(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】腫瘍治療のための4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-D]ピリミジン-5-カルボキサミドの使用法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5377 20060101AFI20231227BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231227BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231227BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20231227BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20231227BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20231227BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20231227BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20231227BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20231227BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20231227BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20231227BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20231227BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20231227BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20231227BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20231227BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231227BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231227BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
A61K31/5377 ZNA
A61P35/00
A61P11/00
A61P35/04
A61K9/20
A61K47/12
A61K47/38
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/20
A61K47/14
A61P1/00
A61P5/14
A61P15/00
A61P1/18
A61P17/00
A61P25/00
C12N15/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530726
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2021082120
(87)【国際公開番号】W WO2022106529
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】505180070
【氏名又は名称】ヘルシン ヘルスケア ソシエテ アノニム
(71)【出願人】
【識別番号】000207827
【氏名又は名称】大鵬薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロヴァティ エマヌエラ
(72)【発明者】
【氏名】ジョルジーノ ルーベン
(72)【発明者】
【氏名】ドリア シモナ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアーノ クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】ボニファシオ アンナリーザ
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 美晴
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 功
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正徳
(72)【発明者】
【氏名】ベルナレッジ アルバート
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC18
4C076CC27
4C076CC30
4C076CC44
4C076DD43
4C076DD46
4C076DD57
4C076DD67
4C076EE16
4C076EE31
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA10
4C086CB05
4C086GA07
4C086GA12
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086ZA02
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZB26
4C086ZC06
(57)【要約】
本発明は、HM06/TAS0953を投与することを含む、RET遺伝子異常を有する癌の患者、例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)であり脳及び/又は軟髄膜転移もある可能性がある患者、又は別の固形腫瘍の患者を治療する組成物及び方法に関し、患者は、HM06/TAS0953を有効量で投与され、HM06/TAS0953は、組成物に配合することができ、単回用量又は複数回用量で経口投与することができ、並びに患者は、以前に別のRET選択的若しくはマルチキナーゼ阻害剤を投与されたことがある、及び/又は別のRET選択的若しくはマルチキナーゼ阻害剤に対して耐性を発生させてしまっている場合がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RET遺伝子異常を有する非小細胞肺癌(NSCLC)のヒト患者を治療する方法であって、前記ヒト患者に、4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドを含む組成物を投与することを含み、前記ヒト患者は、1日あたり約40mg~約3000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、方法。
【請求項2】
RET遺伝子異常を有する局所進行性又は転移性非小細胞肺癌(NSCLC)のヒト患者を治療する方法であって、前記ヒト患者に、4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドを含む組成物を投与することを含み、前記ヒト患者は、1日あたり約40mg~約1000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、方法。
【請求項3】
脳及び/又は軟髄膜転移のあるRET遺伝子異常を有する転移性非小細胞肺癌(NSCLC)のヒト患者を治療する方法であって、前記ヒト患者に、4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドを含む組成物を投与することを含み、前記ヒト患者は、4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドを有効量で投与される、方法。
【請求項4】
前記有効量は、1日あたり約40mg~約3000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記脳及び/又は軟髄膜転移は、無症候性である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
RET遺伝子異常を有する固形腫瘍のヒト患者を治療する方法であって、前記ヒト患者に、4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドを含む組成物を投与することを含み、前記ヒト患者は、1日あたり約40mg~約3000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、方法。
【請求項7】
RET遺伝子異常を有する固形腫瘍のヒト患者を治療する方法であって、前記ヒト患者に、4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドを含む組成物を投与することを含み、前記RET遺伝子異常は、RETタンパク質のソルベントフロント変異を含む、方法。
【請求項8】
脳及び/又は軟髄膜転移のあるRET遺伝子異常を有する固形腫瘍のヒト患者を治療する方法であって、前記ヒト患者に、4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドを含む組成物を投与することを含み、前記ヒト患者は、4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドを有効量で投与される、方法。
【請求項9】
前記有効量は、1日あたり約40mg~約3000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記脳及び/又は軟髄膜転移は、無症候性である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記ヒト患者は、1日あたり約150mg~約640mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒト患者は、1日あたり約160mg~約640mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ヒト患者は、1日あたり約320mg~約640mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ヒト患者は、1日あたり約480mg~約640mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ヒト患者は、1日あたり約640mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ヒト患者は、1日あたり約480mg~約3000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ヒト患者は、1日あたり約480mg~約2000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10及び16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ヒト患者は、1日あたり約480mg~約1500mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10、16及び17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ヒト患者は、1日あたり約480mg~約1280mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10及び16~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記ヒト患者は、1日あたり約480mg~約1000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10及び16~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記ヒト患者は、1日あたり約640mg~約3000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10及び16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記ヒト患者は、1日あたり約640mg~約2000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10、16、17及び21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記ヒト患者は、1日あたり約640mg~約1500mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10、16~18及び20~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記ヒト患者は、1日あたり約640mg~約1280mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10、16~18及び21~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記ヒト患者は、1日あたり約640mg~約1000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10、16~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記ヒト患者は、1日あたり3000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10、16及び21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記ヒト患者は、1日あたり2000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10、16、17、21及び22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記ヒト患者は、1日あたり1500mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10、16~18、及び21~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記ヒト患者は、1日あたり1280mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10、16~19及び21~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記ヒト患者は、1日あたり1000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10及び16~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記ヒト患者は、1日あたり約150mg~約500mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記ヒト患者は、1日あたり約160mg~約500mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~12及び31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記ヒト患者は、1日あたり約150mg又は約160mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~11及び31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物は、経口投与される、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物は、単一錠剤として又は複数の錠剤として、経口投与される、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
各錠剤は、約10mg又は約50mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等しい用量を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記組成物は、4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドの二塩酸塩を含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記組成物は、更に、クエン酸、結晶セルロース、ラクトース、ポリビニルN-ピロリドン、ラウリル硫酸ナトリウム、及び/又はベヘン酸グリセリルを含む、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記組成物は、1日1回(QD)又は1日2回(BID)投与される、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記組成物は、1日2回(BID)投与される、請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記ヒト患者は、1日2回(BID)、約160mg~約1500mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10及び34~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記ヒト患者は、1日2回(BID)、約160mg~約1000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10及び34~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記ヒト患者は、1日2回(BID)、約160mg~約750mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10及び34~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記ヒト患者は、1日2回(BID)、約160mg~約640mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10及び34~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記ヒト患者は、1日2回(BID)、約160mg~約500mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10及び34~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記ヒト患者は、1日2回(BID)、約160mg~約320mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~13及び34~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記ヒト患者は、1日2回(BID)、約320mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~25及び34~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記ヒト患者は、1日2回(BID)、約500mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10、16~25、30及び34~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記ヒト患者は、1日2回(BID)、約640mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10、16~19、21~24及び34~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記ヒト患者は、1日2回(BID)、約750mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10、16~18、21~23、28及び34~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記ヒト患者は、1日2回(BID)、約1000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10、16、17、21、22、27及び34~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記ヒト患者は、1日2回(BID)、約1500mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、請求項1~10、16、21、26及び34~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記投薬量は、体重50kg超の患者及び体重50kg未満の患者で同じである、請求項1~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記組成物は、少なくとも1回の21日治療サイクルで投与される、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記RET遺伝子異常は、RET遺伝子融合、点変異、欠損変異、RET遺伝子のコピー数増加、それらのうちの任意の1種以上の過剰発現、及びRET遺伝子の過剰発現のうち少なくとも1つを含む、請求項1~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記RET遺伝子異常は、RET遺伝子融合を含む、請求項1~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記RET遺伝子異常は、CCDC6、KIF5B、又はTRIM33をコードする遺伝子とのRET遺伝子融合を含む、請求項1~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記RET遺伝子異常は、RETタンパク質の耐性変異を含む、請求項1~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記RET遺伝子異常は、RETタンパク質のソルベントフロント変異及び/又はRETタンパク質のヒンジ領域における変異を含む、請求項1~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記RET遺伝子異常は、アミノ酸残基730番、736番、760番、772番、804番、806番、807番、808番、809番、810番、及び/又は883番でのRETタンパク質の変異を含む、請求項1~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記RET遺伝子異常は、アミノ酸残基804番、806番、807番、808番、809番、及び/又は810番でのRETタンパク質の変異を含む、請求項1~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記RET遺伝子異常は、アミノ酸残基810番でのRETタンパク質の変異を含む、請求項1~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記RET遺伝子異常は、以下:
a)V804X変異(Xは、バリン又はグルタミン酸以外の任意アミノ酸である)、
b)Y806X変異(Xは、チロシン以外の任意アミノ酸である)、
c)A807X変異(Xは、アラニン以外の任意アミノ酸である)、
d)K808X変異(Xは、リシン以外の任意アミノ酸である)、
e)Y809X変異(Xは、チロシン以外の任意アミノ酸である)、及び/又は、
f)G810X変異(Xは、グリシン以外の任意アミノ酸である)、
を含むRETタンパク質の変異を含む、請求項1~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記RET遺伝子異常は、以下:
a)L730Q若しくはL730R変異、
b)G736A変異、
c)L760Q変異、
d)L772M変異、
e)V804L若しくはV804M変異、
f)Y806C、Y806S、Y806H、若しくはY806N変異、
g)G810R、G810S、G810C、G810V、G810D、若しくはG810A変異、及び/又は、
h)A883V変異、
を含むRETタンパク質の変異を含む、請求項1~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記RET遺伝子異常は、以下:
a)V804L若しくはV804M変異、
b)Y806C、Y806S、Y806H、若しくはY806N変異、及び/又は、
c)G810R、G810S、G810C、G810V、G810D、若しくはG810A変異、
を含むRETタンパク質の変異を含む、請求項1~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記RET遺伝子異常は、RETタンパク質のG810R、G810S、G810C、G810V、G810D、又はG810A変異を含む、請求項1~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記RET遺伝子異常は、RETタンパク質のG810R変異を含む、請求項1~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記癌又は前記腫瘍は、少なくとも1種のマルチキナーゼ阻害剤に対して耐性である、請求項1~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記癌又は前記腫瘍は、少なくとも1種のRET選択的阻害剤に対して耐性である、請求項1~68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記癌又は前記腫瘍は、セルペルカチニブ及び/又はプラルセチニブに対して耐性である、請求項1~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記癌又は前記腫瘍は、セルペルカチニブ及び/又はプラルセチニブに対して耐性である細胞を含む、請求項1~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記癌又は前記腫瘍は、4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドに対して耐性ではなく、少なくとも1種の他のRET選択的阻害剤に対して耐性である、請求項1~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記ヒト患者は、前記癌又は前記腫瘍について前治療を以前に受けている、請求項1~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
治療される前記癌又は腫瘍は、前記癌又は腫瘍についての前治療の後に進行した、請求項1~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記ヒト患者は、前記癌又は腫瘍についての前治療に対する不耐性を発生させた、請求項1~74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記ヒト患者は、以前にマルチキナーゼ阻害剤を投与された、請求項1~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記ヒト患者は、以前にカボザンチニブ、バンデタニブ、レンバチニブ、及び/又はRXDX-105を投与された、請求項1~76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記ヒト患者は、以前にRET選択的阻害剤を投与された、請求項1~77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記ヒト患者は、以前にセルペルカチニブ及び/又はプラルセチニブを投与された、請求項1~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記ヒト患者は、以前にRET選択的阻害剤を投与されたことがない、請求項1~77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記ヒト患者は、唾液腺癌、肺癌、結腸直腸癌、甲状腺癌、乳癌、膵癌、卵巣癌、皮膚癌、及び脳癌のうち少なくとも1つを有する、請求項1~80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記ヒト患者は、甲状腺髄様癌又は甲状腺未分化癌、転移性乳癌、及び転移性膵臓腺癌のうち少なくとも1つを有する、請求項1~81のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2020年11月20日付で出願された米国仮出願第63/116,282号及び2021年8月5日付で出願された米国仮出願第63/229,626号の優先権の利益を主張し、それぞれの全体があらゆる目的で引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
本出願は、HM06の投与を含む、RET遺伝子異常を有する癌の患者を治療する組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
受容体チロシンキナーゼ(RTK)は、増殖、運動、分化、及び代謝をはじめとする様々な細胞プロセスにおいて、重要な役割を担っている。そのため、RTKシグナル伝達の調節不全は、或る種のヒト疾患、例えば癌を招く。RTKをコードする遺伝子、例えば、EGFR、HER2/ErbB2、MET、及びRET(トランスフェクション中の再構成;REarranged during Transfection)の変異には様々なものが存在する。RETは、複数の組織及び細胞型の正常な発達、成熟、及び維持に必要とされる1回膜貫通受容体チロシンキナーゼである(非特許文献1;非特許文献2)。RETの活性化は、家族性癌及び散発性癌、例えば、甲状腺癌(乳頭/甲状腺髄様癌)及び非小細胞肺癌(NSCLC)等の肺癌における、発癌性変異を介して起こる。RETは、近年、とりわけ乳腺腫瘍及び膵腫瘍の進行にも関連するとされてきている(非特許文献3)。RET遺伝子異常は、脳転移及び/又は軟髄膜転移でも生じてきた。RET再構成進行性NSCLC患者は、中枢神経系(CNS)転移を有する可能性がある。
【0004】
RET遺伝子は、遺伝子異常、例えば、染色体再構成(RET遺伝子融合)、点変異、コピー数増加、過剰発現、又はリガンド誘導型活性化等により活性化された場合の発癌性ドライバーであることが発見されている。細胞増殖、遊走、及び分化につながる活性化下流経路として、RAS/MEK/ERK経路、P13K/AKT経路、JAK/STAT経路、p38経路、MAPK経路、及びタンパク質キナーゼC経路が挙げられる。RETキナーゼドメイン部分は、融合において保存され、下流の細胞内キナーゼ活性を無傷で残す。RET遺伝子融合は、NSCLC(発生率1%~2%)、甲状腺乳頭癌(PTC)、結腸直腸癌(例えば、CCDC6-RET融合)、及び乳癌(例えば、ERC1-RET融合)で生じる可能性がある。RET遺伝子点変異は、多発性内分泌腺腫症2A(MEN2A)、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、及びMEN2Bをはじめとする多くの遺伝性形態の甲状腺髄様癌(MTC)で生じる。散発性MTCでは、RET変異は、患者の最大50%で同定される。RET遺伝子コピー数増加は、NSCLC、乳癌、膵癌、及び神経膠芽細胞腫で起こる(非特許文献4;非特許文献3;非特許文献5)。
【0005】
RET遺伝子融合は、NSCLCの新規発癌性ドライバーである。NSCLCのRET融合は、多数の症例に存在し、EGFR、KRAS、ALK、HER2、及びBRAFの変異とは相互排他的である。このことは、RET融合が、NSCLCにおいて独立した発癌性ドライバーであることを示唆する。これらの反復遺伝子融合は、2011年後半に初めて発見され、それ以降、複数の独立した研究者により確認されている(非特許文献6;非特許文献7)。融合は、例えば、Ba/F3細胞及びNIH-3T3細胞で発現した場合、発癌性であり、これらの細胞は、ソラフェニブ、スニチニブ、及びバンデタニブをはじめとする様々なRET阻害剤に対する感受性を獲得する可能性がある(非特許文献8;非特許文献9)。
【0006】
RET受容体チロシンキナーゼに対する活性を持つマルチキナーゼ阻害剤(MKI)、例えば、カボザンチニブ、バンデタニブ、及びレンバチニブは、甲状腺髄様癌の患者及びRET融合NSCLCの患者の少数において、限られた有効性を実証してきた(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12)。これらMKIで達成された総合臨床有用性の度合いは、異なる分子サブタイプのNSCLCの患者における標的療法の成績に比べて低い場合がある。そのうえ、リスク/ベネフィットプロファイルは、VEGFR2等の非RETキナーゼのより強力な阻害から生じる重篤な毒性の観察により、妨害される場合がある(非特許文献4)。
【0007】
2種の選択的RET阻害剤、セルペルカチニブ(LOXO-292)(NCT03157128)及びプラルセチニブ(BLU-667)(NCT03037385)は、2020年に米国FDAにより、転移性RET融合陽性非小細胞肺癌の成人患者の治療用として承認された(非特許文献13;非特許文献14)。2018年12月及び2019年11月、選択的RET阻害剤BOS-172738及びTPX-0046が、臨床試験に入った(それぞれ、NCT03780517及びNCT04161391)。これらのRET特異的薬物は、試料で、又はマルチキナーゼ阻害剤、例えば、カボザンチニブ、バンデタニブ、及びRXDX-105に対して耐性である動物モデルで大々的に試験されたことがなかった。
【0008】
これらのRET特異的阻害剤が、脳に転移した肺癌に対してどのくらい有効であるかについても、不明のままである。CNS応答の期間及び脳転移出現を遅らせる効果は、依然として不明である。一般に、脳を含むCNSは、CNSを取り囲む保護内皮組織である血液脳関門(BBB)により保護されており、BBBは、高分子量の治療薬及び診断薬をCNSに全身性送達する際の大きな障害である。神経障害の治療用薬物、例えば、巨大バイオ治療薬又は低分子量薬物であっても脳浸透性が低いもの等の脳浸透性は、一部には、大規模及び不透過性BBBのため、制限される。
【0009】
RET異常を持つ患者は、アンメットメディカルニーズの高い希少疾患を有する。新規標的療法の導入に伴う臨床的改善にも関わらず、多くの患者で最終的に再発する。進行中の患者には、限られた治療選択肢しかない。したがって、再発した患者を治療する新規作用剤が依然として必要とされている。そのうえ、進行NSCLC患者におけるRET再構成CNS転移の頻度、応答性、及び全治療成績について得られる情報は限られている。こうした患者におけるCNS関与の頻度は、診断時で25%であるが、生涯有病率は、ほぼ半数に達し得る。頭蓋内応答の低さが、様々なマルチキナーゼ阻害剤で治療された患者で報告されている(非特許文献15;非特許文献16)。
【0010】
したがって、CNS再発を克服することができ望ましい忍容性プロファイルを持つ新規RET阻害剤を利用できることが求められている。強力で選択的なRET阻害剤を利用できることは、耐性変異を持つ患者だけでなく、RET標的作用剤に対してナイーブな患者にとっても臨床的利益をもたらす可能性がある。高いCNS浸透性は、脳転移又は軟髄膜疾患のNSCLC患者において実質的な臨床的改善となる可能性もある。
【0011】
本明細書中、「HM06」又は「TAS0953/HM06」又は「HM06/TAS0953」と称するRET特異的阻害剤は、臨床開発中である。HM06/TAS0953は、RETリン酸化の強力かつ高選択的阻害剤である。前臨床モデルにおけるHM06/TAS0953の抗腫瘍有効性は、この選択的RET阻害剤に臨床用途として治療的関心を持つことを支持する。HM06/TAS0953は、RET阻害剤で治療されたことのない患者試料に由来する、RET再構成陽性肺癌細胞株の増殖を阻害した。これらの結果は、HM06/TAS0953が、RET融合を持つ細胞株の増殖の阻害について、RETマルチキナーゼ阻害剤よりも有効であったことを示す。HM06/TAS0953を、異なるRETマルチキナーゼ化合物に対して耐性である患者試料由来の細胞株に対しても試験した。これらの結果は、HM06/TAS0953が、異なるRETマルチキナーゼ阻害剤に対して耐性であり、カボザンチニブ、RXDX-105、及びバンデタニブの阻害作用に対して抵抗性である細胞株に対しても、有効であることを示唆する。
【0012】
本明細書中提示される追加の前臨床データは、HM06/TAS0953が、肺癌の脳転移の同所性異種移植片モデルを含む固形腫瘍異種移植片に対して、阻害活性を示すことを示す。これらのデータは、HM06/TAS0953が脳に入ること、及び脳においてRET遺伝子異常を有する腫瘍に対して有効であることを示す。
【0013】
HM06/TAS0953は、非RETキナーゼの阻害から生じる有害反応を潜在的に持たずに臨床有用性を提供する可能性がある。例えば、HM06/TAS0953は、脳転移及び/又は軟髄膜疾患のNSCLC患者に改善された治療及び疾患管理の選択肢を提供することができる。さらに、HM06/TAS0953は、他のRETキナーゼ又はマルチキナーゼ阻害剤に対して耐性である患者(例えば、患者は、その他の医薬に対して不耐性を進行させている又は発生させている)にとって有益である可能性がある。RET遺伝子異常を有する腫瘍患者の数が限られていること及びアンメットメディカルニーズの高い疾患の希少性を鑑みると、患者は、HM06/TAS0953を用いた治療の恩恵を受ける可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Airaksinen MS et al., Nat Rev Neurosci. 2002, 3(5):383-394
【非特許文献2】Alberti L et al., J Cell Physiol. 2003, 195(2):168-186
【非特許文献3】Mulligan LM, Nat Rev Cancer. 2014, 14(3):173-86
【非特許文献4】Ferrara R et al., J Thorac Oncol. 2017, 13(1):27-45
【非特許文献5】Mulligan LM, Front Physiol. 2019, 9:1873
【非特許文献6】Ju YS et al., Genome Res. 2012, 22(3):436-45
【非特許文献7】Suehara Y et al., Clin Cancer Res. 2012, 18(24):6599-608
【非特許文献8】Lipson D et al., Nat Med. 2012, 18(3):382-4
【非特許文献9】Takeuchi K et al., Nat Med. 2012, 18(3):378-81
【非特許文献10】Drilon A et al., Cancer Discov. 2013, 3(6):630-5
【非特許文献11】Drilon A et al., Lancet Oncol. 2016, 17(12):1653-60
【非特許文献12】Drilon A et al., Cancer Discov. 2019, 9(3):384-95
【非特許文献13】Wirth L et al., Ann Oncol. 2019, 30(Suppl 5):v933
【非特許文献14】Drilon A et al., J Thorac Oncol. 2019, 14(10): S6-S7
【非特許文献15】Drilon AE et al., J Clin Oncol. 2017, 35(15_Suppl):9069
【非特許文献16】Gautschi O et al., J Clin Oncol. 2017, 35(13):1403-10
【発明の概要】
【0015】
本発明によれば、HM06/TAS0953の投与を含む、RET遺伝子異常を有する癌の患者を治療する組成物及び方法が提供される。
【0016】
本開示は、RET遺伝子異常を有する非小細胞肺癌(NSCLC)のヒト患者を治療する方法であって、ヒト患者に、4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドを含む組成物を投与することを含み、ヒト患者は、1日あたり約40mg~約3000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、方法を提供する。
【0017】
本開示はまた、RET遺伝子異常を有する局所進行性又は転移性非小細胞肺癌(NSCLC)のヒト患者を治療する方法であって、ヒト患者に、4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドを含む組成物を投与することを含み、ヒト患者は、1日あたり約40mg~約3000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、方法を提供する。
【0018】
本開示は更にまた、脳及び/又は軟髄膜転移のあるRET遺伝子異常を有する転移性非小細胞肺癌(NSCLC)のヒト患者を治療する方法であって、ヒト患者に、4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドを含む組成物を投与することを含み、ヒト患者は、4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドを有効量で投与される、方法を提供する。
【0019】
本開示は、RET遺伝子異常を有する固形腫瘍のヒト患者を治療する方法であって、ヒト患者に、4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドを含む組成物を投与することを含み、ヒト患者は、1日あたり約40mg~約3000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される、方法を提供する。
【0020】
本開示はまた、RET遺伝子異常を有する固形腫瘍のヒト患者を治療する方法であって、ヒト患者に、4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドを含む組成物を投与することを含み、RET遺伝子異常は、RETタンパク質のソルベントフロント変異を含む、方法を提供する。
【0021】
本開示はまた、脳及び/又は軟髄膜転移のあるRET遺伝子異常を有する固形腫瘍のヒト患者を治療する方法であって、ヒト患者に、4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドを含む組成物を投与することを含み、ヒト患者は、4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドを有効量で投与される、方法を提供する。
【0022】
幾つかの実施の形態において、有効量は、1日あたり約40mg~約3000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量である。
【0023】
幾つかの実施の形態において、脳及び/又は軟髄膜転移は、無症候性である。
【0024】
幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日あたり約150mg~約640mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日あたり約160mg~約640mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日あたり約320mg~約640mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日あたり約480mg~約640mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日あたり約640mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。
【0025】
幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日あたり約480mg~約3000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日あたり約480mg~約2000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日あたり約480mg~約1500mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日あたり約480mg~約1280mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日あたり約480mg~約1000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日あたり約640mg~約3000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日あたり約640mg~約2000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日あたり約640mg~約1500mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日あたり約640mg~約1280mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日あたり約640mg~約1000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日あたり約3000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日あたり約2000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日あたり約1500mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日あたり約1280mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日あたり約1000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。
【0026】
幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日あたり約150mg~約500mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日あたり約160mg~約500mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日あたり約150mg又は約160mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。
【0027】
幾つかの実施の形態において、組成物は、経口投与される。幾つかの実施の形態において、組成物は、単一錠剤として又は複数の錠剤として、経口投与される。幾つかの実施の形態において、各錠剤は、約10mg又は約50mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等しい用量を含む。
【0028】
幾つかの実施の形態において、組成物は、4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドの二塩酸塩を含む。
【0029】
幾つかの実施の形態において、組成物は、更に、クエン酸、結晶セルロース、ラクトース、ポリビニルN-ピロリドン、ラウリル硫酸ナトリウム、及び/又はベヘン酸グリセリルを含む。
【0030】
幾つかの実施の形態において、組成物は、1日1回(QD)又は1日2回(BID)投与される。幾つかの実施の形態において、組成物は、1日2回(BID)投与される。
【0031】
幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日2回(BID)、約160mg~約1500mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日2回(BID)、約160mg~約1000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日2回(BID)、約160mg~約750mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日2回(BID)、約160mg~約640mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日2回(BID)、約160mg~約500mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日2回(BID)、約160mg~約320mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。
【0032】
幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日2回(BID)、約320mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日2回(BID)、約500mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日2回(BID)、約640mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日2回(BID)、約750mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日2回(BID)、約1000mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、1日2回(BID)、約1500mgの4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド遊離塩基に等価な投薬量を投与される。
【0033】
幾つかの実施の形態において、投薬量は、体重50kg超の患者及び体重50kg未満の患者で同じである。
【0034】
幾つかの実施の形態において、組成物は、少なくとも1回の21日治療サイクルで投与される。
【0035】
幾つかの実施の形態において、RET遺伝子異常は、RET遺伝子融合、点変異、欠損変異、RET遺伝子のコピー数増加、それらのうちの任意の1種以上の過剰発現、及びRET遺伝子の過剰発現のうち少なくとも1つを含む。幾つかの実施の形態において、RET遺伝子異常は、RET遺伝子融合を含む。幾つかの実施の形態において、RET遺伝子異常は、CCDC6、KIF5B、又はTRIM33とのRET遺伝子融合を含む。
【0036】
幾つかの実施の形態において、RET遺伝子異常は、RETタンパク質の耐性変異を含む。幾つかの実施の形態において、RET遺伝子異常は、RETタンパク質のソルベントフロント変異及び/又はRETタンパク質のヒンジ領域における変異を含む。幾つかの実施の形態において、RET遺伝子異常は、アミノ酸残基730番、736番、760番、772番、804番、806番、807番、808番、809番、810番、及び/又は883番でのRETタンパク質の変異を含む。幾つかの実施の形態において、RET遺伝子異常は、アミノ酸残基804番、806番、807番、808番、809番、及び/又は810番でのRETタンパク質の変異を含む。幾つかの実施の形態において、RET遺伝子異常は、アミノ酸残基810番でのRETタンパク質の変異を含む。幾つかの実施の形態において、RET遺伝子異常は、以下:a)V804X変異(Xは、バリン又はグルタミン酸以外の任意アミノ酸である)、b)Y806X変異(Xは、チロシン以外の任意アミノ酸である)、c)A807X変異(Xは、アラニン以外の任意アミノ酸である)、d)K808X変異(Xは、アラニン以外の任意アミノ酸である)、e)Y809X変異(Xは、チロシン以外の任意アミノ酸である)、及び/又はf)G810X変異(Xは、グリシン以外の任意アミノ酸である)を含むRETタンパク質の変異を含む。幾つかの実施の形態において、RET遺伝子異常は、以下:a)L730Q若しくはL730R変異、b)G736A変異、c)L760Q変異、d)L772M変異、e)V804L若しくはV804M変異、f)Y806C、Y806S、Y806H、若しくはY806N変異、g)G810R、G810S、G810C、G810V、G810D、若しくはG810A、及び/又はA883V変異を含むRETタンパク質の変異を含む。幾つかの実施の形態において、RET遺伝子異常は、以下:a)V804L若しくはV804M変異、b)Y806C、Y806S、Y806H、若しくはY806N変異、及び/又はc)G810R、G810S、G810C、G810V、G810D、若しくはG810A変異を含むRETタンパク質の変異を含む。幾つかの実施の形態において、RET遺伝子異常は、RETタンパク質のG810R、G810S、G810C、G810V、G810D、又はG810A変異を含む。幾つかの実施の形態において、RET遺伝子異常は、RETタンパク質のG810R変異を含む。
【0037】
幾つかの実施の形態において、癌又は腫瘍は、少なくとも1種のマルチキナーゼ阻害剤に対して耐性である。幾つかの実施の形態において、癌又は腫瘍は、少なくとも1種のRET選択的阻害剤に対して耐性である。幾つかの実施の形態において、癌又は腫瘍は、4-アミノ-N-[4-(メトキシメチル)フェニル]-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドに対して耐性ではなく、少なくとも1種の他のRET選択的阻害剤に対して耐性である。幾つかの実施の形態において、癌又は腫瘍は、セルペルカチニブ及び/又はプラルセチニブに対して耐性である。幾つかの実施の形態において、癌又は腫瘍は、セルペルカチニブ及び/又はプラルセチニブに対して耐性である細胞を含む。
【0038】
幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、癌又は腫瘍について前治療を以前に受けている。幾つかの実施の形態において、治療される癌又は腫瘍は、癌又は腫瘍についての前治療の後に進行した。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、癌又は腫瘍についての前治療に対する不耐性を発生させた。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、以前にマルチキナーゼ阻害剤を投与された。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、以前にカボザンチニブ、バンデタニブ、レンバチニブ、及び/又はRXDX-105を投与された。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、以前にRET選択的阻害剤を投与された。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、以前にセルペルカチニブ及び/又はプラルセチニブを投与された。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、以前にRET選択的阻害剤を投与されたことがない。
【0039】
幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、唾液腺癌、肺癌、結腸直腸癌、甲状腺癌、乳癌、膵癌、卵巣癌、皮膚癌、及び脳腫瘍のうち少なくとも1つを有する。幾つかの実施の形態において、ヒト患者は、甲状腺髄様癌又は甲状腺未分化癌、転移性乳癌、及び転移性膵臓腺癌のうち少なくとも1つを有する。
【0040】
更なる目的及び利点は、一部は、以下に続く説明において記載されることになり、一部は、説明から理解されることになる、すなわち実践により学ぶことができる。目的及び利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘される要素及び組合せにより、理解され及び成し遂げられることになる。
【0041】
当然のことながら、上記の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、例示及び説明にすぎず、特許請求の範囲を制限しない。
【0042】
添付の図面は、この明細書に組み込まれてこの明細書の一部を構成するものであり、1つ(複数)の実施形態を解説し、及び説明と一緒になって、本明細書中記載される原則を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1A】KIF5B-RET Luc融合陽性脳転移モデルにおけるHM06/TAS0953の有効性を示す図である。
図1Aは、50mg/kg BIDで投与したHM06/TAS0953の抗腫瘍有効性を、ビークル対照と比較して示す。
【
図1B】
図1Bは、HM06/TAS0953で処置したKIF5B-RET Luc融合脳転移マウスの体重変化パーセントを、ビークル対照マウスと比較して示す。
【
図1C】
図1Cは、HM06/TAS0953群の生存率がビークル対照群より高いことを示す。
【
図1D】
図1Dは、HM06/TAS0953処置したマウス脳のIVIS画像及び病態を、対照と比較して示す。
【
図2】バンデタニブ治療抵抗性マウスモデルのKIF5B-RET融合腫瘍体積に対するHM06/TAS0953の効果を、連続バンデタニブ治療と比較して示す図である。
【
図3A】RET融合陽性細胞株の増殖阻害について、HM06/TAS0953の有効性を、3種のRETマルチキナーゼ阻害剤、カボザンチニブ、RXDX-105、及びバンデタニブと比較して示す図である。
図3Aは、抗癌療法で治療されたことのない患者から得られた試料に由来する治療ナイーブ細胞株(KIF5B-RET)での処置を示す。
【
図3B】
図3Bは、CCDC6-RET融合細胞株での処置を示す。
【
図3C】
図3Cは、空対照プラスミドを発現する同じ細胞株の同質遺伝子カウンターパートに対する効果を示す。
【
図3D】
図3Dは、TRIM33-RET融合細胞株での処置を示す。
【
図3E】
図3Eは、カボザンチニブ耐性であった患者から得られた試料に由来する細胞株(CCDC6-RET)での処置を示す。
【
図3F】
図3Fは、RXDX-105耐性の患者から得られた細胞株での処置を示す。
【
図4A】3T3-CCDC6-RET異種移植片腫瘍の増殖に対するHM06/TAS0953の有効性を示す図である。
図4Aは、処置の開始から終了までの個別腫瘍それぞれの体積変化を示す。結果は、各時点での個別腫瘍5つの平均±SEである。
【
図4B】
図4Bは、腫瘍それぞれの体積変化を示す。
*p<0.05、ビークル処置群との比較による。
【
図4C】
図4Cは、時間の関数としての動物体重である。結果は、1群あたり動物5匹の平均±SEである。
【
図5A】異種移植片腫瘍(TRIM33-RET融合)の増殖に対するHM06/TAS0953の有効性を示す図である。
図5Aは、時間の関数としての腫瘍体積を示す。結果は、各時点での個別腫瘍5つの平均±SEである。
【
図5B】
図5Bは、処置の開始から終了までの個別腫瘍それぞれの体積変化を示す。全ての群で、ビークル処置群に比べて有意な平均腫瘍体積の減少があった(p<0.05)。
【
図5C】
図5Cは、時間の関数としての動物体重を示す。結果は、1群あたり動物5匹の平均±SEである。処置開始後全ての時点で、バンデタニブ処置群の動物体重に有意な減少があった(p<0.05)。
【
図6A】もはやカボザンチニブに反応しなくなった患者から得られた腫瘍試料に由来するPDX腫瘍(CCDC6-RET)の増殖に対するHM06/TAS0953の有効性を示す図である。
図6Aは、時間の関数としての腫瘍体積を示す。結果は、各時点での個別腫瘍5つの平均±SEである。
【
図6B】
図6Bは、処置の開始から終了までの個別腫瘍それぞれの体積変化を示す。全ての群で、ビークル処置群に比べて有意な腫瘍体積の減少があった(p<0.05)。
【
図6C】
図6Cは、時間の関数としての動物体重を示す。結果は、1群あたり動物8匹の平均±SEである。
【
図7A】RXDX-105治療に耐性であった患者に由来するPDX腫瘍(CCDC6-RET)の増殖に対するHM06/TAS0953の有効性を示す図である。
図7Aは、時間の関数としての腫瘍体積を示す。結果は、各時点での個別腫瘍5つの平均±SEである。
【
図7B】
図7Bは、処置の開始から終了までの個別腫瘍それぞれの体積変化を示す。全ての群で、ビークル処置群に比べて有意な腫瘍体積の減少があった(p<0.05)。
【
図7C】
図7Cは、時間の関数としての動物体重を示す。結果は、1群あたり動物5匹の平均±SEである。
【
図8A】RXDX-105に対する反応性が乏しかった患者に由来するPDX腫瘍(CCDC6-RET)の増殖に対するHM06/TAS0953の有効性を示す図である。
図8Aは、時間の関数としての腫瘍体積を示す。結果は、各時点での個別腫瘍5つの平均±SEである。全ての群で、ビークル処置群に比べて有意な腫瘍体積の減少があった(p<0.05)。
【
図8B】
図8Bは、処置の開始から終了までの個別腫瘍それぞれの体積変化を示す。HM06/TAS0953を100mg/kgでQD群の1つの腫瘍が、20.7%だけ増加した。
【
図8C】
図8Cは、時間の関数としての動物体重を示す。結果は、1群あたり動物5匹の平均±SEである。
【
図9A】マウスの脳に移植した腫瘍(TRIM33-RET融合)の増殖に対するHM06/TAS0953の有効性を示す図である。
図9Aは、処置の開始から終了までの生物発光シグナルの画像を示す。
【
図9B】
図9Bは、発光の定量(左側)及び動物体重測定(右側)を示す。ビークル処置群に比べて有意な腫瘍体積の減少があった(p<0.05)。結果は、動物5匹(ビークル)又は4匹(HM06)の平均±SEを表す。
【
図9C】
図9Cは、試験全体を通じた担癌マウスの生存率を示すカプランマイヤープロットを示す。
【
図10A】マウスの脳に移植した腫瘍(TRIM33-RET融合)の増殖に対するHM06/TAS0953、バンデタニブ、及びLOXO-292の有効性を示す図である。
図10Aは、細胞移植から33日後及び93日後の生物発光の代表的な画像を示す。
【
図10B】
図10Bは、発光シグナルの定量を示す。結果は、1群あたり動物6匹の平均±SEである。
【
図10C】
図10Cは、試験全体を通じた担癌マウスの生存率を示すカプランマイヤープロットを示す。HM06処置群とLOXO-292処置群を比較するため調整したp値を、グラフの下に示す。
【
図11A】ラットにおけるHM06/TAS0953の薬物動態プロファイルを示す図である。
図11Aは、HM06/TAS0953を3mg/kg、10mg/kg、30mg/kg、及び50mg/kgで単回経口投与した後の経時的血漿中濃度を示す。
【
図11B】
図11Bは、HM06/TAS0953を3mg/kgのIVで単回投与した後の経時的血漿中濃度を示す。
【
図11C】
図11Cは、自由行動する成人オスHan(商標)Wistarラットに10mg/kgで経口投与した後の、PFC、CSF、及び血漿(合計及び遊離画分)中のHM06/TAS0953の薬物動態プロファイルを示す。遊離血漿濃度対遊離脳濃度比が1:1であることは、HM06/TAS0953が血液脳関門を自由に横断することを示す。
【
図12A】野生型RETと、TAS化合物1、BLU-667、及びLOXO-292との複合体の、RETアミノ酸残基806番~810番領域のX線結晶構造を示す図である。
図12Aは、共結晶構造データに基づき、BLU-667及びLOXO-292がRETの同じポケット(ポケットB)に結合するのに対し、TAS化合物1は、RETの異なるポケット(ポケットA)に異なる結合様式で結合することを示す。
【
図12B】
図12Bは、RETと、TAS化合物1、BLU-667、及びLOXO-292との共結晶複合体を示す。
【
図13A】Ba/F3 KIF5B-RET
G810R細胞担持ヌードマウスモデルにおけるHM06/TAS0953、LOXO-292、及びBLU-667の効果を示す図である。
図13Aは、腫瘍体積に対する効果を示し、HM06/TAS0953、LOXO-292、及びBLU-667はそれぞれ、1日2回、用量10mg/kgで投与される。
【
図13C】
図13Cは、Ba/F3 KIF5B-RET
G810R細胞担持ヌードマウスにおける処置期間中の体重変化を示す。
【
図14A】Ba/F3 KIF5B-RET
G810R細胞担持ヌードマウスモデルにおけるHM06/TAS0953、LOXO-292、及びBLU-667の効果を示す図である。
図14Aは、腫瘍体積に対する効果を示し、HM06/TAS0953は、1日2回、用量50mg/kgで投与され、LOXO-292及びBLU-667はそれぞれ、1日2回、用量30mg/kgで投与される。
【
図14B】
図14Bは、Ba/F3 KIF5B-RET
G810R細胞担持ヌードマウスにおける処置期間中の体重変化を示す。
【
図15A】HM06/TAS0953、BLU-667、及びLOXO-292の投与から1時間後のBa/F3 KIF5B-RET
G810R腫瘍におけるRETのリン酸化を示す図である。Ba/F3 KIF5B-RET
G810R担持マウスに、HM06/TAS0953を10mg/kg、30mg/kg、若しくは50mg/kgで、又はLOXO292及びBLU667を10mg/kg若しくは30mg/kgで、それぞれ1回経口投与した。投薬1時間後、腫瘍を収集し、溶解させた。細胞溶解液を免疫ブロットして、表示されるタンパク質を検出した。
【
図15B】HM06/TAS0953、BLU-667、及びLOXO-292の投与から1時間後のBa/F3 KIF5B-RET
G810R腫瘍におけるRETのリン酸化を示す図である。Ba/F3 KIF5B-RET
G810R担持マウスに、HM06/TAS0953を10mg/kg、30mg/kg、若しくは50mg/kgで、又はLOXO292及びBLU667を10mg/kg若しくは30mg/kgで、それぞれ1回経口投与した。投薬1時間後、腫瘍を収集し、溶解させた。細胞溶解液を免疫ブロットして、表示されるタンパク質を検出した。
【発明を実施するための形態】
【0044】
特定配列の記載
表1に、本明細書中参照される特定配列の一覧を提示する。
【0045】
【0046】
特定実施形態の記載
本明細書中使用される場合、「TAS0953/HM06」、又は「HM06/TAS0953」、又は「HM06」は、同義で、特に記載がない限り、遊離塩基形の4-アミノ-N-(4-(メトキシメチル)フェニル)-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド、並びにその任意の塩形を指し、塩形には、二塩酸塩が含まれる。4-アミノ-N-(4-(メトキシメチル)フェニル)-7-(1-メチルシクロプロピル)-6-(3-モルホリノプロパ-1-イン-1-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミドの二塩酸塩は、同義で、「TAS0953-01/HM06-01」又は「HM06-01」又は「HM06-01/TAS0953-01」とも称する。遊離塩基形のHM06/TAS0953の分子式は、C26H30N6O3であり、分子量は474.57である。遊離塩基の構造式は、以下である:
【化1】
【0047】
HM06-01/TAS0953-01の分子式は、C26H32O3N6Cl2であり、分子量は547.54である。二塩酸塩の化学構造は、以下である:
【化2】
【0048】
幾つかの実施形態において、遊離塩基形が、医薬品有効成分(API)である。幾つかの実施形態において、二塩酸塩が、医薬品有効成分(API)である。幾つかの実施形態において、APIは、白色~オフホワイト色固体である。幾つかの実施形態において、APIは、水に自由に溶解する。
【0049】
HM06/TAS0953を含む組成物の剤形は、経口形でも非経口形でも任意のものが可能である。そのような製剤の形としては特に限定されず、それらの例として、錠剤、コーティング錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、及び乳剤等の経口組成物、注射剤、坐剤、及び吸入剤等の非経口組成物が挙げられる。注射剤は、単独で又は一般的なアジュバント、例えばグルコース又はアミノ酸との混合物として静脈内投与することができ、又は必要に応じて、単独で、動脈内、筋肉内、皮内、皮下、若しくは腹腔内投与することができる。坐剤は、直腸内投与される。
【0050】
幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953は、二塩酸塩(HM06-01/TAS0953-01)として調製され、錠剤に製剤化される。幾つかの実施形態において、錠剤は、経口投与用である。幾つかの実施形態において、錠剤は、約10mg/単位若しくは約50mg/単位(遊離塩基として表す)の用量で、又は明細書中記載される別の投薬量で製剤化される。幾つかの実施形態において、錠剤は、単一錠剤として又は複数の錠剤として経口投与される。
【0051】
幾つかの実施形態において、組成物は、公定の広く使用される賦形剤を含む。幾つかの実施形態において、組成物は、少なくとも1種の賦形剤を含む。幾つかの実施形態において、組成物は、少なくとも1種の抗酸化剤、少なくとも1種の充填剤、少なくとも1種の崩壊剤、少なくとも1種の界面活性剤、及び/又は少なくとも1種の滑沢剤を含む。幾つかの実施形態において、組成物は、クエン酸、結晶セルロース(例えば、Avicel PH200 LM)、ラクトース(例えば、ラクトース316 Fast Flo)、ポリビニルN-ピロリドン(例えば、クロスポビドン)、ラウリル硫酸ナトリウム、及び/又はベヘン酸グリセリル(例えば、Compritol ATO 888)を含む。
【0052】
一般に、ヒト患者には、HM06/TAS0953を有効薬量で含む組成物が投与される。幾つかの実施形態において、ヒト患者には、1日あたりHM06/TAS0953の遊離塩基約40mg~約3000mgの範囲に等価なHM06/TAS0953の投薬量でHM06/TAS0953を含む組成物が投与される。幾つかの実施形態において、ヒト患者には、1日あたりHM06/TAS0953の遊離塩基約40mg~約1000mgの範囲に等価なHM06/TAS0953の投薬量でHM06/TAS0953を含む組成物が投与される。幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953の投薬量は、1日1回(QD)又は1日複数回(例えば、BID又はTID)投与される。幾つかの実施形態において、投与されるHM06/TAS0953の投薬量は、HM06/TAS0953の遊離塩基を約20mg~約1500mgの範囲で1日2回(BID)に等価である。幾つかの実施形態において、投与されるHM06/TAS0953の投薬量は、HM06/TAS0953の遊離塩基を約20mg~約500mgの範囲で1日2回(BID))に等価である。
【0053】
幾つかの実施形態において、投与されるHM06/TAS0953の投薬量は、1日あたりHM06/TAS0953の遊離塩基約150mg~約640mgの範囲に等価である(例えば、HM06/TAS0953の遊離塩基を約75mg~約320mgの範囲で1日2回)。幾つかの実施形態において、投与されるHM06/TAS0953の投薬量は、1日あたりHM06/TAS0953の遊離塩基約160mg~約640mgの範囲に等価である(例えば、HM06/TAS0953の遊離塩基を約80mg~約320mgの範囲で1日2回)。幾つかの実施形態において、投与されるHM06/TAS0953の投薬量は、1日あたりHM06/TAS0953の遊離塩基約150mg~約500mgの範囲に等価である(例えば、HM06/TAS0953の遊離塩基を約75mg~約250mgの範囲で1日2回)。幾つかの実施形態において、投与されるHM06/TAS0953の投薬量は、1日あたりHM06/TAS0953の遊離塩基約160mg~約500mgの範囲に等価である(例えば、HM06/TAS0953の遊離塩基を約80mg~約250mgの範囲で1日2回)。幾つかの実施形態において、投与されるHM06/TAS0953の投薬量は、1日あたりHM06/TAS0953の遊離塩基約320mg~約640mgの範囲に等価である(例えば、HM06/TAS0953の遊離塩基を約160mg~約320mgの範囲で1日2回)。幾つかの実施形態において、投与されるHM06/TAS0953の投薬量は、1日あたりHM06/TAS0953の遊離塩基約480mg~約640mgの範囲に等価である(例えば、HM06/TAS0953の遊離塩基を約240mg~約320mgの範囲で1日2回)。幾つかの実施形態において、投与されるHM06/TAS0953の投薬量は、1日あたりHM06/TAS0953の遊離塩基約480mg~約3000mgの範囲に等価である(例えば、HM06/TAS0953の遊離塩基を約240mg~約1500mgの範囲で1日2回)。幾つかの実施形態において、投与されるHM06/TAS0953の投薬量は、1日あたりHM06/TAS0953の遊離塩基約480mg~約2000mgの範囲に等価である(例えば、HM06/TAS0953の遊離塩基を約240mg~約1000mgの範囲で1日2回)。幾つかの実施形態において、投与されるHM06/TAS0953の投薬量は、1日あたりHM06/TAS0953の遊離塩基約480mg~約1500mgの範囲に等価である(例えば、HM06/TAS0953の遊離塩基を約240mg~約750mgの範囲で1日2回)。幾つかの実施形態において、投与されるHM06/TAS0953の投薬量は、1日あたりHM06/TAS0953の遊離塩基約480mg~約1280mgの範囲に等価である(例えば、HM06/TAS0953の遊離塩基を約240mg~約640mgの範囲で1日2回)。幾つかの実施形態において、投与されるHM06/TAS0953の投薬量は、1日あたりHM06/TAS0953の遊離塩基約480mg~約1000mgの範囲に等価である(例えば、HM06/TAS0953の遊離塩基を約240mg~約500mgの範囲で1日2回)。
【0054】
幾つかの実施形態において、投与されるHM06/TAS0953の投薬量は、1日あたりHM06/TAS0953の遊離塩基約640mg~約3000mgの範囲に等価である(例えば、HM06/TAS0953の遊離塩基を約320mg~約1500mgの範囲で1日2回)。幾つかの実施形態において、投与されるHM06/TAS0953の投薬量は、1日あたりHM06/TAS0953の遊離塩基約640mg~約2000mgの範囲に等価である(例えば、HM06/TAS0953の遊離塩基を約320mg~約1000mgの範囲で1日2回)。幾つかの実施形態において、投与されるHM06/TAS0953の投薬量は、1日あたりHM06/TAS0953の遊離塩基約640mg~約1500mgの範囲に等価である(例えば、HM06/TAS0953の遊離塩基を約320mg~約750mgの範囲で1日2回)。幾つかの実施形態において、投与されるHM06/TAS0953の投薬量は、1日あたりHM06/TAS0953の遊離塩基約640mg~約1280mgの範囲に等価である(例えば、HM06/TAS0953の遊離塩基を約320mg~約640mgの範囲で1日2回)。幾つかの実施形態において、投与されるHM06/TAS0953の投薬量は、1日あたりHM06/TAS0953の遊離塩基約640mg~約1000mgの範囲に等価である(例えば、HM06/TAS0953の遊離塩基を約320mg~約500mgの範囲で1日2回)。
【0055】
幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953の投薬量(遊離塩基に換算して表す)は、1日あたり約40mg(例えば、約20mgを1日2回)、1日あたり約60mg(例えば、約30mgを1日2回)、1日あたり約80mg(例えば、約40mgを1日2回)、1日あたり約100mg(例えば、約50mgを1日2回)、1日あたり約120mg(例えば、約60mgを1日2回)、1日あたり約140mg(例えば、約70mgを1日2回)、1日あたり約160mg(例えば、約80mgを1日2回)、1日あたり約180mg(例えば、約90mgを1日2回)、1日あたり約200mg(例えば、約100mgを1日2回)、1日あたり約220mg(例えば、約110mgを1日2回)、1日あたり約240mg(例えば、約120mgを1日2回)、1日あたり約260mg(例えば、約130mgを1日2回)、1日あたり約280mg(例えば、約140mgを1日2回)、1日あたり約300mg(例えば、約150mgを1日2回)、1日あたり約320mg(例えば、約160mgを1日2回)、1日あたり約340mg(例えば、約170mgを1日2回)、1日あたり約360mg(例えば、約180mgを1日2回)、1日あたり約380mg(例えば、約190mgを1日2回)、1日あたり約400mg(例えば、約200mgを1日2回)、1日あたり約420mg(例えば、約210mgを1日2回)、1日あたり約440mg(例えば、約220mgを1日2回)、1日あたり約460mg(例えば、約230mgを1日2回)、1日あたり約480mg(例えば、約240mgを1日2回)、1日あたり約500mg(例えば、約250mgを1日2回)、1日あたり約750mg(例えば、約375mgを1日2回)、1日あたり約1000mg(例えば、約500mgを1日2回)、1日あたり約1280mg(例えば、約640mgを1日2回)、1日あたり約1500mg(例えば、約750mgを1日2回)、1日あたり約2000mg(例えば、約1000mgを1日2回)、又は1日あたり約3000mg(例えば、約1500mgを1日2回)を含む。
【0056】
幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953の投薬量(遊離塩基に換算して表す)は、1日あたり約40mg以上(例えば、約20mgを1日2回)、1日あたり約60mg以上(例えば、約30mgを1日2回)、1日あたり約80mg以上(例えば、約40mgを1日2回)、1日あたり約100mg以上(例えば、約50mgを1日2回)、1日あたり約120mg以上(例えば、約60mgを1日2回)、1日あたり約140mg以上(例えば、約70mgを1日2回)、1日あたり約160mg以上(例えば、約80mgを1日2回)、1日あたり約180mg以上(例えば、約90mgを1日2回)、1日あたり約200mg以上(例えば、約100mgを1日2回)、1日あたり約220mg以上(例えば、約110mgを1日2回)、1日あたり約240mg以上(例えば、約120mgを1日2回)、1日あたり約260mg以上(例えば、約130mgを1日2回)、1日あたり約280mg以上(例えば、約140mgを1日2回)、1日あたり約300mg以上(例えば、約150mgを1日2回)、1日あたり約320mg以上(例えば、約160mgを1日2回)、1日あたり約340mg以上(例えば、約170mgを1日2回)、1日あたり約360mg以上(例えば、約180mgを1日2回)、1日あたり約380mg以上(例えば、約190mgを1日2回)、1日あたり約400mg以上(例えば、約200mgを1日2回)、1日あたり約420mg以上(例えば、約210mgを1日2回)、1日あたり約440mg以上(例えば、約220mgを1日2回)、1日あたり約460mg以上(例えば、約230mgを1日2回)、1日あたり約480mg以上(例えば、約240mgを1日2回)、1日あたり約500mg以上(例えば、約250mgを1日2回)、1日あたり約640mg以上(例えば、約320mgを1日2回)、1日あたり約750mg以上(例えば、約375mgを1日2回)、1日あたり約1000mg以上(例えば、約500mgを1日2回)、1日あたり約1280mg以上(例えば、約640mgを1日2回)、1日あたり約1500mg以上(例えば、約750mgを1日2回)、1日あたり2000mg以上(例えば、約2000mgを1日2回)、又は1日あたり約3000mg以上(例えば、約1500mgを1日2回)である。
【0057】
幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953の投薬量(遊離塩基に換算して表す)は、1日あたり約640mg以上(例えば、約320mgを1日2回)である。幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953の投薬量(遊離塩基に換算して表す)は、1日あたり約1000mg以上(例えば、約500mgを1日2回)である。幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953の投薬量(遊離塩基に換算して表す)は、1日あたり約1280mg以上(例えば、約640mgを1日2回)である。幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953の投薬量(遊離塩基に換算して表す)は、1日あたり約1500mg以上(例えば、約750mgを1日2回)である。幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953の投薬量(遊離塩基に換算して表す)は、1日あたり約2000mg以上(例えば、約1000mgを1日2回)である。
【0058】
幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953の投薬量(遊離塩基に換算して表す)は、1日あたり約3000mg以下(例えば、約1500mg以下を1日2回)である。幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953の投薬量(遊離塩基に換算して表す)は、1日あたり約2000mg以下(例えば、約1000mg以下を1日2回)である。幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953の投薬量(遊離塩基に換算して表す)は、1日あたり約1500mg以下(例えば、約750mg以下を1日2回)である。幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953の投薬量(遊離塩基に換算して表す)は、1日あたり約1280mg以下(例えば、約640mg以下を1日2回)である。幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953の投薬量(遊離塩基に換算して表す)は、1日あたり約1000mg以下(例えば、約500mg以下を1日2回)である。幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953の投薬量は、1日あたり約640mg以下(例えば、約320mg以下を1日2回)である。幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953の投薬量は、1日あたり約400mg以下(例えば、約200mg以下を1日2回)である。
【0059】
幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953の投薬量(遊離塩基に換算して表す)は、1日あたり約150mgである(例えば、約75mgを1日2回)。幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953の投薬量は、1日あたり約160mgである(例えば、約80mgを1日2回)。幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953の投薬量は、1日あたり約320mgである(例えば、約160mgを1日2回)。幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953の投薬量は、1日あたり約640mgである(例えば、約320mgを1日2回)。幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953の投薬量は、1日あたり約1000mgである(例えば、約500mgを1日2回)。幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953の投薬量は、1日あたり約1280mgである(例えば、約640mgを1日2回)。幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953の投薬量は、1日あたり約1500mgである(例えば、約750mgを1日2回)。幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953の投薬量は、1日あたり約2000mgである(例えば、約1000mgを1日2回)。幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953の投薬量は、1日あたり約3000mgである(例えば、約1500mgを1日2回)。幾つかの実施形態において、用量変更が治療中に発生する場合がある。
【0060】
幾つかの実施形態において、ヒト患者は、年齢12歳以上である。幾つかの実施形態において、年齢12歳以上のヒト患者は、体重が50kg未満である。幾つかの実施形態において、投与される投薬量は、体重50kg超の患者についても体重50kg未満の患者についても同じである。
【0061】
幾つかの実施形態において、体重50kg未満の患者について、HM06/TAS0953の投薬量は、1日あたり約3000mg以下(例えば、1500mgを1日2回)、1日あたり約2000mg以下(例えば、1000mgを1日2回)、1日あたり約1500mg以下(例えば、750mgを1日2回)、1日あたり約1280mg以下(例えば、640mgを1日2回)、1日あたり約1000mg以下(例えば、500mgを1日2回)、1日あたり約640mg以下(例えば、320mgを1日2回)、1日あたり約320mg以下(例えば、160mgを1日2回)、1日あたり約160mg以下(例えば、80mgを1日2回)、1日あたり約120mg以下(例えば、60mgを1日2回)、1日あたり約80mg以下(例えば、40mgを1日2回)、又は約40mg以下を1日1回が可能である。体重50kg超の患者について、HM06/TAS0953の投薬量は、1日あたり約3000mg以下(例えば、1500mgを1日2回)、1日あたり約2000mg以下(例えば、1000mgを1日2回)、1日あたり約1500mg以下(例えば、750mgを1日2回)、1日あたり約1280mg以下(例えば、640mgを1日2回)、1日あたり約1000mg以下(例えば、500mgを1日2回)、約640mg以下を1日1回(例えば、320mgを1日2回)、1日あたり約480mg以下(例えば、240mgを1日2回)、1日あたり約320mg以下(例えば、160mgを1日2回)、1日あたり約240mg以下(例えば、120mgを1日2回)、1日あたり約160mg以下(例えば、80mgを1日2回)、又は1日あたり約80mg以下(例えば、40mgを1日2回)が可能である。幾つかの実施形態において、用量変更が治療中に発生する場合がある。
【0062】
幾つかの実施形態において、ヒト患者は、唾液腺癌、肺癌、結腸直腸癌、甲状腺癌、乳癌、膵癌、卵巣癌、甲状腺癌、皮膚癌、脳癌を有する、又はそれらの癌であると診断されている。実施形態において、ヒト患者は、甲状腺髄様癌若しくは甲状腺未分化癌、転移性乳癌、又は転移性膵臓腺癌を有する、又はそれらの癌であると診断されている。幾つかの実施形態において、ヒト患者は、非小細胞肺癌(NSCLC)を有する、又はその癌であると診断されている。NSCLCの例として、腺癌及び大細胞癌(非扁平上皮癌)、並びに扁平上皮癌が挙げられる。幾つかの実施形態において、ヒト患者は、局所進行性又は転移性NSCLCを有する、又はそれらの癌であると診断されている。
【0063】
幾つかの実施形態において、ヒト患者の原発腫瘍(複数の場合もある)は、中枢神経系(CNS)に転移してしまうことが可能である。例えば、ヒト患者は、原発腫瘍及びCNS転移を有する、又はそれらであると診断されている可能性がある。幾つかの実施形態において、ヒトは、脳及び/又は軟髄膜転移を伴う転移性NSCLCを有する、又はそのような転移性NSCLCであると診断されている可能性がある。
【0064】
本明細書中使用される場合、「脳及び/又は軟髄膜転移」は、脳転移又は軟髄膜疾患とも称し、無症候性疾患及び症候性疾患を含み、測定可能であることも測定不可であることもあり得る。
【0065】
本明細書中使用される場合、特に記載がない限り、「RET」は、RETタンパク質をコードする遺伝子及び/又はRETタンパク質、又はRET遺伝子若しくはタンパク質の変異、多形、若しくは一部分を指す。
【0066】
本明細書中使用される場合、「RETタンパク質」又は「RETポリペプチド」は、RET遺伝子(RET癌原遺伝子とも称する)のコードするチロシンキナーゼ受容体を指し、RETタンパク質全体又は一部分を含むことができる。
【0067】
幾つかの実施形態において、RETタンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列又はその一部分を含む。
【0068】
幾つかの実施形態において、RETタンパク質は、変異型RETタンパク質である。幾つかの実施形態において、RETタンパク質は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、若しくは配列番号8のアミノ酸配列、又はその一部分を含む。
【0069】
幾つかの実施形態において、RETタンパク質は、RET遺伝子異常を含むRET遺伝子によりコードされる。
【0070】
本明細書中使用される場合、「RET遺伝子異常」は、野生型RET遺伝子配列と比較しての変異型RET遺伝子配列の差異を指す。例えば、RET遺伝子異常は、染色体再構成、点変異、コピー数増加、過剰発現、及び/又はリガンド誘導型活性化であることが可能である。
【0071】
RET遺伝子異常の有無は、当該分野で理解される多数の方法の任意の1つにより特定することができ、そのような方法として、DNA若しくはRNA配列決定法又はFISH解析法が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Subbiah, V et al., Ann Oncol. 2021, 32(2):261-268;Lin JJ et al., Ann Oncol. 2020, 31(12):1725-1733;Solomon BJ et al., J Thorac Oncol. 2020, 15(4):541-549を参照)。幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、循環腫瘍DNAの配列決定により検出される。幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、標的単一アンプリコン配列決定(targeted single amplicon sequencing)により検出される。
【0072】
幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常を含むRET遺伝子は、変異型RETタンパク質、例えば、RETタンパク質融合及び/又はソルベントフロント変異(solvent front mutation)を含むRETタンパク質をコードする。
【0073】
幾つかの実施形態において、癌又は腫瘍は、RET遺伝子異常を含む。幾つかの実施形態において、患者は、染色体再構成(RET遺伝子融合)、点変異、コピー数増加、過剰発現、及びリガンド誘導型活性化から選択されるRET遺伝子異常を有する。過剰発現は、コピー数増加又は転写上方制御から生じる可能性があり、これが、受容体の局所濃度上昇及び異常活性化を招く可能性がある。コピー数増加又は過剰発現は、野生型RETを指すことも変異型RETを指すこともできる。例えば、変異型RETの過剰発現は、MEN2関連腫瘍で見つかっている。変異型M918T及び野生型RET両方の安定過剰発現が、2種のSCLC細胞株で見つかっている。RETのリガンド誘導型活性化は、MAPキナーゼ/Erk経路及びPI3キナーゼ/Akt経路をはじめとする複数のシグナル伝達経路の刺激をもたらす可能性がある。この活性化は、野生型RET及び変異型RETで起こる可能性がある。
【0074】
幾つかの実施形態において、RET遺伝子融合は、NSCLC、甲状腺乳頭癌(PTC)、結腸直腸癌(CCDC6-RET融合)、又は乳癌(ERC1-RET融合)で起こる。幾つかの実施形態において、RET遺伝子点変異は、甲状腺髄様癌(MTC)で起こり、これには、多発性内分泌腺腫症2A(MEN2A)、MEN2B、又は家族性甲状腺髄様癌(FMTC)が含まれる。幾つかの実施形態において、RET遺伝子コピー数増加が、NSCLC、乳癌、膵癌、又は神経膠芽細胞腫で起こる。
【0075】
幾つかの実施形態において、癌又は腫瘍は、RETのC末端キナーゼドメインと、キネシンファミリーメンバー5BのN末端配列との融合(KIF5B-RET)、CCDC6-RET(RET-PTC1)、NCOA4-RET(RET-PTC3)、又はTRIM33-RET(RET-PTC7)を含む。KIF5B-RET遺伝子融合は、RET転写の2倍~30倍の増加をもたらす可能性があり、このことは、これらの場合においてRETキナーゼ活性が腫瘍形成を駆動することを示唆する。幾つかの実施形態において、RET融合は、RETと、PRKAR1A、TRIM24、GOLGA5、KTN1、MBD1、又はTRIM27との融合を含む。幾つかの実施形態において、RET融合は、RETと、TRIM33、KIF5B、CCDC6、又はKIF5Bとの融合を含む。
【0076】
幾つかの実施形態において、ヒト患者は、EGFR、KRAS、ALK、HER2、ROS1、BRAF、及び/又はMETex14活性化変異を有しない。NSCLCのRET融合は、症例の大半に存在し、EGFR、KRAS、ALK、HER2、及びBRAFの変異とは相互排他的である。
【0077】
RET受容体チロシンキナーゼ(RTK)に対する活性を持つマルチキナーゼ阻害剤(MKI)として、カボザンチニブ、バンデタニブ、アレクチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、パゾパニブ、ポナチニブ、レゴラフェニブ、アパチニブ、シトラバチニブ、RXDX-105、及びレンバチニブが挙げられる。幾つかの実施形態において、ヒト患者は、以前に、カボザンチニブ、バンデタニブ、レンバチニブ、RXDX-105、又は別のマルチキナーゼ阻害剤で治療されたことがある。幾つかの実施形態において、ヒト患者は、前治療後に病勢進行した。幾つかの実施形態において、ヒト患者は、前治療に対する不耐性を発生させた。幾つかの実施形態において、ヒト患者は、以前に、マルチキナーゼ阻害剤で治療されたことがない。
【0078】
幾つかの実施形態において、ヒト患者は、以前にセルペルカチニブ(LOXO-292)、プラルセチニブ(BLU-667)、BOS-172738、又は別のRET選択的阻害剤で治療されたことがある。幾つかの実施形態において、ヒト患者は、前治療後に病勢進行した。幾つかの実施形態において、ヒト患者は、前治療に対する不耐性を発生させた。幾つかの実施形態において、ヒト患者は、以前に、RET選択的阻害剤で治療されたことがない。
【0079】
標的指向型作用剤を用いることで臨床的改善が見られるにも関わらず、RET異常を持つ患者では、再発が頻発する。幾つかの実施形態において、癌又は腫瘍は、耐性変異を有する、又はそのような耐性変異を発生させてしまっている。幾つかの実施形態において、癌又は腫瘍は、1種以上のマルチキナーゼ阻害剤に対して耐性である。幾つかの実施形態において、癌又は腫瘍は、1種以上のRET選択的阻害剤に対して耐性である。幾つかの実施形態において、癌又は腫瘍は、セルペルカチニブ及び/又はプラルセチニブに対して耐性である。幾つかの実施形態において、癌又は腫瘍は、セルペルカチニブ及び/又はプラルセチニブ耐性である細胞を含む。
【0080】
幾つかの実施形態において、HM06/TAS0953は、RETタンパク質の耐性変異を有する又はそのような耐性変異を発生させてしまった癌又は腫瘍の治療に有効である。幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、RETタンパク質のソルベントフロント変異及び/又はRETタンパク質のヒンジ領域の変異を含む。幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、RETタンパク質のソルベントフロント変異を含む。
【0081】
幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、アミノ酸残基730番、736番、760番、772番、804番、806番、807番、808番、809番、810番、及び/又は883番でのRETタンパク質の変異を含む。幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、アミノ酸残基804番、806番、807番、808番、809番、及び/又は810番でのRETタンパク質の変異を含む。幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、アミノ酸残基810番でのRETタンパク質の変異を含む。
【0082】
幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、以下の変異を含むRETタンパク質変異を含む:V804X変異(Xはバリン又はグルタミン酸以外の任意アミノ酸である);b)Y806X変異(Xはチロシン以外の任意アミノ酸である);c)A807X変異(Xはアラニン以外の任意アミノ酸である);d)K808X変異(Xはアラニン以外の任意アミノ酸である);e)Y809X変異(Xはチロシン以外の任意アミノ酸である);及び/又はf)G810X変異(Xはグリシン以外の任意アミノ酸である)。
【0083】
幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、V804X変異を含むRETタンパク質変異を含み、Xは、バリン又はグルタミン酸以外の任意アミノ酸である。幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、Y806X変異を含むRETタンパク質変異を含み、Xは、チロシン以外の任意アミノ酸である。幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、A807X変異を含むRETタンパク質変異を含み、Xは、アラニン以外の任意アミノ酸である。幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、K808X変異を含むRETタンパク質変異を含み、Xは、アラニン以外の任意アミノ酸である。幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、Y809X変異を含むRETタンパク質変異を含み、Xは、チロシン以外の任意アミノ酸である。幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、G810X変異を含むRETタンパク質変異を含み、Xは、グリシン以外の任意アミノ酸である。
【0084】
幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、以下の変異を含むRETタンパク質変異を含む:a)V804L若しくはV804M変異;b)Y806C、Y806S、Y806H、若しくはY806N変異;及び/又はc)G810R、G810S、G810C、G810V、G810D、若しくはG810A変異。幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、RETタンパク質のV804L又はV804M変異を含む。幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、RETタンパク質のY806C、Y806S、Y806H、又はY806N変異を含む。幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、RETタンパク質のG810R、G810S、G810C、G810V、G810D、又はG810A変異を含む。幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、RETタンパク質のG810R変異を含む。
【0085】
幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、以下を含むRETタンパク質変異を含む:a)L730Q若しくはL730R変異;b)G736A変異;c)L760Q変異;d)L772M変異;及び/又はe)A883V変異。幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、RETタンパク質のL730W又はL730R変異を含む。幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、RETタンパク質のG736A変異を含む。幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、RETタンパク質のL760Q変異を含む。幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、RETタンパク質のL772M変異を含む。幾つかの実施形態において、RET遺伝子異常は、RETタンパク質のA883V変異を含む。
【実施例】
【0086】
実施例1.HM06/TAS0953の脳移行特性
初期研究では、HM06/TAS0953が血液脳関門を横断して移行する能力を評価した。HM06/TAS0953を0.5%HPMC、0.1N塩酸に溶解させ、単回用量で、BALB/cAJcl-nu/nuマウス(日本クレア株式会社)に経口投与した。マウスには、BaF3/KIF5B-RET_RFP細胞株(すなわち、KIF5B RET融合陽性細胞株)を皮下移植しておいた。投与の1時間後、イソフルラン麻酔下で、下大静脈から血液を採取し、次いで、全脳を取り出した。血液試料を遠心して、血漿試料を得た。超音波ホモジナイザーを用いて、脳を3倍量の水とともにホモジナイズし、脳ホモジネートを得た。
【0087】
血漿中及び脳ホモジネート中のHM06/TAS0953の化合物濃度を、LC-MS/MSにより測定し、脳ホモジネート中の化合物濃度に係数4を乗じて、脳中の化合物濃度を計算した。以下の表2を参照。脳/血漿中の化合物濃度比から、Kp値(=脳ホモジネート中の化合物濃度/血漿中の化合物濃度)を計算した。血漿中及び脳中の非結合化合物濃度を、血漿タンパク質非結合比及び脳タンパク質非結合比から計算し、脳/血漿中の非結合化合物濃度比からKp,uu値を計算した。計算したKp値及びKp,uu値に基づいて脳移行特性を評価した。Kp値0.1以上を示す化合物を、脳移行特性を有すると見なし、Kp,uu値0.3以上を示す化合物を、優れた脳移行特性を有すると見なした(Varadharajan S, et al. J Pharm Sci. 2015, 104:1197-1206)。
【0088】
【0089】
HM06/TAS0953は、高いKp値及び高いKp,uu値を呈し、優れた脳移行特性を示す。このデータは、HM06/TAS0953が、脳転移性病変又は他のCNS疾患の治療に有効である可能性を示唆する。
【0090】
実施例2.HM06/TAS0953は、脳転移モデルにおいて強力な有効性を有する
RET異常陽性腫瘍の治療におけるHM06/TAS0953の有効性を、KIF5B-RET融合陽性脳転移モデルで試験した。HM06/TAS0953は、強力かつ安定した効果を示した。
【0091】
このモデルでは、KIF5B-RET Luc融合陽性NIH3T3細胞(2.5×105細胞/マウス)を、無胸腺ヌードマウス(日本チャールス・リバー株式会社)の脳に、ラムダ縫合の3mm前方及び2mm右外側の位置に深さ3mmで移植した。移植から6日後、マウスにルシフェリン(富士フイルム和光純薬株式会社)を静脈内注射し、マウスの発光をin vivo撮影システム(Lumina II、PerkinElmer)で測定した。マウスの背面及び側面の関心対象の領域の合計フラックス(p/s)を、それぞれ、Living Imageソフトウェア(PerkinElmer)を用いて定量し、両方の合計フラックス値を加算して得られた合計フォトンを、発光シグナルとして利用した。マウスを、各群の平均合計フォトンが等しくなるように、1群につき10匹で無作為に3つの群に割り当て、次いで、ビークル(0.1mol/L塩酸含有0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース)又はTAS0953(12.5mg/kg又は50mg/kg)を、7日目から1日2回(b.i.d)経口投与した。マウスの発光シグナルを、試験終了まで、週に1回測定した。
【0092】
HM06/TAS0953は、強力かつ安定した効果を示した。
図1Aは、50mg/kgをBIDで投与した場合のHM06/TAS0953の抗腫瘍有効性を、ビークル対照と比較して示す。
図1Bは、体重変化パーセントを示すとともに、HM06/TAS0953で処置されたマウスが、試験した用量で化合物に対して十分に忍容性であった一方で、ビークル対照群では、腫瘍負荷による動物死亡及び体重増加抑制が観察されたことを示す。
図1Cは、HM06/TAS0953群での生存率がビークル対照群よりも高いことを示す。
図1Dは、処置したマウスのin vivo撮影システム(IVIS)画像及び脳の病態を、ビークル対照と比較して示す。
【0093】
これらのデータは、HM06/TAS0953が、RET変異陽性患者において、脳転移に強力な抗腫瘍効果を有する可能性があることを確立し、長期生存期間を示す。これらのデータは、HM06/TAS0953が、マウスにおいて良好な脳浸透度を有することも示す。
【0094】
実施例3.HM06/TAS0953は、バンデタニブ治療抵抗性腫瘍モデルにおいて有効性を有する
HM06/TAS0953への切り替えが腫瘍寸法に対して有意な効果を有するかどうかを評価するため、バンデタニブ治療後のHM06/TAS0953の有効性を、バンデタニブ治療継続と比較して評価した。結果は、HM06/TAS0953が治療抵抗性腫瘍に対して有効である可能性を示唆する。
【0095】
融合キナーゼKIF5B-RET(NIH3T3 KIF5B-RET)で遺伝子導入したマウス線維芽細胞株を、6週齢のオスBALB/cA Jcl-nuマウスの右胸部に5×106細胞/マウスで移植した。腫瘍移植後、腫瘍の長軸(mm)及び短軸(mm)を、ノギスを用いて測定し、以下の式(A)に従って腫瘍体積(TV)を計算した。次いで、マウスを、各種群の平均TVが均一になるように、各種群に割り当てた。このグループ分け(n=5又は6/群)を行った日を、1日目と指定した。
【0096】
バンデタニブ処置したマウスの平均腫瘍体積が1日目の平均腫瘍体積の3倍の大きさを超える時点まで、バンデタニブを毎日100mg/kg/日で経口投与した。16日目、バンデタニブ処置群を、2つの群に分けた:群1:バンデタニブ処置継続群;群2:HM06/TAS0953処置群。HM06/TAS0953処置群では、バンデタニブからHM06/TAS0953に切り替えた後、HM06/TAS0953を毎日100mg/kg/日(50mg/kg、BID)で経口投与した
【0097】
抗腫瘍効果の指標として、31日目のTVを、各群について測定し、1日目に対する相対腫瘍体積(RTV)を、以下の式(B)により計算して、抗腫瘍効果を評価した。
【0098】
結果を
図2に示す。図中、記号
*は、HM06/TAS0953処置群と連続バンデタニブ処置群の比較の間の有意差を示す。
(A):TV(mm
3)=(長軸×短軸
2)/2
(B):RTV=(n日目のTV)/(1日目のTV)
n:表示された測定日
【0099】
統計上、HM06/TAS0953処置群の平均RTV値は、バンデタニブ処置継続群のものより有意に小さかった(ステューデントのt検定、p<0.05)。これらのデータは、HM06/TAS0953が、バンデタニブ治療抵抗性腫瘍に対して有効であったことを示す。
【0100】
実施例4.RET再構成により駆動される肺癌細胞株におけるHM06/TAS0953の前臨床評価
次いで、RET融合陽性細胞株の増殖阻害におけるHM06/TAS0953の有効性を、3種のRETマルチキナーゼ阻害剤(カボザンチニブ、RXDX-105、及びバンデタニブ)との比較で検査した。HM06/TAS0953の有効性を、治療ナイーブ試料に由来する2種の細胞株で検査した。細胞株の1種は、どのような抗癌療法による治療も受けたことのなかった患者から得られた試料に由来するものであり、この試料は、KIF5B-RET融合陽性である。HM06/TAS0953を用いた処置は、IC50=0.03μMで細胞の増殖を阻害した(
図3A)。これは、マルチキナーゼ阻害剤、カボザンチニブ、RXDX-105、及びバンデタニブより7倍~24倍強力であった。
【0101】
HM06/TAS0953を、CCDC6-RET融合駆動型細胞株に対する有効性及び非腫瘍形成性対照細胞株における非特異的効果を検討するために、同質遺伝子対の細胞株において検査した。HM06/TAS0953は、IC50=0.1μMでCCDC6-RET融合細胞株の増殖を阻害した(
図3B)。この細胞株の空対照プラスミドを発現する同質遺伝子カウンターパートは、HM06/TAS0953に対する感度がずっと低かった(17倍低い)(
図3C)。CCDC6-RET融合細胞株は、カボザンチニブ、RXDX-105、及びバンデタニブに対して等しい感受性であった。
【0102】
HM06/TAS0953を、TRIM33-RET融合陽性細胞株で試験した。細胞の増殖は、HM06/TAS0953によりIC50=0.006μMで阻害され、これは、3種のマルチキナーゼRET阻害剤による増殖阻害のIC50より8倍~20倍低かった(
図3D)。
【0103】
HM06/TAS0953の阻害効果を、RETマルチキナーゼ阻害剤に対して耐性であるRET融合陽性細胞株で検査した。HM06/TAS0953は、カボザンチニブ耐性であった患者の試料に由来する細胞株(CCDC6-RET融合)の増殖をIC50=0.06μMで阻害した。これは、カボザンチニブによるこれら細胞の増殖阻害のIC50より11.5倍低かった。HM06/TAS0953は、カボザンチニブ耐性細胞の増殖阻害について、RXDX-105及びバンデタニブと比べても、より強力であった(
図3E)。
【0104】
HM06/TAS0953は、RXDX-105耐性を獲得した患者から得られた試料に由来する細胞株(KIF5B-RET融合)の増殖をIC50=0.07μMで阻害した(
図3F)。これは、カボザンチニブ(0.34μM、95%CI:0.21~0.54)、RXDX-105(0.49μM、95%CI:0.31~0.76)、又はバンデタニブ(0.38μM、95%CI:0.29~0.49)による増殖阻害のIC50より有意に低かった。
【0105】
これらの結果は、HM06/TAS0953が、RET融合を持つ細胞株の増殖阻害について、他のRETマルチキナーゼ阻害剤よりも有効であることを示唆する。これらの結果は、HM06/TAS0953が、RETマルチキナーゼ阻害剤の阻害活性に対して治療抵抗性である細胞株に対して有効であることを示唆する。また、HM06/TAS0953は、3種の異なるN末端融合パートナー(CCDC6、KIF5B、及びTRIM33)からなるRET融合を持つ細胞株に対して有効であった。
【0106】
実施例5.RET再構成により駆動される肺癌の前臨床動物モデルにおけるHM06/TAS0953有効性の評価
異種移植片腫瘍の増殖を低減するHM06/TAS0953の有効性を確認し、抗RET活性を持つ既知のマルチキナーゼ阻害剤であるバンデタニブと比較した有効性を、更に検査した。RET融合陽性癌の前臨床動物モデルにおいて有効性を観察した。この前臨床動物モデルは、同質遺伝子細胞(NIH-3T3-CCDC6-RET)又は患者由来細胞(TRIM33-RET融合)いずれかを免疫不全マウスに移植して異種移植片腫瘍を発生させることによりRET阻害剤に対して感受性である(実施例5A及び実施例5B)。また、RXDX-105又はカボザンチニブいずれかに対する耐性を発生させてしまった患者の試料から発生させた複数の患者由来異種移植片(PDX)モデルにおいて、有効性を観察した(実施例5C)。以下で詳細に記載するとおり、全てのモデルにおいて、HM06/TAS0953は、腫瘍増殖の阻害について、場合によっては、腫瘍退縮も含めて、バンデタニブより優れているか、又はバンデタニブと同じぐらい有効であった。RET依存性異種移植片腫瘍を担持するマウスをHM06/TAS0953で処置すると、わずか12.5mg/kgをBIDという用量の少なさで、腫瘍増殖の有意な低減が得られた。50mg/kgをBID又は100mg/kgをQDの用量では、腫瘍増殖の有意な低減が存在し、その中には、TRIM33-RET融合異種移植片腫瘍の約100%退縮が含まれていた。同様に、50mg/kgをBID又は100mg/kgをQDのHM06/TAS0953を用いた処置は、カボザンチニブ耐性PDX腫瘍の増殖を有意に低減し、約50%腫瘍退縮をもたらした。HM06/TAS0953処置は、RXDX-105耐性腫瘍に由来する2つのPDXモデルの増殖においても有意な低減を引き起こした。バンデタニブで処置したマウスは、体重を相当量減少させたが、一方でHM06/TAS0953で処置したマウスは、この試験で試験した全ての用量で、化合物に対して十分に忍容性であった。
【0107】
異種移植片腫瘍の増殖に対するHM06/TAS0953の効果を、更に、前臨床脳同所性モデル(TRIM33-RET融合)において観察した(実施例5D)。HM06/TAS0953を50mg/kgのBIDで用いた処置は、脳における腫瘍増殖を完全に遮断し、担癌マウスの生存率の有意な上昇をもたらした。これらの結果は、HM06/TAS0953が、マウスの皮下側腹部に移植された又は脳中に移植されたRET融合陽性異種移植片腫瘍の増殖を遮断することができる有効な抗RET阻害剤であることを示唆する。
【0108】
方法:PDXモデルの生成及び全ての有効性試験に、6週齢のメスNSG(NOD/SCID gamma)マウス(Envigo, Madison, WI)を使用したが、例外として、NIH-3T3異種移植片試験には、無胸腺ヌードマウス(Envigo, Madison, WI)を使用した。細胞の移植から22日後、確固たるシグナルが検出され、ビークル又は50mg/kgのHM06/TAS0953をBIDで用いた処置を開始した後、マウスを、1群につき5匹で無作為に群に割り当てた。ルシフェラーゼシグナルを毎週記録し、動物の体重を週に2回測定した。病的状態の兆候、例えば、協調運動障害又は過剰な体重減少及び疲労が検出されたところでマウスを屠殺した。処置群では、1匹の動物が試験の初期に死亡したことがわかり、したがって、処置群は、4匹の動物のみに縮小した。
【0109】
ビークル及び化合物:カボザンチニブを、30%プロピレングリコール、5%Tween80、65%D5W(ブドウ糖5%含有水)に混合して、懸濁液を生成させた。バンデタニブを、1%ナトリウムカルボキシメチルセルロース(CMC-Na)に混合して、懸濁液を生成させた。HM06/TAS0953を、0.1NのHCl及び0.5%ヒプロメロース(HPMC)に混合して、懸濁液を生成させた。RXDX-105を、15%カプチゾールに混合して、懸濁液を生成させた。NIH-3T3モデル、TRIM33-RET融合モデル、RXDX-105耐性になった後に得られた患者試料から得られたPDXモデル(CCDC6-RET)、及びカボザンチニブ耐性であった患者から得られたモデル(CCDC6-RET)を、HM06/TAS0953遊離塩基で処置した。他のモデルは全て、HM06二塩酸塩形で処置した。
【0110】
統計分析:データセットは、二元配置分散分析により比較し、テューキー又はシダックス多重比較検定を用いて、有意性を特定した。p<0.05を、2つの値又はデータセット間の差が統計上有意であると見なした。生存曲線は、ログランク(マンテルコックス)検定を用いて比較した。95%信頼区間及び全ての統計分析は、Graphpad Prism v7ソフトウェアを用いて行った。
【0111】
実施例5A:HM06/TAS0953は、RET阻害剤感受性異種移植片腫瘍の増殖阻害について有効である。
HM06/TAS0953が、RET阻害剤で処置されたことのない細胞に由来する異種移植片腫瘍の増殖を阻害する能力を、検査した。CCDC6-RET融合タンパク質を安定発現するNIH-3T3細胞を、無胸腺ヌードマウスの皮下側腹部に移植した。腫瘍が約100mm3に到達したところで、マウスを、1群につき5匹で無作為に群に割り当て、処置を開始した(6日目)。NIH-3T3-CCDC6-RET細胞株は、CCDC6-RET融合cDNAの安定発現により生成させた。NIH-3T3-CCDC6-RET異種移植片腫瘍を担持する無胸腺免疫不全ヌードマウスを、12.5mg/kg~100mg/kgのHM06/TAS0953で1日1回(QD)又は1日2回(BID)のいずれかで処置した。バンデタニブ(100mg/kgをQD)を、比較に用いた。
【0112】
HM06/TAS0953を用いた処置は、試験した全ての用量で、腫瘍増殖の有意な低減をもたらした(
図4A及び
図4B)。バンデタニブ処置も、ビークル処置群に比べて、腫瘍体積の有意な減少をもたらした。しかしながら、HM06/TAS0953は、50mg/kgをBID又は100mg/kgをQDで投与した場合、バンデタニブよりも有効であった。これらの実験において、RET融合依存性腫瘍増殖を阻害することが示されているもの(50mg/kg、QD)よりもはるかに高用量のバンデタニブ(100mg/kg)が使用された(Suzuki M et al., Cancer Sci .2013, 104(7):896-903 doi 10.1111/cas.12175)。これらの結果は、HM06/TAS0953が、RET融合駆動型腫瘍の増殖の低減について、バンデタニブよりも有効であることを示唆する。使用したHM06/TAS0953の用量のいずれにおいても、動物の有意な体重減少はなかった(
図4C)。
【0113】
実施例5B:HM06/TAS0953は、RET融合により駆動される患者由来細胞株異種移植片の増殖阻害に有効である。
有効性試験を、患者由来細胞株異種移植片モデルに拡大した。TRIM33-RET融合陽性異種移植片腫瘍を、NSGマウスの皮下側腹部に移植した。腫瘍が約100mm3に到達したところで、マウスを、1群につき5匹で無作為に群に割り当て、処置を開始した(22日目)(Somwar R et al., J Clin Oncol. 2016, 34(15_suppl):9068)。
【0114】
HM06/TAS0953を用いた処置は、試験した3種の異なる用量で、腫瘍増殖の有意な低減を引き起こした(
図5A)。全ての群において、各異種移植片腫瘍は退縮した。腫瘍は、50mg/kgのHM06/TAS0953で1日1回処置した場合、60.7±5%縮小した(
図5B)。50mg/kgのBIDで処置したマウスに触知可能な腫瘍は残存せず、動物を100mg/kgのQDのHM06/TAS0953で処置した場合、腫瘍増殖が90±4%低減した(
図5B)。HM06処置群のいずれにおいても、開始と終了時で動物体重を比較した場合、動物体重の有意な変化は存在しなかった。バンデタニブでの処置は、完全腫瘍退縮をもたらしたものの、動物は、相当量の体重を減少させ、47日目には、この群の全ての動物を屠殺しなければならなかった(
図5C)。バンデタニブ処置群の各動物は、処置開始の3日目に体重を減少させ始めた。
【0115】
実施例5C:HM06/TAS0953は、RETマルチキナーゼ阻害剤に対して治療抵抗性であるPDX腫瘍の増殖阻害について有効である
腫瘍増殖を阻害するHM06/TAS0953の有効性を更に探求するため、3種のPDXモデルにおける腫瘍増殖に対する阻害剤の有効性を検査した。これらのモデルは、RXDX-105耐性であり、1種は、カボザンチニブ耐性であった。
【0116】
もはやカボザンチニブに反応しなくなった患者から得られた腫瘍試料に由来するPDX腫瘍(CCDC6-RET)を、ミンチし、マトリゲルと混合し、次いで、NSGマウスの皮下側腹部に移植した。腫瘍が約100mm
3に到達したところで、マウスを、1群につき8匹で無作為に群に割り当て、処置を開始した(12日目)。バンデタニブを用いた担癌マウスの処置は、腫瘍増殖の有意な低減を引き起こし(
図6A)、試験の終了時に触知可能な腫瘍は残存しなかった(
図6B)。この群の腫瘍は全て、100%縮小した。しかしながら、動物は、相当量の体重を減少させた(
図6C)。カボザンチニブ(30mg/kgをQD)処置は、ビークル処置群と比べた場合に腫瘍増殖を有意に低減したものの(p<0.05)、腫瘍の縮小は存在せず、この群の全ての腫瘍が或る程度の増殖を示した(
図6B)。50mg/kgをBID又は100mg/kgをQDでHM06/TAS0953を用いた処置は、腫瘍増殖の有意な低減を引き起こし(
図6A)、腫瘍はそれぞれ43.7±3.8%及び47.7±0.9%縮小した。HM06-50mg/kgをBID群で、25日目に動物が1匹死亡しているのが見つかり、そのため、実験の終了時、この群には動物が7匹しかいなかった。動物の死因は不明であった。
【0117】
腫瘍試料収集時点でRXDX-105治療に耐性であった患者由来のPDX腫瘍(CCDC6-RET)を、ミンチし、マトリゲルと混合し、次いで、NSGマウスの皮下側腹部に移植した。腫瘍が約100mm
3に到達したところで、マウスを、1群につき5匹で無作為に群に割り当て、処置を開始した(14日目)。RXDX-105(30mg/kgをBID)を用いた処置は、ビークル処置群に比べて、腫瘍体積の有意な変化を引き起こさず(p>0.05)、このモデルがRXDX-105耐性であることを実証した(
図7A)。バンデタニブ(50mg/kgをQD)を用いた処置は、腫瘍体積の有意な減少を引き起こし、腫瘍は27.2±5.2%縮小した(p<0.05)(
図7A及び
図7B)。
図5Cで相当な体重減少が観察されたことを理由に、この試験及びその後の全ての試験について、50mg/kgのQDのバンデタニブを使用した。同様に、HM06/TAS0953(50mg/kgをBID又は100mg/kg、QD)を用いた処置は、ビークル処置群に比べて、腫瘍体積の有意な減少を引き起こし、腫瘍はそれぞれ、8.6±11.8%及び30±7.7%縮小した(
図7A及び
図7B)。HM06/TAS0953をいずれかの用量で用いた処置は、これらの群において動物体重に有意な影響を及ぼさなかった(p>0.05)(
図7C)。
【0118】
RXDX-105に対する反応性が不良であった患者に由来するPDX腫瘍(CCDC6-RET)を、ミンチし、マトリゲルと混合し、次いで、NSGマウスの皮下側腹部に移植した。腫瘍が約100mm
3に到達したところで、マウスを、1群につき8匹で無作為に群に割り当て、処置を開始した(12日目)。50mg/kgをBID及び100mg/kgをQDのHM06/TAS0953の有効性を、このモデルで試験した。HM06/TAS0953を50mg/kgのBIDの用量で用いた処置は、ビークル処置群に比べて、腫瘍体積の小さいけれど有意な減少を引き起こした(
図8A)。HM06/TAS0953を100mg/kgのQDの用量で用いた処置は、腫瘍増殖の減速についてより有効であった。
図8Aに示すとおり、腫瘍の縮小はなかった(
図8B)。HM06/TAS0953は、いずれの群においても動物の体重にどのような有意な変化も引き起こさなかった(
図8C)。
【0119】
これらの結果は、HM06/TAS0953が、カボザンチニブ及びRXDX-105に対して治療抵抗性であったPDX腫瘍の増殖の低減に有効であることを示唆する。
【0120】
実施例5D:HM06/TAS0953は、RET融合を持つ脳同所性異種移植片腫瘍モデルの増殖阻害について有効である。
脳に存在するRET融合陽性腫瘍に対するHM06の効果を評価するため、TRIM33-RET融合陽性異種移植片腫瘍を、NSGマウスの脳に移植した。これらの細胞は、in vivoでの生物発光撮影をしやすくする目的で、ホタルルシフェラーゼを発現するように改変された。異種移植片腫瘍を消化し、次いで、単一細胞をNSGマウスの脳に移植した。生物発光撮影を毎週行い、確固たるシグナルが検出された時点で、腫瘍細胞の移植から22日後に処置を開始した(パネルA及びパネルBの0日目)。マウスを毎週撮影し、確固たるシグナルが検出された後、50mg/kgのHM06/TAS0953をBIDで又はビークルを用いて処置を開始した(移植から22日後)。生物発光シグナルを、材料及び方法のセクションで記載したとおりに定量した。ビークル処置したマウスは、平均開始シグナルを超える(p<0.05)強力な生物発光シグナルによりわかるとおり(
図9A及び
図9B)、腫瘍を急速に発達させた。しかしながら、22日目、ビークル処置群とHM06処置群の間には有意差が存在した(p<0.05)。HM06処置したマウスは、ビークル処置したマウスよりも有意に長く生存し(p<0.05)、腫瘍負荷を理由にビークル処置群の最後の動物を屠殺しなければならなくなってから28日後、実験の終了時に依然として3匹のマウスが生存していた(
図9C)。HM06/TAS0953処置は、実験動物の体重に対してどのような有害作用も持たなかった(
図9B、右側パネル)。これらの結果から、HM06/TAS0953は、横断して脳に入り、そこに存在するRET再構成腫瘍に対して有効であることが確認される。
【0121】
RET特異的キナーゼ阻害剤HM06/TAS0953は、RET阻害剤で処置されたことのないRET再構成腫瘍並びにマルチキナーゼRET阻害剤カボザンチニブ及びRXDX-105に対して耐性である腫瘍の前臨床モデルの増殖を遮断することが観察された。HM06/TAS0953の有効性は、バンデタニブの有効性に匹敵するものであった。しかしながら、バンデタニブを用いた処置は、動物の有意な体重減少をもたらした。これはHM06では見られなかった知見である。重要なことは、HM06/TAS0953が、脳においてRET融合陽性肺癌の前臨床モデルの増殖を抑制し、全生存期間を延長したことである。
【0122】
実施例6.脳内におけるRET再構成により駆動される肺癌の同所性異種移植片モデルに対するHM06/TAS0953有効性の評価
TRIM33-RET融合陽性肺癌の脳同所性モデルにおけるHM06/TAS0953の有効性を、LOXO-292及びバンデタニブと比較した。脳に腫瘍を有するマウスをHM06/TAS0953(50mg/kgをBID)で処置すると、LOXO-292(10mg/kg及び25mg/kgをBIDの投薬量)よりも有効に腫瘍増殖を遮断した。HM06/TAS0953は、LOXO-292の両用量に比べて、担癌マウスの生存期間の有意な増加を引き起こした。バンデタニブ(50mg/kgをQD)は、担癌動物の腫瘍増殖も生存率も減少させなかった。今回提示する結果は、HM06/TAS0953が、脳における腫瘍増殖の低減において、LOXO-292よりも有効であることを示唆する。
【0123】
動物の脳への注射用細胞の調製及び生物発光画像の定量:TRIM33-RET融合細胞に、GFPルシフェラーゼ構築物を内包するレトロウイルスで形質導入し、次いで、GFP陽性細胞をFACSにより単離した。これらの細胞を、NSGマウスの皮下側腹部に注射し、異種移植片腫瘍を生成させた。腫瘍を収集し、GentleMACS組織プロセッサ(Miltenyi Biotech)中で60分間、腫瘍分離酵素セット(Miltenyi Biotech)を用いて消化し、次いで、10%FBS含有増殖培地を加えることで消化酵素を中和し、次いで、遠心によりペレット化した。次いで、細胞を新鮮な増殖培地に再懸濁させ、75μmフィルターを通過させ、計数し、PBSで1回洗い、密度100000細胞/μLでPBSに再懸濁させた。分離した腫瘍細胞を、Hamiltonシリンジに26G針(1μL)を用いて、以下の座標で、麻酔したマウスの脳に注射した:前方(X):0.5、後方(Y):1.5、背側(Z):2.5。創傷を封鎖し、マウスを回復させた。生物発光撮影を毎週行って腫瘍増殖をモニタリングし、画像をImageJソフトウェアで分析した。個別のマウスの全発光領域を包含する対象領域(ROI)におけるピクセルを、閾値関数を用いて同定し、それらの面積(A)及び平均強度(I)を測定した。平均バックグラウンドピクセル強度(B)は、無発光面積から測定した。個別のマウスの合計発光(L)は、以下の式を用いて定量した:L=(I-B)×A。これは、バックグラウンド強度に関して調整する。
【0124】
確固たるシグナルが検出された後、マウスを1群あたり6匹からなる群に無作為に割り当てた。細胞移植から10日後、ビークル、50mg/kgをBIDのHM06、100mg/kgをQDのHM06/TAS0953、及び10mg/kgをBIDのLOXO-292を用いて処置を開始した。バンデタニブ(50mg/kgをQD)及び25mg/kgをBIDのLOXO-292を用いるマウスの処置は、これらのマウスから確固たる生物発光シグナルを得るのに長めの時間を要したため、移植から28日後に開始した。生物発光を毎週記録し、動物の体重を週に2回測定した。病的状態の兆候、例えば、協調運動障害又は過剰な体重減少及び疲労が検出されたところでマウスを屠殺した。
【0125】
ビークル及び化合物:バンデタニブを、1%カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)と混合して、懸濁液を生成させた。HM06/TAS0953を、0.1NのHCl及び0.5%ヒプロメロース(HPMC)と混合して、懸濁液を生成させた。
【0126】
統計分析:データセットは、二元配置分散分析により比較し、テューキー又はシダックス多重比較検定を用いて、有意性を特定した。p<0.05を、2つの値又はデータセット間の差が統計上有意であると見なした。生存曲線は、ログランク(マンテルコックス)検定を用いて比較した。全てのグラフ及び統計分析は、Graphpad Prism 8ソフトウェアを用いて行った。
【0127】
HM06/TAS0953は、RET融合を持つ脳同所性異種移植片腫瘍モデルの増殖阻害について、LOXO-292よりも有効である:ビークル処置したマウスは、平均開始シグナルを超える強力な生物発光シグナルによりわかるとおり(
図10A及び
図10B)、腫瘍を急速に発達させた。処置の33日目には、ビークル群の担癌マウスは病気になり、屠殺しなければならなくなった。対照的に、処置開始から5日後、50mg/kgをBID(p=0.0012)又は100mg/kgをQDのHM06/TAS0953(p=0.0008)で処置したマウスから得られるルシフェラーゼシグナルに有意な減少が存在した。50mg/kgのHM06/TAS0953をBIDで投与すると、試験の全期間(131日間の処置)の間、腫瘍増殖が遮断された。LOXO-292を10mg/kgのBIDで用いる処置は、生物発光シグナルのどのような減少も引き起こさず、マウスをLOXO-292で処置する間、腫瘍は増殖し続けた(
図10B)。高用量のLOXO-292(25mg/kgをBID)は、処置の最初の3週間は腫瘍増殖を低減させたが、その後、腫瘍は、処置開始から64日後に拡大を開始し、高腫瘍負荷を理由にマウスを屠殺しなければならなくなるまで拡大を続けた(
図10B)。HM06/TAS0953を用いた処置は、10mg/kgをBIDのLOXO-292(p=0.0012)及び25mg/kgをBIDのLOXO-292(p=0.001)に比べて担癌マウスの生存期間の有意な増加を引き起こした。試験終了時、HM06/TAS0953を50mg/kgでBID群の6匹のマウスには、低/検出不能なルシフェラーゼシグナルが存在し、全てのマウスが試験終了時に依然として生存していた。2つのLOXO-292群間で生存率に差はなかった。実験動物の体重に何らかの有害作用を有する処置はなかった(
図10D)。これらの結果から、HM06/TAS0953は、横断して脳に移行し、そこに存在するRET再構成腫瘍に対して有効であることが確認される。
【0128】
RET特異的キナーゼ阻害剤HM06/TAS0953は、マウスの脳に移植されたRET融合を持つ肺癌細胞の増殖を遮断し、担癌動物の生存期間の増加をもたらした。LOXO-292は10mg/kgをBIDの投薬量で、マウスの皮下側腹部に移植されたRET融合陽性腫瘍の退縮を引き起こすのに十分であることを考慮すると、これらのデータは、LOXO-292の脳中の腫瘍部位への送達が、たとえ25mg/kgをBIDの高用量であったとしても、不良であることを示す。
【0129】
実施例7.安全性薬理試験
心血管系、呼吸器系、及び中枢神経系に関する安全性薬理試験を行った。HM06-01/TAS0953-01は、痙攣促進活性及び呼吸器系において生物学的に関連する変化をなにももたらさなかった。
【0130】
中枢神経系
HM06-01/TAS0953-01は容易に血液脳関門を横断するため、CNSに対する効果を、複数の非GLP及びGLP安全性薬理試験で評価した。
【0131】
ラットにおける2週間毒物学GLP試験では、HM06-01/TAS0953-01を25mg/kg、50mg/kg、及び125mg/kgのBIDでの毎日投与において、1日目の2回目の投与から1.5時間後に、Irwin試験を行った。各群は、オスラット10匹及びメスラット10匹で構成された。50mg/kg及び125mg/kgをBIDで投薬された動物は、探索行動及び覚醒の低下を示した。また、125mg/kgをBIDで処置されたメスは、尿プールの平均数が高く(対照の0.0に対して0.8)、直腸温度が低かった(対照の37.7℃に対して37.1℃)。しかしながら、他のIrwin試験パラメーターは正常であり、動物の健康状態は、肉眼的には変化していなかったため、これらの変化は、有害ではないと判断された。
【0132】
潜在的な痙攣促進効果及び抗痙攣効果を評価するため、HM06-01/TAS0953-01を、0mg/kg、30mg/kg、100mg/kg、及び200mg/kgのSIDの用量レベルで、強制経口投与を介してラットに投与した。各群は、オスラット10匹で構成された。潜在的な痙攣促進活性を評価するため、これら経口用量レベルのHM06-01/TAS0953-01又は35mg/kgのd-アンフェタミンを投与してから1時間後に、閾値以下用量の25mg/kgのPTZを投与して、痙攣促進効果を評価した。HM06-01/TAS0953-01は、どのような痙攣促進効果も示さなかった。対照群又はHM06-01/TAS0953-01処置群のラットで、ステージ5、強直性/間代性痙攣を示したラットはいなかった。一方で、ラットをd-アンフェタミンで前処置した陽性対照群は、ラットのドーパミンアゴニスト処置に典型的な反復挙動を示し、ラット10匹中3匹に、完全強直性(full tonic)/間代性痙攣を誘導した。相対抗痙攣効果を評価するため、WistarラットにHM06-01/TAS0953-01又はジアゼパムを経口投与した。HM06-01/TAS0953-01は、100mg/kg及び200mg/kgの用量で、ペンチレンテトラゾールの予荷重試験により誘導された痙攣の合計数の減少をもたらした。これらのデータは、HM06-01/TAS0953-01が、ラットにおいて、痙攣促進活性を有さず、特筆すべきは、抗痙攣特性を有する可能性があることを示唆する。
【0133】
イヌにおける2週間毒性試験及び4週間毒性試験(実施例8で更に記載する)では、定期臨床観察中、15mg/kg以上のBIDの一日量で初回後に、及びPK試験において5mg/kg以上のBIDの用量で初回投与後に、イヌにCNS症候が見られた。HM06-01の潜在的神経毒性効果を評価する目的で、対照イヌ及び45mg/kgをBIDのHM06-01/TAS0953-01で処置したイヌの異なる脳領域9箇所(すなわち、前頭極、視交叉、漏斗、乳頭体、第三脳神経底(base)、脳橋の前方部及び後頭極部、小脳、並びに延髄)でFluoro-Jade C染色を行った(試料は、イヌにおける2週間毒性試験から採取した)。また、代替法を用いて検証する目的で、対照1匹及び45mg/kgをBIDで処置した高用量イヌ1匹でのみATF3免疫染色を行ったところ、ニューロン変性又は苦痛のどのような兆候も存在しなかった。対照イヌの脳とHM06-01/TAS0953-01処置したイヌの脳の間に差は観察されなかった。このことは、試験したイヌ脳範囲のどこにおいても、どのようなニューロン変性及び/又はストレスを受けた/損傷したニューロンの証拠も存在しないことを意味する。
【0134】
心臓血管系
上記に記載するとおりのイヌにおける2週間毒性GLP試験で、12日目に、ECGに対するHM06-01/TAS0953-01の効果を調べた。HM06-01/TAS0953-01を用量レベル15mg/kg、30mg/kg、及び45mg/kgのBIDで反復投与した後、QT延長のエビデンスは見られなかった。心拍数及びECGもまた、試験した全ての用量レベルで影響を受けなかった。対照的に、高用量で処置されたメスは、一日量の投与の初回から5時間後及び一日量の2回目から1時間後に、動脈血圧の低下を示した。平均動脈血圧の平均値は、ビークル群の127mmHg及び115mmHgに対して、及びベースラインの119mmHgに対して、それぞれ、91mmHg及び93mmHgであった。8時間後、動脈血圧は、対照/ベースラインレベルに戻っていた。この低下は、対照に対して有意差ではなかったものの、一貫したものであり、試験品に関連すると見なすのに十分なほど目立っていた。そうはいっても、変化の程度が限定的で高用量のメスにのみ存在したこと、及びこの血圧低下が動物の健康に負の影響を有していなかったことから、これは有害ではないと見なした。
【0135】
ECGに対するHM06-01/TAS0953-01の効果を、上記に記載(及び実施例8で更に記載)するとおりのイヌにおける4週間毒性GLP試験の1週目(2日目)、4週目(23日目)、及び2週間回復期間の終了時でも調べた。2日目、一日量の2回目から2時間後、HM06-01/TAS0953-01の効果は、15mg/kg、30mg/kg、及び45mg/kgをBIDの用量レベルでは認められなかった。一方、23日目、オスの15mg/kg及び30mg/kgのBIDで、心電図パラメーターに、試験品関連効果は認められなかった。反対に、オスの用量レベル45mg/kgをBIDでは、有害ではない潜在的に試験品関連のわずかな心拍数増加が認められ、並びにメスの用量レベル15mg/kg、30mg/kg、及び45mg/kgで、試験品及び用量関連のわずかな(対照に比べて最大8%)Fridericia及びVan der Water補正QTc間隔の延長が認められた。これらの心電図効果は、2週間の回復期間終了時には、もはや観察されなかった。また、2日目及び23日目、並びに回復期間の終了時、心電図調律及び波形に異常はなかった。
【0136】
呼吸器系
呼吸器系に対するHM06-01/TAS0953-01の効果も、ラットにおける4週間GLP試験で、HM06-01/TAS0953-01を25mg/kg、50mg/kg、及び90mg/kgのBIDで反復投与した後に調べた。このGLP試験は、実施例8で更に記載する。各群は、5匹の動物/群/性別で構成された。4週目において、呼吸器パラメーターに毒物学的関連効果は観察されず、投与期間の終了から2週間後の6週目において遅発型慢性効果も見られなかった。
【0137】
実施例8.ラット及びイヌにおける4週間反復投与毒性試験
HM06/TAS0953の有害作用を、ラット及びイヌにおける4週間毒性GLP試験で、上記のHM06/TAS0953二塩酸塩(HM06-01/TAS0953-01)を用いて評価した。
【0138】
ラットにおける4週間毒性試験
ラットにおける4週間GLP毒性試験では、動物は、強制経口投与により0mg/kg、25mg/kg、50mg/kg、及び90mg/kgをBIDのHM06-01/TAS0953-01を与えられた。高用量の90mg/kgをBID群において、試験品関連の死亡が観察された:メス3匹について、10日目~14日目に、死亡が見つかった、又は倫理的理由により予定前に屠殺された(活動性の低下、異常な呼吸数、及び立毛のような重篤な臨床兆候)。死体解剖時、肺の変色が概して観察され、この変色は、肺の有害な中等度~顕著な炎症性変化(肺胞/血管周囲炎症、マクロファージ凝集、肺胞浮腫/出血)と組織学的に相関していた。更に1匹のメス(サテライト)が、7日目、投与前に死亡しているのが見つかった。しかしながら、死体解剖では臨床症候も異常性もなく、試験品投与との関連性は疑わしいと判断された。
【0139】
試験品関連の臨床兆候は、両方の性別で及び用量依存性を持って観察され、臨床兆候としては、例えば、異常呼吸数、呼吸中の異常音、活動性の低下/上昇、自発運動性常同症(locomotor stereotypy)、体幹屈曲姿勢、頭尾の低さ(low carriage)、歩行障害、ペダリング、目瞑り、咀嚼動作、瞳孔異常、及び手触りの冷たさ等である。これらの臨床観察は、一時的であり、投与30分後の発生率が高かった。これらの兆候は全て、投与終了後の回復動物には存続しなかった。
【0140】
25mg/kgをBID及び50mg/kgをBIDでは、体重に対して何の効果もなかったが、一方で90mg/kgをBIDでは、両性別で、少ない体重増加及び食物消費量の減少と関連した体重の10%減少が観察された。これらの効果は、回復期間の終了時に、元に戻るものであった。
【0141】
眼科的変化はなく、呼吸機能評価において毒物学的に関連する急性及び慢性の効果もなかった。凝血パラメーターに対する効果もなかった。
【0142】
血液学的には、両性別で、網状赤血球の用量依存的増加が見られた。また、オスでのみ好中球の増加が見られ、中用量及び高用量のオス並びに高用量のメスで血小板の増加が見られた。白血球数の有意な増加が、オスの高用量でのみ観察された。これらの効果は全て、回復期間の終了時に、元に戻るものであった。
【0143】
対照群と比べて、平均臨床化学パラメーターにおける以下の変化が、用量依存的に見られ、試験品関連であると判断された:
両性別でAST及びALTにおける用量依存的増加が見られた。
全ての用量でオスのAPが上昇
中用量及び高用量のオスでコレステロールの上昇及びトリグリセリドの低下が観察された。
これらの効果は全て、回復期間の終了時に、元に戻るものであった。
【0144】
尿タンパク質濃度の用量依存的上昇が、両性別で認められ、高用量オスで発生率が高く(7/10匹のオスが1g/L)並びに中用量及び高用量のメスで発生率が高かった(それぞれ、4/10匹のメス及び3/7匹のメスが1g/L以上)。この効果は、回復期間の終了時に、元に戻るものであった。Tmaxは、概して、1日目の1回目の一日量の7時間後(2回目の一日量の1時間後)及び28日目の1回目の一日量の1時間後に観察され、用量レベルの上昇とともにCmaxが上昇した。2回目の一日量後に推定可能な場合にはT1/2を観察し、これは2.03時間~3.67時間の範囲であった。HM06-01/TAS0953-01への全身曝露は、およそ用量に比例した様式で、用量レベルの上昇とともに上昇し、性別間で同様であった。28日目、全身貯留は認められなかった。
【0145】
投与期間の終了時、HM06-01/TAS0953-01関連炎症の顕微鏡による知見が、肺、膵臓(空胞形成/アポトーシス性腺房細胞)、大腿骨(骨端軟骨肥大)、精巣/精巣上体(セルトリ細胞の空胞形成、管変性、管内細胞デブリの増加、精子濃度の低下)に認められた。回復期間の終了時、終了時屠殺及び早期死亡で見られた試験品関連の知見は、膵臓について完全に元に戻るものであり、主に90mg/kgのBIDで肺及び大腿骨における最小限の重篤度での孤発的発生を示した。このことは、回復の進行が進んでいることを示す。回復期間中に試験品関連の変化が精巣及び精巣上体に存在し、90mg/kgのBIDでは発生率及び重篤度が上昇することは、不完全な可逆性であることを示す。
【0146】
これらの結果に基づき、重篤な毒性用量10(STD10)を、50mg/kgのBIDに設定した。これは、平均AUC(0-t)が1日目でオスにおいて50300ng・h/mL及びメスにおいて37200ng・h/mL、28日目で、オスにおいて73000ng・h/mL及びメスにおいて74300ng・h/mLであることに相当する。
【0147】
イヌにおける4週間毒性試験
イヌにおける4週間GLP毒性試験では、動物は、強制経口投与により0mg/kg、15mg/kg、30mg/kg、及び45mg/kgをBIDのHM06-01/TAS0953-01を4週連続で与えられ、続いて2週間の回復期間とした。高用量の45mg/kgをBID群において、試験品関連の死亡が観察された:オス2匹について、17日目及び18日目に、倫理的理由により予定前に屠殺された(顕著な体重減少と関連した重篤な臨床兆候)。主な死因は、肺胞又は気管支肺胞上皮流通を伴う軽度~中等度の多発性亜急性炎症であり、1匹のオスでは、肺胞異物肉芽腫を伴っていた。他方のオスでは、前立腺房アポトーシスを伴う最小の膵臓腺房空胞形成/アポトーシスが認められ、これについては、試験品との関連性を排除することができない。
【0148】
試験品関連臨床兆候は、用量依存的であり、15mg/kg以上のBIDの用量で1日目から始まることが認められた。これらの観察には、全ての用量での、活動性低下及び振戦、横臥位、毛皮/皮膚の汚れ、目瞑り、歩行異常、手触りの冷たさ;中用量及び高用量での、嘔吐及び唾液分泌、尿の変色/赤色糞便、抑止された/疲弊した及び見かけ上の筋肉萎縮(後肢)が含まれる。しかしながら、これらの臨床兆候は、一過性であり、投与から30分後に発生率が高まった。
【0149】
低用量では、体重への効果がなかったが、一方でメスの30mg/kg及び45mg/kgをBIDで1日目と29日目の間に、並びに45mg/kgをBIDで予定前に屠殺されたオスで、体重減少が認められた(オス644番で-25%及びオス642番で-12%、それぞれ、15日目及び17日目)。回復期間の終了時、中用量及び高用量のメスは体重が増加していたが、これらの体重増加は、対照動物のものより少なかった。
【0150】
眼科、尿検査、凝血、及び臨床化学パラメーターに変化はなかった。
【0151】
血液学的には、両性別で単球数の増加により合計白血球数が増加(全ての用量で用量依存的に)、及び好中球数が増加(メスでは高用量のみ、オスでは中用量及び高用量で);オスの高用量でのみ網状赤血球数が増加、両性別で高用量及び/又は中用量で血小板数が増加。好酸球数の減少は、メスにのみ関係したこと及び用量依存的ではなかったことを考慮して、疑わしいと判断された。これらの効果は全て、回復期間の終了時に、元に戻るものであったが、例外として、高用量のオスの単球及びメスの好酸球については違った。
【0152】
tmaxは、1回目の一日量の1時間後と8時間後(1回目の一日量の1時間後と2回目の一日量の2時間後)の間で観察された。AUC(0-t)に基づき、HM06/TAS0953への全身曝露は、用量比例よりもわずかに多く増加していたが、例外として、28日目のオス及びメスの30mg/kgと45mg/kgのBIDの間では、この増加は用量比例より少なかった。同様なHM06/TAS0953への曝露が、全ての投与された用量で1日目と28日目にオスとメスの間で観察された。28日目のHM06/TAS0953への曝露は、1日目と比較した場合、30mg/kgをBIDでは同様であり、15mg/kg及び45mg/kgをBIDでは、個体の一部について、減少していた又は同様なままであった。
【0153】
投与期間の終了時、全てのメスで胸腺の平均重量の低下、並びに30mg/kgをBIDのオス及び45mg/kgをBIDの生存しているオス限定の前立腺の平均重量の低下が観察された。組織病理学検査では、HM06-01/TAS0953-01は、顕微鏡的炎症性知見を、肺(肺胞又は気管支肺胞上皮流通を伴う亜急性炎症)、膵臓(腺房細胞空胞形成/アポトーシス)、及び胸腺(萎縮)に誘導した。回復期間の終了時、肺における試験品関連の知見は、回復の進行を進めていることを示した。回復期間の終了時に膵臓及び胸腺で観察された組織学的知見は、対照群及び処置群で同様な重篤度及び/又は孤発性の発生を示し、試験したビーグル犬で自然発生的に遭遇する毒性又は機能改変の兆候はなかった。
【0154】
これらの結果に基づき、重篤な毒性が発現しない最大用量(HNSTD)は、この試験において30mg/kgのBIDであると確立された。この量は、平均AUC(0-t)が、1日目にオスにおいて21400ng・h/mL及びメスにおいて29200ng・h/mL、28日目にオスにおいて22300ng・h/mL及びメスにおいて29100ng・h/mLであることに相当する。
【0155】
実施例9.HM06/TAS0953の遊離血漿中濃度と脳及び脳脊髄液中の遊離濃度との相関
自由行動成体オスHan(商標)WistarラットにHM06/TAS0953二塩酸塩を3mg/kg、10mg/kg、及び50mg/kgの単回用量(用量は、投与された遊離塩基を示す)で経口投与した後の前頭前皮質、脳脊髄液(CSF)、及び血漿中のHM06/TAS0953の薬物動態を、以下の表3に従って評価した。
【0156】
【0157】
前頭前皮質(PFC)、血漿、及び脳脊髄液(CSF)におけるHM06/TAS0953曝露は、3mg/kg~50mg/kgの使用した用量範囲にわたり広く用量比例の様式で用量の増加とともに上昇した。Tmaxが0.5時間~1時間であることは、HM06/TAS0953が速く吸収され、短い半減期、良好なF%(46%~51%)、中等度の血漿クリアランス、巨大な分布容積、及び限界腎クリアランスを伴うことを示す。
図11Aは、HM06/TAS0953を3mg/kg、10mg/kg、30mg/kg、及び50mg/kgで単回経口投与した後の経時的血漿中濃度を示す。
図11Bは、3mg/kgのHM06/TAS0953を経口及び静脈内で単回投与した後の経時的血漿中濃度を示す。
【0158】
いったん区画間での平衡に到達すると、PFC、CSF、及び血漿遊離画分からのMetaQuant微小透析液中で観察されるHM06/TAS0953濃度の比は、1:1:1に近かった。この濃度比は、HM06/TAS0953投与後2時間から6.5時間まで(CSFは最長8時間)維持された。
図11Cは、投与後2時間から6.5時間までの血漿遊離画分、PFC、及びCSFにおける薬物動態プロファイルを重ね合わせたものを示す。
【0159】
遊離血漿中濃度対遊離脳濃度の濃度比が1:1であることは、HM06/TAS0953が血液脳関門を容易に横断することを示した。HM06/TAS0953の遊離血漿中濃度を用いて、脳及びCSF中の遊離濃度の良好な近似を推定することができる。高い脳浸透性は、CNSアウトカム(例えば、CNS転移の制御、反応期間、及び/又はCNS転移からの保護)を改善する可能性がある。
【0160】
実施例10.RETに関するHM06/TAS0953の標的選択性の評価
HM06/TAS0953のRET選択性を、LOXO-292及びBLU-667と比較した。表4に示すとおり、HM06/TAS0953は、IC50値に基づき、LOXO-292及びBLU-667と比較した場合、RETキナーゼ選択性をより高く有する。
【0161】
【0162】
安全性の観点から、RETに関するHM06/TAS0953の標的選択性が高いことは、潜在的なオフターゲットキナーゼ阻害を原因とする有害作用を最小限にする可能性があり、潜在的な臨床的利益がある。
【0163】
実施例11.ヒト治験用の開始用量決定
ヒト治験用の開始用量計算は、4週間反復用量のGLPに準拠した毒性試験のデータに基づいており、ICH S9指針のとおり、処置したラットの10%に重篤な毒性が発現する用量(STD10)の10分の1及びイヌの重篤な毒性が発現しない最大用量(HNSTD)の6分の1に基づく。
【0164】
4週間ラット毒性試験におけるSTD10は、50mg/kgをBIDに設定された。50mg/kgをBIDという用量(100mg/kgの一日量に等しい)は、8mg/kgをBIDのヒト等価用量(HED)に相当する。安全係数10を適用すると、ヒト開始用量は、60kg体重(BW)の患者について0.8mg/kgすなわち48mgをBIDもの高用量が可能である。追加の安全係数2.5を加えるが、その理由は、用量依存的肺胞炎症並びに精巣及び精巣上体における試験品関連変化がラットの2週間及び4週間毒性試験で観察され、2週間の回復期間の終了時にそれぞれ進行性の回復が進んでいたこと及び不完全な可逆性を伴っていたこと、並びに50mg/kg以上をSIDでの経口投与後にラットのFOBにおいてCNS効果が観察されたことによる。これにより、20mgをBIDというヒト開始用量案が導かれる。
【0165】
イヌの重篤な毒性が発現しない最大用量(HNSTD)は、イヌにおける4週間毒性試験で試験した高用量(30mg/kgをBID)である。用量30mg/kgをBID(60mg/kgの一日量に等しい)は、60kg BWの患者について16.2mg/kgをBIDすなわち972mgをBIDというヒト等価用量(HED)に相当する。ICH S9指針において指定されるとおり安全係数6を適用すると、ヒト開始用量は、60kgの患者について2.7mg/kgすなわち162mgをBIDもの高用量が可能である。ラット試験と一貫して、追加の安全係数2.5を適用するが、その理由は、イヌでも用量依存的肺胞炎症が観察され、2週間の回復期間の終了時に進行性の回復が進んでいたこと、QTcF延長がイヌの4週間試験において観察されたこと、及び総合毒性試験中、用量≧15 BID mg/kg/日で最初の投与後、1日目からCNS関連臨床兆候が認められたことによる。これにより、64.8mgをBIDというヒト開始用量案が導かれる。
【0166】
ヒト治験用の開始用量は、4週間反復用量のGLP準拠した毒性試験のデータに基づき、20mgをBID(すなわち、患者1人あたり40mg/日)に特定した。これは、処置したラットの10%に重篤な毒性が発現する用量(STD10)の10分の1及びイヌの重篤な毒性が発現しない最大用量(HNSTD)の6分の1に基づく。加速漸増デザイン(ATD)により、許容可能な忍容性の範囲で治験薬用量を投与しながら、有効ではない可能性のある用量に多すぎる患者を晒すことにならないようにできる。
【0167】
実施例12.RET遺伝子異常を持つ進行性固形腫瘍の患者における、HM06/TAS0953の安全性、忍容性、薬物動態(PK)、及び抗腫瘍活性の評価。
HM06/TAS0953の安全性、忍容性、薬物動態(PK)、及び抗腫瘍活性を評価する目的で、第I/II相非盲検、単群、ファーストインヒューマン試験を行う。この試験は、2つの部からなる:用量漸増及び用量拡大コホートを用いる第I相部、並びに3つのコホートを用いる第II相部である。RET遺伝子異常陽性進行性固形腫瘍の患者が、治療を受けることになる。両方の部において、治療サイクルは、21日間の連続投薬であり、サイクル間に治療中断を挟まない。投薬は、病勢進行、臨床的有益性の喪失、許容できない有害事象の発生、新規抗癌治療の開始、同意の撤回、医師の判断、死亡、又は追跡不能になるまで続けることになる。第I/II相試験は、安全性評価も含むことになり、安全性評価には、TEAE及び重篤な有害事象(SAE)の頻度、重篤度、及び関連性の評価、血液学的及び血液化学物質値の変化、身体検査の評価、バイタルサイン、並びに心電図(ECG)を含む。
【0168】
HM06/TAS0953錠剤を、絶食状態(すなわち、薬物投与の2時間前と1時間後の間にどのような食物も消費されてはならない)において、BID(約12時間ごと)で経口投与することになる。
【0169】
第I相試験は、HM06/TAS0953の経口治療、1日2回の20mg用量で開始、最大耐量(MTD)に達するまで、連続した毎日の投薬、サイクルは21日間継続を含むことになる。
【0170】
前臨床有効性データ(マウスモデルにおけるED50は経口3mg/kg/日)、安全性データ(4週間毒物学試験のラットにおける経口用量は25mg/kg及び50mg/kgをBID)、組換えCYPデータからウェル・スタード(well-stirred)モデルにより予測されるヒトクリアランス6.4mL/分/kgに基づき、ヒトにおける経口生体利用度を50%と仮定すると、HM06/TAS0953は、約40mgをBIDで開始して癌患者において抗腫瘍有効性の兆候を示し、HM06/TAS0953の1日の曝露量AUC0-24,ss≧1650ng・h/mLとなることが予想される。最大投与量は、500mgをBID~1500mgをBIDの範囲が可能であり、1日の曝露量AUC0-24,ss≧22000ng・h/mL~≦63000ng・h/mLをもたらす可能性がある。これらの曝露量は、それぞれ、ラットにおけるSTD10である50mg/kgをBIDより低い25mg/kgをBIDの安全用量、及びSTD10で達成されるものに等しい(動物で測定されたAUC値を、動物対ヒトの非結合画分比で乗算することにより、ヒト用に調整してある)。上記の仮定に基づき、この治験で投与することになる最大用量は、500mgをBID~1500mgをBIDの範囲が可能である。
【0171】
第II相試験は、経口治療で、推奨用量を1日2回、連続した毎日の投薬、サイクルは21日間継続を含むことになる。
【0172】
第I相用量漸増
第I相用量漸増試験は、加速漸増デザイン(ATD)に従うことになり、開始用量20mgをBIDで開始して100%刻みで用量を段階的に増加させる初期加速段階(1用量レベルあたり1人の患者)を伴う。80mgをBIDのコホートの後、加速段階を3+3デザインに変換する。加速段階中、治療の最初のサイクル(すなわち治療の最初の21日間、サイクル1)において安全レビュー委員会(SRC)により臨床上意味があると見なされるグレード2以上の薬物関連毒性又は用量制限毒性(DLT)が観察されない場合、及び標準段階において患者の0/3又は2/6未満がDLTを経験する場合、最大耐量(MTD)に達するまで新たな患者で用量漸増を続けることになる。
【0173】
第一コホートは、1人の患者からなり、この患者は、21日間サイクルで、21日間連続してHM06/TAS0953を投与されることになる。サイクル1の間にこの患者で関連性のある関連毒性が観察されない場合、次のコホートを開始することになる。治験計画に基づき、1から最大3つまでのコホートが、漸増段階に含まれることになり、一方、標準段階のコホートの数は、MTDに達するまで用量漸増を続けることになるため、予測不能である。
【0174】
MTDは、以下のとおり定義される:サイクル1でDLTを経験する患者が33%以下である、最高用量レベル。
【0175】
DLTは、以下のとおり定義される:試験プロトコルにおいて詳細に記載されるとおり、治療の最初のサイクルにおける治療中に発生した毒性(病勢進行又は併発する病気と明白に関連しており、治験薬と無関係であるとして、治験責任医師により判定された有害事象を除く)。
【0176】
第II相推奨用量(RP2D)は、以下のとおり定義される:用量の漸増及び拡張の用量レベルで治療された患者に由来する、総合的安全性、忍容性、PKデータ、及び非臨床データから外挿される有効曝露量の推定に基づき第II相で試験される用量。RP2Dは、MTD以下である可能性があるが、MTDより高くはならない。MTDに到達しない場合、RP2Dが、試験した最高用量より高くなることはありえない。
【0177】
第I相用量漸増試験の主要目的は、治療の最初の21日間(サイクル1)内での最大耐量(MTD)を決定すること、及び第II相推奨用量(RP2D)を同定することである。
【0178】
第I相用量漸増試験の主な副次目的は、以下を評価することである:単回投薬及び複数回投薬(高密度試料採取)後の血漿中のHM06/TAS0953及びその代謝産物の個々のPKプロファイル;単回投薬後の尿中排泄;安全性及び忍容性;抗腫瘍活性;並びに治療中の液体生検により得られる循環遊離核酸中のRET遺伝子状態の変化。HM06/TAS0953及び代謝産物の薬物動態評価は、HM06/TAS0953及び主要代謝産物の血漿中濃度並びにPKパラメーターを測定することで評価することができ、そのようなPKパラメーターとして、0時点から24時間までの曲線下面積(AUC0-24)、最大薬物濃度(Cmax)、最大血漿中濃度に到達する時間(Tmax)、及び蓄積度合いが挙げられるが、これらに限定されない。脳脊髄液(CSF)中のHM06/TAS0953濃度を特定することができる。血漿試料を同時に採取して、CSF/血漿比を推定することができる。
【0179】
試験は、DLT評価のために評価可能な患者を最高36人含むことができる。患者の合計数は、用量漸増で必要かつ可能な患者の交代の数に依存することになる。標的試験集団は、RET遺伝子異常陽性進行性固形腫瘍患者を含むことができる。
【0180】
第I相用量拡大:
第I相用量拡大試験において、追加の患者の登録とともにRP2D用量レベルが拡大される。患者のサブセットにおいて、無作為化クロスオーバーデザインに従って、HM06/TAS0953生体利用度に対する食事の影響が評価されることになる。
【0181】
第I相用量拡大試験の主要目的は、3つの第II相コホートで使用することになる、標的集団における第II相推奨用量(RP2D)を確認することである。用量漸増の時間枠は、約10ヶ月(又は患者が試験を中止する場合はそれより早い)間の治療の最初の21日間(サイクル1)及び各サイクル(21日間)になる。
【0182】
第I相用量拡大試験の主な副次目的は、以下を評価することである:個別PK特性決定用に患者のサブセットから高密度試料採取することによる、及び集団PK分析用に他の全ての患者において疎に試料採取することによる、定常状態の血漿中のHM06/TAS0953及びその代謝産物の個々のPKプロファイル;患者のサブセットにおけるHM06/TAS0953生体利用度に対する食事の影響;安全性及び忍容性;抗腫瘍活性;並びに治療中の液体生検により得られる循環遊離核酸中のRET遺伝子状態の変化。
【0183】
この試験は、20人~30人の患者を含むことができ、その中には、ベースラインで測定可能な(RANO作業部会の推奨に従って)CNS転移を持つ患者が少なくとも10人含まれる。用量拡大中のHM06/TAS0953生体利用度に対する食事の影響の予備的評価は、PK評価に含まれる患者10人で行うことができる。
【0184】
標的試験集団は、一次RET遺伝子融合(耐性変異の有無を問わない)を持ちRET選択的阻害剤に以前に曝露した局所進行性又は転移性NSCLC患者を含む。患者は臨床的ベネフィットが実証されていると治験担当医師がみなした既存の治療を受けた後に疾患進行が記録された、又は、そのような治療を受けることができない患者である。
【0185】
第II相:
第II相試験では、患者は、3つのコホートにおいてRP2Dレベルで治療されることになる:コホート1及びコホート2(ピボタル)、並びにコホート3(探索用)である。
【0186】
第II相試験の主目的は、3つの異なる集団における選択したRP2Dの抗腫瘍活性(総合的、及び適宜、頭蓋内において)を評価することである。奏効率は、最初の6ヶ月間は約6週間(±1週間)ごとに、その後は病勢進行しなかった患者において、病勢進行するまで又は試験完了まで9週間(±1週間)ごとに評価することとする。
【0187】
第II相試験の主な副次目的は、以下を評価することである:3つのコホートにおける安全性及び忍容性;集団PK分析用に全ての患者において疎に試料採取することによる、定常状態の血漿中のHM06/TAS0953及びその代謝産物の個々のPKプロファイル;並びに治療中の液体生検により得られる循環遊離核酸中のRET遺伝子状態の変化。脳脊髄液(CSF)中のHM06/TAS0953濃度を特定することができる。血漿試料を同時に採取して、CSF/血漿比を推定することができる。
【0188】
追加の副次アウトカム尺度は、治験責任医師によるORR(客観的奏効率);疾患制御率;腫瘍奏効までの期間;奏効期間;無増悪期間;無増悪生存期間;全生存期間;並びに中枢神経系に特に関する上記のもののいずれかを含むことができる。
【0189】
第II相試験は、コホート1中、1段階デザインに55人の患者を含むことができる。この試験は、コホート2中、Simon2段階デザインに従って最大61人の患者(第一段階から継続する24人の患者及び第二段階で37人)を含むことができる。この試験は、コホート3中、各腫瘍型につき3人の患者を含むことができる。臨床的有益性が観察される場合は、より多くの患者を登録することができる。
【0190】
コホート1(ピボタル)の標的試験集団は、以下を含むことができる:一次RET遺伝子融合(耐性変異の有無を問わない)を持ちRET選択的阻害剤に以前に曝露した局所進行性又は転移性NSCLC患者:臨床的ベネフィットが実証されていると治験担当医師がみなした既存の治療を受けた後に疾患進行が記録された、又は、そのような治療を受けることができない患者;測定可能な脳及び/又は軟髄膜転移の有無を問わない。
【0191】
コホート2(ピボタル)の標的試験集団は、以下を含むことができる:RET遺伝子融合を持ちRET選択的阻害剤に対してナイーブである局所進行性又は転移性NSCLC患者:臨床的ベネフィットが実証されていると治験担当医師がみなした既存の治療を受けた後に疾患進行が記録された、又は、そのような治療を受けることができない患者;測定可能な脳及び/又は軟髄膜転移の有無を問わない。
【0192】
コホート3(探索用)の標的試験集団は、以下を含むことができる:RET遺伝子異常陽性進行性固形腫瘍の患者(一次RET遺伝子融合を持つNSCLC患者以外)であり、利用可能な治療選択肢すべてが無効となった、又は治験担当医師が他の治療に実質的なベネフィットがないと判断した、及び/又はそれを拒否した患者。
【0193】
第I/II相試験の選択基準は、以下を含むことができる:
第I相-用量漸増/用量拡大の共通選択基準:
年齢18歳以上の男性又は女性患者。
米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンススコアが0又は1。
ベースラインで組織生検又は液体生検により特定されるRET遺伝子異常が得られる。
以下のとおり定義される適切な造血機能:
血小板数が100000/μL以上
好中球絶対数が1500/μL以上
ヘモグロビンレベルが9.0g/dL以上(赤血球輸血及びエリスロポエチンを9.0g/dLに到達させるために使用可能であるが、治験薬の初回投与の少なくとも2週間前に投与されていなければならない)。
以下のとおり定義される適切な肝機能:血清総ビリルビンレベルが基準値上限(ULN)×1.5以下、血清アルブミンが2g/dL以上、ASTレベル及びALTレベルが、肝転移が存在しない場合にULN×2.5以下、肝転移が存在する場合にULN×5以下。
以下のとおり定義される適切な腎機能:血清クレアチニンがULN×2以下又は推定クレアチニンクリアランスが60mL/分以上。
子供を持つ可能性がある及び妊娠にリスクがある男性患者及び女性患者は、説明同意書の書式に署名をした日付から、試験全体を通じて、高度に有効な避妊法を使用すること、及び割り当てられた治療の最終用量後、180日間継続することに同意しなければならない。患者が子を持つことが生物学的に可能であり、性的に活発であると治験担当医師が判断した場合を妊娠可能と定義する。
第I相用量漸増-特定選択基準:
RET遺伝子異常のエビデンスを持つ進行性固形腫瘍の患者。
RECIST1.1により決定されるとおりの測定可能な及び/又は測定不能な疾患
患者は、進行性固形腫瘍についての少なくとも1つの又は複数の以前の治療ライン後に疾患の進行が文言化されている、又はそのような治療を受けることができない患者。
患者が脳及び/又は軟髄膜転移を有する場合、その男性患者/女性患者は、無症候性でなければならない。RANO作業部会(WG)推奨に従って測定可能な病変及び測定不能な病変の両方が許容される。
患者が以前にRET選択的阻害剤ですでに治療されたことがある場合、以前のRET選択的阻害剤治療からHM06/TAS0953の最初の用量まで、半減期の少なくとも5倍分が経過していなければならない。
第I相用量拡大-特定選択基準:
一次RET遺伝子融合(耐性変異の有無を問わない)を持ちRET選択的阻害剤に以前に曝露した局所進行性又は転移性NSCLC患者:
既存療法後に疾患が進行し、その療法は治験責任医師の判断によれば臨床的利益を実証した又はその療法を受けることができないとして、文言化されている;
ベースラインでの脳及び/又は軟髄膜転移の有無を問わない。
患者が脳及び/又は軟髄膜転移を有する場合、その男性患者/女性患者は、以下を有するのでなければならない:
少なくとも7日間ステロイド及び抗痙攣薬を使用していない無症候性の未処置脳/軟髄膜転移(これらは、寸法的に適格な場合、標的病変としてとらえる)
又は
局所療法(WBRT/SRT/手術)ですでに治療されており、治験薬投与の前、少なくとも7日間、ステロイド及び抗痙攣薬使用により臨床上安定している、無症候性脳転移。
RECIST1.1により特定されるとおりの測定可能な疾患
以前のRET選択的阻害剤治療からHM06/TAS0953の初回投与まで、半減期の少なくとも5倍分が経過していなければならない。
特定の場所で管理されているNGS試験により優先的にRET状態が文言化されている又は以前のRET阻害剤治療から実質的かつ長期(6ヶ月超)の臨床的利益が実証されているのいずれかである。
第II相-コホート1~3の共通選択基準:
年齢18歳以上の男性又は女性患者。
米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンススコアが0~2。
ベースラインで組織生検又は液体生検により特定されるRET遺伝子異常が得られる。
RECIST1.1により特定されるとおりの測定可能な疾患。
患者が脳及び/又は軟髄膜転移を有する場合、その男性患者/女性患者は、以下を有するのでなければならない:
少なくとも7日間ステロイド及び抗痙攣薬を使用していない無症候性の未処置脳/軟髄膜転移(これらは、寸法的に適格な場合、標的病変としてとらえる)
又は
局所療法(WBRT/SRT/手術)ですでに治療されており、治験薬投与の前、少なくとも7日間、ステロイド及び抗痙攣薬使用により臨床上安定している、無症候性脳転移。
以下のとおり定義される適切な造血機能:
血小板数が100000/μL以上
好中球絶対数が1500/μL以上
ヘモグロビンレベルが9.0g/dL以上(赤血球輸血及びエリスロポエチンを9.0g/dLに到達させるために使用可能であるが、治験薬の初回投与の少なくとも2週間前に投与されていなければならない)。
以下のとおり定義される適切な肝機能:血清総ビリルビンレベルがULN×1.5以下、血清アルブミンが2g/dL以上、ASTレベル及びALTレベルが、肝転移が存在しない場合にULN×2.5以下、肝転移が存在する場合にULN×5以下。
以下のとおり定義される適切な腎機能:血清クレアチニンがULN×2以下又は推定クレアチニンクリアランスが60mL/分以上。
子供を持つ可能性がある及び妊娠にリスクがある男性患者及び女性患者は、スクリーニング時の最初の妊娠検査陰性の時点から、試験全体を通じて及び割り当てられた治療の最終用量後180日間、高度に有効な避妊法を使用することに同意しなければならない。患者が子を持つことが生物学的に可能であり、性的に活発であると治験担当医師が判断した場合を妊娠可能と定義する。
・第II相コホート1-特定選択基準:
一次RET遺伝子融合(耐性変異の有無を問わない)を持ちRET選択的阻害剤に以前に曝露した局所進行性又は転移性NSCLC患者。
臨床的ベネフィットが実証されていると治験担当医師がみなした既存の治療を受けた後に疾患進行が記録された、又は、そのような治療を受けることができない患者。
以前のRET選択的阻害剤治療からHM06/TAS0953の初回投与まで、半減期の少なくとも5倍分が経過していなければならない。
特定の場所で管理されているNGS試験により優先的にRET状態が文言化されている又は以前のRET阻害剤治療から実質的かつ長期(6ヶ月超)の臨床的利益が実証されているのいずれかである。
第II相コホート2-特定選択基準:
RET遺伝子融合を持ちRET選択的阻害剤に以前に曝露したことのない局所進行性又は転移性NSCLC患者。
臨床的ベネフィットが実証されていると治験担当医師がみなした既存の治療を受けた後に疾患進行が記録された、又は、そのような治療を受けることができない患者。
第II相コホート3-特定選択基準:
RET遺伝子異常を担持する進行性固形腫瘍の患者(一次RET遺伝子融合を持つNSCLC患者以外)であり、利用可能な治療選択肢すべてが無効となった、又は治験担当医師が他の治療に実質的なベネフィットがないと判断した、及び/又は患者がそれを拒否した:これには、以下を含むことができる(がそれらに限定されない):
選択的RET阻害剤に対する不耐性を進行させてしまった又は発生させてしまった、甲状腺髄様癌又は甲状腺未分化癌;
転移性乳癌;
転移性膵臓腺癌;
EGFR/ALK/ROS1/BRAF標的療法に限定されないがこれら療法の後のRET経路の出現を伴うNSCLC。
患者が以前にRET選択的阻害剤ですでに治療されたことがある場合、以前のRET選択的阻害剤治療からHM06/TAS0953の最初の用量まで、半減期の少なくとも5倍分が経過していなければならない。
【0194】
第I/II相試験の除外基準には、以下を含むことができる:
第I相-用量漸増/用量拡大の共通除外基準:
授乳中の女性。
治験薬の初回投与前、臨床試験中の作用剤又は抗癌療法を半減期の5倍分(又は、残留毒性がないという条件で、抗癌抗体及び他のバイオ薬物等長期作用薬の場合に半減期1倍分)以内で使用。
治験薬の初回投与前、4週間以内に大手術(血管アクセスの設置を除く)を受けている又は治験治療の過程中に大手術を受ける計画がある。
治験薬の初回投与前、14日間以内にWBRTを受けている、又は7日間以内に他の緩和的放射線治療を受けている、或いはそのような治療の副作用から回復しておらず、治験責任医師の見解においてそのことに臨床上意味がある場合、の患者。
原発性CNS腫瘍の患者。
治験責任医師の見解に従って、臨床上顕著な制御不能の循環器疾患、これには、サイクル1の1日目前3ヶ月以内の心筋梗塞、不安定狭心症、顕著な弁膜又は心膜疾患、心室頻脈歴、症候性うっ血性心不全(CHF)のニューヨーク心臓協会(NYHA)クラスIII~IV、及び重篤な制御不能の動脈性高血圧が含まれる。
Fridericiaの式を用いて補正したオーバータイムQT時間(QTcF)の持続が470msec超;QT延長症候群の個人歴若しくは家族歴又はトルサードドポアント(TdP)歴。制御不能かつ持続性のTdPリスク因子(例えば、心不全、低カリウム血症、最適治療にも関わらずQT/QTc間隔を延長させる併用医薬の使用)歴。
現在、HIV、肝炎Bウイルス、又はC型肝炎ウイルスの活動性感染症がある。
文言化された間質性肺疾患歴、又は現在、ステロイド服薬を必要とする間質性肺疾患のエビデンスがある。
治験責任医師の見解に従って、薬物吸収に影響を及ぼすと思われる臨床上顕著な胃腸異常。
治験責任医師の見解に従って、治験薬療法に影響を及ぼすと思われる、消化機能に影響を及ぼす臨床上顕著な疾患(慢性下痢を含む)。
治験薬の初回投与前、1週間(7日間)以内の強力なCYP3A4阻害剤を用いた治療。
治験薬の初回投与前、3週間(21日間)以内の強力なCYP3A4誘導剤を用いた反復治療。
HM06/TAS0953中の添加剤に対する既知の過敏症。
治験責任医師の見解に従って、試験結果に交絡する可能性のある又は患者に対し治験薬を投与することに望ましくないリスクを負わせる可能性のある、任意の病気又は医学的状態。
第I相用量漸増-特定除外基準:
ベースラインで症候性CNS転移のある患者。
第I相用量拡大-特定除外基準:
ベースラインで症候性脳及び/又は軟髄膜転移があり、局所及び/又は全身療法による制御が不能な患者。
既知のEGFR、KRAS、ALK、HER2、ROS1、BRAF、及びMETex14活性化変異が存在する。
第II相-コホート1~3の共通除外基準:
授乳中の女性。
治験薬の初回投与前、臨床試験中の作用剤又は抗癌療法を半減期の5倍分(又は、残留毒性がないという条件で、抗癌抗体及び他のバイオ薬物等長期作用薬の場合に半減期1倍分)以内で使用
治験薬の初回投与前、4週間以内に大手術(血管アクセスの設置を除く)を受けている又は治験治療の過程中に大手術を受ける計画がある。
治験薬の初回投与前、14日間以内にWBRTを受けている、又は7日間以内に他の緩和的放射線治療を受けている、或いはそのような治療の副作用から回復しておらず、治験責任医師の見解においてそのことに臨床上意味がある場合の、患者。
原発性CNS腫瘍の患者。
ベースラインで症候性脳及び/又は軟髄膜転移があり、局所及び/又は全身療法による制御が不能な患者。
治験責任医師の見解に従って、臨床上顕著な制御不能の循環器疾患、これには、サイクル1の1日目前3ヶ月以内の心筋梗塞、不安定狭心症、顕著な弁膜又は心膜疾患、心室頻脈歴、症候性うっ血性心不全(CHF)のニューヨーク心臓協会(NYHA)クラスIII~IV、及び重篤な制御不能の動脈性高血圧が含まれる。
Fridericiaの式を用いて補正したオーバータイムQT時間(QTcF)の持続が470msec超;QT延長症候群の個人歴若しくは家族歴又はトルサードドポアント(TdP)歴。制御不能かつ持続性のTdPリスク因子(例えば、心不全、低カリウム血症、最適治療にも関わらずQT/QTc間隔を延長させる併用医薬の使用)歴。
現在、HIV、肝炎Bウイルス、又はC型肝炎ウイルスの活動性感染症がある。
文言化された間質性肺疾患歴、又は現在、ステロイド服薬を必要とする間質性肺疾患のエビデンスがある。
治験責任医師の見解に従って、薬物吸収に影響を及ぼすと思われる、臨床上顕著な胃腸異常。
治験責任医師の見解に従って、治験薬療法に影響を及ぼすと思われる、消化機能に影響を及ぼす臨床上顕著な疾患(慢性下痢を含む)。
治験薬の初回投与前、1週間(7日間)以内の強力なCYP3A4阻害剤を用いた治療。
治験薬の初回投与前、3週間(21日間)以内の強力なCYP3A4誘導剤を用いた反復治療。
HM06/TAS0953中の添加剤に対する既知の過敏症。
治験責任医師の見解に従って、試験結果に交絡する可能性のある、又は患者に対し治験薬を投与することに望ましくないリスクを負わせる可能性のある、任意の病気又は医学的状態。
第II相コホート1-特定除外基準:
既知のEGFR、KRAS、ALK、HER2、ROS1、BRAF、及びMETex14活性化変異が存在する。
第II相コホート2-特定除外基準:
既知のEGFR、KRAS、ALK、HER2、ROS1、BRAF、及びMETex14活性化変異が存在する。
第II相コホート3-特定除外基準:
なし。
【0195】
薬物投与:
HM06/TAS0953を、臨床用途用に二塩酸塩(HM06-01/TAS0953-01)として調製する。生成物を、経口使用の錠剤として製剤化する。試験を、用量10mg/単位及び50mg/単位(遊離塩基として表す)の錠剤を用いて行う。意図される貯蔵条件は、冷蔵条件である(2℃~8℃(36°F~46°F)に制御された温度)。
【0196】
HM06/TAS0953錠剤を、絶食状態(すなわち、薬物投与の2時間前と1時間後の間にどのような食物も消費されてはならない)において、20mg(開始用量)BIDを用いて、BID(約12時間ごと)で経口投与することになる。
【0197】
実施例13.第I相試験の用量漸増部を、320mgのBID用量レベルまで進行させる
第I相試験の漸増部は、依然として進行中であるものの、160mgをBIDで投与された患者の最初の治療サイクルから得られる安全性情報から、320mgをBIDの用量レベルに用量漸増させることが可能となった。このプロセスは、上記の実施例12で概要を記載した試験プロトコルに準拠している、すなわち、プロトコルのとおりに採用された患者の最初の治療サイクルから得られる安全性データが入手可能な場合、用量漸増のための安全審査委員会(SRC)会議が行われる。上記の実施例12で検討したとおり、この試験で投与されることになる最大用量は、500mgをBID~1500mgをBIDの範囲である可能性がある。
【0198】
実施例14.RETソルベントフロント変異に対するHM06/TAS0953の細胞性効力
選択的RET阻害剤であるLOXO-292(セルペルカチニブ)及びBLU-667(プラルセチニブ)は非小細胞肺癌において臨床上の抗腫瘍活性を示すものの、RETソルベントフロント変異(例えば、RETG810R/S/C)により駆動される獲得耐性が出現してしまった(Subbiah, V et al., Ann Oncol. 2021, 32(2):261-268;Lin JJ et al., Ann Oncol. 2020, 31(12):1725-1733;Solomon BJ et al., J Thorac Oncol. 2020, 15(4):541-549;Fancelli S et al., Cancers (Basel). 2021, 13(5):1091. doi: 10.3390/cancers13051091を参照)。そのような場合、セルペルカチニブ又はプラルセチニブを用いて再発した後の患者に現在利用可能な他の治療選択肢は、存在しない。
【0199】
ゲートキーパー変異V804L/M及びセルペルカチニブ又はプラルセチニブ耐性変異G810R/Sを含む、RET野生型融合及びRET変異に対する細胞性効力を、改変Ba/F3細胞で調べた。96ウェルプレート中1ウェルあたり約1000の細胞を培養し、HM06/TAS0953、バンデタニブ、BLU-667、又はLOXO-292で72時間(37℃で3日間)、処理した。CellTiter-Glo 2.0 Assay(Promega Corporation)を用いて、発光により細胞生存度を評価した。XLfitソフトウェア(ID Business Solutions)でシグモイド用量応答モデルを用いて、GI50値(化合物未処理対照のものと比較して50%の増殖阻害をもたらす濃度)を計算した。データは、3回の独立実験から得られたデータの平均±SDで表す。
【0200】
IC50データを、表5に示す。Ba/F3 KIF5B-RETG810R/S細胞は、BLU-667に対してだけでなく、LOXO-292に対しても耐性であることがわかった。しかしながら、Ba/F3 KIF5B-RETG810R/S細胞は、HM06/TAS0953に対して感受性であった。
【0201】
また、Ba/F3 KIF5B-RETV804L/M細胞は、HM06/TAS0953、BLU-667、及びLOXO-292に対して感受性であったが、バンデタニブに対しては感受性でなかった。
【0202】
【0203】
RET
G810R/S変異体がHM06/TAS0953に対して感受性であり続ける機構の解明を助けるため、TAS化合物1(HM06/TAS0953と類似の構造を有する)、BLU-667、及びLOXO-292と複合体形成するRETキナーゼドメインの結晶構造を検査した。複合体のX線結晶構造から、TAS化合物1は、BLU-667及びLOXO-292に比べて、RETに対して独特の結合様式を有することが明らかとなった。共結晶構造データに基づき、
図12Aに示すとおり、BLU-667及びLOXO-292は、RETの同じポケット(ポケットB)に結合するが、一方でTAS化合物1は、異なる結合様式でRETの異なるポケット(ポケットA)に結合する。TAS化合物1は、G810の側鎖方向で、空間を完全に埋めはせず、このことは、HM06/TAS0953が、ソルベントフロント置換による立体障害を有効に回避できることを示唆する。この特長が、HM06/TAS0953がG810変異においてその生物学的効力を維持する能力に寄与している可能性が高い。
【0204】
TAS化合物1の構造式は、以下のとおりである:
【化3】
【0205】
図12B及び
図12Cは、RET共結晶複合体の構造解析を、RETアミノ酸残基806番~810番の領域で拡大した図である。
図12Bは、RETと、TAS化合物1、BLU-667、及びLOXO-292との共結晶複合体を示し、
図12Cは、RETとTAS化合物1の共結晶複合体を示す。グリシン810は、BLU-667及びLOXO-292のどちらにも接近しており、この位置での置換は、これらの阻害剤に対する立体障害に影響を及ぼす可能性がある。対照的に、TAS化合物1は、アミノ酸残基806番~810番からなるポケットに挿入されていない。
【0206】
このデータは、RET変異(例えば、G810R/S)に対する阻害パターンが、HM06/TAS0953とBLU-667/LOXO-292の間で異なるという生物学的データと一致する。
【0207】
実施例15.RET変異体に対するHM06/TAS0953の薬理学的効果
ソルベントフロントKIF5B-RETG810R/A/C/D/S変異体を含む各種RET変異の、HM06/TAS0953、BLU-667、及びLOXO-292に対する感受性を、一過性遺伝子導入したHEK293細胞において、KIF5B-RETリン酸化のIn-Cell Western(商標)(ICW)分析により検査した。3回の独立実験に基づき、IC50値を計算した。データを、以下の表6にまとめる。
【0208】
野生型KIF5B-RETに対するHM06/TAS0953の効力は、BLU-667及びLOXO-292のものと等価であった。HM06/TAS0953により阻害されるRET変異のパターンは、LOXO-292及びBLU-667により阻害されるものとは異なっていた。HM06/TAS0953は、G810X変異を阻害し、RETG810Xのリン酸化を抑制するHM06/TAS0953のIC50値は、35.4nmol/L~282nmol/Lの範囲であった。G810X変異に対するHM06/TAS0953の効力は、BLU-667及びLOXO-292のものより高かった。また、L730X、G736A、L760Q、L772M、Y806C、及びA883Vに対するHM06/TAS0953の効力も、BLU-667及びLOXO-292のものより高かったが、一方でI788N及びL865Vに対するHM06/TAS0953の効力は、BLU-667及びLOXO-292のものより低かった。これらのデータは、HM06/TAS0953が、他のRET阻害剤、例えば、LOXO-292及び/又はBLU-667に対する耐性を示すKIF5B-RETの点変異に対して有効である可能性を示唆する。
【0209】
発現ベクターの生成
Gateway技術を用いて発現ベクターを生成させた。最初に、KIF5B-RET PCR産物、pDONR 221ベクター(Invitrogen Corporation)、及びGateway BP Clonase酵素ミックス(Invitrogen Corporation)を用いて、エントリーベクター(pENTR/KIF5B-RET)を構築した。次いで、エントリーベクター、pJTI FAST KO2-PuroR発現ベクター(これは大鵬薬品工業株式会社においてpJTI-FAST DEST発現ベクター(Thermo Fisher Scientific)を用いて改変されている)、及びGateway LR Clonase酵素ミックス(Invitrogen Corporation)を用いて、KIF5B-RET発現ベクターを構築した。
【0210】
In-Cell Western法
TransIT-X2(Mirus Bio LLC.)を用いて、Jump-In GripTite HEK293細胞に、KIF5B-RET発現ベクターで一過性に遺伝子導入した。各試験化合物をさまざまな濃度で用いて1時間処理した後、細胞を、20%ホルマリン中性緩衝液で固定した。次いで、マイクロプレートを、室温で1時間、Intercept(商標)(PBS)ブロック緩衝液(LI-COR Inc.)でブロックし、Intercept(商標)(PBS)ブロック緩衝液で希釈した一次抗体(抗リン酸化RET(Tyr905)抗体(カタログ番号3221、Cell Signaling Technology, Inc.)及び抗RET抗体(カタログ番号sc-101422、Santa Cruz Biotechnology, Inc.))とともに、4℃で一晩インキュベートした。続いてマイクロプレートを洗い、二次抗体(ヤギ抗ウサギIRDye 800CW及びヤギ抗マウスIRDye 680RD)(LI-COR Inc.)とともにインキュベートした。
【0211】
マイクロプレートを洗った後、Odyssey CLx Imaging System(LI-COR Inc.)を用いて、各ウェルの蛍光を定量した。T/C(%)は、以下のとおり特定した:
(試験化合物の平均シグナル)/(対照の平均シグナル)×100
平均シグナル:(リン酸化RETの蛍光-バックグラウンド)/(RETの蛍光-バックグラウンド)
【0212】
XLFitを用いて濃度対T/C(%)曲線から曲線当てはめによりIC50値を計算した。IC50値は、3回の独立実験により特定した。
【0213】
【0214】
実施例16.Ba/F3 KIF5B-RETG810R細胞を皮下移植したヌードマウスにおけるHM06/TAS0953の抗腫瘍効果の評価
HM06/TAS0953は、KIF5B-RETG810R動物腫瘍モデルにおいて顕著な抗腫瘍効果及び際立った標的阻害を示した。このことは、HM06/TAS0953が、G810R変異を持つKIF5B-RET遺伝子陽性である腫瘍の治療において有効である可能性を示唆する。10mg/kgを1日2回というぐらい少ない用量で、HM06/TAS0953は、腫瘍増殖及びリン酸化RETを顕著に阻害した。HM06/TAS0953は、野生型RETに対するその選択的で高い効力に加えて、G810Rソルベントフロント変異に対する顕著な効力も示す。G810Rソルベントフロント変異は、in vitro及びin vivoで、セルペルカチニブ及びプラルセチニブに対する耐性が高い。
【0215】
最初の試験では、Ba/F3 KIF5B-RETG810R細胞(5×106細胞/マウス)を、50%マトリゲル(Corning Incorporated)/PBSに懸濁させ、オス無胸腺ヌードマウス(BALB/cAJcl-nu/nu、日本クレア株式会社)に皮下移植した。HM06/TAS0953、LOXO-292、及びBLU-667を、0.1mol/LのHClを含有する0.5w/v%HPMC(信越化学工業株式会社)に配合した。移植から1週間後、マウスを、各群の平均腫瘍体積が等しくなるようにして無作為に異なる治療群に分け、ビークル(bid)、HM06/TAS0953(10mg/kg、30mg/kg、bid)、LOXO-292(10mg/kg、30mg/kg、bid)、又はBLU-667(10mg/kg、30mg/kg、bid)を、14日間経口投与した。ビークルとして0.1mol/LのHClを含有する0.5w/v%HPMCを投与される群が、対照群であった。腫瘍の長さ及び幅を、デジタルノギス(株式会社ミツトヨ)を用いて測定し、腫瘍体積を以下のとおり計算した:[長さ×(幅)2]/2。マウスの腫瘍体積及び体重を、試験終了まで、週に2回測定した。
【0216】
ダネットの検定を用いることにより統計上の有意性を特定し、処置群の腫瘍体積を対照群のものと比較した。統計分析は、EXSUSバージョン10.0(株式会社CACエクシケア)を介してSASバージョン9.4(SAS Institute Japan株式会社)を使用して行った。0.05未満のp値を、統計上の有意性を示すと見なした。
【0217】
図13A及び
図13Bは、腫瘍体積に対するHM06/TAS0953、LOXO-292、及びBLU-667の効果を示す。これらはそれぞれ、低用量10mg/kg(
図13A)及び高用量30mg/kg(
図13B)で1日2回投与された。データは、平均±SEで表した(各群、n=5)。
図13Aに反映されるとおり、低用量処置群の中で、10mg/kgのHM06/TAS0953で処置した群だけが、試験終了時、対照群に比べて有意な腫瘍体積の減少を示した(
*は、p<0.05を反映する;ダネットの検定)。
図13Bに示すとおり、試験終了時、高用量処置群のそれぞれにおける腫瘍体積は、対照群に比べて減少していた(
*は、p<0.05を反映する;ダネットの検定)。そのうえ、
図13Bに示すとおり、試験終了時、30mg/kgで処置されたHM06/TAS0953群だけが、腫瘍の再増殖を示さず、一方でLOXO-292群及びBLU-667群は、対照群と並行して腫瘍が再増殖する傾向を呈した。
図13Cは、治療期間中の体重に対する投薬量の効果を示す。群間で、体重変化に関して有意な変化はなかった。データは、平均±SEで表した(各群、n=5)。BLU-667の30mg/kg群の1匹のマウスが、事故死した。
【0218】
第二の試験では、Ba/F3 KIF5B-RETG810R細胞(5×106細胞/マウス)を、50%マトリゲル(Corning Incorporated)/PBSに懸濁させ、6週齢オス無胸腺ヌードマウス(BALB/cAJcl-nu/nu、日本クレア株式会社)に皮下移植した。HM06/TAS0953、LOXO-292、及びBLU-667を、0.1mol/LのHClを含有する0.5w/v%HPMC(信越化学工業株式会社)に配合した。移植から5日後、マウスを、各群の平均腫瘍体積が等しくなるようにして無作為に異なる治療群に分け、ビークル(bid)、HM06/TAS0953(50mg/kg、bid)、LOXO-292(30mg/kg、bid)、又はBLU-667(30mg/kg、bid)を、14日間経口投与した。ビークルとして0.1mol/LのHClを含有する0.5w/v%HPMCを投与される群が、対照群であった。腫瘍の長さ及び幅を、デジタルノギス(株式会社ミツトヨ)を用いて測定し、腫瘍体積を以下のとおり計算した:[長さ×(幅)2]/2。マウスの腫瘍体積及び体重を、試験終了まで、週に2回測定した。
【0219】
ダネットの検定を用いることにより統計上の有意性を特定し、処置群のTVを対照群のものと比較した。統計分析は、EXSUSバージョン10.0(株式会社CACエクシケア)を介してSASバージョン9.4(SAS Institute Japan株式会社)を使用して行った。0.05未満のp値を、統計上の有意性を示すと見なした。
【0220】
図14Aは、腫瘍体積に対する、HM06/TAS0953、LOXO-292、及びBLU-667の効果を示し、HM06/TAS0953は、用量50mg/kgで1日2回投与され、LOXO-292及びBLU-667はそれぞれ、用量30mg/kgで1日2回投与される。データは、平均±SEで表した(各群、n=5)。15日目の平均腫瘍体積は、作用剤処置群において対照群よりも有意に小さかった(p<0.05、ダネットの検定)。また、15日目の平均腫瘍体積は、HM06/TAS0953処置群においてLOXO-292群及びBLU-667群よりも有意に小さかった(それぞれp<0.05、テューキーの検定)。LOXO-292及びBLU-667は、15日目に腫瘍再増殖の傾向を示したものの、HM06/TAS0953は、一貫した腫瘍退縮を呈した。
図14Bは、処置期間中の体重に対する投薬量の効果を示す。群間で、体重変化に関して有意な変化はなかった。データは、平均±SEで表した(各群、n=5)。
【0221】
投与から1時間後の、Ba/F3 KIF5B-RET
G810R腫瘍におけるRETリン酸化に対するHM06/TAS0953、LOXO-292、及びBLU-667の阻害効果を、ウエスタンブロットにより評価した。Ba/F3 KIF5B-RET
G810Rを担持するマウスに、HM06を10mg/kg、30mg/kg、若しくは50mg/kgで、又はLOXO292及びBLU667を10mg/kg若しくは30mg/kgで、それぞれ1回、経口投与した。投薬から1時間後、腫瘍を収集し、溶解させた。細胞溶解液を、免疫ブロットして、リン酸化RET(pRET)、RET、及びGAPDH(対照)を検出した。
図15A(最初の試験)及び
図15B(第二の試験)のウエスタンブロットに示されるとおり、対照群と比較して、HM06/TAS0953群においてRETリン酸化の際立った減少が観察され、一方でLOXO-292群及びBLU-667群では、わずかな減少が観察された。
【0222】
上記の2つの試験それぞれにおいて、ウエスタンブロット法を行った。腫瘍を、投与の1時間後に収集した。Sample Diluent Concentrate 2(R&D Systems)に、cOmplete(商標)、mini、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche Applied Science)及びPhosSTOP(商標)ホスファターゼ阻害剤カクテル(Roche Applied Science)を添加して用いて、腫瘍組織を溶解させた。溶解液を、SDS-PAGEに供して、PVDF膜(Trans-Blot turbo Blotting System;Bio-rad)に転写した。次いで、膜をBlocking One-P(ナカライテスク株式会社.)でブロックし、一次抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。リン酸化Ret(Tyr905)抗体(#3221、Cell Signaling Technology)、Ret(C31B4)ウサギmAb(#3223、Cell Signaling Technology)、及びGAPDH(D16H11)XP(商標)ウサギmAb(#5174、Cell Signaling Technology)を、一次抗体として用いた。続いて、膜を洗い、二次抗体(#7074、Cell Signaling Technology)とともに、室温で1時間インキュベートし、再度洗った。発光画像分析装置(Amersham(商標) Imager 600QC、GEヘルスケア・ジャパン株式会社)により化学発光画像を得た。GAPDHは、内部対照として用いた。
【0223】
等価物
上記に記述された明細書は、当業者が実施形態を実施することを可能にするのに十分であると見なされる。上記の説明及び実施例は、或る特定の実施形態の詳細を説明するものであり、本発明者らが企図する最適様式を記載するものである。しかし、当然のことながら、上記のものが文章においてどれほど詳細に説明されているかに関わらず、実施形態は、多くのやり方で実施することができ、添付の特許請求の範囲及びそれらの任意の等価物に従って解釈されなければならない。
【0224】
本明細書中使用される場合、約という用語は、明示されているか否かに関わらず、数値を指し、数値には、例えば、整数、分数、及びパーセンテージが含まれる。約という用語は、一般に、記載される値と等価である(例えば、同じ機能又は結果を有する)と当業者が判断すると思われるある数値範囲を指す(例えば、記載される範囲の±5%~10%)。少なくとも及び約等の用語が数値又は範囲の列挙に先行する場合、その用語は、その列挙に提示される数値又は範囲の全てを修飾する。一部の例において、約という用語は、最も近い有効数字に丸められた数値を含むことができる。
【配列表】
【国際調査報告】