(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】電気絶縁のためのポリアミノシロキサン水トリー忌避剤
(51)【国際特許分類】
C08L 83/08 20060101AFI20231227BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20231227BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C08L83/08
C08L23/04
C08K5/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524952
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 CN2020124808
(87)【国際公開番号】W WO2022087959
(87)【国際公開日】2022-05-05
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ホー、チャオ
(72)【発明者】
【氏名】スン、ヤービン
(72)【発明者】
【氏名】ゴウ、チェン
(72)【発明者】
【氏名】ツォン、シャオホン
(72)【発明者】
【氏名】コーゲン、ジェフリー エム.
(72)【発明者】
【氏名】パーソン、ティモシー ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB031
4J002BB041
4J002BB051
4J002CP092
4J002DA030
4J002EK006
4J002EK036
4J002FD010
4J002FD040
4J002FD070
4J002FD146
4J002GQ01
(57)【要約】
本開示は、組成物を提供する。実施形態では、組成物は、架橋性組成物であり、エチレン系ポリマー、ポリアミノシロキサン(PAS)、及び任意選択的に過酸化物を含む。ポリアミノシロキサン(PAS)は式(I)を有し、
【化1】
式中、
Rは、フェニル部分を有するC
6-C
20アミノアルキル基であり、
Siは、ケイ素原子であり、
Oは、酸素原子であり、
Zは、水素原子又はC
1-C
10ヒドロカルボニル基であり、
q、m、及びnは、それぞれ独立して、2~1,000,000の整数であり、
1/2は、式(II)の末端ブロック構造を表し、
【化2】
2/2は、式(III)の直鎖構造を表し、
【化3】
3/2は、式(IV)の分岐構造を表す。
【化4】
また、架橋性組成物から形成される架橋組成物も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性組成物であって、
エチレン系ポリマーと、
式(I)を有するポリアミノシロキサン(PAS)
【化1】
(式中、
Rは、フェニル部分を有するC
6-C
20アミノアルキル基であり、
Siは、ケイ素原子であり、
Oは、酸素原子であり、
Zは、水素原子又はC
1-C
10ヒドロカルボニル基であり、
q、m、及びnは、それぞれ独立して、2~1,000,000の整数であり、
1/2は、式(II)の末端ブロック構造を表し、
【化2】
2/2は、式(III)の直鎖構造を表し、
【化3】
3/2は、式(IV)の分岐構造を表す)
【化4】
と、
任意選択的に過酸化物と、を含む、架橋性組成物。
【請求項2】
前記エチレン系ポリマーが、0.91g/cc~0.93g/ccの密度と、
0.5g/10分~5.0g/10分のメルトインデックスとを有する、請求項1に記載の架橋性組成物。
【請求項3】
80重量%~99重量%の前記エチレン系ポリマーと、
0.05重量%~3重量%の前記ポリアミノシロキサンと、
0重量%超~2重量%未満の過酸化物とを含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項4】
酸化防止剤、スコーチ遅延剤、助剤、成核剤、加工助剤、エキステンダー油、カーボンブラック、ナノ粒子、UV安定剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項5】
架橋組成物であって、
エチレン系ポリマーと、
式(I)を有するポリアミノシロキサン(PAS)
【化5】
(式中、
Rは、フェニル部分を有するC
6-C
20アミノアルキル基であり、
Siは、ケイ素原子であり、
Oは、酸素原子であり、
Zは、水素原子又はC
1-C
10ヒドロカルボニル基であり、
q、m、及びnは、それぞれ独立して、2~1,000,000の整数であり、
1/2は、式(II)の末端ブロック構造を表し、
【化6】
2/2は、式(III)の直鎖構造を表し、
【化7】
3/2は、式(IV)の分岐構造を表す)と、を含む、架橋組成物。
【化8】
【請求項6】
前記エチレン系ポリマーが、0.91g/cc~0.93g/ccの密度と、
0.5g/10分~5.0g/10分のメルトインデックスとを有する、請求項5に記載の架橋組成物。
【請求項7】
酸化防止剤、スコーチ遅延剤、助剤、成核剤、加工助剤、エキステンダー油、カーボンブラック、ナノ粒子、UV安定剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤を含む、請求項5~6のいずれか一項に記載の架橋組成物。
【請求項8】
90重量%~99重量%の前記エチレン系ポリマーと、
0.1重量%~1.0重量%の前記PASとを含み、
前記架橋組成物が、3%~12%の平均WTLを有する、請求項5~7のいずれか一項に記載の架橋組成物。
【請求項9】
式(I)の前記PASが、フェニルアミノプロピルトリメトキシシランの重合反応生成物である、請求項8に記載の架橋組成物。
【請求項10】
式(I)の前記PASが、アミノフェニルトリメトキシシランの重合反応生成物である、請求項8に記載の架橋組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
電線及びケーブルの絶縁用の架橋エチレンポリマー(XLPE)が知られている。絶縁体として、XLPEは、機械的切断に対する耐性、応力亀裂耐性、及び誘電破壊などの様々な物理的及び電気的特性を提供する。
【0002】
中電圧(MV、5~69kV)ケーブル及び高電圧(HV、70~225kV)ケーブル及び超高電圧(EHV、225kV超)ケーブルにおけるXLPE絶縁は、特に、トリーイング現象の影響を受けやすい。「トリーイング」という用語は、絶縁材料のXLPEを通る木のような経路の外観を有する電気絶縁材料の劣化である。トリーイングは、XLPE絶縁の電気的破壊であるので、問題である。「水トリー」は、交流電界下で絶縁材料内に存在する水、空隙、汚染物質、及び/又は欠陥から発生する。水トリーは電界の方向に成長し、局所的な場所で電気的応力を増加させる作用を有する欠陥から生じる。水トリーの枝は狭く、0.05ミクロン程度である。水トリーは、時間、周波数、及び電圧の増加とともに長さが増加する。水トリーは、導電性であり、絶縁層の絶縁能力を低下させ、最終的にケーブルの破壊を引き起こす可能性があるため有害である。
【0003】
「電気トリー」は、絶縁材料を分解する内部放電の結果である。電気トリーは、局所的な加熱、熱分解、電気的ストレスによる機械的損傷、小さな空隙、及び/又は汚染物質の周囲の空気の包含から生じる。
【0004】
当技術分野では、耐トリーイング性のワイヤ及びケーブル絶縁材料の必要性が認識されている。さらに、機械的強度、亀裂抵抗、及び誘電破壊を維持するために適切な架橋能力を維持しながら、低い散逸率を有する、トリーイング耐性のあるXPLE絶縁材料の必要性が認識されている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、組成物を提供する。実施形態では、組成物は、架橋性組成物であり、エチレン系ポリマー、ポリアミノシロキサン(PAS)、及び任意選択的に過酸化物を含む。ポリアミノシロキサン(PAS)は式(I)を有し、
【化1】
(式中、
Rは、フェニル部分を有するC
6-C
20アミノアルキル基であり、
Siは、ケイ素原子であり、
Oは、酸素原子であり、
Zは、水素原子又はC
1-C
10ヒドロカルボニル基であり、
q、m、及びnは、それぞれ独立して、2~1,000,000の整数であり、
1/2は、式(II)の末端ブロック構造を表し、
【化2】
2/2は、式(III)の直鎖構造を表し、
【化3】
3/2は、式(IV)の分岐構造を表す)。
【化4】
【0006】
本開示は、別の水性組成物を提供する。一実施形態では、架橋組成物が提供され、エチレン系ポリマーと、ポリアミノシロキサン(PAS)とを含む。ポリアミノシロキサン(PAS)は式(I)を有し、
【化5】
(式中、
Rは、フェニル部分を有するC
6-C
20アミノアルキル基であり、
Siは、ケイ素原子であり、
Oは、酸素原子であり、
Zは、水素原子又はC
1-C
10ヒドロカルボニル基であり、
q、m、及びnは、それぞれ独立して、2~1,000,000の整数であり、
1/2は、式(II)の末端ブロック構造を表し、
【化6】
2/2は、式(III)の直鎖構造を表し、
【化7】
3/2は、式(IV)の分岐構造を表す)。
【化8】
【0007】
定義
元素周期表への任意の参照は、CRC Press,Inc.,1990-1991によって出版されたものへの参照である。この表での元素群への参照は、群に番号を付けるための新しい表記法によるものである。
【0008】
米国特許実務の目的のために、いずれの参照された特許、特許出願、又は刊行物の内容も、特に定義の開示に関して(本開示で具体的に提供されるいずれの定義とも矛盾しない範囲で)、それらの全体が参照として組み込まれる(又はその相当する米国版が参照によってそのように組み込まれる)。
【0009】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値及び上限値を含む、下限値から上限値までの全ての値を含む。明示的な値(例えば、1又は2、又は3~5、又は6、又は7)を含む範囲の場合、任意の2つの明示的な値の間のあらゆるサブ範囲が含まれる(例えば、上記の1~7の範囲は、1~2、2~65~73~75~6などのサブ範囲を含む)。
【0010】
特に反対の記載がないか、文脈から暗示されるか、又は当該技術分野で慣習的でない限り、全ての部及びパーセントは、重量に基づき、全ての試験方法は、本開示の出願日時点で最新のものである。
【0011】
「アルキル基」は、飽和直鎖状、環状、又は分岐状の炭化水素基である。好適なアルキル基の非限定的な例として、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、t-ブチル、i-ブチル(又は2-メチルプロピル)などが挙げられる。
【0012】
「アミノ基」は、単結合によって水素原子及び/又は炭化水素に結合している窒素原子である。
【0013】
「アミノシロキサン」は、1つ以上の第一級及び/又は第二級アミノ基を含有するシロキサンである。
【0014】
本明細書で使用される場合、「ブレンド」又は「ポリマーブレンド」という用語は、2つ以上のポリマーの混合物を指す。ブレンドは、混和性であっても、混和性でなくてもよい(分子レベルで相分離していない)。ブレンドは、相分離していても、相分離していなくてもよい。ブレンドは、透過電子分光法、光散乱、x線散乱、及び当技術分野において既知の他の方法から決定される1つ以上のドメイン構成を含有してもよいか、又は含有しなくてもよい。ブレンドは、マクロレベル(例えば、樹脂の溶融ブレンド若しくは配合)又はミクロレベル(例えば、同じ反応器内での同時形成)で2つ以上のポリマーを物理的に混合することによって行ってよい。
【0015】
「組成物」という用語は、組成物を含む材料の混合物、並びに組成物の材料から形成された反応生成物及び分解生成物を指す。
【0016】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」という用語、及びそれらの派生語は、それが具体的に開示されているかどうかにかかわらず、任意の追加の成分、ステップ、又は手順の存在を除外することを意図しない。疑義を回避するために、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて特許請求される全ての組成物は、特に反対の記載がない限り、ポリマーであるかその他であるかによらず、任意の追加の添加剤、アジュバント、又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる続く記述の範囲からあらゆる他の成分、ステップ、又は手順を除く。「からなる」という用語は、明確に描写又は列挙されていない任意の成分、ステップ、又は手順を除外する。「又は」という用語は、特に明記しない限り、列挙されたメンバーを個別に、並びに任意の組み合わせで指す。単数形の使用は複数形の使用を含み、その逆もまた同様である。
【0017】
「エチレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50重量パーセント(重量%)を超える重合エチレンモノマーを含有し、任意選択的に、少なくとも1つのコモノマーを含有し得るポリマーである。エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマー、及びエチレンコポリマー(エチレン及び1つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)を含む。「エチレン系ポリマー」及び「ポリエチレン」という用語は、同義的に使用され得る。
【0018】
本明細書で使用される場合、「エチレンモノマー」又は「エチレン」という用語は、間に二重結合を有する2個の炭素原子を有し、かつ各炭素が2個の水素原子に結合している化学単位であって、他のそのような化学単位と重合して、エチレン系ポリマー組成物を形成する化学単位を指す。
【0019】
「ヘテロ原子」とは、炭素又は水素以外の原子である。ヘテロ原子は、周期表の第IV、V、VI、及びVII族からの非炭素原子であり得る。ヘテロ原子の非限定的な例には、F、N、O、P、B、S、及びSiが含まれる。
【0020】
「炭化水素」は、水素原子及び炭素原子のみを含有する化合物である。「ヒドロカルボニル」(又は「ヒドロカルボニル基」)は、結合価(典型的には一価)を有する炭化水素である。炭化水素は、直鎖構造、環状構造、又は分岐構造を有し得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「直鎖状低密度ポリエチレン」(又は「linear low density polyethylene、LLDPE」)という用語は、エチレンに由来する単位と、少なくとも1つのC3~C10αオレフィン、又はC4~C8αオレフィンコモノマーに由来する単位とを含む不均一な短鎖分岐分布を含む直鎖状エチレン/α-オレフィンコポリマーを指す。LLDPEは、従来のLDPEとは対照的に、長鎖分岐が、あるとしてもわずかしか存在しないことを特徴とする。LLDPEは、0.910g/cc~0.940g/cc未満の密度を有する。LLDPEの非限定的な例は、TUFLIN(商標)直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、DOWLEX(商標)ポリエチレン樹脂(the Dow Chemical Companyから入手可能)、及びMARLEX(商標)ポリエチレン(Chevron Phillipsから入手可能)を含む。
【0022】
本明細書で使用される場合、「低密度ポリエチレン」(又はLDPE)という用語は、0.910g/cc~0.940g/cc未満又は0.918g/cc~0.930g/ccの密度と、広い分子量分布(molecular weight distribution、MWD)、すなわち、4.0~20.0の「広いMWD」を有する長鎖分岐と、を有するポリエチレンを指す。
【0023】
「オレフィン」は、炭素-炭素二重結合を有する不飽和脂肪族炭化水素である。
【0024】
「フェニル」(又は「フェニル基」)という用語は、結合価(典型的には一価)を有するC6H5芳香族炭化水素環である。
【0025】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」又は「ポリマー材料」という用語は、同じタイプであるか、又は異なるタイプであるかにかかわらず、モノマーを重合することによって調製された化合物を指し、ポリマーを構成する複数及び/若しくは繰り返しの「単位」又は「マー単位」を重合形態で提供する。したがって、一般的なポリマーという用語は、ただ1つのタイプのモノマーのみから調製されるポリマーを指すために通常用いられるホモポリマーという用語と、少なくとも2つのタイプのモノマーから調製されるポリマーを指すために通常用いられるコポリマーという用語と、を包含する。それはまた、例えば、ランダム、ブロックなどの全ての形態のコポリマーを包含する。「エチレン/α-オレフィンポリマー」及び「プロピレン/α-オレフィンポリマー」という用語は、それぞれ、エチレン又はプロピレンと、1つ以上の追加の重合性α-オレフィンモノマーとを重合することから調製された上述のコポリマーを示す。ポリマーは、多くの場合、1つ以上の特定のモノマー「で作製され」、特定のモノマー又はモノマータイプに「基づいて」、特定のモノマー含量を「含有する」などと称されるが、この文脈では、「モノマー」という用語は、特定のモノマーの重合残基を指し、非重合種を指すものではないと理解されることに留意されたい。一般に、本明細書におけるポリマーは、対応するモノマーの重合形態である「単位」に基づくものを指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「シラン」は、1つ以上のSi-C結合を有する化合物である。
【0027】
本明細書で使用される場合、「シロキサン」は、Si-O-Si結合を有する炭化水素である。
【0028】
試験方法
密度は、ASTM D792、方法Bに従って測定される。結果は、グラム/立方センチメートル(g/cc)で報告される。
【0029】
フーリエ変換赤外分析(「Fourier Transform Infrared analysis、FTIR」)
【0030】
炭素1000個(「1000C」)当たりの末端及び内部トランス二重結合の量は、フーリエ変換赤外分析(「FTIR」)によって求めた。分析される試料をダイヤモンド/ZnSe結晶上に置き、最適な接触を得るために適切な圧力を加え、次いでATR-FTIRスペクトルを4000~650cm-1で収集し、各試料を8回スキャンする。実験設定を以下に列挙する。分解能:4.0cm~1、アポディゼーション:強スキャン、速度:0.20cm/秒、検出器:MIR TGS。
【0031】
ゲル浸透クロマトグラフィ(Gel Permeation Chromatography、GPC)
【0032】
クロマトグラフィ系は、内部IR5赤外検出器(internal IR5 infra-red detector、IR5)を備えたPolymerChar GPC-IR(Valencia、Spain)高温GPCクロマトグラフ、及びPrecision Detectors(現在は、Agilent Technologies)2角レーザ光散乱(light scattering、LS)検出器モデル2040に結合された4-キャピラリ粘度計(DV)からなっていた。全ての絶対光散乱測定に関して、15度角が測定に使用される。オートサンプラオーブン区画を摂氏160度に設定し、カラム区画を摂氏150度に設定した。使用したカラムは、4本のAgilent「Mixed A」30cm、20マイクロメートルの線形混床式カラムであった。使用したクロマトグラフィ溶媒は、1,2,4トリクロロベンゼン(CAS120-82-1、HPLCグレード、Fisher Scientific製)であり、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene、BHT)を含んでいた。溶媒源を、窒素スパージした。使用した注入体積は、200マイクロリットルであり、流量は、1.0ミリリットル/分であった。
【0033】
GPCカラムセットの較正を、580~8,400,000の範囲の分子量を有する少なくとも20の狭い分子量分布のポリスチレン標準を用いて実施し、個々の分子量の間に少なくとも10の間隔を空けて、6つの「カクテル」混合物中に配置した。標準物質を、Agilent Technologiesから購入した。1,000,000以上の分子量については、50ミリリットルの溶媒中の0.025グラムで、1,000,000未満の分子量については、50ミリリットルの溶媒中の0.05グラムで、ポリスチレン標準物質を調製した。ポリスチレン標準物質を、穏やかに撹拌しながら摂氏80度で30分間溶解させた。ポリスチレン標準物質のピーク分子量を、式1を使用してポリエチレン分子量に変換した(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載の通り)。
【数1】
式中、Mは、分子量であり、Aは、0.4315の値を有し、Bは、1.0に等しい。
【0034】
第3次と第5次との間の多項式を使用して、それぞれのポリエチレン同等較正点に当てはめた。ホモポリマーポリエチレン標準が120,000の分子量を有するようにカラム分解能及びバンド広がり効果を補正するために、Aを少し調整した(およそ0.375~0.440に)。
【0035】
GPCカラムセットの総プレートカウントは、(50ミリリットルのTCB中0.04gで調製され、穏やかに撹拌しながら20分間溶解された)Eicosaneを用いて実施した。プレートカウント(式2)及び対称性(式3)を、200マイクロリットル注入で以下の式に従って測定した。
【数2】
式中、RVは、ミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅は、ミリリットルであり、ピーク最大値は、ピークの最大高さであり、1/2高さは、ピーク最大値の1/2の高さである。
【数3】
式中、RVは保持体積(ミリリットル)であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大位置であり、1/10高さはピーク最大値の1/10の高さであり、後方ピークはピーク最大値よりも後の保持体積でのピークテールを指し、前方ピークはピーク最大値よりも早い保持体積でのピークフロントを指す。クロマトグラフィシステムのプレートカウントは、24,000超になるべきであり、対称性は、0.98~1.22となるべきである。
【0036】
サンプルを、PolymerChar「Instrument Control」ソフトウェアを用いて半自動様式で調製し、2mg/mLをサンプルの目標重量とし、PolymerChar高温オートサンプラを介して、予め窒素スパージされたセプタキャップ付き(septa-capped)バイアルに溶媒(200ppmのBHTを含有)を添加した。試料を、「低速」振盪下で、摂氏160度で2時間溶解した。
【0037】
Mn
(GPC)、Mw
(GPC)、及びMz
(GPC)の計算は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェア、各等間隔のデータ回収点(i)におけるベースラインを差し引いたIRクロマトグラム、及び方程式1の点(i)についての狭い標準物質較正曲線から得られるポリエチレン等価分子量を使用して、方程式4~6に従って、PolymerChar GPC-IRクロマトグラフの内部IR5検出器(測定チャネル)を使用した、GPC結果に基づいた。
【数4】
【数5】
【数6】
【0038】
経時的な偏差を監視するために、PolymerChar GPC-IRシステムで制御されたマイクロポンプを介して、各試料に流量マーカー(デカン)を導入した。この流量マーカー(flowrate marker、FM)を用いて、試料中のそれぞれのデカンピーク(RV(FM試料))と、狭い標準物質較正(RV(FM較正済み))内のデカンピークのそれとを、RV整合させることによって、各試料のポンプ流量(流量(見かけ))を直線的に補正した。次いで、デカンマーカーピークの時間のいかなる変化も、実行の全体にわたって流量(流量(有効))における線形シフトに関連すると推測される。流量マーカーピークのRV測定の最高精度を促進するために、流量マーカー濃度クロマトグラムのピークを二次方程式に当てはめる最小二乗適合ルーチンが使用される。次いで、二次方程式の一次導関数を使用して、真のピーク位置を解く。流量マーカーのピークに基づいてシステムを較正した後、(狭い標準較正に対する)有効流量を、式7の通り計算する。流量マーカーピークの処理を、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアを介して行った。許容可能な流量補正は、有効流量が見かけの流量の+/-2%以内になるはずであるようなものである。
【数7】
【0039】
トリプル検出器GPC(TDGPC)
【0040】
クロマトグラフィシステム、分析条件、カラムセット、カラム較正及び従来の分子量モーメントの計算及び分布を、ゲル浸透クロマトグラフィ(Gel Permeation Chromatography、GPC)に記載されている方法に従って実施した。
【0041】
IR5検出器からの粘度計及び光散乱検出器オフセットの決定に関して、多重検出器オフセットの決定のための体系的手法を、Balke、Moureyらによって公開されもの(Mourey and Balke,Chromatography Polym.Chpt12,(1992))(Balke,Thitiratsakul,Lew,Cheung,Mourey,Chromatography Polym.Chpt13,(1992))によって公開されたものと合致した様式で行われ、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアを使用して、広いホモポリマーポリエチレン標準物質(Mw/Mn>3)からのトリプル検出器ログ(MW及びIV)の結果を、狭い標準較正曲線からの狭い標準カラム較正の結果に対して最適化する。
【0042】
絶対分子量データは、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアを使用して、Zimm(Zimm,B.H.,J.Chem.Phys.,16,1099(1948))及びKratochvil(Kratochvil,P.,Classical Light Scattering from Polymer Solutions,Elsevier,Oxford,NY(1987))によって公開されたものと合致する様式で得た。分子量の決定において使用される総注入濃度を、好適な直鎖状ポリエチレンホモポリマー、又は既知の重量平均分子量のポリエチレン標準物質のうちの1つから導き出した、質量検出器面積及び質量検出器定数から得た。(GPCOne(商標)を使用して)計算される分子量を、以下に述べるポリエチレン標準物質のうちの1つ以上から導き出される、光散乱定数、及び0.104の屈折率濃度係数、dn/dcを使用して得た。一般に、(GPCOne(商標)を使用して決定された)質量検出器応答(IR5)及び光散乱定数は、約50,000g/モルを超える分子量を有する直鎖状標準物質から決定されるべきである。粘度計の較正(GPCOne(商標)を使用して決定された)は、製造業者によって記載された方法を使用して、又は代替として、標準参照材料(Standard Reference Material、SRM)1475a(国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology、NIST)から入手可能)などの好適な直鎖状標準物質の公開された値を使用することによって、達成することができる。較正標準についての特定の粘度面積(DV)及び注入された質量を、その固有粘度に関連付ける(GPCOne(商標)を使用して得られる)粘度計定数を計算する。クロマトグラフィ濃度は、第2のウイルス係数効果(分子量に対する濃度効果)への対処を排除するのに十分に低いと推測される。
【0043】
絶対重量平均分子量(MW
(Abs))を、質量定数から回収された質量及び質量検出器(IR5)面積で除した、光散乱(LS)面積統合クロマトグラム(光散乱定数で因数分解)から(GPCOne(商標)を使用して)得る。分子量及び固有粘度応答は、信号対雑音が低くなるクロマトグラフィの端部で線形に外挿される(GPCOne(商標)を使用して)。他のそれぞれのモーメントMn
(Abs)及びMz
(Abs)は、以下の通り方程式8~9に従って計算する。
【数8】
【数9】
【0044】
トリプル検出器GPC(Triple Detector GPC、3D-GPC)によるgpcBR分岐指数
【0045】
gpcBR分岐指数を、前述のように、最初に光散乱、粘度、及び濃度検出器を較正することによって決定する。次いで、ベースラインを、光散乱、粘度計、及び濃度のクロマトグラムから差し引く。次いで、積分ウィンドウを設定して、赤外線(IR5)クロマトグラムからの検出可能なポリマーの存在を示す光散乱及び粘度計クロマトグラムの低分子量保持体積範囲の全てを確実に積分する。次いで、直鎖状ポリエチレン標準物質を使用して、ポリエチレン及びポリスチレンのMark-Houwink定数を確立する。定数を得た後、方程式(10)及び(11)に示すように、2つの値を使用して、溶出体積の関数としてのポリエチレン分子量及びポリエチレン固有粘度の2つの直鎖状参照によるコンベンショナル較正法を構築する。
【数10】
【数11】
gpcBR分岐指数は、Yau,Wallace W.,「Examples of Using 3D-GPC-TREF for Polyolefin Characterization」,Macromol.Symp.,2007,257,29-45に記載されているように、長鎖分岐の特徴付けのための堅牢な方法である。この指数は、ポリマー検出器領域全体に有利な、g’値及び分岐頻度計算の決定において伝統的に使用された「スライスごとの」3D-GPC計算を回避する。3D-GPCデータから、ピーク面積方法を使用して、光散乱(LS)検出器により、サンプルのバルク絶対重量平均分子量(Mw,Abs)を得ることができる。この方法は、伝統的なg’決定で必要とされる光散乱検出器信号の濃度検出器信号に対する「スライスごとの」比率を回避する。
【0046】
3D-GPCにより、方程式(8)を使用してサンプルの固有粘度も独立して得る。方程式(5)及び(8)における面積計算は、サンプル面積全体として、ベースライン及び積分限界での検出器ノイズ及び3D-GPC設定によって引き起こされる変動の影響をはるかに受けにくいため、より高い精度を提供する。さらに重要なことに、ピーク面積の計算は、検出器のボリュームオフセットの影響を受けない。同様に、方程式(12)に示す面積法によって、サンプルの固有粘度(intrinsic viscosity、IV)が高精度で得られる。
【数12】
式中、η
spiは、粘度計検出器から取得した比粘度を表す。
【0047】
gpcBR分岐指数を決定するために、サンプルポリマーの光散乱溶出面積を使用して、サンプルの分子量を決定する。サンプルポリマー用の粘度検出器の溶出面積を使用して、サンプルの固有粘度(IV又は[η])を決定する。
【0048】
最初に、SRM1475a又は等価物などの直鎖状ポリエチレン標準サンプルのための分子量及び固有粘度を、溶出量の関数として分子量及び固有粘度の両方について従来の較正(「conventional calibration、cc」)を使用して決定する。
【数13】
式(14)を使用して、gpcBR分岐指数を決定する。
【数14】
式中、[η]は、測定された固有粘度であり、[η]
ccは、コンベンショナル較正からの固有粘度であり、Mwは、測定された重量平均分子量であり、Mw
,ccは、コンベンショナル較正の重量平均分子量である。光散乱(LS)による重量平均分子量は、一般に「絶対重量平均分子量」又は「Mw、Abs」と称される。コンベンショナルGPC分子量較正曲線(「コンベンショナル較正」)を使用するMw,ccは、多くの場合、「ポリマー鎖骨格分子量」、「コンベンショナル重量平均分子量」、及び「Mw、
GPC」と称される。
【0049】
「cc」の下付き文字が付いた全ての統計値は、それぞれの溶出量、前述の対応するコンベンショナル較正、及び濃度(Ci)を使用して決定される。下付き文字のない値は、質量検出器、LALLS、及び粘度計面積に基づく測定値である。KPEの値は、直鎖状参照サンプルがゼロのgpcBR測定値を有するまで反復して調整される。例えば、この特定の場合のgpcBRを決定するためのα及びLog Kの最終値は、ポリエチレンの場合はそれぞれ0.725及び-3.391、ポリスチレンの場合はそれぞれ0.722及び-3.993である。次いで、これらのポリエチレン係数を式13に入力した。
【0050】
一旦前述の手順を使用してK値及びα値を決定したら、分岐サンプルを使用して手順を繰り返す。分岐サンプルは、最良の「cc」較正値が適用されたとき、直鎖状参照から得られた最終的なMark-Houwink定数を使用して分析される。
【0051】
gpcBRの解釈は、単純である。直鎖状ポリマーの場合、LS及び粘度計によって測定された値はコンベンショナル較正標準に近くなるので、方程式(14)から計算されたgpcBRはゼロに近くなる。分岐ポリマーの場合、測定されたポリマーの分子量が計算されたMw,ccよりも高くなり、計算されたIVccが測定されたポリマーIVよりも高くなるため、特に長鎖分岐のレベルが高い場合、gpcBRはゼロより高くなることになる。実際、gpcBR値は、ポリマーの分岐の結果としての分子サイズの収縮効果によるIVの分数変化を表している。0.5又は2.0のgpcBR値は、等価重量の直鎖状ポリマー分子に対する、それぞれ50%及び200%のレベルでのIVの分子サイズ収縮効果を意味する。
【0052】
試料を約5mg/mLの濃度でTHFに溶解した。試料溶液を、SEC分析の前に0.45μmのPTFE膜によって濾過した。機器:Agilent1200、列:2本の混合Eカラム(7.8×300mm)、カラム温度:35℃移動相:テトラヒドロフラン、流速:1.0mL/分、注入体積:50μL、検出器:Agilent屈折率検出器、35℃、ソフトウェア:Agilent GPCソフトウェア;較正曲線:PLポリスチレン狭標準(部品番号2010~0101)、11450~162g/モルの範囲のポリオール当量分子量を有する。
【0053】
メルトインデックス
【0054】
本明細書で使用するとき、「メルトインデックス」又は「MI」という用語は、溶融状態にあるときに熱可塑性ポリマーがどれだけ容易に流動するかの尺度を指す。メルトインデックス、又はI2は、ASTM D 1238、条件190℃/2.16kgに従って測定され、10分当たりの溶出グラム数(g/10分)で報告される。I10は、ASTM D 1238、条件190℃/10kgに従って測定され、10分当たりの溶出グラム数(g/10分)で報告される。
【0055】
移動式ダイレオメーター(MDR)試験
【0056】
MDR試験は、ASTM D5289-12、Standard Test Method for Rubber Property-Vulcanization Using Rotorless Cure Metersに従ってトルクの変化をモニタリングしながら、180℃で20分間、MDR2000(Alpha Technologies)で行った。最小の測定トルク値をデシニュートンメートル(deciNewton-meter、dN-m)で表される「ML」として示す。硬化又は架橋が進行すると、測定されたトルク値が増加し、最終的に最大トルク値に達する。最大又は最高の測定トルク値をdN-mで表される「MH」として示す。全ての他の条件が等しいと、MHトルク値が大きいほど、架橋の程度が高くなる。T90架橋時間を、MHからMLを減じた差(MH-ML)の90%、すなわちMLからMHへの経路の90%に等しいトルク値を達成するのに必要な分数として決定する。T90架橋時間が短いほど、すなわちトルク値がMLからMHへの経路の90%になるのが早いほど、試験試料の硬化速度は速くなる。逆に、T90架橋時間が長いほど、すなわち、トルク値がMLからMHへの経路の90%を得るのにかかる時間が長いほど、試験サンプルの硬化速度は遅い。
【0057】
核磁気共鳴(1H NMR)
【0058】
本明細書で使用される場合、「核磁気共鳴」又は「nuclear magnetic resonance、NMR」又は「プロトンNMR」という用語は、材料又は化合物の化学組成及び構造に関する情報を提供する材料又は化合物のスペクトル分析を指す。約50mgの試料を室温で0.7mLのCDCl3に溶解して均一な溶液とした。Bruker400MHz(1H周波数)分光計で室温で1Hスペクトルを取得した。5mmBBFOプローブを使用した。化学シフトは、テトラメチルシラン(TMS)に対する百万分率(ppm)で与えられ、プロトン化溶媒の残留シグナルを基準とする(CDCl3、δ7.26ppm)。緩和遅延を16回のスキャンについて15秒に設定した。
【0059】
約200mgの試料を、0.025Mのクロム(III)アセチルアセトネート(Cr(acac)3)を含む0.6mLの重水素化クロロホルムに溶解して、均一な溶液とした。13Cスペクトルは、100.6MHzの13C共振周波数で動作するBruker AVANCE III 400MHz分光計により室温で得られた。5mmBBFOプローブを使用した。化学シフトは、テトラメチルシラン(TMS)に対する百万分率(ppm)で与えられ、プロトン化溶媒の残留シグナルを基準とする(CDCl3:δC77ppm)。逆ゲート付きデカップリングを、定量的13C NMRのためのパルスプログラムとして使用した。緩和遅延を4000回のスキャンについて10秒に設定した。
【0060】
クロム(III)アセチルアセトネート(Cr(acac)3)を含有する重水素化クロロホルム(CDCl3)中の約40%(v/v)の試験品溶液を、16mmシリコーンフリーNMRチューブ中で調製した。試料溶液中のCr(acac)3の濃度は、約0.02Mであった。Cr(acac)3を添加する目的は、反復パルスが取得され得る速度を改善するT1緩和試薬として作用することであった。調製された試料溶液は、透明で均質な紫色の溶液として観察され、紫色はCr(acac)3によるものである。16mmシリコンフリー切り替え可能13C/29Siプローブを備えたAgilent Mercury 400、FT-NMR分光計で、29Si NMRスペクトルを室温で取得した。逆ゲート付きデカップリングを、定量的29Si NMRのためのパルスプログラムとして使用した。緩和遅延を1000回のスキャンについて13秒に設定した。29Si NMR実験のために、テトラメチルシラン(TMS)を外部基準として使用した。
【0061】
水トリー成長試験方法:ASTM D6097-01a、Standard Test Method for Relative Resistance to Vented Water-Tree Growth in Solid Dielectric Insulating Materialsに従って測定した。この試験方法は、半透明の熱可塑性又は架橋電気絶縁材料の水トリー成長に対する相対的な耐性を対象にしている。これは特に、中電圧電力ケーブルに有用な押出ポリマー絶縁材料に適用され得る。それぞれが制御された円錐形の欠陥を含有する10個の圧縮成形ディスク試験片を、0.01規定の塩化ナトリウムの導電性水溶液中で30日間、1キロヘルツ(kHz)及び23°±2℃で、5キロボルト(kV)の印加電圧に供する。制御された円錐形の欠陥は、60°の刃先角及び3マイクロメートル(μm)の先端半径を有する鋭い針によって形成される。これにより、欠陥先端での電気的ストレスが強化され、メイソンの双曲線の点から面への応力強化方程式によって推定される。この強化された電気的ストレスは、欠陥先端から成長した通気水トリーの形成を開始する。そのように生成された結果的なトリー試験片のそれぞれは、染色され、スライスされる。水トリー長と点から面への試験片の厚さは顕微鏡で測定され、水トリー成長に対する抵抗として定義される比率を計算するために使用される。水トリー長(WTL)は、水トリーが成長している絶縁材料の厚さの割合である。WTLの値が低いほど、水トリー耐性が良好である。WTLはパーセント(%)で報告される。
【発明を実施するための形態】
【0062】
1.架橋性組成物
本開示は、組成物を提供する。一実施形態では、組成物は、架橋性組成物であり、エチレン系ポリマー、ポリアミノシロキサン(PAS)、及び任意選択的に過酸化物を含む。ポリアミノシロキサンは、式(I)の構造を有し、
式(I)
【化9】
(式中、
Rは、フェニル部分を有するC
6-C
20アミノアルキル基であり、
Siは、ケイ素原子であり、
Oは、酸素原子であり、
Zは、水素原子又はC
1-C
10ヒドロカルボニル基であり、
q、m、及びnは、それぞれ独立して、2~1,000,000の整数であり、
1/2は、式(II)の末端ブロック構造を表し、
【化10】
2/2は、式(III)の直鎖構造を表し、
【化11】
3/2は、式(IV)の分岐構造を表す)。
式(IV)
【化12】
【0063】
本開示は、架橋性組成物である組成物を提供する。「架橋性組成物」は、本明細書で使用するとき、エチレン系ポリマーと、架橋条件(例えば、熱、照射、及び/又はUV光)に供されたときにエチレン系ポリマーの架橋する能力を増強する1つ以上の添加剤(例えば、フリーラジカル開始剤又は有機過酸化物)と、を含有する組成物である。架橋条件に供された後(例えば、「架橋後」又は「硬化後」)、架橋性組成物は、架橋され、架橋性組成物とは構造的及び物理的に異なるエチレン系ポリマーを含有する「架橋組成物」になる。
【0064】
本架橋性組成物は、エチレン系ポリマーを含む。好適なエチレン系ポリマーの非限定的な例としては、エチレンホモポリマー、エチレン/α-オレフィンコポリマー(直鎖状又は分枝状)、高密度ポリエチレン(「HDPE」)、低密度ポリエチレン(「LDPE」)、直鎖状低密度ポリエチレン(「LLDPE」)、又は中密度ポリエチレン(「MDPE」)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。架橋性組成物は、架橋性組成物の総重量に基づいて、50重量%~99重量%、又は80重量%~99重量%、又は90重量%~99重量%、又は95重量%~99重量%のエチレン系ポリマーを含有する。
【0065】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレン/C3-C20α-オレフィンコポリマーの総重量に基づいて、1重量%~45重量%、又は5重量%~40重量%、又は10重量%~35重量%、又は15重量%~30重量%のα-オレフィン含有量を有する、エチレン/C3-C20α-オレフィンコポリマー、又はエチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーである。C3-C20α-オレフィンの非限定的な例としては、プロペン、ブテン、4-メチル-1-ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセン、ドデセン、テトラデセン、ヘキサデセン、及びオクタデセンが挙げられる。α-オレフィンはまた、3-シクロヘキシル-1-プロペン(アリルシクロヘキサン)及びビニルシクロヘキサンなどの環状構造を有し得る。好適なエチレン/C3-C20α-オレフィンコポリマーの非限定的な例としては、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/ブテンコポリマー、エチレン/ヘキセンコポリマー、及びエチレン/オクテンコポリマーが挙げられる。
【0066】
一実施形態において、エチレン系ポリマーは、非共役ジエンコモノマーを含む。好適な非共役ジエンモノマーは、6~15個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖、又は環状炭化水素ジエンであり得る。好適な非共役ジエンの例としては、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、及び1,9-デカジエンなどの直鎖非環式ジエン;5-メチル-1,4-ヘキサジエン、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン、3,7-ジメチル-1,7-オクタジエン、並びにジヒドロミリセン及びジヒドロオシネンの混合異性体などの分岐鎖非環式ジエン;1,3-シクロペンタジエン、1,4-シクロヘキサジエン、1,5-シクロオクタジエン、及び1,5-シクロドデカジエンなどの単環脂環式ジエン;アステトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、及びビシクロ-(2,2,1)-ヘプタ-2,5-ジエンなどの多環脂環式縮合及び架橋環ジエン;5-メチレン-2-ノルボルネン、5-プロペニル-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-(4-シクロペンテニル)-2-ノルボルネン、5-シクロヘキシリデン-2-ノルボルネン、及び5-ビニル-2-ノルボルネンなどのアルケニル、アルキリデン、シクロアルケニル、及びシクロアルキリデンノルボルネンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(又は「EPDM」)である。好適なジエンの非限定的な例は、1,4-ヘキサジエン(「HD」)、5-エチリデン-2-ノルボルネン(「ENB」)、5-ビニリデン-2-ノルボルネン(「VNB」)、5-メチレン-2-ノルボルネン(「MNB」)、又はジシクロペンタジエン(「DCPD」)である。EPDMのジエン含有量は、EPDMの総重量に基づいて、0.1重量%~10.0重量%、又は0.2重量%~5.0重量%、又は0.3重量%~3.0重量%である。
【0068】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレンから誘導された単位と、構造(A)を有する少なくとも1つのコモノマーから誘導された単位とを含む。
【化13】
であり
式中、R
1はC
1-C
4ヒドロカルボニル基であり、
R
2は、C
1-C
2ヒドロカルボニル基である。
【0069】
適切なR1基の非限定的な例には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、エテニル基、プロペニル基、及びブテニル基を含む、非置換C1-C4アルキル基及び非置換C2-C4アルケニル基が含まれる。非置換C1-C4アルキル基及び非置換C2-C4アルケニル基は、分岐鎖又は直鎖とすることができる。1つの実施形態では、R1基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又はエテニル基を含む、非置換直鎖C1-C4アルキル基又は非置換C2アルケニル基である。さらなる実施形態では、R1基は、メチル基、エチル基、ブチル基、及びエテニル基から選択される。一実施形態では、R1基は、メチル基、エチル基、及び直鎖ブチル基から選択される。
【0070】
適切なR2基の非限定的な例には、メチル基、エチル基、及びエテニル基を含む、非置換C1-C2アルキル基及び非置換C2アルケニル基が含まれる。一実施形態では、R2基はメチル基及び非置換エテン基から選択される。
【0071】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、
(i)1つ以上の加水分解性シリル基であって、加水分解性シリル基は独立して、式(R2)m(R3)3-mSi-の一価の基であり、式中、下付き文字mは、1、2、又は3の整数である、加水分解性シリル基、各R2は独立してH、HO-、(C1-C6)アルコキシ、(C2-C6)カルボキシ、フェノキシ、(C1-C6アルキル-フェノキシ、((C1-C6)N-、(C1-C6アルキル(H)C=NO-、又は((C1-C6)アルキル)2C=NO-、各R3は、独立して、(C1-C6)アルキル又はフェニルである、
(ii)C3-C40α-オレフィンコモノマー、及び
(iii)(i)及び(ii)の両方である。各R2は、H及びHO-を含まなくてもよく、あるいはフェノキシ及び(C1-C9)アルキルフェノキシを含まなくてもよい。各R2は、独立して、(C1-C6)アルコキシ、(C2-C6)カルボキシ、((C1-C6)アルキル)2N-、(C1-C9)アルキル(H)C=NO-、又は((C1-C9)アルキル)2C=NO-、あるいは(C1-C9)アルコキシ、あるいは(C2-C9)カルボキシ、あるいは((C1-C9)2N-、あるいは(C1-C9)アルキル(H)C=NO-、あるいは((C1-C9))アルキル2C=NOであってもよい。
【0072】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、以下の特性のうちの1つ、いくつか又は全てを有する低密度ポリエチレン(LDPE)ホモポリマーである。
(i)0.91~0.93の密度、及び/又は
(ii)0.5g/10分~10.0g/10分、若しくは1.0g/10分~5.0g/10分のメルトインデックス
【0073】
架橋性組成物は、ポリアミノシロキサンを含む。本明細書で使用される場合、「ポリアミノシロキサン」は、高温(60~100℃)で水の存在下で加水分解され、続いて縮合に供されてアミノアルキルシラン前駆体の単位間にポリシロキサン結合-Si-O-Si-を形成する、1つ以上のアミノアルキルシラン前駆体の縮合生成物である。このようにして、ポリアミノシロキサンは、-Si-O-Si-結合によって互いに結合された多くの(すなわち、「ポリ」)アミノアルキルシラン前駆体からなる鎖である。ポリアミノシロキサン(互換的に「PAS」と呼ばれる)は、式(I)の構造を有する。
【化14】
(式中、
Rは、フェニル部分を有するC
6-C
20アミノアルキル基であり、
Siは、ケイ素原子であり、
Oは、酸素原子であり、
Zは、水素原子又はC
1-C
10ヒドロカルボニル基であり、
qは2~1,000,000の整数であるか、又はqは5~100の整数であり、
mは2~1,000,000の整数であるか、又はmは20~300の整数であり、
nは2~1,000,000の整数であるか、又はnは10~700の整数であり、
1/2は、式(II)の末端ブロック構造を表し、
【化15】
2/2は、式(III)の直鎖構造を表し、
【化16】
3/2は、式(IV)の分岐構造を表す)。
【化17】
【0074】
式(I)の構造を有するPASは、フェニル部分を有するC
6-C
20アミノアルキル基であるRを含む。アミノアルキル基は、1つ以上の窒素原子(N)を含有し、第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基であり得る。C
6-C
20アミノアルキル基のフェニル部分は、以下の構造(B)を有する。
【化18】
式中、Rは、ヒドロカルボニル基又はアミノアルキル基である。
【0075】
式(I)のPASの製造に好適なアミノアルキルシラン前駆体の非限定的な例としては、フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン(CAS:17890-10-7)、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン(CAS:74113-77-2)、p-アミノフェニルトリメトキシシラン(CAS:33976-43-1)、3-(2,4-ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン(CAS:71783-41-0)、n-フェニルアミノメチルトリエトキシシラン(CAS:77855-73-3)、n-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(CAS:3068-76-6)、m-アミノフェニルトリメトキシシラン(CAS:70411-42-6)、アミノフェニルトリメトキシシラン(CAS:33976-43-1/70411-42-6)、3-(n-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシランヒドロクロリド(CAS:34937-00-3)、4-(トリメトキシシリルエチル)ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0076】
一実施形態では、アミノアルキルシラン前駆体は、n-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(CAS:3068-76-6)及びアミノフェニルトリメトキシシラン(CAS:33976-43-1)から選択される。
【0077】
一実施形態では、アミノアルキルシラン前駆体は、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(CAS:3068-76-6)である。
【0078】
一実施形態では、アミノアルキルシラン前駆体は、アミノフェニルトリメトキシシラン(CAS:33976-43-1)である。
【0079】
架橋性組成物は、架橋性組成物の総重量に基づいて、0.05重量%~3重量%、又は0.1重量%~2.5重量%、又は0.5重量%~2.0重量%のポリアミノシロキサンを含む。
【0080】
エチレン系ポリマー及びPASに加えて、本架橋性組成物は、任意選択的に、フリーラジカル開始剤を含む。一実施形態では、フリーラジカル開始剤は架橋性組成物中に存在し、フリーラジカル開始剤は有機過酸化物である。有機過酸化物は、炭素原子、水素原子、及び2つ以上の酸素原子を含有し、少なくとも1つの-O-O-基を有し、ただし、2つ以上の-O-O-基が存在する場合、各-O-O-基は、1つ以上の炭素原子を介して別の-O-O-基に間接的に結合する、分子、又はそのような分子の集合体である。好適な有機過酸化物の非限定的な例としては、ジアシルパーオキシド、パーオキシカーボネート、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、環状ケトンパーオキシド、ジアルキルパーオキシド、ケトンパーオキシド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。架橋性組成物は、架橋性組成物の総重量に基づいて、0重量%超~2重量%未満、又は0.1重量%~1.9重量%、又は0.2~1.8重量%の過酸化物を含む。エチレン系ポリマー、ポリアミノシロキサン、及び過酸化物の集合体は、架橋性組成物の100重量%になることが理解される。
【0081】
有機過酸化物は、式RO-O-O-ROのモノペルオキシドであってもよく、式中、各ROは、独立して、(C1~C20)アルキル基又は(C6~C20)アリール基である。各(C1-C20)アルキル基は独立して、非置換であるか、又は1つ若しくは2つの(C6-C12)アリール基で置換されている。各(C6-C20)アリール基は、非置換であるか、又は1~4つの(C1-C10)アルキル基で置換されている。あるいは、有機過酸化物は、式RO-O-O-R-O-O-ROのジペルオキシドであってもよく、式中、Rは、(C2-C10)アルキレン、(C3-C10)シクロアルキレン、又はフェニレンなどの二価炭化水素基であり、各ROは、上記で定義された通りである。
【0082】
好適な有機過酸化物の非限定的な例としては、ジクミルペルオキシド(DCP)、ラウリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーベンゾエート、ジ(tert-ブチル)パーオキシド、クメンヒドロパーオキシド;2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチル-パーオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ(t-ブチル-パーオキシ)ヘキサン、tert-ブチルヒドロパーオキシド、イソプロピルパーカーボネート、α,α’-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシル-モノカーボネート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジヒドロキシパーオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、ビス(1,1-ジメチルエチル)パーオキシド、ビス(1,1-ジメチルプロピル)パーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(1,1-ジメチルエチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(1,1-ジメチルエチルパーオキシ)ヘキシン、4,4-ビス(1,1-ジメチルエチルパーオキシ)吉草酸、ブチルエステル、1,1-ビス(1,1-ジメチルエチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-tert-アミルペルオキシド(「DTAP」)、ビス(α-t-ブチル-パーオキシイソプロピル)ベンゼン(「BIPB」)、イソプロピルクミルt-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2,5-ジメチルヘキシン-3,1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、イソプロピルクミルクミルペルオキシド、ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ジ(イソプロピルクミル)パーオキシドなどが挙げられる。
【0083】
一実施形態において、フリーラジカル開始剤は、架橋性組成物中に存在し、フリーラジカル開始剤は、ジクミルペルオキシド(DCP)である有機過酸化物である。
【0084】
本発明の架橋性組成物は、1つ以上の任意の添加剤を含み得る。添加剤が存在する場合、好適な添加剤の非限定的な例としては、酸化防止剤、スコーチ遅延剤、助剤(例えば、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、N,N,N’,N’,N’’,N’’-ヘキサアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、トリビニルトリメチルシクロトリシロキサン、ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン)、成核剤、加工助剤、エキステンダー油、カーボンブラック、ナノ粒子、UV安定剤、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0085】
一実施形態では、架橋性組成物は、1つ以上の酸化防止剤を含む。好適な酸化防止剤の非限定的な例としては、ビス(4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル)アミン(例えば、NAUGARD445)、2,2-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)(例えば、VANOX MBPC)、2,2’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール(CAS番号90-66-4)、CAS番号96-69-5、市販のLOWINOX TBM-6)、2,2’-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール(CAS番号90-66-4、市販のLOWINOX TBP-6)、トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-ジメチルフェニル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン)(例えば、CYANOX1790)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(例えば、IRGANOX1010、CAS番号6683-19-8)、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸2,2’-チオジエタンジイル(thiodiethanediyl)エステル(例えば、IRGANOX1035、CAS番号41484-35-9)、ジステアリルチオジプロピオネート(「DSTDP」)、ジラウリルチオジプロピオネート(例えば、IRGANOX PS 800)、ステアリル3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(例えば、IRGANOX1076)、2,4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェノール(IRGANOX1726)、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(例えば、IRGANOX1520)、及び2’,3-ビス[[3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジド(IRGANOX1024)、4,4-チオビス(2-t-ブチル-5-メチイフェノイ(methyiphenoi))(4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)としても知られている)、2,2’-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール、トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン、ジステアリルチオジプロピオネート、Cyanox 1790(CAS:40601-76-1)、Uvinul 4050(CAS:124172-53-8)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。酸化防止剤は、架橋性組成物の総重量に基づいて、0.01重量%~1.5重量%、又は0.05重量%~1.2重量%、又は0.07重量%~1.0重量%、又は0.1重量%~0.5重量%存在する。
【0086】
一実施形態では、架橋性組成物は、
80重量%~99重量%、又は90重量%~99重量%のエチレン系ポリマー、
0.1重量%~2.0重量%、又は0.3重量%~1.0重量%のポリアミノシロキサン(PAS)、■及び
0重量%超~2重量%未満、又は0.5重量%~1.9重量%の過酸化物を含み、重量パーセントは、架橋性組成物の総重量に基づく。エチレン系ポリマー、PAS、及び過酸化物の集合体は、架橋性組成物の100重量%になることが理解される。
【0087】
架橋性組成物の成分を加工し、混合して、架橋性組成物を硬化させ、架橋組成物を形成する。エチレン系ポリマーのペレットを、120℃~180℃の温度で混合装置(例えば、Brabenderミキサなど)に供給して、エチレン系ポリマーを溶融する。PAS(及び酸化防止剤などの任意選択の添加剤)を混合装置に供給し、エチレン系ポリマーに溶融混合する。エチレン系ポリマー及びPAS(及び任意選択の添加剤)から構成される混合化合物(以下、「PAS-PE化合物」)を収集し、小に切断する。
【0088】
PAS-PE化合物及びフリーラジカル開始剤の混合は、PAS-PE化合物及び過酸化物(及び任意選択的に酸化防止剤(複数可))の片を容器に入れることによって行われる。続いて、過酸化物がPAS-PE化合物の片と接触して保持されるか、又は他の方法で過酸化物がPAS-PE化合物の片に吸収されるように、容器を振盪、回転、混転、若しくは他の方法で撹拌する。プロセスは、PAS-PE化合物と過酸化物との混合物を、60℃、70℃、又は80℃~90℃又は100℃の温度で加熱するか、又はそうでなければ、過酸化物の溶融温度よりも高い温度で加熱することを含む。混合物の加熱は、1分、又は10分、又は30分~1時間、又は2時間、又は3時間、又は4時間、又は5時間、又は6時間、又は7時間、又は8時間までの期間にわたって行い、それによって、過酸化物をPAS-PE化合物のペレット中に拡散させることが可能になる。
【0089】
一実施形態では、混合及び加熱は逐次的に行われる。
【0090】
一実施形態では、混合及び加熱は同時に行われる。
【0091】
過酸化物含有PAS-PE片は、100℃、又は110℃、又は125℃超~150℃、又は180℃、又は200℃の硬化温度で、1分、又は5分、又は10分、又は30分、又は1時間~2時間、又は5時間、又は7時間、又はそれ以上の期間加熱することによって硬化(すなわち、「架橋」)されて、エチレン系ポリマー、PAS、及び任意選択の添加剤から構成される架橋組成物を形成する。架橋組成物は、架橋性組成物と構造的及び物理的に異なる。
【0092】
2.架橋組成物
一実施形態では、架橋組成物が提供される。架橋組成物は、エチレン系ポリマー、ポリアミノシロキサン(PAS)、及び任意選択の添加剤を含む。ポリアミノシロキサン(PAS)は式(I)を有し、
【化19】
(式中、
Rは、フェニル部分を有するC
6-C
20アミノアルキル基であり、
Siは、ケイ素原子であり、
Oは、酸素原子であり、
Zは、水素原子又はC
1-C
10ヒドロカルボニルであり、
qは2~1,000,000の整数であるか、又はqは5~100の整数であり、
mは2~1,000,000の整数であるか、又はmは20~300の整数であり、
nは2~1,000,000の整数であるか、又はnは10~700の整数であり、
1/2は、式(II)の末端ブロック構造を表し、
【化20】
2/2は、式(III)の直鎖構造を表し、
【化21】
3/2は、式(IV)の分岐構造を表す)。
【化22】
【0093】
架橋組成物中のエチレン系ポリマーは、本明細書において先に開示された架橋性組成物中の任意のエチレン系ポリマーであり得る。一実施形態では、架橋組成物のエチレン系ポリマー組成物は、0.91g/cc~0.93g/ccの密度、及び0.5g/10分~5.0g/10分のメルトインデックスを有するLDPEエチレンホモポリマーである。
【0094】
架橋組成物中に存在する式(I)のポリアミノシロキサン(PAS)は、アミノアルキルシラン前駆体の重合反応生成物である。式(I)のPASの製造に好適なアミノアルキルシラン前駆体の非限定的な例としては、フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン(CAS:17890-10-7)、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン(CAS:74113-77-2)、p-アミノフェニルトリメトキシシラン(CAS:33976-43-1)、3-(2,4-ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン(CAS:71783-41-0)、n-フェニルアミノメチルトリエトキシシラン(CAS:77855-73-3)、n-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(CAS:3068-76-6)、m-アミノフェニルトリメトキシシラン(CAS:70411-42-6)、アミノフェニルトリメトキシシラン(CAS:33976-43-1/70411-42-6)、3-(n-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシランヒドロクロリド(CAS:34937-00-3)、4-(トリメトキシシリルエチル)ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0095】
一実施形態では、式(I)のポリアミノシロキサン(PAS)は、n-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(CAS:3068-76-6)及びアミノフェニルトリメトキシシラン(CAS:33976-43-1)から選択されるアミノアルキルシラン前駆体の重合反応生成物である。
【0096】
一実施形態では、式(I)のポリアミノシロキサン(PAS)は、アミノアルキルシラン前駆体フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(CAS:3068-76-6)の重合反応生成物である。
【0097】
一実施形態では、式(I)のポリアミノシロキサン(PAS)は、アミノアルキルシラン前駆体アミノフェニルトリメトキシシラン(CAS:33976-43-1)の重合反応生成物である。
【0098】
一実施形態では、架橋組成物は、
90重量%~99.9重量%、又は90重量%~99重量%、又は95重量%~99重量%のエチレン系ポリマーと、
0.1重量%~1.0重量%、又は0.1重量%~0.9重量%、又は0.3重量%~0.9重量%の式(I)のPASとを含み、及び
架橋組成物は、3%~12%、又は5%~10%の平均WTLを有する。さらなる実施形態では、式(I)のPASは、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(CAS:3068-76-6)の重合反応生成物である。なおさらなる実施形態では、式(I)のPASは、アミノフェニルトリメトキシシラン(CAS:33976-43-1)の重合反応生成物である。エチレン系ポリマー、式(I)のPAS、及び任意選択の添加剤の集合体は、架橋組成物の100重量%になることが理解される。
【0099】
本発明の架橋組成物は、1つ以上の任意選択の添加剤を含み得る。添加剤が架橋組成物中に存在する場合、添加剤は、本明細書において先に開示された架橋性組成物における添加剤のような任意の添加剤であり得る。
【0100】
用途
【0101】
架橋組成物は、AC(交流)及びDC(直流)用のMV/HV/EHVケーブル用の絶縁層、MV/HV/EHVケーブル用のカーボンブラックが充填された半導電層、配電送電線用の付属品、絶縁層、光起電力(PV)モジュール用の絶縁封入フィルムなどのワイヤ及びケーブル用途、及びこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、様々な用途で使用することができる。
【0102】
限定するものではなく例として、これから、本開示のいくつかの実施形態を、以下の実施例において詳述する。
【実施例】
【0103】
実施例で使用される材料は、以下の表1に記述されている。
【表1】
【0104】
1.ポリアミノシロキサン(PAS)の調製
20gのPAPTMSを100mL丸底フラスコに加え、次に20mLの水を加え、混合物を80℃で7日間撹拌した。水を除去して、式(I)を有するポリアミノシロキサン1(PAS1)を得た。
【0105】
20gのp-APTMSを100mL丸底フラスコに加え、次に20mLの水を加え、混合物を80℃で7日間撹拌した。水を除去して、式(I)を有するポリアミノシロキサン2(PAS2)を得た。
【0106】
PAS1及びPAS2の性質は、以下の表2に示す。
【表2】
*
29Si NMRから計算されたq/m/n比を、(RSi(OZ)
2O
1/2)、(RSi(OZ)O
2/2)及び(RSiO
3/2)のピーク面積を積分し、次いで比を正規化した。
【0107】
2.配合
設定温度160℃、ロータ速度10rpmで、LDPE1ペレットをBrabenderミキサ供給した。酸化防止剤及び成分(複数可)を設定温度でポリマー溶融物に供給して、表1からの異なる成分(複数可)を有する個々の試料を形成した。最終混合は、設定温度及び45rpmのロータ速度で4分間行った。化合物を回収し、使用のために小片に切断した。
【0108】
3.ペレット化
配合物試料をBrabender 単一押出機のホッパーに供給した。25rpmのスクリュー速度で120℃において化合物試料を溶融ストランドに押出した。溶融ストランドをBrabenderペレット製造機に供給して、ペレットを調製した。
【0109】
4.浸漬
250mLのフッ素化HDPEボトルを適用して、50gのペレット及び0.865gのDCPを密封した。ボトルをしっかりと密封した。浸漬を70℃で8時間行った。ボトルを、浸漬プロセスにおいて0、2、5、10、20、30分ごとに振盪した。DCPで浸漬したペレット(XLPEペレット)を、浸漬プロセス後の試験のためにフッ素化ボトル中に保存した。
【0110】
5.XLPEプラークのホットプレス硬化
鋳型サイズ/プラーク試料サイズは180×190×0.5mmであった。15gのXLPEペレットを秤量し、2枚の2mmPETフィルムの間に挟んだ。試料及びPETフィルムを型に入れた。次いで、型をホットプレス機の上部プレートと下部プレートとの間に挟み、予熱期間に120℃で10分間、0MPaの圧力で保持する。温度を10MPaで7分以内に120℃から180℃まで加熱して硬化させた。型を120℃及び5MPaで0.5分間保持した。型を120℃及び10MPaで0.5分間保持した。8回ベントした後、型を180℃、10MPaで13分間保持して硬化させた。型を10MPaで10分以内に180℃から60℃に冷却した。XLPEプラークを型から取り出した。以下の表3は、各個々のサンプルの組成及び特性を提供する。
【表3】
CS=比較試料IE=発明実施例
【0111】
表3は、IE1~4のウォーターツリー長(WTL)がCS1~3のWTLよりも短いことを示す。IE1~4は、13.55~28.08の範囲のCS1~3のWTLと比較して、5.3%~9.9%の範囲のWTLを有し、これは、CS1-3と比較したIE1-4についての水トリー遅延の改善を示す。注目すべきことに、CS2は、IE1~4における水トリー遅延剤の量(0.3~0.9重量%のPAS1又はPAS2)と比較して、従来の水トリー遅延剤(2.00重量%のPDMS)の2倍を超える量を有するが、CS2は13.55%のWTL値を有し、これは、IE1~4のWTL、5.3%~9.9%よりも大きい。
【0112】
本開示は、本明細書に含まれる実施形態及び例示に限定されず、実施形態の一部、及び異なる実施形態の要素の組み合わせを含むそれらの実施形態の変更された形態を、以下の特許請求の範囲に該当する範囲で含むことが特に意図されている。
【国際調査報告】