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特表2024-500479定格風速未満での浮体式風力タービン制御
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】定格風速未満での浮体式風力タービン制御
(51)【国際特許分類】
   F03D 7/04 20060101AFI20231226BHJP
   F03D 13/25 20160101ALI20231226BHJP
【FI】
F03D7/04 H
F03D13/25
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538673
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 NO2021050266
(87)【国際公開番号】W WO2022139586
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】2020428.5
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515339653
【氏名又は名称】エクイノール・エナジー・アーエス
【氏名又は名称原語表記】EQUINOR ENERGY AS
【住所又は居所原語表記】Torusbeen 50,4035 Stavanger,Norway
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】スカーレ、ビョルン
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA26
3H178AA43
3H178BB35
3H178BB42
3H178CC05
3H178DD12Z
3H178DD34X
3H178DD52X
3H178DD54X
3H178DD61Z
3H178EE02
3H178EE13
3H178EE23
3H178EE26
(57)【要約】
複数のロータブレードを備える浮体式風力タービン1用のモーションコントローラ20が提供される。モーションコントローラ20は、浮体式風力タービン1が定格風速未満の風で動作しているときに各ロータブレードのブレードピッチを調節して、浮体式風力タービンのサージ運動を減衰させる正味の力を生成するように構成されている。また、浮体式風力タービン1の運動を減衰させる方法、及びそのようなモーションコントローラ20を有する風力タービン1も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のロータブレードを備える浮体式風力タービン用のモーションコントローラであって、前記浮体式風力タービンが定格風速未満の風で動作しているときに各ロータブレードのブレードピッチを調節して、前記浮体式風力タービンのサージ運動を減衰させる正味の力を生成するように構成されている、モーションコントローラ。
【請求項2】
前記サージ運動の入力に基づいて、前記ロータブレードのうちの1つ又は複数のブレードピッチ調節を計算するように構成されている、請求項1に記載のモーションコントローラ。
【請求項3】
前記入力が、前記浮体式風力タービンのサージ速度の測定及び/又は推定に基づく、請求項2に記載のモーションコントローラ。
【請求項4】
前記ブレードピッチ調節が、前記サージ速度に比例する、請求項3に記載のモーションコントローラ。
【請求項5】
前記減衰力を提供するために、前記浮体式風力タービンサージ速度に対する位相により各ロータブレードの前記ブレードピッチを調節するように構成された、請求項3又は4に記載のモーションコントローラ。
【請求項6】
前記サージ運動の前記入力が、1つ又は複数のセンサからの出力を使用して測定及び/又は推定される、請求項2~5のいずれか一項に記載のモーションコントローラ。
【請求項7】
前記入力に対してローパスフィルタを使用するように構成されている、請求項2~6のいずれか一項に記載のモーションコントローラ。
【請求項8】
前記ローパスフィルタが伝達関数を含む、請求項7に記載のモーションコントローラ。
【請求項9】
前記ローパスフィルタが、0.017Hzを超える振動数をフィルタ除去するように構成されている、請求項7又は8に記載のモーションコントローラ。
【請求項10】
複数のロータブレードを有するロータと、請求項1~9のいずれか一項に記載のモーションコントローラとを備える浮体式風力タービン。
【請求項11】
複数のロータブレードを備える浮体式風力タービンを制御する方法であって、
前記風力タービンが前記定格風速未満の風速で動作しているときに各ロータブレードのブレードピッチを調節して、前記浮体式風力タービンのサージ運動を減衰させる正味の力を生成するステップ
を含む方法。
【請求項12】
前記浮体式風力タービンの前記サージ運動の入力を前記コントローラに入力するステップと、
前記サージ運動の前記入力に基づいて、各ロータブレードの前記ブレードピッチを調節するステップと
を含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記入力が、前記浮体式風力タービンのサージ速度の測定及び/又は推定に基づく、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ブレードピッチ調節が、前記サージ速度に比例する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記減衰力を提供するために、前記浮体式風力タービンサージ速度に対する位相により各ロータブレードの前記ブレードピッチを調節するステップを含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記運動の前記入力が、1つ又は複数のセンサからの前記出力を使用して測定及び/又は推定される、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ又は複数のセンサが、モーションセンサ及び/又は全地球測位センサを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記入力に対してローパスフィルタを使用することを含む、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ローパスフィルタが伝達関数を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ローパスフィルタが、0.017Hzを超える振動数をフィルタ除去する、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1~9のいずれか一項に記載のコントローラを使用して実施される、請求項11~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
浮体式風力タービンに関する処理回路上で実行されるとき、請求項11~21のいずれか一項に記載の方法を実行するように前記処理回路を構成する命令を含むコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体式風力タービン用のモーションコントローラ、浮体式風力タービンの運動を減衰させる方法、及びそのようなモーションコントローラを備える風力タービンに関する。より詳細には、本発明は、風力タービンが定格風速未満の風速で動作しているときの浮体式風力タービンのサージ運動の減衰に関する。
【背景技術】
【0002】
風力タービン設備は通常、細長いタワーを備える支持構造体で形成され、ロータが取り付けられたナセルが支持構造体の上端部に取り付けられる。ロータは、複数のロータブレードを備える。発電機及びそれに関連する電子機器は通常、ナセル内にある。
【0003】
風力タービン設備は、陸上又は海底に固定された固定ベース風力タービンでも、浮体式風力タービンでもよい。1つの例示的な浮体式風力タービンは、プラットフォーム又はいかだ状の構造体などの浮力ベースに取り付けられた従来の風力タービン構造体を備える。別の例は、「円柱ブイ」タイプの構造体である。そのような構造体は、上部にロータが取り付けられた垂直方向に細長い浮力支持構造体で形成される。支持構造体は、一体構造体でも、標準的なタワーが取り付けられた細長い下部構造体でもよい。
【0004】
浮体式風力タービン設備は、所望の設置場所に保持するために、例えば、アンカを有する若しくは海底に取り付けられる1本又は数本の係留索によって、又は1つ若しくは複数の関節式(ヒンジ式)の脚部を用いて海底に係留され得る。
【0005】
固定基礎風力タービンは、一端で陸地にしっかりと固定されている。風速又は風向の変化によって引き起こされる力などの力による作用を受けるとき、固定基礎風力タービンがカンチレバーとして働き、タワーは、わずかに曲がるので振動する。これらの運動は、振幅が小さいが振動数が高く、すなわち小さくて速い運動であり得る。対照的に、浮体式風力タービンは陸地にしっかりと固定されておらず、その結果、固定基礎タービンが受けるのと同じ種類のタワー振動に加えて、細長い構造体全体が剛体のように動くことがある。
【0006】
浮体式風力タービンは、風速又は風向の変化によって引き起こされる力や、波によって引き起こされる力などの力による作用を受けると、構造体全体が水中で動くことがある。これらの運動は、振幅が大きいが振動数が比較的低く、すなわち大きくて遅い運動であり得る。これらの運動は、タービン/ロータ自体の回転振動数よりもはるかに低いという意味で低振動数である。これらは、(曲げ運動ではなく)剛体運動である。生じる運動は、(例えばロータ軸に垂直な垂直方向での)直線的な垂直(上/下)運動である「ヒーブ」、(例えばロータ軸に垂直な水平方向での)直線的な横(左/右)運動である「スウェイ」、(例えばロータ軸に平行な方向での)直線的な長手方向(前/後)運動である「サージ」、(例えばロータ軸の周りでの)水平(前/後)軸周りの物体の回転である「ロール」、(例えばロータ軸に垂直な水平軸の周りでの)横(左/右)軸周りの物体の回転である「ピッチ」、及び(例えばロータ軸に垂直な垂直軸の周りでの)垂直軸周りの物体の回転である「ヨー」である。
【0007】
特定の状況では、これらの運動は、タービンの全体的な効率又はパワー出力を低減させることがあり、さらに過度の構造応力を発生させることがあり、この構造応力は、風力タービン構造体及び/又は関連する係留を損壊又は脆弱化する可能性があり、又は風力タービンの不安定性をもたらす可能性がある。したがって、これらの剛体運動を制御又は減衰することが望まれる。
【0008】
従来の風力タービンでは、パワー出力を調整するためにロータブレードのピッチが制御される。タービンによって発生されるパワー出力は、定格風速として知られている特定の風速で最大化される。定格風速未満の風で動作するとき、ブレードピッチは、最大パワー出力を提供する角度でほぼ一定に保たれる。対照的に、定格風速よりも高い風で動作するとき、一定のパワー出力を生成し、発電機及び/又はその関連の電子機器を損壊する可能性のある過度に高いパワー出力を防ぐために、ブレードピッチが調節される。この一定のパワー出力は、風力タービンの定格パワーと呼ばれることがある。この体制では、ロータは、一定の速度で回転するように制御され得る。これは、所望のロータ速度及び/又はターゲットロータ速度と呼ばれることがある。
【0009】
風力タービンは、カットアウト風速を有することもあり、カットアウト風速は、損壊を避けるためにタービンが停止する風速である。
【0010】
定格風速未満で動作するときに最大パワー出力を生成するために、ブレードピッチは、最適な先端速度比を生成するように設定される。先端速度比λは、ロータブレードの外側先端部が移動している速度を風速で割った値として定義され、以下の式によって与えられる。
【数1】
ここで、ωはロータの角振動数(単位はラジアン/秒)、Rはロータの半径、uは風速である。最大パワー出力に関する最適な先端速度比は約8~10であり、ほとんどの風力タービンにおいて、これは実際には、約0.45(理論上の最大値は0.59)のパワー係数Cを与え、ここで、パワーPは以下のように定義される。
【数2】
ここで、ρは空気密度、Aはロータブレードによって掃引される面積、Cは、先端速度比λとブレードピッチβとによって決定されるパワー係数である。
【0011】
定格風速未満で動作しているとき、ブレードピッチはほぼ一定に保たれるので、ロータに作用する(その軸方向での)推力は、風速と共に増加する。推力は、ロータに対する風速の二乗にほぼ比例する。その結果、相対風速を増加させる軸方向運動、例えばサージ運動が減衰され得る。
【0012】
対照的に、定格風速よりも高い風で動作しているとき、一定のパワー出力を生成するために、風速の増加と共にロータの推力が減少するようにブレードピッチが調節される。風速が増加するにつれて、ブレードピッチが増加され、すなわち風向に対してより平行にされ、ブレードに作用する推力を減少し、それにより一定のパワーを維持する。しかし、推力が減少されるにつれて、風力タービンの振動に作用する減衰力も減少され、悪影響になり得る。言い換えると、振動が悪化されることがあり、振動の振幅が増加する。次いで、これにより、相対風速のさらなる変化及びブレードピッチのさらなる調節が生じ、振動の振幅がさらに大きくなる。風力タービンが風から遠ざかっているときにはその逆が当てはまり、振動のさらなる悪化をもたらす。これは負の減衰として知られており、浮体式風力タービンを著しく不安定にする可能性がある。
【0013】
特許文献1及び特許文献2には、定格風速よりも高いと発生する負の減衰の問題に対処し、軸方向での共振低周波運動を低減するように設計された風力タービンコントローラが記載されている。これは、ブレードのピッチを一括して調節して軸方向の減衰力及び/又は復元力を生み出すことによって実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2007/053031号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2010/076557号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の態様では、本発明は、複数のロータブレードを備える浮体式風力タービン用のモーションコントローラであって、浮体式風力タービンが定格風速未満の風で動作しているときに各ロータブレードのブレードピッチを調節して、浮体式風力タービンのサージ運動を減衰させる正味の力を生成するように構成される、モーションコントローラを提供する。
【0016】
本発明の発明者らは、風力タービンが定格風速未満で動作しているとき、上述したように生じる自然な正の減衰にもかかわらず、一部の軸方向運動、特にサージ運動が依然として重大であり得ることを認識した。本発明者らは、定格風速未満での動作に関して、特にサージの固有振動数で、自然な全体的な減衰レベルが比較的低くなり得ることを発見した。したがって、本発明は、風力タービンが定格風速未満で動作しているときにサージ運動を能動的に減衰させるように構成されたコントローラを提供し、これは、自然な空気力学的減衰の効果を高める。
【0017】
風力タービンの軸方向運動を減衰させるためのこれまでに知られているモーションコントローラは、風力タービンが定格風速よりも高い風で動作しており、負の減衰が懸念されるときに、タービンブレードの一括ピッチ調節を利用する。これらのコントローラは、典型的には、ブレードピッチを調節することによって所望のロータ速度を維持することを試みるブレードピッチ制御ループを含む。これは、所望の(設定値)ロータ速度からの偏差であるロータ速度誤差に基づいて行われる。しかし、定格風速未満では負の減衰は問題でない。なぜなら、典型的には、その動作領域では(負の減衰を引き起こす)ブレードピッチ調節が行われないからである。さらに、定格風速未満で動作する風力タービンでは、ロータ速度が一定の所望の値に維持されず、したがってロータ速度誤差に基づいてブレードピッチが調節されない。したがって、定格風速よりも高いときの負の減衰を回避するために使用される既知のコントローラアルゴリズムは、風力タービンが定格風速未満で動作しているときには使用に適さない。
【0018】
本発明は、浮体式風力タービンが定格風速未満で動作している間に、タービンのサージ運動の効果的な減衰を可能にする。これは、各ロータブレードのブレードピッチを調節して、サージ運動を減衰させる正味の力を生成することによって実現される。
【0019】
したがって、本発明のコントローラは、風速が定格風速未満であり、大きなサージ運動を防止するために自然な空気力学的減衰が予想されるときでさえ、係留索又は他の固定装置などの構造体の部品を損壊する可能性がある浮体式風力タービンのサージ運動を能動的に減衰させるために使用することができる。
【0020】
コントローラは、穏やかな波候の場所にある浮体式風力タービンに特に有用であり得る。これらの場所では、風によって誘発される負荷が係留負荷全体を占めている可能性があるからである。したがって、本発明は、例えば、浮体式風力タービンの係留システムに対する過剰な負荷の減少を可能にし、それにより、風力タービン構造体自体に対する負荷の低減に加えて、係留システムの寿命を延ばすことができる。
【0021】
係留システムの疲労、及び浮体式風力タービンが受けるサージ運動の問題は、カテナリチェーン係留システムで特に明白であるが、ロープ係留システム(典型的にはポリエステルロープを使用する)でもいくらか生じる。したがって、コントローラは、これら2つの例を含む様々な係留システムと合わせて、特に浮体式風力タービンがチェーン係留システムによって(例えば水底に)係留されているときに有用であり得る。したがって、浮体式風力タービンと、浮体式風力タービンを係留するための係留システム(例えばチェーン又はロープ係留システム)とを備えるシステムが提供されることがあり、浮体式風力タービンは、本明細書で述べるモーションコントローラを備える。
【0022】
本発明の別の特定の用途は、複数の浮体式風力タービンがグリッド又はネットワーク化配置で係留を共有する共有係留システムである。そのような共有係留システムでは、疲労及びサージ運動の問題がより顕著になり得るので、本発明はここに特定の用途を見出すことができる。したがって、共有係留システムを介してネットワーク(又はグリッド)配置で配置された複数の浮体式風力タービンを備えるシステムを提供することができ、各浮体式風力タービンは、本明細書で述べるようなモーションコントローラを備える。
【0023】
サージ運動の減衰は、軸方向サージ速度及び/又は変位を打ち消す軸方向(すなわちロータの軸に関して軸方向)の力を生み出すようにロータブレードを個別に又は一括してピッチングすることによって実現することができる。これは、ブレードのピッチを動的に調節することによって実現することができ、したがって、サージ運動に基づいて、例えばサージ速度、及び/又はサージ運動の方向での浮体式風力タービンの変位に基づいて、追加のブレード角度が提供される。例えば、浮体式風力タービンがサージ運動を受けている間にブレードピッチを連続的に且つ徐々に調節することができ、したがってサージ運動の振動に基づいてブレードピッチが徐々に増加し、次いで減少する。追加のブレードピッチ角度の振幅を変化させ、したがってサージ運動の固有振動数に等しい振動数で力を変化させることにより、正味の減衰効果を得ることができる。
【0024】
浮体式風力タービンのサージ運動は、ロータ回転の周期に比べて長い固有周期を有する。これは、ブレードピッチングの適切な振幅、振動数、及び位相によってサージ運動を正確に制御することができることを意味する。
【0025】
サージ運動は、特定の振動数範囲内にあり得る。振動数範囲は、約0.004~0.017Hzでよく、又は任意選択的に約0.007~0.009Hzの範囲内でもよい。この振動数範囲は、この範囲内の固有振動数又は駆動振動数を有する浮体式風力タービンの任意の運動(又は軸方向運動)に関係し得る。これらの範囲内で発生する浮体式風力タービンの運動は、サージ運動が主となり得るが、他のタイプの運動も含むことがある。サージ運動の固有周期は、約60~250秒の範囲内、又は任意選択的に約110~140秒の範囲内、又は任意選択的に約125秒でよい。これらのサージ運動は、風力タービンの固有サージ振動数を励起する風速の変化によって引き起こされる可能性があり、より穏やかな水域で発生しやすいことがある。
【0026】
コントローラは、浮体式風力タービンのサージ運動を減衰及び/又は制御するためのものである。したがって、コントローラは、モーションコントローラ及び/又は浮体式風力タービンモーションコントローラと呼ばれることがある。コントローラはまた、複数のロータブレードのうちの1つ又は複数のブレードピッチを制御するためのものであり、したがって、コントローラはブレードピッチコントローラと呼ばれることがある。
【0027】
コントローラは、好ましくは、減衰力を提供するために、浮体式風力タービンサージ速度に対する位相により各ロータブレードのブレードピッチを調節するように構成される。
【0028】
追加又は代替として、コントローラは、復元力を提供するために、浮体式風力タービンサージ運動に対する位相により各ロータブレードのブレードピッチを調節するように構成される。
【0029】
減衰力とは、サージ運動の偏位(変位)に対抗するように作用する復元力とは異なり、サージ運動の速度に対抗する力を意味する。
【0030】
サージ運動速度に対するロータブレードピッチ調節の位相を変えることができ、力は、減衰力を生み出すためにサージ運動速度と同位相である、又は復元力を生み出すためにサージ運動の偏位(変位)と同位相である。コントローラは、減衰力と復元力との最適なバランスを得るように調整することができる。
【0031】
コントローラは、サージ運動の入力に基づいて、サージ運動を減衰させるためのブレードピッチ調節を計算又は決定することができる。
【0032】
サージ運動の入力は、サージ速度でもよい。したがって、サージ運動を減衰させるためのブレードピッチ調節は、サージ運動の速度に基づくことがある。速度は、測定又は推定されたサージ速度でよい。サージ速度の推定値は、運動、速度、及び/又は加速度の測定に基づく推定値でよい。
【0033】
サージ運動の入力は、1つ又は複数のセンサからの出力を使用して測定及び/又は推定することができる。センサは、サージ運動振動数範囲内のサージ運動を示す出力を提供するように構成することができる。1つ又は複数のセンサは、異なるタイプのセンサを備えることがある。
【0034】
サージ運動の入力は、モーションセンサ(例えば速度センサ及び/又は加速度計など)からの出力から取得されることがあり、すなわち、センサはモーションセンサでよい。センサは、運動基準ユニット(MRU)でもよい。センサは、関連する振動数範囲内で剛体サージ運動を測定するためのものでよい。関連する振動数範囲は、サージ運動を含むと予想される振動数範囲でよい。風力タービンの運動(例えばサージ運動)を検出するためのモーションセンサは、風力タービンの任意の点に配置することができる。例えば、センサは、風力タービンタワーの基部、風力タービンのナセル内、又は風力タービンタワーに沿った任意の点に配置され得る。
【0035】
追加又は代替として、サージ運動の入力は、差分全地球測位システム(DGPS)などの全地球測位システム(GPS)からの出力から取得されることもあり、すなわちセンサはGPS(又はDGPS)でもよい。全地球測位システムは、風力タービンのサージ運動、例えば関連する振動数範囲内でのサージ運動を測定するために使用することができる。
【0036】
サージ運動を測定するために、任意の他の適切な感知手段を使用することもできる。
【0037】
サージ運動速度測定又は推定が入力されるとき、コントローラが速度入力に対してローパスフィルタを使用することが好ましい。これは、コントローラが特定の振動数範囲内で、例えばサージ運動の共振振動数又はその付近でサージ運動に作用することができることを保証する。サージ運動に関して、サージ運動の固有振動数で減衰を提供し、波の振動数などのより高い振動数を望ましくない外乱とみなすことが望ましい。
【0038】
風力タービンが定格風速未満で動作しているとき、パワー抽出を最大化し、且つサージ運動を減衰させることが好ましい。したがって、コントローラは、好ましくは、パワー抽出を最大化するブレード角度と、サージ運動を考慮するための追加のブレードピッチ調節とに基づいてブレードピッチを制御する。
【0039】
したがって、好ましい実施形態では、コントローラは、複数のロータブレードに関する元のブレードピッチを計算し、浮体式風力タービンのサージ運動を打ち消すために複数のロータブレードに関する追加のブレードピッチ調節を計算し、元のブレードピッチと追加のブレードピッチ調節とを組み合わせて合計ブレードピッチ調節を得て、サージ運動の減衰を引き起こすように構成される。コントローラは、好ましくは、合計ブレードピッチ調節に基づいて各ロータブレードのブレードピッチを調節する。
【0040】
好ましい実施形態では、コントローラは、元のブレードピッチ信号を決定するための標準的なコントローラと、追加のブレードピッチ調節信号を決定するための能動減衰コントローラとを備える。
【0041】
元のブレードピッチは、定格風速未満での最大パワー抽出のための最適なブレードピッチ、例えば最適な先端速度比を生み出すピッチであり得る。これは、一定又は実質的に一定の値であり得る。元のブレードピッチは、浮体式風力タービンのサージ運動に基づいては決定されないことがあり、すなわち元のブレードピッチはサージ運動と無関係であり得る。追加のブレードピッチ調節は、好ましくはサージ運動に基づく。したがって、合計ブレードピッチ調節は、サージ運動から独立した成分(例えば一定又は実質的に一定の成分)と、サージ運動に基づいて変化する成分とを含むことがある。
【0042】
能動減衰コントローラは、制御ループを備えることがある。制御ループは、サージ運動を減衰させるための追加のブレードピッチ調節信号を計算及び/又は決定するためのものでよい。
【0043】
制御ループは、サージ運動に対して調整及び/又は最適化されたフィルタリング及び/又はパラメータ設定を含むことがある。
【0044】
制御ループは、サージ運動の入力、例えば、浮体式風力タービン構造体に設けられたモーションセンサからの入力、及び/又は差分全地球測位システムからのデータからの入力若しくはそのデータに基づく入力を受信することがある。
【0045】
制御ループの出力は、サージ運動を減衰させるための追加のブレードピッチ調節信号であり得る。
【0046】
コントローラは、能動減衰コントローラからの追加のブレードピッチ調節信号に基づいて、複数のロータブレードのうちの1つ又は複数のブレードピッチを制御するように構成されることがある。コントローラは、元のブレードピッチ信号に基づいて、複数のロータブレードのうちの1つ又は複数のブレードピッチを制御するように構成されることもある。
【0047】
能動減衰コントローラは、信号処理ユニットを備えることもある。信号処理ユニットは、センサから生の測定値を取得し、1つ又は複数の推定技法を適用して、風力タービンのサージ運動の速度を推定するように構成されることがある。推定技法は、カルマンフィルタリングを含むことがある。例えば、差分全地球測位システムからの測定値をカルマンフィルタリングなどの推定技法と組み合わせて、運動、例えばサージ速度を推定することができる。
【0048】
能動減衰コントローラは、フィルタを備えることがある。フィルタは、剛体運動の固有サージ振動数よりも高い及び/又は低い振動数での速度変化をフィルタ除去するように構成されることがある。例えば、フィルタは、0.017Hzを超える及び/又は0.004Hz未満の振動数をフィルタ除去することがある。フィルタは、ローパスフィルタでよい。ローパスフィルタは、約0.004~0.017Hzの範囲内、好ましくは約0.007~0.009Hzの範囲内のカットオフ振動数を有することができる。任意の適切なフィルタを採用することができるが、フィルタは、好ましくは2次又は3次バターワース(Butterworth)ローパスフィルタである。そのようなフィルタは、所望の振動数を有する振動のみが能動的に減衰されることを保証するように構成されることがある。
【0049】
上で論じたように、コントローラは、能動減衰コントローラに加えて、標準的なコントローラを備えることがある。標準的なコントローラは、元のブレードピッチ信号を決定又は受信することができ、元のブレードピッチ信号は、浮体式風力タービンのサージ運動が考慮に入れられていないときの所望のブレードピッチに対応する信号であり得る。標準的なコントローラは、好ましくは、能動減衰コントローラから追加のブレードピッチ調節信号を受信するためのものでもある。
【0050】
コントローラは、元のブレードピッチ信号と追加のブレードピッチ調節信号とを組み合わせて、合計ブレードピッチ調節信号を生成するように構成されることがある。コントローラは、合計ブレードピッチ調節信号に基づいて、複数のブレードのうちの1つ又は複数のブレードピッチを調節するように構成されることがある。合計ブレードピッチ調節は、風力タービンが定格風速未満の風速で動作しているときにパワー出力を最大化しながら、サージ運動を減衰させることができる。
【0051】
合計ブレードピッチ調節は、ロータブレードのピッチを一括して制御するためのものであり得る。したがって、コントローラは、一括のブレードピッチ制御を提供するためのものであり得る。
【0052】
ブレードピッチ調節により、ロータ速度が変化し得る。ブレードピッチ調節は、サージ運動を減衰させる力を提供しながら、最適なロータ速度を引き起こすことができる。
【0053】
能動減衰コントローラの制御ループ(すなわち制御法則)は、サージ運動を減衰させるための追加のブレードピッチ調節信号βref2を計算することができる。追加のブレードピッチ調節信号は、サージ運動の測定又は推定速度
【数3】
、コントローラ利得K、及びフィルタ、例えばh(s)に基づいて計算され得る。
【0054】
追加のブレードピッチ調節は、好ましくは、サージ運動の測定又は推定速度
【数4】
に比例(すなわち正比例)する。
【0055】
したがって、制御法則は、以下の形式で記述することができる。
【数5】
ここで、h(s)は、2次ローパスフィルタでよい。フィルタは、ラプラス形式を有することがある。h(s)は、伝達関数でもよい。一例では、h(s)は、以下のようであり得る。
【数6】
ここで、sはラプラス変数でよく、ωはローパスフィルタ振動数でよい。ωは、サージ運動の時間周期に反比例し得る。したがって、ωは、以下のように表すことができる。
【数7】
ここで、Tは、サージ振動の時間周期である。
【0056】
Tは、約60~250秒の範囲内、又は任意選択的に約110~140秒の範囲内、例えば約125秒でよい。
【0057】
コントローラ利得及び/又はローパスフィルタ振動数は、サージ運動に適合されることがある。ローパスフィルタ振動数は、サージ運動振動数範囲に従って設定されることがある。
【0058】
【数8】
は、(上で論じたように)異なるセンサからの出力を使用して測定及び/又は推定することができる。
【0059】
βref2を元のブレードピッチ信号βref1と組み合わせて、合計ブレードピッチ調節信号βrefを提供することができる。言い換えると、
βref=βref1+βref2
である。
【0060】
βref2を含むので、合計ブレードピッチ調節信号により、サージ運動が減衰される。
【0061】
上で論じたように、βref2はサージ速度に比例することがあり、したがって合計ブレードピッチ調節信号もサージ速度に比例し得る。
【0062】
コントローラは、風速が定格風速未満であるときに浮体式風力タービンを制御するためのものである。したがって、コントローラは、風力タービンが定格出力未満で動作しているときに浮体式風力タービンを制御するためのものである。コントローラは、風速が定格風速よりも高いときに浮体式風力タービンを制御するためのものでもよく、すなわち、コントローラは、定格風速未満で使用するためだけのものではないことがある。
【0063】
浮体式風力タービンは、スパーブイ型の浮体式風力タービンでよい。浮体式風力タービンは、係留索及び/又は1つ又は複数の関節式の脚部などの係留システムの使用によって海底に固定され得る。代替として、浮体式風力タービンは、半潜水型の浮体式風力タービン又は任意の他の種類の浮体式風力タービンでもよい。
【0064】
浮体式風力タービンは、1つ又は複数のセンサを備えることがある。
【0065】
第2の態様では、本発明は、複数のロータブレードを有するロータと、浮体式風力タービンが定格風速未満の風で動作しているときに各ロータブレードのブレードピッチを調節して、浮体式風力タービンのサージ運動を減衰させる正味の力を生成するように構成されているモーションコントローラとを備える浮体式風力タービンを提供する。
【0066】
第2の態様の浮体式風力タービンは、第1の態様によるコントローラを備えることがある。
【0067】
本発明は、対応する制御方法にも及ぶ。したがって、第3の態様では、本発明は、複数のロータブレードを備える浮体式風力タービンを制御する方法であって、風力タービンが定格風速未満の風速で動作しているときに各ロータブレードのブレードピッチを調節して、浮体式風力タービンのサージ運動を減衰させる正味の力を生成するステップを含む方法を提供する。
【0068】
この方法は、好ましくは、本発明の第1の態様に関連して上で論じた任意選択的な好ましい特徴を組み込む。
【0069】
第3の態様の方法は、第1の態様のコントローラ及び/又は第2の態様の浮体式風力タービンを使用して実行することができる。
【0070】
第1の態様のコントローラ及び/又は第2の態様の浮体式風力タービンは、第3の態様の方法を実行するように構成することができる。
【0071】
当業者には明らかなように、コントローラは通常、ソフトウェアの形で提供される。したがって、コントローラは、このソフトウェアを実行するためのプロセッサを備える。プロセッサは、例えばマイクロプロセッサでよい。
【0072】
本発明はまた、プロセッサによって実行されるとき、プロセッサに、風力タービンが定格風速未満の風速で動作しているときに各ロータブレードのブレードピッチを調節させて、浮体式風力タービンのサージ運動を減衰させる正味の力を生成させる命令を含むソフトウェア製品に関する。
【0073】
好ましくは、ソフトウェア製品は、物理的なデータキャリアである。代替又は追加として、ソフトウェア製品は、例えばインターネットを介してダウンロードされるなど、ネットワークを介して伝送される命令の形で提供することもできる。
【0074】
本発明は、追加のコントローラ又は追加のソフトウェアでよい。これは、方法又は方法の少なくとも一部を実行するように構成されることがある。ソフトウェアは、物理媒体、クラウドベースのストレージソリューション、又は任意の他の適切な媒体に記憶することができる。
【0075】
コントローラは、既存の浮体式風力タービンに後付けすることができる。これは、既存の浮体式風力タービンに追加の入力、追加のセンサ、及び/又は追加若しくは更新されたコード/ソフトウェアを提供することによって実現することができる。例えば、既存の浮体式風力タービンは、標準的なコントローラを備えることができ、能動減衰コントローラを標準的なコントローラに追加して、本発明のモーションコントローラを得ることができる。
【0076】
能動減衰コントローラは、サージ運動を減衰させるために使用することができる1つ又は複数の追加のブレードピッチ調節を提供するために使用されるコードでもよい。
【0077】
第4の態様から見ると、本発明は、浮体式風力タービン用の処理回路上で実行されるとき、浮体式風力タービンの1つ又は複数のロータに関するブレードピッチを制御するように処理回路を構成する命令を含むコンピュータプログラム製品であって、命令が、風力タービンが定格風速未満の風速で動作しているときに各ロータブレードのブレードピッチを調節して、浮体式風力タービンのサージ運動を減衰させる正味の力を生成することを含む、コンピュータプログラム製品を提供する。
【0078】
第4の態様のコンピュータプログラム製品は、第1の態様のコントローラ及び/又は第2の態様の浮体式風力タービンに提供することができる。第4の態様のコンピュータプログラム製品は、第3の態様の方法を実行するために使用することができる。言い換えると、コンピュータプログラム製品は、浮体式風力タービン用の処理回路上で実行されるとき、第3の態様の方法を実行するように処理回路を構成する命令を含むことができる。
【0079】
次に、特定の実施形態を、単に例として添付図面を参照して述べる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1】浮体式風力タービンを示す図である。
図2】浮体式風力タービン用の従来のコントローラのブロック図である。
図3】本発明の一実施形態による能動サージ減衰制御機能を備えた浮体式風力タービン用のコントローラのブロック図である。
図4】能動サージ減衰制御機能を備えないコントローラを有する浮体式風力タービンと、能動サージ減衰制御機能を備えたコントローラを有する浮体式風力タービンとを比較したシミュレーションからの結果を示すグラフである。
図5】能動サージ減衰制御機能を備えないコントローラを有する浮体式風力タービンと、能動サージ減衰制御機能を備えたコントローラを有する浮体式風力タービンとを比較したシミュレーションからの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0081】
図1を参照すると、浮体式風力タービンアセンブリ1が示されている。浮体式風力タービンアセンブリ1は、ナセル3に取り付けられたタービンロータ2を備える。ナセルはさらに、浮体5の頂部に固定されたタワー4を備える構造体の頂部に取り付けられており、浮体5は、図示される例では円柱ブイのような構造体である。サージ運動を制御する本開示の原理は、浮体式風力タービン用の全ての浮遊構造体に適用可能である。浮体は、1本又は数本のアンカ索7(1本だけが示されている)によって海底に固定されており、アンカ索7は、トート係留索又はカテナリ係留索でよい。ナセルは発電機を含み、この発電機は、減速ギアボックスなどの任意の既知の手段によってタービンロータに接続され、それらの手段は、発電機又は油圧トランスミッションなどに直接接続される(これらの要素は図示されていない)。ナセルは、制御ユニットも含む。
【0082】
浮体式風力タービンは、到来風Uの力と波9の力との影響を受ける(水面の波9が模式的に示されている)。これらの力により、浮体式風力タービンアセンブリ1は水中で動く。軸方向(すなわちロータの軸Aに対して軸方向)の動きは、サージ運動と呼ばれる。
【0083】
ナセルにあるコントローラは、ロータブレード2のブレードピッチを制御するように構成される。従来のコントローラ(例えば、図2に示される標準的なコントローラ)では、風力タービンが定格風速未満の風で動作しているとき、ブレードピッチは、最大パワーを生み出す角度でほぼ一定である。本発明によるコントローラでは、風力タービンが定格風速未満の風で動作しているとき、浮体式風力タービンのサージ運動を減衰させるためにブレードピッチが調節される。
【0084】
図2は、浮体式風力タービン用の従来のブレードピッチコントローラ10を示す。標準的なブレードピッチコントローラ10は、特に、風速が定格風速未満であるときに浮体式風力タービンのブレードのピッチを制御するためのものである。
【0085】
風速が定格風速未満であるとき、標準的なブレードピッチコントローラ10は、元のブレードピッチ信号βref1に従ってブレードのピッチをほぼ一定の角度に保つ。元のブレードピッチ信号βref1に対応するブレードのピッチは、典型的には、定格風速未満の風速で抽出されるパワーを最大化するように選択され、既知の方法に従って決定することができる。しかし、標準的なブレードピッチコントローラ10は、風力タービン構造体自体の運動を考慮していない。
【0086】
図3は、本発明の一実施形態による浮体式風力タービン用のモーションコントローラ20を示す。モーションコントローラ20は、浮体式風力タービンが受ける可能性があるサージ運動を考慮することができる。モーションコントローラ20は、サージ運動を減衰させるための追加のブレードピッチ調節信号βref2を計算するための能動減衰コントローラ22を備える。能動減衰コントローラ22は、標準的なブレードピッチコントローラ、例えば図2の標準的なブレードピッチコントローラ10に結合される。
【0087】
能動減衰コントローラ22は、風力タービンの剛体サージ運動を減衰させるための追加のブレードピッチ調節信号βref2を計算するための能動減衰制御ループ24を備える。減衰制御ループ24は、信号処理ブロック26、能動減衰コントローラ利得K、及びコントローラ伝達関数h(s)を備える。
【0088】
モーションコントローラ20は以下のように動作する。標準的なブレードピッチコントローラ10は、元のブレードピッチ信号βref1を受信又は生成する。本実施形態では、元のブレードピッチ信号βref1は、風速が定格風速未満である間、ロータブレードのほぼ一定の角度又はピッチに対応する。修正された実施形態では、元のブレードピッチ信号βref1は一定でなくてもよく、他の調節信号を含むこともできる。
【0089】
能動減衰制御ループ24では、風力タービンの測定又は推定されたサージ速度v
【数9】
とも呼ばれることがある)が、信号処理手段26によって処理され、次いで能動減衰コントローラ利得K及びコントローラ伝達関数h(s)によって演算される。これにより、追加のブレードピッチ調節信号βref2が得られる。
【0090】
次いで、追加のブレードピッチ調節信号βref2が元のブレードピッチ信号βref1に加算されて、合計ブレードピッチ調節信号βrefが生成され、この信号βrefを使用して、パワー抽出を最大化しながらサージ運動を減衰させるように風力タービンのブレードを制御する。これは、風力タービン構造体及び係留システムに加わる力を低減すると共に、所与の風速に関するパワー出力を最大化する。
【0091】
信号処理ブロック26は、波によって誘発される運動の減衰を避けるために、波の振動数範囲(0.05~0.2Hz)よりも十分に低いフィルタ振動数を有するシャープなローパスフィルタを使用する。波によって誘発される運動の減衰は、重要な風力タービンパラメータに関する性能の悪化につながる。フィルタ振動数は、浮体式風力タービンの固有サージ振動数に依存し得る。フィルタ振動数は、約0.004~0.017Hzであり得る。
【0092】
能動減衰コントローラ利得Kの値は、減衰されるサージ運動の振動数に応じて調整される。このパラメータに使用される正確な値は、従来のコントローラ調整によって見出すことができる。
【0093】
図4及び5は、サージ運動を考慮した定格風速未満での能動風力タービン制御の利益を説明する助けとなるようにシミュレーションの結果を示す。図4は、定格風速未満の風速に対して能動サージ減衰制御機能を使用した場合と使用しない場合との浮体式風力タービンに関するサージ運動を示す。図5は、同じシミュレーションからの、最高の負荷を受けた係留索での係留索張力を示す。このシミュレーションでは、浮体式風力タービンが能動減衰機能のない標準的なブレードピッチコントローラ(例えば図2のブレードピッチコントローラ)を使用するシナリオと、浮体式風力タービンが、異なる能動減衰制御値を有するサージ運動に対する能動減衰機能を備えたモーションコントローラ(例えば図3のブレードピッチコントローラ)を使用する2つのシナリオとを比較する。図4から、本発明に従って能動サージ減衰制御が適用されるとき、サージ運動応答が減少されることが分かる。さらに、図5に示されるように、能動サージ減衰制御が適用されるとき、主係留索の張力変動の対応する減少が見られる。
【0094】
このシミュレーションでは、非対称係留レイアウトを有する12MW浮体式風力タービンをモデル化した。図4及び5は、0~600秒間のシミュレーションのスナップショットを示し、シミュレーションの全長は3700秒であった。シミュレーションのパラメータには、8.5ms-1の平均風速、乱気流クラスCの存在、1.3mに設定された有義波高、及び6.3秒の特性ピーク期間が含まれていた。コントローラによって使用されるサージ速度測定は、1Hzの分解能での2つのDGPS測定間の平均速度としてモデル化した。
【0095】
また、2つの能動サージ減衰コントローラ設定に関して、主係留索及びタワー底部の疲労損傷を、考察下の場合における元の制御システムに関する疲労損傷と比較して計算した。パラメータ値のこの特定のセットに関する3700秒シミュレーションの範囲について、能動減衰コントローラ設定に応じて、最高の負荷を受ける係留索(3)での相対疲労損傷が0.59~0.73に減少され、タワー底部の相対疲労損傷が0.82~0.84に減少された。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】