(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】電気技術用流体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C10G 3/00 20060101AFI20231227BHJP
C09K 5/10 20060101ALI20231227BHJP
C10M 105/04 20060101ALI20231227BHJP
C10N 20/00 20060101ALN20231227BHJP
C10N 20/02 20060101ALN20231227BHJP
C10N 40/16 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
C10G3/00 Z
C09K5/10 E
C10M105/04 ZAB
C10N20:00 C
C10N20:00 A
C10N20:02
C10N40:16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527471
(86)(22)【出願日】2020-11-11
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 FI2020050743
(87)【国際公開番号】W WO2022101540
(87)【国際公開日】2022-05-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505081261
【氏名又は名称】ネステ オサケ ユキチュア ユルキネン
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レメ、ビルピ
(72)【発明者】
【氏名】コウバ、ソンヤ
【テーマコード(参考)】
4H104
4H129
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104EA02A
4H104EA04A
4H104EA06A
4H104EA22A
4H104PA12
4H129AA01
4H129BA09
4H129BA11
4H129BB05
4H129BC15
4H129BC16
4H129KA14
4H129KB03
4H129KC03X
4H129KC04X
4H129KC13X
4H129KD15X
4H129KD15Y
4H129KD16X
4H129KD22X
4H129KD24X
4H129KD24Y
4H129KD25X
4H129KD26X
4H129NA12
4H129NA23
(57)【要約】
電気技術用流体組成物を製造するための方法が記載される。該方法は、遊離脂肪酸およびグリセリドを含む再生可能なフィードストックを、ケトン化条件下でケトン化に付す工程、再生可能なパラフィン系中間生成物を得るために、ケトン化された前記再生可能なフィードストックを水素化処理条件下で水素化処理に付す工程、および電気技術用流体組成物を得るために、前記再生可能なパラフィン系中間生成物を少なくとも1つの分留に付す工程を含み、電気技術用流体組成物はIEC60296(2012)国際規格による要件を満たしている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気技術用流体組成物を製造するための方法であって、
(a)遊離脂肪酸およびグリセリドを含む再生可能なフィードストックを、ケトン化条件下でケトン化に付す工程、
(b)再生可能なパラフィン系中間生成物を得るために、ケトン化された前記再生可能なフィードストックを水素化処理条件下で水素化処理に付す工程、
(c)電気技術用流体組成物を得るために、前記再生可能なパラフィン系中間生成物を少なくとも1つの分留に付す工程
を含み、前記電気技術用流体組成物がIEC60296(2012)国際規格による要件を満たしている方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの分留が、回収された電気技術用組成物が280℃~400℃の範囲内の沸点範囲を有するような方法で行われる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの分留が、蒸留によって提供される請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記ケトン化条件が、100~500℃の温度、0.1~5MPaの圧力、および金属酸化物ケトン化触媒の存在を含み、ここで前記ケトン化触媒は、好ましくはTiO
2を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記水素化処理条件が、水素ガス、および、Ni、Mo、CoまたはWから選択される少なくとも1つの触媒の存在を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記水素化処理が、同時のまたは連続した、水素化脱酸素条件下での水素化脱酸素、および、異性化条件下での異性化を含む請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記水素化脱酸素条件が、150~400℃の範囲の温度での1~15MPaの範囲の水素圧力、ならびに、Pd、Pt、Ni、NiMo、CoMoまたはNiW金属および活性炭、アルミナおよび/またはシリカ担体を含む触媒の存在を含む請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記異性化条件が、200~400℃の範囲の温度での1~15MPaの範囲の水素圧力、ならびに、モレキュラーシーブ、およびPd、PtまたはNi金属、および/または担体から選択される触媒の存在を含み、前記担体がアルミナおよび/またはシリカである請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
90wt%より多い飽和炭化水素、0.03wt%未満の硫黄、および120より大きい粘度指数を有する、APIグループIIIベースオイル仕様を満たす再生可能なベースオイル生成物をさらに得るために、前記再生可能なパラフィン系中間生成物を、少なくとも1つの分留に付すことをさらに含む請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法によって得られる電気技術用流体組成物であって、組成物の総計の重量に基づいて、95wt-%より多い、好ましくは97wt-%より多い、さらにより好ましくは99wt-%より多い、C15~C29の範囲、好ましくはC15~C25の範囲のパラフィンを含有し、および、前記電気技術用組成物が、IEC60296による要件を満たしている電気技術用流体組成物。
【請求項11】
前記電気技術用流体組成物が、895kg/m
3以下、好ましくは800kg/m
3以下である20℃における密度を有する請求項10記載の電気技術用流体組成物。
【請求項12】
前記電気技術用流体組成物が、-40℃未満の流動点(ISO 3016)を有する請求項10または11記載の電気技術用流体組成物。
【請求項13】
前記電気技術用流体組成物が、12mm
2/s以下、好ましくは10mm
2/s以下、より好ましくは8mm
2/s以下である40℃における動粘度を有する請求項10~12のいずれか1項に記載の電気技術用流体組成物。
【請求項14】
前記電気技術用流体組成物が、1800mm
2/s以下、好ましくは150mm
2/s以下である-30℃における動粘度を有する請求項10~13のいずれか1項に記載の電気技術用流体組成物。
【請求項15】
前記電気技術用流体組成物が、135℃以上の引火点を有する請求項10~14のいずれか1項に記載の電気技術用流体組成物。
【請求項16】
前記電気技術用流体組成物が、0.01mgKOH/g以下の全酸度を有する請求項10~15のいずれか1項に記載の電気技術用流体組成物。
【請求項17】
前記電気技術用流体組成物が、30mg/kg以下、好ましくは20mg/kg以下の含水量を有する請求項10~16のいずれか1項に記載の電気技術用流体組成物。
【請求項18】
前記電気技術用流体組成物が、組成物の総計の重量に基づいて、0.01~5wt-%、好ましくは0.01~4wt-%のC15パラフィンを含む請求項10~17のいずれか1項に記載の電気技術用流体組成物。
【請求項19】
前記電気技術用流体組成物が、組成物の総計の重量に基づいて、5~35wt-%、好ましくは18~32wt-%のC16パラフィンを含む請求項10~18のいずれか1項に記載の電気技術用流体組成物。
【請求項20】
前記電気技術用流体組成物が、組成物の総計の重量に基づいて、5~24wt-%、好ましくは10~22wt-%のC17パラフィンを含む請求項10~19のいずれか1項に記載の電気技術用流体組成物。
【請求項21】
前記電気技術用流体組成物が、組成物の総計の重量に基づいて、5~23wt-%、好ましくは8~21wt-%のC18パラフィンを含む請求項10~20のいずれか1項に記載の電気技術用流体組成物。
【請求項22】
前記電気技術用流体組成物が、組成物の総計の重量に基づいて、5~23wt-%、好ましくは8~21wt-%のC19パラフィンを含む請求項10~21のいずれか1項に記載の電気技術用流体組成物。
【請求項23】
前記電気技術用流体組成物が、組成物の総計の重量に基づいて、5~19wt-%、好ましくは8~17wt-%のC20パラフィンを含む請求項10~22のいずれか1項に記載の電気技術用流体組成物。
【請求項24】
前記電気技術用流体組成物が、組成物の総計の重量に基づいて、1~12wt-%、好ましくは2~10wt-%のC21パラフィンを含む請求項10~23のいずれか1項に記載の電気技術用流体組成物。
【請求項25】
前記電気技術用流体組成物が、組成物の総計の重量に基づいて、0.1~12wt-%、好ましくは0.3~10wt-%のC22パラフィンを含む請求項10~24のいずれか1項に記載の電気技術用流体組成物。
【請求項26】
前記電気技術用流体組成物が、組成物の総計の重量に基づいて、0.05~14wt-%、好ましくは0.05~10wt-%のC23パラフィンを含む請求項10~25のいずれか1項に記載の電気技術用流体組成物。
【請求項27】
前記電気技術用流体組成物が、組成物の総計の重量に基づいて、8wt-%未満、好ましくは7wt-%未満、より好ましくは0.5wt-%未満、さらに好ましくは0.1wt-%未満のC24パラフィンを含む請求項10~26のいずれか1項に記載の電気技術用流体組成物。
【請求項28】
前記組成物の総計のイソパラフィン含有量が、組成物の総計の重量に基づいて、93wt-%より多いが99wt-%未満、好ましくは94wt-%より多いが98wt-%未満、より好ましくは95wt-%より多いが97wt-%未満である請求項10~27のいずれか1項に記載の電気技術用流体組成物。
【請求項29】
n-パラフィンの量に対するi-パラフィンの量の重量比が、組成物の総計の重量に基づいて、20より大きい請求項10~28のいずれか1項に記載の電気技術用流体組成物。
【請求項30】
n-パラフィンの量に対するi-パラフィンの量の重量比が、組成物の総計の重量に基づいて、32未満である請求項10~29のいずれか1項に記載の電気技術用流体組成物。
【請求項31】
ENISO 3104に従って測定されて12mm
2/s以下、典型的には3~4.5mm
2/sのあいだである40℃における最大動粘度、
ENISO 3104に従って測定されて1800mm
2/s以下、典型的には120mm
2/s未満である30℃における最大動粘度、
ENISO 2719に従って測定されて135℃以上、典型的には少なくとも137℃である引火点(PM)、および
0.3mgKOH/g以下、典型的には0.009mgKOH/g未満である酸度
を有する請求項10~30のいずれか1項に記載の電気技術用流体組成物。
【請求項32】
ENISO 3104に従って測定されて12mm
2/s以下、典型的には4~8mm
2/sのあいだである40℃における最大動粘度、
ENISO 3104に従って測定されて1800mm
2/s以下、典型的には500mm
2/s未満である30℃における最大動粘度、
ENISO 2719に従って測定されて少なくとも135℃、典型的には少なくとも135℃である引火点(PM)、および
0.3mgKOH/g以下、典型的には0.002mgKOH/g以下である酸度
を有する請求項10~30のいずれか1項に記載の電気技術用流体組成物。
【請求項33】
変圧器、好ましくは電力変圧器における、請求項10~32のいずれか1項に記載の電気技術用流体組成物の使用。
【請求項34】
変圧器油として、または、変圧器油、電池冷却剤、熱伝達流体、冷却剤、絶縁油、衝撃吸収流体もしくはケーブル油の成分としての、請求項10~32のいずれか1項に記載の電気技術用流体組成物の使用。
【請求項35】
電気自動車バッテリー冷却剤としての、請求項10~32のいずれか1項に記載の電気技術用流体組成物の使用。
【請求項36】
サーバーファーム冷却剤としての、請求項10~32のいずれか1項に記載の電気技術用流体組成物の使用。
【請求項37】
組成物の総計の重量に基づいて、95wt-%より多い、好ましくは97wt-%より多い、さらにより好ましくは99wt-%より多い、C15~C29の範囲、好ましくはC15~C25の範囲のパラフィンを含む電気技術用流体組成物であって、IEC60296による要件を満たしている電気技術用流体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能な原料から得られる電気技術用流体組成物を製造するための方法、該方法を用いて製造される組成物、および該組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
液体または気体の電気技術用流体は、変圧器、コンデンサ、開閉装置、ブッシングなどの電気機器に使用されている。電気技術用流体は通常、装置内の高電圧部分と接地部分とを分離する電気絶縁媒体として機能し、装置内で発生する熱を移動させる冷却媒体として機能する。上記の基本的な機能に加え、電気技術用流体は、長い作動寿命、幅広い温度範囲での作動、適切な動粘度、および環境への影響の最小化など、その他の必要かつ望ましい要件に適合する必要がある。
【0003】
電気技術用流体の分野では、持続可能な、生物資源の、再生利用の代替物を目標とするニーズが高まっている。再生可能なフィードストックから調製された製品に対する需要は増加しているが、そのような流体のための標準的な要件も満たしている電気技術用流体の製造のための再生可能な原料の使用は困難であり、この目的のための再生可能な原料の使用を問題のあるものとしていた。
【0004】
特許文献1(Neste Oil Oyjによる)は、炭化水素で希釈され、ならびに、予備水素化、ケトン化、水素化脱酸素、ストリッピング、水素異性化、任意的な水素化仕上、および蒸留によって、再生可能なベースオイル、再生可能なディーゼルおよび再生可能なガソリンに処理される複合フィードを記載している。
【0005】
特許文献2は、70%より多いイソパラフィンを含む再生可能な炭化水素ベースの絶縁流体を開示している。開示は、要求される性能を満たす流体を製造する方法や、要求される性能を満たす流体の組成については教示していない。
【0006】
特許文献3は、200℃から400℃の範囲の沸点および80℃未満の沸点範囲を有し、95重量%より多いイソパラフィンおよび3重量%未満のナフテンを含み、少なくとも95重量%のバイオカーボン含有量を有し、100重量ppm未満の芳香族を含む、電気自動車用の電気技術用流体を開示している。開示は、規格要件を満たす流体の製造方法や規格要件を満たす流体の組成を教示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2007/006879号
【特許文献2】国際公開第2014/128227号
【特許文献3】国際公開第2018/078024号
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、電気技術用流体組成物として好適であり、上述した欠点を緩和する炭化水素組成物の製造方法を提供することである。本発明はまた、IEC60296に従った要件を満たす電気技術用流体組成物に関し、およびその電気技術用流体組成物は、該方法によって調製され得る。さらに、本発明は、電気技術用流体組成物の使用に関する。
【0009】
本発明者らは、驚くべきことに、再生可能ベースオイル(RBO)プロセスのサイドストリームが、IEC60296によるそのような製品のための標準要件を満たす電気技術用流体の製造のために使用され得ることを見出した。本発明者らは、驚くべきことに、RBOプロセスからのサイドストリームの一部が、標準要件を満たす電気技術用流体組成物の製造に使用され得、それによって廃棄物流が減少されるため、再生可能原料、すなわちRBOプロセスに使用されるフィードストックの完全な価値化が結果的にもたらされることを見出した。これは、RBOプロセスからの廃棄物流が低減され、代わりに電気技術用流体組成物の原料として使用され、電気技術用流体組成物の製造に使用されたであろう他の種類の原料の量も削減されるため、より環境に優しいプロセスをもたらす。
【0010】
好ましい実施形態において、電気技術用流体組成物は変圧器油として使用され、既知の変圧器油よりも蒸発が少ないという利点を有する。
【0011】
実施形態の1または複数の例が以下の説明でより詳細に述べられる。他の特徴は、本明細書および特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態のプロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施形態は例示である。本明細書は、いくつかの箇所で「1つ(an)」、「1つ(one)」、または「いくつか(some)」と言及しているかもしれないが、これは、そのような参照のそれぞれが同じ実施形態であること、またはその特徴が単一の実施形態にのみ適用されることを必ずしも意味していない。種々の実施形態の単一の特徴が、他の実施形態を提供するために組み合わされてもよい。さらに、「含む(comprising)」、「含む(containing)」、および「含む(including)」という語は、記載された実施形態を言及された特徴のみから構成されることに限定するものではなく、そのような実施形態は、特に言及されていない特徴/構造も含むことができると理解されるべきである。
【0014】
本明細書中で言及されているすべての規格は、特に断りのない限り、入手可能な最新の改訂版である。
【0015】
本発明は、電気技術用流体組成物の製造のための方法、電気技術用流体組成物、および電気技術用流体組成物の使用を開示する。
【0016】
より特には、本発明は、再生可能なパラフィン系中間生成物を得るための再生可能なフィードストックのケトン化ならびに例えば水素化脱酸素および異性化などの水素化処理、好ましくは蒸留によるその後の分留を含む電気技術用流体組成物の製造方法を開示する。
【0017】
一実施形態において、得られた再生可能パラフィン系中間生成物は、約280℃~約400℃の範囲内の沸点範囲(EN ISO3405:2011)を有する炭化水素組成物を回収するために、少なくとも1つの分留プロセスに付される。このより広い範囲は、より多くのカットが使用される、すなわち、より良い収率が達成されるという利点を有する。
【0018】
一実施形態において、得られた再生可能パラフィン系中間生成物は、約280℃~約375℃の範囲内の沸点範囲(EN ISO3405:2011)を有する炭化水素組成物を回収するために、少なくとも1つの分留プロセスに付される。
【0019】
一実施形態において、得られた再生可能パラフィン系中間生成物は、約280℃~約350℃の範囲内の沸点範囲(EN ISO3405:2011)を有する炭化水素組成物を回収するために、少なくとも1つの分留プロセスに供される。このより狭い範囲は、より広い蒸留温度範囲を使用する場合よりも、製品がさらに優れた特性を有するという利点がある。
【0020】
本発明はまた、IEC60296(2012)に従った要件を満たす電気技術用流体に関し、および、その電気技術用組成物は本発明による方法によって調製することができる。
【0021】
IEC60296(2012)による要件は、895kg/m3である20℃における最大密度、-40℃である最大流動点、12mm2/sである40℃における最大動粘度、1800mm2/sである-30℃における最大動粘度、135℃である最低引火点、最大で500mg/kgである総計の硫黄含有量、0.3mgKOH/gである最大全酸度、30mg/kgである最大含水量(バルク)、および40nMmである最小界面張力である。
【0022】
さらに、本発明は電気技術用流体の使用に関する。
【0023】
再生可能なパラフィン中間生成物は、再生可能な(生物由来の)原料、すなわち再生可能なフィードストックのケトン化、ならびに、水素化脱酸素および異性化などの水素化処理によって得ることができる。再生可能なフィードストックは、主にC16およびC18を含む、C4~C26の範囲の炭素数分布を有する。このようにして得られる再生可能なパラフィン系中間生成物は、C4~C51の範囲の、主にC31~C35を含む炭素数分布を有する。再生可能なパラフィン系中間生成物は、主にn-パラフィンとi-パラフィンを含む。
【0024】
約280℃~約400℃の範囲内の沸点範囲を有する炭化水素組成物を回収するための分留プロセスの後に得られる蒸留物は、C15~C25の範囲内の炭素数分布を有する。
【0025】
一実施形態において、分離/分留のための再生可能パラフィン系中間生成物は、再生可能なフィードストックの触媒ケトン化および接触水素化処理によって提供される。
【0026】
別の実施形態において、水素化処理は、接触水素化脱酸素および水素異性化を含む。
【0027】
別の実施形態において、分離プロセスは蒸留による分留からなる。蒸留は連続式またはバッチ式であり得る。
【0028】
一実施形態において、ケトン化、ならびに、例えば水素化脱酸素および異性化などの水素化処理のステップに続いて、水素化仕上が行われる。
【0029】
沸騰範囲は、蒸留生成物の最初の滴が得られる温度として定義される初留点IBPから、最高沸点化合物が蒸発する最終沸点FBPまでの温度間隔をカバーする。
【0030】
一実施形態によれば、得られた再生可能なパラフィン系中間生成物は、電気技術用組成物を得るために少なくとも1回の分留に付され得、ここで分留は、回収される電気技術用流体組成物が約280℃~約400℃の範囲内の沸点範囲を有する(EN ISO3405:2011)ように実施される。
【0031】
一実施形態によれば、得られた再生可能なパラフィン系中間生成物は、電気技術用組成物を得るために少なくとも1回の分留に付されて得、ここで分留は、回収される電気技術用流体組成物が約280℃~約375℃の範囲内の沸点範囲を有する(EN ISO3405:2011)ように実施される。
【0032】
一実施形態によれば、得られた再生可能パラフィン系中間生成物は、電気技術用流体組成物を得るために少なくとも1つの分留に供されてもよく、分留は、回収された電気技術用流体組成物が約280℃~約350℃の範囲内の沸点範囲を有するように実施される(EN ISO3405:2011)。
【0033】
一実施形態において、少なくとも一つの分留は蒸留によって得られる。
【0034】
本開示の方法によって得られる電気技術用組成物は、国際規格IEC60296(2012)による、そのような製品のための要件を満たしている。
【0035】
EN ISO 3405:2011およびASTM D86:2015規格「Standard Test Method for Distillation of Petroleum Products and Liquid Fuels at Atmospheric Pressure」、およびASTM D7345:2017規格「Standard Test Method for Distillation of Petroleum Products and Liquid Fuels at Atmospheric Pressure (Micro Distillation Method)」は、0℃~400℃(ASTM D7345:20℃~400℃)の範囲内の沸点範囲を有する液体燃料製品の沸点分布を測定するための蒸留方法を記載している。ASTM D86またはASTM D7345を用いて、沸点は25vol-%蒸留で測定される。沸点は88%蒸留で報告されることもある。
【0036】
プロセスの説明
「ケトン化(ketonisation)」との用語は、カルボン酸およびその誘導体、特に脂肪酸、対応するエステル、アルコール、アルデヒド、無水物のケトン化反応を意味する。この反応では、官能基が互いに反応してケトンを生成する。2つのカルボン酸のケトン化反応は、無水物中間体を経てケトンを生成し、水および二酸化炭素が反応中に遊離される。アルコールおよびエステルの場合、ケトン化反応は、アルデヒドを介してティシチェンコエステルを生成し、さらにケトンに、アルデヒドの場合はティシチェンコエステルを介してケトンに進行する。これら最後の2つの反応では、一酸化炭素が遊離される。
【0037】
「水素化処理(hydrotreatment)」との用語は、水素分子による有機材料の触媒的処理を意味する。好ましくは、水素化処理は有機酸素化合物から酸素を水として、すなわち水素化脱酸素(HDO)によって除去する。追加で/代替的に、水素化処理は、有機硫黄化合物から硫黄を硫化水素(H2S)として、すなわち水素化脱硫(HDS)によって除去し、有機窒素化合物から窒素をアンモニア(NH3)として、すなわち水素化脱窒素(HDN)によって除去し、有機塩素化合物からハロゲン、例えば塩素を塩酸(HCl)として、すなわち水素化脱塩素(HDCl)によって除去し、および/または、芳香族を含まない生成物を得るために、すなわち水素化脱芳香族(HDA)によって芳香族を除去する。
【0038】
「水素化脱芳香族(hydrodearomatisation)」(HDA)とは、触媒の影響下での水素分子による芳香族の飽和または開環を意味する。
【0039】
例えばトリグリセリドまたは他の脂肪酸誘導体または脂肪酸の「水素化脱酸素(hydrodeoxygenation)」(HDO)という用語は、触媒の影響下での水素分子による例えばカルボキシル酸素の水としての除去を意味する。
【0040】
再生可能な原料の水素化脱酸素および結果として得られるn-パラフィンの異性化に適した反応条件および触媒は既知である。そのようなプロセスの例は、フィンランド国特許発明第100248号明細書、実施例1~3、および、国際公開第2015/101837号に示されている。
【0041】
「脱酸素(deoxygenation)」との用語は、例えば脂肪酸誘導体、アルコール、ケトン、アルデヒドおよび/またはエーテルなどの有機分子から、酸素を先に述べた任意の手段によって除去する、または脱炭酸または脱カルボニル化を意味する。
【0042】
「異性化(isomerisation)」との用語は、分子が全く同じ原子をもつが、原子の配置が異なる別の分子に変化されるプロセスを意味する。本文脈において、異性化は、パラフィンカルボン酸およびそのアルキルエステルの異性化ならびに水素異性化の両方を指す。
【0043】
「中間生成物(intermediate product)」との用語は、例えばケトン化および水素化処理などの少なくとも1つのプロセス工程の後にフィードストックから得られる組成物であるが、最終生成物を得るために例えば分留などの追加のプロセス工程にさらに付される組成物を意味する。
【0044】
本発明の方法において、再生可能なフィードストックは、ケトン化および水素化処理に、好ましくは水素化脱酸素および異性化に、付される。不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸のエステル、好ましくは脂肪酸および/または脂肪酸アルキルエステルがフィードストックとして使用される場合、異性化は、水素化脱酸素がその後に行われるケトン化の前に行われてもよく、または、異性化は、ケトン化および水素化脱酸素工程の後に行われても、または同時に行われてもよい。
【0045】
一実施形態において、ケトン化、水素化脱酸素および異性化の工程の後に、水素化仕上が続く。
【0046】
再生可能なフィードストック
再生可能なフィードストック(すなわち生物起源のフィードストック)とは、例えば植物(plant)オイル/脂肪、植物(vegetable)オイル/脂肪、動物性オイル/脂肪、魚オイル/脂肪、および藻類オイル/脂肪などの、脂質(例えば脂肪酸またはグリセリド)を通常含むオイルおよび/または脂肪、または、例えば遺伝子操作された藻類オイル/脂肪、他の微生物プロセスからの遺伝子操作されたオイル/脂肪、および遺伝子操作された植物オイル/脂肪などの他の微生物プロセスからのオイル/脂肪を含む生物学的原料成分由来のフィードストックを指す。好ましくは、それは、廃棄物または残渣材料である。そのような材料の成分または誘導体、例えば、アルキルエステル(典型的には、例えばメチル、エチル、プロピル、iso-プロピル、ブチル、sec-ブチルエステルなどのC1~C5アルキルエステル)またはオレフィンなどもまた使用され得る。
【0047】
再生可能なオイルおよび/または脂肪は、単一の種類のオイル、単一の種類の脂肪、種々のオイルの混合物、種々の脂肪の混合物、オイルおよび脂肪の混合物、脂肪酸、グリセロール、および/または、上記の混合物を含み得る。
【0048】
これらのオイルおよび/または脂肪は、典型的には、脂肪酸のエステル、グリセリド、すなわち脂肪酸のグリセリンエステルを含むC8~C24の脂肪酸およびその誘導体を含む。グリセリドとしては、特には、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドが挙げられ得る。
【0049】
14C-同位体の含有量は、フィードストックまたは製品の再生可能なまたは生物学的な起源の証拠として使用され得る。再生可能な物質の炭素原子は、化石由来の炭素原子に比べて、より多くの数の不安定な放射性炭素(14C)原子を含む。したがって、12Cおよび14Cの同位体比を分析することにより、生物学的供給源由来の炭素化合物と化石供給源由来の炭素化合物とを区別することが可能である。したがって、該同位体の特定の比率が、再生可能な炭素化合物を同定し、およびそれらを再生不可能なすなわち化石炭素化合物から区別するために使用され得る。同位体比は化学反応の過程において変化しない。生物学的供給源由来の炭素含有量を分析するための好適な方法の例は、ASTM D6866(2020)である。燃料中の再生可能物質含有量を測定するためのASTM D6866の適用の仕方の例は、Dijsらの論文、Radiocarbon, 48(3), 2006, pp 315-323に記載されている。本発明目的のためには、それが、ASTM D6866を用いて測定されて、90%以上のモダンカーボン(pMC)、例えば100%モダンカーボンなどを含む場合に、例えばフィードストックまたは製品などの炭素含有材料は、生物学的、すなわち再生可能起源であるとみなされる。
【0050】
一実施形態において、本発明の電気技術用流体組成物は、少なくとも5%、特には少なくとも60%、例えば少なくとも75%、さらには100%でさえあるモダンカーボン含有量(pMC)を有する。
【0051】
再生可能なパラフィン系中間生成物の調製
一般的に、再生可能なパラフィン系中間生成物は、任意の既知の方法を用いて再生可能なフィードストックから製造され得る。再生可能なパラフィン系中間生成物を製造するための方法の具体例は、欧州特許出願公開第1963461号明細書に記載されている。
【0052】
一実施形態において、再生可能なフィードストックは、脂肪酸、または、例えばトリグリセリドなどの脂肪酸誘導体、またはそれらの組み合わせを含む。
【0053】
ケトン化
本発明による再生可能なパラフィン系中間生成物の調製は、再生可能な原料のフィードストックのケトン化を含む。ケトン化のためのプロセス条件は、例えば欧州特許出願公開第1963461号明細書に既知である。例えば、ケトン化は、金属酸化物触媒を用いて実施され得る。典型的な金属としては、Na、Mg、K、Ca、Sc、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Ti、Y、Zr、Mo、Rh、Cd、Sn、La、Pb、Bi、および希土類金属などが挙げられる。これらの金属酸化物は、担体上に担持されていてもよく、典型的な担体はラテライト、ボーキサイト、二酸化チタン、シリカおよび/または酸化アルミニウムである。触媒は、好ましくは、Ti、Mn、Mg、CaおよびZr含有金属酸化物触媒の1または複数からなるリストから選択される金属酸化物触媒である。ケトン化触媒は、より好ましくは、TiO2を含む。ケトン化触媒は、最も好ましくは、任意には担体に担持されたTiO2である。例えば、触媒は、80~160Åの平均細孔直径、および/または、40~140m2/gのBET面積、および/または、0.1~0.3cm3/gのポロシティを有するアナターゼ形態のTiO2であってもよい。
【0054】
ケトン化は、例えば、0.1~5MPa、好ましくは0.1~1MPaの圧力で行なわれ得、一方、温度は、100~500℃、好ましくは100~400℃、より好ましくは300~400℃の範囲であり得る。ケトン化は、0.1~10 1/h、好ましくは0.3~5 1/h、より好ましくは0.3~3 1/hの供給流量WHSVで行われ得る。ケトン化反応は、例えば窒素などの不活性ガス、または水素または二酸化炭素などのガスの存在下で行なわれ得る。好ましくは、ガスはCO2、H2、N2、CH4、H2Oのうちの1または複数から選択される。最も好ましくは、それはCO2である。その量は、大過剰から少量の化学量論的過剰まで変わり得る。好ましくは、コスト上の理由から、ガス流量は0.1~1.5ガス/フィード比(w/w)の範囲である。
【0055】
水素化処理
ケトン化の後に水素化処理が行われ、ここで、ケトン化されたフィードは、触媒、好ましくはNi、Mo、CoまたはWから選択される少なくとも1つの触媒の存在下、圧力下で水素に供される。典型的には、水素化処理は、例えば二重結合などの不飽和結合、酸素(脱酸素)、ならびに、窒素、硫黄および塩素などの他のヘテロ原子が除去する。水素化処理は、様々な触媒および調整された反応条件を用いて、いくつかのステップで選択的に行われ得る。
【0056】
水素化脱酸素
ケトン化に続いて、好ましくは水素化脱酸素(HDO)を含む水素化処理が行われ得、ここで酸素結合の水素化が行われ、酸素がH2Oとして除去される。水素化脱酸素の処理条件は、当該技術分野で知られている。例えば、再生可能原料の水素化脱酸素は、金属硫化物触媒上で行われ得る。金属は、例えばMoまたはWなどの第VI族金属の1または複数、または例えばCoまたはNiなどの第VIII族非貴金属の1または複数、またはそれらの混合物であり得る。触媒は、任意の適切な担体、例えばアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、アモルファスカーボン、モレキュラーシーブ、またはそれらの組み合わせなどの上に担持されていてもよい。通常、金属は、金属酸化物として担体上に含浸または堆積される。その後、それらは典型的には、それらの硫化物に変換される。水素化脱酸素のための典型的な触媒の例としては、アルミナまたはシリカ上に担持されたモリブデン含有触媒、NiMo、CoMo、またはNiW触媒が挙げられるが、多くの他の水素化脱酸素触媒が当該技術分野で知られており、そして、NiMoおよび/またはCoMo触媒と共に、または比較して記載されている。水素化脱酸素は、好ましくは、水素ガスの存在下、硫化NiMo触媒または硫化CoMo触媒の影響下で行われる。
【0057】
水素化脱酸素は、150℃~400℃、好ましくは200℃~400℃の温度で、1~15MPaの水素圧力下、および0.5~3 1/hの範囲のWHSVで行われ得る。硫化触媒を使用する水素化脱酸素工程の間、触媒の硫化状態は、気相中への硫黄の添加によって、または、再生可能なフィードストックに混合された硫黄含有鉱油を含むフィードストックを使用することによって、維持され得る。水素化脱酸素に付される総計のフィードの硫黄含有量は、例えば、50wppm(重量当たりのppm)~20000wppmの範囲内、例えば50、100、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10000、10500、11000、11500、12000、12500、13000、13500、14000、14500、15000、15500、16000、16500、17000、17500、18000、18500、19000、19500または20000wppmなど、好ましくは50wppm~1000wppmの範囲、より好ましくは50wppm~570wppmの範囲であり得る。
【0058】
水素化脱酸素のための効果的な条件は、フィードストックの酸素含有量を1wt-%未満、例えば0.5wt-%未満、または0.2wt-%未満、例えば0.2~0.05wt-%から本質的に酸素を含まない状態などまで低下させることができる。いくつかの場合において、条件は、少なくとも40wt-%、少なくとも50wt-%、または少なくとも75wt-%の脱酸素に対応する部分的な水素化脱酸素をもたらすように選択され得る。
【0059】
好ましい実施形態において、水素化脱酸素反応条件は、以下:250~400℃の範囲の温度;2~8MPaの範囲の圧力;0.1~10 1/h、好ましくは0.3~5 1/h、より好ましくは0.5~3 1/hの範囲のWHSV;および350~900nl H2/lフィードのH2フローのうちの1または複数を含む。水素化脱酸素反応は、活性炭、アルミナおよび/またはシリカ担体上のPd、Pt、Ni、NiMo、CoMo、またはNiW金属など、好ましくはアルミナ担体上のNiMoなどの水素化脱酸素触媒の存在下で行われる。
【0060】
異性化
本発明の再生可能なパラフィン系中間生成物は、再生可能なパラフィン系中間生成物を調製するために、ケトン化に付された原料中の少なくとも直鎖炭化水素を異性化処理に付すことによって提供され得る。
【0061】
異性化処理は、ケトン化および水素化処理された原料の炭化水素鎖の分岐、すなわち異性化を引き起こす。炭化水素鎖の分岐は低温特性を向上させる、すなわち異性化処理によって形成された異性体組成物は、ケトン化されおよび水素化処理された原料と比較してより優れた低温特性を有する。
【0062】
異性化工程は、異性化触媒の存在下、任意には異性化プロセスに添加される水素の存在下で行われ得る。好適な異性化触媒は、モレキュラーシーブおよび/または周期表の第VIII族から選択される金属、および任意には担体を含む。好ましくは、異性化触媒は、SAPO-11もしくはSAPO-41、または、ZSM-22もしくはZSM-23、または、フェルネライト、および、Pt、PdまたはNi、および、Al2O3もしくはSiO2を含む。典型的な異性化触媒は、例えば、Pt/SAPO-11/Al2O3、Pt/ZSM-22/Al2O3、Pt/ZSM-23/Al2O3、Pt/SAPO-11/SiO2である。触媒は単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。追加の水素の存在は、触媒の失活を低減するため特に好ましい。好ましい実施形態において、異性化触媒は、例えばPt-SAPOおよび/またはPt-ZSM-触媒などの貴金属二官能性触媒であり、水素と組み合わされて使用される。異性化工程は、例えば、200~400℃、好ましくは280~400℃の温度、および、1~15MPa、好ましくは1~10MPaの圧力で行われ得る。異性化工程は、例えば精製工程および分留工程などのさらなる中間工程を含んでもよい。異性化は、例えば300℃~350℃で行われ得る。
【0063】
一実施形態において、異性化反応条件は、以下:250~400℃の範囲の温度;3~6MPaの範囲の圧力;0.5~3 1/hの範囲のWHSV;100~800nl H2/l フィードのH2フローの1または複数を含む。水素異性化反応は、任意にはアルミナおよび/またはシリカ担体上に担持された、例えば第VIII族金属およびモレキュラーシーブを含む触媒などの異性化触媒の存在下で行われる。
【0064】
ちなみに、異性化処理は、主に水素化処理された原料を異性化するように作用する工程である。即ち、HDOは通常、選択された反応条件に依存して少しの程度の異性化(通常5wt-%未満)をもたらすが、本発明で採用され得る異性化工程は、イソパラフィンの含有量における顕著な増加をもたらす工程である。
【0065】
本発明によるカット物は、-40℃未満の流動点を有し、その観点から、例えば少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%などの非常に高い異性化の程度を有していなければならない。従って、工程が異なれば、たとえ同じカットを取り出しても、炭素鎖の分布、分岐、および性質に違いがある異なる製品を与える。
【0066】
水素化脱酸素工程および異性化工程は、同時または連続して行われ得る。これらは、組み合わされた工程のための単一の触媒、例えばNiWのなど、または、例えばアルミナ上のNiMoなどの担体上に担持されたMo触媒との混合物中のPt/SAPOなどのPt触媒を使用して、同じ触媒床の単一工程で行われ得る。
【0067】
水素化仕上工程
水素化脱酸素および異性化工程の後、フィードストックは、残存する任意の二重結合および芳香族を除去するために水素化仕上に付され得るが、この工程は必須ではない。水素化仕上は、触媒の存在下、水素を使用して、1~20MPa、好ましくは2~15MPa、および特に好ましくは3~10MPaの範囲の圧力で行われ得る。温度は、50~500℃、好ましくは200~400℃、および特に好ましくは200~300℃の範囲であり得る。水素化仕上においては、元素周期表第VIII族の金属を含む特定の触媒、および担体が使用され得る。水素化仕上触媒は、好ましくは担持されたPd、PTまたはNi触媒であり、担体はアルミナおよび/またはシリカである。また、仕上は、クレイまたはモレキュラーシーブなどの吸着材を用いて極性成分を除去することによっても行われ得る。
【0068】
分留工程
任意の既知の分留方法、または分留方法の組み合わせが、約280℃~約400℃(EN ISO3405:2011)の範囲内、または約280℃~約350℃(EN ISO3405:2011)の範囲内の沸点範囲を有する炭化水素組成物を回収するために、再生可能なパラフィン系中間生成物から本発明による電気技術用流体組成物の製造に使用され得る。
【0069】
好ましくは、分離は、280~400℃の沸点範囲を有する留分中の炭素数分布が、蒸留物が0~4wt-%のC15パラフィン、18~21wt-%のC16パラフィン、10~13wt-%のC17パラフィン、9~11wt-%のC18パラフィン、8.5~10.5wt-%のC19パラフィン、8.5~10.5wt-%のC20パラフィン、8~10wt-%のC21パラフィン、7.5~9.5wt-%のC22パラフィン、7~9.5wt-%のC23パラフィン、6~8wt-%のC24パラフィン、および4.5~6.5wt-%のC25~C29パラフィンを含むようになるように選択される。
【0070】
好ましくは、分離は、280~350℃の沸点を有する留分中の炭素数分布が、蒸留物が0~5wt-%のC15パラフィン、27~30wt-%のC16パラフィン、16.5~19wt-%のC17パラフィン、15.5~18.5wt-%のC18パラフィン、15.5~18wt-%のC19パラフィン、11.5~14.5wt-%のC20パラフィン、2.5~5.5wt-%のC21パラフィン、および0.1~2wt-%のC22パラフィンを含むように、選択される。
【0071】
上記で特定されている炭素数分布は、他の炭素数が存在することを排除するものではないが、これらは好ましくは、各炭素数において0.3wt%未満の量しか存在しない。
【0072】
好ましくは、分離は、i-パラフィンの大部分が回収される蒸留留分に入るように選択される。
【0073】
一実施形態において、電気技術用流体組成物は、再生可能なパラフィン系中間生成物を、蒸留を含む少なくとも1つの分離プロセスに付すことによって製造される。
【0074】
一実施形態において、初留点IBPは280℃、および最終沸点FBPは400℃である(EN ISO3405:2011)。
【0075】
一実施形態において、初留点IBPは280℃、および最終沸点FBPは375℃である(EN ISO3405:2011)。
【0076】
一実施形態において、初留点IBPは280℃、および最終沸点FBPは350℃である(EN ISO3405:2011)。
【0077】
一実施形態において、プロセスは2つ以上の分離工程を含む。
【0078】
好ましい性質に関する再生可能なフィードストックの選択、例えば、C16およびC18をピークとする炭素鎖長を有する化合物を多量に有する再生可能なフィードストックを選択などは、電気技術用流体組成物および再生可能ベースオイルを含む製品の収率を高めるために使用され得る。
【0079】
電気技術用流体組成物の収率は、再生可能なパラフィン系中間生成物製造プロセスにおけるプロセス条件の選択によってもまた向上され得る。
【0080】
図1による本発明の一実施形態において、遊離脂肪酸およびグリセロールを含む原料は、ケトン化条件下でケトン化に付され、次いで水素化脱酸素条件下で水素化脱酸素される。ケトン化および水素化脱酸素された原料は、次いで異性化に付され、次いで任意工程である水素化仕上が行われる。生成物は、その後、例えば蒸留またはストリッパーなどの最初の分留に付され、ここでそれは、デミスターナフサ、ストリッパーナフサ、塔底生成物に分留される。ストリッパーナフサはさらなる分留に付され、例えばディーゼル留分などの中間蒸留物、および、デミスターナフサから得られたガソリンと共に使用されるガソリンを結果として与える。塔底生成物は、例えばディーゼルなどの中間留分および再生可能なベースオイル留分にさらに分留される。再生可能なベースオイル留分はさらに分留され、および、280~400℃または280~350℃の蒸留カットが集められ、そして電気技術用流体組成物としての性能の点で評価される。より重質なカットは再生可能ベースオイル生成物を含む。
【0081】
一実施形態において、本発明は、電気技術用流体組成物を製造するための方法であって、遊離脂肪酸およびグリセリドを含む再生可能なフィードストックを、ケトン化条件下でケトン化に付す工程、再生可能なパラフィン系中間生成物を得るために、ケトン化された再生可能なフィードストックを水素化処理条件下で水素化処理に付す工程、電気技術用流体組成物を得るために、再生可能なパラフィン系中間生成物を少なくとも1つの分留に付す工程であって、ここで、該電気技術用流体組成物はIEC60296(2012)国際規格による要件を満たしている工程を含む方法に関する。
【0082】
一実施形態において、電気技術用流体組成物は、895kg/m3以下、好ましくは800kg/m3以下の20℃における密度を有する。
【0083】
一実施形態において、電気技術用流体組成物は、-40℃未満の流動点(ISO 3016)を有する。
【0084】
一実施形態において、電気技術用流体組成物は、12mm2/s以下、好ましくは10mm2/s以下、より好ましくは8mm2/s以下、例えば6mm2/s以下の40℃における動粘度を有する。
【0085】
一実施形態において、電気技術用流体組成物は、1800mm2/s以下、好ましくは150mm2/s以下、例えば120mm2/s以下などの-30℃における動粘度を有する。
【0086】
一実施形態において、電気技術用流体組成物は、135℃以上の引火点を有する。
【0087】
一実施形態において、電気技術用流体組成物は、0.01mgKOH/g以下、例えば0.005mgKOH/g以下の全酸度を有する。
【0088】
一実施形態において、電気技術用流体組成物は、30mg/kg以下、好ましくは20mg/kg以下の含水量を有する。
【0089】
一実施形態において、前記少なくとも1つの分留は、回収された電気技術用組成物が約280℃~約400℃の範囲内、好ましくは約280℃~約400℃(EN ISO3405:2011)の範囲内、より好ましくは約280℃~約350℃(EN ISO3405:2011)の範囲内の沸点範囲を有するような方法で行われる。
【0090】
一実施形態において、前記少なくとも1つの分留は、蒸留によって提供される。
【0091】
一実施形態において、前記少なくとも1つの分留は、分留蒸留によって提供される。
【0092】
一実施形態において、ケトン化は、100~500℃、好ましくは100~400℃、より好ましくは300~400℃の範囲の温度で行われる。
【0093】
一実施形態において、ケトン化は、0.1~5MPa、好ましくは0.1~1MPaの圧力で行われる。
【0094】
一実施形態において、ケトン化は、0.1~10l/h、好ましくは0.3~5l/h、より好ましくは0.3~3l/hのフィードフローレートWHSVで行われる。
【0095】
一実施形態において、ケトン化は、少なくとも1つの金属酸化物ケトン化触媒の存在下で行われる。
【0096】
一実施形態において、金属酸化物ケトン化触媒はTi、より好ましくはTiO2を含み、さらに好ましくは触媒はTiO2から構成される。
【0097】
一実施形態において、前記ケトン化条件は、100~400℃の温度、0.1~5MPaの圧力、および金属酸化物ケトン化触媒の存在を含み、ここでケトン化触媒は、好ましくはTiO2を含む。
【0098】
一実施形態において、前記水素化処理条件は、水素ガス、および、Ni、Mo、CoまたはWから選択される少なくとも1つの触媒の存在を含む。
【0099】
一実施形態において、前記水素化処理は、同時のまたは連続した、水素化脱酸素条件下での水素化脱酸素、および、異性化条件下での異性化を含む。
【0100】
一実施形態において、水素化脱酸素は、150~400℃、好ましくは200~400℃の温度範囲で行われる。
【0101】
一実施形態において、水素化脱酸素反応は、1~15MPa、好ましくは2~8MPaの圧力で行われる。
【0102】
一実施形態において、水素化脱酸素は、0.1~101/h、好ましくは0.3~5 1/h、より好ましくは0.5~3 1/hのフィードフローレートWHSVで行われる。
【0103】
一実施形態において、水素化脱酸素反応は、350~900nl H2/l フィードのH2流量で行われる。
【0104】
一実施形態において、水素化脱酸素は、少なくとも1つの水素化脱酸素触媒の存在下で行われる。
【0105】
一実施形態において、水素化脱酸素触媒は、Pd、Pt、Ni、CoMo、NiMo、NiWおよびCoNiMoからなる群より選択される少なくとも1つの金属を含む。
【0106】
一実施形態において、触媒は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、アモルファスカーボン、モレキュラーシーブ、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される担体上に担持されていてもよい。
【0107】
一実施形態において、前記水素化脱酸素条件は、150~400℃の範囲の温度での1~15MPaの範囲の水素圧力、ならびに、Pd、Pt、Ni、NiMo、CoMoまたはNiW金属および活性炭、アルミナおよび/またはシリカ担体を含む触媒の存在を含む。
【0108】
一実施形態において、前記異性化条件は、200~400℃、好ましくは250~400℃、より好ましくは280~400℃の温度範囲を含む。
【0109】
一実施形態において、前記異性化条件は、1~15MPa、好ましくは1~10MPaの圧力を含む。
【0110】
一実施形態において、前記異性化条件は、0.5~3 1/hのフィードフローレートWHSVを含む。
【0111】
一実施形態において、前記異性化条件は、100~800nl H2/l フィードのH2フローを含む。
【0112】
一実施形態において、前記異性化条件は、水素異性化触媒の存在を含む。
【0113】
一実施形態において、水素異性化触媒は、任意にはアルミナおよび/またはシリカ担体上に担持されているVIII族金属、好ましくはPd、PTまたはNiから選択される。
【0114】
一実施形態において、前記異性化条件は、200~400℃の範囲の温度での1~15MPaの範囲の水素圧力、およびモレキュラーシーブ、およびPd、PtまたはNi金属、および/または担体から選択される触媒の存在を含む、前記担体はアルミナおよび/またはシリカである。
【0115】
一実施形態において、この方法は、90wt%より多い飽和炭化水素、0.03wt%未満の硫黄、および120より大きい粘度指数を有する、APIグループIIIベースオイル仕様を満たす再生可能なベースオイル生成物を得るために、再生可能なパラフィン系中間生成物を、第2のまたはさらなる、例えば第3の、分留に付すことをさらに含む。
【0116】
一実施形態において、本発明は、電気技術用流体組成物、または本発明による方法によって得られる電気技術用流体組成物に関する。これらの電気技術用流体組成物は、組成物の総計の重量に基づいて、95wt-%より多い、好ましくは97wt-%より多い、さらにより好ましくは99wt-%より多い、C15~C29の範囲、好ましくはC15~C25の範囲のパラフィンを含有し、および、該電気技術用組成物は、IEC60296による要件を満たしている。
【0117】
以下の実施形態は、電気技術用流体組成物および本発明による方法によって得られる電気技術用流体組成物の両方に適用される。
【0118】
一実施形態において、電気技術用流体組成物は、895kg/m3以下、好ましくは800kg/m3以下である20℃における密度を有する。
【0119】
一実施形態において、電気技術用流体組成物は、-40℃未満の流動点(ISO 3016)を有する。
【0120】
一実施形態において、電気技術用流体組成物は、12mm2/s以下、好ましくは10mm2/s以下、より好ましくは8mm2/s以下の40℃における動粘度を有する。
【0121】
一実施形態において、電気技術用流体組成物は、1800mm2/s以下、好ましくは150mm2/s以下である-30℃における動粘度を有する。
【0122】
一実施形態において、電気技術用流体組成物は、135℃以上の引火点を有する。
【0123】
一実施形態において、電気技術用流体組成物は、0.01mgKOH/g以下の全酸度を有する。
【0124】
一実施形態において、電気技術用流体組成物は、30mg/kg以下、好ましくは20mg/kg以下の含水量を有する。
【0125】
一実施形態において、電気技術用組成物は、組成物の総計の重量に基づいて、0.01wt-%より多い、好ましくは2.5wt-%より多い、しかしながら5wt-%までの、C15パラフィンを含む。
【0126】
一実施形態において、電気技術用組成物は、組成物の総計の重量に基づいて、5wt-%より多い、好ましくは18wt-%より多い、さらに好ましくは20wt-%より多い、より好ましくは25wt-%より多い、例えば28wt-%より多い、しかしながら35wt-%までの、C16パラフィンを含む。
【0127】
一実施形態において、電気技術用組成物は、組成物の総計の重量に基づいて、5wt-%より多い、好ましくは10wt-%より多い、より好ましくは15wt-%より多い、さらに好ましくは17wt-%より多い、しかしながら24wt-%までの、C17パラフィンを含む。
【0128】
一実施形態において、電気技術用組成物は、組成物の総計の重量に基づいて、5wt-%より多い、好ましくは8wt-%より多い、好ましくは15wt-%より多い、より好ましくは16wt-%より多い、しかしながら23wt-%までの、C18パラフィンを含む。
【0129】
一実施形態において、電気技術用組成物は、組成物の総計の重量に基づいて、5wt-%より多い、好ましくは8wt-%より多い、好ましくは15wt-%より多い、より好ましくは16wt-%より多い、しかしながら23wt-%までの、C19パラフィンを含む。
【0130】
一実施形態において、電気技術用組成物は、組成物の総計の重量に基づいて、5wt-%より多い、好ましくは8wt-%より多い、より好ましくは9wt-%より多い、さらに好ましくは12wt-%より多い、しかしながら19wt-%なでのC20パラフィンを含む。
【0131】
一実施形態において、電気技術用組成物は、組成物の総計の重量に基づいて、12wt-%未満、好ましくは10wt-%未満、より好ましくは9wt-%未満、さらに好ましくは5wt-%未満、しかしながら少なくとも1wt-%のC21パラフィンを含む。
【0132】
一実施形態において、電気技術用組成物は、組成物の総計の重量に基づいて、12wt-%未満、好ましくは10wt-%未満、より好ましくは9wt-%未満、さらに好ましくは1wt-%未満、しかしながら少なくとも0.1wt-%のC22パラフィンを含む。
【0133】
一実施形態において、電気技術用組成物は、組成物の総計の重量に基づいて、14wt-%未満、好ましくは10wt-%未満、より好ましくは9wt-%未満、さらにより好ましくは1wt-%未満、さらにより好ましくは0.25wt-%未満、しかしながら少なくとも0.05wt-%のC23パラフィンを含む。
【0134】
一実施形態において、電気技術用組成物は、組成物の総計の重量に基づいて、8wt-%未満、好ましくは7wt-%未満、より好ましくは0.5wt-%未満、さらに好ましくは0.1wt-%未満のC24パラフィンを含む。
【0135】
一実施形態において、電気技術用流体組成物の総計のイソパラフィン含有量は、組成物の総計の重量に基づいて、93wt-%より多いが99wt-%未満、好ましくは94wt-%より多いが98wt-%未満、より好ましくは95wt-%より多いが97wt-%未満である。
【0136】
一実施形態において、n-パラフィンの量に対するi-パラフィンの量の重量比は、組成物の総計の重量に基づいて、20より大きい。
【0137】
一実施形態において、n-パラフィンの量に対するi-パラフィンの量の重量比は、組成物の総計の重量に基づいて、32未満である。
【0138】
一実施形態において、電気技術用流体は、ENISO 3104に従って測定されて12mm2/s以下、典型的には3~4.5mm2/sのあいだである40℃における最大動粘度、ENISO 3104に従って測定されて1800mm2/s以下、典型的には120mm2/s未満である30℃における最大動粘度、ENISO 2719に従って測定されて135℃以上、典型的には少なくとも137℃である引火点(PM)、0.3mgKOH/g以下、典型的には0.009mgKOH/g未満である酸度を有する。
【0139】
一実施形態において、電気技術用流体は、ENISO 3104に従って測定されて12mm2/s以下、典型的には4~8mm2/sのあいだである40℃における最大動粘度、ENISO 3104に従って測定されて1800mm2/s以下、典型的には500mm2/s未満である30℃における最大動粘度、ENISO 2719に従って測定されて少なくとも135℃、典型的には少なくとも135℃である引火点(PM)、0.3mgKOH/g以下、典型的には0.002mgKOH/g以下である酸度を有する。
【0140】
一実施形態において、電気技術用組成物は、C29までの炭素数範囲を有する。
【0141】
一実施形態において、電気技術用組成物は、C25までの炭素数範囲を有する。
【0142】
一実施形態において、電気技術用組成物は、C15までの炭素数範囲を有する。
【0143】
一実施形態において、本発明は、変圧器、好ましくは電力変圧器における、本発明による電気技術用流体組成物の使用に関する。
【0144】
一実施形態において、本発明は、変圧器油として、または、変圧器油、電池冷却剤、熱伝達流体、冷却剤、絶縁油、衝撃吸収流体もしくはケーブル油の成分としての、本発明による電気技術用流体組成物の使用に関する。
【0145】
一実施形態において、本発明は、電気自動車バッテリー冷却剤としての、本発明による電気技術用流体組成物の使用に関する。
【0146】
一実施形態において、本発明は、サーバーファーム冷却剤としての、本発明による電気技術用流体組成物の使用に関する。
【0147】
一実施形態において、本発明は、組成物の総計の重量に基づいて、95wt-%より多い、好ましくは97wt-%より多い、さらにより好ましくは99wt-%より多い、C15~C29の範囲、好ましくはC15~C25の範囲のパラフィンを含む電気技術用流体組成物に関し、ここで、該電気技術用組成物は、IEC60296による要件を満たしている。
【実施例】
【0148】
実施例1(比較)
表1は、実施例1、NRI-A(比較)の組成物の物理的および化学的特性をまとめたものである。
【0149】
表2は、実施例1のNRI-Aの組成物の炭素数分布をまとめたものである。
【0150】
実施例1のサンプル組成物は、上記で説明されたように、再生可能な起源のフィードストックの水素化脱酸素および異性化によって製造された。水素化脱酸素の前のケトン化は行われなかった。異性化工程に続いて、初留点(IBP)275℃および最終沸点(FBP)300℃を有する炭化水素組成物を回収するための蒸留工程が行われた。
【0151】
実施例1の組成物の炭素数分布を表2に示す。実施例1の組成物は非常に狭い炭素数分布を示し、C15パラフィンは組成物の0.02wt%、C16パラフィンは組成物の2.31wt%、C17パラフィンは組成物の24.97wt%、C18パラフィンは組成物の70.65wt%、C19パラフィンは組成物の1.59wt%、C20パラフィンは組成物の0.45wt%、および、C21パラフィンは組成物の0.01wt%を構成する。全パラフィンの99.97wt%はC16~C20の範囲にある。
【0152】
【0153】
【0154】
実施例2(比較)
表3は、市販されている3つの製品、市販サンプルA、市販サンプルB、およびNeste NRI-B(比較)の組成の物理的および化学的特性をまとめたものである。
【0155】
【0156】
実施例3
RBOプロセス
パーム油脂肪酸蒸留物(PFAD)をケトン化段階のためのフィードストックとして使用した。使用した分留フィードは、主にC16:0脂肪酸から構成されていた。ケトン化は、CO2雰囲気中(650l/h)、TiO2触媒を使用し、1.8MPaの圧力下、350℃で運転されるパイロット連続運転固定床反応器システム中で行った。フィードレートは、ガス比は0.6g/gおよびWHSVは1.1 1/hで2.2kg/hであった。生成ガスは液体ケトン生成物から分離され、NiMo触媒を含む連続固定床HDO反応器に導かれた。主にC31ケトンを含むケトン生成物に対して、水素化脱酸素反応が、フィードレート1.4kg/hおよびガス比712Nl/lである水素(1270l/h)中、6.0MPaの圧力下、温度309℃で行われた。得られたパラフィン系液体HDO生成物は、さらに水素異性化および水素化仕上に導かれた。水素異性化反応器は、市販の水素異性化触媒を使用し、WHSVは0.91/hおよびフィードに対するガス(水素)比は674Nl/lで、4.5MPaの圧力下、340℃で運転された。水素化仕上反応器の温度は、同じ圧力および3.01/hのWHSV中、285℃であった。
【0157】
電気技術用流体の回収
RBOプロセスから得られた再生可能なパラフィン分岐中間生成物は、蒸留によりデミスターナフサ、ナフサ、ディーゼル、電気技術用流体成分、および再生可能なベースオイル成分に分留された。280~400℃で蒸留カットしたものと280~350℃で蒸留カットしたものである、2つの異なる電気技術用流体成分が集められた。これらのカットは、その特性および電気技術用途への適合性の観点から評価された。
【0158】
2つの分留カットの特性を評価は、蒸留カットが電気技術用組成物としての使用に良好に適していることを示した。
【0159】
表4は、280~400℃または280~350℃で蒸留カットした、実施例3の2つの電気技術用組成物の物理的および化学的特性をまとめたものである。
【0160】
表5は、280~400℃で蒸留カットした組成物の炭素数分布をまとめたものであり、表6は、280~350℃で蒸留カットした組成物の炭素数分布をまとめたものである。
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
280~400℃での蒸留カットでは、全てのパラフィンの99.78wt-%がC15~C29の範囲にあった。例えば実施例1の電気技術用組成物、すなわちNRI-Aと比較した場合の改良点が、例えば、本発明による方法を使用した場合に得られる生成物のより高い異性化の程度について見ることができた(実施例1のNRI-Aではノルマルパラフィンが4.59%であったのに対し、本発明による280~400℃のカットではノルマルパラフィンが3.21%)。
【0165】
280~400℃および280~350℃での蒸留カットのいずれにおいても、製造方法においてケトン化が行われず、生成物のより高分子量の成分がC20で終わる実施例1の組成物と比較して、本発明による電気技術用組成物ではより高分子量の成分、すなわちC25~C29さえまで得られることが発見された。
【0166】
C15 n-パラフィンの量に対するC15 i-パラフィンの量の比は、組成物中のC15 i-パラフィンの重量およびC15 n-パラフィンの重量に基づいて3.8であった。C16 n-パラフィンの量に対するC16 i-パラフィンの量の比は、組成物中のC16 i-パラフィンの重量およびC16 n-パラフィンの重量に基づいて12.5であった。C17 n-パラフィンの量に対するC17 i-パラフィンの量の比は、組成物中のC17 i-パラフィンの重量およびC17 n-パラフィンの重量に基づいて29.0であった。C18 n-パラフィンの量に対するC18 i-パラフィンの量の比は、組成物中のC18 i-パラフィンの重量およびC18 n-パラフィンの重量に基づいて74.8であった。C19 n-パラフィンの量に対するC19 i-パラフィンの量の比は、組成物中のC19 i-パラフィンの重量およびC19 n-パラフィンの重量に基づいて92.8であった。C20 n-パラフィンの量に対するC20 i-パラフィンの量の比は、組成物中のC20 i-パラフィンの重量およびC20 n-パラフィンの重量に基づいて135.4であった。C21 n-パラフィンの量に対するC21 i-パラフィンの量の比率は、組成物中のC21 i-パラフィンの重量およびC21 n-パラフィンの重量に基づいて48.9であった。C22 n-パラフィンの量に対するC22 i-パラフィンの量の比は、組成物中のC22 i-パラフィンの重量とC22 n-パラフィンの重量に基づいて56.0であった。C23 n-パラフィンの量に対するC23 i-パラフィンの量の比は、組成物中のC23 i-パラフィンの重量およびC23 n-パラフィンの重量に基づいて42.3であった。C24 n-パラフィンの量に対するC24 i-パラフィンの量の比率は、組成物中のC24 i-パラフィンの重量およびC24 n-パラフィンの重量に基づいて68.7であった。
【0167】
280~350℃での蒸留では、全てのパラフィンの100wt%がC15~C29の範囲にあり、全てのパラフィンの99.92wt%がC15~C22の範囲にあった。C15 n-パラフィンの量に対するC15 i-パラフィンの量の比は、組成物中のC15 i-パラフィンの重量とC15 n-パラフィンの重量に基づいて3.8であった。C16 n-パラフィンの量に対するC16 i-パラフィンの量の比は、組成物中のC16 i-パラフィンの重量およびC16 n-パラフィンの重量に基づいて11.9であった。C17 n-パラフィンの量に対するC17 i-パラフィンの量の比は、組成物中のC17 i-パラフィンの重量およびC17 n-パラフィンの重量に基づいて23.3であった。C18 n-パラフィンの量に対するC18 i-パラフィンの量の比は、組成物中のC18 i-パラフィンの重量およびC18 n-パラフィンの重量に基づいて129.2であった。C19 n-パラフィンの量に対するC19 i-パラフィンの量の比は、組成物中のC19 i-パラフィンの重量およびC19 n-パラフィンの重量に基づいて53.4であった。C20 n-パラフィンの量に対するC20 i-パラフィンの量の比は、組成物中のC20 i-パラフィンの重量およびC20 n-パラフィンの重量に基づいて45.4であった。C21 n-パラフィンの量に対するC21 i-パラフィンの量の比は、組成物中のC21 i-パラフィンの重量およびC21 n-パラフィンの重量に基づいて65.3であった。C22 n-パラフィンの量に対するC22 i-パラフィンの量の比は、組成物中のC22 i-パラフィンの重量およびC22 n-パラフィンの重量に基づいて58.0であった。
【0168】
表から理解されるように、280~350℃および280~400℃で蒸留カットした留分は、変圧器油の性能の観点から評価され、良好な結果が得られた。両留分カットの結果は、規格要求に沿っているものであった。280~350℃の留分は、280~400℃の留分よりもより低い粘度、より低い曇点、およびより高い界面張力を有していた。
【0169】
280~350℃の留分の芳香族の含有量がUOP495に従って測定され、およびそれは組成物の総計の重量に基づいて0.001wt-%程度に低かった。このような低い量は、安全性および毒性の問題にとって有益であり、かつ、芳香族の含有量がより多い他の電気技術用組成物と比較して大きな利点である。さらに、ナフタレンの含有量が、UOP495に従って、280~350℃の留分について測定され、およびそれは、<0.001、すなわちナフタレンは発癌性物質であるため有益な低い値であった。
【0170】
当業者であれば、技術の進歩に伴い、本発明の発明概念を様々な方法で実施できることは明らかであろう。本発明およびその実施形態は、上述した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で変わり得る。
【国際調査報告】