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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】熱界面材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20231227BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231227BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20231227BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20231227BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C08L23/00
C08K3/013
C08K5/5415
C08L9/00
C08L23/26
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535897
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(85)【翻訳文提出日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 CN2020138821
(87)【国際公開番号】W WO2022133850
(87)【国際公開日】2022-06-30
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ホー、チャオ
(72)【発明者】
【氏名】バグワガー、ドラブ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ジグァン
(72)【発明者】
【氏名】リン、リン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ホンユ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ、ペン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、チェン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC032
4J002AC111
4J002AC112
4J002AE033
4J002BB202
4J002BB221
4J002BE021
4J002BE031
4J002DA096
4J002DE106
4J002DE146
4J002DF016
4J002DK006
4J002EA017
4J002EC067
4J002EC078
4J002EF057
4J002EH037
4J002EJ019
4J002EJ069
4J002EW069
4J002EW119
4J002EX038
4J002EX079
4J002FD016
4J002FD079
4J002FD209
4J002GQ00
(57)【要約】
熱界面材料であって、(A)1分子当たり少なくとも2つのヒドロキシ基を有するポリオレフィンと、(B)少なくとも1種の熱伝導性充填剤と、(C)25~150℃の融点を有する相変化材料と、(D)カップリング剤と、を含み、構成成分(B)の含有量が、少なくとも80質量%であり、構成成分(C)の含有量が、0.01~1質量%であり、構成成分(D)の含有量が、0.1~1質量%であり、各々が、本熱界面材料の全質量に基づいている、熱界面材料。本熱界面材料は、パワーサイクリング中の電子デバイスにおいて、その温度が上昇するにつれて柔らかくなるが、ポンプアウトを示さない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱界面材料であって、
(A)1分子当たり少なくとも2つのヒドロキシ基を有するポリオレフィンと、
(B)少なくとも1種の熱伝導性充填剤と、
(C)25~150℃の融点を有する相変化材料と、
(D)カップリング剤と、を含み、
構成成分(B)の含有量が、少なくとも80質量%であり、構成成分(C)の含有量が、0.01~1質量%であり、構成成分(D)の含有量が、0.1~1質量%であり、各々が、前記本熱界面材料の全質量に基づいている、熱界面材料。
【請求項2】
構成成分(A)が、以下の一般式:
【化1】

で表されるポリオレフィンであり、式中、各R、R、及びRが、独立して、水素原子、ヒドロキシ基、又は炭素数1~12のアルキル基であり、全R~Rのうちの少なくとも2つが、前記ヒドロキシ基であり、「m」が、正の数であり、「n」が、0又は正の数であり、ただし、「m+n」が、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した2,000~100,000の数平均分子量を満たす正の数であることを条件とする、請求項1に記載の熱界面材料。
【請求項3】
構成成分(B)が、アルミナ、アルミニウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、又は酸化アルミニウム三水和物から選択される少なくとも1種の熱伝導性充填剤である、請求項1に記載の熱界面材料。
【請求項4】
構成成分(C)が、C12-C25アルコール、C12-C25酸、C12-C25エステル、ワックス、又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の相変化材料である、請求項1に記載の熱界面材料。
【請求項5】
構成成分(D)が、ケイ素系カップリング剤、チタン系カップリング剤、又はアルミニウム系カップリング剤から選択される少なくとも1種のカップリング剤である、請求項1に記載の熱界面材料。
【請求項6】
構成成分(D)が、以下の一般式:
【化2】

で表されるケイ素系カップリング剤であり、式中、各Rが、独立して、炭素数6~15のアルキル基であり、各Rが、独立して、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数2~6のアルケニル基であり、各Rが、独立して、炭素数1~4のアルキル基であり、「a」が、1~3の整数であり、「b」が、0~2の整数であり、ただし、「a+b」が、1~3の整数であることを条件とする、請求項5に記載の熱界面材料。
【請求項7】
(E)酸化防止剤を更に含む、請求項1に記載の熱界面材料。
【請求項8】
(F)充填剤-ポリマー相互作用促進剤を更に含む、請求項1に記載の熱界面材料。
【請求項9】
構成成分(F)が、液体ポリブタジエン、シラングラフト化ポリオレフィン、又はビス(トリアルコキシシリルアルキル)アミンから選択される少なくとも1種の充填剤-ポリマー相互作用促進剤である、請求項8に記載の熱界面材料。
【請求項10】
(G)溶媒を更に含む、請求項1に記載の熱界面材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱界面材料に関する。
【背景技術】
【0002】
熱界面材料(thermal interface material、TIM)は、電子デバイスにおける2つの構成成分間の熱伝達に有用な熱伝導性材料である。例えば、TIMは、典型的には、中央処理装置(central processing unit、CPU)又はグラフィック処理装置(graphic processing unit、GPU)などの発熱電子部品からヒートシンクなどのヒートスプレッダに熱を伝達するために使用される。近年、発熱電子部品は、使用する電力が増加し、より高い熱放散を必要とする機能が増加している。また、GPU及びAIチップのような用途にベアダイ設計を使用する傾向がある。したがって、TIMの熱インピーダンス(thermal impedance、TI)は、0.1℃・cm/W未満の値を有することが望ましい。
【0003】
電子機器内での熱伝達のためのTIMは、当該技術分野において周知である。例えば、特許文献1には、(a)ワックス100重量部、(b)ポリイソブチレンなどの液体ポリマー10~1,000重量部、(c)熱伝導性充填剤10~2,000重量部、及び(d)軟化剤0~1,000重量部を含む、熱伝導性材料が記載されている。
【0004】
特許文献2には、少なくとも1種のポリマーと、少なくとも1種の熱伝導性充填剤と、少なくとも1種の相変化材料と、を含む熱界面材料であって、少なくとも1種の相変化材料が、ASTM D1321に準拠して25℃で決定された少なくとも50の針入度値を有するワックスを含む、熱界面材料が記載されている。
【0005】
特許文献3には、少なくとも1種の相変化材料と、少なくとも1種のポリマーマトリックス材料と、第1の粒径を有する少なくとも1種の第1の熱伝導性充填剤と、第2の粒径を有する少なくとも1種の第2の熱伝導性充填剤と、を含む熱界面材料が記載されている。
【0006】
特許文献4には、熱伝導性充填剤と、35~120℃の融点を有する相変化材料、非イオン性界面活性剤、及び不揮発性構成成分から構成される結合剤と、を含み、各々、結合剤100質量部に対して、相変化材料の含有量が10質量部以上、非イオン性界面活性剤の含有量が60質量部以上、不揮発性構成成分の含有量が30質量部以下である、熱伝導性組成物が記載されている。
【0007】
しかしながら、TIMは、典型的には、特に2つの構成成分が、異なる熱膨張係数を有する場合、パワーサイクリング中に電子デバイス内の2つの構成成分からポンプアウトし分離する。ベアダイ設計は、TIMが集積回路(Integrated Circuit、IC)と金属ヒートシンクとの間に直接適用されるので、大量のポンプアウトをもたらし得る。ポンプアウトは、バルク熱抵抗の増加及び界面抵抗の増加につながる。ハイエンド用途では、バルク抵抗及び界面抵抗の両方におけるそのような変化は、結果として生じる性能の劇的な生成のため、許容できない。TIMはまた、GPU又はAIチップなどのベアダイ設計におけるパワーサイクリングによるポンプアウトに対して安定であるべきである。TIMは、少なくとも5000回のパワーサイクル後に、5%未満の最小限のポンプアウトを示すべきである。
【0008】
先行技術文献
特許文献
特許文献1:国際公開第2003/004580(A1)号
特許文献2:国際公開第2015/120773(A1)号
特許文献3:国際公開第2016/086410(A1)号
特許文献4:国際公開第2016/185936(A1)号
【発明の概要】
【0009】
技術的問題
本発明の目的は、熱界面材料を提供することであって、熱界面材料は、パワーサイクリング中に電子デバイスにおいて、その温度が上昇するにつれて柔らかくなるが、ポンプアウトしない。
【0010】
問題に対する解決策
本発明の熱界面材料は、
(A)1分子当たり少なくとも2つのヒドロキシ基を有するポリオレフィンと、
(B)少なくとも1種の熱伝導性充填剤と、
(C)25~150℃の融点を有する相変化材料と、
(D)カップリング剤と、を含み、
構成成分(B)の含有量が、少なくとも80質量%であり、構成成分(C)の含有量が、0.01~1質量%であり、構成成分(D)の含有量が、0.1~1質量%であり、各々が、本熱界面材料の全質量に基づいている。
【0011】
様々な実施形態では、構成成分(A)は、以下の一般式:
【化1】

で表されるポリオレフィンであり、式中、各R、R、及びRが、独立して、水素原子、ヒドロキシ基、又は炭素数1~12のアルキル基であり、全R~Rのうちの少なくとも2つが、ヒドロキシ基であり、「m」が、正の数であり、「n」が、0又は正の数であり、ただし、「m+n」が、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した2,000~100,000の数平均分子量を満たす正の数であることを条件とする。
【0012】
様々な実施形態では、構成成分(B)は、アルミナ、アルミニウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、又は酸化アルミニウム三水和物から選択される少なくとも1種の熱伝導性充填剤である。
【0013】
様々な実施形態では、構成成分(C)は、C12-C25アルコール、C12-C25酸、C12-C25エステル、ワックス、又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の相変化材料である。
【0014】
様々な実施形態では、構成成分(D)は、ケイ素系カップリング剤、チタン系カップリング剤、又はアルミニウム系カップリング剤から選択される少なくとも1種のカップリング剤である。
【0015】
様々な実施形態では、構成成分(D)は、以下の一般式:
【化2】

で表されるケイ素系カップリング剤であり、式中、各Rが、独立して、炭素数6~15のアルキル基であり、各Rが、独立して、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数2~6のアルケニル基であり、各Rが、独立して、炭素数1~4のアルキル基であり、「a」が、1~3の整数であり、「b」が、0~2の整数であり、ただし、「a+b」が、1~3の整数であることを条件とする。
【0016】
様々な実施形態では、熱界面材料は、(E)酸化防止剤を更に含む。
【0017】
様々な実施形態では、熱界面材料は、(F)充填剤-ポリマー相互作用促進剤を更に含む。
【0018】
種々の実施形態では、構成成分(F)は、液体ポリブタジエン、シラングラフト化ポリオレフィン又はビス(トリアルコキシシリルアルキル)アミンから選択される少なくとも1種の充填剤-ポリマー相互作用促進剤である。
【0019】
様々な実施形態では、熱界面材料は、(G)溶媒を更に含む。
【0020】
発明の効果
本発明の熱界面材料は、パワーサイクリング中の電子デバイスにおいて、その温度が上昇するにつれてより柔らかくなるが、ポンプアウトしない。
【0021】
定義
「含む(comprising)又は含む(comprise)」という用語は、本明細書において広義に使用され、「含む(including)又は含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing)essentially of)」、及び「からなる(consist(ing)of)」を意味し、それらの概念を包含する。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば/など(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば/など(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example, but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as, but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。本明細書で使用されている「約(about)」という用語は、機器分析により測定した、又は試料を取り扱った結果としての数値のわずかな変動を、合理的に包含若しくは説明する働きをする。このようなわずかな変動は、数値の±0~25%、±0~10%、±0~5%、又は±0~2.5%程度であり得る。更に、「約」という用語は、ある範囲の値に関連する場合、数値の両方に当てはまる。更に、「約」という用語は、明確に記載されていない場合であっても、数値に当てはまることがある。
【0022】
「熱インピーダンス」又は「TI」という用語は、本明細書では、TIMの有効性を意味するために使用される。基板間のTIMの熱インピーダンスは、以下の式:
【化3】

によって計算され、
式中、Θは、TIMの熱インピーダンスであり、dは、ボンドラインの厚さ(bond line thickness、BLT)であり、κは、TIMの熱伝導率であり、Rcontactは、TIM及び隣接する基板の接触抵抗値の和である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の熱界面材料について、詳細に説明する。
【0024】
構成成分(A)は、構成成分(B)を分散させるためのマトリックス材料であり、1分子中に少なくとも2つのヒドロキシ基を有するポリオレフィンである。構成成分(A)の例示的なポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-イソブチレンコポリマー、エチレン-ブチレン-スチレンコポリマー;並びに水素化ポリアルキルジエンポリオール(水素化ポリブタジエンポリオール、水素化ポリプロパジエンポリオール、及び水素化ポリペンタジエンモノオールを含む)、及び水素化ポリアルキルジエンジオール(水素化ポリブタジエンジオール、水素化ポリプロパジエンジオール、及び水素化ポリペンタジエンジオールを含む)などの水素化ポリマーが挙げられる。
【0025】
とりわけ、構成成分(A)は、好ましくは、以下の一般式:
【化4】
【0026】
で表されるポリオレフィンであり、上記式中、各R、R及びRは、独立して、水素原子、ヒドロキシ基、又は炭素数1~12のアルキル基であり、ただし、全R~Rのうちの少なくとも2つが、ヒドロキシ基であることを条件とする。上記式中のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基が挙げられる、
【0027】
上記式中、「m」は正の数であり、「n」は0又は数であるが、m+nはゲル浸透クロマトグラフィーで測定した2,000~100,000、好ましくは3,000~100,000の数平均分子量を満たす正の数である。
【0028】
25℃における構成成分(A)の状態は、限定されないが、好ましくは固体である。構成成分(A)は好ましくは、溶融粘度、例えば1~100Pa・sの45℃における溶融粘度を有する。なお、本明細書において、粘度は、JIS K7117-1:プラスチック-液状、乳濁状又は分散状の樹脂-ブルックフィールド形回転粘度計による見掛け粘度の測定方法、あるいはISO 2555:Plastics Resins in the Liquid State or as Emulsions or Dispersions Determination of Apparent Viscosity by the Brookfield Teste Methodに準じて測定され得る。
【0029】
例示的な市販のポリオレフィンは、Nippon Soda Co.,Ltd.から入手可能なNISSO-PB GI-3000である。
【0030】
構成成分(B)は、TIMにおいて有用な任意のものであり得る少なくとも1種の熱伝導性充填剤である。例えば、構成成分(B)は、金属、合金、非金属、金属酸化物、又はセラミックから選択される2種以上の熱伝導性充填剤のうちのいずれか1種又は2種以上の任意の組み合わせであり得る。例示的な金属としては、アルミニウム、銅、銀、亜鉛、ニッケル、スズ、インジウム、及び鉛が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な非金属としては、炭素、グラファイト、カーボンナノチューブ、炭素繊維、グラフェン、及び窒化ケイ素が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な金属酸化物及びセラミックとしては、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、及び酸化スズが挙げられるが、これらに限定されない。望ましくは、構成成分(B)は、アルミナ、アルミニウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、及び酸化アルミニウム三水和物からなる群から選択されるいずれか1種又は2種以上の任意の組み合わせである。更により望ましくは、構成成分(B)は、5~15μmの平均粒径を有する球状アルミニウム粒子、1~3μmの平均粒径を有する球状アルミニウム粒子、0.1~0.5μmの平均粒径を有する酸化亜鉛粒子から選択されるいずれか1種又はいずれかの組み合わせ若しくは2種以上の充填剤である。操作ソフトウェアに従ってレーザ回折粒径分析器(CILAS920粒径分布測定装置又はベックマン・コールタLS 13 320 SW)を使用して、充填剤粒子の平均粒径をメジアン粒径(D50)として決定する。
【0031】
構成成分(B)の量は、本熱界面材料の総質量に対する質量%で、少なくとも80質量%、好ましくは85質量%以上、更には90質量%以上であり、同時に、典型的には95質量%以下、94質量%以下、更には93質量%以下である。
【0032】
構成成分(C)は、電子デバイスの動作温度で可逆的な固体-液体相変化を受ける相変化材料である。構成成分(C)は、25~150℃、好ましくは、25~100℃、25~80℃、あるいは、25~70℃の融点を有する。構成成分(C)は、その融点未満に冷却されると、体積の大きな変化を伴わずに固化し、それによって発熱電子部品とヒートスプレッダとの間の密接な接触を維持する。なお、本明細書において、融点(℃)は、ASTM D3418に準拠して、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter、DSC)により測定し得る。
【0033】
構成成分(C)の例示的な相変化材料としては、C12-C25アルコール、C12-C25酸、C12-C25エステル、ワックス、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適なC12-C25酸及びアルコールとしては、ミリスチルアルコール、1,2-テトラデカンジオール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、1-エイコサノール、ペンタコサノール、ミリスチル酸、及びステアリン酸が挙げられる。好ましいワックスとしては、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、並びにオクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘンエイコサン、ドコサン、トリコサン、トリアコンタン、及びヘキサトリアコンタンなどの他のワックス様C18-C40オレフィンが挙げられる。
【0034】
構成成分(C)の量は、本熱界面材料の0.01~1質量%の範囲である。しかしながら、本熱界面材料の質量に基づいて、望ましくは、0.05質量%以上、0.15質量%以上、更には0.2質量%以上であり、同時に、典型的には2.0質量%以下、1.5質量%以下、1.0質量%以下、更には0.5質量%以下である。これは、構成成分(C)の含有量が上記の範囲の下限以上である場合、本材料のハンドリング性が良好であるのに対し、構成成分(D)の含有量が上記の範囲の上限以下である場合、本材料の物理的特性が良好であることが理由である。
【0035】
構成成分(D)は、カップリング剤であり、構成成分(A)中の構成成分(B)の分散を補助するのに有用である。構成成分(D)としては、特に限定されないが、好ましくは、ケイ素系カップリング剤、チタン系カップリング剤、又はアルミニウム系カップリング剤である。
【0036】
ケイ素系カップリング剤は、好ましくは、以下の一般式:
【化5】
【0037】
で表されるアルコキシシラン化合物である。式中、Rは、独立して、炭素数6~15のアルキル基である。例示的なアルキル基としては、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基が挙げられる。
【0038】
式中、Rは、独立して、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数2~6のアルケニル基である。例示的なアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、及びネオペンチル基が挙げられる。例示的なアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、及びヘキセニル基が挙げられる。
【0039】
式中、Rは、独立して、炭素数1~4のアルキル基である。例示的なアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、及びtert-ブチル基が挙げられる。
【0040】
式中、「a」は、1~3の整数であり、「b」は、0~2の整数であり、ただし、「a+b」が、1~3の整数であるか、あるいは「a」が1であり、「b」が、0若しくは1の整数であるか、あるいは「a」が1であり、「b」が0であることを条件とする。
【0041】
構成成分(D)の例示的なケイ素系カップリング剤の例としては、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルメチルジメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、ノナデシルトリメトキシシラン、及びそれらの少なくとも2つの任意の組み合わせが挙げられる。
【0042】
構成成分(D)の例示的なチタン系カップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N-アミドエチル、アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスフェート)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスフェートチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセタートチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、及びテトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネートが挙げられる。
【0043】
構成成分(D)の例示的なアルミニウム系カップリング剤としては、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートが挙げられる。
【0044】
構成成分(D)の量は、本熱界面材料の0.1~1質量%の範囲である。しかしながら、本熱界面材料の質量に基づいて、望ましくは、0.2質量%以上、0.3質量%以上、更には0.5質量%以上であり、同時に、典型的には3.0質量%以下、2.5質量%以下、2.0質量%以下、更には1.0質量%以下である。これは、構成成分(D)の含有量が上記の範囲の下限以上である場合、本熱界面材料中の構成成分(B)の分散が良好であるのに対し、構成成分(D)の含有量が上記の範囲の上限以下である場合、本熱界面材料の安定性が良好であることが理由である。
【0045】
本熱界面材料は、(E)酸化防止剤を更に含み得る。構成成分(E)の例示的な酸化防止剤としては、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロ-シンナメート)]メタンなどのヒンダードフェノール;ビス[(ベータ-(3,5-ジtert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)メチルカルボキシエチル)]-スルフィド、4,4’-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、及びチオジエチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)-ヒドロシンナメート;トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト及びジ-tert-ブチルフェニル-ホスホナイトなどのホスファイト及びホスホナイト;ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、及びジステアリルチオジプロピオネートなどのチオ化合物;様々なシロキサン;重合2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、n,n’-ビス(1,4-ジメチルペンチル-p-フェニレンジアミン)、アルキル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(アルファ、アルファ-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、ジフェニル-p-フェニレンジアミン、混合ジアリール-p-フェニレンジアミン、及び他のヒンダードアミン劣化防止剤又は安定剤が挙げられる。
【0046】
構成成分(E)の量は限定されないが、本熱界面材料の質量に基づいて、望ましくは0.01質量%以上、0.05質量%以上、更には0.1質量%以上であり、同時に、典型的には1.0質量%以下、0.5質量%以下、更には0.2質量%以下である。これは、構成成分(E)の含有量が上記の範囲の下限以上である場合、本熱界面材料中の構成成分(A)の安定性が良好であるのに対し、構成成分(E)の含有量が上記の範囲の上限以下である場合、本熱界面材料の機械的特性が良好であることが理由である。
【0047】
本材料は、(F)充填剤-ポリマー相互作用促進剤を更に含み得る。構成成分(F)は、好ましくは、液体ポリブタジエン、シラングラフト化ポリオレフィン、マレイン化ポリオレフィンの反応によって得られるシラン官能化ポリオレフィン、又はビス(トリアルコキシシリルアルキル)アミンから選択される少なくとも1種の充填剤-ポリマー相互作用促進剤である。構成成分(F)の例示的な液体ポリブタジエンとしては、ブタジエン単独重合体、ブタジエン-スチレン共重合体、及びマレイン化ポリブタジエンが挙げられる。例示的な市販の液体ポリブタジエンは、TOTAL Cray Valleyから入手可能なRicon(登録商標)130MA8である。
【0048】
構成成分(F)の量は限定されないが、本熱界面材料の質量に基づいて、望ましくは0.1質量%以上、0.5質量%以上、更には1.0質量%以上であり、同時に、典型的には3.0質量%以下、2.5質量%以下、更には2.0質量%以下である。これは、構成成分(F)の含有量が上記の範囲の下限以上である場合、本熱界面材料中の構成成分(A)の安定性が良好であるのに対し、構成成分(F)の含有量が上記の範囲の上限以下である場合、本熱界面材料の機械的特性が良好であることが理由である。
【0049】
本材料は、(G)溶媒を更に含み得る。構成成分(G)の例示的な溶媒としては、トルエン、キシレン、p-キシレン、m-キシレン、メシチレン、ソルベントナフサH、ソルベントナフサA、Isopar H、並びに他のパラフィン油及びイソパラフィン系流体などの脂肪族炭化水素溶媒;ペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、ノナン、オクタン、ドデカン、2-メチルブタン、ヘキサデカン、トリデカン、ペンタデカン、シクロペンタン、2,2,4-トリメチルペンタンなどのアルカン;及びシロキサンオリゴマーが挙げられる。例示的な市販のシロキサンオリゴマーは、Dow Silicones Corporationから入手可能なDOWSIL(商標)OS-20である。
【0050】
構成成分(G)の量は限定されないが、本熱界面材料の質量に基づいて、望ましくは0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、更には2.0質量%以上であり、同時に、典型的には5.0質量%以下、3.0質量%以下、更には2.5質量%以下である。これは、構成成分(G)の含有量が上記の範囲の下限以上である場合、本材料中の構成成分(A)の安定性が良好であるのに対し、構成成分(G)の含有量が上記の範囲の上限以下である場合、本材料の機械的特性が良好であることが理由である。
【0051】
本熱界面材料は、1種以上の添加剤などの追加の構成成分を更に含み得る。そのような添加剤としては、帯電防止剤、カラーエンハンサ、染料、潤滑剤、TiO又はCaCOなどの充填剤、乳白剤、核剤、顔料、加工助剤、UV安定剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤、粘着付与剤、難燃剤、抗菌剤、臭気低減剤、抗真菌剤、及びそれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0052】
本熱界面材料は、周囲温度で成分の全てを混合することによって調製することができる。先行技術に記載されている、混合技術及び装置のいずれかをこの目的に用いることができる。使用する具体的な装置は、成分及び最終的な組成物の粘度によって決定される。混合中に成分を冷却することが、早期硬化を避けるために望ましい場合がある。
【0053】
本熱界面材料は、適切な形状にダイカットされ、組立前にIC又はヒートシンク上に直接適用されるフィルムとして適用することができる。逆に、本熱界面材料は、ステンシル又はスクリーン印刷用の熱グリース又は化合物として構成成分上に印刷することができる。
【実施例
【0054】
以下、実施例及び比較例を使用して、本発明の熱界面材料について詳細に説明する。しかし、本発明は、以下に列挙する実施例の説明により限定されるものではない。
【0055】
<熱インピーダンス(TI)及びボンドライン厚さ(BLT)試験>
熱インピーダンス(TI)及びボンドライン厚さ(BLT)は、ASTM D-5470規格に従って、LonGwinによって製造されたLW-9389 TIM Thermal Resistance and Conductivity Measurement Apparatusによって評価された。熱界面材料上に加えられる圧力は40PSIである。試験時間は、1つの試料について15分である。温度は、80℃である。
【0056】
<熱試験車両(thermal testing vehicle、TTV)試験>
以下のコンピュータ部品が試験に使用される。
・CPU:AMD Ryzen 7 2700X8-コア、
・マザーボード:ASUS TUF X470-PLUS GAMING、
・メモリ:KINSTON DDR4 2666 8 GB、
・グラフィックスカード:ASUS Radeon RX Vega 64 8 GB Overlocked 2048-Bit HBM2 PCI Express 3.0 HDCP Ready Video Card、
・ソリッドステートドライブ:Intel SSD 760P Series(256GB、M.2 80mm PCle 3.0x4、3D2、TLC、
・モニタ:Del U2417H、
・キーボード:Dell、
・マウス:Dell、
・PCケース:Antec P8 ATX、
・電源:Antec NEO650W、
・KVM:MT-viki HK04。
【0057】
TTVプログラミング:GPUパワーサイクル試験を使用して、GPUにストレスを加え、特にポンプアウト問題の監視のためにチップセット上に適用される熱界面材料(TIM)の信頼性を反映したその絶対限界までGPUを押し進めた。この試験は、クラッシュ又は過熱を引き起こして、問題のTIMが通常又は集中的な使用中にそれを行う可能性がないことを確実にする目的で構築された。パワーサイクル試験方法は、その処理能力を完全に利用することによって達成され、カードに利用可能な全ての電力を使用しながら、冷却及び温度を可能な限り高めた。
【0058】
パワーサイクリングプログラムをセットアップするために、以下の機能ソフトウェアは、1つの選択肢に限定されず、無料で、オンラインで簡単にダウンロードすることができる。
・Windowsプラットフォーム上での安定かつ集中的なグラフィックスカード/GPUストレス試験:FurMark、3D Mark又はUnigine Heaven
・GPUモニタ:MSI Afterburner、ASUS GPU Teak II
・ファンコントローラ:SpeedFan
・ループでプログラムを実行するためのAUTOIT
【0059】
パワーサイクル試験は、35~85℃の温度間隔を有する1サイクル当たりについて、2.5分で特定の高温に達する一方、更に2.5分でGPUを着実に冷却することによって行われた。ストレス試験後、GPUカードを分解して、ヒートシンク及びチップセットの両側のTIM形態の劣化を検出した。グラフ解析ソフトウェアを更に実行して、TIMのポンプアウト度に変換することができる欠損面積の全体量を判定することができ、5%面積ポンプアウトのサイクル数を収集した。ポンプアウト面積計算の例は以下の通りであった:
1)ポンプアウトピクチャを得る:
2)ソフトウェアLabelmeを使用して、ダイ面積(A1)及び総ポンプアウト面積(A2)にラベルを付ける:
ポンプアウト比=100×(A1-A2)/A1%を計算する。
【0060】
<合成例1>
25gのエチレンと酢酸ビニルのコポリマー(商品名:Nexxstar(商標)Low EVA-00111ExxonMobilから市販されている、酢酸ビニル含有量が7.5質量%)、及び以下の一般式:
【化6】

で表され、及び300mLのキシレンを1000mL丸底フラスコに添加し、撹拌し、130℃に加熱して、溶液を形成し、その後、80℃に冷却し、10gのNaOHを添加し、混合物を80℃で3時間撹拌し、次いで、10mLのメタノールを添加し、80℃で2.5時間更に撹拌し、その後、500mLのエタノールを添加して、白色固体粉末を形成した。白色粉末を濾過し、アセトン、水、pH7までHCl(水溶液、pH4)、及びアセトンで洗浄した。最終生成物を真空下で一晩乾燥させ、構造を以下のようにFTIRによって確認した:EVOH生成物はアセテート吸収を有さないが、増加したOH吸収を示す。
【化7】
【0061】
<合成例2>
以下の式で表される20gのポリブタジエン(商品名:Nippon Soda Co.,Ltd.から市販されているNISSO-PB GI-3000、Mn=3100、45℃での粘度=31.5Pa・s、Tg=-37℃):
【化8】

を100mL丸底フラスコに添加し、0.01gのジブチルスズジラウレート及び4.01gのイソシアン酸オクタデシルエステルを撹拌しながら添加した。最終混合物を40℃下で5時間撹拌して、最終生成物を得た。原料ポリブタジエン中のヒドロキシ基が消費され、最終生成物中にウレタン基が同定されたことをFTIRにより確認した。
【0062】
[実施例1~4及び比較例1~4]
以下に記載の構成成分を使用して、表1に示される熱界面材料を調製した。
【0063】
以下の構成成分を、構成成分(A)として使用した。
構成成分(a-1):以下の式で表されるポリブタジエン:
【化9】

(商品名:Nippon Soda Co.,Ltd.から市販されているNISSO-PB GI-3000、Mn=3,100、45℃での粘度=31.5Pa・s、Tg=-37℃)
構成成分(a-2):合成例1で調製したポリエチレン。
【0064】
以下の構成成分を、構成成分(A)の比較として使用した。
構成成分(a-3):以下の式で表される水素化ポリブタジエン:
【化10】

(商品名:Nippon Soda Co.,Ltd.から市販されているNISSO-PB BI-3000、Mn=3,300、45℃での粘度=18.0Pa・s、Tg=-44℃)
構成成分(a-4):以下の式で表されるポリブタジエン:
【化11】

(商品名:Cray Valley Co.,Ltd.から市販されているKrasol(登録商標)LBH 5000M、Mn=4500、25℃での粘度=2.5Pa・s、Tg=-45℃)
構成成分(a-5):合成例2で調製したポリブタジエン。
【0065】
以下の構成成分を、構成成分(B)として使用した。
構成成分(b-1):0.2μmの平均粒径を有する酸化亜鉛充填剤(商品名:Zochem LLCから市販されているZOCO 102)
構成成分(b-2):2μmの平均粒径を有する球状アルミニウム充填剤(商品名:TOYO ALUMINUM K.K.から市販されているTCP-02)
構成成分(b-3):9μmの平均粒径を有する球状アルミニウム充填剤(商品名:TOYO ALUMINUM K.K.から市販されているTCP-09)
【0066】
以下の構成成分を、構成成分(C)として使用した。
構成成分(c-1):オクタデカン(融点=約28℃)
構成成分(c-2):ヘキサトリアコンタン(融点=75~78℃)
構成成分(c-3):1-エイコサノール(融点=64~66℃)
構成成分(c-4):1,2-テトラデカンジオール(融点=約67℃)
構成成分(c-5):パラフィンワックス(融点=52~54℃)
【0067】
以下の構成成分を、構成成分(D)として使用した。
構成成分(d-1):n-デシルトリメトキシシラン
【0068】
以下の構成成分を、構成成分(E)として使用した。
構成成分(e-1):ヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名:BASFから市販されているIrganox(登録商標)1010)
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
[実施例5~7及び比較例5~9]
上記構成成分及び下記構成成分を使用して、表2に示す熱界面材料を調製した。
【0072】
以下の構成成分を、構成成分(F)として使用した。
構成成分(f-1):6,500MPa・sの25℃における粘度を有する無水マレイン酸付加液体ポリブタジエン(商品名:Cray Valleyから市販されているRicon(登録商標)130MA8)
構成成分(f-2):ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン
【0073】
以下の構成成分を、構成成分(G)として使用した。
構成成分(g-1):シロキサンオリゴマー(商品名:Dow Silicones Corporationから市販されているDOWSIL(商標)OS-20)
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
表1及び表2の結果によれば、比較熱界面材料(CE1、CE2、CE5、及びCE6)は、本熱界面材料(IE1、IE3、及びIE4)と比較して、抗ポンプアウトが劣っていたため、構成成分(A)のポリオレフィン中のヒドロキシル基が、ポンプアウトを防止するのに重要であることが確認された。比較熱界面材料(CE3及びCE7)は、本熱界面材料(IE1及びIE3)と比較して、ポンプアウトの防止において劣っていたため、イソシアン酸オクタデシルエステルによるヒドロキシルの処理(キャッピング)もまた、この発見を確認した。比較熱界面材料(CE4)は、本熱界面材料(IE1、IE2、及びIE3)と比較して、不十分な抗ポンプアウト性能及びより高いTIを示したため、構成成分(B)の相変化材料、特にヒドロキシル基含有炭化水素ワックスの適切な充填量は、熱伝導率を改善するのに役立ち、ポンプアウトを防止する。
【0077】
しかしながら、0.45質量%の相変化材料(IE5)は合格基準をちょうど満たすが、0.9質量%の相変化材料(CE8)は不合格であったため、相変化材料の高い充填量(これは相変化材料と同じであるは、抗ポンプアウト性能を損なう。比較熱界面材料(CE9)は、本熱界面材料(IE1及びIE6)よりもはるかに高いTIを示し、TTV試験に使用することができないため、カップリング剤も必要である。重要なことは、構成成分(F)相互作用促進剤の充填剤-ポリマー相互作用促進剤の導入が、本熱界面材料(IE6)の抗ポンプアウト性能を更に改善し、構成成分(G)の溶媒の導入が、パッド(IE7)の代わりにグリース様の配合物を可能にすることである。
【0078】
[比較例10~15]
上記構成成分及び下記構成成分を使用して、表3に示す熱界面材料を調製した。
【0079】
以下の構成成分を、構成成分(A)として更に使用した。
構成成分(a-6):以下の式で表されるポリブタジエン:
【化12】

(商品名:Cray Valley Co.,Ltd.から市販されているKrasol(登録商標)H-LBH P 3000、Mn=3,000、25℃での粘度=1.5Pa・s、Tg=-45℃)
【0080】
以下の構成成分を、構成成分(D)として更に使用した。
構成成分(d-2):イソプロピルトリ(ジオクチルピロホスフェート)チタネート
【0081】
以下の構成成分を、架橋剤のための構成成分(H)として使用した。
構成成分(h-1):メチル化メラミン-ホルムアルデヒド樹脂〔商品名:CYTEC Industries Inc.から市販されているCYMEL(登録商標)325樹脂)
【0082】
以下の構成成分を、触媒のための構成成分(I)として使用した。
構成成分(i-1):スルホン酸(商品名:King Industries Inc.から市販されているNACURE(登録商標)155)
【0083】
【表5】
【0084】
【表6】
【0085】
表3の結果によれば、従来技術からの他の比較熱界面材料(CE10~CE14)は、不十分な抗ポンプアウト性能を示したことが確認された。また、構成成分(F)の充填剤-ポリマー相互作用促進剤の過剰な充填量は、TI性能を損なうであろう(CE15)。したがって、本熱界面材料は、TIM用途においてより有望であることを示した。
【0086】
産業上の利用可能性
本発明の熱界面材料は、パワーサイクリング中の電子デバイスにおいて、その温度が上昇するにつれて柔らかくなるが、ポンプアウトを示さない。したがって、熱界面材料は、中央処理装置(CPU)又はグラフィック処理装置(GPU)などの発熱電子部品からヒートシンクなどのヒートスプレッダに熱を伝達するための熱カップリング材料に有用である。
【国際調査報告】