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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】多針アブレーションプローブ
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20231226BHJP
   A61B 10/02 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B10/02 300D
A61B10/02 110K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559191
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 IL2021051476
(87)【国際公開番号】W WO2022123578
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】63/123,545
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523221902
【氏名又は名称】ワンパス メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ベン アリエ, ジェイコブ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK06
4C160KK20
4C160MM32
4C160NN09
(57)【要約】
アブレーションデバイスであって、シースと、それぞれシースの遠位端から伸長可能な複数の針電極と、複数の針電極が組織と接触するときに前記組織の所望の領域をアブレーションするように複数の針電極のうちの特定の針電極のペア間に電力信号を選択的に印加するように構成されたコントローラと備えるデバイスである。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アブレーションデバイスであって、
シースと、
それぞれシースの遠位端から伸長可能な複数の針電極と、
複数の針電極が組織と接触するときに前記組織の所望の領域をアブレーションするように、複数の針電極のうちの特定の針電極のペア間に電力信号を選択的に印加するように構成されたコントローラと、
を備えるデバイス。
【請求項2】
前記電力信号は高周波(RF)交流である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記印加は、前記電力信号を前記特定の針電極のペアのそれぞれに同時に印加することを含む、請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項4】
前記印加は、前記特定の針電極のペアの所定の針電極ペア順序で、前記特定の針電極のペア間に前記電力信号を順次印加することを含む、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記特定の針電極のペアは、所望のアブレーションパターンに基づいて選択される、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記所望のパターンは、少なくとも部分的に前記組織の前記所望の領域に基づいて決定される、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記複数の針電極は、中央の第1の針電極と、前記第1の針電極に対して所定のパターンで配置された少なくとも2つの第2の針電極とを含む、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記所定のパターンは、前記第1の針電極に対して囲むパターンで配置された前記少なくとも2つの第2の針電極を含む、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記特定の針電極のペアのうちの少なくとも1つは、前記第1の針電極と、前記第2の針電極のうちの1つとを含む、請求項7に記載のデバイス。
【請求項10】
前記特定の針電極のペアのうちの少なくとも1つは、一対の前記第2の針電極を含む、請求項7に記載のデバイス。
【請求項11】
前記シースは細長いシャフトを含む、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記細長いシャフトは可撓性である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記複数の針電極のうちの1つの針電極は、その長さに沿って電気絶縁体を備え、前記針電極は、電気的に絶縁されていない遠位先端部を備える、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記電気的に絶縁されていない遠位先端部は、尖っているか、又は勾配付きである、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記複数の針電極のうちの1つの針電極は、センサを備える、請求項1~請求項14のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記センサは、温度センサを含む、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記温度センサは、熱電対を含む、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記複数の針電極のうちの1つの針電極は、中空のコアを備える生検針である、請求項1~請求項14のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項19】
アブレーション方法であって、
シースと、
それぞれシースの遠位端から伸長可能な複数の針電極と、
複数の針電極のうちの任意の針電極のペア間に電力信号を選択的に印加するように構成されたコントローラと
を備える、アブレーションデバイスを提供することと、
前記シースの少なくとも遠位部を被検者の体内に挿入することと、
前記複数の針電極が前記被検者の組織と係合するように、前記複数の針電極を前記シースの前記遠位端から伸長させることと、
前記組織の所望の領域をアブレーションするために、前記複数の針電極のうちの特定のペア間に前記電力信号を選択的に印加するように前記コントローラを動作させることと、
を含む方法。
【請求項20】
前記電力信号は高周波(RF)交流である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記印加は、前記電力信号を前記特定の針電極のペアのそれぞれに同時に印加することを含む、請求項19又は請求項20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記印加は、前記特定の針電極のペアの所定の針電極ペア順序で、前記特定の針電極のペア間に前記電力信号を順次印加することを含む、請求項19~請求項21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記特定の針電極のペアは、所望のアブレーションパターンに基づいて選択される、請求項19~請求項22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記所望のパターンは、少なくとも部分的に前記組織の前記所望の領域に基づいて決定される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記複数の針電極は、中央の第1の針電極と、前記第1の針電極に対して所定のパターンで配置された少なくとも2つの第2の針電極とを含む、請求項19~請求項24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記所定のパターンは、前記第1の針電極に対して囲む配置パターンで配置された前記少なくとも2つの第2の針電極を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記特定の針電極のペアのうちの少なくとも1つは、前記第1の針電極と、前記第2の針電極のうちの1つとを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記特定の針電極のペアのうちの少なくとも1つは、一対の前記第2の針電極を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記シースは細長いシャフトを含む、請求項19~請求項28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記細長いシャフトは可撓性である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記複数の針電極のうちの1つの針電極は、その長さに沿って電気絶縁体を備え、前記針電極は、電気的に絶縁されていない遠位先端部を備える、請求項19~請求項30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記電気的に絶縁されていない遠位先端部は、尖っているか、又は勾配付きである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記複数の針電極のうちの1つの針電極は、センサを備える、請求項19~請求項32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記センサは、温度センサを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記温度センサは、熱電対を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記複数の針電極のうちの1つの針電極は、中空のコアを備える生検針である、請求項19~請求項35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記係合は、前記組織との接触及び前記組織への挿入、のうちの1つを含む、請求項19~請求項36のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、「MULTI-NEEDLE ABLATION PROBE」という名称の2020年12月10日に出願された米国特許仮出願第63/123,545号の優先権を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明のいくつかの実施形態は、一般に、組織の治療に関する。より詳細には、本発明のいくつかの実施形態は、針電極を介して提供される電力を使用した組織のアブレーションに関する。
【背景技術】
【0003】
患者の体内に異常な組織が存在する状況では、その異常な組織を破壊するために、例えば外科的切除の代わりに、アブレーション療法が使用される場合がある。例えば、アブレーション手技は、異常な心調律を引き起こしている少量の心臓組織を破壊又はアブレーションするため、或いは、肺、乳房、甲状腺、肝臓、又は他の身体領域の腫瘍を治療するために使用される場合がある。
【0004】
通常、そのようなアブレーション療法は、異常な組織を切除する外科手技よりも侵襲性が低い。例えば、アブレーション療法では、プローブが、皮膚の切開を通じて、カテーテルを介して動脈に通して、又は例えば様々な医用イメージングデバイスによってガイドされるエネルギービームの誘導によって挿入される場合がある。異常な組織をアブレーションするために適用されるエネルギーとしては、熱(例えば、高周波又はマイクロ波放射として送達される)、極度の低温、超音波、レーザ、又は化学物質が挙げられる。
【0005】
関連技術の上記の例及びそれに関連する制限は、例示を意図しており、排他的なものではない。関連技術の他の制限は、本明細書を読み、図面を検討することで、当業者には明らかとなるであろう。
【発明の概要】
【0006】
以下の実施形態及びその態様は、範囲の限定ではなく例示及び説明を意図しているシステム、ツール、及び方法と併せて説明及び図示される。
【0007】
一実施形態では、アブレーションデバイスであって、シースと、それぞれシースの遠位端から伸長可能な複数の針電極と、複数の針電極が組織と接触するときに前記組織の所望の領域をアブレーションするように複数の針電極のうちの特定の針電極のペア間に電力信号を選択的に印加するように構成されたコントローラとを備えるデバイスが提供される。
【0008】
一実施形態では、アブレーション方法であって、シースと、それぞれシースの遠位端から伸長可能な複数の針電極と、複数の針電極のうちの任意の針電極のペア間に電力信号を選択的に印加するように構成されたコントローラとを備える、アブレーションデバイスを提供することと、前記シースの少なくとも遠位部を被検者の体内に挿入することと、前記複数の針電極が前記被検者の組織と係合するように、前記複数の針電極を前記シースの前記遠位端から伸長させることと、前記組織の所望の領域をアブレーションするために前記複数の針電極のうちの特定のペア間に前記電力信号を選択的に印加するように前記コントローラを動作させることと、を含む方法も提供される。
【0009】
いくつかの実施形態では、係合は、前記組織との接触及び前記組織への挿入、のうちの1つを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、電力信号は高周波(RF)交流である。
【0011】
いくつかの実施形態では、印加は、前記電力信号を前記特定の針電極のペアのそれぞれに同時に印加することを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、印加は、前記特定の針電極のペアの所定の針電極ペア順序で、前記特定の針電極のペア間に前記電力信号を順次印加することを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、特定の針電極のペアは、所望のアブレーションパターンに基づいて選択される。
【0014】
いくつかの実施形態では、所望のパターンは、少なくとも部分的に前記組織の前記所望の領域に基づいて決定される。
【0015】
いくつかの実施形態では、複数の針電極は、中央の第1の針電極と、前記第1の針電極に対して所定のパターンで配置された少なくとも2つの第2の針電極とを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、所定のパターンは、前記第1の針電極に対して囲むパターンで配置される前記少なくとも2つの第2の針電極を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記特定の針電極のペアのうちの少なくとも1つは、前記第1の針電極と、前記第2の針電極のうちの1つとを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記特定の針電極のペアのうちの少なくとも1つは、一対の前記第2の針電極を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、シースは細長いシャフトを含む。いくつかの実施形態では、細長いシャフトは可撓性である。
【0020】
いくつかの実施形態では、複数の針電極のうちの1つの針電極は、その長さに沿って電気絶縁体を備え、前記針電極は、電気的に絶縁されていない遠位先端部を備える。いくつかの実施形態では、電気的に絶縁されていない遠位先端部は、尖っている又は勾配付きである。
【0021】
いくつかの実施形態では、複数の針電極のうちの1つの針電極は、センサを備える。いくつかの実施形態では、センサは、温度センサを含む。いくつかの実施形態では、温度センサは、熱電対を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、複数の針電極のうちの1つの針電極は、中空のコアを備える生検針である。
【0023】
前述の例示的な態様及び実施形態に加えて、さらなる態様及び実施形態が、図面を参照し、以下の詳細な説明を検討することで明らかとなるであろう。
【0024】
例示的な実施形態が参照図に示されている。図面に示されている構成要素及び特徴の寸法は、一般に、表示の便宜及び明瞭さのために選択されており、必ずしも一定の縮尺で示されているわけではない。図面を以下に挙げる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る針電極アブレーションデバイスを概略的に示す図である。
図2】本発明のいくつかの実施形態に係る針電極アブレーションデバイスの使用を概略的に示す図である。
図3】本発明のいくつかの実施形態に係る針電極アブレーションデバイスのシースからの針電極の伸長を概略的に示す図である。
図4A】針電極が後退したときの、本発明の一実施形態に係る図1に示されている針電極アブレーションデバイスの制御ハウジングの例を概略的に示す図である。
図4B】ガイドチューブに挿入可能なシースの長さを短くするようにアダプタが配置されている状態の、図4Aの制御ハウジングを概略的に示す図である。
図5A】第1グループの針電極をシースから伸長させるための遠位電極伸長スライダの動作を概略的に示す図である。
図5B】第2グループの針電極をシースから伸長させるための近位電極伸長スライダの動作を概略的に示す図である。
図5C】近位ポート又は境界面を備える、本発明のデバイスの制御ハウジングの近位端を概略的に示す図である。
図6A】中央電極と選択された周辺電極との間の電力信号の印加を概略的に示す図である。
図6B】隣接する周辺電極の選択されたペア間の電力信号の印加を概略的に示す図である。
図6C】中央電極と選択された周辺電極との間の、並びに、隣接する周辺電極の選択されたペア間の、電力信号の印加を概略的に示す図である。
図6D】中央電極と選択された周辺電極との間の電力信号の印加を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のいくつかの実施形態は、アブレーションする組織に係合及び/又は挿入され得る複数の針電極を含む組織アブレーションデバイスを提供する。
【0027】
通常、針電極は、シースの遠位端から伸長するように構成される。シースは、例えば、切開を介して、又はカテーテル、内視鏡チューブなどの形態のガイドを介して患者の体内に挿入可能な、細長い剛性又は可撓性シャフトの形態であり得る。針電極は、針電極が患者の体内に挿入される際にシースの遠位端へ後退させることができる。例えば、シースへの後退により、針電極の汚染、並びに、患者の体内に挿入される際にシースが直面するあらゆる解剖学的構造又は他の構造への引っ掛かり又は接触、及び潜在的な損傷を回避することができる。シースはまた、電極と患者の体又は他の構造との間の電気絶縁を提供することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、針電極デバイスは、遠隔的に針電極をシースから伸長させるための手動又は自動操作機構を含む。いくつかの実施形態では、各針電極は個々に伸長させることができる。代替的に又は加えて、針電極のうちの2つ以上をグループとして伸長させることができる。
【0029】
デバイスの近位端に制御ハウジングを配置することができる。例えば、制御ハウジングは、通常、患者の体外にとどまるように構成することができる。制御ハウジングは、針電極をシースから伸長させるための機構と、針電極に電力信号を選択的に印加するためのコントローラを含み得る。いくつかの実施形態では、制御ハウジングは、2つ以上の別個のハウジング又はユニットを含み得る。いくつかの実施形態では、制御ハウジングの少なくとも一部は、デバイスのオペレータが保持及び操作できるハンドルとして機能し得る。
【0030】
制御ハウジングに少なくとも部分的に格納され得るコントローラは、針電極に、例えば、針電極の任意の1つ又は複数のペア間に電力信号、例えば高周波(RF)交流を選択的に印加するように動作することができる。電力信号の選択的印加は、針電極のペアの所定の順序に従って行うことができる。例えば、所定の順序は、針電極と組織との接触点の配置によって画定される領域内に存在する組織を実質的に一様にアブレーションするように設計することができる。例えば、組織の領域は、横方向に最も外側の針電極のペアを結ぶ線分によって境界付けられる組織の領域を含むと考えることができる。正方形パターンで配置された4つの外側針電極の中央に中央針電極が存在する例では、アブレーションする領域は、外側針電極と組織との接触によって画定される正方形領域内にある組織を含み得る。同様の領域が、3つ以上の非共線的な針電極の任意の配置で画定され得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、針電極は、近位の制御ハウジングから、シースの長さに沿って、シースの遠位端を通って、伸長することができる。いくつかの実施形態では、コントローラは、針電極の近位端に電力信号、例えばRF交流を選択的に印加するように動作することができ、電力信号は、各針電極によってその長さに沿ってその遠位端まで伝わる。
【0032】
いくつかの実施形態では、シース内に収容された異なる針電極の部分間の電気的接触を防ぐために、針電極は、近位端からその長さに沿って絶縁体を備えることができる。いくつかの実施形態では、電気絶縁体は、針電極の遠位先端部分まで延びる。いくつかの例では、シースは、各針電極がシースの異なる内腔を通って伸長するように、複数の内腔を含み得る。この場合、内腔間を隔てる壁は、シースの遠位端から伸長していない異なる針電極の部分間の電気的接触を防ぐ電気絶縁を提供することができる。
【0033】
シースの挿入により、アブレーションする組織の位置にシースの遠位端が到達すると、針電極のうちの2つ以上をシースから伸長させることができる。針電極は、その遠位端がアブレーションする組織に接触する又は挿入されるまで伸長させることができる。
【0034】
針電極の数及び幾何学的配置は、特定の印加又は印加のクラスに合わせて設計することができる。例えば、5つの針電極の正方形配置は、正方形の角に配置された4つの角電極からほぼ等距離に位置する中央電極を含み得る。必要に応じて、例えば、5つの針電極又は5つよりも多い又は少ない針電極の他の配置が、使用のために提供され得る。
【0035】
コントローラは、針電極と組織との間の電気的接触を検証するように構成することができる。例えば、コントローラは、電極のペア間の電気インピーダンスを測定できるように、比較的低い(例えば、組織のアブレーション中に印加される電力よりも低い)電力信号を印加することができる。閾値インピーダンスよりも低い測定されたインピーダンスは、アブレーションを可能にするのに十分な電気的接触を示し得る。
【0036】
針電極と組織との間に電気的接触がなされた(及び検証された)後に、システムのコントローラは、所定の順序に従って針電極のうちの2つ以上の間に電力信号、例えばRF交流又は任意の他の直流又は交流を印加することができる。いくつかの実施形態では、電力信号は、RF交流(例えば、350~500kHzの範囲内)を表す。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、インピーダンス測定をさらに、電極の位置を識別するために、例えば、電極が治療される被検者の血管又は組織内に位置するかどうかを識別するために使用することができる。いくつかの実施形態では、システムのコントローラが、1つ又は複数の電極が誤って配置されたことを識別すると、その誤って配置された電極を非作動にすることができ、適正に配置された電極のみを使用してアブレーションを行うことができる。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、インピーダンス測定の別の用途は、アブレーションの進行に関するフィードバックのためであり得る。当業者には理解されるように、アブレーションプロセスが進行するにつれて、アブレーションされた組織のインピーダンスが変化し、したがって、インピーダンスの変化を、アブレーションの進行を判断するために、また、組織への望ましくない損傷を防ぐための安全対策として使用することができる。
【0039】
順序は、アブレーションの所望の度合い及び/又はアブレーションの所望の領域カバレッジを達成するために所定の基準に従って選択することができる。例えば、順序は、前述のようなインピーダンス測定、超音波モニタリング、又は他のイメージング結果、或いは他の基準に基づいて選択することができる。順序は、実験室での実験から経験的に決定されてもよく、シミュレーション又は計算に基づいていてもよく、経験的な結果と計算の組み合わせに基づいていてもよく、又はその他の方法で決定されてもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、コントローラは、1つ又は複数の特定の針電極のペア間に電力信号、例えばRF交流を選択的に印加するように構成することができる。いくつかの実施形態では、コントローラは、所定の針電極ペア順序で、複数の特定の針電極のペア間に電力信号を選択的に順次印加するように構成することができる。いくつかの実施形態では、印加の順序は、所望のパターンを形成するように選択することができ、所望のパターンは、組織の所望の領域に少なくとも部分的に基づいて決定することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、針電極は、中央の第1の針電極と、第1の針電極に対して所定のパターンで配置された少なくとも2つの第2の針電極を含み得る。いくつかの実施形態では、所定のパターンは、第1の針電極に対して囲むパターンで配置される少なくとも2つの第2の針電極を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、コントローラは、所定の針電極ペア順序で、複数の特定の針電極のペア間に電力信号、例えばRF交流を選択的に印加するように構成することができ、特定の針電極のペアは、第1の針電極と、第2の針電極のうちの1つを含む。いくつかの実施形態では、特定の針電極のペアのうちの少なくとも1つは、一対の第2の針電極を含む。したがって、上記で説明した針電極の正方形配置の例では、電力信号は、角電極のうちの1つ又は複数と中央電極との間に、2つの隣接する角電極間に、又は別の電極ペア間に印加することができる。電力信号は、針電極の異なるペア又はグループに順次印加することができる。
【0043】
例えば、コントローラは、針電極に電力信号、例えばRF交流を選択的に且つ制御可能に印加するように構成された回路を含み得る。電力信号を印加するための電力は、コントローラ内で生成されてもよく、或いは、主電源電圧又は外部電源(例えば、発電機、蓄電池、又は他の電源)から引き出されてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、針電極のうちの1つ又は複数は湾曲していてもよい。湾曲した針電極がシースから伸長する際に、針電極の湾曲により、針電極の遠位端とシースの遠位端から延びる軸との間の横方向の距離が変化し得る。例えば、針電極が軸から外方へ湾曲している場合、その針電極がシースから伸長すると、電極の遠位端と軸との間の横方向距離が増加する。他方では、針電極が内方へ軸に向けて湾曲している場合、針電極がシースから伸長すると、電極の遠位端と軸との間の横方向距離が減少する。
【0045】
針電極への電力信号の印加は、中央針電極が外側針電極によって囲まれるパターンの例では、中央針電極と外側針電極のうちの1つ又は複数との各ペアに電力信号を順次印加することを含み得る。別の例は、隣接する外側針電極の各ペアに電力信号を順次印加することを含み得る。例えば、針電極の特定の配置について構成された他の電力信号印加パターンを使用してもよい。
【0046】
アブレーションする組織の領域への電力信号の印加を制約するために、各針電極を、露出された絶縁されていない遠位先端領域を除いて、その長さに沿って電気的に絶縁することができる。他の例では、電気絶縁は、シース内の分離壁によって提供することができる。先端部は、アブレーションする組織への露出先端部の挿入を可能にするために勾配をつける又は尖らせることができる。
【0047】
針電極のうちの1つ又は複数には、例えば組織をアブレーションする際に組織の1つ又は複数の特性を感知するように構成された1つ又は複数のセンサを設けることができる。例えば、針電極の露出先端部は、組織の温度を感知するために、例えば、熱電対又は他のタイプの温度計の形態の温度センサを含み得る。例えば、組織の1つ又は複数の機械的特性、熱的特性、化学的特性、光学的特性、又は他の特性を感知するように構成された他のタイプのセンサが、針電極に又は針電極アブレーションデバイスの他の場所に含まれていてもよい。場合によっては、アブレーション前、アブレーション中、又はアブレーション後に、組織の温度、弾性率、又は別の特性を監視するために、超音波測定などの他の方法が適用されてもよい。
【0048】
コントローラは、感知された組織の温度又は他の特性を監視するように構成することができる。場合によっては、コントローラは、感知された特性に応じて電力信号の印加を制御するように構成することができる。例えば、電力信号の印加は、感知された温度が所定の温度限界を超えたときに停止、一時停止、又は低減されてもよく、或いは、感知された温度が温度限界よりも下がったときに再開されてもよい。コントローラは、組織又は周囲環境の感知された物理的又は化学的特性に応じて、電力信号の印加を他の方法で制御するように構成されてもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、針電極は、組織サンプルを切開するように構成された生検針の形態であってもよく、組織サンプルは、その後、例えば真空の支援を用いて吸引され、針電極の近位端に吸引を適用することにより、切開された組織(例えば、針電極の尖った遠位端が埋め込まれる)を、針電極の中空のコアに引き込むことができる。したがって、いくつかの実施形態では、本発明のデバイスは、組織生検デバイスとして及びアブレーションデバイスとして交互に又は同時に使用することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、針電極は、制御ハウジングの近位端からシースの遠位端まで延びる細長い細いリード線又はカニューレを表す。いくつかの実施形態では、針電極の近位端には、例えばデバイスの制御ハウジングにある近位ポート又は端子又は境界面を通じてアクセス可能である。いくつかの実施形態では、本発明のデバイスが組織生検デバイスとして及びアブレーションデバイスとして交互に又は同時に使用され得る場合、近位ポート又は境界面は、吸引ポートとしても使用することができ、真空吸引を針電極の中空のコアの近位端に適用することができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、上述のように、針電極は、シースの内腔内での針電極間の接触を防ぐために、露出遠位先端領域を除いて、それらの長さのほとんどに沿って絶縁することができる。したがって、いくつかの実施形態では、例えば、針電極の近位端から電源まで延びる電気接続部を使用して、近位ポート又は境界面で針電極に電力を供給することができる。いくつかの実施形態では、針電極に供給される電力は、本明細書で十分に詳述されるアブレーション手技を行うために針電極の長さに沿って遠位へ及びその先端部まで伝わる。いくつかの実施形態では、電源は、RF信号を生成及び送達するように構成された任意の適切な電源、例えばアブレーションジェネレータであり得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明のデバイスのコントローラモジュールは、近位ポート又は境界面に取り付け可能であって、針電極の近位端のそれぞれとの電気接続部を提供し得る、アドオンモジュールで実装されてもよい。アドオンモジュールは、組織をアブレーションするために針電極に電力信号、例えばRF交流を印加するのに必要とされる回路を含み得る。
【0053】
針電極と組織との間に電気的接触がなされた(及び検証された)後に、システムのコントローラは、所定の順序に従って針電極のうちの2つ以上の間に電力信号、例えばRF交流又は任意の直流又は交流を印加することができる。いくつかの実施形態では、電力信号は、高周波交流(例えば、350~500kHzの範囲内)を表す。
【0054】
順序は、アブレーションの所望の度合い及び/又はアブレーションの所望の領域カバレッジを達成するために所定の基準に従って選択することができる。例えば、順序は、前述のようなインピーダンス測定、超音波モニタリング、又は他のイメージング結果、或いは他の基準に基づいて選択することができる。順序は、実験室での実験から経験的に決定されてもよく、シミュレーション又は計算に基づいていてもよく、経験的な結果と計算の組み合わせに基づいていてもよく、又はその他の方法で決定されてもよい。
【0055】
図1は、本発明の一実施形態に係る針電極アブレーションデバイスを概略的に示す。図2は、本発明のいくつかの実施形態に係る針電極アブレーションデバイスの使用を概略的に示す。
【0056】
針電極アブレーションデバイス10は、アブレーションする組織と接触するように複数の針電極12を配置し、組織をアブレーションするために針電極12に電力信号を印加するように構成される。針電極12は、電極シース16から伸長可能であり、且つ、電極シース16へ後退可能である。針電極アブレーションデバイス10は、例えば、電極シース16の近位端にある制御ハウジング19に存在する1つ又は複数のユーザ制御部28を使用して操作することができる。いくつかの実施形態では、少なくともいくつかのユーザ制御部28が別個の制御ユニットに存在していてもよい。別個の制御ユニットは、針電極アブレーションデバイス10に関連するプログラムされた命令で(例えば、プログラム又はアプリケーションのインストールによって)プログラムされているコンピュータ、スマートフォン、又は他のデバイスを含み得る。別個の制御ユニットは、有線又は無線通信チャネルを介して針電極アブレーションデバイス10の他のコンポーネントと通信することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の針電極12は、吸引デバイスと流体連通する中空のコアを取り囲む生検針の形態であり得る。吸引デバイスの動作により、針電極12の遠位端でコアに組織サンプルを引き込むことができる。このような実施形態では、アドオンモジュール21は、多針生検システムの制御ハウジングに接続することができる。アドオンモジュール21は、制御された電力信号を2つ以上の針電極12に印加するように構成された電気回路を含み得る。
【0058】
コントローラ18の少なくともいくつかのコンポーネントが、制御ハウジング19内に存在し得る。場合によっては、コントローラ18の1つ又は複数のコンポーネントは、制御ハウジング19の外部に、例えば、別個のコンピュータ又は他のハウジングに存在し得る。例えば、制御ハウジング19の外部に存在するコントローラ18のコンポーネントは、有線又は無線接続又は通信チャネルによって相互接続することができる。場合によっては、コントローラ18の1つ又は複数のコンポーネント(例えば、電力信号制御部22、監視モジュール24、又はその両方)は、アドオンモジュール21内に存在し得る。
【0059】
コントローラ18は、針電極12を電極シース16から遠位方向に伸長させる、及び、針電極12を電極シース16へ近位方向に後退させるように構成された、エクステンダ制御部20を含む。いくつかの例では、エクステンダ制御部20は、すべての針電極12を電極シース16からタンデムに伸長させるように構成することができる。場合によっては、針電極12をタンデムに伸長させることで、針電極12は電極シース16から等しい長さだけ伸長し得る。他の場合には、針電極12をタンデムに伸長させることで、異なる針電極12が電極シース16から異なる長さだけ伸長し得る。代替的に又は加えて、エクステンダ制御部20は、電極シース16からの針電極12の選択的な又は順次の伸長を制御するように構成することができる。例えば、伸長の順序及び長さは、例えば、所定のプロトコルに従って予め決定されてもよく、又は、例えば、1つ又は複数の医用イメージングデバイスによって決定される条件に応じて、針電極アブレーションデバイス10のオペレータによって制御されてもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、エクステンダ制御部20は、制御ハウジング19を保持しているオペレータが操作できる手動で操作される機械的コンポーネント、例えば、レバー、スライダ、ノブ、又は他の機械的制御部を含み得る。代替的に又は加えて、エクステンダ制御部20は、電気的に制御可能なコンポーネントを含み得る。電気的に制御可能なコンポーネントは、電動、油圧、空気圧、電磁、又は他のアクチュエータ又は機構を含み得る。この場合、エクステンダ制御部20の少なくともいくつかのコンポーネントは、制御ハウジング19の外部に、例えば、制御ハウジング19と有線又は無線通信する状態で存在し得る。
【0061】
電力信号制御部22は、針電極12に電力信号を選択的に印加するように構成される。通常、電力信号制御部22は、2つ以上の針電極12に電力信号、例えば高周波交流を同時に印加するように動作する。電力信号制御部22は、針電極12に電力信号を選択的に印加する及び印加する電力信号を調整するための回路を含む。電力信号制御部22は、例えば、プロセッサと通信するデータストレージユニット又はメモリデバイスにプログラムされた命令として記憶される所定の基準に従って決定される順序で電力信号を印加するように構成されたプロセッサを含み得る。
【0062】
針電極12に電力信号を印加するための電力は、主電源から、発電機から、制御ハウジング19内に又は制御ハウジング19の外部に存在する蓄電池又は他のバッテリから、又はその他の場所から電力信号制御部22に供給することができる。通常、電力信号制御部22は、針電極12に高周波又は他の交流電力信号を印加するように構成される。例えば、電力信号制御部22の回路は、オルタネータ、電力信号又は電流レギュレータ、又は他のコンポーネントを含み得る。
【0063】
いくつかの実施形態によれば、インピーダンス測定をさらに、電極の位置を識別するために、例えば、電極が治療される組織の血管又は組織内に位置するかどうかを識別するために使用することができる。いくつかの実施形態では、デバイス10のコントローラ18が、1つ又は複数の電極が誤って配置されたことを識別すると、その誤って配置された電極12を非作動にすることができ、適正に配置された電極12のみを使用してアブレーションを行うことができる。
【0064】
いくつかの実施形態によれば、インピーダンス測定の別の用途は、アブレーションの進行に関するフィードバックのためであり得る。当業者は理解できるように、アブレーションプロセスが進行するにつれて、アブレーションされた組織のインピーダンスが変化し、したがって、インピーダンスの変化を、アブレーションの進行を判断するために、また、組織への望ましくない損傷を防ぐための安全対策として使用することができる。
【0065】
通常、電極シース16は、細長いシャフトの形態である。場合によっては、例えば、電極シース16がガイドチューブ32、例えば図2に示す例のように内視鏡30の可撓性ガイドチューブを介して患者の体内に挿入される場合、電極シース16は、細長い可撓性シャフトの形態であり得る。図示の例では、針電極アブレーションデバイス10のオペレータは、内視鏡30を介して見ることによって針電極12の位置を監視することができる。他の例では、例えば、電極シース16の遠位端がオリフィス又は切開部を介して体内に短い距離だけ挿入される場合、電極シース16は、例えば、オペレータ(例えば、医師又は他の医療訓練を受けた人又はロボットシステム)による遠位端の正確な手動配置を容易にするために剛性又は半剛性シャフトの形態であり得る。
【0066】
各針電極12の近位セグメントは絶縁区域13を含む。絶縁区域13の電気絶縁は、絶縁区域13と別の針電極12との、又は絶縁区域13が接触するアブレーションしない組織などの別の表面又は物体との電気的接触を防ぐように構成される。
【0067】
各針電極12の遠位端は、絶縁体のない露出先端区域14を含む。露出先端区域14は、アブレーションする組織と接触する状態で配置されるように構成される。いくつかの実施形態では、露出先端区域14の遠位端は、勾配面15を含んでいてもよく、或いは尖っていてもよい。露出先端区域14の遠位端の先端は、アブレーションする組織への露出先端区域14の部分的挿入を容易にし、したがって、露出先端区域14と組織との間の電気的接触を向上させることができる。
【0068】
針電極12の遠位端、例えば、露出先端区域14は、1つ又は複数のセンサ26を含み得る。センサ26は、熱電対若しくは他の温度センサ、又は針電極12への電力信号の印加に起因して組織を通る電流によって変化し得る組織の別の化学的又は物理的特性のセンサを含み得る。コントローラ18の監視モジュール24は、1つ又は複数のセンサ26によって生成される電気信号又は他の信号を受信するように構成することができる。監視モジュール24は、センサ26から受信した信号を分析し、その信号を組織又は周囲環境の特性、例えば、温度、pH、電気伝導率、又は他の特性の指標に変換するように構成することができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、電力信号制御部22は、1つ又は複数のセンサ26を使用して測定される組織の特性に従って、針電極12に印加される電力信号を調整するように構成することができる。例えば、電力信号制御部22は、感知された組織の温度が所定の温度を超えるときに、針電極12に印加される電力信号を例えばゼロに減少させるように構成することができる。
【0070】
図3は、本発明のいくつかの実施形態に係る針電極アブレーションデバイスのシースからの針電極の伸長を概略的に示す。
【0071】
図示の例では、中央電極12aは、電極シース16の中央内腔の遠位端にある中央開口部36aから伸長可能である。中央電極12aは、電極シース16の周辺内腔の遠位端にある周辺開口部36bからそれぞれ伸長可能な複数の周辺電極12bによって囲まれている。これに関連して、「によって囲まれている」という用語は、中央開口部36aが、隣接する周辺開口部36bのペアを線分で結ぶことによって形成される多角形内にあることを示すものとして理解されたい。
【0072】
電極シース16の内腔間を隔てる材料は、電極シース16から伸長していない針電極12の部分間の接触を防ぐ電気絶縁を提供することができる。いくつかのそのような場合、電極シース16は、針電極12が(絶縁区域13などの)別個の絶縁体を含んでいる必要がないように、必要なすべての電気絶縁を提供することができる。
【0073】
図示の例では、4つの周辺電極が、中央電極12aの周りに等間隔に配置される正方形構成で配置されている。他の例では、針電極12及び電極シース16の開口部の数は4つよりも多くても又は少なくてもよく、他の構成で配置されてもよい。
【0074】
針電極12のうちの1つ又は複数、例えば図示の例では周辺電極12b、又は他の針電極12の少なくとも遠位端は、制約のない解放状態にあるとき、弧状であり得る。電極シース16の開口部、例えば、周辺開口部36b又は電極シース16の別の開口部から伸長する前は、弧状の針電極12の形状は電極シース16の湾曲に制約され得る。弧状の針電極12の遠位端が電極シース16の遠位端から伸長すると、弧状の針電極12の遠位端はもはや制約がなく、その解放状態の湾曲に戻る。このように、異なる針電極12の露出先端区域14間の距離は、それらの露出先端区域14が電極シース16から伸長する距離に依存し得る。
【0075】
図示の例では、各周辺電極12bは、その周辺開口部36bから伸長すると、中央電極12aから横方向外方へ弧状になる。したがって、周辺電極12bの露出先端区域14と中央電極12a又は別の周辺電極12bの露出先端区域14との間の距離は、それらの露出先端区域14が電極シース16から伸長する距離とともに増加し得る。したがって、エクステンダ制御部20の人間又は自動オペレータは、露出先端区域14が電極シース16から伸長する距離を増加させることによって、針電極12の露出先端区域14のペア間の距離を増加させることができる。
【0076】
他の例では、1つ又は複数の弧状の針電極12は、異なる方向に、例えば、中央電極12aに向けて内方へ、方位角的に(例えば、中央電極12aからその弧状の針電極12への半径方向に垂直な成分を有する)、又は他の様態で湾曲していてもよい。他の例では、針電極12のうちの1つ又は複数は解放状態では真っ直ぐであり得るが、電極シース16の開口部、例えば周辺開口部36bに傾斜が付けられていてもよい。したがって、その開口部から伸長する針電極12は、特定の方向に傾くことになる。このようなすべての例において、エクステンダ制御部20のオペレータは、異なる針電極12の露出先端区域14とアブレーションする組織との相対接触位置を少なくとも部分的に制御することができる。
【0077】
図4Aは、針電極が後退したときの、本発明の一実施形態に係る図1に示された針電極アブレーションデバイスの制御ハウジングの例を概略的に示している。
【0078】
図示の例では、制御ハウジング19は、電極シース16の近位部に結合される。制御ハウジング19は、メインシャフト40と、近位電極伸長スライダ46と、ハウジングハンドル47に対してメインシャフト40によって画定される軸Xに概して沿って軸方向にスライドするように構成された遠位電極伸長スライダ44とを含む。図示の例では、制御ハウジング19の構成要素の手動操作により、異なるグループの針電極12を電極シース16から選択的に伸長させる又はグループの針電極12を電極シース16へ後退させることができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、制御ハウジング19は、メインシャフト40の遠位端に存在するアダプタ42を含む。アダプタ42は、シース16の有効長を調整することによって、様々な長さの例えば内視鏡30のガイドチューブ32に電極シース16を挿入するために、針電極アブレーションデバイス10を適応させるように構成することができる。例えば、アダプタ42は、ガイドチューブ32への電極シース16の挿入を制限するストップ部として機能し得る。
【0080】
図示の例では、アダプタ42は、(例えば、電極シース16は定位置に実質的に固定されたままの状態で)電極シース16上で遠位方向又は近位方向にメインシャフト40に対して軸方向にスライドするように構成され、それにより、ガイドチューブ32に挿入可能な電極シース16の長さを短く又は長くする。
【0081】
図示の例では、アダプタ42がメインシャフト40の遠位端に隣接して配置される場合、アダプタ42の遠位側の電極シース16の全長をガイドチューブ32に挿入することができる。アダプタ42を電極シース16上でメインシャフト40から遠位方向にスライドさせることで、ガイドチューブ32に挿入可能な電極シース16の長さを短くすることができる。
【0082】
図4Bは、ガイドチューブに挿入可能なシースの長さを短くするようにアダプタが配置されている状態の、図4Bの制御ハウジングを概略的に示している。
【0083】
図示の例では、アダプタ42は、メインシャフト40から離れる遠位方向にスライドしており、したがって、アダプタ42を超えて遠位方向に伸長する電極シース16の長さが短くなる。アダプタ42をメインシャフト40に向けて近位方向に後方にスライドさせることで、ガイドチューブ32に挿入可能な電極シース16の長さを長くすることができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、制御ハウジング19は、例えばガイドチューブ32上の対応する取付部と嵌合するルアー型の係止取付部を介して、ガイドチューブ32に係止可能である。通常、取付部は、アダプタ42に結合される又はアダプタ42によって画定される。通常、アダプタ42の遠位端(例として概して円錐形であるように示されている)は、患者の体内のアブレーションする組織に向けて延びる内視鏡30の内腔の形態のガイドチューブ32を通って電極シース16が延びる状態で、内視鏡30のルアー型の係止取付部に嵌るように配置することができる。
【0085】
図示の例では、アダプタ42は、アダプタ42をメインシャフト40から離れる遠位方向に又はメインシャフト40に向かう近位方向にスライドさせるように、メインシャフト40から伸長可能又はメインシャフト40に挿入可能なステム50の遠位端に取り付けられる。図示の例では、ステム50には、ガイドチューブ32に挿入可能な電極シース16の長さの調整を支援するために複数のマークが付けられている。いくつかの実施形態では、アダプタ42がメインシャフト40に対して所望の位置までスライドした後に、ステム50がメインシャフト40の中に又はメインシャフト40からスライドするのを防ぐために、係止構造を設けることができる。
【0086】
例えば、係止構造は、ねじ、ばね入りピン(例えばポゴピン)、クリップ、又は他の係止構造を含み得る。例えば係止構造、例えば、ばね入りピン49(図5Bで見られる)は、1つ又は複数のストップ部48と係合するように構成することができる。ストップ部48は、図示の例のようにステム50の辺りにある円周スリット、ピット、凹部、リッジ、又は係止構造によって係合され得る他の構造である。ストップ部48はまた、例えば、特定のタイプのガイドチューブ32に適応するためにアダプタ42が設定され得るプリセット距離の指標として使用することもできる。
【0087】
いくつかの実施形態では、異なるグループの針電極12を、遠位電極伸長スライダ44及び近位電極伸長スライダ46の順次の操作によって電極シース16から順次に伸長させることができる。
【0088】
図5Aは、第1グループの針電極をシースから伸長させるための遠位電極伸長スライダの動作を概略的に示している。
【0089】
遠位電極伸長スライダ44は、電極シース16を通して針電極12のうちの1つ又は複数に取り付けられる。したがって、遠位電極伸長スライダ44を遠位方向にスライドさせると、遠位電極伸長スライダ44に取り付けられた針電極12の露出先端区域14が電極シース16の遠位端から伸長することができる。一例では、中央電極12aだけが遠位電極伸長スライダ44に取り付けられる。このようにして、周辺電極12bを組織に挿入する前に中央電極12aを組織に挿入することができる。別のグループの1つ又は複数の針電極12が遠位電極伸長スライダ44に取り付けられてもよく、したがって、遠位電極伸長スライダ44の動作によって伸長可能である。
【0090】
制限リング50を、メインシャフト40に沿って所望の場所までスライドさせて、その場所の位置で係止することができる。したがって、制限リング50は、遠位電極伸長スライダ44の遠位方向の動きを制限することで、例えば、遠位電極伸長スライダ44に取り付けられた針電極12の伸長を制限することができる。例えば、この制限により、制御ハウジング19の露出先端区域14が所定の(例えば、医学的考慮に基づく)距離を超えて組織表面に貫入しないことを保証することができる。
【0091】
図示の例では、遠位電極伸長スライダ44は、制限リング50に接触するまで遠位方向にスライドされており、したがって、取り付けられた針電極12が所定の限界まで最大限に伸長している。
【0092】
同様に、遠位電極伸長スライダ44を近位方向にスライドさせることで、遠位電極伸長スライダ44に取り付けられた針電極12の露出先端区域14を電極シース16の遠位端へ後退させることができる。
【0093】
図5Bは、第2グループの針電極をシースから伸長させるための近位電極伸長スライダの動作を概略的に示している。
【0094】
図示の例では、近位電極伸長スライダ46は、遠位電極伸長スライダ44に取り付けられていない1つ又は複数の針電極12に取り付けられている。したがって、近位電極伸長スライダ46をハウジングハンドル47に対して遠位方向にスライドさせることで、近位電極伸長スライダ46に取り付けられた針電極12の露出先端区域14を電極シース16の遠位端から伸長させることができる。近位電極伸長スライダ46の遠位方向へのスライドは、近位電極伸長スライダ46の遠位面54と遠位電極伸長スライダ44の近位面52との接触によって制限され得る。同様に、近位電極伸長スライダ46を近位方向にスライドさせることで、近位電極伸長スライダ46に取り付けられた針電極12の露出先端区域14を電極シース16の遠位端へ後退させることができる。
【0095】
いくつかの例では、周辺針12bは、近位電極伸長スライダ46に取り付けられてもよい。他の例では、針電極12の別のサブセットが、近位電極伸長スライダ46に取り付けられてもよい。いくつかの例では、すべての針電極12が単一の電極伸長スライダに取り付けられるか、又は別個の制御部が、各個々の針電極12又は2つ以上の針電極12の他のグループを伸長させるために設けられてもよい。
【0096】
針電極12を伸長させるための機械的機構の代わりに又はそれに加えて、すべての又はいくつかの針電極12を電極シース16から伸長させるための又は針電極12を電極シース16へ後退させるための電動、油圧、空気圧、電磁、又は他の方法で制御されたアクチュエータ又は機構が、針電極アブレーションデバイス10に設けられてもよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、制御ハウジング19は、針電極アブレーションデバイス10のオペレータが制御ハウジング19及び針電極12を片手で操作することを可能にするように構成することができる。
【0098】
場合によっては、制御ハウジング19は、任意の機械的制御部(例えば、遠位電極伸長スライダ44及び近位電極伸長スライダ46)とともに、アダプタ42及びガイドチューブ32に対して回転可能であってもよい。
【0099】
場合によっては、針電極12に電力信号を選択的に印加するための電力が、電気接続部56を介して供給されてもよい。場合によっては、電源、制御回路、ユーザが操作可能な制御部、又は他のコンポーネントのうちの1つ又は複数が、制御ハウジング19又はアドオンモジュール21に組み込まれてもよい。針電極12が生検針としても機能するように構成されるとき、吸引源が、制御ハウジング19又はアドオンモジュール21のポートを介して針電極12に適用されてもよい。
【0100】
針電極12が伸長すると、2つ以上の針電極12の露出先端区域14が組織と接触することができる。場合によっては、針電極12の伸長により、例えば伸長距離に応じて、針電極12のうちの1つ又は複数の露出先端区域14が組織表面に挿入される又は埋め込まれる。場合によっては、露出先端区域14が組織に埋め込まれる深さは、アダプタ42がメインシャフト40から遠位方向に伸長する距離によって決定され得る。
【0101】
2つ以上の露出先端区域14がアブレーションする組織の表面と接触するとき、電力信号制御部22は、2つ以上の針電極12に選択的に電力信号を印加するように動作することができる。針電極12への電力信号の印加により、それらの針電極12の露出先端区域14間の組織内に電流が発生し得る。針電極12の異なるサブセットへの電力信号の選択的な順次印加は、そのサブセットの針電極12の露出先端区域14間の組織領域を効果的にアブレーションするように設計することができる。
【0102】
図5Cは、近位ポート又は境界面51を備えるハウジング47の近位端を概略的に示している。針電極12a、12bの近位端にポート51が設けられる。いくつかの実施形態では、ハウジング47の近位端にアドオンモジュール21を結合することができ、アドオンモジュール21は、電気接続部又はリード線58を介して針電極12a、12bに電力信号を提供するように構成することができる。上で述べたように、近位側で針電極12a、12bに供給される電力信号は、本明細書で十分に詳述されるアブレーション手技を行うために針電極の長さに沿って遠位へ及びその先端部まで伝わる。
【0103】
図6Aは、中央電極と選択された周辺電極との間の電力信号の印加を概略的に示している。
【0104】
図示の例では、例えば図3に示されているような中央電極12aに対応する1つの電極の露出先端区域14が、中央接触点60で組織表面と接触する。同様に、例えば周辺電極12bに対応する、他の4つの針電極12の露出先端区域14が、中央接触点60の周りの正方形パターンの4つの周辺接触点62で組織表面と接触するものとして示される。他の例では、組織表面と複数の露出先端区域14との間の接触点は、別の様態で配置されてもよい。
【0105】
隣接する又は最近傍の周辺接触点62のペアを線分で結ぶことによって形成される形状は、アブレーションする組織の領域の側方境界を実質的に画定し得る。電極の露出先端区域14が組織に挿入される深さは、アブレーションする組織ボリュームの厚さを画定し得る。
【0106】
各矢印は、対応する針電極12への電力信号の印加によって中央接触点60と選択された周辺接触点62との間に発生し得る電流64を表す。通常、各電流64は高周波交流の形態である。他の例では、直流、パルス電流、又は別の周波数範囲の周波数を有する交流を発生させてもよい。
【0107】
場合によっては、電力信号制御部22は、各電流64を、個々に、例えば順次に発生させるように構成することができる。場合によっては、電力信号制御部22は、2つ以上の電流64を同時に発生させるように構成することができる。例えば、電力信号制御部22は、中央接触点60とすべての周辺接触点62との間に電流が同時に流れるように、すべての周辺接触点62にタンデムに、及び中央接触点60に、電力信号を印加するように構成することができる。
【0108】
一実施形態では、中央接触点60とすべての周辺接触点62との間に直流が同時に印加されてもよい。例えば、中央接触点60はアノードとして機能し、周辺接触点62はカソードとして機能してもよく、又はその逆であってもよい。他の例では、直流が、中央接触点60と各周辺接触点62との間に、又は中央接触点60と2つ以上の周辺接触点62との間に順次印加されてもよい。
【0109】
図6Bは、隣接する周辺電極の選択されたペア間の電力信号の印加を概略的に示している。
【0110】
図示の例では、中央接触点60と周辺接触点62の構成は図6Aと同じである。各矢印は、電力信号制御部22によってもたらされ得る、対応する針電極12への電力信号の印加によって隣接する周辺接触点62のペア間に流れる電流66を表す。
【0111】
場合によっては、各電流66は、例えば、針電極12の対応するペアに電力信号を順次印加することによって順次に発生し得る。場合によっては、2つ以上の電流66が同時に発生し得る。他の例では、電力信号は、隣接しない周辺接触点62間に電流を発生させるように、2つ以上の針電極12の他の組み合わせに印加されてもよい。
【0112】
場合によっては、隣接する周辺接触点62間に電流66を発生させるための選択された針電極12への電力信号の印加は、1つ又は複数の選択された周辺接触点62と中央接触点60との間に電流64を発生させるための印加と交互に行われてもよい。
【0113】
他の例では、針電極12と組織表面との間の接触点は、5つよりも少ない又は多い針電極12によって形成されてもよい。接触点は、周辺接触点が単一の中央接触点を囲むパターン以外のパターンで配置されてもよい。
【0114】
図6Cは、中央電極と選択された周辺電極との間の、並びに、隣接する周辺電極の選択されたペア間の、電力信号の印加を概略的に示している。
【0115】
図示の例では、中央接触点60と周辺接触点62の配置は図6A図6Bと同じである。各矢印は、電力信号制御部22によってもたらされ得る、対応する針電極12への電力信号の印加によって中央接触点60と周辺接触点62との間に及び/又は周辺接触点62のペア間に流れる電流64、66を表す。
【0116】
本発明の様々な実施形態の説明が、例示する目的で提示されているが、網羅的であること又は開示された実施形態に限定されることを意図したものではない。説明した実施形態の精神及び範囲から逸脱することなく、多くの修正及び変形が当該技術分野の当業者には明らかであろう。本明細書で用いられる用語は、実施形態の原理、実際の適用、又は市場で見受けられる技術に対する技術的改良を最もよく説明するため、又は他の当業者が本明細書で開示された実施形態を理解できるようにするために選択されたものである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
【国際調査報告】