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特表2024-500533可撓性プラスチックバッグ及びミダゾラムの即時使用可能な水溶液を備える医薬品
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  • 特表-可撓性プラスチックバッグ及びミダゾラムの即時使用可能な水溶液を備える医薬品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】可撓性プラスチックバッグ及びミダゾラムの即時使用可能な水溶液を備える医薬品
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/10 20060101AFI20231226BHJP
   A61K 31/5517 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231226BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
A61J1/10 331C
A61J1/10 331Z
A61K31/5517
A61P25/20
A61K9/08
A61L31/04 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539184
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2021087328
(87)【国際公開番号】W WO2022144276
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】20217491.8
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508240177
【氏名又は名称】ビー.ブラウン メルズンゲン アーゲー
【氏名又は名称原語表記】B.BRAUN MELSUNGEN AG
【住所又は居所原語表記】Carl-Braun-Str. 1, 34212 Melsungen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ロビショード
(72)【発明者】
【氏名】マキシム ハンドフィールド
(72)【発明者】
【氏名】バレリー ラジョア
(72)【発明者】
【氏名】マリー-クロード ジャンドロン
(72)【発明者】
【氏名】ルイス エリック フルニエ
【テーマコード(参考)】
4C047
4C076
4C081
4C086
【Fターム(参考)】
4C047AA11
4C047BB12
4C047BB17
4C047BB28
4C047CC04
4C076AA12
4C076BB17
4C076CC01
4C076FF63
4C081AC14
4C081BC04
4C081CA021
4C081DA02
4C081DC04
4C081EA03
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB13
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086NA03
4C086ZA05
(57)【要約】
本発明は、可撓性プラスチックバッグを備える医薬品、特に滅菌した医薬品に関し、可撓性プラスチックバッグは、ポリプロピレンを備えるか又はポリプロピレンから構成されている壁を有し、ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の即時使用可能な水溶液を収容している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品、特に滅菌した医薬品であって、
可撓性プラスチックバッグを備え、
前記可撓性プラスチックバッグは、ポリプロピレンを備えるか又はポリプロピレンから構成されている壁を備え、ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の即時使用可能な水溶液を収容している、医薬品。
【請求項2】
前記壁は、多層壁の形態であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬品。
【請求項3】
前記多層壁の層は、共押出し層であることを特徴とする、請求項2に記載の医薬品。
【請求項4】
前記多層壁の少なくとも最内層は、前記ポリプロピレンを備えるか又は前記ポリプロピレンから構成されていることを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載の医薬品。
【請求項5】
前記多層壁の少なくとも中間層は、前記ポリプロピレンを備えるか又は前記ポリプロピレンから構成されていることを特徴とする、請求項2又は請求項4のいずれかに記載の医薬品。
【請求項6】
前記多層壁の少なくとも最外層は、前記ポリプロピレンを備えるか又は前記ポリプロピレンから構成されていることを特徴とする、請求項2~5のいずれかに記載の医薬品。
【請求項7】
前記多層壁の全ての層は、前記ポリプロピレンを備えるか又は前記ポリプロピレンから構成されていることを特徴とする、請求項2~6のいずれかに記載の医薬品。
【請求項8】
前記壁、特に前記多層壁の各層は、前記ポリプロピレンを備えるか又は前記ポリプロピレンから構成されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか、特に請求項2~7のいずれかに記載の医薬品。
【請求項9】
前記多層壁は、3層壁の形態であることを特徴とする、請求項2~8のいずれかに記載の医薬品。
【請求項10】
ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の即時使用可能な前記水溶液は、0.5mg/ml~5mg/ml、特に0.5mg/ml~2mg/ml、好ましくは1mg/mlのミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の濃度を有してよいことを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載の医薬品。
【請求項11】
前記ポリプロピレンは、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、アタクチック又はヘテロタクチックポリプロピレン、及び前述のポリプロピレンの少なくとも2つの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の医薬品。
【請求項12】
前記可撓性プラスチックバッグの前記壁、特に前記可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層及び/又は中間層及び/又は最外層は、前記ポリプロピレンと共に、ポリアミド11等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル、ポリカーボネート、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンプロピレンコポリマー、エチレンαオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマー、スチレン-エチレン-プロピレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリシクロヘキサンジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートエラストマー、及び前述のポリマーの少なくとも2つの混合物からなる群から選ばれる、少なくとも1つのさらなるポリマーを備えるか又はそれから構成されていることを特徴とする、請求項1~11のいずれか、特に請求項4~11のいずれかに記載の医薬品。
【請求項13】
前記可撓性プラスチックバッグは、オーバーラップポーチによって上包みされており、
前記オーバーラップポーチは、好ましくは、アルミニウム等の不透明な材料を備えるか又又はそれから構成されていることを特徴とする、請求項1~12のいずれかに記載の医薬品。
【請求項14】
前記可撓性プラスチックバッグは、可撓性プラスチック輸液バッグであることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の医薬品。
【請求項15】
前記可撓性プラスチックバッグは、18ヶ月~24ヶ月の保存期間中、室温で、ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の即時使用可能な前記水溶液の安定性を維持するように適合されていることを特徴とする、請求項1~14のいずれかに記載の医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミダゾラムの即時使用可能な水溶液が入った可撓性プラスチックバッグを備える医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
ミダゾラムは、集中治療室(ICU)で鎮静作用をコントロールするために一般的に使用されるベンゾジアゼピン誘導体である。化学的に、ミダゾラム塩酸塩は、8-クロロ-6-(2-フルオロフェニル)-1-メチル-4H-イミダゾ[1,5-a][1,4]ベンゾジアゼピン塩酸塩である。これは、短時間作用型のベンゾジアゼピン系中枢神経系(CNS)抑制剤で、通常、単独で投与されるか、又は第2の薬剤、例えばモルヒネ、アトロピン、スコポラミン、又はメペリジンと組み合わせて投与される。
【0003】
ミダゾラムの即時使用可能な水溶液は、ポリプロピレン製のシリンジ内で5℃以下の保存温度で保存すると、1年間の長期安定性を示すことが知られている(Gilliot他、「Long-term stability of ready-to-use 1-mg/mL midazolam solution」、Am J Health-Syst Pharm、2020年、77、681~689)。
【0004】
さらに、ミダゾラム塩酸塩は、5%のブドウ糖水溶液又は0.9%の塩化ナトリウム水溶液中で30日間にわたって安定状態であることが知られている(Hagan他、「Stability of midazolam hydrochloride in 5% dextrose injection or 0.9% sodium chloride injection over 30 days」、Am J Hosp Pharm、1993年、50、2379-2381)。
【0005】
さらに、5%のブドウ糖注入液で希釈したミダゾラム塩酸塩1mg/ml溶液は、保存条件に関係なく、ポリオレフィン製バッグ及びポリ塩化ビニル(PVC)製バッグのいずれにおいても、27日間にわたって安定状態を保つことが知られている(Karlage他、「Stability of midazolam hydrochloride injection 1-mg/mL solutions in polyvinyl chloride and polyolefin bags」、Am J Health-Syst Pharm、vol 68、8月15日、2011年、1537-1540)。
【0006】
WO 2020/170198 A1は、ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の安定した水溶液を含む、即時使用可能な滅菌輸液容器を開示している。ミダゾラム及びミダゾラムの薬学的に許容可能な塩それぞれの吸着を回避するために、輸液容器の壁の少なくとも最内層は、シクロオレフィンポリマー又はシクロオレフィンコポリマーから作製されている。
【0007】
従来技術から知られている、ミダゾラムの水溶液を保存する容器には、室温で長期間にわたる安定性を提供できないという欠点がある。さらに、加熱滅菌の際、特に121℃で15分間オートクレーブ処理を用いる際のミダゾラムの安定性が課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の即時使用可能な水溶液を備え、上記の欠点を少なくとも部分的に回避する医薬品を利用可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、独立請求項1による医薬品によって達成される。医薬品の好ましい実施形態は、従属請求項及び本明細書において明らかとなる。すべての請求項の主題及び文言は、それぞれ、明示的な参照により本明細書に組み込まれる。
【0010】
本発明による医薬品は、好ましくは、滅菌した医薬品である。
【0011】
医薬品は、可撓性を有する、すなわち柔軟な又は柔らかいプラスチックバッグを備える。従って、本発明による医薬品は、例えば、シリンジ、バイアル、アンプル等の形態ではない。
【0012】
可撓性プラスチックバッグは、ポリプロピレン(PP)を備えるか又はポリプロピレンから構成される壁を有する。さらに、可撓性プラスチックバッグは、水溶液、特にミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の即時使用可能な(すなわち予め混合された)水溶液、すなわち、水溶液、特にミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩を備えるか又は含む即時使用可能な(すなわち予め混合された)水溶液を、備えるか又は含む。好ましくは、ミダゾラムの薬学的に許容可能な塩は、ミダゾラム塩酸塩である。
【0013】
本発明によって使用される「プラスチックバッグ」という用語は、プラスチックを備えるか又はプラスチックから構成されるバッグを意味する。
【0014】
特に、本発明による可撓性プラスチックバッグは、唯一のプラスチックとしてポリプロピレンを備えていてよい。
【0015】
驚くべきことに、ポリプロピレンを備えるか又はポリプロピレンから構成される壁を有する可撓性プラスチックバッグ、特に可撓性輸液プラスチックバッグは、ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の水溶液、特に即時使用できる水溶液を、室温で長期間、特に18ヶ月~24ヶ月の間、安定して維持することができることが判明した。さらに、有利なことに、ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の水溶液、特に即時使用可能な水溶液は、特に121℃で15分間のオートクレーブによる加熱滅菌、特に最高123℃の意図しない高熱曝露、及び数回の凍結融解サイクルの適用に対して、安定していることが判明した。
【0016】
「ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の即時使用可能な溶液」とは、ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩のそのまま利用可能な又は予め混合された溶液、すなわち、使用準備が整っており、追加の準備又は混合工程なしに投与可能なミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の溶液のことをいう。好ましくは、ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の即時使用可能な溶液は、ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の即時注入可能な溶液である。
【0017】
ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の水溶液、特に即時使用可能な水溶液に関して本発明によって使用される「安定」又は「安定性」という用語は、好ましくは、滅菌条件及び/又は保存条件、特に保存期間中及び保存温度において、特にミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の分解生成物の形成に起因する濁り及び/又は沈殿が生じないこと、及び/又は、ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の分解生成物の形成が生じないことを意味する。
【0018】
本発明によって使用される「ポリプロピレン」という用語は、ポリプロピレンホモポリマー及び/又はポリプロピレンコポリマー、特にポリプロピレンランダムコポリマー及び/又はポリプロピレンブロックコポリマーを意味してよい。
【0019】
本発明によって使用される「ポリプロピレンホモポリマー」という用語は、プロペンの重合(すなわち、他の種類又はタイプのモノマーが重合に使用されない)、特に連鎖成長重合によって生成又は合成されるポリマーを意味する。
【0020】
本発明によって使用される「ポリプロピレンコポリマー」という用語は、プロペンとエテン等の少なくとも1つの他の種類又はタイプのモノマーとの重合、特に連鎖成長重合によって生成又は合成されるポリマーを意味する。特に、ポリプロピレンコポリマーは、エテン-プロペンコポリマー(エチレン-プロピレンコポリマー)、特にエテン-プロペンブロックコポリマー(エチレン-プロピレンブロックコポリマー)であってよい。
【0021】
本発明によって使用される「室温」という用語は、10℃~30℃、特に15℃~30℃、好ましくは15℃~25℃の温度のことをいう。
【0022】
本発明の実施形態では、可撓性プラスチックバッグの壁は、多層壁の形態、すなわち、複数の層からなるか又は構成されている壁の形態である。多層壁の層は、同じ厚さを有してもよいし、厚さが異なっていてもよい。
【0023】
本発明のさらなる実施形態では、多層壁の層は、共押出し層の形態である。有利なことに、共押出し層を適用することにより、可撓性プラスチックバッグの壁の形成と、接着剤又は材料による層の結合とを1つの工程で容易に行うことができる。
【0024】
本発明のさらなる実施形態では、可撓性プラスチックバッグの多層壁の少なくとも最内層、特に最内層のみが、ポリプロピレンを備えるか又はポリプロピレンから構成されている。
【0025】
本発明によって使用される「最内層」という用語は、可撓性プラスチックバッグの多層壁の層のうち、特に少なくとも部分的に、好ましくは部分的にのみ、直にすなわち直接、ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の水溶液、特に即時使用可能な水溶液を包み込む又は囲む層のことをいう。
【0026】
本発明のさらなる実施形態では、可撓性プラスチックバッグの多層壁の少なくとも中間層、特に中間層のみが、ポリプロピレンを備えるか又はポリプロピレンから構成されている。
【0027】
本発明によって使用される「中間層」という用語は、可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層と最外層との間に配置される、特に直に配置される層のことをいう。
【0028】
本発明のさらなる実施形態では、可撓性プラスチックバッグの多層壁の少なくとも最外層、特に最外層のみが、ポリプロピレンを備えるか又はポリプロピレンから構成されている。
【0029】
本発明によって使用される「最外層」という用語は、可撓性プラスチックバッグの多層壁の層のうち、可撓性プラスチックバッグをその環境又は周囲から分離又は輪郭付けする層のことをいう。
【0030】
特に、可撓性プラスチックバッグの多層壁の少なくとも最内層と中間層、特に最内層と中間層のみが、ポリプロピレンを備えるか又はポリプロピレンから構成されていてよい。
【0031】
あるいは、可撓性プラスチックバッグの多層壁の少なくとも最内層と最外層、特に最内層と最外層のみが、ポリプロピレンを備えるか又はポリプロピレンから構成されていてよい。
【0032】
あるいは、可撓性プラスチックバッグの多層壁の少なくとも中間層と最外層、特に中間層と最外層のみが、ポリプロピレンを備えるか又はポリプロピレンから構成されていてよい。
【0033】
本発明のさらなる実施形態では、可撓性プラスチックバッグの多層壁の全ての層が、ポリプロピレンを備えるか又はポリプロピレンから構成されている。特に、可撓性プラスチックバッグの多層壁の全ての層が、唯一のプラスチックとしてポリプロピレンを備えてよい。
【0034】
特に、可撓性プラスチックバッグは、ポリプロピレン系の層、特にポリプロピレン系のフィルムからできていてよい。
【0035】
本発明のさらなる実施形態では、可撓性プラスチックバッグの多層壁は、3層壁の形態であり、すなわち、特に前述の説明及び以下の説明に記載されているように、最内層、中間層、及び最外層から構成されている。好ましくは、中間層は、最内層上に直にすなわち直接配置又は形成され、最外層は、中間層上に直にすなわち直接配置又は形成される。
【0036】
さらに、可撓性プラスチックバッグの壁、又は可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層及び/又は中間層及び/又は最外層は、500μm未満の厚さ、特に25μm~300μm、好ましくは25μm~50μm又は50μm~300μmの厚さを有してよい。本発明によれば、壁又は層の厚さによって、多層壁の壁又は層がフィルムと呼ばれてもよい。
【0037】
本発明のさらなる実施形態では、ポリプロピレンは、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、アタクチック又はヘテロタクチックポリプロピレン、及び前述のポリプロピレンの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される。
【0038】
好ましくは、ポリプロピレンは、ポリプロピレンホモポリマー又はポリプロピレンコポリマー、特にポリプロピレンランダムコポリマー又はポリプロピレンブロックコポリマーである。例えば、ポリプロピレンコポリマーは、エチレン-プロピレンコポリマーであってよい。
【0039】
本発明のさらなる実施形態では、可撓性プラスチックバッグの壁、又は可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層及び/又は中間層及び/又は最外層は、ポリプロピレンと共に、少なくとも1つのさらなるポリマーを備えるか又はそれから構成されている。好ましくは、少なくとも1つのさらなるポリマーは、ポリアミド11等のポリアミド、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン-酢酸ビニル(EVA、ポリ(エチレン-酢酸ビニル(PEVA))、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレンプロピレンコポリマー、エチレンαオレフィンコポリマー、シクロオレフィンコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマー、スチレン-エチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-プロピレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリシクロヘキサンジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートエラストマー、及び前述のさらなるポリマーのうち少なくとも2つの混合物からなる群から選ばれる。より好ましくは、少なくとも1つのさらなるポリマーは、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマー及び/又はスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマーである。
【0040】
例えば、可撓性プラスチックバッグの多層壁の少なくとも最内層が、少なくとも1つのさらなるポリマーを備えるか又はそれから構成されていてよい。特に、可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層のみが、少なくとも1つのさらなるポリマーを備えるか又はそれから構成されていてよく、可撓性プラスチックバッグの多層壁の中間層及び最外層は、ポリプロピレンを備えるか又はそれから構成されていてよい。
【0041】
あるいは、可撓性プラスチックバッグの多層壁の少なくとも中間層が、少なくとも1つのさらなるポリマーを備えるか又はそれから構成されていてよい。特に、可撓性プラスチックバッグの多層壁の中間層のみが、少なくとも1つのさらなるポリマーを備えるか又はそれから構成されていてよく、可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層及び最外層は、ポリプロピレンを備えるか又はそれから構成されていてよい。
【0042】
あるいは、可撓性プラスチックバッグの多層壁の少なくとも最外層が、少なくとも1つのさらなるポリマーを備えるか又はそれらから構成されていてよい。特に、可撓性プラスチックバッグの多層壁の最外層のみが、少なくとも1つのさらなるポリマーを備えるか又はそれから構成されていてよく、可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層及び中間層は、ポリプロピレンを備えるか又はそれから構成されていてよい。
【0043】
あるいは、可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層と中間層のみが、少なくとも1つのさらなるポリマーを備えるか又はそれから構成されていてよく、可撓性プラスチックバッグの多層壁の最外層は、ポリプロピレンを備えるか又はそれから構成されていてよい。
【0044】
あるいは、可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層と最外層のみが、少なくとも1つのさらなるポリマーを備えるか又はそれから構成されていてよく、可撓性プラスチックバッグの多層壁の中間層は、ポリプロピレンを備えるか又はそれから構成されていてよい。
【0045】
あるいは、可撓性プラスチックバッグの多層壁の中間層と最外層のみが、少なくとも1つのさらなるポリマーを備えるか又はそれから構成されていてよく、可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層は、ポリプロピレンを備えるか又はそれから構成されていてよい。
【0046】
さらに、可撓性プラスチックバッグの多層壁の少なくとも最内層は、ポリプロピレンと少なくとも1つのさらなるポリマーとを備えるか又はそれらから構成されていてよい。特に、可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層のみが、ポリプロピレンと少なくとも1つのさらなるポリマーとを備えるか又はそれらから構成されていてよい。好ましくは、少なくとも1つのさらなるポリマーは、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマー及び/又はスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマーである。
【0047】
あるいは、可撓性プラスチックバッグの多層壁の少なくとも最内層、特に最内層のみが、少なくとも1つのさらなるポリマーと、ポリプロピレンを含むポリオレフィンとを備えるか又はそれらから構成されていてよい。特に、ポリプロピレンは、ポリオレフィンの主成分であってよく、すなわち、ポリオレフィンの総重量に基づくポリプロピレンの割合が、ポリオレフィンの総重量に基づくポリオレフィンの残りの成分の割合よりも高い(いわゆるポリプロピレン系のポリオレフィン)。好ましくは、少なくとも1つのさらなるポリマーは、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマー及び/又はスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマーである。より好ましくは、少なくとも1つのさらなるポリマーは、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマーである。
【0048】
あるいは、可撓性プラスチックバッグの多層壁の少なくとも中間層は、ポリプロピレンと少なくとも1つのさらなるポリマーとを備えるか又はそれらから構成されていてよい。特に、可撓性プラスチックバッグの多層壁の中間層のみが、ポリプロピレンと少なくとも1つのさらなるポリマーとを備えるか又はそれらから構成されていてよい。好ましくは、少なくとも1つのさらなるポリマーは、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマー及び/又はスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマーである。
【0049】
あるいは、可撓性プラスチックバッグの多層壁の少なくとも中間層、特に中間層のみが、少なくとも1つのさらなるポリマーと、ポリプロピレンを含むポリオレフィンとを備えるか又はそれらから構成されていてよい。特に、ポリプロピレンは、ポリオレフィンの主成分であってよく、すなわち、ポリオレフィンの総重量に基づくポリプロピレンの割合が、ポリオレフィンの総重量に基づくポリオレフィンの残りの成分の割合より高い。好ましくは、少なくとも1つのさらなるポリマーは、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマー及び/又はスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマーである。より好ましくは、少なくとも1つのさらなるポリマーは、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマーである。
【0050】
あるいは、可撓性プラスチックバッグの多層壁の少なくとも最外層は、ポリプロピレンと少なくとも1つのさらなるポリマーとを備えるか又はそれらから構成されていてよい。特に、可撓性プラスチックバッグの多層壁の最外層のみが、ポリプロピレンと少なくとも1つのさらなるポリマーとを備えるか又はそれらから構成されていてよい。好ましくは、少なくとも1つのさらなるポリマーは、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマー及び/又はスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマーである。より好ましくは、少なくとも1つのさらなるポリマーは、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマーである。
【0051】
あるいは、可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層と中間層のみが、ポリプロピレンと少なくとも1つのさらなるポリマーとを備えるか又はそれらから構成されていてよい。好ましくは、少なくとも1つのさらなるポリマーは、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマー及び/又はスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマーである。
【0052】
あるいは、可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層と中間層のみが、少なくとも1つのさらなるポリマーと、ポリプロピレンを含むポリオレフィンとを備えるか又はそれらから構成されていてよい。特に、ポリプロピレンは、ポリオレフィンの主成分であってよく、すなわち、ポリオレフィンの総重量に基づくポリプロピレンの割合が、ポリオレフィンの総重量に基づくポリオレフィンの残りの成分の割合より高い。好ましくは、少なくとも1つのさらなるポリマーは、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマー及び/又はスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマーである。より好ましくは、少なくとも1つのさらなるポリマーは、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマーである。
【0053】
あるいは、可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層と最外層のみが、ポリプロピレンと少なくとも1つのさらなるポリマーとを備えるか又はそれらから構成されていてよい。好ましくは、少なくとも1つのさらなるポリマーは、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマー及び/又はスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマーである。
【0054】
あるいは、可撓性プラスチックバッグの多層壁の中間層と最外層のみが、ポリプロピレンと少なくとも1つのさらなるポリマーとを備えるか又はそれらから構成されていてよい。好ましくは、少なくとも1つのさらなるポリマーは、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマー及び/又はスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマーである。
【0055】
さらに、可撓性プラスチックバッグの多層壁の少なくとも最内層は、ポリプロピレンと少なくとも1つのさらなるポリマーとを備えるか又はそれらから構成されていてよい。特に、可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層のみが、ポリプロピレンと少なくとも1つのさらなるポリマーとを備えるか又はそれらから構成されていてよく、可撓性プラスチックバッグの多層壁の中間層と最外層は、ポリプロピレンを備えるか又はそれから構成されていてよい。好ましくは、少なくとも1つのさらなるポリマーは、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマー及び/又はスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマーである。
【0056】
あるいは、可撓性プラスチックバッグの多層壁の少なくとも中間層は、ポリプロピレンと少なくとも1つのさらなるポリマーとを備えるか又はそれらから構成されていてよい。特に、可撓性プラスチックバッグの多層壁の中間層のみが、ポリプロピレンと少なくとも1つのさらなるポリマーとを備えるか又はそれらから構成されていてよく、可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層と最外層は、ポリプロピレンを備えるか又はそれから構成されていてよい。好ましくは、少なくとも1つのさらなるポリマーは、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマー及び/又はスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマーである。
【0057】
あるいは、可撓性プラスチックバッグの多層壁の少なくとも最外層は、ポリプロピレンと少なくとも1つのさらなるポリマーとを備えるか又はそれらから構成されていてよい。特に、可撓性プラスチックバッグの多層壁の最外層のみが、ポリプロピレンと少なくとも1つのさらなるポリマーとを備えるか又はそれらから構成されていてよく、可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層と中間層は、ポリプロピレンを備える又はそれから構成されていてよい。好ましくは、少なくとも1つのさらなるポリマーは、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマー及び/又はスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマーである。
【0058】
あるいは、可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層と中間層のみが、ポリプロピレンと少なくとも1つのさらなるポリマーとを備えるか又はそれらから構成されていてよく、可撓性プラスチックバッグの多層壁の最外層が、ポリプロピレンを備えるか又はそれから構成されていてよい。好ましくは、少なくとも1つのさらなるポリマーは、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマー及び/又はスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマーである。
【0059】
あるいは、可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層と最外層のみが、ポリプロピレンと少なくとも1つのさらなるポリマーとを備えるか又はそれらから構成されていてよく、可撓性プラスチックバッグの多層壁の中間層が、ポリプロピレンを備えるか又はそれから構成されていてよい。好ましくは、少なくとも1つのさらなるポリマーは、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマー及び/又はスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマーである。
【0060】
あるいは、可撓性プラスチックバッグの多層壁の中間層と最外層のみが、ポリプロピレンと少なくとも1つのさらなるポリマーとを備えるか又はそれらから構成されていてよく、可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層が、ポリプロピレンを備えるか又はそれから構成されていてよい。好ましくは、少なくとも1つのさらなるポリマーは、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマー及び/又はスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマーである。
【0061】
あるいは、可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層、中間層、及び最外層が、ポリプロピレンと少なくとも1つのさらなるポリマーとを備えるか又はそれらから構成されていてよい。好ましくは、少なくとも1つのさらなるポリマーは、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマー及び/又はスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマーである。
【0062】
あるいは、可撓性プラスチックバッグの壁は、好ましくは単層壁の形態、すなわち、1つの層のみからなる又は構成されている壁であることが好ましい。単層壁は、特に、単層フィルムの形態であってよい。
【0063】
さらに、可撓性プラスチックバッグの壁は、シクロオレフィンポリマー又はシクロオレフィンコポリマーを含まなくてよい。
【0064】
さらに、可撓性プラスチックバッグの壁は、好ましくは、金属又は金属合金を含まない。
【0065】
さらに、ポリプロピレンは、可撓性プラスチックバッグの壁の総重量、又は可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層及び/又は中間層及び/又は最外層の総重量に基づいて、50重量%以上、特に60重量%~95重量%、好ましくは70重量%~90重量%、特に70重量%~80重量%の割合を有してよい。
【0066】
さらに、少なくとも1つのさらなるポリマーは、可撓性プラスチックバッグの壁の総重量、又は可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層及び/又は中間層及び/又は最外層の総重量に基づいて、50重量%以下、特に5重量%~40重量%、好ましくは10重量%~30重量%、特に20重量%~30重量%の割合を有してよい。
【0067】
例えば、ポリプロピレンは、可撓性プラスチックバッグの壁の総重量、又は可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層及び/又は中間層及び/又は最外層の総重量に基づいて、90重量%の割合を有してよく、少なくとも1つのさらなるポリマー、好ましくはスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマーは、可撓性プラスチックバッグの壁の総重量、又は可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層及び/又は中間層及び/又は最外層の総重量に基づいて、10重量%の割合を有してよい。
【0068】
あるいは、ポリプロピレンは、例えば、可撓性プラスチックバッグの壁の総重量、又は可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層及び/又は中間層及び/又は最外層の総重量に基づいて、80重量%の割合を有してよく、少なくとも1つのさらなるポリマー、好ましくはスチレン-エチレン-スチレンブロックコポリマー又はスチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマーは、可撓性プラスチックバッグの壁の総重量、又は可撓性プラスチックバッグの多層壁の最内層及び/又は中間層及び/又は最外層の総重量に基づいて、20重量%の割合を有してよい。
【0069】
さらに、可撓性プラスチックバッグは、好ましくは単室バッグの形態、すなわち、ただ1つの室を有するバッグの形態であり、、ミダゾラム又はみダグラムの薬学的に許容可能な塩の水溶液、特に即時使用可能な水溶液は、可撓性プラスチックバッグの単室、すなわち、ただ1つの室に入っている。
【0070】
さらに、可撓性プラスチックバッグは、ある材料からできていてよいし、又はInerta(登録商標)という商業名称で販売されているバッグであってもよい。特に、可撓性プラスチックバッグは、ポリプロピレンポリマーとスチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマーとを備えるか又はそれらから構成されている最外層と、ポリプロピレン系ポリオレフィンポリマーとスチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマーとを備えるか又はそれらから構成されている中間層と、ポリプロピレン系ポリオレフィンポリマーとスチレン-エチレン-ブチレン(SEB)ブロックコポリマーとを備えるか又はそれらから構成されている最内層とからなる壁を有する可撓性プラスチックバッグであって、Inerta103(登録商標)という商業名称で販売されているバッグであってよい。あるいは、可撓性プラスチックバッグは、エチレン-プロピレンコポリマーを備える又はそれから構成されている壁を有する可撓性プラスチックバッグであって、Excel(登録商標)又はPAB(登録商標)の商業名称で販売されているバッグであってもよい。
【0071】
本発明のさらなる実施形態では、可撓性プラスチックバッグは、オーバーラップポーチによって上包みされている。オーバーラップポーチは、不透明な材料を備えるか又それから構成されている。
【0072】
本発明によって使用される「不透明な材料」という用語は、400nm~700nmの波長を有する光を透過させない材料のことをいう。例えば、不透明な材料は、アルミニウムであってよい。
【0073】
本発明のさらなる実施形態では、可撓性プラスチックバッグは、可撓性プラスチック輸液バッグの形態である。
【0074】
本発明によって使用される「輸液バッグ」という用語は、薬剤の静脈内投与のために通常使用されるバッグのことをいう。
【0075】
可撓性プラスチックバッグは、医薬品が、好ましくはオートクレーブによって、特に121℃で及び/又は15分間の滅菌、特に最終滅菌を受けた場合に、ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の水溶液、特に即時使用可能な水溶液の安定性を維持するように適合されていることが好ましい。
【0076】
本発明のさらなる実施形態では、可撓性プラスチックバッグは、特に滅菌後、好ましくは前述の段落で明記されたように18ヶ月~24ヶ月の保存期間中、室温で、ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の水溶液、特に即時使用可能な水溶液の安定性を維持するように適合されている。
【0077】
さらに、可撓性プラスチックバッグは、医薬品が、熱、特に最高で123℃の温度に晒された場合に、ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の水溶液、特に即時使用可能な水溶液の安定性を維持するように適合されていることが好ましい。
【0078】
さらに、可撓性プラスチックバッグは、医薬品が、少なくとも1回の凍結融解サイクル、特に1回又は数回の凍結融解サイクルを受けた場合に、ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の水溶液、特に即時使用可能な水溶液の安定性を維持するように適合されていることが好ましい。
【0079】
さらに、可撓性プラスチックバッグは、特に23℃及び40%の相対湿度で測定した場合に、1000ml/(m・24hour・atm)~1300ml/(m・24hour・atm)、特に1050ml/(m・24hour・atm)~1200ml/(m・24hour・atm)、好ましく1050ml/(m・24hour・atm)~1150ml/(m・24hour・atm)の酸素透過率を有してよい。本発明によって使用される「酸素透過率」(「OTR」とも略記される)は、ASTM D3985又はISO 15105によって決定されてよい。
【0080】
さらに、可撓性プラスチックバッグは、3.0g・m-2・day-1以下、特に3.0g・m-2・day-1未満の水蒸気透過率を有してよい。好ましくは、可撓性プラスチックバッグは、3.0g・m-2・day-1~0g・m-2・day-1、特に2.0g・m-2・day-1~0g・m-2・day-1、好ましくは1.0g・m-2・day-1~0g・m-2・day-1の水蒸気透過率を有してよい。本発明によって使用される「水蒸気透過率」(「WVTR」とも略される)は、ASTM F1249又はISO 15106によって決定されてよい。
【0081】
さらに、可撓性プラスチックバッグは、50ml~500ml、特に50ml~350ml、好ましくは50ml~250mlの容積容量を有してよい。
【0082】
さらに、可撓性プラスチックバッグの形状、長さ、幅は、特に限定されない。しかしながら、可撓性プラスチックバッグは、長方形の形状を有することが好ましい。例えば、可撓性プラスチックバッグは、長さが150mm~250mmであり、幅が50mm~150mmであってよい。
【0083】
さらに、ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の水溶液、特に即時使用可能な水溶液は、0.5mg/ml~5mg/ml、特に0.5mg/ml~2mg/ml、好ましくは1mg/mlのミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の濃度を有してよい。
【0084】
さらに、ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の水溶液、特に即時使用可能な水溶液は、特に、等張化剤、pH調整剤、浸透圧剤、緩衝剤、及び前述の成分の少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのさらなる成分を含んでいてよい。
【0085】
浸透圧剤は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、ソルビトール、ブドウ糖、スクロース、及び前述の浸透圧剤の少なくとも2つの混合物からなる群から選択されてよい。
【0086】
さらに、ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の水溶液、特に即時使用可能な水溶液は、キレート剤、及び/又は抗酸化剤、及び/又は安定剤、及び/又は錯化剤、及び/又は防腐剤を含まなくてよい。
【0087】
さらに、ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の水溶液、特に即時使用可能な水溶液は、2.9~4.5、特に2.9~3.7のpH値を有してよい。
【0088】
本発明のさらなる特徴及び利点は、従属請求項の主題と併せて、図面、図面の説明、及び実施例の形態の好ましい実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。個々の特徴は、本発明の一実施形態において、単独で又は複数を組み合わせて実現することができる。好ましい実施形態は、単に本発明の説明及びより良い理解を助けるためのものであり、いかなる意味でも本発明を限定するものとして理解されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0089】
図1図1は、本発明による医薬品の例示的な実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0090】
図1は、本発明に係る医薬品1の一実施形態の概略上面図である。
【0091】
医薬品1は、可撓性プラスチック輸液バッグ2と、ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の即時使用可能な水溶液3とを備える。ミダゾラムの薬学的に許容可能な塩は、ミダゾラム塩酸塩であることが好ましい。
【0092】
ミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の即時使用可能な水溶液3は、可撓性プラスチック輸液バッグ2内、より具体的にはその単室内に収容されている。
【0093】
可撓性プラスチック輸液バッグ2は、ポリプロピレンを備えるか又はポリプロピレンから構成されている壁4を有する。壁4は、好ましくはフィルムの形態の、3つの層、特に3つの共押出しされた層で構成されていることが好ましく、各層は、ポリプロピレンを備えるか又はポリプロピレンから構成されている、特にポリプロピレンからできている。ポリプロピレンは、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、又はアタクチック/ヘテロタクチックポリプロピレンであってよい。
【0094】
さらに、可撓性プラスチック輸液バッグ2は、少なくとも1つのポート5を有してよい。特に、可撓性プラスチックバッグは、図示されるように、(ただ)1つのポート、特に(ただ)1つの出口ポート5を有してよい。少なくとも1つのポート5は、通路の流体密な閉鎖を提供するゴム栓と、ゴム栓の外縁をクランプする蓋部材とを有してよい。あるいは、可撓性プラスチックバッグは、2つのポート、特に入口ポートと出口ポートとを有してよい。
【0095】
出口ポート5には、無菌輸液セット(図示せず)が取り付けられてよく、これは、例えば、特に容積式ポンプと共に、可撓性プラスチック輸液バッグ2から輸液セットを介してミダゾラム又はミダゾラムの薬学的に許容可能な塩の即時使用可能な水溶液3を患者に流出送出できるスパイクなどの適切な手段によって、取り付けられる。
【0096】
(実施例)
1.ミダゾラム塩酸塩の即時使用可能な水溶液の製造
注入用水(WFI)のバッチサイズの80%を、20℃~25℃の温度で、適切な容量のステンレス鋼316L製造タンクに採取した。窒素ガスをパージして溶解酸素量を1mg/l(ppm)未満とし、窒素ガスの圧力と窒素ガスの流量のパージ時間を記録した。塩化ナトリウムを添加して徐々に溶解させ、その後10分以上攪拌して、完全に溶解したこと及び溶液の見た目が透明であることを確認した。追加の賦形剤を以下のように添加する間、パージを停止した。1%w/wの塩酸(35ml/Kg)を添加し、約10分弱よく攪拌した。撹拌を続けながらミダゾラム塩酸塩をバルク溶液にゆっくりと添加し、調合容器を溶存酸素維持WFIですすぎ、バルク溶液に添加し、内容物がすべて移されるまですすぎを繰り返した。十分な量の1%w/w塩酸を用いてpHを3.0±1に調整し、pH調整後、ミダゾラムが完全溶解し、pHが安定したことが確認され、溶液の見た目が無色透明になるまで、約1時間撹拌した。十分な量の1%w/w水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを3.4±0.2に調整し、20℃~25℃で保存した溶存酸素維持WFIで容量を補った。pH調整中にpHが上記範囲を超えた場合は、1%w/w塩酸を用いて再度3.4±0.2まで調整した。この溶液を、透明な溶液が得られるまで10分間撹拌した。窒素をパージして溶解酸素量を1mg/l(ppm)未満にし、最終的にpHが3.4±0.2であることを確認した。
【0097】
このバルク溶液を0.2ミクロンのポリエーテルスルホン(PES)膜フィルターで濾過した。濾過されたバルク溶液は、ポリプロピレン系フィルムでできた輸液バッグに標準充填量で入れられた。輸液バッグは、滅菌ストッパーで栓をされた。121℃で15分間オートクレーブすることにより、栓をした輸液バッグを最終滅菌した。最後に、オーバーラッピング機を使ってアルミニウムポーチで輸液バッグを上包みした。任意で、上包みとバッグの間の空間を窒素又は不活性ガスで置換してよい。
【0098】
2.ダブル最終滅菌サイクル
1.で処理した輸液バッグ(100mlの輸液バッグにミダゾラム塩酸塩1mg/ml)のうちのいくつかに対して、ダブル最終滅菌サイクルを行った。各最終滅菌サイクルは、121℃で15分間オートクレーブすることによって実施した。
【0099】
ダブル最終滅菌サイクルの直後、ダブル最終滅菌サイクルの12ヶ月後、ダブル最終滅菌サイクルの18ヶ月後に、ミダゾラム塩酸塩の即時使用可能な水溶液の安定性を確認した。得られた結果を下の表1にまとめた。
【0100】
【表1】
【0101】
可撓性プラスチック輸液バッグは、ダブル最終滅菌サイクルの影響を受けないという結果が示された。さらに、安定性を示すパラメータ(アッセイ、pH、可撓性プラスチックバッグ/密閉性の完全性、分解生成物)は、12ヶ月後及び18ヶ月後の両方で大きな変化を示さなかった。本試験期間中の保管時の温度は22℃±2℃、湿度は40%±20%であった。結論として、輸液バッグとそれに収容されているミダゾラム塩酸塩の即時使用可能な水溶液は、ストレス条件後18ヶ月経っても依然として安定していた。
【0102】
3.高熱最終滅菌
1.で処理した輸液バッグのうちのいくつかに対して、123℃の高熱最終滅菌処理を行った。そして、高熱最終滅菌処理直後、高熱最終滅菌処理から12ヶ月後及び18ヶ月後に、それらの輸液バッグの安定性を確認した。得られた結果を下の表2にまとめる。
【0103】
【表2】
【0104】
輸液バッグは、最終滅菌サイクル時の高熱限界条件に影響されないという結果が確認された。安定性を示すパラメータ(アッセイ、pH、容器密閉の完全性、分解生成物)は、高熱最終滅菌直後、高熱最終滅菌処理の12ヶ月後及び18ヶ月後ともに、大きな変化を示さなかった。本試験期間中の保管時の温度は22℃±2℃、室内湿度(RH)は40%±20%であった。結論として、輸液バッグとそれに収容されているミダゾラム塩酸塩の即時使用可能な水溶液は、ストレス条件後18ヶ月経っても依然として安定していた。
【0105】
4.凍結融解サイクルの影響
1.で処理した輸液バッグのうちのいくつかに対して、凍結融解サイクルを行った。試料を冷凍庫に入れ、解凍させるサイクルを5回行った。6個の可撓性プラスチック輸液バッグを冷凍庫に12時間以上入れた後、冷凍庫から取り出して室温で4時間以上(完全に解凍されるまで)放置した。翌日、12個の可撓性プラスチック輸液バッグを冷凍庫に入れた(最初の可撓性プラスチック輸液バッグ6個と新しい可撓性プラスチック輸液バッグ6個)。これらのステップを5日間連続で繰り返した。したがって、この試験では、合計30個の可撓性プラスチック輸液バッグが使用された。
【0106】
本試験の目的は、凍結融解サイクルが輸液バッグに与える影響を見つけることであった。得られた結果を下の表3にまとめる。
【0107】
【表3】
【0108】
5回の凍結融解サイクルは、輸液バッグ及びその中に収容されているミダゾラム塩酸塩の即時使用可能な水溶液に大きな影響を与えなかったという結果が確認された。
【0109】
5.最終滅菌後の安定性を示すパラメータに関する、ミダゾラム水溶液が入った異なる可撓性プラスチックバッグの評価
【0110】
以下の9個の異なる試料について、安定性を示すパラメータ(アッセイ、関連物質、pH)を比較した。
-実験用ガラス器具内の非滅菌バルク試料(対照)
-シングル滅菌されたTechnoflex(SEBSを含む多層ポリプロピレンフィルム)バッグ
-シングル滅菌されたPAB(SEBSを10%含む単層ポリプロピレン)バッグ
-シングル滅菌されたExcel(SEBSを20%含む最内層ポリプロピレンを有する多層フィルム)バッグ
-シングル滅菌されたFreeflex(多層ポリプロピレン)バッグ
-ダブル滅菌されたTechnoflexバッグ
-ダブル滅菌されたPABバッグ
-ダブル滅菌されたExcelバッグ
-ダブル滅菌されたFreeflexバッグ
【0111】
下の表4は、製剤及びバッグの組成に関する詳細を示す。
【0112】
【表4】
【0113】
最終滅菌処理は、Getinge社のモデルGEV TS ID# 270-AUT-01のオートクレーブ器を使用して、下の表5に示すパラメータで実施した。
【0114】
【表5】
【0115】
すべてのバッグが、最初のP2-15分オートクレーブサイクルで滅菌された。この負荷は最小負荷条件で行われた。その後、バッグの半数(Technoflex、PAB、Excel、Freeflexの半数)が、ダブル滅菌を達成するために、全負荷でP2-15分サイクルで再度滅菌された。
【0116】
下の表6は、同一ロットのミダゾラム注入液1mg/mLに関して、様々な条件下における安定性を示すパラメータ(描写、アッセイ、pH、及び不純物)の試験結果を示す。対照試料は滅菌されず、一次容器と接触しなかった。対照群は、ガラスのバイアルに入れられ、他の試料と比較するための基準として使用された。
【0117】
研究の目的として、4つの容器と2つの条件で試験が行われた。1つ目の容器はTechnoflexの100mLバッグであった。2つ目の容器はPABバッグで、3つ目の容器はExcelバッグであった。試験された最後のバッグは、Freeflexバッグであった。
【0118】
試験された2つの条件は、Getinge社のモデルGEV TS、ID# 270-AUT-01のオートクレーブ器を用いた、サイクルP2-15分(P2-PRD002)のシングル最終滅菌及びダブル最終滅菌だった。
【0119】
【表6】
【0120】
結果として、1回のオートクレーブサイクル後、Technoflexバッグ、PABバッグ、及びFreeflexバッグはすべて、対照群と同様の結果となったことが分かった。1回の最終滅菌サイクルの後、Technoflexバッグ、PABバッグ、及びFreeflexバッグの描写は、適合するものであった。それらのアッセイは、100.2%~99.2%の範囲であった。それらのpHは3.1であり、不純物D、F、H、Bに関して0.05%未満の同じ不純物レベルを有し、RRT0.230で未知の不純物に関する値が0.06%であった。1回のオートクレーブサイクル後、Excelバッグでは、アッセイの低下が観察され、その値は98.3%であった。このアッセイ値の変化は、充填時にミダゾラム注入液を希釈した、バッグ内に存在する0.9%塩化ナトリウム注入液USPに起因していた。このバッグの他の安定性を示すパラメータは、対照群、Technoflexバッグ、PABバッグ、及びFreeflexバッグのものと同様だったが、アッセイに関しては、規格内ではあるものの、他の試験試料及び対照群よりも低いことが分かった。
【0121】
2回目のオートクレーブサイクル後、Technoflexバッグ、PABバッグ、Excelバッグ、及びFreeflexバッグはすべて、下の表7に示すように、それらのシングル滅菌されたものと同様の結果を示した。
【0122】
【表7】
【0123】
シングル滅菌されたバッグとダブル滅菌されたバッグの間で、描写、アッセイ、pH、及び不純物に関して目立った違いはなかった。ダブル滅菌されたバッグすべての描写は、適合したものであり、さらに、シングル滅菌されたバッグとダブル滅菌されたバッグの間のアッセイの差は0.03%~0.1%であった。pHは、すべての試料で3.1と安定しており、不純物レベルは、不純物D、F、H、Bに関して0.05%未満の値で同じであり、未知の不純物(RRT0.230)は0.06%であった。
【0124】
以上の結果から、サイクルP2-15分(P2-PRD002)のオートクレーブ滅菌を1回行った場合と2回行った場合では、描写、アッセイ、pH、不純物に差がないことが確認された。シングル滅菌されたものとダブル滅菌されたものの両者間の結果が、安定性を示すパラメータすべてで同様の値を示したことから、Technoflexバッグ、PABバッグ、Excelバッグ、及びFreeflexバッグにおいて、タイムポイント0でオートクレーブサイクルを1回又は2回繰り返した後でも製品の挙動は同じであるという結論が導かれる。
【0125】
シングル滅菌後及びダブル滅菌後の両方で、Technoflexバッグ、PABバッグ、及びFreeflexバッグのすべてが、滅菌されていない対照群のものと同様の安定性を示すパラメータを示した。Excelバッグでは、シングル滅菌後及びダブル滅菌後にアッセイ値のわずかな低下が見られたが、その値は製品規格の90.0~110.0%の範囲内に留まっていた。
図1
【国際調査報告】