(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】早期特発性パーキンソン病のための治療レジメン
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4439 20060101AFI20231227BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20231227BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231227BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20231227BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231227BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20231227BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20231227BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20231227BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20231227BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20231227BHJP
A61P 13/00 20060101ALI20231227BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20231227BHJP
A61P 1/10 20060101ALI20231227BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20231227BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61P25/16
A61P43/00 121
A61K31/198
A61K45/00
A61P25/28
A61P25/18
A61P25/24
A61P25/22
A61P25/20
A61P13/00
A61P25/04
A61P1/10
A61P7/06
A61P3/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536970
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 PT2021050044
(87)【国際公開番号】W WO2022131944
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509095086
【氏名又は名称】ビアル-ポルテラ エ コンパニア,ソシエダッド アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】パトリシオ、マヌエル、ビエイラ、アラウホ、ソアレス、ダ、シルバ
(72)【発明者】
【氏名】ホセ、フランシスコ、ダ、コスタ、デ、ピノ、ロチャ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA22
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4C206ZA55
4C206ZA72
4C206ZA81
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4C206ZC75
(57)【要約】
パーキンソン病の患者が、レボドパとDDCIの製剤によって治療可能であり、臨床的に診断される運動合併症を起こしていないことを特徴とする、パーキンソン病の治療におけるレボドパとDOPAデカルボキシラーゼ阻害剤(DDCI)の製剤に対する補助的療法として使用するための、オピカポン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキンソン病の患者が、レボドパおよびDOPAデカルボキシラーゼ阻害剤(DDCI)の製剤によって治療可能であり、臨床的に診断される運動合併症を起こしていないことを特徴とする、パーキンソン病の治療におけるレボドパとDDCIの製剤に対する補助的療法として使用するための、オピカポン。
【請求項2】
前記治療が、オピカポンなしでレボドパとDDCIの製剤によって同じ期間治療した患者が示す症状と比較して、患者の1つ以上の症状における改善をもたらす、請求項1に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項3】
前記治療が、オピカポン治療を開始する前の同じ患者と比較して、患者の1つ以上の症状における改善をもたらす、請求項1に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項4】
前記改善が、治療を開始する前の患者(複数または単数)の疾患スコアと、オピカポンの効果が安定した際の、例えば、治療が開始されてから24週間後、好ましくは12週間後、より好ましくは4週間後および最も好ましくは2週間後の患者の疾患スコア(複数または単数)とを比較することによって評価される、請求項2または3に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項5】
前記治療が、国際運動障害学会のパーキンソン病の統一評価スケール(MDS-UPDRS)パートIII(運動機能の評価)からの1つ以上の基準についての患者のスコアにおける改善をもたらす、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項6】
前記治療が、患者の国際運動障害学会のパーキンソン病の統一評価スケール(MDS-UPDRS)パートIII(運動機能の評価)トータルスコアにおける改善をもたらす、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項7】
前記治療が、発話;顔の表情;固縮;指のタッピング;手の運動;手の回内・回外運動;つま先のタッピング;下肢の敏捷性;椅子からの立ち上がり;歩行;すくみ足;姿勢の安定性;姿勢;運動緩慢;手の姿勢時振戦;手の運動時振戦;安静時振戦の振幅;および安静時振戦の持続性からなる群から選択される1つ以上の基準における改善をもたらす、請求項5または6に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項8】
前記治療が、MDS-UPDRSパートI(日常生活で経験する非運動性の側面)からの1つ以上の基準についての患者のスコアにおける改善をもたらす、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項9】
前記治療が、患者のMDS-UPDRSパートI(日常生活で経験する非運動性の側面)トータルスコアにおける改善をもたらす、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項10】
前記治療が、患者の認知障害;幻覚;精神病;抑うつ気分;不安気分;アパシー;ドパミン調節異常症候群の特徴;睡眠の問題;日中の眠気;疼痛;泌尿の問題;便秘の問題;起立時のめまい;および疲労からなる群から選択される1つ以上の基準における改善をもたらす、請求項8または9に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項11】
前記治療が、MDS-UPDRSパートII(日常生活で経験する運動症状の側面)からの1つ以上の基準についての患者のスコアにおける改善をもたらす、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項12】
前記治療が、患者のMDS-UPDRSパートII(日常生活で経験する運動症状の側面)トータルスコアにおける改善をもたらす、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項13】
前記治療が、患者の発話;唾液;流涎;咀嚼;嚥下;摂食課題;着衣;衛生;手で書くこと;趣味を行う;寝返り;振戦;ベッド、自動車、またはベッドから降りること;歩行;バランス;またはすくみからなる群から選択される1つ以上の基準における改善をもたらす、請求項11または12に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項14】
前記治療が、患者のパーキンソン病睡眠スケール2(PDSS-2)トータルスコアにおける改善をもたらす、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項15】
前記治療が、患者の国際運動障害学会の非運動症状スケール(MDS-NMSS)トータルおよび/またはサブドメインスコアにおける改善をもたらす、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項16】
前記治療が、患者の修正Hoehn&Yahr重症度トータルスコアにおける改善をもたらす、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項17】
前記治療が、患者のSchwab&Englandスケールスコアにおける改善をもたらす、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項18】
前記治療が、患者のパーキンソン病質問票-39(PDQ-39)トータルおよび/またはサブドメインスコアにおける改善をもたらす、請求項1~17のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項19】
前記治療が、患者の改善についての医師による全般的印象(CGI-I)スコアにおける改善をもたらす、請求項1~18のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項20】
前記治療が、患者の改善についての患者による全般的印象(PGI-I)スコアにおける改善をもたらす、請求項1~19のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項21】
レボドパとDDCIの製剤によって治療可能であり、臨床的に診断される運動合併症を起こしていないパーキンソン病の前記患者が示す、MDS-UPDRSパートIV(運動合併症) A+B+Cのトータルスコアが、0である、請求項1~20のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項22】
レボドパとDDCIの製剤によって治療可能であり、臨床的に診断される運動合併症を起こしていないパーキンソン病の患者が示す、次のレボドパの投与後に改善するWOQ-9における陽性症状が、2以下である、請求項1~21のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項23】
レボドパとDDCIの製剤によって治療可能であり、臨床的に診断される運動合併症を起こしていないパーキンソン病の前記患者が、振戦、気分の変動、動作の遅さ、器用さの低下、硬直、不安/パニック発作、ぼんやりした思考/思考の遅さ、筋けいれん、および疼痛/うずきからなる群から選択される運動合併症を示さない、請求項22に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項24】
レボドパとDDCIの製剤によって治療可能であり、臨床的に診断される運動合併症を起こしていないパーキンソン病の前記患者が、振戦、不安、気分の変動、動作の遅さ、器用さの低下および硬直からなる群から選択される運動合併症を示さない、請求項23に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項25】
レボドパとDDCIの製剤によって治療可能であり、臨床的に診断される運動合併症を起こしていないパーキンソン病の前記患者が、振戦、不安/パニック発作および動作の遅さからなる群から選択される運動合併症を示さない、請求項24に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項26】
レボドパとDDCIの製剤によって治療可能であり、臨床的に診断される運動合併症を起こしていないパーキンソン病の前記患者が、運動症状の変動およびジスキネジアからなる群から選択される運動合併症を示さない、請求項1~25のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項27】
前記患者が、過去5年以内に特発性パーキンソン病と診断されている、請求項1~26のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項28】
前記患者が、英国パーキンソン病協会ブレインバンクの臨床診断基準に従って、特発性パーキンソン病と診断されている、請求項1~27のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項29】
前記患者が、少なくとも1年間にわたって、レボドパ/DDCIによる治療を受けており、かつ、オピカポンを開始する前に、少なくとも4週間にわたって、1日用量が300~500mgの範囲、1日3~4回の安定レジメンで治療を受けている、請求項1~28のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項30】
オピカポンによる治療の前、前記患者の修正Hoehn&Yahrステージが1~3である、請求項1~29のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項31】
前記患者が、1日あたり600mg以下のレボドパの投与を受ける、請求項1~30のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項32】
前記患者が、1日あたり6回以下のレボドパの投与を受ける、請求項1~31のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項33】
前記患者が、現在、COMT阻害剤による治療を受けていない、請求項1~32のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項34】
前記患者が、COMT阻害剤による治療を受けたことが全くない、請求項1~33のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項35】
前記患者が、現在、制御放出レボドパによる治療を受けていない、請求項1~34のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項36】
前記患者が、制御放出レボドパによる治療を全く受けたことがない、請求項1~35のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項37】
前記オピカポンが、1日1回投与される、請求項1~36のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項38】
前記オピカポンの単位用量が、5~100mg、好ましくは25~75mg、より好ましくは25~50mg、最も好ましくは50mgである、請求項1~37のいずれかに記載の使用のためのオピカポン。
【請求項39】
前記オピカポンが、食事の前後1時間以上あけて投与される、請求項1~38のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項40】
前記オピカポンが、レボドパの投与の前後1時間以上あけて投与される、請求項1~39のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項41】
前記オピカポンが、就寝前に、または就寝前の近くに投与される、請求項1~40のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項42】
前記治療が、少なくとも24週間、好ましくは少なくとも1年間続く、請求項1~41のいずれか一項に記載の使用のためのオピカポン。
【請求項43】
パーキンソン病の患者が、レボドパとDDCIの製剤によって治療可能であり、臨床的に診断される運動合併症を起こしていないことを特徴とする、パーキンソン病の治療におけるレボドパとDDCIの製剤に対する補助的療法として使用するための医薬の製造における、オピカポンの使用。
【請求項44】
パーキンソン病の患者が、レボドパとDDCIの製剤によって治療可能であり、臨床的に診断される運動合併症を起こしていないことを特徴とする、レボドパとDDCIの製剤に対する補助的療法として、それを必要とする対象に対してオピカポンを投与することを含む、パーキンソン病の治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、早期特発性パーキンソン病の症状の治療に使用するための治療レジメンに関する。特に、本発明は、レボドパとDOPAデカルボキシラーゼ阻害剤(DDCI)によって症状を抑えることができる、運動合併症を起こしていない患者におけるパーキンソン病の治療における、レボドパとDDCIに対する補助的療法としてのオピカポンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
レボドパ(L-DOPA)は、パーキンソン病を含む、種々の状態の対症療法において、数十年にわたって診療に使用されてきた。レボドパは、血液脳関門を通過することができ、次いで、そこで酵素DOPAデカルボキシラーゼ(DDC)によってドパミンに変換され、その結果、脳内のドパミンレベルが上昇する。しかしながら、レボドパからドパミンへの変換は末梢組織でも起こり得、有害作用を引き起こす可能性がある。したがって、補助的療法として、末梢DDC阻害剤(DDCI)、例えばカルビドパまたはベンセラジドなどを共投与することが標準治療になっている。DDCIは、末梢組織におけるレボドパのドパミンへの変換を阻害する。レボドパ/DCCI療法は、依然として、パーキンソン病を管理するための最も効果的な治療である(Ferreira J, et al., Eur. J. Neurol., 2013; 20, 5-15)。
【0003】
パーキンソン病の早期の間、レボドパ/DDCI療法は、次の用量が投与されるまで、パーキンソン病の症状をほぼ完全に抑制することができる。しかしながら、レボドパ/DDCIの長期投与を受けているほとんどの患者は、レボドパ投与を継続または増量しているにも関わらず、パーキンソン病の早期を過ぎると、運動合併症、例えば、エンド・オブ・ドーズの運動症状の変動およびジスキネジアなどを発症することになる(Aquino CC, Fox SH, Mov. Disord., 2015, 30, 80-89)。患者は、しばしば、いわゆる「オフ」状態において、エンド・オブ・ドーズの運動症状の変動の時間を1日あたり数時間過ごしていると訴えるが、これは患者のクオリティ・オブ・ライフに対して大きな影響を及ぼし得る(Chapuis S, Ouchchane L, Metz O, Gerbaud L, Durif et al., Mov. Disord. 2005, 20, 224-30)。パーキンソン病の、早期からより進行したステージへの移行は、運動合併症、例えばエンド・オブ・ドーズの運動症状の変動などの発症によって規定される。そうであるから、運動合併症の制御は、最終的に、ほぼ全ての患者にとって重要な臨床上の要求になる(Poewe W, Neurology, 2009, 72, S65-73)。
【0004】
エンド・オブ・ドーズの運動症状の変動は、経口レボドパの短い半減期(DDCIと共に投与した場合、約60~90分)と関連している。カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤は、レボドパの血漿排出半減期を延長し、ピーク-トラフ(peak-trough)変動を低下させ、エンド・オブ・ドーズの運動症状の変動に苦しんでいるパーキンソン病患者に対する臨床効果の改善をもたらす。
【0005】
2,5-ジクロロ-3-[5-(3,4-ジヒドロキシ-5-ニトロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]-4,6-ジメチルピリジン1-オキシド(オピカポン)は、レボドパの不活性な代謝物である3-O-メチルドパへの分解を低減させる、強力かつ長時間作用型のCOMT阻害剤である。オピカポンは、生理活性であり、生物学的利用能を有しており、かつ低毒性である。よって、オピカポンは、COMTの阻害が治療上の利益を有し得るいくつかの中枢および末梢神経系障害、例えば、気分障害;運動障害、例えばパーキンソン病、パーキンソン病様疾患およびレストレス・レッグズ症候群など;胃腸障害;浮腫形成状態;および高血圧などの治療において、潜在的に価値のある医薬特性を有している。
【0006】
さらなる研究は、オピカポンを安定で生物学的利用能を有する形態に最適化することに集中されてきた。例えば、WO2009/116882には、オピカポンの種々の多形が記述されており、多型Aは、動力学的にも、熱力学的にも安定である。WO2010/114404およびWO2010/114405は、臨床試験に使用された安定なオピカポン製剤が記述されている。WO2013/089573には、単純な出発材料を使用して、高収率でオピカポンを製造するための最適化された方法が記述されている。オピカポンの開発については、L. E. Kiss et al, J. Med. Chem., 2010, 53, 3396-3411に記述されており、オピカポンは、レボドパおよびDCCIと組み合わせて、パーキンソン病の治療用途で、欧州で2016年6月、米国で2020年4月および日本で2020年6月に、商標「オンジェンティス(Ongentys)」で承認された。
【0007】
すべてのケースにおいて、オピカポンは、パーキンソン病の早期を過ぎた患者に使用するための、レボドパ/DDCI製剤に対する補助療法として承認されている。例えば、欧州のラベルには、「オンジェンティスは、レボドパ/DOPAデカルボキシラーゼ阻害剤(DDCI)の組合せによって安定化できないパーキンソン病およびエンド・オブ・ドーズの運動症状の変動を有する成人患者における、レボドパ/DOPAデカルボキシラーゼ阻害剤(DDCI)の製剤に対する補助的療法として指示される」(下線を追加した)と記載されている。米国のラベルには、「オンジェンティスは、「オフ」エピソードを経験したパーキンソン病(PD)患者における、レボドパ/カルビドパに対する補助的治療として必要とされるカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤である」(下線を追加した)と記載されている。
【0008】
オピカポンの認可は、パーキンソン病の早期を過ぎた患者における(すなわち、エンド・オブ・ドーズの運動症状の変動を経験した患者における)オピカポンの2つのフェーズIIIピボタル試験からの主要結果に基づく。これらの臨床試験は、BIPARK-I(Ferreira et al., Lancet Neurol., 2016, 15, 154-65)およびBIPARK-II(Lees et al., JAMA Neurol., 2017, 74, 197-206)として知られている。
【0009】
BIPARK-Iによって、オピカポンが、患者が「オフ」状態で過ごす時間を短縮する能力の点で、レボドパ/DCCIと組み合わせたプラセボよりも優れており、以前に承認されたCOMT阻害剤であるエンタカポンに劣らないことが実証された。BIPARK-IIによって、オピカポンの有効性および安全性が確証された。これらのフェーズIIIピボタル試験によって、より小規模のフェーズII試験からの暫定的な結果が確証された。BIPARK試験の組合せ、およびそれらの非盲検継続投与の事後分析によって、オピカポンは、また、患者が「オフ」状態で過ごす時間の増加速度を遅らせることも示唆された。言い換えると、オピカポンは、パーキンソン病のより進行したステージの患者において、すなわち、エンド・オブ・ドーズの運動症状の変動を経験した患者において、レボドパの必要性に関して、パーキンソン病の進行を遅らせるように思われる(WO2016/083875)。パーキンソン病の1つのステージにおいて治療上の利益を示す治療は、別のステージにおいても同じ利益をもたらすと想定することはできず、実際に、多くの場合、同じ利益をもたらさないことに留意することが重要である。
【0010】
以前に承認されたCOMT阻害剤であるエンタカポンは、早期特発性パーキンソン病に罹患している患者、すなわち、運動合併症を起こしていない患者で試験された。最初のFIRST-STEP試験によって、エンタカポンが、パーキンソン病の統一評価スケール(UPDRS)パートIIおよびIIIで評価した運動症状を改善したことが示唆された。しかしながら、より大規模なSTRIDE-PDピボタル試験によって、これらの暫定的な結果を確証することはできなかった。よって、早期パーキンソン病におけるレボドパ/DDCI治療に対する補助的療法としてのエンタカポンの使用は追跡されなかった。実際に、エンタカポンの追加は、より短時間での運動合併症の発症、およびジスキネジア頻度の増大と関連があった。したがって、COMT阻害剤は、現在、早期パーキンソン病の治療における、すなわち、レボドパおよびDDCIによって症状を制御することができる、運動合併症を起こしていない患者における、レボドパおよびDDCIに対する補助的療法として推奨されていない。
【0011】
現在、パーキンソン病の早期の患者のための単独療法として適切であるとみなされている薬物には、3つの主要なクラスが存在する(Miyasaki JM, et al., Neurology, 2002, 58, 11-17; Fox SH, et al., Mov. Disord., 2011, 26, S2-41)。ドパミン前駆体であるレボドパ(DDCIとの組み合わせ)は、初期の運動性徴候および症状について最大の抗パーキンソン病効果をもたらし、短期間における副作用が最小であった(Fox SH, et al., Mov. Disord., 2011, 26, S2-41;Olanow CW, et al., Mov. Disord., 2004, 19, 997-1005)。しかしながら、上述したように、疾患の全期間にわたって有効性は維持されるものの、レボドパは運動合併症(変動および/またはジスキネジア)の発症と関連があり、典型的には、結果として、薬物療法レジメンを最適化するために、補助療法の使用が必要になる。したがって、最も早期の治療においては、他のクラスの単独療法が好まれることが多い。モノアミンオキシダーゼ(MAO)-B阻害剤(例えば、ラサギリン、セレギリン)は、生き残っているドパミン作動性ニューロンにおける脳内のドパミンの分解を阻害し、早期疾患の初期治療のためにも考慮され得る(Rascol O, et al., Mov. Disord., 2016, 31, 1489-1496)。しかしながら、典型的には、これらの薬剤がもたらす症候的利益は少ないため、患者の大多数は、比較的短期間で症候的有効性をもたらす追加の療法を必要とするであろう(Olanow CW, et al., Mov. Disord., 2004, 31,1489-1496)。ドパミンアゴニスト(例えば、ロピニロール、プラミペキソール、ロチゴチン)は、シナプス後ドパミン受容体に直接作用し、中程度の症候的利益をもたらす。初期の単独療法としてのドパミンアゴニストの使用は、レボドパと比較して運動合併症の発症を遅らせるために利用され得るが、一部の患者において、心理的または行動的副作用が起こる(Antonini A, et al., Lancet Neurol., 2009, 8, 929-937)。
【0012】
これらの治療によって実証されるように、早期パーキンソン病の治療は、単に脳内のドパミンレベルを増大させるという問題ではない。実際に、レボドパの過剰投与は、早期パーキンソン病における運動合併症の発症に直接結びつく(Stocchi F, et al., Ann. Neurol., 2010, 68, 18-27)。しかし、疾患が進行した場合、実質的に全ての患者は、レボドパの優れた症候的利益/有効性を必要とするであろう。ほとんどのパーキンソン病療法には、それぞれ、疾患の全てのステージおよび/または異なるステージにおいて特有の弱みがあるという事実が、パーキンソン病の治療に対するステージに基づくアプローチにつながり(Carrarini et al., Biomolecules, 2019, 9, 388)、レボドパ/DDCIは、運動合併症との関連性があるにも関わらず、ゴールドスタンダードである。
【0013】
そうであるから、レボドパの濃度またはバイオアベイラビリティーを高めようとする一般的な戦略は、パーキンソン病の早期(すなわち、エンド・オブ・ドーズの運動変動症状が現れる前)においては、レボドパレベルが低い場合のあらゆる潜在的利益は、レボドパレベルが高い場合のジスキネジアの増加によって相殺されると予想されるため、患者に利益をもたらさないと考えられる(Stocchi F, et al., Ann. Neurol., 2010, 68, 18-27)。
【0014】
したがって、早期パーキンソン病の対症療法を実現および/または強化する治療の必要性が残されている。特に、早期パーキンソン病の急性症状を、運動合併症を誘発することなく改善する、安全で効果的な治療レジメンの必要性が残されている。
【発明の概要】
【0015】
本発明者らは、オピカポンは、運動合併症を起こしていない患者のパーキンソン病の治療において、レボドパ/DDCIに対する補助的療法として使用できることを提唱する。
【0016】
したがって、第1の一般的実施形態において、本発明は、パーキンソン病の患者が、レボドパとDDCIの製剤によって治療可能であり、臨床的に診断される運動合併症を起こしていないことを特徴とする、パーキンソン病の治療におけるレボドパとDDCIの製剤に対する補助的療法として使用するための、オピカポンを提供する。
【0017】
第2の一般的実施形態において、本発明は、パーキンソン病の患者が、レボドパとDDCIの製剤によって治療可能であり、臨床的に診断される運動合併症を起こしていないことを特徴とする、パーキンソン病の治療におけるレボドパとDDCIの製剤に対する補助的療法として使用するための医薬の製造におけるオピカポンの使用を提供する。
【0018】
第3の一般的実施形態において、本発明は、パーキンソン病の患者が、レボドパとDDCIの製剤によって治療可能であり、臨床的に診断される運動合併症を起こしていないことを特徴とする、レボドパとDDCIの製剤に対する補助的療法として、それを必要とする患者に対してオピカポンを投与することを含む、パーキンソン病の治療方法を提供する。
【0019】
前記第1、第2および第3の一般的実施形態と関連する第4の一般的実施形態において、オピカポンの投与は、下記の1つ以上の症候的な読み出し情報における改善をもたらす。一般に、患者の改善は、オピカポンなしでレボドパとDDCIの製剤によって同じ期間治療した患者が示す症状と比較する。好ましくは、治療は、オピカポン治療を開始する前の同じ患者と比較して、患者の1つ以上の症状における改善をもたらす。
【0020】
前記第1、第2および第3の一般的実施形態と関連する第5の一般的実施形態において、オピカポンの投与は、オピカポンによる治療の間、レボドパ/DDCI療法を継続しているにもかかわらず、1つ以上の運動合併症の出現を抑制(supresses)する。
【0021】
本発明を裏付ける理論的根拠
本発明の基礎となる理論的根拠を以下に詳述する。これは、オピカポンによる、パーキンソン病(PD)の治療におけるCOMT阻害の位置付けの変化を裏付け、また、早期疾患における有効性を実現するための道筋を説明する。
【0022】
要約すると、本発明者らは以下のことを提唱する。
トルカポンおよびエンタカポンによる以前の研究は、運動合併症を起こしていない患者におけるPDの治療における効果を明確に示すものであるとは考えられておらず、そのため、製品のラベル、およびCOMT阻害剤の臨床的な使用方法に対して影響を与えることはできなかった;
エンタカポンが、臨床的に診断される運動合併症を起こしていない患者におけるPDを治療できなかったのは、エンタカポンの投与がレボドパ投与のタイミングに縛られていたという事実と合わせて、その時点の薬物動態パラメーターに対する理解が不十分であったことと関連していた可能性がある;
PDにおける運動合併症を低減させるオピカポンの作用の重要な面は、低い血漿レボドパトラフレベルの回避と関連がある;
レボドパ単独療法は、低いレボドパトラフレベルの問題に対処するものではなく、むしろ拍動性を悪化させ、さらに大脳基底核の出力に影響を及ぼす可能性がある;
早期疾患における外来性レボドパの送達を平滑化するためにオピカポンを使用することによって、可能性として、すでに不安定化している大脳基底核の処理の悪化が回避され、それによって運動合併症の出現が予防されるか、または遅延する;
多数の生理学的、薬理学的および臨床的研究の新たな解析に基づき、オピカポンは、臨床的に診断される運動合併症を起こしていないPD患者を治療するための新たな選択肢として提案される。
【0023】
レボドパは、パーキンソン病(PD)の運動症状の治療のための最も効果的な薬物であり、また、この一般的な神経変性疾患に罹患しているほぼ全ての患者に必要とされる「ゴールドスタンダード」療法である[1,2]。しかしながら、その有用性は、しばしば、運動症状の変動(例えば、「ウェアリング・オフ」、「オン・オフ」)および他の運動合併症(例えば、ジスキネジア-コレア、ジストニア、アテトーシス)の発現による制約を受ける[3]。厄介なジスキネジアの発生は、より慎重に判断されたレボドパの使用によって減少しているように見えるが[4]、運動症状の変動(これは、治療開始から数年の間に出現することがある)は、依然としてPDの一般的な特徴のままである。運動症状の変動には、患者による認識が不十分であり、医師には過小診断される運動性症状と非運動性症状の両方が含まれる[5]。最近のコホート研究によって、運動症状の変動の5年累積発生率は、29~54%の範囲と推定され[6~8]、10年で100%に上昇し[8]、また、運動症状の変動の日常生活に対する影響は変動する可能性があるものの[9]、多数の研究が、一様に、運動症状の変動はクオリティ・オブ・ライフに対して有害な影響を及ぼすことを示しており[10~13]、運動症状の変動の効果的な管理は、未だ満たされていない重要な要求のままである[3,14]。このことは、ひとたび運動症状の変動が発現すると、毎日の累積したオフ時間は、患者が覚醒している時間の最大50%を占める可能性があるという事実によって示される[15]。実際に、ウェアリング・オフは、患者によって、厄介ではないジスキネジアよりも、現在の治療の最も重要かつ不都合な要素として報告される[16]。
【0024】
今日でも、オンおよびオフの定義は、未だ議論になる問題である。個々の医師が様々な用語を使用し、用語「ウェアリング・オフ」は、不適切なレボドパ投与、エンド・オブ・ドーズ(end of dose)の悪化またはオン・オフ現象に関連する種々の状況を包含するために使用される。しかしながら、ウェアリング・オフ現象の実用的な優れた定義は、疾患の進行および薬物治療の継続期間の延長に伴う、レボドパの個々の投与の効果の持続時間の短縮であろう。後期疾患の合併症であると考えられることが多いものの、レボドパ療法開始から数か月以内に出現する可能性があるという説得力がある証拠が存在するが、精力的な研究にも関わらず、ウェアリング・オフのために重要な病態生理学的メカニズムは不明確なままであり、患者のリスクファクターは明らかになっていない[17~19]。ドパミン作動性および大脳基底核機能における、シナプス前の変化とシナプス後の変化の両方に関与する薬力学的因子は、レボドパの末梢の薬物動態プロファイルにおけるあらゆる変化と対立するものとして重要であると思われる。それにもかかわらず、不確かさはあるものの、ウェアリング・オフの発現に対する重要な要因は、レボドパの短い血漿半減期であることが広く認められており、それが線条体ドパミン受容体の非生理的な「拍動性」刺激を引き起こし、それが次に、無秩序な線条体出力および随意運動を制御する運動プログラムの破壊をもたらすと考えられている[20、21]。
【0025】
運動機能を改善するための最新の薬理学的戦略は、線条体のシナプス後ドパミン受容体の不適切かつ不連続的な刺激が存在し、かつより多くの持続的ドパミン刺激を与えることによってオン時間が増加することを前提とする。診療において、医師は、脳へのレボドパ送達を改善し、ドパミン受容体刺激を維持することを試みる一連の戦略を利用する。これらの戦略には、レボドパ投与量の増加、経口レボドパ投与頻度の増加、およびこの医薬の放出制御製剤または徐放性製剤の使用などのレボドパ修正戦略が含まれ得る。これらのレボドパアプローチは低コストであり、また通常短期間では効果的ではあるものの、低レボドパトラフレベルの問題に対処するものではなく、また拍動性をむしろ悪化させ、さらに大脳基底核出力に影響を及ぼす可能性がある。レボドパの持続的な十二指腸内送達は、非常に効果的である場合が多いが、侵襲的であり、全ての患者に利用できるものではない[22,23]。別の選択肢は、より持続的な受容体刺激を与えるために、より長時間作用する経口ドパミン作動薬、例えばロピニロールまたはプラミペキソールなどを使用すること[24,25]、またはアポモルヒネおよびロチゴチンの場合のように、ドパミンアゴニストを皮下注入もしくは経皮投与によって送達すること[26,27]である。しかしながら、ドパミンアゴニストは、リスク便益方程式に他の潜在的に重大な有害事象(例えば、幻覚、錯乱および衝動制御障害など)を持ち込み、したがって、通常、高齢のPD集団には利用されない[28]。最近、アデノシンA2Aアンタゴニストであるイストラデフィリン[29]およびNMDAアンタゴニストであるアマンタジン[30]などの、大脳基底核機能を変化させる非ドパミン性アプローチが、ウェアリング・オフの改善に有効であることが示唆されている。ドパミンアゴニストと同様に、これらの非ドパミン性アプローチは、通常、変動の重症度を軽減するものの、レボドパの薬物動態プロファイルに影響せず、したがって根底にある問題に対処するものではない。
【0026】
試みられ試験されたある戦略は、レボドパの血漿プロファイルおよび脳への送達ならびに各投与の有効期間を増大させるために一貫して有効であることが証明されており、この戦略は、レボドパの有効性を決定する鍵となる異化過程を制御する酵素阻害剤の使用によるものである。これらの戦略の一番目は、末梢脱炭酸酵素阻害剤であるカルビドパおよびベンセラジドであり、これらは、この疾患の全てのステージにおいて、脳に対するレボドパの利用可能性を増大させるための標準として使用される。次に、不可逆的モノアミンオキシダーゼB阻害剤であるセレギリンおよびラサギリンが開発され、現在、早期単独療法として、ならびに内在性ドパミンおよび脳内でレボドパから形成されたドパミンの効果の持続性を延長するための、レボドパに対する補助剤として一般に使用されている[31]。より最近には、可逆的MAO-B阻害剤であるサフィナミドもまた、レボドパに対する補助剤として治療に導入されている[31]。
【0027】
COMT阻害剤であるエンタカポン、トルカポンおよびオピカポンは、COMT酵素による代謝の主要な末梢経路からレボドパを保護する作用を有するため、特にウェアリング・オフの管理のために開発された。トルカポンは、中枢COMTを阻害することが示されているにもかかわらず、その臨床的有効性は、主に、末梢COMTの阻害によって媒介されるように思われ、外来性レボドパの同時使用に依存する[32]。トルカポンおよびエンタカポンは、1990年代に導入され、主に、慢性の運動症状の変動を有する、より進行した患者に使用されてきた。しかしながら、どちらの化合物も、理想的なものではないことが判明し、トルカポンは、肝毒性に関係し、エンタカポンは血漿半減期が短く、レボドパの投与ごとに投与することが必要である[33]。オピカポンは、毒性のリスクを低減し、他のCOMT阻害剤と比較してCOMT阻害活性および末梢組織選択性を改善するように合理的に設計された、第三世代のCOMT阻害剤である[34]。オピカポンは、運動症状の変動の管理のために、2016年に欧州で最初に承認され、その後、米国、日本、韓国、オーストラリアおよび他の国々で使用が承認されている。それ以前のCOMT阻害剤を上回る明白な利点があるにもかかわらず、オピカポンもまた、他の治療戦略が失敗に終わった、ウェアリング・オフを有する後期の患者に使用するためのものとして、使用が大幅に留保されてきた。
【0028】
1.末梢酵素の阻害は、脳におけるレボドパの作用を決定する重要な因子である
レボドパとDDCIの組合せは、現在、PDの診療に必須のものになっているため、「レボドパ単独療法」は、必然的に、レボドパ+DDCIを意味し、治療のごく初期から、DDCIなしでレボドパを使用しようとする者はいないであろう。
【0029】
しかしながら、レボドパのDDCIとの併用によって、その使用に内在する問題の多くは克服されない。しばしば「短い」と言われるレボドパの90分という半減期は、実際には、カルビドパと組み合わせた経口レボドパの血漿薬物動態を指し[44]、レボドパの脳透過性の程度は低いままであり、DDCIと組み合わせた場合、10%に達するに過ぎない。レボドパのプロファイルにおける、これらの存続する不足の主要な理由は、代謝の他の経路、すなわちCOMTを経由する経路に関連する。COMTは、末梢および脳に見られる別の遍在性の酵素であり、広い範囲のカテコール含有物質のO-メチル化のために重要である。末梢組織において、COMTは、主に可溶性サイトゾル形態(S-COMT)で最大の活性で利用することができ、これは肝臓、腎臓および胃腸管において示され、一方で、膜結合形態(MB-COMT)は、CNSにおいて優勢である[45]。その結果、末梢COMTは、脳内に透過できる前に、各レボドパ用量の大半を不活性化する。実際に、COMTは、レボドパの約90%を3-O-メチルドパ(3-OMD)に変換し、これは、レボドパ自体とは対照的に、DDCの基質ではないため、長い血漿半減期を有し、レボドパ投与が繰り返されることで蓄積する。3-OMDの有害作用は報告されていないが、血液脳関門のレベルで、脳内への移行についてレボドパと競合する可能性がある[46]。末梢DDCI阻害剤が使用された場合、投与された薬剤のわずか5~10%だけが脳に到達するように、レボドパ代謝がCOMT経路に短絡される(および3-OMDの形成が増加する)ことは、正しく評価されていない[47]。
【0030】
PDにおけるレボドパの作用を最大化するために末梢DDCと末梢COMTの両方をブロックする必要があるという理論的な結論は早くから認識されていたが、このコンセプトは、実現可能な薬物治療につなげることが難しいことが判明した。ピロガロールなどの化合物を使用してCOMTを阻害する初期の試みによって、これらの化合物は、非特異的であり、幅広い酵素系を阻害し、さらに重要なことに、作用が短時間であり、かつ毒性であることが示された[48]。ニトロカテコール(「カポン(capone)」シリーズ)の発見によって初めて、PDにおける選択的COMT阻害の臨床的な現実性が見え始めた。最初に開発されるべきものの1つは、有効性があるニテカポンであったが、これは臨床開発を妨げる毒性を示した[49]。トルカポンは有用かつ有効な薬物であり、レボドパのウェアリング・オフに治療に使用するために登録されたが、その後に肝臓障害の可能性が判明し、その後の大規模な安全性試験によってこの化合物の有用性が示されたにもかかわらず、必要とされる大規模なモニタリングによって使用が制限された[50,51]。エンタカポンもまたPDの治療のための登録には成功したが、その半減期がレボドパと同じくらい短かったため、COMTの十分な阻害を実現するためには、これら2つの薬物を組み合わせて使用しなければならなかった。この現実的な制約は、併用されるレボドパ/カルビドパ/エンタカポンの組合せとしてのスタレボの導入によってある程度克服されたが、この「3剤の組合せ」の使用は、医師が、レボドパの用量を患者の個別の必要性に適合させることを困難にする。結果として、スタレボは、薬物治療のコンプライアンスを改善するために開発されたにもかかわらず、その日の時間に応じてレボドパ用量が異なる患者、および複雑な投与レジメンによる患者における使用が困難であり得る。さらに、エンタカポンは、レボドパ血漿プロファイルの拍動性の改善においてある程度の有効性を有していたが、トルカポンよりも有効性が低く、また、レボドパ血漿レベルのピークおよびトラフは、依然として顕著であった。よって、第二世代のCOMT阻害剤によって、末梢代謝の阻害および脳へのレボドパ送達の増加による、レボドパの薬物動態的な制約に対する取り組みが始まったが、レボドパ送達を最適化する問題は解決されなかった。
【0031】
2.オピカポン-実験的生化学および薬理学
1日1回の強力な選択的かつ長期作用型の、毒性のない末梢COMT阻害剤の探索の結果、PDの治療ための第三世代の分子として、オピカポンが開発された。オピカポンは、3位にピリジンN-オキシド残基を有する1,2,4-オキサジアゾールアナログとして設計され、そのため、前の世代のニトロカテコールとは化学的に異なっている。その特有のファルマコフォアによって、細胞毒性のない、高いCOMT阻害活性がもたらされる[52]。さらに、オピカポンは、末梢組織においてS-COMTに対してピコモル濃度未満の結合親和性を有し、脳においてCOMT活性に対していかなる影響も及ぼさないと考えられる[52]。オピカポンは、比較的短い血漿半減期を有しており、COMTに対して長期間持続する阻害をもたらすことは直ちに期待されるものではない。しかしながら、S-COMTとの結合および相互作用は長く、体循環からの薬物のクリアランスよりも長時間持続する。概略的に言えば、オピカポンは、S-COMTに緊密に結合するが、劣った基質であり、したがって、長期間にわたって酵素活性を不活性化する[53]。オピカポンの緊密な結合および遅い複合体解離特性は、そのCOMT阻害活性および1日に1回の投与頻度の基礎である。
【0032】
オピカポンによって実現される持続性の酵素阻害は、実験モデルにおいてin vitroとin vivoの両方で観察することができる機能的活性につながる。オピカポン、トルカポンまたはエンタカポンによって経口的に処理されたラット由来の肝臓ホモジネートおよび腎臓ホモジネートにおいて、オピカポンは、他の薬物と比較して、より顕著で、より長時間持続するCOMTの阻害をもたらした[54,55]。(DDCIと組み合わせた)レボドパ代謝に対する作用もまた、オピカポンによってもたらされる長時間持続するCOMTの阻害を反映するものである。ラットに対するレボドパと組み合わせた経口的なオピカポン投与によって、薬物投与の24時間後にも明らかである脳レボドパレベルの持続的な上昇が引き起こされた。類似した結果は、カニクイザルにおいても見られ、レボドパ/ベンセラジドに対する補助剤であるオピカポンの投与により、Cmax値を変化させずにレボドパの全身曝露を2倍増加させ[56,57]、3-O-メチルドパ(3-OMD)曝露とCmax値を、両方とも最大7倍減少させた[56,57]。これらの変化は、赤血球COMTの最大約85%の減少を伴い[56,57]、MPTPで治療したパーキンソン病霊長類の運動機能の改善につながった[57]。
【0033】
3.レボドパの薬物動態プロファイルに対するオピカポンの作用
in vitroおよびin vivoの実験モデルと同様に、ヒトにおけるオピカポンの薬物動態は、最初は、1日1回投与のための医薬に適合するものには思われなかった。健常男性ボランティアに対して投与された10~1200mgの範囲のオピカポンの単回経口投与によって、血漿において薬物に対する用量に比例した曝露、および0.8~3.2時間の範囲のオピカポンの最終排出半減期が示された。しかしながら、オピカポンによるCOMT阻害の持続時間は用量とは無関係であり、また、赤血球におけるCOMT阻害の半減期は61.6時間であり、推定されたCOMT-オピカポン分子複合体の解離を反映するものであった。よって、比較的短い血漿半減期にもかかわらず、オピカポンは、血漿クリアランスのずっと後、末梢S-COMT活性を著しく、かつ持続的に阻害した[59,60]。このCOMTの長期間持続する阻害は、レボドパの血漿動態の変化に反映される。PD患者において、オピカポンの投与は、薬物投与の用量および期間に応じて、レボドパのバイオアベイラビリティーを、用量依存的に、最大65%増加させる[40,43]。AUCによって評価した場合、オピカポンは、レボドパ曝露の増加において、エンタカポン投与後と比較してより効果的であり、これは24時間にわたって持続する持続的COMT阻害を反映するものである[59]。オピカポンの投与は、また、個々のレボドパ投与について、最小血漿中濃度(Cmin)を、最大2.6倍増大させた。このことは、PDにおける運動症状の変動の低減は低い血漿レボドパトラフレベルの回避と関係するため、オピカポンの作用の重要な面である[61]。
【0034】
オピカポンの薬物動態プロファイルと、その機能的活性の分離には、別の利点も存在する可能性がある。一部のPD患者において、エンタカポンの吸収は、レボドパの吸収を妨げ、その結果、同時投与において、レボドパのtmaxが遅れ、Cmaxが低下する[62,63]。これによって、一部の患者はエンタカポンに対して見かけ上応答しないことが説明できる可能性がある[62]。同時投与した場合、レボドパとオピカポンの間にも相互作用がある可能性が存在するにもかかわらず、1日1回の就寝前投与(レボドパの組合せの少なくとも1時間前または後)と急速な血漿クリアランスによって、薬物吸収に基づくレボドパとのあらゆる相互作用が最小になる[64]。よって、オピカポンの薬物動態プロファイル、およびその後のレボドパの利用可能性に対する作用によって、単回の有効用量による1日1回の投与に基づく治療戦略がもたらされ、この場合、COMTの阻害は、レボドパ投与のタイミングと、またはいかなる特定のレボドパ製品または用量とも(エンタカポンの場合は関連があるが)関連がない。これは、患者のコンプライアンスおよび医薬品のコストのためにも、よりやさしく、また、より好都合である。最近、英国国立保健医療研究所(NICE)は、1日1回のオピカポンの投与を使用することによって、オピカポン用量を変更することなく、フレキシブルなレボドパの投与が可能になることを強調した[65]。
【0035】
4.変動を有するパーキンソン病における有効性
4.1 運動症状の変動の管理におけるCOMT阻害の理論的根拠
レボドパによる治療を受け、運動合併症が現れている患者において、末梢で作用するCOMT阻害剤を使用するための明確かつ明白な理論的根拠が存在する。投与と投与の間に現れる血漿レボドパレベルのトラフは、オフ症状に直接的に対応し[61,66]、COMT阻害剤による治療の目的は、オンのための閾値より上にレベルを維持することである。レボドパレジメンにCOMT阻害剤を追加することによって、各レボドパ投与の利益が延長され、不必要にレボドパの用量または投与頻度を増やすことなく、経口レボドパ療法に関連する変動を避けるために役立つ[67]。レボドパ代謝のCOMT経路への短絡は回避され、結果として薬物曝露が増大する。そのため、DDCIとCOMT阻害剤の使用により、レボドパ代謝の両方の主要な経路を阻害することによって、レボドパの脳への送達を最大化することができ、より持続的な薬物送達が実現される。
【0036】
4.2 ウェアリング・オフを有する患者におけるオピカポンの臨床試験
運動症状の変動を有する患者におけるオフ時間を減少させる補助剤であるオピカポンの有効性は、フェーズ3臨床試験ならびに観察研究によって十分に確立しており、他の所で広範囲にレビューされている[68,69]。3つのランダム化、二重盲検、プラセボ対照試験、すなわち、BIPARK試験(IおよびII))[70,71]と、より最近には、日本人集団において実施されたフェーズ2b(COMFORT-PD)試験[72]によって、運動症状の変動を有するPD患者におけるオピカポンの対症状的な効果が検討された。
【0037】
BIPARK試験のプール解析において、オピカポン(25および50mg)による二重盲検治療によって、一日の絶対的なオフ時間が著しく減少した。プラセボに対する平均[95%CI]治療効果は、オピカポン25mg投与については-35.1[-62.1,-8.2]分(p=0.0106)であり、50mg投与については-58.1[-84.5,-31.7]分(p<0.0001)であった [73]。ジスキネジアのないオン時間の統計的に有意な増加も観察されたが、厄介なジスキネジアは増加しなかった[73]。このような結果は、日本における試験でも同様であり、プラセボに対するオフ時間の減少は、オピカポン25mg投与群では-0.74時間であり、50mg群では-0.62時間(両方のオピカポン群についてp<0.05)であることが示された。オフ時間は、両方のオピカポン錠群において、第1週から二重盲検パートの終了まで(14~15週間)、一貫して、着実に減少した[72]。
【0038】
BIPARK I試験はエンタカポンに対するオピカポンの優位性を試験するためにデザインされたものではなかったが(そうではなくて、非劣性について試験した)、活性対照薬であるエンタカポンに対して、オピカポン50mgについて、CGI-CスコアとPGI-Cスコアの統計的に有意な改善も認められた[70]。エンタカポンについての試験におけるプラセボに対するオフ時間の減少(-40.3分)は、以前の試験と完全に整合性があり(エンタカポン試験のメタ分析の結果は-41分である[74])、エンタカポンに対するオピカポン50mgについての治療上の差である26.2分は、統計的優位性の境界(p=0.05)であった[70]。これらのデータに基づき、オピカポンのレボドパ等価用量(LED)は、最近、1.5であると推定されたが、これは、トルカポンと同じであり、エンタカポンのLED変換係数である1.3よりも高い。よって、オピカポンのLEDは、100mgのレボドパ用量に対して、140~150mgである[75]。製品間の臨床的な差異は、BIPARK Iにおけるエンタカポンから、非盲検継続投与におけるオピカポンへの切り替えによってさらに強調される。二重盲検相において以前にエンタカポンで治療された患者は、平均で40分のオフ時間の減少があり、その後、非盲検のオピカポン50mg治療が終了した患者において、68分のオフ時間の減少というさらなる改善があった[76]。有効性の改善についての類似した手がかりは、単一の欧州サイトにおける、以前にエンタカポンを使用した者の聴取において報告されている[77]。この聴取には、エンタカポンからオピカポンに切り替えた20人の患者と、エンタカポンによって、以前に有効性が得られなかったか、または有害事象を経験した37人の患者が含まれていた。6か月を超えてオピカポンを継続した患者において、オフ時間の減少は、インタビューによって測定して、1日あたり平均で約2時間であると報告された。エンタカポンからオピカポンに切り替えた患者は、COMT阻害によるAEを以前に経験した患者よりも、オピカポン治療に残る見込みが高かった[77]。エンタカポンと比較してより優れたトルカポンの有効性はよく知られているが[78]、トルカポンの安全性プロファイルは、エンタカポンの後にのみ考慮することができることを意味している[79]。オピカポンにはそのような制約はなく、その1日1回の投与は、エンタカポンよりも高い有効性のための指示と合わせると、運動症状の変動を有する患者において、エンタカポンに代わる優れた選択肢であることを示唆している[69]。
【0039】
実臨床の観察研究では、Reichmannと共同研究者らは、英国およびドイツにおける68施設で治療された506人の患者を含むOPTIPARK試験を実施した[80]。オピカポン50mgによる治療の3か月後、患者の大半(71.3%)が、治験担当医師が判断した臨床的効果(CGI-C)を示し、43%は、大きく、または非常に大きく改善されたと報告された。6か月においても評価を受けた英国の患者(n=95)については、85.3%が治療を開始してから改善したものと判定され(非常に大きく改善された8.4%の患者と、大きく改善された49.4%の患者が含まれる)、一方で、8.4%が「変化なし」、6.4%が悪化したものと判定された。重要なことに、有効性に対するこの高い所見は、患者自身によって確証されており、そのうちの76.9%は、3か月において改善があったと報告している。患者は最適化された療法を受けて試験に参加したにもかかわらず(79%の患者はレボドパ+別のPD薬物治療を受けていた)、この試験によって、オピカポン補助治療は、UPDRSの運動スコアおよびADLスコアにおいて、臨床的に関連がある改善(それぞれ、4.6および3.0ポイントの改善)をもたらしたことがわかった[80]。これらの変化は、2.0~5.2ポイント(運動スコアについて)および0.5~2.3ポイント(ADLスコアについて)[81]という推定の臨床的に関連がある相異の範囲内であり、これは、オピカポンによる治療が、オン時間を増加させただけではなく、オン時間の質も改善したことを示唆している。
【0040】
別の興味深い知見は、オピカポンによる治療の3か月後に、ほとんどの患者が、同じ一日あたりのレボドパ頻度を維持しており(投与頻度について、77.1%が変化なし、10.4%が増加、12.5%が減少)、結果として、全体の平均減少は-10mg/日であったことである。これは、例えば、BIPARK II試験において、臨床的な必要性に応じて用量を調節することは自由であったにもかかわらず、ほぼ3分の2(63%)の患者が同じ用量のレボドパ治療を維持していた[71]ピボタル試験と整合性を有している。一日のレボドパ投与の平均数もまた、このフェーズの間安定なままであり、1年間にわたって4.7~4.8の範囲であった。全ての試験において、レボドパ用量の減量の最も一般的な理由はジスキネジアなどのドパミン性有害事象を管理するためであり、一方で、OPTIPARK[80]およびピボタル試験の数年にわたる非盲検継続投与[69,73,82]において、オピカポンと併用のレボドパ用量が維持されたことによって、レボドパ増量の必要性を長期間遅らせる可能性が暗示された。実際に、このコンセプトは、早期ウェアリング・オフの実施中の試験においてさらに調査されるであろう。
【0041】
4.3 早期ウェアリング・オフにおけるオピカポン
運動症状の変動は、かつて考えられていたよりも大幅に早く表れ始め[21]、ウェアリング・オフは、治療の最初の数年以内にすでに一般的なことであり、神経学的な臨床評価によって過小評価されている[83]ことが次第に受け入れられている。ウェアリング・オフの認識が過小である理由としては、非運動症状の変動に対する理解が欠如していること、ならびにこの現象に対する患者(および医師)の認識が一般的に欠如していることがあげられる[84]。継続的な医学教育によって、これらの問題は徐々に対処されているが[85]、おそらく、確立した症状の再現についてのより客観的な画像が得られるのを待つため、神経学者には、依然として、診断されてから最初の数年以内(疾患の持続<2.5年)の患者におけるウェアリング・オフの存在を過小評価する顕著な傾向がある[83]。ウェアリング・オフの予測因子としては、(治療の持続期間および疾患の重症度に加えて)年齢がより若いこと、体重および女性であることがあげられ[18,83]、女性のウェアリング・オフのリスクは、80%高い[86]。
【0042】
全体をまとめると、BIPARK試験に登録される患者は、疾患の持続期間が約8年であり、運動症状の変動がほぼ3年であり、一日のオフ時間が平均して6時間を超えており[73]、患者の大多数(83%)がパーキンソン症状のための多剤療法(レボドパ+少なくとも1つの他のPD薬物治療)を受けている[87]。これは、より慢性の運動合併症の集団を意味する可能性があるにもかかわらず、試験には、ベースラインにおいてより短いオフ時間を有する患者、ならびに他の補助療法を受けていない患者が含められていた。PDおよび治療過程がより早期であるウェアリング・オフを有する患者に対する最近の事後分析によって、プール集団全体と比較した場合、プラセボに対して、オピカポン50mgの有効性が、同等であること、さらには増強されていることが示された[88]。例えば、より最近に運動症状の変動(ここ2年以内)が発症した患者は、プラセボに対して、オフ時間の減少が-68.5分(p=0.0003、対プラセボ)であり、1日あたり600mg未満のレボドパ投与を受けている患者は、プラセボに対して、オフ時間の減少が-75.5分(p=0.0005、対プラセボ)であった[73、88]。このようなオフ時間の減少は、ここでも、推定の臨床的に関連がある相異である1時間を超えているので、臨床的に関連があると見込まれる[81,89]。サンプルサイズが比較的小さい(オピカポン50mg群においてn=67、プラセボ群においてn=59)にもかかわらず、ベースラインにおいてレボドパだけの投与を受けている(すなわち、補助療法としてドパミンアゴニストまたはMAO-B阻害剤を投与されていない)患者もまた、プラセボに対して、オピカポン50mgによる平均の減少が-65.6分(p=0.02、対プラセボ)であり、これは、ウェアリング・オフが出現してすぐの有用性を裏付けるものである。
【0043】
最後に、より遅いオピカポンの開始に対する、より早いオピカポンの開始が、運動症状の変動を有する患者に対して有益である可能性があるという証拠もいくつか存在する。BIPARK二重盲検試験と非盲検試験の複合解析において、非盲検相の終わりにおけるオフ時間の減少は、二重盲検相において、もともとはプラセボに割り付けられた患者と比較して、オピカポンに割り付けられた患者の方が数値的に大きいことが判明した(二重盲検と非盲検治療の全体にわたってオピカポン50mgの投与を受けた群において、ベースラインからの変化が-141.1分であるのに対して、プラセボからオピカポンに切り替えた群において114.7分)[73]。より早いエンタカポンの開始について、(6か月遅い場合と比べて)プラセボ対照試験と非盲検継続投与の別のプール解析からのデータを使用して、類似の傾向が以前に示されており[90]、レボドパに関連する変動を有する患者において、より遅い開始と比べて、より早いCOMT阻害剤の開始には、有益な効果が存在する可能性があることが示唆されている。その時点で90%を超える参加者数の減少があったものの、ベースラインから4~5年において相異が検出され、このコンセプトには、さらなる前向き研究を行う価値がある。
【0044】
上述したように、ウェアリング・オフに対する標準治療のアプローチは、各レボドパ投与量を増やすことによって、または1日の合計レボドパ投与量をより小さく頻回の投与に「分割すること」によって、通常のレボドパ製剤の投与レジメンを変えることである(Brooks DJ. Neuropsychiatr. Dis. Treat.; 4(1): 39-47; 2008)。多数の生理学的試験、薬理学的試験、および臨床試験からの全ての結果を組み合わせると、1日1回のオピカポンは、ウェアリング・オフを治療するための、有望な第一選択の補助的レボドパ療法とみなされる可能性があり、潜在的に、長期間の継続において必要とされるレボドパの量を増量する必要性を限定する可能性さえある。ランダム化、並行群、多施設、国際、前向き、非盲検の探索的臨床試験(eArly levoDopa with Opicapone in Parkinson’s paTients wIth motOr fluctuatioNs[ADOPTION]試験;EudraCT number 2020-002754-24)が、早期ウェアリング・オフを有するPD患者におけるオピカポン50mgのの効果を評価するために、現在進行中である。この試験において、特発性PDを有し、1日に3~4回、最大600mgのレボドパの経口投与による治療を受けており、治療可能な運動障害の徴候を有し、2年未満にわたりウェアリング・オフ現象を経験している患者(年齢が30歳以上)は、1か月の評価期間の間、1日1回のオピカポン50mgの投与、または追加して100mgのレボドパの投与を受けるように、(1:1の比率で)ランダム化されることになる。有効性エンドピントは、患者が家でつける日記[91]、ならびに国際運動障害学会のパーキンソン病の統一評価スケール(MDS-UPDRS)[92]、国際運動障害学会の非運動症状評価スケール(MDS-NMS)[93]、パーキンソン病質問票-8(PDQ-8)[94]、改善についての医師による全般的印象(CGI-I)および変化についての患者による全般的印象(PGI-C)[95]に基づくことになる。
【0045】
5.安定パーキンソン病における有効性
5.1 早期「安定」疾患におけるCOMT阻害についての理論的根拠
安定病態において、すなわち、運動合併症が発症する前にCOMT阻害を考慮する2つの理由が存在する。1つ目は、運動症状の変動の発症を予防または遅らせるためであり、2つ目は、安定した状態の患者における現在の症状を軽減するためである。この文脈において、「安定」疾患とは、患者が、運動合併症と診断されることなく、レボドパ療法の利益を享受している期間を指す。言い換えると、長い間、「ハネムーン」期間と呼ばれていたものである。これは、診断を受けた後の最初の数年を指すためにしばしば用いられる「早期」疾患と(しばしば混同されるが)完全に同じものではない。以前に言及したように、患者の一部は、疾患の過程におけるかなり早い時期に運動合併症を発症する。
【0046】
運動症状の変動の管理におけるCOMT阻害の理論的根拠の理解は容易であるが、運動症状の変動の出現を予防または遅らせるための理論的根拠については、大脳基底核がどのようにして平衡に達しようとするのかについてのより深い理解が求められる。世紀の変わり目において、レボドパの薬物動態の影響、およびレボドパ/DDCIの間欠的な経口投与に関連する「拍動性の」送達を理解するための研究が爆発的に行われた。安定病態において、より持続的な薬物送達(CDD)を実現する重要な理由は、それが、より持続的なドパミン刺激(CDS)を実現するからである。両方のコンセプトについての前臨床的および臨床的な証拠は、他の所で広範囲にレビューされている[21、67、96~98]。CDSのこのコンセプトは非常に複雑であるが、非常に基本的な前提は、通常の生理的条件下で、黒質に始まるドパミン作動性ニューロンは(運動とは無関係に)持続的に発火し、それによって、線条体における細胞外ドパミンが、一定のベースライン濃度になるということである。これによって、線条体のドパミン受容体の持続的刺激のバックグラウンドレベルが維持され、行動的な活動に応答して位相性のドパミン放出が起こる。正常な脳においては、シナプス前小胞のドパミンの貯蔵が伝達物質の貯蔵所として機能し、それによって、線条体に予期される定常的な刺激を確保するための天然のバッファーがもたらされる。黒質線条体の変性に伴い、このバッファー能は次第に失われる。短期的には、これが、ドパミンによる皮質線条体のグルタミン酸放出の非生理的な変化を含む、線条体機能の異常なパターンを生じさせる。長期的には、生理的な結果には、線条体出力の深刻な不安定化につながる皮質線条体シナプスの異常な可塑性、大脳基底核の残りにおける下流分子の変化および神経生理学的変化(長期ポテンシャル「LTP」および長期抑制「LTD」の変化を含む)が含まれ、究極的には、大脳基底核が運動情報を処理する方法を変化させる[99]。
【0047】
これらの条件下で、レボドパが送達されて内在性ドパミンを置き換える方法が重要であると考えられる。その短い半減期を前提とすると、経口投与は、レボドパ(および、その結果、外来性ドパミン)の利用可能性のピークおよびトラフと関連する。このパターンの送達は、正常な脳で起こる生理的な持続性刺激を反映するものではなく、大脳基底核の処理のさらなる混乱を引き起こし、究極的にはウェアリング・オフおよびジスキネジアという運動合併症として顕在化する。本発明者らは、早期疾患における外来性の送達を平滑化するためにCOMT阻害剤を使用することによって、すでに不安定化している大脳基底核の処理の悪化が回避され、それによって運動合併症の出現が予防されるか、または遅延するであろうと考えている。
【0048】
5.2 「安定」患者におけるCOMT阻害の臨床試験
レボドパ/カルビドパ/エンタカポン(スタレボ)の組合せの早期使用によるジスキネジア発症の遅延を示すためのSTRIDE(STalevo Reduction In Dyskinesia Evaluation)試験が失敗したことによって、最初は、早期COMT阻害の利点は存在しないことが示唆された[100]。しかしながら、本発明者らは、STRIDE試験は、多くの点で欠陥があったものと考えている。主要な欠陥は、この試験が、1日に4回、3.5時間間隔で投与を受けたMPTPマーモセットにおける所見に基づいて開始されたことである[101]。ヒトにおける薬物動態試験は、後になって初めて実施され[67、102、103]、この投与間隔は、CDDを起こさないことが示された[18、102、103]。さらに、これらの薬物動態試験によって、エンタカポンの反復投与が血漿中のレボドパのCmax値を上昇させ、それがジスキネジアの発症リスクを増加させたのであろうことが示された。また、治療の最初の年に投与量を最大400mg/日まで増加させるというレボドパ投与スケジュールを使用したことも批判することができ、これは、この期間における通常の診療とは著しく異なっている。本発明者らは、この時点のこれらの薬物動態パラメーターをよりよく理解していれば、大きく異なるSTRIDEのデザインにつながったであろうと考えている。
【0049】
対照的に、1日1回のオピカポン50mgでPD患者を治療することによって、3および4時間ごとに投与されるレボドパに対する全身曝露が増加し、これによって、レボドパ濃度におけるピーク-トラフ変動の低下と、トラフレボドパ濃度の上昇の両方が引き起こされる[104]。これに基づき、本発明者らは、オピカポンは、早期疾患において開始すれば、ジスキネジアを回避するために必要とされるCDDのレベルを実現できると考えている。オピカポンによるCDDのコンセプトは、薬物動態試験において検討することは可能であるが、ジスキネジアの低下を臨床的に実現することは、非常に大規模であり、少なくとも2~4年の期間が必要とされ、したがって被験者の登録が難しく、実施に費用がかかる正式なSTRIDEのような試験において試験される見込みはなさそうである。
【0050】
別の重要な問題は、COMT阻害が、「安定」患者(すなわち、レボドパ治療に対して、運動合併症を発症することなく、完全奏功が可能である患者)において、運動症状をさらに緩和するために役立つか否かである。早期トルカポン試験において、1日に3回の100または200mgのトルカポンによる、6か月間の治療によって、「安定」患者において、UPDRSパートII日常生活動作スコア(ADL、それぞれ-1.4および-1.6ポイント)および運動スコア(それぞれ-2.0および-2.3ポイント)の著しい減少が引き起こされた。これらの改善は、12か月のアセスメントまで維持され、試験の間に運動症状の変動を発症した患者数は、プラセボ群よりも、トルカポン群の方が少なかった[105]。同様に、FIRST-STEP試験において、合計UPDRSスコアについて、スタレボの方が良好な著しい相異が第4週において最初に観察され、これが39週間の観察期間の全体にわたって維持され、最大の相異は第26週に生じた[106]。類似の所見は、単独のエンタカポンによる先行する試験においても暗示されており、レボドパの投与レベルが(プラセボ群においてはレボドパの投与量を増加したのとは対照的に)6か月間にわたって維持されていたにも関わらず、安定した状態の患者のサブグループにおいて、レボドパレジメンにCOMT阻害剤を追加することによってスコアが改善されたことが示された[107、108]。これらの試験によって、薬剤が中止された場合、エンタカポンによって得られたUPDRSスコアにおける利益は、一貫して失われることも示された[107、108]。しかしながら、これらの試験は、安定病態における効果を明確に示すものであるとは考えられておらず、そうであるから、製品のラベル、およびPDにおけるCOMT阻害剤の使用方法に対して影響を与えることはできなかった。
【0051】
対照的に、オピカポンは、その独特なプロファイルゆえに、「安定」患者における利益について試験するための優れた候補になると考えている。
【0052】
ランダム化、二重盲検、プラセボ対照臨床試験(Early ParkinSon wIth L-DOPA and OpicapoNe[EPSILON]試験;EudraCT number 2020-005011-52)が、「安定」PD患者におけるオピカポン50mgの効果を評価するためにデザインされた。この試験において、特発性PDを有し、1日に3~4回、最大500mgのレボドパの経口投与による治療を受けており、治療可能な運動障害の徴候を有するが、運動合併症を起こしていない(年齢が30~80歳)が、6か月の二重盲検評価期間の間、1日1回のオピカポン50mgの投与を受けるように、1:1の比率でランダム化されることになる。患者の現行のレボドパ/DDCIレジメンは、二重盲検期間を通じて一定のままにすべきである。主要エンドポイントは、MDS-UPDRSパートIII(運動)スコアにおける、ベースラインから二重盲検期間の終わりまでの変化であり、副次的アウトカムにおいては、非運動症状、クオリティ・オブ・ライフおよび変化についての臨床的な全般的印象が評価されることになる。二重盲検期間の終わりにおいて、患者は、追加の1年間のオピカポン50mgによる治療の非盲検期間に入ってもよい[109]。
【0053】
6.オピカポンの非運動有効性
有効性について比較的研究されていない側面は、非運動症状に対する補助剤であるオピカポンの影響である。BIPARK II試験において、非運動症状は、ベースライン、二重盲検相の終わり、および非盲検相の終わりを含む、異なるタイムポイントにおいて、非運動症状スケール(NMSS)によって評価した。二重盲検相の終わりにおいて、NMSSスコアは、オピカポン群とプラセボ群の両方でわずかに改善し、その間に有意差はなかった。1年の非盲検エンドポイントにおいて、NMSSトータルスコアにおける平均で-4.2の改善は、依然として維持されていた[71]。いかなる特定のドメインの悪化も観察されず、自律神経障害、幻覚または認知障害の悪化はなかったことを強調することが重要である。
【0054】
トータルNMSSスコアは、ドパミン作動薬によって同時に改善または悪化し得る非運動性項目の複合概念であるため、説明が困難である。しかしながら、より興味深いのは、睡眠/疲労ドメインについて見られる重要なシグナルであり、NMSS睡眠/疲労スコアは、プラセボによって-0.5ポイント低下したのに対して、50mgの用量によって-1.2ポイント低下した(p>0.05)。睡眠/疲労を含む非運動スコアにおけるこのような利益は、OPTIPARK試験においても見られ、NMSSトータルスコアについての平均±SDで-6.8±19.7ポイントの改善および睡眠/疲労スコアについての-1.3±6.3ポイントの改善は、ベースラインに対して統計的に有意であった(両方ともp<0.0001)[80]。先に進めて、オピカポンの就寝前投与および睡眠/疲労症状に対する推測される有効性によって、オピカポンによって睡眠のどの相が改善され得るかを理解するためのさらなる研究は注目に値することが示唆される。例えば、本発明者らは、オピカポンを併用するレボドパの薬物動態および薬力学プロファイルの最適化は、睡眠構築よりも、夜間の不眠を改善する見込みの方が高いと考えている。OpicApone Sleep dISorder(OASIS)試験(EudraCT number 2020-001176-15)は、非盲検、シングルアームのパイロット試験が、エンド・オブ・ドーズの運動症状の変動があり、かつパーキンソン病睡眠スケール(PDSS-2)が≧18であるPD患者に対するオピカポン50mgの効果を評価するためにデザインされた。主要エンドポイントは、PDSS-2トータルスコアにおけるベースラインから試験の終わりまでの変化であり、副次的基準には、パーキンソン病疲労スケール(PFS-16)におけるベースラインからの変化、および国際運動障害学会の支援による非運動症状評価スケール(MDS-NMS)のドメインK(睡眠と覚醒)におけるベースラインからの変化が含まれる[110]。
【0055】
最後に、PDの最も一般的かつ厄介な非運動症状である疼痛は、運動性のオフ状態に関連し、かつドパ反応性であることが知られていることが多い、別の非運動症状である[111~113]。特に、レボドパレジメンの最適化は、レボドパ(しかしアポモルヒネはそうではない)はPD患者における疼痛閾値を正常化することが知られているので、この症状の治療に有利である可能性がある。明らかに、特定の非運動症状に対する介入の効果を調べるあらゆる試験においては、患者の集団に、その症状を経験した患者が多く含まれることが確実でなければならない。したがって、エンド・オブ・ドーズの運動症状の変動および関連痛を有する患者におけるオピカポン50mgの効果を評価するために現在進行中である、別のランダム化、二重盲検、プラセボ対照臨床試験(OpiCapone Effect on motor fluctuations and pAiN[OCEAN]試験;EudraCT number 2020-001175-32)において、適格な患者は、PD(ONの間、Hoehn&YahrステージI~III)を有し、安定してレボドパジメンによる治療を受けており、最適な治療にもかかわらず1日のOFF時間として少なくとも1.5時間のOFFを経験しているだけではなく、スクリーニングの前に、少なくとも4週間にわたって、Kingのパーキンソン病疼痛スケール(King’s Parkinson’s Disease Pain Scale)(KPPS)によるスコアが≧12と定義されるPD関連痛も経験していなければならない。主要有効性基準は、KPPSのドメイン3(変動関連痛)におけるベースラインからの変化であり、副次的な有効性基準においては、不安および抑うつ、ならびに、基準の中でも睡眠と覚醒も評価されることになる[114]。
【0056】
7.結論
末梢COMT活性の阻害によるレボドパの有効性の改善は、後期PDにおけるウェアリング・オフの治療のための確立された選択肢である。これは、エンタカポン、トルカポン、および、より最近にはオピカポンの臨床評価において包括的に実証されてきた。レボドパの脳への危険な移動における制限因子としての、末梢におけるCOMTの重要性については争いがないが、本発明者らは、ここで、早期の効果的なCOMT阻害が、長期疾患の管理における臨床的利益をもたらすであろうと信じる説得力がある薬理学的な理論的根拠を提供する。
【0057】
PDアルゴリズムにおける現在のCOMT阻害剤の遅い位置付けの理由の一部は、DDCIが、使用することができる疾患のステージに対する制約が存在せず、さらに代わりになる選択肢は存在しないという、レボドパが最初に治療に導入されようとする時代に開発されたという点で歴史的なものである。他の理由は、医薬開発の過程およびPDのための対症療法の規制当局の承認に関係する。最初の治験薬に対する標準的なプラクティスは、ウェアリング・オフを有する後期患者の大規模な集団におけるものであり、そこで、オン時間の改善は、次に製品を市場に出し、利益を生む、規制当局によって認められた標準化されたエンドポイントになった。結果として、遅れて登場したCOMT阻害剤は、このより進行した治療群のために後回しにされることになった。
【0058】
別の理由は、レボドパの代謝、および脳に対する薬物の利用可能性における制限因子としてのCOMTの重要性の基本的理解が根本的に欠けていたことである。特に、DDCIと共に使用された場合の、レボドパ代謝のCOMT経路への短絡である。これは、おそらく、レボドパが60年超にわたって流通しており、その有効性が問題にされないため、レボドパがどのように働くか、およびこの薬物の末梢代謝が臨床結果にどのように影響するかについて医師が気にする理由が乏しかったからである。
【0059】
以前の世代のCOMT阻害剤による制約のため、現在まで、全てのステージのPDにおいてCOMT阻害剤を使用することが可能であるとは考えられていなかった。上記のFIRST-STEP試験およびSTRIDE-PD試験の説明によって、エンタカポンの効果の持続期間が短いことが、早期の使用において重要な制約であった理由が示されている。対照的に、本発明者らは、1日1回のオピカポン投与、長期間持続する効果、および伝統的な後期の適用によって証明された臨床的効果に基づいて、十分に探求すべき、COMT阻害剤の使用が拡大される可能性が今では存在すると考えている。本発明者らは、オピカポンの周辺の基礎科学、およびレボドパの代謝に対する関連性の分析に基づいて、早期使用を提案する。以下にさらに詳細に説明するように、この仮説は、運動機能の改善、運動合併症の遅延、およびPDの一部の非運動症状の治療についてのオピカポンの能力を包含するアウトカム基準を用いて、早期患者集団における適切な臨床的評価によって裏付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
以下、添付の図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【
図1】
図1は、タイムラインおよび適切な来院日を含む臨床試験のデザインを示す。EOS=試験終了来院;DDCI=DOPAデカルボキシラーゼ阻害剤;L-DOPA=レボドパ;PSV=後観察来院;QD=1日1回。
【発明の具体的説明】
【0061】
A.定義
以下の定義は、特定の例において別段の限定がないかぎり、本明細書の全体にわたって使用される用語にあてはまる。
【0062】
用語「特発性パーキンソン病」は、ほとんどの(80~85%)パーキンソン病(英国パーキンソン病協会ブレインバンクの臨床診断基準)または国際運動障害学会の基準のいずれかに従って診断される)を包含し、非定形型パーキンソニズム、二次性[後天性または症候性]パーキンソニズムおよびパーキンソンプラス症候群、例えば、薬物誘発性パーキンソニズム、血管性パーキンソニズム、正常圧水頭症、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺および多系統萎縮症は除外される。典型的には、顕著な運動緩慢および可変性の随伴錐体外路徴候および症状が含まれる。典型的には黒質線条体ドパミン性システムの変性を含み、剖検によって見出される黒質における神経細胞の欠損および反応性グリオーシスを有する。特発性パーキンソン病において、α-シヌクレインは、典型的には神経細胞の核周囲部(レビー小体)および神経細胞突起(レビー神経突起)に蓄積する。
【0063】
用語「早期特発性パーキンソン病」または「早期パーキンソン病」は、疾患の早期を指し、顕性症状によって(英国パーキンソン病協会ブレインバンクの臨床診断基準)または国際運動障害学会の基準のいずれかに従って)特発性パーキンソン病の診断が可能になるが、治療に対して、運動合併症、例えば運動症状の変動および/またはジスキネジアを発症することなく、完全奏功が可能である。特に、このグループのパーキンソン病は、レボドパとDDCIの製剤によって治療可能である(すなわち、それらの症状は管理可能である)。以下に説明するように、この患者集団が示すMDS-UPDRSパートIV A+B+Cのトータルスコアは低く(例えば、0)、および/または9項目ウェアリング・オフ質問票(WOQ-9)(例えば、2未満、好ましくは0)における陽性症状の数は少ない。
【0064】
用語「パーキンソン病の症状」は、運動症状(例えば、振戦、固縮、運動緩慢および姿勢の不安定性)と非運動症状(例えば、認知の変化、胃腸症状、視覚、および/または嗅覚の喪失、疼痛、疲労、めまい、性的な問題、睡眠障害および体重減少)の両方を含む。このような症状は、下記の症候的な読み出し情報の1つ以上を使用して評価することができる。
【0065】
用語「運動合併症」は、レボドパ療法に関連するパーキンソン病症状に関する。運動合併症は、レボドパ/DDCI療法単独ではもはや患者の症状を完全に制御することができなくなったときに起こる。運動合併症には、運動症状の変動および/またはジスキネジアが含まれる。運動合併症は、患者のクオリティ・オブ・ライフ(QoL)に定量的かつ悪い影響を与えるように、持続性であるが、必ずしも定型的または予測可能ではない。「臨床的に診断される運動合併症」は、一般に、MDS-UPDRSパートIV A+B+Cのトータルスコアが6超、好ましくは3超、より好ましくは0超、および/または9項目ウェアリング・オフ質問票(WOQ-9)において陽性症状が1つ以上という結果をもたらす。MDS-UPDRSパートIV A+B+Cのトータルスコアが0(ゼロ)超というのは、臨床的に診断される運動合併症の最も好ましい定義である。運動合併症は、パーキンソン病の運動症状と同じであってもよいことに留意すべきである。しかしながら、最初はレボドパ/DDCI療法によって治療が可能であるが、レボドパ/DDCI療法が継続されているにもかかわらず疾患の後期に再発現する運動症状は、その時点で運動合併症とみなされる。
【0066】
用語「運動症状の変動」には、 エンド・オブ・ドーズの変動(end-of-dose fluctuation)(ウェアリング・オフ現象としても知られている)、奇異性変動および予測不能なオン/オフ期間が含まれる。
【0067】
用語「オフ期間」または「オフエピソード」は、その期間の間にレボドパによる治療を受けている患者が、もはや症候的利益を得ることができない時間として定義され、「オフ」状態にあると言われる。対照的に、レボドパによる治療を受けている患者が症候的利益を受けている場合、その患者は「オン」状態にあると言われる。
【0068】
用語「エンド・オブ・ドーズの運動症状の変動」(「ウェアリング・オフ(wearing off)」現象としても知られている)は、次の用量のレボドパ/DDCI療法を施す前の、予測可能な症状の再発現または悪化に関する。典型的には、このような症状の再発現または悪化は、薬剤が消耗するにつれて、レボドパ投与の3~4時間後に始まり、症状が再発現または悪化する。次いで、症状は、典型的には、次のレボドパ投与が行われてから15~45分後に改善する。
【0069】
用語「ジスキネジア」または「レボドパ誘発性ジスキネジア」には、ピーク・ドーズジスキネジア、二相性ジスキネジアおよびオフジスキネジアが含まれる。一般的な症状には、コレアおよびジストニアが含まれる。あまり一般的ではない症状としては、アカシジア(akathasia)(過剰な運動不穏状態)、足の運びが高く大げさな歩行、足の小刻みな動き(RAM)、眼瞼けいれん、および異常な動きが混合したパターンがあげられる(Fahn S., Ann. Neurol., 2000, 47, S2-S9)。
【0070】
「補助的療法」(「補助治療」、「アドオン療法」、または「アジュバントケア」としても知られている)は、有効性を最大化するために、一次または初期療法に追加して施される療法である。本出願において、レボドパは一次療法であり、DCCIおよびCOMT阻害剤(すなわち、オピカポン)は補助的療法である。
【0071】
用語「治療によって発現する有害事象」は、治験薬に曝露する前には存在しなかったあらゆる事象、または治験薬の最初の投与後から治験薬の最後の投与後2週間までに強度または頻度のいずれかが悪化した、すでに存在したあらゆる事象と定義される。
【0072】
開示されている実施形態に対する他の変形は、本開示および添付の特許請求の範囲を検討することによって、特許請求された発明の実施において、当業者が理解および実行することができる。特許請求の範囲において、用語「含む(comprising)」は、他の要素またはステップを除外するものではなく、不定冠詞「a]または「an」は、複数形を除外するものではない。ある特定の基準が相互に異なる従属項に記載されているからといって、それらの基準の組合せが、利益をもたらすために使用できないことを示すわけではない。
【0073】
B.L-DOPA/DDCIおよびオピカポンによる早期パーキンソン病の治療
本発明は、早期パーキンソン病の患者が、レボドパおよびDOPAデカルボキシラーゼ阻害剤(DDCI)の製剤によって治療可能であり、臨床的に診断される運動合併症(あらゆる種類の運動症状の変動および/またはジスキネジアのいずれか)を起こしていないことを特徴とする、早期パーキンソン病の治療におけるレボドパとDDCIの製剤に対する補助的療法として使用するためのオピカポンを提供する。
【0074】
本発明は、また、早期パーキンソン病の患者が、レボドパとDDCIの製剤によって治療可能であり、臨床的に診断される運動合併症(あらゆる種類の運動症状の変動および/またはジスキネジアのいずれか)を起こしていないことを特徴とする、早期パーキンソン病の治療におけるレボドパとDDCIの製剤に対する補助的療法として使用するための医薬の製造におけるオピカポンの使用も提供する。
【0075】
本発明は、また、早期パーキンソン病の患者が、レボドパとDDCIの製剤によって治療可能であり、臨床的に診断される運動合併症(あらゆる種類の運動症状の変動および/またはジスキネジアのいずれか)を起こしていないことを特徴とする、レボドパとDDCIの製剤に対する補助的療法として、それを必要とする患者に対してオピカポンを投与することを含む、早期パーキンソン病の治療方法も提供する。
【0076】
症状とその治療
本発明の重要な側面は、運動合併症を起こしていない患者における、早期パーキンソン病に特有の症状の治療を改善することであり、ここで、前記症状は、レボドパとDDCIの製剤によって治療することができる。しかしながら、特定の問題は、早期パーキンソン病の症状と、後期における運動合併症の両方として現れ得ることに留意することが重要である。例えば、おそらくパーキンソン病において最も典型的な問題は振戦である。
【0077】
振戦は、早期パーキンソン病の一般的な症状であり、最初に、レボドパ/DDCI治療によって完全に治療可能である可能性がある。このケースでは、振戦は、(レボドパ/DDCI治療によって既に完全に治療されているので)本発明の補助的オピカポン療法によって治療が改善できる症状ではない。あるいは、振戦は、最初は、レボドパ/DDCI治療によって部分的にのみ治療可能である可能性がある。このケースでは、振戦は、本発明の補助的オピカポン療法によって治療が改善できる症状である。重要なことには、このタイプの振戦が存在することは、患者が(本明細書で定義されている)運動合併症に罹患していることを意味するものではないことである。まとめると、本発明の補助的オピカポン療法によって治療可能な症状は、早期パーキンソン病の間に存在するが、レボドパ/DDCI治療が完全には有効ではない症状である。
【0078】
振戦は、また、運動合併症であってもよく、疾患の後期に、例えば、エンド・オブ・ドーズの運動症状の変動として出現または発症する可能性がある。このケースでは、振戦が存在することによって、(本明細書で定義されている)運動合併症という臨床診断が下される可能性がある。
【0079】
早期パーキンソン病の症状(これは、レボドパ/DDCI治療が有効である期間全体にわたってある程度存在する)と運動合併症(これは、長期にわたるレボドパ/DDCI治療の後に出現または発症する)を区別するための方法は、当業者に知られており、また、以下にさらに詳細に説明する。
【0080】
早期パーキンソン病の治療においてレボドパとDDCIの製剤に対する補助的療法としてのオピカポンの使用は、患者の1つ以上の症状における改善をもたらす。好ましい実施形態において、オピカポン治療は、オピカポンなしでレボドパとDDCIの製剤によって同じ期間治療した患者が示す症状と比較して、患者の1つ以上の症状における改善をもたらす。これは、患者が衰える速度が減少すること、停止すること、または逆転することを意味する。より好ましい実施形態において、オピカポンの使用は、オピカポン治療を開始する前の同じ患者と比較して、患者の1つ以上の症状における改善をもたらす。これは、患者が衰える速度が逆転することを意味する。さらにより好ましい実施形態において、オピカポンは、オピカポン治療を開始する前の同じ患者と比較して、患者の1つ以上の症状における急速な(例えば、治療が開始されてから24週間後、好ましくは12週間後、より好ましくは4週間後および最も好ましくは2週間後)改善をもたらす。
【0081】
下記の例示的な試験においては、二重盲検相の終わりにおける主要エンドポイントとして、プラセボと比較して、国際運動障害学会のパーキンソン病の統一評価スケール(MDS-UPDRS)パートIIIトータルスコアにおける、二重盲検ベースラインから二重盲検期間の終わりまでの変化を評価する。したがって、好ましい実施形態において、本発明によるオピカポンの使用は、オピカポンなしで同じ期間治療した患者が獲得するスコアと比較して、またはオピカポン治療を開始する前の同じ患者のスコアと比較して、MDS-UPDRSパートIII(運動症状の調査)からの1つ以上の基準についての患者のスコアにおける改善をもたらす。さらに、非常に好ましい実施形態において、本発明によるオピカポンの使用は、本発明に従って治療した患者のMDS-UPDRSパートIII(運動症状の調査)トータルスコアにおける改善をもたらす。特に非常に好ましい実施形態において、本発明によるオピカポンの使用は、オピカポン治療を開始する前の同じ患者のスコアと比較して、本発明に従って治療した患者のMDS-UPDRSパートIII(運動症状の調査)トータルスコアにおける改善をもたらす。この改善は、オピカポン治療を開始する前の患者のスコア(ベースライン)と、オピカポンの効果が安定した際(例えば、治療が開始されてから24週間後、好ましくは12週間後、より好ましくは4週間後および最も好ましくは2週間後)の患者のスコアとを比較することによって評価される。
【0082】
MDS-UPDRSパートIII(運動症状の調査)トータルスコアは、症状の数を評価し、そのため、先行する段落の好ましい実施形態の範囲内で、本発明によるオピカポンの使用は、プラセボの投与を受けた患者が獲得するスコアと比較して、および好ましくはオピカポン治療を開始する前の同じ患者のスコアと比較して、本発明に従って治療した患者において、発話;顔の表情;固縮;指のタッピング;手の運動;手の回内・回外運動;つま先のタッピング;下肢の敏捷性;椅子からの立ち上がり;歩行;すくみ足;姿勢の安定性;姿勢;運動緩慢;手の姿勢時振戦;手の運動時振戦;安静時振戦の振幅;および安静時振戦の持続性からなる群から選択される1つ以上の基準についてのスコアにおける改善をもたらす。
【0083】
早期パーキンソン病の対症療法における改善を評価する他の方法は、当業者に知られており、また、以下のセクションDにおいて説明する。
【0084】
下記の例示的な試験においては、二重盲検相と非盲検相の両方の全期間における副次的エンドポイントとして、(i)MDS-UPDRSスコア:パートII、II、IIIおよびIV、ならびにパートII+IIIのトータル;(ii)最大「オン」反応の間の修正Hoehn&Yahr重症度トータルスコア;(iii)Schwab&Englandスケールスコア;(iv)パーキンソン病睡眠スケール2(PDSS-2)トータルスコア;(v)国際運動障害学会の非運動症状スケール(MDS-NMSS)トータルスコアおよびサブドメインスコア;(vi)パーキンソン病質問票(PDQ-39)トータルスコアおよびサブドメインスコア;および(vii)ウェアリング・オフ質問票(WOQ-9)トータルおよびサブセクション(運動性および非運動性)スコアにおける変化を評価する。この試験においては、改善についての医師による全般的印象(CGI-I)および/または改善についての患者による全般的印象(PGI-I)も評価する。
【0085】
したがって、本発明のオピカポン治療は、オピカポン治療を開始する前の同じ患者のスコアと比較して、患者において、
(i)MDS-UPDRSパートIトータルスコア、特に、
認知障害;幻覚および精神病;抑うつ気分;不安気分;アパシー;ドパミン調節異常症候群の特徴;睡眠の問題;日中の眠気;疼痛および他の感覚;泌尿の問題;便秘の問題;起立時のめまい;または疲労
から選択される1つ以上のグループ;
(ii)MDS-UPDRSパートIIトータルスコア、特に、
発話;唾液および流涎;咀嚼および嚥下;摂食課題;着衣;衛生;手で書くこと;趣味を行うことおよび他の活動;寝返り;振戦;ベッド、自動車、またはベッドから降りること;歩行およびバランス;またはすくみ
から選択される1つ以上のグループ;
(iii)MDS-UPDRSパートII+IIIトータルスコア;
(iv)大「オン」反応の間の修正Hoehn&Yahr重症度トータルスコア;
(v)Schwab&Englandスケールスコア;
(vi)PDSS-2トータルスコア;
(vii)MDS-NMSSトータルスコアおよびサブドメインスコア;
(viii)PDQ-39トータルスコアおよびサブドメインスコア;
(ix)CGI-Iスコア;および
(x)PGI-Iスコア
の1つ以上における改善をもたらす。
【0086】
1つの代替的な実施形態において、本発明によるオピカポンの使用は、オピカポンなしで同じ期間治療した患者が獲得するスコアと比較して、またはオピカポン治療を開始する前の同じ患者のスコアと比較して、MDS-UPDRSパートI(日常生活で経験する非運動性の側面)からの1つ以上の基準についての患者のスコアにおける改善をもたらす。より好ましくは、本発明によるオピカポンの使用は、プラセボの投与を受けた患者が獲得するスコアと比較して、および好ましくはオピカポン治療を開始する前の同じ患者のスコアと比較して、患者のMDS-UPDRSパートIトータルスコアにおける改善をもたらす。これらの実施形態の好ましい例において、オピカポンの使用は、プラセボの投与を受けた患者が獲得するスコアと比較して、および好ましくはオピカポン治療を開始する前の同じ患者のスコアと比較して、本発明に従って治療した患者において、認知障害;幻覚;精神病;抑うつ気分;不安気分;アパシー;ドパミン調節異常症候群の特徴;睡眠の問題;日中の眠気;疼痛;泌尿の問題;便秘の問題;起立時のめまい;および疲労からなる群から選択される1つ以上の基準における改善をもたらす。
【0087】
第2の代替的な実施形態において、本発明によるオピカポンの使用は、オピカポンなしで同じ期間治療した患者が獲得するスコアと比較して、またはオピカポン治療を開始する前の同じ患者のスコアと比較して、MDS-UPDRSパートII(日常生活で経験する運動症状の側面)からの1つ以上の基準についての患者のスコアにおける改善をもたらす。より好ましくは、本発明によるオピカポンの使用は、プラセボの投与を受けた患者が獲得するスコアと比較して、および好ましくはオピカポン治療を開始する前の同じ患者のスコアと比較して、患者のMDS-UPDRSパートIIトータルスコアにおける改善をもたらす。これらの実施形態の好ましい例において、オピカポンは、プラセボの投与を受けた患者が獲得するスコアと比較して、および好ましくはオピカポン治療を開始する前の同じ患者のスコアと比較して、本発明に従って治療した患者において、発話;唾液;流涎;咀嚼;嚥下;摂食課題;着衣;衛生;手で書くこと;趣味を行う;寝返り;振戦;ベッド、自動車、またはベッドから降りること;歩行;バランス;およびすくみからなる群から選択される1つ以上の基準における改善をもたらす。
【0088】
第3の好ましい実施形態において、本発明によるオピカポンの使用は、プラセボの投与を受けた患者が獲得するスコアと比較して、および好ましくはオピカポン治療を開始する前の同じ患者のスコアと比較して、本発明に従って治療した患者において、修正Hoehn&Yahr重症度トータルスコアにおける改善をもたらす。
【0089】
第4の好ましい実施形態において、本発明によるオピカポンの使用は、プラセボの投与を受けた患者が獲得するスコアと比較して、および好ましくはオピカポン治療を開始する前の同じ患者のスコアと比較して、本発明に従って治療した患者において、Schwab&Englandスケールスコアにおける改善をもたらす。
【0090】
第5の好ましい実施形態において、本発明によるオピカポンの使用は、プラセボの投与を受けた患者が獲得するスコアと比較して、および好ましくはオピカポン治療を開始する前の同じ患者のスコアと比較して、本発明に従って治療した患者において、PDSS-2トータルスコアにおける改善をもたらす。
【0091】
第6の好ましい実施形態において、本発明によるオピカポンの使用は、プラセボの投与を受けた患者が獲得するスコアと比較して、および好ましくはオピカポン治療を開始する前の同じ患者のスコアと比較して、本発明に従って治療した患者において、MDS-NMSSトータルスコアおよびサブドメインスコアにおける改善をもたらす。この実施形態の好ましい例において、オピカポンは、プラセボの投与を受けた患者が獲得するスコアと比較して、および好ましくはオピカポン治療を開始する前の同じ患者のスコアと比較して、本発明に従って治療した患者において、心血管系;睡眠系;疲労;気分;認知;知覚障害;注意;記憶;消化器系;尿路系;および性機能からなる群から選択される1つ以上のサブドメインにおける改善をもたらす。
【0092】
第7の好ましい実施形態において、本発明によるオピカポンの使用は、プラセボの投与を受けた患者が獲得するスコアと比較して、および好ましくはオピカポン治療を開始する前の同じ患者のスコアと比較して、本発明に従って治療した患者において、PDQ-39トータルスコアおよびサブドメインスコアにおける改善をもたらす。この実施形態の好ましい例において、オピカポンは、プラセボの投与を受けた患者が獲得するスコアと比較して、および好ましくはオピカポン治療を開始する前の同じ患者のスコアと比較して、本発明に従って治療した患者において、可動性;日常生活動作(ADL);感情;スティグマ;社会的支援;認知;コミュニケーション;および身体的不快感からなる群から選択される1つ以上のサブドメインにおける改善をもたらす。
【0093】
第8の好ましい実施形態において、本発明によるオピカポンの使用は、プラセボの投与を受けた患者が獲得するスコアと比較して、および好ましくはオピカポン治療を開始する前の同じ患者のスコアと比較して、本発明に従って治療した患者において、CGI-Iスコアにおける改善をもたらす。
【0094】
第9の好ましい実施形態において、本発明によるオピカポンの使用は、プラセボの投与を受けた患者が獲得するスコアと比較して、および好ましくはオピカポン治療を開始する前の同じ患者のスコアと比較して、本発明に従って治療した患者において、PGI-Iスコアにおける改善をもたらす。
【0095】
改善は、一般に、オピカポン治療を開始する前の患者のスコア(ベースライン)と、二重盲検期間および/または非盲検期間の終わりのスコアを比較することによって評価されるが、試験においては、試験期間を通じて、多数のポイント(来院)で症状を評価するので、改善は、オピカポンの効果が安定した際に、随時評価される。例えば、改善は、治療が開始されてから、24週間後、好ましくは12週間後、より好ましくは4週間後および最も好ましくは2週間後に評価され得る。
【0096】
最初と最後の評価の間の期間が短いので、対症療法と、観察される、起こり得るあらゆる疾患修飾性効果が区別される。
【0097】
運動合併症、およびその出現の抑制
本発明による治療のために選択される患者集団は運動合併症が起こっていないにもかかわらず、例示的な試験においては、二重盲検期間と非盲検期間の全体を通じて、運動合併症の出現を評価する。したがって、非常に好ましい実施形態において、本発明による治療は、オピカポンによる治療の間、レボドパ/DDCI療法を継続しているにもかかわらず、1つ以上の運動合併症の出現を抑制(supresses)する。
【0098】
本発明による治療の間の1つ以上の運動合併症の出現は、以下のセクションDにおいて説明する運動合併症を評価するための方法を使用して評価される。
【0099】
特に、この非常に好ましい実施形態において、本発明による治療の間の運動合併症の出現の抑制によって、次のレボドパの投与後に改善するWOQ-9における陽性症状が2以下、好ましくは1または0、より好ましくは0に維持される;および/または一日の平均オフ時間が1.5時間未満、好ましくは1.0時間未満、より好ましくは0.5時間未満、最も好ましくは0時間に維持される、のうちの1つ以上がもたらされる。
【0100】
下記の試験においては、非盲検相の終わりにおける主要エンドポイントとして、MDS-UPDRSパートIV(運動合併症)トータルスコアにおける、非盲検ベースラインから非盲検期間の終わりまでの変化を評価する。したがって、非常に好ましい実施形態において、本発明のオピカポン治療は、同じ期間にわたってオピカポン治療を行わない場合に観察される増加と比較して、患者のMDS-UPDRSパートIVトータルスコアにおける増加における減少をもたらす。この非常に好ましい実施形態において、オピカポン治療は、同じ期間にわたってオピカポン治療を行わない場合に観察されるトータルスコアに対して、患者のMDS-UPDRSパートIVトータルスコアを80%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは40%以下、さらにより好ましくは20%以下、最も好ましくは10%以下に減少させる。
【0101】
レボドパ/DDCI療法の安定性
持続的なレボドパ/DDCI療法の間、患者は、レボドパ用量の増量、例えば、1日3回の100mgレボドパの投与(1日用量300mg)から1日4回の100mgレボドパの投与(1日用量400mg)を必要とする可能性がある。したがって、非常に好ましい実施形態において、本発明による治療によって、患者は、レボドパ/DDCI療法の安定的な1日用量を、少なくとも3か月、好ましくは少なくとも24週間、より好ましくは少なくとも1年の期間にわたって維持することが可能になる。より好ましくは、本発明による治療によって、患者は、レボドパ/DDCI療法の安定的な投与頻度(例えば、1日を通じて、より頻回のより少ない用量のレボドパ/DDCI療法)を、少なくとも3か月、好ましくは少なくとも24週間、より好ましくは少なくとも1年の期間にわたって維持することが可能になる。
【0102】
より好ましい実施形態において、本発明による治療によって、患者は、投与間隔を広げることによって、および/または投与あたりのL-DOPA/DDCIの量を減らすことによって、L-DOPA/DDCIの一日用量を減らすことが可能になる。例えば、患者は、レボドパ/DDCIの1日の投与回数を、1日あたり1回、好ましくは1日あたり2回、またはより好ましくは1日あたり3回減らすことが可能である。例えば、投与は、1日4回の100mgレボドパの投与(1日用量400mg)から1日3回の100mgレボドパの投与(1日用量300mg)に、好ましくは1日5回の100mgレボドパの投与(1日用量500mg)から1日3回の100mgレボドパの投与(1日用量300mg)に減らすことができる。
【0103】
患者集団
早期パーキンソン病のレボドパ/DDCIおよびオピカポンによる治療は、好ましくはヒト、より好ましくは成年のヒト、さらにより好ましくは、年齢が少なくとも30歳、好ましくは少なくとも50歳、より好ましくは少なくとも65歳の成年のヒトを対象とする。
【0104】
パーキンソン病の患者は、好ましくは特発性パーキンソン病に罹患している。
【0105】
レボドパ/DDCIに加えてオピカポンを使用することによって、患者においてレボドパ/DDCI療法が開始された時にすでに部分的に治療されている、上記の特発性パーキンソン病の1つ以上の症状の治療がさらに改善される。
【0106】
早期特発性パーキンソン病に罹患している患者は、そうであるから、運動合併症に罹患していない。運動合併症の存否を評価する方法は、当業者に知られている。以下のセクションDにおいて、運動合併症を評価することができる方法を含む、パーキンソン病における症状を評価するための方法を説明する。
【0107】
パーキンソン病の患者の臨床状態を評価するための最も幅広く使用されている臨床スケールは、パーキンソン病の統一評価スケール(UPDRS)(Fahn S, Elton RL, UPDRS Program Members. Unified Parkinson’s disease rating scale. In Recent Developments in Parkinson’s Disease, Vol. 2, eds Fahn S, Marsden CD, Goldstein M. Florham Park, NJ, USA: Macmillan Healthcare Information, 1987:153-63, 293-304)である。患者が早期特発性パーキンソン病に罹患しているか否かを規定するための主要基準は、MDS-UPDRSパートIV A+B+Cのトータルスコアが、6未満、好ましくは3未満、特に0(ゼロ)であることに基づく。MDS-UPDRSパートIVは、特に、治療の運動合併症を評価する。
【0108】
したがって、本発明の最も好ましい実施形態において、レボドパとDDCIの製剤によって治療可能であり、臨床的に診断される運動合併症を起こしていないパーキンソン病の患者が示す、レボドパとDDCIの製剤によって治療されている時のMDS-UPDRSパートIV A+B+Cのトータルスコアは、0である。
【0109】
代替的な好ましい実施形態において、レボドパとDDCIの製剤によって治療可能であり、臨床的に診断される運動合併症を起こしていない患者が示す、次のレボドパの投与後に改善するWOQ-9における陽性症状は、2以下、好ましくは1以下、より好ましくは0である。
【0110】
上記の実施形態のより好ましい形態において、レボドパとDDCIの製剤によって治療可能であり、臨床的に診断される運動合併症を起こしていないパーキンソン病の患者に存在しない運動合併症は、振戦、気分の変動、動作の遅さ、器用さの低下、硬直、不安/パニック発作、ぼんやりした思考/思考の遅さ、筋けいれん、および疼痛/うずきからなる群から選択される。これらは、WOQ-9に列挙されている運動合併症である。より好ましくは、レボドパとDDCIの製剤によって治療可能であり、臨床的に診断される運動合併症を起こしていないパーキンソン病の患者に存在しない運動合併症は、振戦、不安/パニック発作および動作の遅さからなる群から選択される。これらの特定の症状は、運動合併症、例えばエンド・オブ・ドーズの運動症状の変動などを有する患者を補足するために最も適している(Stacy M. and Hauser R., J. Neural. Transm. 2007, 114, 211-217)。
【0111】
別の代替的な好ましい実施形態において、運動合併症は、熟練した臨床家によって診察される、運動症状の変動および/またはジスキネジアからなる群から選択される。
【0112】
一般に、早期特発性パーキンソン病に罹患している患者は、パーキンソン病の早期を過ぎた患者よりも、より短い期間にわたってパーキンソン病の治療を受けているであろう。好ましい実施形態において、患者は、過去5年以内、好ましくは過去1~3年以内、より好ましくは過去1年以内、さらにより好ましくは過去6か月以内にレボドパによる治療を開始しており、最も好ましくは、患者は、以前にレボドパによる治療を受けていない。
【0113】
一般に、早期特発性パーキンソン病に罹患している患者は、パーキンソン病の早期を過ぎた患者と比較して、修正Hoehn&Yahrステージがより低いであろう。好ましい実施形態において、オピカポンによる治療の前、オン状態において、患者の修正Hoehn&Yahrステージは、1~3、好ましくは1.0~2.5、より好ましくは1.0~2.0である。
【0114】
一般に、早期特発性パーキンソン病に罹患している患者は、パーキンソン病の早期を過ぎた患者よりも、1日あたりより少ない量のレボドパの投与を受けることになる。好ましい実施形態において、患者は、1日あたり600mg以下、好ましくは1日あたり500mg以下、より好ましくは1日あたり400mg以下、さらにより好ましくは1日あたり300mg以下、および最も好ましくは1日あたり300mg未満のレボドパの投与を受ける。
【0115】
一般に、早期特発性パーキンソン病に罹患している患者は、パーキンソン病の早期を過ぎた患者よりも、1日あたりより少ない回数のレボドパの投与を受けることになる。好ましい実施形態において、患者は、1日あたり6回以下、好ましくは5回以下、より好ましくは4回以下、さらにより好ましくは3回以下のレボドパの投与を受ける。
【0116】
特に好ましい実施形態において、早期特発性パーキンソン病に罹患している患者は、少なくとも1年間にわたって、レボドパ/DDCI(例えば、制御放出、即時放出または制御即時放出複合型)による治療を受けており、かつ、オピカポンを開始する前に、少なくとも4週間にわたって、1日用量が300~500mgの範囲、1日3~4回の安定レジメンで治療を受けている。
【0117】
一般に、早期特発性パーキンソン病に罹患している患者は、以前に、COMT阻害剤による治療を受けたことがないであろう。好ましい実施形態において、患者は、現在、COMT阻害剤による治療を受けておらず、好ましくは、患者は、COMT阻害剤による治療を受けたことが全くない。
【0118】
一般に、早期特発性パーキンソン病に罹患しており、レボドパによる治療を受けている患者は、制御放出レボドパは即時放出レボドパに対して追加の利益をもたらさないので、即時放出レボドパの投与を受けるであろう。好ましい実施形態において、患者は、現在、制御放出レボドパによる治療を受けておらず、より好ましくは、患者は、制御放出レボドパによる治療を受けたことが全くない。
【0119】
超早期特発性パーキンソン病に罹患している患者は、薬学的介入を用いたパーキンソン病の治療を受けたことが全くない可能性がある。好ましい実施形態において、患者は、パーキンソン病の治療を全く受けたことがない。
【0120】
オピカポンの投与量およびレジメン
オピカポンは、他の既知のCOMT阻害剤と比較して、長時間作用型のCOMT阻害剤である。好ましい実施形態において、オピカポンは、1日1回または1週間に1回、好ましくは1日1回投与される。
【0121】
オピカポンは、低毒性で有効であり、また、比較的低用量で良好な薬力学的特性を示す。好ましい実施形態において、オピカポンの単位用量は、5~100mg、好ましくは25~75mg、より好ましくは25または50mg、最も好ましくは50mgである。
【0122】
オピカポンは、食物と相互作用し得る。好ましい実施形態において、オピカポンは、食事の前後1時間以上あけて投与される。
【0123】
オピカポンは、レボドパと相互作用し得る。好ましい実施形態において、オピカポンは、レボドパの投与の前後1時間以上あけて投与される。
【0124】
より好ましい実施形態において、オピカポンは、就寝前に、または就寝前の近く、例えば、就寝前1時間未満、さらには就寝前30分未満に投与される。
【0125】
オピカポンは、良好な忍容性を示し、また、治療によって発現する有害事象を含む有害事象(AE)の発生率が低い。好ましい実施形態において、治療は、少なくとも24週間、好ましくは少なくとも1年間続く。
【0126】
上述の実施形態に関連する好ましい実施形態において、オピカポンの投与は、上記の1つ以上の運動合併症を誘発することなく、上記の症候的な読み出し情報の1つ以上における改善をもたらす。
【0127】
上述の実施形態に関連する別の好ましい実施形態において、オピカポンの投与は、上記の治療によって発現する有害事象の1つ以上を誘発することなく、上記の症候的な読み出し情報の1つ以上における改善をもたらす。
【0128】
上記の実施形態および好ましい実施形態は、セクションBの最初に記載されている医薬の製造におけるオピカポンの使用、およびパーキンソン病の症状を治療する方法にも等しくあてはまる。
【0129】
C.臨床プロトコル
臨床試験デザイン
レボドパ/DDCIによる治療を受けており、かつ、いかなる運動合併症(例えば、運動反応における変動および/または不随意運動および/またはジスキネジア)の徴候を有していない早期特発性パーキンソン病の患者における、オピカポン(50mg)の有効性および安全性を評価するフェーズIII試験。
【0130】
対象は、年齢が30~80歳(30歳と80歳を含む)であり、英国パーキンソン病協会ブレインバンクの臨床診断基準)に従って、過去5年以内に早期特発性パーキンソン病と診断されており、疾患重症度がステージ1~2.5(修正Hoehn&Yahrによる)であり、かつMDS-UPDRSパートIIIスコア≧20であらねばならない。あるいは、対象は、MDSの非運動症状スケール(MDS-NMSS)の基準に従って、過去5年以内に早期特発性パーキンソン病と診断されており、疾患重症度がステージ1~2.5(修正Hoehn&Yahrによる)であり、MDS-UPDRSパートIIIスコア≧20である。対象は、ランダム化の前に、少なくとも4週間にわたって、安定レジメンによるレボドパ/DDCIによる治療を受けており、運動合併症(運動反応における変動および/または不随意運動またはジスキネジアからなる)の徴候を有しておらず、COMT阻害剤に対してナイーブである。
【0131】
選択基準
対象は、以下の全ての基準に該当する場合にのみ、試験に組み入れる適格性を有する。
1.署名したインフォームドコンセントを提出することができる。
2.対象は、二重盲検試験のためのインフォームドコンセントに署名する時点で、年齢が30~80歳(30歳と80歳を含む)でなければならない。
3.過去5年以内に英国パーキンソン病協会ブレインバンクの臨床診断基準)に従って、および/または過去5年以内にMDSの非運動症状スケール(MDS-NMSS)に従って、特発性パーキンソン病と診断されている。
4.疾患重症度がステージ1~2.5(修正Hoehn&Yahrによる)
5.安定抗パーキンソン病療法を受けているにもかかわらず、スクリーニングと来院2の両方において、MDS-UPDRSパートIIIスコアで≧20を最低閾値として、スクリーニング前に、少なくとも4週間にわたって、治療可能な運動障害の徴候がある。
6.少なくとも1年にわたって、L-DOPA/DDCI(制御放出、即時放出または制御即時放出複合型のいずれか)による治療を受けており、かつ、来院2の前に、少なくとも4週間にわたって、1日用量が300~500mgの範囲、1日3~4回の安定レジメンで治療を受けている。
7.COMT阻害剤(オピカポンを含む)に対してナイーブである。
8.男性または女性
男性対象は、治療期間の間、およびPSVまで避妊法を用いることに同意し、かつこの期間の間、精子提供を差し控えることに同意しなければならない。
女性対象は、妊娠しておらず、授乳しておらず、かつ以下の条件の少なくとも1つに該当していれば、参加に適格である:
(i)妊娠する可能性のある女性(WOCBP)ではない。
(ii)治療期間の間、およびPSVまで避妊ガイドラインに従うことに同意しているWOCBP。
9.治験担当医師によって、スクリーニング臨床検査の結果が、臨床的に許容されるとみなされること(すなわち、対象の福祉または試験の目的に臨床的に関連がないこと)。
【0132】
除外基準
対象は、以下の基準のいずれかに該当する場合、試験から除外される。
1.非特発性PD(例えば、非定形型パーキンソニズム、二次性[後天性または症候性]パーキンソニズム、パーキンソンプラス症候群)。
2.MDS-UPDRSパートIV A+B+Cのトータルスコアが0(ゼロ)超である運動合併症の徴候。
3.禁止されている薬物、すなわちCOMT阻害剤(例えば、エンタカポン、トルカポン)、抗ドパミン作用がある制吐剤(ドンペリドンを除く)またはDuopa(商標)(カルビドパ/レボドパ経腸用液)による、スクリーニング前4週間前以内の治療。
4.PD治療用のものではないモノアミンオキシダーゼ(MAO-AおよびMAO-B)阻害剤(例えば、フェネルジン、トラニルシプロミンおよびモクロベミド)の併用。
5.過去の、または(全試験継続期間の間に)計画されている深部脳刺激。
6.過去のパーキンソン病のための定位脳手術(例えば、淡蒼球破壊術、視床破壊術)、または試験期間の間に計画されている定位脳手術。
7.スクリーニング前3か月(または半減期の5倍以内のいずれか長い方)の何らかの治験薬。
8.患者のリスクを増大させるか、または試験の評価を妨げる可能性がある何らかの医学的状態。
9.コロンビア自殺評価スケール(C-SSRS)の希死念慮部分の質問4または質問5(スクリーニング質問)に対する肯定的な回答(「はい」)によって判定される、希死念慮または自殺企図の過去(この1年以内)または現在の履歴。
10.治験担当医師の判断に基づいて、患者のリスクを増大させるか、または評価を妨げる可能性がある、現在または過去(この1年以内)の精神病、重篤な大うつ病、または他の精神疾患の診断。
11.臨床的に関連がある心電図(ECG)の異常(関連性は、必要に応じて、心臓病専門医によって評価されるべきである)。
12.それらに限定されないが、管理不良高血圧、重大な収縮期または拡張期障害を有する心筋梗塞、不安定狭心症、うっ血性心不全(ニューヨーク心臓協会の心機能分類のクラス≧III)、および重大な心不整脈(Mobitz IIの2度または3度の房室ブロック、または症候性の徐脈または失神としての血行力学的影響を引き起こすあらゆる他の不整脈)を含む、不安定心血管疾患の現在のエビデンス。
13.過去の腎臓移植または現在の腎透析。
14.クロム親和性細胞腫、パラガングリオーマまたは他のカテコールアミン分泌性腫瘍。
15.治験薬のいずれかの成分に対する既知の過敏症。
16.神経遮断薬悪性症候群(NMS)もしくはNMS様症候群、または非外傷性横紋筋融解症の病歴。
17.切除によって消散した皮膚の基底細胞癌または扁平上皮癌を除く、過去5年以内の悪性腫瘍(例えば、メラノーマ、前立腺癌)。
18.不安定な進行性狭隅角緑内障または不安定な広隅角緑内障
19.この試験の状況における、すなわち対象の安全性に関するか、または試験条件に関連する、例えば治験薬の吸収または代謝に影響を及ぼし得る、何らかの関連性のある疾患(例えば関連性のある肝臓疾患など)の履歴または現在のエビデンス。
20.肝臓の酵素(アラニンアミノ基転移酵素[ALT]および/またはアスパラギン酸アミノ基転移酵素[AST])における、スクリーニング臨床検査の結果が、正常範囲の上限の2倍超である何らかの異常。
21.血漿ナトリウムが130mmol/L未満、白血球数が3000細胞/mm3未満、または、治験担当医師の意見として、対象の安全性を損ない得る、何らかの他の関連性がある臨床検査の異常。
22.衝動制御障害(ICD)のエビデンス(改定ミネソタ衝動障害インタビュー(mMIDI)において1つ以上の肯定的モジュール)。患者が、ゲートウェイ(最初の)質問に対して肯定的な回答をした後、いずれかの質問に対して肯定的な回答(まれ=1、時々=2、頻繁=3)をした場合に、モジュールを肯定的とみなす。
【0133】
ランダム化
最長4週間のスクリーニング期間の後、適格な対象は、2つの治験群(オピカポン(50mg)、またはプラセボ)の1つに1:1の比でランダム化され、24週間のプラセボ対照、並行群、二重盲検期間に入る(
図1)。
【0134】
治験薬は、既に行われているL-DOPA/DDCIの治療と組み合わせて投与される(表1)。
【0135】
ランダム化は、適格性が確認された後、来院2において行われる。対照は、オピカポンまたはプラセボのいずれかに、1:1でランダム化される。好ましくは、ランダム化の間に、層別化は一切行わない。
【0136】
対象は、音声/ウェブ自動応答システム(IVRS/IWRS)を使用して、ランダム化した治験薬に割り付けられる。試験が開始される前に、IVRSのための電話番号および電話の説明、および/またはIWRSのためのログイン情報および説明が、各試験施設から提供される。
【0137】
試験は、ランダム化コードへのアクセスが制限された、二重盲検試験である。被験薬カプセルとプラセボカプセルは、外観が同一である。各対象が受ける治療は治験担当医師、治験施設のスタッフ、対象、治験依頼者、または治験ベンダーに開示されない。治験薬コードは、IVRS/IWRSベンダーが保持する。
【0138】
後観察来院(PSV)は、試験終了来院(EOS)または早期中止来院(EDV)のおよそ2週間後に行われる。
【0139】
二重盲検期間の終わりにおいて、多くの対象は、治験担当医師の判断で、追加の1年間の非盲検期間に入り、そこでは、全ての対象がオピカポン(50mg)による治療を受ける。二重盲検期間は、データ解析の目的でデータベースがロックされた後に、盲検化が解除される。しかしながら、対象および治験施設は、非盲検相の終わりまで、二重盲検治療については盲検化されたままである。
【0140】
用量の変更
レボドパ/DDCI用量は、医学的に必要である場合、例えば、運動合併症、例えば厄介または危険なジスキネジアを理由として調節される。治験薬(オピカポンまたはプラセボ)の用量の変更は許されない。
【0141】
統計学的方法
主要有効性解析は、全ての対象が試験を完了した後に行われる。二重盲検試験の盲検化の解除は、データ解析の目的でデータベースがロックされた後に行われる。
【0142】
D.症候的な読み出し情報
国際運動障害学会のパーキンソン病の統一評価スケール
国際運動障害学会のパーキンソン病の統一評価スケール(MDS-UPDRS)(Goetz C. et al., Mov. Disord., 2008, 23, 2129-70)は、MDSが支援した、幅広く用いられているパーキンソン病の統一評価スケール(UPDRS)の拡張版である。MDS-UPDRSは、以下のように施行される。
MDS-UPDRSパートI(日常生活で経験する非運動性の側面)。
MDS-UPDRSパートII(日常生活で経験する運動性の側面)。
MDS-UPDRSパートIII(運動症状の調査)スコア(主要有効性エンドポイント)。
MDS-UPDRSパートIV(運動合併症)。
トータルスコアの計算のための方法、ならびにサブセクションの解析は、当業者に知られている。
【0143】
Hoehn&Yahr重症度
修正Hoehn&Yahrスケールは、パーキンソン病の症状の進行を説明するために使用される。元のバージョン(Hoehn M., Yahr M., Neurology, 1967, 17, 427-42)は、ステージ1~5を含む。
【0144】
Schwab&Englandスケール
Schwab&England日常生活動作スケールは、0(最低限の機能を示す)から100(障害がないことを示す)のスケールによる日常生活の機能の基準である(Schwab R., England A., 1969;152-7)。
【0145】
パーキンソン病睡眠スケール
パーキンソン病睡眠スケールバージョン2(PDSS-2)は、パーキンソン病の患者における睡眠障害を評価するための特別なスケールである(Chaudhuri K. et al., Mov. Disord., 2006, 21, 916-23)。PDSS-2は、夜間症状を調べるために使用され、医師による全般的印象で完結すべきである。
【0146】
非運動症状スケール
非運動症状は、パーキンソン病の患者に対して大きな影響を与える。MDSの非運動症状スケール(MDS-NMSS)は、パーキンソン病の患者における非運動症状の包括的評価のために特別にデザインされた尺度である(Chaudhuri K. et al., Mov. Disord., 2007, 22, 1901-11)。MDS-NMSSは、心血管系、睡眠/疲労、気分/認知、知覚障害、注意/記憶、消化器系、尿路系、性機能、その他という9領域から構成されており、合わせて30項目のスケールである。
【0147】
MDS-NMSSは、医師による全般的印象で完結する。
【0148】
パーキンソン病質問票
対象は、パーキンソン病質問票(PDQ-39)を完成させることによって、パーキンソン病によって悪影響を受けた機能性および福祉の種々の側面を評価する。PDQ-39は、最も幅広く使用されている、パーキンソン病に特化した健康状態の尺度である。PDQ-39は、クオリティ・オブ・ライフの8つの側面(可動性、日常生活動作[ADL]、感情、スティグマ、社会的支援、認知、コミュニケーションおよび身体的不快感)をカバーする39の質問を含んでいる。この尺度は、パーキンソン病と診断された人々に対する問診に基づいて開発され、幅広くバリデートされている(Peto V et al., Qual. Life Res., 1995, 4, 241-8;Jenkinson Cet al., Age Ageing, 1997,26, 353-7)。
【0149】
PDQ-39スケールは、医師による全般的印象で完結する。
【0150】
9項目の「ウェアリング」オフの患者の質問票
「ウェアリング」オフの患者の質問票(WOQ-9)(Stacy M., et al., Clin. Neuropharmacol., 2006, 29, 312-21)には、パーキンソン病に関連する9症状、すなわち振戦、気分の変動、何らかの動作の遅さ、器用さの低下、体のどこかの硬直、不安/パニック発作、ぼんやりした思考/思考の遅さ、筋けいれんおよび疼痛/うずき、が列挙されている。患者は、これらの症状のどれを経験しているか、および、それらの症状が、次回の治療薬投与後に通常改善するか否かをマークするように求められる。もし、症状が次回の薬物投与後に改善すると回答した場合、それは「肯定的な反応」とみなされる。
【0151】
医師による全般的印象
改善についての医師による全般的印象(CGI)(CGI-I)は、患者の疾患がベースラインに対してどの程度改善または悪化したかを評価する7点(著明改善、改善、やや改善、不変、やや悪化、悪化、著明悪化)のスケールである。「改善」のある患者は、著明改善、改善、またはやや改善と評価された患者である。
【0152】
個々の患者について、CGIスケールは、好ましくは、試験全体にわたって、同じ治験担当医師/評価者によって、スコア化される。
【0153】
患者の全般的印象
患者の全般的印象(PGI)改善スケール(PGI-I)は、患者に適合させたCGIに由来する項目からなる。治験担当医師は、患者が彼/彼女自身の評価を行う前に、患者を評価する。好ましくは、患者は、PGI改善スケール(PGI-I)を使用して、試験への参加が認められた時点の状態と比較して、自分自身の状態を評価する。
【0154】
E.臨床試験
オピカポン治療
オピカポンは、WO2013/089573に記載されているようにして合成し、WO2010/114405に記載されるようにして50mgカプセルに製剤化する。治験薬(オピカポンまたはマッチングプラセボ)は、夜に、L-DOPA/DDCIの毎日の最後の投与(就寝前投与とみなされる)の後、少なくとも1時間が過ぎてから1日1回経口投与する。
【0155】
患者のL-DOPA/DDCIレジメンには、対象の安全性のために調節が必要でない限り、試験の二重盲検相全体にわたって変更を加えない。非盲検期間においては、患者の安全性のために必要である場合、および/または患者の状態の悪化を治療するためにはL-DOPA/DDCI用量の調節および新たな抗パーキンソン病薬が許容されるが、その他のいかなる理由による調節も許されない。
【0156】
【0157】
臨床試験のデザイン
早期特発性パーキンソン病を有し、レボドパ/DDCIによる治療を受けており、運動合併症(例えば、運動反応における変動および/または不随意運動および/またはジスキネジア)の徴候がない患者における、オピカポンの有効性および安全性を評価するフェーズIII、多施設、二重盲検、プラセボ対照、並行群試験。この試験における患者は、早期パーキンソン病を有し、運動合併症はない。しかしながら、何らかの運動合併症が出現するのを追跡するために、WOQ-9およびMDS-UPDRSパートIVを使用する。およそ324人の対象が、およそ13か国の推定85施設においてランダム化される。この試験には、追加の52週間の非盲検継続投与が含まれる。
【0158】
期間1-スクリーニング(V1)
スクリーニング来院は、来院2の前4週間以内に行われる。試験に関連するいかなる手順も実施しないうちに、インフォームドコンセントフォーム(ICF)を使用して、二重盲検期間について、対象のインフォームドコンセントを得る。
【0159】
期間2-二重盲検期間(V2~V9)
来院2において、対象は、少なくとも4週間にわたって安定なレボドパ/DCCI療法を維持している。適格な対象は、2つの治験群(オピカポン(50mg)、またはプラセボ)の1つに1:1の比でランダム化され、24週間の二重盲検試験に入る。治験薬は、対象の既に行われているレボドパ/DDCIと組み合わせて投与される。
【0160】
対象は、レボドパ/DDCIと組み合わせて治験薬を継続し、4週間間隔で、7回の試験来院(V2~V8)に参加する。
【0161】
試験終了(EOS)来院は、来院9であり、続けて非盲検期間に入らない対象のためのものである。その他の場合、対象は、続けて非盲検期間に入る。試験の早期中止の場合、対象は、早期中止来院(EDV)に参加する。
【0162】
後観察来院(PSV)は、試験施設において、EOS来院の、または非盲検期間に入らない対象についてはEDVの、およそ2週間後に行われる。
【0163】
主要有効性解析
主要有効性パラメーターである、二重盲検期間の終わり(来院9)における、ベースライン(来院2)からのMDS-UPDRSパートIIIトータルスコアの変化は、ベースライン、施設/国、(ランダム化)治療、来院、来院相互作用による治療および来院相互作用によるベースラインを固定効果とし、ランダム効果として対象を用いて、混合モデル反復測定(MMRM)アプローチを使用して解析する。治療群間(オピカポン対プラセボ)の差異は、このモデルから推定する。
【0164】
感度分析
感度分析は、共分散分析(ANCOVA)アプローチを使用して、ベースライン、施設/国および(ランダム化)治療を固定効果として、またはMMRM解析を使用して、主要エンドポイントについて行われる。欠測データは、主要エンドポイントのみの感度分析について、多重補完法を使用して補完する。
【0165】
副次的有効性解析
主要エンドポイントのために使用したものと類似するMMRM解析が、二重盲検期間における関連がある副次的エンドポイントのために使用される。副次的エンドポイントとしては、以下のものがあげられる。
以下のスコアにおける、二重盲検試験の間の、ベースライン(来院2)からベースライン後の来院までの変化。
MDS-UPDRSスコア:パートI、II、IIIおよびIV、ならびにパートII+IIIのトータル
最大「オン」反応の間の修正Hoehn&Yahr重症度トータルスコア
Schwab&Englandスケールスコア
パーキンソン病睡眠スケール2(PDSS-2)トータルスコア
MDSの非運動症状スケール(MDS-NMSS)トータルスコアおよびサブドメインスコア
パーキンソン病質問票(PDQ-39)トータルスコアおよびサブドメインスコア
9項目ウェアリング・オフ質問票(WOQ9)トータルおよびサブセクション(運動性および非運動性)スコア
改善についての医師による全般的印象(CGI-I)
改善についての患者による全般的印象(PGI-I)
【0166】
二重盲検期間の終わり(来院9)のエンドポイントにおいて、CGI-Iスコアにおけるベースラインからの(好ましくは、治療の開始前と比較して)改善がある患者と、PGI-Iスコアにおけるベースラインからの(好ましくは、試験への参加が認められた時点と比較して)改善がある患者の割合は、(ランダム化)治療をこのモデルに含めて、ロジスティック回帰分析を使用して解析される。
【0167】
期間3-非盲検期間(V9~V15)
二重盲検期間の終わりにおいて、対象は、追加の1年間の非盲検期間に入ってもよく、そこでは、全ての対象が、既に行われているレボドパ/DDCIと組み合わせて、オピカポン(50mg)による治療を受ける。非盲検期間においては、患者の安全性のために必要である場合、および/または患者の状態の悪化を治療するためにはレボドパ/DDCI用量の調節および新たな抗パーキンソン病薬が許容されるが、その他のいかなる理由による調節も許されない。
【0168】
レボドパ/DDCI療法の用量は、電子的症例報告書(eCRF)に記録される。
【0169】
非盲検相における主要エンドポイントは、MDS-UPDRSパートIVトータルスコアにおける、ベースライン(来院9)から非盲検期間の終わり(来院15)までの変化である。副次的エンドポイントとしては、以下のものがあげられる。
以下のスコアにおける、二重盲検ベースライン(来院2)からオープンラインベースライン(来院9)までの変化。
MDS-UPDRSスコア:パートI、II、IIIおよびIV、ならびにパートII+IIIのトータル
最大「オン」反応の間の修正Hoehn&Yahr重症度トータルスコア
Schwab&Englandスケールスコア
PDSS-2トータルスコア
MDS-NMSSトータルスコアおよびサブドメインスコア
PDQ-39トータルスコアおよびサブドメインスコア
WOQ-9トータルおよびサブセクション(運動性および非運動性)スコア
CGI-I、好ましくは治療開始前の状態と比較する
PGI-I、好ましくは試験への参加が認められた時点の状態と比較する
【0170】
オピカポン(50mg)を含む実薬治療は、主要エンドポイントおよび/または1つ以上の副次エンドポイントにおいて、良好な有効性の徴候を示す。
【0171】
期間4-二重盲検期間および非盲検期間(V2~15)
二重盲検期間と非盲検期間の過程の間、早期パーキンソン病の患者における安定レボドパ/DDCI療法に対する補助療法としての1日1回のオピカポン(50mg)の安全性および忍容性を評価する。評価した因子としては、以下のものがあげられる。
重篤有害事象(SAE)を含む、治療によって発現する有害事象(TEAE)
安全性の臨床検査(生化学、血液学、血液凝固および尿検査)
理学的検査および神経学的検査
バイタルサイン
12誘導ECG読み取り
コロンビア自殺評価スケール(C-SSRS)
改定ミネソタ衝動障害インタビュー(mMIDI)
【0172】
【国際調査報告】