(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】凝集抑制のためのAβ変異体の伝達
(51)【国際特許分類】
A61K 35/76 20150101AFI20231227BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20231227BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20231227BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20231227BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20231227BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231227BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20231227BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20231227BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20231227BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20231227BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231227BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231227BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231227BHJP
A61K 31/445 20060101ALI20231227BHJP
A61K 31/27 20060101ALI20231227BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20231227BHJP
A61K 31/13 20060101ALI20231227BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20231227BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20231227BHJP
【FI】
A61K35/76
C12N15/12 ZNA
C12N15/86 Z
C12N15/85 Z
C12N15/864 100Z
A61P25/00
A61P25/28
A61P25/16
A61K9/127
A61K9/51
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K39/395 N
A61K31/445
A61K31/27
A61K31/55
A61K31/13
A61K38/16
A61K35/761
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537058
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 US2021072944
(87)【国際公開番号】W WO2022133461
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】391058060
【氏名又は名称】ベイラー カレッジ オブ メディスン
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR COLLEGE OF MEDICINE
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】パク,キュン‐ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ジャンコウスキー,ジョアンナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB13
4C076CC01
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA19
4C084MA24
4C084MA38
4C084MA66
4C084NA13
4C084ZA02
4C084ZA16
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
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4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA24
4C086MA38
4C086MA66
4C086NA13
4C086ZA02
4C086ZA16
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA24
4C087MA38
4C087MA66
4C087NA13
4C087ZA02
4C087ZA16
4C087ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA29
4C206HA24
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA44
4C206MA58
4C206MA86
4C206NA13
4C206ZA02
4C206ZA16
4C206ZC75
(57)【要約】
本開示内容の局面は、神経退行性障害、疾患または病態を有する対象体を治療するための組成物および方法に関するものである。特定の局面は、Aβペプチド変異体をコードするベクターを含む治療学的有効量の組成物を用いる治療に関するものである。更なる局面は、少なくとも一つの生体内の内因性Aβペプチドを、Aβペプチド変異体をコードするベクターから治療学的有効量の発現されたAβペプチド変異体と接触させる(前記ベクターは組成物に存在する)ことで生体内の内因性Aβペプチドの凝集を抑制する方法に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミロイドベータ(Aβ)ペプチド変異体をコードするベクターを含む治療学的有効量の組成物を対象体に投与する段階を含む、対象体から神経退行性疾患、障害または病態を治療または予防する方法であって、前記Aβペプチド変異体は、次と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、方法。
、またはその断片または機能的誘導体。
【請求項2】
タンパク質ミスフォールディング、内因性Aβペプチドの凝集、アミロイドプラークの形成、神経炎症、神経退行性、ニューロン損失またはシナプス損失を予防または減少させ;タウのレベル(tau level)、タウのリン酸化またはリン酸化されたタウのレベルを減少させ;タウのシーディングまたは内因性Aβペプチドのシーディングを鈍化させ/鈍化させるか、または認知改善を促進する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
内因性Aβペプチドオリゴマー、プロトフィブリル、フィブリルまたはプラークの形成を予防または減少させる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
内因性Aβペプチド凝集体の細胞毒性を予防または減少させる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一つの生体内の内因性Aβペプチドを、Aβペプチド変異体をコードするベクターから治療学的有効量の発現されたAβペプチド変異体と接触させる段階を含む、生体内の内因性Aβペプチドの凝集を抑制する方法であって、前記ベクターは、組成物に存在し、Aβペプチド変異体は、次と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、方法。
、またはその断片または機能的誘導体。
【請求項6】
内因性Aβペプチドの凝集を抑制することは、対象体から神経退行性疾患、障害または病態を治療または予防する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
内因性Aβペプチドの凝集を抑制することは、Aβペプチドオリゴマー、プロトフィブリル、フィブリルまたはプラークの形成を予防または減少させる、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
内因性Aβペプチドの凝集を抑制することは、内因性Aβペプチド凝集体の細胞毒性を予防または減少させる、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
神経退行性疾患、障害または病態がある対象体を診断する段階と、
神経退行性疾患、障害または病態の症状を有すると対象体を診断する段階と、または
神経退行性疾患、障害または病態を有する危険がある対象体を診断する段階とをさらに含む、請求項1、2、3、4、6、7または8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
神経退行性疾患、障害または病態は、アルツハイマー病、パーキンソン病、パーキンソン病認知症、血管性認知症、脳アミロイド血管症、レビー小体型認知症、慢性外傷性脳症、ダウン症候群、および/または病的老化である、請求項1、2、3、4、6、7、8または9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
神経退行性疾患、障害または病態がアルツハイマー病である、請求項1、2、3、4、6、7、8、9または10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
Aβペプチド変異体が配列番号:3、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
Aβペプチド変異体が配列番号:3、またはその断片または機能的誘導体を含む、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
配列番号:3と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するか、または配列番号:3を含むAβペプチド変異体がN-末端切断を含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
N-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22つのアミノ酸切断を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
配列番号:3と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するか、または配列番号:3を含むAβペプチド変異体がC-末端切断を含む、請求項12乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
C-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個のアミノ酸切断を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
配列番号:3の断片または機能的誘導体は、KLVDFAE(配列番号:10)と少なくとも85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項12乃至17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
Aβペプチド変異体が配列番号:4、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
Aβペプチド変異体が配列番号:4を含む、請求項1、2、3、4、5、6、7または19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
配列番号:4と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するか、または配列番号:4を含むAβペプチド変異体がN-末端切断を含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
N-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22つのアミノ酸切断を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
配列番号:4と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するか、または配列番号:4を含むAβペプチド変異体がC-末端切断を含む、請求項19乃至22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
C-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個のアミノ酸切断を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
配列番号:4の断片または機能的誘導体は、KLVFPAE(配列番号:11)と少なくとも85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項19乃至24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
Aβペプチド変異体が配列番号:5、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
Aβペプチド変異体が配列番号:5を含む、請求項1、2、3、4、5、6、7または26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
配列番号:5と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するか、または配列番号:5を含むAβペプチド変異体がN-末端切断を含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
N-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22つのアミノ酸切断を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
配列番号:5と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するか、または配列番号:5を含むAβペプチド変異体がC-末端切断を含む、請求項26乃至29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
C-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個のアミノ酸切断を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
配列番号:5の断片または機能的誘導体は、KLVDFAE(配列番号:10)と少なくとも85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項26乃至31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
Aβペプチド変異体が配列番号:6、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
Aβペプチド変異体が配列番号:6を含む、請求項1、2、3、4、5、6、7または33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
配列番号:6と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するか、または配列番号:6を含むAβペプチド変異体がN-末端切断を含む、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
N-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22つのアミノ酸切断を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
配列番号:6と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するか、または配列番号:6を含むAβペプチド変異体がC-末端切断を含む、請求項33乃至36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
C-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個のアミノ酸切断を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
配列番号:6の断片または機能的誘導体は、KLVPFAE(配列番号:12)と少なくとも85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項33乃至38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
ベクターが、Aβペプチド変異体をコードするミニ遺伝子をコードする、請求項1乃至39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
Aβペプチド変異体をコードするミニ遺伝子は、アミロイド前駆体タンパク質の切断されたベータ-カルボキシル-末端断片(β-CTF)を含むアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列をコードする、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
切断されたβ-CTFが信号ペプチド配列に融合される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
信号ペプチド配列がガウシアルシフェラーゼ信号ペプチドを含むアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列、またはマウス免疫グロブリン重鎖信号ペプチドを含むアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
切断されたβ-CTFがAβペプチド変異体配列、膜貫通ドメイン配列および細胞質配列を含む、請求項41乃至43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
膜貫通ドメイン配列が、配列番号:9、配列番号:18、配列番号:86または配列番号:87を含むアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
細胞質配列が膜固定(membrane anchoring)、ガンマ-セクレターゼ切断の促進、および/またはAβペプチド変異体の細胞外放出のためのアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含む、請求項41乃至45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
細胞質配列が2つのリジン残基を含むアミノ酸配列に相応する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
細胞質配列が3つのリジン残基を含むアミノ酸配列に相応する、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
細胞質配列は、5’から3’方向にアルギニン残基に引き続き、2つのリジン残基を含むアミノ酸配列に相応する、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
ミニ遺伝子は、配列番号:8、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37または配列番号:38と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項40乃至49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
ミニ遺伝子は、配列番号:8、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37または配列番号:38を含む、請求項40乃至50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
ミニ遺伝子が配列番号:66、配列番号:67、配列番号:68、配列番号:69または配列番号:70と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項40乃至49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
ミニ遺伝子は、配列番号:66、配列番号:67、配列番号:68、配列番号:69または配列番号:70を含む、請求項40乃至50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
ミニ遺伝子が配列番号:71、配列番号:72、配列番号:73、配列番号:74または配列番号:75と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項40乃至49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
ミニ遺伝子は、配列番号:71、配列番号:72、配列番号:73、配列番号:74または配列番号:75を含む、請求項40乃至50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
ミニ遺伝子が配列番号:76、配列番号:77、配列番号:78、配列番号:79または配列番号:80と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項40乃至49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
ミニ遺伝子は、配列番号:76、配列番号:77、配列番号:78、配列番号:79または配列番号:80を含む、請求項40乃至50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
ミニ遺伝子の発現が構成的なプロモーターによって調節される、請求項40乃至57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
ミニ遺伝子の発現が組織-特異的または細胞-特異的プロモーターによって調節される、請求項40乃至58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
細胞-特異的プロモーターがニューロン-特異的プロモーターである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
ニューロン-特異的プロモーターがヒトシナプシンIプロモーターである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
組織-特異的プロモーターが脈絡叢-特異的プロモーターである、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
組織-特異的プロモーターがPrlr、Spint2、またはF5である、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
ベクターがウイルスベクターまたは非-ウイルスベクターである、請求項1乃至63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
ベクターがアデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルスまたはアデノ-関連ウイルスベクターである、請求項1乃至64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
ベクターがAAVベクターである、請求項1乃至65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
ベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV2.5、AAvDJ、AAVrhlO.XX、AAVrh.8、AAVrh.10、AAVrh.43、AAVpi.2、AAVhu.11、AAVhu.32、AAVhu.37またはPHP.eB AAVである、請求項1乃至66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
ベクターがAAV9、PHP.eB、AAVrh.8、AAVrh.10、またはAAVrh.43である、請求項1乃至67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
対象体の体重1kg当たり1×10
8乃至1×10
18ベクターゲノムの用量が対象体に投与される、請求項1乃至68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
対象体の体重1kg当たり1×10
11乃至1×10
14ベクターゲノムの用量が対象体に投与される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
対象体の体重1kg当たり1×10
12乃至1×10
15ベクターゲノムの用量が対象体に投与される、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
ベクターが対象体の細胞を形質導入し、対象体の細胞がミニ遺伝子を発現する、請求項1乃至71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
組成物が薬剤学的に許容される担体をさらに含む、請求項1乃至72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
薬剤学的に許容される担体がリポソーム、重合体ミセル、マイクロスフェアまたはナノ粒子を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
組成物が全身的にまたは局所的へ伝達される、請求項1乃至74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
組成物が末梢注入を通じて全身的に中枢神経系へ伝達される、請求項1乃至75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
末梢注入は静脈注入である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
組成物が脳脊髄液(CSF)へ伝達される、請求項1乃至75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
組成物が非外科的な注入によって脳脊髄液(CSF)へ伝達される、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
脳脊髄液(CSF)への非外科的な注入は、非外科的脊髄腔内の注入を含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
組成物が非外科的な注入によって脳脊髄液(CSF)へ伝達される、請求項78に記載の方法。
【請求項82】
脳脊髄液(CSF)への神経外科的な注入が大槽(cisterna magna)への神経外科的な注入を含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
組成物が心室系へ伝達される、請求項1乃至75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
組成物が神経外科的な注入によって心室系へ伝達される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
組成物が血液-脳関門(blood-brain barrier)を通過する、請求項1乃至84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
組成物が対象体に1回伝達される、請求項1乃至85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
組成物がAβペプチドオリゴマー、プロトフィブリルまたはフィブリル形成の開始前に伝達される、請求項1乃至86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
組成物がAβペプチドオリゴマー、プロトフィブリルまたはフィブリル形成の開始後に伝達される、請求項1乃至86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
組成物がアミロイドプラーク形成の開始前に伝達される、請求項1乃至88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
組成物がアミロイドプラーク形成の開始後に伝達される、請求項1乃至88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
対象体が神経退行性疾患、障害または病態に対する一つ以上の追加療法の有効量を提供される、請求項1乃至90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
一つ以上の追加療法がアルツハイマー病薬物を含む、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
アルツハイマー病薬物がアデュカヌマブ、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、メマンチンまたはタクリンを含む、請求項92に記載の方法
【請求項94】
Aβペプチド変異体をコードするベクターを含む薬剤学的組成物であって、Aβペプチド変異体は、下記と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、薬剤学的組成物。
、またはその断片または機能的誘導体。
【請求項95】
Aβペプチド変異体が配列番号:3と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項94に記載の組成物。
【請求項96】
Aβペプチド変異体が配列番号:3、またはその断片または機能的誘導体を含む、請求項94または95に記載の組成物。
【請求項97】
配列番号:3と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するか、または配列番号:3を含むAβペプチド変異体がN-末端切断を含む、請求項95または96に記載の組成物。
【請求項98】
N-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22つのアミノ酸切断を含む、請求項97に記載の組成物。
【請求項99】
配列番号:3と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するか、または配列番号:3を含むAβペプチド変異体がC-末端切断を含む、請求項95乃至98のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項100】
C-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個のアミノ酸切断を含む、請求項99に記載の組成物。
【請求項101】
配列番号:3の断片または機能的誘導体は、KLVDFAE(配列番号:10)と少なくとも85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項95乃至100のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項102】
Aβペプチド変異体が配列番号:4と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項94に記載の組成物。
【請求項103】
Aβペプチド変異体が配列番号:4、またはその断片または機能的誘導体を含む、請求項94または102に記載の組成物。
【請求項104】
配列番号:4と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するか、または配列番号:4を含むAβペプチド変異体がN-末端切断を含む、請求項102または103に記載の組成物。
【請求項105】
N-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22つのアミノ酸切断を含む、請求項104に記載の組成物。
【請求項106】
配列番号:4と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するか、または配列番号:4を含むAβペプチド変異体がC-末端切断を含む、請求項102乃至105のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項107】
C-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個のアミノ酸切断を含む、請求項106に記載の組成物。
【請求項108】
配列番号:4の断片または機能的誘導体は、KLVFPAE(配列番号:11)と少なくとも85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項102乃至107のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項109】
Aβペプチド変異体が配列番号:5と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項94に記載の組成物。
【請求項110】
Aβペプチド変異体が配列番号:5、またはその断片または機能的誘導体を含む、請求項94または109に記載の組成物。
【請求項111】
配列番号:5と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するか、または配列番号:5を含むAβペプチド変異体がN-末端切断を含む、請求項109または110に記載の組成物。
【請求項112】
N-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22つのアミノ酸切断を含む、請求項111に記載の組成物。
【請求項113】
配列番号:5と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するか、または配列番号:5を含むAβペプチド変異体がC-末端切断を含む、請求項109乃至112のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項114】
C-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個のアミノ酸切断を含む、請求項113に記載の組成物。
【請求項115】
配列番号:5の断片または機能的誘導体は、KLVDFAE(配列番号:10)と少なくとも85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項109乃至114のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項116】
Aβペプチド変異体が配列番号:6と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項94に記載の組成物。
【請求項117】
Aβペプチド変異体が配列番号:6、またはその断片または機能的誘導体を含む、請求項94または116に記載の組成物。
【請求項118】
配列番号:6と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するか、または配列番号:6を含むAβペプチド変異体がN-末端切断を含む、請求項116または117に記載の組成物。
【請求項119】
N-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22つのアミノ酸切断を含む、請求項118に記載の組成物。
【請求項120】
配列番号:6と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するか、または配列番号:6を含むAβペプチド変異体がC-末端切断を含む、請求項116乃至119のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項121】
C-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個のアミノ酸切断を含む、請求項120に記載の組成物。
【請求項122】
配列番号:6の断片または機能的誘導体は、KLVPFAE(配列番号:12)と少なくとも85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項116乃至121のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項123】
ベクターがAβペプチド変異体をコードするミニ遺伝子をコードする、請求項94乃至122のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項124】
Aβペプチド変異体をコードするミニ遺伝子は、アミロイド前駆体タンパク質の切断されたベータ-カルボキシル-末端断片(β-CTF)を含むアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列をコードする、請求項123に記載の組成物。
【請求項125】
切断されたβ-CTFが信号ペプチド配列に融合される、請求項124に記載の組成物。
【請求項126】
信号ペプチド配列がガウシアルシフェラーゼ信号ペプチドを含むアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列またはマウス免疫グロブリン重鎖信号ペプチドを含むアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含む、請求項125に記載の組成物。
【請求項127】
切断されたβ-CTFがAβペプチド変異体配列、膜貫通ドメイン配列および細胞質配列を含む、請求項124乃至126のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項128】
膜貫通ドメイン配列が配列番号:9、配列番号:18、配列番号:86または配列番号:87を含むアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含む、請求項127に記載の組成物。
【請求項129】
細胞質配列が膜固定(membrane anchoring)、ガンマ-セクレターゼ切断の促進、および/またはAβペプチド変異体の細胞外放出のためのアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含む、請求項124乃至128のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項130】
細胞質配列が2つのリジン残基を含むアミノ酸配列に相応する、請求項129に記載の組成物。
【請求項131】
細胞質配列が3つのリジン残基を含むアミノ酸配列に相応する、請求項129に記載の組成物。
【請求項132】
細胞質配列は5’から3’方向にアルギニン残基に引き続き、2つのリジン残基を含むアミノ酸配列に相応する、請求項129に記載の組成物。
【請求項133】
ミニ遺伝子が配列番号:8、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37または配列番号:38と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項123乃至132のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項134】
ミニ遺伝子は、配列番号:8、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37または配列番号:38を含む、請求項123乃至133のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項135】
ミニ遺伝子が配列番号:66、配列番号:67、配列番号:68、配列番号:69、または配列番号:70と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項123乃至132のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項136】
ミニ遺伝子は、配列番号:66、配列番号:67、配列番号:68、配列番号:69または配列番号:70を含む、請求項123乃至133のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項137】
ミニ遺伝子が配列番号:71、配列番号:72、配列番号:73、配列番号:74、または配列番号:75と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項123乃至132のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項138】
ミニ遺伝子は、配列番号:71、配列番号:72、配列番号:73、配列番号:74または配列番号:75を含む、請求項123乃至133のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項139】
ミニ遺伝子が配列番号:76、配列番号:77、配列番号:78、配列番号:79または配列番号:80と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項123乃至132のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項140】
ミニ遺伝子は、配列番号:76、配列番号:77、配列番号:78、配列番号:79または配列番号:80を含む、請求項123乃至133のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項141】
ミニ遺伝子の発現が構成的なプロモーターによって調節される、請求項123乃至140のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項142】
ミニ遺伝子の発現が組織-特異的または細胞-特異的プロモーターによって調節される、請求項123乃至141のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項143】
細胞-特異的プロモーターがニューロン-特異的プロモーターである、請求項142に記載の組成物。
【請求項144】
ニューロン-特異的プロモーターがヒトシナプシンIプロモーターである、請求項143に記載の組成物。
【請求項145】
組織-特異的プロモーターが脈絡叢-特異的プロモーターである、請求項142に記載の組成物。
【請求項146】
組織-特異的プロモーターがPrlr、Spint2、またはF5である、請求項142に記載の組成物。
【請求項147】
ベクターがウイルスベクターまたは非-ウイルスベクターである、請求項94乃至146のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項148】
ベクターがアデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルスまたはアデノ-関連ウイルスベクターである、請求項94乃至147のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項149】
ベクターがAAVベクターである、請求項94乃至148のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項150】
ベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV2.5、AAvDJ、AAVrhlO.XX、AAVrh.8、AAVrh.10、AAVrh.43、AAVpi.2、AAVhu.11、AAVhu.32、AAVhu.37、またはPHP.eB AAVである、請求項94乃至149のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項151】
ベクターが、AAV9、PHP.eB、AAVrh.8、AAVrh.10、またはAAVrh.43である、請求項94乃至150のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項152】
薬剤学的に許容される担体をさらに含む、請求項94乃至151のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項153】
薬剤学的に許容される担体がリポソーム、重合体ミセル、マイクロスフェアまたはナノ粒子を含む、請求項152に記載の組成物。
【請求項154】
神経退行性疾患、障害または病態に対する一つ以上の追加療法をさらに含む、請求項94乃至153のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項155】
一つ以上の追加療法がアルツハイマー病薬物を含む、請求項154に記載の組成物。
【請求項156】
アルツハイマー病薬物が、アデュカヌマブ、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、メマンチンまたはタクリンを含む、請求項155に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年12月18日に出願された米国仮特許出願一連番号第63/127,815号に対する優先権を主張し、その開示内容は、全文が本願に参照として含まれる。
【0002】
本発明は、米国国立予防衛生研究所(National Institutes of Health)が授与したNS092615、AG054160、AG056028およびAG058188による政府支援により行われた。政府は、本発明に対する特定権利を有する。
【0003】
本開示内容の局面は、少なくとも細胞生物学、分子生物学、タンパク質生物学、神経生物学および医学分野に関する。
【背景技術】
【0004】
アルツハイマー病(AD)は致命的な神経退行性障害であり、認知症の最もありがちな原因である。アルツハイマー病の病理学的な特徴は、患者の脳に神経線維のもつれ(neurofibrillary tangles)とアミロイド沈殿物が存在するということである。ベータ-アミロイドペプチド(Aβ)およびその凝集形態はアミロイドプラークの主な構成成分である。Aβ1-42は特に凝集しやすく、オリゴマー、プロトフィブリル、不溶性フィブリルおよびプラークを形成する。操作された抗体療法はAβ凝集を下げるのに効果的である;しかし、副作用プロファイルおよび繰り返し静脈伝達の要件は、アルツハイマー病のような神経退行性疾患の治療のための操作された抗体の広範囲な使用に障害を引き起こす。従って、Aβペプチドのオリゴマー化および凝集を防止することができる高い特異性、低い毒性および延長された生体内の半減期を有する新規の治療アプローチが当業界に要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示内容の局面は、神経退行性疾患、障害または病態(例えば、アルツハイマー病)を有する対象体を治療するための方法および組成物を提供することによって、当業界の要求を扱っている。従って、一部の局面において、Aβペプチド変異体、またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む治療学的有効量の組成物を投与する段階を含む、神経退行性疾患、障害または病態を有する対象体を治療し/治療するか、生体内でアミロイドベータ(Aβ)ペプチドの凝集を抑制するか、または分解を促進するための方法および組成物が本発明に提供される。一部の実施様態において、開示されている方法は、神経退行性疾患、障害または病態を有する対象体を診断する段階と、神経退行性疾患、障害または病態の症状を有する対象体を診断する段階と、または神経退行性疾患、障害または病態を有する危険がある対象体を診断する段階とをまた含む。一部の実施様態において、神経退行性疾患、障害または病態は、アルツハイマー病、パーキンソン病、パーキンソン病認知症、血管性認知症、脳アミロイド血管症、レビー小体型認知症、慢性外傷性脳症、ダウン症候群、および/または病的老化である。一部の実施様態において、神経退行性疾患、障害または病態はアルツハイマー病である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示内容の実施様態は、神経退行性疾患、障害または病態を有する対象体を治療するための、および/または生体内のAβペプチドの凝集を抑制するための方法および組成物を含む。本開示内容の方法は、下記段階のうち1、2、3、4、5個以上を含んでもよい:対象体にAβペプチド変異体を提供する段階と、神経退行性疾患、障害または病態に対する一つ以上の追加療法を対象体に提供する段階と、神経退行性疾患、障害または病態がある対象体を診断する段階と、神経退行性疾患、障害または病態の症状を有すると対象体を診断する段階と、および神経退行性疾患、障害または病態を有する危険がある対象体を診断する段階。本開示内容の特定の実施様態は、先行要素および/または段階のうち一つ以上を除外してもよい。
【0007】
一部の局面において、Aβペプチド変異体、またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む治療学的有効量の組成物を対象体に投与する段階を含む、対象体から神経退行性疾患、障害または病態を治療または予防する方法が本願に開示される。一部の実施様態において、Aβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを投与する段階は、タンパク質ミスフォールディング、内因性Aβペプチド凝集、アミロイドプラークの形成、神経炎症、神経退行性、ニューロン損失またはシナプス損失を防止または減少させ;タウのレベル、タウのリン酸化またはリン酸化されたタウのレベルを減少させ;タウのシーディングまたは内因性Aβペプチドのシーディングを鈍化させ/鈍化させるか、または認知改善を促進する。一部の実施様態において、Aβペプチド変異体をコードするベクターを投与する段階は、内因性Aβペプチドオリゴマー、プロトフィブリル、フィブリルまたはプラークの形成を防止または減少させる。一部の実施様態において、Aβペプチド変異体をコードするベクターを投与する段階は、内因性Aβペプチド集合体の細胞毒性を予防または減少させる。
【0008】
一部の局面において、少なくとも一つの生体内の内因性Aβペプチドを、Aβペプチド変異体をコードするベクターから治療学的有効量の発現されたAβペプチド変異体と接触させる段階(前記ベクターは組成物に存在する)を含む生体内の内因性Aβペプチドの凝集を抑制する方法が本願に記載されている。一部の実施様態において、内因性Aβペプチドの凝集を抑制する方法は、対象体から神経退行性疾患、障害または病態を治療または予防する。一部の実施様態において、内因性Aβペプチドの凝集を抑制する方法は、内因性Aβペプチドオリゴマー、プロトフィブリル、フィブリルまたはプラークの形成を防止または減少させる。一部の実施様態において、内因性Aβペプチドの凝集を抑制する方法は、内因性Aβペプチド凝集体の細胞毒性を防止または減少させる。
【0009】
一部の実施様態において、前記方法は、神経退行性疾患、障害または病態を有する対象体を診断する段階と、神経退行性疾患、障害または病態の症状を有する対象体を診断する段階と、および神経退行性疾病、障害または病態を有する危険がある対象体を診断する段階とをさらに含む。一部の実施様態において、神経退行性疾患、障害または病態は、アルツハイマー病、パーキンソン病、パーキンソン病認知症、血管性認知症、脳アミロイド血管症、レビー小体型認知症、慢性外傷性脳症、ダウン症候群、および/または病的老化である。一部の実施様態において、神経退行性疾患、障害または病態はアルツハイマー病である。
【0010】
一部の局面において、Aβペプチド変異体をコードするベクターを含む薬剤学的組成物が本願に開示される。
【0011】
本願に開示されている方法および組成物の一部の実施様態において、Aβペプチド変異体は、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、または配列番号:6、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施様態において、Aβペプチド変異体は、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5または配列番号:6、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施様態において、Aβペプチド変異体は、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5または配列番号:6、またはその断片または機能的誘導体を含む。
【0012】
一部の実施様態において、Aβペプチド変異体が配列番号:3、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施様態において、Aβペプチド変異体は、配列番号:3、またはその断片または機能的誘導体を含む。一部の実施様態において、配列番号:3と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するか、または配列番号:3を含むAβペプチド変異体がN-末端切断を含む。一部の実施様態において、N-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22つのアミノ酸切断を含む。一部の実施様態において、配列番号:3と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するか、または配列番号:3を含むAβペプチド変異体がC-末端切断を含む。一部の実施様態において、C-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個のアミノ酸切断を含む。一部の実施様態において、配列番号:3の断片または機能的誘導体は、KLVDFAE(配列番号:10)と少なくとも85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0013】
一部の実施様態において、Aβペプチド変異体が配列番号:4、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施様態において、Aβペプチド変異体は、配列番号:4、またはその断片または機能的誘導体を含む。一部の実施様態において、配列番号:4と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するか、または配列番号:4を含むAβペプチド変異体がN-末端切断を含む。一部の実施様態において、N-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22つのアミノ酸切断を含む。一部の実施様態において、配列番号:4と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するか、または配列番号:4を含むAβペプチド変異体がC-末端切断を含む。一部の実施様態において、C-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個のアミノ酸切断を含む。一部の実施様態において、配列番号:4の断片または機能的誘導体は、KLVFPAE(配列番号:11)と少なくとも85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0014】
一部の実施様態において、Aβペプチド変異体が配列番号:5、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施様態において、Aβペプチド変異体は、配列番号:5、またはその断片または機能的誘導体を含む。一部の実施様態において、配列番号:5と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するか、または配列番号:5を含むAβペプチド変異体がN-末端切断を含む。一部の実施様態において、N-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22つのアミノ酸切断を含む。一部の実施様態において、配列番号:5と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するか、または配列番号:5を含むAβペプチド変異体がC-末端切断を含む。一部の実施様態において、C-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個のアミノ酸切断を含む。一部の実施様態において、配列番号:5の断片または機能的誘導体は、KLVDFAE(配列番号:10)と少なくとも85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0015】
一部の実施様態において、Aβペプチド変異体が配列番号:6、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施様態において、Aβペプチド変異体は、配列番号:6、またはその断片または機能的誘導体を含む。一部の実施様態において、配列番号:6と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するか、または配列番号:6を含むAβペプチド変異体がN-末端切断を含む。一部の実施様態において、N-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22つのアミノ酸切断を含む。一部の実施様態において、配列番号:6と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するか、または配列番号:6を含むAβペプチド変異体がC-末端切断を含む。一部の実施様態において、C-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個のアミノ酸切断を含む。一部の実施様態において、配列番号:6の断片または機能的誘導体は、KLVPFAE(配列番号:12)と少なくとも85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0016】
本願に開示されている方法および組成物の一部の実施様態において、Aβペプチド変異体は、Aβペプチド変異体をコードするポリペプチドまたはポリヌクレオチドである。一部の実施様態において、ベクターは、Aβペプチド変異体をコードするポリヌクレオチドをコードする。
【0017】
一部の実施様態において、ベクターまたはベクターによってコードされたポリヌクレオチドは、Aβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードする。一部の実施様態において、ベクターまたはベクターによってコードされたポリヌクレオチドは、Aβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするミニ遺伝子をコードする。一部の実施様態において、Aβペプチド変異体をコードするミニ遺伝子は、アミロイド前駆体タンパク質の切断されたベータ-カルボキシル-末端断片(β-CTF)を含むアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列をコードする。一部の実施様態において、切断されたβ-CTFは信号ペプチド配列に融合される。一部の実施様態において、信号ペプチド配列は、ガウシアルシフェラーゼ信号ペプチドを含むアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列またはマウス免疫グロブリン重鎖信号ペプチドを含むアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含む。一部の実施様態において、切断されたβ-CTFは、Aβペプチド変異体配列、膜貫通ドメイン配列および細胞質配列を含む。一部の実施様態において、膜貫通ドメイン配列が配列番号:9、配列番号:18、配列番号:86または配列番号:87を含むアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含む。一部の実施様態において、細胞質配列は、膜固定(membrane anchoring)、ガンマ-セクレターゼ切断の促進、および/またはAβペプチドの細胞外放出のためのアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含む。一部の実施様態において、細胞質配列は2つのリジン残基を含むアミノ酸配列に相応する。一部の実施様態において、細胞質配列は3つのリジン残基を含むアミノ酸配列に相応する。一部の実施様態において、細胞質配列は5’から3’方向にアルギニン残基に引き続き、2つのリジン残基を含むアミノ酸配列に相応する。
【0018】
一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、配列番号:8、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37、または配列番号:38と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、配列番号:8、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37または配列番号:38を含む。一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、配列番号:66、配列番号:67、配列番号:68、配列番号:69、または配列番号:70と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、配列番号:66、配列番号:67、配列番号:68、配列番号:69または配列番号:70を含む。一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、配列番号:71、配列番号:72、配列番号:73、配列番号:74、または配列番号:75と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、配列番号:71、配列番号:72、配列番号:73、配列番号:74または配列番号:75を含む。一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、配列番号:76、配列番号:77、配列番号:78、配列番号:79、または配列番号:80と少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、配列番号:76、配列番号:77、配列番号:78、配列番号:79または配列番号:80を含む。
【0019】
一部の実施様態において、ミニ遺伝子の発現は、構成的なプロモーターによって調節される。一部の実施様態において、ミニ遺伝子の発現は、組織-特異的または細胞-特異的プロモーターによって調節される。一部の実施様態において、細胞-特異的プロモーターは、ニューロン-特異的プロモーターである。一部の実施様態において、ニューロン-特異的プロモーターはシナプシンプロモーターである。一部の実施様態において、組織-特異的プロモーターは、脈絡叢(choroid plexus)-特異的プロモーターである。一部の実施様態において、組織-特異的プロモーターはPrlr、Spint2、またはF5である。
【0020】
一部の実施様態において、Aβペプチドまたはその断片または機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドはベクターに含まれる。一部の実施様態において、ベクターはウイルスベクターまたは非-ウイルスベクターである。一部の実施様態において、ベクターは、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルスまたはアデノ-関連ウイルスベクターである。特定の実施様態において、ベクターはAAVベクターである。一部の実施様態において、ベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV2.5、AAV-DJ、AAVrhlO.XX、AAVrh.8、AAVrh.10、AAVrh.43、AAVpi.2、AAVhu.11、AAVhu.32、AAVhu.37、またはPHP.eB AAVである。一部の実施様態において、ベクターは、AAV9、PHP.eB、AAVrh.8、AAVrh.10、またはAAVrh.43である。
【0021】
一部の実施様態において、対象体の体重1kg当たり1×108乃至1×1018ベクターゲノムの用量が対象体に投与される。一部の実施様態において、対象体の体重1kg当たり約1×1011乃至約1×1014ベクターゲノムの用量が対象体に投与される。一部の実施様態において、対象体の体重1kg当たり約1×1012乃至約1×1015ベクターゲノムの用量が対象体に投与される。一部の実施様態において、ベクターは対象体の細胞を形質導入し、対象体の細胞はミニ遺伝子を発現する。
【0022】
本願に開示されている方法および組成物の一部の実施様態において、組成物は薬剤学的に許容される担体をさらに含む。一部の実施様態において、薬剤学的に許容される担体は、リポソーム、重合体ミセル、マイクロスフェアまたはナノ粒子を含む。
【0023】
一部の実施様態において、組成物が全身的にまたは局所的に伝達される。一部の実施様態において、組成物が末梢注入を通じて全身的に中枢神経系へ伝達される。一部の実施様態において、末梢注入は静脈注入である。一部の実施様態において、組成物が脳脊髄液(CSF)へ伝達される。一部の実施様態において、組成物は非外科的な注入によって脳脊髄液(CSF)へ伝達される。一部の実施様態において、脳脊髄液(CSF)への非外科的な注入は非外科的脊髄腔内注入を含む。一部の実施様態において、組成物は、神経外科的な注入によって脳脊髄液(CSF)へ伝達される。一部の実施様態において、脳脊髄液への神経外科的な注入は、大槽(cisterna magna)への神経外科的な注入を含む。一部の実施様態において、組成物は心室系に伝達される。一部の実施様態において、組成物は、神経外科的な注入によって心室系に伝達される。一部の実施様態において、組成物は血液-脳関門(blood-brain barrier)を通過する。
【0024】
一部の実施様態において、組成物が対象体に1回伝達される。一部の実施様態において、組成物がAβペプチドオリゴマー、プロトフィブリルまたはフィブリル形成の開始前に伝達される。一部の実施様態において、組成物がAβペプチドオリゴマー、プロトフィブリルまたはフィブリル形成の開始後に伝達される。一部の実施様態において、組成物がアミロイドプラーク形成の開始前に伝達される。一部の実施様態において、組成物がアミロイドプラーク形成の開始後に伝達される。
【0025】
一部の実施様態において、対象体は、神経退行性疾患、障害または病態に対する一つ以上の追加療法の有効量が提供される。一部の実施様態において、一つ以上の追加療法はアルツハイマー病薬物を含む。一部の実施様態において、アルツハイマー病薬物は、アデュカヌマブ、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、メマンチンまたはタクリンを含む。
【0026】
「個体」、「対象体」および「患者」は相互交換的に用いられ、ヒトまたは非ヒトを指称してもよい。
【0027】
本出願の全体にわたって、用語「およそ」は、値が測定または定量化方法に対する固有の誤差範囲を含むことを示すのに用いられる。
【0028】
用語「含む」を組み合わせて用いる場合、単語「一つ」または「一つの」の使用は「一つ」を意味してもよいが、「一つ以上」、「少なくとも一つ」および「一つまたは一つ以上」の意味とも一致する。
【0029】
文句「および/または」は「および」または「または」を意味する。例えば、A、Bおよび/またはCは、A単独、B単独、C単独、AおよびBの組み合わせ、AおよびCの組み合わせ、BおよびCの組み合わせ、またはA、BおよびCの組み合わせを含む。すなわち、「および/または」は包括または包括しないものと機能する。
【0030】
単語「含む(comprising)」(およびすべての「含む」および「を含む」のような含む形態)、「有している」(およびすべての「有する」および「有している」のような有する形態)、「含む(including)」(およびすべての「含む」および「を含む」のような含みの形態)または「含有する」(およびすべての「含有する」および「を含有する」のような含有の形態)は、包括的であるか、または制限がなく、さらに言及されない要素または方法の段階を排除しない。
【0031】
使用のための組成物および方法は、明細書の全般にわたって開示されている任意の成分または段階を「含み」、「本質的に構成」または「構成」することができる。開示されている任意の成分または段階で「本質的に構成された」組成物および方法は、請求された発明の基本的で新規の特徴に実質的に影響を及ぼすことのない特定材料または段階に請求の範囲を制限する。
【0032】
治療、診断または生理学的目的または効果と関連して、任意の方法は記載されている治療学的、診断学的または生理学的な目的または効果を達成または具現するために本願において議論された任意の化合物、組成物または製剤の「用途」のような「用途」の請求用語として記載されてもよい。
【0033】
本明細書において議論された任意の実施様態は、本発明の任意の方法または組成物と関連して具現されてもよく、その反対も可能であるということが考慮される。また、本発明の組成物は、本発明の方法を達成するために用いられてもよい。
【0034】
本発明の別の目的、特徴および長所は、次の詳細な説明から明らかになるだろう。しかし、詳細な説明および特定例は、本発明の具体的な実施様態を示すが、単に例示として与えられるということを理解しなければならず、これは、本発明の思想および範囲内における多様な変化および修正が詳細な説明から当業者に明白であるためである。
【0035】
次の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定局面をさらに立証するために含まれる。本発明は、本明細書に提示されている特定実施例の詳細な説明とともにこれらの図面のうち一つ以上を参照することでさらによく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1A~1Eは、変異体Aβペプチドが野生型Aβのフィブリル化および細胞毒性を減少させることを示す。
図1Aは、野生型(WT)Aβ42と比べて変異体ペプチドの自己-凝集に対するチオフラビン-T(ThT)検定を示す。5種類の変異体のうちいずれも反応中に自己凝集を示しておらず;比較のためにWT Aβ42(緑色)は1時間以内にThT結合停滞期に到達した。
図1Bは、WT Aβ42凝集の抑制を試験する競争検定を示す。各変異体をWT Aβ42と1:1で混合してThTとともにインキュベーションした。V18PはWTペプチドの凝集を悪化させ;他の4個の変異体はフィブリル化を減少させた。F20P(赤色)およびF19D/L34P(青色)は凝集を防止して追加の研究のために選択された。
図1Cは、F19D/L34Pに対するフィブリルの分解検定を示す。WT Aβ42フィブリルを多様な濃度の単量体F19D/L34Pペプチドに露出させた。フィブリル単独と比べてF19D/L34Pとのインキュベーションは、Aβフィブリルの分解と一致するThT蛍光の濃度-依存的な減少を生成した。
図1Dは、F19D/L34Pについて記述されているように、F20Pに対するフィブリルの分解を示す。F20PはまたThT蛍光を濃度-依存的に減少させたが、F19D/L34Pよりかなり効果的でなかった。
図1Eは、野生型Aβ42オリゴマー(緑色)と異なり、F20P(赤色)またはF19D/L34P(青色)がN2a細胞自体の毒性を誘発することなく、二つの変異体のすべてが非処理された対照群(黒色)と類似していることをみせるMTS分析を示す。対照的に、オリゴマーAβを形成する間、任意の変異体とWT Aβの等モル共インキュベーションは、後続N2a細胞毒性を減少させた。X軸値は、試験のためにN2a培地に追加された100μLのオリゴマーAβ反応の体積(μl)を示す。これは、0.1または10μMの単量体WT Aβ42出発物質および同一の量の変異体ペプチド(表示された場合)に相当する。ANOVA、*p<0.05、**p<0.01 WT Aβ42単独との比較のためのボンフェローニ(Bonferroni)事後検定。すべてのデータは、平均±SEMで表示される。
【
図2】
図2A~2Dは、変異体Aβの効率的な分泌のために最適化された発現構築物を示す。
図2Aは、γ-セクレターゼ切断に十分な最も短いCTF断片を確認するために用いられる順次的欠失ストラテジーを示す。構築物をN2a細胞によりトランスフェクトさせて培地からAβを回収して分泌を測定した。最適の構築物は、全体膜貫通ドメインと2つの細胞内リジン(KK)を含んだ。このミニ遺伝子は、全長CTFと同等なAβ分泌を達成した(左側ブロット、矢印は末端残基で表示された各構築物に対する分泌されたAβ対比切断されていないAβ+残存膜貫通(TM)ドメインを示す)。‘KK’最小構築物を用いた野生型Aβ42の分泌は、β-セクレターゼ抑制剤LY411575によって用量依存的方式で遮断された(右側ブロット、矢印は再び分泌されたAβ対比切断されていないAβ+TMドメイン、nM単位のGSI濃度を示す)。
図2Bは、生体内の変異体Aβペプチドの伝達のためのAAVベクターの設計をみせる。発現カセットは、AβのN-末端にガウシアルシフェラーゼ信号ペプチドに引き続き、Aβ42変異体および最小APP C-末端膜貫通配列を含み、いずれもCAGプロモーターによって制御される。
図2Cは、免疫沈殿されたAβの質量分光分析を用いた全長変異体Aβの細胞外放出を示す。Aβ F20Pを発現するN2a細胞を用いて6E10免疫沈殿によって培地から分泌されたペプチドを分離した。溶出されたペプチドのMS1スペクトルは、Aβ40 F20PおよびAβ42 F20Pに対する予想質量を表示する(データは図示していない)。+5電荷状態のm/z=856.4441における完全なAβ40 F20Pのピークは、4,277.1841 Daの単一同位元素質量を示す一方、最も豊富な同位元素は、4,279.1851 Daの質量を示し、予想質量の10ppm誤差内にある。
図2Dは、Aβ40 F20Pの質量と一致するペプチドのMS2断片化をみせ、20ppm未満の断片イオン許容誤差により配列同一性を確認する。
【
図3】
図3A~3Gは、新生児AAV注入が変異体Aβの神経発現を生成することを立証する。F19D/L34PまたはF20P AβをコードするAAVを野生型新生児マウスの側脳室に注入した。3週間または7ヶ月後、免疫染色および/またはELISA分析のためにマウスを回収した。
図3Aは、AAV-F20PのP0注入3週間後に回収された抗-ヒトAβ免疫染色(6E10、緑色)が矢状切片の皮質で広範囲なウイルスの発現を立証することをみせる。
図3Bは、ウイルス-伝達変異体Aβ((F20P;6E10、緑色)および内因性マウスAPP(Y188、赤色)に対する共染色が優れた一致性を立証することをみせ、これは、皮質ニューロンで変異体ペプチドの膜伝達を示唆する。
図3Cは、生体内全長変異体Aβの生成を確認するための免疫沈殿されたAβの質量分光分析法をみせる。Aβ F20Pを発現するマウスを用いて6E10免疫沈殿によって脳ホモジナイズ液からペプチドを分離した。溶出されたペプチドのMS1スペクトルは、Aβ42 F20P(表示される)およびAβ40 F20Pに対する予想質量を表示する。+5電荷状態(d=0.2)を有するm/z=893.2675における完全なAβ42 F20Pのピークは、4,461.3011 Daの単一同位元素質量を示すのに対し、最も豊富な同位元素の構成は、4,463.3136 Daであり、予想質量の15ppm誤差内にある。
図3Dは、Aβ42 F20Pの配列同一性を確認するためのペプチドのMS2断片化をみせ、断片イオン許容誤差は20ppmである。
図3Eは、3週齢に安楽死させた野生型マウスからの前頭葉ホモジネートの可溶性分画でELISAによって検出されたヒトAβを示す。二つの変異体はすべてヒトAβ42を生成し、Aβ40はF20Pで形質導入されたマウスでのみ検出された。F20Pは注入されていないマウスに比べて高いレベルのAβ40を生成したのに対し、F19D/L34Pは無視できるレベルでAβ40の生成を示し、変異体ペプチド(グラフでF19Dと略称される)の不良な検出のためであると推測される。Aβ42の生成は野生型γ-セクレターゼ部位をコードする構築物について予想されるようにAβ40よりも低かった。
図3Fで変異体ヒトAβの発現はP0ウイルス注入の後7.5ヶ月後にも依然としてELISAによって検出され得ることを示す。図面内の値は非-トランスジェニック動物の前頭葉ホモジネートの溶解性分画に関するものである。パネルCとDの絶対値は他の製造ロットのキットを用いて別の時間に検定を行ったため、直接比較することはできない。
図3Gにおいて、各変異体によって生成されたAβ40:42の割合は3週間(上部パネル)と7.5ヶ月(下部パネル)との間に一定に維持される。ANOVA、*p<0.05、***p<0.001、****p<0.0001。データは、平均±SEMで表示される。n=2-10/処理。
【
図4】
図4A~4Cは、変異体Aβの生涯にわたる発現がAPP/PS1マウスでプラーク負荷およびAβ蓄積を減少させることを立証する。APP/PS1マウスにAβ F19D/L34PまたはF20PをコードするAAVをP0に注入し、7.5ヶ月後に回収した。
図4Aは、Aβ免疫染色が変異体Aβペプチドで処理されたマウスで減少されたプラーク蓄積を示すことをみせる。
図4Bは、%Aβ面積で測定された皮質プラーク負荷が非処理されたマウスよりF20Pマウスがさらに少ないアミロイドを有することを確認することをみせる。n=5未注入、n=4 F19D/L34P、n=8 F20P。
図4Cは、皮質組織のグアニジン抽出物でヒトAβペプチドに対するMSD ELISAがプラーク組織学を反映することをみせる。Aβ40のレベルは二つの変異体のすべてで減少したのに対し、F20PはAβ42のレベルも減少した。Aβの減少はF20Pで有意味なレベルに至り、F19D/L34Pで傾向を示した。n=8未注入、n=5 F19D/L34P、n=12 F20P。ANOVA、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。データは、平均±SEMで表示される。
【
図5】
図5A~5Bは、転移遺伝子発現の空間的分布およびタイミングを制御するためのウイルス血清型の使用を立証する。
図5Aは、末梢注入後のCNSの発現を立証するために用いられた赤色蛍光タンパク質をコードするPHP.eBウイルスを示す。CAG-tdTomatoをコードするPHP.eBの1.6×10
11粒子を生後3ヶ月になったマウスの後眼窩洞(retro-orbital sinus)へ注入し;2週間後にマウスを回収した。
図5Bは、
図3において用いられたAAV8と異なり、低力価AAV1は新生児マウスの側脳室に注入されるとき、上衣細胞を優先的に形質導入することを示す。第4脳室にウイルスが拡散されることに注目する。図面内の挿入物はさらに高い倍率で側脳室(ボックス型)を示す。AAV4またはAAV5のような代替血清型は側脳室に注入されるとき、上衣細胞に対する特異性を提供するために用いられてもよい。
【
図6】
図6A-6Dは、変異体Aβペプチドがプラーク負荷に相応する反応性神経膠症を減少させるということをみせる。APP/PS1および野生型(非-トランスジェニック、NTG)マウスのすべてはF20P変異体Aβを伝達するためにicv P0ウイルス注入の後、7.5ヶ月に回収された。非注入されたシブリング(sibling)が比較のために用いられた。
図6A、6Bは、星状細胞の検出に用いられるGFAP免疫染色;ミクログリア細胞を検出するIba1を示す。最も下の行に表示された蛍光免疫染色はアミロイドプラークを検出するためにチオフラビン-Sで対照染色された。APP/PS1マウスでF20P処理によって神経グリア病巣のサイズと周辺細胞の数が注入されていない動物(上段および下段の列)に比べて全て減少した。対照的に、ウイルスの注入は、NTGマウスでミクログリア細胞の形態または密度に影響を及ぼしていないが、脳梁(真ん中の列)に沿ってGFAP+細胞の数を増加させた。
図6Cは、GFAPおよびIba1に対する比色免疫染色の定量化を見せるものであって、F20Pの処理がAPP/PS1マウスで相応するグリア細胞染色領域を減少させたが、注入されていない対照群と比べてNTGマウスでGFAPのレベルを上昇させたという定性的発見を確認させてくれる。
図6Dは、ヒトAβのウイルス発現は前脳星状細胞の下位集合で検出された。F20Pを注入したNTGマウスでヒトAβ(6E10、緑色)およびGFAP(赤色)に対する共免疫蛍光は希薄な共標識細胞(矢印)を検出した。APP/PS1 n=5未注入、n=7-8 F20P;NTG n=5-6未注入、n=5 F20P。抗ヒトAβ抗体6E10(緑色)で共標識されたGFAP+星状細胞(赤色)の小さな部分は、AAV注入によってP0で形質導入されたことを示唆する。両方向ANOVA、*p<0.05、**p<0.01、****p<0.0001。データは、平均±SEMで表示される。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、少なくとも部分的に一部のアミロイドベータ(Aβ)ペプチド変異体、変異体をコードするベクター、または変異体Aβペプチドのタンパク質の発現を可能にするミニ遺伝子をコードするベクターは、内因性Aβペプチドの凝集を抑制できるという驚くべき発見に基づく。また、前記変異体をコードするベクターまたは変異体Aβペプチドのタンパク質の発現を可能にするミニ遺伝子をコードするベクターを投与することは、驚くべきことに内因性Aβペプチドオリゴマー、プロトフィブリル、フィブリルまたはプラークの形成および内因性Aβペプチド凝集体の内因性形成の細胞毒性を防止または減少させるものと明かにされた。本願に開示されているように、Aβペプチド変異体をコードするベクターまたは変異体Aβペプチドのタンパク質の発現を可能にするミニ遺伝子をコードするベクターを含む治療学的有効量の組成物の投与は、タンパク質ミスフォールディング、内因性Aβペプチドの凝集、アミロイドプラークの形成、神経炎症、神経退行性、ニューロン損失またはシナプス損失を予防または減少させることができ;タウのレベル(tau level)、タウのリン酸化またはリン酸化されたタウのレベルを減少させることができ;タウのシーディング(seeding)または内因性Aβペプチドのシーディングを鈍化させることができ/できるか、または認知改善を促進することができる。
【0038】
従って、一部の実施様態において、Aβペプチド変異体をコードするベクターまたは変異体Aβペプチドのタンパク質の発現を可能にするミニ遺伝子をコードするベクターを含む治療学的有効量の組成物を投与する段階を含む、対象体から神経退行性疾患、障害または病態を治療または予防するか、または生体内で内因性Aβペプチドの凝集を抑制するための方法および組成物が開示される。一部の実施様態において、神経退行性疾患、障害または病態は、アルツハイマー病、パーキンソン病、パーキンソン病認知症、血管性認知症、脳アミロイド血管症、レビー小体型認知症、慢性外傷性脳症、ダウン症候群、および/または病的老化である。一部の実施様態において、神経退行性疾患、障害または病態はアルツハイマー病である。一部の実施様態において、対象体は、神経退行性疾患、障害または病態、神経退行性疾患、障害または病態の症状で先立って診断されたか、または神経退行性疾患、障害または病態を有する危険がある。
【0039】
I.神経退行性疾患、障害および病態
一部の実施様態において、神経退行性疾患を治療する方法が開示される。本願において用いられる用語「神経退行性疾患、障害または病態」または「神経退行性疾患」は、主にヒトの脳のニューロンに影響を及ぼしてニューロンの構造または機能の漸進的な損失(ニューロンの死滅を含む)をもたらす状態を指称する。神経退行性疾患は具体的に下記の類型であってもよいが、これに制限されることはない:アルツハイマー病、パーキンソン病、パーキンソン病認知症、血管性認知症、脳アミロイド血管症、レビー小体型認知症、慢性外傷性脳症、ダウン症候群、および/または病的老化。一部の実施様態において、神経退行性疾患はアルツハイマー病である。
【0040】
神経退行性疾患は、脳または末梢神経系の神経細胞の進行性変性および/または死滅をもたらす不治の衰弱状態である。これは動きまたは精神機能(認知症という)に問題を引き起こす。認知症は日常生活と活動に支障を与える程度に認知機能、例えば、思考、記憶、推論および行動能力の喪失である。認知症はヒトの機能に影響を及ぼし始めたばかりの最も軽微な段階から日常生活の基本活動を他人に完全に依存しなければならない最も深刻な段階まで重症度の範囲が広い。
【0041】
認知症の原因は、発生し得る脳の変化の類型に応じて多様であり得る。認知症は神経退行性疾患の最も大きい負担を担当し、アルツハイマー病は認知症事例の約60~70%を示す。2016年には、約540万人のアメリカ人がアルツハイマー病を病んでいた。他の認知症としては、レビー小体型認知症、前側頭葉障害、および血管性認知症を含む。一部の場合には、患者が二つ以上の類型の認知症が結合された混合型認知症を有する場合がある。例えば、一部の患者はアルツハイマー病と血管性認知症を全て有している。
【0042】
アルツハイマー病(AD)は大脳皮質および特定皮質の下部構造でニューロンおよびシナプスの損失をもたらす慢性神経退行性疾患であって、側頭葉、頭頂葉、前頭葉皮質および帯状回(cingulate gyrus)の一部が総体的に委縮し、退行(degeneration)される。退行は青斑のような脳幹核にも存在する可能性がある。MRIとPETを用いた研究では、アルツハイマー病患者が軽微な認知障害からアルツハイマー病へ進行することによって健康な老人の類似したイメージと比較してアルツハイマー患者の特定の脳領域の大きさが減少したことを記録した。アルツハイマー病病理学は、主に正常な脳機能と化学作用を妨害し、神経伝達物質の相当な欠乏をもたらして脳機能の漸進的な損失をもたらす老人性プラークおよび神経線維のもつれの存在を特徴とする。非正常的な量のベータ-アミロイドとタウタンパク質が脳で形成され、脳細胞を蚕食し始めてプラークと神経線維のもつれを形成する。アミロイドプラークと神経線維のもつれは両方ともアルツハイマー病にかかった脳、特に海馬で顕微鏡にて明確に見られる。多数の高齢人から老化の結果で一部のプラークともつれが発生するが、アルツハイマー病患者の脳は側頭葉のような特定脳領域にさらに多い量のプラークともつれを有する。
【0043】
最もありがちな初期症状としては、最近の出来事を記憶するのに経験する困難である。アルツハイマー病が進行するにつれて、症状は、言語問題、方向感覚の喪失、気分の変化、動機喪失、セルフケアの誤った管理および行動問題を含み得る。さらに深刻なアルツハイマー病患者はたびたび家族と社会から退く。漸次的に、身体機能を喪失し、究極的に死亡に至ることになる。進行速度は多様であり得るが、アルツハイマー病診断の後、一般的な期待寿命は3年から9年である。
【0044】
A.アルツハイマー病の過程
疾患の過程は、認知および機能障害の漸進的なパターンとともに明らかな段階に分けられる。前臨床アルツハイマー病はPETまたはCSF検査によって検出されたアミロイドのようなアルツハイマー病に対するバイオマーカーの存在を特徴とする。軽度認知障害(MCI)はアルツハイマー病症状の発病を特徴とする。これはたびたび正常な老化と認知症との間の過渡期段階であると明らかにされた。MCIは多様な症状を示すことができ、記憶喪失が主な症状である場合、「記憶喪失性MCI」とし、アルツハイマー病の前駆段階として頻繁に見なされる。最初の症状はたびたび老化やストレスに起因すると誤って思うが、詳細な神経心理学的検査を通じて、アルツハイマー病の診断のための臨床的基準が満たされる最大8年前に軽微な認知障害が現れることがある。最も著しい欠点は短期記憶喪失であって、最近学んだ事実を記憶するのに困難であり、新たな情報を習得できないものと現れる。注意力、計画、柔軟性および抽象的思考のような実行機能の微妙な問題または意味論的記憶、意味記憶および概念関係の損傷も初期アルツハイマー病の症状であり得る。無関心も観察されることがあり、疾患が進められる間、最も持続的な神経精神科的症状として残る。抑うつ症状、過敏性、微妙な記憶力障害に対する認識減少もよくみられる。
【0045】
アルツハイマー病患者における学習および記憶障害の増加は、結局のところ、最終的な診断に繋がる。少数割合の患者において、言語、実行機能、知覚(認知不能症)または動作実行(運動不能症)の困難性が記憶力の問題よりさらに顕著である。アルツハイマー病はすべてのメモリー容量に同様に影響を与えるものではない。個体の人生に関する古い記憶(エピソード的記憶)、学習された事実(意味論的記憶)および暗示的記憶(物事を行う方法に対する身体の記憶)は、新たな事実や記憶より影響を受けない。言語問題は、主に語彙減少と単語流暢性の減少に特徴づけられ、口頭および書面言語の全般的な欠陥に繋がる。この段階においては、一般的に基本思考は適切に伝えることができる。微細な運動作業を行う間、特定動きの調整および計画の困難性または運動不能症が示されることがあるが、目立たない可能性がある。アルツハイマー病が進められることにつれて患者は多くの作業を独立的に行い続けることができるが、認知的に最も要求される活動には助けや監督が必要である場合がある。
【0046】
漸進的な悪化は、結局のところ、患者が日常生活の最も一般的な活動を遂行できなくなり、独立性を妨害する。語彙を記憶することができないことから言語障害が明らかになることがあり、これは、頻繁な誤った単語代替または意訳に繋がる。読み取りおよび書き能力は漸進的に喪失される場合がある。アルツハイマー病が進められることにつれて複雑な運動配列は不十分に調整される可能性があるので、転倒の危険が増加する。記憶力問題が悪化し、長期記憶力が損傷される可能性がある。行動および神経精神科的な変化がさらに広く広がり得、彷徨、過敏、泣きに繋がる不安定な影響、計画されていない攻撃性爆発または介護への抵抗が含まれ得る。日没症候群(Sundowning)が示されることもある。アルツハイマー病患者の約30%は錯視誤認およびその他の妄想症状をみせる。患者はまた疾病不覚症(anosognosia)と知られた疾患過程と限界に対する洞察力を喪失することもある。
【0047】
アルツハイマー病の最終の段階で、患者は介護人に全面的に依存することがある。言語は単なる句や一の単語にまで減少する場合があり、結局、言葉を完全に失うことになる。極度の無関心と脱力と同様に、攻撃性は依然として存在する可能性がある。筋肉量と運動性は患者が寝たきりになり、自分で食事をすることができない時点まで悪化する場合がある。死亡原因は一般的に疾患自体よりは感染や肺炎のような外部要因である。
【0048】
B.アルツハイマー病の原因
双子および家族研究の検討に基づいたアルツハイマー病の遺伝的遺伝性の範囲は49%乃至79%に至る。事例の約0.1%は早期発病家族性アルツハイマー病と知られた65歳以前に発病する、家族形態の常染色体優性遺伝である。大部分の常染色体優性家族性アルツハイマー病の事例は、三種類の遺伝子:アミロイド前駆体タンパク質(APP)とプレセニリン1および2をコードする遺伝子のうちの一つの突然変異に起因してもよい。APPおよびプレセニリン遺伝子の大部分の突然変異は、老人性プラークの主成分であるベータ-アミロイドタンパク質(A-ベータタンパク質またはAβタンパク質)の生成を増加させるか、またはAβ42タンパク質(42つのアミノ酸で構成される)対Aβ40タンパク質(40個のアミノ酸で構成される)の割合を増加させる。一部の突然変異は、総Aβレベルを増加させることなくAβ42およびAβ40のような他の主な形態のアミロイドベータタンパク質との間の割合を改造する。
【0049】
大部分のアルツハイマー病の事例は常染色体優性遺伝を示さず、環境および遺伝的差異が危険要因として作用する可能性がある散発性アルツハイマー病と言う。最もよく知られた遺伝的危険因子は、アポ脂質タンパク質E(apolipoprotein E;APOE)のε4対立遺伝子の遺伝である。アルツハイマー病患者の40乃至80%は少なくとも一つのAPOEε4対立遺伝子を有している。APOEε4対立遺伝子は異形接合体で3倍、同型接合体で15倍まで疾患の危険を増加させる。ゲノム-全体関連研究(Genome-wide Association Studies;GWAS)は、アルツハイマー病の危険に影響を及ぼすものと見られる追加遺伝子で30個以上の領域を発見した。これら遺伝子は、ABCA7、SORL1、CASS4、CELF1、FERMT2、HLA-DRB5、INPP5D、MEF2C、NME8、PTK2B、SORL1、ZCWPW1、SLC24A4、CLU、PICALM、CR1、BIN1、MS4A、ABCA7、EPHA1およびCD2APを含むが、これに制限されるものではない。アルツハイマー病の危険にかかる追加遺伝子は、全文が本願に参照として含まれた文献[参照:BW Kunkleの他.、Nature Genetics 51、414~430(2019)]から見つけることができる。TREM2遺伝子の対立遺伝子はまたアルツハイマー発病の危険が3乃至5倍さらに高いものと関連している。一部のTREM2変異体における脳のミクログリア細胞は、存在するベータ-アミロイドの量をこれ以上調節することができない。Mukherjeeなどの2018年の研究(遺伝子データおよび認知的に定義された後期発病アルツハイマー病の下位グループ。Mol Psychiatry(2018)、具体的に、本明細書に全文が参照として含まれ、アルツハイマー病を記憶、言語、時空間および実行機能を含む6種類の範疇に区分して30個のSNPを追加する)によると、多くの単一塩基多形成(SNP)がアルツハイマー病と関連している。
【0050】
日本血統の家族性アルツハイマー病は大阪突然変異として知られたAPPのコドン693の欠失突然変異と関連しているものと明らかにされた。この突然変異を有した同型接合体はアルツハイマー病を発病させる。突然変異はAβオリゴマー化を加速化するが、タンパク質はアミロイドフィブリルを形成しない。この突然変異を発現するマウスは、大阪突然変異によるアルツハイマー病のすべての一般的な病理を有している。
【0051】
APP遺伝子のコドン673におけるアラニンからバリンへの置換突然変異は、おそらくAβの形成を促進することにより、アミロイドフィブリルの発達とともに同型接合体キャリア(carrier)でアルツハイマー病の危険を増加させるのに対し、A673Vの異形接合体キャリアは、アルツハイマー病から保護され得る。この置換は、ベータ-セクレターゼ切断部位に隣接し、アミロイド生成経路を通じてベータ-セクレターゼによるAPP切断の増加をもたらす可能性がある。対照的に、673番の位置で同一のアラニンをスレオニン(A673T)に置換すれば、アルツハイマー病を予防することができる。この置換は、ベータ-セクレターゼ切断部位に隣接し、試験管内でアミロイドベータの形成を40%減少させることができる。
【0052】
また、細胞外Aβ沈殿物がアルツハイマー病の根本原因であるという理論も提示された。この理論を裏付けるのは、21番染色体にあるAPP遺伝子の位置だけでなく、追加の遺伝子コピーを有した多数の21番三染色体性(ダウン症候群)患者が40歳までADの最も初期症状をみせるという事実である。また、APOE4は、アルツハイマー病の主な遺伝的危険因子である(文献参照:例えば、M.Safiehの他、BMC Medicine 17:64(2019)、およびC.G.Fernandezの他、Front.Aging Neuroscience 11:14(2019)、具体的に、これらの文献は、全文が本明細書に参照として含まれる)。ヒトAPP遺伝子の突然変異形態を発現する形質転換マウスは、原線維性アミロイドプラークと空間学習欠陥があるアルツハイマー病-類似脳の病理を発病させる。
【0053】
Aβ沈殿物はAβ(A-ベータペプチドまたはベータ-アミロイドと指称する)から形成され、長さは一般的に39乃至43個のアミノ酸である。Aβペプチドは細胞膜を貫通する膜貫通タンパク質(APP)と呼ばれるさらに大きいタンパク質の断片である。APPは正常なニューロンの成長、生存および損傷後、復旧で役割をするものと見られる。アルツハイマー病で、ガンマ-セクレターゼとベータ-セクレターゼは、タンパク質の分解過程でともに作用してAPPをさらに小さな断片に分けさせる。これらの断片は、老人性プラークまたはアミロイドプラークとして知られた稠密な細胞外沈殿物に自己組み立てすることができるベータ-アミロイドフィブリルを生成する。プラークは、ベータ-アミロイドペプチドとニューロンの外部および周辺の細胞物質からなった稠密かつ大部分不溶性の沈殿物である。実験的なワクチンは、初期ヒト実験でアミロイドプラークを除去するものと明らかになったが、認知症に対して有意な影響を与えてはおらず、これは、非-プラークAβオリゴマーがAβの主な病原性形態であることを示すことができる。アミロイド-由来拡散性リガンドともするこれらの毒性オリゴマーは、ニューロンの表面受容体に結合してシナプスの構造を変化させることで神経通信を妨害する。
【0054】
他の研究においては、タウタンパク質異常がアルツハイマー病カスケード(AD cascade)を開始すると提案している。すべてのニューロンには、部分的に微細小管で構成された細胞骨格がある。タウタンパク質はリン酸化されるとき、微細小管を安定化させる。アルツハイマー病モデルにおけるタウは化学的変化を経て過リン酸化される。過リン酸化されたタウはタウの他の糸と対をなし始める。結局、神経細胞体の内部に神経線維のもつれを形成する。もつれ(神経原線維のもつれ)は過リン酸化されて細胞内部に蓄積される微細小管-関連タンパク質タウの集合体である。もつれが発生すれば、微細小管が分解され、細胞の細胞骨格構造が破壊し、ニューロンの輸送システムを崩壊する。最初には、ニューロンの間の生化学的通信の誤作動を引き起こし、後には細胞の死滅を引き起こすことができる。病原性タウはまた転位因子調節障害を通じてニューロン死滅を誘発することがある。
【0055】
年齢はアルツハイマー病の重要な危険要素である。脳の年齢-関連変化は、ニューロンに害を及ぼして他の類型の脳細胞に影響を及ぼし、アルツハイマー損傷に寄与することがある。年齢-関連変化は、脳の特定部分の委縮(収縮)、炎症、血管損傷、自由ラジカルとする不安定な分子生成、およびミトコンドリア機能障害(細胞内エネルギー生産の崩壊)を含む。従って、高齢(60歳以上)はアルツハイマー病の危険因子である。
【0056】
アルツハイマー病の原因を説明するために提示されたいくつかの追加理論がある。例えば、炎症性仮説は、アルツハイマー病が神経退行性で絶頂に達する脳で自体的に持続する進行性炎症によって誘発されるということである。一部のモデルにおいては、感染性ウイルスおよび微生物作用剤がAβとともに作用して神経炎症に対する陽性フィードバックメカニズムを生成するものと思われる。文献参照[A.L.Komaroff、JAMA 324(3):239~240(2020)]。血液-脳関門(BBB)の機能低下が関わり得るという神経血管仮説も提案されている。イオン性銅、鉄および亜鉛のような生体金属の細胞恒常性はアルツハイマー病においても破壊され;これらのイオンは、タウ、APPおよびAPOEに影響を及ぼし、またこれらの影響を受け、これらの調節障害は病理学に寄与できる酸化ストレスを誘発し得る。また他の仮説は、老化の間、希突起グリア細胞および関連ミエリンの機能障害が軸索損傷に寄与して副作用としてアミロイドの生成およびタウの過リン酸化を誘発するということである。
【0057】
C.アルツハイマー病の診断
アルツハイマー病は、一般的に患者の病歴、親戚の病歴および行動観察に基づいて診断される。特徴的な神経学的および神経心理学的特徴の存在および代替条件の不在がこれを支持する。コンピュータ断層撮影または磁気共鳴映像および単一-光子放出コンピュータ断層撮影または陽電子放出断層撮影を用いた高度医療映像を用いて、他の脳の病理または認知症の下位類型を排除することができる。また、軽微な認知障害と代表される前駆段階でアルツハイマー病への転換を予測することができる。
【0058】
アルツハイマー病を診断するために米国国立老化研究所(National Institute on Aging)およびアルツハイマー協会(Alzheimer’s Association)ワークグループの研究フレームワークは、現在のところ、主なアルツハイマー病バイオマーカーを、病理学的変化類型に基づいて三種類の範疇であるβ-アミロイド(A)、病理学的タウ(T)および神経退行性(N)に分けるバイオマーカー分類体系を用いる。ATN命名法は、去る10年間、アミロイド、タウおよび神経退行性マーカーとの間の関係に対する経験的な観察に基づく概念的なフレームワークを示す。「A」はアミロイドプラークのアミロイド陽電子放出断層撮影(PET)映像によって、またはAβ42またはAβ42対Aβ40の割合として脳脊髄液(CSF)で測定されたアミロイドβ(Aβ)を指称する。「T」は、実質神経線維のもつれのCSFリン酸化されたタウまたはタウPET映像化によって測定されたタウ病理学を指称する。「N」は、例えば、海馬体積または皮質体積または厚さによって測定される神経退行性または神経損傷および機能障害を指称する。「A」+「T」は、アルツハイマー病に対する診断的特異性を有するものと見なされるのに対し、「N」は、アルツハイマー病の他に任意の数の病因を反映することができるので、アルツハイマー病の診断に特異的ではない。ATNシステムは、文献(DS Knopmanの他.、Alzheimer’s&Dement.14(4):563~575(2018)、具体的に、全文が本願に参照として含まれる)に詳細に記載されている。
【0059】
記憶力検査を含む知的機能の評価は疾患の状態をさらに特性化することができる。医療機関は診断プロセスを標準化するために診断基準を構築した。1984年国立神経およびコミュニケーション障害および脳卒中研究所(NINCDS)とアルツハイマー病および関連障害協会(ADRDA、現在、アルツハイマー協会と知られている)は、最も一般的に用いられるNINCDS-ADRDAアルツハイマーの基準を確立し、認知障害および疑われる認知症症候群は、可能であるまたは蓋然性のあるアルツハイマー病の臨床的診断のための神経心理学的検査により確認されることを要求する。記憶力、言語、知覚能力、注意力、運動能力、方向性、問題解決および実行機能能力のような8種類の知的ドメインがアルツハイマー病において最も一般的に損傷される。これらのドメインは、米国精神科協会(American Psychiatric Association)で発行した精神障害診断および統計マニュアル(DSM-IV-TR)に並べられたNINCDS-ADRDAアルツハイマーの基準と同一である。診断の基準と明確な組織病理学的な確認との間に優れた統計的信頼性と妥当性が示された。
【0060】
2011年米国国立老化研究所/アルツハイマー協会は、診断および治療に関する研究を進めるための高度なガイドラインを提供するために臨床医と科学者のためのアップデートされたアプローチを発表した。2011年のガイドラインはいくつかの重要な点において1984年の診断基準と異なる。これらの団体は、アルツハイマー病が3段階、すなわち無症状の初期前臨床段階;軽度認知障害の中間段階;および認知症症状が現れる最終段階のスペクトルに進行されるという点を認識する。1984年の基準は、認知症の最終段階である疾患の一段階のみを扱い;最初のまたは唯一の主な症状である記憶喪失を超えてアルツハイマー認知症の基準を拡張する。これらの団体は、単語探し能力や判断力のような認知の別の局面が先に損傷され得ることを認識する。1984年の基準は、アルツハイマー認知症の核心的な特徴として記憶喪失に焦点を置き;アルツハイマー認知症と非アルツハイマー認知症の間だけでなく、アルツハイマーと血管疾患のような発病に影響を及ぼす可能性がある障害の間の相違点と関連性に関するさらなる理解を反映する。1984年にはこのような関係がよく認識または理解されておらず、アルツハイマー疾患を診断するために根本的な脳疾患の指標であるバイオマーカーの潜在的使用を認識する。しかし、ガイドラインには、バイオマーカーが臨床設定よりは研究にのみほぼ独占的に用いられると明示されている。これらのバイオマーカーは、1984年に元々の基準が開発されたときに存在しておらず、一般的に、死亡後の剖検を通じて診断を確認した。
【0061】
ミニメンタルステート検査(MMSE)のような神経心理学的検査は、診断に必要な認知障害を評価するのに広く用いられる。初期のアルツハイマー病における神経学的検査は、認知症の別の原因を含めて別の疾患過程の結果と変わらない可能性がある明白な認知障害を除いては、一般的に正常な結果を提供する。追加の神経学的検査はアルツハイマー病およびその他の疾患の鑑別診断に重要である。家族構成員とのインタビューも疾患の評価に活用される。介護人は日常生活能力だけでなく、時間経過による患者の精神機能低下に関する重要な情報を提供することができる。介護者の観点は特に重要である場合があり、アルツハイマー病患者は、一般的に自分の欠陥を認識できないためである。
【0062】
補充検査は疾患の特徴に関する追加の情報を提供するか、または他の診断を排除するのに用いることができる。血液検査はアルツハイマー病ではない認知症の別の原因を識別することができる。また、甲状腺機能検査遂行、B12評価、梅毒排除、代謝性問題排除(腎機能、電解質レベルおよび糖尿病検査を含む)、重金属(例えば、鉛、水銀)レベルおよび貧血評価が一般的である。抑うつ症はアルツハイマー病、認知障害の初期兆候と同時に、またはその上、原因である場合もあるため、抑うつ症に関する審理検査も用いることができる。
【0063】
II.Aβペプチド変異体
一部の実施様態において、開示されている組成物は少なくとも一つのタンパク質性分子を含む。一部の実施様態において、タンパク質性分子は、アミロイドベータ(Aβ)ペプチドまたはその変異体を含む。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体を含むタンパク質性分子はポリヌクレオチドによってコードされる。一部の実施様態において、ポリヌクレオチドはベクターによってコードされる。一部の実施様態において、ポリヌクレオチドは、Aβペプチドのタンパク質の発現を可能にするミニ遺伝子をコードするベクターによってコードされる。従って、一部の実施様態において、野生型または変異体Aβペプチドまたはその断片または機能的誘導体は、ベクターによってコードされる。一部の実施様態において、Aβペプチドまたはその断片または機能的誘導体は、Aβペプチドのタンパク質の発現を可能にするミニ遺伝子をコードするベクターによってコードされる。
【0064】
Aβペプチドはニューロンの膜を通じて透過する膜貫通タンパク質(APP)というさらに大きいタンパク質の断片である。代表的なmRNA APP配列は、GenBank(登録商標)受託番号NM_000484で見出すことができ、次のアミノ酸配列を含む。
【0065】
MLPGLALLLLAAWTARALEVPTDGNAGLLAEPQIAMFCGRLNMHMNVQNGKWDSDPSGTKTCIDTKEGILQYCQEVYPELQITNVVEANQPVTIQNWCKRGRKQCKTHPHFVIPYRCLVGEFVSDALLVPDKCKFLHQERMDVCETHLHWHTVAKETCSEKSTNLHDYGMLLPCGIDKFRGVEFVCCPLAEESDNVDSADAEEDDSDVWWGGADTDYADGSEDKVVEVAEEEEVAEVEEEEADDDEDDEDGDEVEEEAEEPYEEATERTTSIATTTTTTTESVEEVVREVCSEQAETGPCRAMISRWYFDVTEGKCAPFFYGGCGGNRNNFDTEEYCMAVCGSAMSQSLLKTTQEPLARDPVKLPTTAASTPDAVDKYLETPGDENEHAHFQKAKERLEAKHRERMSQVMREWEEAERQAKNLPKADKKAVIQHFQEKVESLEQEAANERQQLVETHMARVEAMLNDRRRLALENYITALQAVPPRPRHVFNMLKKYVRAEQKDRQHTLKHFEHVRMVDPKKAAQIRSQVMTHLRVIYERMNQSLSLLYNVPAVAEEIQDEVDELLQKEQNYSDDVLANMISEPRISYGNDALMPSLTETKTTVELLPVNGEFSLDDLQPWHSFGADSVPANTENEVEPVDARPAADRGLTTRPGSGLTNIKTEEISEVKMDAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIATVIVITLVMLKKKQYTSIHHGVVEVDAAVTPEERHLSKMQQNGYENPTYKFFEQMQN(配列番号:1)
【0066】
ガンマ-セクレターゼとベータ-セクレターゼはタンパク質の分解過程においてともに作用してAPPがAβ(アミロイドベータまたはA-ベータ)ペプチドと知られたさらに小さいアミノ酸断片に分けるようにする。AβペプチドのC-末端を生成するガンマ-セクレターゼは、APPの膜貫通領域内で切断し、長さが30乃至51個のアミノ酸残基の多数のC-末端断片同型を生成することができる。これらのC-末端断片とは別途に、配列DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA(配列番号:2)を含む42つのアミノ酸Aβペプチド断片もAPPの切断によって生成される。これらの断片はプラークとして知られた稠密な細胞外沈着物で自己組み立てることができるベータ-アミロイドフィブリルを生成する。Aβ42はさらに疎水性であるため、最もアミロイド生成形態のペプチドである。しかし、中央アミノ酸配列KLVFFAE(配列番号:39)は、それ自体でアミロイドを形成するものと知られており、アミロイドフィブリルのコアを形成することができる。
【0067】
従って、本開示内容の一部の実施様態において、開示されている組成物は、野生型Aβペプチドを含む。本開示内容の一部の実施様態において、開示されている組成物は、野生型Aβペプチドの変異体を含む。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体は、内因性Aβペプチドの凝集を促進する。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体は、オリゴマー、プロトフィブリル、フィブリルまたはプラークで自己組み立てされる。一部の実施様態において、Aβペプチド変異体は、内因性Aβペプチドの凝集を防止する。一部の実施様態において、Aβペプチド変異体は、オリゴマー、プロトフィブリル、フィブリルまたはプラークで自己組み立てされない。一部の実施様態において、Aβペプチド変異体は残っているAβペプチド凝集体の細胞毒性を減少させる。一部の実施様態において、本願に開示されている全長Aβの変異体は、Aβに対する親和度および特異性を増加させるために多重凝集ドメインの標的化を同時に許容する。
【0068】
一部の実施様態において、野生型Aβペプチドは、DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA(配列番号:2)、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施様態において、本開示内容の野生型Aβペプチドは、配列番号:2、またはその断片または機能的誘導体を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成される。一部の実施様態において、配列番号:2の断片または機能的誘導体は、KLVFFAE(配列番号:39)と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列を含む。
【0069】
一部の実施様態において、Aβペプチド変異体は、
、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列を含み、ここで太字の残基は、野生型Aβペプチドからの置換を示す。一部の実施様態において、本開示内容のAβペプチド変異体は、配列番号:3、またはその断片または機能的誘導体を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成される。一部の実施様態において、配列番号:3の断片または機能的誘導体は、KLVDFAE(配列番号:10)と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列を含む。
【0070】
一部の実施様態において、Aβペプチド変異体は、
、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列を含み、ここで太字の残基は、野生型Aβペプチドからの置換を示す。一部の実施様態において、本開示内容のAβペプチド変異体は、配列番号:4、またはその断片または機能的誘導体を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成される。一部の実施様態において、配列番号:4の断片または機能的誘導体は、KLVFPAE(配列番号:11)と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列を含む。
【0071】
一部の実施様態において、Aβペプチド変異体は、
、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列を含み、ここで太字の残基は、野生型Aβペプチドからの置換を示す。一部の実施様態において、本開示内容のAβペプチド変異体は、配列番号:5、またはその断片または機能的誘導体を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成される。一部の実施様態において、配列番号:5の断片または機能的誘導体は、KLVDFAE(配列番号:10)と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列を含む。
【0072】
一部の実施様態において、Aβペプチド変異体は、
、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列を含み、ここで太字の残基は、野生型Aβペプチドからの置換を示す。一部の実施様態において、本開示内容のAβペプチド変異体は、配列番号:6、またはその断片または機能的誘導体を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成される。一部の実施様態において、配列番号:6の断片または機能的誘導体はKLVPFAE(配列番号:12)と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列を含む。
【0073】
一部の実施様態において、Aβペプチド変異体は、
、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列を含み、ここで太字の残基は、野生型Aβペプチドからの置換を示す。一部の実施様態において、本開示内容のAβペプチド変異体は、配列番号:7、またはその断片または機能的誘導体を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成される。一部の実施様態において、配列番号:7の断片または機能的誘導体は、KLPFFAE(配列番号:65)と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施様態において、Aβペプチド変異体は、配列番号:7を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成されない。
【0074】
一部の実施様態において、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、または配列番号:7を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成される野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体はN-末端切断を含む。一部の実施様態において、N-末端切断は1乃至22つのアミノ酸切断を含む。一部の実施様態において、N-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22つのアミノ酸切断を含む。
【0075】
一部の実施様態において、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、または配列番号:7を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成される野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体はC-末端切断を含む。一部の実施様態において、C-末端切断は1乃至27個のアミノ酸切断を含む。一部の実施様態において、C-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個のアミノ酸切断を含む。
【0076】
一部の実施様態において、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、または配列番号:7を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成される野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体はN-末端切断およびC-末端切断を含む。一部の実施様態において、N-末端切断は1乃至22つのアミノ酸切断を含み、C-末端切断は1乃至27個のアミノ酸切断を含む。一部の実施様態において、N-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22つのアミノ酸切断を含み、C-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個のアミノ酸切断を含む。
【0077】
一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体はポリペプチドを含む。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体は、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施様態において、ベクターは、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドをコードする。一部の実施様態において、ベクターまたはベクターによってコードされるポリヌクレオチドは、信号ペプチドに融合された野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードする。一部の実施様態において、ベクターまたはベクターによってコードされるポリヌクレオチドは、全体APPベータ-カルボキシル-末端断片(β-CTF)をコードし、β-CTFのN-末端で信号ペプチドに融合された野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体アミノ酸配列を含むアミロイド前駆体タンパク質の99 C-末端アミノ酸を含む。
【0078】
一部の実施様態において、ベクターまたはベクターによってコードされるポリヌクレオチドは、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするミニ遺伝子をコードする。一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、β-CTFのN-末端で信号ペプチドに融合された切断されたβ-CTFを含むアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列をコードする。一部の実施様態において、切断されたβ-CTFは、細胞外および膜貫通アミノ酸のすべてが、膜貫通ドメインアミノ酸配列、および細胞質アミノ酸配列を含む野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体アミノ酸配列(またはその断片または機能的誘導体)を含む。
【0079】
従って、一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、本願に開示されている任意の信号ペプチド、本願に開示されている野生型Aβペプチドまたは任意のAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体、本願に開示されている任意の膜貫通ドメインアミノ酸配列、および本願に開示されている任意の細胞質アミノ酸配列をコードすることができる。一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、本願に開示されている信号ペプチド、本願に開示されている野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体、本願に開示されている膜貫通ドメインアミノ酸配列、および本願に開示されている細胞質アミノ酸配列を5’から3’方向にコードする。
【0080】
一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、
、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含み、ここで太字は、Aβペプチド変異体アミノ酸配列に該当し、下線を引いたテキストは、膜貫通ドメインアミノ酸配列に該当し、変形されていないテキストは、細胞質アミノ酸配列に該当する。一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、配列番号:8、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37、または配列番号:38のアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成される。
【0081】
一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、
、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含み、ここで太字は、Aβペプチド変異体アミノ酸配列に該当し、下線を引いたテキストは、膜貫通ドメインアミノ酸配列に該当し、変形されていないテキストは、細胞質アミノ酸配列に該当する。一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、配列番号:66、配列番号:67、配列番号:68、配列番号:69、または配列番号:70のアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成される。
【0082】
一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、
、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含み、ここで太字は、Aβペプチド変異体アミノ酸配列に該当し、下線を引いたテキストは、膜貫通ドメインアミノ酸配列に該当し、変形されていないテキストは、細胞質アミノ酸配列に該当する。一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、配列番号:71、配列番号:72、配列番号:73、配列番号:74、または配列番号:75のアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成される。
【0083】
一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、
、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含み、ここで太字は、Aβペプチド変異体アミノ酸配列に該当し、下線を引いたテキストは、膜貫通ドメインアミノ酸配列に該当し、変形されていないテキストは、細胞質アミノ酸配列に該当する。一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、配列番号:76、配列番号:77、配列番号:78、配列番号:79、または配列番号:80のアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成される。
【0084】
一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、
、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含み、ここで太字は、Aβペプチド変異体アミノ酸配列に該当し、下線を引いたテキストは、膜貫通ドメインアミノ酸配列に該当し、変形されていないテキストは、細胞質アミノ酸配列に該当する。一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、配列番号:81、配列番号:82、配列番号:83、配列番号:84、または配列番号:85のアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成される。
【0085】
一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、
、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含み、ここで太字は、野生型Aβ42ペプチドアミノ酸配列に該当し、下線を引いたテキストは、膜貫通ドメインアミノ酸配列に該当し、変形されていないテキストは、細胞質アミノ酸配列に該当する。一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、または配列番号:17のアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成される。
【0086】
一部の実施様態において、膜貫通ドメインは、Aβペプチド変異体の13個のC-末端アミノ酸および追加10個のアミノ酸に相応するヌクレオチド配列を含む。従って、当業者は、Aβペプチド変異体のアミノ酸配列が膜貫通ドメインのアミノ酸配列の一部を含むかまたは重複することを認知するだろう。一部の実施様態において、Aβペプチド変異体をコードするミニ遺伝子の膜貫通部分のアミノ酸配列は、
を含み、ここで太字は、Aβペプチド変異体のアミノ酸配列と重なる膜貫通ドメインアミノ酸配列の一部を示す。一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、配列番号:9、配列番号:18、配列番号:86、または配列番号:87のうちの一つと少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列に相応する膜貫通配列を含む。
【0087】
一部の実施様態において、細胞質配列は、膜固定(membrane anchoring)、ガンマ-セクレターゼ切断の促進、および/またはAβペプチドの細胞外放出のためのアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含む。一部の実施様態において、細胞質配列は、2つのリジン残基(例えば、KK)を含むアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含む。一部の実施様態において、細胞質配列は、3つのリジン残基(例えば、KKK)を含むアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含む。細胞質アミノ酸配列が3つのリジン残基を含む一部の実施様態において、一番目または5’リジンはアルギニン残基(例えば、RKK)に置換されてもよい。一部の実施様態において、信号ペプチド配列は、文献[参照:L.Koberの他、Biotechnology and Bioengineering 110(4):1164~1173(2013)、具体的に、全文が本願に参照として含まれる]に記載されているアミノ酸配列を含む。細胞表面へのAβ-含有プロペプチドのトラフィッキング(trafficking)を保障するのに十分な任意の信号配列は、内因性プロテアーゼによって切断されてAβペプチドN-末端を露出させることがあり、本開示内容のポリヌクレオチド構築物で用いるために考慮される。
【0088】
非制限的な例として、一部の実施様態において、信号ペプチド配列は、ガウシアルシフェラーゼ信号ペプチド(Gaussia luciferase signal peptide)を含むアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含み、ここで、ガウシアルシフェラーゼ信号ペプチドは、文献[参照:B.A.Tannousの他、Molecular Therapy 11(3):435~443(2005)、およびS.Knappskogの他.、J.of Biotechnology 128:705~715(2007)、具体的に、全文が本願に参照として含まれる]に記載されているように哺乳動物遺伝子発現のためにコドン-最適化され得る。一部の実施様態において、ガウシアルシフェラーゼ信号ペプチドのアミノ酸配列は、MGVKVLFALICIAVAEA(配列番号:19)を含む。配列番号:19のガウシアルシペラジェ信号ペプチドをコードする、相応するヌクレオチド配列は、ATGGGCGTGAAGGTCCTGTTCGCCCTGATTTGCATCGCCGTCGCAGAGGCA(配列番号:20)を含んでもよい。
【0089】
第2の非制限的な例として、一部の実施様態において、信号ペプチド配列は、マウス免疫グロブリン重鎖(MoIgH)信号ペプチドを含むアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含み、ここで、MoIgH信号ペプチドは、文献[参照:B.A.Tannousの他、Molecular Therapy 11(3):435~443(2005)、およびS.Knappskogの他、J.of Biotechnology 128:705~715(2007)、具体的に、全文が本願に参照として含まれる]に記載されているように哺乳動物遺伝子発現のためにコドン-最適化され得る。一部の実施様態において、MoIgH信号ペプチドのアミノ酸配列は、MGWSCIILFLVATATGVHS(配列番号:21)を含む。配列番号:21のMoIgH信号ペプチドをコードする、相応するヌクレオチド配列は、
を含んでもよく、ここで、配列番号:22の太字の部分は、MoIgH信号ペプチドのイントロン非コード配列に相当する。
【0090】
一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、配列番号:19または配列番号:21のうちの一つと少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列に相応する信号ペプチド配列を含む。
【0091】
一部の実施様態において、ポリヌクレオチドはベクターに含まれる。一部の実施様態において、ベクターはAβペプチドの細胞外空間への放出が内因性γ-セクレターゼによって調節される細胞膜で野生型または変異体Aβペプチド、またはその断片または機能的誘導体を安定的に発現する。
【0092】
A.タンパク質性組成物
本願に用いられた「タンパク質性分子」、「タンパク質性組成物」、「タンパク質性化合物」、「タンパク質性鎖」または「タンパク質性物質」は、一般的に、約200個以上のアミノ酸または遺伝子から翻訳された全長内因性配列以上のタンパク質;約100個以上のアミノ酸のポリペプチド;および/または約3乃至約100個のアミノ酸のペプチドを指称するが、これに制限されるものではない。前記に記載されているすべての「タンパク質性」という用語は、本願において相互交換的に用いられてもよい。
【0093】
本願において用いられる「タンパク質」、「ペプチド」または「ポリペプチド」は、少なくとも3個のアミノ酸残基を含む分子を意味する。本願において用いられる用語「内因性」は、生物体で自然的に発生する分子のバージョンを意味する。一部の実施様態において、内因性ペプチドは野生型ペプチドを含む。一部の実施様態において、内因性ペプチドは野生型ペプチドからのアミノ酸改造を含む。一部の実施様態において、タンパク質またはペプチドの野生型バージョンが用いられるが、本開示内容の多くの実施様態において、変形されたタンパク質またはペプチドが用いられる。前記用語は相互交換的に用いることができる。「変形されたタンパク質」または「変形されたポリペプチド」または「変異体」は、化学的構造、特にそのアミノ酸配列が野生型タンパク質またはペプチドに対して改造されたタンパク質またはペプチドを指称する。一部の実施様態において、変形された/変異体タンパク質またはペプチドは、少なくとも一つの変形された活性または機能を有する(タンパク質またはポリペプチドが多重活性または機能を有し得ることを認識する)。変形された/変異体タンパク質またはペプチドは一つの活性または機能に関して改造され得るが、別の局面においては、野生型活性または機能を保有し得るということが具体的に考慮される。
【0094】
タンパク質が本明細書において具体的に言及される場合、一般的に、天然(内因性)または組換え(変形または変異体)タンパク質またはペプチドに対する参照である。タンパク質は固有の生物体から直接分離されるか、組換えDNA/外因性発現方法によって生産されるか、固体相ペプチド合成(SPPS)またはその他の試験管内の方法によって生産され得る。多様な自動合成機が商業的に利用可能であり、公知になっているプロトコルに従って用いられてもよい。例えば、それぞれの全文が本願に具体的に参照として含まれる文献[参照:Stewart and Young、(1984);Tam et al.、(1983);Merrifield、(1986);およびBaranyおよびMerrifield(1979)]を参照する。代案的に、ペプチドまたはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が発現ベクターに挿入され、適切な宿主細胞に形質転換またはトランスフェクトされ、発現に適合する条件下でインキュベーションされる組換えDNA技術が用いられてもよい。特定の実施様態において、ペプチドをコードする核酸配列を含む単離された核酸セグメントおよび組換えベクターがある。「組換え」という用語は、ペプチドまたは特定ペプチドの名とともに用いられてもよく、これは、一般的に、試験管内で操作された核酸分子から生成されたペプチドまたはこのような分子の複製産物を意味する。
【0095】
特定の実施様態において、少なくとも一つのタンパク質性分子の大きさは、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約51、約52、約53、約54、約55、約56、約57、約58、約59、約60、約61、約62、約63、約64、約65、約66、約67、約68、約69、約70、約71、約72、約73、約74、約75、約76、約77、約78、約79、約80、約81、約82、約83、約84、約85、約86、約87、約88、約89、約90、約91、約92、約93、約94、約95、約96、約97、約98、約99、約100、約110、約120、約130、約140、約150、約160、約170、約180、約190、約200、約210、約220、約230、約240、約250、約275、約300、約325、約350、約375、約400、約425、約450、約475、約500、約525、約550、約575、約600、約625、約650、約675、約700、約725、約750、約775、約800、約825、約850、約875、約900、約925、約950、約975個、約1000個、約1100個、約1200個、約1300個、約1400個、約1500個、約1750個、約2000個、約2250個、約2500個以上のアミノ分子残基、およびこれらの範囲内の誘導可能な任意の範囲、または本願に記載または参照された、相応するアミノ 酸配列の誘導体を含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0096】
本願に記載されているペプチドは、少なくとも、最大、または正確に5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、300、400、500、550、1000個以上のアミノ酸(またはこれらの範囲内の任意の誘導可能な範囲)の固定長さであってもよい。
【0097】
特定の実施様態において、タンパク質性組成物は少なくとも一つのタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを含む。本明細書に記載されている事実上任意のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチド含有成分が本願に開示されている組成物および方法に用いられ得ることが考慮される。追加の実施様態において、タンパク質性組成物は、生体適合性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを含む。本願において用いられる用語「生体適合性」は、本願に記載されている方法および量に応じて与えられた生物体に適用または投与されるとき、有意味な副作用を引き起こさない物質を指称する。このような不適切且つ好ましくない効果は、重大な毒性または不利な免疫学的反応と同様である。好ましい実施様態において、生体適合性タンパク質-、ポリペプチド-、またはペプチド-含有組成物は、一般的に、毒素、病原体および有害な免疫原がそれぞれ本質的にない哺乳動物タンパク質またはペプチドまたは合成タンパク質またはペプチドであるだろう。
【0098】
タンパク質性組成物は、標準分子生物学的技術を通じたタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの発現、天然供給源からタンパク質性化合物の分離、またはタンパク質性物質の化学的合成を含む当業者に公知になっている任意の技術によって製造されてもよい。多様な遺伝子に対するヌクレオチドおよびタンパク質、ポリペプチドおよびペプチド配列は以前に開示されており、当業者に公知になっている電算化されたデータベースで見つけることができる。データベースのうち一つは、米国国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)のGenbankおよびGenPeptデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)である。これらの公知になっている遺伝子に対するコーディング領域は、本明細書に開示されている技術を用いるか、または当業者に公知になっているように増幅および/または発現されてもよい。代案的に、タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドの多様な市販用製剤が当業者に公知になっている。
【0099】
特定の実施様態において、タンパク質性化合物は精製されてもよい。一般的に、「精製された」とは、多様な他のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを除去するために分画化された特定またはタンパク質、ポリペプチドまたはペプチド組成物を指称するものであって、ここで組成物は、その活性を実質的に維持するものと評価(例えば、特定または目的とするタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドについて当業者に公知になっているようにタンパク質検定によって評価される)されてもよい。
【0100】
本発明に用いるのに適合するタンパク質およびペプチドは自己タンパク質またはペプチドであってもよいが、本発明は、このような自己タンパク質の使用を明確に制限しない。本願において用いられる用語「自己タンパク質、ポリペプチドまたはペプチド」は、生物体から由来するかまたは得られるタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを意味する。用いられてもよい生物体は、ウシ、爬虫類、両生類、魚類、げっ歯類、鳥類、イヌ、ネコ、菌類、植物または原核生物を含むが、これに制限されるものではなく、選ばれた動物またはヒト対象体が好まれる。「自己タンパク質、ポリペプチドまたはペプチド」は選ばれた動物またはヒト対象体に適用するための組成物の成分として用いられてもよい。
【0101】
本開示内容の組成物が神経退行性疾患を治療または予防するのに用いるのに特に適しているという点において、野生型または変異体Aβペプチドを含む好ましいタンパク質が考慮される。
【0102】
本開示内容の方法および組成物に用いるための他のタンパク質、ポリペプチド、ペプチドなどを選択するために、当業者は、好ましくは、下記特性のうち一つ以上を保有するタンパク質性物質を選択するだろう:高い百分率の可溶化されたタンパク質性物質を有した溶液を形成し;高い粘度(すなわち、約40乃至約100ポアズ)を有し;非共有混合物(すなわち、陰イオン性タンパク質と陽イオン性染料、または陽イオン性タンパク質と陰イオン性染料)である場合、染料に結合する正しい分子電荷を有し;共有架橋結合を形成するために存在する正しいアミノ酸を有し(すなわち、一つ以上のチロシン、ヒスチジン、トリプトファンおよび/またはメチオニン);および/または生体適合性である(すなわち、哺乳動物の場合、哺乳動物起源、好ましくは、ヒトの場合、ヒト起源、イヌの場合、イヌ起源など;自己由来であり、非アレルギー性および/または非免疫原性である)。
【0103】
本開示内容の組成物において、1ml当たり約0.001mg乃至約10mgの全体ポリペプチド、ペプチドおよび/またはタンパク質が存在するものと考慮される。組成物のうちタンパク質の濃度は、約、少なくとも約、または最大約0.001、0.010、0.050、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0mg/mlまたは以上(またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の範囲)であってもよい。
【0104】
B.生物学的機能性等価物
本発明によるポリヌクレオチドおよび/またはタンパク質の構造に変形および/または変化が行われてもよく、類似または改善された特性を有する分子を得つつ、このような生物学的機能性等価物も本発明に含まれる。
【0105】
1.変形されたポリヌクレオチドおよびペプチド
生物学的機能性等価物は「野生型」または標準タンパク質またはペプチドまたは「変異体」タンパク質またはペプチドをコードする能力を維持しつつ、同時に別個の配列を含むように操作されたポリヌクレオチドを含んでもよい。これは、遺伝子コードの退化、すなわち同一のアミノ酸をコードする多重コドンの存在により達成され得る。用語「機能的に同等なコドン」は、アルギニンに対する6個の異なるコドンのように同一のアミノ酸をコードするコドンを指称するために本願において用いられる。また、生物学的に同等なアミノ酸をコードするコドンまたはコドンの変化を示す「中立置換」または「中立突然変異」が考慮される。一つの例において、当業者は、ポリヌクレオチドがタンパク質をコードする能力を妨害しないつつ、制限酵素認識配列をポリヌクレオチドに取り入れることを望む場合がある。
【0106】
機能性等価物と関連して、熟練した技術者は「生物学的機能性等価物」タンパク質および/またはポリヌクレオチドの定義に内在されている、許容可能なレベルの同等な生物学的活性を有した分子を維持しつつ、分子の定義された部分内で作られ得る変化の数に制限があるという概念であることをよく理解する。従って、生物学的機能性等価物は、内因性Aβペプチド凝集を妨害し/妨害するか、または内因性Aβペプチドフィブリルまたは他の内因性Aβペプチド多量体構造の分解を促進する能力を維持する、選ばれたアミノ酸(またはコドン)に置換または突然変異があるタンパク質(およびポリヌクレオチド)および/または自己-凝集しないことから、例えば、内因性Aβペプチドの毒性および/または凝集が減少するようになる選ばれたアミノ酸(またはコドン)に置換または突然変異があるその他の内因性Aβペプチド多量体構造および/またはタンパク質(およびポリヌクレオチド)と本願において定義される。生物学的機能性等価物はまた内因性Aβペプチドの凝集および/または内因性Aβペプチドフィブリルまたは他の内因性Aβペプチドの多量体構造および/またはタンパク質(およびポリヌクレオチド)の凝集を促進する能力を維持する選ばれたアミノ酸(またはコドン)に置換または突然変異があるタンパク質(およびポリヌクレオチド)および/または、例えば、自己-凝集する選択されたアミノ酸(またはコドン)で置換または突然変異を有するタンパク質(およびポリヌクレオチド)を含んでもよい。
【0107】
一般的に、分子の長さが短いほど、機能を維持しながら分子内で作ることができる変化が少ない。さらに長いドメインには中間程度の変化があり得る。全長タンパク質はさらに多い程度の変化に対して最も大きい耐性に有するだろう。しかし、構造に大きく依存する特定分子またはドメインは、変形がほぼないかまたは全く許容されない可能性があることを理解しなければならない。
【0108】
一つの例において、ポリヌクレオチドはさらに重要な変化を有する生物学的機能性等価物(およびコード化)であってもよい。特定のアミノ酸は、例えば、抗体の抗原-結合領域、基質分子上の結合部位、受容体などのような構造との相互作用結合能力の相当な損失なく、タンパク質構造で他のアミノ酸を代替することができる。
【0109】
置換変異体は、典型的にタンパク質内の一つ以上の部位で一つのアミノ酸を他のアミノ酸に交換することを含み、他の機能または特性の損失とともにまたは損失なくポリペプチドの一つ以上の特性を調節するように設計されてもよい。置換は保存的であってもよく、すなわち、一つのアミノ酸が類似した形状と電荷を有した一つに代替される。保存的置換は当業界によく知られており、例えば、アラニンからセリン;アルギニンからリジン;アスパラギンからグルタミンまたはヒスチジン;アスパラギン酸からグルタミン酸;システインからセリン;グルタミンからアスパラギン;グルタミン酸からアスパラギン酸;グリシンからプロリン;ヒスチジンからアスパラギンまたはグルタミン;イソロイシンからロイシンまたはバリン;ロイシンからバリンまたはイソロイシン;リジンからアルギニン;メチオニンからロイシンまたはイソロイシン;フェニルアラニンからチロシン、ロイシンまたはメチオニン;セリンからスレオニン;スレオニンからセリン;トリプトファンからチロシン;チロシンからトリプトファンまたはフェニルアラニン;バリンからイソロイシンまたはロイシンへの変化を含む。いわゆる「保存的」変化は、タンパク質の生物学的活性を妨害することはなく、これは構造的変化が設計された機能を行うタンパク質の能力に影響を与えるものではないためである。従って、本発明の目的を依然として満たしつつ、本願に開示されている遺伝子およびタンパク質の配列に多様な変化が行われ得ることが本発明者によって考慮される。代案的に、置換は、ポリペプチドの機能または活性が影響を受けるように非-保存的であってもよい。非-保存的変化は、典型的に一つの残基を非極性または非荷電アミノ酸を極性または電荷を帯びたアミノ酸に、またはその反対のように、化学的に他の残基に代替することを含む。非-保存的置換は、アミノ酸クラスのうち一つのメンバーを他のクラスのメンバーに交換することを含んでもよい。
【0110】
他の実施様態において、ポリペプチド機能の改造は一つ以上の置換を取り入れることで意図される。例えば、特定のアミノ酸は相互作用結合能力の相当な損失なくタンパク質構造で他のアミノ酸を代替することができる。例えば、酵素触媒ドメインまたは相互作用成分のような構造は、このような機能を維持するために置換されたアミノ酸を有してもよい。タンパク質の生物学的機能的活性を定義することは、タンパク質の相互作用能力と特性であるため、特定のアミノ酸置換がタンパク質配列と基本DNAコーディング配列で行われてもよく、それにもかかわらず類似した特性を有したタンパク質を生成することができる。従って、本発明者は、生物学的有用性または活性の相当な損失なく遺伝子のDNA配列に多様な変化が行われてもよいと思う。
【0111】
欠失変異体は典型的に天然または野生型タンパク質の一つ以上の残基が欠如されている。個別残基が欠失されるか、または多数の隣接アミノ酸が欠失される場合がある。停止コドンは切断されたタンパク質を生成するためにコード化核酸配列に導入(置換または挿入により)されてもよい。例えば、ペプチドは多数の隣接アミノ酸の切断または欠失によって突然変異されて相応する内因性形態よりもさらに短くすることができることが考慮される。
【0112】
挿入突然変異は、一般的に、ポリペプチドの非-末端地点にアミノ酸残基を追加することを含む。これは、一つ以上のアミノ酸残基の挿入を含んでもよい。末端の追加がまた生成されてもよく、本願に記述されているか、または参照されている一つ以上のペプチドまたはポリペプチドの多量体または連鎖体(concatemer)である融合タンパク質を含んでもよい。例えば、特定機能(例えば、標的化または局所化のために、強化された活性のために、精製目的のためになど)を有する異種タンパク質またはポリペプチド配列を融合または接合することでペプチドが改造され得ることが考慮される。
【0113】
さらに、本発明のポリペプチドは化学的に変形されてもよい。ポリペプチドのグリコシル化は、例えば、抗原に対するポリペプチドの親和度を増加させるために、ポリペプチド配列内の一つ以上のグリコシル化部位を変形することで改造されてもよい(米国特許第5,714,350号および第6,350,861号)。
【0114】
また、アミノ酸および核酸配列は、それぞれ追加のN-またはC-末端アミノ酸、または5’または3’配列のような追加的な残基を含んでもよく、配列がタンパク質の発現にかかる生物学的タンパク質活性の維持を含めて上記に提示されている基準を満たす限り、依然として本質的に本願に開示されている配列のうち一つに記載されたとおりである。末端配列の追加は、特に、例えば、コーディング領域の5’または3’部分の側面に位置した多様な非-コーディング配列を含んでもよい核酸配列に適用される。
【0115】
本開示内容のアミノ酸配列変異体は、例えば、置換、挿入または欠失変異体であってもよい。本開示内容のポリペプチドの領域または断片は、配列番号:1乃至9、配列番号:21、23乃至39および65乃至87に対し、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200個またはそれ以上のアミノ酸置換、隣接アミノ酸添加または隣接アミノ酸欠失を有するか、少なくとも有するか、または最大で有するアミノ酸配列を有してもよいと考慮される。代案的に、本開示内容のポリペプチドの領域または断片は、任意の配列番号:1乃至19、配列番号:21、23乃至39および65乃至87と50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%(またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値)同一であるか、少なくとも同一であるか、または最大で同一であるアミノ酸配列を含むか、またはこれにより構成されたアミノ酸配列を有してもよい。
【0116】
また、一部の実施様態において、領域または断片は、任意の配列番号:1乃至19、配列番号:21、23乃至39および65乃至87(ここで、位置1は配列番号のN-末端にある)で位置1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、500で始まる4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、500個以上の隣接アミノ酸からなるアミノ酸領域を含む。
【0117】
本開示内容のポリペプチドは、任意の配列番号:1乃至19、配列番号:21、23乃至39および65乃至87の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50個以上の変異体アミノ酸を含んでもよいか、または少なくともまたは最大3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、300、400、500、550、600個以上(またはこれらの範囲内の任意の誘導可能な範囲)の隣接アミノ酸と少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%類似、同一または相同であってもよい。
【0118】
本開示内容のポリペプチドは、少なくとも、最大または正確に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、537、538、539、540、541、542、543、544、545、546、547、548、549、550、551、552、553、554、555、556、557、558、559、560、561、562、563、564、565、566、567、568、569、570、571、572、573、574、575、576、577、578、579、580、581、582、583、584、585、586、587、588、589、590、591、592、593、594、595、596、597、598、599、600、601、602、603、604、605、606、607、608、609、610、611、612、613、614または615個の置換(またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の範囲)を含んでもよい。
【0119】
置換は、任意の配列番号:1乃至19、配列番号:21、23乃至39および65乃至87(またはこれらの範囲内の誘導可能な範囲)のアミノ酸位置1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、537、538、539、540、541、542、543、544、545、546、547、548、549、550、551、552、553、554、555、556、557、558、559、560、561、562、563、564、565、566、567、568、569、570、571、572、573、574、575、576、577、578、579、580、581、582、583、584、585、586、587、588、589、590、591、592、593、594、595、596、597、598、599、600、601、602、603、604、605、606、607、608、609、610、611、612、613、614または650で行われてもよい。
【0120】
アミノ酸置換は、一般的に、アミノ酸側鎖置換体の相対的な類似性、例えば、その疎水性、親水性、電荷、大きさなどに基づく。アミノ酸側鎖置換体の大きさ、形状および/または類型に対する分析は、アルギニン、リジンおよび/またはヒスチジンがすべて陽電荷を帯びた残基であり;アラニン、グリシンおよび/またはセリンはいずれも類似した大きさであり;および/またはフェニルアラニン、トリプトファンおよび/またはチロシンはいずれも一般的に類似した形状を有することを示す。従って、このような考慮事項に応じて、アルギニン、リジンおよび/またはヒスチジン;アラニン、グリシンおよび/またはセリン;および/またはフェニルアラニン、トリプトファンおよび/またはチロシンは、本願において生物学的に機能的な等価物と定義される。
【0121】
生物学的に機能的な等価物を生産するためにこのような変化を加えるとき、アミノ酸の疎水性指数(hydropathy index)が考慮されてもよい。タンパク質の疎水性プロファイルは、各アミノ酸に数字値(「疎水性指数」)を割り当てた後、繰り返しペプチド鎖に沿ってこれらの値を平均して計算する。各アミノ酸は疎水性および電荷特性を基準として値を指定した。これらのアミノ酸は、イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/システイン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);およびアルギニン(-4.5)である。タンパク質に対する相互作用的な生物学的機能を付与するにあたり、疎水性アミノ酸指数の重要性は一般的に当業界において理解されている(Kyte and Doolittle、1982)。アミノ酸の相対的な疎水性特性が生成されたタンパク質の2次構造に寄与するものと受け入れられ、これは、順にタンパク質と他の分子、例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとの相互作用を定義する。また、特定のアミノ酸は、類似した疎水性指数または点数を有する他のアミノ酸に代替されてもよく、依然として類似した生物学的活性を維持できるものと知られている。疎水性指数に基づいた変化を加えるとき、特定の実施様態において、疎水性指数が±2以内であるアミノ酸の置換が含まれる。本開示内容の一部の局面において、±1以内である疎水性指数が含まれ、本開示内容の別の局面において、±0.5以内である疎水性指数が含まれる。
【0122】
類似アミノ酸の置換が親水性に基づいて効果的に行われ得るということも当業界において理解される。米国特許第4,554,101号は、全文が本願に参考として含まれており、隣接アミノ酸の親水性によって決定されるタンパク質の最大局所平均親水性がタンパク質の生物学的特性と相関関係があると記述している。特定の実施様態において、隣接したアミノ酸の親水性によって決定されるタンパク質の最大局所平均親水性は、タンパク質の生物学的特性と相関関係がある。次の親水性値がこれらのアミノ酸残基:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);およびトリプトファン(-3.4)に割り当てられた。類似した親水性値に基づいた変化を加えるとき、特定の実施様態において、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が含まれ、他の実施様態においては±1以内である親水性値が含まれ、また他の実施様態においては±0.5が含まれる。一部の場合には、親水性に基づいて1次アミノ酸配列からエピトープを識別することもできる。アミノ酸は類似した親水性値を有する他のアミノ酸に代替されてもよく、依然として生物学的に同等且つ免疫学的に同等なタンパク質を生産できることが理解される。
【0123】
さらに、当業者は、活性または構造に重要な、類似したポリペプチドまたはタンパク質の残基を確認する構造-機能の研究を検討することができる。このような比較の観点において、類似したタンパク質の活性や構造に重要なアミノ酸残基に該当するタンパク質のアミノ酸残基の重要性を予測することができる。当業者は、このような予測された重要なアミノ酸残基に対して化学的に類似したアミノ酸置換を選択することができる。
【0124】
当業者はまた類似したタンパク質またはポリペプチドから3次元構造およびこの構造にかかるアミノ酸配列を分析することができる。このような情報の観点において、当業者は、3次元構造に対するアミノ酸残基の整列を予測することができる。当業者は、タンパク質表面にあると予想されるアミノ酸残基を変更しないように選択することができるが、その理由は、このような残基が他の分子との重要な相互作用に関与できるからである。さらに、当業者は、それぞれの目的とするアミノ酸残基で単一アミノ酸置換を含む試験変異体を生成することができる。その後、これらの変異体は結合および/または活性に対する標準検定を用いてスクリーニングすることができ、従って、このような日常的な実験から収集された情報を得ることができ、これは、当業者が追加置換を単独または別の突然変異と組み合わせて避けなければならないアミノ酸位置を決定できるようにする。2次構造を決定するのに用いてもよい多様な道具は、ワールドワイドウェブ(expasy.org/proteomics/protein_structure)で見つけることができる。
【0125】
本開示内容の一部の実施様態において、アミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を減少させ、(2)酸化に対する感受性を減少させ、(3)タンパク質複合体の形成のための結合親和性を改造し、(4)リガンド結合親和性を改造し、および/または(5)このようなポリペプチドに他の物理化学的または機能的特性を付与または変形して行われる。例えば、単一または多重アミノ酸置換(特定の実施様態において、保存的アミノ酸置換)は、自然発生配列で行われてもよい。分子間接触を形成するドメイン(単数または複数)の外部にあるタンパク質部分で置換が行われてもよい。このような実施様態において、タンパク質またはポリペプチドの構造的特徴を実質的に変化させない保存的なアミノ酸置換(例えば、天然タンパク質を特徴づける1次、2次または3次構造を破壊しない一つ以上の代替アミノ酸)が用いられてもよい。
【0126】
上記したように、アミノ酸置換は、一般的に、アミノ酸側鎖置換体の相対的な類似性、例えば、疎水性、親水性、電荷、大きさなどに基づく。前述の多様な特性を考慮した例示的な置換はよく知られており、アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;およびバリン、ロイシンおよびイソロイシンを含む。
【0127】
2.改造されたアミノ酸
本願に用いられた「アミノ分子」は、当業者に公知になっている任意のアミノ酸、アミノ酸誘導体またはアミノ酸模倣体を指称する。特定の実施様態において、タンパク質性分子の残基は、アミノ分子残基の配列を妨害する任意の非-アミノ分子なく順次的である。他の実施様態において、配列は一つ以上の非-アミノ分子モイアティを含んでもよい。特定の実施様態において、タンパク質性分子の残基の配列は一つ以上の非-アミノ分子モイアティによって中断されてもよい。ペプチドおよびポリペプチドは20個の「天然」アミノ酸およびこの翻訳-後の変形を含む。しかし、試験管内のペプチド合成は、変形されたおよび/または特異なアミノ酸の使用を許容する。
【0128】
従って、用語「タンパク質性組成物」は自然的に合成されたタンパク質から20個の共通アミノ酸のうち少なくとも一つ、または少なくとも一つの変形されたまたは特異なアミノ酸を含むアミノ分子配列を含み、下記の表に示したものを含むが、これに制限されるものではない。
【0129】
【0130】
3.模倣体(Mimetic)
前記議論された生物学的機能性等価物に加えて、本発明者らはまた、構造的に類似した化合物が本発明のペプチドまたはポリペプチドの核心部分を模倣するように剤形化できることを考慮する。ペプチドミメティックス(模倣ペプチド:peptidomimetic)と言える前記化合物は、本発明のペプチドと同一の方式で用いられてもよいので、機能性等価物でもある。
【0131】
タンパク質2次および3次構造の要素を模倣する特定模倣体は、文献[参照:Johnsonの他(1993)]に記載されている。ペプチド模倣体を用いる根本的な根拠は、タンパク質のペプチド骨格が主に抗体および/または抗原のような分子相互作用を促進する方式でアミノ酸側鎖を配向するために存在するということである。従って、ペプチド模倣体は天然分子と類似した分子相互作用を許容するように設計される。
【0132】
ペプチド模倣概念の一部の成功的な適用は、抗原性の高いものと知られたタンパク質内でβ-ターンの模倣に焦点を置いている。ポリペプチド内の類似β-ターンの構造は、本明細書において議論されたようにコンピュータ-基盤アルゴリズムによって予測され得る。前記ターンの成分アミノ酸が決定されると、アミノ酸側鎖の必須要素の類似した空間方向を達成するために模倣体を構成することができる。
【0133】
他のアプローチは、大きなタンパク質の結合部位を模倣する生物学的活性形態を生成するための魅力的な構造テンプレートとして、小さな多重二硫化物-含有タンパク質を用いるのに焦点を置く。文献参照:Vitaの他.(1998)。特定毒素で進化的に保存されているものと思われる構造的モチーフは、小さく(30~40個のアミノ酸)、安定しており、突然変異に対して高い許容性を有する。このモチーフは3個の二硫化物によって内部コアで連結されたベータシートとアルファ螺旋で構成される。
【0134】
ベータIIターンはサイクリックL-ペンタペプチドとD-アミノ酸を有するものを用いて成功的に模倣された。Weisshoffの他(1999)。また、文献[Johannessonの他.(1999)]は、リバースターン誘導特性を有しているバイサイクリックトリペプチドについて報告する。
【0135】
特定構造を生成する方法は当業界に開示されている。例えば、アルファ-螺旋模倣体は、米国特許第5,446,128号;第5,710,245号;第5,840,833号;および第5,859,184号に記載されている。これらの構造は、ペプチドまたはタンパク質を熱的にさらに安定にし、タンパク質分解に対する抵抗性を増加させる。6員、7員、11員、12員、13員および14員の環構造が開示されている。
【0136】
構造的に制限されたベータ-ターンおよびベータ膨張(beta bulge)を生成する方法は、例えば、米国特許第5,440,013号;第5,618,914号;および第5,670,155号に記載されている。ベータ-ターンは相応する骨格形態の変化なしに変更された側面置換体を許容し、標準合成手順によってペプチドに統合するための適切な末端を有する。他の類型の模倣ターンには、リバースターンおよびガンマターンが含まれる。リバースターン模倣体は、米国特許第5,475,085号および第5,929,237号に開示されており、ガンマターン模倣体は、米国特許第5,672,681号および第5,674,976号に記述されている。
【0137】
C.ペプチドの外因性伝達
特定の実施様態において、ペプチドの細胞への外因性伝達を改善するために、本願に開示されているタンパク質性組成物およびペプチド変異体に変形が行われてもよい。
【0138】
特定の実施様態において、ベクターは、細胞が本願に開示されているタンパク質性組成物およびペプチド変異体を発現させる外因性核酸配列を含むように構成されてもよい。これらのベクターの成分および伝達方法に関する詳細事項は、下記に開示されている。
【0139】
一部の実施様態において、本願に開示されている組成物を投与して細胞が細胞の遺伝子工学による一つ以上の遺伝的改造を含むようにすることができる。外因性核酸またはポリヌクレオチドが任意の適切な人工操作手段によって細胞内に伝達される場合、または細胞がポリヌクレオチドを受け継いだ元の変形された細胞の子孫である場合、細胞は「遺伝的に改造された」、「遺伝的に変形された」または「トランスジェニック」とする。
【0140】
多様な実施様態において、本願に開示されている野生型または変異体Aβペプチドまたはその断片または機能的誘導体のペプチド配列をコードするDNA構築物またはベクターが提供される。遺伝的変形はまた細胞に導入されてもよい。このような変形は、例えば、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片、または機能的誘導体をコードするベクターで細胞を形質導入して野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片、または機能的誘導体を発現する細胞を生成することを含む。本願に開示されている野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体のペプチド配列をコードするウイルスベクターは、連続的な遺伝子発現およびAβペプチド放出を可能にする。
【0141】
本開示内容による細胞は、本願に開示されているタンパク質性組成物およびペプチド変異体および/または細胞が本願に開示されているタンパク質性組成物およびペプチド変異体を発現するように外因性核酸配列を含むように作製されたDNA構築物、またはベクターが本願に記載されているように導入および発現できる任意の細胞を含む。本明細書に記述されている本発明の基本概念は、細胞類型によって制限されないことを理解しなければならない。本開示内容による細胞は、真核細胞、哺乳動物細胞、動物細胞、ヒト細胞などを含む。また、細胞には機能的タンパク質の生産を調節するのに有益または好ましいすべてが細胞が含まれる。
【0142】
1.外因性伝達を改善するためのペプチドの変形
一部の実施様態において、本願に開示されている野生型または変異体Aβペプチドは、細胞によるペプチドの摂取(uptake)または吸収を向上させるために変形されてもよい。例えば、一部の実施様態において、細胞透過性ペプチド(CPP)は、野生型または変異体Aβペプチドに付着してAβオリゴマーおよびフィブリルの形成の細胞透過性および/または脳透過性抑制剤を生成する。CPPはナノサイズの粒子から小さな化合物乃至大きなDNA片に至る分子の細胞摂取および吸収を促進する短いペプチドである。カーゴ(cargo)は共有結合を通じた化学的連結または非共有相互作用を通じてペプチドと連結される。CPPは、一般的に、リジンまたはアルギニンのような陽電荷を帯びたアミノ酸を相対的に多く含むか、または極性、荷電性アミノ酸および非極性、疎水性アミノ酸の交代パターンを含む配列を有するアミノ酸組成を有する。これら二つの類型の構造は、それぞれ多価陽イオン性または両親媒性と言う。三つ目の部類のCPPは疎水性ペプチドであって、純電荷の低い無極性残基または細胞摂取に重要な疎水性アミノ酸グループのみを含む。
【0143】
一部の実施様態において、細胞-透過ペプチドは、逆転バージョン(retro-inverted version)のHIVタンパク質伝達ドメイン「TAT」;ポリ-アルギニン(例えば、R8-R12);ポリアミン;MAP;MTS;MPG;ペネトラチン(Penetratin);Pep-1;トランスポータン(Transportan);またはVP22である。一部の実施様態において、細胞-透過ペプチドは、逆転バージョンのHIVタンパク質伝達ドメイン「TAT」である。一部の実施様態において、細胞-透過ペプチドはポリ-アルギニンである。一部の実施様態において、細胞-透過ペプチドはポリアミンである。一部の実施様態において、野生型または変異体Aβペプチドに細胞-透過ペプチドを付着させることは、野生型または変異体Aβペプチドがベクター化することなく細胞透過性になるようにする。
【0144】
ヒト免疫欠乏ウイルス1(HIV-1)のトランス活性化転写活性剤(transactivating transcriptional activator:TAT)は、細胞膜の不浸透性リン脂質二重層に浸透して生物学的障壁を通過可能にする。文献[参照:M.Greenの他、Biochim Biophys Acta 1414:127~139(1998)、具体的に、全文が本願に参照として含まれる)]を参照する。HIV-感染された細胞で分泌された後、TATは、隣接した細胞に移動して遺伝子転写を変形させて疾患を広める。Tat-由来ペプチドが大きなタンパク質を他の細胞類型と哺乳類器官へ伝達できることを立証した最初の報告書は1994年に発表され、これは、キメラとしてβ-ガラクトシダーゼを生きている細胞内に摂取することを促進できるHIV-1の36個のアミノ酸領域の化学的架橋および識別を立証した。文献[参照:S.Fawellの他、Proc Natl Acad Sci USA 91:664~668(1994)]を参照する。このHIV TATタンパク質伝達ドメイン(PTD)は、塩基性アミノ酸残基のクラスターとα-螺旋構成を採択するものと推定される配列を含む。TATペプチドのさらに短いドメインが細胞内在化に十分であるか否かを記述することを数多くの研究で目標とした。転座に必要な主な決定要因は塩基性アミノ酸のクラスターと確認されており、α-螺旋領域のあるペプチドがさらに効率的に細胞に入ることができるが、推定されるα-螺旋ドメインは不要であるものと示された。RNA結合および核局所化信号(nuclear localization signal:NLS)モチーフを含む切断された多重陽イオン性ペプチドGRKKRRQRRRは、細胞および組織への効果的な転座に適したものと確認されており、TATに含まれる。文献[参照:E.Vives Eの他、J Biol Chem 272:16010~16017(1997)]を参照する。従って、一部の実施様態において、野生型または変異体AβペプチドはTAT配列に付着される。TAT配列は、GRKKRRQRRR(配列番号:23)、YGRKKRRQRRR(配列番号:24)、GRKKRRQRRRPQ(配列番号:25)を含むアミノ酸配列を有するペプチドを含んでもよく、アミノ酸配列は、任意の配列番号:23乃至25、またはその断片または誘導体と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有する。
【0145】
オリゴ-およびポリ-アルギニンは、構造的に、Argが唯一のビルディングブロックである最も単純なCPPであり、容易に製造することができる。ポリ-アルギニンは、水溶液でまたは強い側鎖電荷反発と疎水性または両親媒性構造の欠如により、リン脂質膜と結合されるとき、無作為コイル形態を採択し、膜透過性は主にグアニジニウム電荷グループにより媒介される脂質膜との静電気的相互作用に依存する。従って、一部の実施様態において、野生型または変異体Aβペプチドはポリ-アルギニンに付着される。一部の実施様態において、ポリ-アルギニンは6個以上のアルギニンアミノ酸を含むL-またはD-アルギニンの重合体を含む。一部の実施様態において、ポリ-アルギニンはRRRRRRRR-RRRRRRRRRRRR(配列番号:26)を含むアミノ酸配列に相応するR8-R12を含む(参照文献:G.Tunnemannの他、J.Pept.Sci.14:469~476(2008)、具体的に、全文が本願に参照として含まれる)。
【0146】
ポリアミン、例えば、プトレシン、スペルミジンおよびスペルミンは、血液-神経および血液-脳関門でタンパク質の透過性を増加させるものと示された。ポリアミン輸送体は、ポリアミン-変形タンパク質の輸送を担当してもよい。例えば、文献[参照:J.F.Poduslo&G.L.Curran、J.Neurochem 66:5705~5709(1996);J.F.Poduslo&G.L.Curran、J.Neurochem 67:734~741(1996);and J.F.Podusloの他、J.Neurobio 39(3):371~82(1999)、具体的に、全文が本願に参照として含まれる]を参照する。従って、ポリアミン-変形野生型または変異体Aβペプチドの全身投与は、アルツハイマー病を含む多様な神経系疾患の治療のためにこれらの治療剤をCNSに伝達するための効率的なアプローチであり得、一部の実施様態において、野生型または変異体Aβペプチドはポリアミンに共有結合される。一部の実施様態において、ポリアミンはプトレシンである。一部の実施様態において、ポリアミンはスペルミジンである。一部の実施様態において、ポリアミンはスペルミンである。
【0147】
本願に開示されている野生型または変異体Aβペプチドへの付着のために考慮される他の細胞-透過ペプチドは、次の細胞-透過ペプチドを含むが、これに制限されるものではない:KLALKLALKALKAALKLA(配列番号:27)を含むアミノ酸配列に相応するMAP(参照文献J.Oehlkeの他、Cell 58:215~223(1989)、具体的に、全文が本願に参照として含まれる);AAVALLPAVLLALLAP(配列番号:28)を含むアミノ酸配列に相応するMTS(参照文献M.Rojas、Nat.Biotechnol.16:370~375(1998)、具体的に、全文が本願に参照として含まれる);GLAFLGFLGAAGSTMGAWSQPKKKRKV(配列番号:29)を含むアミノ酸配列に相応するMPG(参照文献M.C.Morrisの他、Nucleic Acids Res.25:2730~2736(1997)、具体的に、全文が本願に参照として含まれる);RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号:30)を含むアミノ酸配列に相応するペネトラチン(参照文献D.Derossiの他、J.Biol.Chem.269:10444~10450(1994)、具体的に、全文が本願に参照として含まれる);KETWWETWWTEWSQPKKRKV(配列番号:31)を含むアミノ酸配列に相応するPep-1(参照文献M.C.Morrisの他、Nat.Biotechnol.19:1173~1176(2001)、具体的に、全文が本願に参照として含まれる);GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL(配列番号:32)を含むアミノ酸配列に相応するトランスポータン(参照文献M.Poogaの他、FASEB J.12:67~77(1998)、具体的に、全文が本願に参照として含まれる);またはDAATATRGRSAASRPTQRPRAPARSASRPRRPVQ(配列番号:33)を含むアミノ酸配列に相応するVP22(参照文献G.Elliottの他、Cell 88:223~233(1997)、具体的に、全文が本願に参照として含まれる)。本願に開示されている野生型または変異体Aβペプチドへの付着のために考慮される追加の細胞-透過ペプチドは、例えば、文献[A.Borrelliの他、Molecules 23:295~318(2018)、具体的に、全文が本願に参照として含まれる]に記載されている。
【0148】
一部の実施様態において、細胞-透過および/または脳-透過Aβペプチド変異体は、Aβペプチド変異体の自然発生L-アミノ酸がアミノ酸のD-鏡像異性質体に代替されたAβペプチド変異体を含む。文献[J.F.Podusloの他、J.Neurobio 39(3):371~82(1999)]を参照する。D-残基を含むペプチドは、タンパク質分解に対する抵抗性がさらに大きい。文献[Robson、Nat Biotechnol 14:893~895(1996)、and Schumacherの他、Science 271:1854~1857(1996)]を参照する。また、このような変形は、Aβペプチド変異体を低い免疫原性にすることができ、これは、L-アミノ酸ペプチドがTヘルパー細胞への主な組織適合性複合体クラスII-に制限された提示のために効率的に処理され、従って、薬物の生体活性を損傷させる活発な体液性免疫反応を生成するのに対し、D-残基ペプチドは抗原性がはるかに少ない。文献[参照Herveの他、J.Immunol.156:157~163(1997)]を参照する。従って、一部の実施様態において、本願に開示されているAβペプチド変異体の自然発生L-アミノ酸は、Aβペプチド変異体の細胞透過性および/または脳透過性を改善するためにアミノ酸のD-鏡像異性質体に代替される。
【0149】
2.ベクター
一部の実施様態において、本願に開示されている野生型または変異体Aβペプチドは、野生型または変異体Aβペプチドまたはその一部をコードする核酸をプロモーターに作動可能に連結し、細胞によって吸収されて発現される発現ベクターに構築物を混入することで達成される。ベクターは、複製、場合によって真核生物内の統合に適合する可能性がある。典型的なクローニングベクターは、目的とする核酸配列の発現調節に有用な転写および翻訳ターミネーター、開始配列およびプロモーターを含む。例えば、核酸は、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルスおよびコスミド(cosmid)を含むが、これに制限されないベクターにクローニングされてもよい。特に、関心のあるベクターとしては、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクターおよびシークエンシングベクターが含まれる。一般的に、適合するベクターは、少なくとも一つの生物体で機能的な複製起点、プロモーター配列、便利な制限エンドヌクレアーゼ部位、および一つ以上の選別マーカーを含む(例えば、WO01/96584;WO01/29058;および米国特許第6,326,193号)。一部の実施様態において、適合するベクターは、血液-脳関門を通過することができる。
【0150】
特定の実施様態において、発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞へ提供されてもよい。ウイルスベクター技術は当業界によく知られており、例えば、文献[参照:Sambrookの他.、(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York)]およびその他のウイルス学および分子生物学のマニュアルに記載されている。
【0151】
哺乳類細胞への遺伝子伝達のために多数のウイルス基盤システムが開発されてきた。ベクターとして有用なウイルスは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ-関連ウイルス、ヘルペスウイルスおよびレンチウイルス(自己不活性化レンチウイルスベクターを含む)を含むが、これに制限されるものではない。例えば、アデノウイルスは遺伝子伝達システムのための便利なプラットフォームを提供する。選択された遺伝子は、当業界に公知になっている技術を用いてベクターへ挿入され、レトロウイルス粒子にパッケージング(packaging)されてもよい。この後、組換えウイルスは分離されて生体内または生体外対象体の細胞に伝達されてもよい。従って、一部の実施様態において、Aβペプチド変異体をコードする核酸は、例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、ガンマ-レトロウイルス、アデノ-関連ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルスまたはアデノウイルスを含むウイルスベクターのような組換えベクターを用いて細胞内に導入される。
【0152】
特定の実施様態において、ベクターはAAVベクターである。「AAVベクター」は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV2.5、AAV-DJ、AAVrhlO.XX、AAVrh.8、AAVrh.10、AAVrh.43、AAVpi.2、AAVhu.11、AAVhu.32、AAVhu.37、PHP.eB AAV、およびその他のようなアデノ-関連ウイルス血清型から由来した組換えベクターを意味する。AAVベクターは一つまたはすべての野生型AAV遺伝子が欠失されてもよいが、依然として機能的逆末端繰り返し(ITR)核酸配列を含む。機能的ITR配列は、AAVビリオンの複製、構造およびパッケージングに必要である。ITR配列は野生型配列または実質的に同一の配列であってもよく、または、例えば、機能を維持する限り、ヌクレオチドの挿入、突然変異、欠失または置換によって改造されてもよい。このようなAAVベクターは、AAV repおよびcap遺伝子産物(すなわち、AAV RepおよびCapタンパク質)を発現する宿主細胞に存在するとき、複製され、感染性ウイルス粒子でパッケージングされてもよい。
【0153】
AAVのゲノムは長さが約5,000個のヌクレオチド(nt)未満である線形単一鎖DNA分子である。逆末端繰り返し(ITR)は、非構造的複製(Rep)タンパク質と構造的(VP)タンパク質に対する固有のコーディングヌクレオチド配列の側面に位置する。VPタンパク質(VP1、-2および-3)はカプシドを形成する。末端145ntは自己相補的であり、T字型ヘアピンを形成するエネルギー的に安定した分子内デュプレックスが形成され得るように構成される。このようなヘアピン構造は、細胞DNAポリメラーゼ複合体のプライマーの役割をするウイルスDNA複製の起点の役割をする。哺乳動物細胞で野生型AAV感染の後、Rep遺伝子(すなわち、Rep78およびRep52)は、それぞれP5プロモーターおよびP19プロモーターから発現され、二つのRepタンパク質はいずれもウイルスゲノムの複製機能を有する。Rep ORFにおけるスプライシングイベント(splicing event)は実際に4個のRepタンパク質(すなわち、Rep78、Rep68、Rep52およびRep40)の発現を引き起こす。しかし、哺乳類細胞においてRep78およびRep52タンパク質をコードする非接合されたmRNAがAAVベクターの生産に十分であるということが明かにされた。また、昆虫細胞でRep78およびRep52タンパク質はAAVベクターの生産に十分である。
【0154】
AAV VPタンパク質はAAVビリオンの細胞親和性を決定するものと知られている。VPタンパク質-コード配列は、別のAAV血清型の中でRepタンパク質および遺伝子よりはるかに不十分に保存される。他の血清型の相応する配列を交差補完するRepおよびITR配列の能力は一つの血清型(例:AAV5)のカプシドタンパク質およびまた他のAAV血清型(例:AAV2)のRepおよび/またはITR配列を含む類似型AAV粒子の生産を可能にする。本明細書において、類似型AAV粒子は「x/y」類型と言及されてもよく、ここで「x」はITRの根源(source)を示し、「y」はカプシドの血清型を示し、例えば、2/5 AAV粒子はAAV2のITRとAAV5のカプシドを有する。
【0155】
AAVベクターは少なくとも一つのAAV ITRが側面に位置した一つ以上の関心ポリヌクレオチド配列(一つ以上のトランスジーン)を含んでもよい。従って、一つの局面において、本開示内容は、本願に開示されている一つ以上の野生型または変異体Aβペプチドのペプチド配列をコードする一つ以上のヌクレオチド配列を含む核酸ベクター構築物に関するものであり、ここで核酸ベクター構築物は組換えAAVベクターであり、これにより、一つ以上の野生型または変異体Aβペプチドのペプチド配列をコードする一つ以上のヌクレオチド配列に側面に位置した少なくとも一つのAAV ITRを含む。核酸ベクター構築物の一部の実施様態において、一つ以上の野生型または変異体Aβペプチドのペプチド配列をコードする一つ以上のヌクレオチド配列はいずれか一方にAAV ITRが側面に位置する。
【0156】
AAVの任意の適合する血清型がベクターとして用いられてもよく、ベクターは一つ以上の関心ポリヌクレオチド配列を含んでもよい。一部の実施様態において、一つ以上の関心ポリヌクレオチド配列を含むAAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV2.5、AAvDJ、AAVrhlO.XX、AAVrh.8、AAVrh.10、AAVrh.43、AAVpi.2、AAVhu.11、AAVhu.32、AAVhu.37、またはPHP.eB AAVベクターである。一部の実施様態において、ベクターは、血液-脳関門を通過することができる。一部の実施様態において、血液-脳関門を通過することができるベクターは、AAV9、PHP.eB、AAVrh.8、AAVrh.10またはAAVrh.43を含む。一部の実施様態において、血脳関門を通過することができるベクターは、例えば、静脈内、脳内および/または心室内に伝達され、大人CNSでニューロンを効率的且つ広範囲に形質導入することができる。一部の実施様態において、アデノウイルスベクターは、宿主反応を減少させるために変形される。文献[参照:例えば、Russell J.Gen.Virol.81:2573~2604(2000);米国特許公開番号第2008/0008690号;およびZaldumbideの他.、Gene Therapy 15(4):239~46(2008);これらの文献は、具体的に、本願に全文が参照として含まれる]を参照する。
【0157】
当業者は標準組換え技術(例えば、全文が本願に参照として具体的に含まれる文献Maniatisの他.、1988およびAusubelの他.、1994)を通じて少なくとも一つのAAV ITRが側面に位置した一つ以上の関心ポリヌクレオチド配列を含むAAVベクターを作製することができるだろう。
【0158】
ベクターはまた遺伝子伝達および/または遺伝子発現をさらに調節するか、または標的細胞に有益な特性を提供する他の構成成分または機能を含んでもよい。このような他の構成成分には、例えば、細胞への結合または標的化に影響を及ぼす構成成分(細胞類型または組織-特異結合を仲裁する構成成分を含む);細胞によるベクター核酸の摂取に影響を及ぼす構成成分;摂取後に細胞内のポリヌクレオチドの局所化に影響を及ぼす構成成分(例えば、核局所化を媒介する作用剤);およびポリヌクレオチドの発現に影響を及ぼす構成成分を含む。
【0159】
このような構成成分はまたベクターによって伝達された核酸を吸収して発現する細胞を検出するかまたは選別するのに用いられてもよい検出可能な、および/または選別マーカーのようなマーカーを含んでもよい。このような構成成分は、ベクターの自然的な特徴(例えば、結合および摂取を媒介する構成成分または機能を有する特定ウイルスベクターの使用)として提供されるか、またはベクターがこのような機能を提供するように変形されてもよい。非常に多様なこのようなベクターは当業界に公知になっており、一般的に利用可能である。ベクターが宿主細胞で維持される場合、ベクターは自律的構造として有糸分裂中に細胞によって安定して複製されるか、宿主細胞のゲノム内に統合されるか、または宿主細胞の核または細胞質で維持されてもよい。
【0160】
ベクターに含まれた真核発現カセットは、特に、タンパク質-コーディング配列に作動可能に連結された真核転写プロモーター、介在配列を含むスプライス信号、転写終結/ポリアデニル化配列、転写後調節エレメントおよび複製起点を含む(5’から3’方向)調節エレメントを含む。
【0161】
a.プロモーター/エンハンサー
「プロモーター」は開始および転写速度が制御される核酸配列の領域である制御配列である。プロモーターは核酸配列の特定の転写を開始するために、RNAポリメラーゼおよびその他の転写因子のように調節タンパク質および分子が結合できる遺伝エレメントを含んでもよい。文具:「作動可能に位置された」、「作動可能に連結された」、「制御下に」および「転写制御下に」は、プロモーターが、核酸配列と関して正しい機能的位置および/または方向にあり、該当配列の転写開始および/または発現を制御するということを意味する。
【0162】
プロモーターは、一般的に、RNA合成のための開始部位を位置させる機能をする配列を含む。これについて最もよく知られた例はTATAボックスであり、TATAボックスのない一部のプロモーター、例えば、哺乳類末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子に対するプロモーター、およびSV40後期遺伝子に対するプロモーターで開始部位の上にある個別エレメント自体は、開始位置を固定するのに役立つ。追加プロモーターエレメントは転写開始頻度を調節する。一般的に、追加プロモーターエレメントは、開始部位の30 110 bpアップストリーム領域に位置し、多くのプロモーターが開始部位のダウンストリームにも機能エレメントを含むものと示された。コーディング配列をプロモーター「の制御下に」もたらすため、選択されたプロモーターの転写読み取りフレーム「ダウンストリーム」(すなわち、3’)の転写開始部位の5’末端を位置させる。「アップストリーム」プロモーターは、DNAの転写を刺激し、コードされたRNAの発現を促進する。
【0163】
プロモーターエレメントとの間の間隔は多くの場合柔軟であるため、エレメントが反転されるか、または互いに相対的に移動するとき、プロモーターの機能が保存される。例えば、チミジンキナーゼプロモーターで、プロモーターエレメントとの間の間隔は、活性が減少し始める前に50bp間隔に増加されてもよい。プロモーターによって個別エレメントが協力的にまたは独立的に機能して転写を活性化できるものと思われる。プロモーターは、核酸配列の転写活性化に関与するシス-作用調節配列を意味する「エンハンサー」とともに用いられるか、または用いられない場合もある。
【0164】
コーディングセグメントおよび/またはエキソンのアップストリームに位置した5’非コーディング配列を分離することで得られるように核酸配列と自然的に関連したものであり得る。これらのプロモーターは、「内因性」と指摘されてもよい。類似に、エンハンサーは、該当配列のダウンストリームまたはアップストリームに位置した核酸配列と自然的に関連したものであり得る。代案的に、コーディング核酸セグメントを組換えまたは異種プロモーターの制御下に位置させることで特定利点を得ることができ、これは自然環境で核酸配列と正常に関連しないプロモーターを意味する。組換えまたは異種エンハンサーは、自然環境で核酸配列と正常に関連しないエンハンサーを意味する場合もある。このようなプロモーターまたはエンハンサーは、他の遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー、任意の他のウイルス、または原核または真核細胞から分離されたプロモーターまたはエンハンサー、および「自然発生」ではない、すなわち、異なる転写調節領域の異なるエレメントを含むプロモーターまたはエンハンサー、および/または発現を改造する突然変異を含んでもよい。プロモーターおよびエンハンサーの核酸配列を合成的に生成すること以外にも、本願に開示されている組成物と関連して、PCRTMを含む組換えクローニングおよび/または核酸増幅技術を用いて配列を生成することができる(それぞれ米国特許第4,683,202号および第5,928,906号を参照、全文が本明細書に具体的に参照として含まれる)。また、ミトコンドリアなどのような非-核小器官内配列の転写および/または発現を指示する制御配列も用いられてもよいものと考慮される。
【0165】
当然、発現のために選択された小器官、細胞類型、組織、器官または生物体でDNAセグメントの発現を効果的に指示するプロモーターおよび/またはエンハンサーを用いることが重要である。分子生物学分野の熟練家は、一般的に、タンパク質の発現のためのプロモーター、エンハンサーおよび細胞類型の組み合わせの使用を分かっている(例えば、Sambrookの他.1989、具体的に、全文が本願に参照として含まれる)。用いられたプロモーターは、導入されたDNAセグメントの高いレベルの発現を指示する適切な条件下で構成的、細胞特異的、組織特異的、誘導的および/または有用であり得、例えば、組換えタンパク質および/またはペプチドの大掛かりの生産に有利である。プロモーターは異種性または内因性であってもよい。
【0166】
さらに、任意のプロモーター/エンハンサーの組み合わせ[例えば、ワールドワイドウェブ(epd.isb-sib.ch/)を通じたEukaryotic Promoter Data Base(EPDB)]も発現を駆動するのに用いられてもよい。その他の潜在的なプロモーターの非制限的な例は、初期または後期ウイルスプロモーター、例えば、SV40初期または後期プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)即時初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)初期プロモーター;真核細胞プロモーター、例えば、ベータ-アクチンプロモーター(Ng、1989;Quitscheの他、1989)、GADPHプロモーター(Alexanderの他、1988、Ercolaniの他、1988)、メタロチオネインプロモーター(Karinの他、1989;Richardsの他、1984);および最小TATAボックス付近のサイクリックAMP応答エレメントプロモーター(cre)、血清応答エレメントプロモーター(sre)、ホルボールエステルプロモーター(TPA)および応答エレメントプロモーター(tre)のような連結された応答エレメントプロモーターを含む。ヒト成長ホルモンプロモーター配列(例えば、Genbankに記載されているヒト成長ホルモン最小プロモーター、受託番号X05244、ヌクレオチド283-341)またはマウス乳腺腫瘍プロモーター(ATCCより入手可能、Cat.No.ATCC 45007)を用いることがまた可能である。特定の例は、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターであってもよい。
【0167】
一部の実施様態において、ポリヌクレオチドの発現は、構成的なプロモーターによって調節される。一部の実施様態において、構成的なプロモーターは、CAG(CAGGSまたはCBAとも知られている)、EF-1ALPHA、ユビキチンまたはCMVである。
【0168】
一部の実施様態において、ポリヌクレオチドの発現は、細胞-特異的プロモーターによって調節される。一部の実施様態において、細胞-特異的プロモーターはニューロン-特異的プロモーターである。一部の実施様態において、ニューロン-特異的プロモーターは、ヒトシナプシンI(SYN)プロモーター、マウスカルシウム/カルモジュリン-依存性タンパク質キナーゼII(CaMKII)プロモーター、ラットチューブリンアルファI(Ta1)、ラットニューロン-特異的なエノラーゼ(NSE)プロモーター、ヒト血小板-由来成長因子-ベータ鎖(PDGF)プロモーター、またはTHY1(CD90)プロモーターを含む。一部の実施様態において、細胞-特異的プロモーターはヒトシナプシンIである。
【0169】
一部の実施様態において、ポリヌクレオチドの発現は組織-特異的プロモーターによって調節される。一部の実施様態において、組織-特異的プロモーターは、脈絡叢(choroid plexus)-特異的プロモーターである。一部の実施様態において、脈絡叢-特異的プロモーターは、Prlrプロモーター、Spint2プロモーターまたはF5プロモーターを含む。一部の実施様態において、組織-特異的プロモーターは、肝-特異的プロモーターである。肝-特異的プロモーターは、例えば、文献[参照:LM Kattenhornの他、Hum.Gene Ther.27(12):947~961(2016)、具体的に、全文が本願に参照として含まれる]に記載されている。
【0170】
b.プロテアーゼの切断部位/自己-切断ペプチドおよび内部リボソームの結合部位
適合したプロテアーゼの切断部位および自己-切断ペプチドは、当業者に公知になっている(例えば、Ryanの他、1997;Scymczakの他、2004を参照)。プロテアーゼの切断部位の例は、フリンプロテアーゼ、ポティウイルスNIaプロテアーゼ(例えば、タバコエッチ病ウイルスプロテアーゼ)、ポティウイルスHCプロテアーゼ、ポティウイルスP1(P35)プロテアーゼ、ビオウイルス(byovirus)Nlaプロテアーゼ、ビオウイルスRNA-2-エンコーディングプロテアーゼ、アフトウイルスLプロテアーゼ、エンテロウイルス2Aプロテアーゼ、ライノウイルス2Aプロテアーゼ、ピコルナ3Cプロテアーゼ、コモウイルス24Kプロテアーゼ、ネポウイルス24Kプロテアーゼ、RTSV(イネツングロ球形ウイルス)3C-類似プロテアーゼ、PYFV(パースニップ黄色斑点ウイルス)3C-類似プロテアーゼ、トロンビン、因子Xaおよびエンテロキナーゼの切断部位である。高い切断ストリンジェンシーにより、タバコエッチ病ウイルス(tobacco etch virus:TEV)プロテアーゼの切断部位を用いることができる。一部の実施様態において、プロテアーゼの切断部位はフリンプロテアーゼの切断部位である。
【0171】
例示的な自己-切断ペプチド(「シス-作用加水分解エレメント」ともいう、CHYSEL;deFelipe(2002)を参照)は、ポティウイルスおよびカルジオウイルス2Aペプチドに由来する。特定の自己-切断ペプチドは、FMDV(口蹄疫ウイルス)、ウマ鼻炎A(equine rhinitis A)ウイルス、TaV(Thosea asigna virus)およびブタテスコウイルスから2Aペプチドから選択されてもよい。
【0172】
特定の開始信号はまた、ポリシストロンメッセージでコーディング配列の効率的な翻訳のために用いられてもよい。これらの信号はATG開始コドンまたは隣接配列を含む。例えば、開始信号は、GCCACCAUGGG(配列番号:34)を含むアミノ酸配列を有するKozakコンセンサス配列を含んでもよい。文献[Kozak、1987;Harteの他、2012]を参照する。ATG開始コドンを含む外因性翻訳制御信号が提供される必要がある場合がある。当業者はこれを容易に決定し、必要な信号を提供することができるだろう。全体挿入物の翻訳を保障するために、開始コドンが目的とするコーディング配列の読み取りフレームと「フレーム内」でなければならないということはよく知られている。外因性翻訳制御信号および開始コドンは天然または合成であってもよい。発現の効率性は適切な転写エンハンサーエレメントを含むことで向上され得る。
【0173】
特定の実施様態において、内部リボソームの進入部位(IRES)エレメントの使用は、多重遺伝子またはポリシストロンメッセージを生成するのに用いられる。IRESエレメントは5’メチル化キャップ依存翻訳のリボソームスキャニングモデルを迂回することができ、内部部位で翻訳を始めることができる(Pelletier and Sonenberg、1988)。ピコルナウイルス系列の二つのメンバー(小児麻痺および脳心筋炎)のIRESエレメントが記載されており(Pelletier and Sonenberg、1988)、哺乳類メッセージのIRESエレメントも記載されている(Macejak and Sarnow、1991)。IRESエレメントは異種オープンリーディングフレームに連結されてもよい。多重オープンリーディングフレームをともに転写することができ、それぞれは、IRESにより分離されてポリシストロンメッセージを生成する。IRESエレメントのおかげでそれぞれのオープンリーディングフレームは、効率的な翻訳のためにリボソームにアクセスしてもよい。多重遺伝子は単一メッセージを転写するために、単一プロモーター/エンハンサーを用いて効率的に発現されてもよい(米国特許第5,925,565号および第5,935,819号を参照、それぞれ本願に参照として含まれる)。
【0174】
c.マルチクローニング部位
ベクターは、ベクターを分解するために標準組換え技術とともに用いられてもよい多重制限酵素部位を含む核酸領域であるマルチクローニング部位(MCS)を含んでもよい(例えば、Carbonelliの他、1999、Levensonの他、1998、およびCocea、1997、特に、全文が本願に参照として含まれる)。「制限酵素切断(digestion)」は核酸分子の特定位置でのみ機能する酵素で核酸分子を触媒切断することを意味する。このような制限酵素のうちの多数は商業的に利用可能である。このような酵素の使用は当業者によって広く理解される。頻繁に、ベクターは外因性配列がベクターにライゲーションできるようにMCS内で切断する制限酵素を用いて線形化または断片化される。「ライゲーション(ligation)」は互いに隣接していても、隣接していなくてもよい2個の核酸断片の間にホスホジエステル結合を形成する過程を意味する。制限酵素およびライゲーション反応を伴う技術は、組換え技術分野の熟練家によく知られている。
【0175】
d.スプライシング部位
大部分の転写された真核RNA分子は、RNAスプライシングを経て1次転写体でイントロンを除去する。ゲノム真核配列を含むベクターは、タンパク質の発現のための転写体の適切なプロセッシングを保障するためにドナーおよび/またはアプセプタースプライシング部位を必要とする場合がある(例えば、本願に参照として含まれたChandlerの他、1997を参照)。
【0176】
e.終結信号
ベクターまたは構築物は少なくとも一つの終結信号を含んでもよい。「終結信号」または「ターミネーター」はRNA重合酵素によるRNA転写物の特定終結に関与するDNA配列で構成される。従って、特定の実施様態において、RNA転写体の生成を終了させる終結信号が考慮される。ターミネーターは目的とするメッセージレベルを達成するために生体内で必要な場合がある。
【0177】
真核システムにおいて、終結領域はまたポリアデニル化部位を露出させるために新たな転写体の部位-特異的切断を許容する特定DNA配列を含んでもよい。これは、転写体の3’末端に約200A残基(polyA)のストレッチを追加するように専門化された内因性重合酵素に信号を送る。このpolyAテイルで変形されたRNA分子はより安定していると思われ、さらに効率的に翻訳される。従って、真核生物を含む他の実施様態において、ターミネーターは、RNA切断のための信号を含み、終結信号はメッセージのポリアデニル化を促進する。ターミネーターおよび/またはポリアデニル化部位のエレメントはメッセージのレベルを向上させ、カセットで他の配列への読み取りを最小化する役割をすることができる。
【0178】
考慮されるターミネーターは、例えば、ウシ成長ホルモンのターミネーターのような遺伝子の終結配列、または、例えば、SV40のようなウイルス終結配列を含むが、これに制限されない、本願に記述されているか、または当業者に公知になっている任意の公知になっている転写ターミネーターを含む。特定の実施様態において、終結信号は、例えば、配列切断による転写可能または翻訳可能配列の欠如であり得る。
【0179】
f.ポリアデニル化信号
発現、特に真核生物の発現において、一般的に転写体の適切なポリアデニル化を行うためのポリアデニル化信号を含むだろう。ポリアデニル化信号の特性は成功的な実習に決定的であるものと思われず、任意のすべての配列が用いられてもよい。例示的な実施様態は、便利且つ多様な標的細胞でよく機能するものと知られたSV40ポリアデニル化信号またはウシ成長ホルモンのポリアデニル化信号を含む。ポリアデニル化は転写体の安定性を増加させるか、または細胞質輸送を促進することができる。
【0180】
g.転写後調節エレメント
本開示内容において用いるためのベクターはまた一つ以上の転写後調節エレメント(PRE)を含んでもよい。PREの例は、ウッドチャック肝炎ウイルスPRE(WPRE)、B型肝炎ウイルスPRE、およびヒトサイトメガロウイルス前初期遺伝子のイントロンAを含む。追加の例示および詳細事項について文献[参照:Sunの他、2009およびMariatiの他、2010]を参照して下さい。特定の実施様態において、PREはWPREである。WPREは転写されるとき、ウイルスベクターによって伝達される遺伝子の発現を向上させるために3次構造を生成するDNA配列である。
【0181】
h.複製の起源
宿主細胞でベクターを増殖させるために、ベクターは、一つ以上の複製部位起源(種々「ori」と指称される)、例えば、前記記載されているようなEBVのoriPまたは遺伝的に操作されたoriPに相応する核酸配列(複製が始まる特定核酸配列である分化プログラミングで類似または向上した機能を有する)を含んでもよい。代案的に、前述のような他の染色体-外複製ウイルスの複製起源、または自律複製配列(ARS)が用いられてもよい。
【0182】
3.ベクター伝達
遺伝的変形または外因性核酸の細胞への導入は、本願に記載されているように、または当業者に公知になっているように細胞の形質転換のための核酸伝達のための任意の適合した方法を用いてもよい。遺伝子を細胞へ導入し、発現させる方法は当業界に公知になっている。発現ベクターと関連して、ベクターは、当業界の任意の方法によって宿主細胞、例えば、哺乳動物、バクテリア、酵母または昆虫細胞内へ容易に導入されてもよい。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的または生物学的手段によって宿主細胞へ伝達されてもよい。
【0183】
これらの方法は、DNAの直接伝達、例えば、生体外トランスフェクション(Wilsonの他、1989、Nabelの他、1989);形質導入;ウイルス性形質導入;微細注入(HarlandおよびWeintraub、1985、米国特許第5,789,215号(本願に参照として含まれる)を含む注入(米国特許第5,994,624号、第5,981,274号、第5,945,100号、第5,780,448号、第5,736,524号、第5,702,932号、第5,656,610号、第5,589,466号および第5,580,859号、それぞれが本願に参照として含まれる);エレクトロポレーション(米国特許第5,384,253号、本願に参照として含まれる;Tur-Kaspaの他.、1986;Potterの他.、1984);リン酸カルシウム沈殿(Graham and Van Der Eb、1973;Chen and Okayama、1987;Rippeの他、1990);DEAEデキストランに続いてポリエチレングリコールを使用(Gopal、1985);直接的な音波負荷(Fechheimerの他、1987);ヌクレオフェクション(nucleofection);リポフェクションまたはリポソーム媒介トランスフェクション(Nicolau and Sene、1982;Fraleyの他、1979;Nicolauの他、1987;Wongの他.、1980;Kanedaの他.、1989;Katoの他、1991)および収容体-媒介トランスフェクション(WuおよびWu、1987;WuおよびWu、1988);マクロインジェクションまたはナノパーティクル・ガン(PCT出願番号WO94/09699および95/06128;米国特許第5,610,042号;第5,322,783号、第5,563,055号、第5,550,318号、第5,538,877号および第5,538,880号、それぞれ本願に参照として含まれる);シリコンカーバイド繊維との撹拌(Kaepplerの他、1990;米国特許第5,302,523号および第5,464,765号、それぞれ本願に参照として含まれる);アグロバクテリウム-媒介形質転換(米国特許第5,591,616号および第5,563,055号、それぞれ本願に参照として含まれる);原形質体のPEG-媒介形質転換(Omirullehの他、1993;米国特許第4,684,611号および第4,952,500号、それぞれ本願に参照として含まれる);乾燥/抑制-媒介DNAの吸収(Potrykusの他、1985);熱衝撃(Froger and Hall、2007);およびこれらの方法の組み合わせを含むが、これに制限されるものではない。このような技術を適用して小器官(単数または複数)、細胞(単数または複数)、組織(単数または複数)または生物体(単数または複数)が安定にまたは一時的に変形されてもよい。
【0184】
ポリヌクレオチドを宿主細胞へ導入するための物理的な方法は、リン酸カルシウム沈澱法、リポフェクション法、パーティクル・ガン法、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法などを含む。ベクターおよび/または外因性核酸を含む細胞を生産する方法は当業界によく知られている(例えば、Sambrookの他.(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New Yorkを参照)。
【0185】
関心のあるポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための生物学的な方法は、関心のあるポリヌクレオチドまたはトランスジーンが挿入できるDNAおよびRNAベクターの使用を含んでもよい。ウイルスベクターは、哺乳動物、例えば、ヒト細胞に遺伝子を挿入するために最も広く用いられる方法となった。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルスおよびアデノ-関連ウイルスなどから誘導され得る(例えば、米国特許第5,350,674号および第5,585,362号などを参照)。
【0186】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段は、巨大分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、および水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセルおよびリポソームを含む脂質-基盤システムのようなコロイド分散システムを含む。また、ナノ粒子が考慮される。試験管内および生体内の伝達ビヒクルとして用いるための例示的なコロイドシステムはリポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0187】
遺伝子の治療方法および、例えば、アデノ-関連ウイルスを用いて対象体に遺伝子を伝達する方法は、特許文献US6,967,018、WO2014/093622、US2008/0175845、US2014/0100265、EP2432490、EP2352823、EP2384200、WO2014/127198、WO2005/122723、WO2008/137490、WO2013/1421 14、WO2006/128190、WO2009/134681、EP2341068、WO2008/027084、WO2009/054994、WO2014059031、US7,977,049およびWO2014/059029(これらのそれぞれは、全文が本願に参照として含まれる)に記載されている。
【0188】
a.リポソーム-媒介トランスフェクション
一つの例示的な伝達ビヒクルは脂質および/またはリポソームである。脂質製剤の使用は、核酸を宿主細胞に導入するたに考慮される(試験管内、生体外または生体内)。また他の局面において、核酸は脂質と会合されてもよい。脂質と会合された核酸は、リポソームの水性内部にカプセル化されてもよく、リポソームの脂質二重層内に散在されており、リポソームとオリゴヌクレオチドのすべてと関連する連結分子を通じてリポソームに付着、リポソームに捕獲、リポソームと複合化、脂質を含む溶液に分散、脂質と混合、脂質と結合、脂質に懸濁液として含有、ミセルに含有または複合化、またはそうでなければ脂質と会合されてもよい。脂質、脂質/DNAまたは脂質/発現ベクター関連の組成物は、溶液中の任意の特定構造に制限されない。例えば、二重層構造、ミセルまたは「崩壊した」構造で存在してもよい。これらはまた単に溶液に散在され、大きさや形状が均一でない凝集体を形成することが可能である。脂質は自然発生または合成脂質であり得る脂肪物質である。例えば、脂質には、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコールおよびアルデヒドのような長鎖脂肪族炭化水素およびその誘導体を含む化合物の種類だけでなく、細胞質で自然的に発生する脂肪滴が含まれる。
【0189】
特定の実施様態において、核酸は、例えば、リポソームのような脂質複合体に捕獲されてもよい。リポソームは、リン脂質二重層膜と内部の水性媒質を特徴とする多孔質構造である。多層(multilamellar)リポソームは、水性媒質により分離された様々な脂質層を有している。脂質層はリン脂質が過量の水溶液に懸濁されるとき、自発的に形成される。脂質成分は-閉じられた構造が形成される前に自己再配列を経て、脂質二重層の間に水と溶解された溶質を捕獲する(Ghosh and Bachhawat、1991)。用いられるリポソームの量は、用いられる細胞だけでなくリポソームの特性によって変化し得、例えば、100万乃至1000万細胞当たり約5乃至約20μgベクターDNAが考慮されてもよい。
【0190】
リポソーム-媒介核酸伝達および外来DNAの試験管内の発現は、非常に成功的であった(文献参照:Nicolau and Sene、1982;Fraleyの他、1979;Nicolauの他、1987)。培養されたニワトリ胚、HeLaおよび肝癌細胞におけるリポソーム-媒介伝達および外来DNA発現可能性も立証された(Wongの他、1980)。
【0191】
特定の実施様態において、リポソームは赤血球凝集ウイルス(HVJ)と複合体を形成してもよい。これは、細胞膜との融合を促進し、リポソーム-カプセル化DNAの細胞進入を促進するものと示された(Kanedaの他、1989)。他の実施様態において、リポソームは、核非-ヒストン染色体タンパク質(HMG-1)とともに複合化されるか、または用いられてもよい(Katoの他、1991)。また他の実施様態において、リポソームは、HVJおよびHMG1のすべてとともに複合化されるか、または用いられてもよい。他の実施様態において、伝達ビヒクルは、リガンドおよびリポソームを含んでもよい。
【0192】
多様な実施様態において用いるのに適合した脂質は、商業的な供給源から得られる。例えば、リポフェクタミンは、米国マサチューセッツ州・ウォルサム素材のThermo Fisher Scientificから入手することができ;ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、米国ミズーリ州・セントルイス素材のSigmaから入手することができ;ジセチルホスフェート(「DCP」)は、米国ニューヨーク州・プレーンビュー素材のK&K Laboratoriesから入手することができ;コレステロール(「Choi」)はCalbiochem-Behringで得ることができ;ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)およびその他の脂質は、米国アラバマ州・バーミンガム素材のAvanti Polar Lipids、Inc.、から入手することができる。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノールのうち脂質原液は約-20℃で保管してもよい。クロロホルムはメタノールより容易に蒸発するため、唯一の溶媒として用いてもよい。「リポソーム」は取り囲まれた脂質二重層または凝集体の生成によって形成された多様な単一および多層脂質ビヒクルを包括する一般的な用語である。リポソームはリン脂質二重層膜および内部水性媒質を有する多孔質構造を有するものと特徴付けられてもよい。多層(multilamellar)リポソームは、水性媒質により分離された多くの脂質層を有している。脂質層は、リン脂質が過量の水溶液に懸濁されるとき、自発的に形成される。脂質成分は、閉じられた構造が形成される前に自己再配列を経て、脂質二重層の間に水と溶解された溶質を捕獲する(Ghoshの他(1991)Glycobiology 5:505~510)。しかし、溶液で正常な多孔質構造とは異なる構造を有する組成物も含まれる。例えば、脂質は、ミセル構造を仮定するか、または単に脂質分子の不均一な凝集体で存在してもよい。リポフェクタミン-核酸複合体も考慮される。
【0193】
b.エレクトロポレーション法
特定の実施様態において、核酸はエレクトロポレーション法を通じて細胞内に導入される。エレクトロポレーション法は、細胞懸濁液とDNAを高電圧電気放電に露出させることを含む。レシピエント細胞は、機械的傷によるトランスフォーメーションにさらに敏感にさせることができる。また、用いられるベクターの量は、用いられる細胞の特性によって変化し得、例えば、100万乃至1000万個の細胞当たり約5乃至約20μgのベクターDNAが考慮されてもよい。
【0194】
エレクトロポレーション法を利用した真核細胞のトランスフェクションはかなり成功的であった。マウスのプレ-Bリンパ球はヒトカッパー-免疫グロブリン遺伝子でトランスフェクトされ(Potterの他、1984)、ラット肝細胞はクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子でトランスフェクトされた(Tur-Kaspaの他、1986)。
【0195】
c.リン酸カルシウム法
他の実施様態において、核酸は、リン酸カルシウム沈殿を用いて細胞に導入される。ヒトKB細胞は、この技術を用いてアデノウイルス5DNA(Graham and Van Der Eb、1973)でトランスフェクトされた。また、このような方式でマウスL(A9)、マウスC127、CHO、CV-1、BHK、NIH3T3およびHeLa細胞にネオマイシンマーカー遺伝子をトランスフェクトさせ(Chen and Okayama、1987)、ラット肝細胞に多様なマーカー遺伝子をトランスフェクトさせた(Rippeの他、1990)。
【0196】
d.DEAE-デキストラン法
他の実施様態において、核酸は、DEAE-デキストランに続いてポリエチレングリコールを用いて細胞内に伝達される。このような方式でレポータープラスミドをマウス骨髄腫および赤白血病細胞に導入した(Gopal、1985)。
【0197】
4.選択可能であるか、またはスクリーニング可能なマーカー
外因性核酸を宿主細胞に導入する方法、または本発明の抑制剤に細胞を露出させる方法とは関係なく、宿主細胞内の組換えDNA配列の存在を確認するために多様な検定を行うことができる。このような検定は、例えば、サザンおよびノーザンブロッティング、RT-PCRおよびPCRのような当業者によく知られた「分子生物学的」検定と、特定ペプチドの存在または不在検出のような「生化学的」検定、例えば、免疫学的手段(ELISAおよびウエスタンブロット)または本開示内容の範囲内に属する作用剤を確認するための本願に記載されている検定とを含む。
【0198】
特定の実施様態において、外因性核酸を含む細胞は、発現ベクターまたは外因性核酸にマーカーを含むことで、試験管内または生体内で識別され得る。このようなマーカーは、発現ベクターを含む細胞を容易に識別することができるように、細胞に識別可能な変化を付与するだろう。一般的に、選択マーカーは、選択を許容する属性を付与するものであってもよい。ポジティブ選択マーカーは、マーカーの存在が選択を許容するマーカーであるのに対し、ネガティブ選択マーカーは、その存在が選択を妨害するマーカーである。陽性選択マーカーの例は、薬物耐性マーカーである。
【0199】
条件の具現に基づいて形質転換体の区別を可能にする表現型を付与するマーカーの他に、比色分析を基本とするGFPのようなスクリーニング可能なマーカーを含む他の類型のマーカーも考慮される。代案的に、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)のような陰性選別マーカーとして、スクリーニング可能な酵素を用いてもよい。当業者はまた、可能にはFACS分析とともに免疫学的マーカーを用いる方法を認知するだろう。用いられたマーカーは、遺伝子産物をコードする核酸と同時に発現できる限り、重要でないものと思われる。選別およびスクリーニング可能なマーカーの追加の例は、当業者によく知られている。
【0200】
選別可能なマーカーは、外来DNAを細胞に導入するためのトランスフェクションまたはその他の操作の成功を示すために実験室の微生物学、分子生物学および遺伝工学において用いられるレポーター遺伝子類型を含んでもよい。選別可能なマーカーは、たびたび抗生剤耐性遺伝子であり;外部DNAを導入する操作を経た細胞は抗生剤を含んだ培地で成長し、成長できる細胞は、導入された遺伝物質を成功的に吸収して発現した。選別可能なマーカーの例は、ジェネテシンに対する抗生剤耐性を付与するTn5のAbicr遺伝子またはNeo遺伝子を含む。
【0201】
スクリーニング可能なマーカーは、研究者が所望する細胞と所望しない細胞を区別できるようにするレポーター遺伝子を含んでもよい。本発明の特定の実施様態は、特定の細胞系統を示すためにレポーター遺伝子を利用する。例えば、レポーター遺伝子は、同時発現のための心室-または心房-選択的遺伝子のコーディング領域と、一般的に関連した心室-または心房-選択的調節エレメントの制御下に発現エレメント内に位置してもよい。レポーターは、特定血統の細胞を薬物またはその他の選択圧力に置くか、または細胞生存可能性を危険に落ち込むことなく分離することができる。
【0202】
このようなレポーターの例は、細胞表面タンパク質(例えば、CD4、HAエピトープ)、蛍光タンパク質、抗原決定基および酵素(例えば、β-ガラクトシダーゼ)をコードする遺伝子を含む。ベクター含有細胞は、例えば、細胞表面のタンパク質に対する蛍光-タグされた抗体またはベクターによりコードされた酵素によって蛍光生成物に転換され得る基質を用いてFACSによって分離されてもよい。
【0203】
特定の実施様態において、レポーター遺伝子は蛍光タンパク質である。ほぼ全体可視光線スペクトルにわたった蛍光放出スペクトルプロフィルを特徴とする広範囲な蛍光タンパク質遺伝変異体が開発された(非制限的な例は、表1を参照)。元々Aequorea victoriaクラゲ緑色蛍光タンパク質に対する突然変異誘発努力により青色から黄色まで多様な色相の新たな蛍光プローブが作られており、これは、生物学的研究において最も広く用いられる生体内のレポーター分子中の一部である。オレンジ色と赤色スペクトル領域で放出するさらに長い波長の蛍光タンパク質は、海洋イソギンチャク、ディスコソマ線条体(Discosoma striata)および珊瑚虫(Anthozoa)の種類に属する暗礁珊瑚から開発された。青緑色、緑色、黄色、オレンジ色および濃い赤色蛍光放出を有する類似したタンパク質を生産するためにまた別の種が採掘された。蛍光タンパク質の明るさと安定性を改善して全般的な有用性を向上させるための開発研究努力が進行中である。
【0204】
【0205】
III.神経退行性疾患の治療
本開示内容の局面は、神経退行性疾患、障害または病態を病んでいる対象体を治療または予防するためにこのような組成物を用いる組成物および方法に関するものである。一部の実施様態において、神経退行性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、パーキンソン病認知症、血管性認知症、大脳アミロイド血管症、レビー小体型認知症、慢性外傷性脳症、ダウン症候群、および/または病的老化である。一部の実施様態において、神経退行性疾患はアルツハイマー病である。
【0206】
特定の実施様態において、開示されている方法は、神経退行性疾患、障害または病態と診断された対象体を治療する段階をさらに含む。特定の実施様態において、開示されている方法は、神経退行性疾病、障害または病態の症状を有すると診断された対象体を治療する方法をさらに含む。特定の実施様態において、開示されている方法は、神経退行性疾患、障害または病態を有する危険があると確認された対象体を治療する段階をさらに含む。当業界に公知になり、本願に記述された試験および診断方法を用いて、対象体は神経退行性疾患、障害または病態と診断されるか、または症状を有すると診断され得るか、または有する危険があると識別され得る。
【0207】
一部の実施様態において、前記方法は、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む治療学的有効量の組成物を含む、治療が必要な対象体を決定する段階をさらに含む。一部の実施様態において、Aβペプチドをコードするベクターは、Aβペプチドのタンパク質の発現を可能にするミニ遺伝子をコードすることができ、一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、配列番号:8、配列番号:13乃至17、配列番号:35乃至38、または配列番号:66乃至85のうちの任意の配列番号と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含んでもよい。一部の実施様態において、前記方法は、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む治療学的有効量の組成物を含む治療を対象体に必要であると判断される場合、対象体に提供する段階をさらに含む。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む治療学的有効量の組成物を含む治療を必要とする対象体を決定する段階は、対象体を神経退行性疾患、障害または病態と診断する段階を含む。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む治療学的有効量の組成物を含む治療を必要とする対象体を決定する段階は、対象体が神経退行性疾患、障害または病態の症状を有すると診断する段階を含む。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む治療学的有効量の組成物を含む治療を必要とする対象体を決定する段階は、神経退行性疾患、障害または病態を有する危険がある対象体を識別する段階を含む。
【0208】
一部の実施様態において、開示されている方法は、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む治療学的有効量の組成物を神経退行性疾患、障害または病態を病んでいる対象体に投与する段階を含む。本願に開示されているように、神経退行性疾患は、Aβペプチドの凝集またはオリゴマー化と関連する可能性があり、Aβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターの投与は、驚くべきことに内因性Aβペプチドオリゴマー、プロトフィブリル、フィブリルまたはプラークの形成を防止または減少させるものと期せずして明らかにされた。また、Aβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを投与すると、驚くべきことに内因性Aβペプチド凝集体の細胞毒性を予防または減少させることができる。従って、一部の実施様態において、Aβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む治療学的有効量の組成物で神経退行性疾患、障害または病態を病んでいる対象体を治療するための組成物、および相応する方法が開示される。追加の実施様態において、少なくとも一つの生体内の内因性Aβペプチドを、Aβペプチド変異体をコードするベクターから治療学的有効量の発現されたAβペプチド変異体と接触させる段階を含む、生体内で内因性Aβペプチドの凝集を抑制する方法が開示されており、ここで、ベクターは任意で組成物に含まれる。追加の実施様態において、少なくとも一つの生体内の内因性Aβペプチドを、野生型-Aβ型ペプチドまたはAβペプチド変異体をコードするベクターから治療学的有効量の発現された野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体と接触させる段階を含む、生体内の内因性Aβペプチドの凝集を促進する方法が開示され、ここで、ベクターは任意で組成物に含まれる。一部の実施様態において、神経退行性疾患、障害または病態は、内因性Aβペプチドの非正常的な凝集を特徴とするものである。一部の実施様態において、神経退行性疾患、障害または病態はアルツハイマー病である。
【0209】
対象体は、例えば、Aβペプチドの異常凝集を症状および/または機序として有する病態を有し得る。本開示内容の実施様態は、Aβペプチド凝集の調節が有益である任意の医学的病態の治療または予防を含む。特定の実施様態において、個体におけるAβペプチド凝集の弱化、または個体におけるAβペプチド凝集の遅延または逆転のために、Aβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む一つ以上の組成物の治療学的有効量を提供する。特定の実施様態において、個体にAβペプチド凝集の促進のための野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む一つ以上の組成物の治療学的有効量を提供する。特定の実施様態において、Aβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物で治療または予防される医学的病態は、Aβペプチドの凝集を特徴とする神経退行性疾患、障害または病態を含む。特定の実施様態において、Aβペプチドの凝集は、本開示内容の組成物で処理されない。一部の場合に、Aβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物は、例えば、Aβペプチドの凝集を改善、抑制、遅延または逆転させることで、個体の医学的病態を治療または予防する。一部の場合に、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物は、例えば、Aβペプチドの凝集を促進することで、個体の医学的病態を治療または予防する。一部の実施様態において、Aβペプチド凝集の改善、抑制、遅延または逆転は、タウタンパク質シーディングを弱化させることができる。
【0210】
対象体は、例えば、非正常的アミロイドプラークの形成、タンパク質ミスフォールディング、タウタンパク質のレベルおよび/またはリン酸化されたタウタンパク質のレベルの増加、タウタンパク質および/またはAβペプチドシーディングの増加、神経炎症、認知減退、神経退行性、ニューロン損失、および/またはシナプス損失を症状および/または機序として有する病態を有し得る。本開示内容の実施様態は、アミロイドプラークの形成、タンパク質ミスフォールディング、タウタンパク質のレベル、タウタンパク質のリン酸化、タウタンパク質および/またはAβペプチドのシーディングのシーディング速度、神経炎症、認知低下、神経退行性、ニューロン損失および/またはシナプス損失の調節が有益である任意の医学的病態の治療または予防を含む。特定の実施様態において、個体内のアミロイドプラークの形成、タンパク質ミスフォールディング、タウタンパク質のレベル、タウタンパク質のリン酸化、タウタンパク質および/またはAβペプチドのシーディング速度、神経炎症、認知低下、神経退行性、ニューロン損失および/またはシナプス損失の弱化のための野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む一つ以上の組成物の治療学的有効量が個体に提供される。特定の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物で治療または予防される医学的病態は、神経退行性疾患、障害またはタンパク質ミスフォールディング、内因性Aβペプチドの凝集、アミロイドプラークの形成、神経炎症、神経退行性、ニューロン損失またはシナプス損失に繋がり得る病態;非正常的なタウのレベル、タウのリン酸化、またはリン酸化されたタウのレベル;タウのシーディングまたは内因性Aβペプチドのシーディング;および/または認知低下を含む。特定の実施様態において、タンパク質ミスフォールディング、内因性Aβペプチドの凝集、アミロイドプラークの形成、神経炎症、神経退行性、ニューロン損失またはシナプス損失;非正常的なタウのレベル、タウのリン酸化、またはリン酸化されたタウのレベル;タウのシーディングまたは内因性Aβペプチドのシーディング;および/または認知減退は、本発明の組成物で治療されない。一部の場合に、Aβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物は、例えば、タンパク質ミスフォールディング、内因性Aβペプチドの凝集、アミロイドプラークの形成、神経炎症、神経退行性、ニューロン損失またはシナプス損失;非正常的なタウのレベル、タウのリン酸化、またはリン酸化されたタウのレベル;タウのシーディングまたは内因性Aβペプチドのシーディング;および/または認知低下を改善するか、または抑制することで個体の医学的病態を治療または予防する。
【0211】
本開示内容の実施様態は、タンパク質ミスフォールディング、内因性Aβペプチドの凝集、アミロイドプラークの形成、神経炎症、神経退行性、ニューロン損失またはシナプス損失;非正常的なタウのレベル、タウのリン酸化、またはリン酸化されたタウのレベル;タウのシーディングまたは内因性Aβペプチドのシーディング;および/または神経退行性障害の結果として認知減退を治療または予防する組成物および方法を含む。特定の場合に、Aβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物を個体に伝達すれば、内因性Aβペプチドオリゴマー、プロトフィブリル、フィブリルの形成または内因性Aβペプチド凝集体のプラークまたは細胞毒性を防止または減少させる。特定の場合に、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物を個体に伝達すれば、内因性Aβペプチドオリゴマー、プロトフィブリル、フィブリルまたは内因性Aβペプチド凝集体のプラークの形成を促進する。
【0212】
一部の実施様態において、野生型Aβペプチドをコードするベクターは、DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA(配列番号:2)、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施様態において、本開示内容の野生型Aβペプチドは、配列番号:2、またはその断片または機能的誘導体を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成される。一部の実施様態において、配列番号:2の断片または機能的誘導体は、KLVFFAE(配列番号:39)と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列を含む。
【0213】
一部の実施様態において、Aβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターは、野生型Aβペプチドアミノ酸配列に相応する配列番号:2の変異体を含む。
【0214】
一部の実施様態において、Aβペプチド変異体は、
、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施様態において、本開示内容のAβペプチド変異体は、配列番号:3、またはその断片または機能的誘導体を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成される。一部の実施様態において、配列番号:3の断片または機能的誘導体は、KLVDFAE(配列番号:10)と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列を含む。
【0215】
一部の実施様態において、Aβペプチド変異体は、
、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施様態において、本開示内容のAβペプチド変異体は、配列番号:4、またはその断片または機能的誘導体を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成される。一部の実施様態において、配列番号:4の断片または機能的誘導体は、KLVFPAE(配列番号:11)と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列を含む。
【0216】
一部の実施様態において、Aβペプチド変異体は、
、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施様態において、本開示内容のAβペプチド変異体は、配列番号:5、またはその断片または機能的誘導体を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成される。一部の実施様態において、配列番号:5の断片または機能的誘導体は、KLVDFAE(配列番号:10)と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列を含む。
【0217】
一部の実施様態において、Aβペプチド変異体は、
、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施様態において、本開示内容のAβペプチド変異体は、配列番号:6、またはその断片または機能的誘導体を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成される。一部の実施様態において、配列番号:6の断片または機能的誘導体は、KLVPFAE(配列番号:12)と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列を含む。
【0218】
一部の実施様態において、Aβペプチド変異体は、
、またはその断片または機能的誘導体と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施様態において、本開示内容のAβペプチド変異体は、配列番号:7、またはその断片または機能的誘導体を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成される。一部の実施様態において、配列番号:7の断片または機能的誘導体は、KLPFFAE(配列番号:65)と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施様態において、Aβペプチド変異体は、配列番号:7を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成されない。
【0219】
一部の実施様態において、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、または配列番号:7を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成される野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体はN-末端切断を含む。一部の実施様態において、N-末端切断は、1乃至22つのアミノ酸切断を含む。一部の実施様態において、N-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22つのアミノ酸切断を含む。
【0220】
一部の実施様態において、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、または配列番号:7を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成される野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体はC-末端切断を含む。一部の実施様態において、C-末端切断は、1乃至27個のアミノ酸切断を含む。一部の実施様態において、C-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個のアミノ酸切断を含む。
【0221】
一部の実施様態において、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、または配列番号:7を含むか、またはこれにより構成されるか、本質的に構成される野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体は、N-末端切断およびC-末端切断を含む。一部の実施様態において、N-末端切断は、1乃至22つのアミノ酸切断を含み、C-末端切断は、1乃至27個のアミノ酸切断を含む。一部の実施様態において、N-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22つのアミノ酸切断を含み、C-末端切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28個のアミノ酸切断を含む。
【0222】
野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体は、Aβペプチドのタンパク質の発現を可能にするミニ遺伝子をコードするベクターによってコードされてもよい。一部の実施様態において、ミニ遺伝子は、配列番号:8、配列番号:13乃至17、配列番号:35乃至38、または配列番号:66乃至85のうちの任意の配列番号と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値を有するアミノ酸配列に相応するヌクレオチド配列を含んでもよい。
【0223】
また、一部の実施様態においては、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む薬剤学的組成物が開示される。一部の場合に、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物が個体のための単独療法で提供されるが、他の場合、個体は、タンパク質ミスフォールディング、内因性Aβペプチドの凝集、アミロイドプラークの形成、神経炎症、神経退行性、ニューロン損失またはシナプス損失の治療または予防;非正常的なタウのレベル、タウのリン酸化、またはリン酸化されたタウのレベル;タウのシーディングまたは内因性Aβペプチドのシーディング;および/または認知低下のための一つ以上の追加療法を提供されるか;または他の場合にAβペプチドの凝集、アミロイドプラークの形成および/またはフィブリルの形成を促進するための一つ以上の追加療法が個体に提供される。
【0224】
一つ以上の追加療法は任意の種類であってもよいが、特定の場合に、一つ以上の追加療法は、一つ以上の追加神経退行性疾患治療剤、例えば、アルツハイマー病薬物である。一部の実施様態において、アルツハイマー病薬物は、アデュカヌマブ、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、メマンチンまたはタクリンを含む。一部の実施様態において、アルツハイマー病薬物はAβレベルを減少させるか、または凝集を防止する追加および/または代替薬物および生物製剤(すなわち、セクレターゼ抑制剤/調節剤、抗-Aβ手動免疫化、抗-Aβ能動免疫化または金属キレート剤);タウのレベルを下げるか、またはタウの凝集を防止するか、またはタウの病的リン酸化を減少させる薬物および製剤(すなわち、キナーゼ抑制剤、抗-タウ手動免疫化、抗-タウ能動免疫化、またはアンチセンスオリゴヌクレオチド);微細小管を安定化する薬物および製剤;神経退化を減少する薬物および製剤;炎症反応を遮断または変形する薬物および製剤;神経精神病症状を減少する薬物および製剤;認知を向上する薬物および製剤(すなわち、神経伝達物質抑制剤、調節剤、活性剤);血管機能を保存または改善する薬物および製剤;または細胞代謝を変更する薬物および製剤を含んでもよい(例えば、文献K.G.Yiannopoulou&S.G.Papageorgiou、J.Cent.Nerv.Sys.Dis.12:1179573520907397(2020)、and J.Cummingsの他、Alzheimer’s Dement.(N.Y.)5:272~293(2019)を参照)。
【0225】
一部の実施様態において、一つ以上の追加療法は、老化の障害または同伴疾患、例えば、心血管疾患、糖尿病、粥状動脈硬化症、肥満、癌、感染および神経障害を治療するための一つ以上の療法を含む。老化の進行に対するよく-確立された全ての指標を用いることができる。一部の実施様態において、老化の障害または同伴疾患を治療するための一つ以上の療法は、ガン発病率の減少、粥状動脈硬化症のような心血管疾患の遅延または緩和;骨粗鬆症の遅延および/または緩和;ブドウ糖耐性の改善または糖尿病および肥満のような関連疾患の発病率の減少;記憶機能およびその他の認知機能の低下の改善または減少;衰退する神経筋協応改善または減少;および免疫機能低下を改善または減少させる効果を有する。年齢-関連障害の改善は、影響を受けた対象体の症状減少または治療されていない集団と比べて、集団の疾病または障害発病率の減少の結果でもあり得る。一つ以上の療法は、特定のマーカーおよび老化障害によって評価されるように、多様な年齢-関連病態および疾患を治療および/または予防する効果を有する。従って、追加の局面において、本発明は、少なくとも心血管機能の減少、骨粗鬆症、関節炎、ブドウ糖不耐性、インシュリン抵抗性、記憶力減少、神経筋協応喪失、心血管疾患増加、心臓、循環系または肺機能の減少および寿命減少、またはこれらの組み合わせのグループから選ばれる障害または老化マーカーの対象体における治療または予防に関するものである。
【0226】
IV.治療学的組成物の投与
特定の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物は、治療的投与のための薬剤学的組成物として剤形化される。一部の実施様態において、開示されている方法は、対象体または患者に神経退行性疾患療法を投与する段階を含む。本開示内容の組成物は、生体内、試験管内または生体外投与のために用いられてもよい。
一部の実施様態において、神経退行性疾患療法は、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異療法であってもよいタンパク質-基盤療法を含む。一部の実施様態において、神経退行性疾患療法は、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む療法であってもよいポリヌクレオチド-基盤の療法を含む。一部の実施様態において、神経退行性疾患療法は一つ以上の神経退行性疾患の薬物を含む。これらの神経退行性疾患療法はいずれも除外されてもよい。これらの療法の組み合わせもまた投与されてもよい。
【0227】
本願において提供される療法は、第1の神経退行性疾患療法(例えば、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体または野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体をコードするポリヌクレオチド)および一つ以上の追加神経退行性疾患療法(例えば、神経退行性疾患薬物)のような治療学的組成物の組み合わせの投与を含んでもよい。療法は当業界に公知になっている任意の適合した方式で投与されてもよい。例えば、第1および一つ以上の追加の神経退行性疾患療法は、順次に(異なる時間に)または同時に(同時にまたはほぼ同時に;また「同時に」または「実質的に同時に」)投与されてもよい。一部の実施様態において、第1および一つ以上の追加の神経退行性疾患治療療法は、別途の組成物で投与されてもよい。一部の実施様態において、第1および一つ以上の追加の神経退行性疾患治療療法は同一の組成物にあり得る。異なる療法は、一つの組成物または2つの組成物、3つの組成物または4つの組成物のような一つ超過の組成物で投与され得る。製剤の多様な組み合わせが用いられてもよい。
【0228】
一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物(単数または複数)、および一つ以上の追加の神経退行性疾患薬物は実質的に同時に投与される。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターおよび一つ以上の追加の神経退行性疾患薬物を含む組成物(単数または複数)は順次に投与される。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物(単数または複数)は、一つ以上の追加の神経退行性疾患薬物を投与する前に投与される。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物(単数または複数)は、一つ以上の追加の神経退行性疾患薬物を投与した後に投与される。
【0229】
一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物(単数または複数)は対象体に1回伝達される。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物は、対象体に、例えば、1日1回、1日1回以上、1週間に1回、1週間に1回以上、1ヶ月に1回、1ヶ月に1回以上、1年に1回または1年に1回以上に数回伝達される。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体が対象体に数回投与される。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体をコードするベクターまたはポリヌクレオチドは対象体に1回投与される。多重治療は同一の製剤および/または投与経路を有してもよく、または有さなくてもよい。
【0230】
一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物は、Aβペプチドオリゴマー、プロトフィブリルまたはフィブリル形成の開始後に伝達される。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物は、アミロイドプラーク形成の開始後に伝達される。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物は、Aβペプチドオリゴマー、プロトフィブリルまたはフィブリル形成の開始前に伝達される。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物はアミロイドプラーク形成の開始前に伝達される。
【0231】
A.担体
一部の実施様態において、本開示内容の薬剤学的組成物は、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体または薬剤学的に許容される担体に溶解または分散された変異体をコードするポリヌクレオチドを含む有効量の一つ以上の組成物を含む。「薬剤学的」および「薬理学的に許容される」という文具は、本明細書において相互交換的に用いられ、例えば、ヒトのような対象体に適切に投与されるとき、副作用、アレルギーまたはその他の好ましくない反応を引き起こすことなく、本開示内容の治療方法を妨害しない分子実体および組成物を意味する。Aβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体または追加の活性成分をコードする少なくとも一つのベクターを含む薬剤学的組成物の製造は、文献[参照:Remington:The Science and Practice of Pharmacy、21st Ed.Lippincott Williams and Wilkins、2005、具体的に、全文が本願に参照として含まれる]に例示されるように、本開示内容に照らして当業者に公知になるだろう。また、対象体に投与するための製剤は、FDA生物標準事務局(FDA Office of Biological Standards)で要求する無菌性、発熱性、一般安全性および純度標準を満たさなければならないことを理解するだろう。
【0232】
本願において用いられる用語「薬剤学的に許容される担体」は、当業者に公知になったような(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、18th Ed.Mack Printing Company、1990、pp.1289~1329、具体的に、全文が本願に参照として含まれる)、任意のおよびすべての溶媒、分散媒質、コーティング剤、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張化剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、染料、類似物質およびこれらの組み合わせを含む。任意の通常の担体が活性成分と両立できない場合を除き、薬剤学的組成物におけるその使用が考慮される。野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはこれをコードするポリヌクレオチドを含む組成物は、固体、液体またはエアロゾル形態で投与されるか否か、および注入のような投与経路に対して滅菌が必要であるか否かによって異なる類型の担体を含んでもよい。
【0233】
さらに、本開示内容によると、投与に適合した本開示内容の組成物は、不活性希釈剤とともにまたは不活性希釈剤なく製薬上許容される担体に提供されてもよい。担体は同化可能であるべきであり、液体、半固体、すなわちペーストまたは固体担体を含む。任意の通常の媒質、作用剤、希釈剤または担体がレシピエントまたは内部に含有された組成物の治療効果に有害な場合を除き、本開示内容の方法を実施するのに担体の使用が適切である。担体または希釈剤の例は、脂肪、オイル、水、塩水溶液、脂質、リポソーム、樹脂、結合剤、充填剤、アルコールなど、またはこれらの組み合わせを含む。組成物はまた一つ以上の成分の酸化を遅滞させるために多様な抗酸化剤を含んでもよい。さらに、微生物作用の予防は、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール(thimerosal)またはこれらの組み合わせを含むが、これに制限されない多様な抗菌剤および抗真菌剤のような防腐剤によって引き起こされてもよい。
【0234】
本開示内容によると、組成物は、任意の便利で実質的な方式、すなわち、溶液、懸濁液、乳化、混合、カプセル化、吸収などによって担体と組み合わされる。このような操作は当業者にとって日常的である。野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはこれをコードするポリヌクレオチドを含む組成物は凍結乾燥されてもよい。
【0235】
本開示内容の特定の実施様態において、組成物は、半固体または固体担体と完全に組み合わされるか、または混合される。混合は、グラインディング(grinding)のような任意の便利な方式で行われてもよい。治療活性の損失、すなわち、胃腸での変性から組成物を保護するために安定化剤がまた混合過程で添加されてもよい。組成物に用いられる安定化剤の例は、緩衝剤、グリシンおよびリジンのようなアミノ酸、デキストロース、マンノース、ガラクトース、果糖、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトールなどのような炭水化物を含む。
【0236】
更なる実施様態において、本開示内容は、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはこのような一つ以上の脂質をコードするポリヌクレオチド、および水性溶媒を含む組成物を含む薬剤学的脂質ビヒクル組成物の使用を含んでもよい。本願において用いられる用語「脂質」は、特徴的に水に不溶性であり、かつ有機溶媒で抽出することができる広範囲な物質のうち任意のものを含むと定義されるだろう。このような広範囲な部類の化合物は、当業者によく知られており、「脂質」という用語が本願において用いられることによって任意の特定構造に制限されない。脂質の例は、長鎖脂肪族炭化水素およびその誘導体を含む化合物を含む。脂質は天然発生または合成(すなわち、ヒトによって設計または生産される)であってもよい。しかし、脂質は、一般的に生物学的物質である。生物学的脂質は当業界によく知られており、例えば、中性脂肪、リン脂質、ホスホグリセリド、ステロイド、テルペン、リゾ脂質、グリコスフィンゴ脂質、糖脂質、スルファチド(sulphatide)、エーテルおよびエステル-結合された脂肪酸を有する脂質および重合性脂質、およびこれらの組み合わせを含む。もちろん、当業者が脂質と理解する本願に具体的に記載されている脂質以外の化合物も本開示内容の組成物および方法に含まれる。
【0237】
当業者は組成物を脂質ビヒクルに分散させるために用いられてもよい技術の範囲をよく知っているはずである。例えば、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはこれをコードするポリヌクレオチドを含む組成物(単数または複数)は、脂質を含む溶液に分散され、脂質と溶解され、脂質と油化され、脂質と混合され、脂質に共有結合され、脂質に懸濁液で含有され、ミセルまたはリポソームに含有または複合化されるか、または当業者に公知になっている任意の手段によって脂質または脂質構造と会合されてもよい。分散液はリポソームを形成してもよく、または形成しなくてもよい。
【0238】
野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物(単数または複数)は、遊離塩基、中性または塩形態の組成物に剤形化されてもよい。薬剤学的に許容される塩は、酸付加塩、例えば、タンパク質性組成物の遊離アミノ基と形成された塩、または、例えば、塩酸またはリン酸のような無機酸または酢酸、シュウ酸、酒石酸またはマンデル酸のような有機酸と形成された塩を含む。遊離カルボキシル基で形成された塩はまた、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化鉄のような無機塩基;またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジンまたはプロカインのような有機塩基から由来してもよい。製剤化の際、溶液は、投与製剤と互換される方式で、そして治療学的に効果的な量で投与されるだろう。前記剤形は、肺へ伝達するための注入液またはエアロゾルのような非経口投与のために剤形化されるか、または薬物放出カプセルなどのような消化投与のために剤形化される形態のような多様な投与形態で容易に投与される。
【0239】
B.投与経路
本発明の治療剤は同一の投与経路または異なる投与経路によって投与されてもよい。組成物の投与経路は、例えば、静脈内、脳内、頭蓋内、筋肉内、皮下、局所、経口、粘膜内、皮内、経皮、腹腔内、動脈内、眼窩内、移植によって、膣内、直腸内、脊髄腔内、関節内、脳室内、潤滑膜内または鼻腔内;吸入、注入、投入、連続投入、カテーテルを介して、洗浄を通じて標的細胞を直接な局所的灌流入浴;クリームまたは脂質組成物(例えば、リポソーム);他の方法または当業者に公知になっている前述の方法の任意の組み合わせであってもよい(例えば、文献Remington’s Pharmaceutical Sciences、18th Ed.Mack Printing Company、1990を参照、具体的に全文が本願に参照として含まれる)。
【0240】
一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物(単数または複数)は全身的にまたは局所的に伝達される。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物は、眼窩-後方注入を通じて中枢神経系へ伝達される。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物は、末梢注入を通じて全身的に中枢神経系へ伝達される。一部の実施様態において、末梢注入は静脈注入である。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物は脳脊髄液(CSF)へ伝達される。一部の実施様態において、組成物は非外科的な注入によって脳脊髄液へ伝達される。一部の実施様態において、脳脊髄液への非外科的な注入は非外科的脊髄腔内の注入を含む。一部の実施様態において、組成物は神経外科的な注入によって脳脊髄液へ伝達される。一部の実施様態において、脳脊髄液への神経外科的な注入は大槽(cisterna magna)への神経外科的な注入を含む。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物は心室系へ伝達される。一部の実施様態において、組成物は神経外科的な注入によって心室系へ伝達される。脳脊髄液および/または心室系への組成物の伝達は、例えば、本願に全文が参照として含まれた文献[W.A.Liguoreの他、Molecular Therapy 27(11):2018~2037]に記述されている。一部の実施様態において、中枢神経系、CSFおよび/または心室系へ伝達される組成物は血液脳関門を通過する。
【0241】
一部の実施様態において、本願に開示されている野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体を含む組成物は、文献[A.L.Lewis and J.Richard、Therapeutic Delivery 6(2):149~163(2015)、具体的に、本願に全文が参照として含まれる)]に説明されているように、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体の生体内の安定性および/または細胞による野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体の摂取または吸収を向上させるために剤形化されてもよい。例えば、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体は、細胞による野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体の吸収を増加させるために吸収増強剤、例えば、アシルカルニチン、オクタン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、SNAC、SNAD、5-CNACとともに剤形化されてもよい。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体の生体内の安定性および/または細胞による野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体の吸収または吸収を向上させるための剤形は、組成物の投与経路、例えば、経口または注入に左右されるだろう。
【0242】
1.非経口経路
従って、一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物(単数または複数)は非経口経路を通じて投与されてもよい。本願において用いられる用語「非経口」は、消化管を迂回する経路を含む。具体的に、本願に開示されている薬剤学的組成物は、例えば、眼窩-後方、脳内、頭蓋内、静脈内、皮内、筋肉内、動脈内、脊髄腔内、皮下または腹腔内に投与されてもよいが、これに制限されるものではない(米国特許第6,7537,514号、第6,613,308号、第5,466,468号、第5,543,158号;第5,641,515号;および第5,399,363号(それぞれ全文が参照として本明細書に具体的に含まれる)。
【0243】
遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤と適切に混合された水で製造されてもよい。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびこれらの混合物およびオイルで製造されてもよい。一般的な保管および使用条件において、これらの製剤は、微生物の成長を防止する防腐剤を含む。注入可能な用途に適合した薬剤学的形態は、殺菌された注入可能な溶液または分散液の即席製造のための滅菌水溶液または分散液および滅菌粉末を含む(例えば、米国特許第5,466,468号、具体的に全文が本願に参照として含まれる)。すべての場合に、形態は無菌状態でなければならず、注入が容易である程度に流動的でなければならない。製造および保管条件で安定的でなければならず、バクテリアおよびカビのような微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(すなわち、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、その適合した混合物および/または植物性オイルを含む溶媒または分散媒質であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用、分散の場合必要である粒子の大きさの維持および界面活性剤の使用によって維持されてもよい。微生物作用の防止は、多様な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって引き起こされてもよい。多くの場合に、例えば、糖または塩化ナトリウムのような等張化剤を含むことが好ましいだろう。注入用組成物は吸収を遅延させる製剤、例えば、アルミニウムモノステアレートおよびゼラチンを組成物に用いることで長時間吸収されてもよい。
【0244】
例えば、水溶液における非経口投与のために、溶液は、必要である場合に適切に緩衝されなければならず、液体希釈剤は、先ず十分な食塩水またはブドウ糖で等張性にさせるべきである。これらの特定水溶液は、特に、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与に適合している。これと関連して、用いられてもよい滅菌水性媒質は、本開示内容に照らして当業者に公知になるだろう。例えば、一つの投与量を等張性NaCl溶液に溶解させて提案された投入部位に注入することができる(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」15th Edition、1035~1038頁および1570~1580頁を参照)。投与量の一部の変動は、治療対象体の状態に応じて必然的に発生するだろう。投与責任者はどのような場合でも個別対象体に適切な用量を決定する。また、ヒト投与の場合、製剤は、FDA生物標準事務局において要求する無菌性、発熱性、一般安全性および純度標準を満たさなければならない。
【0245】
滅菌注入用溶液は必要な量の活性化合物を適切な溶媒に前記列挙された多様なその他の成分とともに混入させた後、必要である場合、例えば、ろ過滅菌することで製造することができる。一般的に、分散液は、基本分散媒質および上記に列挙されたもののうち、必要なその他の成分を含む滅菌ビヒクルに多様な滅菌活性成分を混入して製造される。滅菌注入溶液の製造のための滅菌粉末の場合、好ましい製造方法は、以前に滅菌濾過された溶液から活性成分の粉末と任意の追加の所望の成分を生成する真空乾燥および凍結乾燥技術である。粉末化組成物は安定化剤とともにまたは安定化剤なく、例えば、水または食塩水のような液体担体と組み合わされる。
【0246】
2.消化経路
本開示内容の特定の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物(単数または複数)は、消化経路を通じて投与されるように剤形化される。消化経路は組成物が消化管と直接接触するすべての可能な投与経路を含む。具体的に、本願に開示されている薬剤学的組成物は、経口、頬側、直腸または舌下で投与されてもよい。このように、これらの組成物は、不活性希釈剤または同化可能な食用担体とともに剤形化されてもよいか、硬質-または軟質-シェルのゼラチンカプセルに同封されてもよいか、錠剤で圧縮されてもよいか、または献立の食べ物と直接統合されてもよい。
【0247】
特定の実施様態において、活性化合物は賦形剤とともに混入されてもよく、摂取可能な錠剤、頬側錠剤、トローチ剤(troches)、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハなどの形態で用いられてもよい(Mathiowitzの他、1997;Hwangの他、1998、米国特許第5,641,515号、第5,580,579号および第5,792,451号(それぞれ全文が本願に参考として含まれる)。錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などはまた次を含んでもよい:例えば、トラガカントガム、アカシア、トウモロコシデンプン、ゼラチンまたはそれらの組み合わせのような結合剤;例えば、リン酸二カルシウム、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムまたはこれらの組み合わせのような賦形剤;例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸またはこれらの組み合わせのような崩壊剤;例えば、マグネシウムステアレートのような潤滑剤;例えば、スクロース、ラクトース、サッカリンまたはこれらの組み合わせのような甘味剤;例えば、ペパーミント、ウインターグリーンオイル、チェリー香料、オレンジ香料などのような香味剤。投与単位の形態がカプセルである場合、前記類型の物質に加えて液体担体を含んでもよい。多様なその他の物質がコーティング剤で存在することができるか、そうでなければ投与単位の物理的形態を変形することができる。例えば、錠剤、丸薬またはカプセルはシェラック(shellac)、砂糖または両方ともでコーティングされてもよい。投与形態がカプセルである場合、前記類型の物質に加えて液体担体のような担体を含んでもよい。ゼラチンカプセル、錠剤または丸薬は腸溶コーティングされてもよい。腸溶コーティングはpHが酸性である胃または上部腸で組成物の変性を防止する。例えば、米国特許第5,629,001号を参照する。小腸に到達すれば、内部塩基性pHはコーティングを溶解させ、組成物が放出されて、特化された細胞、例えば上皮腸細胞およびPeyer’s patch M細胞により吸収されるようにする。エリキシルシロップは活性化合物であるスクロースのような甘味料、メチルおよびプロピルパラベンのような防腐剤、染料および香味剤(例えば、チェリーまたはオレンジ香)を含んでもよい。もちろん、任意の投与単位形態を製造するのに用いられる任意の物質は薬剤学的に純粋であり、用いられる量で実質的に無毒性でなければならない。また、活性化合物は持続放出製剤および剤形に含まれてもよい。
【0248】
経口投与のために、本開示内容の野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物(単数または複数)は、代案的に口腔洗浄剤、歯磨き粉、頬側錠剤、経口スプレーまたは舌下経口-投与剤形の形態で一つ以上の賦形剤とともに混入されてもよい。例えば、ホウ酸ナトリウム溶液(Dobell’s Solution)のような適切な溶媒に必要な量の活性成分を含んで口腔清潔剤を製造することができる。代案的に、活性成分は、ホウ酸ナトリウム、グリセリンおよび重炭酸カリウムを含む溶液のような経口溶液に混入されるか、歯磨剤(dentifrice)に分散されるか、または水、結合剤、研磨剤、香味剤、発布剤および湿潤剤を含んでもよい組成物に治療学的有効量で加えることができる。代案的に、組成物は舌の下に置くか、口中で溶解され得る錠剤または溶液の形態で作られてもよい。
【0249】
他の消化管の投与方式に適合した追加の剤形は座薬を含む。座薬は多様な重さと形状の固形剤形であって、一般的に直腸に挿入するために薬用で用いられる。挿入後の座薬は共同流体で軟化されるか溶けるか、または溶解される。一般的に、座薬の場合、伝統的な担体は、例えば、ポリアルキレングリコール、トリグリセリドまたはこれらの組み合わせを含んでもよい。特定の実施様態において、座薬は、例えば、約0.5%乃至約10%(重量)、好ましくは約1%乃至約2%(重量)の範囲の活性成分を含む混合物から形成されてもよい。
【0250】
3.その他の経路
本開示内容の他の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む組成物(単数または複数)は、多様なその他の経路、例えば、局所(すなわち、経皮)投与、粘膜投与(鼻腔、膣など)および/または吸入を通じた投与のために剤形化されてもよい。
【0251】
局所投与用製薬組成物は、軟膏、ペースト、クリームまたは粉末のような医薬適用のために剤形化された活性化合物を含んでもよい。軟膏は局所適用のためのすべての維持性、吸着性、エマルジョンおよび水溶性基盤組成物を含むのに対し、クリームおよびローションはエマルジョン基盤のみを含む組成物である。局所的に投与される薬物には肌を通じた活性成分の吸着を促進するための浸透促進剤が含有されてもよい。適合した浸透促進剤は、グリセリン、アルコール、アルキルメチルスルホキシド、ピロリドンおよびラウロカプラムを含む。局所適用のための組成物の可能なベースは、ポリエチレングリコール、ラノリン、コールドクリームおよびワセリンだけでなく、任意の他の適合した吸収性、エマルジョンまたは水溶性軟膏ベースを含む。局所製剤はまた活性成分を保存し、均質にした混合物を提供するために必要に応じて乳化剤、ゲル化剤および抗微生物保存剤を含んでもよい。本開示内容の経皮投与はまた「パッチ」の使用を含んでもよい。例えば、パッチは一つ以上の活性物質を予め決定された速度で固定された期間の中、連続的な方式で供給することができる。
【0252】
特定の実施様態において、Aβペプチド変異体またはその断片または機能的誘導体をコードするベクターを含む製薬組成物(単数または複数)は、点眼液、鼻腔内スプレー、吸入および/またはその他のエアロゾル伝達ビヒクルによって伝達されてもよい。鼻腔エアロゾルスプレーを通じて組成物を肺に直接伝達する方法は、例えば、米国特許第5,756,353号および第5,804,212号(それぞれ全文が参照として本明細書に含まれる)に記載されている。類似に、鼻腔内微細粒子樹脂(例えば、Takenagaの他、1998を参照)およびリソホスファチジル-グリセロール化合物(例えば、米国特許第5,725,871号を参照、全文が本願に参考として含まれる)を用いる薬物の伝達が薬学分野においてもよく知られている。類似に、ポリテトラフルオロエチレン支持体マトリックス形態の経粘膜薬物伝達は、例えば、米国特許第5,780,045号(全文が本明細書に具体的に参照として含まれる)に記載されている。
【0253】
エアロゾルという用語は、液化または加圧ガス推進剤に分散された液体粒子の微細に分割された固体のコロイドシステムを意味する。吸入のための本開示内容の典型的なエアロゾルは、液体推進剤または液体推進剤と適合した溶媒の混合物のうち活性成分の懸濁液で構成されるだろう。適合した推進剤は、炭化水素および炭化水素エーテルを含む。適切な容器は推進剤の圧力要件によって変わる。エアロゾルの投与は、対象の年齢、体重および症状の重症度および反応によって変わる。
【0254】
C.投薬
対象体に投与される本開示内容の組成物(単数または複数)の適切な投与量は、体重、重症度および状態経過、治療される疾患の類型、個体の臨床的状態、以前または同時治療介入、個体の臨床病歴および治療に対する反応、対象の特発性、投与経路および主治医の裁量のような物理的および生理学的要因によって決定され得る。投与量および投与経路によって、好ましい投与量および/または有効量の投与回数は、対象体の反応に応じて変ってもよい。投与を担当する専門医はどのような場合にも組成物内の活性成分(単数または複数)の濃度および個別対象体に対する適切な用量(単数または複数)を決定するだろう。
【0255】
特定の実施様態において、薬学組成物は、例えば、最大または少なくとも約0.000001乃至最大または少なくとも約10%(重量)の活性化合物を含んでもよい。他の実施様態において、活性化合物は単位重量の約0.001%乃至約1%、または、例えば、約0.01%乃至約0.1%、およびこれらの範囲内の誘導可能な任意の範囲を含んでもよい。当然、それぞれの治療的に有用な組成物における活性化合物(単数または複数)の量は適切な投与量が化合物の任意の与えられた単位用量で得られる方式で製造されてもよい。溶解度、生体利用率、生物学的半減期、投与経路、製品有効期間のような因子だけでなく、その他の薬理学的考慮事項は、このような薬剤学的製剤を製造する技術分野の熟練家によって考慮されるはずであり、従って、多様な投与量および治療療法が好ましい場合がある。
【0256】
治療には多様な「単位用量」が含まれてもよい。単位用量は所定量の治療用組成物を含むものと定義される。投与する量、特定経路および剤形は臨床分野の技術従事者の決定技術内にある。単位用量は単一注入で投与する必要はないが、一定期間にわたる連続投入を含んでもよい。一部の実施様態において、単位用量は単一投与可能な用量を含む。
【0257】
治療回数と単位用量に応じて投与する量は目的とする治療効果に左右される。有効用量は特定効果を達成するのに必要な量を意味するものと理解される。また、このような用量は一日中および/または数日、数週または数ケ月の間多回投与されてもよい。
【0258】
一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体の単一用量が投与される。一部の実施様態において、Aβペプチド変異体の多重用量が投与される。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体の単一用量が投与される。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体は、少なくても、最大、または約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、および200、300、400、500、1000μg/kg、mg/kg、μg/日、またはmg/日またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の範囲または値の用量で投与される。特定の実施様態において、Aβペプチド変異体の有効用量は、約、少なくとも約または最大約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100μMまたはこれらの範囲内の誘導可能な任意の範囲の血液レべルを提供することができる用量である。特定の実施様態において、対象体に投与される野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体は代謝治療剤として体内で代謝され、この場合、血液レベルは、その製剤の量を示すことができる。代案的に、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体が対象体によって代謝されない限り、本願において議論された血液レベルは、代謝されない野生型または変異体Aβペプチドを指称することができる。
【0259】
一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体をコードするポリヌクレオチドの単一用量が投与される。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体をコードするポリヌクレオチドの多重用量が投与される。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体をコードするポリヌクレオチドの有効用量が投与される。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体をコードするポリヌクレオチドは、対象体の体重(kg)当たり、少なくても、最大、または約1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015、1×1016、1×1017または1×1018ポリヌクレオチドのコピー数、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値または範囲の用量で投与される。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体をコードするポリヌクレオチドは対象体の体重(kg)当たり1×108乃至1×1018ポリヌクレオチドのコピー数の用量で投与される。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体をコードするポリヌクレオチドは対象体の体重(kg)当たり1×1011乃至1×1014ポリヌクレオチドのコピー数の用量で投与される。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体をコードするポリヌクレオチドは、対象体の体重(kg)当たり1×1012乃至1×1015ポリヌクレオチドのコピー数の用量で投与される。
【0260】
一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体をコードするポリヌクレオチドはベクターに含まれる。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体をコードするポリヌクレオチドは変異体Aβペプチドのタンパク質の発現を可能にするミニ遺伝子をコードするベクターに含まれる。一部の実施様態において、野生型AβペプチドまたはAβペプチド変異体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターの有効用量が投与される。一部の実施様態において、ベクターは、対象体の体重(kg)当たり、少なくても、最大、または約1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015、1×1016、1×1017または1×1018ベクターゲノム、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の範囲または値の用量で投与される。一部の実施様態において、ベクターは、対象体の体重(kg)当たり1×108乃至1×1018のベクターゲノムの用量で投与される。一部の実施様態において、ベクターは、対象体の体重(kg)当たり1×1011乃至1×1014のベクターゲノムの用量で投与される。一部の実施様態において、ベクターは、対象体の体重(kg)当たり1×1012乃至1×1015のベクターゲノムの用量で投与される。
【0261】
一部の実施様態において、一つ以上の追加の神経退行性疾患薬物の単一用量が投与される。一部の実施様態において、一つ以上の追加の神経退行性疾患薬物の多重用量が投与される。一部の実施様態において、一つ以上の追加の神経退行性疾患薬物の有効用量が投与される。一部の実施様態において、一つ以上の追加の神経退行性疾患薬物は、少なくても、最大、または約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195および200、300、400、500、1000μg/kg、mg/kg、μg/日、またはmg/日またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の範囲または値の用量で投与される。特定の実施様態において、一つ以上の追加の神経退行性疾患薬物の有効用量は、約、少なくとも約または最大約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100μMまたはこれらの範囲内の誘導可能な任意の範囲の血液レベルを提供できる用量である。特定の実施様態において、対象体に投与される一つ以上の追加の神経退行性疾患薬物は、体内で代謝される代謝治療剤として提供され、この場合、血液レベルは該当製剤の量を示すことができる。代案的に、一つ以上の追加の神経退行性疾患薬物が対象体によって代謝されない限り、本願において議論された血液レベルは、代謝されない野生型または変異体Aβペプチドを示すことができる。
【0262】
治療学的組成物の正確な量は専門医の判断に左右され、各個体ごとに異なる。投与量に影響を及ぼす要因には患者の身体的および臨床的状態、投与経路、意図された治療目標(症状緩和対比治療)、特定治療物質または対象体が受けることができる他の療法の効能、安定性および毒性が含まれる。
【0263】
当業者は体重のμg/kgまたはmg/kgの投与単位がμg/mlまたはmM(血中濃度)の類似した濃度単位に転換されて表現され得ることを理解し、認知するだろう。摂取は種および器官/組織依存的であるということも理解される。吸収および濃度測定と関連して適用可能な換算係数および生理学的仮定はよく知られており、当業者が一つの濃度測定を他の濃度測定に変換し、本願に記載されている用量、効能および結果に関する合理的な比較および結論を下すことができるようにする。
【0264】
V.キット
本開示内容の特定の局面はまた、開示内容の組成物または開示内容の方法を具現するための組成物を含むキットに関するものである。一部の実施様態において、キットは、一つ以上のバイオマーカー(例えば、Aβペプチドオリゴマー、プロトフィブリル、フィブリル、プラーク、ミスフォールディングタンパク質、タウタンパク質、リン酸化されたタウタンパク質)、シーディングされたタウタンパク質および/またはシーディングされたAβペプチド、神経炎症マーカー、認知減退のマーカー、神経退行性マーカー、ニューロン損失のマーカー、および/またはシナプス損失のマーカー)を評価するのに用いてもよい。特定の実施様態において、キットを用いて試験管内または生体内でAβペプチドまたは他のタンパク質の発現を測定してもよい。特定の実施様態において、キットは、少なくともまたは最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、100、500、1,000個以上のプローブ、プライマーまたはプライマーセット、合成分子または抑制剤、またはこれらの範囲内の誘導可能な任意の値または範囲および組み合わせを含む。一部の実施様態において、細胞でバイオマーカーの活性を評価するためのキットがある。
【0265】
キットは、チューブ、瓶、バイアル、シリンジまたはその他の適合した容器手段のような容器に個別的に包装されるか、または配置され得る構成要素を含んでもよい。
【0266】
個別構成要素は濃縮された量でキットに提供されてもよく;一部の実施様態において、構成要素は他の構成要素とともに溶液にあるときと同一の濃度で個別的に提供される。成分の濃度は、1×、2×、5×、10×または20×以上に提供されてもよい。
【0267】
予後または診断適用のための本開示内容のプローブ、合成核酸、非合成核酸、合成ペプチド、非合成ペプチドおよび/または抑制剤を用いるためのキットが本開示内容の一部として含まれる。バイオマーカーの非コーディング配列だけでなく、バイオマーカーのコーディング配列を含んでもよいバイオマーカーの全部または一部と同一であるか、または相補的な核酸プライマー/プライマーセットおよびプローブを含む、本願で確認された任意のバイオマーカーに該当する任意のこのような分子が具体的に考慮される。
【0268】
特定の局面において、陰性および/または陽性対照群核酸、プローブおよび抑制剤が一部キットの実施様態に含まれる。また、キットは一つ以上のバイオマーカーのメチル化に対する陰性または陽性対照群である試料を含んでもよい。
【0269】
命じて特定バイオマーカーを含む開示内容の任意の実施形態は、特定核酸の成熟した配列と少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の同一の配列であるバイオマーカーを含む実施様態を含むものとまた考慮される。
【0270】
本明細書に記載されている任意の方法または組成物が本明細書に記載されている任意の他の方法または組成物に対して具現でき、異なる実施様態を組み合わせてもよいことと見なされる。本来提出された請求項は、任意の提出された請求項または提出された請求項の組み合わせに多重従属された請求項を含むものと考慮される。
【実施例】
【0271】
下記の実施例は、本発明の実施形態を説明するために含まれる。当業者は下記の実施例に開示されている技術が本発明の実施でよく機能するものであって、発明者によって発見された技術を示すということを理解しなければならない。しかし、当業者は、本開示内容に照らして開示されている特定実施例において多くの変更が行われてもよく、依然として本発明の思想および範囲から外れることなく類似(like)または類似した(similar)結果が得られることを認識しなければならない。
【0272】
実施例1-アミロイド減少のためのAβ変異体を利用した遺伝子治療
4つの治療基準を満たすペプチド抑制剤が試験管内で確認されており、上位2つのペプチド候補がAβアミロイド症の動物モデルで生体内で調べられた。ミニ遺伝子ベクターは、細胞外空間への放出が内因性プロテアーゼによって調節される細胞膜で変異体Aβペプチドを発現するために生成された。この後、AAVを用いてアルツハイマー病(AD)のAPP/PS1マウスモデルでAβ減少に対する効能を試験する広範囲な生涯神経発現のために新生児マウス脳へベクターを伝達した。本研究は、病原性Aβと単に1個または2つのアミノ酸が異なるペプチドがAβフィブリル化を効果的に減少させ、既存のフィブリルを不安定にし、試験管内の短い期間の間、オリゴマーの毒性を下げる一方、生体内で慢性的に用いられるとき、アミロイドの凝集および神経炎症を減少させるという直観に反する結果をもたらした。
【0273】
また、本研究は、ベンチから脳へペプチドAβ抑制剤を発展させるのに当たり過去の限界を克服するために、ウイルス-媒介遺伝子療法を適用する最初の段階を行う。本研究のより大きい影響は、ペプチド治療が現在の発現工学およびウイルスを通じて克服できる技術的な理由により忌避された神経退行性を誘発する毒性種でミスフォールディングタンパク質の凝集を含む他のタンパク質ミスフォールディング疾患にこのストラテジーを適用できる可能性にある。
【0274】
A.F20PおよびF19D/L34P変異体は野生型Aβ42の凝集を抑制する。
Aβの中央疎水性領域(17Leu-Val-Phe-Phe-Ala21)は単量体の組み立て速度を制御し、成熟したフィブリルでβ-シートヘアピンを形成する。フィブリルの形成における重要性を考慮するとき、一部の実施様態において、この領域で標的化されたアミノ酸置換は、野生型Aβ42ペプチドの凝集を防止することができるペプチドを生成する。このドメインに関する過去の研究に基づいてV18P、F19D、F19P、F19D/L34PおよびF20Pの5種類の他のAβ42変異体ペプチドを検査した。5つの変異体のうちいずれもフィブリルで自体凝集されないということがチオフラビン(Thioflavin)-T分析を用いて初めて確認された(
図1A)。次に、二つのペプチドがフィブリル化反応を始める前に等モル比で混合されたとき、5つのペプチドのうち任意のものが野生型Aβ42のフィブリル化を競争的に抑制することができるか否かを試験した(
図1B)。5種類の変異体ペプチドのうち4種類が野生型Aβのフィブリル化を減少させたのに対し、1種類(V18P)は凝集を悪化させた。追加の研究のために選ばれた2つのペプチド変異体、F20PおよびF19D/L34Pは凝集を完全に防止するものと示された。これらの2つのペプチドをフィブリルの形成後に添加するとき、野生型A42を分解する可能性について試験した。二つの変異体はいずれも濃度-依存方式で野生型フィブリルを分解したが、F19D/L34PはF20Pよりフィブリルの分解でよりさらに効果的であって、試験された最高濃度で>80%のThT信号損失を達成した(
図1C、1D)。
【0275】
最後に、変異体Aβペプチドが野生型Aβオリゴマーによって誘発される細胞毒性を弱化させる可能性を調査した。この実験のために、野生型Aβ42を単独で用いるか、またはオリゴマーの組み立て前に変異体ペプチドと等モル比で混合した。24時間後、ネズミ科の神経芽細胞腫2a細胞株(N2a)の細胞培養培地にペプチド溶液を添加した。野生型Aβ42から組み立てられたオリゴマーは、オリゴマー化緩衝液単独で処理された培養物と比べてほぼ50%の細胞損失を引き起こした(
図1E)。対照的に、F20PやF19D/L34Pはそれ自体で細胞生存力を大して変化させなかった。特に、細胞生存率は、野生型Aβ42単独で対照群の50%からオリゴマー組み立ての間、野生型ペプチドが変異体と共培養されたとき、約70%に増加した。従って、一部の実施様態において、F20PおよびF19D/L34P変異体は、候補凝集抑制剤に対する最小の試験管内の基準を満たす。
【0276】
B.哺乳類細胞でAβ変異体を分泌するベクターの設計
次に、Aβペプチド変異体は治療学的に有効であるだけ十分に高いレベルで脳で試験された。細胞外空間への放出が内因性γ-セクレターゼによって調節される細胞膜で変異体Aβを安定的に発現するように発現ストラテジーを設計した。以前の研究は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)の信号ペプチドをAPP C-末端断片(β-CTF)に融合してこの目標を達成したが、この構築物は、細胞外Aβを生成するのに対し、β-CTFの過発現によりAβ-独立的リソソーム-自己貪食病理を期せずして引き起こした。従って、本発明者は、γ-セクレターゼ切断に必要な最も小さいβ-CTF断片を用いることで潜在的なリソソーム合併症を避けようとした。ガウシアルシフェラーゼ信号ペプチド(Gaussia luciferase信号ペプチド)を用いて細胞膜を標的にし、この信号ペプチドを一連のβ-CTF断片に融合した。最も長い断片は、長さが54個のアミノ酸であって、Aβ42および全体APP膜貫通ドメインと2つの細胞内リジン残基を含有した(
図2A)。4つの追加構築物は、それぞれ2つのアミノ酸によって膜貫通ドメインにより切断され;最も短い構築物は、単に45個の残基を含有した(Aβ42+3追加)。
【0277】
異なる構築物をN2a細胞でトランスフェクトさせ、免疫沈澱法に引き続き免疫ブロットを用いて調整された細胞培養培地で測定され、分泌されたAβを測定した。完全なAPP膜貫通ドメイン+2つの細胞内リジンは、全長CTFをコードする構築物を用いて観察されたものと同等なレベルでAβ分泌を達成するのに必要であり、十分であると明かにされた(
図2A)。γ-セクレターゼ抑制剤LY411575の添加は、濃度-依存的方式でAβ変異体の培地への放出を遮断してAβ分泌がγ-セクレターゼの活性に依存するということを確認した(
図2A)。
【0278】
この最小発現構築物は、ユビキタスCAGプロモーターの制御下に以降の生体内の発現のためにAAV伝達ベクターでクローニングした(
図2B)。ウッドチャックポリオウイルスの反応要素は、mRNAを安定化するために3’末端に含まれ、ウシの成長ホルモンポリA配列が続いた。最後に、質量分光分析法を用いてこのベクターが細胞で発現されるとき、真にAβ40/42を生産するかを確認した。N2a細胞をウイルスAβ F20Pベクターでトランスフェクトさせた後、ヒトAβをWTペプチドに対して培地から免疫沈殿させた。液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法(LC-MS/MS)を酵素消化なく行い、全長ペプチドが作られたか否かを確認した。この分析を通じてAβ40 F20P(
図2C)およびAβ42 F20P(データは提示されていない)に対して適切な質量を有するペプチドの存在をそれぞれのペプチドに対する正確な配列とともに(
図2D)確認した。
【0279】
C.AAVを用いて生体内Aβ変異体の発現
野生型マウスに注入してペプチドが生体内で発現および分泌されるかを確認した。Aβ F19D/L34PおよびF20P発現構築物すべてをAAV8にパッケージングし、新生児(P0)マウスの側脳室に注入した。発現レベルおよびウイルスの分布を調査するために、注入してから3週間乃至4週間後にマウスを安楽死させた。変異体Aβを検出するために、ヒト-特異的APP抗体(6E10)を用いた免疫染色によってウイルスの拡散を評価した。ウイルスの発現は前頭葉皮質に偏向されており、後続分析は、この領域に焦点を合わせた(
図3A)。変異体Aβ検出のための6E10と内因性マウスAPPの検出のためのY188の共免疫染色でウイルス-伝達された前駆体ペプチドが内因性APPのとなりにある細胞膜に位置することを確認した(
図3B)。
【0280】
全長ペプチドの生体内の発現を試験するために、Aβ F20Pで形質導入されたWTマウスからのホモジネートに対してIPに引き続きMSを用いた。脳ホモジネートのAβ40およびAβ-42 F20Pはいずれも細胞培地から分離されたAβと同一の溶出時間を示しており;二つのペプチドはいずれも予想質量で再度確認され、配列が確認された(
図3C、3D;Aβ42 F20Pに関するデータが提示される)。特に、6E10で免疫沈殿されてもよい部分的な切断生成物(例えば、信号ペプチドがない完全なTMドメインまたは信号ペプチドに依然として付着されているγ-セクレターゼ-切断されたAβ)はスペクトルに示されていない。
【0281】
また、各変異体Aβペプチドの生体内の生産をELISAにより測定した。本検定のヒト-特異的な捕獲抗体および末端-特異的な検出抗体は、測定されたペプチドが1)ヒト、従って、ウイルス-伝達された変異体Aβおよび2)γ-セクレターゼ切断が行われた成熟したAβであることを保障した。F20Pは生体内でよく発現された。天然APPと類似に、この構築物は、Aβx-42よりさらに何倍は大きいレベルでAβx-40ペプチドを生産した(
図3E)。対照的に、F19D/L34Pは高いレベルのAβx-42を生成したが、検出可能なAβx-40は生成しておらず、これは、一部の実施様態において、L34P置換が末端-特異的なAβ40抗体結合を破壊することを示す。これらの結果は、一部の実施様態において、最小発現ベクターを用いたウイルス形質導入が細胞膜の局所化およびγ-セクレターゼ切断を達成して変異体Aβペプチドを脳へ放出することを示唆する。
【0282】
D.ウイルス-伝達された変異体ペプチドがAPP/PS1トランスジェニックマウスでAβ負荷を減少させてもよい
Aβ F20PまたはF19D/L34Pをコードするウイルスを新生児(P0)APP/PS1マウスおよび非-トランスジェニック(形質転換されていない)同腹仔(littermate)に注入した。このモデルからアミロイド沈着が始まった直後である生後7.5ヶ月に動物を回収した。非-トランスジェニックシブリング(sibling)の皮質組織を用いてウイルスで発現されたAβがこの年齢にも依然として生産されるということを確認した(
図3F)。AAV-注入された非-トランスジェニックマウスは、3週目と同一の相対レベルのAβ40:42を示しており、二つの変異体の両方でx-42は増加し、増加されたx-40はF20Pでのみ検出された(
図3G)。
【0283】
APP/PS1動物において、一方の半球の前頭葉皮質でAβ免疫染色によって、そして他の半球でAβ ELISAによってプラーク負荷を評価した。注入されていないAPP/PS1対照群マウスと比較して、F20Pで処理されたマウスは、Aβ沈着がほぼ75%減少したと示された(
図4A、4B)。免疫染色と一致するように、F20Pで処理されたマウスで不溶性Aβx-40およびAβx-42のレベルも顕著に減少した(
図4C)。APP/PS1マウスでF19D/L34P発現の効果は、F20Pよりもさらに可変的であった。不溶性Aβx-40レベルは、F19D/L34Pを発現するAPP/PS1マウスで有意に減少されたが、Aβx-42もプラーク負荷も有意に減少することはなかった(
図4B、4C)。従って、F20PおよびF19D/L34PはいずれもAβの総蓄積をかなり減少させたが、F20PはAPP/PS1マウスで凝集を抑制するのにさらに効果的であった。F20P-またはF19D/L34P-処理された非-トランスジェニック動物は、発現7.5ヶ月の間ヒトAβの検出可能なレベルを蓄積していない(データは提示されていない;総Aβ40+42、可溶性+不溶性、非注入100.7±45.5(n=6);F19D/34P 72.3±23.6(n=11);F20P 158.2±35.2pg/ml(n=10);ANOVA F(2、24)=2.02、p=0.15)。
【0284】
生物理学的分析において、変異体のうちの少なくともひとつであるF19D/L34PがAβの組み立てを防止できるだけでなく、試験管内で既存のAβフィブリルの分解を促進できることを示唆したため(
図1C)、変異体がアミロイドの開始後に投与される場合、プラーク除去を支援できるか否かを試験した。PHP.eBのような新たに進化されたAAV血清型を用いて大人の脳でウイルスの伝達および発現を達成し、末梢注入を通じたCNSの伝達を可能にした。AAV PHP.eBの注入は形質導入効率および脳全体の空間分布に対する読み取り値として蛍光タンパク質を用いて最適化された(
図5A)。AAV PHP.eB血清型は拡散と一致し、新生児AAV8注入によって達成された密度に近づくことが明らかにされ、これは、生体内で用いるのに十分なレベルで変異体Aβを伝達することを示唆する。ウイルス性形質導入はまた臨床的に用いられてもよい代替投与経路がニューロン形質導入の効能と一致するか否かを試験することができるようにした。脈絡叢のウイルス性形質導入は、リソソーム蓄積病、ADおよびALSのマウスモデルにおける遺伝子治療に用いられた。本発明者は、脈絡膜神経叢の上衣細胞がAAV1によって容易に形質導入され得ることを見出し、これは、本願において変異体AβのCSFの伝達可能性を試験するために用いられる(
図5B)。
【0285】
E.変異体Aβの発現は、APP/PS1マウスから全般的な神経炎症を減少させるが、軽微な星状細胞症を誘発する可能性がある
アミロイドプラークは肥大性星状細胞とミクログリア細胞がコア沈着物を取り囲むように移動するか、または分裂する明白な神経免疫反応を誘導する。大部分の条件で神経膠誘導の程度はアミロイド負荷の程度と類似している。一般的に言えば、プラーク蓄積を遅らせる治療は、神経膠の形態および局所化におけるこれらの変化も緩和させる。従って、変異体Aβで処理されたマウスにおいて、一般的にコアAβ沈着物の範囲を決める肥大性星状細胞およびミクログリア細胞のクラスタリングがプラーク負荷とともに減少するか否かを調査した。F19D/L34Pよりプラーク負荷にさらに顕著な影響を及ぼすため、F20P変異体に焦点を合わせて分析した。神経膠原線維タンパク質(GFAP)-陽性星状細胞およびIba1-陽性ミクログリア細胞は両方とも未処理のAPP/PS1マウスの皮質におけるアミロイドプラークの輪郭を顕著に示す(
図5A、5B)。実際に、GFAPおよびIba1の両方の表面積は未処理のトランスジェニックマウスにおけるAβ免疫染色の表面積を超えている(
図5C)。ウイルス-伝達されたAβF20Pを用いた生涯治療は、これらのマーカーのすべてに対する染色を有意に減少させ、これは、一部の実施様態において、神経炎症がアミロイド負荷とともに減少することを示唆する。
【0286】
皮質GFAP染色の増加は、未注入の対照群と比較してウイルス-注入された非-トランスジェニックマウスにおいても観察された(
図5A、5C)。GFAP-陽性星状細胞は主に脳梁に隣接したバンドに制限されており、その効果は、星状細胞に対して特異的であった:非-トランスジェニックマウスにおけるIba1のレベルはウイルス露出によって変わらなかった(
図5B、5C)。同一のパターンの脳梁周囲GFAP染色がF20P-処理されたAPP/PS1マウスで識別され得るが、この領域はまた定量化を混同させるプラーク-関連星状細胞症を含有した(
図5A)。
【0287】
ヒトAβ(6E10)およびGFAPに対する共免疫染色を7.5ヶ月のNTGマウスで行った。ヒトAβを発現するいくつかの星状細胞が検出されたが、これらの共標識された細胞は、GFAP+集団の小さな断片のみを含んだ。これらのデータは、一部の実施様態において、変異体Aβペプチドのウイルスの発現がそれ自体で軽微な星状グリア細胞症を誘発することがあるが、アミロイド症モデルの純効果はプラーク負荷の減少に相応する慢性神経炎症の重症度を減少させることを示唆する。
【0288】
実施例2-変異体と野生型Aβペプチドとの間の相互作用に対する生物理学的メカニズムの解読
分離および野生型Aβの存在のいずれもにおいて溶液内の変異体ペプチドによって採択された形態は、これらの特性が生体内の使用に適合であることを保障するために決定される。
【0289】
A.長期間の試験管内のインキュベーション時にAβペプチドによって採択された構造の分析
各変異体ペプチドによって形成された構造は、円型二色性(CD)分光法、大きさ-排除クロマトグラフィ(SEC)、A11/OCドットブロット分析、および透過電子顕微鏡(TEM)の4種類の主な分析を用いて評価される。初期実験は、分離されたF20PおよびF19D/L34Pペプチドによって形成された2次および3次構造が、多様なインキュベーション条件下で経時的にどのように変化するか、そして二つのうち一つが凝集を示す4次構造で組み立てられるか否かを決定する。各ペプチドの2次構造は遠赤外線CD分光法で、3次/4次構造は近紫外線分光法でモニタリングし、多様なタンパク質濃度と溶媒条件でスペクトルおよび熱スキャンを用いる。動力学CD分光法の測定は、ペプチドフォールディングおよびアンフォールディングの時間的進化を評価するために平衡分析を補完することになる。CD分光法で収集したデータを用いて各ペプチドに対する誘導期、代数増殖期および安定期のタイミングを案内し、SECのために試料を除去して単量体ペプチドが小さなオリゴマーおよびさらに大きい構造に転換されるか否かを確認する。A11/OCドットブロットのために別途の時間超過試料を除去して、非-原線維型および前-原線維型オリゴマー状態の形成を試験する。試料の最終セットは、1)構造化フィブリルの存在または不在および適切な場合、周期性および幅、2)オリゴマーまたはプロトフィブリルを暗示するさらに小さな規則的な構造の外見、または3)以前にアミロイド生成ペプチドのプロリン置換変異体において観察された無定形の凝集を暗示する不規則な構造を確認するために陰性染色TEMイメージングのための安定期反応(>24時間)で収集される。
【0290】
B.野生型Aβ単量体とAβ変異体の共インキュベーション時に生成された構造の分析
CD分光法、SEC、A11/OCドットブロットおよびTEMを用いて、F20PまたはF19D/L34Pと野生型Aβの共インキュベーションによって形成された構造を評価する。
【0291】
C.野生型Aβ42の凝集を防止するのに必要な変異体ペプチドの割合および事前-形成されたフィブリルを分解するのに必要な最小濃度
一部の実施様態において、変異体Aβペプチドの等モル混合物は、野生型Aβ42の凝集を防止するが、変異体:野生型の割合がさらに低いと十分である。大部分のペプチド抑制剤は、野生型Aβの凝集を防止するために化学量論以上の濃度を要求するが、いくつかの候補は、抑制剤:野生型の割合が1:50の程度と低い効能をみせる。ThT検定は、F20PまたはF19D/L34Pが1:50の変異体:野生型まで亜化学量論的濃度で野生型Aβ42のフィブリル化を減少させるか、または防止できるか否かを決定するのに用いられる。並列実験を通じて事前-形成されたAβ42フィブリルの分解に必要な変異体ペプチドの最小濃度を確認することができる。一部の実施様態において、5μMのF19D/L34P程度の少ない量でも10μM WT Aβ出発物質から作られたフィブリルのThT蛍光を下げるのに相当十分であり;一部の実施様態において、さらに低い濃度のF19D/L34Pは同一の効果を達成し、F20Pはフィブリルの分解に同等に効率的である可能性がある。
【0292】
D.変異体Aβペプチドによる野生型Aβフィブリルの分解で現れる構造の分析
一部の実施様態において、野生型AβフィブリルはF19D/L34Pペプチドの添加時、時間の経過に応じてThT蛍光を喪失し、これは、一部の実施様態において、この変異体がフィブリルの分解を促進することを示唆する。野生型Aβフィブリルの分解により発生する構造は、変異体ペプチドの存在下に決定される。野生型Aβ42フィブリルが生成され、本願に記述されているように、CD分光法、SEC、ドットブロットおよびTEMによる分析のために10μM F20PまたはF19D/L34Pに露出される。上記の分解検定においてThT蛍光をかなり下げることができるF20PまたはF19D/L34Pの最も低い濃度を用いて並列実験を行う。
【0293】
E.変異体ペプチドと野生型Aβの共インキュベーションが細胞毒性に及ぼす影響
F20PおよびF19D/L34P変異体によって形成された構造は、野生型Aβ42凝集体の細胞毒性を減少させることができる。一部の実施様態において、オリゴマー形成の間、野生型Aβ42と一つの変異体の共インキュベーションはN2a培養における後続細胞の死滅を減少させる。細胞株および1次ニューロン培養で研究が行われ、Aβ変異体ペプチドによるAβフィブリルの分解生成物が二つの細胞システムの両方で試験される。Aβ42の組み立ておよび分解のための反応生成物は、各変異体に対して0.1乃至10μMの等モルおよび最小有効ペプチドの割合で試験され、細胞生存力はMTT検定により測定される。
【0294】
議論
これらの実験は、変異体ペプチドが野生型Aβの凝集を防止する方法と、事前-形成されたフィブリルの分解を促進する方法に関する生物理学的理解を提供する。互いに異なる温度、濃度および溶媒条件で平衡および動力学反応のすべてについてCDスペクトルを評価することで、野生型および変異体ペプチドの相互作用で現れる物理的構造を識別することができる。一部の実施様態において、野生型Aβと比較して、単離された変異体は優勢な無作為コイル状態で残っており、野生型との共インキュベーションは、構造化されたオリゴマーおよびフィブリル形態の出現を減少させる。一部の実施様態において、SEC分析は、単離されたAβ変異体に対して、および野生型Aβとの共インキュベーションの両方に対してオリゴマーまたはフィブリル状態対比単量体ペプチドの優勢を確認する。一部の実施様態において、末期インキュベーションのTEM分析により野生型Aβ42からのみフィブリルが検出され、変異体単独または野生型Aβ42との共インキュベーションにおいてはフィブリルが検出されない。
【0295】
代案的に、一部の実施様態において、SECの分析は、単量体の減少とともにオリゴマー種の出現を示すが、さらに大きな種の実質的な増加はなく、CDスペクトルの移動を伴って時間の経過によってさらに大きい割合のβ-シート構造を示し、フィブリルの形成時観察された程度まではない。一部の実施様態において、A11/OCとも反応し得る環状または小さな原線維構造がTEMで観察される。一部の実施様態において、このような中間体はまたあらかじめ形成されたフィブリルの分解後に発生する。一部の実施様態において、これらの中間体は、野生型Aβによって形成されたものよりも毒性が低い。
【0296】
実施例3-変異体Aβ投与の投与量、時期および経路が生体内の効能に及ぼす影響の決定
【0297】
A.APPマウスにおける生涯変異体Aβ発現の分析
一部の実施様態において、変異体Aβペプチドの生涯にわたる発現は、APP/PS1マウスにおけるプラークの発達に相当な影響を及ぼす。AAVコード化スクランブルAβペプチドで処理されたAPP/PS1マウスグループが追加される。この追加制御は、変異体Aβを用いた治療で見られる効果がウイルス形質導入の副作用ではないペプチドによるものであることを保障する。変異体Aβの発現がAPPの発現に影響を及ぼすか、または生体内のプロセッシングに影響を及ぼすか否かもまた決定される。一部の実施様態において、変異体Aβのアミロイド-低下メカニズムは、細胞から放出された後、野生型Aβの結合により発生し、ウエスタンブロットによる全長APP、sAPPおよびCTFを測定し、これが事実であるかを保障する。最後に、一部の実施様態において、第2のAPPモデルであるAPPNL-Fノック-イン(knock-in)マウスラインは、APP/PS1マウスからの発見を確認する。KIマウスはAPP/PS1マウスよりも後にプラークを発生させるため、KI動物は、内因性ペプチドよりも高いレベルで変異体Aβの長期間発現が病理学または神経生存に予想せぬ影響を及ぼすか否かを試験できる機会を提供する。APP/PS1およびAPPNL-F KIマウスの両方、P0で変異体またはスクランブルAAVを脳室内(intracerebroventricular:ICV)注入し、分析のために、それぞれ7.5ヶ月または15ヶ月に回収する。本実験および後続実験に対する結果の測定は、組織学的プラーク負荷(Aβおよびチオフラビン-S)、ヒトAβ ELISAおよびヒトオリゴマーAβ ELISA(IBL、82E11)である。
【0298】
B.効果に必要な野生型Aβに対する変異体Aβの割合(投与量)
一部の実施様態において、変異体と野生型Aβの等モル混合物は、野生型ペプチドの凝集を阻止するのに十分である(
図1B)。従って、一部の実施様態において、変異体Aβに対する生体内の有効用量はかなり低い。変異体Aβの生産と総Aβの蓄積との間の生体内の用量-反応関係を試験した。生体内のウイルスの発現は、事実上、すべての細胞が形質導入されていないモザイクであるが、ペプチドが分泌されるため、広い領域に変異体ペプチドを露出させるためには細胞の一部のみを形質導入すればよい。一部の実施様態において、マウス脳におけるウイルスの発現密度は、注入されたウイルスの力価を制御することで容易に調整される。ここで、生体内でプラークの形成を遅らせるのに必要な変異体Aβの閾値レベルがあるか否かを決定する。ELISAは処理されていない幼いAPP/PS1マウスで測定された野生型ヒトAβのレベルと比較するために、非-トランスジェニックマウスの各力価で変異体Aβのレベルを用いてF20P変異体:野生型Aβの割合を経験的に測定するのに用いられる。本実験から決定された用量-反応関係はAPP/PS1モデルに適用されるが、一部の実施様態において、効果のために必要な変異体Aβの相対的な露出に関する貴重な情報を提供したりもする。APP/PS1および非-トランスジェニックマウスは、P0でF20P AAVを脳室内に注入し、7.5ヶ月後に分析のために回収する。ウイルスの希釈は以前の試験管研究によって知られ、以前に用いられた力価の約0.05から1×の範囲である。
【0299】
C.心室投与は実質伝達(parenchymal delivery)効果を表現する
一部の実施様態において、変異体Aβは細胞外空間で野生型Aβの凝集を抑制するためにニューロンによって発現される必要がない。一部の実施様態において、間質液に接近することができる任意の細胞類型における発現は、変異体Aβを脳全体に広範囲に伝達するのに十分である。一部の実施様態において、側脳室の脳室膜ライニングは分泌タンパク質をCSFを通じて脳に伝達するのに理想的である。ニューロン分泌で観察されるように、皮質を通じたAβの凝集を減少させるための変異体AβのCSFへの伝達の十分性を試験する。APP/PS1および非-トランスジェニック動物にAAV1コード化F20PまたはスクランブルAβを注入して脈絡叢を形質導入する。脳室膜-脳関門が成熟した後のP3とP7の間に注入が行われる。ニューロン形質導入によって達成されたものと比較するために、非-トランスジェニック動物を用いて、上衣形質導入の後に皮質に到達する変異体Aβの濃度を測定する。APP/PS1マウスは分析のために7.5ヶ月に回収される。
【0300】
D.変異体Aβはプラーク発病後に導入された場合、利点を維持する
試験管内の研究を通じて、一部の実施様態において、変異体Aβがフィブリルの形成後に導入される場合、分解を促進することが示される。変異体Aβが脳で既存の凝集体を除去する可能性を調べる。この実験は、AAV血清型PHP.eBを活用して大人脳の細胞へ広範囲に形質導入させる。APP/PS1および非-トランスジェニックシブリングは、7.5ヶ月齢にF20P変異体Aβまたはスクランブルペプチドを運ぶPHP.eBウイルスを眼窩-後方に注入する。ヒトシナプシンプロモーターは、ニューロンの特異的な発現に用いられ;注入のためのウイルス力価は1×1011乃至1×1012gc/マウスの掲示された範囲内で各製造に対して経験的に一致する。非-トランスジェニック動物は、P0で治療によって達成されたものと比較するために大人に注入した後、皮質で変異体Aβの濃度を測定するのに用いられる。動物を処理した後、分析3ヶ月および6ヶ月に回収し、7.5ヶ月齢に処理せずに回収したマウスと比較した。
【0301】
議論
本実験は、投与量、時期および投与経路が変異体Aβの生体内の効能にどのような影響を及ぼすかを試験する。一部の実施様態において、F20Pの発現およびさらに少ない程度であり、F19D/L34Pの発現は、非注入APP/PS1マウスおよびスクランブルAβペプチドを発現する新たに追加された対照群のすべてと比較してAPP/PS1マウスの拡張されたコホートにおけるプラーク負荷およびAβ負荷を減少させる。一部の実施様態において、同一の効果がAPPNL-Fで観察されるが、これらの後期開始は、回収前のさらに長い時間の間、変異体Aβを過発現し、APP/PS1マウスよりも非-トランスジェニックに比べてさらに多くの変異体を生産することを意味する。
【0302】
一部の実施様態において、生体内でプラークの形成を遅らせるのに必要な変異体対野生型Aβの最小割合があり、これは、試験管内の効果に必要な最小割合とほぼ類似している。この割合以上に、一部の実施様態において、試験管内よりも不十分に定義された用量-反応関係があるにもかかわらず、段階的な程度のプラークの減少が観察される。非-トランスジェニック動物を用いてCSFを通じて皮質に到達する変異体Aβの濃度をニューロンの発現によって達成される濃度と比較して、CSFの伝達がニューロンの発現のための最小有効投与量と同じであるか、または超える変異体Aβの皮質レベルを達成するか否かを決定する。そうではない場合、心室発現のための代替血清型(すなわち、AAV4)または脈絡叢で活性である代替プロモーター(すなわち、Prlr、Spint2、F5)を用いて伝達を改善する。
【0303】
これらの実験は、後続研究で認知検査、シナプス分析および電気生理学に発展され、変異体ペプチドに対する露出からAβ種に対する基本的な理解が確立されると、生体内でAβ蓄積を緩和するか、または逆転させるための最適の治療療法の識別および意図しない神経炎症が生理的測定を妨害できるか否かを決定することになる。
【0304】
実施例4-プラークの減少に寄与することができる変異体Aβに対する神経免疫反応の調査(Interrogation of the neuroimmune reaction to variant Aβ as a possible accomplice to plaque reduction)
一部の実施様態において、新生児ウイルス形質導入は脳で軽微で細胞-特異的な神経免疫反応を誘導するが、分析は形態学的マーカーに制限されており、根本的な分子変化を全く示していない。RNAプロファイリングは、アミロイド病理学の脈絡でまたはウイルス発現単独による改造に対し、広範囲な神経免疫マーカーを評価するのに用いられる。年齢による神経免疫プロファイルの進化を試験し、大人脳の形質導入が新生児として注入されたマウスで初めて観察されたことよりもさらに顕著な反応を誘導するか否かを決定する。星状細胞およびミクログリア細胞の組織学的分析を完了し、プラーク負荷、ウイルスの露出および細胞反応が疾患の様々な段階で介入後の変異体Aβを処理した後、相互作用する方式を決定する。一部の実施様態における効果は、星状細胞反応性に起因するのに対し、他の実施様態における効果は、野生型ペプチドに対する変異体Aβの生物理学的効果に起因する。一部の実施様態において、生物理学的効果は、星状細胞の反応を乗り越える。アルツハイマー病やその他のタンパク質凝集疾患における自己抑制のためのプラットフォームとしての遺伝子療法の有用性を確立するために経験的な検査が行われる。
【0305】
A.変異体Aβのウイルス伝達に対する神経炎症の転写マーカーの上向調節およびウイルス伝達年齢が反応に及ぼす影響
この実験においては、非-天然タンパク質を発現するAAVの導入が脳で神経炎症反応を誘導するか否かを扱う。最初はAPP/PS1動物におけるプラーク-関連神経膠腫の交絡効果を避けるために、非-形質転換動物に焦点を合わせる。本実験および後続実験のための動物は実施例3のように生成される:全体RNA抽出のために各動物の一方の半球から前頭葉皮質の小さな部分(約20~40mg)を収集し、残りの皮質は、実施例3のELISAおよびウエスタン研究のために残しておく。反対側の半球は組織学的研究のために固定される。ここで、非-トランスジェニック対照群マウスの転写プロファイルは、P0または7.5ヶ月にAAV-F20Pまたはスクランブルペプチドで処理されたシブリングと比較される。P0に注入され、15ヶ月に回収された非-トランスジェニック動物も含まれ、神経炎症反応への延長されたウイルス発現の影響を評価する。転写は広範囲な潜在的な神経免疫反応にわたった756個の遺伝子を扱うマウス用ナノストリングNカウンター(Nanostring nCounter)神経炎症パネルを用いてプロファイリングされる。RNAシークエンシングとは異なり、このプラットフォームは、テンプレートの増幅なしに線形定量化のためにmRNA分子を直接デジタルで測定する。nSolverソフトウェアを用いて発現データを分析し、処理/回収年齢の各組み合わせに対してF20Pまたはスクランブルペプチドで処理された動物と、注入されていない対照群の遺伝子発現を比較する。2次階層の分析は、ベイラー医科大学の多重オミクスデータ分析コア(Baylor College of Medicine Multi-Omics Data Analysis Core)から経路および遺伝子集合の強化のために修得する。RNAシークエンシングも利用可能であり、潜在的な変化に対するより広い読み取り値を提供する。
【0306】
B.ウイルス-伝達されたAβ変異体が神経炎症反応に及ぼす影響
AAVとその非-天然ペプチドカーゴの導入がアミロイド沈殿物に対する神経炎症反応を変化させるか否かを扱う。P0または7.5ヶ月にF20PまたはスクランブルAβを注入したAPP/PS1およびAPPNL-Fマウスの皮質転写プロファイルを各実験で注入していないAPP/PS1およびAPPNL-Fシブリングと比較する。ナノストリングNカウンター神経炎症パネルは、APPモデルにおける神経免疫反応の発現プロファイリングに用いられる。
【0307】
C.変異体Aβのウイルス発現時の神経炎症細胞の多様な形態および分布
変異体Aβのウイルス伝達に対する神経免疫反応の細胞プロファイルを検査する。免疫蛍光は非-トランスジェニック、APP/PS1およびAPPNL-Fマウスでミクログリア細胞(汎-小膠細胞マーカーとしてのIba1、恒常性ミクログリア細胞の場合、P2RY12、食細胞ミクログリア細胞の場合、CD68、および炎症性ミクログリア細胞の場合、MHCII)および星状細胞(汎-星状細胞マーカーとしてのAldh1l1、反応性星状細胞に優先的なGFAP)を検出するのに用いられる。注入されていないマウスと比較するために、P0または7.5ヶ月にF20Pまたはスクランブルペプチドを注入した後、マウスを回収した。結果の測定には、非-トランスジェニック動物でまたはAPPモデルで、アミロイドプラークと関連して単位面積当たりの皮質神経免疫細胞の定性的形態および定量的細胞数および空間分布が含まれる。
【0308】
論議
この作業は、転写および細胞マーカーによる非-天然タンパク質のウイルス伝達に対する神経炎症の反応を調査する。これらの実験はまたパイロット研究で観察されたアミロイドの減少が、治療に対する神経炎症反応によって役に立てるか否かを調べる。一部の実施様態において、軽い星状細胞症は、非-トランスジェニックマウスでウイルス伝達を伴ってもよいが、星状細胞症およびミクログリア細胞症の両方はいずれもF20P-処理されたAPP/PS1動物でプラーク負荷に比例して減少される。一部の実施様態において、これらの分子および組織学的実験は、このような不一致の解決を許容し、神経炎症性食細胞作用よりはAβ立体抑制に基づいたメカニズムを裏付ける。
【0309】
一部の実施様態において、mRNAまたは組織学的プロファイルが変異体Aβで処理された動物で上昇された炎症を提案する場合、ニューロンの形質導入を通じて処理されたマウスのプロファイルをCSFを通じて処理されたマウスのプロファイルと比較する。CSF伝達はウイルス露出を制限するが、変異体Aβの拡散は制限することなく、神経発現との比較は、ウイルスまたはペプチドが原因であるかを正確に指摘しなければならない。試験管内の代替研究は、精製された1次細胞培養および組換えタンパク質を用いて変異体Aβペプチドに対するミクログリア細胞/星状細胞反応を直接試験する。プラークの減少における神経炎症の役割を排除するために、星状細胞/小膠細胞の存在および不在での治療効能も比較される。
【0310】
最後に、一部の実施様態において、mRNAパネルは循環する大食細胞、T-またはB-細胞のような追加的な細胞類型が任意の神経炎症反応に関与し、脳組織のFACS分類が細胞の構成成分および神経侵入の程度を識別するのに用いられるということを示す。伝達経路(すなわち、ニューロンよりは心室)またはカプシド(臨床的に用いられるAAV9対実験的に用いられるAAV8/PHP.eB)は、任意の治療-関連神経炎症を緩和するための今後の研究のために変更される。
【0311】
一部の実施様態において、mRNAマーカーパネルまたは組織学的染色がウイルス処理された動物で増加された反応を確認する場合、必要に応じて、P0または大人のウイルス伝達後の神経炎症変化の時間経過をマッピングするために追加の実験を行う。
【0312】
実施例5-変異体AβはAD凝集のシーディングを鈍化させる。
変異体Aβを用いた遺伝子治療が、病原性タンパク質シードが生体内で疾患の進行を加速化する可能性を減少させることができるか否かを試験した。これらの実験は、変異体Aβがモノマーからシードの形成を防止するのに制限されるかまたは既存のシードの成長も抑制できるか否かを試験することができる機会を提供する。さらに、この実験は、ヒトアルツハイマー病組織の病原性シードを試験し、これは、遺伝子モデル単独よりもさらに多様で現実的な挑戦を示す。最初の実験は、変異体Aβの予防的発現がAβシードが豊富なヒトアルツハイマー病抽出物で接種して発生するプラークの形成を鈍化させ得るか否かを調べる。最終の実験は、アミロイド-含有マウスにおけるタウの2次シーディングを弱化させるAβ減少の可能性を試験する。
【0313】
A.事前-沈着マウスにおけるアミロイドシーディングの速度および程度に対する変異体Aβの効果のメカニズム
変異体Aβの生涯にわたる発現が外因性アルツハイマー病の脳抽出物への接種によって誘発され、加速化されたアミロイド症を緩和することができるか否かを試験する。病理学的に確認された2人のアルツハイマー病被験者と年齢が一致する健康な対照群1人から生体内のシーディングのためのAβ抽出物を製造する。冷凍前頭葉皮質試料を修得する。注入用タンパク質抽出物はPBSでホモジナイズされ、超音波処理されて清澄化される。抽出物は、オリゴマーAβに対するA11/OCドットブロット、総Aβ濃度に対するELISA、およびシーディング量に対するタンパク質ミスフォールディング循環増幅(PMCA)の検定を特徴とする。出生時、APP/PS1マウスにF20P変異体またはスクランブルAβをコードするAAVを投与し、1ヶ月後にアルツハイマー病または健康な対照群の脳抽出物を海馬および上部皮質に両側注入した。F20P対スクランブルを発現する動物におけるAβ凝集の重症度および広がりを評価するためのAβ免疫組織化学およびELISAのために、このモデルでプラークの正常の開始前の3乃至5ヶ月後に動物を回収する。
【0314】
B.変異体Aβはアミロイド-含有マウスでシードされたタウ病理学に影響を与える。
最終の実験は、変異体Aβの存在が、アミロイド-含有マウスにおけるタウ神経病理学の形成を予防または鈍化できるか否かを試験する。注入用タウ抽出物は、元々Leeグループが説明したとおり、サルコシル-不溶性脳ホモジネートの分画遠心分離によって皮質灰白質から製造される。抽出物は総タウ濃度に対するPHF1ウエスタンブロットおよびELISAにより特徴付けられ、タウRD FRETバイオセンサー細胞(ATCCから入手可能)を用いてシーディングの可能性について試験した。アルツハイマー病-タウ抽出物が試験管内で予想どおり行われると、F20PをコードするAAVまたはスクランブルAβを新生児APP/PS1マウスに投与して生体内実験を行う。12ヶ月後、十分なアミロイド負荷を保障するために、アルツハイマー病(AD)-タウ抽出物を海馬と上部皮質に両側注入する。3または6ヶ月後にタウ免疫組織化学(AT8、AT180、MC1)およびアミロイド免疫染色および組織学(チオフラビン-S)のために動物を回収してF20P対スクランブルを発現する動物におけるアミロイド負荷に対するホスホ-タウ免疫染色の広がりおよび総面積を測定する。
【0315】
議論
一部の実施様態において、変異体Aβの生涯にわたる発現はAPP/PS1マウスにおけるアミロイドの形成を減少させ、アルツハイマー病抽出物によるプラークおよびホスホ-タウ神経突起のシーディングを減少させる可能性がある。一部の実施様態において、変異体Aβは新たに生成されたシーディングと同様に注入されたAD-Aβシードの拡張を制限する。類似に、一部の実施様態において、変異体Aβがタウの2次シーディングを促進するのに必要なアミロイドプラークの形成を弱化させることによってホスホ-タウ神経突起の出現が減少する。代案的に、一部の実施様態において、変異体Aβは、外因性凝集体によるシーディングを弱化させることができず、これは、一部の実施様態において、変異体AβがAPPマウスにおけるシードの形成を鈍化させるのに十分であるが、一旦存在すれば、種子の成長を防止するか、またはAD抽出物に存在するシードと相互作用し得ないことを示唆し;これは、出発物質にかかわらず発生しなければならないフィブリル拡張中の、立体障害の予測されたメカニズムにより可能性が低い。
【0316】
このような実験は接種に関する治療時期が効能を制御する方法を試験する今後の研究のための重要な土台を提供する。変異体Aβがプラーク発病後に提供される場合、シーディングを妨害することができるか否かを決定するために試験を行う。時間外にも投与量と投与経路がアミロイドからタウへの進行に及ぼす影響を調べる。
【0317】
実施例6-例示的な方法
WT Aβ42または変異体ペプチドストックの製造。合成Aβ42 WTまたは変異体ペプチドは、Biomatik(Wilmington、DE)で購入した。凝集体のないAβ42 WTまたは変異体ペプチドの原液を製造するために粉末型ペプチドを50%アセトニトリルに溶解して、凍結し、一晩凍結乾燥して残留トリフルオロ酢酸を除去した。凍結乾燥されたAβ42ペプチドをHFIP(#105228、Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)に溶解させた。Aβ-HFIP溶液を室温(RT)で30分間インキュベーションした後、分取量に分けた。HFIPをヒュームフードで一晩蒸発させた後、1時間の間SpeedVacに移動させ、残っているHFIPの痕跡を除去した。ペプチドフィルムを含むチューブは、用いるまで-20℃で乾燥剤の上に保管した。実験に用いる直前に凍結乾燥されたペプチドをDMSOに最終濃度が5mMとなるように溶解させ、水槽超音波処理器で10分間超音波処理した。
【0318】
オリゴマーおよび原線維型WT Aβの製造。Ham’s F-12培地(#30611040-1、Fisher Scientific、Pittsburgh、PA)でペプチドを最終濃度100μm WT Aβ42ペプチドまたは100μM WT+100μM変異体で溶解した後、振盪せずに4℃で24時間の間インキュベーションし、オリゴマーAβを生成した。原線維型AβはWTペプチドをPBSに最終濃度100μmで溶解させ、振盪せずに37℃で24時間の間インキュベーションして生成された。
【0319】
Aβ自己-凝集、WTペプチドとの競争およびフィブリルの分解の動力学を試験するためのThT検定。Aβ42 WTまたは変異体単量体の自己-凝集は5μMチオフラビンT(ThT)を含むPBSで10μMの開始濃度で試験した。ThT蛍光は440nmの励起波長および485nmの放出波長でInfinite M1000 Pro Plate Reader(Tecan、Mannedorf、Switzerland)を用いて測定された。反応物を37℃で振盪せずにインキュベーションした後、蛍光を読み取る前に5秒間振盪した。変異体とWT Aβとの間の競争は類似に行われ、WT単独を除いて混合物(1:1、WT:変異体)の各ペプチドに対して10μMの開始濃度を用いて最終濃度10μMで試験した。5μM ThTを含むPBSで10μlのWT Aβ42フィブリル(上記で説明した)を5、10または20μM単量体F19D/L34PまたはF20Pペプチドと1:1の割合で混合してフィブリルの分解を評価した。37℃で48時間の間振盪せずに24時間ごとに蛍光を測定した。
【0320】
オリゴマーAβ毒性検定。N2a細胞は1×104U/mlペニシリン/ストレプトマイシン(#15140-122、Life Technologies、Carlsbad、CA)および10%胎児ウシ血清(#MT35010CV、Fisher)が補充されたEMEM(Eagle’s minimum essential medium、#112-018-101、VWR、Radnor、PA)培地で、37℃で5%のCO2に成長させた。融合性(confluent)細胞をトリプシン化し、細胞成長を最小化するために、1%のN2補充剤を含むEMEMに希釈した後、透明平面-床96-ウェルプレート(#07-200-89、Fisher)に、1ウェル当たり5,000個の細胞をプレーティングした。10μlのそれぞれのオリゴマー製剤(WT Aβ単独またはWT+変異体、上記に記載されている)または10μlの1:10希釈液を90μlの培養培地に添加した。製造社の指示に応じてMTS検定(#G3582、Promega、Madison、WI)を用いて処理24時間後に細胞生存力を測定した。簡略に、20μlのAQueous One Solution Reagentを培養ウェルに直接添加し、37℃、5%のCO2雰囲気で2時間の間培養した後、Epoch 2分光光度計(Biotek、Winooski、VT)を用いて490nmで吸光度を記録して検定を行った。
【0321】
プラスミド構築物。Aβ-CTFのN末端にガウシアルシペラジェ信号ペプチド(GLSP、アミノ酸MGVKVLFALICIAVAEA、配列番号:20に該当)を添加するためにPCRを用いた。先ず、オリゴGLSP-1 5’ATGGGCGTGAAGGTCCTGTTCGCCCTGATTTGCATCGCCGTCGCAGAGGCAGATGCAGA 3’(配列番号:40)およびオリゴGLSP-2 5’TCTGCATCTGCCTCTGCGACGGCGATGCAAATCAGGGCGAACAGGACCTTCACGCCCAT 3’(配列番号:41)を用いて部分的なAβ配列を有したGLSP用合成DNAを製造した。このオリゴヌクレオチドは95℃の2分間で開始した後、漸次的に25℃に冷却されるようにプログラミングされたサーマルサイクラーでインキュベーションしてアニーリングされた。第二に、ヒトAPP野生型配列(pBS-hAPPwt-IRES-GFP)を含むプラスミドをフォワードプライマー5’GTCGCAGAGGCAGATGCAGAATTCCGACATGAC 3’(配列番号:42)およびリバースプライマー5’GCGCGGATATCCTAGTTCTGCATCTGCTCAAAG 3’(配列番号:43)に増幅して部分的なGLSP配列を有するAβ-CTFを生成した。その後、GLSP-Aβ-CTFは、二つのテンプレートからKozak配列5′GCGCGAAGCTTGCCACCATGGGCGTGAAGGTCCTGTT 3′(配列番号:44)を追加するためのフォワードプライマーおよびリバースプライマー5′ GCGCGGATATCCTAGTTCTGCATCTGCTCAAAG 3′(配列番号:45)を用いてGLSP+部分AβにAβ-CTF+部分GLSPに結合するキブソン(Gibson)アセンブリーによって生成された。生成されたGLSP-Aβ-CTF断片は、HindIIIおよびEcoRVで切断し、CAGプロモーターおよびWPREを含むpAAVでサブクローニングしてpAAV-GLSP-Aβ-CTFを生成した。
【0322】
GLSP-Aβ-CTF欠失シリーズは、多様なGLSP-Aβ-CTF欠失をpAAVでクローニングして作製された。GLSP-Aβ-CTF欠失シリーズは、一連のリバースプライマーと共通のフォワードプライマーを用いて全長pAAV-GLSP-Aβ-CTFからPCRによって増幅された後、HindIIIおよびEcoRVで切断し、pAAVにライゲーションさせた。
【0323】
フォワードプライマー:
Aβ-GLSP-F(KOZAK):5′ GCGCGAAGCTTGCCACCATGGGCGTGAAGGTCCTGTT 3′(配列番号:46)。
【0324】
リバースプライマー:
Aβ-R(KK):5′ GCGCGgatatcTTACTACTTCTTCAGCATCACCAAGGTG 3′(配列番号:47);
Aβ-R(ML):5′ GCGCGgatatcTTACTACAGCATCACCAAGGTGATGA 3′(配列番号:48);
Aβ-R(LV):5′ GCGCGgatatcTTACTACACCAAGGTGATGACGATCA 3′(配列番号:49);
Aβ-R(IT):5′ GCGCGgatatcTTACTAGGTGATGACGATCACTGTCG 3′(配列番号:50);
Aβ-R(IV):5′ GCGCGgatatcTTACTAGACGATCACTGTCGCTATGA 3′(配列番号:51);
Aβ-R(IA):5′ GCGCGgatatcTTACTACGCTATGACAACACCGCCCA 3′(配列番号:52);
【0325】
F19D/L34P置換を含むpAAV-GLSP-Aβ(F19D/L34P)-KKを構築するために2つのPCR反応を行った。GLSP-Aβ(F19D/L34P)-KKの断片は、フォワードプライマー5′ GCGCGaagcttGCCACCATGGGCGTGAAGGTCCTGTT 3′(配列番号:53)およびリバースプライマー5′ ACCATGGGTCCAATGATTGCACCTTTGTTTGAACCCACATCTTCTGCAAAGTCCACCAA 3′(配列番号:54)を用いてpAAV-GLSP-Aβ-KKから増幅された。GLSP-Aβ(F19D/L34P)-KKの第2の断片は、フォワードプライマー5′ TTGGTGGACTTTGCAGAAGATGTGGGTTCAAACAAAGGTGCAATCATTGGACCCATGGT 3‘(配列番号:55)およびリバースプライマー5′ GCGCGGATATCTTACTACTTCTTCAGCATCACCAAGGTG 3′(配列番号:56)を用いて増幅された。生成された断片をフォワードプライマー5′ GCGCGAAGCTTGCCACCATGGGCGTGAAGGTCCTGTT 3′(配列番号:57)およびリバースプライマー5′ GCGCGGATATCTTACTACTTCTTCAGCATCACCAAGGTG 3′(配列番号:58)を用いてギブスンアセンブリーによって結合した。生成された挿入物をHindIIIおよびEcoRVで切断し、pAAVにサブクローニングしてpAAV-GLSP-Aβ(F19D/L34P)-KKを生成した。
【0326】
F20P置換を含むpAAV-GLSP-Aβ(F20P)-KKに対し、2つのPCR反応を行った。GLSP-Aβ(F20P)-KKの断片は、フォワードプライマー5′ GCGCGAAGCTTGCCACCATGGGCGTGAAGGTCCTGTT 3′(配列番号:59)およびリバースプライマー5′ TCTTCTGCAGGGAACACCAATTTTTG 3′(配列番号:60)を用いてpAAV-GLSP-Aβ-KKから増幅された。GLSP-Aβ(F20P)-KKの第2の断片は、フォワードプライマー5′ CAAAAATTGGTGTTCCCTGCAGAAGA 3′(配列番号:61)およびリバースプライマー5′ GCGCGGATATCTTACTACTTCTTCAGCATCACCAAGGTG 3′(配列番号:62)を用いて増幅された。生成された断片をフォワードプライマー5′ GCGCGAAGCTTGCCACCATGGGCGTGAAGGTCCTGTT 3′(配列番号:63)およびリバースプライマー5′ GCGCGGATATCTTACTACTTCTTCAGCATCACCAAGGTG 3′(配列番号:64)を用いてギブスンアセンブリーによって結合した。生成された挿入物をHindIIIおよびEcoRVで切断してpAAVにサブクローニングしてpAAV-GLSP-Aβ(F20P)-KKを生成した。全ての制限酵素はニュー・イングランド・バイオラボ(New England Biolabs:Ipswich、MA、USA)で購入した。
【0327】
N2a調節培地でAβペプチドの収集。N2a細胞は1×104U/mlペニシリン/ストレプトマイシンおよび10%胎児ウシ血清が補充されたDMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium、#12-604F、VWR)培地を用いておよそ90%融合されるまで6ウェルプレートで成長させた。引き続き、リポフェクタミンLTX(#15338030、Fisher)または14μg/皿(10cm)のpAAV-GLSP-Aβ(F20P)-KKを用いて順次に欠失されたAPP-CTF配列(例えば、pAAV-GLSP-Aβwt-KK)の2.5μg/ウェルで細胞をトランスフェクトさせた。24時間後、細胞を1× Dulbecco’s PBSで洗浄し、DMEMおよび0.2%の胎児ウシ血清で構成された血清-減少培地を添加した後、細胞を37℃で5%のCO2に回復させた。調節培地を24時間後に回収し、4℃で5分間10,000rpmで遠心分離した(IP反応当たり2ml/ウェル×3ウェル)。γ-セクレターゼ活性に対するAβ放出の依存性を試験するために、細胞を上記のようにトランスフェクトさせ、0.1または1nMのLY411575(#SML0506、Sigma)を含む後続培地を入れ替った。上澄み液を収集し、プロテアーゼ抑制剤(#5892970001、Sigma)および0.01%のNaN3(#S2002、Sigma)で補充してタンパク質分解を防止した。
【0328】
免疫ブロットのための調節培地のAβ IP.タンパク質G Dynabeads(50μl、#10003D、Fisher)に室温で1時間の間マウス抗-Aβ抗体6E10(1μg、#SIG-39320、BioLegend、San Diego、CA)をローディングした。トランスフェクトされたN2a細胞(6ml)の調節培地を4℃で一晩回転器で50μlのDynabead-6E10複合体とともに培養した。翌日、磁気分離を用いてビーズを収集し、上澄み液を除去した。ビーズを0.02%のTween-20を含むPBSで3回洗浄した。免疫沈殿された複合体を50mMグリシンpH2.8で溶出させた。この後、試料を70℃で10分間同一の体積の2× Laemmli試料バッファーで変性させ、16.5%のCriterion Tris-Tricineゲル(#3450063、Bio-Rad、Hercules、CA)で電気泳動した。トランス-ブロットターボトランスファーシステム(Trans-Blot Turbo Transfer System、#170-4159、Bio-Rad)を用いてタンパク質をニトロセルロースに移した。メンブレンを0.1%のTween-20および5%無脂肪粉乳を含むPBSで室温で1時間の間ブロッキングし、ブロッキング溶液に1:5000で希釈された6E10を用いて4℃で一晩探針した。抗体結合はブロックで1:20,000で希釈されたIRDyeと接合されたマウス抗-IgG 2次抗体(#26-32210、LI-COR、Lincoln、NE)を用いて検出された。オデッセイFcイメージャ(Odyssey Fc Imager)でブロットをイメージ化し、イメージスタジオ(Image Studio)ソフトウェア(LI-COR)で分析した。
【0329】
MS用調節培地のAβ IP.Aβ F20Pを含む約60mLのN2a調節培地を10μgマウス抗-Aβ抗体6E10(#SIG-39320;BioLegend、San Diego、CA、USA)とともにインキュベーションし、それぞれ30mLずつ二つのバッチに分け、回転器で4℃で一晩インキュベーションした。翌日Protein G Dynabeads(100μL;#10003D;Fisher Scientific)を培地に添加し、4℃で2時間インキュベーションした。上澄み液を除去するために、磁気分離によりビーズを収集した後、0.02%のTween-20を含むPBSで3回洗浄した後、洗剤なしにPBSで2回洗浄した。最後に、MS分析のために免疫沈殿された複合体を10%のギ酸溶液80μLで溶出した。
【0330】
MS.脳ホモジネートおよびAβ F20Pを発現する培養培地で溶出された免疫沈殿物をSpeedVacで乾燥し、50μLの20%のギ酸に再懸濁させた。1μLのIP反応物を10cm、100μm内径C3コラム(ZORBAX 300SB-C3;300Å 5μm)にローディングし、溶融シリカに自体パッキングし、引き寄せてナノ電気噴霧放出器を形成した。オンライン高性能LC(HPLC)はThermo Scientific U3000 RSLCnano ProFlowシステムで行われた。緩衝液A:2%のアセトニトリル、0.1%のギ酸および緩衝液B:98%のアセトニトリルおよび0.1%のギ酸を用いて0%の緩衝液Bから35%の緩衝液Bまで50分線形勾配した。コラム溶離液はナノ電子噴霧イオン化によってThermo Scientific Orbitrap Fusion Lumosに導入された。2,200Vの静的噴霧電圧と320℃のイオン伝達チューブの温度が供給源に対して設定された。
【0331】
MS1は4重極子分離(quadrupole isolation)があるポジティブモードで60kの解像度設定でオービトラップ(Orbitrap)によって行われた。最大注入時間が200msである5.0e6の自動利得制御(AGC)標的、2つのマイクロスキャンおよび350乃至2,000質量対電荷割合(m/z)のスキャン範囲が用いられた。MS2断片化のために選択された標的前駆体m/zは、+4、+5および+6 Aβ F20P 38、40および42アミノ酸変形されていないイオンに対する単一同位元素および最も豊富な質量を含んだ。正規化された衝突エネルギーが45%である高エネルギー衝突解離(HCD)断片化が用いられた。MS2収集は15kの解像度設定、AGC標的1e6、最大注入時間100ms、スキャン範囲150-2,000m/zおよび3つのマイクロスキャンを用いてオービトラップを用いて行われた。次に、α-セクレターゼにより切断されたAβ 1-16の質量は、MS分析のために切断されずに部分的に切断された前駆体(信号ペプチドおよび残存TMドメインがあるかまたはない)とともに特異的に標的化され、これらの標的に対する敏感度を向上させた。媒介変数はこのような代案的に切断されたペプチドを含む標的質量リストで複製された。
【0332】
データ処理は、上記において説明したように、カスタム分析スイートによって行われた。切断されずに部分的に切断された前駆体ペプチド(信号ペプチドおよび残留TMドメインがあるかまたはない)とともにAβ F20P 38、40および42つのペプチド、α-セクレターゼ-切断されたAβ 1-16は検索のための鋳型配列で用いられた。変形されていないAβ F20Pに対する代表的なスペクトルが図示される。
【0333】
ウイルス性パッケージング。すべてのAAVは以前に説明したのと類似した方法を用いてベイラー医科大学の遺伝子ベクターコア(Gene Vector Core)で製造した。HEK293Tサブクローン1F11細胞を10%のFBS(#97068-085、VWR)および1×抗生剤/抗真菌剤(#CA002-010、GenDEPOT)が補充されたDMEM(#CM002-050、GenDEPOT Corp.、Barker、TX)で成長させた。血清型8AAVはiMFectin Poly DNA Transfection Reagent(#I7200-101、GenDEPOT)24μL/プレートを用いて3つのプラスミド(発現ベクター(1.14μg/15cmプレート)、p5E18-VD2/8 Rep-Capプラスミド(4.57μg/プレート)およびpAdDF6ヘルパープラスミド(2.29μg/プレート)の同時トランスフェクションによって製造された。AAV精製は、Ayusoの他に基づいたプロトコルを用い、0.75 M NaClを含む15%のイオジキサノールで行った。トランスフェクションの3日後、後続ポリエチレングリコール(PEG)沈殿のために培地を維持する間、細胞を収集した。細胞ペレットをプレート当たり1mlの5mM MgCl2および0.15 M NaClを含む50mM Tris pH8.0に再懸濁し、室温で30分間0.1体積の5%のデオキシコール酸ナトリウムを添加して溶解させた後、37℃で1時間の間10μg/mlのDNase IおよびRNase Aで培養した。細胞溶解物を4℃で10分間、5,000× gで遠心分離して浄化した。培養培地を10μg/mlのDNase IおよびRNase Aとともに37℃で1時間の間培養した後、4℃で8%のPEG(ストック40%のPEG 8000+2.5 M NaCl)で一晩培養した。この混合物から2,500× gで30分間遠心分離によってAAVを収集した。AAVを含むペレットを最小体積のHBS(50mM HEPES、0.15M NaCl、1%のサルコシルおよび20mM EDTA pH8.0)に再懸濁させた。イオジキサノール密度遠心分離のために細胞-関連の、および分泌されたAAV製剤を組み合わせた。生成されたAAV粒子をAmicon Ultra-15遠心分離フィルター(100,000 kDa公称限界、Millipore、Burlington、MA)を用いてMgおよびCaがないPBSに対して透析し、力価をリアルタイムPCRで決定した。
【0334】
マウス。ベイラー医科大学の比較医学センター(Center for Comparative Medicine)で購入した野生型ICR動物は、P0ウイルス注入のための子孫生成に用いられた。これらの同腹仔の野生型仔は、下述のように、P0でウイルスの注入されており、1ヶ月齢で新皮質ウイルス発現を評価するために回収された。男性APPswe/PS1dE9 bigenicマウスは、ジャクソン研究所のMutant Mouse Resource and Research Center(製品 #34832-JAX、B6.Cg-Tg(APPswe、PSEN1dE9)85Dbo/Mmjax)で入手した。これらは野生型C57BL/6Jマウスと交配して逆交配コロニーを構築するか、またはFVB/NJ雌と交配して研究用F1子孫を生成した。雄および雌、非-トランスジェニック(野生型)およびAPP/PS1-陽性子孫の両方にP0ウイルス注入して7.5ヶ月齢で変異体Aβの発現を評価した。すべての動物実験はベイラー医科大学機関動物管理および使用委員会で検討して承認し、関連規制標準を遵守する。
【0335】
P0脳室内注入。新生児マウス仔の側脳室にAAVを上述したように定位注入した。生まれた後6時間以内に新生児をケージから収集して冷凍麻酔で注入する準備をする。運動を中断した後、0.05%のトリパンブルーを含む滅菌PBSに希釈された4×106TU/μlのウイルス溶液を32ゲージ針(Hamilton、#7803-04、RN 6PK PT4)が装着された10μLのシリンジ(Hamilton Company、Reno、NV、#7653-01)を用いて側脳室に注入した。新生児定位装置(X、Y、Z)=(±0.8、±1.5、-1.5mm)および(±1.35、±2.0、-1.7mm)を用いてラムダから半球当たり2つの部位に部位当たり1μLのウイルス溶液を注入した。注入された仔をケアのために生物学的な母親に戻す前に、正常の色と動きを取り戻すために温熱パッドの上に置いた。
【0336】
組織の回収。野生型ICRマウスを3週齢にウイルス拡散および発現について研究した;トランスジェニックAPP/PS1動物およびこれらの非-トランスジェニックシブリングを7.5ヶ月齢でAβレベル、プラークの負荷および神経膠症について研究した。ペントバルビタールナトリウムの過多服用によりマウスを死滅し、PBSとヘパリンを心臓を通じて灌流した。脳を除去して正中線に沿って解剖した。左側皮質の口側半分は生化学のためにドライアイスで急速凍結させた。右側半球は4℃で48時間の間4%のパラホルムアルデヒドに浸漬固定されており、4℃で30%のスクロースで凍結保護されており、組織学のために35mmで分割した。
【0337】
組織ホモジナイズ。凍結された前頭葉皮質を5mM EDTA、1×プロテアーゼ抑制剤(#05892970001、Roche、Basel、Switzerland)および1× PhosSTOP(#04906845001、Roche)を含むPBSで超音波処理し、4℃で30分間100,000× gで遠心分離した。ペレットを1%のTriton X-100(PBS-X)を含む同一体積のPBSに再懸濁し、4℃で30分間柔らかい回転にて混合した。試料を4℃で30分間100,000× gで遠心分離し、上澄み液をPBS-X可溶性分画で貯蔵した。ペレットを50mM Tris pH6.8のうち同量の5Mグアニジンハイドロクロライドに再懸濁し、室温で一晩柔らかく回転して混合した。試料を室温で30分間16,000× gで遠心分離し、上澄み液をグアニジン可溶性分画で貯蔵した。
【0338】
MS用脳抽出物のAβ IP.AAV-F20Pを注入し、3週目に回収したWT ICRマウスの脳抽出物をIP-MSに用いた。500μLのPBS-X溶解性抽出物を500μLのRIPA(radioimmunoprecipitation assay)緩衝液(5mM EDTA、0.5%のIgepal、0.5%のデオキシコール酸ナトリウム、0.2%のSDSおよびプロテアーゼ抑制剤を含むPBS)と混合した後、回転プラットフォームで5μgマウス抗Aβ-抗体6E10とともに4℃で一晩インキュベーションした。翌日Protein G Dynabeads(50μL)をホモジネートに添加し、4℃で2時間インキュベーションした。ビーズを磁気分離により収集して上清液を除去した後、0.02%のTween-20を含むPBSで3回洗浄した後、洗剤なしにPBSで2回洗浄した後、免疫沈殿された複合体をMS用10%のギ酸溶液40μLで溶出した。
【0339】
中間規模ディスカバリーの検定(Meso Scale Discovery assay)。PBS-X(生後3週)またはグアニジン(生後7.5ヶ月)で製造された前頭葉皮質抽出物でヒトAβx-40および-42の濃度は、マルチプレックスAβペプチドパネル1(#K15200E、Meso Scale Diagnostics、Rockville、MD)を用いて測定された。捕獲のために提供された6E10抗体(ヒトAβ 1-16)、および検出のために提供された末端-特異的40/42抗体を用いて、基本的に製造業社の指示に応じて検定を行った。試料はPBS-Xの場合、1:1、グアニジンの場合、1:250の希釈を要求する検定の線形範囲内にあるように希釈した。PBS-Xおよびグアニジン分画の初期希釈は、1%のプロテアーゼのないBSA(#820451、MP Biomedical、Santa Ana、CA)を含むPBSで行われた。キットに含まれたDiluent 35を用いて最終作業希釈液を製造するが;Aβ遮断試薬を用いなかった。SECTOR Imager 6000で試料を読み取り、Discovery Workbenchソフトウェア(Meso Scale Diagnostics)を用いて濃度を計算した。
【0340】
免疫蛍光。1/12シリーズ切片をTBSでリンスさせ、0.1%のTriton X-100および10%の正常ヤギ血清を含むTBSで室温で1時間の間ブロッキングした後、それぞれがブロッキング溶液のうち1:500希釈されたマウス抗-GFAP(#G3893、Sigma)、ウサギ抗-Iba1(#019-19741、Waco、Richmond、VA)、またはマウス抗-Aβ抗体6E10(BioLegend)+ウサギ抗-Aβ抗体Y188(#ab32136、Abcam、Cambridge、United Kingdom)で4℃で一晩インキュベーションした。TBSで数回洗浄した後、切片を1:500ブロックで希釈させたAlexa Fluor-568ヤギ-抗ウサギおよびAlexa Fluor-488ヤギ-抗マウス2次抗体(#A-11036および#A-21121、Life Technologies)とともに室温で2時間インキュベーションした。GFAP/Iba1切片をTBSで洗浄した後、TBSで希釈した0.002%のチオフラビン-Sで室温で8分間対比染色した。チオフラビン-染色された切片を50%のエタノールで二回洗浄した後、装着する前にTBSで数回洗浄した。すべての切片をスーパーフロストプラス(Superfrost Plus)スライド(#12-550-15、Fisher)に装着し、Vectashield装着媒体(#H1400、Vector Laboratories、Burlingame、CA)でカバースリップした。
【0341】
免疫組織化学。アミロイド-ベータプラークを標識するために、自由-浮動切片をTBSを利用して凍結保護剤で洗浄し、88%のギ酸で1分間インキュベーションした後、TBSでリンスさせた。内因性ペルオキシダーゼを室温で30分間TBS+0.1%のTriton X-100(TBS-T)のうち0.9%のH202で急冷(quenching)した。TBSで洗浄した後、切片を室温で1時間の間TBS-Tで5%の正常ヤギ血清でブロッキングした。切片をブロッキング緩衝液に希釈された1次抗体(1:500、Rb抗-Aβ、ThermoFisher/Zymed、71-5800)とともに一晩4℃でインキュベーションした。翌日、切片をTBSで洗浄して室温で2時間の間、2次抗体とともにインキュベーションした(1:500、ビオチニル化されたGt抗-Rb、VECTASTAIN Elite ABC Kit、Vector Labs、PK-6101)。使用の30分前にTBS 5mlに各溶液50μLを用いてA+B試薬を製造した。切片をTBSで数回洗浄した後、A+B試薬で90分間室温でインキュベーションした。切片を再度TBSで洗浄した後、濾過されたDAB溶液(Sigma、D4293)で現像させ、TBS洗浄して急冷させた。切片をスーパーフロストプラススライド(Fisher、12-550-15)に装着させて一晩乾燥させた。スライドをPermount(Fisher、SP15-100)でカバースリップする前にエタノールシリーズ(70%、95%、100%、キシレン)を通じて処理した。
【0342】
星状細胞およびミクログリア細胞標識のために切片を次のように変形して上記のように処理した。内因性ペルオキシダーゼを室温で30分間TBS+0.1%のTriton-X100+0.05%のTween-20(TBS-TT)のうち0.9%のH202を用いて急冷した。ブロッキング溶液はTBS-TTのうち5%のNGSで構成された。1次抗体をTBS-TT(1:1,000、Rb抗-GFAP、DAKO Z0334または1:1,000、Rb抗-Iba1、Wako 019-19741)に希釈した。
【0343】
Aβ、GFAPおよびIba1表面積の定量化。Zeiss Axio Scan.Z1を10×倍率で用いてタイルイメージを獲得した(Carl Zeiss AG、Oberkochen、Germany)。露出時間とランプ強度はすべての切片で一定であった。ブレグマ(bregma)で0.24mmから2.04mmの間の二つの矢状切片が定量化のために無作為に選ばれた。Fiji 1.51W(NIH、USA)を用いて分析のために海馬前方前頭葉皮質をROIで表示した。イメージを8ビットで変換し、ROIを基準としてYen(円)アルゴリズムを用いて臨界値を適用した。ROIがある臨界値上の面積百分率を定量化に用いた。
【0344】
統計。GraphPad Prism 6.0hを用いて統計の比較およびグラフ作成を行った。二つのグループの比較は、Student’s t-testで行った;3つ以上のグループの比較は、一元または両方向ANOVAに引き続き、Bonferroni事後試験で行われた。Grubbの試験は異常値データポイントを識別するのに用いられた(graphpad.com/quickcalcs/Grubbs1.cfm);これによって
図3Eで1つのデータポイント(F19D/L34P Aβ42)を、
図3Fで2つのデータポイント(F19D/L34P Aβ40およびF20P Aβ42)を、
図3Fで1つのデータポイント(7.5ヶ月F19D/L34P)を、そして
図4Bから1つのデータポイント(F20P)を除去した。グラフはグループ平均±SEMを表示する。
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【0345】
本明細書に開示されて請求されたすべての方法は、本開示内容を考慮して過度な実験なしに行われ、実行されてもよい。本発明の組成物および方法が特定の実施様態の観点で記述されているが、本明細書に記述された方法および段階または段階の順序は、本発明の概念、思想および範囲から外れることなく、変形され得ることが当業者に明白であるだろう。より具体的に、同一または類似の結果が達成される間、化学的および生理学的に両方とも関わった特定製剤が本明細書に記載されている製剤を代替することができることが明白であるだろう。当業者に明白なすべての類似した代替物および修正物は、添付の請求の範囲によって定義された本発明の思想、範囲および概念内にあるものと見なされる。
【配列表】
【国際調査報告】