(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】クリームチーズの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23C 19/076 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
A23C19/076
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538965
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(85)【翻訳文提出日】2023-06-23
(86)【国際出願番号】 IB2022050339
(87)【国際公開番号】W WO2022157611
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508351303
【氏名又は名称】インターコンチネンタル グレート ブランズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シエラ, ホセ トロ
(72)【発明者】
【氏名】ダン, ビック フオン
【テーマコード(参考)】
4B001
【Fターム(参考)】
4B001AC05
4B001BC01
4B001BC08
4B001BC13
4B001BC99
4B001EC99
(57)【要約】
クリームチーズの製造方法クリームチーズの製造方法であって、(i)チーズカードを提供することと、(ii)理想ホエイを含むホエイタンパク質溶液を提供することと、(iii)ホエイタンパク質溶液を少なくとも70℃の温度に加熱するのに十分なキャビテーション処理にホエイタンパク質溶液を供して、熱処理されたホエイタンパク質溶液を提供することと、(iv)チーズカードと熱処理されたホエイタンパク質溶液とを混合して、混合物を形成することと、(v)混合物をテクスチャー構築熱処理に供して、クリームチーズを形成することと、を含む、方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリームチーズの製造方法であって、
(i)チーズカードを提供することと、
(ii)理想ホエイを含むホエイタンパク質溶液を提供することと、
(iii)前記ホエイタンパク質溶液を少なくとも70℃の温度に加熱するのに十分なキャビテーション処理に前記ホエイタンパク質溶液を供して、熱処理されたホエイタンパク質溶液を提供することと、
(iv)前記チーズカードと前記熱処理されたホエイタンパク質溶液とを混合して、混合物を形成することと、
(v)前記混合物をテクスチャー構築熱処理に供して、前記クリームチーズを形成することと、を含む、方法。
【請求項2】
工程(ii)の後、かつ工程(iii)の前に、
(a)前記ホエイタンパク質溶液を限外濾過に供し、好ましくは、前記限外濾過が、前記ホエイタンパク質溶液のタンパク質含量を少なくとも3倍濃縮するのに十分であり、かつ/又は、
(b)前記ホエイタンパク質溶液のpHが、乳酸菌による発酵によって、若しくはクエン酸の添加によって、4.5~5.1、好ましくは4.8~4.9のpHを得るように調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記チーズカードが、
クリーム、精密濾過された乳濃縮物、及び乳を含む、乳製品液体を提供することと、
前記乳製品液体を発酵させて、前記チーズカード及びサワーホエイを形成することと、
限外濾過によって前記サワーホエイから前記チーズカードを分離することと、を含む、方法で得られる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記乳製品液体が、
乳をクリームと脱脂乳とに分離することと、
前記脱脂乳を精密濾過して、保持液として精密濾過された乳濃縮物、及び透過液として理想ホエイを生成することと、
前記クリーム及び精密濾過された乳濃縮物を前記乳と一緒に混合して、前記乳製品液体を形成することと、によって得られる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ホエイタンパク質溶液が、前記脱脂乳を精密濾過することから得られる理想ホエイと、必要に応じて、ハードチーズ製造プロセスから得られるスイート理想ホエイと、を含む、スイートホエイを含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記理想ホエイの少なくとも一部を、蒸発、逆浸透又はナノ濾過によって濃縮して、濃縮理想ホエイを形成することを更に含む、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ホエイタンパク質溶液が、前記乳製品液体を発酵させることから得られるサワーホエイを含む、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ホエイタンパク質溶液が、前記乳製品液体を発酵させることから得られるサワーホエイと、前記脱脂乳を精密濾過することから得られる理想ホエイを含むスイートホエイと、必要に応じて、ハードチーズ製造プロセスから得られるスイートホエイと、を混合することによって形成され、好ましくは、前記理想ホエイを含むスイートホエイの少なくとも一部は、濃縮スイートホエイを形成するために予め濃縮されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ホエイタンパク質溶液が、
(i)15~30重量%の固形分を含み、かつ/又は
(ii)5.7~6.1のpHを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記理想ホエイが、前記ホエイタンパク質溶液中に10~100重量%、好ましくは15~85重量%、及び最も好ましくは20~70重量%のタンパク質を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ホエイタンパク質溶液が、
4~8重量%の固形分を含む20~40重量%の酸ホエイと、
4~8重量%の固形分を含む40~60重量%のスイートホエイと、
20~40重量%の固形分を含む10~30重量%の濃縮スイートホエイと、を混合することによって形成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ホエイタンパク質溶液が、
4~8重量%の固形分を含む20~40重量%の酸ホエイと、
20~40重量%の固形分を含む5~15重量%のスイートレンネットホエイ濃縮物と、
4~6重量%の固形分を含む30~55重量%のスイート理想ホエイと、
20~40重量%の固形分を含む5~15重量%のスイート理想ホエイ濃縮物と、を混合することによって形成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記キャビテーション処理が、前記ホエイタンパク質溶液を75℃~90℃の温度に加熱するのに十分である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記テクスチャー構築熱処理が、前記混合物を少なくとも15分間剪断しながら65℃~90℃の温度に加熱することを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記熱処理されたホエイタンパク質溶液が、1:19~2:3の熱処理されたホエイタンパク質溶液対チーズカードの重量比で前記チーズカードに添加される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記方法が、前記クリームチーズを、好ましくは前記テクスチャー構築熱処理から直接、包装に充填することを更に含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記チーズカードと前記熱処理されたホエイタンパク質溶液とを混合して混合物を形成する工程が、塩、安定剤及びガムからなる群から選択される1つ又はそれより多くの更なる成分の添加を更に含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ホエイタンパク質溶液をキャビテーション処理に供する工程から、前記クリームチーズの形成までの、連続プロセスである、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記クリームチーズが、33重量%未満の全固形分を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、クリームチーズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリームチーズの製造方法に関し、特に、理想ホエイタンパク質を含有するクリームチーズの提供に関する。
【背景技術】
【0002】
クリームチーズは、乳及びクリームなどの成分から製造されるソフトチーズであり、一般的に展延性である。それはまた、一般にマイルドな味であるが、ガーリッククリームチーズのような、特定の風味を与えるために香味料を加えることができる。クリームチーズには、シングルクリームチーズ及びダブルクリームチーズが含まれ得る。クリームチーズはまた、典型的には、全脂肪、低脂肪、及びエクストラライトなど、様々な脂肪含量で提供される。
【0003】
クリームチーズは、長年にわたって世界中の多くの場面で親しまれている。クリームチーズは、消費者が望むように多くの異なる料理分野で使用することができるが、最も一般的には、ベーグルに、サラダに、風味付けされたスプレッド、フロスティング、及びチーズケーキの成分として、並びにパスタ及びトレイベイクなどの様々な料理レシピの材料として使用される。クリームチーズを製造する様々な異なる方法が開発され、長年にわたって使用されてきた。これらの方法のほとんどは、典型的には、クリーム及び乳を特定の脂肪:タンパク質比で調整し、その後、低温殺菌、発酵、凝塊形成、撹拌、遠心分離、限外濾過又は布濾過を行って、サワーホエイ及び濃縮カードを得て、最終的に、濃縮カードをクリームとブレンドし、加熱し、必要に応じて安定剤及び/又はガムの添加を行い、クリームチーズを包装する。
【0004】
安定剤及び添加剤をクリームチーズ混合物に組み込むことができるが、消費者はより多くの天然産物及び最小量の添加剤を有するクリームチーズを好むため、クリームチーズ中に多くの添加剤を含ませことは一般に望ましくない。
【0005】
欧州特許第2649884号は、クリームチーズを製造する既知の方法を開示しており、この方法は、以下の工程、即ち、乳ブレンドを調製することと、乳ブレンドを発酵させることと、発酵させた乳ブレンドからクリームチーズを調製することと、を含み、乳ブレンドの調製においては、カゼイン強化乳画分が使用される。好ましい方法は、廃液流としての理想ホエイの製造を含む。
【0006】
様々な異なるタイプの乳製品を生産するプラントにおけるクリームチーズの製造を取り巻く課題の1つは、ハードチーズ製造プロセスからのスイートホエイタンパク質の廃液流を含む、これらのプロセスから生産されるホエイタンパク質溶液の廃液流がしばしば存在することである。これに取り組むことは、クリームチーズのような食品の製造における環境持続可能性にとって重要である。
【0007】
これらの廃液流は、他の乳製品に使用され得る貴重な成分を含有することが多く、通常、他のチーズ又は乳製品の製造における特定の時点で生成される。特に、様々なチーズ製造プロセスは、スイートホエイ(理想ホエイ及び/又は非理想ホエイを含む)、及び/又はサワーホエイの副流をもたらす。これらは、チーズ又は他の乳製品製造プロセスの異なる段階で、様々な量及び濃度で製造することができる。
【0008】
ホエイタンパク質溶液の1つ又はそれより多くの副流が生成される場合、それらは、一般に、短時間のうちに、好ましくはそれらが生成されたときに、使用される必要がある。ホエイタンパク質溶液が迅速に使用されない場合、低温で溶液を貯蔵するために大きな貯蔵タンクが必要となるか、又は溶液を廃棄しなければならず、これは無駄である。更に、ホエイタンパク質溶液の廃液流を使用することは、これらの成分が、成分を購入し、それらをプラントに輸送する代替法よりも明らかにはるかに低いコストで得られるため、製造業者のコストを低減することができる。
【0009】
チーズの製造方法において、ホエイタンパク質及び/又はホエイタンパク質濃縮物を使用することは、当該技術分野において一般に知られている。欧州特許第2649884号は、チーズ製造におけるホエイタンパク質濃縮物の使用を開示している。
【0010】
クリームチーズを製造するための好ましいプロセスにおいて、クリームチーズ混合物は、クリームチーズの製造中にクリーミーなテクスチャーを構築するために使用される、テクスチャー構築熱処理工程に供される。欧州特許第2649884号には、混合物を例えば65~90℃の温度で加熱及び剪断することによって行われるテクスチャー化工程が記載されている。このテクスチャー化工程は、チーズカードとホエイタンパク質濃縮物との混合物に対して行われる。テクスチャー構築工程の前に、ホエイタンパク質添加剤を熱処理してホエイタンパク質を変性させる。この熱処理工程は、一般に、任意の従来の加熱手段を用いて行われてきた。熱処理工程は、欧州特許第2649884号においてS6-1又はS6-2として記載されており、通常、同時の均質化とともに行われる。
【0011】
様々な加熱方法が当該技術分野で知られている。これらには、バッチ加熱、短時間加熱、又は高温加熱による低温殺菌法が含まれる。オートクレーブも乳の加熱に使用することができる。加熱と均質化を組み合わせたプロセスは、高圧下で小さな開口部を通して混合物を押し込み、同時に所定の温度まで加熱することを含む。これらの方法は、クリームチーズ製造方法において確実に使用されてきた。
【0012】
キャビテーションは、熱処理を提供する方法として当該技術分野で一般に知られている。キャビテーションのプロセスは、一般に、溶液の加熱、混合、及び微粒子化を含み、乳製品含有混合物の代替的な加熱方法として知られている。米国特許出願公開第2018/0249733号は、クリーミーで濃厚なテクスチャーを有する微粒子化された理想ホエイタンパク質調製物を製造するために、キャビテータを用いて理想ホエイタンパク質を微粒子化するプロセスを開示している。特に、微粒子化された理想ホエイタンパク質調製物は、チーズ、ヨーグルト及びクワルクなどの乳又は乳製品ベースの製品において使用される。
【0013】
上記のとおり、理想ホエイタンパク質を含有するホエイタンパク質溶液の使用を可能にするクリームチーズの製造方法を提供することが望ましい。これは、過剰な廃液流の問題に対処するものである。したがって、理想ホエイタンパク質溶液を使用して、望ましいテクスチャー、味及び口当たりを有するチーズを形成することができるクリームチーズの製造方法を提供することが望ましい。
したがって、理想ホエイタンパク質を使用しつつ従来のテクスチャーを有するクリームチーズを提供すること、並びに/又は従来技術に伴う少なくともいくつかの問題に取り組むこと、若しくは少なくとも、商業的に実用化可能な代替物を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許第2649884号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0249733号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の態様によれば、クリームチーズの製造方法であって、
(i)理想ホエイを含むホエイタンパク質溶液を提供することと、
(ii)チーズカードを提供することと、
(iii)ホエイタンパク質溶液を少なくとも70℃の温度に加熱するのに十分なキャビテーション処理にホエイタンパク質溶液を供して、熱処理されたホエイタンパク質溶液を提供することと、
(iv)チーズカードと熱処理されたホエイタンパク質溶液とを混合して、混合物を形成することと、
(v)混合物をテクスチャー構築熱処理に供して、クリームチーズを形成することと、を含む、方法が提供される。
【0016】
ここで、本発明を更に説明する。以下の節では、本発明の異なる態様がより詳細に定義される。そのように定義された各態様は、それとは異なる定義が明示されていない限り、他の1つ又は複数の態様と組み合わせることができる。具体的には、好ましい又は有利なものとして示されているいずれの特徴も、好ましい又は有利なものとして示されている他のいずれの1つ又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【0017】
驚くべきことに、本発明者らは、欧州特許第1698231(B1)号におけるような従来の加熱方法によって加熱された理想ホエイを含有する熱処理ホエイタンパク質溶液を提供する場合、テクスチャー化工程が機能せず、クリームチーズが所望のクリーミーなテクスチャー及び口当たりを構築しないことを見出した。即ち、理想ホエイを含む従来の熱処理されたホエイタンパク質濃縮物(whey protein concentrate、WPC)は、欧州特許第2649884号に開示されるようなテクスチャー構築の方法において使用することができない。
【0018】
これらの溶液を混合物に添加すると、適切なテクスチャー、味及び口当たりではないクリームチーズが得られる。むしろ、製造されたクリームチーズは水が多く、所望のテクスチャーを欠いている。これらのクリームチーズの破損は、スティーブンス硬度試験(低温)を使用して測定することができ、そこでは、クリームチーズは、約100g、確実に少なくとも80gの値を有するべきである。従来の熱処理された理想ホエイ添加剤を用いて調製されたクリームチーズは、40gの値を示すのがやっとである。低温スティーブンス硬度試験は、テクスチャーアナライザーを使用して実施され、コニカル45°プローブでクリームチーズ製品を穿刺するのに必要なピーク力を測定することを含む。
【0019】
これは、理想ホエイタンパク質を有するか又はそれからなる大量のホエイタンパク質溶液副産物が存在するため、問題があることが証明されている。したがって、所望のテクスチャー及び口当たりを有するクリームチーズを開発するために、クリームチーズの製造において理想ホエイを含有するホエイタンパク質溶液を使用できることが望ましい。
【0020】
しかしながら、本出願人は、予想外にも、ホエイタンパク質溶液を少なくとも70℃の温度に加熱するのに十分なキャビテーション処理の使用によって、理想ホエイタンパク質がクリームチーズ中の成分として使用できることを見出した。特に、理想ホエイを含有するホエイタンパク質溶液を加熱するためのキャビテーション工程を含めることで、予想外にも、クリーム状のテクスチャーを発達及び構築するためのテクスチャー構築熱処理工程における使用に適合する熱処理ホエイタンパク質溶液が得られることが見出された。これは、理想ホエイの浪費を低減し、プロセス効率を改善させる。
【0021】
本発明は、クリームチーズの製造方法に関する。上記のように、クリームチーズは、乳及びクリームを含む成分から作製されるソフトチーズであり、一般的に展延性であり、マイルドな味である。
【0022】
クリームチーズは、様々な脂肪含有量で販売することができる。例えば、広く利用可能なクリームチーズの範囲は、全脂肪、低脂肪、及びエクストラライトクリームチーズである。よりライトなクリームチーズは、それらの望ましいクリーミーなテクスチャーを保持するために、より多くのタンパク質、ガム及び安定剤の添加に依存する傾向がある。
【0023】
この方法は、理想ホエイを含むホエイタンパク質溶液を提供することを含む。ホエイは、乳製品液体を凝固させ、次いでそれを水切りした後に残る液体である。凝固は、通常、レンネット又は乳酸を乳製品液体に添加して、カゼインを凝固させ、塊に分離させることによって行われる。ホエイタンパク質は通常、チーズ又はカゼインの製造の副産物として生成され、いくつかの商業的用途を有する。クリームチーズの製造において、凝固は、乳酸を発生させ、乳溶液を自然に凝固する培養物を使用して行われる。クリームチーズの場合、乳製品液体は典型的にはタンパク質強化クリームであり、タンパク質は乳濃縮物として提供される。
【0024】
様々なタイプのホエイタンパク質溶液が存在し、これには、サワーホエイ及びスイートホエイが含まれる。スイートホエイは、チェダーチーズ及びスイスチーズのようなレンネットタイプのハードチーズの製造から生じる副産物である。これは、「レンネットホエイ」としても知られている。乳を凝固させるためにレンネットが添加され、得られる液体溶液は、その製造が酸性化を伴わないか、又は非常に穏やかな酸性化のみを伴うことにより、中性に近いpH(約6.5、例えば6.3~6.8)を有することから、スイートホエイ溶液という。レンネットを用いて製造されたスイートホエイでは、ホエイタンパク質はいくらか変性され得る。
【0025】
サワーホエイ(酸性ホエイとしても知られる)は、カッテージチーズ又は水切りヨーグルトなどの酸性タイプの乳製品の製造における副産物である。乳酸を凝固させるために乳酸が使用されるため、酸性ホエイは酸性であり、したがって、ホエイタンパク質溶液のpHは、酸性/サワーホエイ(例えば、約4.7、例えば、4.4~4.9)を生じるように低下する。酸性ホエイにおいて、ホエイタンパク質はいくらか変性され得る。
【0026】
理想ホエイは、未変性又は「天然」ホエイタンパク質を含有するホエイである。これは一般に、適切な大きさの膜で乳を濾過することによって得られる。理想ホエイは、酸性化されていないため、約6.5、例えば6.3~6.8の、中性に近いpHも有することから、スイートホエイであるとも考えることができる。したがって、理想ホエイは、そのpHのためにスイートホエイとして分類され得、したがって、スイートホエイは、理想ホエイ及び/又は理想的でないホエイの混合物を含有し得る。乳を濾過することから得られる理想ホエイは、体細胞、乳酸菌、バクテリオファージ、カゼインマクロペプチドのようなレンネットのレムナントや、チーズ製造プロセスから得られるスイートホエイ中に存在し得るチーズ微粉を含まない。
【0027】
本発明の方法において使用されるホエイタンパク質溶液は、いずれも様々な量及び濃度で、理想ホエイを含有し、また、サワーホエイ及びスイートホエイも含有することができる。ホエイタンパク質溶液を、以下により詳細に考察する。
【0028】
好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、室温で、より好ましくは10℃以下の温度で提供される。これは、ホエイタンパク質溶液の安定性にとって最適である。
【0029】
一実施形態では、ホエイタンパク質溶液は、スイートホエイ、及び濃縮スイートホエイを含む。スイートホエイは、理想ホエイを含む。別のより好ましい実施形態では、ホエイタンパク質溶液は、スイートホエイ、濃縮スイートホエイ、及びサワーホエイを含む。ホエイタンパク質溶液中にスイートホエイ及び濃縮スイートホエイのみが存在する場合(例えば、プラント中の副産物として産生された利用可能なサワーホエイが存在しない場合)、ホエイタンパク質溶液は、好ましくは2~15重量%の濃縮スイートホエイ及び85~98重量%のスイートホエイ、より好ましくは5~10重量%の濃縮スイートホエイ及び90~95重量%のスイートホエイ、最も好ましくは約7重量%の濃縮スイートホエイ及び約93重量%のスイートホエイから構成される。
【0030】
好ましくは、理想ホエイは乳を精密濾過することによって得られる。乳、特に脱脂乳の精密濾過は、理想ホエイを含有する精密濾過透過物をもたらす。この方法は、理想ホエイを製造する最も簡単な方法である。保持される物質は、クリーム成分と組み合わせてクリームチーズ製造に使用されるカゼインリッチタンパク質濃縮物である。
【0031】
この方法は、チーズカードを提供する第1の工程を含む。クリームチーズの製造に適したチーズカードは、当該技術分野で周知である。好ましくは、チーズカードは、クリーム、乳(生又は低温殺菌及び均質化された加工乳のいずれか)、及び精密濾過された乳濃縮物を含む乳製品液体を提供することと、乳製品液体を発酵させて、チーズカード及び酸性ホエイを形成することと、限外濾過によってチーズカードを酸性ホエイから分離することと、を含む、方法で得られる。これは、クリームチーズ製造に使用するための所望のカードを製造するための最も効率的な方法である。より好ましくは、発酵は中温発酵による。必要に応じて、乳製品液体はまた、発酵工程の前に低温殺菌され、均質化され得る。
【0032】
乳製品液体とは、乳又はその成分に由来する液体を意味する。特に、乳製品液体は、乳及び/又はクリーム成分を含む画分を含有する。好ましくは、乳製品液体は主にクリームを含み、必要に応じて、乳タンパク質濃縮物を含む。
【0033】
好ましくは、乳製品液体は、乳をクリームと脱脂乳とに分離することと、
脱脂乳を精密濾過して、保持液として精密濾過された乳濃縮物、及び透過液としてスイート理想ホエイを生成することと、クリーム及び精密濾過された乳濃縮物を乳と一緒に混合して、乳製品液体を形成させることと、によって得られる。この方法は、クリームチーズ製造のための所望の特性を有する乳製品液体を製造する信頼できる方法である。このプロセスは、チーズカードを作製するのに必要な精密濾過された乳濃縮物を提供するだけでなく、本発明において使用することができる理想ホエイの供給源も提供する。このようなホエイカードは廃棄する必要があるが、これは本明細書に記載の開発のために役立つであろう。
【0034】
好ましくは、次いでホエイタンパク質溶液を限外濾過に供し、より好ましくは、限外濾過は、ホエイタンパク質溶液のタンパク質含量を少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍、より好ましくは少なくとも6倍、又は少なくとも8倍、更により好ましくは最大15倍、例えば8~12倍に濃縮するのに十分である。ホエイタンパク質溶液を濃縮するこの工程は、溶液中の含水量を減少させ、その後のテクスチャー構築熱処理工程(v)を実施するのをより容易かつより効率的にする。
【0035】
ホエイタンパク質溶液を限外濾過に供するこの工程において、総固体含量は、好ましくは、ホエイタンパク質溶液の重量に対して、典型的には2~10重量%の総固体含量の量から20~50重量%の総固体含量の量に増加する。更に、この工程はまた、好ましくは、水溶液中に可溶性であるラクトース及びミネラルを除去する。
【0036】
好ましくは、次いで、濃縮ホエイタンパク質溶液のpHは、4.5~5.1、より好ましくは4.8~4.9の最終pHとなるよう、キャビテーション工程の前に調整される。濃縮ホエイタンパク質溶液のpHの調整は、クエン酸の添加又は乳酸菌による発酵のいずれかによって行うことができるが、好ましくはクエン酸の添加によって行われる。スイートホエイ及び濃縮スイートホエイのみを使用してホエイタンパク質溶液を調製する場合、クエン酸を使用してpHを所望の値に低下させることが好ましい。しかしながら、ホエイタンパク質溶液がスイートホエイ、濃縮スイートホエイ、及びサワーホエイを使用して構成される場合、サワーホエイはpHを低下させるように作用し、必要とされるクエン酸は、あるとしても、より少ない。
【0037】
本方法は、理想ホエイを含有する濃縮ホエイタンパク質溶液を、ホエイタンパク質溶液を少なくとも70℃の温度に加熱するのに十分なキャビテーション処理に供して、熱処理ホエイタンパク質溶液を提供することを更に含む。キャビテーション工程は、ホエイタンパク質溶液を特定の方法で熱処理する際に特に有利であり、これにより、ホエイタンパク質溶液は、その後のテクスチャー構築熱処理工程(v)において、(他の成分とともに)クリーム状のテクスチャーを発達させることができる。キャビテーションは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2018/024973号の教示に従って実施することができる。
【0038】
好ましくは、キャビテーション処理は、ホエイタンパク質溶液を75℃~90℃、好ましくは80~85℃の温度に加熱するのに十分である。これは、ホエイタンパク質溶液がテクスチャー構築熱処理工程(v)と適合するために加熱されるべき理想的な温度である。
【0039】
本方法は、チーズカードと熱処理ホエイタンパク質溶液とを混合して混合物を形成することを更に含む。混合は、スターラー、シェーカー、回転装置、又は成分を混合するための他の一般的に使用される手段を用いて行われ得る。好ましくは、チーズカードと熱処理ホエイタンパク質溶液との混合は、均質化によって行われる。
【0040】
好ましくは、熱処理ホエイタンパク質溶液は、1:19~2:3、好ましくは1:15~1:5の熱処理ホエイタンパク質溶液対チーズカードの重量比で、チーズカードに添加される。この比は、望ましいクリーミーなテクスチャーを有するクリームチーズを得るために、その後のテクスチャー構築熱処理工程に最適な比である。
【0041】
本方法は、テクスチャー構築熱処理に供して、クリームチーズを形成することを更に含む。かかる方法は、好ましくは、混合物を少なくとも15分間剪断しながら65~90℃の温度に加熱することを含む。かかるプロセスは、欧州特許第2649884号により詳細に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、脱脂乳を精密濾過することから得られる理想ホエイと、必要に応じて、ハードチーズ製造プロセスから得られる理想ホエイと、を含む、スイートホエイを含む。脱脂乳の精密濾過中に形成された(即ち、乳製品液体を作製するプロセスからの)理想ホエイを使用することは、副産物を処分するのではなく、副産物の理想ホエイを使用する有益な方法である。更に、ハードチーズ製造プロセスからの理想ホエイを使用することはまた、ハードチーズの製造中に廃棄される副生成物の使用を有利に可能にする。
【0043】
好ましくは、本方法は、理想ホエイの少なくとも一部を濃縮して、濃縮理想ホエイを形成することを更に含む。これは、キャビテーション工程の前に固体濃度を増加させるのに重要であり、キャビテーションがホエイタンパク質溶液を十分に加熱することを可能にするのを助ける。好ましくは、キャビテーション前の固形分レベルは、15~25重量%、好ましくは17~23重量%であり、そのうちの25~75重量%はホエイタンパク質であり、好ましくは40~60%、好ましくは約50%である。好ましくは、総タンパク質含量は7~20重量%、より好ましくは10~15重量%である。
【0044】
好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、乳製品液体、好ましくはチーズカードを提供するために使用される乳製液を発酵させることから得られるサワーホエイを含む。乳製品液体を発酵させる工程(チーズカード及び酸性ホエイを生成するため)からの酸性ホエイを使用することは、この副産物が廃棄されるのではなくクリームチーズ製造において使用されることを可能にするため、有益である。
【0045】
好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、乳製品液体を発酵させることから得られるサワーホエイと、脱脂乳を精密濾過させることから得られる理想ホエイを含むスイートホエイと、必要に応じて、ハードチーズ製造プロセスから得られるスイートホエイと、を混合することによって形成される。乳製品液体を発酵させる工程からのサワーホエイ、及び脱脂乳を精密濾過する工程からのスイートホエイを使用することは、有益には、これらの廃棄流が再使用されることを可能にする。同様に、ハードチーズ製造プロセスから得られるスイートホエイを使用することにより、大量に生成され得、さもなければ低温で保存するか又は廃棄する必要があるスイートホエイの使用が可能になる。酸性ホエイの使用はまた、有益な風味ノートを付加し、製品pHを調整するために使用することができる。
【0046】
好ましくは、理想ホエイを含むスイートホエイの少なくとも一部は、濃縮スイートホエイを形成するために予備濃縮されている。スイートホエイを濃縮することは、より濃縮された溶液がテクスチャー構築及び熱処理プロセスをより容易かつ迅速に行うことを可能にするため、有益である。これはまた、最終製品中のタンパク質レベルを構築するのに役立つ。
【0047】
好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、キャビテーション工程の前に、15~30重量%、好ましくは18~27%、より好ましくは20~25重量%の固形分を含む。これは、所望のクリーミーなテクスチャーを有するクリームチーズを得るためのホエイタンパク質溶液の最適な固形分含量である。ホエイの固体含量は、その起源が何であれ、蒸発、逆浸透又はナノ濾過を介して水を除去することによって増加させることができる。これらの技術は広く知られており、乳業において適用されている。
【0048】
好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、最初にスイートホエイ、濃縮スイートホエイ及びサワーホエイから形成されるとき、5.7~6.1のpHを有する。これは、ミネラルを所望の程度まで可溶化するためのホエイタンパク質溶液の最適pH範囲である。これらが除去されない場合、テクスチャー化工程は機能しない可能性が高い。これは、値がそれらの天然値の間にあるため、サワーホエイとスイートホエイとのブレンドを提供することによって達成することができる。pHを更に調整するために、又は酸性ホエイが存在しない場合、クエン酸を添加することができる。
【0049】
キャビテーション工程(iii)に供される前のホエイタンパク質溶液の好ましいpHは、4.6~5.0であり、更により好ましくは約4.8である。好ましくは、pHはクエン酸の添加によって調整される。
【0050】
好ましくは、理想ホエイは、ホエイタンパク質溶液中に10~100重量%、好ましくは15~85重量%、最も好ましくは20~70重量%のタンパク質を含む。総タンパク質含量の10~100重量%が理想ホエイタンパク質であるということは、どの程度のホエイタンパク質副生成物の相対比率を生成させるか、またその時点で利用可能であるか、に応じて、溶液に組み込ませる理想ホエイの量の範囲を適宜調整できるということである。
【0051】
したがって、本方法は、その時点での様々なタイプのホエイタンパク質溶液の相対存在量に適合するように、様々な組成構成を有するホエイタンパク質溶液を使用するように適合させることができる。理想ホエイタンパク質の量は、テクスチャー化工程をより迅速かつより容易に行うことができるために、全ホエイタンパク質の20~70重量%であることが好ましい。好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、
4~8重量%の固形分(好ましくは約6重量%)を含む20~40重量%の酸ホエイと、
4~8重量%の固形分(好ましくは約6重量%)を含む40~60重量%のスイートホエイと、
20~40重量%の固体(好ましくは約30重量%)を含む10~30重量%の濃縮スイートホエイと、を混合することによって形成される。
【0052】
より好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、
4~8重量%の固形分(好ましくは約6重量%)を含む20~35重量%の酸ホエイと、
4~8重量%の固形分(好ましくは約6重量%)を含む45~60重量%のスイートホエイと、
20~40重量%の固体(好ましくは約30重量%)を含む15~25重量%の濃縮スイートホエイと、を混合することによって形成される。
【0053】
更により好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、
4~8重量%の固形分(好ましくは約6重量%)を含む約20~25重量%の酸ホエイと、
4~8重量%の固形分(好ましくは約6重量%)を含む約54~59重量%のスイートホエイと、
20~40重量%の固形分(好ましくは約20重量%)を含む約20~25重量%の濃縮スイートホエイと、を混合することによって形成される。
【0054】
酸性ホエイ、スイートホエイ及び濃縮スイートホエイのこの特定の混合物は、所望のテクスチャー及び味を有するクリームチーズを形成するためのキャビテーション処理及びその後のテクスチャー構築熱処理における使用に最適な固形分及び含有量を有するホエイタンパク質溶液を提供する。
【0055】
また、ホエイタンパク質溶液は、4つの流、即ち、
4~8重量%の固形分を含む20~40重量%の酸ホエイと、
20~40重量%の固形分を含む5~15重量%のスイートレンネットホエイ濃縮物と、
4~6重量%の固形分を含む30~55重量%のスイート理想ホエイと、
20~40重量%の固形分を含む5~15重量%のスイート理想ホエイ濃縮物と、を混合することによっても形成され得る。
【0056】
より好ましくは、ホエイタンパク質溶液は、
4~8重量%の固形分を含む25~35重量%の酸ホエイと、
20~40重量%の固形分を含む8~12重量%のスイートレンネットホエイ濃縮物と、
4~6重量%の固形分を含む46~52重量%のスイート理想ホエイと、
20~40重量%の固形分を含む8~12重量%のスイート理想ホエイ濃縮物と、を混合することによって形成される。
【0057】
これらの4つの流の使用は、そうでなければ廃棄物である種々のホエイタンパク質溶液が、クリームチーズの製造において首尾よく使用されることを可能にする。
【0058】
好ましくは、本方法は、クリームチーズを、好ましくはテクスチャー構築熱処理から直接、包装に充填することを更に含む。テクスチャー構築熱処理から直接包装にクリームチーズを充填することは、液体クリームチーズ(即ち、まだ温かいために液体である)が、包装されるためにスライスに切断される必要があるのではなく、包装に容易に注がれ、包装内で固まることを可能にし、これはより効率的である。次いで、クリームチーズは、好ましくは、官能評価の前に、少なくとも12時間、冷却チャンバ内で冷却される。次いで、クリームチーズは、数日又は数週間以内に販売のために輸送される。
【0059】
好ましくは、チーズカードと熱処理ホエイタンパク質溶液とを混合して混合物を形成する工程は、乳固形分、塩、安定剤及びガムからなる群から選択される1つ又はそれより多くの更なる成分の添加を更に含む。これらの更なる成分は、クリームチーズにより長い貯蔵寿命を与えるのを助けることができる。
【0060】
好ましくは、本方法は、ホエイタンパク質溶液をキャビテーション処理に供する工程からクリームチーズの形成までの連続プロセスである。工程(iii)~(v)を連続プロセスとすることは、装置を最大効率で使用することができ、工程間のかなりの期間にわたって混合物を保持するための貯蔵媒体を必要としないため、有益である。
【0061】
更なる態様によれば、本明細書に記載の方法によって得ることができる、クリームチーズが提供される。この方法によって得られたクリームチーズは独特であり、他のクリームチーズと区別することができる。特に、キャビテーションプロセスのために顕微鏡で検査したときにより小さい粒径を有し、テクスチャー構築工程の結果としてより均質なテクスチャーを有する。この特徴の組み合わせは、理想ホエイタンパク質を含有する改善されたクリームチーズ製品を提供する。
【0062】
好ましくは、クリームチーズは33重量%未満の全固形分を含む。本方法は、有利なことに、クリームチーズが33重量%未満の全固形分で製造されることを可能にし、一方で、クリーミーな口当たり及びテクスチャーを依然として有し、これは、より多くのクリームチーズが所与の量の固形分当たりで製造されることを可能にする。この範囲は、テクスチャー形成工程で得られたクリームチーズを、このような工程で製造されていないクリームチーズと区別する。例えば、全脂肪クリームチーズは、テクスチャー構築工程を用いて作製された場合、32.5重量%の全固形分を有し得るが、テクスチャー構築工程を用いない場合、約37重量%を有し得る。ライトクリームチーズは、テクスチャー構築工程を用いて作製された場合、26重量%の全固形分を有し得るが、テクスチャー構築工程を用いない場合、約35重量%を有し得る。
【0063】
好ましくは、クリームチーズは、63重量%未満の脂肪含量を有する全脂肪クリームチーズである。
【0064】
好ましくは、本方法が、ホエイタンパク質溶液を限外濾過に供する追加の工程(工程(ii)と工程(iii)との間)を含む場合、より好ましくは、限外濾過がホエイタンパク質溶液のタンパク質含量を少なくとも3倍濃縮するのに十分である場合、これによりホエイタンパク質濃縮物が得られる。ホエイタンパク質濃縮物は20~25重量%の固形分を有し、その50~60重量%がホエイタンパク質である。
【0065】
次いで、得られたホエイタンパク質濃縮物を異なる量で最終クリームチーズに組み込んで、異なる脂肪含量を有するクリームチーズを得ることができる。特に、クリームチーズの6~8重量%のホエイタンパク質濃縮物を有する全脂肪クリームチーズを製造することができる。ライトクリームチーズ製品は、クリームチーズの重量に対して10~14重量%のホエイタンパク質濃縮物を有し、エクストラライトクリームチーズ製品は、クリームチーズ製品の重量に対して35~40重量%のホエイタンパク質濃縮物を有する。より多くのホエイタンパク質濃縮物をクリームチーズに組み込むことにより、最終製品中に存在する脂肪をより少なくすることができる一方で、テクスチャー構築熱処理工程においてクリーミーなテクスチャーを依然として発達させることができる。
【0066】
一実施形態によれば、製品は全脂肪クリームチーズであり、製品の6~8重量%がWPCである。WPCは23重量%固体であり、その50~60重量%がタンパク質である。別の実施形態によれば、製品はライトクリームチーズであり、製品の10~14重量%がWPCである。WPCは23重量%固体であり、その50~60重量%がタンパク質である。別の実施形態によれば、クリームチーズはエクストラライトクリームチーズであり、製品の35~40重量%がWPCである。WPCは23重量%固体であり、その50~60重量%がタンパク質である。
ここで、本発明を、以下の非限定的な図に関連して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】先行技術によるクリームチーズの製造方法のフローチャートを示す。
【
図2】本明細書に開示する方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1に関して、生乳205及びクリーム210は、混合ユニット215において混合される。生乳205及びクリーム210の混合物220は、次いで、低温殺菌/均質化ユニット225に通され、ここで、混合物220は、低温殺菌及び均質化に供される。
【0069】
得られた低温殺菌混合物230は発酵ユニット235に送られ、そこで低温殺菌混合物230は添加された培養物とともに発酵される。
【0070】
次いで、発酵混合物240は、カード245のための濃縮ユニットに通され、ここで、サワーホエイ250が除去され、カード255は、混合ユニット280に通される。カード用濃縮ユニット245は、分離機とも呼ばれ得る。
【0071】
ホエイタンパク質濃縮物270及び追加成分275を混合ユニット280に添加して、カード255と混合する。追加成分275は、添加剤及び安定剤を含む。
【0072】
ホエイタンパク質濃縮物270は、熱処理されたサワー及びスイートホエイを含み、20~25重量%の固形分レベルを有し、その約半分がホエイタンパク質である。ホエイタンパク質濃縮物270は、スイートホエイ及びサワーホエイを含有するホエイタンパク質溶液260を提供し、ホエイタンパク質溶液260を加熱及び均質化ユニット265に通すことによって得られ、ここで、ホエイタンパク質溶液260は、ホエイタンパク質を変性させるための同時加熱を伴う均質化のプロセスに供される。
【0073】
次いで、加熱され均質化された混合物270は、混合ユニット280においてカード255及び他の追加成分275と混合されて、組み合わされた混合物285を提供する。組み合わされた混合物285をテクスチャー構築熱処理ユニット290に通し、ここで、組み合わされた混合物285を65~90℃、好ましくは約80℃の温度に、少なくとも15分間剪断しながら加熱して、クリームチーズ製品295を得る。
【0074】
次いで、クリームチーズ製品295は、まだ高温である間に包装設備300に送られ、容器に包装される。
【0075】
図2に関して、生乳5が提供される。これを、生乳5を低温殺菌及び/又は均質化し、チーズ製造に適した加工乳15を提供するための処理10に供する。
【0076】
加工乳15の第1の部分15.1を遠心分離機20に通して、脱脂乳25をクリーム30から分離する。
【0077】
脱脂乳25は精密濾過ユニット35に送られ、そこで精密濾過された乳濃縮物40が保持液として保持される。保持物は主にカゼインに富む濃縮物である。精密濾過ユニット35はまた、スイートホエイ透過物45を生成する。スイートホエイ透過物45は、理想ホエイを含む。
【0078】
スイートホエイ透過物の一部50を保持し、次いでスイートホエイ透過物45の一部を第1の蒸発ユニット55に通してスイートホエイ透過物を濃縮し、濃縮スイートホエイ溶液60及び水65を形成する。
【0079】
精密濾過された乳濃縮物40、クリーム30、及び加工乳15の第2の部分15.2は、ミキサー70に通されて、乳製品液体75を形成する。次いで、乳製品液体75は、低温殺菌及び均質化ユニット77において低温殺菌及び均質化される。次いで、得られた低温殺菌及び均質化された乳製品液体79を発酵装置80に通して、乳製液を発酵させて、チーズカード95とサワーホエイ100との混合物85を形成する。
【0080】
混合物85は、限外濾過のために濃縮ユニット90に送られ、サワーホエイ100からチーズカード95が分離される。
【0081】
サワーホエイ100、スイートホエイ50及び濃縮スイートホエイ60は、混合ユニット105内で一緒に混合されて、ホエイタンパク質溶液110を形成する。ホエイタンパク質溶液110を限外濾過ユニット115に通して、ホエイタンパク質溶液110のタンパク質含量を少なくとも3倍濃縮して、濃縮ホエイタンパク質溶液120を生成する。
【0082】
濃縮ホエイタンパク質溶液120のpHは、クエン酸の添加によって4.8~4.9に調整され、その後、キャビテーション装置125に通され、ここで、濃縮ホエイタンパク質溶液120は、溶液を少なくとも70℃、好ましくは約80℃の温度に加熱するのに十分なキャビテーション処理に供され、熱処理ホエイタンパク質溶液130が提供される。
【0083】
濃縮熱処理ホエイタンパク質溶液130及びチーズカード95は、ミキサー135中で混合されて、第1の混合物140を形成する。第1の混合物140は、低温殺菌及び均質化ユニット145に送られ、そこで混合物が低温殺菌及び均質化されて、低温殺菌及び均質化された第1の混合物150が生成される。次いで、低温殺菌され、均質化された第1の混合物150は、テクスチャー化ユニット155に通され、テクスチャー化ユニットは、混合物150を少なくとも15分間剪断しながら65~90℃の温度に加熱することを含むテクスチャー構築熱処理プロセスに混合物150を供する。次いで、この工程は、クリームチーズ160を提供する。
【0084】
次いで、クリームチーズは、充填工程165において、まだ温かいうちにパッケージに充填される。
【0085】
ここで、本発明を、以下の非限定的な実施例に関連して説明する。
【実施例】
【0086】
実施例1
以下の流を総量100重量%になるように混合することによって、ホエイタンパク質溶液を生成した:
- 20重量%の量の、クリームチーズプロセスにおける発酵カード及びホエイの遠心分離による分離から得られる、6.0%の全固形分を有する酸ホエイ、
- 21重量%の量の、ハードチーズ製造及びその後の30.0%全固形分への蒸発から得られるスイートホエイ濃縮物、
- 59重量%の量の、脱脂乳精密濾過からの6.0%の全固形分を有するスイート理想ホエイ。
【0087】
ホエイタンパク質溶液のpHは、酸性ホエイのために天然では6.0である。次いで、このホエイタンパク質ブレンドを、10倍の濃縮のために20kDaのUF膜を用いた限外濾過に供した。得られた濃縮ホエイタンパク質溶液は、25.0%の全固形分及び13%の総タンパク質の組成を有し、そのpHをクエン酸で更に4.9に低下させた。次いで、このサワーホエイタンパク質濃縮物を剪断し、流体力学的キャビテーションを用いて加熱して、チーズカードとブレンドする準備をした(即ち、本発明の実施例1)。比較のために、同じブレンドを、撹拌タンク中で加熱及び剪断を使用する標準的な既知の手順で処理した(即ち、比較例1)。得られた粒度分布をレーザー散乱で測定し、得られたホエイタンパク質の架橋度を逆相高速液体クロマトグラフィーで測定した。WPC溶液は以下の特性を有した。
【0088】
【0089】
クリームチーズ製造中、WPCの加熱は架橋を引き起こし、その結果、粒子が形成される。混合物の粘度を増加させるために(即ち、クリームチーズが水っぽくならないように)架橋が望ましいが、より多くの架橋は、大きな粒子の形成をもたらす傾向がある。これらの大きな粒子(最も正確には高いD50値によって表される)は、得られるクリームチーズをざらざらした感触にし、クリームチーズに顆粒状の粘稠度を与え、これは消費者によって望まれない。
【0090】
一般により大きな架橋値が望ましいが、約50~85%の%架橋を得ることが特に望ましい。架橋は、好ましくは90%以下、より好ましくは50~85%、更により好ましくは60~80%、更により好ましくは65~75%である。架橋のこの最適範囲は、天然タンパク質と変性タンパク質との間の良好なバランスを提供する。天然タンパク質は依然として反応性であるが、変性タンパク質及びそのより大きな表面は、水分保持及びネットワーク構築を助ける。したがって、粒状組織を引き起こすほどD50値を増加させることなく、架橋を増加させ、特に所望の範囲内にすることが望まれている。
【0091】
WPCの熱処理工程中のキャビテーション技術の使用は、驚くべきことに、D50値を許容可能なレベルに維持しながら、CE1の62%と比較してIE1の82%の架橋によって示されるように、多量の架橋をもたらすことが見出された。
【0092】
特に、20μmのD50値(即ち、粒子の50%が20μm未満の直径を有することを示す)は許容可能な値であり、より好ましくは、D50値は20μm未満、好ましくは10μm未満、最も好ましくは5μm未満である。CE1の10.271というはるかに高い値とは対照的に、IE1は1.619μmのD50値を有する。両方の値が許容可能であるが、CE1と比較してIE1のより低いD50値は、より滑らかなテクスチャーを与える。
【0093】
IE1のD10値はまた、CE1のD10値よりも低く、より小さい粒径を有するIE1中により多くの粒子が存在することを示す。しかしながら、D10及びD90値は、D50値ほど重要な意味を有しておらず、D10及びD90値は、粒子分布サイズの「末端」によって大きく影響され得る。したがって、低いD50値を維持しながら、同時に高い架橋を達成することが望ましい。
【0094】
実施例2:
以下の流を100重量%になるように混合することによって、ホエイタンパク質液を生成した:
- 20重量%の量の、クリームチーズプロセスにおける発酵カード及びホエイの遠心分離による分離から得られる、6.0%の全固形分を有する酸ホエイ、
- 21重量%の量の、ハードチーズ製造及びその後の30.0%全固形分への蒸発から得られるスイートホエイ濃縮物、
- 59重量%の量の、脱脂乳精密濾過からの6.0%の全固形分を有するスイート理想ホエイ。
【0095】
ホエイタンパク質溶液のpHは、酸性ホエイのために天然では約6.0となる。次いで、このホエイブレンドを、10倍の濃縮のために20kDaのUF膜を用いた限外濾過に供した。得られた濃縮ホエイタンパク質は、25.0%の全固形分及び13%の総タンパク質の組成を有していた。次いで、この酸性ホエイタンパク質濃縮物を、pH 4.9に達するまで20℃で乳酸菌で発酵させ、その後、剪断し、流体力学的キャビテーションを用いて加熱した。得られた粒度分布をレーザー散乱で測定し、得られたホエイタンパク質溶液の架橋度を逆相高速液体クロマトグラフィーで測定した。WPCは以下の特性を有した。
【0096】
【0097】
見られるように、キャビテーションを用いて発酵WPCを剪断及び加熱する工程は、4%から98%への架橋の有意な増加をもたらした。本発明者らは、これがD50値の増加をもたらすと予想したが、驚くべきことに、D50値が3.559μmから4.236μmにわずかに増加するだけであることを見出した。発酵WPCのD50値のわずかな増加は、混合物のD50値を許容可能な低い値に維持しながら、架橋を増加させるキャビテーション技術の有利な能力を示す。
【0098】
本実施例はまた、クエン酸を添加する代わりに(他の実施例で行ったように)乳酸菌で発酵させることによって試料のpHを低下させる能力を示す。WPC熱処理前の低いpHは、粒径を低く保つために重要である。乳酸菌による発酵は、クエン酸を使用してpHを低下させることと比較して、得られるクリームチーズにおいて異なる風味を与える。したがって、これは、クリームチーズ最終製品において異なる風味の特徴を作り出すことを可能にするが、両方の方法(即ち、乳酸を用いた発酵を使用すること、又はクエン酸を添加すること)が、キャビテーション工程に適合するWPCをもたらすことを示す。
【0099】
実施例3
乳、クリーム及び精密濾過された乳濃縮物をブレンドして、15重量%の固形分、5.5重量%の脂肪、4重量%のタンパク質及び4.5重量%のラクトースを含む乳製品液体を製造した。この乳製品液体を低温殺菌し、均質化し、最終pHが4.8~5.0に達するまで20℃で乳酸菌による中温発酵に供した。形成された凝塊を撹拌した後、膜限外濾過を使用して濃縮カードと酸性ホエイとに分離した。カードを、24%固形分及び11%タンパク質含量を有するホエイタンパク質濃縮物とブレンドした。ホエイタンパク質濃縮物は、実施例1に記載のように、スイートホエイ、酸性ホエイ及びスイートホエイ濃縮物からなっていた。WPCを、(IE1について記載したように)50%の変性度で流体力学的キャビテーションに供した。次いで、カード及びホエイタンパク質混合物を、低温殺菌及び均質化により更に加工して乳製品液体にし、次いで、これを最終クリーミング工程(即ち、テクスチャー構築熱処理工程)によりテクスチャー加工して、10℃で90±5gの低温スティーブンス硬度を有する濃厚でクリーミーなフレッシュチーズ製品(即ち、IE3)を得た。比較のために、同じホエイブレンドを、標準的な既知の手順で加熱し(即ち、CE1)、同じカードの別の部分とブレンドし、次いで、組織化を含む記載された熱処理に供し、10℃で80±10gの低温スティーブンス硬度を有するチーズ(即ち、CE3)を得た。
【0100】
見られるように、クリーミング工程の前にキャビテーションを受けたWPCから製造されたクリームチーズ製品IE3は、クリーミング工程の前に標準的な熱処理のみを受けたWPCから製造されたクリームチーズ製品CE3よりも高い低温スティーブンス硬度をもたらした。このより高い低温スティーブンス硬度値は、より水っぽいテクスチャーを有するあまり硬くないクリームチーズとは対照的に、消費者にとってより濃厚でよりクリーミーな味がするより硬いクリームチーズを示すため、クリームチーズ製品において望ましい。
【0101】
これらの値は、IE3で製造された乳製品液体は、クリーミング工程により適合性があり、よりクリーミーで濃厚なクリームチーズを製造することができたが、CE3で製造された乳製品液体は、最後のクリーミング工程と適合性がなく、したがってIE3ほど高い硬度を有するクリームチーズを形成しなかったことを示す。
【0102】
実施例4
以下の流を総量100重量%になるように混合することによって、ホエイタンパク質溶液を生成した:
- 25重量%の量の、クリームチーズプロセスにおける発酵カード及びホエイの遠心分離による分離から得られる、6.0%の全固形分を有する酸ホエイ、
- 21重量%の量の、脱脂乳を10~15℃で精密濾過し、続いて蒸発させて全固形分30.0%にすることによって得られるスイート理想ホエイ濃縮物、
- 54重量%の量の、脱脂乳精密濾過からの6.0%の全固形分を有するスイート理想ホエイ。
【0103】
ホエイタンパク質溶液のpHは、酸性ホエイのために天然では約6.0となる。次いで、このホエイブレンドを、12倍の濃縮のために20kDaのUF膜を用いた限外濾過に供した。得られた濃縮ホエイタンパク質は、20.3%の全固形分及び11.8%の総タンパク質の組成を有し、そのpHをクエン酸で更に4.9に下げた。次いで、このサワーホエイタンパク質濃縮物の1つの試料を剪断し、76℃の温度で流体力学的キャビテーションを用いて加熱し(IE4a)、別の試料を剪断し、81℃の温度で流体力学的キャビテーションを用いて加熱する(IE4b)。次いで、得られた溶液を、チーズカードとブレンドさせることとした。比較のために、同じブレンドを、撹拌タンク中で加熱及び剪断を使用する標準的な既知の手順で処理した(CE4)。得られた粒度分布をレーザー散乱で測定し、得られたホエイタンパク質の架橋度を逆相高速液体クロマトグラフィーで測定した。WPC溶液は以下の特性を有した。
【0104】
【0105】
見られるように、81℃でのキャビテーションは、76℃でのキャビテーションよりも高いパーセンテージの架橋をもたらし、これは、クリームチーズを作製するために必要とされる粘度を得るために有益である。CE4(即ち、WPCに標準的な熱処理のみを施した場合)は、79%という最も高い架橋率を有していたが、CE4のD50値は、57.617μmと、許容できないほど高かった。かかる高いD50値は、消費者にとって望ましくない、粒状で粗いテクスチャーを有するクリームチーズとなる。
【0106】
一方、IE4a及びIE4bは、クリームチーズ製造に許容されるD50値を維持した。加えて、IE4b(81℃でキャビテーションを受けた)は、適切に低いD50値を維持しながら、75%の望ましい高い架橋率を得ることができた。
【0107】
実施例5
乳、クリーム及び精密濾過された乳濃縮物をブレンドして、15%の固形分、5.5%の脂肪、4%のタンパク質及び4.5%のラクトースを含む乳製品液体を製造した。この乳製品液体を低温殺菌し、均質化し、20℃で乳酸菌による中温発酵に供して最終pHを4.8~5.0とした。形成された凝塊を撹拌した後、2.2~2.5倍の濃縮係数を有する膜限外濾過を使用して、それを濃縮カードとホエイとに分離した。カードを、20.3%固形分及び11.8%タンパク質含量を有するホエイタンパク質濃縮物とブレンドした。ホエイタンパク質濃縮物は、理想スイートホエイ、酸性ホエイ及び実施例4に記載される理想スイートホエイ濃縮物からなっていた。WPCを、カード(IE5)と混合する前に、81℃で75%の変性度で流体力学的キャビテーションに供した(即ち、IE4b)。加えて、同じカードの別の部分を、79.0%の変性度までの標準的な熱処理(即ち、CE4)後の同じホエイタンパク質濃縮物の別の部分と混合することによって、第2のバッチを調製した(CE5)。次いで、カード及びそれらのそれぞれのホエイタンパク質添加物の両方の混合物を、低温殺菌及び均質化を用いて別個の様式で更に加工して乳製品液体にし、次いでこれを最終クリーミング工程でテクスチャー加工した。
【0108】
驚くべきことに、より多量の理想スイートホエイを有する標準的な加熱ホエイタンパク質濃縮物を含有する比較例では、クリームチーズのテクスチャー化挙動が完全に損なわれることが見出された。カードと加熱ホエイタンパク質との混合物が流動性のままであり(即ち、乳製液がクリーム状の均質なチーズにならず)、いかなるテクスチャーも表さず、最終製品が測定可能な低温スティーブンスを有さず、テクスチャー化後にRapid Visco Analyzerを用いて78℃で測定して400 cP未満の粘度を示したため、乳製品液体を廃棄した。比較によると、多量の理想スイートホエイを含有するホエイタンパク質濃縮物を用いて製造され、流体力学的キャビテーションで処理されたクリームチーズ(即ち、IE5)は、十分なテクスチャーの発達を示し、テクスチャー化後に78℃で400 cPを超える測定粘度値を有した。これにより、10℃で90±5gの低温スティーブンス硬度を有する、濃厚で塗り広げることができ、クリーミーな、フレッシュチーズ製品が得られた。
【0109】
このデータは、乳製品液体が、標準的な熱処理に供されたWPCとは対照的に、キャビテーション処理に供されたWPCを有する場合に、乳製品液体とクリーミング工程との改善された適合性を示すことを示す。IE5のより高い粘度は、CE5と比較して、高レベルの理想ホエイを含むWPCストリームが使用される場合に、得られる混合物がクリーミング及びテクスチャー化工程に適合するためにキャビテーション工程が必要であることを示す。高レベルの理想ホエイを有するWPC溶液が使用されるが、最初に標準的な熱処理に供される場合、得られる溶液は単にクリーミング/テクスチャー化工程に適合せず、許容可能なクリームチーズを製造することができない。
【0110】
実施例6
以下の流を総量100重量%になるように混合することによって、ホエイタンパク質溶液を生成した:
- 30重量%の量の、クリームチーズプロセスにおける発酵カード及びホエイの遠心分離による分離から得られる、6.0%の全固形分を有する酸(サワー)ホエイ、
- 10重量%の量の、ハードチーズ製造及びその後の30.0%全固形分への蒸発から得られるスイートレンネットホエイ濃縮物、
- 50重量%の量の、脱脂乳精密濾過からの6.0%の全固形分を有するスイート理想ホエイ、
- 10重量%の量の、脱脂乳を10~15℃で精密濾過し、続いて蒸発させて全固形分30.0%にすることから得られるスイート理想ホエイ濃縮物。
【0111】
ホエイタンパク質溶液のpHは、酸性ホエイのために天然では6.0である。次いで、このホエイタンパク質ブレンドを、11倍の濃縮のために20kDaのUF膜を用いた限外濾過に供した。得られた濃縮ホエイタンパク質溶液は20%の全固形分及び12%の総タンパク質の組成を有し、そのpHをクエン酸で更に4.91に低下させた。次いで、このサワーホエイタンパク質濃縮物を剪断し、流体力学的キャビテーションを用いて81℃の温度で加熱し、チーズカードとブレンドする準備をした(即ち、本発明の実施例6)。比較のために、同じブレンドを、撹拌タンク中で加熱及び剪断を使用する標準的な既知の手順で処理した(即ち、比較例6)。各試料の得られた粒度分布をレーザー散乱で測定し、処理前及びキャビテーション後のWPCの得られた架橋度を逆相高速液体クロマトグラフィーで測定した。WPC溶液は以下の特性を有した。
【0112】
【0113】
見られるように、IE6は、D50のわずかな増加を示したが、依然として3.01μmという有利に低い値を有していた。一方、CE6は、212μmへのかなり大きな増加を示し、これは、はるかに粒状のテクスチャーを意味し、これは望ましくない。加えて、WPCは、架橋の割合の非常に大きく有利な増加を示し、キャビテーション処理が、WPCが十分に粘性の組成物を形成することを可能にし、クリームチーズにおける使用に適したものにすることを示した。一方、CE6はより低い架橋度を示し、試料が十分に粘稠な生成物を形成しなかったことを示した。
【0114】
実施例7
乳、クリーム及び精密濾過された乳濃縮物をブレンドして、15%の固形分、5.5%の脂肪、4%のタンパク質及び4.5%のラクトースを含む乳製品液体を製造した。この乳製品液体を低温殺菌し、均質化し、20℃で乳酸菌による中温発酵に供して最終pHを4.8~5.0とした。形成された凝塊を撹拌した後、2.2~2.5倍の濃縮係数を有する膜限外濾過を使用して、それを濃縮カードとホエイとに分離した。カードを、固形分20%及びタンパク質含量12%のホエイタンパク質濃縮物とブレンドした。ホエイタンパク質濃縮物は、実施例6に記載されるように、スイートレンネットホエイ濃縮物、スイート理想ホエイ、酸ホエイ、及びスイート理想ホエイ濃縮物からなっていた。WPCを、カードと混合する前に、81℃で85%の変性度で流体力学的キャビテーションに供した(IE7)。加えて、同じカードの別の部分を、79.0%の変性度までの標準的な熱処理(即ち、CE6)後の同じホエイタンパク質濃縮物の別の部分と混合することによって、第2のバッチを調製した(CE7)。次いで、カード及びそれらのそれぞれのホエイタンパク質添加物の両方の混合物を、低温殺菌及び均質化を伴う別個の様式で乳製品液体に更に加工し、次いで、これを最終クリーミング工程(即ち、テクスチャー構築熱処理工程)でテクスチャー加工した。
【0115】
実施例5について上述したのと同様に、CE7(標準的な熱処理を使用した)は、適切なチーズ製品を形成せず、必要なクリーミーなテクスチャーを有さなかった。特に、CE7の得られた生成物は、テクスチャー化後にRapid Visco Analyzerを用いて78℃で測定して、400cP未満の粘度を示した。比較によると、多量の理想スイートホエイを含有するホエイタンパク質濃縮物を用いて製造され、流体力学的キャビテーションで処理されたクリームチーズ(即ち、IE7)は、十分なテクスチャーの発達を示し、テクスチャー化後に78℃で400cPを超える測定粘度値を有した。これにより、10℃で85.0±1gの低温スティーブンス硬度を有する、濃く、塗り広げることができ、クリーミーなフレッシュチーズ製品が得られた。
【0116】
見られるように、キャビテーション処理されたWPCから製造されたクリームチーズ製品IE7は、適切なクリームチーズ製品を形成するのに十分な低温スティーブンス硬度を有していた。
【0117】
要約すると、これらの値は、IE7で製造された乳製品液体が、クリーミング工程により適合性があり、よりクリーミーで濃厚なクリームチーズを製造することができたが、CE7で製造された乳製液は、最後のクリーミング工程と適合性がなく、したがって、IE7と同程度に高い硬度(及び望ましいテクスチャー)を有するクリームチーズを形成しなかったことを示す。
【0118】
特に明記しない限り、本明細書における百分率は重量ベースである。
【0119】
本明細書において「固体」とは、全ての水が除去された後に残る物質を指す。したがって、20重量%の固体を含む溶液は、残り(即ち、80重量%)の水も含有する。
【0120】
本発明の好ましい実施形態は本明細書に詳細に記載されているが、本発明又は添付の特許請求の範囲を逸脱することなく変更を行えることが、当業者に理解されよう。
【国際調査報告】