(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】エネルギー装置
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20231227BHJP
C25B 11/042 20210101ALI20231227BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20231227BHJP
C25B 15/02 20210101ALI20231227BHJP
C25B 9/77 20210101ALI20231227BHJP
C25B 11/031 20210101ALI20231227BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B11/042
C25B1/04
C25B15/02
C25B9/77
C25B11/031
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023536341
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 NL2021050771
(87)【国際公開番号】W WO2022131917
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511086559
【氏名又は名称】テクニシュ ユニベルシテイト デルフト
【氏名又は名称原語表記】TECHNISCHE UNIVERSITEIT DELFT
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】ムルダー フォッコ マルテン
(72)【発明者】
【氏名】イランソ オードリー
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA11
4K011AA17
4K011AA18
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA02
4K021BA17
4K021BB03
4K021CA05
4K021CA06
4K021CA15
4K021DB06
4K021DB31
4K021DB36
(57)【要約】
本発明は、1又は2以上の機能性ユニット(2)を含むエネルギー装置(1)であって、それぞれの機能性ユニット(2)が、第1のセル電極(120)、並びに第1のセル水性液体(11)及び第1のセル気体(12)のための1又は2以上の第1のセル開口部(110)を含む第1のセル(100)であって、第1のセル電極が鉄ベースの電極を含む、第1のセル(100);第2のセル電極(220)、並びに第2のセル水性液体(21)及び第2のセル気体(22)のための1又は2以上の第2のセル開口部(210)を含む第2のセル(200)であって、第2のセル電極が1又は2以上の金属を含み、1又は2以上の金属が、60~99.9at.%のニッケル及び0.1~35at.%の鉄を含む、第2のセル(200);セパレータ(30)であって、第1のセル(100)及び第2のセル(200)がセパレータ(30)を共有し、セパレータが、水酸化物イオン(OH-)、一価ナトリウム(Na+)、一価リチウム(Li+)、及び一価カリウム(K+)のうち少なくとも1又は2以上の透過性を有しながら、1つのセルから他のセルへのO2及びH2のうち1又は2以上の輸送を阻止するように構成された、セパレータ(30);を含み、エネルギー装置が、第1のセル電極(120)と第2のセル電極(220)との間に電位差を印加するように構成された充電制御ユニット(400)をさらに含む、エネルギー装置(1)を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は2以上の機能性ユニット(2)を含むエネルギー装置(1)であって、それぞれの機能性ユニット(2)が、
- 第1のセル電極(120)、並びに第1のセル水性液体(11)及び第1のセル気体(12)のための1又は2以上の第1のセル開口部(110)を含む第1のセル(100)であって、前記第1のセル電極が鉄ベースの電極を含む、第1のセル(100)、
- 第2のセル電極(220)、並びに第2のセル水性液体(21)及び第2のセル気体(22)のための1又は2以上の第2のセル開口部(210)を含む第2のセル(200)であって、前記第2のセル電極が1又は2以上の金属を含み、前記1又は2以上の金属が、60~99.9at.%のニッケル及び0.1~35at.%の鉄を含む、第2のセル(200)、
- セパレータ(30)であって、前記第1のセル(100)及び前記第2のセル(200)が前記セパレータ(30)を共有し、前記セパレータが、水酸化物イオン(OH
-)、一価ナトリウム(Na
+)、一価リチウム(Li
+)、及び一価カリウム(K
+)のうち少なくとも1又は2以上に対する透過性を有しながら、1つのセルから他のセルへのO
2及びH
2のうち1又は2以上の輸送を阻止するように構成された、セパレータ(30)
を備え、
前記エネルギー装置が、
- 前記第1のセル電極(120)と前記第2のセル電極(220)との間に電位差を印加するように構成された充電制御ユニット(400)
をさらに備える、
前記エネルギー装置(1)。
【請求項2】
1又は2以上の金属が、少なくとも17at.%の鉄及び少なくとも70at.%のニッケルを含む、請求項1に記載のエネルギー装置(1)。
【請求項3】
エネルギー装置(1)が、電気エネルギー貯蔵機能及び電解機能を有し、充電時間の少なくとも一部の間に電位差が1.37Vを超えており、水素生成時間の少なくとも一部の間に電位差が1.37~3.0Vの範囲から選択される、請求項1又は2に記載のエネルギー装置(1)。
【請求項4】
1又は2以上の金属が、Ti、Cr、Mn、Co、Zn、Sc、Al、Ru、Mo、Zr、Sn、Cu、Al、Y、及びLaを含む群から選択される金属をさらに含んでもよい、請求項1~3のいずれかに記載のエネルギー装置(1)。
【請求項5】
機能性ユニット(2)への第1のセル水性液体(11)及び第2のセル水性液体(21)のうち1又は2以上の導入を制御するように構成された水性液体制御システム(60)をさらに備える、請求項1~4のいずれかに記載のエネルギー装置(1)。
【請求項6】
機能性ユニット(2)の外部の第1のセル気体(12)及び第2のセル気体(22)のうち1又は2以上を貯蔵するように構成された貯蔵システム(70)をさらに備える、請求項1~5のいずれかに記載のエネルギー装置(1)。
【請求項7】
(a)機能性ユニット(2)の中の第1のセル気体(12)の圧力、(b)貯蔵システム(70)の中の前記第1のセル気体(12)の圧力、(c)前記機能性ユニット(2)の中の第2のセル気体(22)の圧力、及び(d)前記貯蔵システム(70)の中の前記第2のセル気体(22)の圧力のうち1又は2以上を制御するように構成された圧力システム(300)
をさらに備える、請求項6に記載のエネルギー装置(1)。
【請求項8】
第1のセル電極(120)と電気的に接続された第1の電気接続(51)、第2のセル電極(220)と電気的に接続された第2の電気接続(52)、電力供給を受ける受容器と前記電気接続(51、52)とを機能的に接続する第1のコネクタユニット(510)、並びに第1のセル気体(12)及び第2のセル気体(22)のうち1又は2以上が供給されるデバイスと前記貯蔵システム(70)とを機能的に接続する第2のコネクタユニット(520)
をさらに備える、請求項1~7のいずれかに記載のエネルギー装置(1)。
【請求項9】
2又は3以上の第1のセル電極(120)及び(b)2又は3以上の第2のセル電極(220)を備え、(a)前記2又は3以上の第1のセル電極(120)の間の第1の電位差及び(b)前記2又は3以上の第2のセル電極(220)の間の第2の電位差のうち1又は2以上を印加するように構成された電気要素(7)をさらに備える、請求項1~8のいずれかに記載のエネルギー装置(1)。
【請求項10】
電気要素(7)が、2又は3以上の第1のセル電極(120)の第1のサブセット(1211)と前記2又は3以上の第1のセル電極(120)の第2のサブセット(1212)との間に電位差を印加するように構成され、前記第1のサブセット(1211)の前記第1のセル電極(120)が鉄ベースの電極を備え、前記第2のサブセット(1212)の前記第1のセル電極(120)が、鉄ベースの電極又は水素ガス生成電極(1210)のいずれかを備える、請求項9に記載のエネルギー装置(1)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載のエネルギー装置(1)及び外部電力源(910)を備える、エネルギーシステム(5)。
【請求項12】
請求項6~10のいずれかに記載のエネルギー装置(1)を用いて電気エネルギー並びに水素(H
2)及び酸素(O
2)のうち1又は2以上を貯蔵する方法であって、第1のセル水性液体(11)、第2のセル水性液体(21)、及び外部電力源(910)からの電力を機能性ユニット(2)に供給し、それによって充電された機能性ユニット(2)並びに貯蔵システム(70)に貯蔵された水素(H
2)及び酸素(O
2)のうち1又は2以上を供給するステップを含む、前記方法。
【請求項13】
充電時間の少なくとも一部の間、機能性ユニットが、第1のセル電極(120)と第2のセル電極(220)との間の1.37Vを超える電位差で充電される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
電力、水素(H
2)、及び酸素(O
2)のうち1又は2以上を受容器に供給するための、請求項1~10のいずれかに記載のエネルギー装置(1)又は請求項11に記載のエネルギーシステム(5)の使用。
【請求項15】
電極(220)であって、前記電極が電極材料を含み、前記電極材料が1又は2以上の金属を含み、前記1又は2以上の金属が17~23at.%の鉄及び少なくとも70at.%のニッケルを含み、前記電極が菱面体構造を有するα-Ni(OH)
2を含み、前記電極材料が5wt.%以上のインターカレートされた水を含み、前記電極が、ステンレス鋼繊維、ニッケル繊維、炭素繊維、噴霧ニッケル、及びステンレス鋼粒子を含む群から選択される0.5~10vol.%の導電性添加物を含む、前記電極(220)。
【請求項16】
SO
4
2-、OH
-、Cl
-、及びCO
3
2-のうち1又は2以上を含むインターカレートされた陰イオンを含む、請求項15に記載の電極。
【請求項17】
統合された電池電解装置における電極の使用であって、前記電極が電極材料を含み、前記電極材料が1又は2以上の金属を含み、前記1又は2以上の金属が17~23at.%の鉄及び少なくとも70at.%のニッケルを含み、前記電極が、菱面体構造を有するα-Ni(OH)
2を含み、前記電極材料が5wt.%以上のインターカレートされた水を含む、前記使用。
【請求項18】
請求項1~10のいずれかに記載のエネルギー装置(1)を組み立てるための方法であって、機能性ユニット(2)と充電制御ユニットとを機能的に連結するステップを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー装置に関する。本発明はさらに、エネルギーシステムに関する。本発明はさらに、方法に関する。本発明はさらに、エネルギー装置の使用に関する。本発明はさらに、電極及び/又は電極の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー装置は当技術分野で公知である。例えば、国際公開第2016/178564号パンフレットには、変動する又は間欠的な電気エネルギー並びに水素(H2)及び酸素(O2)のうち1又は2以上をエネルギー装置に貯蔵する方法であって、第1のセル水性液体、第2のセル水性液体、及び外部電力源からの電力を機能性ユニットに供給し、それによって電気的に充電された機能性電池ユニット並びに前記貯蔵システムに貯蔵された水素(H2)及び酸素(O2)のうち1又は2以上を供給することを含み、充電時間の少なくとも一部の間に第1のセル電極と第2のセル電極との間の1.37Vを超える電位差で機能性ユニットが充電される方法が記載されている。
【0003】
米国特許出願公開第2020/028227A1号明細書には、変動する又は間欠的な電気エネルギー並びに水素(H2)及び酸素(O2)のうち1又は2以上をエネルギー装置に貯蔵する方法であって、第1のセル水性液体、第2のセル水性液体、及び外部電力源からの電力を機能性ユニットに供給し、それによって充電された機能性電池ユニット並びに前記貯蔵システムに貯蔵された水素(H2)及び酸素(O2)のうち1又は2以上を供給し、充電時間の少なくとも一部の間に第1のセル電極と第2のセル電極との間の1.37Vを超える電位差で機能性ユニットを充電するステップを含む方法が記載されている。
【0004】
米国特許出願公開第2015/368811A1号明細書には、混合金属触媒、特にナノ寸法の層状複水酸化物ナノスタック、レーザーアブレーション技法を使用してナノ触媒を作製する方法、及びこれらのナノ触媒を含み、使用する、例えば水の電気化学的酸化に使用する、電気化学的デバイスを対象とする発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/178564号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2020/028227A1号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2015/368811A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
再生可能エネルギー源からの年間発電量は急速に増えている。再生可能電力源は、現在おそらく世界の電力の約26%を占めており、国際エネルギー機関(IEA,International Energy Agency)によれば、2024年までには30%に達すると予想されている。IEAは、再生可能エネルギーのシェアの上昇には太陽エネルギーが最も大きな役割を果たすと予想している。再生可能エネルギーは、その固有の間欠性のために、供給過多及び供給不足の際に電力市場に深刻な影響を及ぼす可能性がある。これによって、需要と供給の深刻なミスマッチによって引き起こされる短縮又は引き下げられた若しくは負ですらある電力価格に至る可能性がある。ドイツの電力価格は、2011~2018年の間に22回ゼロより下に下落した。さらに最近では2020年4月に、コロナウイルス危機の間に、ヨーロッパにおける1時間当たりの1日前電力は6週間連続で負の価格に下落した。それだけではなく、再生可能発電の不足が生じ、ますます化石燃料発電の補完の段階的廃止が行われると、電力価格が上がる可能性がある。これらの例から、とりわけ再生可能エネルギーの供給が即時的需要より多くなり始めるときに、日間及び季節的サイクルの負荷バランスを取ることによって電気グリッドを安定化するための、大規模なエネルギー貯蔵システムを開発する必要性が示される。
【0007】
電解によって生産される水素は、容易に貯蔵することができ、また高貯蔵容量をもたらすことができるために、電気エネルギーの長期エネルギー貯蔵変換の有望な解決策であり得る。しかし、水素貯蔵には、他の貯蔵技術より往復効率が低いという難題があり得る。
【0008】
充電式電池は、高い往復効率、拡張性、及び柔軟性を有し、短い時間スケールにおける電気グリッドのバランスを取るのに特に良好な候補であり得る。前世紀に、幾つかの電池システムが開発されたが、大規模な用途で実証されたのはわずかに過ぎず、主に鉛蓄電池及びリチウムイオン電池であった。しかし、そのような鉛蓄電池の展開は、その限られたサイクル寿命(500~800サイクル)、エネルギー密度(30~50Wh/kg)、及び原料の毒性によって限定される場合がある。さらに、鉛蓄電池は、充電時間が8~15時間であり、高レート特性が不十分であるという難題があり得る。リチウムイオン電池は、寿命が長く(1000を超える高深度の放電サイクル)、高レート特性が良好であり(充電時間が1時間未満)、エネルギー及び電力密度は充電式電池について報告されている最も高いものの中に入り(170~250Wh/g)、鉛蓄電池の性能を大きく凌ぐことができる。高エネルギー及び電力密度は、小型で軽量の記憶デバイスを必要とする(ラップトップ、電動工具、スマートフォン、電気自動車)用途では、根本となるものである。
【0009】
しかし、定置型エネルギー貯蔵用途には別の要件が要求される。そのような用途に使用されるエネルギー貯蔵システムは、桁外れに長いサイクル寿命を有し、高出力の充放電を数分で行うことが可能であり、極めて高いエネルギー効率を有し、何よりまず、低資本及び生涯コストを有することが理想的であるが、これらは、リチウムイオン電池では(十分に)提供することができない。グリッドの安定化のためのLiイオン電池の広範な展開に対する他の制限は、材料費及びその低い堅牢性である。Liイオンは、実際に過充電及び深放電に対して低い許容性を示し、それによって例えば熱暴走が引き起こされるので、その場合は電池を冷却し、電池の放電を例えば80%に制限するための追加の高価な安全システムが必要とされる。
【0010】
充電式Ni/Feアルカリ電池は、グリッドスケールの電気エネルギー貯蔵システムの需要を満たすための興味深い選択肢を提示し得る。Ni/Fe電池は、リチウムイオンより低いエネルギー密度を示すが、その比エネルギー(50Wh/g)は、それでも鉛蓄電池より1~1.5倍高い。その上、このエジソン電池は、その桁外れの堅牢性(2000~5000サイクル)、及び過充電及び深放電に対するその許容性でよく知られている。Ni/Feセルの生産に必要とされる原料が低コストであり、豊富であることも、この技術の2つの重要な利点である。Ni/Fe電池は、正極に使用されるNi(OH)2が比較的高価であることなどの幾つかの欠点も提示するが、より重要なのは、全セルエネルギー効率が比較的低いことである(65~70%)。この最後の点によって、最近のNi/Fe技術が受ける関心の低さを説明することができる。その理由の一部は、充電するときにNi/FeがOER(酸素発生反応)及びHER(水素発生反応)の良好な触媒として知られるNiOOH及び金属Feをそれぞれ形成し、電池の充電中に競合的な水分解反応を誘導することである。
【0011】
この効率の問題を克服するために、バトライザ(battolyser)と名付けられたNi/Fe電池を有するハイブリッドアルカリ電池電解槽デバイスが以前に提案されており、そのデバイスでは、水素の生産が、電池機能の次の長期貯蔵用の主な電解燃料生産物として見なされている。
【0012】
このハイブリッド電池電解槽をさらに向上させるために、材料費を削減し、高レート特性を向上させ、エネルギー効率をさらに増大させることが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明の一態様は、好ましくはさらに上記の欠点の1又は2以上の少なくとも一部を未然に防ぐ代替エネルギー装置を提供することである。本発明は、目的として、先行技術の欠点の少なくとも1つを克服する若しくは改善すること、又は有用な選択肢を提供することを有することができる。
【0014】
したがって、第1の態様では、本発明は、エネルギー装置を提供し得る。本エネルギー装置は、1又は2以上の機能性ユニットを含んでもよい。それぞれの機能性ユニットは、第1のセル、第2のセル、セパレータ、及び充電制御ユニットのうち1又は2以上を含んでもよい。第1のセルは、第1のセル電極を含んでもよく、特に第1のセル電極は、鉄ベースの電極を含む。第1のセルは、1又は2以上の第1のセル開口部をさらに含んでもよく、特に1又は2以上の第1のセル開口部は、第1のセル水性液体及び第1のセル気体用である(それらのために構成される)。第2のセルは、第2のセル電極を含んでもよく、特に第2のセル電極は、1又は2以上の金属を含み、より特に1又は2以上の金属は、60~99.9at.%のニッケル及び0.1~35at.%の(三価)金属カチオン、特に鉄を含む。第2のセルは、1又は2以上の第2のセル開口部をさらに含んでもよく、特に第2のセル開口部は、第2のセル水性液体及び第2のセル気体用である(それらのために構成される)。実施形態では、第1のセル及び第2のセルは、セパレータを共有してもよい。セパレータは、1つのセルから他のセルへのO2及びH2のうち1又は2以上の輸送を阻止するように構成されてもよい。特に、セパレータは、水酸化物イオン(OH-)、一価ナトリウム(Na+)、一価リチウム(Li+)、及び一価カリウム(K+)のうち少なくとも1又は2以上に対する透過性を有してもよい。実施形態では、エネルギー装置は、充電制御ユニットをさらに含んでもよい。充電制御ユニットは、第1のセル電極と第2のセル電極との間に電位差を印加するように構成されてもよい。
【0015】
本発明のエネルギー装置は、先行技術に優る様々な利益をもたらすことができる。特に、第2のセル電極は、(純粋な)ニッケル電極に優る様々な利益を有することができる。
【0016】
典型的には、Ni/Feシステムに関して、活性電極材料の主なコストは水酸化ニッケル化合物にあるのに対して、鉄は、比較的低コストを有する。エネルギー効率に関して、ニッケル電極は、そのより低い固有導電性及び電解中のOER過電圧が突出していることがあり、それらはいずれもエネルギー効率の損失を決定する部分である。しかし、ニッケル電極と比べて、第2のセル電極は、従来の水酸化ニッケル材料と比較して向上したニッケル原子当たりの電池貯蔵容量、向上した電子及びイオン導電性、並びに低減したOER過電圧をもたらすことができる。
【0017】
特に、第2のセル電極はα-Ni(OH)2型を有してもよく、これは、典型的なβ-Ni(OH)2型(約289mAh/g)と比較して高い理論比容量を有することができる(約490mAh/g)。このアルファ相は、水分子及び陰イオン、特に合成に使用されたニッケル塩の対陰イオンがインターカレートされた、正に荷電したβ-Ni(OH)2層からなり得る。その場合、アルファ相(>7.6Å)の方がベータ相(>4.6Å)よりも層間空間が大きくなり得、それによってイオン移送のための経路をより良好にすることが可能になる。しかし、高度に脱水されているNi/Fe電池のアルカリ電解質(6M KOH)中では、アルファ相は一般に、急速にβ-Ni(OH)2に変換される可能性がある。しかし、ここでは、水酸化物層中のNi2+が三価金属陽イオン、特に鉄によって部分的に置換されることを介して、α-Ni(OH)2を安定化することができる。したがって、層への陰イオン結合の強度は、層中の正電荷の増加によって強化され、それによってアルファ相の安定化を促進することができる。さらに、過充電されるとき、β-Ni(OH)2は容易にγ-NiOOHに変わることがあり、それによって層間間隔が大きくなり、電極の体積膨張が大きくなることがある。一方、α-Ni(OH)2は、充電中にγ-NiOOHを形成することがあり、それは7Åという同様の層間間隔を有する。しかし、特に、α→γ転移は、β→γ転移より比較的小さい格子変化で容易に逆転し得る。したがって、より大きいその格子変化を有するβ→γ転移は、内部結合の問題を生じることがある。したがって、アルファ相を安定化すると、充(放)電及び過充電(すなわち、電解)中の電極の寸法変化を有利に制限することができる。
【0018】
したがって、金属陽イオンは、ニッケルベースの電極をアルファ相に安定化することができ、これによって種々の利益をもたらすことができる。実施形態では、金属陽イオンは、Co、Al、Zn、Fe、Mn、Ti、Cr、Sc、Zn、Mo、Y、Laを含む群から選択されてもよい。さらなる実施形態では、金属陽イオンは、特に三価金属陽イオンであってもよい。特定の実施形態では、金属陽イオンは鉄であってもよい。
【0019】
特に、鉄は、三価の状態で良好な安定性という利点をもたらすことができる。したがって、アルファ/ガンマ対の高い安定性を得ることができる。他の三価陽イオンに優る鉄の他の利点は、Fe-NiOOHとしてNiと組み合わせたときの酸素発生反応(OER)触媒挙動であり得る。Ni/Fe電池にとって有害作用と考えられてきたこの特性は、ハイブリッドNi/Feバトライザ用途を考慮したときに特に有益であり得る。他の利点は、過充電及び電解中にFe3+が部分的にFe4+を形成し得ることであり、それによって電極の容量をさらに追加することができることである。
【0020】
したがって、実施形態では、第2のセル電極は、α-Ni1-xFex(OH)2を含んでもよい。この材料は、ニッケル電極と比較して増加したNi原子当たりの貯蔵容量を有することができ、それによって全体の材料費の削減も促進することができ、ハイブリッドNi/Fe電池の向上した高レート特性及び向上したエネルギー効率を有することができ(強化された導電性に起因する)、格子の膨張によって誘導される構造疲労を制限することができる。
【0021】
したがって、特定の実施形態では、本発明はエネルギー装置を提供することができ、本エネルギー装置は、充電制御ユニット及び1又は2以上の機能性ユニットを含み、それぞれの機能性ユニットは、第1のセル、第2のセル、及びセパレータを含み、第1のセルは、第1のセル電極、並びに第1のセル水性液体及び第1のセル気体のための1又は2以上の第1のセル開口部を含み、第1のセル電極は、鉄ベースの電極を含み、第2のセルは、第2のセル電極、並びに第2のセル水性液体及び第2のセル気体のための1又は2以上の第2のセル開口部を含み、第2のセル電極は、1又は2以上の金属を含み、1又は2以上の金属は、60~99.9at.%のニッケル及び0.1~35at.%の鉄を含み、第1のセル及び第2のセルは、セパレータを共有し、セパレータは、水酸化物イオン(OH-)、一価ナトリウム(Na+)、一価リチウム(Li+)、及び一価カリウム(K+)のうち少なくとも1又は2以上に対する透過性を有しながら、1つのセルから他のセルへのO2及びH2のうち1又は2以上の輸送を阻止するように構成され、充電制御ユニットは、第1のセル電極と第2のセル電極との間に電位差を印加するように構成される。
【0022】
本エネルギー装置は、電気エネルギー貯蔵機能と電解機能とを有し得る。したがって、装置は、電池と電解槽との組合せであり得る。電池を充電することによって電池は使用準備ができ、さらなる水素が生産される。電池が満たされても、水素の生産を継続することができる。これにより、充電された電池と水素が提供され、その生産は例えば装置のエネルギー又はエネルギーキャリアが消費されていないときでも起こり得る。用語「エネルギー」は特に電気エネルギーに関連する。用語「エネルギーキャリア」は特に水素ガス(H2)に関連し、これは例えばエンジンの直接推進のための燃料として使用できるが、例えば発電のための燃料電池において間接的にも使用できる。したがって、装置は特に電気及び/又は水素(及び/又はO2)の車両の充電ポイントとして用いることができる(以下も参照されたい)。
【0023】
装置は機能性ユニットを含んでもよい。しかし、エネルギー装置の一実施形態では、装置は複数の機能性ユニットをも含んでもよい。例えば電圧差を増大させるために、2又は3以上の機能性ユニットを(電気的に)直列に配置してもよい。しかし、例えば電流を増大させるために、機能性ユニットの2又は3以上を並列に配置してもよい。さらに、3以上の機能性ユニットが存在する場合には、直列及び並列の配置の組合せを適用してもよい。
【0024】
特に、機能性ユニットは、第1のセル電極、並びに第1のセル水性液体及び第1のセル気体のための1又は2以上の第1のセル開口部を含む第1のセルであって、第1の電極が特に鉄ベースの電極を含む、第1のセルと、第2のセル電極、並びに第2のセル水性液体及び第2のセル気体のための1又は2以上の第2のセル開口部を含む第2のセルであって、第2の電極が、特に1又は2以上の金属を含み、より特に、1又は2以上の金属が、60~99.9at.%のニッケル、及び0.1~35at.%の(三価)金属陽イオン、特に鉄を含む、第2のセルとを含んでもよい。
【0025】
それぞれのセルは、少なくともそれぞれの水性液体の導入のための開口部を含んでもよい。用いられる水性液体は特に塩基性水性液体であり、例えばKOH、LiOH、及びNaOHのうち1又は2以上を含む。特に、OH-の濃度は少なくとも3mol/lである。特に、水中の水酸化物(特にKOH、NaOH、及びLiOHの1又は2以上)の濃度は4.5~8.4mol/L(KOHについて25~47wt%)の範囲である。したがって、これらの開口部はそれぞれ、KOH、LiOH、及び/又はNaOHの選択された濃度を維持するために水を添加した回収電解質の入口として構成されていてよい。
【0026】
セル内の第1のセル水性液体及び第2のセル水性液体は特にアルカリ性であってもよく、例えば、少なくとも0.1mmol/l OH-、特に少なくとも3mol/l OH-、さらには特に少なくとも3mol/l OH-、例えば少なくとも約6mol/l OH-を含むアルカリ性であってもよい。したがって、実施形態では、第1のセル水性液体は、少なくとも0.1mmol/l OH-、特に少なくとも3mol/l OH-、さらには特に少なくとも3mol/l OH-、例えば少なくとも約6mol/l OH-を含んでもよい。さらなる実施形態では、第2のセル水性液体は、少なくとも0.1mmol/l OH-、特に少なくとも3mol/l OH-、さらには特に少なくとも3mol/lOH-、例えば少なくとも約6mol/l OH-を含んでもよい。セル内の液体は、水性液体制御システムからの液体で補充してよい。セル内のアルカリは実質的に効果的には用いられないことがあるので、新鮮な水は必ずしもアルカリ性でなくてもよい。「セル水性液体」は、電解質として表示することもある。 さらに、実施形態では、本エネルギー装置の動作中に、第1のセル内の第1のセル水性液体及び第2のセル内の第2のセル水性液体はセパレータを介してOH-を交換することができ、それによってOH-濃度を(本質的に)等しくすることができる。
【0027】
さらに、それぞれのセルは、水性液体の除去及び/又は気体の除去のために特に構成されたさらなる開口部を含んでもよい。第1のセル気体は特にH2ガスを含み、第2のセル気体は特にO2を含む。セル内の水性液体とセル気体は、同じ開口部から逃散してよい。或いは、又はさらに、2又は3以上の開口部、例えば水性液体の除去のための開口部と気体の除去のための開口部を用いてもよい。
【0028】
そのような実施形態では、水性液体はそれぞれのセルを通って流れることができ、流れによって気体の除去、必要な場合には冷却(又は加熱)、及び水の再充填が補助される。電極表面積1cm2当たりの印加した電流に応じて流量(体積/面積/時間)は、例えば約0.3μl/cm2/h~3.5ml/cm2/hの範囲であってよい(前者の値はほぼ0.001A/cm2の値に相当し、後者の値はほぼ10A/cm2の値に相当する。本明細書の他の箇所も参照されたい)。
【0029】
さらに、それぞれのセルは電極を含んでもよい。
【0030】
特に、第1のセルは第1の電極を含んでもよく、第1の電極は特に鉄ベースの電極を含む。EdisonのNi-Fe電池の場合と同様、鉄ベースの電極は充電状態で本質的にFe(金属)を含み、放電状態で本質的にFe(OH)2を含み得る。
【0031】
鉄ベースの電極は特に以下の手順に従って作製される。最初に鉄を希H2SO4に溶解して硫酸第一鉄を生成する。後者を再結晶によって精製し、1070~1120Kで焙焼する。焙焼物を水で十分に洗浄し、次いで乾燥する。乾燥物質を化学還元のため1020~1070Kで水素処理し、再び部分酸化のために970~1070Kに供する。この後者のプロセスにより、鉄粉とマグネタイトの混合物が得られる。混合物を追加の薬剤(Cu、FeS、HgOなど)とブレンドし、ニッケルめっきした多孔スチールシートから作られたポケットに入れる。ポケットを、好適なニッケルめっきスチールプレートの上に固定して、負電極を形成させる。したがって、特に鉄ベースの電極は、参照により本明細書に組み込まれるChakkaravarthy et al.、Journal of Power Sources、35 (1991) 21-35に記載されているように、Niめっきしたスチールから作られた多孔ポケットを用いて作られる。活性鉄材料はさらに焼結により結合してもよく、その代わりにPTFE又はポリエチレンによって結合してもよい。或いは又はさらに、第1の電極は炭素又はNiなどの導電性添加物を含む。記載されていることが多いNi-Fe電池とは対照的に、水素の発生を抑制する硫化物(FeS、硫化ビスマス、HgOなど)又はその他の添加物は用いないか、或いは濃度を減少させる。それは、電池電解槽では低減した過電圧で水素の発生が起こることを目的とするからである。水素生成過電圧を低減させる添加物はさらに、少量の質量百分率の、Feと共堆積したNi-Mo-Zn、或いはNi-S-Co、Ti2Ni、窒素ドープしたグラフェン、Ni-Mo-N、Ni(OH)2ナノ粒子、Ni-Cr、Ni5P4ナノ結晶、Ru、RuO2、AgNi、又は貴元素Pd、Ptなどであってよい。電極を加圧する間、電極に例えばNaClを加え、加圧し、次いでNaClを浸出させて多孔性を導入することによって、電極の多孔性を維持することができる。電極のポケット内の電極の総厚みは2~5mm、特に約3.5mmである。用語「第1の電極」は、複数の第1の電極に関連することもある。
【0032】
第2のセルは、第2の電極を含んでもよく、第2の電極は、特に1又は2以上の金属を含み、より特に、1又は2以上の金属は、60~99.9at.%のニッケル、及び0.1~35at.%の(三価)金属陽イオン、例えば1~30at.%の(三価)金属陽イオン、特に5~25at.%の(三価)金属陽イオン、例えば10~25at.%の(三価)金属陽イオン、特に15~25at.%の(三価)金属陽イオンを含む。金属陽イオンは、特に鉄を含んでもよい。ニッケルべースの電極は、充電状態で本質的にγ-Ni1-xFexOOH1-yを含んでもよく、放電状態で本質的にα-Ni1-xFex(OH)2を含んでもよい。α相の材料は、層状構造を有してもよく、ある量の陰イオン及び水がFe濃度に応じて層の間にインターカレートされていてもよく、相当量の無秩序を有してもよい。インターカレートされた陰イオンは、特に合成に依存するが、SO4
2-、OH-、Cl-、CO3
2-のうち1又は2以上を含んでもよい。陰イオンは、例えば、組成物Ni1-xFex(OH)2(SO4)x/2か、或いはNi1-xFex(OH)2+xをもたらしてもよく、さらにインターカレートされた水を含んでもよい。
【0033】
実施形態では、1又は2以上の金属は、少なくとも60at.%のニッケル、例えば少なくとも65at.%のニッケル、特に少なくとも70at.%のニッケルを含んでもよい。さらなる実施形態では、1又は2以上の金属は、少なくとも75at.%のニッケル、例えば少なくとも80at.%のニッケル、特に少なくとも85at.%のニッケルを含んでもよい。さらなる実施形態では、1又は2以上の金属は、少なくとも90at.%のニッケル、例えば少なくとも95at.%のニッケルを含んでもよい。
【0034】
さらなる実施形態では、1又は2以上の金属は、少なくとも0.1at.%の(三価)金属陽イオン、例えば少なくとも1at.%、特に少なくとも3at.%の(三価)金属陽イオンを含んでもよい。さらなる実施形態では、1又は2以上の金属は、少なくとも5at.%の(三価)金属陽イオン、例えば少なくとも10at.%、特に少なくとも13at.%の(三価)金属陽イオンを含んでもよい。さらなる実施形態では、1又は2以上の金属は、少なくとも15at.%の金属陽イオン、例えば少なくとも17at.%、特に少なくとも18at.%の金属陽イオンを含んでもよい。さらなる実施形態では、1又は2以上の金属は、少なくとも19at.%の金属陽イオン、例えば少なくとも20at.%の金属陽イオンを含んでもよい。さらなる実施形態では、1又は2以上の金属は、最大35at.%の金属陽イオン、例えば最大30at.%、特に最大25at.%の金属陽イオンを含んでもよい。さらなる実施形態では、1又は2以上の金属は、最大23at.%の金属陽イオン、例えば最大22at.%、特に最大21at.%の金属陽イオンを含んでもよい。
【0035】
特に、実施形態では、1又は2以上の金属は、少なくとも80at.%のニッケル及び金属陽イオン(組み合わせて)、特に少なくとも85at.%、例えば少なくとも90at.%のニッケル及び金属陽イオンを含んでもよい。さらなる実施形態では、1又は2以上の金属は、少なくとも95at.%のニッケル及び金属陽イオン(組み合わせて)、特に少なくとも97at.%、例えば少なくとも99at.%(100at.%を含む)のニッケル及び金属陽イオンを含んでもよい。したがって、1又は2以上の金属は、実施形態では、ニッケル及び(三価)金属陽イオン、特にニッケル及び鉄から(本質的に)なってもよい。
【0036】
「1又は2以上の金属は60~99.9at.%のXを含む」という語句及び同様の語句は、本明細書では、1又は2以上の金属中の60~99.9%の原子がXを含むことを示す。
【0037】
上に示したように、充電状態で、第2の電極はγ-Ni1-xFexOOH1-yを含んでもよい。特に、第2の電極は、充電中及び/又は充電状態で、Ni4+を含んでもよい。この電荷を補償するために、電極材料は、1-yによって示される通りの低減された量のHを含んでもよく、yは、0~1の範囲から選択されてもよい。特に、実施形態では、y>0、特に≧0.05、例えば≧0.1である。
【0038】
実施形態では、第2の電極は固体電極であってもよい。
【0039】
さらなる実施形態では、第2の電極は、1mAh/cm2~500mAh/cm2の範囲から選択される(総)容量を有してもよく、cm2は、電極の幾何学的表面積を指す。したがって、実施形態では、第2の電極は、1mAh/cm2~500mAh/cm2の範囲から選択される、例えば5mAh/cm2~400mAh/cm2の範囲、特に20mAh/cm2~300mAh/cm2の範囲から選択される、(第2の電極の)(幾何学的)表面積当たりの(総)容量を有してもよい。
【0040】
さらなる実施形態では、第2の電極は、1mAh/cm2~500mAh/cm2の範囲、特に5mAh/cm2~400mAh/cm2の範囲から選択される、例えば20~200mAh/cm2の範囲から選択される面積容量を有してもよい。
【0041】
さらなる実施形態では、第2の電極は、少なくとも0.9、例えば少なくとも、特に少なくとも1.2、例えば少なくとも1.4、特に少なくとも1.5の、ニッケルの原子当たりに交換される電子数(NEE)での容量を有してもよい。
【0042】
さらなる実施形態では、第2の電極は、0.5~10mmの範囲、例えば3~6mmの範囲から選択される電極の厚みを有してもよく、特に、厚みは、第1の電極と第2の電極との間の平面に垂直に定義される。特に、厚みは、第1の軸に沿って定義されてもよく、第1の軸は、第2の電極の表面に垂直であり、第1の軸は第1の電極と交差する。
【0043】
Fe置換水酸化ニッケル材料(α-Ni1-xFex(OH)2)は、例えば、化学的共沈法によって調製してもよい。鉄及びニッケルの硫酸塩か、或いは鉄及びニッケルの塩化物塩又は硝酸塩の溶液を所望の比率で混合し、撹拌下で2M NaOH溶液中に滴下してもよい。混合溶液のpH値は、合成全体を通して13.2~13.4に制御されてもよい。或いは、7.5~13.2のより低いpH範囲も使用されてもよい。沈殿物を遠心分離によって溶液から分離し、脱イオン水で洗浄してもよい(この手順は特に2回繰り返される)。次いで沈殿物を50~60℃の真空オーブン内で一定の重量に達するまで乾燥させてもよい。得られた材料を、次いで200RPMで12分間ボールミル粉砕してもよい。その後、調製したFe置換水酸化ニッケル材料Ni(OH)2、カーボンスーパーP、及びグラファイトを一緒に粉砕し、その後、ポリエーテルスルホン(PES)溶液を均一なスラリーが得られるまで混合物(例えば、NMP又はDMSO中3~7wt.%)に添加してもよい。例えば、約50~90%のドープされた水酸化ニッケル材料、及び約3~25wt.%のカーボンスーパーP、及び約3~25wt.%のグラファイトが使用されてもよい。代替的に又は追加的に、低体積百分率(1~10%)の高アスペクト比のNi若しくはステンレス鋼の金属繊維が使用されてもよく、又はカーボンナノファイバが使用されてもよい。次いでこのスラリーをニッケルフォーム、例えば直径1cmの円板状のニッケルフォームに塗り込んでもよい。ニッケルフォームは、酸化物層を除去するために、超音波下で、HCl(例えば、4wt.%)中(例えば、3分間)、及びアセトン中(例えば、3分間)で事前処理してもよい。この活物質をニッケルフォームに注入した後、転相プロセスによってポリマーの沈殿を誘導するために電極を水中に浸漬してもよい。次いで電極を真空下50~60℃で乾燥させ、フォームと活物質との間に良好な電気接触をもたらす(又は「確保する」)ために所望の厚み(例えば、約0.1~7mm)にプレスしてもよい。最後に、電極は、穿孔ニッケルテープ又はニッケルで被覆された穿孔スチールテープで包まれてもよい。
【0044】
使用中に、この電極材料は、Fe2+、Fe3+、及びFe4+のうち1若しくは2以上を含むことができ、又はFe2+、Fe3+、及びFe4+のうち全てを含むことすらできる。同様に、使用中に電極材料は、Ni2+、Ni3+、及びNi4+のうち1若しくは2以上を含むことができ、又はNi2+、Ni3+、及びNi4+のうち全てを含むことすらできる。特に、実施形態では、充電動作の少なくとも一部の間に、電極材料は、Ni3+及びNi4+のうち1若しくは2以上、特に少なくともNi3+、又は特に少なくともNi4+を含むことができる。
【0045】
鉄の原子価は、メスバウアー分光法を使用して決定されてもよい。さらに、ニッケル及び鉄の原子価は、レントゲン吸収分光法技法を使用して、特にX線吸収広域微細構造(EXAFS,Extended X-ray Absorption Fine Structure)を使用して、又は特にX線吸収微細構造(XAFS,X-ray absorption fine structure)を使用して決定されてもよい。さらに、NiとFeの相対量は、誘導結合プラズマ(ICP,Inductively Coupled Plasma)原子発光分析を使用して決定されてもよい。
【0046】
アルファ相は、特に、X線回折を使用して決定されてもよい。
【0047】
特に、Fe置換水酸化ニッケル材料では、鉄はニッケルを部分的に置換し得る。
【0048】
「第2のセル電極はα-Ni1-xFex(OH)2を含んでもよい(含み得る)」という語句及び同様の語句は、特に、動作状態の少なくとも一部の間に、第2の電極がα-Ni1-xFex(OH)2を含んでもよいことを示し得る。例えば、特定の実施形態では、充電時間の少なくとも一部の間及び/又は放電時間の少なくとも一部の間に、第2のセル電極は、α-Ni1-xFex(OH)2を含んでもよい。
【0049】
ニッケル鉄水酸化物、及び同様の系は、金属元素のニッケル及び鉄を含んでもよい。上に示したように、金属元素は、実施形態では、60~99.9at.%のニッケル及び0.1~35at.%の鉄を含んでもよい。特に、少なくとも90at.%の金属元素がニッケル及び鉄によって定義され、少なくとも95at.%のように定義される。したがって、他の金属元素が利用可能であり得るが、特に最大限で17at.%、例えば最大限で約10at.%、特に最大限で5又は2at.%のように利用可能であり得る。上に示したように、金属は、特に金属イオンとして利用可能となろう。異なる原子価のニッケルが利用可能であり得る。さらに、異なる原子価の鉄も利用可能であり得る。
【0050】
第1のセル及び第2のセルはセパレータを共有し得るが、それらはこのセパレータによって互いに隔離されてもよい。したがって、液体電解質は、セパレータを介して1つのセルから他のセルに自由に流れることはできないが、電解質はイオンを接触させることができる。水素ガス及び/又は酸素ガスも、セパレータを介して1つのセルから他のセルに流れることはできない。しかし、セパレータは、中性のH2O、並びに特定のイオン、例えば、OH-イオン、中性H2O、一価ナトリウム(Na+)、一価リチウム(Li+)、及び一価カリウム(K+)のうち少なくとも1又は2以上に対して透過性であってもよい。実施形態では、セパレータは、(中性)H2Oに対して透過性であってもよい。さらなる実施形態では、セパレータは、OH-イオン、一価ナトリウム(Na+)、一価リチウム(Li+)、及び一価カリウム(K+)の1又は2以上に対して透過性であってもよい。したがって、第1のセルと第2のセルはセパレータを共有し、セパレータはOH-イオン、中性のH2O、一価ナトリウム(Na+)、一価リチウム(Li+)、及び一価カリウム(K+)のうち少なくとも1又は2以上、特に全てに対して透過性を有しながら、1つのセルから他のセルへのO2及びH2のうち1又は2以上の輸送を阻止するように構成されている。したがって、特にセパレータは、相対的に高いイオン導電性及び比較的低いイオン抵抗性を有してもよい。例えば、イオン抵抗性は30wt%KOH溶液(30℃)で0.3Ω・cm2以下より低い。セパレータは例えば当技術分野で公知の電解膜などの膜を含んでもよい。膜の例には、例えば、アルカリ抵抗性ポリマー膜及びポリマー複合体膜、例えばZirfon(Agfa社製)膜が含まれる。そのような膜は、例えばセラミック微粒子(酸化ジルコニウム)が埋め込まれたポリマーマトリックスからなっていてよい。この本体は、単繊維ポリフェニレンスルフィド(PPS)から作られたメッシュファブリック又はポリプロピレン(PP)ファブリックで内部補強されている。これは約0.15μmの制御された孔径及び約2±1バール(過剰圧)のバブルポイント(液体が存在する他方側の面に気泡を形成させるために必要な膜の一方側に対する気体の圧力として特に定義される)を有する。そのような膜は組み込まれた金属酸化物粒子によって永続的に親水性であり、水及び最も一般的な電解質に完全に濡れる。そのような膜は強アルカリ(6MまでのKOH)中及び110℃まで安定であり得る。孔径は例えば約0.05~0.3μmの範囲、例えば約0.15μmであってよく、厚みは例えば約100~1000μmの範囲、例えば約500μmであってよい。セパレータとそれぞれの電極との間に、それぞれのスペーサが構成されていてもよい。これらのスペーサは、水性液体の輸送のため、及びこれらの液体のそれぞれの電極へのアクセスを提供するための開口部を含んでもよい。
【0051】
さらなる実施形態では、セパレータはOH-イオンに対して透過性であってもよい。さらなる実施形態では、セパレータは一価ナトリウム(Na+)に対して透過性であってもよい。さらなる実施形態では、セパレータは一価リチウム(Li+)に対して透過性であってもよい。さらなる実施形態では、セパレータは一価カリウム(K+)に対して透過性であってもよい。
【0052】
このようにして、本明細書に示す開口部以外が実質的に閉じている機能性ユニットが提供されてもよい。電気的接続のため、電極は機能性ユニットの外部からアクセスし得る電気接続と接続されていてもよい。したがって、機能性ユニットは、第1のセル電極と電気的に接続された第1の電気接続、及び第2のセル電極と電気的に接続された第2の電気接続をさらに含んでもよい。
【0053】
機能性ユニットによる処理を良好にするため、装置は水性液体制御システム、気体貯蔵システム、圧力システム、充電制御ユニット、第1のコネクタユニット、第2のコネクタユニット、及び制御ユニットのうち1又は2以上を含んでもよい。さらに、装置は熱管理システム及び/又は熱絶縁を含んでもよい。特に、エネルギー装置はこれらの全てを含んでもよい。
【0054】
したがって、一実施形態では、エネルギー装置は、機能性ユニットへの第1のセル水性液体及び第2のセル水性液体のうち1又は2以上の導入を制御するように構成された水性液体制御システムをさらに含んでもよい。そのような水性液体制御システムは1又は2以上の弁を含んでもよい。さらに、そのような水性液体制御システムは-作動中に-水の供給管と機能的に接続されていてよい。圧力システム(下記も参照されたい)と組み合わせて、水性液体は加圧下に機能性ユニットに供給されてよい(さらに下記も参照されたい)。さらに、水性液体制御システムはNaOH、LiOH、及びKOH、特に少なくともKOHのうち1又は2以上などの腐食性物質の貯蔵を含んでもよい。水性液体制御システムは第1のセル及び第2のセルに独立して液体を供給することができる。さらに、水性液体制御システムは第1のセル及び/又は第2のセルから下流の液体を受容し、第1の液体及び/又は第2の液体の少なくとも一部を再使用するように構成された還流システムを含んでもよい。用語「水性液体制御システム」は、複数の水性液体制御システムを意味することもある。
【0055】
さらに一実施形態では、エネルギー装置は前記機能性ユニットの外部からの第1のセル気体及び第2のセル気体のうち1又は2以上を貯蔵するように構成された貯蔵システムをさらに含んでもよい。したがって、貯蔵は機能性ユニットの外部で行われてよい。この目的のため、装置はH2を貯蔵するために構成された貯蔵システム及び/又はO2を貯蔵するように構成された貯蔵装置を含んでもよい。少なくとも、装置はH2を貯蔵するように構成された貯蔵装置を含んでもよい。圧力システム(下記も参照されたい)と組み合わせて、貯蔵システムは第1セル気体及び第2セル気体のうち1又は2以上を加圧下に貯蔵するように構成されていてよい(さらに下記も参照されたい)。用語「貯蔵システム」は、複数の貯蔵システムを意味することもある。
【0056】
したがって、一実施形態では、エネルギー装置は、(a)機能性ユニットの中の第1のセル気体の圧力、(b)貯蔵システムの中の第1のセル気体の圧力、(c)機能性ユニットの中の第2のセル気体の圧力、及び(d)貯蔵システムの中の第2のセル気体の圧力のうち1又は2以上を制御するように構成された圧力システムをさらに含んでもよい。この目的のため、圧力システムはポンプ、弁などを含んでもよい。一実施形態では、圧力システムは1又は2以上の弁を本質的に含む。用語「圧力システム」は、複数の圧力システムを意味することもある。特に2又は3以上の異なる種類の流体を加圧しなければならない場合には、2又は3以上の独立の圧力システムを適用してよい。
【0057】
さらに別の実施形態では、エネルギー装置は外部電力源(下記も参照されたい)からの電力を受容するように構成され、充電時間の少なくとも一部の間に第1のセル電極と第2のセル電極との間の、18℃で1.55V、40℃で1.50Vを超え、すなわち実際上少なくとも1.50Vの電位差を生じる電流(「電流強度」と表示することもある)で前記電力を前記機能性ユニットに供給するように構成された充電制御ユニットをさらに含んでもよい。放電された状態から出発して、電流はまず主として電池を充電するために印加される。この電流を印加することにより、電圧は18℃で1.65V、40℃で1.55Vに達し、したがってその後、電池は実際上少なくとも1.55Vに完全充電される。電池が容量に達した後、より多くの水素が徐々に生産され、次いで電圧は(18℃で)1.75V、40℃で1.62V、すなわち実際上少なくとも1.62Vに達することができる。電池機能性充電と電解気体生産のエネルギー効率は、放電時間にわたって積算された電池出力電流とその電圧との積と、全サイクルにわたって充電と(自己)放電の間に生産された水素ガスの量の高位発熱量基準(HHV)との積算値を、充電時間にわたる入力電流とその電圧との積の積算値で除した値として計算される。完全な公称充電のためのNi-Fe充電についての通常の上限電圧である1.65V(18℃)又は1.55V(40℃)(すなわち実際上少なくとも1.55V)を超えてさえも、また特にNi及びFeの電池電極の公称容量をはるかに超える電流の充電/挿入を行っても、全エネルギー効率に関しては極めて良好な結果が得られるようである。充電制御ユニットは、高電圧を必要な電圧に変換し、及び/又はAC電圧をDC電圧に変換するための電子デバイスを含んでもよい。特にエネルギー装置の一実施形態では、充電制御ユニットは、充電時間の少なくとも一部において、第1のセル電極と第2のセル電極との間に1.4~1.75Vの間で選択される電位差をもたらす電流で前記電力を前記機能性ユニットに供給するように構成されている。この電圧範囲のセル電位をもたらす電流の印加により、電池の電気化学的可逆性、気体の生産量、及び全体のエネルギー効率に関して最良の結果が得られる。
【0058】
実施形態では、充電時間の少なくとも一部の間に、電位差は1.37Vを超える。さらなる実施形態では、水素生成時間の少なくとも一部の間に、電位差は1.37~3.0Vの範囲、特に1.48~2.0Vの範囲から選択される。
【0059】
放電に関しては、セルについて好ましくは1.10Vより低くないレベルまで放電を続ける場合に最良の結果が得られ得る。制御システムは、任意選択で充電制御ユニットと組み合わせて、機能性ユニットの放電を制御するように構成されてもよい。放電は電気エネルギーを用いて工業対象物又は車両などに行ってよい。しかし、或いは又はさらに、機能性ユニットは電気グリッドに放電してもよい。
【0060】
さらに、充電制御ユニットは、充電時間の少なくとも一部の間に、Ahで表される公称電池容量Cを最小の2時間で除した値、すなわち2時間超でC/時間に対応する電流で、前記電力を前記機能性ユニットに供給するように構成されていてよい。そのような印加された電流は、第1のセル電極と第2のセル電極との間の、特に1.37Vを超える電位差を生じ得るが、特に最大でも2.0Vを超えない。
【0061】
上に示したように、装置は特に機能性ユニットからの熱エネルギーの損失を低く保つように構成された熱絶縁をさらに含んでもよい。さらに装置はユニットの温度を所定の最高温度と等しいかそれより低く、例えば95℃又はそれより低く保つように構成された熱管理システムを含んでもよい。したがって、一実施形態、特に大規模なシステム(例えば10kW又はそれ以上)では、セルの温度が監視され、温度が設定した限度の60℃を超えて上昇した場合には、印加する充電電流及び放電電流が低減させられる。熱管理システムは少なくとも部分的に制御システムに、すなわち制御に関して含まれていてよい。さらに、熱隔離は熱管理システムに含まれていてよい。
【0062】
実施形態では、エネルギー装置は、電力を供給される受容器と電気接続とを機能的に連結するための第1のコネクタユニットをさらに含んでもよい。デバイスの一例は自動車でよい(以下も参照されたい)。したがって、特に装置は、特にソケット又はプラグを含むそのようなデバイスに接続することができる(電気的な)プラグ又はソケットを含んでもよい。第1のコネクタは、装置からの電力を例えば受容器、例えば外部デバイス、例えばそのようなデバイスの電池に、又は電気グリッドに移送するように特に構成されている。用語「第1のコネクタユニット」は、複数の第1のコネクタユニットを意味することもある。
【0063】
実施形態では、エネルギー装置は、第1のセル気体及び第2のセル気体のうち1又は2以上が供給されるデバイスと前記貯蔵システムとを機能的に接続する第2のコネクタユニットをさらに含んでもよい。したがって、特に装置は、特にソケット又はプラグを含むそのようなデバイスに接続することができる(水素ガス)プラグ又はソケットを含んでもよい。第2のコネクタは、貯蔵装置からの水素ガスを受容器、例えば外部デバイス、例えばそのようなデバイスの水素貯蔵ユニットに、又は気体グリッドに移送するように特に構成されている。用語「第2のコネクタユニット」は、複数の第2のコネクタユニットを意味することもある。気体用の受容器は電気用の受容器と必ずしも同じでないことに注目されたい。
【0064】
さらに一実施形態では、エネルギー装置は、水性液体制御システム(利用可能な場合)、貯蔵システム(利用可能な場合)、圧力システム(利用可能な場合)、及び充電制御ユニット(利用可能な場合)のうち1又は2以上を制御するように構成された制御システムをさらに含んでもよい。制御システムは特に、装置及び個別の要素、特に水性液体制御システム、貯蔵システム、圧力システム、及び充電制御ユニットを制御するように構成されている。このようにして、充電及び電解プロセスは、とりわけ例えば外部電力源からの電力の利用可能性並びに電力及び/又は水素ガスの消費に応じて、最大の効率で最適化することができる。したがって、エネルギー装置の特定の実施形態では、制御システムは、機能性ユニットの充電状態及び外部電力源からの電力の利用可能性の関数として充電制御ユニットを制御するように構成されている。さらに、制御システムは、機能性ユニットの充電状態、気体貯蔵の状態(満杯か、さらに充填できるか)、及び外部電力源からの電力の利用可能性の関数として、充電制御ユニットを制御するように構成されている。任意選択で充電制御ユニットは、電気を電気グリッドに送り返すように構成されていてもよい。制御システムは、1又は2以上の顧客(本明細書に示したデバイスのような)からの電気の需要及び/若しくは気体の需要、並びに/又は(グリッド中での)電気の利用可能性の関数として、エネルギー装置の作動条件を制御するように特に構成されていてよい。したがって、制御システムはとりわけ、外部需要の存在及び/又は外部需要の種類(H2及び/又は電気)の関数として、温度、液体流、電圧差、電圧の符号などのうち1又は2以上を制御してよい。
【0065】
さらに、さらなる態様では、本発明は本明細書に定義したエネルギー装置を含むエネルギーシステムをも提供する。そのようなシステムはパワー源、特に電力源をさらに含んでもよい。したがって、一実施形態は本明細書に定義したエネルギー装置及び外部パワー(電力)源を含むエネルギーシステムを含む。パワー源は機能性ユニットを充電するため(すなわち電池を充電するため)に用いられる。装置は電力幹線に機能的に接続してよい。しかし装置はローカルな発電機に機能的に接続してもよい。例えば、バイオマス生成プラント又はバイオマス収集サイトはバイオマスを電気に変換するデバイスを含んでもよく、これを用いて装置に電力を供給することができる。同様に、ローカルな風力タービン(単数又は複数)、ローカルな光発電装置(単数又は複数)、又はローカルな水力タービン(単数又は複数)を用いて、装置に電力を供給してよい。もちろん、そのような外部電力源は電力インフラに統合されていてもよく、それらは種々の再生可能な及び従来の発電所が含まれてよい。したがって、一実施形態では、外部電力源は光発電セル、風力タービン、及び水力タービンのうち1又は2以上を含む。したがって、エネルギー装置は、電気エネルギーグリッド、H2ガスグリッド、及びO2ガスグリッドのうち1又は2以上に含まれてもよい。
【0066】
用語「エネルギー装置」は、複数のエネルギー装置を意味することもある。したがって、一実施形態では、エネルギーシステムは複数のエネルギー装置及び複数の外部電力源を含んでもよい。これらのエネルギー装置及び外部電力源は、例えば電気グリッドを介して機能的に関連している。例えば、一実施形態では、エネルギー装置は高速道路や一般道路に沿って互いに離れて配置される。エネルギーシステムは電気グリッドをさらに含んでもよい。特に外部電力源はこの電気グリッドと機能的に連結されてもよい。工業、住宅などもそのような電気グリッドと機能的に連結されてよい。したがって、一実施形態では、エネルギーシステムは複数のエネルギー装置及び複数の外部電力源並びに電気グリッドを含んでもよい。
【0067】
さらに、さらなる態様では、本発明は単一の電池電解槽で電気エネルギーと水素(H2)及び酸素(O2)のうち1又は2以上とを貯蔵する方法をも提供する。特に本発明は本明細書に定義したエネルギー装置で電気エネルギーと水素(H2)及び酸素(O2)のうち1又は2以上とを貯蔵する方法をも提供し、本方法は、第1のセル水性液体、第2のセル水性液体、及び外部電力源からの電力を機能性ユニットに供給し、それによって充電された機能性ユニット並びに前記貯蔵システムに貯蔵された水素(H2)及び酸素(O2)のうち1又は2以上を供給し、充電時間の少なくとも一部の間に第1のセル電極と第2のセル電極との間の特に1.37Vを超え、さらに特に少なくとも1.55Vの電位差で機能性ユニットを充電するステップを含む。さらに特に、充電時間の少なくとも一部の間に、第1のセル電極と第2のセル電極との間に1.50~2.0V、例えば1.55~1.75Vの範囲、少なくとも1.6Vなどから選択される電位差が生じるように電流が選択される。さらに、特に電流密度は0.001~10A/cm2の範囲から選択され得る。
【0068】
したがって、一実施形態では、充電時間の少なくとも一部の間に、第1のセル電極と第2のセル電極との間に1.50~2.0V、例えば1.55~1.75Vの範囲、少なくとも1.6Vなどから選択される電位差が生じるように電流が選択される。さらに、特に電流密度は0.001~10A/cm2、例えば0.001~2A/cm2の範囲から選択され得る。したがって、一実施形態では、充電制御ユニットは、充電時間の少なくとも一部の間に、第1のセル電極と第2のセル電極との間に1.6~2.0Vの範囲から選択される電位差で、及び0.001~10A/cm2の範囲から選択される電流密度で、前記電力を前記機能性ユニットに供給するように構成されている。ここで、当技術分野で公知のように、面積は電極の外部面積を意味する。例えば、ニッケル材料又は鉄材料は極めて大きな表面積を有し得るという事実に関わらず、ニッケル材料又は鉄材料で1cm2の面積を有する電極は1cm2の外部面積を有する。したがって、用語「外部」面積が用いられる。特に、外部面積は穿孔された金属ポケットの外部表面によってちょうど定義される。ここでは、用語「外部面積」の代わりに、用語「幾何学的表面積」も適用される。内部の電極材料は特にナノ構造を有しており、したがって例えばm2/gの範囲で表される大きな表面積を有し得る。しかしここではこれは特に断面積(電極の面に平行な断面)と称する。特に、全ての電流はセパレータを通過するので、定義として用いることができる。これはそれぞれの金属ポケットの、すなわちそれぞれの電極の表面の外形とほぼ同じ表面積を有している。
【0069】
さらなる実施形態では、本方法は、第1のセルの第1の圧力及び第2のセルの第2の圧力を、少なくとも200bar、例えば200~800barの範囲などの圧力に維持するステップを含んでもよい。さらに、本方法は、貯蔵中の圧力を1barを超え、800barまでの範囲、特に200~800barに維持するステップをも含んでもよい。上に示したように、第1のセル及び第2のセルの中の圧力は、互いに独立に制御してよい。同様に、H2及びO2の両方を貯蔵する場合には、貯蔵中のH2とO2の圧力は所望により独立に制御してよい。
【0070】
充電の間、機能性ユニットの温度は特に-10℃~+60℃の範囲の温度、さらには特に少なくとも10℃の温度に保たれる。この目的のため、エネルギー装置は温度制御ユニットをさらに含んでもよい。特に制御ユニットは、温度が設定した限度を超えて上昇した場合に印加する電流を低減することによって、機能性要素の温度を制限するように構成されてよい。さらに、装置、特に機能性ユニットは熱隔離を含んでもよい。
【0071】
エネルギー装置及び/又はエネルギーシステムは、実施形態では特に電力、水素(H2)、及び酸素(O2)のうち1又は2以上をデバイスに供給するために用いられる。例えば、そのようなデバイスは電池(電力のため)、又は自動車のようにそのような電池を含むデバイスであってよい。そのようなデバイスは水素貯蔵ユニット、又はそのような水素貯蔵ユニットを含むデバイスであってよい。さらに、そのようなデバイスは生産プロセスで酸素を用いる装置であってよい。したがって、一実施形態では、エネルギー装置及び/又はエネルギーシステムは、その推進エネルギーが水素源及び電力源のうち1又は2以上に由来するエンジンを含む電動車両に電力、水素(H2)のうち1又は2以上を供給するために用いられる。車両は例えば水素、電力、又はその両方を必要とする自動車であってよい。しかし他の実施形態では、デバイスは生産プロセスにおいて酸素及び/又は水素を用いる装置(化学的水素化、アンモニア合成、化学的還元など)等の工業対象物に含まれてよい。そのような工業対象物は特に電力、水素、及び酸素のうち1又は2以上を使用するように構成されている。
【0072】
したがって、とりわけ本発明は、(変動する又は間欠的な)電気エネルギー並びに水素(H2)及び酸素(O2)のうち1又は2以上をエネルギー装置に貯蔵する方法を提供し、本方法は、第1のセル水性液体、第2のセル水性液体、及び外部電力源からの電力を機能性ユニットに供給し、それによって充電された機能性電池ユニット並びに前記貯蔵システムに貯蔵された水素(H2)及び酸素(O2)のうち1又は2以上を供給し、充電時間の少なくとも一部の間に第1のセル電極と第2のセル電極との間の1.37Vを超える電位差で機能性ユニットを充電するステップを含む。さらなる実施形態では、水素生成時間の少なくとも一部の間に、電位差は、1.37~3.0Vの範囲、特に1.48~2.0Vの範囲から選択されてもよい。
【0073】
実施形態では、1又は2以上の金属は、少なくとも0.1at.%の(三価)金属陽イオン、例えば少なくとも1at.%、特に少なくとも2at.%、例えば少なくとも3at.%、特に少なくとも5at.%、例えば少なくとも10at.%、特に少なくとも15at.%、例えば少なくとも17at.%、特に少なくとも18at.%、例えば少なくとも19at.%の(三価)金属陽イオンを含んでもよい。
【0074】
さらなる実施形態では、1又は2以上の金属は、最大35at.%の(三価)金属陽イオン、例えば最大32at.%、特に最大30at.%、例えば最大28at.%、特に最大25at.%、例えば最大23at.%、特に最大22at.%、例えば最大21at.%、特に最大20at.%の(三価)金属陽イオンを含んでもよい。
【0075】
さらなる実施形態では、1又は2以上の金属は、少なくとも60at.%のニッケル、例えば少なくとも65at.%のニッケル、特に少なくとも70at.%のニッケル、例えば少なくとも75at.%のニッケル、特に少なくとも80at.%のニッケル、例えば少なくとも85at.%のニッケルを含んでもよい。
【0076】
さらなる実施形態では、1又は2以上の金属は、最大99.9at.%のニッケル、例えば最大99at.%のニッケル、特に最大95at.%のニッケル、例えば最大90at.%のニッケル、特に最大85at.%のニッケルを含んでもよい。
【0077】
さらなる実施形態では、1又は2以上の金属は、Ti、Cr、Mn、Co、Zn、Sc、Al、Ru、Mo、Zr、Sn、Cu、Al、Y、及びLaを含む群から選択される金属をさらに含んでもよい。さらなる実施形態では、1又は2以上の金属は、特に少なくともCuを含んでもよい。
【0078】
実施形態では、エネルギー装置は、2又は3以上の第1のセル電極及び(b)2又は3以上の第2のセル電極を含んでもよく、特に、エネルギー装置は、(a)2又は3以上の第1のセル電極間の第1の電位差及び(b)2又は3以上の第2のセル電極間の第2の電位差のうち1又は2以上を印加するように構成された電気要素をさらに含む。参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2018/117839A1号パンフレットにさらに記載され得るように、そのような装置を用いれば放電及びH2の生成を同時に行うことが可能になり得る。さらに、そのような装置によって、装置を充電する際に電気を貯蔵し、水素及び酸素を生成させることができる。
【0079】
さらなる実施形態では、電気要素は、2又は3以上の第1のセル電極の第1のサブセットと2又は3以上の第1のセル電極の第2のサブセットとの間に電位差を印加するように構成されてもよく、第1のサブセットの第1のセル電極は鉄ベースの電極を含み、第2のサブセットの第1のセル電極は鉄ベースの電極又は水素ガス生成電極(第1のサブセットの第1のセル電極とは異なる)のいずれかを含む。第1のサブセットから得られた電極は、材料において第2のサブセットと異なってよい。例えば、実施形態では、第2のサブセットの第1のセル電極は、白金(Pt)、NiMo、NiFex、FeMOx、NiCoFe、LaNi5、及びMmが2又は3以上のランタニドの混合物を表すMmNi5-x-yCoxAlyなどのLaNi5型材料、並びに硫化モリブデン(MoSx)の1又は2以上を含む。MmNi5-x-yCoxAlyはLaNi5型化合物である。Mmは特にCe、La、Pr及びその他の稀土元素(Yを含む)の1又は2以上を含んでもよい。さらに、x及びyは当技術分野で知られているように0と等しく又は0より大きいように選択される。特に、第1のサブセットの1又は2以上の電極はFeを含み、第2のサブセットの1又は2以上の電極はPtを含む。他の選択肢は硫化タングステン(WSx)又はセレン化タングステン(WSex)、及び硫化モリブデン(MoSx)であってよい。ここでxは特に1.9~2.1、又は1~3の範囲である。特に、これらの材料は(例えばFeを含む電極に加えて)触媒として用いられ得る。これらの硫化物材料は1m2/gより大きく、又は10~50m2/g、又は500m2/gまでの高い比表面積を有するように生産される。
【0080】
さらなる態様では、本発明は、電力、水素(H2)、及び酸素(O2)のうち1又は2以上を受容器に供給するための、本発明によるエネルギー装置又は本発明によるエネルギーシステムの使用を提供し得る。
【0081】
さらなる態様では、本発明は、そのような第2のセル電極を提供し得る。したがって、本発明は、(第2のセル)電極を提供することができ、電極は電極材料を含み、電極材料は1又は2以上の金属を含み、1又は2以上の金属は60~95at.%のニッケル、及び5~30at.%の(三価)金属陽イオン、特に鉄を含む。
【0082】
実施形態では、1又は2以上の金属は、17~23at.%の鉄、及び特に少なくとも70at.%のニッケルを含んでもよい。
【0083】
実施形態では、電極は、特に菱面体構造を有し、より特に空間群R3mを有する、α-Ni(OH)2を含んでもよい。実施形態では、電極材料の構造は、従来のNi(OH)2電極より長いc軸長を有することができ、それによって向上した構造安定性をもたらすことができる。このようにc軸を延ばすと、合成中に水及び対イオンのインターカレーションをもたらすことができる。実施形態では、菱面体構造中のNiの少なくとも一部がFeによって置き換えられてもよい。さらなる実施形態では、第2の電極、特に電極材料は、インターカレートされた陰イオン、例えばSO4
2-、OH-、Cl-、及びCO3
2-のうち1又は2以上を含んでもよい。
【0084】
したがって、実施形態では、電極材料は、3wt.%以上の(インターカレートされた)水、例えば5wt.%以上の(インターカレートされた)水、特に7wt.%以上の(インターカレートされた)水、例えば10wt.%以上の(インターカレートされた)水、特に15wt.%以上の(インターカレートされた)水を含んでもよい。さらなる実施形態では、電極材料は、30wt.%以下の(インターカレートされた)水、例えば25wt.%以下、特に23wt.%以下、例えば20wt.%以下の(インターカレートされた)水を含んでもよい。
【0085】
実施形態では、電極、特に電極材料は、ステンレス鋼繊維、ニッケル繊維、炭素繊維、噴霧ニッケル、又はステンレス鋼粒子を含む群から選択される導電性添加物をさらに含んでもよい。さらなる実施形態では、電極、特に電極材料は、0.3~20体積パーセントの導電性添加物、特に0.5~10体積パーセントの導電性添加物を含んでもよい。そのような実施形態は、特に(さらに)向上した導電性を有することができる。
【0086】
さらなる態様では、本発明は、統合された電池電解装置における本発明による(第2の)電極の使用を提供し得る。
【0087】
さらなる態様では、本発明は、機能性ユニットを組み立てるための方法を提供し得る。機能性ユニットを組み立てるための方法は、特に、第1のセルと、第2のセルと、セパレータとを機能的に連結するステップを含んでもよい。
【0088】
さらなる態様では、本発明は、エネルギー装置を組み立てるための方法を提供し得る。エネルギー装置を組み立てるための方法は、特に、機能性ユニットと充電制御ユニットとを機能的に連結するステップを含んでもよい。
【0089】
実施形態では、エネルギー装置を組み立てるための方法は、機能性ユニットを組み立てるための方法を実行するステップを含んでもよい。
【0090】
さらなる態様では、本発明は、エネルギーシステムを組み立てるための方法を提供し得る。エネルギーシステムを組み立てるための方法は、特に、エネルギー装置と外部電力源とを機能的に連結するステップを含んでもよい。
【0091】
実施形態では、エネルギーシステムを組み立てるための方法は、エネルギー装置を組み立てるための方法を実行するステップを含んでもよい。
【0092】
エネルギー装置のさらなる特徴は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2016/178564号パンフレットに記載され得る。
【0093】
本明細書に記載される実施形態は、本発明の単一の態様に限定されない。例えば、方法を記載する実施形態は、例えば、システム、特にシステムの動作モード、又は特に制御システムにさらに関連し得る。同様に、システムの動作を記載するシステムの実施形態は、方法の実施形態にさらに関連し得る。特に、動作(システムの)を記載する方法の実施形態は、そのシステムが、実施形態において、その動作のために構成されており、及び/又はその動作に適していることを示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
本発明の実施形態を添付の概略図を参照しながら以下に単なる例として説明する。これらの図において、一致する参照符号は、一致する部分を示す。
【
図1E】本発明の態様の実施形態を概略的に示す図である。
【
図5C】実験結果を概略的に示す図である。これらの概略図は必ずしもスケール通りではない。
【発明を実施するための形態】
【0095】
図1Aは、機能性ユニット2の実施形態の幾つかの態様を概略的に図示している。さらなる詳細を、
図1Bの実施形態に示す。
図1A(及び1B)は、第1のセル100、第2のセル200、及びセパレータ30を含む、機能性ユニット2を概略的に示す。第1のセル100は、第1のセル電極120を含む。特に、第1の電極120は、鉄ベースの電極を含む。第2のセル200は、第2のセル電極220を含む。 第2の電極220は、特に1又は2以上の金属を含み、1又は2以上の金属は、60~99.9at.%のニッケル及び0.01~35at.%の金属陽イオン、特に三価金属陽イオン、例えば(三価)鉄を含んでもよい。さらに、第1のセル100及び第2のセル200は、セパレータ30を共有してもよい。該セパレータは、OH
-、一価ナトリウム(Na
+)、一価リチウム(Li
+)、及び一価カリウム(K
+)のうち少なくとも1又は2以上に対する透過性を有しながら、1つのセルから他のセルへのO
2及びH
2のうち1又は2以上の輸送を阻止するように構成されている。セパレータ30は、特に膜を含んでもよい。さらに、セパレータ30と電極120及び220とは、参照符号23で示されるスペーサで離間されていてもよい。このスペーサは、電極とセパレータとの間に間隔を設けるだけでなく、水系電解液が電極のセパレータ側で電極と接触できるように構成されてもよい。よって、第1及び第2のセル水性液体11、21は、それぞれの電極120、220の両側を通過してもよい。
【0096】
セパレータ30及びそれぞれの電極120、220は、実質的に同じ表面積、すなわち外部表面積を有していてもよく、それによってスタック(特にスペーサが間にあるもの)を形成してもよい。よって、電極及びセパレータは、実質的に同じ高さ(ここに図示する通り)及び同じ幅(ここでは図の平面と垂直な平面)を有していてもよい。
【0097】
特に、機能性ユニット2は、圧力格納容器によって実質的に全体的に密閉された一体化ユニットである。以下でさらにまた説明するように、該機能性ユニットは、複数の第1のセル及び第2のセルを含んでもよい。
【0098】
充電中に、次の反応が第1の電極120で起こり得る:Fe(OH)2+2e-⇒Fe+2OH-(SHEに対して-0.877V)、続いて2H2O+2e-⇒H2+OH-(SHEに対して-0.83)。よって、電池が充電されるとき、Feは、H2を形成するための触媒として作用し得る。さらに、第2の電極220での充電中に、次の反応が起こり得る:Ni(OH)2+OH-⇒NiOOH+H2O+e-(SHEに対して+0.49V)、続いて4OH-⇒O2+2H2O+4e-(SHEに対して0.40)。電池が充電されるとき、NiOOHは、O2発生の平衡電位に対して幾らかの過電位を有するO2発生触媒として作用する。
【0099】
図1Aは、電解反応を示す。矢印が逆転したときは、放電反応が示される。よって、開放セルの電位(放電時)は1.37Vであり得る。電解の平衡電位は1.23Vであり得る;しかし、O
2及びH
2を相当に発生させるには、平衡電位に対して過電位が必要とされ得る。加えて、それが電解中に印加された電位のみから生成されることになるのであれば必要となる熱も考慮に入れると、水分解のための熱中性電圧(thermo neutral potential)は1.48Vである。しかし、本発明では、熱は、幾らかの追加的な熱をもたらす、電池の充電の過電位からも利用可能であり得る。実際、電解中に電位は(少なくとも)1.55~1.75Vに上昇し得る。したがって、過電位からの熱は電解に利用可能であり得る。特筆すべきことは、ポテンシャルエネルギーレベルがH
2及びO
2の発生電位と非常に近いにもかかわらず、最初に電池を充電できることである。
【0100】
図1Aは、統合された電池電解装置における本発明による(第2の)電極の使用をさらに概略的に示している。
【0101】
図1Bは、電気エネルギー貯蔵機能及び電解機能を有するエネルギー装置1の実施形態を概略的に図示している。システム1は、機能性ユニット2(上記も参照されたい)を含む。第1のセル100は、第1のセル電極120、並びに第1のセル水性液体11及び第1のセル気体12のための1又は2以上の第1のセル開口部110を含む。第2のセル200は、第2のセル電極220、並びに第2のセル水性液体21及び第2のセル気体22のための1又は2以上の第2のセル開口部210を含み、ここで、第2のセル電極220はニッケルベースの電極を含む。
【0102】
さらに、第1のセル電極120と電気的に接続された第1の電気接続51、及び第2のセル電極220と電気的に接続された第2の電気接続52が図示される。これらは、電極120、220と機能性ユニット2の外部との電気接点をもたらすために使用することができる。
【0103】
エネルギー装置1は、機能性ユニット2への第1のセル水性液体11及び第2のセル水性液体21のうち1又は2以上の導入を制御するように構成された水性液体制御システム60をさらに含む。液体制御システム60は、例として、第1の液体制御システム60a及び第2の液体制御システム60bを含む。前者は、第1のセル100の第1の注入口110aと機能的に接続され;後者は、第2のセル200の第1の注入口210aと機能的に接続されている。水性液体制御システム60は、水性液体の再循環を(及び新鮮な水性液体の供給も(詳細には示さない))含んでもよい。
【0104】
エネルギー装置1は、複数の弁Pをさらに含んでもよい。特に、このシステムは、再循環された第1のセル水性液体11及び新鮮な第1のセル水性液体11が機能性ユニット2に入る前に、それらを合わせるように構成された弁Pを含んでもよい。同様に、エネルギー装置1は、再循環された第2のセル水性液体21と新鮮な第2のセル水性液体21とを合わせるように構成された弁Pを含んでもよい。エネルギー装置1は、第1のセル気体と第1のセル水性液体とを分離するように構成された弁P、及び第2のセル気体と第2のセル水性液体とを分離するように構成された弁をさらに含んでもよい。
【0105】
なおさらに、装置1は、前記機能性ユニット2の外部の第1のセル気体12及び第2のセル気体22のうち1又は2以上を貯蔵するように構成された貯蔵システム70を含む。該貯蔵装置は、例として、第1の貯蔵装置70a及び第2の貯蔵装置70bを含む。前者は、第1のセル100の第1の出口110bと機能的に接続され;後者は、第2のセル200の第1の出口210bと機能的に接続されている。例えば、第1の貯蔵装置70a、すなわち水素ガス用の貯蔵装置だけが利用可能であってもよいことに留意されたい。貯蔵装置の上流及び/又は第1のセル100若しくは第2のセル200の下流でのガスと液体との分離は、当技術分野で公知のようにH2弁及び/若しくはH2O乾燥機並びにO2脱酸素剤を用いて、又はO2弁及び/若しくはH2O/H2凝縮器を用いて、それぞれ行ってもよい。
【0106】
エネルギー装置1は、(a)機能性ユニット2の中の第1のセル気体12の圧力、(b)貯蔵システム70の中の第1のセル気体12の圧力、(c)機能性ユニット2の中の第2のセル気体22の圧力、及び(d)貯蔵システム70の中の第2のセル気体22の圧力のうち1又は2以上を制御するよう構成された圧力システム300をさらに含む。該圧力システムは、例えば、異なる圧力システムを含んでもよく、これらは、互いに独立であってもよく、又は接続されていてもよい。例として、第1の圧力システム300aを図示する。これは、特に、第1のセル液体11及び第2のセル液体21のうち1又は2以上を圧力下でそれぞれ第1のセル100及び第2のセル200に提供するように構成されている。さらに、別の圧力システム300bは、第1のセルガス12用の貯蔵装置の圧力を制御するように構成されてもよい。さらに、別の圧力システム300cは、第2のセルガス22用の貯蔵装置の圧力を制御するように構成されてもよい。さらに、圧力システム300は、第1のセル100及び/又は第2のセル200の中の圧力を制御するように構成されてもよい。この目的のために、該圧力システムは、1又は2以上のポンプ、1又は2以上の弁などを含んでもよい。
【0107】
さらに、この実施形態における装置はまた、外部電力源(参照符合910、さらに下記を参照されたい)からの電力を受容するように構成され、充電時間の少なくとも一部の間に、最初の電池充電中では第1のセル電極120と第2のセル電極220との間の特に1.37Vを超える電位差で、電池が既に完全充電されたときの電解中では1.37~3.0V、特に電池が既に完全充電されたときの電解中では1.48Vより大きく2.0Vまでの電位差で、前記電力を前記機能性ユニット2に供給するように構成された、充電制御ユニット400を含む。
【0108】
電力供給を受けるデバイス930と電気接続51、52とを機能的に結合する第1のコネクタユニット510、並びに第1のセル気体12及び第2のセル気体22のうち1又は2以上が提供されるデバイスと前記貯蔵システム70とを機能的に接続する第2のコネクタユニット520も概略的に図示される。ここでは、実際に、2つの第2のコネクタユニット520である、第1の貯蔵装置70aと機能的に接続された第1の第2のコネクタユニット520a、及び第2の貯蔵装置70bと機能的に接続された第2のコネクタユニット520bが図示される。
【0109】
該装置は制御システム80によって制御されてもよく、該制御システムは、水性液体制御システム60、貯蔵システム70、圧力システム300、及び充電制御ユニット400のうち少なくとも1つ、特にこれらの全てを制御するように特に構成されてもよい。
【0110】
図1Bは、エネルギー装置1及び外部電源910(ここでは例として風力タービン及び光電発電源を含む)を含むエネルギーシステム5の実施形態も概略的に図示している。装置1又はエネルギーシステム5は、デバイス930、例えば、その推進エネルギーが水素源及び電力源のうち1又は2以上に由来するエンジンを含む電動車両に、電力、水素(H
2)のうち1又は2以上を供給するために使用されてもよい。代替的に又は追加的に、装置1又はエネルギーシステム5は、かかるデバイス930を含む工業対象物940によって使用されてもよい。ここでは例として、工業対象物は、例えば化学的方法のためにO
2を使用する。したがって、当然ながら代替的に又は追加的に、第1の貯蔵装置70aは、ガスグリッドにも機能的に連結されてもよく;同様に、第2の貯蔵装置70bがガスグリッドに機能的に連結されてもよい。
【0111】
【0112】
図1Bは、水性液体の返送システムも示している(上記も参照されたい)。
【0113】
図1A及び1Bは、第2のセル電極220も概略的に図示している。
【0114】
図1Cは、エネルギー装置1のさらなる実施形態を図示している。エネルギー装置1は、1又は2以上の機能性ユニット2を含む。ここでは、単一の機能性ユニット2が概略的に図示されている。それぞれの機能性ユニット2は、1又は2以上の第1のセル電極120、並びに第1のセル水性液体(図示せず)及び第1のセル気体(図示せず)のための1又は2以上の第1のセル開口部(視覚化を目的として図示されていない)を含む第1のセル100、1又は2以上の第2のセル電極220、並びに第2のセル水性液体(図示せず)及び第2のセル気体(図示せず)のための1又は2以上の第2のセル開口部210を含む第2のセル200;並びにセパレータ30であって、第1のセル100及び第2のセル200がセパレータ30を共有し、セパレータが、水酸化物イオン(OH
-)、一価ナトリウム(Na
+)、一価リチウム(Li
+)、及び一価カリウム(K
+)のうち少なくとも1又は2以上に対する透過性を有しながら、1つのセルから他のセルへのO
2及びH
2のうち1又は2以上の輸送を阻止するように構成されたセパレータ30を含む。
【0115】
実施形態では、エネルギー装置1は、(a)少なくとも2又は3以上の第1のセル電極120及び(b)少なくとも2又は3以上の第2のセル電極220のうち1又は2以上を含んでもよい。
図1Cに図示される実施形態では、エネルギー装置1は、単一の第2のセル電極220及び複数の第1のセル電極120を含む。
【0116】
エネルギー装置1は、(a)2又は3以上の第1のセル電極120の間の1又は2以上の電位差、及び(b)2又は3以上の第2のセル電極220の間の1又は2以上の電位差のうち1又は2以上を印加するように構成された電気要素7をさらに含む。ここでは、電気要素7は、2つのタイプの第1のセル電極120の間に電位差を印加し、それらの間に電流を流すように構成されている。よって、電気要素7は、1又は2以上の第1のセル電極120の第1のサブセット1211と1又は2以上の第1のセル電極120の第2のサブセット1212との間に電位差を印加するように構成されている。この電位差は必ずしも印加される必要はないことに留意されたい。ある段階の間にかかる電位差が印加されてもよいが、十分なH2が存在するときなどの他の段階では、電位差が印加される必要はない。例えば、第1のサブセット1211及び第2のサブセット1212の第1のセル電極120は、鉄ベースの電極を含んでもよい。さらなる実施形態では、第1のサブセット1211の第1のセル電極120は鉄ベースの電極を含み、第2のサブセット1212の第1のセル電極120は水素ガス生成電極1210を含む。
【0117】
図1D~1Eは、装置1が並列(1D)又は直列(1E)のいずれかに配置された複数の機能性ユニット2(又は「ユニット2」)を含む実施形態を概略的に図示している。並列配置と直列配置との組合せも適用されてもよい。ユニット2が並列に構成されている
図1Dを参照すると、ユニット2は、ユニットセパレータ4によって分離されてもよい。ユニットセパレータは、特に、(並列に構成された)ユニット(2)の電解質を流体的に分離することができる。さらなる実施形態では、ユニット2は、電解質を含む単一の浴(すなわち、特にKOHを含む水)内に構成し、そのようにしてユニットセパレータ4をセパレータ30に置き換えてもよく、このセパレータ30は、特に、OH
-イオン、中性のH
2O、一価ナトリウム(Na
+)、一価リチウム(Li
+)、及び一価カリウム(K
+)のうち少なくとも1又は2以上、より特に全てに対して透過性を有しながら、1つのユニットから他のユニットへのO
2及びH
2のうち1又は2以上の輸送を阻止するように構成されてもよい。ユニット2が直列に構成されている
図1Eを参照すると、ユニットセパレータ4を導入することが必要になり得る。このユニットセパレータ4は、例えば、ニッケルで被覆されたバイポーラプレートなどのバイポーラプレートを含んでもよい。電解質は、例えば、少なくとも5MのKOH、例えば、約6MのKOHを含有してもよい。セパレータ30を通して、第1のセル100と第2のセル200とを分離し得るが、実施形態において、電解質は、第1のセルから第2のセルへ、若しくはその逆に、又は第1の機能性ユニットの第1のセルから第2の機能性ユニットの第2のセルへ、若しくはその逆に、などのように流動し得る。
【0118】
ユニット2を直列に配置する利点は、電気接続の適用がはるかに容易であり得ることである。例えば、ユニット間に構成されたバイポーラプレートを使用するとき、第1の機能性ユニット2の第1のセル100の第1のセル電極(図示せず)との第1の電気接続51、及び第2の機能性ユニット2の第2のセル100の第2のセル電極(図示せず)との第2の電気接続52だけが必要となり得る。その場合、電流は、バイポーラプレート4を通って、一方の機能性ユニット2(からの一方の電極)から他方の機能性ユニット2(からの他方の電極)に流れ得る(バイポーラプレート4を通る矢印を参照されたい)。直列配置のさらなる利点は、電池の管理が並列の場合より容易であり得ることである。何故なら、セルの1つの全容量を超えて充電すると、有害作用を及ぼすことなく、他のセルより幾らか早くH2の(所望の)生成をもたらすからである。個々のセルの全容量を超える放電中に、電圧降下が個々のセル当たり1.1Vを下回らないようにモニタリングすることができ、また、例えば、O2をセルの底部の水の引込み口から通気して挿入し、電極中に拡散させることによって、Niベースの電極での電解質における還元にO2を利用可能にすることができる。O2は、それに先立つデバイスの充電期間に生産し、貯蔵することができる。
【0119】
複数の機能性ユニット2は、スタックとして構成されてもよい。特に直列のスタックに言及すると、[ABACADAE]nを含む構造体がもたらされてもよく、ここで、Aは電解液及び溶存ガス分散シート(dissolved gas distribution sheet)(成形多孔質プロピレンなど)を指し、Bは第1の電極又は第2の電極を指し、Cは、Ni被覆バイポーラプレートなどのバイポーラプレートを指し、Dは、第2又は第1の電極(この場合B≠D)を指し、Eはガス分離膜を指し、nは1以上の整数を指す。スタックが[CADAEABA]n又は[ADAEABAC]nなどと定義されている場合でも等しく良好であることを留意されたい。スタック全体が、圧力格納容器内に含有されていてもよい。
【0120】
実験
材料の調製 - 7at.%(x=7)、15at.%(x=15)、20at.%(x=20)を含有するFe置換水酸化ニッケル材料(α-Ni1-xFex(OH)2)(ここでは、NiFe7、NiFe15、NiFe20として示される)を単純な化学的共沈法によって調製した。適切な比率で混合した鉄及びニッケルの硫酸塩の溶液を2M NaOH溶液中に撹拌下でゆっくり滴下した。混合溶液のpH値は、合成全体を通して13.2~13.4に制御する。沈殿物を遠心分離によって溶液から分離し、脱イオン水で洗浄した(この手順を2回繰り返す)。次いで沈殿物を50~60℃の真空オーブン内で一定の重量に達するまで乾燥させた。得られた材料を、次いで200RPMで12分間ボールミル粉砕した。比較を目的として、同じプロトコルに従って純粋なβ-Ni(OH)2を合成した。
【0121】
材料の特徴付け - Co Kα線源(λ=1.78890Å、35kV、及び40mA)及びLynxEye位置敏感検出器を有するBruker D8 Advance回折計を用いて、調製時及びエージングした試料の相構造を特定した。スキャンデータは、0.06°のステップサイズ及び15秒の計数時間で、5~95°の2θ範囲内で収集した。TG及びDTA測定は、Mettler Toledo社製のTGA2を使用して、空気流下及び30~800℃の温度範囲内で、1分当たり10℃のステップで行った。調製した試料の金属含有量は、ICP-OES、Spectro Arcos EOPを使用して分析した。
【0122】
電極の調製 - ペースト式ニッケル電極は、次のように調製した:50%のNi(OH)2、25%のカーボンスーパーP、及び25%のグラファイトを一緒に粉砕し、その後ポリエーテルスルホン(PES)溶液を均一なスラリーが得られるまで混合物(NMP中7wt.%)に添加した。次いでこのスラリーを予め直径1cmの円板状に切断されたニッケルフォームに塗り込み、酸化物層を除去するために、超音波下で、HCl(4wt.%)中で3分間及びアセトン中で3分間処理した。この活物質をニッケルフォームに注入した後、転相プロセス54によってポリマーの沈殿を誘導するために電極を水中に浸漬した。次いで電極を真空下50~60℃で乾燥させ、フォームと活物質との間に良好な電気接触をもたらす(又は「確保する」)ために0.1mmの厚み(当初の厚みの1/5)にプレスした。最後に、電極をニッケル穿孔テープで包んだ。同じプロトコルに従ってブランク電極を調製したが、水酸化ニッケルをスラリーに添加しなかった。
【0123】
電気化学的特徴付け - 電気化学的試験は三電極セルで行い、作用電極、対電極、及び基準電極はそれぞれ、Ni(OH)2ペースト式電極、ニッケル箔、及びHg/HgO(6M KOH)基準電極であった。Hg/HgO基準電極の電位は、E(Hg/HgO)=0.098-(R.T/F).ln[OH-]=0.052 V/SHEを使用して推定した。ペースト式電極は、電気化学的試験を開始する10時間前に電解質(6M KOH溶液)に浸漬させた。活性化サイクル、長期サイクリング、及び高レート受入性(high-rate acceptance)を含む電気化学的性能の試験をMaccor 4000電池サイクリングシステムを使用して行った。理論容量は、全ての試料について、電極中に担持されるNi(OH)2材料の総質量から、水酸化ニッケル試料について文献に報告される交換される電子の最大数(Ni 24当たり1.7e-)を考慮して算出した。全ての充電サイクリング実験について、挿入される電荷は理論容量の1.5倍であり、充(放)電レートは、特に言及しない限り0.2Cであった。放電容量値は、サイクリング時にニッケル基板状に形成される酸化ニッケルの形成及び還元に対応するブランク電極の放電容量によって補正した。2.5mA/cm2~25mA/cm2の電流密度でのクロノポテンシオメトリーによって、既に充電された材料についてのターフェルプロットを得た。この実験では、回転するバーを作用電極の下に設置して、生成する気泡を除去する。酸素発生反応電位EOERは抵抗降下(iR)補償で補正した。10mA/cm2でのOER過電圧は、ηOER=EOER-1.23+0.059.pH+0.052を使用して推定する。
【0124】
結果及び考察
材料の特徴付け - 調製時のNi-Fe層状複水酸化物(NiFe-LDH)材料及び純粋なNi(OH)
2材料(同じプロトコルに従って合成されたもの)のXRDパターンを
図2に示す。具体的には、
図2は、2θに対する強度(I;単位a.u.)を図示しており、図中、参照符合L7はNiFe7に対応し、参照符合L15はNiFe15に対応し、参照符合L20はNiFe20に対応し、参照符合LBは鉄置換を行わずに調製された水酸化ニッケル材料に対応する。具体的には、
図2の上部は調製時の材料に関する測定を表しており、それに対して下部は、KOH(6M)中で1カ月間エージングされた後の鉄ドープα-Ni(OH)
2のXRDパターンを図示している。
【0125】
予想した通り、鉄置換を行わずに調製された水酸化ニッケル材料、Ni-Bは純粋なベータ相を提示し、d001反射に関連する層間距離は4.7Åである。NiFe-LDH試料は、低い結晶化度を示し、幅広で非対称の反射を有するが、これはアルファ相によく観察される乱層構造の特徴である。NiFe15(α-Ni1-xFex(OH)2、x=15)及びNiFe20(α-Ni1-xFex(OH)2、x=20)の回折図から、実際に、菱面体構造(空間群R3m)を有するα-Ni(OH)2であることが明らかになる。回折図は六方格子に基づいて指数付けすることができ(表1;下記を参照されたい)、それにおいてc格子パラメータ、反射(003)は、層間距離(d003)がNiFe15では8.64Å、NiFe20では8.25Åであることを示唆している。六方格子のa格子パラメータによって表されるNi-Ni距離は、NiFe15では3.05Å、NiFe20では3.00Åである。この変動は、ニッケルの代わりに置換された三価陽イオンの存在によって引き起こされる。Fe3+のイオン半径はNi2+の半径より小さいため(それぞれri=0.64Å、及びri=0.70Å)、Ni-Niの距離は鉄の含有量と共に減少する。
【0126】
材料NiFe7(α-Ni1-xFex(OH)2、x=7)は独特なX線回折図を示す。α相のように、C軸方向の結晶軸における距離である、CHex/3及びCHex/6を表す2つの反射(003)及び(006)が、2θ=30°より下で観察される。しかし、NiFe15及びNiFe20とは異なり、それらの位置は互いの約数ではなく(材料NiFe20では8.25Å及び4.15Åであるのに、6.88Å及び4.39Å)、アルファ相の(003)及び(006)反射として指数付けすることができないことを意味している。したがって、これらの反射を(003*)及び(006*)と呼ぶことにする。それは、α及びβ-Ni(OH)2ドメインが単一の結晶子内に共存する混合層構造の典型である。この場合では、Fe濃度≧(約)10%(すなわち、x=10)であれば、純粋なα相がもたらされる可能性がある。これらの疑似(003*)及び(006*)反射に加えて、NiFe7の回折図は、別の特殊性を提示し、低角度(2θ=6.85°、d=15Å)に周期外、E.P(extra periodicity)に帰する可能性があると思われるさらなる反射を有する。
【0127】
6M KOH中でエージングさせると、様々なドープ水酸化ニッケルはより鋭い反射を示し、結晶化度が増加して平均的に結晶が大きくなることが示唆される(
図2)。エージング前後の結晶サイズを表1に表示する。1カ月のエージング後に純粋なα相を示すのは材料NiFe20だけであるが、層間距離は8.25から7.70Åに減少した。これは、炭酸イオンが他の陰イオンよりLDH層との親和性が強いことによって説明される、KOH中でのエージングの際にSO
4
2-がCO
3
2-と交換されることに起因し得る。
【0128】
エージングされたNiFe7の回折図は、依然として混合層挙動を示しており、今度は(003*)反射がより高い2θ角度にシフトしている(エージング前はd=6.88Åであるのに、d=5.58Åである)。これは、混合層構造内のβ相の割合が増加したと解釈することができる。エージング前は純粋なα相を示していた材料NiFe15も、今度は混合層構造を示しており、(003)反射がより高い2θ角度にシフトしている(エージング前は8.64Åであるのに、6.07Åである)。この回折図は、実際にエージング前のNiFe7のものと極めてよく似ていると思われる。
【0129】
結論付けると、約15at.%以下の鉄濃度では、過剰なFe3+正電荷のバランスを取るインターカレートされた陰イオンの量が層間スラブを一様に充填するには十分ではなく、混合層材料の形成の原因となる偏析作用をもたらすことがある。
【0130】
したがって、実施形態では、1又は2以上の金属は、少なくとも15at.%の鉄、例えば少なくとも16at.%の鉄、特に少なくとも17at.%の鉄、例えば少なくとも18at.%の鉄、特に少なくとも19at.%、例えば少なくとも20at.%の鉄を含んでもよい。
【0131】
【0132】
水酸化ニッケル中にインターカレートされた水分子の量は、結晶構造及び電気化学的特性に重要な役割を果たし得る。試料に含有される水の量を決定するにはTGAを使用する。吸着及びインターカレートされた水の含有量は、全てのドープ試料では約18wt.%、そして吸着された水のみを含有する従来のβ-Ni(OH)2であるNi-Bでは約8wt.%と推定される。実施形態では、第2のセルは、5~15wt.%のインターカレートされた水、例えば7~13wt.%のインターカレートされた水を含んでもよい。試料中のニッケルの量(wt.%)はICPによって決定し、後でニッケルの原子当たりに交換される電子数を決定するために使用する。ICPによって決定された試料中のニッケルの量(wt.%)並びにFe/(Ni+Fe)モル比を表2に表示する。このICPの結果によって、試料の鉄ドーピングが7、13、及び18%であり、これは期待値(7、15、20%)に近いことが確認される。したがって、「NiFe15」という用語は、本明細書では特に、1又は2以上の金属を含む第2の電極であって、1又は2以上の金属が13at.%の鉄を含む電極を指してもよく、「NiFe20」という用語は、本明細書では特に、1又は2以上の金属を含む第2の電極であって、1又は2以上の金属が18at.%の鉄を含む電極を指してもよい。
【0133】
【0134】
材料費 - 標的とする用途(GSESS)を考慮して、電気化学的研究は、材料費、材料の高レート特性、エネルギー効率、及び耐久性に関連する材料の性能を特徴付けることに焦点を当てる。
【0135】
本研究で材料の容量を特徴付けるための考慮されるパラメータは、比容量(化合物のグラム当たりのミリアンペアアワー)ではなく、ニッケル原子当たりに交換される電子数(NEE)である。比容量は、エネルギー密度に関連するため、電池の文献に従来から使用されているが、ここで考慮される定置型貯蔵装置では、Ni含有量、したがって材料費が比較的高い重要性を有することがある。
【0136】
図3Aは、NiFe20(L20)、NiFe15(L15)、NiFe7(L7)について0.2Cで行った10回の活性化サイクル(#C)を通したNi原子当たりのNEEの段階的変化を、β-Ni(OH)
2であるNi-B(LB)と比較して概略的に図示している。右の軸は、化合物中のNiのグラム当たりの容量(Cap)を示す。
図3Bは、Cレート=0.2Cでの10回の活性化サイクル(#C=10)についての、充電及び放電曲線での比容量(Cap;単位mAh/化合物g)の関数としての電位E(単位V/Hg/HgO、すなわち、Hg/HgO基準電極に対するV)を、特にNiFe20(L20)、NiFe15(L15)、NiFe7(L7)について、β-Ni(OH)
2であるNi-B(LB)と比較して概略的に図示している。
【0137】
図3Aは、3種の鉄ドープ試料での、0.2Cでの10回の活性化サイクルに沿った容量の段階的変化を純粋なβ-Ni(OH)
2と比較して示している。予想した通り、全てのNiFe-LDH材料は、ニッケル原子当たりに交換される電子数を、0.86のe-/Niを示すNi-Bよりも高くすることができる(1.15~1.57のe-/Ni)。ドープ試料からは、NiFe20材料は、活性化の終了時に1.15及び1.23のe-/Niにそれぞれ達するNiFe7及びNiFe15よりはるかに良好な性能を示す。LDH材料の電気化学的性能は、それらの結晶構造に相関し得る。試料NiFe7及びNiFe15の結晶構造におけるアルファ相及びベータ相の層の混合層によって、これらの材料が達した容量の低下が説明される。実際に、アルファ相だけが四価ニッケル原子を含有し、交換される電子数(NEE)を多くすることができる。混合層材料では、ベータ相の層の存在によってニッケルの平均酸化状態がそのとき減少している。この混合層構造は、NiFe7ではエージング前に既に観察されている。NiFe15の場合では、変態は、サイクリング中だけでなく、活性化サイクルに先立つ調製ステップ(電極の浸漬及び1回目の長いサイクル)中で生じる可能性があると思われる。KOH中でエージングした後でも依然として純粋なアルファ相を示した材料NiFe20は、やはりe-/Niが1.57と最良の結果を示す。これは、従来のβ-Ni(OH)
2と比較してNi原子当たり1.8倍増加したことになり得る。水酸化物材料中のニッケルの量、したがってコストは、その場合には同様の容量でほぼ半分となる。
【0138】
図3Bに示す、異なる材料の充(放)電曲線の分析は、サイクリングプロセスへのより多くの洞察をもたらす。充電及び放電曲線の形状は、例えば、材料の組成を明らかにする。NiFe15の充(放)電曲線から、充電及び放電での100mAh/gの位置辺りに見える2つのプラトーによって強調される2つの異なる相(アルファ及びベータ)の存在が確認される。この作用はNiFe7ではあまり見られず、この試料ではアルファからベータへの変態がほぼ完了していることが示唆される。
【0139】
充電及び放電電位は、鉄ドーピングに有意に影響されるように見える。材料中の鉄濃度に伴って電位が徐々に増加することが観察される。異なる試料の半放電電位(Hg/HgOに対するVd1/2)は、以下の順に増加する:
【0140】
【0141】
異なる試料の半充電電位によって明らかにされるように、充電曲線にも同じ傾向を認めることができる:
【0142】
【0143】
半放電での平衡電位、OCP(1/2)は、GITT測定によって決定した。Ni(OH)2/NiOOH酸化還元対の平衡電位は、ヒステリシス挙動を示すことがあり、SOC(充電状態,state of charge)に対する平衡電位は、充電中に測定したときの方が放電中より高くなる。このヒステリシス挙動は、Ni(OH)2構造中のプロトンのインターカレーション(放電中)及び除去(充電中)が格子の膨張及び収縮を引き起こすことによって誘導される構造変化に関連し得ると思われる。したがって、GITT測定から2つの平衡電位が決定される:すなわち、定電流間欠滴定法(Galvanostatic Intermittent Titration Technique,GITT)曲線の充電部分及び放電部分の間にSOC=0.5でそれぞれ得られる、OCPc(1/2)(これは充電中の中間での開路電位である)及びOCPd(1/2)(これは放電中の中間での開路電位である)である。OCP値から、Ni(OH)2中の鉄濃度と共に、酸化状態が高くなることを反映し得る平衡電位の増加が実際に存在し得ることが明らかになる。それにもかかわらず、平衡電位の差であるOCPc(1/2)-OCPd(1/2)が全ての試料で同様であり(約0.055V)、このことから速度論的充電レート(kinetic charge rate)に依存する過電圧は鉄ドーピングで減少し得ることが確認され、これはNiFe-LDH試料内での優れた電荷輸送を示すことができる。
【0144】
電解に関しては、
図3Bにおいて、挿入される電荷が300mAh/gを超えるとOERの過電圧が見られる。電位は、鉄ドーピングの触媒挙動によっても影響を受けることがあり、ドーピングの濃度と共に減少し得る:
E
OER(NiB) = 0.494 > E
OER (NiFe7) = 0.490 > E
OER(NiFe15) = 0.483 > E
OER (NiFe20) = 0.483 V /Hg/HgO
【0145】
試料Ni-Bは、化合物のグラム当たりのミリアンペアアワーでの比容量を考慮したときにNiFe7及びNiFe15より大きい容量をもたらすように見えるが、先に提示したNEE/Niでの推定は異なる傾向を示す。これは、Feドーピングを含有せず、インターカレートされた水を有さないNi-B材料では、化合物のグラム当たりのNi含有量が高く、それによってNi当たりのNEEの低さが補償されることによって説明される。しかし、試料NiFe20では、β-Ni(OH)2より高い比容量とはるかに大きいNi量当たりの容量の両方に達している。これは、化合物中のNi量が低減し、OERが強化されて試料のファラデー効率の低下がもたらされたにもかかわらず、NiFe20によって交換される電子の数が多いことによって、さらに電池の質量エネルギー密度も増加させることができることを示している。
【0146】
高レート特性及びエネルギー損失 - グリッド安定化用途に適するように、エネルギー貯蔵デバイスには、十分に高レートで充電及び放電する能力が必要であり得る。典型的には、電力貯蔵システムは、4時間の貯蔵期間に達するように設計することができる。さらに、再生可能な太陽及び風力ベースのエネルギーは、4時間の周期的な日間挙動に従うことが多い場合がある。したがって、毎日のエネルギー装置の有利で現実的な使用は、短期貯蔵のために(夜間に電力を提供するために)1Cの充電レートを適用して電池を1時間で完全充電し、長期貯蔵のために次の3時間で水素を生産することにあると思われる。したがって、1Cという充電レートは目標とするのに重要であり得る。しかし、一般に水酸化ニッケルは不十分な電子導電体であることが公知であり得る。充電レートが高すぎるならば、放電中にNi(OH)2の形成がNiOOHの完全な放電を妨げる絶縁層を形成し、活物質の利用を減少させる場合がある。したがって、490mAh/gの理論的比容量及び試料の総質量(ドーピング及び水が含まれる)を考慮して、充電レートであるCレートを0.1Cから4Cに増加させることによって、充電レートが材料の容量に及ぼす影響を評価した。したがって、0.1Cは49mA/g(≒0.1mA/cm2)に相当し、4Cはほぼ2A/g(≒4mA/cm2)に相当する。
【0147】
図4A~Dは、β-Ni(OH)
2及びLDH-Fe-Ni(OH)
2材料の高レート特性を概略的に図示している。具体的には、
図4Aは、0.1CのCレートでの放電容量に対する放電容量の比として表した、CレートC
Rでの放電容量NEE/NEE
最大(単位%)の段階的変化を図示しており、挿入図ではC
RでのNEEとして表している。
図4Bは、様々なCレートC
Rでの充(放)電曲線の平均電圧V
A(単位V/Hg/HgO)を図示している。
図4Cは、電流密度I
dの対数(単位log(mA/cm
2)に対するE
OERの段階的変化(単位V/Hg/HgO)を有する、iRで補正されたOERターフェルプロットを図示しており、挿入図では、電流密度I
d(mA/cm
2)でのE
OERの段階的変化(単位V/Hg/HgO)を図示している。
図4Dは、様々なCレートC
Rでの速度論的過電圧(kinetic overpotential)の合計ηc+ηd(単位V)を図示している。
図4A、B、Dは、相当する電流I(単位A/g)をさらに図示している。
図4A~Dのそれぞれについて、参照符合L7はNiFe7に対応し、参照符合L15はNiFe15に対応し、参照符合L20はNiFe20に対応し、参照符合LBは鉄置換を行わずに調製された水酸化ニッケル材料に対応している。
【0148】
電流の増加によって誘導される放電容量の損失を
図4Aに表し、0.1CでのNEEの値によって標準化されたNEEをCレートに対して表す。それによって、電流の増加に対する材料の応答に鉄ドーピングが有意な影響を及ぼすことが明らかとなる。実際に、電流の増加によって誘導される放電容量の低減はドープ試料では少なくなり、材料中のFe濃度が増加するにつれて次第に低減する。Ni-B材料は、Cレートが0.1から4Cに増加するとその放電容量を19%失うのに対して、NiFe20によって失われるのは7%だけである。これは、アルファ相の大きい層間距離及び含水量によって可能となる、材料を通るプロトンのイオン導電の良好化だけでなく、鉄ドーピングによって誘導される電子導電性の向上によっても説明することができる。
【0149】
ハイブリッド電池電解槽デバイス内でのニッケル電極の使用に関連するエネルギー損失は、ニッケル電極の充(放)電の不可逆性に関連する電池損失と、OER損失とに分解することができる。
【0150】
電池損失は以下のように表すことができる:
【0151】
【0152】
したがって、充電プロセスの平均電位と放電プロセスの平均電位、それぞれ
【0153】
【0154】
と
【0155】
【0156】
の差は、エネルギー損失を特徴付けるための興味深い基準であり得る。
図4Bは、Cレートが
【0157】
【0158】
及び
【0159】
【0160】
に及ぼす影響を示している。
【0161】
充電電位と放電電位の差は、エネルギー効率への電池の寄与に影響を及ぼし、それは以下のように推定される。Ni-Bは、全てのCレートで最大の
【0162】
【0163】
及び2番目に低い
【0164】
【0165】
を示すことから、この場合、NiFe-LDH試料より大きいエネルギー損失をもたらす。ニッケル電極の充(放)電プロセスに関連するエネルギー効率の損失L電池(Ni)(CC=2Cdで式1によって算出される)は、1.6Vの
【0166】
【0167】
でのNi/Fe全セル充電を想定すると、0.1CでNi-Bでは2.9%、NiFe20では2.3%に相当する。全てのCレートでNi-Bの代わりにNiFe20を使用すると、-0.4~-0.7%のエネルギー損失の低減となり、これは、Ni-Bの損失と比較すると12~24%の低減となる。
【0168】
【0169】
ここで、Cdは放電容量、Cc=2Cdは、選択された挿入された電荷(したがって電荷の半分はH2に変換された)であり、
【0170】
【0171】
は、1.6Vと推定される全セル充電の平均電圧である。
【0172】
NiFe20とNi-Bの両方とも、4Cでの損失電池(Ni)の方が1Cより若干高い。1.6Vの
【0173】
【0174】
でのNi/Fe全セル充電を考慮すると、これは、式2によるとNiFe20では2.3%~2.8%、Ni-Bでは2.9~3.3%のエネルギー効率の損失L電池(Ni)の増加に相当する。
【0175】
注目すべきことに、
【0176】
【0177】
の差は、速度論的作用に関連する過電圧だけでなく、平衡電位のヒステリシス作用に関連する過電圧からも構成されている可能性がある。したがって、エネルギー損失に対する速度論的及びヒステリシス的寄与をより良く洞察するために、速度論的過電圧の合計ηc+ηdを式3によって求める:
【0178】
【0179】
ここで、ηc(Ni)+ηd(Ni)は、充電及び放電プロセスで平均化された過電圧の合計である。Ec(Ni)、Ed(Ni)は、試料の充電及び放電で平均化された平衡電位であり、GITTによって決定される。
【0180】
過電圧の合計η
c(Ni)+η
d(Ni)は、
図4DにおいてCレートの関数として表される。このように、全てのCレートについて、過電圧はβ-Ni(OH)
2の方がドープ試料より高い。このように、材料Ni-B及びNiFe20では、4Cでの速度論的エネルギー損失L
速度論(Ni)は、
【0181】
【0182】
及びCc=2Cdで全セル充電した場合、式4によるとそれぞれ1.9%及び1.5%のエネルギー効率の損失となる。ドーピングによって誘導されるこの速度論的過電圧の減少は、前に説明した通りの、エネルギー損失を低減させることになる良好なイオン及び電子経路によって説明することができる。
【0183】
【0184】
同じ充電レートの場合、エネルギー効率の損失に寄与するヒステリシスは、式5によるとNi-B及びNiFe20でそれぞれ1.4%及び1.2%に相当する。
【0185】
【0186】
速度論的損失とは異なり、ヒステリシス損失は、充(放)電中の水酸化ニッケル材料の構造変化に固有であると思われ、したがって不可避であり得る。低Cレート(0.1C)ではこのヒステリシス損失が速度論的損失より大きいことも注目に値する。Ni-Bでは、それは1.6%のエネルギー効率の損失となるが、速度論的損失は1.4%である。同じ傾向がNiFe-LDH試料でも観察される。
【0187】
従来のNiFe電池の機能には、良好なエネルギー効率を有するために高いOER電位が必要であり得る。それは、従来のNiFe電池の方がサイクリングプロセスのファラデー効率が高いことを含意するからである。対照的に、ここで提案するハイブリッド電池電解槽の機能では、水素及び酸素が有用な生産物であるため、ファラデー効率は水分解反応によって影響を受けない。この場合、エネルギー効率の向上を可能にするために、OER過電圧の減少はさらに望ましいことであり得る。OERに対する水酸化ニッケル材料の触媒活性を、0.6~25mA/cm
2の範囲の電流密度でのクロノポテンシオメトリーによって特徴付ける。結果は
図4Cにおけるターフェルプロットに表示され、その結果から、ドープ水酸化ニッケルが活性及び速度論において純粋な水酸化ニッケルより性能的に優れていることが確認される。実際に、NiFe-LDH材料の方が、過電圧とターフェル勾配の両方が低い。材料NiFe20は、10mA/cm
2で34mV/decadeのターフェル勾配及び205mVの過電圧を示し、一方、Ni-Bでは10mA/cm
2で勾配が39mV/decade及び過電圧が230mVである。これらの優れた触媒特性によって、Ni/Feハイブリッド電池が完全に充電されれば、NiFe-LDHは有効な水分解に使用することができる。
【0188】
OERの過電圧に関連するエネルギー効率の損失は、異なる試料の充電曲線のOERプラトーとOERの熱中性電圧の差から推定することができる:
【0189】
【0190】
ここで、ETN(OER)はOERの熱中性電圧であり、EOERはOERプラトーの電位である。
【0191】
図4Cに示すように、E
OERは、適用された全てのCレートで全ての試料でE
TN(OER)より低い。これは、環境から来る外部の熱によって説明することができる。これは、その場合、水の酸化の熱中性電圧と比較したときに、負のエネルギー効率の損失、L
el(OER)を含意する。4Cで
【0192】
【0193】
を用いて完全セル充電する場合、OERのエネルギー効率の損失は、Ni-Bでは-2.5%であるのにNiFe20では-3.2%と推定され、ドープ試料では+0.7%のエネルギー効率の獲得が誘導される。電池のエネルギー効率の獲得と合わせると、NiFe20を使用すると、+1.1~+1.4%の総エネルギー効率の増加となる。典型的な完全セル効率は80~90%であり得るため、これは、完全セル損失全体の7~14%の低減となり得る。
【0194】
安定性 - NiFe7、NiFe15、及びNiFe20のうち最も良好な容量性能を示す試料NiFe20をライフサイクル実験に曝露して、サイクリングにわたるその安定性を特徴付けた。活性化及びCレート実験後に、電極に4C充電、過充電、及び放電でのサイクルを960回行った。ライフサイクル実験の途中で、0.2Cでの6回の再活性化サイクルを100サイクル毎に行った。最後に、960サイクルの終わりに、電極をその当初の厚みまで再プレスして、材料を集電体に再接続し、電極を0.2Cで再びサイクルさせた。合計して電極には1000サイクル行った。電極の全履歴をNEEとして
図5に表す。
【0195】
図5Aでは、容量の一定の減少が960回のサイクルにわたって観察可能である。実験の第2のステップ中に行われた再活性化サイクルから、材料をよりゆっくりと充(放)電することによって幾らかの余分の容量を取り戻すことが可能であることが強調される。これは、電極内の電子導電性経路の弱化のために材料のある部分がそのような高い充(放)電レートに達することができないことを示唆している。しかし、再活性化サイクル中に達した容量も、時間の経過と共に明白な減少を示す。容量の減少が材料のエージングに起因するのか、又は電子接触の損失に起因するのかを判定するために、電極を再プレスし、0.2Cで再活性化した(
図5B)。これによって容量の純増がもたらされ、NEEは1.41のe-/Niに上昇する。したがって、NiFe20材料自体は多数のサイクルに耐えることができると結論付けることができる。1000サイクル後に、その容量は最初の10回の活性化サイクル後に得られた容量(NEE=1.57、
図3)の90%に相当する。その上、1000サイクル後であっても、試料NiFe20は依然として良好な高レート特性を示す(
図5C)。それは、充電と放電の両方で20Cほど高いCレートにも耐えることができ、それでも交換される電子数が優れて高いことを示す(0.8のe-/Ni、又は換言すれば46%のSOCに3分で達することができる)。NiFe20内のアルファ相の安定性は、エージングされた電極のXRD分析でも確認され、それによって1000サイクル後であってもNiFe20材料が依然として本質的にα-Ni(OH)
2であることが強調される。β-Ni(OH)2に対応する極めて小さいピークも観察可能であり、それによって1000サイクルにわたる1.57e-から1.4e-への容量の小さな減少を説明することができると思われる。それでも、この結果は結晶構造の高い安定性を示している。β-Ni(OH)
2材料が使用されるときに、電極は材料の膨化に悩まされることがあるが、そうした電極の機械的安定性にもこれは有益である。
【0196】
図5は、0.2C(L202)の放電率又は4C(L204)の放電率でのNiFe20の安定性の特徴付けに関連する実験的観察を概略的に図示している。具体的には、
図5Aは、サイクル数に対するNEEでの、長期安定性試験を図示している。長期安定性試験の後に、電極は再プレスした。
図5Bに図示するように、NiFe20の容量は1.4e-の交換数まで戻る。
図5Cは、長期安定性試験後の再プレスされた電極の高レート特性を、CレートC
Rに対するNEE/NEE
最大(単位%;上記を参照されたい)で概略的に図示している。
図5C中の挿入図は、CレートC
Rに対するNEEを図示している。
【0197】
Ni-Fe層状複水酸化物は、ハイブリッド電池電解槽用途のために初めて調査された。このようにして、貯蔵容量、レート特性、及びサイクリング安定性を含む電池特性、並びに触媒OER活性が特徴付けられた。これらのFeドープ材料は、以下の側面で有益であると思われる:
- 電極の膨化を回避することを可能にし、充電、放電、及び電解プロセスの間のより良好な機械的完全性を確保するための、アルファ/ガンマ相対の安定化
- 従来のベータ相の正極材料と比較して83%増加したニッケル原子当たりの容量
- 容量に及ぼす影響を少なくしながら(4Cで7%しか低減しない)高レートで、及び低減した全体的エネルギー損失(7~14%の低減)で、NiFe-LDHが充(放)電されることを可能にする、強化されたイオン及び電子導電性。
【0198】
これらの進歩によって、NiFe-LDHは、Niのコスト及びエネルギー効率だけでなく、グリッドでの電力貯蔵及び変換におけるハイブリッドNi/Fe電池電解槽コンセプトの実装に関連する安定性の側面にも対処することができる。
【0199】
「複数」という用語は、2又は3以上を指す。さらに、「複数の」及び「幾つもの」という用語は、交換可能に使用することができる。
【0200】
本明細書での「実質的に」又は「本質的に」という用語及び同様の用語は、当業者によって理解されるであろう。「実質的に」又は「本質的に」という用語は、「全体的に」、「完全に」、「全て」などを有する実施形態も含むことができる。したがって、実施形態において、実質的に又は本質的にという形容詞が除去されることもある。適用可能な場合、「実質的に」という用語又は「本質的に」という用語はまた、90%以上、例えば95%以上、特に99%以上、さらには特に99.5%以上(100%を含む)に関連し得る。さらに、「約」及び「およそ」という用語も、90%以上、例えば95%以上、特に99%以上、さらには特に99.5%以上(100%を含む)に関連し得る。数値について、「実質的に」、「本質的に」、「約」、及び「およそ」という用語は、それが指す値(複数可)の90%~110%、例えば95%~105%、特に99%~101%の範囲に関連し得ることが理解されるべきである。
【0201】
「含む」という用語は、「含む」という用語が「からなる」を意味する実施形態も含む。
【0202】
「及び/又は」という用語は、特に、「及び/又は」の前及び後に述べた項目のうち1又は2以上に関連する。例えば、「項目1及び/又は項目2」という語句及び同様の語句は、項目1及び項目2の1又は2以上に関連し得る。「含む」という用語は、ある実施形態では「からなる」を指すことがあるが、別の実施形態では「少なくとも定義された種及び場合によって1又は2以上の他の種を含有する」を指すこともある。
【0203】
さらに、本明細書及び特許請求の範囲における第1の、第2の、第3のなどの用語は、同様の要素間を区別するために使用され、必ずしも順番又は時間的順序を記載するために使用されているのではない。そのように使用される用語は適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載する本発明の実施形態は、本明細書に記載する又は図示する以外の他の順序で動作可能であることが理解されるべきである。
【0204】
デバイス、装置、又はシステムは、本明細書では、とりわけ動作中について説明されている。当業者には明白であるように、本発明は、動作方法、又は動作中のデバイス、装置、若しくはシステムに限定されない。
【0205】
「さらなる実施形態」という用語及び同様の用語は、前に考察した実施形態の特徴を含む実施形態を指すことがあるだけでなく、代替実施形態を指すこともある。
【0206】
上述の実施形態は本発明を限定するものではなく例示するものであり、当業者であれば添付の特許請求の範囲から逸脱することなく多くの代替実施形態を設計することができることに留意されるべきである。
【0207】
特許請求の範囲において、括弧の間に置かれるいかなる参照符号も、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されてはならない。
【0208】
「含むこと」という動詞及びその活用形の使用は、特許請求の範囲に述べられたもの以外の要素又はステップの存在を除外するものではない。文脈により別段の明確な必要がない限り、本説明及び特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」、「含むこと(comprising)」、「含む(include)」、「含むこと(including)」、「含有する(contain)」、「含有すること(containing)」などの単語は、排他的又は網羅的な意味とは対照的に、包括的な意味で、つまり「含むが、限定されない」という意味で解釈されるべきである。
【0209】
要素の前の冠詞「ある(a)」又は「ある(an)」は、複数のかかる要素の存在を除外するものではない。
【0210】
本発明は、幾つかの別個の要素を含むハードウェアを利用して、また適切にプログラムされたコンピュータを利用して実施されてもよい。幾つかの手段を列挙しているデバイスの請求項、又は装置の請求項、又はシステムの請求項において、これらの手段の幾つかが全く同じハードウェア要素で具現化されてもよい。単に特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されるということによって、これらの手段の組合せが有利に使用できないことを示すものではない。
【0211】
本発明はまた、デバイス、装置、若しくはシステムを制御することができる、又は本明細書に記載される方法又はプロセスを実行することができる制御システムを提供する。さらにまた、本発明はまた、デバイス、装置、又はシステムに機能的に連結されるか、又はこれらに含まれるコンピュータ上で実行されたときに、そのようなデバイス、装置、又はシステムの1又は2以上の制御可能な要素を制御するコンピュータプログラム製品を提供する。
【0212】
本発明はさらに、本説明に記載される及び/又は添付の図面に示される特徴的特性の1又は2以上を含むデバイス、装置、又はシステムに適用される。本発明はさらに、本明細書に記載される及び/又は添付の図面に示される特徴のうち1又は2以上を含む方法又はプロセスに関する。さらに、ある方法又はその方法の実施形態が、あるデバイス、装置、又はシステムで実行されると記載されるならば、そのデバイス、装置、又はシステムは、その方法若しくはその方法の実施形態にそれぞれに適しているか、又はそれらのために(それらを実行するために)構成されていることが理解されるであろう。
【0213】
「制御すること」という用語及び同様の用語は、本明細書では特に、少なくともある要素の挙動を決定すること又は稼働を管理することを指すことができる。したがって、本明細書では、「制御すること」及び同様の用語は、例えば、その要素に挙動を課すこと(ある要素の挙動を決定すること又は稼働を管理すること)など、例えば、測定すること、表示すること、作動させること、開放すること、シフトさせること、温度を変化させることなどを指すことができる。それ以外に、「制御すること」という用語及び同様の用語は、モニタリングすることをさらに含んでもよい。したがって、「制御すること」という用語及び同様の用語は、ある要素に挙動を課すこと、及びまたある要素に挙動を課し、その要素をモニタリングすることを含んでもよい。その要素を制御することは、制御システムで行うことができる。制御システム及び要素は、したがって少なくとも一時的に、又は永続的に、機能的に連結されてもよい。その要素がその制御システムを含んでもよい。実施形態では、制御システム及び要素は、物理的に連結されていなくてもよい。制御は、有線及び/又は無線制御を介して行うことができる。「制御システム」という用語は、複数の異なる制御システムを指すこともでき、それらは特に機能的に連結され、そのうちの、例えば1つの制御システムが制御システムであってもよく、1又は2以上の他のものがスレーブ制御システムであってもよい。
【0214】
本特許で論じた様々な態様は、追加的な利点をもたらすために組み合わせることができる。さらに、実施形態を組み合わせることができ、3以上の実施形態も組み合わせることができることを、当業者であれば理解するであろう。さらに、特徴のうちの幾つかは、1又は2以上の分割出願の基礎を形成することができる。
【国際調査報告】