(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】オレフィン系重合体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 10/00 20060101AFI20231227BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C08F10/00
C08F4/6592
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536580
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 KR2021018730
(87)【国際公開番号】W WO2022131693
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0177033
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】キム スン ドン
(72)【発明者】
【氏名】イ ムンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ウィ ガプ
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ソ ジュンホ
(72)【発明者】
【氏名】リム ソンジェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョ ジソン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒェ ラン
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA02P
4J100AA16Q
4J100CA04
4J100DA04
4J100DA11
4J100DA42
4J100FA10
4J128AA02
4J128AB00
4J128AC01
4J128AC28
4J128AD05
4J128AD11
4J128BC12B
4J128BC15B
4J128BC25B
4J128EB02
4J128EB09
4J128EC02
4J128GA05
4J128GA06
4J128GA07
4J128GA08
4J128GB01
(57)【要約】
本発明は、オレフィン系重合体およびその製造方法に関する。具体的には、本発明の実施態様によって、共単量体から由来した分岐が多い共重合体の比重が高くてヒートシール性に優れるオレフィン系重合体およびその製造方法が提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)密度が0.915~0.950g/cm
3;(2)190℃で、2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I
2.16)が0.5~1.5g/10分であり;(3)多分散指数(Mw/Mn)が2~6;および(4)多頂分布の昇温溶離分留(temperature rising elution fractionation;TREF)で下記の関係式1を満たす、オレフィン系重合体。
[関係式1]
C
65-C
45>15(%)
ここで、C
45は、45℃で溶出された重合体の重量%、C
65は、65℃で溶出された重合体の重量%である。
【請求項2】
(1)オレフィン系重合体の密度が0.915~0.940g/cm
3;(2)190℃で、2.16kgの荷重で測定される溶融指数が0.5~1.5g/10分;および(3)多分散指数が4~6である、請求項1に記載のオレフィン系重合体。
【請求項3】
下記の化学式1で表される少なくとも1種の第1遷移金属化合物と、下記の化学式2で表される化合物と下記の化学式3で表される化合物から選択される少なくとも1種の第2遷移金属化合物とを含む混成触媒の存在下で、オレフィン系単量体を重合して製造される、請求項1に記載のオレフィン系重合体。
【化1】
前記化学式1~化学式3中、M
1とM
2は、互いに異なり、且つそれぞれ独立して、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)であり、
Xは、それぞれ独立して、ハロゲン、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル、C
2-20アルキニル、C
6-20アリール、C
1-20アルキルC
6-20アリール、C
6-20アリールC
1-20アルキル、C
1-20アルキルアミドまたはC
6-20アリールアミドであり、
R
1~R
10は、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC
1-20アルキル、置換または非置換のC
2-20アルケニル、置換または非置換のC
6-20アリール、置換または非置換のC
1-20アルキルC
6-20アリール、置換または非置換のC
6-20アリールC
1-20アルキル、置換または非置換のC
1-20ヘテロアルキル、置換または非置換のC
3-20ヘテロアリール、置換または非置換のC
1-20アルキルアミド、置換または非置換のC
6-20アリールアミド、置換または非置換のC
1-20アルキリデン、または置換または非置換のC
1-20シリルであり、R
1~R
10は、それぞれ独立して、隣接した基が連結されて置換または非置換の飽和または不飽和C
4-20環を形成してもよい。
【請求項4】
M
1とM
2は、互いに異なり、且つそれぞれ、ジルコニウムまたはハフニウムであり、Xは、それぞれ、ハロゲンまたはC
1-20アルキルであり、R
1~R
10は、それぞれ、水素または置換または非置換のC
1-20アルキル、請求項3に記載のオレフィン系重合体。
【請求項5】
M
1がハフニウムであり、M
2がジルコニウムであり、Xが塩素またはメチルである、請求項4に記載のオレフィン系重合体。
【請求項6】
第1遷移金属化合物が、下記の化学式1-1および1-2で表される遷移金属化合物のうち少なくとも一つであり、第2遷移金属化合物が、下記の化学式2-1、2-2および3-1で表される遷移金属化合物のうち少なくとも一つである、請求項3に記載のオレフィン系重合体。
【化2】
前記化学式中、Meは、メチル基である。
【請求項7】
第1遷移金属化合物に対する第2遷移金属化合物のモル比が、100:1~1:100の範囲である、請求項3に記載のオレフィン系重合体。
【請求項8】
触媒が、下記の化学式4で表される化合物、化学式5で表される化合物および化学式6で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の助触媒化合物を含む、請求項3に記載のオレフィン系重合体。
【化3】
[化学式6]
[L-H]
+[Z(A)
4]
-または[L]
+[Z(A)
4]
-
前記化学式4中、nは、2以上の整数であり、R
aは、ハロゲン原子、C
1-20炭化水素基またはハロゲンで置換されたC
1-20炭化水素基であり、
前記化学式5中、Dは、アルミニウム(Al)またはホウ素(B)であり、R
b、R
cおよびR
dは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、C
1-20炭化水素基、ハロゲンで置換されたC
1-20炭化水素基またはC
1-20アルコキシ基であり、
前記化学式6中、Lは、中性またはカチオン性ルイス塩基であり、[L-H]
+および[L]
+は、ブレンステッド酸であり、Zは、第13族元素であり、Aは、それぞれ独立して、置換または非置換のC
6-20アリール基であるか、置換または非置換のC
1-20アルキル基である。
【請求項9】
触媒が、遷移金属化合物、助触媒化合物または両方を担持する担体をさらに含む、請求項8に記載のオレフィン系重合体。
【請求項10】
担体が、シリカ、アルミナおよびマグネシアからなる群から選択される少なくとも一つを含む、請求項9に記載のオレフィン系重合体。
【請求項11】
担体に担持される混成遷移金属化合物の総量が、担体1gに対して0.001~1mmoleであり、担体に担持される助触媒化合物の総量が、担体1gに対して2~15mmoleである、請求項9に記載のオレフィン系重合体。
【請求項12】
オレフィン系重合体が、オレフィン系単量体とオレフィン系共単量体の共重合体である、請求項3に記載のオレフィン系重合体。
【請求項13】
オレフィン系単量体が、エチレンであり、オレフィン系共単量体が、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセンおよび1-ヘキサデセンからなる群から選択される一つ以上である、請求項12に記載のオレフィン系重合体。
【請求項14】
オレフィン系重合体が、オレフィン系単量体がエチレンであり、オレフィン系共単量体が1-ヘキセンである直鎖状低密度ポリエチレンである、請求項13に記載のオレフィン系重合体。
【請求項15】
下記の化学式1で表される少なくとも1種の第1遷移金属化合物;および下記の化学式2で表される化合物と下記の化学式3で表される化合物から選択される少なくとも1種の第2遷移金属化合物を含む混成触媒の存在下で、オレフィン系単量体を重合してオレフィン系重合体を得るステップを含み、オレフィン系重合体の(1)密度が0.915~0.950g/cm
3;(2)190℃で、2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I
2.16)が0.5~1.5g/10分であり;(3)多分散指数(Mw/Mn)が2~6;および(4)多頂分布の昇温溶離分留(temperature rising elution fractionation;TREF)で下記の関係式1を満たす、オレフィン系重合体の製造方法。
[関係式1]
C
65-C
45>15(%)
【化4】
前記関係式中、C
45とC
65は、請求項1で定義したとおりであり、前記の化学式中、M
1、M
2、XおよびR
1~R
10は、請求項3で定義したとおりである。
【請求項16】
オレフィン系単量体の重合が、気相重合により行われる、請求項15に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系重合体およびその製造方法に関する。具体的には、本発明は、ヒートシール性に優れるオレフィン系重合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィンを重合するために用いられる触媒の一つであるメタロセン触媒は、遷移金属または遷移金属ハロゲン化合物にシクロペンタジエニル(cyclopentadienyl)、インデニル(indenyl)、シクロヘプタジエニル(cycloheptadienyl)などのリガンドが配位結合した化合物であって、サンドイッチ構造を基本的な形態として有する。
【0003】
オレフィンを重合するために使用される他の触媒であるチーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒が活性点である金属成分が不活性である固体の表面に分散して活性点の性質が均一でないのに対し、メタロセン触媒は、一定の構造を有する一つの化合物であることから、すべての活性点が同一である重合特性を有する単一活性点触媒(single-site catalyst)として知られている。このようなメタロセン触媒で重合された高分子は、分子量分布が狭く、共単量体の分布が均一であり、チーグラー・ナッタ触媒に比べて共重合活性度が高い。
【0004】
一方、直鎖状低密度ポリエチレン(linear low-density polyethylene;LLDPE)は、重合触媒を使用して、低圧でエチレンとアルファ-オレフィンを共重合して製造され、分子量分布が狭く、一定の長さの短鎖分岐(short chain branch;SCB)を有し、一般的に、長鎖分岐(long chain branch;LCB)を有していない。直鎖状低密度ポリエチレンで製造されたフィルムは、一般のポリエチレンの特性に加え、破断強度と伸び率が高く、引裂強度、衝撃強度などに優れ、既存の低密度ポリエチレン(low-density polyethylene)や高密度ポリエチレン(high-density polyethylene)の適用が難しいストレッチフィルム、オーバーラップフィルムなどに広く使用されている。
【0005】
しかし、メタロセン触媒によって製造される直鎖状低密度ポリエチレンは、狭い分子量分布によって加工性が劣り、これより製造されるフィルムは、ヒートシール特性が低下する傾向がある。
【0006】
したがって、ヒートシール性に優れるオレフィン系重合体が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ヒートシール性に優れるオレフィン系重合体を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、上記のオレフィン系重合体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施態様によって、(1)密度が0.915~0.950g/cm3;(2)190℃で、2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.5~1.5g/10分であり;(3)多分散指数(Mw/Mn)が2~6;および(4)多頂分布の昇温溶離分留(temperature rising elution fractionation;TREF)で下記の関係式1を満たすオレフィン系重合体が提供される。
[関係式1]
C65-C45>15(%)
ここで、C45は、45℃で溶出された重合体の重量%、C65は、65℃で溶出された重合体の重量%である。
【0010】
本発明の具体例において、前記のオレフィン系重合体は、下記の化学式1で表される少なくとも1種の第1遷移金属化合物と、下記の化学式2で表される化合物と下記の化学式3で表される化合物から選択される少なくとも1種の第2遷移金属化合物とを含む混成触媒の存在下で、オレフィン系単量体を重合して製造されることができる。
【化1】
前記化学式1~化学式3中、M
1とM
2は、互いに異なり、且つそれぞれ独立して、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)であり、
Xは、それぞれ独立して、ハロゲン、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル、C
2-20アルキニル、C
6-20アリール、C
1-20アルキルC
6-20アリール、C
6-20アリールC
1-20アルキル、C
1-20アルキルアミドまたはC
6-20アリールアミドであり、
R
1~R
10は、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC
1-20アルキル、置換または非置換のC
2-20アルケニル、置換または非置換のC
6-20アリール、置換または非置換のC
1-20アルキルC
6-20アリール、置換または非置換のC
6-20アリールC
1-20アルキル、置換または非置換のC
1-20ヘテロアルキル、置換または非置換のC
3-20ヘテロアリール、置換または非置換のC
1-20アルキルアミド、置換または非置換のC
6-20アリールアミド、置換または非置換のC
1-20アルキリデン、または置換または非置換のC
1-20シリルであり、R
1~R
10は、それぞれ独立して、隣接した基が連結されて置換または非置換の飽和または不飽和C
4-20環を形成してもよい。
【0011】
本発明の具体例において、M1とM2は、互いに異なり、且つそれぞれ、ジルコニウムまたはハフニウムであり、Xは、それぞれ、ハロゲンまたはC1-20アルキルであり、R1~R10は、それぞれ、水素、置換または非置換のC1-20アルキル、置換または非置換のC1-20アルケニル、または置換または非置換のC6-20アリールであることができる。
【0012】
本発明の好ましい具体例において、M1がハフニウムであり、M2がジルコニウムであり、Xが塩素またはメチルであることができる。
【0013】
本発明の好ましい具体例において、第1遷移金属化合物が、下記の化学式1-1および1-2で表される遷移金属化合物のうち少なくとも一つであり、第2遷移金属化合物が、下記の化学式2-1、2-2および3-1で表される遷移金属化合物のうち少なくとも一つであることができる。
【化2】
前記化学式中、Meは、メチル基である。
【0014】
本発明の具体例において、第1遷移金属化合物に対する第2遷移金属化合物のモル比が100:1~1:100の範囲である。
【0015】
本発明の具体例において、前記の触媒が、下記の化学式4で表される化合物、化学式5で表される化合物および化学式6で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の助触媒を含むことができる。
【化3】
[化学式6]
[L-H]
+[Z(A)
4]
-または[L]
+[Z(A)
4]
-
前記化学式4中、nは、2以上の整数であり、R
aは、ハロゲン原子、C
1-20炭化水素基またはハロゲンで置換されたC
1-20炭化水素基であり、
前記化学式5中、Dは、アルミニウム(Al)またはホウ素(B)であり、R
b、R
cおよびR
dは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、C
1-20炭化水素基、ハロゲンで置換されたC
1-20炭化水素基またはC
1-20アルコキシ基であり、
前記化学式6中、Lは、中性またはカチオン性ルイス塩基であり、[L-H]
+および[L]
+は、ブレンステッド酸であり、Zは、第13族元素であり、Aは、それぞれ独立して、置換または非置換のC
6-20アリール基であるか、置換または非置換のC
1-20アルキル基である。
【0016】
本発明の具体例において、前記の触媒が、遷移金属化合物、助触媒化合物または両方を担持する担体をさらに含むことができる。
【0017】
本発明の好ましい具体例において、前記の担体は、シリカ、アルミナおよびマグネシアからなる群から選択される少なくとも一つを含むことができる。
【0018】
ここで、担体に担持される混成遷移金属化合物の総量が、担体1gに対して0.001~1mmoleであり、担体に担持される助触媒化合物の総量が、担体1gに対して2~15mmoleである。
【0019】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体が、オレフィン系単量体とオレフィン系共単量体の共重合体である。具体的には、オレフィン系単量体がエチレンであり、オレフィン系共単量体がプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセンおよび1-ヘキサデセンからなる群から選択される少なくとも一つであることができる。好ましくは、オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体がエチレンであり、オレフィン系共単量体が1-ヘキセンである直鎖状低密度ポリエチレンである。
【0020】
本発明の一実施態様によって、前記の化学式1で表される少なくとも1種の第1遷移金属化合物と、前記の化学式2で表される化合物と前記の化学式3で表される化合物から選択される少なくとも1種の第2遷移金属化合物とを含む混成触媒の存在下で、オレフィン系単量体を重合してオレフィン系重合体を得るステップを含み、オレフィン系重合体の(1)密度が0.915~0.950g/cm3;(2)190℃で、2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.5~1.5g/10分であり;(3)多分散指数(Mw/Mn)が2~6;および(4)多頂分布の昇温溶離分留(temperature rising elution fractionation;TREF)で下記の関係式1を満たすオレフィン系重合体の製造方法が提供される。
[関係式1]
C65-C45>15(%)
ここで、C45は、45℃で溶出された重合体の重量%、C65は、65℃で溶出された重合体の重量%である。
【0021】
本発明の具体例において、オレフィン系単量体の重合が気相重合で行われることができ、具体的には、オレフィン系単量体の重合が気相流動床反応器内で行われることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の実施態様によるオレフィン系重合体は、共単量体から由来した分岐が多い共重合体の比重が高くてヒートシール性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】関係式1を説明するための昇温溶離分留(TREF)グラフである。
【
図2】実施例1のオレフィン系重合体の昇温溶離分留(TREF)グラフである。
【
図3】実施例2のオレフィン系重合体の昇温溶離分留(TREF)グラフである。
【
図4】実施例3のオレフィン系重合体の昇温溶離分留(TREF)グラフである。
【
図5】比較例1のオレフィン系重合体の昇温溶離分留(TREF)グラフである。
【
図6】比較例2のオレフィン系重合体の昇温溶離分留(TREF)グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0025】
オレフィン系重合体
本発明の一実施態様によって、(1)密度が0.915~0.950g/cm3;(2)190℃で、2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.5~1.5g/10分であり;(3)多分散指数(Mw/Mn)が2~6;および(4)多頂分布の昇温溶離分留(temperature rising elution fractionation;TREF)で下記の関係式1を満たすオレフィン系重合体が提供される。
【0026】
[関係式1]
C65-C45>15(%)
【0027】
ここで、C45は、45℃で溶出された重合体の重量%、C65は、65℃で溶出された重合体の重量%である。
【0028】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体は、密度が0.915~0.950g/cm3である。好ましくは、オレフィン系重合体の密度が0.915~0.940g/cm3であることができる。
【0029】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体は、190℃で、2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が、0.5~1.5g/10分である。好ましくは、190℃で、2.16kgの荷重で測定されるオレフィン系重合体の溶融指数が、0.6~1.2g/10分であることができる。
【0030】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体は、多分散指数(Mw/Mn)が2~6である。好ましくは、オレフィン系重合体の多分散指数が4~6であることができる。
【0031】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体は、多頂分布の昇温溶離分留で上記の関係式1のC65-C45の値が15(%)を超える。
【0032】
多頂分布のTREF曲線で45~65℃の間に位置したTREFピークの面積は、共単量体から由来した分岐が多い共重合体の量を意味し、この比重が高いほど、ヒートシール性が高い重合体を得ることができる。
【0033】
本発明の実施態様によるオレフィン系重合体は、下記の化学式1で表される少なくとも1種の第1遷移金属化合物と、下記の化学式2で表される化合物と下記の化学式3で表される化合物から選択される少なくとも1種の第2遷移金属化合物とを含む混成触媒の存在下で、オレフィン系単量体を重合して製造される。
【0034】
【0035】
前記化学式1~化学式3中、M1とM2は、互いに異なり、且つそれぞれ独立して、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)である。具体的には、M1とM2は、互いに異なり、且つそれぞれ、ジルコニウムまたはハフニウムであることができる。好ましくは、M1がハフニウムであり、M2がジルコニウムであることができる。
【0036】
Xは、それぞれ独立して、ハロゲン、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C6-20アリール、C1-20アルキルC6-20アリール、C6-20アリールC1-20アルキル、C1-20アルキルアミドまたはC6-20アリールアミドである。具体的には、Xは、それぞれ、ハロゲンまたはC1-20アルキルであることができる。好ましくは、Xが、塩素またはメチルであることができる。
【0037】
R1~R10は、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC1-20アルキル、置換または非置換のC2-20アルケニル、置換または非置換のC6-20アリール、置換または非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換または非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換または非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換または非置換のC3-20ヘテロアリール、置換または非置換のC1-20アルキルアミド、置換または非置換のC6-20アリールアミド、置換または非置換のC1-20アルキリデン、または置換または非置換のC1-20シリルであり、ここで、R1~R10は、それぞれ独立して、隣接した基が連結されて置換または非置換の飽和または不飽和C4-20環を形成してもよい。具体的には、R1~R10が、それぞれ、水素、置換または非置換のC1-20アルキル、置換または非置換のC1-20アルケニル、または置換または非置換のC6-20アリールであることができる。
【0038】
本発明の具体例において、M1とM2が互いに異なり、且つそれぞれ、ジルコニウムまたはハフニウムであり、Xが、それぞれ、ハロゲンまたはC1-20アルキルであり、R1~R10が、それぞれ、水素、置換または非置換のC1-20アルキル、置換または非置換のC1-20アルケニル、または置換または非置換のC6-20アリールであることができる。
【0039】
本発明の好ましい具体例において、M1がハフニウムであり、M2がジルコニウムであり、Xが塩素またはメチルであることができる。
【0040】
本発明の好ましい具体例において、第1遷移金属化合物が、下記の化学式1-1および1-2で表される遷移金属化合物のうち少なくとも一つであり、第2遷移金属化合物が、下記の化学式2-1、2-2および3-1で表される遷移金属化合物のうち少なくとも一つであることができる。
【0041】
【0042】
前記化学式中、Meは、メチル基である。
【0043】
本発明の具体例において、第1遷移金属化合物に対する第2遷移金属化合物のモル比が、100:1~1:100の範囲である。好ましくは、第1遷移金属化合物に対する第2遷移金属化合物のモル比が、50:1~1:50の範囲である。好ましくは、第1遷移金属化合物に対する第2遷移金属化合物のモル比が、10:1~1:10の範囲である。
【0044】
本発明の具体例において、前記の触媒が、下記の化学式4で表される化合物、化学式5で表される化合物および化学式6で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の助触媒化合物を含むことができる。
【0045】
【0046】
前記化学式4中、nは、2以上の整数であり、Raは、ハロゲン原子、C1-20炭化水素またはハロゲンで置換されたC1-20炭化水素であることができる。具体的には、Raは、メチル、エチル、n-ブチルまたはイソブチルであることができる。
【0047】
【0048】
前記化学式5中、Dは、アルミニウム(Al)またはホウ素(B)であり、Rb、RcおよびRdは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、C1-20炭化水素基、ハロゲンで置換されたC1-20炭化水素基またはC1-20アルコキシ基である。具体的には、Dがアルミニウム(Al)である時に、Rb、RcおよびRdは、それぞれ独立して、メチルまたはイソブチルであることができ、Dがホウ素(B)である時に、Rb、RcおよびRdは、それぞれペンタフルオロフェニルであることができる。
【0049】
[化学式6]
[L-H]+[Z(A)4]-または[L]+[Z(A)4]-
【0050】
前記化学式6中、Lは、中性またはカチオン性ルイス塩基であり、[L-H]+および[L]+は、ブレンステッド酸であり、Zは、第13族元素であり、Aは、それぞれ独立して、置換または非置換のC6-20アリール基であるか、置換または非置換のC1-20アルキル基である。具体的には、[L-H]+は、ジメチルアニリニウムカチオンであることができ、[Z(A)4]-は、[B(C6F5)4]-であることができ、[L]+は、[(C6H5)3C]+であることができる。
【0051】
具体的には、前記の化学式4で表される化合物の例としては、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサンなどが挙げられ、メチルアルミノキサンが好ましいが、これらに制限されるものではない。
【0052】
前記化学式5で表される化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルホウ素、トリエチルホウ素、トリイソブチルホウ素、トリプロピルホウ素、トリブチルホウ素などが挙げられ、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムが好ましいが、これらに制限されるものではない。
【0053】
前記化学式6で表される化合物の例としては、トリエチルアンモニウムテトラフェニルホウ素、トリブチルアンモニウムテトラフェニルホウ素、トリメチルアンモニウムテトラフェニルホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルホウ素、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルホウ素、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルホウ素、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルホウ素、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルホウ素、トリメチルホスホニウムテトラフェニルホウ素、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリフェニルカルボニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリフェニルカルボニウムテトラペンタフルオロフェニルホウ素などが挙げられる。
【0054】
本発明の具体例において、前記の触媒が、遷移金属化合物、助触媒化合物または両方を担持する担体をさらに含むことができる。具体的には、担体が、遷移金属化合物と助触媒化合物の両方を担持することができる。
【0055】
ここで、担体は、表面にヒドロキシ基を含有する物質を含むことができ、好ましくは、乾燥して表面に水分が除去された、反応性が大きいヒドロキシ基とシロキサン基を有する物質が使用されることができる。例えば、担体は、シリカ、アルミナおよびマグネシアからなる群から選択される少なくとも一つを含むことができる。具体的には、高温で乾燥したシリカ、シリカ-アルミナ、およびシリカ-マグネシアなどが担体として使用されることができ、これらは、通常、Na2O、K2CO3、BaSO4、およびMg(NO3)2などの酸化物、炭酸塩、硫酸塩、および硝酸塩の成分を含むことができる。また、これらは、炭素、ゼオライト、塩化マグネシウムなどを含むこともできる。ただし、担体がこれらに制限されるものではなく、遷移金属化合物と助触媒化合物を担持することができるものであれば、特に制限されない。
【0056】
担体は、平均粒度が10~250μmであることができ、好ましくは、平均粒度が10~150μmであることができ、より好ましくは、20~100μmであることができる。
【0057】
担体の微細気孔の体積は、0.1~10cc/gであることができ、好ましくは0.5~5cc/gであることができ、より好ましくは1.0~3.0cc/gであることができる。
【0058】
担体の比表面積は、1~1、000m2/gであることができ、好ましくは100~800m2/gであることができ、より好ましくは200~600m2/gであることができる。
【0059】
本発明の好ましい具体例において、担体がシリカであることができる。ここで、シリカは、乾燥温度が200~900℃であることができる。乾燥温度は、好ましくは300~800℃、より好ましくは400~700℃であることができる。乾燥温度が200℃未満である場合には、水分が多すぎて表面の水分と助触媒化合物が反応し、900℃を超える場合には、担体の構造が崩壊し得る。
【0060】
乾燥したシリカ内のヒドロキシ基の濃度は、0.1~5mmole/gであることができ、好ましくは0.7~4mmole/gであることができ、より好ましくは1.0~2mmole/gであることができる。ヒドロキシ基の濃度が0.1mmole/g未満であると、第1助触媒化合物の担持量が低くなり、5mmole/gを超えると、触媒成分が不活性化する問題が発生し得る。
【0061】
担体に担持される遷移金属化合物の総量は、担体1gに対して0.001~1mmoleであることができる。遷移金属化合物と担体の比が前記の範囲を満たすと、適切な担持触媒活性を示し、触媒の活性維持および経済性の面で有利である。
【0062】
担体に担持される助触媒化合物の総量は、担体1gに対して2~15mmoleであることができる。助触媒化合物と担体の比が前記の範囲を満たすと、触媒の活性維持および経済性の面で有利である。
【0063】
担体は、1種または2種以上が使用されることができる。例えば、1種の担体に遷移金属化合物と助触媒化合物の両方が担持されてもよく、2種以上の担体に遷移金属化合物と助触媒化合物がそれぞれ担持されてもよい。また、遷移金属化合物と助触媒化合物のうち一つのみが担体に担持されてもよい。
【0064】
オレフィン重合用触媒に使用可能な遷移金属化合物および/または助触媒化合物を担持する方法として、物理的吸着方法または化学的吸着方法が使用されることができる。
【0065】
例えば、物理的吸着方法は、遷移金属化合物が溶解された溶液を担体に接触させた後、乾燥する方法、遷移金属化合物と助触媒化合物が溶解された溶液を担体に接触させた後、乾燥する方法、または遷移金属化合物が溶解された溶液を担体に接触させた後、乾燥して遷移金属化合物が担持した担体を製造し、これとは別に、助触媒化合物が溶解された溶液を担体に接触させた後、乾燥して助触媒化合物が担持した担体を製造した後、これらを混合する方法などであることができる。
【0066】
化学的吸着方法は、担体の表面に助触媒化合物を先ず担持させた後、助触媒化合物に遷移金属化合物を担持させる方法、または担体の表面の官能基(例えば、シリカの場合、シリカの表面のヒドロキシ基(-OH))と触媒化合物を共有結合させる方法などであることができる。
【0067】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体の単独重合体(homopolymer)またはオレフィン系単量体と共単量体の共重合体(copolymer)であることができる。好ましくは、オレフィン系重合体が、オレフィン系単量体とオレフィン系共単量体の共重合体である。
【0068】
ここで、オレフィン系単量体は、C2-20アルファ-オレフィン(α-olefin)、C1-20ジオレフィン(diolefin)、C3-20シクロオレフィン(cycloolefin)およびC3-20シクロジオレフィン(cyclodiolefin)からなる群から選択される少なくとも一つである。
【0069】
例えば、オレフィン系単量体は、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセンまたは1-ヘキサデセンなどであることができ、オレフィン系重合体は、前記で例示されたオレフィン系単量体を1種のみ含む単独重合体であるか、2種以上含む共重合体であることができる。
【0070】
例示的な実施形態において、オレフィン系重合体は、エチレンとC3-20アルファ-オレフィンが共重合された共重合体であることができる。好ましくは、オレフィン系重合体が、オレフィン系単量体がエチレンであり、オレフィン系共単量体が1-ヘキセンである直鎖状低密度ポリエチレンであることができる。
【0071】
この場合、エチレンの含量は、55~99.9重量%であることが好ましく、90~99.9重量%であることがより好ましい。アルファ-オレフィン系共単量体の含量は、0.1~45重量%であることが好ましく、0.1~10重量%であることがより好ましい。
【0072】
オレフィン系重合体の製造方法
本発明の一実施態様によって、下記の化学式1で表される少なくとも1種の第1遷移金属化合物と、下記の化学式2で表される化合物と下記の化学式3で表される化合物から選択される少なくとも1種の第2遷移金属化合物とを含む混成触媒の存在下で、オレフィン系単量体を重合してオレフィン系重合体を得るステップを含むオレフィン系重合体の製造方法が提供される。
【0073】
【0074】
前記化学式中、M1、M2、X、R1~R10は、上記のオレフィン系重合体の項目で説明したとおりである。
【0075】
上述のように、本発明の一実施態様による製造方法により製造されるオレフィン系重合体は、(1)密度が0.915~0.950g/cm3;(2)190℃で、21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.5~1.5g/10分であり;(3)多分散指数(Mw/Mn)が2~5;および(4)多頂分布の昇温溶離分留(temperature rising elusion fractionation;TREF)で下記の関係式1を満たす。
【0076】
[関係式1]
C65-C45>15(%)
【0077】
ここで、C45は、45℃で溶出された重合体の重量%、C65は、65℃で溶出された重合体の重量%である。
【0078】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体は、例えば、フリーラジカル(free radical)、カチオン(cationic)、配位(coordination)、縮合(condensation)、添加(addition)などの重合反応により重合されることができるが、これらに制限されるものではない。
【0079】
本発明の一実施形態として、オレフィン系重合体は、気相重合法、溶液重合法またはスラリー重合法などで製造されることができる。好ましくは、オレフィン系単量体の重合が気相重合で行われることができ、具体的には、オレフィン系単量体の重合が気相流動床反応器内で行われることができる。
【0080】
オレフィン系重合体が溶液重合法またはスラリー重合法で製造される場合、使用可能な溶媒の例として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカンおよびこれらの異性体のようなC5-12脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒;ジクロロメタン、クロロベンゼンのような塩素原子で置換された炭化水素溶媒;およびこれらの混合物などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0081】
実施例
以下、実施例を参照して、本発明をより具体的に説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらにのみ限定されるものではない。
【0082】
製造例
化学式1-2の遷移金属化合物(dimethylbis(n-propylcyclopentadienyl)hafnium dichloride)と化学式3-1の遷移金属化合物((pentamethylcyclopentadienyl)(n-propylcyclopentadienyl)zirconium dichloride)は、MCNで購入し、追加の精製過程なしに使用した。
【0083】
化学式1-2の遷移金属化合物4.07gと化学式3-1の遷移金属化合物1.68gに10%メチルアルミノキサンのトルエン溶液892gを投入して常温で1時間撹拌した。反応が終了した溶液を200gのシリカ(XPO-2402)に投入し、さらに、1.5リットルのトルエンを入れて70℃で2時間撹拌した。担持が終了した触媒を500mlのトルエンで洗浄し、60℃の真空で一晩中乾燥して、粉末状の担持触媒280gを得た。
【0084】
実施例1~3
気相流動床反応器を用いて、製造例でそれぞれ得られた担持触媒の存在下で、エチレン/1-ヘキセン共重合体を製造した。反応器のエチレン分圧を約15kg/cm3に維持し、重合温度を70~90℃に維持した。
【0085】
前記実施例の重合条件を下記の表1に示した。
【0086】
【0087】
比較例1~2
比較のために、ハンファソリューションズの直鎖状低密度ポリエチレンM1810HN(比較例1)とM2010EN(比較例2)を使用した。
【0088】
試験例
上記の実施例のオレフィン系重合体の物性を以下のような方法および基準にしたがって測定した。その結果を下記の表2と表3に示した。
【0089】
(1)密度(density)
ASTM D1505に準じて測定した。
【0090】
(2)溶融指数(melt index)および溶融指数比(melt flow ratio;MFR)
ASTM D 1238に準じて、190℃で、21.6kgの荷重と2.16kgの荷重でそれぞれ溶融指数を測定し、その比(MI21.6/MI2.16)を求めた。
【0091】
(3)多分散指数
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定し、その比として多分散指数を求めた。
【0092】
(4)TREF
クロス-分別クロマトグラフィー(cross-fractionation chromatography;CFC)装備を使用して、温度による溶出された累積重量百分率(sum wt%)を示すTREFグラフにおいて温度が65℃である時の重量%の値と温度が45℃である時の重量%の値との差を使用した。
【0093】
【産業上の利用可能性】
【0094】
上記の表2および
図1~
図3から確認されるように、本発明の具体例によるオレフィン系重合体は、共単量体から由来した分岐が多い共重合体の比重が高くてヒートシール性に優れる。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)密度が0.915~0.950g/cm
3;(2)190℃で、2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I
2.16)が0.5~1.5g/10分であり;(3)多分散指数(Mw/Mn)が2~6;および(4)多頂分布の昇温溶離分留(temperature rising elution fractionation;TREF)で下記の関係式1を満たす、オレフィン系重合体。
[関係式1]
C
65-C
45>15(%)
ここで、C
45は、45℃で溶出された重合体の重量%、C
65は、65℃で溶出された重合体の重量%である。
【請求項2】
(1)オレフィン系重合体の密度が0.915~0.940g/cm
3;(2)190℃で、2.16kgの荷重で測定される溶融指数が0.5~1.5g/10分;および(3)多分散指数が4~6である、請求項1に記載のオレフィン系重合体。
【請求項3】
下記の化学式1で表される少なくとも1種の第1遷移金属化合物と、下記の化学式2で表される化合物と下記の化学式3で表される化合物から選択される少なくとも1種の第2遷移金属化合物とを含む混成触媒の存在下で、オレフィン系単量体を重合して製造される、請求項1に記載のオレフィン系重合体。
【化1】
前記化学式1~化学式3中、M
1とM
2は、互いに異なり、且つそれぞれ独立して、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)であり、
Xは、それぞれ独立して、ハロゲン、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル、C
2-20アルキニル、C
6-20アリール、C
1-20アルキルC
6-20アリール、C
6-20アリールC
1-20アルキル、C
1-20アルキルアミドまたはC
6-20アリールアミドであり、
R
1~R
10は、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC
1-20アルキル、置換または非置換のC
2-20アルケニル、置換または非置換のC
6-20アリール、置換または非置換のC
1-20アルキルC
6-20アリール、置換または非置換のC
6-20アリールC
1-20アルキル、置換または非置換のC
1-20ヘテロアルキル、置換または非置換のC
3-20ヘテロアリール、置換または非置換のC
1-20アルキルアミド、置換または非置換のC
6-20アリールアミド、置換または非置換のC
1-20アルキリデン、または置換または非置換のC
1-20シリルであり、R
1~R
10は、それぞれ独立して、隣接した基が連結されて置換または非置換の飽和または不飽和C
4-20環を形成してもよい。
【請求項4】
M
1とM
2は、互いに異なり、且つそれぞれ、ジルコニウムまたはハフニウムであり、Xは、それぞれ、ハロゲンまたはC
1-20アルキルであり、R
1~R
10は、それぞれ、水素
、置換または非置換のC
1-20アルキル、
置換または非置換のC
1-20
アルケニル、または置換または非置換のC
6-20
アリールである、請求項3に記載のオレフィン系重合体。
【請求項5】
M
1がハフニウムであり、M
2がジルコニウムであり、Xが塩素またはメチルである、請求項4に記載のオレフィン系重合体。
【請求項6】
第1遷移金属化合物が、下記の化学式1-1および1-2で表される遷移金属化合物のうち少なくとも一つであり、第2遷移金属化合物が、下記の化学式2-1、2-2および3-1で表される遷移金属化合物のうち少なくとも一つである、請求項3に記載のオレフィン系重合体。
【化2】
前記化学式中、Meは、メチル基である。
【請求項7】
第1遷移金属化合物に対する第2遷移金属化合物のモル比が、100:1~1:100の範囲である、請求項3に記載のオレフィン系重合体。
【請求項8】
触媒が、下記の化学式4で表される化合物、化学式5で表される化合物および化学式6で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の助触媒化合物を含む、請求項3に記載のオレフィン系重合体。
【化3】
[化学式6]
[L-H]
+[Z(A)
4]
-または[L]
+[Z(A)
4]
-
前記化学式4中、nは、2以上の整数であり、R
aは、ハロゲン原子、C
1-20炭化水素基またはハロゲンで置換されたC
1-20炭化水素基であり、
前記化学式5中、Dは、アルミニウム(Al)またはホウ素(B)であり、R
b、R
cおよびR
dは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、C
1-20炭化水素基、ハロゲンで置換されたC
1-20炭化水素基またはC
1-20アルコキシ基であり、
前記化学式6中、Lは、中性またはカチオン性ルイス塩基であり、[L-H]
+および[L]
+は、ブレンステッド酸であり、Zは、第13族元素であり、Aは、それぞれ独立して、置換または非置換のC
6-20アリール基であるか、置換または非置換のC
1-20アルキル基である。
【請求項9】
触媒が、遷移金属化合物、助触媒化合物または両方を担持する担体をさらに含む、請求項8に記載のオレフィン系重合体。
【請求項10】
担体が、シリカ、アルミナおよびマグネシアからなる群から選択される少なくとも一つを含む、請求項9に記載のオレフィン系重合体。
【請求項11】
担体に担持される混成遷移金属化合物の総量が、担体1gに対して0.001~1mmoleであり、担体に担持される助触媒化合物の総量が、担体1gに対して2~15mmoleである、請求項9に記載のオレフィン系重合体。
【請求項12】
オレフィン系重合体が、オレフィン系単量体とオレフィン系共単量体の共重合体である、請求項3に記載のオレフィン系重合体。
【請求項13】
オレフィン系単量体が、エチレンであり、オレフィン系共単量体が、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセンおよび1-ヘキサデセンからなる群から選択される一つ以上である、請求項12に記載のオレフィン系重合体。
【請求項14】
オレフィン系重合体が、オレフィン系単量体がエチレンであり、オレフィン系共単量体が1-ヘキセンである直鎖状低密度ポリエチレンである、請求項13に記載のオレフィン系重合体。
【請求項15】
下記の化学式1で表される少なくとも1種の第1遷移金属化合物;および下記の化学式2で表される化合物と下記の化学式3で表される化合物から選択される少なくとも1種の第2遷移金属化合物を含む混成触媒の存在下で、オレフィン系単量体を重合してオレフィン系重合体を得るステップを含み、オレフィン系重合体の(1)密度が0.915~0.950g/cm
3;(2)190℃で、2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I
2.16)が0.5~1.5g/10分であり;(3)多分散指数(Mw/Mn)が2~6;および(4)多頂分布の昇温溶離分留(temperature rising elution fractionation;TREF)で下記の関係式1を満たす、オレフィン系重合体の製造方法。
[関係式1]
C
65-C
45>15(%)
【化4】
前記関係式中、C
45とC
65は、請求項1で定義したとおりであり、前記の化学式中、M
1、M
2、XおよびR
1~R
10は、請求項3で定義したとおりである。
【請求項16】
オレフィン系単量体の重合が、気相重合により行われる、請求項15に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【国際調査報告】