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特表2024-500572光ファイバネットワークでの量子鍵配送のためのネットワークノード、送信器及び受信器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】光ファイバネットワークでの量子鍵配送のためのネットワークノード、送信器及び受信器
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/70 20130101AFI20231226BHJP
   H04B 10/25 20130101ALI20231226BHJP
   H04B 10/60 20130101ALI20231226BHJP
   H04B 10/50 20130101ALI20231226BHJP
【FI】
H04B10/70
H04B10/25
H04B10/60
H04B10/50
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561422
(86)(22)【出願日】2021-01-19
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2021051021
(87)【国際公開番号】W WO2022135746
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】20383141.7
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522296550
【氏名又は名称】ファンデシオ インスティテュート デ サイエンシス フォトニクス
(71)【出願人】
【識別番号】509135441
【氏名又は名称】インスティテューシオ カタラーナ デ レサーカ イ エストゥーディス アバンキャッツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】プルネリ,バレリオ
(72)【発明者】
【氏名】エチェバリ,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ロペス グランデ,イグナシオ
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA34
5K102AB11
5K102AD00
5K102AD01
5K102AD15
5K102AH02
5K102AH26
5K102AH27
5K102PA12
5K102PB01
5K102PD01
5K102PH01
5K102PH22
5K102PH42
5K102PH49
5K102RD28
(57)【要約】
本発明は、光ファイバネットワークで動作するように構成されたネットワークノードに関する。ネットワークノードは、CV‐QKDモード及び/又はDV‐QKDモードに従って光ファイバネットワークの少なくとも一つの他のネットワークノードの別のQKD通信ユニットとの通信に適応しているQKD通信ユニットを具備する。本発明は、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードの少なくとも一方で動作するようにQKD通信ユニットを制御するように構成された制御ユニット5も開示している。制御ユニットは、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードとの間でQKD通信ユニットの動作を切り替えるように構成されている。
【代表図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバネットワークで動作するように構成されたネットワークノードであって、
連続変数(CV)QKDモード及び/又は離散変数(DV)QKDモードに従って、前記光ファイバネットワークの少なくとも一つの他のネットワークノードの別のQKD通信ユニット(QCD2‐QCD5)と通信するように構成された量子鍵配送通信ユニット(QCD1)と、
前記CV‐QKDモードとDV‐QKDモードの少なくとも一方で動作するように前記QKD通信ユニット(QCD1)を制御するように構成された制御ユニットと、
を具備して、
前記制御ユニットは、前記CV‐QKDモードと前記DV‐QKDモードとの間で前記QKD通信ユニット(QCD1)の動作を切り替えるように構成されている、
ネットワークノード。
【請求項2】
前記QKD通信ユニット(QCD1)は、前記CV‐QKDモードと前記DV‐QKDモードの少なくとも一方で動作するように構成された少なくとも一つのQKD送信器(400A‐400G)を具備する、請求項1に記載のネットワークノード。
【請求項3】
前記QKD送信器(400A‐400G)が前記CV‐QKDモードと前記DV‐QKDモードのいずれかで動作するように、前記制御ユニットは、前記QKD通信ユニット(QCD1)を第1の所定の電気信号で駆動するように構成されている、請求項2に記載のネットワークノード。
【請求項4】
前記QKD送信器(400A‐400G)は、
少なくとも一つの光源(401,401A)により発出される光信号の振幅及び/又は位相を変調するように構成された変調器ユニット(403,AM1,AM2,PM1)と、
前記第1の所定の電気信号に従って前記変調器ユニット(403,AM1,AM2,PM1)を駆動するように構成された電子回路(402)と、
を具備する、請求項3に記載のネットワークノード。
【請求項5】
前記QKD送信器(400A‐40G)は、前記変調光信号を所定レベルまで減衰する、及び/又は、前記CV‐QKDモード又は前記DV‐QKDモードに必要とされる平均光子数を設定するように構成された減衰器(405)を具備し、前記電子回路(402)は、前記減衰器(405)を制御するように構成されている、請求項4に記載のネットワークノード。
【請求項6】
前記制御ユニットは、時間、周波数、空間、偏光の多重化、及びそれらの組み合わせのうちいずれか一つを使用することにより、前記QKD送信器(400A‐400G)を前記CV‐QKDモードと前記DV‐QKDモードとで同時に動作するように構成されている、請求項2乃至5のいずれか一項に記載のネットワークノード。
【請求項7】
前記QKD送信器(400A‐400G)は少なくとも一つのCV‐QKD送信器と少なくとも一つのDV‐QKD送信器とを包含し、前記少なくとも一つのCV‐QKD送信器と前記少なくとも一つのDV‐QKD送信器とが少なくとも一つの光電子コンポーネントを共有する、請求項2乃至6のいずれか一項に記載のネットワークノード。
【請求項8】
前記QKD通信ユニット(QCD1)は、前記CV‐QKDモードと前記DV‐QKDノードの少なくとも一方で動作するように構成された少なくとも一つのQKD受信器(500A‐700B)を具備する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のネットワークノード。
【請求項9】
前記制御ユニットは、前記QKD受信器(500A‐700B)が前記CV‐QKDモードと前記DV‐QKDモードのいずれかで動作するように、前記QKD通信ユニット(QCD1)を第2の所定の電気信号で駆動するように構成されている、請求項8に記載のネットワークノード。
【請求項10】
前記QKD受信器(500A‐700B)は、
前記CV‐QKDモードと前記DV‐QKDモードのそれぞれでCV‐QKD及びDV‐QKD信号の検出を行うように構成された処理/検出ユニット(501,601)と、
前記第2の所定の電気信号に従って前記処理/検出ユニット(501,601)を駆動するように構成された電子回路(605)と、
を具備する、請求項9に記載のネットワークノード。
【請求項11】
前記制御ユニットは、時間、周波数、空間、偏光の多重化、及びそれらの組み合わせのいずれか一項を使用することにより前記CV‐QKDモードと前記DV‐QKDモードとで同時に前記QKD受信器(500A‐700B)を動作するように構成されている、請求項8乃至10のいずれか一項に記載のネットワークノード。
【請求項12】
前記QKD受信器(500A‐700B)は少なくとも一つの前記CV‐QKD受信器と少なくとも一つのDV‐QKD受信器とを組み合わせ、前記少なくとも一つのCV‐QKD受信器と前記少なくとも一つのDV‐QKD受信器とが少なくとも一つの光電子コンポーネントを共有する、請求項8乃至11のいずれか一項に記載のネットワークノード。
【請求項13】
前記CV‐QKDモードが少なくとも一つのCV‐QKDプロトコルに基づき、前記DV‐QKDモードが少なくとも一つのDV‐QKDプロトコルに基づく、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のネットワークノード。
【請求項14】
前記少なくとも一つのCV‐QKDプロトコルがGG02プロトコルと離散変調CV‐QKDプロトコルとから成り、前記少なくとも一つのDV‐QKDプロトコルがBB84 DV‐QKDプロトコルとコヒーレント一方向DV‐QKDプロトコルと差動移相DV‐QKDプロトコルと三状態DV‐QKDプロトコルと六状態DV‐QKDプロトコルとデコイ状態DV‐QKDプロトコルとから成る、請求項13に記載のネットワークノード。
【請求項15】
各々が請求項1乃至14のいずれかに記載の一以上のネットワークノードを具備する光ファイバネットワーク。
【請求項16】
光ファイバネットワークで情報を送信するように構成されたQKD送信器であって、
少なくとも一つの光源(401,401A)により発出される光信号の振幅及び/又は位相を変調するように構成された変調器ユニット(403,AM1,AM2,PM1)と、
前記QKD送信器がCV‐QKDモードとDV‐QKDモードのいずれかで動作するように、前記変調器ユニット(403,AM1,AM2,PM1)を所定の電気信号に従って駆動するように構成された電子回路(402)と、
を具備するQKD送信器。
【請求項17】
前記変調光信号を所定レベルまで減衰させる、及び/又は、前記CV‐QKDモード又は前記DV‐QKDモードに必要とされる平均光子数を設定するように構成された減衰器(405)を更に具備し、前記電子回路(402)は、前記減衰器(405)を制御する構成するように構成されている、請求項16に記載のQKD送信器。
【請求項18】
前記QKD送信器は、時間、周波数、空間、偏光の多重化、及びそれらの組み合わせのいずれか一つを使用することにより前記CV‐QKDモードと前記DV‐QKDモードとで同時に動作するように構成されている、請求項16又は17に記載のQKD送信器。
【請求項19】
前記QKD送信器が少なくとも一つのCV‐QKD送信器と少なくとも一つのDV‐QKD送信器とを組み合わせ、前記少なくとも一つのCV‐QKD送信器と前記少なくとも一つのDV‐QKD送信器とが少なくとも一つの光電子コンポーネントを共有する、請求項16乃至18のいずれか一項に記載のQKD送信器。
【請求項20】
ネットワークノードの前記QKD送信器が、前記CV‐QKDモード及び/又は前記DV‐QKDモードに従って前記光ファイバネットワークの少なくとも一つの他のネットワークノードの対応するQKD受信器(500A‐700B)と通信するのに適応している、請求項16乃至19のいずれか一項に記載のQKD送信器。
【請求項21】
前記CV‐QKDモードが少なくとも一つのCV‐QKDプロトコルに基づき、前記DV‐QKDモードが少なくとも一つのDV‐QKDプロトコルに基づく、請求項16乃至20のいずれか一項に記載のQKD送信器。
【請求項22】
前記少なくとも一つのCV‐QKDプロトコルがGG02プロトコルと離散変調CV‐QKDプロトコルとから成り、前記少なくとも一つのDV‐QKDプロトコルがBB84 DV‐QKDプロトコルとコヒーレント一方向DV‐QKDプロトコルと差動移相DV‐QKDプロトコルと三状態DV‐QKDプロトコルと六状態DV‐QKDプロトコルとデコイ状態DV‐QKDプロトコルとから成る、請求項21に記載のQKD送信器。
【請求項23】
光ファイバネットワークで情報を受信するように構成されたQKD受信器であって、
CV‐QKDモードとDV‐QKDモードのそれぞれでCV‐QKD及びDV‐QKD信号の受信及び/又は検出を行うように構成された処理/検出ユニット(501,601)と、
前記QKD受信器が前記CV‐QKDモードと前記DV‐QKDモードのいずれかで動作するように、所定の電気信号に従って前記処理/検出ユニット(501,601)を駆動するように構成された電子回路(605)と、
を具備するQKD受信器。
【請求項24】
前記QKD受信器は、時間、周波数、空間、偏光の多重化、及びそれらの組み合わせのいずれか一つを使用することにより前記CV‐QKDモードと前記DV‐QKDモードとで同時に動作するように構成されている、請求項23に記載のQKD受信器。
【請求項25】
前記QKD受信器が少なくとも一つのCV‐QKD受信器と少なくとも一つのDV‐QKD受信器とを組み合わせ、前記少なくとも一つのCV‐QKD受信器と前記少なくとも一つのDV‐QKD受信器とが少なくとも一つの光電子コンポーネントを共有する、請求項23又は24に記載のQKD受信器。
【請求項26】
ネットワークノードの前記QKD受信器が、前記CV‐QKDモード及び/又は前記DV‐QKDモードに従って前記光ファイバネットワークの少なくとも一つの他のネットワークノードの対応するQKD送信器と通信するのに適応している、請求項23乃至25のいずれか一項に記載のQKD受信器。
【請求項27】
前記CV‐QKDモードが少なくとも一つのCV‐QKDプロトコルに基づき、前記DV‐QKDモードが少なくとも一つのDV‐QKDプロトコルに基づく、請求項23乃至26のいずれか一項に記載のQKD受信器。
【請求項28】
前記少なくとも一つのCV‐QKDプロトコルがGG02プロトコルと離散変調CV‐QKDプロトコルとから成り、前記少なくとも一つのDV‐QKDプロトコルがBB84 DV‐QKDプロトコルとコヒーレント一方向DV‐QKDプロトコルと差動移相DV‐QKDプロトコルと三状態DV‐QKDプロトコルと六状態DV‐QKDプロトコルとデコイ状態DV‐QKDプロトコルとから成る、請求項27に記載のQKD受信器。
【請求項29】
光ファイバネットワークでのネットワークノードの動作方法であって、前記ネットワークノードは、
連続変数(CV)QKDモード及び/又は離散変数(DV)QKDモードに従って前記光ファイバネットワークの少なくとも一つの他のネットワークノードの別のQKD通信ユニット(QCD2‐QCD5)と通信するように構成された量子鍵配送通信ユニット(QCD1)と、
前記CV‐QKDモードと前記DV‐QKDモードの少なくとも一方で動作するように前記QKD通信ユニット(QCD1)を制御するように構成された制御ユニットと、
を具備し、
前記制御ユニットを使用して、前記CV‐QKDモードと前記DV‐QKDモードとの間で前記QKD通信ユニット(QCD1)の動作を切り替えるステップを包含する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本イノベーションは、助成金契約第820466号に基づく欧州連合ホライズン2020研究イノベーションプログラムから、そして研究結果の活用及び譲渡(QuantumCAT 001‐P‐001644)を専門とする新興技術クラスタの為のSecretaria d’Universitats i Recerca of Departament d’Empresa i Coneixement of the Generalitat de Catalunyaの支援を受けてPrograma operatiu FEDER de Catalunya 2014‐2020に割り当てられた欧州地域開発基金(ERDF)からの基金を受理したものである。
【0002】
本発明は、量子鍵配送(QKD)のネットワークノードに関する。本発明はとりわけ、光ファイバネットワークで動作するように構成されたネットワークノードと、光ファイバネットワークと、光ファイバネットワークで情報を送信するように構成されたQKD送信器と、光ファイバネットワークで情報を受信するように構成されたQKD受信器とに関する。本発明は更に、このような光ファイバネットワークにおけるDV‐QKD及びCV‐QKD技術の組み合わせに関する。
【背景技術】
【0003】
量子通信ネットワークでは、光子を含む光パルスで一般的に構成される光の量子状態で情報を符号化することにより通信当事者の間で情報が共有される。量子状態/信号は、例えば、偏光、位相、エネルギー/時間、又は角運動量など光子の特性を使用することにより、一以上の情報ビットを搬送し得る。量子鍵配送(QKD)は、通信チャネルを通して量子信号を配送することにより二人の当事者が暗号鍵を共有できるようにする技術である。
【0004】
QKDのセキュリティは、量子物理学の法則、すなわち、通信当事者がチャネルでの盗聴者の存在を検出することを可能にするハイゼンベルグの不確定性原理及び量子複製不可能定理に依存する。更に、量子力学の法則によれば、符号化基底について事前の知識を持たない盗聴者による量子状態の測定は量子状態に不可避の変化を引き起こす。そのため、盗聴者が量子信号の情報を取得しようと試みれば、通信当事者が検出し得るノイズ及び/又はエラーを効果的に導入することになる。
【0005】
いわゆる準備測定型QKDでは、送信者(アリス)が特定のプロトコルによる符号化情報を含む量子信号を準備し、光チャネルを通してこれらの信号を受信者(ボブ)へ送信する。ボブは、受信した量子信号に多様な測定を行い、アリスの準備選択と相関しているデータを取得する。そして古典的通信チャネルを使用して、秘密鍵を抽出するように相関データが後処理される。二つの主要なQKD実装例は、離散変数QKD(DV‐QKD)と連続変数QKD(CV‐QKD)である。
【0006】
DV‐QKDでは、量子信号は、偏光、離散時間モード、又は位相、その他など、光子の自由度に符号化された鍵を生成する情報を含む単一光子で構成される。
【0007】
ベネット(Bennet)及びブラサード(Brassard)により1984年に提案されたプロトコルBB84は、最初の、そして最も広く使用されているDV‐QKDプロトコルである。通常はZ基底及びX基底と称される二つの共役基底を完成させる四つの量子状態によるセットが使用される。各基底の状態はビット値0及び1を符号化したものである。プロトコルは、アリスが単一光子列を準備すると開始する。光子ごとに、アリスは四つの量子状態のうち一つをランダムに選択し、選択された自由度を変調することによりこれを光子に割り当てる。続いて、量子信号はボブへ送信され、ボブはX基底とZ基底のいずれかの量子状態を測定するように自分の検出装置をランダムに構成する。
【0008】
ボブは、正しい基底(つまり受信した状態が属する基底)を選択する度に、アリスの選択と完全に相関しているビットを取得する。逆に、ボブが間違った基底を選択した時は、ビット間に相関は見られない。続いて、選別手順が行われ、当事者は選択された基底を公表して基底が適合していないデータを破棄する。そして、アリスとボブは、チャネルでの盗聴者(イヴ)の存在により追加されるノイズを有し得る相関データを共有する。存在し得る盗聴者を識別する為に、当事者は、後で除外される相関データ部分を明白にして信号のノイズを定量化する。残りのデータは、エラー訂正及びプライバシー増幅アルゴリズムによって秘密鍵を抽出するのに使用される。
【0009】
上述したように、DV‐QKDでは情報を符号化して送信するのに単一光子を使用する。単一光子はレーザパルスを減衰させることにより一般的に得られ、そのことは、パルス毎の光子数はポアソン分布によるので、セキュリティ問題を抱える。それゆえ、イヴは、一より多い光子を有するパルスから情報を取得(つまり光子数分割攻撃を利用)し得る。この攻撃に対する対抗策は、従来のDV‐QKD実装例の多くで使用されているデコイ状態法であり、そのことは、ポアソン分布が同じであるが平均光子数は異なる追加のデコイ信号を配送することにより一つの光子を含む受信量子状態の数を推定することで構成される。
【0010】
ファイバリンクでのDV‐QKDの実装は、一般的にタイムビン自由度を使用することにより行われる。タイムビン状態は、「早期」ビン又は「後期」ビンとして知られる二つの可能な時間モードの一つに位置する光子により規定される。そして、早期ビン、後期ビン、あるいは相対位相をそれらの間に含む早期及び後期ビンの重複部に光子を置くことにより、量子状態が符号化される。重複状態は、+及び-状態と称される。タイムビン状態は、低デコヒーレンスで長距離にわたって伝搬されるので、ファイバリンクに適している。BB84プロトコルに加えて、タイムビン量子状態、例えばコヒーレント一方向及び差動移相を利用する他のDV‐QKDプロトコルがある。
【0011】
CV‐QKDでは一般的に、光(弱い光パルス)のコヒーレント状態を量子信号として使用し、電磁場の共役直角位相で情報が符号化される。直角位相は、信号パルスの振幅及び位相にそれぞれ対応するものとして定義される。最も広く使用されているCV‐QKDプロトコルは、2002年にグルーシャム(Groosham)及びグレインジャー(Grainger)により提案されたGG02である。GG02において、光信号の直角位相は、パルスの振幅及び位相を変調することにより得られるゼロ中心のガウスランダム分布に従ったものである。CV‐QKDでは、この信号はショットノイズ限定のコヒーレント検出によって測定される。これは、より高度で熱冷却される単一光子検出器が使用されるDV‐QKD技術と比較すると大きな相違である。コヒーレント検出では、受信した量子信号に干渉してこれを増幅し、その直角位相値を取得するローカル振動子(LO)と呼ばれる高強度の参照信号を採用する。コヒーレント検出であれば、ホモダイン又はヘテロダイン方式を使用し得る。ホモダイン検出で、ボブは90°移相をローカル振動子に加えることによりX直交位相とP直交位相のいずれかを測定するようにランダムな選択を行なうのに対して、ヘテロダイン検出では、例として90°光ハイブリッドを使用して当該信号を二つの部分に分割することにより、ボブは両方の直角位相を同時に測定する。
【0012】
CV‐QKDの初期の実証実験では、ローカル振動子と量子信号とが同じレーザから発生され、時分割多重化を使用することにより両方がボブへ送信された。こうして信号とローカル振動子との間に安定した位相関係が得られる。それにも関わらず、光チャネルでのローカル振動子の送信はセキュリティ問題を引き起こし、盗聴者が較正攻撃を行うことを可能にする。そのため、従来のCV‐QKD実装例の多くでは、追加レーザによりローカル振動子がボブのところで局所的に発生され、二つのレーザの間の位相関係を確立するとともに光ファイバでの位相ドリフトを補償するようにアリスからボブへ参照パルスが送られる。GG02の他に、離散変調を伴う他のCV‐QKDプロトコルの実証実験が行われ、そのことは、実装及びデータ後処理の単純化を可能にした。これらのプロトコルでは、ガウス変調直角位相に代わって、古典的通信で使用されるQPSKと同様に、情報を符号化するのに限定数の直角位相値が使用される。
【0013】
従来のQKD実装例は主として二点間リンクに対応している。しかしながら、QKDは光ネットワークにも統合され、DV‐QKD及びCV‐QKD技術は、光ネットワークにQKDを統合する時に活用され得る特定の利点を有する。例として、DV‐QKDはチャネル損失に対する耐性が高く、長距離リンクにより適している。他方で、ローカル振動子が自然周波数フィルタとして作用するので、CV‐QKDは高強度の古典的信号と共存し得る。それゆえ、CV‐QKDは、共伝搬する幾つかの古典的データチャネルをファイバリンクが有する時の選択肢であり得る。例として、CV‐QKDと高密度波長分割多重化(DWDM)データチャネルとの共存が、DV‐QKDと比較して高いデータレートで実証されている。秘密鍵レートに関して、CV‐QKDとDV‐QKDとの比較は、採用される光学コンポーネントとクロックレートとに依存する。それにも関わらず、一より多い秘密ビットがシンボル毎に抽出されるので、CV‐QKDは短距離でより高い鍵レートを提供すると予想されるのに対して、距離が増加するにつれてDV‐QKDがCV‐QKDより高性能になるだろう。
【0014】
DV‐QKD及びCV‐QKD技術の幾つかの実装例は、多様な構成で存在する。例えば、図1に概略図示されているように、QKD送信器及び受信器が量子通信ネットワーク1000に統合され、このようなネットワークのノードN1101‐1108は、DV‐QKDシステムであるQDV1‐QDV7あるいはCV‐QKDシステムであるQCV1‐QCV5を備え得る。連続線又は破線で図1に示されているこのような従来のQKDネットワークの独立リンクは、CV‐QKD及びDV‐QKD技術のいずれかを使用する。しかしながら、既存のネットワーク及び/又はノード構成は、このリンクの特性に応じてQKD性能を最適化する高度な再構成可能性の欠如が悩みである。
【0015】
幾つかの既存のQKD送信器は、BB84、コヒーレント一方向(COW)、及び差動移相(DPS)など幾つかのDV‐QKDプロトコルを実装する為のDV‐QKD方式において利用可能である。例えば、マッハ・ツェンダー干渉計と二重パルス発生段階とを非対称に使用するファイバベースのQKD送信器は、多様な位相と相対強度とを備えるコヒーレントパルスの発生が可能である。このような送信器は、タイムビン符号化を伴うBB84で動作し得、六状態BB84など他のDV‐QKDプロトコルにも使用され得る。別の例では、半導体レーザの直接位相変調に基づくQKD の変調器フリー送信器が実装される。しかしながら、その運用性は、BB84、DPS、及びCOWなどのDV‐QKDプロトコルに限定されていた。
【0016】
また、このような送信器はDV‐QKDについてのみが最適化されている。量子状態は連続ランダム分布から変調される必要があって、位相復元を行うには、量子状態と比較して高い強度を持つ参照パルスが発生される必要があるので、CV‐QKDプロトコルを実装する為の位相及び振幅変調に関する要件は、より厳密である。この理由から、高い消光比と広範囲の振幅と位相レベル(例えば、10ビット分解能の分布について1024の電圧レベル)とを備えるパルスを発生させる能力を有することが必要とされる。加えて、真のローカル振動子を含むCV‐QKDは、周波数ロックされている二つの狭線幅(例えば20kHz)レーザを必要とし得る。レーザに対するこの制約は、CV‐QKDについての注入同期及び直接変調などの方式の使用を困難にし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記を考慮すると、本発明の目的は、上述した課題、短所、及び/又は問題のうち一以上に対応する改良型のネットワークノード及び/又は送信器/受信器構成を提供することである。言い換えると、DV‐QKD及びCV‐QKDシステムの間の相互運用性を保証し、ライン/ネットワークの特性に応じてQKD性能を最適化するのに改良型で再構成可能なQKDネットワークが必要とされる。更に、光ファイバネットワークの送信器/受信器でCV‐QKD及びDV‐QKD能力を効果的に組み合わせて汎用性及び柔軟性を実現することにも利点が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本明細書に開示される本発明の特定実施形態は、概して、光ファイバネットワークでCV‐QKD及びDV‐QKD技術を組み合わせることに関する。本発明は更に、例えば、光ファイバリンク/ネットワークの特性(例えば、鍵レート、通信距離、共伝搬の古典的チャネルの数/存在等)に応じて性能を最適化する為の動的再構成可能性とCV‐QKD及びDV‐QKDモード間の切り替えとに関する。本発明は、CV‐QKD及びDV‐QKDの両技術を使用して通信を行いネットワークのQKD性能を最適化できる汎用性の送信器及び/又は受信器も開示する。
【0019】
本発明は、特定実施形態において、光ファイバネットワークで動作するように構成されたネットワークノードを設けることにより上述の目的に対応する。ネットワークノードは、連続変数(CV)QKDモード及び/又は離散変数(DV)QKDモードに従って光ファイバネットワークの少なくとも一つの他のネットワークノードの別のQKD通信ユニットと通信するように構成された量子鍵配送(QKD)通信ユニットと、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードの少なくとも一方で動作するようにQKD通信ユニットを制御するように構成された制御ユニットとを具備し、制御ユニットは、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードとの間でQKD通信ユニットの動作を切り替えるように構成されている。
【0020】
この文脈において、用語「ネットワークノード」は、一以上のネットワーク経路で情報を受信、作成、記憶、又は送信できる接続ノードを指す。例えば、ネットワークノードは、情報を送信する為の終点ノード、あるいは再配送ノードであり得る。ネットワークノードは、他のネットワークノードへの/からの情報を認識、処理、及び転送/受信するソフトウェア及び/又はハードウェア能力を有し得る。用語「光ファイバネットワーク」は、光学/光信号、及び/又は、電気信号を介して一つの場所から別の場所へ情報を送信する為の一以上の光ファイバのネットワークとして理解され得る。用語「CV‐QKDモード」及び「DV‐QKDモード」は、「CV‐QKD」技術/プロトコルと「DV‐QKD」技術/プロトコルとをそれぞれ使用するモードとして理解され得る。
【0021】
この構成によれば、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードとの少なくとも一方に従って光ファイバネットワークの少なくとも一つの他のネットワークの別のQKD通信ユニットと通信できるQKD通信ユニットをネットワークノードが備えているので、制御ユニットは、DV‐QKDからCV‐QKDへ、あるいはその逆にQKD通信ユニットの動作を動的に切り替えることができる。このような動的再構成可能性により、例えば、鍵レート、通信距離、古典的な共伝搬チャネル等といった、ネットワークの特性、及び/又は、要求に応じて、QKD性能を最適化することができる。例として、動的切り替えゆえに、ネットワークノードは、長距離リンク/ネットワークにおいて、その高い秘密鍵レートによりDV‐QKDモードで動作するように構成され得るか、幾つかの古典的な共伝搬データチャネルを含む短距離リンク/ネットワークについてはCV‐QKDモードに切り替えられ得る。こうして、ネットワーク構成の特性に応じて性能及び機能性が適応化される状況では、発明に関するネットワークノードによりネットワークを再構成するための頑強だが簡単な手法が得られる。
【0022】
発明の特定実施形態において、QKD通信ユニットは、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードの少なくとも一方で動作するように構成された少なくとも一つのQKD送信器を具備し得る。このQKD通信ユニットの構成を備えてCV‐QKDとDV‐QKDの両方のモードでの動作が可能な少なくとも一つのQKD送信器を設けることにより、ネットワークノードは、ネットワークのQKD性能を最適化するように汎用的な相互運用性及び再構成可能性を達成できる。
【0023】
発明の特定実施形態では、QKD送信器がCV‐QKDモードとDV‐QKDモードのいずれかで動作するように、制御ユニットは、第1の所定の電気信号でQKD通信ユニットを駆動するように構成し得る。これにより、より簡単なハードウェア又はソフトウェア構成を介してCV‐QKDモードとDV‐QKDモードのいずれかを使用する選択が実行され得る。
【0024】
発明の特定実施形態において、QKD送信器は、少なくとも一つの光源により発出される光信号の振幅及び/又は位相を変調するように構成された変調器ユニットを具備し、電気回路は、第1の所定の電気信号に従って変調器ユニットを駆動するように構成し得る。こうして、CV‐QKDとDV‐QKDモードとの間での切り替え性を送信器が達成する為のより簡単だが汎用的な構成が得られる。
【0025】
変調後の光信号を所定レベルまで減衰させる、及び/又は、CV‐QKDモード又はDV‐QKDモードに必要とされる平均光子数を設定するように構成された減衰器をQKD送信器が具備し、電子回路は、減衰器を制御するように構成されていると、有利である。一例において、減衰器は電気制御による可変光学減衰器であり、電子回路は更に、第1の所定の電気信号に従って減衰器を制御するように構成し得る。減衰器は変調器ユニットの前に、あるいは変調器ユニットの後に含まれ得るが、両方の事例で、CV‐QKD又はDV‐QKD信号が送信チャネルへ送信される前に含まれる。
【0026】
発明の特定実施形態で、制御ユニットは、時間、周波数、空間、偏光の多重化、及びこれらの組み合わせのいずれか一つを使用することによりCV‐QKDモードとDVQKDモードとで同時にQKD送信器を動作するように構成し得る。このような多重化では、DV‐QKD及びCV‐QKDを同時に行うべく、ネットワークノード及び/又はネットワークが設けられ、それにより、汎用性を高めて自由度を追加し、QKD性能を向上させ得る。例として、偏光スイッチを使用すること、あるいは少なくとも一つの光/レーザ源からの多様な波長を使用することにより、QKD送信器はCV‐QKD及びDV‐QKD信号の多重化を可能にし得る。
【0027】
発明の特定実施形態において、QKD送信器は少なくとも一つのCV‐QKD送信器と少なくとも一つのDV‐QKD送信器とを組み合わせ得、少なくとも一つのCV‐QKD送信器と少なくとも一つのDV‐QKD送信器とは少なくとも一つの光電子コンポーネントを共有し得る。QKD送信器がCV‐QKD送信器とDV‐QKD送信器との少なくとも一つの光電子コンポーネントを共有するので、単一のQKD送信器は、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードのいずれかで動作すべく切り替え得るように、DV‐QKD及びCV‐QKD送信器を単一の要素に組み合わせ得、それにより、汎用性及び相互運用性を達成し得る。この構成はコンポーネントの数も削減するものである。
【0028】
QKD通信ユニットは、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードの少なくとも一方で動作するように構成された少なくとも一つのQKD受信器を具備し得る。CV‐QKD及びDV‐QKDモードの両方での動作が可能な少なくとも一つのQKD受信器を有することにより、QKD通信ユニット、それによるネットワークノードは、ネットワークのQKD性能を最適化するように汎用的な相互運用性及び再構成可能性を達成できる。
【0029】
QKD受信器がCV‐QKDモードとDV‐QKDモードのいずれかで動作するように、制御ユニットは、第2の所定の電気信号でQKD通信ユニットを駆動するように構成し得る。これにより、より簡単なハードウェア又はソフトウェア構成を介してCV‐QKDモードとDV‐QKDモードのいずれかを用いた選択が実施され得る。
【0030】
発明の特定実施形態において、QKD受信器は、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードのそれぞれでCV‐QKD及びDV‐QKD信号の検出を行うように構成された処理/検出ユニットと、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードのいずれかでQKD受信器が動作するように第2の所定の電気信号に従って処理/検出ユニットを駆動するように構成された電子回路とを具備し得る。これにより、受信器がCV‐QKD及びDV‐QKDモードの間での切り替え性を達成する為のより簡単だが汎用性の構成が提供される。例として、QKD受信器の処理/検出ユニットは、偏光制御器、干渉計、バランス検出器、そして偏光ビームスプリッタ又は波長分割多重化装置を使用することによりCV‐QKDモードとDV‐QKDモードのそれぞれでCV‐QKD及びDV‐QKD信号の検出を行うように構成された光子検出器であり得る。
【0031】
発明の特定実施形態において、制御ユニットは、時間、周波数、空間、偏光の多重化、及びこれらの組み合わせのいずれか一つを使用することによりCV‐QKDモードとDV‐QKDモードで同時にQKD受信器を動作するように構成されてもよい。このような多重化により、DV‐QKD及びCV‐QKDを同時に行うべくネットワークノード及び/又はネットワークが設けられ、それにより、汎用性を高めるとともに自由度を追加し、QKD性能を向上させ得る。例として、QKD受信器は、CV‐QKD及びDV‐QKD信号を対応する検出器へ送る為にこれらを分離させるように構成された偏光ビームスプリッタ又は波長分割多重化装置を使用することにより、CV‐QKD及びDV‐QKD信号の多重化を可能にし得る。
【0032】
発明の特定実施形態において、QKD受信器は少なくとも一つのCV‐QKD受信器と少なくとも一つのDV‐QKD受信器とを組み合わせ得、少なくとも一つのCV‐QKD受信器と少なくとも一つのDV‐QKD受信器とは少なくとも一つの光電子コンポーネントを共有し得る。QKD受信器がCV‐QKD受信器とDV‐QKD受信器との少なくとも一つの光電子コンポーネントを共有するので、単一のQKD受信器は、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードのいずれかで動作すべく切り替えられ得るように、DV‐QKD及びCV‐QKD受信器を単一の要素に組み合わせ得、それにより、汎用性及び相互運用性を達成し得る。この構成はコンポーネントの数も削減するものである。
【0033】
CV‐QKDモードが少なくとも一つのCV‐QKDプロトコルに基づき得て、DV‐QKDモードが少なくとも一つのDV‐QKDプロトコルに基づき得ると、有利である。例えば、少なくとも一つのCV‐QKDプロトコルはGG02プロトコルと離散変調CV‐QKDプロトコルとから成り、少なくとも一つのDV‐QKDプロトコルは、BB84 DV‐QKDプロトコル、コヒーレント一方向DV‐QKDプロトコル、差動移相DV‐QKDプロトコル、三状態DV‐QKDプロトコル、そして六状態DV‐QKDプロトコルから成り得る。従って、発明に関するネットワークノードは多様な従来のCV‐QKD及びDV‐QKDプロトコルで動作し得るが、CV‐QKDとDV‐QKDとの間の相互運用性に適していることで柔軟で再構成可能なネットワークを実装できる。
【0034】
本発明は、特定実施形態において、光ファイバネットワークを設けることにより上述の目的に対応し、この光ファイバネットワークは各々が上記の実施形態/例のいずれかによる一以上のネットワークノードを具備する。こうして、QKD性能が最適化された動的再構成可能かつ汎用性のネットワークが実現され得る。
【0035】
更に、各ネットワークノードは少なくとも一つのCV‐QKD送信器と少なくとも一つのDV‐QKD送信器とを備え得る。同様に、ネットワークノードは少なくとも一つのCV‐QKD受信器と少なくとも一つのDV‐QKD受信器も備え得る。
【0036】
本発明は、特定実施形態において、光ファイバネットワークで情報を送信するように構成されたQKD送信器を設けることにより上述の目的に対応する。QKD送信器は、少なくとも一つの光源により発出される光信号の振幅及び/又は位相を変調させるように構成された変調器ユニットと、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードのいずれかでQKD送信器が動作するように所定の電気信号に従って変調器ユニットを駆動するように構成された電子回路とを具備する。QKDによれば、QKD送信器から例えばQKD受信器へ、鍵データが量子情報として送信され得る。光ファイバネットワークにおいてCV‐QKD及びDV‐QKDモードの少なくとも一方での動作が可能な少なくとも一つのQKD送信器を有することにより、ネットワーク/ネットワークノードは、そのため、CV‐QKDとDV‐QKDとの間で切り替え/構成可能であることにより汎用性となることで、ネットワークのQKD性能を最適化する効率的手法を提供できる。更に、電子回路を有することにより、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードのいずれかの使用の選択が、より簡単なハードウェア又はソフトウェア構成を介して実施され得る。
【0037】
QKD送信器は、変調後の光信号を所定レベルまで減衰させる、及び/又は、CV‐QKDモード又はDV‐QKDモードに必要とされる平均光子数を設定するように構成された減衰器を具備し、電子回路は、減衰器を制御するように構成し得る。一例において、減衰器は電気制御による可変光学減衰器であり、電子回路は更に、所定の電気信号に従って減衰器を制御するように構成し得る。減衰器は変調器ユニットの前、あるいは変調器ユニットの後に含まれ得るが、両方の事例においてCV‐QKD又はDV‐QKD信号が送信チャネルへ送信される前に含まれる。減衰器は、変調後の光の強度及び/又は位相を所定レベルまで低下させるか、平均光子数を所定レベルに設定する為に含まれ得、請求項記載のネットワークでこのようなパラメータを実時間で監視する、及び/又は、請求項記載のネットワークのセキュリティを保証することができる。
【0038】
時間、周波数、空間、偏光の多重化、及びこれらの組み合わせのうちいずれか一つを使用することにより、QKD送信器は、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードとで同時に動作するように構成し得る。このような多重化により、QKD送信器はDV‐QKDとCV‐QKDとを同時に行うことで、汎用性を高めて自由度を追加し、QKD性能を向上させることができる。例として、QKD送信器は、偏光スイッチを使用すること、あるいは少なくとも一つの光/レーザ源からの多様な波長を使用することにより、CV‐QKD及びDV‐QKD信号の多重化を可能にする。
【0039】
QKD送信器は少なくとも一つのCV‐QKD送信器と少なくとも一つのDV‐QKD送信器とを組み合わせ得、少なくとも一つのCV‐QKD送信器と少なくとも一つのDV‐QKD送信器とは少なくとも一つの光電子コンポーネントを共有し得る。QKD送信器がCV‐QKD送信器とDV‐QKD送信器との少なくとも一つの光電子コンポーネントを共有するので、単一のQKD送信器は、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードのいずれかで動作すべく切り替えられ得るように、DV‐QKD及びCV‐QKD送信器を単一の要素に組み合わせ得、それにより、汎用性及び相互運用性を達成し得る。
【0040】
発明の特定実施形態において、ネットワークノードのQKD送信器は、CV‐QKDモード及び/又はDV‐QKDモードに従って光ファイバネットワークの少なくとも一つの他のネットワークノードの対応するQKD受信器と通信するのに適応し得る。この構成は、QKD送信器の汎用性が受信器側へ移行し得ることを保証する。
【0041】
CV‐QKDモードが少なくとも一つのCV‐QKDプロトコルに基づき得て、DV‐QKDモードが少なくとも一つのDV‐QKDプロトコルに基づき得ると、有利である。例えば、少なくとも一つのCV‐QKDプロトコルはGG02プロトコルと離散変調CV‐QKDプロトコルとから成り、少なくとも一つのDV‐QKDプロトコルはBB84 DV‐QKDプロトコルと、コヒーレント一方向DV‐QKDプロトコルと、差動移相DV‐QKDプロトコルと、三状態DV‐QKDプロトコルと、六状態DV‐QKDプロトコルと、デコイ状態DV‐QKDプロトコルとから成り得る。従って、発明のQKD送信器は従来の多様なCV‐QKD及びDV‐QKDプロトコルで動作し得るが、CV‐QKDとDV‐QKDとの間の相互運用性に適していることで柔軟で再構成可能なネットワークを実装できる。
【0042】
本発明は、特定実施形態において、光ファイバネットワークで情報を受信するように構成されたQKD受信器を設けることにより上述の目的に対応する。QKD受信器は、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードのそれぞれでCV‐QKD及びDV‐QKD信号の受信及び/又は検出を行うように構成された処理/検出ユニットと、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードのいずれかでQKD受信器が動作するように所定の電気信号に従って処理/検出ユニットを駆動するように構成された電子回路とを具備する。光ファイバネットワークにおいてCV‐QKD及びDV‐QKDモードの少なくとも一方での動作が可能である少なくとも一つのQKD受信器を有することにより、CV‐QKDとDV‐QKDとの間で切り替え/構成が可能であることでネットワーク/ネットワークノードが汎用性となり、ネットワークのQKD性能を最適化する効率的な手法が得られる。更に、電子回路を有することにより、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードのいずれかの使用の選択が、簡単なハードウェア又はソフトウェア構成を介して実行され得る。例として、QKD受信器の処理/検出ユニットは、例えば、偏光ビームスプリッタ又は波長分割多重化装置を使用することにより、CV‐QKDモード及び/又はDV‐QKDモードのそれぞれでCV‐QKD及び/又はDV‐QKD信号の処理及び検出を行うように構成された偏光制御器及び/又は一以上の検出器であり得る。
【0043】
QKD受信器は、時間、周波数、空間、偏光の多重化、及びこれらの組み合わせのうちいずれか一つを使用することによりCV‐QKDモードとDV‐QKDモードとで同時に動作するように構成し得る。このような多重化により、QKD受信器を設けて、DV‐QKDとCV‐QKDとを同時に行うことで、汎用性を高めるとともに、自由度を追加してQKD性能を向上させることができる。例として、CV‐QKD及びDV‐QKD信号を対応する検出器へ送る為にこれらを分離するように構成された偏光ビームスプリッタ又は波長分割多重化装置を使用することにより、QKD受信器はCV‐QKD及びDV‐QKD信号を多重化することが可能である。
【0044】
発明の特定実施形態において、QKD受信器は少なくとも一つのCV‐QKD受信器と少なくとも一つのDV‐QKD受信器とを組み合わせ得、少なくとも一つのCV‐QKD受信器と少なくとも一つのDV‐QKD受信器とは少なくとも一つの光電子コンポーネントを共有し得る。QKD受信器がCV‐QKD受信器とDV‐QKD受信器の少なくとも一つの光電子コンポーネントを共有するので、単一のQKD受信器は、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードのいずれかで動作すべく切り替えられ得るように、DV‐QKD及びCV‐QKD受信器を単一の要素に組み合わせ得、それにより、汎用性及び相互運用性を達成し得る。
【0045】
発明の特定実施形態において、ネットワークノードのQKD受信器は、CV‐QKDモード及び/又はDV‐QKDモードに従って光ファイバネットワークの少なくとも一つの他のネットワークノードの対応するQKD送信器と通信するのに適応し得る。この構成は、QKD受信器の汎用性を送信器側に移行し得ることを保証する。
【0046】
CV‐QKDモードが少なくとも一つのCV‐QKDプロトコルに基づき得て、DV‐QKDモードが少なくとも一つのDV‐QKDプロトコルに基づき得ると、有利である。例えば、少なくとも一つのCV‐QKDプロトコルはGG02プロトコルと離散変調CV‐QKDプロトコルとから成り、少なくとも一つのDV‐QKDプロトコルは、BB84 DV‐QKDプロトコル、コヒーレント一方向DV‐QKDプロトコル、差動移相DV‐QKDプロトコル、三状態DV‐QKDプロトコル、六状態DV‐QKDプロトコル、そしてデコイ状態DV‐QKDプロトコルから成り得る。従って、発明に関するQKD受信器は多様な従来のCV‐QKD及びDV‐QKDプロトコルで動作し得るが、CV‐QKDとDV‐QKDとの間の相互運用性に適していることで柔軟で再構成可能なネットワークを実装できる。
【0047】
本発明は、特定実施形態において、光ファイバネットワークのネットワークノードの動作方法を提供することにより上述の目的に対応し、ネットワークノードは、連続変数(CV)QKDモード及び/又は離散変数(DV)QKDモードに従って光ファイバネットワークの少なくとも一つの他のネットワークノードの別のQKD通信ユニット(QCD2‐QCD5)と通信するように構成された量子鍵配送通信ユニット(QCD1)と、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードの少なくとも一方で動作するようにQKD通信ユニット(QCD1)を制御するように構成された制御ユニットとを具備し、この方法は、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードとの間でQKD通信ユニット(QCD1)の動作を切り替えるステップを包含する。この方法では、DV‐QKDからCV‐QKDへ、あるいはその逆に、QKD通信ユニットの動作を動的に切り替えることが可能である。
【0048】
発明に関する製品及び方法の有利な実施形態が、図を参照することにより以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】CV‐QKDとDV‐QKDのいずれかの技術を使用する従来のネットワーク1000を図示している。
図2】各々が本発明の特定実施形態による、ネットワークノードN101とネットワークノードN102とのブロック図を示している。
図3】本発明の特定実施形態による、複数のネットワークノードを有する光ファイバネットワーク100を図示している。
図4A】本発明の特定実施形態による、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードの少なくとも一方で動作するように構成されたQKD送信器400Aを図示している。
図4B】本発明の特定実施形態による、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードの少なくとも一方で動作するように構成されたQKD送信器400Bを図示している。
図4C】本発明の特定実施形態による、図4Bに示されているQKD送信器400Bを制御する為の所定の電気信号の一例を図示している。
図4D】本発明の特定実施形態による、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードの少なくとも一方で動作するように構成されたQKD送信器400Dを図示している。
図4E】本発明の特定実施形態による、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードの少なくとも一方で動作するように構成されたQKD送信器400Eを図示している。
図4F】本発明の特定実施形態による、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードの少なくとも一方で動作するように構成されたQKD送信器400Fを図示している。
図4G】本発明の特定実施形態による、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードの少なくとも一方で動作するように構成されたQKD送信器400Gを図示している。
図5A】CV‐QKDモードとDV‐QKDモードのいずれかで動作するように構成された従来のQKD受信器500Aを図示している。
図5B】各々がタイムビンBB84 DV‐QKDプロトコルを行うように構成された従来のQKD受信器500B1及び500B2を図示している。
図5C】GG02 CV‐QKDプロトコルを行うように構成された従来のQKD受信器500Cを図示している。
図6】本発明の特定実施形態による、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードの少なくとも一方で動作するように構成されたQKD受信器600を図示している。
図7A】本発明の特定実施形態による、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードの少なくとも一方で動作するように構成されたQKD受信器700Aを図示している。
図7B】本発明の特定実施形態による、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードの少なくとも一方で動作するように構成されたQKD受信器700Bを図示している。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下では、図を参照して本発明の特徴と有利な実施形態とが詳細に記載される。
【0051】
ネットワークノード
図2は、本発明の実施形態によるネットワークノードN101のブロック図を概略的に示している。一つの特定実施形態において、ネットワークノードN101は、例えば、量子鍵情報などの情報を送信及び/又は受信する為の少なくとも一つの光ファイバネットワークの一部であり得る。
【0052】
ネットワークノードN101は、量子鍵配送(QKD)通信ユニットQCD1と制御ユニット(不図示)とを具備する。QKD通信ユニットQCD1は、光ファイバネットワークの少なくとも一つの他のネットワークノードN102の別のQKD通信ユニットQCD2と通信するように構成されている。QKD通信ユニットQCD1は、特に、連続変数(CV)QKDモード(図1の破線)と離散変数(DV)QKDモード(図1の連続線)の少なくとも一方に従って別のQKD通信ユニットQCD2と通信するように構成されている。制御ユニットは、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードの少なくとも一方で動作するようにQKD通信ユニットQCD1を制御するように構成されている。特に、制御ユニットは、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードとの間でQKD通信ユニットQCD1の動作を切り替えるように構成されている。
【0053】
ノードN101の制御ユニットは、マイクロプロセッサ、メモリ、監視手段、電子手段、あるいはこれらの組み合わせのうち少なくとも一以上を包含し得る。マイクロプロセッサは、QKD通信ユニットQCD1及び/又はそのコンポーネントへ送られるコマンドを計算できる。特定用途向けプロセッサ又はマイクロコントローラなどの他のプロセッサベースデバイスも、同様の機能を行うためにマイクロプロセッサの代わりに使用され得る。メモリは、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードの少なくとも一方で動作するようにQKD通信ユニットQCD1を制御する実行可能命令を記憶できる非一時的コンピュータ可読媒体を含み得る。メモリは、マイクロプロセッサの動作に影響を与える実行可能命令も包含し得る。監視手段は、ネットワークの特性を監視する、及び/又は、ネットワークノードN101の入力インタフェースから、あるいは外部デバイスからコマンドを受信するように構成し得る。一例において、監視手段は、ノイズ/エラーの量、あるいは光ファイバリンク/ネットワークに特有の他の特定性能を推定するセンサを含み得る。別の例で、入力インタフェースは、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードとの間での動的再構成可能性及び切り替えを可能にする一以上の入力デバイス、ボタン、あるいは制御装置を含み得る。
【0054】
CV‐QKDモードは、それぞれのQKD通信ユニットがCV‐QKD実装を実現するように構成されたモードを指し得る。DV‐QKDモードは、それぞれのQKD通信ユニットがDV‐QKD実装を実現するように構成されたモードを指し得る。
【0055】
この構成によれば、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードの少なくとも一方により光ファイバネットワークの少なくとも一つの他のネットワークノードN102の別のQKD通信ユニットQCD2と通信できるQKD通信ユニットQCD1をネットワークノードN101が備えているので、制御ユニットは、DV‐QKDからCV‐QKDモードへ、あるいはその逆にQKD通信ユニットQCD1の動作を動的に切り替えることができる。このような動的再構成可能性は、例えば、毎秒秘密ビット数である秘密鍵レートであり得る鍵レート、通信距離、共伝搬の古典的チャネルの数/存在等のような、ネットワークの特性、及び/又は、要求に応じてQKD性能を最適化することを可能にする。例として、DV‐QKDは長距離のリンク/ネットワークでのより高い秘密鍵レートを提供できる。このような例で、制御ユニットは、DV‐QKDモードで通信するようにQKD通信ユニットQCD1を切り替えることができる。制御ユニットは、短距離のリンク/ネットワークでのより高い秘密鍵レートを達成する為にDV‐QKDモードからCV‐QKDへ動的な切り替えを行なうことができる。
【0056】
考えられる別のシナリオは、DV‐QKDモードで通信している間に、QKD通信ユニットQCD1及びQCD2が、ノイズの増分を検出し得ることであり、そのことは、古典的データチャネルのより高い強度に起因する場合がある。この事例で、制御ユニットはDV‐QKDモードからCV‐QKDモードへ切り替え、こうして共伝搬する古典的信号と共存するとともに正の鍵レートを可能にする。それゆえに、QKD通信ユニットQCD1は、QKD通信ユニットQCD2と通信して、ノイズを含むリンク/ネットワークにおける秘密鍵レートを最適化すべくCV‐QKDへのモード切り替えを要求することができる。
【0057】
図2に図示されているネットワークノードN101の動作が以下に記載される。上記の構成で、QKD通信ユニット(QCD1)は、制御ユニットを使用してCV‐QKDモードとDV‐QKDモードとの間で切り替えられる。切り替え操作は、ハードウェア及び/又はソフトウェア構成を使用して実施され得る。
【0058】
光ファイバネットワーク
図3は、複数のネットワークノードN101からN108を有する、本発明の実施形態による光ファイバネットワーク100を概略的に図示している。複数のネットワークノードの一以上のネットワークノードN101,N102,N105,N106,N108は、本発明の実施形態によるものである。具体的に記すと、一以上のネットワークノードN101,N102,N105,N106,N108は、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードの少なくとも一方により通信できるQKD通信ユニットQCD1‐QCD5を備え得る。一以上のノードN103,N104,N107は、DV‐QKDモードのみにより通信できるQKD通信ユニットQDV2,QDV3,QDV6を備え得る。同様に、CV‐QKDモードのみにより通信できる一以上の追加ノード(不図示)が設けられ得る。
【0059】
例として、ネットワークノードN101は、(図3に破線で示された)CV‐QKDモードと(図3に連続線で示された)DV‐QKDモードの少なくとも一方でネットワークノードN102と通信するように構成されている。ネットワークノードN102は、他のネットワークノードN101,N103,N104,N105と通信できる。他のネットワークノードN101,N103,N104,N105の構成可能性に応じて、通信はCV‐QKDモードとDV‐QKDモードの少なくとも一方であり得る。
【0060】
例えば、ネットワークノードN101又はN105は、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードのいずれかで動作するように構成されている。従って、ネットワークノードN102とネットワークノードN101又はN105との間の通信は、最適化されたQKD性能を達成する為にCV‐QKDモードとDV‐QKDモードとの間で切り替えられ得る。ネットワークノードN102又はN105は、DV‐QKDモードを介してネットワークノードN103又はN104とそれぞれ通信する。ネットワークノードN103及びN104は、DV‐QKDモードを介して互いに通信する。
【0061】
光ファイバネットワーク100でのCV‐QKD及びDV‐QKD技術の組み合わせゆえに、本発明は、光ファイバネットワークのQKD性能を最適化するようにCV‐QKD及びDV‐QKDモードの間での動的再構成可能性及び切り替えを可能にする。
【0062】
本発明はこれらに限定されない。光ファイバネットワークは、いかなる数のネットワークノードを有してもよい。ネットワークノードの全て又は幾つかは、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードとの間で切り替えるように再構成可能であり得る。ネットワークノードは、光通信チャネル、光ファイバ、その他など一以上の導波路を介して互いに通信できる。
【0063】
実施形態において、本発明のネットワークノードの各々は、光ファイバネットワークの他のネットワークノードと通信する為に、少なくとも一つの送信器及び/又は少なくとも一つの受信器をそれぞれのQKD通信ユニットとして含み得る。送信器及び受信器は、CV‐QKD信号及び/又はDV‐QKD信号をやり取りするように構成され得ることでQKD向けに構成され、それゆえにそれぞれQKD送信器とQKD受信器と称されている。
【0064】
QKD通信ユニットは、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードの少なくとも一方で動作するように構成された少なくとも一つのQKD送信器及び/又は少なくとも一つのQKD受信器を具備しうる。以下では、図4A‐7Bを使用してQKD送信器及びQKD受信器が記載される。
【0065】
QKD送信器
図4Aは、発明の別の実施形態によるQKD送信器400Aのブロック図を示している。QKD送信器400Aは、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードの少なくとも一方で動作するように構成されている。CV‐QKDとDV‐QKDの両方のモードでの動作が可能なQKD送信器400Aを有することにより、ネットワークノードは、前に開示されたネットワーク100のQKD性能を最適化するように汎用的な相互運用性及び再構成可能性を達成できる。QKD送信器は、CV‐QKD及び/又はDV‐QKD信号を受信器へ送信するように構成されている。
【0066】
発明の実施形態において、QKD送信器400Aでは、少なくとも一つのCV‐QKD送信器と少なくとも一つのDV‐QKD送信器とが組み合わされて単一の要素となり得る。特定例で、少なくとも一つのCV‐QKD送信器と少なくとも一つのDV‐QKD送信器とは少なくとも一つの光電子コンポーネントを共有し得る。QKD送信器がCV‐QKD送信器とDV‐QKD送信器との少なくとも一つの光電子コンポーネントを共有するので、単一のQKD送信器は、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードのいずれかで動作すべく切り替えられ得るように、DV‐QKD及びCV‐QKD送信器を単一の要素に組み合わせ得、それにより、汎用性及び相互運用性を達成し得る。この構成はコンポーネントの数も削減するものである。
【0067】
QKD送信器400Aは電子回路402と変調器ユニット403とを具備する。少なくとも一つの光源401は、QKD送信器400Aの一部であるかQKD送信器400Aの外部にあるように設けられ得る。
【0068】
少なくとも一つの光源401は光信号を発出するように構成されている。例えば、光源はレーザ光源、特に連続波(CW)レーザ光源であり得る。代替的に、光源はパルスレーザ光源であり得る。光源が調節可能なレーザ源であり得ることで、例えば、使用されるバンド(例えばCバンド)の特定チャネルでの量子通信を可能にするようにレーザの波長が調節され得る。
【0069】
変調器ユニット403は、少なくとも一つの光源401により発出される光信号を受信し得る。変調器ユニット403は、受信した光信号の振幅及び/又は位相を変調するように構成されている。変調器ユニット403は、光信号の振幅を変調する為の少なくとも一つの振幅変調器、及び/又は、光信号の位相を変調する為の少なくとも一つの位相変調器をそれぞれ具備し得る。振幅及び/又は位相変調器は、一以上の光学及び/又は電子コンポーネントを具備し得る。例えば、振幅及び/又は位相変調器は、材料の電場を制御することによりそれぞれの振幅及び/又は位相変調が達成され得るように電気光学効果を呈する少なくとも一つの材料を包含し得る。振幅変調器は、好ましくは、背景ノイズを低減する所定の消光比(例えば>20dB)を有し得る。ガウス変調を伴うCV‐QKDの場合では、位相及び振幅の連続的な変調について所望の近似値が得られるように、位相及び/又は振幅変調器は所定の分解能及びダイナミックレンジを有する。変調器の一以上の光学及び/又は電子コンポーネントは、対応するCV‐QKD送信器とDV‐QKD送信器とで共有される一以上の光電子コンポーネントであり得る。
【0070】
電子回路402は、変調器ユニット403を制御するように構成されている。特に、QKD送信器400AがCV‐QKDモードとDV‐QKDモードのいずれかで動作するような手法で、電子回路402は第1の所定の電気信号に従って変調器403を駆動するように構成されている。電子ユニット402は、変調器ユニット402を駆動する第1の所定の電気信号を設定することにより、CV‐QKDモード又はDV‐QKDモードの選択を可能にする。電子回路402はハードウェア及び/又はソフトウェア要素であり得る。これにより、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードのいずれかを使用する選択が、より簡単なハードウェア及び/又はソフトウェア構成を介して実施され得る。
【0071】
電子回路402の第1の所定の電気信号は、変調器ユニット403を駆動するように構成し得る。特に、振幅及び/又は位相変調器の一以上の共有光電子コンポーネントなど変調器ユニット403のコンポーネントは、QKD送信器400Aの動作モードとしてCV‐QKDモードとDV‐QKDモードの一方を選択するように第1の所定の電気信号により駆動されるように構成されている。一例において、第1の所定の電気信号は、通信モードがCV‐QKDモード又はDV‐QKDモードであるかどうかを判断できる。
【0072】
電子回路402の例は、電子スイッチ、フィールドプログラマブルゲートアレイを含むがこれらに限定されず、一以上のデジタルアナログ変換器と組み合わされてもよい。電子回路402は、波長、周波数、出力、その他など、光源401のレーザパラメータを制御するように構成し得る。付加的に、電子回路402は、一以上のアナログデジタル変換器を使用して、光源401及び/又は変調器ユニット403の光電子コンポーネントの動作を監視するように構成されてもよい。実施形態において、電子回路402はソフトウェアにより制御され得る。
【0073】
図4Aに図示されている発明の別の実施形態によれば、QKD送信器400Aは更に、変調後の光信号を所定レベルまで減衰させる、及び/又は、CV‐QKDモード又はDV‐QKDモードに必要とされる平均光子数を設定するように構成された減衰器405を具備し得る。電子回路402は、減衰器405を制御するように構成し得る。減衰器405は、第1の所定の電気信号により駆動され得る。例えば、所与の通信モードについては、減衰も第1の所定の電気信号も固定されてよい。一例において、減衰器405は固定光学減衰器又は可変光学減衰器であり得る。減衰器405の位置は限定されない。例えば、減衰器405は、変調器ユニット403の前、あるいは変調器ユニット403の後に含まれ得る。変調後の光の強度及び/又は位相を所定レベルまで低下させる、又は、平均光子数を所定レベルに設定する為に、減衰器405を含み得、光ファイバネットワークでこのようなパラメータを実時間で監視する、及び/又は、光ファイバネットワークのセキュリティを保証することができる。減衰器405は、一以上の光学及び/又は電子コンポーネントを具備し得る。減衰器405の一以上の光学及び/又は電子コンポーネントは、対応するCV‐QKD減衰器とDV‐QKD減衰器とで共有される一以上の光電子コンポーネントであり得る。電子回路402は、減衰器405、及び/又は、減衰器405の一以上の共有の光電子コンポーネントを駆動する第1の所定の電気信号を設定することによりCV‐QKDモード又はDV‐QKDモードの選択を可能にするように構成し得る。
【0074】
図4Bは、図4Aに示されているQKD送信器400Aの実施形態/ブロック図の特定実装例であるQKD送信器400Bを図示している。この特定実装例で、QKD送信器400Bは、DV‐QKD BB84タイムビンプロトコルとCV‐QKD GG02プロトコルとにそれぞれ従ってDV‐QKDとCV‐QKDとを行い得る。変調器ユニット403は、この特定実装例では連続波レーザである光源401により発出される光信号の振幅を変調する為の二つの電子光学振幅変調器AM1,AM2と、発出された光信号の位相を変調する為の電子光学位相変調器PM1とを具備し得る。続いて、この特定実装例では電気制御による可変光学減衰器である減衰器405が、変調後の光信号を所定レベルまで減衰させる、及び/又は、CV‐QKDモード又はDV‐QKDモードに必要される平均光子数を設定し得る。
【0075】
特定実装例は更に、ビームスプリッタ407を含み得る。分割された変調後の光信号の一部が平均光子数その他の測定など更なる処理の為に送られて、残り部分が(後に記載される)受信器へ送られ得るように、ビームスプリッタ407は変調後の光信号を分割するように構成し得る。
【0076】
電子回路402は、レーザ光源401と一以上の変調器AM1,AM2,PM1と減衰器405との少なくとも一つを駆動するように構成されている。特に、QKD送信器400BがCV‐QKDモードとDV‐QKDモードのいずれかで動作し得るような手法で、これらのコンポーネントの一以上が第1の所定の電気信号に従って駆動され得る。
【0077】
図4Cは、DV‐QKDモードとCV‐QKDモードにそれぞれ従ってDV‐QKD BB84タイムビンプロトコルとCV‐QKD GG02プロトコルとを実装するように、図4Bに示されているQKD送信器400Bの一以上の電気光学変調器を駆動する為の所定の電気信号の一例を図示している。言い換えると、所定の電気信号は、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードのいずれかでQKD送信器400Bが動作するように一以上の電気光学変調器を駆動する一以上の電気信号を包含し得る。この例で、電気信号は、タイムビンBB74 DV‐QKDプロトコル(図4C左)と真のローカル振動子を伴うGG02 CV‐QKDプロトコル(図4C右)とに対応する。図4Cについて記載する際に、発明の背景の箇所の関連部分は繰り返されず、参照によりここに組み込まれる。
【0078】
図4C(左)に示されているタイムビンBB84プロトコルについて、第1の振幅変調器403であるAM1は、四つの量子状態、つまりZ基底からの早期及び後期状態と、等しい強度を持つ二つのパルスに対応するX基底からの二つの重複状態である+及び-とに従った強度を持つパルスを発生させる。続いて、第2の振幅変調器403であるAM2はデコイ状態法を行なう。例として、図4C(左)に描かれている状態の強度レベルを調節することにより二つのデコイが実行される。信号の平均光子数とデコイ状態とは、第2の振幅変調器403であるAM2と減衰器405とをそれぞれ使用することにより調節される。例えば、平均光子数1(つまり平均して1パルス当たり1光子)を持つ信号パルスと、0.1及び0.01の平均光子数を持つデコイ状態とが使用され得る。最後に、位相変調器403であるPM1は、X基底の状態について+π及び-πの位相差を設定するのに使用され、また、プロトコルのセキュリティプルーフにより必要とされるように均一分布のランダム位相をシンボルの間に追加するのに使用され得る。
【0079】
GG02 CV‐QKDプロトコルについてQKD送信器400Bを動作するのに使用される電気信号が、図4C(右)に示されている。この例で、第1の振幅変調器403であるAM1は、二つの異なる位相を持つパルスR,Sを、それぞれ参照及び信号パルスとして発生させる。参照パルスは、ガウス変調直角位相X,Pを持つ光学パルスで構成される量子信号の間にインタリーブされ得る。レイリーランダム分布に従って信号の振幅を変調するのに第2の振幅変調器403であるAM2を、そして均一ランダム分布に従って位相を変調するのに位相変調器403であるPM1を使用することにより、ガウス変調による直角位相が得られる。秘密鍵レートを最大化できる値(例えば平均光子数の2倍に等しい)に信号の変調分散を設定するのに、減衰器405が使用され得る。一実施形態では、正確な位相復元が得られるように参照パルスの振幅は信号パルスの振幅より通常は高くなり得る。
【0080】
図4Dは、本発明の別の実施形態によるQKD送信器400Dのブロック図を示す。QKD送信器400Dは、図4Aに示されているQKD送信器400Aのコンポーネント、詳細、及び機能性の全てを含む。QKD送信器400Dは更に偏光スイッチ409を含む。偏光スイッチ409は、例えば、時間、周波数、空間、偏光の多重化、及びこれらの組み合わせのうちいずれか一つを使用することにより、QKD送信器400DがCV‐QKDモードとDV‐QKDモードで同時に動作することを容易にする。多重化されたCV‐QKD及びDV‐QKD信号を受信器(後で記載)へ送ることにより、QKD送信器400Dは動作し得る。図4Eに示されているQKD送信器400Eは、QKD送信器400Dの特定実装例である。この実装例では、QKD送信器400EがCV‐QKD及びDV‐QKD信号の時間多重化パケットを受信器へ送ることができるように、偏光スイッチ409は、CV‐QKD及びDV‐QKD信号を直交偏光で時間多重化するように構成し得る。
【0081】
図4Fは、本発明の別の実施形態によるQKD送信器400Fのブロック図を示している。QKD送信器400Fは、図4Aに示されているQKD送信器400Aのコンポーネント、詳細、及び機能性の全てを含む。QKD送信器400Fにおいて、光源401Aは、一方はDV‐QKDモードの為に、他方はCV‐QKDモードの為に二つの異なる波長/周波数で動作するように構成され、それにより、波長又は周波数の多重化を達成する。光源401Aは、二つの異なる波長/周波数を使用して動作するように構成された調整可能なレーザ源などの単一光源、あるいは互いに同じか異なる所与の波長/周波数で各々が動作する二つの個別光源であり得る。光源401Aは、例えば、波長又は周波数の多重化とこれらの組み合わせとを使用することにより、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードで同時にQKD送信器400Fが動作するのを容易にし得る。図4Gに示されているQKD送信器400Gは、QKD送信器400Fの特定の実装例である。この実装例で、QKD送信器400GはCV‐QKD及びDV‐QKD信号を波長又は周波数多重化して、CV‐QKD及びDV‐QKD信号の波長又は周波数多重化パケットを受信器へ送ることができる。
【0082】
上述したタイムビンBB84プロトコルとGG02 CV‐QKDプロトコルとは、それぞれ、図4A‐4Gで提案されているQKD送信器400A‐400Gで行い得るDV‐QKD及びCV‐QKDプロトコルの一例に過ぎない。しかしながら、本発明はこれに限定されない。電気回路402により送られる所定の電気信号は、離散変調CV‐QKDプロトコル、コヒーレント一方向DV‐QKDプロトコル、差動移相DV‐QKDプロトコル、三状態DV‐QKDプロトコル、六状態DV‐QKDプロトコル、デコイ状態DV‐QKDプロトコルなどのいずれかのプロトコルを実行するように修正され得る。
【0083】
QKD受信器
QKD受信器は、QKD送信器からQKD信号を受信するように構成されている。従来のQKD受信器は、CV‐QKD信号とDV‐QKD信号のいずれかをそれぞれの送信器から受信するように構成されている。
【0084】
図5Aに示されている従来のQKD受信器500Aは、一般的に、それぞれのCV又はDV‐QKD送信器からCV又はDV‐QKD信号を受信する為、及び/又は、受信したQKD信号を処理する為の処理ユニット501と、受信したQKD信号を検出する為の検出ユニット502とを含む。処理ユニット501は、一以上の光電子コンポーネントを含み得る。処理ユニット501の一以上の光電子コンポーネントは、バランス/アンバランス型マイケルソン干渉計又はバランス/アンバランス型マッハ・ツェンダー干渉計などの干渉計、一以上のビームスプリッタ、偏光保持光ファイバ(PMF)などの偏光部材、偏光制御器、一以上の変調器/復調器、ローカル振動子、その他の組み合わせを含み得るがこれらに限定されない。検出ユニット503は、一以上の単一光子検出器、ヘテロダイン検出器、ホモダイン検出器、その他など一以上の光電子コンポーネントを含み得るがこれらに限定されない。
【0085】
図5B‐5Cは、DV‐QKDモードとCV‐QKDモードのそれぞれの為に使用されるこのような従来のDV‐QKD及びCV‐QKD受信器の一例を図示している。
【0086】
図5Bの上図は、タイムビンBB84 DV‐QKDプロトコルを行う為に一般的に使用される従来の受信器500B1を図示している。受信器500B1は、2本のアームを持つアンバランス型干渉計と、ビームスプリッタBSと、ファラデーミラーFMが干渉計を偏光無依存型にできるように各干渉計アームの端部に配設される二つのファラデーミラーFMとを含む。図4Cの「早期」及び「後期」時間モードの間の時間分離に等しいファイバ遅延が、干渉計の1本のアームに追加され得る。受信器500B1は更に、少なくとも二つの検出器D1,D2と、干渉計が入力及び出力に同じポートを使用できるようにそれぞれの検出器D1,D2による検出の為に信号を分割するサーキュレータCとを含む。
【0087】
代替的に、図5Bの下図は、タイムビンBB84 DV‐QKDプロトコルを行うのに一般的に使用される受信器500B2を図示している。受信器500B2は、2本のアームを備えるアンバランス型干渉計と、ビームスプリッタBSと、干渉計の両方のアームに追加される偏光保持部材PMFと、受信したQKD信号の偏光を偏光保持部材PFMの軸と整合させるように受信器の入力側に設けられる偏光制御器PCとを含む。図4Cの「早期」及び「後期」時間モードの間の時間分離に等しいファイバ遅延が、干渉計の1本のアームに追加され得る。受信器500B1は更に、少なくとも二つの検出器D1,D2と、それぞれの検出器D1,D2による検出の為に信号を分割する更なるビームスプリッタBSとを含む。
【0088】
図5Cは、GG02 CV‐QKDプロトコルを行うのに一般的に使用される従来の受信器500Cを図示している。受信器500Cは、信号直角位相値の取得を可能にするように送信器からの入力信号をローカル振動子で干渉するように構成されている。干渉を最大化し得るように、受信器500Cは、信号とローカル振動子LOとの偏光を整合させる為の偏光制御器PCを含む。図5Cの上図に示されている受信器500Cは、90°光ハイブリッドOHと二つの検出器D1,D2とを使用することにより直角位相X及びPを同時に検出し得るヘテロダイン検出器を含む。代替的に、図5Cの下図に示されている受信器500Cは、位相変調器PMを使用して0とπとの間でローカル振動子の位相をランダムに変化させることにより、単一の検出器Dにより直角位相X及びPを一度に一つずつ検出し得るホモダイン検出器を含み得る。
【0089】
本発明の実施形態において、図5A‐5Cに示されているような従来周知のDV‐QKD及び/又はCV‐QKD受信器は、図4A‐4Gにおいて光ファイバネットワークでのDV‐QKD及び/又はCV‐QKD通信で図示されている発明のQKD送信器との組み合わせで使用し得る。
【0090】
発明の実施形態によるQKD受信器が図6を参照して記載される。QKD受信器600は、例えば、従来のCV及び/又はDV‐QKD送信器あるいは本発明によるQKD送信器からCV及び/又はDV‐QKD信号を受信するように構成された、及び/又は、受信したQKD信号を処理するように構成された処理ユニット601と、受信したQKD信号を検出するように構成された検出ユニット603とを含む。処理ユニット601と検出ユニット603とは、受信器500Aと同じコンポーネントを含み得る。
【0091】
QKD受信器600は更に、処理ユニット601及び/又は検出ユニット603を制御するように構成された電子回路605を含む。特に、電子回路605は、QKD受信器600がCV‐QKDモードとDV‐QKDモードのいずれかで動作するように、例えば第2の所定の電気信号に従って処理ユニット601及び/又は検出ユニット603を駆動するように構成されている。電子ユニット605は、処理ユニット601及び/又は検出ユニット603を駆動する第2の所定の電気信号を設定することによりCV‐QKDモード又はDV‐QKDモードの選択を可能にする。電子回路605はハードウェア及び/又はソフトウェア要素であり得る。電子回路605の例は、電子スイッチ、偏光ビームスプリッタ(PBS)、波長分割多重化装置(WDM)、偏光制御器、その他を含むが、これらに限定されない。実施形態において、電子回路605はソフトウェアにより制御され得る。
【0092】
電子回路605の第2の所定の電気信号は、CV‐QKDモードとDV‐QKDモードの一方をQKD受信器600の動作モードとして選択するように、処理ユニット601及び/又は検出ユニット603のコンポーネント、特に、処理ユニット601及び/又は検出ユニット603の一以上の光電子コンポーネントを駆動するように構成し得る。第2の所定の電気信号は何らかの形態の信号であり得るが、CV‐QKDからDV‐QKDへ、あるいはその逆に動作を切り替える処理ユニット及び/又は検出ユニットへの信号である。
【0093】
こうしてQKD受信器600がCV‐QKDモードとDV‐QKDモードの少なくとも一方で動作するように構成されたことで、汎用的な相互運用性と再構成可能性と切り替え性とが達成され、QKD性能が最適化され得る。
【0094】
実施形態において、QKD受信器の一以上の光電子コンポーネントは、従来のCV‐QKD受信器とDV‐QKD受信器とにより共有される一以上の光電子コンポーネントであり得る。発明のQKD送信器と同様に、QKD受信器の電子回路605は、DV‐QKDモードとCV‐QKDモードとの間でDV及び/又はCV信号の検出を適切に行うように構成されている。
【0095】
図7Aは、本発明の実施形態の特定実装例によるQKD受信器700Aを図示している。QKD受信器700Aは、図5BのタイムビンBB84 DV‐QKD受信器500B2のコンポーネントと図5C(上図)のGG02 CV‐QKD受信器500Cのコンポーネントとを組み合わせたものであり、これらはこの実施形態では図6の電子回路605により制御されるように構成されている。DV‐QKDモードとCV‐QKDモードの少なくとも一方でQKD受信器700Aが動作し得るように、偏光制御器PCは電子回路605により制御される。この実施形態において、QKD受信器700Aは、偏光制御器PCにより制御されるように構成された偏光ビームスプリッタPBSを備える。電子回路605は偏光制御器PCを制御するように構成され、それにより、偏光制御器PCは偏光ビームスプリッタPBSへ信号を送るように構成され、それで、DV‐QKD受信器又はCV‐QKD受信器のコンポーネントを、例えば、本発明のQKD送信器からそれぞれのQKD信号を受信する為に動作する。
【0096】
図7Bは、本発明の実施形態の別の特定実装例による代替的なQKD受信器700Bを図示している。偏光ビームスプリッタPBSが波長分割多重化装置WDMに置き換えられているという点で、QKD受信器700BはQKD受信器700Aと異なっている。QKD受信器700Bは、例えば図4Eの実施形態のように一方はDV‐QKDモードの為の、他方はCV‐QKDモードの為の二つの異なる波長/周波数でQKD送信器400F又は400Gの光源401Aが動作する例で使用され得る。動作時に、QKD送信器400CはCV‐QKD及びDV‐QKD信号を波長又は周波数多重化して、CV‐QKD及びDV‐QKD信号の波長又は周波数多重化パケットをQKD受信器700Bへ送ることができる。電子回路605に応じて、波長分割多重化装置WDMは、DV及びCV信号を分離させて対応する検出器へこれらを送るように構成されている。この多重構成では、QKD受信器700BによりDV‐QKDモードとCV‐QKDモードとを同時に行い得る。
【0097】
上述したタイムビンBB84プロトコルとGG02 CV‐QKDプロトコルとは、図6‐7Bに提案されているQKD受信器600‐700Bで行い得るDV‐QKD及びCV‐QKDプロトコルのそれぞれの一例に過ぎない。しかしながら、本発明はこれらに限定されない。電子回路605により送られる所定の電気信号は、離散変調CV‐QKDプロトコル、コヒーレント一方向DV‐QKDプロトコル、差動移相DV‐QKDプロトコル、三状態DV‐QKDプロトコル、六状態DV‐QKDプロトコル、デコイ状態DV‐QKDプロトコル、その他など何らかのプロトコルを実行するように修正し得る。
【0098】
本発明の実施形態は、DV‐QKDモード及びCV‐QKDモードの間の動作を動的に切り替え得ることで、光ファイバネットワークの汎用的で頑強な構成と相互運用性との実現を可能にするようなネットワークノード、光学ネットワーク、QKD送信器、QKD受信器、ネットワークノードの動作方法を提供する。
【符号の説明】
【0099】
100 光ファイバネットワーク
400A,400B,400C,400D,400E,400F,400G QKD(量子鍵配送)送信器
401,401A 光源
402 電子回路
403 変調器ユニット
405 減衰器
407 ビームスプリッタ
409 偏光スイッチ
500A,500B1,500B2,500C 従来のQKD(量子鍵配送)受信器
501 処理ユニット
503 検出ユニット
600 QKD(量子鍵配送)受信器
601 処理ユニット
603 検出ユニット
605 電子回路
700A,700B QKD(量子鍵配送)受信器
N101,N102,N103,N104,N105,N106,N107,N108 ネットワークノード
QCD1,QCD2,QCD3,QCD4,QCD5 QKD(量子鍵配送)通信ユニット
QDV2,QDV3,QDV6 離散量子鍵システム
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
【国際調査報告】