(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】眼科処置中の光毒性を防止するための光曝露の定量化方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/12 20060101AFI20231227BHJP
A61B 3/14 20060101ALI20231227BHJP
A61F 9/008 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
A61B3/12
A61B3/14
A61F9/008 130
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537358
(86)(22)【出願日】2021-11-02
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 IB2021060144
(87)【国際公開番号】W WO2022136958
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165995
【氏名又は名称】加藤 寿人
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル デューラント
(72)【発明者】
【氏名】アショック バートン トリパティ
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB06
4C316AB16
4C316FA16
4C316FA18
4C316FB05
4C316FB13
4C316FB15
4C316FC12
4C316FY02
4C316FY09
4C316FY10
4C316FZ01
(57)【要約】
眼科処置中の患者の網膜(25)の光曝露を定量化するためのシステム(10)及び方法(70)。光源(32)は、処置中に患者の網膜(25)を指向性光(LL)で照明して、照明された網膜表面を生成する。カメラ(36)は、照明された網膜表面(25I)の画像データ(38)を収集する。カメラ(36)及び指示デバイス(40)と通信する電子制御ユニット、ECU(50)は、画像データ(38)を受信し、網膜(25)に入射する指向性光(LL)の累積エネルギースペクトル密度を計算し、且つ累積エネルギースペクトル密度が光毒性閾値を超えていることに応じて、指示デバイス(40)を作動させることを含む、可能性のある光毒性を示す制御動作を実行する。照明された網膜表面(25I)は、ECU(50)が累積エネルギースペクトル密度を照明された網膜表面(25I)にマッピングすることで、仮想ゾーン(Z1、Z2)に分割され得る。任意選択的なゾーン(Z1、Z2)の各々は、対応する累積エネルギースペクトル密度を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科処置中の患者の網膜の光曝露を定量化するためのシステムであって、
前記眼科処置中に前記患者の網膜を指向性光で照明し、それによって照明された網膜表面を生成するように構成された光源と、
前記照明された網膜表面の画像データを、収集された画像データとして収集するように構成されたカメラと、
指示デバイスと、
前記指示デバイス及び前記カメラと通信する電子制御ユニット(ECU)であって、
前記照明された網膜表面を示す前記カメラからの前記収集された画像データを受信し、
前記収集された画像データを使用して、前記眼科処置中に前記網膜に入射する前記指向性光の累積エネルギースペクトル密度を推定し、
前記累積エネルギースペクトル密度が光毒性閾値を超えていることに応じて、前記指示デバイスを作動させることを含む、可能性のある光毒性を示す制御動作を実行する、
ように構成されている、電子制御ユニット(ECU)と、
を備える、システム。
【請求項2】
前記ECUが、前記光源と通信しており、そこから光出力データを受信するように構成されており、前記光出力データが、前記患者の網膜を照明する前記光の強度及びスペクトルコンテンツを記述している、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ECUが、前記照明された網膜表面を複数の仮想ゾーンに分割し、且つ前記複数の仮想ゾーンの各々の1つが、対応する累積エネルギースペクトル密度を有するように、前記累積エネルギースペクトル密度を前記照明された網膜表面にマッピングするように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記光毒性閾値が、複数のゾーン固有の光毒性閾値を含み、前記ECUが、前記累積エネルギースペクトル密度から、前記複数のゾーンの各々に対するそれぞれの累積エネルギースペクトル密度を判定し、且つその後、前記複数の仮想ゾーンのうちの1つの前記それぞれの累積エネルギースペクトル密度が前記ゾーン固有の光毒性閾値のうちの対応する1つを超えていることに応じて、前記制御動作を実行する、ように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記指示デバイスが、スピーカを含み、前記制御動作が、前記スピーカを介して可聴アラームを鳴らすことを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記指示デバイスが、色分けされたランプを含み、前記制御動作が、前記色分けされたランプを照明することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記指示デバイスが、表示画面を含み、前記制御動作が、前記表示画面を介して前記累積エネルギースペクトル密度を示す情報を表示することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
ECUが、前記表示画面を介して前記照明された網膜表面のヒートマップを表示するように構成されており、前記ヒートマップが、前記照明された網膜表面にわたる前記累積エネルギースペクトル密度の分布を示している、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記デジタル画像データが、前記患者の網膜の眼底画像を含み、前記ヒートマップが、前記眼底画像が前記ヒートマップの背景を形成するように、前記眼底画像上に表示される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記ECUが、前記光源の制御設定を選択的に調整するように構成されており、前記制御動作が、前記制御設定として、前記眼科処置中にリアルタイムで前記指向性光の波長及び/又は強度レベルを調整することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記光源が、可変強度及び/又はスペクトルコンテンツを有する光パイプ又は内照射器である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
眼科処置中の患者の網膜の光曝露を定量化するための方法であって、
前記眼科処置中に前記患者の網膜を光源からの指向性光で照明し、それによって照明された網膜表面を生成することと、
カメラを使用して、前記照明された網膜表面の画像データを、収集された画像データとして収集することと、
電子制御ユニット(ECU)を介して、前記カメラから前記収集された画像データを受信することと、
前記ECUを介して、前記眼科処置中に前記網膜に入射する前記指向性光の累積エネルギースペクトル密度を推定することと、
前記累積エネルギースペクトル密度が光毒性閾値を超えていることに応じて、前記ECUを介して制御動作を実行することであって、前記制御動作が、可能性のある光毒性を示し、前記制御動作が、指示デバイスを作動させることを含む、実行することと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記ECUを介して、前記照明された網膜表面を複数の仮想ゾーンに分割することと、
前記複数のゾーンの各々の1つが、対応する累積エネルギースペクトル密度を有するように、前記ECUを介して前記累積エネルギースペクトル密度を前記照明された網膜表面にマッピングすることと、
を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記光毒性閾値が、複数のゾーン固有の光毒性閾値を含み、前記方法が、
前記複数の仮想ゾーンのうちの1つの前記それぞれの累積エネルギースペクトル密度が前記ゾーン固有の光毒性閾値のうちの対応する1つを超えていることに応じて、前記ECUを介して前記制御動作を実行すること、
を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ECUを介して、前記光源から光出力データを受信することであって、前記光出力データが、前記患者の網膜を照明する際に前記光源によって放出される指向性光の強度及びスペクトルコンテンツを記述しており、前記累積エネルギースペクトル密度を推定することが、前記光出力データからの前記強度及びスペクトルコンテンツを使用することを含む、受信することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記指示デバイスが、スピーカ及び色分けされたランプを含み、前記制御動作を実行することが、前記スピーカを介して可聴アラームを鳴らすことと、前記色分けされたランプを照明することと、を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記指示デバイスが、表示画面を含み、前記制御動作が、前記表示画面を介して前記累積エネルギースペクトル密度を示すヒートマップを表示することを含み、前記ヒートマップが、前記照明された網膜表面にわたる前記累積エネルギースペクトル密度の分布を示している、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記制御動作を実行することが、
前記ECUを介して前記光源の制御設定を選択的に調整することであって、前記制御設定が、前記指向性光の波長及び/又は強度レベルを含む、調整すること、を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
眼科処置中に患者の網膜の光曝露を定量化するための電子制御ユニット(ECU)であって、前記眼科処置中に光源と通信し、それによって照明された網膜表面を生成し、
プロセッサと、
前記プロセッサ、前記光源、指示デバイス、及びカメラと通信する入力/出力(I/O)回路と、
コンピュータ読み取り可能命令が記録されたメモリであって、前記プロセッサによる前記コンピュータ読み取り可能命令の実行により、前記ECUに、
前記眼科処置中に前記カメラから収集された画像データを受信させ、前記収集された画像データが、前記患者の網膜の照明された網膜表面を示しており、
前記光源から光出力データを受信させ、前記光出力データが、前記患者の網膜を照明する際に前記光源によって放出される指向性光の強度及びスペクトルコンテンツを記述しており、
前記眼科処置中に前記照明された網膜表面を提供する前記光源からの前記指向性光の累積エネルギースペクトル密度を計算させ、
前記累積エネルギースペクトル密度が光毒性閾値を超えていることに応じて、前記指示デバイスを作動させることを含む、可能性のある光毒性を示す制御動作を実行させる、
メモリと、
を備える、電子制御ユニット(ECU)。
【請求項20】
前記プロセッサによる前記コンピュータ読み取り可能命令の実行により、前記ECUに、
前記照明された網膜表面を複数の仮想ゾーンに分割させ、
前記複数の仮想ゾーンの各々の1つが、対応する累積エネルギースペクトル密度を有するように、前記累積エネルギースペクトル密度を前記照明された網膜表面にマッピングさせ、前記光毒性閾値が、複数のゾーン固有の光毒性閾値を含み、前記ECUが、前記累積エネルギースペクトル密度として、前記複数の仮想ゾーンの各々に対するそれぞれの累積エネルギースペクトル密度を判定し、且つその後、
前記複数の仮想ゾーンのうちの1つの前記それぞれの累積エネルギースペクトル密度が前記ゾーン固有の光毒性閾値のうちの対応する1つを超えていることに応じて、前記制御動作を実行する、
請求項19に記載のECU。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科処置中の光エネルギーに対する網膜の曝露を定量化するための自動化された方法に関する。特定の眼科手術処置は、患者の眼の硝子体腔内の網膜及び周辺組織の高倍率化及び画像化を必要とする。そのような処置の間、網膜は、主に手で操作される光パイプ/内照射器、又は他の適切な指向性光源によって放出される、明るい光によって照明される。硝子体手術は、そのような指向性光が硝子体腔を照明するために使用される代表的な処置である。当該技術分野では理解されるように、硝子体手術は、裂けた若しくは分離した網膜、黄斑の穴、又は罹患/損傷した眼球組織へのアクセス及び修復を容易にするために、硝子体液ゲルを正確に除去することを伴う。白内障手術及び他の眼科処置も同様に、照明及び画像化の目的で、内部及び外部からの指向性光を使用する。
【背景技術】
【0002】
網膜は、眼球の後部内面に位置する薄くて高度にデリケートなライニングであり、脳の付属器官として機能する。すなわち、網膜の感覚神経細胞、複雑な神経回路、及びシナプス結合は、入射光に応答して対応する神経インパルスを発生し、これが最終的に視神経を介して脳幹に伝達される。デリケートな網膜組織の光感受性に起因して、網膜表面に入射する指向性光エネルギーは、光毒性のリスクをもたらし、このリスクは高度に多様で要因依存的である。
【0003】
現在、眼科処置中の光出力は、ワーストケースの想定を使用するモデルに対して特徴付けられている。個々の外科医の手術用照明技術、照明技術における差、手術時間の長さには大きいばらつきがあるため、ワーストケースモデルを使用する予測が実際の光毒性のリスク又は曝露と一致することはまれである。その結果、外科医は、過剰な光毒性通知及び偽アラームによって、手術中に気が散ってしまう場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に開示されるのは、眼科処置中に指向性光エネルギーに対する患者の網膜の曝露を正確に定量化するための、自動化された光毒性防止方法及びシステムである。そのような処置中の光エネルギーの毒性ポテンシャルは、網膜と光源との間の直線距離、網膜の曝露された表面領域、その領域が光エネルギーに曝露された時間の長さ、並びに光エネルギーのスペクトルコンテンツ及び強度を含む、複数の要因に基づいて広く変化する。処置中の網膜の作業画像を測定し、且つ累積エネルギースペクトル密度の点から光エネルギー分布を定量化することにより、真の光エネルギー曝露及びそれに伴う毒性リスクが外科医に与えられる。これにより、外科医又は他の担当臨床医は、網膜の照明に関して、より多くの情報に基づく決定を行うことが可能になる。本教示の利点には、ことによると光毒性の危険性警告が現れる前のより長い持続時間に対する、より高い強度の光の使用及び/又は異なるスペクトルコンテンツの光の適用の可能性を含む。いったん光毒性の危険性が示されると、いくつかの実施形態では、光源の制御設定を調整する可能性とともに、適切な警告又は通知が発出される。
【0005】
例示的な実施形態では、眼科処置中の患者の網膜の光曝露を定量化するためのシステムは、光源、カメラ、指示デバイス、及び電子制御ユニット(ECU)を含む。光源は、眼科処置中に患者の網膜を指向性光で照明し、それによって照明された網膜表面を生成するように構成されている。これが起こると、カメラは、照明された網膜表面のデジタル又はアナログ画像データを収集する。カメラと通信しているECUは、画像データを受信し、その後、網膜に入射する指向性光エネルギーの累積スペクトルエネルギー密度を計算する。次いで、ECUは、上記の指示デバイスを介して入射光エネルギー情報を表示し、それ自体が、本明細書に記載されるような複数の可能な構成を有する。別の実施形態では、ECUは、光源と通信することができ、可能性のある光毒性の評価に基づいて、光源に対する制御動作を実行するように続行することができる。
【0006】
本明細書で使用される場合、「累積エネルギースペクトル密度」という用語は、経時的に統合されて異なる波長にわたって広がる入射光のエネルギー密度、すなわち、電磁スペクトルの特定の帯域幅における光エネルギーに対する網膜の累積曝露、並びにそのような光の関連する周波数及び強度に対する曝露を指す。制御動作は、送達/入射光の累積エネルギースペクトル密度が光毒性閾値を超えていることに応じて実行され、この閾値は、ユーザ/外科医によって判定されたプリセット値であってもよく、又は較正に基づいてもよく、且つ指示デバイスを作動させることを含む。
【0007】
本明細書に記載されたECUは、網膜の照明の開始を起点として、眼科処置の過程にわたって指向性光のエネルギーレベルを統合する。言い換えれば、統合は、光源がオンにされたときにトリガされるのではなく、網膜のアクティブ照明が開始されたときに、すなわち、光エネルギーが網膜に入射すると開始する。
【0008】
ECUは、任意選択的に、上記の累積エネルギースペクトル密度を複数の異なる累積密度として判定して、より高いレベルの精度を提供することができる。一例として、ECUは、光パイプ/プローブ及びシャンデリアなどの複数の光源に基づいて、累積光エネルギーを計算することができる。別の例では、ECUは、照明された網膜表面の複数の異なる領域又はゾーンに対して累積密度を計算することができる。そのような実施形態では、ECUは、ゾーンのいずれか1つの累積エネルギースペクトル密度が光毒性閾値を超えていることに応じて制御動作を実行することができ、閾値自体は、網膜の曝露領域にわたる光感度の潜在的な差を考慮するためのいくつかのゾーン固有の閾値であってもよい。
【0009】
本明細書で企図される指示デバイスは、特定の実施形態では、表示画面を含む。ECUは、表示画面を介して、照明された網膜表面の光エネルギー分布パターン又は「ヒートマップ」を、外科医に自動的に提示する。したがって、ヒートマップは、累積エネルギースペクトル密度の分布を代表するものであり、それによって、網膜に送達された、比較的高い又は低いエネルギー濃度の位置をピンポイントで特定する。眼底画像は、そのようなヒートマップの任意の背景として使用されて、すなわち、ヒートマップをオーバーレイとして提示するか、又は眼底画像の上部に表示されて、不釣り合いに高い量の入射光エネルギーに対して曝露される領域などの、局所的な「ホットスポット」に対応するゾーンを正確に示すことができる。任意選択的なアプローチには、閾値を超える表示画像の部分に黄色のハイライトを追加するのと同様の方法で、オーバーレイの色を変更することが含まれる。
【0010】
本開示のいくつかの態様では、ECUは、光毒性閾値を超えていることに応じて、光源の制御設定を自動的に調整するように構成され得る。例えば、指向性光の波長及び/又は強度は、外科医による手動介入なしで必要に応じて修正されてもよい。そのような実施形態における制御動作は、ECUを介してリアルタイムで波長及び/又は強度を自動的に調整することを含み得る。
【0011】
眼科処置中の患者の網膜の光エネルギー曝露を定量化するための方法もまた開示される。方法の実施形態は、眼科処置中に患者の網膜を光源からの指向性光で照明し、それによって照明された網膜表面を生成することと、カメラを使用して、照明された網膜表面の画像データを収集することと、を含む。方法はまた、ECUを介してカメラから画像データを受信することと、次いで、ECUを介して、眼科処置中に網膜に入射する指向性光エネルギーの累積エネルギースペクトル密度を計算することと、を含む。累積エネルギースペクトル密度が光毒性閾値を超えていることに応じて、方法は、ECUを介して制御動作を実行することを含み、制御動作は、可能性のある光毒性を示し、制御動作は、指示デバイスを作動させることを含む。
【0012】
可能な実施形態におけるECUは、プロセッサ、プロセッサと通信して光源と通信する入力/出力(I/O)回路、指示デバイス、カメラ、及びメモリを含む。メモリには、コンピュータ読み取り可能命令が記録されており、プロセッサによる命令の実行により、ECUに、眼科処置中にカメラから収集された画像データを受信させる。収集された画像データは、照明された網膜表面を示している。命令の実行はまた、ECUに、眼科処置中に網膜に入射する指向性光エネルギーの累積エネルギースペクトル密度を計算させ、且つ累積エネルギースペクトル密度が光毒性閾値を超えていることに応じて、指示デバイスを作動させることを含む、可能性のある光毒性を示す制御動作を実行させる。閾値は、以前の手術の経験及び外科医の医学的判断に基づく、外科医が任意に設定した値であってもよい。或いは、閾値は、適切な安全閾値を定量化する較正プロセスに基づいてもよい。
【0013】
本開示の上述の特徴及び利点並びに他の可能な特徴及び利点は、本開示を実施するための最良の態様の以下の詳細な説明を添付の図面と併せて読むことで容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、代表的な眼科処置中に可能性のある光毒性又は曝露状態を防止するために、光曝露を定量化するための自動化システムを使用する手術室セットアップの概略図である。
【
図2】
図2は、
図1に示される自動化システムの一実施形態の概略図である。
【
図3】
図3は、本開示の態様による、例示的な眼底画像ベースのヒートマップの概略図である。
【
図4】
図4は、
図1に示される自動化システムを使用して光エネルギー曝露を定量化するための例示的な方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の前述した特徴及び他の特徴は、添付の図面と併せて考慮されると、以下の説明及び添付の請求項からより完全に明らかになる。
【0016】
本開示の実施形態が本明細書で説明される。しかしながら、開示される実施形態は単なる例示であり、他の実施形態が様々な代替形態を取り得ることが理解されよう。図は、必ずしも縮尺通りに描かれてはいない。一部の特徴は、特定の構成要素の詳細を示すために誇張又は最小限にされ得る。したがって、本明細書に開示される特定の構造的及び機能的な詳細は、限定的に解釈されるべきではなく、単に、本開示を様々に採用することを当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。当業者であれば理解することになるように、いずれか1つの図を参照して示されて説明される様々な特徴を、1つ以上の他の図に示された特徴と組み合わせて、明示的に図示又は説明されていない実施形態を作り出すことができる。図示された特徴の組み合わせは、典型的なアプリケーションのための代表的な実施形態を提供する。しかしながら、本開示の教示と一致する特徴の様々な組み合わせ及び修正が、特定のアプリケーション又は実装のために所望され得る。
【0017】
以下の説明では、特定の用語が参照のみを目的として使用される場合があり、そのため、それらは、限定を意図するものではない。例えば、「上方」及び「下方」などの用語は、参照される図面内における方向を指す。「前部」、「後部」、「前方」、「後方」、「左」、「右」、「後部」、及び「側部」などの用語は、議論している構成要素又は要素を説明する本文及び関連図面を参照することによって明確になる、一貫しているが、任意の基準系の範囲内での構成要素又は要素の部分の向き及び/又は位置を説明するものである。更に、「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、別々の構成要素を説明するために使用され得る。そのような用語には、具体的に上述された語、それらの派生語及び類似の意味の語を含み得る。
【0018】
図面を参照すると、同様の参照番号は同様の構成要素を指し、代表的な眼科手術室10が、
図1に概略的に示されている。当業者であれば理解するように、そのような手術室10は、多軸手術ロボット12及び手術台14を備え得る。手術室10が代表的な網膜硝子体手術又は他の外科的若しくは診断的手順を実行するために使用される場合、手術ロボット12は、眼科顕微鏡16に接続され、外科医(図示せず)は、それを通して高倍率で患者の眼球の解剖学的構造を見ることができる。関連するハードウェア及びソフトウェアを使用して、外科医は、高倍率画像18及び118、例えば、その網膜25を見ることができ、これは、対応する高解像度医療表示画面20及び200を介して達成され得る。
【0019】
また、
図1の例示的な手術室10内には、電子制御ユニット(ECU)50を含むキャビネット22が存在し、ECU 50の例示的な実施形態は、
図2に示されており、以下に詳細に説明される。表示画面20と共働して示されているキャビネット22は、他の実施形態では、手術室10内の他の箇所に配置されてもよい。そのようなキャビネット22は、軽量で容易に除菌できる構造、例えば塗装されたアルミニウム又はステンレス鋼で構成することができ、これは、ECU 50を収容し、その構成ハードウェアをダスト、デブリ、及び湿気の侵入の可能性から保護するために使用される。
【0020】
本開示の範囲内では、手術室10内で行われる網膜硝子体手術処置は、網膜25の照明のための指向性タスク照明の使用を伴う。そのような光は、
図2に示されるように、主に光源32によって放出され、追加の照明は、眼科顕微鏡16に取り付けられた外部ランプ17によって提供される。経時的に、多数の変動要因に基づいて、そのような光の使用は、網膜25の光感受性機能に影響を与える光毒性リスクをもたらす可能性がある。そのようなリスクを軽減するために、本開示のECU 50は、網膜25の光エネルギー曝露を自動的に定量化するように構成されており、正確に導出されたアラーム又は警告を担当外科医に送達することを最終目標としている。ECU 50はまた、以下に示されるような、任意選択的な曝露低減アクティブ制御動作を実行することができる。
【0021】
図2を参照すると、代表的な患者の眼30が、眼科処置13、この例では侵襲的な網膜硝子体手術を受けている様子が示されている。このタイプの眼科処置13の過程中、上記の光源32は、患者の眼30の硝子体腔15内に挿入される。光源32から放出される光LLは、
図1の顕微鏡ランプ17からの一部の光と同様に、照明タスクに応じた所定の波長範囲内にあてはまる。光源32は、いくつかの実施形態では、光パイプ又は内照射器として具現化されてもよく、場合によっては、制御可能な強度及び/又はスペクトルコンテンツ、すなわち、電磁スペクトル内の光の特定の波長及び関連する色を伴う。例示的なアプリケーションには、外科医が視認性を改善するためにブルーライトシフトを望む場合が想定されてもよく、ソース光32は、場合によっては、外科医からのコマンドに応じてその出力スペクトルを調整するように構成される。限定されないが、赤色/緑色/青色(RGB)レーザ、発光ダイオード(LED)、ハロゲン電球などの様々な照明技術が、光LLを放出するために使用されてもよい。
【0022】
眼科処置13の間、外科医はまた、網膜25上又は網膜25に近接した所与の手術タスクを実行するために、硝子体腔15内に手術ツール34を挿入する場合がある。手術ツール34の非限定的な例示的実施形態には、鉗子、押出ハンドピース、ブレード付き硝子体手術プローブ、ハサミ、照明付き若しくは照明なしレーザプローブ、及び/又は注入ツールとしてのデバイスが含まれる。光源32に関して、指向性光LLは、その遠位端E1から放出され、指向性光LLは、網膜25の曝露された表面に入射して、照明された網膜表面25Iを生成する。光源32は、指向性光(矢印LL)の信頼性の高い生成及び伝達を確実にするのに適したフィルタ付き壁コンセント又は電池パック及び電力インバータなどの、付随するフィルタ付き電源(PS)37に結合される。
【0023】
眼科処置13の過程中、デジタル若しくはアナログカメラ36又は別の高解像度医療用画像化デバイスが、照明された網膜表面25Iの画像データ38を収集し、その後、収集された画像データ38をECU 50に送信して、光毒性アルゴリズム(L-TOX ALGO)70に従って処理する。アルゴリズム70によって可能になる方法は、
図4に示されており、以下に詳細に説明される。指示デバイス(IND)40も同様に、ECU 50と通信しており、ECU 50からの指示制御信号(矢印CC
40)に応じて作動/オンにするように構成されている。指示制御信号(矢印CC
40)に応じて、且つ指示デバイス40の特定の構成に応じて、指示デバイス40は、適切な可聴、可視、及び/又は触知アラーム若しくは警告を提供することができる。
【0024】
例えば、指示デバイス40は、スピーカとして具現化されてもよく、その場合、指示制御信号(矢印CC40)は、指示デバイス40に可聴トーンを鳴らせることができる。或いは、指示デバイス40は、指示制御信号(矢印CC40)の受信により、容易に識別可能な方法で、例えば赤色光を使用して、指示デバイス40に点灯させるように、色分けされたランプを含んでもよい。いずれの実施形態でも、ECU 50はまた、指示デバイス40の一部として表示画面20及び/又は200を使用して、照明された網膜表面25I上の光エネルギー濃度又は分布パターンの直感的なグラフィカル描写を提示することができる。
【0025】
本開示の範囲内では、光毒性アラームの発生率は、上述のタイプのモデル化されたワーストケースシナリオ上で動作する従来のアプローチに対して低減される。代わりに、いくつかの実施形態におけるECU 50は、強度、波長、温度、及び/又は他の関連する出力パラメータを示す光源32からの電子フィードバック信号として、光出力データ(矢印FBL)を受信するように構成される。そのような実施形態におけるECU 50は、その後、照明された網膜表面25Iにわたる光源32からの指向性光LLの実際の分布及びエネルギースペクトル密度を定量化する。
【0026】
なおも
図2を参照すると、ECU 50は、眼科処置13の間にリアルタイムでカメラ36から収集された画像データ38を受信するように構成されており、受信された収集画像データ38は、照明された網膜表面25Iを示し、各構成画像画素に対する対応する光強度レベルを記述している。ECU 50は、眼科処置13の過程中に網膜25に入射する指向性光LLの累積エネルギースペクトル密度を推定又は計算し、ECU 50は、異なる実施形態では、デジタル画像データ38及び場合によっては光出力データ(矢印F
BL)を使用してそのようにする。上記のように、本明細書で使用される「累積エネルギースペクトル密度」という用語は、電磁スペクトルの異なる波長にわたる光エネルギー密度、すなわち、光毒性リスクに関連する特定の波長範囲における光エネルギー密度を考慮する。ECU 50は、その後、1つ以上の対応する光毒性閾値に対する可能性のある光毒性を示す、適切な制御動作を実行する。
【0027】
ECU 50は、例示的な明瞭さ及び単純さのためにユニット型ボックスとして概略的に示されているが、ECU 50は、中央処理装置(CPU)又は他のプロセッサ52と、CPU 52によって読み取られ得るデータ/命令の提供時に参加する非一時的(例えば、有形)媒体をその各々が含む、十分な量のメモリ54と、を有する、1つ以上のネットワーク化デバイスを含み得る。アルゴリズム70を具現化する命令は、メモリ54に記憶され、CPU 52によって実行されて、本明細書に記載される様々な機能を実行することができ、したがって、本方法を可能にする。メモリ54は、不揮発性媒体及び揮発性媒体を含むがこれらに限定されない、多くの形態を取り得る。
【0028】
理解されるように、不揮発性媒体としては、光ディスク及び/若しくは磁気ディスク又は他の永続的なメモリを挙げることができ、揮発性媒体としては、動的ランダムアクセスメモリ(DRAM)、静的RAM(SRAM)などが挙げられ得る。これらのいずれか又は全てが、ECU 50のメインメモリを構成し得る。入力/出力(I/O)回路56は、カメラ36、光源32、指示デバイス40、並びに表示画面20及び/又は200を含む、眼科処置13の間に使用される様々な周辺デバイスへの接続及び通信を容易にするために使用され得る。局部発振器又は高速クロック、信号バッファ、フィルタなどを含むが、これらに限定されない、図示されていないが、当該技術分野では一般的な他のハードウェアがECU 50の一部として含まれ得る。
【0029】
本開示の範囲内では、ECU 50は、ソフトウェアでプログラムされ、ハードウェアで装備され、したがって、眼科処置13の持続時間にわたって網膜25に入射する指向性光LLの経時的なパワーレベルを統合するように構成される。このようにして、ECU 50は、上記の累積エネルギースペクトル密度を導出する。換言すれば、光源32がオンにされている全持続時間を考慮するのではなく、すなわち、光源32からの指向性光LLが網膜25の任意の部分を実際に照明するかどうかに関して考慮するのではなく、ECU 50は、代わりに、網膜25上の分散光LLからのスペクトルエネルギーの分布及び集中を、より意味のある期間、例えば、1分あたりのワット、1時間あたりのワットなどで評価し、場合によっては、網膜25の異なるゾーン間を識別する。
【0030】
図3を簡単に参照すると、
図2の網膜25は、代表的な眼底画像42として示されている。当該技術分野では理解されるように、眼底画像は、網膜25の様々な主要構造、主に視神経板44、網膜動脈46、及びそこから派生する周辺静脈、並びに黄斑48のカラー、白黒、又はグレースケール画像である。眼底画像42は、眼科診療において遍在するため馴染みがあり、表示されるヒートマップ45の背景として使用されてもよい。そのような構成では、ECU 50は、照明された網膜表面25Iを複数の仮想ゾーンにデジタル的に分割又は他の方法で分離し、且つ複数のゾーンの各々の1つが、対応する累積エネルギースペクトル密度を有するように、累積エネルギースペクトル密度を照明された網膜表面25Iにマッピングするように構成され得る。
【0031】
そのような構成では、ECU 50は、
図2の眼科処置13の間にヒートマップ45を眼底画像42上に任意選択的にオーバーレイし、この情報を、
図1の表示画面20及び/又は200を介してリアルタイムで提示することができる。このように、ヒートマップ45は、一見して、
図2に示される照明された網膜表面25Iにわたる累積エネルギースペクトル密度の分布又は濃度を示す情報を直感的に提供する。そのようなアプローチは、網膜25全体を等しい光感受性を有するものとして、又は
図2の指向性光LLに対して等しい曝露を受けるものとして扱うことに対して、より大きいレベルの粒状性又は局所的な精度を提供する。
【0032】
図2の代表的な眼科処置13を実行する過程では、外科医は、硝子体腔15の周りで遠位端E1を移動させることが期待される場合がある。その結果、網膜25の曝露された全表面領域は、不均等に照明され、且つ網膜25に対する遠位端E1の位置/距離及び向き、並びに指向性光LLの強度及び他の毒性関連スペクトルコンテンツに大きく依存する程度で照明される可能性がある。その結果、
図2の照明された網膜表面25Iのゾーンは、複雑な外科的修復を実行する際に外科医が網膜25の特定の領域に手間取るときなど、他のゾーンに対してより大きい密度又は濃度の指向性光LLを受ける場合がある。したがって、定性的な観点から、より大きい累積光エネルギー密度を受けるゾーンは、ECU 50によって局所的な「ホットスポット」であると考えられ得る。2つのそのようなゾーンは、
図3では、ゾーンZ1及びZ2として概略的に表され、ゾーンZ1及びZ2は、もっぱら図示の目的のために黄斑48を挟むように示されている。
【0033】
本開示のECU 50は、空間的に、すなわち、網膜25の表面領域にわたって、及び時間的に、すなわち、曝露時間に関して、の両方で、パワーを統合することによって、そのような不均衡を処理するように装備されている。ECU 50は次いで、複数の異なるゾーンZ1及び/又はZ2のうちの少なくとも1つ、又は照明された網膜表面25I全体の累積エネルギースペクトル密度が、対応する光毒性閾値を超えていることに応じて、適切な制御動作を実行する。そのような閾値は、上記のように、異なる実施形態では、同じであってもゾーン固有であってもよく、ECU 50は、例えば、網膜25の組織が他よりも光に対して回復力があるゾーンにおいてより高い閾値を使用する。
【0034】
更に他の実施形態では、網膜25に入射する指向性光LLの全積算エネルギースペクトル密度が、例えば、1ミリメートル平方あたりのワット(W/mm2)単位で使用されてもよく、再び場合によっては、上記のように網膜25の異なるゾーンに対して異なる光毒性閾値が適用される。例えば、網膜25の光受容体が他よりも密に集中しているゾーンは、他のゾーンに対してより低い、対応する光毒性閾値を有してもよく、有効な「ロッドあたりのワット」又は「コーンあたりのワット」レベルの精度が、本開示の範囲内で実現可能である。そのような光毒性閾値は、術後の履歴又は他の要因に基づいて経時的に調整されて、改善された長期的な結果を提供することができる。
【0035】
ここで
図4を参照すると、方法は、アルゴリズム70を具現化するコンピュータ読み取り可能命令の実行によって可能になる。すなわち、
図2に示されるECU 50のメモリ(M)に記憶又は記録された命令の実行により、ECU 50のプロセッサ52及び他のハードウェアに方法を実行させることができる。したがって、明瞭化のために、以降、そのような方法を方法70と呼ぶ。
【0036】
方法70の代表的な実施形態は、眼科処置13の間に、
図1の顕微鏡ランプ17からのいくつかの追加光とともに、光源32からの指向性光LLで
図2の患者の網膜25を照明し、集合指向性光LLが、照明された網膜表面25Iを生成することを含む、論理ブロックB72で開始する。したがって、論理ブロックB72の実施に先行する手術ステップは、眼30内に切開を作成することと、カニューレ(図示せず)を挿入することと、光源32を硝子体腔15内に挿入することと、を含み得る。いったん光源32の遠位端E1が硝子体腔15内に存在し、電源37によって通電されると、いくつかの実施形態では、光源32は、ECU 50への光出力データ(矢印FB
L)の送信を開始する。そのような光出力データ(矢印FB
L)は、ここでも、主に光源32の寄与であるが、いくつかの実施形態では、顕微鏡ランプ17によって放出される光を記述してもよい。方法70は、その後、論理ブロックB74に進む。
【0037】
図4の論理ブロックB74は、光源32から光出力データ(矢印FB
L)を受信することを伴ってもよく、光出力データは、患者の網膜を照明する際に光源によって放出される指向性光の強度及びスペクトルコンテンツを記述する。論理ブロックB74はまた、カメラ36を使用して
図2の画像データ38を収集することを含み、画像データ38は、場合によっては、照明された網膜表面25Iの2次元画像又は3次元画像を含む。カメラ36は、いくつかの実施形態では、
図1の眼科顕微鏡16と統合されてもよく、又はカメラ36は、別々のデバイスであってもよい。収集された画像データ38はデジタル的な実施形態では画像ピクセルから形成されるため、論理ブロックB74は、例えばその強度を含む、構成画像ピクセルの各々の対応する照明レベルを記述する、付随する定量性情報を含み得る。
【0038】
論理ブロックB74の一部として、画像データ38は、適切な転送導体(図示せず)を介してECU 50に送信される。したがって、論理ブロックB74はまた、ECU 50を介してカメラ36から収集された画像データ38を受信することを含む。論理ブロックB72において提供される光出力データ(矢印FBL)と連動して、画像データ38は、ECU 50が、光源32からの指向性光(LL)のパワー、強度、波長、及び他の関連エネルギースペクトルコンテンツ、並びに網膜25にわたるその分布を推定することを可能にする。方法70は、その後、論理ブロックB76に進む。
【0039】
論理ブロックB76において、ECU 50は、次に、論理ブロックB72の光出力データ(矢印FBL)及び論理ブロックB74の画像データ38を使用して、網膜25に入射する指向性光LLの累積エネルギースペクトル密度を推定又は計算する。収集された画像データ38のみに基づいて行われる実施形態では、推定は、例えば、収集された画像データ38を含む画像内に存在する明るさ、色、分布、及び他の要因に基づくモデルを使用して行われてもよい。光出力データ(矢印FBL)を使用する実施形態では、例えば、光源32のパワー、光源32の広がり関数、網膜25からの光源32の距離、及び網膜組織が光LLに曝露される時間の長さの予見を用いて、より正確な結果を享受することができる。
【0040】
論理ブロックB76は、照明された網膜表面25I全体にわたって平均又は正規化されたエネルギースペクトル密度を計算することを含んでもよく、又はECU 50は、ゾーン固有の方法で複数の離散的なエネルギースペクトル密度を計算してもよい。後者のアプローチを使用する場合、例えば
図3に示されているように、外科医は、網膜25の表面全体にわたる光エネルギー濃度の不均衡に気付かされる。いったんECU 50が累積エネルギースペクトル密度又はゾーン固有のエネルギースペクトル密度を計算すると、方法は、論理ブロックB78に進む。
【0041】
論理ブロックB78において、
図2のECU 50は、次に、累積エネルギースペクトル密度をそれぞれの光毒性閾値と比較する。方法70は、光毒性閾値のいずれも超えていない場合、論理ブロックB72を繰り返す。方法70は、1つ以上の光毒性閾値を超えたとECU 50が判定すると、代替的に論理ブロックB80に進む。
【0042】
論理ブロックB80は、累積エネルギースペクトル密度が光毒性閾値を超えていることに応じて、ECU 50を介して制御動作を実行することを伴う。上記のように、制御動作は、可能性のある光毒性を示しており、且つ指示デバイス40を作動させることを含む。論理ブロックB80の一部として、ECU 50は、ECU 50が所与の状況において多くの可能な制御動作のうちのどれを実行すべきかを判定する際に、論理ブロックB78において所与の光毒性閾値が超えた大きさを考慮してもよい。すなわち、制御動作は、光毒性閾値の超過分と累積エネルギースペクトル密度との間の差の大きさに比例することができ、ECU 50は、場合によっては、大きさが増加するにつれて対応するアラームをエスカレートさせる。
【0043】
例示的な実施例は、
図3の代表的なゾーンZ1及びZ2に対して光毒性閾値レベルを確立することを含む。眼科処置13の経過を通じて、ECU 50は、ゾーンZ1及びZ2を含む、照明された網膜表面25Iの異なる領域又はゾーンにおいて、経時的に送達される指向性光LLのパワーを自動的に統合する。ECU 50は、
図1の表示画面20及び/又は200を介して、
図3のヒートマップ45の色分けされたバージョンを表示することができ、これにより、外科医は、特定のゾーンが他のゾーンに対して過剰照射されているかどうかを一目で見分けることが可能になる。実施形態では、ECU 50は、ゾーンを黄色から赤色に徐々にカラーリングするなど、そのゾーンの累積エネルギースペクトル密度が増加するにつれて「よりホットな」ゾーンの色を修正することができる。所与のゾーンに対する所与の光毒性閾値を跨ぐと、ECU 50は、
図2の指示デバイス40、例えば、ランプ又は可聴アラーム音を作動させることができる。
【0044】
加えて、本開示の範囲内のECU 50は、光源32の設定を自動的に調整することによって、所与の光毒性閾値レベルを超えていることに応答することができる。そのようなオプションは、外科医によって選択可能であり、又は他の実施形態において選択的にバイパス又はオーバーライドされ得る。そのような事象における代表的な制御動作は、
図2の電源37からのパワーレベルを調整して光源32のパワーを下げること、並びに/又は眼科処置13の過程中に光源32によって放出される指向性光LLの波長及び/若しくは強度を変更することを含み得る。後者の制御動作は、紫外光/紫色光/青色光のコンテンツを低減するようにそのスペクトルコンテンツを変更することを包含することができ、それによって、細部が少なくなるという潜在的な犠牲は伴うものの、眼にとってより安全なエネルギーを作成する。
【0045】
図1及び
図2のECU 50、
図3の直感的なヒートマップ45、及び
図4に示されるアルゴリズム70を使用することにより、
図2に示される眼科処置13を実行する外科医は、より現実的且つ局所的な方法で、説明した光源32から網膜25上に入射光LLを方向付けることに伴う光毒性リスクを気付かされる。光毒性アラームは、所与のエネルギースペクトル密度固有の閾値を超えない限り、またそれを超えるまではトリガされないため、本アプローチは、従来のワーストケースモデル化シナリオに対して、偽アラームの数を減少させるのに役立つはずである。
【0046】
更に、偽アラームの割合を低減することにより、外科医に向上した信頼レベルを提供する。眼科処置13を実行する過程で鳴るアラームは、言い換えれば、真のアラームである可能性が非常に高く、その結果、何の動作もなしで黙殺又は無視される可能性は低くなる。実施形態は、スタンドアローンであってもよく、すなわち、ECU 50及びその付随するロジックが、既存の眼科顕微鏡16、カメラ36、及び光源32とともに使用されてもよい。或いは、
図4の方法70を実行する際のECU 50のプログラムされた機能がシームレスであるように、説明したハードウェアのいずれか又は全てを統合することができる。
【0047】
詳細な説明及び図面は、本開示をサポートし、説明するものであるが、本開示の適用範囲は、特許請求の範囲によってのみ定義される。特許請求の範囲に記載された開示を実施するための最良の態様及び他の実施形態のいくつかを詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲において定義された開示を実施するための様々な代替的な設計及び実施形態が存在する。更に、図面に示された実施形態又は本明細書で言及された様々な実施形態の特徴は、必ずしも互いに独立した実施形態として理解されるべきではない。むしろ、ある実施形態の例のうちの1つにおいて説明した特性のそれぞれは、他の実施形態からの1つ以上の他の望ましい特性と組み合わせることが可能であり、その結果、言葉で説明されていない、又は図面を参照することによって説明されていない、他の実施形態を得ることができる。したがって、かかる他の実施形態は、添付の特許請求の範囲の枠組み内に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科処置中の患者の網膜の光曝露を定量化するためのシステムであって、
前記眼科処置中に前記患者の網膜を指向性光で照明し、それによって照明された網膜表面を生成するように構成された光源と、
前記照明された網膜表面の画像データを、収集された画像データとして収集するように構成されたカメラと、
指示デバイスと、
前記指示デバイス及び前記カメラと通信する電子制御ユニット(ECU)であって、
前記照明された網膜表面を示す前記カメラからの前記収集された画像データを受信し、
前記収集された画像データを使用して、前記眼科処置中に前記網膜に入射する前記指向性光の累積エネルギースペクトル密度を推定し、
前記照明された網膜表面を複数の仮想ゾーンに分割し、前記複数の仮想ゾーンの各々が、対応するゾーン固有の光毒性閾値を有し、
前記複数の仮想ゾーンの各々の1つが、対応する累積エネルギースペクトル密度を有するように、前記累積エネルギースペクトル密度を前記照明された網膜表面にマッピングし、
前記累積エネルギースペクトル密度から、前記複数の仮想ゾーンの各々に対する対応する累積エネルギースペクトル密度を判定し、
前記
複数の仮想ゾーンのうちの1つの前記対応する累積エネルギースペクトル密度が
前記対応するゾーン固有の光毒性閾値を超えていることに応じて、前記指示デバイスを作動させることを含む、可能性のある光毒性を示す制御動作を実行する、
ように構成されている、電子制御ユニット(ECU)と、
を備える、システム。
【請求項2】
前記ECUが、前記光源と通信しており、そこから光出力データを受信するように構成されており、前記光出力データが、前記患者の網膜を照明する前記光の強度及びスペクトルコンテンツを記述している、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記指示デバイスが、スピーカを含み、前記制御動作が、前記スピーカを介して可聴アラームを鳴らすことを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記指示デバイスが、色分けされたランプを含み、前記制御動作が、前記色分けされたランプを照明することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記指示デバイスが、表示画面を含み、前記制御動作が、前記表示画面を介して前記累積エネルギースペクトル密度を示す情報を表示することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
ECUが、前記表示画面を介して前記照明された網膜表面のヒートマップを表示するように構成されており、前記ヒートマップが、前記照明された網膜表面にわたる前記累積エネルギースペクトル密度の分布を示している、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記デジタル画像データが、前記患者の網膜の眼底画像を含み、前記ヒートマップが、前記眼底画像が前記ヒートマップの背景を形成するように、前記眼底画像上に表示される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記ECUが、前記光源の制御設定を選択的に調整するように構成されており、前記制御動作が、前記制御設定として、前記眼科処置中にリアルタイムで前記指向性光の波長及び/又は強度レベルを調整することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記光源が、可変強度及び/又はスペクトルコンテンツを有する光パイプ又は内照射器である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
眼科処置中に患者の網膜の光曝露を定量化するための電子制御ユニット(ECU)であって、前記眼科処置中に光源と通信し、それによって照明された網膜表面を生成し、
プロセッサと、
前記プロセッサ、前記光源、指示デバイス、及びカメラと通信する入力/出力(I/O)回路と、
コンピュータ読み取り可能命令が記録されたメモリであって、前記プロセッサによる前記コンピュータ読み取り可能命令の実行により、前記ECUに、
前記眼科処置中に前記カメラから収集された画像データを受信させ、前記収集された画像データが、前記患者の網膜の照明された網膜表面を示しており、
前記光源から光出力データを受信させ、前記光出力データが、前記患者の網膜を照明する際に前記光源によって放出される指向性光の強度及びスペクトルコンテンツを記述しており、
前記眼科処置中に前記照明された網膜表面を提供する前記光源からの前記指向性光の累積エネルギースペクトル密度を計算させ、
前記照明された網膜表面を複数の仮想ゾーンに分割させ、複数の仮想ゾーンの各々が、対応するゾーン固有の光毒性閾値を有し、
前記複数の仮想ゾーンの各々の1つが、対応する累積エネルギースペクトル密度を有するように、前記累積エネルギースペクトル密度を前記照明された網膜表面にマッピングさせ、
前記
複数の仮想ゾーンのうちの1つの前記対応する累積エネルギースペクトル密度が
前記対応するゾーン固有の光毒性閾値を超えていることに応じて、前記指示デバイスを作動させることを含む、可能性のある光毒性を示す制御動作を実行させる、
メモリと、
を備える、電子制御ユニット(ECU)。
【国際調査報告】