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特表2024-500709金で作られた計時器、宝石又はジェムストーンジュエリ
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  • 特表-金で作られた計時器、宝石又はジェムストーンジュエリ 図1
  • 特表-金で作られた計時器、宝石又はジェムストーンジュエリ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】金で作られた計時器、宝石又はジェムストーンジュエリ
(51)【国際特許分類】
   C22C 5/02 20060101AFI20231227BHJP
   C22F 1/14 20060101ALI20231227BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
C22C5/02
C22F1/14
C22F1/00 Z
C22F1/00 630C
C22F1/00 623
C22F1/00 640Z
C22F1/00 671
C22F1/00 673
C22F1/00 681
C22F1/00 683
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 694A
C22F1/00 685Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536392
(86)(22)【出願日】2021-07-23
(85)【翻訳文提出日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2021070732
(87)【国際公開番号】W WO2022128178
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】20215708.7
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン,ドニ
(72)【発明者】
【氏名】ローペル,ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】キスリング,グレゴリー
(57)【要約】
本発明は73重量%から77重量%の金、5重量%から重量11%の銀、1重量%から7重量%のパラジウム、及び10重量%から18重量%の銅を含有する金合金に関する。
本発明は更に本金合金で作られた計時器、宝石又はジェムストーンジュエリに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
73重量%から77重量%の金、5重量%から9.9重量%の銀、1重量%から4.9重量%のパラジウム、及び10重量%から18重量%の銅を含有する金合金。
【請求項2】
73.5重量%から77重量%の金、5.5重量%から9.9重量%の銀、1.5重量%から4.9重量%のパラジウム、及び11重量%から18重量%の銅を含有することを特徴とする、請求項1に記載の金合金。
【請求項3】
73.5重量%から76.5重量%の金、5.5重量%から9.9重量%の銀、1.5重量%から4.9重量%のパラジウム、及び11重量%から16重量%の銅を含有することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の金合金。
【請求項4】
74重量%から76.5重量%の金、6重量%から9.9重量%の銀、2重量%から4.9重量%のパラジウム、及び12重量%から16重量%の銅を含有することを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の金合金。
【請求項5】
74重量%から76重量%の金、6重量%から9.5重量%の銀、2重量%から4.9重量%のパラジウム、及び12重量%から15.5重量%の銅を含有することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の金合金。
【請求項6】
イリジウム、レニウム及びルテニウムから選択される1つ又は複数の元素を最大で0.05重量%含有することを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の金合金。
【請求項7】
CIELAB色空間のa値は3から9、b値は12から18であることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の金合金。
【請求項8】
前記CIELAB色空間のa値は5.5から8、b値は14から17であることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の金合金。
【請求項9】
前記CIELAB色空間のL値は80から90であることを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の金合金。
【請求項10】
140から185、好ましくは155から180の硬度HV1を有することを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の金合金。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の金合金で作られた計時器、宝石又はジェムストーンジュエリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魅力的なブロンズ色相を有し、耐変色性が改善された18カラット金合金に関する。
【0002】
本発明は、更にこの金合金で作られた計時器、宝石又はジェムストーンジュエリに関する。
【背景技術】
【0003】
亜鉛を含まない9カラット金合金は欧州特許出願公開第19193469号明細書で知られ、37.5重量%から38.5重量%の金、総割合が4重量%から32重量%であるパラジウム及び/又は銀、25重量%から54重量%の銅、0重量%から10重量%のガリウムを含有する。この合金は優れた変形能を有し、耐応力腐食性及び耐変色性が改善されている。更に、魅力的なブロンズ様色相を有し、この材料の酸化に関連する欠点はない。
【0004】
標準の9カラット金合金と比較して耐変色性は改善されているが、経時的に変色が観察される場合がある。この変色により、この合金を用いて作られた物の美しいブロンズ様色相が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第19193469号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、先行技術の9カラット金合金と同じブロンズ色相を有し、耐変色性が改善した金合金を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のために、金合金の化学組成は適合されている。このように開発された金合金は、銀、パラジウム及び銅を含有する18カラット合金である。
【0008】
より具体的には、金合金は73重量%から77重量%の金、5重量%から9.9重量%の銀、1重量%から4.9重量%のパラジウム、及び10重量%から18重量%の銅を含有する。
【0009】
有利には、本発明は73重量%~77重量%の金、5重量%~9.9重量%の銀、1重量%~4.9重量%のパラジウム、10重量%~18重量%の銅、並びに0~0.05重量%のイリジウム、レニウム及びルテニウムから選択される1つ又は複数の元素からなる金合金に関する。
【0010】
本発明の具体的な実施形態によれば、本金合金は以下の特徴の1つ又はその適当な組合せを有する。
・73.5重量%から77重量%の金、5.5重量%から9.9重量%の銀、1.5重量%から4.9重量%のパラジウム、及び11重量%から18重量%の銅を含有する。
・73.5重量%から76.5重量%の金、5.5重量%から9.9重量%の銀、1.5重量%から4.9重量%のパラジウム、及び11重量%から16重量%の銅を含有する。
・74重量%から76.5重量%の金、6重量%から9.9重量%の銀、2重量%から4.9重量%のパラジウム、及び12重量%から16重量%の銅を含有する。
・74重量%から76重量%の金、6重量%から9.5重量%の銀、2重量%から4.9重量%のパラジウム、及び12重量%から15.5重量%の銅を含有する。
・最大で0.05重量%のイリジウム、レニウム及びルテニウムから選択される1つ又は複数の元素を含有する。
・CIELAB色空間のa値が3から9、b値が12から18である。
・CIELAB色空間のa値が5.5から8、b値が14から17である。
・CIELAB色空間のL値が80から90である。
・硬度HV1が140から185、好ましくは155から180である。
【0011】
本発明は、更に本合金で作られた計時器、宝石又はジェムストーンジュエリに関する。
【0012】
使用中、本合金を用いて作られた計時器、宝石又はジェムストーンジュエリは、前述の9カラット合金を用いて作られた物と比較して、経時的な耐変色性が改善されていることが見出されている。他の18カラット合金を用いて作られた物と比較しても、耐変色性が改善されている。
【0013】
色相に関して、先行技術の9カラット合金及び本発明の18カラット合金は、目測で類似した色相を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付図を参照し、非限定的な例により示される以下の好ましい実施形態の記載により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明による金合金を用いて作られたミドルケースを含む計時器を示す。
図2図2は、本発明の合金(INV)及び先行技術の2つの18カラット合金(2N、3N)に関する退色曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は時計製作、宝石又はジェムストーンジュエリ分野への適用をより具体的に意図した18カラット金合金に関する。従って、更に本合金で作られた計時器、宝石又はジェムストーンジュエリに関する。「計時器」という用語は、ミドルケース、バックケース、ベゼル、プッシュボタン、ブレスレットリンク、ダイアル、針、又はダイアルインデックス等の外部部品、及びプレート、受け又はテンプ等のムーブメントの部品の両方を意味することが理解される。実例として、計時器は図1に示すようにミドルケース1である。
【0017】
本発明による金合金は、73重量%から77重量%の金、5重量%から11重量%の銀、1重量%から4.9重量%のパラジウム、及び10重量%から18重量%の銅を含有する。本合金はニッケル、コバルト、鉄及びマンガンを含まない。
【0018】
有利には、金系合金は、73.5重量%から77重量%の金、5.5重量%から9.9重量%の銀、1.5重量%から4.9重量%のパラジウム、及び11重量%から18重量%の銅を含有する。
【0019】
好ましくは、金系合金は、73.5重量%から76.5重量%の金、5.5重量%から9.9重量%の銀、1.5重量%から4.9重量%のパラジウム、及び11重量%から16重量%の銅を含有する。
【0020】
より好ましくは、金系合金は、74%から76.5%の金、6%から9.9%の銀、2%から4.9%のパラジウム、及び12%から16%の銅を含有する。
【0021】
特に好ましくは、金系合金は、74重量%から76重量%の金、6重量%から9.5重量%の銀、2重量%から4.9重量%のパラジウム、及び12重量%から15.5重量%の銅を含有する。
【0022】
更に、金系合金は、0から0.05重量%(0及び0.05重量%を含む)のイリジウム、レニウム及びルテニウムから選択される1つ又は複数の元素を含有し、0~0.05重量%の範囲は1つ又は複数のこれらの元素の全割合に及ぶ。有利には、この合金は0.0025重量%のイリジウムを含有する。
【0023】
金合金を調製するため、鋳造する前に、組成の様々な元素を溶融する。その後、数回のパスに分散させた75%以上の加工硬化率で鋳造インゴットを変形し、中間焼鈍を550℃から750℃の温度範囲で5分間から30分間実施する。下記実施例では、サンプルを650℃の温度で30分間焼鈍する。冷却後、例えば機械加工によりブランクを特定の大きさにする。
【0024】
変形及び焼鈍後に得られる合金は、CIELAB色空間(CIE No.15、ISO7724/1、DIN5033Teil7、ASTM E-1164標準に準拠)のa値が3から9、好ましくは5.5から8、b値が12から18、好ましくは14から17であり、a及びb値は合金の色相を共に定義する。また、L値は80から90であり、La値は合金の色を共に定義する。本発明によれば、より具体的には、合金の色相を定義するa及びb値に注目している。
【0025】
これらの合金は、140から185HV1、好ましくは155から180HV1の硬度を有する。
【0026】
表1は、欧州特許出願公開第19193469号明細書の参考の9カラット金合金、及び本発明の5つの18カラット金合金の組成を重量で示す。得られた測色値及び測定した硬度(HV1)も表1に示す。Lの測色値はコニカミノルタCM-2600d分光測色計により、D65光源及び観測角10°で測定した。デルタE及びデルタC値それぞれが、9Kの参考に対する色差及び彩度差を示す。以下のようにデルタEをLa値に基づき計算する。Lref、a ref及びb refは参考の9カラット金合金の値を指す。
ΔE=[(Lref-L)+(a ref-a+(b ref-b1/2
【0027】
以下のようにデルタCをa値に基づき計算する。
ΔC=[(a ref-a+(b ref-b1/2
【0028】
【表1】
【0029】
値及びb値は非常に近く、a値は参考値6.7に対し6.4から7.8、b値は参考値15に対し14.7から16.4である。肉眼では、参考及び本発明による金合金は同じブロンズ色相を有する。変色は数日間、周囲空気に曝した後に視覚的に評価した。先行技術による9カラット金合金が実質的に変色するのと対照的に、本発明による18カラット金合金は、変色することなく魅力的なブロンズ色相を維持する。更に、本発明の18カラット金合金、並びに先行技術の2つの18カラット金合金、つまり75重量%の金、16重量%の銀及び9重量%の銅を含有する合金2N、75重量%の金、12.5重量%の銅及び12.5重量%の銀を含有する合金3Nに、比較退色試験を実施した。退色試験は70℃で数日間、塩化ナトリウムの飽和水溶液にサンプルを浸すことにより実施した。退色をデルタEで定義し、上述と同じ条件下で行う比色測定によりモニターした。図2に示すように、新規の金合金は、先行技術の18カラット金合金2N及び3Nと比較して、著しく耐退色性が改善されている。
【0030】
本発明による合金は、硬度HV1が焼鈍した状態で158から175であり、変形させ易い。
【0031】
このように新規金合金は、魅力的なブロンズ色相を有し、経時的な変色は少ない。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-06-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
73重量%から77重量%の金、5重量%から9.9重量%の銀、1重量%から4.9重量%のパラジウム、及び10重量%から18重量%の銅を含有する金合金。
【請求項2】
73.5重量%から77重量%の金、5.5重量%から9.9重量%の銀、1.5重量%から4.9重量%のパラジウム、及び11重量%から18重量%の銅を含有することを特徴とする、請求項1に記載の金合金。
【請求項3】
73.5重量%から76.5重量%の金、5.5重量%から9.9重量%の銀、1.5重量%から4.9重量%のパラジウム、及び11重量%から16重量%の銅を含有することを特徴とする、請求項1に記載の金合金。
【請求項4】
74重量%から76.5重量%の金、6重量%から9.9重量%の銀、2重量%から4.9重量%のパラジウム、及び12重量%から16重量%の銅を含有することを特徴とする、請求項1に記載の金合金。
【請求項5】
74重量%から76重量%の金、6重量%から9.5重量%の銀、2重量%から4.9重量%のパラジウム、及び12重量%から15.5重量%の銅を含有することを特徴とする、請求項1に記載の金合金。
【請求項6】
イリジウム、レニウム及びルテニウムから選択される1つ又は複数の元素を最大で0.05重量%含有することを特徴とする、請求項1に記載の金合金。
【請求項7】
CIELAB色空間のa値は3から9、b値は12から18であることを特徴とする、請求項1に記載の金合金。
【請求項8】
CIELAB色空間のa値は5.5から8、b値は14から17であることを特徴とする、請求項1に記載の金合金。
【請求項9】
CIELAB色空間のL値は80から90であることを特徴とする、請求項1に記載の金合金。
【請求項10】
140から185、好ましくは155から180の硬度HV1を有することを特徴とする、請求項1に記載の金合金。
【請求項11】
請求項1に記載の金合金で作られた計時器、宝石又はジェムストーンジュエリ。
【国際調査報告】