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特表2024-500734オレフィン系重合体およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】オレフィン系重合体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/00 20060101AFI20231227BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C08F10/00
C08F4/6592
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536578
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 KR2021018720
(87)【国際公開番号】W WO2022131690
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0177009
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】キム スン ドン
(72)【発明者】
【氏名】イ ムンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ウィ ガプ
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ソ ジュンホ
(72)【発明者】
【氏名】リム ソンジェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョ ジソン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒェ ラン
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA02P
4J100AA16Q
4J100CA04
4J100DA11
4J100DA42
4J100DA43
4J100FA10
4J128AA02
4J128AB00
4J128AC28
4J128AD05
4J128AD11
4J128BC12B
4J128BC15B
4J128BC25B
4J128EB02
4J128EB09
4J128EC02
4J128GA05
4J128GA06
4J128GA07
4J128GA08
4J128GA26
4J128GB01
(57)【要約】
本発明は、オレフィン系重合体およびその製造方法に関する。本発明の実施態様によるオレフィン系重合体は、分子量分布が広くて加工性に優れ、高分子量成分に短鎖分岐が相対的に多く存在することから、機械的強度およびヒートシール特性に優れる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)密度が、0.915~0.935g/cm;(2)190℃で、21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(melt flow ratio;MFR)が、15以上;(3)下記の数学式1で定義される共単量体分布勾配(comonomer distribution slope;CDS)が、1.0以上である、オレフィン系重合体。
【数1】
ここで、C20とC80は、共単量体分布で、累積質量分率(cumulative weight fraction)がそれぞれ20%と80%である地点での共単量体の含量であり、M20とM80は、共単量体分布で、累積質量分率がそれぞれ20%と80%である地点での分子量である。
【請求項2】
(1)オレフィン系重合体の密度が0.918~0.932g/cm;(2)MFRが15~40;および(3)CDSが1.0~3.0である、請求項1に記載のオレフィン系重合体。
【請求項3】
下記の化学式1で表される少なくとも1種の第1遷移金属化合物と、下記の化学式2で表される少なくとも1種の第2遷移金属化合物とを含む混成触媒の存在下で、オレフィン系単量体を重合して製造される、請求項1に記載のオレフィン系重合体。
【化1】
前記化学式中、nは、それぞれ独立して、1~20の整数であり、
Mは、それぞれ独立して、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)であり、
Xは、それぞれ独立して、ハロゲン、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C6-20アリール、C1-20アルキルC6-20アリール、C6-20アリールC1-20アルキル、C1-20アルキルアミドまたはC6-20アリールアミドであり、
~Rは、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC1-20アルキル、置換または非置換のC2-20アルケニル、置換または非置換のC6-20アリール、置換または非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換または非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換または非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換または非置換のC3-20ヘテロアリール、置換または非置換のC1-20アルキルアミド、置換または非置換のC6-20アリールアミド、置換または非置換のC1-20アルキリデン、または置換または非置換のC1-20シリルであり、
~R11とR12~R14は、それぞれ独立して、置換または非置換のC1-20アルキル、置換または非置換のC2-20アルケニル、置換または非置換のC6-20アリール、置換または非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換または非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換または非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換または非置換のC3-20ヘテロアリール、置換または非置換のC1-20アルキルアミド、置換または非置換のC6-20アリールアミド、置換または非置換のC1-20アルキリデン、または置換または非置換のC1-20シリルであり、
~Rは、それぞれ独立して、隣接した基が連結されて置換または非置換の飽和または不飽和C4-20環を形成してもよい。
【請求項4】
Mは、それぞれ、ジルコニウムまたはハフニウムであり、Xは、それぞれ、ハロゲンまたはC1-20アルキルであり、R~Rは、それぞれ、水素、置換または非置換のC1-20アルキル、置換または非置換のC1-20アルケニル、または置換または非置換のC6-20アリールであり、R~R11とR12~R14は、それぞれ、置換または非置換のC1-20アルキルである、請求項3に記載のオレフィン系重合体。
【請求項5】
第1遷移金属化合物が、下記の化学式1-1~1-3で表される遷移金属化合物のうち少なくとも一つであり、第2遷移金属化合物が、下記の化学式2-1で表される遷移金属化合物である、請求項3に記載のオレフィン系重合体。
【化2】
前記化学式中、Meは、メチル基である。
【請求項6】
第1遷移金属化合物に対する第2遷移金属化合物のモル比が、100:1~1:100の範囲である、請求項3に記載のオレフィン系重合体。
【請求項7】
触媒が、下記の化学式3で表される化合物、化学式4で表される化合物および化学式5で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の助触媒化合物を含む、請求項3に記載のオレフィン系重合体。
【化3】
[化学式5]
[L-H][Z(A)または[L][Z(A)
前記化学式3中、nは、2以上の整数であり、Rは、ハロゲン原子、C1-20炭化水素基またはハロゲンで置換されたC1-20炭化水素基であり、
前記化学式4中、Dは、アルミニウム(Al)またはホウ素(B)であり、R、RおよびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、C1-20炭化水素基、ハロゲンで置換されたC1-20炭化水素基またはC1-20アルコキシ基であり、
前記化学式5中、Lは、中性またはカチオン性ルイス塩基であり、[L-H]および[L]は、ブレンステッド酸であり、Zは、第13族元素であり、Aは、それぞれ独立して、置換または非置換のC6-20アリール基であるか、置換または非置換のC1-20アルキル基である。
【請求項8】
触媒が、遷移金属化合物、助触媒化合物または両方を担持する担体をさらに含む、請求項7に記載のオレフィン系重合体。
【請求項9】
担体が、シリカ、アルミナおよびマグネシアからなる群から選択される少なくとも一つを含む、請求項8に記載のオレフィン系重合体。
【請求項10】
担体に担持される混成遷移金属化合物の総量が、担体1gに対して0.001~1mmoleであり、担体に担持される助触媒化合物の総量が、担体1gに対して2~15mmoleである、請求項8に記載のオレフィン系重合体。
【請求項11】
オレフィン系重合体が、オレフィン系単量体とオレフィン系共単量体の共重合体である、請求項1に記載のオレフィン系重合体。
【請求項12】
オレフィン系単量体が、エチレンであり、オレフィン系共単量体が、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセンおよび1-ヘキサデセンからなる群から選択される一つ以上である、請求項11に記載のオレフィン系重合体。
【請求項13】
オレフィン系重合体が、オレフィン系単量体がエチレンであり、オレフィン系共単量体が1-ヘキセンである直鎖状低密度ポリエチレンである、請求項12に記載のオレフィン系重合体。
【請求項14】
下記の化学式1で表される少なくとも1種の第1遷移金属化合物;および下記の化学式2で表される少なくとも1種の第2遷移金属化合物を含む混成触媒の存在下で、オレフィン系単量体を重合してオレフィン系重合体を得るステップを含み、オレフィン系重合体の(1)密度が、0.915~0.935g/cm;(2)190℃で、21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(melt flow ratio;MFR)が、15以上;(3)下記の数学式1で定義される共単量体分布勾配(comonomer distribution slope;CDS)が、1.0以上である、オレフィン系重合体の製造方法。
【化4】
【数2】
前記化学式中、n、M、X、R~RおよびR~R14は、請求項3で定義したとおりであり、前記の数学式1のC20、C80、M20およびM80は、請求項1で定義したとおりである。
【請求項15】
オレフィン系単量体の重合が、スラリー重合により行われる、請求項14に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系重合体およびその製造方法に関する。具体的には、本発明は、機械的強度に優れるオレフィン系重合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィンを重合するために用いられる触媒の一つであるメタロセン触媒は、遷移金属または遷移金属ハロゲン化合物にシクロペンタジエニル(cyclopentadienyl)、インデニル(indenyl)、シクロヘプタジエニル(cycloheptadienyl)などのリガンドが配位結合した化合物であって、サンドイッチ構造を基本的な形態として有する。
【0003】
オレフィンを重合するために使用される他の触媒であるチーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒が活性点である金属成分が不活性である固体の表面に分散して活性点の性質が均一でないのに対し、メタロセン触媒は、一定の構造を有する一つの化合物であることから、すべての活性点が同一である重合特性を有する単一活性点触媒(single-site catalyst)として知られている。このようなメタロセン触媒で重合された高分子は、分子量分布が狭く、共単量体の分布が均一であり、チーグラー・ナッタ触媒に比べて共重合活性度が高い。
【0004】
一方、直鎖状低密度ポリエチレン(linear low-density polyethylene;LLDPE)は、重合触媒を使用して、低圧でエチレンとアルファ-オレフィンを共重合して製造され、分子量分布が狭く、一定の長さの短鎖分岐(short chain branch;SCB)を有し、一般的に、長鎖分岐(long chain branch;LCB)を有していない。直鎖状低密度ポリエチレンで製造されたフィルムは、一般のポリエチレンの特性に加え、破断強度と伸び率が高く、引裂強度、衝撃強度などに優れ、既存の低密度ポリエチレン(low-density polyethylene)や高密度ポリエチレン(high-density polyethylene)の適用が難しいストレッチフィルム、オーバーラップフィルムなどに広く使用されている。
【0005】
しかし、メタロセン触媒によって製造される直鎖状低密度ポリエチレンは、狭い分子量分布によって加工性が劣り、これより製造されるフィルムは、ヒートシール特性が低下する傾向がある。
【0006】
したがって、加工性に優れ、且つ機械的強度とヒートシール特性に優れるフィルムを製造することができるオレフィン系重合体が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、加工性に優れ、且つ機械的強度とヒートシール特性に優れるオレフィン系重合体フィルムを製造することができるオレフィン系重合体を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、上記のオレフィン系重合体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施態様によって、(1)密度が、0.915~0.935g/cm、好ましくは0.918~0.932g/cm;(2)190℃で、21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(melt flow ratio;MFR)が、15以上、好ましくは15~40;(3)下記の数学式1で定義される共単量体分布勾配(comonomer distribution slope;CDS)が、1.0以上、好ましくは1.0~3.0であるオレフィン系重合体が提供される。
【数1】
ここで、C20とC80は、共単量体分布で、累積質量分率(cumulative weight fraction)がそれぞれ20%と80%である地点での共単量体の含量であり、M20とM80は、共単量体分布で、累積質量分率がそれぞれ20%と80%である地点での分子量である。
【0010】
本発明の具体例において、前記のオレフィン系重合体は、下記の化学式1で表される少なくとも1種の第1遷移金属化合物と、下記の化学式2で表される少なくとも1種の第2遷移金属化合物とを含む混成触媒の存在下で、オレフィン系単量体を重合して製造されることができる。
【化1】
前記化学式中、nは、それぞれ独立して、1~20の整数であり、
Mは、それぞれ独立して、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)であり、
Xは、それぞれ独立して、ハロゲン、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C6-20アリール、C1-20アルキルC6-20アリール、C6-20アリールC1-20アルキル、C1-20アルキルアミドまたはC6-20アリールアミドであり、
~Rは、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC1-20アルキル、置換または非置換のC2-20アルケニル、置換または非置換のC6-20アリール、置換または非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換または非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換または非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換または非置換のC3-20ヘテロアリール、置換または非置換のC1-20アルキルアミド、置換または非置換のC6-20アリールアミド、置換または非置換のC1-20アルキリデン、または置換または非置換のC1-20シリルであり、
~R11とR12~R14は、それぞれ独立して、置換または非置換のC1-20アルキル、置換または非置換のC2-20アルケニル、置換または非置換のC6-20アリール、置換または非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換または非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換または非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換または非置換のC3-20ヘテロアリール、置換または非置換のC1-20アルキルアミド、置換または非置換のC6-20アリールアミド、置換または非置換のC1-20アルキリデン、または置換または非置換のC1-20シリルであり、
~Rは、それぞれ独立して、隣接した基が連結されて置換または非置換の飽和または不飽和C4-20環を形成してもよい。
【0011】
本発明の具体例において、Mは、それぞれ、ジルコニウムまたはハフニウムであり、Xは、それぞれ、ハロゲンまたはC1-20アルキルであり、R~Rは、それぞれ、水素、置換または非置換のC1-20アルキル、置換または非置換のC1-20アルケニル、または置換または非置換のC6-20アリールであり、R~R11とR12~R14は、それぞれ、置換または非置換のC1-20アルキルであることができる。
【0012】
本発明の好ましい具体例において、第1遷移金属化合物が、下記の化学式1-1~1-3で表される遷移金属化合物のうち少なくとも一つであり、第2遷移金属化合物が、下記の化学式2-1で表される遷移金属化合物であることができる。
【化2】
前記化学式中、Meは、メチル基である。
【0013】
本発明の具体例において、第1遷移金属化合物に対する第2遷移金属化合物のモル比が100:1~1:100の範囲である。
【0014】
本発明の具体例において、前記の触媒が下記の化学式3で表される化合物、化学式4で表される化合物および化学式5で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の助触媒を含むことができる。
【化3】
[化学式5]
[L-H][Z(A)または[L][Z(A)
前記化学式3中、nは、2以上の整数であり、Rは、ハロゲン原子、C1-20炭化水素基またはハロゲンで置換されたC1-20炭化水素基であり、
前記化学式4中、Dは、アルミニウム(Al)またはホウ素(B)であり、R、RおよびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、C1-20炭化水素基、ハロゲンで置換されたC1-20炭化水素基またはC1-20アルコキシ基であり、
前記化学式5中、Lは、中性またはカチオン性ルイス塩基であり、[L-H]および[L]は、ブレンステッド酸であり、Zは、第13族元素であり、Aは、それぞれ独立して、置換または非置換のC6-20アリール基であるか、置換または非置換のC1-20アルキル基である。
【0015】
本発明の具体例において、前記の触媒が遷移金属化合物、助触媒化合物または両方を担持する担体をさらに含むことができる。
【0016】
本発明の好ましい具体例において、前記の担体は、シリカ、アルミナおよびマグネシアからなる群から選択される少なくとも一つを含むことができる。
【0017】
ここで、担体に担持される混成遷移金属化合物の総量が、担体1gに対して0.001~1mmoleであり、担体に担持される助触媒化合物の総量が、担体1gに対して2~15mmoleである。
【0018】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体が、オレフィン系単量体とオレフィン系共単量体の共重合体である。具体的には、オレフィン系単量体が、エチレンであり、オレフィン系共単量体が、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセンおよび1-ヘキサデセンからなる群から選択される少なくとも一つであることができる。好ましくは、オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体がエチレンであり、オレフィン系共単量体が1-ヘキセンである直鎖状低密度ポリエチレンである。
【0019】
本発明の一実施態様によって、前記の化学式1で表される少なくとも1種の第1遷移金属化合物と、前記の化学式2で表される少なくとも1種の第2遷移金属化合物とを含む混成触媒の存在下で、オレフィン系単量体を重合してオレフィン系重合体を得るステップを含み、オレフィン系重合体の(1)密度が、0.915~0.935g/cm、好ましくは0.918~0.932g/cm;(2)190℃で、21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(melt flow ratio;MFR)が、15以上、好ましくは15~40;(3)前記数学式1で定義される共単量体分布勾配(comonomer distribution slope;CDS)が、1.0以上、好ましくは1.0~3.0である、オレフィン系重合体の製造方法が提供される。
【0020】
本発明の具体例において、オレフィン系単量体の重合が、スラリー重合で行われることができ、具体的には、オレフィン系単量体の重合が、スラリーバッチ反応器内で行われることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施態様によるオレフィン系重合体は、分子量分布が広くて加工性に優れ、高分子量成分に短鎖分岐が相対的に多く存在することから、機械的強度およびヒートシール特性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】数学式1で定義されるCDSの測定方法を説明するためのGPC-FTIRグラフである。
図2】実施例1のオレフィン系重合体のCDS測定のためのGPC-FTIRグラフである。
図3】実施例2のオレフィン系重合体のCDS測定のためのGPC-FTIRグラフである。
図4】実施例3のオレフィン系重合体のCDS測定のためのGPC-FTIRグラフである。
図5】実施例4のオレフィン系重合体のCDS測定のためのGPC-FTIRグラフである。
図6】実施例5のオレフィン系重合体のCDS測定のためのGPC-FTIRグラフである。
図7】実施例6のオレフィン系重合体のCDS測定のためのGPC-FTIRグラフである。
図8】実施例7のオレフィン系重合体のCDS測定のためのGPC-FTIRグラフである。
図9】実施例8のオレフィン系重合体のCDS測定のためのGPC-FTIRグラフである。
図10】比較例1のオレフィン系重合体のCDS測定のためのGPC-FTIRグラフである。
図11】比較例2のオレフィン系重合体のCDS測定のためのGPC-FTIRグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0024】
オレフィン系重合体
本発明の一実施態様によって、(1)密度が、0.915~0.935g/cm;(2)190℃で、21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(melt flow ratio;MFR)が、15以上;(3)下記の数学式1で定義される共単量体分布勾配(comonomer distribution slope;CDS)が、1.0以上であるオレフィン系重合体が提供される。
【0025】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体は、密度が0.915~0.935g/cmである。好ましくは、オレフィン系重合体の密度が0.918~0.932g/cmであることができる。
【0026】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体は、190℃で、21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(melt flow ratio;MFR)が15以上である。好ましくは、オレフィン系重合体のMFRが15~40であることができる。
【0027】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体は、下記の数学式1で定義される共単量体分布勾配(comonomer distribution slope;CDS)が、1.0以上である。好ましくは、オレフィン系重合体のCDSが1.0~3.0であることができる。
【0028】
【数2】
【0029】
前記数学式1中、C20とC80は、共単量体分布で、累積質量分率(cumulative weight fraction)がそれぞれ20%と80%である地点での共単量体の含量であり、M20とM80は、共単量体分布で、累積質量分率がそれぞれ20%と80%である地点での分子量である。
【0030】
オレフィン系重合体のCDSは、共単量体分布グラフで、累積質量分率がそれぞれ20%と80%である地点での分子量に対する共単量体の含量の勾配を示す。オレフィン系重合体のCDSが大きいほど、分子量が大きい高分子鎖に共重合体が集中し、優れた機械的強度とヒートシール特性を有することができる。
【0031】
ここで、オレフィン系重合体の共単量体分布は、GPC-FTIR装備を用いて、重合体の分子量、分子量分布とともに連続して測定することができる。
【0032】
本発明の実施態様によるオレフィン系重合体は、比較的広い分子量分布を有し、高分子量成分に短鎖分岐が相対的に多く存在することから、これより製造されるオレフィン系重合体フィルムの機械的強度とヒートシール特性に優れると理解される。
【0033】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体は、下記の化学式1で表される少なくとも1種の第1遷移金属化合物と、下記の化学式2で表される少なくとも1種の第2遷移金属化合物とを含む混成触媒の存在下で、オレフィン系単量体を重合して製造されることができる。
【0034】
【化4】
【0035】
前記化学式中、nは、それぞれ独立して、1~20の整数、好ましくは1~10の整数、より好ましくは1~5の整数である。具体的には、nは、それぞれ、1または2であることができる。
【0036】
Mは、それぞれ独立して、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)である。具体的には、Mは、それぞれ、ジルコニウムまたはハフニウムであることができる。
【0037】
Xは、それぞれ独立して、ハロゲン、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C6-20アリール、C1-20アルキルC6-20アリール、C6-20アリールC1-20アルキル、C1-20アルキルアミドまたはC6-20アリールアミドである。具体的には、Xは、それぞれ、ハロゲンまたはC1-20アルキルであることができる。好ましくは、Xが塩素またはメチルであることができる。
【0038】
~Rは、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC1-20アルキル、置換または非置換のC2-20アルケニル、置換または非置換のC6-20アリール、置換または非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換または非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換または非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換または非置換のC3-20ヘテロアリール、置換または非置換のC1-20アルキルアミド、置換または非置換のC6-20アリールアミド、置換または非置換のC1-20アルキリデン、または置換または非置換のC1-20シリルであり、ここで、R~Rは、それぞれ独立して、隣接した基が連結され、置換または非置換の飽和または不飽和C4-20環を形成してもよい。具体的には、R~Rが、それぞれ、水素、置換または非置換のC1-20アルキル、置換または非置換のC1-20アルケニル、または置換または非置換のC6-20アリールであることができる。
【0039】
~R11とR12~R14は、それぞれ独立して、置換または非置換のC1-20アルキル、置換または非置換のC2-20アルケニル、置換または非置換のC6-20アリール、置換または非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換または非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換または非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換または非置換のC3-20ヘテロアリール、置換または非置換のC1-20アルキルアミド、置換または非置換のC6-20アリールアミド、置換または非置換のC1-20アルキリデン、または置換または非置換のC1-20シリルである。具体的には、R~R11とR12~R14は、それぞれ、置換または非置換のC1-20アルキルまたは置換または非置換のC6-20アリールであることができる。好ましくは、R~R11とR12~R14がそれぞれメチルであることができる。
【0040】
本発明の具体例において、Mは、それぞれ、ジルコニウムまたはハフニウムであり、Xは、それぞれ、ハロゲンまたはC1-20アルキルであり、R~Rは、それぞれ、水素、置換または非置換のC1-20アルキル、置換または非置換のC1-20アルケニル、または置換または非置換のC6-20アリールであり、R~R11とR12~R14は、それぞれ、置換または非置換のC1-20アルキルであることができる。
【0041】
本発明の好ましい具体例において、第1遷移金属化合物が、下記の化学式1-1~1-3で表される遷移金属化合物のうち少なくとも一つであり、第2遷移金属化合物が、下記の化学式2-1で表される遷移金属化合物であることができる。
【0042】
【化5】
【0043】
前記化学式中、Meは、メチル基である。
【0044】
本発明の具体例において、第1遷移金属化合物に対する第2遷移金属化合物のモル比が100:1~1:100の範囲である。好ましくは、第1遷移金属化合物に対する第2遷移金属化合物のモル比が50:1~1:50の範囲である。好ましくは、第1遷移金属化合物に対する第2遷移金属化合物のモル比が10:1~1:10の範囲である。
【0045】
本発明の具体例において、前記の触媒が、下記の化学式3で表される化合物、化学式4で表される化合物および化学式5で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の助触媒化合物を含むことができる。
【0046】
【化6】
【0047】
前記化学式3中、nは、2以上の整数であり、Rは、ハロゲン原子、C1-20炭化水素またはハロゲンで置換されたC1-20炭化水素であることができる。具体的には、Rは、メチル、エチル、n-ブチルまたはイソブチルであることができる。
【0048】
【化7】
【0049】
前記化学式4中、Dは、アルミニウム(Al)またはホウ素(B)であり、R、RおよびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、C1-20炭化水素基、ハロゲンで置換されたC1-20炭化水素基またはC1-20アルコキシ基である。具体的には、Dがアルミニウム(Al)である時に、R、RおよびRは、それぞれ独立して、メチルまたはイソブチルであることができ、Dがホウ素(B)である時に、R、RおよびRは、それぞれ、ペンタフルオロフェニルであることができる。
【0050】
[化学式5]
[L-H][Z(A)または[L][Z(A)
【0051】
前記化学式5中、Lは、中性またはカチオン性ルイス塩基であり、[L-H]および[L]は、ブレンステッド酸であり、Zは、第13族元素であり、Aは、それぞれ独立して、置換または非置換のC6-20アリール基であるか、置換または非置換のC1-20アルキル基である。具体的には、[L-H]は、ジメチルアニリニウムカチオンであることができ、[Z(A)は、[B(Cであることができ、[L]は、[(CC]であることができる。
【0052】
具体的には、前記の化学式3で表される化合物の例としては、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサンなどが挙げられ、メチルアルミノキサンが好ましいが、これらに制限されるものではない。
【0053】
前記化学式4で表される化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルホウ素、トリエチルホウ素、トリイソブチルホウ素、トリプロピルホウ素、トリブチルホウ素などが挙げられ、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムが好ましいが、これらに制限されるものではない。
【0054】
前記化学式5で表される化合物の例としては、トリエチルアンモニウムテトラフェニルホウ素、トリブチルアンモニウムテトラフェニルホウ素、トリメチルアンモニウムテトラフェニルホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルホウ素、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルホウ素、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルホウ素、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルホウ素、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルホウ素、トリメチルホスホニウムテトラフェニルホウ素、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリフェニルカルボニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリフェニルカルボニウムテトラペンタフルオロフェニルホウ素などが挙げられる。
【0055】
本発明の具体例において、前記の触媒が、遷移金属化合物、助触媒化合物または両方を担持する担体をさらに含むことができる。具体的には、担体が、遷移金属化合物と助触媒化合物の両方を担持することができる。
【0056】
ここで、担体は、表面にヒドロキシ基を含有する物質を含むことができ、好ましくは、乾燥して表面に水分が除去された、反応性が大きいヒドロキシ基とシロキサン基を有する物質が使用されることができる。例えば、担体は、シリカ、アルミナおよびマグネシアからなる群から選択される少なくとも一つを含むことができる。具体的には、高温で乾燥したシリカ、シリカ-アルミナ、およびシリカ-マグネシアなどが担体として使用されることができ、これらは、通常、NaO、KCO、BaSO、およびMg(NOなどの酸化物、炭酸塩、硫酸塩、および硝酸塩の成分を含むことができる。また、これらは、炭素、ゼオライト、塩化マグネシウムなどを含むこともできる。ただし、担体がこれらに制限されるものではなく、遷移金属化合物と助触媒化合物を担持することができるものであれば、特に制限されない。
【0057】
担体は、平均粒度が10~250μmであることができ、好ましくは、平均粒度が10~150μmであることができ、より好ましくは、20~100μmであることができる。
【0058】
担体の微細気孔の体積は、0.1~10cc/gであることができ、好ましくは0.5~5cc/gであることができ、より好ましくは1.0~3.0cc/gであることができる。
【0059】
担体の比表面積は、1~1、000m/gであることができ、好ましくは100~800m/gであることができ、より好ましくは200~600m/gであることができる。
【0060】
本発明の好ましい具体例において、担体がシリカであることができる。ここで、シリカは、乾燥温度が200~900℃であることができる。乾燥温度は、好ましくは300~800℃、より好ましくは400~700℃であることができる。乾燥温度が200℃未満である場合には、水分が多すぎて表面の水分と助触媒化合物が反応し、900℃を超える場合には、担体の構造が崩壊し得る。
【0061】
乾燥したシリカ内のヒドロキシ基の濃度は、0.1~5mmole/gであることができ、好ましくは0.7~4mmole/gであることができ、より好ましくは1.0~2mmole/gであることができる。ヒドロキシ基の濃度が0.1mmole/g未満であると、第1助触媒化合物の担持量が低くなり、5mmole/gを超えると、触媒成分が不活性化する問題が発生し得る。
【0062】
担体に担持される遷移金属化合物の総量は、担体1gに対して0.001~1mmoleであることができる。遷移金属化合物と担体の比が前記の範囲を満たすと、適切な担持触媒活性を示し、触媒の活性維持および経済性の面で有利である。
【0063】
担体に担持される助触媒化合物の総量は、担体1gに対して2~15mmoleであることができる。助触媒化合物と担体の比が前記の範囲を満たすと、触媒の活性維持および経済性の面で有利である。
【0064】
担体は、1種または2種以上が使用されることができる。例えば、1種の担体に遷移金属化合物と助触媒化合物の両方が担持されてもよく、2種以上の担体に遷移金属化合物と助触媒化合物がそれぞれ担持されてもよい。また、遷移金属化合物と助触媒化合物のうち一つのみが担体に担持されてもよい。
【0065】
オレフィン重合用触媒に使用可能な遷移金属化合物および/または助触媒化合物を担持する方法として、物理的吸着方法または化学的吸着方法が使用されることができる。
【0066】
例えば、物理的吸着方法は、遷移金属化合物が溶解された溶液を担体に接触させた後、乾燥する方法、遷移金属化合物と助触媒化合物が溶解された溶液を担体に接触させた後、乾燥する方法、または遷移金属化合物が溶解された溶液を担体に接触させた後、乾燥して遷移金属化合物が担持した担体を製造し、これとは別に、助触媒化合物が溶解された溶液を担体に接触させた後、乾燥して助触媒化合物が担持した担体を製造した後、これらを混合する方法などであることができる。
【0067】
化学的吸着方法は、担体の表面に助触媒化合物を先ず担持させた後、助触媒化合物に遷移金属化合物を担持させる方法、または担体の表面の官能基(例えば、シリカの場合、シリカの表面のヒドロキシ基(-OH))と触媒化合物を共有結合させる方法などであることができる。
【0068】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体の単独重合体(homopolymer)またはオレフィン系単量体と共単量体の共重合体(copolymer)であることができる。好ましくは、オレフィン系重合体が、オレフィン系単量体とオレフィン系共単量体の共重合体である。
【0069】
ここで、オレフィン系単量体は、C2-20アルファ-オレフィン(α-olefin)、C1-20ジオレフィン(diolefin)、C3-20シクロオレフィン(cycloolefin)およびC3-20シクロジオレフィン(cyclodiolefin)からなる群から選択される少なくとも一つである。
【0070】
例えば、オレフィン系単量体は、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセンまたは1-ヘキサデセンなどであることができ、オレフィン系重合体は、前記で例示されたオレフィン系単量体を1種のみ含む単独重合体であるか、2種以上含む共重合体であることができる。
【0071】
例示的な実施形態において、オレフィン系重合体は、エチレンとC3-20アルファ-オレフィンが共重合された共重合体であることができる。好ましくは、オレフィン系重合体が、オレフィン系単量体がエチレンであり、オレフィン系共単量体が1-ヘキセンである直鎖状低密度ポリエチレンであることができる。
【0072】
この場合、エチレンの含量は、55~99.9重量%であることが好ましく、90~99.9重量%であることがより好ましい。アルファ-オレフィン系共単量体の含量は、0.1~45重量%であることが好ましく、0.1~10重量%であることがより好ましい。
【0073】
オレフィン系重合体の製造方法
本発明の一実施態様によって、下記の化学式1で表される少なくとも1種の第1遷移金属化合物と、下記の化学式2で表される少なくとも1種の第2遷移金属化合物とを含む混成触媒の存在下で、オレフィン系単量体を重合してオレフィン系重合体を得るステップを含むオレフィン系重合体の製造方法が提供される。
【0074】
【化8】
【0075】
前記化学式中、n、M、X、R~RおよびR~R14は、上記のオレフィン系重合体の項目で説明したとおりである。
【0076】
上述のように、本発明の一実施態様による製造方法により製造されるオレフィン系重合体は、(1)密度が、0.915~0.935g/cm、好ましくは0.918~0.932g/cm;(2)190℃で、21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(melt flow ratio;MFR)が、15以上、好ましくは15~40;(3)下記の数学式1で定義される共単量体分布勾配(comonomer distribution slope;CDS)が、1.0以上、好ましくは1.0~3.0であることができる。
【0077】
【数3】
【0078】
上記の数学式1のC20、C80、M20およびM80は、上記のオレフィン系重合体の項目で説明したとおりである。
【0079】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体は、例えば、フリーラジカル(free radical)、カチオン(cationic)、配位(coordination)、縮合(condensation)、添加(addition)などの重合反応により重合されることができるが、これらに制限されるものではない。
【0080】
本発明の一実施形態として、オレフィン系重合体は、気相重合法、溶液重合法またはスラリー重合法などで製造されることができる。好ましくは、オレフィン系単量体の重合がスラリー重合で行われることができ、具体的には、オレフィン系単量体の重合がスラリーバッチ反応器内で行われることができる。
【0081】
オレフィン系重合体が溶液重合法またはスラリー重合法で製造される場合、使用可能な溶媒の例として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカンおよびこれらの異性体のようなC5-12脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒;ジクロロメタン、クロロベンゼンのような塩素原子で置換された炭化水素溶媒;およびこれらの混合物などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0082】
実施例
以下、実施例を参照して、本発明をより具体的に説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらにのみ限定されるものではない。
【0083】
製造例
化学式1-1の遷移金属化合物(bis[(1-butyl-3-methyl)cyclopentadienyl]zirconium dichloride)および化学式1-2の遷移金属化合物(bis(n-butylcyclopentadienyl)zirconium dichloride)は、TCIで購入し、化学式2-1の遷移金属化合物は、下記のように製造した。
【0084】
2-(トリメチルシリルメチル)-2-プロペン-1-オール(2-(trimethylsilylmethyl)-2-propen-1-ol)の製造
2-(トリメチルシリルメチル)アリルアセテート(2-(trimethylsilylmethyl)allyl acetate)(2.69g、14.4mmole)をメタノール(methanol;22ml)に溶解した溶液に炭酸カリウム(KCO)水溶液(6.6M、14.4mmole)を徐々に投入した。投入完了後、これを常温で4時間撹拌した。撹拌後、これに水を入れて反応を終結させた。ジエチルエーテル(diethyl ether)を使用して有機層を抽出した後、硫酸マグネシウム(MgSO)で残っている水を除去した。真空下で、全ての溶媒を除去し、淡い米色のオイル化合物1.51g(72%)を得た。
【0085】
H-NMR (CDCl, 300 MHz): δ 4.90-4.88 (m, 1H), 4.66 (s, 1H), 3.97 (s, 2H), 1.53 (s, 2H), 0.03 (s, 9H).
【0086】
2-(トリメチルシリルメチル)メタンスルホネート(2-(trimethylsilylmethyl)methanesulfonate)の製造
2-(トリメチルシリルメチル)-2-プロペン-1-オール(1.51g、10.5mmole)とトリエチルアミン(triethylamine)(1.91g、18.8mmole)をジクロロメタン(dichloromethane)(30ml)に希釈した溶液にメタンスルホニルクロリド(methanesulfonyl chloride)(1.8g、15.7mmole)を0℃で徐々に添加した。その後、0℃で3時間撹拌した。0℃で炭酸水素ナトリウム(NaHCO)水溶液を入れて反応を終結させた後、ジクロロメタンで抽出して有機層を分離した。硫酸ナトリウム(NaSO)で残っている水を除去した後、真空下で、全ての溶媒を除去して黄色のオイル化合物1.9g(82%)を得た。
【0087】
H-NMR (CDCl, 300 MHz): δ5.03 (d, 1H), 4.84 (s, 1H), 4.56 (s, 2H), 3.02 (s, 3H), 1.60 (s, 2H), 0.06 (s, 9H).
【0088】
2-(トリメチルシリルメチル)アリルブロミド(2-(trimethylsilylmethyl)allyl bromide)の製造
2-(トリメチルシリルメチル)メタンスルホネート(1.9g、8.54mmole)をテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)(20ml)に希釈した溶液にリチウムブロミド(lithium bromide)をテトラヒドロフラン(15ml)に分散させた溶液を常温で徐々に添加した後、110℃で4時間撹拌した。0℃で蒸留水を入れて反応を終結させた後、ジエチルエーテルで抽出して有機層を分離した。硫酸ナトリウムで残っている水を除去した後、真空下で、全ての溶媒を除去して黄色のオイル化合物1.12g(65%)を得た。
【0089】
H-NMR (CDCl, 300 MHz): δ5.04 (s, 1H), 4.74 (d, 1H), 3.90 (d, 2H), 1.72 (d, 2H), 0.05 (s, 9H).
【0090】
[2-(シクロペンタジエニルメチル)アリル]トリメチルシラン([2-(cyclopentadienylmethyl)allyl]trimethylsilane)の製造
2-(トリメチルシリルメチル)アリルブロミド(1.12g、5.41mmole)をテトラヒドロフラン(20ml)に希釈した溶液にナトリウムシクロペンタジエニド(sodium cyclopentadienide)(3.04g、6.49mmole、2M THF溶液)を-30℃で徐々に滴下し、温度を徐々に常温に上げて12時間撹拌した。0℃で蒸留水を添加して反応を終結させた後、ジエチルエーテルで抽出して有機層を分離した。硫酸マグネシウムで残っている水を除去した後、カラムクロマトグラフィー(hexane)で分離して淡い米色のオイル化合物620mg(60%)を得た。
【0091】
H-NMR (CDCl, 300 MHz): δ6.42-6.02 (m, 4H), 4.60-4.55 (m, 2H), 3.06-2.97 (m, 2H), 2.87-2.85 (m, 2H), 1.54 (s, 2H), 0.03 (d, 9H).
【0092】
[2-(トリメチルシリルメチル)アリル]シクロペンタジエニルリチウム([2-(trimethylsilylmethyl)allyl]cyclopentadienyl lithium)の製造
[2-(シクロペンタジエニルメチル)アリル]トリメチルシラン(620mg、3.22mmole)をテトラヒドロフラン(10ml)に希釈した溶液にn-ブチルリチウム(n-BuLi)(1.44g、2.93mmole、1.6Mヘキサン溶液)を-30℃で徐々に添加した後、温度を徐々に常温に上げて12時間撹拌した。反応溶液の溶媒を真空下で乾燥した後、ヘキサンを入れて15分間撹拌した。生成された固体を濾過した後、真空下で乾燥して淡い黄色の固体化合物528mg(83%)を得た。
【0093】
ビス[(2-トリメチルシリルメチルアリル)シクロペンタジエニル]ハフニウムジクロリド(bis[(2-trimethylsilylmethylallyl)cyclopentadienyl]hafnium dichloride)の製造
[2-(トリメチルシリルメチル)アリル]シクロペンタジエニルリチウム(280mg、1.41mmole)をトルエン(3ml)に希釈した溶液に塩化ハフニウム(HfCl)(226mg、0.71mmole)をトルエン(2ml)に分散させた溶液を-30℃で徐々に添加した後、温度を徐々に常温に上げて12時間撹拌した。反応が終結すると、反応溶液を濾過した後、濾過液の溶媒を真空下で乾燥した。生成された固体をヘキサンで洗浄し、乾燥して、白色の固体化合物180mg(41%)を得た。
【0094】
H-NMR (CDCl, 300 MHz): δ6.21 (t, 2H), 6.12 (t, 2H), 4.54 (d, 2H), 4.44 (d, 1H), 3.28 (s, 2H), 1.52 (s, 2H), 0.05 (s, 9H).
【0095】
ビス[(2-トリメチルシリルメチルアリル)シクロペンタジエニル]ハフニウムジメチル(bis[(2-trimethylsilylmethylallyl)cyclopentadienyl]hafniumdimethyl)の製造
ビス[(2-トリメチルシリルメチルアリル)シクロペンタジエニル]ハフニウムジクロリド(2.4g、3.79mmole)をトルエン(40ml)に希釈した溶液にMeMgBr(3.93g、11.4mmole、3.0Mジエチルエーテル溶液)を-30℃で徐々に添加した後、温度を徐々に常温に上げて12時間撹拌した。反応終結後、トルエンで抽出して濾過した。真空下でトルエンを除去した後、ヘキサンで洗浄し、乾燥して、白色の固体化合物2.08g(93 %)を得た。
【0096】
製造例1
化学式1-1の遷移金属化合物17.9mgと化学式2-1の遷移金属化合物57.0mgに10%メチルアルミノキサンのトルエン溶液8.71gを投入して常温で1時間撹拌した。反応が終了した溶液を1.94gのシリカ(XPO-2402)に投入し、さらに、15mlのトルエンを入れて70℃で2時間撹拌した。担持が終了した触媒を5mlのトルエンを用いて3回洗浄し、60℃の真空で一晩中乾燥して、粉末状の担持触媒2.80gを得た。
【0097】
製造例2
化学式1-1の遷移金属化合物の代りに化学式1-2の遷移金属化合物15.5mgを使用した以外は、製造例1と同じ方法で担持触媒2.6gを得た。
【0098】
実施例1~8
スラリーバッチ重合反応器を用いて、製造例1と2でそれぞれ得られた担持触媒の存在下で、エチレン/1-ヘキセン共重合体を製造した。上記の実施例の重合条件を下記の表1にまとめた。
【0099】
【表1】
【0100】
比較例1~2
比較のために、ハンファソリューションズの直鎖状低密度ポリエチレンM1810HN(密度0.9180g/cm、溶融指数1.0g/10分;比較例1)とM2010EN(密度0.9200g/cm、溶融指数1.0g/10分;比較例2)を使用した。
【0101】
試験例
上記の実施例のオレフィン系重合体の物性を以下のような方法および基準にしたがって測定した。その結果を下記の表2と表3に示した。
【0102】
(1)密度(density)
ASTM D1505に準じて測定した。
【0103】
(2)溶融指数(melt index)および溶融指数比(melt flow ratio;MFR)
ASTM D 1238に準じて、190℃で、21.6kgの荷重と2.16kgの荷重でそれぞれ溶融指数を測定し、その比(MI21.6/MI2.16)を求めた。
【0104】
(3)共単量体分布勾配(CDS)
170℃で、ゲル浸透クロマトグラフィー-エフティーアイアール(GPC-FTIR)を用いて測定した。
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の実施態様によるオレフィン系重合体は、分子量分布が広くて加工性に優れ、高分子量成分に短鎖分岐が相対的に多く存在することから、機械的強度およびヒートシール特性に優れる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】