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特表2024-500520プラスチック廃材を水素化解重合するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】プラスチック廃材を水素化解重合するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C10G 1/10 20060101AFI20231226BHJP
   C10G 9/36 20060101ALI20231226BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20231226BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20231226BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20231226BHJP
   B01J 23/26 20060101ALI20231226BHJP
   B01J 23/883 20060101ALI20231226BHJP
   B01J 29/78 20060101ALI20231226BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C10G1/10
C10G9/36
B01J37/04 102
B01J37/08
B01J23/755 M
B01J23/26 M
B01J23/883 M
B01J29/78 M
B01J29/76 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539084
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(85)【翻訳文提出日】2023-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2022051275
(87)【国際公開番号】W WO2022157265
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】21152705.6
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513076604
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ミハン,シャフラム
(72)【発明者】
【氏名】フラーイエ,ボルカー
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA03A
4G169BA03B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BC50A
4G169BC51A
4G169BC54A
4G169BC58A
4G169BC58B
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC60A
4G169BC66A
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169CC04
4G169DA05
4G169FB05
4G169FB06
4G169FB14
4G169FB30
4G169FB57
4G169FC07
4G169FC10
4G169ZA02A
4G169ZA02B
4G169ZA03A
4G169ZA04A
4G169ZA08A
4G169ZA19A
4G169ZA19B
4H129AA01
4H129BA04
4H129BB05
4H129BC15
4H129BC16
4H129BC35
4H129BC37
4H129CA22
4H129DA03
4H129FA02
4H129KB03
4H129KC03X
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4H129KD12X
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4H129KD15X
4H129KD16X
4H129KD19X
4H129KD22X
4H129KD24X
4H129NA21
4H129NA26
4H129NA43
(57)【要約】
【解決手段】 本開示は、無機担体にFe、Mo、W、Ti、Ni、Cr、V、Co、Zrおよびこれらの混合物のうちの少なくとも1種を含む水素化成分と、酸化合物である解重合成分とを含む水素化分解触媒を用いて、20~500barの水素圧でプラスチック廃材を水素化解重合するためのプロセス、および該水素化解重合プロセスの生成物を原材料としてオレフィンを製造するためのプロセスに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー廃棄材料を水素化解重合するためのプロセスであって、
i) プラスチック廃材の原材料を提供するステップと、
ii) 無機担体上に担持されたFe、Mo、W、Ti、Ni、Cr、V、Co、Zrおよびこれらの混合物の少なくとも1種を含む水素化成分と、好ましくはAl、アルミノシリケート、シリカ、およびゼオライトの群、特にゼオライトY、ゼオライトβ、ゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトLおよびそれらの混合物、とりわけ、ゼオライトYおよびゼオライトβの群から選択される酸化合物である解重合成分とを含む水素化分解触媒を、前記プラスチック廃材の原材料と混合するステップと、
iii) 前記混合物を、水素ガスの存在下、反応器内にて20~500barの水素圧で解重合するステップと、
iv) 前記反応器の内容物を分離して、液体または液化可能な水素化解重合生成物を得るステップと、
v) 任意に、分離ステップiv)で得られた水素化分解触媒および/または水素リッチガス留分を前記反応器に再導入するステップと、
vi) 任意に、前記分離ステップivで得られたガス状留分を収集するステップと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記水素化成分の無機担体が解重合成分である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記水素化分解触媒が、前記水素化成分を含む水素化触媒と、前記解重合成分を含む解重合触媒との物理的混合物である、請求項1または2の少なくとも1項に記載のプロセス。
【請求項4】
前記水素化成分の無機担体の細孔容積が0.2~4ml/gである、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記水素化分解触媒は、前記水素化分解触媒の総重量に対して、0.5~25重量%の活性水素化種を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記水素化分解触媒と前記有機プラスチック廃材の原材料とを、1:500~1:10の触媒原材料(C/F)比で前記反応器に供給する、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
200~550℃、特に300~450℃の温度で水素化解重合を行う、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記プラスチック廃材は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリブテン(PB)およびこれらの混合物を含むか、またはこれらからなる群から選択されるプラスチック材料からなるか、またはこれを含むプラスチック廃材である、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記プラスチック廃材は揮発分の総含有量を有し、100℃および200mbarの圧力で2時間にわたる重量損失として測定されたプラスチック廃材中の揮発分の総含有量は、前記プラスチック廃材の総重量に対して、10重量%未満、好ましくは、5重量%未満、より好ましくは2重量%未満、特に1重量%未満である、請求項1~8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記プラスチック廃材は、嵩密度が50~500g/L、好ましくは75~400g/Lである細断プラスチック廃材であるか、または、前記プラスチック廃材は、嵩密度が300~700g/Lであるペレット形態であり、前記嵩密度は、DIN 53466に従って測定される、請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記プラスチック廃材は、ポリオレフィン含有量、特にポリプロピレン(PP)および/またはポリエチレン(PE)含有量を有し、前記ポリオレフィン含有量は、50重量%を超え、好ましくは60重量%を超え、より好ましくは70重量%を超え、とりわけ、80重量%を超え、特に90重量%を超える、請求項1~10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記プラスチック廃材は総塩素含有量を有し、前記プラスチック廃材の総塩素含有量は、前記プラスチック廃材の総重量に対して、1.0重量%未満、好ましくは0.5重量%未満である、請求項1~11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
得られた水素化解重合生成物の臭素価で表されるオレフィン化合物含有量が、前記水素化解重合生成物の総重量に対して、20未満、好ましくは15未満、特に10以下であり、および/または得られた水素化解重合生成物のH-NMRスペクトルが、10モル%未満、好ましくは5モル%未満、特に3モル%以下の芳香族プロトンを示す、請求項1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記水素化分解触媒の水素化成分は、
(a) Fe、Mo、W、Ti、Ni、Cr、V、Co、Zrおよびそれらの混合物のうちの少なくとも1種の前駆体化合物であって、それぞれの塩の形態である前駆体化合物を提供するステップと、
(b) 前記前駆体化合物を極性溶媒に溶解するステップと、
(c) 無機担体を提供するステップと、
(d) 溶解した前記前駆体化合物を初期湿潤含浸によって前記無機担体上に堆積させて、水素化成分前駆体を得るステップと、
(e) ステップd)で得られた水素化成分前駆体を乾燥するステップと、
(f) 前記乾燥した水素化成分前駆体を200℃~850℃の温度で処理するステップと、
(g) ステップf)の生成物を冷却して前記水素化分解触媒の水素化成分を得るステップと、を含むプロセスにより得られる、ことを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
オレフィンを製造するためのプロセスであって、
i) プラスチック廃材の原材料を提供するステップと、
ii) 無機担体上に担持されたFe、Mo、W、Ti、Ni、Cr、V、Co、Zrおよびこれらの混合物の少なくとも1種を含む水素化成分と、酸性化合物である解重合成分とを含む水素化分解触媒を、前記プラスチック廃材の原材料と混合するステップと、
iii) 前記混合物を反応器に導入し、水素ガスで処理するステップと、
iv) 前記反応器の内容物を分離して、液体または液化可能な水素化解重合生成物を得るステップと、
v) 任意に、分離ステップiv)で得られたガス状留分を収集するステップと、
vi) 前記水素化解重合生成物を水蒸気分解装置に導入して、オレフィンを含む生成物を形成するステップと、を含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、SiO、Al、AlPOおよびAl/Si混合酸化物から選択される少なくとも1種機担体上に担持されたFe、Mo、W、Ti、Ni、Cr、V、Co、Zrおよびそれらの混合物を含む水素化分解触媒の存在下でプラスチック廃材を水素化解重合するためのプロセス、および該水素化解重合プロセスの生成物を原材料としてオレフィンを製造するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックなどのポリマー製品は人間の生活で広く応用されており、廃プラスチック材料は深刻な汚染問題を引き起こしている。原材料リサイクルは廃プラスチック材料を管理するプロセスの一つであり、プラスチック廃棄物を熱分解して化学中間体に変換することはますます現在の研究の焦点になっている。不活性雰囲気下での廃プラスチック材料の直接熱分解は良好に実証されているが、通常のバッチ生産、収率、得られる製品の品質、炭化度の点で改善される。
【0003】
W.M.Lewandowskiらは、分析と応用熱分解雑誌140(2019),25-53に掲載された論文「廃タイヤ熱分解生成物の効率と比率は反応器の種類に依存する-総説」において、異なる熱分解反応器の現在の使用状況、構造、廃タイヤ熱分解リサイクルの主要な生成物の収率に関する操作原理を議論し、現在の技術の概要を提供した。
【0004】
プラスチック廃材、特にプラスチック廃棄物の管理プロセスをさらに最適化するために、収率とエネルギー効率に関して一般的に採用されている解重合プロセスを改善する努力がなされてきた。
【0005】
WO 2012/076890 A1は、プラスチック材料(特に廃プラスチック材料)を化学原材料および炭化水素留分にリサイクルする連続プロセスに関する。前記の廃プラスチック材料をリサイクルするためのプロセスは、(i)少なくとも1種の反応室を含む反応器に廃プラスチック材料を原材料として連続的に導入するステップと、(ii)任意に、脱塩素化反応室に原材料と水素ガスとを導入し、脱塩素化反応室を高温Tかつ圧力Pに維持し、脱塩素化反応室からHClを回収し(存在する場合)、脱塩素化反応室から脱塩素化原材料をそれぞれ回収するステップと、(iii)ステップ(i)からの原材料、またはステップ(ii)からの脱塩素化原材料と水素を水素化反応室に導入し、水素化反応室を温度T、圧力Pに維持し、原材料を触媒と接触させるステップと、(iv)水素化反応室から水素化原材料を回収するステップと、(v)任意に、水素化反応室から水素化されていないまたは部分水素化された原材料を水素化反応室に再導入するステップと、を含む。特許請求の範囲に記載のプロセスにおいて使用される触媒は、酸化ナトリウム含有量が0.1%以下であるゼオライトを含み、任意に遷移金属を含むゼオライト触媒であってもよい。米国特許第2019/0299490 A1号は、混合プラスチックの同時熱分解と脱塩素化を含む混合プラスチックの処理プロセスに関する。このプロセスは、混合プラスチックを熱分解ユニット内でゼオライト触媒と接触させて、気相および液相を含む炭化水素生成物を生成することと、炭化水素生成物を炭化水素ガス流と炭化水素液体流に分離することと、を含む。好ましい実施形態では、炭化水素液体流は、後続の水素化処理ユニットに搬送される。
【0006】
WO 2010/139997 A2は、廃プラスチック材料のリサイクルに使用される改質ゼオライト触媒を製造する方法を記載しており、この方法は、(i)NaO含有量が2.0~4.0%である市販のゼオライトY触媒を得るステップと、(ii)任意に、ゼオライトをアンモニウム塩溶液と50~85℃で10~60分間混合することを含むイオン交換プロセスをゼオライトに施すステップと、(iii)ゼオライトとアンモニウム塩溶液とを60~100℃で60~240分間混合することを含むイオン交換プロセスを、ステップ(i)またはステップ(ii)のゼオライトに施すステップと、(iv)ステップ(iii)で得られたゼオライトを450~800℃で10~60分間蒸気焼成するステップと、(v)ステップ(iv)のゼオライトをアンモニウム塩溶液と50~95℃で10~120分間混合することを含むイオン交換プロセスを、ステップ(iv)のゼオライトに施すステップと、(vi)任意に、ステップ(v)のゼオライトを遷移金属塩溶液と混合することを含むイオン交換プロセスを、ステップ(v)のゼオライトに施すステップと、を含む。この触媒は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリクロロプロピレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリウレタンなどの廃プラスチック材料のリサイクルに有用である。
【0007】
米国特許第2018/0201847 A1号は、輸送用燃料を製造するために、問題のある原料をアップグレードして供給するプロセスに関するものである。このプロセスは、廃プラスチックを水素供給剤として使用した重質原油・残留物のアップグレードに重点を置いている。重質原油および残留物をアップグレードするために、重質原油および残留物と廃プラスチックとを混合して反応容器に供給し、130~220℃の温度範囲で予熱した後、反応器内に水素の存在下、350~450℃の温度範囲で撹拌しながらさらに加熱して水素化反応を行い、所望の生成物を分離する。CN 103980938 Aは、塩素化プラスチック油を触媒蒸留塔、低圧液相水素化塔、水洗塔、水素化精製塔、蒸留塔の順に通過させる、塩素化プラスチック油からクリーン燃料を製造する方法である。触媒蒸留塔で使用される触媒は、アルミナに担持されたゼオライト等のモレキュラーシーブである。低圧液相水素化塔では、水素化脱塩素化触媒として担持金属触媒を用いている。
【0008】
米国特許第4,941,966号は、油と有機廃棄物の混合物を水素化変換するプロセスを記載しており、このプロセスは、i)重油、残留油若しくはその混合物、または使用済み油、廃油若しくはその混合物、および未架橋または架橋炭素鎖を含む天然または合成有機化合物を含む1つ以上の有機廃棄物を含む水素化混合物を調製するステップと、(ii)水素化混合物を、炭素、赤泥、酸化鉄、静電ろ過ダストおよびサイクロンダストを含む高表面積固体から選択される添加剤と接触させ、ここで、添加剤は、2つの異なる粒径範囲の粒子を含むステップと、(iii)接触混合物を50~350barの水素分圧で水素化するステップと、を含む。
【0009】
米国特許第6,171,475B1号は、制御された水素化によってエチレン不飽和モノマーから誘導されるポリマーまたはオリゴマーをアルカンまたは炭化水素留分若しくは低級オリゴマー留分に変換するプロセスであって、該ポリマーまたはオリゴマーを、鉱物担体上に担持された金属水素化物または有機金属錯体に基づく触媒に曝し、該錯体が少なくとも1種の炭化水素配位子および任意に少なくとも1種の水素化物配位子を有し、得られた混合物を水素と反応させて該ポリマーまたはオリゴマーの接触水素化を引き起こす方法に関する。
【0010】
WO 2013/169462 A1は、炭化水素のアップグレードプロセスを記載しており、このプロセスは、(a)水蒸気分解装置、接触分解装置、コーカー、水素化分解装置および改質装置のうちの少なくとも1種において適切な条件下で炭化水素原料を処理して、オレフィン系炭化水素および芳香族炭化水素を含む第1の流れを生成するステップと、(b)第1の流れからC~C12オレフィンおよび芳香族炭化水素を主成分とする第2の流れを回収するステップと、(c)水素を添加することなく、450~700℃の温度を含む反応条件下で、第2の流れの少なくとも一部を触媒と接触させて、第2の流れの成分を脱アルキル化、トランスアルキル化、分解および芳香化し、第2の流れに比べてベンゼンおよび/またはトルエンの含有量が増加した第3の流れおよびC-オレフィン副生成物を生成するステップと、(d)第3の流れからC-オレフィンを回収するステップと、(e)トルエンを含む第4の流れを第3の流れから分離するステップと、を含む。アップグレードプロセスで使用される触媒はゼオライトYを含む。
【0011】
WO 2018/055555 A1は、熱分解、水素化処理、水素化脱アルキル化、および水蒸気分解を含むプロセスによる混合プラスチックからの炭化水素流の製造に関するものであり、ここで、C~Cの範囲のモノマー芳香族炭化水素および軽ガスオレフィンが好ましい生成物である。このプロセスは、触媒を使用することを含み、触媒は、1つ以上の金属を含むゼオライトであってもよく、前記ゼオライトは、好ましくはZSM-5、ZSM-11、Y、高シリカY、USY、またはこれらの組み合わせを含む。
【0012】
米国特許第2018/0002609 A1号は、混合プラスチック流からの熱分解生成物中の塩素を還元する方法を開示しており、(a)少なくとも一部が塩素化プラスチックを含むプラスチック原材料を熱分解して、C~Cガス状炭化水素および軽質ガス状オレフィンを含む第1の流れと、5個以上の炭素原子を有する炭化水素を含む第2の流れとを生成するステップと、(b)第2の流れと水素ガスとを水素化分解装置に供給して、C~Cガス状炭化水素ガスを含む第3の流れと、5個以上の炭素原子を有する炭化水素を含む第4の流れとを生成するステップと、(c)第4の流れを(i)蒸気分解装置に供給して、C~Cガス状炭化水素および軽質ガス状オレフィンを含む第5の流れとC~C炭化水素を含む第6の流れと、8個以上の炭素原子を有する炭化水素を含む第7の流れとを生成し、または(ii)流動化接触分解装置に供給して、C~Cガスおよび軽質ガスオレフィンを含む第8の流れと、5個以上の炭素原子を有する炭化水素を含む第9の流れとを生成するステップと、を含む。
【0013】
プラスチック廃材をリサイクルするプロセスにはいくつかの改良が加えられているが、多くの異なるポリマー廃棄物原材料のリサイクルを可能にし、特に蒸気分解装置の原材料、特にオレフィンの製造のために直接使用できる、高い液体含有量と低い芳香族およびオレフィン系成分含有量を有する生成流れを生成する効果的なプロセスが必要である。
【0014】
したがって、オレフィンの製造などのさらなる処理のために水蒸気分解装置に直接供給できる生成物を生成する水素化解重合プロセスを提供する必要がある。驚くべきことに、無機酸化物上に担持された活性水素化種を含む触媒の存在下でプロセスを実施することにより、上記の必要性が満たされ得ることが見出された。
【発明の概要】
【0015】
一般に、本開示は、プラスチック廃材を水素化解重合するためのプロセスであって、このプロセスは、
i) プラスチック廃材の原材料を提供するステップと、
ii) 無機担体上に担持されたFe、Mo、W、Ti、Ni、Cr、V、Co、Zrおよびこれらの混合物の少なくとも1種を含む水素化成分と、好ましくはAl、アルミノシリケート、シリカ、およびゼオライトの群、特にゼオライトY、ゼオライトβ、ゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトLおよびそれらの混合物、とりわけ、ゼオライトYおよびゼオライトβの群から選択される酸化合物である解重合成分とを含む水素化分解触媒をプラスチック廃材の原材料と混合するステップと、
iii) 前記混合物を、水素ガスの存在下、反応器内にて20~500barの水素圧で解重合するステップと、
iv) 反応器の内容物を分離して、液体または液化可能な水素化解重合生成物を得るステップと、
v) 任意に、分離ステップiv)で得られた水素化分解触媒および/または水素リッチガス留分を前記反応器に再導入するステップと、
vi) 任意に、前記分離ステップivで得られたガス状留分を収集するステップと、を含む、プロセスに関する。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記水素化成分の無機担体が解重合成分である。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記水素化分解触媒が、水素化成分を含む水素化触媒と、解重合成分を含む解重合触媒との物理的混合物である。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記水素化成分の無機担体の細孔容積が0.2~4ml/gである。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記水素化分解触媒は、前記水素化分解触媒の総重量に対して0.5~25重量%の活性水素化種を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記水素化分解触媒と前記有機プラスチック廃材の原材料とを、1:500~1:10の触媒原材料(C/F)比で前記反応器に供給する。
【0021】
いくつかの実施形態では、200~550℃、特に300~450℃の温度で水素化解重合を行う。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記プラスチック廃材は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリブテン(PB)およびこれらの混合物を含むか、またはこれらからなる群から選択されるプラスチック材料からなるか、またはこれを含むプラスチック廃材である。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記プラスチック廃材は揮発分総含有量を有し、100℃および200mbarの圧力で2時間にわたる重量損失として測定されたプラスチック廃材中の揮発分の総含有量は、前記プラスチック廃材の総重量に対して、10重量%未満、好ましくは、5重量%未満、より好ましくは2重量%未満、特に1重量%未満である。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記プラスチック廃材は、嵩密度が50~500g/L、好ましくは75~400g/Lである細断プラスチック廃材であるか、または、前記プラスチック廃材は、嵩密度が300~700g/Lであるペレット形態であり、前記嵩密度は、DIN 53466に従って測定される。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記ポリマー廃棄物は、ポリオレフィン含有量、特にポリプロピレン(PP)および/またはポリエチレン(PE)含有量を有し、前記ポリオレフィン含有量は、50重量%を超え、好ましくは60重量%を超え、より好ましくは70重量%を超え、とりわけ、80重量%を超え、特に90重量%を超える。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記プラスチック廃材の総塩素含有量が、前記プラスチック廃材の総重量に対して、1.0重量%未満、好ましくは0.5重量%未満である。
【0027】
いくつかの実施形態では、得られた水素化解重合生成物の臭素価で表されるオレフィン系化合物含有量が、前記水素化解重合生成物の総重量に対して、20未満、好ましくは15未満、特に10以下であり、および/または得られた水素化解重合生成物のH-NMRスペクトルが、10モル%未満、好ましくは5モル%未満、特に3モル%以下の芳香族プロトンを示す。
【0028】
いくつかの実施形態では、前記水素化分解触媒の水素化成分は、
(a) Fe、Mo、W、Ti、Ni、Cr、V、Co、Zrおよびそれらの混合物のうちの少なくとも1種の前駆体化合物であって、それぞれの塩の形態である前駆体化合物を提供するステップと、
(b) 前記前駆体化合物を極性溶媒に溶解するステップと、
(c) 無機担体を提供するステップと、
(d) 溶解した前記前駆体化合物を初期湿潤含浸によって前記無機担体上に堆積させて、水素化成分前駆体を得るステップと、
(e) ステップd)で得られた水素化成分前駆体を乾燥するステップと、
(f) 前記乾燥した水素化成分前駆体を200℃~850℃の温度で処理するステップと、
(g) ステップf)の生成物を冷却して前記水素化分解触媒の水素化成分を得るステップと、を含む方法により得られる。
【0029】
本開示の別の態様は、本開示のプロセスにより得られた水素化解重合生成物を蒸気分解装置の原料として使用することである。
【0030】
本開示の別の態様は、無機担体上に担持された、Fe、Mo、W、Ti、Ni、Cr、V、Co、Zrおよびそれらの混合物のうちの少なくとも1種を含む水素化成分と、有機廃棄物を水素化解重合するための酸性化合物である解重合成分とを含む水素化分解触媒の使用である。
【0031】
いくつかの実施形態では、水素化分解触媒の水素化成分は、解重合成分を含む解重合触媒と組み合わせて使用され、解重合成分は、酸性化合物、好ましくはAl、アルミノシリケート、シリカおよびゼオライト、特にゼオライトY、ゼオライトβ、ゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトLおよびそれらの混合物、とりわけ、ゼオライトYおよびゼオライトβからなる群から選択される。
【0032】
本開示の別の態様は、オレフィンを製造するプロセスであって、
(i) プラスチック廃材の原材料を提供するステップと、
ii) 無機担体上に担持されたFe、Mo、W、Ti、Ni、Cr、V、Co、Zrおよびこれらの混合物の少なくとも1種を含む水素化成分と、酸性化合物である解重合成分とを含む水素化分解触媒を、前記プラスチック廃材の原材料と混合するステップと、
iii) 前記混合物を反応器に導入し、水素ガスで処理するステップと、
iv) 前記反応器の内容物を分離して、液体または液化可能な水素化解重合生成物を得るステップと、
v) 任意に、分離ステップiv)で得られたガス状留分を任意に収集するステップと、
vi) 前記水素化解重合生成物を水蒸気分解器に導入して、オレフィンを含む生成物を形成するステップと、を含む、プロセスである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本開示の第1の実施形態では、プラスチック廃材を水素化解重合するためのプロセスが提供され、このプロセスは、
i) プラスチック廃材の原材料を提供するステップと、
ii) 無機担体上に担持されたFe、Mo、W、Ti、Ni、Cr、V、Co、Zrおよびこれらの混合物の少なくとも1種を含む水素化成分と、好ましくはAl、アルミノシリケート、シリカ、およびゼオライトの群、特にゼオライトY、ゼオライトβ、ゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトLおよびそれらの混合物、とりわけ、ゼオライトYおよびゼオライトβの群から選択される酸化合物である解重合成分とを含む水素化分解触媒をプラスチック廃材の原材料と混合するステップと、
iii) 水素の存在下で混合物を解重合するステップと、
iv) 任意に、ガス状反応生成物を収集するステップと、
v) 任意に、反応器の内容物を分離して、所望の水素化解重合生成物を得るステップと、
vi) 任意に、水素化分解触媒および/または反応器ガスを反応器に再導入するステップと、を含む。
【0034】
驚くべきことに、本開示の特定の水素化分解触媒の存在下で水素化解重合を行うことは、文献に先に記載されたものよりも低い温度および低い水素圧で水素化解重合を行うことを可能にする。
【0035】
本開示の水素化解重合プロセスは、ガス状反応生成物の生成量が少なく、得られる水素化解重合生成物中の芳香族化合物およびオレフィン系化合物の含有量が少なく、水素化解重合プロセスを実施するための反応器中のコークスの生成量が少ないことを特徴とする。加えて、ポリ芳香族炭化水素(例えば、アスファルテン)、ダイオキシン類、チャーに対する副反応も大幅に抑制される。したがって、得られた水素化解重合生成物は、更なる精製または前処理を必要とせずに、更なる処理のために蒸気分解装置に直接供給することができるので、本開示のプロセスは、高い時間的およびエネルギー的効率を有する。
プラスチック廃材の原材料
【0036】
一般的な水素化解重合プロセスは、通常、特定の廃棄物に限定されており、ほとんどの場合、これらの廃棄物はリサイクルプロセスに導入される前に前処理が必要である。一方、本開示の水素化解重合プロセスは、プラスチック廃棄物や分解油滓のような種々のプラスチック廃材のリサイクルに適していることが判明した。本開示のプロセスで使用されるプラスチック廃材の原材料は、実質的に全てのポリマー材料、特に合成ポリマーから形成されるものを含むことができる。非限定的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエステル、天然ゴムおよび合成ゴム、タイヤ、充填ポリマー、複合材料およびプラスチック合金、溶剤に溶解されたプラスチックなどが含まれる。プラスチック廃棄材料のための本開示のプロセスを開発する過程で、驚くべきことに、他の炭化水素材料がプラスチック廃材の原材料としても使用可能であることが判明した。これらの炭化水素は、バイオマス等を含むことができる。したがって、本明細書は、主にプラスチック原料の水素化解重合を対象としているが、本開示のプロセスは他の炭化水素の使用にも適用可能であり、その使用も含むことが理解されるべきである。軽質ガスオレフィンを製造する必要がある場合、ポリオレフィンを主成分とするか、ポリオレフィンを多量に含むプラスチック原材料が好ましい。種々の異なるプラスチックおよび炭化水素材料の混合物を無制限に使用することができる。
【0037】
本開示のプラスチック廃材の原材料は、1種類のプラスチック廃材からなることができ、または2種類以上の異なるポリマー廃棄材の混合物であってもよい。プラスチック廃材の原材料は、種々の異なる形態で提供することができる。小規模な操作では、プラスチック廃材の原材料を粉末の形態とすることができる。大規模な操作では、プラスチック廃材の原材料は、1~20mm、好ましくは2~10mm、より好ましくは2~8mmの粒径を有するペレットの形態であってもよいし、好ましくは1~20mmの粒子のフレークおよび/またはフィルムの小片の形態であってもよい。本開示の文脈において、規定の範囲内の粒径を有するとは、粒子の90重量%が規定の範囲内の直径を有することを意味する。粒径は、ふるい分けにより、またはBeckman Coulters LS13320レーザー回折粒径分析装置を用いて決定され得る。プラスチック廃材の原材料は、エチレン分解残留物(ECR)であってもよい。本開示によれば、ポリマー材料は、少なくとも500g/mol、好ましくは500g/mol~20000,000g/mol、より好ましくは1000g/mol~15000,000g/mol、特に2000g/mol~10000,000g/molの重量平均分子量を有する材料である。
【0038】
本開示のプロセスで使用されるプラスチック廃材の原材料中のプラスチック廃材の量は、好ましくは50~99重量%、より好ましくは60~97重量%、最も好ましくは70~95重量%、特に75~97重量%である。
【0039】
プラスチック廃材は、主としてプラスチック材料で構成されており、プラスチック廃材の主成分を形成するポリマータイプの名前が付けられていることが多い。好ましくは、本開示のプロセスにおいて原料として使用されるプラスチック廃材は、ポリマー材料の総重量の25重量%を超え、好ましくは40重量%を超え、より好ましくは50重量%を超えて含有する。プラスチック廃材中の他の成分は、例えば、充填剤、補強材、加工助剤、可塑剤、顔料、光安定剤、潤滑剤、耐衝撃性改質剤、帯電防止剤、インク、酸化防止剤等の添加剤である。
【0040】
本開示のプロセスで使用されるプラスチック廃材は、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)、ポリプロピレン(PP)およびポリスチレン(PS)などのポリオレフィンおよびポリスチレンを含むことが好ましい。特に、ポリオレフィンとポリスチレンの混合物を含むプラスチック廃材が好ましい。
【0041】
ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン(PU)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ナイロンおよびフッ素化ポリマーなどの他のプラスチック廃材も、本開示のプロセスに使用することができる。プラスチック廃材中に存在する場合、これらのポリマーは、プラスチック廃材の原材料の乾燥重量の総重量に対して、好ましくは50重量%未満、好ましくは30重量%未満、より好ましくは20重量%未満、さらに好ましくは10重量%未満の量で存在する。
【0042】
好ましくは、プラスチック廃材は、1種以上の熱可塑性ポリマーを含み、熱硬化性ポリマーを実質的に含まない。この点で実質的に含まれていないとは、熱硬化性ポリマーの含有量が、プラスチック廃材の原材料に対して、15重量%未満、好ましくは10重量%未満、さらに好ましくは5重量%未満であることを意味する。
【0043】
本開示のプロセスで使用されるプラスチック廃材は、単一のプラスチック廃棄物、規格上のまたは規格外の単一のバージンプラスチック、混合プラスチック廃棄物、ゴム廃棄物、分解油残留物、バイオマスまたはこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。単一のプラスチック廃棄物、規格外の単一のバージンプラスチック、混合プラスチック廃棄物、ゴム廃棄物、またはそれらの混合物が好ましい。特に、規格外の単一のバージンプラスチック、混合プラスチック廃棄物、またはこれらの混合物が好ましい。
【0044】
驚くべきことに、本開示のプロセスは、プラスチック廃材の汚染物質として、水、ガラス、石、金属等のような、の制限量の非熱分解性成分が存在していても、良好な結果を得ることができる。「制限量」とは、好ましくは、乾燥プラスチック廃材の原材料の総重量に対して50重量%未満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは10重量%未満の量を指す。
【0045】
プラスチック廃材は、任意に、本開示のプロセスにおいて原料として使用する前に押し出されてもよい。好ましい実施形態では、プラスチック廃材がペレット化され、本開示のプロセスでは、このペレットが原料として使用される。他の好ましい実施形態では、プラスチック廃材は、例えば200℃から300℃の温度で、溶融状態で反応器に供給される
【0046】
本開示のプロセスにおいて原料として使用されるプラスチック廃材は、好ましくは、さらに以下の特徴のうちの少なくとも1つを特徴とする。
i) 100℃および200mbarの圧力で2時間にわたる重量損失として測定した揮発分(TV)の総含有量が、プラスチック廃材の原材料の総重量に対して、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満、特に1重量%未満であること
ii) プラスチック廃材は、嵩密度が50g/l~500g/l、好ましくは75g/l~400g/lである、細断され、任意に圧縮されたプラスチック廃材であるか、または、嵩密度が300g/l~700g/lのペレット形態のプラスチック廃材であり、前記嵩密度は、DIN 53466に従って測定されること
iii) プラスチック廃材中のポリオレフィンの含有量、特にポリプロピレン(PP)および/またはポリエチレン(PE)の含有量が、プラスチック廃材の原材料の総重量に対して、50重量%を超え、好ましくは60重量%を超え、より好ましくは70重量%を超え、特に80重量%を超え、特に90重量%を超えること
iv) プラスチック廃材中の極性ポリマー汚染物質の量が、プラスチック廃材の総重量に対して、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは3%未満であること
v) プラスチック廃材中のセルロース、木材および/または紙の量が、プラスチック廃材の総重量に対して、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは3%未満であること
vi) 総塩素含有量が、プラスチック廃材の総重量に対して、1.0重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満であること
vii) ポリマー廃棄物を空気中800℃で120時間加熱した後に残留物として決定された、プラスチック廃材の原材料の総灰分含有量が、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満、最も好ましくは1重量%未満であること。他の好ましい実施形態では、灰分の含有量は、0.01~2重量%、好ましくは0.02~1.5重量%、より好ましくは0.05~1.0重量%である。
【0047】
本開示の好ましい実施形態では、本開示のプロセスにおいて原料として使用されるプラスチック廃材は、重量百分率で表される微量成分、構成成分または不純物の上限によって規定される。プラスチック廃材中のこれらの成分、構成成分または不純物の量の下限が検出限界以下であること、または下限が0.001重量%若しくは0.01重量%、または0.1重量%であることが好ましい。
【0048】
プラスチック廃材の流れ中の材料を分離するための多くの技術が知られている。移動層、ドラム、スクリーン、空気分離器を使用して、サイズ、重量、密度に応じて材料を識別する。プラスチック廃棄物を分光法技術(MIR、NIR[近赤外])、X線または蛍光分光法により高度に選別することにより、高品質のポリオレフィン含有プラスチック廃棄物の流れを提供することができる。
【0049】
廃プラスチックの自動分離技術には、乾式選別技術、静電選別技術、機械的選別法(遠心力、比重、弾性、粒子形状、選択的粉砕および機械的性質を含む)、湿式選別プロセス(浮沈選別法など)および化学的選別法がある。
【0050】
本開示のプロセスのための適切な原料は、例えば、B.Rujら:効果的なリサイクルのためのプラスチック廃棄物選別、Int.J.応用科学工学Res 4、2015、564-571等に要約されているような、任意の公知の選別技術を適用することによって得ることができる。
水素化分解触媒
【0051】
このプロセスは、無機担体上に担持された活性水素化種として、Fe、Mo、W、Ti、Ni、Cr、V、Co、Zrおよびそれらの混合物のうちの少なくとも1種を含む水素化成分を含む水素化分解触媒の存在下で行う。このタイプの触媒は重合反応での活性については知られているが、驚くべきことに、このタイプの触媒は水素化分解反応にも首尾よく使用することができ、芳香族炭化水素とオレフィン系含有量が低く、水蒸気分解の原料として直接使用することができる水素化分解生成物を製造することができることが判明した。活性水素化種は、Fe/Mo、Fe/W、Ni/Mo、Ni/W、Cr/Mo、Ni/V、Ni/CoおよびCr/Wからなる群から選択される混合物であることが好ましい。
【0052】
Fe、Mo、W、Ti、Ni、Cr、V、Co、Zrおよびこれらの混合物のうちの少なくとも1種を担持する担体は、任意の無機担体であってもよい。担体は、SiO、Al、AlPOおよびAl/Si混合酸化物からなる群から選択されることが好ましい。本開示において特に好ましいAl/Si混合酸化物は、AlとSiOとの混合物を含み、中性構造を有する材料である。
【0053】
本開示の水素化分解触媒は、酸化合物、好ましくはAl、アルミノシリケート、シリカおよびゼオライトからなる群から選択される解重合成分をさらに含む。本開示におけるゼオライトは、一般的な構造M+x/n[AlOxSiO)y]zHOを有する角共有SiO 、およびAlO-四面体で構成される結晶性微多孔質アルミノシリケートと理解される。ここで、nはカチオンMの電荷であり、一般的にアルカリ金属またはアルカリ土類金属または水素イオンであり、好ましくは、H、Na、Ca2+、KおよびMg2+からなる群から選択されるイオンであり、zは結晶構造中に結合する水分子の数を定義する。ゼオライトと混合Al/Si酸化物との相違点は、それらが決定した細孔構造とイオン特性である。ゼオライトは、特に流動接触分解(FCC)と水素化分解(HC)で知られている触媒である。特に好ましい態様では、解重合成分として用いられるゼオライトは、ゼオライトY、ゼオライトβ、ゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトL、およびこれらの混合物、特にゼオライトYおよびゼオライトβからなる群から選択される。列挙されたゼオライトはよく知られており、入手することができる。特に、金属イオンMが水素で置換されたゼオライトが好ましい。本開示で使用される適切なゼオライト型成分の他の具体例としては、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48、ZSM-50、TS-1、TS-2、SSZ-46、MCM-22、MCM-49、FU-9、PSH-3、ITQ-1、EU-1、NU-10、シリカライト-1、シリカライト-2、ボラライト-C、ボラライト-D、BCA、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。代替的にまたは追加的に、解重合成分は、例えばシリカ、アルミナ、カオリン、粘土、またはこれらの任意の混合物を含むことができる非晶質化合物を含むことができる。特に砂型シリカはFCC触媒用途でよく知られている。
【0054】
本開示の好ましい実施形態では、水素化分解触媒の水素化成分の無機担体は、水素化分解触媒の解重合成分である。これらの実施形態では、Fe、Mo、W、Ti、Ni、Cr、V、Co、Zrおよび混合物のうちの少なくとも1種が、担体として機能する解重合成分に担持されている。
【0055】
特に好ましい実施形態では、水素化成分の無機担体はAl/Si混合酸化物である。担体として使用されるAl/Si混合酸化物の組成は、必要に応じて調整することができるしかしながら、担体がAlとSiOとを特定量含有する場合には、特に有利な水素化解重合結果が得られる。したがって、好ましい実施形態では、担体は、Alを、担体の総重量に対して20~99重量%、好ましくは30~80重量%、特に40~70重量%含有する。さらに、担体は、担体の総重量に対して、SiOを、1~80重量%、好ましくは20~70重量%、特に30~60重量%含有することが好ましい。
【0056】
驚くべきことに、無機担体がAlをわずかに過剰に含有していれば、水素化解重合プロセスの結果をさらに改善することも可能であった。したがって、好ましい実施形態では、担体は過剰のAlを含む。さらに好ましくは、担体中のAlとSiOの重量比が99:1~30:70、好ましくは9:1~3:2、特に4:1~3:2である態様が好ましい。
【0057】
無機担体中のSiOおよびAlの含有量の測定は、誘導結合プラズマ(ICP-AES)の原子発光分光法を用いて行うことができる。
【0058】
驚くべきことに、無機担体の平均粒径を一定の範囲内に維持すれば、粒子担体を使用した場合に一般的に見られる欠点を回避できることが判明した。したがって、担体の平均粒径D50が5~300μm、好ましくは5~100μm、より好ましくは10~80μm、特に10~50μm、特に15~40μmである態様が好ましい。担体は、粒径D50が20~50μmであってもよい。体積メジアン径D50とは、この値より小さいまたは大きい直径を有する粒子の部分が50%であることを指し、ASTM D4438に準拠したコールターカウンター分析に従って決定することができる。特に好ましい態様では、無機担体粒子の少なくとも5体積%の粒径が0.1~3μmの範囲にあり、および/または少なくとも40体積%の粒径が0.1~12μmの範囲にあり、および/または少なくとも75体積%の粒径が0.1~35μmの範囲にあり、体積%は粒子の総体積に基づく。
【0059】
さらに好ましい態様では、BET法により求められる平均細孔径が1~100nm、好ましくは2~80nm、より好ましくは5~60nmである無機担体を用いる。
【0060】
本開示で使用される細孔径とは、一般に、細孔の対向する2つの壁の間の距離、すなわち、円筒形の細孔の場合には細孔の直径であり、スリップ形状の細孔の場合には細孔の幅である。
【0061】
BETの方法は当業者に公知であり、S.Brunauerら、Journal of the American Chemical Society、60、209~319頁、1929年に記載されている。
【0062】
水素化分解触媒の水素化成分の無機担体は、好ましくは0.2~4ml/g、より好ましくは0.5~3ml/g、特に0.6~2ml/gまたは0.8~2ml/gの細孔容積を有する。
【0063】
さらに好ましい態様では、カールフィッシャー滴定法により測定された水素化成分の無機担体の水分含有量が、担体の総含量に対して、0.2~10%、好ましくは0.3~5%である。
【0064】
固体触媒の活性は、その表面積に強く影響される可能性がある。本開示において、無機担体は、BET法により測定された比表面積が5~800m/g、より好ましくは100~600m/g、特に150~500m/g、特に100~400m/gであることが好ましい。
【0065】
本開示のプロセスで使用される水素化分解触媒は、水素化分解触媒の総重量に対して、活性水素化種を、好ましくは0.5~25重量%、好ましくは1~20重量%、特に3~15重量%の量で含む。特に好ましい実施形態では、水素化分解触媒は、活性水素化種の混合物を含む。この場合、無機担体上に担持された活性水素化種は、Fe/Mo、Fe/W、Ni/Mo、Ni/W、Cr/Mo、Ni/V、Ni/Co、Cr/Wからから選択される混合物であることが好ましい。
【0066】
水素化分解触媒の触媒性能を変化させるために、水素化分解触媒はさらにドーパント材料を含んでいてもよい。ドーパント材料はアンモニウム塩とフッ化物と窒素からなる群から選択されることが好ましく、上記アンモニウム塩は、好ましくは、NHX(X=F、Cl、Br)、NHHF、(NHSiF、(NHSbF、(NHTiF、(NH)PF、(NHSiF、(NHZrF、NHBF、NHF、(NHTaF、NHNbF、(NHGeF、(NHSmF、(NHTiF、(NHZrFから選択され、上記フッ化物は、好ましくは、MoF、ReF、GaF、SOClF、F、SiF、SF、ClF、ClF、BrF、IF、NF、HF、BF、NHFから選択される。
【0067】
驚くべきことに、水素化成分を含む水素化触媒と解重合成分を含む解重合触媒との物理的混合物である水素化分解触媒を使用することにより、生成物の液体含有量だけでなく、水素化解重合プロセスの収率をさらに向上できることが見出された。このような実施形態では、水素化成分の無機担体は、本開示による解重合成分ではなく、水素化触媒の粒子と解重合触媒の粒子とが物理的に混合される。好ましい態様において、解重合触媒は、Al、アルミノシリケート、シリカおよびゼオライトからなる群から選択される酸性化合物である。特に好ましい態様では、解重合触媒として用いられるゼオライトは、ゼオライトY、ゼオライトβ、ゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトL、およびこれらの混合物、特にゼオライトYおよびゼオライトβからなる群から選択される。列挙されたゼオライトはよく知られており、入手することができる。特に、金属イオンMが水素で置換されたゼオライトが好ましい。本開示で使用するための適切なゼオライト型触媒の他の具体的な例としては、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48、ZSM-50、TS-1、TS-2、SSZ-46、MCM-22、MCM-49、FU-9、PSH-3、ITQ-1、EU-1、NU-10、シリカライト-1、シリカライト-2、ボラライト-C、ボラライト-D、BCA、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。代替的にまたは追加的に、解重合触媒は、例えばシリカ、アルミナ、カオリンまたはこれらの任意の混合物を含むことができる非晶質化合物を含むことができる。特に砂型シリカはFCC触媒用途でよく知られている。
【0068】
物理的混合物中の水素化触媒と解重合触媒との重量比は、プラスチック廃材の組成に応じて変化させることができ、最適な目標生成物組成を得るように調整することができる。好ましい実施形態では、水素化触媒と解重合触媒との重量比は、100:1~1:10、好ましくは10:1~1:5、より好ましくは5:1~1:3、特に1:1~3:1であることが好ましい。
【0069】
本開示のプロセスで使用される水素化分解触媒は、プラスチック廃材、特に、水素化分解生成物中の芳香族化合物およびオレフィン系化合物の含有量が低いプラスチック廃材を高収率で水素化分解することを可能にする。水素化分解触媒は、その驚くべき触媒活性とは別に、一般的な材料と反応を使用して簡単に入手できる。
【0070】
効果的な水素化はまた、水素化生成物、例えばHO、HS、アルコール、アミン、NHを生成することによって、炭化水素中の有機ヘテロ原子の含有量を著しく減少させる。このような水素化生成物は、例えば苛性スクラバーユニットによって、ガス状炭化水素生成物から容易に分離することができる。
【0071】
したがって、より好ましい実施形態では、水素化分解触媒の水素化成分は、以下のステップを含むプロセスにより得られる。
a) Fe、Mo、W、Ti、Ni、Cr、V、Co、Zrおよびそれらの混合物のうちの少なくとも1種の前駆体化合物であって、それぞれの塩の形態である前駆体化合物を提供する。
b) 前駆体化合物を極性溶媒、例えばアルコール等のプロトン性溶媒、または最も好ましくは水に溶解する。
c) SiO、Al、AlPOおよびAl/Si混合酸化物からなる群から選択される無機担体を提供する。
d) 溶解した前駆体化合物を初期湿潤含浸により無機担体上に堆積させて、水素化成分前駆体を得る。
e) ステップd)で得られた水素化成分前駆体を乾燥する。
f) 乾燥した水素化成分前駆体を200~850℃の温度で処理する。
g) ステップf)の生成物を冷却して水素化分解触媒の水素化成分を得る。
【0072】
水素化分解触媒の水素化成分の製造プロセスは、通常の化合物を用いるため、容易に行うことができる。好ましい実施形態では、前駆体化合物は、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、亜硫酸塩、硫酸塩、アセチルピルビン酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロケイ酸塩、ヘキサフルオロアルミン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、シュウ酸塩、グルコン酸塩、マロン酸塩、およびこれらの混合物を含むがこれらに限定されない無機または有機金属塩からなる群から選択される。非限定的な例として、メタタングステン酸塩、メタモリブデン酸塩、メタバナジン酸塩などのW、MoおよびVの対応するヘテロポリ酸の塩を金属前駆体化合物として用いることもできる。
【0073】
本開示のプロセスの工程e)で得られた乾燥水素化成分前駆体は、好ましくは焼成される。したがって、本プロセスは、好ましくは、乾燥した水素化成分前駆体を高温で、好ましくは空気、酸素、窒素およびアルゴンからなる群から選択されるガスの流れ、またはこれらガスのうちの一連の異なるガスの雰囲気中で、焼成するステップをさらに含むことが好ましい。
【0074】
水素化成分の製造プロセスは、中間条件下で実施することができる。好ましい実施形態では、本開示のプロセスによるステップf)の処理は、200~850℃、好ましくは230~550℃、より好ましくは400~700℃、特に250~600℃の温度で行われる好ましくは、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガスまたは空気は焼成/活性化中にパージガスとして使用され、最も好ましくは、(i)窒素ガスまたはアルゴンガス下で加熱し、(ii)空気中または酸素中で焼成し、(iii)窒素ガスまたはアルゴンガス下で冷却するような順序で使用される。好ましい実施形態では、水素、一酸化炭素、H、エチレンなどの還元性ガスが、本開示のプロセスのステップf)の間に使用される。驚くべきことに、このガスは、本開示の水素化成分の活性、選択性およびロバスト性を高めるために使用され得ることが判明した。本開示のプロセスのステップf)は、オーブン、溶融炉、ロータリーキルンまたは流動層活性剤中で行われることが好ましい。
【0075】
さらに好ましい実施形態では、水素化分解触媒を製造するためのプロセスは、水素化分解触媒としての水素化成分と、解重合触媒としての解重合成分とを混合するステップをさらに含み、解重合成分として、好ましくは、上記のような酸性化合物、特に、Al、アルミノシリケート、シリカおよびゼオライトから選択されるもの、特に、ゼオライトY、ゼオライトβ、ゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトLおよびそれらの混合物、特に、ゼオライトYおよびゼオライトβから選択されるものである。
【0076】
水素化分解触媒とプラスチック廃材の原材料とは、本開示のプロセスのステップii)で混合される。混合は、反応器に導入する前に行ってもよいし、水素化分解触媒とプラスチック廃材とを別々に反応器に供給してもよい。プラスチック廃材に対する水素化分解触媒の重量比は変化することができ、使用される特定のシステムおよびプロセス条件に依存することができる。一般に、プラスチック廃材の原材料は、非常に低いまたは非常に高い水素化分解触媒対原料(C/F)比を使用して変換できる。触媒対原料(C/F)比は、反応器に供給される水素化分解触媒の量に対する、反応器に供給されるプラスチック廃材の原材料の量の重量比であると理解されなければならない。C/F比が低い場合には、より長い接触時間が必要とされ、C/F比が高い場合には、より短い接触時間が必要とされることがある。好ましくは、水素化分解触媒と有機プラスチック廃材の原材料とをC/F比1:500~1:10、特にC/F比1:100~1:15で反応器に供給する。好ましい実施形態では、水素化分解触媒およびプラスチック廃材の原材料は、水素化分解触媒およびポリマー廃棄物原料を水素化解重合反応器に供給する前に、液体炭化水素中で均一に混合される
【0077】
本開示の好ましい実施形態では、プラスチック廃材は、例えば押出機によって200~300℃に予熱され、次いで、水素化分解重合を行う反応器に供給される前に、容器内の炭化水素流中で水素化分解触媒と混合される。
【0078】
本開示のプロセスのステップiii)における水素化解重合は、連続的または不連続的に行われてもよい。ステップiii)は連続して実行されることが好ましい。好ましくは、水素化分解が500barまでの圧力および600℃までの温度を処理することができる水素化分解反応器システムで行われるこのような条件に対処するのに好適な高圧反応器システムは、例えば、石油精製における水素化分解または水素化処理プロセス、またはベルギウス法のような石炭液化プロセスのための反応器システムである。ステップiii)を実施するための好適な高圧反応器システムは、撹拌機を有するかまたは有さない1つ以上の連結された容器を含む。
【0079】
好ましい実施形態では、ステップiii)における水素化解重合は、200~600℃、好ましくは200~550℃、より好ましくは270~550℃、特に300~450℃の温度で行われる
【0080】
プラスチック廃材と水素化分解触媒との混合物の水素化解重合を、20~500bar(2MPa~50MPa)、好ましくは30~400bar(3~40MPa)、特に100~350bar(10~35MPa)の水素圧で行う。水素化解重合が不連続的に行われる場合、プラスチック廃材と水素化分解触媒との混合物の水素化解重合を、20~500bar(2~50MPa)、より好ましくは30~400bar(3~40MPa)、特に100~350bar(10~35MPa)の初期水素圧で行うことが好ましい。水素化解重合が不連続的に行われる場合、初期水素圧は、室温で水素を供給した後であって、反応器を最終反応温度まで加熱する前の反応器内の水素圧と理解する必要がある。他の好ましい実施形態では、水素化解重合は、水素圧20~90bar(2MPa~9MPa)で行う。
【0081】
本開示の好ましい実施形態では、水素化解重合が連続的に行われ、反応器内容物が反応器から連続的に排出される。滞留時間は、プラスチック廃材の高い転化率を確保するように設定することが好ましい。反応器から反応器内容物の1つの流れを反応器から連続的に排出することが可能である。好ましくは、液相流と気相流の両方が反応器から連続的に排出される。この場合、本開示のプロセスの分離ステップiv)の第1のサブステップは、反応器内ですでに行われている。好ましくは、反応器から排出される全ての流れは、分離ステップiv)の更なるサブステップを経ている。
【0082】
分離は、分離容器と、液体水素化解重合生成物が収集される留分ユニットとを含む分離ユニットにおいて少なくとも部分的に行われることが好ましい。分離ユニットは、ガス状の水素化分解重合粗生成物を他の成分から分離するサイクロンをさらに含むことができる。
【0083】
本開示のプロセスのステップiii)で得られた反応器内容物、すなわち反応生成物を、液体または液化可能な水素化解重合生成物と他の種々の留分とに分離するために、種々の分離技術を用いることができる。好適な分離技術には、凝縮、蒸留および濾過がある。好ましくは、高沸点炭化水素、チャー、触媒残留物、および他の固体汚染物質を蒸留、デカンテーションまたは濾過などの技術によって分離した後、液体または液化可能な水素化解重合生成物を得る。
【0084】
本開示の好ましい実施形態では、分離ステップiv)で得られた水素化分解触媒および/または水素リッチガス留分が反応器に再導入される。
【0085】
好ましくは、固体残留物および触媒を依然として含む可能性がある排出反応器内容物から分離された液体炭化水素流は、水素化解重合反応器に供給される前にプラスチック廃材および水素化分解触媒と混合するために使用される。好ましくは、液体炭化水素流は、20重量%以下の濃度の固体残留物と触媒とを含む。
【0086】
プラスチック廃材のエネルギーの効率的なリサイクルには、回収されたすべての材料の利用を含むことが好ましい。したがって、本開示のプロセスは、分離ステップiv)で得られたガス状留分を収集するステップを含むことが好ましい。好ましい実施形態では、反応器内容物から分離されたガス状留分は凝縮され、従って、CO、CO、NH、HS、および水のような不要な副生成物から分離される。このようにして、本開示のステップiii)の水素化解重合において生成されたガス状留分は、他のプロセス、例えば、水素とC~C炭化水素留分とを含むジエン生成物を製造するために使用することができる。
水素化解重合生成物
【0087】
本開示の水素化分解触媒と本開示のプロセスとの組み合わせは、芳香族化合物の驚くほど低い含量、特に多環芳香族化合物およびアスファルテンの驚くほど低い含量を有する液体または液化可能な水素化分解生成物を生成する。したがって、本開示のプロセスにより得られる水素化解重合生成物は、芳香族成分およびオレフィン系成分の含有量が低く、かつ高純度であることを特徴とする。
【0088】
本開示のプロセスにより得られる液体または液化可能な水素化解重合生成物は、好ましくは30℃~650℃、より好ましくは50℃~250℃の沸点範囲を有する蒸留などの分離技術により、水素化解重合生成物は、沸点範囲が30℃から130℃のCおよびC炭化水素を主に含む軽質ナフサ留分、沸点範囲が130℃から220℃のCからC12炭化水素を主に含む重質ナフサ留分、沸点範囲が220℃から270℃のCからC17炭化水素を主に含む灯油留分など、異なる沸点範囲の炭化水素留分、または軽質油、燃料油またはハイドロワックスなどの他の高沸点留分に分離することができる。好ましい実施形態では、本開示に係るプロセスで得られた水素化解重合生成物の重質留分は、水蒸気分解装置で使用される軽質留分原料のような軽質炭化水素留分を製造するために追加の水素化解重合工程に戻される。適切な反応器条件および触媒を選択することにより、必要に応じて水素化解重合生成物の組成を変えることができる。本開示の生成物の水素化解重合プロセスでは、軽質留出物分解原料を製造するためにより高い水素量と反応器内での長い滞留時間を必要とするので、分解原料として300℃~550℃の沸点範囲を有する水性ワックス留分を使用することも好ましい。蒸気分解装置の信頼性が高く経済的な操作には、不純物の量が少ない高純度原料が必要であるため、好ましい実施形態では、水素化分解生成物または水素化分解生成物の留分は、分解装置の原料または燃料として使用する前に、他の原料と混合される。
【0089】
したがって、好ましい実施形態では、ASTM D381に従って測定される蒸発時の水素化解重合生成物の残留物含有量は5ppm(w)を超えない。
【0090】
本開示のプロセスにより得られる水素化解重合生成物は、芳香族成分およびオレフィン系成分の含有量が低く、かつ高純度であることを特徴とする。好ましい実施形態では、ASTM D381に従って測定される蒸発時の水素化解重合生成物の残留物含有量は5ppm(w)以下である。
【0091】
好ましくは、得られる水素化解重合生成物中の芳香族化合物の含有量が10モル%未満、好ましくは5モル%未満であり、特に3モル%未満であり、芳香族成分の含有量が、H-NMR-分光法による芳香族プロトンのモル%単位での含有量として測定される
【0092】
また、本開示の水素化解重合プロセスにより得られる水素化解重合物は、オレフィン系化合物の含有量が少ないことを特徴とする。水素化解重合生成物中のオレフィン系化合物の含有量は、オレフィン系化合物の総数に対して、好ましくは5モル%未満、より好ましくは3モル%未満、さらに好ましくは1.5モル%未満、特に1モル%未満であり、オレフィン系化合物の含有量は、H-NMR-分光法により測定されるオレフィン性プロトンの含有量に基づいて測定される。
【0093】
与えられたサンプル中の二重結合の含有量を表すもう1つの尺度は不飽和度を示す臭素価(BrNo)である。好ましい実施形態では、本開示のプロセスにより得られる水素化解重合生成物は、サンプル100gあたりの臭素グラムとして、ASTM D1159-01に従って測定された臭素価が25未満、好ましくは0.1~20、より好ましくは0.2~15、さらに好ましくは0.3~10、特に0.5~5である。
【0094】
従来のプロセスではチャーの生成が問題になることが多く、反応器やヒートコイルなどの他の機器の定期的なデコーキングが必要になる。驚くべきことに、本開示のプロセスはほとんどまたは全くチャーを生成しない。したがって、好ましい実施形態では、本開示のプロセスにより得られる水素化解重合生成物は、生成物の総重量に対して5重量%未満、好ましくは2重量%未満のチャー含有量を有する。
【0095】
本開示の好ましい実施形態では、本開示の水素化解重合プロセスにより得られる水素化解重合生成物は、重量百分率で表される微量成分、構成成分または不純物の上限によって定義される。好ましい水素化解重合生成物中のこれらの成分、構成成分または不純物の量の下限は、検出限界よりも低く、好ましくは、それぞれ0.001重量%または0.01重量%または0.1重量%である。
【0096】
本開示のプロセスにより得られる水素化解重合生成物は、芳香族化合物およびオレフィン系化合物の含有量が低いことを特徴とする。したがって、得られた水素化解重合生成物は、更なる精製または前処理を必要とせずに、更なる処理のために蒸気分解装置に直接供給することができるので、本開示のプロセスは、高い時間的およびエネルギー的効率を有する。したがって、別の態様では、本開示は、蒸気分解装置における原料としての、本開示の水素化分解プロセスの水素化分解生成物の使用を提供する。好ましくは、水素化解重合物はオレフィンを製造するための原料として使用される。
【0097】
別の態様では、本開示は、SiO、Al、AlPOおよびAl/Si混合酸化物からなる群から選択される無機担体上に担持された、Fe、Mo、W、Ti、Ni、Cr、V、Co、Zrおよびそれらの混合物の少なくとも1種を含む、プラスチック廃材の水素化分解触媒の使用に関する。担体は特にAl/Si混合酸化物であり、担体の総重量に対して、Alを20~99重量%、好ましくは30~80重量%、特に40~70重量%含有することが好ましい。さらに、担体は、担体の総重量に対して、SiOを1~80重量%、好ましくは20~70重量%、特に30~60重量%含有することが好ましい。
【0098】
混合酸化物中のAlとSiOの重量比が99:1~30:70、好ましくは9:1~3:2、特に4:1~3:2である態様が好ましい。
【0099】
混合酸化物中のSiOおよびAlの含有量の決定は、誘導結合プラズマ(ICP-AES)の原子発光スペクトルを用いて行うことができる。
【0100】
水素化分解触媒の水素化成分に含まれる活性水素化種は、Cr、NiおよびMoからなる群から選択されることが好ましい。本開示の特に好ましい実施形態では、水素化分解触媒の無機担体が混合Al/Si酸化物であり、Al3とSiOの重量比が4:1~3:2であり、混合Al/Si酸化物に担持された活性水素化種がCr、NiおよびMoからなる群から選択される。
本開示のプロセスにより得られた水素化解重合生成物は、エチレン、プロピレンおよび/またブテンなどの新規なオレフィン系材料を製造するための原料として直接使用することができる。したがって、本開示は、オレフィンを製造するためのプロセスに関するものであり、このプロセスは、以下のステップを含む。
i) プラスチック廃材の原材料を提供する。
ii) SiO、Al、AlPOおよびAl/Si混合酸化物からなる群から選択される無機担体上に担持された、Fe、Mo、W、Ti、Ni、Cr、V、Co、Zrおよびこれらの混合物の少なくとも1種を含む水素化分解触媒をプラスチック廃材の原材料と混合する。
iii) ステップii)の混合物を反応器に導入し、水素ガスで処理する。
iv) 反応器の内容物を分離して、液体または液化可能な水素化解重合生成物を得る。
v) 任意に、分離離ステップiv)で得られたガス状留分を収集する。
Vi) 得られた水素化解重合生成物を水蒸気分解装置に導入してオレフィンを含む生成物を生成する。
【0101】
水素化分解触媒、プラスチック廃材の原材料および水素化解重合を行う条件は、上記と同様であることが好ましい。
【0102】
ポリエチレン、ポリプロピレンおよび/またはポリブテンを含むプラスチック廃材からエチレン、プロピレンおよび/またはブテン等のオレフィンを製造し、新規なポリエチレン、ポリプロピレンおよび/またはポリブテンを製造する際にこれらオレフィンを使用することにより、製造された新規なポリオレフィンの特性を低下させることなく、抽出物のケミカルリサイクルを伴う本格的なポリオレフィンの循環システムが可能となる。
【0103】
本開示は、以下の実施例によってさらに詳細に説明されるが、これらは決して本発明の精神を限定するものとして理解されるべきではない
分析方法
【0104】
次の分析方法を使用する。
1) GC MSを用いて液体および気体を分析する。
2) 反応器残留物を800℃で脱コークスした後、質量バランスによりチャー残留物を測定する。
3) 液体含有量は、ASTM D 7213:2012に従って模擬蒸留(SimDist)分析を使用して、特性評価される。
4) 液体凝縮物中の不飽和成分の総含有量は、PT1000温度センサーと10mlビュレットを統合したダブルPT-ワイヤ電極を搭載した848 Titrino Plus(Metrohm AG,Herisau,Switzerland)を用いた臭素価測定により、Metrohm Application Bulletin 177/5e(2018年12月)に記載されているASTM D1159-01に従って、特徴評価されている。臭素価(BrNo.)はサンプル100gに吸収された臭素量をグラム単位で示す。
5) H-NMR分析は、液体凝縮物サンプルをCDClに溶解し、プロトンNMR分光法を用いてサンプルを特徴評価することにより行う。芳香族、オレフィンおよび脂肪族のプロトンは、表1にまとめられた化学シフトに従って割り当てられた。
【表1】
【0105】
列挙されているオレフィン系プロトンの型は、以下の構造に対応するものと想定される。
【化1】
【0106】
芳香族プロトン、オレフィン系プロトンおよび脂肪族プロトンの量は、以下の式により、特定のピーク積分に基づいて決定することができる。
芳香族プロトンモル%=[(I+I)/(I+I+I+I+I+I+I+I+I)]%
オレフィン系プロトン型1モル%=[(I+I)/(I+I+I+I+I+I+I+I+I)]%
オレフィン系プロトン型2モル%=[(I+I)/(I+I+I+I+I+I+I+I+I)]%
オレフィン系プロトン型3モル%=[(I)/(I+I+I+I+I+I+I+I+I)]%
オレフィン系プロトン型4モル%=[(I)/(I+I+I+I+I+I+I+I+I)]%
パラフィン系プロトンモル%=[(I)/(I+I+I+I+I+I+I+I+I)]%
6) 無機担体、水素化分解触媒および解重合成分の水分含有量はSartorius MA45(Sartorius AG,Goettingen,ドイツ)を用いて0.5~1gのサンプルについて180℃で測定される。
7) 細孔容積は、粉体が流動性を失って塊を形成し始めることから明らかなように、すべての細孔が液体で飽和するまで粉体に水を加えて決定する。サンプル1gあたりに必要な水の体積は、サンプルの細孔容積に相当する。細孔容積を測定する前に、サンプルを180℃、100mbarの真空下で2時間乾燥し、揮発分を除去する。測定のために、スクリューキャップ付き乾燥粉末ボトル(150ml)に5gの材料を計量する。ビュレットから蒸留水を少しずつ入れ、ボトルをスクリューキャップで密封し、内容物を激しく振って混合する。そしてボトルをコルクマットの上に勢いよく置き、その後回転させる。この操作中に、サンプルの約1/3がボトルの底に付着したままになると、細孔は飽和する。水の消費量を読み取り、サンプル1gに換算する。
8) 水素化解重合物のpHを測定するために、水:サンプル1:5の体積比で水素化解重合物の液体サンプルを抽出し、水溶液のpHを測定する。
9) 使用したプラスチック廃材の原材料の特性は以下のように測定される。
プラスチック廃材は組成を変えることができるので、20~100gのポリマー廃棄物のサンプルを粉砕して分析する。あるいは、ポリマー廃棄物のペレット化サンプルを分析する。次のプロセスを使用する。
i) 総揮発分(TV)は100℃、200mbarで2時間後のサンプル10gの重量損失として測定される。
ii) 水分含有量は、ASTM E203に準拠したMetrohm Application Bulletin 77/3eに従って、KF容積滴定用のPT100指示電極を備えたMetrohm 915 KF Ti-Touchの装置を使用したカールフィッシャー滴定によって測定される。
iii) IR分光法は、さまざまなポリマー(PP、PE、PS、PA、PET、PU、ポリエステル)やCaCO3などの添加剤の定性的同定に使用される。
iv) 標準元素分析は、H、C、N (DIN 51732:2014-07)およびSの重量% (管状炉、ELTRA GmbH、Haan、ドイツ、DIN 51724-3:2012-07)を決定することに用いられる。
v) H-NMRは、H-NMRスペクトル:E/PP平衡(コポリマーも含む)、PET、PSを記録するのに適切な溶媒に可溶なポリマーの組成を決定するために使用される。
vi) プラスチックの灰分分析は、DIN EN ISO 3451-1 (2019-05)に従って800℃で測定される。
vii) プラスチック廃材のかさ密度はDIN 53466に従って測定される。
viii) 腐食性は、腐食性は、3時間の接触時間後の水溶液のpH値として測定される(50mlの蒸留水に5gのサンプル)
ix) 誘導結合プラズマ原子発光分光法 (ICP-AES)は、元素の定量測定 (総塩素含有量、Si または金属の含有量)に使用される
x) 熱分解油、エチレン分解残留物(ECR)、減圧軽油(VGO)、重質減圧軽油(HVGO)などの液体原料の灰分含有量をASTM D482-19に従って測定される。
原材料:
【0107】
次のプラスチック廃材は原料として使用される。
A: ペレット化された農業用および工業用包装フィルム
B: 細断フレークとフィルムの小片の混合プラスチック廃棄物
C: フィルムのフレーク、毛羽立ち、小片
D: 細断フィルム
E: 多層フィルムを細断・ペレット化したもの
【0108】
F: アスファルトまたは分解油とも呼ばれるエチレン分解残留物(ECR)は、蒸気分解の過程でエチレンを製造する際に生成される独特の臭いを持つ高粘度の黒紫色の液体である。ECRは主に、特に発電所用に燃料として使用される。使用するサンプルは、IP143に従ってヘプタン不溶分として測定されたアスファルテンを33%、H-NMRによる芳香族プロトンを44モル%含有し、ASTM D1160による中心沸点(65%)が486℃で、灰分が0.01重量%未満、15℃における密度が1139 kg/m(DIN12791)である。表2に原材料の特性をまとめて示す。
【0109】
【表2】
※)H-NMRによるポリマー組成
灰分:原材料の灰含有量
TV:原材料の総揮発分
BD:かさ密度
Cl:全塩素量
PE:ポリエチレン含有量
PP:ポリプロピレン含有量
PET:ポリエチレンテレフタレート含有量
PS:ポリスチレン含有量
PA:ポリアミド含有量
その他の続き:その他の汚染物質の含有量
解重合成分
【0110】
解重合成分#1a:平均粒径が30μmであり、AlとSiOの比が60:40であり、ドイツ・ハンブルクのSasol Germany GmbH社によりSiral 40HPVの名称で市販されるAl/Si混合酸化物細孔容積は1.5ml/gである。
【0111】
解重合成分#1b:Zeolyst β(CP811E-75)として米国ペンシルベニア州マルビンのPQ社から商業的に入手可能なゼオライトβ 細孔容積は0.3ml/gである。
水素化分解触媒
【0112】
触媒#2:解重合成分#1aの量に対して、Ni(NO水溶液としてのNi 5%を、初期湿潤法により無機担体である解重合成分#1a上に堆積させ、自由流動性の粉末になるまで乾燥させる。触媒前駆体を流動層活性化剤に導入し、窒素ガスでパージしながら温度を300℃まで上昇させる。300℃では、パージガスを空気に変更し、500℃まで昇温して2時間保持した後、300℃まで冷却し、室温まで冷却する前に空気から窒素に変更する。
【0113】
触媒#3:解重合成分#1aの量に対して、Cr(NOのメタノール溶液としてのCr 5%を初期湿潤法により無機担体である解重合成分#1aに堆積させ、自由流動性の粉末になるまで乾燥させる。触媒前駆体を流動層活性化剤に導入し、窒素ガスでパージしながら温度を300℃まで上昇させる。300℃では、パージガスを空気に変更し、500℃まで昇温し、300℃まで冷却する前に2時間保持し、室温まで冷却する前に空気から窒素に変更する。
【0114】
触媒#4:水素化触媒である触媒#2の3gと、解重合触媒であるゼオライトβ(解重合成分#1b)の3gとの物理的混合物。
【0115】
触媒#5:水素化触媒である触媒#2の3gと、解重合触媒であるゼオライトβ(解重合成分#1b)の1gとの物理的混合物。
【0116】
触媒#6:無機質担体である解重合成分#1aに、解重合成分#1aに対して5%のNi(NO2としてのNiと、該解重合成分#1aに対して10%のヘプタモリブデンアンモニウムデート(NHMo24の水溶液としてのMoと、を初期湿潤法により解重合成分#1aに堆積させ、自由流動性の粉末になるまで乾燥させる。触媒前駆体を流動層活性化剤に導入し、窒素ガスでパージしながら温度を300℃まで上昇させる。300℃では、パージガスを空気に変更し、500℃まで昇温して2時間保持した後、300℃まで冷却し、室温まで冷却する前に空気から窒素に変更する。
【0117】
触媒#7:水素化触媒である触媒#6の3gと、解重合触媒であるゼオライトβ(解重合成分#1b)の1gとの物理的混合物。
【0118】
水素化解重合
【0119】
実験#1~#10、#14~#14では、原材料A 57gと触媒3gを、オートクレーブ500ml中の水和白油60g(Ondina4、オランダロイヤルロイヤル・ダッチ・シェル社)中に窒素雰囲気下で懸濁させる。反応器を水素ガスでパージし、所望の初期水素圧に達するまで室温で水素ガスで加圧する。その後、混合物を150℃に加熱して30分間撹拌した後(混合ステップ)、200rpmで一定に撹拌しながら、反応器温度を1時間かけて最終反応温度まで上昇させる。反応器内で反応温度を1時間保持した後、反応器を60℃まで冷却し、減圧する。反応器内容物を濾過することにより生成物を収集する。
【0120】
実験#11は実験#7の繰り返しであるが、原料Aおよび触媒#4を、水和白色油の代わりに比較実験#Cの熱解重合によって得られた熱分解油60g中に懸濁させる。
【0121】
実験#15、#16では、初期水素圧が5barであるため、水素化解重合時の水素圧は20barから40barの範囲にある。
【0122】
原材料Aに代えて原材料Bを用いて実験#17を行う。
【0123】
比較実験A、B、Eは、#1~#10,#14~#14の繰り返しであるが、水素化分解触媒を使用する代わりに、水素化成分を含まない解重合成分のみを触媒として使用する。比較実験Dは、4~6barの範囲の水素化解重合時の水素圧に対応する2barの初期水素圧で行われる。
【0124】
触媒、初期水素圧力、最終反応温度などの水素化脱重合の詳細と水素化脱重合の結果を表3にまとめて示す。得られた水素化解重合生成物の分析データを表4と表5にまとめて示す。
【表3】
【0125】
【表4】
【0126】
【表5】
【0127】
解重合成分#1aを用いた比較実験Aで生成されたデータから、プラスチック廃棄物の熱分解により、水素の存在下でも、その黒色で示すようにチャー含有量が高く、H-NMRで測定した芳香族水素/プロトンが5.7モル%であるオレフィン系ワックス状生成物が得られることが示された。
【0128】
解重合成分#1bは効率的な解重合触媒であることが知られているが、プラスチック廃棄物を水素の存在下で熱分解すると、その黒色で示すようにチャー含有量が高く、H-NMRで測定した芳香族水素/プロトンが7.6モル%である高オレフィン系ワックス状生成物が得られる。
【0129】
これに対して、本開示の水素化分解触媒の存在下で行われる実験は、液体生成物および清浄な高アルファー性の生成物の収率を非常に高く得るための触媒の非常に汎用的な能力を証明する。注目すべきことに、生成物中または反応器壁には顕著なチャーの堆積が観察されなかった。加えて、得られた液体のpHが、比較実験では4から本開示による実験では6まで増加していることが見出され、本開示のプロセスが、解重合に加えて水素化処理および水素化分解反応の両方を含むことが示された。
【0130】
特に、実験#6~#10は、水素化触媒と、酸性化合物である解重合触媒とを組み合わせることにより、本開示のプロセスにおける触媒の触媒活性をさらに向上できることを示している。水素化触媒と解重合触媒との比率を調整することにより、解重合反応を所望の生成物に移行させるために、汎用的な手段で生成物の組成および液体収率を最適化することができる。水素化触媒と酸性解重合触媒の組み合わせの性能は、プラスチック廃材をオレフィン含有量の少ない使用可能な原材料に変換する優れた手法であり、蒸気分解装置に適していることが実証されている。驚くべきことに、水素化分解重合反応は高い選択性を有し、チャーや芳香族分がほとんど観察されないことがわかった。
【0131】
実験#11では、プラスチック廃棄物を熱分解重合して得られた熱分解油(それ自体は、例えばプラスチック廃棄物を懸濁させるための蒸気分解装置の原材料として使用するのに適さない)を使用した場合であっても、生成された水素化分解物は、水素化分解物を原材料として使用できる許容レベルの芳香族含有量を有することが示されている。
【0132】
実験#15で輸送されたハイドロワックスは50℃で液体であり、臭素価が6g/100gであり、これにより、高度飽和炭化水素が示される。
【0133】
比較実験A、B、CおよびGで得られる生成物は不均一であり、ワックスの含有量が高く、オレフィンおよび芳香族炭化水素の含有量が高い。そのため、燃料や分解装置の原材料として使用する前に、製品を精製する必要がある。さらに、4回のすべての実験において、反応器に顕著なスケールが観察された。これらの実験で得られた生成物中のオレフィンおよび芳香族炭化水素の含有量が比較的高いため、解重合成分が水素化成分と組み合わせて使用されない場合、解重合成分の水素化効率が低いことが分かった。
【0134】
さらに、原材料F(実験12)とECR/PW(原材料FとA)の1:1の混合物(実験13)を用いて試験を行う。結果を表6と表7にまとめて示す。
【表6】
【0135】
【表7】
【0136】
要約されたデータは、分解残留物および分解残留物とプラスチック廃棄物との混合物であっても使用可能であることを明確に示しており、本開示の水素化分解触媒およびプロセスの広範な適用性を証明している。
【0137】
上記の実施例は、プラスチック廃棄物の接触水素化解重合がプラスチック廃棄物の高い転化率を実現する技術であることを明確に示しており、また、ガスやコークスなどの副生成物を最小限に抑えつつ、プラスチック廃棄物を製油所や分解装置からの重質原材料や熱分解油と組み合わせて、分解装置に適した原材料とすることも可能である。本開示の水素化分解物は、芳香族、オレフィン、ヘテロ原子の含有量が低いという分解原材料の要件を完全に満たす。
【0138】
原材料、操作条件(すなわち、温度および圧力)、並びに水素化分解触媒、水素化分解触媒のタイプおよび平均粒径に応じて、水素化分解触媒の種類および平均粒径を調整して、本プロセスの最適な性能を達成することができる。水素化分解触媒とポリマー廃棄物および他の原材料を別々のプロセスステップで混合することは、均一に分散された触媒を得るのに非常に役立ち、高い転化率と最適な触媒活性をもたらすことが明らかになる。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー廃棄材料を水素化解重合するためのプロセスであって、
i) ポリマー廃材の原材料を提供するステップと、
ii) 無機担体上に担持されたFe、Mo、W、Ti、Ni、Cr、V、Co、Zrおよびこれらの混合物の少なくとも1種を含む水素化成分と、好ましくはAl、アルミノシリケート、シリカ、およびゼオライトの群、特にゼオライトY、ゼオライトβ、ゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトLおよびそれらの混合物、とりわけ、ゼオライトYおよびゼオライトβの群から選択される酸化合物である解重合成分とを含む水素化分解触媒を、前記ポリマー廃材の原材料と混合するステップと、
iii) 前記混合物を、水素ガスの存在下、反応器内にて20~500barの水素圧で解重合するステップと、
iv) 前記反応器の内容物を分離して、液体または液化可能な水素化解重合生成物を得るステップと、
v) 任意に、分離ステップiv)で得られた水素化分解触媒および/または水素リッチガス留分を前記反応器に再導入するステップと、
vi) 任意に、前記分離ステップivで得られたガス状留分を収集するステップと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記水素化分解触媒は、前記水素化分解触媒の総重量に対して、0.5~25重量%の活性水素化種を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記水素化分解触媒と前記有機ポリマー廃材の原材料とを、1:500~1:10の触媒原材料(C/F)比で前記反応器に供給する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ポリマー廃材は揮発分の総含有量を有し、100℃および200mbarの圧力で2時間にわたる重量損失として測定されたポリマー廃材中の揮発分の総含有量は、前記ポリマー廃材の総重量に対して、10重量%未満、好ましくは、5重量%未満、より好ましくは2重量%未満、特に1重量%未満である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ポリマー廃材は、嵩密度が50~500g/L、好ましくは75~400g/Lである細断ポリマー廃材であるか、または、前記ポリマー廃材は、嵩密度が300~700g/Lであるペレット形態であり、前記嵩密度は、DIN 53466に従って測定される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ポリマー廃材はポリオレフィン含有量、特にポリプロピレン(PP)および/またはポリエチレン(PE)含有量を有し、前記ポリオレフィン含有量は、50重量%を超え、好ましくは60重量%を超え、より好ましくは70重量%を超え、とりわけ、80重量%を超え、特に90重量%を超える、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記水素化分解触媒の水素化成分は、
a) Fe、Mo、W、Ti、Ni、Cr、V、Co、Zrおよびそれらの混合物のうちの少なくとも1種の前駆体化合物であって、それぞれの塩の形態である前駆体化合物を提供するステップと、
b) 前記前駆体化合物を極性溶媒に溶解するステップと、
c) 無機担体を提供するステップと、
d) 前記溶解した前駆体化合物を初期湿潤含浸によって前記無機担体上に堆積させて、水素化成分前駆体を得るステップと、
e) ステップd)で得られた水素化成分前駆体を乾燥するステップと、
f) 前記乾燥した水素化成分前駆体を200℃~850℃の温度で処理するステップと、
g) ステップf)の生成物を冷却して前記水素化分解触媒の水素化成分を得るステップと、を含むプロセスにより得られる、ことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。

【国際調査報告】