(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】グルホシネートの調製方法
(51)【国際特許分類】
C07F 9/30 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
C07F9/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537397
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2023-06-19
(86)【国際出願番号】 CN2022106398
(87)【国際公開番号】W WO2023001131
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】202110817019.5
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522225099
【氏名又は名称】リアー ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LIER CHEMICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ヨンジアン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ, レイ
(72)【発明者】
【氏名】ゼン, ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シュー, ミン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ケ
【テーマコード(参考)】
4H050
【Fターム(参考)】
4H050AA02
4H050BB12
4H050BC10
4H050BC31
4H050WA24
(57)【要約】
グルホシネート又はその塩、それらの鏡像異性体若しくは全ての比率の鏡像異性体の混合物のための調製方法であって、この方法は、グルホシネートの調製に特に適しており、既存の調製プロセスの工程を大幅に短縮する。特にL-グルホシネートの調製において、生成物は、原料のee値を効果的に維持することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のグルホシネート又はその塩、それらの鏡像異性体若しくは全ての比率の鏡像異性体の混合物を調製するための方法であって、当該方法は、
【化1】
a)式(II)の化合物又はその塩、それらの鏡像異性体若しくは全ての比率の鏡像異性体の混合物を、
【化2】
1種若しくは複数の式(III)の化合物又は混合物と反応させる工程であって、
この混合物が、1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(V)の化合物を含む混合物;又は1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(III)の化合物を含む混合物;又は1種若しくは複数の式(V)の化合物及び1種若しくは複数の式(III)の化合物を含む混合物;又は1種若しくは複数の式(III)の化合物、1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(V)の化合物を含む混合物である工程;
【化3】
b)中間体を、それが単離されているか否かにかかわらず、水と酸又は塩基との存在下で反応させて、グルホシネート(I)又はその塩、それらの鏡像異性体若しくは全ての比率の鏡像異性体の混合物を得る工程;
を備え、
ここで、PGがアミノ保護基である場合、当該アミノ保護基を除去する段階をさらに備えることができ;
ここで、LGは、Hal
1、-OTs又は
【化4】
であり;
Hal
1及びHal
2はそれぞれ独立してハロゲン、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり;
PGは、水素又はアミノ保護基であり;当該アミノ保護基は、好ましくは-C(=O)R、-C(=O)OR又は-S(=O)
2Rであり;
Aは-NHR
1、-NR
1R
1’又は-OR
1であり;
R、R
1、R
1’、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、C
1~C
6アルキル、C
3~10シクロアルキル、C
6~10アリール、C
6~12アラルキル、5から14員までのヘテロアリール及び3から10員までのヘテロシクリルからなる群から選択され、混合物が1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(III)の化合物の混合物を含む場合、又は混合物が1種若しくは複数の式(III)の化合物、1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(V)の化合物の混合物を含む場合、R
2はR
3又はR
4のいずれかであり;
キラル炭素原子は
*で標識されており;
ただし、以下の条件:
1)式(II)の化合物は
【化5】
ではない;
2)式(III)の化合物は
【化6】
ではない;
3)式(IV)の化合物は
【化7】
ではない;又は
4)式(V)の化合物は
【化8】
ではない;
の少なくとも1つが満たされる
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
式(I)の鏡像異性的に純粋なグルホシネート又はその塩を調製するための方法であって、
【化9】
当該方法は、
a1)式(II)の鏡像異性的に純粋な化合物又はその塩を、
【化10】
式(III)の化合物、
【化11】
又は1種若しくは複数の式(III)の化合物若しくは混合物と反応させる工程であって;
この混合物が、1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(V)の化合物を含む混合物;又は1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(III)の化合物を含む混合物;又は1種若しくは複数の式(V)の化合物及び1種若しくは複数の式(III)の化合物を含む混合物;又は1種若しくは複数の式(III)の化合物、1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(V)の化合物を含む混合物である工程;
【化12】
b1)中間体を、それが単離されているか否かにかかわらず、水と酸又は塩基との存在下で反応させて、鏡像異性的に純粋なグルホシネート(I)又はその塩を得る工程;
を備え、
ここで、PGがアミノ保護基である場合、当該アミノ保護基を除去する段階をさらに備えることができ;
ここで、
LGは、Hal
1、-OTs又は
【化13】
であり;
Hal
1及びHal
2はそれぞれ独立してハロゲン、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり;
PGは、水素又はアミノ保護基であり;当該アミノ保護基は、好ましくは-C(=O)R、-C(=O)OR又は-S(=O)
2Rであり;
Aは-NHR
1、-NR
1R
1’又は-OR
1であり;
R、R
1、R
1’、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、C
1~C
6アルキル、C
3~10シクロアルキル、C
6~10アリール、C
6~12アラルキル、5から14員までのヘテロアリール及び3から10員までのヘテロシクリルからなる群から選択され、混合物が1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(III)の化合物の混合物を含む場合、又は混合物が1種若しくは複数の式(III)の化合物、1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(V)の化合物の混合物を含む場合、R
2はR
3又はR
4のいずれかであり;
キラル炭素原子は
*で標識されており;
ただし、以下の条件:
1)式(II)の化合物は
【化14】
ではない;
2)式(III)の化合物は
【化15】
ではない;
3)式(IV)の化合物は
【化16】
ではない;又は
4)式(V)の化合物は
【化17】
ではない;
の少なくとも1つが満たされる
ことを特徴とする、方法。
【請求項3】
鏡像異性体比が、(L):(D)-鏡像異性体又は(D):(L)-鏡像異性体として、50.5:49.5~99.5:0.5であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
鏡像異性体比が、(L):(D)-鏡像異性体として、50.5:49.5~99.5:0.5であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
Rが、C
1~C
6アルキル又はC
6~
10アリールであり、好ましくはメチル、エチル、tert-ブチル、フェニル又はp-メチルフェニルであり;
好ましくは、PGが、水素、-C(=O)CH
3、-C(=O)Ph、-C(=O)OC
2H
5、-C(=O)OC(CH
3)
3又は
【化18】
である
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
Hal
1が塩素、臭素又はヨウ素であり;
好ましくは、LGが塩素、臭素、ヨウ素、-OTs又は
【化19】
である
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
Hal
2が塩素であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
R
1、R
1’、R
2、R
3及びR
4が、それぞれ独立して、C
1~C
6アルキル又はC
6~C
12アラルキルであり、好ましくはC
1~C
4アルキル又はベンジルであることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
R
1及びR
1’がそれぞれ独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はベンジルであり;
好ましくは、Aが、-NHCH
2CH
2CH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-OCH
2CH
2CH
3、-OCH(CH
3)
2、-OCH
2CH
2CH
2CH
3、-OCH
2CH(CH
3)
2又は-OBnである
ことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
R
2が、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル又はイソブチルであり、好ましくはn-プロピル、イソプロピル又はn-ブチルであることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
R
3が、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル又はイソブチルであり、好ましくはn-プロピル、イソプロピル又はn-ブチルであることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
R
4が、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル又はイソブチルであり、好ましくはn-プロピル、イソプロピル又はn-ブチルであることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
混合物が、1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(III)の化合物の混合物であり、式(IV)の化合物と式(III)の化合物とのモル比が(0.9~1.1):1又は(0.05~1.1):1であり;或いは当該混合物が、1種若しくは複数の式(V)の化合物及び1種若しくは複数の式(III)の化合物の混合物であり、式(V)の化合物と式(III)の化合物とのモル比が(0.9~1.1):1又は(0.05~1.1):1であり;或いは当該混合物が、1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(V)の化合物を含む混合物であり、式(IV)の化合物と式(V)の化合物とのモル比は(0.9~1.1):1であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程a)又はa1)において、反応温度が20~200℃、好ましくは90~140℃であることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程a)又はa1)が塩基の存在下で実施されることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程a)又はa1)における塩基が、有機塩基又はアンモニアであることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程a)又はa1)において、有機塩基が、有機アミン、ピリジン又は複素環中の1個若しくは複数の炭素原子に結合した1~3個の置換基を有するピリジン誘導体、ピペリジン又は複素環中の1個若しくは複数の炭素原子に結合した1~3個の置換基を有するピペリジン誘導体からなる群から選択されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
有機塩基が、トリエチルアミン、ピペリジン又はピリジンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
工程a)又はa1)において、塩基と式(III)の化合物及び式(V)の化合物の総量とのモル比が、(1~10):1であることを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
工程a)又はa1)において、反応が無溶媒条件下又は不活性溶媒中で実施されることを特徴とする、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
上記工程a)又はa1)において、不活性溶媒が、ベンゼン溶媒、アミド溶媒、炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、スルホン又はスルホキシド溶媒、エーテル溶媒又はエステル溶媒のいずれか1種若しくは複数から選択され;好ましくは、不活性溶媒が、ベンゼン溶媒、アミド溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、エーテル溶媒又はエステル溶媒のいずれか1種若しくは複数から選択されることを特徴とする、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
工程a)又はa1)において、不活性溶媒が、クロロベンゼン、トリメチルベンゼン、1,4-ジオキサン、1,2-ジクロロエタン、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、石油エーテル、n-ヘプタン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、及び酢酸ブチルのいずれか1種若しくは複数から選択されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
工程a)又はa1)において、式(III)の化合物又は混合物と式(II)の化合物とのモル比が、1:(0.8~10)、好ましくは1:(1~3)であり;又は式(II)の化合物と式(III)の化合物又は混合物とのモル比が、1:(0.8~10)、好ましくは1:(1~3)であることを特徴とする、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
工程b)又はb1)において、無機酸又は有機酸を添加することを特徴とする、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
無機酸が塩酸又は硫酸であることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
工程b)又はb1)において、塩基が無機塩基又は有機塩基であることを特徴とする、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
塩基が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩又はアルカリ土類金属重炭酸塩であることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
塩基が、NaOH、KOH又はBa(OH)
2であることを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
工程b)又はb1)において、反応温度が20~150℃であることを特徴とする、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
式(II)の化合物又はその塩であって、
【化20】
式(II)の化合物が、
【化21】
からなる群から選択される、式(II)の化合物又はその塩。
【請求項31】
グルホシネート若しくはその塩、又はL-グルホシネート若しくはその塩の調製における請求項30に記載の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、グルホシネートの調製方法に関する。
【0002】
[発明の背景]
グルホシネートは重要な除草剤である。
【0003】
[発明の概要]
本発明は、式(I)のグルホシネート又はその塩、それらの鏡像異性体若しくは全ての比率の鏡像異性体の混合物を調製するための方法であって、当該方法は、
【化1】
a)式(II)の化合物又はその塩、それらの鏡像異性体若しくは全ての比率の鏡像異性体の混合物を、
【化2】
1種若しくは複数の式(III)の化合物又は混合物と反応させる工程であって、
上記混合物は、1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(V)の化合物を含む混合物;又は1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(III)の化合物を含む混合物;又は1種若しくは複数の式(V)の化合物及び1種若しくは複数の式(III)の化合物を含む混合物;又は1種若しくは複数の式(III)の化合物、1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(V)の化合物を含む混合物である工程;
【化3】
b)中間体を、それが単離されているか否かにかかわらず、水と酸又は塩基との存在下で反応させて、グルホシネート(I)又はその塩、それらの鏡像異性体若しくは全ての比率の鏡像異性体の混合物を得る工程;
を備え、
ここで、PGがアミノ保護基である場合、当該アミノ保護基を除去する段階をさらに備えることができ;
ここで、LGは、Hal
1、-OTs又は
【化4】
であり;
Hal
1及びHal
2はそれぞれ独立してハロゲン、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり;
PGは、水素又はアミノ保護基であり;当該アミノ保護基は、好ましくは-C(=O)R、-C(=O)OR又は-S(=O)
2Rであり;
Aは-NHR
1、-NR
1R
1’又は-OR
1であり;
R、R
1、R
1’、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、C
1~C
6アルキル、C
3~10シクロアルキル、C
6~10アリール、C
6~12アラルキル、5から14員までのヘテロアリール及び3から10員までのヘテロシクリルからなる群から選択され、混合物が1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(III)の化合物の混合物を含む場合、又は混合物が1種若しくは複数の式(III)の化合物、1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(V)の化合物の混合物を含む場合、R
2はR
3又はR
4のいずれかであり;
キラル炭素原子は
*で標識されており;
ただし、以下の条件:
1)式(II)の化合物は
【化5】
ではない;
2)式(III)の化合物は
【化6】
ではない;
3)式(IV)の化合物は
【化7】
ではない;又は
4)式(V)の化合物は
【化8】
ではない;
の少なくとも1つが満たされる、方法を提供する。
【0004】
本発明はさらに、式(I)の鏡像異性的に純粋なグルホシネート又はその塩を調製するための方法であって、
【化9】
当該方法は、
a1)式(II)の鏡像異性的に純粋な化合物又はその塩を、
【化10】
式(III)の化合物、
【化11】
又は1種若しくは複数の式(III)の化合物若しくは混合物と反応させる工程であって;
上記混合物は、1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(V)の化合物を含む混合物;又は1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(III)の化合物を含む混合物;又は1種若しくは複数の式(V)の化合物及び1種若しくは複数の式(III)の化合物を含む混合物;又は1種若しくは複数の式(III)の化合物、1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(V)の化合物を含む混合物である工程;
【化12】
b1)中間体を、それが単離されているか否かにかかわらず、水と酸又は塩基との存在下で反応させて、鏡像異性的に純粋なグルホシネート(I)又はその塩を得る工程;
を含み、
ここで、PGがアミノ保護基である場合、当該アミノ保護基を除去する段階をさらに備えることができ;
ここで、
LGは、Hal
1、-OTs又は
【化13】
であり;
Hal
1及びHal
2はそれぞれ独立してハロゲン、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり;
PGは、水素又はアミノ保護基であり;当該アミノ保護基は、好ましくは-C(=O)R、-C(=O)OR又は-S(=O)
2Rであり;
Aは-NHR
1、-NR
1R
1’又は-OR
1であり;
R、R
1、R
1’、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、C
1~C
6アルキル、C
3~10シクロアルキル、C
6~10アリール、C
6~12アラルキル、5から14員までのヘテロアリール及び3から10員までのヘテロシクリルからなる群から選択され、混合物が1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(III)の化合物の混合物を含む場合、又は混合物が1種若しくは複数の式(III)の化合物、1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(V)の化合物の混合物を含む場合、R
2はR
3又はR
4のいずれかであり;
キラル炭素原子は
*で標識されており;
ただし、以下の条件:
1)式(II)の化合物は
【化14】
ではない;
2)式(III)の化合物は
【化15】
ではない;
3)式(IV)の化合物は
【化16】
ではない;又は
4)式(V)の化合物は
【化17】
ではない;
の少なくとも1つが満たされる、方法を提供する。
【0005】
ある特定の実施形態では、1種の式(III)の化合物が使用される。
【0006】
ある特定の実施形態では、1種の式(IV)の化合物及び1種の式(V)の化合物の混合物が使用され、この混合物に、式(III)の化合物を任意の比でさらに添加することができる。
【0007】
さらに、鏡像異性体比は、(L):(D)-鏡像異性体又は(D):(L)-鏡像異性体として、50.5:49.5~99.5:0.5である。
【0008】
さらに、鏡像異性体比は、(L):(D)-鏡像異性体として、50.5:49.5~99.5:0.5である。
【0009】
一部の実施形態では、Rは、C1~C6アルキル又はC6~10アリールであり、好ましくはメチル、エチル、tert-ブチル、フェニル又はp-メチルフェニルである。
【0010】
一部の実施形態では、前記PGは、水素、-C(=O)CH
3、-C(=O)Ph、-C(=O)OC
2H
5、-C(=O)OC(CH
3)
3又は
【化18】
である。
【0011】
一部の実施形態では、前記Hal1は塩素、臭素又はヨウ素である。
【0012】
一部の実施形態では、LGは塩素、臭素、ヨウ素、-OTs又は
【化19】
である。
【0013】
一部の実施形態では、前記Hal2は塩素である。
【0014】
一部の実施形態では、前記R1、R1’、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、C1~C6アルキル又はC6~C12アラルキルであり、好ましくはC1~C4アルキル又はベンジルである。
【0015】
一部の実施形態では、前記R1及びR1’はそれぞれ独立して、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はベンジルである。
【0016】
一部の実施形態では、Aは、-NHCH2CH2CH2CH3、-N(CH3)2、-OCH3、-OCH2CH3、-OCH2CH2CH3、-OCH(CH3)2、-OCH2CH2CH2CH3、-OCH2CH(CH3)2又は-OBnである。
【0017】
一部の実施形態では、前記R2は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル又はイソブチルであり、好ましくはn-プロピル、イソプロピル又はn-ブチルである。
【0018】
一部の実施形態では、前記R3は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル又はイソブチルであり、好ましくはn-プロピル、イソプロピル又はn-ブチルである。
【0019】
一部の実施形態では、前記R4は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル又はイソブチルであり、好ましくはn-プロピル、イソプロピル又はn-ブチルである。
【0020】
ある特定の実施形態において、当該混合物は、1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(III)の化合物の混合物であり、式(IV)の化合物と式(III)の化合物とのモル比が(0.9~1.1):1又は(0.05~1.1):1であり;或いは当該混合物は、1種若しくは複数の式(V)の化合物及び1種若しくは複数の式(III)の化合物の混合物であり、式(V)の化合物と式(III)の化合物とのモル比が(0.9~1.1):1又は(0.05~1.1):1であり;或いは当該混合物は、1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(V)の化合物を含む混合物であり、式(IV)の化合物と式(V)の化合物とのモル比は(0.9~1.1):1である。
【0021】
さらに、上記工程a)又はa1)において、反応は室温で進行することができ、反応温度は反応効率を考慮して20~200℃、好ましくは90~140℃であり得る。
【0022】
さらに、上記工程a)又はa1)は塩基の存在下で実施される。
【0023】
さらに、上記工程a)又はa1)における塩基は、有機塩基又はアンモニアである。
【0024】
さらに、上記工程a)又はa1)において、有機塩基は、有機アミン、ピリジン又は複素環中の1個若しくは複数の炭素原子に結合した1~3個の置換基を有するピリジン誘導体、ピペリジン又は複素環中の1個若しくは複数の炭素原子に結合した1~3個の置換基を有するピペリジン誘導体からなる群から選択される。
【0025】
さらに、有機塩基は、トリエチルアミン、ピペリジン又はピリジンからなる群から選択される。
【0026】
さらに、上記工程a)又はa1)において、塩基と式(III)の化合物及び式(V)の化合物の総量とのモル比は、(1~10):1である。
【0027】
さらに、上記工程a)又はa1)において、反応は無溶媒条件下又は不活性溶媒中で実施される。
【0028】
さらに、上記工程a)又はa1)において、不活性溶媒は、ベンゼン溶媒、アミド溶媒、炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、スルホン又はスルホキシド溶媒、エーテル溶媒又はエステル溶媒のいずれか1種若しくは複数から選択され;好ましくは、不活性溶媒は、ベンゼン溶媒、アミド溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、エーテル溶媒又はエステル溶媒のいずれか1種若しくは複数から選択される。
【0029】
さらに、上記工程a)又はa1)において、不活性溶媒は、クロロベンゼン、トリメチルベンゼン、1,4-ジオキサン、1,2-ジクロロエタン、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、石油エーテル、n-ヘプタン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、及び酢酸ブチルのいずれか1種若しくは複数から選択される。
【0030】
さらに、上記工程a)又はa1)において、式(III)の化合物又は混合物と式(II)の化合物とのモル比は、1:(0.8~10)、好ましくは1:(1~3)であり;又は式(II)の化合物と式(III)の化合物又は混合物とのモル比は、1:(0.8~10)、好ましくは1:(1~3)である。
【0031】
さらに、上記工程a)又はa1)の合計反応時間は、0.5時間~25時間、好ましくは1時間~20時間又は1時間~15時間、最も好ましくは1時間~5時間である。
【0032】
さらに、上記工程b)又はb1)において、無機酸又は有機酸を添加する。
【0033】
さらに、無機酸は塩酸又は硫酸である。
【0034】
さらに、上記工程b)又はb1)において、塩基は無機塩基又は有機塩基である。
【0035】
さらに、塩基は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩又はアルカリ土類金属重炭酸塩である。
【0036】
さらに、塩基は、NaOH、KOH又はBa(OH)2である。
【0037】
さらに、上記工程b)又はb1)において、反応温度は20~150℃である。
【0038】
一部の実施形態では、本開示は、式(II)
【化20】
の化合物又はその塩であって、式(II)の化合物が、
【化21】
からなる群から選択される、式(II)の化合物又はその塩を提供する。
【0039】
一部の実施形態では、本開示は、グルホシネート若しくはその塩、又はL-グルホシネート若しくはその塩の調製における上記化合物の使用を提供する。
【0040】
本発明の方法は、グルホシネートの調製に特に適しており、既存の調製プロセスの工程を実質的に減少させる。特に、L-グルホシネートの調製において、生成物は、原料のee値を効果的に維持することができる。例えば、鏡像異性的に純粋な原料(例えば、鏡像異性体過剰率(%ee)が90%超である)が用いられる場合、調製されたL-グルホシネートの鏡像異性体過剰率(%ee)は、例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%超である。
【0041】
特に明記しない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される用語は、以下の意味を有する。
【0042】
「アミノ保護基」という用語は、アミノ基中の窒素原子に結合してアミノ基を反応に関与することから保護することができ、その後の反応において容易に除去することができる基を指す。適切なアミノ保護基としては、以下の保護基が挙げられるが、これらに限定されない:
式-C(=O)O-Ra(式中、Raは例えば、メチル、エチル、tert-ブチル、ベンジル、フェネチル、CH2=CH-CH2-などである)のカルバメート基;式-C(=O)-Rb(式中、Rbはメチル、エチル、フェニル、トリフルオロメチルなどである)のアミド基;式-S(=O)2-Rc(式中、Rcは例えば、トリル、フェニル、トリフルオロメチル、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-イル-、2,3,6-トリメチル-4-メトキシベンゼンなどである)のN-スルホニル誘導体基。
【0043】
「アルキル」という用語は、1~18個の炭素原子を有する直鎖及び分岐鎖基を含む飽和脂肪族炭化水素基を指す。メチル、エチル、プロピル、2-プロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル及びペンチルなどの1~6個の炭素原子(すなわち、C1~C6アルキル)を有するアルキルが好ましい。アルキルは、置換又は非置換であり得、置換される場合、置換基は、ハロゲン、ニトロ、スルホニル、エーテルオキシ、エーテルチオ、エステル、チオエステル又はシアノであり得る。
【0044】
C1~C4アルキルは、1~4個の炭素原子を有する飽和炭化水素鎖を含む直鎖又は分岐鎖である。それは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル又はtert-ブチルであり得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」という用語は、飽和単環式又は多環式(例えば、二環式)炭化水素環(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルなどの単環式、又はスピロ、縮合又は架橋環系を含む二環式(ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル又はビシクロ[5.2.0]ノニル、デカヒドロナフタレンなど))を指し、これは1個又は複数(例えば、1~3個)の適切な置換基で任意選択で置換されている。シクロアルキルは、3~15個の炭素原子を有する。例えば、「C3~10シクロアルキル」という用語は、3~10個の環形成炭素原子を有する飽和単環式又は多環式(例えば、二環式)炭化水素環(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシル)を指し、これは1個又は複数(例えば、1~3個)の適切な置換基、例えば、メチル置換シクロプロピルで任意選択で置換されている。
【0046】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクリル」という用語は、2、3、4、5、6、7、8又は9個の炭素原子と、環内に、C(=O)、O、S、S(=O)、S(=O)2、及びNRd(式中、Rdは水素原子、C1~6アルキル、又はC1~6ハロアルキル基を表す)からなる群から選択される1個又は複数(例えば、1、2、3又は4個)のヘテロ原子含有基とを有する飽和又は不飽和の、一価の、単環式又は二環式残基を指す。ヘテロシクリルは、炭素原子又は窒素原子(存在する場合)のいずれか1個を介して残りの分子と結合していてもよい。特に、3~10員までのヘテロシクリルは、3~10個の炭素原子と、環内に、これらに限定されないが、オキシラニル、アジリジニル、アゼチジニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、ジオキソリニル、ピロリジニル、ピロリジノニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピロリニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、モルホリニル、ジチアニル、チオモルホリニル、ピペラジニル又はトリチアニルなどのヘテロ原子(複数可)を有する基を指す。
【0047】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、共役π電子系を有する全炭素単環式又は縮合環多環式芳香族基を指す。例えば、本明細書で使用される場合、「C6~10アリール」という用語は、6~10個の炭素原子を含有する芳香族基、例えばフェニル又はナフチルなどを指す。アリールは、1個又は複数(例えば、1~3個)の適切な置換基(例えば、ハロゲン、-OH、-CN、-NO2、C1~6アルキル)で任意選択で置換される。
【0048】
「アラルキル」という用語は、好ましくはアリール置換アルキルを意味し、ここで、アリール及びアルキルは本明細書で定義されている通りである。通常は、アリール基は、6~10個の炭素原子を有していてもよく、アルキル基は、1~6個の炭素原子を有していてもよい。例示的なアラルキル基としては、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルブチルが挙げられるが、これらには限定されない。
【0049】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」という用語は、5、6、8、9、10、11、12、13又は14個の環原子、特に1又は2又は3又は4又は5又は6又は9又は10個の炭素原子を有し、同じであっても異なっていてもよい、少なくとも1個のヘテロ原子(O、N又はSなど)を含有する一価の単環式、二環式又は三環式芳香族環系を指す。その上、各場合において、それはベンゾ縮合していてもよい。特に、ヘテロアリールは、チエニル、フリル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリルなど、及びそのベンゾ誘導体;又はピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニルなど、及びそのベンゾ誘導体からなる群から選択される。
【0050】
本明細書で使用される場合、「全ての比率の鏡像異性体の混合物」は、「任意の比率の鏡像異性体の混合物」と同じ意味を有する。
【0051】
[発明の詳細な説明]
実施例1a:化合物1~5の一般的な調製方法
【化22】
L-ホモセリンラクトン塩酸塩(1a-1)(ee値99%、0.1mol)を丸底フラスコに添加し、アルコール(ホモセリンラクトン塩酸塩とアルコールとのモル比は約1:(10~15)であった)を添加した。系の温度を10℃に下げ、塩化チオニル(0.3mol)をゆっくりと滴下した。系の温度を10℃に維持し、30分間撹拌した。温度を徐々に35℃に上げ、反応物を20時間撹拌し、その間に気泡が連続的に発生した。反応が完了するまで、反応をLC-MS又はLCでモニターした(特定の基質を完全に反応させるために、反応温度を上げる必要があった)。系の温度を室温に下げ、残存する塩化チオニル及び溶媒を減圧下留去し、固体残留物を100mLのn-ヘキサン及び酢酸エチルの混合溶媒(n-ヘキサンと酢酸エチルの体積比は2:1であった)でスラリー化し、ろ過によってろ過ケーキを得た。湿潤生成物1a-2をアンモニア水で中和し、系をpH7~8に調整し、酢酸エチルで抽出した。有機相を回収し、乾燥させ、濃縮して、目的生成化合物1a-3を得た。
【0052】
実施例1b:化合物16の調製
【化23】
工程1
出発原料として化合物16-1を使用して合成を実施した(Weitz、Iris S.ら、Journal of Organic Chemistry(1997年)、62(8)、2527~2534頁に記載された合成を参照してもよい)。室温で、化合物16-1(40mmol)、DCM(20ml)、四塩化炭素(20ml)及びトリフェニルホスフィン(120mmol)を丸底フラスコに添加し、次いで室温で2時間撹拌した。TLCは、原料が完全な反応を行ったことを示し、カラムクロマトグラフィーによって化合物16-2を収率50%で得た。
MS (ESI): m/z [M+H]
+ C
11H
22ClN
2O
3の計算値: 265.13; 実測値: 265.1.
1H NMR(400 MHz, CDCl
3) δ 4.84 (td, J = 8.8, 4.0Hz, 1H), 3.80 - 3.44 (m, 2H), 3.12 (s, 3H), 2.97 (s, 3H), 2.16 - 2.03 (m, 1H),1.96 (ddt, J = 14.5, 8.9, 5.6 Hz, 1H), 1.43 (s, 9H).
【0053】
工程2
化合物16-2(20mmol)を丸底フラスコに添加し、続いて1,4-ジオキサン(60ml)及び36%HCl(16ml)を添加し、反応物を室温で終夜撹拌した。反応溶液を濃縮し、次いで中和のためにアンモニア水を添加し、pHを7~8に調整した。混合物を酢酸エチルで抽出し、乾燥させ、濃縮して化合物16を得た。
【0054】
以下の表中のホモセリン類似体は、実施例1a、実施例1bの方法又は当技術分野で既知の類似の方法によって調製した。
【表1】
【0055】
実施例2
【化24】
-10℃で、n-プロパノール(0.9mol)、トリエチルアミン(0.9mol)及びn-ヘキサン(450ml)を丸底フラスコに添加し、定圧滴下漏斗によってジクロロ(メチル)ホスファン(0.45mol)を約1時間滴下した。反応物を0℃に温め、完全な反応のために2時間進行させた。混合物をろ過し、固体をn-ヘキサン(150ml×2)で洗浄し、母液を減圧下で蒸発させて溶媒を除去した。分別によってジプロピルメチルホスホナイト(無色液体、収率:86%、含有率:94%)を得た(分別温度は60℃以下である)。
MS (ESI): m/z [M+H]
+ C
7H
18O
2Pの計算値: 165.11; 実測値: 165.1.
1H NMR(400 MHz, CDCl
3) δ 3.65 (ddddt, J = 10.0,6.2, 5.0, 3.5, 1.7 Hz, 4H), 1.51 (q, J = 7.1 Hz, 4H), 1.12 (dd, J = 8.3, 1.2Hz, 3H), 0.82 (td, J = 7.4, 1.1 Hz, 6H).
13C NMR(100 MHz, CDCl
3) δ 68.2, 24.6, 19.9, 10.2.
31P NMR(160 MHz, CDCl
3) δ 33.5.
【0056】
以下の化合物は、上記の方法と類似した方法に従って調製した。
【表2】
【0057】
実施例3
【化25】
窒素雰囲気下、-10℃で、式(IV)の化合物(0.6eq、90%純度)のクロロベンゼン溶液を丸底フラスコに添加し、ジクロロ(メチル)ホスファン(0.6eq、98%純度)のクロロベンゼン溶液を、定圧滴下漏斗によって1d/sの速度で滴下した。滴下が完了した後、反応物を10分間撹拌した(このとき、対応する式(III)の化合物
【化26】
が生成する可能性があった(式中、Hal
2は塩素であり、R
2はR
3又はR
4である))。続いて、式(IIa)の化合物(1.0eq)及びトリエチルアミン(1.2eq、98%純度)のクロロベンゼン溶液を4d/sの速度でそれに添加し、滴下後に撹拌を30分間続けた。反応物を室温に温め、1時間撹拌し、次いで温度を90℃に上げ、反応を12時間続けた。反応物を室温に自然冷却し、吸引ろ過し、ろ過ケーキをクロロベンゼン(150mL×3)で洗浄した。ろ液を回転蒸発させてクロロベンゼンを除去し、その結果中間体を得た。中間体に100mLの濃塩酸(36%)を加え、90℃に加熱し、反応を10時間進行させた。MS検出は中間体が消失したことを示し、混合物を室温に自然冷却し、回転蒸発させて溶媒を除去し、95%エタノール(300mL)を添加した。粗生成物が完全に溶解するまで溶液を加熱還流し、結晶化のために自然冷却し、ろ過し、乾燥させてL-グルホシネート塩酸塩を得た。
【0058】
上記方法に従って、下表の基質からL-グルホシネート塩酸塩を調製した。生成物の反応収率及びee値を下表に示す。
【表3】
【0059】
実施例4
【化27】
窒素雰囲気下、-10℃で、ジエチルメチルホスホナイト(861.7g、0.55eq、90%純度)のクロロベンゼン(6.0kg)溶液を20Lジャケット付ガラス反応器に添加し、ジクロロ(メチル)ホスファン(679.5g、0.55eq、98%純度)のクロロベンゼン(2.0kg)溶液を、定圧滴下漏斗によって5d/sの速度で滴下した。滴下が完了した後、反応物を10分間撹拌した(このとき、クロロ(エトキシ)(メチル)ホスファン
【化28】
が生成する可能性があった)。続いて、式(IIa)の化合物-ブチルエステル(2.0kg、1.0eq)及びトリエチルアミン(1.2kg、1.1eq、98%純度)のクロロベンゼン(8.0kg)溶液を10d/sの速度でそれに添加し、滴下後に撹拌を30分間続けた。反応物を室温に温め、30分間撹拌し、次いで温度を90℃に上げ、反応を2時間続けた。反応物を室温に自然冷却し、吸引ろ過し、ろ過ケーキをクロロベンゼン(2.5L×2)で洗浄した。ろ液を回転蒸発させてクロロベンゼンを除去し、その結果中間体を得た。中間体に4.2kgの36%wt.塩酸を加え、95℃に加熱し、反応を10時間進行させ、同時に、生成したブタノールを蒸留除去した。MS検出は中間体が消失したことを示し、混合物を室温に自然冷却し、回転蒸発させて溶媒を除去し、95%エタノール(6L)を添加した。粗生成物が完全に溶解するまで溶液を加熱還流し、結晶化のために自然冷却し、ろ過し、乾燥させてL-グルホシネート塩酸塩(白色、収率88%、ee値98%)を得た。
【0060】
本明細書に記載されたものに加えて、前述の記載に従って、本発明に対する種々の改変が当業者に明らかである。このような改変は、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。本明細書に引用される各参考文献(全ての特許、特許出願、学術論文、書籍、及び任意の他の開示を含む)は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のグルホシネート又はその塩、それらの鏡像異性体若しくは全ての比率の鏡像異性体の混合物を調製するための方法であって、当該方法は、
【化1】
a)式(II)の化合物又はその塩、それらの鏡像異性体若しくは全ての比率の鏡像異性体の混合物を、
【化2】
1種若しくは複数の式(III)の化合物又は混合物と反応させる工程であって、
この混合物が、1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(V)の化合物を含む混合物;又は1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(III)の化合物を含む混合物;又は1種若しくは複数の式(V)の化合物及び1種若しくは複数の式(III)の化合物を含む混合物;又は1種若しくは複数の式(III)の化合物、1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(V)の化合物を含む混合物である工程;
【化3】
b)中間体を、それが単離されているか否かにかかわらず、水と酸又は塩基との存在下で反応させて、グルホシネート(I)又はその塩、それらの鏡像異性体若しくは全ての比率の鏡像異性体の混合物を得る工程;
を備え、
ここで、PGがアミノ保護基である場合、当該アミノ保護基を除去する段階をさらに備えることができ;
ここで、LGは、Hal
1、-OTs又は
【化4】
であり;
Hal
1及びHal
2はそれぞれ独立してハロゲン、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり;
PGは、水素又はアミノ保護基であり;当該アミノ保護基は、好ましくは-C(=O)R、-C(=O)OR又は-S(=O)
2Rであり;
Aは-NHR
1、-NR
1R
1’又は-OR
1であり;
R、R
1、R
1’、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、C
1~C
6アルキル、C
3~10シクロアルキル、C
6~10アリール、C
6~12アラルキル、5から14員までのヘテロアリール及び3から10員までのヘテロシクリルからなる群から選択され、混合物が1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(III)の化合物の混合物を含む場合、又は混合物が1種若しくは複数の式(III)の化合物、1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(V)の化合物の混合物を含む場合、R
2はR
3又はR
4のいずれかであり;
キラル炭素原子は
*で標識されており;
ただし、以下の条件:
1)式(II)の化合物は
【化5】
ではない;
2)式(III)の化合物は
【化6】
ではない;
3)式(IV)の化合物は
【化7】
ではない;又は
4)式(V)の化合物は
【化8】
ではない;
の少なくとも1つが満たされる
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
式(I)の鏡像異性的に純粋なグルホシネート又はその塩を調製するための方法であって、
【化9】
当該方法は、
a1)式(II)の鏡像異性的に純粋な化合物又はその塩を、
【化10】
式(III)の化合物、
【化11】
又は1種若しくは複数の式(III)の化合物若しくは混合物と反応させる工程であって;
この混合物が、1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(V)の化合物を含む混合物;又は1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(III)の化合物を含む混合物;又は1種若しくは複数の式(V)の化合物及び1種若しくは複数の式(III)の化合物を含む混合物;又は1種若しくは複数の式(III)の化合物、1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(V)の化合物を含む混合物である工程;
【化12】
b1)中間体を、それが単離されているか否かにかかわらず、水と酸又は塩基との存在下で反応させて、鏡像異性的に純粋なグルホシネート(I)又はその塩を得る工程;
を備え、
ここで、PGがアミノ保護基である場合、当該アミノ保護基を除去する段階をさらに備えることができ;
ここで、
LGは、Hal
1、-OTs又は
【化13】
であり;
Hal
1及びHal
2はそれぞれ独立してハロゲン、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり;
PGは、水素又はアミノ保護基であり;当該アミノ保護基は、好ましくは-C(=O)R、-C(=O)OR又は-S(=O)
2Rであり;
Aは-NHR
1、-NR
1R
1’又は-OR
1であり;
R、R
1、R
1’、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、C
1~C
6アルキル、C
3~10シクロアルキル、C
6~10アリール、C
6~12アラルキル、5から14員までのヘテロアリール及び3から10員までのヘテロシクリルからなる群から選択され、混合物が1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(III)の化合物の混合物を含む場合、又は混合物が1種若しくは複数の式(III)の化合物、1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(V)の化合物の混合物を含む場合、R
2はR
3又はR
4のいずれかであり;
キラル炭素原子は
*で標識されており;
ただし、以下の条件:
1)式(II)の化合物は
【化14】
ではない;
2)式(III)の化合物は
【化15】
ではない;
3)式(IV)の化合物は
【化16】
ではない;又は
4)式(V)の化合物は
【化17】
ではない;
の少なくとも1つが満たされる
ことを特徴とする、方法。
【請求項3】
鏡像異性体比が、(L):(D)-鏡像異性体又は(D):(L)-鏡像異性体として、50.5:49.5~99.5:0.5であることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
Rが、C
1~C
6アルキル又はC
6~
10アリールであり、好ましくはメチル、エチル、tert-ブチル、フェニル又はp-メチルフェニルであり;
好ましくは、PGが、水素、-C(=O)CH
3、-C(=O)Ph、-C(=O)OC
2H
5、-C(=O)OC(CH
3)
3又は
【化18】
である
ことを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
Hal
1が塩素、臭素又はヨウ素であり;
好ましくは、LGが塩素、臭素、ヨウ素、-OTs又は
【化19】
であ
り;
より好ましくは、LGが塩素、臭素又はヨウ素であり、あるいは
Hal
2
が塩素であることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
R
1、R
1’、R
2、R
3及びR
4が、それぞれ独立して、C
1~C
6アルキル又はC
6~C
12アラルキルであり、好ましくはC
1~C
4アルキル又はベンジルであることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
R
1及びR
1’がそれぞれ独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はベンジルであり;
好ましくは、Aが、-NHCH
2CH
2CH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-OCH
2CH
2CH
3、-OCH(CH
3)
2、-OCH
2CH
2CH
2CH
3、-OCH
2CH(CH
3)
2又は-OBnである
ことを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
R
2が、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル又はイソブチルであり、好ましくはn-プロピル、イソプロピル又はn-ブチルである
;あるいは
R
3
が、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル又はイソブチルであり、好ましくはn-プロピル、イソプロピル又はn-ブチルである;あるいは
R
4
が、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル又はイソブチルであり、好ましくはn-プロピル、イソプロピル又はn-ブチルであることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
混合物が、1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(III)の化合物の混合物であり、式(IV)の化合物と式(III)の化合物とのモル比が(0.9~1.1):1又は(0.05~1.1):1であり;或いは当該混合物が、1種若しくは複数の式(V)の化合物及び1種若しくは複数の式(III)の化合物の混合物であり、式(V)の化合物と式(III)の化合物とのモル比が(0.9~1.1):1又は(0.05~1.1):1であり;或いは当該混合物が、1種若しくは複数の式(IV)の化合物及び1種若しくは複数の式(V)の化合物を含む混合物であり、式(IV)の化合物と式(V)の化合物とのモル比は(0.9~1.1):1であることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程a)又はa1)において、反応温度が20~200℃、好ましくは90~140℃であることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程a)又はa1)が塩基の存在下で実施されることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程a)又はa1)における塩基が、
有機アミン、ピリジン又は複素環中の1個若しくは複数の炭素原子に結合した1~3個の置換基を有するピリジン誘導体、ピペリジン又は複素環中の1個若しくは複数の炭素原子に結合した1~3個の置換基を有するピペリジン誘導体からなる群から選択される有機塩基又はアンモニアであ
り;
好ましくは、有機塩基が、トリエチルアミン、ピペリジン又はピリジンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
工程a)又はa1)において、塩基と式(III)の化合物及び式(V)の化合物の総量とのモル比が、(1~10):1であることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程a)又はa1)において、反応が無溶媒条件下又は不活性溶媒中で実施されることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
上記工程a)又はa1)において、不活性溶媒が、ベンゼン溶媒、アミド溶媒、炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、スルホン又はスルホキシド溶媒、エーテル溶媒又はエステル溶媒のいずれか1種若しくは複数から選択され;好ましくは、不活性溶媒が、ベンゼン溶媒、アミド溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、エーテル溶媒又はエステル溶媒のいずれか1種若しくは複数から選択されることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程a)又はa1)において、不活性溶媒が、クロロベンゼン、トリメチルベンゼン、1,4-ジオキサン、1,2-ジクロロエタン、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、石油エーテル、n-ヘプタン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、及び酢酸ブチルのいずれか1種若しくは複数から選択されることを特徴とする、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
工程a)又はa1)において、式(III)の化合物又は混合物と式(II)の化合物とのモル比が、1:(0.8~10)、好ましくは1:(1~3)であり;又は式(II)の化合物と式(III)の化合物又は混合物とのモル比が、1:(0.8~10)、好ましくは1:(1~3)であることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
工程b)又はb1)において、無機酸又は有機酸を添加する
;好ましくは無機酸が塩酸又は硫酸であることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
工程b)又はb1)において、
塩基がアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩又はアルカリ土類金属重炭酸塩からなる群より選択される無機塩基又は有機塩基である
;好ましくは塩基が、NaOH、KOH又はBa(OH)
2
であることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
工程b)又はb1)において、反応温度が20~150℃であることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
式(II)の化合物が、
【表1】
からなる群より選ばれる、及び/又は
式(IV)の化合物が、
【化20】
である、及び/又は
式(V)の化合物が、
【化21】
であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
式(II)の化合物又はその塩であって、
【化22】
式(II)の化合物が、
【化23】
からなる群から選択される、式(II)の化合物又はその塩。
【請求項23】
グルホシネート若しくはその塩、又はL-グルホシネート若しくはその塩の調製における請求項
22に記載の化合物の使用。
【国際調査報告】