(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】金属-リガンド錯体、これを含むエチレン系重合体製造用の触媒組成物およびこれを用いたエチレン系重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 209/86 20060101AFI20231227BHJP
C08F 4/64 20060101ALI20231227BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C07D209/86
C08F4/64
C08F10/00 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525459
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(85)【翻訳文提出日】2023-04-18
(86)【国際出願番号】 IB2021061605
(87)【国際公開番号】W WO2022144650
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0184595
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0175570
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523146708
【氏名又は名称】サビック エスケー ネクスレン カンパニー プライヴェート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シン,ドンチョル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミジ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミンジ
【テーマコード(参考)】
4J128
【Fターム(参考)】
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC26
4J128AC27
4J128AE06
4J128BA02B
4J128BB01B
4J128BC12B
4J128BC15B
4J128EB02
4J128EB07
4J128EC03
4J128FA02
4J128GA05
4J128GA08
4J128GB01
(57)【要約】
本発明は、特定の官能基であるジフルオロメチレン基を酸素と酸素のブリッジとして導入して強い電子供与基と電子求引基を同時に有する金属-リガンド錯体、これを含むエチレン系重合用触媒組成物およびこれを用いるエチレン系重合体の製造方法に関する。本発明による金属-リガンド錯体およびこれを含む触媒組成物は、優れた物性を有するエチレン系重合体の製造に非常に有用に使用されることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される、金属-リガンド錯体。
[化学式1]
前記化学式1中、
Mは、周期表上、第4族の遷移金属であり、
A
1およびA
2は、互いに独立して、C
1-C
20アルキレンまたはC
1-C
20ハロアルキレンであり、
R’およびR’’は、互いに独立して、C
1-C
20アルキル、C
6-C
20アリールオキシまたはC
1-C
20アルキルC
6-C
20アリールオキシであり、
R
1およびR
2は、互いに独立して、ハロゲン、C
1-C
20アルキルまたはハロC
1-C
20アルキルであり、
R
3~R
6は、互いに独立して、C
1-C
20アルキル、C
6-C
20アリールまたはC
6-C
20アリールC
1-C
20アルキルであり、
R
7およびR
8は、互いに独立して、C
1-C
20アルキルまたはC
1-C
20アルコキシであり、
p、q、a、b、cおよびdは、互いに独立して、0~4の整数であり、
sおよびtは、互いに独立して、0~3の整数である。
【請求項2】
前記化学式1中、
A
1およびA
2は、互いに独立して、C
1-C
20アルキレンであり、
R’およびR’’は、互いに独立して、C
1-C
20アルキルであり、
R
1およびR
2は、互いに独立して、ハロゲン、C
1-C
20アルキルまたはハロC
1-C
20アルキルであり、
R
3~R
6は、互いに独立して、C
1-C
20アルキルまたはC
6-C
20アリールC
1-C
20アルキルであり、
R
7およびR
8は、互いに独立して、C
1-C
20アルキルまたはC
1-C
20アルコキシであり、
pおよびqは、互いに独立して、0~3の整数であり、
a、b、cおよびdは、互いに独立して、1~3の整数であり、
sおよびtは、互いに独立して、1~2の整数である、請求項1に記載の金属-リガンド錯体。
【請求項3】
前記化学式1は、下記化学式2で表される、請求項1に記載の金属-リガンド錯体。
[化学式2]
前記化学式2中、
Mは、周期表上、第4族の遷移金属であり、
A
1およびA
2は、互いに独立して、C
1-C
20アルキレンまたはC
1-C
20ハロアルキレンであり、
R’およびR’’は、互いに独立して、C
1-C
20アルキル、C
6-C
20アリールオキシまたはC
1-C
20アルキルC
6-C
20アリールオキシであり、
R
3~R
6は、互いに独立して、C
1-C
20アルキル、C
6-C
20アリールまたはC
6-C
20アリールC
1-C
20アルキルであり、
R
7およびR
8は、互いに独立して、C
1-C
20アルキルまたはC
1-C
20アルコキシであり、
R
11およびR
12は、互いに独立して、水素、ハロゲンまたはC
1-C
20アルキルであり、
R
13およびR
14は、互いに独立して、水素またはC
1-C
20アルキルである。
【請求項4】
前記化学式2中、
A
1およびA
2は、互いに独立して、C
1-C
20アルキレンであり、
R’およびR’’は、互いに独立して、C
1-C
20アルキルであり、
R
3~R
6は、互いに独立して、C
1-C
20アルキルまたはC
6-C
20アリールC
1-C
20アルキルであり、
R
7およびR
8は、互いに独立して、C
1-C
20アルキルまたはC
1-C
20アルコキシであり、
R
11およびR
12は、互いに独立して、ハロゲンであり、
R
13およびR
14は、互いに独立して、水素またはC
1-C
20アルキルである、請求項3に記載の金属-リガンド錯体。
【請求項5】
前記化学式1は、下記化学式3で表される、請求項1に記載の金属-リガンド錯体。
[化学式3]
前記化学式3中、
Mは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
A
1およびA
2は、互いに独立して、C
1-C
20アルキレンまたはC
1-C
20ハロアルキレンであり、
R’およびR’’は、互いに独立して、C
1-C
20アルキルであり、
R
3~R
6は、互いに独立して、C
1-C
20アルキルであり、
R
7およびR
8は、互いに独立して、C
1-C
20アルキルまたはC
1-C
20アルコキシであり、
R
11およびR
12は、互いに独立して、ハロゲンであり、
R
13およびR
14は、互いに独立して、水素またはC
1-C
20アルキルである。
【請求項6】
前記化学式3中、
A
1およびA
2は、互いに独立して、C
1-C
10アルキレンであり、
R’およびR’’は、互いに独立して、C
1-C
10アルキルであり、
R
3~R
6は、互いに独立して、C
1-C
10アルキルであり、
R
7およびR
8は、互いに独立して、C
5-C
20アルキルまたはC
5-C
20アルコキシであり、
R
11およびR
12は、互いに独立して、ハロゲンであり、
R
13およびR
14は、互いに独立して、水素またはC
1-C
10アルキルである、請求項5に記載の金属-リガンド錯体。
【請求項7】
前記化学式1は、下記化学式4で表される、請求項1に記載の金属-リガンド錯体。
[化学式4]
前記化学式4中、
Mは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
A
1およびA
2は、互いに独立して、C
1-C
20アルキレンまたはC
1-C
20ハロアルキレンであり、
Rは、C
1-C
20アルキルであり、
R
21は、ハロゲンであり、
R
22は、水素またはC
1-C
20アルキルであり、
R
23は、C
1-C
20アルキルであり、
R
24は、C
1-C
20アルキルまたはC
1-C
20アルコキシである。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の金属-リガンド錯体と、
助触媒とを含む、エチレン系重合体製造用の触媒組成物。
【請求項9】
前記助触媒は、アルミニウム化合物助触媒、ホウ素化合物助触媒、またはこれらの混合物である、請求項8に記載のエチレン系重合体製造用の触媒組成物。
【請求項10】
前記助触媒は、金属-リガンド錯体1モルに対して0.5~10,000モル使用される、請求項8に記載のエチレン系重合体製造用の触媒組成物。
【請求項11】
請求項8に記載のエチレン系重合体製造用の触媒組成物の存在下で、エチレンまたはエチレンとα-オレフィンを重合させてエチレン系重合体を製造するステップを含む、エチレン系重合体の製造方法。
【請求項12】
前記重合は、100~250℃で行われる、請求項11に記載のエチレン系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属-リガンド錯体、これを含むエチレン系重合体製造用の触媒組成物およびこれを用いたエチレン系重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エチレンとα-オレフィンの共重合体またはエチレンとオレフィン-ジエンの共重合体のようなエチレン系重合体の製造には、一般的に、チタンまたはバナジウム化合物の主触媒成分とアルキルアルミニウム化合物の助触媒成分で構成されるいわゆるチーグラー・ナッタ触媒系が使用されてきた。
【0003】
米国特許第3,594,330号および第3,676,415号には、改善したチーグラー・ナッタ触媒を開示しており、チーグラー・ナッタ触媒系は、エチレン重合に対して高活性を示すが、不均一な触媒活性点のため、一般的に生成される重合体は分子量分布が広く、特に、エチレンとα-オレフィンの共重合体においては組成分布が均一でないという欠点があった。
【0004】
以降、単一種の触媒活性点を有する均一系触媒として、既存のチーグラー・ナッタ触媒系に比べて分子量分布が狭く、組成分布が均一なポリエチレンを製造することができるジルコニウム、ハフニウムなど周期表第4族遷移金属のメタロセン化合物と助触媒であるメチルアルミノキサン(methylaluminoxane)で構成されるメタロセン触媒系に関する様々な研究がなされてきた。
【0005】
例えば、ヨーロッパ公開特許第320,762号、第372,632号には、Cp2TiCl2、Cp2ZrCl2、Cp2ZrMeCl、Cp2ZrMe2、エチレン(IndH4)2ZrCl2などにおいて、メタロセン化合物を助触媒メチルアルミノキサンで活性化させることでエチレンを高活性で重合させて、分子量分布(Mw/Mn)が1.5~2.0の範囲であるポリエチレンを製造することができることが開示されている。
【0006】
エチレンまたはエチレンとα-オレフィンの重合により製造される低密度および低分子量のエチレン系重合体は、合成オイル、潤滑剤および接着剤などの高付加価値製品の開発に適用可能である。
【0007】
しかし、前記の触媒系を適用する場合、低密度および低分子量のエチレン系重合体を得ることが難しい。すなわち、低密度および低分子量のエチレン系重合体は、ほとんどが100℃未満の温度で生成され、温度が高くなるほど急激に低い活性を示す。また、低分子量のエチレン系重合体を製造するために水素を連鎖移動剤として使用するが、水素の使用量が増加するほど触媒活性が急激に低下するため、低分子量のエチレン系重合体を生成するための高温での製造が難しいだけでなく、触媒活性が低いという問題がある。
【0008】
したがって、化学産業では依然として求められる向上した特性を有する触媒および触媒前駆体が求められている状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来の問題点を改善するために、特定の置換基のジフルオロメチレンをブリッジとして導入した金属-リガンド錯体およびこれを含むエチレン系重合体製造用の触媒組成物を提供する。
【0010】
また、本発明の別の実施態様は、本発明のエチレン系重合体製造用の触媒組成物を用いる低密度および低分子量のエチレン系重合体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、特定の官能基を導入することで、高温での安定性が増大して著しく向上した高温活性を有する金属-リガンド錯体を提供し、本発明の金属-リガンド錯体は、下記化学式1で表される。
[化1]
[化学式1]
前記化学式1中、
Mは、周期表上、第4族の遷移金属であり、
A
1およびA
2は、互いに独立して、C
1-C
20アルキレンまたはC
1-C
20ハロアルキレンであり、
R’およびR’’は、互いに独立して、C
1-C
20アルキル、C
6-C
20アリールオキシまたはC
1-C
20アルキルC
6-C
20アリールオキシであり、
R
1およびR
2は、互いに独立して、ハロゲン、C
1-C
20アルキルまたはハロC
1-C
20アルキルであり、
R
3~R
6は、互いに独立して、C
1-C
20アルキル、C
6-C
20アリールまたはC
6-C
20アリールC
1-C
20アルキルであり、
R
7およびR
8は、互いに独立して、C
1-C
20アルキルまたはC
1-C
20アルコキシであり、
p、q、a、b、cおよびdは、互いに独立して、0~4の整数であり、
sおよびtは、互いに独立して、0~3の整数である。
【0012】
別の一般的な態様において、本発明の金属-リガンド錯体および助触媒を含むエチレン系重合体製造用の触媒組成物が提供される。
【0013】
また、本発明は本発明のエチレン系重合体製造用の触媒組成物の存在下でエチレンまたはエチレンとα-オレフィンを重合させてエチレン系重合体を製造するステップを含むエチレン系重合体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の金属-リガンド錯体は、酸素と酸素のブリッジとして特定の官能基であるジフルオロメチレン基を導入することで、強力な電子供与基であるカルバゾール基が置換されたフェニル基と電子供与-受容の構造を有し、このような構造的特徴によって錯体内のリガンドの電子が豊富になり、錯体の安定性が著しく向上して、高温の重合温度で触媒活性の低下なしに重合を促進することができる。
【0015】
また、本発明の金属-リガンド錯体は、オレフィン類との反応性が良くて容易に重合可能であり、高い重合温度で低密度および低分子量のエチレン系重合体を製造することができる利点を有する。
【0016】
特に、エチレン系重合体、すなわち、エチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンの共重合体の製造時に、本発明の金属-リガンド錯体を含む触媒組成物を用いる場合、100℃以上の高い重合温度で優れた触媒活性で低密度および低分子量のエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンの共重合体を効率的に製造することができる。
【0017】
これは、本発明による金属-リガンド錯体の構造的特徴から起因し、本発明による金属-リガンド錯体は、触媒の熱安定性に優れることから、高温でも高い触媒活性を維持し、且つオレフィン類との共重合反応性が良く、低密度および低分子量のエチレン系重合体を高い収率で製造することができ、周知のメタロセンおよび非メタロセン系単一活性点触媒に比べて、合成オイル、潤滑剤および接着剤などの多数の高付加製品の開発への適用などのように、商業的な実用性が高いと言える。
【0018】
したがって、本発明の金属-リガンド錯体およびこれを含む触媒組成物は、優れた物性を有するエチレン系重合体の製造に非常に有用に使用されることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の金属-リガンド錯体、これを含むエチレン系重合体製造用の触媒組成物およびこれを用いるエチレン系重合体の製造方法について詳述するが、ここで使用される技術用語および科学用語において他の定義がない限り、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明から本発明の要旨を不明瞭にし得る公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0020】
本明細書で使用されている下記の用語は、以下のように定義されるが、これは、単に例示的なものに過ぎず、本発明、出願または用途を限定するものではない。
【0021】
本明細書の用語「置換基(substituent)」、「ラジカル(radical)」、「基(group)」、「グループ(group)」、「部分(moiety)」、および「断片(fragment)」は、互いに変えて使用することができる。
【0022】
本明細書の用語「CA-CB」は、「炭素数がA以上であり、B以下」であるものを意味する。
【0023】
本明細書の用語「アルキル」は、炭素および水素原子だけで構成された直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素1価ラジカルを意味する。前記アルキルは、1~20個の炭素原子、1~10個の炭素原子、1~5個の炭素原子、5~20個の炭素原子、8~20個の炭素原子または8~15個の炭素原子を有することができるが、これに限定されない。前記アルキルの具体的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、ペンチル、i-ペンチル、メチルブチル、n-ヘキシル、t-ヘキシル、メチルペンチル、ジメチルブチル、ヘプチル、エチルペンチル、メチルヘキシル、ジメチルペンチル、n-オクチル、t-オクチル、ジメチルヘキシル、エチルヘキシル、n-デシル、t-デシル、n-ドデシル、t-ドデシルなどを含むが、これに限定されない。
【0024】
本明細書の用語「アリール」は、一つの水素除去によって芳香族炭化水素から誘導された1価の有機ラジカルであり、各環に、適切には4~7個、好ましくは5または6個の環原子を含む単一または縮合環系を含み、多数個のアリールが単結合で連結されている形態まで含む。前記アリールの具体的な例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フルオレニル、フェナントレニル、アントラセニル、トリフェニレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニルなどを含むが、これに限定されない。
【0025】
本明細書の用語「アルコキシ」は、-O-アルキルラジカルであり、ここで、「アルキル」は、前記定義したとおりである。前記アルコキシの具体的な例としては、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t-ブトキシなどが含まれるが、これに限定されない。
【0026】
本明細書の用語「アリールオキシ」は、-O-アリールラジカルを意味し、ここで、「アリール」は、前記定義したとおりである。前記アリールオキシの具体的な例としては、フェノキシ、ナフトキシなどを含むが、これに限定されない。
【0027】
本明細書の用語「アルキルアリール」は、少なくとも一つのアルキルで置換されたアリールラジカルを意味し、ここで「アルキル」および「アリール」は、前記定義したとおりである。前記アルキルアリールの具体的な例としては、トリルなどを含むが、これに限定されない。
【0028】
本明細書の用語「アリールアルキル」は、少なくとも一つのアリールで置換されたアルキルラジカルを意味し、ここで、「アルキル」および「アリール」は、前記定義したとおりである。前記アリールアルキルの具体的な例としては、ベンジルなどを含むが、これに限定されない。
【0029】
本発明は、バルキーな形態の電子求引基として、ジフルオロメチル-ブリッジされた金属-リガンド錯体に関し、本発明は、特定の位置に導入された強力な電子供与基であるカルバゾール基と酸素と酸素のブリッジとしてジフルオロメチレン基を含む、下記化学式1で表される金属-リガンド錯体を提供する。
【0030】
【0031】
前記化学式1中、
Mは、周期表上、第4族の遷移金属であり、
A1およびA2は、互いに独立して、C1-C20アルキレンまたはC1-C20ハロアルキレンであり、
R’およびR’’は、互いに独立して、C1-C20アルキル、C6-C20アリールオキシまたはC1-C20アルキルC6-C20アリールオキシであり、
R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、C1-C20アルキルまたはハロC1-C20アルキルであり、
R3~R6は、互いに独立して、C1-C20アルキル、C6-C20アリールまたはC6-C20アリールC1-C20アルキルであり、
R7およびR8は、互いに独立して、C1-C20アルキルまたはC1-C20アルコキシであり、
p、q、a、b、cおよびdは、互いに独立して、0~4の整数であり、
sおよびtは、互いに独立して、0~3の整数である。
【0032】
本発明の金属-リガンド錯体は、バルキーな形態の電子求引基としてジフルオロメチレンを含む官能基を導入することで、電子供与基であるカルバゾール基が置換されたフェニル基と電子供与-受容の構造を形成してリガンドの電子を豊富にし、錯体の安定性を著しく向上させることができる。
【0033】
したがって、本発明の金属-リガンド錯体は、優れた熱安定性を有して高温でも高い触媒活性を維持し、且つ他のオレフィン類との重合反応性が良く、低密度および低分子量のエチレン系重合体を高い収率で製造することができ、周知のメタロセンおよび非メタロセン系単一活性点触媒に比べて、合成オイル、潤滑剤および接着剤などの多数の高付加製品の開発における商業的な実用性が高い。
【0034】
好ましくは、本発明の一実施形態による化学式1中、A1およびA2は、互いに独立して、C1-C20アルキレンであり、R’およびR’’は、互いに独立して、C1-C20アルキルであり、R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、C1-C20アルキルまたはハロC1-C20アルキルであり、R3~R6は、互いに独立して、C1-C20アルキルまたはC6-C20アリールC1-C20アルキルであり、R7およびR8は、互いに独立して、C1-C20アルキルまたはC1-C20アルコキシであり、pおよびqは、互いに独立して、0~3の整数であり、a、b、cおよびdは、互いに独立して、1~3の整数であり、sおよびtは、互いに独立して、1~2の整数であることができ、より好ましくは、Mは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、A1およびA2は、互いに独立して、C1-C10アルキレンであり、R’およびR’’は、互いに独立して、C1-C10アルキルであり、R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、C1-C10アルキルまたはハロC1-C10アルキルであり、R3~R6は、互いに独立して、C1-C10アルキルまたはC6-C20アリールC1-C20アルキルであり、R7およびR8は、互いに独立して、C5-C20アルキルまたはC5-C20アルコキシであり、pおよびqは、互いに独立して、0~3の整数であり、a、b、cおよびdは、互いに独立して、1~3の整数であり、sおよびtは、互いに独立して、1~2の整数であることができる。
【0035】
一具体例において、前記R’およびR’’は、互いに独立して、C1-C7アルキルであることができ、C1-C3アルキルであることができる。
【0036】
一具体例において、前記R3~R6は、互いに独立して、分岐鎖のC3-C10アルキルであることができ、分岐鎖のC3-C6アルキルであることができる。
【0037】
一具体例において、前記R7およびR8は、互いに独立して、C8-C20アルキルであることができ、具体的には、n-オクチル、t-オクチル、n-ノニル、t-ノニル、n-デシル、t-デシル、n-ウンデシル、t-ウンデシル、n-ドデシルまたはt-ドデシルであることができる。
【0038】
一具体例において、前記R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲンまたはC1-C10アルキルであることができ、pおよびqは、互いに独立して、1または2の整数であることができる。
【0039】
より向上した熱安定性および優れた触媒活性を有するという観点から、好ましくは、本発明の一実施形態による金属-リガンド錯体は、下記化学式2で表されることができる。
【0040】
【0041】
前記化学式2中、
Mは、周期表上、第4族の遷移金属であり、
A1およびA2は、互いに独立して、C1-C20アルキレンまたはC1-C20ハロアルキレンであり、
R’およびR’’は、互いに独立して、C1-C20アルキル、C6-C20アリールオキシまたはC1-C20アルキルC6-C20アリールオキシであり、
R3~R6は、互いに独立して、C1-C20アルキル、C6-C20アリールまたはC6-C20アリールC1-C20アルキルであり、
R7およびR8は、互いに独立して、C1-C20アルキルまたはC1-C20アルコキシであり、
R11およびR12は、互いに独立して、水素、ハロゲンまたはC1-C20アルキルであり、
R13およびR14は、互いに独立して、水素またはC1-C20アルキルである。
【0042】
好ましくは、本発明の一実施形態による化学式2中、A1およびA2は、互いに独立して、C1-C20アルキレンであり、R’およびR’’は、互いに独立して、C1-C20アルキルであり、R3~R6は、互いに独立して、C1-C20アルキルまたはC6-C20アリールC1-C20アルキルであり、R7およびR8は、互いに独立して、C1-C20アルキルまたはC1-C20アルコキシであり、R11およびR12は、互いに独立して、ハロゲンであり、R13およびR14は、互いに独立して、水素またはC1-C20アルキルであることができ、より好ましくは、A1およびA2は、互いに独立して、C1-C10アルキレンであり、R’およびR’’は、互いに独立して、C1-C10アルキルであり、R3~R6は、互いに独立して、C1-C10アルキルであり、R7およびR8は、互いに独立して、C5-C20アルキルまたはC5-C20アルコキシであり、R11およびR12は、互いに独立して、ハロゲンであり、R13およびR14は、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであることができる。
【0043】
一具体例において、前記R’およびR’’は、互いに独立して、C1-C7アルキルであることができ、C1-C3アルキルであることができる。
【0044】
一具体例において、前記R3~R6は、互いに独立して、分岐鎖のC3-C10アルキルであることができ、分岐鎖のC3-C7アルキルであることができる。
【0045】
一具体例において、前記R7およびR8は、互いに独立して、C8-C20アルキルであることができ、具体的には、n-オクチル、t-オクチル、n-ノニル、t-ノニル、n-デシル、t-デシル、n-ウンデシル、t-ウンデシル、n-ドデシルまたはt-ドデシルであることができる。
【0046】
一具体例において、前記R11およびR12は、いずれもフルオロであることができる。
【0047】
より好ましくは、本発明の一実施形態による金属-リガンド錯体は下記化学式3で表されることができる。
【0048】
【0049】
前記化学式3中、
Mは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
A1およびA2は、互いに独立して、C1-C20アルキレンまたはC1-C20ハロアルキレンであり、
R’およびR’’は、互いに独立して、C1-C20アルキルであり、
R3~R6は、互いに独立して、C1-C20アルキルであり、
R7およびR8は、互いに独立して、C1-C20アルキルまたはC1-C20アルコキシであり、
R11およびR12は、互いに独立して、ハロゲンであり、
R13およびR14は、互いに独立して、水素またはC1-C20アルキルである。
【0050】
より好ましくは、本発明の一実施形態による化学式3中、A1およびA2は、互いに独立して、C1-C10アルキレンであり、R’およびR’’は、互いに独立して、C1-C10アルキルであり、R3~R6は、互いに独立して、C1-C10アルキルであり、R7およびR8は、互いに独立して、C5-C20アルキルまたはC5-C20アルコキシであり、R11およびR12は、互いに独立して、ハロゲンであり、R13およびR14は、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであることができる。
【0051】
一具体例において、前記R’およびR’’は、互いに独立して、C1-C7アルキルであることができ、C1-C3アルキルであることができる。
【0052】
一具体例において、前記R3~R6は、互いに独立して、分岐鎖のC3-C10アルキルであることができ、分岐鎖のC3-C7アルキルであることができる。
【0053】
一具体例において、前記R7およびR8は、互いに独立して、C8-C20アルキルであることができ、具体的には、n-オクチル、t-オクチル、n-ノニル、t-ノニル、n-デシル、t-デシル、n-ウンデシル、t-ウンデシル、n-ドデシルまたはt-ドデシルであることができる。
【0054】
一具体例において、前記R11およびR12は、いずれもフルオロであることができる。
【0055】
好ましくは、本発明の一実施形態による金属-リガンド錯体は、下記化学式4で表されることができる。
【0056】
【0057】
前記化学式4中、
Mは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
A1およびA2は、互いに独立して、C1-C20アルキレンまたはC1-C20ハロアルキレンであり、
Rは、C1-C20アルキルであり、
R21は、ハロゲンであり、
R22は、水素またはC1-C20アルキルであり、
R23は、C1-C20アルキルであり、
R24は、C1-C20アルキルまたはC1-C20アルコキシである。
【0058】
より好ましくは、本発明の一実施形態による化学式4中、Mは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、A1およびA2は、互いに独立して、C1-C10アルキレンであり、Rは、C1-C10アルキルであり、R21は、ハロゲンであり、R22は、水素またはC1-C20アルキルであり、R23は、C1-C10アルキルであり、R24は、C5-C20アルキルである。
【0059】
一具体例において、前記Rは、C1-C7アルキルであることができ、C1-C3アルキルであることができる。
【0060】
一具体例において、前記R23は、分岐鎖のC3-C10アルキルであることができ、分岐鎖のC3-C7アルキルであることができる。
【0061】
一具体例において、前記R24は、C8-C20アルキルであることができ、具体的には、n-オクチル、t-オクチル、n-ノニル、t-ノニル、n-デシル、t-デシル、n-ウンデシル、t-ウンデシル、n-ドデシルまたはt-ドデシルであることができる。
【0062】
一具体例において、前記R21は、フルオロであることができる。
【0063】
高温安定性、触媒活性およびオレフィン類との反応性をより向上させるという観点から、好ましくは、本発明の一実施形態による化学式1の金属-リガンド錯体は、下記化学式5で表されることができる。
【0064】
【0065】
前記化学式5中、
Mは、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
A11は、C1-C20アルキレンであり、
R24は、C8-C20アルキルであり、
R22は、水素またはメチルである。
【0066】
好ましくは、本発明の一実施形態による化学式5中、R24は、直鎖または分岐鎖のC8-C12アルキルであることができ、具体的には、R24は、n-オクチル、t-オクチル、n-ノニル、t-ノニル、n-デシル、t-デシル、n-ウンデシル、t-ウンデシル、n-ドデシルまたはt-ドデシルであることができる。
【0067】
好ましくは、本発明の一実施形態による化学式5中、A11は、C1-C10アルキレンであることができ、またはC1-C7アルキレンであることができ、またはC1-C3アルキレンであることができる。
【0068】
一具体例において、前記化学式5中、A11は、-CH2-であり、R24は、n-オクチル、t-オクチル、n-デシルまたはn-ドデシルであり、R22は、水素であることができる。
【0069】
一具体例において、前記化学式5中、A11は、-CH2CH2-であり、R24は、n-オクチル、t-オクチル、n-デシルまたはn-ドデシルであり、R22は、水素であることができる。
【0070】
一具体例において、前記化学式5中、A11は、-CH2-であり、R24は、n-オクチル、t-オクチル、n-デシルまたはn-ドデシルであり、R22は、メチルであることができる。
【0071】
一具体例において、前記化学式5中、A11は、-CH2CH2-であり、R24は、n-オクチル、t-オクチル、n-デシルまたはn-ドデシルであり、R22は、メチルであることができる。
【0072】
具体的には、本発明の一実施形態による金属-リガンド錯体は、下記構造から選択される化合物であることができるが、これに限定されるものではない。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
前記化合物において、Mは、ジルコニウムまたはハフニウムである。
【0078】
また、本発明は、本発明の金属-リガンド錯体および助触媒を含む、エチレン単独重合体およびエチレンとα-オレフィンの共重合体から選択されるエチレン系重合体製造用の触媒組成物を提供する。
【0079】
一実施形態による助触媒は、ホウ素化合物助触媒、アルミニウム化合物助触媒およびこれらの混合物であることができる。
【0080】
一実施形態による助触媒は、金属-リガンド錯体1モルに対して0.5~10,000モル含まれることができるが、これに制限されない。
【0081】
前記助触媒として使用されることができるホウ素化合物は、米国特許第5,198,401号に開示されているホウ素化合物が挙げられ、具体的には、下記の化学式A~Cで表される化合物から選択される一つまたは二つ以上の混合物であることができる。
【0082】
[化学式A]
B(R21)3
【0083】
[化学式B]
[R22]+[B(R21)4]-
【0084】
[化学式C]
[(R23)wZH]+[B(R21)4]-
【0085】
前記化学式A~化学式C中、
Bは、ホウ素原子であり、R21は、フェニルであり、前記フェニルは、フッ素原子、C1-C20アルキル、フッ素原子で置換されたC1-C20アルキル、C1-C20アルコキシおよびフッ素原子で置換されたC1-C20アルコキシから選択される3~5個の置換基でさらに置換されることができ、R22は、C5-C7芳香族ラジカルまたはC1-C20アルキルC6-C20アリールラジカル、C6-C20アリールC1-C20アルキルラジカル、例えば、トリフェニルメチリウム(triphenylmethylium)ラジカルであり、Zは、窒素またはリン原子であり、R23は、C1-C20アルキルラジカルまたは窒素原子とともに2個のC1-C10アルキルで置換されたアニリニウム(Anilinium)ラジカルであり、wは、2または3の整数である。
【0086】
前記ホウ素系助触媒の好ましい例としては、トリフェニルメチリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4-トリフルオロフェニル)ボラン、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、テトラキス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボラート、テトラキス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボラート、テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボラート、テトラキス(2,2,4-トリフルオロフェニル)ボラート、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボラートまたはテトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボラートが挙げられる。また、それらの特定の配合例としては、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、1,1'-ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルメチリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルメチリニウムテトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボラート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボラート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボラート、ジイソプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、またはトリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートが含まれ、このうち、最も好ましくは、トリフェニルメチリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート、トリフェニルメチリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラートおよびトリスペンタフルオロボランから選択されるいずれか一つまたは二つ以上であることができる。
【0087】
本発明の一実施形態による触媒組成物において助触媒として使用することができるアルミニウム化合物の一例としては、化学式DまたはEのアルミノキサン化合物、化学式Fの有機アルミニウム化合物または化学式Gまたは化学式Hの有機アルミニウムアルキルオキシドまたは有機アルミニウムアリールオキシド化合物が挙げられる。
【0088】
[化学式D]
(-Al(R31)-O-)x
【0089】
[化学式E]
(R31)2Al-(-O(R31)-)y-(R31)2
【0090】
[化学式F]
(R32)zAl(E)3-z
【0091】
[化学式G]
(R33)2AlOR34
【0092】
[化学式H]
R33Al(OR34)2
【0093】
前記化学式D~H中、
R31は、C1-C20アルキルであり、好ましくは、メチルまたはイソブチルであり、xとyは、互いに独立して、5~20の整数であり、R32およびR33は、互いに独立して、C1-C20アルキルであり、Eは、水素原子またはハロゲン原子であり、zは、1~3の整数であり、R34は、C1-C20アルキルまたはC6-C30アリールである。
【0094】
前記アルミニウム化合物として使用することができる具体的な例として、アルミノキサン化合物として、メチルアルミノキサン、修飾(modified)メチルアルミノキサン、テトライソブチルジアルミノキサンがあり、有機アルミニウム化合物の例として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、およびトリヘキシルアルミニウムを含むトリアルキルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、およびジヘキシルアルミニウムクロリドを含むジアルキルアルミニウムクロリド;メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、およびヘキシルアルミニウムジクロリドを含むアルキルアルミニウムジクロリド;ジメチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジプロピルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリドおよびジヘキシルアルミニウムヒドリドを含むジアルキルアルミニウムヒドリド;メチルジメトキシアルミニウム、ジメチルメトキシアルミニウム、エチルジエトキシアルミニウム、ジエチルエトキシアルミニウム、イソブチルジブトキシアルミニウム、ジイソブチルブトキシアルミニウム、ヘキシルジメトキシアルミニウム、ジヘキシルメトキシアルミニウム、ジオクチルメトキシアルミニウムを含むアルキルアルコキシアルミニウムが挙げられる。好ましくは、アルミノキサン化合物、トリアルキルアルミニウムおよびこれらの混合物を助触媒として使用することができ、具体的には、メチルアルミノキサン、修飾メチルアルミノキサン、テトライソブチルジアルミノキサン、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムから選択される単独またはこれらの混合物を使用することができ、より好ましくは、テトライソブチルジアルミノキサン、トリイソブチルアルミニウムまたはこれらの混合物を使用することができる。
【0095】
好ましくは、本発明の一実施形態による触媒組成物において、前記アルミニウム化合物を助触媒として使用する場合、本発明の金属-リガンド錯体とアルミニウム化合物助触媒中の遷移金属(M):アルミニウム原子(Al)の比がモル比基準で1:10~10,000の範囲であることができる。
【0096】
好ましくは、本発明の一実施形態による触媒組成物において、前記アルミニウム化合物およびホウ素化合物を同時に助触媒として使用する場合、本発明の金属-リガンド錯体と助触媒中の遷移金属(M):ホウ素原子(B):アルミニウム原子(Al)の比がモル比基準で1:0.1~200:10~10,000の範囲であることができ、より好ましくは1:0.5~100:25~5,000の範囲であることができる。
【0097】
本発明の金属-リガンド錯体と助触媒との比率が前記範囲内であるときに、エチレン系重合体を製造するための優れた触媒活性を示し、反応の純度に応じて比率の範囲が変化する。
【0098】
本発明の一実施形態によるさらに他の態様として、前記エチレン系重合体製造用の触媒組成物を用いたエチレン系重合体の製造方法は、適切な有機溶媒の存在下で前記の金属-リガンド錯体、助触媒、およびエチレンまたは必要に応じて共単量体を接触させて行われることができる。ここで、金属-リガンド錯体であるプレ触媒と助触媒の成分は、別に反応器内に投入するかまたは各成分を予め混合して反応器に投入することができ、投入順序、温度または濃度などの混合条件は、特に制限されない。
【0099】
前記製造方法に使用されることができる好ましい有機溶媒は、C3-C20の炭化水素であり、その具体的な例としては、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
【0100】
具体的には、エチレン単独重合体の製造時には、単量体としてエチレンを単独で使用し、エチレンとα-オレフィンの共重合体を製造する場合には、エチレンとともに共単量体としてC3~C18のα-オレフィンを使用することができる。前記C3~C18のα-オレフィンの具体的な例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセンなどがある。本発明では、エチレンに、上述のC3~C18のα-オレフィンを単独重合させるか、2種以上のオレフィンを共重合させることができ、より好ましくは、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、または1-デセンとエチレンを共重合させることができる。
【0101】
エチレンの圧力は、1~1000気圧であり、さらに好ましくは10~150気圧であることができる。また、重合反応は、80℃以上、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは100℃~250℃の温度で行われることが効果的である。前記重合ステップの温度および圧力条件は、適用しようとする反応の種類および反応器の種類に応じて重合反応の効率を考慮して決定されることができる。
【0102】
一般的に、溶液重合工程は、前記のような高温で実施する場合、温度の上昇によって触媒の変形や劣化が発生して触媒の活性が低くなり、所望の物性の重合体を取得し難いが、本発明による触媒組成物を用いてエチレン系重合体を製造する場合、高温の重合温度で安定した触媒活性を示す。
【0103】
前記エチレン系重合体は、エチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンの共重合体であり、前記エチレンとα-オレフィンの共重合体は、エチレン50重量%以上を含み、好ましくは60重量%以上のエチレンを含み、さらに好ましくは60~99重量%の範囲でエチレンを含むことができる。
【0104】
上述のように、本発明の金属-リガンド錯体を重合反応の主触媒として使用することで、低密度および低分子量のエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンの共重合体を製造することができる。
【0105】
一例として、本発明により製造されたエチレン系重合体は、低密度エチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンの共重合体であり、0.870g/cc未満の低密度、好ましくは0.850g/cc以上、0.870g/cc未満の密度を有することができ、且つ、10~50g/10min(ASTM D1238、190℃/2.16kg)のMI(melt index)値を示すことができる。
【0106】
また、本発明によるエチレン系共重合体の製造時に分子量を調節するために、水素を連鎖移動剤として使用することができ、通常、50,000~200,000範囲の重量平均分子量(Mw)を有する。
【0107】
本発明で提示されている触媒組成物は、重合反応器内で均一な形態で存在するため、当該重合体の融点以上の温度で実施する溶液重合工程に適用することが好ましい。しかし、米国特許第4,752,597号に開示されているように、多孔性金属酸化物支持体に前記金属-リガンド錯体であるプレ触媒および助触媒を支持させて得られる非均一触媒組成物の形態でスラリー重合や気相重合工程に用いられることもできる。
【0108】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、下記の実施例によって本発明の範疇が本発明を限定しない。
【0109】
別に言及される場合以外は、すべてのリガンドおよび触媒合成実験は、窒素雰囲気下で標準シュレンク(Schlenk)またはグローブボックス技術を使用して行われ、反応に使用される有機溶媒は、ナトリウム金属とベンゾフェノン下で還流させて水分を除去して使用直前に蒸留して使用した。合成されたリガンドおよび触媒の1H-NMR分析は、室温でBruker 400または500MHzを使用して行った。
【0110】
重合溶媒であるメチルシクロヘキサンは5Åモレキュラーシーブと活性アルミナが充填された管を通過させて高純度の窒素でバブリングさせて水分、酸素およびその他の触媒毒物質を十分に除去させた後に使用した。
【0111】
[実施例1]プレ触媒C1の合成
化合物1-1(3,6-Di-tert-butyl-9-(2-((tetrahydro-2H-pyran-2-yl)oxy)-3-(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)-5-(2,4,4-trimethylpentan-2-yl)phenyl)-9H-carbazole)の製造
[化11]
【0112】
WO2017/040088によって前記化合物1-1(3,6-Di-tert-butyl-9-(2-((tetrahydro-2H-pyran-2-yl)oxy)-3-(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)-5-(2,4,4-trimethylpentan-2-yl)phenyl)-9H-carbazole)を製造した。
【0113】
化合物1-2(2,2-difluoropropane-1,3-diyl bis(4-methylbenzenesulfonate)の製造
[化12]
【0114】
2,2-difluoropropane-1,3-diol(44.6mmol、5g)と4-Methylbenzene-1-sulfonyl chloride(18.71g、2.2equiv.)をDCM(Dichloromethane)(50mL)に溶解した。0℃でトリエチルアミン(Triethylamine)(14mL、3equiv.)を添加した後、混合物を室温(RT)で一晩中撹拌した。反応終結後、1M NaOHを用いて洗浄してDCMで有機層を抽出した。溶媒除去の後、ヘキサンから再結晶して白色の固体状の化合物1-2を得た。(17g、75%)。
【0115】
1H NMR (CDCl3): δ 7.76 (d, 4H), 7.37 (d, 4H), 4.18 (t, 4H), 2.46 (s, 6H).
【0116】
化合物1-3(4,4'-((2,2-difluoropropane-1,3-diyl)bis(oxy))bis(3-bromo-1-fluorobenzene))の合成
[化13]
【0117】
化合物1-2(11.89mmol、5g)と2-Bromo-4-fluorophenol(4.77g、2.1equiv.)、KOH(1.67g、2.5equiv.)をDMSO(50mL)で溶解した後、100℃で一晩中撹拌した。反応終結後、DCMで有機層を抽出した。溶媒除去の後、ヘキサンから再結晶して白色の固体状の化合物1-3を得た。(4g、74%)
【0118】
1H NMR (CDCl3): δ 7.29-7.26 (m, 2H), 7.00-6.99 (m, 2H), 6.94-6.92 (m, 2H), 4.24 (m, 4H).
【0119】
【0120】
窒素雰囲気下で二口(two-neck)丸底フラスコに化合物1-1(7.0g、2.2equiv.)と化合物1-3(2g)およびNaOH(1.4g、8equiv.)、PD(pph3)4(0.2g、0.04equiv.)を添加し、トルエン(Toluene)(50mL)とH2O(10mL)に溶解した後、130℃で24時間撹拌した。反応終結の後、EAで有機物を抽出して溶媒を除去した後、filter columnを行って精製した。精製物をTHF(20mL)とMeOH(20mL)に溶解した。これにP-TsOH(0.08g、0.1eq)を添加した後、60℃で4時間撹拌した。反応完了後、溶媒を除去した。MeOHを用いて再結晶して白色の固体状のリガンドL1を得た。(4.3g、78%)
【0121】
1H NMR (CDCl3): δ 8.26 (m, 4H), 7.45 (d, 4H), 7.31 (d, 2H), 7.14 (d, 2H), 6.98 (d, 4H), 6.84-6.81 (m, 2H), 6.13-6.11 (m,2H), 5.24 (m, 2H), 4.63 (s, 2H), 3.77 (m, 2H), 1.66 (s, 4H), 1.48 (s, 36H), 1.31 (s, 12H), 0.75 (s, 18H).
【0122】
【0123】
反応は、窒素雰囲気下でグローブボックス内で行った。100mlフラスコにZrCl4(0.66g、2.83mmol)およびトルエン(200mL)を加えてスラリーを製造した。スラリーをグローブボックス冷凍機内で30分間-20℃で冷却した。撹拌中の低温のスラリーにジエチルエーテル中の3.0Mメチルマグネシウムブロミド(3.9mL、15.3mmol)を添加した。混合物を強く30分間撹拌した。固体は溶解されたが、反応溶液は、淡褐色(pale brown)になった。混合物にリガンドL1(3.09g、2.44mmol)を固体としてゆっくり添加した。反応フラスコを室温に昇温した後、12時間撹拌した後、反応混合物をメンブレンフィルタが連結された注射器で濾過した。濾過された溶液を真空で乾燥して褐色の固体のプレ触媒C1を得た(2.99g、88.7%収率)。
【0124】
1H NMR (CDCl3): δ 8.31 (s, 2H), 8.07 (s, 2H), 7.58-7.14 (m, 12H), 7.00 (m, 2H), 6.29 (m, 2H), 4.65 (m, 2H), 4.20 (m, 2H), 3.49 (m, 2H), 1.75 (s, 4H), 1.57 (s, 18H), 1.40 (s, 6H), 1.38 (s, 18H), 1.33 (s, 6H), 0.80 (s, 18H), -1.50 (s, 6H).
【0125】
[比較例1]プレ触媒C2の合成
WO2017/040088およびKR10-2019-0075778Aによって製造した。
[化16]
【0126】
[比較例2]プレ触媒C3
下記構造のプレ触媒C3をS-PCI社から購入して使用した。
[化17]
【0127】
[実施例2]エチレンと1-オクテンの共重合
回分式重合装置を使用して、以下のように、エチレンと1-オクテンとの共重合を行った。
【0128】
十分に乾燥した後、窒素で置換した1500mL容量のステンレススチール反応器にメチルシクロヘキサン600mLと1-オクテン50mLを入れた後、トリイソブチルアルミニウム1.0Mヘキサン溶液2mLを反応器に投入した。次に、反応器の温度を100℃に加熱した後、実施例1で製造されたプレ触媒C1 1.0μmolとトリフェニルメチリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート40μmolを順に投入した後、エチレンで反応器内の圧力を20barまで満たした後、連続して供給して重合されるようにした。5分間反応を行った後、回収された反応生成物を40℃の真空オーブンで8時間乾燥した。重合結果を下記表1に記載した。
【0129】
メルトフローインデックス(MI、melt index):ASTM D1238分析法を用いて、190℃で2.16kgの荷重で測定した。
【0130】
密度:ASTM D792分析法で測定した。
【0131】
[比較例3]
プレ触媒C1(実施例1)の代わりにプレ触媒C2(比較例2)1.0μmolを使用した以外は、実施例2の方法と同様にエチレンと1-オクテンの共重合を実施した。重合反応条件および重合結果を下記表1に示した。
【0132】
[比較例4]
プレ触媒C1(実施例1)の代わりにプレ触媒C3(比較例2)1.0μmolを投入した以外は、実施例2の方法と同様にエチレンと1-オクテンの共重合を実施した。重合反応条件および重合結果を下記表1に示した。
【0133】
【0134】
前記表1の重合結果から、重合触媒の構造によって触媒活性と重合体特性が著しく変化することを確認することができる。
【0135】
具体的には、本発明のプレ触媒C1(実施例1)を重合触媒として使用する実施例2の場合、同じ位置にフルオリドを有していないプレ触媒C2(比較例1)を使用した比較例3とメタロセン化合物であるプレ触媒C3(比較例2)を使用した比較例4の場合に比べて触媒活性が著しく向上したことが分かり、低密度と低分子量を意味する高いMI値を有するエチレンと1-オクテンの共重合体を製造することができる。
【0136】
すなわち、本発明のプレ触媒C1を使用した場合、比較例のプレ触媒C2およびC3に比べて著しく高くなったMI値を示すことが分かり、これにより、本発明の金属-リガンド錯体を重合触媒として製造された共重合体は、比較例に比べて分子量が低いことが分かる。
【0137】
また、本発明のプレ触媒C1を使用した場合、密度が0.860g/ccであり、比較例のプレ触媒C2およびC3とは異なり、0.870g/cc未満の低密度を有することが分かる。
【0138】
このような低密度および低分子量の共重合体の製造可否は、重合触媒の構造的特徴から起因することが分かる。
【0139】
したがって、本発明による金属-リガンド錯体は、バルキーな形態の電子求引基でジフルオロメチル-ブリッジされた構造的特性により、高温でも驚くほどに優れた触媒活性を有して、低密度および低分子量のエチレンとα-オレフィンの共重合体を効果的に製造することができ、高付加価値製品の開発に有用であることができる。
【0140】
上述のように、本発明の実施例について詳細に記述しているが、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、添付の請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、本発明を様々に変形して実施することができる。したがって、本発明の今後の実施例の変更は、本発明の技術から逸脱することができない。
【国際調査報告】