(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】インダイレクトボンディングデバイス及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61C 7/16 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
A61C7/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538668
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-06-22
(86)【国際出願番号】 IB2021062092
(87)【国際公開番号】W WO2022137109
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ペール,ラルフ エム.
(72)【発明者】
【氏名】レイビー,リチャード イー.
(72)【発明者】
【氏名】ブレース,ディートマール
(72)【発明者】
【氏名】シナダー,デイヴィッド ケー.ジュニア
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052JJ02
4C052JJ10
(57)【要約】
インダイレクトボンディングデバイスが第1のトレイ及び第2のトレイを含む。第1のトレイは、歯表面を有する歯に着脱可能に結合されるように構成されている。第2のトレイは、第1のトレイに着脱可能に結合されるように構成されている。第1のトレイは、長手方向軸に沿って第1の内面から第1の外面へ少なくとも部分的に延びた空洞を含む。歯科矯正装具は、空洞内に少なくとも部分的に、かつ着脱可能に受容されている。接着剤層が歯科矯正装具の基面上に配置されている。第1のトレイが歯に着脱可能に結合されると、接着剤層は歯表面から離間されている。更に、第2のトレイが第1のトレイに着脱可能に結合されると、第2のトレイは第1のトレイに係合し、歯科矯正装具を歯表面に向かって移動させ、接着剤層が歯表面に接触する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダイレクトボンディングデバイスであって、
歯表面を有する歯に着脱可能に結合されるように構成された第1のトレイであって、
前記歯表面に少なくとも部分的に適合した第1の内面、
前記第1の内面と反対の第1の外面、及び
長手方向軸に沿って前記第1の内面から前記第1の外面へ少なくとも部分的に延びた空洞、
を含む第1のトレイと、
前記空洞内に少なくとも部分的に、かつ着脱可能に受容された歯科矯正装具であって、
基面、及び
前記基面上に配置された接着剤層であって、前記歯科矯正装具を前記歯に接着するように構成されている、接着剤層、
を含む歯科矯正装具と、
前記第1のトレイに着脱可能に結合されるように構成された第2のトレイと、
を備え、
前記第2のトレイが前記第1のトレイから取り外された状態で前記第1のトレイが前記歯に着脱可能に結合されると、前記接着剤層が前記歯表面から離間されており、
前記第2のトレイが前記第1のトレイに着脱可能に結合されると、前記第2のトレイが前記第1のトレイに係合し、前記歯科矯正装具を前記歯表面に向かって移動させ、前記接着剤層が前記歯表面に接触する、インダイレクトボンディングデバイス。
【請求項2】
前記第1のトレイが、前記空洞内へ延びた空洞突出部を更に含み、前記空洞突出部が前記歯科矯正装具に係合して、前記歯科矯正装具が前記空洞内に保持される、請求項1に記載のインダイレクトボンディングデバイス。
【請求項3】
前記第2のトレイが前記第1のトレイから取り外された状態で前記歯科矯正装具が前記第1のトレイの前記空洞内に受容されると、前記歯科矯正装具の前記基面及び前記第1のトレイの前記第1の内面がそれらの間に前記長手方向軸に沿って第1の間隙を画定し、
前記第2のトレイが前記第1のトレイから取り外された状態で前記第1のトレイが前記歯に着脱可能に結合されると、前記基面上に配置された前記接着剤層は前記第1の間隙を部分的に充填し、前記接着剤層は前記歯表面から離間されている、
請求項1に記載のインダイレクトボンディングデバイス。
【請求項4】
前記第1のトレイが、前記第1の外面上に配置され、前記長手方向軸に沿って前記第1のトレイの前記第1の内面から離れる方向に延びたトレイ突出部を更に含み、
前記第2のトレイが第2の内面を含み、
前記第2のトレイが前記第1のトレイに着脱可能に結合されると、前記第2のトレイの前記第2の内面が、前記トレイ突出部に係合し、前記トレイ突出部を少なくとも部分的に変形させ、前記歯科矯正装具を前記長手方向軸に沿って前記歯表面に向かって移動させて、前記接着剤層が前記歯表面に接触する、
請求項1に記載のインダイレクトボンディングデバイス。
【請求項5】
前記第2のトレイが、第2の内面、及び前記第2の内面上に配置された突起を含み、前記突起が前記第1のトレイの前記第1の外面に向かって延びており、
前記第2のトレイが前記第1のトレイに着脱可能に結合されると、前記突起が、前記第1のトレイを少なくとも部分的に変形させ、前記歯科矯正装具を前記長手方向軸に沿って前記歯表面に向かって移動させて、前記接着剤層が前記歯表面に接触する、
請求項1に記載のインダイレクトボンディングデバイス。
【請求項6】
前記空洞が前記第1の内面から前記第1のトレイの前記第1の外面へ延びており、
前記第2のトレイが第2の内面を含み、
前記第2のトレイが前記第1のトレイから取り外された状態で前記歯科矯正装具が前記空洞内に受容されると、前記歯科矯正装具が前記第1のトレイの前記第1の外面を貫いて少なくとも部分的に延び、
前記第2のトレイが前記第1のトレイと着脱可能に結合されると、前記第2のトレイの前記第2の内面が、前記歯科矯正装具に係合し、前記歯科矯正装具を前記長手方向軸に沿って前記歯表面に向かって移動させて、前記接着剤層が前記歯表面に接触する、
請求項1に記載のインダイレクトボンディングデバイス。
【請求項7】
前記第1のトレイが、
前記歯表面に少なくとも部分的に適合し、前記歯に着脱可能に結合されるように構成された第1の部分、
前記歯科矯正装具を内部に少なくとも部分的に、かつ着脱可能に受容する前記空洞を含む第2の部分、並びに
前記第1の部分を前記第2の部分に接続するリビングヒンジであって、ヒンジ軸を規定する、リビングヒンジ、
を更に含み、
前記第1のトレイの前記第2の部分が、前記第1の部分に対して前記ヒンジ軸を中心として旋回するように構成されており、
前記第2のトレイが、前記第1のトレイに係合し、前記第2の部分を、前記ヒンジ軸を中心として前記歯表面に向かって旋回移動させて、前記接着剤層が前記歯表面に接触するように構成されている、請求項1に記載のインダイレクトボンディングデバイス。
【請求項8】
前記第2の部分が第1の位置と第2の位置との間で旋回可能であり、前記前記第1の位置において、前記第2の部分が前記歯表面から離間されており、前記第2の位置において、前記第2の部分が前記歯表面に係合し、
前記第2のトレイが前記第1のトレイから取り外された状態で前記第1のトレイが前記歯に着脱可能に結合されると、前記第2の部分が前記第1の位置にあり、前記接着剤層が前記歯表面から離間されており、
前記第2のトレイが前記第1のトレイに着脱可能に結合されると、前記第2の部分が前記ヒンジ軸を中心として前記第2の位置へ旋回し、前記接着剤層が前記歯表面に接触する、
請求項7に記載のインダイレクトボンディングデバイス。
【請求項9】
前記第1のトレイが、第1の弾性率を有する第1の材料を含み、前記第2のトレイが、第2の弾性率を有する第2の材料を含み、前記第2の弾性率が前記第1の弾性率よりも大きく、これにより、前記第2のトレイが、前記第1のトレイに係合されると、前記第1のトレイを少なくとも部分的に変形させるように構成されている、請求項1に記載のインダイレクトボンディングデバイス。
【請求項10】
前記複数の歯に対応する複数の前記歯科矯正装具を更に備え、前記第1のトレイが、複数の歯に対応する複数の前記空洞を含み、各歯科矯正装具が、前記複数の前記空洞のうちの対応する空洞内に少なくとも部分的に、かつ着脱可能に受容されている、請求項1に記載のインダイレクトボンディングデバイス。
【請求項11】
インダイレクトボンディングデバイスであって、
第1のトレイであって、
第1の内面、
前記第1の内面と反対の第1の外面、及び
長手方向軸に沿って前記第1の内面から前記第1の外面へ少なくとも部分的に延びた空洞、
を含む第1のトレイと、
前記空洞内に少なくとも部分的に、かつ着脱可能に受容された歯科矯正装具であって、歯科矯正装具と、
前記第1のトレイに着脱可能に結合されるように構成された第2のトレイであって、第2の内面、及び前記第2の内面と反対の第2の外面を含む、第2のトレイと、
を備え、
前記第2のトレイが前記第1のトレイから取り外された状態で前記歯科矯正装具が前記第1のトレイの前記空洞内に受容されると、前記歯科矯正装具の前記基面が前記空洞内に配置され、前記長手方向軸に沿って第1の間隙だけ前記第1の内面から離間されており、
前記第2のトレイが前記第1のトレイに着脱可能に結合されると、前記第2のトレイの前記第2の内面が前記第1のトレイに係合し、前記歯科矯正装具を前記第1の内面に向かって移動させ、前記歯科矯正装具の前記基面が前記長手方向軸に沿って第2の間隙だけ前記第1の内面から離間されており、前記第2の間隙は前記第1の間隙よりも小さい、インダイレクトボンディングデバイス。
【請求項12】
前記第2の間隙が実質的に0である、請求項11に記載のインダイレクトボンディングデバイス。
【請求項13】
前記歯科矯正装具の前記基面上に配置された接着剤層を更に備え、前記接着剤層が、前記第2のトレイが前記第1のトレイに着脱可能に結合される前に、前記第1の間隙を部分的に充填している、請求項11に記載のインダイレクトボンディングデバイス。
【請求項14】
前記第1の間隙が前記接着剤層の厚さよりも大きく、前記第2の間隙が前記接着剤層の前記厚さ以下である、請求項13に記載のインダイレクトボンディングデバイス。
【請求項15】
前記第1のトレイが、前記空洞内へ延びた空洞突出部を更に含み、前記空洞突出部が前記歯科矯正装具に係合して、前記歯科矯正装具が前記空洞内に保持されている、請求項11に記載のインダイレクトボンディングデバイス。
【請求項16】
複数の歯のための歯科矯正治療のための方法であって、前記複数の歯のうちの各歯が歯表面を有し、前記方法が、
複数の空洞及び複数の歯科矯正装具を含む第1のトレイを提供することであって、前記複数の歯科矯正装具のうちの各歯科矯正装具が前記複数の空洞のうちの対応する空洞内に少なくとも部分的に、かつ着脱可能に受容されており、接着剤層が各歯科矯正装具の基面上に設けられている、第1のトレイを提供することと、
前記第1のトレイを前記複数の歯に着脱可能に結合することであって、前記複数の歯科矯正装具のうちの対応する歯科矯正装具の前記基面上に設けられた前記接着剤層が前記複数の歯のうちの対応する歯の前記歯表面から離間されている、結合することと、
第2のトレイを前記第1のトレイに着脱可能に結合し、各歯科矯正装具を、前記対応する歯の前記歯表面に向かって移動させることであって、前記対応する歯科矯正装具の前記基面上に設けられた前記接着剤層が、前記対応する歯の前記歯表面に接触する、結合することと、
を含む、方法。
【請求項17】
前記第1のトレイが、
各歯の前記歯表面に少なくとも部分的に適合した第1の内面、及び
前記第1の内面と反対の第1の外面、
を含み、
前記複数の空洞のうちの各空洞が長手方向軸に沿って前記第1の内面から前記第1の外面に向かって少なくとも部分的に延びている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のトレイが、前記複数の空洞に対応する複数の空洞突出部を更に含み、各空洞突出部が、前記対応する空洞内へ延びており、各歯科矯正装具が、前記複数の空洞突出部のうちの対応する空洞突出部によって係合され、前記対応する歯科矯正装具を前記対応する空洞内に保持している、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
各歯科矯正装具の前記基面及び前記第1のトレイの前記第1の内面がそれらの間に前記長手方向軸に沿って第1の間隙を画定し、前記接着剤層の厚さが前記第1の間隙よりも小さく、これにより、前記第2のトレイが前記第1のトレイから取り外された状態で前記第1のトレイが前記複数の歯に着脱可能に結合されるとき、前記接着剤層が、前記対応する歯の前記歯表面から離間されている、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記第2のトレイを前記第1のトレイに着脱可能に結合することが、前記第2のトレイの第2の内面を前記第1のトレイ及び各歯科矯正装具のうちの少なくとも一方と係合させ、各歯科矯正装具を、前記対応する歯の前記歯表面に向かって移動させることを更に含み、これにより前記接着剤層が前記歯表面に接触し、前記第2のトレイを前記第1のトレイに着脱可能に結合することが、前記第2のトレイの前記第2の内面を、前記第1のトレイの前記第1の外面上に配置されたトレイ突出部と係合させ、前記トレイ突出部を少なくとも部分的に変形させることを更に含み、これにより前記トレイ突出部に対応する前記歯科矯正装具が、前記対応する歯の前記歯表面に向かって移動する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記第2のトレイを前記第1のトレイに着脱可能に結合することが、前記第2のトレイの前記第2の内面上に配置された突起を前記第1のトレイの前記第1の外面と係合させ、前記第1のトレイを少なくとも部分的に変形させることを更に含み、これにより前記突起に対応する前記歯科矯正装具が、前記対応する歯の前記歯表面に向かって移動する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1のトレイが、
前記複数の歯の各々の前記歯表面に少なくとも部分的に適合し、前記複数の歯の各々に着脱可能に結合されるように構成された第1の部分、
前記対応する歯科矯正装具を内部に少なくとも部分的に、かつ着脱可能に受容する前記複数の空洞を含む第2の部分、並びに
前記第1の部分を前記第2の部分に接続するリビングヒンジであって、ヒンジ軸を規定する、リビングヒンジ、
を更に含み、
前記第1のトレイを前記複数の歯に着脱可能に結合することが、前記第2の部分を前記ヒンジ軸の周りに位置決めすることを更に含み、これにより前記第2のトレイが前記第1のトレイから取り外された状態で前記第1のトレイが前記複数の歯に着脱可能に結合されるとき、前記第2の部分が前記複数の歯の各々の前記歯表面から離間されている、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記第2のトレイを前記第1のトレイに着脱可能に結合することが、前記第2のトレイを前記第1のトレイと係合させ、前記第2の部分を、前記ヒンジ軸を中心として前記複数の歯の各々の前記歯表面に向かって旋回移動させることを更に含み、これにより前記接着剤層が前記対応する歯の前記歯表面に接触する、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ボンディングデバイス及び方法に関し、詳細には、複数の歯のためのインダイレクトボンディングデバイス及び方法に関する。本方法は、インダイレクトボンディングデバイスを使用して歯科矯正装具を複数の歯に接着するために用いられてもよい。
【背景技術】
【0002】
歯科矯正ブラケットなどの歯科矯正装具は、患者の1本以上の歯を異常位置から患者の歯列内の所望の位置へ移動させるための歯科医による歯科矯正治療において使用される場合がある。歯科矯正治療は患者の顔立ちを改善し得る。場合によっては、歯科矯正治療はまた、咀嚼中の咬合の改善をもたらすことによって歯の機能も改善し得る。
【0003】
歯科矯正治療は、口腔内の所望の位置への転位歯の移動を伴う。歯科矯正治療は、特に、歯が著しく不揃いである場合、あるいは上歯及び下歯が互いにずれている場合に、患者の顔立ちを改善することができる。歯科矯正治療は、咀嚼中の咬合をより良好にすることにより、歯の機能を向上させることもできる。
【0004】
歯科矯正治療の1つの一般的なタイプは、ブラケットとして知られる、小さなスロット付き装具の使用を伴う。ブラケットは患者の歯に固定され、アーチワイヤが各ブラケットのスロット内に配置される。アーチワイヤは、所望の位置への歯の移動を案内する軌道を形成する。
【0005】
歯科矯正アーチワイヤの端部は、患者の大臼歯に固定されるバッカルチューブとして知られる小さな装具に接続されることが多い。多くの場合、患者の上顎歯列弓及び下顎歯列弓のそれぞれのために、ブラケットのセット、バッカルチューブ、及びアーチワイヤが提供される。ブラケット、バッカルチューブ、及びアーチワイヤは一般に、「ブレース(brace)」と総称される。
【0006】
多くのタイプの歯科矯正技法において、歯上で装具が正確な位置にあることは、歯がその目標とする最終的な位置に動くのを確実にするのに役立つ重要な要素である。例えば、ある一般的なタイプの歯科矯正治療技法は、治療完了時にアーチワイヤが水平面内にある、「ストレートワイヤ」法として知られている。したがって、アーチワイヤが真っ直ぐになり、水平面内に位置すると歯が適切に整列するよう、ブラケットは治療の開始時に正しく位置付けられなければならない。例えば、ブラケットが、歯の咬合先端部又は外側先端部に近過ぎる位置で歯に取り付けられた場合、ストレートワイヤ法を使用する歯科矯正医は、最終的な位置にある歯が過度に中に押し込まれていることに気付く可能性がある。一方、ブラケットが、適切な位置より歯肉に近い位置で歯に取り付けられた場合、歯の最終的な位置は、所望の位置よりも外に押し出される傾向がある。
【0007】
歯科矯正装具を歯に接着するための1つの技法はインダイレクトボンディング法として知られている。過去において、既知のインダイレクトボンディング法は、患者の歯列弓の少なくとも部分の構成と一致する形状を有する配置デバイス又はトランスファー装置を使用することが多かった。1つの種類のトランスファー装置は、しばしば、「トランスファートレイ」又は「インダイレクトボンディングトレイ」と呼ばれ、典型的には、いくつかの歯を同時に受容するための空洞を有する。ブラケットなどの装具のセットは、特定の所定の位置でトレイに着脱可能に接続される。
【0008】
インダイレクトボンディングのためのボンディングトレイの使用中、典型的には、歯科矯正医又はスタッフメンバーによって接着剤が各装具の基部に適用される。その後、トレイが患者の歯の上に配置され、接着剤が硬化するまで所定位置にとどまる。次に、トレイが歯及び装具から取り外され、その結果、従前ではトレイに接続されていた装具の全てが、それらの意図された所定の位置で今度はそれぞれの歯に接着される。
【0009】
従来の歯科矯正接着剤は、典型的には、高充填され、これは、白色又は歯の色を有する接着剤を生じさせる。ブラケットを歯牙構造に接着するために、十分だが過剰でない量の接着剤が使用されることが望ましい。歯牙構造上の過剰な接着剤は、最終的に、細菌の蓄積、並びに/又は食物若しくは飲料からの着色する部位となり得る。歯科矯正治療は18~36か月以上続き得るため、細菌の蓄積は歯牙構造を損傷する可能性があり、接着剤の変色を生じさせることがあり、これらはどちらも望ましくない。接着剤の色と歯の色とに類似性がある場合には、即ち、接着剤における対比色の欠如のゆえに、過剰な接着剤を識別し、歯牙構造から除去することは困難になり得る。
【発明の概要】
【0010】
一態様では、本開示はインダイレクトボンディングデバイスを提供する。インダイレクトボンディングデバイスは第1のトレイを含む。第1のトレイは、歯表面を有する歯に着脱可能に結合されるように構成されている。第1のトレイは、歯表面に少なくとも部分的に適合した第1の内面を含む。第1のトレイは、第1の内面と反対の第1の外面を更に含む。第1のトレイは、長手方向軸に沿って第1の内面から第1の外面へ少なくとも部分的に延びた空洞を更に含む。インダイレクトボンディングデバイスは、空洞内に少なくとも部分的に、かつ着脱可能に受容された歯科矯正装具を更に含む。歯科矯正装具は、基面、及び基面上に配置された接着剤層を含む。接着剤層は、歯科矯正装具を歯に接着するように構成されている。インダイレクトボンディングデバイスは、第1のトレイに着脱可能に結合されるように構成された第2のトレイを更に含む。第2のトレイが第1のトレイから取り外された状態で第1のトレイが歯に着脱可能に結合されると、接着剤層は歯表面から離間されている。更に、第2のトレイが第1のトレイに着脱可能に結合されると、第2のトレイは第1のトレイに係合し、歯科矯正装具を歯表面に向かって移動させ、接着剤層が歯表面に接触する。
【0011】
別の態様では、本開示はインダイレクトボンディングデバイスを提供する。インダイレクトボンディングデバイスは第1のトレイを含む。第1のトレイは、第1の内面、及び第1の内面と反対の第1の外面を含む。第1のトレイは、長手方向軸に沿って第1の内面から第1の外面へ少なくとも部分的に延びた空洞を更に含む。インダイレクトボンディングデバイスは、空洞内に少なくとも部分的に、かつ着脱可能に受容された歯科矯正装具を更に含む。歯科矯正装具は基面を含む。インダイレクトボンディングデバイスは、第1のトレイに着脱可能に結合されるように構成された第2のトレイを更に含む。第2のトレイは、第2の内面、及び第2の内面と反対の第2の外面を含む。第2のトレイが第1のトレイから取り外された状態で歯科矯正装具が第1のトレイの空洞内に受容されると、歯科矯正装具の基面は空洞内に配置され、長手方向軸に沿って第1の間隙だけ第1の内面から離間される。更に、第2のトレイが第1のトレイに着脱可能に結合されると、第2のトレイの第2の内面は第1のトレイに係合し、歯科矯正装具を第1の内面に向かって移動させ、歯科矯正装具の基面が長手方向軸に沿って第2の間隙だけ第1の内面から離間される。第2の間隙は第1の間隙よりも小さい。
【0012】
別の態様では、本開示は複数の歯のための方法を提供する。複数の歯のうちの各歯は歯表面を有する。本方法は、複数の空洞及び複数の歯科矯正装具を含む第1のトレイを提供することを含む。複数の歯科矯正装具のうちの各歯科矯正装具は、複数の空洞のうちの対応する空洞内に少なくとも部分的に、かつ着脱可能に受容されている。更に、接着剤層が各歯科矯正装具の基面上に設けられている。本方法は、第1のトレイを複数の歯に着脱可能に結合することを更に含み、複数の歯科矯正装具のうちの対応する歯科矯正装具の基面上に設けられた接着剤層が複数の歯のうちの対応する歯の歯表面から離間されている。本方法は、第2のトレイを第1のトレイに着脱可能に結合し、各歯科矯正装具を、対応する歯の歯表面に向かって移動させることを更に含み、対応する歯科矯正装具の基面上に設けられた接着剤層が、対応する歯の歯表面に接触する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以下の図と共に以下の「発明を実施するための形態」を検討することで、本明細書に開示する例示的実施形態を、より完全に理解することができる。図は、必ずしも縮尺通りに描かれているとは限らない。図面で使用されている同様の番号は同様の構成要素を示す。しかし、所与の図内における構成要素を示すための番号の使用は、同じ番号で示されている別の図内の構成要素を限定することを意図していないことが理解されよう。
【
図1A】本開示の一実施形態に係る、インダイレクトボンディングデバイス及び患者の歯列弓の概略側面図である。
【
図1B】本開示の一実施形態に係る、インダイレクトボンディングデバイス及び患者の歯の概略断面側面図である。
【
図2A】本開示の一実施形態に係る、インダイレクトボンディングデバイス及び歯の概略断面側面図である。
【
図2B】本開示の一実施形態に係る、インダイレクトボンディングデバイス及び歯の概略断面側面図である。
【
図2C】本開示の一実施形態に係るインダイレクトボンディングデバイスの拡大概略断面側面図である。
【
図3A】本開示の別の実施形態に係る、インダイレクトボンディングデバイス及び歯の概略断面側面図である。
【
図3B】本開示の別の実施形態に係る、インダイレクトボンディングデバイス及び歯の概略断面側面図である。
【
図4A】本開示の別の実施形態に係る、インダイレクトボンディングデバイス及び歯の概略断面側面図である。
【
図4B】本開示の別の実施形態に係る、インダイレクトボンディングデバイス及び歯の概略断面側面図である。
【
図5A】本開示の別の実施形態に係る、インダイレクトボンディングデバイス及び歯の概略断面側面図である。
【
図5B】本開示の別の実施形態に係る、インダイレクトボンディングデバイス及び歯の概略断面側面図である。
【
図6】複数の歯のための方法を示すフローチャートである。
【
図7A】本開示の別の実施形態に係る、インダイレクトボンディングデバイス及び歯の概略断面側面図である。
【
図7B】本開示の別の実施形態に係る、インダイレクトボンディングデバイス及び歯の概略断面側面図である。
【0014】
定義
「近心」とは、患者の湾曲した歯列弓の中心に向かう方向を意味する。
【0015】
「遠心」とは、患者の湾曲した歯列弓の中心から離れる方向を意味する。
【0016】
「咬合側」とは、患者の歯の外側先端部に向かう方向を意味する。
【0017】
「歯肉側」とは、患者の歯茎又は歯肉に向かう方向を意味する。
【0018】
「舌側」とは、患者の舌に向かう方向を意味する。
【0019】
「唇側」とは、患者の唇に向かう方向を意味する。
【0020】
「頬側」とは、患者の頬に向かう方向を意味する。
【0021】
特性又は属性に対する修飾語として本明細書で使用するとき、用語「概して」は、特に定めのない限り、その特性又は属性が、当業者によって容易に認識されるものであるが、絶対的な精度又は完全な一致を必要とするものではないこと(例えば、定量化可能な特性に関しては、±20%の範囲内)を意味する。用語「実質的に」は、特に定めのない限り、高い近似度(例えば、定量化可能な特性に関しては、±10%の範囲内)を意味するが、この場合もまた、絶対的な精度又は完全な一致を必要とするものではない。同一の、等しい、均一な、一定の、厳密に、などの用語は、絶対的な精度又は完全な一致を必要とするものではなく、特定の状況に適用可能な、通常の許容誤差又は測定誤差の範囲内にあるものと理解される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の説明では、説明の一部を構成し、様々な実施形態が実例として示される、添付の図面が参照される。本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の実施形態が想定され、実施され得ることを理解されたい。したがって、以下の発明を実施するための形態は、限定的な意味では解釈されない。
【0023】
本開示はインダイレクトボンディングデバイスに関する。インダイレクトボンディングデバイスは、歯科矯正装具を患者の歯に適用するために使用されてもよい。更に、インダイレクトボンディングデバイスは、複数の歯科矯正装具を患者の複数の歯に適用するために使用されてもよい。
【0024】
インダイレクトボンディングデバイスは第1のトレイを含む。第1のトレイは、歯表面を有する歯に着脱可能に結合されるように構成されている。第1のトレイは、歯表面に少なくとも部分的に適合した第1の内面を含む。第1のトレイは、第1の内面と反対の第1の外面を更に含む。第1のトレイは、長手方向軸に沿って第1の内面から第1の外面へ少なくとも部分的に延びた空洞を更に含む。インダイレクトボンディングデバイスは、空洞内に少なくとも部分的に、かつ着脱可能に受容された歯科矯正装具を更に含む。歯科矯正装具は、基面、及び基面上に配置された接着剤層を含む。接着剤層は、歯科矯正装具を歯に接着するように構成されている。インダイレクトボンディングデバイスは、第1のトレイに着脱可能に結合されるように構成された第2のトレイを更に含む。
【0025】
第2のトレイが第1のトレイから取り外された状態で第1のトレイが歯に着脱可能に結合されると、接着剤層は歯表面から離間されている。更に、第2のトレイが第1のトレイに着脱可能に結合されると、第2のトレイは第1のトレイに係合し、歯科矯正装具を歯表面に向かって移動させ、接着剤層が歯表面に接触する。
【0026】
従来の接着技法は、歯科矯正装具を患者の歯に適用するために「トランスファートレイ」を利用し得る。しかし、従来のトランスファートレイは、歯に取り付けられたとき、歯科矯正装具が歯科矯正装具を歯に接着する接着剤と一緒に、咬合-歯肉方向に(即ち、歯の舌側及び唇側面と実質的に平行に)歯に接近する。概して、これは、歯の舌側及び唇側面に沿った接着剤の擦り付き(smearing)を生じさせる。接着剤の擦り付きは、歯科矯正装具を歯に接着する接着剤の体積を低減し、これにより、歯科矯正装具の歯への不良接着をもたらすことがある。場合によっては、不良接着を有する歯科矯正装具は歯科医によって再接着されることが必要となり、したがって、患者のチェアタイムを増大させ得る。
【0027】
場合によっては、歯科医は、歯科矯正装具の歯への不良接着の可能性を低減するために、必要とされるよりも多くの接着剤を使用し得る。しかし、これは、過剰な接着剤が歯の舌側及び唇側上に適用される結果をもたらし得る。過剰な接着剤は、歯の不均質な着色、石灰化、及び/又は脱灰を生じさせ得る。場合によっては、過剰な接着剤は、歯の酸蝕症につながるプラークの蓄積を生じさせ得る。したがって、過剰な接着剤を除去することは患者のチェアタイムを更に増大させる。
【0028】
本開示のインダイレクトボンディングデバイスは患者の歯上の接着剤層の望ましくない擦り付きを低減又は防止し得る。具体的には、接着剤層が歯表面から離間されているため、第1のトレイが歯に着脱可能に結合されるとき、歯科矯正装具の基面上に配置された接着剤層は歯表面上に擦り付かないだろう。それゆえ、インダイレクトボンディングデバイスは、接着剤層が歯表面上で拭い取られることを防止し得る。したがって、インダイレクトボンディングデバイスは、歯科医が、歯科矯正装具の歯への確実な接着のための接着剤層の体積及び厚さを推定し、最適化する必要性を無くし得る。加えて、インダイレクトボンディングデバイスは、(歯科医が、必要とされるよりも多くの接着剤を使用する場合に)過剰な接着剤を除去する必要性を無くし得る。これは患者のチェアタイムを低減し得る。
【0029】
更に、第2のトレイが第1のトレイに着脱可能に結合されると、歯科矯正装具は、接着剤層と一緒に、その歯表面(例えば、舌側歯表面及び/又は唇側歯表面)と実質的に垂直に移動し、歯に接近し得る。したがって、インダイレクトボンディングデバイスは、接着剤層を歯表面上に均一に展延し得る。その結果、インダイレクトボンディングデバイスは、歯科矯正装具と歯との間の接着を改善し得る。その結果、インダイレクトボンディングデバイスは、歯科矯正装具の強固で確実な接着をもたらし、患者のチェアタイムを更に低減し得る。
【0030】
ここで図を参照すると、
図1Aは患者の歯列弓50を示す。歯列弓50は複数の歯60を含む。複数の歯60のうちの各歯60は、歯表面62を有する。歯表面62は、対応する歯60の外面に対応し得る。歯表面62は、唇側歯表面、頬側歯表面、舌側歯表面、及び咬合側歯表面を含んでもよい。更に、各歯60の歯表面62は適用面及び非適用面を含んでもよい。適用面は、歯科矯正装具が適用されることになる表面を指してもよい。非適用面は、適用面以外の表面、即ち、歯科矯正装具が適用されるべきでない表面を指してもよい。適用面は各歯60の唇側歯表面又は舌側歯表面上にあってもよい。
図1Aに示されるように、各歯60は患者の歯肉組織70によって部分的に包囲されている。
【0031】
患者の複数の歯60のうちの1本以上の歯60が転位していることがある。したがって、患者は、1本以上の歯60の転位を矯正するために歯科矯正治療を受けることが必要とされ得る。1本以上の歯60の転位を矯正することは患者の顔立ちを改善し得る。更に、1本以上の歯60の転位を矯正することは、咀嚼中の咬合の改善をもたらすことによって1本以上の歯60の機能を向上させ得る。
【0032】
図1Aは、本開示の一実施形態に係るインダイレクトボンディングデバイス100を更に示す。インダイレクトボンディングデバイス100は、1本以上の歯60の歯科矯正治療を支援するために歯科医によって使用されてもよい。インダイレクトボンディングデバイス100は、歯科矯正装具を複数の歯60に精密かつ正確に適用するために使用されてもよい。具体的には、インダイレクトボンディングデバイス100は、歯科矯正装具を複数の歯60の適用面に精密かつ正確に適用するために使用されてもよい。
【0033】
インダイレクトボンディングデバイス100は、第1のトレイ110及び第2のトレイ120を含む。第1のトレイ110は、複数の歯60に着脱可能に結合されるように構成されている。更に、第2のトレイ120は、第1のトレイ110に着脱可能に結合されるように構成されている。
【0034】
インダイレクトボンディングデバイス100は、複数の歯科矯正装具130(破線によって示されている)を更に含む。複数の歯科矯正装具130のうちの各歯科矯正装具130は、第1のトレイ110内に少なくとも部分的に、かつ着脱可能に含まれる。各歯科矯正装具130は、複数の歯60のうちの歯60に対応する。具体的には、インダイレクトボンディングデバイス100は、複数の歯60のうちの対応する歯60のための複数の歯科矯正装具130のうちの対応する歯科矯正装具130を含む。
【0035】
第2のトレイ120が第1のトレイ110から取り外された状態で第1のトレイ110が複数の歯60に着脱可能に結合されると、各歯科矯正装具130は、対応する歯60の歯表面62から離間されている。更に、第2のトレイ120が第1のトレイ110に着脱可能に結合されると、第2のトレイ120は第1のトレイ110に係合し、各歯科矯正装具130を、対応する歯60の歯表面62に向かって移動させる。
【0036】
図1Aに示される歯列弓50は、患者の下顎歯列弓であることに留意されたい。したがって、
図1Aに示されるインダイレクトボンディングデバイス100は、下顎歯列弓に従って構成されている。いくつかの他の実施形態では、歯列弓50は患者の上顎歯列弓を含んでもよく、インダイレクトボンディングデバイス100は上顎歯列弓に従って構成されていてもよい。更に、
図1A及び
図1Bに示されるインダイレクトボンディングデバイス100は、対応する歯科矯正装具130を、対応する歯60の唇側歯表面上で、対応する歯60に接着するように構成されていることに留意されたい。具体的には、各歯60の適用面は唇側歯表面である。いくつかの他の実施形態では、インダイレクトボンディングデバイス100は、対応する歯科矯正装具130を、対応する歯60の舌側歯表面上で、対応する歯60に接着するように構成されていてもよい。具体的には、各歯60の適用面は舌側歯表面であってもよい。更に、
図1Aに示される各歯科矯正装具130は、歯科矯正ブラケットであることに留意されたい。いくつかの他の実施形態では、複数の歯科矯正装具130は、複数の歯60に接着されるように構成されてもよい任意の装具を含み得る。
【0037】
図1Aの例示された実施形態では、第1のトレイ110は完全トレイである。具体的には、第1のトレイ110は、複数の歯60に対応する複数の歯科矯正装具130を含む。しかし、いくつかの他の実施形態では、第1のトレイ110は部分トレイであってもよい。即ち、第1のトレイ110は、少なくとも1本の歯60に対応する少なくとも1つの歯科矯正装具130を含んでもよい。場合によっては(例えば、歯の過密)、歯科矯正装具の歯への接着をより制御できるようにするために、部分トレイが歯科医によって使用されてもよい。これらの場合には、第1のトレイ110は完全トレイの2分割又は3分割にされてもよい。いくつかの他の場合には、部分トレイは、偶発的に剥離した特定の歯科矯正装具を再適用するために使用されてもよい。具体的には、部分トレイは、歯科矯正装具の不具合(破断など)が生じた場合に特定の歯科矯正装具を再適用するために使用されてもよい。したがって、第2のトレイ120もまた、第1のトレイ110に対応する部分トレイであってもよい。しかし、第1のトレイ110及び第2のトレイ120の構成は、所望の属性に従って変更されてもよい。
【0038】
インダイレクトボンディングデバイス100は、複数の歯科矯正装具130を複数の歯60に適用するために使用されてもよい。具体的には、インダイレクトボンディングデバイス100は、対応する歯科矯正装具130を、対応する歯60に適用するために使用されてもよい。有利に、インダイレクトボンディングデバイス100は、第2のトレイ120が第1のトレイ110に着脱可能に結合されると、複数の歯科矯正装具130を複数の歯60に同時に適用してもよい。いくつかの実施形態では、インダイレクトボンディングデバイス100は、少なくとも1本の歯60に対応する少なくとも1つの歯科矯正装具130を適用するために使用されてもよい。インダイレクトボンディングデバイス100を、
図1B、
図2A、及び
図2Bを参照して詳細に説明する。
【0039】
図1Bは、本開示の一実施形態に係るインダイレクトボンディングデバイス100の断面側面図を示す。
図1Bは、(
図1Aに示されている)複数の歯60のうちの歯60Aの断面側面図を更に示す。歯60Aは歯表面62Aを有する。上述されたように、歯表面62Aは歯60Aの外面に対応する。歯表面62Aは、唇側歯表面、頬側歯表面、舌側歯表面、及び咬合側歯表面を含む。更に、歯表面62Aは適用面及び非適用面を含む。適用面は歯60Aの唇側歯表面又は歯60Aの舌側歯表面であってもよい。
図1Bの例示された実施形態では、適用面は歯60Aの唇側歯表面であり、非適用面は歯60Aの舌側表面を含む。
【0040】
歯60Aは、中切歯、側切歯、犬歯、小臼歯、第1大臼歯、第2大臼歯、又は第3大臼歯を含んでもよい。更に、歯60Aは患者の下顎歯列弓又は上顎歯列弓のものであってもよい。
図1Bに示されるように、歯60Aは患者の歯肉組織70によって部分的に包囲されている。
【0041】
以下においては、歯60Aが参照されるが、インダイレクトボンディングデバイス100は、(
図1Aに示される)複数の歯60のうちの各歯60に対応する複数の説明された特徴を含んでもよいことを理解されたい。
図1Bを参照すると、第1のトレイ110は、歯表面62Aを有する歯60Aに着脱可能に結合されるように構成されている。第1のトレイ110は、第1の内面112、及び第1の内面112と反対の第1の外面114を含む。第1の内面112は、歯表面62Aに少なくとも部分的に適合している。
【0042】
第2のトレイ120は、第1のトレイ110に着脱可能に結合されるように構成されている。第2のトレイ120は、第2の内面122、及び第2の内面122と反対の第2の外面124を含む。
図1Bの例示された実施形態では、第2のトレイ120は、その第2の内面122上に配置された突起123を更に含む。いくつかの実施形態では、突起123は、第1のトレイ110の第1の外面114に向かって延びている。
【0043】
いくつかの実施形態では、第2のトレイ120は、締まりばめを介して第1のトレイ110に着脱可能に結合する。換言すれば、第2のトレイ120の第2の内面122は、第1のトレイ110の第1の外面114よりも若干小さい幾何学的寸法を有してもよい。その結果、第2のトレイ120が第1のトレイ110に着脱可能に結合されると、第2のトレイ120は第1のトレイ110を少なくとも部分的に変形させ得る。
【0044】
したがって、いくつかの実施形態では、第1のトレイ110は、第1の弾性率を有する第1の材料を含む。いくつかの実施形態では、第2のトレイ120は、第2の弾性率を有する第2の材料を含む。いくつかの実施形態では、第2の弾性率は第1の弾性率よりも大きく、これにより、第2のトレイ120は、第1のトレイ110に係合すると、第1のトレイ110を少なくとも部分的に変形させるように構成されている。換言すれば、いくつかの実施形態では、第1のトレイ110は第2のトレイ120よりも柔らかいか、又は柔軟であってもよい。いくつかの実施形態では、第1の弾性率は約0.5メガパスカル(MPa)~約100MPaである。いくつかの実施形態では、第2の弾性率は約1000MPa~約2500MPaである。いくつかの他の実施形態では、第1の弾性率は約20MPa~約500MPaであってもよく、第2の弾性率は約2000MPa~約3000MPaであってもよい。
【0045】
第1のトレイ110及び第2のトレイ120は、任意の好適な製造プロセスを用いて任意の好適な材料によって作製され得る。例えば、第1のトレイ110及び第2のトレイ120の各々は、シリコーン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PET-G)、ポリスチレン、及び同様のものなどの材料から作製されてもよい。更に、第1のトレイ110及び第2のトレイ120の各々は、積層造形、熱成形、又はこれらの組み合わせによって製造されてもよい。歯科医は(
図1に示される)複数の歯60を走査し、複数の歯60の仮想モデルを生成してもよい。場合によっては、歯科医は、仮想モデルに従って第1のトレイ110及び第2のトレイ120を製造するために複数の歯60の仮想モデルを製造施設へ送信してもよい。いくつかの他の場合には、歯科医は、仮想モデルに基づいて第1のトレイ110及び第2のトレイ120を自分で製造してもよい。
【0046】
図1Bに示されるように、第1のトレイ110は空洞116を更に含む。空洞116は長手方向軸117に沿って第1の内面112から第1の外面114へ少なくとも部分的に延びている。第1のトレイ110は、歯科矯正装具130Aを更に含む。歯科矯正装具130Aは、(
図1Aに示される)複数の歯科矯正装具130からのものであってもよい。歯科矯正装具130Aは、空洞116内に少なくとも部分的に、かつ着脱可能に受容されている。空洞116は、歯60Aの適用面に対応する第1のトレイ110内に含まれてもよい。更に、空洞116のサイズは歯科矯正装具130Aのサイズに従って構成されてもよい。場合によっては、歯科矯正装具130Aは、歯科矯正装具130と互換的に称されてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、第1のトレイ110は、(
図1Aに示される)複数の歯60に対応する複数の空洞116を更に含む。いくつかの実施形態では、インダイレクトボンディングデバイス100は、(
図1Aに示される)複数の歯60に対応する複数の歯科矯正装具130Aを含む。各歯科矯正装具130Aは、複数の空洞116のうちの対応する空洞116内に少なくとも部分的に、かつ着脱可能に受容されている。複数の空洞116は、(
図1Aに示される)複数の歯60の適用面に対応してもよい。
【0048】
図1Bに示される歯科矯正装具130Aは歯科矯正ブラケットである。いくつかの他の実施形態では、歯科矯正装具130Aは、歯60Aに接着されることになる任意の歯科矯正装具を含み得る。具体的には、歯科矯正装具130Aは、限定するものではないが、歯科矯正バッカルチューブ、歯科矯正シース、歯科矯正咬合オープナ、咬合ランプ、アライナアタッチメント、歯科矯正ボタン、歯科矯正クリート、及び同様のものを含んでもよい。いくつかの実施形態では、複数の歯科矯正装具130Aのうちの異なる歯科矯正装具が、(
図1Aに示される)複数の歯60のうちの異なる歯に適用されてもよい。例えば、歯科矯正ブラケットは切歯、犬歯等に適用されてもよく、その一方で、歯科矯正バッカルチューブは患者の大臼歯に適用されてもよい。
【0049】
歯科矯正装具130Aは基面132を含む。基面132は、歯表面62Aとの接着のために適した形状を有してもよい。具体的には、基面132は、歯60Aの適用面との接着のために適した形状を有してもよい。いくつかの実施形態では、基面132は、歯60Aの適用面の外形と一致する外形を有してもよい。いくつかの実施形態では、歯科矯正装具130Aは、歯60Aへの歯科矯正装具130Aの接着を改善するために基面132上に配置されたメッシュ、突出部、パターン、及び同様のもの(図示せず)を更に含んでもよい。
【0050】
歯科矯正装具130Aは、基面132上に配置された接着剤層140を更に含む。接着剤層140は、歯科矯正装具130Aを歯60Aに接着するように構成されている。接着剤層140は厚さ140Tを規定する。接着剤層140の厚さ140Tは、接着剤層140の最大厚さとして規定されてもよい。
【0051】
接着剤層140は、単層又は多層接着剤を含んでもよい。具体的には、接着剤層140は1つ以上の接着剤層を含んでもよい。1つ以上の接着剤層の各層は異なる接着剤を含んでもよい。1つ以上の接着剤層は、接着剤の異なる組成を含んでもよい。組成は、例えば、光硬化性及び化学硬化性の両方の歯科矯正接着剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成は、フッ化物放出接着剤、セルフエッチング接着剤、セルフプライミング接着剤、色変化接着剤、及びこれらの組み合わせであってもよい。
【0052】
好適な接着剤としては、コンポジット、コンポマー、グラスアイオノマー、及び樹脂変性グラスアイオノマーを挙げることができる。光硬化性接着剤の例としては、3M UnitekからのTransbondブランドXTプライマー、TransbondブランドMIPプライマー、Transbond Supreme LV、及びTransbond LRブランド接着剤、並びに3M ESPEからのAdperブランドSingle Bond、AdperブランドSingle Bond Plus、及びAdperブランドScotchbondブランド接着剤を挙げることができる。化学硬化性接着剤の例としては、3M UnitekからのSondhiブランド接着剤、Conciseブランド接着剤、及びMulti-Cureブランドグラスアイオノマーセメントを挙げることができる。
【0053】
接着剤層140は、所望の属性に従って、接着剤の上述の例及び任意の他の好適な接着剤のうちの1種以上を含んでもよいことに留意されたい。
【0054】
いくつかの実施形態では、第1のトレイ110は、歯科矯正装具130Aに隣接したリング状凹部(図示せず)を更に含んでもよい。具体的には、空洞116はリング状凹部を含んでもよい。いくつかの実施形態では、接着剤層140の過剰な接着剤は接着中にリング状凹部内へ流れ込んでもよく、歯60Aの非適用面上に擦り付けられない可能性がある。したがってリング状凹部は、接着剤層140の、歯科矯正装具130Aの基面132から歯60Aへの滑らかな移行を作り出し得る。それゆえ、リング状凹部は、歯60Aの非適用面上の接着剤層140の擦り付きを更に低減し得る。更に、接着剤層140は歯60Aの適用面上に均一に適用され得る。
【0055】
図1Bに示されるように、いくつかの実施形態では、第2のトレイ120が第1のトレイ110から取り外された状態で歯科矯正装具130Aが第1のトレイ110の空洞116内に受容されると、歯科矯正装具130Aの基面132及び第1のトレイ110の第1の内面112はそれらの間に長手方向軸117に沿って第1の間隙G1を画定する。換言すれば、歯科矯正装具130Aの基面132は空洞116内に配置され、長手方向軸117に沿って第1の間隙G1だけ第1の内面112から離間される。いくつかの実施形態では、第1の間隙G1は、歯科矯正装具130Aの基面132と第1のトレイ110の第1の内面112との間の最小間隙として規定されてもよい。
【0056】
更に、
図1Bに示されるように、いくつかの実施形態では、第1のトレイ110は1つ以上の咬合側停止部材190を更に含む。第1のトレイ110が複数の歯60に着脱可能に結合されると、咬合側停止部材190は(
図1Aに示される)複数の歯60の咬合側歯表面に係合し得る。
図1Bの例示された実施形態では、咬合側停止部材190は第1の内面112から第1のトレイ110の第1の外面114へ延びている。しかし、いくつかの他の実施形態では、咬合側停止部材190は第1の内面112から第1のトレイ110の第1の外面114へ部分的に延びていてもよい。更に、咬合側停止部材190は、所望の属性に従って任意の形状を有し得ることを理解されたい。
【0057】
いくつかの実施形態では、咬合側停止部材190は剛直であってもよい。具体的には、第1のトレイ110が歯60Aに着脱可能に結合される際、及び第2のトレイ120が第1のトレイ110に着脱可能に結合される際、咬合側停止部材190は変形し得ない。したがって、第1のトレイ110は変形可能であってもよいため、咬合側停止部材190は歯60A上の第1のトレイ110の位置決めを改善し得る。更に、咬合側停止部材190は、歯60Aの適用面に対応する空洞116の位置決めを改善し得る。したがって、咬合側停止部材190は、歯60A上での歯科矯正装具130Aの位置決めの精度及び正確性を改善し得る。
【0058】
図2Aは、歯60Aに着脱可能に結合された第1のトレイ110、及び第1のトレイ110から取り外された第2のトレイ120を示す。
図2Aを参照すると、第2のトレイ120が第1のトレイ110から取り外された状態で第1のトレイ110が歯60Aに着脱可能に結合されると、接着剤層140は歯表面62Aから離間されている。
【0059】
いくつかの実施形態では、第2のトレイ120が第1のトレイ110から取り外された状態で第1のトレイ110が歯60Aに着脱可能に結合されると、第1の間隙G1は不変のままであってもよい。
図2Aの例示された実施形態では、第1のトレイ110が歯60Aに着脱可能に結合されると、第1の間隙G1は不変のままである。いくつかの実施形態では、基面132上に配置された接着剤層140は、第2のトレイ120が第1のトレイ110に着脱可能に結合される前に第1の間隙G1を部分的に充填し、接着剤層140は歯表面62Aから離間されている。換言すれば、第1の間隙G1は接着剤層140の厚さ140Tよりも大きい。
【0060】
図1B及び
図2Aの例示された実施形態では、第2のトレイ120が第1のトレイ110から取り外された状態で歯科矯正装具130Aを空洞116内に受容すると、接着剤層140と第1のトレイ110の第1の内面112との間に最小間隙GAがもたらされる。第2のトレイ120が第1のトレイ110から取り外された状態で第1のトレイ110が歯60Aに着脱可能に結合されると、最小間隙GAは不変のままであってもよい。場合によっては、最小間隙GAは第1の間隙G1と接着剤層140の厚さ140Tとの差以下であってもよい(GA≦(G1-140T))。更に、最小間隙GAは、接着剤層140が第1のトレイ110の第1の内面112及び歯60Aの歯表面62Aから離間されるよう、常に0より大きくてもよい。しかし、いくつかの実施形態では、最小間隙GAは実質的に0であってもよい。最小間隙GAは、第2のトレイ120が第1のトレイ110から取り外された状態で第1のトレイ110が歯60Aに着脱可能に結合されると、接着剤層140が歯表面62Aに接触しないことを確実にし得る。
【0061】
第1のトレイ110が歯60Aに着脱可能に結合されると、咬合側停止部材190は歯60Aの咬合側歯表面に係合する。上述されたように、咬合側停止部材190は、歯60A上の第1のトレイ110の位置決めを改善し得る。咬合側停止部材190はまた、空洞116が歯60Aの適用面に対応するよう、空洞116の位置決めも改善し得る。
図2A及び
図2Bに示されるように、第1のトレイ110は、歯60Aに着脱可能に結合されると、歯肉組織70に接触しないように構成されていてもよい。したがって、インダイレクトボンディングデバイス100は、歯科矯正治療中の患者の快適性を改善し得る。
【0062】
図2Bは、第2のトレイ120が第1のトレイ110に着脱可能に結合された状態で歯60Aに着脱可能に結合された第1のトレイ110を示す。
図2Bを参照すると、第2のトレイ120が第1のトレイ110に着脱可能に結合されると、第2のトレイ120は第1のトレイ110に係合し、歯科矯正装具130Aを歯表面62Aに向かって移動させて、接着剤層140が歯表面62Aに接触する。更に、第2のトレイ120が第1のトレイ110に着脱可能に結合されると、第2のトレイ120の第2の内面122は第1のトレイ110に係合し、歯科矯正装具130Aを第1の内面112に向かって移動させて、歯科矯正装具130Aの基面132が長手方向軸117に沿って第2の間隙G2だけ第1の内面112から離間される。第2の間隙G2は第1の間隙G1よりも小さい。いくつかの実施形態では、第2の間隙G2は、接着剤層140の(
図2Aに示される)厚さ140T以下である。いくつかの他の実施形態では、第2の間隙G2は実質的に0である。
【0063】
より具体的には、
図2A及び
図2Bの例示された実施形態では、第2のトレイ120が第1のトレイ110に着脱可能に結合されると、突起123が第1のトレイ110を少なくとも部分的に変形させ、歯科矯正装具130Aを長手方向軸117に沿って歯表面62Aに向かって移動させて、接着剤層140が歯表面62Aに接触する。更に、突起123は、第1のトレイ110を少なくとも部分的に変形させ、歯科矯正装具130Aを長手方向軸117に沿って第1のトレイ110の第1の内面112に向かって移動させて、接着剤層140が少なくとも第1の内面112と同一平面になる。
【0064】
突起123が第2のトレイ120の第2の内面122の残りの部分よりも大きく第1のトレイ110の第1の外面114に向かって延びるよう、突起123は任意の好適な形状を有し得る。場合によっては、突起123は、第1のトレイ110の第1の外面114と面を接する、又はそれに係合する実質的に平面状の部分を有してもよい。更に、平面部分と第2のトレイ120の第2の内面122との間に突起123の隆起部分が配置されていてもよい。隆起部分は少なくとも長手方向軸117に沿って延びていてもよい。更に、隆起部分は曲線状又は直線状であってもよい。
【0065】
インダイレクトボンディングデバイス100は、患者の歯60A上の接着剤層140の擦り付きを低減し得る。具体的には、接着剤層140は、第1のトレイ110が歯60Aに着脱可能に結合される際に、接着剤層140が歯表面62A上に擦り付かないよう、歯科矯正装具130Aの基面132上に配置されてもよい。それゆえ、インダイレクトボンディングデバイス100は、接着剤層140が歯表面62A上で拭い取られることを防止し得る。したがって、インダイレクトボンディングデバイス100は、歯科医が、歯科矯正装具130Aの歯60Aへの確実な接着のための接着剤層140の厚さ140Tを推定し、最適化する必要性を無くし得る。加えて、インダイレクトボンディングデバイス100は、(歯科医が、必要とされるよりも多くの接着剤を使用する場合に)過剰な接着剤を除去する必要性を無くし得る。これは患者のチェアタイムを低減し得る。
【0066】
第2のトレイ120の第1のトレイ110への着脱可能な結合は、有利に、第1のトレイ110の局所的変形を低減し得る。即ち、第2のトレイ120は第1のトレイ110を均一な様態で変形させ得る。これは、歯60A上の歯科矯正装具130Aの位置決めのより高い精度及び正確性をもたらし得る。具体的には、歯科矯正装具130Aは、歯60Aの適用面上に精密かつ正確に適用され得る。その結果、インダイレクトボンディングデバイス100は、歯科矯正治療の有効性を改善し得る。
【0067】
更に、第2のトレイ120が第1のトレイ110に着脱可能に結合されると、歯科矯正装具130Aは歯60Aの適用面と実質的に垂直に移動し、歯60Aに接近してもよい。したがって、インダイレクトボンディングデバイス100は、歯60Aの適用面上の接着剤層140の均一な展延又は適用を可能にし得る。したがって、インダイレクトボンディングデバイス100は、歯科矯正装具130Aの歯60Aへの強固で確実な接着を可能にし得る。
【0068】
図2Cに示されるように、いくつかの実施形態では、第1のトレイ110は、空洞116内へ延びた空洞突出部118を更に含む。空洞突出部118は歯科矯正装具130Aに係合し、これにより、歯科矯正装具130Aは空洞116内に保持される。いくつかの実施形態では、空洞突出部118は第1のトレイ110と一体に形成されてもよい。いくつかの実施形態では、空洞突出部118は、第1の弾性率を有する第1の材料を含んでもよい。空洞突出部118は、曲線状、多角形、半円形、又は同様のものなどの、任意の好適な断面形状を有し得る。いくつかの実施形態では、空洞突出部118は、歯科矯正装具130Aの周りに配置された完全又は部分的な環状構成を有してもよい。
【0069】
図3A及び
図3Bは、本開示の別の実施形態に係るインダイレクトボンディングデバイス200を示す。インダイレクトボンディングデバイス200は、
図2A及び
図2Bに示されるインダイレクトボンディングデバイス100と実質的に同様である。インダイレクトボンディングデバイス100、200の間の共通構成要素は同じ参照符号によって示される。しかし、インダイレクトボンディングデバイス200は、
図2A及び
図2Bに示される第1のトレイ110及び第2のトレイ120とはそれぞれ異なる構成を有する第1のトレイ210及び第2のトレイ220を含む。
【0070】
図3A及び
図3Bを参照すると、第1のトレイ210は、歯表面62Aを有する歯60Aに着脱可能に結合されるように構成されている。第1のトレイ210は、第1の内面212、及び第1の内面212と反対の第1の外面214を含む。第1の内面212は、歯表面62Aに少なくとも部分的に適合している。第1のトレイ210は、第1の外面214上に配置され、長手方向軸117に沿って第1のトレイ210の第1の内面212から離れる方向に延びるトレイ突出部215を更に含む。いくつかの実施形態では、第1のトレイ210は、(
図2Aに示される)咬合側停止部材190を更に含んでもよい。
【0071】
更に、第2のトレイ220は、第1のトレイ210に着脱可能に結合されるように構成されている。第2のトレイ220は、第2の内面222、及び第2の内面222と反対の第2の外面224を含む。
【0072】
図3Aは、歯60Aに着脱可能に結合された第1のトレイ210、及び第1のトレイ210から取り外された第2のトレイ220を示す。
図3Aを参照すると、第2のトレイ220が第1のトレイ210から取り外された状態で第1のトレイ210が歯60Aに着脱可能に結合されると、接着剤層140は歯表面62Aから離間されている。
【0073】
図3Aの例示された実施形態では、第2のトレイ220が第1のトレイ210から取り外された状態で第1のトレイ210が歯60Aに着脱可能に結合されると、第1の間隙G1は不変のままである。更に、基面132上に配置された接着剤層140は、第2のトレイ220が第1のトレイ210に着脱可能に結合される前に第1の間隙G1を部分的に充填し、接着剤層140は歯表面62Aから離間されている。換言すれば、第1の間隙G1は、接着剤層140の厚さ140Tよりも大きい。
【0074】
図3Bは、第2のトレイ220が第1のトレイ210に着脱可能に結合された状態で歯60Aに着脱可能に結合された第1のトレイ210を示す。
図3Bを参照すると、第2のトレイ220が第1のトレイ210に着脱可能に結合されると、第2のトレイ220は第1のトレイ210に係合し、歯科矯正装具130Aを歯表面62Aに向かって移動させて、接着剤層140が歯表面62Aに接触する。更に、第2のトレイ220が第1のトレイ210に着脱可能に結合されると、第2のトレイ220は第1のトレイ210に係合し、歯科矯正装具130Aを第1の内面212に向かって移動させて、歯科矯正装具130Aの基面132が長手方向軸117に沿って第2の間隙G2だけ第1の内面212から離間される。第2の間隙G2は、第1の間隙G1よりも小さい。いくつかの実施形態では、第2の間隙G2は接着剤層140の(
図3Aに示される)厚さ140T以下である。いくつかの他の実施形態では、第2の間隙G2は実質的に0である。いくつかの実施形態では、第2の間隙G2は負であってもよい。
【0075】
より具体的には、
図3A及び
図3Bの例示された実施形態では、第2のトレイ220が第1のトレイ210に着脱可能に結合されると、第2のトレイ220の第2の内面222はトレイ突出部215に係合し、トレイ突出部215を少なくとも部分的に変形させ、歯科矯正装具130Aを長手方向軸117に沿って歯表面62Aに向かって移動させて、接着剤層140が歯表面62Aに接触する。更に、第2のトレイ220の第2の内面222は、トレイ突出部215に係合し、トレイ突出部215を少なくとも部分的に変形させ、歯科矯正装具130Aを長手方向軸117に沿って第1の内面212に向かって移動さて、接着剤層140が第1の内面212と少なくとも同一平面になる。場合によっては、第2のトレイ220は、トレイ突出部215が第2のトレイ220の第2の内面222に実質的に適合するような様態でトレイ突出部215を変形させてもよい。トレイ突出部215の変形は、第1のトレイ210の第1の内面212及び歯60Aの歯表面62Aに向かう歯科矯正装具130Aの移動を生じさせる。
【0076】
トレイ突出部が第1のトレイ210の第1の外面214の残りの部分よりも大きく第2のトレイ220の第2の内面222に向かって延びるよう、トレイ突出部215は任意の好適な形状を有し得る。トレイ突出部215は、曲線状、多角形、半円形などの、様々な断面形状を有してもよい。
【0077】
図4A及び
図4Bは、本開示の別の実施形態に係るインダイレクトボンディングデバイス300を示す。インダイレクトボンディングデバイス300は、
図2A及び
図2Bに示されるインダイレクトボンディングデバイス100と実質的に同様である。インダイレクトボンディングデバイス100、300の間の共通構成要素は同じ参照符号によって示される。しかし、インダイレクトボンディングデバイス300は、
図2A及び
図2Bに示される第1のトレイ110及び第2のトレイ120とはそれぞれ異なる構成を有する第1のトレイ310及び第2のトレイ320を含む。更に、第1のトレイ310は、
図2A及び
図2Bに示される空洞116とは異なる構成を有する空洞316を含む。
【0078】
図4A及び
図4Bを参照すると、第1のトレイ310は、歯表面62Aを有する歯60Aに着脱可能に結合されるように構成されている。第1のトレイ310は、第1の内面312、及び第1の内面312と反対の第1の外面314を含む。第1の内面312は歯表面62Aに少なくとも部分的に適合している。いくつかの実施形態では、第1のトレイ310は、(
図2Aに示される)咬合側停止部材190を更に含んでもよい。
【0079】
更に、第2のトレイ320は、第1のトレイ310に着脱可能に結合されるように構成されている。第2のトレイ320は、第2の内面322、及び第2の内面322と反対の第2の外面324を含む。
【0080】
空洞316は第1の内面312から第1のトレイ310の第1の外面314へ延びている。したがって、空洞316は第1のトレイ310内の貫通開口を形成してもよい。いくつかの実施形態では、第1のトレイ310は、空洞316内へ延びた(
図2Cに示される)空洞突出部118を更に含んでもよい。
【0081】
第2のトレイ320が第1のトレイ310から取り外された状態で、歯科矯正装具130Aが空洞316内に受容されると、歯科矯正装具130Aは第1のトレイ310の第1の外面314を貫いて少なくとも部分的に延びる。更に、第2のトレイ320が第1のトレイ310から取り外された状態で歯科矯正装具130Aが第1のトレイ310の空洞316内に受容されると、歯科矯正装具130Aの基面132は空洞316内に配置され、長手方向軸117に沿って第1の間隙G1だけ第1の内面312から離間される。いくつかの実施形態では、歯科矯正装具130Aの最大長の少なくとも10%が第1のトレイ310の第1の外面314の上方に配置される。換言すれば、歯科矯正装具130Aの最大長の少なくとも10%が空洞316の外部に延びている。いくつかの他の実施形態では、歯科矯正装具130Aの最大長の少なくとも15%、少なくとも20%、又は少なくとも30%が第1のトレイ310の第1の外面314の上方に配置される。
【0082】
図4Aは、歯60Aに着脱可能に結合された第1のトレイ310、及び第1のトレイ310から取り外された第2のトレイ320を示す。
図4Aを参照すると、第2のトレイ320が第1のトレイ310から取り外された状態で第1のトレイ310が歯60Aと着脱可能に結合されると、歯科矯正装具130Aは第1のトレイ310の第1の外面314を貫いて少なくとも部分的に延びる。歯科矯正装具130Aは、第1のトレイ310が歯60Aに着脱可能に結合されたとき、接着剤層140が歯表面62Aから離間されるよう、第1のトレイ310の空洞316内に少なくとも部分的に、かつ着脱可能に受容される。
【0083】
図4Aの例示された実施形態では、第2のトレイ320が第1のトレイ310から取り外された状態で第1のトレイ310が歯60Aに着脱可能に結合されると、第1の間隙G1は不変のままである。更に、基面132上に配置された接着剤層140は、第2のトレイ120が第1のトレイ110に着脱可能に結合される前に第1の間隙G1を部分的に充填し、接着剤層140は歯表面62Aから離間されている。換言すれば、第1の間隙G1は接着剤層140の厚さ140Tよりも大きい。
【0084】
図4Bは、第2のトレイ320が第1のトレイ310に着脱可能に結合された状態で歯60Aに着脱可能に結合された第1のトレイ310を示す。
図4Bを参照すると、第2のトレイ320が第1のトレイ310と着脱可能に結合されると、第2のトレイ320は第1のトレイ310に係合し、歯科矯正装具130Aを長手方向軸117に沿って歯表面62Aに向かって移動させて、接着剤層140が歯表面62Aに接触する。更に、第2のトレイ320が第1のトレイ310に着脱可能に結合されると、第2のトレイ320は第1のトレイ310に係合し、歯科矯正装具130Aを第1の内面312に向かって移動させて、歯科矯正装具130Aの基面132が長手方向軸117に沿って第2の間隙G2だけ第1の内面312から離間される。第2の間隙G2は第1の間隙G1よりも小さい。いくつかの実施形態では、第2の間隙G2は接着剤層140の(
図4Aに示される)厚さ140T以下である。いくつかの他の実施形態では、第2の間隙G2は実質的に0である。
【0085】
より具体的には、第2のトレイ320が第1のトレイ310と着脱可能に結合されると、第2のトレイ320の第2の内面322は歯科矯正装具130Aに係合し、歯科矯正装具130Aを長手方向軸117に沿って歯表面62Aに向かって移動させて、接着剤層140が歯表面62Aに接触する。換言すれば、第2のトレイ320が第1のトレイ310と着脱可能に結合されると、第2のトレイ320の第2の内面322は、歯科矯正装具130Aに係合し、歯科矯正装具130Aを長手方向軸117に沿って第1の内面312に向かって移動させて、接着剤層140が第1の内面312と少なくとも同一平面になる。
【0086】
図5A及び
図5Bは、本開示の更に別の実施形態に係るインダイレクトボンディングデバイス400を示す。インダイレクトボンディングデバイス400は、
図2A及び
図2Bに示されるインダイレクトボンディングデバイス100と同様である。インダイレクトボンディングデバイス100、400の間の共通構成要素は同じ参照符号によって示される。しかし、インダイレクトボンディングデバイス400は、
図2A及び
図2Bに示される第1のトレイ110及び第2のトレイ120とはそれぞれ異なる構成を有する第1のトレイ410及び第2のトレイ420を含む。
【0087】
図5A及び
図5Bを参照すると、第1のトレイ410は、歯表面62Aを有する歯60Aに着脱可能に結合されるように構成されている。第1のトレイ410は、第1の内面412、及び第1の内面412と反対の第1の外面414を含む。第1のトレイ410は第1の部分409及び第2の部分411を更に含む。第1の内面412は歯表面62Aに少なくとも部分的に適合している。具体的には、第1の部分409は歯表面62Aに少なくとも部分的に適合し、歯60Aに着脱可能に結合されるように構成されている。いくつかの実施形態では、第1のトレイ410は(
図2Aに示される)咬合側停止部材190を更に含んでもよい。具体的には、第1のトレイ410の第1の部分409は咬合側停止部材190を含んでもよい。第2の部分411は、歯科矯正装具130Aを内部に少なくとも部分的に、かつ着脱可能に受容する空洞116を含む。
【0088】
第1のトレイ410は、第1の部分409を第2の部分411に接続するリビングヒンジ480を更に含む。いくつかの実施形態では、第1のトレイ410は、リビングヒンジ480を形成するために、方略的な切り込み及び薄くした区分を組み込んでもよい。
図5A及び
図5Bの例示された実施形態では、リビングヒンジ480は、第1の内面412から第1のトレイ410の第1の外面414へ部分的に延びた切り込みを組み込むことによって形成されている。いくつかの実施形態では、リビングヒンジ480は、第1のトレイ410の残りの部分に対してより大きい可撓性を有する領域によって形成されてもよい。場合によっては、より大きい可撓性は、第1のトレイ410の残りの部分とは異なる材料によるものであってもよい。場合によっては、より大きい可撓性は、第1のトレイ410の残りの部分とは異なる構造的特徴(例えば、部分的切り込み、穿孔、低減された厚さ等)を有する脆弱な領域によるものであってもよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、リビングヒンジ480はヒンジ軸482を規定する。ヒンジ軸482は、第2の部分411が第1の部分409に対して旋回する軸として規定されてもよい。具体的には、第1のトレイ410の第2の部分411は、第1の部分409に対してヒンジ軸482を中心として旋回するように構成されている。第2の部分411は、(
図5Aに示される)第1の位置411Aと(
図5Bに示される)第2の位置411Bとの間で旋回可能である。第1の位置411Aにおいて、第2の部分411は歯表面62Aから離間される。更に、第2の位置411Bにおいて、第2の部分411は歯表面62Aに係合する。
【0090】
第2のトレイ420は、第2の内面422、及び第2の内面422と反対の第2の外面424を含む。第2のトレイ420は、第1のトレイ410に着脱可能に結合されるように構成されている。具体的には、第2のトレイ420が第1のトレイ410に係合し、第2の部分411を、ヒンジ軸482を中心として歯表面62Aに向かって旋回移動させて、接着剤層140が歯表面62Aに接触するように構成されている。より具体的には、第2のトレイ420が第1のトレイ410に係合し、第2の部分411を第1の位置411Aから第2の位置411Bへ旋回移動させて、接着剤層140が歯表面62Aに接触するように構成されている。
【0091】
図5Aは、歯60Aに着脱可能に結合された第1のトレイ410、及び第1のトレイ410から取り外された第2のトレイ420を示す。
図5Aを参照すると、第2のトレイ420が第1のトレイ410から取り外された状態で第1のトレイ410が歯60Aに着脱可能に結合されると、接着剤層140は歯表面62Aから離間されている。具体的には、第2のトレイ420が第1のトレイ410から取り外された状態で第1のトレイ410が歯60Aに着脱可能に結合されると、第2の部分411は第1の位置411Aにあり、これにより、接着剤層140は歯表面62Aから離間されている。いくつかの実施形態では、第1のトレイ410は、第1のトレイ410が歯60Aに着脱可能に結合されると、接着剤層140が歯表面62Aから離間されるよう、第2の部分411を第1の位置411Aに保持するように構成されていてもよい。
【0092】
図5Bを参照すると、第2のトレイ420が第1のトレイ410に着脱可能に結合されると、第2のトレイ420は第1のトレイ410に係合し、歯科矯正装具130Aを歯表面62Aに向かって移動させて、接着剤層140が歯表面62Aに接触する。具体的には、第2のトレイ420の第2の内面412は第1のトレイ410に係合し、歯科矯正装具130Aを歯表面62Aに向かって移動させる。より具体的には、第2のトレイ420が第1のトレイ410に着脱可能に結合されると、第2の部分411はヒンジ軸482を中心として第2の位置411Bへ旋回して、接着剤層140が歯表面62Aに接触する。
【0093】
図5A及び
図5Bの例示された実施形態では、第2の部分411の第1の位置411Aにおいて、歯科矯正装具130Aの基面132は第1のトレイ410の第1の内面412と同一平面にある。これは、第2の部分411の第1の位置411Aにおいて、接着剤層140が空洞116から少なくとも部分的に突出することを可能にし得る。しかし、いくつかの他の実施形態では、第2の部分411の第1の位置411Aにおいて、歯科矯正装具130Aの基面132は、第1のトレイ410の第1の内面412と同一平面になくてもよい。このような実施形態では、接着剤層140の厚さ140Tは第1の内面412と基面132との間の距離より大きくてもよい。それゆえ、いくつかの実施形態では、接着剤層140の少なくとも部分は第1の内面412を貫通して延び、第2の部分411の第2の位置411Bにおいて歯表面62Aに接触してもよい。
【0094】
インダイレクトボンディングデバイス400は、患者の歯60A上の接着剤層140の擦り付きを低減し得る。具体的には、接着剤層140は、第1のトレイ110が歯60Aに着脱可能に結合される際に、接着剤層140が歯表面62A上に擦り付かないよう、歯科矯正装具130Aの基面132上に配置されてもよい。それゆえ、インダイレクトボンディングデバイス400は、接着剤層140が歯表面62A上で拭い取られることを防止し得る。したがって、インダイレクトボンディングデバイス400は、歯科医が、歯科矯正装具130Aの歯60Aへの確実な接着のための接着剤層140の(
図1Bに示される)厚さ140Tを推定し、最適化する必要性を無くし得る。加えて、インダイレクトボンディングデバイス400は、(歯科医が、必要とされるよりも多くの接着剤を使用する場合に)過剰な接着剤を除去する必要性を無くし得る。これは患者のチェアタイムを低減し得る。
【0095】
インダイレクトボンディングデバイス400は、歯科矯正装具130Aが、歯表面62Aと実質的に垂直な方向に歯60Aに接近することを可能にし得る。したがって、インダイレクトボンディングデバイス400は、歯60Aの適用面上における接着剤層140の均一な展延を可能にし得、歯60Aの非適用面上における接着剤層140の擦り付きを低減し得る。更に、基面132の歯肉側が歯60Aの適用面と接触する前に基面132の咬合側が歯60Aの適用面と接触することは、接着剤層140を歯表面62Aの歯肉区域に向けて誘導し得る。過剰な接着剤がある場合には、過剰な接着剤は歯表面62Aの歯肉区域に向けて誘導され得る。歯表面62Aの歯肉区域に向けて誘導された過剰な接着剤は、接着剤の硬化の前に歯科医によって除去することがより容易であり得る。
【0096】
図7A及び
図7Bは、本開示の別の実施形態に係るインダイレクトボンディングデバイス600を示す。インダイレクトボンディングデバイス600は、
図2A及び
図2Bに示されるインダイレクトボンディングデバイス100と実質的に同様である。インダイレクトボンディングデバイス100、500の間の共通構成要素は同じ参照符号によって示される。しかし、インダイレクトボンディングデバイス500は、
図2A及び
図2Bに示される第1のトレイ110及び第2のトレイ120とはそれぞれ異なる構成を有する第1のトレイ110及び第2のトレイ120を含む。
【0097】
図7A及び
図7Bを参照すると、第1のトレイ110は、歯表面62Aを有する歯60Aに着脱可能に結合されるように構成されている。第1のトレイ110は、第1の内面112、及び第1の内面112と反対の第1の外面114を含む。第1の内面112は歯表面62Aに少なくとも部分的に適合している。いくつかの実施形態では、第1のトレイ110は(
図2Aに示される)咬合側停止部材190を更に含んでもよい。
【0098】
更に、第2のトレイ120は、第1のトレイ110に着脱可能に結合されるように構成されている。第2のトレイ120は、第2の内面122、及び第2の内面122と反対の第2の外面124を含む。第2のトレイ110は、第1の外面122上に配置され、長手方向軸117に沿って第1の内面124から離れる方向に延びる変形可能なトレイ突出部126を更に含む。変形可能なトレイ突出部126(即ち、ボタン)は、第2のトレイ120の残りの部分の歯形の外形からの逸脱を表す、概ね凸状のレンズ様の形状を有する。他の実施形態では、突出部126は、第2のトレイ120の外形からの逸脱をもたらすために十分な、台形、角錐形、又は他の球根状の形状であってもよい。突出部126内のトレイの厚さは、変形を助けるために、第2のトレイ120の周囲の領域より薄くてもよい。同じ又は他の実施形態では、突出部126は1つ以上の厚さの勾配を含んでもよく、中心により近い領域が外縁部に近い領域よりも薄いか、又はその逆である。
【0099】
ボタン126の外縁寸法は、一貫した圧力が第2のトレイ120の内面123によって装具130Aの顔面側表面に印加され得るよう、装具130Aに対するプロファイルサイズ(即ち、近心-遠心幅及び咬合歯肉高さ)に概ね対応する。目下好ましい実装形態では、第2のトレイ120を第1のトレイ110に結合することが、装具130Aが歯表面62Aに向かって移動することを不注意に引き起こさないよう、ボタンの外縁寸法は装具130Aに対するプロファイル寸法よりも十分に大きい。他の実装形態では、外縁寸法は装具130Aのプロファイル寸法と同等であるか、又はそれより小さくてもよい。
【0100】
図7Aは、歯60Aに着脱可能に結合された第1のトレイ110、及び第1のトレイ210から取り外された第2のトレイ120を示す。
図7Aを参照すると、第2のトレイ120が第1のトレイ110から取り外された状態で第1のトレイ110が歯60Aに着脱可能に結合されると、接着剤層140は歯表面62Aから離間されている。
【0101】
図7Aの例示された実施形態では、第2のトレイ120が第1のトレイ210から取り外された状態で第1のトレイ110が歯60Aに着脱可能に結合されると、第1の間隙G1は不変のままである。更に、基面132上に配置された接着剤層140は、第2のトレイ120が第1のトレイ110に着脱可能に結合される前に第1の間隙G1を部分的に充填し、接着剤層140は歯表面62Aから離間されている。換言すれば、第1の間隙G1は接着剤層140の厚さ140Tよりも大きい。
【0102】
図8Aは、第2のトレイ120が第1のトレイ110に着脱可能に結合され、ボタン126が装具130Aから概ね顔面側方向に設けられた状態で歯60Aに着脱可能に結合された第1のトレイ110を示す。
図7B及び
図8Bは、装具130Aに向かう方向におけるボタン126の変形を示す。
図8Aを参照すると、第2のトレイ120が第1のトレイ110に着脱可能に結合されると、第2のトレイ120は第1のトレイ210に係合するが、歯科矯正装具は、ボタン126自体が歯表面62Aの方向に押されるまで歯表面62Aに向かって移動させられない。その代わりに、内面123が外面114及び装具130Aに隣接して保持され、いくつかの実施形態は2つの表面123と114との間に間隙を生じさせる。
図7B及び
図8Bを参照すると、ボタン126が患者又は医師によって変形させられ、歯科矯正装具130Aを第1の内面212に向かって移動させると、歯科矯正装具130Aの基面132は長手方向軸117に沿って第2の間隙G2だけ第1の内面212から離間される。第2の間隙G2は第1の間隙G1よりも小さい。いくつかの実施形態では、第2の間隙G2は接着剤層140の(
図3Aに示される)厚さ140T以下である。いくつかの他の実施形態では、第2の間隙G2は実質的に0である。いくつかの実施形態では、第2の間隙G2は負であってもよい。
【0103】
より具体的には、
図7A~
図7B及び
図8A~
図8Bの例示された実施形態では、ボタン126が第1のトレイ110の方向に少なくとも部分的に変形させられると、第2のトレイ120の第2の内面123は第1のトレイの外面114に係合し、外面114を少なくとも部分的に変形させ、歯科矯正装具130Aを長手方向軸117に沿って歯表面62Aに向かって移動させて、接着剤層140が歯表面62Aに接触する。更に、第2のトレイ120の第2の内面123は、外面114に係合し、第1のトレイ110を少なくとも部分的に変形させ、歯科矯正装具130Aを長手方向軸117に沿って第1の内面212に向かって移動させて、接着剤層140が第1の内面112と少なくとも同一平面になる。変形は、患者若しくは医師の指先によって、又はボタン126を押し下げるために十分な表面を有する歯科矯正器具を通じてもたらされてもよい。本実施形態は、接着作用がいつ生じるかを更に制御することを可能にし、接着作用とは、順次的接着、又は意図された接着場所の確認を含んでもよい。
【0104】
図6は複数の歯60のための方法500を示す。複数の歯60のうちの各歯60は歯表面62を含む。いくつかの実施形態では、方法500は、インダイレクトボンディングデバイス100、200、300、400のうちの任意のものを使用して複数の歯科矯正装具130を複数の歯60に適用するために用いられてもよい。いくつかの他の実施形態では、方法500は、インダイレクトボンディングデバイス100、200、300、400のうちの任意のものを使用して歯科矯正装具130Aを歯60Aに適用するために用いられてもよい。方法500を、
図1A~
図5B及び
図6を参照して説明する。方法500は以下のステップを含む。
【0105】
ステップ510において、方法500は、複数の空洞116、316及び複数の歯科矯正装具130を含む第1のトレイ110、210、310、410を提供することを含む。上述されたように、複数の歯科矯正装具130のうちの各歯科矯正装具130は、複数の空洞116、316のうちの対応する空洞116、316内に少なくとも部分的に、かつ着脱可能に受容されている。いくつかの実施形態では、第1のトレイ110、210、310、410は、複数の空洞116、316に対応する複数の空洞突出部118を更に含む。いくつかの実施形態では、各空洞突出部118は、対応する空洞116.316内へ延びている。いくつかの実施形態では、各歯科矯正装具130は、複数の空洞突出部118のうちの対応する空洞突出部118によって係合され、対応する歯科矯正装具130を、対応する空洞116、316内に保持する。接着剤層140は、各歯科矯正装具130の基面132上に設けられている。
【0106】
上述されたように、第1のトレイ110、210、310、410は第1の内面112、212、312、412を含む。いくつかの実施形態では、第1の内面112、212、312、412は各歯60の歯表面62に少なくとも部分的に適合している。第1のトレイ110、210、310、410は、第1の内面112、212、312、412と反対の第1の外面114、214、314、414を更に含む。いくつかの実施形態では、複数の空洞116、316のうちの各空洞116、316は、長手方向軸117に沿って第1の内面112、212、312、412から第1の外面114、214、314、414に向かって少なくとも部分的に延びている。
【0107】
ステップ520において、方法500は、第1のトレイ110、210、310、410を複数の歯60に着脱可能に結合することを更に含み、これにより複数の歯科矯正装具130のうちの対応する歯科矯正装具130の基面132上に設けられた接着剤層140が、複数の歯60のうちの対応する歯60の歯表面62から離間されている。
【0108】
いくつかの実施形態では、各歯科矯正装具130の基面132及び第1のトレイ110、210、310の第1の内面112、212、312はそれらの間に長手方向軸117に沿って第1の間隙G1を画定する。第2のトレイ120、220、320が第1のトレイ110、210、310から取り外された状態で第1のトレイ110、210、310が複数の歯60に着脱可能に結合されると、接着剤層140が、対応する歯60の歯表面62から離間されるよう、接着剤層140の厚さ140Tは第1の間隙G1よりも小さい。
【0109】
ステップ530において、方法500は、第2のトレイ120、220、320、420を第1のトレイ110、210、310、410に着脱可能に結合し、各歯科矯正装具130を、対応する歯60の歯表面62に向かって移動させることを更に含み、これにより対応する歯科矯正装具130の基面132上に設けられた接着剤層140が、対応する歯60の歯表面62に接触する。いくつかの実施形態では、上記においてインダイレクトボンディングデバイス600に関して説明されたように、第2のトレイ120の結合が単独で各歯科矯正装具130を歯表面63に向かって移動させるのではなく、その代わりに、患者又は医師が、装具130の意図された移動を生じさせるために第2のトレイ上のボタン126を変形させなければならない。
【0110】
いくつかの実施形態では、第2のトレイ120、220、320、420を第1のトレイ110、210、310、410に着脱可能に結合することは、締まりばめを介して第2のトレイ120、220、320、420を第1のトレイ110、210、310、410に着脱可能に結合することを更に含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、第2のトレイ120、220、320、420を第1のトレイ110、210、310、410に着脱可能に結合することは、第2のトレイ120、220、320、420の第2の内面122、222、322、422を第1のトレイ110、210、310、410及び各歯科矯正装具130のうちの少なくとも一方と係合させ、各歯科矯正装具130を、対応する歯60の歯表面62に向かって移動させることを更に含み、これにより接着剤層140が歯表面62に接触する。
【0112】
いくつかの実施形態では、
図2A及び
図2Bに示されるように、第2のトレイ120を第1のトレイ110に着脱可能に結合することは、第2のトレイ120の第2の内面122上に配置された突起123を第1のトレイ110の第1の外面114と係合させ、第1のトレイ110を少なくとも部分的に変形させることを更に含み、これにより突起123に対応する歯科矯正装具130Aが、対応する歯60Aの歯表面62Aに向かって移動する。
【0113】
いくつかの実施形態では、
図3A及び
図3Bに示されるように、第2のトレイ220を第1のトレイ210に着脱可能に結合することは、第2のトレイ220の第2の内面222を、第1のトレイ210の第1の外面214上に配置されたトレイ突出部215と係合させ、トレイ突出部215を少なくとも部分的に変形させることを更に含み、これによりトレイ突出部215に対応する歯科矯正装具130Aが、対応する歯60Aの歯表面62Aに向かって移動する。
【0114】
いくつかの実施形態では、
図4A及び
図4Bに示されるように、各空洞316は第1の内面312から第1のトレイ310の第1の外面314へ延びており、これにより、第2のトレイ320が第1のトレイ310から取り外された状態で歯科矯正装具130Aが対応する空洞316内に受容されると、各歯科矯正装具130Aは第1のトレイ310の第1の外面314を貫いて少なくとも部分的に延びる。更に、第2のトレイ320を第1のトレイ310に着脱可能に結合することは、第2のトレイ320の第2の内面322を各歯科矯正装具130Aと係合させ、各歯科矯正装具130Aを、対応する歯60Aの歯表面62Aに向かって移動させることを更に含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、
図5A及び
図5Bに示されるように、第1のトレイ410は、複数の歯60の各々の歯表面62に少なくとも部分的に適合し、複数の歯60の各々に着脱可能に結合されるように構成された第1の部分409を更に含む。第1のトレイ410は、対応する歯科矯正装具130を内部に少なくとも部分的に、かつ着脱可能に受容する複数の空洞116を含む第2の部分411を更に含む。第1のトレイ410は、第1の部分409を第2の部分411に接続するリビングヒンジ480を更に含む。リビングヒンジ480はヒンジ軸482を規定する。第1のトレイ410を複数の歯60に着脱可能に結合することは、第2のトレイ420が第1のトレイ410から取り外された状態で第1のトレイ410が複数の歯60に着脱可能に結合されると、第2の部分411が複数の歯60の各々の歯表面62から離間されるよう、第2の部分411をヒンジ軸482の周りに位置決めすることを更に含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、第2のトレイ420を第1のトレイ410に着脱可能に結合することは、第2のトレイ420を第1のトレイ410と係合させ、第2の部分411を、ヒンジ軸482を中心として複数の歯60の各々の歯表面62に向かって旋回移動させることを更に含み、これにより接着剤層140が対応する歯60の歯表面62に接触する。
【0117】
いくつかの実施形態では、方法500は、接着剤層140を所定の期間にわたって硬化(hardening)させること(即ち、その硬化(curing)又は少なくとも部分的な固化)を更に含む。いくつかの実施形態では、所定の期間は、少なくとも約5秒、少なくとも約10秒、少なくとも約20秒、少なくとも約30秒、少なくとも約40秒、少なくとも約50秒、又は少なくとも約60秒であってもよい。
【0118】
いくつかの実施形態では、方法500は、第2のトレイ120、220、320、420を第1のトレイ110、210、310、410から取り外すことを更に含む。いくつかの実施形態では、方法500は、第1のトレイ110、210、310、410を複数の歯60から取り外すことを更に含む。
【0119】
本明細書において提示された構成は、依然として本明細書における開示の範囲内にとどまりつつ、任意の数の態様において変更され得ることは理解されるであろう。
【0120】
別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される特徴サイズ、量及び物理的特性を表す全ての数は、用語「約」によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、特に反対の指示がない限り、上記明細書及び添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、本明細書で開示される教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変動し得る近似値である。
【0121】
特定の実施形態が本明細書において図示及び説明されているが、図示及び記載されている特定の実施形態は、本開示の範囲を逸脱することなく、様々な代替的実施態様及び/又は等価の実施態様によって置き換えられ得ることが、当業者には理解されよう。本出願は、本明細書で論じられた特定の実施形態のあらゆる適応例又は変形例を包含することが意図されている。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されることが意図されている。
【国際調査報告】