(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】神経障害の検出、及び一般的認知能力の測定のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/113 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
A61B3/113
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530158
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-05-10
(86)【国際出願番号】 US2021064774
(87)【国際公開番号】W WO2022140498
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522375198
【氏名又は名称】ビューマインド・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アベル フェルナンデス,ゲラルド
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA21
4C316AA22
4C316AA28
4C316AA30
4C316AB16
4C316FA04
4C316FB13
4C316FB21
(57)【要約】
眼球運動、動眼特徴、又は瞳孔の動きを測定することによって被験者における1つ以上の神経障害を検出し、かつ/又は認知能力を測定するためのシステムは、被験者がターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析している間、その被験者の眼球運動を監視するように構成されたアイトラッカーと、被験者がターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析している間、アイトラッカーからデータを受け取るように構成されたプロセッサと、プロセッサから受け取ったテストレポートを表示するように構成されたディスプレイと、を備え、そのプロセッサは、1つ以上の神経障害又は一般的認知能力の根拠についてアイトラッキングデータを分析することと、被験者の1つ以上の神経障害の検出又は認知能力の測定をテストレポートにおいて報告することと、を行うように更に構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼球運動、動眼特徴、又は瞳孔の動きを測定することによって被験者における1つ以上の神経障害を検出し、かつ/又は認知能力を測定するためのシステムであって、前記眼球運動の測定は、前記被験者がターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析している間に行われ、前記システムが、
a.被験者[5]がターゲット[15]を視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析している間、前記被験者[5]の眼球運動を監視するように構成された、アイトラッカー[10]と、
b.前記被験者[5]が前記ターゲット[15]を視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析している間、前記アイトラッカー[10]からデータを受け取るように構成された、プロセッサ[20]と、
c.前記プロセッサ[20]から受け取ったテストレポート[50]を表示するように構成された表示手段[40]と、を備え、
前記プロセッサ[20]が、1つ以上の神経障害又は一般的認知能力の根拠についてアイトラッキングデータを分析することと、前記被験者[5]の前記1つ以上の神経障害の検出又は認知能力の測定を、前記テストレポート[50]において報告することと、を行うように更に構成されている、システム。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記アイトラッカーから前記アイトラッキングデータを受け取ると、
a.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析する間、被験者の固視の総数をカウントすることと、
b.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析するときの、被験者の固視の前記総数が対照群を上回る場合、注意過程における低下が検出されることを前記テストレポートにおいて報告することと、を行うように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサが、前記アイトラッカーから前記アイトラッキングデータを受け取ると、
a.前記ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、追従、及び分析する間、前記被験者の正しい着地位置の数をカウントすることと、
b.前記被験者の正しい着地位置の前記数が前記対照群を下回る場合、実行過程における低下が検出されることを前記テストレポート[50]において報告することと、を行うように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記アイトラッカーから前記アイトラッキングデータを受け取ると、
a.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析しようとする間、発信サッケードに向けられた正しいキューの数をカウントすることと、
b.前記被験者が行う、発信サッケードに向けられた正しいキューのパーセンテージ数が前記対照群を下回る場合、実行過程における低下が検出されることを前記テストレポートにおいて報告することと、を行うように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサが、前記アイトラッカーから前記アイトラッキングデータを受け取ると、
a.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析しようとする間、前記被験者の発信サッケードの反対側のキュー方向の数をカウントすることと、
b.発信サッケードの反対側のキュー方向のパーセンテージ数が前記対照群を上回る場合、抑制過程における低下が検出されることを前記テストレポートにおいて報告することと、を行うように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記プロセッサが、前記アイトラッカーから前記アイトラッキングデータを受け取ると、
a.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析する間、1つの固視から次の固視までの平均サッケード振幅を算出することと、
b.前記平均サッケード振幅が前記対照群を下回る場合、実行過程における低下が検出されることを前記テストレポートにおいて報告することと、を行うように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記アイトラッカーから前記アイトラッキングデータを受け取ると、
a.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析するための送出視線を向ける間、前記被験者のサッケード潜時の長さをカウントすることと、
b.前記サッケード潜時の長さ(時間)が前記対照群を上回る場合、速度処理における低下が検出されることを前記テストレポートにおいて報告することと、を行うように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記被験者の瞳孔径を測定するための手段[15]を更に備え、前記プロセッサが、
a.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析するときに、前記被験者の前記瞳孔径をトラッキングすることと、
b.前記被験者の前記瞳孔径が、ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析することが進むにつれて、変調を示さない場合、ノルアドレナリン作動系における低下が検出されることを前記テストレポートにおいて報告することと、を行うように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサが、前記アイトラッカーから前記アイトラッキングデータを受け取ると、
a.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析しようとする間、前記被験者の固視継続時間の長さを考慮に入れることと、
b.前記固視継続時間の長さが前記対照群を上回る場合、オンライン処理における低下が検出されることを前記テストレポートにおいて報告することと、を行うように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサが、前記アイトラッカーから前記アイトラッキングデータを受け取ると、
a.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析しようとする間、前記被験者の凝視継続時間を考慮に入れることと、
b.前記凝視継続時間の長さが前記対照群を上回る場合、オンライン処理における低下が検出されることを前記テストレポートにおいて報告することと、を行うように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記プロセッサが、前記アイトラッカーから前記アイトラッキングデータを受け取ると、
a.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析する間、認識された正しいターゲットの数をカウントすることと、
b.前記認識された正しいターゲットの数が前記対照群を下回る場合、実行過程及びワーキングメモリ過程における低下が検出されることを前記テストレポートにおいて報告することと、を行うように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
眼球運動及び瞳孔の動きを測定し、かつインテリジェントアルゴリズムを適用することによって、被験者における1つ以上の神経障害を検出し、かつ認知能力を点検するためのシステムであって、眼球運動の前記測定は、前記被験者がターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析する間に行われ、前記システムが、
a.アイトラッカー[10]であって、被験者[5]がターゲット[15]を視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析している間、前記被験者[5]の眼球運動及び瞳孔の動きを監視するように構成されている、アイトラッカー[10]と、
b.プロセッサ[20]であって、前記被験者[5]がターゲット[15]を視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析している間、前記アイトラッカー[10]からデータを受け取るように構成されている、プロセッサ[20]と、
c.病理において、かつ病理内において眼球運動の特徴を学習し、識別し、類型化し、かつ分類するためのインテリジェントアルゴリズムと、
d.表示手段[40]であって、前記プロセッサ[20]から受け取ったテストレポート[50]に前記インテリジェントアルゴリズムの出力を表示するように構成されている、表示手段[40]と、を備え、
前記プロセッサ[20]が、1つ以上の神経障害の根拠について、及び認知能力から、前記アイトラッキングデータを分析及びモデル化し、病理間及び病理内の両方で、前記被験者[5]の前記1つ以上の神経障害の検出及び分類を前記テストレポート[50]において報告するように更に構成されている、システム。
【請求項13】
前記プロセッサが、前記アイトラッカーから前記アイトラッキングデータを受け取ると、ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析する間の、眼球運動特徴及び瞳孔の動きを識別及び分類して、被験者の認知能力及び/又は病理学的分類(すなわち、各被験者の眼球運動特徴に基づく、前記被験者に対応する病理を前記テストレポートにおいて報告するための分類子の出力、並びに前記病理内の値(すなわち、前記被験者が特定の病理内で示す認知的、行動的、及び生物学的低下のレベル)を提供するように更に構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記インテリジェントアルゴリズムが、少なくとも1つの入力を読み取るように構成され、前記入力が、以下からなる群から選択される、請求項8に記載のシステム。
a.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析する間の、被験者の固視の総数のインデックス。
b.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析する間の、前記被験者の正しい着地位置のインデックス。
c.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析する間、前記被験者が行う、発信サッケードに向けられた正しいキューのインデックス。
d.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析する間の、前記被験者の発信サッケードの反対側のキュー方向のインデックス。
e.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析するための送出視線を向ける間の、前記被験者のサッケード潜時の長さのインデックス。
f.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析する間の、1つの固視から次の固視までの平均サッケード振幅。
g.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析する間の、前記被験者の瞳孔径。
h.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析する間の、前記被験者の固視継続時間。
i.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析する間の、前記被験者の凝視継続時間。
j.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析するときの、左眼、右眼から、又はその両方から生じる瞬きのインデックス。
k.マイクロサッケードのフォームファクタ(FF)、すなわち:
ki.HEWI:前記マイクロサッケードの高さ/幅の関係を示す。
kii.AREA:前記マイクロサッケードが内接される矩形の面積を示す。
kiii.LONG:前記マイクロサッケードの水平-垂直面の軌跡の長さである。
kiv.ANG:
前記マイクロサッケードの平坦な水平-垂直面における全ての角度の合計である。
kv.AANG:前記マイクロサッケードの平坦な水平-垂直面における、ラジアン単位の角度の全ての絶対値の合計である。
kvi.FF:前記マイクロサッケードの軌道の規則性の推定を与える。
kvii.MOD及びTHETA:デカルト座標の合計の極座標の係数及び角度である。前記係数及び前記角度は、前記固視の中央値に関して前記マイクロサッケードの空間定位を与える。
kviii.TIME:前記マイクロサッケードのミリ秒単位での継続時間である。
kix.VMIN及びVMAX:
1秒当たりの度単位の、前記マイクロサッケードの最小速度及び最大速度である。
kx.マイクロサッケードレート:各時間区切りにおける瞬間レートである。
kxi.方向性一致:前記マイクロサッケードの方向と、刺激の位置との間の一致である。
l.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、及び分析する間の、左眼、右眼から、又はその両方から生じる眼球位置(すなわち、横座標及び縦座標)。
m.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、及び分析する間の、固視シーケンス(すなわち、視線の動き)。前記シーケンスは、画像、マトリックスなどから入手可能となる。
n.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、及び分析する間の、固視間の分離の距離。
o.前記被験者のフィリア情報(すなわち、年齢、学歴年数、性別、人種、職業、週当たりの身体活動時間)。
p.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析する総時間(すなわち、前記被験者が、試行を通じてターゲットを視覚化するときに費やした時間)。
q.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析する間に認識される正しいターゲットの数。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月23日に出願された、「SYSTEM AND METHOD FOR DETECTING NEUROLOGICAL DISORDERS AND FOR MEASURING GENERAL COGNITIVE PERFORMANCE WHILE DOING GO AND NO-GO TASK AND MOVING TARGET TASK」と題する米国仮特許出願第63/130,266号の利益を主張する。本出願はまた、国際出願第PCT/I12018/051316(WO2019/106678)にも関連し、その国際出願日は、2018年11月30であり、「SYSTEM AND METHOD FOR DETECTING NEUROLOGICAL DISORDERS AND FOR MEASURING GENERAL COGNITIVE PERFORMANCE」と題し、その内容は、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、神経障害を検出し、かつ一般的認知能力を測定するためのシステム及び方法に関し、特に、Goタスク及びNo-Goタスクの間中、眼球運動、動眼特徴、及び/又は瞳孔径を測定し、ターゲットタスクを移動させることによるものである。
【背景技術】
【0003】
アイトラッキングを診断ツールとして使用することは、当技術分野で実施されている。
【0004】
米国特許第4,889,422号は、読書障害の存在を判定するための自動式システムを開示している。そのシステムは、眼球刺激手段、眼球運動検出器、眼球位置を経時的に表すデータを収集するプロセッサ、及び、そのデータを分析して、眼球運動を、マイクロ運動、サッケード運動、追跡運動、収束発散運動、固視、及び瞬きに分類するための分析プログラムを備える。固視の総数が視覚刺激の数を上回る場合、読書障害が存在するという最初の指標が登録される。
【0005】
神経障害を診断するための広く入手可能なツールの必要性が、長い間切実に感じられている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、被験者がターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析している間に眼球運動を登録することによって、被験者における1つ以上の神経障害を検出し、かつ、健康な被験者の認知能力も測定するためのシステムを提供することであり、このシステムは、
a.被験者[5]がターゲット[15]を視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析している間、被験者[5]の眼球運動を監視するように構成された、アイトラッカー[10]と、
b.被験者[5]がターゲット[15]を視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析している間、アイトラッカー[10]からデータを受け取るように構成された、プロセッサ[20]と、
c.プロセッサ[20]から受け取ったテストレポート[50]を表示するように構成された表示手段[40]と、を備え、
プロセッサ[20]は、1つ以上の神経障害、及び/又は一般的認知能力の根拠についてアイトラッキングデータを分析することと、被験者[5]の1つ以上の神経障害の検出又は認知能力の測定を、テストレポート[50]において報告することと、を行うように更に構成される。
【0007】
上述したような本発明の別の目的であり、プロセッサは、アイトラッカーからアイトラッキングデータを受け取ると、
a.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析しようとする間、被験者の固視の総数をカウントすることと、
b.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析するときの、被験者の固視の総数が対照群を上回る場合、注意過程における低下が検出されることをテストレポートにおいて報告することと、を行うように更に構成される。
【0008】
上述したような本発明の別の目的であり、プロセッサは、アイトラッカーからアイトラッキングデータを受け取ると、
a.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析する間、被験者の正しい着地位置の数をカウントすることと、
b.被験者の正しい着地位置のパーセンテージ数が対照群を下回る場合、実行過程における低下が検出されることをテストレポート[50]において報告することと、を行うように更に構成される。
【0009】
上述したような本発明の別の目的であり、プロセッサは、アイトラッカーからアイトラッキングデータを受け取ると、
a.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析しようとする間、発信サッケードに向けられた正しいキューの数をカウントすることと、
被験者が行う、発信サッケードに向けられた正しいキューのパーセンテージ数が対照群を下回る場合、実行過程における低下が検出されることをテストレポートにおいて報告することと、を行うように更に構成される。上述したような本発明の別の目的であり、プロセッサは、アイトラッカーからアイトラッキングデータを受け取ると、
a.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析しようとする間、被験者の発信サッケードの反対側のキュー方向の数をカウントすることと、
b.発信サッケードの反対側のキュー方向のパーセンテージ数が対照群を上回る場合、抑制過程における低下が検出されることをテストレポートにおいて報告することと、を行うように更に構成される。
【0010】
上述したような本発明の別の目的であり、プロセッサは、アイトラッカーからアイトラッキングデータを受け取ると、
a.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析するための送出視線を向ける間、被験者のサッケード潜時の長さをカウントすることと、
b.サッケード潜時の長さ(時間)が対照群を上回る場合、速度処理における低下が検出されることをテストレポートにおいて報告することと、を行うように更に構成される。
【0011】
本発明の別の目的は、眼球運動を測定することによって、被験者における1つ以上の神経障害、及び/又は一般的認知能力を検出することであり、プロセッサは、アイトラッカーからアイトラッキングデータを受け取ると、
a.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析するための送出視線を向ける間、1つの固視から次の固視への平均サッケード振幅を算出することと、
b.平均サッケード振幅が対照群の場合と異なる場合、実行過程における低下が検出されることをテストレポートにおいて報告することと、を行うように更に構成される。
【0012】
上述したような本発明の別の目的は、被験者の瞳孔径を測定するための手段[17]を更に備えることであり、プロセッサは、
a.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析するときに、被験者の瞳孔径をトラッキングすることと、
b.被験者の瞳孔径がターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析することが進むにつれて、変調を示さない場合、ノルアドレナリン作動系における低下が検出されることをテストレポートにおいて報告することと、を行うように更に構成される。
【0013】
上述したような本発明の別の目的であり、プロセッサは、アイトラッカーからアイトラッキングデータを受け取ると、
a.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析しようとする間、被験者の固視継続時間の長さを考慮に入れることと、
b.固視継続時間の長さが対照群を上回る場合、オンライン処理における低下が検出されることをテストレポートにおいて報告することと、を行うように更に構成される。
【0014】
上述したような本発明の別の目的であり、プロセッサは、アイトラッカーからアイトラッキングデータを受け取ると、
a.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析しようとする間、被験者の凝視継続時間を考慮に入れることと、
b.凝視継続時間の長さが対照群を上回る場合、オンライン処理における低下が検出されることをテストレポートにおいて報告することと、を行うように更に構成される。
【0015】
本発明の別の目的は、眼球運動を測定することによって、被験者における1つ以上の神経障害、及び/又は一般的認知能力を検出することであり、プロセッサは、アイトラッカーからアイトラッキングデータを受け取ると、
a.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析する間に認識された正しいターゲットの数をカウントすることと、
b.認識された正しいターゲットの数が対照群を下回る場合、実行過程及びワーキングメモリ過程における低下が検出されることをテストレポートにおいて報告することと、を行うように更に構成される。
【0016】
本発明の目的は、眼球運動及び瞳孔の動きを測定してインテリジェントアルゴリズムを適用することによって、被験者における1つ以上の神経障害を検出し、かつ認知能力を点検するためのシステムを提供することであり、眼球運動の測定は、被験者がターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析している間に行われ、そのシステムは、
a.アイトラッカー[10]であって、被験者[5]がターゲット[15]を視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析している間、被験者[5]の眼球運動、動眼特徴、及び瞳孔の動きを監視するように構成されている、アイトラッカー[10]と、
b.プロセッサ[20]であって、被験者[5]がターゲット[15]を視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析している間、アイトラッカー[10]からデータを受け取るように構成されている、プロセッサ[20]と、
c.病理学において、及び病理内において眼球運動特徴を学習し、識別し、類型化し、かつ分類するためのインテリジェントアルゴリズムと、
d.表示手段[40]であって、プロセッサ[20]から受け取ったテストレポート[50]にインテリジェントアルゴリズムの出力を表示するように構成されている、表示手段[40]と、を備え、
プロセッサ[20]は、1つ以上の神経障害の根拠について、及び認知能力から、アイトラッキングデータを分析及びモデル化し、病理間及び病理内の両方で、被験者[5]の1つ以上の神経障害の検出及び分類をテストレポート[50]において報告するように更に構成される。
【0017】
上述したような本発明の別の目的であり、プロセッサは、アイトラッカーからアイトラッキングデータを受け取ると、ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析する間の、眼球運動特徴及び瞳孔の動きを識別及び分類して、被験者の認知能力及び/又は病理学的分類(すなわち、各被験者の眼球運動特徴に基づく、被験者に対応する病理をテストレポートにおいて報告するための分類子の出力、並びに病理内の値(すなわち、被験者が特定の病理内で示す認知的、行動的、及び生物学的低下のレベル)を提供するように更に構成される。
【0018】
上述したような本発明の別の目的であり、インテリジェントアルゴリズムは、少なくとも1つの入力を読み取るように構成され、その入力は、以下からなる群から選択される。
a.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析する間の、被験者の固視の総数のインデックス。
b.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析する間の、被験者の正しい着地位置のインデックス。
c.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析する間、被験者が行う、発信サッケードに向けられた正しいキューのインデックス。
d.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析する間の、被験者の発信サッケードの反対側のキュー方向のインデックス。
e.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析するための送出視線を向ける間の、被験者のサッケード潜時の長さのインデックス。
f.1つの固視から次の固視までの平均サッケード振幅。
g.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析する間の、被験者の瞳孔径。
h.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、及び分析する間の、被験者の固視継続時間。
i.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析する間の、被験者の凝視継続時間。
j.左眼、右眼から、又はその両方から生じる瞬きのインデックス。
k.マイクロサッケードのフォームファクタ(FF)、すなわち、
i.HEWI:マイクロサッケードの高さ/幅の関係を示す。
ii.AREA:マイクロサッケードが内接される矩形の面積を示す。
iii.LONG:マイクロサッケードの水平-垂直面の軌跡の長さである。
iv.ANG:マイクロサッケードの平坦な水平-垂直面における全ての角度の合計である。
v.AANG:マイクロサッケードの平坦な水平-垂直面における、ラジアン単位の角度の全ての絶対値の合計である。
vi.FF:マイクロサッケードの軌道の規則性の推定を与える。
vii.MOD及びTHETA:デカルト座標の合計の極座標の係数及び角度である。その係数及び角度は、固視の中央値に関してマイクロサッケードの空間定位を与える。
viii.TIME:マイクロサッケードのミリ秒単位の継続時間である。
ix.VMIN及びVMAX:
1秒当たりの度単位の、マイクロサッケードの最小速度及び最大速度である。
x.マイクロサッケードレート:各時間区切りにおける瞬間レートである。
xi.方向性一致:マイクロサッケードの方向と、刺激の位置との間の一致である。
l.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析する間の、左眼、右眼から、又はその両方から生じる眼球位置(すなわち、横座標及び縦座標)。
m.ターゲットの視覚化、認識、維持、照合、順序付け、及び分析の間の、固視シーケンス(すなわち、視線の動き)。このシーケンスは、画像、マトリックスなどから入手可能となる。
n.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析する間の、固視間の分離の距離。
o.被験者のフィリア情報(すなわち、年齢、学歴年数、性別、人種、職業、週当たりの身体活動時間)。
p.ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、順序付け、追従、及び分析する総時間(すなわち、被験者が、試行を通じてターゲットを視覚化するときに費やした時間)。
【0019】
本発明の目的は、Goタスク及びNo-Goタスクに関連付けられた神経機能、並びに/又は一般的認知リソースにおける低下を評価するための方法[]、速度処理、並びにターゲットタスクを移動させることを提供することであり、その方法は、
a.神経機能における低下を評価し、かつ/又はGoタスク及びNo-Goタスク、速度処理、並びにターゲットタスクを移動させることに関連付けられた一般的認知リソースを測定するための方法を提供することと、
b.被験者に、キュー参照及び/又は参照ターゲット[]を固視するように要求することと、
c.いくつかの繰り返しについて、画面[]のいずれかの場所のうちの1つに、刺激画像-キュー参照及び/又は参照ターゲット-を提示することであって、被験者は、ターゲットを固視するか、若しくはターゲットを固視することを回避し、かつ/又は、ターゲットが画面を通じて1つの場所から他の1つの場所に移動するときに、そのターゲットに追従するように要求され、ターゲットの出現の時間速度(すなわち、ターゲットが画面を通じてどの程度速く提示されるか)は、ターゲットを処理するための被験者の速度に応じて、増加又は減少させることができる、提示することと、
d.いくつかの試行についてステップb及びcを繰り返すこと[]と、を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、方法[]は、ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析しようとする間、被験者の固視の総数をカウントするステップと、ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析しようとするときに、被験者の固視の総数が対照群[]を上回る場合、注意過程及び実行過程における低下が検出されることを報告するステップを更に含む。
【0021】
生理学的には、実行過程における低下は、前頭葉、側頭葉、及び/又は頭頂葉における劣化と相関している。いくつかの実施形態では、瞳孔の動きの異常性に関するレポートは、追加の治療で使用され得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、方法[]は、ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析しようとする間、被験者の正しい着地位置の数をカウントするステップと、その被験者の正しい着地位置のパーセンテージ数が対照群を下回る場合に、実行過程における低下が検出されることを報告するステップと、を更に含む。
【0023】
生理学的には、実行過程における低下は、前頭葉、側頭葉、及び/又は頭頂葉における低下と相関している。いくつかの実施形態では、瞳孔の動きの異常性に関するレポートは、追加の治療で使用され得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、方法[]は、ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析しようとする間、被験者の発信サッケードに向けられた正しいキューの数をカウントするステップと、被験者が行う発信サッケードに向けられた正しいキューのパーセンテージ数が対照群[]を下回る場合、実行過程及び探索過程における低下が検出されることを報告するステップと、を更に含む。
【0025】
生理学的には、実行過程における低下は、前頭葉、側頭葉、及び/又は頭頂葉における低下と相関している。いくつかの実施形態では、瞳孔の動きの異常性に関するレポートは、追加の治療で使用され得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、方法[]は、ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析するための視線送出を向ける間、被験者のサッケード潜時の長さをカウントするステップと、サッケード潜時の長さ(時間)が対照群[]を上回る場合、速度処理における低下が検出されることを報告するステップを更に含む。
【0027】
生理学的には、より遅いサッケード速度は、前頭眼野、大脳基底核、及び上丘における外観と相関している。いくつかの実施形態では、サッケード潜時における外観に関するレポートは、追加の治療において使用され得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、方法[]は、ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析するために、1つの固視から次の固視への平均サッケード振幅をカウントするステップと、その平均サッケード振幅が対照群[]の場合と異なる場合、実行過程における低下が検出されることを報告するステップと、を更に含む。
【0029】
生理学的には、より遅いサッケード速度は、大脳基底核及び上丘の外観と相関している。いくつかの実施形態では、サッケード潜伏期における外観に関するレポートは、追加の治療において使用され得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、方法[]は、ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析する間、瞳孔径をトラッキングするステップと、被験者の瞳孔径が、ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析することが進むにつれて、変調を示さない場合、ノルアドレナリン作動系における低下が検出されることを報告するステップ[]と、を更に含む。
【0031】
生理学的には、瞳孔の動きの異常性は、青斑核、ノルアドレナリン作動系、及び上丘の外観と相関している。いくつかの実施形態では、瞳孔の動きの異常性に関するレポートは、追加の治療で使用され得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、方法[]は、ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析する間、被験者の固視継続時間の長さをカウントするステップと、固視継続時間の長さが対照群[]を上回る場合、オンライン処理における低下が検出されることを報告するステップと、を更に含む。
【0033】
生理学的には、オンライン処理における低下は、前頭前皮質、前頭眼野、及び背頭頂葉皮質の劣化と相関している。いくつかの実施形態では、ワーキングメモリ過程、抑制過程、及び精神的柔軟性における低下に関するレポートは、追加の治療において使用され得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、方法[]は、ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析する間、被験者の凝視継続時間の長さをカウントするステップと、固視継続時間が対照群[]を上回る場合、オンライン処理における低下が検出されることを報告するステップと、を更に含む。
【0035】
生理学的には、オンライン処理における低下は、前頭前皮質、前頭眼野、及び背頭頂葉皮質の劣化と相関している。いくつかの実施形態では、ワーキングメモリ過程、抑制過程、及び精神的柔軟性における低下に関するレポートは、追加の治療において使用され得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、方法[]は、ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析する間、被験者の認識された正しいターゲットの数をカウントするステップと、認識された正しいターゲットの数が対照群を下回る場合、ワーキングメモリ過程における低下が検出されることを報告するステップと、を更に含む[]。
【0037】
生理学的には、ワーキングメモリにおける低下が、前頭前皮質及び後頭頂葉皮質における外観と相関している。いくつかの実施形態では、ワーキングメモリ過程、抑制過程、及び精神的柔軟性における低下に関するレポートは、追加の治療において使用され得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、方法[]は、ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析する間、被験者の左眼、右眼、又は両眼ターゲットから生じる眼球位置をカウントするステップと、眼球データの数が対照群と異なる場合、協調過程及び探索過程における低下が検出されることを報告するステップと、を更に含む[]。
【0039】
生理学的には、相違した眼球位置は、前頭眼野、大脳基底核、上丘、及び小脳における外観と相関している。いくつかの実施形態では、サッケード潜伏期における外観に関するレポートは、追加の治療において使用され得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、方法[]は、ターゲットを視覚化、認識、維持、照合、抑制、順序付け、追従、及び分析する間、被験者の固視と、変化した運動協調との間の分離距離をカウントするステップと、眼球データの数が対照群[]の場合と異なる場合、協調過程及び探索過程における低下が検出されることを報告するステップと、を更に含む。
【0041】
生理学的には、眼球固定間の距離、及び/又は変化した運動協調速度は、前頭眼野、大脳基底核、せつ前部、及び上丘の外観と相関している。いくつかの実施形態では、サッケード潜伏期における外観に関するレポートは、追加の治療において使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による、被験者の1つ以上の神経障害を検出するためのシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本出願において、「マイクロサッケード」という用語はまた、「フリック」としても知られており、固視期間中に行われる小さなサッケードである。それらは、固視的な眼球運動の中で最大、かつ最速である。本出願において、「サッケード」という用語は、固視の2つ以上の段階の間における両眼の迅速な同時運動に関係する。
【0044】
本出願において、「視線ドリフト」という用語は、対象物に固視したときに、眼球のより滑らかで、よりゆっくりとしたローミング運動によって特徴付けられた固視眼球運動である。
【0045】
本出願において、「視線常時微動」(OMT)という用語は、40~100Hzの範囲の周波数で起こる眼球のわずかに、素早く、かつ同期した振動であるが、それらは、典型的には、平均的に健康な個人において、約90Hzで起こる。それらは、その高い周波数、及びほんの数角度秒の微小振幅によって特徴付けられる。
【0046】
本出願において、「刺激画像」という用語は、ディスプレイ内に被験者に対して提示される特定の視覚パターン又はターゲットを指す。「視覚タスク」という用語は、それぞれの刺激画像を処理する間、被験者に行わせる活動を指す。
【0047】
ここで、本発明の非限定的な実施形態を詳細に説明する。
【0048】
ここで、
図1を参照すると、本発明のいくつかの実施形態による、被験者5の神経障害又は神経機能を検出するためのシステム100を示している。
【0049】
システム100は、アイトラッカー10、瞳孔径を測定するための手段15、プロセッサ20、及び表示手段40を備える。
【0050】
アイトラッカー10は、当技術分野において既知である任意のタイプのもの、例えば、眼球取り付け式トラッカー、光学式アイトラッカー、又は電気光学式アイトラッカーであってもよい。
【0051】
瞳孔径を測定するための手段15は、例えば、眼球の画像を取得するように構成されたカメラ、及びその画像から瞳孔径を測定するための処理ユニットを含むことができる。処理ユニットに対する別の方法として、手段15は、表示を閲覧する間に行われる手動測定を伴う画像の表示を含むことができる。
【0052】
アイトラッカー10、及び瞳孔径15を測定するための手段は、プロセッサ20と通信接続されている。この通信接続は、当技術分野において既知である任意の形態のものであり得、有線(例えば、USB、パラレルポート、若しくは同様のもの)か、又は無線(例えば、WiFi、Bluetooth、若しくは同様のもの)のいずれかとすることができる。
【0053】
プロセッサ20は、1つ以上のメモリ媒体60、例えば、RAM、CD/DVD、HDD、フラッシュメモリ、及び/又は任意の適切な媒体に記憶された命令を受信して、実行する。それらの命令は、プロセッサ20に指令して、1)アイトラッカー10からアイトラッキングデータを受け取ること、2)瞳孔径を測定する手段15から瞳孔径データを受け取ること、3)(本明細書に更に説明された)アイトラッキングデータ及び瞳孔径データを分析すること、4)表示手段40に表示するために、被験者5における記憶結合機能の1つ以上の障害の検出又は非検出に関するテストレポート50を報告すること、を行わせる。表示手段40は、モニタ、スマートフォンなどのモバイルデバイスの画面、プリントアウト、又はテストレポート50を表示する任意の適切な手段とすることができる。プロセッサ20は、メモリ媒体60内に、受け取ったアイトラッキングデータ、分析の任意の段階における中間結果、及び/又はテストレポート50を記憶することができる。
【0054】
システム100によって検出された神経障害は、処理機能、例えば、ターゲットの符号化及び認識における低下、注意過程における低下、認知リソースにおける低下、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。他の実施形態では、検出される障害には、多発性硬化症(MS)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、パーキンソン病(PD)、アルツハイマー病(AD)、慢性ストレス(CS)、大うつ病(MJ)、薬物低下(DC)等が含まれ得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、プロセッサ20は、被験者5が1つ以上のターゲット30の各々を閲覧する間、アイトラッカー10からアイトラッキングデータを受け取る。プロセッサ20は、被験者5によって閲覧された各ターゲット30に対する被験者5の凝視継続時間を測定する。プロセッサ20は、被験者5によるターゲット30の各々に対する平均凝視継続時間を計算する。被験者5のターゲット30に対する凝視継続時間の平均が対照群についての平均凝視継続時間よりも長い場合、プロセッサ20は、ターゲット符号化及び認識過程における低下が被験者5において検出されていることをテストレポート50に報告する。
a.いくつかの実施形態では、プロセッサ20は、追加的に又は代替的に、ターゲット30の各々を閲覧する間、被験者5によって行われた固視の数をカウントする。ターゲット30の各々を閲覧する間、被験者5によって行われた固視の数が対照群を上回る場合に、プロセッサ20は、注意過程における低下が被験者5において検出されていることをテストレポート50に報告する。
【0056】
いくつかの実施形態では、プロセッサ20は、被験者5がより少ない認知努力を必要とする活動を実行する間、瞳孔径を測定する手段15から瞳孔径データを受け取る。プロセッサ20は、被験者5が、より少ない認知努力を必要とする活動よりも、より大きな認知努力を必要とする活動を実行する間、瞳孔径を測定する手段15から瞳孔径データを更に受け取る。より大きな認知努力を必要とする活動を実行する間の、被験者5の平均瞳孔径が、より少ない認知努力を必要とする活動を実行する間の、被験者5の平均瞳孔径を超える増加を示さない場合に、プロセッサ20は、認知リソースにおける低下が被験者5において検出されていることをテストレポート50に報告する。
【0057】
対照群は、被験者5と同じ人口統計学的分野における統計学的に典型的な図式(例えば、被験者5と同じ性別、人種、国民文化、年齢群、及び/又は他の人口統計学的特徴)を含むことができる。対照群についてのアイトラッキングデータは、システム100によって取得されてもよく、又はそれ以外の場合は、以前の研究調査及び/若しくは治験から収集されてもよい。被験者5の平均凝視継続時間又は固視の数が、対照群についての平均図の選択された範囲内、すなわち、対照群についての対応する図の分布の約1つの標準偏差内にある場合、システム100は、被験者5の平均凝視継続時間又は固視の数を、対照群についての平均対応図と同等であるものとして取り扱うことができる。
【0058】
プロセッサ20によって受け取ったアイトラッキングデータは、アイトラッカー10によって測定された一連の眼球位置とすることができ、そのプロセッサ20は、そのデータを分析して、被験者5の凝視継続時間及び固視を見出すことが理解される。あるいは、プロセッサ20は、前処理された一連の信号をアイトラッカー10から受け取ることができ、各信号は、凝視継続時間、又は、固視が起きたことを信号伝達する。それらの信号は、任意選択的に、メタデータ(例えば、眼球位置、時間、及び/又は固視の長さ)とともに付随され得る。
【国際調査報告】