IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特表-タンパク質封入マイクロゲルの作製 図1A
  • 特表-タンパク質封入マイクロゲルの作製 図1B
  • 特表-タンパク質封入マイクロゲルの作製 図1C
  • 特表-タンパク質封入マイクロゲルの作製 図2
  • 特表-タンパク質封入マイクロゲルの作製 図3
  • 特表-タンパク質封入マイクロゲルの作製 図4
  • 特表-タンパク質封入マイクロゲルの作製 図5
  • 特表-タンパク質封入マイクロゲルの作製 図6
  • 特表-タンパク質封入マイクロゲルの作製 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】タンパク質封入マイクロゲルの作製
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/16 20060101AFI20231226BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20231226BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K38/02
A61K39/395 N
A61K9/10
A61K47/02
A61K47/34
A61K47/32
A61K47/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536846
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-07-13
(86)【国際出願番号】 US2021063890
(87)【国際公開番号】W WO2022133135
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/127,033
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507302748
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】チェン ハンター
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ イーミン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA13
4C076AA22
4C076AA31
4C076AA61
4C076AA94
4C076EE06
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE26
4C076EE30
4C076FF31
4C076GG02
4C076GG05
4C076GG09
4C084AA01
4C084CA53
4C084MA17
4C084MA23
4C084MA43
4C084NA12
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
(57)【要約】
本発明は、フルオロカーボン中炭化水素エマルジョンを使用してタンパク質封入マイクロゲルを作製するための方法を提供する。この非水性エマルジョンベースのマイクロゲル作製方法は、投与の容易さを有する治療的使用のための、抗体及び抗体融合タンパク質を含む広範なタンパク質及びペプチドの封入のために使用することができる。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロゲル微粒子を製造する方法であって、
(a)少なくとも1つの架橋可能なポリマーと、少なくとも1つの架橋調節剤と、少なくとも1つのタンパク質を含む粉末とを、炭化水素溶媒と混合して、分散相懸濁液を形成すること、
(b)前記分散相懸濁液を、フルオロカーボン液及びフッ素系界面活性剤を含む連続相溶液に添加して、混合した分散相懸濁液及び連続相溶液を形成すること、
(c)前記混合した分散相懸濁液及び連続相溶液に配合力を加えて、前記フルオロカーボン液中に、前記少なくとも1つの架橋可能なポリマーと、少なくとも1つのタンパク質を更に含む前記粉末とを含む複数の炭化水素液滴を有する、非水性エマルジョンを形成すること、並びに
(d)前記炭化水素溶媒及び前記フルオロカーボン液を前記非水性エマルジョンから除去して、単離されたヒドロゲル微粒子を形成することであって、前記ヒドロゲル微粒子が、架橋化ポリマーのマトリックス内に封入された前記少なくとも1つのタンパク質を含む、前記形成すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの架橋調節剤が、非官能化直鎖PEGポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分散相懸濁液中の前記少なくとも1つの架橋調節剤の濃度が、約5.0%~約35%w/vである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フルオロカーボン液が、高粘度フルオロカーボンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記連続相溶液が、ペルフルオロC5~C18化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記連続相溶液が、FC-70又はペルフルオロトリペンチルアミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記炭化水素溶媒が、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記連続相溶液が、ペルフルオロポリエーテル-b-ポリエチレングリコール-b-ペルフルオロポリエーテルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの架橋可能なポリマーが、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシド、コ-ポリエチレンオキシドブロック又はランダムコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルピロリジノン)、ポリ(アミノ酸)、デキストラン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるコアを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの架橋可能なポリマーが、少なくとも1つの求核官能基を含む第1の架橋可能なポリマーと、少なくとも1つの求電子官能基を含む第2の架橋可能なポリマーとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの求核官能基 対 前記少なくとも1つの求電子官能基のモル比が、約1:1~約1:2である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの架橋可能なポリマーが、PEG-NH第1前駆体、及びPEG-NHS第2前駆体を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記PEG-NH第1前駆体又は前記PEG-NHS第2前駆体が、4アーム又は8アーム化合物である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのタンパク質が、抗体、その抗原結合断片、融合タンパク質、組換えタンパク質、又はその断片若しくは切断型である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのタンパク質が、VEGFトラップタンパク質である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記VEGFトラップタンパク質が、VEGFトラップタンパク質の切断形態である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つのタンパク質が、アフリベルセプト、リロナセプト、アリロクマブ、デュピルマブ、サリルマブ、セミプリマブ、抗エボラ抗体、及び抗SARS-CoV-2抗体からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記単離されたヒドロゲル微粒子が、約1μm~約200μmの直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記粉末が、噴霧乾燥、エレクトロスプレー乾燥、可逆沈殿、噴霧凍結、マイクロテンプレート、又はそれらの組み合わせによって微粉化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記配合力が、均質化、ボルテックス撹拌、超音波処理、キャビテーション、撹拌、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記ヒドロゲル微粒子が、持続放出微粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記分散相懸濁液中の前記粉末の濃度が、約1.0%~約30%w/vである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記分散相懸濁液中の前記少なくとも1つの架橋可能なポリマーの濃度が、約5.0%~約35%w/vである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記連続相溶液中の前記フッ素系界面活性剤の濃度が、約0.1%~約5.0%w/vである、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記単離されたヒドロゲル微粒子を、医薬的に許容される製剤中に懸濁させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記製剤が、pH緩衝化生理食塩水、水溶液、又は非水溶液を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記粉末が、少なくとも1つの賦形剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
請求項1に記載の方法によって作製された、ヒドロゲル粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月17日に出願された米国仮特許出願第63/127,033号の優先権及び利益を主張し、この出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本発明は、全般的には、薬物マイクロゲル、薬物マイクロゲルを含有する製剤、及び非水性エマルジョンシステムを使用して薬物マイクロゲルを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
生物学的に関連する標的に対する治療用タンパク質の徐放及び持続放出送達は、がん、心血管疾患、血管病態、整形外科的障害、歯科障害、創傷、自己免疫疾患、胃腸障害、及び眼疾患などの医学的状態の治療に望ましく、それは、より少ない頻度の投与しか必要としない、より多い投与量を可能にするからである。注射回数を低減すること、又は注射間隔の延長は、特に、眼内治療薬の場合など、医師が注射を行う必要がある場合に、患者のコンプライアンスにとって望ましいものであり得る。
【0004】
薬物の制御された及び持続した送達のための生体適合性及び生体分解性ポリマー並びに他の移植可能な送達デバイスが使用されてきており、例えば、ポリマーが経時的に分解して、治療薬がゆっくりと放出される、ポリマーベースの送達デバイスが挙げられる。しかしながら、ポリマー及びポリマーベースの送達デバイスを使用する場合、特にタンパク質治療薬の送達において、薬物の安定性を維持することには様々な課題がある。
【0005】
抗体及び受容体Fc融合タンパク質などの治療用巨大分子は、分子を患者への投与に好適なものにするだけでなく、保存中及び投与部位でのそれらの安定性を維持する手段で製剤化されなければならない。例えば、水溶液中の治療用タンパク質(抗体又は融合タンパク質など)は、溶液が適切に製剤化されない限り、分解、凝集、及び/又は望ましくない化学修飾を受けやすい。
【0006】
持続放出のために治療用タンパク質を製剤化する場合、保存及び生理学的温度で経時的に安定な状態を維持し、適切な濃度の治療用タンパク質(例えば、抗体)を含有し、かつ製剤が患者に都合よく投与されることを可能にする他の特性を有する製剤に到達するために、細心の注意を払わなければならない。
【0007】
いくつかの徐放又は持続放出製剤は、複数のエマルジョンの形成、内部相分離、界面重合、高分子電解質の層ごとの吸着、及び軟質テンプレート技法を含む封入方法論を使用して製造される。例えば、複数のエマルジョンの最も一般的な種類は、水中油中水(W/O/W)である。W/O/Wにおける複数のエマルジョンは、水性懸濁液中における水性/親水性コアの直接的な封入を可能にするが、生物学的に活性な薬剤を徐放又は持続放出製剤に封入するために使用される場合、特定の問題が存在する。例えば、タンパク質の沈殿が、水性有機界面で、付随するタンパク質の免疫反応性の低減とともに生じ得る。
【0008】
他の水性エマルジョンシステムにおいて、水は、有機相内に拡散し、タンパク質を加水分解することができる。加水分解後、タンパク質の液滴が合わさり始め、水性環境内へと脱出し、凝集又は沈殿する。硬化後、タンパク質が水性環境内へと脱出した所に、空隙及び水路が出現し得る。
【0009】
別の例において、ヒドロゲル微粒子(本明細書では「マイクロゲル」と称される)を使用して、治療用タンパク質の徐放又は持続放出製剤を提供し得る。マイクロゲルは、大量の水によって水和された架橋した親水性ポリマーネットワークを含み得る微細構造である。ポリマーを接続する架橋は、共有結合性、イオン性、親和性、及び/又は物理的基礎を使用して形成され得る。マイクロゲルは、移植に手術を必要とするバルクヒドロゲルとは対照的に、柔らかく、変形可能であり、針又はカテーテルで投与することができ、これは侵襲性が低く、より良い治療転帰をもたらすことができる。
【0010】
いくつかの合成経路が、マイクロゲルの作製のために利用可能である。バッチエマルジョン又は沈殿重合は、現在、油中水エマルジョン又は反転油中油エマルジョンに基づく最も一般的な方法である。これらの方法において、水相の存在が、親水性ペイロードの封入効率を制限する。
【0011】
多くの非混和性溶媒対が、マイクロゲルの作製において選択可能であるが、通常は1つの極性溶媒及び1つの非極性溶媒が選択される。しかしながら、例えば、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、又はポリ(オルトエステル)(POE)を含む典型的な生体分解性ポリマーは、クロロホルム、ジクロロメタン、又は酢酸エチルなどの媒体極性を有する溶媒に大部分が可溶性であるため、ポリマーマイクロゲル(本明細書においてマイクロスフェアとしばしば称される)の合成に好適である対を見出すことが課題であり得る。これは、連続相の選択を制限する。加えて、プロセスとの適合性、毒性、安全性、及び残留溶媒は、それらの有機溶媒を使用することの懸念事項であり、医薬製品としての使用のために考慮されるべきである。
【0012】
リソグラフィー、マイクロ流体重合、及びエレクトロスプレーなどの他の作製方法は、通常、小規模なラボスケール方法として使用され、臨床的又は商業的な製造環設定にスケールアップするときに難題を経験し得る。フルオロカーボンを含有する様々な種類のエマルジョンシステムが、マイクロ流体技術によって作製されてきており、フルオロカーボン中水(W/F)、水中フルオロカーボン中水(W/F/W)二重エマルジョン、水/フルオロカーボン/油/水(W/F/O/W)三重エマルジョン、フルオロカーボン/炭化水素/水(F/H/W)二重エマルジョン、及び炭化水素/フルオロカーボン/水(H/F/W)二重エマルジョンなどが挙げられる。これらのエマルジョンのうちのいくつかは、ポリマーマイクロスフェアの合成に使用されている。しかしながら、それらの全ては、分散相又は連続相として水を使用する水性ベースのエマルジョンシステムである。
【0013】
そのため、非水性エマルジョンシステムを使用してマイクロゲルを製造するための方法が必要とされている。
【0014】
したがって、できるだけ少ない注射で経時的に薬物を効果的に送達する徐放又は持続放出製剤を提供する、改良されたポリマー及びポリマーベースの送達デバイスの必要性が対処されていない。他の疾患、例えば、がん及び炎症疾患の場合、安定かつ効果的なタンパク質治療薬を含有する改善された移植可能な徐放又は持続放出製剤が必要とされている。
【0015】
したがって、薬物製剤を製造する非水性エマルジョンシステム及びそれらの使用方法を提供することが望ましい。また、改善されたタンパク質安定性、安定した徐放又は持続放出(持続した放出)、及び投与の容易さを有する徐放製剤を提供することが望ましい。
【0016】
水の存在が望ましくない場合であれば、通常の水性エマルジョンを非水性エマルジョンに交換することができる。2種類の炭化水素ベースの非水性エマルジョンシステムは、(1)ブロッキングコポリマー(例えば、ヘキサン/ジメチルホルムアミド)によって安定化される2つの不混和性有機溶媒、及び(2)既存の界面活性剤を使用して水を置き換える油不混和性極性溶媒(例えば、ホルムアミド、アセトニトリル)である。全フッ素置換油中水(W/F)エマルジョンは、フルオロカーボン溶媒中の水滴を安定化させるためのフッ素系界面活性剤(FS)として使用されるPFPE-PEG-PFPEとともに、単一細胞又は単一分子生物学的アッセイのための液滴ベースのマイクロ流体技術に適用されてきている。
【0017】
したがって、本発明によるいくつかの実施形態は、フルオロカーボンを非水性エマルジョンシステムにおける連続相として使用するが、それはそれらがいくつかの望ましい特性を有するためである。第一に、フルオロカーボンは、疎水性でも親水性でもなく、ほとんどの有機(炭化水素)溶媒と混和性がなく、それらを炭化水素液滴エマルジョンのための連続相として理想的なものにする。第二に、フルオロカーボンは、タンパク質及び他の親水性分子、炭化水素ベースのポリマー、及び有機賦形剤にとって非溶媒であり、言い換えると、これらの種類の分子は、フルオロカーボンに可溶性ではない。第三に、フルオロカーボンは、低い粘度を有する。第四に、フルオロカーボンは、化学的に不活性であり、一般的に使用される炭化水素溶媒と比較して比較的毒性又は腐食性が低い場合がある。最後に、フルオロカーボンは、揮発性でリサイクル可能である。
【発明の概要】
【0018】
概要
非水性エマルジョンシステムを使用してマイクロゲルを製造するための方法が開発されてきている。方法は、少なくとも1つの生体分解性及び/又は生体侵食性の架橋可能なポリマー、並びに少なくとも1つの架橋調節剤を、炭化水素溶媒と混合して、非水性の第1の溶液又は分散相懸濁液を形成することを含む。第1の溶液又は分散相懸濁液を、フルオロカーボン液及びフッ素系界面活性剤を含有する第2の溶液又は連続相溶液に添加する。溶液混合物は、乳化方法を通して乳化される。最初に炭化水素溶媒を除去し、次いでフルオロカーボン液を除去することによって、マイクロゲル粒子の粉末を回収することができる。治療用活性剤、例えば、治療用タンパク質を含む粉末を分散相懸濁液中に懸濁させることによって、徐放若しくは持続放出の治療用又は薬物微粒子が製造され得る。
【0019】
いくつかの例示的な実施形態において、本開示に従って提供される薬物微粒子は、架橋化ポリマーマイクロゲル表層によって囲まれた活性成分(例えば、タンパク質など)を含む。開示される方法によって製造される薬物微粒子は、ポア又はチャネルを欠いており、穿孔されていない架橋化ポリマーマイクロゲル表層を有し得る。いくつかの例示的な実施形態において、薬物微粒子は、約1μm~約200μmの直径を有し得る。
【0020】
薬物微粒子は、活性成分(例えば、乾燥タンパク質粉末)、1つ以上の生体分解性及び/若しくは生体侵食性の架橋可能なポリマー又はポリマー前駆体、並びに架橋調節剤を炭化水素溶媒中に混合して、非水性の第1の溶液又は分散相懸濁液を形成することと、第1の溶液又は分散相懸濁液を、フルオロカーボン液及びフッ素系界面活性剤を含む第2の溶液又は連続相溶液に添加することと、によって、非水性エマルジョンシステムを使用して、本開示に従って調製される。溶液混合物は、乳化方法を通して乳化される。最初に炭化水素溶媒、次いでフルオロカーボン液を除去することによって、薬物微粒子を回収することができる。
【0021】
薬物微粒子を含有する製剤もまた、本開示に従って提供される。
【0022】
特定の態様において、本開示は、活性成分(例えば、乾燥タンパク質粉末)及び1つ以上の架橋可能なポリマー前駆体を炭化水素溶媒と混合して、非水性の第1の溶液を形成するステップを含む、微粒子を製造する方法に関する。
【0023】
方法は、第1の溶液を第2の溶液に添加することを更に含み、第2の溶液は、フルオロカーボン液及びフッ素系界面活性剤を含む。方法は、混合した第1及び第2の溶液を撹拌して、フルオロカーボン液中に複数のエマルジョン炭化水素液滴を有する非水性エマルジョンを形成することを更に含む。本方法は、マイクロゲルを単離するために、炭化水素溶媒を除去することと、フルオロカーボン液を除去することとを更に含み、マイクロゲルは、架橋化ポリマーのマトリックス内に封入された活性成分を含む。
【0024】
例示的な実施形態において、第2の溶液は、ペルフルオロC5~C18化合物を含有し得る。他の実施形態において、第2の溶液は、FC-70を含有し得る。活性成分(例えば、乾燥タンパク質粉末)及び1つ以上の架橋可能なポリマー前駆体は、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、又はそれらの組み合わせから選択される炭化水素溶媒と混合され得る。更に他の実施形態において、活性成分及び1つ以上の架橋可能なポリマー前駆体は、ジクロロメタン、酢酸エチル、又はそれらの組み合わせから選択される炭化水素溶媒と混合される。
【0025】
例示的な実施形態において、第1の溶液を第2の溶液に添加するステップは、第1の溶液を、ペルフルオロポリエーテル-b-ポリエチレングリコール-b-ペルフルオロポリエーテルを含有する第2の溶液に添加することを含む。
【0026】
他の実施形態において、炭化水素溶媒と混合される1つ以上の架橋可能なポリマー前駆体は、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシド、コ-ポリエチレンオキシドブロック若しくはランダムコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルピロリジノン)、ポリ(アミノ酸)、デキストラン、又はそれらの任意の組み合わせから選択されるコアを含む。
【0027】
例示的な実施形態において、炭化水素溶媒と混合される1つ以上の架橋可能なポリマー前駆体は、求核官能基を含む第1の架橋可能なポリマー前駆体、及び求電子官能基を含む第2の架橋可能なポリマー前駆体を含む。炭化水素溶媒と混合される1つ以上の架橋可能なポリマー前駆体は、PEG-NH第1前駆体、及びPEG-NHS第2前駆体を含み得る。炭化水素溶媒と混合されるPEG-NH第1前駆体又はPEG-NHS第2前駆体のうちの少なくとも1つは、4アーム又は8アーム化合物のうちの1つであり得る。
【0028】
例示的な実施形態において、炭化水素溶媒と混合される活性含有粉末は、タンパク質粉末である。炭化水素溶媒と混合されるタンパク質粉末は、抗体、その抗原結合断片、融合タンパク質、組換えタンパク質、又はそれらの断片若しくは切断型を含有し得る。他の実施形態において、炭化水素溶媒と混合されるタンパク質粉末は、VEGFトラップタンパク質を含有する。炭化水素溶媒と混合されるVEGFトラップタンパク質は、VEGFトラップタンパク質の切断形態であり得る。更に他の実施形態において、炭化水素溶媒と混合されるタンパク質粉末は、噴霧乾燥、エレクトロスプレー乾燥、可逆沈殿、噴霧凍結、マイクロテンプレート、又はそれらの組み合わせによって微粉化され得る。
【0029】
例示的な実施形態において、混合された第1及び第2の溶液を撹拌するステップは、均質化、ボルテックス撹拌、超音波処理、キャビテーション、撹拌、又はそれらの組み合わせを含み得る。単離された微粒子は、持続放出微粒子であり得る。形成された第1の非水溶液は、炭化水素溶媒中に懸濁された1.0%~30%w/vの噴霧乾燥タンパク質、及び5.0%~35%w/vの1つ以上の架橋可能なポリマー前駆体を含み得る。第1の非水溶液が添加される第2の溶液は、0.1%~5.0%w/vのフッ素系界面活性剤を含有し得る。
【0030】
例示的な実施形態において、方法は、微粒子を医薬的に許容される賦形剤中に懸濁させるステップを更に含み得る。微粒子は、pH緩衝化生理食塩水中に懸濁させ得る。
【0031】
別の実施形態において、本開示は、第1の非水性炭化水素溶液中に懸濁された1.0%~30.0%w/wの全固体噴霧乾燥タンパク質を含む分散相であって、第1の非水性炭化水素溶液が、5.0%~35%w/vPEG-NH及び1.0%~15%w/vPEG-NHを含む、当該分散相を、連続相に混合して、分散相のエマルジョン液滴を形成するステップを含む、ポリマー又はポリマーコーティングマイクロスフェアを製造するための方法に関する。連続相は、0.1%~5.0%w/vのフッ素系界面活性剤を含む第2の非水性フルオロカーボン溶液を含み得る。方法は、炭化水素液体を除去することによってエマルジョン液滴を硬化させ、硬化ポリマー又は硬化ポリマーコーティングマイクロスフェアを形成するステップを更に含む。
【0032】
いくつかの例示的な実施形態において、本開示によるヒドロゲル微粒子を製造する方法は、
(a)少なくとも1つの架橋可能なポリマーと、少なくとも1つの架橋調節剤と、少なくとも1つのタンパク質を含む粉末とを、炭化水素溶媒と混合して、分散相懸濁液を形成すること、
(b)当該分散相懸濁液を、フルオロカーボン液及びフッ素系界面活性剤を含む連続相溶液に添加して、混合した分散相懸濁液及び連続相溶液を形成すること、
(c)当該混合した分散相懸濁液及び連続相溶液に配合力を加えて、当該フルオロカーボン液中に、当該少なくとも1つの架橋可能なポリマーと、少なくとも1つのタンパク質を更に含む当該粉末とを含む複数の炭化水素液滴を有する、非水性エマルジョンを形成すること、並びに
(d)炭化水素溶媒及びフルオロカーボン液を当該非水性エマルジョンから除去して、単離されたヒドロゲル微粒子を形成することであって、当該ヒドロゲル微粒子が、架橋化ポリマーのマトリックス内に封入された当該少なくとも1つのタンパク質を含む、当該形成すること
を含む。
【0033】
一態様において、少なくとも1つの架橋調節剤は、非官能化直鎖PEGポリマーである。別の態様において、分散相における少なくとも1つの架橋調節剤の濃度は、約5.0%~約35%w/vである。
【0034】
一態様において、フルオロカーボン液は、高粘度フルオロカーボンである。別の態様において、連続相溶液は、ペルフルオロC5~C18化合物を含む。更に別の態様において、連続相溶液は、FC-70又はペルフルオロトリペンチルアミンを含む。
【0035】
一態様において、炭化水素溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。別の態様において、連続相溶液は、ペルフルオロポリエーテル-b-ポリエチレングリコール-b-ペルフルオロポリエーテルを含む。
【0036】
一態様において、少なくとも1つの架橋可能なポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシド、コ-ポリエチレンオキシドブロック若しくはランダムコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルピロリジノン)、ポリ(アミノ酸)、デキストラン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるコアを含む。
【0037】
一態様において、少なくとも1つの架橋可能なポリマーは、少なくとも1つの求核官能基を含む第1の架橋可能なポリマー、及び少なくとも1つの求電子官能基を含む第2の架橋可能なポリマーを含む。特定の態様において、少なくとも1つの求核官能基 対 少なくとも1つの求電子官能基のモル比は、約1:1~約1:2である。別の特定の態様において、少なくとも1つの架橋可能なポリマーは、PEG-NH第1前駆体、及びPEG-NHS第2前駆体を含む。更なる特定の態様において、PEG-NH第1前駆体又はPEG-NHS第2前駆体は、4アーム又は8アーム化合物である。
【0038】
一態様において、少なくとも1つのタンパク質は、抗体、その抗原結合断片、融合タンパク質、組換えタンパク質、又はその断片若しくは切断型である。特定の態様において、少なくとも1つのタンパク質は、VEGFトラップタンパク質である。更なる特定の態様において、VEGFトラップタンパク質は、VEGFトラップタンパク質の切断形態である。
【0039】
一態様において、少なくとも1つのタンパク質は、アフリベルセプト、リロナセプト、アリロクマブ、デュピルマブ、サリルマブ、セミプリマブ、抗エボラ抗体、及び抗SARS-CoV-2抗体からなる群から選択される。
【0040】
一態様において、単離されたヒドロゲル微粒子は、約1μm~約200μmの直径を有する。別の態様において、粉末は、噴霧乾燥、エレクトロスプレー乾燥、可逆沈殿、噴霧凍結、マイクロテンプレート、又はそれらの組み合わせによって微粉化される。更なる態様において、配合力は、均質化、ボルテックス撹拌、超音波処理、キャビテーション、撹拌、又はそれらの組み合わせを含む。
【0041】
一態様において、ヒドロゲル微粒子は、持続放出微粒子である。
【0042】
一態様において、分散相懸濁液中の粉末の濃度は、約1.0%~約30%w/vである。別の態様において、分散相懸濁液中の少なくとも1つの架橋可能なポリマーの濃度は、約5.0%~約35%w/vである。更に別の態様において、連続相溶液中のフッ素系界面活性剤の濃度は、約0.1%~約5.0%w/vである。
【0043】
一態様において、方法は、単離されたヒドロゲル微粒子を、医薬的に許容される製剤中に懸濁させることを更に含む。別の態様において、製剤は、pH緩衝化生理食塩水、水溶液、又は非水溶液を含む。
【0044】
一態様において、粉末は、少なくとも1つの賦形剤を更に含む。
【0045】
本開示はまた、ヒドロゲル微粒子を提供する。いくつかの例示的な実施形態において、ヒドロゲル微粒子は、前述の方法のうちのいずれかによって製造される。
【0046】
本発明のこれら及び他の態様は、以下の説明及び添付の図面と併せて考慮される場合、よりよく認識され、理解されるであろう。以下の説明は、その様々な実施形態及び多数の具体的な詳細を示すが、例解として与えられ、限定するものではない。多くの置換、修正、追加、又は再配置は、本発明の範囲内で行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0047】
本開示の概念及び例解的な実施形態のより完全な理解は、添付の描画の図と併せて、以下の説明を参照することによって取得され得る。
【0048】
図1A】例示的な実施形態に従い、フルオロカーボン(H/F)ベースの(非水性)バルクエマルジョン中で炭化水素を介してブランク架橋PEGマイクロゲルを製造するためのプロセスを例解する。
図1B】例示的な実施形態に従い、Fluorinert(商標)FC-70(Millipore Sigma)(ペルフルオロトリペンチルアミン)について化学構造を示す。
図1C】例示的な実施形態に従い、ペルフルオロポリエーテル/ポリ(エチレングリコール)トリブロックコポリマーである、フッ素系界面活性剤PFPE-PEG-PFPE(Sphere Fluidics、Pico-Surf(商標)1)について化学構造を示す。
図2】例示的な実施形態に従い、ブランク架橋PEGマイクロゲルについて合成経路を例解する。
図3】例示的な実施形態に従い、架橋PEGマイクロゲルに封入された噴霧乾燥タンパク質(SDP)を有する薬物微粒子を調製するプロセスを例解する。
図4図4Aは、FC-70に懸濁された例示的な実施形態によるVEGFトラップ封入架橋PEGマイクロゲルの明視野顕微鏡画像を示す。図4Bは、FC-70に懸濁された例示的な実施形態によるVEGFトラップ封入架橋PEGマイクロゲルの蛍光顕微鏡画像を示す。
図5図5Aは、FC-70に懸濁された例示的な実施形態によるVEGFトラップ封入架橋PEGマイクロゲルの明視野顕微鏡画像を示す。図5Bは、FC-70に懸濁された例示的な実施形態によるVEGFトラップ封入架橋PEGマイクロゲルの蛍光顕微鏡画像を示す。
図6図6Aは、水に懸濁された例示的な実施形態によるVEGFトラップ封入架橋PEGマイクロゲルの明視野顕微鏡画像を示す。図6Bは、水に懸濁された例示的な実施形態によるVEGFトラップ封入架橋PEGマイクロゲルの蛍光顕微鏡画像を示す。
図7】水に懸濁された例示的な実施形態によるVEGFトラップ封入架橋PEGマイクロゲルの蛍光顕微鏡画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
詳細な説明
本開示は、本明細書に記載の材料、組成物、及び方法、又は記載される実験条件に限定されず、そのため、かかる材料、組成物、方法、及び/又は条件は、変化し得ると認識されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することが意図されないことも理解されるべきである。
【0050】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等のあらゆる組成物、方法、及び材料は、本明細書に記載の実施形態の様々な態様の実施又は試験に使用することができる。
【0051】
本明細書に示される実施形態の様々な態様を説明する文脈において(特に特許請求の範囲の文脈において)、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」という用語、及び同様の指示対象の使用は、本明細書で別段の指示がなされるか、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を網羅するように解釈されるべきである。
【0052】
本明細書における値の範囲の言及は、本明細書中に別段の指示がない限り、単に、範囲に含まれる各個別の値を個々に参照する簡略方法として機能することを意図しており、各個別の値は本明細書に個別に言及されているかのように、本明細書に組み入れられる。
【0053】
「約」という用語は、記載された値を、おおよそ+/-10%の範囲内で上回るか、又は下回るいずれかの値を説明することが意図され、他の実施形態において、値は、記載された値を、おおよそ+/-5%の範囲内で上回るか、又は下回るいずれかの値の範囲内であり得、他の例示的な実施形態において、値は、記載された値を、おおよそ+/-2%の範囲内で上回るか、又は下回るいずれかの値の範囲内であり得、他の例示的な実施形態において、値は、記載された値を、おおよそ+/-1%の範囲内で上回るか又は下回るいずれかの値の範囲内であり得る。前述の範囲は、文脈によって明確にされることが意図され、更なる限定は示唆されない。
【0054】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書中で別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書で提供される任意の及び全ての例、又は例示的な用語(例えば、「など」)の使用は、単に本明細書に記載される実施形態の様々な態様をよりよく示すことを意図しており、別段の請求がない限り、本開示の範囲の限定を提示するものではない。本明細書におけるいかなる文言も、任意の特許請求されていない要素を、本明細書に記載される実施形態の様々な態様の実施に不可欠であることを示すものとして解釈されるべきではない。
【0055】
「タンパク質」という用語は、ペプチド結合によって相互に結合された2つ以上のアミノ酸残基を含む分子を指す。タンパク質は、ポリペプチド及びペプチドを含み、グリコシル化、脂質付着、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ-カルボキシル化、アルキル化、ヒドロキシル化、及びADP-リボシル化などの修飾も含み得る。タンパク質は、タンパク質ベースの薬物を含む、科学的又は商業的に関心のあるものである可能性があり、タンパク質としては、とりわけ、酵素、リガンド、受容体、抗体、及びキメラ又は融合タンパク質が挙げられる。タンパク質は、周知の細胞培養法を使用して様々なタイプの組換え細胞によって産生され得、一般的に遺伝子操作技術(例えば、キメラタンパク質をコードする配列、又はコドン最適化配列、イントロンレス配列など)によって細胞に導入され得、そこでエピソームとして存在するか、又は細胞ゲノムに統合され得る。
【0056】
「抗体」という用語は、ジスルフィド結合により相互接続された4つのポリペプチド鎖である、2つの重(H)鎖、及び2つの軽(L)鎖からなる免疫グロブリン分子を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(HCVR又はVH)及び重鎖定常領域を有する。重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2、及びCH3)を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域を有する。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL)からなる。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に更に細分され得、これは、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域により散在する。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に、以下の順序で配置された3つのCDR及び4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。「抗体」という用語は、任意のアイソタイプ又はサブクラスのグリコシル化及び非グリコシル化免疫グロブリンの両方に対する言及を含む。「抗体」という用語は、組換え手段によって調製、発現、作製又は単離された抗体分子、例えば、抗体を発現するようにトランスフェクトされた宿主細胞から単離された抗体を含む。抗体という用語はまた、1つを超える異なるエピトープに結合することができるヘテロ四量体免疫グロブリンを含む二重特異性抗体を含む。二重特異性抗体は、概して、米国特許第8,586,713号(参照により本出願に組み込まれる)に記載されている。
【0057】
「Fc融合タンパク質」という用語は、2つ以上のタンパク質(そのうちの1つは免疫グロブリン分子のFc部分であり、それ以外の場合、自然界では一緒に見出されない)の一部又は全部を含む。抗体由来ポリペプチド(Fcドメインを含む)の様々な部分に融合した特定の異種ポリペプチドを含む融合タンパク質の調製は、例えば、Ashkenazi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:10535,1991、Byrn et al.,Nature 344:677,1990、及びHollenbaugh et al.,”Construction of Immunoglobulin Fusion Proteins”,in Current Protocols in Immunology,Suppl.4,pages 10.19.1-10.19.11,1992によって記載されている。「受容体Fc融合タンパク質」は、いくつかの実施形態において、ヒンジ領域を含み、その後に免疫グロブリンのCH2及びCH3ドメインが続く、Fc部分に結合された受容体の1つ以上の細胞外ドメインを含む。いくつかの実施形態において、Fc融合タンパク質は、1つ以上のリガンドに結合する2つ以上の明確に異なる受容体鎖を含む。例えば、Fc融合タンパク質は、例えば、IL-1トラップ又はVEGFトラップなどのトラップであり得る。いくつかの例示的な実施形態において、本発明に使用されるFc融合タンパク質は、アフリベルセプトなどのVEGFトラップであり得る。
【0058】
「微粉化タンパク質粒子」又は「タンパク質粒子」という用語は、低いか、非常に低いか、又はゼロに近い量の水(例えば、<3重量%の水)を有する、タンパク質の複数の分子を含有する粒子を指す。本明細書で使用される場合、微粉化タンパク質粒子は、概して球形であり、約2ミクロン~約35ミクロンの範囲の円相当径(ECD)を有する。微粉化タンパク質粒子は、任意の特定のタンパク質実体に限定されず、治療用タンパク質の調製及び送達に適している。一般的な治療用タンパク質としては、とりわけ、可溶性受容体断片、抗体(IgGを含む)及び抗体の誘導体又は断片、Fc融合タンパク質を含む他のFc含有タンパク質、並びにVEGFトラップなどのトラップ型タンパク質(Huang,C.,Curr.Opin.Biotechnol.20:692-99(2009))が挙げられる。
【0059】
「ヒドロゲル微粒子」(マイクロゲル)という用語は、親水性ポリマーネットワークを含む微細構造を指す。ポリマーのネットワークは、共有結合性、イオン性、親和性、又は物理的基礎を有し得る架橋によって接続される。マイクロゲルは、治療用タンパク質の制御放出のための潜在的な送達媒体として浮上している。移植に手術を必要とするバルクヒドロゲルと比較して、柔らかく変形可能なマイクロゲルは、針又はカテーテルで患者に送達することができ、これは侵襲性が低く、より良い治療転帰をもたらすことができる。本明細書に記載される作製プロセスを使用して、微粉化タンパク質粒子(すなわち、タンパク質粉末の微粉化形態、例えば、噴霧乾燥VEGFトラップ粉末)を、架橋可能なポリマーを含有する炭化水素溶液中に懸濁し得る。架橋するための化学反応を受ける架橋可能なポリマーは、ポリマー前駆体と称され得る。架橋剤を添加した後、懸濁液(本明細書では第1の溶液又は分散相懸濁液とも称される)を、直ちにフッ素系界面活性剤を含有するフルオロカーボン連続相に添加し得る。炭化水素相は、乳化方法を通して速やかに分散する。フルオロカーボン連続相は、架橋可能なポリマー及び噴霧乾燥タンパク質粉末を炭化水素液滴内に閉じ込めるため、エマルジョン液滴中のポリマーが架橋され、次いで、個々のマイクロゲルに硬化される。
【0060】
炭化水素-フルオロカーボンエマルジョンを使用したマイクロスフェア製剤の製造
油及び水性ベースのエマルジョンシステムは、ポリマー微粒子又はナノ粒子の合成に頻繁に使用され、疎水性ポリマー材料は有機相に溶解され、水性連続相に分散される。しかしながら、水溶性ポリマー、例えばPEG又はカルボキシメチルセルロース(CMC)、及び水の存在下で容易に加水分解するポリマーとしては、例えば、ポリ無水物、ポリ乳酸のような短い中間ブロックを有する脂肪族ポリエステル、及びポリ(グルタミン酸)のような特定のポリ(アミノ酸)が挙げられるが、従来の水性ベースのエマルジョンシステムは、理想的ではない。水性連続相に溶解する水溶性ポリマーの望ましくない効果に加えて、PEG-NHSなどの官能化架橋性ポリマーは、水と反応し得、架橋の反応動態をマイクロゲルの形成にとって非常に好ましくないものにする。
【0061】
追加的に、水性エマルジョンシステムを使用して製造される医薬製剤は、薬物、例えば、タンパク質薬物を、製造中にエマルジョン液滴から水性連続相に漏出させ得る。エマルジョン液滴からの薬物のこの漏出により、低い封入有効性が得られる。タンパク質薬物などの水溶性薬物は、水性連続相で溶解して、薬物のマイクロゲルからの漸進的な持続放出を防止し得る。
【0062】
無水又は非水性のエマルジョンシステムを使用して、医薬組成物を製剤化するためのシステム及び方法が提供される。開示される無水エマルジョン方法は、上記の既存の水性エマルジョンシステムの問題を克服する。
【0063】
本明細書に記載の非水性ベースのエマルジョン方法は、タンパク質などの親水性薬物を含むがこれらに限定されない薬物分子を、水性エマルジョンシステムと比較して増加した封入有効性、増加した最初のタンパク質粒子構造の保持、又はそれらの組み合わせで封入する。開示される無水エマルジョンシステム及び方法は、バルク方法(例えば、撹拌、均質化、又は超音波処理)及び他の従来の方法によって封入された薬物製剤を製造することができる。本明細書に開示されるシステム及び方法はまた、幅広いポリマー材料、固体ペイロード、及び乳化方法に適用することができる。
【0064】
フルオロカーボン中炭化水素中固体(S/H/F)エマルジョン
例示的な非水性S/H/Fエマルジョン方法は、乾燥タンパク質粉末、1つ以上の生体分解性及び/又は生体侵食性の架橋可能なポリマー又はポリマー前駆体、並びに1つ以上の架橋調節剤を、炭化水素溶媒に混合して、非水性の第1の溶液又は分散相懸濁液を形成するステップと、第1の溶液又は分散相懸濁液を、フルオロカーボン液及びフッ素系界面活性剤を含む第2の溶液又は連続相溶液に添加するステップと、を含む。第1の溶液又は分散相懸濁液、及び第2の溶液又は連続相溶液の混合は、例えば、撹拌、超音波処理、キャビテーション、均質化、又はボルテックス撹拌などの配合力を加えることによって、フルオロカーボン液中に複数のエマルジョン炭化水素液滴を含有する非水性エマルジョンを形成する手段で行われる。
【0065】
本発明の方法は、炭化水素溶媒を除去し、フルオロカーボン液を除去して、微粉化タンパク質の1つ以上のコア及び架橋生体分解性ポリマーの表層を有するヒドロゲル微粒子を単離することを更に含む。
【0066】
いくつかの例示的な実施形態において、エマルジョンを撹拌して、炭化水素及びフルオロカーボン液を周囲条件又は真空下で蒸発させる。いくつかの例示的な実施形態において、ヒドロフルオロエーテル(HFE)をフルオロカーボンに添加して、炭化水素を分散相からフルオロカーボン連続相に抽出することを促進することができる。得られた微粒子は、任意選択的に洗浄して、炭化水素溶媒、フルオロカーボン液、フッ素系界面活性剤、又はそれらの組み合わせを除去することができる。エマルジョンは、バルクエマルジョン技術を使用して形成することができる。炭化水素及びフルオロカーボン液を除去することによって微粒子が硬化され、次いで、それらを採取することができる。
【0067】
いくつかの例示的な実施形態において、微粒子は、濾過によって採取され得る。本非水性エマルジョン方法によって製造された持続放出微粒子は、架橋結合した生体分解性及び/又は生体侵食性ポリマーのマトリックス内に封入されたタンパク質を含有する。いくつかの例示的な実施形態において、微粒子は、単一コア-シェル構造を有する。他の例示的な実施形態において、微粒子は、ポリマー内に分散した複数のコアを有する。
【0068】
更に他の例示的な実施形態において、微粒子の集団は、ポリマー表層によって封入された単一コア構造を有する微粒子、及びポリマー表層内に複数のコア構造を有する微粒子の両方を含む。フルオロカーボン液は、FC-40又はFC-70(ペルフルオロトリペンチルアミン)を含むがこれらに限定されないペルフルオロC5~C18化合物などの高粘度フルオロカーボンであり得、炭化水素溶液は、酢酸エチル、クロロホルム、トルエン、テトラヒドロフラン、及びジクロロメタン、又はそれらの組み合わせから選択される炭化水素溶媒を含み得る。いくつかの例示的な実施形態において、フッ素系界面活性剤は、Pico-Surf(商標)1として市販されている、ペルフルオロポリエーテル-b-ポリエチレングリコール-b-ペルフルオロポリエーテルである。
【0069】
いくつかの例示的な実施形態において、連続相溶液中のフッ素系界面活性剤の濃度は、約0.1%~約10%w/v、約0.1%~約5%w/v、約1%~約10%w/v、約1%~約5%w/v、約0.1%w/v、約0.2%w/v、約0.3%w/v、約0.4%w/v、約0.5%w/v、約0.6%w/v、約0.7%w/v、約0.8%w/v、約0.9%w/v、約1%w/v、約1.5%w/v、約2%w/v、約2.5%w/v、約3%w/v、約3.5%w/v、約4%w/v、約4.5%w/v、約5%w/v、又は約10%w/vであり得る。
【0070】
架橋可能なポリマー及びポリマー前駆体
本発明のヒドロゲル微粒子の架橋化ポリマー表層を製造するのに好適な前駆体は、典型的には多官能性であり、それらが2つ以上の求電子又は求核官能基を含み、そのため前駆体における求核官能基が別の前駆体における求電子官能基と反応して共有結合を形成し得ることを意味する。前駆体は2つを超える官能基を含み得、それによって、求電子-求核反応の結果として、前駆体が結合して架橋化ポリマー生成物を形成する。かかる反応は、「架橋反応」と称される。いくつかの例示的な実施形態において、1つを超える前駆体が用いられ得、第1の前駆体は、ポリマー前駆体(例えば、求電子基を含有する)であり、第2の前駆体は、低分子量化合物(例えば、求核基を含有する)である。1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の異なる前駆体が、表層の所望の特性に応じて用いられ得るが、ただし、前駆体のうちの少なくとも1つはポリマーであることが理解されるべきである。
【0071】
いくつかの例示的な実施形態において、各前駆体は、求核前駆体及び求電子前駆体の両方が架橋反応で使用される限り、求核官能基のみ、又は求電子官能基のみを含む。したがって、例えば、架橋剤(比較的低い分子量を有する)がアミンなどの求核官能基を有する場合、官能性ポリマー(比較的高い分子量を有する)は、N-ヒドロキシスクシンイミドなどの求電子官能基を有し得る。他方、架橋剤が、スルホスクシンイミドなどの求電子官能基を有する場合、官能性ポリマーは、アミンなどの求核官能基を有し得る。したがって、タンパク質、ポリ(アリルアミン)、又はアミン末端化した二官能性若しくは多官能性ポリ(エチレングリコール)(「PEG」)などの感応性ポリマーを使用することができる。
【0072】
いくつかの例示的な実施形態において、第1の前駆体における求核基の数は、約2~30、約2~25、約2~20、約2~15、約2~10、約5~30、約5~20、約5~15、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、又は約30であることができる。
【0073】
いくつかの例示的な実施形態において、第2の前駆体における求電子基の数は、約2~30、約2~25、約2~20、約2~15、約2~10、約5~30、約5~20、約5~15、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、又は約30であることができる。
【0074】
架橋可能なポリマー又はポリマー前駆体は、生物学的に不活性かつ水溶性のコアを有し得る。分岐ポリマーの場合、コアは、コアから伸長するアームに結合され、各アームの末端が官能基を有する、分子の隣接部分を指す。コアが、水溶性であるポリマー領域である場合、使用され得る好適なポリマーとしては、ポリエーテル、例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)などのポリアルキレンオキシド、ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシド(「PPO」)、コ-ポリエチレンオキシドブロック又はランダムコポリマー、及びポリビニルアルコール(「PVA」)、ポリ(ビニルピロリジノン)(「PVP」)、ポリ(アミノ酸)、デキストランなどが挙げられる。コアが本質的に小分子である場合、様々な親水性官能性のうちのいずれかを使用して、前駆体を水溶性にすることができる。例えば、水溶性であるヒドロキシル、アミン、スルホネート、及びカルボキシレートのような官能基を使用して、前駆体を水溶性にし得る。加えて、スバリン酸(subaric acid)のN-ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)エステルは、水に不溶であるが、サクシンイミド環にスルホネート基を付加することによって、スバリン酸のNHSエステルを、アミン基に対するその反応性に影響を及ぼすことなく、水溶性にし得る。
【0075】
生体分解性又は吸収性である生体適合性架橋化ポリマーを提供するために、官能基の間に存在する生体分解性結合を有する1つ以上の前駆体が使用され得る。生体分解性結合はまた、任意選択的に、前駆体のうちの1つ以上の水溶性コアとしても機能し得る。代替として、又は加えて、前駆体の官能基は、それらの間の反応の生成物が生体分解性結合をもたらすように選択され得る。各アプローチについて、生体分解性結合は、得られる生体分解性である生体適合性架橋化ポリマーが、所望の期間で分解又は吸収されるように選択され得る。生理学的条件下で非毒性生成物に分解する生体分解性結合が選択され得る。
【0076】
生体分解性結合は、化学的又は酵素的に加水分解可能か、又は吸収可能であり得る。化学的に加水分解可能な生体分解性結合の例としては、グリコリド、dl-ラクチド、l-ラクチド、カプロラクトン、ジオキサノン、及びトリメチレンカーボネートのポリマー、コポリマー、及びオリゴマーが挙げられる。酵素的に加水分解可能である生体分解性結合の例としては、メタロプロテイナーゼ及びコラゲナーゼによって切断可能なペプチド結合が挙げられる。生体分解性結合の追加の例としては、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(無水物)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(カーボネート)、及びポリ(ホスホネート)のポリマー及びコポリマーが挙げられる。
【0077】
アルコール又はカルボン酸などの特定の官能基は、通常、生理学的条件(例えば、pH7.2~11.0、37℃)下で、アミンなどの他の官能基と反応しない。しかしながら、かかる官能基は、N-ヒドロキシスクシンイミドなどの活性化基を使用することによって、より反応性にすることができる。かかる官能基を活性化するためのいくつかの方法が、当技術分野で知られている。好適な活性化基としては、カルボニルジイミダゾール、塩化スルホニル、アリールハライド、スルホスクシンイミジルエステル、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、スクシンイミジルエステル、エポキシド、アルデヒド、マレイミド、イミドエステルなどが挙げられる。N-ヒドロキシスクシンイミドエステル又はN-ヒドロキシスルホスクシンイミド基は、タンパク質又はアミノ末端化ポリエチレングリコール(「APEG」)などのアミン官能化ポリマーの架橋に好適な基である。
【0078】
インサイツで反応及び架橋することができる求電子基及び求核基を有する水溶性前駆体からの好適な生体適合性架橋化ポリマー、並びにそれらの調製及び使用のための方法は、例えば、米国特許出願第8,535,70号に開示され、参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの例示的な実施形態において、生体侵食性である架橋性ポリマー前駆体は、PEG-NHSである。
【0079】
いくつかの例示的な実施形態において、化学反応を使用して架橋し得るポリマー前駆体の代わりに、物理的相互作用を使用して架橋する架橋可能なポリマーが使用され得る。本明細書で使用される場合、「架橋可能なポリマー」という用語は、ポリマー前駆体及び物理的に相互作用する架橋可能なポリマーを包含し、これらのうちのいずれかは、本発明の方法に好適であり得る。
【0080】
治療薬の放出持続期間及び放出プロファイルは、ポリマー表層における架橋密度、マトリックスからのタンパク質の拡散、及びマトリックス自体の溶解などの要因に依存する。ポリマー表層の特性は、架橋可能なポリマー(4アーム又は8アーム)の分岐、架橋可能なポリマーのアームの長さ、及び-NH基に対する-NHS基のモル比(MR)を含むいくつかの要因を通して調整され得る。
【0081】
求電子基に対する求核基のモル比は、架橋密度を決定することができる。1のモル比は、最も高い架橋密度をもたらす。1未満のモル比は、1のモル比よりも低い架橋密度をもたらすことができる。架橋密度は、モル比が1の値に達するまで増加するにつれて増加し、次いで、モル比が1の値を超えて増加するにつれて減少する。ヒドロゲルに埋め込まれた薬物は、架橋密度が低いほど速く放出され得る。結果として、求電子基に対する求核基のモル比を調節することによって、薬物の放出動態が調整され得る。
【0082】
モル比は、ヒドロゲルマトリックス内の架橋密度(ネットワークを形成する共有結合性架橋の数)及びネットワークポアサイズの両方を効果的に調節し得る。架橋密度を減少させることによって、マトリックスの有効ポアサイズを増加させることができ、マトリックスを通る薬物のより速い拡散をもたらす。追加的に、架橋密度を減少させることによって、タンパク質粒子を囲む架橋性ポリマーの局所濃度が、水和時にタンパク質を固体状態に保持するのに不十分であるヒドロゲル内のドメインを増加させ、バースト放出並びに質量ベースでの拡散速度に増加をもたらし得る。そのため、モル比が増加するにつれて、拡散制御レジームにおけるバースト放出及び放出動態の両方が増加し得る。
【0083】
追加的に、Chen et al.(米国特許出願公開第2020/0038328A1号、参照により本明細書に組み込まれる)は、モル比の増加とともに、溶解制御レジームにおける放出プロファイルの勾配における増加を観察した。これは、モル比の増加に伴う架橋の程度の低減によって説明することができ、反応及び架橋に利用可能な求核基の数と求電子基の数との間により大きいミスマッチが存在する。成長速度は、架橋の加水分解速度によって決定され、ヒドロゲル膨潤における増加、及びタンパク質粒子の更なる溶解を生じる架橋性ポリマーの局所濃度における付随する減少をもたらす。ヒドロゲルの膨張はまた、タンパク質の溶解が生じるときに増加する、ヒドロゲル多孔性と相関している。モル比が増加し、水和時のタンパク質溶解が増加すると、ヒドロゲルの有効な多孔性も増加し、溶解制御レジームにおけるより多くの膨張、より速い加水分解、及びより速い成長速度をもたらす。更に、拡散と溶解制御レジームとの間の遷移を特定する変曲点は、モル比と逆相関する。有効な拡散速度がモル比の増加とともに増加すると、拡散が、もはや速度制限ステップではない程度に増加する期間が減少し、それによって変曲点をより早い時点にシフトさせる。包括的に考慮すると、モル比を単独で変化させることによって、放出プロファイルを所望の結果に応じてほぼ直線からシグモイドに調整することができる。
【0084】
いくつかの例示的な実施形態において、求核基 対 求電子基のモル比は、1を超える。他の例示的な実施形態において、求核基 対 求電子基のモル比は、1未満である。他の例示的な実施形態において、求核基 対 求電子基のモル比は、約0.1~3.0、例えば、約0.1~0.9、約0.1~0.8、約0.1~0.7、約0.1~0.6、約0.2~0.9、約0.2~3.0、約0.2~2.8、約0.2~2.5、約0.5~2.5、約0.5~2.0、約0.8~2.5、約0.8~2.0、約1.1~2.0、約1.1~2.5、約1.1~3.0、約1.5~3.0、約1.5~2.5、約1.5~2.0、又は約1.3~1.8の範囲であることができる。いくつかの例示的な実施形態において、求核基 対 求電子基のモル比は、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、又は約3.0であることができる。
【0085】
モル比に関連して、第1の前駆体における求核基の数及び/又は第2の前駆体における求電子基の数はまた、架橋密度を決定することができる。一般に、所与のモル比では、求核基又は求電子基の数が多いほど、架橋密度が高くなる。いくつかの実施形態において、方法は、60日以上の放出期間のために、8アームPEG NH及び8アームPEG NHS試薬を選択することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、60日未満の放出期間のために、4アームPEG NH及び4アームPEG NHS試薬を選択することを含む。
【0086】
ヒドロゲル微粒子の放出動態を調整するために使用することができる別のパラメータは、第1及び/又は第2の架橋可能なポリマーの分子量である。所与のモル比では、架橋可能なポリマーの分子量が低いほど、ネットワークポアサイズは小さくなる。第1及び第2の架橋可能なポリマーの分子量は、放出プロファイルに非連続的又は離散的な効果を有する。本明細書で使用される場合、「非連続的」又は「離散的」という用語は、レベル間で補間することができないことを意味する。例えば、所定の分子量を有する第1及び第2の架橋可能なポリマー(例えば、PEG試薬)の組み合わせは、可能な放出期間の範囲を定義することができる。モル比などの他の要因を使用して、放出プロファイル又は放出期間を微調整することができる。
【0087】
放出動態を調整するために使用できる別のパラメータは、ヒドロゲルに対する薬物及び賦形剤の重量比である。ヒドロゲルに対する薬物及び賦形剤の重量比は、本明細書では「固体負荷」とも称される。これは、薬物、賦形剤、及び薬物負荷ヒドロゲルを含むポリマーの総重量に対する薬物及び賦形剤の重量比を指す。固体負荷を増加させて、主に、変曲点の前の初期拡散段階中のより速い放出によって、放出プロファイルの形状を変化させることができる。また、溶解段階の発生(変曲点)と固体負荷との間には逆相関がある可能性が高い。理論に拘束されることを望まないが、増加した固体負荷に伴い、初期拡散段階中のより速い放出が予想されるが、それは薬物溶解度がより制限されない比較的低い架橋可能なポリマー濃度の微小環境において、より多くの量の薬物が存在するためである。かかる領域における薬物は、マトリックスの初期水和化で溶解され得、濃度依存性拡散の速度を増加させる。追加的に、タンパク質粒子の形態における薬物では、初期水和化で溶解したタンパク質粒子の増加は、マトリックス内に空隙を生じ、マトリックス多孔性に増加をもたらす。より多孔性なマトリックスはまた、バルクマトリックスを通る拡散の有効速度を増加させ、それが表面に到達すると放出される。理論に拘束されることを望まないが、変曲点と個体負荷との間の逆相関は、増加した固体負荷に伴って観察される拡散速度の増加によって仮定的に説明することもできる。変曲点は、拡散制御レジームと溶解制御レジームとの間の遷移を意味する。固体負荷が増加すると、拡散速度がより高く開始され、より急速に増加し、拡散がもはや速度制限されなくなる前の持続時間が短くなる。拡散制御レジームにおいて、マトリックスを通る溶解した薬物の拡散は、薬物放出の速度制限ステップである。より多くのタンパク質粒子が溶解するにつれて、マトリックス内に空隙が生成され、マトリックスの多孔性が増加し、増加した拡散速度をもたらす。溶解制御レジームにおいて、マトリックスを通る拡散は、もはや速度制限ステップではない。この時点は、固体負荷が増加すると、より迅速に到達する。
【0088】
いくつかの例示的な実施形態において、分散相懸濁液中の架橋可能なポリマー又はポリマー前駆体の濃度は、約1%~約50%w/v、約1%~約35%w/v、約1%~約20%w/v、約5%~約50%w/v、約5%~約35%w/v、約5%~約20%w/v、約1%w/v、約2%w/v、約3%w/v、約4%w/v、約5%w/v、約6%w/v、約7%w/v、約8%w/v、約9%w/v、約10%w/v、約15%w/v、約20%w/v、約25%w/v、約30%w/v、約35%w/v、約40%w/v、約45%w/v、又は約50%w/vであり得る。
【0089】
いくつかの例示的な実施形態において、本開示は、(1)炭化水素溶液に懸濁された1.0~30.0%w/vの噴霧乾燥タンパク質を有する分散相であって、炭化水素溶液が、炭化水素溶媒中に5.0~35%w/vの1つ以上の架橋可能なポリマーを含む、当該分散相を、(2)連続相と混合して、分散相のエマルジョン液滴を形成することであって、連続相が、0.1~5.0%w/vのフッ素系界面活性剤を含有するフルオロカーボン溶液を含む、当該形成することによって、ポリマーコーティングマイクロスフェアを製造するための方法を提供する。方法は、炭化水素溶液を除去することによってエマルジョンを硬化させて、硬化した架橋結合ポリマーコーティングマイクロスフェアを形成することを更に含む。
【0090】
いくつかの例示的な実施形態において、フルオロカーボン溶液は、FC-40又はFC-70を含むがこれらに限定されないペルフルオロC5~C18化合物などの高粘度フルオロカーボンであり得、炭化水素溶液は、酢酸エチル、クロロホルム、トルエン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、又はそれらの組み合わせを含む群から選択され得る。いくつかの例示的な実施形態において、フッ素系界面活性剤は、Pico-Surf(商標)1として市販されている、ペルフルオロポリエーテル-b-ポリエチレングリコール-b-ペルフルオロポリエーテルであり得る。方法はまた、真空下でエマルジョンを撹拌して、炭化水素を除去すること、マイクロスフェアの硬化を加速するためにヒドロフルオロエーテル(HFE)を添加すること、及び/又は濾過してフルオロカーボン溶液を除去すること、を含み得る。
【0091】
他の例示的な実施形態において、噴霧乾燥タンパク質は、架橋化ポリエチレングリコールマイクロゲル中に封入され得る。PEGの架橋化は、例えば、PEG-NHなどの求核基を含有するPEG前駆体を、例えば、PEG-NHSなどの求電子基を含有するPEG前駆体と混合することによって達成され得る。いくつかの例示的な実施形態において、反応混合物への非官能化PEGの添加を使用して、非官能化PEGが官能化PEG前駆体濃度を低減させながら炭化水素相粘度を維持するように、架橋反応速度を調節し得る。したがって、架橋調節剤(純粋な非官能化PEG)に対する官能化PEG前駆体対の比率を変化させることが、所望のゲル化時間を達成するために使用され得る。
【0092】
いくつかの例示的な実施形態において、分散相懸濁液中の架橋調節剤の濃度は、約1%~約50%w/v、約1%~約35%w/v、約1%~約20%w/v、約5%~約50%w/v、約5%~約35%w/v、約5%~約20%w/v、約1%w/v、約2%w/v、約3%w/v、約4%w/v、約5%w/v、約6%w/v、約7%w/v、約8%w/v、約9%w/v、約10%w/v、約15%w/v、約20%w/v、約25%w/v、約30%w/v、約35%w/v、約40%w/v、約45%w/v、又は約50%w/vであり得る。
【0093】
更に他の例示的な実施形態は、溶解した架橋可能なポリマー及び噴霧乾燥タンパク質粉末を含有する炭化水素溶液を調製して分散相を生成することによって、架橋化ポリマーコーティング微粒子を製造するための方法を提供する。方法は、分散相を連続相と混合して、連続相中に分散相のエマルジョン液滴を生成することであって、連続相が、フルオロカーボン液及び0.1~5.0%w/vのフッ素系界面活性剤を含む、当該生成することと、ポリマーコーティング微粒子を採取することと、を更に含む。炭化水素溶液は、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、又はそれらの組み合わせを含む群から選択される炭化水素溶媒を含み得る。フルオロカーボン溶液は、高粘度フルオロカーボンであり得る。例示的な実施形態において、フルオロカーボン溶液は、FC-40又はFC-70を含有し得、フッ素系界面活性剤は、ペルフルオロポリエーテル-b-ポリエチレングリコール-b-ペルフルオロポリエーテルであり得、Pico-Surf(商標)1として市販されている。
【0094】
炭化水素溶媒
いくつかの例示的な実施形態において、炭化水素溶媒(炭化水素液体とも称される)は、ポリマー材料、例えば、生体分解性又は生体侵食性の架橋可能なポリマーが炭化水素に可溶性であるように選択される。いくつかの実施形態において、炭化水素溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、又はそれらの組み合わせを含む群から選択される。いくつかの実施形態において、炭化水素溶媒は、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、エタノール、メタノール、ペンタン、プロパノール、ヘキサン、又はこれらの組み合わせを含有することができる。
【0095】
フッ素系液体
例示的なフッ素系液体は、Flourinert(商標)FC-40(平均MW=650g/mol)である1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロ-N,N-ビス(1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブチル)ブタン-1-アミン、Fluorinert(商標)FC-70(平均MW=821g/mol)(ペルフルオロトリペンチルアミン)、又はそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されないフルオロカーボン液である。いくつかの例示的な実施形態において、フルオロカーボン液は、ヒドロフルオロエーテル(HFE)であるか、又はそれを含む。例示的なHFEとしては、NOVEC(商標)7000(1-メトキシヘプタフルオロプロパン)、NOVEC(商標)7100(メトキシ-ノナフルオロブタン)、NOVEC(商標)7200(エトキシ-ノナフルオロブタン)、又はNOVEC(商標)7500(2-(トリフルオロメチル)-3-エトキシドデカフルオロヘキサンが挙げられる、これらに限定されない。更に他の例示的な実施形態において、フルオロカーボン液としては、FC-40、FC-70、Novec(商標)7500、Novec(商標)7100、Novec(商標)7000、又はそれらの組み合わせが挙げられる。ある特定の実施形態において、第2の溶液又は連続相溶液は、フッ素系液体に加えて、フッ素系界面活性剤(FS)を含む。例示的なFSは、Pico-Surf(商標)1として市販されている、ペルフルオロポリエーテル-b-ポリエチレングリコール-b-ペルフルオロポリエーテル(PFPE-PEG-PFPE)トリブロックコポリマーである。いくつかの例示的な実施形態において、フルオロカーボン液又は第2の溶液若しくは連続相溶液は、FC-40及びPico-Surf(商標)1を含む。
【0096】
いくつかの例示的な実施形態において、FSは、
であり、式中、
であり、ここで、nは約37、x+zは約6.0、yは約12.5であるか、又はn=3.7、x+zは約3.6、yは約9.0である。(Lee,M.et al.,Lab Chip.,7:14(3):509-13(2014)を参照されたい)。
【0097】
いくつかの例示的な実施形態において、HFEは、2-(トリフルオロメチル)-3-エトキシドデカフルオロヘキサンに対応する、以下の化学構造を有する。
【0098】
他の例示的な実施形態において、フルオロカーボン液又は第2の溶液若しくは連続相溶液は、図1Bに例解される構造を有するFC-70を含む。
【0099】
本開示による方法での使用に好適な他のHFEは、全ての水素原子がフッ素置換を伴わずに炭素上に存在し、エーテル酸素、すなわちRfORhによってフッ素化炭素から分離される分子のクラスを含む。HFEは、直鎖状、分岐状、若しくは環状、又はこれらの組み合わせ(アルキル環状脂肪族など)であり得、好ましくはエチレン系不飽和を含まず、合計で約4~約20個の炭素原子を有する分子構造を有する。かかるHFEは、本質的に純粋な化合物として、又は混合物として、知られており、容易に入手可能である。HFEの親油性及び親フッ素性のために、それらは、フルオロカーボン及び炭化水素の両方と混和性である。炭化水素/フルオロカーボンエマルジョンに添加すると、炭化水素をフルオロカーボン相に抽出し、硬化プロセスを加速するための共溶媒として作用することができる。
【0100】
いくつかの例示的な実施形態において、炭化水素溶媒、フルオロカーボン、又はそれらの両方は、エマルジョンを撹拌しながら、任意選択的に真空下で蒸発によって除去される。いくつかの例示的な実施形態において、微粒子は、濾過することによって、任意選択的に真空下で濾過することによって、採取される。
【0101】
フルオロカーボン相におけるHFEのパーセンテージは、異なるHFEの親油性及び親フルオロ性に応じて、0~40%v/vであることができる。HFEパーセンテージを増加させると、炭化水素抽出率が増加する。しかしながら、HFEのパーセンテージは、微粒子のサイズ及び形態を制御することがより困難になる可能性があるため、高すぎるべきではない。
【0102】
侵食性又は生体分解性ポリマー架橋調節剤
官能化架橋可能なポリマー濃度を低減させながら炭化水素相粘度を維持するために、架橋調節剤が炭化水素相に添加され得る。これは、架橋反応速度を低下させ、ゲル化時間を延長させる。いくつかの例示的な実施形態において、架橋調節剤は、非官能化の侵食性又は生体分解性ポリマーである。
【0103】
例示的な実施形態において、架橋調節剤は、分岐又は直鎖ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマー(PLGA)、ポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、PLGA-エチレンオキシドフマレート、ポリエチレングリコール1000にエステル化されたPLGA-アルファ-トコフェリルスクシネート(PLGA-TGPS)、ポリ無水物ポリ[1,6-ビス(p-カルボキシフェノキシ)ヘキサン](pCPH)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-コヒドロキシ吉草酸)(PHB-PVA)、ポリエチレングリコール-ポリ(乳酸)コポリマー(PEG-PLA)、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)、ポリ-アルキル-シアノ-アクリレート(PAC)、ポリ(エチル)シアノアクリレート(PEC)、ポリイソブチルシアノアクリレート、ポリ-N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(ポリ(HPMA))、ポリ-β-R-ヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ-β-R-ヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ-β-R-リンゴ酸、リン脂質-コレステロールポリマー、2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン/ポリエチレングリコール-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DOPC/PEG-DSPE)/コレステロール、多糖類、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、アルギネート、デキストラン及びデキストランヒドロゲルポリマー、アミロース、イヌリン、ペクチン及びグアーガム、キトサン、キチン、ヘパリン、ヒアルロン酸、シクロデキストリン(CD)ベースのポリロタキサン及びポリ擬ロタキサン、ポリアスパルテート、ポリグルタメート、ポリルシン、ロイシン-グルタメートコポリマー、ポリブチレンスクシネート、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、フィブロイン、ポリオルトエステル、ポリオルトエステル-ポリアミジンコポリマー、ポリオルトエステル-ジアミンコポリマー、潜在酸を組み込んだポリオルトエステル、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(ブチレンテレフタレート)コポリマー、並びにそれらの組み合わせ及びコポリマーを含む群から選択されるポリマーである。
【0104】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、共有結合化学結合によって接続された繰り返しモノマーを含有する巨大分子を指す。いくつかの例示的な実施形態において、ポリマーは、生体適合性、生体分解性、及び/又は生体侵食性であり得る。生体適合性及び生体分解性ポリマーは、天然又は合成であることができる。
【0105】
いくつかの例示的な実施形態において、侵食性又は生体分解性ポリマーは、架橋によって接続されたポリマーのネットワークの一部であり得る。架橋は、共有結合性、イオン性、親和性、又は物理的基礎を有し得る。本開示による例示的な実施形態に存在する共有結合性架橋は、混合されて、互いに反応してマトリックスを形成するように誘発される、複数の反応性官能基を有するポリマー又はポリマー前駆体を利用し得る。H/Fエマルジョンを使用してヒドロゲル微粒子(マイクロゲル)を作製するために、架橋反応は、主に乳化プロセスの後に開始し、安定して架橋された別個のマイクロゲル粒子を形成するように炭化水素エマルジョン液滴内で進行すべきである。そのため、架橋反応速度又はゲル化速度を制御することは、所望の特徴を有する別個の架橋されたマイクロゲル粒子を生成するのに役立つ。
【0106】
タンパク質薬物
一般に、任意の活性成分が、本開示の微粒子に組み込まれ得る。いくつかの例示的な実施形態において、活性成分は、薬物である。特定の例示的な実施形態において、活性成分は、タンパク質である。かかるタンパク質としては、抗体、受容体、融合タンパク質、アンタゴニスト、阻害剤、酵素(酵素置換療法に使用されるものなど)、因子及び補因子、サイトカイン、ケモカイン、抑制因子、活性化因子、リガンド、レポータータンパク質、選択タンパク質、タンパク質ホルモン、タンパク質毒素、構造タンパク質、貯蔵タンパク質、輸送タンパク質、神経伝達物質、並びに収縮タンパク質が挙げられ得るが、これらに限定されない。典型的には、タンパク質は、例えば、噴霧乾燥、エレクトロスプレー乾燥、可逆沈殿、噴霧凍結、マイクロテンプレート、又はこれらの組み合わせによって微粉化される。いくつかの例示的な実施形態において、タンパク質は、VEGFトラップタンパク質又はその切断形態である。開示される方法で使用することができる他のタンパク質の例が以下に記載される。
【0107】
いくつかの例示的な実施形態において、開示される無水エマルジョン方法及びシステムによって製造される微粒子製剤は、薬物を含む。例示的な薬物としては、タンパク質、融合タンパク質及びその断片、抗体及びその抗原結合断片が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例示的な実施形態において、タンパク質は、VEGFトラップタンパク質(例えば、hIgG1のFcに融合されたVEGF受容体Flk1のIgドメイン3に融合されるVEGF受容体Flt1のIgドメイン2を含むアフリベルセプト、例えば、米国特許第7,087,411号、同第7,279,159号、及び同第8,144,840号に記載され、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)である。いくつかの例示的な実施形態において、VEGFトラップタンパク質は、米国特許第7,396,664号(その全体が参照により組み込まれる)に記載されるようなVEGFトラップの切断形態である。
【0108】
抗体(「免疫グロブリン」とも称される)は、複数のポリペプチド鎖及び広範な翻訳後修飾を有するタンパク質の例である。標準的な免疫グロブリンタンパク質(例えば、IgG)は、4つのポリペプチド鎖-2つの軽鎖及び2つの重鎖を含む。各軽鎖は、システインジスルフィド結合を介して1つの重鎖に結合し、2つの重鎖は、2つのシステインジスルフィド結合を介して互いに結合している。哺乳動物系において産生された免疫グロブリンはまた、様々なポリサッカライドによって様々な残基(例えば、アスパラギン残基)でグリコシル化され、種によって異なり得、これは治療用抗体の抗原性に影響を及ぼし得る。Butler and Spearman,”The choice of mammalian cell host and possibilities for glycosylation engineering”,Curr.Opin.Biotech.30:107-112(2014).
【0109】
抗体重鎖定常領域は、3つのドメイン:CH1,CH2,及びCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてLCVR又はVLと略される)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLを含む。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に更に細分され得、これは、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域により散在する。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRからなり、アミノ末端からカルボキシ末端に、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される。重鎖CDRは、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3と略され得、軽鎖CDRは、LCDRl、LCDR2、及びLCDR3と略され得る。「高親和性」抗体という用語は、表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)又は溶液親和性ELISAによって測定されるとき、少なくとも10-9M、少なくとも10-10M、少なくとも10-11M、又は少なくとも10-12Mのそれらの標的に対する結合親和性を有する抗体を指す。
【0110】
抗体軽鎖は、任意の生物からの免疫グロブリン軽鎖定常領域配列を含み、特に指定されない限り、ヒトカッパ及びラムダ軽鎖を含む。軽鎖可変(VL)ドメインは、通常、特に指定されない限り、3つの軽鎖CDR及び4つのフレームワーク(FR)領域を含む。一般に、全長軽鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端に、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を含むVLドメイン、及び軽鎖定常ドメインを含む。これらの発明で使用することができる軽鎖としては、例えば、抗原結合タンパク質によって選択的に結合される第1又は第2の抗原のいずれにも選択的に結合しない軽鎖が挙げられる。好適な軽鎖としては、既存の抗体ライブラリ(ウェットライブラリ又はインシリコ)において最も一般的に用いられる軽鎖についてスクリーニングすることによって識別することができるものが挙げられ、軽鎖は、抗原結合タンパク質の抗原結合ドメインの親和性及び/又は選択性に実質的に干渉しない。好適な軽鎖としては、抗原結合タンパク質の抗原結合領域によって結合される片方又は両方のエピトープに結合することができるものが挙げられる。
【0111】
抗体可変ドメインとしては、N末端からC末端までの配列に、以下のアミノ酸領域(別段の指示がない限り):FRl、CDRl、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4を含む、免疫グロブリン軽鎖又は重鎖のアミノ酸配列(必要に応じて修飾される)が挙げられる。「可変ドメイン」は、ベータシートが第1のベータシートの残基と第2のベータシートの残基との間のジスルフィド結合によって接続される、二重ベータシート構造を有する標準的なドメイン(VH又はVL)に折り畳むことができるアミノ酸配列を含む。
【0112】
抗体相補性決定領域(「CDR」)は、通常(すなわち、野生型動物において)、免疫グロブリン分子(例えば、抗体又はT細胞受容体)の軽鎖又は重鎖の可変領域における2つのフレームワーク領域間に出現する、生物の免疫グロブリン遺伝子の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む。CDRは、例えば、生殖細胞系列配列、あるいは、例えば、ナイーブ又は成熟B細胞若しくはT細胞によって、再配列されたか、又は再配列されていない配列によってコードすることができる。いくつかの状況において(例えば、CDR3の場合)、CDRは、隣接していない(例えば、再配列されていない核酸配列において)が、B細胞核酸配列において、例えば、配列のスプライシング又は接続の結果(例えば、重鎖CDR3を形成するV-D-J組換え)として隣接している、2つ以上の配列(例えば、生殖系列配列)によってコードすることができる。
【0113】
抗体の上記成分の各々は、本発明の方法に従って製造することができる。
【0114】
二重特異性抗体は、2つ以上のエピトープに選択的に結合することができる抗体を含む。二重特異性抗体は、概して、2つの異なる重鎖を含み、各重鎖は、2つの異なる分子(例えば、抗原)上又は同じ分子上(例えば、同じ抗原上)のいずれかで異なるエピトープに特異的に結合する。二重特異性抗体が2つの異なるエピトープ(第1のエピトープ及び第2のエピトープ)に選択的に結合することができる場合、第1のエピトープに対する第1の重鎖の親和性は、概して、第2のエピトープに対する第1の重鎖の親和性よりも、少なくとも1~2、3、又は4桁低く、逆も同様である。二重特異性抗体によって認識されるエピトープは、同じか又は異なる標的上(例えば、同じ又は異なるタンパク質上)にあり得る。二重特異性抗体は、例えば、同じ抗原の異なるエピトープを認識する重鎖を組み合わせることによって作製され得る。例えば、同じ抗原の異なるエピトープを認識する重鎖可変配列をコードする核酸配列は、異なる重鎖定常領域をコードする核酸配列に融合され得、かかる配列は、免疫グロブリン軽鎖を発現する細胞で発現され得る。典型的な二重特異性抗体は、各々が3つの重鎖CDR、続いて、(N末端からC末端に)CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを有する2つの重鎖、並びに抗原結合特異性を付与しないが、各重鎖と会合し得るか、又は各重鎖と会合し得、かつ重鎖抗原結合領域が結合するエピトープのうちの1つ以上と会合し得るか、又は各重鎖と会合し得、かつ重鎖のうちの一方若しくは両方をエピトープの一方若しくは両方と結合させ得、本発明に従って製造することができる、免疫グロブリン軽鎖を有する。
【0115】
例えば、抗体実施形態において、本発明は、全ての主要な抗体クラス、すなわちIgG、IgA、IgM、IgD、及びIgEに基づいた診断及び治療のための研究及び製造使用に適している。IgGは、IgG1(IgG1λ及びIgG1κを含む)、IgG2、及びIgG4などの好ましいクラスである。本発明によって製造される例示的な抗体としては、アリロクマブ、アトルチビマブ、マフチビマブ、オデシビマブ、オデシビブマブ-ebgn、カシリビマブ、イムデビマブ、セミプリマブ、センプリマブ-rwlc、デュピルマブ、エビナクマブ、エビナクマブ-dgnb、ファシムマブ、ネスバクマブ、トレボグルマブ、リヌクマブ、及びサリルマブが挙げられる。
【0116】
いくつかの例示的な実施形態において、微粒子製剤中のタンパク質は、抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、抗原結合抗体断片、一本鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディ若しくはテトラボディ、二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD-IG)と称される二重特異性四価免疫グロブリンG様分子、IgD抗体、IgE抗体、IgM抗体、IgG抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、又はIgG4抗体である。いくつかの例示的な実施形態において、抗体は、IgG1抗体である。いくつかの例示的な実施形態において、抗体は、IgG2抗体である。更に他の例示的な実施形態において、抗体は、IgG4抗体である。他の例示的な実施形態において、抗体は、キメラヒンジを含む。更に他の例示的な実施形態において、抗体は、キメラFcを含む。他の例示的な実施形態において、抗体は、キメラIgG2/IgG4抗体である。他の例示的な実施形態において、抗体は、キメラIgG2/IgG1抗体である。いくつかの例示的な実施形態において、抗体は、キメラIgG2/IgG1/IgG4抗体である。
【0117】
いくつかの例示的な実施形態において、抗体は、抗プログラム細胞死1抗体(例えば、米国特許第9,987,500号に記載のような抗PD1抗体、抗プログラム細胞死リガンド-1抗体(例えば、米国特許第9,938,345号に記載のような抗PD-L1抗体)、抗Dll4抗体、抗アンジオポエチン-2抗体(例えば、米国特許第9,402,898号に記載のような抗ANG2抗体)、抗アンジオポエチン様3抗体(例えば、米国特許第9,018,356号に記載のような抗AngPtl3抗体)、抗血小板由来成長因子受容体抗体(例えば、米国特許第9,265,827号に記載のような抗PDGFR抗体)、抗Erb3抗体、抗プロラクチン受容体抗体(例えば、米国特許第9,302,015号に記載のような抗PRLR抗体)、抗補体抗体(例えば、米国特許第9,795,121号に記載のような抗C5抗体)、抗TNF抗体、抗表皮増殖因子受容体抗体(例えば、米国特許第9,132,192号に記載のような抗EGFR抗体又は米国特許第9,475,875号に記載のような抗EGFRvIII抗体)、抗プロプロテイン転換酵素サブチリシンケキシン-9抗体(例えば、米国特許第8,062,640号又は米国特許第9,540,449号に記載のような抗PCSK9抗体)、抗成長及び分化因子8抗体(例えば、抗GDF8抗体、抗ミオスタチン抗体としても知られており、米国特許第8,871,209号又は第9,260,515号に記載されている)、抗グルカゴン受容体抗体(例えば、米国特許第9,587,029号又は同第9,657,099号に記載のような抗GCGR抗体)、抗VEGF抗体、抗IL1R抗体、抗インターロイキン4受容体抗体(例えば、米国特許出願公開第2014/0271681A1号又は米国特許第8,735,095号若しくは同第8,945,559号に記載のような抗IL4R抗体)、抗インターロイキン6受容体抗体(例えば、米国特許第7,582,298号、同第8,043,617号、又は同第9,173,880号に記載のような抗IL6R抗体)、抗IL1抗体、抗IL2抗体、抗IL3抗体、抗IL4抗体、抗IL5抗体、抗IL6抗体、抗IL7抗体、抗インターロイキン33(例えば、米国特許第9,453,072号又は同第9,637,535号に記載のような抗IL33抗体)、抗呼吸器合胞体ウイルス抗体(例えば、米国特許第9,447,173号及び同第10,125,188号、並びに米国特許出願公開第2019/0031741A1号に記載のような抗RSV抗体)、抗分化抗原群3抗体(例えば、米国特許第9,657,102号に記載のような抗CD3抗体)、抗分化抗原群抗体(例えば、米国特許第9,657,102号及びUS20150266966A1、並びに米国特許第7,879,984号に記載のような抗CD20抗体)、抗CD19抗体、抗CD28抗体、抗分化抗原群48抗体(例えば、米国特許第9,228,014号に記載のような抗CD48抗体)、抗Fel d1抗体(例えば、米国特許第9,079,948号に記載)、SARS-CoV-2治療(抗SARS-CoV-2抗体カシリビマブ及びイムデビマブを含むREGN-COV(商標))、抗SARS-CoV-2抗体、抗中東呼吸器症候群ウイルス抗体(例えば、米国特許第9,718,872号に記載のような抗MERS抗体)、エボラに対する抗体カクテル(アトルチビマブ、マフチビマブ、及びオデシビマブ-ebgn(INMAZEB(登録商標))を含むREGN-EB3)、抗エボラウイルス抗体(例えば、米国特許第9,771,414号に記載)、抗ジカウイルス抗体、抗リンパ球活性化遺伝子3抗体(例えば、抗LAG3抗体、又は抗CD223抗体)、抗神経成長因子抗体(例えば、米国特許出願公開第2016/0017029号、並びに米国特許第8,309,088号及び同第9,353,176号に記載のような抗NGF抗体)、抗アクチビンA抗体、並びに抗プロテインY抗体を含む群から選択される。
【0118】
いくつかの例示的な実施形態において、二重特異性抗体は、抗CD3×抗CD20二重特異性抗体(米国特許第9,657,102号及びUS20150266966A1に記載)、抗CD3×抗ムチン16二重特異性抗体(例えば、抗CD3×抗Muc16二重特異性抗体)、及び抗CD3×抗前立腺特異性膜抗原二重特異性抗体(例えば、抗CD3×抗PSMA二重特異性抗体)を含む群から選択され得る。
【0119】
いくつかの例示的な実施形態において、タンパク質は、アブシキシマブ、アダリムマブ、アダリムマブ-アット、アド-トラスツズマブ、アフリベルセプト、アレムツズマブ、アリロクマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベバシズマブ、ベズロトキシマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブロダルマブ、ブロルシズマブ、カナキヌマブ、カプロマブペンデチド、セルトリズマブペゴル、セミプリマブ、セツキシマブ、デノスマブ、ジヌツキシマブ、デュピルマブ、デュルバルマブ、エクリズマブ、エロツズマブ、エミシズマブ-kxwh、エムタンシネアリロクマブ、エビナクマブ、エボロクマブ、ファシヌマブ、ゴリムマブ、グセルクマブ、イブリツモマブチウキセタン、イダルシズマブ、インフリキシマブ、インフリキシマブ-アブダ、インフリキシマブ-dyyb、イピリムマブ、イキセキズマブ、メポリズマブ、ネシツムマブ、ネスバクマブ、ニボルマブ、オビルトキサキシマブ、オビヌツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オマリズマブ、パニツムマブ、ペンブロリズマブ、ペルツズマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラクシバクマブ、レスリズマブ、リヌクマブ、リツキシマブ、サリルマブ、セクキヌマブ、シルツキシマブ、トシリズマブ、トシリズマブ、トラスツズマブ、トレボグルマブ、ウステキヌマブ、及びベドリズマブを含む群から選択され得る。
【0120】
抗体誘導体及び断片は、本発明による製造に適しており、抗体断片(例えば、ScFv-Fc、dAB-Fc、半抗体)、多重特異性(例えば、IgG-ScFv、IgG-dab、ScFV-Fc-ScFV、三重特異性)、及びFc融合タンパク質(例えば、Fc融合(N末端)、Fc融合(C末端)、モノFc融合、二重特異性Fc融合)が挙げられるが、これらに限定されない。「Fc含有タンパク質」という句は、抗体、二重特異性抗体、Fcを含有する抗体誘導体、Fcを含有する抗体断片、Fc融合タンパク質、イムノアドヘシン、並びに免疫グロブリンCH2及びCH3領域の少なくとも機能的部分を含む他の結合タンパク質を含む。「機能部分」は、Fc受容体(例えば、FcyR、又はFcRn(新生児Fc受容体)に結合することができ、かつ/又は補体の活性化に関与することができる、CH2及びCH3領域を指す。CH2領域及びCH3領域が、それを任意のFc受容体に結合することができなくし、また補体を活性化することができなくする、欠失、置換、及び/若しくは挿入又は他の修飾を含む場合、CH2領域及びCH3領域は機能的ではない。
【0121】
非天然立体配置のFabドメインなどの非天然形式を有する抗原結合分子(ABM)及びABMコンジュゲートは、本発明に従って表すことができ、WO2021/026409A1に開示されている。多重特異性結合分子(MBM)及びMBMコンジュゲートは、本発明によって製造することができ、WO2021/091953A1及びWO2021/030680A1に開示されている。
【0122】
Fc含有タンパク質は、免疫グロブリンドメインに改変を含むことができ、改変が結合タンパク質の1つ以上のエフェクター機能に影響を与える場合を含む(例えば、FcyR結合、FcRn結合、したがって半減期、及び/又はCDC活性に影響を与える改変)。かかる改変としては、免疫グロブリン定常領域のEU番号付けを参照して、以下の改変:238、239、248、249、250、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、297、298、301、303、305、307、308、309、311、312、315、318、320、322、324、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、337、338、339、340、342、344、356、358、359、360、361、362、373、375、376、378、380、382、383、384、386、388、389、398、414、416、419、428、430、433、434、435、437、438、及び439、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
例えば、限定によるものではなく、結合タンパク質は、Fc含有タンパク質であり得、増強された血清半減期を呈し(言及された改変を有しない同じFc含有タンパク質と比較したとき)、250位(例えば、E又はQ)、250位及び428位(例えば、L又はF)、252位(例えば、L/Y/F/W、又はT)、254位(例えば、S又はT)、及び256位(例えば、S/R/Q/E/D又はT)に改変、又は428位及び/若しくは433位(例えば、L/R/SI/P/Q、又はK)及び/若しくは434位(例えば、H/F又はY)に改変、又は250位及び/若しくは428位に改変、又は307位若しくは308位(例えば、308F、V308F)及び434位に改変を有する。別の例において、改変は、428L(例えば、M428L)及び434S(例えば、N434S)改変、428L、2591(例えば、V259I)、及び308F(例えば、V308F)改変、433K(例えば、H433K)及び434(例えば、434Y)改変、252、254、及び256(例えば、252Y、254T、及び256E)改変、250Q及び428L改変(例えば、T250Q及びM428L)、307及び/又は308改変(例えば、308F又は308P)を含むことができる。
【0124】
上述のように、本発明はまた、融合タンパク質を含む、他の分子の製造にも適している。これらのタンパク質は、2つ以上のタンパク質の一部分又は全てを含むことができ、そのうちの1つは免疫グロブリン分子のFc部分であり、それらの天然状態では融合されていない。Fc融合タンパク質としては、Fc融合(N末端)、Fc融合(C末端)、モノFc融合、及び二重特異性Fc融合が挙げられる。抗体由来ポリペプチド(Fcドメインを含む)の様々な部分に融合した特定の異種ポリペプチドを含む融合タンパク質の調製は、例えば、Ashkenazi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA 88:10535-39(1991)、Byrn et al.,Nature 344:677-70,1990、及びHollenbaugh et al.,”Construction of Immunoglobulin Fusion Proteins”,in Current Protocols in Immunology,Suppl.4,pages 10.19.1-10.19.11(1992)によって記載されている。受容体Fc含有タンパク質もまた、C.Huang,”Receptor-Fc fusion therapeutics,traps,and MFMETIBODY technology,”20(6)Curr.Opin.Biotechnol.692-9(2009)に記載されている。
【0125】
受容体Fc融合タンパク質は、Fc部分に結合された受容体の1つ以上の細胞外ドメインのうちの1つ以上を含み、いくつかの実施形態において、ヒンジ領域、続いて免疫グロブリンのCH2及びCH3ドメインを含む。いくつかの実施形態において、Fc融合タンパク質は、単一又は1つを超えるリガンドに結合する2つ以上の明確に異なる受容体鎖を含有する。いくつかの受容体Fc融合タンパク質は、複数の異なる受容体のリガンド結合ドメインを含有し得る。
【0126】
いくつかの例示的な実施形態において、タンパク質は、Fc部分及び別のドメインを含有する組換えタンパク質(例えば、Fc融合タンパク質)であり得る。他の例示的な実施形態において、Fc融合タンパク質は、Fc部分に連結された受容体の1つ以上の細胞外ドメインを含有する受容体Fc融合タンパク質である。他の例示的な実施形態において、Fc部分は、ヒンジ領域、続いてIgGのCH2及びCH3ドメインを含む。更に別の例示的な実施形態において、受容体Fc融合タンパク質は、単一のリガンド又は複数のリガンドのいずれかに結合する2つ以上の異なる受容体鎖を含有する。
【0127】
例えば、Fc融合タンパク質は、トラップタンパク質であり得、例えば、IL-1トラップ(例えば、hIgG1のFcに融合されたIl-1R1細胞外領域に融合されたIL-1RAcPリガンド結合領域を含むリロナセプト、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,927,004号を参照されたい)、又はVEGFトラップ(例えば、hIgG10のFcに融合されたVEGF受容体Flk1のIgドメイン3に融合されたVEGF受容体Flt1のIgドメイン2を含むアフリベルセプト又はziv-アフリベルセプト)などが挙げられる。他の例示的な実施形態において、Fc融合タンパク質は、Fc部分に連結した抗体の可変重鎖断片及び可変軽鎖断片などの1つ以上の抗原結合ドメインを含有するScFv-Fc融合タンパク質であり得る。
【0128】
ミニトラップタンパク質は、Fc部分の代わりに多量体化成分(MC)を使用するトラップタンパク質であり、例えば、米国特許第7,279,159号及び同第7,087,411号に開示されており、本発明に従って製造することができる。
【0129】
例示的な実施形態において、初期タンパク質は、乾燥粉末、例えば、微粉化された乾燥粉末の形態にある。いくつかの例示的な実施形態において、タンパク質は、噴霧乾燥粉末(SDP)である。タンパク質の溶液の代わりに噴霧乾燥タンパク質を使用することは、微粒子におけるより高いタンパク質負荷及び封入プロセス中のより良好なタンパク質安定性の利点を有する。
【0130】
いくつかの例示的な実施形態において、乾燥タンパク質分子は、封入プロセス及び保存条件全体の間、固体状態にとどまり、安定剤又は他の賦形剤によって囲まれている。タンパク質粉末中の賦形剤としては、保存中のタンパク質安定性を改善することが知られている任意の賦形剤、例えば、ソルビトール、グリセロール、マンニトール、トレハロース、スクロース、アルギニン、アラニン、プロリン、グリシン、ロイシン、ヒスチジン、塩化ナトリウム、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリエチレングリコール、又はリン酸緩衝剤が挙げられ得る。
【0131】
例示的な実施形態において、封入された噴霧乾燥タンパク質は、表面タンパク質の小さい部分のみが界面に曝露され、おそらく最小化された表面相互作用に起因して、高い回収率及び低い凝集を呈する。更に他の例示的な実施形態において、タンパク質は、封入の前に微粉化される。
【0132】
ヒドロゲル微粒子(マイクロゲル)
他の例示的な実施形態において、開示される非水性エマルジョンシステムを使用して製造される医薬組成物が提供される。他の例示的な実施形態において、医薬組成物は、ポリマー表層及び微粉化タンパク質コアを有するマイクロゲルを含む。更に他の例示的な実施形態において、マイクロゲルは、概ね球状である微粒子を含む。
【0133】
微粒子及びタンパク質コアは、球状に近づくものもあれば、より不規則な形状になるものもあるであろう。したがって、本明細書で使用される場合、「直径」という用語は、以下の各々及びいずれかを意味する:(a)微粒子若しくはタンパク質コアに外接する球体の直径、(b)微粒子若しくはタンパク質コアの境界内に収まる最大の球体の直径、(c)(a)の外接球体と(b)の限定球体との間の任意の測定値(2つの間の平均値を含む)、(d)微粒子若しくはタンパク質コアの最長軸の長さ、(e)微粒子若しくはタンパク質コアの最短軸の長さ、(f)長軸(d)の長さと短軸(e)の長さとの間の任意の測定値(2つの間の平均値を含む)、及び/又は(g)マイクロフロー撮像(MFI)、ナノ粒子トラッキング分析(NTA)によって決定されるような、又は静的光散乱法(SLS)、動的散乱法(DLS)、若しくはレーザ回折分析などの光散乱法による体積若しくは数平均直径としての、円相当径(ECD)。直径は、一般にマイクロメートル(μm又はミクロン)で表される。直径は、光学測定又は走査電子顕微鏡測定によって決定することができる。
【0134】
開示される非水性エマルジョン方法によって製造される微粒子は、低いか、非常に低いか、又はゼロに近い量の水(例えば、重量で3%未満の水)を有するタンパク質の複数の分子を含む。いくつかの例示的な実施形態において、微粉化タンパク質粒子は、2ミクロン~約35ミクロン、若しくは2.0~50μm、若しくは5.0~15.0μmの範囲、又は約10μmのECDを有し得る。微粉化タンパク質粒子は、任意の特定のタンパク質実体に限定されず、上記のタンパク質を含む治療用タンパク質の調製及び送達に適している。
【0135】
例えば、タンパク質粒子は、噴霧乾燥、凍結乾燥及び粉砕、ジェット粉砕、非溶媒中の可逆沈殿、造粒、漸進的沈殿(米国特許第7,998,477号)、超臨界流体沈殿(米国特許第6,063,910号)、又は高圧二酸化炭素誘導粒子形成(Bustami et al.,Pharma.Res.17:1360-66(2000))によって微粉化され得る。本明細書で使用される場合、「噴霧乾燥」という用語は、噴霧乾燥機を使用することによって、スラリー又は懸濁液からミクロンサイズの粒子を含有する乾燥粉末を製造する方法を指す。噴霧乾燥機は、噴霧器又はスプレーノズルを使用して、懸濁液又はスラリーを制御されたドロップサイズのスプレーに分散させる。
【0136】
噴霧乾燥によって、10μm~500μmのドロップサイズを生成することができる。溶媒(水又は有機溶媒)が乾燥すると、タンパク質物質は、ミクロンサイズの粒子に乾燥し、粉末状の物質を形成する。又は、タンパク質-ポリマー懸濁液の場合、乾燥中に、ポリマーは、タンパク質充填の周りのシェルを硬化させた。
【0137】
いくつかの例示的な実施形態において、分散相懸濁液、例えば、炭化水素溶液を含む分散相に懸濁された微粉化タンパク質粉末の濃度は、約1%~約50%w/v、約1%~約30%w/v、約1%~約20%w/v、約1%~約10%w/v、約1%~約5%w/v、約5%~約30%w/v、約5%~約20%w/v、約5%~約10%w/v、約1%w/v、約2%w/v、約3%w/v、約4%w/v、約5%w/v、約6%w/v、約7%w/v、約8%w/v、約9%w/v、約10%w/v、約15%w/v、約20%w/v、約25%w/v、約30%w/v、約35%w/v、約40%w/v、約45%w/v、又は約50%w/vである。
【0138】
いくつかの実施形態において、微粉化タンパク質は、VEGFトラップタンパク質である。微粉化VEGFトラップタンパク質粒子の形成のための医薬製剤は、約10mg/mL~約100mg/mLのVEGFトラップタンパク質、約1.0~約50mg/mLのタンパク質、約10mg/mL、約15mg/mL、約20mg/mL、約25mg/mL、約30mg/mL、約35mg/mL、約40mg/mL、約45mg/mL、約50mg/mL、約55mg/mL、約60mg/mL、約65mg/mL、約70mg/mL、約75mg/mL、約80mg/mL、約85mg/mL、約90mg/mL、約95mg/mL、又は約100mg/mLのVEGFトラップタンパク質を含有し得る。いくつかの例示的な実施形態において、VEGFトラップタンパク質は、眼への硝子体内投与に好適な眼科用製剤であり得、本出願に参照により組み込まれる米国特許第8,092,803号に開示される製剤と実質的に同様である。
【0139】
例示的な実施形態において、開示される非水性エマルジョンシステムを使用して製造される微粒子は、約1μm~約200μm、約1μm~約150μm、約1μm~約100μm、約2μm~約70μm、約5μm~約65μm、約10μm~約60μm、約15μm~約55μm、約10μm~約50μm、約1.0μm~15μm、約20μm、約25μm、又は約30μm.範囲の直径を有し得る。サイズの変動は大部分がポリマー表層の厚さを反映するが、タンパク質コアの直径が、ある程度サイズの変動に関与する可能性がある。
【0140】
いくつかの例示的な実施形態において、開示される非水性エマルジョン方法によって形成される微粒子は、流動性微粒子組成物である。開示される流動性微粒子組成物は、医薬的に許容される製剤、例えば、pH緩衝化生理食塩水、水溶液、又は非水溶液を含む製剤中に、医薬的に許容される賦形剤とともに懸濁させることができる。
【0141】
「賦形剤」という用語は、所望の粘度又は安定化効果を提供するために医薬組成物に添加される任意の非治療剤を含む。好適な医薬的賦形剤としては、例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。流動性微粒子組成物は、例えば、27G針を有するシリンジなどのシリンジを使用して、非経口的に投与することができる。微粒子は、タンパク質治療薬の期間放出又は持続放出において有用である。
【0142】
「製剤」という用語は、薬物又は治療剤、例えば、本発明の微粒子と、治療剤の適用に有用であり得る任意の追加の成分、賦形剤、又はビヒクルとの任意の組み合わせを含む。いくつかの例示的な実施形態において、製剤は、微粒子と、pH緩衝化生理食塩水、水溶液、又は非水溶液と、を含み得る。いくつかの例示的な実施形態において、微粒子製剤は、硝子体内に、脈絡膜に、又は皮下に注入される。例えば、VEGFトラップ微粒子は、例えば、血管性眼障害の治療のための硝子体におけるVEGFトラップ治療用タンパク質の徐放又は持続放出において、又は他の障害を治療するVEGFトラップの徐放又は持続放出のための皮下埋め込みにおいて有用であることが想定される。
【0143】
本発明による微粒子は、約37℃の生理学的水性環境において、少なくとも60、90、120、又は150日までの長期間にわたって、比較的一定の速度でタンパク質を放出する(持続放出)。
【0144】
いくつかの例示的な実施形態において、本明細書に開示される非水性エマルジョン方法を使用して製造される微粒子を含有する組成物が提供され、組成物は、100mg超の噴霧乾燥タンパク質を含む。いくつかの例示的な実施形態において、非水性エマルジョン方法は、90%超の収率を有し、99%超の純度を有する微粒子を製造し、50~100μLの注入体積において10%w/w超の負荷、及び10%超のバーストを有する。
【0145】
本開示に従って調製された微粒子を含む医薬製剤は、医薬品及び他の治療用組成物の保存に好適な任意の容器内に含有され得る。例えば、例示的な医薬製剤は、バイアル、アンプル、シリンジ、カートリッジ、又はボトルなどの所定容積を有する密封されかつ滅菌されたプラスチック又はガラス容器内に含有され得る。例えば、透明な及び不透明な(例えば、琥珀色の)ガラス又はプラスチックバイアルを含む異なる種類のバイアルを使用して、本開示の製剤が含有され得る。同様に、任意の種類のシリンジを使用して、本開示の医薬製剤を含有又は投与することができる。
【0146】
本開示に従って調製された微粒子を含む医薬製剤は、「通常のタングステン」シリンジ又は「低タングステン」シリンジ内に含有され得る。当業者によって理解されるように、ガラスシリンジを作製するプロセスは、一般に、ガラスを穿刺し、それによって液体がシリンジから引き出され排出され得る孔を作成するように機能する、高温タングステン棒の使用を含む。このプロセスは、シリンジの内部表面に微量のタングステンの沈着をもたらす。その後の洗浄及びその他の処理ステップを使用して、シリンジ中のタングステンの量を低減させることができる。本明細書で使用される場合、「通常のタングステン」という用語は、シリンジが、500ppb(十億分率)以上のタングステンを含むことを意味する。「低タングステン」という用語は、シリンジが500ppb未満のタングステンを含むことを意味する。例えば、本開示による低タングステンシリンジは、約490、480、470、460、450、440、430、420、410、390、350、300、250、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10未満、又はそれよりも少ないppbのタングステンを含有することができる。
【0147】
シリンジに使用されるゴム製プランジャ、及びバイアルの開口部を閉じるために使用されるゴム製ストッパは、シリンジ又はバイアルの医薬内容物の汚染を防止するため、又はそれらの安定性を維持するためにコーティングされ得る。したがって、本開示の医薬製剤は、特定の実施形態により、コーティングされたプランジャを含むシリンジ内、又はコーティングされたゴム製ストッパで密封されるバイアル内に含有され得る。例えば、プランジャ又はストッパは、フルオロカーボン膜でコーティングされ得る。本開示の医薬製剤を含有するバイアル及びシリンジとの使用に好適なコーティングされたストッパ又はプランジャの例は、例えば、米国特許第4,997,423号、同第5,908,686号、同第6,286,699号、同第6,645,635号、及び同第7,226,554号に言及されており、それらの内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0148】
本開示の文脈で使用することができる例示的なコーティングされたゴム製ストッパ及びプランジャは、商品名「FluoroTec(登録商標)」で市販されており、West Pharmaceutical Services,Inc.(Lionville,Pa.)から入手可能である。FluoroTec(登録商標)は、医薬品がゴム表面に付着するのを最小化又は防止するために使用されるフルオロカーボンコーティングの例である。
【0149】
例示的な医薬製剤は、フルオロカーボンコーティングされたプランジャを含む低タングステンシリンジ内に含有され得る。
【0150】
例示的な医薬製剤は、注射(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内など)などの非経口経路、又は経皮、粘膜、鼻腔、肺、若しくは経口投与などによって患者に投与することができる。多くの再利用可能なペン又は自動注入器送達デバイスを使用して、本開示の医薬製剤を皮下送達することができる。例としては、Autopen(登録商標)(Owen Mumford,Inc.、Woodstock,UK)、Disetronic Pen(Disetronic Medical Systems、Bergdorf,Switzerland)、Humalog(登録商標)Mix75/25(登録商標)ペン、Humalog(登録商標)ペン、Humulin(登録商標)70/30ペン(Eli Lilly and Co.、Indianapolis,Ind.)、NovoPen(登録商標)I、II、及びIII(Novo Nordisk、Copenhagen,Denmark)、NovoPen(登録商標)Junior(Novo Nordisk、Copenhagen,Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson、Franklin Lakes,N.J.)、OptiPen(登録商標)、OptiPen Pro(登録商標)、及びOptiPen Starlet(商標)、並びにOptiClik(登録商標)(Sanofi-Aventis、Frankfurt,Germany)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0151】
本開示の医薬組成物の皮下送達における適用を有する使い捨てペン又は自動注入器送達デバイスの例としては、SoloSTAR(登録商標)ペン(Sanofi-Aventis)、FlexPen(登録商標)(Novo Nordisk)、及びKwikPen(商標)(Eli Lilly)、SureClike(商標)自動注入装置(Amgen、Thousand Oaks,Calif.)、Pelet(登録商標)(Haselmeier、Stuttgart,Germany)、EpiPen(登録商標)(Dey,L.P.)、並びにHumira(登録商標)Pen(Abbott Labs、Abbott Park,Ill.)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0152】
本開示に従って調製された微粒子を含む医薬製剤を送達するためのマイクロインフューザの使用もまた、本明細書で企図される。本明細書で使用される場合、「マイクロインフューザ」という用語は、長期間(例えば、約10、15、20、25、30分以上)にわたって大量(最大約2.5mL以上)の治療製剤をゆっくりと投与するように設計された皮下送達デバイスを意味する。例えば、米国特許第6,629,949号、米国特許第6,659,982号、及びMeehan et al.,J.Controlled Release 46:107-116(1996)を参照されたい。マイクロインフューザは、高濃度(例えば、約100、125、150、175、200mg/mL以上)又は粘性溶液内に含有される治療用タンパク質の大用量の送達に特に有用である。
【実施例
【0153】
以下の非限定的な実施例は、ブランクマイクロゲルの合成、薬物マイクロゲル、薬物マイクロゲルを含有する製剤、及び非水性エマルジョンシステムを使用して薬物マイクロゲルを作製する方法を例解することを意図している。表1は、以下の実施例で使用された材料を含む。例示的な実施形態において、噴霧乾燥蛍光標識VEGFトラップの固体組成物は、69.8%w/wのVEGFトラップ、0.7%w/wのAlexa488標識VEGFトラップ、13.1%w/wのVEGFトラップグリコシル化、2.1%w/wのリン酸ナトリウム、14.1%w/wのスクロース、及び0.2%w/wのポリソルベート80を含む。噴霧乾燥粉末中の賦形剤の濃度は、本発明の方法の有効性に影響を与えることなく変化し得、本発明の方法は、任意のタンパク質を賦形剤の任意の組み合わせとともに含む噴霧乾燥粉末を用いて使用され得ることが理解されるべきである。
【0154】
(表1)ヒドロゲル微粒子作製のための材料
【0155】
実施例1:非水性エマルジョンシステムを使用したブランク架橋PEGマイクロゲルの合成
図1Aに例解されるように、非水性エマルジョンシステムであるH/Fバルクエマルジョンを介したブランク架橋PEGマイクロゲルの合成は、ジクロロメタン(DCM)中に32%w/vの40kDa PEG-NHS、DCM中に12%w/vのPEG-NH、及びDCM中に35%w/vの8kDa(非官能化直鎖)PEGを20μL:20μL:260μLの比で含むNHS:NH:PEG8kのストック溶液を、1.5mLマイクロチューブ中で混合することによって実行され得る。次いで、1.5mLマイクロチューブの内容物を、0.5%w/wのフッ素系界面活性剤であるPico Surf(商標)1を含有する6mLのFC-40に素早く移し得る。次いで、FC-40溶液中のDCMは、ボルテックス撹拌又は均質化によって乳化され得る。架橋反応は、個々の液滴中で継続して完了し、エマルジョン液滴は、DCMの除去後に最終的にPEGマイクロゲルに硬化する。
【0156】
ブランク架橋PEGマイクロゲルを収集すると、大きいポリマー凝集塊を形成し、エマルジョンから沈殿し得る。小さい液滴は形状を維持し得るが、一方、大きい液滴(約>10μm)は、架橋反応が完了してマイクロゲルが硬化する前に、線状化して溶け込む傾向がある。
【0157】
マイクロゲルの線状化及びその後の凝集を防止するために、上記のプロトコルにおけるFC-40を、より粘性の連続相に置き換えて使用することができる。ストークの法則に従い、相分離速度を低減させる1つの方法は、連続相の粘度を増加させることであることが知られている。したがって、別の市販のフルオロカーボンである、はるかに高い粘度、24cP(4.1cPを有するFC-40と比較して)を有するFluorinert(商標)FC-70(ペルフルオロトリペンチルアミン)を、マイクロゲル作製に使用することができる。より粘性のフルオロカーボンの使用は、より少ない凝集及びマイクロゲルの形成の成功をもたらした(データは示さず)。
【0158】
実施例2.架橋調節剤を使用したゲル化速度の最適化
実施例1に記載されるように、架橋は、求核基を含有する前駆体(PEG-NH)を、求電子基を含有する前駆体(PEG-NHS)と混合することによって達成され得る。反応は混合直後に開始され、反応速度は、後続の乳化プロセスで十分な時間を可能にするように抑制されるべきである。本発明者らは、混合時の15kDa PEG-NHS及び40kDa PEG-NHの反応が、濃度依存性であることを見出した。ゲル化速度は、高いPEG濃度で非常に速く、反応混合物は、混合後直ちにもはや微粉化することができなくなり得る。ポリマー濃度を希釈すると、架橋速度が低減する。しかしながら、それはまた、分散相の粘度を低下させ、噴霧乾燥タンパク質(SDP)を封入する効率を低くする、より小さいマイクロゲルの形成につながり得る。
【0159】
したがって、本発明の方法の例示的な実施形態は、乳化中により大きい液滴を生成するのに十分な分散相の高い粘度を保ちながら、架橋反応速度を制御することを含み、それによってより大きいマイクロゲルを生成し、効率的なタンパク質封入を確実にする。いくつかの例示的な実施形態において、特性における所望のバランスは、架橋調節剤の量を最適化することによって達成される。いくつかの例示的な実施形態において、架橋調節剤は、直鎖状の非官能化PEGであり、反応混合物に添加して、官能化PEG前駆体濃度を低減させながら、炭化水素相粘度を維持し得る。
【0160】
純粋な非官能化架橋調節剤に対する官能化前駆体の比率を最適化するために、ゲル化速度を評価する実験を行い、本発明者らの結果を外挿するのに十分なデータポイントを提供した。最初に、以下のストック溶液:DCM中に32%w/vの40kDa PEG-NHS、DCM中に12%w/vのPEG-NH、及びDCM中に35%w/vの8kDa(非官能化直鎖)PEGを調製した。次いで、PEG-NH及び8kDa PEG溶液を、1.5mL Eppendorfマイクロチューブ中でボルテックス撹拌によって混合した。最後に、様々なPEG-NHS溶液を添加して、300μLの混合物にした。混合物を均質化して反応を開始するためにボルテックス撹拌した後、マイクロチューブを常に傾けて、混合物が流れなくなったか確認し、それによってゲルが形成されたことが示される。PEG-NHS:PEG-NH:PEG 8kDaの様々な比率におけるゲル化時間を表2に示す。
【0161】
以下の表2に例解されるように、官能化架橋可能なポリマー又はポリマー前駆体濃度を低下させ、官能化架橋可能なポリマー又はポリマー前駆体を架橋調節剤(純粋な非官能化直鎖PEG鎖)に置き換えることによって、ゲル化時間を延長して、後続の乳化プロセスを可能にすることができる。
【0162】
(表2)ゲル化時間を最適化するために変化させたPEG前駆体及び非官能化PEG
【0163】
実施例3.架橋PEGマイクロゲルにおける噴霧乾燥タンパク質の封入
いくつかの例示的な実施形態において、架橋PEGマイクロゲルにおける噴霧乾燥タンパク質の封入は、図3に例解されるように達成され得る。マイクロゲルの製造は、DCM中に35%w/vの20kDa PEG、DCM中に32%w/vのHGEO-400GS(PEG-NHS)、及びDCM中に12%w/vのHGEO-150PA(PEG-NH)のストック溶液を最初に調製することによって実行した。次いで、1.5mLマイクロチューブ中で260μLの20kDa PEG及び20μLのPEG-NHを溶液に混合した後、10mgの微粉化タンパク質粉末(例えば、VEGFトラップSDP)を添加し、ボルテックス撹拌し、10分間音波処理して懸濁液を作製した。次いで、20μLのPEG-NHSを懸濁液に添加した後、ボルテックス撹拌して均質化した。次いで、1.5mLマイクロチューブの内容物を、0.5%w/wのPS-1を含有する6mLのFC-70に添加した。次いで、混合物をボルテックス撹拌又は均質化によって乳化した。エマルジョンを穏やかに撹拌しながら3時間以上真空下に置き、架橋反応を完了させ、DCMを除去した。次いで、マイクロゲルを真空濾過し、0.45μmのPES膜に通して洗浄した。真空濾過を使用して、最終収集の前に必要に応じてマイクロゲルを更に乾燥させ得る。生成物を真空下で長時間更に乾燥させ、残留溶媒を低減させた。
【0164】
上記の手順を通して作製したマイクロゲルの粉末は、0.1%PVAのような界面活性剤を含有するPBS中に容易に懸濁して分散させることができるか、又は中鎖トリグリセリドなどの非水性液体ビヒクル中に懸濁させることができる。負荷したタンパク質粒子の位置を特定して視覚化するために、VEGFトラップ(例えば、アフリベルセプト)は、非特異的コンジュゲーションによってAlexa488TFPエステル色素で標識され得る。次いで、1%Alexa488標識タンパク質を含有するVEGFトラップをSDP中に噴霧乾燥させて、蛍光顕微鏡を使用してSDP粒子を可視化することができる。
【0165】
蛍光標識VEGFトラップを含むSDP粒子を封入する架橋PEGマイクロゲルを上記のように製造し、0.1%PVA(凝集を防止し、水溶液中の分散を促進するために使用される界面活性剤)を含有するPBS緩衝液中、又はFC-70中に懸濁させ、顕微鏡下で撮像した。
【0166】
図4A及び4Bは、FC-70中に再懸濁させたSDP負荷マイクロゲルの明視野及び蛍光顕微鏡画像を示す。平均サイズが約26μmである、15μm~60μmのサイズのマイクロゲルの分布が観察され(Leica LAS Xソフトウェアを使用した画像解析による)、微細粒子の集団(<5μm)も示された。SDPからの蛍光シグナルは、明視野チャネルにおける粒子画像と良好に同様に配置され、マイクロゲル内のSDP粒子の効果的な封入を確認した。図5A及び5Bに示されるより高い倍率の画像は、マイクロゲルがほぼ球状であり、SDP粒子(サイズ2~5μm)がマイクロゲル内に均等に分布したことを示す。マイクロゲル中のSDP粒子は、それらの最初のレーズン様形状を維持し、本発明の方法による封入プロセス全体が、SDP粒子の完全性に最小限の影響を有することを示す。
【0167】
図6A、6B、及び7は、PBS中に懸濁させた架橋PEGマイクロゲルの明視野及び蛍光顕微鏡画像を示す。これらの画像は、PEGは水溶性であるが、架橋PEGマイクロゲルは、分解されることなく水性緩衝液中でそれらの球状構造を維持することを実証し、PEG前駆体の架橋及びマイクロゲルの形成が成功したことを示す。SDPからの蛍光シグナルは、マイクロゲル粒子と同様に配置され、PEGマトリックスが水性緩衝液の水によって膨潤した可能性があるが、タンパク質は依然としてマイクロゲル内に保持されていることを示唆した。これらの結果は、VEGFトラップを封入する得られた架橋PEGマイクロゲルが、潜在的な持続放出適用に必要とされる特性を有することを示唆した。
【0168】
上述の明細書において、本技術の態様は、その特定の実施形態に関連して記載されており、多くの詳細は、例解目的で提示されているが、本明細書に開示される概念及び原理が追加の実施形態に拡張され得、本明細書に記載の詳細の一部が、本開示の基本原則から逸脱することなく、かなり変動し得ることは、当業者には明らかであろう。
【0169】
米国特許及び出願を含む、本明細書で引用される全ての参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。本開示は、その趣旨又は本質的な属性から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化され得、したがって、前述の明細書ではなく、本開示の範囲を示す添付の特許請求の範囲が参照されるべきである。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-08-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロゲル微粒子を製造する方法であって、
(a)少なくとも1つの架橋可能なポリマーと、少なくとも1つの架橋調節剤と、少なくとも1つのタンパク質を含む粉末とを、炭化水素溶媒と混合して、分散相懸濁液を形成すること、
(b)前記分散相懸濁液を、フルオロカーボン液及びフッ素系界面活性剤を含む連続相溶液に添加して、混合した分散相懸濁液及び連続相溶液を形成すること、
(c)前記混合した分散相懸濁液及び連続相溶液に配合力を加えて、前記フルオロカーボン液中に、前記少なくとも1つの架橋可能なポリマーと、少なくとも1つのタンパク質を更に含む前記粉末とを含む複数の炭化水素液滴を有する、非水性エマルジョンを形成すること、並びに
(d)前記炭化水素溶媒及び前記フルオロカーボン液を前記非水性エマルジョンから除去して、単離されたヒドロゲル微粒子を形成することであって、前記ヒドロゲル微粒子が、架橋化ポリマーのマトリックス内に封入された前記少なくとも1つのタンパク質を含む、前記形成すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの架橋調節剤が、非官能化直鎖PEGポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分散相懸濁液中の前記少なくとも1つの架橋調節剤の濃度が、約5.0%~約35%w/vである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フルオロカーボン液が、高粘度フルオロカーボンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記連続相溶液が、ペルフルオロC5~C18化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記連続相溶液が、FC-70又はペルフルオロトリペンチルアミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記炭化水素溶媒が、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記連続相溶液が、ペルフルオロポリエーテル-b-ポリエチレングリコール-b-ペルフルオロポリエーテルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの架橋可能なポリマーが、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシド、コ-ポリエチレンオキシドブロック又はランダムコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルピロリジノン)、ポリ(アミノ酸)、デキストラン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるコアを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの架橋可能なポリマーが、少なくとも1つの求核官能基を含む第1の架橋可能なポリマーと、少なくとも1つの求電子官能基を含む第2の架橋可能なポリマーとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの求核官能基 対 前記少なくとも1つの求電子官能基のモル比が、約1:1~約1:2である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの架橋可能なポリマーが、PEG-NH第1前駆体、及びPEG-NHS第2前駆体を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記PEG-NH第1前駆体又は前記PEG-NHS第2前駆体が、4アーム又は8アーム化合物である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのタンパク質が、抗体、その抗原結合断片、融合タンパク質、組換えタンパク質、又はその断片若しくは切断型である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのタンパク質が、VEGFトラップタンパク質である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記VEGFトラップタンパク質が、VEGFトラップタンパク質の切断形態である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのタンパク質が、アフリベルセプト、リロナセプト、アリロクマブ、デュピルマブ、サリルマブ、セミプリマブ、抗エボラ抗体、及び抗SARS-CoV-2抗体からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記単離されたヒドロゲル微粒子が、約1μm~約200μmの直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記粉末が、噴霧乾燥、エレクトロスプレー乾燥、可逆沈殿、噴霧凍結、マイクロテンプレート、又はそれらの組み合わせによって微粉化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記配合力が、均質化、ボルテックス撹拌、超音波処理、キャビテーション、撹拌、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記ヒドロゲル微粒子が、持続放出微粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記分散相懸濁液中の前記粉末の濃度が、約1.0%~約30%w/vである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記分散相懸濁液中の前記少なくとも1つの架橋可能なポリマーの濃度が、約5.0%~約35%w/vである、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記連続相溶液中の前記フッ素系界面活性剤の濃度が、約0.1%~約5.0%w/vである、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記単離されたヒドロゲル微粒子を、医薬的に許容される製剤中に懸濁させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記製剤が、pH緩衝化生理食塩水、水溶液、又は非水溶液を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記粉末が、少なくとも1つの賦形剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
請求項1に記載の方法によって作製された、ヒドロゲル粒子。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
[本発明1001]
ヒドロゲル微粒子を製造する方法であって、
(a)少なくとも1つの架橋可能なポリマーと、少なくとも1つの架橋調節剤と、少なくとも1つのタンパク質を含む粉末とを、炭化水素溶媒と混合して、分散相懸濁液を形成すること、
(b)前記分散相懸濁液を、フルオロカーボン液及びフッ素系界面活性剤を含む連続相溶液に添加して、混合した分散相懸濁液及び連続相溶液を形成すること、
(c)前記混合した分散相懸濁液及び連続相溶液に配合力を加えて、前記フルオロカーボン液中に、前記少なくとも1つの架橋可能なポリマーと、少なくとも1つのタンパク質を更に含む前記粉末とを含む複数の炭化水素液滴を有する、非水性エマルジョンを形成すること、並びに
(d)前記炭化水素溶媒及び前記フルオロカーボン液を前記非水性エマルジョンから除去して、単離されたヒドロゲル微粒子を形成することであって、前記ヒドロゲル微粒子が、架橋化ポリマーのマトリックス内に封入された前記少なくとも1つのタンパク質を含む、前記形成すること
を含む、前記方法。
[本発明1002]
前記少なくとも1つの架橋調節剤が、非官能化直鎖PEGポリマーである、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記分散相懸濁液中の前記少なくとも1つの架橋調節剤の濃度が、約5.0%~約35%w/vである、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記フルオロカーボン液が、高粘度フルオロカーボンである、本発明1001の方法。
[本発明1004]
前記連続相溶液が、ペルフルオロC5~C18化合物を含む、本発明1001の方法。
[本発明1005]
前記連続相溶液が、FC-70又はペルフルオロトリペンチルアミンを含む、本発明1001の方法。
[本発明1006]
前記炭化水素溶媒が、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、本発明1001の方法。
[本発明1007]
前記連続相溶液が、ペルフルオロポリエーテル-b-ポリエチレングリコール-b-ペルフルオロポリエーテルを含む、本発明1001の方法。
[本発明1008]
前記少なくとも1つの架橋可能なポリマーが、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド-コ-ポリプロピレンオキシド、コ-ポリエチレンオキシドブロック又はランダムコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルピロリジノン)、ポリ(アミノ酸)、デキストラン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるコアを含む、本発明1001の方法。
[本発明1009]
前記少なくとも1つの架橋可能なポリマーが、少なくとも1つの求核官能基を含む第1の架橋可能なポリマーと、少なくとも1つの求電子官能基を含む第2の架橋可能なポリマーとを含む、本発明1001の方法。
[本発明1010]
前記少なくとも1つの求核官能基 対 前記少なくとも1つの求電子官能基のモル比が、約1:1~約1:2である、本発明1009の方法。
[本発明1011]
前記少なくとも1つの架橋可能なポリマーが、PEG-NH第1前駆体、及びPEG-NHS第2前駆体を含む、本発明1009の方法。
[本発明1012]
前記PEG-NH第1前駆体又は前記PEG-NHS第2前駆体が、4アーム又は8アーム化合物である、本発明1011の方法。
[本発明1013]
前記少なくとも1つのタンパク質が、抗体、その抗原結合断片、融合タンパク質、組換えタンパク質、又はその断片若しくは切断型である、本発明1001の方法。
[本発明1014]
前記少なくとも1つのタンパク質が、VEGFトラップタンパク質である、本発明1013の方法。
[本発明1015]
前記VEGFトラップタンパク質が、VEGFトラップタンパク質の切断形態である、本発明1014の方法。
[本発明1016]
前記少なくとも1つのタンパク質が、アフリベルセプト、リロナセプト、アリロクマブ、デュピルマブ、サリルマブ、セミプリマブ、抗エボラ抗体、及び抗SARS-CoV-2抗体からなる群から選択される、本発明1013の方法。
[本発明1017]
前記単離されたヒドロゲル微粒子が、約1μm~約200μmの直径を有する、本発明1001の方法。
[本発明1018]
前記粉末が、噴霧乾燥、エレクトロスプレー乾燥、可逆沈殿、噴霧凍結、マイクロテンプレート、又はそれらの組み合わせによって微粉化されている、本発明1001の方法。
[本発明1019]
前記配合力が、均質化、ボルテックス撹拌、超音波処理、キャビテーション、撹拌、又はそれらの組み合わせを含む、本発明1001の方法。
[本発明1020]
前記ヒドロゲル微粒子が、持続放出微粒子である、本発明1001の方法。
[本発明1021]
前記分散相懸濁液中の前記粉末の濃度が、約1.0%~約30%w/vである、本発明1001の方法。
[本発明1022]
前記分散相懸濁液中の前記少なくとも1つの架橋可能なポリマーの濃度が、約5.0%~約35%w/vである、本発明1001の方法。
[本発明1023]
前記連続相溶液中の前記フッ素系界面活性剤の濃度が、約0.1%~約5.0%w/vである、本発明1001の方法。
[本発明1024]
前記単離されたヒドロゲル微粒子を、医薬的に許容される製剤中に懸濁させることを更に含む、本発明1001の方法。
[本発明1025]
前記製剤が、pH緩衝化生理食塩水、水溶液、又は非水溶液を含む、本発明1024の方法。
[本発明1026]
前記粉末が、少なくとも1つの賦形剤を更に含む、本発明1001の方法。
[本発明1027]
本発明1001の方法によって作製された、ヒドロゲル粒子。
本発明のこれら及び他の態様は、以下の説明及び添付の図面と併せて考慮される場合、よりよく認識され、理解されるであろう。以下の説明は、その様々な実施形態及び多数の具体的な詳細を示すが、例解として与えられ、限定するものではない。多くの置換、修正、追加、又は再配置は、本発明の範囲内で行われ得る。
【国際調査報告】