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特表2024-5003912-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エタノンのプロドラッグ
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  • 特表-2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エタノンのプロドラッグ 図1
  • 特表-2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エタノンのプロドラッグ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エタノンのプロドラッグ
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/06 20060101AFI20231226BHJP
   A61K 31/4725 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 31/661 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20231226BHJP
   C07F 9/6558 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C07D401/06 CSP
A61K31/4725
A61K31/661
A61P43/00 123
A61P25/18
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/30
A61P25/14
A61P25/04
A61P25/20
C07F9/6558
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536109
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2021086238
(87)【国際公開番号】W WO2022129356
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】20215254.2
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
(71)【出願人】
【識別番号】514232085
【氏名又は名称】ユーシービー バイオファルマ エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アテス、アリ
(72)【発明者】
【氏名】アテス、セラル
(72)【発明者】
【氏名】プロヴァン、ローラン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
4H050
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB04
4C063CC22
4C063DD15
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA03
4C086AA10
4C086BC37
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA02
4C086NA15
4C086ZA02
4C086ZA05
4C086ZA08
4C086ZA16
4H050AA01
4H050AB21
(57)【要約】
本発明は、2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エタノンのプロドラッグであって、式(II)で表されるプロドラッグに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エタノンのプロドラッグであって、式(II):
【化1】

(式中、
は、-P(=O)(OH)、-P(=O)(OM、-P(=O)(O、または-C(=O)Rを表し;
は、アミノで置換されたC1-6アルキルを表し;
は1価のカチオンを表し;
は2価のカチオンを表す。)
で表されるプロドラッグ。
【請求項2】
が-P(=O)(OH)を表す、請求項1に記載の式(II)で表されるプロドラッグ。
【請求項3】
がアミノで置換されたC1-6アルキルを表す、請求項1に記載の式(II)で表されるプロドラッグ。
【請求項4】
が(アミノ)ブチルを表す、請求項3に記載の式(II)で表されるプロドラッグ。
【請求項5】
が(アミノ)ペンチルを表す、請求項3に記載の式(II)で表されるプロドラッグ。
【請求項6】
式(II-A)、(II-B)および(II-C)で表される化合物から選択される、請求項1に記載の式(II)で表されるプロドラッグ。
【化2】
【請求項7】
式(II-A)の化合物である、請求項6に記載の式(II)で表されるプロドラッグ。
【請求項8】
式(II-B)の化合物である、請求項6に記載の式(II)で表されるプロドラッグ。
【請求項9】
式(II-C)の化合物である、請求項6に記載の式(II)で表されるプロドラッグ。
【請求項10】
請求項1に記載の式(II)で表されるプロドラッグであって、
式中、
は、P(=O)(OMまたは-P(=O)(Oを表し、
は、Naを表し、
は、Ca2+を表す、プロドラッグ。
【請求項11】
請求項1に記載の式(II)で表されるプロドラッグを、薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含む医薬組成物。
【請求項12】
統合失調症における認知症状および陰性症状、神経弛緩薬療法に関連する認知障害、軽度認知障害(MCI)、衝動性、注意欠陥多動性障害(ADHD)、パーキンソン病およびその他の運動障害、ジストニア、パーキンソン病認知症、ハンチントン病、レビー小体型認知症、アルツハイマー病、薬物中毒、睡眠障害、無関心、外傷性脊髄損傷、または神経因性疼痛の治療および/または予防に使用するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の式(II)で表されるプロドラッグ、または請求項11に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エタノンのプロドラッグに関する。
【0002】
本発明はまた、これらのプロドラッグの調製方法、およびそのようなプロドラッグを含む医薬組成物にも関する。
【背景技術】
【0003】
WO2021/001288として公開された国際特許出願番号PCT/EP2020/068183は、式(I)の2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エタノンを開示している。
【化1】

この化合物は、D1ポジティブアロステリックモジュレーター(D1 Positive Allosteric Modulator)として作用し、そのため、D1受容体が役割を果たす疾患の治療用薬剤として有益である。
【0004】
WO2021/001288として公開された国際特許出願番号PCT/EP2020/068183は、式(I)の化合物が、統合失調症における認知症状および陰性症状、神経弛緩薬療法に関連する認知障害、軽度認知障害(MCI)、衝動性、注意欠陥多動性障害(ADHD)、パーキンソン病およびその他の運動障害、ジストニア、パーキンソン病認知症、ハンチントン病、レビー小体型認知症、アルツハイマー病、薬物中毒、睡眠障害、無関心、外傷性脊髄損傷または神経因性疼痛の治療および/または予防に有用である可能性があることをさらに開示している。
【0005】
したがって、上記疾患のいずれか1つに罹患している患者への投与に適した式(I)の化合物の製剤を開発することが望まれている。
【0006】
特に、WO2021/001288として公開された国際特許出願番号PCT/EP2020/068183の例2.8は、とりわけ、2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エタノンの一水和結晶形を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この一水和結晶形である2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)-1-[(1S,3R)-3-ヒドロキシメチル)-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エタノンは、限られた溶解性を有し、それによって、経口投与が望ましい場合には、製剤化の困難性および/または低いバイオアベイラビリティー(生物学的利用能)を生じうる。
【0008】
したがって、2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エタノンの一水和結晶形を、特に経口投与用の医薬組成物に組み込むことができるように、その溶解性を向上させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エタノンのプロドラッグであって、式(II):
【化2】

(式中、
は、-P(=O)(OH)、-P(=O)(OM、-P(=O)(O、または-C(=O)Rを表し;
は、アミノで置換されたC1-6アルキルを表し;
は1価のカチオンを表し;
は2価のカチオンを表す。)
で表されるプロドラッグ類、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0010】
したがって、更なる態様において、本発明は、式(II)のプロドラッグおよび薬学的に許容される担体(キャリア)を含む医薬組成物を提供する。
【0011】
WO2021/001288として公開された国際特許出願番号PCT/EP2020/068183は、式(I)の化合物がD1ポジティブアロステリックモジュレーター(D1 Positive Allosteric Modulator)として作用し、それによりD1受容体が関与する疾患の治療用薬剤として有益であることを開示している。
【0012】
WO2021/001288として公開された国際特許出願番号PCT/EP2020/068183は、式(I)の化合物が、統合失調症における認知症状および陰性症状、神経弛緩薬療法に関連する認知障害、軽度認知障害(MCI)、衝動性、注意欠陥多動性障害(ADHD)、パーキンソン病およびその他の運動障害、ジストニア、パーキンソン病認知症、ハンチントン病、レビー小体型認知症、アルツハイマー病、薬物中毒、睡眠障害、無関心、外傷性脊髄損傷または神経因性疼痛の治療および/または予防に有用である可能性があることをさらに開示している。
【0013】
したがって、さらなる態様では、本発明は、統合失調症における認知症状および陰性症状、神経弛緩薬療法に関連する認知障害、軽度認知障害(MCI)、衝動性、注意欠陥多動性障害(ADHD)、パーキンソン病およびその他の運動障害、ジストニア、パーキンソン病認知症、ハンチントン病、レビー小体型認知症、アルツハイマー病、薬物中毒、睡眠障害、無関心、外傷性脊髄損傷または神経因性疼痛の治療および/または予防に使用するための式(II)のプロドラッグ、またはその医薬組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本明細書にさらに記載される例7に従って調製されたプロドラッグ(II-A)の懸濁液を投与した後の、時間の関数としてプロットされた3匹の異なる動物の血漿中の化合物(I)の濃度のグラフを表す。
図2図2は、本明細書にさらに記載される例7に従って調製されたプロドラッグ(II-B)の懸濁液を投与した後の、時間の関数としてプロットされた3匹の異なる動物の血漿中の化合物(I)および(II-B)のそれぞれの濃度のグラフを表す。
図3図3は、本明細書にさらに記載される例7に従って調製されたプロドラッグ(II-C)の懸濁液を投与した後の、時間の関数としてプロットされた3匹の異なる動物の血漿中の化合物(I)の濃度のグラフを表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、式(I)の化合物のプロドラッグを指す場合、インビボ(in vivo)で式(I)の必要な化合物に容易に変換できる式(I)の化合物の機能的誘導体を意味する。本発明による式(I)の化合物のプロドラッグは、上で一般的に定義され、本明細書でさらに説明される式(II)の化合物によって表される。
【0016】
本明細書で使用される「C1-6アルキル」という用語は、直鎖または分枝鎖であってもよく、鎖中に1~6個の炭素原子を含み得る脂肪族炭化水素基を指す。本発明で使用する化合物上に存在し得る適切なアルキル基には、直鎖および分枝鎖のC1-4アルキル基が含まれる。例示的なC1-6アルキル基には、メチル、エチル、プロピルおよびブチルが含まれる。
【0017】
本発明の第1の実施形態では、Rは-P(=O)(OH)を表す。本発明の第2の実施形態では、Rは-P(=O)(OMを表す。本発明の第3の実施形態では、Rは-P(=O)(Oを表す。本発明の第4の実施形態では、RはC(=O)Rを表す。
【0018】
一般に、Mはアルカリ金属カチオンを表す。アルカリ金属カチオンの適切な例は、NaおよびKである。
【0019】
一般に、Mはアルカリ土類金属カチオンを表す。アルカリ土類金属カチオンの適切な例は、Ca2+である。
【0020】
一般に、Rは、アミノによって置換されたC1-6アルキルを表す。第1の実施形態では、Rは(アミノ)ブチルを表す。第2の実施形態では、Rは(アミノ)ペンチルを表す。
【0021】
本発明による式(II)の化合物の具体例は、式(II-A)、(II-B)および(II-C)の化合物によって表される。
【化3】
【0022】
第一の実施形態において、本発明は式(II-A)のプロドラッグに関する。
【0023】
第2の実施形態において、本発明は式(II-B)のプロドラッグに関する。
【0024】
第3の実施形態において、本発明は式(II-C)のプロドラッグに関する。
【0025】
第4の実施形態において、本発明は、式(II-A)の化合物の塩に関する。この実施形態の一態様では、本発明は、Rが-P(=O)(OMを表し、MがNaを表す式(II)の化合物に相当する式(II-A)の化合物の二ナトリウム塩に関する。
【0026】
この実施形態の別の態様では、本発明は、RがP(=O)(Oを表し、MがCa2+を表す式(II)の化合物に相当する式(II-A)の化合物のカルシウム塩に関する。
【0027】
本発明による式(II)で表されるプロドラッグは、一般に、式(I)の化合物の一水和物(本明細書では式(Ia)の化合物と呼ぶ)の結晶形よりも溶解性が高い。このような改善された溶解度は、より高いバイオアベイラビリティーが達成され得るため、特に経口投与のために医薬組成物を調製する必要がある場合に格別に有利である。これにより、用量を減らすこともでき、したがって固体製剤が所望される場合に使用されるべき錠剤サイズを小さくすることもできる。
【0028】
実施例の表1は、本実施例に従って得られた式(II)の化合物と式(Ia)の化合物との間の溶解度の比較データを提示しており、使用された媒体に関係なく最小20倍の増加を示す。
【0029】
本発明によるプロドラッグは、さらに、希釈剤、結合剤(バインダー)、崩壊剤、滑沢剤、流動化剤または担体(キャリア)などの薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて、適切な医薬組成物を形成することができる。
【0030】
このような医薬組成物を調製するために、本発明によるプロドラッグは、当業者に公知の従来の医薬配合技術に従って医薬希釈剤または担体と緊密に混合される。
【0031】
適切な希釈剤および担体は、所望の投与経路、例えば、経口、直腸、非経口または鼻内の経路に応じて、多種多様な形態を採ることができる。
【0032】
経口投与に適した医薬組成物は、固体または液体であり得、例えば、錠剤、丸薬、糖衣錠、ゼラチンカプセル、溶液、シロップ、チューインガムなどの形態であり得る。
【0033】
この目的のために、活性成分は、不活性希釈剤、またはデンプンもしくはラクトースなどの非毒性の薬学的に許容される担体と混合され得る。任意選択で、これらの医薬組成物はまた、微結晶セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチンなどの結合剤、クロスカルメロースナトリウムもしくはクロスポビドンアルギン酸などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、コロイド状二酸化ケイ素などの流動化剤、スクロースもしくはサッカリンなどの甘味料、着色剤、または、ペパーミントもしくはサリチル酸メチルなどの芳香剤、およびOpadry(登録商標)(I、II、AMB II、QXもしくはEZ)などのコーティング剤を含有することができる。
【0034】
本発明はまた、制御された方法で活性物質を放出できる組成物を企図する。非経口投与に使用され得る医薬組成物は、一般にアンプル、使い捨て注射器、ガラスもしくはプラスチックのバイアル、または注入容器に含まれる水性または油性の溶液または懸濁液などの従来の形態である。
【0035】
プロドラッグに加えて、これらの溶液または懸濁液は、任意選択で、注射用水、生理食塩水、油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの滅菌希釈剤、ベンジルアルコールなどの抗菌剤、アスコルビン酸や亜硫酸水素ナトリウムなどの酸化防止剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩などの緩衝剤、塩化ナトリウムやデキストロースなどの浸透圧調整剤、および、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL)、ヒプロメロース(HPMC)などの増粘剤、そして最後にTWEEN(登録商標)80、PVPVA、PVP、PVAなどの安定化剤を含有していてよい。
【0036】
これらの医薬形態は、薬剤師によって日常的に使用される方法で調製される。
【0037】
医薬組成物中の本発明による式(II)のプロドラッグの量は、広い範囲の濃度であってよく、患者の性別、年齢、体重および病状などの様々な要因、ならびに投与方法に依存する。したがって、経口投与のためのプロドラッグの量は、一般に、組成物の全重量に対して約0.5重量%から約80重量%の間、適切には、組成物の全重量に対して約20重量%から約60重量%の間に含まれる。
【0038】
WO2021/001288として公開された国際特許出願番号PCT/EP2020/068183には、式(I)の化合物が、D1受容体が役割を果たす疾患および/または障害、特に、統合失調症における認知症状および陰性症状、神経弛緩薬療法に関連する認知障害、軽度認知障害(MCI)、衝動性、注意欠陥多動性障害(ADHD)、パーキンソン病およびその他の運動障害、ジストニア、パーキンソン病認知症、ハンチントン病、レビー小体型認知症、アルツハイマー病、薬物中毒、睡眠障害、無関心、外傷性脊髄損傷または神経因性疼痛の治療に有用である可能性があることが記載されている。
【0039】
したがって、更なる態様において、本発明は、統合失調症における認知症状および陰性症状、神経弛緩薬療法に関連する認知障害、軽度認知障害(MCI)、衝動性、注意欠陥多動性障害(ADHD)、パーキンソン病およびその他の運動障害、ジストニア、パーキンソン病認知症、ハンチントン病、レビー小体型認知症、アルツハイマー病、薬物中毒、睡眠障害、無関心、外傷性脊髄損傷または神経因性疼痛の治療および/または予防に使用するための、本明細書に記載の式(II)のプロドラッグ、またはその医薬組成物を提供する。
【0040】
特定の態様では、本発明は、パーキンソン病および他の運動障害、アルツハイマー病、または統合失調症における認知症状および陰性症状の治療に使用するための、本発明による式(II)のプロドラッグまたはその医薬組成物を提供する。
【0041】
式(I)の化合物は、式(A)の中間体を式(B)の中間体と反応させることを包含するプロセスによって調製され得る。
【化4】
【0042】
中間体(B)は、(2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HBTU)または当業者に公知の別のカップリング剤の存在下で、適切な溶媒、例えばジメチルホルムアミド中、過剰量の塩基、例えばN,N-ジイソプロピルエチルアミンを用いて、式(A)の中間体と首尾良く反応させることができる。
【0043】
式(B)の中間体は、式(IV)の中間体の反応を伴うプロセスによって調製することができる。
【化5】

(式中、Zは、ハロゲンまたは1-ヒドロキシ-1-メチルエチルを表し;
は、t-ブチルジメチルシリルを表し;
は、水素またはt-ブトキシカルボニルを表す。)
【0044】
第1のステップでは、式(IV)(式中、Zはブロモを表し、Rは水素を表す。)の中間体(以下、中間体(IVa)と称する。)は、当業者に公知の方法に従って、適切な保護基で保護され、式(IV)(式中、Zはブロモを表し、Rはt-ブトキシカルボニルを表す。)の化合物(以下、中間体(IVb)と称する。)を与えることができる。
【0045】
第2のステップでは、例えば、n-BuLiの存在下、適切な溶媒中、例えばテトラヒドロフラン中で、低温にて、乾燥アセトンの存在下、連続流下で、後続の実施例に記載された方法に従って、金属ハロゲン交換反応を行い、上記の対応する中間体(IV)(式中、Zは1-ヒドロキシ-1-メチルエチルを表す:以下、中間体(IVc)と称する。)を与えることができる。
【0046】
次いで、当業者に知られている方法に従って、または添付の実施例にさらに記載されている方法に従って、t-ブトキシカルボニル(Boc)基(R)を最初に脱保護し、続いて、Boc基の脱保護中に形成されたトリメチルシリル基およびt-ブチルジメチルシリル基(R)を脱保護して中間体(B)を得ることができる。
【0047】
式(IVa)の中間体は、式(V)の中間体の反応を含むプロセスによって製造することができ、式中、Yはハロゲン、例えばブロモであり、およびRは式(IV)の中間体について上で定義したものである。
【化6】
【0048】
この反応は、塩化メチルマグネシウムの存在下、適切な溶媒中、例えばテトラヒドロフラン中で、低い温度にて首尾良く行われる。
【0049】
中間体(V)は、式(VI)の中間体の反応を含む2段階プロセスによって調製され得る。
【化7】

(式中、Yは式(V)の中間体について上で定義したとおりであり、Rは水素またはt-ブチル-ジメチルシリルを表す。)
【0050】
第1ステップでは、中間体(VI)(式中、Rは水素を表す。)を、適切な塩基、例えば4-ジメチルアミノ-ピリジンの存在下、室温でt-ブチルジメチルシリルクロリドと反応させ、中間体(VI)(式中、Rはt-ブチル-ジメチルシリルを表す。)を得る。
【0051】
第2ステップでは、中間体(VI)(式中Rはt-ブチル-ジメチルシリルを表す。)を、適切な溶媒中、例えばTHF中で、N-クロロスクシンイミド(NCS)と反応させ中間体(V)を得る。
【0052】
中間体(VI)(式中、Rは水素を表す。)は、式(VII)(式中、Yは中間体(V)について上で定義したとおりである。)の中間体を含むプロセスによって調製することができる。
【化8】
【0053】
この反応は、強塩基、例えば水酸化ナトリウムの存在下、適切な溶媒中、例えばエタノールと水の混合物中で、高い温度にて首尾良く行われる。
【0054】
式(VII)の中間体は、中間体(VIII)の反応を含むプロセスによって調製することができる。
【化9】

(式中、Yは式(V)の中間体について上で定義したとおりである。)
【0055】
この反応は、トリメチルシリルトリフラートおよびパラホルムアルデヒドの存在下、適切な溶媒中、例えばジクロロメタン中で首尾良く行われる。
【0056】
中間体(VIII)は、市販の中間体(IX)を含む2段階プロセスによって調製することができる。
【化10】

(式中、Yは式(V)の中間体について上で定義したとおりである。)
【0057】
この反応は、添付の実施例に記載の方法に従って、または当業者に知られている方法に従って首尾良く行われる。
【0058】
式(A)の中間体は、式(X)の中間体の反応を含む多段階プロセスによって調製することができる。
【化11】

(式中、
は、クロロ、アミノまたはニトロを表し;
は、水素またはt-ブチルを表す。)
【0059】
第1のステップでは、式(X)(式中Rはニトロを表し、Rはt-ブチルを表す。)の中間体(以下、中間体(Xa)と称する。)を、対応する中間体(X)(Rはアミノを表し、Rはt-ブチルを表す:以下、中間体(Xb)と称する。)に還元する。この反応は、適切な溶媒中、例えばメタノール中で、高圧下でのPd/C触媒による水素化によって首尾良く行われる。
【0060】
中間体(Xb)は、濃塩酸および亜硝酸ナトリウムを添加し、続いて塩酸および塩化銅(II)をさらに添加することによって、対応する中間体(X)(式中、Rはクロロを表し、Rは水素を表す:以下、中間体(Xc)と称する。)に変換される。この反応は、低い温度で首尾良く行われる。
【0061】
次いで、中間体(A)は、添付の実施例に記載の方法または当業者に知られている方法に従って、N-クロロスクシンイミドと反応させることによって中間体(Xc)から直接得ることができる。
【0062】
式(Xa)の中間体は、式(XI)の中間体を含むプロセスによって調製され得る。
【化12】

(式中、Rは、水素またはメチルを表す。)
【0063】
第1のステップでは、式(XI)(式中、Rが水素を表す。)の市販の中間体(以下、中間体(XIa)と称する。)を、強塩基、例えば塩化カリウムの存在下で、適切な溶媒中、例えば、ジメチルホルムアミド中でヨウ化メチルと反応させる。次いで、得られた中間体(XI)(Rはメチルを表す:以下、中間体(XIb)と称する。)を、適切な溶媒中、例えばテトラヒドロフラン中で、カリウムt-ブトキシドの存在下、低温で2-クロロ酢酸t-ブチルと反応させて中間体(Xa)を得る。
【0064】
式(II)のプロドラッグは、式(I)の化合物の官能基変換によって得ることができる。
【0065】
式(II)(Rは、-P(=O)(OH)を表す。)の化合物は、実施例3にさらに記載される手順に従って、または当業者に公知のいずれかの他の方法に従って調製される。
【0066】
式(II)(Rは-P(=O)(OMまたは-P(=O)(Oを表す。)の化合物は、式(II)(Rは-P(=O)(OH)を表す。)の化合物から、当業者にとって慣習的な方法に従って、塩基との反応により得ることができる。
【0067】
式(II)(RはC(=O)Rを表し、Rはアミノで置換されたC1-6アルキルを表す。)の化合物は、典型的には式(I)の化合物から2段階の手順で調製される。
(i)式(I)の化合物を、アミノ基が適切な保護基で保護されている、アミノで置換されたC1-6アルキルの対応するカルボン酸と反応させる。このようなカルボン酸は、一般に市販されている。
この反応は、ジクロロメタンなどの適切な溶媒中、室温で首尾良く行われる。
(ii)工程(i)の結果として得られる化合物のアミノ基の保護基は、当業者に公知の従来の方法、例えば酸との反応により除去される。
【0068】
本発明による化合物を調製するための上記のプロセスのいずれかから生成物の混合物が得られる場合、所望の生成物は、分取HPLCなどの従来の方法によって;あるいは、例えばシリカおよび/またはアルミナを適切な溶媒系と組み合わせて利用するカラムクロマトグラフィーによって、適切な段階でそこから分離することができる。
【0069】
本発明による化合物を調製するための上記方法により立体異性体(stereoisomers)の混合物が生じる場合、これらの異性体は従来の技法によって分離され得る。特に、式(I)の化合物の特定のエナンチオマーを得ることを所望する場合、エナンチオマーを分割するためのいずれかの適切な従来の手順を用いて、対応するエナンチオマー混合物からこれを製造することができる。したがって、例えば、ジアステレオマー誘導体(塩など)は、式(I)のエナンチオマーの混合物(例えば、ラセミ体)および適当なキラル化合物(例えば、キラル塩基)の反応によって生成され得る。次いで、いずれかの好都合な手段、例えば結晶化によってジアステレオマーを分離することができ、例えば、ジアステレオマーが塩の場合には酸での処理によって所望のエナンチオマーを回収することができる。別の分割プロセスでは、キラルHPLCを使用して式(I)のラセミ体を分離することができる。さらに、所望される場合には、上記のプロセスの1つで適切なキラル中間体を使用することにより、特定のエナンチオマーを得ることができる。代替的に、特定のエナンチオマーは、エナンチオマーに特異的な酵素による生体内変換を行うことによって得ることもできる。この生体内変換の例としては、エステラーゼを使用してエステルを加水分解し、次いで未反応のエステル対掌体から純粋なエナンチオマーである加水分解された酸のみを精製することが挙げられる。本発明の特定の幾何異性体を得ることが望まれる場合、クロマトグラフィー、再結晶および他の従来の分離手順を、中間体または最終生成物に対して使用することもできる。代替的に、当業者に公知の方法、または添付の実施例に記載の方法に従って、酸または塩基の存在下で、所望されない鏡像異性体を所望の鏡像異性体にラセミ化してもよい。
【0070】
上記の合成手順のいずれかの間に、関係するいずれかの分子上の感受性または反応性の基を保護することが必要および/または望ましい場合がある。これは、Protective Groups in Organic Chemistry「有機化学における保護基」、J.F.W. McOmie、Plenum Press編、1973年;ならびに、T.W. Greene及びP.G.M. Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis「有機合成における保護基」、John Wiley & Sons、第3版、1999年に記載されたものなどの従来の保護基の手段によってなし得る。保護基は、当該技術分野で知られている方法を利用して、後続の好都合ないずれかの段階で除去することができる。
【実施例
【0071】
略語/頻出する試薬
Ac:アセチル
ACN:アセトニトリル
ブライン(brine):飽和塩化ナトリウム水溶液
nBu:n-ブチル
tBu:t-ブチル(tert-butyl)
CV:カラム容量
DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCM:ジクロロメタン
DMAP:4-ジメチルアミノピリジン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
ES:エレクトロスプレー正イオン化
Et:エチル
EtOH:エタノール
EtO:ジエチルエーテル
EtOAc:酢酸エチル
h:時間(Hour)
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
IPAC:酢酸イソプロピル
LC:液体クロマトグラフィー
LCMS:液体クロマトグラフィー質量分析法
Me:メチル
MeOH:メタノール
min:分
NCS:N-クロロスクシンイミド
NMR:核磁気共鳴
iPr:イソプロピル
iPrOH:イソプロパノール
p-TSA:p-トルエンスルホン酸
rt:室温
RT:保持時間
SFC:超臨界流体クロマトグラフィー
SPE:固相抽出
t-BuOK:カリウムt-ブトキシド
TBS:t-ブチルジメチルシリル
TEA:トリエチルアミン
TFA:トリフルオロ酢酸
THF:テトラヒドロフラン
TLC:薄層クロマトグラフィー
TMS:トリメチルシリル
UPLC:超高速液体クロマトグラフィー
IUPAC名は、Biovia Draw バージョン19.1(2019)および20.1(2020)を使用して作られた。
【0072】
1.分析方法
空気または湿気に敏感な試薬を含むすべての反応は、乾燥した溶媒およびガラス器具を使用して窒素またはアルゴン雰囲気下で実行された。マイクロ波照射を必要とする実験は、オペレーティングソフトウェアのバージョン2.0でアップグレードされたBiotage Initiator Sixty電子レンジで行われる。実験は、必要な温度にできるだけ早く到達するように行われる(最大照射出力:400W、外部冷却なし)。市販の溶媒および試薬は、通常さらに精製することなく使用され、必要に応じて無水溶媒が用いられた(一般的に、Aldrich Chemical Companyから入手されるSure-Seal(商標)製品またはACROS Organicsから入手されるAcroSeal(商標))。一般に、反応は薄層クロマトグラフィー(HPLC)、または質量分析によって追跡された。
【0073】
LCMSモードでの質量分析測定は、次のようなさまざまな方法および機器を使用して実行された。
- 塩基性LCMS方法1:
QDA Watersの簡易四重極質量分析計がLCMS分析に使用される。この分光計には、ESI源と、ダイオードアレイ検出器(210~400nm)を備えたUPLC Acquity Classicとが装備されている。データは、塩基性溶出(basic elution)によるポジティブ/ネガティブモードでm/z70~800のフルMSスキャンで取得される。逆相分離は、塩基性溶出用のWaters Acquity UPLC BEH C18 1.7μm(2.1×50mm)カラム上で45℃にて実行される。勾配溶出は、HO/ACN/ギ酸アンモニウム(95/5/63mg/L)+100μL/L NHOH(溶媒A)およびACN/HO/ギ酸アンモニウム(95/5/63mg/L)+100μL/L NHOH(溶媒B)を用いて行われる。注入容積:1μL。MSにおけるフル流量。
【表1】
【0074】
一部の反応混合物は、Isolute(登録商標)セパレーターフェーズカートリッジ(Biotageから入手)、酸性カラム、またはキャッチアンドリリースSPE(固相抽出)カートリッジを使用して処理することができた。粗物質は、順相クロマトグラフィー、分取TLC、(酸性または塩基性)逆相クロマトグラフィー、キラル分離研和(trituration)または再結晶によって精製することができた。
【0075】
順相クロマトグラフィーは、シリカゲルカラム(Biotage(登録商標)のIsolera(商標)FourもしくはTeledyne Isco CombiNormal phase column(登録商標)などの順相カラムクロマトグラフィーシステム用のカートリッジ、または100:200メッシュのシリカゲル)を使用して実行された。
製品は、通常、最終分析および生物学的試験に提供する前に真空下で乾燥された。
【0076】
NMRペクトルは、Topspin 3.2ソフトウェアを実行するWindows 7 Professionalワークステーションと、5mmのDouble Resonance Broadband Probe(PABBIH/19F-BB Z-GRD Z82021/0075)または1mmのTriple Resonance Probe(PATXI H/D-13C/15N Z-GRD Z868301/004)とを搭載したBRUKER AVANCEIII 400MHz-Ultrashield NMR分光計で記録した。
【0077】
化学シフトは、重水素化溶媒(DMSO-d、MeOH-dまたはCDCl)の残留プロトンに由来するシグナルを参照する。化学シフトは百万分率(ppm)で表され、結合定数(J)はヘルツ(Hz)で表される。スピン多重度は、ブロード(br)、一重項(s)、二重項(d)、三重項(t)、四重項(q)、および多重項(m)として与えられる。
【0078】
すべての最終生成物は、次のように塩基性モードと酸性モードの両方でLCMSによって分析された。
- 塩基性LCMS方法2:
QDA Watersの簡易四重極質量分析計がLCMS分析に使用される。この分光計には、ESI源と、ダイオードアレイ検出器(210~400nm)を備えたUPLC Acquity Classicとが装備されている。データは、塩基性溶出(basic elution)によるポジティブ/ネガティブモードでm/z70~800のフルMSスキャンで取得される。逆相分離は、塩基性溶出用のWaters Acquity UPLC BEH C18 1.7μm(2.1×100mm)カラム上で45℃にて実行される。勾配溶出は、HO/ACN/ギ酸アンモニウム(95/5/63mg/L)+100μL/L NHOH(溶媒A)、およびACN/HO/ギ酸アンモニウム(95/5/63mg/L)+100μL/L NHOH(溶媒B)を用いて行われる。注入容積:1μL。MSにおけるフル流量。
【表2】
【0079】
- 酸性LCMS法:
QDA Watersの簡易四重極質量分析計がLCMS分析に使用される。この分光計には、ESI源と、ダイオードアレイ検出器(210~400nm)を備えたUPLC Acquity Hclassとが装備されている。データは、酸性溶出(acidic elution)によるポジティブ/ネガティブモードでm/z70~800のフルMSスキャンで取得される。逆相分離は、酸性溶出用のWaters Acquity UPLC HSS T3 1.8μm(2.1×100mm)カラム上で45℃にて実行される。勾配溶出は、HO/ACN/TFA(95/5/0.05%)(溶媒A)およびACN(溶媒B)を用いて行われる。
【表3】
【0080】
2. 2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)-1-[(1S,3R)-3-(ヒドロキシメチル)-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]エタノン(1a)の一水和結晶形の調製
式(Ia)の化合物を、参照により本明細書に組み込まれる同時係属中の国際特許出願WO2021/001288の実施例2に記載されているのと同じ合成方法を適用することによって調製した。
【0081】
次の再結晶化プロトコルも、セクション2.8で開示された再結晶化プロトコルの代替として適用された:
240mlのジメチルスルホキシドに可溶化されている5.00gの粗物質に対して再結晶化を実施する。この溶液を40℃に加熱し、次いでP3焼結ガラス上で濾過する。反応器およびフィルターを35mlのジメチルスルホキシドですすぐ。濾液を清浄な反応器に移し、85℃に加熱する。110mlの水を、30分かけてゆっくりと投与する。次いで、250mgの化合物(Ia)(0.5%w/w、一水和物形態)を反応混合物に添加する。混合物を85℃で2時間30分撹拌し、そして、12時間かけて20℃に達するようにゆっくりと冷却し、その間に結晶性物質が溶液から出て来る。懸濁液を濾過し、濾過ケーキを水で数回、次いで酢酸エチル150mlで連続的に洗浄する。フィルターケーキを真空下、50~60℃で乾燥させる。化合物(Ia)をオフホワイトの粉末46.9gとして得る。収率=94%
【0082】
【数1】
【0083】
3. 式(II-A)の化合物の調製 - [(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチル二水素ホスファート、ならびにその二ナトリウム塩(II-A-Na)およびカルシウム塩(II-A-Ca)の調製
【化13】
【0084】
3.1.中間体(a1)の合成 - ジベンジル[(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチルホスファートの合成
DCM(210mL)中の式(Ia)の化合物(10.0g、20.0mmol)の懸濁液に、室温で、ジベンジルn,n-ジイソプロピルホスホルアミダイト(10.8mL、31.5mmol)、イミダゾール(1.43g、21.0mmol)およびイミダゾール塩酸塩(3.29g、31.5mmol)を連続的に加え、反応混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、過酸化水素(水中35%w/w、10.4mL、128mmol)を45分かけて2回に分けて加え、反応混合物を室温で1時間30分撹拌した。次いで、反応混合物を飽和亜硫酸水素ナトリウム溶液(200mL)で洗浄し、水相をDCMで2回抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、さらに乾燥するまで真空中で濃縮して、淡黄色油を得た。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーBiotage Isolera Four(15CV(カラムボリューム)でヘプタン:EtOAc70:30~20:80の勾配における100g SFARシリカゲルカラム)により精製した。最も純粋な画分を収集し、乾燥するまで溶媒を蒸発させ(30℃)、ジベンジル[(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチルホスファート(a1)を白色固体として得た(11.9g、16.2mmol、収率81%)。
【0085】
塩基性LCMS方法1: 1.71分(ES)にて1ピーク:758/760[M+Na]、458/460[M-(BnO)P(O)OH+H]、純度87%。
【数2】
【0086】
3.2. 化合物(II-A)の合成 - [(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチル二水素ホスファートの合成
300mLのガラス製パール反応器に、ジベンジル[(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチルホスファート(a1)(11.5g、15.6mmol)、THF(141mL)、およびパラジウム(カーボン上に担持5%、Paste JM タイプ87L、764mg、0.359mmol)を導入し、この反応混合物を4バールのH下で3時間撹拌した。次いで、反応混合物をセライトのパッド上で濾過し、濾過ケーキをTHF(200mL)で溶出した。濾液を乾燥するまで真空中で濃縮して、白色固体を得た。この粗混合物を逆相分取HPLC GILSON塩基性モード(YMC Triart-500g-10μm-76.5×200mm、Gradient(勾配)溶出ACN(1000mL水中NHOH5mL)20/80~50/50)により精製した。最も純粋な画分を収集し、直接凍結乾燥して白色固体を得た。この白色固体を、酸性条件下で(1.0gずつ、C18 SNAP 60gゲルカラム、12CVで、水/ギ酸(pH約5)中20%から50%のACNの勾配の条件により)、逆相フラッシュクロマトグラフィーBiotage Isolera Fourにより2度目の精製を行った。最も純粋な画分を収集し、直接凍結乾燥して、[(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチル二水素ホスファート(II-A)(6.07g、10.9mmol、収率70%)を白色固体として得た。
【0087】
塩基性LCMS方法2: 4.00分(ES)にて1ピーク:554/556[M-H]、純度97%。
酸性LCMS方法1: 2.30分(ES)にて1ピーク:554/556[M-H]、純度97%。
【数3】
【0088】
式(II-A)の化合物の結晶化は、10mLのエタノール/ペンタン(10/1)溶液中の100mgの化合物を使用して最適化された。3週間後、白色の結晶が得られた(20mg、収率20%)。結晶化のスケールアップは、10mLエタノール/ペンタン(10/1)を使用して、700mgを140mgの5つのバッチに分割して実行した。3週間後、[(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチル二水素ホスファート(II-Ax)の白色結晶が得られた(203mg、収率29%、5つの実験の組み合わせ)。
【0089】
3.3. 化合物(II-A-Na)の合成 - 二ナトリウム[(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチルホスファートの合成
[(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチル二水素ホスファート(II-A)(1.0当量、275mg、0.490mmol)の水溶液(0.1M、5mL)に、0℃にて水酸化ナトリウム溶液(2.0当量、1mL、1mmol、1M溶液)を加え、反応物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を一晩凍結乾燥して、二ナトリウム[(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチルホスファート(II-A-Na)(250mg、0.402mmol、収率82%)を淡黄色固体として得た。
【0090】
【数4】
【0091】
3.4. 化合物(II-A-Ca)の合成 - カルシウム[(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチルホスファートの合成
[(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチル二水素ホスファート(II-A)(1.0当量、100mg、0.178mmol)の水溶液(0.1M、2mL)に、0℃にて水酸化カルシウム溶液(1.0当量、14mg、0.183mmol)を加え、反応物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を一晩凍結乾燥して、カルシウム[(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチルホスファート(II-A-Ca)(110mg、0.179mmol、収率100%)を白色固体として得た。
【0092】
【数5】
【0093】
4. 化合物(II-B)の調製 - [(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチル(2S)-2-アミノ-3-メチル-ブタノアートの調製
【化14】
【0094】
4.1. 中間体(a2)の合成 - [(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチル(2S)-2-(t-ブトキシカルボニルアミノ)-3-メチル-ブタノアートの合成
式(Ia)の化合物(8.00g、16.2mmol)のDCM(170mL)溶液に、室温で、(2S)-2-(t-ブトキシカルボニルアミノ)-3-メチル-ブタン酸(Boc-L-Valine、7.30g、33.2mmol)、DMAP(1.00g、8.40mmol)およびDCC(6.93g、33.6mmol)を加え、混合物を室温で18時間撹拌した。次いで、NaHCOの飽和溶液を加え、水層をDCMで抽出した(3回)。合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、乾燥するまで蒸発させて、白色固体を得た。この粗混合物を逆相分取HPLC GILSON塩基性モード(YMC Triart-500g-10μm-76.5×200mm、Gradient(勾配)溶出ACN(1000mL水中NHOH5mL)60/40~90/10)により精製した。最も純粋な画分を収集し、濃縮乾固して、[(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチル(2S)-2-(t-ブトキシカルボニルアミノ)-3-メチル-ブタノアート(a2)(10.0g、14.8mmol、収率91%)を白色固体として得た。
【0095】
塩基性LCMS方法1: 1.78分(ES)にて1ピーク:675/677[M+H]、575/577[M-Boc+H]、純度98%。
【数6】
【0096】
4.2. 化合物(II-B)の合成 - [(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチル(2S)-2-アミノ-3-メチル-ブタノアートの合成
[(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチル(2S)-2-(t-ブトキシカルボニルアミノ)-3-メチル-ブタノアート(a2)(10.0g、14.8mmol)の2-プロパノール(100mL)溶液に、室温で塩酸(水中37%、36.2mL、434mmol)を加え、反応混合物を室温で30分間撹拌した。次いで、得られた混合物にpHが7~8に達するまでDCMおよびNaHCOの飽和溶液を添加し、層を分離した。水層をDCMで2回抽出した。次いで、合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮乾固して、白色固体を得た。この粗混合物を逆相分取HPLC GILSON塩基性モード(YMC Triart-500g-10μm-76.5×200mm、Gradient(勾配)溶出ACN(1000mL水中NHOH5mL)50/50~100/0)により精製した。最も純粋な画分を収集し、濃縮乾固して、表題生成物を白色固体として得た。この生成物をEtOAc/ペンタン5:2(35mL/g)の混合物中で再結晶し、[(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチル(2S)-2-アミノ-3-メチル-ブタノアート(II-B)(3.30g、5.75mmol、収率39%)を白色結晶として得た。
【0097】
塩基性LCMS方法2: 4.59分(ES)にて1ピーク:575/577[M+H]、純度98%。
酸性LCMS方法1: 4.45分(ES)にて1ピーク:575/577[M+H]、純度99%。
【数7】
【0098】
5. 化合物(II-C)の合成 - [(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチル(2S)-2-アミノ-4-メチル-ペンタノアートの合成
【化15】
【0099】
5.1. 中間体(a3)の合成 - [(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチル(2S)-2-(t-ブトキシカルボニルアミノ)-4-メチル-ペンタノアートの合成
(2S)-2-(t-ブトキシカルボニルアミノ)-4-メチル-ペンタン酸(Boc-L-ロイシン(Leucine)、9.50g、40.3mmol)および式(Ia)の化合物(10.0g、20.2mmol)のDCM(200ml)懸濁液に、室温でDMAP(1.24g、10.1mmol)およびDCC(8.35g、40.5mmol)を加え、得られた反応混合物を室温で18時間撹拌した。LCMSモニタリングにより不完全な転化が示された後、追加のDCC(2.09g、10.1mmol)および(2S)-2,4-ジメチルペンタン酸(2.39g、10.1mmol)を反応混合物に加え、得られた反応混合物を室温で20時間撹拌した。LCMSモニタリングにより完全な転化が示された後、反応混合物を水およびDCMで希釈し、層を分離した。有機層を飽和NHCl水溶液、飽和NaHCO水溶液、水、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーBiotage Isolera Four(セライト上に固体充填、ヘプタン/EtOAc100/0から40/60の勾配中、220gのSFARシリカゲル)により精製した。所望の化合物を含む画分を収集し、濃縮して残渣を得て、次いでフラッシュクロマトグラフィーBiotage Isolera Four(DCM中の液体充填、DCM/EtOAc100/0から80/20の勾配中、220gのSFARシリカゲル)によって精製した。所望の生成物を含む画分を合わせ、DCMがすべて除去されるまで減圧下で部分的に蒸発させて懸濁液を得、これを濾過して溶液を得、濃縮して[(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチル(2S)-2-(t-ブトキシカルボニルアミノ)-4-メチル-ペンタノアート(a3)(11.3g、16.4mmol、収率81%)を白色固体として得た。
【0100】
塩基性LCMS方法2: 1.82分(ES)にて1ピーク:589[M+H-Boc]、純度98%。
酸性LCMS方法1: 1.82分(ES)にて1ピーク:589[M+H-Boc]、純度98%。
【数8】
【0101】
5.2. 化合物(II-C)の合成 - [(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチル(2S)-2-アミノ-4-メチルペンタノアートの合成
[(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチル(2S)-2-(t-ブトキシカルボニルアミノ)-4-メチル-ペンタノアート(a3)(10.0g、14.5mmol)の2-プロパノール(150mL)溶液に、0℃で塩酸(水中37%w/w、36.2mL、434mmol)を加え、反応混合物を4℃から室温にて8日間撹拌した。反応混合物をDCM(600mL)で希釈した後、飽和NaHCO水溶液をpH=8になるまでゆっくり加えた。層を分離し、水層をDCM(2×400mL)で抽出した。合わせた有機層を半飽和NaCl水溶液(800mL)、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーBiotage Isolera Four(DCM中の液体充填、ヘプタン/EtOAc/MeOH50/50/0から0/100/0、次いで0/100/0から0/90/10への勾配中、220gのSFARシリカゲル)によって2回精製し、白色固体を得た。固体をEtOAc(100mL)に溶解し、ペンタン(250mL)で希釈した。混合物全体を、透明な溶液が得られるまで35℃で30分間撹拌した。溶液を室温まで放冷し、室温にて150rpmで6日間撹拌して白色の懸濁液を得、これを濾過した。固体を高真空下、室温で24時間乾燥させて、[(1S,3R)-2-[2-(3,5-ジクロロ-1-メチル-インダゾール-4-イル)アセチル]-5-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-3-イル]メチル(2S)-2-アミノ-4-メチルペンタノアート(II-C)(2.56g、4.35mmol、収率30%)を白色結晶として得た。
【0102】
塩基性LCMS方法2: 4.80分(ES)にて1ピーク:589[M+H]、純度100%。
酸性LCMS方法1: 3.93分(ES)にて1ピーク:589[M+H]、純度100%。
【数9】
【0103】
6. 式(II-A)、(II-Ax)、(II-B)および(I)の化合物の溶解度
例2.12.に従って得られた式(Ia)の化合物、ならびに例3.2.および4.2.に従ってそれぞれ得られた式(II-A)、(II-Ax)および(II-B)の化合物の溶解度を、振盪フラスコ法を使用して異なる媒体で測定した。5mg/mLの式(I)の化合物の濃度に相当する(II-Ax)および(II-B)について、および、1mg/mLの式(I)の化合物の濃度に相当する(II-A)についての過剰の固体を、表1に具体的に記載されている5mLの緩衝液/生体関連媒体に懸濁し、ロータリーミキサーを備えた気候室内で、室温または37℃(以下に示す)にて、24時間、密閉ガラスバイアル(10mL)中でインキュベートした。24時間の時点で溶解度に達したと仮定し、その時点で懸濁液を0.45μmのウルトラフリーフィルター(Merck Millipore)を通して濾過し、薬物含有量をHPLCによって測定した。化合物(Ia)、(II-A)、(II-Ax)、および(II-B)の溶解度を3回測定し(n=3)、平均値を計算した。
【0104】
試験した媒体はそれぞれ、水、リン酸緩衝液、FasSGF、FASSIF-V2、およびFeSSIF-V2である。FasSGは空腹時の胃液である。FasSGFは、pH1.6で調製され、0.08mMタウロコール酸塩、0.02mMリン脂質、34mMナトリウムおよび59mM塩化物を含む。FaSSIF-V2およびFeSSIF-V2は、それぞれ絶食および摂食状態の生物関連媒体である。FaSSIF-V2は、pH6.5で調製され、3mMタウロコール酸塩、0.2mMリン脂質、106mMナトリウム、69mM塩化物、および19mMマレイン酸を含む。FeSSIF-V2は、pH5.8で調製され、10mMタウロコール酸塩、2mMリン脂質、0.8mMオレイン酸塩、5mMモノオレイン酸グリセロール、218mMナトリウム、125mM塩化物、および55mMマレイン酸を含む。
【0105】
【表1】
【0106】
上で得られた結果は、使用された媒体に関わりなく、式(Ia)の化合物と比較して、プロドラッグ(II-A)、(II-Ax)および(II-B)の溶解度の少なくとも20倍の増加が得られることを示す。
【0107】
7. (II-A)、(II-B)、および(II-C)の懸濁液のインビボ(in vivo)でのバイオアベイラビリティー
7.1. (II-A)、(II-B)、および(II-C)の懸濁液
以下の懸濁液で使用される製剤ビヒクルは、25mMホスファート緩衝液中の1%(w/v)メチルセルロース(400cps)、0.1%(w/v)TWEEN(登録商標)80、0.1%(w/v)Antifoam 1510USの混合物であり、水中でのpHは3.0である。
【0108】
式(II)の化合物を超音波処理システム(Covaris S220X)の容器中で秤量し、上記の配合ビヒクルを添加して、式(II)の化合物の濃度0.72g/mlを得た。
1分間の超音波処理を3回繰り返してこの溶液を均質化する。
【0109】
7.2. 投与およびバイオアベイラビリティの測定
3匹の雄のスプラーグドーリーラットに、上のパラグラフ7.1に記載された(II-A)、(II-B)および(II-C)のそれぞれの懸濁液を、式(I)の化合物3mg/kgに相当する単回経口用量で投与した。
【0110】
血漿サンプルを、投与後0.12時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間および8時間後に採取した。
化合物(I)ならびにそれぞれの化合物(II-A)、(II-B)および(II-C)の血漿濃度を、LC/MS(液体クロマトグラフィー/質量分析)によって定量した。
【0111】
図1および図3は、すべてのプロドラッグ(II-A)および(II-C)が完全に切断されて式(I)の化合物となり、血流中を循環することを示している。
図2は、プロドラッグ(II-B)が部分的に切断されて式(I)の化合物になることを示している。
図1
図2
図3
【国際調査報告】