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特表2024-500440PET基板を用いたバイオセンサー、その製造方法及びそれを用いた微生物の抗生剤感受性検査方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】PET基板を用いたバイオセンサー、その製造方法及びそれを用いた微生物の抗生剤感受性検査方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20231226BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20231226BHJP
   G01N 27/02 20060101ALI20231226BHJP
   G01N 27/22 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C12M1/34 C
C12Q1/04
G01N27/02 D
G01N27/22 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537429
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-06-19
(86)【国際出願番号】 KR2021019292
(87)【国際公開番号】W WO2022131857
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0178756
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ブルートゥース
(71)【出願人】
【識別番号】515100787
【氏名又は名称】プロテオメテック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PROTEOMETECH INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イム,ククジン
(72)【発明者】
【氏名】ジュ,ハンスン
(72)【発明者】
【氏名】オ,チェスン
(72)【発明者】
【氏名】イム,チャンス
【テーマコード(参考)】
2G060
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G060AA15
2G060AD06
2G060AF06
2G060AF07
2G060AF10
2G060AG03
2G060AG06
2G060AG10
2G060GA01
2G060JA07
2G060KA09
4B029AA07
4B029BB02
4B029FA07
4B063QA06
4B063QQ06
4B063QR75
4B063QS39
4B063QX04
(57)【要約】
本発明は、ポリエチレンテレフタレートを含む基板、及び前記基板の片面または両面に形成され、インターディジテイトされた第1の電極及び第2の電極を含む電極層を含むセンサー部を含む微生物の抗生剤感受性検査用バイオセンサー、その製造方法及びそれを用いた微生物の抗生剤感受性検査方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)を含む基板、及び
前記基板の片面または両面に形成され、インターディジテイトされた第1の電極及び第2の電極を含む電極層を含む、微生物の抗生剤感受性検査用バイオセンサー。
【請求項2】
前記電極は、銀または金材質である、請求項1に記載の微生物の抗生剤感受性検査用バイオセンサー。
【請求項3】
前記電極は、スクリーン印刷、PCBまたはフォトリソグラフィ(photolithography)方式を通じて形成された、請求項2に記載の微生物の抗生剤感受性検査用バイオセンサー。
【請求項4】
前記バイオセンサーは、抗生剤処理によって、微生物が生長しながら発生する電気的特性変化をリアルタイムで測定して微生物の抗生剤感受性を測定するためのものである、請求項1に記載の微生物の抗生剤感受性検査用バイオセンサー。
【請求項5】
ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)を含む基板を準備する段階、及び
前記基板上にインターディジテイトされた第1の電極及び第2の電極を含む電極層を形成する段階を含む、請求項1に記載のバイオセンサーの製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載のバイオセンサーに微生物を含有する試料を処理する段階、
前記試料が処理されたバイオセンサーに抗生剤を処理する段階、及び
前記抗生剤の処理後、電気的特性の変化を測定する段階を含む、微生物の抗生剤感受性検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PET基板を用いたバイオセンサー、その製造方法及びそれを用いた微生物の抗生剤感受性検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体に発生する様々な疾病の中には、尿路感染症、敗血症を含む微生物の感染によって発生する疾病がある。このような微生物感染による疾病を治療するためには、微生物の増殖を抑制する抗生剤が必要であり、このような抗生剤は微生物の増殖を抑制するか、または微生物を死滅させる。しかし、抗生剤の種類は、最近まで百種以上が開発されており、微生物の種類によって、または微生物の抗生剤の耐性の有無によってその効果が異なる。したがって、感染症患者には必ず当該微生物に最も効果的な抗生剤を選別しなければならず、そのための診断検査方法を抗生剤感受性検査という。
【0003】
現在、最も普遍的に利用する抗生剤感受性検査方法としては液体培地希釈法(Broth dilution method)があり、このような方法は多様な条件の抗生剤が処理された培養液で細菌を一日以上培養した後、細菌同定および培養液の濁度を測定して抗生剤耐性および感受性の有無を判定することになるが、このような過程に多くの時間と労働力が必要だという短所がある。したがって、リアルタイム検査が可能であり、検査に伴う時間と労働力を短縮し、従来の抗生剤感受性検査法の問題点を解決するための方法の開発が必要なのが実状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国登録特許公報第10-1776698号(2017.09.04.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポリエチレンテレフタレートを含む基板、及び前記基板の片面または両面に形成され、インターディジテイト(interdigitate)された第1の電極及び第2の電極を含む電極層を含む微生物の抗生剤感受性検査用バイオセンサーなどを提供する。
【0006】
しかし、本発明が解決しようとする技術的課題は、前述した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は、以下の記載から当業者が明確に理解できるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリエチレンテレフタレートを含む基板、及び前記基板の片面または両面に形成され、インターディジテイトされた第1の電極及び第2の電極を含む電極層を含む微生物の抗生剤感受性検査用バイオセンサーを提供する。
【0008】
前記電極は、銀または金材質であってもよい。
【0009】
前記電極は、スクリーン印刷、PCBまたはフォトリソグラフィ方式を通じて形成されてもよい。
【0010】
前記バイオセンサーは、抗生剤処理によって、微生物が生長しながら発生する電気的特性変化をリアルタイムで測定して微生物の抗生剤感受性を検査するためのものであってもよい。
【0011】
本発明の一具現例として、ポリエチレンテレフタレートを含む基板を準備する段階、及び前記基板上にインターディジテイトされた第1の電極及び第2の電極を含む電極層を形成する段階を含む、前記バイオセンサーの製造方法を提供する。
【0012】
本発明の他の具現例において、前記バイオセンサーに微生物を含有する試料を処理する段階、前記試料が処理されたバイオセンサーに抗生剤を処理する段階、及び前記抗生剤の処理後、電気的特性の変化を測定する段階を含む微生物の抗生剤感受性検査方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるバイオセンサーは、ポリエチレンテレフタレートを含む基板、及び前記基板の片面または両面に形成され、インターディジテイトされた第1の電極及び第2の電極を含む電極層を含むことを特徴とするところ、他の材質の基板を使用した場合に比べて、微生物の生長変化検出の所要時間が短く、弁別力に優れた利点を持つ。さらに、迅速な微生物の抗生剤感受性検査が可能なだけでなく、耐性を制限できる最小限の抗生剤の濃度を迅速に確認しうる。
【0014】
したがって、本発明によるバイオセンサーを用いると、顕著に優れた敏感度によって微生物の抗生剤感受性検査の所要時間を4時間以内に画期的に短縮させることができ、迅速な判断及び処置が必要な微生物の感染を治療するのに非常に効果的に適用しうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一具現例によるPET基板を用いたバイオセンサーを用いた微生物の抗生剤感受性検査方法を概略的に示す図である。
図2a図2a及び図2bは、本発明の一具現例によるPET基板及びAg電極を用いたバイオセンサーを概略的に示す図である。
図2b図2a及び図2bは、本発明の一具現例によるPET基板及びAg電極を用いたバイオセンサーを概略的に示す図である。
図3a図3a及び図3bは、本発明の一具現例によるPET基板及びAu電極を用いたバイオセンサーを概略的に示す図である。
図3b図3a及び図3bは、本発明の一具現例によるPET基板及びAu電極を用いたバイオセンサーを概略的に示す図である。
図4a図4aは、本発明の一具現例によるPET基板及びAg電極を用いたバイオセンサーを用いた場合、微生物のキャパシタンス変化を測定したグラフであり、図4bは、本発明の一具現例によるPET基板及びAg電極を用いたバイオセンサーを用いた場合、微生物の抗生剤感受性検査結果を示すグラフである。
図4b図4aは、本発明の一具現例によるPET基板及びAg電極を用いたバイオセンサーを用いた場合、微生物のキャパシタンス変化を測定したグラフであり、図4bは、本発明の一具現例によるPET基板及びAg電極を用いたバイオセンサーを用いた場合、微生物の抗生剤感受性検査結果を示すグラフである。
図5a図5a及び図5bは、本発明の一具現例によるPET基板及びAu電極を用いたバイオセンサーを用いた場合、微生物のキャパシタンス変化を測定したグラフであり、図5cは、本発明の一具現例によるPET基板及びAu電極を用いたバイオセンサーを用いた場合、微生物の抗生剤感受性検査結果を示すグラフである。
図5b図5a及び図5bは、本発明の一具現例によるPET基板及びAu電極を用いたバイオセンサーを用いた場合、微生物のキャパシタンス変化を測定したグラフであり、図5cは、本発明の一具現例によるPET基板及びAu電極を用いたバイオセンサーを用いた場合、微生物の抗生剤感受性検査結果を示すグラフである。
図5c図5a及び図5bは、本発明の一具現例によるPET基板及びAu電極を用いたバイオセンサーを用いた場合、微生物のキャパシタンス変化を測定したグラフであり、図5cは、本発明の一具現例によるPET基板及びAu電極を用いたバイオセンサーを用いた場合、微生物の抗生剤感受性検査結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、抗生剤処理により、微生物が生長しながら発生する電気的特性変化をリアルタイムで測定し、微生物の抗生剤感受性を検査するためのバイオセンサーについて研究していたところ、基板の最適材質として、ポリエチレンテレフタレートを適用した場合、その敏感度が著しく優れていることを確認し、本発明を完成した。
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
ただし、本発明は、様々な変更を加えることができ、様々な形態を有してもよいので、後述する特定の実施例及び説明は、本発明の理解を助けるためのものであり、本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではない。本発明の範囲は、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解されるべきである。
【0019】
本明細書において、「抗生剤感受性」とは、抗生剤敏感性とも呼ばれ、当該微生物が特定の抗生剤により生育の抑制、分裂の妨害、細胞の死滅などの影響を受けるもので、従来のディスク拡散方式の抗生剤感受性検査法によると、抗生剤ディスクを置いた周囲に一定の直径の円形の生長阻害帯(clear zone)を形成し、この直径の大きさが一定レベル以上のときに抗生剤感受性を有するという。抗生剤感受性検査の結果は、一例として、感受性、中間耐性、及び耐性(抵抗性)に分けられる。微生物による感染症を治療するためには、当該微生物に対する感受性のある抗生剤を使用しなければならず、前記感受性(susceptible)を示すと判読された微生物の場合、前記菌種及び感染部位に勧告される用量の抗生剤の処方を通じて治療できることを意味し、前記中間耐性(intermediate resistance)を示すと判読された微生物の場合、対象微生物に対する抗生剤の最小生長抑制濃度が処方可能な薬物の最大濃度に類似し治療効果が低下しうることを意味する。一方、前記耐性(抵抗性)を示すと判読された微生物の場合、処方可能な薬物の最大濃度では治療されないことを示す。
【0020】
微生物の抗生剤感受性検査用バイオセンサー及びその製造方法
本発明は、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)を含む(または素材の)基板、及び前記基板の片面または両面に形成され、インターディジテイトされた第1の電極及び第2の電極を含む電極層を含む微生物の抗生剤感受性検査用バイオセンサーを提供する。
【0021】
また、本発明は、ポリエチレンテレフタレートを含む基板を準備する段階、及び前記基板上にインターディジテイトされた第1の電極及び第2の電極を含む電極層を形成する段階を含む、前記バイオセンサーの製造方法を提供する。
【0022】
本発明によるバイオセンサーは、微生物の抗生剤感受性を検査するためのもので、具体的には、抗生剤処理により、微生物が生長しながら発生する電気的特性変化をリアルタイムで測定して微生物の抗生剤感受性を検査するためのものであってもよい。このとき、電気的特性とは、キャパシタンス(capacitance)、インピーダンス(impedance)、レジスタンス(resistance)、リアクタンス(reactan
ce)などであってもよい。したがって、電気的特性変化を測定する場合、光学的特性変化を測定する場合に比べて、より低い濃度及び少ない量の試料でも敏感度を高めることができるという利点がある。
【0023】
まず、本発明によるバイオセンサーは、ポリエチレンテレフタレートを含む基板を含む。前記ポリエチレンテレフタレートは、非導電性ポリマーで、エポキシ、ポリイミド、ガラスなど他の材質基板を使用した場合に比べて、微生物の生長変化検出の所要時間が短く、弁別力に優れた利点を持つ。さらに、迅速な微生物の抗生剤感受性検査が可能なだけでなく、耐性を制限できる最小限の抗生剤の濃度を迅速に確認しうる。
【0024】
次に、本発明によるバイオセンサーは、インターディジテイトされた第1の電極及び第2の電極を含む電極層を含むが、前記電極層は、前記基板の片面または両面に形成される。前記電極層は一列に整列された棒が1つの極を成し、2つの電極(第1の電極及び第2の電極)が互いに噛み合った状態で対向する形態の構造を有してもよい。前記2つの電極は、古典的な形態のインピーダンス測定電極と同じ役割を果たす。前記第1の電極及び第2の電極の間隔は、0.1μm~1000μm、1μm~500μm、または10μm~300μmであってもよい。第1の電極及び第2の電極の間隔を前記範囲に調節することにより、マイクロレベルの生体分子に対しても精密な測定が可能である。また、前記第1の電極及び第2の電極の高さは、50nm~5,000nmの範囲であり、前記第1の電極及び第2の電極の幅は、0.1μm~1000μm、1μm~500μm、或いは10μm~300μmであってもよい。具体的には、前記電極は、銀または金材質であってもよい。
【0025】
前記電極は、スクリーン印刷、PCBまたはフォトリソグラフィ(photolithography)方式を通じて形成されてもよい。具体的には、前記電極が銀材質の場合、前記銀材質電極は、スクリーン印刷方式を通じて形成されてもよい。また、前記電極が金材質の場合、前記金材質電極は、PCB方式を通じて形成されてもよい。スクリーン印刷またはPCB方式の場合、フォトリソグラフィ方式に比べて製作コストが1/100ほど安いという利点がある。
【0026】
本発明によるバイオセンサーは、収納部をさらに含んでもよい。前記収納部は、内部に電極層、抗生剤及び微生物を収納してもよい。また、前記収納部は、前記基板に垂直方向に形成されてもよい。具体的には、前記バイオセンサーを用いて微生物の抗生剤感受性を測定する場合、微生物または抗生剤などは、前記収容部の内部で処理されてもよい。前記収納部は、上部が開いた形態であってもよい。
【0027】
前記収納部は、ガラス、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテトラフタレート(PET)及びポリカーボネート(PC)からなる群から選ばれる1つ以上の材料によるものであってもよい。商業的に使用される一例として、プラスチック素材のウェル(well)であってもよい。前記収容部の容量は、10μlから1mlであってもよい。前記微生物は、培養培地とともに処理されてもよく、このような意味で前記収容部は、微生物の培養培地もともに内部に含んでもよい。
【0028】
前記培養培地は、培地、培養液とも呼ばれ、微生物の増殖、保存などのために使用される液体または固形の材料を意味するもので、微生物の種類によってその具体的な構成が異なってもよい。液体形態が好ましく、血液であるか、または血液を含んでもよい。
【0029】
前記微生物はバクテリアであってもよく、前記バクテリアは、グラム陽性菌、グラム陰性菌及びそれらの抗生剤耐性菌株であることが好ましいが、これに限定されるものではない。具体的には、前記グラム陽性菌は、バチルス・サブチリス(Bacillus su
btilis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)及びスタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)からなる群から選ばれるいずれか1つ以上であってもよく、前記グラム陰性菌は、大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス・エルジノサ(Psedomonas aeruginosa)、アセネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)及びサルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)からなる群から選ばれるいずれか1つ以上であってもよい。
【0030】
前記抗生剤はその種類が具体的に限定されず、本発明によるバイオセンサーでその感受性を測定できるものであればすべて含まれる。具体的には、前記抗生剤は、アンピシリン(Ampicillin)、テトラサイクリン(Tetracycline)、ジェンタマイシン(Gentamicin)、エリスロマイシン(Erythromycin)、バンコマイシン(Vancomycin)、リネゾリド(Linezolid)、メチシリン(Methicil)、オキサシリン(Oxacillin)、セホタキシム(Cefotaxime)、リファンピシン(Rifampicin)、アミカシン(Amikacin)、アミカシン(Amikacin)、カナマイシン(Kanamycin)、トブラマイシン(Tobramycin)、ネオマイシン(Neomycin)、エルタペネム(Ertapenem)、ドリペネム(Doripenem)、イミペネム/シラスタチン(Imipenem/Cilastatin)、メロペネム(Meropenem)、セフタジジム(Ceftazidime)、セファピム(Cefepime)、セフタロリン(Ceftaroline)、セフトビプロール(Ceftobiprole)、アズトレオナム(Aztreonam)、ピペラシリン(Piperacillin)、ポリミキシンB(Polymyxin B)、コリスチン(Colistin)、シプロフロキサシン(Ciprofloxacin)、レボフロキサシン(Levofloxacin)、モキシフロキサシン(Moxifloxin)、ガチフロキサシン(Gatifloxacin)、チゲサイクリン(Tigecycline)、それらの配合体及びそれらの誘導体からなる群から選ばれてもよく、アンピシリン(Ampicillin)またはテトラサイクリン(Tetracycline)であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0031】
本発明によるバイオセンサーの測定機器は、電気的特性変化測定結果を送出する無線送出部をさらに含んでもよく、このような送出方式は、USBなどのデータケーブルを用いた有線でデータ伝送またはブルートゥース方法を用いた無線方法をすべて含んで通常使用可能な方法によって行われてもよい。
【0032】
本発明によるバイオセンサーは、電気的特性の測定が可能な計測器に連結され、微生物の濃度変化をリアルタイムでモニタリングすることができ、このとき、前記バイオセンサーには、10hz~1MHzの周波数を有する1mV~1V交流電圧が供給されてもよい。
【0033】
微生物の抗生剤感受性検査方法
【0034】
本発明は、前記バイオセンサーに微生物を含有する試料を処理する段階、前記試料が処理されたバイオセンサーに抗生剤を処理する段階、及び前記抗生剤の処理後、電気的特性の変化を測定する段階を含む微生物の抗生剤感受性検査方法を提供する。
【0035】
まず、本発明による微生物の抗生剤感受性検査方法は、前記バイオセンサーに微生物を含有する試料を処理する段階を含む。
【0036】
前記バイオセンサーについては前述したので、重複説明を省略する。
【0037】
また、前記試料は微生物を含有するもので、前記微生物については前述したので、重複説明を省略する。前記試料は組成物の形態であってもよく、液体、土壌、空気、食品、廃棄物、動植物の腸内及び動植物に由来する組織、血液、尿、涙、唾液、または汗などのいずれかから採取されたものであってもよく、前記動植物は、人体を含む。前記試料は、さらに人体の血液から検体から抽出され、血液培養培地ないし分離培養培地で培養されて増幅させた微生物であってもよい。前記試料は、Mass spectrometerまたはその他の同定キットなどによって菌種が同定されない試料を使用してもよい。
【0038】
次に、本発明による微生物の抗生剤感受性検査方法は、前記試料が処理されたバイオセンサーに抗生剤を処理する段階を含む。
【0039】
前記抗生剤については前述したので、重複説明を省略する。
【0040】
次に、本発明による微生物の抗生剤感受性検査方法は、前記抗生剤の処理後、電気的特性変化を測定する段階を含む。
【0041】
具体的には、前記抗生剤感受性は、抗生剤処理前と抗生剤処理後に変化した電気的な特性を測定し、その変化値によって抗生剤耐性の有無による微生物の抗生剤抵抗及び生存可否をリアルタイムで迅速に確認することができ、キャパシタンス(capacitance)、インピーダンス(impedance)、レジスタンス(resistance)、リアクタンス(reactance)などの電気的特性の変化を通じてより精密に耐性の有無を判別しうる。一例として、抗生剤の濃度による最小抗生剤最小抑制濃度(Minimum inhibitory concentration、MIC)値も測定でき、治療のための投与抗生剤の濃度を最小化でき、耐性の有無による最適な抗生剤を選択することができ、抗生剤の誤用・乱用などを防ぐことができ、それによって副作用などを下げることができるという長所がある。
【0042】
上述したように、本発明によるバイオセンサーは、ポリエチレンテレフタレートを含む基板、及び前記基板の片面または両面に形成され、インターディジテイトされた第1の電極及び第2の電極を含む電極層を含むことを特徴とし、他の材質の基板を使用した場合に比べて、微生物の生長変化検出の所要時間が短く、弁別力に優れた利点を持つ。さらに、迅速な微生物の抗生剤感受性検査が可能なだけでなく、耐性を制限できる最小限の抗生剤の濃度を迅速に確認しうる。
【0043】
したがって、本発明によるバイオセンサーを用いると、顕著に優れた敏感度により微生物の抗生剤感受性検査の所要時間を4時間以内に画期的に短縮させることができ、迅速な判断及び処置が必要な微生物感染を治療するのに非常に効果的に適用できる。
【0044】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、以下の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものであり、以下の実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例
【0045】
<実施例>
【0046】
製造例1:実験の準備
【0047】
実験に使用した菌株は大腸菌(ATCC25922)で、標準菌株を米国のATCC社から購入して使用した。菌株の培養には、米国標準のCLSI及び欧州標準のEUCASTが推奨する培養液であるMueller-Hinton media(MH media)をDIFCO社から購入し、製品説明書の推奨製造法に従って使用した。菌株をMH
mediaで24時間培養した後、菌株培養液をMcfarland OD0.5に合わせた後、培養液で1/100希釈後(菌株濃度:5×10~10cfu/mL)、センサーに処理した。
【0048】
一方、実験に使用した抗生剤は、アンピシリン(ampicillin)及びテトラサイクリン(tetracycline)で、Sigma社から購入し、各抗生剤の性状によって脱イオン処理および高圧蒸気滅菌した超純水(deionized water)、100%DMSOまたは100%エタノールに溶かして(抗生剤ごとに溶媒が異なるように使用してもよい。例えば、テトラサイクリンは100%エタノールで溶かした後、高圧蒸気滅菌した超純水(deionized water)で希釈して使用してもよい。)8mg/mLの濃度にし、22umフィルターで濾過後、高圧蒸気滅菌した超純水(deionized water)を用いて0.5~8mg/mlの濃度に希釈した後、センサーに処理した。
【0049】
実施例1:微生物の抗生剤感受性評価用バイオセンサー(PET基板-Ag電極)の作製
微生物の抗生剤感受性を評価するためのバイオセンサーを作製するために、非導電性ポリマーであるポリエチレンテレフタレート(PET)(SKC製品、SW94M)材質の基板(厚さ:250μm)上に微細シルバーインク(EベースSC-PE09F4)データシート)をスクリーン印刷方式(スクリーン印刷工程)で印刷し、インターデジタル化された(Interdigitated)Ag電極(厚さ:~150μm)を形成したセンサーを作製した(図2a及び図2b参考)。このとき、16チャンネル及び64チャンネルインターディジテイト(Interdigitated)センサーの場合、直径4.5mmのセンサーのサイズに電極高さ(~150)μm及び幅(100μm)と100μmの電極間隔を置いた。その後、前記Ag電極上にポリプロピレン材質を用いて射出方式で作製した収納部を防水性両面テープまたは熱融着テープを用いて貼り付け、Oを使用して最終的に滅菌して使用した。また、前記Ag電極及び電気信号測定用パッド(pad)がビアホール(via hole)を通じて通電できるようにした。
【0050】
比較例1:微生物の抗生剤感受性評価用バイオセンサー(エポキシ基板-Ag電極)の作製
PET材質基板の代わりにエポキシ材質基板を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法でセンサーを作製した。
【0051】
実施例2:微生物の抗生剤感受性評価用バイオセンサー(PET基板-Au電極)の作製
微生物の抗生剤感受性を評価するためのバイオセンサーを作製するために、非導電性ポリマーであるポリエチレンテレフタレート(PET)(SKC製品、SW94M))材質の基板(厚さ:250μm)上に非電解及び電気めっきによるPCB作製工程方式で両面を印刷してAu電極(厚さ:Total:80.1μm、Cu 50μm、Ni:30μm、Au 0.1μm)を形成したセンサーを作製した(図3a及び3b参照)。このとき、16チャンネル及び192チャンネルインターディジテイト(Interdigitated)Auセンサーの場合、直径2.5mmのセンサーのサイズに電極高さ(~80)μm及び幅(100μm)と100μmの電極間隔を置いた。その後、前記Au電極上にポリプロピレン材質を用いて射出方式で作製した収納部を防水性両面テープまたは熱融着テープを用いて貼り付け、Oを使用して最終的に滅菌して使用した。また、前記Au電極及び電気信号測定用パッド(pad)がビアホール(via hole)を通じて通電できるようにした。
【0052】
比較例2:微生物の抗生剤感受性評価用バイオセンサー(エポキシ基板-Au電極)の作製
PET材質基板の代わりにエポキシ材質基板を使用したことを除いては、実施例2と同様の方法でセンサーを作製した。
【0053】
比較例3:微生物の抗生剤感受性評価用バイオセンサー(ポリイミド基板-Au電極)の作製
PET材質基板の代わりにポリイミド材質基板を使用したことを除いては、実施例2と同様の方法でセンサーを作製した。
【0054】
比較例4:微生物の抗生剤感受性評価用バイオセンサー(ガラス基板-Au電極)の作製
PET材質基板の代わりにガラス材質基板を使用し、PCB方式の代わりにフォトリソグラフィ(photolithography)方式を適用したことを除いては、実施例2と同様の方法でセンサーを作製した。
【0055】
実験例1:センサーによる微生物のキャパシタンス変化の測定
【0056】
実施例1~2及び比較例1~4で作製したセンサーを用いて微生物のキャパシタンス変化測定能を確認した。具体的には、実施例1~2及び比較例1~3で作製したセンサーのそれぞれについて、大腸菌(ATCC25922)を10~10cells/ml処理した後、MH media内において37℃で培養しながら大腸菌(ATCC25922)の生長によるキャパシタンスの変化を測定した。一方、実施例4で作製したセンサーに対して、大腸菌(E.coli U556またはE.coli U433)または黄色ブドウ球菌(S.aureus T82またはS.aureus P101)を1~10cells/ml処理した後、37℃で培養しながら大腸菌(E.coli U556またはE.coli U433)または黄色ブドウ球菌(S.aureus T82またはS.aureus P101)の成長によるキャパシタンス変化を測定した。
【0057】
図4aに示すように、実施例1で作製したセンサーは、PET基板-Ag電極を適用したもので、短時間内にキャパシタンス変化が大きく測定されたところ、微生物の生長変化検出の所要時間が短く、弁別力に優れていることが確認される。一方、比較例1で作製したセンサーは、エポキシ基板-Ag電極を適用したもので、キャパシタンス変化が微々たる水準に過ぎないことが確認される。
【0058】
図5a及び図5bに示すように、実施例2で作製したセンサーはPET基板-Au電極を適用したもので、同様に短時間内にキャパシタンス変化が大きく測定されたところ、微生物の生長変化検出の所要時間が短く、弁別力に優れていることが確認される。一方、比較例2~3で作製したセンサーは、エポキシまたはポリイミド基板-Ag電極を適用したもので、いずれもキャパシタンス変化が微々たる水準に過ぎないことが確認される。また、比較例4で作製したセンサーは、従来のガラス基板-Au電極を適用したもので、これもキャパシタンス変化が微々たる水準に過ぎないことが確認される。
【0059】
実験例2:センサーによる微生物の抗生剤感受性検査
【0060】
実施例1~2で作製したセンサーを用いて微生物の抗生剤感受性を測定した。具体的には、実施例1~2で作製したセンサーのそれぞれについて、アンピシリンを0.5~8μg/mlの濃度で、テトラサイクリンを0.5~8μg/mlの濃度で準備してそれぞれセンサー表面に処理した後、直ちに準備した大腸菌(ATCC25922)を10cells/ml処理し、リアルタイムでモニタリングされるキャパシタンス変化結果に基づ
いて微生物の抗生剤感受性を測定した。図4bに示すように、実施例1で作製したセンサーは、PET基板-Ag電極を適用したもので、アンピシリンの処理後に大きく増加するキャパシタンス変化が確認されたのに対し、テトラサイクリンの処理後にはキャパシタンス変化が確認されなかったので、大腸菌(ATCC25922)は、アンピシリンに対して抵抗性(耐性)を有し、テトラサイクリンに対して感受性を有することが確認される。
【0061】
図5cに示すように、実施例2で作製したセンサーは、PET基板-Au電極を適用したもので、同様にアンピシリンの処理後に大きく増加するキャパシタンス変化が確認されたのに対し、テトラサイクリンの処理後にはキャパシタンス変化が確認されなかったので、大腸菌(ATCC25922)は、アンピシリンに対して抵抗性(耐性)を有し、テトラサイクリンに対して感受性を有することが確認される。
【0062】
すなわち、実施例1~2で作製したセンサーを用いると、アンピシリンに対して耐性を有する微生物を処理した後、アンピシリンを処理する場合、1~2時間内に大きく変化を引き起こすキャパシタンス変化が確認される。したがって、実施例1~2で作製したセンサーを用いると、迅速な微生物の抗生剤感受性検査が可能であり、マルチチャンネルインターディジテイト(Interdigitated)センサーの場合、同時に複数の抗生剤に対して測定可能で感受性の高い抗生剤に対する迅速な情報提供が可能である。また、耐性を制限できる最小限の抗生剤の濃度を迅速に確認できるという利点がある。
【0063】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変形できることが理解できるだろう。したがって、前述した実施例は、あらゆる点で例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
【国際調査報告】