(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】密着性に優れた複合鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C25F 3/02 20060101AFI20231227BHJP
C23C 2/06 20060101ALI20231227BHJP
C23C 2/26 20060101ALI20231227BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20231227BHJP
B32B 15/18 20060101ALI20231227BHJP
B32B 27/06 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C25F3/02 B
C23C2/06
C23C2/26
B32B15/08 M
B32B15/18
B32B27/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536453
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 KR2021018657
(87)【国際公開番号】W WO2022131680
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0179085
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ユー、 ヘ-ジン
(72)【発明者】
【氏名】ビョン、 チャン-セ
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ジュン-ス
(72)【発明者】
【氏名】ペク、 ジェ-フン
(72)【発明者】
【氏名】イ、 カン-ミン
【テーマコード(参考)】
4F100
4K027
【Fターム(参考)】
4F100AB03A
4F100AB18B
4F100AK48B
4F100AK48C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DD07B
4F100EH71B
4F100GB32
4F100JL12C
4F100YY00B
4K027AA05
4K027AA22
4K027AB02
4K027AB42
4K027AC82
(57)【要約】
本発明は、密着性に優れた複合鋼板及びその製造方法に関し、より詳細には、めっき鋼板の表面及び内部に微細構造を形成させた後、プラスチック層と接合することによって密着性を極大化できる軽量複合鋼板に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地鉄と、
前記素地鉄上の少なくとも一面に設けられためっき層と、
前記めっき層上に設けられた樹脂層と、を含み、
前記めっき層と樹脂層との間の界面粗さRaは0.5~1.5μmであり、
前記めっき層は内部に空隙が存在し、
前記めっき層の内部に存在する空隙の平均直径は10nm~3μmである、複合鋼板。
【請求項2】
前記めっき層の表面から、めっき層の内部に含まれ、素地鉄側に最も近く存在する空隙までの深さが、前記めっき層の全厚さの10~90%である、請求項1に記載の複合鋼板。
【請求項3】
前記めっき層の断面の単位面積9μm
2に含まれる、直径が10nm以上の空隙の個数は5~30個である、請求項1に記載の複合鋼板。
【請求項4】
前記めっき層の断面の全面積に対する直径10nm以上の空隙の面積分率は10~80%である、請求項1に記載の複合鋼板。
【請求項5】
前記めっき層の内部に存在する空隙の全面積のうち、前記空隙を樹脂層が占める面積の分率は20~90%である、請求項1に記載の複合鋼板。
【請求項6】
前記樹脂層上に設けられた第2めっき層と、前記第2めっき層上に設けられた第2素地鉄と、をさらに含む、請求項1に記載の複合鋼板。
【請求項7】
素地鉄の少なくとも一面にめっき層を形成してめっき鋼板を得る段階と、
前記めっき鋼板に、HCl及びNaClからなる群から選択された1種以上を含む第1次電解液を用いて、1次電解エッチング処理する段階と、
前記1次電解エッチング処理されためっき鋼板に、HNO
3、NaOH、H
3PO
4、H
2SO
4、Na
2SO
4及びNaH
2PO
4からなる群から選択された1種以上を含む第2次電解液を用いて、2次電解エッチング処理する段階と、
前記2次電解エッチング処理されためっき鋼板上に、樹脂シートを熱融着する段階と、を含む、複合鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記1次電解エッチング処理する段階を、電圧1~10Vで1~20秒間行い、
前記2次電解エッチング処理する段階を、1~10Vの電圧で1秒~20分間行う、請求項7に記載の複合鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂シートを熱融着する段階を、150~230℃の温度で行う、請求項7に記載の複合鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記1次電解液は、HCl及びNaClからなる群から選択された1種以上の物質の濃度が0.1~1.5%である、請求項7に記載の複合鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記2次電解液は、HNO
3、NaOH、H
3PO
4、H
2SO
4、Na
2SO
4及びNaH
2PO
4からなる群から選択された1種以上の物質の濃度が0.01~1.5Mである、請求項7に記載の複合鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密着性に優れた複合鋼板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去20年間、過度なエネルギー使用の問題が話題として浮上し、エネルギー使用を減らすために、産業全般にわたって素材の軽量化を図ろうとする動きが活発に行われてきた。深刻なエネルギー使用による環境汚染の問題、及び自動車需要の急激な増加によるエネルギー資源の枯渇に対する懸念が日々深化している。このため、素材の軽量化に関する活発な研究が進められており、さらにアルミニウムなどの軽量素材の使用量も毎年増加している。特に自動車産業における自動車素材の軽量化は長い間持続してきた関心事であり、全ての自動車企業における次世代開発目標でもある。世界的に有名な自動車メーカーと部品、素材関連企業は、自動車軽量化のための新素材の開発及び採用を通じて、高い燃費効率を有する自動車の生産を目指して熾烈な技術競争を繰り広げている。
【0003】
軽量素材の中でもアルミニウムは、非鉄系素材のうち自動車素材として最も広く使用されており、特に自動車外装パネル用に適用される比率が増加している。しかし、アルミニウムは加工過程で大量のエネルギーを消耗し、価格的な面で不利であるという問題がある。
【0004】
アルミニウムに対する対応素材として、厚さの薄い高強度鋼板が台頭している。高強度鋼板を使用する場合、厚さが薄くなり外板剛性が不十分になるという問題がある。また、一定厚さ以下の高強度鋼板は、加工過程中に微細シワ又はスプリングバック現象が起こるという限界がある。
【0005】
そこで、代案として、鋼板の間に接着性を有する軽いプラスチック層を挿入した軽量サンドイッチ鋼板が研究されている。ところが、このようなプラスチック層を挿入した形態の複合鋼板は、プラスチック層と鋼板との接合のために接着剤を塗布した後にラミネートしたり、鋼板の表面にプラズマ処理した後にラミネートする等の工程を行っている。
【0006】
しかし、このような接着剤を塗布する方式には、有害物質が発生したり、加工あるいは温度変化によって界面が広がるという問題があり、鋼板の表面にプラズマを処理する方式には、プラスチック層と鋼板との間に十分な接着力が確保されないという限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1728026号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一側面では、密着性に優れた複合鋼板及びその製造方法を提供する。
【0009】
本発明の課題は、上述の内容に限定されない。本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、誰でも本発明の明細書全体にわたる内容から本発明の更なる課題を理解する上で困難がない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面は、
素地鉄と、
上記素地鉄上の少なくとも一面に設けられためっき層と、
上記めっき層上に設けられた樹脂層と、を含み、
上記めっき層と樹脂層の間の界面粗さRaは0.5~1.5μmであり、
上記めっき層は内部に空隙が存在し、
上記めっき層の内部に存在する空隙の平均直径は10nm~3μmである、複合鋼板を提供する。
【0011】
また、本発明のさらに他の一側面は、
素地鉄の少なくとも一面にめっき層を形成してめっき鋼板を得る段階と、
上記めっき鋼板に、HCl及びNaClからなる群から選択された1種以上を含む第1次電解液を用いて、1次電解エッチング処理する段階と、
上記1次電解エッチング処理されためっき鋼板に、HNO3、NaOH、H3PO4、H2SO4、Na2SO4及びNaH2PO4からなる群から選択された1種以上を含む第2次電解液を用いて、2次電解エッチング処理する段階と、
上記2次電解エッチング処理されためっき鋼板上に、樹脂シートを熱融着する段階と、を含む、複合鋼板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面によれば、密着性に優れた複合鋼板及びその製造方法を提供することができる。
【0013】
本発明の多様かつ有益な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】複合鋼板の例示的な構造を示す模式図である。
【
図2】本発明の発明例1に該当する複合鋼板についてSEMを用いて様々な角度で撮影した写真を示すものである。
【
図3】無処理素材、接着剤使用素材、本発明による素材の接合力を比較して示すグラフである。
【
図4】本発明の一実施形態による複合鋼板の構造を模式的に示す模式図である。
【
図5】本発明のさらに他の実施形態による複合鋼板の構造を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。さらに、本明細書で使用される単数形は、関連する定義がそれと明らかに反対の意味を示さない限り、複数の形態も含む。
【0016】
本明細書で使用される「含む」の意味は、構成を具体化し、他の構成の存在や付加を除外するものではない。
【0017】
他に定義しない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語を含むすべての用語は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。辞書に定義されている用語は、関連技術文献と現在開示されている内容に一致する意味を有するものとして解釈される。
【0018】
以下、本発明の一側面による複合鋼板について詳細に説明する。本発明において、各元素の含量を示す際は、特に断らない限り、重量%を意味する。
【0019】
従来は、素材軽量化の需要に応じた高強度鋼板が開発されてきたが、加工過程中に微細シワが形成されるなどの欠点があった。また、鋼板の間に樹脂層を挿入したサンドイッチ鋼板であって、接合のために接着剤を塗布したり、プラズマ処理した後にラミネートする技術が開発されてきた。しかし、このような技術には、樹脂層と鋼板との間の界面が広がったり、接着力が十分でないなどの問題があった。
【0020】
そこで、本発明では、従来技術の問題点を解決しながらも、めっき層と樹脂層との間の結合力をより向上させることができる方案を提供する。以下、具体的に説明する。
【0021】
[複合鋼板]
まず、本発明の一側面である樹脂密着性に優れた複合鋼板について詳細に説明する。本発明による複合鋼板の模式的な構造を
図1に示す。複合鋼板は、素地鉄1と、上記素地鉄1上の少なくとも一面に設けられためっき層2と、上記めっき層2上に設けられた樹脂層3と、を含む。
【0022】
本発明者らは、めっき層2と樹脂層3との間の密着性をより改善するためには、めっき層2の素地鉄と接する面に対向する表面10への表面粗さ(すなわち、上述しためっき層2と樹脂層3との間の界面粗さを意味する)と、めっき層の内部に存在する空隙の平均直径とを制御することが重要な要素であることを見出した。
【0023】
一般に、接着は、機械的結合と化学的結合の2つの要素からなる。化学的結合は機械的結合に比べて遥かに強力であるが、化学的結合は主に原子レベルでの結合によって化合物となる反応であるため、めっき鋼板と樹脂層との間には適用が難しいという技術的課題があった。
【0024】
したがって、従来技術として、めっき鋼板と樹脂層との間の接着力を改善するための様々な試みがなされてきた。しかし、めっき層と樹脂層(プラスチック層)との間に、接着剤を別途用いて接合する方法は、ファンデルワールス等による接合であって、接合強度が弱いか又は不規則であり、接合厚さが数十μmと厚く、接合に要求される時間が長いという欠点があった。また、接合時に揮発性有機化合物が発生したり、周辺環境(湿度、熱、酸性雰囲気など)による劣化現象が発生し、接合対象である両物質のどちらにも適した接着剤の選定が非常に難しく、徹底した品質管理も必要とされるという制約があった。また、接着剤の使用による接合対象間の界面の増加により、加工時に剥離現象が発生するおそれもあった。
【0025】
一方、樹脂層(プラスチック層)を改質して化学官能基を付与する方法として、UV処理、オゾン処理、ラジカル反応、グラフト反応及び架橋剤処理などによって樹脂層の表面に極性官能基を導入する方法がある。しかし、樹脂(プラスチック)の種類と鋼板表面の形状によって適用する官能基を変えなければならず、改質する工程が複雑で時間が長く、鋼板の表面には如何なる官能基も存在しないため、めっき鋼板と樹脂層(プラスチック層)間の接合力が非常に弱いという問題があった。
【0026】
そこで、本発明者らは、上述の問題を解決するために鋭意検討した結果、めっき層の表面粗さ及びめっき層内部の空隙の平均直径を適正な数値範囲に制御することにより、問題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0027】
すなわち、本発明によれば、めっき層の表面(すなわち、めっき層2が樹脂層3と接する表面10を意味する)の表面粗さ及びめっき層内部の空隙サイズを制御することにより、複合鋼板の樹脂層とめっき層との間の接合面積を増加させることができることが分かった。これにより、接着対象であるめっき層2と樹脂層3間の表面積を広げて、ファンデルワールス力(Van der Waals force)による接合力を増加させることができる。さらに、上記樹脂層がめっき層と互いに噛み合って接触することにより発揮される連結効果(interlocking effect)を誘導し、ノーマル(normal)方向と剪断(shear)方向への接合力を強化させることにより、樹脂層3とめっき鋼板1、2との間の強力な接合力を確保することができる。
【0028】
したがって、本発明は、上述した従来技術の問題を解決し、めっき鋼板と樹脂層との間の密着性をより改善した複合鋼板を提供することができる。特に接合対象間の界面を最小化できるため、樹脂層(プラスチック層)の種類及び特性に関係なく、めっき鋼板との接合力をより堅固にするうえで非常に有用な技術である。
【0029】
このために、本発明による複合鋼板は、上記めっき層と樹脂層との間の界面粗さRaが0.5~1.5μmであることを特徴とする。上記めっき層の樹脂層側表面10に対する表面粗さRaが0.5μm未満であると、樹脂層とめっき層との間の界面における接合面積が不十分となることにより、接合力が不足するおそれがあるだけでなく、加工時に剥離が発生するおそれがある。これに対し、上記めっき層の樹脂層側表面に対する表面粗さRaが1.5μmを超えると、樹脂層がめっき層の下まで十分に最後まで浸透できず、接合力が低下するという問題が生じることがある。一方、上述した効果をより改善する観点から、上記Ra値の下限は0.7μmであってもよく、あるいは上記Ra値の上限は1.3μmであってもよい。このとき、めっき層の樹脂層側表面に対する表面粗さは表面粗さ測定方法で測定することができ、接触式粗さ測定装置、3次元粗さ測定装置又は3次元表面形状測定装置などを用いて測定可能である。
【0030】
また、本発明による複合鋼板は、上記めっき層の内部に空隙が存在し、上記空隙の平均直径は10nm~3μmであることを特徴とする。上記めっき層の内部に存在する空隙の平均直径が10nm未満であると、後述する樹脂層が空隙を占めることによる接合面積の増大及び連結効果(interlocking effect)が不十分となるおそれがある。これに対し、上記めっき層の内部に存在する空隙の平均直径が3μmを超えると、空隙のサイズが大きすぎることにより耐食性が低下するおそれがあるだけでなく、めっき層の緻密度が低下してめっき密着性が低下する可能性がある。一方、上述した効果をより改善する観点から、上記空隙の平均直径の下限は20nmであってもよく、あるいは上記空隙の平均直径の上限は2.8μmであってもよい。このとき、上記めっき層の内部に存在する空隙とは、めっき層に対する厚さ方向の断面を基準として、めっき層の樹脂層側表面からめっき層の素地鉄側表面までの領域内に存在する空隙を意味する。なお、本明細書において、上記厚さ方向とは、鋼板の圧延方向と垂直な方向を意味し、以下においても特に断らない限り、同じ意味を有する。但し、上記めっき層の内部に存在する空隙の平均直径が、後述するめっき層の平均厚さよりも小さいことは当然であるため、本明細書では、これについて別途の説明はしない。
【0031】
したがって、上記めっき層の内部に存在する空隙の平均直径は、上述しためっき層に対する厚さ方向への断面を基準として、厚さ方向にめっき層の樹脂層側表面(すなわち、めっき層が樹脂層と接する表面)からめっき層の素地鉄側表面までの領域内に存在する空隙に対する円相当直径を測定した値の平均値を意味する。このとき、上記円相当直径とは、上記空隙の内部を貫通する空隙の最大長さを粒径にして描かれる球状の粒子を仮定して、上記粒子の粒径を測定した値をいう。
【0032】
本発明の一側面によれば、上記めっき層の平均厚さは2.5~7.5μmであってもよい。上記めっき層の平均厚さが2.5μm未満であると、めっき層による耐食性確保の効果が不十分となる可能性があり、未めっき現象が発生するおそれもある。また、上記めっき層の平均厚さが7.5μm超過であると、めっき密着性が低下し、均一なめっき層の形成が困難になる可能性がある。一方、上述した効果をより改善する観点から、上記めっき層の平均厚さの下限は3.0μmであってもよく、あるいは上記めっき層の平均厚さの上限は5.8μmであってもよい。
【0033】
また、本発明の一側面によれば、上記樹脂層の平均厚さは100~600μmであってもよい。上記樹脂層の平均厚さが100μm未満であると、鋼板の間にコア物質としての十分な厚さを有する層を形成することができない。また、上記樹脂層の平均厚さが600μmを超えると、熱融着条件で十分に溶融してめっき層に浸透することができず、密着性などの特性が低下する可能性がある。本明細書において、上記樹脂層とは、樹脂層の表面からめっき層との界面までの領域を意味し、後述する樹脂層に由来する樹脂がめっき層内部の空隙を占める領域は含まない。したがって、上記樹脂層の平均厚さは、樹脂層の表面からめっき層との界面まで厚さ方向に測定された厚さの平均値を意味する。
【0034】
また、特に限定するものではないが、本発明の一側面によれば、上記めっき層の表面から、めっき層の内部に含まれ、素地鉄側に最も近く存在する空隙までの深さ(Tp)が上記めっき層の全厚さの10~90%であってもよい。上記Tpの値が10%未満であると、めっき層の内部に空隙が全般的に形成されず、空隙による接合力向上の効果が不十分となる可能性があるだけでなく、加工時に剥離現象が発生するおそれがある。また、上記Tpの値が90%を超えると、空隙が過剰に形成されるため、素地鉄にまで空隙が形成され、めっき層と素地鉄との密着性が低下することがあり、最終的に、鋼板と樹脂層との加工時の接着力が低下する可能性がある。一方、上述の効果をより改善する観点から、上記Tp値の下限は20%であってもよく、あるいは上記Tp値の上限は85%であってもよい。
【0035】
このとき、上記Tpの値は、複合鋼板に対する厚さ方向への断面を基準として、めっき層の表面から素地鉄側に最も近く存在する空隙に対する厚さ方向への最短距離を測定することで求めることができる。具体的には、複合鋼板の厚さ方向の断面が観察されるように走査電子顕微鏡(SEM)、TEM、FIB等で撮影して求めることができる。
【0036】
また、本発明の一側面によれば、めっき層の断面(厚さ方向への切断面を意味する)の単位面積9μm2に含まれる直径10nm以上の空隙の個数(Np)は5~30個であってもよい。本発明者らは、さらに鋭意検討を行った結果、めっき層内に存在する空隙の密度も、上述した樹脂層との密着性をより改善するとともに、耐食性を確保するうえで重要な要素であることを見出した。
【0037】
すなわち、上記Npの値が5個未満であると、単位面積当たりの空隙の個数が不足するため、樹脂層とめっき層間の接合力が不十分となるおそれがある。また、上記Npの値が30個を超えると、単位面積当たりの空隙の個数が過剰になるため、めっき層の耐食性が低下するおそれがある。さらに、空隙が多くなり過ぎて、めっき層が素地鉄に堅固に密着されず、素地鉄からめっき層の密着性が低下する可能性がある。これにより、結果的には、樹脂層(プラスチック層)との接合力も低下するようになる。本発明は、樹脂層とめっき層との間の密着性だけでなく、1次的には、素地鉄とめっき層との間の密着性の確保も重要な要素である。すなわち、本発明において、めっき層に空隙が過剰に形成されると、素地鉄とめっき層間の接着力も低下するため、本発明では、めっき層における空隙の個数を適正範囲に制御することにより、素地鉄上に設けられるめっき層に空隙を形成した後、このような空隙の間に樹脂を注入することによって連結効果(interlocking effect)を誘導し、物理的に接合力を確保する。一方、上述した効果をより改善する観点から、上記Npの値の下限は13であってもよく、あるいは上記Npの値の上限は27であってもよい。
【0038】
また、本発明の一側面によれば、上記めっき層の断面(厚さ方向への断面を意味する)の全面積に対する直径10nm以上の空隙の面積分率(Ap)は、10~80%であってもよい。上記Apの値が10%未満であると、十分な空隙を確保できず、連結効果(interlocking effect)が不十分となる可能性がある。また、上記Apの値が80%を超えると、逆に空隙が過剰になるため、めっき層の緻密度が低下し、樹脂層の接合後の接合強度が低下するおそれがある。一方、上述の効果をより改善する観点から、上記Apの値の下限は34%であってもよく、あるいは上記Apの値の上限は75%であってもよい。
【0039】
このとき、上記Apの値は、めっき層の厚さ方向の断面が観察されるように走査電子顕微鏡(SEM)を用いて測定することができる。但し、上記Apの値において、空隙の面積はめっき層の内部に存在する空隙自体の全ての面積を測定すればよく、後述する樹脂層から由来する樹脂が空隙を占める面積を除外するものではない。
【0040】
また、本発明の一側面によれば、上記めっき層の内部に含まれる空隙の全面積のうち、上記空隙を樹脂層に由来する樹脂が占める面積の分率(Vp)は20~90%であってよく、上記Vpの値はSEM断面分析によって測定することができる。
【0041】
上記Vpの値が20%未満であると、連結効果(interlocking effect)が不十分であり、接合力が多少低下する可能性がある。また、上記Vpの値が90%を超えると、サンドイッチ型鋼板での使用時、コア(core)層としての樹脂層(プラスチック層)が十分な厚さの層を形成することができない。
【0042】
すなわち、本発明者らは、本発明の効果をより改善するために鋭意検討を行った結果、上記Vpの値が上述の数値範囲を満たすように制御することにより、めっき層内部の空隙に樹脂層が浸透して発揮されるめっき層と樹脂層との間の連結効果(interlocking effect)を極大化できるだけでなく、接合される対象間の界面を最小化することで、加工時に接合部の剥離現象を低減できる効果も確認した。また、空隙の内部を樹脂層が適正範囲に占めることにより、空隙が空き空間として存在する場合に比べて耐食性減少の問題を減少できることにより、優れた樹脂層の密着性及びめっき層の耐食性を同時に確保する効果もある。一方、上述した効果をより改善する観点から、上記Vpの値の下限は48%であってもよく、あるいは上記Vpの値の上限は86%であってもよい。
【0043】
本発明によれば、上述の構成を満たすことで、めっき鋼板として薄型の高強度鋼板を使用しながらも、デント抵抗性を付与し、優れた価格競争力の確保が可能である。鋼板と樹脂層(プラスチック層)をラミネートした構造により、薄型鋼板の使用による外板剛性を補完し、軽量化が可能である。また、薄型の高強度鋼板とプラスチック層とをラミネートすることにより、加工過程で発生する微細シワ又はスプリングバックなどの現象も防止することができる。
【0044】
一方、本発明の一側面によれば、上記素地鉄としては、アルミニウム系めっき又は亜鉛系めっきが可能な鋼材であれば、特に制限なく適用可能である。
【0045】
また、上記めっき層としては、アルミニウム系めっき層又は亜鉛系めっき層であることが好ましく、このとき、上記アルミニウム系めっき層としては、アルミニウムめっき層又はアルミニウム合金めっき層を全て含み、上記亜鉛系めっき層は、亜鉛めっき層又は亜鉛合金めっき層を全て含む。上記めっき層の組成を特に限定するものではないが、代表的な一例として、上記アルミニウム系めっき層としてはAlを過剰量(すなわち、50重量%以上)含み、発明の目的を損なわない範囲内でめっき層の物性をより改善するために、Zn、Mg、Si、Sn、Pb、Fe等の合金元素のうち1種以上を含むことができる。同様に、上記亜鉛系めっき層としては、Znを過剰量(すなわち、50重量%以上)含み、発明の目的を損なわない範囲内でめっき層の物性をより改善するために、Al、Mg、Si、Sn、Pb、Fe等の合金元素のうち1種以上を含むことができる。
【0046】
次に、上記樹脂層は、上記めっき層が上記素地鉄と接する面の反対面(すなわち、上記めっき層が上記素地鉄と接する面に対向する面)上に設けることができる。本発明において、上記樹脂層は、樹脂を99%以上(残部不純物)含む層であって、より好ましくは、不可避不純物を除いて樹脂100%からなる層をいう。
【0047】
一方、上記樹脂層はエンジニアリングプラスチックで形成される。エンジニアリングプラスチックとは、工業材料・構造材料として使用される強度の高いプラスチックを総称する意味である。エンジニアリングプラスチックは、分子量が数十万~数百万の範囲の高分子物質であるという点で、数十~数百程度の低分子物質である従来のプラスチックとは区別される概念である。
【0048】
エンジニアリングプラスチックの性能と特徴は、その化学構造によって異なるが、主に、ポリアミド、ポリアセチル、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリブチレンテレフタレートなどがあり、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、あるいはポリウレタンなども含まれる。例えば、上記ポリアミド樹脂は、表面硬度、曲げ強度及び耐アルカリ性に優れ、ナイロン6又はナイロン66等が知られている。また、炭素繊維複合材料又はガラス繊維複合材料も使用することができる。
【0049】
また、発明の一側面による複合鋼板は、鋼板の一面、あるいは鋼板と鋼板との間に樹脂層(プラスチック層)をラミネートすることにより、素材の軽量化が可能である。例えば、上記樹脂層と上記樹脂層にラミネートされた鋼板の厚さ比率は、3:1~1:5の範囲、あるいは2:1~1:2の範囲であってもよい。鋼板と樹脂層の厚さを上記範囲に制御することにより、複合素材の剛性と軽量化を同時に実現することができる。
【0050】
代表的な複合鋼板の構造を
図1に模式的に示す。具体的に、上記複合鋼板は、上記樹脂層上に追加のめっき鋼板を備えることができ、言い換えれば、上記樹脂層が上記めっき層と接する面の反対面上に、追加のめっき鋼板を備えることにより、サンドイッチ型構造を有する複合鋼板とすることができる。
【0051】
したがって、上記複合鋼板は、
図4に示すように、めっき鋼板1、2/樹脂層3(すなわち、素地鉄1/めっき層2/樹脂層3)の積層構造を有することもできる。または、
図5に示すように、第1めっき鋼板1、2/樹脂層3/第2めっき鋼板4、5(すなわち、第1素地鉄1/第1めっき層2/樹脂層3/第2めっき層4/第2素地鉄5)のサンドイッチ型積層構造を有することもできる。このとき、上記追加のめっき鋼板は、後述するめっき鋼板と同じ性質を有することができる(すなわち、第1素地鉄と、上記第1素地鉄上の少なくとも一面に設けられた第1めっき層と、上記第1めっき層上に設けられた樹脂層と、上記樹脂層上に設けられた第2めっき層と、上記第2めっき層上に設けられた第2素地鉄と、を含み、上記第1めっき層の樹脂側表面に対する表面粗さRa1は0.5~1.5μmであり、上記第2めっき層の樹脂側表面に対する表面粗さRa2は0.5~1.5μmであり、上記第1めっき層及び第2めっき層は内部に空隙が存在し、上記空隙の平均直径は10nm~3μmとすることができる)。
【0052】
[複合鋼板の製造方法]
以下では、本発明のさらに他の一側面である複合鋼板の製造方法について説明する。但し、本発明のめっき鋼板は、必ずしも以下の製造方法により製造されるべきであることを意味するものではないことに留意する必要がある。
【0053】
まず、素地鉄の少なくとも一面にめっき層を形成してめっき鋼板を得る。このとき、上記めっき層の形成方法については、当該技術分野において通常知られている方法を本発明にも制限なく適用可能である。よって、本明細書では、これを別途限定せず、例えば、溶融めっき、電気めっき、蒸着めっき等の方法を全て適用することができる。
【0054】
次いで、上記めっき鋼板に、後述する条件で電解エッチング処理を施す。このとき、電気化学的エッチング方法は当技術分野において知られている方法を同様に適用することができる。例えば、陽極(Anode)に亜鉛を、陰極(Cathode)にアルミニウム板を設置して電解液に浸漬しておく。電気を加えると、陽極にある亜鉛はZnOとなり、酸溶液によって溶解しながら構造物が形成される。表面は、反応後に、酸化亜鉛に性質が変化した部分と、そのまま残っている亜鉛層とからなっている。表面構造が形成されるメカニズムはまだ明らかにされていないが、電解液、エッチング電圧、エッチング時間が表面構造の形成に影響を及ぼすものと判断される。一般に、亜鉛は酸と塩基によってエッチングされ、電解液の濃度が高くなるほど、エッチング電圧と時間が増加するにつれて表面のエッチングの程度が強化される。
【0055】
一方、上記電解エッチングの際には、HCl及びNaClからなる群から選択された1種以上を含む第1次電解液を用いて、1次電解エッチング処理を行う。このとき、上記1次電解エッチング処理は電圧1~10Vで行うことができ、上記1次電解液においてHCl及びNaClからなる群から選択された1種以上の物質の濃度は0.1~1.5重量%の範囲とすることができる。上記条件を満たすように1次電解エッチング処理を行うことにより、1次的にめっき鋼板の表面に空隙を形成することができる。また、上記1次電解エッチング処理の時間は1~20秒間とすることができる。
【0056】
上記1次電解エッチング処理されためっき鋼板に、HNO3、NaOH、H3PO4、H2SO4、Na2SO4及びNaH2PO4からなる群から選択された1種以上を含む第2次電解液を用いて、2次電解エッチング処理を行う。このとき、上記2次電解エッチング処理は、1~10Vの電圧で1秒~20分間行うことができ、上記2次電解液においてHNO3、NaOH、H3PO4、H2SO4、Na2SO4及びNaH2PO4からなる群から選択された1種以上の物質の濃度は0.01~1.5Mの範囲とすることができる。上記条件を満たすように2次電解エッチング処理を行うことにより、めっき鋼板の表面だけでなく、めっき層の(厚さ方向)内部領域にも空隙を形成することができ、これにより本発明で目的とする効果の達成が可能となる。
【0057】
すなわち、本発明によれば、樹脂層(あるいは、プラスチック層)を形成する前に、厳しい条件で制御した2段階の電解エッチング処理をめっき鋼板に行うことにより、めっき層の表面に微細な凹凸構造を形成するとともに、めっき層の内部にも微細な空隙を多数形成することができ、これにより、本発明で目的とする優れた密着性及び加工性等の効果を発揮することができる。
【0058】
次に、上記2次電解エッチング処理されためっき鋼板上に、高分子シートを熱融着することにより、めっき鋼板上に樹脂層が形成された複合鋼板を得ることができる。このとき、上記熱融着工程は150~230℃の温度範囲で行うことができる。上記熱融着工程の温度が150℃未満であると、樹脂が空隙の間に浸透できず、十分な接着力を確保できなくなるおそれがある。また、上記熱融着工程の温度が230℃を超えると、樹脂が全て溶けて空隙に一部浸透した後、鋼板の間の層を形成できず、鋼板の横に流れ出るおそれがある。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を通じて本発明についてより具体的に説明する。但し、下記の実施例は、例示を通じて本発明を説明するためのものであり、本発明の権利範囲を制限するものではないことに留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項及びこれにより合理的に類推される事項によって決定されるものである。
【0060】
(実験例1)
重量%で、溶融亜鉛鋼板を準備した後、超音波洗浄機内に入っているアセトンとメタノールの混合溶液で20分間洗浄した。次いで、蒸留水でリンスした後、圧縮空気により水気を除去し、鋼板の角を絶縁テープを用いてマスキングした。
【0061】
次に、下記表1の電解液に亜鉛めっき鋼板とアルミニウム板を浸漬した。陽極(アノード)に亜鉛めっき鋼板を、陰極(カソード)にはアルミニウム板を約5cm離隔してセットし、1次電解エッチングを行った後、下記表1に記載の条件で2次電解エッチングを行った。このようにエッチングされた試験片を蒸留水でリンスした後、テープを除去し、圧縮空気を用いて水気を除去してから60℃程度の乾燥オーブン内で湿気を除去した。
【0062】
次いで、電解エッチング処理されためっき鋼板の表面にPA6の樹脂シートを180℃の条件で熱融着処理して複合鋼板を得た。このようにして得られた複合鋼板に対して、下記表2に記載の特性を評価して示した。このとき、下記Raは鋼板のエッチング直後に3次元表面粗さ測定装置を用いて測定した。また、複合鋼板を厚さ方向(圧延方向と垂直な方向)に切った断面試験片を作製し、上記断面試験片を走査電子顕微鏡(SEM)で観察することにより、下記めっき層内部の空隙の平均直径を、明細書で上述した方法と同様にして測定し、めっき層の平均厚さ及びTpの値(平均に該当)を測定した。
【0063】
【0064】
【表2】
Ra*:めっき層と樹脂層との間の界面粗さ
Tp*:めっき層の全厚さに対する、めっき層の表面からめっき層の内部に含まれ、且つ素地鉄側に最も近く存在する空隙までの深さの比率[%]
【0065】
各発明例及び比較例から得られた複合鋼板について、下記のような基準で各特性を評価した。
【0066】
<密着性>
密着性は、通常の重ね剪断実験(Lap.shear test、ASTM D 1002)により接合強度を測定し、下記の基準に従って評価した。
◎:15MPa以上
○:10MPa以上14MPa未満
△:5MPa以上9MPa未満
×:5MPa未満
【0067】
<溶接性>
溶接性を評価するために、ISO18278-2、F1-6mm、2.1kN、140msW/T、140msH/Tの方法で測定し、下記の基準に従って評価した。
◎:100%通電(溶接強度を確保)
○:90%通電(溶接強度を確保)
△:50%通電(溶接強度を未確保)
×:溶接強度の測定が不可能(溶接不可能)
【0068】
<加工性>
エリクソン評価(パンチストロークを6mmの高さまで一定の力で押し上げながら素材が破れず持ち堪えるかを確認)、及びバイス(VISE)を用いて180°曲げ加工した後、プラスチックと鋼板が剥離するか否かを確認した。
◎:100%剥離なし
○:90%以上剥離なし(微細剥離)
△:50%以上剥離
×:100%界面剥離
【0069】
【0070】
本発明で規定する複合鋼板の条件を全て満たす発明例1~3の場合、耐食性に優れるとともに、密着性、溶接性及び加工性にいずれも優れていることを確認した。
【0071】
一方、本発明で規定する電解エッチング処理の条件を満たさず、一段階で電解エッチング処理を行う比較例1及びプラズマ処理を行う比較例2の場合、Raとめっき層の内部の空隙の平均直径のうち一つ以上の特性を満たしていない。これにより、比較例1及び2では、耐食性が確保されても、密着性、溶接性、加工性のうち一つ以上の特性が劣ることを確認した。
【0072】
特に、
図3には、無処理素材の場合、接着剤を使用した場合(比較例3に該当)、本発明に該当する場合における接合力(接合強度)を比較して示した。
図3からも分かるように、本発明によれば、めっき層に形成された空隙と樹脂層との間の連結効果(interlocking effect)により接合力に最も優れることを確認した。
【0073】
(実験例2)
下記表4のように条件を変更した以外は、上述した実験例1と同様の方法で複合鋼板を製造した。このようにして得られた各複合鋼板について、表2と同様の方法で測定した値を下記表5に示し、同じ基準で評価した結果を下記表6に示した。なお、複合鋼板について下記表5の値を測定して示した。具体的に、実験例1と同様に厚さ方向への断面試験片を製造した後、SEMで撮影し、明細書で上述した方法と同様にしてNp、Ap、Vpの値を測定した。
【0074】
【0075】
【表5】
Np*:めっき層の断面の単位面積9μm
2に含まれる、直径が10nm以上の空隙の個数[個/μm
2]
Ap*:めっき層の断面の全面積に対する直径10nm以上の空隙の面積分率[%]
Vp*:上記めっき層の内部に含まれる空隙の全面積のうち、上記空隙を樹脂層が占める面積分率[%]
【0076】
【0077】
本発明で規定する複合鋼板の条件を全て満たす発明例4~6の場合、耐食性に優れるとともに、密着性、溶接性及び成形性のいずれにも優れることを確認した。
【0078】
一方、本発明で規定する電解エッチング処理の条件を満たさない比較例4~6の場合、めっき層の内部の空隙の平均直径のうち1つ以上の特性を満たしておらず、これにより、密着性、溶接性、成形性のうち1つ以上の特性が低下することを確認した。
【国際調査報告】