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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】特異的結合分子の迅速なヒト化
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20231227BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231227BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20231227BHJP
   C40B 40/10 20060101ALI20231227BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20231227BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231227BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231227BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231227BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231227BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20231227BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/62 Z
C40B40/10
C07K16/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P43/00 111
A61P29/00
A61P35/00
A61P19/02
A61P17/00
A61P13/12
A61P29/00 101
A61P1/04
A61P25/00
A61P9/10 101
A61K39/395 N
A61K39/395 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536953
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2021086492
(87)【国際公開番号】W WO2022129524
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】2020152.1
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520102808
【氏名又は名称】エラスモーゲン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バレル,キャロライン ジェーン
(72)【発明者】
【氏名】コバレバ,マリナ
(72)【発明者】
【氏名】ファーグソン,ローラ アン
(72)【発明者】
【氏名】ウバー,オビナ チュクエメカ
(72)【発明者】
【氏名】ポーター,アンドリュー ジャスティン ラドクリフ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AD12
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA03
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA16
4C085CC05
4C085CC21
4C085DD23
4C085DD31
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA52
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーに由来するヒト化された抗原特異的結合分子の合成ライブラリー、これを生成するためのプロセス、および前記ライブラリーから単離された特異的抗原特異的結合分子に関する。本発明はまた、ヒト化されたIg様新規抗原受容体可変ドメイン(VNAR)を含むマルチドメイン特異的結合分子にも関する。腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)に結合する特異的結合ドメインもまた提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I):
FW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4
によって表されるペプチドドメイン構造を有するヒト化された抗原特異的抗原結合分子のライブラリーを生成するための方法であって、
(1)FW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4の2つ以上の連続するペプチドドメインをコードするDNA配列を、CDR1ドメインまたはCDR3ドメインに相補的な複数の異種オリゴマーの存在下で増幅して、式(I)の抗原特異的抗原結合分子をコードする複数の増幅されたDNA配列を形成すること、ここで前記2つ以上の連続するペプチドドメインが、ライゲートされると、式(I)の抗原特異的抗原結合分子をコードし、FW1が、-/D A/I/T S/Q/R V/M N/T/D Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T/R D/G T/A/S(配列番号1)に従った1つまたは複数のヒト化配列を含む;
(2)2つ以上の連続するペプチドドメインをコードする前記増幅されたDNA配列を共にライゲートして、式(I)のペプチドドメイン構造を有する抗原特異的結合分子をコードするDNA配列を形成すること;
(3)(2)で得られたライゲートされたDNAをディスプレイベクターにクローニングすること;および
(4)宿主を前記ディスプレイベクターで形質転換して、前記抗原特異的抗原結合分子のライブラリーを生成すること、を含む方法。
【請求項2】
FW2、FW3a、FW3b、およびFW4の少なくとも1つが、それぞれ、
FW2が、T S/Y W F/Y R/Q K/Q N/K P/S G T/S(配列番号2)に従った1つまたは複数の配列を含むこと;
FW3aが、G R Y/F V/S E/G S/T V/G/I N/S(配列番号3)に従った1つまたは複数の配列を含むこと;
FW3bが、F S/T L R/T I K/S/N D/S L T/Q V/P A/E D S/F A/G T Y Y/R/I C K/R/A A/S/L(配列番号4)に従った1つまたは複数の配列を含むこと;および
FW4が、D/Y/F G A/G/Q G T K/V V/L E/T I/V K/N(配列番号5)に従った1つまたは複数の配列を含むこと
からなる群から選択される1つまたは複数の配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
FW2、FW3a、FW3b、およびFW4のうちの2つが、ヒト化配列を含み、FW2、FW3a、FW3b、およびFW4のうちの残りの2つが、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのFW2、FW3a、FW3b、およびFW4の少なくとも1つに対応する配列を含む、または、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーの各配列について、
(i)それに対して少なくとも70%の同一性、および/または
(ii)それに対する1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換
を有するアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
FW2、FW3a、FW3b、およびFW4のうち3つが、ヒト化配列を含み、FW2、FW3a、FW3b、およびFW4のうちの残りの1つが、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのFW2、FW3a、FW3b、およびFW4の少なくとも1つに対応する配列を含む、または、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーの各配列について、
(i)それに対して少なくとも70%の同一性、および/または
(ii)それに対する1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換
を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
FW4が、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのFW4についての配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
FW3aが、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのFW3aについての配列を含む、またはFW3bが、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのFW3bについての配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
FW2、FW3a、FW3b、およびFW4の組み合わせ配列の少なくとも3つのアミノ酸残基がヒト化されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
FW1についての1つまたは複数のヒト化配列が、
A/T S/R V N/D Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T D/G T/A(配列番号6);
D I Q M T Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T D/G T/A(配列番号7);および
ARVDQSPSSLSASVGDRVTITCVLRDS(配列番号8)
からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
FW2についての1つまたは複数の配列が、
T S/Y W F/Y R K N P G T/S(配列番号9);
T S/Y W Y/F Q Q K P G T/S(配列番号10);および
TYWYRKKSGS(配列番号11)
からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
FW3aについての1つまたは複数の配列が、
GRYVESVN(配列番号12);
GRFSGSGS(配列番号13);
GRYVETVN(配列番号14);および
GRYVETIN(配列番号15)
からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
FW3bについての1つまたは複数の配列が、
F S L R I K D L T V A D S A T Y Y/I C K/R A(配列番号16);
F T L T I S S L Q P E D F A T Y Y/I C K/R A(配列番号17);
FTLTISSLQPEDFATYYCAS(配列番号18);および
FSLRINDLTVEDSGTYRCKL(配列番号19)
からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
FW4についての1つまたは複数の配列が、
D/Y G A/G/Q G T K V/L E I K(配列番号20);および
YGGGTVVTVN(配列番号21)
からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
FW2、FW3a、FW3b、およびFW4の少なくとも1つが、
FW2が、T S/Y W F/Y R/Q K/Q N/K P/S G T/S(配列番号22)に従った1つまたは複数の配列を含むこと;
FW3aが、G R Y/F V/S E/G S/T V/G/I N/S(配列番号23)に従った1つまたは複数の配列を含むこと;
FW3bが、F S/T L R/T I K/S/N D/S L T/Q V/P A/E D S/F A/G T Y Y/R/I C K/R/A A/S/L(配列番号24)に従った1つまたは複数の配列を含むこと;および
FW4が、D/Y G A G T K V E I K(配列番号25)に従った1つまたは複数の配列を含むこと
からなる群から選択される1つまたは複数の配列をそれぞれ含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
CDR1が、6アミノ酸の領域であり、
HV2が、9アミノ酸の領域であり、
HV4が、5アミノ酸の領域であり、および/または
CDR3が、8から36アミノ酸の領域である、
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
CDR1、HV2、HV4、およびCDR3の少なくとも1つが、
CDR1が、Y/T/R/I/K/N/S C/Y P/S/A/G W/L H/S/Y N/R/G/S(配列番号26)に従った1つまたは複数の配列を含むこと、ここでCDR1がシステイン残基を含んでいれば、CDR3もまたシステイン残基を含む;
HV2が、S/T/P N/D Q/W E R I/M S I G/S(配列番号27)に従った1つまたは複数の配列を含むこと;
HV4が、K G/R T/P/S K/M S(配列番号28)に従った1つまたは複数の配列を含むこと;ならびに
CDR3が、以下の式(II):
J-J-[Xaa]-O-U-U’
に従った1つまたは複数の配列を含むこと、
ここで、Jが、システイン以外の任意の天然に生じるアミノ酸であり、
Xaaが、任意の天然に生じるアミノ酸であり、
nが、3から31であり、
Oが、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、リジン、アスパラギン、セリン、バリン、およびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸であり、
Uが、システイン、アスパラギン酸、グリシン、ヒスチジン、トリプトファン、およびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸であり、
U’が、チロシン、ロイシン、バリン、およびフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸であり、
CDR3が、1つのシステイン残基を含むまたはシステイン残基を含まず、CDR3がシステイン残基を含んでいれば、CDR1もまたシステイン残基を含んでいる
からなる群から選択される1つまたは複数の配列をそれぞれ含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
CDR1、HV2、HV4、およびCDR3のうちの1つまたは複数の配列を、制御された突然変異生成にかけること、ならびに
所望のCDR1配列、HV2配列、HV4配列、および/またはCDR3配列を、標的分子に対する親和性成熟によって選択すること
をさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ヒト化された抗原特異的抗原結合分子を生成するための方法であって、
(1)請求項1~16のいずれか一項に記載の方法に従って準備されたライブラリーから所望のクローンを選択すること;
(2)これらのクローンから、ヒト化された抗原特異的抗原結合分子を単離および精製すること;
(3)前記ヒト化された抗原特異的抗原結合分子をコードするDNA配列を発現ベクターにクローニングすること;ならびに
(4)宿主を形質転換して前記発現ベクターを発現させること、を含む、方法。
【請求項18】
以下の式(I):
FW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4
によって表されるペプチドドメイン構造を有するヒト化された抗原特異的抗原結合分子を生成するための方法であって、
(1)FW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4の2つ以上の連続するペプチドドメインをコードするDNA配列を、CDR1ドメインまたはCDR3ドメインに相補的な複数の異種オリゴマーの存在下で増幅して、式(I)の抗原特異的抗原結合分子をコードする複数の増幅されたDNA配列を形成すること、ここで、前記2つ以上の連続するペプチドドメインが、ライゲートされると、式(I)の抗原特異的抗原結合分子をコードし、FW1が、-/D A/I/T S/Q/R V/M N/T/D Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T/R D/G T/A/S(配列番号1)に従った1つまたは複数のヒト化配列を含む;
(2)2つ以上の連続するペプチドドメインをコードする前記増幅されたDNA配列を共にライゲートして、式(I)のペプチドドメイン構造を有する抗原特異的結合分子をコードするDNA配列を形成すること;
(3)(1)で得られた増幅されたDNAをディスプレイベクターにクローニングすること;および
(4)宿主を前記ディスプレイベクターで形質転換して、前記抗原特異的抗原結合分子のライブラリーを生成すること;
(5)ライブラリーから所望のクローンを選択すること;
(6)クローンから抗原特異的抗原結合分子を単離および精製すること;
(7)前記抗原特異的抗原結合分子をコードするDNA配列を発現ベクターにクローニングすること;ならびに
(8)宿主を形質転換して前記発現ベクターを発現させること、を含む、方法。
【請求項19】
前記2つ以上の連続するペプチドドメインが、FW1、CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3、およびCDR3-FW4である、請求項1~17または請求項19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
2つ以上のVNARドメインを含むマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子であって、 各VNARドメインが、以下の式(I):
FW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4
によって表されるペプチドドメイン構造を有するアミノ酸配列を含み、
ここで、少なくとも1つのVNAR結合ドメインのFW1が、-/D A/I/T S/Q/R V/M N/T/D Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T/R D/G T/A/S(配列番号1)に従ったヒト化配列を含み、
少なくとも1つのVNARドメインのFW4が、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのFW4に対応する配列、または
(i)それに対して少なくとも70%の同一性、もしくは
(ii)それに対する1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換
のいずれかを有するアミノ酸配列を含む、マルチドメイン抗原特異的抗原結合分子。
【請求項21】
FW1、FW2、FW3a、FW3b、およびFW4の少なくとも1つが、それぞれ、
FW1が、
ARVDQSPSSLSASVGDRVTITCVLRDS(配列番号8)、
A/T S/R V N/D Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T D/G T/A(配列番号6)、および
D I Q M T Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T D/G T/A(配列番号7)
からなる群から選択される配列を含むこと;
FW2が、T S/Y W F/Y R/Q K/Q N/K P/S G T/S(配列番号2)に従った配列を含むこと;
FW3aが、G R Y/F V/S E/G S/T V/G/I N/S(配列番号3)に従った配列を含むこと;
FW3bが、F S/T L R/T I K/S/N D/S L T/Q V/P A/E D S/F A/G T Y Y/R/I C K/R/A A/S/L(配列番号4)に従った配列を含むこと;ならびに
FW4が、YGGGTVVTVN(配列番号21)に従った配列、または
(i)それに対して少なくとも70%の同一性、もしくは
(ii)それに対する1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換
のいずれかを有するアミノ酸配列を含むこと
からなる群から選択される1つまたは複数の配列を含む、請求項20に記載のマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子。
【請求項22】
FW2、FW3a、およびFW3bの組み合わせ配列の少なくとも3つのアミノ酸残基がヒト化されている、請求項20または21に記載のマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子。
【請求項23】
FW2についての1つまたは複数の配列が、
TYWYRKKSGS(配列番号11);
T S/Y W F/Y R K N P G T/S(配列番号9);および
T S/Y W Y/F Q Q K P G T/S(配列番号10)
からなる群から選択される、請求項20~22のいずれか一項に記載のマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子。
【請求項24】
FW3aについての1つまたは複数の配列が、
GRYVETVN(配列番号14);
GRYVETIN(配列番号15);
GRYVESVN(配列番号12);および
GRFSGSGS(配列番号13)
からなる群から選択される、請求項20~23のいずれか一項に記載のマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子。
【請求項25】
第1のVNARドメインのFW3aがGRYVETVN(配列番号14)を含み、第2のVNARドメインのFW3aがGRYVETIN(配列番号15)を含む、請求項24に記載のマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子。
【請求項26】
FW3bについての1つまたは複数の配列が、
FTLTISSLQPEDFATYYCAS(配列番号18);
FSLRINDLTVEDSGTYRCKL(配列番号19);
F S L R I K D L T V A D S A T Y Y/I C K/R A(配列番号16);および
F T L T I S S L Q P E D F A T Y Y/I C K/R A(配列番号17)
からなる群から選択される、請求項20~25のいずれか一項に記載のマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子。
【請求項27】
第1のVNARドメインのFW3bがFTLTISSLQPEDFATYYCAS(配列番号18)を含み、第2のVNARドメインのFW3bがFSLRINDLTVEDSGTYRCKL(配列番号19)を含む、請求項26に記載のマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子。
【請求項28】
FW4についての1つまたは複数の配列がYGGGTVVTVN(配列番号21)を含む、請求項20~27のいずれか一項に記載のマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子。
【請求項29】
FW1についての1つまたは複数の配列がARVDQSPSSLSASVGDRVTITCVLRDS(配列番号8)を含む、請求項20~28のいずれか一項に記載のマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子。
【請求項30】
第1のVNARドメインおよび第2のVNARドメインを含む、請求項20~29のいずれか一項に記載のマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子であって、
前記第1のVNARドメインのFW1が、ARVDQSPSSLSASVGDRVTITCVLRDS(配列番号8)を含み;
前記第1のVNARドメインのFW2が、TYWYRKKSGS(配列番号11)を含み;
前記第1のVNARドメインのFW3aが、GRYVETVN(配列番号14)を含み;
前記第1のVNARドメインのFW3bが、FTLTISSLQPEDFATYYCAS(配列番号18)を含み;
前記第1のVNARドメインのFW4が、YGGGTVVTVN(配列番号21)を含み;
前記第2のVNARドメインのFW1が、ARVDQSPSSLSASVGDRVTITCVLRDS(配列番号8)を含み;
前記第2のVNARドメインのFW2が、TYWYRKKSGS(配列番号11)を含み;
前記第2のVNARドメインのFW3aが、GRYVETIN(配列番号15)を含み;
前記第2のVNARドメインのFW3bが、FSLRINDLTVEDSGTYRCKL(配列番号19)を含み;
前記第2のVNARドメインFW4が、YGGGTVVTVN(配列番号21)を含む、マルチドメイン抗原特異的抗原結合分子。
【請求項31】
前記VNARドメイン間のスペーサー配列をさらに含む、請求項20~30のいずれか一項に記載のマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子。
【請求項32】
前記スペーサー配列が、免疫グロブリンFc領域に由来する、請求項20~31のいずれか一項に記載のマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子。
【請求項33】
前記スペーサー配列が、ヒト免疫グロブリンFc領域に由来する、請求項20~32のいずれか一項に記載のマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子。
【請求項34】
前記VNARドメインの1つまたは複数が、以下のCDRおよび超可変領域(HV)を含むTNF-アルファ特異的VNAR結合ドメインである、請求項20~32のいずれか一項に記載のマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子:
CDR1:HCATSS(配列番号29)またはNCGLSS(配列番号30)またはNCALSS(配列番号31)
HV2:TNEESISKG(配列番号32)
HV4:SGSKS(配列番号33)またはEGSKS(配列番号34)
CDR3:ECQYGLAEYDV(配列番号35)またはSWWTQNWRCSNSDV(配列番号36)またはYIPCIDELVYMISGGTSGPIHDV(配列番号37)。
【請求項35】
第1のVNARドメインおよび第2のVNARドメインを含む、請求項34に記載のマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子であって、
前記第1のVNARドメインのCDR1が、HCATSS(配列番号29)を含み;
前記第1のVNARドメインのHV2が、TNEESISKG(配列番号32)を含み;
前記第1のVNARドメインのHV4が、SGSKS(配列番号33)を含み;
前記第1のVNARドメインのCDR3が、ECQYGLAEYDV(配列番号35)を含み;
前記第2のVNARドメインのCDR1が、NCGLSS(配列番号30)を含み;
前記第2のVNARドメインのHV2が、TNEESISKG(配列番号32)を含み;
前記第2のVNARドメインのHV4が、EGSKS(配列番号34)を含み;
前記第2のVNARドメインのCDR3が、SWWTQNWRCSNSDV(配列番号36)を含む、マルチドメイン抗原特異的抗原結合分子。
【請求項36】
前記第1のVNARドメインが、配列ARVDQSPSSLSASVGDRVTITCVLRDSHCATSSTYWYRKKSGSTNEESISKGGRYVETVNSGSKSFTLTISSLQPEDFATYYCASECQYGLAEYDVYGGGTVVTVN(配列番号38)を含み、前記第2のVNARドメインが、配列ARVDQSPSSLSASVGDRVTITCVLRDSNCGLSSTYWYRKKSGSTNEESISKGGRYVETINEGSKSFSLRINDLTVEDSGTYRCKLSWWTQNWRCSNSDVYGGGTVVTVN(配列番号39)を含む、請求項35に記載のマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子。
【請求項37】
ヒトに投与される場合に潜在的免疫原性を低減させるために、1つまたは複数のアミノ酸配列位置で修飾されている、請求項20~36のいずれか一項に記載のマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子。
【請求項38】
請求項20~37のいずれか一項に記載のマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子をコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離された核酸。
【請求項39】
マルチドメイン抗原特異的抗原結合分子を準備するための方法であって、請求項38に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞を、前記宿主細胞が前記マルチドメイン抗原特異的抗原結合分子を生成するような条件下で培養または維持することを含み、前記マルチドメイン抗原特異的抗原結合分子を単離することをさらに含んでもよい、方法。
【請求項40】
請求項20~37のいずれか一項に記載のマルチドメイン抗原特異的結合分子および場合によって少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項41】
治療において使用するための、請求項20~37のいずれか一項に記載のマルチドメイン抗原特異的結合分子。
【請求項42】
それを必要とする患者における疾患を処置するための医薬品の製造における、請求項20~37のいずれか一項に記載の特異的抗原結合分子の使用。
【請求項43】
処置を必要とする患者への、治療有効投与量の、請求項40に記載の医薬組成物の投与を含む、前記患者における疾患を処置する方法。
【請求項44】
治療有効量の、TNFαに特異的に結合するマルチドメイン抗原特異的結合分子を含む請求項40に記載の組成物の投与を含む、TNFαが媒介する状態を治療するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーに由来するヒト化された抗原特異的結合分子の合成ライブラリー、これを生成するためのプロセス、および前記ライブラリーから単離された特異的抗原特異的結合分子に関する。本発明はまた、ヒト化されたIg様の新規抗原受容体可変ドメイン(VNAR)を含むマルチドメイン特異的結合分子に関する。腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)に結合する特異的結合ドメインもまた提供される。
【0002】
本発明は全体として、ヒト化された抗原特異的抗原結合分子のライブラリーに関する。ライブラリーは、CDR領域およびフレームワーク領域の両方において多様性を生じさせること、ならびに少なくとも1つのフレームワーク領域の配列をヒト化することによって生じる、ドメインおよび/またはその断片を含む複数の異なるヒト化された抗原特異的抗原結合分子を含む。特に、CDR領域における多様性は、本発明の抗原特異的抗原結合分子のVNAR配列およびドメインの構造的混乱を最小にしながら多様性を最大化するように設計されている。
【0003】
このようなライブラリーは、例えば、結合親和性およびアビディティーなどの所望の活性を有する合成VNARクローンの選択および/またはスクリーニングに有用な、コンビナトリアルライブラリーを提供する。これらのライブラリーは、広範な標的抗原のいずれとも相互作用し得る配列の同定に有用である。例えば、ファージ上に提示されている、本発明の、多様化されたVNARポリペプチドを含むライブラリーは、目的の抗原結合分子の選択および/またはスクリーニングの、ハイスループットで、効率的で自動化可能なシステムに特に有用であり、また、当該システムを提供する。本発明の方法は、由来源分子または鋳型分子に対する変化を最小にして、標的抗原に対する高親和性バインダーを提供するように、および抗体または抗原結合断片を細胞培養で生成する場合に良好な生成収量をもたらすように、設計されている。
【背景技術】
【0004】
WO2014/173959は、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種から単離されたRNAに由来する抗原特異的抗原結合分子のライブラリーを生成するための方法を記載している。このようなライブラリーは、任意の所与の標的のための潜在的VNAR治療薬を効果的に供給するために有用である。このようなライブラリーの有用性は、同一種内の異なるアイソタイプおよび異なるElasmobranchii種の異なるアイソタイプに由来する2つ以上の天然に生じるVNAR配列から生成されたライブラリーから単離されたVNARの、予想外の多様性、親和性、特異性、および有効性に基づく。本発明者らは今回、2つ以上の天然に生じるVNAR配列を使用する利点に依拠するWO2014/173959の教示とは対照的に、少なくとも1つのフレームワーク領域についてのヒト化配列を組み込んでいるライブラリーを生成した。潜在的VNAR治療薬は既にヒト化されているため、本発明のライブラリーは、任意の所与の標的のための改善された潜在的VNAR治療薬を供給することを可能にする。このことによって、任意の所与の標的のためのヒト化された潜在的VNAR治療薬の、早期の、効率的でハイスループットな試験が可能となり、この試験データの妥当性が潜在的VNAR治療薬の後のヒト化(および再試験)の必要性によって損なわれることがないことは確実である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らはまた、1つのフレームワーク領域はヒト化されているが、別のフレームワーク領域は、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのフレームワーク領域に対応する配列を保持している、有利な特性を有するマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子を同定した。驚くべきことに、本発明者らは、当該有利な特性が、特定のフレームワーク領域(FW1)が板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのフレームワーク領域に対応する配列を保持しており、別の特定のフレームワーク領域(FW4)がヒト化されている場合には消えるが、逆に、FW1がヒト化されており、FW4が板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのフレームワーク領域に対応する配列を保持している場合には維持されることを示している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に従うと、本発明は、以下の式(I):
FW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4
によって表されるペプチドドメイン構造を有するヒト化された抗原特異的抗原結合分子のライブラリーを生成するための方法であって、
(1)FW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4の2つ以上の連続するペプチドドメインをコードするDNA配列を、CDR1ドメインまたはCDR3ドメインに相補的な複数の異種オリゴマーの存在下で増幅して、式(I)の抗原特異的抗原結合分子をコードする複数の増幅されたDNA配列を形成するステップであって、前記2つ以上の連続するペプチドドメインが、ライゲートされると、式(I)の抗原特異的抗原結合分子をコードし、式中、FW1が、-/D A/I/T S/Q/R V/M N/T/D Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T/R D/G T/A/S(配列番号1)に従った1つまたは複数のヒト化配列を含む、ステップ、
(2)2つ以上の連続するペプチドドメインをコードする前記増幅されたDNA配列を共にライゲートして、式(I)のペプチドドメイン構造を有する抗原特異的結合分子をコードするDNA配列を形成するステップ、
(3)(2)で得られたライゲートされたDNAをディスプレイベクターにクローニングするステップ、および
(4)宿主を前記ディスプレイベクターで形質転換して、前記抗原特異的抗原結合分子のライブラリーを生成するステップ
を含む方法を提供する。
【0007】
本発明の第2の態様に従うと、ヒト化された抗原特異的抗原結合分子を生成するためのプロセスであって、
(1)前記請求項のいずれかに記載の方法に従って準備されたライブラリーから所望のクローンを選択するステップ、
(2)これらのクローンから、ヒト化された抗原特異的抗原結合分子を単離および精製するステップ、
(3)ヒト化された抗原特異的抗原結合分子をコードするDNA配列を発現ベクターにクローニングするステップ、ならびに
(4)宿主を形質転換して発現ベクターを発現させるステップ
を含むプロセスが提供される。
【0008】
本発明の第3の態様に従うと、以下の式(I):
FW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4
によって表されるペプチドドメイン構造を有するヒト化された抗原特異的抗原結合分子を生成するための方法であって、
(1)FW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4の2つ以上の連続するペプチドドメインをコードするDNA配列を、CDR1ドメインまたはCDR3ドメインに相補的な複数の異種オリゴマーの存在下で増幅して、式(I)の抗原特異的抗原結合分子をコードする複数の増幅されたDNA配列を形成するステップであって、前記2つ以上の連続するペプチドドメインが、ライゲートされると、式(I)の抗原特異的抗原結合分子をコードし、式中、FW1が、-/D A/I/T S/Q/R V/M N/T/D Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T/R D/G T/A/S(配列番号1)に従った1つまたは複数のヒト化配列を含む、ステップ、
(2)2つ以上の連続するペプチドドメインをコードする前記増幅されたDNA配列を共にライゲートして、式(I)のペプチドドメイン構造を有する抗原特異的結合分子をコードするDNA配列を形成するステップ、
(3)(2)で得られたライゲートされたDNAをディスプレイベクターにクローニングするステップ、ならびに
(4)宿主を前記ディスプレイベクターで形質転換して、前記抗原特異的抗原結合分子のライブラリーを生成するステップ、
(5)ライブラリーから所望のクローンを選択するステップ、
(6)クローンから抗原特異的抗原結合分子を単離および精製するステップ、
(7)抗原特異的抗原結合分子をコードするDNA配列を発現ベクターにクローニングするステップ、ならびに
(8)宿主を形質転換して発現ベクターを発現させるステップ
を含む方法が提供される。
【0009】
本発明の第4の態様に従うと、2つ以上のVNARドメインを含むマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子であって、各VNARドメインが、以下の式(I):
FW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4
によって表されるペプチドドメイン構造を有するアミノ酸配列を含み、
式中、少なくとも1つのVNAR結合ドメインのFW1が、-/D A/I/T S/Q/R V/M N/T/D Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T/R D/G T/A/S(配列番号1)に従ったヒト化配列を含み、
少なくとも1つのVNARドメインのFW4が、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのFW4に対応する配列、あるいは
(i)それに対して少なくとも70%の同一性、または
(ii)それに対する1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換
のいずれかを有するアミノ酸配列を含む、
マルチドメイン抗原特異的抗原結合分子が提供される。
【0010】
本発明の第5の態様に従うと、本発明の第4の態様に従ったマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子をコードするポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸が提供される。
【0011】
本発明の第6の態様に従うと、本発明の第5の態様のポリヌクレオチドを含む宿主細胞を、前記宿主細胞がマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子を生成するような条件下で培養または維持するステップを含み、マルチドメイン抗原特異的抗原結合分子を単離するステップを場合によってさらに含む、マルチドメイン抗原特異的抗原結合分子を準備するための方法が提供される。
【0012】
本発明の第7の態様に従うと、本発明の第4の態様のマルチドメイン抗原特異的結合分子および場合によって少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物が提供される。
【0013】
本発明のさらなる態様に従うと、医薬において使用するための、前述の態様の医薬組成物が提供される。このような使用には、治療有効用量の上記で定義した本発明の医薬組成物の投与を介する、本発明の結合ドメインの標的抗原とそのリガンドパートナーとの間の相互作用に関連する疾患を処置するための方法が含まれる。組成物は、少なくとも1つの本発明のマルチドメイン特異的結合分子、またはこのような分子の組み合わせを含み得る。
【0014】
本発明のこの態様に従うと、本発明の結合ドメインの標的抗原とそのリガンドパートナーとの間の相互作用に関連する疾患を処置するための医薬品の製造において使用するための組成物が提供される。
【0015】
このような組成物は、示されているような、さらなる薬学的に活性な薬剤を含み得る。さらなる薬剤は、治療用化合物、例えば、抗炎症薬、細胞傷害剤、細胞増殖抑制剤、または抗生物質であり得る。このようなさらなる薬剤は、それを必要とする患者への投与に適切な形態で存在し得、このような投与は、同時、個別、または連続的であり得る。構成要素は、必要に応じて指示を含み得るキットの形態で準備され得る。
【0016】
本発明に従うと、医薬において使用するための本発明のマルチドメイン特異的結合分子が提供される。本発明のこの態様は、したがって、それを必要とする患者における疾患を処置するための医薬品の製造における、このような本発明のマルチドメイン結合分子の使用に及ぶ。このような使用はまた、患者への、治療有効投与量の、本発明のマルチドメイン結合分子を含む本明細書において定義される医薬組成物の投与を含む、処置を必要とする患者における疾患を処置する方法も包含する。
【0017】
さらなる態様において、本発明は、TNFαが媒介する状態を処置するための方法であって、治療有効量の、TNFαに特異的に結合する本発明の組成物の投与を含む方法を提供する。
【0018】
以下の多くの図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ヒト抗体軽鎖であるDPK9を鋳型として使用して、ヒト残基を抗TNF VNARドメイン(D1およびC4)に組み込むことによって説明されるヒト化を示す図である。
図2】VNARのFW1またはFW4が修復された、修飾されたD1-huFc-C4 soloMER Quad-X構築物のアラインメントを示す図である。
図3】還元soloMER Quad-XバリアントのSDS-PAGEを示す図である。SoloMER Quad-X VNAR FW1は、HEK293細胞における発現を示さなかったが、soloMER Quad-X VNAR FW4は、有意なタンパク質発現を示した。したがって、このフォーマットを、ネイティブなVNAR Quad-X(WT Quad-Xとも呼ばれる)との比較におけるさらなる特徴付けおよび機能的評価のために次へ進めた。
図4】ネイティブなQuad-Xと比較した、soloMER Quad-X(VNAR FW4)の結合ELISAを示す図である。この1対1の標的結合比較において、soloMER Quad-X(VNAR FW4)およびネイティブなQuad-Xの両方が、TNFαを認識し(図4A)、ヒト血清アルブミンは認識しない(図4B)、同等の機能性を示した。
図5】SECのトレースを個々のピークおよび重複画像として示している、soloMER(soloMER VNAR FW4)およびネイティブなQuad-Xドメインの分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を示す図である。SECのデータは、ドメインの生化学的挙動の単量体性および類似性を裏付けており、凝集の形跡も不安定性の形跡もない。
図6】L929細胞における、0.3ng/mL(LD80)のhTNF-アルファによって誘発される細胞傷害性の中和を示す図である。インビトロでのヒトTNF-アルファ中和アッセイ。ネイティブなWT Quad-X(D1-Fc-C4 VNAR)およびsoloMER Quad-X(soloMER Quad-X VNAR FW4としても知られている)の両方が、マウス線維肉腫細胞系(L929細胞)に対するヒトTNF-アルファの細胞傷害効果を中和する同一の能力を示すことが実証された。ネイティブおよびsoloMER Quad-X VNAR FW4で達成されたND50値は、それぞれ0.002nMおよび0.0017nMである。
図7】抗ROR1 VNAR P3A1のいくつかのヒト化バリアント(V1からV6)を設計し、二量体(短鎖ペプチドリンカーと連結され、HisMyc検出タグを有する、2×P3A1 VNARバリアント)として合成したことを示す図である。配列が正確であることを確認し、これを適切な細菌発現ベクターにクローニングした。表4も参照されたい。構築物を、HisMycタグを有する二量体として、またインテイン融合体として発現させた。
図8】VNAR E4および78のヒト化バリアントを示す配列アラインメントを示す図である。ヒト化に利用したヒトIgファミリーDPK9配列鋳型が、ネイティブな(WT)抗DLL4 VNAR配列の上に示されている。アラインメントは、ヒト生殖細胞系Vk1配列由来のヒト残基、ヒト化で利用されたDPK9、およびsoloMER-V1からV5からのヒト残基グラフティングの増大のパーセンテージの程度を示している。
図9】E4クローンの還元soloMERバリアントのSDS-PAGEを示す図である。Mは、マルチカラータンパク質マーカーを表している。
図10】1μg/mLのhDLL4-FcでコーティングされたELISAプレートに対する、発現し精製されたsoloMER E4バリアントおよび78バリアントの結合ELISAを示す図である。フレームワークのそれぞれは、ある程度のレベルの機能的結合を、特に78クローンバリアントでは示したが、soloMER E4および78バリアントのこれらの最初の機能的特徴付けから同定された最良のバリアントは、E4-V2および78-V2および78-V4であった。
図11】E4-V2を示す図である。ライブラリーのクローニングの後、各ライブラリーからの96の配列(E4および78の親配列)を分析すると、両ライブラリーが90%を超える正確性を示し、これは、全配列および互いに異なる配列である。ライブラリーの総サイズ(固有のクローン)は、およそ1×109個のクローンであると推定された。
図12】各パンニングラウンドで使用したDLL4抗原の濃度および洗浄ステップ(tweenを有するまたは有さないリン酸緩衝生理食塩水)を示す、E4-V2ヒト化ライブラリーのパンニング戦略を示す図である。
図13】抗DLL4ファージ陽性のE4V2ライブラリーを示す図である。異なるクローンの結合を、Wt DLL4 VNARおよびV2のヒト化親フレームワークと比較し、特異性を、ヒト血清アルブミン(HSA)への結合の欠如によって確認した。
図14】選択後のライブラリーに由来する抗DLL4ファージバインダーの配列分析を示す図である。
図15】D3のいくつかのヒト化バリアントを合成し(V1、V2、V4、V5)、配列を正確であると確認し、適切な細菌発現ベクターにクローニングしたことを示す図である。
図16】CDR1、HV2、およびHV4における制御された突然変異生成、ならびにヒトROR1(hROR1)タンパク質に対するインビトロでの親和性成熟を示す図である。D3V2の配列およびループライブラリーの設計:CDR1の多様性によって488の組み合わせが生じ、HV2の多様性によって768の組み合わせが生じ、そしてHV4の多様性によって24の組み合わせが生じる。
図17】抗原特異的VNAR配列についてのsoloMERライブラリーのスクリーニングを示す図である。選択の戦略。組換えヒトROR1タンパク質を、D3V2 soloMERライブラリーの選択およびスクリーニングに使用した。ROR1特異的soloMERを単離するために、ストレプトアビジンでコーティングされたビーズをビオチン化抗原で事前に装飾し、低ストリンジェンシーでの3ラウンドのパンニングを行った(パンニングラウンド3では200nMの抗原を50nMまで低減させた)。抗原特異的ファージをファージモノクローナルのELISAによって検出し、抗原特異的ファージのパーセンテージは、PAN1(11%)からPAN3(88%)まで上昇した。
図18】4つの最も良く結合するヒト化抗ROR1 soloMERクローンのヒト化配列を示す図である。表6も参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の方法および組成物は、治療的にまたは試薬として使用され得る新規な抗原特異的抗原結合分子の同定に有用である。
【0021】
第1の態様に従うと、本発明は、以下の式(I):
FW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4
によって表されるペプチドドメイン構造を有するヒト化された抗原特異的抗原結合分子のライブラリーを生成するための方法であって、
(1)FW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4の2つ以上の連続するペプチドドメインをコードするDNA配列を、CDR1ドメインまたはCDR3ドメインに相補的な複数の異種オリゴマーの存在下で増幅して、式(I)の抗原特異的抗原結合分子をコードする複数の増幅されたDNA配列を形成するステップであって、前記2つ以上の連続するペプチドドメインが、ライゲートされると、式(I)の抗原特異的抗原結合分子をコードし、式中、FW1が、-/D A/I/T S/Q/R V/M N/T/D Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T/R D/G T/A/S(配列番号1)に従った1つまたは複数のヒト化配列を含む、ステップ、
(2)2つ以上の連続するペプチドドメインをコードする前記増幅されたDNA配列を共にライゲートして、式(I)のペプチドドメイン構造を有する抗原特異的結合分子をコードするDNA配列を形成するステップ、
(3)(2)で得られたライゲートされたDNAをディスプレイベクターにクローニングするステップ、および
(4)宿主を前記ディスプレイベクターで形質転換して、前記抗原特異的抗原結合分子のライブラリーを生成するステップ
を含む方法を提供する。
【0022】
本発明の抗原特異的抗原結合分子は、したがって、基本構造(本明細書において定義される):
FW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4
に従って本明細書において開示されている様々な領域のアミノ酸配列のいずれかから構築することができ、式中、FW1、CDR1、FW2、HV2、FW3a、HV4、FW3b、CDR3、およびFW4のそれぞれはペプチド配列を表し、「FW」は「フレームワーク」領域であり、「CDR1」は「相補性決定領域1」であり、「HV」は「超可変」領域であり、そして「CDR3」は「相補性決定領域3」である。適切なペプチドドメイン配列の例は、本明細書において記載されている。
【0023】
以下の式(I)によって表されるペプチドドメイン構造を有する抗原特異的抗原結合分子は、N末端可変ドメイン(VNAR)と呼ぶことができる。新規なまたは新たな抗原受容体(IgNAR)は、軟骨魚類の血清で見られる、およそ160kDaのホモ二量体タンパク質である。各分子は、単一のN末端可変ドメイン(VNAR)および5つの定常ドメイン(CNAR)から構成される。IgNARドメインは、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。VNARは、免疫グロブリンおよびT細胞受容体の可変ドメインに対するならびに細胞接着分子に対する構造的類似性および一部の配列類似性を有する、堅くフォールディングしたドメインであり、従来の免疫グロブリンおよびT細胞受容体の可変N末端ドメインに類似していることから、VNARと呼ばれる。VNARは、免疫グロブリンと限られた配列相同性を共有しており、例えば、VNARとヒト軽鎖配列との間では25~30%の類似性である(Dooley,H.およびFlajnik,M.F.、Eur.J.Immunol.、2005.35(3):936~945頁)。
【0024】
参照によって本明細書に組み込まれる、Kovaleva M.ら、Expert Opin.Biol.Ther.2014.14(10):1527~1539頁、およびZielonka S.ら、mAbs 2015.7(1):15~25頁は、VNARの構造的特徴付けおよび生成の概要を記載している。
【0025】
VNAR結合表面は、他の天然の免疫グロブリンにおける可変ドメインとは異なり、介在するフレームワーク配列によって以下の順に連結されているCDR1、HV2、HV4、およびCDR3という4つの多様な領域に由来する:FW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4。天然の軽鎖パートナーの欠如およびCDR2の欠如の組み合わせによって、VNARは、脊椎動物界で最も小さい天然に生じる結合ドメインとなっている。
【0026】
本発明の特異的抗原結合分子は、Liuら(Liuら、Mol.Immunol.44、1775~1783(2007)、およびLiuら、BMC Biotechnology、7(78)doi:10.1186/1472-6750-7-78(2007))に従ったVNARの命名法の一般構造に従って分類され得る。
【0027】
本発明の一実施形態において、ステップ(1)におけるDNAの増幅は、システインを除いた任意のアミノ酸の配列をコードするオリゴマーの存在下で行われる。言い換えると、増幅されたDNAによってコードされる、得られたCDR領域は、システインを含まない。しかし、他の実施形態においては、システインはCDR領域内に存在し得る。
【0028】
全てのVNARは、FW1およびFW3において2つの標準的なcys残基を有し、これが、従来の免疫グロブリン(Ig)のフォールディングを生じさせる。加えて、VNARは、以下のような、CDRおよびFWにおける追加のシステイン(cys)残基の付加を特徴としている。
【0029】
I型:CDR3における2つの追加のcysに加えて、FW2およびFW4における非標準的なcys残基 - FW-CDR3の対合が、緊密に制約されたCDR3構造を形成している。
【0030】
II型:CDR3を突き出た位置にあるようにするジスルフィド架橋を生じさせる、CDR1およびCDR3における非標準的なcys残基。
【0031】
III型:II型と同様の非標準的なcys残基であるが、これらは、CDR1において保存されたWを有している。
【0032】
上記の全ては、オオテンジクザメ(nurse shark)命名法に基づいている。本発明において、他の新たなアイソタイプが単離されており、これらは、以下のような「b型」バリアントとして記載されている。
【0033】
IIb型:CDR1およびCDR3に非標準的なcys残基は存在しない - その結果、非常に柔軟性のあるCDR3が生じる(2Vは、IIb型バリアントの一例である)。
【0034】
IIIb型:CDR1およびCDR3に非標準的なcys残基は存在しないが、CDR1に不変のWを有する(5Vは、IIIb型バリアントの一例である)。
【0035】
CDR1およびCDR3に非標準的なシステイン(C)残基が存在しないことを確実にすることが望ましい場合があり、これによって、さらに柔軟性のあるCDR3領域が提供され得る。このような構造は、Liuら(Liuら、Mol.Immunol.44、1775~1783(2007)、およびLiuら、BMC Biotechnology、7(78)doi:10.1186/1472-6750-7-78(2007))に従った、VNARについてのオオテンジクザメ命名法の一般構造に従って、「IIb型」アイソタイプと呼ぶことができる。
【0036】
代替的な実施形態において、非標準的なシステイン(C)残基がCDR1およびCDR3に存在しないことを確実にすることだけではなく、不変のトリプトファン(W)をCDR1に有することも望ましい場合がある。このような構造は、Liuら(上記で引用の)に従った、VNARについてのオオテンジクザメ命名法の一般構造に従って、「IIIb型」アイソタイプと呼ぶことができる。
【0037】
本発明の一実施形態において、抗原特異的抗原結合分子は、領域FW1、CDR1、FW2、HV2、FW3a、HV4、FW3b、CDR3、および/またはFW4の融合体であってもよく、これは、IIb型およびIIIb型のVNAR由来である。融合したIIb部分およびIIIb部分は、必要に応じていずれかの順序で結合されて、VNAR構造を形成し得る。
【0038】
本発明の一実施形態において、DNA配列は、ドメインFW3bにCKAまたはCRAという最後の3つのアミノ酸残基と、YまたはDおよびGAというFW4の最初の3つのアミノ酸残基を有し得る。他のFW3b配列は、CAN、CRG、CKV、CKT、および/またはCHTなどの変型体を含み得る。したがって、FW3bの最後の3つのアミノ酸残基は、CKA、CRA、CAN、CRG、CKV、CKT、およびCHT(好ましくは、CKAおよびCRA)からなる群から選択され得、かつ/または、FW4の最初の3つのアミノ酸残基は、DGAもしくはYGAであり得る。
【0039】
アイソタイプの他の代替的な融合体もまた、本発明に従って作製され得る。例えば、I型VNARの領域をIII型VNARと融合することができるか、またはI型VNARの領域をII型VNARと融合することができる。本発明において記載されているような、アイソタイプ領域I型、II型、およびIII型の変型体であるIb型、IIb型、およびIIIb型もまた含まれる。融合体には、VNARファミリー全体にわたる任意のアイソタイプ融合体、すなわち、Elasmobranchiiの任意の種から単離されたアイソタイプ領域も含まれ得る。例えば、ツノザメ(dogfish)のII型領域と融合したオオテンジクザメのII型領域、またはツノザメのIIIb型と融合したテンジクザメ(Wobbegong)のIIb型。
【0040】
本明細書において開示されている配列において、「/」は「または」を意味し、本発明者らが示した残基が特定した通りに変化し得ることを示している。この文脈において、「-」は、ギャップ、またはアミノ酸の不存在を意味する。Xは、任意のアミノ酸である。例えば、「V/M」は、VまたはMのいずれかであり得る残基を意味する。同様に、「-/D」は、不存在またはDのいずれかであり得る残基を意味する。同様に、「A/I/T」は、A、I、またはTであり得る残基を意味する。配列同一性の値が特定される場合には、配列同一性は、「/」によって隔てられた残基のいずれか1つから出発して計算され得る。
【0041】
一実施形態において、FW2、FW3a、FW3b、およびFW4の少なくとも1つは、それぞれ、以下からなる群から選択される1つまたは複数の配列を含み、
FW2は、T S/Y W F/Y R/Q K/Q N/K P/S G T/S(配列番号2)に従った1つまたは複数の配列を含み、
FW3aは、G R Y/F V/S E/G S/T V/G/I N/S(配列番号3)に従った1つまたは複数の配列を含み、
FW3bは、F S/T L R/T I K/S/N D/S L T/Q V/P A/E D S/F A/G T Y Y/R/I C K/R/A A/S/L(配列番号4)に従った1つまたは複数の配列を含み、
FW4は、D/Y/F G A/G/Q G T K/V V/L E/T I/V K/N(配列番号5)に従った1つまたは複数の配列を含む。
【0042】
FW1は、-/D A/I/T S/Q/R V/M N/T/D Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T/R D/G T/A/S(配列番号1)に従った1つまたは複数のヒト化配列を含む。しかし、代替的な態様においては、FW1の配列は定義されておらず、ライブラリーは、その代わり、以下の1つまたは複数によって特徴付けされる:
FW2は、T S/Y W F/Y R/Q K/Q N/K P/S G T/S(配列番号2)に従った1つまたは複数の配列を含み、
FW3aは、G R Y/F V/S E/G S/T V/G/I N/S(配列番号3)に従った1つまたは複数の配列を含み、
FW3bは、F S/T L R/T I K/S/N D/S L T/Q V/P A/E D S/F A/G T Y Y/R/I C K/R/A A/S/L(配列番号4)に従った1つまたは複数の配列を含み、
FW4は、D/Y/F G A/G/Q G T K/V V/L E/T I/V K/N(配列番号5)に従った1つまたは複数の配列を含む。
【0043】
この代替的な態様では、典型的には、FW2配列、FW3a配列、FW3b配列、およびFW4配列の1つまたは複数がヒト化される。ヒト化されたFW2配列、FW3a配列、FW3b配列、および/またはFW4配列は、任意のヒト化されたFW2配列、FW3a配列、FW3b配列、およびFW4配列、または本明細書において開示されている配列であり得る。
【0044】
FW2は、T S/Y W F/Y R/Q K/Q N/K P/S G T/S(配列番号2)に従った1つまたは複数の配列を含み得る。
【0045】
FW3aは、G R Y/F V/S E/G S/T V/G/I N/S(配列番号3)に従った1つまたは複数の配列を含み得る。
【0046】
FW3bは、F S/T L R/T I K/S/N D/S L T/Q V/P A/E D S/F A/G T Y Y/R/I C K/R/A A/S/L(配列番号4)に従った1つまたは複数の配列を含み得る。
【0047】
FW4は、D/Y/F G A/G/Q G T K/V V/L E/T I/V K/N(配列番号5)に従った1つまたは複数の配列を含み得る。
【0048】
一実施形態において、FW2、FW3a、FW3b、およびFW4のうちの2つはヒト化配列を含み、FW2、FW3a、FW3b、およびFW4のうちの残りの2つは、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのFW2、FW3a、FW3b、およびFW4のうちの対応する少なくとも1つについての配列を含むか、あるいは、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーの各配列について、
(i)それに対して少なくとも70%の同一性、および/または
(ii)それに対する1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換
を有するアミノ酸配列を含む。
【0049】
一実施形態において、FW2、FW3a、FW3b、およびFW4のうちの3つはヒト化配列を含み、FW2、FW3a、FW3b、およびFW4のうちの残りの1つは、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのFW2、FW3a、FW3b、およびFW4のうちの対応する少なくとも1つについての配列を含むか、あるいは、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーの各配列について、
(i)それに対して少なくとも70%の同一性、および/または
(ii)それに対する1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換
を有するアミノ酸配列を含む。
【0050】
ElasmobranchiiはChondrichthyes綱の亜綱であり、これとしては、軟骨魚類、サメ、エイ、およびガンギエイが含まれる。この亜綱のメンバーは、Carchariniformes、Heterodontiformes、Hexanchiformes、Lamniformes、Orectolobiformes、Pristiformes、Rajiformes、Squaliformes、Squatiniformes、Torpediniformesという11の目にさらに分類することができる。それぞれの目は、次いで、多くの科にさらに分類することができる。例えば、FW4配列は、Orectolobformes目のGinglymostomatidae科のGinglymostoma cirratum、および/またはSqualiformes目のSqualidae科のSqualus acanthiasに由来し得る。
【0051】
アミノ酸配列は、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーの配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、およびまたさらに好ましくは95%(またさらに好ましくは少なくとも96%、97%、98%、または99%)の同一性を有し得る。
【0052】
アミノ酸配列は、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーの配列に対する3つの、好ましくは2つの、またはさらに好ましくは1つのアミノ酸置換を有し得る。1つまたは複数の置換は、保存的なアミノ酸置換であり得る。
【0053】
配列同一性および/またはアミノ酸置換は、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における任意の種の任意のFW4配列に対するものであり得る。例えば、配列同一性および/またはアミノ酸置換は、Orectolobformes目のGinglymostomatidae科のGinglymostoma cirratum、および/またはSqualiformes目のSqualidae科のSqualus acanthiasのFW4配列に対するものであり得る。配列同一性および/またはアミノ酸置換は、YGGGTVVTVN(配列番号21)に対するものであり得る。
【0054】
FW4は、YGGGTVVTVN(配列番号21)に従った配列、あるいは
(i)それに対して少なくとも70%の同一性、または
(ii)それに対する1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換
のいずれかを有するアミノ酸配列を含み得る。
【0055】
FW4は、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのFW4についての配列を含み得る。
【0056】
FW4は、YGGGTVVTVN(配列番号21)に従った配列を含み得る。
【0057】
FW3aは、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのFW3aについての配列を含み得るか、またはFW3bは、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのFW3bについての配列を含み得る。
【0058】
FW3aは、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのFW3aについての配列を含み得る。
【0059】
FW3bは、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのFW3bについての配列を含み得る。
【0060】
FW2、FW3a、FW3b、およびFW4の組み合わせ配列の少なくとも3つのアミノ酸残基がヒト化され得る。したがって、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのFW2、FW3a、FW3b、およびFW4の組み合わせ配列から出発して、少なくとも3つのアミノ酸残基が、DPK-9由来の対応する残基に置換され得る。FW2配列、FW3a配列、FW3b配列、およびFW4配列は、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種の同一のメンバー、または板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種の2つ以上の異なるメンバー、例えば同一種の異なる個体に由来し得る。あるいは、FW2配列、FW3a配列、FW3b配列、およびFW4配列は、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における2つ以上の異なる種に由来し得る。
【0061】
少なくとも3つのヒト化残基は、本明細書において開示されている任意のFW2配列、FW3a配列、FW3b配列、および/またはFW4配列における任意の3つのヒト化残基から選択され得る。例えば、少なくとも3つのヒト化残基は、図1で示されている任意の3つのヒト化残基から選択され得る。
【0062】
FW2、FW3a、FW3b、およびFW4の組み合わせ配列の少なくとも4つの、少なくとも5つの、少なくとも6つの、少なくとも7つの、少なくとも8つの、少なくとも9つの、少なくとも10個の、少なくとも11個の、少なくとも12個の、少なくとも13個の、少なくとも14個の、または少なくとも15個のアミノ酸残基がヒト化され得る。
【0063】
FW1についての1つまたは複数のヒト化配列は、
A/T S/R V N/D Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T D/G T/A(配列番号6)、
D I Q M T Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T D/G T/A(配列番号7)、および
ARVDQSPSSLSASVGDRVTITCVLRDS(配列番号8)
からなる群から選択され得る。
【0064】
FW2についての1つまたは複数の配列は、
T S/Y W F/Y R K N P G T/S(配列番号9)、
T S/Y W Y/F Q Q K P G T/S(配列番号10)、および
TYWYRKKSGS(配列番号11)
からなる群から選択され得る。
【0065】
FW3aについての1つまたは複数の配列は、
GRYVESVN(配列番号12)、
GRFSGSGS(配列番号13)、
GRYVETVN(配列番号14)、および
GRYVETIN(配列番号15)
からなる群から選択され得る。
【0066】
FW3bについての1つまたは複数の配列は、
F S L R I K D L T V A D S A T Y Y/I C K/R A(配列番号16)、
F T L T I S S L Q P E D F A T Y Y/I C K/R A(配列番号17)、
FTLTISSLQPEDFATYYCAS(配列番号18)、および
FSLRINDLTVEDSGTYRCKL(配列番号19)
からなる群から選択され得る。
【0067】
FW4についての1つまたは複数の配列は、
D/Y/F G A/G/Q G T K V/L E I K(配列番号20)、および
YGGGTVVTVN(配列番号21)
からなる群から選択され得る。
【0068】
FW2、FW3a、FW3b、およびFW4の少なくとも1つは、以下からなる群から選択される1つまたは複数の配列をそれぞれ含んでいてもよく、
FW2は、T S/Y W F/Y R/Q K/Q N/K P/S G T/S(配列番号22)に従った1つまたは複数の配列を含み、
FW3aは、G R Y/F V/S E/G S/T V/G/I N/S(配列番号23)に従った1つまたは複数の配列を含み、
FW3bは、F S/T L R/T I K/S/N D/S L T/Q V/P A/E D S/F A/G T Y Y/R/I C K/R/A A/S/L(配列番号24)に従った1つまたは複数の配列を含み、
FW4は、D/Y G A G T K V E I K(配列番号25)に従った1つまたは複数の配列を含む。
【0069】
本方法は、上記の配列の任意の組み合わせによって規定され得る。例えば、本方法は、上記の配列の1つまたは複数をそれぞれが含むFW2、FW3a、FW3b、およびFW4の少なくとも2つ、上記の配列の1つまたは複数をそれぞれが含むFW2、FW3a、FW3b、およびFW4の少なくとも3つ、または、上記の配列の1つまたは複数をそれぞれが含むFW2、FW3a、FW3b、およびFW4の4つ全てによって規定され得る。好ましくは、
FW2は、T S/Y W F/Y R/Q K/Q N/K P/S G T/S(配列番号22)に従った1つまたは複数の配列を含み、
FW3aは、G R Y/F V/S E/G S/T V/G/I N/S(配列番号23)に従った1つまたは複数の配列を含み、
FW3bは、F S/T L R/T I K/S/N D/S L T/Q V/P A/E D S/F A/G T Y Y/R/I C K/R/A A/S/L(配列番号24)に従った1つまたは複数の配列を含み、
FW4は、D/Y G A G T K V E I K(配列番号25)に従った1つまたは複数の配列を含む。
【0070】
ヒト化された抗原特異的抗原結合分子は、ある特定の長さのCDRおよび超可変領域(HV)を含み得る。一実施形態において、
CDR1は、6アミノ酸からなる領域であり、
HV2は、9アミノ酸からなる領域であり、
HV4は、5アミノ酸からなる領域であり、かつ/または
CDR3は、8から36アミノ酸からなる領域である。
【0071】
ライブラリーは、多様なCDR配列およびHV配列を含み得る。一実施形態において、CDR1、HV2、HV4、およびCDR3の少なくとも1つは、以下からなる群から選択される1つまたは複数の配列をそれぞれ含み、
CDR1は、Y/T/R/I/K/N/S C/Y P/S/A/G W/L H/S/Y N/R/G/S(配列番号26)に従った1つまたは複数の配列を含み、配列中、CDR1がシステイン残基を含んでいれば、CDR3もまたシステイン残基を含み、
HV2は、S/T/P N/D Q/W E R I/M S I G/S(配列番号27)に従った1つまたは複数の配列を含み、
HV4は、K G/R T/P/S K/M S(配列番号28)に従った1つまたは複数の配列を含み、
CDR3は、以下の式(II):
J-J-[Xaa]-O-U-U’
に従った1つまたは複数の配列を含み、式中、
Jは、システイン以外の任意の天然に生じるアミノ酸であり、
Xaaは、任意の天然に生じるアミノ酸であり、
nは、3から31であり、
Oは、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、リジン、アスパラギン、セリン、バリン、およびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸であり、
Uは、システイン、アスパラギン酸、グリシン、ヒスチジン、トリプトファン、およびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸であり、
U’は、チロシン、ロイシン、バリン、およびフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸であり、
CDR3は、1つのシステイン残基を含むかまたはシステイン残基を含まず、CDR3がシステイン残基を含んでいれば、CDR1もまたシステイン残基を含んでいる。
【0072】
CDR領域のそれぞれへのシステイン(Cys)残基の組み込みは、従来のII型VNARドメインで見られるようなCDR1からCDR3へのジスルフィド架橋の可能性を生み出すことによって、ライブラリーの多様性を増大させる。
【0073】
一部の実施形態において、CDR1、HV2、HV4、およびCDR3にシステイン残基は存在しない。
【0074】
各CDRおよびHV領域の各位置についての考えられる組み合わせの数は、図16で示されている。
【0075】
ライブラリーのクローンは、未処理のレパートリーと等しいレベルの多様性および/またはアミノ酸組成を有し得る。
【0076】
本発明に従ったCDR配列およびHV配列の多様性は、累積的に、ライブラリー内のクローン配列の非常に広範な多様性を可能にする。これはひいては、ライブラリーを極めて多用途にし、所与の目標へのヒト化前の抗原特異的抗原結合分子の的中率の改善をもたらす可能性が高いという効果を有する。
【0077】
一部の実施形態において、ライブラリーは、クローンの集団を含み得、当該クローンの少なくとも90%は、他のクローンの90%のFW1、FW2、FW3a、FW3b、および/またはFW4それぞれのアミノ酸配列に対する少なくとも90%の同一性を有する、FW1、FW2、FW3a、FW3b、および/またはFW4のアミノ酸配列を含む。このライブラリーは、「サブライブラリー」と呼ぶことができる。サブライブラリーは、他のクローンの90%のFW1、FW2、FW3a、FW3b、および/またはFW4それぞれのアミノ酸配列と同一でない最大3つ、最大2つ、または最大1つのアミノ酸を有するFW1、FW2、FW3a、FW3b、および/またはFW4のアミノ酸配列をそれぞれが含むクローンの集団を含み得る。サブライブラリーは、他のクローンの90%のFW1、FW2、FW3a、FW3b、および/またはFW4それぞれのアミノ酸配列に同一なアミノ酸配列を有するFW1、FW2、FW3a、FW3b、および/またはFW4のアミノ酸配列をそれぞれが含むクローンの集団を含み得る。サブライブラリーは、他のクローンのFW1、FW2、FW3a、FW3b、およびFW4それぞれのアミノ酸配列に同一なアミノ酸配列を有するFW1、FW2、FW3a、FW3b、およびFW4のアミノ酸配列をそれぞれが含むクローンの集団を含み得る。本方法は、したがって、サブライブラリーを作製するための方法であり得、場合によって、本発明において、サブライブラリーは、CDR1領域、HV2領域、HV4領域、およびCDR3領域において多様性を有しているが、FW1領域、FW2領域、FW3a領域、FW3b領域、および/またはFW4領域においては有していない。このようなサブライブラリーは、ユーザーが、必要なヒト化のレベルが分かっている所与の抗原に対するヒト化された抗原特異的抗原結合分子を迅速に準備することを望む場合に、有用であり得る。本発明の方法は、サブライブラリーのスーパーライブラリーを生成するための方法として並行して行うことができ、この場合、各サブライブラリーは、CDR1領域、HV2領域、HV4領域、およびCDR3領域において多様性を有するが、FW1領域、FW2領域、FW3a領域、FW3b領域、および/またはFW4領域においては有さず、また、FW1領域、FW2領域、FW3a領域、FW3b領域、および/またはFW4領域のヒト化のレベルは、サブライブラリーの間で異なっている。本方法は、したがって、本発明の第1の態様の方法が、各サブライブラリーで異なるFW1配列、FW2配列、FW3a配列、FW3b配列、および/またはFW4配列を使用して反復される、ヒト化された抗原特異的抗原結合分子のサブライブラリーのスーパーライブラリーを生成するための方法であり得る。
【0078】
本方法は、さらに、
CDR1、HV2、HV4、およびCDR3のうちの1つまたは複数の配列を、制御された突然変異生成にかけるステップ、ならびに
所望のCDR1配列、HV2配列、HV4配列、および/またはCDR3配列を、標的分子に対する親和性成熟によって選択するステップ
を含み得る。
【0079】
制御された突然変異生成の方法、例えばオーバーラップPCRが、当業者に公知である。同様に、標的分子に対する親和性成熟の方法、例えば、表面パンニングおよび溶液選別が、当業者に公知である。
【0080】
特許請求の範囲において規定されている本発明の第1の態様に対する同等物は、第1の態様の代替的な記述であり、これにおいて、本方法は、
(i)以下の式(I)によって表されるペプチドドメイン構造を有するヒト化された抗原特異的抗原結合分子をそれぞれがコードしているDNA配列の集団を合成するステップであって、FW1が、-/D A/I/T S/Q/R V/M N/T/D Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T/R D/G T/A/S(配列番号1)に従った1つまたは複数のヒト化配列を含むステップ、
(ii)DNA配列の集団を増幅するステップ、
(iii)(ii)で得られた増幅されたDNAをディスプレイベクターにクローニングするステップ、および
(iv)宿主を前記ディスプレイベクターで形質転換して、前記抗原特異的抗原結合分子のライブラリーを生成するステップ
を含む。
【0081】
当業者には、必要な変更を加えた、この同等物のステップ(i)から(iv)で、特許請求の範囲に記載のアプローチのステップ(1)から(4)を置き換えることができることが理解されよう。特許請求の範囲において規定されている本発明の第1の態様の任意のさらなる特徴を、第1の態様の上記の代替的な記述と組み合わせることができる。例えば、本明細書において開示されているFW2、FW3a、FW3b、および/またはFW4の任意の配列を、第1の態様の上記の代替的な記述と組み合わせることができる。特許請求の範囲に記載のアプローチまたはこの同等物のアプローチのいずれかを、本発明に従ったライブラリーを作製するために使用することができる。ライブラリーの構築について記載する場合、ライブラリーDNAの集団がまず合成され、その後、当該集団が、記載/設計された位置での全ての必要な変型を伴って、クローニングのために増幅される。これは、単一の連続配列集団として、または増幅プロセスを介して繋ぐことができる連続配列として、行うことができる。共通の特徴は、最終ライブラリーにおけるアミノ酸のバリエーションおよびクローンの違いをもたらすために、本発明者らがどのようにライブラリー(またはライブラリーの部分)を設計するかである。典型的には、多様性が大きいほど、ライブラリーがより良くなる。
【0082】
本方法は、ステップ(1)の前に、以下のステップをさらに含み得る:
(1a)板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーからRNAを単離するステップ、
(2a)(1a)で得られたRNAから、抗原特異的抗原結合分子をコードするDNA配列を増幅して、抗原特異的結合分子をコードするDNA配列のデータベースを作製するステップ、
(3a)(2a)で準備したデータベースからDNA配列を選択するステップ。
【0083】
本方法がステップ(1a)、(2a)、および(3a)をさらに含む場合、(1)の前記2つ以上の連続するペプチドドメインは、(3a)で選択された少なくとも2つの異種DNA配列に由来し得る。RNAは、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種の1つのメンバーまたはいくつかの異なるメンバーから単離され得る。板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のあるメンバーへの言及には、したがって、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種の1つまたは複数の異なるメンバーへの言及も含まれる。ステップ(1a)は、したがって、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種の1つまたは複数のメンバーからRNAを単離することを含み得る。
【0084】
ElasmobranchiiはChondrichthyes綱の亜綱であり、これとしては、軟骨魚類、サメ、エイ、およびガンギエイが含まれる。この亜綱のメンバーは、Carchariniformes、Heterodontiformes、Hexanchiformes、Lamniformes、Orectolobiformes、Pristiformes、Rajiformes、Squaliformes、Squatiniformes、Torpediniformesという11の目にさらに分類することができる。それぞれの目は、次いで、多くの科にさらに分類することができる。例えば、本発明の方法は、Orectolobformes目のGinglymostomatidae科のGinglymostoma cirratum、および/またはSqualiformes目のSqualidae科のSqualus acanthiasに関するものであり得る。
【0085】
したがって、ライゲートされるとFW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4によって表される式(I)の抗原特異的抗原結合分子をコードする、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのペプチドドメインを使用することが可能である。
【0086】
FW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4の前記2つ以上の連続するペプチドドメインは、FW1、CDR1、FW2、HV2、FW3a、HV4、FW3、CDR3、およびFW4、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。2つ、3つ、4つ、または5つのこのようなペプチドドメインが存在し得る。
【0087】
ライゲートされると式(I)の抗原特異的抗原結合分子をコードするFW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4の連続するペプチドドメインの潜在的組み合わせは、式(III):
P-Q-R
によって規定され得、
ここで、P-Q-Rは、FW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4であり、P、Q、およびRのそれぞれは、連続するペプチドドメインを表し、場合によって、QまたはRは不存在である。ライゲートされると式(I)の抗原特異的抗原結合分子を共にコードする連続するペプチドドメインの一部の非限定的な例を、以下の表1に示した。
【0088】
【表1】
【0089】
ライゲートされると式(I)の抗原特異的抗原結合分子を共にコードする連続するペプチドドメインの他の断片は、式(I)によって規定されるペプチドドメイン配列を都合に合わせた代替的な様式で分割することによって準備することができる。
【0090】
各フレームワーク(FW)領域が別々の断片内にある場合、次いで潜在的に4つまたは5つのペプチドドメインが準備され得る。このケースでは、式(III)は、
P-Q-R-S
によって表され、式中、4つの別々のペプチドドメインが存在し、P-Q-R-Sは、FW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4であり、P、Q、R、およびSの各々は、連続するペプチドドメインを表し、または
P-Q-R-S-T
によって表され、式中、5つの別々のペプチドドメインが存在し、P-Q-R-S-Tは、FW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4であり、P、Q、R、S、およびTの各々は、連続するペプチドドメインを表す。
【0091】
これらの代替的な実施形態に従った連続するペプチドドメインの例を、以下の表2に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
本発明のこの態様の一実施形態において、2つ以上の連続するペプチドドメインは、FW1、CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b、およびCDR3-FW4である、FW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4によって表される3つのドメインである。
【0094】
本発明のこの実施形態において、ステップ(1)は、(3a)で選択された少なくとも2つの異種DNA配列に由来するペプチドドメインFW1、CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3、およびCDR3-FW4をコードするDNA配列を、(3a)で選択された配列内のCDR1ドメインまたはCDR3ドメインに相補的な複数の異種オリゴマーの存在下で増幅して、ペプチドドメインFW1、CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3、およびCDR3-FW4をコードする複数の増幅されたDNA配列を形成するステップであると規定され得る。結果として、本発明のこの実施形態に従ったステップ(2)は、ペプチドドメインFW1、CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3、およびCDR3-FW4をコードする前記増幅されたDNA配列を共にライゲートして、式(I)のペプチドドメイン構造を有する抗原特異的結合分子をコードするDNA配列を形成するステップであると規定され得る。
【0095】
本発明の一実施形態において、異なる背景にある、鋳型由来のHV2ループおよびHV4ループは、鋳型由来のHV2およびHV4の組み合わせとそれぞれに由来するFW1ならびにCDR1断片およびCDR3断片とをコードするPCR断片を選択的スプライシングすることを介して得ることができる。
【0096】
本発明の第1の態様の方法のステップ(3a)に従った、ステップ(2a)において準備されたデータベースからのDNA配列の選択は、準備されたDNA配列についての発現したアミノ酸配列の分析に従って行うことができる。翻訳されたDNA配列は、CDR3の長さの分布に加えて、分析対象の集団全体にわたるアミノ酸(AA)組成、相対的位置の保存、および頻度に関して調べることができる。
【0097】
ライブラリーからの発現した配列と比較した、天然の配列のデータベースにおける発現したDNA配列の分析から、CDR1および/またはCDR3のいずれかにおける天然組成の程度、ならびにまた、CDR1および/またはCDR3に存在する相対的多様性に基づいて、DNA配列を選択することが可能である。
【0098】
天然の配列組成は、対応する天然に発現したVNAR配列と比較して少なくとも約80%、85%、90%、または95%、例えば、約80%から約95%、または約85%から約90%の配列同一性として定義される。高いレベルの多様性は、約60%から約75%、適切には約65%から約70%の配列同一性として定義され、この場合、対応する天然に発現したVNAR配列と比較して約60%から約65%の多様性が適切であり得る。
【0099】
例えば、天然型のCDR1と、CDR3での高レベルの多様性とを有することが望ましい場合がある。システイン残基の付加は、DNA増幅プロセスにおいてTRMオリゴヌクレオチドを使用することによって行うことができる。
【0100】
本発明の第2の態様に従うと、ヒト化された抗原特異的抗原結合分子を生成するためのプロセスであって、
(1)前記請求項のいずれかに記載の方法に従って準備されたライブラリーから所望のクローンを選択するステップ、
(2)これらのクローンから、ヒト化された抗原特異的抗原結合分子を単離および精製するステップ、
(3)ヒト化された抗原特異的抗原結合分子をコードするDNA配列を発現ベクターにクローニングするステップ、ならびに
(4)宿主を形質転換して発現ベクターを発現させるステップ
を含むプロセスが提供される。
【0101】
本発明の第3の態様に従うと、以下の式(I):
FW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4
によって表されるペプチドドメイン構造を有するヒト化された抗原特異的抗原結合分子を生成するための方法であって、
(1)FW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4の2つ以上の連続するペプチドドメインをコードするDNA配列を、CDR1ドメインまたはCDR3ドメインに相補的な複数の異種オリゴマーの存在下で増幅して、式(I)の抗原特異的抗原結合分子をコードする複数の増幅されたDNA配列を形成するステップであって、前記2つ以上の連続するペプチドドメインが、ライゲートされると、式(I)の抗原特異的抗原結合分子をコードし、式中、FW1が、-/D A/I/T S/Q/R V/M N/T/D Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T/R D/G T/A/S(配列番号1)に従った1つまたは複数のヒト化配列を含む、ステップ、
(2)2つ以上の連続するペプチドドメインをコードする前記増幅されたDNA配列を共にライゲートして、式(I)のペプチドドメイン構造を有する抗原特異的結合分子をコードするDNA配列を形成するステップ、
(3)(2)で得られたライゲートされたDNAをディスプレイベクターにクローニングするステップ、ならびに
(4)宿主を前記ディスプレイベクターで形質転換して、前記抗原特異的抗原結合分子のライブラリーを生成するステップ、
(5)ライブラリーから所望のクローンを選択するステップ、
(6)クローンから抗原特異的抗原結合分子を単離および精製するステップ、
(7)抗原特異的抗原結合分子をコードするDNA配列を発現ベクターにクローニングするステップ、ならびに
(8)宿主を形質転換して発現ベクターを発現させるステップ
を含む方法が提供される。
【0102】
本発明の一実施形態において、ステップ(1)におけるDNAの増幅は、システインを除いた任意のアミノ酸の配列をコードするオリゴマーの存在下で行われる。言い換えると、増幅されたDNAによってコードされる得られたCDR領域は、システインを含まない。しかし、他の実施形態においては、システインはCDR領域内に存在し得る。
【0103】
定義
本発明の抗原特異的抗原結合分子は、本発明の方法に従って準備されたVNAR分子の合成ライブラリーに由来し得るアミノ酸配列を含む。VNAR、IgNAR、およびNARという用語もまた、区別せずに使用され得る。
【0104】
アミノ酸は、本明細書において、一文字コードで、または3文字コードで、またはその両方で表されている。
【0105】
「アフィニティー精製」という用語は、分子を、パートナー部分に結合した状態または引き付けられた状態のままにしながら不純物から分離することを可能にする、組み合わせまたは複合体を形成するための、化学的パートナーまたは結合パートナーへの分子の特異的な引力または結合に基づく、分子の精製を意味する。
【0106】
「相補性決定領域」またはCDR(すなわち、CDR1およびCDR3)という用語は、その存在が抗原結合に必要である、VNARドメインのアミノ酸残基を指す。各VNARは、典型的には、CDR1およびCDR3と同定される3つのCDR領域を有する。各相補性決定領域は、「相補性決定領域」のアミノ酸残基および/または「超可変ループ」(HV)のアミノ酸残基を含み得る。一部の場合において、相補性決定領域は、CDR領域のアミノ酸と超可変ループのアミノ酸との両方を含み得る。VNAR分子についての一般に認められている命名法に従うと、CDR2領域は存在していない。本明細書において使用される場合、CDRまたはHVが配列を「含む」と言われる場合は常に、この用語には、同一の配列「からなる」CDRまたはHVも含まれる。
【0107】
「フレームワーク領域」(FW)は、CDR残基以外のVNAR残基の領域である。各VNARは、典型的には、FW1、FW2、FW3a、FW3b、およびFW4と同定される5つのフレームワーク領域を有する。本明細書において使用される場合、FWが配列を「含む」と言われる場合は常に、この用語には、同一の配列「からなる」FWも含まれる。
【0108】
「コドンセット」は、所望のバリアントアミノ酸をコードするために使用される異なるヌクレオチドトリプレット配列のセットを指す。オリゴヌクレオチドのセットは、例えば固相合成によって合成することができ、これは、コドンセットによって提供されるヌクレオチドトリプレットの全ての考えられる組み合わせを表し、所望のアミノ酸群をコードする、配列を含む。コドン指定の標準的な形態は、IUBコードの形態であり、これは、当技術分野において公知であり、本明細書において記載されている。
【0109】
コドンセットは、典型的には、イタリック体の3つの大文字、例えば、NNK、NNS、XYZ、DVKなどによって表される。「ランダムでないコドンセット」は、したがって、本明細書において記載されるアミノ酸選択の基準を部分的に、好ましくは完全に満たす選択アミノ酸をコードするコドンセットを指す。ある特定の位置での選択されたヌクレオチド「縮重」を伴うオリゴヌクレオチドの合成が当技術分野において周知であり、例えば、TRIMアプローチ(Knappekら、J.Mol.Biol.(1999)、296、57~86);GarrardおよびHenner、Gene(1993)、128、103)である。ある特定のコドンセットを有するこのようなオリゴヌクレオチドセットは、市販の核酸合成装置(例えば、Applied Biosystems、フォスター・シティ、CAから入手可能である)を使用して合成することができるか、または、商業的に(例えば、Life Technologies、ロックビル、MDから)入手することができる。特定のコドンセットを有する合成オリゴヌクレオチドセットは、異なる配列を有する複数のオリゴヌクレオチドを典型的に含み、配列のその違いは、配列全体内のコドンセットによって生じている。本発明に従って使用されるオリゴヌクレオチドは、VNAR核酸鋳型へのハイブリダイゼーションを可能にする配列を有し、また、都合の良い場合には、制限酵素部位を含み得る。
【0110】
「細胞」、「細胞系」、および「細胞培養物」は、区別せずに使用され(文脈により別段の指示がない限り)、このような指定には、細胞または細胞系の全ての子孫が含まれる。したがって、例えば、「形質転換体」および「形質転換細胞」のような用語には、初代対象細胞、および、移入の数に関わらずこれから派生した培養物が含まれる。全ての子孫は、意図的なまたは意図しない突然変異に起因して、DNA組成が正確に同一ではない場合があることも理解されたい。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングされたものと同一の機能または生物学的活性を有している突然変異子孫が含まれる。
【0111】
「制御配列」は、発現に関する場合、特定の宿主生物における作動可能に連結しているコード配列の発現に必要なDNA配列を意味する。原核生物に適した制御配列としては、例えば、プロモーター、場合によってオペレーター配列、リボソーム結合部位などが含まれる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーなどの制御配列を使用する。
【0112】
「外被タンパク質」という用語は、その少なくとも一部がウイルス粒子の表面に存在するタンパク質を意味する。機能的観点から、外被タンパク質は、宿主細胞におけるウイルスのアセンブリプロセスの際にウイルス粒子と結び付き、ウイルスが別の宿主細胞に感染するまで、アセンブリしたウイルスと結び付いたままでいる、あらゆるタンパク質である。
【0113】
特定のアッセイにおける化学的実体の「検出限界」は、そのアッセイのバックグラウンドレベルを上回って検出され得る、当該実体の最小濃度である。例えば、ファージELISAでは、特定の抗原結合断片を提示している特定のファージの「検出限界」は、抗原結合断片を提示していないコントロールファージによって生成されるシグナルを上回るELISAシグナルを当該特定のファージが生成するファージ濃度である。
【0114】
「融合タンパク質」および「融合ポリペプチド」は、共に共有結合している2つの部分を有するポリペプチドを指し、前記部分の各々は、異なる特性を有するポリペプチドである。特性は、生物学的特性、例えば、インビトロまたはインビボでの活性であり得る。特性はまた、単純な化学的または物理的特性、例えば、標的抗原への結合、反応の触媒などであり得る。2つの部分は、単一のペプチド結合によって直接連結されていても、または、1つもしくは複数のアミノ酸残基を有するペプチドリンカーを介して連結されていてもよい。一般に、2つの部分およびリンカーは、互いにリーディングフレーム内に存在する。好ましくは、ポリペプチドの2つの部分は、異種のまたは異なるポリペプチドから得られる。本発明のマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子は、2つ以上のVNARドメインを含むため、融合タンパク質の一例である。
【0115】
この明細書における「融合タンパク質」という用語は、一般的には、水素結合もしくは塩架橋を含む化学的手段によって、またはタンパク質合成を介するペプチド結合によって、またはこれらの両方によって共に繋がった、1つまたは複数のタンパク質を意味する。
【0116】
「異種DNA」は、宿主細胞に導入されているあらゆるDNAである。DNAは、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、およびこれらの融合体または組み合わせを含む、様々な由来源に由来し得る。DNAは、宿主細胞もしくはレシピエント細胞と同一の細胞もしくは細胞型に由来するDNA、または、異なる細胞型に由来する、例えば同種異系のもしくは異種の由来源に由来するDNAを含み得る。DNAは、場合によって、マーカーまたは選択遺伝子、例えば、抗生物質耐性遺伝子、温度耐性遺伝子などを含み得る。
【0117】
「多様性の高い位置」は、公知のおよび/または天然に生じる抗体または抗原結合断片のアミノ酸配列を比較すると、ある位置で表される多くの異なるアミノ酸を有する軽鎖および重鎖の可変領域内にある、当該アミノ酸位置を指す。多様性の高い位置は、典型的には、CDR領域内にある。
【0118】
「同一性」は、配列の比較によって決定される、2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌクレオチド配列の間の関係を指す。同一性はまた、場合に応じて、このような配列鎖の間のマッチによって決定される、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列の間の配列関係性(相同性)の程度を意味する。2つのポリペプチド配列または2つのポリヌクレオチド配列の間の同一性を測定するための多くの方法が存在しているが、同一性を決定するために一般に利用される方法は、コンピュータプログラムに体系化されている。2つの配列の間の同一性を決定するための好ましいコンピュータプログラムとしては、限定されないが、GCGプログラムパッケージ(Devereuxら、Nucleic acids Research、12、387(1984);BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Atschulら、J.Molec.Biol.(1990)215、403))が含まれる。
【0119】
好ましくは、タンパク質のアミノ酸配列は、HGMP(Human Genome Mapping Project)によって提供されているBLASTコンピュータプログラム(Atschulら、J.Mol.Biol.(1990)215、403~410)のデフォルトパラメータを使用して、アミノ酸レベルで、本明細書において開示されているアミノ酸配列に対して少なくとも50%の同一性を有している。
【0120】
さらに好ましくは、タンパク質配列は、核酸またはアミノ酸レベルで、本明細書において示されているアミノ酸配列に対して少なくとも55%、60%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、およびまたさらに好ましくは95%(またさらに好ましくは少なくとも96%、97%、98%、または99%)の同一性を有し得る。
【0121】
タンパク質はまた、HGMPによって提供されているBLASTコンピュータプログラムのデフォルトパラメータを使用して、本明細書において開示されている配列と少なくとも50%、55%、60%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する配列を含み得る。
【0122】
「ライブラリー」は、複数のVNARもしくはVNAR断片配列(例えば、本発明のポリペプチド)、またはこれらの配列をコードする核酸を指し、これらの配列は、本発明の方法に従ってこれらの配列内に導入されているバリアントアミノ酸の組み合わせが異なっている。
【0123】
「ライゲーション」は、2つの核酸断片の間のリン酸ジエステル結合を形成するプロセスである。2つの断片のライゲーションでは、断片の末端は、互いに適合していなければならない。一部のケースにおいて、末端は、エンドヌクレアーゼ消化の後、すぐに適合する。しかし、エンドヌクレアーゼ消化の後に一般に生じる付着末端を平滑末端に変換して当該末端をライゲーションに適合させることが、まず必要である場合がある。末端を平滑化するために、DNAを、適切な緩衝液中で、4つのデオキシリボヌクレオチド三リン酸の存在下で、約10単位の、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片またはT4 DNAポリメラーゼで、15℃で少なくとも15分間処理する。DNAを次いで、フェノール-クロロホルム抽出およびエタノール沈殿によって、またはシリカ精製によって精製する。共にライゲートされるDNA断片を、およそ等しいモル量で溶液中に入れる。溶液はまた、ATP、リガーゼ緩衝液、およびリガーゼ、例えば、DNA0.5μg当たり約10単位のT4 DNAリガーゼを含有する。DNAがベクターにライゲートされる場合、ベクターは、適切な制限エンドヌクレアーゼでの消化によってまず線状化される。線状化された断片は次いで、ライゲーションステップの間のセルフライゲーションを防ぐために、細菌アルカリホスファターゼまたは仔牛小腸由来のホスファターゼで処理される。
【0124】
「突然変異」は、野生型配列などの参照ヌクレオチド配列に対する、ヌクレオチドの欠失、挿入、または置換である。
【0125】
「天然の」または「天然に生じる」VNARは、非合成由来源、例えばエクスビボで得られた組織由来源から同定された、または板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)の動物の血清から同定された、VNARを指す。これらのVNARには、天然のまたはそれ以外の様式で誘導される、あらゆるタイプの免疫応答で生じるVNARが含まれ得る。天然のVNARとしては、アミノ酸配列、およびこれらの抗体を構成するまたはコードするヌクレオチド配列が含まれる。本明細書において使用される場合、天然のVNARは、「合成VNAR」とは異なるものであり、合成VNARは、例えば、ある特定の位置の1つのアミノ酸または2つ以上のアミノ酸の、由来源抗体配列と異なる抗体配列を提供する異なるアミノ酸での置換、欠失、または付加によって、由来源配列または鋳型配列から変化している、VNAR配列を指す。
【0126】
「核酸構築物」という用語は、一般に、任意の長さの、DNA、cDNA、またはRNA、例えば、クローニングによって得られたまたは化学合成によって生成されたmRNAであり得る、核酸を指す。DNAは、一本鎖または二本鎖であり得る。一本鎖DNAは、コードしているセンス鎖であり得るか、または非コード鎖もしくはアンチセンス鎖であり得る。治療的使用では、核酸構築物は、好ましくは、処置対象において発現し得る形態である。
【0127】
「作動可能に連結している」は、核酸に言及している場合、核酸が別の核酸配列と機能的関係に置かれていることを意味する。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現していれば、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結しており、プロモーターもしくはエンハンサーは、配列の転写に影響する場合には、コード配列に作動可能に連結しており、または、リボソーム結合部位は、翻訳を促進するように位置していれば、コード配列に作動可能に連結している。一般に、「作動可能に連結している」は、連結されるDNA配列が連続的であることを意味し、分泌リーダーのケースでは、偶発的でありリーディングフレーム内にあることを意味する。しかし、エンハンサーは、連続的である必要はない。連結は、都合の良い制限部位でのライゲーションによって行われる。このような部位が存在しない場合には、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが従来の慣例に従って使用される。
【0128】
「ファージディスプレイ」は、バリアントポリペプチドを、ファージ、例えば繊維状ファージの粒子の表面上の外被タンパク質の少なくとも一部への融合タンパク質として提示するための技術である。ファージディスプレイ技術によって、高い親和性で標的抗原に結合する配列について迅速であり効率的に選別され得る、ランダム化されたタンパク質バリアントの大きなライブラリーを準備することが可能となる。ファージ上でのペプチドライブラリーおよびタンパク質ライブラリーの提示は、特異的結合特性を有するポリペプチドについて数百万のポリペプチドをスクリーニングするために使用することができる。多価ファージディスプレイ方法が、繊維状ファージの外被タンパク質pIII、pVIII、pVI、pVII、またはpIXをコードする遺伝子への融合を介する、低分子ランダムペプチドおよび低分子タンパク質の提示に使用されている。
【0129】
「ファージミド」は、細菌の複製起点、例えばColElと、バクテリオファージの遺伝子間領域のコピーとを有する、プラスミドベクターである。ファージミドは、糸状バクテリオファージおよびラムダ様バクテリオファージを含むあらゆる公知のバクテリオファージで使用され得る。プラスミドはまた、抗生物質耐性についての選択マーカーを一般に有する。これらのベクターにクローニングされたDNAのセグメントは、プラスミドとして増幅させることができる。これらのベクターを有する細胞に、ファージ粒子の生成に必要な全ての遺伝子が供給されると、プラスミドの複製態様はローリングサークル複製に変化して、プラスミドDNAの一本鎖のコピーが生成され、ファージ粒子がパッケージングされる。ファージミドは、感染性または非感染性のファージ粒子を形成し得る。この用語には、異種ポリペプチド遺伝子に連結しているファージ外被タンパク質遺伝子またはその断片を遺伝子融合体として有しており、その結果、異種ポリペプチドがファージ粒子の表面に提示されている、ファージミドが含まれる。ファージミドディスプレイベクターの一例は、pWRIL-1である。
【0130】
用語「ファージベクター」は、異種遺伝子を有し、複製が可能な、バクテリオファージの二本鎖複製形態を意味する。ファージベクターは、ファージの複製およびファージ粒子の形成を可能にするファージ複製起点を有する。ファージは、好ましくは、糸状バクテリオファージ、例えば、M13ファージ、flファージ、fdファージ、Pf3ファージ、もしくはこれらの誘導体、または、ラムダ様ファージ、例えば、ラムダ、21、phi80、phi81、もしくはこれらの誘導体である。
【0131】
「タンパク質」という用語は、一般的には、ペプチド結合によって共に繋がった複数のアミノ酸残基を意味する。これは、区別せずに使用され、ペプチド、オリゴペプチド、オリゴマー、またはポリペプチドと同一の意味であり、そして、糖タンパク質およびその誘導体を含む。「タンパク質」という用語はまた、タンパク質の断片、類似体、バリアント、および誘導体も含むものであり、ここで、断片、類似体、バリアント、または誘導体は、参照タンパク質と本質的に同一の生物学的活性または機能を保持している。タンパク質の類似体および誘導体の例としては、ペプチド核酸、およびDARPin(設計されたアンキリンリピートタンパク質)が含まれる。
【0132】
タンパク質の断片、類似体、バリアント、または誘導体は、それが由来した元である起源タンパク質配列の長さに応じて、少なくとも25の、好ましくは30もしくは40の、または最大50もしくは100の、または60から120のアミノ酸長であり得る。90から120、100から110アミノ酸長が、一部の場合において都合が良い場合がある。
【0133】
タンパク質の断片、誘導体、バリアント、または類似体は、(i)アミノ酸残基の1つもしくは複数が、保存されたもしくは保存されていないアミノ酸残基(好ましくは、保存されたアミノ酸残基)で置換されており、このような置換されたアミノ酸残基が、遺伝子コードによってコードされているアミノ酸残基であってもなくてもよい、断片、誘導体、バリアント、もしくは類似体、または(ii)アミノ酸残基の1つもしくは複数が置換基を含む、断片、誘導体、バリアント、もしくは類似体、または(iii)さらなるアミノ酸が、成熟ポリペプチド、例えば、ポリペプチドの精製に利用されるリーダー配列もしくは補助配列に融合している、断片、誘導体、バリアント、もしくは類似体であり得る。このような断片、誘導体、バリアント、および類似体は、本明細書における教示から当業者の範囲内であるとみなされる。
【0134】
「オリゴヌクレオチド」は、公知の方法(固相技術を使用する、リン酸トリエステル化学、ホスファイト化学、またはホスホロアミダイト化学など)によって化学的に合成される、長さの短い、一本鎖または二本鎖のポリデオキシヌクレオチドである。さらなる方法としては、遺伝子の核酸配列全体が分かっている場合、またはコード鎖に相補的な核酸の配列が利用可能な場合に使用される、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が含まれる。あるいは、標的アミノ酸配列が分かっている場合には、各アミノ酸残基についての公知のおよび好ましいコード残基を使用して、考えられる核酸配列を推定することができる。オリゴヌクレオチドは、ポリアクリルアミドゲルもしくは分子サイジングカラムで、または沈殿によって精製することができる。DNAは、DNAが非核酸不純物(これは、極性、非極性、イオン性などであり得る)から分離されている場合、「精製」されている。
【0135】
「由来源」VNARまたは「鋳型」VNAR」は、本明細書において使用される場合、本明細書において記載される基準に従った多様化が行われる際に、その抗原結合配列が鋳型配列として機能する、VNARまたはVNAR抗原結合断片を指す。抗原結合配列は、一般に、VNAR内に好ましくは少なくとも1つのCDRを含み、好ましくはフレームワーク領域を含む。
【0136】
「転写調節エレメント」は、以下の構成要素:エンハンサーエレメント、プロモーター、オペレーター配列、リプレッサー遺伝子、および転写終結配列の1つまたは複数を有する。
【0137】
「形質転換」は、細胞がDNAを取り込み、「形質転換体」となるプロセスを意味する。DNAの取り込みは、永続的または一時的であり得る。「形質転換体」は、DNAを取り込み、維持している細胞であり、これは、当該DNAに関連する表現型(例えば、当該DNAによってコードされているタンパク質によって付与された抗生物質耐性)の発現によって確認される。
【0138】
融合タンパク質(ポリペプチド)または異種ポリペプチド(ファージに対して異種の)などの、出発ポリペプチドまたは参照ポリペプチド(例えば、由来源VNARまたはそのCDR)の「バリアント」または「突然変異体」は、(1)出発ポリペプチドまたは参照ポリペプチドのアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有する、および(2)天然のまたは人工の突然変異生成を介して出発ポリペプチドまたは参照ポリペプチドから派生した、ポリペプチドである。このようなバリアントは例えば、目的のポリペプチドのアミノ酸配列内の残基からの欠失、および/または当該残基への挿入、および/または当該残基の置換を含む。例えば、バリアントアミノ酸(由来源VNARまたは抗原結合断片における対応する位置で見られるアミノ酸に対する)を有する配列をコードする非ランダムなコドンセットを含むオリゴヌクレオチドを使用して生成された本発明の融合ポリペプチドは、由来源VNARまたは抗原結合断片に対するバリアントポリペプチドとなる。したがって、バリアントCDRは、出発ポリペプチド配列または参照ポリペプチド配列(由来源VNARまたは抗原結合断片のポリペプチド配列など)に対するバリアント配列を含むCDRを指す。バリアントアミノ酸は、この文脈において、出発ポリペプチド配列または参照ポリペプチド配列(由来源VNARまたは抗原結合断片のポリペプチド配列など)における対応する位置にあるアミノ酸と異なるアミノ酸を指す。最終構築物が所望の機能的特徴を有するという条件で、欠失、挿入、および置換のあらゆる組み合わせが、最終バリアントまたは突然変異構築物を得るために行われ得る。アミノ酸の変化はまた、グリコシル化部位の数または位置の変更などの、ポリペプチドの翻訳後プロセスを改変し得る。
【0139】
「野生型」もしくは「参照」配列、または、「野生型」もしくは「参照」タンパク質/ポリペプチドの、例えば外被タンパク質もしくは由来源VNARのCDRの配列は、突然変異の導入を介してバリアントポリペプチドがそこから派生する参照配列であり得る。通常、所与のタンパク質の「野生型」配列は、自然界で最も一般的な配列である。同様に、「野生型」遺伝子配列は、自然界で最も一般的に見られる、当該遺伝子の配列である。突然変異は、天然のプロセスを介してまたは人為的な手段を介して、「野生型」遺伝子(およびひいては、それがコードするタンパク質)に導入することができる。このようなプロセスの生成物は、起源の「野生型」タンパク質または遺伝子の「バリアント」または「突然変異」形態である。
【0140】
「ヒト化された」抗原特異的抗原結合分子は、特異的抗原上の特異的エピトープに対する機能的結合活性を保持しながら、インビボでの免疫原性の可能性を低減させるために、1つまたは複数のアミノ酸配列位置で修飾され得る。
【0141】
抗体可変ドメインのヒト化は、ヒト以外の種において作られている、治療上有用な標的に対する抗体を修飾し、その結果、ヒト化形態が、ヒト対象に投与された時の望ましくない免疫学的反応を避け得るようにするための、当技術分野において周知の技術である。ヒト化に関連する方法は、Almagro J.CおよびWilliam Strohl W.Antibody Engineering:Humanization,Affinity Maturation,and Selection Techniques in Therapeutic Monoclonal Antibodies:From Bench to Clinic.An J.編、2009、John Wiley & Sons,Inc、ならびに、Strohl W.R.およびStrohl L.M.、Therapeutic Antibody Engineering、Woodhead Publishing、2012において概説されている。
【0142】
IgNARは、免疫グロブリンと比較して起源が異なり、免疫グロブリン可変ドメインと比較して非常にわずかな配列相同性しか有さないが、免疫グロブリンの可変ドメインとIgNARの可変ドメインとの間にはある程度の構造的類似性が存在し、そのため、類似のプロセスをVNARドメインに適用することができる。例えば、参照によって組み込まれるWO2013/167883は、VNARのヒト化についての記載を提供しており、Kovalenko O.V.ら、J Biol Chem.2013.288(24):17408~19頁もまた参照されたい。
【0143】
ヒト化された抗原特異的結合分子は、1つまたは複数のフレームワークアミノ酸残基をDPK-9の対応するフレームワークアミノ酸残基で置換することによって、野生型抗原特異的結合分子と異なるものになり得る。DPK-9は、可変カッパサブグループ1(Vκ1)のメンバーであるヒト生殖細胞系VL足場である。DPK-9は、
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSYSTPNTFGQGTKVEIK
(配列番号40)
に従った配列を有する。
【0144】
VNARおよびDPK-9の配列は、(図1)で示されている通りにアラインされ得る。
【0145】
ライブラリーの多様性
CDR1およびCDR3というCDR領域におけるアミノ酸位置は、各位置で一般に生じるアミノ酸をコードするランダムでないコドンセットを使用して、それぞれ突然変異させることができる。一部の実施形態において、CDR領域内の1つの位置が突然変異される場合、その位置のアミノ酸の好ましくは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、好ましくは全てをコードするコドンセットが選択される。一部の実施形態において、CDR領域内の1つの位置が突然変異される場合、その位置の全てのアミノ酸の好ましくは約50%から約100%、好ましくは約60%から約95%、好ましくは少なくとも約70%から約90%、好ましくは約75%から約90%をコードするコドンセットが選択される。
【0146】
VNARのライブラリーの多様性は、VNARの構造的混乱を最小化しながら多様性を最大化して、親和性が高い抗原特異的抗原結合分子を単離する能力を増大させ、また細胞培養において高収量で生成され得るこのような分子を提供するように、設計される。VNAR可変ドメインにおける突然変異位置の数は最小化されており、各位置のバリアントアミノ酸は、一般には生じないアミノ酸および停止コドンを適切に(可能である場合)排除しながら、システインを除いた各位置の一般に生じるアミノ酸を含むように、設計されている。
【0147】
ライブラリーにおける多様性は、少なくとも1つのCDRにおける位置を非ランダムなコドンセットを使用して突然変異させることによって設計されている。非ランダムなコドンセットは、システインおよび停止コドンなどの非標的配列を最小化しながら、これらの位置にある一般に生じるアミノ酸の少なくとも1つのサブセットを好ましくはコードする。
【0148】
各位置の非ランダムなコドンセットは、少なくとも2つのアミノ酸を好ましくはコードし、システインはコードしない。各位置の非標的アミノ酸は最小化されており、システインおよび停止コドンは、構造に悪影響を与え得るため、一般におよび好ましくは排除される。
【0149】
上述したように、バリアントアミノ酸は、非ランダムなコドンセットによってコードされている。コドンセットは、所望のアミノ酸群をコードするために使用されるオリゴヌクレオチドのセットを形成するために使用され得る異なるヌクレオチドトリプレット配列のセットである。オリゴヌクレオチドのセットは、例えば固相合成によって合成することができ、これは、コドンセットによって提供されるヌクレオチドトリプレットの全ての考えられる組み合わせに相当し、所望のアミノ酸群をコードする、配列を有する。ある特定の位置での選択されたヌクレオチドの「縮重」を伴うオリゴヌクレオチドの合成は、標準的な手順である。
【0150】
ある特定のコドンセットを有するこのようなヌクレオチドのセットは、市販の核酸合成装置(例えば、Applied Biosystems、フォスター・シティ、CAから入手可能である)を使用して合成することができるか、または商業的に(例えば、Gene Link Inc、ホーソーン、NY、もしくはLife Technologies、ロックビル、MDから)入手することができる。したがって、特定のコドンセットを有する合成オリゴヌクレオチドのセットは、異なる配列を有する複数のオリゴヌクレオチドを典型的に含み、配列のその違いは、配列全体内のコドンセットによって生じている。本発明に従って使用されるオリゴヌクレオチドは、可変ドメイン核酸の鋳型へのハイブリダイゼーションを可能にする配列を有し、また、クローニングを目的とした制限酵素部位を含み得る。
【0151】
一実施形態において、バリアントCDR1およびCDR3またはこれらの混合物を有するポリペプチドが形成され、これにおいて、少なくとも1つのバリアントCDRは、少なくとも1つのアミノ酸位置にバリアントアミノ酸を含み、バリアントアミノ酸は、非ランダムなコドンセットによってコードされ、非ランダムなコドンセットによってコードされるアミノ酸の少なくとも70%は、公知の可変ドメイン配列におけるその位置での標的アミノ酸である。
【0152】
選択されたアミノ酸を鋳型核酸内に置換する方法は、当技術分野において良く確立されており、これらの方法の一部は、本明細書において記載されている。例えば、ライブラリーは、Kunkelの方法(Kunkelら、Methods Enzymol.(1987)154、367~382)を使用して、少なくとも1つのCDR領域におけるアミノ酸位置を、バリアントアミノ酸でのアミノ酸置換のために標的化することによって、生成することができる。
【0153】
コドンセットは、所望のバリアントアミノ酸をコードするために使用される異なるヌクレオチドトリプレット配列のセットである。コドンセットは、IUBコードに従った、以下に示すような、特定のヌクレオチドまたは等モルのヌクレオチド混合物を指定するための記号を使用して表すことができる。典型的には、コドンセットは、3つの大文字、例えば、RRK、GST、TKG、TWC、KCC、KCT、およびTRMによって表される。
IUBコード
G グアニン
A アデニン
T チミン
C シトシン
R(AまたはG)
Y(CまたはT)
M(AまたはC)
K(GまたはT)
S(CまたはG)
W(AまたはT)
H(AまたはCまたはT)
B(CまたはGまたはT)
V(AまたはCまたはG)
D(AまたはGまたはT)
N(AまたはCまたはGまたはT)。
【0154】
オリゴヌクレオチドセットまたはプライマーセットは、標準的な方法を使用して合成することができる。オリゴヌクレオチドのセットは、例えば固相合成によって合成することができ、これは、コドンセットによって提供されるヌクレオチドトリプレットの全ての考えられる組み合わせを表し、所望のアミノ酸群をコードする、配列を含む。
【0155】
ある特定の位置での選択されたヌクレオチド「縮重」を伴うオリゴヌクレオチドの合成は、当技術分野において周知である。ある特定のコドンセットを有するこのようなオリゴヌクレオチドのセットは、市販の核酸合成装置(例えば、Applied Biosystems、フォスター・シティ、CAから入手可能である)を使用して合成することができるか、または、商業的に(例えば、Gene Link Inc、ハーソーン、NY、もしくはLife Technologies、ロックビル、MDから)入手することができる。したがって、特定のコドンセットを有する合成オリゴヌクレオチドセットは、異なる配列を有する複数のオリゴヌクレオチドを典型的に含み、配列のその違いは、配列全体内のコドンセットによって生じている。本発明に従って使用されるオリゴヌクレオチドは、可変ドメイン核酸の鋳型へのハイブリダイゼーションを可能にする配列を有し、また、クローニングを目的とした制限酵素部位を含み得る。
【0156】
1つの方法において、バリアントアミノ酸をコードする核酸配列は、本明細書において開示されているVNAR配列のD1もしくはC4などの由来源ポリペプチドまたは鋳型ポリペプチドをコードする核酸配列のオリゴヌクレオチド介在性の突然変異生成によって、生成することができる。この技術は、Zollerら、Nucleic Acids Res.(1987)10、6487~6504(1987)によって記載されているように、当技術分野において周知である。簡潔に述べると、バリアントアミノ酸をコードする核酸配列は、所望のコドンセットをコードするオリゴヌクレオチドセットをDNA鋳型にハイブリダイズすることによって生成され、ここで、鋳型は、可変領域核酸の鋳型配列を有する一本鎖形態のプラスミドである。ハイブリダイゼーションの後、DNAポリメラーゼを使用して鋳型の第2の相補鎖の全体を合成し、当該相補鎖はこうして、オリゴヌクレオチドプライマーを組み込み、オリゴヌクレオチドセットによって提供されるコドンセットを有することになる。
【0157】
他の由来源分子または鋳型分子をコードする核酸は公知であるか、または容易に決定することができる。一般に、少なくとも25ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドが使用される。最適なオリゴヌクレオチドは、突然変異をコードするヌクレオチドのいずれか側にある鋳型に対して完全に相補的な12から15のヌクレオチドを有する。これによって、オリゴヌクレオチドが一本鎖DNA鋳型分子に適切にハイブリダイズすることが確実となる。オリゴヌクレオチドは、Creaら、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA(1987)75:5765によって記載されているような当技術分野において公知の技術を使用して容易に合成される。
【0158】
DNA鋳型は、バクテリオファージM13ベクター(市販されているM13mpl8ベクターおよびM13mpl9ベクターが適切である)に由来するベクター、または、Vieraら、Methods Enzymol.(1987)153、3によって記載されている一本鎖ファージ複製起点を有するベクターによって生成され得る。したがって、一本鎖鋳型を生成するために、突然変異させようとしているDNAを、これらのベクターの1つに挿入することができる。
【0159】
ネイティブなDNA配列を改変するために、オリゴヌクレオチドは、適切なハイブリダイゼーション条件下で、一本鎖の鋳型にハイブリダイズされる。DNAポリマー化酵素、通常はT7 DNAポリメラーゼ、またはDNAポリメラーゼIのクレノウ断片が次いで、オリゴヌクレオチドを合成のためのプライマーとして使用して鋳型の相補鎖を合成するために添加される。ヘテロ二本鎖分子がこうして形成され、その結果、DNAの一方の鎖は突然変異形態のコード配列1をコードし、他方の鎖(元の鋳型)は、コード配列1のネイティブな改変されていない配列をコードする。このヘテロ二本鎖分子は次いで、適切な宿主細胞、通常は大腸菌(E.coli)JM101などの原核生物に形質転換される。細胞を増殖させた後、これらの細胞をアガロースプレートに播種し、32リン酸で放射性標識されたオリゴヌクレオチドプライマーを使用してスクリーニングして、突然変異したDNAを有する細菌コロニーを同定する。
【0160】
今記載した方法は、プラスミドの両方の鎖が突然変異を有するホモ二本鎖分子が生成されるように修正されてもよい。修正は以下の通りである:一本鎖オリゴヌクレオチドを、上記のような一本鎖鋳型にアニーリングする。デオキシリボアデノシン(dATP)、デオキシリボグアノシン(dGTP)、およびデオキシリボチミジン(dTT)という3つのデオキシリボヌクレオチドの混合物を、dCTP-(aS)と呼ばれる修飾されたチオデオキシリボシトシン(これは、Amershamから入手することができる)と組み合わせる。この混合物を、鋳型-オリゴヌクレオチド複合体に添加する。DNAポリメラーゼをこの混合物に添加すると、突然変異した塩基以外が鋳型に同一のDNA鎖が生成する。加えて、この新たなDNA鎖はdCTPの代わりにdCTP-(aS)を有し、これは、制限エンドヌクレアーゼ消化から鎖を保護するために役立つ。二本鎖ヘテロ二本鎖の鋳型鎖に、適切な制限酵素でニックを入れた後、当該鋳型鎖を、突然変異を生成しようとする部位を有する領域を過ぎたところで、ExoIIIヌクレアーゼまたは別の適切なヌクレアーゼで消化することができる。反応を次いで停止させて、部分的にのみ一本鎖である分子を残す。完全な二本鎖DNAのホモ二本鎖を次いで、4つ全てのデオキシリボヌクレオチド三リン酸、ATP、およびDNAリガーゼの存在下でDNAポリメラーゼを使用して形成する。このホモ二本鎖分子を次いで、適切な宿主細胞に形質転換させることができる。
【0161】
これまでに示されているように、オリゴヌクレオチドセットの配列は、鋳型核酸にハイブリダイズするために十分な長さであり、また、必ずしもそうではないが、制限部位を有し得る。DNA鋳型は、バクテリオファージM13ベクターに由来するベクター、またはVieraら(Meth.Enzymol.(1987)、153、3)によって記載されている一本鎖ファージ複製起点を有するベクターによって生成され得る。したがって、一本鎖鋳型を生成するために、突然変異させようとしているDNAは、これらのベクターの1つに挿入されなければならない。
【0162】
オリゴヌクレオチドセットは、核酸鋳型配列を鋳型として使用して核酸カセットを生成するポリメラーゼ連鎖反応において使用することができる。核酸鋳型配列は、VNAR分子(すなわち、置換のために標的化されたアミノ酸をコードする核酸配列)の任意の部分であり得る。核酸鋳型配列は、第1の核酸鎖および相補的な第2の核酸鎖を有する二本鎖DNA分子の一部である。核酸鋳型配列は、VNARドメインの少なくとも一部を有し、また、少なくとも1つのCDRを有する。一部のケースにおいて、核酸鋳型配列は、2つ以上のCDRを有する。核酸鋳型配列の上流部分および下流部分は、上流のオリゴヌクレオチドセットおよび下流のオリゴヌクレオチドセットのメンバーとのハイブリダイゼーションのために標的化することができる。
【0163】
上流のプライマーセットの第1のオリゴヌクレオチドは第1の核酸鎖にハイブリダイズし得、下流のプライマーセットの第2のオリゴヌクレオチドは第2の核酸鎖にハイブリダイズし得る。オリゴヌクレオチドプライマーは、1つまたは複数のコドンセットを含み得、核酸鋳型配列の一部にハイブリダイズするように設計され得る。これらのオリゴヌクレオチドを使用することで、PCR後にPCR産物(すなわち、核酸カセット)内に2つ以上のコドンセットを導入することができる。VNARドメインをコードする核酸配列の領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーは、アミノ酸置換のために標的化されたCDR残基をコードする部分を含む。
【0164】
上流および下流のオリゴヌクレオチドセットはまた、オリゴヌクレオチド配列内に制限部位を含むように合成することができる。これらの制限部位は、追加のVNAR配列を有する発現ベクター内への核酸カセット(すなわち、PCRの反応生成物)の挿入を促進し得る。
【0165】
タンパク質発現
本発明の抗原特異的抗原結合分子をコードする核酸配列は、核酸構築物内に存在し得る。このような核酸構築物は、ベクター、例えば発現ベクターの形態であり得、またこれら構築物としては、とりわけ、染色体ベクター、エピソーム性ベクター、およびウイルス由来のベクター、例えば、細菌プラスミドに由来するベクター、バクテリオファージに由来するベクター、トランスポゾンに由来するベクター、酵母エピソームに由来するベクター、挿入エレメントに由来するベクター、酵母染色体エレメントに由来するベクター、ウイルスに由来するベクター、例えば、バキュロウイルス、SV40などのパポーバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、およびレトロウイルスに由来するベクター、ならびに、これらの組み合わせに由来するベクター、例えば、プラスミドおよびバクテリオファージの遺伝子エレメントに由来する、例えばコスミドおよびファージミドに由来するベクターが含まれ得る。一般に、宿主内で核酸を維持するか、増幅させるか、または発現させてポリペプチドを発現させるために適切なあらゆるベクターを、この点に関する発現に使用することができる。
【0166】
核酸構築物は、核酸の発現を制御するプロモーターまたは他の調節配列を適切に含み得る。核酸の発現を制御するプロモーターおよび他の調節配列は同定されており、当技術分野において公知である。当業者であれば、プロモーターまたは他の調節配列全体を必ずしも利用する必要はないであろうことが分かるであろう。最小の必須の調節エレメントのみが必要であり得、実際、このようなエレメントが、キメラ配列または他のプロモーターを構築するために使用され得る。必須の要件は、当然のことながら、組織特異性および/または時間的特異性を保持することである。プロモーターは、任意の適切な公知のプロモーター、例えば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、CMV前初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼ、初期および後期SV40プロモーター、またはレトロウイルスのLTRのプロモーター、例えば、ラウス肉腫ウイルス(RSV)のLTRのプロモーター、ならびにメタロチオネインプロモーター、例えば、マウスメタロチオネイン-Iプロモーターであり得る。プロモーターは、プロモーター活性のために含まれる最小単位(エンハンサーエレメントを場合によって有さないTATAエレメントなど)、例えば、CMVプロモーターの最小配列を含み得る。好ましくは、プロモーターは、核酸配列に隣接している。
【0167】
本明細書において記載されているように、核酸構築物は、ベクターの形態であり得る。ベクターは、ベクターでトランスフェクトされた(または形質転換された)細胞の選択を可能にする、および好ましくは、異種DNAを組み込むベクターを含有している細胞の選択を可能にする、1つまたは複数の発現マーカーを含むことが多い。適切な開始シグナルおよび停止シグナルが、一般に存在する。
【0168】
ベクターは、pETなどの任意の適切な発現ベクターであり得る。ベクターは、このような追加の制御配列、例えば、開始配列および終結配列を含む、選択マーカー(例えば、抗生物質耐性、蛍光など)、転写制御配列、およびプロモーターを必要に応じて含み得る
プロモーターは、本発明の核酸配列によってコードされるタンパク質の発現を生じさせるための任意の適切なプロモーター、例えば、CMVプロモーター、ヒトホスホグリセリン酸キナーゼ(hPGK)プロモーターであり得る。
【0169】
このようなベクターは、宿主細胞内に存在し得る。本発明の核酸構築物の発現のための適切な宿主細胞の代表的な例としては、ウイルスベクター内への核酸のカプセル化を可能にするウイルスパッケージング細胞;細菌細胞、例えば、Streptococci、Staphylococci、大腸菌、Streptomyces、およびBacillus subtilis;単細胞、例えば酵母細胞、例えば、Saccharomyces cerevisiae、およびAspergillus細胞;昆虫細胞、例えば、Drosophila S2細胞およびSpodoptera Sf9細胞;動物細胞、例えば、CHO、COS、C127、3T3、PHK.293、およびボウズ・メラノーマ(Bowes Melanoma)細胞、および他の適切なヒト細胞;ならびに植物細胞、例えばArabidopsis thalianaが含まれる。適切には、宿主細胞は、CHO細胞またはHEK293細胞などの真核細胞である。
【0170】
宿主細胞への発現ベクターの導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、マイクロインジェクション、陽イオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、スクレープ・ローディング、バリスティック導入、感染、または他の方法によって行うことができる。このような方法は、Sambrookら、Molecular Cloning,a Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989)などの、多くの標準的な実験マニュアルにおいて記載されている。
【0171】
成熟タンパク質は、CHO細胞、酵母、細菌、または他の細胞などの哺乳動物細胞を含む宿主細胞において、適切なプロモーターの制御下で発現させることができる。本発明の第3の態様の核酸構築物に由来するRNAを使用してこのようなタンパク質を生成するために、無細胞翻訳システムを利用することができる。原核生物宿主および真核生物宿主と共に使用するための適切なクローニングベクターおよび発現ベクターは、Sambrookら、Molecular Cloning,a Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989)によって記載されている。
【0172】
本発明はまた、本明細書において記載される本発明のポリヌクレオチドおよび/またはベクターのいずれかを含む宿主細胞も提供する。本発明に従うと、本発明の抗原特異的抗原結合分子をコードする核酸配列を、本明細書において定義される適切な宿主細胞において発現させるステップを含む、前記分子を生成するためのプロセスが提供される。
【0173】
タンパク質は、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、レクチンおよび/またはヘパリンクロマトグラフィーを含む標準的な方法によって、組換え細胞培養物から回収および精製することができる。治療のためには、例えば組換えベクターの形態の核酸構築物は、当技術分野において公知の技術によって、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning,a Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989)において記載されているようなカラムクロマトグラフィーによって、精製することができる。
【0174】
本発明はまた、本明細書において定義される抗原特異的抗原結合分子を含む融合タンパク質にも及ぶ。抗原特異的抗原結合分子は、生物学的に活性なタンパク質に融合される。本発明はまた、本明細書において開示されている抗原特異的抗原結合分子コードする核酸またはその融合タンパク質にも及ぶ。
【0175】
本発明のこの態様は、したがって、宿主細胞における発現による組換えによる融合タンパク質の生成と、ペプチド結合、水素結合もしくは塩結合、または化学的架橋による発現した融合タンパク質の精製とを含む、本発明の融合タンパク質を準備するためのプロセスに及ぶ。本発明のこの態様の一部の実施形態において、融合タンパク質は、水素結合または塩結合を使用して準備することができ、ここで、ペプチドは、多量体化、例えば二量体化または三量体化することができる。
【0176】
ライブラリーとしてのタンパク質発現
別の態様において、本発明は、本発明の複数のベクターを含むライブラリーであって、前記複数のベクターが複数のポリペプチドをコードする、ライブラリーを提供する。したがって、本発明は、本発明のポリペプチドをその表面に提示しているウイルスまたはウイルス粒子(ファージまたはファージミド粒子など)を提供する。本発明はまた、本発明の複数のウイルスまたはウイルス粒子を含むライブラリーであって、各ウイルスまたはウイルス粒子が本発明のポリペプチドを提示しているライブラリーも提供する。本発明のライブラリーは、任意の数の異なるポリペプチド(配列)、少なくとも約1×10個の、少なくとも約1×10個の、少なくとも約1×1010個の異なる配列、より適切には少なくとも約9×1010個の配列を含み得る。
【0177】
本発明はまた、複数のポリペプチドを含有するライブラリーであって、それぞれのタイプのポリペプチドが、本明細書において記載される本発明のポリペプチドである、ライブラリーも提供する。
【0178】
核酸カセットは、生成した標的化されたアミノ酸置換を有しているVNARの一部または全体を発現するための任意の適切なベクターにクローニングすることができる。核酸カセットは、ウイルス外被タンパク質の全てまたは一部に融合しているVNAR鎖配列の一部または全体の生成(すなわち、融合タンパク質の生成)を可能にするベクターにクローニングされ得、粒子または細胞の表面に提示され得る。いくつかのタイプのベクターが利用可能であり、本発明を実施するために使用され得るが、ファージミドベクターが、比較的容易に構築され得、容易に増幅され得るため、本明細書における使用に好ましいベクターである。ファージミドベクターは、一般に、プロモーター、シグナル配列、表現型選択遺伝子、複製起点部位、および他の必要な構成要素を含む、様々な構成要素を有する。
【0179】
別の実施形態において、特定のバリアントアミノ酸の組み合わせを発現させようとする場合、核酸カセットは、VNAR配列の全てまたは一部をコードし得る、およびバリアントアミノ酸の組み合わせをコードし得る配列を有する。ライブラリーにおけるように、これらのバリアントアミノ酸またはバリアントアミノ酸の組み合わせを有する抗原特異的抗原結合分子を生成するために、核酸カセットを、追加のVNAR配列、例えば、様々なCDR、フレームワーク、および/または超可変領域の全てまたは部分を有する発現ベクターに挿入することができる。これらの追加の配列はまた、他の核酸配列、例えば、ウイルス外被タンパク質の構成要素をコードする、ひいては、融合タンパク質の生成を可能にする配列に融合され得る。
【0180】
本発明の一態様は、遺伝子融合体をコードする核酸配列を含む複製可能な発現ベクターであって、前記遺伝子融合体が、ウイルス外被タンパク質の全てまたは一部に融合している1つのVNAR配列および第2のVNAR配列を含む融合タンパク質をコードする、発現ベクターを含む。また、上記のように多様な配列で生成された複数のVNAR配列を含む複数の異なる融合タンパク質をコードする複数の遺伝子融合体を含む多様な複製可能な発現ベクターのライブラリーも含まれる。ベクターは様々な構成要素を含み得、好ましくは、異なるベクター間でのVNAR配列の移動を可能にするように、および/または異なるフォーマットでの融合タンパク質の提示をもたらすように、構築される。
【0181】
ベクターの例には、ファージベクターが含まれる。ファージベクターは、ファージの複製およびファージ粒子の形成を可能にするファージ複製起点を有する。ファージは、好ましくは、糸状バクテリオファージ、例えば、M13、fl、fd、Pf3ファージ、もしくはこれらの誘導体、または、ラムダ様ファージ、例えば、ラムダ、21、phi80、phi81、82、424、434など、もしくはこれらの誘導体である。
【0182】
ウイルス外被タンパク質の例としては、感染性タンパク質PIII、主要外被タンパク質PVIII、p3、Soc(T4)、Hoc(T4)、gpD(バクテリオファージラムダの)、微量バクテリオファージ外被タンパク質6(pVI)(繊維状ファージ;Huftonら、J Immunol Methods.(1999)、231(1~2):39~51)、M13バクテリオファージ主要外被タンパク質(P8)のバリアント(Weissら、Protein Sci(2000)9(4):647~54)が含まれる。融合タンパク質はファージの表面に提示され得、適切なファージシステムとしては、M13K07ヘルパーファージ、M13R408、M13-VCS、およびPhi X 174、pJuFoファージシステム(Pereboevら、J Virol.(2001)、75(15):7107~13)、ならびにハイパーファージ(Rondotら、Nat Biotechnol.(2001)、19(1):75~8)が含まれる。好ましいヘルパーファージはM13K07であり、好ましい外被タンパク質はM13ファージ遺伝子III外被タンパク質である。好ましい宿主は、大腸菌、および大腸菌のプロテアーゼ欠損株である。fthlベクター(Enshell-Seijffersら、Nucleic Acids Res.(2001);29(10):E50-0)などのベクターは、融合タンパク質の発現に有用であり得る。
【0183】
発現ベクターはまた、各VNARまたはその断片をコードするDNAに融合した分泌シグナル配列を有し得る。この配列は、典型的には、融合タンパク質をコードする遺伝子のすぐ5’側に位置し、したがって、融合タンパク質のアミノ末端で転写される。しかし、ある特定のケースにおいて、シグナル配列は、分泌されるタンパク質をコードする遺伝子の5’側以外の位置にあることが示されている。この配列は、細菌細胞の内膜全体にわたってそれが付着しているタンパク質を標的化している。シグナル配列をコードするDNAは、シグナル配列を有するタンパク質をコードするあらゆる遺伝子から、制限エンドヌクレアーゼ断片として得ることができる。適切な原核生物シグナル配列は、例えば、LamBまたはOmpF(Wongら、Gene(1983)68、1931)、MalE、PhoAをコードする遺伝子、および他の遺伝子から得ることができる。
【0184】
本発明を実施するための好ましい原核生物シグナル配列は、Changら(Gene 55.189(1987))によって記載されている大腸菌の熱安定性エンテロトキシンII(STII)シグナル配列、およびmalEである。
【0185】
ベクターはまた、典型的には、融合タンパク質の発現を進めるためのプロモーターも含む。原核生物ベクターにおいて最も一般的に使用されるプロモーターには、lacZプロモーターシステム、アルカリホスファターゼphoAプロモーター(Ap)、バクテリオファージXPLプロモーター(温度感受性プロモーター)、tacプロモーター(lacリプレッサーによって調節されるハイブリッドtrp-lacプロモーター)、トリプトファンプロモーター、およびバクテリオファージT7プロモーターが含まれる。プロモーターの一般的な説明については、上記のSambrookらの第17節を参照されたい。これらが最も一般的に使用されるプロモーターではあるが、他の適切な微生物プロモーターも同様に使用することができる。
【0186】
ベクターはまた、他の核酸配列、例えば、ファージのまたは細胞の表面に発現した融合タンパク質の検出または精製に有用であり得るgDタグ、c-Mycエピトープ、ポリヒスチジンタグ、蛍光タンパク質(例えばGFP)、またはベータガラクトシダーゼタンパク質をコードする配列も含み得る。
【0187】
例えばgDタグをコードする核酸配列もまた、融合タンパク質を発現している細胞またはウイルスの正または負の選択のために提供される。一部の実施形態において、gDタグは、ウイルス外被タンパク質の構成要素に融合していないVNAR配列に好ましくは融合している。例えばポリヒスチジンタグをコードする核酸配列は、特異的抗原に結合しているVNAR配列を含む融合タンパク質を、免疫組織化学を使用して同定するために有用である。抗原結合の検出に有用なタグは、ウイルス外被タンパク質の構成要素に融合していないVNAR配列またはウイルス外被タンパク質の構成要素に融合しているVNAR配列のいずれかに融合していてよい。
【0188】
本発明を実施するために使用されるベクターの別の有用な構成要素は、表現型選択遺伝子である。典型的な表現型選択遺伝子は、宿主細胞に抗生物質耐性を付与するタンパク質をコードする遺伝子である。説明として、アンピシリン耐性遺伝子(Amp)およびテトラサイクリン耐性遺伝子(Tet)が、この目的のために手軽に利用される。
【0189】
ベクターはまた、固有の制限部位および抑制性の停止コドンを有する核酸配列も含み得る。固有の制限部位は、異なるベクターおよび発現系の間でVNAR配列を移動させるために有用である。抑制性の停止コドンは、融合タンパク質の発現レベルを制御するため、および可溶性VNAR断片の精製を容易にするために有用である。例えば、アンバー停止コドンは、supE宿主においてはGlnと読まれてファージディスプレイを可能にし得るが、一方、非supE宿主では、これは停止コドンと読まれて、ファージ外被タンパク質への融合を伴わずに可溶性VNAR断片を生成する。これらの合成配列は、ベクター内で1つまたは複数のVNAR配列に融合され得る。
【0190】
目的の配列、例えばバリアントアミノ酸を有するCDRをコードする核酸をベクターシステムから容易に除去し、別のベクターシステムに置くことを可能にする、ベクターシステムを使用することが、都合が良い場合がある。例えば、適切な制限部位は、ベクターシステムにおいて、VNARをコードする核酸配列の除去を促進するように操作することができる。制限配列は、効率的な切除および新たなベクターへのライゲーションを促進するために、ベクター内で固有となるように通常選択される。VNAR配列は次いで、ウイルス外被タンパク質または他の配列タグなどの外来の融合配列を有さないベクターから発現され得る。
【0191】
VNAR配列をコードする核酸(遺伝子1)とウイルス外被タンパク質の構成要素をコードする核酸(遺伝子2)との間に、終結コドンまたは停止コドンをコードするDNAが挿入され得、このような終結コドンには、UAG(アンバー)、UAA(オーカー)、およびUGA(オペル)が含まれる。(Microbiology、Davisら、Harper & Row、New York、1980;237、245~47、および374頁)。野生型宿主細胞において発現している終結コドンまたは停止コドンは、遺伝子2のタンパク質が付随していない遺伝子1のタンパク質産物を合成させる。しかし、サプレッサー宿主細胞の増殖は、検出可能な量の融合タンパク質の合成をもたらす。大腸菌サプレッサー株などのこのようなサプレッサー宿主細胞は周知であり、記載されている(Bullockら、BioTechniques 5:376~379(1987))。あらゆる許容可能な方法を、融合ポリペプチドをコードするmRNA内にこのような終結コドンを置くために使用することができる。
【0192】
抑制性のコドンは、VNAR配列をコードする第1の遺伝子と、ファージ外被タンパク質の少なくとも一部をコードする第2の遺伝子との間に挿入することができる。あるいは、抑制性の終結コドンは、VNAR配列内の最後のアミノ酸トリプレットまたはファージ外被タンパク質内の最初のアミノ酸を置き換えることによって、融合部位の隣に挿入することができる。抑制性の終結コドンは、二量体化ドメインのC末端に、または当該C末端の後ろに、位置し得る。抑制性のコドンを有するプラスミドをサプレッサー宿主細胞内で増幅させる場合、これは、ポリペプチドおよび外被タンパク質を有する融合ポリペプチドの検出可能な産生をもたらす。プラスミドを非サプレッサー宿主細胞内で増幅させる場合、VNAR配列は、挿入された抑制性のトリプレットUAG、UAA、またはUGAでの終結に起因して、ファージ外被タンパク質への融合をほとんど伴わずに合成される。非サプレッサー細胞では、他の場合には宿主の膜に固定されている融合したファージ外被タンパク質が存在していないため、抗体可変ドメインが宿主細胞から合成および分泌される。
【0193】
一部の実施形態において、多様化されている(ランダム化されている)CDRは、鋳型配列に、操作された停止コドン(本明細書において「停止鋳型」と呼ばれる)を有し得る。この特徴は、目的のバリアントアミノ酸の配列を含むオリゴヌクレオチドの組み込みに起因して、鋳型配列における停止コドンの成功裏の修復に基づいて成功裏に多様化された配列の検出および選択を提供する。
本発明のマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子
さらなる態様において、本発明は、2つ以上のVNARドメインを含むマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子であって、各VNARドメインが、以下の式(I):
FW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4
によって表されるペプチドドメイン構造を有するアミノ酸配列を含み、
式中、少なくとも1つのVNAR結合ドメインのFW1が、-/D A/I/T S/Q/R V/M N/T/D Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T/R D/G T/A/S(配列番号1)に従ったヒト化配列を含み、
少なくとも1つのVNARドメインのFW4が、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのFW4に対応する配列、あるいは
(i)それに対して少なくとも70%の同一性、または
(ii)それに対する1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換
のいずれかを有するアミノ酸配列を含む、
マルチドメイン抗原特異的抗原結合分子を提供する。
【0194】
ヒト化FW1配列を採用しながら、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのFW4に対応する配列に由来する、または当該配列に関する(上記で定義したように)FW4配列を維持する効果は、FW4もヒト化されている対応するマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子と比較して同等であり得るかまたはわずかに増大し得る中和力である。この効果は、FW4がヒト化されている分子の中和力が高い(およそ0.002nM)場合であっても見られる。本発明者らは、驚くべきことに、この効果が、FW4をヒト化せずにFW1をヒト化することに予想外に関連しているが、しかし、FW1をヒト化せずにFW4をヒト化することには関連していないことを同定した。FW1をヒト化せずにFW4をヒト化すると、中和力が著しく損なわれる場合がある。
【0195】
本発明の第1の態様、第2の態様、および第3の態様の方法に関連して開示されている本発明の特徴は、本発明の第4の態様のマルチドメイン抗原特異的抗原結合分子に関連して開示されている発明の規定において使用され得、また逆の場合も同様である。
【0196】
2つ以上のVNARドメインは、同一であっても異なっていてもよい。典型的には、マルチドメイン抗原特異的結合分子は、少なくとも2つの異なるVNARドメインを含む。2つの異なるVNARドメインは、ある程度の配列同一性、例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の配列同一性を共有し得る。2つの異なるVNARドメインは、FW1、CDR1、FW2、HV2、FW3a、HV4、FW3b、CDR3、およびFW4からなる群から選択される1つまたは複数のドメインについて同一の配列を共有し得る。典型的には、2つの異なるVNARドメインは、少なくともFW1およびFW4について同一の配列を共有する。2つの異なるVNARドメインは、CDR1、HV2、HV4、およびCDR3について同一の配列を共有し得る。2つの異なるVNARドメインは、FW1、FW2、CDR1、HV2、HV4、およびCDR3について同一の配列を共有し得る。
【0197】
典型的には、2つ以上のVNAR結合ドメインのFW1はそれぞれ、-/D A/I/T S/Q/R V/M N/T/D Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T/R D/G T/A/S(配列番号1)に従ったヒト化配列を含む。
【0198】
典型的には、2つ以上のVNAR結合ドメインのFW4はそれぞれ、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのFW4に対応する配列、あるいは
(i)それに対して少なくとも70%の同一性、または
(ii)それに対する1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換
のいずれかを有するアミノ酸配列を含む。
【0199】
一実施形態において、マルチドメイン抗原特異的抗原結合分子は、2つ以上のVNARドメインを含み、各VNARドメインは、以下の式(I):
FW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4
によって表されるペプチドドメイン構造を有するアミノ酸配列を含み、
式中、少なくとも1つのVNAR結合ドメインのFW1は、-/D A/I/T S/Q/R V/M N/T/D Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T/R D/G T/A/S(配列番号1)に従ったヒト化配列を含み、
少なくとも1つのVNARドメインのFW4は、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのFW4に対応する配列を含む。
【0200】
一実施形態において、マルチドメイン抗原特異的抗原結合分子は、2つ以上のVNARドメインを含み、各VNARドメインは、以下の式(I):
FW1-CDR1-FW2-HV2-FW3a-HV4-FW3b-CDR3-FW4
によって表されるペプチドドメイン構造を有するアミノ酸配列を含み、
式中、少なくとも2つのVNAR結合ドメインのFW1は、-/D A/I/T S/Q/R V/M N/T/D Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T/R D/G T/A/S(配列番号1)に従ったヒト化配列を含み、
少なくとも2つのVNARドメインのFW4は、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのFW4に対応する配列を含む。
【0201】
一実施形態において、FW1、FW2、FW3a、FW3b、およびFW4の少なくとも1つは、それぞれ、以下からなる群から選択される1つまたは複数の配列を含み、
FW1は、
ARVDQSPSSLSASVGDRVTITCVLRDS(配列番号8)、
A/T S/R V N/D Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T D/G T/A(配列番号6)、および
D I Q M T Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T D/G T/A(配列番号7)
からなる群から選択される配列を含み、
FW2は、T S/Y W F/Y R/Q K/Q N/K P/S G T/S(配列番号2)に従った配列を含み、
FW3aは、G R Y/F V/S E/G S/T V/G/I N/S(配列番号3)に従った配列を含み、
FW3bは、F S/T L R/T I K/S/N D/S L T/Q V/P A/E D S/F A/G T Y Y/R/I C K/R/A A/S/L(配列番号4)に従った配列を含み、
FW4は、YGGGTVVTVN(配列番号21)に従った配列、あるいは
(i)それに対して少なくとも70%の同一性、または
(ii)それに対する1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換
のいずれかを有するアミノ酸配列を含む。
【0202】
FW1は、
ARVDQSPSSLSASVGDRVTITCVLRDS(配列番号8)、
A/T S/R V N/D Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T D/G T/A(配列番号6)、および
D I Q M T Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T D/G T/A(配列番号7)
からなる群から選択される配列を含み得る。
【0203】
FW2は、T S/Y W F/Y R/Q K/Q N/K P/S G T/S(配列番号2)に従った配列を含み得る。
【0204】
FW3aは、G R Y/F V/S E/G S/T V/G/I N/S(配列番号3)に従った配列を含み得る。
【0205】
FW3bは、F S/T L R/T I K/S/N D/S L T/Q V/P A/E D S/F A/G T Y Y/R/I C K/R/A A/S/L(配列番号4)に従った配列を含み得る。
【0206】
アミノ酸配列は、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのFW4配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、およびまたさらに好ましくは95%(またさらに好ましくは少なくとも96%、97%、98%、または99%)の同一性を有し得る。
【0207】
アミノ酸配列は、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのFW4配列に対する3つの、好ましくは2つの、またはさらに好ましくは1つのアミノ酸置換を有し得る。1つまたは複数の置換は、保存的なアミノ酸置換であり得る。
【0208】
配列同一性および/またはアミノ酸置換は、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における任意の種の任意のFW4配列に対するものであり得る。例えば、配列同一性および/またはアミノ酸置換は、Orectolobformes目のGinglymostomatidae科のGinglymostoma cirratumおよび/またはSqualiformes目のSqualidae科のSqualus acanthiasのFW4配列に対するものであり得る。配列同一性および/またはアミノ酸置換は、YGGGTVVTVN(配列番号21)に対するものであり得る。
【0209】
FW4は、YGGGTVVTVN(配列番号21)に従った配列、あるいは、
(i)それに対して少なくとも70%の同一性、または
(ii)それに対する1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換
のいずれかを有するアミノ酸配列を含み得る。
【0210】
FW4は、YGGGTVVTVN(配列番号21)に従った配列を含み得る。
【0211】
FW2、FW3a、およびFW3bの組み合わせ配列の少なくとも3つのアミノ酸残基は、ヒト化され得る。したがって、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種のメンバーのFW2、FW3a、およびFW3bの組み合わせ配列から出発して、少なくとも3つのアミノ酸残基が、DPK-9由来の対応する残基に置換され得る。FW2配列、FW3a配列、およびFW3b配列は、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種の同一のメンバーに、または板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における種の2つ以上の異なるメンバーに、例えば同一種の異なる個体に由来し得る。あるいは、FW2配列、FW3a配列、およびFW3b配列は、板鰓亜綱(Elasmobranchii subclass)における2つ以上の異なる種に由来し得る。
【0212】
少なくとも3つのヒト化残基は、本明細書において開示されている任意のFW2配列、FW3a配列、および/またはFW3b配列における任意の3つのヒト化残基から選択され得る。例えば、少なくとも3つのヒト化残基は、図1で示されている任意の3つのヒト化残基から選択され得る。
【0213】
FW2、FW3a、およびFW3bの組み合わせ配列の少なくとも4つの、少なくとも5つの、少なくとも6つの、少なくとも7つの、少なくとも8つの、少なくとも9つの、少なくとも10個の、少なくとも11個の、少なくとも12個の、少なくとも13個の、少なくとも14個の、または少なくとも15個のアミノ酸残基が、ヒト化され得る。
【0214】
FW2についての1つまたは複数の配列は、
TYWYRKKSGS(配列番号11)、
T S/Y W F/Y R K N P G T/S(配列番号9)、および
T S/Y W Y/F Q Q K P G T/S(配列番号10)
からなる群から選択され得る。
【0215】
FW3aについての1つまたは複数の配列は、
GRYVETVN(配列番号14)、
GRYVETIN(配列番号15)、
GRYVESVN(配列番号12)、および
GRFSGSGS(配列番号13)
からなる群から選択され得る。
【0216】
一実施形態において、第1のVNARドメインのFW3aはGRYVETVN(配列番号14)を含み、第2のVNARドメインのFW3aはGRYVETIN(配列番号15)を含む。
【0217】
FW3bについての1つまたは複数の配列は、
FTLTISSLQPEDFATYYCAS(配列番号18)、
FSLRINDLTVEDSGTYRCKL(配列番号19)、
F S L R I K D L T V A D S A T Y Y/I C K/R A(配列番号16)、および
F T L T I S S L Q P E D F A T Y Y/I C K/R A(配列番号17)
からなる群から選択され得る。
【0218】
一実施形態において、第1のVNARドメインのFW3bはFTLTISSLQPEDFATYYCAS(配列番号18)を含み、第2のVNARドメインのFW3bはFSLRINDLTVEDSGTYRCKL(配列番号19)を含む。
【0219】
FW4についての1つまたは複数の配列は、YGGGTVVTVN(配列番号21)を含み得る。
【0220】
FW1についての1つまたは複数の配列は、ARVDQSPSSLSASVGDRVTITCVLRDS(配列番号8)を含み得る。
【0221】
一実施形態において、FW4についての1つまたは複数の配列はYGGGTVVTVN(配列番号21)を含み、FW1についての1つまたは複数の配列はARVDQSPSSLSASVGDRVTITCVLRDS(配列番号8)を含む。
【0222】
一実施形態において、マルチドメイン抗原特異的抗原結合分子は、
YGGGTVVTVN(配列番号21)を含む、FW4についての配列、および
ARVDQSPSSLSASVGDRVTITCVLRDS(配列番号8)を含む、FW1についての配列
をそれぞれが含む、少なくとも2つのVNARドメインを含む。
【0223】
マルチドメイン抗原特異的抗原結合分子は、第1のVNARドメインおよび第2のVNARドメインを含み得、ここで、
第1のVNARドメインのFW1は、ARVDQSPSSLSASVGDRVTITCVLRDS(配列番号8)を含み、
第1のVNARドメインのFW2は、TYWYRKKSGS(配列番号11)を含み、
第1のVNARドメインのFW3aは、GRYVETVN(配列番号14)を含み、
第1のVNARドメインのFW3bは、FTLTISSLQPEDFATYYCAS(配列番号18)を含み、
第1のVNARドメインのFW4は、YGGGTVVTVN(配列番号21)を含み、
第2のVNARドメインのFW1は、ARVDQSPSSLSASVGDRVTITCVLRDS(配列番号8)を含み、
第2のVNARドメインのFW2は、TYWYRKKSGS(配列番号11)を含み、
第2のVNARドメインのFW3aは、GRYVETIN(配列番号15)を含み、
第2のVNARドメインのFW3bは、FSLRINDLTVEDSGTYRCKL(配列番号19)を含み、
第2のVNARドメインFW4は、YGGGTVVTVN(配列番号21)を含む。
【0224】
本発明のこの態様に従うと、FW1は、-/D A/I/T S/Q/R V/M N/T/D Q S P S S L S A S V G D R V T I T C V L/V T/R D/G T/A/S(配列番号1)に従った1つまたは複数のヒト化配列を含む。しかし、代替的な態様において、FW1の配列は規定されておらず、ライブラリーは、あるいは、以下の1つまたは複数によって特徴付けされる:
FW2は、T S/Y W F/Y R/Q K/Q N/K P/S G T/S(配列番号2)に従った1つまたは複数の配列を含み、
FW3aは、G R Y/F V/S E/G S/T V/G/I N/S(配列番号3)に従った1つまたは複数の配列を含み、
FW3bは、F S/T L R/T I K/S/N D/S L T/Q V/P A/E D S/F A/G T Y Y/R/I C K/R/A A/S/L(配列番号4)に従った1つまたは複数の配列を含む。
【0225】
この代替的な態様では、典型的には、FW2配列、FW3a配列、およびFW3b配列の1つまたは複数がヒト化されている。ヒト化されたFW2配列、FW3a配列、およびFW3b配列は、任意のヒト化されたFW2配列、FW3a配列、FW3b配列、およびFW4配列、または本明細書において開示されている配列であり得る。
【0226】
本発明は、多価のまたは多重特異的な実体に組み合わせられる能力を有するVNARドメイン配列に関するものであり、このマルチドメイン実体において、各ドメインは結合機能を保持している。マルチドメイン抗原特異的抗原結合分子は、二価または多価のVNARであり得る。
【0227】
マルチドメイン特異的結合分子は、1つまたは複数の特異的抗原の同一のまたは異なるエピトープに結合する2つ以上のVNARドメインを含み得る。
【0228】
ある特定の好ましい実施形態において、本発明の第1の態様のマルチドメイン特異的結合分子におけるVNARは、特異的抗原上の同一の抗原を結合する。
【0229】
さらに好ましい実施形態において、マルチドメイン特異的結合分子のVNARは、特異的抗原上の異なるエピトープを結合する。これらの実施形態に従ったマルチドメイン特異的結合分子は、本明細書においてさらに記載されるように、バイパラトピック分子と呼ぶことができる。
【0230】
一実施形態において、特異的VNAR結合ドメイン配列は、多価のまたは多重特異的な実体に組み合わされ、このマルチドメイン実体において、各ドメインは結合機能を保持しており、ここで、結合ドメインは、単一抗原上の異なるエピトープを認識する。
【0231】
一実施形態において、マルチドメイン特異的結合分子内のVNARドメインの少なくとも1つは、その標的に対して、単量体VNARよりも高い結合親和性を示す。
【0232】
一実施形態において、少なくとも2つのVNARドメインは、1つの特異的抗原の同一のまたは異なるエピトープに結合する。
【0233】
一実施形態において、少なくとも2つのVNARドメインは、1つの特異的抗原の異なるエピトープに結合する。
【0234】
一実施形態において、少なくとも2つのVNARドメインはそれぞれ、異なる特異的抗原に結合する。
【0235】
本発明の好ましい実施形態は、2つの(またはそれを超える)異なるVNARドメインを含む二重特異的または多重特異的な結合分子であり、当該分子において、結合特異性は、単一の特異的抗原上の異なるエピトープに対するものであり、得られた実体は、個々のVNAR結合ドメインよりも改善した特性を示す。改善した特性の例としては、単量体VNARと比較して増大したアゴニスト性またはアンタゴニスト性の影響が含まれる。
【0236】
好ましくは、本発明のマルチドメイン特異的結合分子のVNARドメインは、スペーサー配列によって離されている。さらに好ましくは、スペーサー配列は独立した機能性を有しており、当該機能性は結合分子において示される。一実施形態において、スペーサー配列は、VNARドメインまたはその機能的断片である。具体的な例において、スペーサー配列は、限定されないがヒト免疫グロブリンFc領域を含む、免疫グロブリンのFc部分であり得る。改善した特性は、部分的にまたは完全に、スペーサーの特性に由来し得、これは例えば、VNARドメインを受動的に空間的に離すこと、または得られた実体のインビボでの半減期を延ばし得る血清アルブミン結合などのスペーサーの固有の特性、またはICOSLなどの第2の治療的自己免疫標的の認識、または免疫グロブリンFc領域のケースでは、細胞と契合するための免疫系もしくは補体の能力の導入による。
【0237】
スペーサー配列によって離された2つ以上のVNARドメインを含む、本発明のマルチドメイン特異的結合分子の実施形態は、本明細書において、Quad-Xフォーマットと呼ばれ得る。好ましくは、マルチドメイン特異的結合分子は、免疫グロブリンFc領域に由来する、スペーサー配列によって離された2つ以上のVNARドメインを含む。
【0238】
他の実施形態において、マルチドメイン特異的結合分子は、1つまたは複数の非VNARドメインをさらに含み得る。1つまたは複数の非VNARドメインは、VNARドメインに対する任意の位置に置くことができる。典型的には、および好ましい実施形態において、非VNARドメインは、VNARドメインのC末端側またはN末端側となる。
【0239】
VNARドメインのC末端側またはN末端側にある2つ以上のVNARドメインおよび1つの非VNARドメインを含む本発明のマルチドメイン特異的結合分子の実施形態は、本明細書において、Quad-Yフォーマットと呼ばれ得る。
【0240】
典型的な非VNARドメインとしては、限定されないが、TNF R1および免疫グロブリンFcが含まれる。
【0241】
特異的抗原は、サイトカイン、増殖因子、酵素、細胞表面結合分子、細胞表面膜構成要素、細胞内分子、細胞外マトリクス構成要素、間質抗原、血清タンパク質、骨格抗原、微生物抗原、または通常は免疫特権のある位置に由来する抗原を含む群に由来し得る。
【0242】
本発明のさらなる態様は、サイトカインを認識するVNAR結合ドメインの特異的組み合わせである。
【0243】
また、ヒトTNFを認識し、疾患を処置するために現在使用されている全ての他の良く特徴付けされた抗TNF抗体およびVHHバインダーと異なるエピトープに結合する、特異的ドメインも、本発明によって提供される。
【0244】
一実施形態において、VNARドメインの1つまたは複数は、以下のCDRおよび超可変領域(HV)を含むTNF-アルファ特異的VNAR結合ドメインである:
CDR1:HCATSS(配列番号29)またはNCGLSS(配列番号30)またはNCALSS(配列番号31)
HV2:TNEESISKG(配列番号32)
HV4:SGSKS(配列番号33)またはEGSKS(配列番号34)
CDR3:ECQYGLAEYDV(配列番号35)またはSWWTQNWRCSNSDV(配列番号36)またはYIPCIDELVYMISGGTSGPIHDV(配列番号37)。
【0245】
マルチドメイン抗原特異的抗原結合分子は、第1のVNARドメインおよび第2のVNARドメインを含み得、ここで、
第1のVNARドメインのCDR1は、HCATSS(配列番号29)を含み、
第1のVNARドメインのHV2は、TNEESISKG(配列番号32)を含み、
第1のVNARドメインのHV4は、SGSKS(配列番号33)を含み、
第1のVNARドメインのCDR3は、ECQYGLAEYDV(配列番号35)を含み、
第2のVNARドメインのCDR1は、NCGLSS(配列番号30)を含み、
第2のVNARドメインのHV2は、TNEESISKG(配列番号32)を含み、
第2のVNARドメインのHV4は、EGSKS(配列番号34)を含み、
第2のVNARドメインのCDR3は、SWWTQNWRCSNSDV(配列番号36)を含む。
【0246】
一実施形態において、第1のVNARドメインは、配列ARVDQSPSSLSASVGDRVTITCVLRDSHCATSSTYWYRKKSGSTNEESISKGGRYVETVNSGSKSFTLTISSLQPEDFATYYCASECQYGLAEYDVYGGGTVVTVN(配列番号38)を含み、第2のVNARドメインは、配列ARVDQSPSSLSASVGDRVTITCVLRDSNCGLSSTYWYRKKSGSTNEESISKGGRYVETINEGSKSFSLRINDLTVEDSGTYRCKLSWWTQNWRCSNSDVYGGGTVVTVN(配列番号39)を含む。
【0247】
一実施形態において、マルチドメイン抗原特異的抗原結合分子は、配列:ARVDQSPSSLSASVGDRVTITCVLRDSHCATSSTYWYRKKSGSTNEESISKGGRYVETVNSGSKSFTLTISSLQPEDFATYYCASECQYGLAEYDVYGGGTVVTVNGSGGGSGGGGSGEPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSARVDQSPSSLSASVGDRVTITCVLRDSNCGLSSTYWYRKKSGSTNEESISKGGRYVETINEGSKSFSLRINDLTVEDSGTYRCKLSWWTQNWRCSNSDVYGGGTVVTVN(配列番号59)を含み得る。
【0248】
好ましい実施形態において、本発明のTNF-アルファ特異的VNARドメインは、特異的抗原上の特異的エピトープに対する機能的結合活性を保持しながら、インビボでの免疫原性の可能性を低減させるために、例えば、ヒト化、脱免疫化、または類似の技術によって、1つまたは複数のアミノ酸配列位置で修飾されている。
【0249】
本明細書において記載されるTNF-アルファ特異的VNAR結合ドメインは、本発明のマルチドメイン特異的結合分子において一方または両方のVNARドメインとして使用され得る。
【0250】
抗原特異的抗原結合分子は、本明細書において記載される分子を生成するためのプロセスの際に精製および/または単離を促進し得る、使用の前に切断される追加のN末端配列またはC末端配列を含み得る。例えば、(Ala)(His)が分子のC末端にある。
【0251】
いくつかの、例えば5から10個の、または1から5個の、または1から3、2、1、もしくは0個のアミノ酸残基が任意の組み合わせで置換されているか、欠失しているか、または付加されているタンパク質のアミノ酸配列を有する、バリアント、類似体、誘導体、および断片もまた、本発明に含まれる。これらの間で特に好ましいものは、本発明のタンパク質の特性および活性を改変しない、サイレントな置換、付加、および欠失である。これに関連して同様に特に好ましいものは、本発明のタンパク質の特性が元の形態と比較してバリアント形態で保存される、保存的な置換である。バリアントにはまた、本発明に従った抗原特異的抗原結合分子を含む融合タンパク質も含まれる。
【0252】
上述したように、本発明のバリアントの例には、1つまたは複数のアミノ酸が1つまたは複数の他のアミノ酸で置換されているタンパク質が含まれる。当業者であれば、様々なアミノ酸が類似の特性を有していることを認識している。物質の1つまたは複数のこのようなアミノ酸は、その物質の所望の活性に干渉することも当該活性を排除することもなく、1つまたは複数の他のこのようなアミノ酸によって置換され得ることが多い。このような置換は、「非保存的な」アミノ酸置換と呼ぶことができる。
【0253】
したがって、アミノ酸グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンは、しばしば互いに置換され得る(脂肪族側鎖を有するアミノ酸)。これらの考えられる置換のうち、グリシンおよびアラニンが互いの置換に使用されること(これらは比較的短い側鎖を有するため)、ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシンが互いの置換に使用されること(これらは、疎水性の、より大きな脂肪族側鎖を有するため)が好ましい。しばしば互いに置換され得る他のアミノ酸としては、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸);リジン、アルギニン、およびヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸);アスパラギン酸およびグルタミン酸(酸性側鎖を有するアミノ酸);アスパラギンおよびグルタミン(アミド側鎖を有するアミノ酸);ならびにシステインおよびメチオニン(硫黄を含有する側鎖を有するアミノ酸)が含まれる。この性質の置換は、「保存的な」または「半保存的な」アミノ酸置換と呼ばれることが多い。
【0254】
アミノ酸の欠失または挿入はまた、上記で言及した融合タンパク質のアミノ酸配列に対して行うことができる。したがって、例えば、ポリペプチドの活性にあまり影響しない、またはこのような活性を少なくとも排除しないアミノ酸を、欠失させることができる。このような欠失は、活性を依然として保持しながらポリペプチドの全体的な長さおよび分子量を低減させ得るため、有利であり得る。これは、特定の目的に必要なポリペプチドの量を低減させることを可能にし得、例えば、投与量レベルを低減させることができる。
【0255】
上記の融合タンパク質の配列に対するアミノ酸の挿入もまた行うことができる。これは、本発明の物質の特性を改変するため(例えば、融合タンパク質に関して上記で説明したように、同定、精製、または発現を促進するため)に行うことができる。
【0256】
本発明の融合タンパク質の配列に対するアミノ酸の変化は、任意の適切な技術を使用して、例えば、部位特異的突然変異生成を使用することによって、行うことができる。
【0257】
本発明の範囲内のアミノ酸の置換または挿入が天然に生じるまたは非天然のアミノ酸を使用して行われ得ることが理解される。天然アミノ酸または合成アミノ酸が使用されているかどうかに関わらず、L-アミノ酸のみが存在していることが好ましい。
【0258】
本発明に従ったタンパク質は、追加のN末端および/またはC末端アミノ酸配列を有し得る。このような配列は、様々な理由で、例えばグリコシル化のために提供され得る。
【0259】
融合タンパク質は、融合タンパク質に構造要素を提供する異種のペプチド配列またはタンパク質配列に融合している本発明の抗原特異的抗原結合分子を含み得る。他の実施形態において、融合タンパク質は、生物学的活性を有する分子、すなわち、薬理学的に有用な活性を有する治療用タンパク質に融合している本発明の抗原特異的抗原結合分子を含み得る。当該分子は、ペプチド配列もしくはタンパク質配列、または別の生物学的に活性な分子であり得る。
【0260】
例えば、抗原特異的抗原結合分子は、ポリアミノ酸配列、例えば、複数のヒスチジン残基もしくは複数のリジン残基(適切には、2、3、4、5、もしくは6残基)、または免疫グロブリンドメイン(例えば、Fcドメイン)であり得る、異種ペプチド配列に融合していてよい。
【0261】
異種ペプチド配列への言及には、マウスおよびヒトなどの他の哺乳動物種に由来する配列、ならびに他のVNARドメインに由来する任意の異種ペプチド配列が含まれる。
【0262】
融合タンパク質が、生物学的活性を有する分子と融合している本発明の抗原特異的抗原結合分子を含む場合、生物学的に活性な部分は、生物学的活性を有するペプチドまたはタンパク質、例えば、酵素、免疫グロブリン、サイトカイン、またはこれらの断片であり得る。あるいは、生物学的に活性な分子は、抗生物質、抗がん剤、NSAID、ステロイド、鎮痛剤、毒素、または他の薬学的に活性な薬剤であり得る。抗がん剤には、細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤が含まれ得る。
【0263】
一部の実施形態において、融合タンパク質は、別の免疫グロブリン可変領域もしくは定常領域または本発明の別の抗原特異的抗原結合分子に融合している、本発明の抗原特異的抗原結合分子を含み得る。言い換えると、本発明の抗原特異的抗原結合分子の融合体は、可変の長さのもの、例えば、二量体、三量体、四量体、または高次多量体(すなわち、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、または十量体、またはそれを超えるもの)であり得る。具体的な実施形態において、これは、単量体VNARサブユニットの多量体となり得る。
【0264】
例えば、VNAR CDRが追加のペプチド配列に融合している場合、当該追加のペプチド配列は、ウイルス粒子または細胞の表面上の1つまたは複数の融合ポリペプチドの相互作用をもたらし得る。これらのペプチド配列は、したがって、「二量体化ドメイン」と呼ぶことができる。二量体化ドメインは、二量体化配列の少なくとも1つもしくは複数、またはシステイン残基を含む少なくとも1つの配列、あるいはこれらの両方を含み得る。適切な二量体化配列としては、疎水性の残基が規則的な間隔を有しており、各タンパク質の疎水性残基の相互作用による二量体の形成を可能にする、両親媒性のアルファヘリックスを有するタンパク質の二量体化配列が含まれる。このようなタンパク質およびタンパク質の部分としては、例えば、ロイシンジッパー領域が含まれる。
【0265】
二量体化ドメインはまた、1つまたは複数のシステイン残基(例えば、二量体化ドメインに抗体ヒンジ配列を含めることによってもたらされる)も含み得る。システイン残基は、1つまたは複数のジスルフィド結合の形成による二量体化をもたらし得る。停止コドンが二量体化ドメインの後ろに存在する一実施形態において、二量体化ドメインは、少なくとも1つのシステイン残基を含む。二量体化ドメインは、好ましくは、抗体可変ドメインまたは定常ドメインとウイルス外被タンパク質の構成要素との間に位置する。
【0266】
本発明の融合タンパク質において、抗原特異的抗原結合分子は、リンカー部分を介して融合タンパク質の他のエレメントに直接的に融合または連結していてよい。リンカーは、ペプチド、ペプチド核酸、またはポリアミド結合であり得る。適切なペプチドリンカーとしては、複数のアミノ酸残基、例えば、4、5、6、7、8、9、10、15、20、または25個のアミノ酸、例えば、(Gly)、(Gly)、(Gly)Ser、(Gly)(Ser)(Gly)、またはこれらの組み合わせもしくはこれらの多量体(例えば、二量体、三量体、もしくは四量体、もしくはそれを超えるもの)が含まれ得る。例えば、適切なリンカーは、(GGGGS)であり得る。代替的なリンカーとしては、(Ala)(His)またはその多量体が含まれる。HGMPによって提供されているBLASTコンピュータプログラムのデフォルトパラメータを使用して、それに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の同一性を有する配列も含まれる。
【0267】
一部のケースでは、ベクターは、外被タンパク質に融合した単一のVNAR-ファージポリペプチドをコードする。これらのケースでは、ベクターは、ある特定のプロモーターの制御下で1つの転写産物を発現する「モノシストロン性」であると考えられる。
【0268】
このようなベクターの例示的な例は、アルカリホスファターゼ(AP)、またはVNAR領域をコードするモノシストロン性配列の発現を進めるためのTacプロモーターと、ドメイン間のリンカーペプチドとを利用する。シストロン性配列は、その5’末端で、大腸菌のmalEまたは熱安定性エンテロトキシンII(STII)シグナル配列に接続していてよく、また、その3’末端で、ウイルス外被タンパク質の全てまたは一部(例えば、pIIIタンパク質)に接続していてよい。ベクターは、その3’末端で、第2の可変ドメイン配列とウイルス外被タンパク質配列との間に、二量体化ドメイン(ロイシンジッパーなど)をコードする配列をさらに含み得る。二量体化ドメインを含む融合ポリペプチドは、二量体化して、2つのポリペプチドの複合体を形成することができる。
【0269】
他のケースでは、VNAR配列(複数のVNAR配列または断片)は、別々のポリペプチドとして発現され得、ベクターは、したがって、「2シストロン性」であり得、別々の転写産物の発現を可能にする。これらのベクターにおいて、PtacプロモーターまたはPhoAプロモーターなどの適切なプロモーターを、2シストロン性のメッセージの発現を行わせるために使用することができる。例えば第1のVNAR配列をコードする第1のシストロンは、5’末端で、大腸菌のmalEまたは熱安定性エンテロトキシンII(STII)シグナル配列に接続していてよく、また、3’末端で、gDタグをコードする核酸配列に接続していてよい。例えば第2のVNAR配列をコードする第2のシストロンは、その5’末端で、大腸菌のmalEまたは熱安定性エンテロトキシンII(STII)シグナル配列に接続していてよく、また、3’末端で、ウイルス外被タンパク質の全てまたは一部に接続していてよい。
【0270】
例となるベクターは、適切なプロモーター、例えば、5’末端で大腸菌のmalEまたは熱安定性エンテロトキシンII(STII)シグナル配列に作動可能に連結しており、また3’末端で、gDタグをコードする核酸配列に作動可能に連結している、VNAR配列をコードする第1のシストロンの発現を進める、PtacプロモーターまたはPhoA(AP)プロモーターを含み得る。第2のシストロンは、例えば、5’末端で大腸菌のmalEまたは熱安定性エンテロトキシンII(STII)シグナル配列に作動可能に連結しており、また、3’末端で、IgGヒンジ配列およびロイシンジッパー配列を含む二量体化ドメインと、それに続く、ウイルス外被タンパク質の少なくとも一部とを有している、別のVNAR配列をコードする。
【0271】
VNAR配列の融合ポリペプチドは、細胞、ウイルス、またはファージミド粒子の表面上で、様々なフォーマットで提示され得る。これらのフォーマットには、一本鎖断片およびこれらの断片の多価形態が含まれる。多価形態は、二量体、またはそれを超える多量体であり得る。提示の多価形態は、これら形態が2つ以上の抗原結合部位を有し、これによって、親和性が低いクローンが一般に同定され、また、選択プロセスの際に、稀なクローンのより効率的な選別が可能となるため、都合が良い場合がある。
【0272】
本発明に従って記載されているように構築されたベクターは、増幅および/または発現のために宿主細胞に導入される。ベクターは、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、およびこれらに類するものを含む標準的な形質転換方法を使用して宿主細胞に導入することができる。ベクターがウイルスなどの感染性粒子である場合、ベクター自体が、宿主細胞内への進入のための備えを有している。遺伝子融合体をコードする複製可能な発現ベクターを有する宿主細胞のトランスフェクション、および標準的な手順に従ったファージ粒子の生成は、融合タンパク質がファージ粒子の表面に提示されているファージ粒子を生じさせる。
【0273】
複製可能な発現ベクターは、様々な方法を使用して宿主細胞に導入される。一実施形態において、ベクターは、使用して細胞に導入され得る。細胞は、標準的な培養液中における培養で、場合によって約37℃で約6~48時間(またはOD600=0.6~0.8になるまで)培養され増殖し、次いで、培養液が遠心分離され、上清が除去される(例えば、デカンテーションされる)。最初の精製は、好ましくは、緩衝溶液(例えば、1.0mMのHEPES、pH7.4)中での細胞ペレットの再懸濁と、その後の再遠心分離、および上清の除去によって行われる。得られた細胞ペレットは、希釈されたグリセロール(例えば、5~20%v/v)中に再懸濁され、細胞ペレットを形成するために再び再遠心分離され、そして上清が除去される。最終細胞濃度は、細胞ペレットを水または希釈されたグリセロール中に所望の濃度まで再懸濁することによって得られる。
【0274】
エレクトロポレーションの際の、より高いDNA濃度の使用は、形質転換効率を増大させ(約10倍)、宿主細胞に形質転換されるDNAの量を増大させる。高い細胞濃度の使用はまた、効率も増大させる(約10倍)。移入されるDNAの量が多いほど、より大きな多様性を有し、より多くの数の固有のコンビナトリアルライブラリーメンバーを表す、より大きなライブラリーが得られる。形質転換された細胞は、抗生物質を含有する培地での増殖によって一般に選択される。
【0275】
方法論におけるその様々な順列およびバリエーションを伴う、標的抗原バインダーを同定するためのファージディスプレイの使用は、当技術分野において良く確立されている。1つのアプローチは、融合ポリペプチドをコードする遺伝子融合体に作動可能に連結している転写調節エレメントを有する複製可能なバリアントベクターのファミリーを構築すること、適切な宿主細胞を形質転換すること、形質転換された細胞を培養して、表面上に融合ポリペプチドを提示しているファージ粒子を形成すること、その後の、組換えファージ粒子を標的抗原と接触させて、粒子集団の少なくとも一部を標的に結合させる、選択プロセスにおいて結合しない粒子のサブセットよりも結合する粒子のサブセットを増大させ、豊富にするという目的を有する選択または選別を伴うプロセスを伴う。選択されたプールは、異なるまたは同一のストリンジェンシーを用いる同一の標的での別の選別ラウンドのために宿主細胞を感染させることによって増幅することができる。得られたバリアントプールは次いで、標的抗原に対してスクリーニングされて、新規な高い親和性の結合タンパク質が同定される。
【0276】
これらの新規な高い親和性の結合タンパク質は、アンタゴニストもしくはアゴニストとしての治療剤として、ならびに/または診断試薬および研究試薬として有用であり得る。
【0277】
バリアントアミノ酸を含む抗体可変ドメインなどの融合ポリペプチドは、ファージ、ファージミド粒子、または細胞の表面上に発現させることができ、次いで、融合ポリペプチド群のメンバーの、典型的には目的の抗原である標的抗原を結合する能力について、選択および/またはスクリーニングすることができる。
【0278】
このような融合タンパク質は、宿主細胞または無細胞システムにおける発現による組換え技術を含む任意の適切な経路によって、ならびに化学的合成経路によって、準備することができる。
【0279】
ライブラリーメンバーの選択
標的へのバインダーを選択するプロセスにはまた、ファージ上に提示されている抗体または抗体断片に結合するプロテインLまたはタグ特異的抗体などの、抗体可変ドメインに対する親和性を有する一般的タンパク質の選別が含まれ得、これは、正しくフォールディングした抗体断片(融合ポリペプチド)を提示するライブラリーメンバーを豊富にするために使用することができる。
【0280】
受容体などの標的タンパク質は、天然の由来源から単離することができるか、または当技術分野において公知の手順による組換え方法によって準備することができる。標的抗原には、治療上興味深い多くの分子が含まれ得る。
【0281】
考えられる、親和性について選択(選別)するための2つの主要な戦略は、(i)固体担体方法またはプレート選別または固定標的選別、および(ii)溶液結合方法である。
【0282】
固体担体方法では、標的タンパク質は、当技術分野において公知の適切な固体または半固体マトリクス、例えば、アガロースビーズ、アクリルアミドビーズ、ガラスビーズ、セルロース、様々なアクリルコポリマー、ヒドロキシアルキルメタクリレートゲル、ポリアクリルコポリマーおよびポリメタクリルコポリマー、ナイロン、中性担体およびイオン性担体などに付着させてもよい。
【0283】
標的抗原をマトリクスに付着させた後、固定された標的を、ファージ粒子集団の少なくとも一小集団と固定された標的抗原との結合に適した条件下で、融合ポリペプチドを発現しているライブラリーと接触させる。通常、pH、イオン強度、温度、およびこれらに類するものを含む条件は、生理学的状態を模倣する。固定された標的に結合した粒子(「バインダー」)を、洗浄によって、標的に結合していない粒子から分離する。洗浄条件は、高い親和性のバインダー以外の全てが除去されるように調整することができる。バインダーは、様々な方法によって、固定された標的から解離することができる。これらの方法としては、野生型リガンド(例えば、過剰な標的抗原)を使用する競合的解離、pHおよび/またはイオン強度の変更、ならびに当技術分野において公知の方法が含まれる。バインダーの選択は、典型的には、0.1MのHClのような酸またはリガンドなどの適切な溶出材料を用いる、親和性マトリクスからの溶出を伴う。増大濃度のリガンドでの溶出は、親和性が増大している提示された結合分子を溶出することができる。
【0284】
バインダーを単離し、次いで、バインダーであるウイルス粒子(および、必要に応じて、例えば、ウイルス粒子がファージミド粒子である場合には、ヘルパーファージ)を細胞に感染させることによって、適切な宿主細胞において再増幅させることができ、そして、宿主細胞を、所望の融合ポリペプチドを提示する粒子の増幅に適した条件下で培養する。ファージ粒子を次いで回収し、選択プロセスを、標的抗原のバインダーがある程度豊富になるまで、1回または複数回反復する。任意のラウンド数の選択または選別を利用することができる。選択手順または選別手順の1つは、プロテインLなどの一般的親和性タンパク質に結合するバインダー、または提示されているポリペプチドに存在しているポリペプチドタグに対する抗体、例えば、gDタンパク質もしくはポリヒスチジンタグに対する抗体の単離を伴い得る。
【0285】
別の選択方法は「溶液結合方法」であり、これは、従来の溶液選別方法よりも向上した効率での溶液相の選別を可能にする。溶液結合方法は、ランダムライブラリーからオリジナルバインダーを見出すため、または特定の結合クローンもしくはクローン群の親和性を向上させるために指定されたライブラリーから、改善されたバインダーを見出すために使用されている。この方法は、複数のポリペプチド、例えばファージまたはファージミド粒子(ライブラリー)上に提示されている複数のポリペプチドを、タグ分子で標識されたまたはタグ分子と融合している標的抗原と接触させるステップを含む。タグは、それに対して特異的バインダーが利用可能である、ビオチンまたは他の部分であり得る。溶液相のストリンジェンシーは、第1の溶液結合相における標識された標的抗原の濃度の低下を使用することによって、変化させることができる。
【0286】
ストリンジェンシーをさらに増大させるために、第1の溶液結合相の次に第2の溶液相が続いてよく、この第2の溶液相は、第1の溶液相における標識された標的との最初の結合の後の、高濃度の未標識標的抗原を有している。通常、標識された標的の100から1000倍の未標識標的が、第2の相(含まれる場合)において使用される。第1の溶液相のインキュベーション時間の長さは、平衡に達するまで、数分間から1~2時間、またはそれを超える時間で変化し得る。この第1の相において、より短い結合時間を使用すると、会合速度の速いバインダーに偏り得るか、または当該バインダーが選択され得る。第2の相におけるインキュベーションの時間の長さおよび温度は、ストリンジェンシーを増大させるように変化させることができる。これによって、標的から離れる速度(解離速度)が遅いバインダーに対する選択バイアスが生じる。
【0287】
複数のポリペプチド(ファージ/ファージミド粒子上に提示されている)を標的抗原と接触させた後、標識された標的に結合しているファージまたはファージミド粒子を、結合していないファージから分離する。結合の溶液相から得た粒子-標的混合物を、標識された標的部分と接触させ、標識された標的部分を結合する分子に前記混合物を短時間(例えば、2~5分間)にわたり結合させることによって、前記混合物を単離する。標識された標的抗原の最初の濃度は、約0.1nMから約1000nMの範囲であり得る。結合した粒子を溶出し、次の選別ラウンドのために増殖させてもよい。各選別ラウンドでより低い濃度の標識された標的抗原を使用する、複数の選別ラウンドが好ましい。
【0288】
例えば、約100から250nMの標識された標的抗原を使用する最初の選別または選択は、広範な親和性を捕捉するために十分であるべきだが、この因子は、経験的におよび/または医師の希望に沿うように決定することができる。第2の選択ラウンドにおいて、約25から100nMの標識された標的抗原が使用され得る。第3の選択ラウンドにおいて、約0.1から25nMの標識された標的抗原が使用され得る。例えば、100nMのバインダーの親和性を向上させるために、20nMで開始し、次いで5および1nMの標識された標的に進み、次いでその後に、約0.1nMなどのさらに低い濃度の標識された標的抗原とすることが望ましい場合がある。
【0289】
本明細書において記載されるように、固体担体方法および溶液選別方法の組み合わせが、所望の特徴を有するバインダーを単離するために有利に使用され得る。数ラウンドにわたり標的抗原を選択/選別した後、選択されたプールに由来する個々のクローンのスクリーニングが、所望の特性/特徴を有する特異的バインダーを同定するために一般に行われる。好ましくは、スクリーニングプロセスは、ライブラリー候補のハイスループットスクリーニングを可能にする自動システムによって行われる。
【0290】
2つの主要なスクリーニング方法が以下に記載される。しかし、他の方法もまた使用可能である。第1のスクリーニング方法は、固定された標的抗原を用いるファージELISAアッセイを含み、これは、非結合クローンからの特異的結合クローンの同定をもたらす。特異性は、標的でコーティングされたウェルおよびBSAまたは他の非標的タンパク質でコーティングされたウェルでのクローンの同時のアッセイによって決定することができる。このアッセイは、ハイスループットスクリーニングのために自動化可能である。
【0291】
一実施形態は、複数のポリペプチドを含む複製可能な発現ベクターのライブラリーを作製するステップ、ライブラリーを、結合に適した条件下で、標的抗原および少なくとも1つの非標的抗原と接触させるステップ、ライブラリー内のポリペプチドバインダーを非バインダーから分離するステップ、標的抗原に結合し、非標的抗原には結合しないバインダーを同定するステップ、標的抗原からバインダーを溶出するステップ、ならびに特異的抗原に結合するポリペプチドバインダーを含む複製可能な発現ベクターを増幅するステップによる、特異的標的抗原に結合する抗体可変ドメインを抗体可変ドメインのライブラリーから選択する方法を提供する。
【0292】
第2のスクリーニングアッセイは、本願において具現化されている発明であり、これは、ハイスループットな様式で、低い親和性を有するクローンからの高い親和性を有するクローンのスクリーニングを提供する、親和性スクリーニングアッセイである。このアッセイにおいて、各クローンは、ある特定の濃度の標的抗原との一定時間にわたる(例えば30~60分間にわたる)第1のインキュベーションを伴っておよび伴わずにアッセイされ、その後、標的でコーティングされたウェルに短時間(例えば5~15分間)アプライされる。次いで、結合したファージは、通常のファージELISA方法によって、例えば、抗M13 HRPコンジュゲートを使用して測定される。一方のウェルは標的とプレインキュベートされており、他方のウェルは標的抗原とプレインキュベートされていない、2つのウェルの結合シグナルの比率は、親和性の指標である。第1のインキュベーションでの標的の濃度の選択は、目的の親和性範囲に応じる。例えば、10nMより高い親和性を有するバインダーが望ましい場合、第1のインキュベーションにおいて1000nMの標的が使用されることが多い。バインダーが特定の選別(選択)ラウンドから見出されると、これらのクローンを、より高い親和性を有するバインダーを同定するために、親和性スクリーニングアッセイでスクリーニングすることができる。
【0293】
上記の選別/選択方法のうちのいずれかの組み合わせを、スクリーニング方法と組み合わせることができる。例えば、一実施形態において、ポリペプチドバインダーは、固定された標的抗原への結合について最初に選択される。
【0294】
固定された標的抗原に結合するポリペプチドバインダーを次いで増幅し、標的抗原への結合についておよび非標的抗原への結合の欠如についてスクリーニングすることができる。標的抗原に特異的に結合しているポリペプチドバインダーが増幅される。これらのポリペプチドバインダーを次いで、ある濃度の標識された標的抗原と接触させて複合体を形成することによって、より高い親和性について選択することができ、ここで、標識された標的抗原の濃度範囲は約0.1nMから約1000nMであり、複合体は、標的抗原上の標識に結合する薬剤と接触させることによって単離される。ポリペプチドバインダーを次いで、標識された標的抗原から溶出し、場合によって、選択ラウンドを反復し、毎回、より低い濃度の標識された標的抗原が使用される。この選択方法を使用して単離された高い親和性のポリペプチドバインダーを、次いで、例えば溶液相ELISAアッセイまたはスポット競合ELISAアッセイを使用して、高い親和性についてスクリーニングすることができる。
【0295】
バインダーが標的抗原への結合によって同定された後、核酸を抽出することができる。抽出されたDNAを次いで、大腸菌宿主細胞を形質転換するために直接使用することができるか、またはあるいは、適切なプライマーを用いるPCRを例えば使用してコード配列を増幅し、典型的なシーケンシング方法によってシーケンシングすることができる。バインダーの可変ドメインDNAを制限酵素消化し、その後、タンパク質発現のためにベクターに挿入することができる。
【0296】
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドを含むライブラリーは複数の選別ラウンドにかけられ、ここで、各選別ラウンドは、前のラウンドで得られたバインダーを前のラウンドの標的抗原とは異なる標的抗原と接触させるステップを含む。
【0297】
本発明の別の態様は、特異的標的抗原、例えば、成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、インスリン様増殖因子、n-メチオニルヒト成長ホルモンを含むヒト成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、チロキシン、インスリン、プロインスリン、アミリン、リラキシン、プロリラキシン、糖タンパク質ホルモン、例えば卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、造血成長因子、線維芽細胞増殖因子、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、腫瘍壊死因子、ミュラー管阻害物質、マウスゴナドトロピン関連ポリペプチド、インヒビン、アクチビン、血管内皮増殖因子、インテグリン、神経増殖因子、例えばNGFベータ、インスリン様増殖因子-IおよびII、エリスロポエチン、骨誘導因子、インターフェロン、コロニー刺激因子、インターロイキン、骨形成タンパク質、LIF、SCF、FLT-3リガンド、ならびにkitリガンドに対する高い親和性のバインダーを選択するための方法を提供する。
【0298】
本発明の方法は、1つまたは複数の多様化されたCDR領域を有するポリペプチド(例えば、抗原特異的抗原結合分子)のライブラリーを提供する。これらのライブラリーは、標的抗原に対する高い親和性のバインダーを同定するために選別(選択)および/またはスクリーニングされる。一態様において、ライブラリー由来のポリペプチドバインダーは、標的抗原への結合について、および親和性について選択される。これらの選択戦略の1つまたは複数を使用して選択されたポリペプチドバインダーは次いで、親和性についておよび/または特異性(標的抗原にのみ結合し、非標的抗原には結合しない)についてスクリーニングされ得る。
【0299】
一方法は、1つまたは複数の多様化されたCDR領域を有する複数のポリペプチドを生成するステップ、当該複数のポリペプチドを、結合に適した条件下で標的抗原と接触させることによって、当該複数のポリペプチドを標的抗原へのバインダーのために選別するステップ、標的抗原へのバインダーを、結合していないバインダーから分離するステップ、バインダーを単離するステップ、および高い親和性のバインダーを同定するステップを含む。標的抗原に結合するバインダーの親和性は、本明細書において記載されるものなどの競合ELISAを使用して決定することができる。場合によって、ポリペプチドは、標的抗原の選別と組み合わせてバインダーを選別するために使用され得る、gD、ポリhis、またはFLAGなどのポリペプチドタグに融合されていてよい。
【0300】
別の実施形態は、a)複数の本発明のポリペプチドを含む複製可能な発現ベクターのライブラリーを作製するステップ、b)ライブラリーと、固定された標的抗原とを、結合に適した条件下で接触させることによって、標的抗原へのポリペプチドバインダーをライブラリーから単離するステップ、c)ライブラリー内のポリペプチドバインダーを非バインダーから分離し、標的抗原からバインダーを溶出するステップ、d)ポリペプチドバインダーを有する複製可能な発現ベクターを増幅するステップ、およびe)場合によって、ステップa~dを少なくとも2回反復するステップを含む、標的抗原に結合する抗原特異的抗原結合分子をVNARのライブラリーから選択する方法を提供する。
【0301】
本方法は、f)ポリペプチドバインダーを含む増幅された複製可能な発現ベクターを、結合に適した条件下で、0.1nMから1000nMの範囲の濃度の標識された標的抗原とインキュベートして、混合物を形成するステップ、g)混合物を、標的抗原上の標識に結合する固定された薬剤と接触させるステップ、h)標識された標的抗原に結合したポリペプチドバインダーを分離し、標識された標的抗原からポリペプチドバインダーを溶出するステップ、i)ポリペプチドバインダーを含む複製可能な発現ベクターを増幅するステップ、およびj)場合によって、毎回、より低い濃度の標識された標的抗原を使用して、ステップf)からi)を少なくとも2回反復するステップをさらに含み得る。場合によって、本方法は、過剰な未標識標的抗原を混合物に添加するステップ、および標識された標的抗原から親和性の低いバインダーを溶出するために十分な時間にわたりインキュベートするステップを含み得る。
【0302】
別の実施形態は、a)複数の本発明のポリペプチドを含む複製可能な発現ベクターのライブラリーを作製するステップ、b)ライブラリーを少なくとも約0.1nMから1000nMの濃度の標的抗原と接触させて、標的抗原へのポリペプチドバインダーを単離するステップ、c)標的抗原からポリペプチドバインダーを分離し、ポリペプチドバインダーを含む複製可能な発現ベクターを増幅するステップ、d)場合によって、毎回、低濃度の標的抗原を用いて、ステップa~cを少なくとも2回反復して、最低濃度の標的抗原に結合するポリペプチドバインダーを単離するステップ、e)ポリペプチドバインダーをいくつかの異なる希釈の標的抗原とインキュベートすることによって、最低濃度の標的抗原に結合するポリペプチドバインダーを高い親和性について選択し、ポリペプチドバインダーのIC50を決定するステップ、およびf)約0.1nMから200nMの標的抗原への親和性を有するポリペプチドバインダーを同定するステップを含む、複製可能な発現ベクターのライブラリーから標的抗原に対する高い親和性のバインダーを単離または選択する方法を提供する。
【0303】
別の実施形態は、a)ライブラリーを、結合に適した条件下で、0.1nMから1000nMの濃度範囲の濃度の標識された標的抗原と接触させて、ポリペプチドバインダーと標識された標的抗原との複合体を形成するステップ、b)複合体を単離し、標識された標的抗原からポリペプチドバインダーを分離するステップ、c)ポリペプチドバインダーを含む複製可能な発現ベクターを増幅するステップ、d)場合によって、毎回、より低い濃度の標的抗原を使用して、ステップa~cを少なくとも2回反復するステップを含む、複数の本発明のポリペプチドを含む複製可能な発現ベクターのライブラリーからポリペプチドバインダーを選択するためのアッセイを提供する。
【0304】
場合によって、本方法は、過剰な未標識標的抗原をポリペプチドバインダーと標的抗原との複合体に添加するステップをさらに含み得る。好ましい実施形態において、本方法のステップは2回反復され、第1の選択ラウンドにおける標的の濃度は約100nMから250nMであり、第2の選択ラウンドにおいては約25nMから100nMであり、そして第3の選択ラウンドにおいては約0.1nMから25nMである。
【0305】
本発明はまた、a)ライブラリーの第1の試料を、標的抗原へのポリペプチドの結合に適した条件下で、ある濃度の標的抗原とまずインキュベートするステップ、b)ライブラリーの第2の試料を標的抗原なしでインキュベートするステップ、c)第1の試料および第2の試料の各々を、固定された標的抗原へのポリペプチドの結合に適した条件下で、固定された標的抗原と接触させるステップ、d)各試料について、固定された標的抗原に結合したポリペプチドの量を検出するステップ、e)第2の試料から得られた結合したポリペプチドの量に対する第1の試料から得られた結合したポリペプチドの量の比率を計算することによって、標的抗原に対するポリペプチドの親和性を決定するステップを含む、複数の本発明のポリペプチドを含む複製可能な発現ベクターのライブラリーをスクリーニングする方法も含む。
【0306】
本明細書において記載されるように作製されたライブラリーはまた、特異的標的への結合についておよび非標的抗原への結合の欠如についてスクリーニングすることができる。一態様において、別の実施形態は、a)複数の本発明のポリペプチドを含む複製可能な発現ベクターのライブラリーを作製するステップ、b)ライブラリーを、結合に適した条件下で、標的抗原および少なくとも1つの非標的抗原と接触させるステップ、c)ライブラリー内のポリペプチドバインダーを非バインダーから分離するステップ、d)標的抗原に結合し、非標的抗原には結合しないバインダーを同定するステップ、e)標的抗原からバインダーを溶出するステップ、ならびにf)特異的抗原に結合するポリペプチドバインダーを含む複製可能な発現ベクターを増幅するステップを含む、特異的標的抗原に結合する抗体可変ドメインをVNARのライブラリーからスクリーニングする方法を提供する。
【0307】
上記の選別/選択方法のうちのいずれかの組み合わせは、スクリーニング方法と組み合わせることができる。例えば、一実施形態において、ポリペプチドバインダーは、固定された標的抗原への結合について最初に選択される。
【0308】
固定された標的抗原に結合するポリペプチドバインダーは次いで増幅し、標的抗原への結合についておよび非標的抗原への結合の欠如についてスクリーニングすることができる。標的抗原に特異的に結合しているポリペプチドバインダーが増幅される。これらのポリペプチドバインダーを次いで、ある濃度の標識された標的抗原と接触させて複合体を形成することによって、より高い親和性について選択することができ、ここで、標識された標的抗原の濃度範囲は約0.1nMから約1000nMであり、複合体は、標的抗原上の標識に結合する薬剤と接触させることによって単離される。ポリペプチドバインダーを次いで、標識された標的抗原から溶出し、場合によって、選択ラウンドを反復し、毎回、より低い濃度の標識された標的抗原が使用される。この選択方法を使用して単離された高い親和性のポリペプチドバインダーを、次いで、例えば溶液相ELISAアッセイまたはスポット競合ELISAアッセイを使用して、高い親和性についてスクリーニングすることができる。
【0309】
VNARの単離
VNARドメインは、標的で免疫化されたサメの組織を使用して構築されたファージディスプレイされたライブラリーから得ることができ(Dooley,H.ら、Mol Immunol、2003.40(1):25~33頁;Nuttall,S.D.ら、Proteins、2004.55(1):187~97頁;およびDooley,H.ら、Proc Natl Acad Sci USA、2006.103(6):1846~51頁)、参照によって組み込まれるWO2003/014161は、サメを免疫化し、結合ドメインを得るための有用な方法を記載している。
【0310】
VNAR結合ドメインはまた、VNAR配列を含む合成ライブラリーからも得ることができる。参照によって組み込まれるWO2014/173959は、VNARライブラリーを開発し、結合ドメインを得るための有用な方法を記載している。
【0311】
加えて、CDR3に対して標的化された合成多様性を有するライブラリーが、VNAR構造に基づいて結合ドメインを得るために使用され得ることが示されている(Nuttall,S.D.ら、Mol Immunol、2001.38(4):313~26頁;Nuttall,S.D.ら、Eur J Biochem、2003.270(17):3543~54頁;Shao,C.Y.ら、Mol Immunol、2007.44(4):656~65頁;およびLiu、J.L.ら、BMC Biotechnol、2007.7:78頁;WO2005/118629)。
【0312】
本発明のVNARは、本明細書において記載されているように、人に投与される(ヒト化)場合に潜在的免疫原性を低減させるために、さらに適用され得る。
【0313】
本発明はまた、本明細書において記載される任意の態様または実施形態に従った結合分子をコードするポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸を提供する。さらに、ポリヌクレオチドを含む宿主細胞を、前記宿主細胞が結合分子を生成する条件下で培養または維持するステップを含み、場合によって、結合分子を単離するステップをさらに含む、本発明に従った結合分子を準備するための方法が本明細書において提供される。
医薬組成物および使用
本発明に従うと、本発明のマルチドメイン特異的結合分子を含む医薬組成物が提供される。このような組成物には、前記抗原特異的抗原結合分子を含む融合タンパク質が含まれる。
【0314】
医薬組成物はまた、治療用タンパク質に融合した本発明の抗原特異的抗原結合分子またはその断片を含み得る。治療用タンパク質は、ホルモン、増殖因子(例えば、TGFβ、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、神経増殖因子(NGF)、コロニー刺激因子(CSF)、肝細胞増殖因子、インスリン様増殖因子、胎盤増殖因子);分化因子;血液凝固因子(例えば、因子VIIa、因子VIII、因子IX、フォン・ヴィレブランド因子、もしくはプロテインC)、または血液凝固カスケード由来の別のタンパク質(例えば、抗トロンビン);サイトカイン、例えば、インターロイキン(例えば、IL1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、もしくはIL-33)、またはインターフェロン(例えば、IFN-α、IFN-β、およびIFN-γ)、腫瘍壊死因子(TNF)、IFN-γ誘導因子(IGIF)、骨形成タンパク質(BMP、例えば、BMP-1、BMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7、BMP-8、BMP-9、BMP10、BMP-11、BMP-12、BMP-13);インターロイキン受容体アンタゴニスト(例えば、IL-1ra、IL-1RII);ケモカイン(例えば、MIP(マクロファージ炎症性タンパク質)、例えば、MIP1αおよびMIP1β;MCP(単球走化性タンパク質)、例えば、MCP1、2、または3;RANTES(発現し分泌された正常T細胞の活性化で調節される));栄養因子;サイトカイン阻害剤;サイトカイン受容体;酵素、例えば、フリーラジカル捕捉酵素、例えばスーパーオキシドジスムターゼもしくはカタラーゼ、またはプロドラッグ変換酵素(例えば、アンギオテンシン変換酵素、デアミナーゼ、デヒドロゲナーゼ、レダクターゼ、キナーゼ、およびホスファターゼ);ペプチド模倣体;プロテアーゼ阻害剤;メタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP、例えば、TIMP1、TIMP2、TIMP3、もしくはTIMP4)またはセルピン(セリンプロテアーゼの阻害剤)であり得る。
【0315】
本発明の他の実施形態において、融合タンパク質中の治療用タンパク質は、抗体、または、Fab、Fc、F(ab’)(化学的に結合したF(ab’)鎖を含む)、Fab’、scFv(その多量体形態、すなわち、ジscFv、またはトリscFvを含む)、sdAb、もしくはBiTE(二重特異的T細胞エンゲージャー)を含む、操作されたその断片であり得る。抗体断片としてはまた、可変ドメインおよびその断片、ならびに他のVNARタイプの断片(IgNAR分子)も含まれる。
【0316】
医薬組成物は、治療用タンパク質に融合した多くの本発明の抗原特異的抗原結合分子、例えば二量体、三量体、または高次多量体、すなわち2量体、3量体、4量体、5量体、6量体、7量体、または8量体から構成され得る。
【0317】
治療用タンパク質への本発明の抗原特異的抗原結合分子の融合は、タンパク質の任意の都合の良い部位で起こり得、また、N-、C-、および/またはN/C末端での融合であり得る。本発明の一実施形態において、本発明の抗原特異的抗原結合分子の融合は、治療用タンパク質のN末端およびC末端の両方に対するものである。
【0318】
本発明の医薬組成物は、任意の適切なおよび薬学的に許容可能な担体、希釈剤、アジュバント、または緩衝溶液を含み得る。組成物は、さらなる薬学的に活性な薬剤を含み得る。このような担体としては、限定されないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、リポソーム、水、グリセロール、エタノール、およびこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0319】
このような組成物は、示されているような、さらなる薬学的に活性な薬剤を含み得る。さらなる薬剤は、治療用化合物、例えば、抗炎症薬、細胞傷害剤、細胞増殖抑制剤、または抗生物質であり得る。このようなさらなる薬剤は、それを必要とする患者への投与に適切な形態で存在し得、このような投与は、同時、個別、または連続的であり得る。構成要素は、必要に応じて指示を含み得るキットの形態で準備され得る。
【0320】
医薬組成物は、とりわけ経口経路、局所経路、静脈内経路、筋肉内経路、鼻腔内経路、または皮内経路による投与を例えば含む、患者の疾患の処置に効果的なあらゆる効果的な都合の良い様式で投与され得る。治療において、または予防として、活性な薬剤は、注射可能な組成物として、例えば、好ましくは等張の、無菌の水性分散液として、個体に投与され得る。
【0321】
哺乳動物、特にヒトへの投与では、活性な薬剤の1日投薬量が体重1kg当たり0.01mg、典型的にはおよそ1mg/kg、2mg/kg、または最大4mg/kgとなることが予想される。いずれの事象でも、医師が、個体にとって最も適切となる実際の投薬量を決定し、当該投薬量は、個体の年齢、体重、性別、および応答を含む因子に応じる。上記の投薬量は、平均的なケースの典型例である。当然のことながら、より多くのまたは少ない投薬量が適当である場合が存在し得、これらは、本発明の範囲内である。
【0322】
本発明に従うと、医薬において使用するための本発明の抗原特異的抗原結合分子またはマルチドメイン特異的結合分子が提供される。本発明のこの態様は、したがって、それを必要とする患者における疾患を処置するための医薬品の製造における、本発明のこのような抗原特異的抗原結合分子またはマルチドメイン特異的結合分子の使用に及ぶ。本発明の抗原特異的抗原結合分子はまた、本発明の医薬組成物に関連して上記で定義したこのような特異的結合分子を含む融合タンパク質を準備するためにも使用され得る。
【0323】
このような使用はまた、本発明の抗原特異的抗原結合分子またはマルチドメイン特異的結合分子を含む、治療有効投薬量の本明細書において定義される医薬組成物を患者に投与するステップを含む、処置を必要とする患者における疾患を処置する方法も包含する。
【0324】
本明細書において使用される場合、用語「処置」には、ヒトまたは非ヒト動物に有利であり得るあらゆるレジメが含まれる。動物用医薬における「非ヒト動物」の処置は、ウマおよびコンパニオンアニマル(例えば、ネコおよびイヌ)、ならびにヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、およびウマの科のメンバーを含む家畜/農業用動物を含む、家畜の処置に及ぶ。処置は、あらゆる既存の状態もしくは障害に関する治療的処置であり得るか、または予防的(防止処置)であり得る。処置は、遺伝的なまたは後天的な疾患の処置であり得る。処置は、急性または慢性的な状態の処置であり得る。処置は、炎症および/またはがんに関連する状態/障害の処置であり得る。本発明の抗原特異的抗原結合分子またはマルチドメイン特異的結合分子は、限定されないが、変形性関節症、強皮症、腎臓病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、またはあらゆる炎症性疾患を含む障害の処置において使用することができる。
【0325】
本発明の抗原特異的抗原結合分子またはマルチドメイン特異的結合分子はまた、患者における疾患状態の性質を調べるためにも使用することができる。抗原特異的抗原結合分子またはマルチドメイン特異的結合分子は、X線、ガンマ線、もしくはPETスキャン、またはこれらに類するものなどの画像化技術を使用して対象の身体における疾患の部位の画像を準備するために使用することができる。本発明は、したがって、適切に検出可能に標識された抗原特異的抗原結合分子またはマルチドメイン特異的結合分子を対象に投与すること、および対象の身体をその後にスキャンすることを含む、対象における疾患の部位を画像化する方法に及び得る。あるいは、対象への前記分子の投与は、分子を投与した後の対象から得られた試料を分析することによって、試験結果を提供し得る。このような実施形態には、本発明の抗原特異的抗原結合分子またはマルチドメイン特異的結合分子の投与を含む、対象における疾患または医学的状態を診断する方法が含まれ得る。本発明のマルチドメイン特異的結合分子は、特に、同一の抗原上の異なるエピトープを標的化する複数のVNARを使用する場合に、診断の感度に関して特に有用であり得る。
【0326】
さらなる態様において、本発明は、治療有効量の、TNFαに特異的に結合する本発明の組成物を投与するステップを含む、TNFαが媒介する状態を処置するための方法を提供する。
【0327】
結合の測定
標的へのVNARの結合の検出および測定は、ELISAおよび表面プラズモン共鳴を含む、当技術分野において周知の多くの方法で測定することができる。
【0328】
機能的活性
本発明のVNARは、サイトカインなどの分子に結合させ、当該分子の生物学的影響を中和すること、受容体に結合させてリガンドの結合を防ぐかまたは結合後の生物学的影響を生じさせることを含む、多くの様式で機能し得る。
【0329】
結合ドメインの機能的活性を測定する方法は、当技術分野において公知である。第2のおよびそれに続く本発明の態様の好ましい特徴は、本発明の第1の態様に必要な変更を加えたものである。
【実施例
【0330】
本発明をここで、以下の実施例および添付の図面を参照することによって記載するが、当該実施例および図面は、説明のみを目的として存在しており、本発明を限定するものとしては解釈されない。
【0331】
実施例1-迅速なヒト化:抗TNFα soloMERにおける機能を回復させるための、soloMERドメイン上のDPK9相同性フレームワークの修飾
この実施例全体を通して、ヒト化されたVNAR配列は、soloMERとも呼ぶことができる。ヒト化のための第1のステップは、十分であるが有害ではないヒト残基を、ヒト抗体配列DPK9相同性モデルを使用して、リード抗TNF VNARドメイン(D1およびC4)に組み込むことを伴うものであった(図1を参照されたい)。
【0332】
ヒト化されたQuad Xバインダーを作るために(図2を参照されたい)、D1-V2およびC4-V1を、言及されている場所を除いて維持し、フレームワーク1またはフレームワーク4を未処理のVNAR配列に回復させ、これによって、soloMER Quad-X VNAR FW1回復済またはsoloMER Quad-X VNAR FW4回復済という名称とした。HEK293宿主細胞におけるポリエチレンイミン媒介トランスフェクションおよび一過性発現を、無血清FreeStyle(商標)293培地(Invitrogen)を使用して行った。タンパク質の一過性発現を5~7日間継続させ、その後、培地上清を採取した。プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを利用して、Fcに融合したsoloMERの精製を行った。最大150mg/lの発現レベル(FcベースのsoloMER構築物)が、これらの哺乳動物システムにおいて達成された。
【0333】
soloMER Quad-X VNAR FW1はHEK293細胞において発現を示さなかったが、soloMER Quad-X VNAR FW4は顕著なタンパク質発現を示した(図3を参照されたい)。したがって、このフォーマットを、さらなる特徴付け、およびネイティブなVNAR Quad-X(WT Quad-Xとも呼ばれる)との比較における機能的評価のために次へ進めた。
【0334】
この1対1の標的結合比較において、soloMER Quad-X(VNAR FW4)およびネイティブなQuad-Xの両方が、TNFαを認識し(図4A)ヒト血清アルブミンは認識しない(図4B)、同等の機能性を示した。これはまた、それらの結合動態およびヒトTNF-アルファに対する親和性によっても示されている(表3を参照されたい)。
【0335】
IBIS MX96 SPRi(表面プラズモン共鳴イメージング)機器を利用して、soloMERおよびネイティブなVNAR Quad-Xタンパク質の試料の結合動態を決定した。抗TNFドメインを、連続フローマイクロスポッター(CFM)を使用して、センサー(アレイチップ)にアミン結合し、その後、固定されたsoloMERまたはネイティブなVNAR Quad-Xに抗原(ヒトTNF-アルファ)を通した。
【0336】
【表3】
【0337】
図5におけるSECのデータは、単量体性およびドメインの生化学的挙動の類似性を裏付け、凝集の形跡も不安定性の形跡もない。
【0338】
上記のインビトロでのヒトTNF-アルファ中和アッセイ(図6を参照されたい)において、ネイティブなWT Quad-X(D1-Fc-C4 VNAR)およびsoloMER Quad-X(soloMER Quad-X VNAR FW4としても知られている)の両方が、マウス線維肉腫細胞系(L929細胞)に対するヒトTNF-アルファの細胞傷害効果を中和する同一の能力を示すことが実証された。ネイティブおよびsoloMER Quad-X VNAR FW4で達成されたND50値は、それぞれ0.002nMおよび0.0017nMである。
【0339】
実施例2-クローンP3A1は、ROR1と呼ばれるヒトタンパク質を認識する。クローンP3A1のヒト化を、抗TNF VNARクローンと類似の方法で行った(図1を参照されたい)。
【0340】
P3A1のいくつかのヒト化バリアント(V1からV6)を設計し(図7)、二量体(短鎖ペプチドリンカーと結び付き、HisMyc検出タグを有している、2×P3A1バリアント)として合成し、配列が正確であることを確認し、これを適切な細菌発現ベクターにクローニングした。これらのバリアントのうち、V1およびV4だけが、何らかのタンパク質を産生した(表4)。P3A1 V1は機能的結合を示し、これは、親WTクローンP3A1よりも優れていた(より高い親和性であった)(表4)。V4の発現レベルは低く、精製の間に沈殿した。V1はまた、そのhROR1標的タンパク質に対する良好な特異性を保持していたが、それは、V1が、WT非ヒト化P3A1クローンの特異性を模倣する、関係性の近いhROR2タンパク質に結合できなかったことによる(表4)。
【0341】
【表4】
【0342】
実施例3-様々なヒト化レベルを有する5つのヒト化VNARバリアント
VNARクローンE4および78は、ヒトタンパク質DLL4を認識する。抗TNFプログラムおよび抗ROR1(クローンP3A1)プログラムについて記載されているように、抗DLL4 VNARドメインE4および78を、DPK9をヒトIg相同性鋳型として使用してヒト化し、様々な程度のDPK9残基(ヒト化のレベル)を有する5つのヒト化VNARバリアントを得た。
【0343】
図8で示されているアラインメントは、ヒト生殖細胞系Vk1配列のヒト残基、ヒト化で利用されたDPK9、およびsoloMER-V1からV5からのヒト残基グラフティングの増大のパーセンテージの程度を示している。
【0344】
ヒト化VNAR E4および78バリアント(soloMER)を、パイロット小規模非最適化システム(大腸菌)における発現について評価した。
【0345】
可溶性VNARタンパク質を、原核生物(大腸菌)において発現させた。大腸菌TG1細胞における発現を1mMのイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘導し、可溶性VNARタンパク質をペリプラズム(大腸菌TG1細胞)から抽出した。全てのVNAR構築物を、pIMS100発現ベクターを使用して、IPTGで誘導した大腸菌TG1細胞において細胞質タンパク質として発現させた。細胞質VNARタンパク質の抽出は、BugBuster(商標)タンパク質抽出試薬とBenzonase(登録商標)(Novagen)とを使用して行った。
【0346】
全てのVNAR構築物を、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーを使用して、ポリヒスチジンタグを介して精製した。精製されたタンパク質試料の電気泳動を、MES緩衝液システム(Invitrogen)を製造者の指示に従って使用して、NuPAGE 4~12% Bis-Trisゲル上で行った。タンパク質試料を還元し、NuPAGE LDS+β-メルカプトエタノールを使用して変性させ、そして100℃で3~5分間沸騰させた。
【0347】
直接的な結合ELISA技術を使用するsoloMERドメインの結合活性の評価
96ウェル平底Maxisorp Nunc Immuoプレート(Thermo Scientific)を、1μg/mLのhDLL4で、4℃で一晩コーティングした。プレートを200μl/ウェルのPBST[0.1%(v/v)のTween 20を有するPBS]で3回洗浄し、その後、ウェル当たり200μlの4%の乳(w/v)PBS(MPBS)でブロックし、37℃で1時間インキュベートした。ブロックしたプレートをPBSTで3回洗浄し、その後、未定量のsoloMER/VNARタンパク質溶液を添加し、これを次いで、プレートに流したPBSで1:2で希釈し、そして室温で1時間インキュベートした。プレートをPBSTで3回洗浄し、100μlの1:1000希釈の抗ポリヒスチジン-HRP(ヒスチジンタグ付けされたタンパク質)をプレートに添加し、そして室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、100μlのテトラメチルベンジジン(TMB)基質溶液を添加することによって顕色し、そして50μlの1M HSOを使用して中和した。
【0348】
soloMER E4および78バリアントのこれらの最初の機能的特徴付けから同定された最良のバリアントは、E4-V2および78-V2および78-V4であったが、フレームワークのそれぞれは、ある程度のレベルの機能的結合を、特に78クローンバリアントで示した(図10)。
【0349】
親和性成熟のためのE4-V2および78-V2ヒト化ライブラリー
図11に示すように、抗DLL4 soloMERライブラリーを、個別調整された多様性がCDR1領域、HV2領域、およびHV4領域に導入されたE4-V2フレームワークに基づいて設計した。Squalus acanthus由来のVNAR配列のデータベースを分析して、所望の領域が有し得る予測される多様性のレベルを決定した。
【0350】
ライブラリーのクローニングの後、各ライブラリーからの96の配列(E4および78親配列)を分析すると、両ライブラリーが90%を超える正確性を示し、これは、全配列および互いに異なる配列である。ライブラリーの総サイズ(固有のクローン)は、およそ1×10個のクローンであると推定された。
ヒト化ライブラリーのDLL4に対するモノクローナルファージ結合ELISA。
【0351】
ファージのアウトプットを、モノクローナルファージELISAによって、ヒトDLL4への結合についてスクリーニングした。パンニングされていないライブラリーを、図12で概説されている戦略に従ったバイオパンニングの後に、ラウンド1~3でスクリーニングした。E4-V2親フレームワークと比較して結合が向上している多くのバインダーが、E4-V2ライブラリー(パンニングされていないおよびパンニングされている)から同定され、結合親和性は、ヒト化前の親クローンE4 WTの結合親和性にほぼ等しく、ヒト血清アルブミン(HSA)への結合は有さずに、標的抗原であるヒトDLL4に対する特異性を保持していた(図13)。これらのクローンの配列は図14において報告されている。
【0352】
実施例4-D3V2 soloMERライブラリーの作製
ライブラリーの設計
クローンD3は、ヒトタンパク質のROR1を認識する。D3のいくつかのヒト化バリアントを合成し、配列が正確であることを確認し(図15)、そして適切な発現ベクターにクローニングした。これらのバリアントのうち、D3V2を、表5におけるデータに基づくさらなる最適化のために選択した。
【0353】
【表5】
【0354】
V1およびV2は、WT D3と比較して、KD親和性の変化はほとんど示していない。V2はV1よりも向上したTmを示し、したがって、D3 V2誘導体を、V2フレームワーク内のいかなる変化も伴わない、CDR1領域、HV2領域、およびHV4領域のランダム化を介してヒト化D3V2バリアント(soloMER)の結合親和性を向上させるように設計されたD3V2ヒト化ライブラリーの作製、およびこれからの選択のために選択した。超可変領域(CDR1、HV2、およびHV4)におけるアミノ酸の変化および可能性の選択は、Squalus acanthus由来のVNAR配列のデータ分析に基づいて設計した。D3V2の配列およびライブラリーの設計を図16に示す。
【0355】
ライブラリーを、CDR1、HV2、およびHV4の制御された突然変異生成によって合成した。CDR1ループ、HV2ループ、およびHV4ループ内にそれぞれ位置する残基26~33、44~52、および61~65を、図16で特定した通りの選択されたアミノ酸に変え、8.2×10の組み合わせの、ライブラリーの総多様性を得た。
【0356】
ライブラリーの構築
D3V2 SoloMERライブラリーのDNAを、pHENファージミドベクターへのクローニングのために、NcoI制限部位およびNotI制限部位を導入するための特異的プライマーを使用して、PCRによって増幅した。ベクターにライゲートされたライブラリーDNAを、エレクトロコンピテントTG1大腸菌(Lucigen)に形質転換した。ライブラリーサイズを、1.5×10の固有のクローンであると計算した(配列および完全長インサートによって)。
【0357】
抗原特異的VNAR配列についてのSoloMERライブラリーのスクリーニング
組換えヒトROR1タンパク質を、D3V2 soloMERライブラリーの選択およびスクリーニングに使用した。ROR1特異的soloMERを単離するために、ストレプトアビジンでコーティングされたビーズをビオチン化抗原で事前に装飾し、低ストリンジェンシーの3ラウンドのパンニング(選択戦略の詳細については図17を参照されたい)を行った。抗原特異的ファージをファージモノクローナルのELISAによって検出し、抗原特異的ファージのパーセンテージを、PAN1(11%)からPAN3(88%)まで上昇させた。
【0358】
PAN3のD3V2 soloMERライブラリーのアウトプットを、可溶性soloMERの発現のために、pIMS147-cカッパベクターにサブクローニングした。ライブラリーDNAを、NotI/NcoI制限部位を介してpIMS147-cカッパにライゲートし、エレクトロコンピテントTG1大腸菌(Lucigen)に形質転換した。ライブラリーサイズを3.8×10であると計算した。
【0359】
単一のクローンを培養し、ペリプラズム可溶性タンパク質の発現を誘導し、そして、83%の、huROR1に対する正のバインダーを得た。
【0360】
モノクローナルファージELISAおよびペリプラズム-prep ELISAにおける、huROR1に対する正のバインダー(ckドメインを介して検出される)をアラインし、9つの固有の配列を同定した。
【0361】
【表6】
【0362】
さらなる分析の後、4つのヒットを、それらの発現可能性および抗原への結合に基づいて次へ進めた。クローンF11、E08、F01、およびG02(表6)は全て、ヒト化D3 V2バリアントおよび親クローンD3 WTの双方よりも向上した発現レベルを示した。さらに、全てのクローンが、D3 V2クローンと少なくとも同等の、hROR1抗原に対する親和性を示し、密接な関係があるhROR2タンパク質には結合しなかった(結果は示されていない)。クローンE08はD3 V2クローンよりも増大した親和性を示し、親D3 WTクローンに対する親和性は同様であった。結果は、ライブラリーの選択が、同等の親和性および特異性を有するがバイオプロセシング特徴が向上しているD3 WTのヒト化バリアント(クローンE08)の生成において非常にうまくいったことを示している。4つの最も良く結合するクローンのヒト化配列を図18に示す。
【0363】
ライブラリーの合成
CDRループライブラリーおよび個々のクローンを、設計が示されている図面において概説されている設計に従って、GeneArt遺伝子合成によって合成した。
【0364】
pHENへのライブラリーのサブクローニング
合成ライブラリーのPCR増幅を、Phusion High-Fidelity PCR Master Mix、および以下のプライマー:D3_FOR_NcoI AGCCGGCCATGGCCGCTTC(配列番号41)、D3_REV_NotI ATGTGCGGCCGCCCCTGAGGCCTG(配列番号42)を使用して行った。
【0365】
アンプリコンをPromega PCR精製キットで精製し、NcoIおよびNotIで消化し、そして同一の制限酵素で開裂したpHENベクターにライゲートした。ライゲーションは1:1の比率で行った。
【0366】
ライブラリーの選択
1.選択のためにライブラリーファージを守るために、ライブラリーグリセロールストックからの培養物を、OD600が0.5となるまで、2×TY、1%(w/v)のグルコース、100μg/mlのアンピシリン中で、37℃、250rpmで増殖させた。
【0367】
2.細胞を約1×10のM13K07ヘルパーファージ(NEB)で重感染させ、次いで、2×TY、100μg/mlのアンピシリン、50μg/mlのカナマイシン中で、25℃および250rpmで一晩インキュベートした。
【0368】
3.ファージを細菌培養物から2回PEG沈殿させ(20%のPEG/2.5MのNaCl)、得られたファージペレットを1mlのPBS中に再懸濁した。
【0369】
4.3%(w/v)のMPBSでプレブロックした200マイクロリットルのダイナビーズM-280ストレプトアビジン(Invitrogen、#11205D)を、20rpmで回転させながら、室温で1時間、ビオチン化されたヒトROR1でコーティングした。
【0370】
5.ライブラリーファージを、室温で回転させながらダイナビーズと1時間インキュベーションすることによって、選択から外し、次いで、抗原でコーティングしたビーズに添加した。
【0371】
6.ビーズをPBSTで3回洗浄し、PBSで3回洗浄し、400μlの100mM TEA中で8分間回転させることによって溶出し、そして200μlの1M Tris-HCl、pH7.5を添加することによって中和した。
【0372】
7.大腸菌TG1細胞(10ml)を、300μlの溶出されたファージで、37℃で30分間感染させ、1%(w/v)のグルコースおよび100μg/mlのアンピシリンを含有するTYE寒天プレート上で、37℃で一晩増殖させた。
【0373】
8.3回のさらなる選択ラウンドを実施し、アウトプットを、モノクローナルファージおよびライブラリー設計(限定されないが、ヒトDLL4(hDLL4)、ヒト血清アルブミン(HSA)、ヒトROR1(hROR1)、およびヒトROR2(hROR2)を含む)に応じた広範な異なる抗原に対するペリプラズム抽出ELISAによって抗原特異的結合についてスクリーニングした。ファージバインダーを、HRPにコンジュゲートした抗M13抗体を使用して検出し、ペリプラズムタンパク質を、HRPにコンジュゲートした抗ポリヒスチジン、c-myc、またはヒトCカッパ抗体を使用して検出した。
【0374】
soloMERライブラリーのスクリーニング:96ウェルフォーマットでの単一クローンのペリプラズム発現および結合ELISA
1.1mlの2×TY/0.1%(w/v)のグルコース/100μg/mlのAmpを含有するGreiner 96ディープウェルプレートに接種する。わずかに濁るまで、インキュベーションチャンバ内で、37℃で5時間、180rpmで増殖させる。
【0375】
2.2×TY/Amp中の110μl/ウェルの1mM IPTG(IPTG最終濃度=100μM)で誘導する。28℃で一晩、同一の振とう速度。
【0376】
3.培養物を4℃および3500rpmで15分間スピンさせる。上清をデカンテーションし、ペーパータオルで叩いて乾燥させる。
【0377】
4.250μl/ウェルの氷冷したTES緩衝液(50mMのTris/HCl、pH8.0/1mMのEDTA、pH8.0/20%(w/v)のショ糖)をペレットに添加する。ボルテックスする。
【0378】
5.水中で1:5希釈した250μlのTES緩衝液(氷冷した)を添加する。氷上で(またはリッジ内で)30分間維持する。上記のようにスピンさせる。使用する直前まで上清を氷上で維持する。
【0379】
ELISA
1.1μg/mlのhROR1-Fc、hROR2-Fc、またはHSA、またはhDLL4で96ウェルプレートをコーティングし、4℃で一晩インキュベートする。
【0380】
2.プレートをPBSTで3回洗浄する。
【0381】
3.コーティングされたプレートを200μl/ウェルの4%のM-PBSでブロックする。室温で1時間インキュベートする。
【0382】
4.PBSTで3回洗浄する。
【0383】
5.プレートを、100μl/ウェルのペリプラズム調製物と室温で1時間インキュベートする。
【0384】
6.100μlの抗His-HRPまたはヒトCカッパ-HRP(PBST中で1:1000)を添加し、室温で1時間インキュベートする。
【0385】
7.PBSTで2回、およびPBSで2回洗浄する。
【0386】
8.100μl/ウェルのTMB基質を添加する。50μl/ウェルの1M HSOで反応を停止させる。
【0387】
ROR1 VNARバインダーの大規模発現および精製
1.グリセロールストックから得たクローンを20mlの2×TY/1%(w/v)のグルコース/100μg/mlのAmpに接種する。250rpmで振とうしながら、インキュベーションチャンバ内で、37℃で一晩増殖させる。
【0388】
2.一晩の培養物を、TB+リン酸塩+1%(w/v)のグルコース+100μg/ml Amp培地(500mlの培地に10mlのo/n培養物;450mlのTB+50mlのリン酸塩)中で1:50で希釈し、強力に振とうしながら(250rpm)37℃で終日、またはできるだけ長くインキュベートする。
【0389】
3.20℃で、4000×gで20分間遠心分離することによって、細胞をペレット化する。
【0390】
4.細胞を同一の容積のTB+リン酸塩+1%(w/v)のグルコース+100μg/ml Amp培地中に再懸濁し、振とうしながら(250rpm)30℃で一晩インキュベートする。
【0391】
5.20℃で、4000×gで20分間遠心分離することによって細胞をペレット化し、細胞を同一の容積のTB+リン酸塩+100μg/ml Amp培地(グルコースなし)中に再懸濁する。IPTGを添加して、IPTGの最終濃度1mMとする。振とうしながら(250rpm)30℃で4~5時間インキュベートする。
【0392】
6.4500×gで30分間遠心分離することによって細胞を回収する[ペレットはこの時点で-20℃で凍結され得る]。
【0393】
7.ペレットを10%の培養容積の氷冷したTES緩衝液(500mlの培養物に対して50ml)中で再懸濁し、氷上で15分間、穏やかに振とうする。
【0394】
8.等容積の氷冷した5mMのMgSOを添加し(2.5mM最終濃度のMgSOまで)、さらに15分間、氷上で穏やかに振とうを続ける。
【0395】
9.4℃で、8000×gで30分間遠心分離することによって懸濁液をペレット化する。上清は、放出されたペリプラズムタンパク質を含有している。
【0396】
10.10×PBS(pH7.4)[最終濃度1×PBS]をペリプラズム調製物抽出物に添加し、その後、IMAC精製する。
【0397】
固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)精製
1.2~3mlのニッケル樹脂(His Pur Ni-NTA樹脂、Thermo Fisher#88222)を100mlの浸透圧衝撃溶液(ペリプラズム抽出物)に添加し、ローラー上で、室温で1時間インキュベートする。
【0398】
2.ペリプラズム抽出物をカラム(ポリプレップクロマトグラフィーカラム10ml、Bio-Rad#7321010)に通す。
【0399】
3.50~100mlのPBSで樹脂を洗浄する。
【0400】
4.5×1mlの500mMイミダゾール(pH8)でタンパク質を溶出した。
【0401】
5.透析カセット(Slide A Lyzer透析カセット7.000 MWCO、Thermo Fisher#66707)内で、撹拌しながら、溶出液を3×5リットルのPBS中で透析する。
【0402】
6.タンパク質をSDS-PAGEによって分析する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【配列表】
2024500750000001.app
【国際調査報告】