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特表2024-500693極低温条件下でキャリア流体から機械的エネルギを発生させるためのプラント
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】極低温条件下でキャリア流体から機械的エネルギを発生させるためのプラント
(51)【国際特許分類】
   F01K 25/10 20060101AFI20231227BHJP
   F02G 1/055 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
F01K25/10 Q
F02G1/055 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023535978
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-06-14
(86)【国際出願番号】 IB2021061682
(87)【国際公開番号】W WO2022130191
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】102020000031184
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523209586
【氏名又は名称】スィランズ ソチエタ ア ガランツィア リミタータ
【氏名又は名称原語表記】SYLANS SAGL
【住所又は居所原語表記】Via Motta 16, 6830 Chiasso,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】ルッソ,ヴィタリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】ムーティ,ピエトロ
【テーマコード(参考)】
3G081
【Fターム(参考)】
3G081BC17
(57)【要約】
極低温条件下でキャリア流体から機械的エネルギを発生させるためのプラント(1)であって、極低温条件下でキャリア流体を貯蔵するように構成された極低温タンク(10)と、容量タンク(20)とを含むプラント(1)。プラント(1)は、極低温タンク(10)と容量タンク(20)との間の接続として配置された供給回路(30)であって、キャリア流体の圧力を増加させるように構成されたポンプ(31)を含む供給回路(30)をさらに含む。プラント(1)は、機械的エネルギを発生させるように構成された機関本体(40)であって、容量タンク(20)と流体連通して配置された入口ポート(42)と、使用済みキャリア流体のための排出回路(60)に接続された出口ポート(43)とを有する少なくとも1つの作動チャンバ(41)を含む機関本体(40)と、使用済みキャリア流体の一部を容量タンク(20)に送るように設計された再循環回路(70)とを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温条件下でキャリア流体から機械的エネルギを発生させるためのプラント(1)であって、
- 前記極低温条件下で前記キャリア流体を貯蔵するように構成された極低温タンク(10)、
- 容量タンク(20)、
- 前記極低温タンク(10)を前記容量タンク(20)に接続する供給回路(30)であって、前記キャリア流体の圧力を増加させるように構成されたポンプ(31)を含む供給回路(30)、
- 前記機械的エネルギを発生させるように構成された機関本体(40)であって、前記容量タンク(20)と流体連通して配置された入口ポート(42)と、使用済みキャリア流体のための排出回路(60)に接続された出口ポート(43)とを有する少なくとも1つの作動チャンバ(41)を含む機関本体(40)
を含むプラント(1)において、前記使用済みキャリア流体の一部を前記容量タンク(20)に送るように設計された再循環回路(70)を含むことを特徴とするプラント(1)。
【請求項2】
前記供給回路(30)はさらに、前記ポンプ(31)の下流に配置された主熱交換器(32)であって、前記キャリア流体の温度を上昇させ、且つ前記キャリア流体を蒸発させるために、熱源と前記キャリア流体との間の熱交換を促進するように構成された主熱交換器(32)を備える、請求項1に記載のプラント(1)。
【請求項3】
前記機関本体(40)は、
- 前記キャリア流体を受け入れることと、
- 前記キャリア流体の膨張フェーズを生じさせることと、
- 前記キャリア流体の変位及び/又は膨張を機械的エネルギに変換することと、
- 前記使用済みキャリア流体の圧縮フェーズを生じさせることと
を行うように構成される、請求項1または2に記載のプラント(1)。
【請求項4】
前記再循環回路(70)及び/又は前記容量タンク(20)は、前記機関本体(40)と一体である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプラント(1)。
【請求項5】
前記機関本体(40)は、往復運動式である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプラント(1)。
【請求項6】
前記排出回路(60)及び/又は前記供給回路(30)に連結され、且つガス状態のキャリア流体の一部を前記極低温タンク(10)に送るように構成された補充回路(90)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプラント(1)。
【請求項7】
機械的エネルギを発生させるための補助プラントを含み、前記補助プラントは、好ましくは、機関を含み、前記補助プラントは、さらにより好ましくは、前記主熱交換器(32)に連結されるか又は連結可能であるスターリングエンジンであって、前記主熱交換器(32)によって前記キャリア流体に熱を移送するために、前記熱源と前記主熱交換器(32)との間に動作可能に配置されたスターリングエンジンを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のプラント(1)。
【請求項8】
前記機関本体は、前記入口ポート(42)に連結され且つ供給チャンバ(51)に摺動可能に挿入された供給弁(46)を含み、前記供給チャンバは、上方で前記作動チャンバ(41)に面し、前記供給弁(46)は、前記供給弁(46)の閉構成において、前記作動チャンバ(41)から前記供給チャンバ(51)を遮断するように構成された下部平面要素(46a)と、ステム(46b)であって、前記供給弁(46)の前記閉構成において、前記入口ポート(42)を、当該ステム(46b)に形成された空洞(46c)と連通させるために、前記入口ポート(42)に面するように構成された貫通穴(46d)を有するステム(46b)とを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項9】
極低温条件下でキャリア流体から機械的エネルギを発生させる方法であって、
- 極低温度Tcryo及び圧力レベルPcryoの流体を収容する極低温タンク(10)を準備する予備ステップ、
- 容量タンク(20)を準備する予備ステップ、
- 膨張フェーズ及び圧縮フェーズを生じさせるように設計された機関本体(40)を準備する予備ステップ、
- 圧力レベルPrec及び供給温度Trecの質量M2を前記容量タンク(20)に供給する予備ステップ
を含み、
- 前記PcryoレベルからPprocレベルまで前記キャリア流体の圧力を上昇させる循環ステップであって、Pprocは、Pcryo及びPrecを上回る、循環ステップ、
- 圧力レベルPprocの作動流体の質量M1を前記容量タンク(20)に供給する循環ステップ、
- 前記キャリア流体の質量M1及びM2を混合し、供給温度Tfeed及び圧力レベルPfeedの質量M1+M2を得る循環ステップ、
- 前記圧力レベルPfeed及び供給温度Tfeedの前記キャリア流体の質量M1+M2を前記容量タンク(20)から前記機関本体(40)に供給する循環ステップ、
- 前記レベルPfeedから、Pfeedを下回るレベルPexまで前記圧力を下降させ、且つTfeedから、Tfeedを下回るTexまで前記温度を下降させるために、前記機関本体(40)内の前記キャリア流体の質量M1+M2を膨張させ、機械的エネルギを発生させる循環ステップ、
- 前記流体の質量M1を外部環境に向かって排出する循環ステップ、
- 前記レベルPexから前記レベルPrecまで前記圧力を上昇させ、且つTexからTrecまで前記温度を上昇させるために、前記流体の質量M2を圧縮して、前記圧力レベルPrec及び供給温度Trecの前記質量M2を前記容量タンク(20)に供給する循環ステップ
も含む方法。
【請求項10】
前記キャリア流体の前記圧力を上昇させる前記循環ステップの後で且つ前記容量タンク(20)に供給する前記循環ステップの前に、
- Tcryoから第1のプロセス温度Tproc1まで前記キャリア流体の温度を上昇させるさらなる循環ステップであって、Tproc1は、Tcryoを上回る、さらなる循環ステップ、
- Tproc1から第2のプロセス温度Tproc2まで前記キャリア流体の前記温度を上昇させるさらなる循環ステップであって、Tproc2は、Tproc1を上回る、さらなる循環ステップ、を含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記キャリア流体は、窒素である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
圧力レベルについて、
- 圧力レベルPatmは、大気圧に略等しく、及び
- 前記圧力レベルPprocは、約300bar~約400barの範囲の値を有し、
- 前記圧力レベルPfeedは、約250bar~約300barの範囲の値を有し、
- 前記圧力レベルPexは、約2bar~約4barの範囲の値を有し、
温度レベルについて、
- 前記温度Tcryoは、約-205℃であり、
- 前記温度Tproc1は、約-80℃であり、
- 前記温度Tproc2は、約+70℃であり、
- 前記温度Trecは、約+680℃であり、
- 前記温度Tfeedは、約+480℃であり、及び
- 前記温度Texは、約-20℃~約+20℃の範囲である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記キャリア流体は、メタンである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
圧力レベルについて、
- 圧力レベルPatmは、大気圧に略等しく、及び
- 前記圧力レベルPprocは、約200bar~約220barの範囲の値を有し、
- 前記圧力レベルPfeedは、約150bar~約200barの範囲の値を有し、
- 前記圧力レベルPexは、約2bar~約4barの範囲の値を有し、
温度レベルについて、
- 前記温度Tcryoは、約-130℃~約-90℃の範囲であり、
- 前記温度Tproc1は、約-40℃~約-30℃の範囲であり、
- 前記温度Trecは、約+360℃であり、
- 前記温度Tfeedは、約+280℃~約+300℃の範囲であり、及び
- 前記温度Texは、約-20℃~約+20℃の範囲である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温条件下でキャリア流体から機械的エネルギを発生させるためのプラント及び方法に関する。
【0002】
用語「極低温条件」は、低温状態のキャリア流体、特に当該キャリア流体の臨界点温度より低い温度の、大気圧に略等しい低圧状態のキャリア流体を意味するように意図されている。
【0003】
さらに、用語「キャリア流体」は、例えば、窒素、酸素、アンモニアなど、極低温液の系統に属する流体及び例えばメタンなど、室温をはるかに下回る臨界温度を有する一般的な流体を意味するように意図されている。
【0004】
本発明は、例えば、発電、推進(陸地、鉄道、船)、産業機械の運搬又は極低温条件下の流体(例えば、メタンタンカーでの輸送後のメタン)の高効率の再ガス化を含む様々な用途で使用される。
【背景技術】
【0005】
圧縮空気によって駆動される機関が知られている。歴史的な例は、Naples-Portici鉄道線路の機関車で表され、その圧縮空気機関は、圧縮空気から機械的エネルギを得るために、加圧タンクに貯蔵され且つ機関サイクルにより必要とされる圧縮空気の量を計測する分配器によって取り込まれた圧縮空気によって駆動された。
【0006】
このシステムに関する深刻な問題は、安全性の問題のため、最大12barの比較的低い圧力でのみ供給可能であったことである。低い圧力のため、圧縮空気の充填について、タンクに入れることができる量は限られていたことから、動作の自律性が限られていた。
【0007】
さらに、タンクからの圧縮空気の累進的な抽気は、それ自体、空気圧の減少を導き、機関が停止するまで機能が低下した。
【0008】
さらなる問題は、タンクから取り込む空気の高い消費量と関連していた。実際、キャリアガスとして取り込まれる圧縮空気の直接の使用は、いかなる節約も可能にしなかった。
【0009】
別の問題は、圧縮機によって供給される圧縮空気の供給コストであり、それは、知られているように、効率が低く、非常に高い供給コストを含んでいた。
【0010】
さらに、この解決策では、機関から得られる動力を増加させるために、空気圧を増加させたとしても、圧縮空気の使用と関連する他の問題が依然としてあった。
【0011】
第1の問題は、空気の膨張及び温度の関連する低下が、水の結露及び二酸化炭素を発生させる可能性があることであり、それは、特定の値で機関の動作を中断させる可能性がある。第2の問題は、機関排気口で排気ガスが達する低温に関連し、それは、安全性の問題及び/又は環境被害をもたらす可能性がある。これらの理由のため、空気は、決して10~12barを超えて圧縮されない。
【0012】
したがって、圧縮空気機関の成功は、安全性の理由のため、燃料及び/又は電動モータの使用が推奨されない、例えば炭鉱などでの用途に限定されている。基本的に、圧縮空気機関のこの系統は、圧縮空気の消費量の大きい圧縮空気機関の系統である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
これに関連して、本発明の基礎をなす技術的課題は、先行技術の上記の欠点を解決する、極低温条件下でキャリア流体から機械的エネルギを発生させるためのプラント及び方法を提案することである。
【0014】
特に、本発明の目的は、極低温条件下でキャリア流体から機械的エネルギを効率的且つ連続的に発生させるためのプラント及び方法を提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、極低温条件下でキャリア流体から機械的エネルギを発生させるためのプラント及び方法であって、プラント自体の排出時の結露及び/又は「氷」問題がないプラント及び方法を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、極低温条件下でキャリア流体から機械的エネルギを発生させるためのプラント及び方法であって、非常に少ないキャリア流体の消費で動作する傾向があるプラント及び方法を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、極低温条件下でキャリア流体から機械的エネルギを発生させるためのプラント及び方法であって、環境に影響を及ぼさないプラント及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
指定された技術的課題及び目的は、極低温条件下でキャリア流体から機械的エネルギを発生させるためのプラントであって、前記極低温条件下で前記キャリア流体を貯蔵するように構成された極低温タンクと、容量タンクとを含むプラントによって実質的に実現される。プラントは、極低温タンクと容量タンクとの間の接続として配置された供給回路であって、キャリア流体の圧力を増加させるように構成されたポンプを含む供給回路をさらに含む。プラントは、機械的エネルギを発生させるように構成された機関本体であって、容量タンクと流体連通して配置された入口ポートと、使用済みキャリア流体のための排出回路に接続された出口ポートとを有する少なくとも1つの作動チャンバを含む機関本体と、使用済みキャリア流体の一部を容量タンクに送るように設計された再循環回路とを提供する。
【0019】
さらに、指定された技術的課題及び目的は、極低温条件下でキャリア流体から機械的エネルギを発生させる方法であって、
- 極低温度Tcryo及び圧力レベルPcryoの流体を収容する極低温タンクを準備する予備ステップ、
- 容量タンクを準備する予備ステップ、
- 膨張フェーズ及び圧縮フェーズを生じさせるように設計された機関本体を準備する予備ステップ、
- 圧力レベルPrec及び供給温度Trecの質量M2を容量タンクに供給する予備ステップ
を含む方法によって実質的に実現される。
【0020】
方法は、
- PcryoレベルからPprocレベルまでキャリア流体の圧力を上昇させる循環ステップであって、Pprocは、Pcryo及びPrecを上回る、循環ステップ、
- 圧力レベルPprocのキャリア流体の質量M1を容量タンクに供給する循環ステップ、
- キャリア流体の質量M1及びM2を混合し、供給温度Tfeed及び圧力レベルPfeedの質量M1+M2を得る循環ステップ、
- 圧力レベルPfeed及び供給温度Tfeedのキャリア流体の質量M1+M2を容量タンクから機関本体に供給する循環ステップ、
- レベルPfeedから、Pfeedを下回るレベルPexまで圧力を下降させ、且つTfeedから、Tfeedを下回るTexまで温度を下降させるために、機関本体内のキャリア流体の質量M1+M2を膨張させ、機械的エネルギを発生させる循環ステップ、
- 流体の質量M1を外部環境に向かって排出する循環ステップ、
- レベルPexからレベルPrecまで圧力を上昇させ、且つTexからTrecまで温度を上昇させるために、流体の質量M2を圧縮して、圧力レベルPrec及び供給温度Trecの前記質量M2を容量タンクに供給する循環ステップ
も含む。
【0021】
本発明のさらなる特徴は、添付の図面に示されるように、このような装置の好ましいが、排他的ではない実施形態の指示的且つしたがって非限定的な説明からより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による、機械的エネルギを発生させるためのプラントの好ましい実施形態を概略的に示す。
図2A-2C】図1のプラントの構成要素のそれぞれの図を示す。
図3A-3F】異なる動作構成における、図2A~2Cの構成要素のそれぞれの図を示す。
図4図1のプラントのオープン作動サイクルのモリエ線図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付図に関して、参照番号「1」は、全体として、極低温条件下でキャリア流体から機械的エネルギを発生させるためのプラントを示す。
【0024】
用語「極低温条件」は、低温状態のキャリア流体、特にキャリア流体の臨界点温度より低い温度の、大気圧に略等しい低圧状態のキャリア流体を意味するように意図されている。
【0025】
さらに、用語「キャリア流体」は、例えば、窒素、酸素、アンモニアなど、極低温液の系統に属する流体及び例えばメタンなど、室温をはるかに下回る臨界温度を有する一般的な流体を意味するように意図されている。
【0026】
図1に示されるように、プラント1は、極低温タンク10と、容量タンク20と、極低温タンク10を容量タンク20に接続し且つポンプ31を含む供給回路30と、機関本体40と、排出回路60と、再循環回路70とを含む。
【0027】
極低温タンク10は、上述の極低温条件下でキャリア流体を貯蔵するように構成される。
【0028】
通常の動作状態下では、極低温タンク10内のキャリア流体の略すべては、液体状態である。しかしながら、以下で分かるように、極低温タンク10内に貯蔵されるキャリア流体の比較的小さい割合は、ガス状態で提供され得るか、又は必要に応じて、キャリア流体は、固体状態に変換され得る。
【0029】
有利には、キャリア流体は、周囲圧力に略等しい圧力で極低温タンク10に貯蔵されるため、加圧タンクに関する問題が解決される。
【0030】
寸法形状に関して、極低温タンク10のサイズは、プラントの使用並びに空間及び自律性要件に応じて「アドホックに」確定することができる。
【0031】
有利には、キャリア流体の略すべてが実質的に液体状態で貯蔵されるため、大量に蓄えることが可能である。
【0032】
実際、同じ容積では、液体状態のキャリア流体は、ガス状態の同じキャリア流体の何百倍も大きい質量を有する。
【0033】
本発明の1つの態様によると、極低温タンク10は、極低温タンク10内で大気圧より低い圧力を得るために、極低温タンク10からガス状態のキャリア流体の一部を抽出するように構成された吸引真空ポンプ11を含み得る。
【0034】
特に、前記真空ポンプ11は、キャリア流体の液体部分の上にあるキャリア流体のガス状部分から抜き取るように、極低温タンク10の上部分に動作可能に配置することができる。
【0035】
前記真空ポンプ11の好ましい使用により、それを使用して、極低温タンク10内の圧力及び温度状態を作り出すために例えばキャリア流体の三重点熱力学状態を決定することができる。
【0036】
さらにより好ましくは、真空ポンプ11は、極低温タンク10において、三重点熱力学状態を決定する圧力及び温度よりも低い圧力及び温度に到達するように使用され得る。
【0037】
この特徴は、非限定的な例として、船の用途で有利に使用することができ、共振現象を制限又はさらに排除して、船の転覆を防ぐために、極低温タンク10内に貯蔵されるキャリア流体を少なくとも部分的に固化する必要がある。
【0038】
この状態は、調整可能である。
【0039】
極低温タンク10を容量タンク20に接続する供給回路30は、極低温タンク10の下流に動作可能に配置される。
【0040】
一般に、供給回路30は、エネルギの視点から有利に使用可能にするために、キャリア流体の熱力学的条件を修正するように構成される。
【0041】
供給回路30は、キャリア流体の圧力を上昇させるように構成された前述のポンプ31を備える。
【0042】
好ましくは、供給回路30はさらに、ポンプ31の下流に動作可能に配置された主熱交換器32であって、キャリア流体の温度を上昇させ、且つキャリア流体を蒸発させる、好ましくはキャリア流体を完全に蒸発させるために、熱源とキャリア流体との間の熱交換を促進するように構成された主熱交換器32を備える。
【0043】
ポンプ31は、極低温タンク10内に動作可能に配置され得るか、又は導管を介して極低温タンク10と流体連通して動作可能に配置され得る。
【0044】
特に、ポンプ31は、極低温タンク10から液体状態のキャリア流体を引き出すことができるように動作可能に配置される。
【0045】
逆止め弁33も極低温タンク10とポンプ31との間に設けられ得る。
【0046】
有利には、この逆止め弁33は、極低温タンク10の方への「逆流」を引き起こすことなく、したがってキャリア流体が供給回路30から極低温タンク10に戻ることにより、極低温タンク10内の圧力が上昇することなく、ポンプ31を断続的に使用することを可能にする。これにより、極低温タンク10のサイズおよび断熱に最適な方法で対処することができる。
【0047】
有利には、実質的に非圧縮性の液体に対して作用することにより、ポンプ31は、全体として、プラント1によって発生する機械的エネルギと比較して、無視できる程度の動作エネルギコストのみ必要とする。
【0048】
さらなる態様によると、ポンプ31は、機関本体40の速度に従って制御及び調整することができる。
【0049】
機能的に、以下で詳細に説明されるように、ポンプ31は、液体状態の高圧キャリア流体を得るためにキャリア流体の圧力の上昇を引き起こす。
【0050】
好ましくは、キャリア流体は、通常、超臨界圧力値にされる。
【0051】
この変換は、図4においてセグメントABによってモリエ線図上で示される。
【0052】
逆止め弁34は、ポンプ31と主熱交換器32との間に配置され得る。
【0053】
逆止め弁34は、熱交換器32から戻るガス状態のキャリア流体であり得る逆流及びポンプ31の影響による、供給回路30を通して流れるキャリア流体に対する作用によって引き起こされる、ポンプ31上の負荷を取り除くように構成され得る。
【0054】
主熱交換器32は、高圧の液体キャリア流体を加熱して、その状態変化を促進するように構成される。
【0055】
特に、主熱交換器32は、液体状態からガス状態、好ましくは超臨界ガス相へのキャリア流体の状態変化を促進するように構成される。
【0056】
特に、主熱交換器32は、キャリア流体が到達する温度をその臨界温度より高くする。
【0057】
有利なことに、さらに、主熱交換器32は、キャリア流体の圧力を、ポンプ31の作動に続いて得られる値に対して略一定に維持するように構成される。
【0058】
本明細書において、用語「熱源」は、ポンプ31の出口のキャリア流体より高い、好ましくはキャリア流体の臨界温度より高い温度を有する任意の熱源を意味するように意図されている。
【0059】
この熱源は、目的に適している限り、任意の性質のものであり得る。
【0060】
例示的な且つしたがって非限定的な実施形態によると、大気又は海水は、知られているメタン再ガス化用途の場合のように使用することができる。
【0061】
さらなる実施形態によると、主熱交換器32は、実質的にゼロコストで熱エネルギを得るために、例えば熱源としての役割を果たすソーラコレクタプラントと関連付けることができる。
【0062】
さらなる実施形態によると、プラント1は、機械的エネルギを発生させるために、図に示されない、主熱交換器32と関連付けられた又は関連付けることができる補助プラントを含み得、それは、冷たい熱源としての役割を果たすそれ自体の廃熱を主熱交換器32に移送する。
【0063】
好ましくは、機械的エネルギを発生させるためのこの補助プラントは、スターリングエンジンを含む。
【0064】
特に、スターリングエンジンは、熱源と主熱交換器32との間に配置される。
【0065】
特に、スターリングエンジンは、スターリングエンジンの膨張チャンバにエネルギを供給するために熱源からの熱を使用する一方、スターリングエンジンの圧縮チャンバからエネルギを引き取るために主熱交換器32を使用する。換言すれば、キャリア流体は、冷熱源としての役割を果たし、スターリングエンジンから熱を抽出する。
【0066】
スターリングエンジンがある場合、大気及び/又は海水より高い温度の熱源を提供することが特に有利であり得る。例えば、熱源は、ソーラコレクタ又は他の発生サイクルからの熱回収のための低エンタルピープラントを含み得る。
【0067】
構造的に、主熱交換器32は、目的に適している限り、任意の知られている種類の構成に従って作ることができる。
【0068】
機能的に、主熱交換器32内では、キャリア流体の加熱は、基本的に2つのステップで起こる。
【0069】
第1のステップでは、高圧の液体キャリア流体は、主熱交換器によって熱源から熱を受け取り、状態変化を経て液体からガス状態に変わる。
【0070】
この状態変化は、高圧のガス状キャリア流体が「液圧プレス」効果をもたらすことを可能にする。
【0071】
実際、液体状態のキャリア流体の容積は、ガス状態のキャリア流体の同じ質量によって占められる容積の数百分の一より小さい。
【0072】
したがって、第2の加熱ステップでは、高圧のガス状キャリア流体の温度をさらに上昇させるために、この増幅効果が使用される。
【0073】
この変換は、図4においてセグメントBCによってモリエ線図上で示される。
【0074】
したがって、機能的に、供給回路30は、極低温タンク10からの低圧の液体キャリア流体を高圧のキャリア流体に、好ましくは高圧のガス状キャリア流体に変換する。
【0075】
要約すると、極低温タンク10に貯蔵されたキャリア流体は、極低温条件下にあり、すなわち極低温であり、当該キャリア流体の融解温度より高く、大気圧に略等しい圧力である。
【0076】
換言すれば、極低温条件下のキャリア流体は、有利に使用され且つ機械仕事を直接得るような状態ではない。
【0077】
供給回路30を使用することにより、キャリア流体の圧力は、ポンプ31によって上昇し、好ましくは、温度は、(存在する場合には)主熱交換器32によって変わる。さらに、主熱交換器32は、キャリア流体の液体からガスへの状態変化を促進する。
【0078】
このように、供給プラントの出口におけるキャリア流体は、「元液体」状態(すなわち高圧で且つ好ましくはガス状態(ただしガス状態に限定するものではない))である。この状態は、図4において参照番号「C」で示される。
【0079】
容量タンク20は、主熱交換器32の下流に動作可能に配置され、主熱交換器32と流体連通する。
【0080】
図1に示されるように、さらに、供給回路30は、計量タンク73と、供給回路30を遮断するように構成された弁72と、計量タンク73と容量タンク20との間に配置された弁73とを含み得る。
【0081】
容量タンク20は、機関本体40に有利に供給するために、供給回路30から「元液体」キャリア流体の所定の量を収集して、再循環回路70によって機関本体40から回収された再循環キャリア流体の量と混合するように構成される。
【0082】
換言すれば、前記容量タンク20は、「供給キャリア流体」として定義されるキャリア流体の所定の量を得るために、「元液体」キャリア流体及び再循環キャリア流体を混合するように好適に寸法決めされる。
【0083】
さらに、前記容量タンク20は、機関本体40が供給すべき供給キャリア流体を計量するのに好適な大きさである。
【0084】
「供給キャリア流体」として定義されるこのキャリア流体は、「元液体」キャリア流体及び再循環キャリア流体の圧力及び温度状態を平均した圧力及び温度状態を有する。この「供給」状態は、図4において参照番号「E」で示される。
【0085】
再循環回路70の特徴及び「元液体」キャリア流体と再循環キャリア流体との量比は、以下に詳細に示される。
【0086】
「再循環」状態は、図4において参照番号「D」で代わりに示される。
【0087】
機関本体40は、機械的エネルギを発生させるように構成されており、容量タンク20であって、それから供給キャリア流体が供給される容量タンク20と流体連通して配置される入口ポート42と、図4において参照番号「G」で示される、使用済みキャリア流体のための排出回路60に接続された出口ポート43とを有する少なくとも1つの作動チャンバ41を含む。
【0088】
「元液体」キャリア流体の膨張は、図4において参照番号「EG」で示される。
【0089】
作動チャンバ41は、少なくとも1つの可動壁44により、供給キャリア流体の膨張及び/又は移動を機械仕事に変換するように構成される。
【0090】
好ましくは、可動壁44は、上死点と下死点との間で移動するようになっている。代わりに、可動壁44は、軸を中心に回転するようにされ得る。
【0091】
用語「使用済みキャリア流体」は、この変換後の状態下のキャリア流体を意味するように意図されており、キャリア流体は、環境への放出に適した低エンタルピー並びに温度及び圧力状態を有する。
【0092】
機関本体40は、必要な目的に適している限り、任意の種類に従って作ることができる。
【0093】
好ましい実施形態によると、機関本体40は、往復運動式である。
【0094】
特にそれ自体知られている方法において、機関本体40は、供給弁46と関連付けられた入口ポート42と、排出弁47と関連付けられた出口ポート43とを有する作動チャンバ41を画定する少なくとも1つのシリンダ45を含む。シリンダ45は、シリンダ45内で摺動可能に拘束されて、それぞれの可動壁44と一体であるピストン48と、ピストン48に拘束された接続ロッド49とを格納する。最後に、接続ロッド49は、ドライブシャフト50に拘束される。
【0095】
機能的に、機関本体40は、供給キャリア流体に対する機関本体40の変換作業が2つの別個の動作ステップに実質的に分けることができるように構成される。
【0096】
第1の動作ステップでは、供給弁46が開かれて、容量タンク20からの高圧供給キャリア流体が機関本体40の作動チャンバ41に送られ、それは、可動壁44の第1の移動、したがってドライブシャフト50の第1の移動を引き起こす。
【0097】
これは、力学的質量移送現象であるため、この第1の動作ステップでは、供給キャリア流体の圧力、温度及びエンタルピーは、略一定と考えることができる。
【0098】
換言すれば、機械的エネルギは、供給キャリア流体の質量の作動チャンバ41への移送の結果として発生する。
【0099】
さらに、第1の動作ステップでは、供給キャリア流体は、熱力学変換を経ないが、圧力及びエンタルピーを略一定に維持する。
【0100】
第1の動作ステップが完了した後、第2の動作ステップが開始される。この第2の動作ステップは、ポリトロープ変換に類似の変換からなり、それは、機械仕事を作動チャンバ41の可動壁44と交換する。
【0101】
特に、第2の動作ステップでは、供給キャリア流体のエンタルピーの一部は、機械的エネルギに変換される。
【0102】
特に、供給キャリア流体の温度及び圧力が下降し、キャリア流体は、使用済みキャリア流体とみなすことができる。
【0103】
第2の動作ステップでは、容量タンク20から作動チャンバ41への供給キャリア流体の質量の移送が終わるため、作動チャンバ内のキャリア流体の質量は、一定であると考えることができる。
【0104】
この第2の膨張動作ステップで得られる機械的エネルギは、第1の移送動作ステップで得られる機械的エネルギに比べてごくわずかである。
【0105】
以下の説明では、機関本体40の移動サイクルは、その回転中にドライブシャフト50によって想定される角度の関数と説明され、それは、時計回り方向に発生する。
【0106】
特に、可動壁44が上死点にあるドライブシャフト50の位置は、0度の角度と想定される。
【0107】
特に、第1の動作ステップでは、ドライブシャフト50は、12度から50度まで移動する一方、第2の動作ステップでは、ドライブシャフト50は、50度から180度まで移動する。
【0108】
添付図に示されていないさらなる実施形態によると、機関本体40は、流動機関式であり得る。
【0109】
本実施形態において、第1の動作ステップ及び第2の動作ステップは、略同時に生じる。
【0110】
動作ステップが完了すると、使用済みキャリア流体は、排出回路60に少なくとも部分的に送られる。排出回路60は、図4のモリエ線図において参照番号「F」で示されている状態下でキャリア流体を環境に排出するように設計される。排出回路60は、使用済みキャリア流体のための収集タンク61と、使用済みキャリア流体をプラント1から少なくとも部分的に排出するように設計された排出ダクトとを含み得る。
【0111】
排出回路60は、排出弁62をさらに含み得る。
【0112】
本発明のさらなる態様によると、プラント1は、プラントの運転を止めるように構成された、機関本体40の動作を止めるためのシステム80を含み得る。
【0113】
好ましくは、停止システム80は、極低温タンク10からのキャリア流体の抽出、したがってプラント1への供給をブロックできるようにポンプ31と関連付けることができる。
【0114】
停止システム80は、停止システム80に接続された弁74を通しても作動することができる。
【0115】
本発明の1つの態様によると、プラント1は、排出回路と関連付けられて、排出回路60を通過する使用済み流体の一部、特に収集タンク61を通過する使用済み流体の一部を極低温タンク10に補充するように構成された補充回路90を含み得る。
【0116】
代わりに、プラント1は、供給回路と関連付けられて、(存在する場合に)主熱交換器32を出たガス状キャリア流体の一部を極低温タンク10に補充するように構成された補充回路90を含み得る。
【0117】
有利には、補充回路90は、極低温タンク10の圧力低下が、ポンプ31によって生じる液体キャリア流体の抽気のために、極低温タンク10内の圧力を過度に低下させることを防ぎ、それにより例えばキャリア流体の凝固に関する問題を回避する。
【0118】
実際、補充回路90によって極低温タンク10に導入されるガス状態のキャリア流体は、ポンプ31で抽出される液体状態のキャリア流体を差し引いて、極低温タンク10内の圧力を略一定に維持する。
【0119】
有利には、さらに、補充回路90は、ポンプが、例えばプラント1の運転のために必要とされる液体状態のキャリア流体の瞬間的な消費によって引き起こされる圧力低下のバランスをとる量を極低温タンク10から抜き取ることを可能にする。
【0120】
換言すれば、ポンプ31が極低温タンク10からキャリア流体を引き抜くと、極低温タンク10の動作圧力は、ポンプ31で引き抜かれた液体状態のキャリア流体の容積を、再統合されたガス状態の使用済みキャリア流体の容積と置き換えることによって回復する。
【0121】
流れ遮断及び調整のためのパイロット操作弁は、排出回路60及び補充回路90で流れの調整のために動作可能に配置することができる。
【0122】
本発明の特定の態様によると、再循環回路70は、機関本体40の作動チャンバ41から引き抜かれた使用済みキャリア流体の一部を容量タンク20に送るように設計される。
【0123】
有利には、再循環回路70の使用により、排出回路60から大気中に排出された使用済みキャリア流体は、環境に安全で適した温度及び圧力状態を有することができる。換言すれば、使用済みキャリア流体は、プラント1及び環境を傷つけない圧力及び温度で排出される。
【0124】
実際、再循環回路70は、作動チャンバ41から使用済みキャリア流体の一部を引き抜き、その温度及び圧力を上昇させる、図4において参照番号「GD」でモリエ線図に示されているポリトロープ圧縮後、容量タンク20にそれを導入するように構成される。容量タンク20では、再循環キャリア流体は、供給回路30からの「元液体」キャリア流体と混合し、それによりその圧力及び温度を上昇させる。キャリア流体のこの状態は、図4において参照番号「D」でモリエ線図に示される。
【0125】
実際、再循環キャリア流体の温度は、ポリトロープ圧縮後、供給回路30からの「元液体」キャリア流体の温度より高い。
【0126】
対照的に、再循環キャリア流体の圧力は、供給回路30からの「元液体」キャリア流体の圧力より低い。
【0127】
再循環キャリア流体の、供給回路30からの「元液体」キャリア流体との混合は、供給キャリア流体を定義するように所定の制御された方法で起こる。
【0128】
換言すれば、再循環キャリア流体及び供給回路30からのキャリア流体の量は、以下で説明されるように所定の相互比率を満たさなければならない。
【0129】
好ましい実施形態によると、再循環キャリア流体と「元液体」キャリア流体との間のこの質量比は、23~1である。
【0130】
ポリトロープ圧縮は、プラント1の実施形態に応じて、好適な圧縮機又は有利には機関本体40により、ピストン48の下死点から上死点までの戻り行程を使用して実行することができる。
【0131】
プラント1の2つの実施形態は、極低温タンク10及び供給回路30の特性が略同じであるため、機関本体40及び再循環回路70の技術特性に特に注目して以下に詳細に記載される。
【0132】
第1の実施形態は、図1、2A~2C及び3A~3Fに概略的に示されている。
【0133】
本実施形態において、機関本体は、図2A~2Cに示されている前述の往復運動式である。
【0134】
本実施形態において、機関本体40は、
- 供給キャリア流体を受け入れることと、
- 供給キャリア流体の膨張フェーズを生じさせることと、
- 供給キャリア流体の変位及び/又は膨張を機械的エネルギに変換することと、
- 使用済みキャリア流体の圧縮フェーズを生じさせることと
を行うように構成される。
【0135】
換言すれば、機関本体40は、供給キャリア流体に対する第1及び第2の動作ステップ並びにポリトロープ圧縮ステップを実行するように構成される。
【0136】
さらに、本実施形態において、機関本体40は、再循環回路70と一体であり、減勢及び混合タンク20と一体である。
【0137】
換言すれば、容量タンク20及び再循環回路70は、機関本体40内に形成され、その構成要素の動作及び移動によって定義される。
【0138】
詳細には、機関本体40は、供給チャンバ51と排出チャンバ52とを有し、それらは、シリンダ内に形成され、それぞれ作動チャンバ41と入口ポート42との間及び作動チャンバ41と出口ポート43との間に配置される。
【0139】
供給弁46及び排出弁47は、それぞれ供給チャンバ51及び排出チャンバ52と関連付けられる。
【0140】
特に、弁46、47のそれぞれは、ポペット弁であり、作動チャンバ41からの気密性分離を画定するために、それぞれのチャンバ51、52の底部を閉じるように構成された下部平面要素46a、47aと、下部平面要素46a、47aと一体のステム46b、47bとを含む。
【0141】
弁46、47のそれぞれは、直線状軌道による並進移動を定義するために、それぞれのチャンバ51、52において摺動可能に拘束される。
【0142】
入口ポート42は、機関本体40の上部において機関本体40に形成され、供給チャンバ51の長手方向軸に対して略横断方向である。
【0143】
同様に、出口ポート43は、機関本体40の上部において機関本体40に形成され、排出チャンバ52の長手方向軸に対して略横断方向である。
【0144】
供給弁46は、特定の構造的態様によると、第1の格納容積「V1」を画定する、ステム46b内に形成された空洞46cを有する。ステム46bは、好ましくは、ステム46bの短手方向に形成される、前記空洞46cに対する貫通穴46dも有する。
【0145】
弁は、空洞46cを閉じるための閉鎖要素46eも有する。
【0146】
好ましくは、この閉鎖要素46eは、ねじ切りされており、空洞46c内でどの程度締め付けるかに応じて第1の格納容積「V1」のサイズを調整することができる。
【0147】
供給チャンバ51は、供給弁46とともに第2の格納容積「V2」を画定する。換言すれば、この第2の格納容積「V2」は、供給弁46の大きさ及び第1の格納容積「V1」が差し引かれた供給チャンバ51の容積として定義される。
【0148】
本実施形態において、このように定義された第1の格納容積「V1」及び第2の格納容積「V2」は、容量タンク20を定義する。
【0149】
本発明のさらなる態様によると、第1の格納容積「V1」と第2の格納容積「V2」との寸法比は、1~23である。
【0150】
供給弁46は、4つのそれぞれの動作構成をとることができるように供給チャンバ51内を移動可能である。
【0151】
特に、供給弁46は、図2cに示される、第1の構成としても定義される閉構成をとることができ、この場合、貫通穴46dは、機関本体40の入口ポート42に面し、下部平面要素46aは、底部で供給チャンバ51を閉じている。さらに、この閉構成において、ステム46bは、機関本体40の壁に実質的に付着しており、頂部で供給チャンバ51を閉じている。
【0152】
供給弁46は、下げられると、第2の構成をとることができ、この場合、貫通穴46dは、入口ポート42に面しておらず、入口ポート42は、ステム46bによって閉じられており、下部平面要素46aは、底部で供給チャンバ51を閉じている。この構成において、ステム46bは、第1の格納容積「V1」が第2の格納容積「V2」と流体連通しないように、頂部で供給チャンバ51を依然として閉じている。
【0153】
供給弁46は、さらになお下げられると、第3の構成をとることができ、この場合、貫通穴46dは、入口ポート42に面しておらず、入口ポート42は、ステム46bによって閉じられており、下部平面要素46aは、底部で供給チャンバ51を閉じている。この構成において、第1の格納容積「V1」は、第2の格納容積「V2」と流体連通している。
【0154】
最後に、供給弁46は、第4の構成としても定義される開構成をとることができ、この場合、ステム46bは、入口ポート42を閉じ、第1の格納容積「V1」及び第2の格納容積「V2」は、作動チャンバ41と流体連通している。
【0155】
他方で、排出弁47は、2つの動作構成をとることができる。
【0156】
特に、排出弁47は、排出弁47が底部で供給チャンバ52及び出口ポート43を閉じている閉構成と、出口ポート43が作動チャンバ41と流体連通している開構成とをとることができる。
【0157】
有利には、添付図に示されるように、さらなる構造的態様に従い、開構成では、供給弁46又は排出弁47は、少なくとも部分的に作動チャンバ41に入る可能性があるため、複数の凹部が可動壁44上に形成され、凹部は、供給弁46及び排出弁47に当接しないように、供給弁46及び排出弁47に対して相補的に少なくとも部分的に形作られている。
【0158】
機関本体40の上記の実施形態の移動サイクルは、以下で詳細に記載される。
【0159】
以下の説明では、機関本体40の移動サイクルは、その回転中にドライブシャフト50によって想定される角度の関数と説明され、それは、時計回り方向に発生する。
【0160】
特に、可動壁44が上死点にあるドライブシャフト50の位置は、0度の角度と想定される。
【0161】
特に、図3Aは、供給弁46が閉構成又は第1の構成であり、排出弁47が閉構成である最初のステップを示す。
【0162】
このステップでは、再循環キャリア流体は、第2の格納容積「V2」内にある。
【0163】
第1の格納容積「V1」は、供給回路30から入口ポート42を通した「元液体」キャリア流体で満たされている。
【0164】
好ましくは、プラント1の好ましい使用によると、「元液体」キャリア流体と再循環キャリア流体との質量比は、1~23である。有利には、これにより、消費を非常に少なくすることができる。
【0165】
可動壁44は、上死点に近い。
【0166】
本ステップ中、ドライブシャフト50は、356度の角度から6度の角度まで移動する。
【0167】
図3Bは、排出弁47が閉構成である、移動サイクルの次のステップを示す。本ステップ中、供給弁46は、最初に、入口ポート42を閉じるために第2の構成に切り換えられ、次いで第1の格納容積「V1」が第2の格納容積「V2」と流体連通するように第3の構成に切り換えられる。この構成では、再循環キャリア流体は、供給回路30からの「元液体」キャリア流体と混合することができ、それにより供給キャリア流体を得る。
【0168】
このステップは、上記の機関本体40の第1の動作ステップに対応する。
【0169】
本ステップ中、可動壁44は、依然として上死点に実質的に近く、ドライブシャフト50は、6度の角度から12度の角度まで移動する。
【0170】
図3Cは、供給弁46が開構成又は第4の構成に切り換えられる一方、排出弁47が閉構成であるステップを示す。
【0171】
本ステップ中、第1の格納容積「V1」及び第2の格納容積「V2」は、供給キャリア流体が作動チャンバ41に移動することができるように、作動チャンバ41と流体連通している。このステップは、上記の機関本体40の第2の動作ステップに対応する。可動壁44は、供給状態のキャリア流体の推力により、下向きに移動される。本ステップ中、ドライブシャフト50は、12度の角度から170度の角度まで移動する。
【0172】
図3Dは、供給弁46及び排出弁47が開構成である、移動サイクルのステップを示す。
【0173】
本ステップ中、供給回路30から到来するキャリア流体の量に対応する多量の使用済みキャリア流体が作動チャンバ41から排出回路60に送られる。可動壁44は、下死点に近い。
【0174】
本ステップ中、ドライブシャフト50は、170度の角度から180度の角度まで移動する。
【0175】
図3Eは、供給弁46が開構成又は第1の構成である一方、排出弁47が閉構成に切り換えられる、移動サイクルのステップを示す。本ステップ中、使用済みキャリア流体は、可動壁44によって断熱圧縮を受ける。
【0176】
本ステップ中、ドライブシャフト50は、180度の角度に移動する。
【0177】
本ステップ中、さらに、作動チャンバ41は、再循環キャリア流体に対応するキャリア流体の量を収容する。
【0178】
最後に、図3Fは、ポリトロープ圧縮後、再循環キャリア流体が容量タンク20にある、移動サイクルのステップを示す。
【0179】
本ステップ中、ドライブシャフト50は、180度の角度から356度の角度まで移動する。
【0180】
有利には、この実施形態は、その使用を非常に有効にするいくつかの利点を有する。
【0181】
第1の利点は、機関本体40の構造の単純性に関する。実際、機関本体40は、一般的なディーゼルエンジンとして実質的に構成される。有利には、換言すれば、任意の既存のディーゼル又はオットーエンジンを前記機関本体40に変えることができる。
【0182】
特に、本発明の機関本体40は、既存のディーゼル又はオットーエンジンを修正することによって得ることができる。この場合、修正は、シリンダヘッド及び弁の制御に限定され、それは、機械的又は電子的に行うことができる。
【0183】
第2の利点は、プラント1のコンパクトさに関連する。実際、再循環回路70及び容量タンク20は、機関本体40内に形成される。
【0184】
ここで、添付図に示されていない、プラント1のさらなる実施形態が記載される。
【0185】
本実施形態において、再循環回路70は、排出回路60の収集タンク61と関連付けられ、機関本体60に接続されて移動される圧縮機を含む。
【0186】
基本的に、圧縮機は、特に以下の3つの別個の機能を実行するように構成される:
- 容積的に且つ所望のプラント排出温度に従い、再循環のために計算される量の使用済みキャリア流体の一部を、流れ遮断及び調整のためのパイロット操作弁により、収集タンク61から抽出すること、
- キャリア流体を圧縮すること、
- 圧縮された使用済みキャリア流体を容量タンク20に送ること。
ここで、圧力及び温度は、好適な測定器で測定することができる。
【0187】
さらに、逆止め弁は、圧縮機と容量タンク20との間に配置することができ、そのため、容量タンク20に収容されるキャリア流体は、圧縮機に戻らない。
【0188】
本発明の1つの態様によると、プラントの運転をドライブシャフト50の回転又は制御ユニットに委ねることができる。
【0189】
本発明は、極低温条件下でキャリア流体から機械的エネルギを発生させる方法にも関し、それは、好ましくは、前述のプラント1によって実行することができる。
【0190】
方法は、極低温度Tcryo及び圧力レベルPcryoのキャリア流体を収容する極低温タンク10を準備する予備ステップを含む。キャリア流体のこの状態は、図4のモリエ線図において参照番号「A」で示される。
【0191】
方法は、膨張フェーズ及び圧縮フェーズを生じさせるように設計された容量タンク20及び機関本体40を準備する予備ステップも含む。
【0192】
方法は、再循環温度Trec及び圧力レベルPrecのキャリア流体の質量M2を容量タンク20に供給する予備ステップをさらに含む。上述の再循環状態のキャリア流体のこの質量M2は、図4のモリエ線図において参照番号「D」で示される。
【0193】
この時点で、方法は、循環ステップを含む。
【0194】
特に、方法は、キャリア流体の圧力をPcryoレベルからPprocレベルまで上昇させるステップを含み、Pprocは、Pcryo及びPrecを上回る。この状態は、図4のモリエ線図において参照番号「B」で示される。
【0195】
好ましくは、PcryoレベルからPprocレベルまでキャリア流体の圧力を上昇させるステップは、ポンプ31によって実行される。
【0196】
次に、好ましくは、ただし、限定するものではないが、方法は、キャリア流体の温度をTcryoから第1のプロセス温度Tproc1まで上昇させるさらなるステップであって、Tproc1は、Tcryoを上回る、さらなるステップと、キャリア流体の温度をTproc1から第2のプロセス温度Tproc2まで上昇させるさらなるステップであって、Tproc2は、Tproc1を上回る、さらなるステップとを含む。
【0197】
この状態は、図4のモリエ線図において参照番号「C」で示される。
【0198】
これらのステップは、好ましくは、(存在する場合には)主熱交換器32によって実行される。
【0199】
さらに、好ましくは、これらのステップでは、キャリア流体は、液体からガスに変換される。
【0200】
上述の「元液体」状態のキャリア流体は、そのようにして得られる。
【0201】
次いで、方法は、容量タンク20に圧力レベルPprocの且つ好ましくは温度Tproc2の作動流体の質量M1が供給されるステップを含む。
【0202】
好ましくは、キャリア流体の質量M2は、再循環回路70から到来する一方、キャリア流体の質量M1は、供給回路30から到来する。
【0203】
この時点で、方法は、それぞれ「元液体」及び再循環であるキャリア流体の質量M1及びM2が混合され、それにより供給温度Tfeed及び圧力レベルPfeedのキャリア流体の質量M1+M2を得るステップを含む。
【0204】
再循環キャリア流体の圧力Precは、供給キャリア流体の圧力Pfeedより低いことが想定される。さらに、再循環キャリア流体の温度Trecは、供給キャリア流体の温度Tfeedより高い。
【0205】
この質量M1+M2は、前述の供給キャリア流体状態である。この状態は、図4のモリエ線図において参照番号「E」で示される。
【0206】
キャリア流体の質量M1+M2が得られると、それは、圧力レベルPfeed及び供給温度Tfeedにおいて容量タンク20から機関本体40まで供給される。
【0207】
次いで、方法は、レベルPfeedから、Pprocを下回るレベルPexまで圧力を下降させ、且つTfeedから、Tfeedを下回るTexまで温度を下降させるために、機関本体40のキャリア流体の質量M1+M2を膨張させ、それにより機械的エネルギを発生させるステップを含む。
【0208】
このステップは、図4のモリエ線図において参照番号「EG」で示される。
【0209】
キャリア流体の膨張の最後の状態は、図4のモリエ線図において参照番号「G」で示される。
【0210】
最後に、方法は、流体の質量M1を外部環境に向かって排出するステップを含む。
【0211】
このステップは、好ましくは、排出回路60で実行される。排出状態は、図4のモリエ線図において参照番号「F」で示される。
【0212】
方法は、レベルPexからレベルPrecまで圧力を上昇させ、且つTexからTrecまで温度を上昇させ、圧力レベルPrec及び供給温度Trecの質量M2を容量タンク20に供給するために、流体の質量M2を圧縮するステップをさらに含む。このステップは、図4のモリエ線図において参照番号「GD」で示される。
【0213】
好ましくは、レベルPexからレベルPrecまで圧力を上昇させ、且つTexからTrecまで温度を上昇させ、圧力レベルPrec及び供給温度Trecの質量M2を容量タンク20に供給するために、流体の質量M2を圧縮するステップは、再循環回路70によって実行される。
【0214】
方法の1つの実施形態によると、使用されるキャリア流体は、窒素である。本実施形態において、圧力及び温度値は、以下の通りである:
- 圧力レベルPatmは、大気圧に略等しく、及び
- 圧力レベルPprocは、約300bar~約400barの範囲の値を有し、
- 圧力レベルPfeedは、約250bar~約300barの範囲の値を有し、
- 圧力レベルPexは、約2bar~約4barの範囲の値を有し、
- 温度Tcryoは、約-205℃であり、
- 温度Tproc1は、約-80℃であり、
- 温度Tproc2は、約+70℃であり、
- 温度Trecは、約+680℃であり、
- 温度Tfeedは、約+480℃であり、及び
- 温度Texは、約-20℃~約+20℃の範囲である。
【0215】
方法のさらなる実施形態によると、キャリア流体は、メタンである。本実施形態において、圧力及び温度値は、以下の通りである:
- 圧力レベルPatmは、大気圧に略等しく、及び
- 圧力レベルPprocは、約200bar~約220barの範囲の値を有し、
- 圧力レベルPfeedは、約150bar~約200barの範囲の値を有し、
- 圧力レベルPexは、約2bar~約4barの範囲の値を有し、
- 温度Tcryoは、約-130℃~約-90℃の範囲であり、
- 温度Tproc1は、約-40℃~約-30℃の範囲であり、
- 温度Trecは、約+360℃であり、
- 温度Tfeedは、約+280℃~約+300℃の範囲であり、及び
- 温度Texは、約-20℃~約+20℃の範囲である。
【0216】
有利には、本発明は、先行技術で遭遇した欠点を解決する。
【0217】
特に、達成された目的は、極低温条件下でキャリア流体から機械的エネルギを発生させるためのプラント及び方法であって、プラント自体の排出時の結露及び/又は「氷」問題がないプラント及び方法を提供することである。
【0218】
この結果は、再循環回路70の存在によって実現され、再循環回路70は、結露及び/又は氷の形成を防ぐのに十分である、プラント1の出口における使用済みキャリア流体の温度を可能にする。
【0219】
さらなる達成された目的は、極低温条件下でキャリア流体から機械的エネルギを発生させるためのプラント及び方法を提供することであって、非常に少ないキャリア流体の消費で動作することが可能であるプラント及び方法を提供することである。
【0220】
この結果は、キャリア流体の非常に少ない消費を可能にする再循環回路70によって実現される。
【0221】
さらなる達成された目的は、極低温条件下でキャリア流体から機械的エネルギを発生させるためのプラント及び方法を提供することであって、環境に影響を与えないプラント及び方法を提供することである。
【0222】
この結果は、燃焼なしに動作する可能性によって実現される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
【国際調査報告】