(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】非接触センサーシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 7/04 20060101AFI20231227BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20231227BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
A61B7/04 A
A61B5/02 350
A61B5/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515197
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(85)【翻訳文提出日】2023-04-25
(86)【国際出願番号】 US2021049162
(87)【国際公開番号】W WO2022051680
(87)【国際公開日】2022-03-10
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2021/053919
(32)【優先日】2021-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(31)【優先権主張番号】PCT/US2021/046566
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522437544
【氏名又は名称】レベル・フォーティツー・エーアイ・インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】523058102
【氏名又は名称】アンドレアス・シュー
(71)【出願人】
【識別番号】523058124
【氏名又は名称】マイケル・モリモト
(71)【出願人】
【識別番号】523058113
【氏名又は名称】ネルソン・エル・ジャンベ
(71)【出願人】
【識別番号】523079266
【氏名又は名称】マーク・フリーマン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・シュー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・モリモト
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン・エル・ジャンベ
(72)【発明者】
【氏名】マーク・フリーマン
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA04
4C017AC30
4C017AC35
4C017BC11
4C038SS08
4C038SV03
(57)【要約】
身体に関連する音響信号の非接触監視のためのシステムが提供され、システムはセンシングデバイスを備え、センシングデバイスは開口を画定する支持部材と、ダイアフラムであって、ダイアフラムの少なくとも一部が開口を覆うように開口上に広がるダイアフラムと、支持部材または膜に接続され、ダイアフラムの移動を電気信号に変換するように構成されているセンサーとを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体に関連する音響信号の非接触監視のためのシステムであって、
前記システムはセンシングデバイスを備え、
前記センシングデバイスは、
開口を画定する支持部材と、
ダイアフラムであって、前記ダイアフラムの少なくとも一部が前記開口を覆うように前記開口上に広がる、ダイアフラムと、
前記支持部材または膜に接続され、前記ダイアフラムの移動を電気信号データに変換するように構成されているセンサーと、を備える、システム。
【請求項2】
前記センサーは、約0.01Hzから少なくとも約160kHzまでの範囲の周波数を有する音響信号を検出するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記センシングデバイスと通信するように結合され、前記電気信号データに基づき前記身体の身体状態を決定するための方法を実行するように構成されている、プロセッサを備えるコンピューティングシステムをさらに含む請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記電気信号データをフィルタリングして、前記身体に関連しない電気的データを取り除くように構成され、前記身体状態の決定は、フィルタリングされた電気信号データに基づく、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記身体は、人間または動物の被験体であり、前記電気信号データをフィルタリングすることは、前記プロセッサが前記人間または動物の被験体の生理学的パラメータに関連しない電気信号データを取り除くことを含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記電気信号データに基づき身体状態を決定するための方法は、訓練済み機械学習アルゴリズムを実行することを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
前記支持部材は、第1の側および第2の側を有するフレームであり、前記開口は、前記第1の側と前記第2の側との間で前記フレームを貫通し、前記ダイアフラムは、前記第1の側および前記第2の側のうちの一方において前記開口を覆う、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1の側および前記第2の側の他方において前記開口を覆うためのバックカバーをさらに備える請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記ダイアフラムは、前記開口を封止するように構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記支持部材は、第1の側および第2の側を有するフレームを備え、前記開口は、前記第1の側および前記第2の側のうちの一方に形成され、貫通していない、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記センサーは、
ワイヤ巻線を支持するコイルホルダーを含むボイスコイルコンポーネントと、
磁石ハウジングによって支持される磁石を備える磁石コンポーネントであって、前記磁石は前記ボイスコイルコンポーネントの少なくとも一部を離間した移動可能な方式で受け入れるように構成されている磁石隙間を有する、磁石コンポーネントと、
前記ボイスコイルコンポーネントを前記磁石コンポーネントに接続するコネクタと、を備え、
前記コネクタは、コンプライアントであり、前記ボイスコイルコンポーネントの相対的移動を可能にし、前記ボイスコイルコンポーネントおよび前記磁石コンポーネントのうちの一方は、前記ダイアフラムの移動が前記ボイスコイルコンポーネントと前記磁石コンポーネントとの間の相対的移動を誘発するように前記ダイアフラムに接続される、コネクタと、を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記ダイアフラムは前記ボイスコイルコンポーネントに取り付けられ、前記ワイヤ巻線は前記ダイアフラムから離間される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記センサーは、前記支持部材に取り付けられ前記ダイアフラムから離間される電位センサーを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記電位センサーは、前記開口の空洞内に位置し、または前記空洞の外側に位置する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記ダイアフラム上に導電層をさらに備える請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記センサーは、ボイスコイル型センサー、電位センサー、静電容量センサー、磁界外乱センサー、光検出器および光源、歪みセンサー、慣性測定ユニット(IMU)、および音響エコードップラーのうちから選択された1つまたは複数のセンサーである、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記支持部材に関してアレイとして配置されている複数のセンサーをさらに備える請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記複数のセンサーの各センサーは、各支持部材によって支持されている、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記複数のセンサーの各センサーは、異なる周波数範囲の音響信号を検出するように構成されている、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記ダイアフラムは、各開口を閉じるかまたは流体的に封止するように各支持部材に接続されている、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記ダイアフラムは、前記複数のセンサーの支持部材を収容する外側マントに接続される、請求項17に記載のシステム。
【請求項22】
前記センシングデバイスは、前記支持部材に接続され前記ダイアフラムを覆うフロントカバーをさらに備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記センサーは、フレームから延在する1つまたは複数の支持体によって前記ダイアフラムに関して位置決めされている、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記プロセッサに通信可能に結合されている少なくとも1つの追加のセンサーをさらに備える請求項3に記載のシステム。
【請求項25】
前記少なくとも1つの追加のセンサーは、熱センサー、湿度センサー、気圧センサー、周囲騒音センサー、周囲光センサー、超音波センサー、高度センサー、カメラ、揮発性有機化合物センサー、音響心拍記録(ACG)センサー、心弾動図記録(BCG)センサー、心電図(ECG)センサー、筋電図(EMG)センサー、電気眼球図記録(EOG)センサー、心理心電図記録(SCG)センサー、および音声抑揚(VTI)センサーから選択されている、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
身体に関連する音響信号の非接触監視のための方法であって、前記方法は請求項1に記載のシステムのプロセッサによって実行され、
前記プロセッサと通信する請求項1に記載のシステムのセンシングデバイスによって検出された振動音響データを取得するステップと、
検出された前記振動音響データから、被験体に由来する振動音響信号成分を抽出するステップと、
抽出された前記振動音響信号成分に少なくとも一部は基づき前記身体の身体状態の有無を特性評価するステップと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2020年9月4日に出願した米国仮特許出願第63/075056号、2020年11月12日に出願した米国特許出願第17/096806号、2021年5月8日に出願した国際出願第PCT/IB2021/053919号、および2021年8月18日に出願した国際出願第PCT/US2021/046566号の優先権を主張するものである。前述の出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2021年9月3日に出願した同時係属国際出願、名称「SECURE IDENTIFICATION METHODS AND SYSTEMS」の内容も、その全体が参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般的に、排他的ではないが人間被験体に関連して、被験体の状態を監視するための振動音響信号などの、身体に関連する信号の監視のための非接触センサーシステムの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
人間または動物の被験体などの身体の状態を監視するために、伝統的に、医療従事者は、被験体の特定の生体測定情報を検出するように各々特化している一組の器具を利用している。しかしながら、被験体の包括的な評価は、典型的には、一連の異なる器具を必要とする。これは、複雑である、適切に使用するための学習が難しい、費用がかかる、可搬性およびデータ相互運用性が相対的に欠如している、といったいくつかの問題を提示する。
【0004】
さらに、多くの従来の器具は、被験体の皮膚または衣服との接触を必要とする。そのような器具の1つは、被験体の心臓、肺、および胃腸系が発生する音などの、可聴な患者体音を検出するために使用される聴診器である。しかしながら、そのような接触型の器具およびそれに関連する使用方法は、多くの身体のマススクリーニングにも、ウイルス感染などの所与の状態の迅速な監視もしくは検査にも実行不可能である。さらに、可聴範囲内の音の使用は、限定的なものとなり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第8923956号明細書
【特許文献2】米国特許第8860401号明細書
【特許文献3】米国特許第8264246号明細書
【特許文献4】米国特許第8264247号明細書
【特許文献5】米国特許第8054061号明細書
【特許文献6】米国特許第7885700号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、上述の問題を克服するか、または最小限度に抑えるセンサーシステムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施形態は、前述の従来のセンサーシステムの欠点を低減するか、または克服するものである。
【0008】
大まかに言えば、開発者は、身体に関連し可聴範囲を超えて広がる周波数を有する振動音響信号が、身体に関連する特定の状態を検出し、および/または監視するために使用できることを発見した。より具体的には、音響信号は約0.01Hzから少なくとも約50kHz、約0.01Hzから少なくとも約60kHz、約0.01Hzから少なくとも約70kHz、約0.01Hzから少なくとも約80kHz、約0.01Hzから少なくとも約90kHz、約0.01Hzから少なくとも100kHz、約0.01Hzから少なくとも約110kHz、約0.01Hzから少なくとも約120kHz、約0.01Hzから少なくとも約130kHz、約0.01Hzから約140kHz、約0.01Hzから少なくとも約150kHz、約0.01Hzから約160kHz、約0.01Hzから約150kHz超までの範囲内の帯域幅全体を有する。
【0009】
開発者らは、可聴範囲を含み可聴域を超えて広がる周波数範囲を有するそのような振動音響信号を非接触方式で検出することができるセンサーシステムおよび方法を開発してきた。監視されている身体に対して直接的接触(たとえば、皮膚接触)も間接的接触(たとえば、衣服または毛皮を通しての)も必要ない。有利には、本開示のセンサーシステムおよび方法は、非侵襲的である。
【0010】
いくつかの実施形態において、本開示のセンサーシステムおよび方法は、身体から約1mm、2mm、5mm、1cm、5cm、10cm、1m、2m、3m、4m、5m、6m、7m、8m、9m、または10~50mの距離のところに、空気などにより隔てられたセンサーコンポーネントを用いて動作することができる。
【0011】
いくつかの実施形態において、本開示のセンサーシステムおよび方法は、ウイルス感染、たとえばCovid‐19などの感染した身体状態を検出するのに適しているものとしてよい。現在のCovid‐19スクリーニングアプローチは、単純で迅速であるが正確さに欠ける(たとえば、温度チェック)か、または正確であるが単純でも迅速でもない(たとえば、抗体スクリーニング)かのいずれかである。したがって、現在のスクリーニングアプローチは、非実用的であり、不便であり、マススクリーニングができず、検査と結果との間に遅延を呈し、初期感染段階で個体を識別しない。現在のスクリーニングアプローチとは異なり、本発明の技術の実施形態は、多数の身体を同時に監視し、各身体についてCovid-19感染があるかどうかをリアルタイムで決定することができる。
【0012】
一般的に、いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、センサープラットフォームを含む。センサープラットフォームは、振動音響信号を検出するように構成された1つまたは複数のセンサーを備える振動音響センサーなどのセンシングデバイスと、検出された振動音響信号から、被験体に由来する振動音響信号成分を抽出するように構成された信号処理システムと、たとえば機械学習モデルを使用して抽出された振動音響信号成分に少なくとも一部は基づき被験体の身体状態を特性評価するように構成された少なくとも1つのプロセッサとを備え得る。いくつかの変更形態において、被験体の身体状態は、生きている被験体の健康状態または生きていない被験体の物理的特性を含み得る。
【0013】
別の態様から、身体の非接触監視のためのシステムが提供され、このセンシングシステムは、フレームを有するセンシングデバイスと、フレームに接続されている振動音響信号を検出するためのセンサーと、フレームの少なくとも一部の上に広がり、それに接続されているダイアフラムであって、センサーの少なくとも一部にも接続されている、ダイアフラムとを備える。
【0014】
別の態様から、身体に関連している音響信号の非接触監視のためのシステムが提供され、このシステムは、センシングデバイスであって、開口を画定する支持部材と、ダイアフラムであって、ダイアフラムの少なくとも一部が開口を覆うように開口上に広がるダイアフラムと、支持部材または膜に接続され、ダイアフラムの移動を電気信号データに変換するように構成されているセンサーとを備えるセンシングデバイスを具備する。
【0015】
いくつかの実施形態において、センサーは、約0.01Hzから少なくとも約160kHzまでの範囲の周波数を有する音響信号を検出するように構成される。
【0016】
いくつかの実施形態において、システムは、センシングデバイスに通信可能に結合され、電気信号データに基づき身体の身体状態を決定するための方法を実行するように構成されている、プロセッサを含む、コンピューティングシステムをさらに含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、プロセッサは、電気信号データをフィルタリングして、身体に関連していない電気的データを取り除くように構成され、身体状態を決定することはフィルタリングされた電気信号データに基づく。
【0018】
いくつかの実施形態において、身体は、人間または動物の被験体であり、電気信号データをフィルタリングすることは、プロセッサが人間または動物の被験体の生理学的パラメータに関連していない電気信号データを取り除くことを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、電気信号に基づき身体状態を決定するための方法は、訓練済み機械学習アルゴリズムを実行することを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、支持部材は、第1の側および第2の側を有するフレームであり、開口は、第1の側と第2の側との間でフレームを貫通し、ダイアフラムは、第1の側および第2の側のうちの一方において開口を覆う。
【0021】
いくつかの実施形態において、センシングデバイスは、第1の側および第2の側の他方において開口を覆うためのバックカバーをさらに備える。
【0022】
いくつかの実施形態において、ダイアフラムは、開口を封止するように構成される。シールは、流体シールまたは音響シールであってよい。
【0023】
いくつかの実施形態において、支持部材は、第1の側および第2の側を有するフレームを備え、開口は、第1の側および第2の側のうちの一方に形成され、貫通しない。
【0024】
いくつかの実施形態において、センサーは、ワイヤ巻線を支持するコイルホルダーを含むボイスコイルコンポーネントと、磁石ハウジングによって支持される磁石を備える磁石コンポーネントであって、磁石はボイスコイルコンポーネントの少なくとも一部を離間した移動可能な方式で受け入れるように構成されている磁石隙間を有する、磁石コンポーネントと、ボイスコイルコンポーネントを磁石コンポーネントに接続するコネクタであって、コネクタはコンプライアントであり、ボイスコイルコンポーネントの相対的移動を許す、コネクタとを備え、ボイスコイルコンポーネントおよび磁石コンポーネントのうちの一方は、ダイアフラムの移動がボイスコイルコンポーネントと磁石コンポーネントとの間の相対的移動を誘発するようにダイアフラムに接続される。
【0025】
いくつかの実施形態において、ダイアフラムは、ボイスコイルコンポーネントに取り付けられ、ワイヤ巻線はダイアフラムから離間される。
【0026】
いくつかの実施形態において、センサーは、支持部材に取り付けられ、ダイアフラムから離間される電位センサーを含む。電位センサーは、電極層、ガード層、GND(接地)層、および回路層を備え得る。ダイアフラムは、導電性材料の層を含み得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、電位センサーは、開口の空洞内に、または空洞の外側に位置決めされる。
【0028】
いくつかの実施形態において、センサーは、ボイスコイル型センサー、電位センサー、静電容量センサー、磁界外乱センサー、光検出器および光源、歪みセンサー、慣性測定ユニット(IMU)、および音響エコードップラーのうちから選択された1つまたは複数のセンサーである。
【0029】
いくつかの実施形態において、システムは、支持部材に関してアレイとして配置構成されている複数のセンサーをさらに備える。各センサーは、それぞれの支持部材によって支持され得る。支持部材が取り付けられる外側マウントが提供されてもよい。複数の支持部材は、平面的であってもよい。ダイアフラムは、複数のセンサーおよび支持部材に共通であってよい。言い換えると、ダイアフラムは、支持部材のすべてのそれぞれの開口を覆うものとしてよい。ダイアフラムは、それぞれの開口を閉じるか、または流体的に封止するために、各支持部材にその外周上で取り付けられ得る。代替的に、ダイアフラムは、外側マウントに取り付けられてもよく、それにより中の支持部材の各々の開口を閉じるか、または流体的に封止し得る。
【0030】
複数のセンサーの各センサーは、支持部材のサブフレームによって支持され得る。ダイアフラムは、各サブフレームに接続され得る。ダイアフラムは、各サブフレームの周りを流体的に封止してもよい。サブフレームの少なくとも2つは、互いに相隔てて並べられ得る。
【0031】
いくつかの実施形態において、複数のセンサーの各センサーは、異なる周波数範囲の音響信号を検出するように構成される。
【0032】
いくつかの実施形態において、センシングデバイスは、支持部材に接続され、ダイアフラムを覆うフロントカバーをさらに備える。
【0033】
いくつかの実施形態において、センサーは、フレームから延在する1つまたは複数の支持体によってダイアフラムに関して位置決めされる。
【0034】
いくつかの実施形態において、システムは、プロセッサに通信可能に結合された少なくとも1つの追加のセンサーをさらに備える。少なくとも1つの追加のセンサーは、熱センサー、湿度センサー、気圧センサー、周囲騒音センサー、周囲光センサー、超音波センサー、高度センサー、カメラ、揮発性有機化合物センサー、ACG、BCG、ECG、EMG、EOG、SCG、およびVTIから選択され得る。
【0035】
別の態様から、身体に関連している音響信号の非接触監視のための方法が提供され、この方法は請求項1に記載のシステムのプロセッサによって実行され、この方法はプロセッサと動作可能に通信可能である請求項1に記載のセンシングデバイスによって検出された振動音響データを取得することと、検出された振動音響信号から、被験体に由来する振動音響信号成分を抽出することと、抽出済み振動音響信号成分に少なくとも一部は基づき身体の身体状態の有無を特性評価することとを含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、ダイアフラムは、コンプライアント材料を含む。いくつかの実施形態において、センサーは、フレームによって画定された開口に関して位置決めされ、フレームに接続される。いくつかの実施形態において、センサーは、ダイアフラムの少なくとも1つのエッジによって、また磁石ハウジングによってフレームに接続される。ダイアフラムは、フレームの開口を覆うように構成され得る。いくつかの実施形態において、センシングデバイスは、フレームの開口を覆い、ダイアフラムから離間されたバックカバーをさらに備える。
【0037】
いくつかの実施形態において、センサーは第1のセンサーであり、このセンシングデバイスは、振動音響信号を感知するための第2のセンサーをさらに備え、第1および第2のセンサーは、0.01Hzから160kHzの範囲の帯域幅を有する音響信号を検出するように構成されており、各々、ワイヤ巻線を支持するコイルホルダーを含むボイスコイルコンポーネントと、磁石ハウジングによって支持される磁石を備える磁石コンポーネントであって、磁石はボイスコイルコンポーネントの少なくとも一部を離間した移動可能な方式で受け入れるように構成されている磁石隙間を有する、磁石コンポーネントと、ボイスコイルコンポーネントを磁石コンポーネントに接続するコネクタであって、コネクタはコンプライアントであり、ボイスコイルコンポーネントの相対的移動を許す、コネクタと、入射音響信号に応答して磁石隙間内でボイスコイルコンポーネントの移動を誘発するように構成されているダイアフラムであって、ダイアフラムはボイスコイルコンポーネントに取り付けられ、ワイヤ巻線はダイアフラムから離間される、ダイアフラムと、第1および第2のセンサーを保持するための開口を画定するフレームであって、開口は第1および第2のセンサーのダイアフラムによって少なくとも部分的に覆われており、第1および第2のセンサーはダイアフラムが使用中に被験体の身体の少なくとも一部分に面するようにフレームに接続される、フレームとを備える。
【0038】
いくつかの実施形態において、センサーは第1のセンサーであり、このセンシングデバイスは、振動音響信号を感知するための第2のセンサーをさらに備え、第1および第2のセンサーは、0.01Hzから160kHzの範囲の帯域幅を有する音響信号を検出するためのものであり、これはワイヤ巻線を支持するコイルホルダーを含むボイスコイルコンポーネントと、磁石ハウジングによって支持される磁石を備える磁石コンポーネントであって、磁石はボイスコイルコンポーネントの少なくとも一部を離間した移動可能な方式で受け入れるように構成されている磁石隙間を有する、磁石コンポーネントと、ボイスコイルコンポーネントを磁石コンポーネントに接続するコネクタであって、コネクタはコンプライアントであり、ボイスコイルコンポーネントの相対的移動を許す、コネクタと、入射音響信号に応答して磁石隙間内でボイスコイルコンポーネントの移動を誘発するように構成されているダイアフラムであって、ダイアフラムはボイスコイルコンポーネントに取り付けられ、ワイヤ巻線はダイアフラムから離間される、ダイアフラムと、第1のセンサーを収納するための第1の開口と第2のセンサーを収納するための第2の開口とを画定するフレームであって、第1および第2の開口は第1および第2のセンサーのダイアフラムによって少なくとも部分的に覆われており、第1および第2のセンサーはダイアフラムが使用中に被験体の身体の少なくとも一部分に面するようにフレーム内に位置決めされている、フレームとを備える。第1および第2のセンサーのダイアフラムはフレームに接続される。第1の開口および第2の開口は異なるサイズを有していてもよい。
【0039】
いくつかの実施形態において、センシングデバイスのセンサーは、ボイスコイルセンサーである代わりに、またはそれに加えて、ダイアフラムに装着された慣性測定ユニット(IMU)を備える。
【0040】
いくつかの実施形態において、システムは、使用時に被験体の身体の少なくとも一部の温度を感知するための熱センサーをさらに備え、プロセッサは、熱センサーから、被験体に対応し、熱センサーによって収集された温度データを受信し、受信された振動音響信号データ、超音波信号データ、および熱センサーに基づき、訓練済み機械学習モデルを使用して、被験体の状態の有無の指示を出力するように構成される。
【0041】
いくつかの実施形態において、システムは、周囲温度、気圧、高度、周囲騒音、および周囲光のうちの1つまたは複数を検出するように構成されている環境センサーをさらに備え、プロセッサは、環境センサーから、センシングデバイスの周りの環境に対応する周囲温度、気圧、高度、周囲騒音、および周囲光のうちの1つまたは複数を受け取り、受け取った振動音響信号データおよび超音波信号データの一方または両方を、センシングデバイスの周りの環境に対応する周囲温度、気圧、高度、周囲騒音、および周囲光のうちの1つまたは複数に基づきキャリブレートするように構成される。
【0042】
いくつかの実施形態において、振動音響センサーのインダクタンスとムービングマスとの比は、1kHzにおいて1グラム当たり少なくとも6.5mHである。いくつかの実施形態において、振動音響センサーのコネクタの機械的コンプライアンスと振動音響センサーのムービングマスとの比は、1グラム当たり少なくとも0.3mm/Nである。いくつかの実施形態において、BL積と振動音響センサーのムービングマスとの比は、1グラム当たり少なくとも16N/Ampである。いくつかの実施形態において、ハウジングは、実質的に直立しており、壁、床、または天井によって支持されるように構成される。いくつかの実施形態において、ハウジングは、前側を含む少なくとも1つの実質的に直立した部分を含み、被験体がハウジングの下に立つことができるようなサイズであるアーチ状の構成を有する。いくつかの実施形態において、ハウジングの前側は、被験体に情報を表示するためのディスプレイを備える。
【0043】
いくつかの実施形態において、システムは、光学データ、GPS、運動、湿度、圧力、周囲温度、体温、光、音、放射線、脈拍、生体インピーダンス、皮膚コンダクタンス、電気皮膚反応、皮膚電気反応、および皮膚電位のうちの1つまたは複数を測定するように構成されている、コンテキストセンサーなどの、追加のセンサーをさらに備える。健康データの環境的/社会的決定要因であり得る、追加センサーからの追加のセンサーデータが使用され得る。
【0044】
本明細書の文脈では、特に断りのない限り、振動音響は、空気、生体構造、固体、気体、液体、または他の流体中を伝搬する振動および/または音響信号を指す。この用語は、機械音響という用語も包含する。
【0045】
本明細書の文脈では、特に断りのない限り、「身体」は、(i)人間または動物などの生体、または(ii)人工構造物(たとえば、建物、橋、ダム、発電機、タービン、バッテリー、暖房/換気/空調(HVAC)システム、内燃機関、ジェットエンジン、航空機の翼、環境可聴下音、弾道、ドローンおよび/または船舶、原子炉など)などの非生物物体を意味する。
【0046】
本明細書の文脈では、特に断りのない限り、動物は、哺乳類、鳥類、または魚類である個別の動物を意味する。特に、哺乳類は、分類学上哺乳綱に属するヒトおよび非ヒトである脊椎動物を指す。非ヒト哺乳類の非排他的な例は、コンパニオンアニマルおよび家畜を含む。本開示の文脈における動物は、脊椎動物を含むと理解される。この文脈における脊椎動物という用語は、たとえば、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、およびヒトを含む哺乳類を含むと理解される。本明細書において使用されるように、「動物」という用語は、哺乳類および鳥または魚などの非哺乳類を指すものとしてよい。哺乳類の場合、それは、ヒトまたは非ヒト哺乳類であってもよい。非ヒト哺乳類は、限定はしないが、畜産動物およびコンパニオンアニマルを含む。
【0047】
本明細書の文脈では、特に断りのない限り、「遠隔」または「非接触」は、システムのいくつかのコンポーネントが身体との直接的接触を有していないことを意味する。「遠隔」または「非接触」は、システムのいくつかのコンポーネントが空気などによって身体から離間されている状況を含む。離間の距離に制限はない。本発明のシステムの実施形態の文脈における「遠隔」または「非接触」は、「衣服の上からの」および/または「衣服を通しての」信号検出を含む。たとえば、身体が人間または動物の被験体である場合、「遠隔」または「非接触」は、センサーシステムの特定のコンポーネントが、皮膚/髪の毛、皮膚/髪の毛を覆う衣服、または毛皮に直接的に接触することがないことを意味する。
【0048】
本明細書の文脈では、特に断りのない限り、「身体状態」は、身体の健康または物理的状態を意味する。非生体については、身体状態は、身体の物理的状態、たとえば構造的完全性、亀裂発達、電池寿命、環境騒音汚染、回転モーターエンジン性能の最適化、監視などを含み得る。生体については、身体状態は、限定はしないが、人間もしくは動物の同一性、人間もしくは動物のカテゴリ、ウイルス感染、細菌感染、心拍、胸痛およびその根本原因、吸息、吐息、認知状態、報告義務のある疾病、骨折、裂傷、塞栓症、凝血塊、腫れ、閉塞、脱出、ヘルニア、解剖、梗塞、狭窄、血腫、浮腫、打撲傷、骨減少症、ならびに即席爆発装置(IED)、外科的移植即席爆発装置(SIIED)、および/または体腔爆弾(BCB)などの被験体体内の異物の存在のうちの1つまたは複数を指すものとしてよい。ウイルス感染症の例は、限定はしないが、Covid‐19、SARS、インフルエンザの感染症を含む。報告義務のある疾病は、公衆衛生上重要であると考えられる疾病であり、炭疽病、ウェストナイルウイルスなどのアルボウイルス病(蚊、サシチョウバエ、ダニなどによって拡散されるウイルスによって引き起こされる病気)、東西馬脳炎、バベシア症、ボツリヌス中毒症、ブルセラ症、カンピロバクター感染症、下疳、水痘、クラミジア、コレラ、コクシジオイデス症、クリプトスポリジウム症、サイクロスポーラ症、デングウイルス感染症、ジフテリア、エボラ出血熱、エーリキア症、食中毒発生、ランブル鞭毛虫症、淋病、インフルエンザ、浸潤性疾患、ハンタウイルス肺症候群、溶血性尿毒症症候群、下痢後、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、HIV感染、インフルエンザ関連乳児死亡、侵襲性肺炎球菌疾病、血中鉛濃度上昇、在郷軍人病(レジオネラ症)、ハンセン病、レプトスピラ症、リステリア症、ライム病、マラリア、麻疹、髄膜炎(髄膜炎菌性疾患)、おたふくかぜ、新規感染症Aウイルス、百日咳、農薬関連疾病および怪我、ペスト、ポリオ、ポリオウイルス感染症、非麻痺性、オウム病、Q熱、狂犬病(ヒトおよび動物の症例)、風疹(先天性症候群を含む)、パラチフス菌およびチフス菌感染症、サルモネラ症、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス病、志賀毒素産生性大腸菌(STEC)、細菌性赤痢、天然痘、先天性梅毒を含む梅毒、破傷風、毒素性ショック症候群(レンサ球菌以外)、旋毛虫症、結核、野兎病、腸チフス、バンコマイシン中間体黄色ブドウ球菌(VISA)、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)、ビブリオ症、ウイルス性出血熱(とりわけ、エボラウイルス、ラッサウイルスを含む)、水系感染症発生、黄熱病、ジカウイルス病および感染症(先天性を含む)を含む。身体状態として考えられ得る胸痛の背後にある根本原因の例は、筋挫傷、肋骨損傷、消化性潰瘍、逆流性食道炎(GERD)、喘息、肺虚脱、肋軟骨炎、食道収縮障害、食道過敏症、食道破裂、裂孔ヘルニア、肥大型心筋症、結核、僧帽弁逸脱、パニック発作、心膜炎、胸膜炎、肺炎、肺塞栓症、心臓発作、心筋炎、狭心症、大動脈解離、冠動脈解離、膵臓炎、および肺高血圧症を含む。
【0049】
本明細書の文脈において、特に断りのない限り、コンピュータシステムは、限定はしないが、「電子デバイス」、「オペレーティングシステム」、「通信システム」、「システム」、「コンピュータベースのシステム」、「コントローラユニット」、「制御デバイス」および/または目下の関連タスクに適したそれらの任意の組合せを指すものとしてよい。
【0050】
本明細書の文脈において、特に断りのない限り、「コンピュータ可読媒体」および「メモリ」という表現は、いかなる性質および種類の媒体をも含むことを意図しており、その非限定的な例は、RAM、ROM、ディスク(CD‐ROM、DVD、フロッピーディスク、ハードディスクドライブなど)、USBキー、フラッシュメモリカード、ソリッドステートドライブおよびテープドライブを含む。
【0051】
本明細書の文脈では、「データベース」は、特定の構造、データベース管理ソフトウェア、またはデータが記憶されるか、実装されるか、または他の何らかの形で利用可能にされるようにされるコンピュータハードウェアに関係なく、データの任意の構造化された集まりである。データベースは、データベースに記憶されている情報を記憶するかまたは使用するプロセスと同じハードウェア上に置かれ得るか、または専用サーバまたは複数のサーバなどの、別個のハードウェア上に置かれ得る。
【0052】
本明細書の文脈では、特に断りのない限り、「第1」、「第2」、「第3」などの語は、それらが修飾する名詞を互いに区別することを可能にすることのみのために形容詞として使用されており、それらの名詞の間の特定の関係を記述するために使用されてはいない。
【0053】
本技術の変更形態は各々、上述の目的および/または態様のうち少なくとも1つを有するが、必ずしもそのすべてを有するとは限らない。上述の目的を達成しようとした結果生じた本技術のいくつかの態様は、この目的を満たし得ない、および/または本明細書において特に引用されていない他の目的を満たし得ることが理解されるべきである。
【0054】
本技術の実施形態の追加の、および/または代替的な特徴、側面、および利点は、次の説明、添付の図面、および付属の請求項から明らかとなる。
【0055】
この特許または出願のファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公開の写しは、請求し必要な手数料を支払ったうえで当局から提供される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1A】被験体の身体状態を特性評価するためのシステムの概略図である。
【
図1B】被験体の身体状態を特性評価するためのシステムの概略図である。
【
図1C】被験体の身体状態を特性評価するためのシステムの概略図である。
【
図1D】人間の耳の感度に関係する周波数の範囲、エネルギー分布、および振幅にわたる様々なタイプの振動音響データを周波数の範囲にわたって例示する図である。
【
図2A】本発明のいくつかの実施形態による、パネルとして具現化されたセンシングデバイスを示す分解図である。
【
図2B】
図2Aのセンシングデバイスの正面および斜視図である。
【
図3A】本発明の技術の実施形態による、1つまたは複数のスパイダー層を有するボイスコイルを含む例示的なセンサーの組立図である。
【
図3B】
図3Aの単層スパイダーを有する、センサーの分解図である。
【
図3C】
図3Aの二重層スパイダーを有する、センサーの分解図である。
【
図3D】見やすくするために外側ハウジングが省かれている
図3Aのセンサーの斜視図である。
【
図6A】本発明の技術のいくつかの実施形態による、
図1A~
図1Cのいずれかのシステムにおいて使用するための例示的な電位センサーを示す、電位センサーを通る断面図である。
【
図6B】本発明の技術のいくつかの実施形態による、
図1A~
図1Cのいずれかのシステムにおいて使用するための例示的な電位センサーを示す、電位センサーの平面図である。
【
図6C】本発明の技術のいくつかの実施形態による、
図2Aのセンシングデバイスにおける
図6Aおよび
図6Bの例示的な電位センサーを示す図である。
【
図7】本発明の技術のいくつかの実施形態による、被験体の身体状態を特性評価するための例示的な方法を要約したフローチャートである。
【
図8A】セーターを着た被験体がセンシングデバイスのダイアフラムから10cmのところに位置決めされ、ダイアフラムに面しているときの、
図1A~
図1Cのセンシングシステムおよび
図2Aのセンシングデバイスによって収集された振動音響試験データを示す図である。
【
図8B】セーターを着た被験体がセンシングデバイスのダイアフラムから10cmのところに位置決めされ、ダイアフラムから離れる方向に面しているときの、
図1A~
図1Cのセンシングシステムおよび
図2Aのセンシングデバイスによって収集された振動音響試験データを示す図である。
【
図8C】セーターを着た被験体がセンシングデバイスのダイアフラムから100cmのところに位置決めされ、ダイアフラムに面しているときの、
図1A~
図1Cのセンシングシステムおよび
図2Aのセンシングデバイスによって収集された振動音響試験データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明の様々な態様および変更形態の非限定的な例が、本明細書において説明され、添付図面に例示されている。
【0058】
1.システム
1.a.概要
図1A~
図1Cに示されているように、いくつかの実施形態によれば、身体103を監視するか、または身体状態を特性評価するためのシステム100は、身体103に接触することなく身体103に関連している1つまたは複数のパラメータを検出するように構成されている1つまたは複数のセンサー101を有するセンシングデバイス110と、センシングデバイス110に通信可能に結合可能であり、センシングデバイス110からセンサーデータを受信して処理し、分析し、通信し、および/またはセンサーデータ/処理済みセンサーデータを記憶するためのプロセッサ105を備える、コンピューティングシステム102とを具備する。コンピューティングシステム102は、センサーデータに基づき身体の身体状態を決定するように構成され得る。
図1A~
図1Cに描かれているように、いくつかの実施形態におけるシステム100は、単一のセンシングデバイス110を備える。他の実施形態では、システム100は、複数のセンシングデバイス110を備え、各々同じまたは異なるパラメータを検出するように構成され得る。センシングデバイス110は、複数のセンサー101(
図1B)または単一のセンサー101(
図1C)を含み得る。
【0059】
以下でさらに説明されるように、いくつかの実施形態において、センサー101は、人間または動物の被験体などの、生きている被験体である身体に関連している振動音響信号を検出するように構成される。しかしながら、本発明の技術の実施形態は、非生体にも適用可能であることは理解されるであろう。
【0060】
いくつかの実施形態において、センサー101は、可聴下周波から、音響を経て、超音波に至る帯域幅全体内で振動音響信号を検出するように構成される。いくつかの実施形態において、帯域幅は、約0.01Hzから少なくとも約50kHz、約0.01Hzから少なくとも約60kHz、約0.01Hzから少なくとも約70kHz、約0.01Hzから少なくとも約80kHz、約0.01Hzから少なくとも約90kHz、約0.01Hzから少なくとも100kHz、約0.01Hzから少なくとも約110kHz、約0.01Hzから少なくとも約120kHz、約0.01Hzから少なくとも約130kHz、約0.01Hzから約140kHz、約0.01Hzから少なくとも約150kHz、約0.01Hzから約160kHz、約0.01Hzから約150kHz超までの範囲内にある。
【0061】
上述のように、開発者らは、非可聴範囲(たとえば、可聴下周波および超音波)ならびに可聴範囲の両方の範囲内の周波数が、身体状態を決定する際に有用であることを指摘している。
図1Dに示されているように、人間の聴力の閾値は、振動周波数が約500Hzより低くなると急激に減少する。しかしながら、安静時の健康な被験体では、ほとんどの心臓、呼吸器、消化器、および運動関係の情報は、この情報が音声に関連する周波数よりも低い周波数で発生するので、人間には聞こえない。したがって、身体振動の大部分は、これらの振動の低い周波数帯域、および従来の器具(たとえば、従来の聴診器)の限定された帯域幅の限界により、検出されず、また従来の診断医療行為に含まれることはない。本明細書において説明されているシステム100の変更形態は、可聴下音、超音波、および極超音波の振動音響周波数の広周波数範囲を検出し、増幅し、分析することができ、したがって、被験体の健康および状態のより包括的で全体的な様子を捕らえるのに有利である。それに加えて、システム100の実施形態は、信号を処理し、身体状態を検出することができる十分な感度で、この広い帯域幅にわたる信号を検出することができる。
【0062】
センシングデバイス110は、非接触方式で身体のパラメータを検出するための任意の好適なフォームファクタを有し得る。センシングデバイス110は、接触方式で好適なパラメータをキャプチャするために身体に関して任意の好適な方式で構成され、位置決め可能であるものとしてよい。たとえば、センシングデバイス110は、床の上に自立する(
図1B)など、支持面によって支持されるか、または壁もしくは天井に装着される(
図1C)ように構成され得る。他の実施形態(図示せず)では、センシングデバイス110は、キャビネット、冷蔵庫、冷凍庫、照明器具、鏡、パネル、キオスク、出入り口、看板、フィットネス機器、セキュリティゲート、セキュリティアーチ、ホームセキュリティシステム、券売機などの家具および他の構造物に一体化され得る。
【0063】
コンピューティングシステム102は、センシングデバイス110から分離しているか、またはセンシングデバイス110内に組み込まれ得る。コンピューティングシステム102は、また、センシングデバイス110に部分的に組み込まれ、部分的にその遠隔にあってもよい。コンピューティングシステム102は、限定はしないが、サーバ、モバイルコンピューティングデバイス、パーソナルコンピュータ、またはローカルデータゲートウェイなどの、任意の形態で具現化され得る。いくつかの変更形態において、コンピューティングデバイス102は、ネットワークオンチップ(NoC)技術として実装されてもよい。コンピューティングシステム102は、センサー101またはセンシングデバイス110からデータを受信し、処理、分析、通信、および/または記憶機能においてセンサーデータを使用するように構成され得る。コンピューティングシステム102は、それに加えて、健康コンテキスト情報の補足環境的および社会的決定因子を提供することができる、秤、コンテキストセンサー、カメラ、温度計などの他のセンサーからデータを収集し得る。
【0064】
図1A~
図1Cに示されているように、センシングデバイス110は、コンピューティングシステム102とネットワーク104上でワイヤレス方式により通信するように構成され得る。それに加えて、または代替的に、センシングデバイス110は、ネットワーク104なしでコンピューティングシステム102と直接的に通信するように構成され得る(たとえば、対毎に)。他の変更形態では、センシングデバイス110は、ネットワーク104と直接的に通信するように構成されてもよい。
【0065】
図1Aを参照すると、いくつかの実施形態において、コンピューティングシステム102は、たとえば、(i)センシングデバイス110からセンサーデータに基づき被験体の1つまたは複数の身体状態を特性評価するために(たとえば、1つまたは複数の訓練済み機械学習モデルの適用を通じて)人工知能を組み込み得るパターン評価モジュール106、(ii)センサーデータまたは処理済みセンサーデータ、センサーからの他のデータ(該当する場合)および/または被験体に関連している電子医療記録を記憶するためのデータ記憶モジュール108、ならびに(ii)患者集団にまたがる予測モデルおよび/または処方モデルを訓練し、精度を高めることに使用するためにデータマイニングモジュール107などの、1つまたは複数のモジュールを備える。通信モジュール(図示せず)は、システムの様々なモジュール間のデータ通信のために提供され得る。通信モジュール、または別のモジュールは、システム100のオペレータ(たとえば、決定された身体状態を知らされることを望むエンティティ)、または監視されている被験体に情報を伝達するために提供され得る。たとえば、コンピューティングシステム102は、システム100のオペレータに関連しているか、または被験体に関連しているデバイス109に、触覚信号、表示、光信号、または音声信号などの出力を引き起こすように構成され得る。コンピューティングシステム102は、以下でさらに詳細に説明されるように、信号データを使用して1つまたは複数の方法を実行するように構成され得る。通信モジュールは、センサー101またはセンシングデバイス110からセンサーデータを受信することにも関与し得る。
【0066】
いくつかの変更形態において、センシングデバイス110は、モジュール式であり、モジュール式センシングプラットフォームの一部として、モジュール式の実験、最適化、製造、迅速な現場構成可能性などに関して適合された交換可能なサブシステムを含み得る。たとえば、センシングデバイス110は、交換可能であり得る1つまたは複数のセンサー101、電子モジュール、および/または異なる用途およびコンテキストに対して交換可能であり得る他のコンポーネントを含み得る。そのようなモジュール式センシングプラットフォームは、たとえば、遠隔スクリーニングデバイスおよび/またはヘルスケア用の医療行為発生時点ソリューション、などのモジュール式スイートによく適したアーキテクチャを提供し得る。
【0067】
1.b.センシングデバイス
図2A~
図2Cを参照すると、いくつかの実施形態において、センシングデバイス110は、パネル状の形態を有する。パネル状は、センシングデバイス110が、概して平坦で連続的である外に面する表面(第1の側120)を有することを意味する。
【0068】
センシングデバイス110は、壁、床、天井、出入り口などの支持表面に装着可能であるか、または支持表面上に自立可能であり得る。センシングデバイス110は、被験体にわからないようにカモフラージュされていてもよい。この点で、センシングデバイス110は、キャビネット、ドア、出入り口、鏡、冷蔵庫、セキュリティゲートなどの家具内に組み込まれてもよい。センシングデバイス110は、部屋、廊下、車両、通路、検問所、出入り口、車両、および他のエリアに据え付けられ、被験体のいくつかの身体状態を診断するために被験体からのセンサー信号を検出するものとしてよい。センシングデバイス110は、ゲートウェイ、ドアなどのセキュリティシステムの一部であるか、または身体の同一性を検証するために使用され得る。
【0069】
使用時、いくつかの実施形態において、センシングデバイス110は、第1の側120が身体の少なくとも一部に面し、そこから離間されるように構成され、そこからの振動音響信号を検出するように位置決めされる構成をとる。たとえば、いくつかの例において、センシングデバイス110は、歩いているか、立っているか、または座っている人間被験体の胴体、頭、または手に面するように実質的に垂直に位置決めされるように構成され得る。他の例では、センシングデバイス110は、人間被験体がそれより上で手を振ることができるように実質的に水平に位置決めされるように構成され得る。この特定の構成は、身体状態が被験体の識別を含み、セキュリティ用途で実装される実施形態において使用され得る。
【0070】
センシングデバイス110は、センシングデバイス110の深さ121が第1の側120の表面積123よりも小さいという点で薄い形態も有し得る。いくつかの実施形態において、深さ121は、30cm、25cm、20cm、15cm、10cm、7.5cm、5cm、4cm、3cm、2cm、または1cm未満である。いくつかの実施形態において、センシングデバイス110の深さは、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、または10mm未満であってよい。いくつかの実施形態において、センシングデバイス110の深さ121は、センサー101の厚さによって範囲を定められる。
【0071】
いくつかの実施形態において、第1の側123のサイズが、第1の側123を形成するかまたはその下に位置決めされるかのいずれかのダイアフラム116のサイズを決定するので、第1の側120の表面積123は、必要な感度に関係する。いくつかの実施形態において、第1の側120の直径または最大幅は、約100cm、90cm、80cm、70cm、60cm、50cm、40cm、30cm、20cm、10cm、9cm、8cm、7cm、6cm、または5cm未満である。最小直径は0.5cmと推定され、その結果、約0.2平方cmの面積となる。
【0072】
センシングデバイス110は、身体から、限定はしないが、1cm、5cm、10cm、25cm、50cm、100cm、150cm、200cm、250cm、または300cmなどの任意の距離のところで動作するように構成される。
【0073】
より具体的に
図2Aおよび
図2Cを参照すると、センシングデバイス110は、開口114を画定するフレーム112などの支持部材と、開口114を少なくとも部分的に横切って延在し、フレーム112によって支持されるダイアフラム116とを備える。ダイアフラム116は、少なくともいくつかの部分において自由に振動するように構成される。センサー101は、振動音響センサーを含み、この振動音響センサーは、少なくとも1つの支持体118などによってフレーム112に結合される。いくつかの実施形態において、センサー101をフレームに接続し、センサー101を開口114に関して位置決めする働きをする複数の支持部材117が提供される。
図2Aを見ると最もよくわかるように、支持体は、センサー102が取り付けられる円形部分と、円形部分からフレーム112へ延在する支柱部分とを備える。
【0074】
ダイアフラム116は、被験体の生体音響範囲に関係する周波数で振動するように構成される。センサー101は、ダイアフラム116の振動を、アナログ信号またはデジタル信号などに変換するように構成される。センサー101は、限定はしないが、ボイスコイル型トランスデューサ、電位センサー、静電容量センサー、加速度センサー、およびこれらの組合せなどの、ダイアフラム116の動きを電気信号に変換することができる任意のタイプのセンサーとすることができる。
支持部材
【0075】
支持部材112は、任意の好適なサイズまたは形状であってよく、その寸法および構成は、所望の用途および検出の所望の周波数範囲に基づき選択される。支持部材112は、プラスチック、木材、金属、複合材、ガラス、セラミックなどの任意の好適な材料、または取り付けられたダイアフラムの張力に耐えることができ、および/または取り付けられたダイアフラム116を支持することができる他の任意の好適な材料から製作され得る。八角形フレームとして例示されているが、支持部材112は、円形、卵形、長方形、台形、正多角形、または非正多角形などの任意の形状とすることができる。また、支持部材112は、任意のサイズであってよい。いくつかの実施形態において、支持部材112は、支持表面または家具のコンポーネントであってもよい。
【0076】
支持部材112の厚さは、限定されない。たとえば、支持部材112の幅は、開口部の幅よりも小さい。他の実施形態では、支持部材112の幅は、開口部の幅よりも広くてもよい。
【0077】
前述のように、支持部材112は、センサー101に関連している開口114を画定する。支持部材112は、支持部材112を貫通するように(すなわち、開口は第1の側120および第2の側124の両方で開いている)開口114を画定するように構成され得る。これらの実施形態では、支持部材112は、本明細書において「フレーム112」と称される。他の実施形態(図示せず)では、支持部材112は、それの側の一方のみ、すなわち第1の側120または第2の側124内に開口を画定し得る。
【0078】
例示されているように、いくつかの実施形態において、センシングデバイス110は、共通のフレーム部分を共有することからここではサブフレーム128と称される、複数のフレームを提供するように構成される。各サブフレームは、それぞれの開口114を画定し、各開口114は別個のセンサー101と関連する。この構成は、開口114が支持部材112を貫通しない実施形態にも適用することができる。構造完全性のために外側マウントが設けられてもよい。これは、図では長方形の外側フレームとして見ることができるが、任意であることは理解されるであろう。提供されたときに、ダイアフラム116は外側マウントさらには支持部材112に取り付けられ得るが、特にダイアフラム116が開口114を封止しないときにはそうである。
【0079】
例示されている実施形態では、異なるサブフレーム128内に収納されている、2つのセンサー101が提供される。サブフレーム128は、いくつかの実施形態において、互いに隣接しており、共通するサブフレーム部分を有している。この点に関して、センシングデバイス110は、同じ動作モードまたは異なる動作モードで動作する複数のトランスデューサを備えると考えられ得る。複数のトランスデューサは、アレイとして配置構成されてもよい。
【0080】
いくつかの実施形態において、サブフレーム128は、同じダイアフラム116を共有する。言い換えると、フレーム112に取り付けられ、サブフレーム128を覆う単一のダイアフラム116が提供される。ダイアフラム116は、ヒンジ効果を提供するためにサブフレーム128に取り付けられ得る。
【0081】
いくつかの実施形態において、サブフレーム128は各々それぞれのダイアフラム116を有する。言い換えると、フレーム112毎に提供される複数のダイアフラム116があり、サブフレーム128毎に1つのダイアフラム116がある。
【0082】
いずれかのシナリオにおいて、センサー101のピックアップ範囲、ダイアフラム116の表面積、ダイアフラムの剛性、およびダイアフラムの重量、(センサー101をそこに取り付けるなどして)ダイアフラムに加えられる任意の重量または減衰のうちの1つまたは複数などの、周波数範囲検出を手直しするために種々のパラメータが手直しされ得る。
【0083】
いくつかの実施形態において、サブフレーム128は異なるサイズのものであってよく、たとえば、第1のサブフレーム128は第2のサブフレームよりも大きくてもよい。そのような実施形態では、第1のサブフレーム128およびダイアフラム116のその関連のより大きい領域は、<20Hzである振動音響信号を検出することができる場合があるが、第2のサブフレームおよびそのそれぞれのダイアフラム116は、>100Hzを検出するように構成されてよい。
【0084】
いくつかの実施形態において、サブフレーム128は、フレーム112内で互いに分離し、離間し得る。言い換えると、サブフレームは、共通のサブフレーム部分を共有し得ない。センシングデバイス110は、同じ動作モードまたは異なる動作モードで動作する複数のトランスデューサを備えることがやはり考えられ得る。複数のトランスデューサは、アレイとして配置構成されてもよい。
【0085】
いくつかの実施形態において、センシングデバイス110は、複数の支持部材112(サブフレームを含んでも含まなくてもよい)を備えるものとしてよく、各支持部材112はそれぞれの開口を画定し、それにそれぞれのセンサー101が取り付けられている。ここでもまた、複数のトランスデューサ(センサー101)は、アレイとして考えられ得る。複数のフレーム112の各支持部材112は、異なる範囲の振動音響信号を検出するように構成され、それにより、複数の支持部材112内の個別の支持部材112の帯域幅よりも広い、複数のフレーム112にわたる検出済み信号の帯域幅全体を提供し得る。各支持部材112によって検出可能な振動音響信号の帯域幅は、特定の実施形態では、以下のようにして手直しされ得る。
【0086】
サブフレーム128を有しないセンシングデバイス110さらにはサブフレーム128を有するセンシングデバイス110は、本発明の技術の範囲内にある。サブフレーム128は、センシングデバイス112に設けられるものとしてよく、支持部材112がそこを貫通しない開口114を画定する。サブフレームの構成は、当業者によって知られている方式で、例示されているような構成と異なっていてもよいことは理解される。
【0087】
1.c.ダイアフラム
いくつかの実施形態において、ダイアフラム116は、センシングデバイス110の第1の側120に位置決めされる。支持部材112がフレームである実施形態において、バックカバー122がセンシングデバイス110の第2の側124に設けられるものとしてよく、それによって、ダイアフラム116とバックカバー122との間に空洞126を画定する。ダイアフラム116は、被験体の振動音響範囲などの所望の検出周波数範囲に関係する周波数で振動するように構成される。ダイアフラム116の材料、重量、サイズ、および張力、さらにはダイアフラム116の背後の空洞126の形状またはサイズのパラメータのうちの1つもしくは複数は、所望の周波数範囲を達成するように手直しされ得る。
【0088】
いくつかの実施形態において、ダイアフラム116は、一般的に、ダイアフラム116が平面内に配置構成される公称または静止構成を有してよく、ダイアフラム116は、平面外の力に応答して偏向するか、または屈曲し得る。これらの変更形態では、ダイアフラム116は、平面外の動きに対して低い剛性(または抵抗)を有し、音響移動に対して良好なコンプライアンスを有するが、平面内運動に対して高い剛性または抵抗を有し、平面内の軸間に低い漏話を有するように構成され得る。したがって、ダイアフラム116は、ダイアフラム116に向けられた音響波(すなわち、偏向構造に直交するベクトル成分を有する音響波)に対して高い感度を有するが、他の力が寄与するノイズに対してロバストであるものとしてよい。
【0089】
さらに、いくつかの変更形態では、ダイアフラム116は、慣性を低減するために偏向構造の可動部分に比較的小さい質量を有し得る(そして、平面外の力に対する感度をさらに改善する)。いくつかの変更形態において、偏向構造は、平面外の動きが高度に線形であるように、ヒステリシスが低いかまたは全くないように設計され得る。
【0090】
剛性の低いより大きなダイアフラム116は、低周波をよくピックアップする傾向があり、その一方で、剛性の高いダイアフラム116は、より高い周波数をピックアップするが、より低い周波数を減衰させる。ダイアフラム116それ自体の重量または一般にダイアフラム116に接続されているものはどれも、振動中に慣性を生じ、入射振動音響信号に対抗し、それを減衰させる(そして、音響波の反射を増大させる可能性がある)。
【0091】
センサー101がボイスコイルトランスデューサである実施形態では、それがダイアフラム116に接続され、偏向コンポーネントを有するので、これはシステム内に追加のバネを設け、ダイアフラム116の剛性を高め、センサーピックアップのコンプライアンスを減少させることができる。取り付けられたボイスコイル部分は、また、ダイアフラム116に慣性を加え得る。
【0092】
たとえば、コンプライアンス性の高いダイアフラム116は、低周波数(たとえば、0~100Hzのみ)に有利な良好な信号対雑音比を与える。同様に、より大きなダイアフラム116は、より低い周波数にも有利に働く。より小さいダイアフラム116は、高帯域幅またはより高い周波数を検出することができる。より厚いダイアフラム116は、一般に高い膜曲げ剛性により、高帯域幅、より高い周波数を検出することができる。より薄いダイアフラム116は、他のすべてのパラメータが等しい場合にコンプライアンスがより高い傾向があるのでより低い周波数を検出することができる。より高い張力のダイアフラム116は、高帯域幅を検出することができ、より少ない偏向は、より低いセンサー振幅、したがって、信号対雑音比をもたらし得る。より低い張力のダイアフラム116は、同じ入射音響波によって引き起こされる、コンプライアント性のより高い、高偏向としてより低い帯域幅を検出することができる(良好な信号対雑音比)。
【0093】
一般的に、曲げ剛性の異なる値、したがって低振幅波をピックアップする能力の間にトレードオフの関係が必要になる。低い曲げ剛性の結果、コンプライアント性のあるダイアフラム116は非常に低い振幅の波(たとえば、<20Hz)をピックアップすることができる。しかしながら、コンプライアント性の非常に高いダイアフラム116の共振周波数およびその後のロールオフは非常に低く、したがって、特にいくつかの閾値周波数より上の、より高い周波数、たとえば<100Hzの、周波数をピックアップする能力を妨げる。対照的に、高い曲げ剛性の結果、ダイアフラム116の共振モードが高くなり、小振幅のより低い周波数と引き換えに、より高い周波数をピックアップする能力をもたらす。
【0094】
いくつかの実施形態において、周波数範囲全体に対するトレードオフの関係を見出す代わりに、センシングデバイス110は、上で説明されているより小さいサブフレーム128に分割されるものとしてよく、各サブフレーム128はそれぞれのセンサー101を有する。サブフレーム128は、それに取り付けられた異なるダイアフラム116を有し、異なるダイアフラム116はセンサー101またはダイアフラム116の剛性、重量などの一方または両方を手直しすることによって特定の周波数範囲に対して構成される。この方式で、サブフレーム128を使用することによって、より広い全体的な周波数範囲が検出され得る。
【0095】
いくつかの実施形態において、ダイアフラム116は、熱可塑性または熱硬化性エラストマーなどのコンプライアント材料である。他の実施形態では、ダイアフラム116は、金属、またはシリカ、アルミナもしくはマイカなどの無機材料、または織物、ガラス繊維、Kevlar(登録商標)、セルロース、炭素繊維、またはそれらの組合せおよび複合材料を含み得る。いくつかの実施形態において、ダイアフラム116は、約1mmから約100mmなどの任意の距離のところでダイアフラムの外側に面する側に位置決めされた、発泡体などの、音響透過層を含み得る保護層を設けられている。
【0096】
ダイアフラム116は、接着剤など、任意の方式で支持部材112に取り付けられ得る。支持部材112に取り付けられたときのダイアフラム116の外形は、平面状、凸状、または凹状であり得る。ダイアフラム116が張力を受けている場合、これは異なる直交軸に沿って均質な張力または異なる張力をかける方式で支持部材112に取り付けられ得る。ダイアフラム116は、延伸シートであってよい。ダイアフラム116は、いくつかの変更形態において、自立しているか、または張力を受けるのではなく圧縮を受けていてもよい。減衰材料が、膜の動きを減衰させるために提供されてもよい。
【0097】
空洞126に関して、センシングデバイス110のいくつかの変更形態では、バックカバー122によって空洞126を異なる程度で封止する。たとえば、いくつかの実施形態において、バックカバー122は省かれてもよい。この場合、ダイアフラム116のいずれかの側の圧力は、素早く均等化し得る。しかしながら、ダイアフラム116は、一般的に、両側の圧力に差がある場合にのみ曲げ/振動させることができる。特に、低周波数では、空気が圧力波の入射後にダイアフラム116の両側の圧力を連続的に均等化するのに十分な時間があるので、そのような低い信号を測定することは不可能である。次いで、オープンバックのセットアップでは、静圧が測定され得ないことも明らかである。
【0098】
バックカバー122がセンシングデバイス110上に備えられるいくつかの他の実施形態において、バックカバー122は、異なる程度で空洞126を封止するように機能し得る。極端な例では、バックカバー122は、空洞126を封止する中実片を含み得る。これは、内部の基準圧力に対する静圧を測定する圧力センサーのように考えられ得る。これはDC(静圧)まで測定するが、静圧は、特に入力振動振幅が大きければ大きいほど、AC信号に対するダイアフラム116の移動に対抗する。それに加えて、完全に封止された空洞126は、外圧と内圧とが等しくないとき、たとえば、高度が変化するときに、ダイアフラム116が外向きにまたは内向きに曲がることを引き起こす。その結果、空洞の容積に応じて、より高い周波数およびより大きい振幅での動的(AC)測定において信号対雑音比(SNR)が低くなり得る。
【0099】
いくつかの実施形態において、バックカバー122は、空気流が中を通って空洞126に至るのを可能にする開口部130を備える。これらの開口部130のサイズ、数、および配置は、所望の周波数検出範囲および許容可能な信号対雑音比に従って最適化されるものとしてよく、空洞容積それ自体による空洞インピーダンス最適化とみなすこともできる。低周波検出(20Hz未満)については、低周波圧力波は、ダイアフラム116のいずれかの側で平衡状態を作り出すのに十分な時間を与える。したがって、開口部130の構成は、圧力を下げるために空洞126の内部から(正または負の圧力波に応じて)空気を出し入れすることと、超低周波圧力波をキャッチするために平衡プロセスを十分に長く遅らせることとの間のトレードオフの関係を考慮する必要がある。したがって、ダイアフラム116のいずれかの側の圧力は、ある時定数で均等化し、その平衡時定数以下の期間に対応する周波数の振動が測定され得る。
【0100】
これは、支持部材112が開口114を片側でのみ画定する実施形態にも適用され、その場合、他方の側はバックカバーとして機能することは理解されるであろう。空洞126内の圧力を均等にするのを助けるために1つまたは複数の開口部が設けられ得る。
【0101】
いくつかの実施形態において、センシングデバイス110は、幅約7インチ、高さ約9.75インチ、および深さ約0.5インチである。しかしながら、センシングデバイス110は、その使用に適切である限り他のサイズであってもよいことは理解されるであろう。このセンシングデバイスで取得される実験データは、実施例2に提示される。
【0102】
開口部130は、任意の形状(丸形、正方形、長方形)、サイズ、および数を有することができる。開口部130は、単純な開口部の代わりに、アコースティックサブウーファーに一般的に存在するような様々な直径および長さの管などの、構造であってもよい。開口部としての構造は、空洞と外部環境との間の空気の流れを可能にするものであれば何でもよく、したがって管のみに限定されない。例示的な一実施形態において、バックカバー122は、大きな空洞を有する低周波最適化パネルの内側DC圧力に対して均等化するように単一の小さな管を有することが可能である。
【0103】
いくつかの他の実施形態において、センシングデバイス110の内側の空洞126は、2つの横方向セクションに分割され得る。2つの空洞の間の仕切りは、2つの空洞の間の空気交換を可能にするために、設計上の必要条件に基づき穿孔される。一実施形態において、ダイアフラム116に近い空洞は小さい空洞であり、後方に向かう空洞はより大きい空洞であり、空気の「リザーバ」としての役割を果たす。ユニット全体は、環境から完全に封止されるか、または小さな穴もしくは管で封止され、たとえば高度変化による緩やかでほぼDC型の圧力変化の場合に環境との圧力均等化を可能にする。
【0104】
二重空洞セットアップは、センサー101が電位センサーまたは静電容量センサーであるときに特に有用であり得る。たとえば、容量性センシングアプローチでは、ダイアフラム116の背後に導電性プレートが設けられ、これによりダイアフラム116と同様のサイズのものであってよいキャパシタを形成し感度を最大にする。導電性プレートは、ダイアフラム116と導電性プレートとの間の静電容量を最大にするためにダイアフラム116の近くにあるべきであるので、形成される空洞は小さく、穿孔のないプレートが使用されるときに、振動する膜の下で空気圧を上昇させる。したがって、導電性プレート内の穿孔は、小さな空洞をより大きな後部空洞に接続し、圧力を低減する。
【0105】
一般に、センシングデバイス110が組み立てられるときに、空洞126は、ダイアフラム116、バックカバー122、および支持部材112のうちの1つまたは複数によって、一般的に閉じられるか、または流体的に封止されるべきである。空洞126は、支持部材112(たとえば、存在するときにサブフレーム128)の周りを、または存在するときに外側マウントの周りを、閉じるか、または封止するダイアフラム116によって閉じられるか、または流体的に封止され得る。いくつかの実施形態において、開口部130の1つまたは複数が設けられたときに空洞は閉じられているが流体的に封止されていないとみなされる。一般的に、外側マウントの周りの封止は、膜を変位させるのに必要な力を低減するものとしてよく、それと同時に、到来音響波は、ダイアフラム面積が移動させられ得る大きさよりも大きいことに起因して、ダイアフラム116により大きな力を及ぼすことができる。
【0106】
1.d.膜に関する振動音響センサーアセンブリの位置決め
センサー101は、ダイアフラム116のエッジに関して任意の適切な位置に位置決めされ得る。センサー101の位置決めは、1つまたは複数の支持体118によって達成され得る。1つまたは複数の支持体118は、開口114内の所与の位置にセンサー101を位置決めするために支持部材112またはサブフレーム128からそれぞれの開口114内に内向きに延在し得る。
【0107】
いくつかの実施形態において、例示されているように、センサー101は、ダイアフラム116のエッジに関して中心に位置決めされる。しかしながら、センサー101は、必ずしもダイアフラム116に関して中心に配置される必要はない。特に、ダイアフラム116がより高い固有モードで励起され得る実施形態では、任意の適切な位置で中心から外れた位置にセンサー101を配置することの利点がある。たとえば、センサー101が中心に置かれ、より高い固有モードが中心にノードを有する場合、中心には変位がなく、信号が測定されないが、実は、ダイアフラム116は実際に振動している。
【0108】
たとえば、ダイアフラム116上にノード(変位がない点)を形成するその幾何学的形状に基づく複数の固有モードを有するダイアフラム116を考える。たとえば、ダイアフラム116が2×2の構成で4つの固有モードを有する場合、ダイアフラム116の中心にノードがある。これは、ダイアフラム116が、ダイアフラム116の中心部分にさらにノード(変位がない)を形成する2つの固有モードを有するときにも当てはまる。これらの場合において、また説明されていない他の固有モードの状況では、中心に位置決めされたセンサー101は、ダイアフラム116の振動を検出するために最適な位置に置かれていない。したがって、ダイアフラム116に関するセンサー101の位置決めは、ダイアフラム116の固有モードを考慮することによって選択され得る。
【0109】
センサー101が電位センサーおよび/または容量性センサーを含むセンシングデバイス110の実施形態では、そのようなセンサーの電極は、ダイアフラム116のサイズを覆うサイズにすることができ、これはノードにおけるダイアフラム116の曲げ/変位がないなど固有モードの局部的影響を最小化することができる。いくつかの他の実施形態において、センサー101は、第1の固有モードによって引き起こされる第1の膜共振を超えて感知しないように構成されてもよく、これはまた固有モードの効果を最小にするか、または冗長にし得る。
【0110】
1.e.フロントカバー
いくつかの実施形態において、センシングデバイス110は、第1の側120に設けられたフロントカバー132を備え得る。フロントカバー132は、ダイアフラム116よりも剛性が高いものとしてよい。フロントカバー132は、ダイアフラムに比べてより外へ置かれるので、ダイアフラム116の環境的および機械的保護を提供し得る。フロントカバー132は、任意のタイプの表面仕上げまたは構成を有し得る。たとえば、いくつかの実施形態において、フロントカバー132は、鏡のように反射率が高い。いくつかの変更形態において、フロントカバー132は、出力ディスプレイを備え得る。出力ディスプレイは、被験体が所与の身体状態を有する可能性(たとえば、赤色もしくは緑色の光または他のインジケータとして表示される)、センサー101によって取得されたデータの少なくとも一部(たとえば、被験体の生理学的データ、環境データ)のうちの1つまたは複数などのマーキングおよびインジケータの任意の方式を含み得る。いくつかの実施形態において、フロントカバー132は、少なくとも一部が鏡であり、少なくとも部分的に出力表示装置などの出力ディスプレイであってもよい。フロントカバー132は、壁または床などの支持表面上に支持されたときに実質的に垂直に延在するように構成され得る。フロントカバー132は、音圧が大きな減衰なく伝わるように穿孔され、この穿孔のサイズはマイクロメートルまでとしてよい。
【0111】
要約すれば、センシングデバイス1100の振動音響検出範囲は、ダイアフラム116(たとえば、剛性、材料、表面積、など)、センサー101(たとえば、ボイスコイル、静電容量、電位、光学、音響(エコードップラー)、レーダーなど)、たとえば、空洞126およびバックカバー122の開口部130のサイズに基づく圧力均等化、に関係する様々なパラメータに基づき手直しされ得る。
【0112】
1.f.センサー‐一般
センシングデバイス110において使用される1つまたは複数のセンサー101は、特に限定されない。いくつかの実施形態において、センサー101は、物体に関連する振動音響信号を検出するための振動音響センサーである。いくつかの実施形態において、振動音響波の伝達は、空気などの中間媒体を通して生じ得る。
【0113】
いくつかの実施形態において、振動音響センサーは、約0.01Hzから少なくとも約20Hzの範囲内の帯域幅など、可聴下音範囲内の振動音響信号を検出するのに適した帯域幅を有し得る。さらに、いくつかの実施形態において、振動音響センサーは、約0.01Hzから少なくとも160kHzの範囲内の帯域幅など、可聴下音から超音波までのより広範な周波数帯をカバーするより広い帯域幅を有していてもよい。いくつかの実施形態において、検出された振動音響信号から抽出された生体振動音響信号成分は、約0.01Hzから0.1Hzの範囲内の帯域幅を有し得る。
【0114】
たとえば、いくつかの実施形態において、振動音響センサーは、約0.01Hzから少なくとも約50kHz、約0.01Hzから少なくとも約60kHz、約0.01Hzから少なくとも約70kHz、約0.01Hzから少なくとも約80kHz、約0.01Hzから少なくとも約90kHz、約0.01Hzから少なくとも100kHz、約0.01Hzから少なくとも約110kHz、約0.01Hzから少なくとも約120kHz、約0.01Hzから少なくとも約130kHz、約0.01Hzから約140kHz、約0.01Hzから少なくとも約150kHz、約0.01Hzから約160kHz、約0.01Hzから約150kHz超までの範囲内の帯域幅全体を有するものとしてよい。
【0115】
センサー101は、いくつかの実施形態において、検出された振動音響信号の上述の帯域幅のうちの1つまたは複数を提供する単一のセンサー101を備え得る。
【0116】
いくつかの他の実施形態では、センサー101は、各々振動音響センサー帯域幅全体のセグメントを形成するそれぞれの帯域幅を有する、複数のセンサー101からなる一式またはアレイを備え得る。これらの複数のセンサー101のうちの少なくともいくつかは、いくつかの実施形態において、少なくとも部分的に重なり合うそれぞれの帯域幅を有していてもよい。他の実施形態では、複数のセンサー101は、重なり合う帯域幅範囲を有しない。したがって、まとまって特定の振動音響センサー帯域幅に寄与する特定のセンサーの選択に基づき様々なセンサー帯域幅が達成され得る。言い換えると、帯域幅拡張および線形化アプローチ(帯域幅プリディストーション)は、最適な性能でより広い帯域幅をカバーするようにセンサーの重なり合う組合せにより任意の特定の単一のセンサーの帯域幅制限を補償するなどのために、モジュール式のセンサーフュージョンおよび応答フィードバック情報を利用し得る。
【0117】
たとえば、センサー101は、マイクロフォン(たとえば、ダイナミックマイクロフォン、ラージダイアフラムコンデンサマイクロフォン、スモールダイアフラムコンデンサマイクロフォン、および/またはリボンマイクロフォン)、ボイスコイル、電位センサー、加速度計、圧力センサー、圧電トランスデューサ素子、ドップラーセンサーなどの1つまたは複数などの、振動音響データを取得するための受動的および能動的センサーのうちから選択され得る。それに加えて、または代替的に、振動音響センサーは、線形位置トランスデューサを含んでもよい。そのようなセンサーは、振動音響信号に応答して移動するダイアフラム116とインターフェースすることによって振動音響信号を検出し、測定するように構成され得る。
【0118】
それに加えて、または代替的に、センサー101は、約1Hz(またはそれより低い周波数)から数kHz(たとえば、約1Hzと約2kHzとの間の周波数)の範囲の振動音響信号を検出することができるMEMS交差軸慣性センサーフュージョンを含み得る。さらに、センサー101は、それに加えて、または代替的に、約0.01Hzから数百Hz(たとえば、約0.05Hzから約10kHz)の範囲内の振動音響信号を検出することができるMEMS交差軸慣性センサーを備え得る。いくつかの変更形態において、センサー101は、意図的に人間の可聴範囲に制限されたときに、約20Hzから約20kHzの範囲内の振動音響信号を検出することができる複数の微小電気機械システム技術交差軸慣性センサーを組み合わせたものであってよい。
【0119】
いくつかの実施形態において、センサー101は、ボイスコイル型トランスデューサ、電位センサー、静電容量ピックアップセンサー、磁界外乱センサー、光検出器、歪みセンサー、音響エコードップラーのうちから選択された1つまたは複数のセンサーである。
【0120】
1.g.センサー‐ボイスコイル型振動音響トランスデューサ
いくつかの実施形態において、センサー101は、ボイスコイル型の振動音響トランスデューサに基づくものとしてよい。ボイスコイルトランスデューサの例は、2021年5月8日に出願した国際出願第PCT/IB2021/053919号および2021年8月18日に出願した国際出願第PCT/US2021/046566号において以前に説明されており、これらの内容の全体が本明細書に組み込まれている。
【0121】
図3A~
図3E、
図4A~
図4B、および
図5A~
図ABを参照すると、いくつかの実施形態におけるセンサー101である、振動音響トランスデューサ300が示されており、これは、ボア330を有する円筒形本体部320と、円筒形本体部320から半径方向外向きに延在するフランジ340とを有するフレーム310(磁石ハウジングまたはサラウンドポットとも称される)を備える。フレーム310は、スチール製であってもよい。軟鉄または他の磁性材料の鉄芯350が円筒形本体部320に取り付けられ、円筒形本体部320のボア330一列に並べる。見るとわかるように、鉄芯350は、円筒形本体部320のボア330の周りに延在し、さらには円筒形本体部320の端部360を横切って延在する。鉄芯350は、開放端部を有する。磁石370は、ボア330内に位置決めされ、鉄芯350によって囲まれ、鉄芯350から離間し、磁石隙間380を画定する。コイルホルダー393によって支持されているワイヤ巻線392の1つまたは複数の層を含む、ボイスコイル390は、1つまたは複数のスパイダー395によって磁石隙間380に関して吊り下げられ、センタリングされる。ワイヤ巻線392は、銅またはアルミニウムなどの導電性材料から作られ得る。スパイダーの周はフレーム310に取り付けられ、中央部はボイスコイル390に取り付けられる。ボイスコイル390は、少なくとも部分的に、鉄芯350の開放端部を通して磁石隙間380内に貫入する。1つまたは複数のスパイダー395は、ボイスコイル390と磁石370との間の相対的移動を可能にする一方で、ねじれおよび平面内の移動を最小にするかまたは回避する。
【0122】
ボイスコイルトランスデューサ300はダイアフラム116に取り付けられる。ダイアフラム116をボイスコイルトランスデューサ300の一部(ボイスコイル390など)に取り付けることは、接着剤など、任意の好適な取り付け手段によって行われてよい。代替的に、ダイアフラム116とボイスコイル390の一部は、一体として作られてもよい。
【0123】
それに加えて、ボイスコイルトランスデューサ300は、支持部材118によってフレーム112に取り付けられる。フレーム112に関するフレーム310の回転移動は制限される。
【0124】
音響波に誘発される動きは、ダイアフラム116を移動させ、次いで、磁石隙間内のボイスコイル390の移動を誘発し、その結果、電気信号が誘発される。
【0125】
ボイスコイルトランスデューサのいくつかの変更形態において、トランスデューサの構成は、平面内信号よりも多くの直交信号をピックアップするように配置構成され、それによって感度が改善される。たとえば、1つまたは複数のスパイダーは、平面外コンプライアンスを有し、平面内で堅くなるように設計される。同じことが、平面外コンプライアンスを改善するように材料と剛性が選択され得るダイアフラム116にも当てはまる。ダイアフラムは、偏向させることによって非直交信号を除去するのにさらに役立つ凸状の構成(たとえば、ドーム形状)を有し得る。さらに、信号処理は、たとえば3軸加速度計を使用することによって、任意の非直交信号をさらに導出し得る。これは、非直交信号をさらに除去するか、またはさらにはセンサーを通る非直交信号が入射音響波の発生源の角度を導出することを特に可能にする。
【0126】
センシングデバイスの異なる用途は、異なる感度を必要とし、異なる雑音/信号比の問題に直面する可能性があることは理解されるであろう。たとえば、直接皮膚に接触する用途と比較して、衣服に接触する用途では、より高い感度および高い信号/雑音比が必要とされる。同様に、接触する用途と比較して、非接触の用途では、より高い感度および高い信号/雑音比が必要とされる。
【0127】
したがって、異なるフォームファクタ(たとえば、接触または非接触の用途)に適した感度および信号/雑音比を有するセンシングデバイスを提供するために、開発者は、いくつかの変数の変調が特定の意図された用途に対してボイスコイルトランスデューサを最適化できることを発見したが、これらの変数は磁石強度、磁石体積、ボイスコイル高さ、ワイヤ太さ、巻線数、巻線層の数、巻線材料(たとえば、銅対アルミニウム)、およびスパイダー構成である。これは、実施例1でさらに説明される。
【0128】
いくつかの変更形態において、ボイスコイル390は、約10Ωより大きい、約20Ωより大きい、約30Ωより大きい、約40Ωより大きい、約50Ωより大きい、約60Ωより大きい、約70Ωより大きい、約80Ωより大きい、約90Ωより大きい、約100Ωより大きい、約110Ωより大きい、約120Ωより大きい、約130Ωより大きい、約150Ωより大きい、または約150Ωのインピーダンスを有するよう構成される。これは、約4~8Ωのインピーダンスを有する従来の重い磁石ボイスコイルトランスデューサよりも高い。これは、ボイスコイル内の巻線数、線径、および巻線層の1つまたは複数を調節することで達成される。これらのパラメータの多くの順列が可能であり、実施例1に提示されているように、開発者によってテストされている。そのような一変更形態において、ボイスコイルは細線からなり、巻線を増やすことによって、約150Ωのインピーダンス、および関連する下げられた電力要件を有するように構成された。
【0129】
開発者は、また、スパイダー395の構成の適応が、感度および信号/雑音比の増大に寄与することを発見した。より具体的には、スパイダー395に開口を組み込むことなどによってスパイダーをよりコンプライアントにすることで、感度が高まることが実験およびシミュレーションを介して決定された。開口は、空気が自由に流れることも可能にする。これらは、
図4A~
図4Bおよび
図5A~
図5ABに関して以下でさらに詳細に説明される。代替的に、スパイダー395は省かれてもよく、ボイスコイルまたは磁石のいずれかはダイアフラム116内に一体化されるが、どちらも質量により慣性が低く、したがって膜の移動において抵抗が低い。
【0130】
これらの用途に対するボイスコイルベースのトランスデューサの使用は、限定はしないが身体との接触および/または可聴閾値以下の音のキャプチャなど、直観的でない。ボイスコイルは、オーディオスピーカーシステムで一般的に使用されており、電気エネルギーを音響エネルギーに変換するために最適化されている。有用な音圧レベルを達成するためには、これらのオーディオスピーカーボイスコイルは、10から500ワットの範囲の大電力を取り扱えなければならない。このために採用された設計上の考慮事項により、これらはマイクロフォンまたは一般的なセンシングアプリケーションに使用するのには適さない。電力は式P=IV=V2/Rによって記述され得るので、低い抵抗のボイスコイルは比較的低い電圧で大電力を扱うことを可能にし、オーディオアンプで典型的には使用されているパワー半導体と親和性がある。実際、ほとんどのオーディオ機器メーカーは、アンプが低インピーダンスのスピーカー負荷を駆動できることを利点として挙げている。高巻数、高インピーダンスのコイルは、単位電流について発生する力に関して効率的であるが、そのような電流を駆動するために必要な電圧は、かさばる絶縁体を必要とし、熱管理の妨げとなる。磁性流体冷却が可能なソリューションであるが、そのような流体の粘性が感度を低下させる。もちろん、ハイパワーアンプが利用可能であるときには、問題にならない。したがって、8Ωおよび4Ωなどの低インピーダンスのスピーカーが比較的一般的である。これらは、重いボイスコイル、およびこれらのコイルが備える重い巻線に適応する磁石構造を特徴とする。雑音も1つの要因であり得、温度誘発熱雑音は、導体/抵抗のインピーダンスが高くなるにつれ増大する。
【0131】
さらに、20Hz前後の低周波数で妥当な効率を維持するために、ウーファーおよびサブウーファーは、典型的には、非常に重いコーンを使用し、したがってボイスコイルの質量は重大な問題ではない。反対に、ツイーターは、周波数帯域幅の広い小型ダイアフラムを使用した空気-ダイアフラムインピーダンス整合で妥当な効率を得るために軽いボイスコイルを必要とし、したがって低い周波数で動作するときには非常に非効率的である。ツイーターは、典型的には、非常に軽量でデリケートなダイアフラムを有し、したがって直接接触マイクロフォンには適さない。
【0132】
また、2ウェイおよび3ウェイのトランスデューサスピーカー設計の必要性から、20Hzから20kHzの間で動作するオーディオスピーカーの広い周波数応答を達成するために、クロスオーバー回路が通常必要である。
【0133】
しかしながら、従来のマイクロフォンは、典型的には、全く異なる条件の下で動作し、低い音圧レベルは最小限の雑音でピックアップされる必要がある。そのため、これらは典型的には低重量ダイアフラムで製作され、最良のマイクロフォンは、典型的には、真のボイスコイル/磁気隙間トランスデューサとしてではなくむしろ可変キャパシタとして動作するので外部電源を必要とする。ここでもまた、ツイーターと全く同様に、敏感なマイクロフォン設計のデリケートなダイアフラムは、壊れやすいので直接接触マイクロフォンには適さない。また、その動作方式のせいで、低いダイナミックレンジと高い固有共振周波数に悩まされる。
【0134】
したがって、適応したボイスコイルトランスデューサが生体信号マイクロフォンとして使用され得るという発見は、開発者による驚くべき開発であった。本技術のいくつかの変更形態において、従来の重い磁石構造のオーディオスピーカーの少なくともボイスコイルおよびスパイダーの構成を適合させることによって、より高い感度、より広い周波数範囲の検出能力、動的で調節可能な周波数範囲、および高い信号対雑音比特性を有するマイクロフォンを達成することが可能であることが発見された。いくつかの変更形態において、現在の技術の単一ボイスコイルトランスデューサは、約1Hz未満から約150kHz超または約0.01Hzから約160kHzのマイクロフォン周波数応答を提供することができる。
【0135】
さらに、このような振動音響センサーを使用することで、振動音響センサーのサイズをハンドヘルドアプリケーションのための実用的な最小限のサイズに抑えることも可能になった。変更のこれらの組合せは、典型的なオーディオスピーカーのボイスコイルを使用して可能になる場合に比べて、振動音響信号に応答するボイスコイルによる比較的高い電圧の発生を可能にした。その結果、これらの電圧の感知は、低雑音J‐FETベースのアンプで達成され、たとえば、周波数応答、ダイナミックレンジ、スプリアス信号除去、および信号対雑音比の所望の組合せを達成することができる。
【0136】
本技術のいくつかの変更形態において、ボイスコイルトランスデューサ300は、スパイダー395(
図4A)の単層を備える。本技術のいくつかの他の変更形態において、ボイスコイルトランスデューサ300は、スパイダー395(
図4B)の二重層を備える。限定はしないが、3層、4層、または5層を含む複数のスパイダー395の層も可能である。
【0137】
スパイダー395のいくつかの構成が、
図5A~
図5ABに例示されている。見るとわかるように、従来のボイスコイルの従来のスパイダーで知られているような一体となった波形連続構成の代わりに、現在の技術のいくつかの変更形態では、スパイダー395は、不連続表面を有する。スパイダー395は、互いから離間する少なくとも2つの偏向構造500を備えるものとしてよく、その間の空気の流れを可能にする。いくつかの構成では、偏向構造500は、スパイダー395の中央部分520から、半径方向に延在し、互いから離間する、2つまたはそれ以上のアーム510を備える。
図4Aおよび
図4B、ならびに
図5Bに例示されている変更形態では、偏向構造500は、中央部分520から半径方向に延在する4つのアーム519を備える。4つのアーム510は、外向きに延びるにつれて幅が大きくなっている。アーム510の各々は、波形構成を有する。アーム510の各々の間の開口530は、各偏向アームの面積よりも大きい。
【0138】
図5A~
図5ABは、ボイスコイルトランスデューサ300などの、ボイスコイルトランスデューサ用のスパイダー395の他の変更形態を示している。スパイダー395は、中央部分520から延在し、その間に開口530を画定する1つまたは複数のアーム510を備える。1つまたは複数のアーム510は、真っ直ぐであるか、または湾曲していてもよい。1つまたは複数のアーム510は、その長さに沿って変化する、またはその長さに沿って一定である、幅を有し得る。1つまたは複数のアーム510は、中央部分520から螺旋状にスパイダー395の周540まで延在するように構成され得る。スパイダー395の周540には、中実リングが設けられ得る。これは、わかりやすくするために
図5A~
図5ABから省かれているが、
図3Eに示されている。いくつかの変更形態において、スパイダー395の中央部分520からスパイダー395の周540まで螺旋状に延在するように構成された単一のアーム510が提供され得る。これらの場合、螺旋状アーム510の回転が開口530を画定する。スパイダー395は、中実である部分(アーム510)と、その間に画定された開口530である部分とを含むセグメント分割された形態を含むものとして定められ得る。アーム510は、同じであるか、または異なり得る(たとえば、
図5C)。スパイダー395の複数の層がボイスコイルトランスデューサ300内に設けられる変更形態では、各層のスパイダー395は、同じであるか、または異なり得る。
【0139】
センシングデバイス110の所与の用途について選択された構成は、その所与の用途に必要とされるコンプライアンスの量に依存する。たとえば、高コンプライアンスのボイスコイル構成は、本発明の技術の非接触用途に対して選択され得る。
【0140】
いくつかの変更形態において、ダイアフラムのコンプライアンスは、約0.4から3.2mm/Nの範囲内にあるものとしてよい。コンプライアンス範囲は、次のように、低、中、および高として記述され得る。(i)0.4mm/N:低コンプライアンス->80~100Hzを中心とするfs、(ii)1.3mm/N:中コンプライアンス->130Hzを中心とするfs、および(iii)3.2mm/N:高コンプライアンス->170Hzを中心とするfs。
【0141】
いくつかの変更形態において、センシングデバイス110は、ボイスコイルセンサーによって検出されたかすかな体音の三角測量を可能にし、および/または環境外乱などの雑音の消去および/もしくはフィルタリングをより適切に可能にし得る、2つまたはそれ以上のボイスコイルトランスデューサ300を備え得る。2つまたはそれ以上のボイスコイルセンサーのセンサーフュージョンデータが、低分解能音響強度画像を生成するために使用され得る。
【0142】
いくつかの変更形態において、ボイスコイルトランスデューサは、非従来型のボイスコイル材料および/または巻線技術を使用することなどによって、振動音響検出用に最適化され得る。たとえば、いくつかの変更形態において、ボイスコイル材料は、従来の銅の代わりにアルミニウムを含んでもよい。アルミニウムは低い比導電率を有するけれども、アルミニウムの質量が小さいので、アルミニウムを使用すると、ボイスコイルトランスデューサの全体的な感度が改善され得る。それに加えて、または代替的に、ボイスコイルは、感度を改善するために、2つよりも多くの層または巻線レベル(たとえば、3、4、5、またはそれ以上の層もしくはレベル)を含んでもよい。いくつかの変更形態において、ワイヤ巻線は、所望の特性のために銀、金、または合金を含み得る。所望の機能のために、任意の好適な材料がワイヤ巻線に使用されてもよい。いくつかの他の変更形態では、巻線は、たとえば導電性インクを使用して、ダイアフラム上に印刷されてもよい。
【0143】
本技術のいくつかの変更形態の振動音響センサーは、被験体に関する音響信号を検出するために使用される従来の音響および電気聴診器に勝る利点を有する。
【0144】
第1に、本技術は、遠隔監視などの非接触アプリケーションに配備されてよい。他方、従来の音響聴診器は、適切な音響検出のために被験体の皮膚との接触を必要とする。
【0145】
第2に、音響信号は、広い範囲にわたって、良好な信号対雑音比により、検出され得る。逆に、従来の音響聴診器は、聴診器のダイアフラムの動きを空気圧に変換し、配管を介して聴いている人の耳に直接伝達し、音響エネルギーの伝達効率が悪いので、音量および明瞭度に関して劣る。したがって、聴く人には、空気管を介してダイアフラムの直接的振動が聞こえる。
【0146】
現在の技術は、(1)聴診器ダイアフラムの背後に装着されたマイクロフォン、または(2)ダイアフラムに装着された、または物理的に接続されている、圧電センサーのうちの一方のタイプである傾向がある、従来の電気聴診器トランスデューサに勝る利点を有する。
【0147】
聴診器ダイアフラムの背後に装着されたマイクロフォンは、聴診器ダイアフラムによって生じた音圧をピックアップし、それを電気信号に変換する。マイクロフォン自体にもダイアフラムがあるので、音響伝達経路は、聴診器ダイアフラム、聴診器ハウジングの内側の空気、そして最後にマイクロフォンのダイアフラムを含むか、またはそれらからなる。2つのダイアフラムが存在し、間に空気経路が介在する結果、マイクロフォンによって過剰な周囲雑音がピックアップされ、さらには音響エネルギーの伝達が非効率的になり得る。この非効率的な音響エネルギー伝達は、下記の電気聴診器における一般的な問題点である。既存の電子聴診器は、この基本的に劣るセンシング技術に対抗するために、マイクロフォンのための適応型雑音消去および様々な機械的遮音装置などの追加技術を使用している。しかしながら、これらは、音響電気トランスデューサの本質的な不備を補うに過ぎない。
【0148】
圧電センサーは、単にダイアフラムの音圧を感知するのとはやや異なる原理で動作する。圧電センサーは、結晶物質の変形によって電気エネルギーを発生させる。あるケースでは、ダイアフラムの動きが、ダイアフラムに機械的に結合された圧電センサー結晶を変形させ、その結果電気信号が発生する。このセンサーの問題点は、ダイアフラムの純粋な動きを感知するのに比べて変換機構が信号の歪みを発生させ得る点である。結果として得られる音は、したがって、音色が多少異なり、音響聴診器と比較して歪んでいる。
【0149】
静電容量式音響センサーは、高性能マイクロフォンおよびハイドロフォンによく使われている。静電容量式マイクロフォンは、振動する静電容量板によって引き起こされる可変静電容量を利用して、音響電気変換を実行する。聴診器ダイアフラムの背後に置かれた静電容量式マイクロフォンは、聴診器ダイアフラムの背後に装着された他のマイクロフォンで発生するのと同じ周囲雑音およびエネルギー伝達の問題を抱える。
【0150】
音響電気トランスデューサは、ダイアフラムの動きを直接検出し、ダイアフラムの動きをダイアフラムの動きの尺度である電気信号に変換する、静電容量電気変換原理に基づき動作する。電気信号のさらなる増幅または処理が、音響聴診器の音に非常によく似た特性を持つ増幅音の生成を円滑にするが、低歪みを維持したまま増幅率を上げる。
【0151】
これは、上で説明されているマイクロフォンまたは圧電アプローチによって生成される、より間接的なダイアフラム音感知に勝る著しい改善である。ダイアフラムの動きが直接感知されるので、センサーは外部の雑音の影響を受けにくく、信号はダイアフラムの動きのより正確な測定となる。音響聴診器では、ダイアフラムの動きが聴く人の耳で感知される音圧波を生み出す。音響電気センサーでは、その同じダイアフラムの動きが直接的な方式で電気信号を発生する。信号は、イヤフォンまたはヘッドフォンなどの音響出力トランスデューサを駆動するために使用され、聴く人の耳に当たる同じ音圧波をセットアップする。
【0152】
音響電気トランスデューサは、以前の聴診器設計が直面した固有の問題の多くを克服する一方で、信号に相当の白色雑音を加える。白色雑音は、人間の可聴範囲(一般的に20Hzから20kHz)内のすべての周波数を等しい量で含む音である。ほとんどの人々はこの音を、低周波成分よりも多くの高周波成分を含むと知覚するが、そうではない。このような知覚が起こるのは、連続する各オクターブが、それに先行するオクターブの2倍の周波数を有しているからである。たとえば、100Hzから200Hzまでには、100個の離散周波数がある。次のオクターブ(200Hzから400Hz)には、200個の周波数がある。その結果、聴く人にとって、白色雑音から人体音の差異を識別することは困難である。より高い強度の身体音(すなわちより大きな音)については、聴く人は体音をよく聞き取ることができるが、低い強度の音は背景白色雑音の中に消えてしまう。本技術のいくつかの変更形態では、そうではない。
【0153】
1.h.電位センサー
センシングデバイス110に使用されるセンサー101は、いくつかの実施形態において、非接触の、一定の距離を置いた、衣服を通しての測定を可能にする1つまたは複数の電位集積回路(EPIC)センサーを備える。現在のシステムおよびデバイス内で使用されるいくつかのEPICセンサーは、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6において説明されているような1つまたは複数を含むものとしてよく、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。概略図が、
図6Aおよび
図6Bに示されている。
図6Aおよび
図6Bに示されているEPICセンサーの変更形態は、電極、ガード、およびグランド(GND)の層を備える。回路は、GNDの上に位置決めされる。電極は、任意選択のレジスト層を有し得る。
図6Cは、
図2Aのセンシングデバイス110内の例示的なEPICセンサー102を描いている。
【0154】
電位センサー(EPS)は、これらが引き起こす静電界の外乱に起因して付近の物体の微妙な動きをピックアップすることができる。したがって、ダイアフラム116の近くにあるEPSは、振動するダイアフラム116の運動を感知することができる。ボイスコイルベースのセンサー101とは対照的に、EPSセンサーであれば、質量または追加のバネ定数を加えず、したがって、ダイアフラム116の元のコンプライアンスを維持し、それによって感度の潜在的低下を回避することもあり得る。
【0155】
いくつかの実施形態において、支持部材112は、開口が第1の側120および第2の側124のうちの一方にのみ画定されるように構成される。開口114は、第1の側120および第2の側124のうちの一方においてダイアフラム116によって覆われる。いくつかの実施形態において、これは、開口114によって形成される空洞を音響的に封止し得る。他の実施形態では、空洞が音響的に封止されないように、より小さな開口が第1の側120および第2の側124のうちの他方に設けられ得る。
【0156】
いくつかの実施形態において、支持部材112は、開口が第1の側120と第2の側124との間で支持部材112を貫通するようにフレームとして構成される。これらの実施形態のうちのいくつかでは、センサー101は、第1の側120と第2の側との間の開口114の空洞内に位置決めされ得る。これらの実施形態のうちの他方のいくつかでは、センサー101は、第1の側120または第2の側124のいずれかにおいて、開口114の空洞の外側に位置決めされ得る。
【0157】
いくつかの実施形態において、ダイアフラム116は、下にあるEPICセンサーに対して電位ピックアップを増幅するように構成されている層を備え得る。この層は、強誘電体層であってもよく、その厚さはナノまたはマイクロ単位の厚さであってもよい。したがって、ダイアフラム116に加えられる重量は最小であるが、これはダイアフラム116の材料に応じてダイアフラム116の振動の検出を可能にするか、または検出を改善することができる。EPICセンサーそれ自体は、ダイアフラム116に触れないことが理解されるであろう。
【0158】
いくつかの実施形態において、所与の方向からの音響信号の侵入を最小化するかまたは回避するための1つまたは複数のシールドが設けられ得る。たとえば、外側マウントは、存在しているときに、接地電位のために金属または別の導電性材料を含むことも可能である。いくつかの実施形態において、望ましくない雑音をさらに低減するのを助けるために、DRLが提供され得る。
【0159】
1.i.静電容量性ピックアップセンサー
いくつかの実施形態において、センサー101は、EPSピックアップの直接的代替的アプローチである静電容量性マイクロフォンであるが、ダイアフラム116の上に電荷を発生する能力を有する層が必要である。固定金属プレートがダイアフラム116の背後に近接近して設けられ、間にある空隙を誘電体として働かせるキャパシタの2つのコンポーネントを完成させる。金属プレートは、非常に小さなサイズからダイアフラム116のサイズ全体までの任意のサイズを有することも可能である。さらに、ダイアフラム116の上の層は、印加電圧を通して分極される導電性材料(一般にファントム電圧として知られている)であるか、または準永久電荷または双極子分極を提供するエレクトレット材料であり得る。いずれの場合も、追加された層は振動膜に質量を加え、その結果、慣性を生じる。
【0160】
1.j.磁界外乱センサー
いくつかの実施形態において、センサー101は、磁界外乱センサーであるが、膜内の任意のボイスコイルコンポーネントを一体化することがない。センサーの磁界は、ダイアフラム116上の強磁性層に通される。ダイアフラム116の振動が磁界を変調し、これはしたがってボイスコイルの巻線に電流を誘起し、信号を発生する。
【0161】
1.k.光検出器および光源
いくつかの実施形態において、センサー101は、ダイアフラム116の背後に位置決めされた光検出器および光源を備える。光源はダイアフラム116にエネルギービームを向けるように位置決めされ、光検出器はダイアフラム116から反射されたエネルギービームを検出し、反射されたエネルギービームの角度の変化(膜の動きを反映する)を測定するように位置決めされる。反射角度は、入射する圧力波とともに振動するダイアフラム116の局所的曲げに依存し得る。光検出器は、フォトダイオードアレイを備えるものとしてよく、これからの反射角は、反射信号強度の大部分をキャプチャするアレイ内の特定のフォトダイオードによって決定される。
【0162】
1.l.歪みセンサー
いくつかの実施形態において、センサー101は、ダイアフラム116、たとえばPVDFの層、の移動を検出するために、ダイアフラム116の表面上の戦略的な場所に直接的に位置決めされ得る歪みセンサーを含む。
【0163】
1.m.音響エコードップラー
いくつかの実施形態において、センサー101は、高周波音響信号をダイアフラム116の裏側に向けることができる音響エコードップラーを備え、これは検出器内に反射される。ダイアフラム116の振動はドップラー搬送波周波数に周波数変調され、復調の結果、膜振動ピックアップが生じる。音響ドップラーは、パルス波モードまたは連続波モードのいずれかで動作することが可能である。
【0164】
1.n.エコーセンサーベースの振動音響
システム100またはセンシングデバイス110の変更形態は、限定はしないが、連続波ドップラー(CWD)、パルス波ドップラー(PWD)、および飛行時間に基づくエコーセンサーのうちの1つまたは複数などの、1つまたは複数のエコーベースのセンサーを含み得る。
【0165】
連続波ドップラー(CWD):連続超音波信号がソースオシレータによって放射され、被験体で反射され、受信機に戻る。被験体上の振動は、元の振動信号を取り出すことを可能にする放射超音波信号の周波数/位相を変化させる。これは、調査対象の被験体の最大サンプリング周波数を与える。
【0166】
パルス波ドップラー(PWD):短い超音波バーストが送信され、受信機は応答を待つ。この技術は、CWDと同様の被験体振動を分解することができるが、バースト間隔のせいで、被験体のサンプリング周波数を導入する。対応するサンプリング周波数のナイキスト周波数は、(パルス/秒)/2である。したがって、ミリ秒毎に1パルスの場合、最大分解被験体振動周波数は500Hzである。しかしながら、PWDは特定の深さ、または放射体/センサーからの距離における振動を分解することができる。これは、パルスの飛行時間情報を考慮し、所望の距離の外にある信号を除去することによって達成される。したがって、PWDは、目標距離の外にある信号、他のソース、または被験体を超えて移動し壁から反射された放射パルスによって生成された信号を除去することができる。
【0167】
飛行時間:PWDと比較してより単純なバージョンは、飛行時間のみが考慮されるパルス超音波信号である。
【0168】
有利には、これらのエコーベースのセンサーは、振動(被験体からの振動音響信号など)さらには距離または速度の測定を可能にすることができる。エコーベースのセンサーは、非接触、非侵襲的であり、被験体に害を与えない。振動音響信号は、いくつかの変更形態において、約1cmから約10mの距離のところから検出され得る。検出距離は、約10m、約9m、約8m、約7m、約6m、約5m、約4m、約3m、約2m、または約1mであってよい。信号検出は、被験体の衣類または他の衣服を通して実行され得る。さらに、広周波数帯域で信号検出が取得され得る。
【0169】
エコーベースの音響システムは、広く放射体コンポーネントと受信機コンポーネントとを備え、受信機コンポーネントが被験体に入射した放射体による放射信号に応答して被験体からの信号を検出することに依存する能動的システムである。したがって、いくつかの変更形態において、超音波範囲内の放射信号が使用され、好ましくは、可聴スペクトルの端にある程度のヘッドルームを保つために25kHzを超える(可聴範囲内の放出信号を使用することは好ましくないので)。高い方の端では、最大値は、空気中の超音波信号の吸収とADCのサンプリングレートにより、100kHz程度であり得る。50kHzでは空気中の音響吸収は約1~2dB/m、100kHzでは約2~5dB/m、500kHzでは約40~60dB/m、1Mhzでは約150~200dB/mである。より高い周波数における技術的問題は、高速アナログ/デジタル変換器の利用可能性などの、十分な品質で信号をキャプチャする能力に関するものである。
【0170】
エコーセンサーの放射体コンポーネントおよび受信機コンポーネントの数は制限されない。
図33D~
図33Hを参照しつつさらに詳細に説明されるように、異なる組合せが使用され得る。たとえば、単一の放射体コンポーネントおよび単一の受信機コンポーネント、または2つの放射体コンポーネントおよび単一の受信機コンポーネント、または単一の放射体コンポーネントおよび2つの受信機コンポーネント、または2つの放射体コンポーネントおよび2つの受信機コンポーネントが提供され得る。
【0171】
放射体コンポーネントは、超音波信号を放射するように構成された任意のタイプの放射体とすることができる。放射体は、おそらく可能な限り一方向であるべきである。一例は、Pro‐Wave Electronics 400ET/R250 Air Ultrasonic Ceramic Transducerである。
【0172】
受信機コンポーネントは、被験体からの放射超音波信号を検出するように構成された任意の受信機タイプであってよい。いくつかの変更形態において、受信機コンポーネントは、十分な信号対雑音比で超音波信号をキャプチャすることができるマイクロフォンであってよい。これは、コンデンサマイクロフォン、ダイナミックマイクロフォン、MEMSマイクロフォンなどの、任意のタイプのマイクロフォンを含み得る。いくつかの変更形態にいて、超音波対応MEMSマイクロフォンは、コンパクトであるため好ましい。他の変更形態では、受信機コンポーネントは、その周波数に同調される専用超音波受信機である。いくつかの変更形態において、受信機コンポーネントは可能な限り単一指向性である。受信機コンポーネントの例は、Pro‐Wave Electronics 400ST/R100 Transducer、Pro‐Wave Electronics 400ST/R160 Transducer、またはInvensense ICS‐41352を含む。
【0173】
1.o.レーザードップラー干渉計
いくつかの実施形態において、センサー101は、ドップラー効果および干渉を利用するレーザードップラー干渉計を備える。音響エコードップラーとは対照的に、結果としてこの光ベースのアプローチはより高いSNRおよび振幅分解能をもたらす。レーザー光の代わりに、セットアップは、飛行時間型レーダー、レーダードップラー、超広帯域レーダー(UWB)などの任意の他の一般に知られているレーダーセンシング技術を含む。レーザーおよびレーダーに加えて、振動ピックアップは、電磁波の任意の周波数に基づくものとしてよく、TOFおよびドップラー効果などの同じ基本方法と組み合わされ得る。
1.p.システム内の追加のセンサー
【0174】
システム100は、限定はしないが、周囲温度、周囲湿度、周囲放射、気圧、高度、周囲騒音、および周囲光のうちの1つまたは複数を測定するためのコンテキストセンサー、エコードップラーセンサー、運動センサー、温度センサー、VOCセンサー、マシンビジョンセンサー、環境カメラ、気圧計などの、被験体または環境に関連する振動音響信号以外の信号を検出するためなどの追加のセンサー、IMU、GPS、温度計を備え得る。
【0175】
コンテキストセンサー
実生活で何が起こっているのか、ライフスタイルおよび日々の状況がバイタルサインにどのような影響を与えるのか、生活の質が病気および病状によってどのような影響を受けるのか、治療やケアの推奨が実際にどの程度守られるのか、についてはほとんど知られていない。開発者は、健康データとケアを日常生活の背景状況の中に置くことで、いくつかの変更形態において、生体信号、バイタルサイン、および福祉のより豊かで個別化された解釈を行うための重要な洞察を加えることができると決定した。いくつかの変更形態において、システム100は、環境および/または他の背景状況データ(たとえば、健康の社会的決定要因)を提供する1または複数のセンサーをさらに備えることができる。これは、振動音響センサー、または他のセンサーのいずれかを用いて取得された振動音響データをキャリブレートし、および/またはより適切に解釈するために使用され得る。そのようなデータ(たとえば、健康の環境的および/または社会的決定要因)は、たとえば、より正確な機械学習および/またはAIデータ分析を行えるようにデータを背景状況に当てはめるのに役立ち得る。たとえば、いくつかの変更形態において、センシングデバイス110またはシステム100は、コンテキストセンサーを含んでもよい。コンテキストセンサーは、振動音響データおよび/または他の好適なデータを分析する際にコンテキストセンサーからのセンサーデータが考慮され得るようにコンピューティングシステム102またはセンシングデバイス110の電子機器システム内のプロセッサ105と通信するものとしてよい。
【0176】
コンテキストセンサーは、1つもしくは複数の周囲特性および/または環境に関するセンシングデバイスの1つもしくは複数の特性を測定するための環境センサーなどの1つもしくは複数の好適なセンサーを含み得る。たとえば、コンテキストセンサーは、周囲光センサー、周囲騒音センサー(マイクロフォン)、周囲湿度センサー、周囲圧力センサー、周囲温度センサー、空気品質センサー(たとえば、揮発性有機化合物(VOC)の検出)、高度センサー(たとえば、相対圧力センサー)、GPS、および/またはセンシングデバイスが動作している環境を特性評価する他の好適なセンサーを含み得る。それに加えて、または代替的に、コンテキストセンサーは、慣性測定ユニット(IMU)、個別のジャイロスコープおよび/または加速度計、および/または他の好適なセンサーを含み、環境に対するセンシングデバイスを特性評価するものとしてよい。
【0177】
これらは、収集された関連センサーデータをコンテキスト化するのに有用であり得る。それに加えて、または代替的に、周囲環境データ(たとえば、周囲雑音)は、関連する生体振動音響信号成分からの雑音除去のために使用され得る。そのような雑音除去は、たとえば、デバイス上でアクティブノイズキャンセレーションとして、または後処理段階として実行され得る。
【0178】
音響心拍記録(ACG)センサー
いくつかの変更形態において、システム100は、音響心拍記録センサーを使用して、血液が様々な室、弁、および大血管を通って移動するときの心臓の振動を検出するための1つまたは複数のセンサーをさらに含んでもよい。ACGセンサーは、心臓の4つの配置でこれらの振動を記録することができ、「グラフシグネチャ」を提供する。心臓弁の開閉がグラフに寄与する一方で、心筋の収縮および強さもグラフに寄与する。その結果、心臓の動きの動的な様子が提示される。心臓が効率よく、ストレスなく動いていれば、グラフは滑らかで明瞭である。心臓が非効率的であれば、各タイプの寄与する機能障害に関連する明確なパターンがある。ACGは、一般的な診断検査であるECGと同じでない。心電図(ECG)は、電気インパルスが心臓組織の神経を通過するときに皮膚に現れる通りに電気インパルスを記録する。ECGは、もっぱら、心臓の神経組織網が何らかの外傷、損傷(たとえば、過去の心臓発作または感染症によるもの)、重度の栄養不均衡、過度の圧力からのストレスの影響を受けているかどうかを指示する。神経系に対する効果のみが検出される。筋肉または弁がどれだけうまく機能しているかなどはわからない。それに加えて、ECGは、もっぱら、病気を診断するために使用される。ACGは電気的機能だけでなく、心筋機能も見るので、神経系全体および筋肉の代謝の窓口として働く。心臓を使用することで、神経および筋肉が一緒に動作している様子を「リアルタイム」に見ることが可能になる。このインターフェースの結果、心臓および人体の健康状態について、ユニークで客観的な洞察が得られる。
【0179】
受動的音響セレブログラフィ(ACG)センサー
いくつかの変更形態において、システム100は、脳組織内の血液循環を検出するための1つまたは複数の受動的音響セレブログラフィセンサーをさらに含み得る。この血液循環は、脳の血管系内の血液循環の影響を受ける。各心拍により、生じる発振に従って繰り返し起こるパターンに従って血液が頭蓋骨内を循環する。この発振の効果は、延いては、脳のサイズ、形態、構造、および血管系に依存する。したがって、心拍毎に、脳組織さらには脳脊髄液内に微小運動を促し、頭蓋内圧にわずかな変化を生じさせる。これらの変化は、頭蓋骨内で監視され、測定され得る。1つまたは複数の受動的音響セレブログラフィセンサーは、これらの信号を正しく識別するために、加速度計のような受動的センサーを備え得る。ときには、高感度マイクロフォンが使用され得る。
【0180】
能動的音響セレブログラフィ(ACG)センサー
いくつかの変更形態において、システム100は、1つまたは複数の能動的音響セレブログラフィセンサーをさらに備え得る。能動的ACGセンサーは、多周波超音波信号を検出して細胞レベルまたは分子レベルでの有害な変化を分類するために使用され得る。受動的ACGセンサーが提供する利点のすべてに加えて、能動的ACGセンサーは、受信された音響信号のスペクトル分析を行うこともできる。これらのスペクトル分析は、脳の血管系内の変化だけでなく、細胞および分子構造の変化も表示することができる。能動的ACGセンサーは、経頭蓋ドップラー検査を実行するためにも使用され、任意選択でカラー表示も可能である。これらの超音波検査手順は、脳の血管内の血流速度を測定することができる。これらは、たとえば、クモ膜下出血の後遺症で起こる、塞栓、狭窄、および血管収縮を診断することができる。
【0181】
心弾動図記録(BCG)センサー
いくつかの変更形態において、システム100は、心臓によって引き起こされる衝撃力を検出するための1つまたは複数の心弾動図記録センサー(BCG)をさらに含み得る。下行大動脈を通る血液の下降運動は、上向きの跳ね返りを生じさせ、各心拍で身体を上方に移動させる。大動脈の様々部分が拡張し、収縮すると、身体は繰り返しパターンで下降と上昇を続ける。心弾動図記録法は、心拍毎に大血管内に血液が急激に送り出されることによって生じる人体の反復運動のグラフ表現を形成する技術である。これは、心臓の機械的な動きによって引き起こされ、身体の表面からの非侵襲的な方法によって記録され得る、1~20Hzの周波数帯のバイタルサインである。主な心臓機能不全が、BCG信号を観察し分析することによって識別され得る。また、BCGは、カメラベースのシステムを非接触方式で使用することにより監視することもできる。BCGの一使用例は、体重計に乗った人の身体の跳ね返りを計測する心弾動図体重計である。BCG体重計は、体重だけでなく、人の心拍数も表示することができる。
【0182】
筋電図(EMG)センサー
いくつかの変更形態において、システム100は、骨格筋によって生成される電気的活動を検出するための1つまたは複数の筋電図(EMG)センサーをさらに含み得る。EMGセンサーは、筋電図と呼ばれる記録を生成するための筋電計を備え得る。筋電計は、筋肉細胞が電気的または神経学的に活性化されたときに筋肉細胞が発生する電位を検出する。これらの信号は、医学的異常、活性化レベル、または動員順を検出するため、または人間もしくは動物の動きの生体力学を分析するために分析され得る。また、EMGはジェスチャー認識でも使用され得る。
【0183】
電気眼球図記録(EOG)センサー
いくつかの変更形態において、システム100は、人間の目の前面と背面との間に存在する角膜網膜定位電位を測定するための1つまたは複数の電気眼球図記録(EOG)センサーをさらに含んでもよい。その結果得られる信号は、電気眼球図と呼ばれる。主な用途は、眼科診断および眼球運動の記録である。EOGは、網膜電図とは異なり、個々の視覚刺激に対する反応を測定するものではない。眼球運動を測定するためには、一対の電極が、典型的には、眼の上下または眼の左右に置かれる。眼球が中心位置から2つの電極の一方に向かって移動する場合、この電極は網膜の正側を、反対側の電極は網膜の負側を「見る」。その結果、電極の間に電位差が発生する。安静時電位が一定であると仮定すると、記録された電位は眼の位置の尺度となる。
【0184】
嗅電図記録(EOG)センサー
いくつかの変更形態において、システム100は、被験体の嗅覚を検出するための1つまたは複数の嗅電図記録(EOG)センサーをさらに含み得る。EOGセンサーは、他の形態の電位記録法(ECG、EEG、およびEMGなど)が他の生体電気活動を測定し記録する方法と類似する方法で、嗅覚上皮の変化する電位を検出することができる。嗅電図記録法は、昆虫の触角嗅覚の電位記録法である触覚電図記録法と密接に関係している。
【0185】
脳波記録(EEG)センサー
いくつかの変更形態において、システム100は、脳の電気的活動の電気生理学的検出のための1つまたは複数の脳波記録(EEG)センサー、または脳に「耳を傾ける」、そして音声処理回路に関係する微妙な圧力および圧力勾配の変化をキャプチャするために頭蓋骨無響室上に置かれた振動音響センサーをさらに含み得る。EEGは、典型的には、非侵襲的であり、電極は頭皮に沿って置かれるが、皮質脳波記録法のように、侵襲的電極がときには使用される。EEGは、脳の神経細胞内のイオン電流の結果生じる電圧変動を測定する。臨床的には、頭皮に付けた複数の電極から記録されるような、一定期間にわたって脳の自発的電気的活動を記録することを指す。診断アプリケーションは、事象関係電位、またはEEGのスペクトル内容のいずれか注目する。前者は、「刺激開始」や「ボタン押下」などの事象に時間的にロックされた電位変動を調べる。後者は、周波数領域においてEEG信号で観察され得るタイプの神経振動(一般に「脳波」と呼ばれる)を分析する。EEGは、EEGの読み取りにおける異常の原因となる、てんかんの診断に使用され得る。これは睡眠障害、麻酔の深さ、昏睡、脳障害、および脳死を診断するためにも使用され得る。EEG、さらには核磁気共鳴画像法(MRI)およびコンピュータ断層画像法(CT)は、腫瘍、脳卒中、および他の限局性脳障害の診断に使用され得る。有利には、EEGは、利用可能なモバイル技術であり、CT、PET、またはMRIでは可能でないミリ秒範囲の時間分解能を提供する。EEGの派生技術は、誘発電位(EP)を含み、これは、何らかの種類の刺激(視覚、体知覚、または聴覚)の提示に時間ロックされたEEG活動を平均化することを伴う。事象関係電位(ERP)は、より複雑な刺激処理に時間ロックされ平均化されたEEG反応を指す。
【0186】
超広帯域(UWB)センサー
いくつかの変更形態において、システム100は、1つまたは複数の超広帯域センサー(UWB、超広帯域、ウルトラバンドとしても知られている)をさらに含んでもよい。UWBは、無線スペクトルの大部分にわたって短距離、高帯域幅通信に非常に低いエネルギーレベルを使用することができる無線技術である。UWBは、従来から非協力的レーダー画像処理に応用を有する。最近の用途は、センサーデータの収集、高精度の位置特定、および追跡アプリケーションを対象としている。従来の無線通信とUWBとの間の著しい違いは、従来のシステムは正弦波のパワーレベル、周波数、および/または位相を変化させることによって情報を伝送している点である。UWBは、特定の時間間隔で無線エネルギーを発生させ、広い帯域を占有し、それによりパルス位置変調または時間変調を可能にすることによって情報を伝送する。情報は、また、パルスの極性、およびその振幅をエンコードし、ならびに/または直交するパルスを使用することによって、UWB信号(パルス)上で変調され得る。UWBパルスは、時間または位置変調をサポートするように比較的低いパルスレートで散発的に送信され得るが、UWBパルス帯域幅の逆数までのレートでも送信され得る。パルスUWBシステムは、UWBパルスの連続ストリーム(Continuous Pulse UWBまたはC-UWB)を使用して、1秒当たり1.3ギガパルスを超えるチャネルパルスレートで実証されており、675Mbit/sを超える前方向誤り訂正エンコードデータレートをサポートする。
【0187】
UWB技術の価値のある態様は、UWB無線システムが様々な周波数での伝送の「飛行時間」を決定することができることである。これは、それらの周波数の少なくともいくつかが見通し内軌跡を有するので、多重伝搬を克服するのに役立つ。協力的対称双方向測位技術では、距離は、ローカルクロックドリフトおよび確率論的不正確さを補償することによって高い分解能および高い精度で測定され得る。
【0188】
パルスベースのUWBの別の特徴は、パルスが非常に短い(500MHz幅のパルスに対して60cm未満、1.3GHz帯域幅のパルスに対して23cm未満)ので、ほとんどの信号反射は元のパルスと重ならず、狭帯域信号のマルチパスフェージングはない。しかしながら、それでも高速パルスシステムに対して多重伝搬およびパルス間干渉があり、これは符号化技術によって軽減されなければならない。
【0189】
超広帯域は、「see‐through‐the‐wall」高精度レーダー画像技術、高精度位置特定および追跡(無線機間の距離測定を使用する)、高精度到着時刻ベース定位アプローチでも使用されている。これは、空間容量が約1013ビット/s/m2と効率的である。UWBレーダーは、地下鉄の線路に落ちた人間または物体を検出するために設計された、自動ターゲット認識アプリケーションの能動的センサーコンポーネントとして提案されている。
【0190】
超広帯域パルスドップラーレーダーは、心拍数および呼吸信号さらには人間歩行分析および転倒検出などの、人体のバイタルサインを監視するためにも使用され得る。有利には、UWBは連続波レーダーに比べて消費電力が少なく、高分解能の飛程プロファイルを有する。
【0191】
心理心電図記録(SCG)センサー
いくつかの変更形態において、システム100は、動いているときに心臓によって胸壁に伝達される心臓振動を非侵襲的に測定するための1つまたは複数の心理心電図記録(SCG)センサーをさらに含み得る。SCGは心周期における様々な事象のタイミングを評価するために使用され得る。これらの事象を使用して、たとえば心筋収縮性を評価することも可能であろう。SCGは心拍変動推定値を計算するのに十分な情報を提供するためにも使用できる。心周期タイミングおよびSCG波形振幅のより複雑な応用例は、SCGから呼吸情報を計算することがある。
【0192】
心内電位図(EGM)センサー
いくつかの変更形態において、システム100は、動いているときに心臓によって生成される心臓電気的活動を非侵襲的に測定するための1つまたは複数の心内電位図(EGM)センサーをさらに含み得る。これは、心臓カテーテルを介して心臓内に留置された電極によって測定されるような特定の心臓軌跡の電位の変化の記録を提供する。これは、ヒス束または心臓伝導系内の他の領域などの身体表面電極によって評価できない軌跡に使用される。
【0193】
パルスプレチスモグラフ(PPG)センサー
いくつかの変更形態において、システム100は、血管の充血の動態を非侵襲的に測定するための1つまたは複数のパルスプレチスモグラフ(PPG)センサーをさらに含み得る。センサーは、単一の波長の光、または複数の波長の光を使用してもよく、これらは遠赤外線、近赤外線、可視光線、または紫外線を含む。紫外線の場合、使用される波長は約315nmから400nmの間であり、センサーは、その動作中に1日当たり1平方センチメートル当たり8ミリワット時未満を被験体に照射することを意図されている。
【0194】
ガルバニック皮膚反応(GSR)センサー
いくつかの変更形態において、システム100は、1つまたは複数のガルバニック皮膚反応(GSR)センサーをさらに備え得る。これらのセンサーは、本明細書において説明されているようにウェット(ゲル)、ドライ、または非接触の電極のいずれかを利用し得る。
【0195】
揮発性有機化合物(VOC)センサー
いくつかの変更形態において、システム100は、被験体の呼気中の揮発性有機化合物(VOC)または半VOCを検出するための1つまたは複数のVOCセンサーをさらに含み得る。呼気分析は、病気の診断および監視を可能とすることができる。いくつかのVOCは、人体内の生物過程に結び付いている。たとえば、ジメチルスルフィドは肝性口臭の結果として呼気に含まれ、アセトンが糖尿病のケトアシドーシス時に肺を経由して排泄される。典型的には、VOC排泄物または半VOC排泄物は、プラズモン表面共鳴、質量分析法、酵素ベース、半導体ベース、またはインプリントポリマーベースの検出器を使用して測定され得る。
【0196】
音声抑揚(VTI)センサー
いくつかの変更形態において、システム100は、1つまたは複数の音声抑揚(VTI)センサーモジュールをさらに備え得る。VTI分析は、被験体に、口ごもらせる、音を引き伸ばさせる、または鼻にかかった声で話させる、一連の精神的および身体的な状態を示すことができる。これらは、人間の耳では検出できないほど短時間でも被験体の声をきしませるか、ジッタを生じさせ得る。さらに、声調の変化は、上気道や下気道、さらには心臓血管の状態を示すこともあり得る。開発者は、VTI分析が、Covid‐19感染からのいくつかの呼吸器疾患の早期診断に使用できることを発見した。
【0197】
静電容量センサー
いくつかの変更形態において、システム100は、1つまたは複数の静電容量/非接触センサーをさらに備え得る。そのようなセンサーは、非接触電極を含んでもよい。これらの電極は、インピーダンス適応物質がないと、時間の経過とともに皮膚-電極接触が不安定になる可能性があるので、開発された。この困難は、非導電性材料(すなわち、皮膚と電極自体の間の小さな誘電体)を通して頭皮との物理的接触を回避することによって対処された。ただし、電極インピーダンスの異常な増加(>200MΩ)があり、この方法で、これは定量化可能であり、時間の経過とともに安定する。
【0198】
ドライ電極の特定のタイプは、静電容量電極または絶縁電極として知られている。これらの電極は、皮膚と直列に置かれた単純なキャパシタとして働くので、身体とのオーミック接触を必要とせず、したがって、信号は容量結合される。受信された信号は、オペアンプに接続され、次いで標準的な計測器に接続され得る。
【0199】
皮膚によく接触する誘電体材料を使用すると、300pFから数ナノファラッドのかなり大きな結合容量が得られる。その結果、標準的な高インピーダンスFET(電界効果トランジスタ)アンプを使用することで、低雑音および適切な周波数応答を有するシステムが容易に達成可能である。
【0200】
ウェット電極およびドライ電極は、機能するために皮膚との物理的接触を必要とするが、静電容量電極は、髪、衣類、または空気などの絶縁層を通して、接触せずに使用され得る。これらの非接触電極は、一般的に単純な静電容量電極として記述されているが、実際には、絶縁体も無視できない抵抗を有しているので、小さな抵抗素子もある。
【0201】
静電容量センサーは、直接的な皮膚接触を介して、または誘電体ゲルおよび接地電極のない1層および2層の衣類を通して、被験体の心拍数などの心臓信号を測定し、呼吸数を監視するために使用され得る。高インピーダンス電位センサーは、呼吸信号および心臓信号を測定するのにも使用され得る。
【0202】
静電容量プレートセンサー
いくつかの変更形態において、システム100は、1つまたは複数の静電容量プレートセンサーをさらに備え得る。驚くべきことに、開発者は、水分量、電解質、および発汗レベルの違いに伴う人体の誘電特性の変化を使用して、人体の抵抗特性が調べられ得ることも発見した。この変更形態において、センシングデバイスは、調べられるべき身体または身体の一部のいずれかの側に位置決め可能な2つの平行静電容量プレートを備え得る。特定の時間変化電位がプレートに印加され、特定の電位を維持するために必要な瞬間電流が測定され、生理学的状態をデータに相関する機械学習システムへの入力として使用される。身体または身体の一部の誘電特性が抵抗とともに変化するときに、その変化は電位プロファイルを維持するために必要な電流に反映される。いくつかの変更形態において、ターゲットの身体状態は、そのような静電容量プレートを使用し、静電容量プレート上に立っている被験体を調べることを可能にすることでてスクリーニングされ得る。
【0203】
マシンビジョンセンサー
いくつかの変更形態において、システム100は、被験体、または被験体の一部の運動を、被験体が立っているか動いている(たとえば、歩く、走る、スポーツをする、バランスをとるなどを行っている)ときに、キャプチャするためのカメラなどの1つまたは複数の光学センサーを備える1つまたは複数のマシンビジョンセンサーをさらに含んでもよい。この方式で、バランスおよび歩行パターン、震え、揺れ、または体の一部をかばうことなど、運動学的動作に影響を与える生理学的状態が検出され、重心位置決めなど、装置内の他のセンサーから取得される他のデータと相関させることができる。マシンビジョンは、皮膚の動きを増幅して、血圧、心拍数、および呼吸数などの生理学的パラメータを正確に測定することを可能にする。たとえば、頭部にポンプで送り込まれる血液に反応して引き起こされる頭部の微妙な動きの測定値、観察された皮膚の色によるヘモグロビン情報、動脈や顔面に近い皮膚から反射される光の周期性から、心拍数/呼吸数、心拍数/呼吸数の変動、心拍数/呼吸数の長さが推定され得る。肺の健康の態様は、胸部、鼻孔、および肋骨の運動パターンから評価され得る。
【0204】
広範な動作分析システムが、様々な場面で動作がキャプチャされることを可能にし、それらは大きく分けて、直接的技術(身体に固定されるデバイス、たとえば、加速度計)および間接的技術(ビジョンベース、たとえば、ビデオまたは光電子)に分類され得る。直接的方法は、多様な環境内で運動学的情報が取得されることを可能にする。たとえば、慣性センサーは、様々な動き(歩行、円盤投げ、馬術、および水泳)の実行に関する洞察をもたらすツールとして使用されてきた。慣性センサーデータの正確さに影響を及ぼすセンサードリフトは、処理時に低減され得るが、まだ完全に解決されておらず、キャプチャ期間も限定されている。それに加えて、生体力学的アプリケーションのための動作分析システムは、正確な運動学的情報を、理想的には時宜にかなった方式で、実行者に負担をかけず、または自然な動きに影響を及ぼすことがなく、収集することができるべきであるとする、基準を満たすべきであることが認識されている。そのようなものとして、データは参加者の動きへの干渉を最小限に抑えながら遠隔で参加者からデータを収集されるので、間接的技術は、直接的技術と比較して多くの場面でより適切であると区別され得る。間接的方法も、以前にはスポーツ競技中に行われた生体力学的分析に対する唯一の可能なアプローチであった。過去数十年の間に、生体力学研究者に利用可能な間接的なビジョンベースの方法は、より正確で自動化されたシステムへと劇的に進歩してきました。しかしながら、運動分析システムの前述の重要な属性を完全に満たすツールはまだ開発されていない。したがって、これらの分析は、ダンス、ランニング、テニス、ゴルフ、アーチェリー、射撃生体力学、他のスポーツおよび身体活動のコーチングや物理療法に使用され得る。他の用途は、反復性ストレス障害ならびに運動および姿勢に関係する他の身体的ストレス要因の危険に人を曝す職業の人間工学的訓練を含む。このデータは、また、家具、セルフトレーニング、道具、および機器の設計にも使用され得る。
【0205】
マシンビジョンセンサーは、たとえば、被験体の瞳孔の拡張、強膜紅斑、皮膚の色の変化、顔面紅潮、および/または突飛な動きのうちの1つまたは複数を撮像するための1つまたは複数のデジタルカメラセンサーを含み得る。コヒーレント光で動作する他の光学センサーが使用され得るか、または飛行時間演算を使用してもよい。いくつかの変更形態において、マシンビジョンセンサーは、OrrbecのAstra Embedded Sなどの3Dカメラを含む。
【0206】
熱センサー
いくつかの変更形態において、システム100は、赤外線センサー、温度計、または同様のものを含む1つまたは複数の熱センサーをさらに含んでもよい。熱センサーは、センシングデバイス110と一緒に組み込まれ得るか、またはそれとは別個であってもよい。熱センサーは、被験体の涙湖および/または涙管外部のうちの1つまたは複数の温度測定を実行するために使用され得る。いくつかの変更形態において、熱センサーは、限定はしないが、赤外線温度計、3V、単一センサー(アレイではない)、勾配補償、医療用±0.2~から±0.3ケルビン度/摂氏、5度視野角(視野‐FOV)を含む熱電対列など、ジンバル上の熱電対列を含み得る。
【0207】
歪みゲージセンサー
いくつかの変更形態において、システム100は、被験体の体重を測定するために使用され得る1つまたは複数の歪みゲージセンサーを含み得る。他の変更形態では、これらのセンサーは、振動性心臓図または心弾動図を取得するために使用され得る。これらのセンサーは、制限することなく、抵抗歪みゲージまたは圧電歪みゲージであってもよい。
【0208】
センサーの組合せ
上述のセンサー101と1つまたは複数の追加のセンサーの任意の組合せは、本システム100の変更形態において使用され得る。センサーの組合せは、センシングデバイス110内に、または複数のデバイスにわたって収納され得る。
【0209】
1.p.電子システム
いくつかの変更形態において、センシングデバイス110は、電子機器システムをさらに含んでもよい。電子機器システムは、センサー101およびセンシングデバイス110の動作をサポートするための様々な電子機器コンポーネントを備え得る。たとえば、電子機器システムの少なくとも一部は、支持部材112内に配置構成されている回路基板を含み得る。電子機器システムは、デバイスの信号調整、データ分析、電力管理、通信、および/または他の好適な機能を実行するように構成され得る。電子機器システムは、コンピューティングシステム102およびプロセッサ105など、システム100の他のコンポーネントと通信していてもよい。電子機器システムは、いくつかの変更形態において、センシングデバイス110のためのマイクロコントローラユニットモジュールとして機能してもよく、したがって、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つのメモリデバイス、好適な信号処理回路、コンピュータシステム102と通信するための少なくとも1つの通信モジュール、および/または電源を管理する少なくとも1つの電力管理モジュールを備え得る。これらのコンポーネントまたはモジュールのうちの1つまたは複数は、1つまたは複数の電子回路基板(たとえば、PCB)上に配置構成されてもよく、この電子回路基板は、次いで、支持部材112に関して装着され得る。いくつかの変更形態において、電子機器システムは、音声またはデータ記録(たとえば、電子健康記録のための医療メモの読み上げを可能にする)などのさらなる機能性を可能にするためのマイクロフォンおよび/またはスピーカーも備え得る。
【0210】
1.q.コンピュータシステム
プロセッサ105(たとえば、CPU)および/またはメモリデバイス(1つまたは複数のコンピュータ可読記憶媒体を含むことができる)は、システム100を動作させるためのコントローラを提供するように協働し得る。たとえば、プロセッサ105は、システム100内の様々なセンサー101のいずれかに対するサンプリング周波数を設定し、および/または調整するように構成され得る。別の例として、プロセッサ105は、センサーデータ(たとえば、センサー信号条件の前および/または後の)を受信し、センサーデータは、1つまたは複数のメモリデバイスに記憶されてもよい。いくつかの変更形態において、メモリデバイスに記憶されているデータの一部または全部は、(たとえば、HIPAAに準拠したセキュリティのために)好適な暗号化プロトコルを使用して暗号化されてもよい。いくつかの変更形態において、プロセッサ105およびメモリデバイスは、単一チップ上に実装され得るが、他の変更形態では、これらは別個のチップ上に実装され得る。
【0211】
コンピューティングシステム102は、システム100と対になるハブ、サーバ、クラウドネットワークなどの1つまたは複数のネットワークデバイスにデータを伝達するように構成されてもよい。いくつかの変更形態において、通信モジュールは、暗号化方式で情報を伝達するように構成されてもよい。いくつかの変更形態において、通信モジュールは、別個のデバイスとしてプロセッサ105から分離されてもよいが、変更形態では、通信モジュールの少なくとも一部は、プロセッサと一体化されてもよい(たとえば、プロセッサは、高度暗号化標準(AES)ハードウェアアクセラレータ(たとえば、128/256ビット鍵)またはHASH(たとえば、SHA‐256)などの暗号化ハードウェアを備え得る)。
【0212】
センシングデバイス110またはコンピューティングシステム102の通信モジュールは、有線接続(たとえば、USB、mini‐USBなどの好適な接続インターフェースを有するケーブルなどの物理的接続を含む)および/またはワイヤレスネットワーク(たとえば、NFC、Bluetooth(登録商標)、WiFi、RFID、またはケーブルによって接続されていない任意のタイプのデジタルネットワークを通じて)を介して通信し得る。たとえば、デバイスは、ペアワイズ接続(1:1の関係)、またはハブ-スポークもしくはブロードキャスト接続(「1対多」または1:mの関係)で互いに直接的に通信し得る。別の例として、デバイスは、Bluetooth(登録商標)メッシュネットワーキングなど、メッシュネットワーキング接続(たとえば、「多対多」、またはm:mの関係)を通して互いに通信し得る。ワイヤレス通信は、複数の通信規格、プロトコル、および技術のいずれかを使用してもよく、これらは限定はしないが、Global System for Mobile Communications(GSM)、拡張データGSM環境(EDGE)、高速下りパケットアクセス(HSDPA)、高速上りパケットアクセス(HSUPA)、Evolution、Data‐Only(EV‐DO)、HSPA、HSPA+、Dual‐Cell HSPA(DC‐HSPDA)、ロングタームエボリューション(LTE)、近距離通信(NFC)、広帯域符号分割多元接続(W‐CDMA)、符号分割多元接続(CDMA)、時間分割多元接続(TDMA)、Bluetooth(登録商標)、ワイヤレスフィデリティ(WiFi)(たとえば、IEEE 802.11a、IEEE 802.11b、IEEE 802.11g、IEEE 802.11n、および同様のもの)、または他の任意の好適な通信プロトコルを含む。いくつかのワイヤレスネットワーク配備では、複数のセルラーネットワーク(たとえば、3G、4G、5G)からのネットワークを組み合わせてもよく、および/またはセルラー、WiFi、および衛星通信の混合を使用してもよい。
【0213】
いくつかの変更形態において、通信モジュールは、複数のデータ通信ストリームまたはチャネルを含むものとしてよく、広周波数帯域データ転送(たとえば、最小遅延コーデックによるオーパス20kHz)を確実にするのを助ける。そのような複数のデータ通信ストリームは、典型的なワイヤレスデータ伝送コーデックに勝る改善である。たとえば、ほとんどのワイヤレスデータ通信コーデック(たとえば、G.711)は、バンドパスフィルタを使用して、人間の音声の最適範囲である300Hzから3400Hzのみをエンコードする(これは一般に狭帯域コーデックと称される)。別の例として、いくつかのワイヤレスデータ伝送コーデック(たとえば、G.722)は、300Hzから7,000Hzの範囲をエンコードする(これは一般的に広帯域コーデックと称される)。しかしながら、エネルギーの大半は1,000Hz未満に集中し、5,000Hzより上の可聴音は事実上なく、一方、ほとんどのコーデックの3,400Hz遮断周波数より上で測定可能な量のエネルギーがある。G.711およびG.722の両方に対するデータスループットの要件が同じなのは、G.722で使用される変調が適応差分パルス符号変調方式(ADPCM)というPCMの修正バージョンであるからである。コーデックにこの種の複雑さが加わり、プロセスパワーが一定であるときに、これは待ち時間を加えることになる。そのようなものとして、G.711はちょうど1ミリ秒未満の待ち時間を導入するが、G.722は数十ミリ秒の遅延を導入するする可能性があり、これは振動音響学では受け入れがたいほどの長さである。
【0214】
センサーデータ
いくつかの実施形態において、システム100のコンピューティングシステム102および/またはセンシングデバイス110のプロセッサは、センサーデータ取得およびセンサーデータ処理を制御するように構成され得る。たとえば、センサーデータは、連接された生の振幅シーケンスとして、または組み合わされた短時間フーリエ変換スペクトルとしてキャプチャされ得る。いくつかの変更形態において、センサーデータは、被験体毎に15秒未満で、好ましくは被験体毎に10秒未満で、キャプチャされる。いくつかの実施形態において、センサーデータは、長さ約15秒から約20秒、または約10秒から約25秒のデータセグメント、またはデータ品質およびデータ量の要件を満たす他の任意のデータセグメント長で取得される。いくつかの実施形態において、センサーデータは、継続的な健康状態の特性評価およびベースラインに対して、約2日から約4日の間に収集される。
【0215】
いくつかの実施形態において、センサーデータは、ベースライン段階およびベースライン更新段階のうちの一方または両方において収集され、および/または監視される。これは、生理学的ドリフトを補正することができる。ベースライン段階において、センサーデータは、1から5日、1から4日、1から3日、1から2日、2から5日、3から5日、4から5日、1から3日、2から3日にわたって収集され、および/または監視され得る。データ収集は、連続的であっても、データセグメント単位であってもよい。更新段階において、生体測定データは、1から25秒、5から25秒、10から25秒、15から25秒、20から25秒、1から20秒、1から15秒、1から10秒、5から10秒、5から15秒の間に収集され、および/または監視され得る。いくつかの実施形態において、ベースライン化されたデータを使用する更新は、約5秒から約10秒のより短い確認データ読み出しまたはトップアップを必要とする。
【0216】
いくつかの実施形態において、この方法は、第1の時点で被験体の生体測定データを取得することと、データベースに記憶することとを含む(「事前スクリーニングステップ」)。この方法は、第2の時点で、センサーデータを取得することと、記憶されているデータを監視または診断のために使用することとをさらに含む。事前スクリーニングプロセスは、約1日から5日の期間にわたって実施され得る。いくつかの実施形態において、ベースラインデータは、短命である(削除されるか、上書きされるか、または有効性を喪失し得る)。
【0217】
いくつかの実施形態において、本発明の技術の方法は、約0.01Hzから約20THz、約10THz超、約10THzから約100THz、約0.01Hzから約100THzのサンプリングレートでデータを収集し、および/または監視することを含み得る。いくつかの実施形態において、この結果、改善されたデータ品質および品質意味を得ることができる。これらのサンプリングレートは、従来のデータサンプリングと比較して「高分解能」と考えられ得る。テラヘルツの範囲では、日付は、受動的にまたは能動的にキャプチャされ得る。
【0218】
1.r.信号処理システム
様々なアナログおよびデジタルプロセスは、雑音から有用な信号を抽出するためにセンサーデータを処理し、1つまたは複数の外部ホストデバイス(たとえば、モバイルデバイスなどのコンピューティングデバイス、1つまたは複数のストレージデバイス、医療機器など)に適切なデータを伝達し得る。信号処理の少なくとも一部は、センシングデバイス110またはプロセッサ105内で行われ得る。
【0219】
いくつかの変更形態において、センサーデータ、ECGデータ、背景状況データ、熱データ、光学データなどのデータを取り扱うための信号処理チェーンは、低雑音(高い信号対雑音比(SNR))の出力信号を提供し、アナログ信号の適切な2値化を可能にする十分な増幅を提供し、全体的な信号忠実度を十分に高く維持する方式で機能するように構成され得る。信号処理チェーンは、また、(i)信号減衰および信号の強度損失を、信号が1つまたは複数の媒体上を伝搬する際に克服し、および/または(ii)2値化されたデータをセンシングデバイスの様々なコンポーネントを通して十分に速く移動して著しい信号および/またはデータ損失を回避するように構成され得る。いくつかの変更形態において、信号処理チェーンは、アナログ/デジタルコンバータに対する信号範囲を最適化するために、センシングデバイスの動作中にリアルタイムで利得を調整するプログラム可能な利得段を備え得る。信号処理チェーンの周波数および帯域幅の要件は、特定の用途に応じて異なることがあるが、いくつかの変更形態において、信号処理チェーンは、最大約160kHzまたは最大約320kHzまでの周波数をサンプリングするのに十分な帯域幅を有し、約0.1Hz以下の低周波応答を有するものとしてよい。
【0220】
高精度信号制御は、バイオフィールドおよび他の振動音響能動的/受動的センシングにおいて、信号および/またはデータの損失を最小限に抑えるために重要であり得る。しかしながら、モデルパラメータの取得が困難であることは、モデル依存の方法を使用してバイオフィールド信号の高精度トラッキング制御を取得する際の主要な障害の1つである。パラメータが不確かな振動音響システムは、高い精度のシステム出力情報を有することによって信号および/またはデータの損失を防御することができる。いくつかの変更形態において、適応出力フィードバック制御方式が、コントローラおよびパラメータ適応アルゴリズムでインスタンス化される不確定パラメータおよび測定不能状態を有するインラインサーボシステムにより実装され、それによりバイオフィールド信号トラッキング誤りが一様に有界であることを保証するものとしてよい。この方法は、最適なパラメータ(たとえば、遺伝的アルゴリズムを使用して得られる)を有する従来の比例-積分-微分(PID)制御法、指数到達則に基づくスライディングモード制御、および/または適応制御法および適応バックステッピングスライディングモード制御と組み合わされ、それにより高いトラッキング精度を達成し得る。振動音響システムは、また、信号の負荷変化に関してより優れた干渉防止能力を有し得る。
【0221】
能動的振動音響制御と称され得る、振動音響信号制御は、複数のサーボモーター、アクチュエータ、およびセンサーと完全連成フィードフォワードまたはフィードバックコントローラとを用いるいくつかの変更形態において達成され得る。たとえば、いくつかの変更形態において、フィードバックは、複数の小型の交差軸慣性センサー(たとえば、加速度計)を各センサーの下に置かれた同一場所にあるフォースアクチュエータまたは圧電アクチュエータのいずれかとともに使用して達成され得る。同一場所にあるアクチュエータ/センサーの対および分散型(ローカル)フィードバックは、複数のローカルフィードバックループの安定性を確実にするために注目する帯域幅にわたって最適化され得る。たとえば、制御システムは、アクチュエータ/センサーの対のアレイ(たとえば、4×4以上など、そのようなアクチュエータ/センサーの対のn×nアレイ)を含んでもよく、これらは、n2ローカルフィードバック制御ループで一緒に接続され得る。フォースアクチュエータを使用することで、運動エネルギー(たとえば、20~100dB)および伝達音響パワー(たとえば、10~60dB)の両方における最大1kHzまでの著しい周波数平均低減は、各ループ内で適切なフィードバック利得により取得され得る。
【0222】
いくつかの変更形態において、信号処理システムは、振動音響信号の少なくとも選択された部分を動的に増幅するように構成されたプログラマブル利得増幅器と、2値化された生体振動音響信号成分を提供するアナログ/デジタル変換器とを備える第2のアナログサブシステムをさらに具備する。
【0223】
1.s.人工知能モジュール
データを精緻化する適切なアルゴリズムがなければ、本発明のシステム100および方法の実施形態によって取得される高分解能センサーデータの真価は隠されたままとなる。ニューラルネットなどのポピュラーなアプローチは、因果関係ではなく、相関関係をモデル化し、データからの外挿をサポートしない。これに対し、開発者は、自然なフィードフォワードおよびフィードバックプラットフォームである、新しい構造的機械学習(SML)プラットフォームを開発しており、これによりデータ探索およびデータ利用がより速く、より正確に達成され得る。自動表現合成ツールでは、一般化可能で進化するモデルを構築し、センサーデータを人間が解釈できる形に抜き出し、インテリジェント、アジャイル、ネットワーク化、自律的という特徴を有するセンシング/利用システムにおいて融合データの真価を発揮する。
【0224】
この点に関して、いくつかの実施形態において、システム10は、振動音響および/または他のセンサーデータを分析することを目的として、機械学習および他の形態の適応(たとえば、ベイズ確率的適応)を使用して、データ駆動型フィードバックループを含む分析ソフトウェアを最適化するように構成されている人工知能モジュールを備える。センシングデバイスからのデータを分析するためのこのような機械学習モデルの訓練は、人間由来の事前知識、すなわち「ソフト知識」アーチファクトから始めるものとしてよい。これらの「ソフト知識」アーチファクトは、有利には、一般的に、ニューラルネットまたは決定木のような既製のMLモデルよりもはるかに表現可能である。さらに、訓練段階とテスト段階とを明確に区別してきた主流の機械学習シナリオとは対照的に、センシングデバイスからのデータを分析するための分析ソフトウェアは、インラインでソフトウェアを学習し最適化することを伴い得る。言い換えると、ここでの概念は、人工知能(AI)ソフトウェアシステム内に「インライン学習」アルゴリズムを埋め込み、AIシステムが、新しいデータを処理する際に適応的に学習することを可能にすることである。このようなインライン(およびリアルタイム)適応は、典型的には、様々な機能的および非機能的特性またはメトリックに関してより性能の高いソフトウェアAIシステムをもたらすが、それは少なくとも(i)AIシステムが、人間の設計者によって導入される次善最適あるバイアスを修正することができ、(ii)特徴的動作条件の変化(ほとんど、処理中のデータの変動)に迅速に応答できるからである。
【0225】
特に振動音響データを分析することに関して、患者から収穫された振動音響バイオフィールドは、オーディオ(.wav)ファイルとして保存され得る。また、カスタムクロス周波数カップリング手法は、DaubechiesおよびHaarウェーブレットアプローチなどの平均化ウェーブレットと組み合わせて、設定された時間枠内で可聴下音データを静止画像として分析するために使用され得る。Haarウェーブレットは、最初の、最も単純な直交ウェーブレット基底である。Daubechiesウェーブレットは、より多くのデータ点を平均化するので、Haarウェーブレットに比べて滑らかであり、いくつかのアプリケーションについてはより適している場合がある。典型的には、オーディオシーンは、可聴および不可聴振動とその背景状況を有する豊かな前景と混合された暗騒音を含む、複雑なコンテンツである。一般に、暗騒音および前景音は両方とも、被験体を特性評価する際に使用するための「診断シーン」を特徴付けるのに使用され得る。コンテキストデータのような他のデータは、視覚的な2D表現に変換され、静的な可聴下音画像に添付されて、新しい画像を作成することが可能である。そのような新しい画像は、次いで、アルゴリズムの性能を高めるために全体として分析される。
【0226】
しかしながら、前景音は、典型的には、任意の順序で発生し、それによって、隠されている逐次的パターンを明らかにすることが困難になる。したがって、背景状況に当てはめられた可聴および非可聴振動信号を分離し、識別することによって周囲の診断環境を認識し、「マスクを外す」能力は、多くの診断アプリケーションに対する潜在的可能性を有する。これを達成するための一アプローチは、従来の分類技術から最新のディープニューラルネットワーク(DNN)、およびランダム畳み込みニューラルネットワーク(CNN)へと移行することである。しかしながら、これらのネットワークの変更形態は、その最高の性能にもかかわらず、いくつかのアプリケーションにおいてシーケンスをモデル化することが十分にできないことがある。したがって、いくつかの変更形態において、AIシステムは、組み合わされたディープ、シンボリック、ハイブリッド回帰型および畳み込みニューラルネットワークR/CNNを組み込んでもよい。さらに、いくつかの変更形態において、別個のDNNが「クリスプ」(シンボリック)プログラムを生成し、提案するものとしてよく、そのようなプログラムの実行からのフィードバックは、ハイブリッドシンボリック-サブシンボリックアプローチで上記のDNNおよび/またはCNNをチューニングし/訓練するために使用され得る。
【0227】
いくつかの変更形態において、センシングプラットフォームの感度は、機械学習アルゴリズムの訓練目的のために生物生理学的に正確な模擬患者実体を使用することによって高められ得る。たとえば、そのような模擬実体は、大規模で現実的な訓練データセットを作成するために、十分に特性評価された臨床患者から収集された高精度臨床データ(たとえば、心拍数、脈拍数、呼吸数、心拍変動、呼吸数変動、脈遅延、中核体温、上側および下側呼吸温度勾配など)を使用して、訓練環境においてアップロードされ、修正され得る。
【0228】
いくつかの実施形態において、機械学習モジュールは、(i)本明細書において説明されているセンシングデバイスおよびシステムの変更形態を使用して訓練段階でCovid-19バイオシグネチャを設計し、および/または(ii)本明細書において説明されているセンシングデバイスおよびシステムの変更形態を使用してCovid‐19バイオシグネチャを適用するように構成される。いくつかの他の実施形態では、機械学習モジュールは、センサーデータに基づき固有のバイオシグネチャを決定し、個々の被験体、または被験体のグループを識別するために固有のバイオシグネチャを適用するように構成される。
【0229】
機械学習モジュールによって実行される方法の新規性のある態様は、機械学習問題をプログラム合成のタスクとして提起することを含む。この目的のために、ドメイン特化言語(DSL)が、バイオシグネチャの様々な設計をその言語のプログラムとして表現するように設計された。いくつかの変更形態において、DSLへの入力は、生の時系列(検出された周波数信号)さらにはFFTスペクトル、STFTスペクトル写真、MFCC、振動スケール特徴、ピーク配置、などのその系列から抽出された様々なタイプの特徴を含む。これらは、特注DSLにおける特定のデータ型に対応する。DSLは、特定のタイプの入力および変数を処理することができる関数(命令)を備えている。DSL関数は、ドメイン固有の知識に基づく。たとえば、われわれが現在日常的に使用しているDSL関数は、畳み込み、ピーク検出、パラメータ化可能なローパスおよびハイパスフィルタ、時系列の算術演算、などを含む。
【0230】
大事なのは、これらのビルディングブロックが、SOTA ML技術の典型的な語彙よりもはるかに高い抽象レベルで定義されており、たとえばディープラーニングモデルは本質的に常に、非線形性を有するドット積の入れ子になった構成であることである。第2に、過去数十年間に信号処理および分析に有用であると判明した一連の利用可能な知識に基づく。第3に、DSLの文法は署名識別の文脈で意味をなす操作のみを許可し、問題に関するエキスパートの知識を伝達するために使用することができる。
【0231】
モデルをプログラムとして表現するために、プログラミング言語の設計および意味論に関する豊富な理論と実践的知識を利用することができる。データ表現に関しては、われわれは、型システムの形式化されたアプローチに依存することができ、これはデータ断片、それらの関係、およびそれらの処理について原則に基づく理にかなった方法で推論することを可能にする。この目的のために、われわれは、既存のデータ型の集約および合成によって新しいデータ型を体系的に作成することを可能にする、代数的データ型の基本的な形式主義に頼る。いくつかの変更形態(たとえば、いわゆる従属型)において、われわれは、関数を通してデータの特性を「伝搬させ」、その出力型を制限することができる。次いで、データの実際の処理は、再帰的スキームを使用して都合良く表現され得、これは任意の可変サイズのデータ構造(たとえば、時系列)に対する情報の集約および分解を行うための普遍的なフレームワークを提供する。1つ大事なことを言い忘れていたが、DSLは問題の構造的特徴と適合するような仕方で設計されている。
【0232】
上記のメカニズムは、プログラム合成のプロセスを「正則化」し、所与の問題に対してもっともらしい解(プログラム)を見つける可能性をより高めることができ、特に、これは利用可能な訓練データに対して過剰適合せず、有効な一般化をより可能にする。これは、限られた数の訓練例からロバストなシグネチャ、分類器、および回帰モデルを合成することを可能にする。
【0233】
2.身体状態を特性評価するための方法
図7に示されているように、いくつかの変更形態において、身体状態を特性評価するための方法1000は、センシングデバイス110により振動音響信号を検出することと、振動音響信号から振動音響信号成分を抽出することと、たとえば機械学習モデルを使用して抽出された振動音響信号成分に少なくとも一部は基づき被験体の身体状態を特性評価することとを含み得る。いくつかの変更形態において、振動音響信号の代わりに、または振動音響信号に加えて、方法1000は、光学センサー、生体電気センサー、静電容量センサー、熱センサーなど、本明細書において説明されている任意のセンサーからデータを得ることを含み得る。本方法は、少なくとも一部は、コンピュータシステム102のプロセッサ105によって実行され得る。いくつかの実施形態において、身体状態はCOVID‐19であり、方法は、約0.01Hzから少なくとも約160kHzまでの周波数範囲内の振動音響信号を検出することを含む。いくつかの他の実施形態では、身体状態は、身体に関連する固有の識別子であり、識別またはセキュリティの目的で使用され得る。
【0234】
センサーデータは、ライブストリームとして取得されてもよい。代替的に、センサーデータは、さらに処理されるサンプリング済みセンサーデータを提供するためにサンプリングされ得る。データは、連接された生の振幅シーケンスとして、または組み合わされた短時間フーリエ変換スペクトルとしてキャプチャされ得る。センサーからのデータは、被験体毎に15秒未満で、好ましくは被験体毎に10秒未満で、被験体からキャプチャされ得る。
【0235】
方法1000は、トリガーに基づきセンサー101にデータをキャプチャすることを開始することを行わせる任意選択の前のステップを含んでもよい。トリガーは、手動(たとえば、システムのユーザによって開始される)または自動であり、所定のトリガーパラメータに基づくものとしてよい。トリガーパラメータは、システム100への被験体の近さ、またはデバイスと被験体の身体部分との接触、または体温上昇などの所定の生理学的パラメータの検出に関連し得る。方法1000は、手動または自動トリガーに基づき1つまたは複数のセンサー101にデータの取得を停止させることを含み得る。自動トリガーは、時間間隔または同様のものなどの所定の閾値を含み得る。
【0236】
身体状態の有無を決定するためのデータの処理は、被験体毎に、約14秒、約13秒、約12秒、約11秒、約10秒、約9秒、約8秒、約7秒、約6秒、約5秒、または5秒未満など、15秒未満の時間を要するものとしてよい。いくつかの変更形態において、システムによって検出された振動音響信号は、被験体の3から5回の心拍のスパンである。
【0237】
任意選択で、本方法は、身体状態の決定の出力を、たとえば、本明細書において説明されているデバイス109に向けることを含み得る。出力は、音声出力(たとえばビープ音)、視覚出力(たとえば点滅する光)、触覚出力(たとえばブザー)、機械的出力(たとえば開閉する障壁)などの任意の形態をとり得る。いくつかの変更形態において、出力は、ターゲット状態がないことを示す緑色の光、またはターゲット状態があることを示す赤色の光などのアラートであってもよい。他の変更形態では、出力は、障壁などの物理的拘束部材の制御を通して被験体の身体的保持を引き起こすことを含み得る。
【0238】
いくつかの実施形態において、伝送されたセンサーデータは、モバイルコンピューティングデバイスによって実行されるモバイルアプリケーションにおける安全な記憶およびその後の再生のために個人用フォルダに保存される前に暗号化され得る。アプリケーションは、指定された電子医療記録(EMR)/電子健康記録(EHR)システム内に収集したデータを保存し、患者記録を共有し、記録済み音声に注釈を付けるなどの機能を提供し得る(データの前処理)。
【0239】
センサーデータ、身体状態の決定、および出力のうちの1つまたは複数は、コンピューティングシステム102のデータベースなどに記憶されてもよい。記憶されたデータは、訓練MLAに供給され得る。
【0240】
センサーデータを処理することまたはMLAを訓練することは、所与のターゲット状態と所与のターゲット状態の症状とを関連付けることを含む。症状は、被験体の喉、胸、体質、腸、鼻系、目、および血管に関係する1つまたは複数の症状を含んでもよい。これらの症状には、限定はしないが、喉の痛み、疼痛、腫れ、または掻痒感、味覚の喪失、または嚥下困難を含み得る。胸部関連症状は、呼吸困難、うっ血、締めつけ、空咳、激しい空咳、痰を伴う咳、痰を切る咳、粘液、痰、線維症である。全身症状は、呼吸困難、筋肉痙攣、発熱、体の痛み、疲労、倦怠感、全身不快感、発熱、または悪寒であり得る。腸管関連症状は、食欲不振、腸の運動性の変化、腹痛、嘔吐、吐き気、または下痢であり得る。鼻の症状は、鼻漏、鼻孔の発赤、詰まりであり得る。眼の症状は、どんよりした目および結膜充血であり得る。血管症状は、血栓および打撲を含み得る。たとえば、咽頭痛、空咳、息切れ、筋肉痙攣、悪寒、発熱、腸の不快感、脳のもや、および下痢は、コロナウイルス科(たとえば、COVID‐19)感染の可能性を示す重要な指標である。
【0241】
本技術の変更形態によって非侵襲的、非接触方式で検出され得るこれらおよび他の指標となる症状は、典型的には、気管および肺の厚さの変化、呼吸抑制、局所および全身体液貯留(浮腫)、酸素脱飽和、過呼吸、外傷、瘢痕化、組織刺激、線維性変化、低換気、および高血圧症に起因する。本技術の変更形態は、肺および上気道の可聴および不可聴の喘鳴、パチパチ音、およびヤギ音--しばしば肺の硬化、びまん性肺胞障害、血管損傷、および/または線維症によって引き起こされる--の早期の、微妙な変化を、ECGを使用してまたは使用せずに検出するために使用され得る。
【0242】
方法によって検出され得る代謝物または環境毒素の他の生理学的状態またはレベルは、機械的外傷および怪我、インターロイキン(IL)6および多形核炎症細胞およびメディエーターの上昇、リンパ肥大ならびにアデノイドおよび扁桃組織の隆起、キニン、ヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジンD2、ならびにTAME-エステラーゼ、炎症性咽頭刺激におけるACE阻害剤増大、口腔咽頭粘膜炎、ならびに気道細胞膜および体液に対するオゾンの直接的効果、プロスタグランジンE、IL8、トロンボキサンB2、およびカルシトニン遺伝子関係ペプチドなどの炎症の内因性メディエーターの放出を誘発トリガーする特定のリパーゼの脂質オゾン生成物活性化を含む。
【0243】
いくつかの変更形態において、方法は、センシングデバイス110もしくはセンサー101および/または他のセンサーの任意の好適な変更形態を有し得る、本明細書において説明されているシステム100またはセンシングデバイス110のいずれかを用いて実行され得る。
【0244】
いくつかの変更形態において、抽出された振動音響信号成分は、生体振動音響信号成分を含んでもよく、特性評価された身体状態は、生体振動音響信号成分に基づく健康状態を含んでもよい。この点で、本方法は、生体振動音響信号成分を抽出することを含み得る。いくつかの変更形態において、生体振動音響信号成分を抽出することは、振動音響信号を、第1段増幅器および第1段ローパスフィルタ、ならびに第2段増幅器および第2段ローパスフィルタに通すことを含み得る。第1段ローパスフィルタおよび第2段ローパスフィルタは、アンチエイリアシングを伴う2次ローパスフィルタを形成してもよく、2次ローパスフィルタは、約15kHzから約20kHzの遮断周波数を有する。いくつかの変更形態において、振動音響信号は、振動音響信号の少なくとも一部を動的に増幅するように構成されているプログラマブル利得増幅器を含む第3段増幅器にも通される。いくつかの変更形態において、生体振動音響信号成分を抽出することは、振動音響信号の増幅された部分を2値化することと、2値化された振動音響信号の少なくとも一部を2値化された生体振動音響信号成分として提供することとを含む。
【0245】
たとえば、方法1000は、心肺、呼吸器、および/または胃腸機能に関係するものなどの迅速で正確な診断を行うために、心臓、肺、腸、および他の内臓機能に関連している可聴および不可聴信号の収集およびインテリジェント分析において医療専門家を支援し得る。いくつかの変更形態において、方法は、Covid‐19またはSARSウイルスなどのウイルス感染症の診断を支援し得る。いくつかの変更形態において、方法は、臨床試験などにおいて、特定の治療の有効性についての監視を支援し得る。
【0246】
方法1000は、身体にエネルギー(たとえば、電流または電圧)を与えることなく身体によって受動的に生成されるデータを収集することを含み得る。
【0247】
現在の技術のセンシングデバイス、センサー、システム、および方法は、限定はしないが、COVID‐19、SARSなどの呼吸器疾患および疾病、消化器系疾患および疾病、癌、神経疾患および疾病、精神疾患および疾病、心臓疾患および疾病、循環系疾患および疾病、リンパ系疾患および疾病、腎臓疾患および疾病、肝臓疾患および疾病、肺疾患および疾病、整骨疾患および疾病、整形外科疾患および疾病、睡眠関連疾患および疾病、代謝系疾病、疾患、および状態、運動性疾患、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫、原虫、およびプリオン感染、物質使用障害、行動障害、筋骨格系疾患および疾病、血液病および疾患、内臓機能不全、生殖器疾患および疾病、感情障害、疾患または状態、覚醒、疲労、不安、鬱、せん妄、失見当識、運動失調、不眠症、摂食障害、肥満、身体組成、およびそのようなものを含む生物における身体状態を検出するのに有用であり得る。
【0248】
いくつかの態様において、身体状態の決定は、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%または1%未満の第一種過誤の影響を受けやすい。いくつかの態様において、身体状態の決定は、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%または1%未満の第二種過誤の影響を受けやすい。いくつかの態様において、身体状態の決定は、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%または2%未満の第一種過誤の影響を受けやすい。いくつかの態様において、身体状態の決定は、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%または2%未満の第二種過誤の影響を受けやすい。いくつかの態様において、身体状態の決定は、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%または3%未満の第一種過誤の影響を受けやすい。いくつかの態様において、身体状態の決定は、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%または3%未満の第二種過誤の影響を受けやすい。いくつかの態様において、身体状態の決定は、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%または4%未満の第一種過誤の影響を受けやすい。いくつかの態様において、身体状態の決定は、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%または4%未満の第二種過誤の影響を受けやすい。いくつかの態様において、身体状態の決定は、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%または5%未満の第一種過誤の影響を受けやすい。いくつかの態様において、身体状態の決定は、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%または5%未満の第二種過誤の影響を受けやすい。いくつかの態様において、身体状態の決定は、6%、7%、8%、9%、10%、15%、16%、17%、18%または19%未満の第一種過誤の影響を受けやすい。いくつかの態様において、身体状態の決定は、6%、7%、8%、9%、10%、15%、16%、17%、18%または19%未満の第二種過誤の影響を受けやすい。
【0249】
いくつかの態様において、上記の精度レベルは、2、3、4、5、6、または7未満の数のセンサー101で達成される。いくつかの態様において、システム100のスループットは、1時間当たりスキャンされた被験体少なくとも100人から1時間当たりスキャンされた被験体約1,000人までの範囲内である。いくつかの実施形態において、スループットは、1時間当たりスキャンされた被験体約500人である。いくつかの変更形態において、身体状態を特性評価するための方法は、センシングデバイス110において能動的皮膚運動増幅方法で振動音響信号を検出することを含み得る。
【0250】
(実施例)
(実施例1)
ボイスコイルセンサーの設計
開発者の目標は、人間/動物の身体監視のための新規性のあるボイスコイルベースのセンサーを開発することであった。最適化パラメータはほかにもあるがとりわけ以下の通りであった。
・ 強力で均一な磁界のための磁石のサイズ、形状、および材料、
・ 抵抗および重量を最小限度に抑えながら最大の長さとなるコイルの材料、長さ、巻数、および層数、
・ 軽量な支持構造、たとえば、屈曲ベースの構造、または巻線を保持する可撓性ダイアフラム、
・ センサーを軽量小型ウェアラブルデバイスまたはハンドヘルドデバイスに組み込む必要があるので、全体の寸法の制約。
【0251】
候補トランスデューサ設計の性能を、力応答性、受信感度、および周波数応答効率という3つの出力変数に基づき評価した。
【0252】
力応答性
トランスデューサの作動能力は、周波数の関数としてトランスデューサによって及ぼされる力を測定することによって評価された。ダイナミックシグナルアナライザー(DSA)が、0.01から160,000Hzの範囲内の音源周波数を段階的に辿り、各音源周波数について測定された力トランスデューサからの信号の周波数応答スペクトルを計算するために使用された。
【0253】
受信感度
DSAは、音源周波数の範囲内の周波数を段階的に辿り、各音源周波数で測定された、テストトランスデューサからの受信信号の周波数応答スペクトルを計算するために使用された。
【0254】
相互コンクリート伝送効率(Reciprocal concrete transmission efficiency)
これらのテストボイスコイルトランスデューサを使用して、人体から受動的に収穫された超音波の機械音響波を通して可聴下音を収集し伝送することが実際に可能であることを検証するために、患者と生理的マネキンの測定が行われた。この実験では、伝送用と受信用の2つの同じトランスデューサが使用された。トランスデューサ構成を反転して各測定を繰り返すことによって伝送の相互関係を調べたが、以前伝送したトランスデューサが受信機として働き、その逆も働いた。
【0255】
電力増幅器を介して、DSA音源が使用され、ステップ周波数を有する正弦波信号を、送信機として働くトランスデューサに印加した。電力増幅器の出力は、基準としてDSAのCh.1に供給された。受信側トランスデューサからの出力は、DSA(Ch.2)内に供給された。Ch.2をCh.1で割ることによって、電圧伝達関数が確立された。次にトランスデューサの複素インピーダンスで割ることによって、伝送効率が決定された。
【0256】
【0257】
高感度および高周波数帯域をもたらし得るパラメータ(より高い=より良い):ボイスコイルインダクタンス、トータルQ、機械的コンプライアンス、BL積、巻数(結果としてBLおよびインダクタンスが高くなる)。高い感度および周波数範囲をもたらし得るパラメータ(より低い=より良い):移動質量。
【0258】
BL積と機械的コンプライアンスとの積は、良い機械的コンプライアンスによって増幅された高い信号感度を表し得る。
【0259】
BL積と機械的コンプライアンスとの積/質量は、良い機械的コンプライアンスによって増幅され、低い移動質量によってさらに増幅された高い信号感度を表し得る。
【0260】
背景を用いることで、上記の実験的アプローチをサポートするために、次のことが考えられた。電気力学的センサーアクチュエータは、ホスト機械構造に入力振動エネルギーを提供する能力を持つ可逆的ボイスコイルトランスデューサである。これは電気側の電圧eおよび電流i、ならびに機械側の横力Fsおよび速度vsという2対の二重変数を通しての電気機械的結合を含む2ポートシステムとみなされ得る。
【0261】
時間の正弦波関数の複素振幅(大きさおよび位相)を表す位相ベクトルを使用することで、ホスト機械構造に取り付けられたときのセンサーアクチュエータの特性方程式は、次のように書くことができる。
Bli=Zmava-Zmsvs (1)
e=Zei-ε (2)
vaは移動質量の速度であり、vsはアクチュエータのベースにおける横方向速度であり、eは電気端子に印加される入力電圧であり、iはコイル内を循環する電流であり、Zma=jωMa+Ra+Ka/jωは慣性励起子の機械インピーダンスであり、Ze=Re+jωLeはトランスデューサの制止電気インピーダンスであり、Zms=Ra+Ka/jωはバネ-ダッシュポット装着システムのインピーダンスである。式(1)(2)は電気力学的結合の項を含み、Fmag=Bliは磁界と移動する自由電荷(電流)の相互作用によって引き起こされる力であり、ε=Bl(va vs)は運動中にボイスコイル内に誘導される逆起電力(電圧)である。また、変位が外力に比例したままとなるようにアクチュエータに作用するすべての力が十分に小さいと仮定される(小信号の仮定)。
【0262】
センサーアクチュエータの入力インピーダンスは、トランスデューサの電気回路内の電圧対電流の複素比である。これは、その入力端子間に接続された、電子駆動源、電気ネットワークなどの任意機器から「見る」電気インピーダンス(単位Ω)を決定する。純粋な質量に取り付けられたときに、センサーアクチュエータの入力インピーダンスの閉形式は、式(1)および式(2)を以下のように組み合わせることによって取得され得る。
Zin=e/i=Ze+(Bl)2/Zma (3)
【0263】
式(3)を見るとわかるように、Zinは、アクチュエータインピーダンスのすべての抵抗とリアクタンスを含む、動作しているすべての電気機械的効果を含む。次に説明されるように、アクチュエータの入力インピーダンスを測定することは、dc抵抗および固有周波数などのいくつかの重要なパラメータが評価されることを可能にする。
【0264】
次に式(1)を式(2)に代入すると、アクチュエータのベースにおける横方向速度は以下のように表される。
vs=Zma(e-Zei)/(jωMaBl)+Bli/(jωMa) (4)
【0265】
式(4)は、明らかに、アクチュエータが配置されている構造の横方向速度が入力端子で感知された駆動電流および電圧から推定され得ることを示している。
【0266】
(実施例2)
リモートセンシング
本発明の技術のセンシングデバイス110の例示的な変更形態。センシングデバイスは、封止された空洞を有していた。被験体は、センシングデバイス110のダイアフラム116から様々な距離のところに位置決めされ、アパレルに関して被験体とダイアフラムとの間に異なる障壁を含んでいた(セーターを着ている、セーターなし)。
【0267】
図8は、衣類が障害物となっていない被験体がセンシングデバイスのダイアフラムから12cmのところに位置決めされているとき(
図8A)、衣類が障害物となっていない被験体がセンシングデバイスのダイアフラムから100cmのところに位置決めされているとき(
図8B)、セーターを着ている被験体がセンシングデバイスのダイアフラムから12cmのところに位置決めされているとき(
図8C)、セーターを着ている被験体がセンシングデバイスのダイアフラムから100cmのところに位置決めされているとき(
図8D)にセンシングデバイスによって収集された振動音響試験データを示している。
【0268】
これらの図から、本技術のシステムおよびセンシングデバイスは、様々な距離の空隙を通して身体の振動を遠隔で検出することができることは明らかである。伝搬する音響信号中に本質的に存在する減衰により、振幅は、時間領域信号内で最も明白なように、より大きな距離のところで減少する。しかしながら、周波数スペクトルから明らかなように、信号は、距離が離れてもキャプチャされており、抽出され得る。それに加えて、重要なより低い周波数は近距離場条件による減衰が少なく、さらに大きい距離からそれらを感知することを可能にする。またこれらのことからわかるように、衣類の存在は、信号品質にほとんど影響を与えない。
【0269】
図8は、セーターを着ている被験体がセンシングデバイスのダイアフラムから10cmのところに位置決めされ、ダイアフラムに面しているとき(
図8A)、セーターを着ている被験体がセンシングデバイスのダイアフラムから10cmのところに位置決めされ、ダイアフラムから離れる方向に面しているとき(
図8B)、およびセーターを着ている被験体がセンシングデバイスのダイアフラムから100cmのところに位置決めされ、ダイアフラムに面しているときに本技術のセンシングデバイスによって収集された振動音響試験データを示す。これらの信号は、時間領域信号として提示され、関連する周波数帯域幅に分離されている。上のシアン色の信号は組み合わされたキャプチャ信号であり、緑色の信号はキャプチャ信号中の可聴下音成分(<20Hz)であり、黄色の信号は可聴成分(>20Hz)、下はスペクトログラムである。可聴下音および可聴スペクトルが良好な信号対雑音比でキャプチャされていることは明らかである。可聴スペクトル内の周波数は10cmの距離に比べて減衰しているけれども、可聴下音成分はそれでも良好にキャプチャされている。
【0270】
バックカバーに開口部が設けられているときに、検出される周波数への効果は影響を受ける(すなわち、高周波数へのシフト)ことが十分に予想される。したがって、センシングデバイスの最適化は、空洞の封止の異なる範囲の、高次元のパラメータ空間における所望の周波数検出範囲に基づく、分析および有限要素解析(FEM)の組合せによって実行され得る。
【0271】
前述の説明では、説明を目的として、本発明の完全な理解を提供するために特定の命名法を使用した。しかしながら、当業者には、本発明を実施するために特定の詳細が必要でないことは明らかであろう。したがって、本発明の特定の変更形態の前述の説明は、例示および説明を目的として提示されている。それらは、網羅的であること、または本発明を開示されている正確な形態に限定することを意図されず、明らかに、多くの修正形態および変更形態が、上記の教示に照らして可能である。変更形態は、技術の原理およびその実用的用途を説明するために選択され説明されており、それにより、当業者は、企図された特定の用途に適しているような様々な修正形態とともに本発明および様々な実施形態を利用することができる。以下の請求項およびその等価物は本発明の範囲を定義することが意図されている。
【符号の説明】
【0272】
100 システム
101 センサー
102 コンピュータシステム、コンピューティングシステム
103 身体
104 ネットワーク
105 プロセッサ
106 パターン評価モジュール
107 データマイニングモジュール
108 データ記憶モジュール
109 デバイス
110 センシングデバイス
112 フレーム
114 開口
116 ダイアフラム
117 支持部材
118 支持体
120 第1の側
121 深さ
122 バックカバー
123 表面積
124 第2の側
126 空洞
128 サブフレーム
130 開口部
132 フロントカバー
300 ボイスコイルトランスデューサ、振動音響トランスデューサ
310 フレーム
320 円筒形本体部
330 ボア
340 フランジ
350 鉄芯
360 端部
370 磁石
380 磁石隙間
390 ボイスコイル
392 ワイヤ巻線
393 コイルホルダー
395 スパイダー
500 偏向構造
510 アーム
519 アーム
520 中央部分
530 開口
540 周
1000 方法
1100 センシングデバイス
【国際調査報告】