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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】蛍光色素
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20231226BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20231226BHJP
   C12N 15/87 20060101ALI20231226BHJP
   C07D 311/82 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C12N5/071
C12Q1/02
C12N15/87 Z
C07D311/82 CSP
A61K47/46
A61K9/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538940
(86)(22)【出願日】2021-12-24
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 AU2021051560
(87)【国際公開番号】W WO2022133552
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】2020904852
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519181113
【氏名又は名称】エクソファーマ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】パルマー,ジム
(72)【発明者】
【氏名】ディクソン,イアン
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ショペット,メラニー
(72)【発明者】
【氏名】コング,カルメン
(72)【発明者】
【氏名】マルクッチョ,セバスチャン エム
(72)【発明者】
【氏名】フェイバー,ジョナサン エム
(72)【発明者】
【氏名】ストックトン,キーラン ピー
(72)【発明者】
【氏名】ウェレット,メリッサ
(72)【発明者】
【氏名】ジョイス,ローハン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C076
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QR66
4B063QR72
4B063QR77
4B063QS28
4B063QS36
4B063QX02
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BC50
4B065CA44
4B065CA46
4B065CA60
4C076AA61
4C076AA95
4C076EE57
4C076GG21
(57)【要約】
本発明は、その塩を含む式(I)の蛍光色素ならびにこの蛍光色素で標識された細胞外小胞および細胞に関する。本発明はその方法、使用およびキットにも関する。
【化1】
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、
およびRはそれぞれ独立して、任意に置換されたC1~26脂肪族、任意に置換されたC1~26ヘテロ脂肪族、任意に置換されたC1~26脂肪族-OH、任意に置換されたC1~26ヘテロ脂肪族-OHおよびOHから選択され、ここではRおよびRの少なくとも1つは任意に置換されたC13~26脂肪族または任意に置換されたC13~26ヘテロ脂肪族から選択され、
、R、RおよびRは独立して、任意に置換されたC1~6アルキル、任意に置換されたC1~6ハロアルキル、任意に置換されたC1~6ヘテロアルキル、任意に置換されたアリールおよび任意に置換されたC1~6アルキルアリールから選択されるか、あるいは
およびRはそれらが結合している窒素原子と一緒に、任意に置換された3~7員環の複素環を形成しており、かつ/または
およびRはそれらが結合している窒素原子と一緒に、任意に置換された3~7員環の複素環を形成しており、かつ
、R、RおよびRは独立して水素、フッ素および塩素から選択される)
の蛍光色素で標識された細胞外小胞(EV)。
【請求項2】
は、C13~26アルキル、C13~26アルケニルおよびC13~26ヘテロアルキルから選択され、
は、C1~6アルキル、C1~6ヘテロアルキル、C1~6アルキル-OHおよびC1~6ヘテロアルキル-OHから選択され、かつ
、R、RおよびRはそれぞれ独立してC1~6アルキルまたはC1~6ハロアルキルである、
請求項1に記載のEV。
【請求項3】
は、C13~26アルキル、C13~26アルケニル、Cアルキル-O-C10~23アルキルおよびOC12~25アルキルから選択される、請求項1または請求項2に記載のEV。
【請求項4】
は、C14~22アルキルおよびC14~22アルケニルから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載のEV。
【請求項5】
は、C1~6アルキルおよびC1~6アルキルOR(式中、Rは水素およびメチルから選択される)から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載のEV。
【請求項6】
、R、RおよびRはそれぞれ独立してC1~6アルキルまたはC1~6ハロアルキルである、請求項1~5のいずれか1項に記載のEV。
【請求項7】
、R、RおよびRはそれぞれ独立してC1~3アルキルまたはC1~3フルオロアルキルである、請求項1~6のいずれか1項に記載のEV。
【請求項8】
、R、RおよびRはそれぞれ水素である、請求項1~7のいずれか1項に記載のEV。
【請求項9】
前記EVは、エキソソーム、エクソメア、微小小胞体、オンコソームおよびアポトーシス小体から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載のEV。
【請求項10】
式(II):
【化2】
(式中、
は、任意に置換されたC13~26脂肪族、最も長い直鎖状ヘテロ脂肪族鎖の中に1もしくは2個のヘテロ原子を含むC13~26ヘテロ脂肪族、任意に置換されたC13~26脂肪族-OH、任意に置換されたC13~26ヘテロ脂肪族-OHおよびOHから選択され、
は、任意に置換されたC1~6脂肪族、任意に置換されたC1~6ヘテロ脂肪族、任意に置換されたC1~6脂肪族-OH、任意に置換されたC1~6ヘテロ脂肪族-OHおよびOHから選択され、
、R、RおよびRは独立して、任意に置換されたC1~6アルキル、任意に置換されたC1~6ハロアルキル、任意に置換されたアリールおよび任意に置換されたC1~6アルキルアリールから選択されるか、あるいは
およびRはそれらが結合している窒素原子と一緒に、任意に置換された3~7員環の複素環を形成しており、かつ/または
およびRはそれらが結合している窒素原子と一緒に、任意に置換された3~7員環の複素環を形成しており、かつ
、R、RおよびRは独立して、水素、フッ素および塩素から選択され、かつ
は、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、C~Cアルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、硝酸、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸、トリクロロ亜鉛(II)酸、テトラクロロ鉄酸および過塩素酸から選択される)
の化合物の塩。
【請求項11】
は、C13~26アルキル、C13~26アルケニル、および最も長い直鎖状ヘテロアルキル鎖の中に1もしくは2個のヘテロ原子を含むC13~26ヘテロアルキルから選択され、
は、C1~6アルキル、C1~6ヘテロアルキル、C1~6アルキル-OHおよびC1~6ヘテロアルキル-OHから選択され、かつ
、R、RおよびRはそれぞれ独立してC1~6アルキルまたはC1~6ハロアルキルである、
請求項10に記載の塩。
【請求項12】
は、C13~26アルキル、C13~26アルケニル、Cアルキル-O-C10~23アルキルおよびOC12~25アルキルから選択される、請求項10または請求項11に記載の塩。
【請求項13】
は、C14~22アルキルおよびC14~22アルケニルから選択される、請求項10~12のいずれか1項に記載の塩。
【請求項14】
は、C1~6アルキルおよびC1~6アルキルOR(式中、Rは水素およびメチルから選択される)から選択される、請求項10~13のいずれか1項に記載の塩。
【請求項15】
、R、RおよびRはそれぞれ独立してC1~6アルキルまたはC1~6ハロアルキルである、請求項10~14のいずれか1項に記載の塩。
【請求項16】
、R、RおよびRはそれぞれ独立してC1~3アルキルまたはC1~3フルオロアルキルである、請求項10~15のいずれか1項に記載の塩。
【請求項17】
、R、RおよびRはそれぞれ水素である、請求項10~16のいずれか1項に記載の塩。
【請求項18】
以下のいずれか1つから選択される構造を有する、請求項10~17のいずれか1項に記載の塩:
【化3】
(式中、Xは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸、トリフルオロ酢酸、硝酸、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸および過塩素酸から選択される)。
【請求項19】
は、塩化物、臭化物およびヨウ化物から選択される、請求項10~18のいずれか1項に記載の塩。
【請求項20】
は塩化物である、請求項10~19のいずれか1項に記載の塩。
【請求項21】
以下のいずれか1つから選択される請求項10に記載の塩。
【表1】
【請求項22】
請求項10~21のいずれか1項に記載の塩をEVまたは細胞と組み合わせる工程を含む、細胞外小胞(EV)または細胞を標識する方法。
【請求項23】
請求項10~21のいずれか1項に記載の塩をEVと組み合わせて、それによりEVを前記式(I)の化合物で標識する工程を含む、標識された細胞外小胞(EV)を調製する方法。
【請求項24】
前記組み合わせる工程は、前記塩を前記EVまたは細胞を含む水溶液に添加することを含む、請求項22または請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記水溶液は緩衝液を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
・請求項1~9のいずれか1項に記載の式(I)の蛍光色素で標識されたEVまたは細胞を選択された光源に曝露して前記式(I)の蛍光色素を励起させる工程と、
・前記蛍光色素からの蛍光発光を検出する工程と
を含む、細胞外小胞(EV)または細胞を検出する方法。
【請求項27】
・請求項1~9のいずれか1項に記載の式(I)の蛍光色素で標識されたEVまたは細胞を選択された光源に曝露して前記式(I)の蛍光色素を励起させる工程と、
・前記蛍光色素からの蛍光発光を検出する工程と
を含む、細胞外小胞(EV)または細胞を追跡する方法。
【請求項28】
EVまたは細胞を標識するための請求項10~21のいずれか1項に記載の塩の使用。
【請求項29】
EVまたは細胞を蛍光標識するためのキットあるいはEVまたは細胞を蛍光標識するために使用する場合
・請求項10~21のいずれか1項に記載の塩と、
・任意に、細胞外小胞または細胞を蛍光標識するためのその使用についての説明書と
を含むキット。
【請求項30】
細胞を請求項1~9のいずれか1項に記載のEVであって、治療用カーゴを含むEVと接触させる工程を含む、治療用カーゴを細胞に送達するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その塩を含む式(I)の蛍光色素ならびにこの蛍光色素で標識された細胞外小胞および細胞に関する。本発明は細胞外小胞および細胞を標識する方法ならびにこの蛍光色素を用いて標識された細胞外小胞および細胞を調製する方法にも関する。本発明はさらに本発明の蛍光色素ならびに塩の使用およびキットに関する。
【0002】
関連出願
本出願はオーストラリア仮特許出願第2020904852号の優先権を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
細胞外小胞(EV)は細胞の細胞膜から形成された小胞である。リポソームなどの他の小胞とは異なりEVは、例えば細胞外タンパク質の存在を含む細胞の脂質二重層の特性を有する。従ってEVは、体の自然防御システムおよび免疫応答をより上手く回避することができる。
【0004】
エキソソーム、微小小胞体およびアポトーシス小体を含むEVのいくつかのクラスが同定されている。健康細胞および癌細胞を含む様々な細胞型がEVを放出することができる。それらの発見以来、EVの数多くの機能が仮定または確立されてきたが、最近の研究により、EVが核酸(例えばRNA)などのカーゴを細胞から細胞に運ぶそれらの能力に基づいて細胞間コミュニケーションにおいて重要な役割を担うことが確認された。現在、疾患の診断マーカーとして、および様々な治療用カーゴの送達のためにEVを開発および使用することに大きな関心が寄せられている。幹細胞などの特定の細胞型に由来するEVそれ自体も潜在的な治療薬としてかなり興味深い。
【0005】
EVの潜在的な診断および治療用途を前提として、どのようにそれらが作用するかについてのさらなる理解を得るためにEVを検出および追跡できるかについて関心が寄せられている。好ましくは、EVを検出および追跡するための方法は単純かつ安価であり、かつ従来の器具および当該技術分野で公知の技術を使用するべきである。EVを追跡および/または追跡するための方法が開発されてきたが、この目的のために新しい方法論およびシステムが必要とされ続けている。EVを検出および追跡することは、それらの生物学的機能をさらに解明すること、および潜在的にそれらの臨床使用において有用であり得る。
【0006】
従って、EVの検出および/または追跡を可能にする新しい手段または他の手段が必要とされている。
【0007】
本明細書におけるあらゆる先行技術の参照は、この先行技術が任意の管轄における一般常識の一部をなしているという承認または示唆ではなく、この先行技術が合理的に理解され、関連があるとみなされることが予測され得る、かつ/または当業者によって先行技術の他の部分と組み合わせることができるという承認または示唆ではない。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、EVを標識することができる蛍光色素であって、有利には当該色素で標識されたEVを検出および追跡するのを可能にすることができる蛍光色素を突き止めた。本発明者らは、本蛍光色素が有利にはヒト細胞を含む培養細胞を標識することもできることを突き止めた。
【0009】
従って一態様では、本発明は式(I):
【化1】
(式中、
およびRはそれぞれ独立して、任意に置換されたC1~26脂肪族、任意に置換されたC1~26ヘテロ脂肪族、任意に置換されたC1~26脂肪族-OH、任意に置換されたC1~26ヘテロ脂肪族-OHおよびOHから選択され、ここではRおよびRの少なくとも1つは任意に置換されたC13~26脂肪族または任意に置換されたC13~26ヘテロ脂肪族から選択され、
、R、RおよびRは独立して、任意に置換されたC1~6アルキル、任意に置換されたC1~6ハロアルキル、任意に置換されたC1~6ヘテロアルキル、任意に置換されたアリールおよび任意に置換されたC1~6アルキルアリールから選択されるか、あるいは
およびRはそれらが結合している窒素原子と一緒に、任意に置換された3~7員環の複素環を形成しており、かつ/または
およびRはそれらが結合している窒素原子と一緒に、任意に置換された3~7員環の複素環を形成しており、かつ
、R、RおよびRは独立して水素、フッ素および塩素から選択される)
の蛍光色素で標識された細胞外小胞(EV)を提供する。
【0010】
別の態様では、本発明は式(II):
【化2】
(式中、
は、任意に置換されたC13~26脂肪族、最も長い直鎖状ヘテロ脂肪族鎖の中に1もしくは2個のヘテロ原子を含むC13~26ヘテロ脂肪族、任意に置換されたC13~26脂肪族-OH、任意に置換されたC13~26ヘテロ脂肪族-OHおよびOHから選択され、
は、任意に置換されたC1~6脂肪族、任意に置換されたC1~6ヘテロ脂肪族、任意に置換されたC1~6脂肪族-OH、任意に置換されたC1~6ヘテロ脂肪族-OHおよびOHから選択され、
、R、RおよびRは独立して、任意に置換されたC1~6アルキル、任意に置換されたC1~6ハロアルキル、任意に置換されたアリールおよび任意に置換されたC1~6アルキルアリールから選択されるか、あるいは
およびRはそれらが結合している窒素原子と一緒に、任意に置換された3~7員環の複素環を形成しており、かつ/または
およびRはそれらが結合している窒素原子と一緒に、任意に置換された3~7員環の複素環を形成しており、かつ
、R、RおよびRは独立して、水素、フッ素および塩素から選択され、かつ
は、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、C~Cアルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、硝酸、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸、トリクロロ亜鉛(II)酸、テトラクロロ鉄酸および過塩素酸から選択される)
の塩を提供する。
【0011】
別の態様では、本発明は式(I)の化合物と対イオンとの塩を提供する。いくつかの実施形態では、対イオンは、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、C~Cアルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、硝酸、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸、トリクロロ亜鉛(II)酸、テトラクロロ鉄酸および過塩素酸から選択される。
【0012】
別の態様では、本発明は本明細書に記載されている式(II)の塩(例えば、式(I)の化合物の塩)をEVまたは細胞と組み合わせる工程を含む、細胞外小胞(EV)または細胞を標識する方法を提供する。
【0013】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載されている式(II)の塩(例えば、式(I)の化合物の塩)をEVと組み合わせて、それによりEVを式(I)の化合物で標識する工程を含む、標識された細胞外小胞(EV)を調製する方法を提供する。
【0014】
別の態様では、本発明は、
・本明細書に記載されている式(I)の蛍光色素で標識されたEVまたは細胞を選択された光源に曝露して式(I)の蛍光色素を励起させる工程と、
・この蛍光色素からの蛍光発光を検出する工程と
を含む、細胞外小胞(EV)または細胞を検出する方法を提供する。
【0015】
別の態様では、本発明は、
・本明細書に定められている式(I)の蛍光色素で標識されたEVまたは細胞を選択された光源に曝露して式(I)の蛍光色素を励起させる工程と、
・この蛍光色素からの蛍光発光を検出する工程と
を含む、細胞外小胞(EV)または細胞を追跡する方法を提供する。
【0016】
別の態様では、本発明は、EVまたは細胞を標識するための本明細書に記載されている式(I)の化合物の塩の使用を提供する。
【0017】
別の態様では、本発明は、EVまたは細胞を蛍光標識するためのキット、あるいはEVまたは細胞を蛍光標識するために使用する場合、
・本明細書に記載されている式(I)の化合物の塩と、
・任意に、細胞外小胞または細胞を蛍光標識するためのその使用についての説明書と
を含むキットを提供する。
【0018】
別の態様では、本発明は、細胞を本明細書に記載されている式(I)の蛍光色素で標識されたEVであって治療用カーゴを含むEVと接触させる工程を含む、治療用カーゴを細胞に送達するための方法を提供する。
【0019】
上のパラグラフに記載されている本発明のさらなる態様および当該態様のさらなる実施形態は例として提供されており、添付の図面を参照しながらの以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の蛍光色素で標識された血小板由来のEVのフローサイトメトリー画像。
図2】本発明の蛍光色素で標識された正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)のフローサイトメトリー画像。
図3】本発明の蛍光色素で標識された(a)正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)、(b)ヒト臍帯由来間葉系幹細胞(UC-MSC)および(c)骨髄由来MSC(BM-MSC)の顕微鏡画像。
図4】NHDF細胞上での、(a)色素2および12~18単独ならびに(b)色素2および12~18で標識された血小板由来のEVの蛍光を示すグラフ。(a)および(b)に示されている蛍光はそれぞれ、色素2単独および色素2で標識されたEVに対して正規化されている。
図5】Zeba(商標)スピン脱塩カラムを通過した後の色素2で標識された血小板由来のEVならびに色素17および18の蛍光を示すグラフ。
図6】NHDF細胞上での、色素2、4、6、17、18、23、24および25で標識された血小板由来のEVの蛍光を示すグラフ。この蛍光は色素2で標識されたEVに対して正規化されている。
図7】各時点について基本培地対照に対して正規化された、処理から(a)24時間、(b)36時間、(c)48時間および(d)72時間後のNHDF細胞の増殖に関する、色素2、4、6、17,18、23、24および25で標識されたEVのデルタ細胞指標(cell index)を示すグラフ。これらの試料は以下のように表されている:0.1%基本培地:黒い丸;2%完全培地:黒い四角形;10%高い培地(high media):黒い上向き三角形;0.1%基本培地中のPBS対照:黒い下向き三角形;PLX+色素23:黒い菱形;PLX+色素24:白い丸;PLX+色素25:白い四角形;PLX+色素18:白い上向き三角形;PLX+色素17:白い下向き三角形;PLX+色素4:白い菱形;PLX+色素6:アスタリスク;PLX+色素2:星;PLX単独:プラス。有意性は、多重比較(補正なしDunn検定)を用いるクラスカル・ウォリスノンパラメトリック一元配置分散分析により決定し、ここでは()は<0.05を意味し、(**)は<0.005を意味し、(***)は<0.0005を意味し、かつ非有意性は()がないことで示されている。
図8】MSC-EV調製物中の解析対象の従来の色素および色素2による蛍光標識。蛍光標識手順は、あらゆるEV調製物の非存在下(上の行)、MSC-EV単独の存在下(中間の行)またはMSC-EVおよび界面活性剤NP40の存在下で、CFSE、カルセインAM、BODIPY、PKH67および色素2について行った。色素で標識された解析対象の蛍光強度(x軸)は、それらのサイズを反映しているSSCシグナルの強度(y軸)に対してプロットされている。
図9】(A)PKH67および抗CD9抗体で対比染色したMSC-EV調製物について検出される解析対象のゲーティング戦略。両方の蛍光チャネル(CH02およびCH03)を最初に全ての記録される解析対象の側方散乱強度(SSC)に対してプロットした。チャネルごとの同時発生の解析対象の数が示されている(2番目の列)。全ての記録された解析対象のうち、その後の解析で検討される唯一の解析対象は、PKH67または抗体チャネルにおいて単一のシグナル、あるいは両方のチャネルにおいて単一のシグナル(シングレット)のいずれかを示したものであった。Ch02 SSCシングレットプロット内に、低い側方散乱シグナルを有するR1およびR2ならびに明確な側方散乱シグナルを有するR3においてシングレットで3つの異なるゲートを定めた。R1内の解析対象はPKH67を示さず、R2およびR3内のものは明確なPKH67シグナルを示した。シングレットのSSCシグナルに対してプロットしたCh02シグナルも、ゲーティング前の左側の列と同じプロットサイズまたは同じプロットのバージョンで拡大された状態のいずれかで示されている(右側の列)。(B)抗体非標識または抗CD9、抗CD63または抗CD81標識後のR1、R2およびR3においてそれぞれ記録されたシングレットの分布。シングレットの側方散乱強度に対してPKH67チャネル(Ch02)または抗体チャネル(Ch03)におけるシングレットの蛍光強度のプロット。列3~5はR1~R3でゲートされたシングレットの蛍光強度。(C)それぞれの測定のためのゲートR1~R3におけるイベントの数。平均値±標準偏差が示されている。
図10】色素2ならびに抗CD9、抗CD63または抗CD81抗体のいずれかで対比染色したMSC-EV調製物。図9に記載されている同じゲーティング戦略を適用した。抗体チャネル(Ch02)または色素2チャネル(Ch03)のいずれかについてシングレットの蛍光強度が側方散乱(SSC)強度に対してプロットされている。3つ目の列には色素2シグナルがそれぞれの抗体のシグナルに対してプロットされている。
図11】非標識もしくは色素2で標識されたMSC-EV調製物の存在または非存在下あるいは色素2の存在下で12人の異なるドナーのPBMCの混合物を5日間培養した。その後、細胞を回収してDAPIで染色し、抗CD4、抗CD25および抗CD54抗体を蛍光標識し、従来のフローサイトメトリーで解析した。(A)CD4 T381細胞のためのゲーティング戦略。生細胞をそれらの前方および側方散乱特徴に従ってシングレットおよびDAPI陰性細胞として同定した。CD4 T細胞をCD4生細胞としてゲートした。(B)添加剤(stim)の非存在下、非標識MSC-EV(MSC-EV)、色素2で標識されたMSC-EV(MSC-EV+色素2)の存在下または緩衝液に溶解した色素2(緩衝液+色素2)の存在下で培養した、mdMLRアッセイのCD25およびCD54でゲートした生CD4細胞の蛍光強度。
図12】イメージングフローサイトメトリーによる色素2で染色したEVの取込み後のmdMLRの免疫細胞の細胞下染色の分析。光(明視野)、蛍光顕微鏡およびマージ画像が示されている。
図13】(A)従来および(B)共焦点顕微鏡法によって観察したNHDF細胞中の本発明の色素2で染色したEV。血小板由来のEVは色素2(赤色)で染色した。核染色はヘキスト染色(青色)を用いて行った。
【発明を実施するための形態】
【0021】
当然のことながら、本明細書に開示および定義されている発明は本文において言及されているか図面から明らかな2つ以上の個々の特徴の全ての他の組み合わせにまで及ぶ。これらの異なる組み合わせの全てが本発明の様々な他の態様を構成している。
【0022】
次に本発明の特定の実施形態を詳細に参照する。本発明を実施形態と共に説明するが、当然のことながら、その意図は本発明をそれらの実施形態に限定することではない。それどころか、本発明は全ての代替形態、修正形態および均等物を包含することを意図しており、これらは特許請求の範囲によって定められている本発明の範囲内に含めることができる。
【0023】
当業者であれば、本発明の実施において使用することができる本明細書に記載されているものと同様または同等の多くの方法および材料を認識しているであろう。本発明は決して記載されている方法および材料に限定されない。当然のことながら、本明細書に開示および定義されている発明は本文に言及されているか図面から明らかな2つ以上の個々の特徴の全ての他の組み合わせにまで及ぶ。これらの異なる組み合わせの全てが本発明の様々な他の態様を構成している。
【0024】
本明細書において参照されている特許および刊行物の全ての内容全体が参照により組み込まれる。
【0025】
本明細書を解釈するという目的のために、単数形で使用されている用語は複数形も含み、かつ逆もまた同様である。
【0026】
本発明者らは本明細書において、EVおよび細胞を標識するのに有用な蛍光色素を同定した。この蛍光色素は、蛍光色素であるローダミンBの類似体および誘導体である。本発明者らは驚くべきことに、本発明の蛍光色素がEVおよび細胞を標識することができ、これにより有利には当該色素で標識されたEVおよび細胞をフルオロメーターなどの好適な市販されている器具を用いて比較的容易に、かつ安価に検出および追跡するのを可能にすることができることを見出した。理論に縛られることを望むものではないが、本発明者らは、式(I)の色素のRおよび/またはRの比較的疎水性の部分がEVおよび細胞の脂質二重層と結合することができ、これがそれによりEV脂質二重層の中に組み込まれてEV/細胞を当該色素で標識するのを可能にすると仮定する。これも理論に縛られることを望むものではないが、本発明者らは、Rおよび/またはRの比較的長い鎖長が色素凝集を防止し、かつEVまたは細胞の表面で負に帯電した化学種と相互作用するための正に帯電したローダミン蛍光体の高い相互作用を可能にすることができるとも考える。本発明の色素は脂質二重層を含む他の種類の分子または巨大分子と結合することができ、かつ従ってそれらを標識することができることが期待される。
【0027】
実施例に示されているように、本発明の蛍光色素はEVおよび様々なヒト細胞を標識することが分かった。これも実施例に示されているように、本発明の蛍光色素で標識されたEVおよび細胞は従来の器具を用いて検出して画像化することができる。
【0028】
当然のことながら、本明細書に開示および定義されている本発明は本文に言及されているか図面から明らかな2つ以上の個々の特徴の全ての他の組み合わせにまで及ぶ。これらの異なる組み合わせの全てが本発明の様々な他の態様を構成する。
【0029】
定義
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと同様または同等のあらゆる方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料が記載されている。本発明の目的のために、以下の用語を以下に定義する。
【0030】
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、1つまたは2つ以上(すなわち少なくとも1つ)のその冠詞の文法上の目的語を指すために本明細書で使用される。例として、「1つの要素」は1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0031】
本明細書で使用される「および/または」、例えば「Xおよび/またはY」という用語は「XおよびY」または「XまたはY」のいずれかを意味するように理解され、両方の意味またはいずれか一方の意味の明示的な支持を与えるように解釈されるべきである。
【0032】
本発明の様々な特徴が特定の値または値の範囲を参照しながら記載されている。これらの値は様々な適当な測定技術の結果に関するものであることが意図されており、従ってどんな特定の測定技術にもつきものの許容誤差を含むものとして解釈されるべきである。本明細書において参照されている値のいくつかは、少なくとも部分的にこのばらつきを補償するために「約」という用語によって示されている。「約」という用語は、値を記載するために使用されている場合、その値の±10%、±5%または±1%以内の量を意味してもよい。
【0033】
特に文脈から別の意味に解釈すべき場合を除き、本明細書で使用される「~を含む(comprise)」という用語ならびに「~を含む(comprises)」および「~を含む(comprising)」などの変形は、記載されている整数または工程あるいは整数または工程の群を含むが、あらゆる他の整数または工程あるいは整数または工程の群を排除しないことを意味するように理解される。
【0034】
「脂肪族」という用語はそれ単独または別の置換基の一部として、特に明記しない限り直鎖状もしくは分岐鎖状の鎖またはそれらの組み合わせのヒドロカルビルラジカルを意味し、それらは完全飽和、一価もしくは多価不飽和であってもよく、指定されている炭素原子数を有する(すなわちC~C10は1~10個の炭素を意味する)一価、二価および多価のラジカルを含むことができる。飽和アルキルラジカルの例としては、限定されるものではないが、メチル、メチレン、エチル、エチレン、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチルなどの基、それらの相同体および異性体、例えばn-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチルおよびn-オクチルなどが挙げられる。不飽和アルキル基は1つ以上の二重結合または三重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例としては、限定されるものではないが、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-および3-プロピニル、3-ブチニルならびにより高級の相同体および異性体が挙げられる。「脂肪族」という用語は、特に断りのない限り「アルキル」、「アルケニル」および「アルキニル」を含む。また、「アルキル」などの脂肪族基の一価のラジカル化学種への言及は、特に断りのない限り多価のラジカル化学種「アルキレン」を含む。
【0035】
「ヘテロ脂肪族」という用語はそれ単独または別の用語との組み合わせで、特に明記しない限り、記載されている原子数からなるO、N、SiおよびS(好ましくはOおよびN)からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子が途中に存在する脂肪族鎖またはそれらの組み合わせを意味する(例えば、C~C10ヘテロ脂肪族は、炭素およびヘテロ原子の総数が1~10個であることを意味する)。ヘテロ脂肪族基に含まれている任意の窒素および/または硫黄原子は任意に酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は任意に四級化されていてもよい。ヘテロ原子O、N、SおよびSiは、ヘテロ脂肪族基の任意の原子価が許容される内部位置またはヘテロ脂肪族基がその分子の残りまたは複合部分の場合の場合には別の基(例えば、ヘテロ脂肪族-OH)に結合されている位置にあってもよい。例としては限定されるものではないが、-CH-CH-O-CH、-CH-CH-NH-CH、-O-CH-CH-CH、-NH-CH-CH-CH、-CH-CH-N(CH)-CH、-CH-S-CH-CH、-CH-CH、-S(O)-CH、-CH-CH-S(O)-CH、-CH=CH-O-CH、-Si(CH、-CH-CH=N-OCHおよび-CH=CH-N(CH)-CHが挙げられる。最大2個のヘテロ原子は例えば-CH-NH-OCHおよび-CH-O-Si(CHなどのように連続していてもよい。好ましくは、ヘテロ脂肪族基は1、2、3、4個もしくはそれ以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、典型的には最も長い直鎖状ヘテロ脂肪族鎖に含まれている原子の40%超を占めていてもよい。「ヘテロ脂肪族」基は「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」または「ヘテロアルキニル」基であってもよい。また、一価の化学種への言及は二価のラジカルへの言及を含み、例えば「ヘテロアルキル」という用語は「ヘテロアルキレン」を含む。ヘテロアルキレン部分の例としては、-CH-CH-S-CH-CH-および-CH-S-CH-CH-NH-CH-が挙げられる。ヘテロアルキレン基の場合、ヘテロ原子は鎖末端のいずれか一方または両方を占めることもできる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノおよびアルキレンジアミノなど)。
【0036】
「アルキル」という用語は、1~26個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐鎖状飽和炭化水素基を指す。適当であれば、アルキル基は指定された炭素原子数を有していてもよく、例えば直鎖状もしくは分岐鎖状構成で1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を有するアルキル基を含むC1~6アルキルである。好適なアルキル基の例としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、4-メチルブチル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、5-メチルペンチル、2-エチルブチル、3-エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル(palmitadyl)、ヘプタデカニル、オクタデカニル(stearadyl)、ノナデカニル、イコサニル、ヘンイコサニル、ドコサニル、トリコサニル、テトラコサニル、ペンタコサニルおよびヘキサコサニルが挙げられる。
【0037】
「アルケニル」という用語は、炭素原子の間に1つ以上の二重結合を有し、かつ2~26個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐鎖状炭化水素基を指す。適当であれば、アルケニル基は指定された炭素原子数を有していてもよい。例えば「C~Cアルケニル」のように、C~Cは直鎖状もしくは分岐鎖状構成で2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を有する基を含む。好適なアルケニル基の例としては、限定されるものではないが、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、ブタジエニル、ペンテニル、ペンタジエニル、ヘキセニル、ヘキサジエニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル(palmitadenyl)、ヘプタデセニル、オクタデセニル(stearedyl)、ノナデセニル、イコセニル、ヘンイコセニル、ドコセニル、トリコセニル、テトラコセニル、ペンタコセニルおよびヘキサコセニルが挙げられる。
【0038】
「アルキニル」という用語は、炭素原子の間に1つ以上の三重結合を有し、かつ2~26個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐鎖状炭化水素基を指す。適当であれば、アルキニル基は指定された炭素原子数を有していてもよい。例えば「C~Cアルキニル」のようにC~Cは、直鎖状もしくは分岐鎖状構成で2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を有する基を含む。好適なアルキニル基の例としては、限定されるものではないが、エチニル、プロピニル、イソプロピニル、ブチニル、ブタジイニル、ペンチニル、ペンタジイニル、ヘキシニル、ヘキサジイニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル、ウンデシニル、ドデシニル、トリデシニル、テトラデシニル、ペンタデシニル、ヘキサデシニル(palmitadynyl)、ヘプタデシニル、オクタデシニル(stearydyl)、ノナデシニル、イコシニル、ヘンイコシニル、ドコシニル、トリコシニル、テトラコシニル、ペンタコシニルおよびヘキサコシニルが挙げられる。
【0039】
「シクロアルキル」および「ヘテロシクリル」という用語はそれ自体または他の用語との組み合わせで、特に明記しない限り「脂肪族」および「ヘテロ脂肪族」の環式バージョンをそれぞれ表す。「シクロアルキレン」などの二価および多価化学種も含まれる。さらにヘテロシクリルの場合、ヘテロ原子(例えばNまたはSi)は複素環がその分子の残りに結合されている位置を占めることができる。従ってシクロアルキルおよびヘテロシクリル基は飽和であっても不飽和であってもよい。不飽和シクロアルキルおよび/またはヘテロシクリル基は1もしくは2個の二重結合を含んでいてもよい。シクロアルキルの例としては、限定されるものではないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニルおよびシクロヘプチルなどが挙げられる。ヘテロシクロアルキルの例としては、限定されるものではないが、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニルおよび2-ピペラジニルなどが挙げられる。
【0040】
「アリール」という用語は、それ自体または他の用語との組み合わせで、炭素環式(非複素環式)芳香族環または単環、二環もしくは三環式の環系を指す。多環式の環系は、この系内の少なくとも1つの環が芳香族であれば「アリール」と呼ぶ場合がある。芳香族環もしくは環系は一般に6~10個の炭素原子からなる。アリール基の例としては、限定されるものではないが、フェニル、ビフェニル、ナフチルおよびテトラヒドロナフチルが挙げられる。フェニルなどの6員環アリールが好ましい。「アルキルアリール」という用語は、ベンジルなどのC1~6アルキルアリールを指す。
【0041】
「ハロゲン」および「ハロ」という用語はそれ自体または他の用語との組み合わせで、周期表のVIIa族を構成している元素を表す。ハロゲンの例としては、限定されるものではないが、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。「ハロアルキル」という用語は、1つ以上の水素がハロゲンで置換されている飽和アルキルラジカルを指す。
【0042】
アルキルアミノおよびアルキルアリールなどの、どちらもそのラジカルを化合物の残りに結合する結合を形成することができる2つの部分を記述する置換基ラジカルの複合命名の場合、基の順番の方向は意図されておらず、従ってその結合点は複合ラジカルに含まれている部分のいずれに対してであってもよい。例えば、「アルキルアリール」および「アリールアルキル」という用語は同じ基を指すことが意図されており、その結合点はアルキルもしくはアリール部分(またはジラジカル化学種の場合には両方)によるものであってもよい。そのような複合ラジカルの結合方向は結合を含めることにより示されている場合があり、例えば、「-アルキルアリール」または「アリールアルキル-」は化合物の残りへのラジカルの結合点がアルキル部分を介していることを意味し、「アルキルアリール-」または「-アリールアルキル」はその結合点がアリール部分を介していることを意味する。
【0043】
蛍光色素
本発明は、式(I):
【化3】
(式中、
およびRはそれぞれ独立して、任意に置換されたC1~26脂肪族、任意に置換されたC1~26ヘテロ脂肪族、任意に置換されたC1~26脂肪族-OH、任意に置換されたC1~26ヘテロ脂肪族-OHおよびOHから選択され、ここではRおよびRの少なくとも1つは任意に置換されたC13~26脂肪族または任意に置換されたC13~26ヘテロ脂肪族から選択され、
、R、RおよびRは独立して、任意に置換されたC1~6アルキル、任意に置換されたC1~6ハロアルキル、任意に置換されたC1~6ヘテロアルキル、任意に置換されたアリールおよび任意に置換されたC1~6アルキルアリールから選択されるか、あるいは
およびRはそれらが結合している窒素原子と一緒に、任意に置換された3~7員環の複素環を形成しており、かつ/または
およびRはそれらが結合している窒素原子と一緒に、任意に置換された3~7員環の複素環を形成しており、かつ
、R、RおよびRは独立して水素、フッ素および塩素から選択される)
の蛍光色素に関する。
【0044】
式(I)の任意の実施形態では、式(I)の1つ以上のR基は任意に置換されていてもよく、すなわち1つ以上のR基は1つ以上の任意の置換基で置換されていても置換されていなくてもよい。
【0045】
特に定義しない限り、本明細書で使用される「任意に置換された」または「任意の置換基」という用語は、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~8シクロアルキル、ヒドロキシル、オキソ、C1~6アルコキシ、アリールオキシ、C1~6アルコキシアリール、ハロ、C1~6アルキルハロ(CFなど)、C1~6アルコキシハロ(OCFなど)、カルボキシル、エステル、シアノ、ニトロ、アミノ、置換アミノ、二置換アミノ、アシル、ケトン、置換ケトン、アミド、アミノアシル、置換アミド、二置換アミド、チオール、アルキルチオ、チオキソ、硫酸、スルホン酸、スルフィニル、置換スルフィニル、スルホニル、置換スルホニル、スルホニルアミド、置換スルホンアミド、二置換スルホンアミド、アリール、アルC1~6アルキル(arC1~6alkyl)、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールからなる群から選択される1、2、3、4個もしくはそれ以上の基、好ましくは1、2もしくは3個、より好ましくは1もしくは2個の基で置換されていなくてもさらに置換されていてもよい基を指す。
【0046】
任意に置換されたアルキル、アルケニルおよびアルキニルの場合、1つ以上の任意の置換基は、好ましくはC3~8シクロアルキル、ヒドロキシル、オキソ、C1~6アルコキシ、アリールオキシ、C1~6アルコキシアリール、ハロ、C1~6アルキルハロ(CFなど)、C1~6アルコキシハロ(OCFなど)、カルボキシル、エステル、シアノ、ニトロ、アミノ、置換アミノ、二置換アミノ、アシル、ケトン、置換ケトン、アミド、アミノアシル、置換アミド、二置換アミド、チオール、アルキルチオ、チオキソ、硫酸、スルホン酸、スルフィニル、置換スルフィニル、スルホニル、置換スルホニル、スルホニルアミド、置換スルホンアミド、二置換スルホンアミド、アリール、アルC1~6アルキル(arC1~6alkyl)、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールから選択され、より好ましくはハロ、アリール、ヘテロシクリル、C3~8シクロアルキル、C1~6アルコキシ、ヒドロキシル、オキソ、アリールオキシ、ハロC1~6アルキル、ハロC1~6アルコキシルおよびカルボキシルから選択される。
【0047】
式(I)のいくつかの実施形態では、
は、C13~26アルキル、C13~26アルケニル、C13~26ヘテロアルキル(好ましくは最も長い直鎖状ヘテロアルキル鎖の中に1もしくは2個のヘテロ原子、好ましくは1もしくは2個の酸素原子を含む)およびOH、好ましくはC13~26アルキル、C13~26アルケニルおよびC13~26ヘテロアルキル(好ましくは最も長い直鎖状ヘテロアルキル鎖の中に1もしくは2個のヘテロ原子、好ましくは1もしくは2個の酸素原子を含む)、より好ましくはC13~26アルキル、C13~26アルケニル、Cアルキル-O-C10~23アルキルおよびOC12~25アルキル、さらにより好ましくはC14~22アルキルおよびC14~26アルケニル、なおより好ましくはC14~22アルキルから選択され、
は、C1~6アルキル、C1~6ヘテロアルキル、C1~6アルキル-OHおよびC1~6ヘテロアルキル-OH、好ましくはC1~6アルキルおよびC1~6アルキルOR(式中、Rは水素およびメチルから選択される)から選択され、
、R、RおよびRはそれぞれ独立してC1~6アルキルまたはC1~6ハロアルキルであり、好ましくはR、R、RおよびRはそれぞれ独立してC1~3アルキルまたはC1~3フルオロアルキルであり、より好ましくはR、R、RおよびRはそれぞれ独立してメチル、エチルまたはCHCFであり、さらにより好ましくはR、R、RおよびRはそれぞれエチルであり、
、R、RおよびRはそれぞれ水素である。
【0048】
式(I)の色素は塩の形態であってもよい。当該塩は正味電気的中性を達成するためにアニオン性対イオンである対イオンXを含む。アニオン性対イオンXは、例えばハロゲン化物、カルボン酸、炭酸、硫酸、スルホン酸、亜硫酸、硫化物、硝酸、亜硝酸、リン酸、ホウ酸およびアルコキシドなどを含む無機および/または有機アニオンから選択されてもよい。有利には、式(I)の化合物の塩形態は本明細書に記載されている方法のいずれかにおいてEVを標識するために好都合な試薬を提供することができる。
【0049】
従って、本発明は式(I)の化合物の塩を提供する。当該塩は式(II):
【化4】
(式中、
およびRは独立して、任意に置換されたC1~26脂肪族、任意に置換されたC1~26ヘテロ脂肪族、任意に置換されたC1~26脂肪族-OH、任意に置換されたC1~26ヘテロ脂肪族-OHおよびOHから選択され、ここではRおよびRの少なくとも1つは任意に置換されたC13~26脂肪族または任意に置換されたC13~26ヘテロ脂肪族から選択され、
、R、RおよびRは独立して、任意に置換されたC1~6アルキル、任意に置換されたC1~6ハロアルキル、任意に置換されたアリールおよび任意に置換されたC1~6アルキルアリールから選択されるか、あるいは
およびRはそれらが結合している窒素原子と一緒に、任意に置換された3~7員環の複素環を形成しており、かつ/または
およびRはそれらが結合している窒素原子と一緒に、任意に置換された3~7員環の複素環を形成しており、かつ
、R、RおよびRは独立して、水素、フッ素および塩素から選択され、かつ
は、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、C~Cアルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、硝酸、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸、トリクロロ亜鉛(II)酸、テトラクロロ鉄酸および過塩素酸から選択される)
の化合物であってもよい。
【0050】
式(II)の塩のいくつかの実施形態では、
は、任意に置換されたC13~26脂肪族、最も長い直鎖状ヘテロ脂肪族鎖の中に1もしくは2個のヘテロ原子(好ましくは1もしくは2個の酸素原子)を含むC13~26ヘテロ脂肪族、任意に置換されたC13~26脂肪族-OH、任意に置換されたC13~26ヘテロ脂肪族-OH(好ましくは、末端OH酸素原子を除外して最も長い直鎖状ヘテロ脂肪族鎖の中に1もしくは2個のヘテロ原子、好ましくは1もしくは2個の酸素原子を含む)およびOHから選択され、
は、任意に置換されたC1~6脂肪族、任意に置換されたC1~6ヘテロ脂肪族、任意に置換されたC1~6脂肪族-OH、任意に置換されたC1~6ヘテロ脂肪族-OHおよびOHから選択され、
、R、RおよびRは独立して、任意に置換されたC1~6アルキル、任意に置換されたC1~6ハロアルキル、任意に置換されたアリールおよび任意に置換されたC1~6アルキルアリールから選択されるか、あるいは
およびRはそれらが結合している窒素原子と一緒に、任意に置換された3~7員環の複素環を形成しており、かつ/または
およびRはそれらが結合している窒素原子と一緒に、任意に置換された3~7員環の複素環を形成しており、かつ
、R、RおよびRは独立して、水素、フッ素および塩素から選択され、かつ
は、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、C~Cアルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、硝酸、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸、トリクロロ亜鉛(II)酸、テトラクロロ鉄酸および過塩素酸から選択される。
【0051】
式(II)の塩のいくつかの実施形態では、
は、C13~26アルキル、C13~26アルケニル、最も長い直鎖状ヘテロアルキル鎖の中に1もしくは2個のヘテロ原子、好ましくは1もしくは2個の酸素原子を含むC13~26ヘテロアルキルおよびOH、好ましくはC13~26アルキル、C13~26アルケニル、および最も長い直鎖状ヘテロアルキル鎖の中に1もしくは2個のヘテロ原子(好ましくは1もしくは2個の酸素原子)を含むC13~26ヘテロアルキル、より好ましくはC13~26アルキル、C13~26アルケニル、Cアルキル-O-C10~23アルキルおよびOC12~25アルキル、さらにより好ましくはC14~22アルキルおよびC14~22アルケニル、なおより好ましくはC14~22アルキルから選択され、
は、C1~6アルキル、C1~6ヘテロアルキル、C1~6アルキル-OHおよびC1~6ヘテロアルキル-OH、好ましくはC1~6アルキルおよびC1~6アルキルOR(式中、Rは水素およびメチルから選択される)から選択され、
、R、RおよびRはそれぞれ独立してC1~6アルキルまたはC1~6ハロアルキルであり、好ましくはR、R、RおよびRはそれぞれ独立してC1~3アルキルまたはC1~3フルオロアルキルであり、より好ましくはR、R、RおよびRはそれぞれ独立してメチル、エチルまたはCHCFであり、さらにより好ましくはR、R、RおよびRはそれぞれエチルであり、
、R、RおよびRはそれぞれ水素であり、かつ
は塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸、トリフルオロ酢酸、硝酸、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸および過塩素酸、好ましくは塩化物、臭化物およびヨウ化物、より好ましくは塩化物から選択される。
【0052】
式(II)の塩のいくつかの実施形態では、
は、C13~26アルキル、C13~26アルケニル、および最も長い直鎖状ヘテロアルキル鎖の中に1もしくは2個のヘテロ原子、好ましくは1もしくは2個の酸素原子を含むC13~26ヘテロアルキル、好ましくはC13~26アルキル、C13~26アルケニル、Cアルキル-O-C10~23アルキルおよびOC12~25アルキル、より好ましくはC14~22アルキルおよびC14~22アルケニル、さらにより好ましくはC14~22アルキルから選択され、
は、C1~6アルキル、C1~6ヘテロアルキル、C1~6アルキル-OHおよびC1~6ヘテロアルキル-OH、好ましくはC1~6アルキルおよびC1~6アルキルOR(式中、Rは水素およびメチルから選択される)から選択され、
、R、RおよびRはそれぞれ独立してC1~6アルキルまたはC1~6ハロアルキルであり、好ましくはR、R、RおよびRはそれぞれ独立してC1~3アルキルまたはC1~3フルオロアルキルであり、より好ましくはR、R、RおよびRはそれぞれ独立してメチル、エチルまたはCHCFであり、さらにより好ましくはR、R、RおよびRはそれぞれエチルであり、
、R、RおよびRはそれぞれ水素であり、かつ
は、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸、トリフルオロ酢酸、硝酸、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸および過塩素酸、好ましくは塩化物、臭化物およびヨウ化物、より好ましくは塩化物から選択される。
【0053】
いくつかの実施形態では、式(II)の塩は、以下のいずれか1つから選択される構造を有する:
【化5】
(式中、Xは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸、トリフルオロ酢酸、硝酸、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸および過塩素酸、好ましくは塩化物、臭化物およびヨウ化物、より好ましくは塩化物から選択される)。
【0054】
いくつかの実施形態では、式(II)の塩は以下のいずれか1つから選択される構造を有する:
【化6】
(式中、Xは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸、トリフルオロ酢酸、硝酸、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸および過塩素酸、好ましくは塩化物、臭化物およびヨウ化物、より好ましくは塩化物から選択される)。
【0055】
いくつかの実施形態では、式(II)の塩は以下のいずれか1つから選択される構造を有する:
【化7】
(式中、Xは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸、トリフルオロ酢酸、硝酸、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸および過塩素酸、好ましくは塩化物、臭化物およびヨウ化物、より好ましくは塩化物から選択される)。
【0056】
一実施形態では、式(II)の塩は以下の構造を有する:
【化8】
(式中、Xは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸、トリフルオロ酢酸、硝酸、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸および過塩素酸、好ましくは塩化物、臭化物およびヨウ化物、より好ましくは塩化物から選択される)。
【0057】
いくつかの実施形態では、式(II)の塩は、以下のいずれか1つから選択される。
【表1】
【0058】
好ましい実施形態では、式(II)の塩は、化合物2、3、4、6、13、15、17および18のいずれか1つ、好ましくは化合物2、15、17および18のいずれか1つから選択される。
【0059】
好ましい実施形態では、式(II)の塩は化合物2である。
【0060】
本発明の式(I)およびその塩(例えば式(II)の化合物)の色素は、化学合成を含む当該技術分野で知られている方法によって調製してもよい。例えば、本発明の化合物は式(A):
【化9】
(式中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、本明細書に記載されている式(I)のいずれかの化合物のために定義されているとおりである)の化合物を、式(B):
【化10】
(式中、RおよびRは本明細書に記載されているとおりである)の化合物と反応させることによって調製してもよい。式(A)の化合物と式(B)の化合物との反応は、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)およびヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)などの好適なカップリング剤の存在下で、任意に4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)などの触媒の存在下で行ってもよい。代わりまたは追加として、式(A)の化合物のカルボン酸部分を酸塩化物または混合無水物などの活性化カルボン酸に変換してもよい。酸塩化物は塩化ホスホリル(POCl)または塩化チオニル(SOCl)などの塩素化試薬との反応によって調製してもよい。混合無水物はジメチル無水物との反応によって調製してもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、当該色素は出発物質として市販されているローダミンBを用いて調製してもよい。ローダミンBの安息香酸部分を塩化ホスホリル(POCl)と反応させることにより酸ハロゲン化物、例えば酸塩化物に変換し、その後に酸ハロゲン化物を好適なアミンと反応させて標的色素を得てもよい。また本発明の色素および塩は、実施例1に記載されているものと類似した方法を用いて合成してもよい。
【0062】
実施例に示されているように、本発明の色素は蛍光を発し、かつ当該技術分野で知られている方法を用いてフルオロメーターで検出および追跡することができる蛍光マーカーとして機能することができる。本発明の色素は450~700nmの可視域で蛍光を示す。実施例に示されているように、色素1~10は約564nmの最大吸収および約588nmの最大発光を有する。従っていくつかの実施形態では、本発明の色素は約544nm~約584nmまたは約554nm~約574nmの波長の光を吸収し、かつ約568nm~約608nmまたは約578nm~約598nmの波長で蛍光を発する。好ましい実施形態では、本発明の色素は約562nmの波長で光を吸収し、かつ約583nmの波長の光を発する。
【0063】
標識された細胞外小胞および細胞
本発明の式(I)およびその塩の色素は、EVおよびヒト細胞を標識するために有用である。
【0064】
EVおよび細胞は脂質二重層を含む。「脂質二重層」という用語は、リン脂質分子の2つの層からなる生体膜を意味するように理解され、各リン脂質分子は親水性リン酸頭部および疎水性脂質尾部を含み、ここでは尾部領域は水によってはじかれ、かつ互いに僅かに引き寄せられ、互いに集合する。理論に縛られることを望むものではないが、本発明者らは、式(I)の色素のRおよび/またはRの比較的疎水性の部分がEVおよび細胞の脂質二重層に結合し、これがそれにより当該色素によるEV/細胞の標識を可能にすると仮定する。
【0065】
従って本発明は、本明細書に記載されている式(I)の蛍光色素で標識された細胞外小胞(EV)を提供する。
【0066】
本明細書で使用される「細胞外小胞」(EV)という用語は、細胞の中または外にあり、かつ脂質二重層によって封入された液体または細胞質を含む小胞を包含することを意図している。EVは典型的にカーゴを含み、これは治療薬すなわち薬物カーゴ、例えば1種以上の膜タンパク質、サイトゾルおよび核タンパク質、細胞外マトリックスタンパク質、代謝産物ならびにmRNAおよび非翻訳RNA種などのDNAおよびRNAを含む核酸であってもよい。カーゴの好適な種類の例は、Kalluri RおよびLeBleu V S(Science.2020年2月7日;367(6478))に記載されている。EVはナイーブEVまたは操作されたEVであってもよい。本明細書で使用される「ナイーブEV」という用語は、細胞によって天然に産生される未修飾EVを意味するように理解される。そこからナイーブEVを得ることができる好適な細胞の例としては、間葉細胞(MSC)、血小板およびヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)、例えばhiPSC由来神経幹細胞などの幹細胞が挙げられる。ナイーブEVは、EVが得られる細胞の脂質二重層と実質的に同様の1種以上のリン脂質を含む脂質二重層を有していてもよい。本明細書で使用される「操作されたEV」という用語は、それらの表面上に標的分子を発現し、かつ/または特異的薬物カーゴを運ぶように修飾されている小胞を意味するように理解される。EVは当該技術分野で知られている方法、例えば国際公開第2018/112557号および国際公開第2019/241836号に記載されている方法によって得てもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、EVは、エキソソーム、エクソメア(exomere)、微小小胞体、オンコソーム(oncosome)およびアポトーシス小体から選択される。好ましい実施形態では、EVはエキソソームである。本明細書で使用される「エキソソーム」という用語は、真核細胞のエンドソーム区画で産生されるEVを包含することを意図している。エキソソームは典型的には約40nm~約120nmの直径サイズを有し、かつタンパク質および核酸カーゴを含む。本明細書で使用される「エクソメア」という用語は、約50nm未満の直径サイズを有する非膜性EVを包含することを意図している。エクソメアは典型的には約35nmの直径サイズし、かつタンパク質および核酸カーゴを含む。本明細書で使用される「微小小胞体」という用語は、細胞の細胞膜から放出されるEVを包含することを意図している。微小小胞体は典型的には約150nm~約1000nmの直径サイズを有し、かつタンパク質および核酸カーゴを含む。本明細書で使用される「オンコソーム」という用語は、典型的にはより進行したステージの疾患において癌細胞からの膜小疱の放出から産生される腫瘍化促進特性を有するEVを包含することを意図している。オンコソーム(「大型オンコソーム」すなわちLOとも呼ぶ)は典型的には約1μm~約10μmの直径サイズを有し、かつタンパク質を含む腫瘍カーゴを含む。本明細書で使用される「アポトーシス小体」という用語は、アポトーシスの間に細胞の細胞膜から放出されるEVを包含することを意図している。アポトーシス小体は典型的には約500nm~約2000nmの直径サイズを有し、かつ核画分および細胞小器官を含むカーゴを含む。
【0068】
本発明は本明細書に記載されている式(I)の蛍光色素で標識された細胞も提供する。いくつかの実施形態では、当該細胞はヒト細胞である。好適なヒト細胞の例としては正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)、ヒト臍帯由来間葉系幹細胞(UC-MSC)および骨髄由来MSC(BM-MSC)が挙げられる。
【0069】
実施例に示されているように、本発明の蛍光色素で標識されたEVおよび様々なヒト細胞は、それらの非標識対応物と比較してより高い蛍光を示す。これは有利には、フルオロメーターなどの好適な器具を用いて本発明の色素で標識されたEVおよび細胞を検出および追跡するのを可能にすることができる。
【0070】
用途
本発明の色素は標識されたEVおよび細胞を検出および/または追跡するための蛍光マーカーとして有用であり得る。
【0071】
従って本発明は、本明細書に記載されている式(II)の塩(例えば、式(I)の化合物の塩)をEVまたは細胞と組み合わせる工程を含む、細胞外小胞(EV)または細胞を標識する(またはタグ付けする)方法を提供する。
【0072】
本発明は、本明細書に記載されている式(II)の塩(例えば、式(I)の化合物の塩)をEVと組み合わせて、それによりEVを式(I)の化合物で標識する工程を含む、標識された細胞外小胞(EV)を調製する方法も提供する。EVは本明細書に記載されている任意の好適なEVであればよい。
【0073】
これらの実施形態では、本方法はEVを提供する工程をさらに含んでいてもよい。EVは本明細書に記載されている当該技術分野で知られている方法によって調製するか得てもよい。EVを単離するのに適した方法としては、例えばSidhom Kら(Int.J.Mol.Sci.2020,21(18),6466)およびZhang Yら(Int J Nanomedicine.2020;15:6917-6934)に記載されているものが挙げられる。EVを精製するのに適した方法としては、例えば国際公開第2018/112557A1号に記載されているものが挙げられる。EVを提供する工程は、例えば細胞株からEVを得ること、およびEVを細胞から分離することを含んでもよい。言い換えると、本明細書に記載されている方法は、EVを細胞から単離してEVを含む水溶液を得る工程をさらに含んでいてもよい。
【0074】
本発明は、本明細書に記載されている式(II)の塩(例えば、式(I)の化合物の塩)を細胞と組み合わせて、それにより細胞を式(I)の化合物で標識する工程を含む、標識された細胞を調製する方法も提供する。
【0075】
これらの実施形態では、本方法は細胞を提供する工程をさらに含んでいてもよい。細胞は当該技術分野で知られている方法によって調製するか得てもよい。細胞を提供する工程は、例えば細胞を培養することを含んでもよい。異なる細胞型のための好適な細胞培養技術は、https://www.atcc.org/においてアメリカ培養細胞系統保存機関(The Global Bioresource Centre)から入手可能である。
【0076】
本発明は、EVまたは細胞を標識するための本明細書に記載されている式(I)の化合物の塩の使用も提供する。
【0077】
本発明はEVまたは細胞を蛍光標識するためのキット、あるいはEVまたは細胞を蛍光標識するために使用する場合、
・本明細書に記載されている式(I)の化合物の塩と、
・任意に、細胞外小胞または細胞を蛍光標識するためのその使用についての説明書と
を含むキットも提供する。
【0078】
本発明の方法、使用およびキットの任意の実施形態では、標識されるEVまたは細胞は、本明細書に記載されている任意の好適なEVまたは細胞であってもよい。
【0079】
好適には、式(I)の化合物がEVまたは細胞を標識するように本発明の塩およびEVまたは細胞を組み合わせる。例えば標識されるEVまたは細胞を好適な条件下および好適な期間で、例えば37℃で約1時間の期間にわたって本発明の塩と共にインキュベートしてもよい。典型的には当該塩をEVおよび/または細胞を含む水溶液に添加する。但し、いくつかの実施形態では、EVおよび/または細胞の溶液を本発明の塩を含む水溶液に添加する。この水溶液は水を含み、かつEV完全性および細胞生存度を維持することができるレベルで他の水混和性溶媒を含んでいてもよい。好適な水混和性溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、酢酸エチル(EtOAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、メタノール(MeOH)およびエタノール(EtOH)などが挙げられる。この水溶液は、緩衝剤、界面活性剤、培地、凍結保護剤およびそれらの組み合わせから選択される1種以上の添加剤を含んでいてもよい。
【0080】
従っていくつかの実施形態では、式(II)の塩をEVまたは細胞と組み合わせる工程は、式(II)の塩およびEVまたは細胞の水溶液を形成することを含む。式(II)の塩は、EVまたは細胞を標識するのに適した任意の量または任意の濃度で提供してもよい。いくつかの実施形態では、当該水溶液中の式(II)の塩の最小濃度は、少なくとも約0.02μM、約0.03μM、約0.05μM、約0.06μM、約0.07μM、約0.08μM、約0.09μM、約0.1μM、約0.11μM、約0.12μM、約0.13μM、約0.14μM、約0.15μM、約0.16μM、約0.17μM、約0.18μM、約0.19μMまたは約0.2μMである。いくつかの実施形態では、当該水溶液中の式(II)の塩の最大濃度は、当該水溶液に対して約1μM、約2μM、約3μM、約4μM、約5μM、約6μM、約7μM、約8μM、約9μM、約10μM、約15μM、または約20μM以下である。いくつかの実施形態では、当該水溶液中の式(I)の化合物の濃度は、これらの最小濃度のいずれかからこれらの最大濃度のいずれか、例えば約0.1μm~約5μMまたは約0.2μm~約2μMであってもよい。式(II)の塩がEVを標識するためのものである実施形態では、式(II)の塩の最小量は、1個のEV当たり少なくとも約60分子、約90分子、約150分子、約180分子、約210分子、約240分子、約270分子、約300分子、約330分子、約360分子、約390分子、約420分子、約450分子、約480分子、約510分子、約540分子、約570分子または約600分子の塩であってもよい。いくつかの実施形態では、式(II)の塩の最大量は、1個のEV当たり約3000分子、約6000分子、約9000分子、約12000分子、約15000分子、約18000分子、約21000分子、約24000分子、約27000分子、約30000分子、約45000分子または約60000分子の塩であってもよい。いくつかの実施形態では、式(II)の塩は最小量のいずれか1つから最大量のいずれか1つまでの範囲の量、例えば1個のEV当たり約300分子~約15000分子または約600分子~約6000分子の塩であってもよい。式(II)の塩が細胞を標識するためのものである実施形態では、1個の細胞当たりの塩の量は、1個のEV当たりの塩の量と比較して桁違いにより大きくてもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、当該水溶液は、EVまたは細胞を標識する塩の量に対して過剰な式(II)の塩を含む。従っていくつかの実施形態では、本方法は、当該溶液を精製して式(II)の残留する塩を除去する工程をさらに含む。この精製する工程は、例えばサイズ排除クロマトグラフィによって達成してもよい。
【0082】
実施例に示されているように、本発明の色素がEVまたは細胞上に標識されている場合、蛍光を発することができ、これを好適な器具によって検出することができる。これは有利には、好適な器具を用いて当該色素で標識されたEVおよび細胞を検出および追跡するのを可能にする。
【0083】
従って本発明は、
・本明細書に記載されている式(I)の蛍光色素で標識されたEVまたは細胞を選択された光源に曝露して式(I)の蛍光色素を励起させる工程と、
・この蛍光色素からの蛍光発光を検出する工程と
含む、細胞外小胞(EV)または細胞を検出する方法を提供する。
【0084】
本発明は、
・本明細書に記載されている式(I)の蛍光色素で標識されたEVまたは細胞を選択された光源に曝露して式(I)の蛍光色素を励起させる工程と、
・この蛍光色素からの蛍光発光を検出し、それによりこの蛍光色素からの蛍光発光の検出により標識されたEVまたは細胞の追跡を可能にする工程と
を含む、細胞外小胞(EV)または細胞を追跡する方法も提供する。
【0085】
光源は、可視光領域内の波長、すなわち約300nm~約1000nmの範囲の波長で光を放射することができる任意の好適な光源であってもよい。いくつかの実施形態では、この光源は約450~約700nm、好ましくは約500nm~約650nm、より好ましくは約540~約590nmの波長で光を放射する。
【0086】
本発明は、EVまたは細胞を検出および/または追跡するための本明細書に記載されている式(I)の化合物の塩の使用も提供する。
【0087】
本発明の方法または使用の任意の実施形態では、標識されたEVまたは標識された細胞は、本明細書に記載されている任意の好適なEVまたは細胞であってもよい。
【0088】
実施例に示されているように、本発明の色素で標識されたEVおよび様々なヒト細胞は従来の器具を用いて検出して画像化することができる。EVおよび細胞、特にEVの検出および追跡は、有利には診断および治療研究において用途を有し得る。
【0089】
従って本発明は、細胞を本明細書に記載されている式(I)の蛍光色素で標識し、かつ本明細書に記載されている治療用カーゴを含むEVと接触させる工程を含む、治療用カーゴを細胞に送達する方法も提供する。EVの治療用カーゴが細胞に送達されるように、細胞および標識されたEVを好適には接触させる。
【実施例
【0090】
本発明を非限定的な実施例によってさらに説明する。本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく多くの修正を行うことができることが本発明の当業者には理解されるであろう。
【0091】
実施例1:色素の合成
本発明の色素は文献から公知の方法または当業者に公知の方法に従って調製することができる。当該色素を調製するために使用される試薬はほとんどの場合に市販されているものであり、そうでなければ文献から公知の方法によって入手可能なものである。本発明の色素を調製するための好ましいプロセスを色素1~10に基づいて例として説明する。
【0092】
化合物1の合成
【化11】
ローダミンB(0.600g、1.253mmol、3.0当量)の1,2-ジクロロエタン(60mL)部分溶液にPOCl(422μL、4.510mmol、10.8当量)を添加した。明るい紫色の混合物をN下で4時間還流し、次いで周囲温度まで放冷した。この混合物を3つの別個の100mLのRBFに分け、揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製ハロゲン化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。1つのフラスコ中の残留物を乾燥DCM(20mL)に懸濁させ、N-メチルヘキサデシルアミン(128.0mg、0.501mmol、1.2当量)を一度で添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(173.5μL、1.252mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を1.5時間撹拌し、TLCで監視した。この混合物を飽和NaHCO水溶液(20mL)で失活させ、EtOAc(40mL)で抽出した。有機相をHO(20mL)、次いで塩水(15mL)で洗浄した後、乾燥させ(NaSO)、シリカの2cmのプラグに通し、10%MeOH/DCM(80mL)で徹底的に洗浄した。回転蒸発により0.32gの粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドをBiotage自動カラムクロマトグラフィにより精製して、ローダミンB N-メチルヘキサデシルアミド(1)を粘着性の紫色の固体として得た(226.8mg、76%)。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.68-7.60(m,2HR1,2HR2),7.55-7.49(m,1HR1,1HR2),7.33(m,1HR1,1HR2),7.27(d,J=9.4Hz,2HR1),7.22(d,J=9.4Hz,2HR2),7.02(dd,J=9.6,2.5Hz,2HR1),6.89(dd,J=9.5,2.5Hz,2HR2),6.82(d,J=2.4Hz,2HR2),6.74(d,J=2.4Hz,2HR1),3.70-3.58(m,8HR1,8HR2),3.16(t,J=7.4Hz,2HR1),3.02(t,J=7.6Hz,2HR2),2.89(s,3HR1),2.69(s,3HR2),1.31(app.t,J=7.1Hz,12HR1,12HR2),1.28-1.15(m,28HR1,28HR2),1.13-1.02(m,6H),0.99-0.90(m,1H),0.86(m,3HR1,3HR2)。NB:回転異性体はR/Rで示されている。
【0093】
化合物2の合成
【化12】
ローダミンB(0.500g、1.044mmol、1.0当量)の1,2-ジクロロエタン(50mL)部分溶液にPOCl(0.351mL、3.758mmol、3.6当量)を添加し、明るい紫色の混合物をN下で4時間還流した。揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製ハロゲン化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。残留物を乾燥DCM(50mL)に懸濁させ、N-メチルオクタデシルアミン(0.355g、1.253mmol、1.2当量)に一度で添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(0.434mL、3.13mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を1時間撹拌し、TLCで監視した。この混合物を飽和NaHCO水溶液(50mL)で失活させ、EtOAc(100mL)で抽出した。有機相をHO(50mL)、次いで塩水(20mL)で洗浄した後、乾燥させ(NaSO)、シリカの2cmのプラグに通し、10%MeOH/DCM(200mL)で徹底的に洗浄した。回転蒸発により0.81gの粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドをBiotage自動カラムクロマトグラフィにより精製してローダミンB N-メチルオクタデシルアミド(2)を粘着性の紫色の固体として得た(0.68g、87%)。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.68-7.60(m,2HR1,2HR2),7.56-7.48(m,1HR1,1HR2),7.37-7.29(m,1HR1,1HR2),7.27(d,J=9.6Hz,2HR1),7.22(d,J=9.4Hz,2HR2),7.00(dd,J=9.6,2.4Hz,2HR1),6.88(dd,J=9.4,2.4Hz,2HR2),6.82(d,J=2.4Hz,2HR2),6.74(d,J=2.4Hz,2HR1),3.72-3.54(m,8HR1,8HR2),3.16(t,J=7.4Hz,2HR1),3.02(t,J=7.9Hz,2HR2),2.89(s,3HR1),2.69(s,3HR2),1.31(app.t,J=7.1Hz,12HR1,12HR2),1.27-0.90(m,32HR1,32HR2),0.86(app.t,J=7.0Hz,3HR1,3HR2)。NB:回転異性体はR/Rで示されている。
【0094】
化合物3の合成
【化13】
ローダミンB(0.600g、1.253mmol、3.0当量)の1,2-ジクロロエタン(60mL)部分溶液にPOCl(422μL、4.510mmol、10.8当量)を添加した。明るい紫色の混合物をN下で4時間還流し、次いで周囲温度まで放冷した。この混合物を3つの別個の100mLのRBFに分け、揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製ハロゲン化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。1つのフラスコ中の残留物を乾燥DCM(20mL)に懸濁させ、N-メチルイコサン-1-アミン(156.11mg、0.501mmol、1.2当量)を一度で添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(173.5μL、1.252mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を1.5時間撹拌し、TLCで監視した。この混合物を飽和NaHCO水溶液(20mL)で失活させ、EtOAc(40mL)で抽出した。有機相をHO(20mL)、次いで塩水(15mL)で洗浄した後、乾燥させ(NaSO)、シリカの2cmのプラグに通し、10%MeOH/DCM(80mL)および10%MeOH/EtO(80mL)で徹底的に洗浄した。回転蒸発により0.64gの粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドをBiotage自動カラムクロマトグラフィにより精製してローダミンB N-メチルイコサンアミド(3)を粘着性の紫色の固体として得た(188.0mg、58%)。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.67-7.58(m,2HR1,2HR2),7.54-7.47(m,1HR1,1HR2),7.35-7.28(m,1HR1,1HR2),7.25(d,J=9.6Hz,2HR1),7.20(d,J=9.6Hz,2HR2),7.00(dd,J=9.6,2.5Hz,2HR1),6.87(dd,J=9.5,2.5Hz,2HR2),6.78(d,J=2.4Hz,2HR2),6.71(d,J=2.4Hz,2HR1),3.71-3.55(m,8HR1,8HR2),3.14(t,J=7.3Hz,2HR1),3.01(m,2HR2),2.87(s,3HR1),2.67(s,3HR2),1.30(app.t,J=7.1Hz,12HR1,12HR2),1.26-1.11(m,36HR1,36HR2),1.11-1.00(m,6H),0.96-0.88(m,1H),0.87-0.81(m,3HR1,3HR2)。NB:回転異性体はR/Rで示されている。
【0095】
化合物4の合成
【化14】
ローダミンB(0.600g、1.253mmol、3.0当量)の1,2-ジクロロエタン(60mL)部分溶液にPOCl(422μL、4.510mmol、10.8当量)を添加した。明るい紫色の混合物をN下で4時間還流し、次いで周囲温度まで放冷した。この混合物を3つの別個の100mLのRBFに分け、揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製ハロゲン化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。1つのフラスコ中の残留物を乾燥DCM(20mL)に懸濁させ、N-メチルドコシルアミン(170.16mg、0.501mmol、1.2当量)を一度で添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(173.5μL、1.252mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を1.5時間撹拌し、TLCで監視した。この混合物を飽和NaHCO水溶液(20mL)で失活させ、DCM(40mL)で抽出した。有機相をHO(20mL)、次いで塩水(15mL)で洗浄した後、乾燥させ(NaSO)、シリカの2cmのプラグに通し、10%MeOH/DCM(80mL)および10%MeOH/EtO(80mL)で徹底的に洗浄した。回転蒸発により0.27gの粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドをBiotage自動カラムクロマトグラフィにより精製してローダミンB N-ペンチルテトラデカンアミド(4)を粘着性の紫色の固体として得た(291.1mg、73%)。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.68-7.59(m,2HR1,2HR2),7.54-7.49(m,1HR1,1HR2),7.36-7.31(m,1HR1,1HR2),7.27(d,J=9.5Hz,2HR1),7.22(d,J=9.5Hz,2HR2),7.03(dd,J=9.6,2.5Hz,2HR1),6.89(dd,J=9.5,2.5Hz,2HR2),6.81(d,J=2.4Hz,2HR2),6.73(d,J=2.5Hz,2HR1),3.69-3.57(m,8HR1,8HR2),3.16(t,J=7.4Hz,2HR1),3.08-2.98(m,2HR2),2.89(s,3HR1),2.69(s,3HR2),1.31(app.t,J=7.1Hz,12HR1,12HR2),1.28-1.12(m,40HR1,40HR2),1.12-1.00(m,6H),0.99-0.89(m,1H),0.89-0.78(m,3HR1,3HR2)。NB:回転異性体はR/Rで示されている。
【0096】
化合物5の合成
【化15】
ローダミンB(0.600g、1.253mmol、3.0当量)の1,2-ジクロロエタン(60mL)部分溶液にPOCl(422μL、4.510mmol、10.8当量)を添加した。明るい紫色の混合物をN下で4時間還流し、次いで周囲温度まで放冷した。この混合物を3つの別個の100mLのRBFに分け、揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製ハロゲン化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。1つのフラスコ中の残留物を乾燥DCM(20mL)に懸濁させ、N-ペンチルテトラデカン-1-アミン(142.05mg、0.501mmol、1.2当量)を一度で添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(173.5μL、1.252mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を1.5時間撹拌し、TLCで監視した。この混合物を飽和NaHCO水溶液(20mL)で失活させ、DCM(40mL)で抽出した。有機相をHO(20mL)、次いで塩水(15mL)で洗浄した後、乾燥させ(NaSO)、シリカの2cmのプラグに通し、10%MeOH/DCM(80mL)および10%MeOH/EtO(80mL)で徹底的に洗浄した。回転蒸発により0.35gの粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドをBiotage自動カラムクロマトグラフィにより精製してローダミンB N-ペンチルテトラデカンアミド(5)を粘着性の紫色の固体として得た(211.5mg、68%)。H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ7.68-7.61(m,2H),7.54-7.47(m,1H),7.38-7.32(m,1H),7.24(d,J=9.7Hz,2H),6.91(ddd,J=9.7,5.3,2.3Hz,2H),6.75(dd,J=5.5,2.3Hz,2H),3.62(dq,J=11.3,7.3Hz,8H),3.20-3.02(m,2H),2.90(q,J=7.0Hz,2H),1.49-1.36(m,3H),1.31(t,J=7.0Hz,12H),1.27-0.95(m,20H),0.93-0.77(m,9H),0.71(t,J=7.3Hz,3H)。
【0097】
化合物6の合成
【化16】
ローダミンB(0.600g、1.253mmol、3.0当量)の1,2-ジクロロエタン(60mL)部分溶液にPOCl(422μL、4.510mmol、10.8当量)を添加した。明るい紫色の混合物をN下で4時間還流し、次いで周囲温度まで放冷した。この混合物を3つの別個の100mLのRBFに分け、揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製ハロゲン化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。1つのフラスコ中の残留物を乾燥DCM(20mL)に懸濁させ、N-ペンチルオクタデカン-1-アミン(170.16mg、0.501mmol、1.2当量)を一度で添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(173.5μL、1.252mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を1.5時間撹拌し、TLCで監視した。この混合物を飽和NaHCO水溶液(20mL)で失活させ、DCM(40mL)で抽出した。有機相をHO(20mL)、次いで塩水(15mL)で洗浄した後、乾燥させ(NaSO)、シリカの2cmのプラグに通し、10%MeOH/DCM(80mL)および10%MeOH/EtO(80mL)で徹底的に洗浄した。回転蒸発により0.41gの粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドをBiotage自動カラムクロマトグラフィにより精製してローダミンB N-ペンチルオクタデカンアミド(6)を粘着性の紫色の固体として得た(281.4mg、84%)。H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ7.70-7.61(m,2H),7.55-7.48(m,1H),7.39-7.33(m,1H),7.27-7.23(m,2H),6.91(ddd,J=9.6,5.8,2.5Hz,2H),6.77(dd,J=6.1,2.5Hz,2H),3.65(dq,J=11.9,7.4Hz,8H),3.10(s,2H),2.91(q,J=7.2Hz,2H),1.42(t,J=7.5Hz,2H),1.31(t,J=7.1Hz,12H),1.28-0.95(m,28H),0.91-0.80(m,9H),0.72(t,J=7.3Hz,2H)。
【0098】
化合物7の合成
【化17】
ローダミンB(0.600g、1.253mmol、3.0当量)の1,2-ジクロロエタン(60mL)部分溶液にPOCl(422μL、4.510mmol、10.8当量)を添加した。明るい紫色の混合物をN下で4時間還流し、次いで周囲温度まで放冷した。この混合物を3つの別個の100mLのRBFに分け、揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製ハロゲン化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。1つのフラスコ中の残留物を乾燥DCM(20mL)に懸濁させ、N-(2-メトキシエチル)ヘキサデカン-1-アミン(150.07mg、0.501mmol、1.2当量)を一度で添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(173.5μL、1.252mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を1.5時間撹拌し、TLCで監視した。この混合物を飽和NaHCO水溶液(20mL)で失活させ、DCM(40mL)で抽出した。有機相をHO(20mL)、次いで塩水(15mL)で洗浄した後、乾燥させ(NaSO)、シリカの2cmのプラグに通し、10%MeOH/DCM(80mL)で徹底的に洗浄した。回転蒸発により0.35gの粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドをBiotage自動カラムクロマトグラフィにより精製して162.0mgのローダミンB N-エチルメチルエーテルヘキサデカンアミド(7)を粘着性の紫色の固体として得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.73-7.57(m,2HR1,2HR2),7.55-7.50(m,1HR1,1HR2),7.39-7.29(m,1HR1,1HR2),7.29-7.22(m,2HR1,2HR2),7.03(d,J=9.5Hz,2HR1),6.88(dd,J=9.5,2.4Hz,2HR2),6.82(d,J=2.4Hz,2HR2),6.72(d,J=2.4Hz,2HR1),3.72-3.55(m,8HR1,8HR2),3.42(t,J=5.1Hz,1H),3.37-3.23(m,3H);3.19-3.09(m,2HR1),3.00-2.88(m,2HR2,3HR1,3HR2),1.36-1.28(m,12HR1,12HR2),1.27-1.12(m,28HR1,28HR2),0.93-0.82(m,6H)。NB:回転異性体はR/Rで示されている。
【0099】
化合物8の合成
【化18】
ローダミンB(0.600g、1.253mmol、3.0当量)の1,2-ジクロロエタン(60mL)部分溶液にPOCl(422μL、4.510mmol、10.8当量)を添加した。明るい紫色の混合物をN下で4時間還流し、次いで周囲温度まで放冷した。この混合物を3つの別個の100mLのRBFに分け、揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製ハロゲン化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。1つのフラスコ中の残留物を乾燥DCM(20mL)に懸濁させ、N-(2-メトキシエチル)オクタデカン-1-アミン(164.12mg、0.501mmol、1.2当量)を一度で添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(173.5μL、1.252mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を1.5時間撹拌し、TLCで監視した。この混合物を飽和NaHCO水溶液(20mL)で失活させ、EtOAc(40mL)で抽出した。有機相をHO(20mL)、次いで塩水(15mL)で洗浄した後、乾燥させ(NaSO)、シリカの2cmのプラグに通し、10%MeOH/DCM(80mL)および10%MeOH/EtO(80mL)で徹底的に洗浄した。回転蒸発により0.53gの粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドをBiotage自動カラムクロマトグラフィにより精製してローダミンB N-エチルメチルエーテルオクタデカンアミド(8)を粘着性の紫色の固体として得た(175.9mg、53%)。1H NMR(400MHz,CDCl)δ7.75-7.58(m,2HR1,2HR2),7.57-7.50(m,1HR1,1HR2),7.40-7.30(m,1HR1,1HR2),7.30-7.23(m,2HR1,2HR2),7.00(d,J=9.6Hz,2HR1),6.90(dd,J=9.5,2.4Hz,2HR2),6.83(d,J=2.4Hz,2HR2),6.73(d,J=2.4Hz,2HR1),3.77-3.55(m,8HR1,8HR2),3.44(t,J=5.1Hz,1H),3.30(s,3H);3.14(m,2HR1),2.96(m,2HR2,3HR1,3HR2),1.36-1.29(m,12HR1,12HR2),1.29-1.13(m,32HR1,32HR2),0.93-0.82(m,6H)。NB:回転異性体はR/Rで示されている。
【0100】
化合物9の合成
【化19】
ローダミンB(0.600g、1.253mmol、3.0当量)の1,2-ジクロロエタン(60mL)部分溶液にPOCl(422μL、4.510mmol、10.8当量)を添加した。明るい紫色の混合物をN下で4時間還流し、次いで周囲温度まで放冷した。この混合物を3つの別個の100mLのRBFに分け、揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製ハロゲン化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。1つのフラスコ中の残留物を乾燥DCM(20mL)に懸濁させ、2-(オクタデシルアミノ)エタン-1-オール(157.10mg、0.501mmol、1.2当量)を一度で添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(173.5μL、1.252mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を1.5時間撹拌し、TLCで監視した。この混合物を飽和NaHCO水溶液(20mL)で失活させ、DCM(40mL)で抽出した。有機相をHO(20mL)、次いで塩水(15mL)で洗浄した後、乾燥させ(NaSO)、シリカの2cmのプラグに通し、10%MeOH/DCM(80mL)で徹底的に洗浄した。回転蒸発により0.33gの粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドをBiotage自動カラムクロマトグラフィにより精製してローダミンB N-(2-ヒドロキシエチル)オクタデカンアミド(9)を粘着性の紫色の固体として得た(144.2mg、45%)。H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ7.72-7.54(m,3H),7.42(d,J=9.5Hz,1H),7.26(s,2H),7.20-7.10(m,1H),6.90-6.83(m,1H),6.66(d,J=2.4Hz,2H),3.74-3.61(m,8H),3.61-3.50(m,2H),3.47(t,J=6.6Hz,1H),3.33(s,1H),3.21(t,J=7.4Hz,1H),3.11(qd,J=7.3,4.8Hz,1H),2.96(t,J=7.5Hz,1H),1.41(t,J=7.3Hz,2H),1.36-1.28(m,12H),1.28-1.02(m,32H),1.02-0.92(m,1H),0.91-0.82(m,3H)。
【0101】
化合物10の合成
【化20】
ローダミンB(0.600g、1.253mmol、3.0当量)の1,2-ジクロロエタン(60mL)部分溶液にPOCl(422μL、4.510mmol、10.8当量)を添加した。明るい紫色の混合物をN下で4時間還流し、次いで周囲温度まで放冷した。この混合物を3つの別個の100mLのRBFに分け、揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製ハロゲン化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。1つのフラスコ中の残留物を乾燥DCM(20mL)に懸濁させ、N-(2-メトキシエチル)イコサン-1-アミン(178.18mg、0.501mmol、1.2当量)を一度で添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(173.5μL、1.252mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を1.5時間撹拌し、TLCで監視した。この混合物を飽和NaHCO水溶液(20mL)で失活させ、DCM(40mL)で抽出した。有機相をHO(20mL)、次いで塩水(15mL)で洗浄した後、乾燥させ(NaSO)、シリカの2cmのプラグに通し、10%MeOH/DCM(80mL)および10%MeOH/EtO(80mL)で徹底的に洗浄した。回転蒸発により0.36gの粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドをBiotage自動カラムクロマトグラフィにより精製して154.1mgのローダミンB N-エチルメチルエーテルイコサンアミド(10)を粘着性の紫色の固体として得た(154.1mg、45%)。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.75-7.58(m,2HR1,2HR2),7.57-7.50(m,1HR1,1HR2),7.41-7.34(m,1HR1,1HR2),7.34-7.23(m,2HR1,2HR2),7.08(d,J=9.4Hz,2HR1),6.90(dd,J=9.5,2.4Hz,2HR2),6.85(d,J=2.4Hz,2HR2),6.74(d,J=2.4Hz,2HR1),3.74-3.57(m,8HR1,8HR2),3.45(t,J=4.9Hz,1H),3.37-3.28(s,3H);3.20-3.09(m,2HR1),3.01-2.90(m,2HR2,3HR1,3HR2),1.37-1.29(m,12HR1,12HR2),1.29-1.05(m,36HR1,36HR2),0.94-0.80(m,6H)。NB:回転異性体はR/Rで示されている。
【0102】
化合物11の合成
【化21】
ローダミンB(0.600g、1.253mmol、3.0当量)の1,2-ジクロロエタン(60mL)部分溶液を含む250mLの1N RBFにPOCl(422μL、4.510mmol、10.8当量)を添加した。明るい紫色の混合物をN下で4時間還流し、次いで周囲温度まで放冷した。この混合物を3つの別個の100mLのRBFに分け、揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製ハロゲン化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。1つのフラスコ中の残留物を乾燥DCM(17mL)に懸濁させ、DCM(3mL)に溶解したN-メチルヘンイコサン-1-アミン(163.14mg、0.501mmol、1.2当量)を一度で添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(173.5μL、1.252mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を1.5時間撹拌し、TLCで監視した。この混合物を飽和NaHCO水溶液(20mL)で失活させ、DCM(40mL)で抽出した。有機相をHO(20mL)、次いで塩水(15mL)で洗浄した後、乾燥させ(NaSO)、シリカの2cmのプラグに通し、10%MeOH/DCM(100mL)で徹底的に洗浄した。回転蒸発により粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドをBiotage自動カラムクロマトグラフィにより精製し、回転蒸発後に真空乾燥器(40℃)中で一晩乾燥させて315.1mgのローダミンB N-メチルヘンイコサンアミド(11)を粘着性の紫色の固体として得た(315.1mg、96%)。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.70-7.61(m,2HR1,2HR2),7.56-7.50(m,1HR1,1HR2),7.38-7.32(m,1HR1,1HR2),7.29(d,J=9.6Hz,2HR1),7.23(d,J=9.5Hz,2HR2)7.07(dd,J=9.6,2.4Hz,2HR1),6.92(dd,J=9.5,2.4Hz,2HR2),6.86(d,J=2.4Hz,2HR1)6.76(d,J=2.4Hz,2HR2),3.71-3.59(m,8HR1,8HR2),3.17(t,J=7.4Hz,2H),2.91(s,2H),1.33(t,J=7.1Hz,12H),1.30-1.13(m,38H),1.13-1.02(m,4H),0.99-0.91(m,1H),0.86(t,4H)。
【0103】
化合物12の合成
【化22】
ローダミンB(0.600g、1.253mmol、3.0当量)の1,2-ジクロロエタン(60mL)部分溶液を含む250mLの1N RBFにPOCl(422μL、4.510mmol、10.8当量)を添加した。明るい紫色の混合物をN下で4時間還流し、次いで周囲温度まで放冷した。この混合物を3つの別個の100mLのRBFに分け、揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製ハロゲン化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。1つのフラスコ中の残留物を乾燥DCM(17mL)に懸濁させ、DCM(3mL)に溶解したN-メチルノナデシルアミン(149.08mg、0.501mmol、1.2当量)を一度で添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(173.5μL、1.252mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を1.5時間撹拌し、TLCで監視した。この混合物を飽和NaHCO水溶液(20mL)で失活させ、DCM(40mL)で抽出した。有機相をHO(20mL)、次いで塩水(15mL)で洗浄した後、乾燥させ(NaSO)、シリカの2cmのプラグに通し、10%MeOH/DCM(100mL)で徹底的に洗浄した。回転蒸発により粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドをBiotage自動カラムクロマトグラフィにより精製し、回転蒸発後に真空乾燥器(40℃)中で一晩乾燥させて229.6mgのローダミンB N-メチルノナデシルアミド(12)を粘着性の紫色の固体として得た(229.6mg、72%)。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.70-7.61(m,2HR1,2HR2),7.58-7.50(m,1HR1,1HR2),7.38-7.33(m,1HR1,1HR2),7.29(d,J=9.6Hz,2HR1),7.23(d,J=9.4Hz,2HR2)7.06(dd,J=9.5,2.4Hz,2HR1),6.91(dd,J=9.6,2.3Hz,2HR2),6.85(d,J=2.4Hz,2HR1)6.75(d,J=2.3Hz,2HR2),3.72-3.58(m,8HR1,8HR2),3.17(t,J=7.4Hz,2H),2.91(s,2H),2.19(s,4H),1.33(t,J=7.1Hz,12H),1.29-1.14(m,34H),1.14-1.02(m,4H),1.01-0.91(m,1H),0.87(t,J=6.8Hz,4H)。
【0104】
化合物13の合成
【化23】
ローダミンB(0.600g、1.253mmol、3.0当量)の1,2-ジクロロエタン(60mL)部分溶液を含む250mLの1N RBFにPOCl(422μL、4.510mmol、10.8当量)を添加した。明るい紫色の混合物をN下で4時間還流し、次いで周囲温度まで放冷した。この混合物を3つの別個の100mLのRBFに分け、揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製ハロゲン化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。1つのフラスコ中の残留物を乾燥DCM(17mL)に懸濁させ、DCM(3mL)に溶解したN-メチルヘンイコサン-1-アミン(163.14mg、0.501mmol、1.2当量)を一度で添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(173.5μL、1.252mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を1.5時間撹拌し、TLCで監視した。この混合物を飽和NaHCO水溶液(20mL)で失活させ、DCM(40mL)で抽出した。有機相をHO(20mL)、次いで塩水(15mL)で洗浄した後、乾燥させ(NaSO)、シリカの2cmのプラグに通し、10%MeOH/DCM(100mL)で徹底的に洗浄した。回転蒸発により粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドをBiotage自動カラムクロマトグラフィにより精製し、回転蒸発後に真空乾燥器(40℃)中で一晩乾燥させて315.1mgのローダミンB N-メチルヘンイコサンアミド(13)を粘着性の紫色の固体として得た(315.1mg、96%)H NMR(400MHz,CDCl)δ7.70-7.61(m,2HR1,2HR2),7.56-7.50(m,1HR1,1HR2),7.38-7.32(m,1HR1,1HR2),7.29(d,J=9.6Hz,2HR1),7.23(d,J=9.5Hz,2HR2)7.07(dd,J=9.6,2.4Hz,2HR1),6.92(dd,J=9.5,2.4Hz,2HR2),6.86(d,J=2.4Hz,2HR1)6.76(d,J=2.4Hz,2HR2),3.71-3.59(m,8HR1,8HR2),3.17(t,J=7.4Hz,2H),2.91(s,2H),1.33(t,J=7.1Hz,12H),1.30-1.13(m,38H),1.13-1.02(m,4H),0.99-0.91(m,1H),0.86(t,4H)。NB:回転異性体はR/Rで示されている。
【0105】
化合物14の合成
【化24】
ローダミンB(0.600g、1.253mmol、3.0当量)の1,2-ジクロロエタン(60mL)部分溶液を含む250mLの1N RBFにPOCl(422μL、4.510mmol、10.8当量)を添加した。明るい紫色の混合物をN下で4時間還流し、次いで周囲温度まで放冷した。この混合物を3つの別個の100mLのRBFに分け、揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製ハロゲン化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。1つのフラスコ中の残留物を乾燥DCM(17mL)に懸濁させ、DCM(3mL)に溶解したN-プロピルオクタデカン-1-アミン(156.11mg、0.501mmol、1.2当量)を一度で添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(173.5μL、1.252mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を1.5時間撹拌し、TLCで監視した。この混合物を飽和NaHCO水溶液(20mL)で失活させ、DCM(40mL)で抽出した。有機相をHO(20mL)、次いで塩水(15mL)で洗浄した後、乾燥させ(NaSO)、シリカの2cmのプラグに通し、10%MeOH/DCM(100mL)で徹底的に洗浄した。回転蒸発により粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドをBiotage自動カラムクロマトグラフィにより精製し、回転蒸発後に真空乾燥器(40℃)中で一晩乾燥させて235.3mgのローダミンB N-プロピルオクタデシルアミド(14)を粘着性の紫色の固体として得た(235.3mg、73%)H NMR(400MHz,CDCl)δ7.69-7.61(m,2HR1,2HR2),7.55-7.48(m,1HR1,1HR2),7.39-7.32(m,1HR1,1HR2),7.28-7.22(m,2HR1,HR2)6.94(dd,J=9.5,2.4Hz,2HR1),6.89(dd,J=9.6,2.4Hz,2HR2),6.79(d,J=2.4Hz,2HR1)6.75(d,J=2.4Hz,2HR2),3.71-3.54(m,8HR1,8HR2),3.14-3.03(m,2H),2.91(t,J=7.2Hz,2H),2.59(s,1H);2.05-1.84(m,1H),1.55-1.36(m,2H),1.31(t,J=7.1Hz,11H),1.28-1.04(m,35H),1.05-0.93(m,1H),0.92-0.82(m,6H),0.79(t,J=7.3Hz,1H)。NB:回転異性体はR/Rで示されている。
【0106】
化合物15の合成
【化25】
ローダミンB(0.600g、1.253mmol、3.0当量)の1,2-ジクロロエタン(60mL)部分溶液を含む250mLの1N RBFにPOCl(422μL、4.510mmol、10.8当量)を添加した。明るい紫色の混合物をN下で4時間還流し、次いで周囲温度まで放冷した。この混合物を3つの別個の100mLのRBFに分け、揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製ハロゲン化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。1つのフラスコ中の残留物を乾燥DCM(17mL)に懸濁させ、DCM(3mL)に溶解したN-エチルオクタデカン-1-アミン(149.09mg、0.501mmol、1.2当量)を一度で添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(173.5μL、1.252mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を1.5時間撹拌し、TLCで監視した。この混合物を飽和NaHCO水溶液(20mL)で失活させ、DCM(40mL)で抽出した。有機相をHO(20mL)、次いで塩水(15mL)で洗浄した後、乾燥させ(NaSO)、シリカの2cmのプラグに通し、10%MeOH/DCM(100mL)で徹底的に洗浄した。回転蒸発により粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドをBiotage自動カラムクロマトグラフィにより精製し、回転蒸発後に真空乾燥器(40℃)中で一晩乾燥させて123.0mgのローダミンB N-エチルオクタデシルアミド(15)を粘着性の紫色の固体として得た(123.0mg、39%)。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.68-7.60(m,2HR1,2HR2),7.55-7.46(m,1HR1,1HR2),7.39-7.30(m,1HR1,1HR2),7.27-7.20(m[2xd]2HR1,2HR2),6.96(dd,J=9.5,2.4Hz,2HR1),6.88(d,J=2.4Hz,2HR2),6.78(d,J=2.4Hz,2HR1)6.72(d,J=2.3Hz,2HR2),3.68-3.53(m,8HR1,8HR2),3.23-3.03(m,3H),3.03-2.78(m,1H),1.48-1.37(m,1H),1.30(t,J=7.1Hz,12H),1.27-1.10(m,34H),1.05(h,J=6.6Hz,2H),0.96-0.87(m,4H),0.84(t,J=6.7Hz,4H),0.55(t,J=7.0Hz,1H)。NB:回転異性体はR/Rで示されている。
【0107】
化合物16の合成
【化26】
ローダミンB(0.600g、1.253mmol、3.0当量)の1,2-ジクロロエタン(60mL)部分溶液を含む250mLの1N RBFにPOCl(422μL、4.510mmol、10.8当量)を添加した。明るい紫色の混合物をN下で4時間還流し、次いで周囲温度まで放冷した。この混合物を3つの別個の100mLのRBFに分け、揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製ハロゲン化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。1つのフラスコ中の残留物を乾燥DCM(17mL)に懸濁させ、DCM(3mL)に溶解した2-(イコシルオキシ)-N-メチルエタンアミン(178.18mg、0.501mmol、1.2当量)を一度で添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(173.5μL、1.252mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を1.5時間撹拌し、TLCで監視した。この混合物を飽和NaHCO水溶液(20mL)で失活させ、DCM(40mL)で抽出した。有機相をHO(20mL)、次いで塩水(15mL)で洗浄した後、乾燥させ(NaSO)、シリカの2cmのプラグに通し、10%MeOH/DCM(100mL)で徹底的に洗浄した。回転蒸発により粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドをBiotage自動カラムクロマトグラフィにより精製し、回転蒸発後に真空乾燥器(40℃)中で一晩乾燥させて336.8mgのローダミンB N-(2-(イコシルオキシ)エチル)-N-メチルアミド(16)を粘着性の紫色の固体として得た(336.8mg、99%)。H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ7.81-7.74(m,1H),7.69-7.63(m,2H),7.63-7.57(m,1H),7.57-7.50(m,1H),7.38-7.31(m,1H),7.30-7.21(m,5H),7.02-6.93(m,3H),6.80-6.75(m,3H),3.71-3.55(m,11H),3.40-3.31(m,4H),3.22-3.11(m,4H),2.93(s,3H),2.72(s,2H),1.42-1.35(m,2H),1.31(t,J=7.1Hz,17H),1.27-1.15(m,59H),0.85(t,J=6.7Hz,5H)。
【0108】
化合物17の合成
【化27】
ローダミンB(0.600g、1.253mmol、3.0当量)の1,2-ジクロロエタン(60mL)部分溶液を含む250mLの1N RBFにPOCl(422μL、4.510mmol、10.8当量)を添加した。明るい紫色の混合物をN下で4時間還流し、次いで周囲温度まで放冷した。この混合物を3つの別個の100mLのRBFに分け、揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製ハロゲン化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。1つのフラスコ中の残留物を乾燥DCM(17mL)に懸濁させ、DCM(3mL)に溶解した(Z)-N-メチルオクタデカ-9-エン-1-アミン(141.05mg、0.501mmol、1.2当量)を一度で添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(173.5μL、1.252mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を1.5時間撹拌し、TLCで監視した。この混合物を飽和NaHCO水溶液(20mL)で失活させ、DCM(40mL)で抽出した。有機相をHO(20mL)、次いで塩水(15mL)で洗浄した後、乾燥させ(NaSO)、シリカの2cmのプラグに通し、10%MeOH/DCM(100mL)で徹底的に洗浄した。回転蒸発により0.33gの粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドをBiotage自動カラムクロマトグラフィにより精製し、回転蒸発後に真空乾燥器(40℃)中で一晩乾燥させて251.2mgのローダミンB N-メチルオレイルアミド(17)を粘着性の紫色の固体として得た(251.2mg、81%)。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.68-7.58(m,2HR1,2HR2),7.55-7.46(m,1HR1,1HR2),7.36-7.28(m,1HR1,1HR2),7.28-7.16(m,2HR1,2HR2),7.00(dd,J=9.5,2.4Hz,2HR1),6.87(d,J=2.4Hz,2HR2),6.78(d,J=2.4Hz,2HR2)6.72(d,J=2.3Hz,2HR1),5.40-5.23(m,2HR1,2HR2);3.72-3.52(m,8HR1,8HR2),3.14(t,J=7.4Hz,2H),3.01(t,J=7.7Hz,1H);2.88(s,2H),2.68(s,1H);2.04-1.85(m,4H),1.49-1.35(m,1H),1.35-1.15(m,28H),1.15-0.99(m,3H),0.98-0.87(m,2H),0.84(t,J=6.7Hz,3H)。NB:回転異性体はR/Rで示されている。
【0109】
化合物18の合成
【化28】
ローダミンB(0.600g、1.253mmol、3.0当量)の1,2-ジクロロエタン(60mL)部分溶液を含む250mLの1N RBFにPOCl(422μL、4.510mmol、10.8当量)を添加した。明るい紫色の混合物をN下で4時間還流し、次いで周囲温度まで放冷した。この混合物を3つの別個の100mLのRBFに分け、揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製ハロゲン化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。1つのフラスコ中の残留物を乾燥DCM(17mL)に懸濁させ、DCM(3mL)に溶解した(E)-N-メチルオクタデカ-9-エン-1-アミン(141.05mg、0.501mmol、1.2当量)を一度で添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(173.5μL、1.252mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を1.5時間撹拌し、TLCで監視した。この混合物を飽和NaHCO水溶液(20mL)で失活させ、DCM(40mL)で抽出した。有機相をHO(20mL)、次いで塩水(15mL)で洗浄した後、乾燥させ(NaSO)、シリカの2cmのプラグに通し、10%MeOH/DCM(100mL)で徹底的に洗浄した。回転蒸発により粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドをBiotage自動カラムクロマトグラフィにより精製し、回転蒸発後に真空乾燥器(40℃)中で一晩乾燥させて245.6mgのローダミンB N-メチルエライジルアミド(18)を粘着性の紫色の固体として得た(245.6mg、79%)。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.67-7.58(m,2HR1,2HR2),7.53-7.47(m,1HR1,1HR2),7.36-7.28(m,1HR1,1HR2),7.26-7.17(m,2HR1,2HR2),6.98(d,J=9.0,2HR1),6.86(s,2HR2),6.78(s,2HR2)6.72(d,J=2.3Hz,2HR1),5.40-5.26(m,2HR1,2HR2);3.75-3.42(m,8HR1,8HR2),3.13(t,J=7.3Hz,2H),3.00(t,J=7.7Hz,1H);2.86(s,2H),2.67(s,1H);2.02-1.83(m,4H),1.49-1.38(m,1H),1.32-1.26(m,12H),1.26-1.12(m,26H),1.12-0.98(m,3H),0.96-0.86(m,1H),0.83(t,J=6.7Hz,3H)。NB:回転異性体はR/Rで示されている。
【0110】
化合物19の合成
【化29】
ローダミンB(2.00g、4.18mmol、1.0当量)の1,2-ジクロロエタン(170mL)溶液を含む250mLの1N RBFにPOCl(1.40mL、15.0mmol、3.6当量)を添加した。明るい紫色の混合物をN下で4時間還流し、次いで周囲温度まで放冷した。揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製ハロゲン化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。その残留物を100mLのDCMに溶解し、一定分量の26.3mlを(E/Z)-N-メチルオクタデカ-2-エン-1-アミン(0.37g、1.3mmol、1.2当量)のDCM(10ml)撹拌溶液に添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(455μL、3.3mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を1.5時間撹拌し、TLCで監視した。この混合物を飽和NaHCO水溶液(20mL)で失活させ、DCM(40mL)で抽出した。有機相をHO(20mL)、次いで塩水(15mL)で洗浄した後、乾燥させ(NaSO)、シリカの2cmのプラグに通し、10%MeOH/DCM(100mL)で徹底的に洗浄した。回転蒸発により粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドをDCM/MeOH(5%DCM/MeOH~10%MeOH/DCM)の勾配溶媒系で溶離するカラムクロマトグラフィにより精製し、回転蒸発後に真空乾燥器(40℃)中で一晩乾燥させて630mgのN-(6-(ジエチルアミノ)-9-(2-(メチル(オクタデカ-2-エン-1-イル)カルバモイル)フェニル)-3H-キサンテン-3-イリデン)-N-エチルエタンアミニウムクロリド(19)を粘着性の紫色の固体として得た(630mg、81%)。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.70-7.60(m,2HR1,2HR2),7.57-7.53(m,1HR1,1HR2),7.36-7.30(m,1HR1,1HR2),7.26-7.19(m,2HR1,2HR2)),7.02(dd,J=9.6,2.2Hz,2HR1),6.95(d,J=2.5Hz,2HR2),6.82(d,J=2.5Hz,2HR2),5.62-4.85(m,2HR1,2HR2);3.75-3.42(m,10HR1,10HR2),2.84(s,2H),2.70(s,2H);2.10-1.90(m,4H),1.85-1.75(m,1H),1.5-1.00(m,38H),0.87(t,J=6.7Hz,3H)。NB:回転異性体はR/Rで示されている。
【0111】
化合物20の合成
【化30】
ローダミンB(2.00g、4.18mmol、1.0当量)の1,2-ジクロロエタン(170mL)溶液を含む250mLの1N RBFにPOCl(1.40mL、15.0mmol、3.6当量)を添加した。明るい紫色の混合物をN下で4時間還流し、次いで周囲温度まで放冷した。揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製ハロゲン化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。その残留物を100mLのDCMに溶解し、一定分量の4.5mlを(E/Z)-N-メチルノナデカ-10-エン-1-アミン(66mg、0.22mmol、1.2当量)のDCM(10ml)撹拌溶液に添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(77μL、0.56mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を1.5時間撹拌し、TLCで監視した。この混合物を飽和NaHCO水溶液(20mL)で失活させ、DCM(40mL)で抽出した。有機相をHO(20mL)、次いで塩水(15mL)で洗浄した後、乾燥させ(NaSO)、シリカの2cmのプラグに通し、10%MeOH/DCM(100mL)で徹底的に洗浄した。回転蒸発により粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドをDCM/MeOH(5%DCM/MeOH~10%MeOH/DCM)の勾配溶媒系で溶離するカラムクロマトグラフィにより精製し、回転蒸発後に真空乾燥器(40℃)中で一晩乾燥させてN-(6-(ジエチルアミノ)-9-(2-(メチル(オクタデカ-9-エン-1-イル)カルバモイル)フェニル)-3H-キサンテン-3-イリデン)-N-エチルエタンアミニウムクロリド(20)を粘着性の紫色の固体として得た(630mg、75%)。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.70-7.60(m,2HR1,2HR2),7.57-7.53(m,1HR1,1HR2),7.36-7.30(m,1HR1,1HR2),7.30-7.19(m,2HR1,2HR2)),7.08(d,J=9.6,2.2Hz,2HR1),6.92(d,J=2.5Hz,2HR2),6.80(d,J=2.5Hz,2HR2),5.40-5.30(m,2HR1,2HR2);3.75-3.42(m,8HR1,8HR2),3.17(t,J=7.3Hz,2H),3.05(t,J=7.7Hz,1H);2.90(s,2H),2.70(s,1H);2.20-1.90(m,6H),1.5-1.00(m,38H),0.96-0.86(m,2H),0.83(t,J=6.7Hz,3H)。NB:回転異性体はR/Rで示されている。
【0112】
化合物21の合成
【化31】
ローダミンB(2.00g、4.18mmol、1.0当量)の1,2-ジクロロエタン(170mL)溶液を含む250mLの1N RBFにPOCl(1.40mL、15.0mmol、3.6当量)を添加した。明るい紫色の混合物をN下で4時間還流し、次いで周囲温度まで放冷した。揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製ハロゲン化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。その残留物を100mLのDCMに溶解し、一定分量の35.8mlを(9Z,12Z)-N-メチルオクタデカ-9,12-ジエン-1-アミン(0.5g、1.79mmol、1.2当量)のDCM(10ml)撹拌溶液に添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(620μL、4.47mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を1.5時間撹拌し、TLCで監視した。この混合物を飽和NaHCO水溶液(20mL)で失活させ、DCM(40mL)で抽出した。有機相をHO(20mL)、次いで塩水(15mL)で洗浄した後、乾燥させ(NaSO)、シリカの2cmのプラグに通し、10%MeOH/DCM(100mL)で徹底的に洗浄した。回転蒸発により粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドをDCM/MeOH(5%DCM/MeOH~10%MeOH/DCM)の勾配溶媒系で溶離するカラムクロマトグラフィにより精製し、回転蒸発後に真空乾燥器(40℃)中で一晩乾燥させて780mgのローダミンB(9Z,12Z)-N-メチルオクタデカ-9,12-ジエン-1-アミド(21)を粘着性の紫色の固体として得た(780mg、74%)。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.67-7.58(m,2HR1,2HR2),7.53-7.47(m,1HR1,1HR2),7.36-7.30(m,1HR1,1HR2),7.26-7.19(m,2HR1,2HR2)),7.02(dd,J=9.6,2.2Hz,2HR1),6.87(d,J=2.5Hz,2HR2),6.84(d,J=2.5Hz,2HR2),6.74(d,J=2.3Hz,2HR1),5.40-5.26(m,2HR1,2HR2);3.75-3.42(m,8HR1,8HR2),3.13(t,J=7.3Hz,2H),3.00(t,J=7.7Hz,1H);2.86(s,2H),2.80-2.68(m,2H);2.02-1.83(m,4H),1.5-1.00(m,36H),0.96-0.86(m,1H),0.83(t,J=6.7Hz,3H)。NB:回転異性体はR/Rで示されている。
【0113】
化合物22の合成
【化32】
テトラメチルローダミンクロリド(150mg、0.355mmol、1.0当量)の1,2-ジクロロエタン(50mL)溶液を含む25mLの1N RBFにPOCl(196mg、120μL、1.28mmol、3.6当量)を添加した。明るい紫色の混合物をN下で3時間還流し、次いで周囲温度まで放冷した。揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製塩化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。塩化アシル残留物を乾燥DCM(10mL)に懸濁させ、DCM(5mL)に溶解したN-メチルオクタデシルアミン(121mg、0.426mmol、1.2当量)を塩化アシル溶液に一度で添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(107mg、147μL、1.07mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を16時間撹拌し、その時間の後に反応の進行をTLCで監視した。この混合物を飽和NaHCO水溶液(20mL)で失活させ、DCM(20mL)で抽出した。有機相をHO(20mL)、次いで塩水(20mL)で洗浄した後、乾燥させた(MgSO)。回転蒸発により213mgの粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドを、DCM中に5~15%のMeOHの溶離液勾配を用いる段階的カラム(3×15cm、次いで4×7cm、シリカゲル)を用いるフラッシュカラムクロマトグラフィで精製した。生成物を含む画分を1つにまとめ、回転蒸発により濃縮し、次いで真空乾燥器(60℃)中で一晩乾燥させてテトラメチルローダミン N-メチルオクタデシルアミド(22)を濃い緑色の固体として得た(143mg、59%)。H NMR(400MHz,MeOD)δ7.81-7.71(m,2H),7.68-7.62(m,1H),7.55-7.49(m,1H),7.32(dd,J=9.5,6.2Hz,2H),7.10(m,2H),6.98(m,2H),3.33(s,10H),3.18(t,J=7.1Hz,2H),2.85(s,2H),2.65(s,1H),1.29(d,J=2.7Hz,22H),1.06(m,3H),0.94-0.87(m,3H)。
【0114】
ヘキサフルオロローダミンBの合成
【化33】
撹拌子を含む25mLの1N RBFに空気冷却器を装着し、N-エチル-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)-3-ヒドロキシアニリン(3.11g、14.2mmol、2.0当量)および無水フタル酸(1.05g、7.10mmol、1.0当量)を充填した。この混合物を撹拌しながら(500RPM)160℃で16時間加熱して粗製ヘキサフルオロローダミンB遊離塩基を濃い紫色の固体として得た。粗製生成物をDCM中に5~20%のMeOHの溶離液勾配を用いるフラッシュカラムクロマトグラフィ(6×16cmのカラム、注記1)で精製して、9-(2-((λ-オキシダネイル)カルボニル)フェニル)-3,6-ビス(エチル(2,2,2-トリフルオロエチル)アミノ)キサンチリウムを濃い赤色の固体(2.19g)として得た。攪拌子および9-(2-((λ-オキシダネイル)カルボニル)フェニル)-3,6-ビス(エチル(2,2,2-トリフルオロエチル)アミノ)キサンチリウム(2.10g、3.81mmol、2.24当量)のEtOAc(30mL)溶液を含む250mLの1N RBFに、EtOAc(10mL)中に2.8MのHClを添加した。反応混合物を5分間撹拌し、次いで溶媒を回転蒸発により除去した。残留物をDCM(50mL)に溶解し、25mLのこの溶液を100mLの分液漏斗に移した。溶解された残留物の残りの半分を後で使用するために回転蒸発により濃縮した。DCM層をHO(3×25mL)および塩水(25mL)で洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、焼結ガラス漏斗で濾過した。次いで、濾液を回転蒸発により濃縮してヘキサフルオロローダミンB(1.00g)をガラス状の濃い赤色の固体として得た。濃縮された反応混合物の残留物のもう半分を50mLのDCMに再溶解し、25mLを100mLの分液漏斗に移した。DCM層をHO(3×25mL)および塩水(25mL)で洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、焼結ガラス漏斗で濾過した。次いで濾液を回転蒸発により濃縮してヘキサフルオロローダミンB(579mg)を濃い赤色の固体として得た。25mLのDCM中の反応混合物の残留物の残りの4分の1を100mLの分液漏斗に移した。DCM層をHO(3×25mL)および塩水(25mL)で洗浄し、次いでMgSOで乾燥し、焼結ガラス漏斗で濾過した。次いで濾液を回転蒸発により濃縮してヘキサフルオロローダミンB(613mg)を濃い赤色の固体として得た。全収率:2.19g、96%。H NMR(400MHz,CDCl)δ8.05-7.96(m,1H),7.71-7.56(m,2H),7.23-7.17(m,1H),7.09(t,J=8.1Hz,1H),6.67-6.59(m,4H),6.45(dd,J=8.9,2.7Hz,2H),6.39-6.23(m,2H),3.91-3.72(m,6H),3.56-3.35(m,6H),1.28-1.08(m,9H)。
【0115】
化合物23の合成
【化34】
ヘキサフルオロローダミンB(579mg、0.986mmol、2.0当量)の1,2-ジクロロエタン(50mL)溶液を含む250mLの1N RBFにPOCl(544mg、332μL、3.55mmol、7.2当量)を添加した。明るい紫色の混合物をN下で4時間還流し、次いで周囲温度まで放冷した。揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製塩化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。塩化アシル残留物を乾燥DCM(40mL)に懸濁させ、20mLの部分(1.0当量の塩化アシル)を得られた溶液から取り出した。DCM(5mL)に溶解したN-メチルオクタデシルアミン(168mg、0.592mmol、1.2当量)を20mLの塩化アシル溶液に一度で添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(150mg、205μL、1.48mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を16時間撹拌し、その時間の後に反応の進行をTLCで監視した。その混合物を飽和NaHCO水溶液(25mL)で失活させ、DCM(25mL)で抽出した。有機相をHO(25mL)、次いで塩水(25mL)で洗浄した後、乾燥させた(MgSO)。回転蒸発により477mgの粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドをDCM中に5~15%のMeOHの溶離液勾配を用いるフラッシュカラムクロマトグラフィ(4×20cm、シリカゲル)で精製した。生成物を含む画分を1つにまとめ、回転蒸発により濃縮し、次いで真空乾燥器(60℃)中で一晩乾燥させてヘキサフルオロローダミンB N-メチルオクタデシルアミド(23)を濃い赤色の固体として得た(242mg、58%)。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.72-7.62(m,2H),7.49-7.33(m,5H),7.22-7.16(m,1H),7.06(d,J=2.2Hz,1H),4.43(q,J=8.6Hz,4H),3.89-3.75(m,4H),3.18-3.06(m,2H),2.99(s,2H),2.68(s,1H),2.21-1.94(m,3H),2.09(s,4H),1.37(t,J=7.0Hz,6H),1.30-1.02(m,34H),0.96(d,J=6.6Hz,2H),0.91-0.82(m,4H)。
【0116】
化合物24の合成
【化35】
ヘキサフルオロローダミンB(579mg、0.986mmol、2.0当量)の1,2-ジクロロエタン(50mL)溶液を含む250mLの1N RBFにPOCl(544mg、332μL、3.55mmol、7.2当量)を添加した。明るい紫色の混合物をN下で4時間還流し、次いで周囲温度まで放冷した。揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製塩化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。塩化アシル残留物を乾燥DCM(40mL)に懸濁させ、20mLの部分(1.0当量の塩化アシル)を得られた溶液から取り出した。DCM(5mL)に溶解した(E)-N-メチルオクタデカ-9-エン-1-アミン(167mg、0.592mmol、1.2当量)を20mLの塩化アシル溶液に一度で添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(150mg、205μL、1.48mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を16時間撹拌し、その時間の後に反応の進行をTLCで監視した。その混合物を飽和NaHCO水溶液(25mL)で失活させ、DCM(25mL)で抽出した。有機相をHO(25mL)、次いで塩水(25mL)で洗浄した後、乾燥させた(MgSO)。回転蒸発により418mgの粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドをDCM中に5~15%のMeOHの溶離液勾配を用いるフラッシュカラムクロマトグラフィ(4×20cm、シリカゲル)で精製した。生成物を含む画分を1つにまとめ、回転蒸発により濃縮し、次いで真空乾燥器(60℃)中で一晩乾燥させてヘキサフルオロローダミンB N-メチルオクタデシルアミド(24)を濃い赤色の固体として得た(254mg、61%)。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.71-7.63(m,2H),7.55(dd,J=7.0,2.0Hz,1H),7.48-7.35(m,4H),7.19(d,J=8.9Hz,1H),7.05(d,J=2.3Hz,1H),5.46-5.24(m,2H),4.42(q,J=8.3,7.9Hz,4H),3.91-3.75(m,4H),3.13(t,J=7.5Hz,1H),2.99(s,2H),2.68(s,1H),2.21-1.88(m,4H),1.43-1.02(m,29H),1.00-0.92(m,1H),0.90-0.81(m,3H)。
【0117】
化合物25の合成
【化36】
ヘキサフルオロローダミンB(1.00g、1.70mmol、1.0当量)の1,2-ジクロロエタン(100mL)溶液を含む250mLの1N RBFにPOCl(938mg、572μL、6.12mmol、3.6当量)を添加した。明るい紫色の混合物をN下で4時間還流し、次いで周囲温度まで放冷した。揮発性物質を回転蒸発により除去して粗製塩化アシルを明るい紫色のフィルムとして得、それをさらに精製することなく使用した。塩化アシル残留物を乾燥DCM(80mL)に懸濁させ、DCM(20mL)に溶解した(Z)-N-メチルオクタデカ-9-エン-1-アミン(574mg、2.04mmol、1.2当量)を一度で添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでEtN(516mg、707μL、5.10mmol、3.0当量)を添加した。明るい紫色の溶液を1.5時間撹拌し、TLCで監視した。この混合物を飽和NaHCO水溶液(100mL)で失活させ、DCM(200mL)で抽出した。有機相をHO(100mL)、次いで塩水(75mL)で洗浄した後、乾燥させた(NaSO)。回転蒸発により1.78gの粗製アミドを粘着性の紫色の固体として得た。粗製アミドをDCM中に5~15%のMeOHの溶離液勾配を用いるフラッシュカラムクロマトグラフィ(4×20cm、シリカゲル)で精製した。生成物を含む画分を1つにまとめ、回転蒸発により濃縮し、次いで真空乾燥器(60℃)中で一晩乾燥させてヘキサフルオロローダミンB N-メチルオレイルアミド(25)を濃い赤色の固体として得た(478mg、33%)。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.73-7.61(m,2H),7.55(dd,J=6.6,2.3Hz,1H),7.49-7.32(m,4H),7.24-7.15(m,1H),7.05(d,J=2.4Hz,1H),5.40-5.26(m,2H),4.43(p,J=8.3Hz,3H),3.83(h,J=7.6Hz,4H),3.13(q,J=6.3,5.1Hz,2H),3.00(d,J=2.0Hz,2H),2.68(s,1H),1.98(p,J=6.8Hz,4H),1.37(t,J=7.1Hz,6H),1.31-1.23(m,15H),1.10(s,3H),0.91-0.83(m,3H)。
【0118】
実施例2:色素のスペクトルスキャン
以下の手順に従って色素1~25についてスペクトルスキャンを行った。200μLの2μMの色素をCostar96ウェル平底プレートの中にピペットで移した。このプレートをCLARIOStar分光光度計によりスキャンした。各ウェルを単一点でスキャンした。吸収スキャンでは期待される発光波長を598nmに設定し、吸収データを450~568nmから収集した。発光スペクトルでは期待される吸収波長を552nmに設定し、発光スペクトルを580~700nmから収集した。そのゲインを1000に設定した。
【0119】
ローダミンファミリーの最大吸収は564nmであると決定し、最大発光は588nmであると決定した。なお、大部分のシステムは約10~20nmの帯域幅を有する。その後の実験では、蛍光を562nm/583nm(Ex/Em)に設定した。
【0120】
実施例3:色素による細胞外小胞の標識
以下の手順に従って1~10色素による細胞外小胞(EV)の標識を行った。20μLの血小板由来のEVを、2μMの最終濃度の色素の各色素の存在下または非存在下でHPLCバイアル中でインキュベートし、色素原液は水の中で調製した。陰性対照では、当体積の希釈液をEV溶液に添加した。この試料を穏やかに混合した。その後に各試料を37℃で1時間インキュベートした。試料を4℃に設定したオートサンプラに移して貯蔵した。標識されたEVの前に非標識EVを注入するバッチテーブルを準備した。各標識されたEVの実験後にブランク注入を行って持ち越し汚染が存在しないようにした。
【0121】
15μLの各試料をCytiva社製のSuperose 6 Increaseカラム(3.2/300)に注入した。流速を0.15mL/分に設定した。緩衝液A:1×PBS(リン酸緩衝食塩水)(pH7.4、100nmで濾過済)を用いて、Shimadzu BioHPLCを定組成モードで実行した。カラム乾燥器温度は30℃に設定した。総実行期間は30分であった。2つの検出器を用いてデータを収集した。PDA(UV検出器)は190~800nmでスキャンするように設定し、FLD(蛍光検出器)のチャネルは562nm/583nm(Ex/Em)に設定した。滴定実験を行って過剰な色素が除去されているかを確認した。214nmでの吸収および583nmでの発光からボイドピークの面積を手動の積分関数を用いてLabSolutionsソフトウェアにより計算した。蛍光シグナルを正規化するために、総蛍光面積をUV214nmでの面積で割った。この比を使用して各色素をランク付けすることができ、ここではより高い比がより大きい組み込みを示す。
【0122】
それらの結果が表1にまとめられている。全ての色素1~10がEVの中に組み込まれていることが分かり、EV+色素を含む各試料がそれぞれのEV単独の試料と比較してより高いFLD/UV比を示していた。これらの結果は、色素1~10をEVの中に組み込むことができることを示している。
【表2】
【0123】
EV内への色素の組み込みをフローサイトメトリーでも確認した。図1は、Amnis ImageStreamX MKIIイメージングフローサイトメーターを用いたEV+色素2の検出を示す。この結果は、色素がEVを標識することができることを示している。
【0124】
実施例4:色素によるヒト細胞の標識
以下の手順に従って色素1~10によるヒト細胞の標識を行った。Costar96ウェル平底プレートの各ウェルに5,000個の正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF;P9以下)を播種し、完全培地(線維芽細胞増殖培地(Lonza)+2%v/vウシ胎児血清)において一晩接着させた。各色素を10mMのL-ヒスチジン、150mMのNaCl(pH6.0)を含む1mMの原液から1:50で20μMの最終濃度まで希釈した。その後に色素を完全培地にさらなる1:10の希釈で2μMの最終濃度まで添加した。その後に細胞上の培地を色素を含む新たに調製した完全培地で交換した。陰性対照では当体積の希釈溶液を細胞溶液に添加した。細胞を37℃で1時間インキュベートし、次いで1×HBSS(ハンクス液)で洗浄して遊離色素を除去した。プレートをCLARIOStar分光光度計(5×5行列モード、平均25のデータ点、各色素のために3つのウェル)を用いて画像化した。より高い蛍光は細胞内へのより多くの量の組み込みを示している。
【0125】
それらの結果が表2にまとめられている。全ての色素1~10がNHDF内に組み込まれていることが分かり、色素を含む各試料がNHDF単独と比較してより高いFLDを示した。これらの結果は、色素1~10をヒト細胞の中に組み込むことができることを示している。
【表3】
【0126】
フローサイトメトリーでもNHDF内への色素の組み込みを確認した。図2は、Amnis ImageStreamX MKIIイメージングフローサイトメーターを用いた細胞+色素2の検出を示す。この結果は、色素がNHDFなどのヒト細胞を標識することができることを示している。
【0127】
実施例5:色素で標識されたヒト細胞の画像化
以下の手順に従って細胞を画像化して色素の組み込みを評価した。細胞をNHDF(P9以下)、ヒト臍帯由来間葉系幹細胞(UC-MSC)または骨髄由来MSC(BM-MSC)と共に播種し、かつ色素2を0.2μMの最終濃度で使用したという修正以外は、実施例4の手順に従って細胞+色素2試料を調製した。画像化前に、各ウェルを1×HBSS(-)で1回洗浄した。イメージング前に100~200μLの1×HBSS(-)を各ウェルに添加して細胞が乾き切らないようにした。Texas Redフィルタが装着されたThermo Fisher EVos M5000顕微鏡上で細胞を画像化した。日常的に利用される条件は、10×Texas Red、22、146、105;20×Texas Red、12、133、64;40×Texas Red、36、79、40(倍率、光、曝露、ゲイン)であった。同じプレート上で撮影された全ての画像のために設定を一定に維持した。
【0128】
その顕微鏡画像が図3に示されており、色素2がNHDF、UC-MSCおよびBM-MSCを標識することができることを実証している(それぞれ図3(a)、(b)および(c))。これらの結果は、当該色素が様々なヒト細胞を標識することができることを示している。
【0129】
実施例6:過剰な色素を除去するための手順
以下の手順に従って過剰な色素を除去するためのカラムの能力を調べた。Zeba(商標)スピン脱塩カラム(40Kの分子量カットオフ(MWCO)、2mL、ThermoFisher Scientific社製)を使用して過剰な色素を除去した。40kDaのカットオフのZebaスピン脱塩カラムを使用するために、ThermoFisher社によって提供されている説明書に従って遠心分離を行った。色素2を40kDaのカットオフのZebaスピン脱塩カラムを通過するその能力について、3つの濃度(2μM、0.2μMおよび0.02μM)で評価した。対照ウェルはNHDF細胞のみを含んでいた。この手順の背後にある論理的根拠は、EV/細胞とのインキュベーション後にx%の色素2が「遊離している」場合、Zebaカラムを使用して「遊離」(過剰な)色素を除去することができるかを決定することであった(2μM、0.2μMおよび0.02μMの試料は100%、10%および1%の「遊離」色素2をそれぞれ表す)。CLARIOStar分光光度計(5×5行列モード、平均25のデータ点、各色素のために3つのウェル)を用いてこれらの試料を分析した。
【0130】
それらの結果が表3に示されている。これらの結果は2μMの試料では約15%の色素が通過したが、0.2μMおよび0.02μMの試料では本質的にどの色素も通過しなかったことを示している。これらの結果は、過剰な色素を好適なカラムを用いて除去することができると共に、カラムを通過する色素の量が実験結果に影響を与える可能性が低いことを示している。
【表4】
【0131】
実施例7:色素によるヒト細胞の標識および標識された細胞外小胞
以下の手順に従って色素11~18単独および色素11~18で標識されたEVによりNHDF細胞の標識を行った。Costar96ウェル平底プレートの各ウェルに5,000個の正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF;P9以下)を播種し、完全培地(線維芽細胞増殖培地(Lonza社)+2%v/vのウシ胎児血清)において一晩接着させた。各色素を1mMの最終濃度まで水で希釈した。次いで色素をベース製剤(1×PBS)または1×PBS中のPlexarisの試料(血小板由来の精製済EV)のいずれかで2μMの最終濃度まで希釈し、37℃で1時間インキュベートした。その後に色素をさらなる1:10の希釈で0.2μMの最終濃度までNHDFに添加した。細胞を37℃で1時間インキュベートし、次いで1×HBSS(ハンクス液)で洗浄して遊離色素を除去した。プレートをCLARIOStar分光光度計(5×5行列モード、平均25のデータ点、各色素のために3つのウェル)を用いて画像化した。このデータを色素2またはPlexaris+色素2のいずれかに対して正規化した。より高い蛍光は細胞内へのより多くの量の組み込みを示している。
【0132】
図4(a)はNHDF上に色素のみに関する結果を示し、図4(b)は、NHDF上にPlexaris+色素に関する結果を示す。単独またはPlexaris(PLX)を含む全ての色素11~18がNHDF内に組み込まれていることが分かり、これは色素11~18および色素11~18でタグ付けされたEVをヒト細胞の中に組み込むことができることを示している。これらの結果は、単独またはPLXを含む色素12、14,15、17および18が色素2単独およびPLX+色素2のそれぞれよりも大きい程度まで細胞に組み込まれたという指標も与える。
【0133】
実施例8:過剰な色素を除去するための手順
Zeba(商標)スピン脱塩カラム(40Kの分子量カットオフ(MWCO))を用いて色素17および18を除去することができるか否かを探求するために、色素をベース製剤(1×PBS)中に2μMの濃度で調製し、Zebaスピンカラムにより回転させた。色素の除去をPlexaris+色素2、Plexaris単独および対照として使用されるNHDF細胞単独と比較した。
【0134】
それらの結果が図5に示されており、ここではデータはPLX+色素2に対して正規化されている。これらの結果は、色素17および18では細胞染色が観察されなかったことを実証している。これらの結果は、好適なカラムを用いて過剰な色素を除去することができると共に、カラムを通過する色素の量が実験結果に影響を与える可能性が低いことを示している。
【0135】
実施例9:標識された細胞外小胞によるヒト細胞の標識
以下の手順に従って色素4、6、17、18、23、24および25で標識されたEVによるNHDF細胞の標識を行った。Costar96ウェル平底プレートの各ウェルに5,000個の正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF;P9以下)を播種し、完全培地(線維芽細胞増殖培地(Lonza社)+2%v/vウシ胎児血清)において一晩接着させた。各色素をリン酸緩衝食塩水(PBS)で1mMの最終濃度まで希釈した。次いで色素をPlexaris(血小板由来の精製済EV)中で2μMの最終濃度までPBSで希釈し、37℃で1時間インキュベートした。その後に色素をさらなる1:10の希釈で0.2μMの最終濃度までNHDFに添加した。細胞を37℃で1時間インキュベートし、次いで1×HBSS(ハンクス液)で洗浄して遊離色素を除去した。プレートをCLARIOStar分光光度計(5×5行列モード、平均25のデータ点、各色素のために3つのウェル)を用いて画像化した。このデータをPlexaris+色素2に対して正規化した。より高い蛍光は細胞内へのより多くの量の組み込みを示している。
【0136】
それらの結果が図6に示されている。Plexaris(PLX)を含む全ての色素4、6、17、18、23、24および25がNHDF内に組み込まれていることが分かり、これは色素4、6、17、18、23、24および25で標識されたEVをヒト細胞の中に組み込むことができることを示している。
【0137】
実施例10:標識された細胞外小胞を用いた細胞増殖アッセイ
色素が細胞増殖に対して影響を与えるか否かを調べるために、以下の手順に従って本発明の色素で標識されたEVを調べた。Costar96ウェル平底プレートのウェルに5,000個の正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF;P9以下)を播種し、200μLの完全培地(線維芽細胞増殖培地(Lonza社)+2%v/vウシ胎児血清)中で一晩接着させた。24時間後、ウェルの底にある接着細胞を阻害することなく完全培地を除去し、各ウェルを200μLのHBSS(ハンクス液)で1回洗浄した。200μLの基本培地(線維芽細胞増殖培地(Lonza社)+0.1%v/vウシ胎児血清)を各ウェルに添加した。標識されたEVを調製するために、エタノール中に7mMの色素2、4、6、17、18、23、24および25の原液をPBSで1:350で希釈して20μMの最終濃度を得た。その後に色素をさらなる1:10の希釈でHEK EV(1×PBS)に添加し、37℃で1時間インキュベートした。360μLのPlexarisを40μLのPBSで希釈することにより、非標識Plexarisの試料も調製した。
【0138】
16時間後に基本培地を実験ウェルから除去し、処理条件および対照のウェルごとに200μLを添加した(それぞれn=3)。このアッセイを72時間後に停止した。正規化時間を用いたデータ分析のために、デルタ細胞指標を使用した(処理後の最初の読み取りを追加した)。処理から24、36、48および72時間後にデータを分析し、それらの値を各時点についてそれぞれの基本培地に対して正規化した。GraphPad Prism(バージョン8)を使用して、多重比較(補正なしDunn検定)を用いるクラスカル・ウォリスのノンパラメトリック一元配置分散分析を行った。
【0139】
処理から24、36、48および72時間後の結果がそれぞれ図7(a)~図7(d)に示されている。これらの試料は以下のように表されている:0.1%基本培地(線維芽細胞増殖培地(Lonza社)+0.1%v/vウシ胎児血清):黒い丸;2%完全培地(線維芽細胞増殖培地(Lonza社)+2%v/vウシ胎児血清):黒い四角形;10%高い培地(線維芽細胞増殖培地(Lonza社)+10%v/vウシ胎児血清):黒い上向き三角形;0.1%基本培地中のPBS対照:黒い下向き三角形;PLX+色素23:黒い菱形;PLX+色素24:白い丸;PLX+色素25:白い四角形;PLX+色素18:白い上向き三角形;PLX+色素17:白い下向き三角形;PLX+色素4:白い菱形;PLX+色素6:アスタリスク;PLX+色素2:星;PLX単独:プラス。有意性は以下のように表されている:()は<0.05を意味し、(**)は<0.005を意味し、(***)は<0.0005を意味し、かつ非有意性は()がないことで示されている。これらの結果は、色素が72時間の期間にわたって0.1%基本培地と比較して細胞増殖に対してほとんど影響を及ぼさなかったことを示している。
【0140】
実施例11:標識された細胞外小胞を用いた免疫調節アッセイ
この研究では、本発明の色素2ならびに従来通りに使用される色素BODIPY-TR-CER、カルセインAM、CFSEおよびPKH67による間葉系間質細胞(MSC-EV)からのEV調製物の標識効率を調べた。PKH67および色素2で標識された解析対象の対比染色を抗テトラスパニン抗体を用いて行った。MSC-EV調製物の免疫調節能力に対する色素2標識の影響をマルチドナー混合リンパ球反応(mdMLR)アッセイにおいて調べた。さらにmdMLRアッセイ内で、異なる免疫細胞による色素2で標識された解析対象の取込みを評価した。
【0141】
材料および方法
先に記載されているように(Borger,Vら,2020,間葉系幹細胞/間質細胞由来の細胞外小胞の調整された単離(Scaled Isolation of Mesenchymal Stem/Stromal Cell-Derived Extracellular Vesicles).Curr Protoc Stem Cell Biol 55,e128;Kordelasら,2014,MSC由来エキソソーム:治療難治性移植片対宿主病を治療するための新規なツール(MSC-derived exosomes:a novel tool to treat therapy-refractory graft-versus-host disease.Leukemia 28,970-973;Ludwigら,2018,ポリエチレングリコールによる沈殿ならびにその後の洗浄および超遠心分離によるペレット化により、小規模および大規模に組織培養物上澄みから細胞外小胞を濃縮する(Precipitation with polyethylene glycol followed by washing and pelleting by ultracentrifugation enriches extracellular vesicles from tissue culture supernatants in small and large scales).J Extracell Vesicles 7,1528109)、ポリエチレングリコール6000沈殿およびその後の超遠心分離により、MSC馴化培地を含むヒト血小板溶解物からMSC-EVを調製した。馴化培地を48時間ごとに回収した。1mLの最終試料が約4.0×10個の細胞の調製収率の馴化培地を含むように、得られたMSC-EV調製物をNaCl-HEPES緩衝液(Sigma-Aldrich社、タウフキルヘン、ドイツ)で希釈した。
【0142】
EV調製物の特性評価
得られたEV調製物をMISEV基準に従って特性評価した(Theryら,2018,細胞外小胞2018(MISEV2018)の研究についての最小情報:国際細胞外小胞学会の基本的な考え方およびMISEV2014ガイドラインの更新(Minimal information for studies of extracellular vesicles 2018(MISEV2018):a position statement of the International Society for Extracellular Vesicles and update of the MISEV2014 guidelines).J Extracell Vesicles 7,1535750)。簡単に言うと、先に記載されているように(Ludwigら,2018)、ソフトウェアバージョン8.03.08.02を備えたZetaView PMX-120プラットフォーム(ParticleMetrix社、メーアブッシュ、ドイツ)上のNTAにより平均粒子濃度を決定した。製造業者の推奨に従って96ウェルプレートにおいてビシンコニン酸(BCA)アッセイ(Pierce社、米国イリノイ州ロックフォード)により、タンパク質濃度を決定した。先に記載されているように(Ludwigら,2018)行ったウェスタンブロットにおいて、EV特異的タンパク質(CD9、CD63、CD81およびシンテニン)の存在および不純物(カルネキシン)の不存在を確認した。
【0143】
色素によるEV標識
CFSE(Thermo Fisher Scientific社、ダルムシュタット、ドイツ)による染色は、製造業者のプロトコルに基づいていた。未結合CFSEからのシグナルを減らすために僅かな修正が必要とされた。簡単に言うと、CFSE原液を10μM CFSEの作業溶液まで希釈した。この溶液を17,000×gおよび10分間で3回遠心分離した。その後に、1×10個のMSCから得られたEVの量に対応する25μLのMSC-EV調製物を、遠心分離したCFSE溶液と共に37℃で20分間インキュベートした。この試料を分析前に1mLの最終体積まで1:20で希釈した。
【0144】
カルセインAMによるMSC-EV調製物の染色は製造業者の説明書に従った。簡単に言うと、25μLのMSC-EV調製物をカルセインAM(Thermo Fisher Scientific社)の25μLの20μM溶液と共に37℃で40分間インキュベートした。この試料を1:20で1mLの最終体積まで希釈してバックグラウンドノイズを減らし、洗浄工程の要求を回避した。
【0145】
BODIPY-TR-セラミドによるMSC-EV調製物の染色は製造業者の説明書に従った。簡単に言うと、4×10個のMSCからの精製済EVに対応する25μLのMSC-EV調製物を25μLの20μMのBODIPY-TR-セラミド(Thermo Fisher Scientific社)溶液と共に37℃で20分間インキュベートした。10mMのHEPESを含む450μLの0.9%NaCl(0.9%NaCl、メルズンゲン、B.Braun社;HEPES、Thermo Fisher Scientific社)緩衝液を添加し、遠心濃縮器(Vivaspin 500;Sartorius社、ゲッティンゲン、ドイツ)を用いてEVを洗浄した。保持液を分析前に500μLに調整した。
【0146】
PKH67によるMSC-EV調製物の染色は、EVを標識するための製造業者(Thermo Fisher Scientific社)の説明書に従った。簡単に言うと、8×10個の細胞からの精製済EVに対応する200μLの所与のMSC-EV調製物を用いて、この溶液を1mLの最終体積まで希釈液Cで調整した。6μLのPKH67色素を各チューブに添加し、連続的に30秒間混合した。室温で5分後に、2mLの10%(w/v)ウシ血清アルブミン画分5(Carl Roth社、カールスルーエ、ドイツ)を添加してこの溶液を失活させた。無血清培地すなわち100U/mLのペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン(Thermo Fisher Scientific社、ダルムシュタット、ドイツ)が添加されたDMEM低グルコース(PAN Biotech社、アイデンバッハ、ドイツ)を使用して、体積を8.5mLに調整した。1.5mLの0.971Mのスクロース溶液(Carl Roth社)をチューブの底に添加し、このチューブを振動回転子(SW40 Ti;159 Beckman Coulter、クレーフェルト、ドイツ;kファクター:137)の中で190,000×gおよび4℃で2時間遠心分離した。その上澄みを捨て、そのペレットをNa-HEPES緩衝液に再懸濁した。再懸濁後にその体積を5mLに調整し、遠心濃縮器(Vivaspin 6;Sartorius社)に移した。保持液を分析前に120μLに調整した。
【0147】
以下のプロトコルに従ってMSC-EV調製物を本発明の色素2で染色した。色素2は凍結乾燥された粉末として提供された。1mgの色素2を0.2μMの最終濃度まで1mLの緩衝液により再懸濁した。CFDA-SEと同様に、色素2溶液を17,000×gで10分間遠心分離してバックグラウンドノイズを最小まで減らした。簡単に言うと、EV標識のために25μLのMSC-EV調製物を25μLの調製済の遠心分離させた色素2溶液(0.2μM)と共に37℃で1時間インキュベートした。この試料を分析前に1mLの最終体積まで1:20で希釈した。EV取込み実験のために、色素2で標識されたMSC-EV調製物から限外濾過によりEV未結合色素2を除去した。簡単に言うと、色素2による標識後に、MSC-EVをVivaspin 500フィルタ(Sartorius社)に通して12,000×gでの10分間の遠心分離により洗浄した。保持液を標識されたEV試料として回収した。
【0148】
調製済のEVの抗体標識
色素標識後に、5μLの色素2で染色したMSC-EV試料を、20μLの10nMの抗ヒトCD9 FITC(EXBIO社、Vestec、チェコ共和国)、12nMの抗ヒトCD63 AF488(EXBIO社)または13nMの抗ヒトCD81 FITC(Beckman Coulter社)抗体溶液とそれぞれ混合した。PKH67で染色したMSC-EV試料では、先に記載されているように(Tertelら,2020b,酵素学における方法(Methods in Enzymology)の第4章:イメージングフローサイトメトリーによる個々の細胞外小胞の分析(Chapter Four-Analysis of individual extracellular vesicles by imaging flow cytometry),S.SpadaおよびL.Galluzzi編(Academic Press),pp.55-78)、10nMの抗ヒトCD9 PE(EXBIO社)、12nMの抗ヒトCD63 PE(EXBIO社)または13nMの抗ヒトCD81 PE(Beckman Coulter社)のそれぞれと共に室温で2時間インキュベートした。従ってアイソタイプコントロールを行った。色素2では、最終調製物をCD9のために500μLまで希釈し(1~100の最終希釈係数)、CD63およびCD81分析のために200μLまで希釈した(1~40の最終希釈係数)。PKH67のための調製物を全3回の分析のために100μLまで希釈した(1:20の希釈)。
【0149】
界面活性剤コントロール
標識された解析対象のEVの性質について試験するために、2%(w/v)試料体積のNP-40溶液(Calbiochem社、米国カリフォルニア州サンディエゴ)を当該試料に添加して界面活性剤コントロールを行った。
【0150】
IFCM分析
ImageStreamX Mark IIフローサイトメーター(AMNIS/Luminex社、米国ワシントン州シアトル)により、1つのウェル当たり5分間の取得時間でU底96ウェルプレート(Corning Falcon、cat353077)から、内蔵のオートサンプラを用いて全ての試料を測定した。先に記載されているように(Gorgensら,2019,生物学的標準物質としての蛍光標識された小胞を用いた単一の細胞外小胞の分析のためのイメージングフローサイトメトリーの最適化(Optimisation of imaging flow cytometry for the analysis of single extracellular vesicles by using fluorescence-tagged vesicles as biological reference material).J Extracell Vesicles 8,1587567;Tertelら,2020a,高解像度イメージングフローサイトメトリーにより抗体による細胞外小胞の標識に対するインキュベーション温度の影響を明らかにする(High-Resolution Imaging Flow Cytometry REVeals Impact of Incubation Temperature on Labelling of Extracellular Vesicles with Antibodies).Cytometry A 97,602-609)、全データを低い流速(0.3795±0.0003μL/分)および60×の倍率で、除去ビーズオプションは非有効化状態で取得した。そのデータを先に記載されているように(Tertelら,2020b)解析した。
【0151】
マルチドナー混合リンパ球反応(mdMLR)
先に記載されているように(Madelら,2020,独立したヒト間葉系間質細胞由来の細胞外小胞調製物は進行したマウスの移植片対宿主病モデルにおける症状に差次的に影響を与える(Independent human mesenchymal stromal cell-derived extracellular vesicle preparations differentially affect symptoms in an advanced murine Graft-versus-Host-Disease model).bioRxiv,2020.2012.2021.423658)、色素2標識/非標識MSC-EV調製物の免疫調節可能性をマルチドナー混合リンパ球反応アッセイ(MLR)において比較した。簡単に言うと、12人の健康なドナーからのフィコール調製した末梢血単核細胞(PBMC)を等しい割合で混合し、等分し、使用まで液体窒素の気相中に貯蔵した。解凍後に、96ウェルU底型プレート(Corning社、カイザースラウテルン、ドイツ)の1つのウェル当たり600,000個の細胞を播種し、試験されるMSC-EV調製物の存在下または非存在下のいずれかで1つのウェルあたり200μLの最終体積で10%ヒトAB血清(自社で生成)および100U/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific社)が添加されたRPMI1640培地(Thermo Fisher Scientific社)中で培養した。5日後に細胞を回収し、異なる蛍光標識された抗体の群(CD4-BV785;BioLegend社、米国カリフォルニア州サンディエゴ;CD25-PE-Cy5.5;BD Bioscience社;およびCD54-AF700;EXBIO社)で染色し、Cytoflexフローサイトメーター(CytExpert2.3ソフトウェア、Beckman-Coulter社)で分析した。活性化および非活性化CD4T細胞をそれらのCD25およびCD54発現によりそれぞれ区別した。典型的には、5μLの試験されるMSC-EV調製物をそれぞれのウェルに加えた。以下の抗体:CD8-BV650(BioLegend社)、CD14-PO(EXBIO社)、CD19-ECD(Beckman Coulter社)およびCD56-APC(BioLegend社)を使用してさらに亜集団を区別した。それらのデータの評価はKaluzaソフトウェア(バージョン2.1、Beckman Coulter社)を用いて行った。
【0152】
統計
GraphPadバージョン8.4.3を用いて統計およびグラフ表示を行った。平均値±標準偏差が提供される。
【0153】
結果
CFSE、カルセインAMおよびBODIPY-TR-セラミドはMSC-EVを標識しない
従来通りに使用されるEV標識色素、具体的にはCFSE、カルセインAM、PKH67およびBODIPY-TR-セラミドならびに本発明の色素2の正確性を評価した。様々な動物モデルにおいて広範囲に探求されてきたMSC-EV調製物は、十分に確立されたPEG-超遠心分離プロトコル(Borgerら,2020;Doeppnerら,2015,細胞外小胞は脳卒中後の神経再生を向上させ、かつ虚血後免疫抑制を防止する(Extracellular Vesicles Improve Post-Stroke Neuroregeneration and PrEVent Postischemic Immunosuppression),Stem Cells Transl Med 4,1131-1143;Drommelschmidtら,2017,間葉系幹細胞由来の細胞外小胞は炎症誘発性早期脳損傷を寛解させる(Mesenchymal stem cell-derived extracellular vesicles ameliorate inflammation-induced preterm brain injury).Brain Behav Immun 60,220-232;Gussenhovenら,2019,新生児の低酸素性虚血性脳症における血液脳関門完全性のための神経保護決定因子としてのアネキシンA1(Annexin A1 as Neuroprotective Determinant for Blood-Brain Barrier Integrity in Neonatal Hypoxic-Ischemic Encephalopathy).J Clin Med 8;Kaminskiら,2020,間葉系間質細胞由来の細胞外小胞は神経炎症を減少させ、神経細胞増殖を促進させ、かつ新生児の低酸素性虚血性脳損傷におけるオリゴデンドロサイト成熟を向上させる(Mesenchymal Stromal Cell-Derived Extracellular Vesicles Reduce Neuroinflammation,Promote Neural Cell Proliferation and Improve Oligodendrocyte Maturation in Neonatal Hypoxic-Ischemic Brain Injury).Front Cell Neurosci 14,601176;Kordelasら,2014;Ludwigら,2018;Opheldersら,2016,間葉系間質細胞由来の細胞外小胞は低酸素虚血後の胎児の脳を保護する(Mesenchymal Stromal Cell-Derived Extracellular Vesicles Protect the Fetal Brain After Hypoxia-Ischemia).Stem Cells Transl Med 5,754-763;Wangら,2020,間葉系間質細胞由来の小型細胞外小胞は白血球および具体的には好中球を調節することによる虚血性神経保護を誘導する(Mesenchymal Stromal Cell-Derived Small Extracellular Vesicles Induce Ischemic Neuroprotection by Modulating Leukocytes and Specifically Neutrophils).Stroke 51,1825-1834)によって、10%ヒトの血小板溶解物が添加された培地において生じたMSCの上澄みから得られてきた。従来の色素のいくつかのミセル形成が報告されているため、MIFlowCyt-EVの推奨(Welshら,2020,MIFlowCyt-EV:細胞外小胞フローサイトメトリー実験の標準化報告のためのフレームワーク(a framework for standardized reporting of extracellular vesicle flow cytometry experiments),Journal of Extracellular Vesicles 9,1713526)に従って、EV試料以外の標識色素の全てを最初にNaCl-HEPES緩衝液、すなわちMSC-EVが懸濁されている緩衝液に添加した。試料を製造業者の推奨に従って処理し、本発明者らが抗体標識されたMSC-EVの特性評価のために確立に成功したプロトコル(Gorgensら,2019;Tertelら,2020a;Tertelら,2020b)を用いてIFCMにより分析した。
【0154】
製造業者のプロトコルに応じて、異なる量のMSC-EV調製物が必要とされた。CFSE、カルセイン-AM、BODIPY-TR-セラミド-(BODIPY)および色素2標識のために、25μLの体積のMSC-EV調製物を使用し、PKH67のために200μLを用いた。最初に全ての記録された239個の解析対象を分析した。先行経験に基づくと、sEVは最小の側方散乱シグナル(SSC)を有する蛍光標識された解析対象として見える。色素のみの溶液を比較すると、CFSE、カルセインAMおよび色素2は解析対象を含んでいないことが観察された。対照的にBODIPYおよびPKH67溶液を分析した際には、最小の側方散乱シグナルを有する標識された解析対象の固体集団が同定された(図8)。このデータはBODIPYおよびPKH色素のミセルまたは凝集体形成を暗示している。
【0155】
その後に、同じ手順を用いて標識されたMSC-EV調製物を分析した。緩衝液のみの溶液とは対照的に、標識された解析対象の固体集団がBODIPY、PKH67および色素2標識後に、いくつかの解析対象はCFSE標識後に観察された(図8)。カルセインAMはどの検出可能な解析対象も標識することができなかった。緩衝液-BODIPY溶液対照において回収されなかったBODIPY解析対象は、典型的には小型EV(sEV)について認められるものよりも非常に高い側方散乱シグナルを示した。対照的に、PKH67または色素2で特異的に標識された解析対象の光散乱特性はsEVのものを反映している。PKH色素が標識されたEVのサイズを増加させるという公開されている報告書(Dehghaniら,2020,ナノ粒子追跡分析による細胞外小胞サイズに関するPKH標識の系統的評価(Systematic EValuation of PKH Labelling on Extracellular Vesicle Size by Nanoparticle Tracking Analysis),Scientific Reports 10,9533;Morales-Kastresanaら,2017,ナノスケールフローサイトメトリーのための細胞外小胞の標識(Labelling Extracellular Vesicles for Nanoscale Flow Cytometry).Sci Rep 7,1878)と十分に一致して、MSC-EV調製物において特異的に標識されたPKH67解析対象は色素2解析対象よりも高い側方散乱シグナルを示した(図8)。
【0156】
特異的に標識された解析対象が界面活性剤感受性(detergent-sensitive)であるか否かを決定するために、色素で標識されたMSC-EV試料をNP40で処理した。BODIPY解析対象がMSC-EV調製物において特異的に検出されたが、より高い光散乱特性を有するものならびに全てのPKH67および色素2解析対象はNP40処理後に消失した。対照的に、sEV光散乱特性を有するCFSE解析対象およびBODIPY解析対象の集団はNP40処理によってほとんど影響を受けなかった。この目的を達成するために、カルセインAMがどの特異的解析対象も標識することができないことと併せて、低い光散乱特性を有する界面活性剤不溶性CFSEまたはBODIPY解析対象はどちらも小型EVとしてみなさず、CFSE、カルセインAMおよびBODIPYを全ての後の分析から除外し、かつMSC-EV標識色素としてのPKH67および色素2の正確性に焦点を当てた。
【0157】
PKH67はCD9、CD63およびCD81sEVを有効に標識することができない
次に公知のEVマーカーとのPKH67の潜在的な共局在化を調べた。この目的を達成するために、十分に特性評価されたMSC-EV調製物を使用した。これらをPKH67単独または以下の抗体:抗CD9、抗CD81または抗CD63抗体のいずれかとの組み合わせのいずれか一方で染色した。バックグラウンドノイズを減らし、かつ同時に起こるイベント、すなわち同時に2つ以上の独立した解析対象の同時検出(大きい解析対象数での同時発生)を排除するために、最適化されたゲーティング戦略を適用した。簡単に言うと、同時の抗体シグナルを有しないPKH67チャネルにおいてシングレットとして、または同時のPKH67シグナルを有しない抗体チャネルにおいてシングレットとして認識される解析対象、および2つの個々の解析対象を提供しないシングレットとして両方のチャネルにおいて現れるイベントに焦点を当てた(図9A)。
【0158】
側方散乱をPKH67強度に対してプロットした際に、PKH67で標識された緩衝液およびMSC-EVを含む対照よりも、抗CD9抗体で対比染色されていた試料において多くの解析対象が回収された。これらの解析対象の大部分がPKH67に対して陰性であり、低いSSCシグナルを示した。これらの解析対象を含む領域をR1として定めた。抗CD9染色では、領域R1において6672±1170個の解析対象が回収された。抗体により対比染色されていないPKH67で標識されたMSC-EV試料中のR1ではどの解析対象もほとんど回収されなかった。PKH67で標識されたMSC-EV試料が抗CD63抗体(221±42個の解析対象)または抗CD81抗体(96±32個の解析対象)で対比染色されている場合には解析対象数における僅かな上昇が記録された。PKH67に対して陽性の解析対象の大部分が固体のSSCシグナルを示した。これらの解析対象を含む領域をR3として定めた。R2として定めた領域においてクラスター化したより小さい数のPKH67で標識された解析対象を低いSSCシグナルにより同定した。R1における解析対象の数とは対照的に、R2およびR3における解析対象の数は抗体標識手順によって僅かにのみ影響を受けた(図9Aおよび図9B)。抗体非標識対照内では、R2において2040±344個の解析対象、抗CD9染色後に2927±466個の解析対象、抗CD63染色後に1747±141個の解析対象、抗CD81染色後に1734±200個の解析対象が回収された。全ての抗体標識されたMSC-EV調製物において、抗体非標識対照(2046±157個の解析対象)よりも多くの解析対象がR3において認められた(抗CD9:6625±803個の解析対象;抗CD63:5915±271個の解析対象;抗CD81:5777±675個の解析対象)。3つの異なる領域内の解析対象をより詳細に分析するために、それらの抗体標識強度をPHK67標識強度に対してプロットした。これらの結果から、R1において大きい割合の解析対象が抗CD9抗体によって有効に標識されたことが明らかに確認される。R1解析対象集団は抗CD9抗体染色後よりも抗CD63および抗CD81後に非常に小さいが、これらの解析対象の割合はそれぞれCD63またはCD81として明らかに認識される(図9B)。対照的に、R2またはR3において全ての解析対象がCD63およびCD81解析対象として現れ、その大部分は抗CD9抗体によって標識することができる。R1において回収されたCD9、CD63およびCD81解析対象の頻度は、MSC-EV調製物が多数のCD9CD81および少数のCD9CD81sEV集団を含むという本発明者らの先の観察に一致している(Gorgensら,2019)。全体として、R1において大部分の抗体染色した解析対象はPKH67によって標識されないsEVであり、かつsEVの大部分はこれらの3種類の抗体のいずれかにより染色が成功した場合にのみ検出することができるとみなした。従って、このデータからMSC-sEV標識色素としてのPKH67の効率が疑問視される。
【0159】
色素2はMSC-EV調製物中のCD9、CD63およびCD81EVを有効に標識する
次に、EV標識色素としての本発明の色素2の信頼性をPKH67と比較可能な方法で調べた。この目的を達成するために、MSC-EV調製物(n=3)をそれぞれ、色素2単独または抗CD9、抗CD63もしくは抗CD81抗体との組み合わせのいずれか一方で染色した。R1~3サブゲートを定めることなく、図9Aに示すようなゲーティング戦略を適用した。PKH67標識実験とは対照的に、より低い側方散乱シグナル強度を有するより多くの解析対象がこれらの3種類の異なる抗体の非存在下であっても色素2で標識された。色素2のみまたはさらに抗CD9抗体(図10)で標識されたMSC-EV試料間では、検出された解析対象の数の明らかな上昇は観察されなかった。従ってPKH67標識とは対照的に、色素2による標識はMSC-EV調製物内のsEVの大部分を標識するのに十分である。全ての標識された解析対象が界面活性剤不溶性であることが確認された。全体としてこれらのデータにより、色素2がMSC-EV調製物中のsEVの大部分を上手く標識することが実証されている。
【0160】
色素2による染色はMSC-EV調製物の免疫調節能力に影響を与えない
次に、本発明の色素2がMSC-EV調製物の免疫調節能力に影響を与えるか否かを調べた。この目的を達成するために、マルチドナー混合リンパ球反応(mdMLR)アッセイにおいて色素2で染色したMSC-EV調製物の活性を対応する非標識MSC-EV調製物と比較した。12人の異なる健康なドナーの末梢血からの単核細胞(PBMC)をプールした際に、CD4T細胞の活性化状態によって監視することができる同種異系免疫反応が誘導された。5日間の培養後に、全てのCD4T細胞の約4分の1がT細胞活性化を示すインターロイキン-2受容体(CD25)および細胞間接着分子-1(CD54)を発現している(図11)。先に記載されているように、免疫調節能力を有するMSC-EV調製物は活性化されたCD4T細胞の含有量を有効に減少させる(Madelら,2020)。首尾一貫して、非標識MSC-EV調製物の存在下で、監視されたCD4T細胞の16%のみが活性化細胞表面マーカーを示すことが分かった(図11B)。色素2で標識されたMSC-EV調製物(n=3)の存在下で、本発明者らはCD4T細胞活性化の匹敵する減少を観察した(図11B)。注目すべきことに、色素2それ自体はCD4T細胞の活性化状態に影響を与えなかった(図11B)。従って色素2は、施用されるMSC-EV調製物の免疫調節能力に認識できるほどに影響を与えない。
【0161】
色素2で染色したMSC-EVはmdMLRアッセイの免疫細胞サブタイプにわたって異なる取込み能を示す
本発明の色素2によるEV標識がEV取り込み細胞の同定を可能にするか否かを調べるために、mdMLRアッセイ内での異なる免疫細胞の標識されたEV取込みを調べた。この目的を達成するために、限外濾過によって過剰な色素2が除去された12人の健康なドナーから得られたPBMCのプールを色素2で標識されたMSC-EV(n=3)の存在下で5日間培養した。その後に細胞を回収し、抗体を標識し、フローサイトメトリーで解析した。異なるPBMCサブタイプ内の色素2で標識された細胞の含有量を決定した。ほぼ全ての単球(CD14細胞、99%)が色素2のシグナルを示した。対照的に異なるリンパ球の割合、すなわち全てのCD4T細胞(CD4細胞)の71%、全てのCD8T細胞(CD8細胞)の34%、全てのB細胞(CD19細胞)の72%および全てのNK細胞(CD56細胞)の15%のみが色素2陽性細胞として現れた。また、IFCMを使用して色素2陽性細胞の細胞下染色を可視化した(図12)。得られた画像は、本発明者らの経験によれば細胞内に位置している完全に標識された構造を示している。従って、MSC-EV調製物内の色素2で標識されたEVは、アッセイ内で異なる含有量の免疫細胞型によって特異的に取り込まれた。
【0162】
実施例12:色素で標識された細胞外小胞の可視化
電子顕微鏡法を適用して精製済EVを可視化することができる。さらに共焦点顕微鏡法を使用して、インビトロおよび他のアッセイの間に細胞内部の標識されたEVの動きを追跡することができる。図13は、従来(図13A)および共焦点(図13B)顕微鏡法によって観察されるNHDFにおいて本発明の色素2で染色したEVを示す。本明細書に記載されているように、色素2はEVフローサイトメトリーでも使用することができる。
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図3(c)】
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9-1】
図9-2】
図10
図11
図12
図13A
図13B
【国際調査報告】