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  • 特表-遠心分離によるバイオマス除去 図1
  • 特表-遠心分離によるバイオマス除去 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】遠心分離によるバイオマス除去
(51)【国際特許分類】
   C07H 3/06 20060101AFI20231227BHJP
   C13K 13/00 20060101ALI20231227BHJP
   B04B 1/02 20060101ALI20231227BHJP
   B04B 1/08 20060101ALI20231227BHJP
   B04B 5/10 20060101ALI20231227BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20231227BHJP
   B01D 61/16 20060101ALI20231227BHJP
   B01D 15/08 20060101ALI20231227BHJP
   B01J 39/05 20170101ALI20231227BHJP
   B01J 41/07 20170101ALI20231227BHJP
   C12N 5/00 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
C07H3/06
C13K13/00
B04B1/02
B04B1/08
B04B5/10
B01D61/14 500
B01D61/16
B01D15/08
B01J39/05
B01J41/07
C12N5/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535710
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 IB2021061934
(87)【国際公開番号】W WO2022130324
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】PA202001431
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508278309
【氏名又は名称】グリコム・アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】Glycom A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】カーンジン, ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーザー, マルコ
(72)【発明者】
【氏名】テーゲルセン, ジェスパー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C057
4D006
4D017
4D057
【Fターム(参考)】
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD08
4B065BD15
4B065BD18
4B065CA21
4B065CA41
4B065CA44
4C057AA07
4C057BB04
4D006GA06
4D006GA07
4D006KA02
4D006KB12
4D006KB20
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4D006MA40
4D006MC03
4D006MC09
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4D006PB15
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4D006PC41
4D017AA07
4D017BA04
4D017CA03
4D017CA05
4D017CA13
4D017DA03
4D017DA07
4D017EA05
4D057AA00
4D057AB01
4D057AC01
4D057AD01
4D057AE02
4D057BA00
4D057BA03
(57)【要約】
本明細書には、ヒト乳オリゴ糖(HMO)を精製するためのシステム及び方法が開示されている。HMOは、細菌バイオマス、細胞断片、小粒子、及び生体分子のうちの1つ又は複数を含有する懸濁液から精製することができる。有利には、溶液は遠心分離の前に前処理されて、精製HMOを含有する清澄上清を形成することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス及びタンパク質の1つ以上を含有する懸濁液からヒト乳オリゴ糖(HMO)を精製する方法であって、
-pH調整、希釈、及び/又は熱処理によって前記懸濁液を前処理する工程、並びに
-前記前処理後に前記懸濁液を遠心分離し、それによって、精製された前記HMOを含む清澄上清を形成する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記懸濁液は、発酵ブロスである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記前処理は、pH調整、希釈及び熱処理を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
pH調整は、前記懸濁液のpH2~5、好ましくは3~4への酸性化である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記希釈は、前記希釈懸濁液の体積が前記懸濁液の元の体積の2~10倍、好ましくは2~8倍、より好ましくは2~4倍、より好ましくは2.5~3.5倍となるように行う、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記懸濁液の希釈後のバイオ-ウエット-マス(BWM)は、20%未満、好ましくは約10~15%である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記熱処理は、前記懸濁液を45~120℃、好ましくは60~90℃、より好ましくは60~80℃に加熱することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記遠心分離は連続供給添加を伴う連続プロセスであり、前記遠心分離は連続的な又は定期的な湿潤固体の除去をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記遠心分離は、円錐プレート遠心分離機により行う、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記遠心分離は、ソリッドボウル(デカンター)遠心分離機により行う、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
遠心分離後に得られた前記清澄上清は、限外ろ過によってさらに精製される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
遠心分離後に得られた前記清澄上清は、
a)任意選択の限外ろ過(UF)
b)ナノろ過(NF)、及び
c)イオン交換樹脂及び/又は中性固相でのクロマトグラフィーによる処理
によりさらに精製される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記HMOは、中性HMOである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記中性HMOは、2’-FL、3-FL、DFL、LNT、LNnT、LNFP-I、LNFP-II、LNFP-III、LNFP-V又はLNFP-VIである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記中性HMOは、2’-FL、3-FL、DFL又はLNFP-Iである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記中性HMOは、2’-FL又はLNFP-Iである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記中性HMOは、LNT又はLNnTである、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[分野]
本開示は一般に、前処理された懸濁液を遠心分離することによるバイオマスの除去に関する。
【0002】
[背景]
過去数十年、ヒト乳オリゴ糖(HMO)の調製及び商品化への関心が着実に高まっている。HMOの重要性は、このHMOの固有の生物学的活性に直接関係しており、したがって、HMOは、栄養用途及び治療用途に重要な潜在的製品となっている。そのため、HMOを工業的に製造する低コストの方法が模索されている。
【0003】
現在まで、140種を超えるHMOの構造が決定されており、ヒト乳中には、おそらくはるかにより多くのものが存在する(Urashima et al.:Milk oligosaccharides,Nova Biomedical Books,2011;Chen Adv.Carbohydr.Chem.Biochem.72,113(2015))。HMOは、還元末端にラクトース(Galβ1-4Glc)部分を含み、且つN-アセチルグルコサミン又は1つ若しくは複数のN-アセチルラクトサミン部分(Galβ1-4GlcNAc)及び/或いはラクト-N-ビオース部分(Galβ1-3GlcNAc)で伸長され得る。ラクトース及びN-アセチルラクトサミニル化ラクトース誘導体又はラクト-N-ビオシル化ラクトース誘導体を1つ又は複数のフコース及び/又はシアル酸残基でさらに置換するか、或いはラクトースを追加のガラクトースで置換して、これまで知られているHMOを得ることができる。
【0004】
近年、HMO、特に三糖であるものの直接発酵生成が実用化されている(Han et al.Biotechnol.Adv.30,1268(2012)及び本明細書で引用されている参考文献)。そのような発酵技術では、組換えE.コリ(E.coli)システムが使用されており、このシステムでは、ウイルス又は細菌に由来する1つ又は複数のタイプのグリコシルトランスフェラーゼが共発現されて、外部から添加されたラクトースがグリコシル化されており、このラクトースは、E.コリ(E.coli)のLacYパーミアーゼにより内在化されている。しかしながら、組換えグリコシルトランスフェラーゼ、特に4つ以上の単糖単位のオリゴ糖を生成するための一連の組換えグリコシルトランスフェラーゼは、副生成物を常に形成し、そのため、発酵ブロス中にオリゴ糖の複雑な混合物が生じる。さらに、発酵ブロスは、広範な非オリゴ糖物質、例えば細胞、細胞断片、タンパク質、タンパク質断片、DNA、DNA断片、エンドトキシン、カラメル化副生成物、ミネラル、塩又は他の荷電分子及び多くの代謝産物を必然的に含有する。
【0005】
炭水化物副生成物及び他の夾雑成分からHMOを分離するために、最適な方法として、ゲルろ過クロマトグラフィーと組み合わせた活性炭処理が提案されている(国際公開第01/04341号パンフレット、欧州特許出願公開第A-2479263号明細書、Dumon et al.Glycoconj.J.18,465(2001)、Priem et al.Glycobiology 12,235(2002)、Drouillard et al.Angew.Chem.Int.Ed.45,1778(2006)、Gebus et al.Carbohydr.Res.361,83(2012)、Baumgaertner et al.ChemBioChem 15,1896(2014))。ゲルろ過クロマトグラフィーは、実験室規模の便利な方法ではあるが、工業生産用に効率的にスケールアップすることができない。
【0006】
近年、欧州特許出願公開第A-2896628号明細書には、以下の工程を含む、微生物発酵によって得られた発酵ブロスから2’-FLを精製するプロセスが記載されている:限外ろ過、強陽イオン交換樹脂クロマトグラフィー(H形態)、中和、強陰イオン交換樹脂クロマトグラフィー(酢酸塩形態)、中和、活性炭処理、電気透析、第2の強陽イオン交換樹脂クロマトグラフィー(H形態又はNa形態)、第2の強陰イオン交換樹脂クロマトグラフィー(Cl形態)、第2の活性炭処理、任意選択的な第2の電気透析及び滅菌ろ過。
【0007】
国際公開第2017/182965号パンフレット及び国際公開第2017/221208号パンフレットには、発酵ブロスからLNT又はLNnTを精製するプロセスであって、限外ろ過、ナノろ過、活性炭処理及び強強陽イオン交換樹脂(H形態)、その後の弱陰イオン交換樹脂(塩基形態)による処理を含むプロセスが開示されている。
【0008】
国際公開第2015/188834号パンフレット及び国際公開第2016/095924号パンフレットには、精製された発酵ブロスからの2’-FLの結晶化が開示されており、この精製は、限外ろ過、ナノろ過、活性炭処理及び強陽イオン交換樹脂(H形態)、その後の弱陰イオン交換樹脂(塩基形態)による処理を含む。
【0009】
他の先行技術の文献には、ラクトースが少ないか又はラクトースがない発酵ブロスのための緻密な精製方法が開示されている。これらの手順によれば、中性HMOの発酵生成中に過剰に添加されたラクトースは、β-ガラクトシダーゼの作用により、発酵完了後にインサイチュで加水分解されており、ラクトースが実質的に残存していないブロスが得られる。したがって、国際公開第2012/112777号パンフレットには、2’-FLを精製するための一連の工程であって、遠心分離、炭でのオリゴ糖の捕捉、その後の溶出及びイオン交換媒体でのフラッシュクロマトグラフィーを含む工程が開示されている。国際公開第2015/106943号パンフレットには、2’-FLの精製であって、限外ろ過、強カチオン交換樹脂クロマトグラフィー(H形態)、中和、強陰イオン交換樹脂クロマトグラフィー(Cl形態)、中和、ナノろ過/透析ろ過、活性炭処理、電気透析、任意選択的な第2の強陽イオン交換樹脂クロマトグラフィー(Na形態)、第2の強陰イオン交換樹脂クロマトグラフィー(Cl形態)、第2の活性炭処理、任意選択的な第2の電気透析及び滅菌ろ過を含む精製が開示されている。国際公開第2019/063757号パンフレットには、中性HMOの精製プロセスであって、発酵ブロスからバイオマスを分離すること並びに陽イオン交換材料、陰イオン交換材料及び陽イオン交換吸着樹脂による処理を含む精製プロセスが開示されている。
【0010】
しかしながら、HMOの純度を少なくとも維持し、好ましくは改善しつつ、HMOの回収率を改善し、且つ/又は先行技術の方法を簡略化するために、非炭水化物成分が生成された発酵ブロスの非炭水化物成分から中性HMOを単離及び精製するための代替手順、特に工業スケールに適した手順が必要とされている。
【0011】
[概要]
その最も広い態様においては、本発明は、バイオマス及びタンパク質の1つ以上を含有する懸濁液からオリゴ糖を精製する方法であって、
pH調整、希釈、及び/又は熱処理によって懸濁液を前処理する工程、並びに
前処理後に懸濁液を遠心分離し、
それによって、精製オリゴ糖を含む清澄上清を形成する工程
を含む方法に関する。
【0012】
懸濁液は、好ましくは、発酵ブロスである。
【0013】
前処理は、好ましくは、懸濁液、好ましくは発酵ブロスのpH調整である。
【0014】
より好ましくは、前処理は、希釈及び/又は熱処理を伴う懸濁液のpH調整である。
【0015】
さらにより好ましくは、懸濁液の前処理は、pH調整、希釈及び熱処理である。
【0016】
オリゴ糖は、好ましくは、ヒト乳オリゴ糖(HMO)である。
【0017】
HMOは、好ましくは、中性HMOである。
【0018】
中性HMOは、好ましくは、2’-FL、3-FL、DFL、LNT、LNnT、LNFP-I、LNFP-II、LNFP-III、LNFP-V及びLNFP-VIからなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施例5に開示の実施形態による、上清透明度に対する遠心分離時間のグラフを示す。
図2図2は、実施例7による、異なるpH値での沈降速度のグラフを示す。
図3図3は、本開示の1つ以上の実施形態によるフローチャートを示す。
【0020】
[詳細な説明]
溶解した有機分子を含有する不均一な固液混合物又は系(懸濁液)からバイオマスを除去するための方法の実施形態が本明細書に開示される。用語「バイオマス」は、不均一系の液相中の非溶解固体粒子を指し、発酵との関連では、それは、インタクトな細胞、破壊された細胞、細胞断片、タンパク質、タンパク質断片、多糖類などの発酵細胞に由来する懸濁物質、沈殿物質又は不溶性物質を指し、酵素反応との関連では、それは、そこで使用される酵素に由来する(主に変性した及び/又は沈殿した)タンパク質又はタンパク質断片を指す。典型的には、固液混合物又は系中の溶解有機分子は、発酵プロセスの代謝産物であり、代謝産物はインビトロ酵素反応の発酵ブロス又は生成物中に分泌される。例えば、バイオマスは、細菌又は真菌細胞に由来するバイオマスであり得、固液混合物又は系は発酵ブロスであり得る。固液混合物又は系は、好ましくは水性系である。或いは、この方法は、分離又は精製として知られ得る。
【0021】
本開示においては、方法は、バイオマスを懸濁液から分離するための遠心分離を含むことができる。さらに、懸濁液は、遠心分離の前に前処理することができる。有利には、本開示の実施形態は、前処理を行わない遠心分離と比較して、溶解していない粒子の沈降速度をわずか数倍でなく、実質的に数桁、例えば1000~10000倍増加させることができる。さらに、溶解した有機分子を含有する透明な上清(例えば、溶液)を得ることができる。
【0022】
特定の実施態様では、懸濁液はpH調整によって前処理し得る。特定の実施態様では、懸濁液は希釈によって前処理し得る。特定の実施態様では、懸濁液は加熱によって前処理し得る。特定の変形例では、開示された前処理のうちの2つ又は3つを実行することができる。以下に開示する全ての前処理は、遠心分離の前に行うことができる。
【0023】
特に、本開示の実施形態は、発酵ブロスなどの懸濁液から、ヒト乳オリゴ糖(HMO)を含有する液相、好ましくは水相の分離に使用することができる。しかしながら、特定の分離される物質は限定的ではなく、本開示は、バイオマスからの発酵プロセス又は酵素反応に由来する他の工業的に有用な有機化合物の分離/精製に使用することができる。
【0024】
有利には、前処理は、凝集剤(例えば、無機多価金属塩又は荷電ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン(PEI)又はキトサン)などの沈降速度などのプロセスを促進する薬剤)を添加せずに行うことができる。したがって、本開示の一部又は全ての実施形態で、凝集剤が使用されない可能性がある。
【0025】
開示された前処理の実施形態を伴わない溶液の典型的な遠心分離は、OD600の測定(分光光度計により波長600nmで測定される光学密度)によるような、不特定の収率、タンパク質及び他の生体分子の不特定な除去効力、並びに不特定な清澄化の程度の実験室規模の試験において、高いg力での長い遠心分離(滞留)時間を必要とした。このように、既知のプロセスは、実験室規模の操作しか実行できないので、製造を効果的に商業化するために使用することはできなかった。
【0026】
しかしながら、開示した前処理方法の実施形態を使用することによって、1)実質的により多い処理量が達成される;2)溶解した有機化合物、例えばHMOのより良好な収率が、希釈及び熱処理によって達成され、これらの処理はいずれもバイオマス/上清比を最小限にし、バイオマスからの生成物の抽出を容易にする;3)前処理後の微粒子除去は、OD600によって定量化されたように、はるかに効率的である;4)生体分子の除去もまた、より効率的である(例えば、より低いpH及び熱処理での変性及び沈殿によるタンパク質);5)より多い処理量、すなわち、より高いフラックスが精密ろ過又は限外ろ過などの後続の任意選択の膜ろ過工程において達成され得る、など、多くの利点がもたらされた。
【0027】
さらに、本開示の実施形態は、工程時間がより短く、装置はより小さく、より複雑でなく、洗浄剤はより少なくてすみ、且つ必要とする洗浄時間はより短く、洗浄頻度はより少ない。
【0028】
[ヒト乳オリゴ糖(HMO)]
ヒト乳オリゴ糖(HMO、ヒト乳グリカン)は、例えばヒト母乳中に高濃度で見出すことができる複合炭水化物である(例えば、Urashima et al.:Milk Oligosaccharides.Nova Science Publisher(2011);Chen Adv.Carbohydr.Chem.Biochem.72,113(2015)を参照されたい)。HMOは、1つ以上のβ-N-アセチル-ラクトサミニル単位及び/又は1つ以上のβ-ラクト-N-ビオシル単位によって伸長され得る、還元末端にラクトース単位を含むコア構造を有し、そのコア構造は、α L-フコピラノシル部分及び/又はα-N-アセチル-ノイラミニル(シアリル)部分によって置換され得る。この点に関して、非酸性(又は中性)HMOは、シアリル残基を欠き、酸性HMOは、それらの構造に少なくとも1つのシアリル残基を有する。非酸性(又は中性)HMOは、フコシル化されても又はされなくてもよい。このような中性非フコシル化HMOの例としては、ラクト-N-テトラオース(LNT)、ラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)、ラクト-N-ネオヘキサオース(LNnH)、パラ-ラクト-N-ネオヘキサオース(pLNnH)、パラ-ラクト-N-ヘキサオース(pLNH)及びラクト-N-ヘキサオース(LNH)が挙げられる。中性フコシル化HMOの例としては、2’-フコシルラクトース(2’-FL)、ラクト-N-フコペンタオースI(LNFP-I)、ラクト-N-ジフコヘキサオースI(LNDFH-I)、3-フコシルラクトース(3-FL)、ジフコシルラクトース(DFL)、ラクト-N-フコペンタオースII(LNFP-II)、ラクト-N-フコペンタオースIII(LNFP-III)、ラクト-N-ジフコヘキサオースIII(LNDFH-III)、フコシル-ラクト-N-ヘキサオースII(FLNH-II)、ラクト-N-フコペンタオースV(LNFP-V)、ラクト-N-フコペンタオースVI(LNFP-VI)、ラクト-N-ジフコヘキサオースII(LNDFH-II)、フコシル-ラクト-N-ヘキサオースI(FLNH-I)、フコシル-パラ-ラクト-N-ヘキサオースI(FpLNH-I)、フコシル-パラ-ラクト-N-ネオヘキサオースII(F-pLNnHII)及びフコシル-ラクト-N-ネオヘキサオース(FLNnH)が挙げられる。酸性HMOの例としては、3’-シアリルラクトース(3’-SL)、6’-シアリルラクトース(6’-SL)、3-フコシル-3’-シアリルラクトース(FSL)、LST a、フコシル-LST a(FLST a)、LST b、フコシル-LST b(FLST b)、LST c、フコシル-LST c(FLST c)、シアリル-LNH(SLNH)、シアリル-ラクト-N-ヘキサオース(SLNH)、シアリル-ラクト-N-ネオヘキサオースI(SLNH-I)、シアリル-ラクト-N-ネオヘキサオースII(SLNH-II)及びジシアリル-ラクト-N-テトラオース(DSLNT)が挙げられる。
【0029】
一実施形態では、本発明の方法は、懸濁液中に存在する酸性HMOの精製に好適である。懸濁液が発酵ブロスである場合、HMOは、好ましくは3’-SL、6’-SL、LST a、LST b、LST c又はDSLNT、より好ましくは3’-SL又は6’-SLである。懸濁液が酵素反応環境である場合、HMOは、好ましくはLST a、フコシル-LST a(FLST a)、LST b、フコシル-LST b(FLST b)、LST c、フコシル-LST c(FLST c)又はDSLNTである。
【0030】
一実施形態では、本発明の方法は、懸濁液中に存在する中性HMOの精製に好適である。懸濁液が発酵ブロスである場合、発酵の主生成物としての中性HMOは、三糖、四糖、五糖又は六糖の中性HMO、好ましくは三糖、四糖又は五糖の中性HMOである。三糖から六糖の中性HMOの発酵液体培地には、二糖から七糖の副産物が含まれている場合があり、それらのうちのいくつかはHMO自体であり得る。典型的な三糖中性HMO発酵ブロスは、2’-FL又は3-FLの発酵ブロスであり;典型的な四糖中性発酵ブロスは、LNT、LNnT又はDFLの発酵ブロスであり;典型的な五糖中性発酵ブロスは、LNFP-I、LNFP-II、LNFP-III、LNFP-V又はLNFP-VIの発酵ブロスである。
【0031】
好ましくは、本発明の方法におけるHMOは、2’-FL、3-FL、DFL、LNT、LNnT、LNFP-I、LNFP-II、LNFP-III、LNFP-V又はLNFP-VIである。
【0032】
[精製方法]
バイオマス除去(例えば、精製又は固液分離)は、発酵ブロス又は酵素反応環境などの懸濁液から、工業的に有用な有機化合物、例えばHMOを単離するための第1の工程のなかの1つである。いくつかの実施態様では、バイオマス除去が遠心分離によって行うことができる。遠心分離による微生物/細胞又は酵素/タンパク質に由来するバイオマスの除去は、非常に小さい粒径並びにさらに小さい細胞断片及び他の懸濁固体の存在に起因して、高G力(すなわち、RCF>10000g;相対遠心力、地球の重力に対して正規化された遠心分離機における加速度)及び/又は長い滞留時間(例えば、>10分)を通常必要とする。
【0033】
遠心分離によって加速された固液分離は、実験室規模では、発酵ブロス又は酵素反応環境からの生成物分離に、典型的には>10000gの高RCFで首尾よく適用されている。しかしながら、工業規模に適用される場合、複雑なプロセス、多額の設備投資、及び大きいエネルギー消費を含む、多くの一般的な制限に直面する。要求される高速又は高RCFへの液体供給による大型ローターの加速は、大量のエネルギー消費を必要とするだけでなく、壊滅的な故障のリスクが低く、RCF=1,000,000gまで上昇し得る小型の実験室遠心分離機と比較して、生成される内壁圧力の許容範囲がはるかに低いため、RCFの限界を制限する。したがって、発酵ブロス又は酵素反応環境は、通常、バイオマスの除去の広く適用されている代替物として、精密ろ過又は限外ろ過によって処理されている。しかしながら、このアプローチはまた、非常に高度で且つ高価な装置と、懸濁固形分が多い供給物に対する高度に堅牢な膜とを必要とする。さらに、それは、必要とされる高いクロスフロー速度と高い粘度に関連した大きな圧力降下のために、高いエネルギー消費に関連する。別の問題は、透過フラックスを実質的に減少させ得る時間に依存した膜ファウリングが避けられないことである。
【0034】
発酵ブロス又は酵素反応環境の遠心分離による分離を工業的規模で経済的に実行可能にするために、ブロス又は酵素反応環境は、理想的には沈降速度に影響を及ぼす全てのパラメーターを変化させる、すなわち、粘度を低下させ、懸濁固体粒子と媒体との密度差を大きくし、且つ粒径を大きくすることによって、予め条件を調整しなければならず、これにより、より低いG力及びより短い滞留時間でプロセスを実行することが可能になる。粒子を大きくするための典型的な方法は、凝集剤の存在下で細胞又は他の粒子を集める凝集である。この方法は非常に簡単であり、沈降又は遠心分離の前にブロスに、無機多価金属塩、又は帯電ポリマー、例えばポリエチレンイミン(PEI)若しくはキトサンなどの凝集剤を添加することを含む。凝集は、例えば廃水処理において広く使用されているが、食品グレード製品へのその適用は、凝集剤の高コストのためだけでなく、潜在的な毒性及び規制要件のためにも、法外なものになり得る。
【0035】
以下に詳細に論じるように、本開示の実施形態は、遠心分離の前に前処理した発酵ブロス又は酵素反応環境を連続的に遠心分離することによって、バイオマス除去速度を大幅に改善することができる。本開示の実施形態は、有利には、pH調整、希釈及び加熱の1つ以上の前処理をブロス又は酵素反応環境を行うことによって、沈降速度をわずか数倍ではなく、実質的に数桁、すなわち1000~10000倍増加させることができることを見出した。例えば、E.コリ(E.coli)発酵ブロスの沈降速度は、典型的には、通常の重力では0.002~0.01mm/hの範囲であり、これが前処理によって最大50mm/hまで加速され得ることがわかった。特定の実施態様では、pH調整、希釈及び加熱いずれか1つ、2つ又は3つを前処理として実施することができる。
【0036】
また、前処理により、上清中の細胞断片、ポリヌクレオチド、タンパク質又は他のバイオポリマーなどの生体分子含有量を最小限にするか又は排除することができ、OD600によって推定され得る残留懸濁固体を最小限にすることができ、単一の遠心分離工程直後の上清における目的の溶解有機化合物、例えばHMO生成物の収率を高めることができる。
【0037】
さらに、遠心分離は、バイオマス除去工程として限外ろ過に取って代わるか、又は限外ろ過処理量を実質的に増加させて、全体的なプロセスをより経済的且つ効率的にすることができる。
【0038】
加えて、高い生成物収率、低い残留懸濁固体、及び低いタンパク質含量などの製造プロセスの他のパラメーターもまた、実質的に改善される。これらの驚くべき結果は、沈降速度に影響を及ぼす全ての物理的パラメーターを同時変化させることによって、以下のとおり、ある程度説明することができる;希釈は培地の密度を低下させ、粘度を低下させる;pH調整は粒子の表面電荷を低下させ、それらの自己凝集を促進することができる;さらなる熱処理は特に低pHで、高ブロス粘度に大きく寄与するタンパク質及びDNAなどの生体分子を変性させ、沈殿させることができる。また、pH及び熱処理によるアンフォールディング後のこれらの荷電バイオポリマーは、肉眼で明らかな粒子拡大を誘導する内因性凝集剤として働くことができる。
【0039】
したがって、本開示の実施形態は、処理量を実質的に加速することができ、それによって、工業用バイオマス除去プロセスを経済的に実現可能にする。
【0040】
[バイオマスを含有する懸濁液]
開示された方法論は、一般に、懸濁液と併せて使用することができる。懸濁液は、固相又は固形成分が液相中に分布している不均一な固液混合物又は固液混合系である。液相は、有利には、水を含む(すなわち、水性懸濁液)。水性懸濁液において、固相又は固形成分は、バイオマス(無傷の細胞、破壊された細胞、細胞断片、タンパク質、タンパク質断片、多糖類などのような、発酵細胞に由来する懸濁、沈殿又は不溶性物質)、又は酵素反応混合物中で部分的に又は完全に変性及び/又は沈殿し得るタンパク質であり得る。好ましくは、懸濁液の液相は、発酵プロセスの産物(部分的に分泌された二次代謝産物として)、又はインビトロ酵素反応の産物である溶解した有機分子を含有する。
【0041】
特定の懸濁液は、溶解した有機分子としてのHMOと併せて本明細書で論ずることができる。例えば、懸濁液は、発酵ブロスであり得る。したがって、バイオマスは、細菌又は真菌の細胞に由来するバイオマスであり得る。
【0042】
有利には、細菌発酵ブロス内の細菌として改変された大腸菌を使用することにより、以下に論じるようなHMOを産生することができる。例えば、HMOを産生することができる遺伝子改変E.コリ(E.coli)により懸濁液を産生することができる。
【0043】
好ましくは、HMOが生成された反応環境は、発酵ブロスである。この発酵ブロスは、典型的には、その生成のために適切に設計されている遺伝子改変微生物、好ましくはE.コリ(E.coli)が生成する主要化合物としての目的のHMOの他に、炭水化物副生成物又は夾雑物、例えば前駆体、典型的にはラクトース、好ましくは外部から添加されたラクトースから目的のHMOを生合成する経路における炭水化物中間体、及び/又は生合成経路中での不完全な、欠陥のある若しくは不十分なグリコシル化の結果としてのもの、及び/又は培養条件下若しくは発酵後操作下での再構成若しくは分解の結果としてのもの、及び/又は発酵中に過剰に添加された未消費遊離体を含有する。さらに、発酵ブロスは、細胞、タンパク質、タンパク質断片、DNA、カラメル化副生成物、ミネラル、塩、有機酸、エンドトキシン並びに/又は他の荷電分子及び代謝産物を含有し得る。
【0044】
ブロスは、そのDNA配列中に少なくとも1つの改変を含むように遺伝子操作されている微生物の細胞、例えば細菌細胞又は真菌細胞、例えばE.コリ(E.coli)細胞を含み得る。細菌は、野生型細胞の本来の特性に変化をもたらし得る遺伝子改変を受ける可能性があり、例えば、改変細胞は、野生型細胞中に存在しない酵素の発現をコードする新規の遺伝物質の導入に起因して追加の化学的変換を実施し得る、又は遺伝子の除去(ノックアウト)に起因して分解のような変換を実行し得ない。遺伝子改変細胞は、当業者によく知られた遺伝子操作技術により従来の方法で製造し得る。
【0045】
さらに、微生物発酵は、内在化した炭水化物前駆体からHMOを生成することができ、好ましくは、活性化糖ヌクレオチドのグリコシル残基を、内在化したアクセプター分子に転移し得、且つ前記中性HMOの合成、前記グリコシルトランスフェラーゼにより炭水化物前駆体(アクセプター)に転移されるのに適した対応する活性化糖ヌクレオチドドナーを生成するための生合成経路、及び炭水化物前駆体(アクセプター)の培養培地から細胞(目的の中性HMOを生成するためにこのアクセプターがグリコシル化される)中への内在化の機構に必要な1種又は複数のグリコシルトランスフェラーゼ酵素をコードする1種又は複数の内在性遺伝子又は組換え遺伝子を含むように遺伝子操作されている(上記を参照)微生物、例えば細菌又は真菌(例えば酵母)、好ましくは細菌、より好ましくはE.コリ(E.coli)の細胞を意味する。このグリコシルトランスフェラーゼは、β-1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、β-1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ、α-1,2-フコシルトランスフェラーゼ、α-1,3-フコシルトランスフェラーゼα-1,4 フコシルトランスフェラーゼα-2,3 シアリルトランスフェラーゼ、α-2,6 シアリルトランスフェラーゼから選択される。対応する活性化糖ヌクレオチドは、UDP-Gal、UDP-GlcNAc、GDP-Fuc及びCMP-シアル酸である。
【0046】
発酵ブロスの発酵中に、バイオマスが生成される。バイオマスは、発酵細胞、例えば、インタクトな細胞、破壊された細胞、細胞断片、タンパク質、タンパク質断片、多糖に由来する懸濁物質、沈殿物質又は不溶性物質を指す。懸濁液(ブロス)からバイオマスを除去するために、特に精製HMOを生成するために、本明細書に記載されるように、いくつかのプロセスをとることができる。
【0047】
[前処理]
1つ以上の例示的な方法は、懸濁液、例えば本明細書に記載される懸濁液の前処理を可能にし得る。しかしながら、前処理は他の懸濁液にも同様に使用することができ、本明細書に詳細に記載されているものに限定すべきではない。
【0048】
以下でさらに詳細に説明するように、懸濁液の前処理は、pH調整、及び/又は希釈、及び/又は熱処理を含むことができる。特定の実施態様では、pH調整、希釈、及び熱処理の3つ全てを行うことができる。代替の実施形態では、pH調整及び希釈を行うことができる。代替の実施形態では、pH調整及び熱処理を行うことができる。代替の実施形態では、熱処理及び希釈を行うことができる。
【0049】
有利には、複数の前処理方法の組み合わせは、個々の前処理では見出されない高い相乗効果を提供することができる。
【0050】
全ての前処理は、遠心分離の前に、又はHMOの分離の前に、前処理された懸濁液に対し行うことができる。特定の実施形態では、1つ又は複数の前処理工程は、遠心分離中に行われ得る。例えば、多段遠心分離の段階の間に。或いは、遠心分離中に遠心分離容器が懸濁液を加熱することができる。
【0051】
有利には、前処理は、懸濁液(ブロス)中の固体粒子(バイオマス)の沈降速度を100~20000倍増加させることができ、遠心分離によるバイオマス分離の効率を大きく上昇させ、そのため、工業規模での適用を可能にする。沈降速度に加えて、少なくとも次の3つの他のパラメーターが、前処理により実質的に改善される:
1)液相(上清)中に溶解した有機化合物の収率が、単回遠心分離後、前処理なしでは約50~70%にすぎないのと比較して、>90%まで増加する;
2)上清中の蛋白質及びDNAの含量が約10倍減少する;
3)残留懸濁固形分もまた、低RCF=約3000gで3分間の遠心分離によって、OD600が<0.1、例えば、OD600が<0.05、例えば、OD600が約0.024にと、未処理ブロスの約10000g/10分でのOD600が>1であるのと比較して、実質的に減少する。
【0052】
[pH調整による前処理]
1つ以上の例示的な方法において、懸濁液(例えば、ブロス、発酵ブロス)のpHは、遠心分離前/遠心分離中に調製することができる。
【0053】
発酵ブロスを利用する多くの場合、懸濁液のpHは6~7の範囲である。例えば、pHは、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、又は6.9であり得る。しかしながら、他の懸濁液は、他の異なるpH、例えば、6未満及び7超で開始してもよい。懸濁液の特定の開始pHは限定的ではない。
【0054】
有利には、遠心分離の前に懸濁液のpHを低下させ、したがって酸性にすることにより、沈降速度、したがってプロセスの速度及び収率を改善することができる。さらに、pH調整が内因性凝集プロセスとして機能し得るので、凝集剤の使用を回避し得る。
【0055】
懸濁液のpHは、様々な方法で調整することができる。例えば、懸濁液に酸を導入して、pHを低下させることができる。酸は有機酸とし得る。他の実施形態では、酸は無機酸であり得る。
【0056】
使用できる酸の一例は、式HSOを有するような硫酸である。例えば、酸は、20%HSO溶液である。しかしながら、他の酸も同様に使用することができ、使用される特定の酸は限定的ではない。例えば、酸は、HSO、HCl、HPO、ギ酸、酢酸及びクエン酸の1種以上から選択することができる。これらの酸の各々は、単独で、又は任意の他の酸と組み合わせて使用することができる。
【0057】
pH調整により、懸濁液のpHを2~5、特に3~4に低下させることができる。例えば、pH調整前処理の後、懸濁液は、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9又は5.0のpHを有し得る。特定の実施態様では、pH調整前処理の後、懸濁液は2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8又は4.9を超えるpHを有し得る。いくつかの実施態様では、pH調整前処理の後、懸濁液は2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9又は5.0未満のpHを有し得る。
【0058】
一実施形態では、懸濁液のpHを酸性に調整した後、この前処理した懸濁液を、例えば、5~15℃に冷却し、遠心分離前に1~15日間保存する。
【0059】
有利には、懸濁液のpH調整は、粒子(例えば、バイオマスの粒子)の表面電荷を減少させることができる。したがって、pH調整は、バイオマスの自己凝集を、したがって、遠心分離を促進することができる。
【0060】
1つ以上の例示的な方法において、pH調整は、単独で、希釈とともに、熱処理とともに、又は熱処理及び希釈の両方とともに実施することができる。
【0061】
[希釈による前処理]
本開示の方法の1つ以上の例示的な方法において、懸濁液(例えば、ブロス、発酵ブロス)は、遠心分離前/遠心分離中に希釈することができる。
【0062】
特定の実施形態では、懸濁液は、希釈懸濁液の質量が懸濁液の元の質量の1.1~10倍、好ましくは1.5~10倍、より好ましくは2~4倍、より好ましくは2.5~3.5倍となるように希釈することができる。例えば、懸濁液は、懸濁液の元の質量の1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5又は10.0倍に希釈し得る。いくつかの実施形態では、懸濁液は、懸濁液の元の質量の2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5又は10.0倍未満に希釈し得る。いくつかの実施形態では、懸濁液は、懸濁液の元の質量の1.5,2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0又は9.5倍超に希釈し得る。
【0063】
希釈は、好ましくは、水で行うことができる。水は、水道水、脱イオン水又は蒸留水であり得る。
【0064】
特定の実施態様では、希釈は、上清溶液の密度を低下させ、粘度を低下させることができる。希釈の別の利点は、上清中の利用可能なHMO産物の収率を増加させることである。例えば、希釈なしでは、発酵によって産生されたHMOの約50~70%のみが上清に行く。
【0065】
特定の実施態様では、希釈後、懸濁液は、約2~10、好ましくは2~8、より好ましくは2~4、より好ましくは2.5~3.5の希釈比を有し得る。希釈比は、懸濁液の最終体積(すなわち、希釈後)と懸濁液の初期体積(すなわち、希釈前)との間の比である。例えば、懸濁液は、懸濁液の元の質量の2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5又は10.0倍に希釈し得る。
【0066】
好ましくは、懸濁液は、特定のバイオ-ウエット-マス(BWM)を得るために希釈し得る。BWMは、遠心分離後の単離された湿潤固体ペレットと初期ブロス質量との比である。BWMを測定するために、試料を撹拌懸濁液から採取し、透明な上清が得られるまで(約10分)、約10000gの相対遠心力(RCF)で遠心分離する。上清をデカントし、固体湿潤ペレットの質量を秤量する。BWMは、懸濁液から採取した試料の重量に対する固体湿潤ペレットのパーセント比である。典型的な懸濁液は、上で開示した条件下での測定で、25~35%、又は50%まで様々であるBWMを有する。したがって、いくつかの実施形態では、懸濁液は、そのBWMが20、15、10又は5%未満、好ましくは約10~15%になるように希釈し得る(希釈後のBWMは希釈前と同じ条件で決定される)。より好ましくは、これは、約2.5~3.5の希釈比での希釈によって、又は希釈された懸濁液の質量が懸濁液の元の質量の2.5~3.5倍となるように希釈することによって達成される。いくつかの実施形態では、懸濁液は、元の懸濁液のBWMが30~90%減少するように、例えば、BWMが希釈前に測定された元のBMWの例えば2/3、1/2、1/3、1/5又は1/10に減少するように希釈し得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、希釈は2段遠心分離などの多段遠心分離中に行うことができる。例えば、第1の遠心分離の後であるが、第2の遠心分離の前に、水を添加し得る。
【0068】
1つ以上の例示的な方法において、希釈は、単独で、pH調整とともに、熱処理とともに、又は熱処理及びpH調整の両方とともに実施することができる。
【0069】
[熱処理による前処理]
1つ以上の例示的な方法において、遠心分離前/遠心分離中に懸濁液を熱処理(例えば、熱調節、温度処理、温度変化)することができる。
【0070】
本開示の特定の実施形態では、懸濁液は、懸濁液を20~120℃、好ましくは45~120℃、好ましくは60~90℃、より好ましくは60~80℃の温度まで加熱することによって前処理することができる。例えば、懸濁液は、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115又は120℃の温度に加熱され得る。いくつかの実施形態では、懸濁液は、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115又は120℃を超える温度に加熱され得る。いくつかの実施形態では、懸濁液は、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115又は120℃未満の温度に加熱され得る。
【0071】
熱処理は、オーブン、バーナー、水浴、油浴、加熱マントル又は他の加熱システムを使用するなど、知られた方法によって行うことができる。好ましくは、熱処理は、工業用ヒータを用い、以下の熱伝達法の1つ又は組み合わせを使用して行われる:伝導、対流、輻射。そのようなヒータは、例えば、循環ヒータ、ダクトヒータ、浸漬ヒータ、蒸気による加熱、又は加熱マントルによる加熱であり得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、懸濁液を特定の時間、熱処理温度に保持することができる。例えば、懸濁液を、1、2、3、4、5、10、15、20、25又は30分間、上記の加熱温度のいずれかで保持することができる。いくつかの実施形態では、懸濁液を、1、2、3、4、5、10、15、20、25又は30分を超える時間、上記の加熱温度のいずれかで保持することができる。いくつかの実施形態では、懸濁液を、2、3、4、5、10、15、20、25又は30分未満の時間、上記の加熱温度のいずれかで保持することができる。
【0073】
特定の実施形態では、懸濁液を、上記の温度のいずれかに直接加熱することによって前処理される。他の実施態様では、懸濁液は段階的加熱を含むことができ、懸濁液を第1の温度に第1の時間加熱することができる。次いで、懸濁液を第2の温度に第2の時間加熱することができる。第1の温度は、第2の温度よりも低くすることができる。第1の温度は、第2の温度よりも高くすることができる(例えば、加熱の代わりに冷却する)。第1の時間は、第2の時間よりも長くすることができる。第1の時間は、第2の時間よりも短くすることができる。第1の温度は、上述した温度のいずれかとすることができる。第2の温度は、上述した温度のいずれかとすることができる。第1の時間は、上述した時間のいずれかとすることができる。第2の時間は、上述した時間のいずれかとすることができる。
【0074】
有利には、熱処理は、タンパク質及びDNAなどのバイオマスの一部を変性させることができる。さらに、熱処理は、タンパク質及びDNAなどの生体分子を沈殿させることができる。これは、初期の高いブロス粘度を低下させ、したがって、懸濁液(ブロス)中の固体粒子(バイオマス)の沈降速度を増加させることに寄与し、遠心分離によるバイオマス分離の効率をはるかに高めることができる。
【0075】
1つ以上の例示的な方法において、熱処理は、単独で、希釈とともに、pH調整とともに、又はpH調整及び希釈の両方とともに実施することができる。
【0076】
[pH調整及び希釈による前処理]
1つ以上の例示的な方法では、懸濁液のpH調整と希釈の両方を行うことができる。2つの方法を組み合わせることにより、より透明な上清と遠心分離の容易さとを可能にする相乗効果が得られ得る。例えば、pH調整は表面電荷を減少させることができ、希釈と組み合わせた場合、より良好なHMO収率が得られるであろう。
【0077】
1つ以上の例示的な方法では、懸濁液のpH調整を、上で詳細に記載されているように、最初に行うことができる。pHが所望どおりに調整されたところで、懸濁液を、上で詳細に記載されているように、所望のレベルに希釈し得る。希釈がpHに影響を及ぼす場合、適切なpHを維持するために、pHを再度、平衡化し得る。
【0078】
1つ以上の例示的な方法では、懸濁液の希釈を、先に詳述したように、最初に行うことができる。懸濁液が所望のレベルに希釈されたところで、次に、懸濁液のpH調整を行うことができる。したがって、最終希釈懸濁液は、懸濁液の体積が大きいため、単独のpH調整と比較して、より多くの酸の使用を必要する可能性のあるpH調整を受ける可能性がある。
【0079】
1つ以上の例示的な方法では、希釈とpH調整を同時に行うことができる(例えば、一般的には同時に)。例えば、水を懸濁液に添加し、これが行われている間に酸もまた添加することができる。或いは、最初に酸を添加し、ほぼ同時に水を添加することができる。1つ以上の例示的な方法では、pH調整及び希釈を繰り返し工程で行うことができる。例えば、いくらかの酸を添加し、次いでいくらかの水を添加し、これを所望のpH及び希釈が達成されるまで繰り返すことができる。
【0080】
pH調整及び希釈の両方を、遠心分離前又は遠心分離中に行うことができる。
【0081】
[pH調整及び加熱による前処理]
1つ以上の例示的な方法では、懸濁液のpH調整と加熱の両方を行うことができる。2つの方法を組み合わせることにより、より透明な上清と遠心分離の容易さとを可能にする相乗効果が得られ得る。例えば、pH調整は表面電荷を減少させることができ、加熱の変性と組み合わせた場合、より良好なHMO収率を達成することができる。
【0082】
1つ以上の例示的な方法では、懸濁液のpH調整を、上で詳細に記載されているように、最初に行うことができる。pHが所望どおりに調整されたところで、懸濁液を、上で詳細に記載されているように、所望の温度に加熱し得る。加熱がpHに影響を及ぼす場合、適切な希釈を維持するために、pHを再度、平衡化し得る。
【0083】
1つ以上の例示的な方法では、懸濁液の加熱を、先に詳述したように、最初に行うことができる。懸濁液が所望の温度に加熱されたところで、次に、懸濁液のpH調整を行うことができる。熱処理との組み合わせで必要となる酸の量は、単独のpH調整に基づいて変化し得る。
【0084】
1つ以上の例示的な方法では、加熱とpH調整を同時に行うことができる(例えば、一般的には同時に)。例えば、懸濁液を含有する容器を、上述した方法の1つ以上において、加熱し得る。容器が加熱されている間に、懸濁液のpHを調整するために、懸濁液に酸を添加し得る。
【0085】
pH調整及び希釈の両方を、遠心分離前又は遠心分離中に行うことができる。
【0086】
[希釈及び加熱による前処理]
1つ以上の例示的な方法では、懸濁液の希釈及び加熱の両方を行うことができる。2つの方法を組み合わせることにより、より透明な上清と遠心分離の容易さとを可能にする相乗効果が得られ得る。例えば、加熱によって達成されるタンパク質の変性は希釈液からの分離をより容易なものし得、これにより、より良好なHMO収率がもたらされ得る。
【0087】
1つ以上の例示的な方法では、懸濁液の希釈を、上で詳細に記載されているように、最初に行うことができる。懸濁液が希釈されたところで、懸濁液を、上で詳細に記載されているように、所望の温度に加熱し得る。蒸発による材料の損失など、加熱が希釈に影響を及ぼす場合、適切な希釈を維持するために、さらに水を添加することができる。
【0088】
1つ以上の例示的な方法では、懸濁液の加熱を、先に詳述したように、最初に行うことができる。懸濁液が所望の温度に加熱されたところで、水を懸濁液に添加することができる。水は、加熱された懸濁液と同じ温度であっても、より低い温度又はより高い温度であってもよい。
【0089】
1つ以上の例示的な方法では、加熱と希釈を同時に行うことができる(例えば、一般的には同時に)。例えば、懸濁液を含有する容器を、上述した方法の1つ以上において、加熱し得る。容器が加熱されている間に、懸濁液の希釈を調整するために、懸濁液に水を添加し得る。或いは、冷懸濁液に添加した後に、希釈懸濁液の目標温度よりも高い温度に予め加熱した熱水を添加することによって、希釈と加熱を同時に行うことができる。
【0090】
加熱及び希釈の両方を、遠心分離前又は遠心分離中に行うことができる。
【0091】
[加熱、pH調整及び希釈による前処理]
1つ以上の例示的な方法では、懸濁液の希釈、加熱、及びpH調整の3つ全ての前処理を行うことができる。3つの方法を組み合わせることにより、より透明な上清と遠心分離の容易さとを可能にする相乗効果が得られ得る。したがって、より速い時間でより高い収率を達成することができる。3つの前処理の組み合わせは、全ての前処理を個別に追加するよりも大きな影響を与えることができる。
【0092】
1つ以上の例示的な方法では、懸濁液のpH調整を、上で詳細に記載されているように、最初に行うことができる。pHが所望どおりに調整されところで、懸濁液を、上で詳細に記載されているように、所望のレベルに希釈し得る。希釈がpHに影響を及ぼす場合、適切なpHを維持するために、pHを再度、平衡化し得る。希釈が行われたところで、懸濁液を、上で詳細に記載されているように、所望の温度に加熱し得る。加熱がpH及び/又は希釈に影響を及ぼす場合、適切なpHレベル及び/又は希釈レベルを維持するために、pH及び/又は希釈を再平衡化し得る。
【0093】
1つ以上の例示的な方法では、懸濁液のpH調整を、上で詳細に記載されているように、最初に行うことができる。pH調整が行われたところで、懸濁液を所望の温度に加熱し得る。加熱がpHに影響を及ぼす場合、適切なpHレベルを維持するために、pHを再度、平衡化し得る。加熱が行われたところで、懸濁液を所望のレベルに希釈し得る。希釈がpHに影響を及ぼす場合、適切なpHを維持するために、pHを再度、平衡化し得る。水(例えば、希釈用)は、加熱された懸濁液と同じ温度であっても、より低い温度又はより高い温度であってもよい。
【0094】
1つ以上の例示的な方法では、懸濁液の加熱を、先に詳述したように、最初に行うことができる。懸濁液が所望の温度に加熱されたところで、次に、懸濁液のpH調整を行うことができる。熱処理との組み合わせで必要となる酸の量は、単独のpH調整に基づいて変化し得る。加熱及びpH調整が行われたところで、懸濁液をさらに希釈し得る。水は、加熱された懸濁液と同じ温度であっても、より低い温度又はより高い温度であってもよい。希釈後に必要であれば、pHを所望のレベルにさらに調整することができる。
【0095】
1つ以上の例示的な方法では、懸濁液の加熱を、先に詳述したように、最初に行うことができる。懸濁液が所望の温度に加熱されたところで、次に、懸濁液の希釈を行うことができる。水は、加熱された懸濁液と同じ温度であってもよく、より低い温度又はより高い温度であってもよい。加熱及び希釈が行われたところで、懸濁液のpH調整を行うことができる。熱処理及び希釈との組み合わせで必要となる酸の量は、単独のpH調整に基づいて変化し得る。
【0096】
1つ以上の例示的な方法では、懸濁液の希釈を、上で詳細に記載されているように、最初に行うことができる。懸濁液が希釈されたところで、懸濁液を所望の温度に加熱し得る。蒸発による材料の損失など、加熱が希釈に影響を及ぼす場合、適切な希釈を維持するために、さらに水を添加することができる。加熱後、懸濁液のpH調整を行うことができる。熱処理及び希釈との組み合わせで必要となる酸の量は、単独のpH調整に基づいて変化し得る。
【0097】
1つ以上の例示的な方法では、懸濁液の希釈を、上で詳細に記載されているように、最初に行うことができる。希釈されたとろで、懸濁液のpH調整を行うことができる。熱希釈との組み合わせで必要となる酸の量は、単独のpH調整に基づいて変化し得る。pH調整後、懸濁液を加熱し得る。pH及び希釈レベルを維持するために、加熱中に懸濁液を調整することができる。
【0098】
1つ以上の例示的な方法では、加熱と希釈を同時に行うことができる(例えば、一般的には同時に)。例えば、懸濁液を含有する容器を、上述した方法の1つ以上において、加熱し得る。容器が加熱されている間に、懸濁液の希釈を調整するために、懸濁液に水を添加し得る。加熱及び希釈後、懸濁液のpHを調整することができる。或いは、加熱及び希釈を同時に行う前に懸濁液のpHを調整することができる。
【0099】
1つ以上の例示的な方法では、加熱とpH調整を同時に行うことができる(例えば、一般的には同時に)。例えば、懸濁液を含有する容器を、上述した方法の1つ以上において、加熱し得る。容器が加熱されている間に、懸濁液のpHを調整するために、懸濁液に酸を添加し得る。加熱及びpH調整後、懸濁液を希釈し得る。或いは、加熱及びpH調整を同時に行う前に懸濁液を希釈し得る。
【0100】
1つ以上の例示的な方法では、希釈とpH調整を同時に行うことができる(例えば、一般的には同時に)。例えば、水を懸濁液に添加し、これが行われている間に酸もまた添加することができる。或いは、最初に酸を添加し、ほぼ同時に水を添加することができる。1つ以上の例示的な方法では、pH調整及び希釈を繰り返し工程で行うことができる。例えば、いくらかの酸を添加し、次いでいくらかの水を添加し、これを所望のpH及び希釈が達成されるまで繰り返すことができる。希釈及びpH調整後、次に、懸濁液を加熱することができる。或いは、希釈及びpH調整を同時に行う前に懸濁液を加熱することができる。
【0101】
1つ以上の例示的な方法では、希釈、pH調整及び加熱を同時に行うことができる(例えば、一般的には同時に)。このように、3つの前処理の全てを同時に行うことができる。
【0102】
加熱、pH調整及び希釈は、遠心分離前又は遠心分離中に行うことができる。
【0103】
[遠心分離]
上記の前処理のいずれか又は全てを行った後、懸濁液からバイオマスを分離する必要がある。このような方法1つが遠心分離であり、これは、かなりの時間を要する限外ろ過などの他のプロセスに勝る利点を有し得る。遠心分離は、実験室規模、又は以前の遠心分離法よりも有利には、商業規模(例えば、工業規模、フル生産規模)であり得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、多段遠心分離を使用することができる。例えば、一連の2、3、4、5、6、7、8、9又は10回の遠心分離工程を行うことができる。他の実施態様では、遠心分離は単一の工程であってもよい。
【0105】
遠心分離は、長い定置洗浄(CIP)手順、高価なセラミック膜の必要性、及び高サイズ/高フットプリント面積を伴う、実験室規模及びフル生産規模の両方での長い限外ろ過と比較して、迅速なバイオマス除去を提供する。
【0106】
次いで、バイオマス分離は、限外ろ過と比較してより効率的で且つ経済的な方法によって達成される。工業的連続限外ろ過による現在のバイオマス除去は、透過液の流量が少なく、長い滞留時間(>1時間)を必要とし、装置の高フットプリント面積に関連する高膜面積、強力なクロスフローポンプによる高いエネルギー消費を有し、性能はブロス依存性で、時に予測不可能であり、24時間以下の操作毎に長いCIP(5時間)を必要とし、UFユニット及びセラミック膜の両方について非常に高いCapExを有し、且つ大きいサイズ/フットプリントを有する。
【0107】
特定の実施形態では、Flottwegによって設計され製造されたSedicanter(登録商標)遠心分離機を使用することができる。
【0108】
特定のタイプの遠心分離機は限定的ではなく、多くのタイプの遠心分離機を使用することができる。遠心分離は、連続プロセスであり得る。いくつかの実施形態では、遠心分離は供給添加を有し得る。例えば、遠心分離は連続供給添加を有し得る。特定の実施形態では、遠心分離は湿式固体除去などの固体除去を含み得る。湿式固体除去はいくつかの実施態様では連続的であり、他の実施態様では断続的であり得る。
【0109】
例えば、円錐プレート遠心分離機(例えば、ディスクボウル遠心分離機又はディスクスタック分離機)を使用することができる。円錐プレート遠心分離機は液体から固体(通常は不純物)を除去するために、又は高い遠心力によって2つの液相を互いに分離するために使用することができる。これらの力を受けた、高密度の固体又は液体は回転ボウルの壁に向かって外側に移動し、一方、低密度の流体は、中心に向かって移動する。特殊プレート(ディスクスタックとして知られる)は表面沈降面積を増加させ、これは分離プロセスの速度を速める。存在する供給材料のタイプに応じた異なるプロセスのために、様々なスタック設計、配置及び形状が使用される。次に、濃縮された高密度の固体又は液体は、円錐プレート遠心分離機の設計に依って、連続的に、手動で、又は断続的に除去され得る。この遠心分離機は、少量の浮遊固形物を含む液体を清澄化するのに非常に適している。
【0110】
遠心分離機は、傾斜プレートセッター原理によって作動する。粒子沈降の距離を減らすために、水平面に対して傾斜角θを持つ平行プレートのセットを設置する。傾斜角度は、プレート上に沈降した固体が遠心力によって滑り落ちようにするためであり、その結果、隣接するプレート間に形成されたチャネルに沈降した固体がたまってチャネルを詰まらせることがない。
【0111】
このタイプの遠心分離機は、ノズル式、手動洗浄、自己洗浄、密閉式など、様々な設計が可能である。特定の遠心分離機は限定的ではない。
【0112】
遠心分離機に影響を及ぼす要因としては、ディスク角度、G力の影響、ディスク間隔、供給固体、排出のためのコーン角度、排出頻度、及び液体排出が挙げられる。
【0113】
或いは、ソリッドボウル遠心分離機(例えば、デカンター遠心分離機)を使用することができる。これは、沈降の原理を使用する遠心分離機の一種である。遠心分離機を使用して、連続回転から生じる遠心力を使用することによって、異なる密度を有する2つの物質からなる混合物を分離する。これは、通常、固体-液体、液体-液体、及び固体-固体混合物を分離するために使用される。工業的使用のためのソリッドボウル遠心分離機の1つの利点は、他のタイプの遠心分離機と比較して設置が容易なことである。ソリッドボウル遠心分離機には、円錐形、円筒形、円錐-円筒形の3種類の設計タイプがある。
【0114】
ソリッドボウル遠心分離機は多くの異なる設計が可能であり、そのいずれも本開示の方法に使用することができる。例えば、円錐形ソリッドボウル遠心分離機、円筒形ソリッドボウル遠心分離機、及び円錐-円筒形ボウル遠心分離機を使用することができる。
【0115】
ヘリカルスクリューコンベヤの助けを借りて、ソリッドボウル遠心分離機は、高速回転下で形成される遠心力によって密度の異なる2つの物質を分離する。供給スラリーはコンベアに入り、排出ポートを通して回転するボウルに送られる。コンベアとボウルの回転にはわずかな速度差があり、固体は廃水が導入される静止ゾーンからボウル壁に搬送される。遠心力によって、収集された固体はボウル壁に沿って移動し、プールから出て、ボウルのテーパ付き端部に位置する脱水ビーチを上る。最後に、分離された固体は固体排出に行き、一方、液体は液体排出に行く。清澄化された液体は、調整可能なオーバーフロー部を通ってコンベアを逆方向に流れる。
【0116】
遠心分離は、多様な速度及び滞留時間で行うことができる。例えば、遠心分離は、20000g、15000g、10000g、又は5000gの相対遠心力(RCF)で行うことができる。いくつかの実施形態では、遠心分離は、20000g、15000g、10000g又は5000g未満の相対遠心力(RCF)で行うことができる。いくつかの実施形態では、遠心分離は、20000g、15000g、10000g又は5000gを超える相対遠心力(RCF)で行うことができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、遠心分離は作動容量によって特徴付けることができる。いくつかの実施形態では、作動容量は1、5、10、15、20、50、100、300又は500lであり得る。いくつかの実施形態では、作動容量は1、5、10、15、20、50、100、300又は500l未満であり得る。いくつかの実施形態では、作動容量は1、5、10、15、20、50、100、300又は500l超であり得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、遠心分離は供給流量によって特徴付けることができる。いくつかの実施形態では、供給流量は100、500、1000、1500、2000、5000、10000、20000、40000又は100000l/hrであり得る。いくつかの実施形態では、供給流量は100、500、1000、1500、2000、5000、10000、20000、40000又は100000l/hr超であり得る。いくつかの実施形態では、供給流量は100、500、1000、1500、2000、5000、10000、20000、40000又は100000l/hr未満であり得る。
【0119】
遠心分離に費やされる時間(例えば、滞留時間)も同様に変わり得る。例えば、滞留時間は、0.1、0.2、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10分であり得る。いくつかの実施形態では、滞留時間は0.1、0.2、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10分超であり得る。いくつかの実施形態では、滞留時間は0.1、0.2、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10分未満であり得る。
【0120】
[上清]
上記のプロセスは、改善された上清の形成を可能にし得る。例えば、上清は、HMOを含み得る一方、残りの物質を分離することができる。したがって、上清は透明な(例えば、清澄な、一般に透明な、ほとんど透明な)上清であり得る。残りの物質(上清の透明性の欠如を引き起こし得る)は、例えば、バイオマス、すなわち、細胞、細胞断片、小粒子、及び生体分子の1つ以上であり得る。生体分子は、例えば、タンパク質、RNA及びDNAであり得る。したがって、HMOが所望される場合、上清は、精製されたHMOを含有する清澄な上清であり得る。
【0121】
上清の透明度の例として、一般的な発酵ブロスは600nmでの光学密度(OD600)が非常に高く、純水の10倍超であり得る。OD600は、通常、分光光度計で測定され;OD600が多量の懸濁粒子のために1を超える場合、試料の希釈が必要であり得る(したがって、OD600値は希釈液に関して計算される)。しかし、上記のプロセス後は、OD600を、1.0、0.7、0.5、0.3、0.2、0.1又は0.05未満にすることができる(これは、希釈なしであるが、得られた上清を精密ろ過した試料に対して相対的に測定されている)。いくつかの実施形態では、OD600は、1.0、0.7、0.5、0.3、0.2、0.1又は0.05超になり得る。いくつかの実施形態では、OD600は、1.0、0.7、0.5、0.3、0.2、0.1又は0.05になり得る。OD600が0.1未満であると、懸濁粒子を視覚的に検出することができず、上清は透明な溶液のように見える。
【0122】
さらに、上清中のタンパク質も同様に減少させることができ、さらなる透明性をもたらす。遠心分離後の上清中のタンパク質は、3000、2500、2000、1500、1000、500、400、300、200、100又は50mg/l未満であり得る。いくつかの実施形態では、遠心分離後の上清中のタンパク質は、3000、2500、2000、1500、1000、500、400、300、200、100又は50mg/l超であり得る。いくつかの実施形態では、遠心分離後の上清中のタンパク質は、3000、2500、2000、1500、1000、500、400、300、200、100又は50mg/lであり得る。
【0123】
さらに、本開示の方法の実施形態は、有利には、以前の方法と比較してより高い生成物収率を提供することができる。清澄化された上清は、50、55、60、65、70、75、80、85、90又は95%の生成物収率を有し得る。清澄化された上清は、50、55、60、65、70、75、80、85、90又は95%超の生成物収率を有し得る。清澄化された上清は、50、55、60、65、70、75、80、85、90又は95%未満の生成物収率を有し得る。
【0124】
上記の上清のいずれの特性も、単一工程の遠心分離によって得られ得る。或いは、複数工程の遠心分離によって得られ得る。
【0125】
[精製の後処理]
上記の上清を生成した後、さらなる後処理工程を行うことができる。これは、例えば、上清からHMO又は他の生成物を単離する(例えば、得る)ために行うことができる。多くの様々な方法を以下に記載する。本方法は、開示された後処理工程のいずれか1つを含むことができることは理解されるであろう。代替の実施形態では、方法は、開示された後処理工程のうちの2つ以上を、工程の任意の構成で含むことができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、後処理方法は、清澄化した上清の限外ろ過(UF)又は精密ろ過(MF)を含むことができる。例えば、ろ過は、細孔径が2μm未満2nm超、及び/又はMWCOが1000Da超若しくは10000Da以上を有する膜を使用することができる。細孔径又はカットオフは、生成物が膜の細孔を十分に通過し得るだけの大きさでなければならない。任意選択により、HMOを透過流中に収集する透析ろ過をさらに行うことができる。
【0127】
限外ろ過は、遠心分離後のバイオマスの残りの部分を分離するためである。このUF透過液(UFP)は、生成されたHMOを含有する水溶液である。UF(又はMF)膜は、高分子材料又は非高分子材料から構成され得る。好ましくは、UF膜が非高分子材料、より好ましくはセラミック材料から構成される。この非高分子UF膜は、UFを高温で実行する場合、この温度に対して耐性を示す。
【0128】
また、非高分子膜、有利にはセラミック膜の適用可能なフラックスは、通常、MWCOが同一であるか又は類似する高分子UF膜の場合と比べて高く、加えて、非高分子膜、有利にはセラミック膜は、ファウリング又は詰まりを起こし難い。工業用途では、UF膜の再生は、コスト及び技術的に重要な要素である。非高分子膜、有利にはセラミック膜は、懸濁固形分が多い発酵流を限外ろ過する場合に必要であり得る厳しい定置洗浄(CIP)条件、例えば高温での苛性/強酸処理(高分子膜には適用不能)を使用することを可能にする。さらに、非高分子膜、有利にはセラミック膜は、高いクロスフローで循環する固体粒子に対する不活性及び耐摩耗性のために寿命がより長い。
【0129】
分子量カットオフ(MWCO)範囲が約1~約1000kDa、例えば、約1~10、10~1000,5~250、5~500、5~750、50~250、50~500、50~750、100~250、100~500、100~750、250~500、250~750、500~750kDa又は任意の他の好適な部分範囲である任意の従来の限外ろ過膜、有利にはセラミック膜を使用し得る。
【0130】
UFは、低温(約5℃~rt)、約室温又は高温で、好ましくは高温で行われ得る。高温は、好ましくは、約80℃を超えず、好適な温度範囲は、例えば、約35~50、35~80、45~65、50~65、55~65又は60~80℃であり得る。UF工程を高温で行うことにより、反応環境中の生存微生物の総数(総微生物数)が大きく減少し、そのため、本方法の後段での滅菌ろ過工程が不要となり得る。さらに、より効果的な変性及び沈殿のために、可溶性タンパク質の量が減少し、これによりイオン交換処理工程(後の任意選択による工程)で残存するタンパク質を除去する効果が高まる。
【0131】
限外ろ過工程は、デッドエンドモード又はクロスフローモードで適用し得る。さらに一実施形態では、限外ろ過を透析ろ過と組み合わせることができる。
【0132】
いくつかの実施形態において、後処理方法は、ナノろ過(NF)を含むことができる。これは、例えば、MWCOが100~3500Da又は膜細孔径が0.5~2nmである膜を用いて行うことができる。HMOの大部分が保持液中に保持され、それによって少なくとも水及び好ましくは他の小分子が膜を通過することを可能にする、任意選択の透析ろ過があり得る。小分子には、単糖類、二糖類、小細菌代謝産物、及び塩が含まれ得る。
【0133】
好ましくは、NF工程が遠心分離の直後に続く。すなわち、NF工程の供給物は遠心分離後に得られた目的のHMOを含有する上清である。任意選択的に、この上清は、NF工程を行う前に、活性炭(下記を参照されたい)を使用して脱色することができる。有利には、このナノろ過工程を使用して、上清を濃縮し、且つ/又はイオン、主に一価のイオン、及び中性HMOと比べて分子量が小さい有機物、例えば単糖及び二糖を除去し得る。ナノろ過の第1の態様では、NF膜のMWCOは、目的のHMOの分子量の約25~50%、典型的には約150~500Daである。これに関して、目的の中性HMOは、NF保持液(NFR)中に蓄積される。ナノろ過を、水による透析ろ過と組み合わせて、一価イオンなどの透過性塩をより効果的に除去するか、又はこの塩の量をより効果的に減少させることができる。有利にはより多くのラクトースを含有する上清に適用可能なナノろ過の第2の態様においては、膜は、三糖以上の中性HMOの保持を保証し、ラクトースの少なくとも一部が膜を通過することを可能にする600~3500DaのMWCOを有し、ここで、膜の活性層(最上層)はポリアミドから構成され、前記膜のMgSOリジェクションファクターは、0.3m/s超の十分なクロスフロー、水中のMgSO濃度が約0.2M濃度でのTMPが7~10bar、及び約20~25℃の温度下での測定で約20~90%、好ましくは50~90%である。この第2の態様に好適なナノろ過膜の活性層又は最上層は、好ましくはポリアミドで作られ、さらに好ましくは膜は薄膜複合(TFC)膜である。好適なピペラジン系ポリアミドTFC膜の一例は、TriSep(登録商標)UA60である。
【0134】
NF工程は、透過液側と比較して正圧を有する接線流又はクロスフローろ過による従来のナノろ過に使用される条件下で行うことができ、その後、透析ろ過が行われる(両操作はバッチモード又は好ましくは多段連続モードで実施することが可能である)。バッチモードでは、任意選択的な透析ろ過を、上記で開示されているナノろ過工程後の保持液に純水を添加し、ナノろ過と同一又は類似の条件下での透過液の持続的除去によるろ過プロセスを継続することにより行う。水添加の好ましい様式は、連続であり、すなわち、添加の流量は、透過液の流量とほぼ一致している。NFはバッチモードで実施することが可能であり、このモードでは、保持液流は、供給タンクに戻されてリサイクルされ、この供給タンクに精製水又は脱イオン水を連続的に添加することにより透析ろ過(DF)を行う。最も好ましくは、特定の量の透過液を除去することによって少なくとも数回の前濃縮を行った後に、DF水を添加する。DFの開始前の濃縮係数が高いほど、良好なDF効果が達成される。DFの完了後、余分な量の透過液を除去することにより、さらなる濃縮を達成することが可能である。或いは、NFは、連続モード、好ましくはマルチループシステムで実施することが可能であり、このシステムでは、保持液は、各ループから次のループに移される。この場合、DF水は、各ループでの透過液の流量と同じか又はより少ない流量で各ループに別々に添加することが可能である。バッチモードのDFと同様に、DFの効果を高めるためには、より高い濃縮係数を達成するために、例えば最初のループに添加する水の量を少なくするか、又は水を添加しない。マルチループシステムでの水の分配、並びに他のプロセスパラメーター、例えば膜貫通圧、温度及びクロスフローは、日常的に最適化する。
【0135】
NF工程に適用される好都合な温度範囲は、約10~約80℃である。より高い温度は、より高いフラックスをもたらし、そのため、プロセスが加速される。膜は、より高い温度でフロースルーに対してより開放的であることが予想されるが、これにより分離係数が大きく変化することはない。本発明に係るナノろ過分離を行うための好ましい温度範囲は、約15~45℃、例えば20~45℃である。
【0136】
ナノろ過分離での好ましい印加圧力は、約2~50bar、例えば約10~40barである。一般的に、圧力が高いほどフラックスが高い。
【0137】
特定の実施形態では、本発明の方法は、好ましくは活性炭処理(下記を参照されたい)、及び/又はイオン交換処理(下記を参照されたい)、及び/又は中性固定相でのクロマトグラフィー(下記を参照されたい)に続いて、追加の(1工程以上の)NF工程を含み得、その主な目的は、目的の中性HMOを含有する水溶液を濃縮することである。
【0138】
いくつかの実施形態では、後処理方法は、活性炭による清澄化された上清の脱色を完全にすることを含むことができる。いくつかの反復では、HMOに対する木炭の量は、100重量%未満、好ましくは10重量%未満である。これによって、残留生体分子、着色化合物、及び他の疎水性分子を保持しながら、HMOの大部分を通過させることができる。
【0139】
この任意選択的な活性炭処理は、遠心分離、NF工程又はイオン交換処理工程のいずれかに後続し得る。この活性炭処理は、必要に応じて着色剤を除去し、且つ/又は他の水溶性夾雑物、例えば疎水性の高い若しくは極性の低い代謝産物などを減少させるのに役立つ。さらに、この活性炭処理により、それ以前の工程後に付随的に残存していることがある残存する又は微量のタンパク質、DNA、RNA又はエンドトキシンが除去される。
【0140】
目的のHMOのような炭水化物物質は、その水溶液から活性炭粒子の表面に結合する傾向がある。同様に、着色剤も活性炭に吸着し得る。これらの炭水化物及び着色物質は吸着されるが、活性炭に結合していないか又は弱く結合している水溶性物質は、水で溶出され得る。溶出液を水から水性アルコール、例えばメタノール、エタノール又はイソプロパノールに変更することにより、吸着したHMOは容易に溶出し、別の画分に回収することができる。吸着した着色物質は、依然として活性炭に吸着したままであり、そのため、この任意選択工程で脱色及び部分的な脱塩の両方を同時に達成することができる。しかしながら、溶出溶媒中に有機溶媒(エタノール)が存在しているため、脱色の効果は、溶出が純水により行われる場合と比較して低い。特定の条件下では、HMOは、活性炭粒子に吸着しないか、又は少なくとも実質的に吸着せず、水による溶出により、HMOの水溶液がその量をさほど失うことなく得られ、一方、着色物質は吸着したままである。この場合、溶出のためにエタノールなどの有機溶媒を使用する必要はない。HMOがその水溶液から活性炭に結合するであろう条件を決定することは、通常の技能の問題である。例えば、一実施形態では、HMOの量と比較して、より希釈されたHMOの溶液又はより多い量の活性炭が使用され、別の実施形態では、HMOの量と比較して、より濃縮されたHMOの溶液及びより少ない量の活性炭が適用される。活性炭処理は、撹拌下でHMOの水溶液に活性炭粉末を添加し、活性炭をろ別し、撹拌下で水性エタノールに再懸濁させ、ろ過により活性炭を分離することにより行うことができる。より大規模の精製では、HMOの水溶液を、好ましくは、セライトと任意選択的に混合され得る活性炭が充填されているカラムに負荷し、次いで、このカラムを必要な溶出液で洗浄する。HMOを含有する画分を回収する。溶出に使用した場合に残存するアルコールを、これらの画分から例えば蒸発により除去して、HMOの水溶液を得ることができる。好ましくは、使用される活性炭は、粒状である。これにより、高圧を印加することなく好都合な流量が確保される。また、好ましくは、活性炭処理、より好ましくは活性炭クロマトグラフィーは、高温で行われる。高温では、色体、残存タンパク質などの活性炭粒子への結合は、より短い接触時間で起こり、したがって、流量が好都合に上昇し得る。さらに、高温で活性炭処理を行うことにより、HMOの水溶液中の生存微生物の総数(総微生物数)が実質的に減少し、したがって、本方法の後の段階での滅菌ろ過工程を不要とし得る。高温は、少なくとも30~35℃、例えば少なくとも40℃、少なくとも50℃、約40~50℃又は約60℃である。また、好ましくは、適用する活性炭の量は、負荷物に含まれるHMOの約10重量%以下、より好ましくは約2~6重量%である。これは経済的であり、なぜなら、上記に開示した全ての利点を、非常に少ない量の活性炭で都合よく達成し得るからである。活性炭処理を、水溶液中の目的のHMOの量の約10重量%以下、好ましくは約2~6重量%の活性炭を用い、高温で行うことが特に好ましい。
【0141】
いくつかの実施形態では、後処理方法は濃縮を含むことができる。例えば、蒸発、真空蒸発、ナノろ過、逆浸透、又は正浸透のうちの1つ以上による。
【0142】
いくつかの実施形態では、後処理方法は脱塩を含むことができる。例えば、遠心分離した上清、又は上に開示された後処理後の遠心分離した上清を、H型陽イオン交換体、好ましくは強酸性陽イオン交換樹脂に通すことによる。この工程では、正に帯電した物質が樹脂に結合し、同時に交換体からプロトンが放出されることから、正に帯電した物質は供給溶液から除去され得る。HMOの溶液を、正に帯電した物質が陽イオン交換樹脂に結合し、HMOが通過することを可能にする任意の好適な方法で、陽イオン交換樹脂と接触させる。これに続いて、さらに酸吸着工程を行うことができる。例えば、弱塩基性樹脂に通すか又は添加する。樹脂は、好ましくは遊離塩基型で使用される。この工程では、前の工程で生成されたプロトンが樹脂の塩基性基によって捕捉され、陰イオンを引きつけ、したがって供給溶液から陰イオンが除去されることを可能にする。これはプロトン化された樹脂にアニオンが結合することによる。陰イオンが陰イオン交換樹脂に吸着され、HMOは通過し得るような任意の好適な方法で、HMOの水溶液を弱塩基性陰イオン交換樹脂と接触させる。全体として、塩だけでなく、色体、イオン化可能な基を含有する生体分子(例えばタンパク質、ペプチド、DNA及びエンドトキシン)、イオン化可能な官能基(例えば、生体アミン、アミノ酸などの代謝産物中のアミノ基)を含有する中性又は双性のイオン化合物を、樹脂による処理によってさらに除去することができる。いくつかの実施形態では、脱塩は、透析によって行われる。いくつかの実施形態では、脱塩は、中和透析によって行われる。
【0143】
いくつかの実施形態では、後処理方法は、HMOの滅菌ろ過を含むことができる。
【0144】
いくつかの実施形態では、後処理方法は、HMOの電気透析を含むことができる。
【0145】
いくつかの実施形態では、後処理方法は、中性固相上で中性HMOのクロマトグラフィー分離/精製を実施することを含むことができる。この任意選択の工程において、遠心分離した上清、又は上に開示された後処理後の遠心分離した上清に含まれる可溶性の疎水性不純物は、この水性媒体を中性固相上でのクロマトグラフィー、有利には逆相シリカ及び有機ポリマー、特にスチレン又はジビニルベンゼンとメタクリレートポリマーのコポリマーでの逆相クロマトグラフィーに供することによって除去することができる。一実施形態において、固相は、臭素官能化PS-DVB疎水性固定相である。
【0146】
いくつかの実施形態において、後処理方法は、固体HMO分離を含むことができる。例えば、結晶化による。或いは、水除去を固体HMO分離に使用することができる。例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥である。
【0147】
いくつかの実施形態では、後処理方法は、以下の分離/精製工程を任意の順序で含む:
a)任意選択の限外ろ過(UF)
b)ナノろ過(NF)、及び
c)イオン交換樹脂及び/又は中性固相でのクロマトグラフィーによる処理。
【0148】
いくつかの実施形態では、後処理方法は、電気透析を含まない。
【0149】
有利には、工程a)を工程b)の前に行う。より有利には、工程a)を工程b)及びc)のいずれかの前に行う。好ましくは、本方法を、工程a)後に工程b)が続き、且つ工程b)後に工程c)が続く順序で実施する。
【0150】
一実施形態では、後処理方法は、
遠心分離した上清のナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収と、
このNFRのイオン交換樹脂による処理及び樹脂溶出液(RE)の回収と、
このREのクロマトグラフィーと
を含む。
【0151】
別の実施形態では、後処理方法は、
遠心分離した上清のナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収と、
このNFRのクロマトグラフィー及びクロマトグラフィー溶出液(CE)の回収と、
このCEのイオン交換樹脂による処理と
を含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、後処理方法は、遠心分離、NF、クロマトグラフィー又はイオン交換樹脂処理後の活性炭処理を含み得る。
【0153】
一実施形態では、後処理方法は、
遠心分離した上清のナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収と、
このNFRの活性炭処理及び活性炭溶出液(CCE)の回収と、
このCCEのイオン交換樹脂による処理と
を含む。
【0154】
好ましくは、後処理方法は、
遠心分離した上清のナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収と、
このNFRの活性炭処理及び活性炭溶出液(CCE)の回収と、
このCCEの、H型の強陽イオン交換樹脂及び遊離塩基型の弱塩基性陰イオン交換樹脂による処理と
を含む。
【0155】
より好ましくは、後処理方法は、
遠心分離した上清のナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収と、
このNFRの活性炭処理及び活性炭溶出液(CCE)の回収と、
このCCEの、H型の強酸性陽イオン交換樹脂及び遊離塩基型の弱塩基性陰イオン交換樹脂による処理と
を含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、方法は、電気透析を含まなくてもよい。
【0157】
別の実施形態では、後処理方法は、
遠心分離した上清のナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収と、
このNFRのイオン交換樹脂による処理及び樹脂溶出液(RE)の回収と、
このREの活性炭処理と
を含む。
【0158】
好ましくは、後処理方法は、
遠心分離した上清のナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収と、
このNFRの、H型の強酸性陽イオン交換樹脂及び遊離塩基型の弱塩基性陰イオン交換樹脂による処理、並びに樹脂溶出液(RE)の回収と、
このREの活性炭処理と
を含む。
【0159】
より好ましくは、後処理方法は、
遠心分離した上清のナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収と、
このNFRの、H型の強酸性陽イオン交換樹脂及び遊離塩基型の弱塩基性陰イオン交換樹脂による処理、並びに樹脂溶出液(RE)の回収と、
このREの活性炭処理と
を含む。
【0160】
いくつかの反復において、後処理方法は、電気透析を含まない。
【0161】
さらに別の実施形態では、方法は、
遠心分離した上清のナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収と、
このNFRのクロマトグラフィー及びクロマトグラフィー溶出液(CE)の回収と、
このCEの活性炭処理と
を含む。
【0162】
さらに別の実施形態では、後処理方法は、
遠心分離した上清のナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収と、
このNFRの活性炭処理及び活性炭溶出液(CCE)の回収と、
このCCEのクロマトグラフィーと
を含む。
【0163】
さらに別の実施形態では、後処理方法は、
遠心分離した上清のナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収と、
このNFRのクロマトグラフィー及びクロマトグラフィー溶出液(CE)の回収と、
このCEの活性炭処理及び活性炭溶出液(CCE)の回収と、
このCCEのイオン交換樹脂による処理と
を含む。
【0164】
さらに別の実施形態では、後処理方法は、
遠心分離した上清のナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収と、
このNFRのクロマトグラフィー及びクロマトグラフィー溶出液(CE)の回収と、
このCEのイオン交換樹脂による処理及び樹脂溶出液(RE)の回収と、
このREの活性炭処理と
を含む。
【0165】
さらに別の実施形態では、後処理方法は、
遠心分離した上清のナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収と、
このNFRのイオン交換樹脂による処理及び樹脂溶出液(RE)の回収と、
このREのクロマトグラフィー及びクロマトグラフィー溶出液(CE)の回収と、
このCEの活性炭処理と
を含む。
【0166】
さらに別の実施形態では、後処理方法は、
遠心分離した上清のナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収と、
このNFRのイオン交換樹脂による処理及び樹脂溶出液(RE)の回収と、
このREの活性炭処理及び活性炭溶出液(CCE)の回収と、
このCCEのクロマトグラフィーと
を含む。
【0167】
さらに別の実施形態では、後処理方法は、
遠心分離した上清のナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収と、
このNFRの活性炭処理及び活性炭溶出液(CCE)の回収と、
このCCEのイオン交換樹脂による処理及び樹脂溶出液(RE)の回収と、
このREのクロマトグラフィーと
を含む。
【0168】
さらに別の実施形態では、後処理方法は、
遠心分離した上清のナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収と、
このNFRの活性炭処理及び活性炭溶出液(CCE)の回収と、
このCCEのクロマトグラフィー及びクロマトグラフィー溶出液(CE)の回収と、
このCEのイオン交換樹脂による処理と
を含む。
【0169】
いくつかの実施形態において、清澄化された上清は、任意選択の限外ろ過又は精密ろ過、ナノろ過、脱塩、及び仕上げ処理によって精製され、その後、濃縮及び固体HMO生成物分離が続く。
【0170】
[実施例]
以下の実施例は本開示の実施形態についてのいくつかのデータ結果を提供するが、限定的であると見なされるべきではない。炭水化物及び不純物含有量を、較正HPLC及び/又はHPAECによって定量した。可溶性タンパク質を、ブラッドフォードアッセイによって定量した。残留全懸濁固体を定量するために、600nmでの吸光度(Abs600)を、0に設定された純水吸光度に対して1cmの経路長を有する使い捨てPMMA1.5mlキュベット中で、Thermo Fisher分光光度計1510型を用いて測定した。ほとんどの場合、次いで、Abs600値を、精密ろ過された試料で得られたAbs600値によって減算により補正し、ここではOD600値として定義した。遠心分離は、規模に応じて、実施例に示すように、Eppendorf 2ml微小遠心管、又は15ml若しくは50mlのPPファルコンチューブの3つの異なる実験室規模の遠心分離機で行った。より大きな実験室規模の遠心分離は、1lの容器中で行った。
【0171】
報告したRCF又は「G力」値は、ロータ仕様による最大回転半径について計算された最大RCFである。しかしながら、異なる遠心分離機ローター形状の試料管の形状及び体積の違いにより、回転結果、特に、異なる遠心分離機ローターにおいて得られ、同じ最大RCF及び曝露時間の下で異なる体積を有するAbs600値は、試料のバルク内の異なるG力勾配のために異なる可能性がある。したがって、同じ実験セットを、正確に同じ条件下で、すなわち、同じ遠心分離機、同じサイズの遠心管及び同様の体積で実施した。
【0172】
結果は、この特定のpH値(4.1)で、熱処理単独により沈降速度を9倍まで加速できることを明確に示している。さらに希釈及び熱処理は、相対速度を最大5000倍(10倍の希釈で最良)まで、相対処理量を最大500倍まで実質的に改善する。加えて、残留懸濁固体は、より高い温度での予熱した後に、より良好に最小化される。一例として、RCF=3000gで3分間、希釈されていないブロスについて得られた上清のOD600は、90℃でのブロスの予備加熱後に1.94から0.31へ5倍超、又は同じ遠心分離条件下での3倍希釈及び熱処理後は0.024へ70倍、実質的に減少させることができた。
【0173】
[実施例1:pH調整及び熱処理による2-’FLブロス上清中の可溶性タンパク質の減少]
2’-FL含有ブロスを、LacZ、LacY表現型の遺伝子改変E.コリ(E.coli)株を使用する発酵により生成した。前記株は、GDP-フコースのフコースを内在化ラクトースに転移させ得るα-1,2-フコシルトランスフェラーゼ酵素をコードする組換え遺伝子と、GDP-フコースへの生合成経路をコードする遺伝子とを含む。発酵を、外部から添加したラクトースと好適な炭素源との存在下でこの株を培養することにより実施すると、それにより発酵ブロス中の主要な炭水化物不純物としてDFL及び未反応のラクトースを伴う2’-FLが生成された。
【0174】
2’-FL発酵ブロスのいくつかの試料を、室温で撹拌しながら水性25%HSOを滴下することによりpH調整に供し、20分間平衡化させ、その2時間後にpHを測定した。得られた液体試料(各2×2ml)を、Thermo Scientific Heraeus Pico17遠心分離機において、RCF=13000g(11600RPM)、室温(T=+22℃)で3分間遠心分離した。他の試料を10分間、60℃に温度調節し、室温まで冷却し、同じ条件で遠心分離した。得られた清澄化上清を精密ろ過し、ブラッドフォード試験により可溶性タンパク質含量を分析した。結果を下記の表にまとめる。結果は、低pH(<4)と中程度の熱処理(60℃)の組み合わせで、未処理のブロスの上清と比較して可溶性タンパク質を10倍まで減少させることができるが、室温で熱及びpH調整のいずれかによる単独処理ではさほど効率的ではないことを明らかに示している。上記の条件(10分間60℃、及びpH)は例として示されており、限定的な値ではない。最適条件(pH、温度及び曝露時間)は、当業者が行うことができるさらなる日常的な最適化に供される。
【0175】
【表1】
【0176】
[実施例2:pH調整、希釈及び熱処理後のLNFP-I発酵ブロス上清中の可溶性タンパク質の減少及び収率]
LacZ、LacYの遺伝子組換えE.コリ(E.coli)株を用いた発酵によって、LNFP-Iを含有するブロスを生成した、前記株は、内在化ラクトースに、UDP-GlcNAcのGlcNAcを転移させ得るβ-1,3-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼをコードする組換え遺伝子と、UDP-Galのガラクトシル残基をN-アセチル-グルコサミニル化ラクトース(ラクト-N-トリオースII又はLNT-2)に転移させてLNT(ラクト-N-テトラオース)を形成し得るβ-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼをコードする組換え遺伝子と、GDP-フコースのフコースをLNTに転移させ得るアルファ-1,2-フコシルトランスフェラーゼ酵素と、UDP-GlcNAc、UDP-Gal、及びGDP-フコースへの生合成経路をコードする遺伝子とを含む。発酵を、外部から添加したラクトースと好適な炭素源との存在下でこの株を培養することにより実施すると、それにより発酵ブロス中の主要な炭水化物不純物として2’-FL、LNT及び未反応のラクトースを伴うLNFP-Iが生成された。
【0177】
発酵の終わりに、25%HSOをゆっくりと添加して、pHを4.0に調整した。得られたブロスの試料を、50mlのNerbePlus遠心分離PPチューブ中で合計約50mlに希釈(1×=参照として希釈なし、2×及び3×)し、C0650固定角コニカルチューブローターを備えたBeckman Coulter Allegra X-30R遠心分離機において、RCF=10000g(RPM 9851)で10分間、室温(T=+22℃)にて回転させた。同じ試料セットを、T=+60℃の水浴中で断続的に振盪しながらインキュベートすることによって前処理し、室温まで冷却した後、遠心分離した。上清をペレットから注意深く除去し、分析した。得られたペレットの試料(0.4g)を水で10倍に希釈して合計4.0gとし、続いて+95℃に5分間短く加熱し、Thermo Scientific Heraeus Pico17遠心分離機中でRCF=13000g(11600RPM)で3分間遠心分離し、得られた上清をHPLCにより分析し、タンパク質含量をブラッドフォード試験により分析した。また、600nmにおける吸光度を、懸濁固形分の指標として、純水に対する測定値とした。
【0178】
データを以下の表にまとめる。結果は、熱処理後の上清中のタンパク質の減少がpH=4での例1の約4倍であり、また希釈及び熱処理の両処理後のLNFP-Iの収率が改善されたこと、すなわち、未処理のブロスの上清中の49.5%から、3倍希釈ブロスの76.8%へ、さらに3倍希釈及び熱処理の両処理後の90.8%へと改善されたことを明らかに示している。加えて、全懸濁固形分は希釈及び熱処理後により良好に減少し、これは、目視評価(すなわち、希釈なしでは、濁った上清が得られた)及び600nmでの吸光度測定による定量化によって明らかである。
【0179】
【表2】
【0180】
[実施例3:沈降速度 対 希釈及び予熱]
実施例2からの同じLNFP-Iブロス(pH=4.0)を使用し、適切な量の水を添加することによって、様々な希釈倍率(1×=参照として、希釈なし、2×、3×、5×、及び10×)の試料を調製した。例えば、3×希釈の場合、5.00gのブロスを10.00gの水で総質量15.00gに希釈した。15mlのNerbePlus遠心分離PPファルコンチューブ中の、得られた各試料15mlを、以下の表に要約するように、泡立ちを避けるために断続的に穏やかに振盪しながら、水浴中で5分から1時間の様々な時間、60℃、70℃、80℃及び90℃に予熱した。予熱後直ちに試料を冷水浴中で室温に冷却した。前処理後、全ての試料を、泡立ちを避けるために、数回、ゆっくりと上下を反転させることによって、同時に穏やかに再懸濁し、周囲温度で垂直に静置した。透明上清層の高さを、時間に対してmm単位で定期的に測定した(生データは表に含まれない)。初期沈降速度を、いくつかの初期点の0における強制線切片を用いた高さ対時間の線形回帰から得、表にまとめた。相対沈降速度は、得られた速度と未処理のブロスの基準沈降速度の比として算出した。相対ブロス処理量は、相対速度を希釈倍率で割って算出し、したがって、速度は希釈前の実際のブロス量ごとに正規化された。結果は、この特定のpH値(4.1)で、熱処理単独により沈降速度を9倍まで加速できることを明確に示している。さらに希釈及び熱処理は、相対速度を最大5000倍(10倍の希釈で最良)まで、相対処理量を最大500倍まで実質的に改善する。加えて、残留懸濁固体は、より高い温度での予熱後に、より良好に最小化される。一例として、RCF=3000gで3分間、希釈されていないブロスについて得られた上清のOD600は、90℃でのブロスの予備加熱後に1.94から0.31へ5倍超、又は同じ遠心分離条件下での3倍希釈及び熱処理後は0.024へ70倍、実質的に減少させることができた。
【0181】
【表3】
【0182】
【表4】
【0183】
【表5】
【0184】
[実施例4:沈降速度 対 希釈及び予熱]
LNFP-I含有ブロスを、実施例2に記載のように、しかしpH調整なしで(pH=6.5)、2l規模で生成した(供給物0)。得られたブロスの一部(500.00g)を、2リットルのガラス瓶中で1000.00gのDI水を添加することにより、合計1500.00gに3倍希釈した。次いで、内部が50分間でT=+70℃に達するように断続的に手動で振盪しながら80℃の水浴に入れ、その後、直ちに冷水浴に入れた(供給物1)。別の500.00gのブロスに、25%HSO20mlを撹拌しながら滴下し、DI水で合計1500.00gに希釈し(pH2.95)、30分間で70℃に加熱し、次いで、上記のように冷却した(供給物2)。供給物2は、はるかに良好な撹拌性及び流動性から明らかなように、低い粘度を有していた。加えて、単純な目視検査から、供給物2はより大きな粒子、すなわち、1mm超のdを有し、これは、供給物1(pH=6.5)及び元の希釈されていない供給物0の場合ではなかった。したがって、見かけの自己凝集が、凝集剤の添加なしに、pH調整及び熱処理の後に生じた。15mlのPP遠心分離ファルコンチューブ(全液体h=105mm、ID=15mm)中の15mlの各供給物0、1、又は2の試料を、周囲T=+22℃で垂直に静置し、透明な上清層の高さの定期的に測定した。また、供給物1及び2(V=2リットルのガラス瓶中約1.5l、h=112mm、ID=125mm)も同様に沈降させたが、T=+5℃であった。以下の表の結果は、pHが沈降速度に実質的に影響を及ぼすことを明確に示している。すなわち、この例では、希釈及び予熱後、沈降速度が40倍になる。さらに、pH調整、3×希釈及び熱処理の組み合わせは、処理されないブロスと比較して、沈降速度を約22000倍、又は相対処理量を7000倍、改善する。
【0185】
【表6】
【0186】
[実施例5:様々なRCF及び時間並びに2つのpH値での遠心分離。]
前の実施例4からの供給物1(pH=6.5/3×/70℃)及び供給物2(pH=2.95/3×/70℃)を、2mlのエッペンドルフ微量遠心管に分配し、Thermo Scientific Heraeus Pico17遠心分離機において、様々なRCF及び期間で回転させた。上清を注意深く除去し、Abs600測定によって分析し、残りのペレットを秤量し、BWMを計算した。各試験条件について、2つの試料を遠心分離し、上清を合わせた。BWM値を、2つの試料の平均として報告する。以下の表における結果は、pH=6.5と比較してpH=3.0ではるかに良好に清澄化されたことを明確に示しておいる。すなわち、前処理されたpH=3.0のブロスは200gの低いRCFでも沈降し得、pH=6.5で10000gで得られた上清と同等のAbs600値を提供するので、清澄化効力はおよそ50倍良好である。さらに、RCF=10000gで8分間は、供給物1の場合、pH=6.5でOD600を0.1未満に低下させるには不十分である。しかし、供給物2(pH=3.0)は、RCF=3000gでわずか1分間で、OD600<0.1にまで効率的に清澄化させることができた。
【0187】
【表7】
【0188】
【表8】
【0189】
図1は、OD600による上清透明度に対する遠心分離時間のグラフを示す。具体的には、図は、RCF=200g、pH=3.0(供給物2)とRCF=10000g、pH=6.5(供給物1)での遠心分離時間に対する清澄化例を示す。図に示すように、pH=6.5で高いRCF=10000gに対して、50倍低いRCF=200gは、pH=3.0でさらに良好な又は同等のOD600を提供する。
【0190】
[実施例6:pH=6.5及び3.0での1.4kg規模の遠心分離]
実施例4及び5からの残りの供給物1(pH=6.5/3×/70℃)の700gを2つに等分し、Beckman Coulter Avanti J-26S XP遠心分離機においてRCF=10000g(RPM 6330)まで2.5分で加速し、最終的に10000gに10分間曝露した。得られた暗褐色の不透明な上清(m=1156g)をデカンテーションにより除去した。得られたペレットは安定せず、壁から水平に沈降した。供給物2(pH=3.0/3×/70°C)を同様に処理したが、1.5分で低いRCF=3000g(RPM 3467)まで加速し、RCF=3000gで2.5分の短時間保持した。得られた透明な淡褐色~オレンジ色の上清(m=1187g)を分離して、沈降せずに壁にしっかりと固着して残った安定なペレットを得た。上清及びペレットの試料を分析した。
【0191】
【表9】
【0192】
[実施例7.沈降速度 対 pH、希釈及び予熱]
手順:LNFP-I含有ブロスを、実施例2に記載のように、しかしpH調整なしで生成した(pH=6.6)。100ml(約103g)のブロス試料を25%HSO溶液でpH調整して、以下の表に示すようにpH=2.3~6.6の8種類のpH値を有するブロス試料を得た。各試料から、15ml容量の試料をさらに4つ調製した。1つは変更せず、1つは3×希釈し(実施例3に記載のように)、1つは熱処理し(実施例3に記載のように、70℃で30分)、1つは3×希釈及び熱処理し、したがって、全体で32個の試料が得られる。得られた試料を、周囲温度(T=22℃)でNerbePlus遠心分離PPファルコンチューブに垂直に置いた。透明な上清層の高さを、時間に対してmm単位で定期的に測定した。初期沈降速度を、いくつかの初期点を使用して、高さ対時間の線形回帰から得、以下の表及び図2に要約した。
【0193】
【表10】
【0194】
結果は、6~7の初期pHに対して約3~3.5の最適pHへpH調整した後、沈降速度が大幅に、すなわち約50倍に加速したことを示している。加えて、希釈も同様に大きな効果があり、最大500倍に加速する。最後に、同時のpH調整及び希釈は相乗効果を示し、沈降速度を最大25000倍、すなわち、0.002~0.02mm/h(希釈及びpH調整なし)に対し30~50mm/hに加速する。予備加熱は、さらに1.4~2倍の加速及びより良好な清澄化を提供する。
【0195】
[実施例8.Sedicanter S3を用いた工業規模での連続遠心分離]
2’-FL含有ブロスを、LacZ、LacY表現型の遺伝子改変E.コリ(E.coli)株を使用する発酵により生成した。前記株は、GDP-フコースのフコースを内在化ラクトースに転移させ得るα-1,2-フコシルトランスフェラーゼ酵素をコードする組換え遺伝子と、GDP-フコースへの生合成経路をコードする遺伝子とを含む。発酵を、外部から添加したラクトースと好適な炭素源との存在下でこの株を培養することにより実施すると、それにより発酵ブロス中の主要な炭水化物不純物としてDFL及び未反応のラクトースを伴う2’-FLが生成された。
【0196】
得られたブロスの一部(7m)をHSOでpH=3.6に酸性化し、1:1の体積比に脱イオン水(7m)で希釈し、65℃に加熱した。次いで、前処理したブロスの第1の部分を、800~900kg/hの流量で、RCF=5000gのFlottweg Sedicanter S3Eに12.5時間連続的に通した。翌日、遠心分離を、900kg/hの流量で、まずRCF=6500gで3時間、次いで10000gでさらに2.5時間、ブロスの残りの部分で続けた。得られた清澄化溶液(遠心分離液)及び沈殿物から所定の時点で試料を採取し、OD650により残留懸濁固体を分析し、炭水化物含量をHPLCにより、タンパク質含量をブラッドフォード試験により分析した。
【0197】
【表11】
【0198】
【表12】
【0199】
得られた沈殿物(1.2m)を水(3.9m)で再懸濁し、Sedicanterにおいて65℃で再処理した(遠心分離時間:6時間)。
【0200】
【表13】
【0201】
【表14】
【0202】
発酵ブロスの別の部分を1:2の比(2mブロス+4mの水)で希釈し、65℃、RCF=5000gで4時間、次いでRCF=6500gで3時間処理した。
【0203】
【表15】
【0204】
【表16】
【0205】
別の実施において、1:2希釈(3mブロス+6m水)の発酵ブロスを、硫酸を用いてpH=3.3にさらに酸性化し、65℃、RCF=5000gで4時間、次いでRCF=6500gで6時間処理した。
【0206】
【表17】
【0207】
【表18】
【0208】
全ての場合において、清澄化された遠心分離液中の懸濁固形分は、99%以上減少した。2’-FLの回収収率は、単一の遠心分離工程後では91~95%であり、再懸濁(累積)後では約99%であった。試験は、先の実験室規模の実施例1~7に開示されているように最適化されたブロス前処理条件の後、工業規模及び比較的低いG力(5000g)での連続遠心分離により、細菌発酵ブロスのバイオマス除去及び清澄化が効率的に行われることを明らかに示している。
【0209】
[実施例9.遠心分離後のUF性能]
この実施例は、限外ろ過(UF)前に遠心分離が行われた場合、UF単独と比較して、バイオマス除去処理量が実質的に4~7倍改善され得ることを示す。
【0210】
最大量の残留懸濁固体を含む先の実施例で生成された遠心分離液を、さらなるUF清澄化試験のために選択した(1:1希釈、RCF=5000g)。15kDaのカットオフ、0.5m/sのクロスフロー速度(400l/hクロスフロー)での面積0.21mのKerasep BE膜を備えたMMS SW18膜ろ過システムにおいて、膜間圧力差(TMP)及び温度を変化させ、異なる条件下で、遠心分離液の一部を処理した。各試験において、約5kgの遠心分離液を、選択された条件下で20~30分間平衡化し、次いで、保持液の質量が5分の1に減少する(濃縮係数(CF)=5)まで透過液を回収した。透過フラックスを記録し、平均フラックスを以下の表にまとめる。
【0211】
【表19】
【0212】
次いで、より大きな部分の遠心分離液(27.1kg)を、TMP=3.0bar、クロスフロー0.9m/s(600l/h)及びT=60℃で3時間平衡化し、透過液を供給タンクに再循環させた。透過フラックスは、時間=0で初期フラックス250l/mh(LMH)で定期的に測定し、これは時間=3h、120LMHで減少し安定化した。次いで、25.75kgの透過液を100分(CF=20)で収集し、最後にフラックスをさらに40LMHまで低下させた(計算された平均フラックス 74LMH)。
【0213】
比較のために、遠心分離前の最初の2’-FLブロスを、60℃、クロスフロー1~5m/s、TMP1~3バール及びCF=2で数回処理し、1~2容量の脱イオン水で連続透過ろ過し、10~20LMHの平均透過フラックス値を得た。これは、遠心分離後に観察される透過フラックスよりも著しく低い(4~7分の1)。
【0214】
[全般]
以下の図面及び例は、本開示を説明するために以下に提供される。それらは、例示を意図したものであり、決して限定するものとして解釈されるべきではない。
【0215】
図3は、HMOのための発酵を単離/精製するための方法(200)の実施形態を示す。図に示すように、HMOを含む元のブロスを調製することができる(202)。これは、本方法の一部として実施してもよく、又はブロスを別の供給源から本方法に提供することもできる。
【0216】
ブロスが得られたなら、次に、ブロスを前処理することができる(204)。これは、上で詳細に論じたように実行することができる。例えば、ブロスを加熱し(206)、pHを調整し(208)、且つ/又は希釈する(210)ことができる。前処理工程の1つ、2つ、又は全てを実施することができる。
【0217】
前処理に続いて、ブロスを遠心分離することができる(212)。これは任意の数の遠心分離プロセスで行うことができ、本方法は特定のタイプの遠心分離プロセスには限定されない。遠心分離は、バイオマスなどの他の成分からHMOを分離することができる。遠心分離が完了すると、HMOはブロスから単離及び/又は精製されている可能性がある。
【0218】
任意選択で、HMOをさらに取得するために、さらに後処理(214)を行うことができる。これらの後処理技術は、上記で詳述されている。代替の実施形態では、後処理は行われず、本方法は遠心分離の後に終了することができる。例えば、HMOは、遠心分離されたブロスから回収することができる。
【0219】
[例示的実施形態]
本明細書に開示される1つ以上の例示的な方法の特定の非限定的な例示的な実施形態が、以下に説明する。
【0220】
実施形態1.バイオマス及びタンパク質の1つ以上を含有する懸濁液からヒト乳オリゴ糖(HMO)を精製する方法であって、
pH調整、希釈、及び/又は熱処理、好ましくはpH調整、希釈、及び熱処理によって懸濁液を前処理する工程、並びに
前処理後に懸濁液を遠心分離し、
それによって、精製HMOを含む清澄上清を形成する工程
を含む方法。
実施形態2.懸濁液のpH調整又は酸性化は、pH2~5、好ましくは3~4である、実施形態1に記載の方法。
実施形態3.希釈は、
-希釈懸濁液の質量が懸濁液の元の質量の1.1~10倍、好ましくは1.5~10倍、より好ましくは2~4倍、より好ましくは2.5~3.5倍となる、又は
-希釈懸濁液の体積が懸濁液の元の体積の2~10倍、好ましくは2~8倍、より好ましくは2~4倍、より好ましくは2.5~3.5倍となるように行う、実施形態1~2のいずれか1つに記載の方法。
実施形態4.希釈懸濁液のBWMは20、15、10又は5%未満、好ましくは約10~15%である、実施形態3に記載の方法。
実施形態5.懸濁液を45~120℃、好ましくは60~90℃、より好ましくは60~80℃に加熱する、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
実施形態6.遠心分離は連続供給添加を伴う連続プロセスであり、遠心分離は連続的な又は定期的な湿潤固体の除去をさらに含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
実施形態7.遠心分離は、RCF<10000g、滞留時間<3分で行う、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
実施形態8.遠心分離は、RCF<20000g、滞留時間<3分で行う、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
実施形態9.遠心分離は、>10lの作動容量、>1000l/hの供給流量、3分以下の滞留時間で行う、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
実施形態10.遠心分離は、>10lの作動容量、>1000l/hの供給流量、6分以下の滞留時間で行う、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
実施形態11.遠心分離は、Sedicanterを用い、好ましくは5000~10000gのRCFで行う、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
実施形態12.遠心分離は、円錐プレート遠心分離機を用いて行う、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
実施形態13.遠心分離は、ソリッドボウル(デカンター)遠心分離機を用いて行う、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
実施形態14.単一工程の遠心分離後の清澄上清は、OD600<0.1、残留タンパク質<500mg/l、及び生成物収率>80%を含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
実施形態15.以下の工程の少なくとも1つによって、清澄上清をさらに精製する、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法:
a.孔径<1.0μm及びMWCO>600Daを有する膜を用いた清澄上清の限外ろ過又は精密ろ過、及び任意選択の透析ろ過(ここで、HMOは透過流中に収集される);
b.100~3500DaのMWCOの膜によるナノろ過及び任意選択の透析ろ過(ここで、HMOの大部分は保持液中に保持され、それによって少なくとも水及び好ましくは他の小分子が膜を通過することができ、小分子には、単糖、二糖、小細菌代謝産物、及び塩が含まれる);
c.清澄上清からのHMOの活性炭への吸着(ここで、HMOに対する活性炭の量は、>100重量%である)、続くアルコールC1~C4、酢酸、又はアセトニトリルから選択される水性有機溶媒による精製されたHMO生成物流の溶出;
d.活性炭による清澄上清の脱色の仕上げ(ここで、HMOに対する活性炭の量は<100重量%、好ましくは<10%であり、残留生体分子、着色化合物、及び他の疎水性分子を保持しながら、HMOの大部分を通過させる);
e.蒸発、真空蒸発、ナノろ過、逆浸透又は正浸透による濃縮;
f.結晶化による固体HMO分離;
g.HMOの凍結乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥、又はベルト乾燥による水除去による固体HMO分離;
h.HMOの滅菌ろ過;
i.HMOの電気透析;
j.HMOの陽イオン及び/又は陰イオン交換の実施;
k.H型の陽イオン交換体を通過させ、続いて遊離塩基型の弱塩基性樹脂を通過させるか又は添加することによる酸吸着工程による脱塩の実施;
l.透析又は中和透析による脱塩の実施;
m.HMOのクロマトグラフィー分離の実施;及び
実施形態16.懸濁液は、HMOを産生することができる遺伝子改変されたE.コリ(E.coli)によって産生される、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
実施形態17.凝集剤を使用しないことを条件とする、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
実施形態18.遠心分離は、工業規模で行う、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
実施形態19.懸濁液の前処理は、pH調整、希釈、及び熱処理による、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
実施形態20.懸濁液の前処理は、pH調整及び希釈による、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
実施形態21.懸濁液の前処理は、pH調整と、それに続く希釈による、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法。
実施形態22.懸濁液の前処理は、希釈と、それに続くpH調整による、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
実施形態23.懸濁液の前処理は、pH調整及び熱処理による、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
実施形態24.懸濁液の前処理は、pH調整と、それに続く熱処理による、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
実施形態25.懸濁液の前処理は、熱処理と、それに続くpH調整による、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
実施形態26.懸濁液の前処理は、希釈及び熱処理による、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
実施形態27.懸濁液の前処理は、希釈と、それに続く熱処理による、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法。
実施形態28.懸濁液の前処理は、熱処理と、それに続く希釈による、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
実施形態29.懸濁液の前処理は、同時に行うpH調整及び熱処理による、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法。
実施形態30.懸濁液の前処理は、同時に行うpH調整及び熱処理と、それに続く希釈による、実施形態1~29のいずれか1つに記載の方法。
実施形態31.懸濁液の前処理は、希釈と、それに続いて同時に行うpH調整及び熱処理による、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法。
実施形態32.懸濁液の前処理は、同時に行うpH調整及び希釈による、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法。
実施形態33.懸濁液の前処理は、同時に行うpH調整及び希釈と、それに続く熱処理による、実施形態1~32のいずれか1つに記載の方法。
実施形態34.懸濁液の前処理は、熱処理と、それに続いて同時に行うpH調整及び希釈による、実施形態1~33のいずれか1つに記載の方法。
実施形態35.懸濁液の前処理は、同時に行う希釈及び熱処理による、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法。
実施形態36.懸濁液の前処理は、同時に行う希釈及び熱処理と、それに続くpH調整による、実施形態1~35のいずれか1つに記載の方法。
実施形態37.懸濁液の前処理は、pH調整と、それに続いて同時に行う希釈及び熱処理による、実施形態1~36のいずれか1つに記載の方法。
実施形態38.懸濁液の前処理は、pH調整と、それに続く希釈と、それに続く熱処理による、実施形態1~37のいずれか1つに記載の方法。
実施形態39.懸濁液の前処理は、pH調整と、それに続く熱処理と、それに続く熱希釈による、実施形態1~38のいずれか1つに記載の方法。
実施形態40.懸濁液の前処理は、希釈と、それに続くpH調整と、それに続く熱処理による、実施形態1~39のいずれか1つに記載の方法。
実施形態41.懸濁液の前処理は、希釈と、それに続く熱処理と、それに続くpH調整による、実施形態1~40のいずれか1つに記載の方法。
実施形態42.懸濁液の前処理は、熱処理と、それに続く希釈と、それに続くpH調整による、実施形態1~41のいずれか1つに記載の方法。
実施形態43.懸濁液の前処理は、熱処理と、それに続くpH調整と、それに続く希釈による、実施形態1~42のいずれか1つに記載の方法。
実施形態44.HMOは中性HMOである、実施形態1~43のいずれか1つに記載の方法。
実施形態45.中性HMOは、2’-FL、3-FL、DFL、LNT、LNnT、LNFP-I、LNFP-II、LNFP-III、LNFP-V及びLNFP-VIからなる群から選択される、実施形態44に記載の方法。
【0221】
用語「含む(comprising)」は、列挙されたもの以外の他の要素又は工程の存在を必ずしも除外しないことに留意されたい。
【0222】
要素に先行する単語「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、複数のそのような要素の存在を除外しないことに留意されたい。
【0223】
さらに、いかなる参照符号も特許請求の範囲を限定するものではなく、例示的な実施形態はハードウェア及びソフトウェアの両方によって少なくとも部分的に実行され得、いくつかの「手段」、「ユニット」又は「デバイス」は同じハードウェア装置によって表され得ることに留意されたい。
【0224】
特徴を示し説明してきたが、それらは請求項に係る発明を限定することを意図せず、請求項に係る発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正がされ得ることは、当業者には明らかであることは理解されよう。したがって、本明細書及び図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味で見なされるべきである。請求項に係る発明は、あらゆる代替、修正、及び均等物を網羅することが意図される。
図1
図2
図3
【国際調査報告】