(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸結晶形およびこの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 229/64 20060101AFI20231227BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231227BHJP
A61K 31/195 20060101ALI20231227BHJP
C07C 227/42 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C07C229/64 CSP
A61P25/00
A61K31/195
C07C227/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534972
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 CN2021135807
(87)【国際公開番号】W WO2022121854
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】202011443509.5
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523028105
【氏名又は名称】ジーエヌティー ファーマ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】シュ,シンリァン
(72)【発明者】
【氏名】ザン,グォクィン
(72)【発明者】
【氏名】ズァン,チェンハン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,レイ
(72)【発明者】
【氏名】クァク,ビョン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】アン,チュン サン
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ジン ユ
【テーマコード(参考)】
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206AA04
4C206FA32
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA03
4C206NA14
4C206NA20
4C206ZA02
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB20
4H006AD15
4H006BB14
4H006BC51
4H006BJ50
4H006BM10
4H006BM71
4H006BN30
(57)【要約】
本発明は、薬学的結晶形の技術分野に関し、具体的には、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸結晶形およびこの製造方法に関する。結晶形Iは、Pc空間群を有する単斜晶系であって、徐冷、一定の温度において溶媒を蒸発、増加された温度において溶媒を蒸発させたり、貧溶媒(anti-solvent)を加えたりする結晶化方法により得られる。結晶形IIは、P1空間群を有する三斜晶系であって、急速冷却または凍結乾燥などの結晶化方法によって得られる。本発明の両結晶形およびこれらの製造方法の長所は、下記の通りである:1)工程が単純であり、コストが安価である他、歩留まりが90%を上回る;および2)結晶形IおよびIIの結晶形は高純度であり、これらの結晶の形態が無傷であり、流動性に優れていて製剤、特に、中枢神経系の変性疾患を予防および/または治療するための薬学的製剤を製造し易い。また、両結晶形は、原料よりも見かけの溶解度がさらに良好である(
図1)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の結晶学的パラメーターを有する2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の結晶形I:
結晶系:単斜晶系、
空間群:Pc、
セルパラメーター:a=3.83880(10)Å、b=8.82524(12)Å、c=11.62736(9)Å、α=90°、β=98.7472°、γ=90°、および
単位セル当たりの分子数:Z=2。
【請求項2】
このX線粉末回折スペクトルが16.1±0.2°、19.4±0.2°、22.9±0.2°、27.3±0.2°および28.4±0.2°の2θ値において特徴ピークを示し、好ましくは、X線粉末回折スペクトルが6.9±0.2°、13.6±0.2°、20.5±0.2°、21.9±0.2°、22.6±0.2°、25.1±0.2°、25.7±0.2°および34.3±0.2°のうちの少なくとも1つの2θ値において特徴ピークを示し、さらに好ましくは、X線粉末回折スペクトルが12.9±0.2°、17.4±0.2°、29.0±0.2°、29.7±0.2°、31.4±0.2°、34.8±0.2°、36.0±0.2°、36.5±0.2°および39.1±0.2°のうちの少なくとも1つの2θ値において特徴ピークを示し、そして、最も好ましくは、X線粉末回折スペクトルが
図1に示されている、請求項1に記載の結晶形I。
【請求項3】
この示差走査熱量分析グラフは、249~252℃において吸熱ピークを示し、かつ、好ましくは、示差走査熱量分析グラフは、
図2に示されている、請求項1または2に記載の結晶形I。
【請求項4】
次の結晶学的パラメーターを有する2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の結晶形II:
結晶系:三斜晶系、
空間群:P1、
セルパラメーター:a=4.47850(8)Å、b=6.31509(15)Å、c=13.34065(22)Å、α=89.9804(7)°、β=79.7108(12)°、γ=80.6128(8)°、および
単位セル当たりの分子の数:Z=2。
【請求項5】
このX線粉末回折スペクトルが6.8±0.2°、13.5±0.2°、27.2±0.2°および28.3±0.2°の2θ値において特徴ピークを示し、好ましくは、X線粉末回折スペクトルが16.0±0.2°、20.4±0.2°、22.4±0.2°および34.2±0.2°のうちの少なくとも1つの2θ値において特徴ピークを示し、さらに好ましくは、X線粉末回折スペクトルが19.3±0.2°、22.7±0.2°、23.1±0.2°、24.5±0.2°、25.0±0.2°および26.0±0.2°のうちの少なくとも1つの2θ値において特徴ピークを示し、そして、最も好ましくは、X線粉末回折スペクトルが
図5に示されている、請求項4に記載の結晶形II。
【請求項6】
この示差走査熱量分析グラフは、247~250℃において吸熱ピークを示し、好ましくは、示差走査熱量分析グラフは、
図6に示されている、請求項4または5に記載の結晶形II。
【請求項7】
次のステップを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の結晶形Iを製造する方法:
2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の粗生成物を良溶媒に加えるステップ、
完全に溶けるまで攪拌しかつ加熱するステップ、
熱い状態でろ過するステップ、および
ろ液を徐冷結晶化、一定の温度で溶媒を蒸発させて結晶化、増加された温度において溶媒を蒸発させて結晶化、または貧溶媒(anti-solvent)を加えて結晶化させて結晶形Iを得るステップ。
【請求項8】
次のステップを含む、請求項4から6のいずれか一項に記載の結晶形IIを製造する方法:
2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の粗生成物を良溶媒に加えるステップ、
完全に溶けるまで攪拌しかつ加熱するステップ、
熱い状態でろ過するステップ、および
ろ液を急速冷却結晶化または凍結乾燥結晶化させて結晶形IIを得るステップ。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか一項に記載の結晶形Iおよび/または請求項4から6のいずれか一項に記載の結晶形II、および少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体を含む、薬学的組成物。
【請求項10】
中枢神経系の変性疾患の予防および/または治療のための医薬の製造のための請求項1から3のいずれか一項に記載の結晶形Iおよび/または請求項4から6のいずれか一項に記載の結晶形IIの用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬学的な結晶形、特に、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の結晶形IおよびII、この製造方法およびこの用途の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2020年12月8日付けで中国国家知識産権局に提出され、「2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸結晶形およびこの製造方法」という名称を有する中国発明特許出願第202011443509.5号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書および図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【0003】
アルツハイマー病(AD)としても言われている老人性認知症は、主として進行性認知障害および記憶障害を特徴とする中枢神経系の変性疾患であり、認知症は、その最も目立った精神症状である。疾患の病因および発病機序が依然としてはっきりと判明されていないため、未だに具体的な病因学的な治療方法が足りないのが現状である。しかしながら、医学者らの数年間にわたっての研究によれば、老人性認知症患者の記憶力と認知機能を改善し、かつ、老化を遅らせる上で卓越した効果を示す薬が数多くある。老人性認知症治療剤の研究開発には、世界中の医学系の至大な関心が寄せられている。年寄りの神経生理学、生化学および薬理学に関する研究が深められ続けることに伴い、関連する医薬品の開発および研究も、絶え間なく日に日に発展を重ね続けてきている。
【式1】
【0004】
【0005】
【0006】
GNTファーマ社の発明CN 101874016 Aに関する中国特許出願は、前記化合物およびこの製造技術を開示する。臨床試験において、前記化合物は、アルツハイマー病に対して優れた抑制効果があるということが判明されたものの、その形状および微小な形態については述べられていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[技術的な問題]
本発明は、産業的な生産に適しており、製造された結晶粒子の粒子径が大きく、無傷(intact)(損傷を受けていない)の構造および優れた流動性を有し、しかも、製造し易い2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の結晶形IおよびIIを提供し、かつ、この製造方法およびこの医薬用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[技術的な解決手段]
一連の2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸生成物は、本発明の異なる技術工程を用いて製造され、これらの固体は、2つの相対的に安定した結晶形を示すということが判明され、結晶形IおよびIIと命名された。
【0009】
最初の側面において、本発明は、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の結晶形IおよびIIを提供し、この結晶学的パラメーターは、次の通りである:
結晶系:単斜晶系;
空間群:Pc;
セルパラメーター:a=3.83880(10)Å、b=8.82524(12)Å、c=11.62736(9)Å、α=90°、β=98.7472°、γ=90°;および
単位セル当たりの分子の数:Z=2。
【0010】
また、結晶形IのX線粉末回折スペクトル(XRPD)は、16.1±0.2°、19.4±0.2°、22.9±0.2°、27.3±0.2°および28.4±0.2°の2θ値において特徴ピークを示す。
【0011】
さらに、結晶形IのXRPDは、6.9±0.2°、13.6±0.2°、20.5±0.2°、21.9±0.2°、22.6±0.2°、25.1±0.2°、25.7±0.2°および34.3±0.2°のうちの少なくとも1つの2θ値において特徴ピークを示す。
【0012】
さらにまた、結晶形IのXRPDは、12.9±0.2°、17.4±0.2°、29.0±0.2°、29.7±0.2°、31.4±0.2°、34.8±0.2°、36.0±0.2°、36.5±0.2°および39.1±0.2°のうちの少なくとも1つの2θ値において特徴ピークを示す。
【0013】
さらにまた、結晶形IのXRPDは、
図1に示されている。
【0014】
これらに加えて、結晶形Iの示差走査熱量分析グラフ(DSC)は、249~252℃において吸熱ピークを示す。
【0015】
【0016】
これに加えて、結晶形Iの形態(morphology)は、平均粒子径が50μmである不規則的なブロックである。
【0017】
二番目の側面において、本発明は、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の結晶形IIを提供し、この結晶学的パラメーターは、次の通りである:
結晶系:三斜晶系;
空間群:P1;
セルパラメーター:a=4.47850(8)Å、b=6.31509(15)Å、c=13.34065(22)Å、α=89.9804(7)°、β=79.7108(12)°、γ=80.6128(8)°;および
単位セル当たりの分子の数:Z=2。
【0018】
また、結晶形IIのX線粉末回折スペクトル(XRPD)は、6.8±0.2°、13.5±0.2°、27.2±0.2°および28.3±0.2°の2θ値において特徴ピークを示す。
【0019】
さらに、結晶形IIのXRPDは、16.0±0.2°、20.4±0.2°、22.4±0.2°および34.2±0.2°のうちの少なくとも1つの2θ値において特徴ピークを示す。
【0020】
さらにまた、結晶形IIのXRPDは、19.3±0.2°、22.7±0.2°、23.1±0.2°、24.5±0.2°、25.0±0.2°および26.0±0.2°のうちの少なくとも1つの2θ値において特徴ピークを示す。
【0021】
さらにまた、結晶形IIのXRPDは、
図5に示されている。
【0022】
これらに加えて、結晶形IIの示差走査熱量分析グラフ(DSC)は、247~250℃においてピークを示す。
【0023】
【0024】
また、結晶形IIの形態は、平均粒子径が18μmである規則的な棒(rod)状である。
【0025】
三番目の側面において、本発明は、前記結晶形Iを製造する方法を提供し、これは、次のステップを含む:
2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の粗(crude)生成物を良溶媒(good solvent)に加えるステップ、完全に溶けるまで攪拌しかつ加熱するステップ、熱い状態でろ過するステップ、およびろ液を徐冷結晶化、一定の温度において溶媒を蒸発させて結晶化、増加された温度において溶媒を蒸発させて結晶化、または貧溶媒(anti-solvent)を加えて結晶化させて結晶形Iを得るステップ。
【0026】
また、前記良溶媒(good solvent)は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフランおよびジメチルスルホキシドからなる群から選択された少なくとも1つであり、好ましくは、エタノールおよびイソプロパノールからなる群から選択された少なくとも一方である。
【0027】
さらに、粗生成物に対する良溶媒の使用比は、1g:5~300mLである。
【0028】
さらにまた、目標加熱温度は、50~80℃である。
【0029】
さらにまた、前記徐冷結晶化の目標温度は、0℃以下であり、冷却速度は、3℃/分以下である。
【0030】
さらにまた、結晶化のために一定の温度において溶媒を増加させることの周囲温度は、10~30℃である。
【0031】
さらにまた、結晶化のために増加された温度において溶媒を増加させることの目標温度は、80℃以上である。
【0032】
さらにまた、貧溶媒(anti-solvent)を加えて結晶化させるのに用いられた前記貧溶媒(anti-solvent)は、水、アセトニトリル、エチルエーテル、アセトン、石油エーテル(petroleum ether)、n-ヘキサン、およびn-ヘプタンからなる群から選択された少なくともいずれか1種であり、好ましくは、水および石油エーテルから選択された少なくとも一方である。
【0033】
さらにまた、前記貧溶媒に対する良溶媒の体積比は、1~5:1、好ましくは、2:1である。
【0034】
第四番目の側面において、本発明は、前記結晶形IIの製造方法を提供し、これは、次のステップを含む:
2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の粗生成物を良溶媒に加えるステップ、完全に溶けるまで攪拌しかつ加熱するステップ、熱い状態でろ過するステップ、および生成されたろ液を急速冷却結晶化または凍結乾燥結晶化させて結晶形IIを得るステップ。
【0035】
また、前記良溶媒は、メタノール、エタノールおよびテトラヒドロフランからなる群から選択された少なくとも1つであり、好ましくは、メタノールおよびエタノールからなる群から選択された少なくとも一方である。
【0036】
さらに、前記粗生成物に対する良溶媒の使用比は、1g:5~300mLである。
【0037】
さらにまた、前記目標加熱温度は、50~80℃である。
【0038】
さらにまた、前記急速冷却結晶化の目標温度は、0℃以下であり、冷却速度は、5/分以上である。
【0039】
第五番目の側面において、本発明は、前記結晶形Iおよび/または結晶形II、および少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物を提供する。
【0040】
第六番目の側面において、本発明は、中枢神経系の変性疾患の予防および/または治療のための医薬の製造のための前記結晶形Iおよび/または結晶形IIの用途を提供する。
【0041】
また、中枢神経系の変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病および筋萎縮性側索硬化症(ALS:amyotrophic lateral sclerosis)からなる群から選択された少なくとも1つであり、好ましくは、アルツハイマー病である。
【発明の効果】
【0042】
[技術的な効果]
本発明において提供される2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の2つの結晶形(結晶形IおよびII)およびこれらの製造方法の長所は、下記の通りである:1)工程が単純であり、コストが安価である他、歩留まりが90%を上回る;および2)結晶形IおよびIIの結晶形は高純度であり、結晶の形態が無傷(intact)であり、流動性に優れていて製剤化が容易である他、原料よりも見かけの溶解度がさらに良好である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】実施例1において製造された2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の結晶形IのXRPDスペクトルであって、初回と3ヶ月後の安定性試験後の試料のスペクトルを含む。
【
図2】実施例1において製造された2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の結晶形IのDSCグラフである。
【
図3】実施例1において製造された2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の結晶形IのSEM写真である。
【
図4】実施例1において製造された2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の結晶形Iの粒子径分布図である。
【
図5】実施例5において製造された2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の結晶形IIのXRPDスペクトルであって、初回と3ヶ月後の安定性試験後の試料のスペクトルを含む。
【
図6】実施例5において製造された2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の結晶形IIのDSCグラフである。
【
図7】実施例5において製造された2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の結晶形IIのSEM写真である。
【
図8】実施例5において製造された2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の結晶形IIの粒子径分布図である。
【
図9】実施例1~4において製造された2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の結晶形IのXRPD重ね合わせスペクトルである。
【
図10】実施例5~6において製造された2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の結晶形IIのXRPD重ね合わせスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
最初に、本発明は、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の2種類の結晶の形態、すなわち、結晶形Iおよび結晶形IIを提供する。
【0045】
第二に、本発明は、前記2つの結晶形を製造する方法を提供する。
【0046】
第三に、本発明は、前記2つの結晶形のうちの少なくとも一方を含む薬学的組成物を提供する。
【0047】
最後に、本発明は、前記2つの結晶形のうちの少なくとも一方の薬学的用途を提供する。
【0048】
[2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の結晶形IおよびII]
本発明の結晶形IおよびIIは、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量分析(DSC)および走査電子顕微鏡(SEM)などの方法により特徴付けられることが可能であり、例えば、結晶系(crystal system)、空間群、セルパラメーターおよび単位セル当たりの分子の数などのパラメーター結果は、粉末多結晶インデキシングを用いて得られる。前記方法は、本発明の技術分野における通常の作業においてパラメーターの設定を採択することができ、試験物質の特定の物理的および化学的な特性に応じて適宜に調整または変更されることが可能である。
【0049】
[X線粉末回折]
本発明において、X線粉末回折の実験条件は、次の通りである。前記実験は、X線粉末回折分析器(放射線源Cu-kα、λ=1.5418Å)により行われ、3~40°の2θ値を有するXRPDスペクトルがスキャンされた。実施例1の結晶形Iおよび実施例2の結晶形IIのXRPDスペクトルは、
図1および
図5にそれぞれ示されており、XRPDデータは、表1に記載されている。結晶形の安定性を試験するために、実施例1の結晶形Iと実施例2の結晶形IIを40℃、60%相対湿度(RH)の条件下で3ヶ月間放置した後、粉末回折試験を実施した。その結果を
図1および
図5にそれぞれ示す。
【0050】
表1.本発明の結晶形態IおよびIIのXRPDデータ
【0051】
【0052】
[示差走査熱量分析]
本発明において、示差走査熱量分析のための実験条件は、次の通りである。3~10mgの試料を正確に計量し、アルミニウム製ツルボに詰め、窒素の保護下で10℃/分の加熱速度にて30℃で300℃まで加熱し、関連するグラフに記録した。実施例1の結晶形Iおよび実施例2の結晶形IIのDSCグラフは、
図2および
図6にそれぞれ示し、両方とも明らかな加熱および溶融の過程を有する。結晶形Iの融点は251.89℃であり、結晶形IIの融点は248.77℃である。
【0053】
[走査電子顕微鏡]
実施例1の結晶形Iおよび実施例2の結晶形IIのSEM写真は、
図3および
図7にそれぞれ示す。本発明の結晶形Iの形態(morphology)は、
図4に示されるように、大まかに平均粒子径が約50μmである不規則的なブロックである。本発明の結晶形IIの形態(morphology)は、
図8に示されるように、大まかに平均粒子径が約18μmである規則的な棒(rod)状である。
【0054】
[2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の結晶形IおよびIIの製造方法]
本発明の2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の結晶形IおよびIIを製造するための方法は、良溶媒および再結晶化の条件を選択し、最終的に前記良溶媒としてアルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、テトラヒドロフランおよびジメチルスルホキシドからなる群から選択されたいずれか1種以上の混合物を決定することによって、そして、異なる結晶化処理方法を用いて対応する結晶形IおよびII生成物を得る。
【0055】
本発明の結晶形Iは、下記の製造方法により製造することが可能である。2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の粗生成物を良溶媒(または、主溶媒)に加え、完全に溶けるまで攪拌しかつ加熱し、熱い状態でろ過した。ろ液を徐冷結晶化、一定の温度において溶媒を蒸発させて結晶化、増加された温度において溶媒を蒸発させて結晶化または貧溶媒(anti-solvent)を加えて結晶化させて、結晶形Iを得た。
【0056】
本発明の一実施形態において、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の粗生成物を溶解するための前記良溶媒は、単一溶媒または任意の割合の2種以上の溶媒の混合物であり得、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフランおよびジメチルスルホキシドからなる群から選択された少なくとも1種であり得る。本発明の好ましい実施形態において、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の粗生成物を溶解するための前記良溶媒は、エタノールおよびイソプロパノールからなる群から選択された少なくとも一方であり得る。
【0057】
本発明の結晶形Iであって、目的生成物は、徐冷結晶化、一定の温度において溶媒を蒸発させて結晶化、増加された温度において溶媒を蒸発させて結晶化または貧溶媒を加えて結晶化などのような多種多様な結晶化方法により得られる。
【0058】
本発明の一実施形態において、前記結晶形Iは、徐冷結晶化法により製造することが可能である。具体的には、徐冷結晶化の目標温度は、0℃以下であり得る。すなわち、粗生成物の溶解済みの澄んだろ液を0℃以下の温度まで徐々に冷却させ、さらに低い温度において過飽和溶液を形成して、結晶化を成し遂げた。また、徐冷結晶化の冷却速度は、3℃/分以下であり得る。すなわち、粗生成物の溶解済みの澄んだろ液の温度を1分当たりに3℃の減少速度にて、またはそれよりもさらに低速にて目標温度まで低めた。
【0059】
本発明の他の実施形態において、前記結晶形Iは、一定の温度において溶媒を蒸発させて結晶化させる方法によって製造することが可能である。具体的には、結晶化のために一定の温度において溶媒を蒸発させる周囲温度(ambient temperature)は、10~30℃であり得る。すなわち、まず、粗生成物の溶解済みの澄んだろ液の温度を10~30℃の周囲温度まで低め、次いで、一定の周囲温度の条件下で溶媒を蒸発させて過飽和溶液を形成して、結晶化を成し遂げた。
【0060】
本発明の他の実施形態において、結晶形Iは、増加された温度において溶媒を蒸発させて結晶化させる方法により製造することが可能である。具体的には、結晶化のために増加された温度において溶媒を蒸発させることの目標温度は、80℃以上であり得る。すなわち、粗生成物の溶解済みの澄んだろ液の温度を80℃以上の温度まで加熱し、溶媒を蒸発させて過飽和溶液を形成して、結晶化させた。本発明の好ましい実施形態において、結晶化のために増加された温度において溶媒を蒸発させることは、溶媒の除去速度を速めるために特定の真空度(vacuum degree)下で行われ得る。
【0061】
本発明の他の実施形態において、結晶形Iは、貧溶媒(anti-solvent)を加えて結晶化させる方法によって製造することが可能である。具体的には、前記貧溶媒(または、2次溶媒)は、単一溶媒または任意の割合の2種以上の溶媒の混合物であり得、例えば、水、アセトニトリル、エチルエーテル、アセトン、石油エーテル(petroleum ether)、n-ヘキサンおよびn-ヘプタンからなる群から選択された少なくとも1種であり得る。本発明の好ましい実施形態において、前記貧溶媒の量は調整可能であり、例えば、貧溶媒に対する良溶媒の使用比(例えば、体積比)は、1~5:1であり得る。本発明のより好ましい実施形態において、前記貧溶媒に対する良溶媒の使用比(例えば、体積比)は、2:1であり得る。
【0062】
本発明の結晶形IIは、下記の製造方法によって製造することが可能である。2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の粗生成物を良溶媒に加えて、完全に溶けるまで攪拌しかつ加熱し、熱いときにろ過した。前記ろ液を急速冷却結晶化または凍結乾燥結晶化させて、結晶形IIを得た。
【0063】
本発明の一実施形態において、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の粗生成物を溶解するための前記良溶媒は、単一溶媒または任意の割合の2種以上の溶媒の混合物であり得、例えば、メタノール、エタノールおよびテトラヒドロフランからなる群から選択された少なくとも1種であり得る。本発明の好ましい実施形態において、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の粗生成物を溶解するための前記良溶媒は、メタノールおよびエタノールからなる群から選択された少なくとも一方であり得る。
【0064】
本発明の一実施形態において、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の粗生成物を溶解するための前記良溶媒の量は調整可能であり、例えば、粗生成物に対する良溶媒の使用比は、1g:5~300mLであり得る。
【0065】
本発明の一実施形態において、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の粗生成物を溶解するための前記良溶媒は、加熱して処理されることが可能であり、例えば、50~80℃まで加熱され得る。
【0066】
本発明の結晶形IIであって、目的生成物は、急速冷却結晶化、凍結乾燥結晶化などの様々な結晶化方法により得られる。
【0067】
本発明の一実施形態において、結晶形IIは、急速冷却結晶化法により製造することが可能である。具体的には、急速冷却結晶化の目標温度は、0℃以下であり得る。また、前記急速冷却結晶化の冷却速度は、5℃/分以上であり得る。すなわち、粗生成物の溶解済みの澄んだろ液の温度を1分当たりに5℃の減少速度にて、またはそれよりもさらに高速にて目標温度まで低めた。
【0068】
本発明の他の実施形態において、結晶形IIは、凍結乾燥結晶化法により製造することが可能である。
【0069】
また、前記結晶形IおよびIIを製造する方法は、ろ過、乾燥などの後処理ステップを選択的に含み得る。
【0070】
[薬学的組成物]
本発明の2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の結晶形IおよびIIは、薬学的組成物として投与されることが可能である。前記用語「薬学的組成物」は、医薬品(medicine)として使用可能な組成物を意味するものであって、これは、医薬品有効成分(API)(例えば、本発明の結晶形IおよびII)および選択的に1つ以上の薬学的に許容可能な担体を含む。前記用語「薬学的に許容可能な担体」は、医薬品有効成分と互換性があり、対象体に無害な薬学的賦形剤を意味し、希釈剤(または、充填剤)、結着剤、崩解剤、潤滑剤、湿潤剤、増粘剤、滑沢剤、着香剤(flavoring agents)、風味剤(smelling agents)、防腐剤、抗酸化剤、pH調整剤、溶剤、共溶媒、界面活性剤などを含むが、これらに何ら制限されない。
【0071】
本発明の一実施形態において、前記薬学的組成物は、本発明の結晶形Iを含み得る。
【0072】
本発明の他の実施形態において、前記薬学的組成物は、本発明の結晶形IIを含み得る。
【0073】
本発明の他の実施形態において、前記薬学的組成物は、結晶形Iおよび本発明の結晶形IIを両方とも含み得、両結晶形は、任意の割合にて混合され得る。
【0074】
本発明の好ましい実施形態において、前記薬学的組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体をさらに含み得る。
【0075】
[医薬用途]
前記2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の結晶形Iまたは結晶形IIまたは結晶形Iおよび/または結晶形IIを含む前記薬学的組成物は、中枢神経系の変性疾患を退治する上で使用することが可能である。したがって、本発明は、また、中枢神経系の変性疾患の予防および/または治療のための医薬の製造のための前記結晶形Iおよび/または結晶形IIの用途を提供する。
【0076】
前記用語「中枢神経系の変性疾患」は、中枢神経系の慢性進行性退行によって発病する疾患群をまとめて称する用語である。このような疾病は、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)および筋萎縮性側索硬化症(ALS)などを含むが、これらに何ら限定されるものではない。
【0077】
本発明の一実施形態において、前記中枢神経系の変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病および筋萎縮性側索硬化症からなる群から選択される少なくとも1つであり得る。
【0078】
本発明の好ましい実施形態において、前記中枢神経系の変性疾患は、アルツハイマー病であり得る。
【0079】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明の技術的な解決手段について説明する。下記の実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではないということが当業界における通常の知識を有する者にとって理解できる筈である。下記の実施例に用いられた医薬品、試薬、材料、器具などは、この開示において別途に断りのない限り、通常の商業的な方法により入手することが可能である。
【実施例】
【0080】
[実施例1:本発明の結晶形Iの製造および物理化学的な同定]
<ステップ1:粗生成物の溶解済みの澄んだろ液の製造>
2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の粗生成物(100g)を計量し、1Lのフラスコに入れた。エタノール(500mL)を室温において加え、攪拌しながら系を50℃まで加熱した。溶解しかつ澄ました後に系を吸引ろ過し、不純物を取り除いて粗生成物の溶解済みの澄んだろ液を得た。
【0081】
<ステップ2:徐冷結晶化:>
前記溶解済みの澄んだろ液を3℃/分の冷却速度にて-5℃まで冷却させ、これは、白色沈殿物の沈殿を伴った。ろ液を沈殿物が生成されなくなるほどまで1時間かけて-5℃で保持し、吸引ろ過しかつ乾燥させて、目的物を得た(歩留まり:95.6%)。
【0082】
XRPD試験による結果は、
図1に示され、結晶形Iであると決定される。
【0083】
結晶形安定性の試験:一定量の試料を40℃および60%RHの条件下で3ヶ月間放置し、
図1に示されるように、これらの粉末回折の結果を試験した。
図1から明らかなように、長期間にわたっての放置後の試料の回折特性ピークは、初回のものと一致しており、これは、結晶形が安定しており、変わっておらず、結晶形Iが長期安定性を有するということを示す。
【0084】
DSC試験によれば、
図2に示されるように、249~252℃の範囲において溶融が起こった。
【0085】
試料を採取してSEMにて観察した。写真は
図3に示されており、不規則的な大きな粒状(granular)のブロックを示す。
【0086】
粒子径および粒子の分布は、粒子径分析器を用いて試験を行い、
図4に示されるように、平均粒子径は、約50μmである。
【0087】
[実施例2:本発明の結晶形Iの製造および物理化学的な同定]
<ステップ1:粗生成物の溶解済みの澄んだろ液の製造>
2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の粗生成物(80g)を計量し、1Lのフラスコに入れた。イソプロパノール(560mL)を室温において加え、攪拌しながら系を80℃まで加熱した。溶解しかつ澄ました後に系を吸引ろ過し、不純物を取り除いて粗生成物の溶解済みの澄んだろ液を得た。
【0088】
<ステップ2:一定の温度において溶媒を蒸発させて結晶化>
前記溶解済みの澄んだろ液の温度は、30℃の周囲温度まで低め、この一定の温度において溶媒を自然に蒸発させ、ここに白色沈殿物の沈殿が伴われ、沈殿物がそれ以上生成されなくなるほどまで溶媒が蒸発された。ろ液を吸引ろ過しかつ乾燥させて、目的物を得た(歩留まり:93.8%)。
【0089】
図9に示されるように、XRPD試験により結晶形Iであると決定された。
【0090】
[実施例3:本発明の結晶形Iの製造および物理化学的な同定]
<ステップ1:粗生成物の溶解済みの澄んだろ液の製造>
2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の粗生成物(100g)を定量し、1Lのフラスコに入れた。イソプロパノール(800mL)を室温において加え、攪拌しながら系を60℃まで加熱した。溶解および澄ました後に系を吸引ろ過し、不純物を取り除いて粗生成物の溶解済みの澄んだろ液を得た。
【0091】
<ステップ2:高温下で溶媒を蒸発させて結晶化>
前記溶解済みの澄んだろ液を90℃まで加熱し、溶媒を一定の真空度(-0.12MPa)において蒸発させ、ここに白色沈殿物の沈殿が伴われ、沈殿物がそれ以上生成されなくなるほどまで溶媒が蒸発された。前記ろ液を吸引ろ過しかつ乾燥させて目的物を得た(歩留まり:98.1%)。
【0092】
図9に示されるように、XRPD試験により結晶形Iであると決定された。
【0093】
[実施例4:本発明の結晶形Iの製造および物理化学的な同定]
<ステップ1:粗生成物の溶解済みの澄んだろ液の製造>
2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の粗生成物(50g)を計量し、1Lのフラスコに入れた。エタノール(300mL)を室温において加え、かつ系を攪拌しながら60℃まで加熱した。溶解しかつ澄ました後に系を吸引ろ過し、不純物を取り除いて粗生成物の溶解済みの澄んだろ液を得た。
【0094】
<ステップ2:貧溶媒(anti-solvent)を加えて結晶化>
水(600mL)を前記溶解済みの澄んだろ液に徐々に加え、ここに白色沈殿物の沈殿が伴われた。前記ろ液を吸引ろ過しかつ乾燥させて、目的物(歩留まり:94.2%)を得た。
【0095】
図9に示されるように、XRPD試験により結晶形Iであると決定された。
【0096】
[実施例5:本発明の結晶形IIの製造および物理化学的な同定]
<ステップ1:粗生成物の溶解済みの澄んだろ液の製造>
2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の粗生成物(80g)を計量して、1Lのフラスコに入れた。メタノール(400mL)を室温において加え、攪拌しながら前記系を60℃まで加熱した。溶解しかつ澄ました後に系を吸引ろ過し、不純物を取り除いて粗生成物の溶解済みの澄んだろ液を得た
<ステップ2:急速冷却結晶化>
前記溶解済みの澄んだろ液を8℃/分の冷却速度にて0℃まで冷却させ、ここに白色沈殿物の沈殿が伴われた。ろ液を0℃で沈殿物が生成されなくなるまで保持し、ろ液を吸引ろ過しかつ乾燥させて目的物(歩留まり:92.7%)を得た。
【0097】
XRPD試験による結果は、
図5に示され、結晶形IIであると決定される。
【0098】
結晶形安定性の試験:一定量の試料を40℃および60%RHの条件下で3ヶ月間放置し、
図5に示されるように、これらの粉末回折の結果が試験された。
図5から明らかなように、長期のわたっての放置後の試料の回折特性ピークは、最初のものと一致しており、これは、結晶形が相対的に安定しており、変わっておらず、結晶形IIが長期安定性を有するということを意味する。
【0099】
DSC試験によれば、
図6に示されるように、247~250℃の範囲において溶融が起こった。
【0100】
試料を採取してSEMにて観察した。写真は
図7に示されており、規則的な棒状の粒子を示す。
【0101】
粒子径および粒子分布については、粒子径分析器を用いて試験を行い、平均粒子径は、
図8に示されるように、約18μmである。
【0102】
[実施例6:本発明の結晶形IIの製造および物理化学的な同定]
<ステップ1:粗生成物の溶解済みの澄んだろ液の製造>
2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の粗生成物(100g)を計量して、1Lのフラスコに入れた。エタノール(600mL)を室温において加え、攪拌しながら系を50℃まで加熱した。系を溶解しかつ澄ました後に吸引ろ過し、不純物を取り除いて粗生成物の溶解済みの澄んだろ液を得た。
【0103】
<ステップ2:凍結乾燥結晶化:>
前記溶解済みの澄んだろ液を-40℃で固体に凍結させ、凍結乾燥機に入れ、真空乾燥させた後に取り出して目的物を得た(歩留まり:99.7%)。
【0104】
図10に示されるように、XRPD試験により結晶形IIであると決定された。
【0105】
また、粗原料と実施例1において製造された結晶形Iおよび実施例5において製造された結晶形IIの見かけの溶解度が高速液体クロマトグラフ法(HPLC)により試験され、結果は、表2に示されるように、本発明の結晶形IおよびIIの方がさらに高い見かけの溶解度を示すということを示す。
【0106】
表2.本発明の結晶形Iと結晶形IIと原料との見かけの溶解度の比較結果
【0107】
【国際調査報告】