(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】自動臨床診断システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/623 20210101AFI20231226BHJP
【FI】
G01N27/623
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537481
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 EP2021086819
(87)【国際公開番号】W WO2022136286
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】エッピング,クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】レンプト,マルティン
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041CA02
2G041DA04
2G041DA05
2G041EA03
2G041FA10
2G041GA03
2G041GA09
2G041HA03
2G041JA05
2G041JA06
2G041JA13
2G041KA01
(57)【要約】
本発明は、臨床診断システム、生物学的試料中の少なくとも1つの目的の分析物の存在またはレベルを決定するための方法、目的の分析物の効率的および/またはロバストな検出のためのキットおよびその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臨床診断システム(100)であって、
-少なくとも1つの目的の分析物を含む生物学的試料(9)の自動調製のための試料調製ステーション(1)と、
-前記少なくとも1つの目的の分析物の少なくとも1つのイオンまたは複数のイオンを発生させるためのイオン発生ステーション(2)と、
-前記少なくとも1つの目的の分析物の選択性を高めるための少なくとも1つの選択性エンハンサーステーション(3)またはそれ以上であって、前記少なくとも1つの選択性エンハンサーステーション(3)が、それぞれのイオンサイズに基づいてイオンを分離し、1つ以上の電極に印加される電気および/または無線周波数場(AC/DCおよび/またはRF)を使用してイオン移動度に関してイオンを分離するためのイオン移動度ユニット(31)を備える、少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションと、
-前記少なくとも1つの目的の分析物の少なくとも1つのイオンを検出するためのイオン検出ステーション(4)と、
-イオン検出システムから少なくとも受信された少なくとも1つの電子信号を処理および/または評価するためのデータ処理ステーション(5)と
を備える、臨床診断システム(100)。
【請求項2】
前記生物学的試料(9)がランダム過剰モードで調製され、かつ/または前記臨床診断システム(100)が自動化されている、請求項1に記載の臨床診断システム(100)。
【請求項3】
前記生物学的試料(9)が、個体からの血清、血漿、組織、液体、呼気、汗、痰および全血試料からなる群から選択される患者試料から得られ、好ましくは前記個体が哺乳動物、好ましくはヒトである、請求項1または2に記載の臨床診断システム(100)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの目的の分析物が、m/z=2000よりも小さい、好ましくはm/z=1000よりも小さいモル質量を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の臨床診断システム(100)。
【請求項5】
前記試料調製ステーション(1)が、前記生物学的試料(9)中の干渉マトリックス成分を除去もしくは少なくとも低減し、かつ/または前記生物学的試料(9)中の目的の分析物を濃縮するためのものであり、以下のユニット:試料送達ユニット、試料前処理ユニット、試料分析ユニットのうちの少なくとも1つまたはそれらの組み合わせを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の臨床診断システム(100)。
【請求項6】
前記試料送達ユニットが、試料の採取および調製および/もしくは搬送を含み、かつ/または
前記試料前処理ユニットが、以下:磁性ビーズ処理ユニット、内部標準処理ユニット、支持化合物処理ユニット、ピペッティングユニット、流体搬送ユニット、反応容器搬送機構ユニット、濃縮処理ユニット、溶媒蒸発ユニット、誘導体化ユニットの群から選択される少なくとも1つのユニットまたは1つよりも多いユニットを備え、かつ/または、
前記試料分析ユニットが、固液支持分析物濃縮ユニット、固液支持マトリックス枯渇ユニット、気体試料濃縮またはマトリックス分離ユニット、固体支持ユニット上の固体試料の群から選択される少なくとも1つのユニットまたは1つよりも多いユニットを備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の臨床診断システム(100)。
【請求項7】
前記試料調製ステーション(1)が、部分的または完全に自動化されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の臨床診断システム(100)。
【請求項8】
前記イオン発生ステーション(2)が、非定常分析物イオン供給ユニット(21)および/または定常分析物イオン供給ユニット(22)を備え、前記非定常分析物イオン供給ユニット(21)が、レーザー脱離イオン化(LDI、211)、誘電体バリア液体流(212)、表面プラズマイオン化(213)およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記定常分析物イオン供給ユニット(22)が、フローインジェクション(221)、ペーパースプレー(222)、電子イオン化(EI、223)、マトリックス支援イオン化(MAI、223)、例えばプロトン移動反応(PTR)の化学イオン化(CI、225)、例えば
63Niを使用する放射性支援イオン化(226)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の臨床診断システム(100)。
【請求項9】
前記選択性エンハンサーステーション(3)が、前記イオン移動度ユニット(31)と、以下:イオン搬送ユニット(32)、イオンフラグメンテーションユニット(33)の群から選択される少なくとも1つのユニットとを備え、前記イオン搬送ユニット(32)が、イオンファンネル(321)、ステップ波(322)、Sレンズ(323)、イオンミラー(324)、差動電位によるイオンファイトチューブ(325)、イオントラップ(326)、例えば四重極の多極(327)、例えばダイレクトソースカップリングまたは加熱キャピラリの非接触イオン搬送システム(328)、および磁気セクタ搬送(329)からなる群から選択され、前記イオンフラグメンテーションユニット(33)が、衝突誘起解離(CID、331)、電子捕獲解離(ECD、332)、電子移動解離(ETD、333)、光子解離(334)、イオントラップ(335)、オービトラップ(336)、飛行時間(TOF、337)、例えば二重焦点セクタフィールド(DFS)の磁気セクタ(338)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の臨床診断システム(100)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの目的の分析物が、10秒未満、好ましくは9秒未満または8秒未満または7秒未満または6秒未満または5秒未満または4秒未満または3秒未満または2秒未満または1秒未満の前記臨床診断システム(100)または質量分析計または前記イオン移動度ユニット(31)に存在する、請求項1から9のいずれか一項に記載の臨床診断システム(100)。
【請求項11】
前記生物学的試料(9)中の前記少なくとも1つの目的の分析物の存在またはレベルを決定するための、請求項1から10のいずれか一項に記載の臨床診断システム(100)の使用。
【請求項12】
生物学的試料(9)中の少なくとも1つの目的の分析物の存在またはレベルを決定するための方法であって、
A)前記生物学的試料(9)を調製すること、好ましくは少なくとも1つの目的の分析物を含む前記生物学的試料(9)を自動調製することと、
B)前記少なくとも1つの目的の分析物からイオンを発生させることと、
C)1つまたは複数の電極に印加される電場を使用してイオン移動度を介して1つまたは複数のイオンを分離することと、
D)質量分析を使用して前記少なくとも1つの目的の分析物の少なくとも1つのイオンを検出および決定することと
を含む、方法。
【請求項13】
内部標準物が、好ましくはステップ(A)において添加され、前記内部標準物が、好ましくは同位体標識されている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から10のいずれか一項に記載の臨床診断システム(100)において実行される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
請求項12または13または14に記載の方法を実行するのに適したキットであって、
-試薬、好ましくは前処理を実行するための試薬と、
-濃縮を実行するための磁性、常磁性または超常磁性ビーズと、
-任意に、好ましくは同位体標識された内部標準物と
を備える、キット。
【請求項16】
請求項1から10のいずれか一項に記載の臨床診断システム(100)および/または請求項12から14のいずれか一項に記載の方法における、請求項15に記載のキットの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、臨床診断システム、生物学的試料中の少なくとも1つの目的の分析物の存在またはレベルを決定するための方法、目的の分析物の効率的および/またはロバストな検出のためのキットおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
質量分析(MS)は、小分子から高分子にわたる化学物質の定性および定量分析に広く使用されている技術である。概してこれは非常に高感度で特異的な方法であり、複雑な生物学的試料、例えば(例えば)環境または臨床試料の分析さえ可能である。しかしながら、いくつかの分析物、特に血清のように複雑な生物学的マトリックスから分析した場合、測定の感度は問題のままである。
【0003】
多くの場合、MSは、クロマトグラフィ技術、特にガスおよび液体クロマトグラフィ、例えばHPLCと組み合わされる。ここで、分析された目的の分子(分析物)は、クロマトグラフィで分離され、個別に質量分析に供される(Higashiら(2016)J.of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 130 p.181-190)。しかしながら、このシステムは、分析物-表面接触の固有の問題、ならびに固定相および液体溶媒の必要性を有する。さらにまた、機械部品は、移動されることによって固有の応力の基礎となり、これは最終的に機器の劣化をもたらす。したがって、システムは、使用される機械部品のために集中的なメンテナンスを必要とする。例えばGCまたはHPLCに使用されている固定相もまた、劣化または除去不能な化学的閉塞によって置き換えられる必要がある。
【0004】
しかしながら、上記の欠点を克服するために、MS分析方法のHPLCを置き換える必要が依然としてある。
【0005】
さらに、質量分析は、科学のあらゆる分野にわたって汎用的なツールである。環境分析では、汚染物質の痕跡を決定することができ、鉱物学では化学組成を評価することができ、化学では特定の化合物を定性的および定量的に測定することによって反応の経路を反映することができる。
【0006】
臨床診断では、質量分析の汎用ツールは、試料の種類(例えば、液体(例えば血清/血液)、固体(例えば、組織の断面)または気体(例えば、組織の断面))ならびに分析タスク、例えば定性的または定量的という点で異なる態様を満たす。
【0007】
臨床分析における質量分析は、低質量分析物、例えばアルカリ金属(Na、Kなど)または低酸/塩基、例えばバルプロ酸ならびに中サイズ分析物(例えば、ステロイド)および高分子質量分析物、例えばタンパク質のようなバイオポリマーを取り扱う必要性をさらに満たしている。全ての分析物は、定量的および定性的に対処される必要がある。
【0008】
さらに、臨床検査室における質量分析の実装に対する関心が高まっている。特に治療薬監視または乱用薬物試験における小分子について、公開されている方法の数が増加している。
【0009】
事前に検証された臨床MS用途のためのいくつかの使用の準備ができているキットが市販されつつある。
【0010】
しかしながら、質量分析の使用は、そのようなキットに関連してさえも、臨床診断のために規制上承認されない場合がある。これは、ほとんどの場合、ごく少数の分析物を除いて標準化された手順がないため、および依然として実行されている多数の手動ステップ、および使用および組み合わせが可能であり、臨床的関連性の信頼性が高く再現可能な結果を提供する役割を果たすハードウェア構成要素の多様性などの依然として多数のユーザ依存要因のためである。特に、試料調製は、典型的には手動の面倒な手順である。その後の遠心分離を伴うタンパク質沈殿は、望ましくない、潜在的に妨害する試料マトリックスを除去するための最も一般的な方法である。キットの使用は、少なくとも部分的に自動化することができる試料調製を部分的に容易にし得る。しかしながら、キットは、目的の限られた数の分析物に対してのみ利用可能であり、試料調製から分離および検出までの全プロセスは複雑なままであり、高度に洗練された機器を操作するために高度に訓練された検査室職員の対応を必要とする。
【0011】
また、典型的には、同じ調製条件下で事前に調製された試料のバッチが同じ分離条件下で連続的な分離操作を受けるバッチアプローチにしたがう。しかしながら、このアプローチは、高いスループットを可能にせず、柔軟性がなく、例えば、より高い優先度を有し、最初に処理されなければならない到来する緊急試料を考慮して再スケジューリング(事前定義された処理シーケンスの変更)を可能にしない。
【0012】
質量分析をより簡便且つより信頼性が高く、したがって臨床診断に適したものにするシステムおよび方法が本明細書に記載されている。特に、分析物および試料濃度/マトリックス成分試料調製のためのランダムアクセスを伴うハイスループット、例えば最大100試料/時間またはそれ以上が得られ得る。さらに、プロセスを完全に自動化して、ウォークアウェイタイムを増やし、必要な技能のレベルを下げることができる。
【0013】
したがって、当該技術分野では、複雑な生物学的マトリックスからの分析物の圧縮可能で、低いメンテナンスおよび迅速な検出を可能にする臨床診断システムおよび方法が緊急に必要とされている。
【0014】
さらに、本明細書に記載の目的の分析物を含有する試料をイオン発生源を介してイオン移動度ユニット、例えば可逆イオン操作ユニットおよびイオン検出システムのための構造に結合することは、上述した制限を克服することができる。
【0015】
本発明の目的は、臨床診断システム、生物学的試料中の少なくとも1つの目的の分析物の存在またはレベルを決定するための方法、目的の分析物の効率的および/または低維持および/または迅速および/またはロバストな検出のためのキットおよび/またはその使用を提供することである。
【0016】
この目的は、独立請求項の主題によって解決される。さらなる実施形態は、従属請求項にしたがう。
【発明の概要】
【0017】
以下において、本発明は以下の態様に関する。
【0018】
第1の態様では、本発明は、臨床診断システムであって、
-少なくとも1つの目的の分析物を含む生物学的試料の自動調製のための試料調製ステーションと、
-少なくとも1つの目的の分析物の少なくとも1つのイオンまたは複数のイオンを発生させるためのイオン発生ステーションと、
-少なくとも1つの目的の分析物の選択性を高めるための少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションまたはそれ以上であって、少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションが、それぞれのイオンサイズに基づいてイオンを分離し、1つまたは複数の電極に印加される電気および/または無線周波数場(AC/DCおよび/またはRF)を使用してイオン移動度に関してイオンを分離するためのイオン移動度ユニットを備える、少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションと、
-少なくとも1つの目的の分析物の少なくとも1つのイオンを検出するためのイオン検出ステーションと、
-イオン検出システムから少なくとも受信された少なくとも1つの電子信号を処理および/または評価するためのデータ処理ステーションと
を備え、
好ましくは、臨床診断システムが、クロマトグラフィユニットまたはステーションを含まない、臨床診断システムに関する。
【0019】
第2の態様では、本発明は、生物学的試料中の少なくとも1つの目的の分析物の存在またはレベルを決定するための本発明の第1の態様の臨床診断システムの使用に関する。
【0020】
第3の態様では、本発明は、生物学的試料中の少なくとも1つの目的の分析物の存在またはレベルを決定するための方法であって、
A)生物学的試料を調製すること、好ましくは少なくとも1つの目的の分析物を含む生物学的試料を自動調製することと、
B)少なくとも1つの目的の分析物からイオンを発生させることと、
C)1つまたは複数の電極に印加される電場を使用してイオン移動度を介して1つまたは複数のイオンを分離することと、
D)質量分析を使用して前記少なくとも1つの目的の分析物の少なくとも1つのイオンを検出および決定することと
を含む、方法に関する。
【0021】
第4の態様では、本発明は、本発明の第3の態様の方法を実行するのに適したキットであって、
-好ましくは前処理を実行するための試薬と、
-濃縮を実行するための磁性、常磁性または超常磁性ビーズと、
-任意に、好ましくは同位体標識された内部標準物と
を備える、キットに関する。
【0022】
第5の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の臨床診断システムおよび/または本発明の第3の態様の方法におけるキットの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】臨床診断システムおよび臨床診断方法の概略図を示している。
【
図2】臨床診断システムおよび臨床診断方法の概略図を示している。
【
図3】臨床診断システムおよび臨床診断方法の概略図を示している。
【
図4】臨床診断システムおよび臨床診断方法の概略図を示している。
【
図5】臨床診断システムおよび臨床診断方法の概略図を示している。
【
図6】臨床診断システムおよび臨床診断方法の概略図を示している。
【
図7】臨床診断システムおよび臨床診断方法の概略図を示している。
【
図8】臨床診断システムおよび臨床診断方法の概略図を示している。
【
図9】試料の種類および/または試料中の目的の分析物に応じた、臨床診断方法の要素、特に可能なワークフロー経路の組み合わせを概略的に示している。
【
図10】臨床診断方法の例示的なフローチャートを示している。
【
図11】臨床診断方法の例示的なフローチャートを示している。
【
図12A】一般的に選択可能なオプションの中からのオプションの選択を含む、マスターテーブルまたはメモリにおいて事前定義され得る分析物固有のワークフロー経路の2つの一般的な例を示している。
【
図12B】一般的に選択可能なオプションの中からのオプションの選択を含む、マスターテーブルまたはメモリにおいて事前定義され得る分析物固有のワークフロー経路の2つの一般的な例を示している。
【
図13A】比較例にかかるSLIM-MSを使用した3つの同重体五糖の分離を示している。
【
図13B】比較例にかかるSLIM-MSを使用した3つの同重体五糖の分離を示している。
【
図13C】比較例にかかるSLIM-MSを使用した3つの同重体五糖の分離を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
本発明を以下に詳細に説明する前に、本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態および例に限定されず、これらは変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図しないことも理解されるべきである。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当該技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。
【0025】
いくつかの文献が本明細書中で引用されている。本明細書に引用されている各文献(全ての特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、説明書などを含む)は、上記であろうと以下であろうと、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。このように組み込まれた参照の定義または教示と、本明細書に引用された定義または教示との間に矛盾がある場合には、本明細書の本文が優先する。
【0026】
以下、本発明の各要素について説明する。これらの要素は、特定の実施形態とともに列挙されているが、これらは、任意の方法および任意の数で組み合わせて追加の実施形態を作成し得ることを理解されたい。様々な記載された実施例および好ましい実施形態は、本発明を明示的に記載された実施形態のみに限定するように解釈されるべきではない。この記載は、明示的に記載された実施形態を任意の数の開示および/または好ましい要素と組み合わせる実施形態を支持し、且つ包含するものと理解されるべきである。さらにまた、本出願に記載されている全ての要素の任意の順列および組み合わせは、文脈が別段の意味を示さない限り、本出願の説明によって開示されていると考えるべきである。
【0027】
定義
語「備える(comprise)」、ならびに「備える(comprises)」および「備える(comprising)」のような変形は、記載された整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群の包含を意味するが、いかなる他の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群の除外を意味しないことが理解されよう。「含む(including)」および「備える(comprising)」という用語は、互換的に使用され得る。
【0028】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、別途内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0029】
比率、濃度、量、および他の数値データは、「範囲」の形式で本明細書に表され得るかまたは提示され得る。このような範囲の形式は、便宜上および簡潔にするために単に使用されているに過ぎないことが理解され、したがって、その範囲の境界として明示的に列挙されている数値を含むだけではなく、各数値および部分範囲があたかも明示的に列挙されているかのごとく、その範囲内に包含される個々の数値または部分範囲の全てを含むことを柔軟に解釈するべきである。例示として、「4%~20%」の数値範囲は、4%~20%という明示的に列挙されている値を含むだけではなく、表示されている範囲内の個々の値および部分範囲を含むと解釈されるべきである。したがって、この数値範囲には、4、5、6、7、8、9、10、...18、19、20%などの個々の値と、4~10%、5~15%、10~20%などの部分範囲とが含まれる。この同じ原理は、最小値または最大値を列挙する範囲に適用される。さらにまた、このような解釈は、その範囲の幅または記載されている特性にかかわらず、適用すべきである。
【0030】
「約」という用語は、数値に関連して使用される場合、示された数値よりも5%小さい下限値を有し、且つ示された数値よりも5%大きい上限値を有する範囲内の数値を包含することを意味する。
【0031】
「臨床診断システム」は、好ましくは、インビトロ診断用の試料の分析専用の検査室自動化装置である。臨床診断システムは、必要に応じて、および/または所望の検査室ワークフローに従って、異なる構成を有してもよい。追加の構成は、複数のステーションおよび/または装置および/またはモジュールおよび/またはユニットをともに結合することによって取得され得る。「ユニット」は、専用機能を有する、臨床診断システム全体よりもサイズが典型的には小さい作業セルである。この機能は、分析的とすることができるが、分析前または分析後とすることができ、または分析前機能、分析機能または分析後機能のいずれかに対する補助機能とすることもできる。特に、ユニットは、例えば試料の分析前および/または分析および/または分析後ステップを実行することによって、試料処理ワークフローの専用タスクを実行するための1つまたは複数の他のモジュールまたはユニットと協働するように構成され得る。「ユニット」および装置という用語は、交換可能に使用され得る。特に、臨床診断システムは、特定の種類の分析、例えば臨床化学、免疫化学、凝固、血液学、液体クロマトグラフィ分離、質量分析などのために最適化されたそれぞれのワークフローを実行するように設計された1つまたは複数の分析装置を備えることができる。したがって、臨床診断システムは、1つの分析装置、またはそのような分析装置のいずれかとそれぞれのワークフローとの組み合わせを備え得る。分析装置のそれぞれは、少なくとも1つのステーションおよび/または少なくとも1つのユニット、好ましくは分析前および/または分析後ユニットを備えてもよい。臨床診断システムは、試料および/または試薬および/またはシステム流体のピペッティングおよび/またはポンピングおよび/または混合のための液体処理ユニットなどの機能ユニット、ならびに選別、保存、移送、識別、分離、検出のための機能ユニットも備えることができる。
【0032】
本明細書で使用される場合、目的の分析物のレベルを「決定する」という用語は、例えば前処理された試料中の目的の分析物のレベルを決定または測定するための、目的の分析物の定量または認定を指す。
【0033】
これに関連して、「少なくとも1つの目的の分析物の存在」は、その絶対値および/または内部標準物/他の分析物に対するその相対信号値および/またはその濃度と一致する分析物濃度の限界による目的の分析物の認定を包含する。
【0034】
これに関連して、「レベル」または「レベル値」は、絶対量、相対量または濃度、ならびにそれらと相関するかまたはそれらから導出され得る任意の値またはパラメータを包含する。
【0035】
本開示の文脈において、「分析物」、「分析物分子」、または「目的の分析物」という用語は、質量分析によって分析される化学種を互換的に参照して使用される。質量分析によって分析されるのに適した化学種、すなわち分析物は、核酸(例えば、DNA、mRNA、miRNA、rRNAなど)、アミノ酸、ペプチド、タンパク質(例えば、細胞表面受容体、細胞質タンパク質など)、代謝産物またはホルモン(例えば、テストステロン、エストロゲン、エストラジオールなど)、脂肪酸、脂質、炭水化物、ステロイド、ケトステロイド、セコステロイド(例えば、ビタミンD)、別の分子のある特定の修飾を特徴とする分子(例えば、タンパク質上の糖部分またはホスホリル残基、ゲノムDNA上のメチル残基)、もしくは生物によって内在化されている物質(例えば、治療薬、依存性薬物、毒素など)、またはそのような物質の代謝産物を含むが、これらに限定されない、生存生物内に存在する任意の種類の分子とすることができる。このような分析物は、バイオマーカーとして役立つことがある。本発明の文脈において、「バイオマーカー」という用語は、生物系の生物学的状態の指標として使用される当該系内の物質を指す。
【0036】
本明細書で使用される「互いに接続されている」という用語は、例えば、ピペッティングユニットによる固定ユニット、例えば管接続または半物理的接続のいずれかによる物理的接触を指すことができるかまたは指す。さらにまた、物理的とは、固体/液体(例えば、水性液滴吐出または圧電駆動液滴吐出)または気体(例えば、イオンミラー、Sレンズまたは多極を有するイオン光学系)の接触を意味することができる。
【0037】
本明細書で使用される「互いに接続されている」という用語は、ステーションおよび/またはユニット間の電気接点および/または電磁接点を指すことができる。
【0038】
本明細書で使用される「直接」という用語は、2つの直接接続されたステーションの間に他のステーションが配置されていないことを意味し得る。
【0039】
分析物は、目的の試料、例えば生物学的試料、好ましくは臨床生物学的試料中に存在し得る。「試料」または「目的の試料」または「生物学的試料」という用語は、本明細書では互換的に使用され、典型的にはそのような組織、器官または個体よりも小さく、組織、器官または個体の全体を表すことが意図されている組織、器官または個体の一部または片を指す。分析に際して、試料は、組織の状態、または器官もしくは個体の健康もしくは疾患状態に関する情報をもたらす。試料の例は、以下に限定されないが、血液、血清、血漿、滑液、髄液、尿、唾液およびリンパ液などの液体試料、または乾燥血液スポットおよび組織抽出物などの固体試料を含む。試料のさらなる例は、細胞培養物または組織培養物である。
【0040】
本明細書で使用される「血清」という用語は、凝固した血液から分離され得る血液の透明な液体部分である。本明細書で使用される「血漿」という用語は、血球を含む血液の透明な液体部分である。血清は血漿とは異なり、正常な凝固していない血液の液体部分は、赤血球および白血球ならびに血小板を含む。血清と血漿との差を生じさせるのは血餅である。本明細書で使用される場合、「全血」という用語は、血液の全ての成分、例えば白血球および赤血球、血小板、ならびに血漿を含む。
【0041】
本開示の文脈において、試料は、「個体」または「被験者」または「患者」に由来し得る。典型的には、被験者または患者は哺乳動物である。哺乳動物は、これらに限定されないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌおよびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類、例えば、サル)、ウサギおよびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)を含む。好ましくは、患者試料はヒト由来である。
【0042】
本明細書で使用される「小分子」という用語は、2000Da未満、好ましくは1000Da未満、より好ましくは800Daの分子量またはモル質量を有する分子または化合物である。
【0043】
「試料調製ステーション」は、試料中の干渉マトリックス成分を除去もしくは少なくとも低減すること、および/または試料中の目的の分析物を濃縮することを目的とした一連の試料処理ステップを実行するように設計された1つまたは複数の分析ステーションまたはユニットに結合された分析前モジュールである。そのような処理ステップは、試料または複数の試料に対して連続的に、並列的に、または千鳥状に実行される以下の処理操作:流体のピペッティング(吸引および/または分注)、流体のポンピング、試薬との混合、特定の温度でのインキュベーション、加熱または冷却、遠心分離、分離、フィルタリング、ふるい分け、乾燥、洗浄、再懸濁、分注、移送、貯蔵...)のいずれか1つまたは複数を含み得る。
【0044】
「試薬」は、例えば、分析のために試料を準備し、反応の発生を可能にし、あるいは試料または試料に含まれる分析物の物理的パラメータの検出を可能にするために、試料の処理に使用される物質である。特に、試薬は、反応物であるか、または反応物を含む物質であり得て、典型的には、試料または試料の不要な基質成分に存在する1つまたは複数の分析物に結合または化学的に変換することができる、例えば、化合物または薬剤である。反応物の例は、酵素、酵素基質、共役色素、タンパク質結合分子、リガンド、核酸結合分子、抗体、キレート剤、促進物質、阻害剤、エピトープ、抗原などである。しかしながら、試薬という用語は、水または他の溶媒または緩衝液を含む希釈液、あるいはタンパク質、結合タンパク質または表面への分析物の特異的または非特異的結合の破壊に使用される物質など、試料に添加され得る任意の流体を含むように使用される。
【0045】
試料は、例えば、一次管および二次管を含む試料管などの試料容器、またはマルチウェルプレート、または任意の他の試料運搬支持体中に提供され得る。試薬は、例えば、個々の試薬または試薬の群を含む容器またはカセットの形態で配置されてもよく、また貯蔵区画またはコンベヤ内の適切な容器または位置に置かれてもよい。他の種類の試薬またはシステム流体は、バルク容器中に、またはライン供給を介して供給され得る。
【0046】
本明細書で使用される場合、「自動的に(automatically)」または「自動化された(automated)」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つのコンピュータおよび/またはコンピュータネットワークおよび/または機械によって、特に手動の動作および/またはユーザとの相互作用なしに完全に実行されるプロセスを指し得る。
【0047】
「完全に自動化された」という用語は、手動の動作および/またはユーザとの相互作用なしに、少なくとも1つのコンピュータおよび/またはコンピュータネットワークおよび/または機械によって完全に実行されるプロセスを指し得る。
【0048】
「部分的に自動化された」という用語は、少なくとも1つのコンピュータおよび/またはコンピュータネットワークおよび/または機械によって、手動の動作および/またはユーザとの相互作用の助けを借りて実行されるプロセスを指し得る。好ましくは、「部分的に自動化された」とは、ユーザとの手動の動作および/または相互作用が全プロセスの最大で50%または40%または30%または20%または10%または5%であり、プロセスの残りが少なくとも1つのコンピュータおよび/またはコンピュータネットワークおよび/または機械によって実行されることを意味することができる。「少なくとも1つのコンピュータおよび/またはコンピュータネットワークおよび/または機械によって」とは、このプロセスがユーザとの手動のアクションおよび/または相互作用なしに実行されることを意味することができる。
【0049】
通常、「内部標準物」(ISTD)は、質量スペクトル検出のワークフローに施すと、目的の分析物と類似の特性を示す、既知量の物質である(すなわち、任意の前処理、濃縮および実際の検出ステップを含む)。ISTDは、目的の分析物と同様の特性を呈するが、目的の分析物とは明確に区別できる。例示すると、イオン移動度分離中、ISTDは、目的の分析物と同じイオンサイズを有するが、異なるm/z比を有する。好ましくは、内部標準物は、そのイオンサイズが分析物と区別できないが、m/z比が異なる。したがって、分析物およびISTDの双方が同時に質量分析計に入る。ISTDは、しかしながら、試料からの目的の分析物とは異なる分子量を呈する。これは、それらの異なる質量/電荷(m/z)比を用いて、ISTDからのイオンと分析物からのイオンとの間を質量分析で区別することを可能にする。双方が断片化に供され、娘イオンを得る。これらの娘イオンは、互いのm/z比およびそれぞれの親イオンによって区別され得る。結果として、ISTDおよび分析物からの信号の別個の決定および定量化が実行され得る。ISTDは既知量で添加されているため、試料からの分析物の信号強度は、特定の定量的量の分析物に帰属され得る。したがって、ISTDの添加は、検出された分析物の量の相対的比較を可能にし、分析物が質量分析計に到達した際、試料中に存在する目的の分析物の明白な同定および定量化を可能にする。典型的には、必ずしもそうではないが、ISTDは、目的の分析物の同位体標識されたバリアントである(例えば、2H、13C、または15Nなどの標識を含む)。
【0050】
本発明の文脈において、「誘導体化試薬」または「標識」または「誘導体化剤」という用語は互換的に使用され、特定の化学構造を有する化学物質を指す。前記化合物は、1つまたは複数の反応性基を含み得る。各反応性基は、異なる機能を実行してもよく、または2つ以上の反応性基は、同じ機能を実行してもよい。反応性基は、反応性単位、荷電単位、および中立損失単位を含むが、これらに限定されない。誘導体化試薬は、目的の分析物と大気圧化学反応を起こすことができる。
【0051】
「溶血試薬」(HR)という用語は、試料中に存在する細胞を溶解する試薬を指し、本発明の文脈では、溶血試薬、特に、限定されないが、全血試料中に存在する赤血球を含む血液試料中に存在する細胞を溶解する試薬を指す。周知の溶血試薬は、水(H2O)である。溶血試薬のさらなる例は、脱イオン水、高浸透圧の液体(例えば、8M尿素)、イオン性液体、および異なる界面活性剤を含むが、これらに限定されない。
【0052】
本発明の文脈において、「化合物」または「誘導体化試薬」または「標識」または「誘導体化剤」という用語は互換的に使用され、特定の化学構造を有する化学物質を指す。前記化合物は、1つまたは複数の反応性基Qを含み得る。各反応性基は、異なる機能を実行してもよく、または2つ以上の反応性基は、同じ機能を実行してもよい。反応性基は、反応性単位、荷電単位、および中立損失単位を含むが、これらに限定されない。誘導体化試薬は、目的の分析物と化学反応を起こすことができる。
【0053】
「固相抽出(SPE)」という用語は、マトリックス、例えば生物学的マトリックスから固体吸着剤への分析物の吸着、およびその後の吸着剤から溶媒、例えば有機溶媒への分析物の溶出を指す。SPEは、化学における試料調製のための効率的なツールである。従来のSPE材料は、シリカ系、炭素系および粘土系樹脂である。SPE用途のための多くの吸着剤は、Oasis-HLB(Waters製)、Omix(Agilent製)およびMonoTips(GL Sciences製)などのSPE管およびピペットチップ形式などの様々な形式で市場で市販されている。
【0054】
SPEの基本原理は、液体-液体抽出と同様である。双方の方法は、2つの相の間の溶解種の分布を含む。しかしながら、SPEは、液体-液体抽出のように一緒に混合することができない2つの液相の代わりに、液体(試料媒体)相と固体(吸着剤)相との間の分析物の分散を伴う。この技術は、溶液からの吸着による固体吸着剤上の分析物の濃縮および精製を可能にする。この技術は、当業者に知られており、したがって、より詳細には説明されない。
【0055】
「液体-液体抽出(LLE)」という用語は、ある溶媒から別の溶媒への溶質の移動からなる分離プロセスを指し、2つの溶媒は、互いに不混和性または部分的に混和性である。多くの場合、溶媒の一方は、水または水性混合物とすることができ、他方は、非極性有機液体とすることができる。全ての抽出プロセスと同様に、液体-液体抽出は、混合(接触)ステップと、それに続く相分離ステップとを含む。溶媒の選択および動作モードの双方のステップを考慮することが重要である。したがって、激しく混合することは、一方の溶媒から他方の溶媒への目的の分析物の移動に有利であるが、エマルジョンを形成することによって相分離の容易さを損なう可能性もある。この技術は、当業者に知られており、したがって、詳細には説明されない。
【0056】
「クロマトグラフィ」という用語は、液体またはガスによって運ばれる化学混合物が、静止した液相または固相の周りまたは上を流れる際に化学成分の異なる分布の結果として成分中に分離される、プロセスを指す。
【0057】
「液体クロマトグラフィ」または「LC」という用語は、細かく分かれた物質のカラムまたは毛管路を通って流体が均一に浸透する際に、流体溶液の1つまたは複数の成分を選択的に遅延させるプロセスを指す。遅延は、この流体が固定相に対して移動する際の、1つまたは複数の固定相とバルク流体(すなわち、移動相)との間の混合物成分の分布に起因する。固定相が移動相よりも高い極性である(例えば、移動相としてトルエン、固定相としてシリカ)方法は、順相液体クロマトグラフィ(NPLC)と呼ばれ、固定相が移動相よりも低い極性である(例えば、移動相として水-メタノール混合物、固定相としてC18(オクタデシルシリル))方法は、逆相液体クロマトグラフィ(RPLC)と呼ばれる。
【0058】
「高速液体クロマトグラフィ」または「HPLC」とは、圧力下において固定相、典型的には高密度に充填されたカラムに移動相を通すことによって分離の程度が増加する、液体クロマトグラフィの方法を指す。典型的に、カラムには、不規則または球形の粒子、多孔質モノリシック層、または多孔質膜から構成される固定相が充填されている。HPLCは、歴史的に、移動相および固定相の極性に基づいて2つの異なるサブクラスに分けられる。固定相が移動相よりも高い極性である(例えば、移動相としてトルエン、固定相としてシリカ)方法は、順相液体クロマトグラフィ(NPLC)と呼ばれ、反対の(例えば、移動相として水-メタノール混合物、固定相としてC18(オクタデシルシリル))方法は、逆相液体クロマトグラフィ(RPLC)と呼ばれる。マイクロLCとは、典型的には1mm未満、例えば約0.5mmの狭い内径を有するカラムを使用するHPLC法を指す。「超高速液体クロマトグラフィ」または「UHPLC」とは、120MPa(17,405lbf/in2)または約1200気圧の圧力を使用するHPLC法を指す。ラピッドLCとは、上記のような内径であり、長さが2cm未満、例えば1cmの短いカラムを用いて、上記のような流量および上記のような圧力を加えるLC法を指す(マイクロLC、UHPLC)。短いラピッドLCプロトコルは、単一の分析カラムを使用するトラッピング/洗浄/溶出ステップを含み、1分未満の非常に短い時間でLCを実現する。
【0059】
さらに、周知のLC様式は、「親水性相互作用クロマトグラフィ」(HILIC)、サイズ排除型LC、イオン交換型LC、およびアフィニティ型LCを含む。
【0060】
LC分離は、並列に配置された複数のLCチャネルを含むシングルチャネルLCまたはマルチチャネルLCであってもよい。LCにおいて、分析物は、当業者に一般的に知られているように、それらの極性またはログP値、サイズ、または親和性に従って分離され得る。
【0061】
「微粒子」という用語は、10nm~10mmの範囲の球状粒子または不規則な形状の粒子を指し得る。粒子は、無機および/または有機材料、例えば、SiO2、TiO2、ポリスチレン、PMMAおよび場合により多くの材料からなるか、またはそれらを含むことができる。粒子の表面は、支持微粒子コア材料、例えばC18鎖、CN、ペンタフルオロフェニルなどとは異なる化学によって修飾され得る。
【0062】
「ビーズ」という用語は、必ずしも球形を指すのではなく、ナノメートルまたはマイクロメートル範囲の平均サイズを有し、任意の可能な形状を有する粒子を指す。ビーズは、固相であってもよい。適切な固相は、固相抽出(SPE)カートリッジを含むが、これに限定されない。ビーズは、非磁性、磁性、または常磁性であり得る。ビーズは、目的の分析物に特異的であるように異なるようにコーティングされてもよい。コーティングは、意図される用途、すなわち意図される捕捉分子に応じて異なり得る。どのコーティングがどの分析物に適しているかは当業者に周知である。ビーズは、様々な異なる材料で作られてもよい。ビーズは、様々なサイズを有してもよく、細孔を含むまたはそれを含まない表面を備えてもよい。
【0063】
非磁性ビーズもまた、使用され得る。その場合、捕捉と解放は濾過に基づいてもよい。試料調製ステーションは、試料、試薬、洗浄流体、懸濁流体などの流体を反応容器へと追加/反応容器から除去するための1つまたは複数のピペッティング装置または流体移送装置をさらに備え得る。
【0064】
「不活性ガスストリッピング」という用語は、ストリッピングする必要がある液体に不活性ガス、例えば窒素またはアルゴンをバブリングするプロセスを指し得る。揮発性化合物は、不活性ガスと分析物担持液体との平衡プロセスに起因して蒸発される。
【0065】
「ヘッドスペース抽出」という用語は、液体上のヘッドスペースに空気または他のガスを有するバイアル内に気密な液体試料を有するプロセスを指し得る。バイアルのシールは、周囲圧力におけるものである。シールされたバイアルは、外部熱源によって加熱され、目的の分析物は、バイアルの圧力を増加させながらヘッドスペースにおいて蒸発する。バイアルのガス状部分は、さらにフリンジまたは毛細管によって取り出され、分析ユニットに直接移送される。
【0066】
「液体および/または固体によって支持された気体吸着」という用語は、気体が液体または固体の活性表面に吸着するプロセスを指し得る。分析物は、このプロセス中に吸熱または発熱プロセスならびに化学反応を受けることができる。
【0067】
「非定常分析物イオン供給ユニット」という用語は、例えばパルス化されたレーザーショットによってイオン時間依存性を生成するユニットを指し得る。
【0068】
「定常分析物イオン供給ユニット」という用語は、例えばナノESI中の一定のローおよび電源によって独立したイオン時間を生成するユニットを指し得る。
【0069】
「エレクトロスプレーイオン化」または「ESI」という用語は、溶液を長さの短い毛細管に沿って通過させて、毛細管の端部に高い正電位または負電位を印加する方法を指す。管の端部に到達した溶液は、溶媒蒸気中の非常に小さな液滴のジェットまたはスプレーへと蒸発(噴霧)される。液滴のこの霧は、蒸発チャンバを通り、このチャンバは、僅かに加熱されて、凝縮を予防して溶媒を蒸発する。液滴が小さくなるほど、同じ電荷間の自然な反発によってイオンと中性分子が放出されるまで、電気的な表面電荷密度が向上する。
【0070】
「ナノエレクトロスプレーイオン化」または「ナノESI」という用語は、典型的には、静的モードまたは動的モードのいずれかで1μL/分未満の流量を使用する方法を指す。好ましくは、ナノESIは、50~500nl/分、例えば500nl/分の流量を使用する。500nl/分は、0.5μl/分に等しい。
【0071】
「静的ナノESI」という用語は、本開示の文脈では、非連続フローナノESIオプションとして使用される。分析は、典型的には、使い捨てピペットチップによってエミッタに装填される別個の試料によって定義される。対照的に、動的ナノESI質量分析法は、小径エミッタを低流量でポンピングされた移動相を特徴とする。
【0072】
「大気圧化学イオン化」または「APCI」という用語は、ESIに類似した質量分析法を指す。しかしながら、APCIは、大気圧のプラズマ内で起こるイオン分子反応によってイオンを発生させる。プラズマは、スプレーキャピラリと対向電極との間の電気放電によって維持される。次いで、イオンは、典型的には、差動的にポンピングされたスキマステージのセットを使用して質量分析器に抽出される。溶媒の除去を改善するために、乾燥および予熱された窒素ガスの対向流が使用されてもよい。APCIにおける気相イオン化は、極性がより低い実体を分析するためにESIよりも有効となり得る。
【0073】
「高電場非対称波形イオン移動度分光法(FAIMS)」は、気相イオンを強電場および弱電場での挙動によって分離する大気圧イオン移動度技術である。
【0074】
「ナノスプレー」または「APCI」という用語は、イオン化に高電流が使用されている2つの独立したイオン化技術を指す。
【0075】
「前に配置される」という用語は、2つのユニットの配置を指すことができ、これは、少なくとも1つの目的の分析物が最初に第2のユニット(例えば、イオン移動度ユニット)の前に配置された第1のユニット(例えば、第1のイオン断片化)を通過し、次いで第2のユニットを通過することを意味する。
【0076】
「後に配置される」という用語は、2つのユニットが互いに後に配置されるという2つのユニットの配置を指すことができる。これは、少なくとも1つの目的の分析物が最初に第1のユニット(例えばイオン移動度ユニット)を通過し、次いで第1のユニットの後に配置された第2のユニット(例えば、第2のイオン断片化)を通過することを意味し得る。
【0077】
「質量分析」(「質量Spec」または「MS」)または「質量分析決定」という用語は、化合物をその質量によって同定するために使用される分析技術に関する。MSは、その質量電荷比または「m/z」に基づいてイオンをフィルタにかける、検出する、および測定する方法である。MS技術は、一般に、(1)化合物をイオン化して荷電化合物を形成すること;および、(2)荷電化合物の分子量を検出し、質量電荷比を計算することを含む。化合物は、任意の好適な手段によってイオン化されて、検出され得る。「質量分析計」は、一般に、イオン化装置およびイオン検出器を含む。一般に、1つまたは複数の目的の分子がイオン化されて、続いて、このイオンは、質量分析機器に導入されて、この機器において、磁場および電場の組み合わせにより、イオンは、質量(「m」)および電荷(「z」)に依存して空間の経路をたどる。「イオン化」または「イオン化する」という用語は、1つまたは複数の電子単位に等しい正味の電荷を有する分析物のイオンを発生させるプロセスを指す。陰イオンは、1つまたは複数の電子単位の正味の負電荷を有するものである一方、陽イオンは、1つまたは複数の電子単位の正味の正電荷を有するものである。MS方法は、陰イオンが発生してこれが検出される「負イオンモード」、または陽イオンが発生してこれが検出される「正イオンモード」のどちらか一方で実行され得る。
【0078】
「タンデム質量分析」または「MS/MS」は、分析物の断片化が段階間で生じる、質量分析の選択の複数ステップを含む。タンデム質量分析計では、イオンがイオン源で形成され、質量分析の第1の段階(MS1)において質量電荷比により分離される。特定の質量電荷比(前駆イオンまたは親イオン)のイオンが選択され、断片化イオン(娘イオン)が、衝突誘起解離、イオン分子反応、または光解離によって生成される。次いで、得られたイオンが分離され、質量分析の第2の段階(MS2)において検出される。質量分析計は、僅かに異なる質量のイオンを分離して検出するため、所与の元素からなる異なる同位体を容易に区別する。したがって、質量分析は、以下に限定されないが、低分子量の分析物、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含む、分析物の正確な質量決定および特徴付けにとって重要な方法である。その用途は、タンパク質およびその翻訳後修飾の同定、タンパク質複合体、そのサブユニットおよび機能的相互作用の解明、ならびにプロテオミクスにおけるタンパク質の全測定を含む。質量分析によるペプチドまたはタンパク質のデノボ配列決定は、通常、アミノ酸配列のこれまでの知識なしに実行され得る。
【0079】
「多重反応モード」または「MRM」は、前駆体イオンおよび1つまたは複数の断片化イオンが選択的に検出される、MS機器用の検出モードである。
【0080】
「インビトロ法」という用語は、この方法が生物の外部で、好ましくは体液、単離された組織、器官または細胞に対して行われることを示すために使用される。
【0081】
本明細書で使用される「ランダム過剰モード」または「ランダム過剰」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つの目的の分析物の少なくとも1つのイオンを連続的に検出および/または測定しないプロセスを指し得て、これは、最初から開始してステップごとに進めることを意味し得る。ランダムアクセスまたは直接アクセスとは、目的の任意の分析物および/または配列の試料に、目的のアドレス指定可能な分析物および/または試料の集団から等しい時間または任意の日付で、目的の任意の分析物および/または試料がセット内にいくつあっても、他の任意の分析物および/または試料とほぼ同様に容易且つ効率的にアクセスする能力を指し得る。
【0082】
「キット」は、少なくとも1つの試薬、例えば障害の処置のための薬品、または本発明のバイオマーカー遺伝子もしくはタンパク質を特異的に検出するためのプローブを含む、任意の製品(例えば、パッケージまたは容器)である。キットは、好ましくは、本発明の方法を実行するためのユニットとして、促進、流通、または販売される。典型的には、キットは、バイアル、管などの1つまたは複数の容器手段を密接に閉じ込めて受け入れるように区画化された担体手段をさらに備え得る。特に、容器手段のそれぞれは、第1の態様の方法において使用される別個の要素のうちの1つを備える。キットは、反応触媒を含むがこれに限定されない1つまたは複数の他の試薬をさらに備えてもよい。キットは、緩衝液、希釈剤、フィルタ、ニードル、注射器、および使用説明を伴う添付文書を含むがこれらに限定されない、さらなる材料を含む1つまたは複数の他の容器をさらに含んでもよい。標識は、組成物が特定の用途に使用されることを示すために容器上に提示され得て、インビボ使用またはインビトロ使用のいずれかに関する指示も示し得る。コンピュータプログラムコードは、光記憶媒体(例えば、コンパクトディスク)などのデータ記憶媒体もしくは装置上に、またはコンピュータもしくはデータ処理装置に直接提供されてもよい。さらに、キットは、較正目的のための目的の分析物の標準量を含み得る。
【0083】
実施形態
第1の態様では、本発明は、臨床診断システムであって、
-少なくとも1つの目的の分析物を含む生物学的試料の自動調製のための試料調製ステーションと、
-少なくとも1つの目的の分析物の少なくとも1つのイオンまたは複数のイオンを発生させるためのイオン発生ステーションと、
-少なくとも1つの目的の分析物の選択性を高めるための少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションまたはそれ以上であって、少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションが、それぞれのイオンサイズに基づいてイオンを分離し、1つまたは複数の電極に印加される電気および/または無線周波数場(AC/DCおよび/またはRF)を使用してイオン移動度に関してイオンを分離するためのイオン移動度ユニットを備える、少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションと、
-少なくとも1つの目的の分析物の少なくとも1つのイオンを検出するためのイオン検出ステーションと、
-イオン検出システムから少なくとも受信された少なくとも1つの電子信号を処理および/または評価するためのデータ処理ステーションと
を備える、臨床診断システムに関する。
【0084】
本発明の第1の態様の実施形態では、臨床診断システムは、少なくとも1つの目的の分析物の存在またはレベルを決定するためのものである。
【0085】
本発明の第1の態様の実施形態では、目的の分析物は、人工または天然である。
【0086】
本発明の第1の態様の実施形態では、臨床診断システムは、クロマトグラフィユニットまたはステーションを含まず、好ましくは液体クロマトグラフィ(LC)ユニットおよび/または高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)ユニットおよび/またはガスクロマトグラフィ(GC)ユニットを含まない。
【0087】
本発明の第1の態様の実施形態では、試料調製ステーション、イオン発生ステーション、少なくとも1つの選択性エンハンサーステーション、イオン検出ステーションおよびデータ処理ステーションは、互いに接続されている。好ましくは、試料調製ステーションは、イオン検出ステーションに直接接続された少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションに直接接続されたイオン発生ステーションに直接接続されている。
【0088】
本発明の第1の態様の実施形態では、生物学的試料は、ランダム過剰モードで調製される。ランダム過剰モードの意味は、当業者に知られており、したがって詳細には説明されない。追加的または代替的に、臨床診断システムは、自動化されており、好ましくは完全または部分的に自動化されている。
【0089】
本発明の第1の態様の実施形態では、生物学的試料は、個体からの血清、血漿、組織、液体、呼気、汗、痰および全血試料からなる群から選択される患者試料から得られる。
【0090】
本発明の第1の態様の実施形態では、個体は、哺乳動物、好ましくはヒトである。
【0091】
本発明の第1の態様の実施形態では、少なくとも1つの目的の分析物は、小分子である。
【0092】
本発明の第1の態様の実施形態では、少なくとも1つの目的の分析物は、m/z(質量電荷比)=2000未満、好ましくはm/z=1000未満またはm/z=900未満またはm/z=800未満またはm/z=700未満またはm/z=600未満またはm/z=500未満またはm/z=400未満またはm/z=300未満またはm/z=200未満またはm/z=100未満またはm/z=90未満のモル質量を有する。
【0093】
本発明の第1の態様の実施形態では、少なくとも1つの目的の分析物は、2000未満のm/z比を有する大きな分子ではなく、好ましくは、少なくとも1つの目的の分析物は、以下:テストステロン、ビタミンD、シクロスポリンA、リドカイン、シロリムス、アベータ42の群から選択される。
【0094】
本発明の第1の態様の実施形態では、少なくとも1つの目的の分析物は、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、代謝物、ホルモン、脂肪酸、脂質、炭水化物、ステロイド、ケトステロイド、セコステロイド、別の分子の特定の修飾を特徴とする分子、生体によって内在化された物質、そのような物質の代謝物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0095】
本発明の第1の態様の実施形態では、生物学的試料は、少なくとも1つの目的の分析物およびマトリックスを含み、好ましくはマトリックスは、以下の成分またはそれらの組み合わせを含む:無機塩、有機塩成分、タンパク質、溶媒ポリマー、小分子。
【0096】
無機塩は、例えば、(例えば)塩化ナトリウムである。
【0097】
有機塩成分は、例えば、HEPES((4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)またはクエン酸である。
【0098】
タンパク質は、例えば、ヒト血清アルブミンである。
【0099】
溶媒は、例えば、水、メタノールおよび/またはアルコールである。
【0100】
ポリマーは、例えば、DNAおよび/またはポリアクリルアミドである。
【0101】
小分子は、例えばホルムアルデヒドである。
【0102】
本発明の第1の態様の実施形態では、マトリックスは、試料調製ステーション内の少なくとも1つの目的の分析物から分離される。
【0103】
臨床診断システムは、試料調製ステーションを備える。試料調製ステーションは、生物学的試料の自動調製のためのものである。少なくとも1つの生物学的試料は、少なくとも1つの目的の分析物を含む。
【0104】
本発明の第1の態様の実施形態では、試料調製ステーションは、以下のユニットまたはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを備える:試料送達ユニット、試料前処理ユニット、試料分析ユニット。
【0105】
本発明の第1の態様の実施形態では、試料調製ステーションは、部分的または完全に自動化されている。
【0106】
本発明の第1の態様の実施形態では、試料調製ステーションは、生物学的試料中の干渉マトリックス成分を除去もしくは少なくとも低減し、かつ/または生物学的試料中の目的の分析物を濃縮するためのものである。さらに、試料調製ステーションは、以下のユニットまたはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを備えることができる:試料送達ユニット、試料前処理ユニット、試料分析ユニット。
【0107】
本発明の第1の態様の実施形態では、試料送達ユニットは、例えば試料データ調製を含む、試料収集および/または調製および/または移送を含む。このユニットは、ピペッタ、グリッパ、コンベヤ、および液体処理ロボットからなるか、またはそれらを備えることができる。
【0108】
本発明の第1の態様の実施形態では、以下:試料前処理ユニットは、磁性ビーズ処理ユニット、内部標準物処理ユニット、支持化合物処理ユニット、ピペッティングユニット、流体移送ユニット、反応容器移送機構ユニット、濃縮処理ユニット、溶媒蒸発ユニット、誘導体化ユニットの群から選択される少なくとも1つのユニットまたは2つ以上のユニットを備える。
【0109】
本発明の第1の態様の実施形態では、磁性ビーズ処理ユニットは、目的の分析物を抽出/濃縮し、マトリックス成分を除去または少なくとも減少させるための分析物および/またはマトリックス選択基を担持する磁性ビーズを含む試薬によって試料を処理するためのものである。特に、磁性ビーズ処理ユニットは、少なくとも1つの反応容器を保持し、その中に含まれる1つまたは複数の試料に追加された磁性ビーズを操作するための少なくとも1つの磁気または電磁気ワークステーションを備える。磁性ビーズ処理ユニットは、例えば、反応容器の振とう、または偏心回転機構などによる撹拌によって、反応容器において流体を混合し、および/または磁性ビーズを再懸濁させるための混合機構をさらに備え得る。あるいは、ビーズ処理ユニットは、磁性ビーズがチャネルまたはキャピラリフロースルー装置に捕捉されるフロースルーシステムであってもよい。この実施形態によれば、分析物の捕捉、洗浄および放出は、フロースルーチャネル内でビーズを繰り返し磁気的に捕捉および放出することによって行うことができる。
【0110】
本発明の第1の態様の実施形態では、磁性ビーズ処理ユニットは、分析物および/またはマトリックス選択基を担持する磁性ビーズによって生物学的試料を処理するためのものである。
【0111】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物選択基を担持する磁性または常磁性ビーズが、磁性ビーズ処理ユニット内で試料に添加される。本発明の第1の態様の実施形態では、磁性ビーズの添加は、撹拌または混合を含む。ビーズ上の目的の分析物を捕捉するための、事前定義されたインキュベーション期間がこれに続く。本発明の第1の態様の実施形態では、磁性ビーズ処理ユニット内で行われるワークフローは、磁性ビーズとのインキュベーション後に洗浄ステップ(W1)を含む。分析物に応じて、1つまたは複数の追加の洗浄ステップ(W2)が実行される。1つの洗浄ステップ(W1、W2)は、磁石または電磁石を備える磁性ビーズ操作ユニットによる磁性ビーズ分離、液体の吸引、洗浄緩衝液の添加、磁性ビーズの再懸濁、別の磁性ビーズ分離ステップ、および液体の別の吸引を含む、一連のステップを含む。さらに、洗浄ステップは、洗浄サイクルの容量および数または組み合わせとは別に、溶媒の種類(水/有機/塩/pH)の点で異なってもよい。各パラメータの選択方法は、当業者にはよく知られている。最後の洗浄ステップ(W1、W2)には、溶出試薬の添加、次いで磁性ビーズの再懸濁、および磁性ビーズから目的の分析物を放出するための事前定義されたインキュベーション期間が続く。その後、結合のない磁性ビーズが分離され、誘導体化された目的の分析物を含有する上清が捕捉される。
【0112】
本発明の第1の態様の実施形態では、マトリックス選択基を有する磁性ビーズが、磁性ビーズ処理ユニット内で試料に添加される。本発明の第1の態様の実施形態では、磁性ビーズの添加は、撹拌または混合を含む。ビーズ上のマトリクスを捕捉するための、所定のインキュベーション期間がこれに続く。ここで、目的の分析物は磁性ビーズに結合せず、上清中に残る。その後、磁性ビーズが分離され、目的の濃縮分析物を含有する上清が収集される。
【0113】
本発明の第1の態様の実施形態では、上清が、例えば第2の濃縮ワークフローを実行する濃縮処理ユニットに供される。ここで、上清は、少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションに移送されるか、または希釈液の添加による希釈ステップ後に、少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションに移送される。例えば、溶媒の種類(水/有機/塩/pH/マイクロ粒子)および体積を変えることによって、異なる溶出手順/試薬もまた、使用され得る。様々なパラメータが当業者によく知られており、容易に選択される。
【0114】
磁性ビーズ処理ユニットの代わりに、またはそれに加えて、タンパク質沈殿とそれに続く遠心分離、カートリッジベースの固相抽出、ピペットチップベースの固相抽出、液体-液体抽出、親和性ベースの抽出(免疫吸着、分子インプリント、アプタマーなど)などの他の技術および/またはユニットが使用されてもよい。
【0115】
本発明の第1の態様の実施形態では、磁性ビーズ処理ユニットは、試料送達ユニットの後で試料分析ユニットの前に配置される。
【0116】
本発明の第1の態様の実施形態では、内部標準物処理ユニットは、それぞれの分析物に対して定義された濃度を有する内部標準物が貯蔵されるリザーバからなる。このリザーバから専用の割合が取り出され、未変性/または調製された試料(液体から液体または気体から気体)になる。
【0117】
本発明の第1の態様の実施形態では、内部標準物処理ユニットは、少なくとも1つの内部標準物および/または標準添加のためのものである。
【0118】
本発明の第1の態様の実施形態では、内部標準物処理ユニットは、試料送達ユニットの後で試料分析ユニットの前に配置される。
【0119】
本発明の第1の態様の実施形態では、支持化合物処理ユニットは、支持化合物を添加して、それぞれの結合剤から分析物を放出するためのものである。結合剤は、目的の分析物としてビタミンDまたはリノール酸のためのビタミンD結合タンパク質またはアルブミンであり得る。
【0120】
本発明の第1の態様の実施形態では、支持化合物は、以下:メタノール、NaOH、エチレンカーボネート、トリフルオロ酢酸(TFA)、ギ酸、ウシ血清アルブミン(BSA)、フッ化アンモニウムの群から選択される。
【0121】
本発明の第1の態様の実施形態では、支持化合物処理ユニットは、例えば、少なくとも1つの目的の分析物を結合剤、例えばメタノールもしくはNaOHから、またはマトリックスから放出するために、またはMALDI用途のためのマトリックス、例えば2,5-ジヒドロキシベンゾエサ(DHB)を添加するために、または分析物および/またはマトリックスの化学的および/または物理的特性を変化させるためにそれぞれの誘導体化剤によって分析物を処理するために、支持化合物またはイオン支持分子を添加するためのものである。
【0122】
本発明の第1の態様の実施形態では、支持化合物処理ユニットは、試料送達ユニットの後で試料分析ユニットの前に配置される。
【0123】
本発明の第1の態様の実施形態では、ピペッティングユニットは、規定の体積である場所から別の場所に液体を取り出すためのニードルまたは直接分配ユニットからなることができるか、またはそれを備えることができる。ピペッティングユニットはまた、超音速またはピエゾ駆動によって駆動される液滴吐出ユニットからなることができるか、またはそれを備えることができる。ピペッティングユニットは、試料ならびに支持液をピペッティングすることができる。
【0124】
本発明の第1の態様の実施形態では、ピペッティングユニットは、試料送達ユニットの後で試料分析ユニットの前に配置される。試料分析ユニットはまた、上述したピペッティングユニットに依存しないいくつかの独立した試薬ピペッティングユニットからなることができるか、またはそれを備えることができる。
【0125】
本発明の第1の態様の実施形態では、流体移送ユニットは、試料、試薬、洗浄液、懸濁液などの流体を、配管を通して試薬を送達することによって反応容器に/反応容器から添加/除去するためのものである。
【0126】
本発明の第1の態様の実施形態では、流体移送ユニットは、試料送達ユニットの後で試料分析ユニットの前に配置される。
【0127】
本発明の第1の態様の実施形態では、1つまたは複数のピペッティングユニットおよび/または流体移送ユニットは、流体を添加、混合または除去するためのものである。
【0128】
本発明の第1の態様の実施形態では、反応容器移送機構ユニットである。移送は、反応容器を取り扱うことができるコンベヤまたは把持システムによって達成され得る。
【0129】
本発明の第1の態様の実施形態では、反応容器移送機構ユニットは、試料または後続のプロセスステーション、好ましくはイオン発生ステーションに送達するためのものである。
【0130】
本発明の第1の態様の実施形態では、反応容器移送機構ユニットは、試料送達ユニットの後で試料分析ユニットの前に配置される。
【0131】
本発明の第1の態様の実施形態では、試料前処理ユニットは、濃縮処理ユニットを備える。濃縮は、例えば蒸発によって溶媒の体積を減少させることによる試料の濃縮によって、または固体支持微粒子に分析物を付着させることによって行うことができる。別の濃縮可能性は、例えば、固液分離後の温度または溶媒交換の変更による周囲の液体中の分析物の沈殿である。本発明の第1の態様の実施形態では、試料前処理ユニットは、加熱および冷却能力を有するピペッティングユニットからなるかまたはそれを備える誘導体化ユニットを備える。このユニットでは、誘導体化試薬または誘導体化試薬が使用され得る。
【0132】
本発明の第1の態様の実施形態では、誘導体化試薬は、ダンシルクロリド、カルバミン酸、N-[2-[[[[2-(ジエチルアミノ)エチル]アミノ]カルボニル]-6-キノリニル]-、2,5-ジオキソ-1-ピロリジニルエステル(RapiFluor-MS)、4-置換1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(コックソン型試薬)、4-フェニル-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン誘導体(アンプリフェックスジエン)、1-プロパンアミニウム、3-(アミノオキシ)-N,N,N-トリメチル化合物(適切な対イオン、例えば臭化物、塩化物、ヨウ素などを含む)(アンプリフェックスケト)、アセチドラジドトリメチルアンモニウムクロリド(Girard T)、1-(カルボキシメチル)ピリジニウムクロリドヒドラジド(Girard P)およびピリジイルアミンからなる群から選択される。
【0133】
本発明の第1の態様の実施形態では、濃縮処理ユニットは、試料送達ユニットの後で試料分析ユニットの前に配置される。
【0134】
本発明の第1の態様の実施形態では、試料前処理ユニットは、溶媒蒸発ユニットを備える。溶媒蒸発ユニットは、濃縮処理ユニットの一部とすることができる。
【0135】
本発明の第1の態様の実施形態では、溶媒蒸発ユニットは、試料送達ユニットの後で試料分析ユニットの前に配置される。
【0136】
本発明の第1の態様の実施形態では、溶血試薬の添加は、試料前処理ユニットにおいて実行され得る。
【0137】
本発明の第1の態様の実施形態では、試料、例えば尿試料への酵素試薬の添加は、試料前処理ユニットにおいて実行され得る。
【0138】
本発明の第1の態様の実施形態では、試料、例えば尿試料への少なくとも1つの誘導体化試薬の添加は、試料前処理ユニットにおいて実行され得る。
【0139】
本発明の第1の態様の実施形態では、目的の分析物は、官能基を含む。官能基は、誘導体化試薬の反応性ユニットQと反応することができる。
【0140】
本発明の第1の態様の実施形態では、官能基は、カルボニル基、ジエン基、ヒドロキシル基、アミン基、イミン基、ケトン基、アルデヒド基、チオール基、ジオール基、フェノール基、エポキシ基、ジスルフィド基、核酸塩基基、カルボン酸基、末端システイン基、末端セリン基およびアジド基からなる群から選択される。
【0141】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、カルボン酸基、アルデヒド基、ケト基、マスクされたアルデヒド、マスクされたケト基、エステル基、アミド基、および無水物基からなる群から選択される官能基としてカルボニル基を含む。アルドース(アルデヒドおよびケト)は、親アルデヒド/ケトの一種のマスクされた形態であるアセタールおよびヘミアセタールとして存在する。
【0142】
本発明の第1の態様の実施形態では、カルボニル基は、アミド基であり、当業者は、アミド基自体が安定な基であるが、アミド基が加水分解されてカルボン酸基およびアミノ基に変換することができることを十分に認識している。アミド基の加水分解は、酸/塩基触媒反応によって、またはいずれも当業者に周知の酵素プロセスによって達成され得る。カルボニル基がマスクされたアルデヒド基またはマスクされたケト基である本発明の第1の態様の実施形態では、それぞれの基は、ヘミアセタール基またはアセタール基、特に環状ヘミアセタール基またはアセタール基のいずれかである。本発明の第1の態様の実施形態では、アセタール基は、化合物と反応する前にアルデヒド基またはケト基に変換される。
【0143】
本発明の第1の態様の実施形態では、カルボニル基はケト基である。本発明の第1の態様の実施形態では、ケト基は、化合物の反応性単位と反応する前に中間体イミン基に転移され得る。本発明の第1の態様の実施形態では、1つまたは複数のケト基を含む分析物分子は、ケトステロイドである。本発明の第1の態様の特定の実施形態では、ケトステロイドは、テストステロン、エピテストステロン、ジヒドロテストステロン(DHT)、デスオキシメチルテストステロン(DMT)、テトラヒドロゲストリノン(THG)、アルドステロン、エストロン、4-ヒドロキシエストロン、2-メトキシエストロン、2-ヒドロキシエストロン、16ケトエストラジオール、16-アルファ-ヒドロキシエストロン、2-ヒドロキシエストロン-3-メチルエーテル、プレドニゾン、プレドニゾロン、プレグネノロン、プロゲステロン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、17-ヒドロキシプレグネノロン、17-ヒドロキシプロゲステロン、アンドロステロン、エピアンドロステロン、Δ4-アンドロステンジオン、11-デオキシコルチゾール、コルチコステロン、21-デオキシコルチゾール、11-デオキシコルチコステロン、アロプレグナノロンおよびアルドステロンからなる群から選択される。
【0144】
本発明の第1の態様の実施形態では、カルボニル基は、カルボキシル基である。本発明の第1の態様の実施形態では、カルボキシル基は、化合物と直接反応するか、または化合物と反応する前に活性化エステル基に変換される。本発明の第1の態様の実施形態では、1つまたは複数のカルボキシル基を含む分析物分子は、Δ8-テトラヒドロカンナビノール酸、ベンゾイルエクゴニン、サリチル酸、2-ヒドロキシ安息香酸、ガバペンチン、プレガバリン、バルプロ酸、バンコマイシン、メトトレキサート、ミコフェノール酸、モンテルカスト、レパグリニド、フロセミド、テルミサルタン、ゲムフィブロジル、ジクロフェナク、イブプロフェン、インドメタシン、ゾメピラク、イソキセパックおよびペニシリンからなる群から選択される。本発明の第1の態様の実施形態では、1つまたは複数のカルボキシル基を含む分析物分子は、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、バリン、プロリンおよびグリシンからなる群から選択されるアミノ酸である。
【0145】
本発明の第1の態様の実施形態では、カルボニル基は、アルデヒド基である。本発明の第1の態様の実施形態では、アルデヒド基は、化合物の反応性単位と反応する前に中間体イミン基に転移され得る。本発明の第1の態様の実施形態では、1つまたは複数のアルデヒド基を含む分析物分子は、ピリドキサール、N-アセチル-D-グルコサミン、アルカフタジン、ストレプトマイシンおよびジョサマイシンからなる群から選択される。
【0146】
本発明の第1の態様の実施形態では、カルボニル基は、カルボニルエステル基である。本発明の第1の態様の実施形態では、1つまたは複数のエステル基を含む分析物分子は、コカイン、ヘロイン、リタリン、アセクロフェナク、アセチルコリン、アムシノニド、アミロキサート、アミロカイン、アニレリジン、アルニジピンアルテスネートおよびペチジンからなる群から選択される。
【0147】
本発明の第1の態様の実施形態では、カルボニル基は、無水物基である。本発明の第1の態様の実施形態では、1つまたは複数の無水物基を含む分析物分子は、カンタリジン、無水コハク酸、無水トリメリット酸および無水マレイン酸からなる群から選択される。
【0148】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基として、1つまたは複数のジエン基、特に共役ジエン基を含む。本発明の第1の態様の実施形態では、1つまたは複数のジエン基を含む分析物分子は、セコステロイドである。複数の実施形態では、セコステロイドは、コレカルシフェロール(ビタミンD3)、エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、カルシフェジオール、カルシトリオール、タキステロール、ルミステロールおよびタカルシトールからなる群から選択される。特に、セコステロイドは、ビタミンD、特にビタミンD2もしくはD3、またはそれらの誘導体である。特定の実施形態では、セコステロイドは、ビタミンD2、ビタミンD3、25ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3(カルシフェジオール)、3-エピ-25-ヒドロキシビタミンD2、3-エピ-25-ヒドロキシビタミンD3、1,25-ジヒドロキシビタミンD2、1,25-ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール)、24,25-ジヒドロキシビタミンD2、24,25-ジヒドロキシビタミンD3からなる群から選択される。本発明の第1の態様の実施形態では、1つまたは複数のジエン基を含む分析物分子は、ビタミンA、トレチノイン、イソトレチノイン、アリトレチノイン、ナタマイシン、シロリムス、アムホテリシンB、ナイスタチン、エベロリムス、テムシロリムスおよびフィダキソミシンからなる群から選択される。
【0149】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基として1つまたは複数のヒドロキシル基を含む。本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、単一のヒドロキシル基または2つのヒドロキシル基を含む。2つ以上のヒドロキシル基が存在する実施形態では、2つのヒドロキシル基は、互いに隣接して配置されてもよく(1,2-ジオール)、または1、2もしくは3個のC原子によって分離されてもよい(それぞれ1,3-ジオール、1,4-ジオール、1,5-ジオール)。第1の態様の特定の実施形態では、分析物分子は、1,2-ジオール基を含む。ヒドロキシル基が1つのみ存在する実施形態では、当該分析物は、第1級アルコール、第2級アルコールおよび第3級アルコールからなる群から選択される。分析物分子が1つまたは複数のヒドロキシル基を含む本発明の第1の態様の実施形態では、分析物は、ベンジルアルコール、メントール、L-カルニチン、ピリドキシン、メトロニダゾール、一硝酸イソソルビド、グアイフェネシン、クラブラン酸、ミグリトール、ザルシタビン、イソプレナリン、アシクロビル、メトカルバモール、トラマドール、ベンラファキシン、アトロピン、クロフェダノール、アルファ-ヒドロキシアルプラゾラム、アルファ-ヒドロキシトリアゾラム、ロラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、エチルグルクロニド、エチルモルヒネ、モルヒネ、モルヒネ-3-グルクロニド、ブプレノルフィン、コデイン、ジヒドロコデイン、p-ヒドロキシプロポキシフェン、O-デスメチルトラマドール、デスメタドール、ジヒドロキニジンおよびキニジンからなる群から選択される。分析物分子が2つ以上のヒドロキシル基を含む本発明の第1の態様の実施形態では、分析物は、ビタミンC、グルコサミン、マンニトール、テトラヒドロビプテリン、シタラビン、アザシチジン、リバビリン、フロクスウリジン、ゲムシタビン、ストレプトゾトシン、アデノシン、ビダラビン、クラドリビン、エストリオール、トリフルリジン、クロファラビン、ナドロール、ザナミビル、ラクツロース、アデノシンモノホスフェート、イドクスウリジン、レガデノソン、リンコマイシン、クリンダマイシン、カナグリフロジン、トブラマイシン、ネチルマイシン、カナマイシン、チカグレロル、エピルビシン、ドキソルビシン、アルベカシン、ストレプトマイシン、ウアバイン、アミカシン、ネオマイシン、フラミセチン、パリモセチン、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、ビンデシン、ジギトキシン、ジゴキシン、メトリザミド、アセチルジギトキシン、デスラノシド、フルダラビン、クロファラビン、ゲムシタビン、シタラビン、カペシタビン、ビダラビン、およびプリカマイシンからなる群から選択される。
【0150】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基として1つまたは複数のチオール基(アルキルチオールおよびアリールチオール基を含むがこれらに限定されない)を含む。本発明の第1の態様の実施形態では、1つまたは複数のチオール基を含む分析物分子は、チオマンデル酸、DL-カプトプリル、DL-チオルファン、N-アセチルシステイン、D-ペニシラミン、グルタチオン、L-システイン、ゾフェノプリラート、チオプロニン、ジメルカプロール、スクシマーからなる群から選択される。
【0151】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基として1つまたは複数のジスルフィド基を含む。本発明の第1の態様の実施形態では、1つまたは複数のジスルフィド基を含む分析物分子は、グルタチオンジスルフィド、ジピリチオン、硫化セレン、ジスルフィラム、リポ酸、L-シスチン、フルスルチアミン、オクトレオチド、デスモプレシン、バプレオチド、テルリプレシン、リナクロチドおよびペジネサチドからなる群から選択される。硫化セレンは、二硫化セレン、SeS2、または六硫化セレン、Se2S6であり得る。
【0152】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基として1つまたは複数のエポキシド基を含む。本発明の第1の態様の実施形態では、1つまたは複数のエポキシド基を含む分析物分子は、カルバマゼピン-10,11-エポキシド、カルフィルゾミブ、フロセミドエポキシド、ホスホマイシン、塩酸セベラマー、セルレニン、スコポラミン、チオトロピウム、チオトロピウムブロミド、メチルスコポラミンブロミド、エプレレノン、ムピロシン、ナタマイシン、およびトロレアンドマイシンからなる群から選択される。
【0153】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基として1つまたは複数のフェノール基を含む。本発明の第1の態様の特定の実施形態では、1つまたは複数のフェノール基を含む分析物分子は、ステロイドまたはステロイド様化合物である。本発明の第1の態様の実施形態では、1つまたは複数のフェノール基を含む分析物分子は、sp2ハイブリダイズするA環と、A環の3位にOH基とを有するステロイドまたはステロイド様化合物である。本発明の第1の態様の特定の実施形態では、ステロイドまたはステロイド様分析物分子は、エストロゲン、エストロゲン様化合物、エストロン(E1)、エストラジオール(E2)、17a-エストラジオール、17b-エストラジオール、エストリオール(E3)、16-エピエストリオール、17-エピエストリオール、および16,17-エピエストリオールおよび/またはそれらの代謝物からなる群から選択される。実施形態では、代謝物は、エストリオール、16-エピエストリオール(16-エピE3)、17-エピエストリオール(17-エピE3)、16,17-エピエストリオール(16,17-エピE3)、16-ケトエストラジオール(16-ケトE2)、16a-ヒドロキシエストロン(16a-OHEl)、2-メトキシエストロン(2-MeOEl)、4-メトキシエストロン(4-MeOEl)、2-ヒドロキシエストロン-3-メチルエーテル(3-MeOEl)、2-メトキシエストラジオール(2-MeOE2)、4-メトキシエストラジオール(4-MeOE2)、2-ヒドロキシエストロン(2-OHE1)、4-ヒドロキシエストロン(4-OHE1)、2-ヒドロキシエストラジオール(2-OHE2)、エストロン(El)、エストロンサルフェート(Els)、17a-エストラジオール(E2a)、17b-エストラジオール(E2B)、エストラジオールサルフェート(E2S)、エキリン(EQ)、17a-ジヒドロエキリン(EQa)、17b-ジヒドロエキリン(EQb)、エキレニン(EN)、17-ジヒドロエキレニン(ENa)、17α-ジヒドロエキレニン、17β-ジヒドロエキレニン(ENb)、Δ8,9-ジヒドロエストロン(dEl)、Δ8,9-ジヒドロエストロンサルフェート(dEls)、Δ9-テトラヒドロカンナビノール、ミコフェノール酸からなる群から選択される。βまたはbは、交換可能に使用され得る。αおよびaは、交換可能に使用され得る。
【0154】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基としてアミン基を含む。本発明の第1の態様の実施形態では、アミン基は、アルキルアミンまたはアリールアミン基である。本発明の第1の態様の実施形態では、1つまたは複数のアミン基を含む分析物は、タンパク質およびペプチドからなる群から選択される。本発明の第1の態様の実施形態では、アミン基を含む分析物分子は、3,4-メチレンジオキシアンフェタミン、3,4-メチレンジオキシ-N-エチルアンフェタミン、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン、アンフェタミン、メタンフェタミン、N-メチル-1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミン、7-アミノクロナゼパム、7-アミノフルニトラゼパム、3,4-ジメチルメトカチノン、3-フルオロメトカチノン、4-メトキシメトカチノン、4-メチルエトカチノン、4-メチルメトカチノン、アンフェプラモン、ブチロン、エトカチノン、エレフェヘドロン、メトカチノン、メチロン、メチレンジオキシピロバレロン、ベンゾイルエクゴニン、デヒドロノルケタミン、ケタミン、ノルケタミン、メタドン、ノルメタドン、6-アセチルモルヒネ、ジアセチルモルヒネ、モルヒネ、ノルヒドロコドン、オキシコドン、オキシモルホン、フェンシクリジン、ノルプロポキシフェン、アミトリプチリン、クロミプラミン、ドチエピン、ドキセピン、イミプラミン、ノルトリプチリン、トリミプラミン、フェンタニル、グリシルキシリジド、リドカイン、モノエチルグリシルキシリジド、N-アセチルプロカインアミド、プロカインアミド、プレガバリン、2-メチルアミノ-1-(3,4-メチレンジオキシフェニル)ブタン、N-メチル-1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミン、2-アミノ-1-(3,4-メチレンジオキシフェニル)ブタン、1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミン、ノルメペリジン、O-デストラマドール、デスメタマドール、トラマドール、ラモトリギン、テオフィリン、アミカシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、バンコマイシン、メトトレキサート、ガバペンチンシソマイシン、および5-メチルシトシからなる群から選択される。
【0155】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、炭水化物または炭水化物部分を有する物質、例えば糖タンパク質またはヌクレオシドである。本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、単糖であり、特にリボース、デソキシリボース、アラビノース、リブロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フコース、フルクトース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、ノイラミン酸、N-アセチルニューロミン酸などからなる群から選択される。実施形態では、分析物分子は、特に二糖、三糖、四糖、多糖からなる群から選択されるオリゴ糖である。本発明の第1の態様の実施形態では、二糖は、スクロース、マルトースおよびラクトースからなる群から選択される。本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、上記のモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-、オリゴ-または多糖部分を含む物質である。
【0156】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、アルキルアジドまたはアリールアジドからなる群から選択されるアジド基を官能基として含む。本発明の第1の態様の実施形態では、1つまたは複数のアジド基を含む分析物分子は、ジドブジンおよびアジドシリンからなる群から選択される。
【0157】
そのような分析物分子は、体液、例えば血液、血清、血漿、尿、唾液、髄液など、組織または細胞抽出物などの生物学的または臨床試料中に存在し得る。本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、血液、血清、血漿、尿、唾液、髄液、および乾燥血液スポットからなる群から選択される生物学的または臨床試料中に存在する。本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、分析物分子は、精製または部分的に精製された試料、例えば精製または部分的に精製されたタンパク質混合物または抽出物である試料中に存在し得る。
【0158】
本発明の第1の態様の実施形態では、目的の分析物は、ステロイドである。
【0159】
本発明の第1の態様の実施形態では、ステロイドは、コルチゾール、DHEA-S、エストラジオール、プロゲステロン、テストステロン、17-ヒドロキシプロゲステロン、アルドステロン、アンドロステンジオン、DHEA、ジヒドロテストステロンおよびコルチゾンからなる群から選択される。
【0160】
本発明の第1の態様の実施形態では、目的の分析物は、ビタミンDである。
【0161】
本発明の第1の態様の実施形態では、ビタミンDは、25(OH)D2、25(OH)D3、24、25(OH)2D2、24、25(OH)2D3、1、25(OH)2D2および1、25(OH)2D3からなる群から選択される。当業者は、ビタミンDについて上述した略語を知っている。
【0162】
本発明の第1の態様の実施形態では、目的の分析物は、シクロスポリンA、エベロリムス、シロリムス、タクロリムス、アセトアミノフェン、サリチル酸塩、テオフィリンおよびジゴキシンからなる群から選択される。
【0163】
本発明の第1の態様の実施形態では、目的の分析物は、フェニトイン、バルプロ酸、フェニトイン、レベチラセタム、カルバマゼピン、カルバマゼピン-10,11エポキシド、フェノバルビタール、プリミドン、ガバペンチン、ゾニサミド、ラモトリギンおよびトピラマートからなる群から選択される。
【0164】
本発明の第1の態様の実施形態では、目的の分析物は、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、バンコマイシン、ピペラシリン(タゾバクタム)、メロペネムおよびリネゾリドからなる群から選択される。
【0165】
本発明の第1の態様の実施形態では、目的の分析物は、メトトレキサート、ボリコナゾール、ミコフェノール酸およびミコフェノール酸-グルクロニドからなる群から選択される。
【0166】
本発明の第1の態様の実施形態では、目的の分析物は、ブプレノルフィン、6-モノアカチルモルヒネ、コデイン、ジヒドロコデイン、モルヒネ、モルヒネ-3-グルクロニドおよびトラマドールからなる群から選択される。
【0167】
本発明の第1の態様の実施形態では、目的の分析物は、アセチルフェンタニル、カルフェンタニル、フェンタニル、ヒドロコドン、ノルフェンタニル、オキシコドンおよびオキシモルホンからなる群から選択される。
【0168】
本発明の第1の態様の実施形態では、試料調製ステーションは、試料分析ユニットを備える。
【0169】
本発明の第1の態様の実施形態では、試料分析ユニットは、固液支持分析物濃縮ユニット、固液支持マトリックス枯渇ユニット、ガス状試料濃縮またはマトリックス分離ユニット、固体支持ユニット上の固体試料の群から選択される少なくとも1つのユニットまたは1つを超えるユニットまたはユニットの組み合わせを備える。
【0170】
本発明の第1の態様の実施形態では、固液支持分析物濃縮ユニットは、例えば、SPE(固相抽出)、SLE(固液抽出)、SPME(固相微小抽出)である。このユニットは、試料を支持液に接触させるか、試料が既に入っている液を使用する。さらにまた、固体が試料と接触し、表面吸着および/または吸収により、試料からの化合物の分離が達成される。固体が除去され得、上清または固体粒子は、例えば洗浄および/または抽出によってさらに処理され得る。ユニットは、試料からの自動化された方法においてこの種の抽出を処理し、抽出および/または洗浄の後に処理された試料をさらに移送することができる。
【0171】
本発明の第1の態様の実施形態では、固液支持分析物濃縮ユニットは、固相抽出(SPE)、微粒子、液体-液体抽出(LLE)、液体クロマトグラフィ(LC)、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0172】
本発明の第1の態様の実施形態では、固液支持マトリックス枯渇ユニットである。このユニットは、固液支持分析物濃縮ユニットと同様の方法で、例えば微粒子または予め充填されたカラムによって試料から不要なマトリックス成分を除去することができる。不要なマトリックスは、このユニットによって粒子に結合しているか、または粒子の上清中で洗浄される。
【0173】
本発明の第1の態様の実施形態では、固液支持マトリックス枯渇ユニットは、固相抽出(SPE)、微粒子および液体-液体抽出(LLE)からなる群から選択される。
【0174】
本発明の第1の態様の実施形態では、ガス状試料濃縮またはマトリックス分離ユニットは、分析試料内の分析物および/またはマトリックス化合物が分離されるSLEユニットまたは加熱/冷却ユニットからなるか、またはそれを備える。さらに、エアロゾル、例えば10nm~10mmの範囲の水滴を分離するためのより多くのフィルタリング装置またはユニットが濾別される。
【0175】
本発明の第1の態様の実施形態では、固体支持ユニット上の固体試料は、液体試料が処理される場合はピペッティングユニット、または固体試料用のロボットアームからなるか、またはそれを備える。固体支持体は、金属プレートまたは固体ストリップからなるか、またはそれらを備えることができる。液体を固体支持体上に配置および/または他の試薬と混合された場合、試料が乾燥され得る。例は、MALDI(マトリックス支援レーザー脱離)であり、これは、予め混合された分析物およびマトリックス化合物、例えばDHBがピペッティングされて鋼板に入れられ、レーザー照射および質量分析によって乾燥が続くまで蒸発させる。
【0176】
本発明の第1の態様の実施形態では、固体支持ユニット上の固体試料は、断面の画像化および鉱物分析である。
【0177】
本発明の第1の態様の実施形態では、ガス状試料濃縮またはマトリックス分離ユニットは、液体および/または固体、例えば活性炭またはそれらの組み合わせによって支持された不活性ガスストリッピングまたはヘッドスペース抽出またはガス吸着である。
【0178】
臨床診断システムは、イオン発生ステーションを備える。イオン発生ステーションは、少なくとも1つの目的の分析物の少なくとも1つのイオンまたは複数のイオンを発生させるためのものである。
【0179】
本発明の第1の態様の実施形態では、少なくとも1つの目的の分析物の1つまたは複数のイオンは、好ましくはイオン発生ステーションを出た後に気体状態にある。
【0180】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン発生ステーションは、試料調製ステーションと少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションとの間に配置される。これは、イオン発生ステーションが試料調製ステーションに結合され、少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションに結合されることを意味し得る。
【0181】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン発生ステーションは、非定常分析物イオン供給ユニットおよび/または定常分析物イオン供給ユニットを備える。
【0182】
本発明の第1の態様の実施形態では、非定常分析物イオン供給ユニットは、レーザー脱離イオン化(LDI)、誘電体バリア液体流、表面プラズマイオン化、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0183】
本発明の第1の態様の実施形態では、レーザー脱離イオン化(LDI)は、レーザーエネルギーの使用によって駆動されるイオン/イオン化プロセスを生成するシステムである。エネルギーは、分子および/または支持材料によって取り込まれ、電荷およびイオンを発生させる。
【0184】
本発明の第1の態様の実施形態では、誘電体バリア液体流は、放電空間に加えて、金属電極間の電流経路に1つまたは複数の絶縁層(誘電体バリア)の存在を特徴とする。誘電体バリアは、通常、いくつかの一般的な絶縁材料、例えばガラスまたはシリカガラス、セラミック材料、雲母、および薄いエナメルまたはポリマー層を使用する。DBDには、平面および環状の2つの基本構成がある。
【0185】
本発明の第1の態様の実施形態では、表面プラズマイオン化は、例えば、表面に結合した分析物に向けられた放電によって低温プラズマを提供する供給源から作製されるか、またはそれを備える。分析物は、低温プラズマ固有イオンによってイオン化される。
【0186】
本発明の第1の態様の実施形態では、定常分析物イオン供給ユニットは、フローインジェクション(好ましくはESIまたはAPCIまたはナノスプレーを使用したフローインジェクション)、ペーパースプレー、電子イオン化(EI)、マトリックス支援イオン化(MAI)、例えばプロトン移動反応(PTR)の化学イオン化(CI)、例えば63Niを使用した放射性支援イオン化、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0187】
本発明の第1の態様の実施形態では、フローインジェクションは、ESI/APCIスプレーニードル接触への直接試料に関する。試料は、イオン源を介してさらに処理することなく得られる。
【0188】
本発明の第1の態様の実施形態では、フローインジェクションがエレクトロスプレーイオン化(ESI)である。
【0189】
本発明の第1の態様の実施形態では、ESIは、ナノESIである。
【0190】
本発明の第1の態様の実施形態では、ナノESIは、静的ナノESIである。
【0191】
本発明の第1の態様の実施形態では、フローインジェクションが大気圧化学イオン化(APCI)である。
【0192】
本発明の第1の態様の実施形態では、臨床診断システムは、高電場非対称波形イオン移動度分光法(FAIMS)を含む。
【0193】
本発明の第1の態様の実施形態では、紙スプレーは、先端または円錐を有する片側に成形された紙ストリップに関する。分析物は、先端面に塗布され、溶媒によって濡らされる。紙の反対側に高電圧が印加され(0、5~5kV付近)、先端が質量分析計の前に配置される。
【0194】
本発明の第1の態様の実施形態では、電子イオン化(EI)は、電磁場によって加速される発光ワイヤからの自由電子を使用する。電子ビームは、標的分析物に当たり、したがってラジカルカチオンおよび/またはアニオンを形成することによってそれをイオン化する。
【0195】
本発明の第1の態様の実施形態では、マトリックス支援イオン化(MAI)は、熱エネルギーおよび/または電場によって解離し、したがってマトリックス(例えば共沈殿によって)に密接している目的の分子をイオン化するソリドマトリックス、例えば3-NBNを使用する。
【0196】
本発明の第1の態様の実施形態では、化学イオン化(CI)は、ターゲット分析物をさらにイオン化する支持ガス(例えば、メタンまたはアンモニア)をイオン化するために電子ビームを使用する。
【0197】
本発明の第1の態様の実施形態では、放射性支持イオン化は、例えば63Niのアルファ線をイオン源として使用し、したがって放射性物質のラジオンビーム内の標的分子をイオン化する。
【0198】
臨床診断システムは、少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションを備える。臨床診断システムは、少なくとも1つの目的の分析物の選択性を高めるために、2つまたは3つまたは4つまたは5つまたは6つなどの2つ以上の選択性エンハンサーステーションを備えることができる。2つを超える選択性エンハンサーステーションの場合、選択性エンハンサーステーションは、互いに次々に結合される。少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションは、それぞれのイオンサイズに基づいてイオンを分離する。少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションは、1つまたは複数の電極に印加される電気および/または無線周波数場(AC/DCおよび/またはRF)を使用してイオン移動度に関してイオンを分離するためのイオン移動度ユニットを備える。本発明の第1の態様の実施形態では、臨床診断システムは、正確に1つの選択性エンハンサーステーションを備える。
【0199】
本発明の第1の態様の実施形態では、少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションは、少なくとも1つのイオン貯蔵ユニットおよび/または少なくとも1つのイオン移送ユニットと、それらのm/z(質量電荷比)に基づいてイオンを分離するイオン選択ユニットとを備える。好ましくは、イオン貯蔵ユニットおよび/または少なくとも1つのイオン移送ユニットは、イオン分離能力を有しない。
【0200】
本発明の第1の態様の実施形態では、少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションは、正確に1つのイオン貯蔵ユニットおよび/または正確に1つのイオン移送ユニットを備える。
【0201】
本発明の第1の態様の実施形態では、類似または等しいイオン移動度ユニットを有するイオンは、イオン移動度ユニット内で一緒にまとまる。
【0202】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン移動度ユニットは、イオンの混合物の気相分離を実行する。
【0203】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオンは、イオン移動度ユニットにおいて1から約100,000の範囲の質量電荷比を有する。
【0204】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオンは、イオン移動度ユニットを通るドリフト時間が約0から約60秒である。
【0205】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン移動度ユニットの少なくとも一部は、約10-3トールから大気圧の範囲の圧力に維持される。
【0206】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン移動度ユニット内のイオンは、光イオン化、コロナ放電、レーザーイオン化、電子衝撃、電場イオン化、化学イオン化、およびエレクトロスプレーのうちの少なくとも1つを使用することによって形成される。
【0207】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオンは、イオン移動度ユニットの外側、好ましくはイオン発生ステーション内で形成される。
【0208】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン移動度ユニットは、イオン移動度ユニットの一部に沿って電位勾配を形成するためにイオン移動度ユニットに印加される非一定電場を含み、それにより、同様の移動度を有するイオンは、他のイオン間の分離を維持しながら、より鋭いピークに一緒にまとまる。
【0209】
本発明の第1の態様の実施形態では、電位勾配はDC勾配である。
【0210】
本発明の第1の態様の実施形態では、電位勾配は、装置の長さに沿って徐々に増加または減少する。
【0211】
本発明の第1の態様の実施形態では、装置の長さに沿った電位勾配は、0から約5,000ボルト/mmである。
【0212】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン移動度ユニットは、1つまたは複数の電極に印加される電場および/または無線周波数場(AC/DCおよび/またはRF)を使用する。
【0213】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン移動度ユニットは、可逆イオン操作技術(SLIM)のための構造を実行する。SLIM技術は、イオンを分離し、従来の平行なプリント回路基板表面上の電極に電場を印加し、イオンを可逆的に分離して移動させることができるイオン導管を形成する。したがって、試料中のイオンは、高分解能且つ高トラフによって分離され得る。SLIM技術は、例えば、国際公開第2017/062102号パンフレット(欧州特許第3359960号明細書)または国際公開第2014/168660号パンフレット(欧州特許第2984675号明細書)から当業者に知られており、この技術の構成および機能は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0214】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン移動度ユニットは、
-電圧源に結合され、長手方向のイオン伝播方向に対して第1の閉じ込め方向内側の閉じ込め体積の閉じ込め体積部分内に第1の対の対向電極配置間にイオンを閉じ込める第1の対の対向電極配置であって、第1の対の各対向電極配置が、第1の対の対向電極配置間にイオンの閉じ込めを提供する、第1の対の対向電極配置のRF電極配置の隣接するRF電極間の交互位相を有する電圧源からバイアスされていないRF電圧を受信するRF電極の配置を含む、第1の対の対向電極配置と、
-電圧源に結合され、第1の対の対向電極配置とは別個であり、第2の対の対向電極配置間のイオンを、第1の閉じ込め方向を補完する第2の合流方向内側の閉じ込め体積内に閉じ込める第2の対の対向電極配置であって、第2の対の各対向電極配置が、第2の対の対向電極配置のRF電極の配置の隣接するRF電極間の交互位相を有する電圧源からバイアスされていないRF電圧を受信するRF電極の配置を含む、第2の対の対向電極配置と
を備え、
閉じ込め体積が、第1のイオン導管を画定し、装置が、第1のイオン導管とは別個の、横方向に離間した第2のイオン導管をさらに備え、第2のイオン導管が、複数の電極配置を含み、第2のイオン導管の少なくとも1つの電極配置が、第1のイオン導管の第1または第2の対の対向電極配置の対向電極配置である。
【0215】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン移動度ユニットは、
少なくとも1つの表面と、
少なくとも1つの表面に結合され、高周波(RF)電圧源と電気的に連通している第1の複数の連続電極であって、RF電圧源によって第1の複数の電極の隣接する電極に印加されるRF電圧が、第1の複数の電極の隣接する電極上で約180°位相シフトされている、第1の複数の連続電極と、
少なくとも1つの表面に結合され、第1の複数の電極の間にまたは第1の複数の電極に隣接して長手方向セットに配置された第2の複数のセグメント化電極であって、第2の複数のセグメント化電極が、交流(AC)電圧源とさらに電気的に連通しており、AC電圧源によって第2の複数のセグメント化電極の長手方向セット内の隣接する電極に印加されるAC電圧波形が、第2の複数の電極の隣接する電極上で1°~359°位相シフトされている、第2の複数のセグメント化電極と
を備える。
【0216】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン移動度ユニットは、少なくとも1つの表面上の第1および第2の複数の電極の外側端部に配置された複数のガード電極であって、複数のガード電極が、DC電圧源とさらに電気的に連通しており、複数のガード電極は、DC電圧源から一定のDC電圧を受信すると、ガード電極に向かうイオンの動きを抑制する電場を生成する、複数のガード電極を備える。
【0217】
本発明の第1の態様の実施形態では、AC電圧波形は正弦波である。
【0218】
本発明の第1の態様の実施形態では、AC電圧波形は、2つ以上のAC電圧波形の合計である。
【0219】
本発明の第1の態様の実施形態では、第2の複数のセグメント化電極の長手方向セット内の隣接する電極に印加されるAC電圧波形は、第2の複数のセグメント化電極の隣接する電極上で繰り返しパターンで位相シフトされる。
【0220】
本発明の第1の態様の実施形態では、第2の複数のセグメント化電極の長手方向セット内の隣接する電極に印加されるAC電圧波形は、第2の複数の電極の隣接する電極上で段階的に約45°、90°、または120°位相シフトされる。
【0221】
本発明の第1の態様の実施形態では、少なくとも1つの表面は、単一の非平面表面を含む。
【0222】
本発明の第1の態様の実施形態では、単一の非平面表面は、以下の形状、すなわち、湾曲形状、円筒形状、螺旋形状、漏斗形状、半球形状、または楕円形状のうちの1つである。
【0223】
本発明の第1の態様の実施形態では、少なくとも1つの表面は、互いに離間した2つの表面を含む。
【0224】
本発明の第1の態様の実施形態では、2つの表面は、互いにほぼ平行である。
【0225】
本発明の第1の態様の実施形態では、印加されるAC電圧波形の周波数は、10Hz~200kHzの範囲から選択され、印加されるRF電圧の周波数は、100kHz~5MHzの範囲から選択される。
【0226】
本発明の第1の態様の実施形態では、周波数印加AC電圧波形は、1Hzから1kHzの範囲から選択される。
【0227】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン移動度ユニットの圧力範囲は、大気圧から1ミリトール真空である。
【0228】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン移動度ユニットは、
少なくとも1つの表面と、
少なくとも1つの表面に結合され、1つまたは複数の長手方向セットに配置された複数のセグメント化電極であって、複数のセグメント化電極が、交流(AC)電圧源および高周波(RF)電圧源と電気的に連通している、複数のセグメント化電極と
を備え、
AC電圧源によって複数の電極の長手方向セット内の隣接する電極に印加されるAC電圧波形が、1°~359°位相シフトされ、
RF電圧源によって複数の電極のうちの隣接する電極に印加されるRF電圧が、約180°位相シフトされる。
【0229】
本発明の第1の態様の実施形態では。
【0230】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン移動度ユニットは、好ましくはAC/DCおよびRF駆動イオン方向に対する可変方向を有する支持ガスを含み、イオン流に対して1°から359°の角度で適用され得る。好ましくは、イオン流に向かう角度は、90°または180°である。
【0231】
本発明の第1の態様の実施形態では、支持ガスは不活性である。
【0232】
本発明の第1の態様の実施形態では、支持ガスは、非反応性ガス、例えば、窒素、アルゴン、キセノン、クリプトン、SF6および/またはヘリウムである。
【0233】
本発明の第1の態様の実施形態では、支持ガスは、0~1bar、好ましくは1mbar~500mbarの圧力に反応しない。支持ガスを流すことによって、イオンは、AC/DC RF駆動イオン移動に向かうこの代替力でさらに分離され得る。
【0234】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン移動度ユニットは、
a.一対の表面と、
b.荷電粒子が表面のいずれかに接近するのを抑制する疑似ポテンシャルを生成するために、RF電位が表面の少なくとも1つに印加される表面に結合された電極のアレイと、
c.表面間のイオンの移動を制御および制限するためのDC電位の同時印加と
を備え、
電極アレイが、内側電極アレイと、第1の外側電極アレイと、第2の外側電極アレイとを備え、電極の内側アレイおよび外側アレイが、各表面の長さに実質的に沿って延在する。
【0235】
本発明の第1の態様の実施形態では、電極アレイは、内側電極アレイ、第1の外側電極アレイ、および第2の外側電極アレイを備え、内側および外側電極アレイは、各表面の長さに実質的に沿って延在する。
【0236】
本発明の第1の態様の実施形態では、第1の外側電極アレイは、内側電極のアレイの一方の側に配置され、第2の外側電極アレイは、内側電極のアレイの他方の側に配置される。
【0237】
本発明の第1の態様の実施形態では、DC電位が第1および第2の外側電極アレイに印加され、重畳電場を有するRF電位が内側電極のアレイに印加される。
【0238】
本発明の第1の態様の実施形態では、RF電位は、DC電位とともに第1および第2の外側電極アレイに印加される。
【0239】
本発明の第1の態様の実施形態では、RF電位は、2つの表面の一方のみに印加される。
【0240】
本発明の第1の態様の実施形態では、RF電位は、2つの表面の双方に印加される。
【0241】
本発明の第1の態様の実施形態では、少なくとも1つの内側電極上のRFは、その隣接する電極と位相がずれている。
【0242】
本発明の第1の態様の実施形態では、各内側電極は、その隣接する内側電極と位相シフトされて疑似ポテンシャルを形成する。
【0243】
本発明の第1の態様の実施形態では、内側電極は、その隣接する内側電極と約180度位相がずれており、疑似ポテンシャルを形成している。
【0244】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン移動度ユニットは、複数対の表面をさらに備え、イオンの移動は、開口を通って可能にされ、一連の電極によって案内されて、複数対の表面の異なる対の間を移動する。
【0245】
本発明の第1の態様の実施形態では、一連の電極は、イオンが異なる対の平行面の間を移動するときのイオンの損失を防止するために交互の極性のRF電位を有する。
【0246】
本発明の第1の態様の実施形態では、一対の表面上の電極は、以下の構成:
a.実質的にT字形の構成であって、T字形の構成の接合部においてイオンが切り替えられることを可能にする、構成;
b.実質的にY字形の構成であって、Y字形の構成の接合部においてイオンが切り替えられることを可能にする、構成;
c.実質的にX字形または十字形の構成であって、X字形または十字形の構成の1つまたは複数の側面の接合部においてイオンが切り替えられることを可能にする、構成;d.複数の接合点を有する、アスタリスク(*)形状の構成などの実質的に多方向の形状であって、構成の1つまたは複数の側への接合部においてイオンが切り替えられることを可能にする、形状
のうちの少なくとも1つを形成する。
【0247】
本発明の第1の態様の実施形態では、電場は、イオンが2つ以上の通過を行うことを可能にするために、イオンが円形経路、矩形経路、または他の不規則な経路を移動することを可能にする。
【0248】
本発明の第1の態様の実施形態では、表面間の空間は、不活性ガスまたはイオンが反応するガスを含む。
【0249】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン移動度ユニットは、複数のサイクロトロン段をさらに備える。
【0250】
本発明の第1の態様の実施形態では、複数のサイクロトロン段は、スタック内に配置される。
【0251】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン移動度ユニットは、電荷検出器、光学検出器、および質量分析計のうちの少なくとも1つに結合される。
【0252】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオンは、イオン移動度ユニットの外側から導入され、光イオン化、コロナ放電、レーザーイオン化、電子衝撃、電場イオン化、化学イオン化、およびエレクトロスプレーのうちの少なくとも1つを使用して形成される。
【0253】
本発明の第1の態様の実施形態では、電場は、静電場または動的電場である。
【0254】
本発明の第1の態様の実施形態では、静場はDC勾配であり、動場は進行波である。
【0255】
本発明の第1の態様の実施形態では、2つ以上の異なる周波数および異なる電場強度を有するRF電位は、表面上の電極アレイに、および単一周波数の他のRF電位で実現可能であるよりも実質的に大きいm/z範囲にわたって荷電粒子が表面の一方または双方に接近するのを阻止する疑似電位を生成する印加パターンで共印加される。
【0256】
本発明の第1の態様の実施形態では、表面は、平面、平行、および非平面のうちの1つである。本発明の第1の態様の実施形態では、選択性エンハンサーステーションは、イオン移動度ユニットと、以下:イオン移送ユニット、イオン断片化ユニットの群から選択される少なくとも1つのユニットとを備える。
【0257】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン移動度ユニットは、空間移動度フィルタリングおよび/または時間移動度フィルタリングのためのものである。
【0258】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン移送ユニットは、イオンファンネル、ステップ波、Sレンズ、イオンミラー、差動電位によるイオンファイトチューブ、イオントラップ、例えば四重極の多極、例えばキャピラリ(例えば、加熱キャピラリ)または静電勾配を有する2つのレンズが2つのイオン処理ユニット(例えば、ソースおよび四重極)のための接続であるダイレクトソースカップリングの非接触イオン移送システム、および磁気セクタ移送からなる群から選択される。
【0259】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン断片化ユニットは、衝突誘起解離(CID)、電子捕獲解離(ECD)、電子移動解離(ETD)、光子解離および電子衝撃(EI)からなる群から選択される。
【0260】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン移動度ユニットは、イオン移送ユニットとイオン断片化ユニットとの間に配置される。
【0261】
本発明の第1の態様の実施形態では、少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションは、1つのイオン断片化ユニットまたは2つのイオン断片化ユニットまたは3つのイオン断片化ユニットまたは4つのイオン断片化ユニットを備えるか、またはそれらからなる。イオン移動度ユニットは、2つのイオン断片化ユニットの間に配置され得、好ましくは、イオン移動度ユニットは、第1のイオン断片化ユニットに直接結合され、第2のイオン断片化ユニットに直接結合され得る。
【0262】
本発明の第1の態様の実施形態では、目的の分析物は、第1のイオン断片化ユニット、次いでイオン移動度ユニット、次いで第2のイオン断片化ユニットを通過する。
【0263】
本発明の第1の態様の実施形態では、目的の分析物は、イオン移送ユニット、次いでイオン移動度ユニット、次いで第2のイオン断片化ユニットを通過する。
【0264】
本発明の第1の態様の実施形態では、第1のイオン断片化ユニットは、衝突誘起解離(CID)、電子捕獲解離(ECD)、電子移動解離(ETD)、および光子解離、電子衝撃(EI)からなる群から選択される。
【0265】
本発明の第1の態様の実施形態では、第2のイオン断片化ユニットは、イオントラップ、オービトラップ、飛行時間(TOF)、例えば二重集束セクタフィールド(DFS)の磁気セクタからなる群から選択される。
【0266】
本発明の第1の態様の実施形態では、第1のイオン断片化ユニットは、イオン移動度ユニットの前に配置される。
【0267】
本発明の第1の態様の実施形態では、第2のイオン断片化ユニットは、イオン移動度ユニットの後に配置される。
【0268】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン移送ユニットは、イオン移動度ユニットの前、好ましくは第1のイオン断片化ユニットの前に配置される。
【0269】
本発明の第1の態様の実施形態では、衝突誘起解離(CID)は、標的分析物と中性ガス(例えば、アルゴン、窒素)との衝突に関する。標的分析物は、電場駆動速度に起因してコリオンのエネルギーを得る。
【0270】
本発明の第1の態様の実施形態では、電子捕獲解離(ECD)は、奇数電子種である支持成分からの電子によって駆動される解離に関する。
【0271】
本発明の第1の態様の実施形態では、電子移動解離(ETD)は、正前駆体分子に移動する電子に関連し、ラジカルアニオンが生成され、それらとともにイオントラップに入れられる。イオン/イオン反応中に、正に荷電した分析物分子に電子が移動し、断片化を引き起こす。
【0272】
本発明の第1の態様の実施形態では、光子解離は、分析物結合を切断することができるようにするエネルギーによって光を照射することによって後続する分析物イオン(例えばイオントラップ内)を貯蔵するプロセスに関する。
【0273】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオントラップは、イオンが貯蔵されるイオントラップセルに適用されるAC/DCおよびRF値を変調することによって、それらのm/z比に基づいてイオンを貯蔵する装置に関する。
【0274】
本発明の第1の態様の実施形態では、飛行時間(TOF)は、イオンが開始のための定義された時点を有する電場によって加速される時間依存技術に関する。イオンは、m/z値に直接依存する特定の時間後に検出器に到達する。
【0275】
本発明の第1の態様の実施形態では、二重集束磁気セクタは、空間を通ってイオンを導き、2つのセクタによって異なるm/z値を分離することができる永久磁石と電磁磁石との組み合わせに関する。
【0276】
臨床診断システムは、イオン検出ステーションを備える。イオン検出ステーションは、少なくとも1つの目的の分析物の少なくとも1つのイオンを検出するためのものである。
【0277】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン検出ステーションは、ファラデーカップ、マイクロチャネルプレート検出器(MCP)、光電子増倍管、オービトラップ、電子増倍管、写真用プレートの群から選択される少なくとも1つのユニットまたは2つ以上のユニットを備える。
【0278】
本発明の第1の態様の実施形態では、ファラデーカップは、真空中で荷電粒子を捕捉するように設計された金属(導電性)カップに関する。得られた電流が測定され、カップに当たるイオンまたは電子の数を決定するために使用され得る。
【0279】
本発明の第1の態様の実施形態では、マイクロチャネルプレート検出器(MCP)は、単一粒子(電子、イオンおよび中性子)の検出に使用される平面成分に関する。
【0280】
本発明の第1の態様の実施形態では、光電子増倍管は、分析物分子が第1のダイノードに衝突し、したがって、次のダイノードに衝突する複数の他の電荷ユニットの放出などによって第1のダイノード上のヒットプロセスを増幅する装置に関する。最後に、イオン感応性検出器は、乗算された信号を記録することができる。
【0281】
本発明の第1の態様の実施形態では、オービトラップは、スピンドルの周りの軌道運動でイオンを捕捉する外側バレル状電極および同軸内側スピンドル状電極からなるイオントラップ質量分析装置に関する。捕捉されたイオンからの画像電流が検出され、周波数信号のフーリエ変換を使用して質量スペクトルに変換される。
【0282】
本発明の第1の態様の実施形態では、電子増倍器は、入射電荷を増倍する真空管構造に関する。二次放出と呼ばれるプロセスでは、単一の電子が二次放出材料に衝突すると、約1から3個の電子の放出を誘発することができる。この金属プレートとさらに別の金属プレートとの間に電位が印加されると、放出された電子は、次の金属プレートに加速し、さらに多くの電子の二次放出を誘発する。これを何度も繰り返すことができ、その結果、全て金属アノードによって収集された電子の大きなシャワーが生じ、全てがただ1つによってトリガされている。
【0283】
本発明の第1の態様の実施形態では、写真用プレートは、化学反応によってめっきされたイオン感受性プレートである。このプレートは、その後の化学反応(例えば、銀イオンを用いた写真プロセスのように)の後にイオン画像を固定することができる。
【0284】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン検出ステーションは、質量分析計である。イオン検出ステーションは、質量分析を実行することができる。
【0285】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン検出ステーションは、タンデム質量分析計である。
【0286】
MSにおける最も一般的な試料ワークフローは、試料調製および/または濃縮ステップを含み、ここで、目的の分析物は、ガスまたは液体クロマトグラフィを使用してマトリックスから分離される。本発明者は、驚くべきことに、例えば選択性エンハンサーステーションの一部として、好ましくはクロマトグラフィユニットを含まない本発明の第1の態様の臨床診断システムが、クロマトグラフィユニットを備えるシステムと比較して利点を示すことを見出した。これは、主に、機械的要素が互いに接触して移動する任意の部分(例えば、ポンプ)を除去することによって行われる。攻撃的な溶媒(例えば、アセトニトリル)の除去は、第一に環境にとって有利であり、第二に、化学的に不安定な材料(例えば、ゴムシール)の破壊を防止する。分離のための固定相の除去は、それらの固定相の目詰まりおよび破壊による全体的なコストを低減するために有利である。従来のHPLCにおける条件を変更する時間は非常に時間がかかり、ガスまたは電場のみを変更する必要がある場合には消滅する。
【0287】
本発明の第1の態様の実施形態では、臨床診断システムは、多動作モードで実行される。
【0288】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン検出ステーションは、電荷検出器または光検出器である。
【0289】
本発明の第1の態様の実施形態では、電荷検出器は、電圧を印加することによって電荷を帯びた分子を認識することができる半導体を指す。
【0290】
本発明の第1の態様の実施形態では、光検出器は、電圧を印加することによって光子を認識することができる半導体を指す。
【0291】
臨床診断システムは、データ処理ステーションを備える。データ処理ステーションは、イオン検出システムから少なくとも受信された少なくとも1つの電子信号を処理および/または評価するためのものである。
【0292】
本発明の第1の態様の実施形態では、データ処理ステーションは、コンピュータベースである。コンピュータベースとは、この文脈において、コンピュータが、ユーザが知りたい少なくとも1つの電子信号または情報を処理および/または評価および/または表示するために使用されることを意味することができる。
【0293】
本発明の第1の態様の実施形態では、データ評価、すなわち、各試料についての目的の各分析物の同定ならびに場合によっては定量および/または確認をデータ処理ステーションにおいて行うことができる。
【0294】
本発明の第1の態様の実施形態では、目的の分析物は、試料調製ステーション、次いでイオン発生ステーション、次いで少なくとも1つの選択性エンハンサーステーション、次いでイオン検出ステーション、次いでデータ処理ステーションを通過する。
【0295】
本発明の第1の態様の実施形態では、目的の分析物は、イオン移送ユニット、次いで第1のイオン断片化ユニット、次いでイオン移動度ユニット、次いで第2のイオン断片化ユニットを通過する。
【0296】
本発明の第1の態様の実施形態では、少なくとも1つの目的の分析物は、10秒未満、好ましくは9秒未満または8秒未満または7秒未満または6秒未満または5秒未満または4秒未満または3秒未満または2秒未満または1秒未満の前記臨床診断システムおよび/または質量分析計および/またはイオン移動度ユニットに存在する。
【0297】
第2の態様では、本発明は、生物学的試料中の少なくとも1つの目的の分析物の存在またはレベルを決定するための本発明の第1の態様の臨床診断システムの使用に関する。
【0298】
本発明の第1の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第2の態様に適用され、逆もまた同様である。
【0299】
第3の態様では、本発明は、生物学的試料中の少なくとも1つの目的の分析物の存在またはレベルを決定するための方法であって、
A)生物学的試料を調製すること、好ましくは少なくとも1つの目的の分析物を含む生物学的試料を自動調製することと、
B)少なくとも1つの目的の分析物からイオンを発生させることと、
C)1つまたは複数の電極に印加される電場を使用してイオン移動度を介して1つまたは複数のイオンを分離することと、
D)質量分析を使用して少なくとも1つの目的の分析物の少なくとも1つのイオンを検出および決定することと
を含む、方法に関する。
【0300】
本発明の第1の態様および/または本発明の第2の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第3の態様に適用され、その逆も同様である。
【0301】
本発明の第3の態様の実施形態では、内部標準物は、好ましくはステップ(A)において添加され、内部標準物は、好ましくは同位体標識されている。
【0302】
本発明の第3の態様の実施形態では、目的の分析物は、天然であるか、または天然ではない。
【0303】
本発明の第3の態様の実施形態では、本方法は、インビトロ法である。
【0304】
本発明の第3の態様の実施形態では、本方法は、本発明の第1の態様にかかる臨床診断システムにおいて実行される。
【0305】
第4の態様では、本発明は、本発明の第3の態様の方法を実行するのに適したキットであって、
-好ましくは前処理を実行するための試薬と、
-濃縮を実行するための磁性、常磁性または超常磁性ビーズと、
-任意に、好ましくは同位体標識された内部標準物と
を備える、キットに関する。
【0306】
本発明の第1の態様および/または本発明の第2の態様および/または本発明の第3の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第4の態様に適用され、逆もまた同様である。
【0307】
本発明の第4の態様の実施形態では、前処理は、試料前処理ユニットにおいて実行される。
【0308】
本発明の第4の態様の実施形態では、磁性ビーズまたは常磁性ビーズは、磁性ビーズ処理ユニットにおいて使用される。
【0309】
本発明の第4の態様の実施形態では、内部標準物は、内部標準物処理ユニットにおいて使用される。
【0310】
第5の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の臨床診断システムおよび/または本発明の第3の態様の方法におけるキットの使用に関する。
【0311】
本発明の第1の態様および/または本発明の第2の態様および/または本発明の第3の態様および/または本発明の第4の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第5の態様に適用され、逆もまた同様である。
【0312】
第1の態様では、本発明は、臨床診断システムであって、
-少なくとも1つの目的の分析物を含む生物学的試料の自動調製のための試料調製ステーションと、
-少なくとも1つの目的の分析物の少なくとも1つのイオンまたは複数のイオンを発生させるためのイオン発生ステーションと、
-少なくとも1つの目的の分析物の選択性を高めるための少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションまたはそれ以上であって、少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションが、それぞれのイオンサイズに基づいてイオンを分離し、1つまたは複数の電極に印加される電気および/または無線周波数場(AC/DCおよび/またはRF)を使用してイオン移動度に関してイオンを分離するためのイオン移動度ユニットを備える、少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションと、
-少なくとも1つの目的の分析物の少なくとも1つのイオンを検出するためのイオン検出ステーションと、
-イオン検出システムから少なくとも受信された少なくとも1つの電子信号を処理および/または評価するためのデータ処理ステーションと
を備える、臨床診断システムに関する。
【0313】
本発明の第1の態様の実施形態では、生物学的試料は、ランダム過剰モードで調製される。
【0314】
本発明の第1の態様の実施形態では、生物学的試料は、個体からの血清、血漿、組織、液体、呼気、汗、痰および全血試料からなる群から選択される患者試料から得られ、好ましくは個体は哺乳動物、好ましくはヒトである。
【0315】
本発明の第1の態様の実施形態では、少なくとも1つの目的の分析物は、m/z=20000未満、好ましくはm/z=10000未満のモル質量を有する。
【0316】
本発明の第1の態様の実施形態では、試料調製ステーションは、生物学的試料中の干渉マトリックス成分を除去もしくは少なくとも低減し、かつ/または生物学的試料中の目的の分析物を濃縮するためのものであり、以下のユニット:試料送達ユニット、試料前処理ユニット、試料分析ユニットのうちの少なくとも1つまたはそれらの組み合わせを備える。
【0317】
本発明の第1の態様の実施形態では、試料送達ユニットは、試料の収集および調製および/もしくは搬送を備え、かつ/または試料前処理ユニットは、以下:磁性ビーズ処理ユニット、内部標準物処理ユニット、支持化合物処理ユニット、ピペッティングユニット、流体移送ユニット、反応容器移送機構ユニット、濃縮処理ユニット、溶媒蒸発ユニット、誘導体化ユニットの群から選択される少なくとも1つのユニットまたは複数のユニットを備え、かつ/または試料分析ユニットは、固液支持分析物濃縮ユニット、固液支持マトリックス枯渇ユニット、ガス状試料濃縮またはマトリックス分離ユニット、固体支持ユニット上の固体試料の群から選択される少なくとも1つのユニットまたは複数のユニットを備える。
【0318】
本発明の第1の態様の実施形態では、試料調製ステーションは、部分的または完全に自動化されている。
【0319】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン発生ステーションは、非定常分析物イオン供給ユニットおよび/または定常分析物イオン供給ユニットを備え、非定常分析物イオン供給ユニットは、レーザー脱離イオン化(LDI)、誘電体バリア液体流、表面プラズマイオン化およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、定常分析物イオン供給ユニットは、フローインジェクション(好ましくは、ESIまたはAPCIまたはナノスプレーを使用したフローインジェクション)、ペーパースプレー、電子イオン化(EI)、マトリックス支援イオン化(MAI)、例えばプロトン移動反応(PTR)の化学イオン化(CI)、例えば63Niを使用した放射性支援イオン化、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0320】
本発明の第1の態様の実施形態では、選択性エンハンサーステーションは、イオン移動度ユニットと、以下:イオン移送ユニット、イオン断片化ユニットの群から選択される少なくとも1つのユニットとを備え、イオン移送ユニットは、差動電位によるイオン移送ユニット、ステップ波、Sレンズ、イオンミラー、イオンファイトチューブ、イオントラップ、例えば四重極の多極、例えばダイレクトソースカップリング(例えば、加熱キャピラリ)の非接触イオン移送システム、および磁気セクタ移送からなる群から選択され、イオン断片化ユニットは、衝突誘起解離(CID)、電子捕獲解離(ECD)、電子移動解離(ETD)、光子解離、イオントラップ、オービトラップ、飛行時間(TOF)、例えば二重集束セクタフィールド(DFS)の磁気セクタ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0321】
本発明の第1の態様の実施形態では、少なくとも1つの目的の分析物は、10秒未満、好ましくは9秒未満または8秒未満または7秒未満または6秒未満または5秒未満または4秒未満または4秒未満または3秒未満または2秒未満または1秒未満の前記臨床診断システムに存在する。
【0322】
本発明の第1の態様の実施形態では、臨床診断システムは、紙スプレーまたは固相抽出(SPE)を含まない。好ましくは、少なくとも1つの目的の分析物の少なくとも1つのイオンまたは複数のイオンを発生させるためのイオン発生ステーションは、紙スプレーまたはSPEがないか、または含まない。
【0323】
本発明の第1の態様の実施形態では、臨床診断システムは、少なくとも1つの同軸移動セルとそれに続く円錐同軸イオンチャネルとを備えるイオン移動度分離器を含まない。
【0324】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン移動度ユニットは、プリント回路基板、好ましくはプリント回路基板のスタックを備える。
【0325】
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン移動度ユニットは、プリント回路基板を含まず、好ましくはプリント回路基板のスタックを含まない。
【0326】
本発明の第1の態様の実施形態では、臨床診断システムは、イオン源であって、好ましくは前記源が、一般に約1mBarから1Barのガス圧においてガスによって充填される、イオン源と、
フロントキャップ電極と、それに続くフロントメッシュと、それに続くバックメッシュとから形成されたイオンゲートであって、メッシュが、互いにほぼ平行であり、メッシュセルサイズに匹敵する距離で離間されている、イオンゲートと、
メッシュ間に接続された高周波(RF)発生器と、
キャップ電極およびメッシュに接続されたスイッチングまたは調整可能なDC信号と、
好ましくは一般に約(1から30)mBarまたはその間の圧力においてガスによって満たされたイオンドリフト空間と、
イオン検出器と
を備えない。
【0327】
本発明の第1の態様の実施形態では、臨床診断システムは、ガスクロマトグラフィ(GC)を含まない。
【0328】
本発明の第1の態様の実施形態では、臨床診断システムは、気相中の正に荷電したイオンと負に荷電したイオンとを分離しない。
【0329】
本発明の第1の態様の実施形態では、臨床診断システムは、環状電極を備えない。
【0330】
本発明の第1の態様の実施形態では、臨床診断システムは、好ましくは実質的に(1から100)mBarまたはその間の圧力においてガスによって充填されたイオンドリフト空間を備えない。
【0331】
本発明の第1の態様の実施形態では、臨床診断システムは、イオンドリフト管を備えない。
【0332】
第2の態様では、本発明は、生物学的試料中の少なくとも1つの目的の分析物の存在またはレベルを決定するための本発明の第1の態様の臨床診断システムの使用に関する。
【0333】
第3の態様では、本発明は、生物学的試料中の少なくとも1つの目的の分析物の存在またはレベルを決定するための方法であって、
A)生物学的試料を調製すること、好ましくは少なくとも1つの目的の分析物を含む生物学的試料を自動調製することと、
B)少なくとも1つの目的の分析物からイオンを発生させることと、
C)1つまたは複数の電極に印加される電場を使用してイオン移動度を介して1つまたは複数のイオンを分離することと、
D)質量分析を使用して少なくとも1つの目的の分析物の少なくとも1つのイオンを検出および決定することと
を含む、方法に関する。
【0334】
本発明の第3の態様の実施形態では、内部標準物は、好ましくはステップ(A)において添加され、内部標準物は、好ましくは同位体標識されている。
【0335】
本発明の第3の態様の実施形態では、前記方法は、本発明の第1の態様にかかる臨床診断システムにおいて実行される。
【0336】
第4の態様では、本発明は、本発明の第3の態様の方法を実行するのに適したキットであって、
-好ましくは前処理を実行するための試薬と、
-濃縮を実行するための磁性、常磁性または超常磁性ビーズと、
-任意に、好ましくは同位体標識された内部標準物と
を備える、キットに関する。
【0337】
第5の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の臨床診断システムおよび/または本発明の第3の態様の方法におけるキットの使用に関する。
【0338】
さらなる実施形態では、本発明は、以下の態様に関する:
1.臨床診断システムであって、
-少なくとも1つの目的の分析物を含む生物学的試料の自動調製のための試料調製ステーションと、
-少なくとも1つの目的の分析物の少なくとも1つのイオンまたは複数のイオンを発生させるためのイオン発生ステーションと、
-少なくとも1つの目的の分析物の選択性を高めるための少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションまたはそれ以上であって、少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションが、それぞれのイオンサイズに基づいてイオンを分離し、1つまたは複数の電極に印加される電気および/または無線周波数場(AC/DCおよび/またはRF)を使用してイオン移動度に関してイオンを分離するためのイオン移動度ユニットを備える、少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションと、
-少なくとも1つの目的の分析物の少なくとも1つのイオンを検出するためのイオン検出ステーションと、
-イオン検出システムから少なくとも受信された少なくとも1つの電子信号を処理および/または評価するためのデータ処理ステーションと
を備える、臨床診断システム。
【0339】
2.前記臨床診断システムが、少なくとも1つの目的の分析物の存在またはレベルを決定するためのものである、態様1に記載の臨床診断システム。
【0340】
3.試料調製ステーション、イオン発生ステーション、少なくとも1つの選択性エンハンサーステーション、イオン検出ステーションおよびデータ処理ステーションが互いに接続されている、態様1または2に記載の臨床診断システム。
【0341】
4.生物学的試料がランダム過剰モードで調製され、かつ/または臨床診断システムが自動化されている、態様1から3のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0342】
5.少なくとも1つの目的の分析物の1つまたは複数のイオンが気体状態にある、態様1から4のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0343】
6.少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションが、
-イオン分離能力を有しない少なくとも1つのイオン貯蔵ユニットおよび/またはイオン移送ユニットと、
-m/z(質量電荷比)に基づいてイオンを分離するイオン選択ユニットと
を備える、態様1から5のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0344】
7.生物学的試料が、個体からの血清、血漿、組織、液体、呼気、汗、痰および全血試料からなる群から選択される患者試料から得られる、態様1から6のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0345】
8.個体が哺乳動物、好ましくはヒトである、態様1から7のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0346】
9.少なくとも1つの目的の分析物が小分子である、態様1から8のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0347】
10.少なくとも1つの目的の分析物が、m/z=2000未満、好ましくはm/z=1000未満のモル質量を有する、態様1から9のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0348】
11.少なくとも1つの目的の分析物が、2000未満のm/zを有する高分子ではなく、好ましくは、少なくとも1つの目的の分析物が、以下:テストステロン、ビタミンD、シクロスポリンA、リドカイン、シロリムス、アベータ42の群から選択される、態様1から10のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0349】
12.少なくとも1つの目的の分析物が、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、代謝産物、ホルモン、脂肪酸、脂質、炭水化物、ステロイド、ケトステロイド、セコステロイド、別の分子の特定の修飾に特徴的な分子、生物によって内在化された物質、そのような物質の代謝産物およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様1から11のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0350】
13.生物学的試料が、少なくとも1つの目的の分析物およびマトリックスを含み、好ましくは、マトリックスが、以下の成分:無機塩、有機塩成分、タンパク質、溶媒ポリマー、小分子またはそれらの組み合わせを含む、態様1から12のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0351】
14.マトリックスが、少なくとも試料調製ステーションにおいて少なくとも1つの目的の分析物から分離される、態様1から13のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0352】
15.試料調製ステーションが、試料送達ユニット、試料前処理ユニット、試料分析ユニットのユニットまたはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを備える、態様1から14のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0353】
16.試料調製ステーションが、生物学的試料中の干渉マトリックス成分を除去もしくは少なくとも低減し、かつ/または生物学的試料中の目的の分析物を濃縮するためのものである、態様1から15のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0354】
17.試料送達ユニットが、試料収集および調製ならびに/または移送を備える、態様1から16のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0355】
18.試料前処理ユニットが、以下:磁性ビーズ処理ユニット、内部標準物処理ユニット、支持化合物処理ユニット、ピペッティングユニット、流体移送ユニット、反応容器移送機構ユニット、濃縮処理ユニット、溶媒蒸発ユニット、誘導体化ユニットの群から選択される少なくとも1つのユニットまたは2つ以上のユニットを備える、態様1から17のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0356】
19.試料調製ステーションが部分的もしくは完全に自動化されている、および/または臨床診断システムが部分的もしくは完全に自動化されている、態様1から18のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0357】
20.1つまたは複数のピペッティングユニットおよび/または流体移送ユニットが、流体を添加、混合および/または除去するためのものである、態様1から19のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0358】
21.反応容器移送機構ユニットが、試料または後続のプロセスステーションに送達するためのものである、態様1から20のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0359】
22.磁性ビーズ処理ユニットが、分析物および/またはマトリックス選択基を担持する磁性ビーズによって生物学的試料を処理するためのものである、態様1から21のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0360】
23.内部標準物処理ユニットが、少なくとも1つの内部標準物および/または標準添加のためのものである、態様1から22のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0361】
24.支持化合物処理ユニットが、例えば、少なくとも1つの目的の分析物を結合剤、例えばメタノールもしくはNaOHから、またはマトリックスから放出するために、またはMALDI用途のためのマトリックス、例えば2,5-ジヒドロキシベンゾエサ(DHB)を添加するために、または目的の分析物をそれぞれの誘導体化剤によって処理して分析物および/またはマトリックスの化学的および/または物理的特性を変化させるために、支持化合物またはイオン支持分子を添加するためのものである、態様1から23のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0362】
25.試料分析ユニットが、固液支持分析物濃縮ユニット、固液支持マトリックス枯渇ユニット、ガス状試料濃縮またはマトリックス分離ユニット、固体支持ユニット上の固体試料の群から選択される少なくとも1つのユニットまたは2つ以上のユニットを備える、態様1から24のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0363】
26.固液支持分析物濃縮ユニットが、固相抽出(SPE)、微粒子、液体-液体抽出(LLE)、液体クロマトグラフィ(LC)および高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)からなる群から選択される、態様1から25のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0364】
27.固液支持マトリックス枯渇ユニットが、固相抽出(SPE)、微粒子および液体-液体抽出(LLE)またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様1から26のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0365】
28.ガス状試料濃縮またはマトリックス分離ユニットが、液体および/または固体、例えば活性炭またはそれらの組み合わせによって支持された不活性ガスストリッピングまたはヘッドスペース抽出またはガス吸着である、態様1から27のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0366】
29.固体支持ユニット上の固体試料が、断面の画像化および鉱物分析である、態様1から28のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0367】
30.イオン発生ステーションが、非定常分析物イオン供給ユニットおよび/または定常分析物イオン供給ユニットを備える、態様1から29のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0368】
31.非定常分析物イオン供給ユニットが、レーザー脱離イオン化(LDI)、誘電体バリア液体流、表面プラズマイオン化およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様1から30のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0369】
32.定常分析物イオン供給ユニットが、フローインジェクション(好ましくは、ESIまたはAPCIまたはナノスプレーを使用したフローインジェクション)、ペーパースプレー、電子イオン化(EI)、マトリックス支援イオン化(MAI)、例えばプロトン移動反応(PTR)の化学イオン化(CI)、例えば63Niを使用した放射性支援イオン化、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様1から31のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0370】
33.選択性エンハンサーステーションが、イオン移動度ユニットと、以下:イオン移送ユニット、イオン断片化ユニットの群から選択される少なくとも1つのユニットとを備える、態様1から32のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0371】
34.イオン移動度ユニットが、空間移動度フィルタリングおよび/または時間移動度フィルタリングのためのものである、態様1から33のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0372】
35.イオン移送ユニットが、イオンファンネル、ステップ波、Sレンズ、イオンミラー、差動電位によるイオンファイトチューブ、イオントラップ、例えば四重極の多極、例えばダイレクトソースカップリング(例えば、加熱キャピラリ)の非接触イオン移送システム、および磁気セクタ移送からなる群から選択される、態様1から34のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0373】
36.イオン断片化ユニットが、衝突誘起解離(CID)、電子捕獲解離(ECD)、電子移動解離(ETD)、光子解離、イオントラップ、オービトラップ、飛行時間(TOF)、例えば二重焦点セクタ磁場(DFS)の磁気セクタ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様1から35のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0374】
37.イオン検出ステーションが、ファラデーカップ、マイクロチャネルプレート検出器(MCP)、光電子増倍管、オービトラップ、電子増倍管、写真用プレートの群から選択される少なくとも1つのユニットまたは2つ以上のユニットを備える、態様1から36のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0375】
38.イオン検出ステーションが質量分析計である、態様1から37のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0376】
39.イオン検出ステーションが電荷検出器または光学検出器である、態様1から38のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0377】
40.データ処理ステーションがコンピュータベースである、態様1から39のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0378】
41.データ処理ステーションが、電子信号からの結果の計算を実行する、態様1から40のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0379】
42.目的の分析物が、試料調製ステーション、次いでイオン発生ステーション、次いで少なくとも1つの選択性エンハンサーステーション、次いでイオン検出ステーション、次いでデータ処理ステーションを通過する、態様1から41のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0380】
43.前記臨床診断システムが、2つ以上、例えば2または3または4または5または6つの選択性エンハンサーステーションを備える、態様1から42のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0381】
44.前記臨床診断システムが、正確に1つの選択性エンハンサーステーションを備える、態様1から43のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0382】
45.目的の分析物が、イオン移送ユニット、次いで第1のイオン断片化ユニット、次いでイオン移動度ユニット、次いで第2のイオン断片化ユニットを通過する、態様1から44のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0383】
46.目的の分析物が、第1のイオン断片化ユニット、次いでイオン移動度ユニット、次いで第2のイオン断片化ユニットを通過する、態様1から45のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0384】
47.目的の分析物が、イオン移送ユニット、次いでイオン移動度ユニット、次いで第2のイオン断片化ユニットを通過する、態様1から46のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0385】
48.目的の分析物が、イオン移送ユニット、次いで第1のイオン断片化ユニット、次いでイオン移動度ユニットを通過する、態様1から47のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0386】
49.第1のイオン断片化ユニットが、衝突誘起解離(CID)、電子捕獲解離(ECD)、電子移動解離(ETD)、光子解離およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様1から48のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0387】
50.第2のイオン断片化ユニットが、イオントラップ、オービトラップ、飛行時間(TOF)、例えば二重集束セクタ場(DFS)の磁気セクタ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様1から49のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0388】
51.第1のイオン断片化ユニットが、イオン移動度ユニットの前に配置される、態様1から50のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0389】
52.少なくとも1つの目的の分析物が、10秒未満、好ましくは9秒未満または8秒未満または7秒未満または6秒未満または5秒未満または4秒未満または3秒未満または2秒未満または1秒未満の前記臨床診断システムまたは質量分析計またはイオン移動度ユニットに存在する、態様1から51のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0390】
53.第2のイオン断片化ユニットが、イオン移動度ユニットの後に配置される、態様1から52のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0391】
54.イオン移送ユニットが、イオン移動度ユニットの前、好ましくは第1のイオン断片化ユニットの前に配置される、態様1から53のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0392】
55.類似または等しいイオン移動度ユニットを有するイオンが、イオン移動度ユニット内で一緒にまとまる、態様1から54のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0393】
56.イオン移動度ユニットが、イオンの混合物の気相分離を実行する、態様1から55のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0394】
57.イオンが、イオン移動度ユニットにおいて1から約100,000の範囲の質量電荷比を有する、態様1から56のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0395】
58.イオンが、イオン移動度ユニットを通る約0から約60秒のドリフト時間を有する、態様1から57のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0396】
59.イオン移動度ユニットの少なくとも一部が、約10-3トールから大気圧の範囲の圧力に維持される、態様1から58のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0397】
60.イオン移動度ユニット内のイオンが、光イオン化、コロナ放電、レーザーイオン化、電子衝撃、電場イオン化、化学イオン化、およびエレクトロスプレーのうちの少なくとも1つを使用することによって形成される、態様1から59のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0398】
61.イオンが、イオン移動度ユニットの外側、好ましくはイオン発生ステーション内で形成される、態様1から60のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0399】
62.イオン移動度ユニットが、イオン移動度ユニットの一部に沿って電位勾配を形成するためにイオン移動度ユニットに印加される非一定電場を含み、それにより、他のイオン間の分離を維持しながら、同様の移動度を有するイオンがより鋭いピークに一緒にまとまる、態様1から61のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0400】
63.電位勾配がDC勾配である、態様1から62のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0401】
64.電位勾配が、装置の長さに沿って漸進的に増加または減少する、態様1から63のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0402】
65.装置の長さに沿った電位勾配が0から約5,000ボルト/mmである、態様1から64のいずれかに記載の臨床診断システム。
【0403】
66.生物学的試料中の少なくとも1つの目的の分析物の存在またはレベルを決定するための態様1から65のいずれか一項に記載の臨床診断システムの使用。
【0404】
67.生物学的試料中の少なくとも1つの目的の分析物の存在またはレベルを決定するための方法であって、
A)生物学的試料を調製すること、好ましくは少なくとも1つの目的の分析物を含む生物学的試料を自動調製することと、
B)少なくとも1つの目的の分析物からイオンを発生させることと、
C)1つまたは複数の電極に印加される電場を使用してイオン移動度を介して1つまたは複数のイオンを分離することと、
D)質量分析を使用して少なくとも1つの目的の分析物の少なくとも1つのイオンを検出および決定することと
を含む、方法。
【0405】
68.内部標準物が、好ましくはステップ(A)において添加され、内部標準物が、好ましくは同位体標識されている、態様67に記載の方法。
【0406】
69.前記方法がコンピュータ実装される、態様67または68に記載の方法。
【0407】
70.前記方法が、態様1から65に記載の臨床診断システムにおいて実行される、態様67または68または69に記載の方法。
【0408】
71.態様67から70のいずれか一項に記載の方法を実行するのに適したキットであって、
-好ましくは前処理を実行するための試薬と、
-濃縮を実行するための磁性、常磁性または超常磁性ビーズと、
-任意に、好ましくは同位体標識された内部標準物と
を備える、キット。
【0409】
72.態様1から65のいずれか一項に記載の臨床診断システムおよび/または態様67から70のいずれか一項に記載の方法におけるキットの使用。
【実施例】
【0410】
以下の実施例は、本明細書で特許請求される発明を例示するために提供され、限定するものではない。
【0411】
図1は、臨床診断システム100および臨床診断方法の概略図の例を示している。臨床診断システム100は、少なくとも1つの目的の分析物を含む生物学的試料9の自動調製のための試料調製ステーション1を備える。試料調製ステーション1は、少なくとも1つの目的の分析物の少なくとも1つのイオンまたは複数のイオンを発生させるためにイオン発生ステーション2に直接結合される6。イオン発生ステーション2は、選択性エンハンサーステーション3に直接結合される6。選択性エンハンサーステーション3は、少なくとも1つの目的の分析物の選択性を向上させるためのものである。選択性エンハンサーステーション3は、それぞれのイオンサイズに基づいてイオンを分離するが、これは、1つまたは複数の電極に印加される電場および/または無線周波数場(AC/DCおよび/またはRF)を使用してイオン移動度に関してイオンを分離するためのイオン移動度ユニット31を備える。選択性エンハンサーステーション3は、少なくとも1つの目的の分析物の少なくとも1つのイオンを検出するためにイオン検出ステーション4に直接結合される6。イオン検出ステーション4は、イオン検出ステーション4から少なくとも受信された少なくとも1つの電子信号を処理および/または評価するために、データ処理ステーション5に直接結合される6。
【0412】
好ましくは、臨床診断システム100は、自動化されている、および/またはランダムアクセスモードにある。
【0413】
好ましくは、臨床診断システム100は、以下の実施形態Eに従って配置される:
【表1】
【0414】
表1に記載されている数字は、参照のリストに記載されているそれぞれのステーションおよび/またはユニットの参照を表す。
【0415】
数字はコンマで区切られており、これは、コンマで区切られた隣接する数字が、結合された隣接するステーションおよび/またはユニットであることを意味する。例えば、以下のとおりである:
【0416】
実施形態1(E1)
実施形態1(E1)の臨床診断システム100は、以下の配置を有する:
11,12,122,131,221,32,31,331,327,46,5
【0417】
試料送達ユニット11、次いで試料前処理ユニット12、次いで内部標準物処理ユニット122、次いで固液支持分析物濃縮ユニット131、次いでフローインジェクション(好ましくはESIまたはAPCIまたはナノスプレーを使用したフローインジェクション)221、次いでイオン移送ユニット32、次いでイオン移動度ユニット31、次いで衝突誘起解離(CID)331、次いで例えば四重極327の多極、次いで電子増倍管46、次いでデータ処理ステーション5。
【0418】
E1および/またはE2の利点は、分析物の分離、したがってマトリックスの減少および同重体分離がワークフロー自体によって実行されるだけではないことである(例えば、磁性微粒子および/または液体抽出)。イオン移動度ユニット31は、選択性エンハンサーとして実行する。このエンハンサーのタスクは、以前に同等のワークフロー(例えば、同重体分離およびマトリックス還元のためのHPLCによる方法)で行われた。さらにまた、イオン移動度ユニット31をこれらのワークフローに追加し、HPLCを置き換えることは、イオン移動度ユニット31が分析物信号を時間依存的に1つのピーク形状の信号に圧縮し、したがって分析物時間依存性をさらに濃縮するという事実のためにさらに有利である。
【0419】
E3および/またはE4の利点は、表面上のスポットからの固体支持型分析の場合、HPLC分離が適用されず、したがってイオン移動度ユニットが、イオン気相中での同重体分離およびマトリックス枯渇を有する可能性のために価値を付加していることである。
【0420】
E5の利点は、イオン移動度ユニット31を有することにより、GC(ガスクロマトグラフィ)の温度依存分離を消失させることができることである。したがって、不要なマトリックス成分の等重分離を行うために加熱または冷却用のオーブンは必要とされない。
【0421】
E6の利点は、紙スプレーイオン化による紙組織上の直接試料分析が、それぞれの紙ストリップ上のマトリックス減少または分析物濃縮のための任意の活性領域を消失させることができることである。したがって、分離は、イオン移動度ユニット31を用いて実行される。
【0422】
E7の利点は、プラズマイオン化による表面イオン化が組織または生体に直接使用され得ることである。この表面イオン化は、生体系を損傷させずに表面分子を緩やかにイオン化する低温プラズマとして直接使用され得、例えば手術中または細胞懸濁液上で質量分析によってリアルタイムでさらに分析され得る。
【0423】
図2は、臨床診断システム100および臨床診断方法の概略図の例を示している。
図2のこの例では、
図1の臨床診断システム100と比較して、選択性エンハンサーステーション3を臨床診断システム100のN倍部分とすることができることが示されており、ここで、Nは、例えば2または3または4または5または6である。したがって、少なくとも1つの目的の分析物の選択性の向上を高めることができる。このシステムの利点は、異なる断片化機構、例えばCIDとETDとの組み合わせ、およびそれらのそれぞれのイオン移動度による特定の断片の選択の間である。したがって、複数の選択ステーションが作られる場合、システムの選択性は向上する。
【0424】
図3は、試料調製ステーション1の概略図の例を示している。試料調製ステーション1は、試料送達ユニット11と、試料前処理ユニット12と、試料分析ユニット13とを備える。試料前処理ユニット12は、試料送達ユニット11と試料分析ユニット13との間に配置される。試料分析ユニット13および任意に試料調製ステーション1は、隣接するステーションおよび/またはユニット8に結合され得る。試料送達ユニット11は、例えば試料データの調製および/または移送を含む試料の収集および調製を備える。このステーションでは、試料は、ピペッタによって対処されるように調製され、例えば、水平などに配置され、続いて、必要に応じてソートおよび加熱または冷却または振とうによってメタデータ読み取り(例えば、バーコードリーダ)が行われる。試料前処理ユニット12は、定量分析、例えば内部標準物のピペッティングまたはpH値の調整のために分析物を調製するためのものである。さらなる結合タンパク質またはタンパク質沈殿は、支持試薬を添加することによって達成され得る。加熱/冷却または蒸発ステップは、試料調製ユニット内で実行され得る。試料前処理ユニット12は、以下:磁性ビーズ処理ユニット121、内部標準物処理ユニット122、支持化合物処理ユニット123、ピペッティングユニット124、流体移送ユニット125、反応容器移送機構ユニット126、濃縮処理ユニット127、溶媒蒸発ユニット128の群から選択される少なくとも1つのユニットまたは複数のユニットを備える。試料前処理ユニット12に隣接して、試料分析ユニット13が配置される。試料分析ユニット13は、目的の標的分子(アナライト)からイオンを発生させるためのものである。さらに、この分析物を望ましくないマトリックスから分離し、m/z値またはイオン移動度のいずれかによって選択性を高める。選択的に高められた分析物の検出は、イオンの検出によって行われる。試料分析ユニット13は、固液支持分析物濃縮ユニット131、固液支持マトリックス枯渇ユニット132、ガス状試料濃縮またはマトリックス分離ユニット133、固体支持ユニット134上の固体試料の群から選択される少なくとも1つのユニットまたは複数のユニットまたはユニットの組み合わせを備える。
【0425】
図4は、少なくとも1つの選択性エンハンサーステーション3の概略図の例を示している。N=1の場合、正確に1つの選択性エンハンサーステーション3が示される。N=2または3の場合、2つまたは3つの選択性エンハンサーステーションが例示される。選択性エンハンサーステーションは、同じまたは異なるユニットを有していてもよく、互いに隣接して結合される。少なくとも1つの選択性エンハンサーステーション3は、それぞれのイオンサイズに基づいてイオンを分離する。少なくとも1つの選択性エンハンサーステーションは、1つまたは複数の電極に印加される電気および/または無線周波数場(AC/DCおよび/またはRF)を使用してイオン移動度に関してイオンを分離するためのイオン移動度ユニット31を備える。イオン移動度ユニット31は、2つのイオン断片化ユニット33の間に直接(MおよびZ>0の場合)、またはイオン移送ユニット32(Z=0の場合)とイオン検出ステーション4との間に直接(M=0の場合)配置される。イオン移送ユニット32は、イオンファンネル、ステップ波、Sレンズ、イオンミラー、差動電位によるイオンファイトチューブ、イオントラップ、例えば四重極の多極、非接触イオン移送システム、および磁気セクタ移送からなる群から選択される。イオン断片化ユニット33は、衝突誘起解離(CID)、電子捕獲解離(ECD)、電子移動解離(ETD)、光子解離、イオントラップ、オービトラップ、飛行時間(TOF)、例えば二重集束セクタフィールド(DFS)の磁気セクタからなる群から選択される。
【0426】
図5は、少なくとも1つの選択性エンハンサーステーション3の概略図の例を示している。ここで、イオン移動度ユニット31は、イオン移送ユニット32と少なくとも1つのイオン断片化ユニット33(M>0の場合)またはイオン検出ステーション8、4(M=0の場合)との間に直接配置される。
【0427】
図6は、少なくとも1つの選択性エンハンサーステーション3の概略図の例を示している。ここで、イオン移動度ユニット31は、イオン移送ユニット32(Z=0の場合)または少なくとも1つのイオン断片化ユニット33(Z>0の場合)とイオン検出ステーション8、4との間に直接配置される。少なくとも1つのイオン断片化ユニット33は、イオン移動度ユニット31とイオン移送ユニット32との間に配置され得る。
【0428】
図7は、臨床診断システム100および臨床診断方法の概略図の例を示している。
図7のこの臨床診断システム100は、
図1の臨床診断システム100と比較して、
図4で説明した試料調製ステーション1のユニット(試料送達ユニット11、試料前処理ユニット12、試料分析ユニット13)および選択性エンハンサーステーション3のユニットを示している。
【0429】
図8は、臨床診断システム100および臨床診断方法の概略図の例を示している。ここでは、各ステーションおよびユニットの配置が示されている。
【0430】
好ましくは、以下の実施形態AからC、臨床診断システム100が記載される。
【0431】
A)ナノESIによる試料調製後の試料の直接イオン化
臨床診断システム100は、以下のユニットおよび/またはステーションからなるか、またはそれらを備える:11,12,121,122,123,124,13,221,323,31,322,327,331,327,43,5
【0432】
試料は、内部標準物をピペッティングすることによってさらに処理されるヒト体液であることによってワークフローに入り、その後、磁性ビーズワークフロー、磁力によって支持された複数の固体液体分離および洗浄ステップが続く。最終洗浄ステップの後、分析物がロードされた磁性粒子は、支持液によって溶出され、続いて、直接ナノESIイオン化およびSレンズによるイオン移動度ユニットへのイオン移動が行われ、イオン移動度ユニットは、等塩基性成分を分離し、目的の分析物を通過し、第1の四重極によってm/zが分離され、CIDによって断片化され、第2の四重極によってm/zが分離された断片を得る。イオン検出器は、分析物および内部標準物信号を検出し、それらの信号をコンピュータによって処理して、最終的に絶対的な定量結果で終了する。
【0433】
質量分析計の外部の時間は、このワークフローでは約10s~1000sであり、質量分析計の内部では約0.1s~10sである。
【0434】
B)マトリックス支援レーザーイオン化によるイオン化
臨床診断システム100は、以下のユニットおよび/またはステーションからなるか、またはそれらを備える:11,12,121,122,123,124,128,134,211,322,31,322,327,331,327,43,5
【0435】
試料は、内部標準物をピペッティングすることによってさらに処理されるヒト体液であることによってワークフローに入り、その後、磁性ビーズワークフロー、磁力によって支持された複数の固体液体分離および洗浄ステップが続く。最終洗浄ステップの後、分析物がロードされた磁性粒子は、支持液によって溶出され、その後、LDI標的上にピペッティングおよび乾燥され、その後、レーザー照射が行われ、イオン移動度ユニットへとイオンファンネルを介して質量分析計に導入され、イオン移動度ユニットは、等塩基性成分を分離し、目的の分析物を通過し、第1の四重極によってm/zが分離され、CIDによって断片化され、第2の四重極によってm/zが分離された断片を得る。イオン検出器は、分析物および内部標準物信号を検出し、それらの信号をコンピュータによって処理して、最終的に絶対的な定量結果で終了する。
【0436】
質量分析計の外部の時間は、このワークフローでは約10s~1000sであり、質量分析計の内部では約0.1s~10sである。
【0437】
C)マトリックス支援イオン化によるイオン化
臨床診断システム100は、以下のユニットおよび/またはステーションからなるか、またはそれらを備える:11,12,121,122,123,124,128,134,224,328,31,322,327,331,327,43,5
【0438】
試料は、内部標準物をピペッティングすることによってさらに処理されるヒト体液であることによってワークフローに入り、その後、磁性ビーズワークフロー、磁力によって支持された複数の固体液体分離および洗浄ステップが続く。最終洗浄ステップの後、分析物がロードされた磁性粒子は、支持液および支持固体、例えばマトリックス化合物の添加によって溶出され、続いてガラスターゲット上にピペッティングおよび乾燥され、続いて非接触イオン移送システム(328、直接イオン接触ユニット)、例えば加熱された毛細管が質量分析計に導入され、これは、等塩基性成分を分離し、目的の分析物を通過し、これは、第1の四重極によって分離され、CIDによって断片化され、第2の四重極によってm/zによって分離された断片を得る。イオン検出器は、分析物および内部標準物信号を検出し、それらの信号をコンピュータによって処理して、最終的に絶対的な定量結果で終了する。
【0439】
質量分析計の外部の時間は、このワークフローでは約10s~1000sであり、質量分析計の内部では約0.1s~10sである。
【0440】
引き続き
図1を参照すると、臨床診断方法も示されている。本方法は、目的の分析物を含む生物学的試料9を自動的に調製し、調製された試料を、ガス状である少なくとも1つの目的の分析物の少なくとも1つのイオンまたは複数のイオンを発生させるためのイオン発生ステーション2に入力することを含む。次いで、イオン移動度ユニット31内の1つまたは複数の電極に印加された電場を使用して、イオン移動度を介して1つのイオンまたは複数のイオンが分離される。次いで、少なくとも1つの目的の分析物の少なくとも1つのイオンが、質量分析を使用して検出または決定される。好ましくは、臨床診断方法および臨床診断システム100は、クロマトグラフィユニット、好ましくは液体クロマトグラフィ(LC)ユニットまたはHPLCユニットを含まない。
【0441】
図9は、試料の種類および/または試料中の目的の分析物に応じて、臨床診断方法の要素、特に可能なワークフロー経路の組み合わせを概略的に表している。
【0442】
例えば、試料の種類、例えば全血、血漿、血清、尿に応じて、試料は、その種類の試料に最も適したいくつかの事前定義された試料種類依存前処理ワークフロー(パートI)のうちの1つに割り当てられ得る。
【0443】
また、目的の分析物、例えば同様の化学構造または特性を有する個々の分析物または分析物のクラスに応じて、パートIの試料種類依存(前)処理後に、その種類の分析物(パートII)に最も適した、例えばマトリックス枯渇法、分析物濃縮法、または双方の組み合わせに基づいて、試料がいくつかの事前定義された分析物依存性試料調製ワークフローの1つに割り当てられ得る。
【0444】
目的の分析物、調製された試料は、好ましくはガス状のイオンを発生させるための特定のイオン発生ステーション2に割り当てられ得る(パートIII)。
【0445】
また、目的の分析物に応じて、調製された試料は、その種類の分析物を分離またはイオン検出ステーション4に移送するための特定の選択性エンハンサーステーション3に割り当てられ得る(パートIVおよびV)。
【0446】
最後に、質量分析に続いて、データ評価(パートVI)、すなわち各試料についての目的の各分析物の同定および場合によっては定量が行われ得る。
【0447】
特に、本明細書に記載の方法は、異なる化学的特性を示すいくつかの異なる分析物を短時間で測定しなければならないハイスループットMSセットアップを用いて、ランダムアクセスモードで実行される。
【0448】
ハイスループットMS設定は、少なくとも10試料/時間、好ましくは100試料/時間または100試料/時間超、例えば120または130または140または150または160または170または180または190または200または300または400または500または600試料/時間を測定できることを意味することができる。
【0449】
短時間とは、1つの試料の実行が360秒、好ましくは超過360秒または360秒を超えて終了することを意味することができる。
【0450】
図10は、
図9の臨床診断方法のパートI、特に試料前処理部をより詳細に表す例示的なフローチャートである。コントローラは、最初に、事前定義されたワークフローを試料Sに割り当てるかどうか、または品質管理(QC)もしくは較正(Cal)を実行する必要があるかどうかを決定する。QCおよび/または較正ワークフローは、いくつかのステップの可能な追加または削除を伴って、試料ワークフローのうちの1つと同じステップの少なくともいくつかに従ってもよい。この例の目的のために、試料の種類に応じた前処理(PT)ワークフローのみを説明する。
【0451】
例えば、試料が全血試料である場合、それは、2つの事前定義された試料PTワークフローのうちの1つに割り当てられ、双方とも内部標準物(IS)および溶血試薬(HR)の添加と、それに続く事前定義されたインキュベーション期間(Inc)を含み、2つのワークフローの差は、内部標準物(IS)および溶血試薬(HR)が添加される順序である。内部標準物(IS)は、典型的には、例えば同位体標識されていてもよい既知量の同じ目的の分析物である。これは、相対比較を可能にし、分析物が質量分析計に到達したときに、試料中に存在する目的の分析物の明確な同定および定量を可能にし得る。
【0452】
試料が尿試料である場合、それは他の2つの事前定義された試料PTワークフローのうちの1つに割り当てられ、双方とも内部標準物(IS)および酵素試薬(E)の添加とそれに続く事前定義されたインキュベーション期間(Inc)を含み、2つのワークフローの差は、内部標準物(IS)および酵素試薬(HR)が添加される順序である。酵素試薬は、典型的には、グルクロニド断片化もしくはタンパク質断片化、または分析物もしくはマトリックスの任意の前処理に使用される試薬である。
【0453】
試料が血漿または血清である場合、それは、内部標準物(IS)の添加とそれに続く事前定義されたインキュベーション時間(Inc)のみを含む別の事前定義されたPTワークフローに割り当てられる。任意に、溶解試薬(図示せず)の添加をさらに含んでもよい。
【0454】
上記の試料種類依存性PTワークフローの全ては、希釈液(Dil)の添加を含み得る。しかしながら、希釈液(Dil)の添加はまた、上記の試料種類依存性PTワークフローのいずれか1つまたは複数に特に関連していてもよい。
【0455】
図11は、
図9の臨床診断方法のパートIIをより詳細に表す例示的なフローチャートであり、
図10のフローチャートの続きである。特に、コントローラは、各前処理された試料を、前処理された試料中の目的の分析物に応じて、事前定義された分析物依存性試料調製ワークフローの1つに割り当てる。
【0456】
例えば、前処理された試料は、分析物濃縮ワークフロー、マトリックス枯渇ワークフロー、またはマトリックス枯渇ワークフローを経た後、分析物濃縮ワークフローを経ることができる。
【0457】
分析物濃縮ワークフローは、分析物選択基を担持する磁性ビーズ(MB)を前処理された試料に添加し、続いて目的の分析物を捕捉するための事前定義されたインキュベーション期間(Inc)を含み、磁性ビーズ(MB)の添加は、撹拌または混合を含み得る。目的の分析物に応じて、磁性ビーズ(MB)の添加の前に、溶解試薬(LR)を添加し、続いて事前定義されたインキュベーション期間(Inc)が続いてもよい。溶解試薬(LR)は、赤血球の溶解または結合タンパク質からの放出または非特異的結合からの放出のための試薬とすることができる。磁性ビーズ(MB)とのインキュベーション後、ワークフローは、洗浄ステップ(W1)を含み、分析物に応じて、場合によっては1つまたは複数の追加の洗浄ステップ(W2)を含む。洗浄ステップ(W1、W2)は、磁石または電磁石を備える磁性ビーズ処理ユニットによる磁性ビーズ分離(B sep)、液体の吸引(Asp.)、洗浄緩衝液(W.Buffer)の添加、磁性ビーズの再懸濁(Res.)、別の磁性ビーズ分離ステップ(B Sep)および液体の別の吸引(Asp.)を含む一連のステップを含む。さらに、洗浄ステップは、洗浄サイクルの容量および数または組み合わせとは別に、溶媒の種類(水/有機/塩/pH)の点で異なってもよい。
【0458】
最後の洗浄ステップ(W1、W2)に続いて、溶出試薬(ER)を添加し、続いて磁性ビーズを再懸濁し(Res.)、目的の分析物を磁性ビーズから放出するための事前定義されたインキュベーション期間(Inc.)が続く。次いで、結合を含まない磁性ビーズを分離し(B Sep.)、目的の分析物を含む上清をLCステーションに直接移すか、希釈液(Dil)の添加による希釈ステップの後に移すことができる。例えば溶媒の種類(水/有機/塩/pH)および容量を変えることによって、異なる溶出手順/試薬もまた、使用され得る。
【0459】
マトリックス枯渇ワークフローは、マトリックス選択基(MB)および沈殿試薬(PR)を有する磁性ビーズを前処理された試料に添加し、続いてマトリックス成分を捕捉するための事前定義されたインキュベーション期間(Inc.)を前処理された試料に添加し、1つまたは複数の目的の分析物を上清に残し、続いてビーズ分離(B Sep.)し、目的の1つまたは複数の分析物を含む上清を直接または希釈(Dil)後にLCステーションに移すことを含む。
【0460】
目的の分析物に応じて、マトリックス枯渇ワークフローから導出された上清は、分析物濃縮ワークフローを経て、それによって組み合わされた試料調製ワークフローを経ることができる。
【0461】
パートIIIからVIは、
図10および
図11の臨床診断方法のパートIおよびIIを表す例示的なフローチャートの後に継続され得る。さらに、特定のユニットのAC/DCおよびRF値、ガス流および/または温度を制御するためのコンピュータユニットとすることができるパートVIIに続くことができる。制御は、特定のユニットのAC/DCおよびRF値、ガス流および/または温度のフィードバックによって双方向に制御される。制御は、駆動ユニットの動作時間に応じて、ms(ミリ秒)から数時間以内にトリガされ得る。
【0462】
図12Aおよび
図12Bは、マスターテーブルまたはメモリにおいて事前定義され得る分析物固有のワークフロー経路の2つの一般的な例を提供し、それぞれが一般的に選択可能なオプションの中のオプションの選択を含む(簡略化のために最も関連性の高いオプションのみが示されている)。これらの一般的に選択可能なオプションは、例えば、内部標準物(IS)の添加またはISの非添加(ISなし);酵素試薬(E)または2つの溶解試薬(LR#1、LR#2)のうちの1つの添加;濃縮または枯渇ワークフロー;異なる種類の磁性ビーズが分析物の群に対して選択的であるか、または選択された分析物に対して特異的である(例えば、極性、非極性、荷電、非荷電)、1つの種類の磁性ビーズ(MB A、MB B、MB C、MB D);異なる種類の洗浄液(水/有機/塩/pH)、容量、洗浄サイクルの数または組み合わせを含む異なる事前定義された洗浄手順(W Nr.-1、W Nr.-2、W Nr.-3、W Nr.-4)のうちの1つが可能である、LLE(液体-液体抽出)またはSPE(液相抽出)のような他の種類の試料前濃縮;イオン化の種類(イオン化1、イオン化2、イオン化3、イオン化4、例えば、MAI、ペーパースプレー、MALDI、直接注入ESI、ナノESIなど);異なる種類の溶出液(水/有機/塩/pH)または体積を含む、異なる事前定義された溶出手順(溶出Nr.-1、溶出Nr.-2、溶出Nr.-3、溶出Nr.-4)のうちの1つ;イオン移動度の種類(異なるAC/DCおよびRFならびにガス構成におけるガス支持ありまたはなし);MS MRM5、MS MRM6、MS MRM7、MS MRM8、例えばイオントラップまたは多極、例えばイオンガイドを用いた事前フィルタリングによるMS選択として簡単に要約される、異なる事前定義された質量分析取得手順(イオン化、イオン移動、イオン選択および断片化、検出およびデータ取得の設定)のうちの1つである。イオン移動度は、IMS 1、IMS 2、IMS 3、IMS 4として簡単に要約される。
【0463】
目的の分析物が例えばテストステロンである場合、テストステロン特異的ワークフローは、内部標準物(IS)の添加、溶解試薬(LR Nr.-1)の添加、濃縮ワークフロー、テストステロン選択性磁性ビーズ(MB A)の添加、事前定義された洗浄手順の1つ(W Nr.-2)、事前定義された溶出手順の1つ(溶出Nr.-2)、ナノESIによるイオン化3、MS選択Nr.3(イオントラップ)およびイオン移動度Nr.3(例えば、無損失イオン操作(SLIM)のための構造)の使用、ならびに事前定義された質量分析取得手順のうちの1つ(MS MRM 7)を含む。
【0464】
目的の分析物が例えばベンゾジアゼピンである場合、ベンゾジアゼピン特異的ワークフローは、内部標準物(IS)の添加、酵素試薬(E)の添加、濃縮ワークフロー、試料媒体(例えば酢酸エチル)への非混合溶媒の添加、ピペッティングによる液体分離ステップ、SALDIのための表面上の乾燥ステップ、SALDIイオン化、多極によるMS選択、補助ガス添加を伴うSLIMによるIMSおよび事前定義された質量分析取得手順(MS MRM 7)のうちの1つを含む。
【0465】
同様に、ワークフロー経路は、任意の目的の試料/分析物または目的の分析物の群に対して事前定義されてもよい。
【0466】
開示された実施形態の変更および変形は、上記の説明に照らして確かに可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、上記の例に具体的に記載されている以外の方法で本発明が実施され得ることを理解されたい。
【0467】
図13は、(a)対応するCCS値(REF)を用いた分析に使用される3つの同重体五糖(分岐マンノペンタオース、セロペンタオース、およびマルトペンタオース)の構造、(b)重ね合わされた個々の五糖モビリグラムのSLIM-MS結合モビリグラム、および(c)先行技術にかかる3つの五糖の混合物のSLIM-MSモビリグラムを示している。この比較例は、3つの同重体五糖の分離がSLIM-MSによって行われ得ることを示している。この特定の場合において、分析物は、ナノESIデバイスに注入された。しかしながら、本発明とは対照的に、この特定の比較用途は、抽出および/または分析前ステップ、例えばマトリックスからの多糖の分離の中心的要素を気にしない。さらにまた、概説された比較用途は、定性的にのみであり、定量的に必要なステップ、例えば同位体標識内部標準物の使用およびピペッティングを気にしない。多糖の例では、偽分子イオン[M+Na]は、この偽分子イオンがさらなるMS/MS手順内で十分に断片化されないという事実を担持しないSLIM装置による分離のために選択されている。したがって、SLIMおよび断片化ユニットを使用した定量的評価は、概説した比較例では予測されない。これとは対照的に、本発明者らは、驚くべきことに、生物学的試料の目的の分析物が、本発明の第1の態様にかかる臨床診断システム100によって測定される定性的および/または定量的とすることができることを見出した。好ましくは、臨床診断システム100は、自動化されており、および/または生物学的試料9は、ランダム過剰モードで調製される。
【0468】
本特許出願は、欧州特許出願第20216371.3号の優先権を主張し、この欧州特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0469】
100 臨床診断システム
1 試料調製ステーション
11 試料送達ユニット
12 試料前処理ユニット
121 磁性ビーズ処理ユニット
122 内部標準物処理ユニット
123 支持化合物処理ユニット
124 ピペッティングユニット
125 流体移送ユニット
126 反応容器移送機構ユニット
127 濃縮処理ユニット
128 溶媒蒸発ユニット
13 試料分析ユニット
131 固液支持分析物濃縮ユニット
132 固液支持マトリックス枯渇ユニット
133 ガス状試料濃縮またはマトリックス分離ユニット
134 固体支持ユニット上の固体試料
2 イオン発生ステーション
21 非定常分析物イオン供給ユニット
211 レーザー脱離イオン化(LDI)
212 誘電体バリア液体流
213 表面プラズマイオン化
22 定常分析物イオン供給ユニット
221 フローインジェクション(好ましくはESIまたはAPCIまたはナノスプレーを使用したフローインジェクション)
222 紙スプレー
223 電子イオン化(EI)
224 マトリックス支援イオン化(MAI)
225 例えばプロトン移動反応(PTR)の化学イオン化(CI)
226 例えば63Niを使用した放射性支援イオン化
3 少なくとも1つの選択性エンハンサーステーション
31 イオン移動度ユニット
32 イオン移送ユニット
321 イオンファンネル
322 ステップ波
323 Sレンズ
324 イオンミラー
325 差動電位によるイオンファイトチューブ
326 イオントラップ
327 例えば四重極の多極
328 非接触イオン移送システム(例えば、加熱キャピラリ)
329 磁気セクタ移送
33 少なくとも1つのイオン断片化ユニット
331 衝突誘起解離(CID)
332 電子捕獲解離(ECD)
333 電子移動解離(ETD)
334 光子解離
335 イオントラップ
336 オービトラップ
337 飛行時間(TOF)
338 例えば二重集束セクタ磁場(DFS)の磁気セクタ
4 イオン検出ステーション
41 ファラデーカップ
42 マイクロチャネルプレート検出器(MCP)
43 光電子増倍管
45 オービトラップ
46 電子増倍体
47 写真用プレート
5 データ処理ステーション
6 ステーション間の結合
7 ユニット間の結合
8 隣接するステーションおよび/またはユニットへの結合
9 試料または生物学的試料または試料または生物学的試料
N N≧1、例えば1または2または3または4または5または6である、選択性エンハンサーステーションの数
M M≧0である、イオン断片化ユニットの数
Z M≧0である、イオン断片化ユニットの数
【国際調査報告】