(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】QスイッチCO2レーザ
(51)【国際特許分類】
H01S 3/1123 20230101AFI20231227BHJP
H01S 3/106 20060101ALI20231227BHJP
H01S 3/034 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
H01S3/1123
H01S3/106
H01S3/034
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537310
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2023-06-19
(86)【国際出願番号】 EP2021086779
(87)【国際公開番号】W WO2022136267
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520177884
【氏名又は名称】アルテック アンゲヴァンテ レーザーリヒト テヒノロギー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】ライアン ダニエル ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】アハーン ライアン アール
【テーマコード(参考)】
5F071
5F172
【Fターム(参考)】
5F071AA05
5F071HH07
5F172AD05
5F172EE22
5F172NN13
5F172NQ23
5F172NQ32
5F172ZZ01
5F172ZZ03
(57)【要約】
実質的に周期的なパターンの特徴部を有する周波数選択構造を含む光学素子を備えた、赤外電磁放射を生成するように構成されたCO
2レーザ。光学素子の周波数応答は、信号の受信時に変化するように構成される。CO
2レーザのQ値は、信号の受信時に変化する。レーザマーキングシステムは、CO
2レーザを組み込むことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線電磁放射を生成するように構成されたCO
2レーザであって、
実質的に周期的なパターンの特徴部を有する周波数選択構造を含む光学素子であって、光学素子の周波数応答が、信号の受信時に変化するように構成されている、光学素子を備え、
前記CO
2レーザのQ値は、前記信号の受信時に変化する、CO
2レーザ。
【請求項2】
CO
2利得媒質を含むレーザキャビティと、
前記CO
2利得媒質を励起して赤外線電磁放射を生成するように構成された高周波励起源と、
を備える、請求項1に記載のCO
2レーザ。
【請求項3】
前記光学素子に前記信号を提供して前記CO
2レーザをQスイッチし、
別の制御信号を前記高周波励起源に提供して前記CO
2利得媒質を励起する、
ように構成された制御システムを備える、請求項2に記載のCO
2レーザ。
【請求項4】
前記光学素子が、前記CO
2レーザのリアミラーの一部を形成する、請求項1~3の何れか1項に記載のCO
2レーザ。
【請求項5】
フォールドミラーを有するフォールドキャビティを備え、前記光学素子は、前記CO
2レーザの前記フォールドミラーの一部を形成する、請求項1~3の何れか1項に記載のCO
2レーザ。
【請求項6】
前記光学素子が、シリコン又はGaAsを含む、請求項4又は5に記載のCO
2レーザ。
【請求項7】
前記光学素子が、前記CO
2レーザの出力カプラーの一部を形成する、請求項1~3の何れか1項に記載のCO
2レーザ。
【請求項8】
前記光学素子が、前記CO
2レーザのレーザキャビティ内に配置される受動光学構成要素の一部を形成する、請求項1~3の何れか1項に記載のCO
2レーザ。
【請求項9】
前記光学素子が、ZnSe、GaAs、Ge又はZnSを含む、請求項7又は8に記載のCO
2レーザ。
【請求項10】
前記光学素子が、グラフェンを含む、請求項1~9の何れか1項に記載のCO
2レーザ。
【請求項11】
前記光学素子が、前記信号の受信時に位相が変化するように構成された相変化材料を含む、請求項1~9の何れか1項に記載のCO
2レーザ。
【請求項12】
前記相変化材料は、VO
2を含む、請求項11に記載のCO
2レーザ。
【請求項13】
前記光学素子が、半導体を含む、請求項1~9の何れか1項に記載のCO
2レーザ。
【請求項14】
前記半導体は、GaAs、Si、Geの内の少なくとも1つを含む、請求項13に記載のCO
2レーザ。
【請求項15】
前記光学素子が液晶を含み、前記液晶の光学特性が前記信号の受信時に変化するように構成されている、請求項1~9の何れか1項に記載のCO
2レーザ。
【請求項16】
前記信号がバイアス電圧を含む、請求項10~15の何れか1項に記載のCO
2レーザ。
【請求項17】
前記信号がレーザパルスを含む、請求項10~15の何れか1項に記載のCO
2レーザ。
【請求項18】
前記光学素子の反射率、透過率及び/又は吸収率が、前記信号の受信時に、赤外電磁波の周波数範囲にわたって変化する、請求項1~17の何れか1項に記載のCO
2レーザ。
【請求項19】
前記光学素子が、前記周波数選択構造に動作可能に結合されたスイッチング構成要素を含む、請求項1~18の何れか1項に記載のCO
2レーザ。
【請求項20】
前記光学素子が、前記スイッチング構成要素に動作可能に結合され、前記信号を受信して前記信号を前記スイッチング構成要素に送信するように構成された信号伝送構成要素を含む、請求項19に記載のCO
2レーザ。
【請求項21】
前記光学素子は、前記信号の受信時に、前記実質的に周期的なパターンの特徴部の周期性及び/又は幾何形状を変更するように構成された変形可能な材料を含む、請求項1~20の何れか1項に記載のCO
2レーザ。
【請求項22】
前記光学素子の屈折率は、前記信号の受信時に変化するように構成されている、請求項1~21の何れか1項に記載のCO
2レーザ。
【請求項23】
前記光学素子の誘電率及び/又は透磁率が、信号の受信時に変化するように構成されている、請求項1~22の何れか1項に記載の何れかに記載のCO
2レーザ。
【請求項24】
前記光学素子の導電率及び抵抗率が、前記信号の受信時に変化するように構成されている、請求項1~23の何れか1項に記載のCO
2レーザ。
【請求項25】
前記実質的に周期的なパターンの特徴部は、前記光学素子の周波数応答を少なくとも部分的に決定するように構成された幾何学的特徴部のアレイを含む、請求項1~24の何れか1項に記載のCO
2レーザ。
【請求項26】
前記アレイは、前記光学素子の周波数応答を少なくとも部分的に決定するように構成されたチューニング要素を含む、請求項25に記載のCO
2レーザ。
【請求項27】
前記実質的に周期的なパターンの特徴部は、偏光子として動作するように構成されている、請求項1~26の何れか1項に記載のCO
2レーザ。
【請求項28】
前記光学素子がメタマテリアルを含む、請求項1~27の何れか1項に記載のCO
2レーザ。
【請求項29】
前記周波数選択構造が、前記光学素子の周波数応答を少なくとも部分的に決定するように構成された複数の周波数選択層を含む、請求項1~28の何れか1項に記載のCO
2レーザ。
【請求項30】
前記赤外線電磁放射は、製品をマーキングするように構成される、請求項1~29の何れか1項に記載のCO
2レーザ。
【請求項31】
前記CO
2レーザは、短パルスの赤外電磁放射を生成するように構成されている、請求項1~30の何れか1項に記載のCO
2レーザ。
【請求項32】
前記信号は、
前記光学素子のスイッチング構成要素のバイアスレベルを制御し、
前記CO
2レーザのレーザ出力コマンドと前記CO
2レーザのQスイッチング開始の間のタイミングを制御する、
ように構成されている、請求項1~31の何れか1項に記載のCO
2レーザ。
【請求項33】
前記赤外線電磁波が、工業プロセスの一部を形成する、請求項1~32の何れか1項に記載のCO
2レーザ。
【請求項34】
前記赤外線電磁波が、医療プロセスの一部を形成する、請求項1~33の何れか1項に記載のCO
2レーザ。
【請求項35】
請求項1~33の何れか1項に記載の前記CO
2レーザを備えた、標的をマーキングするためのレーザマーキングシステム。
【請求項36】
赤外線電磁放射を生成するためにCO
2レーザをQスイッチする方法であって、
前記CO
2レーザのCO
2利得媒質を励起するステップと、
前記CO
2レーザの光学素子上の実質的に周期的なパターンの特徴部を有する周波数選択構造の周波数応答を変化させ、これにより赤外電磁放射のパルスを生成するための信号を生成するステップと、
を含む、方法。
【請求項37】
前記赤外電磁放射は、製品をマーキングするように構成されている、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
短パルスの赤外電磁放射を生成するステップを含む、請求項36又は請求項37に記載の方法。
【請求項39】
赤外線電磁放射で標的をマーキングする方法であって、
CO
2レーザのCO
2利得媒質を励起するステップと、
前記CO
2レーザの光学素子上の実質的に周期的なパターンの特徴部を有する周波数選択構造の周波数応答を変化させ、前記CO
2レーザをQスイッチするための信号を生成するステップと、を含み、これにより前記赤外電磁放射のパルスを生成し、
前記赤外電磁放射のパルスを前記標的に向けるステップと、
を含む、方法。
【請求項40】
短パルスの赤外電磁放射を生成するステップを含む、請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の態様及び実施構成は、一般に、周期的なパターンの特徴部を有する周波数選択構造を含む可調光学素子に向けられる。可調光学素子の周波数応答は制御可能であり、信号の受信時に変化するように構成される。可調光学素子は、様々な光学デバイスに組み込まれ、光学デバイスを少なくとも部分的に制御することができる。例えば、可調光学素子は、レーザ(例えば二酸化炭素(CO2)レーザ)のミラー又は出力カプラーとして組み込まれる可能性がある。可調光学素子は、信号の受信時にレーザをQスイッチするのに使用することができる。
【背景技術】
【0002】
レーザは、例えば、エッチング、彫刻、機械加工、切断、及び/又は溶接によってワークピースに対する工程を実行するために、様々な工業生産ラインで使用される。レーザマーキングシステムを利用して、例えば、画像、識別番号、有効期限、及び/又はバーコードなどのマーキングを様々な製品の表面にインプリントすることができる。材料のマーキングは、アブレーション(すなわち材料の除去)、色の変化、又は材料の表面テクスチャの変化の影響を受ける可能性がある。これらのプロセス全てによるマーキングは、レーザビームにより照射される材料の温度が、影響を受ける物理的プロセスの閾値を超えたときに生じる。材料の物理的特性によって閾値温度が決まる。重要な材料特性は、レーザ照射の波長における吸収率、熱拡散率、及び熱伝導率である。従って、どの材料についても、所望のマーキングプロセスに影響を与える閾値温度に達するのに必要なレーザエネルギー密度(単位J/mm2で表すことができる)に対して固有の値が存在する。特定の材料をマーキングするのに必要なレーザエネルギー密度は、必要なレーザタイプ(例えば、CO2レーザ)及びビームパラメータ(例えば、スポットサイズ、パワーなど)を少なくとも部分的に決定する。レーザエネルギー密度は、レーザのピークパワーにレーザのオンタイム(レーザビームが材料に入射する時間)を乗算し、レーザビームが照射する材料の面積で除算したもの(すなわち、(P*t)/(スポットサイズ))と理解することができる。レーザの光学設計により、スポットサイズが決定される。スポットサイズは、約50μm以上の直径を含むことができる。スポットサイズは、約700μm以下の直径を含むことができる。
【0003】
経時的にレーザによって材料に加えられるエネルギー又はパワーは、用途(例えば、マーキングされる材料、材料にマーキングするために利用可能な時間、マークの複雑さなど)によって少なくとも部分的に決定される。例えば、典型的な紙ベースのパッケージ材料は、低パワー(例えば、10~30ワット)の連続波レーザを使用してマーキングすることができる。別の例として、金属は一般に、金属の比較的急速な熱放散を克服し、所望のマークコントラストを保持するために、短いオンタイム(例えば、約1μs以下)の高ピークパワー(例えば、約1kW以上)レーザを必要とする。更なる例として、HDPEなどの一部のプラスチックは、読み取り可能なマーキングに必要な温度に到達するために高いピークパワーを必要とする。
【0004】
連続波(一定出力)モードで動作するレーザで、金属ワークピースに所望の変化を及ぼすのに必要な量のパワーを有するレーザビームを生成することは、実現困難な可能性がある。Qスイッチングとして知られる技術を利用する一部のレーザは、連続波モードで動作する同じレーザによって生成されるよりも遙かに高いピークパワーの光パルスを含むパルス出力ビームを生成させることができる。Qスイッチは一般に知られているが、特定の波長範囲(例えば、赤外波長)で動作するレーザ用に大規模製造できるコンパクトで比較的安価なQスイッチに対する必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【0005】
本開示の第1の態様によれば、実質的に周期的なパターンの特徴部を有する周波数選択構造を含む光学素子が提供され、光学素子の周波数応答は、信号の受信時に変化するように構成される。
【0006】
光学素子は、有利には、ユーザが、光学素子を含む光学系の周波数応答を制御することを可能にする。例えば、光学素子を用いて、所与の周波数範囲内の電磁放射をより多く又はより少なく反射、伝送及び/又は吸収するように周波数応答を変化させることによってレーザをQスイッチすることができる。光学素子は、有利には、既知のQスイッチよりも低いフォームファクタを有するコンパクトなQスイッチングシステムを可能にする。光学素子は、有利には、既知のQスイッチと比較して改善されたエネルギー効率を有する。光学素子は、既知のQスイッチよりも安価に製造される。
【0007】
実質的に周期的なパターンの特徴部は、約10%未満で変化する周期性を有することができる。実質的に周期的なパターンの特徴部は、周期的パターンの特徴部と称することができる。
【0008】
信号は、コントローラによって生成することができる。信号は、熱、電気、及び/又は光エネルギーを含むことができる。信号は、印加された電磁場を含むことができる。信号は、電磁放射線を含むことができる。信号は、印加された電圧又はバイアスを含むことができる。
【0009】
周波数選択構造は、入射電磁放射線の周波数範囲に対して帯域通過光学フィルタ又は帯域阻止光学フィルタとして作用することができる。周波数選択構造、及び/又は光学素子全体としての帯域通過又は帯域阻止の動作は、以前は通過していた電磁放射線の周波数範囲が現在は拒絶されるように、信号の受信時に変化することができ、又はその逆も同様とすることができる。幾つかの実施形態では、周波数選択構造は、周波数選択面を含むことができる。
【0010】
光学素子の反射率、透過率及び/又は吸収率は、信号の受信時に電磁放射の周波数の範囲にわたって変化することができる。
【0011】
光学素子の反射率、透過率及び/又は吸収率をコマンドで変更することにより、光学素子をレーザのQスイッチとして機能させることができる。例えば、光学素子の反射率を第1の比較的低い値(例えば約50%未満)に設定し、レーザの発振キャビティにおいて比較的大きな損失を誘起する可能性がある。レーザのパルス幅(例えば、約100μs以下)に基づいて短い期間で反射率を第2の比較的高い値(例えば、約99%)に変更すると、レーザ発振キャビティにおける損失が減少してレーザ発振が発生可能になり、これによってレーザをQスイッチすることができる。第2の値は、最適値とすることができる。最適値は、使用されるレーザの種類、レーザによって生成されるパルスの所望の特性、レーザによって生成されるパルスの用途等に依存することができる。
【0012】
電磁放射の周波数の範囲は、赤外線放射を含むことができる。
【0013】
CO2レーザなどの赤外線レーザは、生産ラインでの製品のマーキングなど、様々な用途がある。一部のプラスチックなどの一部の材料は、マーキングするために、赤外線放射の比較的高出力パルスを必要とする場合がある。光学素子は、赤外レーザをQスイッチするのに使用され、これにより有利にはより多くの材料のマーキングを可能にすることができる。光学素子は、赤外線に対して制御可能な周波数応答を有するように構成することができる。光学素子は、約8μm以上の波長に対して制御可能な周波数応答を有するように構成することができる。光学素子は、約15μm以下の波長に対して制御可能な周波数応答を有するように構成することができる。光学素子は、約9.3μm、約9.6μm、約10.2μm、及び約10.6μmを中心とする1又は2以上の波長帯に対して制御可能な周波数応答を有するように構成することができる。
【0014】
本開示の光学素子は、紫外線(UV)レーザ及び/又は可視光レーザなどの他のタイプのレーザをQスイッチするために使用することができる。
【0015】
光学素子は、周波数選択構造に動作可能に結合されたスイッチング構成要素を含むことができる。
【0016】
スイッチング構成要素は、光学素子上の層の形態をとることができる。スイッチング構成要素は、周波数選択構造の周期的パターンの特徴部を少なくとも部分的に囲むことができる。周波数選択構造は、スイッチング層に埋め込まれてもよいし、そうでなければ、スイッチング層によって囲まれてもよい。スイッチング構成要素は、周波数選択構造に接着することができる。例えば、周波数選択構造は、アクティブスイッチング層上に設けられた(例えば、エッチング又は配置された)周期的パターンの特徴部で構成することができる。周期的パターンの特徴部は、金属を含むことができる。スイッチング構成要素は、半金属(例えば、グラフェン)を含むことができる。スイッチング構成要素は、電荷キャリア密度の調整可能な値を有する半導体(例えば、GaAs)を含むことができる。GaAs)とすることができる。スイッチング部材は、液晶(例えば、E7、Merck KGaA(ドイツ、Darmstadtに本拠を置く会社)が提供する液晶)を含むことができる。。スイッチング構成要素は、相変化材料(例えば、二酸化バナジウム)を含むことができる。
【0017】
光学素子は、スイッチング構成要素に動作可能に結合され、信号を受信し且つ信号をスイッチング構成要素に送信するように構成された信号伝送構成要素を含むことができる。
【0018】
信号伝送構成要素は、酸化インジウムスズ、金などのパターン化金属、パターン化シリコン、ガリウムヒ素及び/又は別の半導体材料を含むことができる。光学素子は、信号の受信時に周期的パターンの特徴部の周期性及び/又は幾何形状を変更するように構成された変形可能な材料を含むことができる。
【0019】
変形可能な材料は、信号に応答するように構成されたアクチュエータの一部を形成することができる。信号は、変形可能な材料の変形を引き起こすように構成された電界及び/又は磁界を生成又は変化させてもよい。
【0020】
変形可能な材料は、弾性材料とすることができる。これにより、有利には、弾性材料は、これに作用する力を取り除くと元の状態に戻るので、光学素子の周波数応答への変化を反転させるのに必要なエネルギーを低減することができる。
【0021】
変形可能な材料は、応力、歪み、及び/又は弾性の特性が、熱的、機械的、及び/又は電気的手段を介した刺激の適用時に材料の形状を変化させるために使用される、幅広いクラスの材料から形成することができる。適切な変形可能な材料としては、圧電材料、形状記憶金属(例えば、Ni-Ti合金)、形状記憶ポリマー、ゴムが挙げられる。
【0022】
周期的パターンの特徴部の幾何形状は、周期的パターンの特徴部の形状、サイズ、及び相対的配置を含むことができる。
【0023】
光学素子の屈折率は、信号の受信時に変化するように構成することができる。
【0024】
光学素子の誘電率及び/又は透磁率は、信号の受信時に変化するように構成することができる。
【0025】
光学素子の導電率及び抵抗率は、信号の受信時に変化するように構成することができる。
【0026】
周期的パターンの特徴部は、光学素子の周波数応答を少なくとも部分的に決定するように構成された幾何学的特徴部のアレイを含むことができる。
【0027】
光学素子の周波数応答は、周期的パターンの特徴部の周期性及び/又は幾何学的特徴に少なくとも部分的に依存することができる。例えば、特徴部は、スロット、ダイポール、クロス、リング、スプリットリング等を含むことができる。相補的な特徴部は、光学素子の周波数応答に対して相補的な効果をもたらす可能性がある。例えば、スロットは、放射線の波長範囲の透過率を増加させることによって通過帯域フィルタとして作用し、一方、双極子は、放射線の波長範囲の透過率を減少させることによって阻止帯域フィルタとして作用することができる。周波数選択構造は、スロット、ダイポール、クロス、リング、スプリットリング及び/又は他の何れかの幾何学的特徴部のグリッドアレイを含むことができる。
【0028】
周期的パターンの特徴部の周期性及び/又は幾何学は、光学素子に入射する光の波長に少なくとも依存して選択することができる。CO2レーザによって生成される赤外電磁放射の場合、特徴部は、例えば、約1μm又はそれ以上の周期性を有することができる。CO2レーザによる赤外電磁波の場合、特徴部は、例えば、約10μm以下の周期性を有することができる。CO2レーザによる赤外電磁放射の場合、特徴部は、例えば、約0.3μm以上の幅及び/又は長さを有することができる。CO2レーザによって生成された赤外電磁放射の場合、特徴部は、例えば、約3μm以下の幅及び/又は長さを有することができる。
【0029】
例えばスプリットリング共振器などの幾つかの特徴部は、光学素子の周波数応答内にある電磁放射の波長の範囲を減少させることができる。これは、有利には、高度に標的化された周波数応答を提供することができる。すなわち、調整するために比較的低エネルギーの信号のみを必要とする狭い通過帯域又は拒絶帯域である。
【0030】
特徴部は、付加的プロセスを用いて基板上の材料(例えば金属)から作ることができ、及び/又は相補的特徴部は、還元的プロセス(すなわち、材料を除去すること)を用いて作ることができる。例えば、スロットとダイポールは、相補的な特徴部であると考えることができる。周期的パターンの特徴部は、何れの方法(すなわち、付加的プロセス及び/又は還元的プロセス)でも作製可能である。特徴部は、マスターモールドを使用して、インプリント技術、例えばナノインプリント技術を使用して作製することができる。
【0031】
アレイは、光学素子の周波数応答を少なくとも部分的に決定するように構成されたチューニング要素を含むことができる。
【0032】
チューニング要素は、光学素子の周波数応答を調整するために周波数選択構造の幾何学的形状を変更するように構成された1又は2以上の幾何学的特徴部(例えば、バー)を含むことができる。
【0033】
周期的パターンの特徴部は、偏光子として作用するように構成することができる。
【0034】
周波数選択構造は、周期的な表面特徴部の幾何学的形状に応じて、偏光感受性又は不感性とすることができる。これは、偏光依存的な効果を介してレーザを制御する異なる方法を提供する。偏光に敏感な周波数選択構造を有することは、レーザによって発生する放射が偏光されるので、特定のアプリケーション(例えば、CO2レーザ)にとって特に有利である。
【0035】
光学素子は、メタマテリアルを含むことができる。
【0036】
メタマテリアルは、周波数選択構造の一部を形成することができる。メタマテリアルは、金属と誘電体を含むことができる。メタマテリアルは、プラズモニックメタマテリアルとすることができる。すなわち、メタマテリアルは、プラズモン共鳴特性を有することができる。メタマテリアルは、赤外波長の電磁放射に応答するように構成することができる。メタマテリアルを構成する特徴部の配列の物理的な幾何形状を設計し、同時に、所望の切り替え可能な電磁気特性に基づいてこれらの幾何学的特徴部を囲む材料を選択することによって、メタマテリアルに基づくレーザQスイッチを作成することができる。メタマテリアルは、例えば、ZnSeのベース上に形成されたグラフェンを含む周波数選択構造で構成することができる。
【0037】
光学素子は、半導体を含むことができる。半導体の電荷キャリア密度は、信号の受信時に変化するように構成することができる。
【0038】
半導体は、Si、GaAs、Ge、InP、GaAlAs及び/又は多くの他のものを含むことができる。半導体の光学的及び電気的特性は、材料の格子構造における不純物の導入によるドーピングによって制御することができる。リソグラフィ及び蒸着技術により、基板上にパターン及び特徴部を生成し、様々な機能を実行させることができる。周波数選択構造及びスイッチング構成要素を1つのデバイスに組み込むことで、モノリシックQスイッチを作製することができる。半導体ベースの設計を用いる利点は、低損失で高効率な金属を使用しない構造を作製できることである。半導体の電荷キャリア密度を変化させると、周波数選択構造の屈折率が変化し、これにより光学素子の透過率、反射率及び/又は吸収率が変化することができる。光学素子は、信号の受信時に位相を変化させるように構成された相変化材料を含むことができる。
【0039】
「相変化材料」という用語は、外部刺激に晒されたときに物理的変化を起こす広範囲の化合物を対象とする。相変化材料は、ランダムアクセスメモリデバイス、CD及びDVD、並びにスマートウィンドウなど、幅広い種類の用途で使用されている。ランダムアクセスメモリデバイスで使用されるカルコゲニドガラスは、非晶質状態と結晶状態の間で変化する。このような移行の際には、電気的刺激に反応して抵抗率が微視的レベルで変化を引き起こす可能性がある。カルコゲニドガラスであるGeSbTeは、CDに使用されており、光刺激を用いて、非晶質状態と結晶状態との間を変化させて、表面の反射率を変化させる。スマートウィンドウは、三二酸化物(V2O3)の絶縁体-金属相転移を利用して、温度に伴って反射率を変化させる。相変化材料は、信号を受信したときに、非晶質状態と結晶質状態との間で、又はその逆で変化するように構成することができる。相変化材料は、信号を受信したときに、絶縁相状態と金属相状態との間、又はその逆で変化するように構成することができる。相変化材料の相を変化させることにより、周波数選択構造の導電率及び抵抗率が変化し、これにより光学素子の透過率、反射率及び/又は吸収率が変化することができる。
【0040】
相変化材料は、VO2を含むことができる。
【0041】
二酸化バナジウム(VO2)は、CO2レーザQスイッチを実装するための好ましい相変化材料とすることができる。VO2の絶縁体から金属への相転移は、熱的、電気的、又は光学的手段によって刺激することができる。絶縁体から金属への相転移は、サブマイクロ秒の時間領域で電気的又は光学的なソースによって刺激できることが示されている。従って、周波数選択構造及びVO2の活性層からなる光学素子は、光学素子の周波数応答を急速に変化させ、これによりレーザをQスイッチするのに十分であろう。
【0042】
光学素子は、液晶を含むことができる。液晶の光学特性は、信号の受信時に変化するように構成することができる。
【0043】
液晶は、温度及び/又は濃度の適切な条件下で、液体及び結晶の特性を同時に示す材料のファミリーである。液晶の光学特性は、液晶の材料によって異なる。液晶に共通する特性は、電位差の印加によって複屈折が変化することである。この信号は、液晶を構成する光学素子に電圧を印加することで液晶の複屈折挙動を変化させ、これにより液晶の偏光特性及び/又は屈折率を変化させることを含むことができる。これにより、光学素子の透過率、反射率及び/又は吸収率が変化する可能性がある。バイアス印加による液晶の光学特性の変化は、周波数選択構造の透過率、反射率及び/又は吸収率を変化させる可能性がある。このような光学素子は、レーザ、例えばCO2レーザをQスイッチするために使用することができる。液晶は、E7を含むことができる。
【0044】
光学素子は、グラフェンを含むことができる。グラフェンの誘電率は、信号の受信時に変化するように構成することができる。
【0045】
グラフェンは、電気的バイアスの印加によってその誘電率が変化し得る炭素の単一原子層である。レーザをQスイッチするための光学素子は、周波数選択構造、グラフェン層、及びグラフェンにバイアスをかける手段(例えば金属コンタクト)から構成することができる。或いは、グラフェンをリソグラフィで加工して、周波数選択構造の周期的パターンの特徴部を取り込むこともできる。グラフェンのバイアスは、光学素子の電気誘電率の変化を引き起こし、これにより光学素子の透過率、反射率及び/又は吸収率を変化させることができる。
【0046】
周波数選択構造は、光学素子の周波数応答を少なくとも部分的に決定するように構成された複数の周波数選択層を含むことができる。
【0047】
複数の周波数選択層を有することは、有利には、光学素子の周波数応答を微調整することを可能にし、これにより、よりシャープな周波数応答及び/又は多周波応答を有する光学素子を提供する。例えば、複数の周波数選択層の第1の層は、約10.2μmの波長を有する放射線との所望の相互作用を有する(例えば、反射、吸収又は透過)ように構成され得るが、別の層は、約10.6μmの波長を有する放射線との所望の相互作用を有するように構成することができる。
【0048】
本開示の第2の態様によれば、第1の態様の光学素子を含むレーザが提供される。
【0049】
レーザは、標的の材料処理に好適とすることができる。材料処理は、標的をマーキングすること、標的を彫刻すること、標的を切断することなどの内の1又は2以上を含むことができる。レーザは、利得媒質を通る光路を定める2つのミラーを含む共振キャビティを含むことができる。ミラーの内の1つは、実質的に全反射ミラー(例えば、「リアミラー」又は「フォールドミラー」)であってもよく、他のミラーは、放射のパルスを出力するための部分反射ミラー(すなわち、「出力カプラー」)とすることができる。
【0050】
光学素子は、反射体、例えば、ミラーとすることができる。反射器は、「高反射性」(例えば95%以上、例えば約99%の反射率を有する)とすることができる。
【0051】
レーザは、例えばレーザをQスイッチするために、信号を光学部品に提供するように構成されたコントローラを含むことができる。
【0052】
レーザのQ値は、信号の受信時に変化することができる。
【0053】
光学素子は、レーザのQ値が第1の値を有する第1の状態と、レーザのQ値が異なる値を有する第2の状態とを含むことができる。レーザQスイッチングは、光学素子を第1の状態と第2の状態との間で切り替えるための信号を光学素子に提供することによって実施することができる。スイッチング構成要素は、信号の受信時に、第1の状態と第2の状態との間で制御可能な光学特性を変更するように構成することができる。
【0054】
光学素子の帯域通過又は帯域阻止作用は、信号によって引き起こされる小さな変化が光学素子の周波数応答の比較的大きな変化を誘起するように、比較的狭いものとすることができる。
【0055】
周波数選択構造の形状(例えば、特徴部の周期性)と、周囲の材料(例えば、スイッチング構成要素)の電磁気特性(例えば、屈折率、誘電率、透磁率、導電率、抵抗率など)とが、光学素子の周波数応答を決定することができる。例えば、スイッチング部材の導電率を高めると、光学素子の反射率が低下し、光学素子を構成するレーザの光共振キャビティがより損失的になり、レーザのQ値が低下する可能性がある。周波数選択構造の周波数特性は、レーザの動作波長の範囲に基づいて選択することができる。
【0056】
光学素子は、レーザのリアミラーの一部を形成することができる。
【0057】
周期的パターンの特徴部は、周波数選択構造がレーザの動作波長において帯域通過フィルタとして機能するように設計することができる。この場合、共振キャビティ内の損失が大きくなり、レーザ発振が抑制される。信号が光学素子の周波数応答を変化させる場合、周波数選択構造は、非常に低い放射損失を有する規則的なリアミラーとして作用し、これにより、誘導放出及びレーザ発振が発生することを可能にする。
【0058】
光学素子は、レーザの出力カプラーの一部を形成することができる。
【0059】
出力カプラーの反射率は、発振キャビティにおける放射損失を最小限に抑えながら、レーザの出力パワーを最適化するように選択することができる。出力カプラーの最適な反射率は、レーザの設計に大きく依存する。しかしながら、一度最適化されると、出力カプラーの反射率は、通常、固定されたままである。光学素子を出力カプラーとしてレーザに組み込むことで、出力カプラーの反射率をコマンドで変更し、レーザをQスイッチさせることができる。
【0060】
光学素子は、レーザのフォールドミラーの一部を形成することができる。
【0061】
信号は、レーザの波長の動作範囲にわたって光学素子の周波数応答を、高反射である状態から高透過又は吸収状態に変更することができ、その逆もまた同様である。高反射状態にあるとき、共振キャビティは、比較的少ない光子損失(すなわち、Q値が高い)を生じることができる。透過性又は吸収性が高い場合、共振キャビティは、相対的に高い光子損失(すなわちQ値が低くなる)を生じることができる。
【0062】
光学素子は、レーザの受動光学素子の一部を形成することができる。
【0063】
光学素子が受動光学部品としてレーザに組み込まれる場合、信号は、光学素子の周波数応答を、高透過率状態(共振キャビティにおける低損失状態、すなわち高Q値を引き起こす)から、部分透過性又は吸収性状態(共振キャビティにおける高損失状態、すなわち低Q値を引き起こす)に変わることができる。
【0064】
本開示の第3の態様によれば、第2の態様のレーザを含む標的をマーキングするためのレーザマーキングシステムが提供される。
【0065】
本開示の第4の態様によれば、第3の態様のレーザマーキングシステムを使用することを含む、放射線を用いて標的をマーキングする方法が提供される。
【0066】
本開示の第5の態様によれば、レーザに第1の態様の光学素子を提供するステップと、レーザをQスイッチするために信号を光学素子に提供するコントローラを使用するステップとを含む、放射線のパルスを生成するためにレーザをQスイッチさせる方法が提供される。
【0067】
本開示の第6の態様によれば、赤外電磁放射を生成するように構成されたCO2レーザが提供される。CO2レーザは、実質的に周期的なパターンの特徴部を有する周波数選択構造を含む光学素子を備える。光学素子の周波数応答は、信号の受信時に変化するように構成される。CO2レーザのQ値は、信号の受信に応じて変化する。
【0068】
CO2レーザは、約10Wの平均電力を有する赤外線電磁放射を生成するように構成することができる。CO2レーザは、約30Wの平均電力を有する赤外電磁放射を生成するように構成することができる。CO2レーザは、約50Wの平均パワーを有する赤外電磁放射を生成するように構成することができる。CO2レーザは、約100Wの平均電力を有する赤外電磁放射を生成するように構成することができる。
【0069】
CO2レーザは、CO2利得媒質を含むレーザ共振キャビティを備えることができる。CO2レーザは、赤外線電磁放射を生成するためにCO2利得媒質を励起するように構成された高周波励起源を含むことができる。
【0070】
RF励起源は、約150W以上のRFパワーを提供するように構成することができる。RF励起源は、約1kW以下のRFパワーを提供するように構成することができる。RF励起源は、約80MHz以上の周波数でRFパワーを提供するように構成することができる。RF励起源は、約120MHz以下の周波数でRF電力を提供するように構成することができる。RF励起源は、約100MHz以上の周波数でRF電力を提供するように構成することができる。RF励起源は、約0.1μsec以上の持続時間、CO2利得媒質にRF電力を提供するように構成することができる。RF励起源は、約1.0μsec以下の持続時間、CO2利得媒質にRF電力を提供するように構成することができる。RF励起源は、CO2利得媒質にRF電力を連続的に供給するように構成することができる。RF励起源のパルス持続時間は、CO2レーザの使用者によって制御することができる。RF励起源のパルス持続時間は、製品をマーキングするための所望のレーザパルスエネルギー、パルス繰り返し周波数又は製品レート、及びCO2レーザの平均出力の内の1つ以上に少なくとも部分的に依存することができる。
【0071】
CO2レーザは、CO2レーザをQスイッチするための信号を光学素子に提供するように構成された制御システムを含むことができる。制御システムは、CO2利得媒質を励起するために高周波励起源に別の制御信号を提供するように構成することができる。
【0072】
光学素子は、CO2レーザのリアミラーの一部を形成することができる。
【0073】
CO2レーザは、フォールドミラーを有するフォールドキャビティを含むことができる。光学素子は、CO2レーザのフォールドミラーの一部を形成することができる。
【0074】
光学素子は、シリコン又はGaAsを含むことができる。これらの反射性基材は、CO2レーザに存在するCO2レーザプラズマと互換性がある。約10.6μmの波長におけるシリコンの複素屈折率(n+jk)は、約(3.4179+j0.0001223)とすることができる。約10.6μmの波長におけるGaAsの複素屈折率(n+jk)は、約(3.2646+j0.00029)とすることができる。
【0075】
光学素子は、CO2レーザの出力カプラーの一部を形成することができる。
【0076】
光学素子は、CO2レーザのレーザ共振キャビティ内に配置された受動光学部品の一部を形成することができる。
【0077】
光学素子は、ZnSe、GaAs、Ge又はZnSを含むことができる。これらの透過性基材は、CO2レーザに存在するCO2レーザプラズマに適合する。約10.6μmの波長におけるZnSeの複素屈折率(n+jk)は、約(2.4028)とすることができる。波長約10.6μmのGaAsの複素屈折率(n+jk)は、約(3.2646+j0.00029)とすることができる。約10.6μmの波長におけるGeの複素屈折率(n+jk)は、約(4.0038)とすることができる。約10.6μmの波長におけるZnSの複素屈折率(n+jk)は、約(2.1925+j0.002)とすることができる。
【0078】
光学素子は、グラフェンを含むことができる。グラフェンの電気誘電率は、信号の受信時に変化するように構成することができる。約10.6μmの波長におけるグラフェンの複素屈折率(n+jk)は、信号の受信時に約(4.45-j4.34)~約(14.43-j0.08)の間で変化することができる。
【0079】
光学素子は、信号の受信時に位相を変化させるように構成された相変化材料を含むことができる。
【0080】
相変化材料は、VO2を含むことができる。約10.6μmの波長におけるVO2の複素屈折率(n+jk)は、信号の受信時に、絶縁状態の約(2.1+j0.16)から金属状態の約(7.8+j5.8)の間で変化することができる。
【0081】
光学素子は、半導体を含むことができる。半導体の電荷キャリア密度は、信号の受信時に変化するように構成することができる。半導体は、光伝導デバイスの一部を形成することができる。光伝導デバイスは、CO2レーザをQスイッチするための光信号(例えば、レーザパルス)を受信するように構成することができる。
【0082】
半導体は、GaAs、Si、又はGeの内の少なくとも1つを含むことができる。
【0083】
光学素子は、液晶を含むことができる。液晶の光学特性は、信号の受信時に変化するように構成することができる。
【0084】
信号は、バイアス電圧を含むことができる。バイアス電圧は、0Vより大きくてもよい。バイアス電圧は、約20V以下とすることができる。バイアス電圧は、約1ns以上印加することができる。バイアス電圧は、約100μs以下の間、印加することができる。バイアス電圧は、約150ns以下の間、印加することができる。バイアス電圧が印加される持続時間は、CO2レーザによって生成されるべき所望のレーザパルスエネルギーに少なくとも部分的に依存して選択することができる。CO2レーザによって生成されるべき所望のレーザパルスエネルギーは、CO2レーザの用途(例えば、医療用途又は産業用途)に依存することができる。
【0085】
信号は、レーザパルスを含むことができる。レーザパルスは、短パルスレーザダイオードによって生成することができる。短パルスレーザダイオードパルスは、1nsec以上のパルス幅を有することができる。短パルスレーザダイオードパルスは、100μsec以下のパルス幅を有することができる。
【0086】
光学素子の反射率、透過率及び/又は吸収率は、信号の受信により、赤外電磁放射の周波数の範囲にわたって変化することができる。
【0087】
光学素子は、周波数選択構造に動作可能に結合されたスイッチング構成要素を含むことができる。
【0088】
光学素子は、信号を受信し、信号をスイッチング構成要素に送信するように構成された、スイッチング構成要素に動作可能に結合された信号伝送構成要素を含むことができる。信号伝送構成要素は、導電性材料の層を含むことができる。導電性材料の層は、金、ニッケル、アルミニウム、及び酸化インジウムスズ(ITO)の内の少なくとも1つを含むことができる。光学素子は、絶縁材料を含むことができる。絶縁材料は、酸化アルミニウム及び酸化ハフニウムの内の1又は2以上を含むことができる。
【0089】
光学素子は、信号の受信時に実質的に周期的なパターンの特徴部の周期性及び/又は幾何形状を変更するように構成された変形可能な材料を含むことができる。
【0090】
光学素子の屈折率は、信号の受信時に変化するように構成することができる。
【0091】
光学素子の誘電率及び/又は透磁率は、信号の受信時に変化するように構成することができる。
【0092】
光学素子の導電率及び抵抗率は、信号の受信時に変化するように構成することができる。
【0093】
実質的に周期的なパターンの特徴部は、光学素子の周波数応答を少なくとも部分的に決定するように構成された幾何学的特徴部のアレイを含むことができる。
【0094】
アレイは、光学素子の周波数応答を少なくとも部分的に決定するように構成されたチューニング要素を含むことができる。
【0095】
実質的に周期的なパターンの特徴部は、偏光子として作用するように構成することができる。光学素子は、メタマテリアルを含むことができる。
【0096】
周波数選択構造は、光学素子の周波数応答を少なくとも部分的に決定するように構成された複数の周波数選択層を含むことができる。
【0097】
赤外線電磁放射は、製品をマーキングするように構成することができる。
【0098】
CO2レーザは、短パルス赤外電磁放射を生成するように構成することができる。
CO2レーザは、短パルス(パルス幅>0.1nsec及び<500μsec)の赤外電磁放射を生成するように構成することができる。
【0099】
信号は、光学素子のスイッチング構成要素のバイアスレベルを制御するように構成することができる。信号は、CO2レーザのレーザ出力コマンドとCO2レーザのQスイッチングの開始との間のタイミングを制御するように構成することができる。
【0100】
赤外電磁放射は、工業プロセスの一部を形成することができる。CO2レーザは、産業用システムの一部を形成することができる。例えば、CO2レーザ及びCO2レーザから発生する赤外電磁放射は、レーザマーキング及びコーディング、彫刻、穴あけ、切断、穿孔、溶接(金属及びプラスチック)、表面処理(レーザピーニング、硬化、研磨、粗面化、黒化)、錆除去、塗装除去等に使用することができる。
【0101】
赤外線電磁波は、医療プロセスの一部を形成することができる。CO2レーザは、医療システムの一部を形成することができる。例えば、CO2レーザ及びCO2レーザによって生成される赤外電磁放射は、レーザメスとして、耳鼻科及び頭頸部外科処置において、婦人科外科において、病変及び腫瘍除去において、血管外科において、口腔軟組織外科において、エナメル質切除、インプラント歯科、刺青除去、片頭痛治療のためのレーザ誘起侵害受容電位、火傷跡治療、皮膚表面処理、アザ除去、ホクロ・ウイルス性イボ除去、皮膚老化、顔の傷跡除去などに使用されてよい。
【0102】
本開示の第7の態様によれば、第6の態様のCO2レーザを含む、標的をマーキングするためのレーザマーキングシステムが提供される。
【0103】
本開示の第8の態様によれば、CO2レーザのCO2利得媒質を励起するステップを含む、赤外線電磁放射を生成するためにCO2レーザをQスイッチングする方法が提供される。本方法は、CO2レーザの光学素子上の実質的に周期的なパターンの特徴部を有する周波数選択構造の周波数応答を変化させ、これにより赤外電磁放射のパルスを生成する、信号を生成するステップを含む。
【0104】
信号を生成するステップは、電気信号又は光信号(例えば、レーザパルス)を生成するためにコントローラを動作するステップを含むことができる。
【0105】
赤外線電磁放射は、製品にマーキングするように構成することができる。
【0106】
本方法は、短パルス赤外電磁放射を生成するステップを含むことができる。
【0107】
CO2レーザは、赤外電磁放射の短パルス(パルス幅>0.1nsec及び<500μsec)を生成するように構成することができる。
【0108】
本開示の第9の態様によれば、CO2レーザのCO2利得媒質を励起することを含む、赤外線電磁放射で標的をマーキングする方法が提供される。本方法は、CO2レーザの光学素子上の実質的に周期的なパターンの特徴部を有する周波数選択構造の周波数応答を変化させることによって、CO2レーザをQスイッチする信号を生成し、これにより赤外電磁放射のパルスを生成することを備える。この方法は、赤外電磁放射のパルスを標的に向けることを含んでいる。
【0109】
信号を生成することは、電気信号又は光信号(例えば、レーザパルス)を生成するためにコントローラを動作するステップを含むことができる。
【0110】
本方法は、短パルス赤外電磁放射を生成するステップを含むことができる。
【0111】
CO2レーザは、短パルス(パルス幅>0.1nsec及び<500μsec)の赤外電磁放射を生成するように構成することができる。
【0112】
上述した例示的な信号持続時間(例えばRFパワー信号、Qスイッチ信号(例えばバイアス電圧信号)等)は、CO2レーザマーキング用途のものであり、CO2レーザの用途要件に応じて、上述した以外の持続時間も可能であることが理解されよう。
【0113】
上述した例示的な材料は、CO2レーザに好適であるが、他の材料の使用を排除すべきではないことが理解されるであろう。例えば、金属鏡は、本開示による光学素子のベース材料として使用することができる。
【0114】
添付図面は、縮尺通りに描かれることを意図していない。図面において、様々な図に図示される各同一又はほぼ同一の構成要素は、同様の数字によって表される。明瞭化のために、あらゆる構成要素があらゆる図面においてラベル付けされている訳ではない。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【
図1】本開示の一態様による、可調光学素子を含むレーザの一実施形態の概略平面図である。
【
図2】本開示の一態様による、周期的パターンの特徴部を有する周波数選択構造を含む可調光学素子を示す図である。
【
図3】本開示の一態様による、周期的パターンの特徴部を有する周波数選択構造と、周期的パターンの特徴部に動作可能に結合されたスイッチング構成要素とを含む可調光学素子を示す図である。
【
図5】本開示の一態様による、周波数選択構造と、スイッチング構成要素と、信号を受信しスイッチング構成要素に信号を送信するように構成された信号伝送構成要素と、を備える可調光学素子の分解図である。
【
図6A】本開示の一態様による、幾何学的特徴部のアレイを含む周波数選択構造と、ZnSe基板上のVO
2を含む相変化材料を含むスイッチング構成要素と、を備える可調光学素子を示す図である。
【
図6B】信号の受信後の絶縁相及び金属相における
図6Aの可調光学素子の光透過周波数応答を示す図である。
【
図6C】信号の受信後の絶縁相及び金属相における
図6Aの可調光学素子の光反射周波数応答を示す図である。
【
図7A】本開示の一態様による、周波数選択構造と、グラフェンを含むスイッチング構成要素と、ZnSe基板と、を備える可調光学素子を示す図である。
【
図7B】異なる印加化学ポテンシャルを有する、
図7Aの可調光学素子の光透過周波数応答を示す図である。
【
図7C】異なる印加化学ポテンシャルを有する、
図7Aの可調光学素子の光反射周波数応答を示す図である。
【
図8A】本開示の一態様による、周波数選択構造、及びZnSe基板上の液晶E7を含むスイッチング構成要素とを備えた可調光学素子のバイアス状態及びアンバイアス状態における光透過周波数応答を示す図である。
【
図8B】バイアス状態及びアンバイアス状態における
図8Aの可調光学素子の光反射周波数応答を示す図である。
【
図9A】本開示の一態様による、周波数選択構造、GaAsを含む半導体を含むスイッチング構成要素を備えた可調光学素子の電荷キャリア密度の範囲に対する光透過周波数応答を示す図である。
【
図9B】電荷キャリア密度の範囲に対する
図9Aの可調光学素子の光反射周波数特性を示す図である。
【
図10】本開示の一態様による、周期的パターンのスロットを含む周波数選択構造の一部を上方から見た概略斜視図である。
【
図11】本開示の一態様による、周期的パターンの十字を含む周波数選択構造の一部を上方から見た概略斜視図である。
【
図12】本開示の一態様による、周期的パターンのリングを含む周波数選択構造の一部の上方からの概略斜視図である。
【
図13】本開示の一態様による、周期的パターンの分割リングを含む周波数選択構造の一部の上方からの概略斜視図である。
【
図14】本開示の一態様による、CO
2レーザの側部からの概略斜視図である。
【
図15】
図14のCO
2レーザの出力カプラーの概略断面図である。
【
図16】
図14のCO
2レーザのリアミラーの概略断面図である。
【
図17】本開示の一態様による、フォールドキャビティを含むCO
2レーザの概略斜視図である。
【
図18】
図17のCO
2レーザのフォールドミラーの内の2つ及び出力カプラーの概略断面図である。
【
図19】本開示の一態様による、受動光学構成要素を更に備える、
図17のCO
2レーザのフォールドミラーの2つ及び出力カプラーの概略断面図である。
【
図20】本開示の一態様による、CO
2レーザを備えたレーザマーキングシステムの概略図である。
【
図21】本開示の一態様による、CO
2レーザをQスイッチして赤外電磁放射を生成する方法のフローチャートである。
【
図22】本開示の一態様による、赤外電磁放射で標的をマーキングする方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0116】
本明細書に開示された態様及び実施形態は、様々な方法で実行又は実施することが可能であり、以下の説明に記載され又は図面に例示された構造の詳細及び構成要素の配置に限定されるものではない。
【0117】
本明細書で開示される態様及び実施形態は、実質的に周期的なパターンの特徴部を有する周波数選択構造を含む光学素子を含む。実質的に周期的なパターンの特徴部は、周期的パターンの特徴部と称すことができる。しかしながら、厳密な周期性は必要ではないは理解されるであろう。特徴部のパターンの周期性は、約10%以下で変化することができる。光学素子は、光学素子の周波数応答が制御可能であるので、可調光学素子であると説明することができる。すなわち、入射電磁放射線に対する光学素子の効果は、異なる時間に異なる波長に対して異なる効果を有するように制御又は調整することができる。例えば、光学素子は、信号の受信後、第1の時間に第1の波長に対して高い透過性があり、別の時間にて第1の波長に対して高い反射性があるように調整することができる。可調光学素子の周波数応答は、信号の受信時に変化するように構成される。本明細書で開示される態様及び実施形態はまた、例えばレーザマーキングシステムなどの様々な実施構成実装で使用するための可調光学素子を備えたレーザを含む。
【0118】
レーザマーキングシステムは、様々なタイプの標的又は物品をマーキングするための生産ラインにおいて利用することができる。例えば、レーザマーキングシステムを利用して、生産ラインを通過する物品にバーコード、固有識別マーク、有効期限、又は他の情報をインプリントすることができる。レーザマーキングシステムにおけるマーキングには、可視及び近赤外Qスイッチレーザが一般的に使用されている。本発明は、有利には、上記可視及び近赤外Qスイッチレーザのサイズ及びコストの低減を可能にする。また、本発明は、有利には、レーザマーキング用途に二酸化炭素(CO2)Qスイッチレーザを使用することを可能にする。本開示の光学素子は、紫外線(UV)レーザ及び/又は可視光レーザなどの他のタイプのレーザをQスイッチするために使用することができる。CO2レーザは、通常、9.3、9.6、10.2、10.6マイクロメートル(μm)を中心とする4つの主要波長帯の赤外線電磁放射ビームを生成する。より高いマーキング閾値を示す特定の材料(例えば、金属)をマーキングするために、より高いピークレーザ出力パワーが望まれる場合がある。本明細書に開示される様々な態様及び実施形態において、レーザをQスイッチするための可調光学素子を含むCO2レーザを利用して、比較的高い熱伝導率を示す材料を含むワークピースをマーキングするために望ましいとすることができる比較的高いピークレーザ出力レベルを生成することができる。本明細書に開示されたレーザシステムの実施形態は、レーザ走査又はマーキングシステムにおける使用に限定されるものではなく、複数の工業的又は商業的実施形態の何れにおいても利用することができる。レーザをQスイッチするための可調光学素子の実施形態は、周期的特徴を適切にスケーリングすることによって、及び/又は使用する材料の選択によって、他の何れかのレーザ技術又は波長で利用することができる。
【0119】
一般に、レーザは、2つのミラーと利得媒質とを含む。2つのミラーは、2つのミラーの間に利得媒質が存在する共振キャビティを形成するように配置される。レーザの共振キャビティのQ値(Qファクタ、Quality-Factor)とは、レーザが発振作用を維持する能力を示す指標である。レーザのQ値は、共振キャビティ内に蓄積されるエネルギー(すなわち、利得媒質にポンピングされるエネルギー)と、共振キャビティを通る電磁波の1往復の発振によるエネルギーの損失(すなわち、共振キャビティ内の光子の損失)の比率に比例する。レーザの共振キャビティにて発振を開始し持続させるためには、高いQ値が必要とされる。Q値が低いほど、共振キャビティ内の光子の損失が大きくなり、放射線の誘導放出によるレーザ発振動作の開始及び持続が困難になる。共振キャビティ内に蓄積されるエネルギーは、少なくとも部分的には、利得媒質と、例えば直流電流(DC)又は高周波(RF)電力などの外部供給源を用いて利得媒質にエネルギーを効率的にポンピングする能力によって決定される。共振器における光子の損失は、例えば、ミラーの反射率、回折損失、共振キャビティの壁と光子の相互作用、及び共振キャビティ内の吸収損失によって、少なくとも部分的に決定することができる。レータ発振が発生するため、及びレーザが高いQ値を有するためには、共振キャビティ内を循環する光子の寿命は、光子が共振キャビティの往復長を移動するのに要する時間よりも遙かに長いはずである。
【0120】
レーザのQスイッチングは、レーザの共振キャビティのQ値を高い値から低い値へ、或いはその逆へ切り替えることができるように損失機構を制御することによって達成することができる。そうすることで、低いピークパワーを有する連続波出力ではなく、高いピークパワーを有する短いレーザパルスを発生させることができる。Qスイッチングは、レーザの共振キャビティ内に可変減衰器又は他の形態のスイッチ可能な(すなわち制御可能な)光子損失機構を配置することによって達成することができる。損失機構が損失状態にある場合(すなわち、損失機構が、共振キャビティ内の光子の損失を引き起こす場合)、レーザのQ値は、発振を開始できないレベルまで低下することができる。可変減衰器又は損失機構は、Qスイッチと呼ばれることができる。幾つかの実施形態では、可変減衰器がQスイッチとして利用することができるが、レーザの共振キャビティのQ値を制御するため、又はレーザの共振キャビティからの電磁放射の生成もしくは出力を制御するために利用できる種々の機構が、Qスイッチとして利用することができる。
【0121】
Qスイッチングを利用して高出力レーザパルスを生成するには、レーザの共振キャビティにエネルギーがポンピングされながら、レーザ発振が開始されないようにレーザの共振キャビティを低Q値にするようQスイッチが設定される。レーザの利得媒質に導入されたエネルギーは、利得媒質中の原子及び/又は分子を基底状態から励起状態に遷移させ、利得媒質中の反転分布をもたらす。共振キャビティ内に蓄積されたエネルギーは、利得媒質へのエネルギーの連続したポンピングで増大するが、共振キャビティのQ値が低いことに起因して、発振は始まらない(すなわち、共振キャビティ内の光子は、利得媒質から大量の誘導放出が引き起こされる前に失われてしまう)。ある時間の経過後、共振キャビティ内に蓄積されたエネルギーは、最大レベル(「利得飽和」と呼ばれる状態)に達することがあるが、これは、利得媒質にポンピングされるエネルギー量及びポンピングされた利得媒質からの光子の自然放出による損失などの要因によって少なくとも部分的に決定することができる。共振器が利得飽和した後(又は一部の実施形態では完全な利得飽和が達成される前)、Qスイッチの状態を変更又は切り替えて、共振キャビティのQ値を増加させ、これによりレーザ発振(すなわち、利得媒質からの放射のかなりの量の誘導放出)の開始を可能にすることができる。共振キャビティ内のレーザ光の強度は、利得媒質に蓄積された大量のエネルギーに起因して、急速に上昇する。放射は、共振キャビティから迅速に放出され、高強度レーザ放射の短いパルス(幾つかの実施形態では、ナノ秒以下のオーダーで)をもたらすことができる。高強度レーザ放射の短パルスは、レーザが連続波モードで動作するときに生成されるレーザ放射のパワーの数千倍以上のピークパワーを有することができる。
【0122】
Qスイッチングは、一部の固体レーザ及びファイバーレーザ技術において、材料加工における様々な用途の短パルス(持続時間フェムト秒~ナノ秒)及び高ピークパワー(メガワット~ギガワット)を生成するのに使用されている。このようなレーザのQスイッチングに用いられる機構としては、電気光学結晶、音響光学結晶、可飽和吸収体などを挙げることができる。
【0123】
材料加工用に短パルスレーザを使用することの利点が実証されているにもかかわらず、実行可能なQスイッチCO2レーザ製品は市場には存在しない。既存の技術による解決策は、コストが高く、レーザのサイズが管理できないほど大きくなり(例えば、レーザが大きすぎて生産ラインで使用できない)、性能上の制限を受ける(例えば、Qスイッチの非効率性、吸収率の低下、Qスイッチの非効率性、パルス周波数、寿命)。
【0124】
本明細書で開示される本発明の態様及び実施形態は、安価で、コンパクトなサイズで製造可能であり、アクティブに駆動されるが、既知のQスイッチと比較して消費電力が最小である、レーザをQスイッチするための可調光学素子及び方法を含む。本明細書に開示されるレーザにおいてQスイッチデバイスとして機能することができる可調光学素子の実施形態は、外部制御信号を介して、損失状態と低損失状態の間、例えば、透過状態と反射状態の間で切り替え可能である。本明細書で開示される可調光学素子の実施形態は、レーザの共振キャビティにおける出力カプラー、リアミラー、フォールドミラー、又は受動光学構成要素の一部を形成することができる。可調光学素子の実施形態は、周期的パターンの特徴部を有する周波数選択構造を含む。幾つかの実施形態では、周波数選択構造は、周波数選択面を含むことができる。周波数選択構造は、プラズモン共振特性を有するメタマテリアル(例えば、メタサーフェス)を含むことができる。可調光学素子の実施形態は更に、可調光学素子の制御可能な光学特性(例えば、反射率、透過率及び/又は吸光度特性)を変更するために、周期的パターンの特徴部と通信するスイッチング構成要素を含むことができる。このように、可調光学素子を用いて、レーザの共振キャビティにおける光子の損失及び共振キャビティのQ値を制御することができる。共振キャビティをQスイッチすることは、スイッチング構成要素に信号を供給して、命令に応じて可調光学素子の周波数応答を変更する(例えば、可調光学素子の反射率、透過率及び/又は吸収率が電磁放射の周波数範囲に対して変化する)ことによって達成することができる。可調光学素子は、CO2レーザの一部を形成することができ、電磁放射の周波数の範囲は、赤外線(例えば、約8μmから約15μmの間の波長)を含むことができる。
【0125】
本発明は、何れかのレーザ技術に適用することができ、特に、何れかのCO
2レーザ技術に適用することができる。DC励起レーザ、RF励起導波路レーザ、スラブレーザ、又は自由空間レーザの何れかの光学素子は、レーザをQスイッチするための可調光学素子に変換することができる。少なくとも部分的にQスイッチ装置として機能する可調光学素子を含む導波路構成レーザの一例が、
図1に概略的に示されている。レーザ100は、利得領域を定める管体105と、完全反射型リアミラー110と、レーザ100の共振キャビティを定める部分反射型出力カプラー115とを含む。共振キャビティは、キャビティの長さを延長するためのフォールドミラー(図示せず)を含むことができる。要素105は、導波管として作用する管体として本明細書に図示及び説明されているが、他の実施形態では、この要素105は、楕円形、正方形、又は矩形の断面などの別の断面を有する導管を含むことができることに留意されたい。更に他の実施形態では、利得領域は、スラブレーザ構成におけるような電極としても機能する金属プレートによって制約される場合がある。
【0126】
連続波モードで動作する場合、電磁エネルギー、例えば、高周波数(RF)エネルギーは、管体105内の利得媒質(例えば、ガス混合物)を励起するために管体105に適用される。RFエネルギーは、約27MHz以上の周波数を有することができる。RFエネルギーは、約120MHz以下の周波数を有することができる。RFエネルギーは、約95MHzの周波数を有することができる。ガス混合物は、例えば、He:N2:CO2を含むことができる。幾つかの例示的な実施形態では、出力カプラー115は、管体105から出射する光子について管体105に反射して戻し、残りの光子がレーザビーム(図示せず)としてレーザ100から出射することを可能にするように構成することができる。出力カプラー115は、入射光子の約45%以上を反射するように構成することができる。出力カプラー115は、入射光子の約95%以下を反射するように構成することができる。出力カプラーは、入射光子の約80%を反射するように構成することができる。Qスイッチレーザは、連続波レーザの反射率よりも低い反射率を有する出力カプラー115を含むことができる。
【0127】
幾つかの実施形態では、リアミラー110は、銀、金、又は何れかの他の高反射材料(例えば、選択された動作波長において約97%以上の反射率を有する)でコーティングすることができるシリコンミラーとすることができる。リアミラー110は、レーザにおいて発生した光子に対して約99.8%の反射率を示すことができる。フォールドミラーは、使用される場合、リアミラー110と同じ材料から形成されてもよく、リアミラー110と実質的に同じ反射率を有する。出力カプラー115は、セレン化亜鉛又は他の材料のような材料で形成され、レーザ100で発生する光子の特定の波長の光子に対して、又は複数の波長を有する光子を発生するレーザの例では関心のある特定の波長に対して部分的に反射するように選択した所望の材料で被覆されても良い。導波管体105mは、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3、アルミナ)などの誘電体材料で形成されてもよく、レーザ100内の利得媒質の純度を妨げる可能性のある不純物がほとんど存在しないように、例えば、純度99.9%以上のアルミナなどの実質的に純粋なものである。レーザ100内のガス混合物は、例えば、5%のキセノン、57%のヘリウム、19%の窒素、及び19%のCO2の混合物を含むことができるが、当技術分野で知られている他のガス混合物を代替的に使用することができる。ガス混合物は、レーザ100の内部容積130の全体を満たすことができ、管体105は、ガス混合物が管体105及びレーザ100の本体135の内部容積130を循環するように、その端部で開放することができる。管体105は、導波管構成では約5mmの外径と約3mmの内径を有することができ、自由空間構成ではより大きいものとすることができる。
【0128】
レーザ100は更に、レーザ100の光学構成要素の何れかの一部を形成する周期的パターンの特徴部を有する周波数選択構造を備えた可調光学素子140を含むことができる。レーザ100のQスイッチングは、レーザ100の動作帯域幅に対して、可調光学素子140の周波数応答を変化させることを含むことができる。本明細書で開示されるのは、レーザ100をQスイッチングするためのレーザの光学構成要素の一部として、周波数選択構造を含む可調光学素子140を組み込む4つの例示的な実施構成である。第1の例示的な実施構成は、リアミラー110の一部として可調光学素子140を組み込むことを含む。リアミラー110は、通常、高反射率表面(例えば約97%以上、例えば約99.5%の反射率を有する)であり、レーザ100の共振キャビティ内の光子の損失への寄与が比較的小さい。可調光学素子140がリアミラー110の一部を形成する(例えば、固定された高反射コーティングを置き換える)場合、リアミラー110は、レーザの動作帯域幅に対応する電磁放射の波長範囲について、高反射状態とより透過状態及び/又は吸収状態の間で切り替え可能である。このようにリアミラー110の周波数応答を変更することにより、共振キャビティにおける光子の損失の程度を変更し、これによりレーザ100をQスイッチして強力な放射のパルスを生成することが可能である。
【0129】
第2の例示的な実施構成は、可調光学素子140を出力カプラー115の一部として組み込む(例えば、固定された部分反射コーティングを置き換える)ことを含む。通常、出力カプラー115の反射率は、レーザ100の所望の出力パワーを達成すると同時に、共振キャビティにおける光子の損失を低減するように設計される。出力カプラー115の最適反射率は、レーザの設計に依存する。既知のレーザでは、出力カプラー115の反射率は、最適化されると固定されたままである。出力カプラー115の一部として可調光学素子140を組み込むことにより、出力カプラー115の周波数応答(例えば反射率)を、信号の受信時に(すなわちコマンドで)変更することができる。出力カプラー115の反射率は、極めて低い値に設定され、共振キャビティにおける光子の大きな損失を誘起する可能性がある。出力カプラー115の反射率を短期間だけ最適な値に戻すように変更することで、共振キャビティ内の光子の損失が減少し、レーザ発振が発生できるようになり、これによりレーザ100をQスイッチングして強力な放射パルスを生成することができる。
【0130】
第3の例示的な実施構成は、折り畳みキャビティレーザ(図示せず)のフォールドミラーの一部として、可調光学素子を組み込むことを含む。可調光学素子は、共振キャビティにおける光子損失を低減し、レーザ発振を可能にするために、フォールドミラーの周波数応答が高反射である第1の状態を有することができる。可調光学素子は、フォールドミラーの周波数応答が高透過率及び/又は高吸収性であり、共振キャビティ内の光子損失を増加させ、レーザ発振の発生を防止する第2の状態を有することができる。可調光学素子を第1状態と第2状態との間で切り替える信号を供給することにより、レーザをQスイッチして強力な放射パルスを生成することができる。
【0131】
第4の実施構成は、レーザ100の放射経路内に受動光学構成要素120の一部として可調光学素子140を組み込むことを含む。例えば、受動光学構成要素は、管体105と出力カプラー115との間に配置することができる。他の実施構成は、受動光学構成要素120をリアミラー110の前、又はフォールドミラー(図示せず)、又はレーザビーム経路内の何れかの他の適切な場所に配置させることができる。可調光学素子140は、可調光学素子140の周波数応答が、共振キャビティにおける光子損失を低減し、レーザ発振の発生を可能にするために高透過率である第1の状態を有することができる。可調光学素子140は、可調光学素子140の周波数応答が、共振キャビティ内の光子損失を増加させ、レーザ発振の発生を防止するために高吸収性である第2の状態を有することができる。可調光学素子140を第1の状態と第2の状態の間で切り替える信号を供給することにより、レーザをQスイッチして強力な放射パルスを発生させることができる。
【0132】
周波数選択構造を含む可調光学素子140の実施形態は、容量性又は誘導性を有すると考えることができる。すなわち、可調光学素子140及び周波数選択構造は、入射電磁放射線の波長範囲に対してそれぞれ帯域通過光学フィルタ又は帯域阻止光学フィルタとして動作するように構成することができる。周波数選択構造及び全体としての可調光学素子140の帯域通過又は帯域阻止動作は、以前は通過していた電磁放射線の周波数範囲が今は阻止されるように、信号の受信時に変化することができ、その逆もまた同様である。
【0133】
周波数選択構造の周期的パターンの特徴部は、スロット及び/又はダイポールアレイのような単純な特徴部のアレイを含むことができる。代替的又は追加的に、周波数選択構造の周期的パターンの特徴部は、リング又は分割リング共振器のアレイのような、より複雑な特徴部のアレイを含むことができる。例えば、スロットは、ある範囲の波長の放射線を他の波長の放射線よりも透過させることによって、帯域通過光学フィルタとして機能することができる。スロットによって通過される波長は、スロットの幾何学的形状に対応することができる。別の例として、双極子は、放射線の波長範囲を他の放射線の波長よりも多く吸収することによって、帯域阻止光学フィルタとして動作することができる。双極子によって吸収される波長は、双極子の幾何学的形状に対応することができる。
【0134】
スプリットリング共振器は、光学素子の帯域通過又は帯域阻止機能内にある電磁放射線の波長の範囲を減少させることができる。これにより、有利には、狭い範囲の波長に対して高度に目標化された周波数応答を提供することができる。可調光学素子140の形状及び/又は電磁気特性における比較的小さな変化(例えば、比較的低いエネルギーの信号を使用して)は、その後、可調光学素子の周波数応答(例えば、反射率、透過率及び/又は吸収率)において比較的大きな変化をもたらす可能性がある。特徴部の何れかのアレイは、可調光学素子140の周波数応答を少なくとも部分的に決定するように構成されたチューニング要素を追加的に含んでいてもよい。チューニング要素は、可調光学素子140の周波数応答を調整するために周波数選択構造の幾何学的形状を変更するように構成された1又は2以上の幾何学的特徴部(例えば、バー)を含むことができる。
【0135】
光学素子140の周波数選択構造の周期的パターンの特徴部は、偏光子として動作するように構成することができる。すなわち、周期的パターンの特徴部は、特徴部のパターンの幾何学的形状に応じて、偏光感受性又は偏光不感性とすることができる。周波数選択構造の幾何学的形状(例えば、周期的パターンの特徴部の周期性)と、何れかの組み合わせの構成要素(例えば、スイッチング構成要素)の電磁特性(例えば、屈折率、誘電率、透磁率、導電率、抵抗率など)は、光学素子140の周波数応答を少なくとも部分的に決定することができる。
【0136】
周波数選択構造は、光学素子140の周波数応答を少なくとも部分的に決定するように構成された複数の周波数選択層を含むことができる。複数の周波数選択層を有することは、有利には、可調光学素子140の周波数応答を更に微調整することを可能にし、これにより、よりシャープな周波数応答及び/又は複数の周波応答を有する可調光学素子を提供する。例えば、複数の周波数選択層の第1の層は、約10.2μmの波長を有する放射線との所望の相互作用を有する(例えば、反射、吸収又は透過)ように構成することができるが、別の層は、約10.6μmの波長を有する放射線との所望の相互作用を有するように構成することができる。
【0137】
レーザ100においてQスイッチとして動作するために、可調光学素子140の周波数応答、及び信号の受信時に周波数応答が変化する方法は、レーザの動作波長に合わせて調整することができる。周波数応答は、周波数選択構造を形成する周期的パターンの特徴部の物理的形状を設計することによって、及び/又は、所望のスイッチング可能な光学的及び電磁気的特性に基づいて周期的パターンの特徴部に動作可能に結合された(例えば、接触及び/又は周囲の)材料を選択することによって調整することができる。例えば、可調光学素子140は、周波数選択構造に動作可能に結合されたスイッチング構成要素を含むことができる。スイッチング構成要素は、可調光学素子上の層の形態をとることができる。スイッチング構成要素は、周波数選択構造の周期的パターンの特徴部を少なくとも部分的に囲むことができる。周波数選択構造は、スイッチング構成要素に埋め込まれるか、又は他の方法で囲むことができる。スイッチング構成要素は、周波数選択構造に接合することができる。例えば、周波数選択構造は、アクティブスイッチング層上に設けられた(例えば、エッチング又は配置された)周期的パターンの特徴部を含むことができる。周期的パターンの特徴部は、金属を含むことができる。スイッチング構成要素は、電磁気的特性が変化可能な材料、例えば二酸化バナジウムのような相変化材料を含むことができる。
【0138】
周波数選択構造を有する光学素子140を含むリアミラー110は、スイッチング構成要素の1つの状態において、可調光学素子140がレーザ100の動作波長において帯域通過光学フィルタとして機能するように設計された周期的パターンの特徴部を有することができる。これは、共振キャビティにおける光子の比較的高い損失を誘起し、これによりレーザ発振を抑制することになる。信号の受信時にスイッチング構成要素が他の状態に変わると、可調光学素子140は高反射ミラーとして動作し、共振キャビティにおける光子の損失が減少し、レーザ発振が発生することを可能にする。このスイッチングは、周波数選択構造及び/又はスイッチング構成要素の物理的特性の1又は2以上を変えることによって誘起することができる。可調光学素子140を切り替えること(すなわち、光学素子の周波数応答を変えること)は、例えば、光導電体又は半導体材料におけるような可調光学素子の一部(例えば、スイッチング構成要素)の電荷キャリア密度を変化させることによって達成することができる。他の手法としては、材料の相を変えること(例えば、非晶質から結晶へ、又は絶縁体から金属へ)、変形可能な材料を用いて周期的パターンの特徴部の周期性及び/又は幾何形状を変えること、材料の屈折率及び/又は誘電率及び/又は透磁率を変えること、等を含む。これらの変化は、電界及び/又は磁界の印加、電流の注入、電圧によるバイアス、又は光エネルギーを可調光学素子140に印加することによって実現することができる。
【0139】
レーザにおけるQスイッチとして機能することができる周波数選択構造を含む可調光学素子の可能な実施構成が、
図2~
図5に概略的に示される。周波数選択構造205を含むQスイッチ光学素子200が、
図2に示されている。周波数選択構造の周期的パターンの特徴部がスイッチング構成要素305に設けられているQスイッチ光学素子300が、
図3に図示されている。周波数選択構造405及びスイッチング構成要素410を含むQスイッチ光学素子400の分解図を
図4に示す。周波数選択構造505と、スイッチング構成要素510と、信号を受信し、信号をスイッチング構成要素に送信するように構成された信号伝送構成要素515と、を含むQスイッチ光学素子500の分解図が、
図5に図示されている。信号伝送構成要素515は、例えば、インジウム錫酸化物、金などのパターン化金属、パターン化シリコン、ガリウムヒ素及び/又は別の半導体材料を含むことができる。信号伝送構成要素515は、複数の層を含むことができる。信号伝送構成要素515の異なる層は、異なる材料を含むことができる。光信号が光学素子の周波数応答を制御するために使用される場合、信号伝送構成要素515は必要ない場合がある。また、光スイッチングエネルギーは、Qスイッチ光学素子とは別個に印加することができる。
【0140】
図2~5の周波数選択構造、スイッチング構成要素及び信号伝送構成要素は、同じ又は異なる周波数応答を有する光学素子を実現するために、様々な異なる材料から形成することができる。以下の文章は、可能な実施構成の例を提供する。
【0141】
第1の可能な実施構成は、信号の受信時に位相を変えるように構成された相変化材料を含む光学素子である。相変化材料は、例えばスイッチング構成要素として、光学素子に組み込むことができる。「相変化材料」という用語は、外部刺激に晒されたときに物理的変化を起こす広範囲の化合物をカバーしている。相変化材料は、ランダムアクセスメモリデバイス、コンパクトディスク(CD)及びデジタルバーサタイルディスク(DVD)、スマートウィンドウなど、幅広い種類の用途で使用されている。ランダムアクセスメモリデバイスに使用されるカルコゲニドガラスは、非晶質状態と結晶状態の間で変化する。このような遷移の際に、電気的刺激に応答して抵抗率を微視的なレベルで変化させることができる。カルコゲニドガラス(例えば、GeSbTe)は、コンパクトディスクに使用され、光刺激を使用して、非晶質状態と結晶状態を変化させ、表面の反射率を変化させる。スマートウィンドウは、三二酸化物(例:V2O3)の絶縁体から金属への相転移を利用して、温度によって反射率を変化させる。
【0142】
相変化材料は、信号を受信すると、非晶質状態と結晶質状態の間で、又はその逆で変化するように構成することができる。相変化材料は、信号を受信すると、絶縁相と金属相との間で、又はその逆で変化するように構成することができる。相変化材料の相を変化させることにより、周波数選択構造の電磁特性(例えば、屈折率及び/又は導電率及び抵抗率)が変化し、これにより光学素子の透過率、反射率及び/又は吸収率を変化させることができる。相変化材料は、二酸化バナジウム(VO2)を含むことができる。VO2は、CO2レーザQスイッチの実装に好ましい相変化材料である。VO2の絶縁体から金属への相転移は、熱的、電気的、又は光学的手段によって刺激することができる。絶縁体から金属への相転移は、サブマイクロ秒時間領域で電気的又は光学的ソースによって刺激することができることが示されている。
【0143】
図6Aは、基板構成要素605と、周波数選択構造610と、VO
2(例えばVO
2の層)を含むスイッチング構成要素620とを備えた可調光学素子600を概略的に示している。光学素子600は、信号を受信すると、その周波数特性を急速に変化させることができる。従って、光学素子600は、レーザ(例えば、
図1のレーザ)をQスイッチするのに使用することができる。光学素子600は更に、スイッチング構成要素620に動作可能に結合された、信号を受信し且つ信号をスイッチング構成要素620に送信するように構成された信号伝送構成要素630を含む。
図6Aの例では、信号伝送構成要素630は、酸化インジウムスズ(ITO)を含み、周波数選択構造610は、分割リング共振器640のアレイを含み、基板605はZnSeを含む。
【0144】
図6Bは、信号受信前の絶縁相650と信号受信後の金属相655における
図6Aの光学素子600の光透過率周波数特性を示す図である。光学素子600の光透過周波数応答は、約9.7μmから約11.6μmの間の放射線の波長(すなわち、波長の赤外線スペクトル内)について示されている。約10.6μmで、絶縁相650における光学素子600の透過率は、金属相655における光学素子600の透過率よりも遙かに大きい。
【0145】
図6Cは、信号受信前の絶縁相650と信号受信後の金属相655における
図6Aの光学素子600の光反射率周波数特性を示す図である。光学素子600の光反射周波数特性は、約9.7μmから約11.6μmの間の放射線の波長(すなわち、波長の赤外線スペクトル内)について示されている。約10.6μmで、絶縁相650における光学素子600の反射率は、金属相655における光学素子600の反射率よりも遙かに低い。
【0146】
図6B及び
図6Cは、信号の受信時にVO
2が絶縁相から金属相に変化したことに起因して、光学素子600の周波数特性が大きく変化したことを示している。光学素子600が、約10.6μmの波長を有する放射線のパルスを生成するように構成されたCO
2レーザのリアミラーの一部を形成する場合、光学素子600は、高反射リアミラーとして動作することによって、VO
2が金属相であるときに高いQ値を有するレーザに寄与することができる。VO
2の位相を絶縁相に変更する信号を供給することができ、これにより約10.6μmの波長に対するリアミラーの反射率を低下させることで、レーザのQ値を低下させる。このことで、共振キャビティ内で失われる光子の数が増加し、利得媒質がポンピングされている間、レーザの発振が妨げられる。利得媒質が十分にポンピングされると、別の信号を供給してVO
2を金属相に戻し、レーザ発振の発生を可能にし、これによりQスイッチングによって強力な放射パルスを発生させることができる。
【0147】
第2の可能な実施構成は、グラフェンを含む光学素子であって、グラフェンの電気誘電率は、信号の受信時に変化するように構成される。グラフェンは、炭素の単原子層であり、その電気誘電率は、電気バイアスの印加によって変化することができる。
図7Aに示されるように、レーザをQスイッチするための光学素子700は、支持構造又は基板705、周波数選択構造710、グラフェンを含むスイッチング構成要素720、グラフェンをバイアスする手段735、電気絶縁材料745及び信号伝送構成要素730を備えることができる。
図7Aの例では、基板705はZnSeを含み、スイッチング構成要素720はグラフェンの層を含み、グラフェンをバイアスするための手段735は、2つの電気接点735を含む。2つの電気接点735は、例えば、金、銀、ニッケル及び/又はアルミニウムの内の少なくとも1つから形成することができる。2つの電気接点735は、電圧源(図示せず)に接続することができる。絶縁材料745は、例えば、SiO
2、HfO
2及び/又はAl
2O
3の内の少なくとも1つを含むことができる。信号伝送構成要素730は、インジウム錫酸化物(ITO)を含む。信号伝送構成要素730は、トランジスタのゲートと同様の方法で動作することができる。このように、電気接点735及び信号伝送構成要素730は、トランジスタと同様の方法で動作することができる。信号伝送構成要素730は任意選択である。代替の実施形態では、電圧信号は直接切り替えることができ、単一伝送構成要素730は、省略されるか、又は接地することができる。周波数選択構造710は、スプリットリング共振器740のアレイを含む。代替的又は追加的に、グラフェン720は、周波数選択構造710の周期的パターンの特徴部740を組み込むようにリソグラフィ処理することができる。グラフェン720のバイアスは、光学素子700の電気誘電率の変化を引き起こし、これにより光学素子700の透過率、反射率及び/又は吸収率を変化することができる。
【0148】
図7B及び
図7Cは、信号として動作する印加バイアスEfの関数として、
図7Aの光学素子700の伝送及び反射周波数特性のそれぞれの変化を示している。
図7B及び
図7Cは、5*10
-4eV(760)、0.1eV(765)、0.2eV(770)、0.3eV(775)及び0.5eV(780)の印加バイアスEfにおいて、光学素子700の伝送及び反射周波数応答が約9.7μm~約11.6μmの間の波長でどのように変化するのかを示している。
図7Bは、バイアスを変化させた場合の伝送周波数応答シフトを示している。約100%のピーク透過率は、約5*10
-4eV(760)のバイアスで、約10.6μmの波長で発生する。約100%のピーク透過率は、0.1eV(765)のバイアスで約10.9μmの波長で発生する。約95%のピーク透過率は、0.2eV(770)のバイアスで約11.5μmの波長で発生する。約40%の最大透過率が、0.3eV(775)のバイアスで示された波長(約11.6μm)全体で達成可能である。約5%の最大透過率は、0.5eV(780)のバイアス(約11.6μmで)で図示される波長にわたって達成可能である。このような可調伝送周波数特性を有する光学素子700は、例えば、CO
2レーザをQスイッチするための出力カプラーとして実装することができる。
【0149】
図7Cは、グラフェンのバイアスを変化させることにより、光学素子700の周波数特性における反射ヌル(すなわち最低反射率)がシフトし、CO
2波長10.6μmにおける反射率が変化する様子を示す。5*10
-4eV(760)のバイアスで約10.6μmの波長で約0%の最低反射率が発生する。約0%の最低反射率は、0.1eV(765)のバイアスで約10.9μmの波長で発生する。約5%の最低反射率は、0.2eV(770)のバイアスで約11.5μmの波長で発生する。0.3eV(775)のバイアスで図示の波長(約11.6μm)にわたって約60%の最小反射率が達成可能である。約95%の最小反射率が、0.5eV(780)のバイアスで(約11.6μmで)図示の波長にわたって達成可能である。このような波長可変反射周波数応答を有する光学素子700は、例えば、CO
2レーザをQスイッチするためのリアミラーとして実装することができる。
【0150】
第3の可能な実施構成は、液晶を含む光学素子であって、液晶の光学特性は、信号の受信時に変化するように構成される。液晶は、温度及び/又は濃度の適切な条件下で、液体と結晶の特性を同時に示す材料のファミリーである。液晶の光学特性は、液晶の材料によって異なる。液晶に共通する特性は、複屈折、すなわち電位差(バイアス)の印加によって屈折率が変化する偏光感受性である。液晶を含む光学素子に電圧を印加することにより、液晶の偏光特性及び/又は屈折率が変化し、光学素子の透過率、反射率及び/又は吸収率が変化することができる。印加されるバイアスに起因する液晶の光学特性の変動は、周波数選択構造の透過率、反射率及び/又は吸収率を変化させる可能性がある。E7のような液晶を含むこのような光学素子を用いて、レーザ、例えばCO2レーザをQスイッチすることができる。
【0151】
図8Aは、周波数選択構造、E7液晶スイッチング部材、及びZnSeを含む支持基板を備えた光学素子の複屈折に起因する光透過周波数応答の変化を示している。光学素子の光透過周波数応答は、約9.7μmから約11.6μmの間の放射波長(すなわち、CO
2レーザの波長の赤外線放射スペクトル内)について示されている。バイアス電圧は、液晶の複屈折挙動を制御し、これにより光学素子の周波数応答を制御するために使用することができる。バイアス電圧が印加されない場合(790)、一次CO
2レーザ発光波長である約10.6μmで約100%の透過率ピークが発生する。バイアス電圧が印加された場合(792)、液晶の屈折率が変化し、約100%の透過率ピークが約10.9μmにシフトし、約10.6μmの光学素子の透過率は約25%に減少する。
図8Bは、
図8Aの光学素子の相補的な光反射周波数応答を示す。バイアス電圧が印加されない場合(790)、約10.6μmの一次CO
2レーザ発光波長で約0%の反射率トラフが発生する。バイアス電圧が印加される場合(792)、液晶の屈折率が変化し、約0%の反射率のトラフが約10.9μmにシフトし、約10.6μmにおける光学素子の反射率は約75%に増加する。
【0152】
このような液晶スイッチング周波数選択構造を含むレーザ出力カプラーは、レーザをQスイッチするために使用することができる。例えば、光学素子が、約10.6μmの波長を有する放射線のパルスを生成するように構成されたCO
2レーザの出力カプラーの一部を形成する場合、光学素子は、高透過率の出力カプラーとして動作することによって、バイアス電圧が印加されていないとき(すなわち、
図8A)に低Q値を有するレーザに寄与することができる。これにより、共振キャビティ内で失われる光子の量が増加し、利得媒質がポンピングされている間にレーザ発振が起こるのを防ぐことができる。利得媒質が十分にポンピングされると、別の信号を提供し、液晶にバイアス電圧を印加して(すなわち、
図8B)、これにより、出力カプラーの反射率を上げることでレーザのQ値を増大させてレーザ発振を発生させることができ、Qスイッチングを介して10.6μmにて強力なパルス放射を発生させる。
【0153】
第4の可能な実施構成は、半導体を含む光学素子であって、半導体の電荷キャリア密度は、信号(例えば、光放射又は他の電磁場)の受信時に変化するように構成される。半導体は、Si、GaAs、Ge、InP、GaAlAs、及び/又は多くの他のものを含むことができる。半導体の光学的及び電気的特性は、半導体の格子構造における不純物の導入によるドーピングによって制御することができる。リソグラフィ及び蒸着技術を用いると、基板上にパターン及び特徴を生成し、様々な機能を実施することができる。例えば、周波数選択構造とスイッチング構成要素を1つのデバイスに組み込むことで、モノリシックQスイッチ光学素子を作製することができる。半導体ベースの設計の利点は、低損失(すなわち、赤外波長での低光子吸収)及び高効率を有する、金属を含まない構造を作製できることである。半導体の電荷キャリア密度を変更することにより、光学素子の屈折率が変化し、これにより光学素子の透過率、反射率及び/又は吸収率が変化することができる。例えば、p-n接合を含む半導体材料は、自由電荷キャリアが材料のバルク内に存在するような非バイアス時に、第1の光通過帯域を示すことができる。p-n接合を逆バイアスすると、自由電荷キャリアがほとんど存在しない空乏領域が発生し、これにより半導体の光通過帯域が変化する可能性がある。
【0154】
図9Aは、電荷キャリア密度の3つの異なる値((794)~(796))における周波数選択構造を含む光学素子と半導体を含むスイッチング構成要素との光透過周波数応答を示す図である。
図9Bは、電荷キャリア密度の3つの異なる値((794)~(796))における
図9Aの光学素子の光反射周波数応答を示す図である。
図9A及び
図9Bの例では、スイッチング構成要素はGaAsを含む。約9.7μm~約11.6μm(すなわち、約10.6μmの一次CO
2レーザ発光波長を含む)の放射波長に対する光学素子の光透過及び反射周波数応答を示す。第1の電荷キャリア密度(794)は、1立方センチメートルあたり約10
14個の電荷キャリアである。第1の電荷キャリア密度(794)は、印加された電磁場又は何れかの印加された電磁放射のない(すなわち、光学素子の周波数応答を切り替えるための信号の受信前)光学素子を表すことができる。第2の電荷キャリア密度(795)は、1立方センチメートルあたり約10
16個の電荷キャリアである。第2の電荷キャリア密度(795)は、第1の電磁場又は第1の電磁放射の印加後(すなわち、光学素子の周波数応答を切り替えるための第1の信号の受信後)の光学素子を表すことができる。第3の電荷キャリア密度(796)は、1立方センチメートルあたり約10
18個の電荷キャリアである。第3の電荷キャリア密度(796)は、第2の電磁場又は第2の電磁放射の印加後(すなわち、光学素子の周波数応答を切り替えるための第2の信号の受信後)の光学素子を表すことができる。第2の電磁場又は第2の電磁放射の大きさは、第1の電磁場又は第1の電磁放射の大きさよりも大きくてもよい。
【0155】
図9A及び
図9Bの両方を参照すると、第1の(すなわち最も低い)電荷キャリア密度状態(794)では、約10.6μmのCO
2レーザの主波長における光学素子の透過率は約93%の最高値にあり、光学素子の反射率は約3%の最低値である。第1の信号の受信後に電荷密度が第2の電荷キャリア密度(795)まで増加すると、約10.6μmにおける光学素子の透過率は約22%に減少し、光学素子の反射率は約38%に増加する(すなわち、光学素子の周波数応答が変化する)。第2の信号の受信後、電荷キャリア密度が第3の(すなわち最も高い)電荷キャリア密度状態(796)まで増加すると、光学素子の透過率は約0%に減少し、光学素子の反射率は約96%に増加する。このように、光学素子の周波数応答は、半導体スイッチング構成要素の電荷キャリア状態を調整するための電磁場又は電磁放射線の適用によって調整することができる。
【0156】
光学素子が、約10.6μmの波長を有する放射線のパルスを生成するように構成されたCO2レーザのリアミラーの一部を形成する場合、光学素子は、高透過率リアミラーとして動作することによって、電磁場又は電磁放射線を適用しない場合に低Q値を有するレーザに寄与することができる。これにより、共振キャビティ内で失われる光子の数が増加し、利得媒質がポンピングされている間にレーザ発振が発生するのを防ぐことができる。また、GaAs半導体から逆バイアスを除去するための信号を供給することも可能である。利得媒質が十分にポンピングされると、GaAs半導体スイッチング構成要素に電磁場又は電磁放射線を印加し、光学素子を含むリアミラーの反射率を約10.6μmの波長で増加させてレーザのQ値を高め、レーザ発振が発生するように信号を提供することができる。これにより、光学素子によるQスイッチングを介して、10.6μmに強力な放射パルスが発生することになる。
【0157】
上述した可能な実施構成は、周波数選択構造を含むQスイッチ光学素子を構成しスイッチングする多くの方法の内の一部である。
【0158】
光学素子の周波数選択構造は、多くの異なる形態をとることができる。
図10~
図13は、以前に説明した何れかの光学素子の一部を形成することができる異なる幾何学的特徴部のアレイを含む周波数選択構造の部分の4つの異なる例を提供する。
図10は、本開示の一態様による、スロット810の周期的パターンを含む周波数選択構造800の一部を上方から見た斜視図を概略的に描写している。
図10の例では、周期的パターンは、約30μmの長さと約30μmの幅を有する周波数選択構造800を形成する約3μmの周期性を有するスロット810の10×10のグリッドアレイを含む。
図11は、本開示の一態様による、十字架830の周期的パターンを含む周波数選択構造820の一部を上方から見た斜視図を概略的に描写している。
図11の例では、周期的パターンは、約30μmの長さ及び約30μmの幅を有する周波数選択構造820を形成する約3μmの周期性を有する十字架830の10×10グリッドアレイの形態を取る。
図12は、本開示の一態様による、リング850の周期的パターンを含む周波数選択構造840の一部を上方から見た斜視図を概略的に示している。
図12の例では、周期的パターンは、約15μmの長さ及び約15μmの幅を有する周波数選択構造840を形成する約1.5μmの周期性を有するリング850の10×10グリッドアレイを含む。
図13は、本開示の一態様による、分割リング870の周期的パターンを含む周波数選択構造860の一部を上方から見た斜視図を概略的に示している。
図13の例では、周期的パターンは、約15μmの長さ及び約15μmの幅を有する周波数選択構造860を形成する約1.5μmの周期性を有する分割リング870の10×10グリッドアレイを含む。
【0159】
周波数選択構造の何れかのサイズ(例えば、個々のアレイ構成要素の数及び/又はサイズ、並びにアレイの周期性)は、周波数選択構造に入射されるべきレーザビームのビームサイズに少なくとも部分的に基づいて選択することができる。
図10~
図13の何れにおいても、幾何学的特徴部は、リソグラフィ、蒸着、エッチング、ナノインプリントなどの付加的又は還元的製造技術を使用して形成することができる。
図10~
図13は、本開示の一態様による、光学素子の一部を形成することができる周波数選択構造の一部を示す。実際には、周波数選択構造は、
図10-13に示されるものよりも大きくてもよい。例えば、レーザをQスイッチするために使用される場合、アレイは、約3mm×3mmとすることができる。すなわち、光学素子は、
図10-13に示されるアレイの約1万個を組み込むことができる。
【0160】
図14は、本開示の一態様による、CO
2レーザ900の側面からの斜視図を概略的に示している。CO
2レーザ900は、赤外電磁放射(図示せず)を生成するように構成される。CO
2レーザ900は、実質的に周期的なパターンの特徴部を有する周波数選択構造を含む光学素子(図示せず)を備える。光学素子の周波数応答は、信号の受信時に変化するように構成され、CO
2レーザ900のQ値は、信号の受信時に変化する。光学素子は、上述し、
図2~
図6A及び
図7Aに描かれた光学素子の何れかとすることができ、上述の
図10~
図13に描かれた周波数選択構造の何れかを含む。
【0161】
CO
2レーザ900は、CO
2利得媒質(
図14では見えない)を含むレーザ共振キャビティ901を備える。CO
2レーザ900は、レーザキャビティ901内のCO
2利得媒質を励起して赤外電磁放射を生成するように構成された高周波数(「RF」)励起源904を備える。RF励起源904は、約150W以上のRF電力を提供するように構成することができる。RF励起源904は、約1kW以下のRFパワーを提供するように構成することができる。RF励起源904は、約80MHz以上の周波数でRF電力を提供するように構成することができる。RF励起源904は、約120MHz以下の周波数でRF電力を提供するように構成することができる。RF励起源904は、約100MHz以上の周波数でRF電力を提供するように構成することができる。RF励起源904は、約0.1μsec以上の持続時間でCO
2利得媒質にRF電力を提供するように構成することができる。RF励起源904は、約1.0μsec以下の持続時間にわたってCO
2利得媒質にRF電力を提供するように構成することができる。RF励起源904は、CO
2利得媒質にRF電力を連続的に提供するように構成することができる。RF励起源904のパルス持続時間は、CO
2レーザのユーザによって制御される場合がある。RF励起源904のパルス持続時間は、所望のレーザエネルギー(例えば、パルスエネルギー)、CO
2レーザ900の平均パワー、パルス繰り返し周波数、及びレーザマーキングシステムの使用例では、製品全体のレートの内の1又は2以上に少なくとも部分的に依存することができる。
【0162】
CO2レーザ900は、約10Wの平均電力を有する赤外線電磁放射を生成するように構成することができる。CO2レーザ900は、約30Wの平均電力を有する赤外電磁放射を生成するように構成することができる。CO2レーザ900は、約50Wの平均電力を有する赤外電磁放射を生成するように構成することができる。CO2レーザ900は、約100Wの平均電力を有する赤外電磁放射を生成するように構成することができる。CO2レーザ900は、短パルス赤外電磁放射を生成するように構成することができる。CO2レーザ900は、短パルス(パルス幅>0.1nsec及び<500μsec)の赤外電磁放射を生成するように構成することができる。
【0163】
CO2レーザ900は、CO2レーザ900をQスイッチするための信号を光学素子に提供するように構成された制御システム902を含む。信号は、バイアス電圧を含むことができる。バイアス電圧は、0Vより大きくてもよい。バイアス電圧は、約20V以下とすることができる。バイアス電圧は、約1ns以上印加することができる。バイアス電圧は、約150ns以下の間、印加することができる。バイアス電圧が印加される持続時間は、CO2レーザ900によって生成されるべき所望の出力エネルギー(例えば、レーザパルスエネルギー)に少なくとも部分的に依存して選択することができる。或いは、信号は、レーザパルスを含むことができる。レーザパルスは、短パルスレーザダイオードによって生成することができる。制御システム902はまた、レーザキャビティ901内のCO2利得媒質を励起するために、RF励起源904に別の制御信号を提供するように構成される。信号は、光学素子のスイッチング構成要素のバイアスレベルを制御するように構成することができる。信号は、CO2レーザ900のレーザ出力指令とCO2レーザ900のQスイッチングの開始との間のタイミングを制御するように構成することができる。
【0164】
CO
2レーザ900は、RF励起源904からレーザ共振キャビティ901内のCO
2利得媒質に電力を伝送するように構成されたフィードスルー906を含む。CO
2レーザ900は、レーザキャビティ901をCO
2ガスで充填するための流体入力908を備える。CO
2レーザ900は、出力カプラー910を備える。出力カプラー910は、CO
2レーザ900によって生成された赤外線電磁放射(例えば、赤外線電磁放射のパルス)を出力するように構成された部分反射ミラーを備えることができる。CO
2レーザは、CO
2利得媒質が出力カプラー910とリアミラーとの間に位置するように、出力カプラー910と対向するリアミラー(
図14では見えない)を備える。すなわち、CO
2利得媒質を含むレーザ共振キャビティ901は、リアミラーと出力カプラー901との間に形成されている。周波数選択構造を含む光学素子は、CO
2レーザ900の複数の異なる位置に配置することができる。
図15~17は、光学素子がCO
2レーザに配置することができる場所の異なる例を示す。
【0165】
図15は、
図14のCO
2レーザの出力カプラーの断面図を概略的に示している。CO
2レーザによって生成された赤外線電磁放射(図示せず)は、レーザキャビティ901内のボア912に沿って伝播し、出力カプラー910と相互作用する。ボアは、例えば、アルミナで形成することができる。出力カプラー910は、例えば、ZnSeで形成することができる。出力カプラー910は、赤外線電磁放射の一部をボア912を通してリアミラー(図示せず)に向けて反射させる。また、出力カプラー910は、赤外電磁放射線の一部を出力レーザ光としてレーザ共振キャビティ901の外部に透過させる。
図15の例では、実質的に周期的なパターンの特徴部を有する周波数選択構造を含む光学素子914は、CO
2レーザの出力カプラー910の一部を形成する。前述したように、光学素子914の周波数特性は、信号の受信時にCO
2レーザのQ値が変化するように、信号の受信時に変化するように構成される。光学素子914は、ZnSe、GaAs、Ge又はZnSを含むことができる。これらの透過性基材は、レーザキャビティ901のボア912内に存在するCO
2レーザプラズマに適合する。約10.6μmの波長におけるZnSeの複素屈折率(n+jk)は、約(2.4028)とすることができる。約10.6μmの波長におけるGaAsの複素屈折率(n+jk)は、約(3.2646+j0.00029)とすることができる。約10.6μmの波長におけるGeの複素屈折率(n+jk)は、約(4.0038)とすることができる。約10.6μmの波長におけるZnSの複素屈折率(n+jk)は、約(2.1925+j0.002)とすることができる。
【0166】
図16は、
図14のCO
2レーザのリアミラー916の断面図を概略的に示している。CO
2レーザによって生成された赤外電磁放射(図示せず)は、レーザキャビティ901内のボア912に沿って伝播し、リアミラー916と相互作用する。リアミラー916は、赤外線電磁放射の実質的に全てを、ボア912を通って出力カプラー(図示せず)に向かって反射するように構成される。リアミラー916は、例えば、シリコンで形成することができる。
図16の例では、実質的に周期的なパターンの特徴部を有する周波数選択構造を含む光学素子918は、CO
2レーザのリアミラー916の一部を形成する。前述したように、光学素子918の周波数特性は、信号の受信時にCO
2レーザのQ値が変化するように、信号の受信時に変化するように構成される。
図15の例では、光学素子918は、赤外線電磁放射を少なくとも部分的に送信するように構成された出力カプラーの一部を形成するが、
図16の例では、光学素子918は、赤外線電磁放射を反射するように構成されたリアミラー916の一部を形成する。このように、
図16の光学素子918は、
図15の光学素子916とは異なる材料で形成されている。
図15及び16に示された2つの実施構成は、同時に使用されることはないことは理解されるであろう。
図16の光学素子918は、例えば、シリコン又はGaAsを含むことができる。これらの反射性ベース材料は、レーザキャビティ901のボラ912に存在するCO
2レーザプラズマと互換性がある。約10.6μmの波長におけるシリコンの複素屈折率(n+jk)は、約(3.4179+j0.0001223)とすることができる。約10.6μmの波長におけるGaAsの複素屈折率(n+jk)は、約(3.2646+j0.00029)とすることができる。
【0167】
図17は、本開示の一態様による、フォールドキャビティ922を含むCO
2レーザ920の斜視図を概略的に示している。CO
2レーザ920は、赤外電磁放射(図示せず)を生成するように構成される。CO
2レーザ920は、実質的に周期的なパターンの特徴部を有する周波数選択構造を含む光学素子(図示せず)を備える。光学素子の周波数応答は、信号の受信時に変化するように構成され、CO
2レーザ920のQ値は、信号の受信時に変化する。光学素子は、上述し、
図2~
図6A及び
図7Aに描かれた光学素子の何れかであってよく、上述し、
図10~
図13に描かれた周波数選択構造の何れかを含む。
【0168】
フォールドレーザ共振キャビティ922は、CO
2利得媒質(
図17では見えない)を含む。CO
2レーザ920は、赤外電磁放射を生成するためにフォールドレーザキャビティ922内のCO
2利得媒質を励起するように構成された高周波数(「RF」)励起源(図示せず)を含む。RF励起源は、
図14を参照して上述したRF励起源904と実質的に同じであってよく、その詳細は、不必要な重複を避けるためにここでは繰り返さない。
【0169】
CO2レーザ920は、約10Wの平均電力を有する赤外線電磁放射を生成するように構成することができる。CO2レーザ920は、約30Wの平均電力を有する赤外電磁放射を生成するように構成することができる。CO2レーザ920は、約50Wの平均電力を有する赤外電磁放射を生成するように構成することができる。CO2レーザ920は、約100Wの平均電力を有する赤外電磁放射を生成するように構成することができる。CO2レーザ900は、短パルス赤外電磁放射を生成するように構成することができる。CO2レーザ900は、短パルス(パルス幅>0.1nsec及び<500μsec)の赤外電磁放射を生成するように構成することができる。
【0170】
CO2レーザ920は、CO2レーザ920をQスイッチするための信号を光学素子に提供するように構成された制御システム924を含む。信号は、バイアス電圧を含むことができる。バイアス電圧は、0Vより大きくてもよい。バイアス電圧は、約20V以下とすることができる。バイアス電圧は、約1ns以上の間印加することができる。バイアス電圧は、約100μs以下の間、印加することができる。バイアス電圧は、約150ns以下の間、印加することができる。バイアス電圧が印加される持続時間は、CO2レーザ920によって生成されるべき所望の出力エネルギー(例えば、レーザパルスエネルギー)に少なくとも部分的に依存して選択することができる。或いは、信号は、レーザパルスを含むことができる。レーザパルスは、短パルスレーザダイオードによって生成することができる。制御システム924はまた、フォールドレーザキャビティ922内のCO2利得媒質を励起するために、RF励起源に別の制御信号を提供するように構成される。
【0171】
CO
2レーザ900は、出力カプラー910を備える。出力カプラー910は、CO
2レーザ920によって生成された赤外線電磁放射(例えば、赤外線電磁放射のパルス)を出力するように構成された部分反射ミラーで構成することができる。CO
2レーザ920は、複数のフォールドミラー926,928を備える。
図17の例では、CO
2レーザ920は、4つのフォールドミラー926,928を含み、そのうち2つは可視である。フォールドミラー926,928は、フォールドキャビティ922の平行な長さに沿って赤外線電磁放射を向けるように構成される。CO
2レーザ920は、CO
2利得媒質が出力カプラー910とリアミラーとの間に位置するように、フォールドミラー926の1つに対向するリアミラー(
図17では見えない)を備える。すなわち、CO
2利得媒質を含むフォールドレーザ共振キャビティ922は、リアミラーと出力カプラー910の間に形成される。周波数選択構造を含む光学素子は、フォールドキャビティ922を含むCO
2レーザ920において、複数の異なる位置に配置することができる。
図18及び19は、CO
2レーザ920に光学素子を配置することができる場所の異なる例を示す。
【0172】
図18は、
図17のCO
2レーザのフォールドミラー926、928の内の2つと出力カプラー910の断面図を概略的に示している。CO
2レーザによって生成された赤外電磁放射(図示せず)は、フォールドレーザキャビティ922内のボア912に沿って伝播し、出力カプラー910と相互作用する。ボア912は、例えば、アルミナで形成することができる。出力カプラー910は、例えば、ZnSeで形成することができる。出力カプラー910は、赤外線電磁放射の一部をボア912を通ってリアミラー(図示せず)に向けて反射させる。出力カプラー910はまた、赤外電磁放射線の一部を出力レーザ光としてフォールドレーザ共振キャビティ922の外部に透過させる。
図18の例では、実質的に周期的なパターンの特徴部を有する周波数選択構造を含む光学素子914は、CO
2レーザのフォールドミラー926の内の1つの一部を形成する。前述したように、光学素子914の周波数特性は、信号の受信時に変化して、信号の受信時にCO
2レーザのQ値が変化するように構成される。光学素子914は、シリコン又はGaAsを含むことができる。これらの反射性ベース材料は、フォールドキャビティ922のボア912に存在するCO
2レーザプラズマと互換性がある。約10.6μmの波長におけるシリコンの複素屈折率(n+jk)は、約(3.4179+j0.0001223)とすることができる。約10.6μmの波長におけるGaAsの複素屈折率(n+jk)は、約(3.2646+j0.00029)とすることができる。
【0173】
図19は、本開示の一態様による、受動光学構成要素930を更に含む、
図17のCO
2レーザのフォールドミラー926、928及び出力カプラー910の内の2つの断面図を概略的に示す。
図19の例では、実質的に周期的なパターンの特徴部を有する周波数選択構造を含む光学素子914は、受動光学構成要素930の一部を形成する。前述したように、光学素子914の周波数応答は、信号の受信時に変化して、信号の受信時にCO
2レーザのQ値が変化するように構成される。受動光学構成要素930は、CO
2レーザのフォールドレーザ共振キャビティ922に配置される。
図19の例では、受動光学素子930は、CO
2レーザのフォールドミラー926,928の内の2つの間に配置されている。受動光学素子930は、CO
2レーザのフォールドキャビティ922内の他の場所に配置されてもよい。
図19の例では、受動光学構成要素930は、光学素子914が搭載された透過型ディスクを含む。受動光学構成要素930は、例えば、ZnSe、GaAs、Ge又はZnSを含むことができる。光学素子は、例えば、ZnSe、GaAs、Ge又はZnSを含むことができる。これらの透過性基材は、CO
2レーザのフォールドキャビティ922のボア912に存在するCO
2レーザプラズマに適合する。約10.6μmの波長におけるZnSeの複素屈折率(n+jk)は、約(2.4028)とすることができる。波長約10.6μmのGaAsの複素屈折率(n+jk)は、約(3.2646+j0.00029)であることができる。約10.6μmの波長におけるGeの複素屈折率(n+jk)は、約(4.0038)とすることができる。約10.6μmの波長におけるZnSの複素屈折率(n+jk)は、約(2.1925+j0.002)とすることができる。
【0174】
図15の実施例において、光学素子914は、グラフェンを含む。グラフェンの誘電率は、信号の受信時に変化するように構成することができる。約10.6μmの波長におけるグラフェンの複素屈折率(n+jk)は、信号の受信時に約(4.45-j4.34)と約(14.43-j0.08)の間で変化することができる。
【0175】
図15、16、18、及び19の例では、光学素子はグラフェンを含む。グラフェンの誘電率は、CO
2レーザをQスイッチするために使用される信号の受信時に変化するように構成することができる。波長約10.6μmにおけるグラフェンの複素屈折率(n+jk)は、信号の受信時に約(4.45-j4.34)と約(14.43-j0.08)の間で変化することができる。光学素子は、異なる材料で構成することができる。例えば、光学素子914は、信号の受信時に位相を変化させるように構成された相変化材料で構成することができる。相変化材料は、例えば、VO
2を含むことができる。約10.6μmの波長におけるVO
2の複素屈折率(n+jk)は、信号の受信時に、絶縁状態の約(2.1+j0.16)から金属状態の約(7.8+j5.8)の間で変化することができる。或いは、光学素子914は、半導体を備えることができる。半導体の電荷キャリア密度は、信号の受信時に変化するように構成することができる。半導体は、例えば、GaAs、Si、又はGeを含むことができる。CO
2レーザをQスイッチするために光学素子に提供される信号がレーザパルスである場合、半導体は、レーザパルスと相互作用するように構成された光伝導デバイスの一部を形成することができる。
【0176】
上述のように、光学素子は、スイッチング構成要素に動作可能に結合され、信号を受信し且つ信号をスイッチング構成要素に送信するように構成された信号伝送構成要素を含むことができる。信号伝送構成要素は、導電性材料の層を含むことができる。導電性材料の層は、金、ニッケル、アルミニウム、及び酸化インジウムスズ(ITO)の内の少なくとも1つを含むことができる。光学素子は、絶縁材料を含むことができる。絶縁材料は、例えば、酸化アルミニウム及び酸化ハフニウムの内の1又は2以上を含むことができる。絶縁材料は、他の材料を含むことができる。
【0177】
図20は、本開示の一態様による、CO
2レーザ942を含むレーザマーキングシステム940を概略的に示している。CO
2レーザは、上述し、
図14~19に示されたCO
2レーザの何れかと同じとすることができる。これは、不必要な重複を避けるために、ここで再び説明されない。レーザマーキングシステム940は、CO
2レーザ942に電力を供給するように構成された電源944を備える。レーザマーキングシステム940は、CO
2レーザ942をQスイッチする信号を光学素子に提供して、CO
2レーザ内のCO
2利得媒質を励起するための別の制御信号を提供するように構成された制御システム946を備える。
図20の例では、CO
2レーザ942によって生成された赤外線電磁放射946は、製品952をマーキングするように構成されている。CO
2レーザ942は、赤外電磁放射946のパルスを生成するように構成することができる。製品952は、生産ライン960(例えば、コンベアベルト)に沿って移動する複数の製品950~954の内の1つとすることができる。
【0178】
図21は、本開示の一態様による、赤外線電磁放射を生成するためにCO
2レーザをQスイッチする方法のフローチャートを示す。本方法の第1のステップ971は、CO
2レーザのCO
2利得媒質を励起するステップを含む。本方法の第2のステップ972は、CO
2レーザの光学素子上の実質的に周期的なパターンの特徴部を有する周波数選択構造の周波数応答を変化させ、これにより赤外電磁放射のパルスを生成する信号を生成するステップを含む。信号を生成するステップは、電気信号又は光信号(例えば、レーザパルス)を生成するためにコントローラを動作するステップを含むことができる。本方法によって生成された赤外線電磁放射は、製品にマーキングするように構成することができる。本方法は、短パルス赤外線電磁放射を生成する任意選択のステップを含むことができる。CO
2レーザは、赤外線電磁放射の短パルス(パルス幅>0.1nsec及び<500μsec)を生成するように構成することができる。
【0179】
図22は、本開示の一態様による、赤外電磁放射で標的をマーキングする方法を示す。本方法の第1のステップ981は、CO
2レーザのCO
2利得媒質を励起するステップを含む。本方法の第2のステップ982は、CO
2レーザの光学素子上の実質的に周期的なパターンの特徴部を有する周波数選択構造の周波数応答を変化させ、これにより赤外電磁放射のパルスを生成することによって、CO
2レーザをQスイッチする信号を生成するステップを含む。本方法983の第3のステップは、赤外電磁放射のパルスを標的に向けるステップを含む。信号を生成するステップは、電気信号又は光信号(例えば、レーザパルス)を生成するためにコントローラを動作するステップを含むことができる。本方法は、短パルスの赤外線電磁放射を生成する任意選択のステップを含むことができる。CO
2レーザは、短パルス(パルス幅>0.1nsec及び<500μsec)の赤外電磁放射を生成するように構成することができる。
【0180】
本明細書に記載されたCO2レーザは、多くの異なる用途で使用することができることが理解されるであろう。CO2レーザは、例えば、レーザマーキング及びコーディング、彫刻、穴あけ、切断、穿孔、溶接(金属及びプラスチック)、表面処理(レーザピーニング、硬化、研磨、粗面化、黒化)、錆除去、塗装除去などの産業用途に使用することができる。CO2レーザは、例えば、レーザメス、耳鼻科及び頭頸部外科処置、婦人科手術、病変及び腫瘍除去、血管手術、口腔軟組織手術、エナメル切除、インプラント歯科、刺青除去、片頭痛治療のためのレーザ誘起侵害受容電位、熱傷治療、皮膚表面処理、アザ除去、ホクロ及びウイルス性イボ除去、皮膚老化、顔の傷跡除去などの医療応用に使用できる。CO2レーザによって提供される所望のパワーは、少なくとも部分的に、CO2レーザ上のアプリケーションに依存する。例えば、ほとんどの外科手術のような軟質材料の用途のために、CO2レーザは、10~20Wの範囲の電力を有する赤外線電磁放射を生成することができる。別の例として、幾つかの金属レーザ加工アプリケーションでは、CO2レーザは、40~50Wの範囲の電力を有する赤外電磁放射を生成することができる。更なる例として、幾つかのプラスチックレーザ加工用途のために、CO2レーザは、約30Wの電力を有する赤外電磁放射を生成することができる。
【0181】
このようにして、少なくとも1つの実施態様の複数の態様を説明したが、様々な変更、修正、及び改善が当業者に容易に生じることが理解されるであろう。このような変更、修正、及び改善は、本開示の一部であり、本開示の精神及び範囲内であることが意図される。本明細書に開示された方法の動作は、図示されたものとは別の順序で実行されてもよく、1又は2以上の動作は省略、置換、又は追加することができる。本明細書に開示された何れかの1つの実施例の1又は2以上の特徴は、開示された他の実施例の1又は2以上の特徴と組み合わせることができ、又は置き換えることもできる。従って、前述の説明及び図面は、例示に過ぎない。
【0182】
本明細書で使用される語句及び用語は、説明のためのものであり、限定とみなされるべきではない。本明細書で使用される用語「複数」は、2又は3以上のアイテム又は構成要素を指す。本明細書で使用する場合、「実質的に類似している」と記載されている寸法は、互いの約25%以内と考えるべきである。用語「備える」、「含む」、「保持する」、「有する」、「包含する」、及び「伴う」は、明細書又は請求項などにかかわらず、「含むがこれに限定されない」という意味のオープンエンドの用語である。従って、このような用語の使用は、その後に列挙された項目、及びその均等物、並びに追加の項目を包含することを意味する。クレーム要素を修正するために請求項において「第1」、「第2」、「第3」等の序数用語を使用することは、それ自体、あるクレーム要素の他のものに対する優先順位、先行順位、順序、又は方法の動作が行われる時間的順序を意味するものではなく、単に、ある名称を有するあるクレーム要素と同じ名称を有する他の要素(ただし序数用語の使用のため)を区別するための標識として使用される。
【国際調査報告】