IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェの特許一覧

特表2024-500620受動無線コイルベースマーカーおよび追跡システム
<>
  • 特表-受動無線コイルベースマーカーおよび追跡システム 図1A
  • 特表-受動無線コイルベースマーカーおよび追跡システム 図1B
  • 特表-受動無線コイルベースマーカーおよび追跡システム 図2A
  • 特表-受動無線コイルベースマーカーおよび追跡システム 図2B
  • 特表-受動無線コイルベースマーカーおよび追跡システム 図2C
  • 特表-受動無線コイルベースマーカーおよび追跡システム 図3
  • 特表-受動無線コイルベースマーカーおよび追跡システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】受動無線コイルベースマーカーおよび追跡システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/20 20160101AFI20231227BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
A61B34/20
G01B7/00 103M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528712
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2021086146
(87)【国際公開番号】W WO2022129310
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】20215374.8
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【弁理士】
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】グライヒ ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ラーマー ユルゲン アーウィン
(72)【発明者】
【氏名】シマール インゴ
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン ティム
(72)【発明者】
【氏名】モーセル リチャード
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA04
2F063CA09
2F063DA01
2F063DA05
2F063DC08
2F063GA00
(57)【要約】
追跡されるべき無線受動マーカー装置1と、圧電特性を有する共振器素子11及びコイル素子13を含む検知ユニット10を利用するそれぞれの追跡システム3とが提供され、特定の周波数を有する外部印加励起場が検知ユニット10に作用するように印加され、検知ユニット10は共振モードで持続する機械的振動を行う共振器素子11によって外部印加励起場に応答し、持続する機械的振動は、追跡システム3によって検出されることができ、マーカー装置1の位置を決定するために及び/又はマーカー装置1の周囲環境内の物理的特性を検知するために使用される磁場をコイル素子13に生成させる圧電電圧をもたらす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電特性を有する共振器素子およびコイル素子を備える検知ユニットを有し、
前記コイル素子は、外部からの磁気的または電磁的な励起場に応答して出力電圧を前記共振器素子に提供するように構成され、
前記共振器素子は、前記出力電圧を共振モードでのそれぞれの機械的振動に変換して、圧電電圧を前記コイル素子に供給するように構成され、
前記コイル素子は、前記圧電電圧を磁場に変換するように構成される、
受動マーカー装置。
【請求項2】
前記検知ユニットが容量性素子をさらに備える、請求項1に記載のマーカー装置。
【請求項3】
前記コイル素子が少なくとも1つの軟磁性素子をさらに備える、請求項1または2のいずれか一項に記載のマーカー装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの軟磁性素子は、50μT未満、特に10μT未満、より具体的には5μT未満の強度の磁場で飽和をもたらす消磁係数を有する材料を含む、請求項3に記載のマーカー装置。
【請求項5】
前記共振器素子が結晶性材料を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のマーカー装置。
【請求項6】
前記検知ユニットが前記共振器素子に結合された検知材料をさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のマーカー装置。
【請求項7】
前記検知材料が、放射線感受性材料および/または流体吸収材料を含む、請求項6に記載のマーカー装置。
【請求項8】
前記検知ユニットが過電圧保護をさらに備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のマーカー装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のマーカー装置を追跡するための追跡システムであって、
磁気的または電磁的な励起場を生成するための励起場発生器と、
前記マーカー装置からの磁場を検出し、当該磁場に基づいて1つまたは複数の応答信号を生成するための追跡アレイと、
前記1つまたは複数の応答信号に基づいて前記マーカー装置の位置を決定するための位置決定ユニットと、
を有する追跡システム。
【請求項10】
前記1つまたは複数の応答信号に基づいて物理的パラメータを決定するための物理的パラメータ決定ユニットをさらに備える、請求項9に記載の追跡システム。
【請求項11】
前記コイル素子が飽和に達するように設定された磁場強度を有する飽和磁場を生成するための飽和磁場発生器をさらに備える、請求項9または10に記載の追跡システム。
【請求項12】
前記励起場発生器および/または前記飽和磁場発生器および/または前記追跡アレイが勾配磁場を発生させるように構成される、請求項11に記載の追跡システム。
【請求項13】
請求項1から8のいずれか一項に記載のマーカー装置を追跡する方法であって、
磁気的または電磁的な励起場を生成するステップと、
前記マーカー装置の磁場を検出するステップと、
前記磁場に基づいて1つまたは複数の応答信号を生成するステップと、
前記1つまたは複数の応答信号に基づいてマーカー装置の位置を決定するステップと、を有する方法。
【請求項14】
請求項9から12のいずれか一項に記載の追跡システムを制御して、請求項1から8のいずれか一項に記載のマーカー装置を追跡するためのコンピュータプログラムであって、処理装置によって実行されると、前記処理装置に請求項13に記載の方法を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラムを記憶したコンピュータ読取可能記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、追跡される受動マーカー装置、そのようなマーカー装置を追跡するための追跡システム、マーカー装置を追跡するための方法、および追跡システムを制御するためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特定の医療処置では、当該処置中に医療介入装置などの処置で使用される医療装置を追跡することが有益である。これにより、この追跡は可能な限り正確であるべきである。
【0003】
さらに、これらの処置中に、装置、特に医療装置の周囲環境における特定の物理的パラメータを検知することができることが有益であり得る。この場合も、検知は、変化に対して非常に敏感であるべきである。
【0004】
非常に小型の装置の場合、装置の追跡および/または物理的パラメータの検出を高精度で可能にする手段を提供することは困難であり得る。
【0005】
この目的のために、いわゆるマイクロ磁気発振器(MMO)の使用に基づく、小型マーカーおよびセンサのためのシステムが、最近、WO2019243098に記載されている。これらのシステムでは、磁気的または電磁的な励起場に応じたマイクロ磁気発振器における機械的振動の開始が、これらのマイクロ磁気発振器を含む、したがってこれらのマーカー装置が取り付けられるマーカー装置を追跡するために使用される。
【0006】
これにより、マイクロ磁気発振器の機械的振動は、複数のコイルを備えるコイルアレイなどのそれぞれの追跡アレイによって検出され得る振動磁場をもたらす。コイルアレイ内の個々のコイルに対する磁場の距離および向きに応じて、コイルの各々に誘導される応答は異なる。すなわち、各コイルについて或る値が与えられ、すなわち、例えば4×4コイルアレイにおいて16個の値が与えられる。追跡を実行するために、すなわち、マーカー装置、したがってマーカー装置が取り付けられる装置の位置および向きを決定するために、6つの値が必要とされる。したがって、16個のコイルによって検出される応答は、励起場におけるマーカー装置の位置および向きを決定するのに十分である。
【0007】
これらのマイクロ磁気発振器の利点は、それらが高い品質係数を有し、したがってわずかな減衰しか示さないという事実にある。したがって、それぞれの読み出しシステムは比較的低速であることができ、機械的振動を検出するための比較的単純で安価な読み出しシステム、そしてマーカー装置を使用することを可能にする。
【0008】
追跡および/または検知を対象とするモダリティでは、達成される視野(field-of-view)が利用可能な信号対雑音比によって制限される。マイクロ磁気発振器の場合、この信号対雑音比は、装置の寸法の二乗に比例する。したがって、これらの装置は、利用可能な空間が増加することにつれて、それほど有益ではなくなる。
【0009】
対照的に、LC共振器などの既知の磁気コイル共振器は、寸法の5乗に比例する信号対雑音比を有する。これは、より大きなサイズでは、これらの磁気コイル共振器がマイクロ磁気発振器よりも優れていることがあることを意味する。しかしながら、このアプローチの欠点は、これらの磁気コイル共振器の品質係数が非常に低く、これらの種類の共振器が比較的強い減衰を示すことにある。したがって、正確にするためには、磁気コイル共振器を高速に読み出す必要がある。これは、高速である、したがって複雑で高価な、読出し装置が必要とされることを意味する。
【0010】
さらに、低い品質係数のために、磁気コイル共振器の周波数分解能も低い。これは、磁気コイル共振器は、物理的なパラメータの変化に対する、限られた感度しか有さないことを意味する。そのため、磁場勾配に基づく位置追跡を実行することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、磁気コイル共振器の欠点は、主にその低い品質係数にあり、それは正確な結果を得るために非常に複雑な読み取り装置が必要とされることを意味する。これは、典型的な読み出しシステムでは励起場が典型的には応答場よりもはるかに大きいので、励起場の提供と応答場の受信との間でのスイッチングを実行しなければならないからである。したがって、スイッチングが行われる時間の間、追跡アレイは動作しないだろう。
【0012】
したがって、品質係数が低く、共振器回路の減衰が強い場合には、結果を劣化させないために、非常に高速なスイッチングが必要とされる。十分に高速なスイッチングを得るために、追跡アレイが損傷を受けないことを保証しながら、できるだけ迅速にスイッチングを実行するように使用される高価な電子スイッチが必要とされる。これは、プロセスを多少複雑にし、誤差を起こしやすくする。それはまた、追跡アレイを損傷する高いリスクを負う。
【0013】
対照的に、品質係数が高く、減衰が低い場合には、高速スイッチングの必要はない。したがって、高価な電子機器の使用は必要ではない。さらに、スイッチをいくらか遅く行うことができるので、追跡アレイを損傷するリスクが低減される。
【0014】
上記に鑑みて、本発明のいくつかの実施形態の目的は、上述の欠点を克服することを可能にするマーカー装置、特に、装置、特に医療装置に取り付けられるように構成されたマーカー装置を提供することである。
【0015】
より具体的には、本発明のいくつかの実施形態の目的は、従来技術で知られている追跡および検知方法を改善することである。
【0016】
さらに、本発明の実施形態のいくつかの目的は、より多様な異なる状況および異なる条件下で、装置の追跡および物理的パラメータ変化の検知を可能にするマーカー装置を提供することである。
【0017】
さらにより具体的には本発明のいくつかの実施形態の目的は、追跡されるべきマーカー装置と、それを追跡するための対応する追跡システムとを提供することであり、それらは、追跡および物理的パラメータ変化の検知の両方に使用されることができ、比較的単純な読み出しシステムを使用して高い精度を示す。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的は、第1の態様において、追跡されるべきマーカー装置によって達成され、当該マーカー装置は、圧電特性を有する共振器素子とコイル素子とを備える検知ユニットを備え、コイル素子は、外部の磁気的または電磁的励起場を、共振器素子に提供される出力電圧に変換するように構成され得、共振器素子は、共振モードにおいて前記出力電圧をそれぞれの機械的振動に変換し、圧電電圧をコイル素子に提供するように構成され得る。そして、コイル素子は、追跡システム内の追跡アレイによって検出されるべき磁場へと圧電電圧を変換するように構成され得る。
【0019】
すなわち、この目的は、コイル素子としての磁気コイル共振器が、圧電特性を有する共振器素子としてのエネルギー保存発振器と組み合わされる、検知ユニットをマーカー装置が備えるアプローチによって解決される。より詳細には、この目的は、外部から印加される磁気的または電磁的励起場を使用して、共振器素子の共振周波数で機械的振動を引き起こすことによって解決される。ここで、この振動は、回路の高い品質係数のために持続する。この品質係数は、特に、103を超える、またはさらに高い値を有する品質係数であってもよい。
【0020】
この文脈において、マーカー装置という用語は、追跡される装置、特に医療装置に、当該医療装置を追跡するために取り付けられ得る装置を指すものとして特に理解され得る。これにより、マーカー装置は、それが取り付けられる医療装置の位置を決定するために使用され得る。
【0021】
検知ユニットという用語は、特に、追跡アレイによってマーカー装置を追跡することを可能にし、および/または、いくつかの実施形態では、マーカー装置を使用して物理的なパラメータを検知することを可能にするユニットを定義するものとして理解され得る。検知ユニットには、コイル素子、すなわち、LC共振器のような磁気コイル共振器と、圧電共振器素子とが設けられている。
【0022】
ここで、コイル素子と共振器素子とは、特に、互いに電気的に接続され得る。コイル素子は特に、銅を含んでもよく、または銅から作製されてもよい。コイル素子は、代替的にまたは追加的に、銀を含むか、または銀から作製されてもよい。いくつかの実施形態では、マーカー装置が放射に対して透過的であると想定される特定の実施形態では、コイル素子は、アルミニウムを含むか、またはアルミニウムから作製され得る。いくつかの実施形態では、マーカー装置が放射線に対して非透過的であると想定される特定の実施形態では、二重の目的を果たすように巻線に対して金が選択されてもよい。
【0023】
さらに、共振器素子という用語は、この文脈において、外部から印加された磁界または電磁界に応じて出力されるコイル素子の電圧に対してそれぞれ変形し、したがって機械的振動を実行し始めることによって応答するようにコイル素子に接続される要素に対応するものとして理解され得る。共振器素子は特に、水晶振動子などの水晶圧電素子を含むことができる。共振器素子は、特定のセラミックなどの異なる材料から作製されてもよい。
【0024】
共振器装置の機械的振動は、特に共振モードで提供されることができる。これは、共振器装置が、それに印加される出力電圧に応答して、共振周波数で、またはそれに近い周波数で発振を開始し得ることを意味するものと理解されたい。いくつかの実施形態では、これは、そのような共振機械的振動を達成するコイル素子の出力電圧をもたらすように、外部から印加される磁場または電磁場に正しい周波数成分を提供させることによって達成される。共振器素子は、その共振周波数で振動するため、出力電圧がもはや印加されない場合でも、エネルギー貯蔵器として作用する。これにより、コイル素子および共振器素子によって形成される共振回路の減衰が低減される。
【0025】
共振器素子は、それぞれの接点を介してコイル素子に電気的に接続され得る。
【0026】
さらに、共振器素子は、圧電特性を有することができる。この文脈において、圧電特性という用語は、従来の意味の範囲内で理解されるものとし、すなわち、それに印加される電圧に応じて変形し、変形によって加えられる機械的応力に応じて、圧電電圧として出力され得る電荷が蓄積する材料を説明するものして理解される。ここで、電荷の蓄積は可逆的に起こり得、すなわち、第1の状態から第2の状態への機械的応力の変化は電荷の蓄積をもたらし得、機械的応力における第2の状態から第1の状態への変化は前と同じ(電気的)特性を有する材料を再びもたらす。
【0027】
コイル素子という用語は、特に、特定の数の巻線を有する磁気コイル構成を備える、および/またはそれに対応する素子を指し得る。コイル素子は、適切な数の巻線、適切なサイズ、および巻線間の適切な距離を有する既製の磁気コイルであってもよい。巻線の量およびサイズ、ならびに巻線間の距離は、特に、コイル素子の所望の磁気特性に基づいて決定されることができる。いくつかの実施形態では、特に空間を節約する必要がある実施形態では、共振器素子は、コイル素子の内部に設けられることができ、コイル素子の接点に電気的に接続されることができる。あるいは、共振器素子は、それぞれの接点を介してコイル素子に電気的に接続されたまま、コイル素子から若干の距離だけ離れて設けられてもよい。コイル素子は特に、共振器素子の周りにコイルを巻くことによって提供されても方法、そこでは、コイルは、共振器素子に接触しないように巻かれる。
【0028】
コイル素子は、共振器素子から距離を置いて配置されてもよい。この目的のために、共振器素子とコイル素子とは、それぞれの接続部を介して接続されていてもよい。いくつかの実施形態では、空間を節約しなければならない特定の実施形態では、コイル素子の巻線と共振器素子との間に空間が存在するように共振器素子の周りに巻線を設けることによって、距離を達成することができる。ここで、この空間の寸法は、マーカー装置の寸法に応じて適切に選択されるべきである。これにより、コイル素子の巻線は、コイル素子の回転軸からさらに離れているときに、より効率的になることに留意されたい。したがって、共振器素子とコイル素子との間の配置は、共振器素子がコイル素子内に設けられ、その軸に沿って延在するようなものであってもよい。
【0029】
特許請求されるコンセプトによれば、外部から印加される磁気的または電磁的な励起場が提供され得る。この外部から印加される磁気的または電磁的な励起場は、共振モードでの機械的振動を実行するために共振器素子を励起することを可能にする出力電圧をコイル素子が生成および出力することを可能にする少なくとも1つの周波数成分を有し得る。
【0030】
この目的のために、外部から印加される磁場または電磁場がコイル素子に作用することができる。これに応答して、コイル素子は、外部から印加された磁場または電磁場をそれぞれの出力電圧に変換することができる。
【0031】
示されるように、コイル素子は、共振器素子に電気的に接続される。これにより、コイル素子から出力される出力電圧は、共振器素子の入出力端子を通して、電気的接続を介して共振器素子に出力される。したがって、出力電圧は、共振器素子のそれぞれの入力/出力端子に供給される。
【0032】
そして、圧電特性を有する共振器素子は、コイル素子から印加される電圧によって変形する。これにより、共振器素子は、機械的振動を開始する。ここで、変形は、印加される出力電圧の周波数成分に依存し、この周波数成分は、外部から印加される磁気的または電磁的な励起場の周波数成分に依存する。
【0033】
上述のように、この周波数成分は、共振器素子の共振周波数内にあるように提供さることができる。この場合、機械的振動は共振モードで励起される。すなわち、共振器素子は、その共振周波数の近くで発振する。そして、それぞれの振動は、コイルから電圧が供給されるか否かに関係なく、しばらくの時間持続することができる。
【0034】
そして、圧電特性を有する共振器素子が変形することにより、圧電電圧が生成され、入出力端子を介して出力される。そして、この圧電電圧は、入出力端子を介してコイル素子に供給される。これにより、コイル素子に電流が流れる。これに応答して、コイル素子は磁場を生成し、この磁場は、その後、追跡システムによって振動応答としてピックアップされ得る。
【0035】
この目的のために、追跡システムは、磁場を検出するように構成された複数の振動応答検出ユニットを備えるそれぞれの追跡アレイを備えることができる。これらの振動応答検出ユニットは、4x4アレイのような特定の幾何学的配置で配置され得る。振動応答検出ユニットは、特に、チェスボード構造に配置された平面上の4x4個のフラットコイルを有する4x4コイルアレイに配置され得る複数のコイルを備え得る。
【0036】
これにより、個々の振動応答検出ユニット、特にコイルの各々によってピックアップされる磁場は、それぞれの振動応答検出ユニットに対するマーカー装置の距離および向きに依存する。これは、磁場について最大16個の異なる測定値を与え得る。
【0037】
このようにして生成された応答信号は、次いで、位置決定ユニットとして機能するプロセッサに提供され得る。位置決定ユニットは、特に、マーカー装置のそれぞれの位置及び向きに対して生成されるであろう応答信号をモデル化し、それを受信された応答信号と比較するように構成され得る。そして、ベストマッチが、振幅、3つの座標および2つの角度に関して記述される位置と考えられる。
【0038】
位置は、勾配ベースの位置符号化によって決定され得る。これらの実施形態では、外部から印加される磁場が励起磁場に対応してもよく、または代替的に、別個の飽和磁場に関して励起磁場に加えて提供されてもよく、マーカー装置に作用するように提供され、それによって、磁場はコイル素子の飽和値を超える磁場強度を有する。
【0039】
したがって、外部から印加される磁場は、特に、比較的強い(すなわち、飽和値を上回る)直流(DC)磁場が、外部印加磁場または電磁励起磁場に加えられることに対応し得る。磁場強度がコイル素子の飽和値を超えることは、コイル素子が飽和することを意味する。この文脈では、「飽和する」および/または「飽和」という用語は、飽和磁場などの外部から印加される磁場における非常に低い電流に対するコイルのインダクタンス値が、そのような磁場のないインダクタンス値と比較して低減されることを意味するものと理解されたい。そのような場合のインダクタンス値は、そのような磁場を印加しない場合と比較して、印加された磁場または飽和磁場により、特に5%より低く、より具体的には10%より低く、さらにより具体的には15%より低くなり得、すなわち、インダクタンスは、コイルが飽和したとき、その元の値の95%未満、より具体的にはその元の値の90%未満、さらにより具体的にはその元の値の85%未満であり得る。
【0040】
この飽和の結果として、外部から印加される磁気的または電磁的な励起場に応答するコイル素子の効率、したがって、前記磁気的または電磁的な励起場を振動応答に変換する際の検知ユニットの効率が影響を受け、特に、低減される。これは、振動応答の絶対振動振幅が低減されることを意味する。本明細書で上述したように、振動応答は、複数のコイルなどの複数の振動応答検出ユニットを備えるそれぞれの追跡アレイによって検出される。これにより、振幅も振動応答検出ユニットにより検出される。
【0041】
勾配ベースアプローチの場合、飽和を引き起こす磁場は、勾配を与えられてもよく、すなわち、もたらされる磁力の単位距離当たりの量が変化するように、与えられてもよい。本明細書で上述したように、飽和を引き起こす磁場は、外部から印加される磁場または電磁励起場に加えて提供される飽和磁場であってもよい。
【0042】
勾配を有する飽和磁場により、追跡アレイ内の位置決定ユニットによってピックアップされる振幅は、勾配磁場内で検知ユニットが設けられる位置および向きに応じて異なる。したがって、測定された振幅は、マーカー装置の位置を、励起場内の特定の平面などの特定の領域に、すなわち磁場によって呈される磁力が特定の測定された振幅が得られるような磁力となる領域に、制限することを可能にする。
【0043】
そして、異なる勾配を有する飽和磁場を用いて測定を繰り返すことができる。異なる勾配でこの種の測定を数回繰り返すことにより、マーカー装置の特定の位置を決定することができる。
【0044】
あるいは、特に10μT未満の飽和値の場合、飽和は外部から印加される磁気的または電磁的な励起場によって達成され得る。すなわち、コイル素子を飽和させるために追加の磁場は必要ないが、コイル素子は外部から印加される磁気的または電磁的な励起場によって飽和される。これらの場合、勾配に基づくアプローチは、外部から印加される磁気的または電磁的な励起場に勾配を与えることにより実行されることもできる。
【0045】
これらの実施形態では、マーカー装置における励起、すなわち、コイル素子によって生成される出力電圧の振幅および共振器素子によって実行される機械的振動の振幅は、外部から印加される磁気的または電磁的な励起場の非線形関数に対応する。追加の飽和場がないことは、検知ユニットによる振動応答が単純な線形モデルに従って予想されるよりも弱いことを意味するが、これは依然として、マーカー装置の位置及び向きを決定することを可能にする。単に、位置を決定するために使用されるモデルに係数が含まれなければならない。
【0046】
勾配ベースの位置方法は、検知ユニット、すなわちその中のコイル素子の飽和が十分に低い励起場で達成され、十分に強い勾配が使用されるとき、それぞれの振動応答決定ユニットについて決定されたそれぞれの強度値に基づいて位置決定を実行するアプローチよりも、さらに正確であるという利点を有する。さらなる利点として、この種の位置決定に関与する周波数は非常に低く、位置決定プロセスによる非強磁性材料の干渉が少なくなる。
【0047】
いくつかの実施形態では、さらなるファクタを考慮しなければならないことに留意されたい。いくつかの実施形態では、外部から印加される磁気的または電磁的な励起場が共振器素子の共振周波数の半分のみである周波数成分を含む。そのようなケースでは、追加の飽和磁場が与えられない場合、共振器素子の励起はなく、したがって、検知ユニットは振動応答を与えない。対照的に、比較的小さい追加の飽和磁場が提供される場合、周波数成分の偶数高調波および奇数高調波の両方がコイル素子内に生成され得る。これは周波数の倍増をもたらし、このことは、共振器素子に提供される出力電圧が、共振モードで機械的振動を実行するように共振器素子を励起して、上述のように、圧電電圧がコイル素子に提供され、次いで、追跡アレイによって検出され得る磁場を生成することを意味する。さらに対照的に、比較的強い飽和磁場が印加される場合、これは、励起を再び低減し得、それによって、振動応答もはや検出されなくなるまで、より小さい振動応答が検出されることになる。
【0048】
検知ユニットの振動応答の位相は、飽和磁場の極性に依存し得る。したがって、飽和磁場が勾配を与えられる場合、振動応答の、すなわち磁場の異なる振幅および位相が決定され得る。ここで、この変化は、励起場発生器および追跡アレイに対する検知ユニットの位置および向きに非常に強く依存し得る。この理解に基づいて、振幅および位相の値は、勾配飽和磁場における異なる位置および異なる勾配飽和磁場に対して計算され得、それによって、位置および/または向きを非常に正確に決定することを可能にする。
【0049】
上記の半周波数アプローチは、1/3周波数で、またはさらに低い周波数でも実行され得る。1つのコイルの代わりに、合計および/またはその合計の高調波が共振周波数に対応する異なる周波数を有する2つ以上のコイルが使用されてもよい。これらの手段は同様に、マーカー装置の特定の位置及び向きについての特定の振動応答プロファイルを得ることを可能にする。この効果は、特に、勾配飽和場を印加することによって増大される。
【0050】
マーカー装置の位置追跡を実行する上記の可能性の各々は、追跡アレイに対する位置および向きに応じて異なる能力を有するので、いくつかの実施形態では最適化手順が実行される。この最適化手順は、マーカー装置の位置および向きを導出することを可能にする追跡アレイの感度プロファイルを指定することによって開始することができる。さらに、ユーザ入力が提供されてもよい。ユーザ入力は、典型的にはコイル素子の巻線の回転軸に対して多かれ少なかれ垂直な方向に沿った分解能が最大化されるべきであり、一方、繰り返し速度が特定の値より低くてはならないことを指定することを包含し得る。そして、これらの指定に基づいて、コンピュータを使用して、励起振幅、周波数および磁場の全ての異なるコンステレーションをシミュレートまたはモデル化することができる。これに基づいて、コンピュータは、どのコンステレーションを用いて、ユーザによって要求された設定がマーカーの所与の領域に対して最良に満たされるかを決定することができる。
【0051】
励起場発生器および/または飽和場発生器の能力などの更なる境界条件が、モデルの複雑さを増加させることなく考慮され得ることに留意されたい。モデリングは、異なる追跡状況のための異なるパラメータセットを生成するために使用される最適化アルゴリズムを使用することによって実行されることができ、そしてこのパラメータセットは、メモリに記憶され、特定の追跡手順のために必要とされるときに取り出される。
【0052】
勾配ベースのアプローチはまた、受信側、すなわち、追跡システムにおいて使用されることもできる。すなわち、典型的には振動応答検出ユニットとして複数の磁気コイルを備える追跡アレイは、振動応答を検出またはピックアップするときに勾配を生成するために使用され得る。マーカー装置の検知ユニットが飽和している場合、すなわち、磁場強度がコイル素子の飽和値を超える磁場または電磁場内の位置に設けられている場合、振動応答は、時間にわたって遅い減衰を示す比較的小さい信号に対応する。対照的に、マーカー装置の検知ユニットが飽和していない場合、検出され得る振動応答はより大きな信号強度を有するが、時間にわたってより速い減衰を示す。
【0053】
検知ユニットは、容量性素子をさらに有することができる。
【0054】
検知ユニットは、キャパシタなどの容量性素子をさらに備えてもよい。容量性素子は、特に、コイル素子に並列に接続されるように、検知ユニットに追加されてもよい。すなわち、容量性素子を有する検知ユニットでは、コイル素子と共振器素子とが直列に接続され、容量性素子がコイル素子に並列に接続されることができる。これは、本質的に、互いに組み合わされたLC共振器および圧電共振器を有する共振器回路を提供する。
【0055】
容量性素子は特に、外部から印加される磁気的または電磁的な励起場に応答してコイル素子によって提供される出力電圧を増幅するキャパシタンスを有するように選択され得る。そして、このより高い出力電圧は共振器素子に提供されることができ、そこでより強い変形を引き起こし、したがって、振幅、周波数および持続時間などの所与の磁場パラメータのセットに対して、圧電特性を有する共振器素子中のより高いレベルの振動を引き起こす。これにより、コイル素子に作用する圧電電圧が高くなり、信号強度を向上させることができる。
【0056】
容量性素子のキャパシタンスの値は、LC共振器内のコイル素子の共振周波数が、共振器素子、すなわち圧電共振器の共振周波数に対応するように選択され得る。これにより、共振器回路の発振時の損失が小さくなるため、必要な巻線の量を低減することができる。巻線が少なくなると、マーカー装置の製造が簡略化される。
【0057】
コイル素子は、少なくとも1つの軟磁性素子をさらに有することができる。
【0058】
この文脈において、軟磁性という用語は、永久的には磁化されない材料、すなわち永久磁石ではなく、外部磁場に応答して磁化される材料を指すものとして特に理解され得る。そのような磁場がない場合、軟磁性材料の磁化は非常に低い。
【0059】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの軟磁性素子がコイル素子に設けられる。この文脈において、少なくとも1つの軟磁性素子がコイル素子に設けられるという定義は特に、少なくとも1つの軟磁性素子がコイル素子の軟磁性コアを形成し得ることを意味するものとして理解され得る。
【0060】
少なくとも1つの軟磁性素子は、軟磁性フォイルとして提供されることができる。軟磁性フォイルは、それぞれの軟磁性ストライプに切断されてもよい。軟磁性ストライプは、コイル素子内に配置されることができる。
【0061】
少なくとも1つの軟磁性素子は、高ニッケルおよび低鉄含有量を有するニッケル鉄合金、例えば、約80%のニッケルおよび20%の鉄を有するニッケル鉄合金(パーマロイとしても知られる)を含んでもよい。少なくとも1つの軟磁性素子は、追加的にまたは代替的に、ナノ結晶軟磁性合金または非晶質軟磁性合金を含んでもよい。選択された合金は、十分に小さい厚さを備えることができるべきであることに留意されたい。
【0062】
軟磁性素子は、コイル素子の内部にストライプ状に配置されていてもよい。ここで、軟磁性素子は、特にコイル素子の磁気軸に対して斜めに挿入されることができる。この種の構成は、検知ユニットが外部から印加される励起磁場である直接的および/または追加の飽和磁場によって異なるレベルの飽和で少なくとも2回励起される場合、位置追跡においては典型的に利用可能でない第6の自由度(すなわち、第3の角度)を決定することを可能にし得る。
【0063】
代替的に又は追加的に、第6の自由度は、振動応答が異なる周波数を有する検知ユニットを有する2つのマーカー装置による測定値を組み合わせることによって得ることができる。
【0064】
少なくとも1つの軟磁性素子は、50μT未満、特に10μT未満、より具体的には5μT未満の強度の磁場で飽和をもたらす消磁係数を有する材料からなることができる。
【0065】
少なくとも1つの軟磁性素子は、低い消磁係数を有する、すなわち小さい反磁界を提供する材料から選択されることができる。消磁係数は、少なくとも1つの磁性物体の材料が数μTで飽和するのに十分に低い。少なくとも1つの磁性物体が飽和する磁場の強度は、10μT未満、より具体的には5μT未満、さらにより具体的には2μT未満であり得る。これは、磁性物体が急速に飽和に達し、共振器回路の感度を高めるという利点を有する。
【0066】
共振器素子は、結晶性材料を含むことができる。共振器素子は、300kHz未満の共振周波数を有することができる。共振器素子は、本体と、それに取り付けられた少なくとも1つの突起とを有することができる。
【0067】
共振器素子は、結晶性材料を有することができ、または結晶性材料から作製されてもよい。ここで、結晶性材料は、十分な圧電特性を有するように選択されるべきである。結晶性材料は、特に、水晶結晶を含み、かつ/または、水晶結晶に対応し得る。水晶は圧電共振器のための既知の材料であり、したがって、その共振周波数は既知である。したがって、コイル素子と共振器素子とを備える共振器回路を有する検知ユニットを提供することが可能であり、その中で、構成要素は、水晶振動子の共振周波数に近いまたは対応する周波数を有する電場を提供するように容易に選択され得る。これは、共振器回路のための高い品質係数を得ることを可能にする。
【0068】
水晶を使用することの更なる利点は、水晶が両方の固有周波数が互いに非常に近く、水晶振動子が並列に接続されているかまたは直列に接続されているかに応じて、水晶振動子に対して並列または直列にトリマーなどの追加の要素をそれぞれ設けることによって、その共振周波数をそれぞれわずかに調整することができるので、水晶が直列または並列共振で使用され得るという事実にある。これは、製造誤差などを補償することも可能にする。同様の特性を有する更なる結晶性材料も同様に予測され得る。
【0069】
共振器素子は、本体と、それに取り付けられた少なくとも1つの突起とを有することができる。特に、共振器素子は、本体に取り付けられた2つの突起を有するフォークタイプ、特に音叉タイプであってもよい。音叉の形状を有する共振器素子を提供することは、共振特性をさらに改善することができ、以下でさらに概説されるように、物理的特性を検知するためにマーカー装置を使用することに関しても有益であり得る。
【0070】
検知ユニットは、共振器素子に結合された検知材料をさらに有することができる。検知材料は、放射線感受性材料及び/又は流体吸収材料を含むことができる。
【0071】
マーカー装置は、マーカー装置の周囲環境の少なくとも1つの物理的パラメータを検知するためにさらに使用され得る。この文脈において、物理的パラメータという用語は、マーカー装置の周囲環境を示す任意のパラメータを指すものとして理解され得る。物理的パラメータという用語は特に、物理的に関連する値を指し得る。物理的パラメータという用語は、代替的にまたは追加的に、化学的に関連する値、すなわち化学的パラメータを指し得る。物理的パラメータは、マーカー装置に作用する放射を示し得る。物理的パラメータは、周囲環境における湿度値を示すことができる。更なる種類の物理的パラメータが予見され得る。
【0072】
少なくとも1つの物理的パラメータを検知する目的のために、検知ユニットは、共振器素子に結合された検知材料をさらに有することができる。ここで、「結合される」という用語は、共振器素子の発振周波数の変化をもたらす、共振器素子と検知材料との間の接続を指すものと理解され得る。
【0073】
検知材料は、この目的のために、特に共振器素子の表面上に配置されることができる。検知材料は、コーティングとして提供されるように、検知素子に結合されてもよい。検知材料は、共振器素子と少なくとも1つの軟磁性素子との間の接続要素として、共振器素子に結合され得る。検知材料と共振器素子との間の結合を提供するさらなる方法が予見され得る。
【0074】
検知材料は、特に、検知することが意図される物理的パラメータに起因してその機械的特性を変化させる材料に対応し得る。検知材料が共振器素子に結合されるため、機械的特性のそのような変化は、共振器素子の周波数および/またはマーカー装置の品質係数の変化をもたらし、その両方は、追跡システム内のそれぞれの検知ユニットによって検出され、それによって、物理的パラメータを検出することを可能にする。
【0075】
いくつかの実施形態では、マーカー装置が放射線量計としても作用することが想定される。この場合、提供される検知材料は、特に放射線感受性材料であることができる。そのような放射線感受性は、放射線に応答して固化する流体材料を提供することによって達成され得る。
【0076】
照射されると、流体は固化し、流体中の以前は移動し揺動する液滴は固化し、したがって移動を停止する。これは、マーカー装置の共振器素子の共振周波数、およびそれ自体の共振周波数の変化を引き起こす。さらに、マーカー装置の品質係数の変化が同様に引き起こされ、それによって放射線の存在を検知することが可能になる。
【0077】
共振器素子が音叉型であるいくつかの実施形態では、流体、すなわち流体液滴は、フォークの先端に配置され得る。凝固すると、流体は膨張し、これは流体の液滴が膨張することを意味する。本体から離れた位置では、これに起因してフォーク先端の動きが速くなり、慣性モーメントの増加により共振周波数が低下する。
【0078】
流体材料はまた、共振器素子を軟磁性素子に接続するために使用されてもよい。共振器素子が音叉型であるいくつかの実施形態では、特に共振器素子の突起は流体を介して軟磁性素子に接続され得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、マーカー装置が水分センサとして機能することが想定される。この場合、検知材料は、湿気に敏感であるべきである。この感湿性は、材料を流体吸収性にすることによって達成されることができる。この場合、水分が存在すると、材料は周囲環境から水分の一部を吸収する。これは、材料の機械的特性を変化させ、したがって、上述のように共振器素子の共振周波数に影響を及ぼす。
【0080】
流体吸収材料は特に、共振器素子の表面上に堆積されることができる。流体吸収材料は、共振器素子上のコーティングとして堆積されてもよい。共振器素子が音叉型であるいくつかの実施形態では、流体吸収材料は、特に、突起の表面上に堆積され得る。流体吸収材料は、突起上のコーティングとして堆積されることができる。堆積のさらなる方法もまた考えられる。流体吸収材料を共振器素子上に堆積させるというコンセプトは、流体吸収材料が水分の一部を吸収する場合、流体吸収材料が堆積される共振器素子の有効質量が増加するという理解に基づく。有効質量のこの増加は、共振器素子の共振周波数の増加をもたらし、この共振周波数は、その後、検知の目的のためにピックアップされ得る。
【0081】
検知ユニットは、過電圧保護を備えてもよい。過電圧保護という用語は、ここでは、マーカー装置が励起場発生器に近すぎることに起因して、マーカー装置、ひいては検知ユニットに作用する非常に大きな外部から印加される磁気的または電磁的な励起場によって検知ユニットが過電圧を受けることから保護するユニットを指すものと理解されたい。
【0082】
複数のマーカー装置を追跡する必要がある場合がある。すなわち、複数のマーカー装置が一度に追跡される場合がある。そのような場合、外部から印加される磁場または電磁場が、全てのマーカー装置が励起場発生器から十分に離れているときにのみ提供され、過度の磁場を経験しないように調整することは困難であり得、これは、検知ユニットのコイル素子が共振器素子を破壊する可能性がある過度の電圧を生成することにつながり得る。これらの場合のために、過電圧保護が提供されることができる。過電圧保護は、特に、直列に接続されたツェナーダイオードなどの2つの逆並列ダイオードを含み、次いでコイル素子に並列に接続された回路として提供されることができる。ここで、ダイオードの降伏電圧は、共振器素子、またはさらに低い電圧定格を有する共振器回路内の任意の他の構成要素が破壊されるであろう電圧としてのパラメータ値よりも低い値として提供されるべきである。
【0083】
さらなる態様によれば、上述のマーカー装置を追跡するための追跡システムが提供される。追跡システムは、マーカー装置の検知ユニットに作用する磁気または電磁気を生成するための励起場発生器と、検知ユニットの磁場を検出し、この磁場に基づいて1つまたは複数の応答信号を生成するための追跡アレイと、当該1つまたは複数の応答信号に基づいてマーカー装置の位置を決定するための位置決定ユニットとを備える。追跡システムは、前記1つまたは複数の応答信号に基づいて物理的パラメータを決定するための物理的パラメータ決定ユニットをさらに備え得る。追跡システムは、コイル素子および/または軟磁性素子が飽和に達するように設定された磁場強度を有する飽和磁場を生成するための飽和磁場発生器をさらに備えることができる。いくつかの実施形態では、励起場発生器および/または飽和磁場発生器および/または追跡アレイが勾配磁場を発生させるように構成される。
【0084】
更なる態様によれば、追跡システムが提供される。追跡システムは、励起場発生器を有することができる。励起場発生器は、特に、複数の磁気コイル、特にコイルアレイを備える磁場発生器または電磁場発生器に対応することができる。すなわち、励起場は、磁気的または電磁的的な励起場であることができる。励起場は、上述のように、検知ユニット内に振動を誘導するために使用される。
【0085】
これらの振動は、検出可能な検出ユニットの振動応答をもたらす。この目的のために、追跡システムは、振動応答を検出することができるそれぞれの追跡アレイを有する。ここで、追跡アレイは、特に、励起場発生器と同じ複数のコイルによって提供され得る。すなわち、励起場発生器は、追跡アレイとして、すなわちシステム内の共振器回路によって生成される磁場の検出器としても、機能し得る。追跡アレイはまた、別個のユニットとして、すなわち、第2の複数の磁気コイルとして、特に第2のコイルアレイとして、提供されてもよい。
【0086】
追跡アレイは、ここで、検知ユニットによって提供される磁場を検出し、この検出に基づいてそれぞれの応答信号を生成するように構成される。追跡アレイは、特に、磁気コイルとして提供され得る複数の発振応答検出ユニットを備え得る。これらの振動応答検出ユニットは、コイルアレイのような特定の幾何学的配置で配置されてもよい。複数の発振応答検出ユニットの幾何学的配置により、個々の発振応答検出ユニットによってピックアップされる発振応答は、それぞれの発振応答検出ユニットに対するマーカー装置の距離および向きに依存し得、これは、各々の発振応答検出ユニットが、応答信号に含まれることになる発振応答についての異なる値を取得し得ることを意味する。
【0087】
そして、応答信号は、それぞれの位置決定ユニットに提供される。位置決定ユニットは、応答信号を使用して、応答信号に基づいてマーカー装置の位置を決定するように構成される。この位置決定は、追跡アレイ内の特定の振動応答検出ユニットによって得られる振動応答が、外部から印加される磁気的または電磁的な励起場内のマーカー装置の位置および向き、ならびに特定の振動応答検出ユニットに対する距離および向きに依存するという仮定に基づく。ここで、位置決定ユニットは、本質的に、得られた応答信号と、マーカー装置の複数の異なる位置及び向きについてモデル化された応答信号とを比較し、最も近い一致を選択する。このマッチングに基づいて、位置決定ユニットは、マーカー装置の位置を決定する。
【0088】
追跡システムはまた、本明細書で上述したような勾配ベースのアプローチを実行してもよい。ここで、コイル素子および/または軟磁性素子の飽和は、外部から印加される励起磁場によって直接達成され得る。あるいは、飽和は、飽和磁場によって達成されてもよい。この飽和磁場を生成するために、追跡システムは、飽和磁場発生器を備えることができる。飽和磁場発生器は、磁気的または電磁的な励起場を発生させるための励起場発生器に対応することができる。飽和場発生器は、別個の要素であってもよい。
【0089】
すなわち、外部から印加される磁気的または電磁的な励起場および/または飽和磁場は、コイル素子および/または軟磁性素子の飽和値を超える磁界強度を有することができ、コイル素子の飽和、および、外部から印加される磁気的または電磁的な励起場に応答する効率のそれぞれの減少につながる。その結果、磁場の絶対振動振幅が低減される。
【0090】
勾配ベースのアプローチを実行するために、外部から印加された磁気的または電磁的な励起場および/または飽和磁場が勾配磁場に対応し得る。外部から印加される磁場または電磁場が勾配場であるため、追跡アレイによって検出される振動応答、すなわち磁場の振幅は、勾配磁場内に検知ユニットが設けられる位置に応じて異なり、マーカー装置の位置を限定することができる。そして、追跡システムを使用して、いくつかの勾配について測定を繰り返すことができる。これにより、上述したように、マーカー装置の位置を高精度に決定することができる。
【0091】
追跡システムは、追跡アレイ側でも勾配ベースのアプローチを使用するように構成され得る。すなわち、追跡アレイは、検知ユニットによって生成された磁場を検出またはピックアップするときに勾配を生成するために使用され得る。マーカー装置の検知ユニットが飽和した場合、追跡アレイによってピックアップされる磁場は比較的小さく、時間にわたる遅い減衰を示す。対照的に、マーカー装置の検知ユニットが飽和していない場合、追跡アレイによってピックアップされる磁場は大きく、時間にわたる速い減衰を示す。これは、精度をさらに高めるために有益であり得る。
【0092】
追跡システムは、1つまたは複数の応答信号に基づいて物理的パラメータを決定するための物理的パラメータ決定ユニットをさらに備え得る。これらの場合、検知ユニットが検知材料を含むことが好ましい。上述のように、検知材料は、それが感受性である物理的パラメータが存在するときに、共振器素子が発振する周波数を変化させる。この周波数の変化は、コイル素子によって生成される磁場に影響を及ぼし、したがって、追跡アレイによってピックアップされる振動応答において認識可能である。したがって、応答検出ユニットによって生成される応答信号も、この周波数の変化を示すことになる。そして、物理的パラメータ決定ユニットは、応答信号を処理し、検知された物理的パラメータについての更なる情報を提供することができる。ここで、物理的パラメータの値は、物理的パラメータ決定ユニットによって決定されることができる。
【0093】
さらに別の態様によれば、上述のマーカー装置を追跡するための方法が提供され、この方法は、マーカー装置の検知ユニットに作用する磁気的または電磁的な励起場を生成するステップと、検知ユニットの振動応答を検出するステップと、振動応答に基づいて1つまたは複数の応答信号を生成するステップと、1つまたは複数の応答信号に基づいてマーカー装置の位置を決定するステップとを含む。
【0094】
さらに別の態様では、同様に上述したようなマーカー装置を追跡するために上述したような追跡システムを制御するためのコンピュータプログラムが提供され、このコンピュータプログラムは処理装置によって実行されると、上述したような方法を実行するように適合される。さらなる態様では、コンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体が提供される。コンピュータ可読媒体は例えば、非一時的コンピュータ可読媒体であり得る。
【0095】
請求項1に記載のマーカー装置、請求項9に記載の追跡システム、請求項13に記載の方法、請求項14に記載のコンピュータプログラム、および請求項15に記載のコンピュータ可読媒体は、特に、従属請求項に定義されるように、類似のおよび/または同一の好ましい実施形態を有することを理解されたい。
【0096】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項又は上記の実施形態とそれぞれの独立請求項との任意の組み合わせであることができることを理解されたい。
【0097】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかになり、それらを参照して説明される。本発明は、独立請求項によって定義される。従属請求項は、有利な実施形態を規定する。
【図面の簡単な説明】
【0098】
図1A】第1の実施形態による検知ユニットを概略的かつ例示的に示す図。
図1B】第1の実施形態による検知ユニットを表す共振回路を概略的かつ例示的に示す図。
図2A】第2の実施形態による検知ユニットを正面図で概略的かつ例示的に示す図。
図2B】第2の実施形態による検知ユニットを側面図で概略的かつ例示的に示す図。
図2C】第2の実施形態による検知ユニットを上面図で概略的かつ例示的に示す図。
図3】第1の実施形態によるマーカー装置を追跡するための追跡システムの実施形態を概略的かつ例示的に示す図。
図4】第2の実施形態によるマーカー装置を追跡するための追跡システムの実施形態を概略的かつ例示的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0099】
図1Aは、装置に、特に医療装置に取り付けられ、例えば、患者に対して行われる、侵襲的処置のような処置の間に追跡システムによって追跡されるためのマーカー装置1の実施形態を概略的かつ例示的に示す。マーカー装置1は、第1の例示的な実施形態による検知ユニット10を備える。検知ユニット10は、図1Aによる特定の実施形態では、共振器素子11と、コイル素子13と、容量素子20とを備える。ここで、共振器素子11とコイル素子13とは直列に接続される。また、容量素子20は、コイル素子と並列に接続されている。
【0100】
マーカー装置1は、それぞれの追跡システムを使用して、マーカー装置1が取り付けられた装置を追跡するために使用され得る。この目的のために、特定の周波数成分を有する外部から印加される磁気的または電磁的な励起場を生成するために、励起場発生器を設けることができる。この磁気的または電磁的な励起場は、コイル素子13に作用する。図1による特定の実施形態では、さらに、飽和磁場、特に直流磁場が、コイル素子13の飽和をもたらす強度で、励起場発生器によって、生成される。
【0101】
コイル素子13は、磁気的または電磁的な励起場を、共振器素子11の共振周波数に近い特定の周波数を有するそれぞれの出力電圧に変換する。ここで、直流磁場によるコイル素子13の飽和により、この変換の効率が低下し、出力電圧がかなり小さくなる。
【0102】
そして、出力電圧は、コイル素子の端子131を介して、それぞれの電気接続を介して共振器素子11の端子111に供給される。これにより、出力電圧は、端子111を介して共振器素子11に供給される。ここで、出力電圧は共振器素子11に供給される前に、容量素子20によって増幅される。すなわち、容量素子20は、コイル素子13から共振器素子11に供給される出力電圧の増幅を可能とするキャパシタンスを有するように設けられている。出力電圧は、その後、共振器素子11によって受け取られ、その変形をもたらす。
【0103】
図1Aの特定の実施形態では、共振器素子11は圧電結晶に対応する。コイル素子13から調整された出力電圧を受け取ると、共振器素子11が変形する。周波数成分が共振器素子11の共振周波数内にあることにより、共振モードで変形が励起される。このように、共振器素子11は共振モードで機械的振動を開始し、コイルから出力電圧が供給されなくても、振動はしばらく持続する。
【0104】
ここで、共振器素子11の変形は、その圧電特性に起因して、共振器素子11によって発生される電圧をもたらす。生成された電圧は、圧電電圧と呼ばれ、その後、コイル素子13に供給され、コイル素子13を通る電流が生成される。この電流により、コイル素子13に磁場が発生する。そして、この結果として生じる磁場が追跡システムによって検出され、以下でさらに説明するように、位置決定および/または検知のために使用され得る。ここで、振動が持続することに起因して、共振器素子11が出力電圧を受け取らなくても、共振器素子11はエネルギー貯蔵部として動作し、圧電電圧をコイル素子13に供給し続ける。これはコイル素子13を通して電流が連続的に生成されることにつながり、これはコイル素子13が追跡アレイによって検出され得る磁場を提供し続けることを意味する。したがって、共振器素子11をエネルギー貯蔵として用いることによって、共振器素子11、容量素子20およびコイル素子13によって形成される共振回路の減衰を低減することができ、これは、回路が高い品質係数を有することを意味する。
【0105】
図1Bは、共振器素子11、コイル素子13および容量素子20によって形成される共振回路を表す回路図2を概略的かつ例示的に示す。この回路図に示されるように、共振器素子11とコイル素子13とは直列に接続され、容量素子20はコイル素子13と並列に接続されている。
【0106】
ここで図2Aから2Cを参照すると、これらの図は、第2の実施形態による検知ユニット10を含むマーカー装置1'を、それぞれ正面図、側面図および上面図で示す。図2Aから2Cに示される構成は、空間が問題となり得るマーカー装置1'、すなわち、適切に小さくなければならないマーカー装置1'に特に有益である。
【0107】
図2Aによる特定の実施形態では、検知ユニット10は、共振器素子11と、軟磁性素子12と、コイル素子13とを備える。マーカー装置1'は、共振器素子11と軟磁性素子12の少なくとも1つとを接続するために設けられた検知材料(図2Aには図示せず)をさらに備える。
【0108】
検知ユニット10の共振器素子11は圧電特性を有する。すなわち、共振器素子11は、圧電特性を有する材料からなるか、または圧電特性を有する材料を有する。図2Aから2Cによる特定の実施形態では、共振器素子11は水晶を含む。水晶は、その圧電特性について周知の材料である。
【0109】
図2Aから2Cの特定の実施形態では、軟磁性素子12は、磁性フォイルから形成された2つの磁性ストライプ1として設けられている。2つの磁性ストライプ12は、コイル素子13の軟磁性コアを形成するように、コイル素子13内に配置される。図2Aから2Cの特定の実施形態では、軟磁性素子12は、磁性物体12の飽和が数μT、特に50μT未満、より具体的には10μT未満、さらにより具体的には5μT未満で達成されるような消磁係数を有する材料で作製される。図2Aから2Cによる特定の実施形態では、軟磁性素子は、この目的のために、パーマロイなどの大量のニッケルを有するニッケル鉄合金から作製されてもよい。
【0110】
図2Aから2Cの例示的な実施形態におけるマーカー装置1の検知ユニット10は、コイル素子13をさらに備える。図2Aから2Cに係る特定の実施において、コイル素子13は、特に、共振器素子11の周りに巻かれ、その中に軟磁性素子12が配置された巻線に相当する。ここで、効率を向上させるために、巻線13がその周りに設けられている軸間にある程度の距離を持たせるために、巻線が共振器素子11の周りに巻かれる。十分な効率を得ると同時にコイル素子13を容易に飽和させるために、コイル素子13は適切な材料で提供されるべきである。図2Aから2Cの特定の実施形態では、コイル素子13の巻線は銅で作られている。
【0111】
図2Aでは、検知ユニット10を備えるマーカー装置1が正面図で概略的かつ例示的に示されている。検知ユニット10の共振器素子11、軟磁性素子12およびコイル素子13の幾何学的配置の更なる例は、図2Bおよび図2Cから理解され得る。
【0112】
したがって、図2Bに示されるように、共振器素子11は、水晶からなる本体111と、水晶からなるものであってもよいし異なる材料からなるものであってもよい突起112とを有する音叉型の形状を有している。ここで、突起112は、共振周波数及び/又は品質係数を変更するために、例えばコーティング等の何かがそれらに加えることができるように設けられ、一方、本体111は変更されない。共振器素子11のこの音叉型の形状の利点は、共振器素子11の振動特性の改善にある。
【0113】
図2A、2Bおよび2Cによる特定の実施形態では、マーカー装置1'が放射線量計として機能するようにさらに構成される。図2Cに示されるように、この目的のために、放射線感受性材料113が、共振器素子11と軟磁性素子12、すなわち軟磁性ストライプとを互いに接続するために設けられる。図2A、2Bおよび2Cによる特定の実施形態における放射線感受性材料113は、放射線下で固化する流体に対応する。すなわち、検知ユニット10が放射線に曝露されると、放射線感受性材料113は、流体状態から固体状態に変化する。この状態変化は、共振器素子11の機械的特性、ひいては共振器素子11が発振する周波数に影響を与える。この周波数の変化は、追跡システムによって検出され、放射線の存在を検知するために、それぞれの物理的パラメータ決定ユニットによって使用されてもよい。
【0114】
図3は、追跡システム3の実施形態を概略的かつ例示的に示す。追跡システム3は、飽和磁場と共に外部の磁気的または電磁的な励起場を生成するための励起場発生器100と、マーカー装置1の磁場としてマーカー装置1内の検知ユニット10の振動応答を検出し、振動応答に基づいて1つまたは複数の応答信号を生成するための追跡アレイ200とを備える。さらに、追跡システム3は、1つまたは複数の応答信号に基づいてマーカー装置1の位置を決定するための位置決定ユニット300と、1つまたは複数の応答信号に基づいて物理的パラメータを決定するための物理的パラメータ決定ユニット400とを備える。すなわち、図3による実施形態では、励起場発生器および飽和磁場発生器が同じユニット100によって提供され、追跡アレイ200は異なるユニットによって提供される。しかしながら、励起場発生器と飽和磁場発生器は別々のユニットであってもよい。励起場発生器、飽和磁場発生器、および追跡アレイは、以下でさらに論じられるように、図4に例示的に示されるように、1つのユニットとして提供され得る。励起場発生器および追跡アレイが単一のユニットとして提供され、一方飽和磁場発生器は異なるユニットとして提供されることができる。飽和磁場発生器および追跡アレイは同じユニットに対応することができ、励起場発生器は異なる別個のユニットとして提供される。
【0115】
図3による実施形態では、励起場発生器100が外部励起場を発生させ、これは図3による実施形態では電磁的な励起場に対応する。外部励起場は、図1Aから図2Cに関連して上述したように、マーカー装置1内の検知ユニット10によって振動応答を生成させる。
【0116】
すなわち、外部から印加される電磁励起場により、コイル素子13は電磁励起場の影響を受ける結果となる。これにより、コイル素子13の出力電圧が生成される。ここで、この出力電圧は、共振器素子11の共振周波数に近い周波数成分を提供する。これは、コイル素子13の材料および巻線をそれぞれ適切に選択することによって、および/または、電磁場を適切に選択することによって、および/または共振周波数に近くなるように周波数を調整するキャパシタを使用することによって、達成され得る。
【0117】
そして、出力電圧は、共振器素子11に供給される。受信された出力電圧に応答して、共振器素子11は、その圧電特性によって変形される。これは、出力電圧の周波数成分に起因する共振モードにおける機械的振動を引き起こす。これは、外部から印加される励起場がスイッチオフされても、機械的振動が持続的であることを意味する。機械的振動は圧電電圧の発生を引き起こし、圧電電圧は、次いで、コイル素子13に戻される。これにより、コイル素子13に電流が発生し、コイル素子13から磁場が放射される。機械的振動は、共振モードで励起されることに起因して持続的であるので、共振器素子のエネルギー保存特性に起因して、共振回路の減衰は小さい。したがって、このようにして生成された共振回路は、高い品質係数、したがって、高い周波数分解能、および高い感度を有する。さらにそれは、高い品質係数によって、かなり簡単な方法で読み出されることができる。図3による例示的な実施形態では、マーカー装置1は、共振器素子11に結合された検知材料をさらに備える。図3による特定の実施形態では、検知材料は、共振器素子11と磁性物体12との間の接続材料として提供される放射感受性材料である。ここで、検知材料は、放射線に曝露されると凝固する流体に対応する。図3による特定の実施形態では、マーカー装置1が放射線を受けると、流体の検知材料は固体になる。これにより、共振器素子11の発振周波数が変化し、共振器素子11が出力する圧電電圧およびそれに応じてコイル素子13が発生する磁場が変化する。したがって、この変化は、共振回路全体の振動応答に影響を及ぼす。
【0118】
共振回路によるこの振動応答は、追跡アレイ200によってピックアップされ得る。追跡アレイ200は、振動応答を用いて応答信号を生成する。応答信号は、追跡アレイ200から位置決定ユニット300に提供される。位置決定ユニット300は、追跡アレイ200から応答信号を受信し、さらに励起場発生器100から位置情報を受信する。励起場発生器100からの位置情報および追跡アレイ200からの応答信号に基づいて、位置決定ユニット300は、励起場発生器100および追跡アレイ200に対する、マーカー装置1の位置、したがってマーカー装置が取り付けられた装置の位置を決定することができる。これにより、位置検出ユニット300は、マーカー装置1の位置を決定することができる。
【0119】
特に、位置追跡のために、図3による特定の実施形態は、マーカー装置1内のコイル素子13の飽和を使用する勾配ベースの追跡アプローチを使用することを考える。すなわち、コイル素子13を飽和させる外部飽和磁界を発生させるための飽和磁場発生器100が設けられる。ここで、この飽和磁場には勾配が与えられる。
【0120】
この勾配は、追跡アレイ200によってキャプチャされる振幅が、検知ユニットが勾配磁場内に設けられる位置および向きに応じて異なることを意味する。したがって、測定された振幅は、励起場発生器100および追跡アレイ200から提供される位置情報を相関させることによって、励起場におけるマーカー装置1の位置を、特定の平面などの、励起場内の特定の領域に限定することを可能にする。
【0121】
そして、この測定は、異なる勾配を有する飽和磁場を用いて繰り返されることができる。異なる勾配でこの種の測定を数回繰り返すことにより、マーカー装置の特定の位置を決定することができる。そして、マーカー装置の特定の位置は、表示ユニット500上でユーザのために出力され得る。
【0122】
図3による特定の実施形態では、追加の飽和磁場が生成されて使用されるが、他の実施形態では、外部から印加される励起場を使用してコイル素子13を直接飽和させることができる。これらの実施形態では、マーカー装置1における励起、すなわち、コイル素子13によって生成される出力電圧の振幅および共振器素子11によって実行される機械的振動の振幅は、外部から印加される励起場の非線形関数に対応する。
【0123】
追跡システム3は、物理的パラメータ決定ユニット400をさらに備える。また、物理的パラメータ決定ユニット400は、追跡アレイ200から応答信号を受信する。追跡アレイ10による振動応答に基づく応答信号は、共振器素子11と磁性物体12との間の流体接続材料の固化によって引き起こされる周波数の変化に関する情報を含む。そして、周波数の変化に関するこの情報に基づいて、物理的パラメータ決定ユニット400は、マーカー装置1に作用した放射線の存在を決定することができる。
【0124】
そして、この検知情報は、追跡および検知のグラフィカル表現を生成し、このグラフィカル表現をユーザに出力するように構成された表示ユニット500に提供されることができる。
【0125】
この装置を使用して、小型および大型の両方の寸法に対して、すなわち、装置の寸法決定とは無関係に、高い周波数分解能および高品い質係数を有する追跡および検知システムを提供することが可能である。
【0126】
そのために、図4は、追跡システム3'の第2の実施形態を概略的かつ例示的に示す。一般に、図4による第2の実施形態は、図3による実施形態と同じように機能する。その限りにおいて、簡潔にするために図3を参照する。
【0127】
図4の実施形態と上述の図3の実施形態との違いは、図4による実施形態では励起および飽和磁場発生器100および追跡アレイ200が単一の磁場アレイ1200として提供されることにある。すなわち、図4による実施形態では、励起場および/または飽和磁場を生成するために使用されるのと同じ磁場アレイがマーカー装置1による振動応答をピックアップするためにも使用される。この目的のために、磁場アレイ1200は、励起場および/または飽和磁場が生成されてマーカー装置1に作用するように提供される送信モードと、マーカー装置1内のコイル素子13によって生成される磁場をピックアップすることができる受信モードとの間で切り替えられることを可能にする回路を備える。マーカー装置1の共振回路が高い品質係数を有するため、この切り替えは比較的遅くなるだろう。述べられたように、マーカー装置1内の検知ユニット10による応答生成、ならびに、位置決定ユニット300、物理的パラメータ決定ユニット400および表示ユニット500内の応答信号の処理は図3に関連して説明したものと同じであり、磁場アレイ1200が既に生成された励起場および/または飽和磁場の値および位置を認識しているので、2つの別個のユニット、すなわち、励起および飽和場発生器100と追跡アレイ200との間の通信は必要ない。
【0128】
したがって、図4による実施形態では、使用される構成要素が少なく、単純な追跡システム3'が提供され得る。
【0129】
開示された実施形態に対する他の変形例は、図面、開示および添付の特許請求の範囲の検討から、請求項に記載された発明を実施する際に当業者によって理解され、実施されることができる。
【0130】
請求項において、単語「有する」は他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数性を排除するものではない。
【0131】
単一のユニット又は装置が、請求項に列挙されるいくつかの項目の機能を満たしてもよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。
【0132】
振動応答の処理、応答信号の生成、マーカー装置の位置の決定、および/または応答信号に基づく物理的パラメータの検知などの、1つまたはいくつかのユニットまたは装置によって実行される手順は、任意の他の数のユニットまたは装置によって実行されることができる。これらの手順、特にマーカー装置を追跡するための方法に従って追跡シスD3_テムによって実行されるマーカー装置の追跡は、コンピュータプログラムのプログラムコードとして、および/または専用のハードウェアとして実施されることができる。
【0133】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又はその一部として提供される、光記憶媒体又はソリッドステート媒体などの適切な媒体上に記憶され/配布されることができるが、インターネットまたは他の有線もしくは無線の電気通信システム等を介して、他の形態で配信されてもよい。
【0134】
請求項におけるいかなる参照符号も、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0135】
圧電特性を有する共振器素子とコイル素子とを備える検知ユニットを利用する、追跡されるべきマーカー装置とそれぞれの追跡システムとが提供され、特定の周波数を有する外部印加励起場が前記検知ユニットに作用するように印加され、前記検知ユニットは共振モードで持続する機械的振動を実行する前記共振器素子によって前記外部印加励起場に応答し、前記持続する機械的振動は圧電電圧をもたらし、前記圧電電圧は、前記コイル素子に、前記追跡システムによって検出され、前記マーカー装置の位置を決定するためおよび/または前記マーカー装置の周囲環境における物理的特性を検知するために使用され得る磁場を生成させる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4
【国際調査報告】