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特表2024-500707マイクロロボットを備えた送達および採取システム
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  • 特表-マイクロロボットを備えた送達および採取システム 図1
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  • 特表-マイクロロボットを備えた送達および採取システム 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】マイクロロボットを備えた送達および採取システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/20 20160101AFI20231227BHJP
【FI】
A61B34/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536381
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2021086301
(87)【国際公開番号】W WO2022129406
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/126,386
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】21305433.1
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521440482
【氏名又は名称】ロビューテ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】デュプラ,ベルトラン
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ,クェンティン
(72)【発明者】
【氏名】ウルメス,アリ
(57)【要約】
患者の標的身体部分内部の少なくとも1つの標的点のための送達および採取システム(10)であって、
・少なくとも1つの標的点に向かってナビゲートすることを目的としたマイクロロボット(12)と、
・患者の被固定身体部分に固定することを目的としたキャップであって、要素を標的身体部分の中に導入するのを可能にするか、あるいは要素を標的身体部分内部から取り出すのを可能にする通路を備えたキャップ(14)と、
・マイクロロボット(12)およびキャップ(14)に接続されるワイヤ(16)と、
・キャップ(14)と通信するように構成された制御ユニット(18)であって、ユーザがマイクロロボット(12)を遠隔制御およびナビゲートするのを可能にするユーザインタフェースを備えた制御ユニット(18)と
を備え、
システム(10)はキャップ(14)から標的点に向かって伸長するために、摺動することによりワイヤ(16)と協働するように構成された柔軟な細長い要素(20)をさらに備えるシステム(10)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質、エネルギー、情報または構造要素を患者の標的身体部分内部の少なくとも1つの標的点に送達するかそこから採取することを目的とした送達および採取システム(10)であって、
・前記標的身体部分内部をナビゲートするように構成され、かつ前記少なくとも1つの標的点に向かってナビゲートすることを目的としたマイクロロボット(12)と、
・前記患者の被固定身体部分に固定される固定要素に固定するか前記被固定身体部分に直接固定することを目的としたキャップ(14)であって、要素または要素部分を前記標的身体部分の中に導入するのを可能にするか、あるいは要素または要素部分を前記標的身体部分内部から取り出すのを可能にする通路(22)を備えたキャップ(14)と、
・一端で前記マイクロロボット(12)に他端で前記キャップ(14)に接続されるワイヤ(16)と、
・前記キャップ(14)と通信するように構成された制御ユニット(18)であって、ユーザが前記マイクロロボット(12)を遠隔制御およびナビゲートするのを可能にするユーザインタフェースを備えた制御ユニット(18)と
を備え、
前記システムは、前記キャップ(14)から前記標的身体部分を通って前記標的点に向かって伸長するために、摺動することにより前記ワイヤ(16)と協働するように構成された柔軟な細長い要素(20)をさらに備え、従って前記ワイヤ(16)は前記柔軟な細長い要素(20)を前記標的点に向かってガイドすることを目的としているシステム。
【請求項2】
前記柔軟な細長い要素(20)はほぼ管状の形状を示し、前記柔軟な細長い要素(20)は前記ワイヤ(16)の周りを摺動するように構成されている、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項3】
前記柔軟な細長い要素(20)は、
・前記キャップ(14)から前記少なくとも1つの標的点に向かって物質を送達するか、あるいは
・前記少なくとも1つの標的点から前記キャップ(14)に向かって物質を採取する
ために、前記ワイヤ(16)および前記キャップ(14)と協働するように構成されたカテーテルである、請求項1又は2に記載のシステム(10)。
【請求項4】
前記キャップ(14)は、前記カテーテルを通して流体および物質をポンプ輸送するように構成されたポンプを備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項5】
前記柔軟な細長い要素(20)は、前記少なくとも標的点から情報を採取するか前記少なくとも標的点にエネルギーを送達するように構成された電極またはセンサである、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項6】
前記ワイヤ(16)は前記マイクロロボット(12)にエネルギーを供給する、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項7】
前記キャップ(14)は、前記標的身体部分内部での前記ワイヤ伸長を制御するためにワイヤ巻き取りシステムを備え、前記ワイヤ巻き取りシステムは電動式であり、かつ前記制御ユニット(18)によって制御され、前記ワイヤ巻き取りシステムは少なくとも1つの監視センサ(32)をさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項8】
前記キャップ(14)は、前記標的身体部分内部での前記柔軟な細長い要素(20)の伸長を制御するために柔軟な細長い要素(20)用巻き取りシステムを備え、前記柔軟な細長い要素(20)用巻き取りシステムは電動式であり、かつ前記制御ユニット(18)によって制御され、前記柔軟な細長い要素20用巻き取りシステムは少なくとも1つの監視センサ(33)をさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項9】
前記柔軟な細長い要素(20)は、その遠位端(26)に少なくとも1つの監視センサを備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項10】
前記柔軟な細長い要素(20)は、少なくとも1つの変形可能部分(25)に適応的直径を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項11】
前記柔軟な細長い要素(20)は、前記マイクロロボット(12)を格納するためにガレージ様構造体(28)を備える、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項12】
前記柔軟な細長い要素(20)は前記柔軟な細長い要素(20)の前記伸長をリアルタイムで監視するのを可能にする少なくとも1つのトラッカーを備える、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム(10)によって実施される物質の送達および採取方法であって、記載順に以下の工程:
・前記キャップ(14)を前記患者の前記被固定身体部分に固定する工程と、
・前記制御ユニット(18)の前記ユーザインタフェースによってマイクロロボット(12)ナビゲーション経路をプログラミングする工程と、
・必要であれば前記ワイヤ(16)の一端を前記キャップに(14)に固定する工程と、
・必要であれば前記ワイヤ(16)の他端を前記マイクロロボット(12)に固定する工程と、
・前記マイクロロボット(12)を前記キャップ(14)の通路(22)を通して前記患者の前記標的身体部分内部に挿入する工程と、
・前記柔軟な細長い要素(20)の遠位端(26)を前記キャップ(14)の前記通路(22)内部に挿入する工程と、
・前記柔軟な細長い要素(20)および前記ワイヤ(16)を協働のためにセットアップする工程と、
・前記マイクロロボットを少なくとも1つの標的点に向かって始動させ工程と、
・前記標的身体部分を通した前記ワイヤ(16)の伸長を監視する工程と、
・前記標的身体部分を通した前記柔軟な細長い要素(20)の伸長を監視する工程と、
・前記マイクロロボット(12)が前記少なくとも1つの標的点に到達したら、前記柔軟な細長い要素(20)を通した前記物質、エネルギー、情報または構造要素材料の送達または採取を作動させる工程と、
・前記送達または採取が完了したら、さらなる標的点への送達または採取を進行するか、あるいは前記柔軟な細長い要素(20)、前記ワイヤ(16)および前記マイクロロボット(12)を前記キャップ(14)を通して前記標的身体部分から取り出す工程と
を含む方法。
【請求項14】
前記柔軟な細長い要素(20)を引き抜くにより前記マイクロロボット(12)を取り出す、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記マイクロロボット(12)を前記標的身体部分から取り出す前に、前記柔軟な細長い要素(20)のガレージ様構造体(28)に格納する、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の体内での遠隔医療行為または生理学的処置、例えば遠隔薬物送達および/または体液採取に関する。
【背景技術】
【0002】
有線のマイクロロボット/ナノロボットを含む医療用マイクロロボットおよびナノロボットは、難しい微小進入経路を通した到達困難な位置に到達することが必要な薬に関する状況の基本的な診断および治療ツールになりつつある。
【0003】
しかし、それらのマイクロロボットまたはナノロボットの自律性は低く、そのため脳内部の奥深くに位置しており、かつその周囲にはない特定の到達困難な位置に到達するために、ロボットは十分に遠くまたは十分に長く移動することはできない。
【0004】
1つ以上の標的位置に到達したら、マイクロロボットは埋め込まれたセンサによって様々な処置を行い、かつ/または作動体によっていくつかのタスクを行うことができる場合がある。マイクロロボットは、液体または固体のいずれかのいくつかの生体物質を採取し、かつ研究のために体外から戻し、かつ/または物質を治療法の一部として体内(細胞、薬物または他の分子)に局所的に放出しなければならない場合もある。
【0005】
しかし、そのようなマイクロロボットはその位置から採取されるかそれを前記位置に送達するための物質を十分に運ぶことができない場合がある。より詳細には、それらの比較的小さいサイズが原因で、場合によっては診断技術の限界により、マイクロロボットは効率的な生検のために十分な物質を採取することができない場合がある。これは、より多くの量をそれらの上に載せて運ぶことができることが求められ得る場合の薬物送達にも当てはまる。
【0006】
本発明の目的は、標的身体部分内部の到達困難な標的点に作用するために、それらの標的点に到達するための安全かつ信頼できるシステムを提供することにある。
【発明の概要】
【0007】
従って本発明は、物質、エネルギー、情報または構造要素を患者の標的身体部分内部の少なくとも1つの標的点に送達するかそこから採取することを目的とした送達および採取システムであって、
・標的身体部分内部をナビゲートするように構成され、かつ少なくとも1つの標的点に向かってナビゲートすることを目的としたマイクロロボットと、
・患者の被固定身体部分に固定される固定要素に固定するか被固定身体部分に直接固定することを目的としたキャップであって、要素または要素部分を標的身体部分の中に導入するのを可能にするか、あるいは要素または要素部分を標的身体部分内部から取り出すのを可能にする通路を備えたキャップと、
・一端でマイクロロボットに他端でキャップに接続されるワイヤと、
・キャップと通信するように構成された制御ユニットであって、ユーザがマイクロロボットを遠隔制御およびナビゲートするのを可能にするユーザインタフェースを備えた制御ユニットと
を備え、
本システムは、キャップから標的身体部分を通って標的点に向かって伸長するために、摺動することによりワイヤと協働するように構成された柔軟な細長い要素をさらに備え、従ってワイヤは柔軟な細長い要素を標的点に向かってガイドすることを目的としているシステムに関する。
【0008】
このように、本解決法は、到達困難な領域に位置する標的点への安全かつ迅速な方法においてより多くの物質を取得または採取するのを可能にする。これは、より大きい要素またはより多くの量の流体を非常に正確な位置に送達することも可能にすることができる。
【0009】
本発明に係るシステムは、互いに別々に採用されるか互いに組み合わせられる以下の特徴の1つまたはいくつかを備えていてもよい。
・柔軟な細長い要素はほぼ管状の形状を示し、柔軟な細長い要素はワイヤの周りを摺動するように構成されている。
・柔軟な細長い要素は、
・キャップから少なくとも1つの標的点に向かって物質を送達するか、あるいは
・少なくとも1つの標的点からキャップに向かって物質を採取する
ために、ワイヤおよびキャップと協働するように構成されたカテーテルである。
・キャップは、柔軟な細長い要素を通して流体および物質をポンプ輸送するように構成されたポンプを備える。
・柔軟な細長い要素は、少なくとも標的点から情報を採取するか前記少なくとも標的点にエネルギーを送達するように構成された電極またはセンサである。
・ワイヤはマイクロロボットにエネルギーを供給する。
・キャップは、標的身体部分内部でのワイヤ伸長を制御するためにワイヤ巻き取りシステムを備え、ワイヤ巻き取りシステムは電動式であり、かつ制御ユニットによって制御され、ワイヤ巻き取りシステムは少なくとも1つの監視センサをさらに備える。
・キャップは、標的身体部分内部での柔軟な細長い管状要素の伸長を制御するために柔軟な細長い要素用巻き取りシステムを備え、柔軟な細長い要素用巻き取りシステムは電動式であり、かつ制御ユニットによって制御され、柔軟な細長い要素用巻き取りシステムは少なくとも1つの監視センサをさらに備える。
・柔軟な細長い要素はその遠位端に少なくとも1つの監視センサを備える。
・柔軟な細長い要素は少なくとも1つの変形可能部分に適応的直径を備える。
・柔軟な細長い要素はマイクロロボットを格納するためにガレージ様構造を備える。
(ここでは柔軟な細長い要素は、柔軟な細長い要素の伸長をリアルタイムで監視するのを可能にする少なくとも1つのトラッカーを備える)。
【0010】
本発明は、上記特徴のいずれか1つに係るシステムによって実施される物質の送達および採取方法であって、記載順に以下の工程:
・キャップを患者の被固定身体部分に固定する工程と、
・制御ユニットのユーザインタフェースによってマイクロロボットナビゲーション経路をプログラミングする工程と、
・必要であればワイヤの一端をキャップに固定する工程と、
・必要であればワイヤの他端をマイクロロボットに固定する工程と、
・キャップの通路を通してマイクロロボットを患者の標的身体部分内部に挿入する工程と、
・柔軟な細長い要素の遠位端をキャップの通路内部に挿入する工程と、
・柔軟な細長い要素およびワイヤを協働のためにセットアップする工程と、
・少なくとも1つの標的点に向かってマイクロロボットを始動させる工程と、
・標的身体部分を通したワイヤ伸長を監視する工程と、
・標的身体部分を通した柔軟な細長い要素の伸長を監視する工程と、
・マイクロロボットが少なくとも1つの標的点に到達したら、柔軟な細長い要素を通した物質、エネルギー、情報または構造要素の材料の送達または採取を作動させる工程と、
・送達または採取が完了したら、さらなる標的点への送達または採取を進行するか、キャップを通して標的身体部分から柔軟な細長い要素、ワイヤおよびマイクロロボットを取り出す工程と
を含む方法にも関する。
【0011】
本方法は、
・柔軟な細長い要素を引き抜くことによりマイクロロボットを取り出す工程と、
・マイクロロボットを標的身体部分から取り出す前にそれを柔軟な細長い要素のガレージ様構造体の中に格納する工程と
をさらに含んでいてもよい。
【0012】
例示として与えられる本発明の1つまたはいくつかの実施形態の以下の詳細な説明を読めば、本発明がより良く理解され、それらの他の目的、詳細、特性および利点がより明らかになる。それらは添付の概略図を参照しながらの単なる例示であり、かつ非限定的な例である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るシステムの第1の実施形態の概略全体図である。
図2】本発明に係るシステムの第2の実施形態の概略全体図である。
図3】本発明に係るシステムの第3の実施形態の概略全体図である。
図4A】本発明の他の実施形態に関する細長い要素およびワイヤの協働の概略図である。
図4B】本発明の別の他の実施形態に関する細長い要素およびワイヤの協働の概略図である。
図5図5A図5Cは本発明に係る柔軟な細長い要素の異なる実施形態の概略斜視図である。
図6】第1の実施形態に係る本発明に係る方法の概略図である。
図7】第2の実施形態に係る本発明に係る方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る送達および採取システム10は、患者の標的身体部分内部の少なくとも1つの標的点から物質、エネルギー、情報または構造要素を採取することを目的とする。
【0015】
図1図2および図3に示すように、本発明に係るシステム10は、
・標的身体部分内部をナビゲートするように構成され、かつ少なくとも1つの標的点に向かってナビゲートすることを目的としたマイクロロボット12と、
・患者の被固定身体部分に固定することを目的としたキャップ14と、
・一端でマイクロロボット12に他端でキャップ14に接続されるワイヤ16と、
・キャップ14と通信するように構成された制御ユニット18と、
・キャップ14から標的身体部分を通って標的点に向かって伸長するために、摺動することによりワイヤ16と協働するように構成された柔軟な細長い要素20と
を備える。
【0016】
マイクロロボット12は内部エンジンにより自己推進するか、あるいはマイクロロボット12内部に埋め込まれたコイル可動磁石などの外部手段により推進する。マイクロロボット12は直径が0.1~5mm、好ましくは2mmであって長さが最大5cm、好ましくは2cmであってもよい。
【0017】
ワイヤ16は一端でキャップ14に他端でマイクロロボット12に固定されている。1本のワイヤのサイズは、直径が5μm~150μmの範囲であってもよい。ワイヤは実際には複数本のワイヤからできていてもよい。この場合、ワイヤの全体サイズは直径が10μm~500μmの範囲であってもよい。このサイズ範囲は、難しい標的に迅速かつ正確に到達するためにワイヤの柔軟性を維持するのを可能にする。それは特定の実施形態に関しては、エネルギー(流体、電気または光)をマイクロロボット12に供給してもよい。ワイヤ16は、マイクロロボット12へ/からの通信(流体、電気または光)をさらに可能にする。ワイヤ12はマイクロロボット12との強い保持をさらに提供し、緊急の場合にマイクロロボット12を患者の体外に引き出すのを可能にする。
【0018】
柔軟な細長い要素20は、標的点に向かってワイヤ16によってガイドされるように構成されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、柔軟な細長い要素20はほぼ管状の形状を示し、かつワイヤ16の周りを摺動する。本発明のこの例では、柔軟な細長い要素20はワイヤ16を中心に配置されており、それによって自然にガイドされる。言い換えると、ワイヤは柔軟な細長い要素20をガイドすることを目的としており、すなわち柔軟な細長い要素20はワイヤ対して、従って患者の体に対して移動する。他の実施形態では、構造体22を柔軟な細長い要素20の中心に置くことによりガイドを助け、かつ柔軟な細長い要素20をワイヤ16の周りに中心にして配置することもできる(図4Bを参照)。図4Aに示されている別の実施形態では、柔軟な細長い要素20はその側面に協働手段24を備え、前記協働手段24はそれを保持してそれに従うためにワイヤ16と協働する。
【0020】
いくつかの実施形態では、柔軟な細長い要素20はいくつかの同心の層を含み、従って少なくとも2つの同心の埋め込まれた管状要素を形成している。それらの管状要素は互いから分離されていてもよく、あるいは互いに流体もしくはエネルギー連通していてもよい。このように、第1の装置または流体が外部管状要素内を循環してもよく、第2の装置または流体が内部管状要素内を循環してもよい。
【0021】
いくつかの他の実施形態では、柔軟な細長い要素20はその長さに沿っていくつかの構造帯を含んでいてもよく、各構造帯は異なる構造的特徴、例えば異なる壁の色または不透明度、あるいは例えば異なる材料で作られた壁を示す。
【0022】
いくつかの他の実施形態では、柔軟な細長い要素20はカメラまたは圧力/力センサなどのさらなるツールを備えていてもよい。
【0023】
柔軟な細長い要素20がワイヤ16に対して前方に移動する(標的身体部分を通って伸長することを意味している)方法は、図6および図7に示されているような異なる規則に従うことができる。
・柔軟な細長い要素20は、その背後に僅かな距離を置いてマイクロロボット12と同じ時間およびリズムで移動させることができる。この距離は必要であれば、マイクロロボット12が標的点に到達したら完全に埋めることができる(図6を参照)。
・柔軟な細長い要素20は、マイクロロボット12が少なくとも1つの標的点に到達した時にのみ伸長させることができる。次いでそれをマイクロロボット12に接触するかそこから近づくまで完全に伸長させる(図7を参照)。
・柔軟な細長い要素20は、例えばマイクロロボット12が大きな回転方向転換を行おうとした場合(例えば自然な体液流路内部または組織内を進行中)、あるいは特定の距離が標的身体部分内部でマイクロロボット12によって覆われたら、連続的にさらに伸長させることができる。
【0024】
柔軟な細長い要素20の動きのための他の規則を当然ながら想定することができる。
【0025】
柔軟な細長い要素20がほぼ管状の形状を示す実施形態を考察すると、柔軟な細長い要素20は明確な固定された直径を有していてもよく(図5Aを参照)、あるいは可変の適応的直径を有していてもよい(図5Cを参照)。適応的直径は、柔軟な細長い要素20の長さ全体を通して適応可能であってもよく(柔軟な細長い要素20全体を通して同じ直径を維持する)、あるいは図5Cに示されているように柔軟な細長い要素20の長さの変形可能部分25および潜在的に可動性の変形可能部分25において適応可能であってもよい。変形可能部分25のこの動きは、柔軟な細長い要素20内部に挿入される可動要素または材料によってもたらされ、前記要素または材料は柔軟な細長い要素20内部で上下に移動する。場合によっては、標的点に到達し、かつマイクロロボット12を患者の標的身体部分から安全に取り出さなければならない後は、前記要素はマイクロロボット12それ自体であってもよい。柔軟な細長い要素20の変形は、ステント上に存在するものなどの拡張可能な材料、あるいは圧力(流体圧力またはマイクロロボット圧力)により展開することができる「折り紙のような」折り畳みにより達成することができる。
【0026】
柔軟な細長い要素20は2つの端部、すなわち1つの自由端(遠位端26)およびキャップ14または他の場所に固定することができる1つの近位端(図示せず)を有する。
【0027】
いくつかの図示されていない実施形態では、柔軟な細長い要素20はその遠位端26でカメラまたはあらゆる他の記録装置あるいはグラスファイバーを運んでもよい。いくつかのさらなる図示されていない実施形態では、柔軟な細長い要素20はその長さに沿っていくつかのカメラまたはあらゆる他の記録装置を運んでもよい。
【0028】
マイクロロボット12と柔軟な細長い要素20との関係は、以下のように本発明の様々な実施形態に応じて異なる形態をなしていてもよい。
・柔軟な細長い要素20は、各標的点に到達した際に常にマイクロロボット12の背後にあるかそれと単純に接触した状態にあるその遠位端26を有していてもよい。
・柔軟な細長い要素20がほぼ管状の形状を示す場合に、既に上述したようにマイクロロボット12を柔軟な細長い要素20の中に挿入し、かつ潜在的には柔軟な細長い要素20を完全にキャップ14まで抜き出すことさえできるように、柔軟な細長い要素20はマイクロロボット12よりも僅かに幅広であってもよい。
・柔軟な細長い(管状)要素20はマイクロロボット12と同じ幅を有していてもよく、あるいはより小さい幅を有しているとしても、ヘビが自身よりも幅広の餌食を摂食する場合にそうであるように、マイクロロボット12を「飲み込み」、かつ潜在的にそこを通してガイドしてそれを蠕動様に抜き出すための局所的伸長能力が授けられていてもよい。
・柔軟な細長い(管状)要素20は、その遠位端26(またはその長さのどこか他の場所)に、マイクロロボット12よりも大きいか、マイクロロボット12を「飲み込む」ために拡張可能であるガレージ様構造体28(図5Bを参照)をガレージと同様に長い期間にわたって備えていてもよい。ガレージ様構造体28は完全に閉鎖するための能力も有し、かつ気密であってもよい。柔軟な細長い(管状)要素20が標的身体部分から抜き出される場合、ガレージ様構造体28内のマイクロロボット12はそれと一緒に抜き出される。
【0029】
遠位端26は緩んだままであってもよい場合もあるが、それを遮断することが必要な場合もある。その遠位端26において、あるいはその長さに沿ったいくつかの点においてそれを遮断することが必要な場合がある。柔軟な細長い要素20が体内流路(静脈、動脈、胆管または膵管など)内にある場合、その遠位端26は、
・広がるステント様構造27を展開して、そのようにして流路壁それ自体を遮断することができ、同構造体は柔軟な細長い要素20を展開するために後で定位置に戻ることができ(図3を参照)、
・自然な体内流路壁の瞬間接着剤(生物学的、化学的、静電気的接着剤または表面力を用いる)により付着することができ、あるいは
・吸引を使用して、柔軟な細長い要素20に埋め込まれた専用の通路を介して体内流路壁または組織上に付着することができ、柔軟な細長い要素20は例えばトラッカーを備えることができ、それは超音波、スキャナ、MRIにより3Dで、あるいは目視であってもリアルタイムで追跡可能にさせる3Dパターンを含むパターンをその表面に有することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、柔軟な細長い要素20は、
・物質をキャップ14から少なくとも1つの標的点に向かって送達し、かつ/または
・物質を少なくとも1つの標的点からキャップ14に向かって採取する
ための、ワイヤ16およびキャップ14と協働するように構成されたカテーテルであってもよい。
【0031】
柔軟な細長い要素20と共に有線マイクロロボット12を使用することは、マイクロロボット12単独で可能なものよりも多くの物質を標的身体部分の中外で取得するのを可能にするので有利である。
【0032】
この場合、柔軟な細長い要素20は少なくとも1つの標的点に、
・薬物、細胞、栄養因子のような物質、または
・例えばステントのような構造要素
を送達するのを可能にしてもよい。
【0033】
この場合、柔軟な細長い要素20は、少なくとも1つの標的点から
・例えば生検のため、あるいは潜在的に腫瘍切除中であっても体からの局所流体および組織
・構造要素
を採取する(または取り出す)のをさらに可能にしてもよい。
【0034】
より詳細には、柔軟な細長い要素20は、システム10がナノ粒子もしくは磁性粒子または気泡(超音波局在化または結像のために使用される)のような局所効果を有するあらゆる他の粒子、あるいは流体中で輸送することができる任意の他の要素を運ぶのを可能にする。
【0035】
いくつかの他の実施形態(図示せず)では、柔軟な細長い要素20は例えば、少なくとも標的点から情報を採取するか前記少なくとも標的点にエネルギーを送達するように構成された電極またはセンサであってもよい。
【0036】
キャップ14は、ワイヤ16および柔軟な細長い要素20を患者の体外を意味する外部世界と接続するコネクタとみなすことができる。そうするためにキャップは、要素または要素部分を標的身体部分の中に導入するのを可能にするか、あるいは要素または要素部分を標的身体部分内部から取り出すのを可能にする通路22を備える。キャップは、例えばトロカールまたは大型カテーテルのような患者の被固定身体部分に固定される固定要素それ自体により被固定身体部分に固定するか、あるいはキャップ14は被固定身体部分に直接固定することができる。そのような被固定身体部分は、例えば頭蓋、脊椎の椎骨間または自然な体内流路の端部/入口であってもよい。
【0037】
図2に示すように、キャップ14はワイヤ16および柔軟な細長い要素20の両方のそれぞれの巻き取り機構30を保持してもよい。従って実施形態に応じて、ワイヤ16は、ワイヤの長さならびにワイヤの張力を動的に維持するキャップ14内に位置する電動式巻取り機によって操縦される。従ってキャップ14はワイヤ16の長さおよび張力を維持するために、いくつかの実施形態では少なくとも1つの監視センサ32と共に電動式巻き取り/展開機構30を保持する。この監視センサ32は力センサあるいは力、速度および/または位置を監視することができるあらゆる他のセンサであってもよい。ワイヤ16の進入角度も維持することができる。そのような巻き取り機構30は、マイクロロボット12の摩擦および重量をほぼ感じず、かつ標的身体部分の流体または組織の中に前進した際にそれを著しく減速したりさらにはそれを停止したりしないように、ワイヤ16を押すのを助けることができる。巻き取り機構30に加えて、またはその代わりとして柔軟な細長い要素20は、前記1つ以上の壁に沿ったワイヤ16のあらゆる摩擦を回避するためにその1つ以上の壁の内部に沿って特定のパターンを示してもよい。また前記1つ以上の壁は少なくとも部分的に、同じ抗摩擦効果を有する材料で作られていてもよい。別の実施形態では、流体の小さい層が細長い柔軟な要素20の1つ以上の壁の内部に貼り付いていてもよい。また柔軟な細長い要素20は、その長さならびにその張力を動的に維持するキャップ14内に位置する電動式巻き取り機構(図示せず)によって操縦される。従ってキャップ14は、いくつかの実施形態では少なくとも1つの監視センサ32と共に柔軟な細長い要素20の長さおよび張力を維持する電動式巻き取り/展開機構30を保持する。柔軟な細長い要素20の進入角度も維持することができる。本発明の一実施形態では、ワイヤ16の張力は専用の監視センサ33(図2を参照)により、その近位端(この場合はキャップ端)において測定されるだけではなく、柔軟な細長い要素20の端部でも測定される。これは柔軟な細長い要素20が、それが展開する前にマイクロロボット12が標的点に完全に到達するのを待たないシナリオにおいて特に有用である。これは、ワイヤ16(数mmまたはcmの長さ)の最後の部分に対する張力が最適な機能範囲内になることを確かめて、マイクロロボット12がその経路内で動かなくなったり妨害されたりしないことを確かめる。ワイヤ16(または柔軟な要素20)の両端に対する張力を再確認することにより、身体環境との接触および潜在的には柔軟な細長い要素20およびその壁内部の流体との接触により、ワイヤ張力における非線形性を検出しないというリスクを低下させる。
【0038】
柔軟な細長い要素20がほぼ管状の形状を示す(例えばカテーテルである)場合には、キャップ14は流体を柔軟な細長い要素20を通して内外に移動させるために送り出し/汲み出しポンプも備えていてもよい。例えば液体生検またはマイクロ生検の場合に、柔軟な細長い要素20を通して流体(潜在的に薬物が充填された流体)を体内に送り出すため、ならびに潜在的に流体を体外に汲み出すために、ポンプ(図示されていない)がキャップ14内に位置している。個々の細胞または細胞のクラスターなどの小さい固体は加圧して、流れる液体の中を移動させることができる。
【0039】
柔軟な細長い要素20は、流体採取または送達を容易にするために穴34を備えていてもよい。前記穴34は、柔軟な細長い要素20の長さを通してその先端または様々な場所に位置していてもよい(図5Bを参照)。
【0040】
キャップ14は制御ユニット18とさらに通信し、かつ従って特にマイクロロボット12およびワイヤ14を制御ユニット18と接続するのを可能にする。
【0041】
制御ユニット18は、ユーザがマイクロロボット12を遠隔制御およびナビゲートするのを可能にするユーザインタフェースを備える。あらゆるユーザが、
・マイクロロボット12の経路およびタスクを定め、かつ
・マイクロロボット12の進行をリアルタイムで追跡し、
・標的身体部分を通したワイヤ16の伸長を監視し、
・標的身体部分を通した柔軟な細長い要素20の伸長を監視し、
・マイクロロボット12が少なくとも1つの標的点に到達したらあらゆる採取または送達動作を作動させる
ことができるのは、このユーザインタフェースによるものである。
【0042】
制御ユニット18は、物質の送達および採取方法を実施するために操作者がシステム10を使用するのを可能にし、本方法は記載順に以下の工程:
・キャップ14を直接または固定要素により患者の被固定身体部分に固定する工程と、
・制御ユニット18のユーザインタフェースによってマイクロロボットナビゲーション経路をプログラミングする工程と、
・例えばワイヤが消耗材料である場合に、必要であればワイヤ16の1つの近位端をキャップ14に固定する工程と、
・必要であれば、ワイヤ16の遠位端26をマイクロロボット12に固定する工程と、
・マイクロロボット12をキャップ14の通路22を通して患者の標的身体部分内部に挿入する工程と、
・柔軟な細長い要素20の遠位端26をキャップ14の通路22内部に挿入する工程と、
・柔軟な細長い要素20およびワイヤ16を摺動することによる協働のためにセットアップする工程と、
・マイクロロボット12を少なくとも1つの標的点に向かって始動させる工程と、
・標的身体部分を通したワイヤ16の伸長を監視する工程と、
・標的身体部分を通した柔軟な細長い要素20の伸長を監視する工程と、
・マイクロロボット12が少なくとも1つの標的点に到達したら、柔軟な細長い要素20を通した物質、エネルギー、情報または構造材料の送達または採取を作動させる工程と、
・送達または採取が完了したらさらなる標的点への送達または採取を進行するか、柔軟な細長い要素20、ワイヤ16およびマイクロロボット12をキャップ14を通して標的身体部分から取り出す工程
を含む。
【0043】
場合によっては、マイクロロボット12を柔軟な細長い要素20を引き抜くにより取り出し、場合によっては、マイクロロボット12を(柔軟な細長い要素20により/によらずに)標的身体部分から取り出す前に、柔軟な細長い要素20のガレージ様構造体28の中に格納する。
【0044】
ワイヤ16のおかげで、本発明に係るシステム10は、通路22からの任意に距離において患者の体のいずれかの部分の中のマイクロロボット12の安全な回収を可能にする。

図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7
【国際調査報告】