(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】電気化学セル用のバイポーラプレートを製造するための方法及びバイポーラプレート
(51)【国際特許分類】
C23C 24/04 20060101AFI20231227BHJP
C23C 4/129 20160101ALI20231227BHJP
H01M 8/0228 20160101ALI20231227BHJP
H01M 8/0206 20160101ALI20231227BHJP
H01M 8/0215 20160101ALI20231227BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20231227BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20231227BHJP
C25B 13/02 20060101ALI20231227BHJP
C25B 13/04 20210101ALI20231227BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20231227BHJP
【FI】
C23C24/04
C23C4/129
H01M8/0228
H01M8/0206
H01M8/0215
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B13/02 302
C25B13/04 302
H01M8/10 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536069
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-06-14
(86)【国際出願番号】 DE2021100976
(87)【国際公開番号】W WO2022127984
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】102020133553.9
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】メーメト エテ
(72)【発明者】
【氏名】ナズリム バジヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ラディスラウス ドブレニツキ
【テーマコード(参考)】
4K021
4K031
4K044
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB49
4K031AA08
4K031AB02
4K031AB03
4K031CB21
4K031DA01
4K044AA03
4K044AA06
4K044AA16
4K044AB02
4K044BA01
4K044BA02
4K044BA06
4K044BA08
4K044BA10
4K044BB01
4K044BB03
4K044BC14
4K044CA11
4K044CA21
5H126AA12
5H126BB06
5H126DD14
5H126DD17
5H126GG02
5H126GG08
5H126GG11
5H126GG12
5H126GG14
5H126HH02
5H126HH04
(57)【要約】
本発明は、電気化学セル(2)用のバイポーラプレート(1)を製造するための方法(10)であって、流体不透過性キャリア(6)が提供され、流体不透過性コーティング(7)がキャリア(6)の表面の少なくとも1つのサブ領域上に適用され、コーティング(7)が、コールドガススプレー、めっき(特に、圧延クラッド)、又は高速フレームスプレー(特に、燃焼ガスとして空気若しくは酸素を使用する)によって適用される、方法(10)に関する。本発明はまた、電気化学セル(2)用のバイポーラプレート(1)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セル(2)用のバイポーラプレート(1)を製造するための方法(10)であって、流体不透過性キャリア(6)が提供され、かつ流体不透過性コーティング(7)が前記キャリア(6)の表面の少なくとも1つのサブ領域上に適用され、前記コーティング(7)が、コールドガススプレー、めっき(特に、圧延クラッド)、又は高速フレームスプレー(特に、燃焼ガスとして空気若しくは酸素を使用する)によって適用されることを特徴とする、方法(10)。
【請求項2】
前記コーティング(7)が、以下の材料、すなわち、チタン、ニオブ、タンタル、モリブデン、スズ、銀、銅、金、プラチナ、バナジウム、アルミニウム、ルテニウム、ニッケル、ケイ素、タングステン、又はそれらの酸化物若しくは炭化物のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする、請求項1に記載の方法(10)。
【請求項3】
前記コーティング(7)が、チタン又はチタン合金を有し、前記チタン合金が、好ましくは、以下の材料、すなわち、ニオブ、タンタル、モリブデン、スズ、銀、銅、金、プラチナ、バナジウム、アルミニウム、ルテニウム、ニッケル、ケイ素、又はそれらの酸化物若しくは炭化物のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする、請求項2に記載の方法(10)。
【請求項4】
前記キャリア(6)が、導電性材料から形成されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項5】
前記コーティング(7)の前記適用中に、前記表面上に適用されるコーティング材料の組成及び/又は1つ以上のプロセスパラメータ及び/又はスプレー添加剤が変更されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項6】
フローチャネル(4)が、前記コーティング(7)の前記適用前に、前記キャリア(6)の前記表面に形成されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項7】
前記コーティング(7)が、前記フローチャネル(4)間に形成された高い部分に適用され、前記フローチャネル(7)によって形成された窪みはコーティングされないままであることを特徴する、請求項6に記載の方法(10)。
【請求項8】
前記コーティング(7)の前記適用後に、フローチャネル(4)が、アブレーション法又はフォーミング法によって、前記コーティングされたキャリア(6)の前記表面に形成されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項9】
フローチャネル(4)が、前記コーティング(7)の前記適用中に、前記キャリア(6)の前記表面に形成されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項10】
前記コーティング(7)が、前記表面の第1のサブ領域(8’)上に適用されて高い部分を形成し、また前記表面の第2のサブ領域(8)上には適用されず、前記キャリア(6)の前記表面に窪みとして設計されたフローチャネル(4)を形成することを特徴する、請求項9に記載の方法(10)。
【請求項11】
前記キャリア(6)の前記表面上に第1の層(9)が適用され、続いて、少なくとも1つの更なる層(9’)が、フローチャネル(4)が前記更なる層(9’)によって作成された前記高い部分の間の前記キャリア(6)の前記表面上に形成されるような方法で、前記第1の層(9)のサブ領域上に適用されることを特徴する、請求項9に記載の方法(10)。
【請求項12】
粒子が、前記コーティング(7)の前記適用後及び/又は前記適用中に、前記キャリア(6)又は前記コーティングされたキャリア(6)の前記表面上に適用され、前記粒子が、導電性材料を有し、特に、前記コーティングされたキャリア(6)の前記表面での接触抵抗を低減することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法(10)によって得られる電気化学セル(2)用のバイポーラプレート(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体不透過性キャリアが提供され、かつ流体不透過性コーティングがキャリアの表面の少なくとも1つのサブ領域上に適用されている、電気化学セル用のバイポーラプレートを製造する方法に関する。本発明は、電気化学セル用のバイポーラプレートにも関する。
【0002】
従来技術から知られている電気化学セルは、一般に、イオン伝導体によって導電的に互いに接続された2つの電極の配置に基づいている。このような電池の重要な例は、電解セル又は燃料電池システム、及び電気エネルギーを貯蔵するための蓄電池である。電解セル又は燃料電池システムの一般的な構成は、高分子電解質膜セルであり、そこでは、イオン伝導体がプロトン透過性高分子膜(PEM、「プロトン交換膜」又は「高分子電解質膜」)によって形成され、アノードで生成された水素イオンがカソードに移動し、水素分子が形成されるか(電解セル)、又はカソードで還元された酸素と反応して水が生成される(燃料電池システム)。PEMセルの電気化学的に活性なコアは、電極材料で両面がコーティングされた固体高分子膜で構成される膜電極アセンブリ(MEA)である。膜電極アセンブリは、サンドイッチ構造の一部であり、2つの電極がそれぞれ集電体に載置されることができ、その上にバイポーラプレートが配置される。バイポーラプレートは、それぞれの集電体に面する表面にフロー構造(フローフィールド)を有し、それを介してベース物質(例えば、水又は水素及び酸素ガス)がセルに供給される。MEA、集電体、及びバイポーラプレートのいくつかのセルをつなぎ合わせることによって、セルスタックを形成することができ、これを使用して、システムの性能をそれに応じて倍増させることができる。バイポーラプレートは、再充電可能なエネルギー貯蔵セルにも使用される。この例としては、放電中に金属アノードが大気中の酸素で酸化し、充電中に対応する還元反応が起こる金属空気バッテリがある。電解セル及び燃料電池システムと同様に、バイポーラプレートは、酸素を供給又は除去できるフロー構造を有することができる。
【0003】
言及した主なコンポーネントのうち、そのようなセルの製造コストの主要な部分を構成するのは、特にインターコネクタ(バイポーラプレート及び集電体)である。ここで一般的な材料は、特に優れた耐食性を特徴とするチタンであるが、一方で製造コストが高くなる。ここで一般的な材料は、特に優れた耐食性を特徴とするチタンであるが、一方で製造コストが高くなる。別の可能性は、適切に選択されたコーティングによってバイポーラプレートの表面特性を改善することである。バイポーラプレートをコーティングするためのプラズマベースの方法は、例えば、DE102014109321A1及び刊行物「Bipolar plates materials for polymer electrolyte membrane electrolysis」(M.Langemannによる論文、Forschungszentrum Julich 2016)及び「Development and integration of novel components for polymer electrolyte membrane(PEM)electrolyzers」(P.Lettenmeyerによる論文、Universitat Stuttgart 2018)から知られている。
【0004】
電極表面をコーティングするための高圧プラズマビームコーティング法は、DE102006031791A1から知られている。
【0005】
DE102013213015A1は、バイポーラプレートを製造する方法を記載しており、この方法では、層がプラズマスプレー法によって基板上に適用されている。
【0006】
このような背景に対して、本目的は、電気化学用途のための特別な材料要件を満たし、費用対効果の高い方法で製造できるバイポーラプレートの製造方法を提供することである。
【0007】
本目的は、電気化学セル用のバイポーラプレートを製造するための方法によって達成され、流体不透過性キャリアが提供され、かつ流体不透過性コーティング、特に金属又はセラミックコーティングがキャリアの表面の少なくとも1つのサブ領域上に適用され、コーティングは、コールドガススプレー、めっき、又は高速フレームスプレーによって適用される。
【0008】
コーティングは、例えば、延性材料からなり、特に好ましくはプロセスガスとして窒素及び/又はヘリウムを使用する、コールドガススプレー(「コールドガスダイナミックスプレー」又は単に「コールドスプレー、CGDS、CS」)によって、特に好ましくは燃焼ガスとして空気又は酸素(HVAF(高速空気燃料)又はHVOF(高速酸素燃料))を使用する、高速フレームスプレーによって、又は好ましくは金属層上での圧延(例:ロール溶接クラッディング)、溶接、イオンめっき、電気めっき、浸漬若しくは爆発めっきによる、めっきによって適用される。
【0009】
高速フレームスプレーでは、好ましくは、高い接着強度及び低い気孔率を備えた緻密なコーティングを形成するために、コーティング材料を粉末状のスプレー添加剤として溶融し、キャリアガスによってキャリアの表面上に適用する。例えば、窒素はキャリアガスとして適しているが、熱エネルギーは酸素(HVOF)又は空気(HVAF)を追加してプロパン、プロピレン、又は水素を燃焼させることによって生成される。
【0010】
コールドガススプレーでは、コーティング材料の粒子を、窒素及び/又はヘリウムなどのキャリアガスによって非溶融状態で表面にスプレーし、これにより、非常に緻密で実質的に酸化物を含まない良好な密着性の層を作成する。
【0011】
めっきでは、好ましくは、表面を最初に洗浄し、ブラッシング又は研磨によって準備し、次にコーティング材料を、高圧下で圧延することによって実質的に一体的にキャリアに結合させる。
【0012】
これらのコーティング方法によって、電気化学セルで使用するための特別な要件を満たす低酸化物及び低多孔性の層を有利に作成することが可能であり、それに応じて材料コストは、チタン、チタン合金などの固体材料を低コストのキャリア材料に置き換えることによって低減される。
【0013】
好ましくは、コーティングは、以下の材料、すなわち、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、プラチナ(Pt)、バナジウム(V)、アルミニウム(Al)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、ケイ素(Si)、タングステン(W)、又はそれらの酸化物若しくは炭化物のうちの少なくとも1つを有する。特に、コーティングは、例えば炭化ケイ素(SiC)又は炭化タングステン、特に一炭化タングステン(WC)又はそれから製造されたセラミックの炭化物層によって形成することができる。亜化学量論的酸化チタン、ドープ酸化物又は混合酸化物など、様々な酸化物又は酸化物セラミックコーティングも可能である。
【0014】
本発明の有利な実施形態によれば、コーティングは、以下の材料、すなわち、チタン又はチタン合金を有し、チタン合金は、ニオブ、タンタル、モリブデン、スズ、銀、銅、金、プラチナ、バナジウム、アルミニウム、ルテニウム、ニッケル、ケイ素、又はそれらの酸化物若しくは炭化物のうちの少なくとも1つを有する。このようにして、良好な導電率を有する耐腐食性表面を実現することができ、材料費は、対応する固体材料で作られたプレートと比較して有利に比較的低い。
【0015】
流体不透過性キャリアは、導電性材料から形成されることが好ましい。好ましくは、キャリアは金属製であり、特にステンレス鋼で作られているか、又は導電性ポリマー材料で作られている。オーステナイト系ステンレス鋼、ニッケルベースのステンレス鋼、銅、アルミニウム又はグラファイト、複合材料、導電性熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂は、キャリアのベース材料として特に適している。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、コーティングを適用している間に、表面上に適用されるコーティング材料の組成及び/又は1つ以上のプロセスパラメータ及び/又はスプレー添加剤が変更される。好ましくは、層の成分又は化学組成の漸進的な変化が、層の厚さの増加とともに起こり、それによって、層の特性を目標とする方法で改善することができる。同様の改善は、1つ以上のプロセスパラメータを変更するか、又はスプレー添加剤を変更することによっても実現することができる。その変更は、層の厚さにわたって徐々に行われるか、多層アプリケーションによって作成される。
【0017】
電気化学反応に必要なベース物質をセルに供給するため、又は対応する反応生成物を除去するために、バイポーラプレートは、好ましくは、フロー構造(フローフィールド)として構成されるプロファイルを有する。このフロー構造は、好ましくは、表面のチャネル形状の窪みによって形成され、これは、例えば、直線状又は蛇行状に延びることができる(平行蛇行フローフィールド)。好ましくは、フロー構造は、特に好ましくは互いに平行に延びる複数の別個のチャネルを有する。本発明による製造方法は、このタイプのフローチャネルを形成するいくつかの変形を可能にする。特に、チャネルは、コーティングプロセスの前、後、及びその間に作成することができる。
【0018】
本発明の有利な実施形態によれば、コーティングを適用する前に流体不透過性キャリアの表面にフローチャネルが形成される。フローチャネルは、例えば、引張圧縮形成、特にハイドロフォーミングによって作成することができる。このプロセスでは、上部ツールと下部ツールとの間にプレート又はシートが挿入され、上部ツールは、高圧流体の作用下で被加工物が適合する所望のプロファイルを有している。あるいは、形成は、例えば、深絞り、打ち抜き、又は押し出しなどの純粋に機械的な形成プロセスによって行うこともできる。機械加工、特にフライス加工などのアブレーション法によってチャネルを作成することも考えられる。
【0019】
好ましくは、コーティングは、フローチャネル間に形成された高い部分に適用され、フローチャネルによって形成された窪みはコーティングされないままである。キャリアの表面にフローチャネルが形成されると、その後のコーティング中に、構造のリッジ(高い部分)のみをコーティングし、個々の構造の窪みはコーティングせずに残すことが有利に可能である。スプレー法を使用する場合、局所コーティングは、特に、材料をキャリア上にスプレーするのに用いるノズルの適切な目的の移動によって達成することができる。めっき法を使用する場合、コーティング材料は、最初に、コーティングされる表面のサブ領域に配置され、次に、例えば圧延によって、形状に適合するようにそれに結合される。
【0020】
本発明の更に有利な実施形態では、コーティングを適用した後、アブレーション法又は形成法によって、コーティングされたキャリアの表面にフローチャネルが形成される。この製造の変形例では、流体不透過性キャリアの表面が最初に部分的又は完全にコーティングされ、次いで表面のフローチャネルが形成又は材料除去によって作成される。形成は、特に引張圧縮形成、好ましくはハイドロフォーミング、スタンピング又はプレスによって行うことができる。あるいは、チャネルは、アブレーション法、特に機械加工法によって形成することができ、特に、コーティングが適用されたときに覆われなかったサブ領域のみがアブレーションされる。
【0021】
本発明の更に有利な実施形態では、コーティングを適用している間に流体不透過性キャリアの表面にフローチャネルが形成される。特に、材料はスプレーによって適用されるので、噴霧ノズルの標的誘導によってキャリア表面にフローフィールドを作成することができる。これにより、フロー構造のほぼ自由に選択可能な幾何学的構成が可能になり、バイポーラプレートの製造におけるプロセスステップの有利な削減が可能になる。
【0022】
好ましくは、コーティングは、表面の第1のサブ領域上に適用されて高い部分を形成し、また表面の第2のサブ領域上には適用されず、流体不透過性キャリアの表面に窪みとして構成されたフローチャネルを形成する。この製造の変形例では、フローフィールドのリッジは、スプレー材料によって、又はめっきによって適用された層によって、形成されるため、リッジの間にあるコーティングされていない領域は、バイポーラプレートの表面にチャネル形状の窪みを形成する。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、流体不透過性キャリアの表面上に第1の層が適用され、続いて、少なくとも1つの更なる層が、フローチャネルがその更なる層によって作成された高い部分の間のキャリアの表面に形成されるように、第1の層のサブ領域上に適用される。換言すれば、表面の空間的な輪郭が、局所的に付与される量の材料によって作成される。特に、比較的自由に選択可能な高さプロファイルは、ノズルの適切な制御によってスプレー法で層ごとに作成することができ、それらの窪みは、バイポーラプレートのフローチャネルを形成する。このようにして、キャリアの表面を保護し、同時に表面プロファイルを作成することができる。
【0024】
有利な実施形態によれば、粒子は、コーティングを適用した後及び/又は適用している間に、流体不透過性キャリア又はコーティングされた流体不透過性キャリアの表面上に適用され、粒子は、導電性材料を有し、特に、コーティングされたキャリアの表面での接触抵抗を低減する。特に、粒子は、流体不透過性キャリアの表面又は中間層中にスプレー添加剤として堆積され、粒子は、好ましくは領域を覆わない方法で適用される。特に好ましくは、粒子は、適用後に表面に散発的に分布する。導電性材料で表面を部分的に覆うだけで、バイポーラプレートの接触抵抗を大幅に低減すのにすでに十分となり得る。例えば、導電性粒子は、銀又は銀合金などの金属を有することができ、又はグラファイトなどの炭素又は炭素修飾物で作ることができる。導電性粒子とともに、結合剤を適用して粒子を表面に結合することもできる。
【0025】
本発明の更なる目的は、本発明による方法の一実施形態によって製造されるバイポーラプレートである。バイポーラプレートを用いて、本発明による方法に関連して説明したのと同じ技術的効果及び利点を達成することができる。
【0026】
本発明の更なる態様は、2つのバイポーラプレートと、膜電極アセンブリと、バイポーラプレートと膜電極アセンブリとの間にそれぞれ配置される2つの集電体と、を有する高分子電解質膜セルに関し、2つのバイポーラプレートのうちの少なくとも1つは、本発明による方法の一実施形態によって製造される。本発明によるバイポーラプレートは、膜電極アセンブリの片面のみに配置することも、両面に配置することもできる。特に、アノードでのイオン濃度が高いために非常に高い耐食性が要求されるアノード側に配置することができる。
【0027】
PEMセルは、PEM電解セル及びPEM燃料セルの両方として構成することができる。
【0028】
更に、本発明の更なる態様は、本発明によるバイポーラプレートが金属アノード上に配置される、金属空気セル、特にリチウム空気蓄電池に関する。
【0029】
本発明の更なる態様は、複数のセルから形成された少なくとも1つのセルスタックを有する電解槽又は燃料電池システムアセンブリに関し、セルはそれぞれ、本発明による高分子電解質膜セルの実施形態である。好ましくは、セルスタックは、2つのエンドプレートを有し、スタックが機械的圧縮応力下に保持されてコンポーネントの密接な接触を保証する。本発明の更なる態様は、複数の金属空気セルから形成された少なくとも1つのセルスタックを有する、金属空気エネルギー貯蔵ユニット、特にリチウム空気エネルギー貯蔵ユニットに関し、セルはそれぞれ、本発明による金属空気セルの実施形態である。
【0030】
本発明の更なる詳細及び利点は、図面に示される例示的な実施形態を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】電気化学セルの2つの例示的な実施形態を概略図で示す。
【
図2】本発明によるバイポーラプレートの4つの例示的な実施形態を概略図で示す。
【
図3】本発明による方法の例示的な実施形態を概略図で示す。
【0032】
図1は、高分子電解質膜セルとして構成される電気化学セル2の典型的な構造の例を概略的に示している。膜電極アセンブリ(MEA)5は、セル2の中央に配置され、セル2は、各側で集電体3及びバイポーラプレート1に隣接している。バイポーラプレート1の表面のフロー構造4を介して、電気化学反応のためのベース物質がセル2に導入され、次いで多孔質集電体3を通ってMEA5に流れ、そこで反応生成物に変換される。PEMセル2は、電解セル又は燃料電池システムのいずれかであり得る。電気分解では、ベース物質は水であり、MEA5で電気化学的な分割によって水素と酸素に分解される。一方、燃料電池システムでは、ベース物質である水素及び酸素が水に変換され、電気エネルギーが放出される。
【0033】
この目的のために、MEA5は、電極/触媒材料で両面がコーティングされたポリマーベースのプロトン透過膜からなる。水素イオンは、触媒によってアノードで形成され、MEA5の膜を通って反対側のカソード層に移動し、そこで燃料電池システムの場合は水を、電解セルの場合は水素分子のガスを形成する。集電体3は、MEA5に向かって流れるベース物質及び流出する反応生成物のための輸送経路を提供するだけでなく、MEA5の電気的接触も保証する。イオン濃度が高いため、MEA5の触媒/電極層の付近は非常に腐食性の高い状態になり、集電体3及びバイポーラプレート1の材料に特別な要求を課す。
【0034】
本発明によれば、バイポーラプレート1のうちの少なくとも1つは、コーティング8を流体不透過性キャリア6上に適用することによって形成される。チタン又はチタン合金は、耐食性に優れているため、ここでは特に適している。
図1aに示される実施形態では、フローチャネル4がバイポーラプレート1の表面に形成されるが、
図1bに示されるバイポーラプレートはチャネルを有しない。同様に、バイポーラプレートは、蓄電池などの他の電気化学セルにも使用することができる。
【0035】
図2には、本発明によるバイポーラプレート1を構造化及び/又はコーティングするための様々な選択肢が示されている。
図2aに示される実施形態では、流体不透過性コーティング7が、流体不透過性キャリア6の実質的に平坦な表面上に適用される。
図2bに示される実施形態では、フロー構造4は、コーティングの前に流体不透過性キャリア6の表面に形成され、流体不透過性コーティング7は、後続のステップでキャリア6の構造化表面全体上に適用された。あるいは、フローチャネル4間に形成された高い部分のみをコーティングし、窪みをコーティングしないままにすることも可能である。
図2cに示される変形例では、流体不透過性キャリア6のサブ領域8’のみがコーティングされ、中間のコーティングされていないサブ領域8がフローチャネル4を形成する。
図2dに示される実施形態では、流体不透過性キャリア6の表面全体が最初に第1の層9’でコーティングされ、一方、更なる層9が特定のサブ領域上にのみ適用されることで、フロー構造4が流体不透過性コーティング7の異なる厚さによって形成される。2つ以上の層9、9’からなるこのような層システムは、流体不透過性キャリア6の表面に比較的自由に構成可能な高さプロファイルを作成することを可能にする。本発明によれば、流体不透過性コーティング7は、コールドガススプレー、めっき(特に、圧延クラッド)、又は高速フレームスプレー(特に、空気又は酸素を燃焼ガスとして使用する)によって適用される。
【0036】
図3は、バイポーラプレート1を製造するための本発明による方法10の可能な実施形態の様々な方法ステップ11、12、13を示している。第1のステップ11では、例えばステンレス鋼又はポリマー材料で作られた流体不透過性キャリア6が提供される。第2のステップ12では、流体不透過性コーティング7がキャリア6の表面に堆積される。コーティング7は、延性材料、例えば、チタン又はチタン合金からなり、コールドガススプレー、(圧延)クラッド、又は高速フレームスプレー(HVOF又はHVAF)によって適用される。コーティング7は、表面に形成されたフロー構造4を伴うか又は伴わない、単層又は多層コーティングシステムによって形成される。コーティング7は、既存のフローフィールド4上に適用することができるが、フローフィールド4を生成するための構造を、領域を覆うコーティングなしで基板表面上に直接適用することも可能である。任意の第3の方法ステップ13において、導電性粒子(例えばスプレー添加剤として)が、流体不透過性キャリア6又は中間層の表面上に適用される。適用は、粒子が表面に散発的に分布するように、好ましくは領域を覆わない。導電性材料による表面のそのような比例した被覆は、バイポーラプレート1の接触抵抗を有利に低減することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 バイポーラプレート
2 電気化学セル
3 集電体
4 フローチャネル
5 膜電極アセンブリ
6 流体不透過性キャリア
7 流体不透過性コーティング
8 コーティングされていないサブ領域
8’ コーティングされたサブ領域
9 第1の層
9’ 更なる層
10 製造方法
11 キャリアを提供する
12 コーティングを適用する
13 導電性粒子を適用する
【国際調査報告】