(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】コンクリートを補強するためのガラス-樹脂複合材繊維の使用
(51)【国際特許分類】
C03C 25/1025 20180101AFI20231227BHJP
B29C 70/16 20060101ALI20231227BHJP
B29C 70/50 20060101ALI20231227BHJP
C03C 25/323 20180101ALI20231227BHJP
C04B 14/44 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C03C25/1025
B29C70/16
B29C70/50
C03C25/323
C04B14/44 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528700
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 FR2021052275
(87)【国際公開番号】W WO2022129746
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】プルゼネック ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ロース ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス ラファエル
【テーマコード(参考)】
4F205
4G060
【Fターム(参考)】
4F205AA36
4F205AA44
4F205AC05
4F205AD16
4F205AG14
4F205AM28
4F205AR08
4F205AR11
4F205HA06
4F205HA33
4F205HA37
4F205HB02
4F205HC02
4F205HC16
4F205HF30
4F205HK04
4F205HK05
4F205HM02
4G060BA00
4G060BA04
4G060BB01
4G060BC01
4G060BC02
4G060BD15
4G060BD22
4G060CB05
4G060CB23
4G060CB26
(57)【要約】
本発明は、架橋樹脂内に埋設されたガラスフィラメントを含むガラス-樹脂複合材モノフィラメントであって、5~85mmの範囲内の長さ、0.2~1.3mmの範囲の直径、及び2%未満の多孔度を有するモノフィラメント、複数のこれらのモノフィラメントを備えるバンドル、並びにコンクリートを補強するための、コンクリートの質量を低減するための、コンクリートの亀裂を低減するための、又はそれを防止するためのそれらの使用に関する。本発明はまた、これらのモノフィラメントを含むコンクリート、及びこれらのモノフィラメントを得るための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋樹脂内に埋設されたガラスフィラメントを含むガラス-樹脂複合材モノフィラメントであって、5~85mmの範囲内の長さ、0.2~1.3mmの範囲の直径、及び2%未満の多孔度を有することを特徴とするモノフィラメント。
【請求項2】
10~80mmに及ぶ範囲の長さを有する、請求項1に記載のモノフィラメント。
【請求項3】
0.25~1.25mm、好ましくは0.3~1.2mmに及ぶ範囲内の直径を有する、請求項1又は2に記載のモノフィラメント。
【請求項4】
10~110、好ましくは15~65、さらにより好ましくは20~60未満の範囲の長さ/直径比率を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のモノフィラメント。
【請求項5】
螺旋状に変形していない、請求項1~4のいずれか1項に記載のモノフィラメント。
【請求項6】
ガラスフィラメントが、モノフィラメントの65質量%~85質量%、好ましくは70質量%~80質量%を占め、架橋樹脂が、モノフィラメントの15質量%~35質量%、好ましくは20質量%~30質量%を占める、請求項1~5のいずれか1項に記載のモノフィラメント。
【請求項7】
架橋樹脂が、
- ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びそれらの混合物からなる群から選択される架橋性樹脂、
- 300nmを超えるUVに反応性の光開始剤を含む架橋系
をベースとする、請求項1~6のいずれか1項に記載のモノフィラメント。
【請求項8】
1%未満、好ましくは0.5%未満の多孔度を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載のモノフィラメント。
【請求項9】
1050MPa超、好ましくは1100MPa以上、より好ましくは1200MPa以上の破壊応力を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載のモノフィラメント。
【請求項10】
23℃で測定されるモノフィラメントのE
23で指定される初期引張弾性率が、35GPa超、好ましくは42GPa超である、請求項1~9のいずれか1項に記載のモノフィラメント。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の架橋樹脂内に埋設されたガラスフィラメントを含む複数のガラス-樹脂複合材モノフィラメントと、モノフィラメント同士を保持する少なくとも1つの破断可能なフィルムとを備えるバンドルであって、破断可能なフィルムは、好ましくは、ポリビニルアルコール(PVA)からなる群から選択される材料で作製された水溶性フィルムであるバンドル。
【請求項12】
モノフィラメントの数が、300~20000の範囲内である、請求項11に記載のバンドル。
【請求項13】
コンクリートを補強するための、及び/又はコンクリートの質量を低減するための、及び/又はコンクリートの亀裂を低減若しくはそれを防止するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の架橋樹脂内に埋設されたガラスフィラメントを含むガラス-樹脂複合材モノフィラメントの、又は請求項11若しくは12に記載のバンドルの使用。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか1項に記載の架橋樹脂内に埋設されたガラスフィラメントを含む複数のガラス-樹脂複合材モノフィラメントを含むコンクリートであって、コンクリート内のモノフィラメントの体積比率が、好ましくは0.1%~6%の範囲内であるコンクリート。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか1項に記載の架橋樹脂内に埋設されたガラスフィラメントを含むガラス-樹脂複合材モノフィラメントを製造するための方法であって、以下の連続するステップ:
- ガラスフィラメントの直線配置を形成し、この配置を供給方向に運搬するステップ、
- 真空チャンバ内で、真空の作用によりガラスフィラメントの配置を脱気するステップ、
- 脱気後、真空チャンバの出口で、前記ガラスフィラメントの配置に、「含浸樹脂」と呼ばれる液体状態の光硬化性又は熱硬化性樹脂組成物を含浸させるために、真空下で含浸チャンバに通過させ、ガラスフィラメント及び樹脂組成物を含有するプリプレグを得るステップ、
- 所定の面積及び形状の横断面を有するサイジングダイに前記プリプレグを通過させ、それをモノフィラメントの形態に押し通すステップ、
- ダイの下流において、UV照射チャンバ内で、UVの作用下で樹脂組成物を重合させるステップであって、照射チャンバは、照射管と呼ばれるUVを透過する管を備え、その管を通って形成されているモノフィラメントが循環し、またその管を通って不活性ガス流が流れ、照射チャンバ内のモノフィラメントの通過速度(V
irで指定される)は50m/分超であり、照射チャンバ内でのモノフィラメントの照射期間(D
irで指定される)は1.5秒以上であるステップ、
- フィラメントを寸断して、5~85mmの範囲に含まれる長さのモノフィラメントを得るステップ
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートを補強するためのガラス-樹脂複合材繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、その高い圧縮強度、耐久性、寿命及び復元力に起因して、ほぼ間違いなく今日最も広範に使用されている建築材料である。コンクリートは、その特性により、特に建築、道路、及び工学的構造物の分野において優れた材料となっている。
コンクリートは主に、結合剤、最も頻繁にはポルトランドセメントによって互いに保持された凝集体で構成される。コンクリートの特性を改善するために、超微粒子(例えばシリカフューム)、減水可塑剤とも呼ばれる流動化剤、又は金属、合成若しくは鉱物繊維等の添加剤を使用することが知られている。
コンクリートは極めて耐圧縮性であるが、引張強度が低く、引っ張られると亀裂の発生を伴うことが多い。この問題に対抗するために、補強繊維を使用することが既知の慣例である。その機械的特性に起因して、金属繊維がコンクリートの補強に特に有利である。したがってそれらは、より延性のあるコンクリートを作製し、亀裂に対するコンクリートの耐性を改善するために、極めて広範に使用されている。
しかしながら、機械的繊維は、腐食に敏感であるという欠点を有し、これはそのような繊維を含むコンクリートの寿命に有害となり得る。さらに、機械的繊維は、多くの場合7.7超の密度を有し、したがってより低い密度を有するコンクリート内に均一に分布しない(金属繊維は重力の影響下で沈降する傾向がある)。
この問題を解決するために、金属繊維を合成繊維で置き換えることが提案されている。しかしながら、これらの繊維の機械的強度(例えば、弾性(ヤング)率、引張強度)は、金属繊維ほど良好ではない。さらに、それらの使用温度(一般に100℃~160℃の間)は金属繊維の使用温度(約600℃~900℃の間)よりはるかに低く、これによってある特定の用途への合成繊維の使用が制限され得る。
したがって、コンクリートの耐用年数を改善するために腐食に対して耐性を有するとともに、亀裂に対する耐性を改善するために現在の非金属繊維と比較して改善された機械的特性を有する繊維を有することが、依然として有利である。
【0003】
その研究を進める中で、出願人は、予想外にも、架橋樹脂内に埋設されたガラスフィラメントを含む特定のガラス-樹脂複合材繊維を使用することにより、上述の問題を解決することができることを発見した。
出願人はまた、本発明による繊維によって得られる数々の利点を観察した。本発明による繊維は、特にコンクリートの様々な成分を混合する段階だけでなく(容易に分散可能)、コンクリートを乾燥させる段階においても、先行技術のコンクリート用の繊維と比較して実装が極めて容易である。本発明による繊維は、その密度がコンクリートの密度に近いため、コンクリート内に均一に分布したままである(コンクリートより密度の高い金属繊維のように沈降する傾向を有さず、またコンクリートより密度の低い合成繊維のように浮き上がる傾向を有さない)。本発明の繊維はまた、現在使用されている合成繊維よりもはるかに高い最大使用温度を有する。さらに、本発明による繊維は白色であるため、明るい色のコンクリートの美的外観に影響を与えることなく、本発明による繊維をこれらのコンクリートに使用することができる。最後に、より一般的には、本発明による繊維を使用することによって、その密度及びその補強能力のために、先行技術の他の繊維の使用と比較して同じレベルの補強に対してCO2の全体排出量を大幅に低減することができる。
【発明の概要】
【0004】
したがって、本発明は、架橋樹脂内に埋設されたガラスフィラメントを含むガラス-樹脂複合材モノフィラメントであって、5~85mmの範囲内の長さ、0.2~1.3mmの範囲の直径、及び2%未満の多孔度を有するモノフィラメントに関する。
本発明はまた、複数のこれらのモノフィラメントを備えるバンドル、コンクリートを補強するためのこれらのモノフィラメントの、又はこのバンドルの使用、これらのモノフィラメントを含むコンクリート、及びこれらのモノフィラメントを製造するための方法に関する。
【0005】
I-定義
本明細書において、別段に明示されない限り、示されるパーセンテージ(%)は全て質量パーセンテージ(%)である。
「~をベースとする組成物」という表現は、使用される様々な構成物質の混合物及び/又はその場反応の生成物を含む組成物を意味するものとして理解されるべきであり、これらの構成物質のいくつかは、組成物の様々な製造段階において互いに反応することができ、及び/又は反応することが意図され、したがって、組成物は、完全に若しくは部分的に架橋された状態で、又は非架橋状態で存在し得る。
さらに、「a~bの間」という表現により指定されるいかなる値の区間も、a超~b未満に及ぶ値の範囲を表し(つまり、境界値a及びbは除外される)、一方「a~b」という表現により指定されるいかなる値の区間も、a~bに及ぶ値の範囲を意味する(つまり、厳密な境界値a及びbを含む)。本明細書において、値の区間が「a~b」という表現により指定される場合、「a~bの間」という表現により表される区間も同様に、及び優先的に指定される。
本明細書に記載のガラス転移温度「Tg」に対する値は全て、標準ASTM D3418(1999)に従うDSC(示差走査熱量測定)によって既知の様式で測定される。
II-図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明によるモノフィラメントが所定の長さに寸断される前の、本発明によるモノフィラメントを合成するための方法を示す図である。
【
図2】理解を容易にするために縮尺通りに示されてはいないが、本発明によるモノフィラメントの横断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
III-発明の説明
したがって、本発明は、架橋樹脂内に埋設されたガラスフィラメントを含むガラス-樹脂複合材(「GFRP」と略される)で作製されたモノフィラメント(又は繊維、この2つの用語は等価的に使用され得る)であって、5~85mmの範囲内の長さ、0.2~1.3mmの範囲の直径、及び2%未満の多孔度を有することを特徴とするモノフィラメントに関する。
典型的には、ガラスフィラメントは、単一のマルチフィラメント繊維又は互いに関連したいくつかのマルチフィラメント繊維の形態で存在する。後者の場合、マルチフィラメント繊維は、好ましくは本質的に一方向性である。マルチフィラメント繊維はそれぞれ、数十、数百又はさらに数千もの個々のガラスフィラメントを含み得る。これらの非常に細かい個々のフィラメントは、一般に、及び好ましくは、5~30μm、より好ましくは10~20μmのオーダーの平均直径を有する。個々のフィラメントの横断面は、好ましくは円筒形である。本発明に関連して使用され得るガラス繊維の例として、Owens Corningによる「R25H」又は「SE1200」繊維を挙げることができる。
ここで、「樹脂」という用語は、非修飾形態の樹脂、及びこの樹脂をベースとし、少なくとも1種の添加剤(すなわち1種以上の添加剤)を含むあらゆる組成物を意味することが意図される。「架橋」樹脂という用語は、当然ながら、樹脂が硬化(光硬化及び/又は熱硬化)されていること、換言すれば、(「熱可塑性」ポリマーとは対照的に)「熱硬化性」ポリマーに特有の状態である三次元結合のネットワークの形態であることを意味することが意図される。
したがって、本発明によるGFRPモノフィラメントは、架橋後に硬質化した樹脂に埋設された、好ましくは本質的に互いに平行な複数の個々のガラスフィラメントを含む。
本発明によれば、GFRPモノフィラメントは、2%未満、好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満の多孔度を有する。有利には、GFRPモノフィラメントの多孔度は0%~2%の間、好ましくは0.01%~1%の間、好ましくは0.05%~0.5%の間である。
【0008】
多孔度は、顕微鏡法により、例えば走査型電子顕微鏡法により、好ましくはFIJIプログラム等の面積計算ソフトウェアを使用して測定され得る。測定を行うためには、好ましくは以下のプロトコルが実行される。
- 架橋GFRPモノフィラメントを得る。
- 例えば真空コーティングデバイス(例えばStuers社からのCito Vac)内で、例えばエポキシ型の低温コーティング樹脂でコーティングする。
- 例えばBaileigh社からの「SH-5214」等の液圧式裁断機を使用して、コーティングされたGFRPモノフィラメントを寸断する。
- 例えばMecapol社からの機械研磨機等を使用して、好ましくは0.25μmの最終粒度までGFRPモノフィラメントの横断面を研磨する。
- 例えばEloise社からの108又は208シリーズCressingtonコーター等の金スパッタコーターを使用して、1~4nmの金を適用する。
- GFRPモノフィラメントの横断面を、(15kV)走査型電子顕微鏡で、好ましくは真空下で観察する。
- 画像処理プログラム、例えばFIJIを使用して、多孔度の表面積パーセンテージを計算する。GFRPモノフィラメントの「多孔度」という用語は、GFRPモノフィラメント内に存在するあらゆる気体(特に空気)又は空隙を意味する。
【0009】
有利には、GFRPモノフィラメントは、1050MPa超、好ましくは1100MPa以上、より好ましくは1200MPa以上の破壊応力Crを有する。好ましくは、モノフィラメントは、1050~1600MPaの間、好ましくは1200~1500MPaの破壊応力を有する。
同様に、有利には、GFRPモノフィラメントは、23℃で測定される、35GPa超、好ましくは40GPa以上、好ましくは42GPa以上、好ましくは48GPa以上のヤング率とも呼ばれる初期引張弾性率(E23で指定される)を有する。
GFRPモノフィラメントの引張機械特性(弾性率E23、破壊応力Cr及び破断時伸びAr)はまた、コーティングされた(つまりすぐに使用できる)GFRPモノフィラメントに対して、標準ASTM D2343に従い、「INSTRON」タイプ5944引張試験機(引張試験機とともに供給されるBLUEHILL(登録商標)UNIVERSALソフトウェア)を使用して、既知の様式で測定され得る。測定の前に、これらのモノフィラメントは、事前の調整(欧州標準DIN EN20139(温度23±2℃、相対湿度50±5%)に従う標準雰囲気中での少なくとも24時間のモノフィラメントの保存)に供される。引張弾性率は、0.1%~0.6%のひずみの間での、ひずみの関数としての応力曲線の直線回帰により決定される。このひずみは、MultiXtens 1995DA801伸縮計により記録される。0.5MPaの試験前の前負荷下で、260mmの試験される検体を5m/分の公称速度で牽引に供する(基準長さ50mm、ジョーの間の距離:150mm)。示された結果は全て、10回測定の平均である。
【0010】
さらに、本発明によるGFRPモノフィラメントは、有利には、以下の特性を有する。
- 樹脂のガラス転移温度(Tgで指定される)は、180℃以上、好ましくは190℃以上である。
- 23℃で測定されるモノフィラメントの破断時伸び(Arで指定される)は、3.0%以上、好ましくは4.0%超である。
- 23℃で測定されるモノフィラメントの初期引張弾性率(E23で指定される)は、35GPa超、好ましくは42GPa超である。
- DMTA法により190℃で測定されるモノフィラメントの複素弾性率(E’190で指定される)の実部は、30GPa超である。
【0011】
Tgで指定される樹脂のガラス転移温度は、好ましくは190℃超、より好ましくは195℃超、特に200℃超である。これは、例えば第2の通過でDSC(示差走査熱量測定)により、また本出願において別段に指定されない限り1999年の標準ASTM D3418に従って、既知の手法で測定される(Mettler ToledoからのDSC装置「822-2」;窒素雰囲気;試料は、まず周囲温度(23℃)から250℃に昇温され(10℃/分)、次いで23℃~250℃のDSC曲線の最終記録の前に10℃/分の勾配で23℃に急冷される)。
【0012】
23℃で測定されるGFRPモノフィラメントのArで指定される破断時伸びは、好ましくは4.0%超、より好ましくは4.2%超、特に4.4%超である。
弾性率E’190は、好ましくは33GPa超、より好ましくは36GPa超である。
本発明のGFRPモノフィラメントの熱的特性と機械的特性との間の最適化された妥協点のためには、比率E’(Tg’-25)/E’23は、有利には0.85超、好ましくは0.90超であり、E’23及びE’(Tg’-25)は、それぞれ23℃及び(Tg’-25)に等しい℃で表される温度でDMTAにより測定されるモノフィラメントの複素弾性率の実部であり、Tg’という表現は、この場合DMTAにより測定されるガラス転移温度を表す。
さらにより有利には、比率E’(Tg’-10)/E’23は、0.80超、好ましくは0.85超であり、E’(Tg’-10)は、(Tg’-10)に等しい℃で表される温度でDMTAにより測定されるモノフィラメントの複素弾性率の実部である。
【0013】
E’及びTg’の測定は、曲げ、引張又はねじり試験を制御するために「Dynatest 6.83/2010」ソフトウェアを使用して、ACOEM(France)からの「DMA+ 450」粘度分析器を備えるDMTA(「動的機械熱分析」)により既知の手法で行われる。
このデバイスによると、三点曲げ試験では既知の手法で円形断面のモノフィラメントに対する初期幾何学的データを入力することができないため、長方形(又は正方形)断面の幾何構造のみが入力され得る。したがって、直径Dのモノフィラメントの弾性率E’の正確な測定値を得るためには、試験される被験体の同じ剛性Rに対応することができるように、ソフトウェアに同じ断面二次モーメントを有する辺の長さ「a」の正方形横断面を入力することが慣例である。
以下の周知の関係が当てはまらなければならない(Eは材料の弾性率であり、Isは問題となっている物体の断面二次モーメントであり、*は乗算記号である):
R=E複合材*I円形断面=E複合材*I正方形断面
式中、I円形断面=π*D4/64であり、I正方形断面=a4/12である。
【0014】
直径Dのモノフィラメントの(円形)断面の断面二次モーメントと同じ断面二次モーメントを有する等価の正方形の辺の長さ「a」の値は、そこから以下の等式に従って容易に導出される:
a=D*(π/6)0.25
試験される試料の横断面が円形(又は長方形)でない場合、その特定の形状に関係なく、同じ計算方法が適用され、試験される試料の横断面に対し断面二次モーメントIsが事前に決定される。
概して円形断面及び直径Dである試験される被験体は、35mmの長さを有する。これは、24mm離間した2つの支持体上に水平に配設される。2つの支持体の中間の被験体中央に、10Hzの振動数で0.1mmに等しい振幅の鉛直変位の形態で反復される曲げ応力が直角に加えられる(したがって非対称変形、被験体の内側は圧縮応力のみを受け、引張応力を受けない)。
【0015】
次いで、以下のプログラムが適用される:この動的応力下で、被験体は2℃/分の勾配で25℃から260℃に徐々に加熱される。試験の最後に、弾性率E’、粘性係数E’’及び損失角(δ)の測定値が温度の関数として得られる(E’は複素弾性率の実部であり、E”は虚部である);Tg’は最大(ピーク)tan(δ)に対応するガラス転移温度である。
有利には、曲げ圧縮における弾性ひずみは、3.0%超、より好ましくは3.5%超、特に4.0%超である。好ましい実施形態によれば、曲げ圧縮における破壊応力は、1050MPa超、より好ましくは1200MPa超、特に1400MPa超である。
上記の圧縮曲げ特性は、ループ試験と呼ばれる方法によって、欧州特許出願第1167080号に記載のようにGFRPモノフィラメントに対して測定される(D. Sinclair, J. App. Phys. 21, 380, 1950)。現在の場合では、ループが生成され、徐々にその破壊点に至らしめられる。断面の大きいサイズに起因して容易に観察可能である破壊の性質によって、破断するまで曲げ応力を受ける本発明のGFRPモノフィラメントが、材料が引っ張られる側で破断することを即座に理解することができ、これは簡単な観察により特定され得る。この場合、ループの寸法が大きいことを仮定すると、任意の時点でループに刻まれた円の半径を読み取ることが可能である。破壊点の直前の刻まれた円の半径は、Rcで指定される臨界曲率半径に対応する。
【0016】
次いで、以下の式によって、Ecで指定される臨界弾性ひずみを計算により決定することができる(式中、rは、モノフィラメントの半径、すなわちD/2に対応する):
Ec=r/(Rc+r)
σcで指定される曲げにおける圧縮破壊応力は、以下の式を用いて計算により得られる(式中、Eは、初期引張弾性率である):
σc=Ec*E
本発明によるGFRPモノフィラメントの場合、ループは引張部分において破断するため、曲げにおいて、圧縮での破壊応力は引張での破壊応力より大きいと結論付けることができる。
三点法(ASTM D 790)と呼ばれる方法による長方形バーの曲げにおける破壊もまた行うことができる。この方法でもまた、破壊の性質が確かに引張において生じるものであることを視覚的に検証することができる。
有利には、純粋な圧縮における破壊応力は、700MPa超、より好ましくは900MPa超、特に1100MPa超である。圧縮下でのGFRPモノフィラメントの座屈を回避するために、Thompsonらによる出版物「Critical compressive stress for continuous fiber unidirectional composites」、Journal of Composite Materials, 46(26), 3231-3245に記載の方法に従ってこの大きさが測定される。
【0017】
好ましくは、本発明のGFRPモノフィラメントでは、ガラスフィラメントの整列度は、フィラメントの85%(数による%)超がモノフィラメントの軸に対し2.0度未満の、より好ましくは1.5度未満の傾角を有するような整列度であり、この傾角(又は不整合)は、Thompsonらによる上記出版物に記載されるように測定される。また、好ましいものとして、本発明によるGFRPモノフィラメントは螺旋状に変形しておらず、すなわちねじれていない。いずれにしても、GFRPモノフィラメントは、5未満、好ましくは2未満、好ましくは0.5未満、好ましくは0~0.5の1メートル当たりの巻き数を有する。
好ましくは、GFRPモノフィラメント中のガラス繊維(すなわちフィラメント)質量含有量は、65%~85%、好ましくは70%~80%に及ぶ範囲である。
この質量含有量は、最終GFRPモノフィラメントのカウントに対する初期ガラス繊維のカウントの比率を使用して計算される。番手(又は線密度)は、それぞれ50mの長さに対応する少なくとも3つの試料に対して、この長さを秤量することにより決定され、番手は、テックス(1000mの製品のグラム質量、0.111テックスは1デニールに等しいことに留意されたい)で与えられる。
さらに、架橋樹脂は、本発明のGFRPモノフィラメントの15質量%~35質量%、好ましくは20質量%~30質量%を占める。
好ましくは、GFRPモノフィラメントの密度(又はg/cm3での単位体積当たりの質量)は、1.8~2.1の間である。これは、「PG503 DeltaRange」型のMettler Toledoからの特殊な秤を用いて(23℃で)測定され、数cmの試料が空気中で連続的に秤量されてエタノールに浸漬され、次いで装置のソフトウェアが3回の測定に対して平均密度を決定する。
【0018】
本発明のGFRPモノフィラメントの直径Dは、好ましくは0.25~1.25mmに及ぶ範囲、より好ましくは0.3~1.2mmの間、特に0.4~1.1mmの間である。
この定義は、本質的に円筒形状のモノフィラメント(円形横断面を有する)及び他の形状のモノフィラメント、例えば楕円形モノフィラメント(多かれ少なかれ扁平な形状を有する)、又は長方形横断面のモノフィラメントを等しくカバーする。非円形断面の場合、及び別段に具体的に指定されない限り、慣例により、Dはクリアランス直径として知られる直径、すなわちモノフィラメントを取り囲む想像上の回転の円筒の直径、換言すればその横断面を取り囲む外接円の直径である。
さらに、本発明のGFRPモノフィラメントの長さLは、好ましくは、10~80mm、例えば15~60mmの範囲内である。
有利には、本発明のGFRPモノフィラメントの長さ/直径比率L/Dは、10~110、例えば11~90、例えば12~75、好ましくは15~65、好ましくは20~60未満の範囲内である。
使用される樹脂は、定義上、あらゆる既知の方法により、特に、好ましくは少なくとも300nm~450nmの範囲のスペクトル内で発光するUV(又はUV-可視)放射により架橋、硬化され得る、架橋性(すなわち硬化性)樹脂である。
有利には、架橋樹脂は以下をベースとする。
- ビニルエステル樹脂(好ましくはウレタンビニルエステル樹脂)、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びそれらの混合物からなる群から選択される架橋性樹脂、
- 300nmを超えるUVに反応性の光開始剤を好ましくは含む架橋系。
本明細書において、「超える」という表現は、「~超」を意味すると理解される。
「樹脂組成物」が言及される場合、これは、樹脂が作製される、つまり架橋前の組成物を指す。
【0019】
架橋性樹脂として、好ましくはポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂、より好ましくはビニルエステル樹脂が使用される。「ポリエステル」樹脂は、知られているように、不飽和ポリエステル型の樹脂を意味すると理解される。ビニルエステル樹脂に関しては、それらは複合材料の分野において周知である。
この定義に限定されることなく、ビニルエステル樹脂は、好ましくはエポキシビニルエステル型の樹脂である。より好ましくは、ビニルエステル樹脂、特にエポキシ型の樹脂が使用され、これは少なくとも部分的にノボラック(フェノプラストとしても知られる)及び/又はビスフェノールをベースとし(すなわち、この型の構造にグラフトされ)、すなわち、好ましくは、ノボラック、ビスフェノール、又はノボラック及びビスフェノールをベースとするビニルエステル樹脂である。
【0020】
好ましくは、23℃で測定される樹脂の初期引張弾性率は、3.0GPa超、より好ましくは3.5GPa超である。
ノボラック(以下の式I中の角括弧内の部分)をベースとするエポキシビニルエステル樹脂は、例えば、知られているように、以下の式(I)に対応する。
【化1】
(I)
【0021】
ビスフェノールA(以下の式(II)中の角括弧内の部分)(「A」は、生成物がアセトンを使用して製造されたことに留意するためのものとして機能する)をベースとするエポキシビニルエステル樹脂は、例えば、以下の式に対応する。
【化2】
(II)
【0022】
ノボラック及びビスフェノール型のエポキシビニルエステル樹脂は、優れた結果を示している。そのような樹脂の例として、特に、上述の欧州特許出願公開第1074369号及び同1174250号に記載の、AOC社からのビニルエステル樹脂「ATLAC 590」及び「ATLAC E-Nova FW 2045」(約40%のスチレンで希釈)を挙げることができる。エポキシビニルエステル樹脂は、他の製造業者、例えばAOC(USA-「VIPEL」樹脂)から入手可能である。
含浸樹脂(樹脂組成物)用の架橋系は、好ましくは、300nmを超える、好ましくは300~450nmの間のUV放射に感受性(反応性)の光開始剤を含む。この光開始剤は、0.5%~3%の好ましい含有量で、より好ましくは1%~2.5%の含有量で使用される。好ましくは、樹脂架橋系はまた、例えば5%~15%(含浸組成物の質量%)の間の含有量の架橋剤を含み、架橋剤は、上で定義された通りである。
【0023】
好ましくは、この光開始剤は、ホスフィン化合物のファミリーのもの、より好ましくはビス(アシル)ホスフィンオキシド、例えばビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(例えばIGMからの「Omnirad 819」若しくはLambsonからの「speedcure BPO」)、又はモノ(アシル)ホスフィンオキシド(例えばIGMからの「Esacure TPO」)等であり、そのようなホスフィン化合物は、他の光開始剤、例えばアルファ-ヒドロキシケトン型の光開始剤、例えばジメチルヒドロキシアセトフェノン(例えばIGMからの「Omnirad 1173」)若しくは1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えばIGMからの「Omnirad 1173」)等、ベンゾフェノン、例えば2,4,6-トリメチルベンゾフェノン(例えばIGMからの「Esacure TZT」)、及び/又はチオキサントン誘導体、例えばイソプロピルチオキサントン(例えばIGMからの「Esacure Omnirad ITX」)等との混合物として使用され得る。
架橋剤は、好ましくは、トリアクリレートのファミリーからなる群から選択される。
GFRPモノフィラメントは、出願WO2015/014579に記載の方法に続いて、モノフィラメントを所望の長さに寸断するステップに従って調製され得る。
【0024】
したがって、本発明はまた、架橋樹脂内に埋設されたガラスフィラメントを含むガラス-樹脂複合材モノフィラメントを製造するための方法であって、以下の連続するステップ:
- ガラス繊維(フィラメント)の直線配置を形成し、この配置を供給方向に運搬するステップ;
- 真空チャンバ内で、真空の作用によりガラスフィラメントの配置を脱気するステップ;
- 脱気後、真空チャンバの出口で、前記ガラスフィラメントの配置に、「含浸樹脂」と呼ばれる液体状態の光硬化性樹脂組成物を含浸させるために、真空下で含浸チャンバに通過させ、ガラスフィラメント及び樹脂組成物を含有するプリプレグを得るステップ;
- 所定の面積及び形状の横断面を有するサイジングダイに前記プリプレグを通過させ、それをモノフィラメント(例えば丸い横断面を有するモノフィラメント又は長方形横断面を有するストリップ)の形態に押し通すステップ;
- ダイの下流において、UV照射チャンバ内で、UV線の作用下で樹脂を重合させるステップ;
- フィラメントを寸断して、5~85mmの範囲に含まれる長さのモノフィラメントを得るステップ
を含む方法に関する。
【0025】
有利には、重合は、照射管と呼ばれるUVを透過する管を備える照射チャンバ内で行われ、その管を通って形成されているモノフィラメントが循環し、またその管を通って不活性ガス流が流れ、照射チャンバ内のモノフィラメントの通過速度(Virで指定される)は50m/分超であり、照射チャンバ内でのモノフィラメントの照射期間(Dirで指定される)は1.5秒以上である。
方法は、当然ながら、モノフィラメントがUV照射チャンバを通過した後、及びそれが寸断される前に、モノフィラメントを保管するために巻き取るステップを含み得る。
本発明の方法の上記ステップ(配設、脱気、含浸、サイジング、重合、該当する場合は巻取り、及び寸断)は全て当業者に知られているステップであり、使用される材料(マルチフィラメント繊維及び樹脂組成物)も同様に知られている。それらは、例えば、上述の2つの欧州特許出願公開第1074369号及び同1174250号のいずれか又は両方に記載されている。
【0026】
特に、繊維のいかなる含浸の前にも、特にその後の含浸の有効性を増大させるために、そして何よりも完成した複合材モノフィラメント内にいかなる気泡も存在しないことを保証するために、真空の作用により繊維の配設を脱気する必須のステップが行われなければならないことが留意される。
真空チャンバを通過した後、ガラスフィラメントは、含浸樹脂で完全に満たされた、したがって空気を含まない含浸チャンバに入り、このようにして、この含浸ステップは「真空下での含浸」として定義され得る。
「サイジング」ダイとして知られるダイは、概して、及び好ましくは円形又は長方形の所定の寸法の横断面を有することにより、ガラス繊維に対する樹脂の割合を調節すると同時に、モノフィラメントに必要な形状及び厚さをプリプレグに付与することを可能にする。
次いで、重合又はUV照射チャンバは、UV線の作用下で樹脂を重合及び架橋させる機能を有する。UV照射チャンバは、1つ又は好ましくはいくつかのUV照射器を備え、これらはそれぞれ例えば200~600nmの波長のUVランプで構成される。
【0027】
UV照射チャンバにより形成され、樹脂が固体状態となった完成したGFRPモノフィラメントは、次いで例えば巻上げスプールに回収され、それには極めて長いGFRPモノフィラメントが巻き取られ得る。
サイジングダイと最終巻上げ支持体との間には、適度なレベルでガラス繊維が供される張力、好ましくは0.2~2.0cN/テックスの間、より好ましくは0.3~1.5cN/テックスの間の張力が保持されることが好ましく、これを制御するためには、例えば、当業者に周知の好適な張力計を用いて、照射チャンバの出口で直接これらの張力を測定することが可能であろう。
特に有利には、本発明のGFRPモノフィラメントを製造するための方法は、以下の必須のステップを含む。
- 照射チャンバを通るモノフィラメントの通過速度(Vir)は、50m/分超であり、
- 照射チャンバを通るモノフィラメントの通過期間(Dir)は、1.5秒以上10秒以下であり、
- 照射チャンバは、照射管と呼ばれるUVを透過する管(例えば石英管又は好ましくはガラス管)を備え、その管を通って形成されているモノフィラメントが循環し、この管を通って不活性ガス、好ましくは窒素のストリームが流れている。
これらのステップを組み合わせて、本発明のGFRPモノフィラメントの改善された特性、つまり、特に改善されたTg、伸びAr並びに弾性率(E及びE’)の特性を達成することが可能となる。
【0028】
特に、照射管内の窒素等の中性ガスによる掃気の非存在下では、製造過程でGFRPモノフィラメントの上記特性が極めて急速に悪化し、したがって工業的性能がもはや保証されなかったことが観察されている。
さらに、照射チャンバ内でのモノフィラメントの照射期間D
irが短すぎる場合(1.5秒未満)、数々の試験において、Tg値が190℃未満で不十分であるか、又はAr値が4.0%未満で低すぎるという結果となった(50m/分超の異なる速度V
irで行われた試験についての以下の表中の結果を参照されたい)。さらに、照射チャンバ内のモノフィラメントの照射期間D
irが長すぎる場合(例えば10秒超)、樹脂を沸騰させ、したがってより高い多孔度をもたらし、破壊応力を含む機械的特性を劣化させるリスクが増加する。
したがって、2%未満の多孔度を有するGFRPモノフィラメントが得られるのは、本発明による方法のステップの組合せのおかげである、特に真空チャンバ内で真空の作用によりガラスフィラメントの配設を脱気するステップ、並びに上述の速度V
ir及び上述の照射期間D
irでの不活性ガスのストリームが通過する照射管における重合のステップのおかげであることが理解される。
【表1】
【0029】
また、高い照射速度Vir(50m/分超、好ましくは50~150m/分の間)が、一方ではGFRPモノフィラメント内のガラスフィラメントの優れた整列度に、また他方では含浸樹脂のある特定のフラクションが含浸チャンバから真空チャンバに向かって逆流するリスクを大幅に低減しながら真空チャンバ内の真空をより良好に保持するのに有利であり、したがって含浸のより良好な品質に有利であることが観察された。
照射管(好ましくはガラス製)の直径は、好ましくは10~80mmの間、より好ましくは20~60mmの間である。
好ましくは、速度Virは、50~150m/分の間、より好ましくは60~120m/分の範囲である。
好ましくは、照射期間Dirは、1.5~10秒の間、より好ましくは2~5秒の範囲である。
有利には、照射チャンバは、照射管の周りに一列に配設された複数の、すなわち少なくとも2つ(2つ以上)のUV照射器(又は放射器)を備える。各UV照射器は、典型的には1つ(少なくとも1つ)のUVランプ(好ましくは200~600nmのスペクトル内で発光する)、及びその焦点が照射管の中心であるパラボラ反射器を備え、これは好ましくは1メートル当たり2000~14000ワットの間の線出力密度を提供する。さらにより好ましくは、照射チャンバは、一列の少なくとも3つ、特に少なくとも4つのUV照射器を備える。
さらにより好ましくは、各UV照射器により提供される線出力密度は、1メートル当たり2500~12000ワットの間、特に1メートル当たり3000~10000ワットの範囲である。
【0030】
本発明の方法に好適なUV放射器は当業者に周知であり、例えば、「UVAPRINT」ランプ(鉄ドープ高圧水銀ランプ)を備えた、Dr. Honle AG社(ドイツ)により「1055 LCP AM UK」の呼び名で販売されているものである。この種類の各放射器の公称(最大)出力は約13000ワットに等しく、出力は、実際にはポテンショメータにより公称出力の30%~100%の間で調整され得る。
好ましくは、含浸チャンバ内の樹脂(樹脂組成物)の温度は、50℃~95℃の間、より好ましくは60℃~90℃の間である。
別の好ましい実施形態によれば、照射の条件は、含浸チャンバの出口でのGFRPモノフィラメントの温度が架橋樹脂のTgより高くなるように、より好ましくはこの温度が架橋樹脂のTgより高く270℃未満であるように調整される。
本発明の別の主題は、上述の方法により得ることができるGFRPモノフィラメント、特に以下の連続するステップ:
- ガラス繊維(フィラメント)の直線配置を形成し、この配置を供給方向に運搬するステップ;
- 真空チャンバ内で、真空の作用によりガラスフィラメントの配置を脱気するステップ;
- 脱気後、真空チャンバの出口で、前記ガラスフィラメントの配置に、「含浸樹脂」と呼ばれる液体状態の光硬化性樹脂組成物を含浸させるために、真空下で含浸チャンバに通過させ、ガラスフィラメント及び樹脂組成物を含有するプリプレグを得るステップ;
- 所定の面積及び形状の横断面を有するサイジングダイに前記プリプレグを通過させ、それをモノフィラメント(例えば丸い横断面を有するモノフィラメント又は長方形横断面を有するストリップ)の形態に押し通すステップ;
- ダイの下流において、UV照射チャンバ内で、UV線の作用下で樹脂を重合させるステップ;
- フィラメントを寸断して、5~85mmの範囲に含まれる長さのモノフィラメントを得るステップ
を含む方法により得ることができるGFRPモノフィラメントであり、
好ましくは、
- 照射チャンバを通るモノフィラメントの通過速度(Vir)は、50m/分超であり;
- 照射チャンバを通るモノフィラメントの通過期間(Dir)は、1.5秒以上10秒以下であり;
- 照射チャンバは、照射管と呼ばれるUVを透過する管(例えば石英管又は好ましくはガラス管)を備え、その管を通って形成されているモノフィラメントが循環し、この管を通って不活性ガス、好ましくは窒素のストリームが流れており;
- GFRPモノフィラメントは、好ましくは0.2mm~1.3mmの範囲の直径を有する。
【0031】
本発明によるGFRPモノフィラメントの製造及び空気入りタイヤケーシングにおける補強材としてのその使用の例を、以降で説明する。
添付の
図1は、本発明によるGFRPモノフィラメントの生成を可能にするデバイス10の例を、極めて単純な様式で摸式図的に示している。
この図では、示された例において、ガラス繊維11b(マルチフィラメントの形態)を含むリール11aが確認され得る。リールは、これらの繊維11bの直線配置12を生成するように、駆動することにより連続的に引き出される。一般に、補強繊維は「粗紡」として、つまりすでにリール上に平行に巻き取られた繊維群として供給され、例えば、Owens Corningにより「Advantex」という繊維名で販売されている、1200テックス(1テックス=1g/1000m繊維であることに留意されたい)に等しいカウントの繊維が使用される。例えば、繊維を平行に前進させ、またGFRPモノフィラメントを設備1の全長に沿って前進させられるのは、回転レシーバ26により印加される牽引力である。
【0032】
次いで、この配置12は、入口配管13aと含浸チャンバ14に向けて開いている出口配管13bとの間に配設された真空チャンバ13(図示されていない真空ポンプに接続されている)を通過し、この2つの配管は、好ましくは、例えば繊維の総断面積より大きい(典型的には2倍の大きさの)最小断面積、及び前記最小断面積よりはるかに大きい(典型的には50倍大きい)長さを有する剛性壁を有する。
上述の欧州特許出願公開第1174250号によりすでに教示されているように、真空チャンバへの入口開口、及び真空チャンバの出口開口の両方に剛性壁を有する配管を使用すること並びに真空チャンバから含浸チャンバへの移送は、同時に繊維を破壊することなく開口部を通して高速で繊維を通過させるのに適合することが明らかであり、また十分なシーリングを確実にすることができる。実験的に必要であれば、要求されるのは、繊維の進行速度及び配管の長さを考慮して十分なシーリングが達成されるのを依然として可能にする、取り扱われる繊維の総断面積を考慮して最大の通過断面積を見出すことだけである。典型的には、チャンバ13内の真空は、例えば0.1バールのオーダーであり、真空チャンバの長さは約1メートルである。
【0033】
真空チャンバ13及び出口配管13bから出たら、繊維11bの配置12は、ビニルエステル型の硬化性樹脂(例えばAOCからの「ALTAC(登録商標)E-Nova FW 2045」)をベースとする含浸組成物17で完全に満たされた、供給タンク15(図示されていない定量ポンプに接続されている)及びシールされた含浸タンク16を備える含浸チャンバ14を通過する。例として、組成物17はまた、UV及び/又はUV-可視放射に好適な光開始剤、例えばビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IGM社からの「Omnirad 819」)を(1%~2%の質量含有量で)含み、その後組成物はそれで処理される。組成物はまた、(例えば約5%~15%の)架橋剤、例えばトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(Sartomer社からの「SR368」)等を含んでもよい。言うまでもなく、含浸組成物17は液体状態である。
好ましくは、含浸チャンバは、数メートルの長さ、例えば2~10mの間、特に3~5mの間の長さである。
したがって、例えば(質量%で)65%~75%の固体繊維11bを含み、残り(25%~35%)が液体含浸マトリックス17で形成されるプリプレグが、含浸チャンバ14を出て、シールされた出口配管18(依然として低真空下)に入る。
【0034】
次いで、プリプレグは、少なくとも1つのサイジングダイ20を含むサイジング手段19を通過するが、例えば円形、長方形又はさらには円錐形状のその通路(ここでは図示せず)が、特定の実装条件に適している。例として、この通路は、円形形状の最小断面積を有し、その下流側オリフィスは、標的モノフィラメントの直径より若干大きい直径を有する。前記ダイは、最小断面積の最小寸法より典型的には少なくとも100倍大きい長さを有する。その目的は、完成した製品に良好な寸法精度を与えることであり、またこれは、樹脂に対する繊維の含有量を測定するのに役立ち得る。実施形態の1つの可能な代替形態によれば、ダイ20は直接含浸チャンバ14内に組み込まれてもよく、それにより、例えば出口配管18を使用する必要性が回避される。
【0035】
優先的には、サイジングゾーンは、数センチメートルの長さ、例えば5~50cmの間、特に5~20cmの間の長さである。
サイジング手段(19、20)により、「液体」複合材モノフィラメント21(含浸樹脂がまだ液体であるという点で液体)が得られ、その横断面形状は好ましくは本質的に円形である。
サイジング手段(19、20)の出口において、このようにして得られた液体複合材モノフィラメント21は、次いで、複合材モノフィラメントがそれを通って循環するシールされたガラス管(23)を備えるUV照射チャンバ(22)を通過することにより重合され、直径が典型的には数センチメートル(例えば2~3cm)である前記管は、ガラス管から短距離(数センチメートル)離して配設された一列の複数の(ここでは例えば4つの)UV照射器(24)(Dr. Honleからの「UVAprint」ランプ、200~600nmの波長を有する)により照射される。
【0036】
好ましくは、照射チャンバは、数メートルの長さ、例えば2~15mの間、特に3~10mの間の長さである。
この例における照射管(23)は、それを通って流れる窒素のストリームを有する。
照射条件は、好ましくは、含浸チャンバの出口において、(例えば熱電対を用いて)その表面で測定されるGFRPモノフィラメントの温度が架橋樹脂のTgより高く(換言すれば190℃より高く)、より好ましくは270℃未満となるように調節される。
樹脂が重合(硬化)したら、ここでは固体状態で矢印Fの方向に輸送されるGFRPモノフィラメント(25)は、次いで最終巻上げリール(26)に到達する。
最後に、完成した製造された複合材ブロックが、
図2に極めて単純に描かれるように、連続した極めて長いGFRPモノフィラメント(25)の形態で得られ、その個々のガラスフィラメント(251)は、硬化樹脂(252)の体積にわたって均一に分布している。その直径は、例えば約1mmに等しい。
上述の動作条件のために、本発明の方法は、50m/分超、好ましくは50~150m/分の間、より好ましくは60~120m/分の範囲の高い速度で行われ得る。
【0037】
連続したGFRPモノフィラメント(25)は、当業者に知られたあらゆる手段により、例えばBaileighからの「SH-5214」等の液圧式裁断機を使用して、所定の長さ(
図1には示さず)、例えば45mmに寸断され得る。このステップは、照射チャンバ(23)からの出口点で直接行われてもよい。これはまた、最終巻上げリール(26)上にパッケージされた後に行われてもよい。その場合、モノフィラメントを螺旋状に変形させることを回避するために、リールの外側に向かって軸方向に最も離れたモノフィラメントの端部から、モノフィラメントをリールから引き出すことが好ましい。確かに、リールの内側に向かって軸方向に最も離れたモノフィラメントの端部から、モノフィラメントをリールから引き出す場合、これによってモノフィラメントが螺旋状に変形し、これは破壊応力に有害となり得る。
本発明はまた、複数の本発明によるGFRPモノフィラメントと、モノフィラメント同士を保持する少なくとも1つの要素とを備えるバンドルに関する。好ましくは、この保持要素は、破断可能なフィルム、例えば引裂き可能で分散可能な水溶性フィルムである。好ましくは、少なくとも1つの保持要素は、水溶性の糸である。
【0038】
有利には、保持要素は、水溶性フィルム、好ましくは、ポリビニルアルコール(PVA)又はあらゆる水溶性若しくはバイオプラスチックポリマー、例えばミルクカゼインから得られたバイオプラスチックからなる群から選択される材料で作製される水溶性フィルムである。好ましくは、少なくとも1つの水溶性フィルムは、ポリビニルアルコールからなる群から選択される材料で作製される。
本発明によるバンドルは、有利には、300~20000個の範囲に含まれる数のモノフィラメントを含む。
【0039】
バンドルを構成するモノフィラメントは、同一又は異なる寸法であってもよい。例えば、バンドルは、異なる長さ、直径及び/又は長さ対直径比率のモノフィラメントを含んでもよい。有利には、バンドルは、互いに10%を超えて異ならない、好ましくは3%以内だけ異なる長さ及び直径を有する、本発明によるモノフィラメントを含む。
以前に示したように、本発明によるモノフィラメントは、コンクリート用の添加剤として特に有用である。したがって、本発明はまた、コンクリートを補強するための、及び/又はコンクリートの質量を低減するための、及び/又はコンクリートの亀裂を低減若しくはそれを防止するための、本発明によるGFRPモノフィラメント又は本発明によるバンドルの使用に関する。
本発明の別の主題はまた、複数の本発明によるGFRPモノフィラメントを含むコンクリートである。コンクリートは、当業者に周知のあらゆる技術によって調製され得る。
有利には、本発明によるコンクリート中の本発明によるモノフィラメントの体積含有量は、「従来型」と呼ばれるコンクリート、例えばBPS C40/50 XA3型の特定の特性を有するコンクリートの場合0.1%~6%、例えば0.1%~1.5%の範囲に含まれ、又は超高性能繊維補強コンクリート(UHPFRC)の場合1.5%~6%の範囲に含まれる。
【実施例】
【0040】
IV-実施例
IV-1 使用された測定及び試験
以下のプロトコルに従って多孔度を測定した。
- 架橋GFRPモノフィラメントを得た。
- 真空コーティングデバイス(Stuers社からのCito Vac)内で、エポキシ型の低温コーティング樹脂でコーティングした。
- 液圧式裁断機(Baileigh社からのSH-5214)を使用して、コーティングされたGFRPモノフィラメントを寸断した。
- Mecapol社からの機械研磨機を使用して、0.25μmの最終粒度までGFRPモノフィラメントの横断面を研磨した。
- 金スパッタコーター(Eloise社からのシリーズ-108又は-208 Cressingtonコーター)を使用して、1~4nmの金を適用した。
- GFRPモノフィラメントの横断面を、(15kV)走査型電子顕微鏡で、真空下で観察した。
- 画像処理プログラム、例えばFIJIを使用して、多孔度の表面パーセンテージを計算した(%多孔度=多孔度の面積/(多孔度の面積+繊維の面積+架橋樹脂の面積)。
【0041】
GFRPモノフィラメントの引張機械特性(弾性率E23、破壊応力Cr及び破断時伸びAr)を、コーティングされた(つまりすぐに使用できる)GFRPモノフィラメントに対して、23℃の温度で、標準ASTM D2343に従い、「INSTRON」タイプ5944引張試験機(引張試験機とともに供給されるBLUEHILL(登録商標)UNIVERSALソフトウェア)を使用して測定した。引張試験機のジョーに試料を把持させる際のガラス補強材に対する損傷を防止するために、エンドピース(材料:ボール紙、長さ50mm;使用した接着剤:Loctite EA 9483(二液型エポキシ))を以下のように取り付けた。可能な限りあらゆる「乾燥ゾーン」(接着剤を有さないゾーン)を制限するために、2つの対向するエンドピースの表面に接着剤をコーティングし、同様に補強材にもコーティングした。被験体の寸法を有するジグ内でエンドピースを硬化時間(23℃で12時間)の間所定位置に保持し、良好なビード/補強材の接触を確実にするためにエンドピースに重しを置いた。測定の前に、これらのモノフィラメントを、事前の調整(欧州標準DIN EN20139(温度23±2℃;相対湿度50±5%)に従う標準雰囲気中での少なくとも24時間のモノフィラメントの保存)に供した。引張弾性率を、0.1%~0.6%のひずみの間での、ひずみの関数としての応力曲線の直線回帰により決定した。このひずみは、伸縮計MultiXtens 1995DA801により記録された。0.5MPaの試験前の前負荷下で、260mmの試験される検体を5m/分の公称速度で牽引に供した(基準長さ50mm、ジョーの間の距離:150mm)。示された結果は全て、10回測定の平均である。
【0042】
IV-2 モノフィラメントに対する試験
GFRPモノフィラメント(M1~M4)を、70/30のガラス/樹脂の質量パーセンテージで、以前に説明した方法に従い製造した。使用した樹脂組成物は、ビニルエステル樹脂(会社からの「ATLAC E-NOVA FW2045」)、トリアクリレート硬質化剤(Sartomer社からの「SR368」)及び光開始剤(IGM社からの「Omnirad 819」)をベースとしていた。モノフィラメントM1及びM2のガラス繊維は、Owens Corning社からの「R25H」繊維であり、モノフィラメントM3及びM4のガラス繊維は、Owens Corning社からの「SE1200」繊維であった。モノフィラメントの直径及びテックス、並びにそれらの物理的特性及び機械的特性を、以下の表2に示す。
【表2】
【0043】
これらのモノフィラメントの多孔度及び破壊応力を、先行技術のコンクリート用補強繊維と比較した。先行技術のこれらの繊維は、系統的に、2%超の多孔度及び1050MPa以下の破壊応力を有することが観察された。
本発明のモノフィラメントは、その低い多孔度及び高い破壊応力のために、コンクリートの亀裂に対する耐性を改善することを可能にする。
したがって、本発明によるモノフィラメントは、特に機械的強度、腐食耐性、加工性(特に混合中の分散性、加工温度及びコンクリートの乾燥中の均一性の維持)の間の性能の妥協点を提供することが判明した。
【国際調査報告】