(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】幹細胞プライミング組成物およびプライミングされた幹細胞
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0775 20100101AFI20231226BHJP
C12N 5/02 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C12N5/0775
C12N5/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539062
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-06-23
(86)【国際出願番号】 KR2021019485
(87)【国際公開番号】W WO2022139399
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0181940
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521385817
【氏名又は名称】エスシーエム ライフサイエンス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ソン、スンウク
(72)【発明者】
【氏名】キム、シナ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065BA25
4B065BB19
4B065BB20
4B065CA44
(57)【要約】
本発明は、TNF-α、IFN-γおよびIFN-α;またはTNF-α、IFN-γ、IFN-αおよびビタミン;を含む幹細胞の免疫調節および炎症調節能増進用組成物、およびそれを利用した免疫調節および炎症調節能が増進された幹細胞の製造方法に関する。本発明によるTNF-α、IFN-γおよびIFN-α;またはTNF-α、IFN-γ、IFN-αおよびビタミン;を幹細胞に処理すると、幹細胞の免疫調節能および抗炎症効果に係る因子の発現が増加され、これを通じて機能が強化された幹細胞を製造することができる。製造された機能強化幹細胞は、各種免疫、炎症疾患の治療分野において多様に活用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TNF-α、IFN-γおよびIFN-αを含む、幹細胞の免疫調節および炎症調節能増進用組成物。
【請求項2】
前記TNF-α、IFN-γおよびIFN-αは、1:1:0.1乃至3(w/v)の割合で含まれるものである、請求項1に記載の幹細胞の免疫調節および炎症調節能増進用組成物。
【請求項3】
ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5およびビタミンB6からなる群より選ばれた1種以上のビタミンをさらに含む、請求項1に記載の幹細胞の免疫調節および炎症調節能増進用組成物。
【請求項4】
TNF-α、IFN-γ、IFN-αおよびビタミンは、1:1:0.1乃至3:300乃至6,000(w/v)の割合で含まれるものである、請求項3に記載の幹細胞の免疫調節および炎症調節能増進用組成物。
【請求項5】
前記幹細胞は、脂肪、骨髄、胎盤または臍帯血由来中間葉幹細胞である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の幹細胞の免疫調節および炎症調節能増進用組成物。
【請求項6】
前記組成物は、幹細胞のTSG6(TNFα-stimulated gene-6)の発現増加、IDO(Indoleamine 2,3-dioxygenase)の発現増加、ICAM1(Intercellular Adhesion Molecule 1)の発現増加およびVCAM(vascular cell adhension molecule)の発現増加からなる群より選ばれた1種以上の幹細胞の免疫調節および炎症調節能増進を誘導するものである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の幹細胞の免疫調節および炎症調節能増進用組成物。
【請求項7】
ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5およびビタミンB6からなる群より選ばれた1種以上のビタミンを含む、幹細胞の免疫調節および炎症調節増進補助剤組成物。
【請求項8】
前記幹細胞の免疫調節および炎症調節増進は、TNF-α、IFN-γおよびIFN-αの処理によって誘導されるものである、請求項7に記載の幹細胞の免疫調節および炎症調節増進補助剤組成物。
【請求項9】
前記ビタミンは、TNF-α、IFN-γ、IFN-αおよびビタミンの割合が1:1:0.1乃至3:300乃至6,000(w/v)となるように添加されるものである、請求項8に記載の幹細胞の免疫調節および炎症調節増進補助剤組成物。
【請求項10】
1)TNF-α、IFN-γおよびIFN-αを幹細胞に処理して培養するステップ;を含む、幹細胞の免疫調節および炎症調節能増進方法。
【請求項11】
前記1)ステップにおいて、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5およびビタミンB6からなる群より選ばれた1種以上のビタミンをともに処理することである、請求項10に記載の幹細胞の免疫調節および炎症調節能増進方法。
【請求項12】
前記幹細胞の免疫調節および炎症調節能増進は、幹細胞のTSG6(TNFα-stimulated gene-6)の発現増加、IDO(Indoleamine 2,3-dioxygenase)の発現増加、ICAM1(Intercellular Adhesion Molecule 1)の発現増加およびVCAM(vascular cell adhension molecule)の発現増加からなる群より選ばれた1種以上である、請求項10に記載の幹細胞の免疫調節および炎症調節能増進方法。
【請求項13】
1)TNF-α、IFN-γおよびIFN-αを幹細胞に処理して培養するステップ;を含む、免疫調節および炎症調節能が増進された幹細胞の製造方法。
【請求項14】
前記1)ステップにおいて、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5およびビタミンB6からなる群より選ばれた1種以上のビタミンをともに処理することである、請求項13に記載の免疫調節および炎症調節能が増進された幹細胞の製造方法。
【請求項15】
請求項13または14の方法により製造された免疫調節および炎症調節能が増進された幹細胞。
【請求項16】
前記幹細胞は、TSG6、IDO、ICAM1およびVCAMからなる群より選ばれた1種以上の発現が増進されたものである、請求項15に記載の幹細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TNF-α、IFN-γおよびIFN-α;またはTNF-α、IFN-γ、IFN-αおよびビタミン;を含む幹細胞の免疫調節および炎症調節能増進用組成物、およびそれを利用した免疫調節および炎症調節能が増進された幹細胞の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞は、未分化細胞であって、自己再生を通じて長らく分裂でき、特定環境下では多様な種類の細胞に分化できる細胞をいう。幹細胞は、起源となる組織によって胚芽幹細胞(Embryonic stem cell)と成体幹細胞(Adult stem cell)に分けられるが、胚芽幹細胞を利用した治療実験が倫理的な面と腫瘍形成の可能性で難しい点があるのに対し、成体幹細胞は、多様な組織から容易に得られるという長所があり、多様な疾患治療に適用しようとする研究が盛んに進行している。
【0003】
現在まで多くの化合物免疫抑制剤または抗炎症剤が開発されており、臨床的に最もよく用いられる免疫抑制剤としては、シクロスポリン(cyclosporine、Neoral、Cipol A)、アザチオプリン(imuran)、プレドニゾロン(一種のステロイド)がある。前記免疫抑制剤は、抗原刺激から抗体生成に至る過程中、大食細胞による抗原の貪食、リンパ球などによる抗原認識、細胞分裂、T細胞とB細胞の分裂、抗体生成などのいくつかの過程を阻害させることで免疫抑制を引き起こす。このような薬物は、ほとんど抗腫瘍活性を同時に有しており、その理由は、DNA障害、DNA合成阻止などを媒介として細胞分裂を阻止するためである。しかし、それによる代表的な副作用として高血圧と腎毒性(腎機能が低下される)があり、この副作用の発生率が高いため、用いるとき、十分に経過を観察しなければならないなどの問題点がある。その他の副作用として、稀に震え、発作、肝炎、胆液貯留、血中尿酸増加、筋肉気力低下、多毛症(hypertrichosis)、歯肉肥大(gingival hypertrophy)などがある。よく用いられる抑制剤のうちアザチオプリンは、白血球数値の減少、貧血、血小板減少など、骨髄機能を抑制することもあり、膵臓炎、肝炎、胆汁貯留とともに稀に脱毛、発熱などを示す合併症があり得る。ステロイド製剤の一つであるプレドニゾロンは、免疫抑制剤のうち最も早く用いられ始めたが、動脈硬化症を促進させるだけでなく、高血圧、胃潰瘍、糖尿、成長阻害、骨粗鬆症、白内障、緑内障などを起こすので注意すべき薬物である。従って、安全な免疫抑制剤または抗炎症剤の必要性が浮上している。
【0004】
このような問題点を解決するために、最近、幹細胞を利用した治療法が炎症および免疫疾患治療のために試みられている。特に、中間葉幹細胞(mesenchymal stem cell、MSC)は、炎症を抑制させるか調節T細胞(regulatory T cell、Treg)の生成を誘導するかまたは細胞死滅に関与する免疫細胞の死滅を誘導するものと知られており、それを利用した多様な治療剤の開発が盛んに行われている。
【0005】
しかし、幹細胞を利用した多様な臨床試験で効果の持続性や、長期追跡結果、生体内生存割合が極めて低いという問題点が報告されており、幹細胞治療剤を改善するための多様な試みがなされている。例えば、治療効果を高めるために幹細胞に特定遺伝子を挿入するか、幹細胞機能をブースティングできる多様な化学物、ペプチドなどを前処理する方法、培養時、低酸素、温度、光のような刺激条件を加える方法が試みられるか、幹細胞の生存率を高めるために支持体とともに投与する方法が研究されている。幹細胞の機能強化のための多様な研究のうち遺伝子操作を利用した機能改善方法は効果的であり得るが、導入される遺伝子の安全性などの問題点が指摘される。
【0006】
従って、幹細胞そのものに遺伝子を導入して機能を強化するよりは、培養中、多様なプライミング要素処理を通じて幹細胞の内在的機能を強化するための多様な研究が試みられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者らは、幹細胞の炎症調節および免疫調節能を強化するための多様なプライミング方法に関して研究していたところ、TNF-α、IFN-γおよびIFN-α;またはTNF-α、IFN-γ、IFN-αおよびビタミン;を処理すると、幹細胞の機能を効果的に強化させ得ることを確認し、本発明を完成した。
【0008】
従って、本発明の目的は、TNF-α、IFN-γおよびIFN-α;またはTNF-α、IFN-γ、IFN-αおよびビタミン;を含む幹細胞の免疫調節および炎症調節能増進用組成物、およびそれを利用した免疫調節および炎症調節能が増進された幹細胞の製造方法、このような方法により製造された免疫調節および炎症調節能が増進された幹細胞を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、TNF-α、IFN-γおよびIFN-αを含む、幹細胞の免疫調節および炎症調節能増進用組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、TNF-α、IFN-γ、IFN-α;およびビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5およびビタミンB6からなる群より選ばれた1種以上のビタミン;を含む、幹細胞の免疫調節および炎症調節能増進用組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、TNF-α、IFN-γ、IFN-α;およびビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5およびビタミンB6からなる群より選ばれた1種以上のビタミン;の幹細胞の免疫調節および炎症調節能増進用途を提供する。
【0012】
また、本発明は、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5およびビタミンB6からなる群より選ばれた1種以上のビタミンを含む、幹細胞の免疫調節および炎症調節増進補助剤組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5およびビタミンB6からなる群より選ばれた1種以上のビタミンを含む、幹細胞の免疫調節および炎症調節増進補助用途を提供する。
【0014】
また、本発明は、1)TNF-α、IFN-γおよびIFN-αを幹細胞に処理して培養するステップ;を含む、幹細胞の免疫調節および炎症調節能増進方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記1)ステップにおいて、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5およびビタミンB6からなる群より選ばれた1種以上のビタミンをともに処理するものである、幹細胞の免疫調節および炎症調節能増進方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、1)TNF-α、IFN-γおよびIFN-αを幹細胞に処理して培養するステップ;を含む、免疫調節および炎症調節能が増進された幹細胞の製造方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記1)ステップにおいて、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5およびビタミンB6からなる群より選ばれた1種以上のビタミンをともに処理するものである、幹細胞の免疫調節および炎症調節能増進方法を提供する。
【0018】
また、本発明は、1)TNF-α、IFN-γおよびIFN-αを幹細胞に処理して培養するステップ;を含む、免疫調節および炎症調節能が増進された幹細胞の製造方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、前記1)ステップにおいて、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5およびビタミンB6からなる群より選ばれた1種以上のビタミンをともに処理するものである、免疫調節および炎症調節能が増進された幹細胞の製造方法を提供する。
【0020】
また、本発明は、前記製造方法により製造された免疫調節および炎症調節能が増進された幹細胞を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によるTNF-α、IFN-γおよびIFN-α;またはTNF-α、IFN-γ、IFN-αおよびビタミン;を幹細胞に処理すると、幹細胞の免疫調節能および抗炎症効果に係る因子の発現が増加され、これを通じて機能が強化された幹細胞を製造することができる。製造された機能強化幹細胞は、各種の免疫、炎症疾患の治療分野において多様に活用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】TNF-αの処理濃度によるIDOとTSG6の発現増加を確認した結果を示した図である(***P<0.001、****P<0.0001、compared to the control(0ng/ml))。
【
図2】IFN-γの処理濃度によるIDOとTSG6の発現増加を確認した結果を示した図である(*P<0.05、****P<0.0001、compared to the control(0ng/ml))。
【
図3】IFN-αの処理濃度によるIDOとTSG6の発現増加を確認した結果を示した図である(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001、compared to the control(0ng/ml))。
【
図4】表1に示した組成物によるIDOとTSG6の発現増加を確認した結果を示した図である(****P<0.0001)(0:未処理対照群;1:TNF-α(10ng/ml);2:IFN-γ(10ng/ml);3:IFN-α(20ng/ml);4:TNF-α(10ng/ml)+IFN-γ(10ng/ml);5:TNF-α(10ng/ml)+IFN-α(20ng/ml);6:IFN-γ(10ng/ml)+IFN-α(20ng/ml);7:TNF-α(10ng/ml)+IFN-γ(10ng/ml)+IFN-α(20ng/ml))。
【
図5】表2に示したビタミンの単独処理によるIDOとTSG6の発現増加を確認した結果を示した図である(0:未処理対照群;1:ビタミンA(10μg/ml);2:ビタミンB1(50μg/ml);3:ビタミンB2(5μg/ml);4:ビタミンB3(50μg/ml);5:ビタミンB5(50μg/ml);6:ビタミンB6(50μg/ml);7:ビタミンB12(50μg/ml);8:ビタミンD2(10μg/ml);9:ビタミンD3(10μg/ml))。
【
図6】TNF-α、IFN-γ、IFN-αにビタミンをそれぞれ追加した表3に示した組成物の処理によるIDOとTSG6の発現増加を確認した結果を示した図である(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001、compared to group 1)(0:未処理対照群;1:TNF-α+IFN-γ+IFN-α;2:実験群1にビタミンA添加;3:実験群1にビタミンB1添加;4:実験群1にビタミンB2添加;5:実験群1にビタミンB3添加;6:実験群1にビタミンB5添加;7:実験群1にビタミンB6添加;8:実験群1にビタミンB12添加;9:実験群1にビタミンD2添加、10:実験群1にビタミンD3添加)。
【
図7】TNF-α、IFN-γ、IFN-αにビタミンをそれぞれ追加した表3に示した組成物の処理によるICAM1とVCAMの発現増加を確認した結果を示した図である(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001、compared to group 1)(0:未処理対照群;1:TNF-α+IFN-γ+IFN-α;2:実験群1にビタミンA添加;3:実験群1にビタミンB1添加;4:実験群1にビタミンB2添加;5:実験群1にビタミンB3添加;6:実験群1にビタミンB5添加;7:実験群1にビタミンB6添加;8:実験群1にビタミンB12添加;9:実験群1にビタミンD2添加、10:実験群1にビタミンD3添加)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0024】
本発明の様態によると、TNF-α、IFN-γおよびIFN-α;またはTNF-α、IFN-γ、IFN-αおよびビタミンを含む幹細胞の免疫調節および炎症調節能増進用組成物を提供する。
【0025】
本発明の組成物は、幹細胞の機能をプライミングすることができるプライミング用組成物であって、TNF-α、IFN-γおよびIFN-α;またはTNF-α、IFN-γ、IFN-αおよびビタミンを幹細胞に処理すると、幹細胞の免疫調節および炎症調節能を強化して機能強化幹細胞を誘導できる。
【0026】
前記TNF-α、IFN-γおよびIFN-α;またはTNF-α、IFN-γ、IFN-αおよびビタミンの組み合わせは、これらの単一成分を幹細胞に処理することと比較してシナジー効果を示し、低い処理濃度でも目的とする幹細胞の機能強化を効果的に誘導できる。
【0027】
具体的に、幹細胞の機能強化を誘導するために、TNF-α、IFN-γおよびIFN-αを幹細胞に処理した後に培養でき、TNF-α、IFN-γおよびIFN-αは、1:1:0.1乃至3(w/v)の割合で組成物に含まれてもよく、好ましくは1:1:1乃至3(w/v)、さらに好ましくは1:1:1乃至2.5(w/v)の割合で含まれてもよい。本発明の一具現例においては、TNF-α、IFN-γおよびIFN-αを10ng/ml、10ng/mlおよび20ng/mlの濃度の組み合わせで幹細胞に処理して培養し、幹細胞の機能強化を確認した。
【0028】
また、本発明の組成物は、幹細胞の機能強化をより顕著に誘導するために、前記組み合わせに加えてビタミンをさらに含んでもよく、具体的に、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5およびビタミンB6からなる群より選ばれた1種以上のビタミンをさらに含んでもよい。ビタミンをさらに含む組成物を幹細胞に処理してプライミングすると、TNF-α、IFN-γおよびIFN-αの処理を通じて誘導される幹細胞の機能強化がさらに顕著に増進され得る。前記TNF-α、IFN-γ、IFN-αおよびビタミンは、1:1:0.1乃至3:300乃至6,000(w/v)の割合で含まれてもよい。より具体的に、TNF-α、IFN-γ、IFN-αにビタミンB2が追加される場合、1:1:0.1乃至3:300乃至600(w/v)、さらに好ましくは1:1:0.1乃至3:400乃至550(w/v)、よりさらに好ましくは1:1:2:500(w/v)の割合で含まれてもよく、TNF-α、IFN-γ、IFN-αにビタミンB3、ビタミンB-5またはビタミンB6が追加される場合、1:1:0.1乃至3:4,000乃至6,000(w/v)、さらに好ましくは1:1:0.1乃至3:4,000乃至5,500(w/v)の割合、よりさらに好ましくは1:1:2:5,000(w/v)の割合で含まれてもよい。
【0029】
本発明の一具現例においては、複合処理のための濃度としてTNF-α 10ng/ml、IFN-γ 10ng/ml、IFN-α 20ng/mlを選定し、ビタミンB2 5μg/ml、ビタミンB3 50μg/ml、ビタミンB5 50μg/mlおよびビタミンB6 50μg/mlを選定して幹細胞に処理して免疫調節および炎症調節機能の強化を確認した。その結果、ビタミンを添加した実験群においては、TNF-α、IFN-γおよびIFN-αの処理と比較してIDOおよびTSG6の発現増加だけでなく、幹細胞の表面に発現する付着因子であるICAM1(Intercellular Adhesion Molecule 1)とVCAM(vascular cell adhension molecule)の発現が有意的に増加されたことを確認した。
【0030】
本発明において、TNF-α、IFN-γおよびIFN-α;またはTNF-α、IFN-γ、IFN-αおよびビタミンの処理によって機能が強化される幹細胞は、自己複製能力を有しながら二つ以上の細胞に分化する能力を有する細胞のことをいい、万能幹細胞(totipotent stem cell)、全分化能幹細胞(pluripotent stem cell)、多分化能幹細胞(multipotent stem cell)に分類できる。前記幹細胞は、目的に応じて適宜制限なく選択されてもよく、ヒトを含む哺乳動物、好ましくはヒトから由来した公知になっているすべての組織、細胞などの成体細胞から由来でき、例えば、脂肪、骨髄、胎盤(または胎盤組織細胞)、または臍帯血由来中間葉幹細胞であってよい。
【0031】
本発明によって、TNF-α、IFN-γおよびIFN-α;またはTNF-α、IFN-γ、IFN-αおよびビタミン;を幹細胞に処理して培養すると幹細胞の機能が強化され得る。
【0032】
本発明において、「幹細胞の機能強化」は「幹細胞のプライミング」と同一の意味を有し、幹細胞が有している固有の性質および効果をさらにブースティングして有用性を増大させることを意味する。より具体的に、前記機能強化は、好ましくは幹細胞が内在的に有している炎症調節および免疫調節能をブースティングすることを意味し、このとき、TNF-α、IFN-γおよびIFN-α;またはTNF-α、IFN-γ、IFN-αおよびビタミン;は幹細胞をブースティングするためのプライミング製剤として活用されてもよい。
【0033】
より具体的に、前記機能強化は、炎症調節および免疫調節能の強化により、TSG6(TNFα-stimulated gene-6)の発現増加、IDO(Indoleamine 2,3-dioxygenase)の発現増加、ICAM1(Intercellular Adhesion Molecule 1)の発現増加およびVCAM(vascular cell adhension molecule)の発現増加からなる群より選ばれた1種以上の幹細胞の免疫調節および炎症調節能の増進を意味し得る。
【0034】
また、本発明は、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5およびビタミンB6からなる群より選ばれた1種以上のビタミンを含む、幹細胞の免疫調節および炎症調節増進補助剤組成物を提供する。
【0035】
本発明のビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5およびビタミンB6は、単独で幹細胞に処理時、幹細胞の免疫調節または炎症調節能を増進させることができないが、幹細胞の機能を強化し得るプライミング製剤とともに補助的に処理すると、幹細胞の免疫調節または炎症調節能を顕著に増加させることができる。従って、前記ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5およびビタミンB6からなる群より選ばれた1種以上のビタミンは、併用処理を目的として当分野に公知になっている幹細胞のプライミング製剤、好ましくは幹細胞の免疫調節または炎症調節能を増進させ得るプライミング製剤とともに処理されてもよい。
【0036】
本発明の一具現例においては、TNF-α、IFN-γおよびIFN-αに加えて追加的にともに処理してシナジー効果を確認し、従って、前記幹細胞の免疫調節および炎症調節増進は、TNF-α;IFN-γおよびIFN-αの処理によって誘導される幹細胞の免疫調節および炎症調節能であり得る。
【0037】
本発明において、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5およびビタミンB6からなる群より選ばれた1種以上のビタミンを幹細胞の免疫調節および炎症調節増進補助剤の目的として用いる場合、これらは0.1乃至300μg/ml、1乃至300μg/ml、3乃至100μg/mlの濃度、好ましくは3乃至60μg/mlで幹細胞に処理されてもよい。
【0038】
本発明において、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5およびビタミンB6からなる群より選ばれた1種以上のビタミンをTNF-α、IFN-γ、IFN-αとともに併用処理する場合、次のような割合で併用処理されてもよい:TNF-α、IFN-γ、IFN-αおよびビタミンは、1:1:0.1乃至3:300乃至6,000(w/v)の割合で処理されてもよい。より具体的に、TNF-α、IFN-γ、IFN-αにビタミンB2が追加される場合、1:1:0.1乃至3:300乃至600(w/v)、さらに好ましくは1:1:0.1乃至3:400乃至550(w/v)、よりさらに好ましくは1:1:2:500(w/v)の割合で処理されてもよく、TNF-α、IFN-γ、IFN-αにビタミンB3、ビタミンB5またはビタミンB6が追加される場合、1:1:0.1乃至3:4,000乃至6,000(w/v)、さらに好ましくは1:1:0.1乃至3:4,000乃至5,500(w/v)の割合、よりさらに好ましくは1:1:2:5,000(w/v)の割合で処理されてもよい。
【0039】
また、本発明は、1)TNF-α、IFN-γおよびIFN-αを幹細胞に処理して培養するステップ;を含む、幹細胞の免疫調節および炎症調節能増進方法を提供する。
【0040】
また、本発明は、1)TNF-α、IFN-γおよびIFN-αを幹細胞に処理して培養するステップ;を含む、免疫調節および炎症調節能が増進された幹細胞の製造方法を提供する。
【0041】
本発明において、免疫調節および炎症調節能をさらに増進させるためには、TNF-α、IFN-γおよびIFN-αにさらにビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5およびビタミンB6からなる群より選ばれた1種以上のビタミンをともに処理することを特徴とすることができ、これらを同時にまたは順次に処理できる。
【0042】
前記方法は、in vitro、ex vivoで遂行されることを含むことができ、培養は、当分野に広く公知になっている幹細胞培養に必要な成分を含む培地または幹細胞の増殖を促進できる成分をさらに含む培地で遂行されてもよい。前記本発明の幹細胞は、通常の培地で生育可能であり、本発明の幹細胞を培養するために、培養対象、すなわち、培養体となる細胞が必要とする栄養物質を含むものであり、特殊な目的のための物質がさらに添加されて混合されたものであってよい。前記培地は、培養器または培養液ともいい、天然培地、合成培地または選択培地をすべて含む概念である。例えば、本発明においては、DMEM(Dulbecco’s modified Eagle medium)またはalpha-MEMを用いることができるが、これに制限されるものではない。その他、温度、培養時間などの培養条件は、通常の中間葉幹細胞の培養条件に従い得る。
【0043】
前記幹細胞の免疫調節および炎症調節能増進方法および免疫調節および炎症調節能が増進された幹細胞の製造方法において、幹細胞の免疫調節および炎症調節能増進は、幹細胞のTSG6(TNFα-stimulated gene-6)の発現増加、IDO(Indoleamine 2,3-dioxygenase)の発現増加、ICAM1(Intercellular Adhesion Molecule 1)の発現増加およびVCAM(vascular cell adhension molecule)の発現増加からなる群より選ばれた1種以上であり得る。
【0044】
本発明の方法において、免疫調節および炎症調節能増進用組成物と重複する内容は、明細書の記載の複雑性を避けるために省略する。
【0045】
また、本発明は、前記製造方法により製造された免疫調節および炎症調節能が増進された幹細胞を提供する。
【0046】
本発明による幹細胞は機能が強化された幹細胞であって、プライミングされた幹細胞と同一の意味を有する。本発明による幹細胞は、プライミング物質が処理されていない幹細胞と比較して、幹細胞が有している固有の性質および効果がさらにブースティングされた幹細胞である。好ましくは、TNF-α、IFN-γおよびIFN-α;またはTNF-α、IFN-γ、IFN-αおよびビタミン;を培養過程で処理することで、幹細胞が内在的に有している炎症調節および免疫調節能がブースティングされた幹細胞であってもよい。
【0047】
より具体的に、本発明の幹細胞は、TSG6、IDO、ICAM1およびVCAMからなる群より選ばれた1種以上の発現が増進されたことを特徴とすることができる。
【0048】
本発明の幹細胞が薬学的組成物として活用される場合、薬学的組成物は、薬学的組成物の製造に通常用いる適切な担体、賦形剤および希釈剤をさらに含んでもよい。また、薬学組成物の製造には、固体または液体の製剤用添加物を用いてもよい。製剤用添加物は、有機または無機のいずれであってもよい。
【0049】
賦形剤としては、例えば、乳糖、ショ糖、白糖、ブドウ糖、トウモロコシデンプン(corn starch)、デンプン、タルク、ソルビトール、結晶セルロース、デキストリン、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素などが挙げられる。結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、エチルセルロース、メチルセルロース、アラビアゴム、トラガカント(tragacanth)、ゼラチン、シェラック(shellac)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン(pectin)などが挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油などが挙げられる。着色剤としては、通常医薬品に添加することが許可されているものであれば、いずれも用いることができる。これらの錠剤、顆粒剤には、糖衣、ゼラチンコーティング、その他、必要に応じて適宜コーティングしてもよい。また、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤などを添加することができる。
【0050】
本発明の薬学的組成物は、当業界において通常製造されるいかなる剤形にも製造され得、製剤の形態は、特に限定されるものではないが、好ましくは、外用剤であってもよい。本発明の外用剤には、シート剤、液状塗布剤、噴霧剤、ローション剤、クリーム剤、パップ剤、粉剤、浸透パッド剤、噴霧剤、ゲル剤、パスタ剤、リニメント剤、軟膏剤、エアロゾル、粉末剤、懸濁液剤、経皮吸収剤などの通常の外用剤の形態が含まれ得る。これらの剤形は、すべての製薬化学に一般的に公知になっている処方書に記述されている。
【0051】
本発明の薬学的有効量は、患者の傷の種類、適用部位、処理回数、処理時間、剤形、患者の状態、補助剤の種類などによって変わり得る。使用量は、特に限定されないが、通常、本発明の薬学組成物の一日有効量を患者に適用時、0.00001乃至10000μgであってもよい。前記1日量は、1日に1回、または適当な間隔をおいて一日に2~3回に分けて投与してもよく、数日間隔で間欠投与してもよい。
【0052】
しかし、本発明の薬学的組成物の前記使用量は、投与経路、患者の年齢、性別、体重、患者の重症度、傷種類、適用部位、処理回数、処理時間、剤形、患者の状態、補助剤の種類などの様々な関連因子に照らして決定されるものであるので、前記有効量は、いかなる側面にも本発明の範囲を制限するものと理解されてはならない。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳しく説明しようとする。これらの実施例は、専ら本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されるものと解析されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって自明であるだろう。
【0054】
実施例1.幹細胞培養および候補物質の選定
37℃および5%CO2インキュベーターで、貯蔵状態(LN2 tank保管)の中間葉幹細胞を解凍して培養し、このとき、10%FBSまたは4%hPLを含有する培地(DMEM、alpha-MEM)で細胞コンフルエンスが80%程度に増殖されるまで培養した。培養した中間葉幹細胞を100mm dishにseedingした後、中間葉幹細胞の機能強化のための候補物質を24時間の間処理した後、機能強化のための1次候補物質の濃度を設定した。
【0055】
1次候補物質としては、TNF-α、IFN-γIFN-αを選定し、機能強化を確認するために、TSG6(TNFα-stimulated gene-6)とIDO(Indoleamine 2,3-dioxygenase)の発現を増加させることのできる最低有効濃度を確認するために、TNF-α 5、10、20ng/ml、IFN-γ 5、10、20ng/ml、IFN-α 10、20、40ng/mlをそれぞれ幹細胞に処理し、TSG6およびIDOの発現の変化を確認した。
【0056】
IDOは、T細胞増殖に必須的なトリプトファンをキヌレン酸(kynurenine)に替えることで、T細胞のような免疫細胞の増殖を抑制する免疫調節因子として知られており、TSG6は、中間葉幹細胞が分泌する抗炎症調節因子として知られている。幹細胞を培養した後、TRIzol(Invitrogen)を利用して総RNAを分離した後、PrimeScript
TMRT reagent Kit with gDNA Eraser(TaKaRa)を利用して総RNAでcDNAを合成してqRT-PCRを遂行した。各候補物質の濃度別の処理によるTSG6およびIDOの結果を
図1、
図2および
図3に示した。
【0057】
図1乃至
図3に示したように、TSG6およびIDOの発現をいずれも顕著に増加誘導することができる最低有効濃度でTNF-α10ng/ml、IFN-γ 10ng/mlおよびIFN-α 20ng/mlを確認し、以降、実験して該当濃度を基準として処理した。
【0058】
実施例2.幹細胞の機能強化のための組み合わせの選定
前記実施例1を通じて、幹細胞の機能強化を誘導するものと確認された候補物質および最低有効濃度に基づいてさらに強化された機能強化組成物を探索するために選定された候補物質、およびこれらの濃度の組み合わせを表1のように設定した。下記の表1に記載した候補の組み合わせを24時間の間中間葉幹細胞に処理して実施例1のように幹細胞を培養した後、TRIzol(Invitrogen)を利用して総RNAを分離した。以降、PrimeScriptTMRT reagent Kit with gDNA Eraser(TaKaRa)を利用して総RNAでcDNAを合成してqRT-PCRを遂行した。
【0059】
【0060】
これを通じて免疫および抗炎症調節の代表的な因子であるIDO、TSG6の発現の変化を確認し、その結果を
図4に示した。
【0061】
図4に示したように、未処理対照群のグループ0と比較して、すべての単一候補物質TNF-α、IFN-γおよびIFN-α処理群(実験群1乃至3)においてIDO、TSG6の発現増加が確認され、これらをそれぞれ組み合わせた実験群4乃至6において単一候補物質の処理群に対比してさらに顕著な発現増加が確認された。特に、TNF-αにIFN-γまたはIFN-αを処理した実験群4、5は、IFN-γおよびIFN-αのみを組み合わせた実験群6と比較して優れた効果を示し、3種類の候補物質をすべて組み合わせた処理群においては、驚くべきことに2つの組み合わせに対比して2倍以上増加された機能強化効果が確認された。
【0062】
よって、前記結果を通じて、TNF-α(10ng/ml)+IFN-γ(10ng/ml)+IFN-α(20ng/ml)の組み合わせを幹細胞に処理すると、非常に顕著な幹細胞の免疫および抗炎症機能強化が達成できることを確認した。
【0063】
実施例3.ビタミンの追加による幹細胞の機能強化効果の確認
3.1 ビタミン単独添加による幹細胞の機能強化効果の確認
ビタミンは、幹細胞の培養過程中に添加の際、幹細胞の増殖能力を改善させ、幹細胞のstemnessを維持させるものと知られている。よって、多様なビタミンを幹細胞の培養過程に処理し、ビタミンが幹細胞の抗炎症および免疫機能強化効果を達成できるか否かを確認するための実験を遂行した。具体的に、下記の表2に示した多様なビタミンの種類を実施例1に記載の方法によって幹細胞に処理し、各候補物質の処理によるIDOおよびTSG6の発現の変化を確認した結果を
図5に示した。
【0064】
【0065】
図5に示したように、ビタミン処理群は、幹細胞の抗炎症および免疫調節機能に関与するIDOおよびTSG6の発現の変化には有意な効果を示さなかった。
【0066】
3.2 ビタミンとTNF-α+IFN-γ+IFN-αの組み合わせによる幹細胞の機能強化効果の確認
上記のように単一物質では幹細胞の抗炎症および免疫調節機能強化の効果が示されないビタミンを、実施例2において確認した機能強化物質の組み合わせに添加する場合、シナジー効果を示すことができるか否かを確認するために、下記の表3のように、TNF-α(10ng/ml)+IFN-γ(10ng/ml)+IFN-α(20ng/ml)にそれぞれのビタミンを添加し、各組み合わせの処理によるIDOおよびTSG6の発現の変化を確認し、その結果を
図6に示した。
【0067】
【0068】
図6に示したように、ビタミン未処理実験群1と比較して実験群2、3、8、9においては、IDOおよびTSG6の発現が有意的に増加しておらず、実験群10は、TSG6の発現は増加したが、IDOにおいては、対照群に対比して発現の増加が確認されなかった。一方、ビタミンB2(実験群4)、ビタミンB3(実験群5)、ビタミンB5(実験群6)、ビタミンB6(実験群7)の場合には、有意的にIDOとTSG6の発現がすべて増加されることを確認した。TSG6の場合、TNF-α+IFN-γ+IFN-αを処理した実験群1と比較したとき、実験群4、5、6、7において、それぞれ49%、30%、35%、45%増加しており、IDOの場合、実験群1と比較したとき、実験群4、5、6、7において、それぞれ25%、37%、31%、18%増加されることを確認した。上記のような結果は、ビタミンを単独で幹細胞に処理する場合、幹細胞の抗炎症および免疫調節能を向上させることはできないが、TNF-α+IFN-γ+IFN-αとビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5またはビタミンB6を組み合わせて処理する場合、TNF-α+IFN-γ+IFN-αの効果をさらに高められることを示す結果である。
【0069】
実施例4.ICAM1およびVCAMの発現の変化の確認
ICAM1とVCAMはT細胞と結合を通じて、T細胞の増殖を抑制して死滅を誘導することで過度な免疫と炎症反応を減少させて多様な免疫および炎症関連疾患に効果を示すことができる。従って、前記実施例3の表3に記載の同一の実験群で24時間の間、中間葉幹細胞に処理し、実施例1のように幹細胞を培養した後、TRIzol(Invitrogen)を利用して総RNAを分離した。以降、PrimeScriptTMRT reagent Kit with gDNA Eraser(TaKaRa)を利用して総RNAでcDNAを合成してqRT-PCRを遂行した。
【0070】
幹細胞の免疫疾患および炎症疾患治療効果の増進有無を確認するために、幹細胞の表面に発現する付着因子であるICAM1(Intercellular Adhesion Molecule 1)とVCAM(vascular cell adhension molecule)の発現を確認し、その結果を
図7に示した。
【0071】
図7に示したように、ICAM1の場合、TNF-α+IFN-γIFN-αを処理した実験群1と比較したとき、実験群4、5、6、7において、それぞれ45%、100%、35%、45%増加し、VACMの場合、実験群1と比較したとき、実験群4、5、6、7において、それぞれ52%、69%、52%、69%増加されることを確認した。
【0072】
従って、TNF-α+IFN-γ+IFN-αとビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5またはビタミンB6の組み合わせを幹細胞に処理する場合、ICAM1およびVCAMの発現が顕著に増加し、これを通じて幹細胞の免疫調節能および抗炎症効能が促進され得る。
【0073】
前記のような実験結果を組み合わせると、TNF-α、IFN-γおよびIFN-α;またはTNF-α、IFN-γ、IFN-αおよびビタミン;を中間葉幹細胞に処理すると、中間葉幹細胞が有している免疫および炎症調節能力をさらに増進させ得ることが分かる。従って、TNF-α、IFN-γおよびIFN-α;またはTNF-α、IFN-γ、IFN-αおよびビタミンの組み合わせは、中間葉幹細胞の炎症調節および免疫調節機能強化のためのプライミング因子として活用され得る。
【0074】
以上、本発明内容の特定の部分を詳しく記述したところ、当業界における通常の知識を有している者にとって、このような具体的な技術は、単に好ましい実施様態であるだけであって、これによって本発明の範囲が制限されるものではない点は明らかであるだろう。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とそれらの等価物により定義されると言えるだろう。
【国際調査報告】