(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】3D印刷可能な合金
(51)【国際特許分類】
C22C 21/06 20060101AFI20231226BHJP
C22C 21/00 20060101ALI20231226BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20231226BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20231226BHJP
B22F 10/28 20210101ALN20231226BHJP
C22C 19/07 20060101ALN20231226BHJP
C22C 38/00 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
C22C21/06
C22C21/00 L
C22C21/00 N
B33Y70/00
B33Y10/00
B22F10/28
C22C19/07 Z
C22C38/00 304
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538026
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 US2021064732
(87)【国際公開番号】W WO2022140470
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516093851
【氏名又は名称】ダイバージェント テクノロジーズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Divergent Technologies, Inc.
【住所又は居所原語表記】19601 Hamilton Avenue,Los Angeles,California 90502 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】プン サイモン チャン チェオン
(72)【発明者】
【氏名】ヤップ チョー イェン
(72)【発明者】
【氏名】マーバリー フィンリー ヒュー
(72)【発明者】
【氏名】シライ タイキ トーマス
(72)【発明者】
【氏名】カスナクジアン シャハン ソグホモン
(72)【発明者】
【氏名】ケンワージー マイケル トーマス
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA14
4K018BA08
(57)【要約】
合金金属、及び合金金属から部品を作成する技術が開示される。本開示の一態様に係る装置は、合金からなる。このような合金は、マグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)、マンガン(Mn)、及びアルミニウム(Al)を含み、Mg、Zr、及びMnの含有は、合金の構造を生成し、この構造は、少なくとも80メガパスカル(MPa)の降伏強度を有し、少なくとも10パーセント(%)の伸びを有する。本開示の一態様による合金は、0~3.0重量%の範囲のYを添加して、ベース合金溶質に0~7.0重量%の範囲のMgと、0~6.5重量%の範囲のMnと、0~5.0重量%の範囲のZrと、合金の残部としてのベース材料のAlを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合金であって、
マグネシウム(Mg)と、
マンガン(Mn)と、
ジルコニウム(Zr)と、
アルミニウム(Al)と、
を含み、前記Mg、前記Mn及び前記Zrの含有が前記合金の構造を形成し、前記構造は、少なくとも80メガパスカル(MPa)の降伏強度を有し、少なくとも10パーセント(%)の伸びを有する、合金。
【請求項2】
前記合金は、前記Mg、前記Mn、前記Zr及び前記Alから本質的になる、請求項1に記載の合金。
【請求項3】
前記合金中の前記構造は、少なくとも150MPaの降伏強度をもたらし、少なくとも10%の伸びを有する、請求項1に記載の合金。
【請求項4】
イットリウム(Y)をさらに含み、前記合金中の前記Yの量は、前記合金の約3重量%以下である、請求項1に記載の合金。
【請求項5】
ハフニウム(Hf)をさらに含み、前記合金中の前記Hfの量は、前記合金の約7重量%以下である、請求項1に記載の合金。
【請求項6】
ガリウム(Ga)をさらに含み、前記合金中の前記Gaの量は、前記合金の約35重量%以下である、請求項1に記載の合金。
【請求項7】
エルビウム(Er)をさらに含み、前記合金中の前記Erの量は、前記合金の約15重量%以下である、請求項1に記載の合金。
【請求項8】
チタン(Ti)及びホウ素(B)をさらに含み、前記合金中の前記Tiの量は、前記合金の約15重量%未満であり、前記合金中の前記Bの量は、前記合金の約7重量%未満である、請求項1に記載の合金。
【請求項9】
チタン(Ti)及びバナジウム(V)をさらに含み、前記合金中の前記Tiの量は、前記合金の約15重量%未満であり、前記合金中の前記Vの量は、前記合金の約5重量%未満である、請求項1に記載の合金。
【請求項10】
リチウム(Li)、銅(Cu)及び銀(Ag)をさらに含み、前記合金中の前記Liの量は、前記合金の約3重量%未満であり、前記合金中の前記Cuの量は、前記合金の約10重量%未満であり、前記合金中の前記Agの量は、前記合金の約2重量%未満である、請求項1に記載の合金。
【請求項11】
少なくとも鉄(Fe)、シリコン(Si)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)をさらに含む、請求項10に記載の合金。
【請求項12】
前記合金の前記構造は、少なくとも100MPaの降伏強度を有する、請求項1に記載の合金。
【請求項13】
前記合金の前記構造は、少なくとも150MPaの降伏強度を有する、請求項1に記載の合金。
【請求項14】
前記合金の前記構造は、少なくとも200MPaの降伏強度を有する、請求項1に記載の合金。
【請求項15】
前記合金の前記構造は、少なくとも11%の伸びを有する、請求項1に記載の合金。
【請求項16】
前記合金の前記構造は、少なくとも9%の伸びを有する、請求項1に記載の合金。
【請求項17】
合金化金属コンポーネントを三次元的に印刷するための方法であって、
ベース材料を、第一の量のマグネシウム(Mg)、第二の量のジルコニウム(Zr)、及び第三の量のマンガン(Mn)と組み合わせて、ベース物質を生成するステップと、
前記合金化金属コンポーネントを前記ベース物質から三次元的に印刷するステップであって、前記第一の量のMg、前記第二の量のZr、及び前記第三の量のMnを前記ベース材料と組み合わせると、前記合金化金属コンポーネント中に構造が生成され、前記合金化金属コンポーネント中の前記構造は、少なくとも80メガパスカル(MPa)の降伏強度を有し、少なくとも10パーセント(%)の伸びを有する、ステップと、を含む方法。
【請求項18】
合金であって、
マグネシウム(Mg)であって、前記合金中の前記Mgの量は、前記合金の約7重量%以下である、Mgと、
マンガン(Mn)であって、前記合金中の前記Mnの量は、前記合金の約6.5重量%以下である、Mnと、
ジルコニウム(Zr)であって、前記合金中の前記Zrの量は、前記合金の約5重量%以下である、Zrと、
アルミニウム(Al)と、
を含む、合金。
【請求項19】
イットリウム(Y)をさらに含み、前記合金中のYの量は、前記合金の3.3重量%以下である、請求項18に記載の合金。
【請求項20】
ハフニウム(Hf)をさらに含み、前記合金中のHfの量は、前記合金の7重量%以下である、請求項18に記載の合金。
【請求項21】
ガリウム(Ga)をさらに含み、前記合金中のGaの量は、前記合金の35重量%以下である、請求項18に記載の合金。
【請求項22】
エルビウム(Er)をさらに含み、前記合金中のErの量は、前記合金の15重量%以下である、請求項18に記載の合金。
【請求項23】
チタン(Ti)及びホウ素(B)をさらに含み、前記合金中のTiの量は、前記合金の15重量%以下であり、前記合金中のBの量は、前記合金の7重量%以下である、請求項18に記載の合金。
【請求項24】
シリコン(Si)をさらに含み、前記合金中のSiの量は、前記合金の2.5重量%以下である、請求項23に記載の合金。
【請求項25】
チタン(Ti)及びバナジウム(V)をさらに含み、前記合金中のTiの量は、前記合金の15重量%以下であり、前記合金中のVの量は、前記合金の5重量%以下である、請求項18に記載の合金。
【請求項26】
リチウム(Li)、銅(Cu)及び銀(Ag)をさらに含み、前記合金中のLiの量は、前記合金の3重量%以下であり、Cuの量は、前記合金の10重量%以下であり、前記合金中のAgの量は、前記合金の2重量%以下である、請求項18に記載の合金。
【請求項27】
シリコン(Si)をさらに含み、前記合金中のSiの量は、前記合金の1重量%以下である、請求項26に記載の合金。
【請求項28】
チタン(Ti)をさらに含み、前記合金中のTiの量は、前記合金の1.5重量%以下である、請求項27に記載の合金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、「HIGH-PERFORMANCE ALUMINUM ALLOYS」と題され、2020年12月21日に出願された米国仮出願第63/128,674号、及び「3-D Printable ALLOYS」と題され、2021年4月23日に出願された米国非仮出願第17/239,486号の優先権を主張し、これらの出願は、本出願の譲受人に譲渡されており、あたかも本明細書に完全に記載されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に合金材料に関し、より具体的には3D印刷可能な合金に関する。
【背景技術】
【0003】
付加製造(AM)とも呼ばれる三次元(3D)印刷は、自動車、航空機、ボート、オートバイ、バス、列車等の構造物をより効率的に構築する新たな機会を提供する。これらの製品を製造する産業にAMプロセスを適用することで、構造的に効率的な輸送構造物を製造できることが証明されている。例えば、3Dプリンタで作られたコンポーネントを使用して生産される自動車は、より強く、より軽くすることができ、その結果、より燃費が向上する。さらに、AMによって、製造業者は、従来の鋳造、鍛造、及び機械加工技術によって製造された部品よりも、はるかに複雑で、より高度な特徴及び機能を備えた部品を3D印刷することができる。
【0004】
このような最近の進歩にもかかわらず、AM技術の実用化に関しては多くの障害が残っている。例えば、多くの既存の合金は、鋳造又は成形して比較的欠陥のない構造を製造することができるが、これらの合金を3D印刷すると、クラック及び/又は他の欠陥が生じる。特定の用途で特定の強度及び/又は延性を有するコンポーネントが望まれる場合、既存の合金を使用してコンポーネントを3D印刷すると、弱すぎたり脆すぎたりするコンポーネントになるため、製造業者は、従来の鋳造、鍛造、及び機械加工技術を使用してコンポーネントを製造することを余儀なくされる場合がある。
【発明の概要】
【0005】
3D印刷可能な金属合金のいくつかの態様及び特徴について、3D印刷技術を参照して以下により詳細に説明する。
【0006】
本開示の一態様に従う装置は、合金からなる。このような合金は、マグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)、マンガン(Mn)、及びアルミニウム(Al)を含み、Mg、Zr、及びMnを含有することで、合金の構造を生成し、この構造は、少なくとも80メガパスカル(MPa)の降伏強度を有し、少なくとも10パーセント(%)の伸びを有する。
【0007】
このような合金は、さらに任意に、Mg、Zr、Mn、及びAlから本質的になる合金を含み、Mgのある量が合金中に含まれ、Mgのその量は少なくとも固溶体強化によって合金の構造を改質し、Zrのある量が合金中に含まれ、Zrのその量は少なくとも析出硬化によって合金の構造を改質し、Mnのある量が合金中に含まれ、Mnのその量は少なくとも固溶体強化及び析出硬化によって合金の構造を改質し、合金中の構造は、少なくとも150MPaの降伏強度を生じ、少なくとも10%の伸びを有する。
【0008】
このような合金は、さらに任意に、少なくとも1種の溶質を含んでもよく、少なくとも1種の溶質は、少なくとも析出硬化、結晶粒微細化、粒界強化、固溶体強化、等軸粒数、分散強化、又は合金の構造におけるトリアルミナイド粒子形成の促進によって合金の構造を改質する。
【0009】
このような合金の少なくとも1つの溶質は、イットリウム(Y)を含んでもよく、Yは、少なくとも析出硬化又はトリアルミナイド粒子形成の促進によって合金の構造を改質し、合金中のYの量は、合金の約3重量%以下である。
【0010】
このような合金の少なくとも1つの溶質は、ハフニウム(Hf)を含んでもよく、Hfは、少なくとも析出硬化又はトリアルミナイド粒子形成の促進によって合金の構造を改質し、合金中のHfの量は、合金の約2重量%以下である。
【0011】
このような合金の少なくとも1つの溶質は、ガリウム(Ga)を含んでもよく、Gaは、少なくとも固溶体強化によって合金の構造を改質し、合金中のGaの量は、合金の約30重量%以下である。
【0012】
このような合金の少なくとも1つの溶質は、エルビウム(Er)を含んでもよく、Erは、少なくとも析出硬化又はトリアルミナイド粒子形成の促進によって合金の構造を改質し、合金中のErの量は、合金の約15重量%以下である。
【0013】
このような合金の少なくとも1つの溶質は、チタン(Ti)及びホウ素(B)を含んでもよく、Ti及びBは、少なくとも析出硬化及び粒界強化によって合金の構造を改質し、合金中のTiの量は、合金の約1重量%以下であり、合金中のBの量は、合金の約0.5重量%以下である。
【0014】
このような合金の少なくとも1つの溶質は、チタン(Ti)及びバナジウム(V)を含んでもよく、Ti及びVは、少なくとも析出硬化及び粒界強化によって合金の構造を改質し、合金中のTiの量は、合金の約1重量%未満であり、合金中のVの量は、合金の約2重量%未満である。
【0015】
このような合金の少なくとも1つの溶質は、銅(Cu)、リチウム(Li)、銀(Ag)、又はそれらの組合せを含む少なくとも1つの二次溶質を含んでもよい。このような合金は、鉄(Fe)、シリコン(Si)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、又はそれらの組合せを含む少なくとも1つの三次溶質をさらに含んでもよく、少なくとも1つの二次溶質及び少なくとも1つの三次溶質は、合金の6.9重量%以下を構成する。
【0016】
合金の引張強度は、100MPa超、150MPa超、200MPa超でもよく、合金の伸びは、8~16%の間で変化してもよい。
【0017】
本開示の一態様に従って合金化金属コンポーネント(alloyed metal component)を三次元印刷する方法は、第一の量のマグネシウム(Mg)をベース材料と組み合わせるステップと、ベース材料及び第一の量のMgを第二の量のジルコニウム(Zr)と組み合わせるステップと、ベース材料、第一の量のMg、及び第二の量のZrを第三の量のマンガン(Mn)と組み合わせてベース物質を形成するステップと、ベース物質から合金化金属コンポーネントを三次元印刷するステップと、を含み、第一の量のMg、第二の量のZr、及び第三の量のMnをベース材料と組み合わせることにより、合金化金属コンポーネント中の構造を生成し、合金化金属コンポーネント中の構造は、少なくとも80メガパスカル(MPa)の降伏強度を有し、少なくとも10パーセント(%)の伸びを有する。
【0018】
以下の詳細な説明から、印刷可能な合金の他の態様が当業者に容易に明らかになることが理解されよう。ここでは、例示として、いくつかの実施形態のみを図示して、説明する。当業者には理解されるように、本開示の原理は、本発明から逸脱することなく、他の実施形態で実現することができる。したがって、図面及び詳細な説明は、本質的に例示的なものとみなされ、制限的なものとはみなされない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
ここで、本開示の様々な態様が、添付の図面において、限定としてではなく、例として詳細な説明に提示される。
【0020】
【
図1A】本開示の一態様に従う3Dプリンタシステムのそれぞれの側面図を示す。
【
図1B】本開示の一態様に従う3Dプリンタシステムのそれぞれの側面図を示す。
【
図1C】本開示の一態様に従う3Dプリンタシステムのそれぞれの側面図を示す。
【
図1D】本開示の一態様に従う3Dプリンタシステムのそれぞれの側面図を示す。
【
図1E】本開示の一態様に従う3Dプリンタシステムの機能ブロック図を示す。
【
図4】本開示の一態様に従って、コンポーネントを付加製造するための例示的な方法を示すフロー図を示す。
【
図6】本開示の一態様に従うアセンブリの断面図を示す。
【
図7】本開示の態様に従うアセンブリのジョイントフィーチャを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面に関連して以下に記載される詳細な説明は、3D印刷可能な合金の例示的な実施形態の説明を提供することを意図しており、本開示が実施され得る唯一の実施形態を示すことを意図していない。本開示を通して使用される「例示的」という用語は、「例、インスタンス、又は説明として役立つ」ことを意味し、必ずしも好ましいもの、又は有利なもの、として解釈されるべきではない。詳細な説明は、当業者に本開示の範囲を十分に伝える徹底的かつ完全な開示を提供する目的で、特定の詳細を含む。しかしながら、本発明は、これらの具体的な詳細なしに実施することができる。場合によっては、本開示を通じて提示される様々な概念を不明瞭にしないために、周知の構造及びコンポーネントをブロック図の形態で示すことも、あるいは完全に省略することもある。
【0022】
図1A~
図1Dは、例示的な3Dプリンタシステムのそれぞれの側面図を示す。
【0023】
この例では、3Dプリンタシステムは、粉末床融合(PBF)システム100である。
図1A~
図1Dは、動作の異なる段階中のPBFシステム100を示している。
図1A~
図1Dに示される特定の実施形態は、本開示の原理を採用するPBFシステムの多くの適切な例の1つである。また、本開示の
図1A~
図1D及び他の図の要素は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではないが、本明細書で説明される概念をよりよく例示する目的で、より大きく、又は小さく描かれている場合があることに留意すべきである。PBFシステム100は、金属粉末の各層を堆積することのできるデポジッタ101と、エネルギービームを生成することのできるエネルギービーム源103と、エネルギービームを適用して粉末材料を融合することのできる偏向器105と、ビルドピース109等の1つ以上のビルドピースを支持することのできるビルドプレート107と、を含むことができる。「融合する(fuse)」及び/又は「融合している」という用語は、粉末粒子の機械的結合を説明するために用いられるが、他の機械的作用(例えば、焼結、溶融)、及び/又は他の電気、機械、電気機械、電気化学、及び/又は化学結合方法は、本開示の範囲内にあるものと想定される。
【0024】
システム100は、また、粉末床レセプタクル内に配置されたビルドフロア111を含むことができる。粉末床レセプタクル壁112は、一般に、側面から壁112の間に挟まれ、下のビルドフロア111の一部分に当接する粉末床レセプタクルの境界を画定する。ビルドフロア111は、デポジッタ101が次の層を堆積できるように、ビルドプレート107を徐々に下げることができる。メカニズム全体は、他のコンポーネントを封入することができるチャンバ113内に存在してもよく、それにより、機器を保護し、大気及び温度の調節を可能にし、汚染リスクを軽減する。デポジッタ101は、金属粉末等の粉末117を含むホッパー115と、堆積された粉末の各層の頂部を水平にすることができるレベラー119とを含むことができる。
【0025】
特に
図1Aを参照すると、この図は、ビルドピース109のスライスが融合された後、しかし、粉末の次の層が堆積される前のPBFシステム100を示している。実際、
図1Aは、PBFシステム100が、例えば、150のスライスで形成されたビルドピース109の現在の状態を形成するために、複数の層、例えば、150の層でスライスをすでに堆積して、融合した時点を示している。すでに堆積された複数の層は、堆積されたが融合されていない粉末を含む粉末床121を作成した。
【0026】
図1Bは、ビルドフロア111が粉末層の厚さ123だけ下げることのできる段階におけるPBFシステム100を示している。ビルドフロア111が下がると、ビルドピース109及び粉末床121が粉末層の厚さ123だけ下がり、こうして、ビルドピース及び粉末床の頂部は、粉末層の厚さに等しい量だけ、粉末床レセプタクル壁112の頂部よりも低くなる。このようにして、例えば、粉末層の厚さ123に等しい一定の厚さを有する空間を、ビルドピース109及び粉末床121の頂部の上に作成することができる。
【0027】
図1Cは、デポジッタ101が、ビルドピース109及び粉末床121の頂部表面の上に作成され、粉末床レセプタクル壁112によって境界付けられた空間に粉末117を堆積するように配置される段階におけるPBFシステム100を示す。この例では、デポジッタ101は、ホッパー115から粉末117を放出しながら、定義された空間上を徐々に移動する。レベラー119は、放出された粉末を水平にして、粉末層の厚さ123と実質的に等しい厚さを有する粉末層125を形成することができる(
図1Bを参照)。したがって、PBFシステム内の粉末は、例えば、ビルドプレート107、ビルドフロア111、ビルドピース109、壁112等を含むことができる粉末材料サポート構造によって支持することができる。粉末層125の図示された厚さ(すなわち、粉末層の厚さ123(
図1B))は、
図1Aを参照して上で論じた150の以前に堆積された層を含む例に使用された実際の厚さよりも大きいことに留意されたい。
【0028】
図1Dは、粉末層125(
図1C)の堆積に続いて、エネルギービーム源103がエネルギービーム127を生成し、偏向器105がエネルギービームを適用してビルドピース109内の次のスライスを融合する段階におけるPBFシステム100を示す。様々な例示的な実施形態において、エネルギービーム源103は、電子ビーム源であり得、その場合、エネルギービーム127は、電子ビームを構成する。偏向器105は、偏向板を含むことができ、偏向板は、電子ビームを選択的に偏向させて、電子ビームを融合するように指定された領域を横切って走査させる電場又は磁場を生成することができる。様々な実施形態において、エネルギービーム源103は、レーザであり得、その場合、エネルギービーム127は、レーザビームである。偏向器105は、反射及び/又は屈折を使用してレーザビームを操作して、融合される選択された領域を走査する光学システムを含むことができる。
【0029】
様々な実施形態において、偏向器105は、エネルギービーム源を回転及び/又は並進移動させてエネルギービームを配置することができる1つ以上のジンバル及びアクチュエータを含むことができる。様々な実施形態において、エネルギービーム源103及び/又は偏向器105は、エネルギービームを変調することができ、例えば、エネルギービームが粉末層の適切な領域にのみ適用されるように、偏向器が走査するときにエネルギービームをオン及びオフにすることができる。例えば、様々な実施形態において、エネルギービームは、デジタル信号プロセッサ(DSP)によって変調することができる。
【0030】
図1Eは、本開示の一態様に従う3Dプリンタシステムの機能ブロック図を示す。
【0031】
本開示の一態様では、コンピュータソフトウェアを含む制御デバイス及び/又は要素は、PBFシステム100に結合されて、PBFシステム100内の1つ以上のコンポーネントを制御してもよい。そのようなデバイスは、コンピュータ150であってもよく、コンピュータ150は、PBFシステム100の制御を支援し得る1つ以上のコンポーネントを含んでもよい。コンピュータ150は、1つ以上のインターフェース151を介して、PBFシステム100、及び/又は他のAMシステムと通信してもよい。コンピュータ150及び/又はインターフェース151は、本明細書に記載の様々な方法を実装するように構成され得るデバイスの例であり、PBFシステム100及び/又は他のAMシステムの制御を支援し得る。
【0032】
本開示の一態様では、コンピュータ150は、少なくとも1つのプロセッサ152と、メモリ154と、信号検出器156と、デジタル信号プロセッサ(DSP)158と、1つ以上のユーザインターフェース160と、を備えてもよい。コンピュータ150は、本開示の範囲から逸脱することなく、追加のコンポーネントを含んでもよい。
【0033】
プロセッサ152は、PBFシステム100の制御及び/又は操作を支援してもよい。プロセッサ152は、中央処理ユニット(CPU)と呼ばれることもある。メモリ154は、読み取り専用メモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)の両方を含んでもよく、プロセッサ152に命令及び/又はデータを提供してもよい。メモリ154の一部分は、また、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)を含んでもよい。プロセッサ152は、典型的には、メモリ154内に格納されたプログラム命令に基づいて、論理演算及び算術演算を実行する。メモリ154内の命令は、本明細書に記載される方法を実装するために(例えば、プロセッサ152によって)実行可能であってもよい。
【0034】
プロセッサ152は、1つ以上のプロセッサで実装された処理システムのコンポーネントを備えてもよいし、そのコンポーネントであってもよい。1つ以上のプロセッサは、汎用マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、浮動小数点ゲートアレイ(FPGA)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、コントローラ、状態機械、ゲート論理、離散ハードウェアコンポーネント、専用ハードウェア有限状態機械、又は計算又は情報の他の操作を実行できる他の適切なエンティティの任意の組合せで実装されてもよい。
【0035】
プロセッサ152は、また、ソフトウェアを格納するための機械可読媒体を含んでもよい。ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語等と呼ばれるかどうかにかかわらず、任意のタイプの命令を意味するように広義に解釈されるものとする。命令は、コード(例えば、ソースコード形式、バイナリコード形式、実行可能コード形式、RS-274命令(Gコード)、数値制御(NC)プログラミング言語、及び/又はコードの他の任意の適切な形式)を含んでもよい。命令は、1つ以上のプロセッサによって実行されると、処理システムに、本明細書で説明する様々な機能を実行させる。
【0036】
信号検出器156は、プロセッサ152及び/又はコンピュータ150の他のコンポーネントによって使用するために、コンピュータ150が受信した信号の任意のレベルを検出して、定量化するために使用されてもよい。信号検出器156は、エネルギービーム源103の電力、偏向器105の位置、ビルドフロア111の高さ、デポジッタ101に残っている粉末117の量、レベラー119の位置、及び他の信号等の信号を検出してもよい。DSP158は、コンピュータ150が受信した信号の処理に使用されてもよい。DSP158は、PBFシステム100に送信するための命令及び/又は命令のパケットを生成するように構成されてもよい。
【0037】
ユーザインターフェース160は、キーパッド、ポインティングデバイス、及び/又はディスプレイを備えてもよい。ユーザインターフェース160は、コンピュータ150のユーザに情報を伝える、及び/又はユーザからの入力を受信する、任意の要素又はコンポーネントを含んでもよい。
【0038】
コンピュータ150の様々なコンポーネントは、インターフェース151によって一緒に結合されてもよく、インターフェース151は、例えば、バスシステムを含んでもよい。インターフェース151は、データバスを含んでもよいが、データバスに加えて、例えば、電源バス、制御信号バス、及びステータス信号バスを含んでもよい。コンピュータ150のコンポーネントは、何らかの他の機構を用いて、互いに結合されてもよいし、あるいは互いに入力を承認又は提供してもよい。
【0039】
図1Eには、多数の個別のコンポーネントが図示されているが、コンポーネントの1つ以上が組み合わされるか、又は共通に実装されてもよい。例えば、プロセッサ152は、プロセッサ152に関して上述した機能性を実装するだけでなく、信号検出器156、DSP158、及び/又はユーザインターフェース160に関して上述した機能性を実装するために使用されてもよい。さらに、
図1Eに図示されたコンポーネントのそれぞれは、複数の個別の要素を使用して実装されてもよい。
【0040】
(合金組成物)
図2A及び
図2Bは、本開示の一態様に従う合金構造を示す。
【0041】
図2Aは、合金構造200に含まれるベース材料原子及び溶質204原子を有する合金構造200を示す。本開示の一態様では、合金構造200は、ベース材料の下にある構造を有してもよく、その構造は、例えば、立方構造(すなわち、ベース材料の原子は、立方体の各角部に位置する)、面心立方構造(すなわち、ベース材料の原子が立方体の角部及び少なくとも1つの面に位置する)等の結晶型又は周期構造であってもよい。例えば、ベース材料として、アルミニウム(Al)金属は面心立方(fcc)構造で編成し、チタンは体心立方(bcc)構造又は六方最密充填(hcp)構造で編成すること等である。
図2Aに示すように、ベース材料202の原子は、ベース材料層208等の層に編成することができ、その層は、置換溶質204の1つ以上の原子を含むことができる。
【0042】
図2Aでは、合金構造200のベース材料構造は、立方構造として示されているが、合金構造200に関して説明される原理は、本開示の範囲から逸脱することなく、任意のベース材料構造の編成に適用されてもよい。
図2Aでは、合金構造200内のいくつかの位置において、ベース材料202は、溶質204によって置換されている。置換アプローチでは、溶質204が合金構造200のベース材料構造内のベース材料202を置換するので、合金は、「置換型合金」と呼ばれることがある。本開示の一態様では、溶質204は、ベース材料202の置換として作用する1つ以上の異なる原子及び/又は化合物であってもよい。例えば、限定するものではないが、ベース材料202は、鉄(Fe)であってもよく、溶質204は、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、及び/又はスズ(Sn)のうちの1つ以上であってもよい。溶質204がベース材料202とほぼ同じ原子サイズである場合、置換型合金が形成されることがある。
【0043】
図2Bでは、合金構造210は、
図2Aに示したベース材料構造と同様に、立方構造内にベース材料212を有する。
図2Aと同様に、合金構造210に関して説明される原理は、本開示の範囲から逸脱することなく、任意のベース材料構造の編成に適用されてもよい。合金構造210は、また、溶質214も含む。溶質214は、ベース材料212の位置以外の位置、すなわち、合金構造210のベース材料構造内の格子間位置で合金構造210に含まれる。本開示のそのような態様では、溶質214が合金構造210のベース材料構造内の格子間位置で構造の一部をなすので、ベース材料212にそのような添加物を有する合金を「侵入型合金」と呼ばれることがある。そのような態様では、溶質214は、合金構造210のベース材料構造への格子間挿入として作用する1つ以上の異なる原子及び/又は化合物であってもよい。例えば、限定するものではないが、ベース材料212は、アルミニウム(Al)であってもよく、溶質214は、マグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)、及び/又はマンガン(Mn)のうちの1つ以上であってもよい。侵入型合金は、溶質214がベース材料212よりも小さい原子サイズであるときに形成されることがある。
図2Bに示すように、ベース材料212の原子は、ベース材料層218等の層内に編成することができ、ベース材料層218は、層の間に散在する格子間溶質214の1つ以上の原子を含んでもよい。
【0044】
図2Cは、ベース材料222、格子間溶質224、及び置換溶質226を含むことができる合金構造220を有する組合せ合金の例を示す。
図2Cに示すように、ベース材料222の原子は、ベース材料層228等の層内に編成することができ、ベース材料層228は、置換溶質206の1つ以上の原子を含み、格子間溶質224の1つ以上の原子とともに散在してもよい。
【0045】
本開示の態様は、置換型合金、侵入型合金、及び所与の合金中の置換/格子間溶質の組合せを有する組合せ合金を含むことができる。さらに、本開示の範囲から逸脱することなく、ベース材料(例えば、ベース材料202,212,及び222)は、1つ以上の元素を含んでもよく、例えば、ベース材料は、複数の2つの材料、例えば、銅(Cu)及び亜鉛(Zn)であってもよい。ベース材料(base material)における「ベース(base)」の使用は、ベース材料が合金の組成の大部分であることを意味し得るが、そのような意味は、本開示の多くの態様において必ずしも常に当てはまるとは限らない。様々な実施形態では、異なる材料が異なる原子編成、例えば、fcc、bcc、立方体、hcp等を有するので、ベース材料は、合金の下層構造を示してもよい。
【0046】
本開示の一態様では、溶質をベース材料に含めて、ベース材料が示す1つ以上の特性を変化させることができる。例えば、限定するものではないが、炭素(C)をFeに添加して強度を高め、酸化を低減してもよい。換言すれば、ベース材料構造中の原子間の結合の特性を変化させるために、ベース材料に不純物として溶質を添加してもよい。
【0047】
多くの材料及び多くの合金において、所与の用途に対するその材料/合金の適合性を決定するいくつかの基本的特性が存在する。例えば、限定するものではないが、強度、耐熱性、及び延性は、特定の用途において重要になり得る3つの特性である。
【0048】
図2A~
図2Cに示すように、ベース材料及び溶質を含み得る合金の構造は、その基礎となる原子編成(例えば、fcc、bcc、hcp等)の観点から分類することができる。合金構造は、いくつかの方法で作製することができるが、それらの方法は、主に、ベース材料を溶質(例えば、置換及び/又は格子間)と様々な比率及び/又は割合で混合することによって作られる。これは、様々なコンポーネントを製錬及び/又は溶融して均質な液体にし、液体を冷却して固体形態にすることによって行うことができる。
【0049】
結果として生じる合金構造は、侵入型、置換、多結晶、非晶質、又は様々な組合せにかかわらず、純粋な形態のベース材料の特性とは異なる合金の特性の値を提供する。例えば、金(Au)と銀(Ag)との合金化は、得られる合金をより硬くする、すなわち、得られるAuとAgとの合金は、純Auよりも高い引張強度を有する。純粋なベース材料構造が強度の低下を示し得る別の理由は、同じ元素の原子間の共有結合及び/又はイオン結合が制限されることである。合金は、原子サイズの混合物及び様々な価電子を含むために、合金の構造中の原子のいくつかは、わずかに異なるサイズ及び/又は異なる局所的電気特性を有し得るので、ベース材料層208,218,及び210等のベース材料編成中の層が互いに対してシフトすることがより困難になり、原子の編成がもはや均一でなくなると、隣接する原子間の局所的な結合強度が増加し得る。合金の強度のこの増加は、置換溶質のサイズのわずかな差異、格子間溶質の包含、及び/又は他の理由によるものであり得る。
【0050】
(金属の強化機構)
図2A~
図2Cに付随する説明に関して見られるように、ベース材料の強度を増加させるための複数の方法が存在し得る。所与の材料の「強度」は、複数の方法で記載することもできる。材料を破壊するのに必要な力の量は、しばしば、材料の「引張強度」又は「極限引張強度」と呼ばれるが、材料を恒久的に曲げる又は変形させるのに必要な力の量は、材料の「降伏強度」と呼ばれることがある。いくつかの機構が、所与の材料の引張強度及び/又は降伏強度を増加させる原因となり得る。合金におけるそのような機構は、例えば、置換溶質、格子間溶質、又は置換溶質と格子間溶質との組合せのいずれかを導入することによって、合金構造におけるベース材料層間の「平滑性」を変化させることを含んでもよい。溶質の導入は、合金構造内に均一でない領域を作り出すことができ、合金内に「転位」と呼ばれることがある。
【0051】
転位は、応力場として知られる異なる引力及び/又は斥力を合金構造内に導入し得る。これにより、「ピン止め点」として知られる、合金構造内の力間に局所的な差が生じ、そのピン止め点に近接する構造の1つ以上のベース材料層の動きに対抗する。
【0052】
合金構造の単位体積当たりの転位の数を増加させることは、通常、純粋な形態のそのベース材料構造に対して合金の引張強度及び/又は降伏強度を増加させるであろう。しかしながら、各ベース材料について異なり得るある点を超えると、転位密度の増加は、合金の引張強度及び/又は降伏強度を低下させ始めるであろう。引力及び/又は斥力の局所的な差異が十分に広がると、合金の全体的な強度決定からのベース材料の引力及び/又は反発力の寄与を低減及び/又は排除することができる、あるいは、それは、合金構造を、合金構造内の原子の異なる下層編成(例えば、fccからbcc等)に形態変化させることができる。
【0053】
したがって、転位密度をある程度まで増加させると、あるベース材料層を別のベース材料層に対して移動させるために必要な剪断力が増加する。これは、層内にある転位を動かすために追加の剪断力と、それらのベース材料層内のベース材料を動かすために必要とされる力とが必要だからである。転位を移動させるために必要な剪断力のこの増加は、合金における引張強度及び/又は降伏強度の増加として示される。
【0054】
しかしながら、ベース材料の強度を高めると、純粋な形状のときにベース材料が呈する他の特性が低下することがある。例えば、限定するものではないが、強度を高めると、そのベース材料の展性が低下する可能性がある。材料が強いほど、屈曲させたり、窪ませたりすることがより困難であることが知られ得る。材料の展性及び/又は伸長能力は、しばしば、材料の「延性」と呼ばれる。材料がどれだけ強くなるか、すなわち、材料が力に抵抗する能力が変化すると、しばしば、材料がどれだけ「加工可能」になるか、すなわち、材料の破壊ではなく材料の変形によって力を吸収する能力が変化する。本明細書の議論の多くは材料の強化に言及しているが、本開示の一態様では、合金の延性に著しい影響を及ぼすことなく、所与の合金の強度を改善することができる。
【0055】
(加工硬化)
純粋なベース材料の典型的な構造は、規則的で、ほぼ欠陥のない格子であってもよい。「加工硬化」によって材料を硬化させるために、転位は、材料を形成又は「加工」することによってベース材料に導入される。これらの転位は、材料内の応力場の局所的な変動を生じさせる可能性があり、ベース材料の構造をわずかに再編成する。
【0056】
ベース材料の加工硬化を、機械的及び/又は熱的応力をベース材料に加えることによって達成してもよい。例えば、Cuのシートは、材料の厚さを減らすために、ハンマー加工しても、延伸しても、あるいは加圧ローラーに通してもよい。これらの機械的応力は、Cu構造(面心立方である)に転位を導入する。このCuの形成は、硬度(強度)を増加させ、弾性(一般に「延性」と呼ばれる)を低下させる。同様の硬化は、熱サイクル、例えば、材料を「焼き戻す」ための炉や鉄の焼き入れで行われるように、材料の加熱及び冷却によって達成することができる。
【0057】
上述のように、ベース材料の「加工」が特定の点を超えて継続する場合、ベース材料は、過度に高い濃度の転位を含みことになり、これは、微小破壊及び/又は目に見える破壊等の破壊をもたらすことがある。そのような破壊は、例えば、ベース材料の加工中及び/又は加工後の材料の1つ以上の加熱及び冷却サイクルを通して可逆的であり得る。このような材料の加熱及び冷却は、ベース材料の「アニール」と呼ばれることもある。
【0058】
合金を形成するために置換及び/又は格子間溶質を導入することなく、ベース材料に加工硬化を実施してもよい。また、ベース材料と溶質を含む合金に加工硬化を行ってもよい。
【0059】
(固溶体強化)
本開示の一態様では、置換溶質及び/又は格子間溶質をベース材料に添加してもよく、これにより、合金構造に置換点欠陥及び/又は格子間点欠陥をもたらすことができる。溶質原子は、格子歪みを合金構造にもたらすことがあり、この格子歪みが転位運動を妨げる。転位運動が妨げられると、材料の強度が増加する。ベース材料を強化するこの特定の機構は、「固溶体強化」と呼ばれることがある。
【0060】
固溶体中での強化において、溶質原子が存在すると、圧縮又は引張応力を合金構造格子に導入することができ、これは、近くの転位と相互作用し得、溶質原子を、互いに対する構造の層の移動に対する潜在的バリアとして作用させる。これらの相互作用は、所与の合金の引張強度及び/又は降伏強度を増加させることがある。
【0061】
固溶体強化は、一般に、合金構造中に存在する溶質原子の濃度に依存する。所与の合金にどの特定の元素を含めるかを決定するときに考慮され得る置換及び/又は格子間溶質原子のいくつかの物理的特性には、溶質原子の剪断弾性率、溶質原子の物理的サイズ、溶質原子の価電子の数(「価数」としても知られる)、及び溶質応力場の対称性等の特性があり得る。
【0062】
(析出硬化)
溶融金属合金が冷えるにつれて、ベース材料原子は、他のベース材料原子との結合を形成する代わりに、分子を形成しても、及び/又は溶質(又は他の不純物)と直接結合してもよい。ベース材料と溶質又は不純物との間に形成される分子/結合は、純粋なベース材料構造及び/又は純粋な溶質構造とは異なる局在化特性を生じる可能性が高い。これらの特性の1つは、純粋なベース材料及び/又は純粋な溶質の融点と異なり得る分子の融点であってもよい。
【0063】
本開示の一態様では、分子は、純粋なベース材料及び/又は純粋な溶質よりも高い温度で硬化し得、これは、合金構造中に転位を生成し得る。これらの転位は、合金構造の異なる「相」と呼ばれることもある合金構造内に下位構造(substructures)を生成してもよい。合金構造内の異なるサイズの分子は、ベース材料層が合金構造内で相互に対して移動することをより困難にし得るため、これらの分子は、より強力な合金の生成を支援することがある。
【0064】
得られる合金の強度に影響を及ぼす場合、温度に対する「固溶性」の変化と呼ばれることもある分子の特性のこの変化は、「析出硬化」メカニズムと呼ばれることがある。合金に含まれる元素の融点は異なり得るため、析出硬化(「析出強化」としても知られる)は、温度に依存することがある。
【0065】
析出硬化は、温度に対する固溶性におけるこれらの変化を使用して、転位の移動を妨げる不純物相又は「第二の相」の微粒子、例えば、上述のような分子を生成する。第二の相の析出物を構成するこれらの粒子は、同様にピン止め点として作用する。
【0066】
粒子は、ベース材料と同様のサイズ、又はコヒーレントなサイズであってもよい。粒子及びベース材料のサイズが十分に類似している場合、合金構造は、比較的コヒーレントなままであることができ、例えば、bcc又は立方形態のままであることができる。しかしながら、合金構造の局所領域において、湾曲及び/又は窪みがベース材料層に存在することがある。このメカニズムは、合金構造の「コヒーレンシー硬化(coherency hardening)」と呼ばれることがあり、これは固溶体硬化と同様である。
【0067】
粒子がベース材料とは異なる剪断応力に対する応答を有する場合、この差は、合金構造内の張力及び/又は内部応力を変化させることがある。剪断応力に対するこの応答は、「剪断弾性率」として知られており、粒子は異なる量の応力に耐えることができるので、合金構造が耐えることができる応力の総量を増加させることができる。この析出硬化のメカニズムは、合金構造の「モジュラス硬化(modulus hardening)」と呼ばれることがある。
【0068】
析出硬化の他のタイプは、化学強化及び/又は規則化強化(order strengthening)であってもよく、これらは、それぞれ、表面エネルギー及び/又は合金構造内の粒子の規則化構の変化である。これらのメカニズムの任意の1つ以上は、本開示の態様において、合金における析出硬化の一部として存在し得る。
【0069】
(分散強化)
析出硬化と同様に、分子の性質が変化し、合金構造内でベース材料とは異なるサイズの粒子、分子、及び/又は溶質が散乱することで、合金構造内に転位が生じる可能性がある。これらの粒子は、析出硬化に使用される粒子よりも大きい場合があるが、ベース材料層が互いに対して移動する能力を低下させるメカニズムは、同様である。このメカニズムは、析出硬化と区別するために「分散強化」と呼ばれることがある。分散強化の一種は、合金構造中にベース材料の酸化物を導入することである。
【0070】
(粒界強化)
本開示の一態様では、合金構造の単位胞、例えば、fcc、bcc、又は立方構造の1つの立方体等は、合金構造内の「粒子」又は「結晶子」と呼ばれることがある。溶質は、合金構造内の平均粒径を変化させることによって合金構造に影響を及ぼすことがある。合金構造内の粒子が異なるサイズを有するとき、「粒界」として知られる隣接する粒子間の界面は、合金構造内の転位として作用する。粒界は、転位移動の境界として作用し、粒内のあらゆる転位は、隣接する結晶粒内で応力がどのように蓄積又は緩和されるかに影響を及ぼす。
【0071】
このようなメカニズムは、合金におけるベース材料の「粒界強化」と呼ばれることがある。本開示の一態様では、合金構造内の粒子は、異なる結晶配向、例えば、bcc、fcc、立方晶等を有し得る。これらの異なる配向及びサイズは、合金構造内に粒界を形成する。合金構造が外部応力を受けると、ベース材料層間の滑り運動が起こり得る。しかしながら、粒界は、ベース材料層が、滑り運動が起こり得る均一で平らな表面を有さないため、ベース材料層間の滑り運動に対する障害として作用する。
【0072】
(変態強化)
析出硬化に関して上述したように、ベース材料は、冷却速度、冷却温度、及び/又は他の要因に応じて異なる「相」に冷却することができる。例えば、チタン(Ti)は、α-チタン及びβ-チタンとして知られる2つの異なるタイプの粒子を形成し得る。α-チタンは、溶融チタン金属が低温で結晶化すると形成され、hcp格子構造を形成する。β-チタンは、溶融チタンがより高い温度で結晶化すると形成し、bcc格子構造を形成する。全体的な合金構造内のこれらの異なる構造は、より強い合金を生成する。その理由は、ベース材料層の互いの滑らかな界面は、ベース材料及び/又は溶質の異なる相の粒径及び格子構造の変化によって中断されるからである。合金を強化するためのこのメカニズムは、「変態強化」として知られている。
【0073】
本開示の一態様では、様々なベース材料及び/又は溶質の変形相は、合金の形成中に得られる合金を加熱及び/又は冷却すること、例えば、合金を特定の温度に加熱すること、合金を特定の速度で冷却すること、熱処理等の関数として生じてもよい。本開示の一態様では、所与の合金の3D印刷プロセス中、エネルギービーム源103の温度(例えば、エネルギービーム源103によって送達されるエネルギーの量)、エネルギービームが粉末床121を横切って移動する速度(例えば、偏向器105の速度)、及び/又は他の要因は、粉末床121に所望の温度プロファイルを供給するように選択されてもよい。例えば、限定するものではないが、所与の粉末117の加熱及び/又は冷却は、得られる合金中のベース材料及び/又は溶質の所望の相を生成するために、加熱及び/又は冷却プロファイルに近似するように選択されてもよく、また、異なる粉末117の異なる加熱及び/又は冷却は、その粉末117の得られる合金に所望の相を生成するために、異なる温度プロファイルを生成するように選択されてもよい。本開示の一態様では、PBFシステム100によって送達される温度プロファイルは、また、組み合わせられた印刷/熱処理がより効率的な様式で行われ得るように、任意の印刷後熱処理を考慮してもよい。
【0074】
鉄(Fe)構造において、高レベルの炭素(C)及びマンガン(Mn)の溶質は、合金構造内に2つの異なる粒子を生成する。その2つは、bcc格子構造であるフェライトと、体心正方(bct)格子構造であるマルテンサイトである。Feベースの合金構造内のこれらの異なる格子は、Feを鋼に強化する。その理由は、隣接するフェライト及びマルテンサイト格子構造がベース材料層界面の平面的連続性を破壊し、溶質(C及びMn)が格子間溶質として作用してベース材料層平面をさらに破壊するからである。合金がどのように熱処理されるかに応じて、Feの他の格子構造、例えば、オーステナイト(fcc格子構造を有する)、ベイナイト(マルテンサイトとはわずかに異なるサイズのbct格子構造を有する)、セメンタイト(斜方晶Fe3C)、及び/又は他の化合物も形成されてもよい。
【0075】
Feベースの合金構造におけるセメンタイトの生成等変態強化の形態は、合金構造内の「トリフェライト粒子形成」とも呼ばれることがある。当然、ベース材料がチタンである場合、そのような変態強化は、「トリチタン粒子形成」と呼ばれ得り、ベース材料がアルミニウム(Al)である場合、このような変態強化は、「トリアルミナイド粒子形成」等と呼ばれることがある。2つの格子間溶質を伴う、又は格子間溶質と置換溶質との間にベース材料等の他の形態の粒子が形成されてもよく、このような粒子は、本開示の範囲から逸脱することなく、接頭辞「di-」(例えば、チタン及びホウ素の両方が溶質として使用される、二ホウ化チタン(titanium diboride)等)を有してもよい。ベース材料及び/又は溶質を含む、本質的にそれらからなる、及び/又はそれらからなる、化学的接頭辞、添え字、及び数値呼称で説明される、任意の数の異なる化合物が、本開示の範囲から逸脱することなく、合金内に作成されてもよい。
【0076】
(合金組成物)
本開示の一態様では、1つ以上のベース材料を使用して合金を作製してもよい。例えば、限定するものではないが、アルミニウム(Al)をベース材料として使用してもよい。しかしながら、Alは、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、マグネシウム(Mg)、クロム(Cr)等の他の材料と混合されてもよく、及び/又は他の材料、例えば、高エントロピー合金(HEA)材料等は、ベース材料としては単独で用いることができる。また、他の単一ベース材料も本開示の範囲から逸脱することなく、Alの代わりに使用してもよい。
【0077】
本開示の一態様では、1つ以上の溶質も合金に含まれてもよい。例えば、限定するものではないが、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、ハフニウム(Hf)、エルビウム(Er)、イットリウム(Y)、ガリウム(Ga)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、マンガン(Mn)、銀(Ag)、シリコン(Si)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スカンジウム(Sc)、ランタン(La)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ルビジウム(Ru)、チタン(Ti)、銅(Cu)、鉄(Fe)、及び/又は他の残留元素もしくは化合物が、本開示の範囲から逸脱することなく、含まれてもよい。
【0078】
本開示の一態様では、溶質をベース材料に添加して、ベース材料の引張強度を変化させてもよい。本開示の一態様では、溶質をベース材料に添加して、ベース材料の引張強度を変化させてもよいが、ベース材料に溶質を導入すると、ベース材料の延性を低下させるという対応する効果を有さない場合がある。本開示の一態様では、溶質をベース材料に添加して、加工硬化、固溶体強化、析出硬化、分散強化、粒界強化、及び/又は変態強化(例えば、トリアルミニド粒子形成、トリフェライト粒子形成、及び/又は他の変態の促進)のうちの1つ以上によって、本開示の範囲から逸脱することなく、ベース材料の構造を改質してもよい。
【0079】
(アルミニウムベースの合金)
本開示の一態様では、Alをベース材料として使用して、合金の合金構造を形成してもよい。純粋な微細粒アルミニウムは、fcc格子構造を示し、約70メガパスカル(MPa)の引張強度を有し、約10パーセント(%)の伸びを有することができる。
【0080】
本開示の一態様では、合金は、ベース材料としてのアルミニウムと、3つの溶質、例えば、マグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)、及びマンガン(Mn)とを含むことができ、これらの溶質は、格子間溶質又は置換溶質であっても、あるいはそれらの何らかの組合せであってもよい。このような態様では、ベース材料、すなわちアルミニウムの構造は、Mg、Zr、及びMnの溶質の導入によって改変される。
【0081】
このような態様では、得られる合金の引張強度を80MPa超に増加させるようなパーセンテージで、他の溶質と共に、Mgのパーセンテージ質量を溶質としてAlのベース材料に添加してもよい。得られた合金は、引張強度が向上する可能性があるが、伸び特性が異なる可能性がある。例えば、限定するものではないが、伸びは、9%又は8%まで減少する可能性も、あるいは12%、14%、16%等まで増加する可能性もある。さらに、合金に含まれるMgの割合を変えることによって、得られる合金の引張強度を異なるようにしてもよい。例えば、限定するものではないが、Mgの割合を増加させることにより、引張強度を100MPa超、150MPa超、200MPa超、225MPa超等に増加させてもよい。
【0082】
本明細書で使用するとき、合金中の溶質の質量パーセントは、溶質の質量を合金の質量で除して、100を乗じたものに等しく、そして「重量%」として指定され得る。本開示の一態様では、Mgを、得られる合金に対して0.5~5.0重量%の割合で合金に添加してもよい。Mgは、本開示の範囲から逸脱することなく、他の比率、例えば、得られる合金に対して0.5~4.0重量%、0.5~3.0重量%、0.5~2.0重量%、0.5~1.0重量%等の比率で添加されてもよい。本開示の範囲から逸脱することなく、どの他の溶質が結果として得られる合金に含まれるかに応じて、Mgの他の比率を使用してもよい。
【0083】
本開示の一態様では、溶質としてMgを添加すると、少なくとも固溶体強化を通じて、合金構造を変化させることによって、ベース材料としてのAlの引張強度を変化させる可能性がある。どのベース材料及び/又は他の溶質を結果として得られる合金に使用するかに応じて、Mgは、また、本開示の範囲から逸脱することなく、加工硬化、析出硬化、分散強化、粒界強化、及び/又は変態強化のうちの1つ以上を通して、得られる合金の強度を変化させてもよい。本開示の一態様では、Mgは、置換溶質として作用する可能性がある。
【0084】
本開示の一態様では、少なくとも10%の伸びを保持しながら、得られる合金の引張強度を、得られる合金の合金構造の変更を通じて80MPa超まで増加させるようなパーセンテージで、Zrの質量パーセントを、ベース材料としてのAl及び他の溶質に、溶質として添加してもよいが、異なる伸び特性を有することがある。例えば、限定するものではないが、Zrの添加で、得られる合金の伸びを10%超、例えば、12%、14%、16%等に増加させてもよい。さらに、合金に含まれるZrの割合を変えることによって、得られる合金の引張強度を異なるようにしてもよい。例えば、限定するものではないが、Zrの割合を増加させることにより、引張強度を100MPa超、150MPa超、200MPa超、225MPa超等に増加させてもよい。
【0085】
本開示の一態様では、Zrを、得られる合金に対して0.3~5.0重量%の割合で合金に添加してもよい。Zrは、本開示の範囲から逸脱することなく、他の比率、例えば、得られる合金に対して0.3~4.0重量%、0.3~3.0重量%、0.3~2.0重量%、0.3~1.0重量%等の比率で添加してもよい。本開示の範囲から逸脱することなく、どの他の溶質が結果として得られる合金に含まれるかに応じて、Zrの他の比率を使用してもよい。
【0086】
本開示の一態様では、溶質としてZrを添加すると、少なくとも析出強化を通じて、合金構造を変化させることによって、ベース材料としてのAlの引張強度を変化させる可能性がある。どのベース材料及び/又は他の溶質を結果として得られる合金に使用するかに応じて、Zrは、また、本開示の範囲から逸脱することなく、加工硬化、固溶体強化、分散強化、粒界強化、及び/又は変態強化のうちの1つ以上を通して、得られる合金の強度を変化させてもよい。本開示の一態様では、Zrは、置換溶質として作用する可能性がある。
【0087】
本開示の一態様では、Mnの質量パーセントは、少なくとも10%の伸びを保持しながら、得られる合金の合金構造の変更を通じて、得られる合金の引張強度を80MPa超まで増加させるようなパーセンテージで、ベース材料としてのAl及び他の溶質に溶質として添加されてもよい。本開示の一態様では、Mnを、0.3~5.0重量%の割合で合金に添加してもよいが、異なる伸び特性を有することがある。例えば、限定するものではないが、得られる合金の伸びは、9%、又は8%等まで減少する可能性がある。さらに、合金に含まれるMnの割合を変えることによって、得られる合金の引張強度を異なるようにしてもよい。例えば、限定するものではないが、Mgの割合を増加させることにより、得られる合金の引張強度を100MPa超、150MPa超、200MPa超、225MPa超等に増加させてもよい。
【0088】
本開示の一態様では、Mnを、得られる合金に対して0.3~5.0重量%の割合で合金に添加してもよい。Mnは、本開示の範囲から逸脱することなく、他の比率、例えば、得られる合金に対して0.3~4.0重量%、0.3~3.0重量%、0.3~2.0重量%、0.3~1.0重量%等の比率で添加してもよい。本開示の範囲から逸脱することなく、どの他の溶質が結果として得られる合金に含まれるかに応じて、Mnの他の比率を使用してもよい。
【0089】
本開示の一態様では、溶質としてMnを添加すると、少なくとも固溶体強化を通じて、合金構造を変化させることによって、ベース材料としてのAlの引張強度を変化させる可能性がある。どのベース材料及び/又は他の溶質を結果として得られる合金に使用するかに応じて、Mnは、また、本開示の範囲から逸脱することなく、加工硬化、析出硬化、分散強化、粒界強化、及び/又は変態強化のうちの1つ以上を通して、得られる合金の強度を変化させてもよい。本開示の一態様では、Mnは、置換溶質として作用する可能性がある。
【0090】
本開示の一態様では、ベース材料としてのAlと、溶質としてのMg、Zr及びMnとの合金を、本明細書では「ベース合金」と呼ぶことがある。このベース合金は、他の合金のベースライン混合物として役立つことがある。追加の溶質をこの合金に含めることができ、及び/又はMg、Zr、及び/又はMnの重量%を、他の溶質を含めるために変更してもよい。このような合金は、本開示の範囲内にあるものとして本明細書に記載される。
【0091】
例えば、限定するものではないが、本開示の一態様によるベース合金は、0~7.0重量%の範囲のMg、0~6.5重量%の範囲のMn、0~5.0重量%の範囲のZr、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい。本明細書に記載の重量パーセント範囲は、指定の範囲内で所望に応じて変更してもよい。様々な実施形態は、例えば、0.1~3.0重量%の範囲のMg、0.1~1.5重量%の範囲のMn、0.3~2.5重量%の範囲のZr、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい。様々な実施形態は、例えば、1.0~4.5重量%の範囲のMg、0.1~1.3重量%の範囲のMn、0.1~1.8重量%の範囲のZr、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい。様々な実施形態は、例えば、2.0~5.5重量%の範囲のMg、0.1~0.6重量%の範囲のMn、0.1~0.8重量%の範囲のZr、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい。ベース材料は、材料の組合せを含んでもよいが、本開示の一態様では、ベース材料は、単一の材料、例えば、アルミニウム、鉄、コバルト等であってもよい。
【0092】
本開示の一態様では、溶質重量パーセント範囲のうちの1つを低減及び/又は制限することは、所与の合金中の1つ以上の他の溶質の重量パーセント範囲を増加及び/又は低減させる可能性がある。例えば、限定するものではないが、Mnは、合金中に0.5~1.5重量%の範囲で含まれてもよい。溶質としてのMnのそのような低減及び/又は制限によって、異なる量のMgをその合金中に含むことが可能になることがあり、例えば、範囲は、当初の範囲0~7.0重量%から範囲2.5~9.0重量%にシフトしてもよい。そのような合金は、本開示の範囲から逸脱することなく、Zrの当初の重量パーセント範囲を可能にし、特定の合金が含むことができるZrの量を1.0~4.0重量%に変更してもよい。
【0093】
(イットリウム)
本開示の一態様では、ある質量パーセントのイットリウム(Y)を、本明細書に記載のAl、Mg、Zr、及びMnのベース合金に溶質として添加してもよい。ベース合金に溶質としてYを含めることによって、また、少なくとも10%の伸びを保持しながら、得られる合金の合金構造の変更を通じて、得られる合金の引張強度を80MPa超に向上させることができる可能性があるが、伸び特性が異なる可能性もある。例えば、限定するものではないが、伸びは、9%、又は8%等まで減少する可能性がある。さらに、合金に含まれるYの割合を変えることにより、得られる合金の引張強度を異なるようにしてもよい。例えば、限定するものではないが、Yの割合を増加させることにより、引張強度を100MPa超、150MPa超、200MPa超、225MPa超等に増加させてもよい。得られる合金は、引張強度を保持しながら、低減された伸びを有することがある。例えば、限定するものではないが、伸びは、8%まで減少する可能性があり、強度は150MPaまで増加する可能性がある。
【0094】
本開示の一態様では、溶質としてYを添加すると、少なくとも固溶体強化を通じて、合金構造を変化させることによって、ベース材料としてのAlの引張強度を変化させる可能性がある。どのベース材料を合金に使用するか、及び/又はどの他の溶質が合金に含まれるかに応じて、Yは、また、本開示の範囲から逸脱することなく、加工硬化、析出硬化、固溶体強化、分散強化、粒界強化、変態強化(例えば、トリアルミネート粒子形成及び/又は他の変態の促進による)のうちの1つ以上を通して、合金の強度を変化させてもよい。本開示の一態様では、Yは、置換溶質として作用する可能性がある。
【0095】
例えば、限定するものではないが、本開示の一態様による合金は、0~3.0重量%の範囲のYを添加して、ベース合金溶質に0~7.0重量%の範囲のMgと、0~6.5重量%の範囲のMnと、0~5.0重量%の範囲のZrと、合金の残部としてのベース材料を含んでもよい。本明細書に記載の重量パーセント範囲は、指定の範囲内で所望に応じて変更してもよい。様々な実施形態は、例えば、0.1~3.0重量%の範囲のMg、0.1~1.5重量%の範囲のMn、0.3~2.5重量%の範囲のZr、0.01~0.2重量%の範囲のY、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい。様々な実施形態は、例えば、1.0~4.5重量%の範囲のMg、0.1~1.3重量%の範囲のMn、0.1~1.8重量%の範囲のZr、0.02~0.3重量%の範囲のY、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい。様々な実施形態は、例えば、2.0~5.5重量%の範囲のMg、0.1~0.6重量%の範囲のMn、0.1~0.8重量%の範囲のZr、0.23~1.3重量%の範囲のY、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい。ベース材料は、材料の組合せを含んでもよいが、本開示の一態様では、ベース材料は、単一の材料、例えば、アルミニウム、鉄、コバルト等であってもよい。
【0096】
本開示の一態様では、溶質重量パーセント範囲のうちの1つを低減及び/又は制限することは、所与の合金中の1つ以上の他の溶質の重量パーセント範囲を増加及び/又は低減させる可能性がある。例えば、限定するものではないが、Mnは、合金中に0.8~2.0重量%の範囲で含まれてもよい。溶質としてのMnのそのような低減及び/又は制限によって、異なる量のMgをその合金中に含むことが可能になることがあり、例えば、範囲は、当初の範囲0~7.0重量%から範囲2.5~9.0重量%にシフトしてもよい。そのような合金は、本開示の範囲から逸脱することなく、Zrの当初の重量パーセント範囲を可能にし、特定の合金が含むことができるZrの量を1.0~4.0重量%に変更してもよく、そのような合金に含まれ得るYの量を0.3~3.3重量%に変更してもよい。
【0097】
本開示の範囲から逸脱することなく、どの他の溶質が最終的な合金に含まれるかに応じて、Yの他の比例添加量を使用してもよい。
【0098】
本開示の一態様では、溶質としてYを添加すると、少なくとも固溶体強化を通じて、合金構造を変化させることによって、ベース材料としてのAlの引張強度を変化させる可能性がある。どのベース材料を合金に使用するか、及び/又はどの他の溶質が最終的な合金に含まれるかに応じて、Yは、また、本開示の範囲から逸脱することなく、加工硬化、析出硬化、固溶体強化、分散強化、粒界強化、変態強化(例えば、トリアルミネート粒子形成及び/又は他の変態の促進による)のうちの1つ以上を通して、得られる合金の強度を変化させてもよい。本開示の一態様では、Yは、置換溶質として作用する可能性がある。
【0099】
(ハフニウム)
本開示の一態様では、ある質量パーセントのハフニウム(Hf)を、本明細書に記載のAl、Mg、Zr、及びMnのベース合金に溶質として添加してもよい。ベース合金に溶質としてHfを含めることによって、また、少なくとも10%の伸びを保持しながら、得られる合金の合金構造の変更を通じて、得られる合金の引張強度を80MPa超に向上させることができる可能性があるが、伸び特性が異なる可能性もある。例えば、限定するものではないが、伸びは、9%又は8%まで減少する可能性も、あるいは12%、14%、16%等まで増加する可能性もある。
【0100】
さらに、合金に含まれるHfの割合を変えることにより、得られる合金の引張強度を異なるようにしてもよい。例えば、限定するものではないが、Hfの割合を増加させることにより、引張強度を100MPa超、150MPa超、200MPa超、215MPa超等に増加させてもよい。得られた合金は、引張強度が向上する可能性があるが、伸び特性が低下する可能性がある。例えば、限定するものではないが、得られる合金の引張強度は、150MPaまで増加する可能性があり、伸びは、8%まで減少する可能性がある。
【0101】
例えば、限定するものではないが、本開示の一態様による合金は、0~7.0重量%の範囲のHfを添加して、ベース合金溶質に0~7.0重量%の範囲のMg、0~6.5重量%の範囲のMn、0~5.0重量%の範囲のZr、及び合金の残部としてのベース材料を含んでもよい。本明細書に記載の重量パーセント範囲は、指定の範囲内で所望に応じて変更してもよい。様々な実施形態は、例えば、0.1~3.0重量%の範囲のMg、0.1~1.5重量%の範囲のMn、0.3~1.5重量%の範囲のZr、0.1~0.8重量%の範囲のHf、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい。様々な実施形態は、例えば、1.0~3.5重量%の範囲のMg、0.2~1.3重量%の範囲のMn、0.1~1.8重量%の範囲のZr、0.1~1.0重量%の範囲のHf、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい。様々な実施形態は、例えば、2.0~5.5重量%の範囲のMg、0.1~1.8重量%の範囲のMn、0.1~1.4重量%の範囲のZr、0.5~1.5重量%の範囲のHf、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい。ベース材料は、材料の組合せを含んでもよいが、本開示の一態様では、ベース材料は、単一の材料、例えば、アルミニウム、鉄、コバルト等であってもよい。
【0102】
本開示の範囲から逸脱することなく、どの他の溶質が最終的な合金に含まれるかに応じて、Hfの他の比例添加量を使用してもよい。
【0103】
本開示の一態様では、溶質としてHfを添加すると、少なくとも析出硬化及びトリアルミニド粒子形成の促進(変態強化)の少なくとも一方を通じて、合金構造を変化させることによって、ベース材料としてのAlの引張強度を変化させる可能性がある。どのベース材料を得られる合金に使用するかに応じて、Hfは、また、本開示の範囲から逸脱することなく、加工硬化、析出硬化、固溶体強化、分散強化、粒界強化、及び/又は変態強化のうちの1つ以上を通して、得られる合金の強度を変化させてもよい。本開示の一態様では、Hfは、置換溶質として作用する可能性がある。
【0104】
(ガリウム)
本開示の一態様では、ある質量パーセントのガリウム(Ga)を、本明細書に記載のAl、Mg、Zr、及びMnのベース合金に溶質として添加してもよい。ベース合金に溶質としてGaを含めることによって、また、少なくとも10%の伸びを保持しながら、得られる合金の合金構造の変更を通じて、得られる合金の引張強度を80MPa超に向上させることができる可能性があるが、伸び特性が異なる可能性もある。例えば、限定するものではないが、伸びは、9%又は8%まで減少する可能性も、あるいは12%、14%、16%等まで増加する可能性もある。
【0105】
さらに、合金に含まれるGaの割合を変えることにより、得られる合金の引張強度を異なるようにしてもよい。例えば、限定するものではないが、Gaの割合を増加させることにより、引張強度を100MPa超、150MPa超、200MPa超、215MPa超等に増加させてもよい。得られた合金は、引張強度が向上する可能性があるが、伸び特性が低下する可能性がある。例えば、限定するものではないが、得られる合金の引張強度は、150MPaまで増加する可能性があり、伸びは、8%まで減少する可能性がある。
【0106】
例えば、限定するものではないが、本開示の一態様による合金は、0~35.0重量%の範囲のGaを添加して、ベース合金溶質に0~7.0重量%の範囲のMg、0~6.5重量%の範囲のMn、0~5.0重量%の範囲のZr、及び合金の残部としてのベース材料を含んでもよい。本明細書に記載の重量パーセント範囲は、指定の範囲内で所望に応じて変更してもよい。様々な実施形態は、例えば、0.1~3.5重量%の範囲のMg、0.1~1.5重量%の範囲のMn、0.5~2.6重量%の範囲のZr、7.0~20.0重量%の範囲のGa、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい。様々な実施形態は、例えば、1.8~4.9重量%の範囲のMg、0.4~1.3重量%の範囲のMn、0.5~2.5重量%の範囲のZr、15.0~25.0重量%の範囲のGa、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい。様々な実施形態は、例えば、2.5~5.5重量%の範囲のMg、0.1~1.6重量%の範囲のMn、0.4~1.8重量%の範囲のZr、0.5~8.0重量%の範囲のGa、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい。ベース材料は、材料の組合せを含んでもよいが、本開示の一態様では、ベース材料は、単一の材料、例えば、アルミニウム、鉄、コバルト等であってもよい。
【0107】
本開示の範囲から逸脱することなく、どの他の溶質が最終的な合金に含まれるかに応じて、Gaの他の比例添加量を使用してもよい。
【0108】
本開示の一態様では、溶質としてGaを添加すると、少なくとも固溶体強化を通じて、合金構造を変化させることによって、ベース材料としてのAlの引張強度を変化させる可能性がある。どのベース材料及び/又は他の溶質を結果として得られる合金に使用するかに応じて、Gaは、また、本開示の範囲から逸脱することなく、加工硬化、析出硬化、固溶体強化、分散強化、粒界強化、及び/又は変態強化のうちの1つ以上を通して、得られる合金の強度を変化させてもよい。本開示の一態様では、Gaは、置換溶質として作用する可能性がある。
【0109】
(チタン/ホウ素)
本開示の一態様では、ある質量パーセントのチタン(Ti)及びある質量パーセントのホウ素(B)を、本明細書に記載のAl、Mg、Zr、及びMnのベース合金に溶質として添加してもよい。ベース合金に溶質としてTi及びBを含めることによって、また、少なくとも10%の伸びを保持しながら、得られる合金の合金構造の変更を通じて、得られる合金の引張強度を80MPa超に向上させることができる可能性があるが、伸び特性が異なる可能性もある。例えば、限定するものではないが、伸びは、9%又は8%まで減少する可能性も、あるいは12%、14%、16%等まで増加する可能性もある。
【0110】
さらに、合金に含まれるTi及びBの割合を変えることにより、得られる合金の引張強度を異なるようにしてもよい。例えば、限定するものではないが、Ti及びBの割合を増加させることにより、引張強度を100MPa超、150MPa超、200MPa超、225MPa超等に増加させてもよい。得られた合金は、引張強度が向上する可能性があるが、伸び特性が低下する可能性がある。例えば、限定するものではないが、得られる合金の引張強度は、150MPaまで増加する可能性があり、伸びは、8%まで減少する可能性がある。
【0111】
例えば、限定するものではないが、本開示の一態様による合金は、0~15.0重量%の範囲のTi及び0~7.0重量%の範囲のBを添加して、ベース合金溶質に0~7.0重量%の範囲のMg、0~6.5重量%の範囲のMn、0~5.0重量%の範囲のZr、及び合金の残部としてのベース材料を含んでもよい(いくつかの実施形態では、0~2.5重量%の範囲のSiを含んでもよい)。本明細書に記載の重量パーセント範囲は、指定の範囲内で所望に応じて変更してもよい。様々な実施形態は、例えば、1.5~5.5重量%の範囲のMg、0.2~1.5重量%の範囲のMn、0.3~2.5重量%の範囲のZr、12.0~18.0重量%の範囲のTi、3.0~8.0重量%の範囲のB、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい(いくつかの実施形態では、0.5~1.8重量%の範囲のSiを含むことができる)。様々な実施形態は、例えば、1.5~5.5重量%の範囲のMg、0.2~1.4重量%の範囲のMn、0.4~1.9重量%の範囲のZr、0.2~0.4重量%の範囲のTi、0.005~0.1重量%の範囲のB、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい(いくつかの実施形態では、0.5~1.8重量%の範囲のSiを含むことができる)。様々な実施形態は、例えば、2.0~5.5重量%の範囲のMg、0.1~0.6重量%の範囲のMn、0.1~0.8重量%の範囲のZr、5.5~10.0重量%の範囲のTi、3.5~6.0重量%の範囲のB、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい(いくつかの実施形態では、0.5~1.8重量%の範囲のSiを含むことができる)。ベース材料は、材料の組合せを含んでもよいが、本開示の一態様では、ベース材料は、単一の材料、例えば、アルミニウム、鉄、コバルト等であってもよい。
【0112】
本開示の範囲から逸脱することなく、どの他の溶質が最終的な合金に含まれるかに応じて、Ti及びBの他の比例添加量を使用してもよい。
【0113】
本開示の一態様では、溶質としてTi及びBを添加すると、少なくとも析出強化及び粒界強化を通じて、合金構造を変化させることによって、ベース材料としてのAlの引張強度を変化させてもよい。どのベース材料及び/又は他の溶質を結果として得られる合金に使用するかに応じて、Ti及びBは、また、本開示の範囲から逸脱することなく、加工硬化、析出硬化、固溶体強化、分散強化、粒界強化、及び/又は変態強化のうちの1つ以上を通して、得られる合金の強度を変化させてもよい。本開示の一態様では、Tiは、置換溶質として作用する可能性があり、Bは格子間溶質として作用する。
【0114】
(チタン/バナジウム)
本開示の一態様では、ある質量パーセントのチタン(Ti)及びある質量パーセントのバナジウム(V)を、本明細書に記載のAl、Mg、Zr、及びMnのベース合金に溶質として添加してもよい。ベース合金に溶質としてTi及びVを含めることによって、また、少なくとも10%の伸びを保持しながら、得られる合金の合金構造の変更を通じて、得られる合金の引張強度を80MPa超に向上させることができる可能性があるが、伸び特性が異なる可能性もある。例えば、限定するものではないが、伸びは、9%又は8%まで減少する可能性も、あるいは12%、14%、16%等まで増加する可能性もある。
【0115】
さらに、合金に含まれるTi及びVの割合を変えることにより、得られる合金の引張強度を異なるようにしてもよい。例えば、限定するものではないが、Ti及びVの割合を増加させることにより、引張強度を100MPa超、150MPa超、200MPa超、215MPa超等に増加させてもよい。得られた合金は、引張強度が向上する可能性があるが、伸び特性が低下する可能性がある。例えば、限定するものではないが、得られる合金の引張強度は、150MPaまで増加する可能性があり、伸びは、8%まで減少する可能性がある。
【0116】
例えば、限定するものではないが、本開示の一態様による合金は、0~15.0重量%の範囲のTi及び0~5.0重量%の範囲のVを添加して、ベース合金溶質に0~7.0重量%の範囲のMg、0~6.5重量%の範囲のMn、0~5.0重量%の範囲のZr、及び合金の残部としてのベース材料を含んでもよい。本明細書に記載の重量パーセント範囲は、指定の範囲内で所望に応じて変更してもよい。様々な実施形態は、例えば、0.1~3.0重量%の範囲のMg、0.1~1.5重量%の範囲のMn、0.3~2.5重量%の範囲のZr、8.0~13.5重量%の範囲のTi、5.0~8.5重量%の範囲のV、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい。様々な実施形態は、例えば、1.0~5.5重量%の範囲のMg、0.1~1.3重量%の範囲のMn、0.1~1.8重量%の範囲のZr、0.2~0.45重量%の範囲のTi、0.05~0.7重量%の範囲のV、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい。様々な実施形態は、例えば、1.0~5.5重量%の範囲のMg、0.1~1.3重量%の範囲のMn、0.1~1.8重量%の範囲のZr、10.0~15.0重量%の範囲のTi、1.5~4.0重量%の範囲のV、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい。ベース材料は、材料の組合せを含んでもよいが、本開示の一態様では、ベース材料は、単一の材料、例えば、アルミニウム、鉄、コバルト等であってもよい。
【0117】
本開示の範囲から逸脱することなく、どの他の溶質が最終的な合金に含まれるかに応じて、Ti及びVの他の比例添加量を使用してもよい。
【0118】
本開示の一態様では、溶質としてTi及びVを添加すると、少なくとも析出強化及び粒界強化を通じて、合金構造を変化させることによって、ベース材料としてのAlの引張強度を変化させてもよい。どのベース材料及び/又は他の溶質を結果として得られる合金に使用するかに応じて、Ti及びVは、また、本開示の範囲から逸脱することなく、加工硬化、析出硬化、固溶体強化、分散強化、粒界強化、及び/又は変態強化のうちの1つ以上を通して、得られる合金の強度を変化させてもよい。本開示の一態様では、Ti及びVは、置換溶質として作用する可能性がある。
【0119】
本開示の一態様では、溶質としてTi及びVを添加すると、少なくとも析出強化及び粒界強化を通じて、合金構造を変化させることによって、ベース材料としてのAlの引張強度を変化させてもよい。どのベース材料及び/又は他の溶質を結果として得られる合金に使用するかに応じて、Ti及びVは、また、本開示の範囲から逸脱することなく、加工硬化、析出硬化、固溶体強化、分散強化、粒界強化、及び/又は変態強化のうちの1つ以上を通して、得られる合金の強度を変化させてもよい。本開示の一態様では、Ti及びVは、置換溶質として作用する可能性がある。
【0120】
(エルビウム)
本開示の一態様では、ある質量パーセントのエルビウム(Er)を、本明細書に記載のAl、Mg、Zr、及びMnのベース合金に溶質として添加してもよい。ベース合金に溶質としてErを含めることによって、また、少なくとも10%の伸びを保持しながら、得られる合金の合金構造の変更を通じて、得られる合金の引張強度を80MPa超に向上させることができる可能性があるが、伸び特性が異なる可能性もある。例えば、限定するものではないが、伸びは、9%又は8%まで減少する可能性も、あるいは12%、14%、16%等まで増加する可能性もある。
【0121】
さらに、合金に含まれるErの割合を変えることにより、得られる合金の引張強度を異なるようにしてもよい。例えば、限定するものではないが、Erの割合を増加させることにより、引張強度を100MPa超、150MPa超、200MPa超、215MPa超等に増加させてもよい。得られた合金は、引張強度が向上する可能性があるが、伸び特性が低下する可能性がある。例えば、限定するものではないが、得られる合金の引張強度は、150MPaまで増加する可能性があり、伸びは、8%まで減少する可能性がある。
【0122】
例えば、限定するものではないが、本開示の一態様による合金は、0~15.0重量%の範囲のErを添加して、ベース合金溶質に0~7.0重量%の範囲のMg、0~6.5重量%の範囲のMn、0~5.0重量%の範囲のZr、及び合金の残部としてのベース材料を含んでもよい。本明細書に記載の重量パーセント範囲は、指定の範囲内で所望に応じて変更してもよい。様々な実施形態は、例えば、0.1~3.0重量%の範囲のMg、0.1~1.5重量%の範囲のMn、0.3~2.5重量%の範囲のZr、12.0~15.0重量%の範囲のEr、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい。様々な実施形態は、例えば、1.0~5.5重量%の範囲のMg、0.1~1.3重量%の範囲のMn、0.1~1.8重量%の範囲のZr、2.0~7.0重量%の範囲のEr、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい。様々な実施形態は、例えば、2.0~5.5重量%の範囲のMg、0.1~1.4重量%の範囲のMn、0.1~1.8重量%の範囲のZr、9.0~13.0重量%の範囲のEr、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい。ベース材料は、材料の組合せを含んでもよいが、本開示の一態様では、ベース材料は、単一の材料、例えば、アルミニウム、鉄、コバルト等であってもよい。
【0123】
本開示の範囲から逸脱することなく、どの他の溶質が最終的な合金に含まれるかに応じて、Erの他の比例添加量を使用してもよい。
【0124】
本開示の一態様では、溶質としてErを添加すると、析出硬化及びトリアルミニド粒子形成の促進(変態強化)の少なくとも一方を通じて、合金構造を変化させることによって、ベース材料としてのAlの引張強度を変化させてもよい。どのベース材料及び/又は他の溶質を結果として得られる合金に使用するかに応じて、Erは、また、本開示の範囲から逸脱することなく、加工硬化、析出硬化、固溶体強化、分散強化、粒界強化、及び/又は変態強化のうちの1つ以上を通して、得られる合金の強度を変化させてもよい。本開示の一態様では、Erは、置換溶質として作用する可能性がある。
【0125】
(リチウム/銅/銀)
本開示の一態様では、ある質量パーセントのリチウム(Li)、ある質量パーセントの銅(Cu)、及びある質量パーセントの銀(Ag)を、本明細書に記載のAl、Mg、Zr、及びMnのベース合金に溶質として添加してもよい。ベース合金に溶質としてLi、Cu、及びAgを含めることによって、また、少なくとも10%の伸びを保持しながら、得られる合金の合金構造の変更を通じて、得られる合金の引張強度を80MPa超に向上させることができる可能性があるが、伸び特性が異なる可能性もある。例えば、限定するものではないが、伸びは、9%又は8%まで減少する可能性も、あるいは12%、14%、16%等まで増加する可能性もある。
【0126】
さらに、合金に含まれるLi、Cu及びAgの割合を変えることにより、得られる合金の引張強度を異なるようにしてもよい。例えば、限定するものではないが、Li、Cu及びAgの割合を増加させることにより、引張強度を100MPa超、150MPa超、200MPa超、215MPa超等に増加させてもよい。得られた合金は、引張強度が向上する可能性があるが、伸び特性が低下する可能性がある。例えば、限定するものではないが、得られる合金の引張強度は、150MPaまで増加する可能性があり、伸びは、8%まで減少する可能性がある。
【0127】
例えば、限定するものではないが、本開示の一態様による合金は、0~3.0重量%の範囲のLi、0~2.0重量%の範囲のAg、及び0~10.0重量%の範囲のCuを添加して、ベース合金溶質に0~7.0重量%の範囲のMg、0~6.5重量%の範囲のMn、0~5.0重量%の範囲のZr、及び合金の残部としてのベース材料を含んでもよい(いくつかの実施形態では、0~1.0重量%の範囲のSi及び/又は0~1.5重量%の範囲のTiを含んでもよい)。本明細書に記載の重量パーセント範囲は、指定の範囲内で所望に応じて変更してもよい。様々な実施形態は、0.2~2.0重量%の範囲のLi、0.05~1.0重量%の範囲のAg、及び1.0~7.0重量%の範囲のCuを添加して、例えば、1.5~5.5重量%の範囲のMg、0.1~1.5重量%の範囲のMn、0.3~2.5重量%の範囲のZr、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい(いくつかの実施形態では、0~1.0重量%の範囲のSi及び/又は0~1.5重量%の範囲のTiを含んでもよい)。様々な実施形態は、0.2~2.0重量%の範囲のLi、0.05~1.0重量%の範囲のAg、及び6.0~10.0重量%の範囲のCuを添加して、例えば、3.5~7.0重量%の範囲のMg、0.5~2.5重量%の範囲のMn、0.3~1.5重量%の範囲のZr、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい(いくつかの実施形態では、0~1.0重量%の範囲のSi及び/又は0~1.5重量%の範囲のTiを含んでもよい)。様々な実施形態は、0.2~1.0重量%の範囲のLi、0.05~1.0重量%の範囲のAg、及び0.3~3.0重量%の範囲のCuを添加して、例えば、1.5~5.5重量%の範囲のMg、3.0~4.0重量%の範囲のMn、0.8~3.0重量%の範囲のZr、及び合金の残部としての1つ以上のベース材料を含んでもよい(いくつかの実施形態では、0~1.0重量%の範囲のSi及び/又は0~1.5重量%の範囲のTiを含んでもよい)。ベース材料は、材料の組合せを含んでもよいが、本開示の一態様では、ベース材料は、単一の材料、例えば、アルミニウム、鉄、コバルト等であってもよい。
【0128】
本開示の範囲から逸脱することなく、どの他の溶質が最終的な合金に含まれるかに応じて、Li、Cu及びAgの他の比例添加量を使用してもよい。
【0129】
本開示の一態様では、溶質としてLi、Cu、及びAgを添加すると、析出硬化及びトリアルミニド粒子形成の促進(変態強化)の少なくとも一方を通じて、合金構造を変化させることによって、ベース材料としてのAlの引張強度を変化させてもよい。どのベース材料及び/又は他の溶質を結果として得られる合金に使用するかに応じて、Li、Cu、及びAgはまた、本開示の範囲から逸脱することなく、加工硬化、析出硬化、固溶体強化、分散強化、粒界強化、及び/又は変態強化のうちの1つ以上を通して、得られる合金の強度を変化させてもよい。本開示の一態様では、Liは、格子間溶質として作用する可能性があり、Cu及びAgは、置換溶質として作用する可能性がある。
【0130】
(他のアルミニウム合金との組合せ)
図3は、本開示の一態様に従う構造の単位胞を示す。
【0131】
単位胞300は、合金構造の単一の立方体を示し、これは、
図3に示すように、面心立方(fcc)構造である。理解を容易にするために、平面302が示されているが、単位胞(unit cell)300は、各交点において互いにほぼ垂直な6つの平面を有する。他の単位胞300、例えば、bcc、立方体、hcp等も、本開示の範囲から逸脱することなく、可能である。
【0132】
平面302は、5つの原子位置によって記述され、その5つは、平面302の「コーナー」を画定する位置304、位置306、位置308、及び位置310と、観察者に最も近い単位胞の面内の平面302の「中心」を画定する位置312である。合金構造では、単位胞300の大きなアレイが合金構造を画定するように、1つの単位胞300が別の単位胞300等に隣接していることもある。
【0133】
元素314は、この例では、平面302の位置304、306、308、及び310を含む単位胞300のコーナーのそれぞれに位置する。元素316は、位置312を含む6つの平面のそれぞれの中心に位置する。すなわち、
図3に示すように、位置304~310は、元素314によって占有され、位置312は、元素316によって占有される。元素314は、元素316と同じ材料/元素であっても、あるいは得られる合金の組成に応じて異なる材料/元素であってもよい。純粋な材料、例えば、アルミニウムの単位胞300を有する合金構造では、各位置304~310及び位置312は、アルミニウムによって占められる。置換溶質を純アルミニウムのための合金材料として導入した場合、1つ以上の位置304~312は、合金材料、例えば、バナジウム、クロム等によって占有されてもよい。格子間溶質を純アルミニウムのための合金材料として添加した場合、そのような溶質は、例えば、位置318に位置してもよい。位置318は、位置306と位置304との間にあり、本開示の一態様では、平面302内にある。格子間溶質のための他の位置も、本開示の範囲から逸脱することなく可能である。
【0134】
図3に示すようにfcc単位胞を有するアルミニウムは、様々な溶質と合金化されている。いくつかのアルミニウム合金は、どの溶質が命名される合金に含まれるかに基づいて、標準化され、命名されている。例えば、限定するものではないが、国際合金指定システム(IADS)は、アルミニウム合金について広く受け入れられている命名スキームであり、各合金は4桁の数字を使用して言及される。数字の一桁目は、合金に含まれる主要な溶質元素を示す。二桁目は、その溶質合金の任意の変形を示し、三桁目及び四桁目は、その系列における特定の合金を識別する。
【0135】
IADSにおいて命名された(すなわち、番号付けされた)アルミニウム合金に関して、1000系の合金は、重量%による本質的に純アルミニウム含有量であり、他の数字は、そのような合金に関する様々な用途を表す。2000系のアルミニウム合金はCuと合金化され、3000系のアルミニウム合金はMnと合金化され、4000系のアルミニウム合金はシリコン(Si)と合金化され、5000系のアルミニウム合金はMgと合金化され、6000系のアルミニウム合金はMgとSiと合金化され、7000系のアルミニウム合金はZnと合金化される。また、8000系アルミニウム合金は、他の系指定によってカバーされない他の元素又は元素の組合せと合金化される。限定ではなく、例として、一般的なアルミニウム合金は、「6061」と呼ばれ、IADS命名スキームによれば、主要な合金溶質としてMg及びSiを有する。しかしながら、6061は、鉄(Fe)、銅(Cu)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)等の他の合金化溶質を様々な割合で有しており、「不純物」と呼ばれ得る他の溶質を一定割合未満にすることを許容する。6061に存在する溶質は、用途、製造業者、合金化公差、及び/又は他の理由に応じて、重量%の範囲を有することがある。
【0136】
しかしながら、そのような合金を作成する製造プロセスが、製錬、鍛造、及び/又は鋳造から3D印刷に変更されると、合金構造及び/又は合金構造内の単位胞300の形成は、局所化される。3D印刷は、任意の所与の時間に合金構造全体の小さな部分にのみ熱エネルギーを印加するので、単位胞300の形成は、例えば、鋳造片における全体的なスケールではなく、ビルドピース109における局所的なスケールで起こる。ビルドピース109の局所的対全体的熱エネルギー適用及び局所的対全体的冷却の結果として、アルミニウムのいくつかの命名された一般的な合金は、ビルドピース109に微小割れ目及び/又は他の有害な構造的欠陥を導入することなく、3D印刷することが困難であることが分かった。
【0137】
本開示の一態様では、本明細書で説明される合金のうちのいずれか1つ以上は、既知のアルミニウム合金と組み合わせてもよく、例えば、合金2195、合金2218、合金2519、合金6060、合金6061、合金7010等と組み合わせてもよく、これらは、3D印刷が困難なアルミニウム合金の3D印刷を可能にしてもよい。例えば、限定ではないが、合金6061(又は任意の他のIADSで命名された合金)及び本開示の態様に従って説明される合金の粉末形態は、一緒に混合され、ホッパー115の中に配置されてもよく、本開示の
図1A~1Eに説明される構築プロセスは、溶融されると新しい合金を生成することができる、合金のその組み合わせのために行われてもよい。そのような態様では、IADS番号付きの合金と同様の特性を有し得る混合金属複合材、ハイブリッド合金、及び/又は準合金(quasi-alloy)が作製され得る。
【0138】
本開示の一態様では、そのような合金が
図1A~
図1Eに関して説明したように3D印刷されるとき、結果として得られる合金を作成するために使用される粉末117中の溶質のいくつかは、本開示の範囲から逸脱することなく、得られる合金から蒸発及び/又は別様に除去されてもよい。そのような態様では、個々の溶質及び/又はベース材料の割合は、粉末117に使用されるものから変化してもよい。そのような態様では、本明細書に記載のパーセンテージは、最終的に印刷された材料中のベース材料及び/又は溶質の最終的なパーセンテージを意味することもあり、及び/又は粉末117中のベース材料及び/又は溶質のパーセンテージを表すこともある。
【0139】
本開示の一態様では、異なるパーセンテージの各合金粉末材料を使用してもよく、例えば、ある実施形態は、50%の本開示のベース合金及び50%の合金2195を含むことができ、別の実施形態は、25%の本開示のベース合金、25%の合金6061、25%の本開示のTi-V合金、及び25%の別の合金を含むこと等ができる。
【0140】
例えば、限定するものではないが、本開示の一態様では、合金2195は、本明細書に記載の1つ以上の合金と組み合わせてもよい。合金2195は、合金2195に含まれる多くの溶質が存在するという点で、比較的複雑な合金である。IADS命名スケジュールと一致して、合金2195は、主要な合金溶質としてCuを有する。しかしながら、合金2195は、また、例えば、最終合金材料の特定の重量%以下のリチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、シリコン(Si)、及び亜鉛(Zn)と、最終合金材料の特定の重量%未満の他の残留溶質とを含んでもよく、それでも、依然として「合金2195」という呼称を保持している。合金2195と本明細書に記載される1つ以上の合金とのそのような組合せにおける溶質の総パーセンテージは、本開示の範囲から逸脱することなく、合金全体の最大重量%で、例えば、20%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下等を有してもよい。
【0141】
本開示の一態様では、粉末、酸化物、コンポーネント、及び/又はベース合金(すなわち、Alをベース材料とし、Mg、Zr、Mnを溶質とし、引張強度が80MPa以上、伸びが10%以上の合金である)に含まれる元素の前駆体は、この粉末の混合物が本開示の
図1A~
図1Eに記載される技法等の3D印刷技法を使用して印刷され得るように、ベース材料の粉末及び合金2195の溶質と混合されてもよい。ベース合金及び合金2195のパーセンテージは、粉末117の異なる混合物において変化してもよく、例えば、粉末117のある混合物は、50%のベース合金粉末117及び50%の合金2195粉末を含んでもよく、粉末117の別の混合物は、25%のベース合金粉末117及び75%の合金2195粉末を含んでもよく、粉末117のさらに別の混合物は、本開示の範囲から逸脱することなく、10%のベース合金粉末117及び90%の合金2195粉末117を含んでもよい等である。全ての溶質の総パーセンテージは、本開示の範囲から逸脱することなく、合金全体の最大重量%で、例えば、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、9重量%以下等を有してもよい。
【0142】
本開示の一態様では、ベース合金粉末117と合金2195粉末117とを均質な混合物にブレンドすることによって、ベース合金及び合金2195の組み合わせである合金をもたらす3D印刷が可能になり得る。得られる合金に組み合わされるベース合金及び合金2195の割合に応じて、最終材料の強度及び/又は延性は、合金2195と同様であってもよく、したがって、得られる合金は、性能特性に関して合金2195と同様の合金を3D印刷することを可能にする可能性がある。
【0143】
本開示の別の態様では、最終材料の性能特性を所与の用途に合わせて調整し得るように、ベース合金を複数のIADS名合金とブレンドしてもよい。本開示のベース合金、本開示のベース合金の変形例、及びIADSで命名された合金を使用して、粉末形態の合金をブレンドして組み合わせ粉末117を作成する多くの可能性が、本開示の範囲内で可能である。
【0144】
図4は、本開示の一態様に従って、コンポーネントを付加製造するための例示的な方法400を示すフロー図を示す。付加製造は、三次元印刷であってもよいし、あるいは別の付加製造プロセスであってもよい。
図4の例示的な機能を少なくとも部分的に実行するオブジェクトは、例えば、コンピュータ150及びその中の1つ以上のコンポーネント、
図1A~
図1Eに示すような三次元プリンタ、並びに上で参照した材料を形成するために使用され得る他のオブジェクトを含んでもよい。
【0145】
図4で識別されるステップは、本質的に、例示的であり、異なる順序又はステップのシーケンス、及び追加又は代替のステップが、同様の結果に到達するように、本開示で検討されるように着手されてもよいことを理解されたい。
【0146】
402において、ベース金属を第一の量のマグネシウム(Mg)、第二の量のジルコニウム(Zr)、及び第三の量のマンガン(Mn)と組み合わせて、ベース物質を生成してもよい。ベース金属は、アルミニウム(Al)又は他の単一元素材料であってもよいし、あるいは元素及び/又は材料の組合せであってもよい。
【0147】
404において、合金化金属コンポーネントは、ベース材料から三次元印刷され、第一の量のMg、第二の量のZr、及び第三の量のMnをベース材料と組み合わせると、合金化金属コンポーネント中に構造が生成され、合金化金属コンポーネント中の構造は、少なくとも80メガパスカル(MPa)の降伏強度を有し、少なくとも10パーセント(%)の伸びを有する。
【0148】
【0149】
図5は、少なくともノード502及びノード504を含むアセンブリ500を示す。ノード502及びノード504は、1つ以上のジョイント506において結合される。ジョイント506は、様々なタイプの構造を含むことができ、そのうちの1つは、
図5に舌部508として示されている。
【0150】
本開示の一態様では、付加製造によって、車両構造のためのノード502、ノード504等の複雑な構造の製造が可能になる。そのような態様では、マルチパートノードは、付加製造され、次いで、手動アセンブリ又は自動アセンブリセルのいずれかを通して、一緒に結合され、アセンブリ500を形成してもよい。代替実施形態では、本明細書に記載される合金は、熱交換器等の集積コンポーネントを付加製造するために使用されてもよい。
【0151】
本開示の一態様では、車両アセンブリ、サブアセンブリ等は、付加製造されてもよい。これらのアセンブリ、サブアセンブリ等は、車両等のより大きなアセンブリを作成するために、他のコンポーネント、部品等と組み合わされてもよい。
図5に示すように、本開示の態様は、車両用後部フレームを含んでもよい。そのような後部フレームアセンブリ500は、1つ以上のジョイント506で一緒に結合されるノード502及び504を含んでもよい。そのようなジョイント506は、また、隣接する節の溝に結合される舌部508を含んでもよい。ジョイント506は、ジョイント506を構造的に結合するために、1つ以上の構造接着剤を組み込んでもよい。
【0152】
図6は、本開示の一態様に従うアセンブリの断面図を示す。
【0153】
図6に示すように、ジョイント506は、あるノード(この例ではノード502)からの舌部600と、別のノード(この例ではノード504)の溝602とを含んでもよい。舌部600及び溝602によって、ノード504に対するノード502の整列及び/又は結合が可能になってもよい。さらに、所与のノードは、アセンブリ500の製造プロセス及び/又はアセンブリプロセスをより容易に、及び/又はより効率的にするために、舌部600と溝602の両方を有してもよい。
【0154】
本開示の一態様では、ノード502及び504は、本明細書で説明する合金のうちの1つ以上を使用して、付加製造技法を使用して製造されてもよい。ノード502及び/又は504の付加製造によって、ノード502及び/又は504は、1つ以上のフィーチャ604を組み込むことが可能になり得るが、この組み込みは、他の製造技術を使用して製造すると、法外に高価になることも、あるいは非常に困難なこともある。
【0155】
本開示の一態様では、フィーチャ604は、所与のノードの強度、硬化(stiffening)、方向性圧縮、及び/又は拡張を提供してもよい。フィーチャ604は、フィーチャ604の一部であるノードの合金とは異なる合金で作製することができ、その結果、アセンブリ全体は、製造をより安価に、材料費をより安価に、製造をより効率的にすること等ができる。フィーチャ604は、ノード502/504の内部に向かって内向きに延在してもよく、ノード502/504の外部フィーチャであってもよく、あるいはノード502/504の内部及び外部フィーチャであってもよい。さらに、フィーチャ604は、本開示の範囲から逸脱することなく、所与のノード502/504の厚さを通して延在してもよい。いくつかの実施形態では、フィーチャ604は、さらに、自己支持型であってもよく、すなわち、付加製造プロセスの間、支持構造を伴わずに印刷されてもよい。
【0156】
図7は、本開示の一態様に従うアセンブリのジョイントフィーチャを示す。
【0157】
図7に示すように、舌部600は、ジョイント506で溝602に結合される。本開示の一態様では、舌部600は、ノード502の合金とは異なる合金から作製されてもよい。本開示の一態様では、溝602は、ノード504の合金とは異なる合金から作製されてもよい。本開示の一態様では、舌部600は、ノード502がノード504に結合されたときに舌部602と溝604との間に間隙を有するように設計されてもよく、その結果、接着剤又は他の材料を舌部600と溝602との間に配置してもよい。使用される材料は、構造接着剤であってもよく、ノード502、ノード504、舌部600、及び/又は溝602を作製するために使用される合金と同様の構造特性を有してもよい。材料は、また、紫外線(UV)硬化性接着剤等の硬化性接着剤であってもよい。
【0158】
本開示の一態様では、フィーチャ604は、「卵クレート(egg crate)」のフィーチャであってもよく、これは、所与のノードの補強部材、構造コンポーネント、又は方向性強度部分として作用してもよい。例えば、限定ではないが、フィーチャ604は、ノード504が所与の方向及び/又は様式で圧縮し、別の方向及び/又は様式で圧縮に抵抗するように、ノード504上に配向されてもよい。そのようなフィーチャ604は、所与のノードが既知の方向に圧縮し、車両の衝突中に他の方向の圧縮に抵抗して、車両の乗員を保護するように、車両設計において有利であり得る。フィーチャ604は、また、本開示の範囲から逸脱することなく、ノードの内部及び/又はノードの外部のいずれかに空気力学的流れを提供してもよく、また所与のノードに他の特徴を提供してもよい。
【0159】
上述の説明は、本明細書で説明される様々な態様を当業者が実施できるようにするために提供される。本開示を通して提示されるこれらの例示的な実施形態に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかであり、本明細書に開示される概念は、本明細書に開示された例とは異なる方法で適用されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本開示を通して提示される例示的な実施形態に限定されることを意図するものではなく、請求項の文言と一致する全範囲に与えられるべきである。当業者に既に知られている、又は当業者に今後知られるようになる本開示を通して説明される例示的な実施形態の要素に対する全ての構造的及び機能的な均等物は、特許請求の範囲に含まれることが意図される。さらに、本明細書に開示されているものは、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に記載されているかどうかにかかわらず、公衆に捧げられることを意図していない。請求項のいかなる要素も、その要素が「のための手段」という語句を使用して明示的に列挙されていない限り、あるいは方法の請求項において、その要素が「のためのステップ」という語句を使用して列挙されていない限り、米国特許法第112条(f)の規定に基づいて、あるいは適用される管轄区域の類似法に基づいて解釈されるべきではない。
【国際調査報告】