(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】内燃機関のための点火装置
(51)【国際特許分類】
F02P 15/00 20060101AFI20231226BHJP
F02P 3/04 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
F02P15/00 302C
F02P15/00 302B
F02P3/04 304F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537213
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 EP2021084503
(87)【国際公開番号】W WO2022128603
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】102020215994.7
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ティム スコブロネク
(72)【発明者】
【氏名】ハルトヴィヒ ゼンフトレーベン
(72)【発明者】
【氏名】ベルント フィッシャー
【テーマコード(参考)】
3G019
【Fターム(参考)】
3G019BA01
3G019CA02
3G019FA04
3G019FA05
3G019FA12
(57)【要約】
内燃機関のための、特に水素駆動式の内燃機関のための点火装置(1)であって、当該点火装置(1)は、一次回路(2.1)及び二次回路(2.2)を備え、一次回路(2.1)は、一次コイル(3)を有し、二次回路(2.2)は、一次コイル(3)に誘導結合された二次コイル(4)と、投入火花抑制のためのダイオード(5)と、点火プラグ(7)に接続するための高電圧端子(6)とを有する、点火装置(1)に関する。当該点火装置(1)においては、二次回路(2.2)のダイオード(5)に対して電気的に並列に並列経路(10)が構成されており、並列経路(10)内には、オーム負荷抵抗(11)又は電気的なスイッチ(20)が配置されており、並列経路(10)を用いて、残留エネルギ、特に、点火装置(1)の放電後に二次回路(2.2)内に残留する残留電圧を消滅させることが可能であり、特に、残留エネルギの消滅は、二次回路(2.2)内の残留エネルギが、ダイオード(5)を迂回しながらダイオード(5)に沿って伝導可能であることによって実施されることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のための、特に水素駆動式の内燃機関のための点火装置(1)であって、当該点火装置(1)は、一次回路(2.1)及び二次回路(2.2)を備え、
・前記一次回路(2.1)は、一次コイル(3)を有し、
・前記二次回路(2.2)は、前記一次コイル(3)に誘導結合された二次コイル(4)と、投入火花抑制のためのダイオード(5)と、点火プラグ(7)に接続するための高電圧端子(6)とを有する、
点火装置(1)において、
前記二次回路(2.2)の前記ダイオード(5)に対して電気的に並列に並列経路(10)が構成されており、
前記並列経路(10)内には、オーム負荷抵抗(11)又は電気的なスイッチ(20)が配置されており、
前記並列経路(10)を用いて、残留エネルギ、特に、前記点火装置(1)の放電後に前記二次回路(2.2)内に残留する残留電圧を消滅させることが可能であり、
特に、前記残留エネルギの消滅は、前記二次回路(2.2)内の前記残留エネルギが、前記ダイオード(5)を迂回しながら前記ダイオード(5)に沿って伝導可能であることによって実施される、
ことを特徴とする点火装置(1)。
【請求項2】
前記並列経路(10)の前記オーム負荷抵抗(11)は、1MOhmよりも大きい電気抵抗、特に10MOhmから100MOhmまでの間の範囲内にある電気抵抗を有する、
請求項1に記載の点火装置。
【請求項3】
前記並列経路(10)の前記オーム負荷抵抗(11)は、配線抵抗、SMD抵抗、又は、導体抵抗である、
請求項2に記載の点火装置。
【請求項4】
前記導体抵抗は、層、コーティング、導体路又は被覆部として形成されている導電性材料を含む、
請求項3に記載の点火装置。
【請求項5】
前記導体抵抗は、前記ダイオード(5)の表面に配置及び/又は構成されている、
請求項3又は4に記載の点火装置。
【請求項6】
前記並列経路(10)の前記電気的なスイッチ(20)は、火花消失と前記一次回路(2.1)の新たな再充電との間における適当な時点に切り替えられるように構成されており、
前記並列経路(10)の前記スイッチ(20)は、特に半導体スイッチ、特にトランジスタである、
請求項1に記載の点火装置。
【請求項7】
前記並列経路(10)の端子端部(10.1)は、前記ダイオード(5)の端子(5.1)に接続されている、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の点火装置。
【請求項8】
前記残留エネルギは、前記並列経路(10)を介して電気的アースへと伝導可能である、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の点火装置。
【請求項9】
前記二次コイル(4)は、前記高電圧端子(6)の方を向いた第1のコイル端部(4.1)と、前記高電圧端子(6)とは反対側を向いた第2のコイル端部(4.2)とを有し、
前記二次回路(2.2)は、前記二次コイル(4)の前記第1のコイル端部(4.1)に接続された高電圧経路(13)と、前記二次コイル(4)の前記第2のコイル端部(4.2)に接続されたアース経路(14)とを有し、
前記ダイオード(5)は、前記アース経路(14)内又は前記高電圧経路(13)内に配置されている、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の点火装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の点火装置を含む点火コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の上位概念による内燃機関のための点火装置を起点とする。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102013202016号明細書から、内燃機関のための点火装置であって、当該点火装置は、一次回路及び二次回路を備え、一次回路は、一次コイルを有し、二次回路は、一次コイルに誘導結合された二次コイルと、投入火花抑制のためのダイオードと、点火プラグに接続するための高電圧端子とを含む、点火装置が既に公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102013202016号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それぞれの点火後には、点火装置の二次回路内に残留電圧の形態の残留エネルギが残留する可能性があり、この残留エネルギは、最も不利な場合には不所望の点火をもたらし、その結果、内燃機関の吸気系統において、例えば、スロットルバルブ及び/又は吸気管において損傷を引き起こす可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の利点
これに対して、独立請求項の特徴的構成を備えた本発明に係る点火装置は、二次回路のダイオードに対して電気的に並列に並列経路が構成されていることによって、不所望な点火が排除され又は少なくとも回避されるという利点を有する。並列経路内には、第1の変形例によれば、オーム負荷抵抗を配置することができ、第2の変形例によれば、電気的なスイッチを配置することができる。並列経路を用いて、残留エネルギ、特に、点火装置の放電後に二次回路内に残留する残留電圧を消滅させることが可能であり、特に、残留エネルギの消滅は、二次回路内の残留エネルギが、ダイオードを迂回しながらダイオードに沿って伝導可能であることによって実施される。
【0006】
従属請求項に記載された手段により、独立請求項に記載された点火装置の有利な発展及び改良が可能である。
【0007】
第1の実施例による並列経路のオーム負荷抵抗が、1MOhmよりも大きい電気抵抗、及び/又は、特に10MOhmから100MOhmまでの間の範囲内にある電気抵抗を有すると、特に有利である。このようにして、一方では、並列経路内に、残留エネルギのためにあらゆる時点において電気的に導通している接続部が提供され、他方では、ダイオードの投入火花抑制作用がわずかにしか弱められず、これにより、一次電流の投入時に一次回路内に投入火花が発生しないことが保証されている。
【0008】
第1の実施例による並列経路のオーム負荷抵抗が、配線抵抗、SMD抵抗又は導体抵抗であると、さらに有利である。ダイオードが、例えばSMD部品としてプリント基板上に構成されている場合には、SMD抵抗として構成された負荷抵抗が有利である。ダイオードが配線部品である場合には、配線負荷抵抗又は導体抵抗として構成された負荷抵抗が有利である。
【0009】
導体抵抗が、層、コーティング、導体路又は被覆部として形成されている導電性材料を含むと、非常に有利である。例えば、並列経路全体が、一貫した導体抵抗として構成されている。このようにして、負荷抵抗を特に低コストに構成することができる。
【0010】
導体抵抗が、ダイオードの表面に配置及び/又は構成されていると、さらに有利である。このようにして、ダイオードは、負荷抵抗のための、及び、並列経路を構成するための支持体要素を形成する。
【0011】
また、並列経路の電気的なスイッチが、火花消失と一次回路の新たな再充電との間における適当な時点に切り替えられるように構成されていると、有利である。このようにして、スイッチを、適当な時点に閉成状態に切り替えることが可能であり、これにより、残留エネルギのために並列経路が導通接続され、したがって、残留エネルギは、ダイオードを迂回しながらダイオードに沿って伝導可能となり、このことが、残留エネルギの消滅をもたらす。並列経路のスイッチは、例えば半導体スイッチ、特にトランジスタであるものとしてよい。
【0012】
並列経路の端子端部が、ダイオードの端子に接続されていると、さらに有利である。
【0013】
残留エネルギが、消滅のために並列経路を介して、特に、一次回路を介して、又は、二次回路のアース端子を介して、電気的アースへと伝導可能であると、さらに有利である。
【0014】
二次コイルが、高電圧端子の方を向いた第1のコイル端部と、高電圧端子とは反対側を向いた第2のコイル端部とを有し、二次回路が、二次コイルの第1のコイル端部に接続された高電圧経路と、二次コイルの第2のコイル端部に接続されたアース経路とを有すると、さらに有利である。本発明によれば、ダイオードは、アース経路内又は高電圧経路内に配置可能である。
【0015】
本発明に係る点火装置が、点火コイルに形成されており、ひいては閉鎖された構造ユニット内に配置されていると、有利である。点火コイルへの点火装置の組込みは、電気絶縁性及び構造空間に関する利点を提供する。
【0016】
本発明の3つの実施例を図面に概略的に示し、以下の記載において、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1の変形例による並列経路を備えた、第1の実施例による本発明に係る点火装置を示す図である。
【
図2】第2の変形例による並列経路を備えた、
図1の第1の実施例による本発明に係る点火装置を示す図である。
【
図3】第1の変形例による並列経路を備えた、第2の実施例による本発明に係る点火装置を示す図である。
【
図4】第1の変形例による並列経路を備えた、第3の実施例による本発明に係る点火装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施例の説明
図1は、第1の変形例による並列経路を備えた、第1の実施例による本発明に係る点火装置を等価回路図の形態において示している。
【0019】
本発明に係る点火装置1は、内燃機関、例えば水素駆動式の内燃機関を動作させるための点火火花を生成するための高電圧を生成するために使用される。内燃機関は、例えば、車両を駆動するために使用される。
【0020】
本発明に係る点火装置1は、一次回路2.1及び二次回路2.2を備えた変圧器2を含む。一次回路2.1は、一次コイル3を有する。二次回路2.2は、一次コイル3に誘導結合された二次コイル4と、投入火花抑制のためのダイオード5と、点火プラグ7に接続するための高電圧端子6とを含む。本発明に係る点火装置1は、部分的又は完全に点火コイルに形成可能である。
【0021】
本発明によれば、二次回路2.2のダイオード5に対して電気的に並列に並列経路10が構成されており、並列経路10内には、第1の変形例によればオーム負荷抵抗11が配置されており、並列経路10を用いて、残留エネルギ、特に、点火装置1の放電後に二次回路2.2内に残留する残留電圧を消滅させることが可能である。残留エネルギの消滅は、二次回路2.2内の残留エネルギが、並列経路10を介してダイオード5を迂回しながらダイオード5に沿って伝導可能であり、かつ、電気的アースへと伝導可能であることによって実施される。第1の実施例によれば、残留エネルギは、一次回路2.1を介して、例えば、一次回路2.1の低電圧端子12を介して電気的アースに到達し得る。一次回路2.1の低電圧端子12は、例えば、車両のバッテリの正極に接続するために設けられている。
【0022】
したがって、並列経路10は、ダイオード5の投入火花抑制作用を喪失又は終了することなく、残留エネルギのためにあらゆる時点において電気的に導通している接続部を提供する。このことを達成するために、並列経路10のオーム負荷抵抗11は、例えば1MOhmよりも大きい電気抵抗、例えば10MOhmから100MOhmまでの間の範囲内にある電気抵抗を有する。並列経路10のオーム負荷抵抗11は、例えば、配線抵抗、SMD抵抗又は導体抵抗であるものとしてよい。負荷抵抗11が導体抵抗として構成されている場合には、導体抵抗のために、例えば、層、コーティング、導体路又は被覆部として形成可能である導電性材料が設けられる。被覆部は、例えば、導電性の収縮チューブであるものとしてよい。層、コーティング、又は、導体路は、例えば、印刷、蒸着、又は、スパッタリングによって形成可能である。導体抵抗として構成された負荷抵抗11は、例えば、ダイオード5の表面に又はダイオード5のダイオード本体に配置可能及び/又は構成可能である。
【0023】
並列経路10の端子端部10.1は、ダイオード5の端子5.1に接続可能である。導体抵抗は、例えば、ダイオード5の表面に沿ってダイオード5の端子5.1まで到達し得る。
【0024】
二次コイル4は、高電圧端子6の方を向いた第1のコイル端部4.1と、高電圧端子6とは反対側を向いた第2のコイル端部4.2とを有し、二次回路2.2は、二次コイル4の第1のコイル端部4.1に接続された高電圧経路13と、二次コイル4の第2のコイル端部4.2に接続されたアース経路14とを有する。
【0025】
ダイオード5は、二次回路2.2内の任意の箇所に、即ち、アース経路14内又は高電圧経路13内に配置可能であり、それぞれ本発明に係る並列経路10を有する。第1の実施例によれば、ダイオード5は、アース経路14内に配置されており、アース経路14は、ダイオード5の端子5.1が一次回路2.1の低電圧端子12に電気的に接続されていることにより、いわゆる節約回路に従って一次回路2.1に接続されている。
【0026】
一次回路2.1の一次コイル3は、第1のコイル端部3.1及び第2のコイル端部3.2を有し、第1のコイル端部3.1は、低電圧端子12に電気的に接続されており、第2のコイル端部3.2は、一次回路2.1内の一次電流の切り替えのために設けられた点火出力段15に電気的に接続されており又は電気的に接続可能である。点火出力段15は、本実施例によれば本発明に係る点火装置1の一部であるが、点火出力段15を、明示的に点火装置1の外部に、例えば機関制御装置内に構成するものとしてもよい。点火出力段15は、一次コイル3の第2のコイル端部3.2への端子に加えてさらに、電気的アース、例えば、車体アース又は車両アースとの接続のための端子15.1を有する。
【0027】
図2は、第2の変形例による並列経路を備えた、
図1の第1の実施例による本発明に係る点火装置を示している。
【0028】
図2の点火装置は、
図1の点火装置とは、並列経路10の構成という点においてのみ異なっている。第2の変形例によれば、並列経路10内にオーム負荷抵抗11ではなく電気的又は電子的なスイッチ20が設けられている。並列経路10のスイッチ20は、先行する点火の火花消失と一次回路2.1の新たな再充電との間における適当な時点に閉成状態に切り替えられるように構成されている。これにより、並列経路10は、適当な時点に残留エネルギの消滅を達成することができるように、適当な時点に電気的に接続される。スイッチ20は、例えば半導体スイッチ、特にトランジスタであるものとしてよい。
【0029】
図3は、オーム負荷抵抗を用いる第1の変形例による並列経路を備えた、第2の実施例による本発明に係る点火装置を等価回路図の形態において示している。
【0030】
ダイオード5は、第2の実施例によれば、第1の実施例の場合と同様にアース経路14内に配置されている。本発明によれば、二次回路2.2のダイオード5に対して電気的に並列に並列経路10が設けられている。
【0031】
第2の実施例は、
図1の第1の実施例と比較して、アース経路14が一次回路2.1に接続されているのではなくアース端子17を介して電気的アース、例えば車両アースに接続されているという点においてのみ異なっている。第2の実施例において、本発明に係る並列経路10を、スイッチ20を用いる第2の変形例に従って構成することも当然可能である。
【0032】
図4は、第1の変形例による並列経路を備えた、第3の実施例による本発明に係る点火装置を等価回路図の形態において示している。
【0033】
第3の実施例は、
図3の第2の実施例と比較して、ダイオード5がアース経路14内に配置されているのではなく高電圧経路13内に配置されているという点においてのみ異なっている。本発明によれば、二次回路2.2のダイオード5に対して電気的に並列に並列経路10が設けられている。アース経路14は、第3の実施例においては、第2の実施例の場合と同様にアース端子17を介して電気的アース、例えば車両アースに接続されている。
【0034】
第3の実施例において、本発明に係る並列経路10を、スイッチ20を用いる第2の変形例に従って構成することも当然可能である。
【国際調査報告】