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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】ロッキー山紅斑熱の検出および治療
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/569 20060101AFI20231227BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20231227BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20231227BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231227BHJP
   C07K 16/12 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
G01N33/569 F
G01N33/53 D
G01N33/53 N
G01N33/543 501
C07K19/00 ZNA
C07K16/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536976
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 US2021064065
(87)【国際公開番号】W WO2022133233
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/126,756
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300004500
【氏名又は名称】アイデックス ラボラトリーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】IDEXX Laboratories, Inc.
【住所又は居所原語表記】One IDEXX Drive, Westbrook, Maine 04092, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【弁理士】
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】マドリード,クレヴァ
(72)【発明者】
【氏名】メステック,アントン
(72)【発明者】
【氏名】バウチャー,ジョシュア,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】バッチ,ジェシー,スティーブン
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA50
(57)【要約】
本明細書において、ロッキー山紅斑熱(「RMSF」)の検出および治療のための組成物および方法が提供されている。組成物は、Rickettsia rickettsiiを特異的に検出し、他のRickettsia種と交差反応せず、RMSFの迅速かつ正確な検出および診断を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)配列番号1、2、3、4、5、6、もしくは7に記載のポリペプチドに対する90%以上の配列同一性、
(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、もしくは7に対する90%以上の配列同一性を有するポリペプチドを2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、もしくはそれ以上含む融合タンパク質、または
(iii)配列番号1、2、3、4、5、6、もしくは7に対する90%以上の配列同一性を有する少なくとも2つのポリペプチドを含む融合タンパク質、を含むポリペプチド。
【請求項2】
75個未満の総アミノ酸を有する、かつ配列番号1、2、5、6、または7に記載のポリペプチドに対する90%以上の配列同一性を備えるポリペプチド。
【請求項3】
350個未満の総アミノ酸を有する、かつ配列番号3または4に記載のポリペプチドに対する90%以上の配列同一性を備えるポリペプチド。
【請求項4】
前記ポリペプチドが天然起源ではない、請求項1、請求項2、または請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記ポリペプチドが、凍結乾燥、水分除去、または乾燥されている、請求項1、請求項2、または請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、1つ以上の標識またはタグをさらに備える、請求項1、請求項2、または請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記ポリペプチドが支持体に固定されている、請求項1、請求項2、または請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記ポリペプチドが、配列番号1、2、3、4、5、6、または7に記載のポリペプチドに特異的に結合する1つ以上の抗体を有する免疫複合体中に存在する、請求項1、請求項2、または請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記ポリペプチドが、配列番号1、2、5、6、または7に記載のポリペプチドに対する90%以上の配列同一性および1つ以上の分泌シグナル配列、または1つ以上のエピトープタグ、または1つ以上の分泌シグナル配列および1つ以上のエピトープタグを備える、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項10】
(a)配列番号1、2、3、4、5、6、または7に記載のポリペプチドに対する90%以上の配列同一性を備える1つ以上のポリペプチドと検査試料を接触させること、および(b)抗Rickettsia rickettsii抗体またはその特異的結合断片と前記1つ以上のポリペプチドとの複合体を検出することを含む、抗Rickettsia rickettsii抗体またはその特異的結合断片を検出する方法。
【請求項11】
前記1つ以上のポリペプチドが支持体に固定されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
抗Rickettsia rickettsii抗体またはその特異的結合断片に特異的に結合する、1つ以上の二次抗体またはその特異的結合断片を使用して、前記複合体が検出される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記二次抗体またはその特異的結合断片が、1つ以上のタグまたは標識を備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
配列番号1、2、3、4、5、6、または7に記載のポリペプチドに対する90%以上の配列同一性を備える1つ以上の検出器ポリペプチドを使用して、前記複合体が検出される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記1つ以上の検出器ポリペプチドが、標識またはタグを備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(a)配列番号1、2、3、4、5、6、または7に記載のポリペプチドに対する90%以上の配列同一性を備える1つ以上のポリペプチドと検査試料を接触させること、および(b)抗Rickettsia rickettsii抗体またはその特異的結合断片と前記1つ以上のポリペプチドとの複合体を検出することによって、対象においてRickettsia rickettsiiによって引き起こされる疾患を診断する方法。
【請求項17】
前記対象が、Rickettsiaに7日未満の間感染している、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記試料中の前記複合体の量を対照試料または対照標準と比較することをさらに含み、前記対照試料または対照標準と比較した前記複合体のレベルの上昇が、Rickettsia rickettsiiによって引き起こされる疾患の指標である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記複合体が検出される場合に、Rickettsia rickettsiiによって引き起こされる疾患に対する治療を実施することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記試料中の前記抗Rickettsia rickettsii抗体またはその特異的結合断片の量を決定することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が非ヒト動物である、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記検査試料が、血液、血漿、血清、またはリンパ液である、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記抗Rickettsia rickettsii抗体またはその特異的結合断片が、競合免疫測定法、サンドイッチ免疫測定法、酵素結合免疫測定法(ELISA)、免疫組織化学アッセイ、免疫比濁法、粒子増強免疫比濁法、放射免疫測定(RIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、マルチプレックス免疫測定法、タンパク質/ペプチドアレイ免疫測定法、固相放射免疫測定法(SPRIA)、間接免疫蛍光アッセイ(IIF)、化学発光免疫測定法(CIA)、粒子ベースの多項目試験(PMAT)、ドットブロットアッセイ、ウェスタンブロットアッセイ、表面プラズモン共鳴(SPR)、等温滴定熱量測定法(ITC)、マイクロスケール熱泳動(MST)、バイオレイヤー干渉法、またはグレーティング結合干渉法によって検出される、請求項10または請求項16に記載の方法。
【請求項24】
Rickettsia rickettsiiによって引き起こされる疾患を診断するためのキットであって、
(a)配列番号1、2、3、4、5、6、または7に記載のポリペプチドに対する90%以上の配列同一性を備える1つ以上のポリペプチドであって、前記ポリペプチドが天然起源ではない、1つ以上のポリペプチドと、
(b)検査試料中に存在する抗Rickettsia rickettsii抗体またはその特異的結合断片への前記1つ以上のポリペプチドの結合を促進する1つ以上の試薬と、を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、2020年12月17日に出願された米国特許出願第63/126,756号の利益を主張し、その全体が参照により組み込まれる。
(配列表)
【0002】
本出願には、EFS-Webを介してASCII形式で提出され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる配列表が含まれる。2021年12月16日に作成された当該ASCIIコピーは、「331721-000066 sequence listing_ST25.txt」と命名され、約29バイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
ロッキー山紅斑熱(RMSF)は、ロッキー山紅斑熱リケッチア(Rickettsia rickettsii)感染によって引き起こされるベクター媒介性疾患である。非病原性Rickettsia spp.からの交差反応抗体のため、この疾患をイヌにおいて特定することは困難である。従って、R. rickettsii特異的遺伝子/タンパク質の特定は、効果的な診断検査の開発に不可欠である。RMSFは人獣共通感染症であり、主に アメリカ犬ダニ(Dermacentor variabilis)、ロッキーマウンテンウッドダニ(Dermacentor andersonii)、他のダニ(Ambylomma、Rhipicephalusなど)によってイヌに伝染する。R. rickettsiiに感染したダニが、ヒト、イヌ、シカ、他の動物を咬み、それによって感染性細菌が広がる。R. rickettsiiは、ダニ刺咬中に血流に入り、微小循環系の血管細胞に侵入し、しばしば広範な血管損傷をもたらす。
【0004】
R. rickettsiiは、他のRickettsia spp.および内部共生生物と系統学的に密接に関連している。Rickettsiaの幾つかの異なる種のゲノムが配列決定されているが、診断抗原の特定についての課題は、非病原性または内部共生生物と他のRickettisia spp.の両方からの交差反応抗体である。RMSFの現在の診断は、PCR、IFA、培養によって実施される。しかしながら、これらの診断方法には、感染の検出に一定の限界がある(Parola et al.,(2005)Veterinary research,36(3),469-492; Breitschwerdt et al.,(1999)Antimicrobial agents and chemotherapy,43(4), 813-821; Levin et al.(2014)PloS one,9(12)。
【0005】
RMSFは、最も致命的なダニ媒介性疾患の1つである。ヒトのR. rickettsii感染は、未治療の場合、約15%の死亡率をもたらす可能性がある。ヒトの症例は、過去10年間で着実に増加している。イヌの有病率は、非流行地域では0.1%と低いものから、流行地域において、または局所的な大発生中に14%以上に変化しうる。R. rickettsii感染に対する新規マーカーが必要であり、これは抗Rickettsia rickettsii抗体の早期(4~14日目以前のDPI感染)かつ高度に特異的な検出につながる。さらに、R. rickettsiiの種特異的診断検査が必要である。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態は、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、もしくは7に記載のポリペプチドに対する90%以上の配列同一性、(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、もしくは7に対する90%以上の配列同一性を有する2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、もしくはそれ以上のポリペプチドで構成される融合タンパク質、または(iii)配列番号1、2、3、4、5、6、もしくは7に対する90%以上の配列同一性を有する少なくとも2つのポリペプチドで構成される融合タンパク質を含むポリペプチドを提供する。
【0007】
別の実施形態は、75個未満の総アミノ酸を有する、かつ配列番号1、2、5、6、または7に記載のポリペプチドに対する90%以上の配列同一性を備えるポリペプチドを提供する。
【0008】
さらに別の実施形態は、350個未満の総アミノ酸を有する、かつ配列番号3または4に記載のポリペプチドに対する90%以上の配列同一性を備えるポリペプチドを提供する。
【0009】
一実施形態において、ポリペプチドは天然起源ではない。ポリペプチドは、凍結乾燥、水分除去、または乾燥されることができる。ポリペプチドは、1つ以上の標識またはタグをさらに備えることができる。ポリペプチドは、支持体に固定されることができる。ポリペプチドは、配列番号1、2、3、4、5、6、または7に記載のポリペプチドに特異的に結合する1つ以上の抗体を有する免疫複合体中に存在することができる。
【0010】
さらに別の実施形態は、抗Rickettsia rickettsii抗体またはその特異的結合断片を検出する方法を提供する。方法は、配列番号1、2、3、4、5、6、または7に記載のポリペプチドに対する90%以上の配列同一性を備える1つ以上のポリペプチドを検査試料と接触させることと、抗Rickettsia rickettsii抗体またはその特異的結合断片と1つ以上のポリペプチドとの複合体を検出することとを含むことができる。1つ以上のポリペプチドは、支持体に固定されることができる。複合体は、抗Rickettsia rickettsii抗体またはその特異的結合断片に特異的に結合する、1つ以上の二次抗体またはその特異的結合断片を使用して検出されることができる。二次抗体またはその特異的結合断片は、1つ以上のタグまたは標識を備えることができる。配列番号1、2、3、4、5、6、または7に記載のポリペプチドに対する90%以上の配列同一性を備える1つ以上の検出器ポリペプチドを使用して、複合体を検出することができる。1つ以上の検出器ポリペプチドは、標識またはタグを備えることができる。ポリペプチドは、配列番号1、2、5、6、または7に記載のポリペプチドに対する90%以上の配列同一性を備えてもよく、1つ以上の分泌シグナル配列、または1つ以上のエピトープタグ、または1つ以上の分泌シグナル配列および1つ以上のエピトープタグをさらに含んでもよい。
【0011】
別の実施形態は、対象においてRickettsia rickettsiiによって引き起こされる疾患を診断する方法を提供する。方法は、配列番号1、2、3、4、5、6、または7に記載のポリペプチドに対する90%以上の配列同一性を備える1つ以上のポリペプチドを検査試料と接触させることと、抗Rickettsia rickettsii抗体またはその特異的結合断片と1つ以上のポリペプチドとの複合体を検出することとを含むことができる。対象は、約4、5、6、7、8、または9日未満の間、Rickettsia rickettssiに感染することができる。方法は、試料中の複合体の量を対照試料または対照標準と比較することをさらに含んでもよく、対照試料または対照標準と比較した複合体のレベルの上昇は、Rickettsia rickettsiiによって引き起こされる疾患の指標である。方法は、複合体が検出される場合に、Rickettsia rickettsiiによって引き起こされる疾患に対する治療を実施することをさらに含むことができる。方法は、試料中の抗Rickettsia rickettsii抗体またはその特異的結合断片の量を決定することをさらに含むことができる。対象は、ヒトまたは非ヒト動物でありうる。検査試料は、全血、血漿、血清、リンパ液、尿、糞便、鼻腔スワブ、喉スワブ、唾液、環境試料、または任意の他の適切な試料でありうる。
【0012】
一実施形態において、抗Rickettsia rickettsii抗体またはその特異的結合断片は、競合免疫測定法、サンドイッチ免疫測定法、酵素結合免疫測定法(ELISA)、免疫組織化学アッセイ、免疫比濁法、粒子増強免疫比濁法、放射免疫測定(RIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、マルチプレックス免疫測定法、タンパク質/ペプチドアレイ免疫測定法、固相放射免疫測定法(SPRIA)、間接免疫蛍光アッセイ(IIF)、化学発光免疫測定法(CIA)、粒子ベースの多項目試験(PMAT)、ドットブロットアッセイ、ウェスタンブロットアッセイ、表面プラズモン共鳴(SPR)、等温滴定熱量測定法(ITC)、マイクロスケール熱泳動(MST)、バイオレイヤー干渉法、またはグレーティング結合干渉法によって検出されることができる。
【0013】
さらに別の実施形態は、Rickettsia rickettsiiによって引き起こされる疾患を診断するためのキットを提供する。キットは、配列番号1、2、3、4、5、6、または7に記載のポリペプチドに対する90%以上の配列同一性を備える1つ以上のポリペプチドであって、天然には存在しないポリペプチドと、検査試料中に存在する抗Rickettsia rickettsii抗体またはその特異的結合断片への1つ以上のポリペプチドの結合を促進する1つ以上の試薬とを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、RMSF感染の仮定の時間経過、および感染後の選択された時点での利用可能な診断を示す。重症度、死亡リスク、セロコンバージョンは、病原体の用量、感染者の免疫反応、リケッチア株に依存する。x軸は感染後の日数(DPI)を表し、y軸は感染の重症度を表す。曲線は、RMSF感染の代表的な時間経過である。感染が経時的に進行するにつれ、罹患者は抗体陽転し、感染を排除するか、または多系統障害に陥り、死に至る可能性がある。挿入図は、R. rickettsii感染血管系の長軸方向切片を示す。ドキシサイクリンと記載された矢印は、効果的な治療のための時間枠を表す。R. rickettsiiは、進化的に抗原刺激を受けて、速やかに血流から出て、血管内皮細胞(挿入画像を参照)内で複製し、それ故に感染の最初の数日間を超えると採血からのPCRを無効にする。セロコンバージョンを検出するIFAは、特異性を欠き、一般的に非常に骨の折れるものであり、治療に関する迅速またはクリニック内でのガイダンスには無効である。
図2図2は、細胞外タンパク質SCA2の概略図を上部パネルに示す。ボックスで囲まれた細胞外タンパク質SCA2のオートシャペロンドメイン(AC)に、R. rickettsii株にのみ存在する一続きのアミノ酸が存在する。下部のパネルは、Rickettsia種からのSCA2オートシャペロン領域の配列を示す。固有の領域全体(より大きい水平のボックス)はPDX6である一方、わずかに切断された領域(より小さい水平のボックス)はPDX7である。
図3図3は、Sca2タンパク質のR. rickettsii特異的領域の周りに生成された特異試薬を示す。PDX6は対象の全固有領域を代表する一方、PDX7はわずかに短縮された配列である。2つの組み換え融合タンパク質を、PDX6領域の3つの反復(TDX1779)またはPDX6領域の5つの反復(TDX1780)から成るように作製した。また組み換えタンパク質を、8xのHisタグおよびエピトープタグで合成した。
図4図4は、一次抗体および二次抗体を有するアミノビーズに共役されたPDX7ポリペプチドの概略図を示す。ビオチン化ウサギ抗イヌIgGを使用して抗体結合の検出を報告した。
図5図5は、マルチプレックスでの実験的(プール)血清に対するPDX7反応性を示す。感染前、ならびに感染4、7、11、14、21、25、32、39日後(PDI)のPDX7のPDX7蛍光強度(MFI)。PDX7をアミノビーズに共役し、R. rickettsiiに実験的に感染させたイヌからのプール血清に対してインキュベートした。ビオチン化ウサギ抗イヌIgGを使用して抗体結合の検出を報告した。理想的な治療ウィンドウは、PID4とPID21の間の範囲にある。
図6図6は、マルチプレックス(間接抗種形式)での実験的血清に対するTDX1779および1780の反応性を示す。TDX1779およびTDX1780をカルボキシビーズに結合し、R. rickettsiiに実験的に感染させたイヌ(イヌ1またはイヌ6)からの血清に対してインキュベートした(感染後日=PID)。ビオチン化ウサギ抗イヌIgGを使用して抗体結合の検出を報告した。
図7図7は、アミノビーズに共役されたPDX7によって抗R. rickettsii抗体が捕捉され、ビオチン化抗種抗体の代わりにビオチン化PDX7ペプチドによって検出される、直接アッセイ形式の概略図を示す。
図8図8は、アミノビーズに共役され、抗種IgGの代わりにビオチン化ペプチドを検出器として使用する直接アッセイ形式(直接形式、図7を参照)を使用して、米国からの574個の試料に対してスクリーニングされたPDX7ペプチドを示す。このアプローチを使用して、検査された574個中8個の陽性試料を特定した。陽性の確認のためにRMSF免疫蛍光アッセイ(IFA)を使用して、8個の陽性をさらに評価した。マルチプレックスによって特定された8個のPDX7陽性試料のうち、6個はIFAによって陽性が確認され、抗Rickettsia抗体を捕捉するためのPDX7ペプチドの強い感度および的中率が示唆された。
図9図9は、PDX21ポリペプチドに対する、R. rickettsiiに実験的に感染させたイヌからの血清の反応性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
シェルバイアル法は現在、RMSFの最も確定的な診断方法である。この手法には、シェルバイアル培養チューブのカバースリップ上で成長した細胞単層上に臨床標本を接種することと、ウイルス感染性を高めるために低速遠心分離することと、次いでインキュベーションすることとを伴う。しかし、この手法には重大な欠点がある。新しい細胞に継代した時、約3分の1の単離株が失われる可能性がある。さらに、本培養技術は、生存宿主細胞(動物マウスモデルまたは発育卵)、または細胞培養物(Vero、L929、HEL、XTC-2、またはMRC5細胞)を維持する能力を有する生体安全レベル3の施設およびスタッフを備えた実験室に限定される。
【0016】
RMSFの診断のための標準的な血清検査は、スライドに固定されたR. rickettsii病原体を使用した免疫グロブリンG(IgG)の間接免疫蛍光アッセイ(IFA)である。 しかしながら、このアッセイはR. rickettsii特異的ではない。このアッセイはまた、例えばR. akari、R. parkeri、Rickettsia 364Dを検出する。同属内、および時には異なる属の病原体の抗原間の交差反応性は、血清学の既知の主要な限界である。IFAはまた、抗体交差反応性および/または抗種抗体がスライドに非特異的に結合する結果として、非特異的シグナルに悩まされる。さらなる限界として、Rickettsia病原体が以前に単離または検出されていない地域において、IFAアッセイは、唯一の診断方法として頼ることができず、相互参照技術としてのみ頼ることができる。
【0017】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイおよびシーケンシング法を使用して、血液および皮膚生検 のRMSFを検出および特定することもできる。PCRおよびシーケンシング法は迅速であるが、従来のPCRは、血液試料中のR. rickettsiiの検出にとって感度が悪く、試料が汚染されうる。提案された「自殺PCR」アッセイなどのネステッドPCRアッセイは、以前のアッセイからのアンプリコンによる垂直汚染を軽減することを試みるものである。自殺PCRアッセイは、実験室で以前に増幅されたことがない遺伝子を標的とする単回使用プライマーを使用する。それにもかかわらず、標準的なネステッドPCRアッセイは、汚染および偽陽性結果を非常に受けやすい。
【0018】
Rickettsia rickettsiiを特異的に検出でき、他のRickettsia種と交差反応することができないRMSFの診断方法は、RMSFの迅速かつ正確な診断に寄与することになる。培養、IFA、PCR法の欠点を軽減しながら、こうした利点を提供した診断検査は、世界人口のより大きい部分におけるRMSFのより正確でタイムリーな診断を確実にすることになる。RMSFのより迅速でより正確な診断検査は、より早期の治療につながることになり、これは治療が遅れた場合、RMSFの死亡率が増加するため重要である。
【0019】
本明細書において、RMSFの検出および治療のための組成物および方法が提供されている。組成物は、Rickettsia rickettsiiを特異的に検出することができ、他のRickettsia種と交差反応しない可能性が高く、RMSFの迅速かつ正確な診断を提供する。
【0020】
ポリペプチド
ポリペプチドは、アミド結合が3つ以上のアミノ酸を共有結合するポリマーである。ポリペプチドは、翻訳後修飾されうる。精製ポリペプチドは、細胞物質、他のタイプのポリペプチド、化学的前駆体、ポリペプチドの合成に使用される化学物質、またはそれらの組み合わせを実質的に含まないポリペプチド調製物である。細胞物質、培養培地、化学的前駆体、ポリペプチドの合成に使用される化学物質を実質的に含まないポリペプチド調製物は、約30%、20%、10%、5%、1%以下の他のポリペプチド、培養培地、化学的前駆体、および/または合成に使用される他の化学物質を有する。従って、精製ポリペプチドは、約70%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上純粋である。
【0021】
「ポリペプチド」という用語は、1つ以上のタイプのポリペプチドまたは一組のポリペプチドを指しうる。「ポリペプチド」はまた、完全長タンパク質、短縮ポリペプチド、またはポリペプチド断片を含むがこれらに限定されない、2つ以上の異なるタイプのポリペプチドの混合物を指しうる。用語「ポリペプチド(複数可)」は、各々が「1つ以上のポリペプチド」を意味しうる。
【0022】
SCA2ポリペプチド
Rickettsia SCA2タンパク質は、17個の表面細胞抗原(SCA)タンパク質のうちの1つである。表面細胞抗原(SCA)タンパク質は、Rickettsiaオートトランスポーター(AT)のファミリーを指す。これらのSCAタンパク質は、宿主細胞の細菌感染に関与する。SCA2タンパク質はRickettsia種にわたって高度に保存され、標的細胞とのRickettsiaの接着浸潤および運動性を促進することができる外膜タンパク質である。SCA2のポリペプチド配列の例は、GenBank登録番号AJG33947.1およびAJG32613.1に示されている。SCA2は例えば、宿主細胞サイトゾル中のRickettsiaのアクチンベースの運動性に関与するformin模倣物として機能する。
【0023】
R. rickettsii株にのみ存在する一続きのアミノ酸は、細胞外タンパク質SCA2のオートシャペロンドメイン(AC)に存在する。本明細書において固有領域全体がPDX6と呼ばれる一方、わずかに短縮された領域は、本明細書においてPDX7と命名される。図3を参照されたい。加えて、2つの組み換え融合タンパク質TDX1779およびTDX1780が、それぞれPDX6の3つの反復またはPDX6の5つの反復の融合によって構築されている。これらのポリペプチドのいずれも、例えばバーコード付き磁気ビーズ(BMB)などの支持体に固定され、検出アッセイで使用されることができる。
【0024】
(PDX6)配列番号1
CDYKKSLLXLRSSDEDDQGYATGYTTDEEELEEXNSTTGEELKKDISD
9位のXは、EまたはAとすることができる。34位のXは、GまたはSとすることができる。
【0025】
(PDX7)配列番号2
CSSDEDDQGYATGYTTDEEELEEXNSTTGEELKKDISD
24位のXは、GまたはSとすることができる。
【0026】
(TDX1779)配列番号3
MDWTWRVFFLLALATGVHSCDYKKSLLELRSSDEDDQGYATGYTTDEEELEESNSTTGEELKKDISDDYKKSLLELRSSDEDDQGYATGYTTDEEELEESNSTTGEELKKDISDDYKKSLLELRSSDEDDQGYATGYTTDEEELEESNSTTGEELKKDISDAAAHHHHHHHH
【0027】
TDX1779の構造は(MDWTWRVFFLLALATGVHS-PDX6-PDX6-PDX6-8XHIS)である(図3を参照)。N末端の配列の下線部分(例えば、MDWTWRVFFLLALATGVHS配列番号24)は、分泌(シグナル)配列である。「8XHIS」は、8個のHis残基を含むHisタグが存在することを意味する。
【0028】
(TDX1780)配列番号4
MDWTWRVFFLLALATGVHSCDYKKSLLELRSSDEDDQGYATGYTTDEEELEESNSTTGEELKKDISDDYKKSLLELRSSDEDDQGYATGYTTDEEELEESNSTTGEELKKDISDDYKKSLLELRSSDEDDQGYATGYTTDEEELEESNSTTGEELKKDISDDYKKSLLELRSSDEDDQGYATGYTTDEEELEESNSTTGEELKKDISDDYKKSLLELRSSDEDDQGYATGYTTDEEELEESNSTTGEELKKDISDAAAHHHHHHHH
【0029】
TDX1780の構造は(MDWTWRVFFLLALATGVHS-PDX6-PDX6-PDX6-PDX6-PDX6-PDX6-8XHIS)である。図3を参照されたい。
【0030】
下線を引いたアミノ酸は、生化学的/免疫学的目的のために操作されたポリペプチド配列への非天然の変異および/または付加を示す。従って、これらのポリペプチドは、非天然起源であり、天然起源ポリペプチドと異なる特性を有し、これには例えば、より良好な精製特性ならびにアッセイにおけるより良好な特異性および感受性が含まれる。
【0031】
分泌シグナル配列は、ペプチド配列のN末端(または場合によって、C末端)に存在するペプチド配列(またはペプチド配列をコードするポリヌクレオチド)である。分泌シグナル配列は、シグナル配列、ターゲティングシグナル、局在化シグナル、局在化配列、輸送ペプチド、リーダー配列、リーダーペプチド、プレプロ配列、プレ配列、または分泌シグナルペプチドなど(ただしこれらに限定されない)、様々な名称で呼ばれうる。分泌シグナル配列は、アミノ酸約10~110個の長さ(例えば、アミノ酸約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105または110個の長さ)でありうる。より大きいポリペプチドの構成要素である分泌シグナル配列は、ターゲティングに有用である可能性があり、より大きいポリペプチドを、それが合成される細胞の分泌経路を通して方向付けることができる。一部の実施形態において、より大きいポリペプチドは、分泌経路を通る輸送中に分泌シグナル配列を除去するために切断される。分泌シグナル配列は、内因性であることができ、または遺伝子操作されることができる。
【0032】
分泌シグナル配列は例えば、von Heinje(Eur. J. Biochem. 133: 17-21, 1983; J. Mol. Biol. 184: 99-105, 1985; Nuc. Acids. Res. 14: 4683-3690, 1986)によって確立された規則に従って合成されるこ
とができる。分泌シグナル配列の例を表2に示す。当技術分野で周知の、または当業者に周知の任意の分泌シグナル配列を、本明細書に記載のポリペプチドおよび方法に使用することができる。
【0033】
【表1】
【0034】
ポリペプチドは、配列番号1、2、3、4、5、6、または7(以下の配列番号5、6、7の説明を参照)に記載の1つ以上のポリペプチド(例えば、1、2、3、4、5、6、7個またはそれ以上)に対する約70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を備えることができ、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5個、またはそれ以上)の分泌シグナル配列、または1つ以上(例えば、1、2、3、4、5個、またはそれ以上)のエピトープタグ、または1つ以上の分泌信号配列および1つ以上のエピトープタグをさらに備えることができる。これらの要素は、融合タンパク質を構成する個々のタンパク質または配列の間に1つ以上のリンカーを有する融合タンパク質として存在することができる。あるいは、融合タンパク質を構成する個々のタンパク質または配列の間にリンカーが存在しなくてもよい。融合タンパク質の要素(すなわち、配列番号1、2、3、4、5、6、または7に記載のポリペプチド、分泌シグナル配列、エピトープタグ)は、融合タンパク質中、任意の順序で発生することができる。
【0035】
VUTポリペプチド
Rickettsiaビタミン取り込みトランスポーターVUTファミリータンパク質は、200アミノ酸の仮説的タンパク質であり、細菌細胞表面上に存在することを前提としている。ドメイン相同性に基づくVUTの提唱された機能は、細菌増殖のための重要要件であるキューオシンサルベージと一致する。このタンパク質の例は、GenBank登録番号WP_012150928.1であり、配列番号8
MLFDKIKSKRKGKCMSNINAKFYIPLVSLLGVFIYLLNCFNKISQCSLVFVFLAITTNIISELYGRKRALIAVALCIIVSFGLLWNFNYYIHGRVIKGVVFASFVSVLLSTYCSTSIFSQLKPRCSLNTRNFASLIMCAVVDGIVMSGFFVNVFSTSKVLSIFYKEVLYKCAYSLTVYICIFLVQKVYGNNGSVRALKNF
に示されている。
【0036】
一つの実施形態において、VUTタンパク質は、タンパク質の両端に隣接する2つの関心領域を有する。PDX21およびPDX39ペプチドはそれぞれ、VUTタンパク質の最初の38残基および最後の38残基に由来していた。一つの実施形態において、PDX21およびPDX39ペプチドは、システイン残基に点変異を有する。すなわち、天然起源のシステインアミノ酸は例えば、セリンに変更される。さらに、天然起源のメチオニンをシステインに変更することができる。これらの変更には以下で下線が引かれている。
【0037】
(PDX21)配列番号5
MLFDKIKSKRKGKSMSNINAKFYIPLVSLLGVFIYLLN
【0038】
(PDX39)配列番号6
CKEVLYKSAYSLTVYISIFLVQKVYGNNGSVRALKNF
【0039】
(PDX40)配列番号7
CLFDKIKSKRKGKSMSNINAKFYIPLVSLLGVFIYLLN
【0040】
PDX40は、生化学目的で最初のメチオニン(M)がシステイン(C)で置換されたPDX21である。
【0041】
従って、これらのポリペプチドは、非天然起源であり、例えば二次構造を形成する傾向の減少、および検査のための固相に共役する能力を含む、天然起源ポリペプチドと異なる特性を有する。
【0042】
一つの実施形態は、完全なSCA2タンパク質、完全なVUTタンパク質、PDX6、PDX7、TDX1779、TDX1780、PDX21、PDX39、PDX40またはその断片を含む精製ポリペプチドを提供する。完全なSCA2タンパク質のポリペプチド断片、完全なVUTタンパク質、PDX6、PDX7、TDX1779、TDX1780、PDX21、PDX39、PDX40は、約350、300、250、200、150、100、95、90、80、70、60、50、40、35、30、25、20、15、10個未満(または約10~約350個の間の任意の範囲)の連続する総アミノ酸でありうる。一つの実施形態において、ポリペプチド断片は、完全なSCA2タンパク質、完全なVUTタンパク質、PDX6、PDX7、TDX1779、TDX1780、PDX21、PDX39、PDX40の約10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、95、100、150、200、250、300、または350個超の連続する総アミノ酸である。別の実施形態において、ポリペプチドは、約95、75、50、または25個未満の総アミノ酸を有し、配列番号1、2、5、6、または7に記載のポリペプチドに対する70%、80%、90%、95%またはそれ以上の配列同一性を備える。一実施形態において、ポリペプチドは、約400、350、300、200、または150個未満の総アミノ酸を有し、配列番号3または4に記載のポリペプチドに対する約70%、80%、90%、95%またはそれ以上の配列同一性を備える。
【0043】
例えば、配列番号1は、アミノ酸48個の長さである。一実施形態において、ポリペプチドは、ポリペプチドを、例えばアミノ酸95個の長さに伸長させるための追加のアミノ酸を含むことができる。余分なまたは追加のアミノ酸は例えば、標識、タグ、追加のR. rickettsiiアミノ酸、R. rickettsiiに無関係のアミノ酸、精製に使用されることができるアミノ酸、ポリペプチドの溶解性を増加させるために使用されることができるアミノ酸、ポリペプチドの他の特徴を改善するアミノ酸、または他のアミノ酸でありうる。一実施形態において、追加のアミノ酸はR. rickettsiiアミノ酸ではない。この例において、アミノ酸95個の長さのポリペプチドは、配列番号1の48個の連続アミノ酸について、配列番号1に記載のポリペプチドに対する約70%、80%、90%、95%またはそれ以上の配列同一性を有する一方で、アミノ酸95個のポリペプチドの残りの47個のアミノ酸は例えば、配列番号1に対する配列同一性を有することができない。
【0044】
別の非限定的な例において、75個未満の総アミノ酸を有する、かつ配列番号2に記載のポリペプチドに対する90%以上の配列同一性を備えるポリペプチドは、70個のアミノ酸を有するポリペプチドでありうる。アミノ酸70個の長さのポリペプチドは、配列番号2の38個の連続アミノ酸について、配列番号2に記載のポリペプチドに対する90%以上の配列同一性を有することができる一方で、アミノ酸70個のポリペプチドの残りの32個のアミノ酸は例えば、配列番号2に対する配列同一性を有することができない。
【0045】
別の非限定的な例において、350個未満の総アミノ酸を有する、かつ配列番号3に記載のポリペプチドに対する90%以上の配列同一性を備えるポリペプチドは、アミノ酸300個の長さでありうる。アミノ酸300個の長さのポリペプチドは、配列番号3の172個の連続アミノ酸について、配列番号3に記載のポリペプチドに対する90%以上の配列同一性を有することができる一方で、アミノ酸300個のポリペプチドの残りの128個のアミノ酸は例えば、配列番号3に対する配列同一性を有することができない。
【0046】
より小さいポリペプチドは検出アッセイまたは診断アッセイにおいて全長ポリペプチドよりも高い特異性および/または感度を有することができるため、ポリペプチド(例えば、配列番号1~7)が全長R. rickettsiiポリペプチドよりも小さいという事実は重要でありうる。加えて、これらのより小さいポリペプチドは、製造が安価である可能性があり、全長ポリペプチドよりも高い純度で取得されることができる。
【0047】
一つの実施形態において、ポリペプチドまたはその断片は、非天然起源である。すなわち、ポリペプチドまたは断片は、1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、75個またはそれ以上の非天然起源アミノ酸を含む。一実施形態において、非天然起源アミノ酸は、ポリペプチドの溶解性の増加、またはアッセイにおけるポリペプチドの感度の増加または特異性の増加などの有益な特性を提供することができる。
【0048】
「配列同一性」または「パーセント同一性」という用語は本明細書において、互換的に使用される。2つのポリペプチド分子または2つのポリヌクレオチド配列のパーセント同一性を決定するために、配列は、最適な比較の目的のために整列される(例えば、第二のポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列との最適な整列のために、第一のポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列にギャップが導入されうる)。次に、対応するアミノ酸またはヌクレオチド位置でのアミノ酸またはヌクレオチドを比較する。第一の配列のある位置が、第二の配列の対応する位置と同じアミノ酸またはヌクレオチドによって占有されている場合、分子は、その位置で同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、配列によって共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同一の位置の数/位置の総数(すなわち、重複位置)×100)。一部の実施形態において、比較目的のために整列された参照の配列(例えば、配列番号1~7)の長さは、比較配列の長さの少なくとも50、60、70、または80%であり、一部の実施形態において、少なくとも90%または100%である。一実施形態において、2つの配列は同じ長さである。
【0049】
配列同一性の望ましい程度の範囲は、約80%~100%、およびその間の整数値である。開示の配列と請求の配列の間のパーセント同一性は、少なくとも80%、少なくとも83%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または少なくとも99.9%とすることができる。一般に、完全一致は、参照の配列(例えば、配列番号1~7)の長さにわたる100%の同一性を示す。
【0050】
本明細書に記載のポリペプチド(例えば、SCA2またはVUTポリペプチド)に十分に類似しているポリペプチドが本明細書で使用されることができる。本明細書に記載のポリペプチドに対して約90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5%またはそれ以上同一であるポリペプチドも、本明細書で使用されることができる。
【0051】
ポリペプチドバリアントは、配列番号1~7に示されるペプチドまたはその断片からの約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90個、またはそれ以上のアミノ酸残基(例えば、アミノ酸付加、置換、または欠失)によって異なる。この比較が整列を必要とする場合、配列は、最大相同性のために整列される。変異部位は、ポリペプチドのどこにでも発生することができる。一つの実施形態において、バリアントは、元のポリペプチドに対する約70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する。
【0052】
バリアントポリペプチドは概して、本明細書に記載のポリペプチド配列の1つを修飾することと、修飾ポリペプチドの特性を評価して、それが生物学的同等物であるかを判定することとによって特定されることができる。バリアントは、免疫組織化学アッセイ、酵素結合免疫測定法(ELISA)、免疫比濁法、粒子増強免疫比濁法、粒子増強免疫比濁法、放射免疫測定(RIA)、酵素抗体法、ウェスタンブロットアッセイ、または他の適切なアッセイなどのアッセイにおいて、本明細書に記載のポリペプチドと実質的に同じに反応する場合、生物学的同等物である。言い換えれば、バリアントは、元のポリペプチドの活性の90~110%を有する場合、生物学的同等物である。一つの実施形態において、アッセイは競合アッセイであり、これにおいて、生物学的に同等なポリペプチドは、対応する反応性抗原または抗体への本明細書に記載のポリペプチドの結合を約80%、95%、99%、または100%減少させる能力を有する。対応するポリペプチドに特異的に結合する抗体はまた、バリアントポリペプチドに特異的に結合する。
【0053】
バリアントポリペプチドは、1つ以上の保存的アミノ酸変異、または他の軽微な修飾を有し、生物活性を保持することができ、すなわちPDX6、PDX7、TDX1779、TDX1780、PDX21、PDX39、PDX40、またはその断片の生物学的機能性同等物である。バリアントポリペプチドは、標識、タグ、追加のR. rickettsiiアミノ酸、R. rickettsiiに無関係のアミノ酸、精製に使用されることができるアミノ酸、ポリペプチドの溶解性を増加させるために使用されることができるアミノ酸、ポリペプチドの他の特徴を改善するアミノ酸、または他のアミノ酸を有することができる。一実施形態において、追加のアミノ酸はR. rickettsiiアミノ酸ではない。
【0054】
突然変異をアミノ酸配列に導入する方法は、当業者に周知である。例えば、『Ausubel(ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Inc.(1994); Maniatis et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989)』を参照されたい。突然変異はまた、市販のキット、例えば「QuikChange(商標)部位誘導型突然変異誘発キット」(Stratagene社)を使用して導入されることができる。ポリペプチドの機能に影響を与えないアミノ酸を置換することによって機能的に活性なバリアントポリペプチドを生成することは、当業者によって達成されうる。バリアントポリペプチドはまた、化学的に合成されてもよい。
【0055】
バリアントポリペプチドは、1つ以上の予測される非必須アミノ酸残基に保存的アミノ酸置換を有することができる。ポリペプチドの二次構造および疎水性親水性指標の性質が実質的に変化しないとペプチド化学の分野の当業者が予想することになるように、保存的置換は、アミノ酸が類似の特性を有する別のアミノ酸に置換される置換である。一般に、アミノ酸の以下の群は、保存的変化を表す:(1)アラニン、プロリン、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、セリン、スレオニン、(2)システイン、セリン、チロシン、スレオニン、(3)バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、アラニン、フェニルアラニン、(4)リシン、アルギニン、ヒスチジン、および(5)フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン。一つの実施形態において、ポリペプチドは、約1、2、3、4、5、10、20個以下の保存的アミノ酸置換を有する。
【0056】
ポリペプチドは、アミノ酸リンカー、アミノ酸スペーサー、シグナル配列、TMR停止伝達配列、膜貫通ドメイン、ならびにタンパク質精製に有用なリガンド(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、ヒスチジンタグ(例えば、約6、7、8、9、10個またはそれ以上のHis残基)、ブドウ球菌タンパク質Aなど)などの他のアミノ酸配列、またはそれらの組み合わせを含有することができる融合タンパク質でありうる。一実施形態において、ポリペプチドは、FLAG(例えば、DYKDDDDK、配列番号16)、HA(YPYDVPDYAC、配列番号9)、myc(EQKLISEEDLC、配列番号10)、V5(GKPIPNPLLGLDST、配列番号11)、E-タグ(GAPVPYPDPLEPR、配列番号12)、VSV-g(YTDIEMNRLGK、配列番号13)、6xHis(HHHHHHH、配列番号14)、HSV(QPELAPEDPEDC、配列番号15)などの1つ以上のエピトープタグを備える。モノクローナル抗体などの抗体は、エピトープタグに特異的に結合することができ、エピトープタグを備えるポリペプチドを精製するために使用されることができる。
【0057】
融合タンパク質は、互いに動作可能に連結された2つ以上の異なるアミノ酸配列を備えることができる。融合タンパク質構築物は、個々のポリペプチド断片を固定配列で一緒に結合することによって、有機化合物合成技術を使用して化学的に合成されることができる。融合タンパク質はまた、化学的に合成されることができる。融合タンパク質構築物はまた、in vitroで培養された遺伝子組み換え宿主細胞(大腸菌など)によって発現されることができ、これは、適切な配列でアミノ酸残基をコードする特定の組み換えDNA配列を有する導入発現ベクターを保有する。異種ポリペプチドは例えば、ポリペプチドのN末端またはC末端に融合されることができる。複数のポリペプチドが、融合タンパク質中に存在することができる。ポリペプチドの断片が、融合タンパク質中に存在することができる。融合タンパク質は例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたはそれ以上のPDX6、PDX7、TDX1779、TDX1780、PDX21、PDX39、PDX40、それらの断片、またはそれらの組み合わせを備えることができる。ポリペプチドは多量体形態でありうる。言い換えれば、ポリペプチドは、PDX6、PDX7、TDX1779、TDX1780、PDX21、PDX39、PDX40の2つ以上のコピー(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたはそれ以上)、それらの断片、またはそれらの組み合わせを備えることができる。ポリペプチドは例えば、配列番号1、2、3、4、5、6、もしくは7に対する約70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、もしくはそれ以上のポリペプチド、または配列番号1、2、3、4、5、6、もしくは7に対する約70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する少なくとも2つのポリペプチドの融合タンパク質を含むことができる。ポリペプチドは、融合タンパク質を構成する個々のタンパク質(すなわち、配列番号1、2、3、4、5、6、または7)の間に1つ以上のリンカーを含むことができる融合タンパク質でありうる。あるいは、融合タンパク質を構成する個々のタンパク質の間にリンカーが存在しなくてもよい。融合ポリペプチドは、アミノ酸リンカー、アミノ酸スペーサー、シグナル配列、TMR停止伝達配列、膜貫通ドメイン、ならびにタンパク質精製に有用なリガンド(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、ヒスチジンタグ、ブドウ球菌タンパク質Aなど)などの他のアミノ酸配列、またはそれらの組み合わせを含有することができる。
【0058】
融合タンパク質のまたさらなる構成要素は、分泌(シグナル)配列でありうる。これらの配列は、発現中に宿主細胞からの融合タンパク質の分泌を可能にすることができる。分泌(シグナル)配列は、産生される異種タンパク質がこうした配列を有する場合、または別の分泌タンパク質(例えば、t-PA)、または合成されたデノボに由来しうる場合、産生される異種タンパク質の配列でありうる。分泌(シグナル)配列をコードするポリヌクレオチド配列は、融合タンパク質DNA配列に動作可能に連結されることができ、すなわち2つの配列は、正しいリーディングフレームで結合され、新たに合成されたポリペプチドを宿主細胞の分泌経路に方向付けるように位置付けられる。分泌(シグナル)配列をコードするポリヌクレオチド配列は、対象のポリペプチドをコードするDNA配列に対して、一般的に5’に位置付けられるが、特定のシグナル配列は、対象のDNA配列のどこかよそに位置付けられてもよい(例えば、Welchら、米国特許第5,037,743号、Hollandら、米国特許第5,143,830号を参照されたい)。
【0059】
一実施形態において、本明細書に記載の通りのポリペプチドは、配列番号1、2、3、4、5、6、または7に記載のポリペプチドに特異的に結合する1つ以上の抗体またはその特異的結合断片を有する免疫複合体中に存在する。1つ以上の抗体またはその特異的結合断片は、抗R. rickettsii抗体またはその特異的結合断片でありうる。
【0060】
ポリペプチドは、凍結乾燥、水分除去、または乾燥されることができ、例えばフリーズドライされることができる。凍結乾燥ポリペプチドは、ポリペプチドの調製物を低温下に置いて、試料から水を除去することによって得られることができる。水分除去ポリペプチド組成物は、水を除去することによってポリペプチドの調製物を乾燥することによって得られることができる。乾燥ポリペプチド調製物は、空気乾燥された(例えば、凍結乾燥された)ポリペプチド調製物を指しうる。
【0061】
標識
本明細書に記載の1つ以上のポリペプチド(検出器ポリペプチドを含む)は、1つ以上の標識またはタグに共役されることができる。標識またはタグは、アッセイの所望の構成要素(例えば、抗体、ポリペプチド、または支持体)に直接または間接的に結合されることができる。例えば、ポリペプチドは、フルオロフォア、酵素、化学発光部分、放射性部分、有機染料、小分子、ポリペプチドまたはその機能的断片に共役されることができる。フルオロフォアの例としては、フィコエリスリン(PE)、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)、テトラメチルローダミン(TRITC)、BODIPY、テキサスレッド、ローダミン、AlexaFluor(登録商標)染料などの蛍光染料が挙げられる。蛍光染料はまた、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)染料または時間分解(TR)-FRET染料を含むことができる。フルオロフォア標識は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化緑色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質(CFP)などの蛍光タンパク質を含むことができる。酵素標識の例としては、アルカリホスファターゼを含むホスファターゼ、エステラーゼおよびグリコシダーゼなどの加水分解酵素、または酸化還元酵素、西洋ワサビペルオキシダーゼなどのペルオキシダーゼ、ならびに酵素結合免疫測定法(ELISA)で一般的に使用されるその他のものが挙げられる。3,3’5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)、3,3’-ジアミノベンジデン(DAB)、または2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルフォン酸)(ABTS)などの基質がHRPに適用される時に、着色(発色性)または光(化学発光性)信号が生成される。放射性部分標識は例えば、H、125I、35S、14C、または32Pとすることができる。小分子標識には例えば、アガロースビーズ、および蛍光標識磁気ビーズまたはバーコード磁気ビーズ(例えば、カリフォルニア州サンタ・フェ・スプリングスのApplied BioCode社から入手可能なバーコード磁気ビーズ)などの磁気ビーズなどの樹脂、Dynabeads(商標)、着色ガラスまたはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)のビーズ、ならびにコロイド状金などのナノ粒子が含まれる。ポリペプチドまたは機能的断片標識には例えば、ビオチン、ヘマグルチニン(HA)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、またはc-mycに対する親和性を有する、アビジン、ストレプトアビジン、またはニュートラアビジンが含まれる。
【0062】
標識またはタグの検出は、多くの異なる方法を使用して行われることができる。例えば、放射性標識は、シンチレーションカウンター、オートラジオグラフィーにおける写真フィルム、またはストレージ蛍光イメージングを使用して検出されることができる。標識が蛍光標識である場合、蛍光色素を適切な波長の光で励起することと、得られた蛍光を検出することとによって、標識を検出することができる。蛍光は、写真フィルムによって、電荷結合素子(CCD)または光電子増倍体などの電子検出器の使用によって、視覚的に検出されることができる。同様に、酵素標識は、酵素に適切な基質を提供することと、得られた反応生成物を検出することとによって検出されることができる。単純比色標識は、標識に関連付けられた色を観察することによって検出されることができる。フルオロフォアの対はアッセイで使用される時に、それらを容易に識別できるように、はっきり異なる放射パターン(波長)を有することができる。
【0063】
本明細書に記載の構成要素(例えば、ポリペプチド、抗体、それらの特異的結合断片)は標識を備えることができる一方で、例えば表面プラズモン共鳴、バイオレイヤー干渉法、グレーティング結合干渉法検出アッセイを含む、ラベルフリー検出のための多くのオプションが存在するため、標識はポリペプチド/抗体複合体の検出に必要ではない。
【0064】
支持体
一実施形態において、アッセイの構成要素(例えば、ポリペプチドもしくは抗体またはそれらの特異的結合断片)は、支持体に固定されることができる。支持体は、本明細書に記載の通りの1つ以上のポリペプチド、抗体、または特異的結合断片の付着に適切であるか、または適切であるように修正されることができる任意の材料である。支持体の例としては、ガラスおよび変性または機能化ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン、メチルスチレン、ポリウレタン、Teflon(登録商標)など)、常磁性材料、トリアゾル、カーボングラファイト、酸化チタン、ラテックスまたはセファロースなどの架橋デキストラン、セルロース多糖類、ナイロンまたはニトロセルロース、セラミックス、樹脂、ケイ素またはシリコンおよび変性シリコンを含むケイ素系材料、炭素金属、無機ガラス、光ファイバ束、ならびに様々な他のポリマーが挙げられる。一実施形態において、支持体は、マイクロタイターウェルプレート(例えば、96ウェル、384ウェル、または1536ウェルプレート)内に位置することができる。一実施形態において、支持体は、フローセルまたはフローセル装置(例えば、タンパク質チップ上のフローセル)内に位置することができる。支持体は、固体支持体とすることができる。
【0065】
一実施形態において、支持体は、磁気バーコード付きビーズなどのビーズ、ミクロスフェア、粒子、膜、チップ、スライド、ウェル、または試験管でありうる。ビーズは、マイクロスフェアまたは粒子を含み、これは、マイクロメートルまたはナノメートルの寸法の小さい個々の非平面粒子とすることができる。ビーズは球状または不規則でありうる。ビーズは多孔性でありうる。一実施形態において、支持体は、規則正しいパターンでのポリペプチドの固定化に適したパターン表面を備えることができる(例えば、タンパク質チップ)。
【0066】
一実施形態において、本明細書に記載の通りの1つ以上のポリペプチドは、リンカー分子を介して支持体に固定されることができる。1つ以上のポリペプチドは、任意の適切な方法論を使用して、支持体に共役されることができる。一実施形態において、1つ以上のポリペプチドは、共有結合試薬および非共有結合試薬を含む、結合試薬を使用して支持体に共役されている。共有結合試薬には、ポリペプチドを表面上に共有結合で固定するために使用されることができる任意の化学試薬または生物学的試薬が挙げられうる。共有結合試薬には例えば、EDCもしくはDCCなどのカルボジイミドなどのカルボキシル-アミン反応基、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルもしくはイミドエステルなどのアミン反応基、マレイミド、ハロアセチル、もしくはピリジルジスルフィドなどのスルフヒドリル反応性架橋剤、ヒドラジドもしくはアルコキシアミンなどのカルボニル反応性架橋基、アリールアジドもしくはジジリンなどの光反応性架橋剤、またはシュタウディンガー反応対などの化学選択性ライゲーション基が挙げられる。非共有結合固定化試薬には、ビオチンなどの親和性タグ、またはストレプトアビジンなどの捕捉試薬、または抗-His6抗体もしくは抗Myc抗体などの抗タグ抗体など、表面上に非共有結合でポリペプチドを固定するために使用されることができる任意の化学または生物学的試薬が挙げられうる。
【0067】
検出および診断の方法
一実施形態において、アッセイ方法は、ポリペプチドと抗体またはその特異的結合断片との間の複合体の形成に適した条件下で、1つ以上のポリペプチドに検査試料を接触させることを含むことができる。1つ以上のポリペプチドは例えば、本明細書に記載の通りの配列番号1、2、3、4、5、6、もしくは7、これらのポリペプチドの断片、またはバリアントに対する約70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を備えることができる。。ポリペプチドおよび抗体またはその特異的結合断片の複合体を検出することができる。一実施形態において、ポリペプチドおよび抗体または特異的結合断片の複合体はまた、1つ以上の標識またはタグを備えることができる。複合体が検出された場合、試料は抗Rickettsia rickettsii抗体を含有する。
【0068】
一実施形態において、方法は、対象においてRickettsia rickettsiiによって引き起こされる疾患を診断することを含む。本明細書に記載の通りの配列番号1、2、3、4、5、6、もしくは7、断片、またはバリアントに対する約70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を備える1つ以上のポリペプチドと、検査試料を接触させることができる。次いで、抗Rickettsia rickettsii抗体またはその特異的結合断片および1つ以上のポリペプチドの複合体が検出される。対象は、約14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、または2日未満の間、Rickettsiaに感染することができる。試料中の抗Rickettsia rickettsii抗体またはその特異的結合断片の量を決定することができる。試料中の複合体の量を対照試料または対照標準と比較することができ、対照試料または対照標準と比較した複合体のレベルの上昇は、R. rickettsiiによって引き起こされる疾患の指標である。複合体が検出される場合に、対象に治療を実施することができる。対象は、ヒトまたは、イヌ、ウマ、ウシ、もしくはネコなどの非ヒト哺乳類とすることができる。検査試料は例えば、血液、血漿、血清、リンパ液、または任意の他の体液試料とすることができる。
【0069】
一実施形態において、本明細書に記載の1つ以上のポリペプチドと、1つ以上の抗Rickettsia rickettsii抗体またはその特異的結合断片との間の特異的結合は、二次抗体またはその特異的結合断片を使用して検出される。一実施例において、二次抗体を使用して、特異的結合を検出することができる。例えば、二次抗体またはその特異的結合断片は、抗Rickettsia rickettsii抗体またはその特異的結合断片を結合する能力を有する。一実施形態において、二次抗体は、ウサギ抗イヌ抗体またはウサギ抗ヒト抗体などの抗種抗体である。一実施形態において、二次抗体は、ポリペプチド/抗Rickettsia rickettsii抗体/二次抗体複合体の検出に使用されることができる標識またはタグに、共有結合または非共有結合で結合される。一つの実施例において、二次抗体は、ビオチンまたは他の標識またはタグに共役されることができる。ストレプトアビジン蛍光色素コンジュゲートなどのストレプトアビジンコンジュゲート(ビオチン標識の場合)を使用して、ポリペプチド/抗Rickettsia rickettsii抗体/二次抗体複合体を検出することができる。
【0070】
一実施形態において、本明細書に記載の1つ以上のポリペプチドと、1つ以上の抗Rickettsia rickettsii抗体またはその特異的結合断片との間の特異的結合は、抗Rickettsia rickettsii抗体またはその特異的結合断片に特異的に結合する1つ以上の検出器ポリペプチドを使用して検出される。一実施例において、1つ以上の検出器ポリペプチドは、本明細書に記載の通りの配列番号1、2、3、4、5、6、もしくは7に記載のポリペプチド、またはその断片に対する約70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を備える。一実施形態において、1つ以上の検出器ポリペプチドは、ポリペプチド/抗Rickettsia rickettsii抗体/検出器ポリペプチド複合体の検出に使用されることができる標識またはタグに共有結合または非共有結合で結合される。一つの実施例において、検出器ポリペプチドは、ビオチンなどの標識またはタグに共役されることができる。ストレプトアビジン蛍光色素コンジュゲートなどのストレプトアビジンコンジュゲート(ビオチン標識の場合)を使用して、ポリペプチド/抗Rickettsia rickettsii抗体/検出器ポリペプチド複合体を検出することができる。
【0071】
本明細書に記載の1つ以上のポリペプチドと、1つ以上の抗体またはその特異的結合断片との間の特異的結合の検出は、任意の適切な方法を使用して完了されることができ、方法は例えば、競合免疫測定法、サンドイッチ免疫測定法、酵素結合免疫測定法(ELISA)、免疫組織化学アッセイ、免疫比濁法、粒子増強免疫比濁法、放射免疫測定(RIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、マルチプレックス免疫測定法、タンパク質/ペプチドアレイ免疫測定法、固相放射免疫測定法(SPRIA)、間接免疫蛍光アッセイ(IIF)、化学発光免疫測定法(CIA)、粒子ベースの多項目試験(PMAT)、ドットブロットアッセイ、またはウェスタンブロットアッセイなどの免疫測定法である。抗体および/または抗体/ポリペプチド複合体を検出するために使用されることができる他のアッセイ方法には例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)、等温滴定熱量測定法(ITC)、マイクロスケール熱泳動(MST)、バイオレイヤー干渉法、またはグレーティング結合干渉法が挙げられる。
【0072】
本明細書に記載の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、または抗体の特異的結合断片でありうる。抗体特異的結合断片は、完全抗体の抗原結合部位または可変領域を備える完全抗体の1つ以上の部分であり、この部分には抗体のFc領域の定常重鎖ドメインがない。抗原に結合する抗体断片の例としては、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、Fv断片が挙げられる。本明細書に記載の抗体は例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEを含む任意のクラスの抗体でありうる。
【0073】
「特異的に結合する」または「~に特異的」とは、第一の抗原、例えば本明細書に記載の通りの配列番号1~7に示されるポリペプチド、その断片、またはバリアントが、抗R. rickettsia抗体またはその特異的結合断片を認識し、この抗体または特異的結合断片に他の非特異的分子よりも大きい親和性で結合することを意味する。非特異的分子は、第一の抗原と共通エピトープを共有しない抗原である。一実施形態において、非特異的分子はR. rickettsiaポリペプチドではなく、R. rickettsiaに関連していない。一実施形態において、非特異的分子はRickettsia生物に由来しない。例えば、第一の抗原(例えば、R. rickettsia)に対して産生され、それが非特異的抗原に対してよりも効率的に結合する抗体は、第一の抗原に特異的に結合するとして説明されることができる。ポリペプチドは、10-6M以下の結合親和性(K)で結合する時に、抗R. rickettsia抗体または特異的結合断片に特異的に結合する。一実施形態において、ポリペプチドは、2×10-6M以下の親和性(K)で結合する時に、抗R. rickettsia抗体または特異的結合断片に特異的に結合する。一実施形態において、ポリペプチドは、少なくとも10-6M、10-7M、10-8M、10-9M以下の親和性(K)で結合する時に、抗R. rickettsia抗体または特異的結合断片に特異的に結合する。特定の実施形態において、親和性は、表面プラズモン共鳴またはKinExAアッセイによって測定される。一実施形態において、本方法は、Rickettsia rickettsiiを特異的に検出し、R. conorii、R. africae、R. japonica、R. phillipii、R. parkeri、R. massiliae、R. felis、R. typhi、R. prowazekii、R. belliiまたはそれらの組み合わせなどの他のRickettsia種を検出しない。
【0074】
キット
キットは、本明細書に記載のポリペプチドのうちの1つ以上を含むことができる。キットはまた、検出のためのタグ、標識、またはコンジュゲートを含むことができる。1つ以上のポリペプチドは、支持体上に共有結合的にまたは非共有結合的に固定されることができる。
【0075】
例えば、キットの標識は、フルオロフォア、酵素、化学発光部分、放射性部分、有機染料、小分子、ポリペプチドまたはその機能的断片を含むことができる。一部の実施形態において、キットの標識はフィコエリスリンを含む。一部の実施形態において、キットの標識はフルオレセインイソチオシアナートを含む。一部の実施形態において、標識は二次抗体または検出器ポリペプチドに共役されることができる。
【0076】
キットはポジティブコントロールを含むことができる。一部の実施形態において、ポジティブコントロールは、検出可能な量の抗R. rickettsia抗体を含有する試料でありうる。一実施形態において、ポジティブコントロールは、抗R. rickettsia抗体を有する罹患した対象から取得されうる。一実施形態において、ポジティブコントロールは、in vitroで合成された、またはその他の方法で得られた抗R. rickettsia抗体を含むことができる。一実施形態において、キットは、ネガティブコントロールを含むことができる。ネガティブコントロールは、検出可能な量の抗R. rickettsia抗体を含有しない試料でありうる。一部の実施形態において、ネガティブコントロールは、健康な対照個体から取得されてもよく、またはin vitroで合成されてもよい。例えば、ネガティブコントロールは、水または緩衝液を含むことができる。
【0077】
一部の実施形態において、キットは、試料中の抗R.rickettsia抗体の量を決定するための標準曲線を含むことができる。抗Rickettsia rickettsia抗体を使用して、アッセイの標準曲線を作成することができる。標準曲線を使用して、試料中の抗Rickettsia rickettsia抗体の濃度を決定することができる。標準曲線は、「既知」の試料中の抗Rickettsia rickettsia抗体の濃度(すなわち、既知の濃度の標準)に、測定された量を関連付けることによって取得される。これらの標準は、試料中の抗R. rickettsia抗体の未知の濃度を決定するための参照を提供する。標準の量は、「未知」または「検査」試料濃度中に見いだされることが予想される濃度の全範囲に及びうる。
【0078】
キットは、抗Rickettsia rickettsii抗体またはその特異的結合断片への1つ以上のポリペプチドの結合を促進する、1つ以上のアッセイ試薬をさらに含むことができる。アッセイ試薬は、キットの意図された目的を実行するために有用な物質、混合物、材料、または成分である。試薬には例えば、結合試薬、緩衝液、標準、ポジティブコントロール、標識、試料採取道具、説明書などが挙げられうる。
【0079】
キットは、洗浄緩衝液などの1つ以上の緩衝液を含むことができる。洗浄緩衝液には例えば、トリス緩衝生理食塩水(TBS)などのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)系緩衝液、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などのリン酸緩衝液が挙げられうる。洗浄緩衝液は例えば、イオン性または非イオン性洗剤などの洗剤から構成されうる。一部の実施形態において、洗浄緩衝液は、約0.001、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08%またはそれ以上でTween(商標)20(ポリソルベート)を含む、約pH7.0、7.2、7.4、7.6、7.8のPBS緩衝液でありうる。
【0080】
キットは希釈緩衝液を含むことができる。希釈緩衝液には例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)などの担体タンパク質、Tween(登録商標)20(ポリソルベート)などの洗剤が挙げられる。
【0081】
キットは、検出またはアッセイ緩衝液を含むことができる。検出またはアッセイ緩衝液は例えば、比色検出もしくはアッセイ緩衝液、蛍光検出もしくはアッセイ緩衝液、または化学発光検出もしくはアッセイ緩衝液でありうる。比色検出またはアッセイ緩衝液には例えば、PNPP(p-ニトロフェニルホスフェート)、ABTS(2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルフォン酸))、またはOPD(o-フェニレンジアミン)が挙げられる。蛍光検出またはアッセイ緩衝液には、QuantaBlu(登録商標)またはQuantaRed(登録商標)(Thermo Scientific社、マサチューセッツ州ウォルサム)が含まれる。化学発光検出またはアッセイ緩衝液は、ルミノールまたはルシフェリンを含むことができる。検出またはアッセイ緩衝液はまた、Hなどのトリガ、およびイソルミノールコンジュゲートなどのトレーサーを含むことができる。
【0082】
キットは、停止液を含むことができる。停止液は、検出試薬および対応するアッセイシグナルのさらなる進展を終了または遅延させることができる。停止液は例えば、低pH緩衝剤(例えば、グリシン-緩衝液、pH2.0)、カオトロピック試薬(例えば、塩化グアニジニウム、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))、還元剤(例えば、ジチオスレイトール、β-メルカプトエタノール)などが挙げられうる。
【0083】
提供されるキットは、採取管、カラム、スワブ、シリンジ、針など、生体試料を収集するための道具を含むことができる。キットは、キットの構成要素を使用するための説明書を含むことができる。説明書は、プロトコルおよび分析技術に関する詳細を提供することができる。
【0084】
キットの構成要素は、任意の物理的状態でありうる。例えば、構成要素の1つ以上は、凍結乾燥されている、または水溶液中にある、または凍結されていることができる。
【0085】
キットは、特定のアッセイ技術用に設計されうる。例えばキットは、免疫測定キット、競合免疫測定キット、サンドイッチ免疫測定キット、酵素結合免疫測定(ELISA)キット、免疫組織化学アッセイキット、免疫比濁アッセイキット、粒子増強免疫比濁アッセイキット、放射性免疫測定(RIA)キット、蛍光免疫測定(FIA)キット、マルチプレックス免疫測定キット、タンパク質/ペプチドアレイ免疫測定キット、固相放射免疫測定(SPRIA)キット、間接免疫蛍光アッセイ(IIF)キット、化学発光免疫測定(CIA)キット、粒子ベースの多項目試験(PMAT)キット、ドットブロットアッセイキット、またはウェスタンブロットアッセイキット、表面プラズモン共鳴(SPR)キット、等温滴定熱量測定(ITC)キット、マイクロスケール熱泳動(MST)キット、バイオレイヤー干渉法キット、またはグレーティング結合干渉法キット。一実施形態において、ELISAキットは例えば、洗浄緩衝液、試料希釈剤、二次抗体、二次抗体-酵素コンジュゲート、検出器ポリペプチド、標識化検出器ポリペプチド、検出試薬、停止液を含むことができる。一実施形態において、ドットブロットキットは例えば、洗浄緩衝液、試料希釈剤、二次抗体-酵素コンジュゲート、検出試薬、停止液を含むことができる。一部の実施形態において、化学発光免疫測定キットは、洗浄緩衝液、試料希釈剤、トレーサー(例えば、イソルミノールコンジュゲート)、トリガ(例えば、H)を含むことができる。一実施形態において、マルチプレックスキットは例えば、洗浄緩衝液、試料希釈剤、二次抗体-酵素コンジュゲートを含むことができる。
【0086】
治療方法
検出または診断されると、RMSFは例えば、抗生物質、タンパク質もしくはペプチド薬、核酸系薬剤、抗炎症薬、他の薬剤、免疫調節治療、代替療法、またはそれらの組み合わせで治療されうる。
【0087】
例えば、RMSFは多数の抗生物質で治療されることができ、抗生物質には例えば、ドキシサイクリン(モノドックス、ビブラマイシン)、テトラサイクリン(オキシテトラサイクリン)、アジスロマイシン、クロラムフェニコール(クロロミセチン)、トロバフロキサシン(トロバン)、ミノサイクリン誘導体(例えば、US20160030452を参照)、ベータラクタマーゼ阻害剤(例えば、US20130023512を参照)などがある。ドキシサイクリンは、成人に約50、100、150、200mgを、6時間ごと、12時間ごと、1日1回、または1日おきに1回の頻度で、2、4、6、8、10、12、14日またはそれ以上の間、投与されることができる。45kg未満の子供には、約1.0、2.0、2.2、3.0、4.0mg/体重kgまたはそれ以上を、6時間ごと、12時間ごと、1日1回、または1日おきに1回の頻度で、2、4、6、8、10、12、14日またはそれ以上の間、投与されることができる。
【0088】
RMSF治療に適したタンパク質またはペプチド薬には例えば、単離キメラ外表面タンパク質A(OspA)(例えば、US20180296656、US20160333056を参照)、γ-AAペプチド(例えば、US20150274782を参照)、フラゲリンに特異的なモノクローナル抗体(例えば、US20100239583を参照)、非炎症性筋骨格系疼痛または骨関節炎疼痛を治療するためのペプチド化合物(例えば、US20080280835を参照)、異種組み換えSca5/OmpBタンパク質系ワクチンが含まれる。
【0089】
RMSFは、核酸系薬剤、その誘導体(例えば、US2012002104、US20090324584を参照)、脂質修飾核酸(例えば、US20070280929を参照)で治療されることができる。
【0090】
RMSFは、抗炎症剤、例えばセルロース硫酸ポリマーまたはキトサン(負電荷)ポリマー(例えば、US20090298792を参照)、アラキドン酸カスケードを妨害する血小板活性化因子(PAF)阻害剤および抗酸化物質(例えば、US20040022879を参照)、抗炎症性または免疫抑制用量のプレドニゾロンまたは他のステロイドで治療されることができる。
【0091】
RMSFは例えば、エナンチオマー的に純粋な4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンまたは3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンなどの免疫調節化合物(例えば、US20110184025を参照)を単独で、または抗生物質、機能的免疫刺激タンパク質CD40L、構成的活性型TLR4(caTLR4)、機能的免疫刺激タンパク質CD70(例えば、US20170000881を参照)、および/または経静脈的免疫グロブリン療法と併用投与することで治療されることができる。
【0092】
RMSFはまた、グリシン、ピルビン酸、および/またはコハク酸を含む銅(I)複合体の医薬品および/または栄養補助食品(例えば、US20180071336を参照)、イソチオシアネート機能性界面活性剤(例えば、US2018/0311202を参照)、4-(イソキサゾリニル)-ベンズアミド(例えば、置換4-(5-(ハロメチル)-5-フェニル-イソキサゾリン-3-イル)-ベンズアミド)および4-(イソキサゾリニル)-ベンゾチオアミド(例えば、置換4-(5-(ハロメチル)-5-フェニル-イソキサゾリン-3-イル)-ベンゾチオアミド)などの駆虫薬として使用されるイソキサゾリン組成物(例えば、US20180155301を参照)、ピラゾロ[1,5-a][1,3,5]トリアジン誘導体およびその薬学的に許容可能な塩(例えば、US20150111873を参照)、遊離塩素を含む電解酸性水を局所的に投与すること(例えば、US20130259955を参照)、プロテアソーム阻害剤(例えば、US20110172285を参照)、塩酸塩(S)-3-アミノメチル-7-(3-ヒドロキシ-プロポキシ)-3H-ベンゾ[c][1,2]オキサボロル-1-オールの多形(例えば、US20110152217を参照)、ピリジニルアミン(例えば、US20090196912を参照)、複素二環式化合物(4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン-3-カルボン酸アミド、4,7-ジヒドロ-5H-チエノ[2,3-c]チオピラン3-カルボン酸アミド、4,7-ジヒドロ-5H-チエノ[2,3-c]ピラン-3-カルボン酸アミド、またはベンゾ[b]チオフェン-3-カルボン酸アミド)および薬学的に許容可能な塩(例えば、US20070275962を参照)、ピラジン誘導体(例えば、US20080194574を参照)、トリプシン様プロテアーゼの芳香族アミジン阻害剤(ビス(5-アミジノ-2-ベンズイミダゾリル)-メタン、1,2-ビス(5-アミジノ2-ベンジミダゾリル)エタン、1,5-ビス(5-アミジノ-2-ベンズイミダゾリル)ペンタン、5-アミジノインドール)、および/またはミトコンドリア機能に関連する疾患および状態を治療するためのATPシンターゼ阻害剤(例えば、US20090275099を参照)を網羅する多数の追加薬剤で治療されることができる。
【0093】
RMSFはまた、US20140256826に記載の通りの抗菌化合物、または抗菌剤および抗菌関連化合物の高浸透性組成物(HPC)または高浸透性プロドラッグ(HPP)の組成物(例えば、US20130018029を参照)で治療されることができる。
【0094】
RMSFはまた、例えば組み換え大腸菌の超音波溶解物、抗TNF-アルファ阻害剤、および/または核因子カッパBで治療されることができる。
【0095】
RMSFの治療のための代替療法には、水分摂取の増加、グルコースおよび糖の摂取の低減、消化を遅らせる高脂肪食品の低減、少量の食事、マイルドなまたは刺激のない食事、コンブチャまたは味噌汁などのプロバイオティクス製品、マグネシウム、カリウム、カルシウム、クロレラ、スピルリナ、精油混合物(例えば、ペパーミント油、イトスギ油、ココナッツ油)、ショウガ、カモミール茶、ビタミンB6、レモン、少なくとも1つの抗生物質と併用投与されるフェーノルに富むメープルシロップ抽出物(例えば、US20160339071を参照)、前額部または首後部への冷湿布、および/または食後に真っ直ぐに座ることを含む。
【0096】
組成物および方法は以下でより具体的に説明され、本明細書に記載の実施例は、多数の修正および変形が当業者に明らかとなるため、単に例示的なものであることが意図される。本明細書で使用される用語は概して、本明細書に記載の組成物および方法の文脈内で、および各用語が使用される特定の文脈において、当該技術分野における通常の意味を有する。一部の用語は、組成物および方法の説明に関して、実施者に追加のガイダンスを提供するために、本明細書でより具体的に定義されている。
【0097】
本明細書で使用される「および/または」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上のありとあらゆる組み合わせを含む。本明細書の説明において、および以下の特許請求の範囲全体を通して使用される「a」、「an」、「the」の意味は、文脈によって別途明確でない限り、単数参照のみならず複数参照も含む。数値に関連する「約」という用語は、値が5%上下に変動することを意味する。例えば、約100という値は、95~105(または95~105の間の任意の値)を意味する。
【0098】
本明細書の任意の場所に言及されるすべての特許、特許出願、その他の科学的または技術的文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に例示的に記載された実施形態は、本明細書に具体的に、または非具体的に開示されている任意の要素(複数可)、制限(複数可)の不在下で、適切に実施されることができる。それ故に、例えば本明細書のそれぞれの例において、「含む」、「本質的に~から成る」、「~から成る」という用語のいずれも、その通常の意味を保持しながら、他の2つの用語のいずれかで置き換えられることができる。用いられた用語および表現は、説明の用語として使用され、限定する用語ではなく、またこうした用語および表現の使用において、示され、記載された特徴またはその一部のいかなる同等物も排除する意図はなく、様々な修正が特許請求の範囲内で可能であることが認識される。それ故に、本方法および組成物は、実施形態および随意の特徴によって具体的に開示されているものの、本明細書に開示された概念の修正および変形が当業者によって行われる可能性があることと、こうした修正および変形は、説明および添付の特許請求の範囲によって定義される通りの組成物および方法の範囲内であると見なされることとが理解されよう。
【0099】
本明細書に記載の任意の単一用語、単一要素、単一語句、用語群、語句群、または要素群はそれぞれ、特許請求の範囲から具体的に除外されうる。
【0100】
例えば、温度範囲、時間範囲、組成物、または濃度範囲などの範囲が本明細書で与えられている場合は常に、すべての中間範囲および部分範囲、ならびに与えられた範囲に含まれるすべての個々の値は、本開示に含まれることが意図される。本明細書の説明に含まれる、ある範囲または部分範囲中の任意の部分範囲または個々の値は、本明細書の態様から除外されうることが理解されよう。本明細書の説明に含まれる任意の要素または工程は、請求される組成物または方法から除外されうることが理解されよう。
【0101】
加えて、組成物および方法の特徴または態様が、マーカッシュ群または代替物の他のグループ分けに関して記載される場合、当業者は、その組成物および方法もまた、マーカッシュ群または他の群の任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関して記載されることを認識するであろう。
【0102】
以下は、例示のみを目的として提供されていて、大まかに上述された実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。
【0103】
実施例
実施例1:SCA2ポリペプチド
細胞外タンパク質SCA2のオートシャペロンドメイン(AC)は、R. rickettsii株にのみ存在する一続きのアミノ酸を含むことが見いだされた。(図3のボックスで囲まれた)固有領域全体をPDX6と命名した。わずかに短縮されたボックスで囲まれた領域(図3)をPDX7と命名した。
【0104】
2つの組み換え融合タンパク質は、PDX6の3つの反復(「TDX1779」)またはPDX6の5つの反復(「TDX1780」)の融合によって作製した。図3を参照されたい。この実施例において、TDX1779およびTDX1780は、ポリペプチドのカルボキシ末端にエピトープタグ、ポリペプチドのn末端に分泌(シグナル)配列を追加的に備える。PDX7、TDX1779、TDX1780を、バーコード付き磁気ビーズ(BMB)に被覆した。SM(PEG)12リンカー(ThermoFisher社)を用いて、PDX7をアミノ活性化ビーズ上に連結した。EDACリンカーを用いて、TDX1779とTDX1780をカルボキシ活性化ビーズ上に連結した。PDX、TDX1779、TDX1780に連結されたビーズを、間接的形式と直接的形式の両方に対する反応性について試験した。
【0105】
PDX7、TDX1779、TDX1780を、間接的(抗種抗体)形式を使用して、マルチプレックスにおける反応性について試験した。間接的な方法論の図を図4に示す。簡潔に述べると、PDX7、TDX1779、またはTDX1780(例えば、感染したイヌ由来)に存在する1つ以上のエピトープに特異的に結合する一次抗体は、PDX7、TDX1779、TDX1780ペプチド被覆ビーズに特異的に結合することができる。標識された(例えば、ビオチン化)二次抗体(例えば、抗種抗体、この場合はウサギ抗イヌ抗体)は、一次抗体に特異的に結合する。ストレプトアビジン-フィコエリスリンを使用して、ビーズ-ペプチド-一次抗体-標識化二次抗体複合体を検出することができる。
【0106】
PDX7をアミノ活性化ビーズに共役し、R. rickettsiaに実験的に感染させたイヌからのプール血清でインキュベートした。ビオチン化ウサギ抗イヌIgGを使用して抗体結合の検出を報告した。結果を図5に示す(PIDは感染後の日を意味する)。PDX7は、感染後7日目までに感染を検出することができた。
【0107】
TDX1779およびTDX1780をカルボキシビーズに結合し、R. rickettsiiに実験的に感染させたイヌからの血清に対してインキュベートした。ビオチン化ウサギ抗イヌIgGを使用して抗体結合の検出を報告した。図6は、間接的抗種形式の実験血清に対するTDX1779および1780の反応性を示す。TDX1779およびTDX1780は感染から約7日後に、試験されたイヌに応じて様々な程度で、抗体を検出することができた。
【0108】
また、PDX7、TDX1779、TDX1780を、直接的(例えば、ビオチン化分析物)形式で反応性について試験した。直接的な方法論の図を図7に示す。簡潔に述べると、PDX7、TDX1779、またはTDX1780(例えば、感染したイヌ由来)に存在する1つ以上のエピトープに特異的に結合する一次抗体は、PDX7、TDX1779、TDX1780ペプチド被覆ビーズに特異的に結合することができる。検出器ポリペプチド(例えば、PDX7、TDX1779、TDX1780ポリペプチド)はまた、一次抗体に特異的に結合することができる。検出器ポリペプチドは例えば、ビオチンで標識されることができる。ストレプトアビジン-フィコエリスリンを使用して、ビーズ-ペプチド-一次抗体-検出器複合体を検出することができる。
【0109】
PDX7ペプチドをアミノビーズに共役し、ビオチン化ペプチドを検出器ポリペプチドとして使用する直接アッセイ形式を使用して、米国からの574個の試料に対してスクリーニングした。このアプローチを使用して、試験された574個のうち、8個の陽性サンプルを特定した(陽性1.4%、陰性98.6%)。陽性の確認のためにIDEXX RMSF IFAで、8個の陽性をさらに評価した。マルチプレックスによるPDX7陽性試料8個のうち6個が、IFAによって陽性であることが確認され、抗Rickettsia rickettsii抗体を捕捉するためのPDX7ペプチドの強い感受性が示唆された。図8は、陽性試料についてIFAとの75%の一致(8個中6個陽性)、および陰性試料との80%の一致(10個中8個陽性)を示す。
【0110】
PDX7、TDX1779、TDX1780被覆ビーズを、サクラメントのIDEXX Reference LabからのRMSF陰性(neg)または陽性(pos)血清に対してインキュベートし、ビオチン化TDX1779をコンジュゲートとして使用して検出した。このデータは、推定陰性血清がこれらのマーカーで陰性であり、推定陽性血清が反応することを示唆する。マーカーはR. rickettsii感染に対してはるかに高い特異性を有すると予測され、IFAはRickettsia種を区別することができないため、推定陽性のすべてが反応すると予想されないことに注目すべきである。表1を参照されたい。
【0111】
【表2】
【0112】
PDX6、PDX7、TDX1779、TDX1780(それぞれ配列番号1~4)を、R. rickettsiiに対する抗体に特異的に結合する能力について試験した。PDX6、PDX7、TDX1779、またはTDX1780(それぞれ配列番号1~4)で被覆したビーズを、イヌ血清275個の各々とインキュベートし、標識としてストレプトアビジン-フィコエリスリンを使用して、ビオチン化TDX1779(配列番号3)をコンジュゲートとして使用し検出した。275の血清は、他のダニ媒介病原体の検査結果(43の血清はそれぞれ次の通り、幾つかのダニ媒介病原体のうちの1つに対する抗体について陽性であった:18の血清は、Anaplasma ssp.に対する抗体について陽性であった。11の血清は、Ehrlichia canisまたはEhrlichia ewingiiに対する抗体について陽性であった。14の血清は、Borrelia burgdorferiに対する抗体について陽性であった)と、米国中の地理的分布とに基づいて選択された。43の陽性血清のいずれも、TDX1779およびTDX1780(特異性100%)(それぞれ配列番号3~4)で陽性結果をもたらさなかった。43の陽性血清のうちの1つ(すなわち、Anaplasma ssp.に対する抗体について陽性の血清のうちの1つ)は、PDX6およびPDX7(少なくとも97.7%の特異性)(それぞれ配列番号1~2)で陽性の結果をもたらした。このデータは、PDX6、PDX7、TDX1779、TDX1780(それぞれ配列番号1~4)がそれぞれ、高い特異性でR. rickettsiiに対する患者抗体に結合することを示す。このデータはまた、R. rickettsiiに対する抗体の非常に特異的なアッセイが、PDX6、PDX7、TDX1779、TDX1780(それぞれ配列番号1~4)を用いて構築されることができることを示している。
【0113】
実施例2
R. rickettsiiに実験的に感染させたイヌ由来の血清を、ABCマルチプレックスプラットフォーム上のPDX21ポリペプチド(配列番号5)に対する反応性について、ビオチン化ウサギ抗イヌを検出器として用いて評価した。図9において、個々のイヌ1~6(左から右)は、垂直の黒い線で分けられている。実験的に感染させた各イヌについて、免疫前血清「Pre」を、感染後4、7、18、28、32および39日目の血清(これらはイヌの後の数字で示されている)と比較した。各イヌは、様々なベースライン反応性を示したが、6匹すべてのイヌは、それぞれの免疫前血清と比較して、感染後7~18日目からPDX21に対する反応性の増加を示した。感染後28~32日目までに、PDX21に対する反応性がピークに達し、その後、定常状態になるかまたは低下し始めた。図9の右端に、陰性対照および陽性対照が示されている。NCは試料としてのBSA/PBS、FBSは試料としてのウシ胎児血清、ポジティブコントロール(PC)はNAR0085、1088、1349で、確認されたRMSF陽性試料であり、PDX21に対して強い反応性を示し、R. rickettsiiに自然に感染したおよび実験的に感染させたイヌ血清からの血清に対するVUTタンパク質由来PDX21ペプチドの反応性を浮き彫りにしている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
2024500758000001.app
【国際調査報告】