(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20231227BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20231227BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20231227BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20231227BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M4/505
H01M4/525
H01M10/0525
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537202
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 CN2021138677
(87)【国際公開番号】W WO2022143191
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】202011606717.2
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110392954.1
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513222359
【氏名又は名称】シェンズェン カプチェム テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN CAPCHEM TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 1901, Capchem Plaza, No. 9 Changye Road, Liulian Community, Pingshan Street, Pingshan District, Shenzhen City, 518118, China
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】フー, シグァン
(72)【発明者】
【氏名】キァン, ユンシャン
(72)【発明者】
【氏名】カオ, チャオウェイ
(72)【発明者】
【氏名】グオ, ペンカイ
(72)【発明者】
【氏名】シャン,シャオシャ
(72)【発明者】
【氏名】ワン, チ
(72)【発明者】
【氏名】シャン, シュファイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン, クン
(72)【発明者】
【氏名】デン, ヨンホン
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H050AA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
ガス発生が厳しくて高温サイクル特性が劣化するという従来の高ニッケル高圧リチウムイオン電池に存在する問題を克服するために、本発明は、正極、負極、および非水電解液を含むリチウムイオン電池を提供し、前記正極は正極材料層を含み、前記正極材料層は正極活性材料を含み、前記正極活性材料はLiNi
xCo
yMn
zL
(1-x-y-z)O
2を含み、ここで、LはAl、Sr、Mg、Ti、Ca、Zr、Zn、Si、Cu、VまたはFeであり、0.5≦x≦1、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦x+y+z≦1であり、前記リチウムイオン電池の上限電圧≧4.2Vであり、前記非水電解液は、溶剤、電解質塩、および以下の構造式1で示す化合物を含み、
[構造式1]
A-D-B-E-C
前記非水電解液の総質量を100%とした場合、前記構造式1で示す化合物の添加量は0.01~5.0%である。本発明は、構造式1で示す化合物と高ニッケル三元系材料とを併用して、高温サイクル容量維持率が高くてサイクルガス発生が少ない三元系高ニッケルリチウムイオン電池を得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池であって、
正極、負極、および非水電解液を含み、前記正極は、正極材料層を含み、前記正極材料層は、正極活性材料を含み、前記正極活性材料は、LiNi
xCo
yMn
zL
(1-x-y-z)O
2を含み、
ただし、Lは、Al、Sr、Mg、Ti、Ca、Zr、Zn、Si、Cu、VまたはFeであり、0.5≦x≦1、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦x+y+z≦1であり、前記リチウムイオン電池の上限電圧≧4.2Vであり、
前記非水電解液は、溶剤、電解質塩、および以下の構造式1に示す化合物を含み、
[構造式1]
A-D-B-E-C
ただし、A、B、Cは、それぞれ独立して環状炭酸エステル基、環状硫酸エステル基、環状亜硫酸エステル基、環状スルホン酸エステル基、環状スルホン基、環状スルホキシド基、環状カルボン酸エステル基または環状無水物基を含有する基から選択され、
D、Eは、それぞれ独立して単結合、或いはヒドロカルビレン基、エーテル結合、硫黄酸素二重結合または炭素酸素二重結合を含有する基から選択され、
前記非水電解液の総質量を100%とした場合、前記構造式1に示す化合物の添加量は、0.01~5.0%である、
ことを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項2】
A、B、Cがそれぞれ独立して含有する環状炭酸エステル基、環状硫酸エステル基、環状亜硫酸エステル基、環状スルホン酸エステル基、環状スルホン基、環状スルホキシド基、環状カルボン酸エステル基または環状無水物基の数は、1~5であり、且つA、B、Cの環状炭酸エステル基、環状硫酸エステル基、環状亜硫酸エステル基、環状スルホン酸エステル基、環状スルホン基、環状スルホキシド基、環状カルボン酸エステル基または環状無水物基の合計数量は、10以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項3】
A、Cは、それぞれ独立して以下の構造式2に示す基から選択され、
[構造式2]
【化1】
ただし、nは、0~4の整数から選択され、
R
1は、水素ハロゲン、C1~C5の炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基から選択され、
R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7は、それぞれ独立してC1~C3のヒドロカルビレン基、C1~C3的アルコキシ基、酸素原子、
【化2】
から選択され、
R
2、R
3、R
4のうちの少なくとも1つは、
【化3】
から選択され、
R
2、R
3、R
4のうちの少なくとも1つは、酸素原子から選択され、
R
5、R
6、R
7のうちの少なくとも1つは、
【化4】
から選択され、
R
5、R
6、R
7のうちの少なくとも1つは、酸素原子から選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項4】
Bは、以下の構造式3に示す基から選択され、
[構造式3]
【化5】
ただし、
mは、1~4の整数から選択され、
R
8、R
9、R
10は、それぞれ独立してC1~C3のヒドロカルビレン基、C1~C3のアルコキシ基、酸素原子、
【化6】
から選択され、
R
8、R
9、R
10のうちの少なくとも1つは、
【化7】
から選択され、
R
8、R
9、R
10のうちの少なくとも1つは、酸素原子から選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項5】
D、Eは、それぞれ独立して以下の構造式4に示す基から選択され、
[構造式4]
【化8】
ただし、
zは、0~4の整数から選択され、
R
11とR
13は、それぞれ独立して単結合またはC1~C5のヒドロカルビレン基から選択され、
R
12は、単結合、
【化9】
から選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項6】
D、Eは、それぞれ独立して単結合またはC1~C5のヒドロカルビレン基から選択され、A、B、Cは、それぞれ独立して置換または非置換の環状炭酸エステル基、環状硫酸エステル基、環状亜硫酸エステル基、環状スルホン酸エステル基、環状スルホン基、環状スルホキシド基、環状カルボン酸エステル基または環状無水物基から選択され、
好ましくは、A、BまたはCが置換される場合、置換基は、ハロゲン、炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基から選択され、より好ましくは、A、BまたはCが置換される場合、置換基は、ハロゲン、アルキル基またはハロゲン化アルキル基から選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項7】
AとCは互いに同一であり、AとBは互いに同一または異なり、DとEは互いに同一である、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項8】
前記構造式1に示す化合物は、
【化10-1】
【化10-2】
【化10-3】
【化10-4】
【化10-5】
【化10-6】
【化10-7】
という化合物から選択された1つまたは複数である、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項9】
前記正極活性材料は、LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2、LiNi
0.6Co
0.2Mn
0.2O
2、LiNi
0.7Co
0.1Mn
0.2O
2、LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2、LiNi
0.8Co
0.1Mn
0.1O
2、LiNi
0.6Mn
0.4O
2およびLiNi
0.8Mn
0.2O
2から選択される1つまたは複数である、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項10】
前記非水電解液は、補助添加剤をさらに含み、
前記補助添加剤は、不飽和環状炭酸エステル類化合物、フッ素化環状炭酸エステル類化合物、芳香族添加剤、含フッ素アニソール化合物、ジカルボン酸無水物、ジフルオロリン酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)のうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池技術分野に属し、具体的にリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、その優れる性能のため、生活や生産に幅広く使用されており、近年、一般消費者向け電子機器や新エネルギー自動車の発展に伴い、人々はリチウムイオン電池の性能に対してより高い要望を期待しており、特に高温条件下でのサイクル性能をさらに改善する必要がある。リチウムイオン電池、特に高ニッケル・高圧三元系電池システムのサイクル過程では、三元系正極材料内のニッケル含有量と動作電圧のいずれも高い場合、リチウムイオン電池のサイクルにおけるガス発生現象がより深刻になり、考えられる理由は以下のとおりである。一方では、ニッケル含有量の増加に伴い、正極材料表面のアルカリ化合物の含有量、特に炭酸リチウムの含有量が増加し、電池のサイクル過程では、炭酸リチウムが分解されてガスが発生することがあり、他方では、高ニッケル三元系材料では、脱離可能なリチウムイオンの割合がより高く、この時、正極材料の構造は非常に変化しやすく、崩壊さえ発生することもあるので、正極保護フィルムの破裂を引き起こし、正極材料が電解液に直接露出して副反応を生じて大量のガスが発生することになり、そして、ニッケルイオンの活性が高く、電解液がニッケル含有量の高い正極材料表面においてより容易且つ迅速に酸化分解されることが発生するので、サイクルのガス発生がさらに増加し、高温サイクル特性が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ガス発生が厳しくて高温サイクル特性が劣化するという従来の高ニッケルリチウムイオン電池に存在する問題に対して、本発明はリチウムイオン電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明が上記技術的課題を解決するために用いる技術案は以下のとおりである。
【0005】
本発明は、正極、負極、および非水電解液を含むリチウムイオン電池を提供し、前記正極は正極材料層を含み、前記正極材料層は正極活性材料を含み、前記正極活性材料はLiNixCoyMnzL(1-x-y-z)O2を含み、ただし、Lは、Al、Sr、Mg、Ti、Ca、Zr、Zn、Si、Cu、VまたはFeであり、0.5≦x≦1、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦x+y+z≦1であり、前記リチウムイオン電池の上限電圧≧4.2Vであり、前記非水電解液は、溶剤、電解質塩、および以下の構造式1で示す化合物を含み、
[構造式1]
A-D-B-E-C
ただし、A、B、Cは、それぞれ独立して環状炭酸エステル基、環状硫酸エステル基、環状亜硫酸エステル基、環状スルホン酸エステル基、環状スルホン基、環状スルホキシド基、環状カルボン酸エステル基または環状無水物基を含有する基から選択され、
D、Eは、それぞれ独立して単結合、或いはヒドロカルビレン基、エーテル結合、硫黄酸素二重結合または炭素酸素二重結合を含有する基から選択され、
前記非水電解液の総質量を100%とした場合、前記構造式1で示す化合物の添加量は0.01~5.0%である。
【0006】
選択可能に、A、B、Cがそれぞれ独立して含有する環状炭酸エステル基、環状硫酸エステル基、環状亜硫酸エステル基、環状スルホン酸エステル基、環状スルホン基、環状スルホキシド基、環状カルボン酸エステル基または環状無水物基の数は1~5であり、且つA、B、Cの環状炭酸エステル基、環状硫酸エステル基、環状亜硫酸エステル基、環状スルホン酸エステル基、環状スルホン基、環状スルホキシド基、環状カルボン酸エステル基または環状無水物基の合計数量は10以下である。
【0007】
選択可能に、A、Cは、それぞれ独立して以下の構造式2で示す基から選択され、
[構造式2]
【化1】
ただし、nは、0~4の整数から選択され、R
1は、水素、ハロゲンまたはC1~C5のハロゲン化炭化水素基から選択され、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7は、それぞれ独立してC1~C3のヒドロカルビレン基、C1~C3のアルコキシ基、酸素原子、
【化2】
から選択され、R
2、R
3、R
4のうちの少なくとも1つは、
【化3】
から選択され、R
2、R
3、R
4のうちの少なくとも1つは、酸素原子から選択され、R
5、R
6、R
7のうちの少なくとも1つは、
【化4】
から選択され、R
5、R
6、R
7のうちの少なくとも1つは、酸素原子から選択される。
【0008】
選択可能に、Bは以下の構造式3に示す基から選択され、
[構造式3]
【化5】
ただし、mは、1~4の整数から選択され、R
8、R
9、R
10は、それぞれ独立してC1~C3のヒドロカルビレン基()、C1~C3のアルコキシ基、酸素原子、
【化6】
から選択され、R
8、R
9、R
10のうちの少なくとも1つは、
【化7】
から選択され、R
8、R
9、R
10のうちの少なくとも1つは、酸素原子から選択される。
【0009】
選択可能に、D、Eは、それぞれ独立して以下の構造式4に示すから選択され、
[構造式4]
【化8】
ただし、zは、0~4の整数から選択され、R
11とR
13は、それぞれ独立して単結合またはC1~C5のヒドロカルビレン基から選択され、R
12は、単結合、
【化9】
から選択される。
【0010】
選択可能に、D、Eは、それぞれ独立して単結合またはC1~C5のヒドロカルビレン基から選択され、A、B、Cは、それぞれ独立して置換または非置換の環状炭酸エステル基、環状硫酸エステル基、環状亜硫酸エステル基、環状スルホン酸エステル基、環状スルホン基、環状スルホキシド基、環状カルボン酸エステル基または環状無水物基から選択される。
【0011】
選択可能に、A、BまたはCが置換される場合、置換基はハロゲン、炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基から選択される。
【0012】
選択可能に、A、BまたはCが置換される場合、置換基はハロゲン、アルキル基またはハロゲン化アルキル基から選択される。
【0013】
選択可能に、AとCは互いに同一であり、AとBは互いに同一または異なり、DとEは互いに同一である。
【0014】
選択可能に、前記構造式1で示す化合物は、以下の化合物から選択される1つまたは複数である。
【化10-1】
【化10-2】
【化10-3】
【化10-4】
【化10-5】
【化10-6】
【化10-7】
【0015】
選択可能に、前記正極活性材料は、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.7Co0.1Mn0.2O2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、LiNi0.6Mn0.4O2とLiNi0.8Mn0.2O2から選択される1つまたは複数である。
【0016】
選択可能に、前記非水電解液は、補助添加剤をさらに含み、前記補助添加剤は、不飽和環状炭酸エステル類化合物、フッ素化環状炭酸エステル類化合物、芳香族添加剤、含フッ素アニソール化合物、ジカルボン酸無水物、ジフルオロリン酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)のうちの少なくとも1つを含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によって提供されるリチウムイオン電池によれば、発明者は、構造式1で示す化合物と高ニッケル三元系材料とを併用する時、高温サイクル容量維持率が高くてサイクルガス発生が少ない三元系高ニッケルリチウムイオン電池を得ることができることを発見した。ここで、構造式1で示す化合物は正極表面で分解されて正極材料表面を均一に覆う保護フィルムを形成し、一方では、正極材料表面の従来の炭酸リチウムなどの塩基性酸化物の分解を抑制し、ガスの発生を減少させ、他方では、正極構造の安定性を十分に保護することができ、構造式1の正極表面の分解発生物がニッケルイオンと錯体化して比較的安定な保護フィルムを形成してその溶出を抑制して、形成されたフィルムは一定の弾性を有し、正極材料の膨張収縮に応じて膨張収縮することで正極を保護して、且つ充放電サイクル中に破裂しにくいと予想する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例7によって提供されるサイクル後の正極TEM図である。
【
図2】本発明の比較例1によって提供されるサイクル後の正極TEM図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明によって解決される技術的課題、技術案および有益な効果をより明確にするために、以下、図面および実施例に合わせて、本発明をさらに詳しく説明する。なお、ここで説明される具体的な実施例は本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0020】
本発明の一実施例は、正極、負極、および非水電解液を含むリチウムイオン電池を提供し、前記正極は、正極材料層を含み、前記正極材料層は、正極活性材料を含み、前記正極活性材料は、LiNixCoyMnzL(1-x-y-z)O2を含み、ただし、Lは、Al、Sr、Mg、Ti、Ca、Zr、Zn、Si、Cu、VまたはFeであり、0.5≦x≦1、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦x+y+z≦1であり、前記リチウムイオン電池の上限電圧≧4.2Vであり、前記非水電解液は、溶剤、電解質塩、および以下の構造式1で示す化合物を含む、
[構造式1]
A-D-B-E-C
ただし、A、B、Cは、それぞれ独立して環状炭酸エステル基、環状硫酸エステル基、環状亜硫酸エステル基、環状スルホン酸エステル基、環状スルホン基、環状スルホキシド基、環状カルボン酸エステル基または環状無水物基を含有する基から選択され、
D、Eは、それぞれ独立して単結合、或いはヒドロカルビレン基、エーテル結合、硫黄酸素二重結合または炭素酸素二重結合を含有する基から選択され、
前記非水電解液の総質量を100%とした場合、前記構造式1で示す化合物の添加量は0.01~5.0%である。
【0021】
本発明によって提供されるリチウムイオン電池では、構造式1で示す化合物は正極表面で分解されて正極材料表面を均一に覆う保護フィルムを形成し、一方では、正極材料表面の従来の炭酸リチウムなどの塩基性酸化物の分解を抑制し、ガスの発生を減少させ、他方では、正極構造の安定性を十分に保護することができ、構造式1の正極表面の分解発生物がニッケルイオンと錯体化して比較的安定な保護フィルムを形成してその溶出を抑制して、形成されたフィルムは一定の弾性を有し、正極材料の膨張収縮に応じて膨張収縮することで正極を保護して、且つ充放電サイクル中に破裂しにくいと予想する。
【0022】
なお、電池の性能は、正極活性材料内のニッケル含有量、及び非水電解液内の構造式1で示す化合物含有量に関連しており、正極活性材料内のニッケル含有量が少なすぎると、構造式1で示す化合物を加えれば電池の高温サイクル特性をある程度改善することができるが、その改善効果は比較的低く、正極活性材料内のニッケル含有量が高い(0.5≦x≦1)場合、構造式1で示す化合物は電池の高温サイクル特性に対して極めて優れた改善効果を発揮する。これにより、正極活性材料に存在するニッケルと構造式1で示す化合物との間に明確な関連が存在することが実証され、ニッケル含有量の増加につれて、構造式1で示す化合物は、その電池に対する改善効果をさらに発揮する。また、前記構造式1で示す化合物の添加量が少なすぎる時、成膜保護作用がなく、電池性能に対する改善効果が顕著ではない。前記構造式1で示す化合物の添加量が多すぎる時、成膜が厚くて抵抗が大きくなるだけではなく、電解液の粘度も著しく上昇し、電池性能の発揮にも影響するので、添加する構造式1で示す化合物が適量であるこそ、高ニッケル三元系材料との良好な相乗効果を得ることができる。
【0023】
リチウムイオン電池の充電上限電圧が高い場合、その電解液は分解しやすくなり、構造式1で示す化合物は、高電圧条件下の電解液の分解を効果的に抑制できるので、特に上限電圧≧4.2Vの高電圧リチウムイオン電池に適する。
【0024】
いくつかの実施例では、xは、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.83、0.85、0.88、0.90、0.95から選択される。
【0025】
いくつかの実施例では、前記正極活性は、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.7Co0.1Mn0.2O2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、LiNi0.6Mn0.4O2及びLiNi0.8Mn0.2O2から選択される1つ又は複数である。
【0026】
いくつかの実施例では、前記正極活性材料は、ドーピング方式により元素Lを導入し、Lは、Al、Sr、Mg、Ti、Ca、Zr、Zn、Si、Cu、VまたはFeであり、ドーピングされる元素Lは、Ni、Co、Mnなどの活性遷移金属よりも強いA-O化学結合を提供することができ、高電圧での格子酸素(lattice oxygen)の析出を抑制し、材料構造の安定性を向上させる。
【0027】
いくつかの実施例では、A、B、Cがそれぞれ独立して含有する環状炭酸エステル基、環状硫酸エステル基、環状亜硫酸エステル基、環状スルホン酸エステル基、環状スルホン基、環状スルホキシド基、環状カルボン酸エステル基または環状無水物基の数は1~5であり、且つA、B、Cの環状炭酸エステル基、環状硫酸エステル基、環状亜硫酸エステル基、環状スルホン酸エステル基、環状スルホン基、環状スルホキシド基、環状カルボン酸エステル基または環状無水物基の合計数量は10以下である。
【0028】
いくつかの実施例では、A、Cは、それぞれ独立して構造式2で示す基から選択され、
[構造式2]
【化11】
ここで、nは、0~4の整数から選択され、R
1は、水素ハロゲンまたはC1~C5のハロゲン化炭化水素基から選択され、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7は、それぞれ独立してC1~C3のヒドロカルビレン基、C1~C3のアルコキシ基、酸素原子、
【化12】
から選択され、R
2、R
3、R
4のうちの少なくとも1つは、
【化13】
から選択され、且つR
2、R
3、R
4のうちの少なくとも1つは、酸素原子から選択され、R
5、R
6、R
7のうちの少なくとも1つは、
【化14】
から選択され、且つR
5、R
6、R
7のうちの少なくとも1つは、酸素原子から選択される。
【0029】
好ましい実施例では、-R
3-R
2-R
4-の複合基と-R
7-R
5-R
6-の複合基はそれぞれ独立して、
【化15】
から選択される。
【0030】
いくつかの実施例では、Bは構造式3で示す基から選択される、
[構造式3]
【化16】
ここで、mは、1~4の整数から選択され、R
8、R
9、R
10は、それぞれ独立してC1~C3のヒドロカルビレン基、C1~C3のアルコキシ基、酸素原子、
【化17】
から選択され、R
8、R
9、R
10のうちの少なくとも1つは、
【化18】
から選択され、R
8、R
9、R
10のうちの少なくとも1つは、酸素原子から選択される。
【0031】
好ましい実施例では、-R
9-R
8-R
10-の複合基はそれぞれ独立して、
【化19】
から選択される。
【0032】
いくつかの実施例では、D、Eはそれぞれ独立して構造式4で示す基から選択され、
[構造式4]
【化20】
ここで、zは、0~4の整数から選択され、R
11和R
13はそれぞれ独立して単結合またはC1~C5のヒドロカルビレン基から選択され、R
12は単結合、
【化21】
から選択される。
【0033】
いくつかの実施例では、AとCは互いに同一であり、AとBは互いに同一または異なり、DとEは互いに同一である。
【0034】
AとCが互いに同一であり、且つDとEが互いに同一である場合、前記構造式1で示す化合物は対称構造であり、非対称構造に対して、対称構造の構造式1で示す化合物は合成においてより便利で、製品の収率がより高く、生産コストの削減に役立つ。
【0035】
いくつかの実施例では、D、Eは、それぞれ独立して単結合またはC1~C5のヒドロカルビレン基から選択され、A、B、Cはそれぞれ独立して置換または非置換の環状炭酸エステル基、環状硫酸エステル基、環状亜硫酸エステル基、環状スルホン酸エステル基、環状スルホン基、環状スルホキシド基、環状カルボン酸エステル基または環状無水物基から選択される。好ましくは、A、BまたはCが置換される場合、置換基は、ハロゲン、炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基から選択され、より好ましくは、A、BまたはCが置換される場合、置換基は、ハロゲン、アルキル基またはハロゲン化アルキル基から選択される。
【0036】
例として、構造式1で示す化合物は以下の化合物から選択される1つまたは複数である。
【化22-1】
【化22-2】
【化22-3】
【化22-4】
【0037】
いくつかの実施例では、D、Eはそれぞれ独立して構造式4で示す基から選択され、
[構造式4]
【化23】
ここで、zは、1~4の整数から選択され、R
11とR
13は、それぞれ独立して単結合またはC1~C5のヒドロカルビレン基から選択され、R
12は、
【化24】
から選択される。
【0038】
A、B、Cはそれぞれ独立して置換または非置換の環状炭酸エステル基、環状硫酸エステル基、環状亜硫酸エステル基、環状スルホン酸エステル基、環状スルホン基、環状スルホキシド基、環状カルボン酸エステル基または環状無水物基から選択される。好ましくは、A、BまたはCが置換される場合、置換基は、ハロゲン、炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基から選択され、より好ましくは、A、BまたはCが置換される場合、置換基は、ハロゲン、アルキル基またはハロゲン化アルキル基から選択される。
【0039】
例として、構造式1で示す化合物は以下の化合物から選択される1つまたは複数である。
【化25-1】
【化25-2】
【化25-3】
【0040】
いくつかの実施例では、前記構造式1で示す化合物はさらに以下の化合物から選択される1つまたは複数であってもよい。
【化26】
【0041】
なお、以上は本発明が保護しようとする化合物の一部であるが、これらに限定されず、本発明を限定するものとして理解すべきではない。
【0042】
当業者は、構造式1の化合物の構造式を知っている場合、化学合成分野の周知技術によれば上記化合物の製造方法を知ることができる。例えば以下のとおりである。
【0043】
化合物1は以下の方法で製造することができ、
ソルビトール、炭酸ジメチル、メタノールアルカリ性物質触媒である水酸化カリウムおよびDMFなどの有機溶剤を反応容器内に入れ、加熱条件下で数時間反応させた後、一定量のシュウ酸を加えてpHを中性に調整し、ろ過、再結晶して中間生成物1を得て、次に中間生成物1、炭酸エステル、塩化チオニルなどを高温条件下でエステル化反応させて中間生成物2を得て、過ヨウ素酸ナトリウムなどの酸化剤を用いて中間生成物2を酸化させれば化合物1を得ることができる。
【0044】
化合物2は以下の方法で製造することができ、
ジアセトン-D-マンニトール、炭酸ジメチル、メタノール、炭酸カリウム及びジオキサンなどを加熱・攪拌で数時間反応させた後、一定量のシュウ酸を加えて溶液pHを中性に調整し、ろ過、濃縮した後に中間生成物3を得る。中間生成物3に適量の純水、炭酸エステル、酸などを加えて加水分解反応させて中間生成物4を得る。そして中間生成物4、塩化チオニル及び炭酸エステル溶剤を加熱条件下で調製して中間生成物5を得る。最後に過ヨウ素酸ナトリウムなどの酸化剤を用いて中間生成物5を酸化させれば化合物2を得ることができる。
【0045】
いくつかの実施例では、前記溶剤は、エーテル系溶剤、ニトリル系溶剤、炭酸エステル系溶剤及びカルボン酸エステル系溶剤のうちの1つまたは複数を含む。
【0046】
ここで、エーテル系溶剤は、環状エーテルまたは鎖状エーテルを含む。
【0047】
環状エーテルの例として、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,4-ジオキサン(DX)、クラウンエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-CH3-THF)、2-トリフルオロメチルテトラヒドロフラン(2-CF3-THF)のうちの1つまたは複数が挙げられる。
【0048】
鎖状エーテルの例として、ジメトキシメタン(DMM)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)のうちの1つまたは複数が挙げられる。
【0049】
ここで、ニトリル系溶剤のとして、アセトニトリル、グルタロニトリル、マロノニトリルのうちの1つまたは複数が挙げられる。
【0050】
ここで、炭酸エステル類溶剤は、環状炭酸エステルまたは鎖状炭酸エステルを含む。
【0051】
環状炭酸エステルの例として、炭酸エチレン(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ-ブチロラクトン(GBL)、ブチレンカーボネート(BC)のうちの1つまたは複数が挙げられる。
【0052】
鎖状炭酸エステルの例として、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸ジエチル(DEC)、メチルn-プロピルカーボネート、エチルn-プロピルカーボネート、炭酸ジプロピル(DPC)のうちの1つまたは複数が挙げられる。
【0053】
ここで、カルボン酸エステル類溶剤は、環状カルボン酸エステルまたは鎖状炭酸エステルを含む。
【0054】
環状カルボン酸エステルの例として、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトンのうちの1つまたは複数が挙げられる。
【0055】
鎖状炭酸エステルの例として、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(EP)、酢酸ブチル、プロピオン酸プロピル(PP)、プロピオン酸ブチルのうちの1つまたは複数が挙げられる。
【0056】
いくつかの実施例では、前記電解質塩は、リチウム塩から選択される。好ましい実施例では、前記電解質塩は、LiPF6 、LiBF4 、LiBOB、LiDFOB、LiN(SO2CF3)2 、LiN(SO2C2F5)2 、LiC(SO2CF3)3 、LiN(SO2F)2、LiClO4、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、Li2B10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩、LiAlCl4から選択される1つまたは複数である。
【0057】
いくつかの実施例では、前記非水電解液では、前記電解質塩の濃度は、0.1mol/L-8mol/Lである。
【0058】
好ましい実施例では、前記非水電解液では、前記電解質塩の濃度は、0.5mol/L-4mol/Lである。具体的に、前記電解質塩の濃度は、0.5mol/L、1mol/L、1.5mol/L、2mol/L、2.5mol/L、3mol/L、3.5mol/Lまたは4mol/Lであってもよい。
【0059】
いくつかの実施例では、前記非水電解液は、補助添加剤をさらに含み、前記補助添加剤は、不飽和環状炭酸エステル類化合物、フッ素化環状炭酸エステル類化合物、芳香族添加剤、含フッ素アニソール化合物、ジカルボン酸無水物、ジフルオロリン酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)のうちの少なくとも1つを含む。
【0060】
いくつかの実施例では、前記不飽和環状炭酸エステル類化合物は、炭酸ビニレン(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、4、5-ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、4、5-ジビニルエチレンカーボネートのうちの少なくとも1つを含む。
【0061】
前記非水電解液に不飽和環状炭酸エステル類化合物が含まれる場合、前記非水電解液の総質量を100%とした場合、不飽和環状炭酸エステル類化合物の含有量は、0.1-5%である。
【0062】
いくつかの実施例では、前記フッ素化環状炭酸エステル類化合物は、炭酸フルオロエチレン(FEC)、4、4-ジフルオロエチレンカーボネート、4、5-ジフルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4、5-ジフルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4、4-ジフルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)エチレンカーボネート、4-(ジフルオロメチル)エチレンカーボネート、4-(トリフルオロメチル)エチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-4-フルオロエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-5-フルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4、5-ジメチルエチレンカーボネート、4、5-ジフルオロ-4、5-ジメチルエチレンカーボネート、4、4-ジフルオロ-5、5-ジメチルエチレンカーボネートのうちの1つまたは複数を含む。
【0063】
前記非水電解液にフッ素化環状炭酸エステル類化合物が含まれる場合、前記非水電解液の総質量を100%とした場合、前記フッ素化環状炭酸エステル類化合物の含有量は、0.1-30%である。
【0064】
いくつかの実施例では、前記芳香族添加剤は、ビフェニル、アルキルビフェニル、トリフェニル、トリフェニルの一部の水素化物、シクロヘキシルベンゼン、tert-ブチルフェニル、tert-アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフランなどの芳香族化合物と、2-フルオロビフェニル、o-シクロヘキシルフルオロベンゼン、p-シクロヘキシルフルオロベンゼンのうちの1つまたは複数と、を含む。
【0065】
前記非水電解液に芳香族添加剤が含まれる場合、前記非水電解液の総質量を100%とした場合、前記芳香族添加剤の質量%含有量は、0.1-5%である。
【0066】
いくつかの実施例では、前記含フッ素アニソール化合物は、2、4-ジフルオロアニソール、2、5-ジフルオロアニソール、2、6-ジフルオロアニソールのうちの1つまたは複数を含む。前記非水電解液に含フッ素アニソール化合物が含まれる場合、前記非水電解液の総質量を100%とした場合、前記含フッ素アニソール化合物の質量%含有量は、0.1-5%である。
【0067】
いくつかの実施例では、前記ジカルボン酸無水物は、コハク酸、マレイン酸、フタル酸のうちの1つまたは複数を含む。前記非水電解液にジカルボン酸無水物が含まれる場合、前記非水電解液の総質量を100%とした場合、前記ジカルボン酸無水物の質量%含有量は、0.1-5%である。
【0068】
いくつかの実施例では、前記非水電解液にジフルオロリン酸リチウムが含まれる場合、前記非水電解液の総質量を100%とした場合、前記ジフルオロリン酸リチウムの質量%含有量は、0.1-2%である。
【0069】
いくつかの実施例では、前記非水電解液にリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)が含まれる場合、前記非水電解液の総質量を100%とした場合、前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)の質量%含有量は、0.1-5%である。
【0070】
いくつかの実施例では、前記補助添加剤は、1-メチル-2-ピロリドン、1-メチル-2-ピペリドン、3-メチル-2-オキサゾリジノン、1、3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルスクシンイミドなどの窒素酸化物と、ヘプタン、オクタン、シクロヘプタンなどの炭化水素化合物と、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどの含フッ素芳香族化合物などと、をさらに含む。
【0071】
なお、特別な説明がない限り、一般に、前記補助添加剤内のいずれか1つの選択可能な物質の、非水電解液内の含有量の範囲は、質量%で10%以下であり、好ましくは、含有量は、質量%で0.1-5%である。
【0072】
好ましい実施例では、前記正極活性材料は、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.7Co0.1Mn0.2O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、LiNi0.6Mn0.4O2及びLiNi0.8Mn0.2O2から選択される1つまたは複数である。
【0073】
いくつかの実施例では、前記正極は、正極集電体をさらに含み、前記正極材料層は、前記正極集電体の表面を覆う。前記正極集電体は、電子を伝達可能な金属材料から選択され、好ましくは、前記正極集電体は、Al、Ni、ステンレス鋼のうちの1つまたは複数であり、より好ましい実施例では、前記正極集電体は、アルミホイルから選択される。
【0074】
いくつかの実施例では、前記正極材料層は、正極結着剤と正極導電剤をさらに含み、前記正極活性材料、前記正極結着剤及び前記正極導電剤を混合して前記正極材料層を得る。
【0075】
前記正極結着剤は、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン-トリクロロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン-フッ化ビニルの共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレンの共重合体、熱可塑性ポリイミド、ポリエチレン及ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂、アクリル樹脂、およびスチレンブタジエンゴムのうちの1つまたは複数を含む。
【0076】
前記正極導電剤は、導電性カーボンブラック、導電性カーボンボール、導電性グラファイト、導電性炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンまたは還元酸化グラフェンのうちの1つまたは複数を含む。
【0077】
いくつかの実施例では、前記負極は、負極材料層を含み、前記負極材料層は、負極活性材料を含み、前記負極活性材料は、ケイ素系負極、炭素系負極、スズ系負極、リチウム系負極のうちの1つまたは複数を含む。ただし、前記ケイ素系負極は、シリコン材料、シリコン酸化物、シリコン炭素複合材料及びシリコン合金材料のうちの1つまたは複数を含み、前記炭素系負極は、グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン、グラフェン、メソカーボンマイクロビーズのうちの1つまたは複数を含み、前記スズ系負極は、スズ、スズ炭素、スズ酸素、スズ金属化合物のうちの1つまたは複数を含み、前記リチウム系負極は、金属リチウムまたはリチウム合金のうちの1つまたは複数を含む。前記リチウム合金は、具体的に、リチウムシリコン合金、リチウムナトリウム合金、チウムカリウム合金、リチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金及びリチウムインジウム合金のうちの少なくとも1つであってもよい。
【0078】
いくつかの実施例では、前記負極は、負極集電体をさらに含み、前記負極材料層は、前記負極集電体の表面を覆う。前記負極集電体は、電子を伝達できる金属材料から選択され、好ましくは、前記負極集電体は、Cu、Ni、ステンレス鋼のうちの1つまたは複数を含み、より好ましい実施例では、前記負極集電体は、銅箔から選択される。
【0079】
いくつかの実施例では、前記負極材料層は、負極結着剤と負極導電剤をさらに含み、前記負極活性材料、前記負極結着剤及び前記負極導電剤を混合して前記負極材料層を得る。
【0080】
前記負極結着剤は、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン-トリクロロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン-フッ化ビニルの共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレンの共重合体、熱可塑性ポリイミド、ポリエチレン及ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂、アクリル樹脂、およびスチレンブタジエンゴムのうちの1つまたは複数を含む。
【0081】
前記負極導電剤は、導電性カーボンブラック、導電性カーボンボール、導電性グラファイト、導電性炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンまたは還元酸化グラフェンのうちの1つまたは複数を含む。
【0082】
いくつかの実施例では、前記電池は、セパレータをさらに含み、前記セパレータは、前記正極と前記負極との間に位置する。
【0083】
前記セパレータは、従来のセパレータであってもよく、セラミックセパレータ、ポリマーセパレータ、不織布、無機-有機複合セパレータなどであってもよく、単層PP(ポリプロピレン)、単層PE(ポリエチレン)、二層PP/PE、二層PP/PP及び三層PP/PE/PPなどのセパレータを含むが、これらに限定されない。
【0084】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
【0085】
一、実施例1~42と比較例1~9
【0086】
1)電解液の調製
炭酸エチレン(EC)、炭酸ジエチル(DEC)および炭酸エチルメチル(EMC)をEC:DEC:EMC=1:1:1という質量比で混合し、その後、モル濃度が1mol/Lになるまで六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を加えて、そして以下の各表にしたがって各添加剤を加える。添加剤の使用量は、電解液の総質量に対するパーセンテージで表す。
【0087】
2)正極板の調製
93:4:3という質量比に従って正極活性材料、導電性カーボンブラックSuper-Pおよび結着剤ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を混合し、その後、それらのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)内で分散させ、正極スラリーを得る。正極活性材料は、以下の各表に示すとおりであり、正極スラリーを均一にアルミホイルの両面に塗布し、乾燥、圧延、真空乾燥し、超音波溶接機でアルミニウム製リード線を溶接した後に正極板を得て、極板の厚さは120-150μmである。
【0088】
3)負極板の調製
94:1:2.5:2.5の質量比に従って負極活性材料グラファイト、導電性カーボンブラックSuper-P、結着剤であるスチレン・ブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)を混合して、それらの脱イオン水内で分散させて、負極スラリーを得る。負極スラリーを銅箔の両面に塗布し、乾燥、圧延、真空乾燥し、超音波溶接機でニッケル製リード線を溶接した後に負極板を得て、極板の厚さは120-150μmである。
【0089】
4)セルの調製
正極板と負極板との間に厚さ20μmの三層セパレータを配置し、その後、正極板、負極板およびセパレータで構成されるサンドイッチ構造を巻き取り、巻取体を扁平化してアルミホイル包装袋に入れ、75℃で48h真空ベーキング処理して、注液されるべきセルを得る。
【0090】
5)セルの注液と化成
水と酸素の含有量がそれぞれ20ppm、50ppm以下であるグローブボックスでは、上記調製された電解液をセル内に注入し、真空包装して、45℃で24h放置する。
その後、以下のステップに従って初充電の通常の化成を行う。0.05Cで180min定電流充電し、0.1Cで180min定電流充電し、0.2Cで120min定電流充電し、45℃で48hエージング処理した後、二次真空シールし、その後、さらに0.2Cの電流で4.4V(LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2/AG)または4.2V(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2/AG)または4.2V(LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2/AG)または4.25V(LiNi0.7Co0.1Mn0.2O2/AG)または4.35V(LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2/AG)に定電流充電し、0.2Cの電流で3.0Vに定電流放電する。
【0091】
二、性能テスト
実施例1~42と比較例1~9の調製で得られたリチウムイオン電池に対して以下の性能テストを行う。
【0092】
高温サイクル特性テスト
調製されたリチウムイオン電池を、45℃に恒温化した乾燥器に入れ、1Cの電流で4.4V(LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2/AG)または4.2V(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2/AG)または4.2V(LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2/AG)または4.25V(LiNi0.7Co0.1Mn0.2O2/AG)または4.35V(LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2/AG)に定電流充電し、そして電流が0.05Cに低下するまで定電流定電圧充電し、その後、1Cの電流で3.0Vに定電流放電し、このように繰り返して、第1回の放電容量と最終回の放電容量を記録し、電池の初期電池体積および1000回のサイクル後の体積を測定する。
【0093】
下の式に従って高温サイクルの容量維持率を計算する。
容量維持率=最終回の放電容量/第1回の放電容量×100%。
【0094】
以下の式に従って高温サイクルの体積膨張率を計算する。
体積膨張率(%)=(サイクル後の電池体積-初期電池体積)/初期電池体積×100%。
【0095】
以下のデータテストに用いられる電池は、各表に記載の相違点を除いて他の条件が同じである。
【0096】
1、実施例1~10と比較例1~4で得られたテスト結果を表1に記入する。
【表1】
【0097】
表1のテスト結果から分かるように、正極活性材料がLiNi0.5Co0.2Mn0.3O2である場合、実施例1-10と比較例1を比較すると、構造式1で示す化合物の添加により、高温サイクルでのガス発生が大幅に抑制され、構造式1で示す化合物の含有量が1%~2%である時、電池の高温サイクル体積膨張率が最小で7.2%-8.2%であり、且つこの時に最適な高温サイクル容量維持率75.2%-77.2%を有することが分かり、実施例1-10と比較例2-3に比べてと、構造式1で示す化合物の含有量が0.01%未満または5%を超える時、電池のサイクルガス発生量が著しく上昇し、且つ高温サイクル特性が著しく低下し、これにより、高ニッケル三元系リチウムイオン電池において、構造式1で示す化合物の合理的な添加量が0.01%-5%であり、多すぎても少なすぎても電池性能の向上に不利であることを示したことが分かった。
【0098】
2、実施例7、11~14と比較例1、4~9で得られたテスト結果を表2に記入する。
【表2】
【0099】
実施例7、11-14と比較例1、4-9を比較すると、正極活性材料のニッケル含有量が低い場合、比較例5内のサイクル体積膨張率が依然として48.4%であり、比較例4との改善幅度が、実施例7と比較例1との改善幅度よりも遥かに小さく、実施例11-14と比較例6-9との改善幅よりも明らかに小さく、比較例5の低ニッケル電池システムのサイクル性能が明らかに向上することもなく、即ち、構造式1で示す化合物の電池性能に対する向上作用が正極活性材料内のニッケル含有量と顕著に相関し、正極活性材料内のニッケル含有量が一定値を上回るこそ、構造式1で示す化合物が良好な相乗作用を発揮できることが分かった。
【0100】
3、実施例15~24と比較例6で得られたテスト結果を表3に記入する。
【表3】
【0101】
表3のテストデータから分かるように、正極活性材料がLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2である場合、実施例15-24と比較例6を比較すると、添加構造式1で示す化合物がいずれも電池のサイクルガス発生を著しく削減し且つ高温サイクル特性を向上させることができ、構造式1で示す異なる化合物を用いて電池の高温サイクル特性に対する様々な程度の向上が見られることが分かった。
【0102】
4、実施例25~31と比較例7で得られたテスト結果を表4に記入する。
【表4】
【0103】
表4のテストデータから分かるように、正極活性材料がLiNi0.7Co0.1Mn0.2O2である場合、実施例25-30と比較例7を比較すると、構造式1で示す化合物を加えることで電池のサイクルガス発生を著しく削減し且つ高温サイクル特性を改善することができ、これとともに、構造式1で示す異なる化合物を用いて電池の高温サイクル特性に対する様々な程度の向上が見られることが分かった。
【0104】
5、実施例32~35と比較例8で得られたテスト結果を表5に記入する。
【表5】
【0105】
表5のテストデータから分かるように、正極活性材料がLiNi0.8Co0.15Al0.05O2である時、実施例32-35と比較例8を比較すると、構造式1で示す異なる化合物の添加がいずれも電池のサイクルガス発生を削減することができ、高温サイクル容量維持率も著しく向上したことが分かった。
【0106】
6、実施例36~42と比較例9で得られたテスト結果を表6に記入する。
【表6】
【0107】
表6のテストデータから分かるように、正極活性材料がLiNi0.8Co0.1Al0.1O2である場合、実施例36-42と比較例9を比較すると、構造式1で示す異なる化合物の添加がいずれも電池のサイクルガス発生を著しく削減することができ、これとともに高温サイクル容量維持率も明らかに向上したが分かった。
【0108】
7、実施例7と比較例1で得られたリチウムイオン電池を45℃に恒温化した乾燥器に配置し、1Cの電流で4.4V(LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2/AG)に定電流充電し、そして電流が0.05Cに低下するまで定電流定電圧充電し、その後、1Cの電流で3.0Vに定電流放電し、このように1000回繰り返すと、リチウムイオン電池を解体し、正極を取り出して透過型電子顕微鏡で観察し、実施例7の正極TEM図は
図1に示すとおりであり、比較例1の正極TEM図は
図2に示すとおりである。
【0109】
図1と
図2の透過型電子顕微鏡図を比較し、電解液には、構造式1で示す化合物が含まれない場合、比較例1のサイクル後の正極材料の格子縞が明らかに乱され、即ち正極材料の構造が変化したことが観察され、表1の電池性能データから、比較例1のサイクル後の体積膨張率が57.4%であることが分かった。これに対し、
図2の実施例7の正極材料の格子縞が秩序正しく分布しており、且つ実施例7のサイクル後の体積膨張率が7.2%のみであり、構造式1で示す添加剤の添加により正極材料を確かに保護し且つサイクル過程でのガス発生を抑制できることを実証した。
【0110】
以上は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を制限するものではない。本発明の精神と原則を逸脱しない限り、あらゆる修正、同等の入れ替えと改善などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項7
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項7】
AとCは互いに同一であり、AとBは互いに同一または異なり、DとEは互いに同一である、
ことを特徴とする請求項
1に記載のリチウムイオン電池。
【国際調査報告】