(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】アンチロックブレーキシステムのためのバルブユニット
(51)【国際特許分類】
B60T 15/36 20060101AFI20231226BHJP
B60T 8/40 20060101ALI20231226BHJP
B60G 17/052 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B60T15/36 Z
B60T8/40 C
B60G17/052
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539745
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2021087461
(87)【国際公開番号】W WO2022144295
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】102020000032681
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522243484
【氏名又は名称】ライカム・ドライブライン・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】RAICAM DRIVELINE S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボナルド、サンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ストルーヴ、ベンジャミン チェットウッド
【テーマコード(参考)】
3D049
3D246
3D301
【Fターム(参考)】
3D049CC02
3D049HH17
3D049HH34
3D049JJ04
3D049JJ05
3D049JJ06
3D049JJ09
3D049KK16
3D246BA02
3D246DA01
3D246GB01
3D246LA15Z
3D246LA39Z
3D246LA63A
3D246LA79Z
3D301DA14
3D301DB37
3D301DB40
3D301EA77
3D301EB04
(57)【要約】
ABSシステム用のバルブユニット(10)は、ブレーキ液を受容するために構成される1つの液圧チャンバ(15)であって、ブレーキキャリパ(G)にブレーキ液を供給するための放出ポート(14)、及び、ブレーキ液をマスタシリンダ(M)から1つの液圧チャンバ(15)に流入させる通路(50)を有するものを有する。1つの液圧チャンバ(15)内で、縦方向に移動可能な1つのピストン(18)は、放出ポートに面し、及び、第1の横方向領域を全体として規定する第1の横方向面、放出ポート(14)とは離れるように面し、及び、第1の横方向領域よりも大きい第2の横方向面を全体として規定する第2の横方向面を有する。縦方向空洞(31)は、1つのピストン(18)内に延在し、第1の横方向面と第2の横方向面との間で流体連通を確立し、ピストン(18)の放出ポート(14)に向かう変位が、通路(50)を閉鎖し、及び、液圧チャンバのブレーキ液にために利用できる容積を増加する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のアンチロックブレーキシステムのためのバルブユニット(10)であって、
前記バルブユニットは、
ブレーキ液を受容するために構成される1つの液圧チャンバ(15)であって、ブレーキキャリパ(G)にブレーキ液を供給するための放出ポート(14)、及び、ブレーキ液をマスタシリンダ(M)から前記1つの液圧チャンバ(15)に流入させる通路(50)を有するもの、
前記1つの液圧チャンバ(15)内で、縦方向に移動可能な1つのピストン(18)であって、
前記放出ポートに面し、及び、第1の横方向領域を全体として規定する1つ以上の第1の横方向面、
前記放出ポート(14)とは離れるように面し、及び、前記第1の横方向領域よりも大きい第2の横方向面を全体として規定する1つ以上の第2の横方向面、
前記第1の横方向面と前記第2の横方向面との間で流体連通を確立する、前記1つのピストン(18)内に延在する縦方向空洞(31)、
を有するもの、
を有し、
前記ピストン(18)の前記放出ポート(14)に向かう変位が、前記通路(50)を閉鎖し、及び、前記液圧チャンバの前記ブレーキ液にために利用できる容積を増加する、
バルブユニット。
【請求項2】
請求項1に係るバルブユニットであって、
前記液圧チャンバ(15)は、
前記放出ポート(14)の近くに配置され、及び、第1の直径(D1)を有する第1の領域(19)、
前記放出ポート(14)から最も離れて配置され、及び、前記第1の直径(D1)よりも小さい第3の直径(D3)を有する第3の領域(21)、
前記第1の領域(19)と前記第3の領域(21)との中間にあり、前記第1の直径(D1)よりも大きい第2直径(D2)を有する第2の領域(20)、
を形成し、
前記ピストン(18)は、
前記液圧チャンバの第1の領域(19)において、密封しながら摺動する第1の部分(22)、
前記液圧チャンバの前記第2の中間領域(20)を密封しながら摺動する中間部分(23)、
前記液圧チャンバの前記第3の領域21)を密封しながら摺動する第3の部分(24)、
を有し、
前記第1の横方向面は、前記第1の直径(D1)を有する円形の領域を有し、
前記第2の横方向面は、前記第2の直径(D )に対応する直径を有する外周、及び、前記第3の直径(D3)に対応する直径を有する内周を有する環状の領域を有する、
バルブユニット。
【請求項3】
請求項1、又は、2に係るバルブユニットにおいて、さらに、
前記ピストン(18)を前記放出ポート(14)から離れるように移動する弾性力を働かせる少なくとも1つの弾性要素(34)、
を有するバルブユニット。
【請求項4】
請求項1、2、又は、3に係るバルブユニットにおいて、さらに、
前記車両に搭載される電子制御ユニット(ECU)と電気的に接続でき、前記電子制御ユニットからの電気信号に応じて、前記ピストン(18)を前記放出ポート(14)に向かって縦方向に移動するための作動装置(42、80)、
を有するバルブユニット。
【請求項5】
請求項3、4に係るバルブユニットであって、
前記バルブユニットは、
前記1つの液圧チャンバ(15)、及び、前記放出ポート(14)から離れるように面する横方向肩部(35)を形成するバルブ本体(11)、
前記横方向肩部(35)に面し、それから縦方向に間隔を置いて配置される横方向コントラスト壁(36)、
前記横方向コントラスト壁(36)を前記ピストン(18)に縦方向に連結する縦方向ロッド(37)、
を有し、
前記弾性要素(34)は、前記横方向コントラスト壁(36)と前記横方向肩部(35)との間で縦方向に圧縮される、少なくとも1つの圧縮ばねを有し、
前記作動装置(42)は、前記ステム(37)を、縦方向軸(37A)を中心に回転させ、結果として、前記横方向コントラスト壁(36)と前記ピストン(18)との間の縦方向の距離を調整するように構成されている、
バルブユニット。
【請求項6】
請求項4に係るバルブユニットであって、
前記作動装置は、
前記電子制御ユニット(ECU)によって電気的に作動可能な作動ソレノイド(80)を有し、及び、
前記ピストン(18)は、
作動可能に前記駆動ソレノイド(80)に関連付けられる作動部(61)を有する、
バルブユニット。
【請求項7】
請求項2、及び、6に係るバルブユニットにおいて、
前記ピストン(18)の前記作動部(61)は、
前記ピストンの前記第3の部分(24)と一体化され、又は、固定されている、
バルブユニット。
【請求項8】
請求項3、及び、6に係るバルブユニットにおいて、
前記弾性要素(34)は、
前記縦方向空洞(31)に受容され、及び、前記ピストンの肩部(56)と、前記放出ポート(14)に隣接する前記液圧チャンバ(15)によって提供される、前記ピストンのためのエンドストップ(43)との間で弾性的に圧縮される、
バルブユニット。
【請求項9】
請求項6~8のいずれかに係るバルブユニットにおいて、
前記バルブユニットは、
車両サスペンションから補助力(Fsus)を前記ピストン(18)に伝達するように構成され、
前記補助力は、
前記放出ポート(14)から縦方向に離れるように、前記ピストンを付勢する、
バルブユニット。
【請求項10】
請求項9に係るバルブユニットであって、
前記ピストン(18)に動作可能に関連付けられる圧力サーボ機構、
を有し、
前記サーボ機構は、
前記バルブユニット(10)の前記本体(11)と一体される、円筒状の補助流体チャンバ(62)であって、前記補助流体チャンバは、ピストンの補助部分(65)を取り囲むもの、
前記補助流体チャンバ(62)に開口し、及び、車両のサスペンションシステムの加圧流体を前記補助流体チャンバ(62)に導入するために、前記車両のサスペンションシステムに流体的に接続可能である補助吸引ポート(64)、
前記補助流体チャンバ(62)の円筒状の壁に密封係合する補助シール(63)であって、前記補助シール(63)は、前記ピストン(18)に配置されており、及び、前記放出ポート(14)から前記補助吸引ポート(64)よりも離れているもの、
を有する、バルブユニット。
【請求項11】
請求項10に係るバルブユニットであって、
前記加圧流体は、ニューマチックサスペンションシステムのエアバッグ(95)から到来する加圧空気であり、又は、前記加圧流体は、油圧式、又は、ハイドロニューマチック・サスペンションシステムの加圧液体である、
バルブユニット。
【請求項12】
前記請求項のいずれかに係るバルブユニットであって、
前記ピストン(18)によって閉鎖され得る流路によって、前記1つの液圧チャンバ(15)に流体的に接続され得る第2の液圧膨張チャンバを有さない、
バルブユニット。
【請求項13】
請求項9に係るバルブユニットであって、
前記ピストンは、
前記サスペンションの荷重が増加したときに、前記放出ポート(14)から離れる推力を、前記サスペンションから受けるように、前記車両のサスペンションに、機械的に、連結される、
バルブユニット。
【請求項14】
請求項2に係るバルブユニットであって、
前記第1の横方向面は、
前記ピストンの端面(32)によって提供される半径方向の最外殻環状面、及び、前記端面(32)から最も離れた前記空洞(31)の一端に、中央の円形領域(57)を有する、
バルブユニット。
【請求項15】
請求項14に係るバルブユニットであって、
前記第1の横方向面は、
前記縦方向空洞(31)の横方向肩部(56)によって提供される半径方向の中間環状面を有する、
バルブユニット。
【請求項16】
請求項2に係るバルブユニットであって、
前記第2の横方向面は、
前記ピストン(18)の前記第2の中間部分(23)によって提供される環状の形態(58、59)に、1つ、又は、2つの横方向面を有する、
バルブユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪のアンチロック機能を制御する液圧ブレーキシステムのためのバルブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
アンチロックブレーキシステム(ABS)は、油圧ブレーキを備える車両に設置されており、横滑り、又は、制御されていない横滑りを防止し、急停止の効果を低減する。この種のシステムは、自動車の4つの車輪が、ブレーキディスクE1-E4、及び、ブレーキディスクとの回転のために固定されるフォニックホイールF1-F4、又は、等価要素に機能的に対向する関連するセンサS1-S4を備える
図1に示されている。公知の方法では、センサS1-S4は、それらが関連付けられる車輪の回転速度を検出し、例えば、配線N1-N4を介して、受信される速度信号を処理するECU(Electronic control Unit)に、回転速度を示す信号を送信する。ブレーキキャリパG1-G4は、各ブレーキディスクに関連付けられている。ペダル制御部Cによって作動されるマスタシリンダMは、それぞれにバルブユニットABS1-ABS4が設置される各液圧配管H1-H4を介して、ブレーキキャリパを作動させる。各ABSバルブユニットは、電子制御ユニットからの電気制御信号に応答して、関連するブレーキキャリパに向かうブレーキ流体の流れ、及び、圧力を制御する。ECUは、車輪の不用意なロックを示す状態を検出すると、各ABSバルブを作動させ、影響を受ける車輪のブレーキの液圧を低下させ、したがって、この車輪の制動力を低減させ、結果として、車輪は制動されたまま、回転できる。このプロセスは、制動中、1秒間に数回連続して繰り返され、車両が横滑りすることを防止する。
【0003】
ブレーキキャリパに液圧的に接続可能な放出ポート、マスタシリンダに液圧的に接続可能な吸引ポート、放出ポートと流体連通する第1の液圧チャンバ、及び、第2の液圧拡張チャンバを有するバルブ本体を有するバルブユニットが、車両のアンチロックブレーキシステムのために、提案されている。流出通路は、第1の液圧チャンバと拡張チャンバとの間に流体連通を提供し、また、バイパス通路は、吸引ポートと放出ポートとの間に流体連通を提供する。ピストンは、液圧チャンバ内で長軸方向に移動可能であり、弾性要素の力とは対照的に、電子制御ユニットによって制御されるソレノイドによって、作動される。通常の制動条件下では、弾性要素の力は、ピストンが流出通路を閉鎖するが、バイパス通路を閉鎖しない位置に、ピストンを保持する。ロックされた車輪の制動状態では、ピストンがバイパス通路を閉鎖する一方、流出通路をクリアし、ブレーキ液の一部が一第1の液圧チャンバから流出チャンバに排出される位置に、ピストンを移動する。その結果、キャリパの圧力が低下し、車輪のロックを解除する。
【発明の概要】
【0004】
本発明の主たる目的は、公知のABSバルブユニットに比して、より漸進的に作動させることができる、改良され、及び、単純化されたABSバルブユニットを提供することである。
本発明は、車輪がロックされている間の制動時に、ロックされているホイールのブレーキキャリパを含む液圧ブレーキ回路の部分から、ブレーキ液を一時的に除去することを、徐々に調整することにより、前述の技術的課題を解決することを提案する。
一態様によれば、本発明は、請求項1に規定されているように、車輪のアンチロック機能を制御する油圧ブレーキシステム用のバルブユニットを提供する。
要約すると、ABSバルブユニットは、ブレーキ液を受容するように構成され、及び、単一の長軸方向に移動可能なピストンを有する単一の液圧チャンバを有する。液圧チャンバは、ブレーキキャリパにブレーキ液を送出する放出ポート、及び、通路であって、その通路を介して、液圧チャンバがマスタシリンダから送出されるブレーキ液を受容できるもの、を有している。ピストンは、放出ポートに面し、第1の横方向領域を規定する1つ以上の第1の横方向面、及び、放出ポートから離れて面し、及び、全体として第2の横方向領域を規定する1つ以上の第2の横方向面を有している。第2の横方向領域は、第1の横方向領域よりも大きい。長軸方向空洞は、第1の横方向面と第2の横方向面との間で流体連通を確立するピストン内に延在する。これにより、ピストンの放出ポートに向かう変位が通路を閉鎖し、及び、液圧チャンバ内のブレーキ液に利用可能な容積を徐々に大きくする。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本発明が十分に理解されるように、本発明は、例として、添付の図面を参照することによって与えられるいくつかの好ましい実施形態を説明する。
図1は、車両のアンチロックブレーキシステムの動作を模式的に示す図である
図2~
図6は、異なる動作条件における本発明の第1実施形態に係るバルブユニットの長軸方向面図である。
図7は、他の実施形態に係るバルブユニットの長軸方向断面図である。
図8は、車両のエアサスペンションシステムに関連する
図7に示すタイプのバルブユニットを示す概略図である。
図9は、車両のハイドロニューマチックサスペンションシステムに関連する
図7のバルブユニットを示す概略図である。
図10~
図12は、異なる動作条件における
図7のバルブユニットの長軸方向断面を示す概略図である。
図13は、他の実施形態に係るバルブユニットの長軸方向断面図である。
図14~
図17は、様々な動作条件で車両サスペンションに適用されるABSバルブユニットを模式的に示す。
【発明の詳細な説明】
【0006】
図2~
図6を参照して、参照番号10は、車輪のアンチロックブレーキシステムのためのABSバルブユニット全体を示す。バルブユニット10は、縦方向軸xを規定し、及び、縦方向、又は、軸方向として本明細書に定義される方向に、細長い形状を有している。この文脈では、「縦の」、「横の」、及び、「半径の」のような位置、及び、向きを示す用語は、x軸を参照して、解釈されるべきである。
バルブユニット10は、作動の縦方向を規定する本体11を有している。本実施例では、本体11は、第1の端部12、及び、第1の端部に対向する第2の端部13を有する概ね円筒形の管形状を有している。
本体11の端部12は、車輪のブレーキのブレーキキャリパGに、液圧的に、接続され得る放出ポート(又は、出口ポート)14、及び、車両のペダル、又は、手動レバー作動制御部Cと動作的に関連付けられているマスタシリンダMに、液圧的に、接続され得る吸引ポート17を形成する。
本体11は、放出ポート14と連通し、及び、単一のピストン18を縦方向に受容する単一の液圧チャンバ15を有している。
液圧チャンバ15は、放出ポート14に近い、径D1を有する第1の端部領域19(又は、先端領域)、径D1よりも大きい径D2を有する第2の中間領域20、及び、放出ポート14から最も遠い、径D1よりも小さい径D3を有する第3の領域21(又は、基部領域)を形成する。これに対応して、ピストン18は、液圧チャンバ15の第1の端部領域19に受容される端部22、液圧チャンバ15の第2の中間領域20に受賞される中間部23、及び、液圧チャンバ15の第3の基部領域21に受領される基部24を有している。
ピストン18の端部22に、縦方向に隣接し、及び、互いに短い距離で離間される一対のエンドシール26、27を配置する。シール26、27は、液圧チャンバ15の端部領域19に摺接している。ピストン18の中間部23に、液圧チャンバ15の中間領域20に係合する少なくとも1つの中間シールガスケット28を配置する。基端シール30は、液圧チャンバ15の第3の領域21に密封係合するように、ピストンの基部24に配置される。
ピストン18は、放出ポート14に面するピストンの端部の端面32からピストンを通って延在する縦方向空洞31を形成する。縦方向空洞31は、ピストンの側面に開口する横方向通路33と連通している。横方向通路33は、液圧チャンバ15の中間領域20に面している。
弾性要素34は、ピストン18を放出ポート14から離れるように付勢している。
図2~
図6の実施例では、弾性要素34は、吸引ポート17、及び、放出ポート14を有する端部12とは反対側のバルブ本体11の端部13に受容されている。
図2~
図6の実施形態では、弾性要素34は、本体11の肩部35と、肩部35に面し、及び、これから縦方向に離間されて配置されている横方向コントラスト壁36との間で縦方向に圧縮される単一の圧縮ばねとして形成されている。
横方向コントラスト壁36は、横方向の遊びをもって受容され、及び、本体11によって有利に形成されるチャンバ38内で縦方向に移動可能である。
ロッド37は、横方向コントラスト壁36をピストン18に、縦方向に、接続する。
弾性要素34の縦方向の圧縮は、横方向コントラスト壁36を左に付勢し、これにより、ピストン18は、ロッド37を介して左に引っ張られる。
横方向コントラスト壁36と肩部35との間の縦方向の距離を、調整し、弾性要素がピストン18を放出ポート14から離れるように移動させる、縦方向の弾性力を変化できる。
一実施形態によれば、ステム37を、横方向コントラスト壁36を通って形成される、対応するねじ切りされる貫通孔39を通って係合するねじ切りされるステムとして、形成できる。
ロッド37は、ピストン18の部分24に形成される対応する凹部41に係合する、例えば球形の、円形断面を有する拡大されたターミナルヘッド40を有することができる。
車両に搭載された電子制御ユニット(ECU)に電気的に接続可能な作動装置42を、配置し、バルブユニット10を作動させる。作動装置42は、ピストン18に、作動可能に、接続される。
図2~
図6に示す実施形態では、作動装置42は、放出ポート14に向かって、ピストンを、縦方向に移動させる機能を有する。同じ作動装置42は、また、弾性要素がピストン18を放出ポート14から離れるように付勢する弾性力を一時的に変化させる機能を有する。作動装置42は、実際には、横方向コントラスト壁36の縦方向の位置を、ステム37に沿って、変化させ、したがって、横方向コントラスト壁36と肩部35との間の距離、その結果、弾性体34の長さ、及び、その圧縮力を調整できる。弾性体34をより圧縮し、縦方向に短くするような方法で、作動装置42によって、ロッド37を、自身の縦方向軸37Aを中心に所定の回転方向に回転させることによって、結果的に、ピストン18を放出ポート14から離れるように動かす牽引力が、大きくなる。逆に、ロッド37を、逆の回転方向に、回転させることによって、弾性体34は、減圧され、及び、縦方向に長くなることができ、これにより、ピストン18を放出ポート14から離れるように動かす牽引力を低減する。
ロッド37は、好ましくは、ピストン18の縦方向の中心軸18Aに対して偏心する中心縦方向軸37Aを有する。これにより、横方向コントラスト壁36の位置を調整するステップの間に、ロッド37に、その自身の軸37Aを中心に与えられる回転は、ピストン18の、その軸18Aを中心とする望ましくない回転、結果として、ピストン18に配置されるシールガスケットの摩耗、及び、液圧チャンバ15の壁に作用する摩耗を引き起こさない。
横方向コントラスト壁36の縁部とチャンバ38との間の横方向のクリアランスは、壁36と共にピストン18の縦方向の動作の間で、摩擦を低減することが望ましい。ロッド37に与えられる回転が、コントラスト壁36に関して、螺合、又は、螺合解除を引き起こさないようにするために、壁36の周縁の少なくとも一部は、軸37Aとチャンバ38の内面との間の最小横距離P2よりも大きい、軸37Aからの横方向距離P1を有することが好ましい。ここで、チャンバ38の内面は、ステム37の回動時に、横方向壁36を回動ロックするためのコントラスト面として機能する。
ねじ切りされるロッド37を回転させる作動装置42は、車両に搭載される電子制御ユニット(ECU、
図1)によって制御される電動モータを有する。
液圧チャンバ15において、放出ポート14に最も近い第1の端部領域19に存在するブレーキ液は、シール26、27によって特定される直径D1の円周を有するピストン18の円形領域に作用する。放出ポート14とシール27との間の第1の領域に存在するブレーキ液は、ピストン18に、添付図面における左に方向付けられる、縦方向の推力を、放出ポート14から離れるように、作用させる。
液圧チャンバ15の第2の中間領域20に含まれるブレーキ液は、液圧チャンバ15の第2の中間領域20の直径に対応する直径D2の外周、及び、放出ポート14から最も遠い、液圧チャンバ15の第3の領域21の直径に対応する直径D3の内周を有する円環によって定まるピストンの領域に、縦方向の液圧推力を作用させる。液圧チャンバの第2の中間領域20におけるブレーキ液の液圧推力は、添付図面の右に方向付けられ、及び、放出ポート14に向かって、ピストン18を押す。
液圧チャンバの3つの領域19、20、及び、21の直径D1、D2、及び、D3、並びに、ピストン18の対応する部分22、23、及び、24の直径は、直径D2、及び、D3によって範囲を定められる領域が円環の領域が、直径D1を有する円の領域よりも大きくなるように、選択される。結果的に、ピストン18に作用する液圧力は、ピストン18に作用し、それを放出ポート14に向かって押圧する長手方向の合力を有している。この合力を、以降、「液圧合力」と定義する。液圧合力は、放出ポート14から離れるようにピストン18に作用する、弾性要素34によって提供される力とは反対方向に、縦方向に、方向付けられる。
ピストン18は、ここでは、「第1の横方向面」として規定され、放出ポート14に面し、及び、前述の直径D1を有する円の領域に全体的に同等な第1の横方向面を規定する1つ以上の横方向面を有している。ピストン18は、ここでは、「第2の横方向面」として規定され、放出ポート14から離れるように、すなわち、第1の横方向面に対して反対方向に面する1つ以上の横方向面を有している。第2の横方向面は、直径D2の外周、及び、直径D3の内周によって範囲を定められる環状の領域に相当する第2の横方向面を、全体的に、規定する。
本明細書に示される実施形態では、第1の横方向面は、ピストン端面32によって与えられる半径方向に最も外側の環状面、縦方向空洞31の横方向肩部56、及び、空洞31の底部の中央円形領域57によって形成される半径方向の中間環状面を有している。ピストン18の代替の実施形態(図示せず)は、第1の面が、放出ポート14の側に面するピストンの表面上で、異なって、構成され、大きさが決められ、及び/又は、分配されることを提供できる。例えば、一定幅の縦方向空洞31を形成することによって、肩部56を、なくしてもよい。
【0007】
図2~
図6の例示的な実施形態では、第2の横方向面は、ピストン18の最も広い部分である第2の中間部分23によって提供される2つの環状体58、59を有している。ピストン18の実施形態(図示せず)は、第2の面が異なるように構成され、又は、配置されるように提供してもよい。例えば、 ここでは互いに対して縦方向にオフセットする2つの面58、59の代わりに、単一の横方向幾何学平面にある単一の環状面を、提供できる。
通路50は、バルブ本体11に形成され、及び、液圧チャンバ15の端部領域19に開口し、このチャンバと吸引ポート17との間で流体連通を確立するする。
本明細書に示す実施形態では、通路50の構造を容易にするために、構造上の理由により、横方向ボア72は、本体11に形成される。横方向孔72は、73で概略的に表されるクロージャによって、恒久的に、閉鎖される。
構造上の理由から、本体11は、2つ以上の相補部品、この例では、右側部分11aと左側部分11b,から構成できる。右側部分11aは、チャンバ15、吸引ポート17、及び、放出ポート14を形成する。左側部分11bは、ガスケット74によって右側部分11aと気密に連結される。
図2および
図3は、通常の制動状態、すなわち、車両は、制動しているが、放出ポート14からブレーキ液を受けるキャリパは、ホイールをロックせず、したがって、スリップしないときのバルブユニット10を示している。ブレーキ液は、縦方向空洞31によって、第1の端子領域19、及び、第2の中間領域20の両方において、液圧チャンバ15を満たしている。
通常の制動状態において、すなわち、車輪のロック状態に到達することなく、発生する適度な液圧によって、液圧合力は、弾性要素34によって及ぼされる縦方向の力よりも小さい強度である。換言すれば、弾性要素34は、ピストン18を右方向に移動させる傾向がある液圧合力F1を超える、ピストン18を左方向に引っ張る力F2を働かせる。この状態では、弾性体34の長さをL1で示す。ピストンの端面32は、放出ポート14の近くのエンドストップ43から距離Eに配置される。
通常の制動状態では、弾性体34の力は、ピストン18を、放出ポート14から離れるように、休止位置(又は、退避位置)に、左にずらした状態を維持する。休止位置では、ピストン18は、本体11によって形成される横方向肩部75に当接できる。
ピストン18が休止位置にあるとき(
図3)、ピストン18は、通路50をふさがず、ブレーキ液が、通路50を通って通過できるように、及び、吸引ポート17から放出ポート14に、ブレーキキャリパに向かって、移行できるようにする。アンチロックブレーキシステムは、作動していない。
ロックされた車輪の制動状態(
図4)では、車両上の電子制御ユニットECUは、車輪のうちの少なくとも1つのロック、又は、スリップの状況を示す車輪センサから、速度信号を受信する。これらの条件下で、電子制御ユニットは、バルブユニット10の作動装置42に起動信号を送信する。
作動装置42は、ロッドが右に移動し、及び、ピストン18を右に、放出ポート14に近づくように移動させ始めるような回転方向に、横方向コントラスト壁36に関して、ロッド37を回転し始める。弾性要素34は、その本来の長さL1を変化させず、依然として弾性力F2を働かせる。
次いで、ピストン18は通路50を閉鎖し(
図4)、それにより、バルブユニットを通ってマスタシリンダからブレーキキャリパへのブレーキ液の流れが遮断される。これが生ずるとき、液圧チャンバ15における、並びに、放出ポート、及び、ブレーキキャリパを含む液圧回路の部分における、ブレーキ液の圧力は、依然として、バルブユニット10の上流のブレーキ液の圧力に等しい。
作動装置42はロッド37を回転し続け、それにより、ピストンは放出ポートに向かって移動する(
図5)。この段階では、放出ポート14に(右に)面するピストンの横方向面の領域が、放出ポート14から離れるように(左に)面するピストンの横方向面の領域よりも小さいことに起因して、液圧チャンバ15内のブレーキ液に利用できる全容積が増大する。このため、放出ポートに向かうピストンの変位は、放出ポート側(右側)の液圧チャンバ15の容積を減少させるが、同時に、ピストンの変位は、放出ポートとは反対側のチャンバ15の容積を増加させ、及び、左側の容積増加は、同時の右側の体積減少よりも大きい絶対値を有している。次いで、ブレーキ液は、ピストン空洞31を通って流れ、また、液圧チャンバの右側から、より多くの容積が利用できる、左側に向かって通過できる。
前述のことにより、放出ポートへ向かうピストン18の変位は、液圧チャンバ内の圧力を低下させる。また、液圧チャンバ内の圧力降下は、同時に、放出ポートからブレーキキャリパに延びる液圧回路の分岐におけるブレーキ液圧を減少する。これにより、ブレーキキャリパによって働く制動力は、低減され、車輪を解放する。
放出ポートへ向かうピストン18の変位は、駆動部42によって付与さるロッド37の回転によって、及び、液圧合力によって、決定される。ピストンの端面32がストローク当接部43の端部に接するようになると(
図5)、ロッド37と横方向壁36との間のねじ結合の影響により、ロッド37の継続する回転により、横方向コントラスト壁36は、さらに、肩部35から離れる方向に移動する。その結果、弾性部材34は、伸張でき、その長さが、L2(L2>L1)になる。弾性要素の伸びによって、ピストンに作用する弾性力が、減少し、結果的に、弾性力と液圧推力との間のバランスにおいて、両者を減少させる。
ブレーキキャリパが解放されると、電子制御ユニットECUは、ロッド37の回転方向を反転させることによって、作動装置42を制御する(
図6)。したがって、ロッド37は、ピストンを左方向に引っ張り、ピストン18を放出ポート14から離れるように移動させ、及び、コントラスト壁36を放出ポート14に向けて移動させ、弾性要素34を再圧縮する。通路50は開放され、その結果、マスタシリンダが、再び、ブレーキキャリパと流体連通する。ブレーキキャリパに送られるブレーキ液の圧力は、
図3~
図6のステップのサイクルを繰り返すことによって、増加できる。
好ましくは、作動装置42は、ロッド37に、回転可能に連結されるが、ピストン18と縦方向に統合される慣性質量を増加しないように、例えば、スプライン軸継手44によって、ロッド37から、縦方向に、係合解除される。
ここで
図7~
図12を参照すると、実施形態は、弾性要素の力が、車両サスペンションシステムによって提供される加圧液の圧力を利用するサーボ機構によってアシストされることを提供してもよい。
図7~
図12の以下の説明では、
図2~
図6の実施形態と異なる要素のみを、説明する。
【0008】
弾性要素34は、縦方向空洞31に、受容されており、この例では、圧縮ばねが、ピストンの肩部56と、放出ポート14に隣接する液圧チャンバによってもたらされる、ピストンに対するストローク端部の停止部43と、の間に弾性的に圧縮されている。弾性要素34は、放出ポート14から離れるように、ピストン18を付勢する。
バルブユニット10(
図7)を、電磁ソレノイド80に関連付け、それによって、ピストン18を放出ポート14に向かって縦方向に変位させるように、電気的に作動させることができる。ソレノイド80を、車輪の回転速度を制御し、並びに、車輪の不用意なロックを示す状態を検出し、及び、ソレノイド80に通電するための制御信号を提供できる電子制御ユニットECUに、電気的に、接続してもよい。
ピストン18は、ソレノイドアクチュエータ80に、動作可能に、関連付けられ、及び、ピストン18の基部24に一体化され、又は、固定される作動部61を有している。作動部分61は、強磁性材料を有してもよい。
圧力サーボ機構は、作動部61とピストンの基部24との間の中間のピストン18の部分65を取り囲む、円筒形状の、ここでは補助部として定義される、補助流体チャンバ62を有している。ピストンの補助部62は、補助流体チャンバ62の円筒壁に、摺動しながら、及び、密封しながら、係合される補助シール63を有している。補助シール63は、ピストン18の基端部24に配置される基端シール30に関して、放出ポート14から、さらに、離れる位置で、ピストン18に、取り付けられる。
車両サスペンションシステムに流体的に接続可能な、補助吸引ポート64が、補助シール63と近位シール30との間の中間位置において、補助流体チャンバ62上に開口する。液圧チャンバに流入する加圧流体を、例えば、エアサスペンションのエアバッグ95によって、提供できる(
図8)。
【0009】
図9に概略的に示されるような、セルフレベリング式空気圧サスペンションシステムは、当技術分野において公知であり、したがって、本明細書で、詳細に説明されない。ここでは、動的に、車両の各車輪(図示せず)のサスペンションのバランスをとるために、膨張バルブ93、及び、ブリードバルブ94を有するダクト92を用いて、各エアバッグ95に、加圧空気の供給を制御する一対のコンプレッサ90は、加圧空気をタンク91に供給することを示すだけで十分である。可能性のある実施形態によれば、各エアバッグ95は、加圧流体(
図8の例では加圧空気)を、車両のABSシステムのバルブユニット10に供給できる。加圧空気ライン96は、各エアバッグ95からの加圧空気をABSバルブユニット10の各吸引ポート64に供給する。もしくは、加圧サスペンション液は、液圧式、又は、ハイドロニューマチック・サスペンションシステムからのオイルであってもよい(
図9)。
構造上の理由から、本体11は、2つ以上の相補部品、この例では、主部11a、及び、作動ソレノイド80に固定される接続部11b、を有してもよい。主部11aは、液圧チャンバ15と、吸引ポート17、及び、放出ポート14を形成する。接続部11bは、ここで記述される例では、補助吸引ポート64を有し、及び、ガスケット74によって、主部11aと気密に結合され得る。
組立上の理由から、ピストン18を、別々に製造され、その後、本体11にピストンを組み入れる際に、機械的に、一緒に結合されるいくつかの部品から、便宜的に、構成してもよい。
【0010】
図10において、バルブユニットは、通常の制動状態で示されている。サスペンションシステムの流体圧は、補助流体チャンバに存在し、結果的に、弾性要素34によって提供される力Fsprと協働する、ピストン18を放出ポート14から離れるように付勢する補助力Fsusを生成する。通常の制動状態では、すなわち、制動される車輪のロック状態に到達することがなければ、液圧合力FBRは、サスペンション、及び、弾性要素34によって及ぼされる縦方向結合力FSUS+FSPRよりも強くない(Fsus+Fspr>Fbr)。このため、通常の制動状態では、ピストン18は、左に、放出ポート14から離れるように、休止位置(又は、退避位置)に、配置される。休止位置では、ピストン18は、本体11によって形成される横方向肩部75に当接する。ピストン18は、休止位置(
図10)では、通路50を妨げず、ブレーキ液が、それを通って、ブレーキキャリパに向かって、吸引ポート17から放出ポート14まで、直接的に通過できるようにする。アンチロックブレーキシステムは、作動していない。
【0011】
図11では、ブレーキ回路のブレーキ液の圧力が、ブレーキ回路内において、したがって、ABSバルブユニット10の液圧チャンバ15内においても、増加する制動段階のバルブユニットが示されている。このため、前述のピストン18の形状によって、ブレーキシステムの液圧回路におけるブレーキ液の圧力が高くなるほど、液圧合力Fbrが、大きくなる。ピストン18に付与される補助力Fsusは、制動間の荷重伝達によって、動的に、変化できる。
液圧合力Fbrが、補助力と弾性要素との和を超えると、Fbr>(Fsus+Fspr)、ピストン18は右方に移動し、通路50を閉鎖する(
図11)。ブレーキキャリパに作用するブレーキ液圧を、さらに、増加できない。
【0012】
ロックされた車輪制動状態(
図12)では、車両の電子制御ユニットECUは、少なくとも1つの車輪のロック、又は、スリップ状況を示す車輪センサから、速度信号を受信する。これらの条件下で、電子制御ユニットは、ピストンをさらに右方向に移動させる付加力Fsolを、ピストン18に、伝達するソレノイドアクチュエータ80に通電する。
(放出ポート14に向かう)液圧チャンバ15の右断面の面積は、ピストンが右方向に移動するにつれて、左断面の面積よりも小さいため、液圧チャンバ15のブレーキ液は、徐々に広くなる左側の縦方向キャビティ31を通過する。その結果、ブレーキ液に利用できる容積の増加は、ブレーキキャリパ回路に作用する圧力を低下し、そのため、車輪に作用する制動トルクは、低減され、そして、車輪は、ロックが解除される。
ブレーキキャリパが解放されると、電子制御ユニットECUは、ソレノイドへの電力をカットし、そのため、弾性要素34、及び、サスペンションからの加圧流体の圧力は、ピストン18を、排出ポート14から離れるように、左に、戻す。通路50が開放され、それによって、マスタシリンダは、再び、ブレーキキャリパと流体連通する。ブレーキキャリパに送られるブレーキ液の圧力は、
図9~
図12のステップのサイクルを繰り返すことによって、増加できる。
ブレーキ液の圧力が増加すると、液圧合力Fbrは、増加するが、ピストンを移動し、及び、ブレーキに作用する圧力を減少するために、作動ソレノイドによって生成される力Fsolは、増加することを、観察できる。
【0013】
一般に、制動の間、前輪に作用する荷重は、増加する一方、後輪は、解放されることが、理解されよう。したがって、制動圧が非常に高い場合であっても、ABSバルブにおけるピストンを、開放位置に、保持するためのより高い力を提供する必要がある。このため、制動の間、ニューマチックサスペンションを有する車両の前輪用エアバッグは、後輪用エアバッグよりも圧縮され、そして、それらの内部の気圧の上昇は、Fsus力の増加を生成するだろう。このため、より加重される前輪に、より大きな制動トルクを適用でき、これにより、より高いグリップという利点を得させることができる。より低い強度の力Fsusが、制動の間、軽くされ、したがって、よりスライドの影響を受けやすい後輪のABSバルブに適用され、そのことは、制動間の後輪のグリップの減少による車輪ロックのリスクを低減する。
ここで記述されるバルブユニットは、ブレーキキャリパ側の液圧回路の容積を、徐々に、増加できるようにし、したがって、ブレーキキャリパ内の圧力を、徐々に、減少することが理解されよう。圧力が、流路が開放される瞬間に、急激に、解放され、そして、ブレーキ液を、キャリパを有するブレーキ回路の一部から、除去し、そのため、一時的にキャリパから除去された流体を戻すことによって、回路の一部を補充するためのポンプを必要とする、第2の液圧拡張、又は、蓄積チャンバを有する従来のバルブユニットよりも、現在のバルブユニットは、より良い性能を提供する。
【0014】
図13は、
図2-~
図6、及び、
図7~
図12の代替として、簡略化された実施形態を示している。ピストン作動装置は、電子制御ユニットECUによって、電気的に、作動され、ピストン18を放出ポート14に向かって縦方向に移動する電磁ソレノイド80を有している。
弾性要素34は、縦方向空洞31に受容され、ピストンの肩部56と、吐出ポート14に隣接する液圧チャンバによって提供され、及び、ピストンのストロークの端部として作用する当接部43との間で弾性的に圧縮される。弾性要素34は、ピストン18を放出ポート14から離れるように付勢する。
ピストン18は、ソレノイド80に動作的に関連付けられ、及び、ピストン18の基部24と一体化され、又は、固定される作動(強磁性?)部61を有している。作動部61は、強磁性材料を有してもよい。
【0015】
図13では、バルブユニットは、通常の制動状態で示されている。このような状態では、弾性要素34によって提供可能に提供される力は、液圧合力よりも大きい強度である。ピストン18は、本体11によって形成される横方向肩部75に当接している休止位置(又は、退避位置)において、放出ポート14から離れるように、左に配置される。ピストン18は、休止位置において、通路50閉鎖せず、ブレーキ液が吸引ポート17からブレーキキャリパに向かって放出ポート14に通過できるようにする。アンチロックブレーキシステムは、作動していない。
制動の間、前述のピストン18の形状により、液圧合力は、ブレーキシステムの液圧回路におけるブレーキ液の圧力が増加するにつれ、増加する。液圧合力が弾性要素の力を超えると、ピストン18は、右に移動し、通路50を閉鎖する(
図10、及び、
図11を参照して説明されたことと同様)。ブレーキキャリパに作用するブレーキ液圧を、さらには、増加できない。
ロックされた車輪の制動状態では、電子制御ユニットECUは、ピストン18に付加力を伝達する作動ソレノイド80を付勢して、ピストンをさらに右方向に移動させる 油圧室15における右断面の面積(吐出口14側)は、ピストンが右方向に移動するにつれて、左断面の面積よりも小さい 油圧室15内のブレーキ液は、左側の縦キャビティ31を通過し、より大容量である。油圧室の左側の容積は、右側の容積よりも大きくなる 油圧室は、同時に減圧される。このため、ピストンの吐出口側への変位により、液圧室15および液圧回路のうちABS弁よりも下流側の容積が大きくなる ユニットは、ロックされたブレーキキャリパを含む。その結果、ブレーキ液に利用可能な容積の増加は、ブレーキキャリパ回路に作用する圧力を減少させる これにより、車輪に作用する制動トルクが低減され、車輪のロックが解除される
ブレーキキャリパが解放されると、電子制御ユニットECUは、ソレノイドへの電力を遮断し、そのため、弾性要素34は、ピストン18を放出ポート14から離れるように移動する。通路50は、再び開放され、それにより、マスタシリンダは、再び、ブレーキキャリパと流体連通する。ブレーキキャリパに供給されるブレーキ液の圧力は、前述の動作サイクルを繰り返し、増加できる。
代替的な実施形態は、サスペンションによって生成される補助力Fsusが、サスペンションアームに接続される機構によって、ピストン18に伝達され、サスペンションに作用する重量力を利用するように、提供してもよい。
【0016】
図14~
図17の例では、サスペンションの垂直荷重が増加したときに、増加した補助力Fsusを伝達するために、リンク機構70によってサスペンションアーム67に接続されるスプリング66は、ABSバルブユニットのピストン18に関連付けられる。バルブユニット10は、車両本体69と一体のブラケット68に固定される。サスペンションに作用する荷重が低いときは(
図16)、垂直方向に向けられるピストン18に伝達される補助力は、低い。逆に、サスペンションに作用する荷重が高いときは(
図17)、ピストン18に伝達される補助力Fsusは、増加する。
有利には、作動ソレノイドの制御は、PWM(Pulse Width Modulation)において行われ、これは、その急速なオン/オフの切り替えの間に、ソレノイドコイルのオフ時間に対するオン時間の比率を変化させるようにする。
【0017】
図1は、各車輪のための別個のABSバルブを有するシステムを図示しているが、実施形態は、いくつか、又は、全ての車両のABSバルブが、物理的に、1つのバルブ本体の中に一緒にグループ化され、又は、封入されてもよい。
本発明の特定の実施形態が開示されているが、このような開示は、単に例示を目的としたものであり、これにより、本発明は何ら限定されるものではないことを理解されたい。これらの実施例を考慮して、当業者には、種々の変更が、明らかであろう。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される。
【国際調査報告】