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特表2024-500797過剰な核酸沈殿を阻害するための方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】過剰な核酸沈殿を阻害するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/14 20060101AFI20231227BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20231227BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20231227BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20231227BHJP
   C07K 1/16 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C07K1/14
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C07K1/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537314
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 IB2021061943
(87)【国際公開番号】W WO2022137058
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】63/199,368
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/263,924
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
3.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【弁理士】
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100147186
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 眞紀
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【弁理士】
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】ネハ カラ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム キッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ライトホルダー
(72)【発明者】
【氏名】ズオ リュー
(72)【発明者】
【氏名】エリック ヴォースト
(72)【発明者】
【氏名】タマラ ゼコビック
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA20
4H045CA01
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA05
4H045GA21
4H045GA22
4H045GA23
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、宿主細胞によって作製された生物由来生成物の精製における使用のための改善された方法について記載する。一部の実施形態では、改善された方法は、界面活性剤等により宿主細胞を溶解して、生物由来生成物を放出させ、ドミフェン臭化物等により宿主細胞DNAを沈殿させ、次いで、十分な最終濃度となるように塩を添加することにより、生物由来生成物を含有する上清における残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害する1つまたは複数のステップを含む。一部の実施形態では、生物由来生成物は、ワクチン、またはAAVベクターもしくはレンチウイルスベクター等の遺伝子療法のためのウイルスベクターである。
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解された宿主細胞の試料から宿主細胞DNAを除去する方法であって、(i)宿主細胞を溶解し、ライセートを産生するステップと、(ii)ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させ、凝結物および上清を産生するステップと、(iii)凝結物から上清を分離するステップと、(iv)上清における残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するステップとを含む方法。
【請求項2】
宿主細胞が、生理的に適合性の流体に懸濁され、細胞懸濁液が形成され、細胞溶解を引き起こすのに十分な濃度の界面活性剤を含む溶液を細胞懸濁液に添加することにより溶解される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細胞懸濁液および界面活性剤溶液を混合するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
生理的に適合性の流体に懸濁される前に、宿主細胞が、基材における接着細胞培養として、または懸濁細胞培養において育成または維持される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
界面活性剤が、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤または双性イオン性界面活性剤である、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
非イオン性界面活性剤が、アルキルフェノールエトキシレート、4-アルキルフェノールエトキシレート、オクチルフェノールエトキシレート、4-オクチルフェノールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、4-ノニルフェノールエトキシレート、Triton X-100、Triton X-114、NP-40、Tween 20およびTween 80からなる界面活性剤化合物の群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
非イオン性界面活性剤が、Triton X-100である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
溶解に先立ち、細胞懸濁液における宿主細胞の生細胞密度が、少なくとも約10×10vc/mLである、請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
宿主細胞の生細胞密度が、約10×10~30×10vc/mLまたは約15×10~25×10vc/mLの範囲に及ぶ、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
宿主細胞が、哺乳類細胞または昆虫細胞である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
宿主細胞が、HEK293細胞、CHO細胞、HeLa細胞、Sf9細胞およびSf1細胞からなる細胞の群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ライセートにおける界面活性剤の最終濃度が、少なくとも0.3%である、請求項2から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ライセートにおける界面活性剤の最終濃度が、約0.3%~0.7%または約0.4%~0.6%の範囲に及ぶ、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ライセートにおける界面活性剤の最終濃度が、約0.5%である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ライセートにおける宿主細胞DNAが、ドミフェンハロゲン化物を含む溶液をライセートに添加することにより沈殿される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ライセートと、ドミフェンハロゲン化物を含む溶液とを混合するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ドミフェンハロゲン化物が、ドミフェン臭化物(DB)である、請求項15から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ライセートにおけるDBの最終濃度が、少なくとも0.15%である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ライセートにおけるDBの最終濃度が、約0.15%~0.45%、約0.2%~0.4%または約0.2%~0.3%の範囲に及ぶ、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ライセートにおけるDBの最終濃度が、約0.3%である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
溶解に先立つ生細胞密度に対するライセートにおけるDBの最終濃度が、1×10vc/mL当たり0.009%、0.008%または0.007%以上である、請求項17から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
生理的に適合性の流体における宿主細胞の生細胞密度が、約10×10vc/mL~30×10vc/mLの範囲に及び、界面活性剤が、Triton X-100であり、ライセートにおけるTriton X-100の最終濃度が、約0.3%~0.7%または約0.35%~0.65%または約0.4%~0.6%の範囲に及び、ライセートにおけるDBの最終濃度が、約0.15%~0.45%または約0.2%~0.4%または約0.2%~0.3%の範囲に及ぶ、請求項17から18および21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
生理的に適合性の流体における宿主細胞の生細胞密度が、約15×10vc/mL~25×10vc/mLの範囲に及び、界面活性剤が、Triton X-100であり、ライセートにおけるTriton X-100の最終濃度が、約0.3%~0.7%または約0.35%~0.65%または約0.4%~0.6%の範囲に及び、ライセートにおけるDBの最終濃度が、約0.15%~0.45%または約0.2%~0.4%または約0.2%~0.3%の範囲に及ぶ、請求項17から18および21から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
Triton X-100の最終濃度が、約0.5%であり、DBの最終濃度が、約0.3%である、請求項17から18および21から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
重力の影響下で沈降させ、沈降した凝結物の下層および上清の上層を形成することにより、上清が、凝結物から分離される、請求項1から12、15から18および21から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
上清を除去および濾過するステップをさらに含む、請求項1から12、15から18および21から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
上清における残渣宿主細胞DNAの沈殿が、宿主細胞DNAの沈殿を阻害するのに十分な濃度の塩を含む溶液を上清に添加することにより阻害される、請求項1から12、15から18および21から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
塩が、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、硫酸マグネシウム(MgSO)または塩化マグネシウム(MgCl)である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
上清および塩溶液を混合するステップをさらに含む、請求項27から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
溶解に先立ち、宿主細胞の生細胞密度が、少なくとも約10×10vc/mLであり、ライセートにおけるDBの最終濃度が、少なくとも約0.2%であり、塩が、MgSOまたはMgClであり、上清における添加された塩の最終濃度が、少なくとも約10mMである、請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
溶解に先立ち、宿主細胞の生細胞密度が、少なくとも約10×10vc/mLであり、ライセートにおけるDBの最終濃度が、少なくとも約0.2%であり、塩が、NaClまたはKClであり、上清における添加された塩の最終濃度が、少なくとも約100mMである、請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
溶解に先立つ生細胞密度に対するライセートにおけるDBの最終濃度が、1×10vc/mL当たり0.007%以上である、請求項17から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
生理的に適合性の流体における宿主細胞の生細胞密度が、約10×10vc/mL~30×10vc/mLの範囲に及び、ライセートにおけるDBの最終濃度が、約0.2%~0.4%または約0.2%~0.3%の範囲に及び、塩が、NaClまたはKClであり、上清における添加された塩の最終濃度が、少なくとも約100mMもしくは少なくとも約200mMであるか、または約200mM~約700mMの範囲に及ぶ、請求項28から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
生理的に適合性の流体における宿主細胞の生細胞密度が、約15×10vc/mL~25×10vc/mLの範囲に及び、ライセートにおけるDBの最終濃度が、約0.2%~0.4%または約0.2%~0.3%の範囲に及び、塩が、NaClまたはKClであり、上清における添加された塩の最終濃度が、少なくとも約100mMもしくは少なくとも約200mMであるか、または約200mM~約700mMの範囲に及ぶ、請求項28から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
界面活性剤が、Triton X-100であり、ライセートにおけるTriton X-100の最終濃度が、少なくとも約0.3%であるか、または約0.3%~0.7%もしくは0.35%~0.65%もしくは0.4%~0.6%の範囲に及ぶか、または約 0.5%である、請求項27から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
Triton X-100の最終濃度が、約0.5%であり、DBの最終濃度が、約0.3%である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
上清および塩溶液の混合物を濾過するステップをさらに含む、請求項29から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
下流精製処理ステップを行うことにより、生物由来生成物を精製するステップをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
上清および塩溶液の混合物が、下流精製処理ステップを行う前に、少なくとも3時間保持される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
生物由来生成物が、異種遺伝子を発現するための組換えウイルスベクターである、請求項1から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
組換えウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
組換えウイルスベクターが、AAVベクターである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
AAVベクターが、HSPGと比較してシアル酸またはガラクトースにより強く結合するカプシドを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
AAVベクターが、AAV1、AAV4、AAV5またはAAV9カプシドを含む、請求項42から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
下流精製処理ステップが、クロマトグラフィーを含む、請求項42から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15回またはそれを超えるクロマトグラフィー精製サイクルの後に、少なくとも50%、60%または70%のAAVベクター収率をもたらすのに有効である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
少なくとも5回のクロマトグラフィー精製サイクルの後に、少なくとも50%のAAVベクター収率をもたらすのに有効である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
クロマトグラフィーが、親和性クロマトグラフィー、偽親和性クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーまたはサイズ排除クロマトグラフィーである、請求項45から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
親和性クロマトグラフィーが、免疫親和性クロマトグラフィーである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
エンドヌクレアーゼが、ライセートに添加されない、請求項1から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
塩が、凝結物から上清を分離するステップに先立ち添加されない、請求項1から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
溶解に先立つ細胞懸濁液の体積が、少なくとも100Lである、請求項1から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
請求項1から52のいずれか一項に記載の方法によって産生された生物由来生成物。
【請求項54】
アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターからなる群から選択される、異種遺伝子を発現するための組換えウイルスベクターである、請求項53に記載の生物由来生成物。
【請求項55】
AAVベクターである、請求項54に記載の生物由来生成物。
【請求項56】
請求項55に記載のAAVベクターを含む組成物。
【請求項57】
前記AAVベクター組成物におけるカプシドが、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%フルカプシドである、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
約200、150、100、90、80、70、60、50、45、40、35、30、25または20pg/1×10vg以下の宿主細胞DNAを含む、請求項56から57のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月21日に出願された米国仮出願第63/199,368号および2021年11月11日に出願された米国仮出願第63/263,924号の利益を主張するものであり、これら仮出願のそれぞれの内容は、これにより、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
培養において維持された様々な種類の細胞は、所望の生成物を作製するための生物工場として機能することができる。そのような生成物は、改変されていない細胞によって作製された天然起源の化合物を含むが、細胞は、そのような細胞が通常産生できない、単純な分子およびより複雑な分子、さらにはウイルスのような超分子構造を産生するように、遺伝子操作技術を使用して改変することもできる。例として、ヒト成長ホルモンもしくはインスリン等の相対的に単純なタンパク質を発現するように操作されたプラスミドを細菌にトランスフェクトすること、または細胞が、酵素、凝固因子および抗体等のより複雑化されたタンパク質を産生するように導くことができる外来性遺伝物質で、酵母、哺乳類もしくは昆虫細胞等の真核細胞を形質転換することが挙げられる。この技術は、他の仕方では不可能となる、重要な医学的および産業的な用途を有する生物由来生成物の効率的な産生を可能にした。
【0003】
細胞によって作製された一部の生物由来生成物は、周囲の培地へと分泌され、この培地から、生成物を直接的に精製することができ、この際、細胞は典型的に廃棄されるであろう。しかし、他の場合では、所望の生物由来生成物は分泌されず、その代わりに、生細胞内に大部分がまたは完全に保持される。したがって、精製は、様々な仕方で細胞膜を破壊し、細胞の内容物が周囲の培地へとあふれ出すことを可能にすることを要求する。このアプローチは、保持された生物由来生成物を細胞から放出させるのに有効であるが、問題になっている生成物のための純度の一般的な標準に従うために1つまたは複数の下流処理ステップにおいて除去されなければならない、他の全ての細胞内容物も放出するという不利益を有する。例えば、哺乳類細胞は、多くの異なる種類の組換え生物学的製剤の産生に使用されており、米国食品医薬品局は、薬物製品中に存在し得る細胞由来夾雑物の最大量を規定するガイダンスを発行した。これらの厳密な標準に従うということは、生成物収率の観点から非効率的でありかつ実行するのに費用がかかる、複雑な精製スキームを要求し得る。
【0004】
FDAが限定することを求める細胞由来夾雑物の1つは、DNAであり、粗細胞ライセートから細胞由来DNAを除去するために様々なアプローチが開発された。一般的な方法は、下流処理ステップにおいてより容易に除去することができるかまたは依然として存在していたとしても薬物製品中で検出不能となり得る、より小型の断片へと細胞DNAを消化するように作用する、ベンゾナーゼ(Benzonase)等のエンドヌクレアーゼをライセートに添加することである。エンドヌクレアーゼは、高価な試薬であるが、下流で除去されなければならないライセート中の別の生物由来構成成分を表す。これらの不利益のため、粗ライセートから細胞由来DNAを除去するための他の戦略が開発された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エンドヌクレアーゼに頼らない、ライセートから細胞DNAを除去するためのアプローチは、ドミフェン臭化物(DB)等のカチオン性界面活性剤を十分な量で添加して、DNAを沈殿させることである。溶液から凝結物(flocculant)の塊として沈降させられる場合、沈殿したDNAは、上清から容易に分離され得、これは次いで、1つまたは複数の下流精製ステップにおいてさらに処理され得る。このアプローチは、より少ない費用と共に、いずれかの下流ステップが実行される前の相当量の宿主細胞DNAの除去(エンドヌクレアーゼは、DNAを除去するのではなく、これをより小型の断片へと単純に消化する)の利点を享受する。しかし、本発明者らは、部分的に清澄化された上清中の残渣細胞DNAおよびカチオン性界面活性剤が反応し続け、懸濁液中に残って経時的な濁度の増加として検出することができる小型の凝集物を形成することができることを観察した。沈殿反応が十分な長さで進む場合、懸濁された粒子は、下流精製ステップにおいて使用されるクロマトグラフィーカラムを詰まらせ、生物由来生成物の収率が許容される値を下回る前に、新鮮なカラムが耐え得る実行サイクルの数を低減させる可能性がある。したがって、当技術分野において、界面活性剤による清澄化されたライセートにおける残渣DNAの望まれない沈殿を防止しつつ、カチオン性界面活性剤を用いた沈殿によって粗細胞ライセートから細胞DNAを除去するための改善された方法の必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、望ましい生物由来生成物を精製することを意図する下流処理ステップに干渉し得る残渣宿主細胞DNAのその後の沈殿を阻害しつつ、粗宿主細胞ライセートから宿主細胞DNAおよび他の夾雑物を除去するための新規方法、組成物およびシステムを提供することにより、当技術分野における必要に取り組む。ある特定の非限定的な実施形態において、そのような生成物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを含む。
【0007】
当業者であれば、本明細書に記載されている本開示の具体的な実施形態の多くの均等物を認識するであろう、または単なるルーチン実験法を使用してこれを確かめることができるであろう。そのような均等物は、次の実施形態(E)によって包含されることが意図される。
E1.溶解された宿主細胞の試料から宿主細胞DNAを除去する方法であって、(i)宿主細胞を溶解し、ライセートを産生するステップと、(ii)ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させ、凝結物および上清を産生するステップと、(iii)凝結物から上清を分離するステップと、(iv)上清における残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するステップと、場合により(v)宿主細胞によって産生された生物由来生成物を精製するステップとを含む方法。
E2.宿主細胞が、機械的に、浸透圧的に、化学的にまたは酵素的に溶解される、E1に記載の方法。
E3.宿主細胞が、育成培地等の生理的に適合性の流体に懸濁され、細胞溶解を引き起こすのに十分な濃度の界面活性剤を含む溶液を細胞懸濁液に添加することにより化学的に溶解される、E1またはE2に記載の方法。
E4.宿主細胞が、基材における接着細胞培養として育成または維持され、細胞溶解を引き起こすのに十分な濃度の界面活性剤を含む溶液と接触させることにより化学的に溶解されるか、または先ず基材から剥離され、生理的に適合性の流体に懸濁され、そこに、界面活性剤溶液が添加される、E1またはE2に記載の方法。
E5.界面活性剤が、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤または双性イオン性界面活性剤である、E3またはE4に記載の方法。
E6.非イオン性界面活性剤が、アルキルフェノールエトキシレート、4-アルキルフェノールエトキシレート、オクチルフェノールエトキシレート、4-オクチルフェノールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、4-ノニルフェノールエトキシレート、Triton X-100、Triton X-114、NP-40、Tween 20およびTween 80からなる界面活性剤化合物の群から選択される、E5に記載の方法。
E7.溶解に先立ち、生理的に適合性の流体における宿主細胞の生細胞密度が、少なくとももしくは約8×10、9×10、10×10、11×10、12×10、13×10、14×10、15×10、16×10、17×10、18×10、19×10、20×10、21×10、22×10、23×10、24×10、25×10、26×10、27×10、28×10、29×10もしくは30×10個の、1mL当たりの生細胞数(vc/mL)もしくはそれを超える、または約8×10~15×10vc/mL、10×10~30×10vc/mL、15×10~25×10vc/mLもしくは18×10~22×10vc/mL等、前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の範囲である、E3~E6に記載の方法。
E8.宿主細胞が、HEK293細胞、CHO細胞もしくはHeLa細胞等の哺乳類細胞、またはSf9細胞もしくはSf1細胞等の昆虫細胞である、E1~E7に記載の方法。
E9.宿主細胞が、HEK293細胞である、E1~E8に記載の方法。
E10.ライセートにおける界面活性剤の最終濃度が、少なくとももしくは約0.05%、0.10%、0.15%、0.20%、0.25%、0.30%、0.35%、0.40%、0.45%、0.50%、0.55%、0.60%、0.65%、0.70%、0.75%、0.80%、0.85%、0.90%、0.95%、1.00%、2.00%、3.00%、4.00%もしくは5.00%、または約0.05%~5.00%、0.10%~2.50%、0.20%~1.25%、0.20%~0.75%、0.25%~0.75%、0.25%~0.65%、0.20%~0.70%、0.30%~0.70%、0.35%~0.65%、0.40%~0.60%もしくは0.45%~0.55%等、前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の濃度の範囲である、E3~E9に記載の方法。
E11.界面活性剤が、Triton X-100である、E3~E10に記載の方法。
E12.溶解に先立ち、生理的に適合性の流体における宿主細胞の生細胞密度が、少なくとも約10×10vc/mLであり、ライセートにおけるTriton X-100の最終濃度が、少なくとも約0.30%である、E11に記載の方法。
E13.溶解に先立ち、生理的に適合性の流体における宿主細胞の生細胞密度が、少なくとも約10×10vc/mLであり、溶解に先立つ生細胞密度に対するライセートにおけるTriton X-100の最終濃度が、1×10vc/mL当たり少なくとも約0.010%である、E11に記載の方法。
E14.溶解に先立つ生細胞密度に対するライセートにおけるTriton X-100の最終濃度が、1×10vc/mL当たり約0.010%~0.030%、1×10vc/mL当たり0.012%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.013%~0.040%、1×10vc/mL当たり0.016%~0.027%、1×10vc/mL当たり0.017%~0.050%、1×10vc/mL当たり0.020%~0.033%、1×10vc/mL当たり0.020%~0.060%、1×10vc/mL当たり0.023%~0.070%、1×10vc/mL当たり0.024%~0.040%、または1×10vc/mL当たり約0.028%~0.047%である、E11に記載の方法。
E15. 溶解時における細胞懸濁液の体積が、少なくとももしくは約2リットル(L)、5L、10L、20L、50L、100L、200L、500L、1000L、1500L、2000Lもしくはそれを超える、または2L~100L、50L~500L、500L~1000L、500L~1500L、1000L~1500Lもしくは500L~2000L等、前述の値のいずれかを含めたそれらの間の範囲であり、これは、一部の実施形態では、タンク、バッグまたはバイオリアクター等の容器内に封入されている、E3~E14に記載の方法。
E16.一部の実施形態では、少なくとももしくは約5分間、10分間、15分間、20分間、30分間、40分間、50分間、60分間、70分間、75分間、80分間、90分間、100分間、115分間、120分間、150分間、180分間、または前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の時間の範囲にわたり行うことができる、細胞懸濁液および界面活性剤溶液を混合するステップをさらに含む、E3~E15に記載の方法。
E17.ライセートにおける宿主細胞DNAが、宿主細胞DNAを沈殿させるのに十分な濃度でアルキル-ジメチル-(2-フェノキシエチル)アザニウム(azanium)ハロゲン化物を含む溶液をライセートに添加することにより沈殿され、一部の実施形態では、アルキル-ジメチル-(2-フェノキシエチル)アザニウムハロゲン化物が、ドミフェン臭化物、ドミフェン塩化物またはドミフェンヨウ化物等のドミフェンハロゲン化物である、E3~E16に記載の方法。
E18.ライセートにおけるドミフェンハロゲン化物の最終濃度が、少なくとももしくは約0.05%、0.10%、0.15%、0.20%、0.25%、0.30%、0.35%、0.40%、0.45%もしくは0.50%、または0.10%~0.50%、0.10%~0.40%、0.10%~0.30%、0.10%~0.20%、0.15%~0.45%、0.20%~0.50%、0.20%~0.40%、0.20%~0.30%、0.25%~0.35%、0.25%~0.45%、0.30%~0.50%、0.30%~0.40%もしくは0.40%~0.50%等、前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の濃度の範囲である、E17に記載の方法。
E19.溶解に先立ち、生理的に適合性の流体における宿主細胞の生細胞密度が、少なくとも約10×10vc/mLであり、ライセートにおけるドミフェンハロゲン化物の最終濃度が、少なくとも約0.20%である、E17またはE18に記載の方法。
E20.溶解に先立ち、生理的に適合性の流体における宿主細胞の生細胞密度が、少なくとも約10×10vc/mLであり、溶解に先立つ生細胞密度に対するライセートにおけるドミフェンハロゲン化物の最終濃度が、1×10vc/mL当たり少なくとも0.007%である、E17またはE18に記載の方法。
E21.溶解に先立つ生細胞密度に対するライセートにおけるドミフェンハロゲン化物の最終濃度が、1×10vc/mL当たり約0.003%~0.010%、1×10vc/mL当たり0.004%~0.007%、1×10vc/mL当たり0.007%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.008%~0.013%、1×10vc/mL当たり0.010%~0.030%、1×10vc/mL当たり0.012%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.013%~0.040%、1×10vc/mL当たり0.016%~0.027%、1×10vc/mL当たり0.017%~0.050%または1×10vc/mL当たり0.020%~0.033%の範囲に及ぶ、E17またはE18に記載の方法。
E22.溶解に先立ち、生理的に適合性の流体における宿主細胞の生細胞密度が、少なくとも約10×10vc/mLであり、界面活性剤が、Triton X-100であり、ライセートにおけるTriton X-100の最終濃度が、少なくとも約0.30%であり、ライセートにおけるドミフェンハロゲン化物の最終濃度が、少なくとも約0.20%である、E17またはE18に記載の方法。
E23.溶解に先立ち、生理的に適合性の流体における宿主細胞の生細胞密度が、少なくとも約10×10vc/mLであり、界面活性剤が、Triton X-100であり、溶解に先立つ生細胞密度に対するライセートにおけるTriton X-100の最終濃度が、1×10vc/mL当たり少なくとも約0.010%であり、溶解に先立つ生細胞密度に対するライセートにおけるドミフェンハロゲン化物の最終濃度が、1×10vc/mL当たり少なくとも0.007%である、E17またはE18に記載の方法。
E24.溶解に先立つ生細胞密度に対するライセートにおけるドミフェンハロゲン化物の最終濃度が、1×10vc/mL当たり0.009%、0.008%または0.007%以上である、E17またはE18に記載の方法。
E25.ライセートにおけるTriton X-100の最終濃度が、約0.3%~0.7%の範囲に及び、ライセートにおけるドミフェンハロゲン化物の濃度のTriton X-100の濃度に対する比が、約0.100~0.333、0.150~0.500、0.200~0.667、0.250~0.833、0.300~1.000、0.350~1.167、0.400~1.333、0.450~1.500、0.500~1.667、0.550~1.833、0.600~2.000、0.100~0.250、0.150~0.375、0.200~0.500、0.250~0.625、0.300~0.750、0.350~0.875、0.400~1.000、0.450~1.125、0.500~1.250、0.550~1.375、0.600~1.500、0.100~0.200、0.150~0.300、0.200~0.400、0.250~0.500、0.300~0.600、0.350~0.700、0.400~0.800、0.450~0.900、0.500~1.000、0.550~1.100、0.600~1.200、0.100~0.167、0.150~0.250、0.200~0.333、0.250~0.417、0.300~0.500、0.350~0.583、0.400~0.667、0.450~0.750、0.500~0.833、0.550~0.917、0.600~1.000、0.100~0.143、0.150~0.214、0.200~0.286、0.250~0.357、0.300~0.429、0.350~0.500、0.400~0.571、0.450~0.643、0.500~0.714、0.550~0.786または0.600~0.857の範囲に及ぶ、E17に記載の方法。
E26.ライセートにおけるTriton X-100の最終濃度が、約0.4%~0.6%の範囲に及び、ライセートにおけるドミフェンハロゲン化物の濃度のTriton X-100の濃度に対する比が、約0.150~0.375、0.200~0.500、0.250~0.625、0.300~0.750、0.350~0.875、0.400~1.000、0.450~1.125、0.150~0.300、0.200~0.400、0.250~0.500、0.300~0.600、0.350~0.700、0.400~0.800、0.450~0.900、0.150~0.250、0.200~0.333、0.250~0.417、0.300~0.500、0.350~0.583、0.400~0.667または0.450~0.750の範囲に及ぶ、E17に記載の方法。
E27.ライセートにおけるTriton X-100の最終濃度が、約0.4%であり、ライセートにおけるドミフェンハロゲン化物の濃度のTriton X-100の濃度に対する比が、約0.150~0.375、0.200~0.500、0.250~0.625、0.300~0.750、0.350~0.875、0.400~1.000もしくは0.450~1.125の範囲に及ぶか;またはライセートにおけるTriton X-100の最終濃度が、約0.5%であり、ライセートにおけるドミフェンハロゲン化物の濃度のTriton X-100の濃度に対する比が、約0.150~0.300、0.200~0.400、0.250~0.500、0.300~0.600、0.350~0.700、0.400~0.800もしくは0.450~0.900の範囲に及ぶか;またはライセートにおけるTriton X-100の最終濃度が、約0.6%であり、ライセートにおけるドミフェンハロゲン化物の濃度のTriton X-100の濃度に対する比が、約0.150~0.250、0.200~0.333、0.250~0.417、0.300~0.500、0.350~0.583、0.400~0.667もしくは0.450~0.750の範囲に及ぶ、E17に記載の方法。
E28.溶解に先立つ生細胞密度が、約10×10vc/mL~30×10vc/mLまたは15×10vc/mL~25×10vc/mLの範囲に及び、界面活性剤が、Triton X-100であり、ライセートにおけるTriton X-100の最終濃度が、約0.35%~0.65%または0.4%~0.6%の範囲に及び、ライセートにおけるドミフェンハロゲン化物の最終濃度が、約0.15%~0.45%、0.2%~0.3%または0.2%~0.4%の範囲に及ぶ、E17、E18およびE22に記載の方法。
E29.溶解に先立つ生細胞密度が、約15×10vc/mL~25×10vc/mLの範囲に及び、界面活性剤が、Triton X-100であり、ライセートにおけるTriton X-100の最終濃度が、約0.4%~0.6%の範囲に及び、ライセートにおけるドミフェンハロゲン化物の最終濃度が、約0.2%~0.3%または0.2%~0.4%の範囲に及ぶ、E17、E18およびE22に記載の方法。
E30.溶解に先立つ生細胞密度が、約15×10vc/mL~25×10vc/mLの範囲に及び、ライセートにおけるTriton X-100の最終濃度が、約0.5%であり、ライセートにおけるドミフェンハロゲン化物の最終濃度が、約0.2%~0.3%または0.2%~0.4%の範囲に及ぶ、E17、E18およびE22に記載の方法。
E31.宿主細胞が、AAVベクターを産生し、上清から精製されたAAVベクターを含む薬物物質における残渣宿主細胞DNAの量が、1×10ベクターゲノム当たり約100、90、80、70、60または50ピコグラム(pg/1×10vg)未満である、E1~E30に記載の方法。
E32.アルキル-ジメチル-(2-フェノキシエチル)アザニウムハロゲン化物が、ドミフェン臭化物(DB)である、E17~E31に記載の方法。
E33.一部の実施形態では、少なくとももしくは約5分間、10分間、15分間、20分間、30分間、40分間、50分間、60分間、70分間、75分間、80分間、90分間、100分間、115分間、120分間、150分間、180分間、または前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の時間の範囲にわたり行うことができる、ライセートおよびドミフェンハロゲン化物溶液を混合するステップをさらに含む、E17~E32に記載の方法。
E34.凝結物を、ライセートを保持する容器の底に重力の影響下で沈降させることにより、上清が、凝結物から分離され、沈降した凝結物の下層および上清の上層を形成する、E1~E33に記載の方法。
E35.凝結物が、少なくとももしくは約0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、または前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の時間の範囲にわたり沈降させられる、E34に記載の方法。
E36.ライセートを保持する容器を遠心分離することにより、上清が、凝結物から分離され、上清から分離された凝結物のペレットを形成する、E1~E33に記載の方法。
E37.ポンピング等により上清が容器から除去され、凝結物を容器内に残す、E34~E36に記載の方法。
E38.上清を除去した後に、一部の実施形態では、約100μm、50μm、40μm、30μm、25μm、20μm、15μm、10μm、5μm、2μm、1μmまたは0.5μm以下の名目上の保持評定を有するデプスフィルターを使用して行うことができる、深層濾過等により、上清が濾過される、E37に記載の方法。
E39.ドミフェンハロゲン化物による上清における残渣宿主細胞DNAの沈殿が、ドミフェンハロゲン化物による宿主細胞DNAの沈殿を阻害するのに十分な濃度の塩を含む溶液を上清に添加することにより阻害される、E17~E38に記載の方法。
E40.塩溶液が、Triton X-100等の界面活性剤をさらに含む、E39に記載の方法。
E41.塩が、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、硫酸マグネシウム(MgSO)または塩化マグネシウム(MgCl)である、E39に記載の方法。
E42.上清における添加された塩の最終濃度が、少なくともまたは約1mM、5mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、75mM、100mM、125mM、150mM、175mM、200mM、225mM、250mM、275mM、300mM、325mM、350mM、375mM、400mM、425mM、450mM、500mM、550mM、600mM、650mM、700mM、750mMまたは800mMである、E39~E41に記載の方法。
E43.溶解に先立ち、生理的に適合性の流体における宿主細胞の生細胞密度が、少なくとも約10×10vc/mLであり、ライセートにおけるドミフェンハロゲン化物の最終濃度が、少なくとも約0.20%であり、塩が、NaClまたはKClであり、上清における添加された塩の最終濃度が、少なくとも約100mMである、E39~E42に記載の方法。
E44.溶解に先立ち、生理的に適合性の流体における宿主細胞の生細胞密度が、少なくとも約10×10vc/mLであり、ライセートにおけるドミフェンハロゲン化物の最終濃度が、少なくとも約0.20%であり、塩が、MgSOまたはMgClであり、上清における添加された塩の最終濃度が、少なくとも約10mMである、E39~E42に記載の方法。
E45.溶解に先立ち、生理的に適合性の流体における宿主細胞の生細胞密度が、少なくとも10×10vc/mLであり、溶解に先立つ生細胞密度に対するライセートにおけるドミフェンハロゲン化物の最終濃度が、1×10vc/mL当たり少なくとも0.007%であり、(i)塩が、NaClもしくはKClであり、上清における添加された塩の最終濃度が、少なくとも約100mMであるか、または(ii)塩が、MgSOもしくはMgClであり、上清における添加された塩の最終濃度が、少なくとも約10mMである、E39~E42に記載の方法。
E46.溶解に先立つ生細胞密度に対するライセートにおけるドミフェンハロゲン化物の最終濃度が、1×10vc/mL当たり0.007%以上である、E43~E45に記載の方法。
E47.溶解に先立つ生細胞密度が、約10×10vc/mL~30×10vc/mLの範囲に及ぶ、E43またはE44に記載の方法。
E48.溶解に先立つ生細胞密度が、約15×10vc/mL~25×10vc/mLの範囲に及ぶ、E43またはE44に記載の方法。
E49.ライセートにおけるドミフェンハロゲン化物の最終濃度が、約0.2%~0.5%、0.2%~0.4%または0.2%~0.3%の範囲に及ぶ、E43、E44、E47またはE48に記載の方法。
E50.界面活性剤が、Triton X-100であり、ライセートにおけるTriton X-100の最終濃度が、少なくとも約0.30%である、E43またはE44またはE47~E49に記載の方法。
E51.界面活性剤が、Triton X-100であり、ライセートにおけるTriton X-100の最終濃度が、約0.3%~0.7%、0.35%~0.65%、0.4%~0.6%の範囲に及ぶか、または約0.5%である、E43またはE44またはE47~E50に記載の方法。
E52.溶解に先立つ生細胞密度が、約15×10vc/mL~25×10vc/mLの範囲に及び、ライセートにおけるTriton X-100の濃度が、約0.5%であり、ライセートにおけるドミフェンハロゲン化物の濃度が、約0.2%~0.3%または0.2%~0.4%の範囲である、E43またはE44またはE47~E51に記載の方法。
E53.塩が、NaClまたはKClであり、上清における添加された塩の最終濃度が、約100mM~300mM、100mM~350mM、100mM~400mM、100mM~450mM、100mM~500mM、100mM~550mM、100mM~600mM、100mM~650mM、100mM~700mM、100mM~750mM、100mM~800mM、150mM~300mM、150mM~350mM、150mM~400mM、150mM~450mM、150mM~500mM、150mM~550mM、150mM~600mM、150mM~650mM、150mM~700mM、150mM~750mM、150mM~800mM、200mM~300mM、200mM~350mM、200mM~400mM、200mM~450mM、200mM~500mM、200mM~550mM、200mM~600mM、200mM~650mM、200mM~700mM、200mM~750mM、200mM~800mM、250mM~300mM、250mM~350mM、250mM~400mM、250mM~450mM、250mM~500mM、250mM~550mM、250mM~600mM、250mM~650mM、250mM~700mM、300mM~400mM、300mM~450mM、300mM~500mM、300mM~550mM、300mM~600mM、300mM~650mM、300mM~700mM、350mM~400mM、350mM~450mM、350mM~500mM、350mM~550mM、350mM~600mM、350mM~650mM、350mM~700mM、400~500mM、400~550mM、400~600mM、400~650mM、450~500mM、450~550mM、450~600mMまたは450~650mMの範囲である、E39~E52に記載の方法。
E54.一部の実施形態では、少なくとももしくは約5分間、10分間、15分間、20分間、30分間、40分間、50分間、60分間、70分間、75分間、80分間、90分間、100分間、115分間、120分間、150分間、180分間、または前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の時間の範囲にわたり行うことができる、上清および塩溶液を混合するステップをさらに含む、E39~E53に記載の方法。
E55.上清を分離するステップと、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するために塩溶液を上清に添加するステップの間の期間が、約12時間、6時間、3時間、2時間、1時間、45分間、30分間、15分間、10分間、5分間未満、またはそれに満たない、E39~E54に記載の方法。
E56.上清および塩溶液が、バッチにおいて混合される、E54に記載の方法。
E57.上清および塩溶液が、連続的に混合される、E54に記載の方法。
E58.上清および塩溶液の混合物を濾過するステップをさらに含む、E54に記載の方法。
E59.濾過するステップが、約10μm、5μm、2μm、1μm、0.5μm、0.2μmまたは0.1μm以下の平均ポアサイズを有する膜フィルターを使用して行われる、E58に記載の方法。
E60.少なくとも1つの下流処理ステップにおいて、上清および塩溶液の混合物から生物由来生成物を精製するステップをさらに含む、E54~E59に記載の方法。
E61.塩溶液を上清に添加するステップと、生物由来生成物を精製するステップの間の期間が、約72時間、48時間、36時間、24時間、12時間、9時間、6時間、3時間、2時間、90分間、60分間、45分間、30分間、15分間もしくは10分間未満、またはそれに満たない、E60に記載の方法。
E62.宿主細胞によって産生された生物由来生成物が、組換えである、E1~E61に記載の方法。
E63.宿主細胞によって産生された生物由来生成物が、ウイルス粒子である、E1~E61に記載の方法。
E64.ウイルス粒子が、アデノウイルス粒子、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子、レトロウイルス粒子またはレンチウイルス粒子である、E63に記載の方法。
E65.ウイルス粒子が、異種遺伝子を発現するように改変され、ウイルスベクターを形成する、E63またはE64に記載の方法。
E66.ウイルスベクターが、AAVベクターである、E65に記載の方法。
E67.AAVベクターが、HSPGと比較してシアル酸またはガラクトースにより強く結合するカプシドを含む、E66に記載の方法。
E68.AAVベクターが、AAV1、AAV4、AAV5またはAAV9カプシドを含む、E66またはE67に記載の方法。
E69.下流処理ステップが、クロマトグラフィーを含む、E60またはE61に記載の方法。
E70.クロマトグラフィーが、親和性クロマトグラフィー、免疫親和性クロマトグラフィー、偽親和性(pseudoaffinity)クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーまたはサイズ排除クロマトグラフィーである、E69に記載の方法。
E71.生物由来生成物が、AAVベクターであり、方法が、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15回またはそれを超えるクロマトグラフィー精製サイクルの後に、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または100%のAAVベクター収率を達成するのに有効である、E69またはE70に記載の方法。
E72.少なくとも5回のクロマトグラフィー精製サイクルの後に、少なくとも50%のAAVベクター収率を達成するのに有効である、E71に記載の方法。
E73.クロマトグラフィーが、親和性クロマトグラフィーである、E70~E72に記載の方法。
E74.クロマトグラフィーが、免疫親和性クロマトグラフィーである、E73に記載の方法。
E75.AAVベクターが、HSPGと比較してシアル酸またはガラクトースにより強く結合するカプシドを含む、E71~E74に記載の方法。
E76.AAVベクターが、AAV1、AAV4、AAV5またはAAV9カプシドを含む、E71またはE74に記載の方法。
E77.E1~E76に記載の方法によって産生された生物由来生成物。
E78.ウイルスベクターである、E77に記載の生物由来生成物。
E79.AAVベクターである、E77に記載の生物由来生成物。
E80.E1~E76に記載の方法によって産生された生物由来生成物を含む組成物。
E81.前記生物由来生成物が、ウイルスベクターである、E80に記載の組成物。
E82.前記生物由来生成物が、AAVベクターである、E80に記載の組成物。
E83.前記組成物におけるAAVベクターのカプシドが、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%または70%フル(full)である、E82に記載の組成物。
E84.約200、150、100、90、80、70、60、50、45、40、35、30、25または20pg/1×10vg以下の宿主細胞DNAを含む、E82またはE83に記載の組成物。
E85.E39~E59に記載の方法によって産生された上清および塩溶液の混合物であって、混合物の濁度が、約150、100、50、40、30、20、10または5以下のネフェロメトリー濁度単位(NTU)である、混合物。
E86.E39~E59のいずれかに記載の方法を行うためのシステムであって、(i)上清を含有するための手段と、(ii)塩溶液を含有するための手段と、(iii)上清および塩溶液を混合するための手段とを含むシステム。
E87.それぞれの容器手段から混合手段への流体連絡のための手段をさらに含む、E86に記載のシステム。
E88.上清および塩溶液を、これらそれぞれの容器手段から、流体連絡手段を通してポンピングするための手段をさらに含む、E87に記載のシステム。
E89.前記混合手段が、静的インライン混合手段である、E86~E88に記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、ドミフェン臭化物(DB)が、AAV9に基づくベクターを産生するようにトランスフェクトされた界面活性剤溶解HEK293細胞から宿主細胞DNA(HC-DNA)を沈殿させる、濃度依存性を説明する。ライセートにおける最終DB濃度(%w/w)をx軸に示す。1mL当たりのゲノムにおけるベクタータイターを左のy軸に示し、1E14 VG当たりのナノグラム数として正規化された宿主細胞DNAの濃度を右のy軸に示す。宿主細胞DNAおよびベクターの両方をqPCRによって定量化した。傾向線を作成するために、個々のデータ点を、ベクタータイターのための多項式、および宿主細胞DNA濃度のための指数方程式にフィットさせた。
図2-1】図2Aは、ドミフェン臭化物(DB)が、AAV9に基づくベクターを産生するようにトランスフェクトされた界面活性剤溶解HEK293細胞から宿主細胞DNA(HC-DNA)を沈殿させる、濃度依存性を説明する。ライセートにおける最終DB濃度(%w/w)をx軸に示す。1mL当たりのゲノムにおけるベクタータイターを左のy軸に示し、VG当たりのピコグラム数として正規化された宿主細胞DNAの濃度を右のy軸に示す。宿主細胞DNAおよびベクターの両方をqPCRによって定量化した。傾向線を作成するために、個々のデータ点を一次方程式にフィットさせた。
図2-2】図2Bは、AAV9に基づくベクターを産生するようにトランスフェクトされたTriton X-100溶解HEK293細胞が、宿主細胞DNAおよびベクターをライセートへと放出する、濃度依存性を説明する。ライセートにおける最終Triton X-100濃度(%w/w)をx軸に示す。1mL当たりのゲノムにおけるベクタータイターを左のy軸に示し、VG当たりのピコグラム数として正規化された宿主細胞DNAの濃度を右のy軸に示す。宿主細胞DNAおよびベクターの両方をqPCRによって定量化した。傾向線を作成するために、個々のデータ点を一次方程式にフィットさせた。
図3図3は、NaClが、AAV9に基づくベクターを産生するようにトランスフェクトされたHEK293細胞の清澄化されたライセートにおける、残渣宿主細胞DNAのDBによる進行中の沈殿を阻害する、時間および濃度依存性を説明する。沈殿は、経時的な濁度の増加として検出し、ネフェロメトリー濁度単位(NTU)で表した。
図4図4は、NaClが、AAV9に基づくベクターを産生するようにトランスフェクトされたHEK293細胞の清澄化されたライセートにおける、残渣宿主細胞DNAのDBによる進行中の沈殿を阻害する、時間および濃度依存性を説明する。沈殿は、経時的な濁度の増加として検出し、ネフェロメトリー濁度単位(NTU)で表した。
図5-1】図5Aは、NaClが、AAV9に基づくベクターを産生するようにトランスフェクトされたHEK293細胞の清澄化されたライセートにおける、残渣宿主細胞DNAのDBによる進行中の沈殿を阻害する、時間および濃度依存性を説明する。沈殿は、経時的な濁度の増加として検出し、ネフェロメトリー濁度単位(NTU)で表した。
図5-2】図5Bは、MgSO、ならびにナトリウムカチオンならびに異なる無機および有機アニオンを含む塩が、AAV9に基づくベクターを産生するようにトランスフェクトされたHEK293細胞の清澄化されたライセートにおける、残渣宿主細胞DNAのDBによる進行中の沈殿を阻害する、時間および濃度依存性を説明する。沈殿は、経時的な濁度の増加として検出し、ネフェロメトリー濁度単位(NTU)で表した。
図5-3】図5Cは、グリシン、ならびに塩化物および異なるカチオン(anion)を含む塩が、AAV9に基づくベクターを産生するようにトランスフェクトされたHEK293細胞の清澄化されたライセートにおける、残渣宿主細胞DNAのDBによる進行中の沈殿を阻害する、時間および濃度依存性を説明する。沈殿は、経時的な濁度の増加として検出し、ネフェロメトリー濁度単位(NTU)で表した。
図5-4】図5Dは、最も強力な塩が、AAV9に基づくベクターを産生するようにトランスフェクトされたHEK293細胞の清澄化されたライセートにおける、残渣宿主細胞DNAのDBによる進行中の沈殿を阻害する、時間および濃度依存性を説明する。沈殿は、経時的な濁度の増加として検出し、ネフェロメトリー濁度単位(NTU)で表した。
図6-1】図6Aは、時間およびイオン強度(伝導率によって測定される)の間の関係性、ならびにAAV9に基づくベクターを産生するようにトランスフェクトされたHEK293細胞の清澄化されたライセートにおける、残渣宿主細胞DNAのDBによる進行中の沈殿の阻害を説明する。沈殿は、経時的な濁度の増加として検出し、ネフェロメトリー濁度単位(NTU)で表した。複数の塩に関する伝導率、および濁度におけるそれらの効果は、実験0日目(すなわち、初日)に決定した。図6Bは、時間およびイオン強度(伝導率によって測定される)の間の関係性、ならびにAAV9に基づくベクターを産生するようにトランスフェクトされたHEK293細胞の清澄化されたライセートにおける、残渣宿主細胞DNAのDBによる進行中の沈殿の阻害を説明する。沈殿は、経時的な濁度の増加として検出し、ネフェロメトリー濁度単位(NTU)で表した。複数の塩に関する伝導率、および濁度におけるそれらの効果は、1日目に決定した。
図6-2】図6Cは、時間およびイオン強度(伝導率によって測定される)の間の関係性、ならびにAAV9に基づくベクターを産生するようにトランスフェクトされたHEK293細胞の清澄化されたライセートにおける、残渣宿主細胞DNAのDBによる進行中の沈殿の阻害を説明する。沈殿は、経時的な濁度の増加として検出し、ネフェロメトリー濁度単位(NTU)で表した。複数の塩に関する伝導率、および濁度におけるそれらの効果は、2日目に決定した。図6Dは、時間およびイオン強度(伝導率によって測定される)の間の関係性、ならびにAAV9に基づくベクターを産生するようにトランスフェクトされたHEK293細胞の清澄化されたライセートにおける、残渣宿主細胞DNAのDBによる進行中の沈殿の阻害を説明する。沈殿は、経時的な濁度の増加として検出し、ネフェロメトリー濁度単位(NTU)で表した。複数の塩に関する伝導率、および濁度におけるそれらの効果は、3日目に決定した。
図7-1】図7Aは、4M NaClおよび0.5%Triton X-100を含む溶液として本明細書に例証される沈殿阻害剤を、界面活性剤で溶解され、宿主細胞DNAを沈殿させるための薬剤で処理された宿主細胞由来の清澄化されたライセートと連続的に混合するためのシステムを説明する。
図7-2】図7Bは、4M NaClおよび0.5%Triton X-100を含む溶液として本明細書に例証される沈殿阻害剤を、界面活性剤で溶解され、宿主細胞DNAを沈殿させるための薬剤で処理された宿主細胞由来の清澄化されたライセートとバッチ混合するためのシステムを説明する。
図7-3】図7Cは、4M NaClおよび0.5%Triton X-100を含む溶液として本明細書に例証される沈殿阻害剤を、界面活性剤で溶解され、宿主細胞DNAを沈殿させるための薬剤で処理された宿主細胞由来の清澄化されたライセートと連続的に混合するためのシステムを説明する。
図8図8は、ドミフェン臭化物による残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するために塩処理されていない、清澄化された細胞ライセートからAAV9に基づくベクターを精製する、5サイクルにわたる免疫親和性クロマトグラフィーカラムの性能を説明するクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ベンゾナーゼ等のエンドヌクレアーゼの使用に頼ることなく、粗宿主細胞ライセートから宿主細胞DNAを除去するために有用に用いることができる、様々な方法、組成物およびシステムの例示的な非限定的な実施形態を詳細に後述する。これらの実施形態のいくつかは、その例がアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、宿主細胞によって作製された所望の生物由来生成物を少なくとも部分的に精製することを意図した下流ステップの効率を低減させることが観察された、清澄化されたライセートにおける残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するさらなる利点を提供する。本明細書に記載されている方法の利点は、外因的に添加されたエンドヌクレアーゼを使用しない、宿主細胞DNAの有効な除去であるが、そのような酵素の使用は、所望される場合、方法のある特定の実施形態において除外されない。
【0010】
ある特定の実施形態において、本開示は、所望の生物由来生成物を産生した宿主細胞の調製物または試料を溶解し、細胞から放出された宿主細胞DNAの少なくとも一部分を沈殿させて、凝結物および上清を形成し、凝結した宿主細胞DNAから上清の少なくとも一部を分離し、上清における残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害する方法を提供する。一部の実施形態では、宿主細胞は、溶解される前に、所望の生物由来生成物の産生に十分な時間および条件下で、培養において育成または維持される。他の実施形態では、残渣宿主細胞DNAの沈殿が阻害された後に、所望の生物由来生成物は、上清から少なくとも部分的に精製される。
【0011】
宿主細胞
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」は、所望の生物由来生成物のin vitro産生に適したまたは適応された細胞を意味する。宿主細胞は、多くの場合、老化が成長を停止する前に複数の世代にわたり分裂することができるクローナル細胞株である、またはさらには不死であってもよい。本開示の方法における使用のため、宿主細胞は、特異的生物由来生成物の宿主細胞における生合成を導くように設計された外因的遺伝情報の導入により、一過的にまたは非一過的に改変することができる。例えば、宿主細胞に、タンパク質または調節性RNA(lncRNA、miRNAまたはsiRNA等)をコードする核酸塩基配列を含有する核酸をトランスフェクトすることができる。一部の実施形態では、核酸は、コード配列が、mRNAを産生するための細胞の転写およびスプライシング機構が作用し得るプロモーターおよびエンハンサー等の転写調節性エレメントの制御下に置かれた、プラスミド等のDNAである。他の実施形態では、核酸は、タンパク質へと直接的に翻訳され得る、mRNA等のRNAであり得る。
【0012】
DNAまたはRNAを宿主細胞にトランスフェクトするための様々な仕方が当技術分野で公知である。そのようなものは、リン酸カルシウムまたはカチオン性有機化合物、例えば、DEAE-デキストラン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリリジン、ポリオルニチン、ポリブレン、シクロデキストリン、カチオン性脂質、および当技術分野で公知のその他を含む、核酸と複合体形成して細胞内に吸収され得る、ある特定の化合物とDNAまたはRNAを混合するステップを限定することなく含む。トランスフェクションは、エレクトロポレーションおよびよりエキゾチックな技術、例えば、微粒子銃による粒子送達により、非化学的に行うこともできる。当技術分野で公知の通り、トランスフェクションは、一過的または安定的であり得る。一過的トランスフェクションにより、トランスフェクトされたDNAまたはRNAは、細胞内に限られた期間存在し、DNAの場合、ゲノムに組み込まれない。安定的トランスフェクションにより、細胞に導入されたDNAは、エピソームプラスミドとして、または染色体に組み込まれて、長期間持続することができる。通常、安定的にトランスフェクトされた細胞を産生するために、選択マーカーと共に、所望の生物由来生成物を発現するための遺伝子(単数または複数)を含有するプラスミドが細胞にトランスフェクトされ、次いで細胞を、選択圧下で、すなわち、トランスフェクトされていない細胞、またはその選択マーカーを含む外因的DNAが何らかの理由で失われたトランスフェクトされた細胞を死滅させる条件下で育成および維持する。例えば、プラスミドは、抗生物質抵抗性遺伝子を含有することができ、トランスフェクトされた細胞は、細胞が育成されている培地に抗生物質を添加することにより選択することができる。一部の実施形態では、安定的にトランスフェクトされた宿主細胞に導入された生物由来生成物を産生するための遺伝子は、誘導性プロモーターの制御下に置かれ、プロモーターを誘導する、薬物、金属イオンまたは温度増加等の環境因子が、細胞が育成される際に導入されない限り、発現されないか、またはごく低レベルで発現される。
【0013】
他の実施形態では、宿主細胞ゲノムは、所望の生物由来生成物、その構成成分、またはそのような生成物の生合成に必要な他の遺伝子産物を産生するように宿主細胞を導くために、ノックイン等の遺伝子操作方法または遺伝子編集方法を使用して、非一過的かつ標的化された様式で改変することができる。本発明は、宿主細胞が作成される様式によって限定されない。形質導入により所望の生物由来生成物の産生を導く目的で、外来性遺伝子を宿主細胞に導入することもでき、それによると、宿主細胞は、そのような遺伝子を含有する改変されたウイルス(すなわち、ベクター)に感染される。そのような目的に有用なウイルスベクターの例として、アデノウイルス、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、バキュロウイルス、ワクシニアウイルスおよび単純ヘルペスウイルスが挙げられ、その他も可能である。
【0014】
宿主細胞は、所望の生物由来生成物を生合成する目的に有用であることが当技術分野で公知である、いずれかの型の細胞であり得る。宿主細胞は、原核細胞、例えば、細菌、例えば、E.coli、または真核細胞、例えば、真菌細胞、例えば、酵母細胞、例えば、植物細胞または例えば、動物細胞、例えば、昆虫細胞またはラット、マウスもしくはヒト細胞を含む哺乳類細胞であり得る。一部の実施形態では、本開示の方法において有用な宿主細胞は、哺乳類宿主細胞であり、その例として、HeLa細胞、COS細胞、HEK293細胞(およびHEK293E、HEK293F、HEK293H、HEK293TまたはHEK293FT細胞等、HEK293細胞のバリアント)、A549細胞、BHK細胞、Vero細胞、NIH 3T3細胞、HT-1080細胞、Sp2/0細胞、NS0細胞、C127細胞、AGE1.HN細胞、CAP細胞、HKB-11細胞またはPER.C6細胞が挙げられ、多くのその他も可能である。一部の実施形態では、本開示の方法において有用な宿主細胞は、昆虫宿主細胞であり、その例として、Sf9細胞、ExpiSf9、Sf21細胞、S2細胞、D.Mel2細胞、Tn-368細胞またはBTI-Tn-5B1-4細胞が挙げられ、多くのその他も可能である。
【0015】
生物由来生成物を産生する目的で、宿主細胞は、多くの場合、その相対的に高い密度までの成長および所望の生物由来生成物の生合成を促す制御された条件下で培養において育成または維持される。例えば、宿主細胞は、細胞成長および生合成に必要な全ての栄養素を提供する規定された化学組成の液体培地において育成することができる。例示的な培地は、哺乳類宿主細胞のためのDMEM、DMEM/F12、MEM、RPMI 1640、およびある特定の昆虫細胞のためのExpress Five SFM、Sf-900 II SFM、Sf-900 IIIまたはExpiSf CDを含む。そのような培地は、抗生物質、成長因子または使用されている特定の型の細胞の成長を刺激することが公知であるサイトカイン(組換えにより産生されるか、またはFBS等の動物血清中に存在する)、ならびに所望の生物由来生成物の最適な生合成および/または活性に要求され得るが、それ以外の状況では限定的な供給の他の成分を補充することができる。例示的なサプリメントは、必須アミノ酸、グルタミン、ビタミンK、インスリン、BSAまたはトランスフェリンを含む。育成培地に加えて、pH、温度ならびにCOおよび酸素濃度等、細胞の成長および/または生産性を最適化するための他の培養条件を制御することができる。
【0016】
培養における宿主細胞は、撹拌タンクバイオリアクター、ウェーブ(wave)バッグ、スピナフラスコ、ホローファイバーバイオリアクターまたはローラーボトル等、当技術分野で公知の多くの容器において育成または維持することができ、これら容器のいくつかは、使い捨て(single use)または複数回使用(multiple use)のために設計および構成することができる。問題になっている宿主細胞の特徴に応じて、宿主細胞は、細胞が物理的基材と接触しつつそれに付着して成長する、接着細胞培養において育成することができるか、または単一細胞が自身を支える培地中を自由に浮遊するかもしくは培地中に懸濁されたビーズマイクロキャリアに付着した、懸濁細胞培養において育成することができる。当技術分野で公知の通り、灌流培養等、様々な技術が開発されており、高い細胞密度へと宿主細胞を育成するために使用することができる。
【0017】
当技術分野で公知の通り、宿主細胞の試料は、多くの場合、マスター細胞バンクおよび作業細胞バンク等の凍結細胞バンクにおいて維持され、このことは、宿主細胞による一貫した性能を確実にしつつ、時間と共に多くのバッチにおいて生物由来生成物を産生することを容易にする。生物由来生成物を産生するキャンペーンの前に、細胞バンクから得た宿主細胞の凍結試料は典型的に、解凍され、小さい培養体積で播種され、増加する体積の培養においてこれまでよりも高い密度または数となるように育成されるであろう。宿主細胞が、培養において所望の細胞密度および/または体積に達したら、プラスミドDNAのトランスフェクションまたはウイルスベクターによる感染等により外因的遺伝物質を導入して、所望の生物由来生成物の産生を始めさせることができる。あるいは、生物由来生成物の遺伝子が誘導性制御下に置かれた、非一過的に改変された宿主細胞を使用する場合、発現の誘導に必要な環境因子を導入することができる。次に、宿主細胞は、所望の量の生物由来生成物を産生するのに十分な時間および条件下で、培養において育成または維持することができる。
【0018】
生物由来生成物
本開示の方法は、宿主細胞によって作製され得るいずれかの生物由来生成物の産生において有用に用いることができ、そのうち相当な部分が、インタクトな細胞膜を備えた宿主細胞内に保持される。非限定的な例として、いずれかの型および特異性のモノクローナル抗体、凝固因子、酵素(治療薬としての使用のためであれ、産業適用における使用のためであれ)、成長因子、ホルモン、サイトカイン、ワクチンとして機能する抗原性タンパク質、ならびに凝固因子とアルブミンまたは免疫グロブリンタンパク質由来のFc領域の融合体等、異種タンパク質領域またはドメインと融合されたバージョンを含む、前述のいずれかのいずれかの天然起源または非天然起源のバージョンまたはバリアントを含む、いずれかの種類の組換えタンパク質が挙げられる。そのようなタンパク質は、炭水化物基、脂質分子および非標準アミノ酸の共有結合による付加等、当業者にとって公知のいずれかの翻訳後修飾を含むことができる。そのようなタンパク質は、共有結合または非共有結合により互いに結合された複数のポリペプチド鎖を含むこともできる。他の実施形態では、生物由来生成物は、ウイルス、またはがん細胞を死滅させるように(腫瘍溶解性ウイルス)もしくは異種遺伝子のベクター、例えば、遺伝子療法において使用されるべきベクターとして機能するように操作された、改変されたウイルス等、超分子アセンブリーであり得る。非限定的な例として、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、レンチウイルスおよびアデノ随伴ウイルス、またはそのようなウイルスを使用して作製されたベクターが挙げられる。
【0019】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター
一部の実施形態において、本開示の方法は、遺伝子療法のためのウイルスベクター(よって、AAVベクター)として機能するように組換えにより改変されたアデノ随伴ウイルス(AAV)の産生において有用である。そのように改変されると、AAVベクターは、遺伝子転写の適切な開始および終結のための調節性エレメントを含むことが多い遺伝子カセットを、形質導入により標的化された細胞に送達することができる。このようにして、AAVベクターは、遺伝子の機能的コピーを、内因的バージョンが欠けているかまたは突然変異している標的細胞に供給することができる。
【0020】
当技術分野で周知の通り、AAVは、それ自身の複製に必須であるヘルパー因子として公知の遺伝子産物を供給するためにある特定の他のウイルスに依存する、小型のエンベロープを持たない明らかに非病原性のウイルスであり、この依存は、AAVを組換えベクターとしての機能によく適するものにした生物学上の不思議(quirk)である。例えば、アデノウイルス(AdV)は、アデノウイルスおよびAAVに同時感染した細胞において、E1A、E1B55K、E2AおよびE4ORF6タンパク質ならびにVA RNA等、ある特定のアデノウイルス因子を提供することにより、ヘルパーウイルスとして機能することができる。ある特定の動物(哺乳類および鳥類等)および種(ヒトおよびアカゲザル等)に感染するその能力が制限されており、種内では他の組織よりもさらにある特定の組織(肝臓または筋肉等)に感染する傾向を有する、多数の型のAAVが発見されており、これは、トロピズムと呼ばれる現象であり、異なる細胞表面受容体への特異的結合に基づく。AAV2と呼ばれるヒトに感染するAAVの1つの型が、生物学的に特によく特徴付けされているが、多くの他の型が、遺伝子療法ベクターの創出における有用性を見出した。
【0021】
自然界では、AAVゲノムは、一本鎖のDNAであり、AAV2では約4.7キロベースの長さであり、repおよびcapと呼ばれる2種の遺伝子を含有する。2種のプロモーターからの転写物のオルタナティブスプライシングが原因で、rep遺伝子は、ゲノム複製およびパッケージングならびに遺伝子発現に関与する、Rep(AAV2ではRep78、Rep68、Rep52およびRep40)と呼ばれる4種の関連する多機能性タンパク質を産生する。cap遺伝子を制御する単一のプロモーターからの転写物のオルタナティブスプライシングは、3種の関連する構造タンパク質であるVP1、VP2およびVP3を産生し、これらの総計60個が自己集合して、それぞれおよそ1:1:10の比でウイルスの正二十面体カプシドを形成する。VP1は、3種のVPタンパク質の中で最も長く、そのアミノ末端領域にVP2には存在しないアミノ酸を含有し、次いでVP2は、VP3よりも長く、そのアミノ末端領域にVP3には存在しないアミノ酸を含有する。カプシドは、AAVゲノムを保護し、また、標的細胞の表面における受容体への特異的な結合の原因となる。
【0022】
repおよびcap遺伝子に加えて、インタクトなAAVゲノムは、逆位末端配列(ITR)と呼ばれる、自身の5’および3’端のそれぞれに位置する相対的に短い(AAV2では145ヌクレオチド)配列エレメントを有する。ITRは、ワトソン・クリック型の塩基対合により自己アニールして、T字形またはヘアピン二次構造を形成することができる、入れ子状態のパリンドローム配列を含有する。AAV2において、ITRは、一本鎖DNAゲノムを遺伝子発現に要求される二本鎖形態に変換することと共に、Repタンパク質によって一本鎖AAVゲノムをカプシドアセンブリー内にパッケージングすることを含む、ウイルス生活環に要求される重要な機能を有する。
【0023】
AAV2ビリオンが、細胞表面におけるその同族受容体に結合した後に、ウイルス粒子は、エンドサイトーシスを介して細胞に侵入する。リソソームの低pHに達したら、カプシドタンパク質は、立体構造変化を起こし、これにより、カプシドがサイトゾルへとエスケープし、次いで核へと輸送されることが可能となる。核内に入ったら、カプシドは解体され、ゲノムを放出し、ゲノムは、自己アニーリング後にプライマーとして機能する3’端のITRから開始して第2のDNA鎖を合成するように細胞のDNAポリメラーゼによる作用を受ける。次いで、repおよびcap遺伝子の発現を始め、続いて、新たなウイルス粒子を形成することができる。
【0024】
AAVの構造および生活環の相対的な単純さ、ならびにこれがヒトにおいて病原性があることは知られていないという事実から閃き得て、研究者達は、AAVを操作し、これをウイルスから遺伝子療法のための組換えベクターに変換した。簡潔に説明すると、これは、両方のITRを含むAAV2のゲノム全体をプラスミドにクローニングし、repおよびcap遺伝子を別々のプラスミドへと除去し、これらを、異種転写制御領域(プロモーターと、場合により、エンハンサー)および目的の遺伝子(これは時に、導入遺伝子と称される)を含む遺伝子発現カセットに置き換えることにより行われた。よって、ベクターゲノム中に保持される唯一のウイルスゲノム配列はITRであり、これは、パッケージングおよび遺伝子発現におけるそれらの重大な意味を持つ機能のためであり、これなしでは、標的細胞の形質導入後に、AAVベクターは、産生されることも、目的の遺伝子を発現するために機能することもできない。最後に、ヘルパーウイルスによる同時感染の必要を回避するために、いわゆるヘルパー因子(AdVの場合は、E1A、E1B55K、E2A、E4orf6およびVA RNAヘルパー因子等)の遺伝子を第3のプラスミドにクローニングした。3種のプラスミドが細菌において多数複製され、精製され、HEK293細胞等の哺乳類細胞に一緒にトランスフェクトされる場合、RepおよびVPタンパク質ならびにAdVヘルパー因子は、細胞においてそれぞれのプラスミドから発現されて機能して、カプシドをアセンブルし、その中に、その配列が存するプラスミドから複製された一本鎖ベクターゲノムをパッケージングする。repおよびcap遺伝子は、ITRに挟まれたそれらの通常の前後関係の外側で、異なるプラスミドにトランスで存在するため、ベクターにパッケージングされない。結果的に、ベクターは、標的細胞に結合し、そのゲノム内の発現カセットを細胞内に運ぶことができるが、新たなベクター粒子を複製および創出することはできない。このような理由で、用語「形質導入」は、用語「感染」の代わりに、このプロセスを指すように使用されることが多い。ベクターが、意図される通りに機能する場合、発現カセットは、転写活性があり、目的の遺伝子によってコードされた遺伝子産物を産生するであろう。
【0025】
本開示の方法に関連した使用のため、AAVベクターは、遺伝子療法における使用等、その意図される使用に適することが当技術分野で公知である、いずれかの配列、構造、機能的サブエレメントの配置、および構成の、AAVベクターゲノム内におけるいずれかの目的の遺伝子を含むことができる。AAVベクターが典型的に設計される場合、実験戦略は、パッケージング限界を上回るように開発されたが、遺伝子の長さが、転写調節性領域およびITR等、ベクター機能に要求されるゲノムにおける他の全エレメントと組み合わされたときに、AAV2の場合はおよそ5キロベースを超えないように、目的の遺伝子の選択は、カプシドのパッケージング容量のみによって限定される。
【0026】
遺伝子療法の目的のため、目的の遺伝子は、その生成物が、いずれかの疾患または状態を防止または処置するが必ずしも治癒しないと理解される、いずれかの遺伝子であり得る。一部の実施形態では、遺伝子療法は、機能喪失型突然変異が原因で生じ得るもの等、天然起源の遺伝子によって産生される生成物の異常に少ない量またはさらには非存在によって特徴付けされた疾患または状態を防止または処置することを意図する。そのような実施形態に関して、目的の遺伝子は、発現されたときに同じまたは同様の遺伝子産物を提供することにより欠損遺伝子を代償することを意図する遺伝子であり得る。非限定的な例は、ネイティブ第IX因子遺伝子における機能喪失型突然変異によって引き起こされた血友病Bの遺伝子療法における使用のための、凝固因子IXの機能的バージョンを発現するように設計されたベクターとなるであろう。しかし、他の実施形態では、目的の遺伝子は、標的化された細胞における有害な機能獲得型突然変異の効果を相殺することを意図する遺伝子であり得る。一部の実施形態では、目的の遺伝子は、望ましい遺伝子産物を産生する内因的遺伝子の活性を増加させるための転写活性化因子、または逆に、望ましくない遺伝子産物を産生する内因的遺伝子の活性を減少させるための転写リプレッサーをコードすることができる。一部の実施形態では、目的の遺伝子は、タンパク質、または調節性非コードRNA分子(例えば、マイクロRNA、低分子干渉RNA、piwi結合RNA、エンハンサーRNAまたは長鎖非コードRNA)等のコードタンパク質とは別個の機能を有するRNA分子をコードすることができる。目的の遺伝子におけるタンパク質コード配列は、コドン最適化することができ、翻訳開始部位(例えば、コザック配列)は、翻訳を開始するその傾向を増加または減少させるように改変することができる。一部の実施形態では、目的の遺伝子は、1個または複数のオープンリーディングフレームを含有することができる。他の実施形態では、ベクターゲノムは、2個以上の目的の遺伝子、それ自身の別々の転写単位の各部分を含むことができる、または異なる生成物を、オルタナティブスプライス部位を含めることによって単一の転写単位から産生することができる。
【0027】
目的の遺伝子とは別に、AAVベクターゲノムの多くの他の側面は、ベクターの意図される使用に応じた選択および最適化の設計に受け入れられる。限定することなく、転写制御領域は、構成的に活性、組織特異的または誘導性であり得、プロモーターと共に1個または複数のエンハンサーエレメントを含むことができる。転写制御領域は、天然に遺伝子に生じるものと同じヌクレオチド配列を含むことができる、または自然界で見出される配列に対してヌクレオチドを変化、付加もしくは除去することにより、その機能を改善するようにおよび/もしくはその長さを低減させるように改変することができる、または完全に合成であってもよい。他の実施形態では、ベクターゲノムは、遺伝子の5’および/または3’端由来の非翻訳領域、非コードエクソン、イントロン、転写終結シグナル(例えば、ポリAシグナル配列)、RNA転写物を安定化するエレメント、スプライスドナーおよびアクセプター部位、lox部位、調節性miRNAのための結合部位、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節性エレメント(WPRE)等のmRNAの核外輸送を増強するエレメント、ならびに機序が不確かであったとしても目的の遺伝子の発現を改善することが経験的に実証された他のいずれかのエレメントをさらに含むことができる。
【0028】
一部の実施形態では、ベクターゲノムは、標的細胞のゲノムを編集または他の仕方で改変する目的で設計することができる。例えば、ベクターゲノムは、ベクターゲノムおよび標的細胞ゲノムの間の相同組換えを促進することを意図するホモロジーアームに挟まれた目的の遺伝子を含むことができる。別の例では、ベクターゲノムは、ガイドRNA(gRNA)、および/またはgRNAに結合し、gRNAによって標的化されたDNA配列を切断することができる、Cas9もしくはSaCas9等の関連するエンドヌクレアーゼ等のエンドヌクレアーゼを発現させることにより、CRISPR遺伝子編集を実行するように設計することができる。
【0029】
当技術分野で公知の通り、AAVベクターにおいて典型的に使用されるITRは、AAV2に起源を持つが、他の血清型および天然起源のAAV単離株もしくはハイブリッドに由来するITRまたはさらには完全に合成のITRを使用することもできる。一部の実施形態では、ベクターゲノムは、一本鎖DNAゲノムの各端に1個ずつ、2個のインタクトなITRを含む。しかし、他の実施形態では、従来の一本鎖AAVゲノムと同様に、第2鎖合成の必要なく直ちに進むための遺伝子発現を可能にする、二本鎖形態へとカプシド脱コートした後に自己アニールすることができる、いわゆる自己相補的AAV(scAAV)ゲノムに生じるもの等、末端分離(resolution)部位を欠如する第3の突然変異したITRが、ゲノムの中央に位置することができる。ある1つの型のAAV由来のITRを、同じ型のAAV由来のカプシドに、または時に偽型ベクターとして公知である異なる型のAAV由来のカプシドに含有されたゲノムにおいて使用することができる。例えば、AAV2 ITRを、AAV2カプシド、またはAAV5カプシド(これは時にAAV2/5と表示)、またはAAV2とは異なる別のAAVカプシドによってカプシド被包されたゲノムにおいて使用することができる。
【0030】
単に、ベクターゲノムの設計において広い自由度があるため、多くの異なる天然起源のおよび改変されたAAVカプシドを使用してAAVベクターを作製することができる。かつては、生物学的試料から6つの型のみの霊長類AAVが単離されており(AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5およびAAV6)、そのうち最初の5つは、抗体交差反応性実験に基づき異なる血清型として分類されるのに十分なほど構造的に別個のものであった。後に、AAV7およびAAV8と呼ばれる2種の新規AAVが、以前に発見されたAAVのcap遺伝子における高度に保存された領域を標的とするプライマーを使用したアカゲザル由来のDNAのPCR増幅によって発見された。Gao、Gら、Novel adeno-associated viruses from rhesus monkeys as vectors for human gene therapy、PNAS(USA)99(18):11854~11859(2002)。その後、同様のアプローチを使用して、ヒトおよび非ヒト霊長類組織から多数の新規AAVをクローニングし、公知AAV capタンパク質配列の範囲を大いに拡大した。Gao、Gら、Clades of Adeno-Associated Viruses Are Widely Disseminated in Human Tissues、J Virol.78(12):6381~6388(2004)。多くのAAV capタンパク質配列は、互いに、または以前に同定されたAAVと高度に類似しており、別個のAAV「血清型」と称されることが多いが、そのようなカプシドの全てが、抗体交差反応性によって検査された場合に免疫学的に識別可能であると必ず予想されるとは限らない。
【0031】
研究は、異なるAAVカプシドが、異なる組織トロピズムと共に、特定の適用についてあるカプシドを別のカプシドよりも好ましくすることができる他の特性を有することを確立した。例えば、いずれの集団が検査されているかに応じて、ヒトは、天然起源のAAVへの曝露の結果として、高い中和抗体タイターを有することができ、これは、標的細胞に形質導入する、同じまたは同様のカプシドを有するAAVベクターの能力に干渉し得る。よって、遺伝子療法のためのベクターの設計において、カプシドの選択は、一部の場合では、カプシドの免疫原性、および/または処置されるべき患者の血清有病率によって導かれ得る。
【0032】
本開示の方法に関連した使用のため、AAVベクターは、遺伝子療法における使用等、その意図される使用に適することが当技術分野で公知のいずれかのカプシドを含むことができる。そのようなカプシドは、天然起源のAAV由来のカプシドと共に、改変または操作されたカプシドを含む。例えば、組織トロピズム、免疫原性、安定性または製造可能性等、何らかの仕方でカプシド機能を改善することが意図されるcapタンパク質配列において、ペプチドを挿入することまたはアミノ酸置換を作製することにより、天然起源のカプシドを改変することができる。他の例として、ある公知のカプシドから別のカプシドへとアミノ酸もしくはドメインを取り替えることにより創出された(これは時に、モザイクまたはキメラカプシドとして公知である)、またはDNAシャッフリングおよび定向進化方法を用いて作成および選択された、改善された特性を有する新規カプシドが挙げられる。一部の実施形態では、宿主細胞によって有用に産生され、本開示の方法を用いて精製され得るAAVベクターは、次のカプシド:AAV1、AAV2、AAV3、AAV3b、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、Rh10、Rh74、AAV-DJ、AAV-PHP.B、Anc80、AAV2.5およびAAV2i8のうちいずれかを使用するAAVベクターを含み、多くのその他も可能である。
【0033】
上に記す通り、ビリオンのカプシドが、標的細胞の表面における受容体に特異的に結合すると、AAV感染が始まる。次に、ビリオンは、エンドサイトーシスを介して細胞内に取り込まれ、核に輸送され、そこで、カプシドは脱コートして、ゲノムをさらけ出す。異なるカプシドは、異なる細胞受容体に特異的に結合することが示されており、このことは、少なくとも部分的に、異なるAAV血清型およびバリアントの間で観察された異なる組織トロピズムを説明することができる。細胞へのAAVによる初期付着は、多くの場合では、細胞表面タンパク質に表示されたグリカン部分へのカプシドによる結合が関与すると思われ、他の細胞表面タンパク質は、ウイルス侵入に関与する共受容体としての重要な役割を果たす。例えば、AAV1、AAV5およびAAV6はN結合型シアル酸に、AAV4はO結合型シアル酸に、AAV9は末端N結合型ガラクトースに結合することが示された。AAV2、AAV3、AAV3b、AAV6、AAV13およびAAV-DJを含む、他のカプシドは、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)に特異的に結合することが示された。AAVRとして公知の細胞表面タンパク質は、多数のAAV血清型による侵入に明らかに要求されるが、カプシド血清型に応じて、ある特定のインテグリンおよびラミニン受容体等の他のタンパク質が関与する場合もある。例えば、Huang、LY、Parvovirus Glycan Interactions、Curr.Opin.Virol.(2014)7:108~118;Zhang、Rら、Divergent engagements between adeno-associated viruses with their cellular receptor AAVR、Nat.Comms.(2019)10:3760;Havlik、LP、Receptor Switching in Newly Evolved Adeno-associated Viruses、J.Virol.(2021)95(19):e00587-21を参照されたい。
【0034】
一部の実施形態では、いずれか公知のまたは未だ特徴付けされていないカプシドを含むAAVベクターは、本開示の方法を用いて精製することができ、一方、他の実施形態では、本開示の方法を用いて精製することができるAAVベクターは、HSPGと比較してシアル酸もしくはガラクトースにより強く結合する、またはHSPGに特異的に結合しないかもしくはごく弱く結合するカプシドを含む。よって、一部の実施形態では、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3b、AAV4、AAV5、AAV6、AAV9、AAV13およびAAV-DJ由来のカプシドを含むAAVベクターは、本開示の方法を用いて精製することができ、一方、他の実施形態では、AAV1、AAV4、AAV5およびAAV9由来のカプシドを含むAAVベクターは、本開示の方法を用いて精製することができる。いずれかの種類の受容体に対するカプシドの特異的結合親和性またはアビディティーは、表面プラズモン共鳴または他の方法等、当業者にとって造詣が深いいずれかの技法を使用して決定することができる。一部の実施形態では、本開示の方法を用いて精製することができるAAVベクターは、少なくともまたは約2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、250、500、1000倍もしくはそれを超える倍数、または他の何らかの倍数だけ、HSPGと比較してシアル酸またはガラクトースにより強く結合するカプシドを含む。
【0035】
当技術分野で公知の通り、多数の仕方で、ラージスケールを含めて、ウイルスベクターを産生することができる。例えば、AAVベクターは、哺乳類または昆虫細胞において作製し、次いで精製することができる。ヘルパーウイルスによる同時感染に頼らない伝統的なアプローチは、上に記述されている通り、3種のプラスミドの使用が関与する。1つのプラスミドは、ヘルパーウイルス因子の遺伝子を含有し、第2のプラスミドは、二本鎖形態のAAVゲノム配列を含有し、第3のプラスミドは、AAV repおよびcap遺伝子を含有する。rep/capプラスミドは、多くの場合、AAV2由来のrep遺伝子を含有するが、これは要件ではなく、cap遺伝子配列は、いずれのAAV capタンパク質がカプシドの構成に所望されるかに基づき選択される。実際に、3種のプラスミドは、多くの場合、細菌において別々に複製され、精製され、所定の割合で溶液中にて一緒に混合され、次いで、トランスフェクション剤と混合される。次に、トランスフェクション混合物は、適した哺乳類宿主細胞(接着または懸濁細胞培養における)のトランスフェクトに使用され、細胞は、十分な時間(例えば、48~72時間等)にわたり、また、宿主細胞がヘルパー因子ならびにrepおよびcap遺伝子を発現し、AAVベクターゲノムがそのプラスミドテンプレートから複製されてカプシド中にパッケージングされるのに十分な条件下で、インキュベートされる。一部の実施形態では、ヘルパープラスミドが、AdV E2A、E4ORF6およびVA RNA遺伝子を含有することのみを必要とするように、宿主細胞は、AdVヘルパー因子E1AおよびE1Bを構成的に発現するHEK293細胞である。自分でAdVまたは他のウイルスヘルパー因子を産生しない他の哺乳類宿主細胞の使用は、欠けているまたは他の理由で要求されるいずれかのヘルパー因子を含有するヘルパープラスミドの使用を必要とするであろう。上に記載されているいわゆる三重トランスフェクション方法が一般的に用いられるが、ヘルパー因子ならびにrepおよびcap遺伝子が、別々のプラスミドに提供されることの要件はない。原則的にこれらの遺伝子の全てを1つのプラスミドに収容することができ、例えば、この場合、トランスフェクションにおいて2つのプラスミドを使用することができる。
【0036】
ラージスケールでAAVベクターを産生する、より効率的な方法を求めて、当該細胞株がなければ一過的トランスフェクションによって細胞に導入される必要があるであろう構成成分の全てではなく一部を含有する安定的細胞株が創出された。パッケージング細胞株は、安定的に組み込まれたAAV repおよびcap遺伝子を含有する。パッケージング細胞におけるAAVの産生は、細胞が、AAVベクターゲノムを含有するプラスミドを一過的にトランスフェクトされ、ヘルパーウイルスに感染されることを要求する。トランスフェクションを用いずに、先ず、細胞をAdV E1遺伝子産物を供給するAdV(野生型の、またはE2b遺伝子が欠失された)に感染させ、これにより、細胞におけるrepおよびcap発現、ならびにAAV複製に要求されるヘルパー因子を誘導し、続いて、AAVベクターゲノムがハイブリッドウイルスのゲノムにおいてE1遺伝子に取って代わった複製欠損ハイブリッドAdVに感染させることにより、パッケージング細胞においてAAVベクターを産生することも可能である。産生株細胞株は、安定的に組み込まれたAAV repおよびcap遺伝子を、また、AAVベクターゲノムを含有する。産生株細胞におけるAAVの産生は、細胞がヘルパーウイルスに感染されることを要求する。パッケージングおよび産生株細胞は、例えば、Martin、Jら、Generation and characterization of adeno-associated virus producer cell lines for research and preclinical vector production、Hum.Gene Methods、24:253~269(2013);Gao、GPら、High-titer adeno-associated viral vectors from a Rep/Cap cell line and hybrid shuttle virus、Hum.Gene Ther.、9:2353~62(1998);Martin、Jら、Generation and Characterization of Adeno-Associated Virus Producer Cell Lines for Research and Preclinical Vector Production、Hum.Gene Ther.Meth.、24:253~69(2013);Clement、NおよびJC Grieger、Manufacturing of recombinant adeno-associated viral vectors for clinical trials、Mol.Ther.Meth.&Clin.Dev.(2016)3、16002(doi:10.1038/mtm.2016.2)にさらに記載されている。商業的スケールで行うものを含む、哺乳類細胞においてAAVベクターを産生するための他の細胞システムが可能である。
【0037】
バキュロウイルスシステムもまた、AAVベクターの産生に用いられてきた。このシステムにおいて、Sf9昆虫細胞は、AAV repおよびcap遺伝子ならびにAAVゲノムを様々に含有する組換えバキュロウイルスベクターに感染される。外因的遺伝子が発現され、続いて、細胞内でベクター粒子へのゲノムパッケージングが行われる。システムの初期バージョンにおいて、各構成成分であるrep、capおよびゲノムは、3種の別々のバキュロウイルスによって運搬された。後に、2つの型のバキュロウイルスのみが要求されるように、単一のバキュロウイルスにrepおよびcapを組み合わせることや、AAVベクターゲノムを含有する単一の型の組換えバキュロウイルスによる感染のみを要求する、安定的に組み込まれたAAV repおよびcap遺伝子を含有するSf9細胞株を産生すること等の改変が為された。AAVベクターを産生するためのバキュロウイルスシステムの使用は、例えば、Urabe、Mら、Insect Cells as a Factory to Produce Adeno-Associated Virus Type 2 Vectors、Hum.Gene Ther.、13:1935~43(2002);Virag、Tら、Producing recombinant adeno-associated virus in foster cells:Overcoming production limitations using a baculovirus-insect cell expression strategy、Hum.Gene Ther.、20:807~17(2009);Smith、RHら、A simplified baculovirus-AAV expression vector system coupled with one-step affinity purification yields high-titer rAAV stocks from insect cells、Mol.Ther.、17:1888~96(2009);Mietzsch、Mら、OneBac:platform for scalable and high-titer production of adeno-associated virus serotype 1-12 vectors for gene therapy、Hum.Gene.Ther.25(3):212~22(2014)にさらに記載されている。商業的スケールで行なうものを含む、昆虫細胞においてAAVベクターを産生するための他の細胞システムが可能である。
【0038】
宿主細胞の溶解
所望の生物由来生成物を含む宿主細胞は、精製されることを求められる生物由来生成物を変性させることなく、細胞内部の内容物を周囲の培地と接触させることを可能にする、細胞の原形質膜の破壊に有効であることが当技術分野で公知のいずれかの仕方で溶解することができる。宿主細胞の溶解は、溶解の直前に細胞が懸濁されたまたは他の仕方で細胞を囲んだ流体中に分散された、細胞構成成分の中でもとりわけ、宿主細胞DNAおよび生物由来生成物を含む、粗宿主細胞ライセートを産生する。
【0039】
本開示の一部の実施形態では、宿主細胞溶解は、高圧ホモジナイザーもしくはビーズミルを用いる等、機械的に、または物理的、化学的もしくは生物学的方法を包含し得る、非機械的にもたらすことができる。物理的方法の例として、加熱、凍結融解サイクル、浸透圧ショック、超音波処理またはキャビテーションに細胞を曝露することが挙げられ;化学的方法の例として、アルカリまたは界面活性剤で細胞を処理することが挙げられ;生物学的方法の例として、酵素で細胞を処理することが挙げられる。溶解方法に関するさらなる情報は、Islam、MSら、A Review on Macroscale and Microscale Cell Lysis Methods、Micromachines 8、83(pp.1~27)(2017)に見出すことができる。
【0040】
一部の実施形態では、宿主細胞溶解は、細胞の原形質膜の破壊、融解または溶解を引き起こすのに十分な濃度で界面活性剤と宿主細胞を接触させることによりもたらされる。上に記す通り、宿主細胞は、接着細胞培養または懸濁細胞培養において育成および維持することができる。一部の実施形態では、接着細胞培養において育成された宿主細胞の溶解は、いくつかの仕方で簡便に行うことができる。育成培地を除去することができ、次いで、細胞溶解を引き起こすのに十分な最終濃度で界面活性剤および場合によりバッファー等の他の構成成分を含む溶解溶液を、細胞が育成されている容器に添加し、次いで、細胞溶解が生じるまで、細胞と接触させることができる。容器をかき混ぜる、振動させる等して、細胞にわたる溶解溶液の有効な分布、ならびに溶解溶液と溶解した細胞およびその内容物の混合を引き起こすことができる。その代わりに、界面活性剤および場合によりバッファー等の他の構成成分を含む濃縮ストック溶液を調製し、細胞溶解を引き起こすのに十分な所望の最終界面活性剤濃度(例えば、%重量/体積、%重量/重量または容積モル濃度として)となるように、育成培地(またはリン酸緩衝溶液(PBS)その他等、細胞が維持されている他の生理的に適合性の流体)に直接的に添加することができる。次に、培地および溶解溶液を混合し、細胞溶解が生じるまで、容器内の接着細胞と接触させることができる。他の実施形態では、接着細胞培養において育成された宿主細胞は、その基材から化学的にまたは酵素的に剥離することができ、その後、上に記載されている溶解溶液が容器に添加され、細胞溶解が生じるまで、懸濁下の細胞と接触させる。その代わりに、剥離された細胞は、その育成容器から除去し、懸濁下で、上に記載されている通り、溶解が行われることになる新たな容器に移すことができる。
【0041】
一部の実施形態では、懸濁細胞培養において育成または維持された宿主細胞は、細胞溶解を引き起こすのに十分な所望の最終界面活性剤濃度(例えば、%重量/体積、%重量/重量または容積モル濃度として)となるように、界面活性剤および場合によりバッファー等の他の構成成分を含む濃縮ストック溶液を育成培地(またはリン酸緩衝溶液(PBS)その他等、細胞が維持される他の生理的に適合性の流体)に添加することにより溶解することができる。次に、培地および溶解溶液を混合して、培養体積の全体にわたり界面活性剤を均等に分布させ、細胞溶解が生じるまで、細胞を接触させることができる。一部の実施形態では、宿主細胞は、いずれか所望の体積のバイオリアクターにおいて育成または維持され、そこに、界面活性剤溶解溶液が、1つもしくは複数のボーラスとして、または溶解溶液の所望の体積全体が添加されるまで継続的に添加される。界面活性剤溶解溶液は、当技術分野で公知であるいずれかの仕方で、例えば、宿主細胞が懸濁された流体の上に位置するチューブ経由等、上から、または表面下添加ラインもしくはチューブ経由等、バイオリアクターのいずれか所望の高さでそのような流体の表面より下から、バイオリアクター、またはその中で宿主細胞が溶解されることになるいずれかの容器に添加することができる。細胞が懸濁されている培地および溶解溶液の混合は、細胞が溶解される期間全体にわたって進めることができる、またはより短い期間にわたり進められ、続いて、混合またはかき混ぜなしで細胞が溶解させられるインキュベーション期間となる。混合は、羽根車またはポンプの使用等、当技術分野で公知であるいずれかの仕方で行うことができる。一部の実施形態では、宿主細胞と、それが懸濁培養において育成された培地を、宿主細胞を沈降させること等により分離し、培地を除去し、同じもしくは異なる種類の新鮮培地または何らかの他の生理的に適合性の流体等の異なる流体に置き換えることができ、次いで、そこに界面活性剤溶解溶液が添加され、続いて、混合および細胞溶解が行われる。これは、細胞が育成された同じ容器で、またはいずれか適したサイズの新たな容器で起こり得る。
【0042】
所望の生物由来生成物を損なうことも変性させることもなく、宿主細胞溶解を引き起こすのに有効であることが当技術分野で公知のいずれかの界面活性剤を使用することができるが、他の仕方で変性させる界面活性剤の使用は、その濃度が低い場合または細胞がそれに限られた期間曝露される場合、可能となり得る。本開示の方法における使用のための界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤であり得る。アニオン性界面活性剤の例として、デオキシコール酸ナトリウムおよびアルキル硫酸塩、例えば、ドデシル硫酸ナトリウムが挙げられ、その他も可能である、カチオン性界面活性剤の多くの例は、当技術分野で公知である。双性イオン性界面活性剤の例として、(3-((3-コラミドプロピル(cholamidopropyl))ジメチルアンモニオ)-1-プロパンスルホネート)(CHAPS)および3-([3-コラミドプロピル]ジメチルアンモニオ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホネート(CHAPSO)が挙げられ、その他も可能である。非イオン性界面活性剤の例として、n-アルキル-ベータ-D-マルトピラノシド(アルキル基が、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルまたはドデシルである場合等)、n-アルキル-ベータ-D-グルコピラノシド(アルキル基が、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルまたはドデシルである場合等)、n-アルキル-ベータ-D-チオグルコピラノシド(アルキル基が、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルまたはドデシルである場合等)、ジギトニン、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート(例えば、ポリソルベート20(Tween 20)、ポリソルベート80(Tween 80))、Brij 35、Brij 58およびアルキルフェノールエトキシレート界面活性剤が挙げられる。
【0043】
一部の実施形態では、宿主細胞を溶解するための本開示の方法において有用である非イオン性界面活性剤は、2-アルキルフェノールエトキシレート、3-アルキルフェノールエトキシレートまたは4-アルキルフェノールエトキシレート界面活性剤等のアルキルフェノールエトキシレート界面活性剤であり、これは、一般式C2n+1-フェニル-O-[-CH2-CH2-O-]-H(式中、アルキル基は、直鎖状または分枝状であり得、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20または何らかの他の整数であり、xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55または何らかの他の整数である)によって提供される。
【0044】
一部の実施形態では、宿主細胞を溶解するための本開示の方法において有用である非イオン性界面活性剤は、2-オクチルフェノールエトキシレート、3-オクチルフェノールエトキシレートまたは4-オクチルフェノールエトキシレート界面活性剤等のオクチルフェノールエトキシレート界面活性剤であり、これは、一般式C17-フェニル-O-[-CH2-CH2-O-]-H(式中、オクチル基は、直鎖状または分枝状であり得、xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55または何らかの他の整数である)によって提供される。
【0045】
一部の実施形態では、宿主細胞を溶解するための本開示の方法において有用である非イオン性界面活性剤は、次の構造を有する4-オクチルフェノールエトキシレート界面活性剤である:
【0046】
【化1】
(式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55または何らかの他の整数である)。
【0047】
例示的なオクチルフェノールエトキシレート界面活性剤は、Triton X-15、X-35、X-45、X-100、X-165、X-305、X-405、X-102、X-114またはX-705等、Triton Xシリーズのそれを含む。例示的なオクチルフェノールエトキシレート界面活性剤は、Igepal CA-630およびCA-720等、Igepalシリーズのそれも含む。一部の実施形態では、本開示の方法における使用のためのオクチルフェノールエトキシレート界面活性剤は、次の(I)化学名:4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコール;ポリエチレングリコール4-tert-オクチルフェニルエーテル;t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール;ポリエチレングリコールtert-オクチルフェニルエーテル;ポリオキシエチレン(10)イソオクチルシクロヘキシルエーテル;(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコール;4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコール;ポリオキシエチレン(40)イソオクチルフェニルエーテル;ポリエチレングリコールtert-オクチルフェニルエーテル;ポリオキシエチレン(40)イソオクチルシクロヘキシルエーテル;ポリオキシエチレン(12)イソオクチルフェニルエーテル;ポリオキシエチレン(12)オクチルフェニルエーテル、分枝状;(II)化学式:t-オクタ-C-(OCHCHOH、x=~5;4-(C17)C10(OCHCHOH、n~10;t-オクタ-C-(OCHCHOH、x=9~10;(CO)n C1422O、n=7もしくは8;または(III)CAS登録番号:9036-19-5、92046-34-9および9002-93-1によって公知である。
【0048】
一部の実施形態では、宿主細胞を溶解するための本開示の方法において有用である非イオン性界面活性剤は、2-ノニルフェノールエトキシレート、3-ノニルフェノールエトキシレートまたは4-ノニルフェノールエトキシレート界面活性剤等のノニルフェノールエトキシレート界面活性剤であり、これは、一般式C19-フェニル-O-[-CH2-CH2-O-]-H(式中、ノニル基は、直鎖状または分枝状であり得、xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55または何らかの他の整数である)によって提供される。
【0049】
例示的なノニルフェノールエトキシレート界面活性剤は、NP-4、NP-6、NP-7、NP-8、NP-9、NP-9.5、NP-10、NP-11、NP-12、NP-13、NP-15、NP-30、NP-40およびNP-50を含むTergitol NPシリーズのそれを含む。例示的なノニルフェノールエトキシレート界面活性剤は、Igepal CO-520、CO-630、CO-720およびCO-890等、Igepalシリーズのそれも含む。一部の実施形態では、本開示の方法における使用のためのノニルフェノールエトキシレート界面活性剤は、次の(I)化学名:ポリオキシエチレン(5)ノニルフェニルエーテル、分枝状;ポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル、分枝状;ポリオキシエチレン(12)ノニルフェニルエーテル、分枝状;ポリオキシエチレン(40)ノニルフェニルエーテル、分枝状;(II)化学式:(CO)・C1524O、n~5;(CO)・C1524O ・ n=9~10;(CO)・C1524O、n=10.5~12;(CO)・C1524O n=40;または(III)CAS登録番号:68412-54-4によって公知である。
【0050】
一部の実施形態では、オクチルフェノールエトキシレートおよびノニルフェノールエトキシレート界面活性剤組成物等、アルキルフェノールエトキシレート界面活性剤組成物は、例えば、あるものは直鎖状であり、またあるものは異なる構成の分枝状である、異なるアルキル鎖構造や、異なる数のエトキシレート(OCHCH)単量体を有する親水性(hydrophile)の鎖を有する種の不均一集団を含む。一部の実施形態では、オクチルフェノールエトキシレートおよびノニルフェノールエトキシレート界面活性剤組成物等、アルキルフェノールエトキシレート界面活性剤組成物は、1分子当たりのエトキシレート単量体の平均数、例えば、1分子当たり平均して約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54もしくは55個のエトキシレート単量体、または1分子当たり1~2、2~3、3~4、4~5、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、16~17、17~18、18~19もしくは19~20個の間のエトキシレート単量体によって特徴付けることができる。
【0051】
一部の実施形態では、本開示の方法における使用のための界面活性剤組成物は、式(I)(式中、nの平均値は、9~10の間である)の構造を有するオクチルフェノールエトキシレート界面活性剤を含む。
【0052】
一部の実施形態では、特に、宿主細胞が、懸濁培養において育成または維持される場合、宿主細胞溶解のステップは、細胞が懸濁されている培地、または他の生理的に適合性の流体の規定された体積における生存宿主細胞の数、例えば、1ミリリットル当たりの生細胞数(vc/mL)を意味する、所定の生細胞密度で行うことができる。細胞生存率は、当技術分野で公知のいずれかの技法を使用して決定することができる。例えば、細胞の試料は、細胞が育成または維持されている培養物から引き抜き、トリパンブルー等の生体色素と混合することができ、次いで、色素を排除する細胞の総数を血球計数器で計数し、その結果から、1mL(または他のいずれかの体積)当たりの生細胞の数を容易に計算することができる。その代わりに、生細胞密度は、誘電率センサー等のセンサーを使用して、リアルタイムでモニターすることができ、それに関するさらなる情報は、例えば、Metze、Sら、Monitoring online biomass with a capacitance sensor during scale-up of industrially relevant CHO cell culture fed-batch processes in single-use bioreactors、Bioprocess Biosys.Eng.43:193~205(2020)に見出すことができる。
【0053】
一部の実施形態では、AAVベクター等の所望の生物由来生成物を産生する宿主細胞は、ある特定の生細胞密度で溶解(収集)され、そのような生細胞密度は、少なくとももしくは約0.01×10vc/mL、0.1×10vc/mL、1×10vc/mL、2×10vc/mL、3×10vc/mL、4×10vc/mL、5×10vc/mL、6×10vc/mL、7×10vc/mL、8×10vc/mL、9×10vc/mL、10×10vc/mL、11×10vc/mL、12×10vc/mL、13×10vc/mL、14×10vc/mL、15×10vc/mL、16×10vc/mL、17×10vc/mL、18×10vc/mL、19×10vc/mL、20×10vc/mL、21×10vc/mL、22×10vc/mL、23×10vc/mL、24×10vc/mL、25×10vc/mL、26×10vc/mL、27×10vc/mL、28×10vc/mL、29×10vc/mL、30×10vc/mLもしくはそれよりも高く、または約2×10~25×10vc/mL;5×10~25×10vc/mL;2×10~30×10vc/mL;5×10~30×10vc/mL;10×10~20×10vc/mL;11×10~20×10vc/mL;12×10~20×10vc/mL;13×10~20×10vc/mL;14×10~20×10vc/mL;15×10~20×10vc/mL;16×10~20×10vc/mL;17×10~20×10vc/mL;18×10~20×10vc/mL;19×10~20×10vc/mL;10×10~21×10vc/mL;11×10~21×10vc/mL;12×10~21×10vc/mL;13×10~21×10vc/mL;14×10~21×10vc/mL;15×10~21×10vc/mL;16×10~21×10vc/mL;17×10~21×10vc/mL;18×10~21×10vc/mL;19×10~21×10vc/mL;20×10~21×10vc/mL;10×10~22×10vc/mL;11×10~22×10vc/mL;12×10~22×10vc/mL;13×10~22×10vc/mL;14×10~22×10vc/mL;15×10~22×10vc/mL;16×10~22×10vc/mL;17×10~22×10vc/mL;18×10~22×10vc/mL;19×10~22×10vc/mL;20×10~22×10vc/mL;21×10~22×10vc/mL;10×10~23×10vc/mL;11×10~23×10vc/mL;12×10~23×10vc/mL;13×10~23×10vc/mL;14×10~23×10vc/mL;15×10~23×10vc/mL;16×10~23×10vc/mL;17×10~23×10vc/mL;18×10~23×10vc/mL;19×10~23×10vc/mL;20×10~23×10vc/mL;21×10~23×10vc/mL;10×10~24×10vc/mL;11×10~24×10vc/mL;12×10~24×10vc/mL;13×10~24×10vc/mL;14×10~24×10vc/mL;15×10~24×10vc/mL;16×10~24×10vc/mL;17×10~24×10vc/mL;18×10~24×10vc/mL;19×10~24×10vc/mL;20×10~24×10vc/mL;21×10~24×10vc/mL;22×10~24×10vc/mL;23×10~24×10vc/mL;10×10~25×10vc/mL;11×10~25×10vc/mL;12×10~25×10vc/mL;13×10~25×10vc/mL;14×10~25×10vc/mL;15×10~25×10vc/mL;16×10~25×10vc/mL;17×10~25×10vc/mL;18×10~25×10vc/mL;19×10~25×10vc/mL;20×10~25×10vc/mL;21×10~25×10vc/mL;22×10~25×10vc/mL;23×10~25×10vc/mL;24×10~25×10vc/mL;10×10~26×10vc/mL;11×10~26×10vc/mL;12×10~26×10vc/mL;13×10~26×10vc/mL;14×10~26×10vc/mL;15×10~26×10vc/mL;16×10~26×10vc/mL;17×10~26×10vc/mL;18×10~26×10vc/mL;19×10~26×10vc/mL;20×10~26×10vc/mL;21×10~26×10vc/mL;22×10~26×10vc/mL;23×10~26×10vc/mL;24×10~26×10vc/mL;25×10~26×10vc/mL;10×10~27×10vc/mL;11×10~27×10vc/mL;12×10~27×10vc/mL;13×10~27×10vc/mL;14×10~27×10vc/mL;15×10~27×10vc/mL;16×10~27×10vc/mL;17×10~27×10vc/mL;18×10~27×10vc/mL;19×10~27×10vc/mL;20×10~27×10vc/mL;21×10~27×10vc/mL;22×10~27×10vc/mL;23×10~27×10vc/mL;24×10~27×10vc/mL;25×10~27×10vc/mL;26×10~27×10vc/mL;10×10~28×10vc/mL;11×10~28×10vc/mL;12×10~28×10vc/mL;13×10~28×10vc/mL;14×10~28×10vc/mL;15×10~28×10vc/mL;16×10~28×10vc/mL;17×10~28×10vc/mL;18×10~28×10vc/mL;19×10~28×10vc/mL;20×10~28×10vc/mL;21×10~28×10vc/mL;22×10~28×10vc/mL;23×10~28×10vc/mL;24×10~28×10vc/mL;25×10~28×10vc/mL;26×10~28×10vc/mL;27×10~28×10vc/mL;10×10~29×10vc/mL;11×10~29×10vc/mL;12×10~29×10vc/mL;13×10~29×10vc/mL;14×10~29×10vc/mL;15×10~29×10vc/mL;16×10~29×10vc/mL;17×10~29×10vc/mL;18×10~29×10vc/mL;19×10~29×10vc/mL;20×10~29×10vc/mL;21×10~29×10vc/mL;22×10~29×10vc/mL;23×10~29×10vc/mL;24×10~29×10vc/mL;25×10~29×10vc/mL;26×10~29×10vc/mL;27×10~29×10vc/mL;28×10~29×10vc/mL;10×10~30×10vc/mL;11×
10~30×10vc/mL;12×10~30×10vc/mL;13×10~30×10vc/mL;14×10~30×10vc/mL;15×10~30×10vc/mL;16×10~30×10vc/mL;17×10~30×10vc/mL;18×10~30×10vc/mL;19×10~30×10vc/mL;20×10~30×10vc/mL;21×10~30×10vc/mL;22×10~30×10vc/mL;23×10~30×10vc/mL;24×10~30×10vc/mL;25×10~30×10vc/mL;26×10~30×10vc/mL;27×10~30×10vc/mL;28×10~30×10vc/mL;もしくは29×10~30×10vc/mL等、前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の生細胞密度の範囲、または何らかの他の範囲であり得る。一部の実施形態では、宿主細胞は、懸濁培養におけるHEK293細胞である。
【0054】
一部の実施形態では、AAVベクター等の所望の生物由来生成物を産生する宿主細胞は、ある体積の生理的に適合性の流体、例えば、細胞が育成された培地、または一部の実施形態では、細胞がトランスフェクトされた培地(これは、細胞が育成された培地と同じ培地であり得る)に懸濁されながら溶解され、そのような体積は、少なくとももしくは約2リットル(L)、5L、10L、20L、25L、50L、75L、100L、150L、200L、300L、400L、500L、600L、700L、750L、800L、900L、1000L、1250L、1500L、1750L、2000L、3000L、4000L、5000Lもしくはより大きい体積、または2L~5L、2L~10L、2L~50L、2L~100L、5L~10L、5L~50L、5L~100L、10L~50L、10L~100L、50L~250L、50L~500L、100L~250L、100L~500L、100L~1000L、250L~500L、250L~1000L、250L~2000L、500L~1000L、500L~2000L、500L~5000L等、前述の体積のいずれかを含めたそれらの間の範囲、または何らかの他の範囲であり得る。一部の実施形態では、体積は、宿主細胞の試料の体積であり、この試料は、例えば、バイオリアクター内の懸濁細胞培養物の体積全体を含むことができる。一部の実施形態では、宿主細胞は、懸濁培養におけるHEK293細胞である。他の実施形態では、溶解前に、宿主細胞は、細胞が育成された培地の体積と比較して小さい、生理的に適合性の流体の体積へと濃縮することができる。
【0055】
宿主細胞の懸濁液に添加される、またはそれと界面活性剤溶液の混合物における(または接着細胞が基材に付着したまま溶解される場合は、細胞溶解溶液における)界面活性剤の最終濃度は、溶解後に細胞から放出されたAAVベクター等の所望の生物由来生成物を損なうことも変性することもなく、宿主細胞を溶解するのに有効ないずれかの濃度であり得る。濃度は、パーセンテージまたは容積モル濃度を単位として表すことができ、パーセンテージとして表される場合、%重量/体積または%重量/重量として計算することができ、それらの値は、希薄水溶液にでは有意に異ならないであろう。
【0056】
一部の実施形態では、界面活性剤(例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤)の最終濃度は、少なくとももしくは約0.05%、0.10%、0.15%、0.20%、0.25%、0.30%、0.35%、0.40%、0.45%、0.50%、0.55%、0.60%、0.65%、0.70%、0.75%、0.80%、0.85%、0.90%、0.95%、1.00%、1.10%、1.20%、1.25%、1.30%、1.40%、1.50%、1.60%、1.70%、1.80%、1.90%、2.00%、3.00%、4.00%もしくは5.00%、または約0.05%~5.00%、0.05%~1.25%、0.10%~2.50%、0.10%~0.90%、0.20%~0.80%、0.20%~1.25%、0.20%~0.75%、0.25%~0.75%、0.25%~0.65%、0.20%~0.70%、0.30%~0.70%、0.35%~0.65%、0.40%~0.60%、0.45%~0.55%等、前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の濃度の範囲、または何らかの他の範囲であり得る。一部の実施形態では、宿主細胞を溶解するのに使用される界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、例えば、オクチルフェノールエトキシレート界面活性剤(例えば、4-オクチルフェノールエトキシレート界面活性剤)またはノニルフェノールエトキシレート界面活性剤(例えば、4-ノニルフェノールエトキシレート界面活性剤)等のアルキルフェノールエトキシレート界面活性剤であり、具体的な非限定的な例は、Triton X-100であり、これらのいずれかを、少なくとももしくは約0.05%、0.10%、0.15%、0.20%、0.25%、0.30%、0.35%、0.40%、0.45%、0.50%、0.55%、0.60%、0.65%、0.70%、0.75%、0.80%、0.85%、0.90%、0.95%、1.00%、1.10%、1.20%、1.25%、1.30%、1.40%、1.50%、1.60%、1.70%、1.80%、1.90%、2.00%、3.00%、4.00%もしくは5.00%、または約0.05%~5.00%、0.05%~1.25%、0.10%~2.50%、0.10%~0.90%、0.20%~0.80%、0.20%~1.25%、0.20%~0.75%、0.25%~0.75%、0.25%~0.65%、0.20%~0.70%、0.30%~0.70%、0.30%~0.60%、0.35%~0.65%、0.40%~0.60%、0.45%~0.55%等、前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の濃度の範囲、または何らかの他の範囲の最終濃度で、宿主細胞の溶解に使用することができる。
【0057】
一部の実施形態では、懸濁液における宿主細胞の試料は、Triton X-100を含む溶液を懸濁液に添加することにより溶解され、混合物におけるTriton X-100の最終濃度は、約0.30%~0.70%、0.35%~0.65%、0.40%~0.60%、0.45%~0.55%または約0.5%である。一部の実施形態では、宿主細胞は、懸濁培養におけるHEK293細胞である。一部の実施形態では、宿主細胞は、AAVベクターを産生する。
【0058】
一部の実施形態では、約0.5%の最終濃度におけるTriton X-100は、少なくとももしくは約9×10vc/mL、10×10vc/mL、11×10vc/mL、12×10vc/mL、13×10vc/mL、14×10vc/mL、15×10vc/mL、16×10vc/mL、17×10vc/mL、18×10vc/mL、19×10vc/mL、20×10vc/mL、21×10vc/mL、22×10vc/mL、23×10vc/mL、24×10vc/mL、25×10vc/mL、26×10vc/mL、27×10vc/mL、28×10vc/mL、29×10vc/mL、30×10vc/mL、または約9×10vc/mL~15×10vc/mL、10×10vc/mL~14×10vc/mL、18×10vc/mL~24×10vc/mL、10×10vc/mL~30×10vc/mLもしくは15×10vc/mL~25×10vc/mL等、前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の生細胞密度の範囲等、溶解(収集)時に高い生細胞密度であっても宿主細胞を溶解させるのに有効である。後者の2つの例示的な範囲において、0.5%Triton X-100の最終濃度は、それぞれ1mL当たり10個の生存宿主細胞当たり0.05%~0.017%、または1mL当たり10個の生存宿主細胞当たり0.033%~0.02%に等しい。これらの因数を使用して、いずれか特定の生細胞密度の宿主細胞を有効に溶解するために使用することができるTriton X-100の最終濃度範囲を計算することができる。例えば、一部の実施形態では、約0.17%~0.5%または約0.2%~0.33%の最終濃度におけるTriton X-100は、約10×10vc/mLの生細胞密度の宿主細胞を溶解させるのに有効であり、約0.33%~1.0%または約0.4%~0.67%の最終濃度におけるTriton X-100は、約20×10vc/mLの生細胞密度の宿主細胞を溶解させるのに有効であり、約0.5%~1.5%または約0.6%~1%の最終濃度におけるTriton X-100は、約30×10vc/mLの生細胞密度の宿主細胞を溶解させるのに有効である。同様の様式で、一部の実施形態では、約1%~3%または約1.2%~2%の最終濃度におけるTriton X-100は、約60×10vc/mLの生細胞密度の宿主細胞を溶解させるのに有効である。一部の非限定的な実施形態では、宿主細胞は、AAVベクターを産生する、懸濁培養において育成されたHEK293細胞である。
【0059】
一部の他の実施形態では、1×10vc/mL当たり約0.010%~0.030%、1×10vc/mL当たり0.012%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.013%~0.040%、1×10vc/mL当たり0.016%~0.027%、1×10vc/mL当たり0.017%~0.050%、1×10vc/mL当たり0.020%~0.033%、1×10vc/mL当たり0.020%~0.060%、1×10vc/mL当たり0.023%~0.070%、1×10vc/mL当たり0.024%~0.040%、または1×10vc/mL当たり約0.028%~0.047%の最終濃度で、懸濁培養において育成されたHEK293細胞等の宿主細胞の試料に添加されるTriton X-100は、宿主細胞を溶解させ、宿主細胞界面活性剤ライセートを産生するのに有効である。
【0060】
一部の実施形態では、宿主細胞の懸濁液および界面活性剤を含む溶解溶液は、溶解溶液の添加中および/または全ての溶解溶液が添加された後の期間にわたり混合されて、2つの溶液の徹底的な混合をもたらす。一部の実施形態では、そのような混合は、少なくとももしくは約5分間、10分間、15分間、20分間、30分間、40分間、50分間、60分間、70分間、75分間、80分間、90分間、100分間、115分間、120分間、150分間、3時間、4時間、5時間、6時間もしくはそれを超える、または15分間~90分間等、前述の時間のうちいずれか2つを含めたそれらの間の範囲、または何らかの他の時間の範囲にわたり行うことができる。一部の実施形態では、混合後に、宿主細胞懸濁液および界面活性剤溶解溶液の混合物は、活発な混合を行うことなく、ある期間にわたり保持またはインキュベートされる。一部の実施形態では、保持期間は、少なくとももしくは約5分間、10分間、15分間、20分間、30分間、40分間、50分間、60分間、70分間、75分間、80分間、90分間、100分間、115分間、120分間、150分間、3時間、4時間、5時間、6時間もしくはそれを超える、または15分間~90分間等、前述の時間のうちいずれか2つを含めたそれらの間の範囲、または何らかの他の時間の範囲であり得る。一部の実施形態では、混合および/または保持は、約室温、例えば、20~22℃、または約2℃~8℃、4℃もしくは37℃等、何らかの他の温度で行われる。
【0061】
宿主細胞DNAの沈殿
宿主細胞の溶解は、細胞が懸濁されている周囲の流体、例えば、育成培地中に宿主細胞DNAを放出する。宿主細胞DNAの相当な割合がゲノムDNAであるが、溶解された宿主細胞から放出されたいずれかのDNA、例えば、ミトコンドリアDNAおよび/またはプラスミドDNAを含むことができる。本方法の目標は、溶解された宿主細胞の試料における宿主細胞DNAの量を低減させることであるが、本方法は、一部の実施形態では、ライセートからRNAと共に、クロマチンとして宿主細胞DNAと複合体形成したヒストン等のタンパク質を少なくとも部分的に除去するのに有効となる可能性もある。宿主細胞DNAは、ライセートから宿主細胞DNAを除去するのに有効であることが当技術分野で公知のいずれかの技法によって、宿主細胞のライセートから除去することができる。本明細書で使用される場合、宿主細胞のライセートからの宿主細胞DNAの除去は、そのようなDNA全ての除去を要求しないが、後述でより明らかとなるように、ライセートの一部分における宿主細胞DNAの量の単なる低減を要求する。
【0062】
一部の実施形態では、カチオン性界面活性剤等のカチオン性有機化合物とDNAを接触させることにより宿主細胞DNAを沈殿させることにより、宿主細胞DNAは、ライセートから除去することができる。そのような接触は、適した容器において、カチオン性界面活性剤(すなわち、DNA沈殿溶液)および場合によりバッファー等の他の構成成分を含むストック溶液を宿主細胞ライセートに添加して、宿主細胞DNAを沈殿させるのに十分な、ライセートにおけるカチオン性界面活性剤の最終濃度(例えば、%重量/体積、%重量/重量または容積モル濃度として)を達成し、次いで、ライセート全体にわたりカチオン性界面活性剤を均等に分布させ、DNAに接触させるように混合することにより、簡便に行うことができる。一部の実施形態では、DNA沈殿が行われる容器は、宿主細胞溶解が行われたバイオリアクター等の同じ容器である。DNA沈殿溶液は、宿主細胞DNAが、当技術分野で公知であるいずれかの仕方で、例えば、宿主細胞が懸濁された流体の上に位置するチューブ経由等、上からまたは表面下添加ラインもしくはチューブ経由等、バイオリアクターのいずれか所望の高さでそのような流体の表面より下から、1つもしくは複数のボーラスとして、またはDNA沈殿溶液の所望の体積全体が添加されるまで継続的に沈殿されることになるバイオリアクターまたはいずれかの容器に添加することができる。混合は、DNA沈殿溶液が添加されている間におよび/またはその後のある期間にわたり起こり、それぞれの場合において、ライセートおよびDNA沈殿溶液を一緒に徹底的に混合することができる。混合は、羽根車またはポンプの使用等、当技術分野で公知であるいずれかの仕方で行うことができる。
【0063】
理論に制約されることは望まないが、カチオン性界面活性剤における正に荷電した基は、DNA骨格における負に荷電したリン酸と静電気的に相互作用することができ、一方、界面活性剤分子内の疎水性の基は、非共有結合的に相互作用して、水を排除し、DNAおよび界面活性剤分子の複合体を沈殿させると考えられる。初期に、粒子は、非常に小型であり、溶液中で懸濁状態を維持するが、所望であればモニターすることができる濁度の増加を引き起こすことにより検出可能(detectible)となり得る。しかし、沈殿反応が進むにつれて、複合体形成したDNAおよび界面活性剤のこれまでより大型の粒子が合体し、最終的に、重力の影響下で溶液から沈降することができる十分なサイズの凝集物(凝集塊)を形成し、沈殿反応が生じる封じ込め容器(例えば、ボトル、タンクまたは撹拌タンクバイオリアクターその他)の底に凝結物を形成し、その上に、AAVベクター等の生物由来生成物を含有する部分的に清澄化された上清が形成される。典型的に、凝結物は、低密度であり、容易に撹乱され、そのため、ライセート中にカチオン性界面活性剤を分布させるための混合後に、混合物は、カチオン性界面活性剤およびDNAが相互作用して、溶液から凝結物として沈降する沈殿物を形成することを可能にするために、多くの場合、有意な混合もかき混ぜも行わずに、またはせいぜい穏やかな混合下で保持またはインキュベートされる。
【0064】
一部の実施形態では、カチオン性界面活性剤は、四級アンモニウムカチオンにおける電荷が、臭化物、塩化物またはヨウ化物等のハロゲン化物によってバランスを取られた、アルキル-ジメチル-(2-フェノキシエチル)アザニウムまたはその塩等の四級アンモニウム化合物である。一部の実施形態では、カチオン性界面活性剤は、アルキル置換基がC~C18またはC~C16、C10~C14またはC12であり、ハロゲン化物が臭化物、塩化物またはヨウ化物である、アルキル-ジメチル-(2-フェノキシエチル)アザニウムハロゲン化物である。一部の実施形態では、カチオン性界面活性剤は、ドミフェン(CAS登録番号13900-14-6)とも呼ばれるドデシル-ジメチル-(2-フェノキシエチル)アザニウムであり、ハロゲン化物は、臭化物、塩化物またはヨウ化物である。さらに他の実施形態では、カチオン性界面活性剤は、「DB」と省略される、ドミフェン臭化物(CAS登録番号538-71-6)とも呼ばれるドデシル-ジメチル-(2-フェノキシエチル)アザニウム臭化物である。
【0065】
一部の実施形態では、ライセートとの混合物におけるドミフェン臭化物 (DB)等のドデシル-ジメチル-(2-フェノキシエチル)アザニウムハロゲン化物等のアルキル-ジメチル-(2-フェノキシエチル)アザニウムハロゲン化物等のカチオン性界面活性剤の最終濃度(%重量/体積(w/v)または重量/重量(w/w)。これらは、相対的に希薄な水溶液では同等である)は、少なくとももしくは約0.05%、0.10%、0.15%、0.20%、0.25%、0.30%、0.35%、0.40%、0.45%もしくは0.50%、または0.10%~0.50%、0.10%~0.40%、0.10%~0.30%、0.10%~0.20%、0.15%~0.45%、0.20%~0.50%、0.20%~0.40%、0.20%~0.30%、0.25%~0.35%、0.25%~0.45%、0.30%~0.50%、0.30%~0.40%、0.40%~0.50%等、前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の濃度の範囲、または何らかの他の濃度の範囲である。
【0066】
一部の実施形態では、約0.3%の最終濃度におけるDBは、少なくとももしくは約9×10vc/mL、10×10vc/mL、11×10vc/mL、12×10vc/mL、13×10vc/mL、14×10vc/mL、15×10vc/mL、16×10vc/mL、17×10vc/mL、18×10vc/mL、19×10vc/mL、20×10vc/mL、21×10vc/mL、22×10vc/mL、23×10vc/mL、24×10vc/mL、25×10vc/mL、26×10vc/mL、27×10vc/mL、28×10vc/mL、29×10vc/mL、30×10vc/mL、または約9×10vc/mL~15×10vc/mL、10×10vc/mL~14×10vc/mL、18×10vc/mL~24×10vc/mL、10×10vc/mL~30×10vc/mLもしくは15×10vc/mL~25×10vc/mL等、前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の生細胞密度の範囲等、収集時に高い生細胞密度であっても、溶解された宿主細胞の界面活性剤ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させるのに有効である。後者の2つの例示的な範囲において、0.3%DBの最終濃度は、それぞれ1mL当たり10個の生存宿主細胞当たり0.03%~0.01%、または1mL当たり10個の生存宿主細胞当たり0.02%~0.012%に等しい。これらの因数を使用して、いずれか特定の生細胞密度で宿主細胞DNAを有効に沈殿させるのに使用することができるDBの最終濃度範囲を計算することができる。例えば、一部の実施形態では、約0.1%~0.3%または約0.12%~0.2%の最終濃度におけるDBは、約10×10vc/mLの生細胞密度で宿主細胞DNAを沈殿させるのに有効であり、約0.2%~0.6%または約0.24%~0.4%の最終濃度におけるDBは、約20×10vc/mLの生細胞密度で宿主細胞DNAを沈殿させるのに有効であり、約0.3%~0.9%または約0.36%~0.6%の最終濃度におけるDBは、約30×10vc/mLの生細胞密度で宿主細胞DNAを沈殿させるのに有効である。同様の様式で、一部の実施形態では、約0.6%~1.8%または約0.72%~1.2%の最終濃度におけるDBは、約60×10vc/mLの生細胞密度で宿主細胞DNAを沈殿させるのに有効である。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり0.009%、0.008%または0.007%以上の最終濃度におけるDBは、宿主細胞の界面活性剤ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させるのに有効である。前述の実施形態のいずれかに関するさらに他の実施形態では、宿主細胞は、AAVベクターを産生した、懸濁液において育成されたHEK293細胞であり得、上清における残渣宿主細胞DNAの量は、1×10ベクターゲノム当たり約100、90、80、70、60、50、40、30または20ピコグラム(pg/1×10vg)未満であり得、ライセートにおけるAAVベクターの量に対する上清におけるAAVベクターの量(収率)は、少なくとも約30%、35%、40%、45%または50%であり得る。
【0067】
前述の実施形態では、DBの最終濃度のTriton X-100の最終濃度に対する比は、約0.6である。他の実施形態では、この比は、AAVベクター等の生物由来生成物の収率を実質的に低減させることなく、また、上清における残渣宿主細胞DNAの量を実質的に増加させることなく、若干変動し得る。例えば、一部の実施形態では、Triton X-100の最終濃度は、約0.3%であり得、DBの最終濃度は、約0.10%~0.60%(または、約0.33~2のDB対Triton X-100の比)、0.15%~0.55%(または、約0.5~1.83のDB対Triton X-100の比)、0.20%~0.50%(または、約0.67~1.67のDB対Triton X-100の比)、0.20%~0.45%(または、約0.67~1.5のDB対Triton X-100の比)、0.20%~0.40%(または、約0.67~1.33のDB対Triton X-100の比)、0.20%~0.35%(または、約0.67~1.17のDB対Triton X-100の比)、0.25%~0.50%(または、約0.83~1.67のDB対Triton X-100の比)、0.25%~0.45%(または、約0.83~1.5のDB対Triton X-100の比)、0.25%~0.40%(または、約0.83~1.33のDB対Triton X-100の比)、0.25%~0.35%(または、約0.83~1.17のDB対Triton X-100の比)に変動し得る、約0.3%(または、約1のDB対Triton X-100の比)であり得る、または約0.2%(または、約0.67のDB対Triton X-100の比)であり得る。前述の実施形態のいずれかでは、収集時の生存宿主細胞の濃度は、少なくとももしくは約9×10vc/mL、10×10vc/mL、11×10vc/mL、12×10vc/mL、13×10vc/mL、14×10vc/mL、15×10vc/mL、16×10vc/mL、17×10vc/mL、18×10vc/mL、19×10vc/mL、20×10vc/mL、21×10vc/mL、22×10vc/mL、23×10vc/mL、24×10vc/mL、25×10vc/mL、26×10vc/mL、27×10vc/mL、28×10vc/mL、29×10vc/mL、30×10vc/mL、または約9×10vc/mL~15×10vc/mL、10×10vc/mL~14×10vc/mL、18×10vc/mL~24×10vc/mL、10×10vc/mL~30×10vc/mLもしくは15×10vc/mL~25×10vc/mL等、前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の生細胞密度の範囲であり得る。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり0.009%、0.008%または0.007%以上の最終濃度におけるDBは、宿主細胞の界面活性剤ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させるのに有効である。前述の実施形態のいずれかに関するさらに他の実施形態では、宿主細胞は、AAVベクターを産生した、懸濁液において育成されたHEK293細胞であり得、上清における残渣宿主細胞DNAの量は、1×10ベクターゲノム当たり約100、90、80、70、60、50、40、30または20ピコグラム未満(pg/1×10vg)であり得、ライセートにおけるAAVベクターの量に対する上清におけるAAVベクターの量(収率)は、少なくとも約30%、35%、40%、45%または50%であり得る。
【0068】
一部の他の実施形態では、Triton X-100の最終濃度は、約0.3%~0.4%または約0.4%であり得、DBの最終濃度は、約0.10%~0.60%(または、約0.25~1.5のDB対Triton X-100の比)、0.15%~0.55%(または、約0.38~1.38のDB対Triton X-100の比)、0.20%~0.50%(または、約0.5~1.25のDB対Triton X-100の比)、0.20%~0.45%(または、約0.5~1.13のDB対Triton X-100の比)、0.20%~0.40%(または、約0.5~1のDB対Triton X-100の比)、0.20%~0.35%(または、約0.5~0.88のDB対Triton X-100の比)、0.25%~0.50%(または、約0.63~1.15のDB対Triton X-100の比)、0.25%~0.45%(または、約0.63~1.13のDB対Triton X-100の比)、0.25%~0.40%(または、約0.63~1のDB対Triton X-100の比)、0.25%~0.35%(または、約0.63~0.88のDB対Triton X-100の比)に変動し得る、約0.3%(または、約0.75のDB対Triton X-100の比)であり得る、または約0.2%(または、約0.5のDB対Triton X-100の比)であり得る。前述の実施形態のいずれかでは、収集時の生存宿主細胞の濃度は、少なくとももしくは約9×10vc/mL、10×10vc/mL、11×10vc/mL、12×10vc/mL、13×10vc/mL、14×10vc/mL、15×10vc/mL、16×10vc/mL、17×10vc/mL、18×10vc/mL、19×10vc/mL、20×10vc/mL、21×10vc/mL、22×10vc/mL、23×10vc/mL、24×10vc/mL、25×10vc/mL、26×10vc/mL、27×10vc/mL、28×10vc/mL、29×10vc/mL、30×10vc/mL、または約9×10vc/mL~15×10vc/mL、10×10vc/mL~14×10vc/mL、18×10vc/mL~24×10vc/mL、10×10vc/mL~30×10vc/mLもしくは15×10vc/mL~25×10vc/mL等、前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の生細胞密度の範囲であり得る。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり0.009%、0.008%または0.007%以上の最終濃度におけるDBは、宿主細胞の界面活性剤ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させるのに有効である。前述の実施形態のいずれかに関するさらに他の実施形態では、宿主細胞は、AAVベクターを産生した、懸濁液において育成されたHEK293細胞であり得、上清における残渣宿主細胞DNAの量は、1×10ベクターゲノム当たり約100、90、80、70、60、50、40、30または20ピコグラム未満(pg/1×10vg)であり得、ライセートにおけるAAVベクターの量に対する上清におけるAAVベクターの量(収率)は、少なくとも約30%、35%、40%、45%または50%であり得る。
【0069】
一部の他の実施形態では、Triton X-100の最終濃度は、約0.4%~0.5%または約0.5%であり得、DBの最終濃度は、約0.10%~0.60%(または、約0.2~1.2のDB対Triton X-100の比)、0.15%~0.55%(または、約0.3~1.1のDB対Triton X-100の比)、0.20%~0.50%(または、約0.4~1のDB対Triton X-100の比)、0.20%~0.45%(または、約0.4~0.9のDB対Triton X-100の比)、0.20%~0.40%(または、約0.4~0.8のDB対Triton X-100の比)、0.20%~0.35%(または、約0.4~0.7のDB対Triton X-100の比)、0.25%~0.50%(または、約0.5~1のDB対Triton X-100の比)、0.25%~0.45%(または、約0.5~0.9のDB対Triton X-100の比)、0.25%~0.40%(または、約0.5~0.8のDB対Triton X-100の比)、0.25%~0.35%(または、約0.5~0.7のDB対Triton X-100の比)に変動し得る、約0.3%(または、約0.6のDB対Triton X-100の比)であり得る、または約0.2%(または、約0.4のDB対Triton X-100の比)であり得る。前述の実施形態のいずれかでは、収集時の生存宿主細胞の濃度は、少なくとももしくは約9×10vc/mL、10×10vc/mL、11×10vc/mL、12×10vc/mL、13×10vc/mL、14×10vc/mL、15×10vc/mL、16×10vc/mL、17×10vc/mL、18×10vc/mL、19×10vc/mL、20×10vc/mL、21×10vc/mL、22×10vc/mL、23×10vc/mL、24×10vc/mL、25×10vc/mL、26×10vc/mL、27×10vc/mL、28×10vc/mL、29×10vc/mL、30×10vc/mL、または約9×10vc/mL~15×10vc/mL、10×10vc/mL~14×10vc/mL、18×10vc/mL~24×10vc/mL、10×10vc/mL~30×10vc/mLもしくは15×10vc/mL~25×10vc/mL等、前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の生細胞密度の範囲であり得る。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり0.009%、0.008%または0.007%以上の最終濃度におけるDBは、宿主細胞の界面活性剤ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させるのに有効である。前述の実施形態のいずれかに関するさらに他の実施形態では、宿主細胞は、AAVベクターを産生した、懸濁液において育成されたHEK293細胞であり得、上清における残渣宿主細胞DNAの量は、1×10ベクターゲノム当たり約100、90、80、70、60、50、40、30または20ピコグラム未満(pg/1×10vg)であり得、ライセートにおけるAAVベクターの量に対する上清におけるAAVベクターの量(収率)は、少なくとも約30%、35%、40%、45%または50%であり得る。
【0070】
一部の他の実施形態では、Triton X-100の最終濃度は、約0.5%~0.6%または約0.6%であり得、DBの最終濃度は、約0.10%~0.60%(または、約0.17~1のDB対Triton X-100の比)、0.15%~0.55%(または、約0.25~0.92のDB対Triton X-100の比)、0.20%~0.50%(または、約0.33~0.83のDB対Triton X-100の比)、0.20%~0.45%(または、約0.33~0.75のDB対Triton X-100の比)、0.20%~0.40%(または、約0.33~0.67のDB対Triton X-100の比)、0.20%~0.35%(または、約0.33~0.58のDB対Triton X-100の比)、0.25%~0.50%(または、約0.42~0.83のDB対Triton X-100の比)、0.25%~0.45%(または、約0.42~0.75のDB対Triton X-100の比)、0.25%~0.40%(または、約0.42~0.67のDB対Triton X-100の比)、0.25%~0.35%(または、約0.42~0.58のDB対Triton X-100の比)に変動し得る、約0.3%(または、約0.5のDB対Triton X-100の比)であり得る、または約0.2%(または、約0.33のDB対Triton X-100の比)であり得る。前述の実施形態のいずれかでは、収集時の生存宿主細胞の濃度は、少なくとももしくは約9×10vc/mL、10×10vc/mL、11×10vc/mL、12×10vc/mL、13×10vc/mL、14×10vc/mL、15×10vc/mL、16×10vc/mL、17×10vc/mL、18×10vc/mL、19×10vc/mL、20×10vc/mL、21×10vc/mL、22×10vc/mL、23×10vc/mL、24×10vc/mL、25×10vc/mL、26×10vc/mL、27×10vc/mL、28×10vc/mL、29×10vc/mL、30×10vc/mL、または約9×10vc/mL~15×10vc/mL、10×10vc/mL~14×10vc/mL、18×10vc/mL~24×10vc/mL、10×10vc/mL~30×10vc/mLもしくは15×10vc/mL~25×10vc/mL等、前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の生細胞密度の範囲であり得る。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり0.009%、0.008%または0.007%以上の最終濃度におけるDBは、宿主細胞の界面活性剤ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させるのに有効である。前述の実施形態のいずれかに関するさらに他の実施形態では、宿主細胞は、AAVベクターを産生した、懸濁液において育成されたHEK293細胞であり得、上清における残渣宿主細胞DNAの量は、1×10ベクターゲノム当たり約100、90、80、70、60、50、40、30または20ピコグラム未満(pg/1×10vg)であり得、ライセートにおけるAAVベクターの量に対する上清におけるAAVベクターの量(収率)は、少なくとも約30%、35%、40%、45%または50%であり得る。
【0071】
一部の他の実施形態では、Triton X-100の最終濃度は、約0.6%~0.7%または約0.7%であり得、DBの最終濃度は、約0.10%~0.60%(または、約0.14~0.86のDB対Triton X-100の比)、0.15%~0.55%(または、約0.21~0.79のDB対Triton X-100の比)、0.20%~0.50%(または、約0.29~0.71のDB対Triton X-100の比)、0.20%~0.45%(または、約0.29~0.64のDB対Triton X-100の比)、0.20%~0.40%(または、約0.29~0.57のDB対Triton X-100の比)、0.20%~0.35%(または、約0.29~0.5のDB対Triton X-100の比)、0.25%~0.50%(または、約0.36~0.71のDB対Triton X-100の比)、0.25%~0.45%(または、約0.36~0.64のDB対Triton X-100の比)、0.25%~0.40%(または、約0.36~0.57のDB対Triton X-100の比)、0.25%~0.35%(または、約0.36~0.5のDB対Triton X-100の比)に変動し得る、約0.3%(または、約0.43のDB対Triton X-100の比)であり得る、または約0.2%(または、約0.29のDB対Triton X-100の比)であり得る。前述の実施形態のいずれかでは、収集時の生存宿主細胞の濃度は、少なくとももしくは約9×10vc/mL、10×10vc/mL、11×10vc/mL、12×10vc/mL、13×10vc/mL、14×10vc/mL、15×10vc/mL、16×10vc/mL、17×10vc/mL、18×10vc/mL、19×10vc/mL、20×10vc/mL、21×10vc/mL、22×10vc/mL、23×10vc/mL、24×10vc/mL、25×10vc/mL、26×10vc/mL、27×10vc/mL、28×10vc/mL、29×10vc/mL、30×10vc/mL、または約9×10vc/mL~15×10vc/mL、10×10vc/mL~14×10vc/mL、18×10vc/mL~24×10vc/mL、10×10vc/mL~30×10vc/mLもしくは15×10vc/mL~25×10vc/mL等、前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の生細胞密度の範囲であり得る。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり0.009%、0.008%または0.007%以上の最終濃度におけるDBは、宿主細胞の界面活性剤ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させるのに有効である。前述の実施形態のいずれかに関するさらに他の実施形態では、宿主細胞は、AAVベクターを産生した、懸濁液において育成されたHEK293細胞であり得、上清における残渣宿主細胞DNAの量は、1×10ベクターゲノム当たり約100、90、80、70、60、50、40、30または20ピコグラム未満(pg/1×10vg)であり得、ライセートにおけるAAVベクターの量に対する上清におけるAAVベクターの量(収率)は、少なくとも約30%、35%、40%、45%または50%であり得る。
【0072】
一部の他の実施形態では、1×10vc/mL当たり約0.003%~0.010%、1×10vc/mL当たり0.004%~0.007%、1×10vc/mL当たり0.007%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.008%~0.013%、1×10vc/mL当たり0.010%~0.030%、1×10vc/mL当たり0.012%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.013%~0.040%、1×10vc/mL当たり0.016%~0.027%、1×10vc/mL当たり0.017%~0.050%、1×10vc/mL当たり0.020%~0.033%の最終濃度で、懸濁培養において育成されたHEK293細胞等の宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加されたDBは、宿主細胞界面活性剤ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させるのに有効である。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり約0.010%~0.030%の最終濃度で、懸濁培養において育成されたHEK293細胞等の宿主細胞の試料に添加されたTriton X-100は、宿主細胞を溶解させ、宿主細胞界面活性剤ライセートを産生するのに有効であり、1×10vc/mL当たり約0.003%~0.010%、1×10vc/mL当たり0.004%~0.007%、1×10vc/mL当たり0.007%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.008%~0.013%、1×10vc/mL当たり0.010%~0.030%、1×10vc/mL当たり0.012%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.013%~0.040%、1×10vc/mL当たり0.016%~0.027%、1×10vc/mL当たり0.017%~0.050%、1×10vc/mL当たり0.020%~0.033%の最終濃度におけるDBは、宿主細胞界面活性剤ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させるのに有効である。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり約0.012%~0.020%の最終濃度におけるTriton X-100は、宿主細胞を溶解させるのに有効であり、1×10vc/mL当たり約0.003%~0.010%、1×10vc/mL当たり0.004%~0.007%、1×10vc/mL当たり0.007%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.008%~0.013%、1×10vc/mL当たり0.010%~0.030%、1×10vc/mL当たり0.012%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.013%~0.040%、1×10vc/mL当たり0.016%~0.027%、1×10vc/mL当たり0.017%~0.050%、1×10vc/mL当たり0.020%~0.033%の最終濃度におけるDBは、宿主細胞界面活性剤ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させるのに有効である。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり約0.013%~0.040%の最終濃度におけるTriton X-100は、宿主細胞を溶解させるのに有効であり、1×10vc/mL当たり約0.003%~0.010%、1×10vc/mL当たり0.004%~0.007%、1×10vc/mL当たり0.007%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.008%~0.013%、1×10vc/mL当たり0.010%~0.030%、1×10vc/mL当たり0.012%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.013%~0.040%、1×10vc/mL当たり0.016%~0.027%、1×10vc/mL当たり0.017%~0.050%、1×10vc/mL当たり0.020%~0.033%の最終濃度におけるDBは、宿主細胞界面活性剤ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させるのに有効である。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり約0.016%~0.027%の最終濃度におけるTriton X-100は、宿主細胞を溶解させるのに有効であり、1×10vc/mL当たり約0.003%~0.010%、1×10vc/mL当たり0.004%~0.007%、1×10vc/mL当たり0.007%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.008%~0.013%、1×10vc/mL当たり0.010%~0.030%、1×10vc/mL当たり0.012%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.013%~0.040%、1×10vc/mL当たり0.016%~0.027%、1×10vc/mL当たり0.017%~0.050%、1×10vc/mL当たり0.020%~0.033%の最終濃度におけるDBは、宿主細胞界面活性剤ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させるのに有効である。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり約0.017%~0.050%の最終濃度におけるTriton X-100は、宿主細胞を溶解させるのに有効であり、1×10vc/mL当たり約0.003%~0.010%、1×10vc/mL当たり0.004%~0.007%、1×10vc/mL当たり0.007%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.008%~0.013%、1×10vc/mL当たり0.010%~0.030%、1×10vc/mL当たり0.012%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.013%~0.040%、1×10vc/mL当たり0.016%~0.027%、1×10vc/mL当たり0.017%~0.050%、1×10vc/mL当たり0.020%~0.033%の最終濃度におけるDBは、宿主細胞界面活性剤ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させるのに有効である。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり約0.020%~0.033%の最終濃度におけるTriton X-100は、宿主細胞を溶解させるのに有効であり、1×10vc/mL当たり約0.003%~0.010%、1×10vc/mL当たり0.004%~0.007%、1×10vc/mL当たり0.007%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.008%~0.013%、1×10vc/mL当たり0.010%~0.030%、1×10vc/mL当たり0.012%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.013%~0.040%、1×10vc/mL当たり0.016%~0.027%、1×10vc/mL当たり0.017%~0.050%、1×10vc/mL当たり0.020%~0.033%の最終濃度におけるDBは、宿主細胞界面活性剤ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させるのに有効である。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり約0.020%~0.060%の最終濃度におけるTriton X-100は、宿主細胞を溶解させるのに有効であり、1×10vc/mL当たり約0.003%~0.010%、1×10vc/mL当たり0.004%~0.007%、1×10vc/mL当たり0.007%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.008%~0.013%、1×10vc/mL当たり0.010%~0.030%、1×10vc/mL当たり0.012%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.013%~0.040%、1×10vc/mL当たり0.016%~0.027%、1×10vc/mL当たり0.017%~0.050%、1×10vc/mL当たり0.020%~0.033%の最終濃度におけるDBは、宿主細胞界面活性剤ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させるのに有効である。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり約0.023%~0.070%の最終濃度におけるTriton X-100は、宿主細胞を溶解させるのに有効であり、1×10vc/mL当たり約0.003%~0.010%、1×10vc/mL当たり0.004%~0.007%、1×10vc/mL当たり0.007%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.008%~0.013%、1×10vc/mL当たり0.010%~0.030%、1×10vc/mL当たり0.012%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.013%~0.040%、1×10vc/mL当たり0.016%~0.027%、1×10vc/mL当たり0.017%~0.050%、1×10vc/mL当たり0.020%~0.033%の最終濃度におけるDBは、宿主細胞界面活性剤ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させるのに有効である。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり約0.024%~0.040%の最終濃度におけるTriton X-100は、宿主細胞を溶解させるのに有効であり、1×10vc/mL当たり約0.003%~0.010%、1×10vc/mL当たり0.004%~0.007%、1×10vc/mL当たり0.007%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.008%~0.013%、1×10vc/mL当たり0.010%~0.030%、1×10vc/mL当たり0.012%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.013%~0.040%、1×10vc/mL当たり0.016%~0.027%、1×10vc/mL当たり0.017%~0.050%、1×10vc/mL当たり0.020%~0.033%の最終濃度におけるDBは、宿主細胞界面活性剤ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させるのに有効である。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり約0.028%~0.047%の最終濃度におけるTriton X-100は、宿主細胞を溶解させるのに有効であり、1×10vc/mL当たり約0.003%~0.010%、1×10vc/mL当たり0.004%~0.007%、1×10vc/mL当たり0.007%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.008%~0.013%、1×10vc/mL当たり0.010%~0.030%、1×10vc/mL当たり0.012%~0.020%、1×10vc/mL当たり0.013%~0.040%、1×10vc/mL当たり0.016%~0.027%、1×10vc/mL当たり0.017%~0.050%、1×10vc/mL当たり0.020%~0.033%の最終濃度におけるDBは、宿主細胞界面活性剤ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させるのに有効である。
【0073】
一部の実施形態では、収集時の生細胞密度は、約10×10vc/mL~30×10vc/mL、15×10vc/mL~25×10vc/mLの範囲に及び、細胞は、AAVベクターを産生し、細胞の溶解に使用されるTriton X-100の最終濃度は、約0.35%~0.65%または0.4%~0.6%の範囲に及び、宿主細胞DNAの沈殿に使用されるDBの最終濃度は、約0.15%~0.45%または0.2%~0.4%の範囲に及び、上清における残渣宿主細胞DNAの量は、1×10ベクターゲノム当たり約100、90、80、70、60、50、40、30または20ピコグラム(pg/1×10vg)未満であり、ライセートにおけるAAVベクターの量に対する上清におけるAAVベクターの量(収率)は、少なくとも約30%、35%、40%、45%または50%である。これらの実施形態のいずれかでは、宿主細胞は、懸濁培養において育成されたHEK293細胞であり得る。
【0074】
一部の実施形態では、収集時の生細胞密度は、約15×10vc/mL~25×10vc/mLの範囲に及び、細胞は、AAVベクターを産生し、細胞の溶解に使用されるTriton X-100の最終濃度は、約0.4%~0.6%の範囲に及び、宿主細胞DNAの沈殿に使用されるDBの最終濃度は、約0.2%~0.4%の範囲に及び、上清における残渣宿主細胞DNAの量は、1×10ベクターゲノム当たり約50ピコグラム(pg/1×10vg)未満であり、ライセートにおけるAAVベクターの量に対する上清におけるAAVベクターの量(収率)は、少なくとも約40%である。これらの実施形態のいずれかでは、宿主細胞は、懸濁培養において育成されたHEK293細胞であり得る。
【0075】
一部の実施形態では、収集時の生細胞密度は、約15×10vc/mL~25×10vc/mLの範囲に及び、細胞は、AAVベクターを産生し、細胞の溶解に使用されるTriton X-100の最終濃度は、約0.5%であり、宿主細胞DNAの沈殿に使用されるDBの最終濃度は、約0.2%~0.3%の範囲に及び、上清における残渣宿主細胞DNAの量は、1×10ベクターゲノム当たり約50ピコグラム(pg/1×10vg)未満であり、ライセートにおけるAAVベクターの量に対する上清におけるAAVベクターの量(収率)は、少なくとも約40%である。これらの実施形態のいずれかでは、宿主細胞は、懸濁培養において育成されたHEK293細胞であり得る。
【0076】
一部の実施形態では、宿主細胞ライセート、およびDB等のカチオン性界面活性剤を含むDNA沈殿溶液は、DNA沈殿溶液の添加の最中のおよび/またはDNA沈殿溶液が全て添加された後の期間にわたり混合されて、2つの溶液の徹底的な混合をもたらす。一部の実施形態では、そのような混合は、少なくとももしくは約5分間、10分間、15分間、20分間、30分間、40分間、50分間、60分間、70分間、75分間、80分間、90分間、100分間、115分間、120分間、150分間、180分間、または15分間~60分間等、前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の時間の範囲、または何らかの他の時間の範囲にわたり行うことができる。一部の実施形態では、混合後に、宿主細胞ライセート、およびDB等のカチオン性界面活性剤を含むDNA沈殿溶液の混合物は、凝集塊の沈降を可能にするために、活発な混合を行うことなく、ある期間にわたり保持される。一部の実施形態では、保持期間は、少なくとももしくは約5分間、10分間、15分間、20分間、30分間、40分間、50分間、60分間、70分間、75分間、80分間、90分間、100分間、115分間、120分間、150分間、3時間、4時間、5時間、6時間もしくはそれを超える、または30分間~3時間、1時間~6時間等、前述の時間のうちいずれか2つを含めたそれらの間の範囲、または何らかの他の時間の範囲であり得る。一部の実施形態では、混合および/または保持は、約室温、例えば、約20℃~22℃、または約2℃~8℃、4℃もしくは37℃等、何らかの他の温度で行われる。
【0077】
上清からの凝結した宿主細胞DNAの分離
凝結した宿主細胞DNAおよび上清を分離するのに有効であることが当技術分野で公知のいずれかの技法によって、凝結した宿主細胞DNAを上清から分離することができる。上に記す通り、一部の実施形態では、通常、沈降が生じている間に混合することなく、宿主細胞ライセートおよびDNA沈殿溶液が混合された容器の底に、ある期間にわたり重力の影響下で凝集塊を沈降させることにより、凝結した宿主細胞DNAを上清から分離することができる。その代わりに、連続流遠心分離等の遠心分離によって、凝結した宿主細胞DNAを上清から分離することができる。凝集塊は、1つまたは複数のデプスフィルターを通して混合物から除去することもできる。
【0078】
部分的に清澄化された上清(ライセート)が、凝結した宿主細胞DNAの層の上に形成されたら、上清または凝結物をポンピングによって除去することができる。例えば、その端が上清に浸漬されているが凝結物層の上に位置する、上から挿入されたチューブを通して、または凝結物の層の上に配置された容器の壁を通って挿入されたポートを通して、上清をポンピングして出すことができる。その代わりに、その端が凝結物に浸漬されている、上から挿入されたチューブを通して、または容器の底にある、もしくは上清の下に配置された容器の壁を通って挿入されたポートを通して、凝結物をポンピングして出すことができる。これらの方法の組合せを使用することもできる。典型的に、凝結した宿主細胞DNAから除去または分離された後に、上清は、新たな容器に移される。
【0079】
一部の実施形態では、部分的に清澄化された上清は、ポンピング等によって凝結した宿主細胞DNAから除去または分離された後に、例えば、1つまたは複数のデプスフィルターおよび/または膜フィルターを通した濾過によって、除去プロセス中に運ばれた可能性のあるいかなる凝集塊も除去するように濾過される。部分的に清澄化された上清(ライセート)の濾過は、清澄化された上清(ライセート)をもたらす。一部の実施形態では、フィルターのうち1つまたは複数は、約100μm、50μm、40μm、30μm、25μm、20μm、15μm、10μm、5μm、2μm、1μmまたは0.5μm以下の名目上の保持評定または平均ポアサイズを有する。
【0080】
残渣宿主細胞DNAの沈殿の阻害
宿主細胞DNAを沈殿させるステップは、多くの場合、粗宿主細胞界面活性剤ライセートから相当な割合のDNAを除去するのに高度に有効となるであろうが、特に、所望の生物由来生成物が、細胞内でかつその溶解の直前に産生されながら、宿主細胞が、高い生細胞密度まで育成または維持された場合、ある程度の残渣および複合体形成しなかった宿主細胞DNAならびにカチオン性界面活性剤が、前のステップから、部分的に清澄化されたまたは清澄化された上清(ライセート)に残り得ることが予想される。介入がなければ、残渣DNAおよびDB等の界面活性剤は、複合体形成し続けることができるが、通常これは、それらのより低い濃度が原因で、より遅い速度となり、経時的に増加している濁度として検出されるのに十分なサイズの粒子を徐々に形成する。濁度の増加が僅かな程度のものである場合であっても、この進行中のプロセスは、十分な濃度のそのような粒子を産生して、時に著しく、AAVベクター等の所望の生物由来生成物をさらに精製することを意図する下流処理ステップの効率を低減させ得る。この問題に取り組むために、一部の実施形態では、本開示の方法は、上清における残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するステップをさらに含む。
【0081】
上清における残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するのに有効であることが当技術分野で公知のいずれかの技法を使用して、上清における残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、上清における残渣宿主細胞DNAの沈殿は、例えば、DB等のドミフェンハロゲン化物による宿主細胞DNAの沈殿を阻害するのに十分な、ある量の塩を上清に添加することにより阻害される。一部の実施形態では、塩は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、硫酸マグネシウム(MgSO)または塩化マグネシウム(MgCl)である。一部の実施形態では、塩は、固体形態で、または塩(すなわち、塩溶液)および場合により、Triton X-100等の界面活性剤等の他の成分を含む濃縮ストック溶液において、いずれか所望の最終濃度まで、例えば、約0.5%(w/vまたはw/w)の上清における最終濃度を達成するのに十分な量で、上清に添加することができる。
【0082】
一部の実施形態では、上清、および塩を含む溶液は、ある期間にわたり混合されて、2つの溶液の徹底的な混合をもたらし、混合物を形成し、次いで場合により、濾過される、および/または混合することなく、貯蔵等において、ある期間にわたり保持(インキュベート)される。一部の実施形態では、混合および/または保持は、約室温、例えば、約20℃~22℃、または約2℃~8℃、4℃もしくは37℃等、何らかの他の温度で行われる。一部の実施形態では、上清、および塩を含む溶液の混合は、少なくとももしくは約5分間、10分間、15分間、20分間、30分間、40分間、50分間、60分間、70分間、75分間、80分間、90分間、100分間、115分間、120分間、150分間、180分間、または15分間~60分間等、前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の時間の範囲、または何らかの他の時間の範囲にわたり行われる。
【0083】
一部の実施形態では、例えば、DB等のドミフェンハロゲン化物による上清における残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するステップは、凝結した宿主細胞DNAから上清を除去または分離し、場合により上清を濾過する、前のステップの直後に行われる。一部の実施形態では、上清を除去し、場合により濾過するステップの終結と、沈殿を阻害するステップの開始との間の遅延は、約12時間、6時間、3時間、2時間、1時間、45分間、30分間、15分間、10分間、5分間またはそれに満たない時間未満である。
【0084】
一部の実施形態では、上清における添加された塩、例えば、NaCl、KCl、MgSOもしくはMgClまたは別の添加された塩の、その添加後の最終濃度は、少なくとももしくは約5mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、75mM、100mM、125mM、150mM、175mM、200mM、225mM、250mM、300mM、350mM、400mM、450mM、500mM、550mM、600mM、650mM、700mM、750mMもしくは800mM、または10mM~200mM、10mM~400mM、200mM~600mM、200mM~800mM、300mM~500mM、300mM~600mM、250mM~600mM、250mM~400mMもしくは400mM~600mM等、前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の濃度の範囲である。一部の実施形態では、宿主細胞DNAは、DB等のドミフェンハロゲン化物により沈殿される。
【0085】
明確にするために、本明細書に記載されている添加された塩の最終濃度が、上清中に先在し得る同じ型の塩の濃度を考慮しない、添加された塩の最終濃度を指すことに留意されたい。例えば、当技術分野で周知の通り、様々な種類の細胞培養培地は、NaClおよびKCl等の塩を既に含み、既に存在するそのような塩の濃度は、他に指示がない限り、添加された塩の最終濃度の値に含まれない。
【0086】
一部の実施形態では、塩は、NaClまたはKClであり、上清における添加された塩の最終濃度は、少なくとももしくは約100mM、125mM、150mM、175mM、200mM、225mM、250mM、300mM、350mM、400mM、450mM、500mM、550mMもしくは600mM、または約200mM~300mM、200mM~400mM、200mM~500mM、200mM~600mM、200mM~700mM、200mM~800mM、300mM~500mM、300mM~600mM、250mM~600mM、250mM~400mM、250mM~350mMもしくは400~600mM等、前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の濃度の範囲である。一部の実施形態では、塩は、MgSOであり、処理された上清における添加された塩の最終濃度は、少なくともまたは約10mM、50mM、100mM、200mM、300mMまたは400mMであり、一方、他の実施形態では、塩は、MgClであり、処理された上清における添加された塩の最終濃度は、少なくともまたは約1mM、5mM、10mM、20mM、50mMまたは100mMである。一部の実施形態では、宿主細胞DNAは、DB等のドミフェンハロゲン化物により沈殿される。
【0087】
一部の実施形態では、宿主細胞DNAは、DB等のドミフェンハロゲン化物により沈殿され、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度におけるDBは、少なくとも約10×10vc/mL、少なくとも(least)約15×10vc/mL、少なくとも(least)約20×10vc/mLまたは約10×10vc/mL~30×10vc/mLもしくは15×10vc/mL~25×10vc/mL等、収集時に高い生細胞密度であっても、溶解された宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加されたときに宿主細胞DNAを沈殿させるのに有効であり、少なくとも約200mM、300mM、400mM、500mM、600mM、700mM、800mM、または約200mM~800mMの範囲の添加された塩の最終濃度となるような、NaClまたはKCl等、上清への塩のその後の添加は、混合物における残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害またはクエンチするのに有効である。そのようなクエンチは、例えば、免疫親和性クロマトグラフィー等の下流クロマトグラフィーステップ中のカラム詰まりを低減させることにより、AAVベクター等の生物由来生成物をさらに精製することを意図する下流処理ステップの効率を有用に増強することができる。
【0088】
一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、少なくとも約10×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約200mMまたは約200mM~300mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、少なくとも約10×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約300mMまたは約300mM~400mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、少なくとも約10×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約400mMまたは約400mM~500mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、少なくとも約10×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約500mMまたは約500mM~600mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、少なくとも約10×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約600mMまたは約600mM~700mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、少なくとも約10×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約700mMまたは約700mM~800mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。前述の実施形態のいずれかでは、宿主細胞は、約0.3%~0.7%または0.4%~0.6%の範囲に及ぶまたは約0.5%の最終濃度におけるTriton X-100を用いて溶解することができ、宿主細胞は、懸濁培養において育成された、AAVベクターを産生するHEK293細胞であり得る。
【0089】
一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、少なくとも約15×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約200mM~300mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、少なくとも約15×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約300mMまたは約300mM~400mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、少なくとも約15×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約400mMまたは約400mM~500mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、少なくとも約15×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約500mMまたは約500mM~600mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、少なくとも約15×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約600mMまたは約600mM~700mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、少なくとも約15×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約700mMまたは約700mM~800mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。前述の実施形態のいずれかでは、宿主細胞は、約0.3%~0.7%または0.4%~0.6%の範囲に及ぶまたは約0.5%の最終濃度におけるTriton X-100を用いて溶解することができ、宿主細胞は、懸濁培養において育成された、AAVベクターを産生するHEK293細胞であり得る。
【0090】
一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、少なくとも約20×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約200mMまたは約200mM~300mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、少なくとも約20×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約300mMまたは約300mM~400mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、少なくとも約20×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約400mMまたは約400mM~500mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、少なくとも約20×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約500mMまたは約500mM~600mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、少なくとも約20×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約600mMまたは約600mM~700mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、少なくとも約20×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約700mMまたは約700mM~800mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。前述の実施形態のいずれかでは、宿主細胞は、約0.3%~0.7%または0.4%~0.6%の範囲に及ぶまたは約0.5%の最終濃度におけるTriton X-100を用いて溶解することができ、宿主細胞は、懸濁培養において育成された、AAVベクターを産生するHEK293細胞であり得る。
【0091】
一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約10×10vc/mL~30×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約200mMまたは約200mM~300mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約10×10vc/mL~30×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約300mMまたは約300mM~400mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約10×10vc/mL~30×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約400mMまたは約400mM~500mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約10×10vc/mL~30×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約500mMまたは約500mM~600mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約10×10vc/mL~30×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約600mMまたは約600mM~700mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約10×10vc/mL~30×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約700mMまたは約700mM~800mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。前述の実施形態のいずれかでは、宿主細胞は、約0.3%~0.7%または0.4%~0.6%の範囲に及ぶまたは約0.5%の最終濃度におけるTriton X-100を用いて溶解することができ、宿主細胞は、懸濁培養において育成された、AAVベクターを産生するHEK293細胞であり得る。
【0092】
一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約15×10vc/mL~25×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約200mMまたは約200mM~300mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約15×10vc/mL~25×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約300mMまたは約300mM~400mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約15×10vc/mL~25×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約400mMまたは約400mM~500mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約15×10vc/mL~25×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約500mMまたは約500mM~600mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約15×10vc/mL~25×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約600mMまたは約600mM~700mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%または0.3%等、約0.1%~0.5%または約0.2%~0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約15×10vc/mL~25×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約700mMまたは約700mM~800mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。前述の実施形態のいずれかでは、宿主細胞は、約0.3%~0.7%または0.4%~0.6%の範囲に及ぶまたは約0.5%の最終濃度におけるTriton X-100を用いて溶解することができ、宿主細胞は、懸濁培養において育成された、AAVベクターを産生するHEK293細胞であり得る。
【0093】
一部の実施形態では、DBは、約0.2%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約10×10vc/mL~30×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約200mMまたは約200mM~300mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約10×10vc/mL~30×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約300mMまたは約300mM~400mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約10×10vc/mL~30×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約400mMまたは約400mM~500mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約10×10vc/mL~30×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約500mMまたは約500mM~600mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約10×10vc/mL~30×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約600mMまたは約600mM~700mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。前述の実施形態のいずれかでは、宿主細胞は、約0.3%~0.7%または0.4%~0.6%の範囲に及ぶまたは約0.5%の最終濃度におけるTriton X-100を用いて溶解することができ、宿主細胞は、懸濁培養において育成された、AAVベクターを産生するHEK293細胞であり得る。
【0094】
一部の実施形態では、DBは、約0.3%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約10×10vc/mL~30×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約200mMまたは約200mM~300mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.3%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約10×10vc/mL~30×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約300mMまたは約300mM~400mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.3%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約10×10vc/mL~30×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約400mMまたは約400mM~500mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.3%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約10×10vc/mL~30×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約500mMまたは約500mM~600mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.3%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約10×10vc/mL~30×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約600mMまたは約600mM~700mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。前述の実施形態のいずれかでは、宿主細胞は、約0.3%~0.7%または0.4%~0.6%の範囲に及ぶまたは約0.5%の最終濃度におけるTriton X-100を用いて溶解することができ、宿主細胞は、懸濁培養において育成された、AAVベクターを産生するHEK293細胞であり得る。
【0095】
一部の実施形態では、DBは、約0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約10×10vc/mL~30×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約200mMまたは約200mM~300mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約10×10vc/mL~30×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約300mMまたは約300mM~400mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約10×10vc/mL~30×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約400mMまたは約400mM~500mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約10×10vc/mL~30×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約500mMまたは約500mM~600mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約10×10vc/mL~30×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約600mMまたは約600mM~700mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。前述の実施形態のいずれかでは、宿主細胞は、約0.3%~0.7%または0.4%~0.6%の範囲に及ぶまたは約0.5%の最終濃度におけるTriton X-100を用いて溶解することができ、宿主細胞は、懸濁培養において育成された、AAVベクターを産生するHEK293細胞であり得る。
【0096】
一部の実施形態では、DBは、約0.2%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約15×10vc/mL~25×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約200mMまたは約200mM~300mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約15×10vc/mL~25×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約300mMまたは約300mM~400mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約15×10vc/mL~25×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約400mMまたは約400mM~500mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約15×10vc/mL~25×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約500mMまたは約500mM~600mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.2%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約15×10vc/mL~25×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約600mMまたは約600mM~700mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。前述の実施形態のいずれかでは、宿主細胞は、約0.3%~0.7%または0.4%~0.6%の範囲に及ぶまたは約0.5%の最終濃度におけるTriton X-100を用いて溶解することができ、宿主細胞は、懸濁培養において育成された、AAVベクターを産生するHEK293細胞であり得る。
【0097】
一部の実施形態では、DBは、約0.3%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約15×10vc/mL~25×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約200mMまたは約200mM~300mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.3%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約15×10vc/mL~25×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約300mMまたは約300mM~400mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.3%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約15×10vc/mL~25×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約400mMまたは約400mM~500mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.3%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約15×10vc/mL~25×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約500mMまたは約500mM~600mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.3%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約15×10vc/mL~25×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約600mMまたは約600mM~700mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。前述の実施形態のいずれかでは、宿主細胞は、約0.3%~0.7%または0.4%~0.6%の範囲に及ぶまたは約0.5%の最終濃度におけるTriton X-100を用いて溶解することができ、宿主細胞は、懸濁培養において育成された、AAVベクターを産生するHEK293細胞であり得る。
【0098】
一部の実施形態では、DBは、約0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約15×10vc/mL~25×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約200mMまたは約200mM~300mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約15×10vc/mL~25×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約300mMまたは約300mM~400mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約15×10vc/mL~25×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約400mMまたは約400mM~500mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約15×10vc/mL~25×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約500mMまたは約500mM~600mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。一部の実施形態では、DBは、約0.4%の最終濃度となるように、宿主細胞の界面活性剤ライセートに添加して、ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させることができ、この場合、収集時の生細胞密度は、約15×10vc/mL~25×10vc/mLであり、NaClまたはKClは、約600mMまたは約600mM~700mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加して、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害することができる。前述の実施形態のいずれかでは、宿主細胞は、約0.3%~0.7%または0.4%~0.6%の範囲に及ぶまたは約0.5%の最終濃度におけるTriton X-100を用いて溶解することができ、宿主細胞は、懸濁培養において育成された、AAVベクターを産生するHEK293細胞であり得る。
【0099】
一部の実施形態では、AAVベクターを産生する、懸濁培養において育成されたHEK293細胞は、細胞を溶解するために少なくともまたは約0.5%の最終濃度となるようにTriton X-100を添加することにより、少なくともまたは約10×10vc/mLの生細胞密度で収集され、DBは、界面活性剤ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させるために、少なくともまたは約0.2%の最終濃度となるように添加され、NaClまたはKClは、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するために、少なくともまたは約200mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加される。一部の実施形態では、AAVベクターを産生する、懸濁培養において育成されたHEK293細胞は、細胞を溶解するために少なくともまたは約0.5%の最終濃度となるようにTriton X-100を添加することにより、少なくともまたは約15×10vc/mLの生細胞密度で収集され、DBは、界面活性剤ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させるために、少なくともまたは約0.2%の最終濃度となるように添加され、NaClまたはKClは、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するために、少なくともまたは約200mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加される。一部の実施形態では、AAVベクターを産生する、懸濁培養において育成されたHEK293細胞は、細胞を溶解するために少なくともまたは約0.5%の最終濃度となるようにTriton X-100を添加することにより、少なくともまたは約20×10vc/mLの生細胞密度で収集され、DBは、界面活性剤ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させるために、少なくともまたは約0.2%の最終濃度となるように添加され、NaClまたはKClは、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するために、少なくともまたは約200mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加される。一部の実施形態では、AAVベクターを産生する、懸濁培養において育成されたHEK293細胞は、細胞を溶解するために少なくともまたは約0.5%の最終濃度となるようにTriton X-100を添加することにより、約10×10vc/mL~30vc/mLの生細胞密度で収集され、DBは、界面活性剤ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させために、少なくともまたは約0.2%の最終濃度となるように添加され、NaClまたはKClは、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するために、少なくともまたは約200mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加される。一部の実施形態では、AAVベクターを産生する、懸濁培養において育成されたHEK293細胞は、細胞を溶解するために少なくともまたは約0.5%の最終濃度となるようにTriton X-100を添加することにより、約15×10vc/mL~25×10vc/mLの生細胞密度で収集され、DBは、界面活性剤ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させるために、少なくともまたは約0.2%の最終濃度となるように添加され、NaClまたはKClは、残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するために、少なくともまたは約200mMの最終添加塩濃度となるように、上清に添加される。前述の実施形態のいずれかに関するさらに他の実施形態では、上清における残渣宿主細胞DNAの量は、1×10ベクターゲノム当たり約50ピコグラム(pg/1×10vg)未満であり得、ライセートにおけるAAVベクターの量に対する上清におけるAAVベクターの量(すなわち、収率)は、少なくとも約40%であり得る。
【0100】
一部の実施形態では、DBによる残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するのに有効である、粗ライセートにDBを添加することにより宿主細胞DNAが沈殿された界面活性剤溶解された宿主細胞(例えば、懸濁培養において育成されたHEK293細胞)から調製された上清に添加されるNaClまたはKClの濃度は、それが溶解された時点における、宿主細胞の生細胞密度(例えば、細胞が懸濁された流体1ミリリットル当たりの生細胞の数(vc/mL))に対する添加された塩の量を単位として表すことができる。よって、例えば、一部の実施形態では、DBによる残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するのに有効である、上清に添加されるNaClまたはKClの最終濃度は、1×10vc/mL当たり約6.7mM~20.0mM、1×10vc/mL当たり8.0mM~13.3mM、1×10vc/mL当たり10.0mM~30.0mM、1×10vc/mL当たり12.0mM~20.0mM、1×10vc/mL当たり13.3mM~40.0mM、1×10vc/mL当たり16.0mM~26.7mM、1×10vc/mL当たり16.7mM~50.0mM、1×10vc/mL当たり20.0mM~33.3mM、1×10vc/mL当たり20.0mM~60.0mM、1×10vc/mL当たり23.3mM~70.0mM、1×10vc/mL当たり24.0mM~40.0mM、1×10vc/mL当たり26.7mM~80.0mM、1×10vc/mL当たり28.0mM~46.7mM、または1×10vc/mL当たり約32.0mM~53.3mMである。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり約0.003%~0.010%の最終濃度で粗ライセートに添加されたDBによる残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するのに有効である、上清に添加されるNaClまたはKClの最終濃度は、1×10vc/mL当たり約6.7mM~20.0mM、1×10vc/mL当たり8.0mM~13.3mM、1×10vc/mL当たり10.0mM~30.0mM、1×10vc/mL当たり12.0mM~20.0mM、1×10vc/mL当たり13.3mM~40.0mM、1×10vc/mL当たり16.0mM~26.7mM、1×10vc/mL当たり16.7mM~50.0mM、1×10vc/mL当たり20.0mM~33.3mM、1×10vc/mL当たり20.0mM~60.0mM、1×10vc/mL当たり23.3mM~70.0mM、1×10vc/mL当たり24.0mM~40.0mM、1×10vc/mL当たり26.7mM~80.0mM、1×10vc/mL当たり28.0mM~46.7mM、または1×10vc/mL当たり約32.0mM~53.3mMである。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり約0.004%~0.007%の最終濃度で粗ライセートに添加されたDBによる残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するのに有効である、上清に添加されるNaClまたはKClの最終濃度は、1×10vc/mL当たり約6.7mM~20.0mM、1×10vc/mL当たり8.0mM~13.3mM、1×10vc/mL当たり10.0mM~30.0mM、1×10vc/mL当たり12.0mM~20.0mM、1×10vc/mL当たり13.3mM~40.0mM、1×10vc/mL当たり16.0mM~26.7mM、1×10vc/mL当たり16.7mM~50.0mM、1×10vc/mL当たり20.0mM~33.3mM、1×10vc/mL当たり20.0mM~60.0mM、1×10vc/mL当たり23.3mM~70.0mM、1×10vc/mL当たり24.0mM~40.0mM、1×10vc/mL当たり26.7mM~80.0mM、1×10vc/mL当たり28.0mM~46.7mM、または1×10vc/mL当たり約32.0mM~53.3mMである。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり約0.007%~0.020%の最終濃度で粗ライセートに添加されたDBによる残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するのに有効である、上清に添加されるNaClまたはKClの最終濃度は、1×10vc/mL当たり約6.7mM~20.0mM、1×10vc/mL当たり8.0mM~13.3mM、1×10vc/mL当たり10.0mM~30.0mM、1×10vc/mL当たり12.0mM~20.0mM、1×10vc/mL当たり13.3mM~40.0mM、1×10vc/mL当たり16.0mM~26.7mM、1×10vc/mL当たり16.7mM~50.0mM、1×10vc/mL当たり20.0mM~33.3mM、1×10vc/mL当たり20.0mM~60.0mM、1×10vc/mL当たり23.3mM~70.0mM、1×10vc/mL当たり24.0mM~40.0mM、1×10vc/mL当たり26.7mM~80.0mM、1×10vc/mL当たり28.0mM~46.7mM、または1×10vc/mL当たり約32.0mM~53.3mMである。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり約0.008%~0.013%の最終濃度で粗ライセートに添加されたDBによる残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するのに有効である、上清に添加されるNaClまたはKClの最終濃度は、1×10vc/mL当たり約6.7mM~20.0mM、1×10vc/mL当たり8.0mM~13.3mM、1×10vc/mL当たり10.0mM~30.0mM、1×10vc/mL当たり12.0mM~20.0mM、1×10vc/mL当たり13.3mM~40.0mM、1×10vc/mL当たり16.0mM~26.7mM、1×10vc/mL当たり16.7mM~50.0mM、1×10vc/mL当たり20.0mM~33.3mM、1×10vc/mL当たり20.0mM~60.0mM、1×10vc/mL当たり23.3mM~70.0mM、1×10vc/mL当たり24.0mM~40.0mM、1×10vc/mL当たり26.7mM~80.0mM、1×10vc/mL当たり28.0mM~46.7mM、または1×10vc/mL当たり約32.0mM~53.3mMである。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり約0.010%~0.030%の最終濃度で粗ライセートに添加されたDBによる残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するのに有効である、上清に添加されるNaClまたはKClの最終濃度は、1×10vc/mL当たり約6.7mM~20.0mM、1×10vc/mL当たり8.0mM~13.3mM、1×10vc/mL当たり10.0mM~30.0mM、1×10vc/mL当たり12.0mM~20.0mM、1×10vc/mL当たり13.3mM~40.0mM、1×10vc/mL当たり16.0mM~26.7mM、1×10vc/mL当たり16.7mM~50.0mM、1×10vc/mL当たり20.0mM~33.3mM、1×10vc/mL当たり20.0mM~60.0mM、1×10vc/mL当たり23.3mM~70.0mM、1×10vc/mL当たり24.0mM~40.0mM、1×10vc/mL当たり26.7mM~80.0mM、1×10vc/mL当たり28.0mM~46.7mM、または1×10vc/mL当たり約32.0mM~53.3mMである。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり約0.012%~0.020%の最終濃度で粗ライセートに添加されたDBによる残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するのに有効である、上清に添加されるNaClまたはKClの最終濃度は、1×10vc/mL当たり約6.7mM~20.0mM、1×10vc/mL当たり8.0mM~13.3mM、1×10vc/mL当たり10.0mM~30.0mM、1×10vc/mL当たり12.0mM~20.0mM、1×10vc/mL当たり13.3mM~40.0mM、1×10vc/mL当たり16.0mM~26.7mM、1×10vc/mL当たり16.7mM~50.0mM、1×10vc/mL当たり20.0mM~33.3mM、1×10vc/mL当たり20.0mM~60.0mM、1×10vc/mL当たり23.3mM~70.0mM、1×10vc/mL当たり24.0mM~40.0mM、1×10vc/mL当たり26.7mM~80.0mM、1×10vc/mL当たり28.0mM~46.7mM、または1×10vc/mL当たり約32.0mM~53.3mMである。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり約0.013%~0.040%の最終濃度で粗ライセートに添加されたDBによる残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するのに有効である、上清に添加されるNaClまたはKClの最終濃度は、1×10vc/mL当たり約6.7mM~20.0mM、1×10vc/mL当たり8.0mM~13.3mM、1×10vc/mL当たり10.0mM~30.0mM、1×10vc/mL当たり12.0mM~20.0mM、1×10vc/mL当たり13.3mM~40.0mM、1×10vc/mL当たり16.0mM~26.7mM、1×10vc/mL当たり16.7mM~50.0mM、1×10vc/mL当たり20.0mM~33.3mM、1×10vc/mL当たり20.0mM~60.0mM、1×10vc/mL当たり23.3mM~70.0mM、1×10vc/mL当たり24.0mM~40.0mM、1×10vc/mL当たり26.7mM~80.0mM、1×10vc/mL当たり28.0mM~46.7mM、または1×10vc/mL当たり約32.0mM~53.3mMである。
【0101】
一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり約0.016%~0.027%の最終濃度で粗ライセートに添加されたDBによる残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するのに有効である、上清に添加されるNaClまたはKClの最終濃度は、1×10vc/mL当たり約6.7mM~20.0mM、1×10vc/mL当たり8.0mM~13.3mM、1×10vc/mL当たり10.0mM~30.0mM、1×10vc/mL当たり12.0mM~20.0mM、1×10vc/mL当たり13.3mM~40.0mM、1×10vc/mL当たり16.0mM~26.7mM、1×10vc/mL当たり16.7mM~50.0mM、1×10vc/mL当たり20.0mM~33.3mM、1×10vc/mL当たり20.0mM~60.0mM、1×10vc/mL当たり23.3mM~70.0mM、1×10vc/mL当たり24.0mM~40.0mM、1×10vc/mL当たり26.7mM~80.0mM、1×10vc/mL当たり28.0mM~46.7mM、または1×10vc/mL当たり約32.0mM~53.3mMである。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり約0.017%~0.050%の最終濃度で粗ライセートに添加されたDBによる残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するのに有効である、上清に添加されるNaClまたはKClの最終濃度は、1×10vc/mL当たり約6.7mM~20.0mM、1×10vc/mL当たり8.0mM~13.3mM、1×10vc/mL当たり10.0mM~30.0mM、1×10vc/mL当たり12.0mM~20.0mM、1×10vc/mL当たり13.3mM~40.0mM、1×10vc/mL当たり16.0mM~26.7mM、1×10vc/mL当たり16.7mM~50.0mM、1×10vc/mL当たり20.0mM~33.3mM、1×10vc/mL当たり20.0mM~60.0mM、1×10vc/mL当たり23.3mM~70.0mM、1×10vc/mL当たり24.0mM~40.0mM、1×10vc/mL当たり26.7mM~80.0mM、1×10vc/mL当たり28.0mM~46.7mM、または1×10vc/mL当たり約32.0mM~53.3mMである。一部の実施形態では、1×10vc/mL当たり約0.020%~0.033%の最終濃度で粗ライセートに添加されたDBによる残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するのに有効である、上清に添加されるNaClまたはKClの最終濃度は、1×10vc/mL当たり約6.7mM~20.0mM、1×10vc/mL当たり8.0mM~13.3mM、1×10vc/mL当たり10.0mM~30.0mM、1×10vc/mL当たり12.0mM~20.0mM、1×10vc/mL当たり13.3mM~40.0mM、1×10vc/mL当たり16.0mM~26.7mM、1×10vc/mL当たり16.7mM~50.0mM、1×10vc/mL当たり20.0mM~33.3mM、1×10vc/mL当たり20.0mM~60.0mM、1×10vc/mL当たり23.3mM~70.0mM、1×10vc/mL当たり24.0mM~40.0mM、1×10vc/mL当たり26.7mM~80.0mM、1×10vc/mL当たり28.0mM~46.7mM、または1×10vc/mL当たり約32.0mM~53.3mMである。
【0102】
一部の実施形態では、%w/vまたは%w/wとして表される粗宿主細胞ライセートから宿主細胞DNAを沈殿させるために添加されたDB等のドミフェンハロゲン化物の最終濃度に対する、1リットル当たりのモル数(M)で表される上清における添加された塩の最終濃度の比は、少なくともまたは約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.25、1.3、1.33、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9もしくは3.0、または約3.0~0.1、2.9~0.2、2.8~0.2、2.8~0.3、2.7~0.2、2.7~0.3、2.7~0.4、2.6~0.2、2.6~0.3、2.6~0.4、2.6~0.5、2.5~0.2、2.5~0.3、2.5~0.4、2.5~0.5、2.5~0.6、2.5~0.7、2.5~0.8、2.5~0.9、2.5~1.0、2.5~1.1、2.5~1.2、2.5~1.3、2.5~1.4、2.5~1.5、2.5~1.6、2.5~1.7、2.5~1.8、2.5~1.9、2.5~2.0、2.5~2.1、2.5~2.2、2.5~2.3、2.5~2.4、2.4~0.2、2.4~0.3、2.4~0.4、2.4~0.5、2.4~0.6、2.4~0.7、2.4~0.8、2.4~0.9、2.4~1.0、2.4~1.1、2.4~1.2、2.4~1.3、2.4~1.4、2.4~1.5、2.4~1.6、2.4~1.7、2.4~1.8、2.4~1.9、2.4~2.0、2.4~2.1、2.4~2.2、2.4~2.3、2.3~0.2、2.3~0.3、2.3~0.4、2.3~0.5、2.3~0.6、2.3~0.7、2.3~0.8、2.3~0.9、2.3~1.0、2.3~1.1、2.3~1.2、2.3~1.3、2.3~1.4、2.3~1.5、2.3~1.6、2.3~1.7、2.3~1.8、2.3~1.9、2.3~2.0、2.3~2.1、2.3~2.2、2.2~0.2、2.2~0.3、2.2~0.4、2.2~0.5、2.2~0.6、2.2~0.7、2.2~0.8、2.2~0.9、2.2~1.0、2.2~1.1、2.2~1.2、2.2~1.3、2.2~1.4、2.2~1.5、2.2~1.6、2.2~1.7、2.2~1.8、2.2~1.9、2.2~2.0、2.2~2.1、2.1~0.2、2.1~0.3、2.1~0.4、2.1~0.5、2.1~0.6、2.1~0.7、2.1~0.8、2.1~0.9、2.1~1.0、2.1~1.1、2.1~1.2、2.1~1.3、2.1~1.4、2.1~1.5、2.1~1.6、2.1~1.7、2.1~1.8、2.1~1.9、2.1~2.0、2.0~0.2、2.0~0.3、2.0~0.4、2.0~0.5、2.0~0.6、2.0~0.7、2.0~0.8、2.0~0.9、2.0~1.0、2.0~1.1、2.0~1.2、2.0~1.3、2.0~1.4、2.0~1.5、2.0~1.6、2.0~1.7、2.0~1.8、2.0~1.9、1.9~0.2、1.9~0.3、1.9~0.4、1.9~0.5、1.9~0.6、1.9~0.7、1.9~0.8、1.9~0.9、1.9~1.0、1.9~1.1、1.9~1.2、1.9~1.3、1.9~1.4、1.9~1.5、1.9~1.6、1.9~1.7、1.9~1.8、1.8~0.2、1.8~0.3、1.8~0.4、1.8~0.5、1.8~0.6、1.8~0.7、1.8~0.8、1.8~0.9、1.8~1.0、1.8~1.1、1.8~1.2、1.8~1.3、1.8~1.4、1.8~1.5、1.8~1.6、1.8~1.7、1.7~0.2、1.7~0.3、1.7~0.4、1.7~0.5、1.7~0.6、1.7~0.7、1.7~0.8、1.7~0.9、1.7~1.0、1.7~1.1、1.7~1.2、1.7~1.3、1.7~1.4、1.7~1.5、1.7~1.6、1.6~0.2、1.6~0.3、1.6~0.4、1.6~0.5、1.6~0.6、1.6~0.7、1.6~0.8、1.6~0.9、1.6~1.0、1.6~1.1、1.6~1.2、1.6~1.3、1.6~1.4、1.6~1.5、1.5~0.2、1.5~0.3、1.5~0.4、1.5~0.5、1.5~0.6、1.5~0.7、1.5~0.8、1.5~0.9、1.5~1.0、1.5~1.1、1.5~1.2、1.5~1.3、1.5~1.4、1.4~0.2、1.4~0.3、1.4~0.4、1.4~0.5、1.4~0.6、1.4~0.7、1.4~0.8、1.4~0.9、1.4~1.0、1.4~1.1、1.4~1.2、1.4~1.3、1.3~0.2、1.3~0.3、1.3~0.4、1.3~0.5、1.3~0.6、1.3~0.7、1.3~0.8、1.3~0.9、1.3~1.0、1.3~1.1、1.3~1.2、1.2~0.2、1.2~0.3、1.2~0.4、1.2~0.5、1.2~0.6、1.2~0.7、1.2~0.8、1.2~0.9、1.2~1.0、1.2~1.1、1.1~0.2、1.1~0.3、1.1~0.4、1.1~0.5、1.1~0.6、1.1~0.7、1.1~0.8、1.1~0.9、1.1~1.0、1.0~0.2、1.0~0.3、1.0~0.4、1.0~0.5、1.0~0.6、1.0~0.7、1.0~0.8、1.0~0.9、0.9~0.2、0.9~0.3、0.9~0.4、0.9~0.5、0.9~0.6、0.9~0.7、0.9~0.8、0.8~0.2、0.8~0.3、0.8~0.4、0.8~0.5、0.8~0.6、0.8~0.7、0.7~0.2、0.7~0.3、0.7~0.4、0.7~0.5、0.7~0.6、0.6~0.2、0.6~0.3、0.6~0.4、0.6~0.5、0.5~0.2、0.5~0.3、0.5~0.4、0.4~0.2、0.4~0.3もしくは0.3~0.2等、前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の範囲である。
【0103】
上清への塩の添加は、上清のイオン強度を高め、イオン強度は、その使用が当業者の知識範囲内である伝導率プローブおよびメーターを使用して測定することができ、1センチメートル当たりのミリシーメンス(mS/cm)等の適した単位で表すことができる、溶液の伝導率の増加等の様々な仕方で表すことができる。一部の実施形態では、上清への塩の添加は、上清の伝導率を、塩の添加前のその伝導率と比べて、少なくとももしくは約5mS/cm、10mS/cm、15mS/cm、20mS/cm、25mS/cm、30mS/cm、35mS/cm、40mS/cm、45mS/cm、50mS/cm、55mS/cm、60mS/cm、65mS/cm、70mS/cm、75mS/cm、80mS/cm、85mS/cm、90mS/cm、95mS/cmもしくは100mS/cm、または5mS/cm~60mS/cm、10mS/cm~60mS/cm、15mS/cm~60mS/cm、15mS/cm~55mS/cm、15mS/cm~50mS/cm、15mS/cm~45mS/cm、15mS/cm~40mS/cmもしくは15mS/cm~35mS/cm等、前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の伝導率の範囲、または何らかの他の範囲だけ増加させる。
【0104】
一部の実施形態では、混合後に、上清および塩溶液の混合物は、例えば、深層濾過、限外濾過、ナノ濾過または透析濾過によって濾過することができる。一部の実施形態では、濾過は、約10μm、5μm、2μm、1μm、0.5μm、0.2μmまたは0.1μm以下の平均ポアサイズを有する膜フィルター等の1つまたは複数の膜フィルターを使用して行われる。
【0105】
一部の実施形態では、混合および場合により濾過後に、上清および塩溶液の混合物は、混合物における宿主細胞の生物由来生成物を精製することを意図する少なくとも1つの追加の下流処理ステップを行う前に、活発に混合することなく、ある期間にわたり、バッグ、ブレイク(break)タンクもしくは使い捨てミキサー、または当技術分野で公知の他の容器等、何らかの種類の適した容器内の貯蔵等において、保持(インキュベート)することができる。一部の実施形態では、保持期間は、約96時間、72時間、48時間、36時間、24時間、12時間、9時間、6時間、3時間、2時間、90分間、60分間、45分間、30分間、15分間または10分間以下である。一部の実施形態では、混合物は、約室温、例えば、約20℃~22℃、または約2℃~8℃、4℃もしくは37℃等、何らかの他の温度で保持される。
【0106】
実施例セクションに記載されている通り、DBによる残渣宿主細胞DNAの沈殿が原因の濁度は、経時的に増加することができ、その結果生じる沈殿物は、親和性クロマトグラフィー等の下流処理ステップの効率を劇的に低減させることができ、NaCl、KClまたはその他等の塩の添加は、濃度依存的様式で、この進行中の沈殿を阻害することができる。さらに、より高い塩濃度の阻害効果は、沈殿が生じ得る、より長い期間にわたり最も明らかである。結果的に、一部の実施形態では、保持時間が相対的に短い場合、残渣宿主細胞DNAの進行中の沈殿を阻害するために、より低い最終濃度の添加された塩を使用し、逆に、保持時間が比較的に長い場合、進行中の沈殿を阻害するために、より高い最終濃度の添加された塩を使用することが可能となり得る。例えば、一部の実施形態では、塩添加と、クロマトグラフィー等のその後の精製ステップとの間の保持時間が、約24時間またはそれに満たない時間である場合、NaClまたはKCl等の塩は、約100mM、または約100mM~200mM、100mM~300mM、100mM~400mM、100mM~500mM、100mM~600mMの最終濃度となるように、上清に添加することができる。他の実施形態では、塩添加と、クロマトグラフィー等のその後の精製ステップとの間の保持時間が、約36時間またはそれに満たない時間である場合、NaClまたはKCl等の塩は、約200mM、または約200mM~300mM、200mM~400mM、200mM~500mM、200mM~600mM、または約300mM、または約300mM~400mM、300mM~500mMもしくは300mM~600mM、または約400mM、または約400mM~500mMもしくは400mM~600mMの最終濃度となるように、上清に添加することができる。一部の他の実施形態では、塩添加と、クロマトグラフィー等のその後の精製ステップとの間の保持時間が、約48時間またはそれに満たない時間である場合、NaClまたはKCl等の塩は、約300mM、または約300mM~400mM、300mM~500mMもしくは300mM~600mM、または約400mM、または約400mM~500mMもしくは400mM~600mMの最終濃度となるように、上清に添加することができる。また、さらに他の実施形態では、塩添加と、クロマトグラフィー等のその後の精製ステップとの間の保持時間が、約72時間またはそれに満たない時間である場合、NaClまたはKCl等の塩は、約400mM、または約400mM~500mMもしくは400mM~600mM、または約500mM、または約500mM~600mM、または約600mMの最終濃度となるように、上清に添加することができる。
【0107】
上に記載されている実施形態のいずれかにおいて、残渣宿主細胞DNAの沈殿によって引き起こされた上清(すなわち、清澄化された宿主細胞ライセート)の濁度は、塩溶液の添加およびそれとの混合ならびに場合によりその後の濾過の前またはその直後等、いずれかの簡便なステージまたは時点で、ならびに上清の保持または貯蔵の期間中だが、一部の実施形態では、AAVベクター等の所望の生物由来生成物をさらに精製することを対象にする1つまたは複数の追加のステップに従ってこれが処理される前等、1つまたは複数のその後の時点でモニターすることができる。濁度は、電子濁度メーター(濁度計)、ネフェロメーター、分光光度計その他を使用すること等により、当技術分野で公知であるいずれかの仕方で検出および定量化することができ、ネフェロメトリー濁度単位(NTU)またはJackson濁度単位(JTLJ)等、いずれか簡便な単位で表すことができる。例えば、Zhu、Yら、Development of a New Method for Turbidity Measurement Using Two NIR Digital Cameras、ACS Omega 5:5421~8(2020);Bin Omar、FAおよびMZ Bin MatJafri、Turbidimeter Design and Analysis: A Review on Optical Fiber Sensors for the Measurement of Water Turbidity、Sensors 9:8311~35(2009)を参照されたい。
【0108】
一部の実施形態では、界面活性剤溶解された宿主細胞から調製された上清への塩の添加は、上清の濁度が、約100NTU、50NTU、40NTU、30NTU、20NTU、15NTU、14NTU、13NTU、12NTU、11NTU、10NTU、9NTU、8NTU、7NTU、6NTU、5NTU、4NTU、3NTU、2NTU、1NTUもしくはそれ未満またはそれに満たない、または前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の範囲となるように、DBによる残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するのに有効である。一部の実施形態では、濁度は、1時間もしくはそれに満たない時間以内、または約96時間、72時間、48時間、36時間、24時間、12時間、9時間、6時間、3時間、2時間、90分間、60分間、45分間、30分間、15分間もしくは10分間以下の保持期間の最中もしくはその後等、塩添加後の何らかの期間、または前述の値のうちいずれか2つを含めたそれらの間の何らかの時間の範囲等、塩溶液の添加およびそれとの混合ならびに場合によりその後の濾過の直後に測定される。
【0109】
方法を行うためのシステム
一部の実施形態では、塩溶液は、1つまたは複数のボーラスとしてバッチにおいて上清に添加され、塩溶液の添加中におよび/またはその後に上清と混合される。そのような混合は、ボトル、タンク、撹拌タンクバイオリアクターその他等、いずれか適したサイズおよび構成の封じ込め容器において行うことができる。この様式において、上清および塩溶液の体積全体は、1つまたは複数の別々のステップの経過にわたり、互いに組み合わされる。そのような実施形態では、混合は、羽根車またはポンピングの使用による等、溶液の混合に有効であることが当技術分野で公知のいずれかの仕方で行うことができる。
【0110】
他の実施形態では、上清および塩溶液の容積は、連続的プロセスにおいて一緒に混合されながら、別々に維持することができる。一部の実施形態では、上清および塩溶液を別々に含有する1個または複数の容器手段と、混合手段と、別々の溶液のそれぞれの容器手段から混合手段への流体連絡のための手段とを含むシステムを使用して、連続的混合プロセスをもたらすことができる。一部の実施形態では、システムは、混合手段から、混合物を様々に貯蔵するため、混合物を濾過するためおよび/または混合物から生物由来生成物をさらに精製するための下流の手段への流体連絡のための手段をさらに含む。一部の実施形態では、システムは、ポンプ手段、例えば、蠕動ポンプその他等、いくつかの封じ込め手段から混合手段へと流体を活発に動かすための手段をさらに含む。本開示のシステムは、単一のポンプ手段または複数のそれを含むことができる。一部の実施形態では、本開示のシステムは、塩溶液と混合される前に上清を濾過するための、ならびに/または混合後に上清および塩溶液の混合物を濾過するための手段をさらに含む。
【0111】
一部の実施形態では、容器手段は、生物由来生成物を含む溶液の保持に適することが当技術分野で公知のいずれかの型の容器であり得、その例は、ボトル、タンク、カーボイ、プラスチックバッグまたはバイオリアクターである。封じ込め手段および下流の混合手段の間の流体連絡は、ある場所から別の場所へと溶液を連続的に運ぶための当技術分野で公知のいずれかの仕方でもたらすことができ、その例は、パイプまたはチューブである。そのような流体連絡手段は、容器手段における開口部を通して溶液と一時的に接触させられた(その上部における開口部からタンク内に配置されたチューブ等)、または封じ込め手段の付着ポイントに何らかの様式で永久的にもしくは半永久的に取り付けられた(例えば、締め付け、接着によってまたは摩擦接合により)、別々のワークピースであり得る、または封じ込め手段と一体的であり得る(例えば、溶接によって)。混合手段は、様々な構成の羽根車、撹拌子、回転子/固定子組合せまたは静的インラインミキサー等、その少なくとも1種が生物由来生成物を含有する溶液を一緒に混合するのに有効であることが当技術分野で公知のいずれかのデバイスまたは機序であり得る。封じ込め手段、流体連絡手段および混合手段はそれぞれ、ステンレススチール、ガラスおよびポリエチレン等のプラスチック、またはそのような材料の組合せ等、生物由来生成物と適合性であることが当技術分野で公知のいずれかの材料から作られていてよい。流体連絡手段は、流体連絡をもたらすための単一の手段または複数の手段を含むことができる。例えば、本開示のシステムは、容器手段、濾過手段および混合手段等のシステムの他の構成成分に付属しており、これを流体的に接続する複数のチューブを含むことができる。
【0112】
本開示の方法を行うためのシステムの非限定的な例は、図7Aに説明されている。本システムにおいて、上清は、使い捨てバイオリアクター(SUB)において一時的に保持され、塩(この場合、NaCl)を含む濃縮溶液は、別々の容器において保持される。チューブは、SUBおよび塩溶液のための容器から伸びて、流体が各々から出ることを可能にする。同じであっても異なっていてもよい規定された速度で各溶液をそれぞれの容器からポンピングすることができるように、各チューブは、蠕動ポンプにロードされる。次に、チューブは、中空TコネクタまたはYコネクタで交わり、そこで、2種の溶液が一緒に混ざり、次いで混合物として下流に進むことができる。描写されている通り、上清のポンプの下流かつ中空コネクタの上流に深層濾過装置を位置させること等により、混合前に上清を濾過することができ、出口チューブを経て混合のための中空コネクタに進行する前に、上清は、この装置を通過して濾過され得る。同様に描写されている通り、混合後に、他の管によってそこに接続された、1つまたは複数の膜フィルターを中空コネクタの下流に位置させること等により、混合物を濾過することができる。
【0113】
本開示の方法を行うためのシステムの別の非限定的な例は、図7Bに説明されている。本システムにおいて、上清および塩溶液は、第1のシステムの場合と同様に、一時的に保持、ポンピングおよび濾過されるが、中空コネクタで組み合わせて混合することの代わりに、Xcellerex XDUO SUM(Cytiva)等の使い捨てミキサー(SUM)へとポンピングされ、そこで、上清および塩溶液が一緒に混合される。その後、蠕動ポンプは、SUMから、場合により膜フィルターを通して、接続管を経て、混合物をポンピングする。本システムは、バッチ式で操作することができ、これは、上清および塩溶液の容積をそれらの容器からSUMへとポンピングし、そこで混合し、その後、下流の処理のためにSUMからポンピングすることができることを意味する。その代わりに、本システムは、連続的に操作することができ、これは、上清および塩溶液を混合のためにそこにポンピングするのと同時に、SUMにおいて形成された混合物を下流の処理のためにそこからポンピングすることができることを意味する。
【0114】
本開示の方法を行うためのシステムのさらに別の非限定的な例は、図7Cに説明されている。本システムにおいて、上清および塩溶液は、第1のシステムの場合と同様に、一時的に保持、ポンピングおよび濾過されるが、上清および塩溶液が初期に組み合わされる中空TまたはYコネクタの下流に位置する、多数の構成が可能な静的インライン混合エレメントにより2種の溶液をポンピングすることにより、混合効率が増強される。そのような静的インライン混合エレメントの使用は、上清および塩溶液が、有意に異なる粘稠性を有する(塩溶液が高濃度の塩を含有して、その粘稠性がより高くなる場合に生じ得る)場合等、様々な状況下での混合を改善することができる。システムは、デプスフィルターの下流かつミキサーの上流に位置する、所望であれば上清のより高速のポンピング(例えば、有効なデプスフィルタリングに十分な圧力を維持するために)を可能にする、ここではSUMとして描写されているブレイクタンクと共に、ブレイクタンクからミキサーへと上清をポンピングするための追加のポンプをさらに含むことができる。同様に描写されている通り、混合後に、他の管によってそこに接続された、1つまたは複数の膜フィルターをミキサーの下流に位置させること等により、混合物を濾過することができる。
【0115】
上に記す通り、上清および塩溶液のポンピング流速は、混合物における所望の最終塩濃度を達成するために上清と混合されるべき塩溶液の相対量を制御する目的で、同じであっても異なっていてもよい。例えば、混合物における添加された塩の所望の最終濃度が、約400mMとなるべきである場合、4M塩を含むストック溶液を調製することができる。その後、所望の最終塩濃度を達成するために、10:1の相対的比率で上清および濃縮塩溶液をポンピングすることができる。一部の実施形態では、コンダクタンスを許容される範囲内に戻すために、相対的ポンプ比率の調整に使用されるフィードバック制御を用いて、混合物のコンダクタンスをリアルタイムでモニターすることができる。混合物における塩の所望の最終濃度およびストック溶液におけるその濃度を考慮して、いずれか適した相対的ポンプ比率が可能である。
【0116】
下流精製ステップ
本明細書で使用される場合、用語「精製する」、「精製された」、「精製」その他は、生物由来生成物またはその試料もしくは調製物に関連して使用される場合、生物由来生成物が得られる出発材料および/または生物由来生成物の精製を意図する逐次精製ステップの一部のスキームにおける前の中間精製ステップと比較した、純度の相対的な増加または改善を示し、他に指定がなければ、特定の定性的または定量的な程度の純度を要求するものではない。
【0117】
一部の実施形態では、上清および塩溶液の混合、ならびに場合により混合物の濾過および/または保持の後に、混合物における生物由来生成物を、そのような生物由来生成物を精製するのに有効であることが当技術分野で公知の少なくとも1つの下流処理ステップにおいてさらに精製することができる。例えば、生成物がモノクローナル抗体である場合、カラムを満たすために使用されるレジンまたはマトリックスがプロテインAを含有する、親和性クロマトグラフィーカラムを通して混合物をポンピングすることにより、生成物を精製することができる。他の実施形態では、生物由来生成物の性質に応じて、下流処理ステップは、硫酸アンモニウム等のリオトロピック塩における沈殿を含むことができる。他の実施形態では、下流処理ステップは、少なくとも1つの型のクロマトグラフィーを行うステップを含むことができる。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC);抗体もしくはその抗原結合性断片、レクチン、プロテインA、プロテインG、プロテインLまたはグリカン等、生物由来生成物に特異的結合することができる、クロマトグラフィーレジンまたはマトリックスに付着されたいずれかの親和性リガンドを使用した親和性クロマトグラフィー;固定化金属キレートクロマトグラフィー(IMAC);チオフィリック(thiophilic)吸着クロマトグラフィー;疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC);マルチモーダルクロマトグラフィー(MMC);偽親和性クロマトグラフィー;およびアニオン交換クロマトグラフィー(AEX)またはカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)等のイオン交換クロマトグラフィー(IEXまたはIEC)を限定することなく含む、本開示の方法において有用である多くの型のクロマトグラフィーが当技術分野で公知である。他の実施形態では、下流処理ステップは、例えば、接線流濾過(TFF)を使用した、生物由来生成物の脱塩またはバッファー交換、限外濾過、ナノ濾過および/または透析濾過等の濾過、または濃縮を含むことができる。2つ以上の下流処理ステップの使用が可能であり、複数の下流処理ステップを、当業者の知識に従っていずれかの順序で行うことができる。
【0118】
一部の実施形態では、生物由来生成物は、AAVベクターであり、ベクターをさらに精製するのに有用な下流ステップは、少なくとも1つのクロマトグラフィーステップを行うステップを限定することなく含むことができる。一部の実施形態では、クロマトグラフィーステップは、抗体に基づく親和性リガンド精製を含み、それによると、抗体またはその抗体断片は、クロマトグラフィーカラムに充填された固定相マトリックスまたはレジンに付着され、次いでこれは、適したバッファーで平衡化され、続いてカラムを通したベクターを含有する上清および塩溶液混合物のポンピング、次いでリガンドに特異的に結合したベクターの溶出が行われる。一部の実施形態では、固相に結合された抗体は、IgGもしくはその断片、または単鎖ラクダ類抗体(重鎖可変領域ラクダ類抗体等)であり得る。そのようなレジンの非限定的な例として、セファロースAVB、POROS CaptureSelect AAVX、POROS CaptureSelect AAV8およびPOROS CaptureSelect AAV9が挙げられる。例えば、Terova、Oら、Affinity Chromatography Accelerates Viral Vector Purification for Gene Therapies、BioPharm Intl. eBook pp.27~35(2017);Mietzsch、Mら、Characterization of AAV-Specific Affinity Ligands: Consequences for Vector Purification and Development Strategies、Mol.Ther.Meth.&Clin.Dev.、19:362~73(2020);Rieser、Rら、Comparison of Different Liquid Chromatography-Based Purification Strategies for Adeno-Associated Virus Vectors、Pharmaceutics 13、748(2021)(doi.org/10.3390/pharmaceutics13050748)を参照されたい。
【0119】
他の実施形態では、クロマトグラフィーステップは、シアル酸(例えば、O結合型またはN結合型シアル酸)、ガラクトース、ヘパリンもしくはヘパラン硫酸等のグリカン、またはヘパランもしくはヘパリン硫酸プロテオグリカン(HSPG)等のプロテオグリカン等、ある特定のAAV血清型が細胞への結合において使用する、同じ型のリガンドが結合された固定相の使用を含む。例えば、シアル酸残基を含有する親和性マトリックスは、シアル酸に特異的に結合するカプシドを有するAAVベクター(例えば、AAV1、AAV4、AAV5またはAAV6)の精製に使用することができ;ガラクトースを含有する親和性マトリックスは、ガラクトースに特異的に結合するカプシドを有するAAVベクター(例えば、AAV9)の精製に使用することができ;ヘパリン、ヘパランまたはHSPGを含有する親和性マトリックスは、HSPGに特異的に結合するカプシドを有するAAVベクター(例えば、AAV2、AAV3、AAV3b、AAV6またはAAV13)の精製に使用することができる。さらに他の例示的な非限定的な実施形態では、カプシド表面の電荷等、ベクターの物理化学的特徴に応じて、AAVベクターは、アニオン交換、カチオン交換または疎水性相互作用クロマトグラフィーを行うことにより、さらに精製することができる。当技術分野で公知のAAVベクターを精製するのに有用な他のいずれかの下流プロセスステップを使用することもできる。
【0120】
一部の実施形態では、本開示の方法は、少なくとも1つの下流処理ステップの性能を改善するのに有効である。一部の実施形態では、下流処理ステップは、親和性クロマトグラフィーであり、改善された性能は、生物由来生成物、例えば、AAVベクターの収率が、80%、70%、60%または50%未満等のある特定の閾値を下回る前の、多数の精製サイクルとして測定される。当技術分野で公知の通り、クロマトグラフィーは典型的に、いずれか適したサイズのクロマトグラフィーカラムに、親和性レジン等、行われているクロマトグラフィーの型に適した新鮮な未使用の固定相レジンまたはマトリックスを詰め、次いで、カラムに精製されるべき試料をロードするのに備えて、適した平衡化溶液(複数可)でレジンを洗浄および/または平衡化することにより行われる。その結果、カラムは、精製されるべき生物由来生成物を含有する液体試料がカラムにロードされ、それを通ってポンピングされる、第1の精製サイクルの準備ができている。試料全体がポンピングされて通り過ぎたら、カラムをいずれか適した非変性洗浄溶液(複数可)で洗浄して、生物由来生成物を通常非共有結合により固定相に保持しつつ、夾雑物を除去することができる。その後、カラムを通していずれか適した溶出溶液をポンピングし、溶出液を収集することによって、生成物を溶出することができ、溶出液は、溶出画分において収集することができ、溶出画分はその後に検査して、各々における生物由来生成物の量を決定し、その後に、相当量の生物由来生成物を含有する画分をプールすることができる。一部の実施形態では、溶出後に、固定相は、酸、塩基またはカオトロピック塩等の化学物質を含有するいずれか適した定置洗浄溶液(複数可)で定置洗浄して、いかなる残渣生成物も夾雑物も除去し、次いで、その後の精製サイクルに備えて、平衡化溶液で再平衡化することができる。よって、本明細書で使用される場合、精製サイクルは、クロマトグラフィーカラムを通して試料を泳動し、次いで、固定相に保持されたAAVベクター等の所望の生物由来生成物を溶出するステップを含む。
【0121】
クロマトグラフィーが関与する下流プロセスステップの文脈において、生物由来生成物の「収率」は、クロマトグラフィーステップの前の試料における生成物の総量のパーセンテージとして表される、溶出液プールにおける生成物の総量を意味する。生物由来生成物の量は、当技術分野で公知のいずれかの方法を使用して決定することができる。例えば、生成物がAAVベクターである場合、ベクターの量は、ITRまたは導入遺伝子もしくは発現カセットの他の部分における配列に対するプライマーを使用した定量的PCR(pPCR)を使用して、またはデジタルドロップレットPCR(ddPCR)を使用して、定量化することができ、ミリリットル等の単位体積当たりのベクターゲノム(vg/mL)を単位としたタイターとして表すことができる。例えば、Dobnik、Dら、Accurate Quantification and Characterization of Adeno-Associated Viral Vectors、Front.Microbiol.、Vol.10、Art.1570、pp.1~13(2019);Wang、Yら、A qPCR Method for AAV Genome Titer with ddPCR-Level of Accuracy and Precision、Mol.Ther.:Methods&Clin. Devel.、19:341~6(2020);Werling、NJら、Systematic Comparison and Validation of Quantitative Real-Time PCR Methods for the Quantitation of Adeno-Associated Viral Product、Hum.Gene Ther.Meth.26:82~92(2015)を参照されたい。
【0122】
一部の実施形態では、本開示の方法は、親和性クロマトグラフィーを行うことにより、AAVベクターを精製するのに有効であり、AAVベクターの収率が、80%、70%、60%または50%を下回る前に行うことができる親和性クロマトグラフィー精製サイクルの数は、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15回またはそれを超えるサイクルである。これらの実施形態の一部では、クロマトグラフィーは、免疫親和性クロマトグラフィーであり、ベクターは、HSPGよりも強く、シアル酸またはガラクトースに結合する、またはHSPGに特異的に結合しないかもしくはごく弱く結合するカプシド、例えば、AAV1、AAV4、AAV5またはAAV9を含有する。他の実施形態では、本開示の方法は、親和性クロマトグラフィーを行うことにより、AAVベクターを精製するのに有効であり、AAVベクターの収率が50%を下回る前に行うことができる、親和性クロマトグラフィー精製サイクルの数は、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15回またはそれを超えるサイクルである。これらの実施形態の一部では、クロマトグラフィーは、免疫親和性クロマトグラフィーであり、ベクターは、HSPGよりも強く、シアル酸またはガラクトースに結合するカプシド、例えば、AAV1、AAV4、AAV5、AAV6またはAAV9を含有する。他の実施形態では、本開示の方法は、親和性クロマトグラフィーを行うことにより、AAVベクターを精製するのに有効であり、AAVベクターの収率が60%を下回る前に行うことができる、親和性クロマトグラフィー精製サイクルの数は、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15回またはそれを超えるサイクルである。これらの実施形態の一部では、クロマトグラフィーは、免疫親和性クロマトグラフィーであり、ベクターは、HSPGよりも強く、シアル酸またはガラクトースに結合する、またはHSPGに特異的に結合しないかもしくは弱く結合するカプシド、例えば、AAV1、AAV4、AAV5またはAAV9を含有する。他の実施形態では、本開示の方法は、親和性クロマトグラフィーを行うことにより、AAVベクターを精製するのに有効であり、AAVベクターの収率が70%を下回る前に行うことができる、親和性クロマトグラフィー精製サイクルの数は、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15回またはそれを超えるサイクルである。これらの実施形態の一部では、クロマトグラフィーは、免疫親和性クロマトグラフィーであり、ベクターは、HSPGよりも強く、シアル酸またはガラクトースに結合する、またはHSPGに特異的に結合しないかもしくは弱く結合するカプシド、例えば、AAV1、AAV4、AAV5またはAAV9を含有する。
【0123】
一部の実施形態では、本開示の方法は、薬物物質または薬物製品におけるAAVベクター等の所望の生物由来生成物等の活性成分の高い収率および/または純度を達成するのに有効である。この文脈で使用される場合、「収率」は、活性成分の合成または産生において使用される出発材料における同じ化合物もしくは物質またはその前駆物質の量と比較した、薬物物質における活性成分の量を意味する。本明細書で使用される場合、「薬物物質」は、活性成分を精製することを意図する完全なプロセスに起因する実質的に精製された活性成分を含む調製物を意味し、実際に設計または使用された場合に、夾雑物を除去するまたは活性成分をさらに精製することを意図するいかなるさらなるステップを含むこともこれを要求することもない場合、このプロセスは完全である。明確にするために、そのようなさらなるステップは、薬物物質から薬物製品を調製することを単に意図する、バッファー交換、体積低減、または賦形剤の添加その他を含まず、「薬物製品」は、患者への投与のために販売または使用されることになるため、活性成分の完了された剤形である。本明細書で使用される場合、「活性成分」は、疾患の診断、治癒、軽減、処置もしくは予防における薬理学的活性もしくは他の直接的効果を提供すること、または人体の構造もしくはいずれかの機能に影響を与えることを意図する、生物由来物質を含むいずれかの化合物または物質である。活性成分の非限定的な例として、ウイルス、ワクチンおよびウイルス由来のベクター、例えば、AAVベクターおよびレンチウイルスベクターその他が挙げられる。
【0124】
そのようなベクターの試料または調製物におけるAAVベクターの純度は、当技術分野で公知の種々の仕方で決定し、当技術分野で公知の種々の仕方で表すことができる。例えば、ベクター調製物は、変性ポリアクリルアミドゲルにおいて解析し、銀染色して、混入細胞タンパク質に対する、異なるウイルスタンパク質VP1、VP2およびVP3の割合を検出することができる。異なる技法を使用して、空カプシドと比較したフルの割合を検出することもでき、より大きいパーセンテージのフルカプシドは、より高い純度を示す。本明細書で使用される場合、「フルカプシド」は、ベクターゲノムを含有すると結論付けられるカプシドであり、「空カプシド」は、核酸を全く含有しないかまたはほとんど含有しないと結論付けられるカプシドである。例えば、ベクター調製物におけるカプシドは、cryoEMを含む透過型電子顕微鏡を使用して可視化することができ、フルおよび空カプシドの数は、手作業で、またはコンピュータ処理された画像認識アルゴリズムを使用して計数することができる。さらにより高い分解能は、フル、部分的にフルおよび空カプシドの間を識別することができる解析的超遠心分離を使用して達成することができる。混入空カプシドの量の観点からAAVベクター純度を推定するための簡便な方法は、260nmおよび280nmにおけるベクター調製物のUV光の吸光度を測定して、A260/A280比を得ることである。特定のベクターのカプシドおよびゲノムの理論的消衰係数を計算することにより、調製物におけるそのカプシドおよびゲノムの相対濃度をA260/A280比から計算することができ、より高いA260/A280値は、より高い割合のフルカプシドを示す。ベクター純度を検査するための方法に関する追加の情報は、Burnham Bら、Analytical ultracentrifugation as an approach to characterize recombinant adeno-associated viral vectors、Hum.Gene Ther.Meth.、26(6):228~242(2015);Subramanian、Sら、Filling Adeno-Associated Virus Capsids: Estimating Success by Cryo-Electron Microscopy、Hum.Gene Ther.、30(12):1449~60(2019);McIntosh、NLら、Comprehensive characterization and quantification of adenoassociated vectors by size exclusion chromatograpy and multi angle light scattering、Nat.Sci.Reports、11:3012、pp.1~12(2021);Sommer、JMら、Quantification of Adeno-Associated Virus Particles and Empty Capsids by Optical Density Measurement、Mol.Ther.、7(1):122~8(2003);Wu、Dら、Rapid Characterization of AAV gene therapy vectors by Mass Photometry、bioRxiv 2021.02.18.431916(doi.org/10.1101/2021.02.18.431916)に記載されている。
【0125】
一部の実施形態では、本開示の方法は、宿主細胞によって産生されたAAVベクター等の所望の生物由来生成物を含有する薬物物質または薬物製品における、宿主細胞DNAの許容できる程度に低い負荷を達成するのに有効である。AAVベクター等、そのような細胞の界面活性剤ライセートまたはそのような細胞から精製された生物由来生成物を含む組成物(薬物物質または薬物製品等)等の試料または調製物における宿主細胞DNAの量は、当技術分野で公知のいずれかの仕方で決定することができる。例えば、ヒトゲノムに特有の反復配列エレメント(例えば、Alu反復)、およびその宿主細胞が製造において一般的に使用される他の種のエレメントを特異的に検出するように設計された、高感度qPCRアッセイが開発された。例えば、Zhang、Wら、Development and qualification of a high sensitivity, high throughput Q-PCR assay for quantitation of residual host cell DNA in purification process intermediate and drug substance samples、J.Pharma Biomed Anal 100:145~9(2014);Wang、Yら、A Digestion-free Method for Quantification of Residual Host Cell DNA in rAAV Gene Therapy Products、Mol.Ther.13:526~31(2019)を参照されたい。宿主細胞DNAの量を定量化し、ミリリットルまたは用量等の他の単位等の体積におけるピコグラム(pg)またはナノグラム(ng)等の単位の質量等、絶対量として表すことができる。宿主細胞DNAの量は、試料におけるAAVベクターの量等、別の変数に対して正規化することもでき、これは、一部の実施形態では、定量化し、ミリリットル、用量当たりのベクターゲノムの数等として表すこともできる。
【0126】
薬物物質または薬物製品における宿主細胞DNAの許容できる程度に低い負荷を構成するものは、当業者には明らかとなるであろうが、問題になっている生物由来生成物の型、ならびに産業、患者および/またはUS FDAもしくはEMA等の規制当局の期待に依存することができ、これらは、経時的に変化し得る。例えば、Gombold、Jら、Lot Release and Characterization Testing of Live-Virus-Based Vaccines and Gene Therapy Products、Part 2、Bioprocess Intl. 4:46~56(2006);Wright、JF、Product-Related Impurities in Clinical-Grade Recombinant AAV Vectors: Characterization and Risk Assessment、Biomedicines 2(1):80~97(2014);Wang、Xら、Residual DNA Analysis in Biologics Development: Review of Measurement and Quantitation Technologies and Future Directions、Biotech Bioeng 109(2):307~17(2012)を参照されたい。
【0127】
一部の実施形態では、本開示の方法は、AAVベクターの高い収率および/または純度、ならびに薬物物質または薬物製品における宿主細胞DNAの許容できる程度に低い負荷を達成するのに有効である。一部の実施形態では、本開示の方法(一部の実施形態では、追加の下流精製ステップを同様に含む)を使用して産生されたAAVベクターの収率は、少なくとももしくは約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%もしくは80%もしくはそれを超える、または前述の値のいずれかの間のそれらを含めたいずれかのパーセンテージ収率であり得る。一部の実施形態では、本開示の方法(一部の実施形態では、追加の下流精製ステップを同様に含む)を使用して産生されたAAVベクターの純度は、260nmおよび280nmで測定されたUV吸光度の比(すなわち、A260/A280)として表すことができ、これは、一部の実施形態では、少なくとももしくは約0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7もしくは1.8もしくはそれを超える、または前述の値のいずれかの間のそれらを含めたA260/A280であり得る。一部の実施形態では、本開示の方法(一部の実施形態では、追加の下流精製ステップを同様に含む)を使用して産生されたAAVベクターの純度は、ベクター調製物におけるフルカプシドのパーセンテージとして表すことができ、これは、一部の実施形態では、少なくとももしくは約20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%、または前述の値のいずれかの間のそれらを含めたフルカプシドのいずれかのパーセンテージであり得る。
【0128】
一部の実施形態では、薬物物質または薬物製品における宿主細胞DNAの許容できる程度に低い負荷は、用量当たり約100ng、90ng、80ng、70ng、60ng、50ng、40ng、30ng、20ng、10ng、5ng、2ngもしくは1ngもしくはそれ未満の、もしくはそれに満たない、または前述の値のいずれかの間のそれらを含めたいずれかの値の負荷である。他の実施形態では、薬物物質または薬物製品における宿主細胞DNAの許容できる程度に低い負荷は、薬物物質もしくは薬物製品1ミリリットル当たり約50ng、40ng、30ng、20ng、10ng、5ng、2ng、1ng、0.9ng、0.8ng、0.7ng、0.6ng、0.5ng、0.4ng、0.3ng、0.2ng、0.1ng、0.09ng、0.08ng、0.07ng、0.06ng、0.05ng、0.04ng、0.03ng、0.02ng、0.01ng、0.009ng、0.008ng、0.007ng、0.006ng、0.005ng、0.004ng、0.003ng、0.002ng、0.001ngもしくはそれ未満の、もしくはそれに満たない、または前述の値のいずれかの間のそれらを含めたいずれかの値の負荷である。さらに他の実施形態では、AAVベクターを含有する薬物物質または薬物製品における宿主細胞DNAの許容できる程度に低い負荷は、1×10ベクターゲノム当たり約1000、500、250、200、150、100、90、80、70、60、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、2もしくは1ピコグラム(pg/1×10vg)もしくはそれ未満の、もしくはそれに満たない、または前述の値のいずれかの間のそれらを含めたいずれかの値の負荷である。
【0129】
本発明の他の目的、特色および利点は、前述の詳細な説明から明らかとなるであろう。しかし、本発明の精神および範囲内の様々な変化、改変および均等物が、詳細な説明および実施例から当業者にとって明らかとなり、添付の特許請求の範囲内に収まるため、詳細な説明と後述する具体的な実施例は、本発明の具体的な実施形態を示すが、単なる説明として提示されていることを理解されたい。
【0130】
他に指示がない限り、一式の実施形態の1つまたは複数の要素を参照した用語「または」の使用は、意味が「および/または」と等しく、互いに相互排他的であることを要求しない。他に指示がない限り、複数の明確に列挙されている数的範囲はまた、その下限が、明確に列挙されている範囲のいずれか1つの下限または上限に由来し、その上限が、明確に列挙されている範囲のいずれか他の1つの下限または上限に由来する範囲を表す。よって、例えば、一連の明確に列挙されている範囲「10~20、20~30、30~40、40~50、100~150、200~250、275~300」はまた、範囲10~50、50~100、100~200および150~250を、他にも多数あるが表す。他に指示がない限り、一連の数値または範囲の前にある用語「約」の使用は、その直後に現れる値または範囲のみならず、同じ一連においてその後に現れるありとあらゆる値または範囲も改変することを意図する。よって、例えば、語句「約1、2または3」は、「約1、約2または約3」に等しい。
【0131】
本明細書に引用されている、論文、抄録、特許、特許出願(公開されているか公開されていないかに関わりなく)および生物学的配列(具体的なデータベース参照番号によって同定された配列を含むがこれらに限定されない)を含むがこれらに限定されない、あらゆる刊行物および参考文献は、あたかも個々の刊行物または参考文献のそれぞれが、そのように参照により本明細書に組み込まれていると特にかつ個々に示されているのと同じ程度まで、あらゆる目的で、これによりそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。本出願が直接的にまたは間接的に優先権を主張するいかなる特許出願もまた、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0132】
他に指示がない限り、後述する実施例は、当業者にとって周知かつルーチンである標準技法を使用して行われたまたは行われている実験について記載する。実施例は、説明を目的とするが、本発明を限定するものではない。
【実施例
【0133】
(実施例1)
ドミフェン臭化物による宿主細胞DNAの濃度依存的沈殿
第1のシリーズの実験は、界面活性剤溶解された宿主細胞からの宿主細胞DNA(HC-DNA)および宿主細胞タンパク質(HCP)の沈殿ならびに細胞によって産生されたアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの回収における、ドミフェン臭化物(DB)濃度の効果を決定した。
【0134】
HEK293細胞を、4.9×10個の細胞/mLの生細胞密度となるまで、50L使い捨てバイオリアクター(SUB)における懸濁培養において育成し、次いで、AAV2 repおよびAAV9 cap遺伝子、アデノウイルスヘルパー機能、ならびにAAV2 ITRで挟まれたミニジストロフィンタンパク質を産生するための発現カセット(この例示的なベクターは、WO2017/221145にさらに記載されている)をそれぞれ含有する3種のプラスミドをトランスフェクトした。AAVベクター産生のための72時間のインキュベーション後に(この時点までに、細胞は、約7.7×10個の細胞/mLの生細胞密度に達した)、バイオリアクターから細胞懸濁液の1000mL試料を除去し、0.5%(v/v)の最終Triton X-100濃度となるように10%Triton X-100ストック溶液(w/v)を添加し、続いて30分間室温でかき混ぜることにより溶解した。次に、0.05%~0.20%(v/v)に及ぶ範囲の最終DB濃度となるように10%DBストック溶液(w/v)をライセート試料に添加し、30分間室温でかき混ぜて、HC-DNAを沈殿させ、これを30分間、同様に室温で溶液から沈降させた。次に、DB処理ライセート試料を4000RPMで15分間遠心分離して、DNAをペレットにし、その後、上清(すなわち、部分的に清澄化されたライセート)を除去して確保した。DBによる残渣HC-DNAの沈殿を防止するために(すなわち、沈殿をクエンチするために)、0.25Mの最終NaCl濃度となるように5M NaClストック溶液を添加した。クエンチされた上清を、1つまたは複数の0.2μmフィルター(EKV (Pall))を通して濾過して、最終清澄化されたライセートを産生した。次に、ベクターにおけるAAV9カプシドに特異的な免疫親和性クロマトグラフィー(AKTA Avant 150システムを使用した1cm(d)×10cm(h)カラムにおける8mLのPoros CaptureSelect AAV9)によって、試料からAAVベクターを精製した。
【0135】
最終清澄化されたライセート(出発材料)および精製されたベクター(クロマトグラフィーカラム溶出)の試料におけるAAVベクターのタイターならびにHCPおよびHC-DNAの量を検査した。AAVベクタータイターは、ベクターにおける導入遺伝子に対するプライマーを使用した定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって決定し、1ミリリットル当たりのベクターゲノム(VG/mL))として表し;HCPの量は、ELISAによって決定し、1mL当たりのナノグラム(ng/mL)として表し;HC-DNAの量は、qPCRによって決定し、1mL当たりのピコグラム(pg/mL)として表した。試料体積可変性を制御するために、HCPおよびHC-DNAの量を、ベクターの量に対して正規化した。表1に示す通り、出発材料におけるベクタータイターならびにHCPおよびHC-DNAの量は、検査した全てのDB濃度にわたって相対的に一貫していた一方で、ライセートにおける0.1%DB最終濃度から開始して、HC-DNAの濃度依存的低減が見られ、DBが、宿主細胞界面活性剤ライセートからHC-DNAを沈殿させることができる有効性を実証する。
【0136】
【表1】
【0137】
第2のシリーズの実験は、界面活性剤溶解された宿主細胞からのHC-DNAおよび宿主細胞タンパク質HCPの沈殿ならびに細胞によって産生されたAAVベクターの回収における、より高いDB濃度の効果を決定した。
【0138】
上に記載されているものと同様に、3.6L体積の2個のバイオリアクターにおいて、HEK293細胞を懸濁培養において育成し、トランスフェクトして、AAVベクターを産生した。細胞が、それぞれ約1.4×10個の細胞/mLおよび1.7×10個の細胞/mLの生細胞密度に達したら、培養物を組み合わせ、1つの3500mL、4つの200mLを含む、試料を採取した。各試料に、Triton X-100を添加して(0.5%最終濃度)細胞を溶解し、その後に、DBを添加してHC-DNAを沈殿させた。3500mL試料における最終DB濃度は、0.2%であり、一方、4つの200mL試料における最終DB濃度は、0.1%~0.4%の範囲に及んだ。DNA沈殿後に、全ての試料を、1μmデプスフィルター(J700(Pall))および0.4μmデプスフィルター(Bio20(Pall))を通して濾過した。次に、濃縮NaClの溶液を、250mM~500mMに及ぶ範囲の異なる最終濃度となるように濾過試料に添加し、続いて、30分間室温で混合した。塩を添加し、混合した後に、試料を、0.2μmおよび0.1μm膜フィルター(それぞれEAVおよびEDT(Pall))を通して濾過した。同日(0日目)に、試料を解析して、上に記載されている通り、AAVベクタータイターならびにHC-DNAおよびHCPの量を定量化した。表2に示す通り、清澄化されたライセートにおけるベクタータイターならびにHCPおよびHC-DNAの量は、検査した全てのDB濃度にわたって同等であり、一方、HC-DNAの濃度依存的低減が見られ、DBが、本実施例に記載されている第1の実験において研究されたものと比較して、より高い生細胞密度で宿主細胞界面活性剤ライセートにおけるHC-DNAを沈殿させることができる有効性を実証した。
【0139】
【表2-1】
【0140】
【表2-2】
【0141】
清澄化されたHEK293細胞ライセートにおけるベクタータイターおよびHC-DNA濃度におけるDB沈殿の濃度依存性は、第1の膜濾過ステップの後に行われた測定から得たデータに基づき、図1に説明されている。グラフにおいて、ベクタータイター曲線は、多項式にフィットされ、HC-DNA濃度は、指数方程式にフィットされる。結果は、研究された条件下で、0.1%を超えるDB濃度が、宿主細胞DNAを有効に沈殿させるのに要求され、0.3%~0.4%を上回るDB濃度が、おそらく、沈殿された材料中にベクターを隔絶することにより、ベクター収率の低減を開始できることを示す。
【0142】
濁度計を使用して、0日目および2~4日目に、濾過されたライセートにおける濁度も測定し、結果をネフェロメトリー濁度単位(NTU)で表す。表3に示す通り、検査した全てのDBおよびNaCl濃度において、濁度は、0日目および4日目の間でごくわずかに増加した。
【0143】
【表3】
【0144】
第3のシリーズの実験は、DNA沈殿後の清澄化されたライセートにおけるAAVベクター収率およびHC-DNAの量における、宿主細胞の溶解に使用されるTriton X-100および宿主細胞DNAの沈殿に使用されるDBの濃度を変動させることの効果を試験した。
【0145】
上に記載されているものと同様に、HEK293細胞を懸濁培養において育成し、トランスフェクトして、AAVベクターを産生した。約2×10個の細胞/mLの生細胞密度に達した後に、40mL試料を引き抜き、細胞を溶解するためのTriton X-100、粗ライセートにおける宿主細胞DNAを沈殿させるためのDB、および部分的に清澄化されたライセートにおける残渣宿主細胞DNAのDBによる沈殿を阻害するためのNaClの最終濃度のマトリックスに従って処理した。細胞ライセートを産生するためのTriton X-100添加後に、細胞を30分間混合し、そこにDBを添加し、30分間混合して、HC-DNAを沈殿させ、続いて、遠心分離して、沈殿されたHC-DNAをペレットにした。処理された試料由来の上清を確保し、続いて、塩添加および2日間の貯蔵を行った。細胞懸濁液におけるおよび処理された試料由来のベクタータイターおよびHC-DNAを0日目に定量化し、出発細胞懸濁液と比べた試料におけるベクター収率および残渣宿主細胞DNAの量の計算に使用した。0日目に、および再び47時間後に、清澄化されたライセートの濁度を測定して、清澄化されたライセートにおける残渣宿主細胞DNAのDBによる沈殿を測定した。処理された試料におけるTriton X-100、DBおよびNaClの最終濃度、ベクタータイターおよび収率、ならびに濃度およびベクタータイターに対する正規化の両方として表されるHC-DNAの量を含む実験条件および結果は、表4に記載されている。
【0146】
【表4】
【0147】
表4における結果に基づき、図2Aは、HC-DNAの沈殿に使用されたDBの濃度、ならびにHEK293細胞の清澄化されたライセートの試料におけるベクターおよびHC-DNAの両方の含量の間の関係性を説明する。検査した範囲内で、DB濃度の増加は、清澄化されたライセートにおけるベクターおよびHC-DNAの量の両方を低減させたが、個々のデータ点にフィットされた線形傾向線によって示される通り、HC-DNAが低減された率は、より大きかった。同様に、図2Bは、Triton X-100の濃度、ならびに同じ試料におけるベクターおよびHC-DNAの含量の間の関係性を説明する。検査した範囲内で、Triton X-100濃度の増加は、ベクタータイターに有意に影響を与えずに、清澄化されたライセートにおけるHC-DNAの量を増加させる。
【0148】
(実施例2)
塩化ナトリウムは、ドミフェン臭化物による残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害する
DBによる宿主細胞DNAの沈殿は、溶解された細胞から放出されたDNAの実質的な部分を除去するのに有効であるが、清澄化されたライセートは、反応し続ける十分な残渣HC-DNAおよびDBを含有し、経時的に増加する濁度を生じる。制御されなければ、この効果は、AAVベクターを精製するために下流プロセスにおいて一般的に用いられるクロマトグラフィーカラムの詰まりをもたらし得る。追加の実験を実行して、いかなる濃度の塩化ナトリウムが、清澄化された細胞ライセートにおけるDBによる残渣宿主細胞DNAの望まれない沈殿を阻害またはクエンチするのに最も有効であるか決定した。
【0149】
実施例1に記載されているものと同様に、3.6L体積の2個のバイオリアクターにおいて、HEK293細胞を育成し、トランスフェクトして、AAVベクターを産生した。細胞が、それぞれ約1.8×10個の細胞/mLおよび2.1×10個の細胞/mLの生細胞密度に達したら、培養物を組み合わせ、Triton X-100を添加して(0.5%最終濃度)細胞を溶解し、DBを添加して(0.2%最終濃度)HC-DNAを沈殿させ、続いて、1μmデプスフィルター(J700(Pall))および0.4μmデプスフィルター(Bio20(Pall))を通した濾過を行った。次に、1つの2000mLおよび4つの300mLを含む、濾液の試料を採取した。次に、濃縮NaClの溶液を、250mM~500mMに及ぶ範囲の異なる最終濃度となるように濾過試料に添加し、続いて、30分間室温で混合した。塩を添加し、混合した後に、試料を、0.2μmおよび0.1μm膜フィルター(それぞれEAVおよびEDT(Pall))を通して濾過した。NaClが添加されなかった試料を同様に処理し、対照とした。同日(0日目)に、試料を解析して、AAVベクタータイターならびにHC-DNAおよびHCPの量を定量化した。ベクタータイターは、qPCRを使用して決定し、VG/mLとして表し;HCPレベルは、ELISAによって決定し、ng/mLとして表すと共に、ベクタータイターに対して正規化し、ng/VGとして表し;HC-DNAレベルは、qPCRによって決定し、pg/mLとして表すと共に、ベクタータイターに対して正規化し、pg/VGとして表した。実施例1とは異なり、試料は、クロマトグラフィーによってさらに精製されなかった。結果は、表5に報告されている。他の実験の場合と同様に、0.2%の最終濃度におけるDBは、HC-DNAを沈殿させるのに有効であった。2000mL試料による実験において、膜濾過後の清澄化されたライセートにおけるHC-DNAの量は、処理されていないライセートにおける量の100分の1よりも少なかった。
【0150】
【表5】
【0151】
濁度計を使用して、0、1および2日目に濁度も測定し、結果をネフェロメトリー濁度単位(NTU)で表す。結果は、表6に報告され、図3に説明されている。図3に示す通り、塩がライセートに添加されなかった場合(0M NaCl)、濁度は、2日間の実験の経過にわたりほぼ40倍増加しており、このことは、DBによる残渣HC-DNAの沈殿が進行中のプロセスであることを示した。対照的に、0.25M~0.50Mに及ぶ範囲の最終濃度となるようなNaClの添加は、同じ時間にわたり本質的に未変化の濁度レベルをもたらし、これらの濃度の塩の添加が、DBによる残渣HC-DNAの進行中の沈殿を阻害するのに有効であることを示す。表5に示す通り、AAVベクタータイターは、宿主細胞タンパク質の量と同様に、検査した全ての塩濃度(塩なし対照を含む)にわたって同等であった。
【0152】
【表6】
【0153】
別のシリーズの実験において、上に記載されている他の実験と同様に、HEK293細胞を育成し、AAVベクター産生のためにトランスフェクトし、収集した。細胞を0.5%Triton X-100(30分間室温で)により溶解し、宿主細胞DNAを0.3%DB(30分間室温で)により沈殿させ、次いで、本明細書に記載されている通り、J700、Bio20、EAVおよびEDTフィルターを通して濾過した。次に、濃縮塩溶液を試料に添加して、200mM~800mMに及ぶ範囲の最終NaCl濃度と、塩なし対照を達成した。次に、処理された試料の部分を7日間保持し、1、2、3、4および7日目に濁度を測定し、他の部分を免疫親和性カラムクロマトグラフィーによって精製して、AAVベクターを精製した。濁度測定の結果は、表7に報告されており、これは、図4にさらに説明されている通り、200mMを超えるNaCl濃度が、7日後であっても、濁度の有意な増加を防止するのに有効であったことを実証する。
【0154】
【表7】
【0155】
免疫親和性カラムクロマトグラフィーによって異なる塩処理された試料からAAVベクターを単離した後に、精製された調製物を解析して、qPCRによってベクタータイターを決定し、260nmおよび280nmにおける吸光度を測定してA260/A280比を計算することによりフルカプシドの割合を決定し、HC-DNAおよびHCPの量を定量化した。結果は、表8に報告されており、これは、精製されたベクター調製物におけるベクタータイターおよび純度にまたはHC-DNAもしくはHCPの量に有意差がないことを実証する。
【0156】
【表8】
【0157】
(実施例3)
ドミフェン臭化物による残渣宿主細胞DNA沈殿の阻害におけるアニオンおよびカチオン交換の効果
理論に制約されることは望まないが、DBによるHC-DNA沈殿における塩化ナトリウムの効果についての可能な説明は、塩化物アニオンが、正に荷電したドミフェン部分と静電気的に相互作用し、これを遮蔽し、それと負に荷電したDNAとの相互作用を低減させることである。この潜在的な機序をさらに調査するために、HC-DNAの沈殿およびAAVベクター産生における異なる塩の効果を検査した一連の実験を実行した。検査条件は、実施例2において検査されたものよりも広い範囲のNaCl濃度、ナトリウムが異なる無機および有機アニオンと対形成した塩の使用、塩化物が異なる無機カチオンと対形成した塩の使用、ならびにナトリウムも塩化物も存在しない塩(MgSO)の使用を含んだ。
【0158】
以前の実施例の場合と同様に、HEK293細胞を育成し、AAVベクター産生のためにトランスフェクトした。細胞が、約1.4×10個の細胞/mLの生細胞密度に達したら、細胞を、0.5%の最終濃度におけるTriton X-100により30分間溶解した。溶解後に、30分間混合しつつ、0.3%の最終濃度となるようにDBを添加して、HC-DNAを沈殿させた。凝結されたHC-DNAを沈降させ、その後、バイオリアクターから上清をポンピングして出し、19μmおよび0.4μmデプスフィルターを通した濾過によって清澄化した。清澄化されたライセートの300mL試料に、0.5%Triton X-100および塩を含有するストック溶液を表9に記載されている通りに添加し、混合し、0.22μmおよび0.1μmフィルターを通して濾過して、最終清澄化されたライセートを産生し、次いでこれを貯蔵ボトルに分注し、室温で4日間保持した。0日目に、試料を解析して、pH、伝導率、AAVベクタータイター、ならびにHC-DNAおよびHCPの濃度を測定し、一方、濁度は、0.2μmおよび0.1μmフィルターを通した濾過の前および後に、0~4日目にHach 2100 Q濁度計により測定した。
【0159】
表10は、異なる塩の存在下での経時的なネフェロメトリー濁度単位(NTU)(3回の測定の平均)で報告された濁度測定の結果を報告し、これは、図5A図5Dのグラフにおいても説明されている。表9は、ライセート伝導率の0日目における測定の結果を報告し、一方、表11は、ライセート試料におけるAAVベクタータイターならびにHCPおよびHC-DNAの正規化された濃度の同日における測定の結果を報告する。
【0160】
【表9】
【0161】
【表10】
【0162】
図5Aと、表10の追加の詳細に示す通り、清澄化されたライセートは、1日後に増加する濁度を実証し、これは、より高い濃度のNaClが添加されるにつれて、濃度依存的様式で阻害された。これらの実験において、0.6M NaClは、残渣HC-DNAのさらなるDB沈殿をほぼ完全に阻害すると思われた。
【0163】
興味深いことに、図5Bに示す通り、ナトリウムおよび塩化物以外のアニオンを含む塩は、漸進的濁度増加の防止において、同じ濃度(0.4M)で検査した場合、NaClよりも優れた成績にはならなかった。さらに、検査した塩のうち2種であるNaIおよびクエン酸ナトリウムは、時間と共に驚くべき仕方で濁度に影響を与えると思われた。塩NaIは、初期に濁度を劇的に加速するが、後にこれを阻害すると思われ、一方、クエン酸ナトリウムは、初期に濁度を加速し、続いて阻害し、阻害は後の時点で徐々に縮小すると思われた。塩化物は、濁度の阻害において有効性が低いアニオンよりも高い電荷密度を有し、電荷密度が、正に荷電したドミフェンとの相互作用に影響を与える重要な変数となり得ることを示唆する。注目すべきことに、図5Bにも示す通り、MgSOは、濁度の阻害について、同じ濃度のNaClよりも有効であった。塩化物は、硫酸塩よりも高い電荷密度を有するため、観察された差は、DBとDNAとの相互作用に干渉し得る、負に荷電したDNAとMg2+イオンとの強い静電気的相互作用に起因し得る。
【0164】
図5Cに示す通り、塩化物およびナトリウム以外のカチオンを含む検査した2種の塩は、濁度の阻害について、NaClよりも優れた成績にはならなかった。濁度を阻害すると初期に思われた後に、0.2M CaClは、後の時点で濁度を急速に増加させ、一方、KClは、有効であったが、同じ濃度のNaClと比較してわずかに劣る。対照的に、塩化物が、Mg2+対イオンと対形成した場合、濁度の阻害は、半分の濃度(0.2M)であっても、NaClよりも有効であった。この効果は、DNAとの強いMg2+相互作用と組み合わせた、塩化物の高い電荷密度(おそらく、ドミフェンとのより有効な相互作用に寄与する)に起因し得る。双性イオンとして挙動し得るアミノ酸グリシンも検査したが、いかなる認識できる程度にも、濁度を阻害することができなかった。図5Dは、濁度形成の最も強力な阻害剤の比較有効性に関する追加の詳細を提供する。
【0165】
異なる量の同じ塩または同様の量の異なる塩が、可変的な程度でイオン強度に寄与し得るため、濁度形成の阻害が、様々なイオンの化学的性質ならびにそれらとDBおよび/またはDNAとの相互作用の代わりに、イオン強度によるものであり得る可能性があった。図6A図6Dに示す通り、伝導率(表9に報告される通り0日目における)の関数としての、検査期間(表10に報告される通り、0~3日目)にわたる濁度の回帰プロットは、しかし、イオン強度が、初期時点において不十分に予測的であり、後の時点において多くても弱く予測的であることを示す。3日目においてのみ、回帰解析は、より高いイオン強度が、濁度形成の低減と正に相関し得ることを示唆する。まとめると、本データは、検査した塩におけるイオンの化学的特性が、イオン強度よりも有意な濁度阻害の寄与因子であることを示唆する。
【0166】
表11に要約される通り、大部分の沈殿阻害剤の添加は、100%を超えた阻害%VG収率値において反映される通り、AAVベクタータイターに有意に影響を与えなかった。対照的に、0.4M MgSO、0.2M MgClおよび0.2M CaClの添加は、濾過後阻害%VG収率の低減を引き起こした。表11におけるデータは、DBが、溶解された細胞からのHC-DNAの除去において高度に有効であることも実証する(DB添加前の770.9pg/1×10VGから、添加後の50.6pg/1×10VG)。阻害剤の添加と、それに続く0.2μmおよび0.1μm濾過は、HC-DNAレベルを有意に変更しなかった。
【0167】
【表11】
【0168】
(実施例4)
ラージスケールでのドミフェン臭化物による残渣宿主細胞DNA沈殿の阻害
HC-DNAのDB沈殿、および上に記載されているある特定の塩の添加によるその阻害の研究を相対的にスモールスケールで実行し、これは、清澄化された細胞ライセートを塩溶液と組み合わせるバッチ混合技法に頼った。しかし、バッチ混合は、臨床的または商業的スケールでベクター製造に適用される場合、非効率的となるであろうことから、実験を実行して、DB処理細胞ライセートを濃縮塩溶液と混合し、これを同じスケールのバッチシステムと比較するための半連続的システムの有効性を検査した。バッチシステムは、図7Bに説明されており、連続的システムは、図7Cに説明されている。連続的混合のための代替システムは、図7Aに説明されている。
【0169】
バッチまたは連続的プロセスシステムのいずれかを用いた実験を行った。本質的に上の実施例に記載されている通りに、250L使い捨てバイオリアクター(SUB)内で懸濁培養においてHEK293細胞を育成し、AAVベクター産生のためにプラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションの約68時間後に、この時点で生細胞密度は、約2.0×10個の細胞/mLに達しており、10%Triton X-100を、0.5%の最終濃度となるようにSUBに添加し、続いて30分間混合した。HC-DNAを沈殿させるために、10%ドミフェン臭化物を、0.3%の最終濃度となるようにSUBに添加し、続いて30分間混合した。SUB羽根車を止め、凝結されたHC-DNAをSUBの底に沈降させた。
【0170】
バッチシステムにおいてDBによる残渣HC-DNAの沈殿をクエンチするために、DB沈殿HC-DNAの層を覆う(overly)部分的に清澄化されたライセートをポンピングしてSUBから出し、1.0μmおよび0.4μmデプスフィルター(それぞれT3500およびBio 20 Stax)を通して、使い捨てミキサー(SUM)に入れた。次に、4M NaClおよび0.5%Triton X-100を含有する濃縮塩溶液をポンピングしてSUMに入れ、続いて濾液と混合して、塩に、さらなるHC-DNA沈殿を阻害させた。次に、クエンチされた混合物をポンピングしてSUMから出し、追加のフィルターを通過させた。連続的混合システムにおいて、部分的に清澄化されたライセートをポンピングしてSUBから出し、上述の通りに濾過し、次いで、この設計ではブレイクタンクとして機能するSUMに一時的に貯蔵した。十分な体積の濾過された上清をSUMに添加した後に、別々のタンクに貯蔵された上清、ならびに4M NaClおよび0.5%Triton X-100を含有する溶液を、蠕動ポンプによってポンピングしてそれぞれの容器から出し、Y-コネクタで交わる別々のチューブを通した。これらの実験において、混合物において0.4M NaClの最終濃度を達成することが所望された。したがって、濾液および濃縮NaCl溶液の相対的ポンプ比率は、約10:1であった。Y-コネクタの下流は、濾液および塩溶液の徹底的な混合を確実にするための静的インライン混合エレメントを含有する単一のチューブであり、その後に、混合物は、追加のフィルターを通過された。
【0171】
実際には、上清および塩溶液混合物は、さらなる下流精製ステップ(例えば、クロマトグラフィー)に供されるであろうが、これらの実験においては、経時的な濁度変化をモニターするために室温で貯蔵された。AAVベクタータイターを0日目に決定し、Hach 2100 Q濁度計を使用して濁度を0~4日目に測定した。実験システムの側面は、表12に要約されており、結果は、表13に要約されている。バッチシステムを使用して調製された1種の検査試料、ならびに異なるポンプ流速、管直径および静的ミキサーで構成された連続的システムを使用して調製された3種の検査試料と同様に、沈殿阻害剤が添加されなかった対照試料が含まれた。上に記述されている結果と一致して、NaClが添加されなかった対照は、経時的に増加する濁度を示した。対照的に、NaClが、バッチまたは連続的システムのいずれかを使用して清澄化されたライセートに添加された場合、実験の最終日までに濁度レベルの有意な増加は観察されなかった。AAVタイターレベルも、異なる実験にわたって一貫していた。本データは、貯蔵の前に、および/またはAAVベクターをさらに精製するための下流プロセスにおける使用の前に、清澄化されたライセートを塩溶液と混合して、DBによる残渣HC-DNAの沈殿を阻害するために、連続的混合システムが、バッチシステムと同じ程度に有効であることを示唆する。
【0172】
【表12】
【0173】
【表13】
【0174】
(実施例5)
免疫親和性カラムクロマトグラフィー効率におけるドミフェン臭化物DNA沈殿の阻害の効果
以前の実施例に記載されているものと同様の方法および試薬を使用して、懸濁培養におけるHEK293細胞にトランスフェクトすることにより、AAV9カプシドを有するAAVベクターの別々の調製物を250Lスケールで産生した。Triton X-100で細胞を溶解し、次いで、0.2%の最終濃度のドミフェン臭化物で宿主細胞DNA(HC-DNA)を沈殿させることにより、ベクターを収集した。凝結されたHC-DNAを沈降させ、その後に、ベクターを含有する部分的に清澄化された細胞ライセートを除去し、深層濾過して、清澄化されたライセートを産生した。残渣宿主細胞DNAの沈殿を阻害するために塩を添加しなかった。次に、POROS(商標)CaptureSelect(商標)AAV9親和性レジン(Thermo Fisher Scientific)を詰めたカラムを使用した免疫親和性クロマトグラフィーによって、ベクターを精製した。複数のベクター調製物由来の清澄化されたライセートを、同じカラムを通して泳動して、カラム性能が望ましくないほど低いレベルに劣化する前に可能となる精製サイクルの数を評価した。qPCRによって、各調製物からの精製の前および後のベクターの量を決定し、組み合わせた溶出プールにおけるベクターの量をクロマトグラフィー前の清澄化されたライセートにおけるベクターの量で割ることによって、収率を計算した。
【0175】
結果は、表14に示されており、これは、ほんの4回の精製サイクルの後に、30%ベクター収率へのカラム性能の急速劣化を実証する。異なる量のベクターをそれぞれ含有する異なるベクター調製物が精製されていたため、各精製サイクルからの精製されたベクターの総量は変動する。第5の精製サイクルの前に、免疫親和性レジンをカラムから除去し、洗浄し、再充填して、この操作が、レジン性能を改善することができるか検査したが、収率に僅かな改善しか観察されなかった。
【0176】
【表14】
【0177】
カラム性能はまた、免疫親和性クロマトグラフィー精製の溶出相における系列溶出画分におけるベクターの量を定量化することによって評価した。表14に記載されている精製サイクルのうち3つの結果が、図8のクロマトグラムに示されている。第1のサイクル(サイクル#1)は、免疫親和性レジンによるベクターの有効な分離を示す、単一の鋭い溶出プロファイルピークを示す。しかし、第4のサイクル(サイクル#4)によって、溶出ピークは、カラム性能の劣化を示す、幅広くかつ二峰性であった。レジンの洗浄および再充填は、ベクターを分離するレジンの能力を回復するのに有効であったが、収率は低減した(サイクル#5)。
【0178】
免疫親和性クロマトグラフィー性能における清澄化されたライセートへの塩の添加の効果も評価した。他の実施例に記載されている通り、懸濁培養におけるHEK293細胞においてAAV9カプシドを有するAAVベクターを産生し、その後に、Triton X-100で細胞を溶解し、ドミフェン臭化物で宿主細胞DNAを沈殿させた。深層濾過後に、0.4M(既に存在していた可能性があるNaClを説明しない)の最終濃度となるように、NaClを清澄化されたライセートに添加した。次に、POROS(商標)CaptureSelect(商標)AAV9親和性レジンを詰めたカラムを使用して、10サイクルの試料ローディング、洗浄、ベクター溶出およびレジンの定置洗浄を経て、ライセートからベクターを精製した。上述の通りにベクター収率を決定し、非変性逆相HPLCによってベクター純度を決定し、一定の流速の維持に要求されるカラム圧力もモニターした。結果は、表15に示されている。塩処理により、カラム性能は、ベクター収率および純度の観点から一貫して高かったが、カラム圧力は、10回の精製サイクルの経過にわたり増加した(最大デルタ圧力がおよそ倍加)。表14におけるデータと比較して、これらの実験のために新たな定置洗浄プロトコールを実行し、これは、性能改善に寄与した可能性もある。
【0179】
【表15】
【0180】
まとめると、表14、図8および表15に示す結果は、塩添加による、清澄化された宿主細胞ライセートにおけるドミフェン臭化物による残渣宿主細胞DNAの沈殿の阻害が、性能が望ましくないレベルを下回る前に、クロマトグラフィーカラムが耐えることができる、AAVベクター精製サイクルの数を増加させるのに有効であることを示唆する。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8
【国際調査報告】