(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】ピストン圧縮機のスロットル配置
(51)【国際特許分類】
F16J 15/3268 20160101AFI20231227BHJP
F16J 15/3248 20160101ALI20231227BHJP
F16J 15/18 20060101ALI20231227BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
F16J15/3268
F16J15/3248
F16J15/18 A
F04B39/00 104D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536398
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2021087092
(87)【国際公開番号】W WO2022136433
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592229502
【氏名又は名称】ブルクハルト コンプレッション アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】ファイステル、ノルベルト
【テーマコード(参考)】
3H003
3J043
【Fターム(参考)】
3H003AA02
3H003AC01
3H003BC03
3H003CB01
3H003CB08
3H003CE04
3J043AA13
3J043BA01
3J043CA05
3J043CA08
3J043CB04
3J043CB06
3J043CB14
3J043CB20
3J043DA20
(57)【要約】
軸方向(A)に移動可能なピストン圧縮機(20)におけるボディの摺動面(9)がシールされる。シールディスクホルダ(3)は、軸方向(A)に延びる第1脚部(4)と、軸方向(A)に対して横方向に延びる第2脚部(5)と、を有するL字形の径方向断面を有する。第1脚部(4)の軸方向高さ(H4)は、軸受面(6)に積層された複数のシールディスク(2)が使用時に軸方向の遊びを有するように選択される。境界面(8)とシールディスク(2)との間に形成される第1環状間隙(RS1)は、ガス通路開口部(7)によって高圧側(1a)に流体接続される。シールされるボディの摺動面(9)とシールディスク(2)との間に第2環状間隙(RS2)は形成される。第2環状間隙(RS2)の摩耗関連の拡大は、第1環状間隙(RS1)の径方向幅によって制限される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向(A)に移動可能なボディの摺動面(9)をシールするための、特にピストン圧縮機(20)のピストンロッド(21)またはピストン(28)の摺動面(9)をシールするための、スロットル配置(1)であって、
前記スロットル配置(1)は、使用時に圧縮室側の高圧側(1a)と、クランク駆動側の低圧側(1b)と、を備えており、
前記スロットル配置(1)は複数の環状のシールディスク(2)と、シールディスクホルダ(3)と、を備えており、
前記シールディスクホルダ(3)は、前記軸方向(A)に延びている第1脚部(4)と、前記軸方向(A)に対して横方向に延びている第2脚部(5)と、を有しているL字形の径方向断面を有しており、
前記第1脚部(4)および前記第2脚部(5)は、共に前記L字形の径方向断面を形成しており、
前記第2脚部(5)は環状設計であり、前記第2脚部(5)は前記高圧側(1a)の方向を向く軸受面(6)を有しており、前記軸受面(6)上には前記シールディスク(2)同士が前記軸方向(A)において互いに重なって配置されており、
前記第1脚部(4)は円筒状であり、前記第1脚部(4)は前記第2脚部(5)の外周または内周に沿って前記軸受面(6)から前記高圧側(1a)の方向に延びており、
前記第1脚部(4)の軸方向高さ(H
4)は、前記軸受面(6)に積層された前記シールディスク(2)同士が使用時に前記軸方向(A)の遊びを有しているように選択されており、
前記第1脚部(4)は、複数のガス通路開口部(7)を有しており、
前記第1脚部(4)は、前記シールディスク(2)の方向に向く境界面(8)を有しており、
前記シールディスク(2)が前記第1脚部(4)およびシールされる前記ボディとで同軸に整列されるとき、前記境界面(8)と前記シールディスク(2)同士との間には第1環状間隙(RS1)が各々の場合に形成されており、前記第1環状間隙(RS1)は複数の前記ガス通路開口部(7)によって前記高圧側(1a)に流体的に接続されており、
第2環状間隙(RS2)は、各場合において、シールされる前記ボディの前記摺動面(9)と、前記シールディスク(2)同士と、の間に形成されており、摩耗に関連する前記第2環状間隙(RS2)の拡大は、前記第1環状間隙(RS1)の径方向幅によって本質的に制限されている、
スロットル配置(1)。
【請求項2】
前記第1環状間隙(RS1)の径方向幅は、各場合において1mmを超えない、
請求項1に記載のスロットル配置(1)。
【請求項3】
前記ガス通路開口部(7)同士は、前記第1脚部(4)の軸方向高さ(H
4)の全体にわたって延びている、
請求項1または2に記載のスロットル配置(1)。
【請求項4】
前記ガス通路開口部(7)同士は、前記第1脚部(4)の周方向(U)に均一に分散して配置されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載のスロットル配置(1)。
【請求項5】
前記ガス通路開口部(7)同士の面積の合計と、前記ガス通路開口部(7)同士の面積を備えている境界領域(8)と、の比は1:2~1:4の間であり、好ましくは1:2.8~1:3の間である、
請求項1~4のいずれか1項に記載のスロットル配置(1)。
【請求項6】
前記第1脚部(4)は、8つの前記ガス通路開口部(7)を備えている、
請求項1~5のいずれか1項に記載のスロットル配置(1)。
【請求項7】
前記シールディスクホルダ(3)同士は一体的に形成されており、前記シールディスクホルダ(3)は前記スロットル配置(1)の乾式走行運転において良好な緊急走行特性を有している材料で好ましくは作られており、
特に前記シールディスクホルダ(3)は、本質的に純または充填高温ポリマーで、純または充填繊維複合材料で、または金属で、作られている、
請求項1~6のいずれか1項に記載のスロットル配置(1)。
【請求項8】
前記シールディスク(2)同士の数は少なくとも3つであり、好ましくは丁度5つである、
請求項1~7のいずれか1項に記載のスロットル配置(1)。
【請求項9】
前記シールディスク(2)同士は、一体的かつエンドレスに形成されている、
請求項1~8のいずれか1項に記載のスロットル配置(1)。
【請求項10】
前記シールディスク(2)同士の軸方向高さ(H
2)は、1mm~5mmの間であり、好ましくは2.4mm~2.6mmの間である、
請求項1~9のいずれか1項に記載のスロットル配置(1)。
【請求項11】
前記シールディスク(2)同士は、互いに異なる材料で作られており、
前記シールディスク(2)同士に使用される材料の弾性率は、前記低圧側(1b)の方向に優先的に増加する、
請求項1~10のいずれか1項に記載のスロットル配置(1)。
【請求項12】
前記シールディスクホルダ(3)内の前記シールディスク(2)同士のうちの少なくとも1つは、好ましくは全ての前記シールディスク(2)は、他のシールディスク(2)とは異なる軸方向高さ(H
2)を有している、
請求項1~11のいずれか1項に記載のスロットル配置(1)。
【請求項13】
前記シールディスク(2)同士の軸方向高さ(H
2)は、前記低圧側(1b)の方向に増加する、
請求項12に記載のスロットル配置(1)。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の少なくとも1つのスロットル配置(1)を有している、
ピストン圧縮機(20)、特に乾式走行ピストン圧縮機(20)。
【請求項15】
請求項14に記載のピストン圧縮機(20)において、特に動圧差に関して、前記ピストンロッド(21)または前記ピストン(28)をシールするための、
請求項1~13のいずれか1項に記載のスロットル配置(1)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストン圧縮機用のスロットル配置(アレンジメント、配列、構成)に関する。本発明はさらに、このようなスロットル配置を備えているピストン圧縮機と、ピストン圧縮機におけるこのようなスロットル配置の使用と、に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機、特にピストン圧縮機、は液体または気体の圧縮のために標準的に使用されている。圧縮される媒体の不所望なあるいは無秩序な流出を防ぐべく、あるいは少なくともそれを最小限に抑えるべく、圧縮室はその周囲からできるかぎりよく密閉されなければならない。ピストンロッドがシリンダ内部を通過する領域は、通常、いわゆるピストンロッドパッキンで密閉(シール、封止)される。このピストンロッドパッキンは、ピストンロッドの軸方向で互いに後ろに配置された複数のシール要素を備えて構成されている。
【0003】
スロットルリングは、ピストンロッドパッキンの圧縮室に面した端部に配置されていることで、動圧ピークの低減を図るピストンロッドシール要素である。動圧成分、すなわち、クランクシャフトが1回転する間にゼロから最大値までの間で変化する圧縮圧力と吸引圧力との間の差、は実際のシール要素を破壊から保護するべくそれら実際のシール要素から遠ざけられなければならない。
【0004】
先行技術から知られているスロットルリングは、通常、最初から摩擦のないシール要素として設計されているか、あるいは、摩擦のない(フリクションレス)シール要素として、低い慣らし運転(ランイン)摩耗を有しているように設計されている。そのようなスロットルリングは、例えば、特許文献1から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】スイス国特許発明第439897号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、一般的な摩擦のないスロットルリングは、動圧成分のシールにはほとんど寄与しないという欠点がある。よって、下流に配置された実際のシール要素は、急速に摩耗することになる。さらに、運転中にスロットルリングとその相手方との間で接触があると、スロットルリングと相手方との間の最小間隙は、摩耗に関連して増加する。その結果、スロットルリングのシール機能がさらに低下するとともに、最終的には失われる。
【0007】
本発明は、前述の先行技術に基づき、先行技術のこのようなおよびさらなる欠点を少なくとも低減することを目的とする。特に、公知のスロットルリング設計とで比較して改善されたシール機能を有しているとともに、より長い耐用年数を可能にする、冒頭に述べたタイプのスロットル配置を規定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、独立請求項の特徴を有している、スロットル配置と、そのようなスロットル配置を備えているピストン圧縮機と、および、ピストン圧縮機におけるそのようなスロットル配置の使用と、によって特に動圧成分の封止のために解決される。有利な設計およびさらなる開発は、従属請求項の主題である。
【0009】
この目的は、特に、軸方向に移動可能なピストン圧縮機のボディ(体)の摺動面をシールするためのスロットル配置(絞りアレンジメント)によって解決される。スロットル配置は、使用時に、圧縮室側の高圧側と、クランク駆動側の低圧側と、を有している。本発明によるスロットル配置は、複数の環状のシールディスクと、シールディスクホルダと、を備えて構成されている。シールディスクホルダは、軸方向に延びている第1脚部と、軸方向に対して横方向に延びている第2脚部と、によって形成されるL字状の径方向断面を有している。第2脚部は円環状である。第2脚部は、高圧側方向を向く軸受面を有している。その軸受面上には、シールディスク同士が軸方向に重ねて配置される。第1脚部は円筒形である。第1脚部は、第2脚部の外周または内周に沿って、軸受面から高圧側の方向に延びている。第1脚部の軸方向高さは、軸受面に積層されるシールディスク同士が使用時に一定の軸方向のクリアランスを有しているように、選択される。その結果、シールディスク同士は軸方向にクランプされないので、したがって軸方向に対して横方向に移動可能にされている。また、第1脚部は、複数のガス通路開口部と、シールディスク同士の方向に面する境界面と、を有している。シールディスク同士が第1脚部および被封止体(密封されるべきボディ)とで同軸に整列されるとき、各場合において境界面とシールディスク同士との間には、第1環状間隙(アニュラギャップ、円環隙間)が形成されている。この第1環状間隙は、ガス通路開口部を介して、高圧側に流体的に接続されている。第2環状間隙は、各場合において、被封止体の摺動面と、シールディスク同士と、の間に形成されている。摩耗に関連する第2環状間隙のサイズの増加は、本質的に第1環状間隙の径方向幅(径方向寸法)によって制限される。
【0010】
本発明によるスロットル配置のシールディスクホルダは、したがって、シールディスク同士が一種の直列接続で互いの座面を上にして横たわることで、シールディスクパックを形成するシールディスクマガジンである。典型的には、スロットル配置の非運転状態における第2環状間隙の径方向幅は、第1環状間隙の径方向幅よりも小さい。したがって、慣らし運転(ランイン)処理の間、運転中にシールディスク同士と、被封止体と、の間の接触によって生じるいくらかの摩耗は、シールディスク同士が境界面によってさらなる摩耗から防止される前に、摺動面に面したシールディスク同士の表面で許容される。言い換えれば、シールディスクホルダは、個々のシールディスク同士が、第1環状間隙によって規定される径方向の距離よりも大きくは、慣らし運転状態において互いに相対的に移動できないことを保証している。したがって、第2環状間隙のさらなる拡大を防止するか、少なくとも大幅に抑制する。本発明によるスロットル配置は、乾式運転ピストン圧縮機のピストンロッドまたはピストンをシールするのに特に適している。また、長期間にわたって一定の良好なシール効果を有しているシール要素が要求される、水素などの非常に軽いガスを圧縮する場合にも、本発明によるスロットル配置は使用することが可能にされている。
【0011】
シール効果は、シールディスク同士の互いに異なる位置に起因する。よって、先行技術から知られているスロットルリングとは対照的に、シール効果の劣化に直接つながることなく、個々のディスクの摩耗を制限することができる。しかしながら、個々のシールディスク同士の過度の摩耗は、十分な流動抵抗を示さない直線的な流路を有しているより多くの配置の形成につながり得る。よって、径方向の摩耗を制限することは絶対的に必要である。
【0012】
このため、本発明に係るスロットル配置の好ましい実施形態では、第1環状間隙の径方向幅は、したがって、シールディスクホルダにおけるシールディスク同士の実質的に最大許容径方向クリアランスは、各々の場合において、1mm以下である。
【0013】
シールディスクホルダのガス通路開口部の数、位置、および形状、は各々の要求に応じて変化させることができる。
本発明によるスロットル配置の好ましい実施形態では、ガス通路開口部は、シールディスクホルダの第1脚部の軸方向高さ全体にわたって延びている。よってこのことは、高圧側のガス圧が、シールディスクパックの軸方向高さ全体に沿って、すなわちシールディスクホルダ内の各シールディスク同士で、有効であることを保証する。
【0014】
代替的にまたは追加的に、本発明によるスロットル配置では、ガス通路開口部同士は、シールディスクホルダの第1脚部の周方向に均等に配置されている。これによって、高圧側のガス圧はシールディスク同士の外周方向全体に沿って有効であるので、シールディスク同士に偏った負荷がかからないようにすることができる。
【0015】
本発明によるスロットル配置のさらに好ましい実施形態では、ガス通路開口部同士の面積の合計と、境界面積と、すなわちガス通路開口部の面積を備えている面積と、の比は1:2~1:4である。好ましくは、ガス通路開口部同士の面積の合計と、境界部と、の比は1:2.8~1:3の間である。指定された値範囲は、シールリングホルダの機械的安定性と、特にシールディスクホルダにおけるシールディスク同士の径方向クリアランスの制限と、および、シールディスク同士に対する高圧側からのガス圧力の有効性と、の間の特に好ましい妥協点を表す。シールディスク同士の径方向クリアランスの最適な制限は、使用中のシールディスク同士と移動ピストンロッドとの間の接触を減らしているので、シールディスク同士の摩擦関連の摩耗を最小化する。
【0016】
本発明によるスロットル配置のさらに好ましい実施形態では、シールディスクホルダの第1脚部は、8つのガス通路開口部を有している。好ましくは、8つのガス通路開口部は、第1脚部の軸方向高さ全体にわたって延びているとともに、第1脚部の周方向に均等に分布している。結果として生じる対称性は、圧力が特に均一にスロットル配置に作用することによって、スロットル配置の耐用年数を増加させることを意味する。
【0017】
スロットル配置が使用されるピストン圧縮機の設計に応じて、本発明によるスロットル配置は、乾式運転(ドライランニング)または油潤滑式にすることができる。乾式運転のスロットル配置の場合、少なくともシールディスク同士は乾式運転特性を有していなければならない。作動中(運転中)にシールディスクホルダが、被封止体(封止されるべきボディ)の摺動面にも接触する場合、シールディスクホルダの少なくとも第2脚部が、乾式走行性(乾走性)を有していると好ましい。
【0018】
本発明によるスロットル配置のさらに好ましい実施形態では、シールディスクホルダは、一体に形成されている、すなわち1つの部品を備えて構成されている。好ましくは、シールディスクホルダは、スロットル配置のドライランニングオペレーション(乾式走行運転)において良好な緊急走行特性(エマージェンシーランニングプロパティ)を有している材料で作られている。このようなシールディスクホルダは、特に高い安定性を有しているとともに、本発明によるスロットル配置の極めて長い耐用年数を可能にする。
【0019】
好ましくは、シールディスクホルダは、純粋または充填された高温ポリマー、純粋または充填された繊維複合材料、または非常に高い圧力差の場合には青銅(ブロンズ)などの金属、で作られる。
【0020】
好適な高温ポリマーは、純粋または充填されたポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、純粋または充填されたポリイミド(PI)、純粋または充填されたポリフェニレンサルファイド(PPS)、または純粋または充填されたエポキシ、を備えている。
【0021】
好適な繊維複合材料は、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)である。炭素繊維強化プラスチックCFRPは、炭素繊維がプラスチックマトリックスに、例えばポリエーテルエーテルケトンPEEKまたはエポキシに、埋め込まれた複合材料である。マトリックス材料は、繊維同士を結合させるだけでなく、間隙を埋めるためにも使用される。他の熱硬化性プラスチックや熱可塑性プラスチックも、マトリックス材料として適している。
【0022】
使用するプラスチックには、カーボン、グラファイト、ガラス繊維、MoS2、および/またはガラス繊維、などの無機充填材を添加することで、物理的、機械的、および/またはトライボロジー特性、を改善している。よって、特に乾式走行(ドライランニング)特性を付与することができる。
【0023】
好適な金属としては、アルミニウム、鉛、または錫ブロンズのようなブロンズ材料、および真鍮、のような材料が挙げられる。
個々のシールディスク同士の径方向のクリアランスの枠組みの中で、これらシールディスク同士は、受入空間内の境界面に対する全てのシールディスク同士の同軸の整列に対してズレることがある。この変位は、各シールディスク同士で互いに異なって発生している。シールディスク同士に作用する動圧成分によって、ピストンロッドとの間隙の幅が変化する。すべてのシールディスク同士の組み合わせによって、一種の動的ラビリンスシールが形成されている。この動的ラビリンスシールによって流れ抵抗が増加する。特に動圧成分に関して、スロットル配置のシール効果が改善される。
【0024】
流れ抵抗は、同軸方向とは異なる、シールディスク同士の互いに対するランダムな配向から生じる。よって、本発明によるスロットル配置におけるシールディスク同士の数は、少なくとも3つであるべきである。好ましくは、本発明によるスロットル配置におけるシールディスク同士の数は、丁度5つである。この数のシールディスク同士は、特に効率的な流れの転換(ダイバージョン、迂回)を保証している。同時に、スロットル配置の軸方向の高さをコンパクトに保つことができる。
【0025】
本発明によるスロットル配置におけるシールディスク同士の直列接続によれば、個々のシールディスク同士は、必ずしも可能な限り最高の封止効果を有する必要はない。なぜなら、先に述べたように、スロットル配置の封止効果は、複数のシールディスク同士の組み合わせと、スロットル配置におけるシールディスク同士の連続した後列配置による流れ抵抗の増大と、に基づくからである。
【0026】
しかしながら、本発明によるスロットル配置のシールディスク同士が単一ピース(ワンピース)として形成されているとともに、エンドレスであると有利である。これによって、シールディスク同士は、動圧差を有している負荷に関して、特に堅牢な方法で製造することができる。
【0027】
本発明によるスロットル配置の好ましい実施形態では、シールディスク同士は、1mm~5mmの間の軸方向高さを有している。好ましくは、シールディスク同士の軸方向高さは2.4mm~2.6mmの間である。これによって、スロットル配置を軸方向において特にコンパクトにすることができる。
【0028】
スロットル配置内では、高圧側から低圧側に向かって、すなわち、シールディスクホルダにおいて最上位に配置されたシールディスクから、受圧室の底面上に支持されたシールディスクに向かって、圧力が低下する。シール間隙内の圧力、すなわち第2環状間隙内の圧力は、低圧側の方向に減少する。一方で、シールディスク同士の外周面に作用する圧力は、すなわち第1環状間隙内の圧力は、一定である。よって、スロットル配置における上部に配置されたシールディスクの外周面と内周面には、同じ圧力がかかる。一方、スロットル配置における下部に配置されたシールディスクの外周面と内周面には、最大の圧力差が存在する。圧力差に起因する径方向のシールディスクの弾性塑性変形によって、シール間隙が小さくなる。さらに、他のシールディスクとで比較して、最も低いシールディスクの摩耗可能性が高くなり得る。
【0029】
シールディスク同士にかかるこの異なる負荷を考慮するべく、本発明によるスロットル配置の好ましい実施形態におけるシールディスク同士は、互いに異なる材料で作られている。弾性率(またはヤング率)は、材料工学の材料パラメータである。弾性率(またはヤング率)は、線形弾性挙動の場合、固体物の変形中の応力と歪みとの間の比例関係を記述する。弾性係数は、材料の弾性変形に対する抵抗が大きくなるにつれて大きくなる。弾性係数は、通常、プラスチックの材料サンプルの引張試験で決定される。この場合、初期断面が既知であるサンプルを、引張試験機にクランプしてから引張力Fを負荷する。引張力を、一定時間かけて増加させる。引張力が増加するにつれて、発生する長さの変化ΔLに対してプロットされる。引張試験の試験方法は、例えば、EN_ISO_527-1/-2に規定されている。
【0030】
本発明によるスロットル装置の下部に配置されたシールディスクは、最も大きな圧力差を経験する。したがって、シールディスク同士に使用される材料の弾性係数は、低圧側の方向に好ましくは(優先的に)増加する。この対策によって、スロットル装置の流れ抵抗と耐用年数をさらに向上させることができる。例えば、本発明によれば、上部に配置された1つまたは複数のシールディスクには、比較的柔らかい材料、例えば充填PTFEを使用している。次いで中間領域には、高温ポリマー、例えばPEEK、PPS、またはPI、で作られた1つまたは複数のシールディスクを配置している。最後に下部領域には、高い強度を有している材料、例えば青銅またはセラミックでできた1つまたは複数のシールディスクを配置することが考えられ得る。もちろん、単一のシールディスクに互いに異なるポリマー同士を混合して使用すること、および/または、例えばドライランニング特性を改善するべく充填剤(フィラー)を使用すること、も本発明にしたがって考えられる。
【0031】
より高い弾性係数を特徴とする、より硬いディスクが、この組み合わせにおいて依然として十分な弾性塑性変形をしないことを保証する。そうするべく、シールディスクホルダ内の複数のシールディスクのうちの少なくとも1つ、好ましくは全てのシールディスク、が他のシールディスクとは異なる軸方向の高さを有している場合、本発明によれば好ましい。
【0032】
本発明によるスロットル配置の好ましい実施形態では、シールディスク同士の軸方向高さは、低圧側の方向で増加する。シールディスク同士の軸方向寸法の増加は、各々のシールディスクの外周面積の増加をもたらしている。したがってガス圧の効果が大きくなるので、それによって改善された封止効果が達成される。
【0033】
この目的は、本明細書に記載の少なくとも1つのスロットル配置を備えているピストン圧縮機、特に乾式走行(ドライランニング)式ピストン圧縮機、によってさらに解決される。
【0034】
この目的は、特に動的圧力差に関して、ピストンロッドまたはピストンをシールするための、本明細書に記載のスロットル配置の使用によってさらに解決される。
本発明の様々な実施形態を、図面を参照して以下に説明する。ここで、同一または対応する要素には、一般的に同一の参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1a】本発明に係るスロットル配置の、第1実施形態の上面図。
【
図1b】
図1aの線B-Bに沿った、スロットルアセンブリを通る長手方向の断面図。
【
図2b】
図2aの線B-Bに沿った、シールディスクホルダを通る縦断面図。
【
図3b】
図3aの線C-Cに沿った、シールディスクを通る縦断面図。
【
図4】ピストンロッドを有している、
図1aからの本発明によるスロットル配置の半分を示す、ピストン圧縮機を通る長手方向の断面図。
【
図5】本発明によるスロットル配置を備えているピストン圧縮機の、ピストンロッドパッキンを通る縦断面図。
【
図6a】本発明によるスロットル配置の、第2実施形態の上面図。
【
図6b】
図6aの線C-Cに沿った、スロットルアセンブリを通る長手方向の断面図。
【
図7】シリンダトレッド(シリンダ溝)を有している、
図6aの本発明によるスロットル配置の半分を示す、ピストン圧縮機を通る長手方向の断面図。
【
図8】本発明による複数のスロットル配置を有している、ピストンの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1aは、シールディスクホルダ3と複数のシールディスク2と、を備えている本発明によるスロットル配置1の第1実施形態の上面図を示している。よって、示された上面図に従って、軸方向Aで最も上に配置されたシールディスクのみが、この再表現で見える。シールディスクホルダ3は、
図1bで以下に見ることができるように、径方向RにL字形の径方向断面を有している。シールディスクホルダ3は、軸方向Aに延びている(走る)第1脚部4と、軸方向Aに対して横方向に延びている第2脚部5と、を備えている。第2脚部5は環状設計である。第2脚部5は、複数のシールディスク2を軸方向Aに互いに重ねて配置する軸受面6を有している。第1脚部4は円筒形状であり、第2脚部5は円環形状である。第1脚部4は円筒形であり、第2脚部5の外周に沿って周方向Uに、かつ軸受面6からシールディスク2の方向に、延びている。また、第1脚部4は、シールディスク2に面する側に境界面8を有している。この境界面8は、均一に分布した8個のガス通路開口部7によって、周方向Uに中断されている。
【0037】
図1bは、
図1aの交差点B-Bの線に沿って、
図1aに示すスロットル配置1を通る縦断面を示す。軸方向Aに互いに重なっている合計5枚のシールディスク2a~2eが見られる。シールディスク2a~2e同士は、高圧側1aからシールディスクホルダ3に挿入することができる。シールディスクホルダ3に配列された最も下部のシールディスク2eは、当該シールディスク2eのフランクを低圧側1bの方向に向けた状態で、シールディスクホルダ3の軸受面6に載っている。第1脚部4に対して、第2脚部5は、この実施形態では径方向内方を向いている。その結果、円筒状の第1脚部4は、第2脚部5の外周に沿って、すなわち軸受面6から、高圧側1aの方向に積層されたシールディスク2a~2eの軸方向の全高よりも若干高い範囲にわたって、延びている。この実施形態例では、第1脚部4と境界面8とは13mmである軸方向高さH
4を有している。シールディスク2a~2eの各々の軸方向高さは2.5mmである。第1脚部4の軸方向高さH
4と、積層されたシールディスク2a~2eの軸方向高さ同士の和と、の間の差によって、図示の実施形態例では、シールディスクホルダ3におけるシールディスク2の軸方向クリアランスが0.5mmとなる。したがって、以下に詳細に説明するように、使用時にシールディスク2が径方向に移動可能にされていることが保証されている。
【0038】
図2aは、
図1aに示すスロットル配置(絞りアレンジメント)1のシールディスクホルダ3の上面図である。シールディスクホルダ3は、軸受面6を有している円形の第2脚部5を備えている。この軸受面6は、ピストンロッド(図示せず)を受け入れるために軸方向Aに延びているホルダ中央貫通開口部13を有している。ホルダ中央貫通開口部13は、第2脚部5の内周面14によって画定されている。シールディスクホルダ3はさらに、第2脚部5の外周に沿って外延している第1脚部4を備えている。第1脚部4は、径方向Rの内方を向く境界面8を有している。この境界面8は、シールディスク(図示せず)のための受入空間を画定している。第1脚部4は、周方向Uに均一に分散して配置された8つのガス通路開口部7によって、中断されている。境界面8は、8つのガス通路開口部7によって、8つの境界面セグメント(8)に細分化されている。2つの互いに隣接する境界面セグメント(8)同士の中心同士間の中心角は、各々の場合で45°である。
【0039】
図2bは、
図2aの交差点B-Bの線に沿って、
図2aに示すシールディスクホルダ3を通る縦断面を示す。図示の実施形態では、内周面14によって規定される第2脚部5のホルダ中央貫通開口部13の内径D
13は、50mmである。境界面セグメント(セグメンテーション)(8)同士によって画定される受入空間D
8の明確な直径は、69mmである。第1脚部4は、13mmの軸方向高さH
4を有しているとともに、8つのガス通路開口部7によって周方向に中断されている。各ガス通路開口部7は、第1脚部4の軸方向高さH
4全体にわたって延びているとともに、約19mmの円弧長B
7を有している。このようにして得られた個々の境界面セグメント(8)の円弧長B
8は、約10mmである。指定された円弧長は、高圧側1aに面する境界面8の側(サイド)に沿って測定される。
【0040】
図3aは、
図1aに示すスロットル配置1からの、シールディスク2の上面図である。シールディスク2は、一体的(ワンピース)に形成されている。シールディスク2は、周方向Uにエンドレスである。シールディスク2は、ピストンロッド(図示せず)を受け入れるための軸方向Aのシール中央貫通開口部12を有している。しかしながら、本発明によるスロットル配置の第2実施形態について以下に詳述するように、環状のシールディスク2のシール中央貫通開口部12は、代替的に、シールディスクホルダ3の円筒状の第1脚部4を受け入れる役割も果たし得る。シールディスク2は、径方向Rの外方を向く外周面10と、径方向内方を向く内周面11と、を有している。内周面11は、軸方向Aに対して横方向に、シールディスク2のシール中央貫通開口部12を画定している。
【0041】
図3bは、
図3aの交差点C-Cの線に沿って、
図3aに示すシールディスク2を通る縦断面を示す図である。シールディスク2では、軸方向の高さH
2が2.5mmであり、シールディスク2の外周面10に対する外径D
2が68mmである。内周面11によって囲まれたシール中央貫通開口部(中央通路開口部)12の明確な直径D
12は、50mmである。
【0042】
図4は、
図1aからの本発明によるスロットル配置1を通る縦断面を示している。この表現では、スロットル配置1の半分と、ピストンロッド21の半分と、のみが見えている。個々のシールディスク2a~2e、円筒状の第1脚部4、および、被封止体(シールされるべきボディ)すなわちこの実施形態ではピストンロッド21、は図示の描写において互いに同軸に整列されている。その結果、境界面8と、シールディスク2a~2eの外周面10a~10eと、の間には、各場合において第1環状間隙RS1a~RS1eが形成されている。これら第1環状間隙RS1a~RS1eは、ガス通過開口部(図示せず)を介して、高圧側1aに流体的に接続されている。また、ピストンロッド21の摺動面9と、シールディスク2a~2eの内周面11a~11eと、の間には各々第2環状間隙RS2a~RS2eが形成されている。第2環状間隙RS2a~RS2eの径方向幅は、図示の実施形態例では第1環状隙RS1a~RS1eの径方向幅の約1/5としての0.1mmである。新しい状態において、すなわち、シールディスク2a~2eが引っ込む前である一定期間において、シールディスク2a~2eは、
図4に示すように、それらシールディスク2a~2eの内周面11a~11eが、第2脚部5の中央貫通開口の内周面14を越えて径方向に突出するように、設計されている。
図4に示す実施形態では、シールディスク2a~2eの内径は、ピストンロッド21の直径よりも数百分の一ミリメートルまたは数十分の一ミリメートルだけ大きい。運転中にシールディスク2a~2eと、移動するピストンロッド21と、が互いに接触することによって、慣らし運転中に内周面11a~11eが摺動面9に突き当たる。よって、突き当たっているシールディスク2a~2eの各々の内周面11a~11eから、材料が除去される。シールディスク2a~2eの内径は、したがって第2環状間隙RS2は、境界面8による径方向のクリアランスの制限によってシールディスク2a~2eのさらなる摩耗が防止される前に、実質的に第1環状間隙RS1に対応する径まで連続的に成長する。したがって、本発明によるスロットル配置1の使用においては、シールディスク2a~2eが第1環状間隙RS1a~RS1eによってさらなる摩耗から防止される前に、まずシールディスク2a~2eの内周面11a~11eにおけるわずかな摩耗が許容される。
【0043】
図5は、本発明によるスロットル配置1を有している、乾式運転のピストン圧縮機20のピストンロッドパッキン22を通る縦断面を示す。ピストン圧縮機20は、軸方向Aで長手方向に移動可能なように取り付けられたピストンロッド21を有している。スロットル配置1が取り付けられるかまたは使用されるときに、シリンダは高圧側1aに位置しているとともに、ピストンロッド駆動部(クランク駆動側)は低圧側1bに位置している。ピストンロッドパッキン22は、チャンバリング26の中にシールリング23を配置した複数のチャンバリング26を備えている。これらチャンバリング26同士は、互いに背中合わせに配置されている。
図5に示す実施形態では、シールリング23は各々、カバーリング24と支持リング25との間に配置されている。2つの互いに隣接するチャンバリング26同士の間には、したがって、各々の場合に、ピストンロッド21の方向において、カバーリング24、シールリング23、および支持リング25、を備えているいわゆるサンドイッチリングが存在する。しかしながら、ピストンロッドパッキン22の底部に配置されたシール要素で示されるように、支持リングとカバーリングの存在は絶対に必要というわけではない。スロットル配置1は、ピストンロッドパッキン22の高圧側入口に配置されている。スロットル配置1は、図示の実施形態例では、シールディスクホルダ3において軸方向Aに互いに重ねて配置された3枚のシールディスク2a~2cを備えている。スロットル配置1の軸方向Aの高さは、それによって、スロットル配置1を収容する2つの互いに隣接するチャンバリング26によって形成される溝の幅(寸法)よりも、幾分小さくなる。従って、スロットル配置1は、これらのチャンバリング26同士の間に、軸方向Aの遊びを持って挿入されている。シールディスクホルダ3の第1脚部4が、シールディスクホルダ3内の最上部に配置されたシールディスク2aの上方にわずかに延びているという事実によるように、シールディスク2a~2cは、軸受面6と、高圧側のスロットル配置に隣接するチャンバリング26と、の間ではクランプされていない。したがって、シールディスク2a~2cは使用時に軸方向Aのクリアランスを有しているので、使用時にシールディスク2a~2cの径方向の動きが可能にされている。
【0044】
図6aは、シールディスクホルダ3と複数のシールディスク2と、を備えている、本発明によるスロットル配置1の第2実施形態の上面図を示している。それによって、示された上面図に従って、軸方向Aにおいて最も上に配置されたシールディスク2のみが、この再表明で見える。シールディスクホルダ3は、
図6bで以下に見ることができるように、径方向RにおいてL字形の径方向断面を有している。シールディスクホルダ3は、軸方向Aに延びている(走る)第1脚部4と、軸方向Aに対して横方向に延びている第2脚部5と、を備えている。第2脚部5は環状設計である。第2脚部5は、軸方向Aにシールディスク2同士を互いに重ねて配置する軸受面6を有している。第1脚部4は円筒形状であり、第2脚部5は円環形状である。第1脚部4は円筒形状であり、第1脚部4は、第2脚部5の内周に沿って周方向Uに、軸受面6からシールディスク2の方向に延びている。また、第1脚部4は、シールディスク(シールリングディスク)2に面する側において、周方向Uにおけるシリンダジャケットの形をした境界面8を有している。この境界面8は、周方向Uにおいて、均一に分布した8個のガス通路開口部7によって中断されている。
【0045】
図6bは、
図6aの交差点D-Dの線に沿って、
図6aに示すスロットル配置1を通る縦断面を示す。合計5枚のシールディスク2a~2eが見られる。これらシールディスク2a~2eは、軸方向Aにおいて互いに重ねられている。シールディスク2a~2eは、高圧側1aからシールディスクホルダ3に挿入することができる。それによってシールディスクホルダ3の底部に配置されたシールディスク2eは、当該シールディスク2eのフランクが第2脚部5の軸受面6上において低圧側1bの方向に向くように、載る。図示の実施形態では、第2脚部5は、第1脚部4に対して径方向外方を向いている。その結果、円筒状の第1脚部4は、第2脚部5の内周に沿って、すなわち軸受面6から、高圧側1aの方向に積層されたシールディスク2a~2eの軸方向高さの全体よりもわずかに大きい範囲にわたって、延びている。第1脚部4の軸方向高さH
4は13mmであり、シールディスク2a~2eの軸方向高さ(不図示)は各々2.5mmである。第1脚部4の軸方向高さH
4と、積層されたシールディスク2a~2eの軸方向高さ同士の和と、の間の差によって、図示の実施形態ではシールディスクホルダ3におけるシールディスク2a~2eの軸方向クリアランスが0.5mmとなる。よって、使用時にシールディスク2a~2eを径方向に確実に移動させることができる。
【0046】
図7は、
図6aおよび
図6bで上述したように、シリンダ27と、ピストン28と、ピストン28に配置された少なくとも1つのスロットル配置1と、を備えているピストン圧縮機を通る縦断面を示す。ピストン28は、ビルドピストンとして構成されている。よってピストン28は、軸方向Aに連続して配置された複数のピストン体29を備えている。各ピストン体29は、内部空間29bを形成するチャンバディスク29aを有している。内部空間29bには、スロットル配置1が配置されている。
図7において、ピストン圧縮機20の圧縮室(1a)は上部に配置されており、クランクケースすなわち低圧側(低圧部)1bは、下部に配置されている。スロットル配置1は、シールディスクホルダ3と、4つの環状のシールディスク2a~2dと、を備えている。これらのシールディスク2a~2dは各々、径方向内方に向いた周面11a~11dと、シールディスクホルダ3の境界面8と、の間に第1環状間隙RS1を形成する。シールディスクホルダ3は、チャンバディスク29aに関して軸方向Aに対して横方向に間隔をあけて配置されているので、内部間隙29cを形成している。図示の実施形態例では、第1脚部4の軸方向高さH
4は、内部空間29bの軸方向高さよりもわずかに小さい。それによって内部間隙29cは、図示の図ではさらに上に存在することで見えない高圧側空間(1a)に、流体伝達的に連通している。その結果、第1環状間隙RS1も、第1脚部4のガス通路開口部7(図示の
図7では見えない)を介して、高圧側空間(1a)に流体的に接続される。ピストン圧縮機20の運転中に、シールディスク2a~2dとシリンダ27の摺動面9とが接触する結果、シールディスク2a~2dの外周面10a~10dから材料が除去される。したがって、シールディスク2a~2dの外径が、そしてしたがって、外周面10a~10dと摺動面9との間に存在する第2環状間隙RS2が、連続して増加することになる。第2環状間隙RS2が実質的に第1環状間隙RS1に対応する直径まで成長するとすぐに、境界面8による径方向のクリアランスの制限によって、シールディスク2a~2dのさらなる摩耗が防止される。したがって、
図7に示す本発明によるスロットル配置1の実施形態では、シールディスク2a~2dが第1環状間隙RS1a~RS1dによってさらなる摩耗から防止される前に、まずシールディスク2a~2dの外周面10a~10dにわずかな摩耗が許される。
【0047】
図8は、高圧側1aから出発して、ピストン28の第1領域A
1において軸方向Aに互いに間隔をおいて配置された、本発明による4つのスロットル配置1を有しているピストン28の一例の側面図である。軸方向Aにおいて、ピストン28は、その後、第2領域A
2において5つの追加シール要素30を備えて構成されている。さらに、低圧側1bには、ガイドリング31が配置されている。
【符号の説明】
【0048】
1…スロットル配置。
1a…高圧側。
1b…低圧側。
【0049】
2…シールディスク。
3…シールディスクホルダ。
4…第1脚部。
【0050】
5…第2脚部。
6…軸受面。
7…ガス通路開口部。
【0051】
8…境界面。
9…被密封体(被封止体、被シール体)の摺動面。
10…シールディスクの外周面。
【0052】
11…シールディスクの内周面。
12…シールディスクの中央貫通孔。
13…軸受面6の中央貫通孔。
【0053】
14…中央貫通孔13の内周面。
20…ピストン圧縮機。
21…ピストンロッド。
【0054】
22…ピストンロッドパッキン。
23…シールリング。
24…カバーリング。
【0055】
25…支持リング。
26…チャンバリング。
27…シリンダ。
【0056】
28…ピストン。
29…ピストン体。
29a…チャンバディスク。
【0057】
29b…内部。
29c…内部の間隙。
30…シール要素。
【0058】
31…ガイドリング。
A…軸方向。
B7…ガス通路開口部の円弧長さ。
【0059】
B8…境界面セグメントの円弧長さ。
D2…シールディスクの外径。
D12…シールディスクの内径。
【0060】
D8…受入室の内径。
D13…中央貫通孔13の内径。
H2…シールディスクの軸方向高さ。
【0061】
H4…第1脚部の軸方向高さ。
R…径方向。
RS1…第1環状間隙。
【0062】
RS2…第2環状間隙。
U…周方向。
【国際調査報告】