IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-500399ヒト化Fcアルファ受容体を発現するマウス
<>
  • 特表-ヒト化Fcアルファ受容体を発現するマウス 図1A
  • 特表-ヒト化Fcアルファ受容体を発現するマウス 図1B
  • 特表-ヒト化Fcアルファ受容体を発現するマウス 図2
  • 特表-ヒト化Fcアルファ受容体を発現するマウス 図3
  • 特表-ヒト化Fcアルファ受容体を発現するマウス 図4A
  • 特表-ヒト化Fcアルファ受容体を発現するマウス 図4B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ヒト化Fcアルファ受容体を発現するマウス
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20231226BHJP
   A01K 67/027 20240101ALI20231226BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231226BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20231226BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20231226BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALN20231226BHJP
【FI】
C12N15/09 100
A01K67/027 ZNA
C12N5/10
G01N33/53 N
C12N15/12
C12N5/0735
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536551
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 US2021063574
(87)【国際公開番号】W WO2022132943
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/126,326
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.プルロニック
3.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】マックフィルター、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】トゥ、ナシン
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー、アンドリュー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド、リン
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA91X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BA03
(57)【要約】
本明細書では、マウス白血球受容体複合体(LRC)に位置するFcaR遺伝子座からヒトまたはヒト化Foot受容体(FcaR)を発現するマウスに関連する方法及び組成物が提供される。特定の実施形態において、このようなマウスは、ヒトIgA Fcを含む治療薬のin vivo試験(例えば、そのような治療薬の薬物動態学的及び/または薬力学的特性の試験、ならびに投与計画)に有用である。また、本明細書では、そのようなマウスを使用する方法、そのようなマウスから得られる細胞、そのようなマウスを作製する方法、及びそのようなマウスと同様の遺伝子改変を含むES細胞も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲノム中に、マウス白血球受容体複合体(LRC)に位置するFcアルファ受容体(FcαR)遺伝子座を含むマウスであって、前記FcαR遺伝子座は、ヒト細胞外ドメイン及びヒトまたはげっ歯類の細胞質ドメインを含むFcαRポリペプチドをコードする核酸配列を含む、前記マウス。
【請求項2】
前記FcαR遺伝子座は、Tthy1タンパク質の遺伝子座とRdh13タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する、請求項1に記載のマウス。
【請求項3】
前記FcαR遺伝子座は、Lilra5タンパク質の遺伝子座とGp6タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する、請求項1または2に記載のマウス。
【請求項4】
前記FcαR遺伝子座は、Pira6タンパク質及びNcr1タンパク質をコードする核酸配列の間など、Pira6タンパク質の遺伝子座とNcr1タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する、請求項1~3のいずれか一項に記載のマウス。
【請求項5】
前記遺伝子間領域は、前記Pira6遺伝子座と前記Ncr1遺伝子座との間の54kbの領域である、請求項4に記載のマウス。
【請求項6】
前記FcαR遺伝子座は、マウス7番染色体上の座標4,303,905~4,312,280(+鎖、GRCm38アセンブリ)の間に位置する、請求項1~5のいずれか一項に記載のマウス。
【請求項7】
前記FcαR遺伝子座は、ヒトFcαRポリペプチドをコードする核酸配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のマウス。
【請求項8】
前記FcαR遺伝子座は、前記ヒトFcアルファ受容体遺伝子のヒトエクソン1~5を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のマウス。
【請求項9】
前記FcαR遺伝子座は、非マウスげっ歯類FcαRエクソン1の非コード部分、ヒトFcαRエクソン1及び2、ヒトFcαRエクソン3及び4、ならびに非マウスげっ歯類FcαRエクソン5のコード部分を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のマウス。
【請求項10】
前記ヒトまたはヒト化FcαR受容体遺伝子座は、ヒト19番染色体上の座標54,862,297~54,906,185の間で見出されるゲノム配列(+鎖、GRCh38アセンブリ)を含む、請求項7または8に記載のマウス。
【請求項11】
前記FcαR遺伝子座は、ヒトKIR3DL2遺伝子に存在する核酸配列、及び/または前記ヒトNCR1遺伝子の5’UTRに存在する核酸配列をさらに含む、請求項7または8に記載のマウス。
【請求項12】
前記マウスは、マウス好中球、単球、マクロファージ、好酸球、及び樹状細胞(例えば、形質細胞様樹状細胞)上で前記FcαRポリペプチドを発現する、請求項1~11のいずれか一項に記載のマウス。
【請求項13】
前記マウスは、前記FcαR遺伝子座についてヘテロ接合性またはホモ接合性を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のマウス。
【請求項14】
ゲノム中に、ヒトまたはヒト化Fcガンマ受容体(FcγR)遺伝子座、ヒトまたはヒト化IgH遺伝子座、ヒトまたはヒト化Igκ遺伝子座、ヒトまたはヒト化Igλ遺伝子座、ヒトまたはヒト化FcRn遺伝子座、ヒトまたはヒト化β2M遺伝子座、及び/またはヒトまたはヒト化FcεR1α遺伝子座をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のマウス。
【請求項15】
ゲノム中に、マウスゲノムの白血球受容体複合体(LRC)に位置するFcアルファ受容体(FcαR)遺伝子座を含むマウス胚性幹細胞(ES細胞)であって、前記FcαR遺伝子座は、ヒト細胞外ドメイン及びヒトまたはげっ歯類の細胞質ドメインを含むFcαRポリペプチドをコードする核酸配列を含む、前記マウス胚性幹細胞。
【請求項16】
前記FcαR遺伝子座は、Tthy1タンパク質の遺伝子座とRdh13タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する、請求項15に記載のマウスES細胞。
【請求項17】
前記FcαR遺伝子座は、Lilra5タンパク質の遺伝子座とGp6タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する、請求項15または16に記載のマウスES細胞。
【請求項18】
前記Fcアルファ受容体(FcαR)遺伝子座は、Pira6タンパク質及びNcr1タンパク質をコードする核酸配列の間など、Pira6タンパク質の遺伝子座とNcr1タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する、請求項15~17のいずれか一項に記載のマウスES細胞。
【請求項19】
前記遺伝子間領域は、前記Pira6遺伝子座と前記Ncr1遺伝子座との間の54kbの領域である、請求項18に記載のマウスES細胞。
【請求項20】
前記FcαR遺伝子座は、マウス7番染色体上の座標4,303,905~4,312,280(+鎖、GRCm38アセンブリ)の間に位置する、請求項15~19のいずれか一項に記載のマウスES細胞。
【請求項21】
前記FcαR遺伝子座は、ヒトFcαRポリペプチドをコードする核酸配列を含む、請求項15~20のいずれか一項に記載のマウスES細胞。
【請求項22】
前記FcαR遺伝子座は、前記ヒトFcアルファ受容体遺伝子のヒトエクソン1~5を含む、請求項15~21のいずれか一項に記載のマウスES細胞。
【請求項23】
前記FcαR遺伝子座は、非マウスげっ歯類FcαRエクソン1の非コード部分、ヒトFcαRエクソン1及び2、ヒトFcαRエクソン3及び4、ならびに非マウスげっ歯類FcαRエクソン5のコード部分を含む、請求項15~20のいずれか一項に記載のマウスES細胞。
【請求項24】
前記ヒトまたはヒト化FcαR受容体遺伝子座は、ヒト19番染色体上の座標54,862,297~54,906,185の間で見出されるゲノム配列(+鎖、GRCh38アセンブリ)を含む、請求項21または22に記載のマウスES細胞。
【請求項25】
前記FcαR遺伝子座は、ヒトKIR3DL2遺伝子に存在する核酸配列、及び/または前記ヒトNCR1遺伝子の5’UTRに存在する核酸配列をさらに含む、請求項21または22に記載のマウスES細胞。
【請求項26】
前記ES細胞は、前記FcαR遺伝子座についてヘテロ接合性またはホモ接合性を有する、請求項15~25のいずれか一項に記載のマウスES細胞。
【請求項27】
ゲノム中に、ヒトまたはヒト化Fcガンマ受容体(FcγR)遺伝子座、ヒトまたはヒト化IgH遺伝子座、ヒトまたはヒト化Igκ遺伝子座、ヒトまたはヒト化Igλ遺伝子座、ヒトまたはヒト化FcRn遺伝子座、ヒトまたはヒト化β2M遺伝子座、及び/またはヒトまたはヒト化FcεR1α遺伝子座をさらに含む、請求項15~26のいずれか一項に記載のマウスES細胞。
【請求項28】
ヒトIgA抗体またはFcα融合ポリペプチドを試験する方法であって、前記IgA抗体またはFcα融合ポリペプチドを請求項1~14のいずれか一項に記載のマウスに投与することを含む、前記方法。
【請求項29】
前記投与されたヒトIgA抗体またはFcα融合ポリペプチドの1つ以上の薬物動態学的特性を測定することをさらに含み、任意選択で、前記1つ以上の薬物動態学的特性は、血漿中濃度対時間下面積(AUC)、生体内回収率(IVR)、クリアランス率(CL)、平均滞留時間(MRT)、薬剤半減期(t1/2)、及び/または定常状態分布容積(Vss)の1つ以上から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記投与されたヒト抗体またはFcα融合ポリペプチドの治療的有効性を測定することをさらに含む、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
複数の用量の前記ヒト抗体またはFcα融合ポリペプチドを投与することと、各用量の前記ヒト抗体またはFcα融合ポリペプチドの治療的有効性、安全性、及び/または耐容性を決定することとをさらに含む、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記マウスにおける1つ以上のFc受容体媒介反応を測定することをさらに含み、任意選択で、前記1つ以上のFc受容体媒介反応が抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)反応である、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記ヒト抗体は、前記マウスの標的細胞に結合し、前記方法は、前記標的細胞に対するナチュラルキラー(NK)細胞の抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)を測定することと、ADCCの量を対照と比較することとをさらに含み、標的細胞死滅の増加は、薬剤がADCCを媒介する能力が増加していることを示す、請求項28~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記ヒト抗体に対して前記マウスが生成する前記免疫反応を測定することをさらに含む、請求項28~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
マウスゲノムを改変する方法であって、
Fcアルファ受容体(FcαR)遺伝子座をマウスゲノムの白血球受容体複合体(LRC)に挿入して、前記マウスゲノムを改変することを含み、前記FcαR遺伝子座は、ヒト細胞外ドメイン及びヒトまたはげっ歯類の細胞質ドメインを含むFcαRポリペプチドをコードする核酸配列を含む、前記方法。
【請求項36】
前記FcαR遺伝子座は、ヒトFcαRポリペプチドをコードする核酸配列を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記FcαR遺伝子座は、Tthy1タンパク質の遺伝子座とRdh13タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
前記FcαR遺伝子座は、Lilra5タンパク質の遺伝子座とGp6タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する、請求項35~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記FcαR遺伝子座は、Pira6タンパク質及びNcr1タンパク質をコードする核酸配列の間など、Pira6タンパク質の遺伝子座とNcr1タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する、請求項35~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記遺伝子間領域は、前記Pira6遺伝子座と前記Ncr1遺伝子座との間の54kbの領域である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記FcαR遺伝子座は、マウス7番染色体上の座標4,303,905~4,312,280(+鎖、GRCm38アセンブリ)の間である、請求項35~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
Fcアルファ受容体(FcαR)遺伝子座を含むマウスを作製する方法であって、
請求項15~27のいずれか一項に記載のマウスES細胞を作製することと、
前記ES細胞からマウスを作製することと
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年12月16日に出願された米国仮特許出願第63/126,326号に対する優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
マウスは、サイズが小さく、生理学がよく特徴付けられており、大型の哺乳類モデル(霊長類など)に比べて維持費が比較的安価であるため、治療薬の前臨床試験に必須的なin vivoモデルである。マウスモデルは、ヒトの臨床研究に進む前に、治療薬の毒性や薬物動態を評価するためによく使用される。このような利点にもかかわらず、抗体及びFc融合タンパク質のin vivo試験では、これらの治療薬はマウスではヒトとは異なる振る舞いを示す可能性があることから、重大な欠点がある。これは、マウスがIgA抗体に結合するFc受容体を発現しないため、特にIgAベースの治療薬をマウスで試験する場合に当てはまる。従って、マウスモデルは、IgAベースの治療薬の安全性、有効性、及び最適な投与量を予測するために、広範に特性化されておらず、使用されてもいない。ヒト患者におけるこのようなIgAベースの治療薬の特性を予測する、IgAベースの治療薬の前臨床試験を正確に行えるようにする新しいマウスモデル及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本明細書では、ヒトまたはヒト化Fcα受容体(FcαR)を発現するマウスに関連する方法及び組成物、ならびにそのようなマウスにおけるヒトIgA Fcを含む治療薬のin vivo試験(例えば、薬物動態学的及び/または薬力学的特性の試験、ならびにそのような治療薬の投与計画)に関連する方法及び組成物が提供される。本明細書に記載されるように、マウスは、サイズが小さく、生理学がよく特徴付けられており、遺伝子改変に対する適応性のため、治療用抗体及びFc融合タンパク質を試験するのに便利な動物モデルである。残念ながら、ヒトIgA Fc領域を含む薬剤(例えば、IgA抗体及びFcα融合タンパク質)は、野生型マウスに投与したとき、ヒトに投与した場合と比較して非常に異なる薬物動態学的特性及び薬力学的特性を示すことが多いが、これは、そのようなマウスにはFcαRが欠如しているためである。従って、本明細書で提供されるマウスは、治療用途のヒトIgA抗体及びFcα融合タンパク質の開発、スクリーニング、及び試験のためのin vivoシステムとして機能することができる。
【0004】
特定の態様において、本明細書は、ゲノム中に、マウス白血球受容体複合体(LRC)に位置するFcアルファ受容体(FcαR)遺伝子座を含むマウスであって、当該FcαR遺伝子座(ヒトまたはヒト化FcαR遺伝子座など)には、ヒト細胞外ドメイン及びヒトまたはげっ歯類の細胞質ドメインを含むFcαRポリペプチドをコードする核酸配列が含まれる、当該マウスを提供する。いくつかの実施形態において、マウスは、マウス好中球、単球、マクロファージ、好酸球、及び樹状細胞(例えば、形質細胞様樹状細胞)上でFcαRポリペプチドを発現する。いくつかの実施形態において、好中球、単球、マクロファージ、好酸球、及び/または樹状細胞(例えば、形質細胞様樹状細胞)は、マウスの血液から得られる。いくつかの実施形態において、好中球、単球、マクロファージ、好酸球、及び樹状細胞(例えば、形質細胞様樹状細胞)は、マウスの脾臓から得られる。
【0005】
いくつかの態様において、本明細書は、ゲノム中に、マウスゲノムの白血球受容体複合体(LRC)に位置するFcアルファ受容体(FcαR)遺伝子座を含むマウス胚性幹細胞(ES細胞)であって、当該FcαR遺伝子座には、ヒト細胞外ドメイン及びヒトまたはげっ歯類の細胞質ドメインを含むFcαRポリペプチドをコードする核酸配列が含まれる、当該マウス胚性幹細胞を提供する。
【0006】
いくつかの実施形態において、FcαR遺伝子座は、Tthy1タンパク質の遺伝子座とRdh13タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する。いくつかの実施形態において、FcαR遺伝子座は、Lilra5タンパク質の遺伝子座とGp6タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する。いくつかの実施形態において、FcαR遺伝子座は、Pira6タンパク質の遺伝子座とGp6タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する。いくつかの実施形態において、FcαR遺伝子座は、Pira6タンパク質の遺伝子座とNcr1タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する。いくつかの実施形態において、FcαR遺伝子座は、Pira6タンパク質及びNcr1タンパク質をコードする核酸配列の間の遺伝子間領域に位置する。いくつかの実施形態において、遺伝子間領域は、Pira6遺伝子座とNcr1遺伝子座との間の54kbの領域である。いくつかの実施形態において、FcαR遺伝子座は、マウス7番染色体上の座標4,303,905~4,312,280(+鎖、GRCm38アセンブリ)の間に位置する。
【0007】
いくつかの実施形態において、FcαR遺伝子座は、ヒトFcαRポリペプチドをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、FcαR遺伝子座は、ヒトFcアルファ受容体遺伝子のヒトエクソン1~5を含む。いくつかの実施形態において、FcαR遺伝子座は、げっ歯類(非マウス)FcαRエクソン1の非コード部分、ヒトFcαRエクソン1及び2、ヒトFcαRエクソン3及び4、ならびにげっ歯類(非マウス)FcαRエクソン5のコード部分を含む。いくつかの実施形態において、ヒトまたはヒト化FcαR受容体遺伝子座は、ヒト19番染色体上の座標54,862,297~54,906,185の間で見出されるゲノム配列(+鎖、GRCh38アセンブリ)を含む。いくつかの実施形態において、FcαR遺伝子座は、ヒトKIR3DL2遺伝子に存在する核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態において、遺伝子座は、ヒトNCR1遺伝子の5’UTRに存在する核酸配列をさらに含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、マウスまたはマウスES細胞は、FcαR遺伝子座についてヘテロ接合性を有する。いくつかの実施形態において、マウスまたはマウスES細胞は、FcαR遺伝子座についてホモ接合性を有する。
【0009】
いくつかの実施形態において、上記の態様または実施形態のいずれかのマウスまたはマウスES細胞は、ゲノム中に、ヒトまたはヒト化Fcガンマ受容体(FcγR)遺伝子座、ヒトまたはヒト化IgH遺伝子座、ヒトまたはヒト化Igκ遺伝子座、ヒトまたはヒト化Igλ遺伝子座、ヒトまたはヒト化FcRn遺伝子座、ヒトまたはヒト化β2M遺伝子座、及び/またはヒトまたはヒト化FcεR1α遺伝子座をさらに含む。いくつかの実施形態において、マウスまたはマウスES細胞は、ヒトまたはヒト化FcγR遺伝子座、ヒトまたはヒト化IgH遺伝子座、ヒトまたはヒト化Igκ遺伝子座、ヒトまたはヒト化Igλ遺伝子座、ヒトまたはヒト化FcRn遺伝子座、ヒトまたはヒト化β2M遺伝子座、及び/またはヒトまたはヒト化FcεR1α遺伝子座についてヘテロ接合性を有する。いくつかの実施形態において、マウスまたはマウスES細胞は、ヒトまたはヒト化FcγR遺伝子座、ヒトまたはヒト化IgH遺伝子座、ヒトまたはヒト化Igκ遺伝子座、ヒトまたはヒト化Igλ遺伝子座、ヒトまたはヒト化FcRn遺伝子座、ヒトまたはヒト化β2M遺伝子座、及び/またはヒトまたはヒト化FcεR1α遺伝子座についてホモ接合性を有する。
【0010】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の様々な実施形態のFcαR遺伝子座を含むマウスまたはマウスES細胞は、ゲノム中に、ヒトまたはヒト化FcγRをコードする核酸配列を含むヒトまたはヒト化FcγR遺伝子座を含む。いくつかの実施形態において、ヒトまたはヒト化FcγR遺伝子座は、Fcガンマ受容体2a(FcγR2a)、Fcガンマ受容体2b(FcγR2b)、Fcガンマ受容体3a(FcγR3a)、Fcガンマ受容体3b(FcγR3b)、及び/またはFcガンマ受容体2c(FcγR2c)から選択される1つ以上の低親和性FcγRをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ヒトまたはヒト化FcγR遺伝子座は、ヒトまたはヒト化Fcガンマ受容体1アルファ(FcγR1a)、Fcガンマ受容体2a(FcγR2a)、Fcガンマ受容体2b(FcγR2b)、Fcガンマ受容体3a(FcγR3a)、Fcガンマ受容体3b(FcγR3b)、及び/またはFcガンマ受容体2c(FcγR2c)から選択される1つ以上のFcγRをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ヒトまたはヒト化FcγRはヒト細胞外ドメインを含む。いくつかの実施形態において、ヒトまたはヒト化FcγRはマウス膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態において、ヒトまたはヒト化FcγRはヒト膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態において、ヒトまたはヒト化FcγRはマウス細胞質ドメインを含む。いくつかの実施形態において、ヒトまたはヒト化FcγRはヒト細胞質ドメインを含む。いくつかの実施形態において、ヒトまたはヒト化FcγR遺伝子座は、内因性マウスFcγR遺伝子座に位置する。いくつかの実施形態において、ヒトまたはヒト化FcγRをコードする核酸配列は、内因性マウスFcγR遺伝子の全部または一部を置き換える。いくつかの実施形態において、ヒトまたはヒト化FcγRをコードする核酸配列は、マウスFcγR細胞外ドメインをコードする内因性核酸配列を置き換える、ヒトFcγR細胞外ドメインをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、上記の実施形態のいずれかのマウスは、マウスFcγRを発現しない。
【0011】
特定の態様において、本明細書は、ヒトIgA抗体またはFcα融合ポリペプチドを試験する方法であって、当該IgA抗体またはFcα融合ポリペプチドを上記の実施形態のいずれかのマウスに投与することを含む当該方法を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態において、当該方法は、投与されたヒトIgA抗体またはFcα融合ポリペプチドの1つ以上の薬物動態学的特性を測定することをさらに含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の薬物動態学的特性は、血漿中濃度対時間下面積(AUC)、生体内回収率(IVR)、クリアランス率(CL)、平均滞留時間(MRT)、薬剤半減期(t1/2)、及び/または定常状態分布容積(Vss)の1つ以上から選択される。いくつかの実施形態において、当該方法は、投与されたヒト抗体またはFcα融合ポリペプチドの治療的有効性を測定することをさらに含む。いくつかの実施形態において、当該方法は、複数の用量のヒト抗体またはFcα融合ポリペプチドを投与することと、各用量のヒト抗体またはFcα融合ポリペプチドの治療的有効性を決定することとをさらに含む。いくつかの実施形態において、当該方法は、複数の用量のヒト抗体またはFcα融合ポリペプチドを投与することと、各用量のヒト抗体またはFcα融合ポリペプチドの安全性を決定することとをさらに含む。いくつかの実施形態において、当該方法は、複数の用量のヒト抗体またはFcα融合ポリペプチドを投与することと、各用量のヒト抗体またはFcα融合ポリペプチドの耐容性を決定することとをさらに含む。いくつかの実施形態において、当該方法は、マウスにおける1つ以上のFc受容体媒介反応を測定することをさらに含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のFc受容体媒介反応は、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)反応である。いくつかの実施形態において、ヒト抗体はマウス中の標的細胞に結合し、当該方法は、標的細胞に対するナチュラルキラー(NK)細胞の抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)を測定することと、ADCCの量を対照と比較することとをさらに含み、標的細胞死滅の増加は、薬剤がADCCを媒介する能力が増加していることを示す。いくつかの実施形態において、当該方法は、ヒト抗体に対してマウスが生成する免疫反応を測定することをさらに含む。
【0013】
特定の態様において、本明細書は、Fcアルファ受容体(FcαR)遺伝子座を含むマウスを作製する方法であって、ゲノム中に、本明細書で提供されるマウスゲノムの白血球受容体複合体(LRC)に位置するFcアルファ受容体(FcαR)遺伝子座を含む、マウスES細胞を作製することと、当該ES細胞からマウスを作製することとを含む、当該方法を提供する。
【0014】
特定の態様において、本明細書は、マウスゲノムを改変する方法であって、Fcアルファ受容体(FcαR)遺伝子座をマウスゲノムの白血球受容体複合体(LRC)に挿入して、マウスゲノムを改変することを含み、FcαR遺伝子座は、ヒト細胞外ドメイン及びヒトまたはげっ歯類の細胞質ドメインを含むFcαRポリペプチドをコードする核酸配列を含む、当該方法を提供する。いくつかの実施形態において、FcαR遺伝子座は、ヒトまたはヒト化FcαRポリペプチドをコードする核酸配列を含む。特定の実施形態において、FcαR遺伝子座は、Tthy1タンパク質の遺伝子座とRdh13タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する。いくつかの実施形態において、FcαR遺伝子座は、Lilra5タンパク質の遺伝子座とGp6タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する。いくつかの実施形態において、FcαR遺伝子座は、Pira6タンパク質の遺伝子座とGp6タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する。いくつかの実施形態において、FcαR遺伝子座は、Pira6タンパク質の遺伝子座とNcr1タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する。いくつかの実施形態において、遺伝子間領域は、Pira6遺伝子座とNcr1遺伝子座との間の54kbの領域である。特定の実施形態において、FcαR遺伝子座は、マウス7番染色体上の座標4,303,905~4,312,280(+鎖、GRCm38アセンブリ)の間にある。
【0015】
特に示さない限り、図では、ヒト遺伝子配列には白のボックス、マウス遺伝子配列には黒のボックス、マウス遺伝子間配列には単線、ヒト遺伝子間配列には二重線、選択カセットにはテキストが入った白のボックス(例えば、Lox、CM)を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】ホモ接合性を有するように育種することができるヘテロ接合性のマウスを生成するためのMAID20277カセットを、マウスゲノムに挿入することを示す(縮尺通りではない)。「LRC」は、白血球受容体複合体を示し、「EP」はエレクトロポレーションを示す。対立遺伝子の改変(MOA)アッセイ(実施例に記載)で使用されるプライマー及びプローブの名前と位置は、図の上の短い線として示す。
図1B】マウスゲノム中のMAID20277カセットの挿入のための、選択マーカーの欠失を引き起こすCREリコンビナーゼによるヘテロ接合性ES細胞の処理と、それによって、MAID20278カセットに対してヘテロ接合性を有するES細胞を産生することを示す(縮尺通りではない)。対立遺伝子の改変(MOA)アッセイ(実施例に記載)で使用されるプライマー及びプローブの名前と位置は、図の上の短い線として示す。
図2】マウスゲノムに相同な配列(「5’マウス相同性アーム」)、I-CeuI部位、FCAR遺伝子を含む44,887bpのヒトゲノムインサート、lox2372-Ub-Neo-lox2372カセット、PI-SceI部位、マウスゲノムに相同な2番目の配列、及びクロラムフェニコール(「CM」と表示)耐性カセットを含む標的化ベクターを示す(縮尺通りではない)。
図3】マウス1番染色体上のヒトFcγR2B、FcγR3B、FcγR2C、FcγR3A、及びFcγR2A遺伝子を含むヒト化低親和性FcγR遺伝子座を示す(縮尺通りではない)。この遺伝子座のヒト化のステップは、米国特許第8,658,154号に記載されており、当該文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
図4A】MAID20278カセットを用いて遺伝子操作されたマウスから得られた血液サンプル中の細胞におけるFcαRの発現を検出するフローサイトメトリープロットを示す。
図4B】MAID20278カセットを用いて遺伝子操作されたマウスから得られた脾臓細胞におけるFcαRの発現を検出するフローサイトメトリープロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
概要
本明細書では、ヒト、ヒト化、または部分的ヒト化Fcα受容体(FcαR)を発現するマウスに関連する方法及び組成物、ならびにそのようなマウスにおけるヒトIgA Fcを含む治療薬のin vivo試験(例えば、そのような治療薬の薬物動態学的及び/または薬力学的特性の試験、ならびに投与計画)に関連する方法及び組成物が提供される。具体的には、本明細書に記載される様々な実施形態は、完全なヒトまたは部分的ヒトFcαR1/CD89遺伝子/受容体(本明細書では「FcαR」と呼ぶ)をコード及び/または発現する遺伝子を含む、マウス、ES細胞、及び方法に関する。遺伝子改変マウスは、ゲノム中に、ヒトまたはヒト化Fcアルファ受容体(FcαR)タンパク質をコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ヒトまたはヒト化Fcアルファ受容体(FcαR)タンパク質をコードする配列は、マウス7番染色体上の白血球受容体複合体(LRC)に位置する。いくつかの実施形態において、FcαRをコードする核酸配列は、Tthy1タンパク質の遺伝子座とRdh13タンパク質の遺伝子座との間、Lilra5ポリペプチドの遺伝子座とGp6ポリペプチドの遺伝子座との間、及び/またはPira6タンパク質の遺伝子座とNcr1タンパク質の遺伝子座との間(例えば、Pira6タンパク質のコード核酸配列とNcr1タンパク質のコード核酸配列との間)の遺伝子間領域に位置する。いくつかの実施形態において、遺伝子間領域は、Pira6遺伝子座とNcr1遺伝子座との間の54kbの領域である。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、マウスゲノム(+鎖、GRCm38アセンブリ)の座標chr7:4,303,905~4,312,280の間に位置する遺伝子座でヒトFcαRを発現する。いくつかの実施形態において、FcαRはヒト細胞外ドメインを含む。このような受容体の膜貫通ドメイン及び/または細胞質ドメインは、ヒトのものでも、または非ヒト(例えば、ラット)のものでもあり得る。
【0018】
治療用ヒト抗体及びヒトFcα融合タンパク質などのヒトIgA Fcを含む治療薬は、典型的には、ヒトに投与する前に、非ヒト種に試験を行う。このような薬剤はヒト以外の霊長類やその他の比較的大型の哺乳類で試験されることが多いが、そのような試験には費用がかかり、医薬品開発者には多大な経済的負担になる。さらに、ヒト以外の霊長類やその他の比較的大型の哺乳類は、遺伝子改変に適していない場合が多く、そのような生物で利用可能な疾患モデルが制限されている。
【0019】
一方、マウスは、サイズが小さく、生理学がよく特徴付けられており、遺伝子改変に対する適応性のため、治療用抗体及びFc融合タンパク質を試験するのに便利な動物モデルである。残念ながら、ヒトIgA Fc領域を含む薬剤は、従来のマウスに投与したとき、ヒトに投与した場合と比較して非常に異なる薬物動態学的特性及び薬力学的特性を示すことが多いが、これは、野生型マウスにはFcαRが欠如されているためである。従って、本明細書で提供されるマウスは、治療用途のヒトIgA抗体及びFcα融合タンパク質の開発、スクリーニング、及び試験のためのin vivoシステムとして機能することができる。
【0020】
マウスのゲノム内の導入遺伝子の位置は、その発現に重大な影響を与える可能性がある。例えば、ヒトFcαR導入遺伝子を含むマウスは、好中球上でFcαRを発現するが、単球では亜集団上でのみ発現することが報告されている。例えば、そのようなマウスでは、腹腔から単離されたマクロファージや、リンパ球、内皮細胞、肝細胞などの非骨髄細胞はFcαR発現を示さなかった。van Egmond et al.,Blood 93(12):4387-4394(1999)。対照的に、ヒトでは、通常、好中球、単球、マクロファージ(例えば、クッパー細胞)、好酸球、及び樹状細胞上でFcαRが発現される。従って、特定の実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、ヒト内因性FcαR遺伝子座の位置に対応するマウスゲノム中の位置、またはヒトゲノム中のヒト内因性FcαR遺伝子座の位置の近くに位置する遺伝子座に対応するそれらのゲノム中の位置で、ヒトFcαRを発現する。具体的には、特定の実施形態において、ヒトまたはヒト化Fcアルファ受容体(FcαR)タンパク質をコードする配列は、マウス7番染色体上の白血球受容体複合体(LRC)に位置する。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、Tthy1タンパク質の遺伝子座とRdh13タンパク質の遺伝子座との間、Lilra5ポリペプチドの遺伝子座とGp6ポリペプチドの遺伝子座との間、及び/またはPira6タンパク質の遺伝子座とNcr1タンパク質の遺伝子座との間(例えば、Pira6タンパク質のコード核酸配列とNcr1タンパク質のコード核酸配列との間)の遺伝子間領域に位置する遺伝子座でヒトFcαRを発現する。いくつかの実施形態において、遺伝子間領域は、Pira6遺伝子座とNcr1遺伝子座との間の54kbの領域である。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、マウスゲノム(+鎖、GRCm38アセンブリ)の座標chr7:4,303,905~4,312,280の間に位置する遺伝子座でヒトFcαRを発現する。本明細書で提供されるいくつかの実施形態において、本明細書に記載のマウスは、好中球、単球/マクロファージ(例えば、血液単球/マクロファージ)、好酸球、及び樹状細胞(例えば、形質細胞様樹状細胞)の細胞表面上にFcαRを発現する。
【0021】
本明細書で提供されるマウス、ES細胞、及び方法の様々な実施形態では、野生型マウスFcRγ鎖と会合する本明細書に記載のヒトまたはヒト化FcαRを、ゲノムが含み、及び/またはマウスが発現する。従って、いくつかの実施形態において、ヒトまたはヒト化FcαRは、内因性マウスFcRγ鎖と会合してマウス細胞の表面上に発現される。
【0022】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、ヒトFcαを含む治療薬の投与後のマウス抗ヒト免疫反応の低下をさらに含む。これは、投与された抗体またはFc融合タンパク質に存在するFcと一致するヒトFcを発現するように遺伝子を改変したマウスを使用することによって達成し得る。このようなマウスは、例えば、内因性非ヒト免疫グロブリン重鎖定常領域遺伝子セグメントに対応する部分をコードする配列の代わりに、ヒト免疫グロブリン重鎖定常領域をコードする核酸配列の全部または一部を挿入することによって作製し得る。このような動物は、ヒトFcを「自己」タンパク質として認識するため、投与されたヒトFc含有治療薬に対して免疫反応を発現する可能性が低い。
【0023】
さらに、いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、ヒト患者で発現されるFcαRと同様の、ヒトFcαと相互作用可能なFcα受容体(FcαR)を発現する。例えば、特定の実施形態において、本明細書で提供される遺伝子改変マウスは、少なくともヒト細胞外ドメイン(例えば、膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインはヒトまたはラットのいずれのものでもよい)を有するFcαRを発現する。特定の実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、ヒトまたは部分的ヒトFcαRを発現することに加え、ヒトまたは部分的ヒトβ2M、ヒトまたは部分的ヒトFcεR1α、ヒトまたは部分的ヒトFcγR1a、ヒトまたは部分的ヒトFcγR2a、ヒトまたは部分的ヒトFcγR2b、ヒトまたは部分的ヒトFcγR3a、ヒトまたは部分的ヒトFcγR3b、及び/またはヒトまたは部分的ヒトFcγR2cを発現する。従って、そのようなマウスは、完全に非ヒトFc受容体を有するマウスと比較して、ヒト患者のヒトFc反応をより正確に模倣することが可能である。
【0024】
従って、特定の実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、単に抗原に対する特異性及び/または親和性に基づくだけでなく、免疫系のエフェクター機能の評価を通じて、選択された抗体に関連する生物学的機能全体に基づき、治療用ヒトIgA抗体及びFc融合タンパク質を開発、選択、及び試験するための新規なin vivoシステムである。このようにして、別々に評価された個々の成分のみに基づく予測ではなく、関連する生物学的反応(例えば、細胞反応)を伴う分子全体レベルで評価された治療可能性に基づいて、ヒト治療用候補を開発及び選択することができる。従って、本明細書に開示されるマウスは、特に、in vivoでのヒト治療用抗体機能を予測及び特性評価するための適切なシステムを提供する。
【0025】
本明細書に開示されるヒトFcαRを発現するトランスジェニックマウスは、より大型の動物モデルまたはヒトに比べ、免疫反応において受容体が有する機能的役割を低コストで研究するのに使用され得る。さらに、マウスは、基本的な生物学的機能を確認し、その後、それを大型の動物やヒトで確認するのにより好適なモデルである。例えば、ヒトFcαRを発現するマウスは、抗体依存性細胞毒性(ADCT)における受容体の役割を研究し、FcαR媒介反応に必要な他の成分を同定するために以前から使用されていた。van Egmond et al.(1999)Blood,93(12):4387-94を参照されたい。
【0026】
IgA抗体は、特定の疾患の発症及び進行において重要な役割を果たす。Breedveld及びvan Egmondは、IgA抗体が役割を果たすいくつかの疾患及び状態について議論している((2019)Frontiers in Immunology,10:553)。例えば、いくつかの自己免疫疾患は、IgA抗体の量が増加することを特徴としている(例えば、関節リウマチ及びIgA腎症)。炎症性腸疾患では、IgAでオプソニン化された細菌がFcαRの架橋と好中球の活性化を引き起こし、組織損傷をもたらす可能性がある。IgAレベルが低いことは、特定の疾患にも関連している。低いIgAレベルとアレルギー性喘息の重症度との間に潜在的な関連性が見出されているが、同時にアレルギー性鼻炎の対象では高いレベルも見出される。本明細書に記載のマウスを使用し、疾患の重症度に対するFcαRの役割、またはFcαR阻害剤が症状の弱化に及ぼす影響を特定することができる。
【0027】
IgAが不足すると、感染症、特に粘膜感染症に対する感受性が高まる可能性がある。過剰な量のIgAを投与すると、FcαRの活性化が亢進し、意図しない合併症を引き起こす可能性がある。従って、本明細書に記載のマウスを用い、副作用を引き起こすことなく、IgA欠損症を好適に克服する適切な投与計画を確認することができる。本明細書に記載のマウスは、IgAが媒介し得る炎症の治療に対するFcαR阻害剤の有効性を評価するためにも使用することが可能である。
【0028】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるマウスは、抗腫瘍(または病原体)候補IgA治療薬もしくはIgA Fc融合タンパク質、またはFcαR及び腫瘍抗原に対する二重特異性抗体で治療され得る。言い換えれば、本明細書に記載のマウスは、IgA及び/またはFcαRが関与する治療薬の前臨床評価に使用され得る。
【0029】
定義
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、冠詞の文法上の目的語の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すように使用される。例として、「(an)要素」は、1つの要素または1つを超える要素を意味する。
【0030】
「アミノ酸」という用語は、天然であろうと合成であろうと、アミノ官能基及び酸官能基の両方を含み、天然に生じるアミノ酸のポリマーに含まれ得る全ての分子を網羅することを意図している。例示的なアミノ酸には、天然に生じるアミノ酸、その類似体、誘導体及び同族体、変異体側鎖を有するアミノ酸類似体、及び前述のいずれかの全ての立体異性体が含まれる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、インタクト抗体及びその抗原結合断片の両方を指し得る。インタクト抗体は、ジスルフィド結合によって相互結合された少なくとも2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖には、重鎖可変ドメイン及び重鎖定常ドメインが含まれる。各軽鎖には、軽鎖可変ドメイン及び軽鎖定常ドメインが含まれる。重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が点在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性のドメインにさらに細分することができる。重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、それぞれ3つのCDR及び4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端へ、次の順序で配列される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖及び軽鎖の可変ドメインには、抗原と相互作用する結合ドメインが含まれる。
【0032】
本明細書で使用される、抗体の「抗原結合断片」及び「抗体結合部分」という用語は、抗原に結合する能力を保持する、抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の「抗原結合断片」という用語に含まれる結合断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、scFv、ジスルフィド結合Fv、Fd、一本鎖抗体、単離されたCDRH3、及びインタクト抗体の可変ドメインの少なくとも一部を保持する他の抗体断片が挙げられる。これらの抗体断片は、従来の組換え技術及び/または酵素技術を使用して得られ、インタクト抗体と同様の方法で抗原結合についてスクリーニングし得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、「血漿中濃度対時間曲線下面積」または「AUC」という用語は、投与後の治療薬の除去の速度及び程度を指す。いくつかの実施形態において、AUCは、12、18、24、36、48、もしくは72時間などの特定の期間にわたって、または曲線の傾きに基づき、外挿を用いて無限にわたって決定される。本明細書で特に指定しない限り、AUCは無限大(AUCINF)で決定される。AUCは、用量ごとに計算してもよい。他のPKパラメータの多くと同様に、AUCの決定は、単一の動物で行ってもよく、平均が計算される動物集団で行ってもよい。
【0034】
本明細書で使用する「クリアランス率」または「CL」という用語は、薬物を除去する身体能力の尺度を指し、時間の経過とともに薬物が除去された血漿の量として表される。
「に由来する」という語句は、再構成されていない可変領域及び/または再構成されていない可変領域遺伝子セグメント「に由来する」再構成された可変領域遺伝子に関して使用される場合、再構成された可変領域遺伝子の配列を、可変ドメインを発現する遺伝子を形成するように再構成された、一連の再構成されていない可変領域遺伝子セグメントまで遡ることができることを指す(該当する場合、スプライスの相違点及び体細胞変異を説明する)。例えば、体細胞変異した、再構成された可変領域遺伝子は、それでもなお、再構成されていない可変領域遺伝子セグメントに由来する。いくつかの実施形態において、内因性遺伝子座がユニバーサル軽鎖または重鎖遺伝子座で置換される場合、「に由来する」という用語は、配列が体細胞変異したことがあっても配列の起源を上記の再構成された遺伝子座まで遡ることができることを示す。
【0035】
本明細書で使用される場合、「内因性遺伝子」または「内因性遺伝子セグメント」という語句は、本明細書に記載の破壊、欠失、置換、変更、または改変を導入する前の親または参照生物で見られる遺伝子または遺伝子セグメントを指す。いくつかの実施形態において、参照生物は野生型生物である。いくつかの実施形態において、参照生物は遺伝子操作された生物である。いくつかの実施形態において、参照生物は、実験室で飼育された生物(野生型生物であるか、または遺伝子操作された生物)である。
【0036】
「生体内回収率」または「IVR」という用語は、観察されたピーク活性から投与前レベルを差し引き、次いで、投与量で除算した、増分回収率(K値)を指す。IVRは、パーセンテージに基づいて計算してもよい。平均IVRは、動物集団で決定することができ、または個別のIVRを個別の動物で決定することができる。
【0037】
本明細書で使用される場合、「遺伝子座」という用語は、染色体上の位置を指す。いくつかの実施形態において、遺伝子座は、一連の関連する遺伝子エレメント(例えば、遺伝子、遺伝子セグメント、調節エレメント)を含有する。例えば、ヒト白血球受容体複合体(LRC)遺伝子座は、19番染色体上に位置し、とりわけKIR、FcαR、NCRI、NLRP、GP6、及びRdh13を含む遺伝子を含む。ヒトLRC遺伝子座と相同なマウス遺伝子座は、マウス7番染色体上にあり、ヒトLRCの遺伝子と相同ないくつかの遺伝子(例えば、Ncr1、Gp6、及びRdh13遺伝子)を含む。遺伝子座は内因性または非内因性の場合がある。「内因性遺伝子座」という用語は、ある特定の遺伝子エレメントが天然に見出される染色体上の位置を指す。いくつかの実施形態において、内因性遺伝子座は、自然界に見出される配列を有する。いくつかの実施形態において、内因性遺伝子座は、野生型遺伝子座である。いくつかの実施形態において、内因性遺伝子座は、操作された遺伝子座である。
【0038】
「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、互換的に使用される。当該用語は、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドまたはそれらの類似体のいずれかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有し、任意の機能を発揮し得る。ポリヌクレオチドの非限定的な例は、次のとおりである:遺伝子または遺伝子断片のコード領域または非コード領域、連鎖解析から定義された遺伝子座(複数の遺伝子座)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組み換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、及びプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体などの修飾ヌクレオチドを含んでもよい。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーの組立て前または後に付与され得る。ポリヌクレオチドは、例えば標識成分の結合によりさらに修飾され得る。本明細書で提供される全ての核酸配列において、Uヌクレオチドは、Tヌクレオチドと置き換え可能である。
【0039】
本明細書で使用される場合、「定常状態における分布容積」または「Vss」という用語は、薬物が分布する見かけの空間(容積)を指す。より具体的には、Vssは、定常状態における血漿中濃度で除算した動物体内の薬物量を表す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「CH遺伝子セグメント」(例えば、Cγ1遺伝子セグメント、Cγ2a遺伝子セグメント、Cγ2c遺伝子セグメント、Cμ遺伝子セグメント、Cγ2b遺伝子セグメント、Cγ3遺伝子セグメント、Cδ遺伝子セグメント、Cε遺伝子セグメント、Cα遺伝子セグメントなど)という用語は、免疫グロブリン重鎖定常領域をコードするDNA配列のセグメントを指し、C遺伝子(例えば、Cγ遺伝子、Cγ2a遺伝子、Cγ2c遺伝子、Cγ3遺伝子、Cγ2b遺伝子、Cμ遺伝子、Cδ遺伝子、Cε遺伝子、Cα遺伝子など)と互換的に使用され得る。例えば、Cγ1遺伝子セグメントまたはCγ1遺伝子は、IgG1定常領域をコードするDNA配列のセグメントを指す。「C遺伝子セグメント遺伝子座」という用語は、C遺伝子セグメントまたはC遺伝子が天然に見出される染色体上の位置を指す。
【0041】
遺伝子改変された遺伝子座
いくつかの態様において、本明細書に記載される、治療薬のin vivo試験(例えば、そのような治療薬の薬物動態学的特性及び/または薬力学的特性の試験)に有用な遺伝子改変マウス及び細胞(例えば、ES細胞)は、ヒトIgA抗体またはFcα融合タンパク質を含む。本明細書に開示される遺伝子改変マウスは、当該マウスのゲノム中に、ヒトまたはヒト化FcαRをコードする核酸配列を含み、ヒト内因性FcαR遺伝子座の位置、またはヒトゲノム中のヒト内因性FcαR遺伝子座の位置の近くに位置する遺伝子座に対応するマウスゲノム中の位置に対応する、少なくとも1つの遺伝子座を含む。例えば、特定の実施形態において、ヒトまたはヒト化Fcアルファ受容体(FcαR)タンパク質をコードする配列は、マウス7番染色体上の白血球受容体複合体(LRC)に位置する。いくつかの実施形態において、ヒトまたはヒト化Fcアルファ受容体(FcαR)タンパク質をコードする配列は、Tthy1タンパク質の遺伝子座とRdh13タンパク質の遺伝子座との間、Lilra5ポリペプチドの遺伝子座とGp6ポリペプチドの遺伝子座との間、Pira6タンパク質の遺伝子座とGp6タンパク質の遺伝子座との間、及び/またはPira6タンパク質の遺伝子座とNcr1タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する。いくつかの実施形態において、ヒトまたはヒト化Fcアルファ受容体(FcαR)タンパク質をコードする配列は、マウスゲノム(+鎖、GRCm38アセンブリ)の座標chr7:4,303,905~4,312,280の間に位置する。いくつかの実施形態において、遺伝子間領域は、Pira6遺伝子座とNcr1遺伝子座との間の54kbの領域である。いくつかの実施形態において、FcαRをコードする核酸配列は、ヒトKIR3DL2遺伝子の全部または一部をコードする核酸配列をさらに含み、及び/またはヒトNCR1遺伝子の全部または一部の核酸配列、例えば、ヒトNCR1遺伝子の5’UTRに存在する核酸配列をさらに含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、遺伝子改変マウスは、ヒトFc(例えば、ヒトIgA1Fc、ヒトIgA2Fc)を含む抗体重鎖をコードする遺伝子改変遺伝子座を含む。このような遺伝子座は、WO2019/190990に開示されており、当該文献は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、マウス及び/またはES細胞は、完全または部分的なヒト軽鎖をコードする(例えば、λ軽鎖またはκ軽鎖をコードする)遺伝子改変された遺伝子座を含む。このような遺伝子座は、WO2019/190990及び米国特許第10,820,582号に開示されており、当該文献は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、遺伝子改変マウス及びES細胞は、ヒト細胞外ドメイン(例えば、新生児Fc受容体(FcRn)α鎖、β-2-ミクログロブリンポリペプチド(β2M)、Fcε受容体1α(FcεR1α)α鎖、Fcγ受容体1アルファ(FcγR1a)α鎖、Fcガンマ受容体2a(FcγR2a)α鎖、Fcガンマ受容体2b(FcγR2b)α鎖、Fcガンマ受容体3a(FcγR3a)α鎖、Fcガンマ受容体3b(FcγR3b)α鎖、Fcガンマ受容体2c(FcγR2c)α鎖)を有するFc受容体をコードする1つ以上の遺伝子座をさらに含む。いくつかの実施形態において、そのような遺伝子座によってコードされる膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインは、ヒトまたは非ヒト(例えば、マウスなどのげっ歯類)であり得る。このような遺伝子座は、WO2019/190990及び米国特許第9,474,255号及び同第8,658,154号に開示されており、当該文献のそれぞれは、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
ヒト化Fcアルファ受容体
本明細書で提供されるマウスまたは胚性幹(ES)細胞は、ヒト化またはヒトFcアルファ受容体1(FcαR1)を発現する及び/またはそのゲノム中に含む。マウスはFcαRホモログを有さない。従って、いくつかの実施形態において、マウスまたはES細胞は、ゲノム中に、ヒトまたはヒト化FcαRをコードする核酸配列を含み、ヒト内因性FcαR遺伝子座の位置、またはヒトゲノム中のヒト内因性FcαR遺伝子座の位置の近くに位置する遺伝子座に対応するマウスゲノム中の位置に対応する、少なくとも1つの遺伝子座を含む。例えば、特定の実施形態において、ヒトまたはヒト化Fcアルファ受容体(FcαR)タンパク質をコードする配列は、マウス7番染色体上の白血球受容体複合体(LRC)に位置する。いくつかの実施形態において、ヒトまたはヒト化Fcアルファ受容体(FcαR)タンパク質をコードする配列は、Tthy1タンパク質の遺伝子座とRdh13タンパク質の遺伝子座との間、Lilra5ポリペプチドの遺伝子座とGp6ポリペプチドの遺伝子座との間、及び/またはPira6タンパク質の遺伝子座とNcr1タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する。いくつかの実施形態において、ヒトまたはヒト化Fcアルファ受容体(FcαR)タンパク質をコードする配列は、マウスゲノム(+鎖、GRCm38アセンブリ)の座標chr7:4,303,905~4,312,280の間に位置する。いくつかの実施形態において、遺伝子間領域は、Pira6遺伝子座とNcr1遺伝子座との間の54kbの領域である。いくつかの実施形態において、FcαRをコードする核酸配列は、ヒトKIR3DL2遺伝子の全部または一部をコードする核酸配列をさらに含み、及び/またはヒトNCR1遺伝子の全部または一部の核酸配列、例えば、ヒトNCR1遺伝子の5’UTRに存在する核酸配列をさらに含む。特定の実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、好中球、単球、マクロファージ(例えば、誘導マクロファージ)、好酸球、及び/または樹状細胞上にFcαRを発現する。いくつかの実施形態において、好中球、単球、マクロファージ(例えば、誘導マクロファージ)、好酸球、及び/または樹状細胞は、血液の好中球、単球、マクロファージ(例えば、誘導マクロファージ)、好酸球、及び/または樹状細胞である。いくつかの実施形態において、好中球、単球、マクロファージ(例えば、誘導マクロファージ)、好酸球、及び/または樹状細胞は、脾臓の好中球、単球、マクロファージ(例えば、誘導マクロファージ)、好酸球、及び/または樹状細胞である。
【0044】
FcαRは、ヒトFcRγ鎖と複合体を形成する活性化受容体であり、ヒトIgA1、IgA2、分泌型IgAに対して中程度の親和性(K約5x10-1)と、複合体IgAに対して高い結合活性(K約5x10-1)を有する。IgAでコーティングされた粒子へのFcαRの結合は、炎症性メディエーターの放出、食作用、及び抗体依存性細胞媒介細胞傷害を引き起こす原因になる。IgA抗腫瘍療法を使用し、好中球を腫瘍細胞に誘導することで、腫瘍細胞を効果的に溶解することができる。全長の受容体に加え、好中球と好酸球は、分泌型IgAに結合可能な選択的にスプライシングされた受容体の形態で発現される。In vivoでは、2つのFcαR分子が二量体化し、IgA単量体と相互作用する。
【0045】
いくつかの実施形態において、FcαR遺伝子座は、ヒト細胞外ドメイン、げっ歯類(非マウス、例えばラット)膜貫通ドメイン、及びげっ歯類(非マウス、例えばラット)細胞質ドメインを含むFcαRポリペプチドをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、FcαR遺伝子座は、ヒト細胞外ドメイン、ヒト膜貫通ドメイン、及びげっ歯類(非マウス、例えばラット)細胞質ドメインを含むFcαRポリペプチドをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、FcαR遺伝子座は、ヒト細胞外ドメイン、ヒト膜貫通ドメイン、及びヒト細胞質ドメインを含むFcαRポリペプチドをコードする核酸配列を含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、FcαR遺伝子座は、非ヒト調節エレメント(例えば、非ヒトプロモーター及び/またはエンハンサー)を含む。いくつかの実施形態において、非ヒト調節エレメントは、げっ歯類調節エレメント(例えば、ラットまたはマウスのプロモーターまたはエンハンサー)である。別の実施形態において、FcαR遺伝子座は、ヒト調節エレメント(例えば、ヒトプロモーター及び/またはエンハンサー)を含む。
【0047】
当該技術分野で記載されているように(例えば、Monteiro and van de Winkel,(2003)Annu.Rev.Immunol.21:177-204を参照)、ヒトFcαR遺伝子は、次の5つのエクソンからなる:5’UTR、ATG翻訳開始コドン、及びリーダーペプチドをコードする配列を含むエクソン1;リーダーペプチドの残りの部分をコードするエクソン2;FcαRの2つの細胞外ドメインであるEC1及びEC2をコードするエクソン3及び4(EC1はIgA Fcに結合するドメインである);タンパク質の細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインをコードするエクソン5。
【0048】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるヒトまたはヒト化FcαRポリペプチドをコードする核酸は、完全ヒトFcαRポリペプチドをコードする。特定の実施形態において、そのような核酸は、ヒト化エクソン1(例えば、げっ歯類(非マウス、例えばラット)5’UTR及びヒトコード配列を含む)、終止コドンまでのヒトコードエクソン2~5、及びヒトまたはげっ歯類(非マウス、例えばラット)の3’UTRとポリAを含む。いくつかの実施形態において、ヒトまたはヒト化FcαRポリペプチドをコードする核酸は、ヒトFcαR遺伝子のエクソン1~5を含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、核酸は、マウスES細胞ゲノムに挿入するための標的化ベクターを生成するために使用される。いくつかの実施形態において、ヒトまたはヒト化FcαRポリペプチドをコードする核酸は、FCAR遺伝子を含む約44kbのヒトゲノム配列を含む。いくつかの実施形態において、ヒトゲノム配列は、ヒト19番染色体上に位置し、座標chr19:54,862,297~54,906,185(+鎖、GRCh38アセンブリ)を有するゲノム配列であり、KIR3DL2遺伝子の3’末端及びヒトFCAR遺伝子全体を含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、FcαRポリペプチドをコードする核酸は、げっ歯類(非マウス、例えばラット)/ヒトキメラ配列である。いくつかの実施形態において、げっ歯類(非マウス、例えばラット)/ヒトキメラ配列は、ヒト、ラット、またはラット/ヒトキメラのエクソン1(リーダー配列をコードする核酸配列はヒトまたはラットのいずれかである);ヒトまたはラットのエクソン2、ヒトエクソン3~4;及びラットのエクソン5を含む。これらの実施形態において、核酸は、ヒトFcαR細胞外ドメイン及びラットの膜貫通ドメインと細胞質ドメインを含むFcαRポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、調節領域(例えば、プロモーター及びUTR)は、げっ歯類(例えば、ラット)調節領域である。
【0051】
NCBI参照配列番号NW_016107304.1は、ヒトFcαR遺伝子の代表的な供給源配列である。NCBI参照配列番号NM_002000.4及びNP_001991.1、NM_133269.4及びNP_579803.1、NM_133271.4及びNP_579805.1、NM_133272.4及びNP_579806.1、NM_133273.4及びNP_579807.1、NM_133274.4及びNP_579808.1、NM_133277.4及びNP_579811.1、NM_133278.4及びNP_579812.1、XM_011526625.3及びXP_011524927.1、XM_017026473.1及びXP_016881962.1、XM_017026474.2及びXP_016881963.1は、ヒトFcαR cDNAの代表的な供給源配列及び所望のヒト部分が得られるポリペプチドを提供する。
【0052】
NCBI参照配列番号NC_005100.4は、Rattus norvegicusのFcαR遺伝子の代表的な供給源配列を提供し、NCBI参照配列番号NM_201992.1→NP_973721.1は、Rattus norvegicusのFcαR cDNA及び所望のRattus norvegicus部分が得られるポリペプチド及び/または標的化ベクター相同性アームの設計に使用可能なポリペプチドの代表的な供給源配列を提供する。
【0053】
いくつかの実施形態において、マウスは、遺伝子改変されたFcαR遺伝子座についてヘテロ接合性を有する。いくつかの実施形態において、マウスは、遺伝子改変されたFcαR遺伝子座についてホモ接合性を有する。
【0054】
様々な実施形態において、本明細書に記載のヒトまたはヒト化FcαRポリペプチドは、野生型マウスFcRγ鎖と会合して細胞表面上に発現される。様々な実施形態において、本明細書に記載のヒトまたはヒト化FcαRポリペプチドは、内因性マウスFcRγ鎖と会合して細胞表面上に発現される。
【0055】
ヒト化低親和性Fcガンマ受容体
いくつかの実施形態において、ゲノム中にヒト化またはヒトFcαR1遺伝子座を含むように遺伝子改変されたマウス及びES細胞は、ヒト低親和性Fcガンマ受容体(FcγR)ポリペプチドをコードする遺伝子座(例えば、ヒトFcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIIIa、またはFcγRIIIbポリペプチド;例えば、米国特許第8,658,154号を参照、当該文献は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)をさらに含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、低親和性FcγR遺伝子座は、ヒトFcγRIIaポリペプチドをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ヒトFcγRIIaポリペプチドをコードする核酸配列は、内因性マウス低親和性FcγR遺伝子座に位置する。いくつかの実施形態において、FcγRIIaポリペプチドをコードする核酸配列は、内因性マウス低親和性FcγR遺伝子座の全部または一部を置き換える。いくつかの実施形態において、ヒトFcγRIIa遺伝子は多型を含み、この多型は、131His低反応性多型及び131Arg高反応性多型から選択される。いくつかの実施形態において、FcγRIIa多型は、131His低反応性多型である。いくつかの実施形態において、マウスはマウス低親和性FcγRポリペプチドを発現しない(例えば、マウスFcγRIIb、FcγRIV、及び/またはFcγRIIIポリペプチドを発現しないか、または機能的なマウスFcγRIIb、FcγRIV、及び/またはFcγRIIIポリペプチドを発現しない)。いくつかの実施形態において、FcγRIIa遺伝子座は、非ヒト調節エレメント(例えば、非ヒトプロモーター及び/またはエンハンサー)を含む。いくつかの実施形態において、非ヒト調節エレメントは、げっ歯類調節エレメント(例えば、ラットまたはマウスのプロモーターまたはエンハンサー)である。
【0057】
いくつかの実施形態において、低親和性FcγR遺伝子座は、ヒトFcγRIIbポリペプチドをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ヒトFcγRIIbポリペプチドをコードする核酸配列は、内因性マウス低親和性FcγR遺伝子座に位置する。いくつかの実施形態において、FcγRIIbポリペプチドをコードする核酸配列は、内因性マウス低親和性FcγR遺伝子座の全部または一部を置き換える。いくつかの実施形態において、ヒトFcγRIIb遺伝子は、アミノ酸置換を含み、この置換は187Ileまたは187Thr置換から選択される。いくつかの実施形態において、マウスはマウス低親和性FcγRポリペプチドを発現しない(例えば、マウスFcγRIIb、FcγRIV、及び/またはFcγRIIIポリペプチドを発現しないか、または機能的なマウスFcγRIIb、FcγRIV、及び/またはFcγRIIIポリペプチドを発現しない)。いくつかの実施形態において、FcγRIIb遺伝子座は、非ヒト調節エレメント(例えば、非ヒトプロモーター及び/またはエンハンサー)を含む。いくつかの実施形態において、非ヒト調節エレメントは、げっ歯類調節エレメント(例えば、ラットまたはマウスのプロモーターまたはエンハンサー)である。
【0058】
いくつかの実施形態において、低親和性FcγR遺伝子座は、ヒトFcγRIIcポリペプチドをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ヒトFcγRIIcポリペプチドをコードする核酸配列は、内因性マウス低親和性FcγR遺伝子座に位置する。いくつかの実施形態において、FcγRIIcポリペプチドをコードする核酸配列は、内因性マウス低親和性FcγR遺伝子座の全部または一部を置き換える。一実施形態において、FcγRIIc遺伝子は、特定の対立遺伝子変異体であり、この対立遺伝子変異体は、57Stop変異体及び57Q変異体から選択される。いくつかの実施形態において、マウスは、マウス低親和性FcγRポリペプチドを発現しない(例えば、マウスFcγRIIB、FcγRIV、及び/またはFcγRIIIポリペプチドを発現しない)。いくつかの実施形態において、FcγRIIc遺伝子座は、非ヒト調節エレメント(例えば、非ヒトプロモーター及び/またはエンハンサー)を含む。いくつかの実施形態において、非ヒト調節エレメントは、げっ歯類調節エレメント(例えば、ラットまたはマウスのプロモーターまたはエンハンサー)である。
【0059】
いくつかの実施形態において、低親和性FcγR遺伝子座は、ヒトFcγRIIIaポリペプチドをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ヒトFcγRIIIaポリペプチドをコードする核酸配列は、内因性マウス低親和性FcγR遺伝子座に位置する。いくつかの実施形態において、FcγRIIIaポリペプチドをコードする核酸配列は、内因性マウス低親和性FcγR遺伝子座の全部または一部を置き換える。いくつかの実施形態において、マウスはマウス低親和性FcγRポリペプチドを発現しない(例えば、マウスFcγRIIb、FcγRIV、及び/またはFcγRIIIポリペプチドを発現しないか、または機能的なマウスFcγRIIb、FcγRIV、及び/またはFcγRIIIポリペプチドを発現しない)。一実施形態において、FcγRIIIa遺伝子は、特定の対立遺伝子変異体であり、この対立遺伝子変異体は、176Val変異体及び176Phe変異体から選択される。いくつかの実施形態において、FcγRIIIa対立遺伝子変異体は176Val変異体である。いくつかの実施形態において、FcγRIIIa遺伝子座は、非ヒト調節エレメント(例えば、非ヒトプロモーター及び/またはエンハンサー)を含む。いくつかの実施形態において、非ヒト調節エレメントは、げっ歯類調節エレメント(例えば、ラットまたはマウスのプロモーターまたはエンハンサー)である。
【0060】
いくつかの実施形態において、低親和性FcγR遺伝子座は、ヒトFcγRIIIbポリペプチドをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ヒトFcγRIIIbポリペプチドをコードする核酸配列は、内因性マウス低親和性FcγR遺伝子座に位置する。いくつかの実施形態において、FcγRIIIbポリペプチドをコードする核酸配列は、内因性マウス低親和性FcγR遺伝子座の全部または一部を置き換える。いくつかの実施形態において、FcγRIIIb遺伝子は、特定の対立遺伝子変異体であり、この対立遺伝子変異体は、NA1変異体及びNA2変異体から選択される。別の特定の実施形態において、FcγRIIIb対立遺伝子変異体はNA2変異体である。いくつかの実施形態において、マウスはマウス低親和性FcγRポリペプチドを発現しない(例えば、マウスFcγRIIb、FcγRIV、及び/またはFcγRIIIポリペプチドを発現しないか、または機能的なマウスFcγRIIb、FcγRIV、及び/またはFcγRIIIポリペプチドを発現しない)。いくつかの実施形態において、FcγRIIIb遺伝子座は、非ヒト調節エレメント(例えば、非ヒトプロモーター及び/またはエンハンサー)を含む。いくつかの実施形態において、非ヒト調節エレメントは、マウス調節エレメント(例えば、ラットまたはマウスのプロモーターまたはエンハンサー)である。
【0061】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、米国特許第9,221,894号、同第9,056,130号、同第9,089,599号、同第8,658,154号、同第8,883,496号、または同第8,658,853号に記載される1つ以上のヒト低親和性FcγR遺伝子を含む(当該文献は、参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、少なくとも2つの低親和性ヒトFcγR遺伝子及び内因性マウスFcγ鎖遺伝子を含み、低親和性ヒトFcγR遺伝子は、ヒトFcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIIIa、及びFcγRIIIbからなる群から選択される。いくつかの特定の実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、ヒトFcγRIIa及びFcγRIIIb、ならびに内因性マウスFcγ鎖遺伝子を含む。いくつかの特定の実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、FcγRIIa、FcγRIIIa、FcγRIIb、FcγRIIc、及びFcγRIIId遺伝子、ならびに内因性マウスFcγ鎖遺伝子を含む。様々な実施形態において、1つ以上のヒトFcγRを含むマウスは、内因性マウスFcγRIIB、FcγRIV、及びFcγRIII遺伝子(すなわち、内因性マウスFcγRIIb、FcγRIV、及びFcγRIIIα鎖コード配列)におけるホモ接合性破壊をさらに含む。様々な実施形態において、本明細書に記載の1つ以上のヒト低親和性FcγRを含むマウスは、内因性マウス低親和性FcγRポリペプチド(例えば、内因性低親和性FcγR α鎖ポリペプチド)を、検出できるほど発現しない。
【0062】
いくつかの実施形態において、マウスは、遺伝子改変された低親和性FcγR遺伝子座についてヘテロ接合性を有する。いくつかの実施形態において、マウスは、遺伝子改変された低親和性FcγR遺伝子座についてホモ接合性を有する。
【0063】
ヒト化新生児Fc受容体遺伝子座
いくつかの実施形態において、ゲノム中に、ヒト化またはヒトFcαR1遺伝子座、及びいくつかの実施形態においてはヒトまたはヒト化FcγR遺伝子座(上記のように)を含むように遺伝子改変されたマウス及びES細胞は、ヒト化またはヒト新生児Fc受容体(FcRn)遺伝子座をさらに含む。ブランベル受容体としても知られているFcRnは、内皮細胞によって発現され、ベータ2ミクログロブリン(β2M)と会合し、IgG抗体のFcドメインと血清アルブミンの両方に結合するタンパク質である。FcRnは、IgGと血清アルブミンの半減期を延長する。具体的には、FcRnは、pH依存的にIgGと血清アルブミンに結合することにより、これらの血清タンパク質を内皮細胞によるリソソーム分解から救い出すことができ、それによってそのようなタンパク質の血清半減期を延長することができる。
【0064】
いくつかの実施形態において、FcRn遺伝子座は、ヒト細胞外ドメイン、げっ歯類(例えば、マウスまたはラット)膜貫通ドメイン、及びげっ歯類(例えば、マウスまたはラット)細胞質ドメインを含むFcRnポリペプチドをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、FcRn遺伝子座は、ヒト細胞外ドメイン、ヒト(例えば、マウスまたはラット)膜貫通ドメイン、及びげっ歯類(例えば、マウスまたはラット)細胞質ドメインを含むFcRnポリペプチドをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、FcRn遺伝子座は、ヒト細胞外ドメイン、ヒト(例えば、マウスまたはラット)膜貫通ドメイン、及びヒト(例えば、マウスまたはラット)細胞質ドメインを含むFcRnポリペプチドをコードする核酸配列を含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、FcRnポリペプチドをコードする核酸配列は、内因性マウスFcRn遺伝子座に位置する。特定の実施形態において、FcRnポリペプチドをコードする核酸配列は、内因性マウスFcRn遺伝子の全部または一部を置き換える。例えば、いくつかの実施形態において、内因性FcRn遺伝子座における内因性FcRnの細胞外ドメインをコードする核酸配列は、そのような遺伝子座を含むマウスがヒト細胞外ドメイン及びげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを有するFcRnを発現するように、ヒトFcRnの細胞外ドメインをコードする核酸配列で置き換えられる。いくつかの実施形態において、マウスは、マウスFcRnを発現しないか、または機能的なマウスFcRnを発現しない。いくつかの実施形態において、FcRn遺伝子座は、非ヒト調節エレメント(例えば、非ヒトプロモーター及び/またはエンハンサー)を含む。いくつかの実施形態において、非ヒト調節エレメントは、げっ歯類調節エレメント(例えば、ラットまたはマウスのプロモーターまたはエンハンサー)である。
【0066】
特定の実施形態において、マウスFcRn遺伝子のアルファ1、アルファ2、及びアルファ3ドメインをコードするマウスエクソン(最初の3つのコードエクソンであるエクソン3、4、及び5)は、ヒトFcRn遺伝子のアルファ1、アルファ2、及びアルファ3ドメインをコードするヒトエクソン(エクソン3、4、及び5)で置き換えられる。いくつかの実施形態において、FcRn遺伝子は、マウスエクソン1(非コードエクソン)、マウスエクソン2(シグナルペプチドをコードする核酸配列を含む)、ならびにヒトエクソン3~6、マウスエクソン6及び7(膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインをコードする)を含む。例示的なヒト化FcRn遺伝子座は、WO2019/190990(例えば、図4)に記載されており、当該文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
GenBank受託番号NC_000019.10(49512279~49526428)、NM_001136019.1、及びNP_001129491.1は、所望のヒト部分が得られるヒトFcRn遺伝子、cDNA、及びポリペプチドの代表的な供給源配列を提供する。GenBank受託番号NC_000073.6(45092992~45103846)、NM_010189.1、及びNP_034319.1は、マウスFcRn遺伝子、cDNA、及びポリペプチドの代表的な供給源配列を提供し、これらの配列から、所望のマウス部分が得られる、及び/または標的化ベクター相同性アームの設計に使用され得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、マウスは、遺伝子改変されたFcRn遺伝子座についてヘテロ接合性を有する。いくつかの実施形態において、マウスは、遺伝子改変されたFcRn遺伝子座についてホモ接合性を有する。
【0069】
ヒト化Fcイプシロン受容体1アルファ
いくつかの実施形態において、ゲノム中に、ヒト化またはヒトFcαR1遺伝子座、及びいくつかの実施形態においてはヒトまたはヒト化FcγR遺伝子座(上記のように)を含むように遺伝子改変されたマウス及びES細胞は、ヒト化またはヒトFcイプシロン受容体1アルファ(FcεR1α)遺伝子座をさらに含む。FcεR1αは、FcεR1β及びFcεR1γと会合して、表皮ランゲルハンス細胞、好酸球、マスト細胞、及び好塩基球上に発現されるIgEに対する高親和性受容体であるFcεR1を形成する。FcεR1のIgE結合部位はFcεR1αサブユニットにおいて見出される。
【0070】
いくつかの実施形態において、FcεR1α遺伝子座は、ヒト細胞外ドメイン、げっ歯類(例えば、マウスまたはラット)膜貫通ドメイン、及びげっ歯類(例えば、マウスまたはラット)細胞質ドメインを含むFcεR1αポリペプチドをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、FcεR1α遺伝子座は、ヒト細胞外ドメイン、ヒト膜貫通ドメイン、及びげっ歯類(例えば、マウスまたはラット)細胞質ドメインを含むFcεR1αポリペプチドをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、FcεR1α遺伝子座は、ヒト細胞外ドメイン、ヒト膜貫通ドメイン、及びヒト細胞質ドメインを含むFcεR1αポリペプチドをコードする核酸配列を含む。操作されたFcεR1α遺伝子座の例示的な実施形態は、WO2019/190990に記載されており、当該文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0071】
いくつかの実施形態において、FcεR1αポリペプチドをコードする核酸配列は、内因性マウスFcεR1α遺伝子座に位置する。特定の実施形態において、FcεR1αポリペプチドをコードする核酸配列は、内因性マウスFcεR1α遺伝子の全部または一部を置き換える。例えば、いくつかの実施形態において、内因性FcεR1α遺伝子座における内因性FcεR1αの細胞外ドメインをコードする核酸配列は、そのような遺伝子座を含むマウスがヒト細胞外ドメイン及びげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを有するFcεR1αを発現するように、ヒトFcεR1αの細胞外ドメインをコードする核酸配列で置き換えられる。いくつかの実施形態において、ヒト細胞外ドメイン、ヒト膜貫通ドメイン、及びヒト細胞質ドメインを含むFcεR1αポリペプチドをコードする核酸配列は、内因性マウスFcεR1α遺伝子座に位置する。いくつかの実施形態において、ヒト細胞外ドメイン、ヒト膜貫通ドメイン、及びヒト細胞質ドメインを含むFcεR1αポリペプチドをコードする核酸配列は、内因性マウスFcεR1α遺伝子の全部または一部を置き換える。いくつかの実施形態において、マウスは、マウスFcεR1αを発現しないか、または機能的なマウスFcεR1αを発現しない。いくつかの実施形態において、FcεR1α遺伝子座は、非ヒト調節エレメント(例えば、非ヒトプロモーター及び/またはエンハンサー)を含む。いくつかの実施形態において、非ヒト調節エレメントは、げっ歯類調節エレメント(例えば、ラットまたはマウスのプロモーターまたはエンハンサー)である。
【0072】
特定の実施形態において、マウスFcεRIαのマウスコーディングエクソン1、コーディングエクソン2、コーディングエクソン3、コーディングエクソン4、及びコーディングエクソン5の一部が、ヒトFcεRIα遺伝子のヒトコーディングエクソン1、コーディングエクソン2、コーディングエクソン3、コーディングエクソン4、及びコーディングエクソン5の一部によって置き換えられる。いくつかの実施形態において、FcεRIα遺伝子は、マウス/ヒトキメラエクソン1(マウスプロモーター及び5’UTRを含む)、ヒトコーディングエクソン2~5から終止コドン、ヒト3’UTR及びポリA、続いてマウス3’UTR及びポリAを含む。いくつかの実施形態において、キメラ遺伝子エクソン1(部分)及び2はシグナルペプチドをコードし、エクソン3及び4はIgEと相互作用すると考えられるFcεRIαの2つのIg様ドメインをコードし、エクソン5はタンパク質の細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインをコードする(WO2019/190990の図9を参照)。
【0073】
GenBank受託番号NC_000001.11(159283888~159308224)、NM_002001.3、及びNP_001992.1は、所望のヒト部分が得られるヒトFcεR1α遺伝子、cDNA、及びポリペプチドの代表的な供給源配列を提供する。GenBank受託番号NC_000067.6(173221269~173227232)、NM_010184.1、及びNP_034314.1は、マウスFcεR1α遺伝子、cDNA、及びポリペプチドの代表的な供給源配列を提供し、これらの配列から、所望のマウス部分が得られる、及び/または標的化ベクター相同性アームの設計に使用され得る。
【0074】
いくつかの実施形態において、マウスは、遺伝子改変されたFcεR1α遺伝子座についてヘテロ接合性を有する。いくつかの実施形態において、マウスは、遺伝子改変されたFcεR1α遺伝子座についてホモ接合性を有する。
【0075】
ヒト化Fcガンマ受容体1a
いくつかの実施形態において、ゲノム中にヒト化またはヒトFcαR1遺伝子座を含むように遺伝子改変されたマウス及びES細胞は、ヒト化またはヒトFcガンマ受容体1a(FcγR1a)遺伝子座をさらに含む。FcγR1aは、単球上に発現される高親和性FcγRタンパク質であり、IgGのFc部分に結合し、宿主細胞の活性化を引き起こすものである。
【0076】
いくつかの実施形態において、FcγR1a遺伝子座は、ヒト細胞外ドメイン、げっ歯類(例えば、マウスまたはラット)膜貫通ドメイン、及びげっ歯類(例えば、マウスまたはラット)細胞質ドメインを含むFcγR1aポリペプチドをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、FcγR1a遺伝子座は、ヒト細胞外ドメイン、ヒト(例えば、マウスまたはラット)膜貫通ドメイン、及びげっ歯類(例えば、マウスまたはラット)細胞質ドメインを含むFcγR1aポリペプチドをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、FcγR1a遺伝子座は、ヒト細胞外ドメイン、ヒト(例えば、マウスまたはラット)膜貫通ドメイン、及びヒト(例えば、マウスまたはラット)細胞質ドメインを含むFcγR1aポリペプチドをコードする核酸配列を含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、FcγR1αポリペプチドをコードする核酸配列は、内因性マウスFcγR1a遺伝子座に位置する。特定の実施形態において、FcγR1aポリペプチドをコードする核酸配列は、内因性マウスFcγR1a遺伝子の全部または一部を置き換える。例えば、いくつかの実施形態において、内因性FcγR1a遺伝子座における内因性FcγR1aの細胞外ドメインをコードする核酸配列は、そのような遺伝子座を含むマウスがヒト細胞外ドメイン及びげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを有するFcγR1aを発現するように、ヒトFcγR1αの細胞外ドメインをコードする核酸配列で置き換えられる。いくつかの実施形態において、マウスは、マウスFcγR1aを発現しないか、または機能的なマウスFcγR1aを発現しない。いくつかの実施形態において、FcγR1a遺伝子座は、非ヒト調節エレメント(例えば、非ヒトプロモーター及び/またはエンハンサー)を含む。いくつかの実施形態において、非ヒト調節エレメントは、げっ歯類調節エレメント(例えば、ラットまたはマウスのプロモーターまたはエンハンサー)である。
【0078】
ヒト化FcγR1aポリペプチド、ヒト化FcγR1aポリペプチドをコードする遺伝子座、及びヒト化FcγR1aポリペプチドを発現するマウスについては、米国特許第9,474,255号及び米国特許公開第2017/0086432号に記載されており、当該文献のそれぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【0079】
いくつかの実施形態において、マウスは、遺伝子改変されたFcγR1a遺伝子座についてヘテロ接合性を有する。いくつかの実施形態において、マウスは、遺伝子改変されたFcγR1a遺伝子座についてホモ接合性を有する。
【0080】
ヒト化免疫グロブリン重鎖遺伝子座
本明細書において上記で論じたように、特定の実施形態では、ヒトFcαRを発現する本明細書で提供されるマウスは、ヒトFcを含む薬剤(例えば、治療用ヒトIgA抗体及びヒトFcα融合タンパク質などのヒトFcαを含む薬剤)を試験するために使用される。しかしながら、ヒトFc領域を有する治療薬が野生型マウスに投与される場合、Fc領域内のヒト配列はマウス免疫系によって異物として識別されることが多い。その結果、マウスは投与された治療薬に対する免疫反応(マウス抗ヒト反応またはMAHAとして知られている)を開始する可能性があり、これは投与された薬剤の薬物動態学的特性及び薬力学的特性に影響を与える。WO2019/190990(当該文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているように、ヒト免疫グロブリン遺伝子座領域を有するマウスにおいてヒトFcを含む治療薬を試験すると、ヒトFcがそのようなマウスにおいて異物として識別される可能性が低いため、MAHA反応を低減または排除することができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、ゲノム中に、ヒト化またはヒトFcαR1遺伝子座、ならびに任意に、ヒトまたはヒト化FcγR遺伝子座、ヒトまたはヒト化Igκ遺伝子座、ヒトまたはヒト化Igλ遺伝子座、ヒトまたはヒト化FcRn遺伝子座、ヒトまたはヒト化β2M遺伝子座、及び/またはヒトまたはヒト化FcεR1α遺伝子座を含むように遺伝子改変されたマウス及びES細胞は、遺伝子改変された免疫グロブリン(Ig)重鎖遺伝子座をさらに含む。このような遺伝子座は、一般に、可変領域及び定常領域を含む。可変領域には、Ig重鎖可変領域遺伝子セグメント(例えば、少なくともV遺伝子セグメント、D遺伝子セグメント、及びJ遺伝子セグメント)が含まれる。定常領域遺伝子座には、1つ以上のIg重鎖定常領域遺伝子セグメント(C)が含まれる。特定の実施形態において、免疫グロブリン重鎖可変領域は、マウスが、V遺伝子セグメント、D遺伝子セグメント、及びJ遺伝子セグメントに由来する可変ドメイン及びC遺伝子セグメントに由来する重鎖定常ドメインを含む抗体を産生するように、免疫グロブリン重鎖定常領域に機能的に連結される。
【0082】
抗体を生成する能力は、ヒト標的に対する治療用抗体を生成するために遺伝子改変動物で利用されてきた。治療用抗体を生成するための、ヒトV(D)J遺伝子セグメントを含む遺伝子改変マウスの例としては、米国特許第5,633,425号、同第5,770,429号、同第5,814,318号、同第6,075,181号、同第6,114,598号、同第6,150,584号、同第6,998,514号、同第7,795,494号、同第7,910,798号、同第8,232,449号、同第8,703,485号、同第8,907,157号、及び同第9,145,588号に記載されたものがあり、当該文献のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、それに加え、米国特許公開第2008/0098490号、同第2010/0146647号、同第2013/0145484号、同第2012/0167237号、同第2013/0167256号、同第2013/0219535号、同第2012/0207278号、及び同第2015/0113668号に記載されたものがあり、当該文献のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、さらに、PCT公開第WO2007117410号、同第WO2008151081号、同第WO2009157771号、同第WO2010039900号、同第WO2011004192号、同第WO2011123708号、同第WO2014093908号、同第WO2014093908号、同第WO2006008548号、同第WO2010109165号、同第WO2016062990号、同第WO2018039180号、同第WO2011158009号、同第WO2013041844号、同第WO2013041846号、同第WO2013079953号、同第WO2013061098号、同第WO2013144567号、同第WO2013144566号、同第WO2013171505号、及び同第WO2019008123号に記載されたものがあり、当該文献のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。治療用抗体を生成するための、ヒトV(D)J遺伝子セグメントを含む遺伝子改変マウスの他の例としては、米国特許第6,596,541号、同第6,586,251号、同第8,642,835号、同第9,706,759号、同第10,238,093号、同第8,754,287号、同第10,143,186号、同第9,796,788号、同第10,130,081号、同第9,226,484号、同第9,012,717号、同第10,246,509号、同第9,204,624号、及び同第9,686,970号に記載されたものがあり、当該文献のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、それに加え、米国特許公開第2013/0212719号、同第2015/0289489号、同第2017/0347633号、同第2019/0223418号、同第2018/0125043号、同第2019/0261612号、及び同第2019/0380316号に記載されたものがあり、当該文献のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、さらに、PCT公開第WO2013138680号、同第WO2013138712号、同第WO2013138681号、同第WO2015042250号、同第WO2012148873号、同第WO2013134263号、同第WO2013184761号、同第WO2014160179号、同第WO2017214089号、同第WO2016149678号、及び同第WO2017123808号、ならびにMurphy,A.,「VelocImmune:Immunoglobulin Variable Region Humanized Mouse」,in Recombinant Antibodies for Immunotherapy,New York,NY,Cambridge University Press,101-107(2009)に記載されたものがあり、これらのそれぞれは、当該文献の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0083】
特定の実施形態において、Ig重鎖可変領域遺伝子座は、再構成されていないヒトIg重鎖可変領域遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、再構成されていないヒトIg可変領域遺伝子セグメントは、1つ以上のヒトVセグメント、1つ以上のヒトDセグメント、及び1つ以上のヒトJセグメントを含む。いくつかの実施形態において、再構成されていないヒトIg可変領域遺伝子セグメントは、少なくとも3個のV遺伝子セグメント、少なくとも18個のV遺伝子セグメント、少なくとも20個のV遺伝子セグメント、少なくとも30個のV遺伝子セグメント、少なくとも40個のV遺伝子セグメント、少なくとも50個のV遺伝子セグメント、少なくとも60個のV遺伝子セグメント、少なくとも70個のV遺伝子セグメント、または少なくとも80個のV遺伝子セグメントを含む。いくつかの特定の実施形態において、操作されたIgH遺伝子座(または対立遺伝子)は、天然に現れるヒトIgH遺伝子座のヒトV3-74遺伝子セグメントとヒトV6-1遺伝子セグメントとの間(両端を含む)に見出される機能的ヒトV遺伝子セグメントの全てまたは実質的に全てを含む。いくつかの特定の実施形態において、操作されたIgH遺伝子座(または対立遺伝子)は、少なくとも、ヒトV遺伝子セグメントV3-74、V3-73、V3-72、V2-70、V1-69、V3-66、V3-64、V4-61、V4-59、V1-58、V3-53、V5-51、V3-49、V3-48、V1-46、V1-45、V3-43、V4-39、V4-34、V3-33、V4-31、V3-30、V4-28、V2-26、V1-24、V3-23、V3-21、V3-20、V1-18、V3-15、V3-13、V3-11、V3-9、V1-8、V3-7、V2-5、V7-4-1、V4-4、V1-3、V1-2、及びV6-1を含む。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、単一の多型ヒトV遺伝子セグメント、複数のD遺伝子セグメント、及び複数のJ遺伝子セグメントによって特徴付けられる、制限された免疫グロブリン重鎖遺伝子座を有する(例えば、米国特許公開第2013/0096287号に記載されており、当該文献は、参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態において、V遺伝子セグメントは、V1-2またはV1-69である。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、再構成された重鎖可変領域(例えば、米国特許公開第20140245468号、ならびに米国特許第9,204,624号及び同第9,930,871号に記載されているユニバーサル重鎖可変領域または共通重鎖コード配列であり、当該文献の全体は、参照により本明細書に組み込まれる)を有する。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、免疫グロブリン重鎖遺伝子座で重鎖定常領域遺伝子に機能的に連結された、再構成されていないヒト免疫グロブリン軽鎖、例えばκ、遺伝子セグメントを含む(例えば、米国特許第9,516,868号、当該文献は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0084】
さらに他の実施形態において、マウスは、その生殖細胞系列及び/またはゲノム中に、そのようなマウスで生成された抗体にpH依存性の結合特性を導入するように設計されたヒスチジンコドンの挿入及び/または置換を含む重鎖免疫グロブリン遺伝子座を含み得る。このような実施形態のいくつかにおいて、ヒスチジンコドンは、CDR3をコードする核酸配列において挿入及び/または置換される。様々なそのような重鎖免疫グロブリン遺伝子座は、米国特許第9,301,510号、同第9,334,334号、米国特許出願公開第2013/0247236号、同第20140013456号に提供されており、当該文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0085】
いくつかの実施形態において、操作されたIgH遺伝子座(または対立遺伝子)は、5、10、15、20、25、またはそれ以上(例えば、26、27など)のヒトD遺伝子セグメントを含む。いくつかの特定の実施形態において、操作されたIgH遺伝子座(または対立遺伝子)は、天然に現れるヒトIgH遺伝子座のヒトD1-1遺伝子セグメントとヒトD7-27遺伝子セグメントとの間(両端を含む)に見出される機能的ヒトD遺伝子セグメントの全てまたは実質的に全てを含む。いくつかの特定の実施形態において、操作されたIgH遺伝子座(または対立遺伝子)は、少なくとも、ヒトD遺伝子セグメントD1-1、D2-2、D3-3、D4-4、D5-5、D6-6、D1-7、D2-8、D3-9、D3-10、D5-12、D6-13、D2-15、D3-16、D4-17、D6-19、D1-20、D2-21、D3-22、D6-25、D1-26、及びD7-27を含む。いくつかの実施形態において、再構成されていないヒトIg遺伝子セグメントは、ヒトD遺伝子セグメントの全てを含む。
【0086】
いくつかの実施形態において、操作されたIgH遺伝子座(または対立遺伝子)は、1、2、3、4、5、6、またはそれ以上の機能的ヒトJ遺伝子セグメントを含む。いくつかの特定の実施形態において、操作されたIgH遺伝子座(または対立遺伝子)は、天然に現れるヒトIgH遺伝子座のヒトJ1遺伝子セグメントとヒトJ6遺伝子セグメントとの間(両端を含む)に見出される機能的ヒトJ遺伝子セグメントの全てまたは実質的に全てを含む。いくつかの特定の実施形態において、操作されたIgH遺伝子座(または対立遺伝子)は、少なくとも、ヒトJ遺伝子セグメントJ1、J2、J3、J4、J5、及びJ6を含む。いくつかの実施形態において、再構成されていないヒトIg遺伝子セグメントは、ヒトJ遺伝子セグメントの全てを含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の操作されたIgH遺伝子座は、内因性Adam6遺伝子を含まない。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の操作されたIgH遺伝子座は、同種の野生型非ヒト動物の生殖細胞系列ゲノムに見出されるものと同様の生殖細胞系列ゲノム位置に、内因性Adam6遺伝子(またはAdam6コード配列)を含まない。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の操作されたIgH遺伝子座は、ヒトAdam6偽遺伝子を含まない。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の操作されたIgH遺伝子座は、1つ以上の非ヒト(例えば、マウス)Adam6ポリペプチドをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列の挿入を含む。当該挿入は、本明細書に記載の操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座の外側(例えば、最も5’側のV遺伝子セグメントの上流)、操作されたIgH遺伝子座内、または非ヒト動物の生殖細胞系列ゲノム(例えば、無作為に導入された非ヒトAdam6コード配列)、細胞もしくは組織のその他の場所であり得る。
【0088】
いくつかの実施形態において、操作された内因性免疫グロブリン重鎖遺伝子座は、機能性内因性マウスAdam6遺伝子を欠いている。いくつかの実施形態において、操作された重鎖遺伝子座を含むマウス生殖細胞系列ゲノムは、1つ以上のマウスADAM6ポリペプチド、その機能性オルソログ、機能性ホモログ、または機能性断片をコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のマウスADAM6ポリペプチド、その機能性オルソログ、機能性ホモログ、または機能性断片が(例えば、雄生殖系の細胞内、例えば、精巣細胞内で)発現される。
【0089】
いくつかの実施形態において、1つ以上のマウスADAM6ポリペプチド、その機能性オルソログ、機能性ホモログ、または機能性断片をコードする1つ以上のヌクレオチド配列は、操作された内因性免疫グロブリン重鎖遺伝子座と同じ染色体上に含まれる。いくつかの実施形態において、1つ以上のマウスADAM6ポリペプチド、その機能性オルソログ、機能性ホモログ、または機能性断片をコードする1つ以上のヌクレオチド配列は、操作された内因性免疫グロブリン重鎖遺伝子座に含まれる。いくつかの実施形態において、1つ以上のマウスADAM6ポリペプチド、その機能性オルソログ、機能性ホモログ、または機能性断片をコードする1つ以上のヌクレオチド配列は、第1のヒトV遺伝子セグメントと第2のヒトV遺伝子セグメントとの間にある。いくつかの実施形態において、第1のヒトV遺伝子セグメントはV1-2であり、第2のヒトV遺伝子セグメントはV6-1である。いくつかの実施形態において、1つ以上のマウスADAM6ポリペプチド、その機能性オルソログ、機能性ホモログ、または機能性断片をコードする1つ以上のヌクレオチド配列は、ヒトAdam6偽遺伝子の代わりである。いくつかの実施形態において、1つ以上のマウスADAM6ポリペプチド、その機能性オルソログ、機能性ホモログ、または機能性断片をコードする1つ以上のヌクレオチド配列は、ヒトAdam6偽遺伝子を置き換える。いくつかの実施形態において、1つ以上のマウスADAM6ポリペプチド、その機能性オルソログ、機能性ホモログ、または機能性断片をコードする1つ以上のヌクレオチド配列は、ヒトV遺伝子セグメントとヒトD遺伝子セグメントとの間にある。
【0090】
Ig重鎖遺伝子セグメントを含む例示的なIg可変領域は、例えば、Macdonald et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 111:5147-52及び補足情報に提供されており、当該文献は、参照により本明細書に組み込まれる。このようなマウスは、例えば、米国特許第8,642,835号及び同第8,697,940号に記載されており、当該文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0091】
いくつかの実施形態において、再構成されていないヒトIg重鎖可変領域遺伝子セグメントを含むIg重鎖可変遺伝子座には、ヒトIg重鎖可変領域遺伝子間配列も含まれる。いくつかの実施形態において、Ig重鎖可変遺伝子座は、非ヒト(例えば、げっ歯類、ラット、マウス)Ig重鎖可変領域遺伝子間配列を含む。いくつかの実施形態において、IgH遺伝子座は、非ヒト調節エレメント(例えば、非ヒトプロモーター及び/またはエンハンサー)を含む。いくつかの実施形態において、非ヒト調節エレメントは、げっ歯類調節エレメント(例えば、ラットまたはマウスのプロモーターまたはエンハンサー)である。いくつかの実施形態において、IgH遺伝子座はIgMエンハンサー(Eμ)を含む。いくつかの実施形態において、IgMエンハンサーは非ヒトEμ(例えば、マウスまたはラットEμなどのげっ歯類Eμ)である。
【0092】
いくつかの実施形態において、Ig重鎖可変領域は、Ig重鎖可変領域遺伝子(ユニバーサル重鎖可変領域)を含む再構成された可変領域である。いくつかの実施形態において、再構成されたIg重鎖可変領域遺伝子は、再構成されたヒトIg重鎖可変領域遺伝子である。再構成されたIg重鎖可変領域の例としては、米国特許公開第2014/0245468号に提供されたものがあり、当該文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0093】
特定の実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、ヒトFc(例えば、ヒトFcα)を含む抗体を発現するように、ヒト免疫グロブリン定常領域(例えば、ヒトCα定常領域)を含む。ヒト免疫グロブリン定常領域を含むマウスは、例えば、WO2019/190990に開示されており、当該文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0094】
特定の実施形態において、免疫グロブリン定常領域は、ヒトC1ドメイン、ヒトヒンジ領域、ヒトC2ドメイン、ヒトC3ドメイン、IgG膜貫通ドメイン、及びIgG細胞質ドメインを含むIgG定常ドメインをコードするC遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、IgG膜貫通ドメインは、げっ歯類IgG膜貫通ドメイン(例えば、マウスまたはラット膜貫通ドメイン)である。特定の実施形態において、膜貫通ドメインはヒトIgG膜貫通ドメインである。いくつかの実施形態において、IgG細胞質ドメインは、げっ歯類IgG細胞質ドメイン(例えば、マウスまたはラット細胞質ドメイン)である。いくつかの実施形態において、IgG細胞質ドメインは、ヒトIgG細胞質ドメインである。いくつかの実施形態において、IgG接続領域は、げっ歯類IgG接続領域(例えば、マウスまたはラット接続ドメイン)である。特定の実施形態において、IgG接続領域はヒトIgG接続領域である。
【0095】
特定の実施形態において、ヒトC1ドメイン、ヒトヒンジ領域、ヒトC2ドメイン、及びヒトC3ドメインは、IgG1ドメインである。いくつかの実施形態において、このようなIgG1ドメインは、IGHG1*01、IGHG1*02、IGHG1*03、IGHG1*04、及びIGHG1*05から選択される対立遺伝子によってコードされる。
【0096】
特定の実施形態において、ヒトC1ドメイン、ヒトヒンジ領域、ヒトC2ドメイン、及びヒトC3ドメインは、IgG2ドメインである。いくつかの実施形態において、このようなIgG2ドメインは、IGHG2*01、IGHG2*02、IGHG2*03、IGHG2*04、IGHG2*05、及びIGHG2*06から選択される対立遺伝子によってコードされる。
【0097】
特定の実施形態において、ヒトC1ドメイン、ヒトヒンジ領域、ヒトC2ドメイン、及びヒトC3ドメインは、IgG3ドメインである。いくつかの実施形態において、このようなIgG3ドメインは、IGHG3*01、IGHG3*02、IGHG3*03、IGHG3*04、IGHG3*05、IGHG3*06、IGHG3*07、IGHG3*08、IGHG3*09、IGHG3*10、IGHG3*11、IGHG3*12、IGHG3*13、IGHG3*14、IGHG3*15、IGHG3*16、IGHG3*17、IGHG3*18、及びIGHG3*19から選択される対立遺伝子によってコードされる。
【0098】
特定の実施形態において、ヒトC1ドメイン、ヒトヒンジ領域、ヒトC2ドメイン、及びヒトC3ドメインは、IgG4ドメインである。いくつかの実施形態において、このようなIgG4ドメインは、IGHG4*01、IGHG4*02、IGHG4*03、及びIGHG4*04から選択される対立遺伝子によってコードされる。
【0099】
いくつかの実施形態において、C遺伝子セグメントは、エフェクター機能及び/またはFcRに対する親和性が、参照ヒト免疫グロブリン重鎖定常領域と比較して増大または減少することを特徴とする、変異型ヒト免疫グロブリン重鎖定常領域配列(すなわち、適切な参照ヒト免疫グロブリン重鎖定常領域配列に対して1つ以上の付加、欠失、及び/または置換を含むヒト免疫グロブリン重鎖定常領域配列)をコードする。
【0100】
いくつかの実施形態において、C遺伝子セグメントは、活性化及び/または抑制性受容体に対する親和性の変化を特徴とするヒト免疫グロブリン重鎖定常領域をコードする。いくつかの実施形態において、C遺伝子セグメントは、FcRn受容体への結合が、例えば、中性pHと比較して酸性pHで、増大または減少することを特徴とするヒト免疫グロブリン重鎖定常領域をコードする。いくつかの実施形態において、C遺伝子セグメントは、ヒト免疫グロブリン重鎖定常領域を全体的または部分的にコードし、1つ以上のアミノ酸改変を有するヒト免疫グロブリン重鎖定常領域をコードする。アミノ酸改変の例としては、位置297(例えば、N297A)、位置250(例えば、250Eまたは250Q)、位置252(例えば、252L、252Y、252F、252W、または252T)、位置254(例えば、254Sまたは254T)、位置256(例えば、256S、256R、256Q、256E、256D、または256T)、位置307(例えば、307Pまたは307A)、位置308(例えば、308Fまたは308V)、位置428(例えば、428Lまたは428F)、位置433(例えば、433H、433Lm、433R、433S、433P、433Q、または433K)、位置434(例えば、434A、434W、434H、434F、または434Y)、及びこれらの組み合わせでの置換が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、C遺伝子セグメントは、250Q及び248L(例えば、T250Q及びM248L);252Y、254T、及び256E(例えば、M252Y、S254T、及びT256E);428L及び434S(例えば、M428L及びN434S);257I及び311I(例えば、P257I及びQ311I);257I及び434H(例えば、P257I及びN434H);376V及び434H(例えば、D376V及びN434H);307A、380A、及び434A(例えば、T307A、E380A、及びN434A);ならびに433K及び434F(例えば、H433K及びN434F)からなる群から選択されるアミノ酸改変の1つ以上対またはグループを有するヒト免疫グロブリン重鎖定常領域をコードする。
【0101】
いくつかの実施形態において、C遺伝子セグメントは、2つ以上のヒト免疫グロブリンアイソタイプに由来する(または現れる)セグメントまたは部分を含むキメラ免疫グロブリン重鎖定常ドメインをコードする。例えば、そのようなキメラC領域は、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4分子に由来するC2ドメインを、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4分子に由来するC3ドメインと組み合わせて含み得る。いくつかの特定の実施形態において、キメラC領域は、キメラヒンジ領域をさらに含む。例えば、キメラヒンジは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「上部ヒンジ」アミノ酸配列(EU番号付けに従って216から227までの位置のアミノ酸残基)を、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「下部ヒンジ」配列(EU番号付けに従って228から236までの位置のアミノ酸残基)と組み合わせて含み得る。いくつかの特定の実施形態において、キメラヒンジ領域は、ヒトIgG1またはヒトIgG4上部ヒンジに由来するアミノ酸残基、及びヒトIgG2下部ヒンジに由来するアミノ酸残基を含む。
【0102】
特定の実施形態において、改変されたC遺伝子セグメントは、内因性C遺伝子セグメント遺伝子座に位置する。特定の実施形態において、改変されたC遺伝子セグメントは、内因性Cγ1遺伝子セグメント遺伝子座、内因性Cγ2a遺伝子セグメント遺伝子座、内因性Cγ2b遺伝子セグメント遺伝子座、内因性Cγ2c遺伝子セグメント遺伝子座、または内因性Cγ3遺伝子セグメント遺伝子座に位置する。
【0103】
いくつかの実施形態において、改変されたC遺伝子セグメントは、ヒトCγ1遺伝子セグメント(または少なくともヒトCγ1遺伝子セグメントの、IgG1定常ドメインのC1ドメイン、ヒンジ領域、C2ドメイン、及びC3ドメインをコードする部分)であり、内因性Cγ2a遺伝子セグメント遺伝子座に位置する。いくつかの実施形態において、ヒトCγ1遺伝子セグメントの、IgG1定常ドメインのC1ドメイン、ヒンジ領域、C2ドメイン、及びC3ドメインをコードする部分は、内因性マウスCγ2a遺伝子セグメントの、IgG2a膜貫通ドメイン及び/または細胞質ドメインをコードする部分に機能的に連結される。
【0104】
いくつかの実施形態において、改変されたC遺伝子セグメントは、ヒトCγ1遺伝子セグメント(または少なくともヒトCγ1遺伝子セグメントの、IgG1定常ドメインのC1ドメイン、ヒンジ領域、C2ドメイン、及びC3ドメインをコードする部分)であり、内因性Cγ2c遺伝子セグメント遺伝子座に位置する。いくつかの実施形態において、ヒトCγ1遺伝子セグメントの、IgG1定常ドメインのC1ドメイン、ヒンジ領域、C2ドメイン、及びC3ドメインをコードする部分は、内因性マウスCγ2c遺伝子セグメントの、IgG2c膜貫通ドメイン及び/または細胞質ドメインをコードする部分に機能的に連結される。
【0105】
いくつかの実施形態において、改変されたC遺伝子セグメントは、ヒトCγ4遺伝子セグメント(または少なくともヒトCγ4遺伝子セグメントの、IgG4定常ドメインのC1ドメイン、ヒンジ領域、C2ドメイン、及びC3ドメインをコードする部分)であり、内因性Cγ1遺伝子セグメント遺伝子座に位置する。いくつかの実施形態において、ヒトCγ4遺伝子セグメントの、IgG4定常ドメインのC1ドメイン、ヒンジ領域、C2ドメイン、及びC3ドメインをコードする部分は、内因性マウスCγ1遺伝子セグメントの、IgG1膜貫通ドメイン及び/または細胞質ドメインをコードする部分に機能的に連結される。
【0106】
特定の実施形態において、改変されたC遺伝子セグメントは、内因性C遺伝子セグメントの全部または一部を置き換える。特定の実施形態において、改変されたC遺伝子セグメントは、内因性Cγ1遺伝子セグメント、内因性Cγ2a遺伝子セグメント、内因性Cγ2b遺伝子セグメント、内因性Cγ2c遺伝子セグメント、または内因性Cγ3遺伝子セグメントの全部または一部を置き換える。
【0107】
いくつかの実施形態において、改変されたC遺伝子セグメントは、ヒトCγ1遺伝子セグメント(または少なくともヒトCγ1遺伝子セグメントの、IgG1定常ドメインのC1ドメイン、ヒンジ領域、C2ドメイン、及びC3ドメインをコードする部分)であり、内因性Cγ2a遺伝子セグメント遺伝子座の全部または一部を置き換える。いくつかの実施形態において、ヒトCγ1遺伝子セグメントの、IgG1定常ドメインのC1ドメイン、ヒンジ領域、C2ドメイン、及びC3ドメインをコードする部分は、内因性マウスCγ2a遺伝子セグメントの、IgG2a定常ドメインのC1ドメイン、ヒンジ領域、C2ドメイン、及びC3ドメインをコードする部分を置き換え、ヒトCγ1遺伝子セグメントの、IgG1定常ドメインのC1ドメイン、ヒンジ領域、C2ドメイン、及びC3ドメインをコードする部分が、内因性マウスCγ2a遺伝子セグメントの、IgG2a膜貫通ドメイン及び/または細胞質ドメインをコードする部分に機能的に連結されるようにする。
【0108】
いくつかの実施形態において、改変されたC遺伝子セグメントは、ヒトCγ4遺伝子セグメント(または少なくともヒトCγ4遺伝子セグメントの、IgG4定常ドメインのC1ドメイン、ヒンジ領域、C2ドメイン、及びC3ドメインをコードする部分)であり、内因性Cγ1遺伝子セグメント遺伝子座の全部または一部を置き換える。いくつかの実施形態において、ヒトCγ4遺伝子セグメントの、IgG4定常ドメインのC1ドメイン、ヒンジ領域、C2ドメイン、及びC3ドメインをコードする部分は、内因性マウスCγ1遺伝子セグメントの、IgG1定常ドメインのC1ドメイン、ヒンジ領域、C2ドメイン、及びC3ドメインをコードする部分を置き換え、ヒトCγ4遺伝子セグメントの、IgG4定常ドメインのC1ドメイン、ヒンジ領域、C2ドメイン、及びC3ドメインをコードする部分が、内因性マウスCγ1遺伝子セグメントの、IgG1膜貫通ドメイン及び/または細胞質ドメインをコードする部分に機能的に連結されるようにする。
【0109】
特定の実施形態において、Ig重鎖定常領域は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)の1つ以上のC遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、Ig定常領域は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)のCμ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、Ig定常領域は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)のCδ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、Ig定常領域は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)のCγ1遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、Ig定常領域は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)のCγ2a遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、Ig定常領域は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)のCγ2b遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、Ig定常領域は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)のCγ2c遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、Ig定常領域は、げっ歯類(例えば、マウス)のCγ3遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、Ig定常領域は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)のCε遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、Ig定常領域は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)のCε遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のげっ歯類定常領域遺伝子セグメントは、内因性定常領域遺伝子セグメントである。いくつかの実施形態において、上記の改変されたC遺伝子セグメントは、Ig重鎖定常領域中の唯一の改変されたC遺伝子セグメントである。いくつかの実施形態において、上記の改変されたC遺伝子セグメントは、Ig重鎖定常領域中の複数の改変されたC遺伝子セグメントのうちの1つ(例えば、Ig重鎖定常領域中の部分的または完全にヒト化された2、3、4、5、6、7、または8つの改変された遺伝子セグメントのうちの1つ)である。いくつかの実施形態において、Ig重鎖定常領域は、ヒトまたは部分的ヒトCμ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、Ig重鎖定常領域は、ヒトまたは部分的ヒトCδ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、Ig重鎖定常領域は、ヒトまたは部分的ヒトCγ1遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、Ig重鎖定常領域は、ヒトまたは部分的ヒトCγ2遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、Ig重鎖定常領域は、ヒトまたは部分的ヒトCγ3遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、Ig重鎖定常領域は、ヒトまたは部分的ヒトCγ4遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、Ig重鎖定常領域は、ヒトまたは部分的ヒトCε遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、Ig重鎖定常領域は、ヒトまたは部分的ヒトCα遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、Ig重鎖定常領域は、ヒトCμ遺伝子セグメント、ヒトCδ遺伝子セグメント、ヒトCγ1遺伝子セグメント、及びヒトCγ3遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、Ig重鎖定常領域は、ヒトCγ2遺伝子セグメント及びヒトCγ4遺伝子セグメントをさらに含む。いくつかの実施形態において、Ig重鎖定常領域は、ヒトCα遺伝子セグメントをさらに含む。いくつかの実施形態において、Ig重鎖定常領域は、ヒトCε遺伝子セグメントをさらに含む。
【0110】
いくつかの実施形態において、IgH遺伝子座は、ヒトまたはげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)の調節エレメントを含む。いくつかの実施形態において、調節エレメントは内因性調節エレメントである。特定の実施形態において、IgH遺伝子座は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)またはヒトのイントロンエンハンサー(E)を含む。いくつかの実施形態において、IgH遺伝子座は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)またはヒトの3’調節領域(3’RR)を含む。
【0111】
いくつかの実施形態において、改変された免疫グロブリン重鎖遺伝子座は、内因性免疫グロブリン重鎖遺伝子座に配置される。いくつかの実施形態において、免疫グロブリン重鎖遺伝子座は、内因性免疫グロブリン重鎖遺伝子座の全部または一部を置き換える。特定の実施形態において、改変されたIgH遺伝子座は、内因性遺伝子座の外側に配置される導入遺伝子上に位置する。いくつかの実施形態において、内因性IgH遺伝子座は、不活性化される(例えば、内因性Ig重鎖遺伝子座の全部または一部の欠失、転位、及び/または逆位により)。
【0112】
したがって、いくつかの実施形態において、免疫グロブリン重鎖遺伝子座の1つ以上の免疫グロブリン重鎖定常領域(または一部)は、欠失されていない(すなわち、インタクト)。いくつかの実施形態において、免疫グロブリン重鎖遺伝子座の1つ以上のC遺伝子セグメントは、とりわけ、非ヒト免疫グロブリン重鎖IgG定常領域遺伝子の膜貫通及び細胞質コード配列(複数可)(例えば、M1及び/またはM2コード配列)に機能的に連結された本明細書に記載の免疫グロブリン重鎖定常領域配列(例えば、ヒトIgG C1-H-C2-C3ポリペプチドをコードする配列)、また、いくつかの実施形態においては、IgE定常領域遺伝子の膜貫通及び細胞質コード配列(複数可)に機能的に連結された免疫グロブリン重鎖定常領域配列(例えば、ヒトIgE C1-C2-C3-C4ポリペプチドをコードする配列)で変更、破壊、欠失、または置換される。いくつかの実施形態において、免疫グロブリン重鎖定常領域の全てまたは実質的に全てが、異種免疫グロブリン重鎖定常領域で置き換えられる。いくつかの実施形態において、異種免疫グロブリン重鎖定常領域配列は、1つ以上のIgG定常領域遺伝子の膜貫通及び細胞質コード配列(例えば、M1及びM2エクソン)に機能的に連結される。いくつかの実施形態において、異種免疫グロブリン重鎖定常領域配列は、IgE定常領域遺伝子の膜貫通及び細胞質コード配列(例えば、M1及びM2エクソン)に機能的に連結される。いくつかの実施形態において、異種免疫グロブリン重鎖定常領域配列は、IgA定常領域遺伝子の膜貫通及び細胞質コード配列(例えば、Mエクソン(複数可))に機能的に連結される。いくつかの特定の実施形態において、1つ以上のC遺伝子セグメント(例えば、Cμ、Cδなど)は、本明細書に記載される1つ以上の定常領域遺伝子の膜貫通及び細胞質コード配列に機能的に連結された異種免疫グロブリン重鎖定常領域配列を含む免疫グロブリン重鎖定常領域において、欠失または置換されない。いくつかの実施形態において、異種免疫グロブリン重鎖定常領域配列は、ヒト免疫グロブリン重鎖定常領域配列である。いくつかの実施形態において、1つ以上の異種免疫グロブリン重鎖定常領域配列で変更、破壊、欠失、置換、または操作される免疫グロブリン重鎖定常領域は、マウス免疫グロブリン重鎖定常領域である。いくつかの実施形態において、異種免疫グロブリン重鎖定常領域配列は、免疫グロブリン重鎖定常領域のIgG定常領域遺伝子(例えば、Cγ1、Cγ2a、Cγ2b、Cγ2c、またはCγ3)の2コピーのうちの当該IgG定常領域遺伝子の1コピー(すなわち、対立遺伝子)に挿入され、これにより、異種免疫グロブリン重鎖定常領域配列に関してヘテロ接合性を有するマウスが生じる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される異種免疫グロブリン重鎖定常領域配列を含む、免疫グロブリン重鎖定常領域に関してホモ接合性を有するマウスが提供される。
【0113】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、同一または異なるIgGサブクラスの非ヒト膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインコード配列(例えば、非ヒトIgG M1-M2)に機能的に連結されたヒト細胞外ドメインコード配列(例えば、ヒトIgG C1-H-C2-C3)をそれぞれ含む1つ以上のIgGコードC遺伝子セグメントを含む。
【0114】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、本明細書に記載される1つ以上の操作されたIgGコードC遺伝子セグメントを含み、野生型(例えば、改変されていない、ラットまたはマウスなどの非ヒト)Cμ定常領域遺伝子を更に含む。
【0115】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、本明細書に記載される1つ以上の操作されたIgGコードC遺伝子セグメントを含み、野生型(例えば、改変されていない、ラットまたはマウスなどの非ヒト)Cμ及びCδ定常領域遺伝子を更に含む。
【0116】
様々な実施形態において、本明細書に記載されるヒト免疫グロブリン重鎖定常領域配列を含む操作されたIgGコードC遺伝子セグメントは、Cγ1、Cγ2a、Cγ2b、Cγ2c、またはCγ3から選択されるIgGサブクラスの操作されたIgGコードC遺伝子セグメントである。
【0117】
いくつかの特定の実施形態において、本明細書に記載される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、C1-H-C2-C3エクソンの代わりに、ヒトIgG1 C1-H-C2-C3をコードする配列を含み、非ヒト(例えば、ラットまたはマウス)Cγ2a遺伝子セグメントのM1及びM2エクソンに機能的に連結された、操作されたCγ2a遺伝子セグメントを含む。
【0118】
いくつかの特定の実施形態において、本明細書に記載される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、C1-H-C2-C3-M1-M2エクソンの代わりに、ヒトIgG1 C1-H-C2-C3-M1-M2をコードする配列を含み、非ヒト(例えば、ラットまたはマウス)Cγ2a遺伝子セグメントのスイッチ領域に機能的に連結された、操作されたCγ2a遺伝子セグメントを含む。
【0119】
いくつかの特定の実施形態において、本明細書に記載される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、C1-H-C2-C3エクソンの代わりに、ヒトIgG1 C1-H-C2-C3をコードする配列を含み、非ヒト(例えば、ラットまたはマウス)Cγ2c遺伝子セグメントのM1及びM2エクソンに機能的に連結された、操作されたCγ2c遺伝子セグメントを含む。
【0120】
いくつかの特定の実施形態において、本明細書に記載される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、C1-H-C2-C3-M1-M2エクソンの代わりに、ヒトIgG1 C1-H-C2-C3-M1-M2をコードする配列を含み、非ヒト(例えば、ラットまたはマウス)Cγ2c遺伝子セグメントのスイッチ領域に機能的に連結された、操作されたCγ2c遺伝子セグメントを含む。
【0121】
いくつかの特定の実施形態において、本明細書に記載される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、C1-H-C2-C3エクソンの代わりに、ヒトIgG4 C1-H-C2-C3をコードする配列を含み、非ヒト(例えば、ラットまたはマウス)Cγ1遺伝子セグメントのM1及びM2エクソンに機能的に連結された、操作されたCγ1遺伝子セグメントを含む。
【0122】
いくつかの特定の実施形態において、本明細書に記載される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、C1-H-C2-C3-M1-M2エクソンの代わりに、ヒトIgG4 C1-H-C2-C3-M1-M2をコードする配列を含み、非ヒト(例えば、ラットまたはマウス)Cγ1遺伝子セグメントのスイッチ領域に機能的に連結された、操作されたCγ1遺伝子セグメントを含む。
【0123】
いくつかの特定の実施形態において、本明細書に記載される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、C1-H-C2-C3エクソンの代わりに、ヒトIgG1 C1-H-C2-C3をコードする配列を含み、非ヒト(例えば、ラットまたはマウス)Cγ2a遺伝子セグメントのM1及びM2エクソンに機能的に連結された、操作されたCγ2a遺伝子セグメントと、C1-H-C2-C3エクソンの代わりに、ヒトIgG4 C1-H-C2-C3をコードする配列を含み、非ヒト(例えば、ラットまたはマウス)Cγ1遺伝子セグメントのM1及びM2エクソンに機能的に連結された、操作されたCγ1遺伝子セグメントと、を含む。
【0124】
いくつかの特定の実施形態において、本明細書に記載される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、C1-H-C2-C3-M1-M2エクソンの代わりに、ヒトIgG1 C1-H-C2-C3-M1-M2をコードする配列を含み、非ヒト(例えば、ラットまたはマウス)Cγ2a遺伝子セグメントのスイッチ領域に機能的に連結された、操作されたCγ2a遺伝子セグメントと、C1-H-C2-C3-M1-M2エクソンの代わりに、ヒトIgG4 C1-H-C2-C3-M1-M2をコードする配列を含み、非ヒト(例えば、ラットまたはマウス)Cγ1遺伝子セグメントのスイッチ領域に機能的に連結された、操作されたCγ1遺伝子セグメントと、を含む。
【0125】
いくつかの特定の実施形態において、本明細書に記載される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、C1-H-C2-C3エクソンの代わりに、ヒトIgG1 C1-H-C2-C3をコードする配列を含み、非ヒト(例えば、ラットまたはマウス)Cγ2c遺伝子セグメントのM1及びM2エクソンに機能的に連結された、操作されたCγ2c遺伝子セグメントと、C1-H-C2-C3エクソンの代わりに、ヒトIgG4 C1-H-C2-C3をコードする配列を含み、非ヒト(例えば、ラットまたはマウス)Cγ1遺伝子セグメントのM1及びM2エクソンに機能的に連結された、操作されたCγ1遺伝子セグメントと、を含む。
【0126】
いくつかの特定の実施形態において、本明細書に記載される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、C1-H-C2-C3-M1-M2エクソンの代わりに、ヒトIgG1 C1-H-C2-C3-M1-M2をコードする配列を含み、非ヒト(例えば、ラットまたはマウス)Cγ2c遺伝子セグメントのスイッチ領域に機能的に連結された、操作されたCγ2c遺伝子セグメントと、C1-H-C2-C3-M1-M2エクソンの代わりに、ヒトIgG4 C1-H-C2-C3-M1-M2をコードする配列を含み、非ヒト(例えば、ラットまたはマウス)Cγ1遺伝子セグメントのスイッチ領域に機能的に連結された、操作されたCγ1遺伝子セグメントと、を含む。
【0127】
様々な実施形態において、本明細書に記載される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、ヒトIgG C1-H-C2-C3またはヒトIgG C1-H-C2-C3-M1-M2(例えば、IgG1及び/またはIgG2a)をコードする配列を含む1つ以上のIgG定常領域以外の定常領域遺伝子(すなわち、アイソタイプ)を、例えば、IgD、IgE、IgA、及びIgG(それ自体が本明細書に記載されるヒトIgG C1-H-C2-C3またはヒトIgG C1-H-C2-C3-M1-M2をコードする配列を含有しないIgG)(例えば、IgG2b及び/またはIgG3)をコードする1つ以上の免疫グロブリン定常領域遺伝子の全体的または部分的な欠失、全体的または部分的な変更、全体的または部分的な破壊、全体的または部分的な置換を介して、機能させないようにすることを含む、1つ以上の更なる改変を含む。そのようなマウス、胚、及び細胞を作製するための操作された非ヒト胚、細胞、及び標的化ベクターもまた提供される。
【0128】
いくつかの特定の実施形態において、本明細書で提供される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、野生型(例えば、改変されていない非ヒト(ラットまたはマウスなど))Cμ遺伝子セグメントと、Cγ1遺伝子セグメントであって、C1-H-C2-C3エクソンの代わりに、ヒトIgG4 C1-H-C2-C3をコードする配列を含み、当該Cγ1遺伝子セグメントのM1-M2エクソンに機能的に連結されたCγ1遺伝子セグメントと、Cδ、Cγ2a、Cγ2c、Cγ2b、Cγ3、Cε及びCα遺伝子セグメントの欠失と、を含む。
【0129】
いくつかの特定の実施形態において、本明細書で提供される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、野生型(例えば、改変されていない非ヒト(ラットまたはマウスなど))Cμ遺伝子セグメントと、Cγ1遺伝子セグメントであって、C1-H-C2-C3-M1-M2エクソンの代わりに、ヒトIgG4 C1-H-C2-C3-M1-M2をコードする配列を含み、当該Cγ1遺伝子セグメントのスイッチ領域に機能的に連結されたCγ1遺伝子セグメントと、Cδ、Cγ2a、Cγ2c、Cγ2b、Cγ3、Cε及びCα遺伝子セグメントの欠失と、を含む。
【0130】
いくつかの特定の実施形態において、本明細書で提供される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、野生型(例えば、改変されていない非ヒト(ラットまたはマウスなど))Cμ遺伝子セグメントと、Cγ2a遺伝子セグメントであって、C1-H-C2-C3エクソンの代わりに、ヒトIgG1 C1-H-C2-C3をコードする配列を含み、当該Cγ2a遺伝子セグメントのM1-M2エクソンに機能的に連結されたCγ2a遺伝子セグメントと、Cδ、Cγ1、Cγ2b、Cγ2c、Cγ3、Cε及びCα遺伝子セグメントの欠失と、を含む。
【0131】
いくつかの特定の実施形態において、本明細書で提供される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、野生型(例えば、改変されていない非ヒト(ラットまたはマウスなど))Cμ遺伝子セグメントと、Cγ2a遺伝子セグメントであって、C1-H-C2-C3-M1-M2エクソンの代わりに、ヒトIgG1 C1-H-C2-C3-M1-M2をコードする配列を含み、当該Cγ2a遺伝子セグメントのスイッチ領域に機能的に連結されたCγ2a遺伝子セグメントと、Cδ、Cγ1、Cγ2b、Cγ2c、Cγ3、Cε及びCα遺伝子セグメントの欠失と、を含む。
【0132】
いくつかの特定の実施形態において、本明細書で提供される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、野生型(例えば、改変されていない非ヒト(ラットまたはマウスなど))Cμ遺伝子セグメントと、Cγ2c遺伝子セグメントであって、C1-H-C2-C3エクソンの代わりに、ヒトIgG1 C1-H-C2-C3をコードする配列を含み、当該Cγ2c遺伝子セグメントのM1-M2エクソンに機能的に連結されたCγ2c遺伝子セグメントと、Cδ、Cγ1、Cγ2a、Cγ2b、Cγ3、Cε及びCα遺伝子セグメントの欠失と、を含む。
【0133】
いくつかの特定の実施形態において、本明細書で提供される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、野生型(例えば、改変されていない非ヒト(ラットまたはマウスなど))Cμ遺伝子セグメントと、Cγ2c遺伝子セグメントであって、C1-H-C2-C3-M1-M2エクソンの代わりに、ヒトIgG1 C1-H-C2-C3-M1-M2をコードする配列を含み、当該Cγ2c遺伝子セグメントのスイッチ領域に機能的に連結されたCγ2c遺伝子セグメントと、Cδ、Cγ1、Cγ2a、Cγ2b、Cγ3、Cε及びCα遺伝子セグメントの欠失と、を含む。
【0134】
様々な実施形態において、本明細書に記載される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、ヒトIgG C1-H-C2-C3またはヒトIgG C1-H-C2-C3-M1-M2(例えば、IgG1及び/またはIgG2a)をコードする配列を含む1つ以上のIgG定常領域以外の定常領域遺伝子(すなわち、アイソタイプ)を、本明細書に記載されるヒト免疫グロブリン重鎖定常領域配列の、IgD、IgE、IgA、及びIgG(それ自体が本明細書に記載されるヒトIgG C1-H-C2-C3またはヒトIgG C1-H-C2-C3-M1-M2をコードする配列を含有しないIgG)(例えば、IgG2b及び/またはIgG3)の1つ以上の免疫グロブリン定常領域遺伝子への挿入を介して、変更、改変、置換、操作などがなされるように操作することを含む、1つ以上の更なる改変を含む。
【0135】
本明細書に記載される操作された定常領域を有する免疫グロブリン遺伝子座を含むマウス、胚、及び細胞を作製するための操作されたマウス胚、細胞、及び標的化ベクターもまた提供される。
【0136】
いくつかの特定の実施形態において、本明細書で提供される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、野生型Cμ遺伝子セグメントと、野生型Cδ遺伝子セグメントと、Cγ3遺伝子セグメントであって、C1-H-C2-C3エクソンの代わりに、ヒトIgG3 C1-H-C2-C3をコードする配列を含み、当該Cγ3遺伝子セグメントのM1-M2エクソンに機能的に連結されたCγ3遺伝子セグメントと、Cγ1遺伝子セグメントであって、C1-H-C2-C3エクソンの代わりにヒトIgG4 C1-H-C2-C3をコードする配列を含み、当該Cγ1遺伝子セグメントのM1-M2エクソンに機能的に連結されたCγ1遺伝子セグメントと、Cγ2b遺伝子セグメントであって、C1-H-C2-C3エクソンの代わりに、ヒトIgG2 C1-H-C2-C3をコードする配列を含み、当該Cγ2b遺伝子セグメントのM1-M2エクソンに機能的に連結されたCγ2b遺伝子セグメントと、Cγ2a遺伝子セグメントであって、C1-H-C2-C3エクソンの代わりに、ヒトIgG1 C1-H-C2-C3をコードする配列を含み、当該Cγ2a遺伝子セグメントのM1-M2エクソンに機能的に連結されたCγ2a遺伝子セグメント(及び/またはCγ2c遺伝子セグメントであって、C1-H-C2-C3エクソンの代わりに、ヒトIgG1 C1-H-C2-C3をコードする配列を含み、当該Cγ2c遺伝子セグメントのM1-M2エクソンに機能的に連結されたCγ2c遺伝子セグメント)と、Cε遺伝子セグメントであって、C1-C2-C3-C4エクソンの代わりに、ヒトIgE C1-C2-C3-C4をコードする配列を含み、当該Cε遺伝子セグメントのM1-M2エクソンに機能的に連結されたCε遺伝子セグメントと、Cα遺伝子セグメントであって、C1-H-C2-C3エクソンの代わりに、ヒトIgA1またはIgA2 C1-H-C2-C3をコードする配列を含み、当該Cα遺伝子セグメントのMエクソン(複数可)に機能的に連結されたCα遺伝子セグメントと、を含む。
【0137】
いくつかの特定の実施形態において、本明細書で提供される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、野生型Cμ遺伝子セグメントと、野生型Cδ遺伝子セグメントと、Cγ3遺伝子セグメントであって、C1-H-C2-C3-M1-M2エクソンの代わりに、ヒトIgG3 C1-H-C2-C3-M1-M2をコードする配列を含み、当該Cγ3遺伝子セグメントのスイッチ領域に機能的に連結されたCγ3遺伝子セグメントと、Cγ1遺伝子セグメントであって、C1-H-C2-C3-M1-M2エクソンの代わりにヒトIgG4 C1-H-C2-C3-M1-M2をコードする配列を含み、当該Cγ1遺伝子セグメントのスイッチ領域に機能的に連結されたCγ1遺伝子セグメントと、Cγ2b遺伝子セグメントであって、C1-H-C2-C3-M1-M2エクソンの代わりに、ヒトIgG2 C1-H-C2-C3-M1-M2をコードする配列を含み、当該Cγ2b遺伝子セグメントのスイッチ領域に機能的に連結されたCγ2b遺伝子セグメントと、Cγ2a遺伝子セグメントであって、C1-H-C2-C3-M1-M2エクソンの代わりに、ヒトIgG1 C1-H-C2-C3-M1-M2をコードする配列を含み、当該Cγ2a遺伝子セグメントのスイッチ領域に機能的に連結されたCγ2a遺伝子セグメント(及び/またはCγ2c遺伝子セグメントであって、C1-H-C2-C3-M1-M2エクソンの代わりに、ヒトIgG1 C1-H-C2-C3-M1-M2をコードする配列を含み、当該Cγ2c遺伝子セグメントのスイッチ領域に機能的に連結されたCγ2c遺伝子セグメント)と、Cε遺伝子セグメントであって、C1-C2-C3-C4エクソンの代わりに、ヒトIgE C1-C2-C3-C4をコードする配列を含み、当該Cε遺伝子セグメントのM1-M2エクソンに機能的に連結されたCε遺伝子セグメントと、Cα遺伝子セグメントであって、C1-H-C2-C3エクソンの代わりに、ヒトIgA1またはIgA2 C1-H-C2-C3をコードする配列を含み、当該Cα遺伝子セグメントのMエクソン(複数可)に機能的に連結されたCα遺伝子セグメントと、を含む。
【0138】
いくつかの実施形態において、マウスは、本明細書に記載される改変された免疫グロブリン重鎖遺伝子座についてヘテロ接合性を有する。特定の実施形態において、マウスは、本明細書に記載される改変された免疫グロブリン重鎖遺伝子座についてホモ接合性を有する。
【0139】
ヒトFcを含む治療薬(例えば、治療用ヒトIgA抗体などのヒトFcαを含む治療薬)は、典型的には、ヒトに投与する前に非ヒト種(例えば、マウス)で試験される。残念ながら、ヒトFc領域を含む薬剤は、従来のマウスに投与したとき、ヒトに投与した場合と比較して非常に異なる薬物動態学的特性及び薬力学的特性を示すことが多い。例えば、ヒトFc領域を有する治療薬が従来のマウスに投与される場合、Fc領域内のヒト配列はマウス免疫系によって異物として識別されることが多い。その結果、マウスは投与された治療薬に対する免疫反応(マウス抗ヒト反応またはMAHAとして知られている)を開始する可能性があり、これは投与された薬剤の薬物動態学的特性及び薬力学的特性に影響を与える。従って、従来のマウスモデルは、ヒトFcを含む治療薬に対するヒトの治療応答の予測因子として不十分であることが多い。特定の実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、ヒトFcを含む治療薬の投与後のMAHA反応が低下する。従って、ヒト免疫グロブリン遺伝子座領域を有する本明細書に開示されるマウスは、MAHA反応を低減または排除するのに役立つ。
【0140】
従って、例えば、WO2019/190990(当該文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されたように、ヒトまたはヒト化FcαRを発現し、ヒト定常領域(例えば、ヒトCα定常領域)を含む本明細書で提供される様々なマウスを用いてヒトFcを含む薬剤(例えば、治療用ヒトIgA抗体などのヒトFcαを含む薬剤)の投与に対するMAHA反応を試験することができる。
【0141】
ヒト化免疫グロブリンカッパ遺伝子座
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、ヒト化Igκ鎖遺伝子座をさらに含む。WO2019/190990(当該文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているように、ヒト化Igκ鎖遺伝子座を有するマウスにおいてヒトκ鎖を含む治療薬を試験すると、ヒトκ鎖がそのようなマウスにおいて異物として識別される可能性が低いため、MAHA反応を低減または排除することができる。
【0142】
いくつかの実施形態において、ゲノム中にヒト化またはヒトFcαR1遺伝子座を含むように遺伝子改変されたマウス及びES細胞は、遺伝子改変されたIgκ鎖遺伝子座をさらに含む。このような遺伝子座は、κ可変領域及びκ定常領域を含む。κ可変領域には、Igκ鎖可変領域遺伝子セグメント(すなわち、少なくともVκ遺伝子セグメント及びJκ遺伝子セグメント)が含まれる。定常領域には、Igκ鎖定常領域(Cκ)遺伝子セグメントが含まれる。特定の実施形態において、ヒトIgκ可変領域などの免疫グロブリンκ鎖可変領域は、マウスがヒトVκ遺伝子セグメント及びヒトJκ遺伝子セグメントに由来する軽鎖可変ドメインと、Cκ遺伝子セグメントに由来する軽鎖定常ドメインとを含む抗体を生成するように、免疫グロブリンκ鎖定常領域に機能的に連結する。いくつかの実施形態において、Igκ可変領域は、再構成されていないIgκ可変領域であり、従って、再構成されていないIgκ可変領域遺伝子セグメントを含むことになる。いくつかの実施形態において、Igκ可変領域は、再構成されたIgκ可変領域であり、従って、再構成されたIgκ可変領域遺伝子を含むことになる。特定の実施形態において、Igκ可変領域遺伝子セグメントは、ヒトIgκ可変領域遺伝子セグメントである。特定の実施形態において、Igκ可変領域遺伝子セグメントは、げっ歯類Igκ可変領域遺伝子セグメント(例えば、ラットまたはマウス可変領域遺伝子セグメント)である。いくつかの実施形態において、Igκ定常領域遺伝子座は、部分的または完全にヒトのIgκ定常領域遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるIgκ鎖遺伝子座は、内因性Igκ鎖遺伝子座に位置する。
【0143】
特定の実施形態において、Igκ可変領域は、再構成されていないヒトIgκ可変領域遺伝子セグメントを含む。いくつかの特定の実施形態において、操作されたIgκ軽鎖遺伝子座(または対立遺伝子)は、天然に現れるヒトIgκ軽鎖遺伝子座の遠位可変クラスター(または遠位アームもしくは遠位重複)に現れる少なくともヒトVκ遺伝子セグメントを含む。いくつかの特定の実施形態において、操作されたIgκ軽鎖遺伝子座(または対立遺伝子)は、天然に現れるヒトIgκ軽鎖遺伝子座の近位可変クラスター(または近位アームもしくは近位重複)に現れる少なくともヒトVκ遺伝子セグメントを含む。いくつかの特定の実施形態において、操作されたIgκ軽鎖遺伝子座(または対立遺伝子)は、天然に現れるヒトIgκ軽鎖遺伝子座の遠位及び近位可変クラスターに現れるヒトVκ遺伝子セグメントを含む。いくつかの特定の実施形態において、操作されたIgκ軽鎖遺伝子座(または対立遺伝子)は、天然に現れるヒトIgκ軽鎖遺伝子座のヒトVκ2-40(またはVκ3D-7)遺伝子セグメントとヒトVκ4-1遺伝子セグメントとの間(両端を含む)に見出される機能的ヒトVκ遺伝子セグメントの全てまたは実質的に全てを含む。
【0144】
いくつかの実施形態において、再構成されていないヒト免疫グロブリン可変領域遺伝子セグメントは、複数のヒトVκセグメント及び1つ以上のヒトJκセグメントを含む。いくつかの実施形態において、免疫グロブリン可変領域遺伝子セグメントは、4個の機能的Vκセグメント及び全てのヒトJκセグメントを含む。いくつかの実施形態において、免疫グロブリン可変領域遺伝子セグメントは、16個の機能的Vκセグメント及び全てのヒトJκセグメントを含む。いくつかの実施形態において、再構成されていないヒト免疫グロブリン可変領域遺伝子セグメントは、全てのヒトVκセグメント及び全てのヒトJκセグメントを含む。
【0145】
いくつかの特定の実施形態において、操作されたIgκ軽鎖遺伝子座(または対立遺伝子)は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、またはそれ以上(例えば、36、37、38、39、40など)のヒトVκ遺伝子セグメントを含む。いくつかの特定の実施形態において、操作されたIgκ軽鎖遺伝子座(または対立遺伝子)は、ヒトVκ遺伝子セグメントVκ3D-7、Vκ1D-8、Vκ1D-43、Vκ3D-11、Vκ1D-12、Vκ1D-13、Vκ3D-15、Vκ1D-16、Vκ1D-17、Vκ3D-20、Vκ6D-21、Vκ2D-26、Vκ2D-28、Vκ2D-29、Vκ2D-30、Vκ1D-33、Vκ1D-39、Vκ2D-40、Vκ2-40、Vκ1-39、Vκ1-33、Vκ2-30、Vκ2-28、Vκ1-27、Vκ2-24、Vκ6-21、Vκ3-20、Vκ1-17、Vκ1-16、Vκ3-15、Vκ1-12、Vκ3-11、Vκ1-9、Vκ1-8、Vκ1-6、Vκ1-5、Vκ5-2、及びVκ4-1を含む。いくつかの特定の実施形態において、操作されたIgκ軽鎖遺伝子座(または対立遺伝子)は、少なくともヒトVκ遺伝子セグメントVκ3D-7、Vκ1D-8、Vκ1D-43、Vκ3D-11、Vκ1D-12、Vκ1D-13、Vκ3D-15、Vκ1D-16、Vκ1D-17、Vκ3D-20、Vκ6D-21、Vκ2D-26、Vκ2D-28、Vκ2D-29、Vκ2D-30、Vκ1D-33、Vκ1D-39、及びVκ2D-40を含む。いくつかの特定の実施形態において、操作されたIgκ軽鎖遺伝子座(または対立遺伝子)は、少なくともヒトVκ遺伝子セグメントVκ2-40、Vκ1-39、Vκ1-33、Vκ2-30、Vκ2-28、Vκ1-27、Vκ2-24、Vκ6-21、Vκ3-20、Vκ1-17、Vκ1-16、Vκ3-15、Vκ1-12、Vκ3-11、Vκ1-9、Vκ1-8、Vκ1-6、Vκ1-5、Vκ5-2、及びVκ4-1を含む。
【0146】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、2つ以下のヒトV遺伝子セグメント及び複数のJ遺伝子セグメント(例えば、米国特許公開第2013/0198880(当該文献は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載の二重軽鎖マウスまたはDLC)を特徴とする制限された免疫グロブリン軽鎖遺伝子座を有する。いくつかの実施形態において、V遺伝子セグメントはVκ遺伝子セグメントである。いくつかの実施形態において、V遺伝子セグメントはVλ遺伝子セグメントである。いくつかの実施形態において、Vκ遺伝子セグメントはVκ3-20及びVκ1-39である。
【0147】
いくつかの実施形態において、操作されたIgκ軽鎖遺伝子座(または対立遺伝子)は、1、2、3、4、5、またはそれ以上の機能的ヒトJκ遺伝子セグメントを含む。いくつかの特定の実施形態において、操作されたIgκ軽鎖遺伝子座(または対立遺伝子)は、天然に現れるヒトIgκ軽鎖遺伝子座のヒトJκ1遺伝子セグメントとヒトJκ5遺伝子セグメントとの間(両端を含む)に見出される機能的ヒトJκ遺伝子セグメントの全てまたは実質的に全てを含む。いくつかの特定の実施形態において、操作されたIgκ軽鎖遺伝子座(または対立遺伝子)は、少なくともヒトJκ遺伝子セグメントJκ1、Jκ2、Jκ3、Jκ4、及びJκ5を含む。
【0148】
さらに他の実施形態において、非ヒト生物は、その生殖細胞系列及び/またはゲノム中に、そのような非ヒト生物で生成された抗体にpH依存性の結合特性を導入するように設計されたヒスチジンコドンの挿入及び/または置換を含む軽鎖免疫グロブリン遺伝子座を含み得る。このような実施形態のいくつかにおいて、ヒスチジンコドンは、CDR3をコードする核酸配列において挿入及び/または置換される。様々なそのような軽鎖免疫グロブリン遺伝子座は、米国特許第9,301,510号、同第9,334,334号、米国特許出願公開第2013/0247236号、同第2014/0013456号に提供されており、当該文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0149】
Igκ遺伝子セグメントを含む例示的な可変領域は、例えば、Macdonald et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 111:5147-52及び補足情報に提供されており、当該文献は、参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、再構成されていないヒト免疫グロブリン可変領域遺伝子セグメントは、全てのヒトJκセグメントを含む。
【0150】
いくつかの実施形態において、再構成されていないヒトIgκ可変領域遺伝子セグメントを含むIgκ可変遺伝子座には、ヒトIgκ可変領域遺伝子間配列も含まれる。いくつかの実施形態において、Igκ可変遺伝子座は、非ヒト(例えば、げっ歯類、ラット、マウス)Igκ可変領域遺伝子間配列を含む。いくつかの実施形態において、Igκ遺伝子座は、非ヒト調節エレメント(例えば、非ヒトプロモーター及び/またはエンハンサー)を含む。いくつかの実施形態において、非ヒト調節エレメントは、げっ歯類調節エレメント(例えば、ラットまたはマウスのプロモーターまたはエンハンサー)である。
【0151】
いくつかの実施形態において、Igκ可変領域遺伝子座は、Igκ可変領域遺伝子(ユニバーサル軽鎖可変領域)を含む再構成された可変領域遺伝子座である。いくつかの実施形態において、再構成されたIgκ可変領域遺伝子は、再構成されたヒトIgκ可変領域遺伝子(例えば、ヒトVκ1-39Jκ5またはヒトVκ3-20Jκ1配列などの、ヒトVκ1-39JκまたはヒトVκ3-20Jκ配列を含む再構成されたヒトIgκ可変領域)である。ユニバーサル軽鎖可変領域を使用すると、二重特異性抗体の生成が容易になる。再構成されたIg軽鎖可変領域の例としては、米国特許公開第2013/0185821号に提供されたものがあり、当該文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0152】
いくつかの実施形態において、Igκ鎖遺伝子座は、ヒトまたはげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)の調節エレメントを含む。いくつかの実施形態において、調節エレメントは内因性調節エレメントである。特定の実施形態において、Igκ鎖遺伝子座は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)またはヒトのイントロンκエンハンサー(Eκi)を含む。いくつかの実施形態において、IgH遺伝子座は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)またはヒトの3’κエンハンサー(Eκ3’)を含む。
【0153】
いくつかの実施形態において、遺伝子改変されたげっ歯類における改変された免疫グロブリンκ鎖遺伝子座は、Cλ遺伝子の上流に(例えば、機能的に連結された)、1つ以上の再構成されていないヒトVλ遺伝子セグメント及び1つ以上の再構成されていないヒトJλ遺伝子セグメントを含む。このような遺伝子改変された免疫グロブリンκ鎖遺伝子座を含むげっ歯類の例としては、米国特許第11,051,498号(当該文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたものが挙げられる。いくつかの実施形態において、遺伝子改変されたげっ歯類における改変された免疫グロブリンκ鎖遺伝子座は、限定されたヒトλ軽鎖可変領域レパートリーを含み、限定されたヒトλ軽鎖可変領域レパートリーは、単一の再構成されたヒト免疫グロブリンλ軽鎖可変領域(Vλ/Jλ)を含む。単一の再構成されたヒトλ軽鎖可変領域は、ヒトJλ遺伝子セグメントに連結され、CκまたはCλ遺伝子セグメント(例えば、げっ歯類CκまたはCλ遺伝子セグメント(例えば、マウスCλ1遺伝子セグメント)に機能的に連結されたヒトVλ遺伝子セグメントを含む。このような遺伝子改変された免疫グロブリンκ鎖遺伝子座を含むげっ歯類の例としては、WO2020/247623(当該文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたものが挙げられる。
【0154】
いくつかの実施形態において、改変された免疫グロブリンκ鎖遺伝子座は、内因性免疫グロブリンκ鎖遺伝子座に配置される。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンκ鎖遺伝子座は、内因性免疫グロブリンκ鎖遺伝子座の全部または一部を置き換える。特定の実施形態において、改変されたIgκ鎖遺伝子座は、内因性遺伝子座の外側に配置される導入遺伝子上に位置する。いくつかの実施形態において、内因性Igκ鎖遺伝子座は、不活性化される(例えば、内因性Igκ鎖遺伝子座の全部または一部の欠失、転位、及び/または逆位により)。
【0155】
いくつかの実施形態において、マウスは、本明細書に記載される改変された免疫グロブリンκ鎖遺伝子座についてヘテロ接合性を有する。特定の実施形態において、マウスは、本明細書に記載される改変された免疫グロブリンκ鎖遺伝子座についてホモ接合性を有する。
【0156】
従って、例えば、WO2019/190990(当該文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されたように、ヒトまたはヒト化FcαRを発現し、ヒト軽鎖定常領域(及び、いくつかの実施形態においては、また、ヒトCα定常領域)を含む本明細書で提供される様々なマウスを用いて、ヒトFcを含む薬剤(例えば、治療用ヒトIgA抗体などのヒトFcαを含む薬剤)の投与に対するMAHA反応を試験することができる。
【0157】
ヒト化免疫グロブリンラムダ遺伝子座
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、ヒト化Igλ鎖遺伝子座をさらに含む。WO2019/190990(当該文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているように、ヒト化Igλ鎖遺伝子座を有するマウスにおいてヒトλ鎖を含む治療薬を試験すると、ヒトκ鎖がそのようなマウスにおいて異物として識別される可能性が低いため、MAHA反応を低減または排除することができる。
【0158】
いくつかの実施形態において、ゲノム中にヒト化またはヒトFcαR1遺伝子座を含むように遺伝子改変されたマウス及びES細胞は、遺伝子改変されたIgλ鎖遺伝子座をさらに含む。そのような遺伝子座には、Igλ鎖可変領域遺伝子セグメント(すなわち、少なくともVλ遺伝子セグメント及びJλ遺伝子セグメント)が含まれる。改変されたλ遺伝子座は、少なくとも1つのIgλ鎖定常領域(Cλ)遺伝子セグメントをさらに含む。特定の実施形態において、ヒトVλ遺伝子セグメント及びヒトJλ遺伝子セグメントなどのVλ遺伝子セグメント及びJλ遺伝子セグメントは、マウスがヒトVλ遺伝子セグメント及びヒトJλ遺伝子セグメントに由来する軽鎖可変ドメインと、Cλ遺伝子セグメントに由来する軽鎖定常ドメインとを含む抗体を生成するように、Cλに機能的に連結される。いくつかの実施形態において、Vλ遺伝子セグメント及びJλ遺伝子セグメントは、再構成されていないVλ及びJλ遺伝子セグメントであり得る。いくつかの実施形態において、Vλ遺伝子セグメント及びJλ遺伝子セグメントは、再構成されたVλ及びJλ遺伝子セグメントであり得、従って、再構成された可変領域遺伝子の形態であり得る。特定の実施形態において、Igλ可変領域遺伝子セグメントは、ヒト可変領域遺伝子セグメントである。特定の実施形態において、Igλ可変領域遺伝子セグメントは、げっ歯類可変領域遺伝子セグメント(例えば、ラットまたはマウス可変領域遺伝子セグメント)である。いくつかの実施形態において、Igλ定常領域遺伝子座は、部分的または完全にヒトのλ定常領域遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるIgλ鎖遺伝子座は、内因性Igλ鎖遺伝子座に位置する。Igλ遺伝子セグメントを含む可変領域の例としては、例えば、米国特許公開第2012/0073004号及び同第2002/0088016号、ならびに米国特許出願第15/803,513号(2017年11月3日出願、US2018/0125043として公開)に提供されたものが挙げられ、当該文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0159】
いくつかの実施形態において、再構成されていないヒトIgλ可変領域遺伝子セグメントを含むIgλ可変遺伝子座には、ヒトIgλ可変領域遺伝子間配列も含まれる。いくつかの実施形態において、Igλ可変遺伝子座は、非ヒト(例えば、げっ歯類、ラット、マウス)Igλ可変領域遺伝子間配列を含む。いくつかの実施形態において、Igλ遺伝子座は、非ヒト調節エレメント(例えば、非ヒトプロモーター及び/またはエンハンサー)を含む。いくつかの実施形態において、非ヒト調節エレメントは、げっ歯類調節エレメント(例えば、ラットまたはマウスのプロモーターまたはエンハンサー)である。
【0160】
いくつかの実施形態において、ヒトIgλ軽鎖遺伝子座は、ヒトIgλ軽鎖遺伝子座に由来する遺伝物質を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のヒトIgλ軽鎖遺伝子座は、少なくとも1つのヒトVλ遺伝子セグメント、少なくとも1つのヒトJλ遺伝子セグメント、少なくとも1つのヒトCλ遺伝子セグメント、及び、当該少なくとも1つのヒトVλ遺伝子セグメントと当該少なくとも1つのヒトJλ遺伝子セグメントとの再構成を促進し、ヒトVλドメインをコードする機能的な再構成されたヒトVλ-Jλ配列を形成するのに必要な1つ以上の配列(例えば、組換えシグナル配列[複数可])を含む。多くの実施形態において、ヒトIgλ軽鎖配列は、複数のヒトVλ遺伝子セグメント、及び当該ヒトVλ遺伝子セグメントと少なくとも1つのヒトJλ遺伝子セグメントとの再構成を促進するのに必要な1つ以上の配列を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のヒトIgλ軽鎖配列は、ヒトIgλ軽鎖遺伝子座のゲノム配列であり(例えば、細菌人工染色体から単離及び/またはクローン化されたもの)、生殖細胞系列の構成に複数のヒトVλ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、ヒトIgλ軽鎖配列は、生殖細胞系列の構成にヒトVλ、Jλ、及びCλ配列を含む(すなわち、当該ヒトVλ、Jλ、及びCλ配列がヒト細胞内のIgλ軽鎖遺伝子座に現れるため、言い換えれば、Jλ及びCλ配列はJλλクラスターとして現れる)。いくつかの実施形態において、ヒトIgλ軽鎖配列は、全体または部分的にIgλ軽鎖ポリペプチドをコードし、そのIgλ軽鎖ポリペプチドは、免疫グロブリン、特にヒトB細胞によって発現される免疫グロブリンに現れる。対応する非ヒトIgλ軽鎖配列(例えば、内因性マウスIgλ軽鎖遺伝子座)の代わりに当該ヒトIgλ軽鎖配列を含むマウス、非ヒト胚、及び細胞を作製するためのマウス、胚、細胞、及びターゲティング構築物も提供される。
【0161】
いくつかの実施形態において、ヒトIgλ軽鎖配列は、非ヒト動物の生殖細胞系列ゲノム内の対応する非ヒトIgλ軽鎖配列の代わりに挿入される。いくつかの実施形態において、ヒトIgλ軽鎖配列は、非ヒトIgλ軽鎖配列(例えば、非ヒトIgλ軽鎖定常領域配列)の上流に挿入される。いくつかの実施形態において、ヒトIgλ軽鎖配列は、当該ヒトIgλ軽鎖配列が非ヒトIgλ軽鎖配列と並置されるように、1つ以上の非ヒトIgλ軽鎖配列の中央に挿入される。
【0162】
特定の実施形態において、Igλ鎖遺伝子座は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、10、20、30、または40個の機能的Vλ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態において、遺伝子座は、ヒトVλ遺伝子セグメントVλ3-10、Vλ3-9、Vλ2-8、Vλ4-3、及びVλ3-1を含む。いくつかの実施形態において、遺伝子座は、Vλ2-11、Vλ3-12、Vλ2-14、Vλ3-16、Vλ3-19、Vλ3-21、Vλ3-22、λ2-23、Vλ3-25、及びVλ3-27を含む。いくつかの実施形態において、遺伝子座は、Vλ3-27、Vλ1-36、Vλ5-37、Vλ5-39、Vλ1-40、Vλ7-43、Vλ1-44、Vλ5-45、Vλ7-46、Vλ1-47、Vλ9-49、Vλ1-51、及びVλ5-52を含む。特定の実施形態において、遺伝子座は、Vλ10-54、Vλ6-57、Vλ4-60、Vλ8-61、及びVλ4-69を含む。いくつかの実施形態において、Igλ鎖遺伝子座は、1つ以上のヒトJλ-Cλ対を含む。例えば、特定の実施形態において、Igλ鎖遺伝子座は、ヒトVλ遺伝子セグメントの下流に、ヒトJλ1-Cλ1、Jλ2-Cλ2、Jλ3-Cλ3、Jλ6-Cλ6、及び/またはJλ7-Cλ7を含む。いくつかの実施形態において、Igλ鎖遺伝子座は、ヒトVλ遺伝子セグメントの下流に、ヒトJλ1-Cλ1、Jλ2-Cλ2、Jλ3-Cλ3、Jλ6-Cλ6、ヒトJλ7、及びマウスCλ1を含む。
【0163】
いくつかの実施形態において、Igλ遺伝子座は、Igλ可変領域遺伝子(ユニバーサル軽鎖可変領域)を含む再構成された遺伝子座である。いくつかの実施形態において、再構成されたIgλ可変領域遺伝子は、再構成されたヒトIgλ可変領域遺伝子である。ユニバーサル軽鎖可変領域を使用すると、少なくとも1つの抗原結合ドメインが結合する二重特異性抗体の生成が容易になる。再構成されたIg軽鎖可変領域の例としては、米国特許公開第2013/0185821号に提供されたものがあり、当該文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0164】
いくつかの実施形態において、Igλ鎖遺伝子座は、ヒトまたはげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)の調節エレメントを含む。いくつかの実施形態において、調節エレメントは内因性調節エレメントである。特定の実施形態において、Igλ鎖遺伝子座は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)λエンハンサー2.4を含む。いくつかの実施形態において、Igλ鎖遺伝子座は、ヒトまたはげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)の3’λエンハンサーを含む。いくつかの実施形態において、Igλ鎖遺伝子座は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)λエンハンサー3.1を含む。
【0165】
いくつかの実施形態において、改変された免疫グロブリンλ鎖遺伝子座は、内因性免疫グロブリンλ鎖遺伝子座に配置される。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンλ鎖遺伝子座は、内因性免疫グロブリンλ鎖遺伝子座の全部または一部を置き換える。特定の実施形態において、改変されたIgλ鎖遺伝子座は、内因性遺伝子座の外側に配置される導入遺伝子上に位置する。特定の実施形態において、改変されたIgλ鎖遺伝子座は、内因性免疫グロブリンκ鎖遺伝子座に位置する。いくつかの実施形態において、内因性Igλ鎖遺伝子座は、不活性化される(例えば、内因性Igλ鎖遺伝子座の全部または一部の欠失、転位、及び/または逆位により)。
【0166】
いくつかの実施形態において、マウスは、改変された免疫グロブリンλ鎖遺伝子座についてヘテロ接合性を有する。特定の実施形態において、マウスは、改変された免疫グロブリンλ鎖遺伝子座についてホモ接合性を有する。
【0167】
いくつかの実施形態において、マウスは、その生殖細胞系列及び/またはゲノム中に、軽鎖可変遺伝子セグメントの限られたレパートリー(例えば、2つの軽鎖可変遺伝子セグメントを含む二重軽鎖可変領域)を含む軽鎖免疫グロブリン遺伝子座を含む。いくつかの実施形態において、軽鎖遺伝子セグメントの限られたレパートリーにおける軽鎖可変遺伝子セグメントは、ヒト軽鎖遺伝子セグメントである。二重軽鎖可変領域の例としては、米国特許公開第2013/0198880号に提供されたものがあり、当該文献は、参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、二重軽鎖可変領域を含むマウスは、二重特異性抗体を生成するために使用される。
【0168】
従って、例えば、WO2019/190990(当該文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されたように、ヒトまたはヒト化FcαRを発現し、ヒト軽鎖定常領域(及び、いくつかの実施形態においては、また、ヒトCα定常領域)を含む本明細書で提供される様々なマウスを用いて、ヒトFcを含む薬剤(例えば、治療用ヒトIgA抗体などのヒトFcαを含む薬剤)の投与に対するMAHA反応を試験することができる。
【0169】
ヒト化CD79a及びCD79b遺伝子座
いくつかの実施形態において、ゲノム中にヒト化またはヒトFcαR1遺伝子座を含むように遺伝子改変されたマウス及びES細胞は、ヒトまたはヒト化B細胞抗原受容体複合体関連タンパク質アルファ鎖(CD79aまたはIgα)及び/またはB細胞抗原受容体複合体関連タンパク質ベータ鎖(CD79bまたはIgβ)遺伝子座をさらに含む。ヒトまたはヒト化CD79a及びCD79b遺伝子を含むマウスは、ヒトまたはヒト化CD79a及びCD79bポリペプチドをヘテロ二量体としてB細胞の表面に発現し、これが膜発現免疫グロブリンと非共有結合で会合してB細胞受容体(BCR)を形成する。BCRは抗原と会合し、抗原との結合後のシグナル伝達及び内部移行において機能する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のマウスは、ヒトまたはヒト化CD79a遺伝子及びCD79b遺伝子を含む。いくつかの特定の実施形態において、本明細書に記載のマウスは、げっ歯類CD79a部分及びヒトCD79a部分を含むCD79a遺伝子、ならびにげっ歯類CD79b部分及びヒトCD79b部分を含むCD79b遺伝子をさらに含み、ヒトCD79a部分は、実質的に全てのヒトCD79aポリペプチドの細胞外ドメイン(例えば、ヒトCD79aポリペプチドの残基33~143に対応するアミノ酸)をコードし、ヒトCD79b部分は、実質的に全てのヒトCD79bポリペプチドの細胞外ドメイン(例えば、ヒトCD79bポリペプチドの残基29~159に対応するアミノ酸)をコードする。いくつかの実施形態において、げっ歯類CD79a及びCD79b部分の各々は、内因性CD79a及びCD79bポリペプチドの少なくとも細胞内ドメインをそれぞれコードし、いくつかの特定の実施形態においては、内因性CD79a及びCD79bポリペプチドの膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインをそれぞれコードする。いくつかの実施形態において、ヒト部分及び内因性部分は、それぞれ内因性CD79aプロモーターまたはCD79bプロモーターに機能的に連結する。
【0170】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のマウスは、げっ歯類CD79a部分及びヒトCD79a部分を含むキメラCD79a遺伝子をさらに含み、ヒトCD79a部分は、ヒトCD79aポリペプチドの残基33~116に対応するアミノ酸を含む配列をコードし、一実施形態においては、ヒトCD79aポリペプチドのアミノ酸33~119を含む配列をコードし、一実施形態においては、ヒトCD79aポリペプチドのアミノ酸33~143を含む配列をコードし、一実施形態においては、ヒトCD79aポリペプチドのアミノ酸33~165を含む配列をコードする。いくつかの実施形態において、キメラCD79aポリペプチドは、ヒトIg C2様ドメインを含み、いくつかの実施形態においては、キメラCD79aポリペプチドは、ヒトストーク領域も含み、いくつかの実施形態においては、キメラCD79aポリペプチドは、ヒト膜貫通ドメインも含み、またいくつかの実施形態においては、キメラCD79aポリペプチドは、げっ歯類(例えば、マウス)細胞質ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態において、マウスは、本明細書に記載のヒト領域部分と、ヒトまたはげっ歯類(例えば、マウス)CD79aシグナルペプチドをコードする配列とを含むキメラCD79a遺伝子を含み、一実施形態においては、シグナルペプチドをコードする配列は、マウスCD79aのアミノ酸1~28をコードするマウスCD79a配列である。
【0171】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のマウスは、げっ歯類CD79b部分及びヒトCD79b部分を含むキメラCD79b遺伝子をさらに含み、ヒトCD79b部分は、ヒトCD79bポリペプチドの残基29~135に対応するアミノ酸を含む配列をコードし、一実施形態においては、ヒトCD79bポリペプチドのアミノ酸29~159を含む配列をコードし、一実施形態においては、ヒトCD79bポリペプチドのアミノ酸29~184を含む配列をコードする。いくつかの実施形態において、キメラCD79bポリペプチドは、ヒトIgV様ドメインを含み、いくつかの実施形態においては、キメラCD79bポリペプチドは、ヒトストーク領域も含み、いくつかの実施形態においては、キメラCD79bポリペプチドは、ヒト膜貫通ドメインも含み、またいくつかの実施形態においては、キメラCD79bポリペプチドは、げっ歯類(例えば、マウス)細胞質ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態において、マウスは、本明細書に記載のヒト領域部分と、ヒトまたはげっ歯類(例えば、マウス)CD79bシグナルペプチドをコードする配列とを含むキメラCD79b遺伝子を含み、一実施形態においては、シグナルペプチドをコードする配列は、マウスCD79bのアミノ酸1~25をコードするマウスCD79b配列である。
【0172】
GenBank受託番号NP_001774.1、NM_001783.3、NP_067612.1、及びNM_021601.3、ならびにUniProt ID P11912は、所望のヒト部分が得られるヒトCD79A遺伝子及びヒトCD79Aポリペプチドの代表的な供給源配列を提供する。GenBank受託番号NP_000617.1、NM_000626.2、NP_001035022.1、NM_001039933.1、NP_067613.1、及びNM_021602.2、ならびにUniProt ID P40259は、所望のヒト部分が得られるヒトCD79B遺伝子及びヒトCD79Bポリペプチドの代表的な供給源配列を提供する。
【0173】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、米国特許願公開第2011-0093963A1号及び同第2009-0053210A1号、国際特許出願公開第WO2008/027986号、及び欧州特許第2 064 325 B1号(当該文献のそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる)に記載された1つ以上のヒトCD79A及びCD79B遺伝子をさらに含む。いくつかの特定の実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、内因性CD79a部分及びヒトCD79a部分を含むヒト化CD79a遺伝子、ならびに内因性CD79b部分及びヒトCD79b部分を含むヒト化CD79b遺伝子を含み、ヒトCD79a部分は、実質的に全てのヒトCD79aポリペプチドの細胞外ドメイン(例えば、ヒトCD79aポリペプチドの残基33~143に対応するアミノ酸)をコードし、ヒトCD79b部分は、実質的に全てのヒトCD79bポリペプチドの細胞外ドメイン(例えば、ヒトCD79bポリペプチドの残基29~159に対応するアミノ酸)をコードする。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、内因性CD79a部分及びヒトCD79a部分を含むヒト化CD79a遺伝子、ならびに内因性CD79b部分及びヒトCD79b部分を含むヒト化CD79b遺伝子を含み、ヒトCD79a部分は、アミノ酸33~116を含む配列(例えば、ヒトCD79aポリペプチドのアミノ酸33~119を含む配列、アミノ酸33~143を含む配列、またはアミノ酸33~165を含む配列)をコードし、ヒトCD79b部分は、アミノ酸29~135を含む配列(例えば、ヒトCD79aポリペプチドのアミノ酸29~159を含む配列、またはアミノ酸29~184を含む配列)をコードする。いくつかの実施形態において、内因性CD79a及びCD79b部分の各々は、少なくとも内因性CD79a及びCD79bポリペプチドの細胞内ドメインをそれぞれコードし、いくつかの特定の実施形態においては、内因性CD79a及びCD79bポリペプチドの膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインをそれぞれコードする。
【0174】
ヒト化β-2-ミクログロブリン
いくつかの実施形態において、ゲノム中にヒト化またはヒトFcαR1遺伝子座を含むように遺伝子改変されたマウス及びES細胞は、ヒト化β-2-ミクログロブリン(β2M)ポリペプチドをコードする遺伝子座をさらに含む。β2Mは、膜貫通領域を欠いており、かつFcRn及びMHCクラスI分子と結合するポリペプチドである。
【0175】
いくつかの実施形態において、β2M遺伝子座は、ヒトβ2Mポリペプチドをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ヒトβ2Mポリペプチドをコードする核酸配列は、内因性マウスβ2M遺伝子座に位置する。特定の実施形態において、β2Mポリペプチドをコードする核酸配列は、内因性マウスβ2M遺伝子の全部または一部を置き換える。いくつかの実施形態において、マウスは、マウスβ2Mを発現しないか、または機能的なマウスβ2Mポリペプチドを発現しない。いくつかの実施形態において、β2M遺伝子座は、非ヒト調節エレメント(例えば、非ヒトプロモーター及び/またはエンハンサー)を含む。いくつかの実施形態において、非ヒト調節エレメントは、げっ歯類調節エレメント(例えば、ラットまたはマウスのプロモーターまたはエンハンサー)である。
【0176】
ヒト化β2Mポリペプチド、ヒト化β2Mポリペプチドをコードする遺伝子座、及びヒト化β2Mポリペプチドを発現するマウスについては、米国特許公開第2013/0111617号及び同第2013/0185819号に記載されており、当該文献のそれぞれは参照により本明細書に組み込まれる。従って、米国特許公開第2013/0111617号及び同第2013/0185819号に記載されているように、いくつかの実施形態において、マウスは、ヒト化β2M遺伝子を含み、当該遺伝子は、ヒトβ2M遺伝子のエクソン2、3、及び4を含み、いくつかの実施形態において、ヒト化β2M遺伝子は、非ヒト(例えば、マウス)β2M遺伝子のエクソン1を含む。いくつかの実施形態において、マウスは、遺伝子改変されたβ2M遺伝子座についてヘテロ接合性を有する。いくつかの実施形態において、マウスは、遺伝子改変されたβ2M遺伝子座についてホモ接合性を有する。
【0177】
遺伝子改変マウス及びES細胞
特定の態様において、本明細書では、本明細書に開示されるヒト化遺伝子座の1つ以上を含む遺伝子改変マウス及びES細胞、ならびにそのようなマウスの作製に有用な遺伝子改変マウスES細胞が提供される。
【0178】
特定の態様において、本明細書では、生殖細胞系列及び/またはゲノム中に、ヒト化またはヒトFcαR1遺伝子座を含む遺伝子改変マウス及びマウスES細胞が提供される。例えば、いくつかの実施形態において、マウスまたはES細胞は、その生殖細胞系列及び/またはゲノム中に、本明細書で提供されるFcαR遺伝子座を含む。いくつかの実施形態において、マウスまたはES細胞は、本明細書で提供されるIgH遺伝子座をさらに含む。いくつかの実施形態において、マウスまたはES細胞は、本明細書で提供されるIgκ及び/またはIgλ遺伝子座をさらに含む。いくつかの実施形態において、マウスまたはES細胞は、それらの生殖細胞系列及び/またはゲノム中に、本明細書で提供されるCD79a及び/またはCD79b遺伝子座を含む。いくつかの実施形態において、マウスまたはES細胞は、それらの生殖細胞系列及び/またはゲノム中に、本明細書で提供されるFcRn遺伝子座を含む。いくつかの実施形態において、マウスまたはES細胞は、それらの生殖細胞系列及び/またはゲノム中に、本明細書で提供されるβ2M遺伝子座を含む。いくつかの実施形態において、マウスまたはES細胞は、それらの生殖細胞系列及び/またはゲノム中に、本明細書で提供されるFcεR1α遺伝子座を含む。いくつかの実施形態において、マウスまたはES細胞は、それらの生殖細胞系列及び/またはゲノム中に、本明細書で提供されるFcγR1a遺伝子座を含む。いくつかの実施形態において、マウスまたはES細胞は、それらの生殖細胞系列及び/またはゲノム中に、本明細書で提供されるFcγR2a遺伝子座を含む。いくつかの実施形態において、マウスまたはES細胞は、それらの生殖細胞系列及び/またはゲノム中に、本明細書で提供されるFcγR2b遺伝子座を含む。いくつかの実施形態において、マウスまたはES細胞は、それらの生殖細胞系列及び/またはゲノム中に、本明細書で提供されるFcγR3a遺伝子座を含む。いくつかの実施形態において、マウスまたはES細胞は、それらの生殖細胞系列及び/またはゲノム中に、本明細書で提供されるFcγR3b遺伝子座を含む。いくつかの実施形態において、マウスまたはES細胞は、それらの生殖細胞系列及び/またはゲノム中に、本明細書で提供されるFcγR2c遺伝子座を含む。いくつかの実施形態において、マウスまたはES細胞は、本明細書で提供される1つ以上の遺伝子座、例えば、遺伝子操作された遺伝子座についてヘテロ接合性を有する。いくつかの実施形態において、マウスまたはES細胞は、本明細書で提供される1つ以上の遺伝子座、例えば、遺伝子操作された遺伝子座についてホモ接合性を有する。
【0179】
いくつかの実施形態において、マウスはC57BL系統のマウスである。いくつかの実施形態において、C57BL系統は、C57BL/A、C57BL/An、C57BL/GrFa、C57BL/KaLwN、C57BL/6、C57BL/6J、C57BL/6ByJ、C57BL/6NJ、C57BL/10、C57BL/10ScSn、C57BL/10Cr、及びC57BL/Olaから選択される。いくつかの実施形態において、マウスは129系統のマウスである。いくつかの実施形態において、129系統は、129P1、129P2、129P3、129X1、129S1(例えば、129S1/SV、129S1/SvIm)、129S2、129S4、129S5、129S9/SvEvH、129S6(129/SvEvTac)、129S7、129S8、129T1、129T2系統からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、遺伝子改変マウスは、129系統とC57BL系統との混合である。いくつかの実施形態において、マウスは、129系統の混合及び/またはC57BL/6系統の混合である。いくつかの実施形態において、混合129系統は、129S6(129/SvEvTac)系統である。いくつかの実施形態において、マウスはBALB系統(例えば、BALB/c)である。いくつかの実施形態において、マウスは、BALB系統と別の系統(例えば、C57BL系統及び/または129系統)との混合である。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるマウスは、前述の系統の任意の組み合わせに由来するマウスであり得る。
【0180】
遺伝子改変マウス及びES細胞は、当技術分野で知られている任意の適切な方法を使用して産生することができる。例えば、そのような遺伝子改変マウスES細胞は、米国特許第6,586,251号、同第6,596,541号、同第7,105,348号、及びValenzuela et al.(2003)「High-throughput engineering of the mouse genome coupled with high-resolution expression analysis」Nat.Biotech.21(6):652-659に記載されているVELOCIGENE(登録商標)技術を用いて産生することができ、当該文献のそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。改変は、CRISPR/Cas系、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)系、またはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)系などのゲノム標的ヌクレアーゼ系を使用して行うこともできる。いくつかの実施形態において、改変は、例えば米国特許出願第14/314,866号、同第14/515,503号、同第14/747,461号、及び同第14/731,914号に記載されているCRISPR/Cas系を使用して行われ、当該文献のそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。このような遺伝子改変マウス及びES細胞を作製する例示的な方法も、本明細書の実施例1に提供される。
【0181】
次いで、本明細書に記載のES細胞は、当技術分野で知られている方法を使用してマウスを作製する場合に使用可能である。例えば、本明細書に記載のマウスES細胞を使用して、米国特許第7,294,754号及びPoueymirou et al.,Nature Biotech 25:91-99(2007)に記載されているように、VELOCIMOUSE(登録商標)法を用いて遺伝子改変マウスを作製することができ、当該文献のそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。得られたマウスはホモ接合性を有し得る。
【0182】
ヒトFcα含有治療薬の試験方法
特定の態様において、本明細書では、本明細書で提供されるマウスに治療用タンパク質を投与することを含む、ヒトFcαドメインを含む治療用タンパク質(例えば、ヒト抗体またはFcα融合タンパク質)を試験する方法が提供される。いくつかの実施形態において、本明細書では、そのような方法を実施するための動物モデルが提供される。
【0183】
いくつかの実施形態において、投与されるヒト抗体またはFc融合タンパク質は、本明細書で提供されるマウスの遺伝子改変されたIgH遺伝子座におけるヒトCによってコードされるFcドメインのアイソタイプ及び/またはアロタイプと一致するアイソタイプ及び/またはアロタイプを有する。例えば、いくつかの実施形態において、薬剤はヒトIgA1抗体であり、マウスは、ヒトIgA1 CH、ヒンジ、CH、及びCHドメインをコードするC遺伝子セグメントを含む遺伝子改変されたIgH遺伝子座を含む。いくつかの実施形態において、薬剤はヒトIgA2抗体であり、マウスは、ヒトIgA2 CH、ヒンジ、CH、及びCHドメインをコードするC遺伝子セグメントを含む遺伝子改変されたIgH遺伝子座を含む。いくつかの実施形態において、薬剤は、ヒト重鎖可変ドメインを含む抗体(例えば、IgA1またはIgA2抗体)である。
【0184】
いくつかの実施形態において、当該方法は、投与された治療用タンパク質の1つ以上の薬物動態学的特性を測定することを含む。いくつかの実施形態において、投与されたヒト抗体または融合タンパク質の薬物動態学的特性を決定するために使用される動物モデルは、ヒトFcαR遺伝子座を含む、本明細書で提供される遺伝子改変マウスである。
【0185】
いくつかの実施形態において、1つ以上の薬物動態学的パラメータは、血漿中濃度対時間下面積(AUC)、生体内回収率(IVR)、クリアランス率(CL)、平均滞留時間(MRT)、薬剤半減期(t1/2)、及び定常状態分布容積(Vss)を含むが、これらに限定されない。一般に、投与される治療薬の薬物動態学的特性は、選択された用量の治療薬(例えば、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/mg、7.5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、または50mg/kg以上)を投与し、その後、治療薬の血漿濃度が経時的に(例えば、0時間、6時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、もしくは最大30日、またはそれ以上)どのように変化するかを決定することで判定される。
【0186】
いくつかの実施形態において、当該方法は、投与された治療用タンパク質の治療的有効性(例えば、ある投与量の治療用タンパク質が、動物モデルにおいて、1つ以上の疾患症状を軽減または排除する能力)を測定することを更に含む。いくつかの実施形態において、動物モデルは、がんモデルであり、疾患症状には、例えば、腫瘍サイズ、腫瘍転移、及び/または動物の生存が含まれ得る。いくつかの実施形態において、動物モデルは、自己免疫または炎症モデルであり、疾患症状には、例えば、サイトカインの発現レベル、免疫細胞の増殖、組織損傷、及び/または動物の生存が含まれ得る。いくつかの実施形態において、動物モデルは、感染症モデルであり、疾患症状には、例えば、感染性因子レベル、組織損傷、及び/または動物の生存が含まれ得る。
【0187】
いくつかの実施形態において、当該方法は、投与された治療用タンパク質の安全性及び投与量(例えば、ある投与量の治療用タンパク質が、動物モデルにおいて、1つ以上の有害作用をもたらす程度)を測定することを更に含む。有害作用には、アレルギー反応、脱毛症、アナフィラキシー、貧血、食欲不振、平衡感覚障害、出血、血栓、呼吸困難、気管支炎、打撲、白血球数の減少、赤血球数の減少、血小板数の減少、心毒性、結膜炎、便秘、咳、脱水、下痢、電解質平衡障害、不妊、発熱、脱毛、心不全、感染症、注射部位反応、鉄欠乏症、腎不全、白血球減少症、肝機能障害、肺炎、急速な心拍動、直腸出血、痙攣、体重減少、及び体重増加が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、治療薬によって誘発されたアレルギー反応を、受動皮膚アナフィラキシー(PCA)及び/または受動全身性アナフィラキシー(PSA)モデルを使用して測定する方法である。
【0188】
いくつかの実施形態において、当該方法は、治療用タンパク質が、マウスにおいて、1つ以上のFcαR媒介反応を誘導する程度(例えば、治療用タンパク質が抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)を誘導する程度)を測定することを更に含む。例えば、特定の実施形態において、本明細書で提供されるのは、ヒト抗体のヒトFcα領域を含む治療薬をスクリーニングする方法であり、(a)ヒト抗体のFcα領域を含む薬剤を本明細書で提供されるマウスに投与することであって、薬剤は、マウスの標的細胞に結合する、当該投与することと、(b)標的細胞に対するナチュラルキラー(NK)細胞の抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)を測定することと、(c)ステップ(b)におけるADCCの量を対照と比較することであって、標的細胞の殺傷増加は、薬剤がADCCを媒介する能力を増加させることを示す、当該比較することと、を含む。
【0189】
いくつかの実施形態において、当該方法は、治療用タンパク質の投与が、マウスにおいて、抗ヒトFcα免疫反応を誘導する程度を測定することを更に含む。
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法で試験される抗体は、ヒト軽鎖可変ドメインを有する。いくつかの実施形態において、軽鎖可変ドメインは、λ軽鎖可変ドメインである。いくつかの実施形態において、軽鎖可変ドメインは、κ軽鎖可変ドメインである。いくつかの実施形態において、抗体はヒト軽鎖定常ドメインを有する。いくつかの実施形態において、軽鎖定常ドメインは、λ軽鎖定常ドメインである。いくつかの実施形態において、軽鎖定常ドメインは、κ軽鎖定常ドメインである。ヒト軽鎖定常ドメインの配列は、当該技術分野において知られている(例えば、Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242及びIMGTデータベース(www.imgt.orgで入手可能)を参照)。
【0190】
いくつかの実施形態において、治療薬は、医薬組成物、例えば、薬学的に許容される担体と一緒に製剤化されたヒトIgA抗体またはFc融合タンパク質を含有する医薬組成物の一部として、本明細書で提供されるマウスに投与される。
【0191】
本明細書で提供される医薬組成物は、固体または液体の形態での投与用に特別に製剤化され得、(1)経口投与、例えば、ドレンチ(水性もしくは非水性の溶液または懸濁液)、錠剤、例えば、口腔粘膜、舌下、及び全身吸収を目的にしたもの、ボーラス、散剤、顆粒剤、舌への塗布のためのペースト剤、または(2)非経口投与、例えば、皮下、筋肉内、静脈内もしくは硬膜外注射による、例えば、無菌の溶液もしくは懸濁液、または徐放性製剤に適応されたものを含む。
【0192】
非経口投与に好適な医薬組成物は、ヒトIgA抗体またはFc融合タンパク質を、1つ以上の薬学的に許容される無菌の等張性の水性もしくは非水性の溶液、分散液、懸濁液もしくは乳濁液、または使用直前に無菌の注射用溶液もしくは分散液中に再構成することができる無菌粉末との組み合わせで含み、糖、アルコール、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、目的のレシピエントの血液と製剤とを等張にする溶質、または懸濁化剤もしくは粘稠化剤を含有し得る。
【0193】
本明細書で提供される医薬組成物に採用され得る好適な水性及び非水性の担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの好適な混合物、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材の使用によって、分散剤の場合には必要な粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持することができる。
【0194】
いくつかの実施形態において、組成物は、ヒト抗体またはFc融合タンパク質を、所望の投与量に適したw/vをもたらす濃度で含む。抗体は、少なくとも1mg/mL、少なくとも5mg/mL、少なくとも10mg/mL、少なくとも15mg/mL、少なくとも20mg/mL、少なくとも25mg/mL、少なくとも30mg/mL、少なくとも35mg/mL、少なくとも40mg/mL、少なくとも45mg/mL、少なくとも50mg/mL、少なくとも55mg/mL、少なくとも60mg/mL、少なくとも65mg/mL、少なくとも70mg/mL、少なくとも75mg/mL、少なくとも80mg/mL、少なくとも85mg/mL、少なくとも90mg/mL、少なくとも95mg/mL、少なくとも100mg/mL、少なくとも105mg/mL、少なくとも110mg/mL、少なくとも115mg/mL、少なくとも120mg/mL、少なくとも125mg/mL、少なくとも130mg/mL、少なくとも135mg/mL、少なくとも140mg/mL、少なくとも150mg/mL、少なくとも200mg/mL、少なくとも250mg/mL、または少なくとも300mg/mLの濃度で組成物中に存在し得る。
【0195】
いくつかの実施形態において、組成物は、ヒトIgA抗体またはFc融合タンパク質を、任意選択の生理学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤、例えば、限定するものではないが、緩衝剤、糖類、塩、界面活性剤、可溶化剤、ポリオール、希釈剤、結合剤、安定剤、塩、親油性溶媒、アミノ酸、キレート剤、保存剤などと混合することによって(Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,12th edition,L.Brunton,et al.及びRemington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Osol,A.Ed.(1999))、所望の最終濃度の凍結乾燥された組成物または水溶液の形態に調製される。許容可能な担体、賦形剤、または安定化剤は、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、これには緩衝液、例えば、ヒスチジン、リン酸塩、クエン酸塩、グリシン、酢酸塩、及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン;トレハロース、グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖、二糖、及び他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖類、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN、ポリソルベート80、PLURONICS(登録商標)またはポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。
【0196】
いくつかの実施形態において、緩衝剤は、ヒスチジン、クエン酸塩、リン酸塩、グリシン、または酢酸塩である。糖賦形剤は、トレハロース、スクロース、マンニトール、マルトース、またはラフィノースであり得る。界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート80、またはプルロニックF68であり得る。塩は、NaCl、KCl、MgCl2、またはCaCl2であり得る。
【0197】
いくつかの実施形態において、組成物は、改善されたpH制御をもたらすために、緩衝剤またはpH調整剤を含む。このような組成物は、約3.0~約9.0の間、約4.0~約8.0の間、約5.0~約8.0の間、約5.0~約7.0の間、約5.0~約6.5の間、約5.5~約8.0の間、約5.5~約7.0の間、または約5.5~約6.5の間のpHを有し得る。更なる実施形態において、そのような組成物は、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.5、約8.0、約8.5、または約9.0のpHを有する。いくつかの実施形態において、組成物のpHは約6.0である。当業者は、組成物のpHが、一般に、組成物中に使用されるヒト抗体またはFc融合タンパク質の等電点と同じであってはならないことを理解している。典型的に、緩衝剤は、有機もしくは無機の酸または塩基から調製される塩である。代表的な緩衝剤には、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、またはフタル酸の塩などの有機酸塩;トリス緩衝液、トロメタミン塩酸塩緩衝液、またはリン酸緩衝液が含まれるが、これらに限定されない。加えて、アミノ酸成分は、緩衝能としても機能し得る。緩衝剤として組成物に利用され得る代表的なアミノ酸成分には、グリシン及びヒスチジンが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、ヒスチジン、クエン酸塩、リン酸塩、グリシン、及び酢酸塩から選択される。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、ヒスチジンである。別の具体的な実施形態において、緩衝剤は、クエン酸塩である。さらに別の実施形態において、緩衝剤はグリシンである。緩衝剤の純度は、少なくとも98%、または少なくとも99%、または少なくとも99.5%でなければならない。本明細書で使用される場合、ヒスチジン及びグリシンの文脈における「純度」という用語は、当該技術分野において理解される、例えば、The Merck Index,13th ed.,O’Neil et al.ed.(Merck & Co.,2001)に記載されるヒスチジンまたはグリシンの化学純度を指す。
【0198】
いくつかの実施形態において、組成物は、緩衝剤としてヒスチジンを含む。いくつかの実施形態において、ヒスチジンは、少なくとも約1mM、少なくとも約5mM、少なくとも約10mM、少なくとも約20mM、少なくとも約30mM、少なくとも約40mM、少なくとも約50mM、少なくとも約75mM、少なくとも約100mM、少なくとも約150mM、または少なくとも約200mMのヒスチジンの濃度で組成物中に存在する。別の実施形態において、組成物は、約1mM~約200mM、約1mM~約150mM、約1mM~約100mM、約1mM~約75mM、約10mM~約200mM、約10mM~約150mM、約10mM~約100mM、約10mM~約75mM、約10mM~約50mM、約10mM~約40mM、約10mM~約30mM、約20mM~約75mM、約20mM~約50mM、約20mM~約40mM、または約20mM~約30mMのヒスチジンを含む。更なる実施形態において、組成物は、約1mM、約5mM、約10mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、約60mM、約70mM、約80mM、約90mM、約100mM、約150mM、または約200mMのヒスチジンを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、約10mM、約25mMのヒスチジンを含むか、またはヒスチジンを含まなくてもよい。
【0199】
いくつかの実施形態において、組成物は、炭水化物賦形剤を含む。炭水化物賦形剤は、例えば、増粘剤、安定剤、増量剤、可溶化剤、及び/または同様のものとして作用し得る。炭水化物賦形剤は、一般に、約1%~約99%の重量%または体積%、例えば、約0.1%~約20%、約0.1%~約15%、約0.1%~約5%、約1%~約20%、約5%~約15%、約8%~約10%、約10%及び約15%、約15%及び約20%、0.1%~20%、5%~15%、8%~10%、10%~15%、15%~20%、約0.1%~約5%、約5%~約10%、または約15%~約20%で存在する。更に別の具体的な実施形態において、炭水化物賦形剤は、1%、または1.5%、または2%、または2.5%、または3%、または4%、または5%、または10%、または15%、または20%で存在する。
【0200】
いくつかの実施形態において、組成物は、炭水化物賦形剤を含む。組成物での使用に好適な炭水化物賦形剤には、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボースなどの単糖;ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなどの二糖;ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなどの多糖;及びマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトールソルビトール(グルシトール)などのアルジトールが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される組成物に使用される炭水化物賦形剤は、スクロース、トレハロース、ラクトース、マンニトール、及びラフィノースから選択される。いくつかの実施形態において、炭水化物賦形剤は、トレハロースである。別の具体的な実施形態において、炭水化物賦形剤は、マンニトールである。さらに別の具体的な実施形態において、炭水化物賦形剤はスクロースである。さらに別の具体的な実施形態において、炭水化物賦形剤は、ラフィノースである。炭水化物賦形剤の純度は、少なくとも98%、または少なくとも99%、または少なくとも99.5%でなければならない。
【0201】
いくつかの実施形態において、組成物は、トレハロースを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約4%、少なくとも約8%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、または少なくとも約40%のトレハロースを含む。別の実施形態において、組成物は、約1%~約40%、約1%~約30%、約1%~約20%、約2%~約40%、約2%~約30%、約2%~約20%、約4%~約40%、約4%~約30%、または約4%~約20%のトレハロースを含む。さらなる実施形態において、組成物は、約1%、約2%、約4%、約6%、約8%、約15%、約20%、約30%、または約40%のトレハロースを含む。いくつかの実施形態において、組成物は約4%、約6%、または約15%のトレハロースを含む。
【0202】
いくつかの実施形態において、組成物は、賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、糖、塩、界面活性剤、アミノ酸、ポリオール、キレート剤、乳化剤、及び保存剤から選択される、少なくとも1つの賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、例えばNaCl、KCl、CaCl、及びMgClから選択される塩などの、塩を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、NaClを含む。
【0203】
いくつかの実施形態において、組成物は、アミノ酸、例えば、リジン、アルギニン、グリシン、ヒスチジン、またはアミノ酸塩を含む。組成物は、少なくとも約1mM、少なくとも約10mM、少なくとも約25mM、少なくとも約50mM、少なくとも約100mM、少なくとも約150mM、少なくとも約200mM、少なくとも約250mM、少なくとも約300mM、少なくとも約350mM、または少なくとも約400mMのアミノ酸を含み得る。別の実施形態において、組成物は、約1mM~約100mM、約10mM~約150mM、約25mM~約250mM、約25mM~約300mM、約25mM~約350mM、約25mM~約400mM、約50mM~約250mM、約50mM~約300mM、約50mM~約350mM、約50mM~約400mM、約100mM~約250mM、約100mM~約300mM、約100mM~約400mM、約150mM~約250mM、約150mM~約300mM、または約150mM~約400mMのアミノ酸を含み得る。さらなる実施形態において、組成物は、約1mM、1.6mM、25mM、約50mM、約100mM、約150mM、約200mM、約250mM、約300mM、約350mM、または約400mMのアミノ酸を含む。
【0204】
いくつかの実施形態において、組成物は、界面活性剤を含む。本明細書で使用される「界面活性剤」という用語は、両親媒性構造を有する有機物質を指し、すなわち、反対の溶解傾向を有する基、典型的には、油溶性炭化水素鎖及び水溶性イオン基からなる。界面活性剤は、界面活性部分の電荷に応じて、アニオン性、カチオン性、及び非イオン性界面活性剤に分類することができる。界面活性剤は、生物学的材料の様々な医薬組成物及び調製物に、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、及び分散剤として使用されることが多い。ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20または80);ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);Triton;オクチルグリコシドナトリウム;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、またはステアリル-スルホベタイン;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-またはステアリル-サルコシン;リノレイル-、ミリスチル-、またはセチル-ベタイン;ラウロアミドプロピル-、コカミドプロピル-、リノールアミドプロピル-、ミリスタミドプロピル-、パイミドプロピル(paImidopropyl)-、またはイソステアラミドプロピル-ベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピル-、パイミドプロピル(paImidopropyl)-、またはイソステアラミドプロピル-ジメチルアミン;ココイルメチルタウリン酸ナトリウム、またはオレイルメチルタウリン酸二ナトリウム;ならびにMONAQUA(登録商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.,Paterson,N.J.)、ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、及びエチレンとプロピレングリコールのコポリマー(例えば、PLURONICS(登録商標)PF68など)のような薬学的に許容される界面活性剤を、凝集を低減するために、任意に組成物に加えることができる。いくつかの実施形態において、組成物は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、またはポリソルベート80を含む。界面活性剤は、組成物の投与にポンプまたはプラスチック容器が使用される場合、特に有用である。薬学的に許容される界面活性剤の存在は、タンパク質の凝集する性質を緩和する。組成物は、約0.001%~約1%、または約0.001%~約0.1%、または約0.01%~約0.1%の範囲の濃度であるポリソルベートを含み得る。他の具体的な実施形態において、組成物は、0.001%、または0.002%、または0.003%、または0.004%、または0.005%、または0.006%、または0.007%、または0.008%、または0.009%、または0.01%、または0.015%、または0.02%の濃度であるポリソルベートを含む。
【0205】
いくつかの実施形態において、組成物は、限定するものではないが、希釈剤、結合剤、安定剤、親油性溶媒、保存剤、アジュバントなどを含む、他の賦形剤及び/または添加剤を含む。薬学的に許容される賦形剤及び/または添加剤は、本明細書で提供される組成物に使用され得る。薬学的に許容されるキレート剤(例えば、限定するものではないが、EDTA、DTPA、またはEGTA)などの一般に使用される賦形剤/添加剤は、凝集を低減するために、任意に組成物に加えることができる。これらの添加剤は、組成物の投与にポンプまたはプラスチック容器が使用される場合、特に有用である。
【0206】
いくつかの実施形態において、組成物は、保存剤を含む。フェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、亜硝酸フェニル水銀、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド、クロロブタノール、塩化マグネシウム(例えば、限定されるものではないが、六水和物)、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、及びチメロサール、またはこれらの混合物などの保存剤は、約0.001%~約5%、または当該範囲内の任意の範囲もしくは値などの任意の好適な濃度で、任意に組成物に加えることができる。組成物に使用される保存剤の濃度は、微生物作用をもたらすのに十分な濃度である。そのような濃度は、選択された保存剤に依存し、当業者によって容易に決定される。
【0207】
いくつかの実施形態において、組成物は、ヒトの血液と等張であり、当該組成物は、ヒトの血液と本質的に同じ浸透圧を有する。そのような等張性組成物は、一般に、約250mOSm~約350mOSmの浸透圧を有する。等張性は、例えば、蒸気圧または凍結点型浸透圧計を使用することによって、測定することができる。組成物の張度は、張度調整剤を使用して調節される。「張度調整剤」は、組成物の等張性をもたらすために組成物に加えることができる、薬学的に許容される不活性物質である。本明細書で提供される組成物のための好適な張度調整剤には、糖、塩、及びアミノ酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0208】
いくつかの実施形態において、組成物は、エンドトキシン及び/または関連する発熱物質を実質的に含まない、パイロジェンフリー組成物である。エンドトキシンには、微生物の内部に閉じ込められた毒素であって、その微生物が分解または死滅したときにのみ放出される毒素が含まれる。発熱物質にはまた、細菌及び他の微生物の外膜からの発熱性の熱安定性物質が含まれる。これらの物質はいずれも、ヒトに投与されると、発熱、低血圧、及びショックを引き起こす場合がある。潜在的な有害作用があることから、エンドトキシンは、たとえ少量であっても、静脈内投与される医薬品溶液から除去しなければならない。米国食品医薬品局(「FDA」)は、静脈内薬物投与の場合、1時間当たり、5エンドトキシン単位(EU)/用量/キログラム体重の上限を設定している(The United States Pharmacopeial Convention,Pharmacopeial Forum 26(1):223(2000))。治療用タンパク質が、目的のタンパク質(例えば、抗体)のように、体重1キログラム当たり数百または数千ミリグラムの量で投与される場合、有害かつ危険なエンドトキシンは、微量であっても、除去しなければならない。いくつかの実施形態において、組成物中のエンドトキシン及び発熱物質のレベルは、10EU/mg未満、または5EU/mg未満、または1EU/mg未満、または0.1EU/mg未満、または0.01EU/mg未満、または0.001EU/mg未満である。
【0209】
in vivo投与で使用される場合、本明細書に記載される組成物は、無菌でなければならない。組成物は、滅菌濾過、放射線などを含む様々な滅菌方法によって滅菌され得る。いくつかの実施形態において、組成物は、滅菌済みの0.22ミクロンフィルターで滅菌濾過される。注射用無菌組成物は、「Remington:The Science & Practice of Pharmacy」,21st ed.,Lippincott Williams & Wilkins,(2005)に記載されているような従来の薬学的実務に従って、製剤化することができる。本明細書で開示されるものなどの目的のタンパク質(例えば、抗体)を含む組成物は、通常、凍結乾燥形態または溶液中で保存される。目的のタンパク質(例えば、抗体)を含む無菌組成物は、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針で貫通可能な栓などの、組成物を取り出すことが可能なアダプターを有する静脈内注射用溶液バッグまたはバイアル中に入れられることが企図される。いくつかの実施形態において、組成物は、プレフィルドシリンジとして提供される。
【0210】
いくつかの実施形態において、組成物は、凍結乾燥製剤である。「凍結乾燥」または「フリーズドライ」という用語は、凍結乾燥などの乾燥手順に供された物質の状態を含み、少なくとも50%の水分が除去されている。
【0211】
選択された投与経路にかかわらず、好適な水和形態で使用され得る本明細書で提供される薬剤、及び/または本明細書で提供される医薬組成物は、当業者に知られている従来の方法によって、薬学的に許容される剤形に製剤化される。
【0212】
本明細書で提供される方法において、ヒト抗体、Fc融合タンパク質、及び/または医薬組成物は、任意の好適な投与経路によって送達され得、例えば、経口、経鼻、例えば、スプレーによるもの、経直腸、膣内、非経口、大槽内及び局所的、散剤、軟膏剤または滴剤によるもの、口腔粘膜及び舌下投与を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、全身投与される(例えば、経口または非経口投与を介して)。
【0213】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物中の有効成分の実際の投与量は、動物モデルにおいて毒性なく、その動物モデル、組成物、及び投与方法で所望の治療応答を達成するのに有効である有効成分の量を決定するために変化させてもよい。
【0214】
例えば、特定の実施形態において、本明細書に記載されるマウスは、1つ以上のヒト抗体候補の薬物動態プロファイルを決定するために使用される。様々な実施形態において、1つ以上の本明細書に記載のマウス及び1つ以上の対照または参照のマウスは、1つ以上のヒト抗体候補に、様々な投与量(例えば、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/mg、7.5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、または50mg/kg以上)でそれぞれ曝露される。候補の治療用抗体は、非経口及び非経口以外の投与経路を含む、任意の所望の投与経路を介して投与され得る。非経口経路には、例えば、静脈内、動脈内、門脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、髄腔内、鞘内、側脳室内、頭蓋内、胸腔内または他の注射経路が含まれる。非経口でない経路は、例えば、経口、経鼻、経皮、肺、直腸、頬、膣、眼を含む。投与は、連続注入、局所投与、インプラント(ゲル、膜など)からの持続放出、及び/または静脈内注射によるものであってもよい。様々な時点(例えば、0時間、6時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、もしくは最大30日、またはそれ以上)で、マウス(ヒト化及び対照)から血液を単離する。投与された候補の治療用抗体またはFc融合ポリペプチドの薬物動態プロファイルを決定するために、本明細書に記載されるマウスから得られた試料を使用し、限定するものではないが、総IgA、抗治療用抗体反応、凝集などを含む、様々なアッセイを実施し得る。
【0215】
様々な実施形態において、本明細書に記載のマウスは、目的のポリペプチドの活性を遮断もしくは調節する治療効果、及び細胞変化の結果としての遺伝子発現に対する効果、または受容体ポリペプチドとの関係では、マウスの細胞表面上の受容体ポリペプチドの密度に対する効果を測定するために使用される。様々な実施形態において、本明細書に記載されるマウスまたは当該マウスから単離された細胞は、目的のポリペプチドに結合する候補治療薬に曝露され、一定期間後、当該目的のポリペプチドに関連する特定の細胞プロセス、例えば、リガンド受容体相互作用またはシグナル伝達に対する効果について分析される。
【0216】
本明細書に記載のマウスは、腫瘍学及び/または感染症において使用するヒトIgA抗体またはFc融合ポリペプチドの開発及び選択のための改善されたin vivoシステムを提供する。様々な実施形態において、本明細書に記載されるマウス及び対照マウス(例えば、本明細書に記載されるものとは異なる遺伝子改変を有するマウス、または遺伝子改変のない、すなわち、野生型マウス)は、腫瘍(または腫瘍細胞)が移植され得、またはウイルス(例えば、インフルエンザ、HIV、HCV、HPVなど)に感染させられ得る。移植または感染させた後、マウスに、候補治療薬が投与され得る。腫瘍またはウイルスは、候補治療薬の投与前に、マウス内の1つ以上の場所に定着するのに十分な時間を与えてもよい。代替的及び/または付加的に、治療薬として開発され得る潜在的ヒト抗体の特性評価及び選択のために、そのようなマウスにおける免疫反応がモニタリングされ得る。
【0217】
遺伝子改変マウス及びES細胞の作製方法
特定の態様において、本明細書で提供される方法は、本明細書で提供される遺伝子改変された遺伝子座の1つ以上を含むマウス及びES細胞を作製することである。本明細書で提供される遺伝子改変マウス及びES細胞を作製する例示的な方法は、本明細書の説明、実施例、及び/または図に記載されている。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、本明細書で提供されるFcαR遺伝子座を含むマウス及びES細胞を作製することである。いくつかの実施形態において、FcαR遺伝子座は、マウス7番染色体の、Pira6遺伝子とNcr1遺伝子との間に挿入される。いくつかの実施形態において、FcαR遺伝子座は、マウス7番染色体の、ヌクレオチド残基4,303,905~4,312,280の間に挿入される(GRCm38アセンブリ)。
【0218】
いくつかの実施形態において、本明細書では、本明細書で提供されるヒト化CD79a遺伝子座及び/または本明細書で提供されるヒト化CD79b遺伝子座をさらに含むマウス及びES細胞を作製する方法が提供される。いくつかの実施形態において、本明細書では、本明細書で提供されるヒトまたはヒト化FcRn遺伝子座及び/または本明細書で提供されるヒトまたはヒト化β2M遺伝子座をさらに含むマウス及びES細胞を作製する方法が提供される。いくつかの実施形態において、本明細書では、本明細書で提供されるヒトまたはヒト化FcεR1α遺伝子座をさらに含むマウス及びES細胞を作製する方法が提供される。特定の実施形態において、本明細書では、本明細書で提供されるヒトまたはヒト化FcγR1a遺伝子座をさらに含むマウス及びES細胞を作製する方法が提供される。いくつかの実施形態において、本明細書では、本明細書で提供されるヒトまたはヒト化FcγR2a遺伝子座、本明細書で提供されるヒトまたはヒト化FcγR2b遺伝子座、本明細書で提供されるヒトまたはヒト化FcγR2c遺伝子座、本明細書で提供されるヒトまたはヒト化FcγR3a遺伝子座、及び/または本明細書で提供されるヒトまたはヒト化FcγR3b遺伝子座をさらに含むマウス及びES細胞を作製する方法が提供される。いくつかの実施形態において、本明細書では、本明細書で提供されるヒトまたはヒト化重鎖及び/または軽鎖遺伝子座をさらに含むマウス及びES細胞を作製する方法が提供される。本明細書で提供される遺伝子改変マウス及びES細胞を作製する例示的な方法は、本明細書の説明、実施例、及び/または図に記載されている。
【0219】
キット
本明細書では、本明細書中の説明、実施例、及び/または図に記載される少なくとも1つのマウス、マウス細胞、DNA断片、及び/または標的化ベクターを充填した1つ以上の容器を含む、パックまたはキットが提供される。キットは、任意の適用可能な方法(例えば、研究方法)に使用され得る。そのような容器(複数可)には、医薬品または生物製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形式の文書を任意選択で添付してもよく、文書は、(a)ヒト投与のための製造、使用または販売に関する当局による承認、(b)使用法、(c)材料及び/または生物製品(例えば、本明細書に記載されるマウスまたはマウス細胞)を2つ以上の主体及びこれらの組み合わせの間で移転することを管理する契約を示すものである。
【0220】
例示的な実施形態
例示的な実施形態1によると、本明細書では、ゲノム中に、マウス白血球受容体複合体(LRC)に位置するFcアルファ受容体(FcαR)遺伝子座を含むマウスであって、前記FcαR遺伝子座には、ヒト細胞外ドメイン及びヒトまたはげっ歯類の細胞質ドメインを含むFcαRポリペプチドをコードする核酸配列が含まれる、前記マウスを提供する。
【0221】
例示的な実施形態2によると、本明細書では、前記FcαR遺伝子座は、Tthy1タンパク質の遺伝子座とRdh13タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する、実施形態1のマウスが提供される。
【0222】
例示的な実施形態3によると、本明細書では、前記FcαR遺伝子座は、Lilra5タンパク質の遺伝子座とGp6タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する、実施形態1または2のマウスが提供される。
【0223】
例示的な実施形態4によると、本明細書では、前記FcαR遺伝子座は、Pira6タンパク質及びNcr1タンパク質をコードする核酸配列の間など、Pira6タンパク質の遺伝子座とNcr1タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する、実施形態1~3のいずれか1つのマウスが提供される。
【0224】
例示的な実施形態5によると、本明細書では、前記遺伝子間領域は、Pira6遺伝子座とNcr1遺伝子座との間の54kbの領域である、実施形態4のマウスが提供される。
【0225】
例示的な実施形態6によると、本明細書では、前記FcαR遺伝子座は、マウス7番染色体上の座標4,303,905~4,312,280(+鎖、GRCm38アセンブリ)の間に位置する、実施形態1~5のいずれか1つのマウスが提供される。
【0226】
例示的な実施形態7によると、本明細書では、前記FcαR遺伝子座は、ヒトFcαRポリペプチドをコードする核酸配列を含む、実施形態1~6のいずれか1つのマウスが提供される。
【0227】
例示的な実施形態8によると、本明細書では、前記FcαR遺伝子座は、ヒトFcアルファ受容体遺伝子のヒトエクソン1~5を含む、実施形態1~7のいずれか1つのマウスが提供される。
【0228】
例示的な実施形態9によると、本明細書では、前記FcαR遺伝子座は、非マウスげっ歯類FcαRエクソン1の非コード部分、ヒトFcαRエクソン1及び2、ヒトFcαRエクソン3及び4、ならびに非マウスげっ歯類FcαRエクソン5のコード部分を含む、実施形態1~6のいずれか1つのマウスが提供される。
【0229】
例示的な実施形態10によると、本明細書では、前記ヒトまたはヒト化FcαR受容体遺伝子座は、ヒト19番染色体上の座標54,862,297~54,906,185の間で見出されるゲノム配列(+鎖、GRCh38アセンブリ)を含む、実施形態7または8のマウスが提供される。
【0230】
例示的な実施形態11aによると、本明細書では、前記FcαR遺伝子座は、ヒトKIR3DL2遺伝子に存在する核酸配列をさらに含む、実施形態7または8のマウスが提供される。例示的な実施形態11bによると、本明細書では、前記FcαR遺伝子座は、ヒトNCR1遺伝子の5’UTRに存在する核酸配列をさらに含む、実施形態7、8、または11aのマウスが提供される。
【0231】
例示的な実施形態12によると、本明細書では、前記マウスは、マウス好中球、単球、マクロファージ、好酸球、及び形質細胞様樹状細胞上で前記FcαRポリペプチドを発現する、実施形態1~11のいずれか1つのマウスが提供される。
【0232】
例示的な実施形態13によると、本明細書では、前記マウスは、前記FcαR遺伝子座についてヘテロ接合性を有する、実施形態1~12のいずれか1つのマウスが提供される。
【0233】
例示的な実施形態14によると、本明細書では、前記マウスは、前記FcαR遺伝子座についてホモ接合性を有する、実施形態1~12のいずれか1つのマウスが提供される。
例示的な実施形態15によると、本明細書では、ゲノム中に、ヒトまたはヒト化Fcガンマ受容体(FcγR)遺伝子座、ヒトまたはヒト化IgH遺伝子座、ヒトまたはヒト化Igκ遺伝子座、ヒトまたはヒト化Igλ遺伝子座、ヒトまたはヒト化FcRn遺伝子座、ヒトまたはヒト化β2M遺伝子座、及び/またはヒトまたはヒト化FcεR1α遺伝子座をさらに含む、実施形態1~14のいずれか1つのマウスが提供される。
【0234】
例示的な実施形態16によると、本明細書では、前記マウスは、ゲノム中に、ヒトまたはヒト化FcγRをコードする核酸配列を含むヒトまたはヒト化FcγR遺伝子座を含む、実施形態15のマウスが提供される。
【0235】
例示的な実施形態17によると、本明細書では、前記ヒトまたはヒト化FcγR遺伝子座は、Fcガンマ受容体2a(FcγR2a)、Fcガンマ受容体2b(FcγR2b)、Fcガンマ受容体3a(FcγR3a)、Fcガンマ受容体3b(FcγR3b)、及び/またはFcガンマ受容体2c(FcγR2c)から選択される1つ以上の低親和性FcγRをコードする核酸配列を含む、実施形態16のマウスが提供される。
【0236】
例示的な実施形態18によると、本明細書では、前記ヒトまたはヒト化FcγR遺伝子座は、ヒトまたはヒト化Fcガンマ受容体1アルファ(FcγR1a)、Fcガンマ受容体2a(FcγR2a)、Fcガンマ受容体2b(FcγR2b)、Fcガンマ受容体3a(FcγR3a)、Fcガンマ受容体3b(FcγR3b)、及び/またはFcガンマ受容体2c(FcγR2c)から選択される1つ以上のFcγRをコードする核酸配列を含む、実施形態16のマウスが提供される。
【0237】
例示的な実施形態19によると、本明細書では、前記ヒトまたはヒト化FcγRは、ヒト細胞外ドメインを含む、実施形態16~18のいずれか1つのマウスが提供される。
例示的な実施形態20によると、本明細書では、前記ヒトまたはヒト化FcγRは、マウス膜貫通ドメインを含む、実施形態16~19のいずれか1つのマウスが提供される。
【0238】
例示的な実施形態21によると、本明細書では、前記ヒトまたはヒト化FcγRは、ヒト膜貫通ドメインを含む、実施形態16~19のいずれか1つのマウスが提供される。
例示的な実施形態22によると、本明細書では、前記ヒトまたはヒト化FcγRは、マウス細胞質ドメインを含む、実施形態16~21のいずれか1つのマウスが提供される。
【0239】
例示的な実施形態23によると、本明細書では、前記ヒトまたはヒト化FcγRは、ヒト細胞質ドメインを含む、実施形態16~21のいずれか1つのマウスが提供される。
例示的な実施形態24によると、本明細書では、前記ヒトまたはヒト化FcγR遺伝子座は、内因性マウスFcγR遺伝子座に位置する、実施形態16~23のいずれか1つのマウスが提供される。
【0240】
例示的な実施形態25によると、本明細書では、前記ヒトまたはヒト化FcγRをコードする前記核酸配列は、内因性マウスFcγR遺伝子の全部または一部を置き換える、実施形態24のマウスが提供される。
【0241】
例示的な実施形態26によると、本明細書では、前記ヒトまたはヒト化FcγRをコードする前記核酸配列は、マウスFcγR細胞外ドメインをコードする内因性核酸配列を置換するヒトFcγR細胞外ドメインをコードする核酸配列を含む、実施形態25のマウスが提供される。
【0242】
例示的な実施形態27によると、本明細書では、前記マウスは、マウスFcγRを発現しない、実施形態15~26のいずれか1つのマウスが提供される。
例示的な実施形態28によると、本明細書では、前記マウスは、前記ヒトまたはヒト化FcγR遺伝子座、ヒトまたはヒト化IgH遺伝子座、ヒトまたはヒト化Igκ遺伝子座、ヒトまたはヒト化Igλ遺伝子座、ヒトまたはヒト化FcRn遺伝子座、ヒトまたはヒト化β2M遺伝子座、及び/またはヒトまたはヒト化FcεR1α遺伝子座についてヘテロ接合性を有する、実施形態15~27のいずれか1つのマウスが提供される。
【0243】
例示的な実施形態29によると、本明細書では、前記マウスは、前記ヒトまたはヒト化FcγR遺伝子座、ヒトまたはヒト化IgH遺伝子座、ヒトまたはヒト化Igκ遺伝子座、ヒトまたはヒト化Igλ遺伝子座、ヒトまたはヒト化FcRn遺伝子座、ヒトまたはヒト化β2M遺伝子座、及び/またはヒトまたはヒト化FcεR1α遺伝子座についてホモ接合性を有する、実施形態15~27のいずれか1つのマウスが提供される。
【0244】
例示的な実施形態30によると、本明細書では、ゲノム中に、マウスゲノムの白血球受容体複合体(LRC)に位置するFcアルファ受容体(FcαR)遺伝子座を含むマウス胚性幹細胞(ES細胞)であって、前記FcαR遺伝子座には、ヒト細胞外ドメイン及びヒトまたはげっ歯類の細胞質ドメインを含むFcαRポリペプチドをコードする核酸配列が含まれる、前記マウスES細胞が提供される。
【0245】
例示的な実施形態31によると、本明細書では、前記FcαR遺伝子座は、Tthy1タンパク質の遺伝子座とRdh13タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する、実施形態30のマウスES細胞が提供される。
【0246】
例示的な実施形態32によると、本明細書では、前記FcαR遺伝子座は、Lilra5タンパク質の遺伝子座とGp6タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する、実施形態31または32のマウスES細胞が提供される。
【0247】
例示的な実施形態33によると、本明細書では、前記Fcアルファ受容体(FcαR)遺伝子座は、Pira6タンパク質及びNcr1タンパク質をコードする核酸配列の間など、Pira6タンパク質の遺伝子座とNcr1タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する、実施形態30~32のいずれか1つのマウスES細胞が提供される。
【0248】
例示的な実施形態34によると、本明細書では、前記遺伝子間領域は、Pira6遺伝子座とNcr1遺伝子座との間の54kbの領域である、実施形態33のマウスES細胞が提供される。
【0249】
例示的な実施形態35によると、本明細書では、前記FcαR遺伝子座は、マウス7番染色体上の座標4,303,905~4,312,280(+鎖、GRCm38アセンブリ)の間に位置する、実施形態30~34のいずれか1つのマウスES細胞が提供される。
【0250】
例示的な実施形態36によると、本明細書では、前記FcαR遺伝子座は、ヒトFcαRポリペプチドをコードする核酸配列を含む、実施形態30~35のいずれか1つのマウスES細胞が提供される。
【0251】
例示的な実施形態37によると、本明細書では、前記FcαR遺伝子座は、ヒトFcアルファ受容体遺伝子のヒトエクソン1~5を含む、実施形態30~36のいずれか1つのマウスES細胞が提供される。
【0252】
例示的な実施形態38によると、本明細書では、前記FcαR遺伝子座は、非マウスげっ歯類FcαRエクソン1の非コード部分、ヒトFcαRエクソン1及び2、ヒトFcαRエクソン3及び4、ならびに非マウスげっ歯類FcαRエクソン5のコード部分を含む、実施形態30~35のいずれか1つのマウスES細胞が提供される。
【0253】
例示的な実施形態39によると、本明細書では、前記ヒトまたはヒト化FcαR受容体遺伝子座は、ヒトの19番染色体上の座標54,862,297~54,906,185の間で見出されるゲノム配列(+鎖、GRCh38アセンブリ)を含む、実施形態36または37のマウスES細胞が提供される。
【0254】
例示的な実施形態40aによると、本明細書では、前記FcαR遺伝子座は、ヒトKIR3DL2遺伝子に存在する核酸配列をさらに含む、実施形態36または37のマウスES細胞が提供される。例示的な実施形態40bによると、本明細書では、前記FcαR遺伝子座は、ヒトNCR1遺伝子の5’UTRに存在する核酸配列をさらに含む、実施形態36、37、または40aのマウスES細胞が提供される。
【0255】
例示的な実施形態41によると、本明細書では、前記ES細胞は、前記FcαR遺伝子座についてヘテロ接合性を有する、実施形態30~40のいずれか1つのマウスES細胞が提供される。
【0256】
例示的な実施形態42によると、本明細書では、前記ES細胞は、前記FcαR遺伝子座についてホモ接合性を有する、実施形態30~40のいずれか1つのマウスES細胞が提供される。
【0257】
例示的な実施形態43によると、本明細書では、ゲノム中に、ヒトまたはヒト化Fcガンマ受容体(FcγR)遺伝子座、ヒトまたはヒト化IgH遺伝子座、ヒトまたはヒト化Igκ遺伝子座、ヒトまたはヒト化Igλ遺伝子座、ヒトまたはヒト化FcRn遺伝子座、ヒトまたはヒト化β2M遺伝子座、及び/またはヒトまたはヒト化FcεR1α遺伝子座をさらに含む、実施形態30~42のいずれか1つのマウスES細胞が提供される。
【0258】
例示的な実施形態44によると、本明細書では、前記マウスES細胞は、ゲノム中に、ヒトまたはヒト化FcγRをコードする核酸配列を含むヒトまたはヒト化FcγR遺伝子座を含む、実施形態43のマウスES細胞が提供される。
【0259】
例示的な実施形態45によると、本明細書では、前記ヒトまたはヒト化FcγR遺伝子座は、Fcガンマ受容体2a(FcγR2a)、Fcガンマ受容体2b(FcγR2b)、Fcガンマ受容体3a(FcγR3a)、Fcガンマ受容体3b(FcγR3b)、及び/またはFcガンマ受容体2c(FcγR2c)から選択される1つ以上の低親和性FcγRをコードする核酸配列を含む、実施形態44のマウスES細胞が提供される。
【0260】
例示的な実施形態46によると、本明細書では、前記ヒトまたはヒト化FcγR遺伝子座は、ヒトまたはヒト化Fcガンマ受容体1アルファ(FcγR1a)、Fcガンマ受容体2a(FcγR2a)、Fcガンマ受容体2b(FcγR2b)、Fcガンマ受容体3a(FcγR3a)、Fcガンマ受容体3b(FcγR3b)、及び/またはFcガンマ受容体2c(FcγR2c)から選択される1つ以上のFcγRをコードする核酸配列を含む、実施形態44のマウスES細胞が提供される。
【0261】
例示的な実施形態47によると、本明細書では、前記ヒトまたはヒト化FcγRは、ヒト細胞外ドメインを含む、実施形態44~46のいずれか1つのマウスES細胞が提供される。
【0262】
例示的な実施形態48によると、本明細書では、前記ヒトまたはヒト化FcγRは、マウス膜貫通ドメインを含む、実施形態44~47のいずれか1つのマウスES細胞が提供される。
【0263】
例示的な実施形態49によると、本明細書では、前記ヒトまたはヒト化FcγRは、ヒト膜貫通ドメインを含む、実施形態44~47のいずれか1つのマウスES細胞が提供される。
【0264】
例示的な実施形態50によると、本明細書では、前記ヒトまたはヒト化FcγRは、マウス細胞質ドメインを含む、実施形態44~49のいずれか1つのマウスES細胞が提供される。
【0265】
例示的な実施形態51によると、本明細書では、前記ヒトまたはヒト化FcγRは、ヒト細胞質ドメインを含む、実施形態44~49のいずれか1つのマウスES細胞が提供される。
【0266】
例示的な実施形態52によると、本明細書では、前記ヒトまたはヒト化FcγR遺伝子座は、内因性マウスFcγR遺伝子座に位置する、実施形態44~51のいずれか1つのマウスES細胞が提供される。
【0267】
例示的な実施形態53によると、本明細書では、前記ヒトまたはヒト化FcγRをコードする前記核酸配列は、内因性マウスFcγR遺伝子の全部または一部を置き換える、実施形態52のマウスES細胞が提供される。
【0268】
例示的な実施形態54によると、本明細書では、前記ヒトまたはヒト化FcγRをコードする前記核酸配列は、マウスFcγR細胞外ドメインをコードする内因性核酸配列を置換するヒトFcγR細胞外ドメインをコードする核酸配列を含む、実施形態53のマウスES細胞が提供される。
【0269】
例示的な実施形態55によると、本明細書では、前記マウスは、前記ヒトまたはヒト化FcγR遺伝子座、ヒトまたはヒト化IgH遺伝子座、ヒトまたはヒト化Igκ遺伝子座、ヒトまたはヒト化Igλ遺伝子座、ヒトまたはヒト化FcRn遺伝子座、ヒトまたはヒト化β2M遺伝子座、及び/またはヒトまたはヒト化FcεR1α遺伝子座についてヘテロ接合性を有する、実施形態43~54のいずれか1つのマウスES細胞が提供される。
【0270】
例示的な実施形態56によると、本明細書では、前記マウスは、前記ヒトまたはヒト化FcγR遺伝子座、ヒトまたはヒト化IgH遺伝子座、ヒトまたはヒト化Igκ遺伝子座、ヒトまたはヒト化Igλ遺伝子座、ヒトまたはヒト化FcRn遺伝子座、ヒトまたはヒト化β2M遺伝子座、及び/またはヒトまたはヒト化FcεR1α遺伝子座についてホモ接合性を有する、実施形態43~54のいずれか1つのマウスES細胞が提供される。
【0271】
例示的な実施形態57によると、本明細書では、ヒトIgA抗体またはFcα融合ポリペプチドを試験する方法であって、前記IgA抗体またはFcα融合ポリペプチドを実施形態1~29のいずれか1つのマウスに投与することを含む、前記方法が提供される。
【0272】
例示的な実施形態58によると、本明細書では、前記投与されたヒトIgA抗体またはFcα融合ポリペプチドの1つ以上の薬物動態学的特性を測定することをさらに含む、実施形態57の方法が提供される。
【0273】
例示的な実施形態59によると、本明細書では、前記1つ以上の薬物動態学的特性は、血漿中濃度対時間下面積(AUC)、生体内回収率(IVR)、クリアランス率(CL)、平均滞留時間(MRT)、薬剤半減期(t1/2)、及び/または定常状態分布容積(Vss)の1つ以上から選択される、実施形態58の方法が提供される。
【0274】
例示的な実施形態60によると、本明細書では、前記投与されたヒト抗体またはFcα融合ポリペプチドの治療的有効性を測定することをさらに含む、実施形態57~59のいずれか1つの方法が提供される。
【0275】
例示的な実施形態61によると、本明細書では、複数の用量の前記ヒト抗体またはFcα融合ポリペプチドを投与することと、各用量の前記ヒト抗体またはFcα融合ポリペプチドの治療的有効性を決定することとをさらに含む、実施形態57~60のいずれか1つの方法が提供される。
【0276】
例示的な実施形態62によると、本明細書では、複数の用量の前記ヒト抗体またはFcα融合ポリペプチドを投与することと、各用量の前記ヒト抗体またはFcα融合ポリペプチドの安全性を決定することとをさらに含む、実施形態57~61のいずれか1つの方法が提供される。
【0277】
例示的な実施形態63によると、本明細書では、複数の用量の前記ヒト抗体またはFcα融合ポリペプチドを投与することと、各用量の前記ヒト抗体またはFcα融合ポリペプチドの耐容性を決定することとをさらに含む、実施形態57~62のいずれか1つの方法が提供される。
【0278】
例示的な実施形態64によると、本明細書では、前記マウスにおける1つ以上のFc受容体媒介反応を測定することをさらに含む、実施形態57~63のいずれか1つの方法が提供される。
【0279】
例示的な実施形態65によると、本明細書では、前記1つ以上のFc受容体媒介反応が抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)反応である、実施形態64の方法が提供される。
【0280】
例示的な実施形態66によると、本明細書では、前記ヒト抗体は、前記マウスの標的細胞に結合し、前記方法は、前記標的細胞に対するナチュラルキラー(NK)細胞の抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)を測定することと、ADCCの量を対照と比較することとをさらに含み、標的細胞死滅の増加は、薬剤がADCCを媒介する能力が増加していることを示す、実施形態57~65のいずれか1つの方法が提供される。
【0281】
例示的な実施形態67によると、本明細書では、前記ヒト抗体に対して前記マウスが生成する前記免疫反応を測定することをさらに含む、実施形態57~66のいずれか1つの方法が提供される。
【0282】
例示的な実施形態68によると、本明細書では、マウスゲノムを改変する方法であって、Fcアルファ受容体(FcαR)遺伝子座をマウスゲノムの白血球受容体複合体(LRC)に挿入して、前記マウスゲノムを改変することを含み、前記FcαR遺伝子座は、ヒト細胞外ドメイン及びヒトまたはげっ歯類の細胞質ドメインを含むFcαRポリペプチドをコードする核酸配列を含む、前記方法が提供される。
【0283】
例示的な実施形態69によると、本明細書では、前記FcαR遺伝子座は、ヒトまたはヒト化FcαRポリペプチドをコードする核酸配列を含む、実施形態68の方法が提供される。
【0284】
例示的な実施形態70によると、本明細書では、前記FcαR遺伝子座は、Tthy1タンパク質の遺伝子座とRdh13タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する、実施形態68または69の方法が提供される。
【0285】
例示的な実施形態71によると、本明細書では、前記FcαR遺伝子座は、Lilra5タンパク質の遺伝子座とGp6タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する、実施形態68~70のいずれか1つの方法が提供される。
【0286】
例示的な実施形態72によると、本明細書では、前記FcαR遺伝子座は、Pira6タンパク質及びNcr1タンパク質をコードする核酸配列の間など、Pira6タンパク質の遺伝子座とNcr1タンパク質の遺伝子座との間の遺伝子間領域に位置する、実施形態68~71のいずれか1つの方法が提供される。
【0287】
例示的な実施形態73によると、本明細書では、前記遺伝子間領域は、Pira6遺伝子座とNcr1遺伝子座との間の54kbの領域である、実施形態72の方法が提供される。
【0288】
例示的な実施形態74によると、本明細書では、前記FcαR遺伝子座は、マウス7番染色体上の座標4,303,905~4,312,280(+鎖、GRCm38アセンブリ)の間である、実施形態68~73のいずれか1つの方法が提供される。
【0289】
例示的な実施形態75によると、本明細書では、Fcアルファ受容体(FcαR)遺伝子座を含むマウスを作製する方法であって、実施形態30~56のいずれか1つのマウスES細胞を作製することと、前記ES細胞からマウスを作製することとを含む、前記方法が提供される。
【実施例
【0290】
実施例1.1:ヒトまたはヒト化FcαRを含むマウスの遺伝子操作
ヒトFcαR(MAID20277及びMAID20278)カセットをコードする核酸配列を含む標的化ベクターを生成した。MAID20277及びMAID20278は、MAID20277が選択マーカー(すなわち、ネオマイシン耐性)を保持していることを除いて同一であった。簡単に言うと、ヒトFCAR遺伝子は、VELOCIGENE(登録商標)技術(例えば、米国特許第6,586,251号及びValenzuela et al.(2003)Nat.Biotech.21(6):652-659を参照、両文献の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を使用してマウスゲノムに導入された。プロモーターを含むヒトFCARの44kbのゲノム配列を、マウス7番染色体上のマウスPira6遺伝子とNcr1遺伝子との間、座標chr7:4,303,905~4,312,280(+鎖、GRCm38アセンブリ)の間に位置するマウスLRC遺伝子座に挿入した(図1A及び1B)。
【0291】
より具体的には、マウス相同性アームは、BACクローンRP23-458i16を鋳型として使用するPCR増幅によって作製され、それを表1に示す。
【0292】
【表1】
【0293】
マウスの相同性アームは、5’から3’に、5’アーム、I-CeuI及びPI-SceIホーミングエンドヌクレアーゼ部位が隣接するスペクチノマイシン耐性カセット、3’アーム、及びクロラムフェニコール耐性カセットを含む構築物に組み立てられた(構築物A)。遺伝子操作の後工程で、構築物Aのスペクチノマイシン耐性カセットがヒトFCARを含むインサートによって置き換えられた。
【0294】
FCAR遺伝子全体と隣接配列を含むヒトインサートは、BACクローンCTD-3161p22の2回の連続した細菌相同組換え(BHR)改変によって作成された。最初のBHRステップでは、スペクチノマイシン耐性カセットとI-CeuI部位が、ヒトBACの5’末端に挿入された。2番目のBHRステップでは、NCR1遺伝子を含む約44kbの配列が、ヒトBACの3’末端から欠失され、変異型lox部位が隣接するネオマイシン耐性カセット(lox2372-Ub-neo-lox2372)及び3’PI-SceI部位に置き換えられた。この構築物(構築物B)には、この時点で、5’から3’に、スペクチノマイシン耐性カセット、I-CeuI部位、44,887bpのヒトゲノム配列(GRCh38座標chr19:54,862,297~54,906,185)、lox2372-Ub-neo-lox2372カセット、及びPI-SceI部位が含まれていた。ヒト配列には、KIR3DL2遺伝子の最後の約5kb(イントロン6から始まる)、FCAR遺伝子全体(約17kb)、及びNCR1遺伝子の5’UTRが含まれていた。
【0295】
最終的な標的化ベクター(MAID20277と指定)を作製するために、構築物A及びBを両方ともI-CeuI及びPI-SceI制限酵素で消化し、一緒にライゲーションした。最終的な標的化ベクターには、5’から3’に、5’マウス相同性アーム、I-CeuI部位、FCAR遺伝子を含む44,887bpのヒトゲノムインサート、lox2372-Ub-Neo-lox2372カセット、PI-SceI部位、3’マウス相同性アーム、及びクロラムフェニコール耐性カセットが含まれており、最終クローンは、CM/カナマイシン耐性に基づいて選択された(図2)。最終クローンのさまざまな接合部を表2に示す。
【0296】
【表2】
【0297】
MAID20277標的化ベクターを、ヒト低親和性Fcγ受容体を含むマウス胚性幹(ES)細胞にエレクトロポレーションした。低親和性Fcγ受容体遺伝子座の遺伝子改変は、米国特許第8,658,154号に記載されており、図3に概略的に示されている。標的相同組換えにより、約8.4kbのマウス配列(GRCm38の座標chr7:4,303,905~4,312,280)が欠失し、FCAR遺伝子を含む約44kbのヒト配列が挿入された。組み込みの成功は、例えば、上記のValenzuela et alに記載されているように、対立遺伝子の改変(MOA)アッセイによって確認された。ヒトFCAR配列の存在及びマウスLRC配列の喪失を検出するためのMOAアッセイに使用されたプライマー(フォワード(F)プライマー及びリバース(R)プライマー)及びプローブを以下の表3に示し、それらの位置を図1Aに示す。続いて、抗体耐性カセットは、ES細胞クローンにおけるCREリコンビナーゼの一過性発現によって除去された(図1B)。
【0298】
【表3】
【0299】
ポジティブに標的化されたES細胞(上記のヒト低親和性Fcγ受容体をコードする遺伝子も含む)をドナーES細胞として使用し、VELOCIMOUSE(登録商標)法により前桑実胚(8細胞)期のマウス胚に微量注入した(例えば、US7,576,259、US7,659,442、US7,294,754、及びUS2008-0078000A1を参照、それぞれの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。ドナーES細胞を含むマウス胚をin vitroでインキュベートし、代理母に移植して完全にドナーES細胞に由来するF0マウスを作製した。ヒトFCAR遺伝子(及びヒト低親和性Fcγ受容体をコードする遺伝子)を有するマウスは、上記のMOAアッセイを使用した遺伝子型決定によって同定された。ヒトFCAR遺伝子に関してヘテロ接合であるマウスをホモ接合になるまで育種した。
【0300】
上記の戦略の代わりに、標的化ベクターを野生型ES細胞(内因性の低親和性Fcγ受容体を含む)にエレクトロポレーションし、VELOCIMOUSE(登録商標)法を使用してマウスを作製する。ヒトFcαRを含むマウスを、ヒト低親和性FcγRを含むマウス(図3に記載の遺伝子座を有する)になるまで育種する。ヒトFcαR(及び任意に、ヒト低親和性FcγR)を含むマウスは、当技術分野で周知の技術を使用して、ヒトまたはヒト化高親和性FcγR、FcεR、FcRn、β2Mを含むマウス、及びヒト化Ig重鎖及び/または軽鎖遺伝子座を含むマウスになるまで育種することも可能である。
【0301】
実施例1.2:ヒトまたはヒト化FcαRを含むマウスの遺伝子操作の表現型分析
ヒトFCAR遺伝子及び低親和性FCGR遺伝子を含む上記の実施例1.1に記載のマウスをFcαR発現に関して分析した。全てのマウスは、特定の病原体のない条件で飼育及び繁殖された。マウスを屠殺し、脾臓と血液を採取した。血液は、EDTA(カタログ番号365973)を含むBDマイクロテナーチューブに収集された。脾臓からの赤血球及び血液調製物をACK溶解緩衝液(ThermoFisher、カタログ番号A1049201)で溶解し、続いて完全RPMI培地で洗浄した。
【0302】
脾臓細胞と血液細胞の両方を、生存不能な細胞を排除するためにLive Dead Aqua(ThermoFisher)でインキュベートした。染色の前に、細胞を抗マウスCD16/32(2.4G2、BD)とともに氷上で10分間インキュベートした。次に、細胞を蛍光色素結合抗ヒトCD89(BioLegend、クローン番号A59)及び次の抗マウス抗体;CD45(BioLegend、クローン番号30-F11)、B220(BioLegend、クローン番号RA3-6B2)、CD11c(BioLegend、クローン番号N418)、Ly6G(BioLegend、クローン番号1A8)、Ly6C(BioLegend、クローン番号HK1.4)、SiglecF(BD Biosciencesクローン番号E50-2440)、NKp46(BioLegend、クローン番号29A1.4)、CD11b(BioLegend、クローン番号M1/70)、F4/80(BD Biosciencesクローン番号T45-2342)、及びNK1.1(BioLegend、クローン番号PK136)で、氷上で30分間染色した。
【0303】
リンパ球及び骨髄細胞集団は、BD Symphony A3機器(BD Biosciences)でのフローサイトメトリーによって同定された。まず、生存可能な単一細胞をCD45+でゲーティングした。次に、以下のサブセットが同定された:B細胞(B220+)、cDC(CD11c++)、pDC(CD11cint、Ly6C+ B220+)、PMN Ly6G+ Ly6C+)、好酸球(Ly6G-、SiglecF+CD11b+)、マクロファージ/単球(Ly6G-、SiglecF-、F4/80+ CD11b+)、及びNK細胞(Ly6G-、SiglecF-、F4/80-CD11b-、NK1.1+)。CD89(FcαR)の発現を各細胞タイプで測定した。
【0304】
MAID20278カセットで遺伝子操作されたマウスは、脾臓及び血液の好中球、好酸球、一部の血液の単球/マクロファージ、及び脾臓の形質細胞様樹状細胞でhFcαRの増加を示した。脾臓の単球またはマクロファージではhFcαR発現は観察されなかった(図4A~4B)。
【0305】
参照による組み込み
本明細書で述べられるすべての刊行物、特許、及び特許出願は、各々の個々の刊行物、特許、または特許出願が参照によって組み込まれることが具体的かつ個別に示されるかのように、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。矛盾する場合には、本出願が、本明細書におけるあらゆる定義を含めて優先する。
【0306】
均等物
当業者らは、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または単なる通常の実験のみを使用して確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
【国際調査報告】