IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アトテック ドイチェランド ゲーエムベーハーの特許一覧

特表2024-500634プラスチック基板の少なくとも1つの表面をエッチングする方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】プラスチック基板の少なくとも1つの表面をエッチングする方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 13/04 20060101AFI20231227BHJP
   C23C 18/24 20060101ALI20231227BHJP
   C23C 18/16 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C09K13/04
C23C18/24
C23C18/16 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531071
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-06-26
(86)【国際出願番号】 EP2021082572
(87)【国際公開番号】W WO2022112196
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】20209518.8
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511188635
【氏名又は名称】アトテック ドイチェランド ゲーエムベーハー ウント コ カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フランク・バイエル
(72)【発明者】
【氏名】カール・クリスティアン・フェルス
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ハルトマン
【テーマコード(参考)】
4K022
【Fターム(参考)】
4K022AA14
4K022AA31
4K022AA47
4K022BA08
4K022BA14
4K022CA02
4K022CA06
4K022CA15
4K022CA21
4K022DA01
(57)【要約】
本発明は、プラスチック基板の少なくとも1つの表面をエッチングする方法であって、方法が工程(A)~(C)を含み、工程(B)が、1つ又は複数のフッ素非含有表面活性化合物を含む前処理組成物と接触させる工程を含み、且つ工程(C)が、クロム酸を含むエッチング組成物と接触させる工程を含み、工程(B)の後且つ工程(C)の前に洗い流しが適用されず、且つエッチング組成物がフッ素含有表面活性化合物を実質的に含まない、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基板の少なくとも1つの表面をエッチングする方法であって、前記方法が
(A)前記基板を供給する工程、
(B)前処理基板が得られるように前記基板を水性前処理組成物と接触させる工程であって、前記前処理組成物が
(B-a)1つ又は複数のフッ素非含有表面活性化合物を含む、工程、並びに
(C)エッチングされた基板が得られるようにエッチング区画で前記前処理基板をエッチング組成物と接触させる工程であって、前記エッチング組成物が
(C-a)クロム酸、及び
(C-b)3価クロムイオンを含む、工程を含み、
前記前処理基板が工程(B)の後且つ工程(C)の前に洗い流されず、且つ
前記エッチング組成物がフッ素含有表面活性化合物を実質的に含まないことを特徴とする、方法。
【請求項2】
工程(A)において前記基板がアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン-ポリカーボネート(ABS-PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトン(PEK)、又はそれらの混合物を含み、好ましくはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)及び/又はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン-ポリカーボネート(ABS-PC)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(B-a)において前記1つ又は複数のフッ素非含有表面活性化合物が非イオン性界面活性剤、好ましくは非イオン性アルキルポリエチレングリコールエーテル、より好ましくは非イオン性アルコールアルコキシレート、最も好ましくは非イオン性脂肪アルコールエトキシレートを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記非イオン性アルコールアルコキシレートにおいてアルコールが6~20個、好ましくは7~18個、より好ましくは8~16個、更により好ましくは9~14個、最も好ましくは10~12個の炭素原子を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記前処理組成物において(B-a)が前処理組成物の合計重量に基づき0.1wt.-%~40wt.-%、好ましくは0.2wt.-%~20wt.-%、更により好ましくは0.3wt.-%~10wt.-%、最も好ましくは0.4wt.-%~5wt.-%の範囲の総濃度を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記前処理組成物において水及び(B-a)が共に前処理組成物の合計重量の98wt.-%以上、好ましくは98.5wt.-%以上、より好ましくは99wt.-%以上、更により好ましくは99.5wt.-%以上、そのうえ更により好ましくは99.9wt.-%以上、最も好ましくは99.99wt.-%以上を形成する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記エッチング組成物において(C-a)がエッチング組成物の合計容積に基づきCrO3に関して100g/L~450g/L、好ましくは200g/L~430g/L、更により好ましくは300g/L~410g/L、最も好ましくは350g/L~400g/Lの範囲の総濃度を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記前処理組成物における前記1つ又は複数のフッ素非含有表面活性化合物が、前記前処理組成物から少なくとも部分的に引き出されて前記エッチング組成物に引き込まれる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記エッチング組成物におけるあらゆる全ての量のフッ素非含有表面活性化合物が前記前処理組成物に由来する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記エッチング組成物において(C-b)が35g/L以下、好ましくは33g/L以下、より好ましくは30g/L以下、更により好ましくは27g/L以下、そのうえ更により好ましくは25g/L以下、最も好ましくは21g/L以下の総濃度を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
好ましくは再利用区画で酸価数(VI)のクロムが得られるように前記エッチング組成物における3価クロムイオンの少なくとも一部が電流により酸化される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(C)において前記接触が1分~120分、好ましくは2分~80分、より好ましくは3分~60分、更により好ましくは5分~45分、そのうえ更により好ましくは6分~30分、最も好ましくは8分~15分の範囲の時間行われる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(C)において前記接触が50℃~80℃、好ましくは60℃~75℃、最も好ましくは65℃~72℃の範囲の温度で行われる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記前処理組成物及び前記エッチング組成物がフッ素化表面活性化合物を実質的に含まず、好ましくは含まない、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記前処理組成物及び前記エッチング組成物が同一のフッ素非含有表面活性化合物を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック基板の少なくとも1つの表面をエッチングする方法であって、方法が工程(A)~(C)を含み、工程(B)が、1つ又は複数のフッ素非含有表面活性化合物を含む前処理組成物と接触させる工程を含み、且つ工程(C)が、クロム酸を含むエッチング組成物と接触させる工程を含み、工程(B)の後且つ工程(C)の前に洗い流しが適用されず、且つエッチング組成物がフッ素含有表面活性化合物を実質的に含まない、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非金属基板、例えばプラスチック基板の金属化は、近代技術において長い歴史を有する。典型的な用途は、自動車産業及び衛生用品で見られる。
【0003】
しかしながら、プラスチック基板を金属層受容可能なものにすることは多大な努力を有することである。典型的には、それぞれの方法は基板表面の表面改質から始まり、これは典型的にはエッチングとして知られている。通常、ひどすぎる欠陥を引き起こすことなく十分な粗面処理を保証するためには、繊細なバランスが必要とされる。
【0004】
クロム酸を含む非常に効果的なエッチング組成物を含む、様々な方法及びエッチング組成物が知られている。しかしながら、基板の表面の全体にわたって均等に分布したエッチングパターンを得るためには、十分な濡れ性が必要とされる。複雑な表面形状、例えばホール及び/又は60°~130°の範囲の角度を形成するバックリング(すなわち、よじれ)が存在する場合、このことは更により多大な努力を有するものとなる。そのような条件下ではしばしば、表面活性化合物(surface active compounds)の利用に際してもしばしば、特にそのような領域で不十分なエッチングが観察される。
【0005】
更に、クロム酸は腐食性が高く、強力な酸化剤であり、それにより有機化合物を強力に分解する。表面活性化合物の化学的安定性はフッ素化により上昇させることができるが、それと引き換えに排水処置及び環境の持続可能性が問題となる。したがって、既存のクロム酸エッチングプロセスを更に改善することが依然として求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、エッチング品質を損なうことなく環境面で問題のある表面活性化合物の使用を排除するエッチングプロセスを提供することである。
【0007】
更に、一般的に用いられるフッ素化表面活性化合物を含むエッチング組成物に比べてエッチング品質及びプロセス品質を改善することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的は、プラスチック基板の少なくとも1つの表面をエッチングする方法であって、方法が
(A)基板を供給する工程、
(B)前処理基板が得られるように基板を水性前処理組成物と接触させる工程であって、前処理組成物が
(B-a)1つ又は複数のフッ素非含有表面活性化合物を含む、工程、並びに
(C)エッチングされた基板が得られるようにエッチング区画で前処理基板をエッチング組成物と接触させる工程であって、エッチング組成物が
(C-a)クロム酸、及び
(C-b)3価クロムイオンを含む、工程を含み、
前処理基板が工程(B)の後且つ工程(C)の前に洗い流されず、且つ
エッチング組成物がフッ素含有表面活性化合物を実質的に含まず、好ましくは含まないことを特徴とする、方法により解決される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、主に、両工程の間に洗い流し工程のない(即ち前処理基板が工程(B)の後且つ工程(C)の前に洗い流されない)、工程の特定の組み合わせ、即ち上記に規定した連続した工程(B)及び(C)に基づく。独自の実験により、前処理組成物に含まれる1つ又は複数のフッ素非含有表面活性化合物によって、プラスチック基板の表面が濡れたままであることが示された。したがって、工程(B)の後に(B-a)の少なくとも一部が基板に残存し、一方で基板が工程(C)に移動させられる、本発明の方法が好ましい。
【0010】
基板に残存するフッ素非含有表面活性化合物は十分な量で存在し、クロム酸をより複雑な形状にも見事に到達するようにする。エッチングのためのクロム酸との接触の前に表面が表面活性化合物で既に覆われている場合、非常に有益なようである。そのような条件下でエッチング組成物において表面活性化合物が追加で全く必要とされないことは、特に驚くべきことであった。
【0011】
したがって、優れた表面濡れ及びそれによる優れたエッチング結果を得るために、一般的に用いられるフッ素含有表面活性化合物はクロム酸エッチング組成物と組み合わせて必ずしも必要とされない。独自の実験により、一般的に利用されているクロム酸エッチング組成物に比べて、本発明の方法が行われた場合、(i)環境面で問題のある表面活性化合物(例えばフッ素化表面活性化合物)を回避できるだけでなく、(ii)改善した濡れ性及びそれによるエッチング品質をも得られることが特に示されている。結果として、不良品の数を更により低下させることができる。更なる詳細は本文の以下の実施例に示されており、そこで示される詳細は最も好ましくはまた、本記載を通して規定されているように本発明の方法に一般的に適用される。
【0012】
工程(A)
本発明の方法の工程(A)では、プラスチック基板である、基板が供給される。
【0013】
工程(A)において基板が熱可塑性基板、好ましくは非晶性熱可塑性基板及び/又は半結晶性熱可塑性基板を含む、本発明の方法が好ましい。
【0014】
工程(A)において基板がブタジエン部分、好ましくはポリブタジエンを含む、本発明の方法がより好ましい。
【0015】
工程(A)において基板がニトリル部分を含む、本発明の方法もまた好ましい。
【0016】
工程(A)において基板がアクリル部分を含む、本発明の方法もまた好ましい。
【0017】
工程(A)において基板が重合されたスチレンを含む、本発明の方法が非常に好ましい。
【0018】
工程(A)において基板がアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン-ポリカーボネート(ABS-PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトン(PEK)、又はそれらの混合物を含み、好ましくはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)及び/又はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン-ポリカーボネート(ABS-PC)を含む、本発明の方法が最も好ましい。そのようなプラスチック基板、特にABS及びABS-PCは、典型的には、装飾用途、例えば自動車部品に用いられる。
【0019】
ポリエーテルケトン(PEK)がポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルエーテルエーテルケトン(PEEEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、及び/又はそれらの混合物を含み、好ましくはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、及び/又はそれらの混合物を含む、本発明の方法が好ましい。
【0020】
既に上述したように、特に複雑な形状を有する基板は、金属化が特に困難である。多くの技術的用途では、基板は、空洞、ホール、起伏、くぼみ、スリット、よじれ等を含む不規則な表面を有し、特に粘性の組成物、例えばクロム酸を含むエッチング組成物にとって多くの接近困難な領域を基板上に形成する。しかしながら、本発明の方法は、特に、そのような「問題のある」プラスチック基板にも対処する。したがって、工程(A)において基板が少なくとも1つのホール、空洞、くぼみ、スリット、及び/又は少なくとも1つのバックリング(よじれという意味)を含み、それらの少なくとも1つが180°ではない角度で、好ましくは60°~160°、より好ましくは65°~140°、より好ましくは70°~110°、最も好ましくは80°~100°の範囲の角度で互いに関して少なくとも2つのサブ領域を構成する、本発明の方法が好ましい。問題のある/複雑な形状と考えられた場合であっても、特にそのような基板について本発明の方法によって優れた結果が得られた。
【0021】
工程(B)
本発明の方法の工程(B)では、前処理基板が得られるように基板が水性前処理組成物と接触させられる。水性前処理組成物は、(B-a)1つ又は複数のフッ素非含有表面活性化合物を含む。
【0022】
本発明に照らせば、1つ又は複数のフッ素非含有表面活性化合物は、水の表面張力に比べて水性前処理組成物の表面張力を低下させる化合物である。
【0023】
前記1つ又は複数のフッ素非含有表面活性化合物が有機のフッ素非含有表面活性化合物である、本発明の方法が好ましい。
【0024】
前記1つ又は複数のフッ素非含有表面活性化合物がフッ素非含有界面活性剤である、本発明の方法がより好ましい。
【0025】
前記1つ又は複数のフッ素非含有表面活性化合物が有機のフッ素非含有界面活性剤である、本発明の方法が最も好ましい。
【0026】
前記1つ又は複数のフッ素非含有表面活性化合物が有機溶媒ではない、本発明の方法が好ましい。水性前処理組成物が有機溶媒を実質的に含まず、好ましくは含まない、本発明の方法がそれぞれ好ましい。
【0027】
より好ましくは、水性前処理組成物は、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、エチレングリコール、又はジエチレングリコールを実質的に含まず、好ましくは含まない。
【0028】
前記1つ又は複数のフッ素非含有表面活性化合物が飽和している、本発明の方法が好ましい。より好ましくは、1つ又は複数のフッ素非含有表面活性化合物は、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる。
【0029】
(B-a)において1つ又は複数のフッ素非含有表面活性化合物が非イオン性界面活性剤、好ましくは非イオン性アルキルポリエチレングリコールエーテル、より好ましくは非イオン性アルコールアルコキシレート、最も好ましくは非イオン性脂肪アルコールエトキシレートを含む、本発明の方法が好ましい。
【0030】
非イオン性アルコールアルコキシレートにおいてアルコールが6~20個、好ましくは7~18個、より好ましくは8~16個、更により好ましくは9~14個、最も好ましくは10~12個の炭素原子を含む、本発明の方法がより好ましい。このことは好ましくは、非常に好ましい非イオン性脂肪アルコールエトキシレートに同様に適用される。
【0031】
非イオン性アルコールアルコキシレートにおいてアルコキシレートが10~30個、好ましくは12~28個、より好ましくは14~26個、更により好ましくは16~24個、最も好ましくは18~22個の炭素原子を含む、本発明の方法が好ましい。このことは好ましくは、非常に好ましい非イオン性脂肪アルコールエトキシレートに同様に適用される。
【0032】
非イオン性アルコールアルコキシレートが合計で20~40個、好ましくは22~38個、より好ましくは24~36個、更により好ましくは26~34個、最も好ましくは28~32個の炭素原子を含む、本発明の方法が好ましい。このことは好ましくは、非常に好ましい非イオン性脂肪アルコールエトキシレートに同様に適用される。
【0033】
非イオン性アルコールアルコキシレートが合計で28~34個の炭素原子を含み、そのアルコールが10~12個の炭素原子を、アルコキシレートが18~22個の炭素原子を含む、本発明の方法が非常に好ましい。このことは好ましくは、非常に好ましい非イオン性脂肪アルコールエトキシレートに同様に適用される。
【0034】
前記1つ又は複数のフッ素非含有表面活性化合物が工程(B)及び(C)を通して利用される唯一の表面活性化合物である、本発明の方法が最も好ましい。
【0035】
前処理組成物において(B-a)が前処理組成物の合計重量に基づき0.1wt.-%~40wt.-%、好ましくは0.2wt.-%~20wt.-%、更により好ましくは0.3wt.-%~10wt.-%、最も好ましくは0.4wt.-%~5wt.-%の範囲の総濃度を有する、本発明の方法が好ましい。最も好ましくは、これらの総濃度が適用され、且つ前処理組成物中に更なる表面活性化合物が存在しない。
【0036】
工程(B)において前処理組成物が1~9、好ましくは1.5~7.5、より好ましくは2~6.5、更により好ましくは2.5~5.5、最も好ましくは3~5の範囲のpHを有する、本発明の方法が好ましい。pHが酸性であることが通常は好ましい。
【0037】
本発明の方法で利用される前処理組成物は水性である。したがって、基本の(即ち50wt.-%を超える)溶媒は好ましくは水であり、好ましくは、前処理組成物は、前処理組成物の合計重量に基づき60wt.-%以上、より好ましくは70wt.-%以上、更により好ましくは80wt-%以上、そのうえ更により好ましくは90wt.-%以上、最も好ましくは95wt.-%以上の水を含む。最も好ましくは、水が唯一の溶媒である。
【0038】
前処理組成物において水及び(B-a)が共に前処理組成物の合計重量の98wt.-%以上、好ましくは98.5wt.-%以上、より好ましくは99wt.-%以上、更により好ましくは99.5wt.-%以上、そのうえ更により好ましくは99.9wt.-%以上、最も好ましくは99.99wt.-%以上を形成する、本発明の方法が好ましい。
【0039】
工程(B)が膨潤工程ではない、本発明の方法が好ましい。
【0040】
工程(B)において接触が20秒~15分、好ましくは1分~10分、最も好ましくは2分~6分の範囲の時間行われる、本発明の方法が好ましい。
【0041】
工程(B)において接触が20℃~70℃、好ましくは22℃~60℃、より好ましくは25℃~50℃、最も好ましくは30℃~40℃の範囲の温度で行われる、本発明の方法が好ましい。
【0042】
工程(C)
本発明の方法の工程(C)では、エッチングされた基板が得られるように、エッチング区画(etching compartment)で、工程(B)の後に得られた前処理基板がエッチング組成物と接触させられる。エッチング組成物は、活性エッチング種である(C-a)クロム酸を含む。
【0043】
エッチング組成物において(C-a)がエッチング組成物の合計容積に基づきCrO3に関して100g/L~450g/L、好ましくは200g/L~430g/L、更により好ましくは300g/L~410g/L、最も好ましくは350g/L~400g/Lの範囲の総濃度を有する、本発明の方法が好ましい。
【0044】
工程(C)におけるエッチング組成物がクロム酸/硫酸エッチング組成物である、本発明の方法がより好ましい。
【0045】
エッチング組成物が、好ましくはエッチング組成物の合計容積に基づき250g/L~450g/L、好ましくは280g/L~430g/L、より好ましくは300g/L~410g/L、更により好ましくは330g/L~400g/L、最も好ましくは350g/L~390g/Lの範囲の総濃度で硫酸を含む、本発明の方法が好ましい。
【0046】
エッチング組成物はまた、(C-b)3価クロムイオンを含む。3価クロムイオンは、典型的にはエッチングプロセスそれ自体の結果物である。クロム酸における6価クロムが3価クロムイオンに還元される一方で、基板表面にエッチングパターンが得られるようにプラスチック基板における化合物が酸化及び分解される。
【0047】
本発明の方法では、前処理組成物において利用される1つ又は複数のフッ素非含有表面活性化合物を引き込む(dragged in)ことにより、更なる3価クロムイオンが形成される。それらはまた、典型的には比較的短時間後にクロム酸により分解される。したがって、前処理組成物における1つ又は複数のフッ素非含有表面活性化合物が、前処理組成物から少なくとも部分的に引き出されてエッチング組成物に引き込まれる、本発明の方法が好ましい。
【0048】
エッチング組成物におけるあらゆる全ての量のフッ素非含有表面活性化合物が前処理組成物に由来する、本発明の方法がより好ましい。
【0049】
しかしながら、本発明の方法では3価クロムイオンのこの更なる形成が望ましい。この更なる形成は、好ましくは、エッチング組成物における表面活性化合物の濃度を制御する。更に、この更なる形成は、エッチング組成物において常に未使用の表面活性化合物のみが供給されることを保証し、その表面活性化合物はそれらが必要とされる基板表面に直接存在する。これはエッチング組成物内の最適な濃度制御である。
【0050】
エッチング組成物において(C-b)が35g/L以下、好ましくは33g/L以下、より好ましくは30g/L以下、更により好ましくは27g/L以下、そのうえ更により好ましくは25g/L以下、最も好ましくは21g/L以下の総濃度を有する、本発明の方法が好ましい。典型的には、エッチング組成物は、適度な量の3価クロムイオン、好ましくは35g/Lまでを許容することができる。この濃度を著しく超えた場合、エッチング能力が損なわれるようになる。最も好ましくは、50g/Lの最大総濃度を超えるべきではなく、これは好ましくはまた、最大濃度としての以下の好ましい範囲に一般的に適用される。
【0051】
エッチング組成物において(C-b)がエッチング組成物の合計容積に基づき1g/L~35g/L、好ましくは5g/L~33g/L、より好ましくは8g/L~30g/L、更により好ましくは10g/L~27g/L、そのうえ更により好ましくは11g/L~25g/L、最も好ましくは12g/L~21g/Lの範囲の総濃度を有する、本発明の方法がより好ましい。
【0052】
エッチング組成物において(CrO3に基づく)クロム酸及び3価クロムイオンが5以上、好ましくは7以上、より好ましくは8以上、更により好ましくは10以上、そのうえ更により好ましくは13以上、最も好ましくは18以上のモル比を形成する、本発明の方法が好ましい。
【0053】
特に本発明の方法の長期間にわたる適用では、3価クロムイオンの濃度を35g/L以下(少なくとも50g/Lを超えない)に維持するために更なる測定が必要とされる。したがって、好ましくは再利用区画で、最も好ましくはエッチング区画とは異なる再利用区画で、酸価数(VI)のクロムが得られるようにエッチング組成物における3価クロムイオンの少なくとも一部が電流により酸化される、本発明の方法が好ましい。
【0054】
好ましくは少なくとも1つのパイプにより、より好ましくは少なくとも1つの流入パイプ及び少なくとも1つの流出パイプにより、エッチング区画及び再利用区画が流体的に接続されている、本発明の方法が好ましい。好ましくは、少なくとも1つの流入パイプ及び少なくとも1つの流出パイプは、エッチング区画と流体的に接続されている。流体的に接続されているとは、好ましくは継続的に又は非継続的に、好ましくは少なくとも1つのポンプにより、液体がエッチング区画と再利用区画との間を流れる又は移動する(好ましくは循環する)ことができることを意味する。
【0055】
再利用区画が少なくとも1つの陽極、少なくとも1つの陰極、及び少なくとも1つの半透過性セパレーターを含む、本発明の方法が好ましい。
【0056】
再利用区画において少なくとも1つの陽極が鉛陽極、鉛合金陽極、貴金属陽極、及び混合金属酸化物陽極からなる群より選択される、本発明の方法が好ましい。好ましい鉛合金陽極は鉛スズ陽極である。好ましい貴金属陽極は白金を含み、より好ましくは白金めっきされたチタン陽極である。
【0057】
再利用区画において半透過性セパレーターが膜である、本発明の方法が好ましい。
【0058】
再利用区画において半透過性セパレーターがセラミックダイヤフラムである、本発明の方法が最も好ましい。
【0059】
再利用区画において少なくとも1つの陰極が鉛又は鋼鉄を含む、本発明の方法が好ましい。
【0060】
最も好ましくは、少なくとも1つの陽極及び少なくとも1つの陰極が鉛及び/又は鉛合金を含む。
【0061】
再利用区画において少なくとも1つの陽極が全陽極表面を形成し、且つ少なくとも1つの陰極が全陰極表面を形成し、全陽極表面が全陰極表面よりも大きい、本発明の方法が好ましい。全陰極表面と全陽極表面との比が1:1.5~1:100の範囲である、本発明の方法がより好ましい。いくつかの場合には、前記比が1:1.5~1:10、好ましくは1:1.7~1:8、より好ましくは1:1.9~1:6、最も好ましくは1:2~1:4の範囲である、本発明の方法が好ましい。別の場合には、前記比が1:10~1:100、好ましくは1:11~1:95、より好ましくは1:20~1:90、更により好ましくは1:25~1:85、最も好ましくは1:30~1:80の範囲である、本発明の方法が好ましい。
【0062】
再利用区画において少なくとも1つの陽極及びセパレーターが陽極液を含む陽極液サブ区画を形成する、本発明の方法が好ましい。
【0063】
再利用区画において電流が100A~400A、好ましくは200A~300Aの範囲である、本発明の方法が好ましい。最も好ましくは、再利用区画においてのみ電流が加えられる。
【0064】
再利用区画において陽極液が水及び硫酸、好ましくは陽極液の合計重量に基づいて40wt.-%~80wt.-%の硫酸、より好ましくは50wt.-%~70wt.-%の硫酸を含む、本発明の方法が好ましい。
【0065】
工程(C)におけるエッチング組成物が1.2g/ml~1.9g/ml、好ましくは1.4g/ml~1.7g/ml、最も好ましくは1.5g/ml~1.6g/mlの範囲の密度を有する、本発明の方法が好ましい。
【0066】
いくつかの場合には、エッチング組成物がパラジウムイオンを含む、本発明の方法が好ましい。エッチング組成物におけるパラジウムイオンは、パラジウムイオンを含まないエッチング組成物と比べてその後のパラジウム活性化工程において効率的且つ十分な活性化のために比較的低い濃度のパラジウムが必要とされる限りにおいて、エッチング品質に影響を与える。更に、パラジウムイオンが存在する場合、エッチング直後のエッチング品質それ自体もまた改善される。
【0067】
工程(C)においてエッチング組成物においてフッ素非含有表面活性化合物がエッチング組成物の合計重量に基づいて0.01wt.-%~1wt.-%、好ましくは0.02wt.-%~0.5wt.-%、より好ましくは0.03wt.-%~0.2wt.-%、最も好ましくは0.04wt.-%~0.1wt.-%の範囲の平均総濃度を有する、本発明の方法が好ましい。平均とは、継続的に表面活性化合物がエッチング組成物に引き込まれるような、通常の連続的操作の間のことを意味する。
【0068】
工程(C)においてエッチング組成物が69mN/m以下、好ましくは68mN/m以下、より好ましくは66mN/m以下、更により好ましくは63mN/m以下、そのうえ更により好ましくは59mN/m以下、ほとんど最も好ましくは55mN/m以下、最も好ましくは50mN/m以下の表面張力を有する、本発明の方法が好ましい。したがって、エッチング組成物に引き込まれた1つ又は複数のフッ素非含有表面活性化合物は、エッチング組成物に好影響を与える。本発明に照らせば、これは、同一だが前記フッ素非含有表面活性化合物を含まないエッチング組成物に比べて表面張力が(上昇される代わりに)低減されることを意味する。
【0069】
工程(C)において基板をエッチングするために電流が加えられない、本発明の方法が好ましい。これはエッチングプロセスそれ自体が完全に化学に基づいたものであり、電流は関与しないことを意味する。このことは、再利用区画において3価クロムイオンをクロム酸に再酸化するのに利用される電流を除外しない。
【0070】
工程(C)において接触が1分~120分、好ましくは2分~80分、より好ましくは3分~60分、更により好ましくは5分~45分、そのうえ更により好ましくは6分~30分、最も好ましくは8分~15分の範囲の時間行われる、本発明の方法が好ましい。8分~15分の範囲の接触が、ABS及び/又はABS-PCを含む基板にとって最も好ましい。基板がポリエーテルケトン(PEK)を含む場合はより長い接触が典型的には好ましく、好ましくは約60分以下である。
【0071】
工程(C)において接触が50℃~80℃、好ましくは60℃~75℃、最も好ましくは65℃~72℃の範囲の温度で行われる、本発明の方法が好ましい。
【0072】
工程(C)においてエッチング組成物がマンガン種を実質的に含まず、好ましくは含まない、本発明の方法が好ましい。これは、マンガン種が好ましくは意図的に/故意にエッチング組成物に添加されないことを意味する。
【0073】
更に、最も好ましくは本発明の方法全体を通して、工程(A)において供給される基板がマンガン種を含むいずれの組成物とも接触させられない、本発明の方法が好ましい。
【0074】
既に上述したように、本発明の方法では、一般的に用いられるフッ素化表面活性化合物が用いられず、完全に防止することができる。したがって、前処理組成物及びエッチング組成物がフッ素化表面活性化合物を実質的に含まず、好ましくは含まない、本発明の方法が好ましい。
【0075】
前処理組成物及びエッチング組成物が同一のフッ素非含有表面活性化合物を含む、本発明の方法がより好ましい。しかしながら、それらは、その濃度が著しく異なる。
【0076】
工程(C)の後、
(D)活性化された基板が得られるようにエッチングされた基板を活性化組成物と接触させる工程を含む、本発明の方法が好ましい。
【0077】
このようにする場合、本発明の方法は、プラスチック基板の少なくとも1つの表面をエッチングする方法であるだけでなく、更に、前記表面を活性化する方法でもある。
【0078】
多くの場合、より好ましくは水によって工程(C)と(D)との間に洗い流すことが好ましい。最も好ましくは、工程(C)の後、基板上の残存量のクロム酸を3価クロムに化学的に還元するために還元剤含有組成物との接触が行われる。好ましくは、洗い流しがその後に行われ、好ましくはあらゆるクロム残渣を除去する。
【0079】
本発明の方法では、好ましくは、工程(C)は工程(D)から分離された独立した工程である。言い換えれば、工程(C)で利用されるエッチング組成物は、工程(D)で利用される活性化組成物ではない。このことは工程(B)及び(C)に変更すべきところは変更して準用され、即ち工程(C)で利用されるエッチング組成物は、工程(B)で利用される前処理組成物ではない。
【0080】
工程(D)において活性化組成物がパラジウム、好ましくは溶解したパラジウムイオン又はコロイドパラジウム、最も好ましくはコロイドパラジウムを含む、本発明の方法が好ましい。好ましくは、コロイドパラジウムはスズを含む。
【0081】
工程(D)において活性化組成物が活性化組成物の合計容積に基づき5mg/L~200mg/L、好ましくは10mg/L~150mg/L、より好ましくは15mg/L~80mg/L、更により好ましくは17mg/L~50mg/L、最も好ましくは20mg/L~40mg/Lの範囲の総濃度でパラジウムを含む、本発明の方法が好ましい。好ましくは、この総濃度は溶解したパラジウムイオン及びコロイドパラジウムの両方に適用される。上記濃度はパラジウム元素に基づく。
【0082】
工程(D)において活性化組成物が25℃~70℃、好ましくは28℃~60℃、より好ましくは30℃~55℃、更により好ましくは32℃~50℃、最も好ましくは35℃~46℃の範囲の温度を有する、本発明の方法が好ましい。
【0083】
工程(D)において接触が1分~15分、好ましくは2分~12分、より好ましくは2.5分~9分、最も好ましくは3分~7分の範囲の時間行われる、本発明の方法が好ましい。
【0084】
工程(D)が
(D-1)活性化基板を促進剤組成物と接触させて活性化基板を改質する工程であって、促進剤組成物が
工程(D)において活性化組成物がコロイドパラジウムを含む場合は、還元剤ではなく、少なくとも1つのスズイオン用錯化剤、又は
工程(D)において活性化組成物がパラジウムイオンは含むがコロイドパラジウムは含まない場合は、パラジウムイオンを金属パラジウムに還元するための還元剤を含む、工程を含む、本発明の方法が好ましい。
【0085】
工程(D-1)において促進剤組成物が還元剤ではなく少なくとも1つのスズイオン用錯化剤を含み、且つ酸性であり、好ましくは更に硫酸を含む、本発明の方法が好ましい。
【0086】
工程(D)の後、
(E)金属化された基板が得られるように活性化基板を少なくとも1つの金属化組成物と接触させる工程を含む、本発明の方法が好ましい。
【0087】
このようにする場合、本発明の方法は、プラスチック基板の少なくとも1つの表面をエッチング及び活性化する方法であるだけでなく、更に、前記表面を金属化する方法でもある。
【0088】
本発明はここで、以下の限定されない例を参照して説明される。
【実施例
【0089】
以下の例では、複雑な表面形状を模倣するためにシャープな端部、シャープなバックリング(即ち90°のよじれを有する)及び起伏構造を有するABS基板(約9x6cm)を用いた。エッチング組成物は200L、前処理組成物は70Lの合計容積を有する。
【0090】
例1(比較)
前処理組成物:n/a
前処理パラメーター:n/a
【0091】
エッチング組成物:約380g/Lのクロム酸(CrO3として)、
約380g/Lの硫酸、及び
表面活性化合物無し、且つパラジウムイオン無し
エッチングパラメーター:10分、
68℃
【0092】
エッチング後、クロム酸を還元するためにエッチングされた基板を還元組成物で処理した。その後、還元された基板を水で洗い流した。その後、洗い流した基板を、その後のニッケル銅めっきのためにコロイドパラジウムを含む活性剤組成物で処理した(約3~5分、40℃)。
【0093】
銅めっき基板を、特にシャープな端部及びシャープなバックリング(即ちよじれ)の領域におけるスキップめっきについて視覚的に検査した。結果をTable 1(表1)にまとめる。
【0094】
例2(比較)
エッチング組成物が約0.1g/Lのフッ素含有表面活性化合物(部分的にフッ素化されたC6~C10のアルキルスルホン酸)を含んだ点を変えて、例1を繰り返した。
【0095】
例3(本発明に従う)
前処理組成物:約1.5wt.-%の非イオン性アルコールアルコキシレート、アルコールが10~12個の炭素原子を有する、フッ素非含有表面活性化合物として
水以外に更なる化合物は無し
前処理パラメーター:5分、
40℃
【0096】
エッチング組成物:約380g/Lのクロム酸(CrO3として)、
約380g/Lの硫酸、及び
前処理組成物からの引き込み以外に表面活性化合物無し、パラジウムイオン無し
エッチングパラメーター:10分、
68℃
【0097】
前処理基板は前処理後に洗い流さず、エッチング組成物中に直接移動させた。
【0098】
上述の非イオン性アルコールアルコキシレートは、プロセス全体を通して利用された唯一の表面活性化合物であった。
【0099】
例1に記載のように全ての更なる工程を行った。
【0100】
パラジウムイオンは典型的にはエッチング組成物に含まれるが、本発明の方法に基づくエッチング結果をより良く際立たせるために、この例では除外した。しかしながら、パラジウムイオンを含む更なる例は、パラジウムイオンを利用しない例(データは示さない)に比べて活性剤組成物中のパラジウムの量を減らすことができ、さらに改善されたエッチングパターンを与えるという点において、改善したエッチング結果が示された。
【0101】
更に、別の実験設定では、3価クロムイオンの一部を、セラミックダイヤフラム、鉛含有陽極及び鉛含有陰極を含む再利用区画に移動させる。エッチング組成物における3価クロムイオンの濃度を永久的に約30g/Lより低く保つために(特定のデータは示さない)、電流を加え、3価クロムイオンを酸化してクロム酸に戻した。この別の設定では、プロセス全体を数週間にわたって維持し、安定的且つ均一なエッチング結果を得た。
【0102】
結果
結果を、次のことを示す以下のTable 1(表1)にまとめる。
+ 平坦な領域にスキップめっき無し、端部及びよじれに深刻なスキップめっき
++ 平坦な領域にスキップめっき無し、例1よりも端部及びよじれにスキップめっきは少ないもののいくつかの場合には依然として観察可能
+++ 平坦な領域にスキップめっき無し、端部及びシャープなバックリングにスキップめっき無し
【0103】
【表1】
【0104】
更に、例3により、前処理組成物における表面活性化合物が比較的多く消費されることが示された。前処理後に洗い流しが適用されないことから、かなりの量のフッ素非含有表面活性化合物が前処理組成物から引き出されてエッチング組成物に引き込まれ、一方で驚くべきことに、十分な量が基板の表面に残存する。フッ素非含有表面活性化合物はクロム酸に対する耐薬品性が著しく低いことから、フッ素非含有表面活性化合物はエッチング組成物においてかなり速く分解する。しかしながら、例3により、フッ素非含有表面活性化合物の安定性が、完全なエッチングのための優れた濡れを得るのに依然として完全に十分であることが示されている。
【0105】
上記のTable 1(表1)に示すように、例3のような前処理基板は、例2に比べて更により改善したエッチング及びそれによる更に少ないスキップめっきをもたらす。クロム酸及び表面活性化合物が、複雑且つ接近しにくい領域で互いに競合し、それにより表面活性化合物の効率を低下させると考えられる。
【0106】
例2では、更に、フッ素化表面活性化合物であっても、かなり低い割合ではあるが分解されることが観察された。しかしながら、分解生成物もまたフッ素含有であり、それにより比較的長い時間にわたって安定であってそれにより蓄積し、これは望ましくないことである。そのような欠点は例3において克服される。更に、例3は、それらの表面活性化合物はフッ素を含まないことから、生分解性の表面活性化合物に完全に依存している。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基板の少なくとも1つの表面をエッチングする方法であって、前記方法が
(A)前記基板を供給する工程、
(B)前処理基板が得られるように前記基板を水性前処理組成物と接触させる工程であって、前記前処理組成物が
(B-a)1つ又は複数のフッ素非含有表面活性化合物を含む、工程、並びに
(C)エッチングされた基板が得られるようにエッチング区画で前記前処理基板をエッチング組成物と接触させる工程であって、前記エッチング組成物が
(C-a)クロム酸、及び
(C-b)3価クロムイオンを含む、工程を含み、
前記前処理基板が工程(B)の後且つ工程(C)の前に洗い流されず、且つ
前記エッチング組成物がフッ素含有表面活性化合物を含まないことを特徴とする、方法。
【請求項2】
工程(A)において前記基板がアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン-ポリカーボネート(ABS-PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトン(PEK)、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(B-a)において前記1つ又は複数のフッ素非含有表面活性化合物が非イオン性界面活性剤を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
(B-a)において前記1つ又は複数のフッ素非含有表面活性化合物が非イオン性アルコールアルコキシレートを含み、前記非イオン性アルコールアルコキシレートにおいてアルコールが6~20個の炭素原子を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記前処理組成物において(B-a)が前処理組成物の合計重量に基づき0.1wt.-%~40wt.-%の範囲の総濃度を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記前処理組成物において水及び(B-a)が共に前処理組成物の合計重量の98wt.-%以上を形成する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記エッチング組成物において(C-a)がエッチング組成物の合計容積に基づきCrO3に関して100g/L~450g/Lの範囲の総濃度を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記前処理組成物における前記1つ又は複数のフッ素非含有表面活性化合物が、前記前処理組成物から少なくとも部分的に引き出されて前記エッチング組成物に引き込まれる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記エッチング組成物におけるあらゆる全ての量のフッ素非含有表面活性化合物が前記前処理組成物に由来する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記エッチング組成物において(C-b)が35g/L以下の総濃度を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
価数(VI)のクロムが得られるように前記エッチング組成物における3価クロムイオンの少なくとも一部が電流により酸化される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(C)において前記接触が1分~120分の範囲の時間行われる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(C)において前記接触が50℃~80℃の範囲の温度で行われる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記前処理組成物及び前記エッチング組成物がフッ素化表面活性化合物を含まない、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記前処理組成物及び前記エッチング組成物が同一のフッ素非含有表面活性化合物を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】