(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】治療診断剤として使用するための放射性標識α-Vβ-3及び/又はα-Vβ-5インテグリンアンタゴニスト
(51)【国際特許分類】
A61K 51/04 20060101AFI20231227BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
A61K51/04 100
A61K51/04 200
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537505
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2021086885
(87)【国際公開番号】W WO2022136317
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519129045
【氏名又は名称】アドヴァンスド アクセラレーター アプリケーションズ インターナショナル エセ.アー.
(71)【出願人】
【識別番号】521125305
【氏名又は名称】アドヴァンスド・アクセラレーター・アプリケーションズ・(イタリー)・エッセエッレエッレ
(71)【出願人】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ムツィオ ヴァレリア
(72)【発明者】
【氏名】ウェゲナー アンティエ
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン ジョン スコット
(72)【発明者】
【氏名】デ カルリ フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】バルディーニ パオラ
(72)【発明者】
【氏名】マグリ アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ロッセット マッティア
(72)【発明者】
【氏名】バレンゴ ダニエラ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C084AA12
4C084MA17
4C084MA65
4C084NA13
4C084ZB262
4C085HH03
4C085HH07
4C085JJ02
4C085KA09
4C085KA29
4C085KB15
4C085KB56
4C085LL18
(57)【要約】
本開示は、αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニスト放射性医薬品並びにαvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍を有するヒト対象の選択及び治療のための治療診断手法におけるそれらの使用に関する。特に、本開示は、上記処置に適したヒト対象におけるαvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍を処置するのに使用するための、αv177Lu放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストの医薬組成物に関し、ここで、前記対象は、同じαvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストだけでなく、造影剤として使用するための放射性金属としての68-Gaを用いたPET/CT又はPET/MRI又はSPECT/CT又はSPECT/MRIイメージングによる処置のために選択されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象における、膠芽細胞腫、頭頸部がん、胃食道腺がん、大腸がん、乳がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、悪性黒色腫、胃がん、膵臓がん、特に、膵管腺がん、前立腺がん及び脳転移、特に、乳がん及び黒色腫からの脳転移からなる群から選択されるαvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍を処置するのに使用するための、放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストの医薬組成物であって、前記医薬組成物が、
[i]式Iの放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニスト:
【化1】
(式中:
Mは、治療に好適な放射性金属、好ましくは、177-ルテチウムである)、及び
[ii]1つ以上の薬学的に許容される賦形剤
を含み、
ここで、前記対象が、Mが、イメージングに好適な放射性金属、好ましくは、68-ガリウム、67-ガリウム又は64-銅、より好ましくは、68-ガリウムである以外は前記処置について定義されるのと同じαvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストを用いたSPECT/CT又はPET/CT又はSPECT/MRI、PET/MRIイメージングによる前記処置のために選択された、医薬組成物。
【請求項2】
αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍が、膠芽細胞腫、悪性黒色腫、乳がん及び黒色腫からの脳転移、好ましくは、悪性黒色腫からなる群から選択される、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物が、注射、好ましくは、注入に好適である、請求項1又は2に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項4】
対象が、前記対象においてPET/MRI又はPET/CT又はSPECT/CT又はSPECT/MRIイメージングによって決定される際、前記病変における[
68Ga]標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストの取り込みを評価することによって、前記処置のために選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項5】
対象が、膠芽細胞腫、頭頸部がん、大腸がん、乳がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、悪性黒色腫、胃がん、膵臓がん、前立腺がん及び脳転移、特に、乳がん及び黒色腫からの脳転移からなる群から選択されるαvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍を処置するための放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストによる処置のために選択され得るかどうかを決定する際に、PET/CT又はPET/MRI又はSPECT/CT又はSPECT/MRIイメージングのための造影剤として使用するための、放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストの医薬組成物であって、前記医薬組成物が、
[i]式Iの放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニスト:
【化2】
(式中:
Mは、SPECT/CT又はPET/CT又はSPECT/MRI、PET/MRIイメージングにおいて造影剤として使用するための放射性金属、例えば68-ガリウムである)、及び
[ii]1つ以上の薬学的に許容される賦形剤
を含み、
ここで、前記対象が、前記対象におけるPET/CT又はPET/MRI又はSPECT/CT又はSPECT/MRIイメージングによって、αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する前記腫瘍における前記放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストの取り込みを評価することによって、前記処置のために選択される、医薬組成物。
【請求項6】
αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍が、膠芽細胞腫、胃食道腺がん、悪性黒色腫、膵管腺がん、乳がん及び黒色腫からの脳転移、好ましくは、悪性黒色腫からなる群から選択される、請求項5に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項7】
腫瘍病変を有するヒト患者が、放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストによる処置のために選択され得るかどうかを決定するための方法であって、
(i)前記腫瘍病変における前記放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストの取り込みをイメージングするための造影剤としての請求項5又は6に記載の医薬組成物の有効量を投与する工程、
(ii)前記患者のPET/MRI又はPET/CT又はSPECT/CT又はSPECT/MRIによって画像を取得する工程、及び
(iii)前記腫瘍病変における工程(ii)で取得された前記画像に基づいて前記放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストの取り込みを決定する工程
を含む、方法。
【請求項8】
治療有効量の請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与することによって、αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍を処置する工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項5又は6に記載の医薬組成物が、PET/CT又はPET/MRI又はSPECT/CT又はSPECT/MRIイメージングの前の、6時間~15分の間、好ましくは、3時間~25分の間に投与される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
請求項5又は6に記載の医薬組成物が、150MBq~250MBqの量で投与される、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項5又は6に記載の医薬組成物が、注射、好ましくは、ボーラス注入に好適である、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
治療有効量の請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物が、前記造影剤を投与する工程(i)の少なくとも2週間後に投与される、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニスト放射性医薬品並びにαvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍を有するヒト対象の選択及び治療のための治療診断(セラノスティック)手法におけるそれらの使用に関する。特に、本開示は、前記処置に適したヒト対象におけるαvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍又は腫瘍血管系を処置するのに使用するための、177Lu放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストの医薬組成物に関し、ここで、前記対象は、同じαvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストだけでなく、造影剤として使用するための放射性金属としての68-Gaを用いたPET/CT又はPET/MRIイメージングによる処置のために選択されている。
【背景技術】
【0002】
インテグリンは、細胞間及び細胞-細胞外基質(ECM)相互作用のために重要であり、1つのα及び1つのβ-サブユニットから構成されるヘテロ二量体受容体である。これらの細胞接着分子は、それらの細胞外リガンドと細胞骨格との間の膜貫通リンカーとして機能し、ほとんどの細胞の生物学的機能に不可欠な様々なシグナル伝達経路を調節する。インテグリンは、細胞移動、血管新生、創傷治癒、止血及び発がん性形質転換などのプロセスにおいて重要な役割を果たす。多くのインテグリンが病的状態にも関連するという事実により、インテグリンは、有望な治療標的となった。特に、インテグリンαvβ3、αvβ5は、固形腫瘍の血管新生及び転移に関与するため、それらは、膠芽細胞腫、頭頸部がん、大腸がん、乳がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、悪性黒色腫、膵臓がん、前立腺がん及び脳転移などの、満たされていない高い医学的ニーズを有するものを含め、がん治療のための潜在的な候補である。
【0003】
αvβ3及びαvβ5の両方は、内皮細胞、線維芽細胞、上皮細胞、骨芽細胞、及び平滑筋細胞などの様々な細胞型で発現され、血管新生を起こす内皮細胞内で上方制御される。それらは、形態学的に異常な腫瘍血管系においてだけではなく、神経膠腫を含む腫瘍細胞においても高度に発現される。[18F]Galacto-RGDを用いたポジトロン放出型断層撮影法(PET)及び免疫組織化学による検証は、患者の様々な固形腫瘍におけるαvβ3発現を示したが、正常組織(例えば良性リンパ節、筋肉)における発現の欠如を示した。さらに、αvβ3の活性化が、乳がんモデルにおける転移に必要とされること並びに腫瘍血管系におけるαvβ3及びαvβ5の発現が、神経芽細胞腫の悪性度と相関することが示されている。悪性神経膠腫におけるαvβ3及びαvβ5受容体の選択的な上方制御が、このタイプのがんにおけるこのインテグリンの大きな役割を示唆している。したがって、活性化された内皮細胞におけるそれらの一次発現のため、αvβ3及びαvβ5インテグリンは、がん治療のための魅力的な標的である(Mas-Moruno et al,2010)。
【0004】
インテグリンを標的とする最も顕著な化合物は、膠芽細胞腫及び他の腫瘍の処置のために開発された、αvβ3及びαvβ5インテグリンを標的とする環状RGDペプチドであるシレンギチドであり得る。その特徴及び効力により、ここ20年で、インテグリンに拮抗することができる多くの新たな小分子のための研究が増加された。しかしながら、大きな期待にもかかわらず、シレンギチドを含む、がん処置のための血管新生阻害剤としての臨床試験に入ったαvβ3及びαvβ5インテグリンのアンタゴニストは、概して失敗に終わっている。それにもかかわらず、インテグリンは、依然として膠芽細胞腫のための潜在的な処置の標的のままである(Tolomelli et al,2016)。
【0005】
放射性標識受容体結合分子は、腫瘍診断及び治療のための放射性医薬品の重要な種類であると考えられる。インビボで受容体発現組織を標的とする放射性標識分子の使用は、核医学の分野において高い関心を喚起した(Reubi,2003)。ペプチドは、単一光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)及びポジトロン放出型断層撮影法(PET)の両方で使用するために標識され得る。一般的に使用されるγ放出体は、SPECTイメージングでの使用では111In及び99mTcである一方、PETイメージングでは、ペプチドは、68Ga、18F及び64Cuなどのポジトロン放出放射性核種で放射性標識され得る。いくつかのタイプの神経内分泌腫瘍のイメージングのための最初に承認された放射性ペプチドである、111In標識ソマトスタチン類似体オクトレオチド(OctreoScan(商標))は、様々な受容体を標的とするいくつかの他の放射性標識ペプチドの開発の道を開いた。
【0006】
ヒトにおいて利用可能な文献データ(Beer et al.,2007;Mena et al.,2014;Iagaru et al.,2014;Kim et al.,2012)により、αvβ3及びαvβ5インテグリンを標的とする18F及び68Ga放射性標識RGDペプチドが忍容性良好であることが確認された。
【0007】
多くの治療法の進歩にもかかわらず、膠芽細胞腫、頭頸部がん、大腸がん、乳がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、悪性黒色腫、膵臓がん、前立腺がん及び脳転移などのいくつかの一般的な腫瘍は、依然として死亡の原因になることが多く、新たな処置法が必要とされている。
【0008】
したがって、これに関連して、αvβ3及び/又はαvβ5過剰発現腫瘍の選択及び治療のための新規な治療診断手法を提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、(1)腫瘍病変を特定し、放射性リガンド治療(RLT)に好適な患者を選択するための診断薬としてのガリウム68(68Ga)並びに(2)(RLT)による、これらの腫瘍病変、特に、膠芽細胞腫、頭頸部がん、胃食道腺がん、大腸がん、乳がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、悪性黒色腫、膵臓がん、特に、膵管腺がん、胃がん、前立腺がん又は脳転移、特に、乳がん及び黒色腫からの脳転移の処置のためのルテチウム-177(177Lu)を用いた放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストの使用に基づく治療診断手法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、ヒト対象における、膠芽細胞腫、頭頸部がん、胃食道腺がん、大腸がん、乳がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、悪性黒色腫、膵臓がん、特に、膵管腺がん、胃がん、前立腺がん及び脳転移、特に、乳がん及び黒色腫からの脳転移からなる群から選択されるαvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍を処置するのに使用するための、放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストの医薬組成物であって、前記医薬組成物が、
[i]式Iの放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニスト:
【化1】
(式中:
Mは、治療に好適な放射性金属、好ましくは、177-ルテチウムである)、及び
[ii]1つ以上の薬学的に許容される賦形剤
を含み、
ここで、前記対象が、Mが、イメージングに好適な放射性金属、好ましくは、68-ガリウム、67-ガリウム又は64銅、より好ましくは、68-ガリウムである以外は処置について定義されるのと同じαvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストを用いたSPECT/CT又はPET/CT又はSPECT/MRI、PET/MRIイメージングによる処置のために選択された、医薬組成物に関する。
【0011】
同様に、本開示は、ヒト対象が、膠芽細胞腫、頭頸部がん、胃食道腺がん、大腸がん、乳がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、悪性黒色腫、膵臓がん、特に、膵管腺がん、胃がん、前立腺がん及び脳転移、特に、乳がん及び黒色腫からの脳転移からなる群から選択されるαvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍を処置するための放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストによる処置のために選択され得るかどうかを決定する際に、SPECT/CT又はPET/CT又はSPECT/MRI、PET/MRIイメージングのための造影剤として使用するための、放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストの医薬組成物であって、前記医薬組成物が、
[i]式Iの放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニスト:
【化2】
(式中:
Mは、SPECT/CT又はPET/CT又はSPECT/MRI、PET/MRIイメージングにおいて造影剤として使用するための放射性金属、例えば68-ガリウムである)、
[ii]1つ以上の薬学的に許容される賦形剤
を含み、
ここで、前記対象が、前記対象におけるSPECT/CT又はPET/CT又はSPECT/MRI、PET/MRIイメージングによって、αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する前記腫瘍における前記放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストの取り込みを評価することによって、処置のために選択される、医薬組成物に関する。
【0012】
本開示はまた、腫瘍を有するヒト患者が、放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストによる処置のために選択され得るかどうかを決定するための方法であって、
(i)放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストの取り込みをイメージングするための造影剤としての本発明の医薬組成物の有効量を投与する工程、
(ii)前記患者のSPECT/CT、SPECT/MRI、PET/MRI又はPET/CTによって画像を取得する工程、及び
(iii)対照画像と比較する工程
を含む、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
本明細書において使用される際、「処置する」「処置すること」又は「処置」という用語は、(1)疾患を阻害すること;例えば、疾患、病態又は障害の病理又は症状を生じる又は示す個体における疾患、病態又は障害を阻害すること(すなわち、病理及び/又は症状のさらなる発生を停止させること);並びに(2)疾患を改善すること;例えば、疾患、病態又は障害の病理又は症状を生じる又は示す個体における疾患、病態又は障害を改善すること(すなわち、病理及び/又は症状を食い止めること)、例えば、疾患の重症度を低下させること又は疾患の1つ以上の症状を軽減若しくは緩和することのうちの1つ以上を指す。特に、腫瘍の処置に関連して、「処置」という用語は、腫瘍の増殖の阻害、又は腫瘍のサイズの減少を指し得る。
【0014】
国際単位系に従って、「MBq」は、放射能の単位「メガベクレル」の略語である。
【0015】
本明細書において使用される際、「PET」は、ポジトロン放出型断層撮影法を表す。
【0016】
本明細書において使用される際、「SPECT」は、単光子放出型コンピュータ断層撮影法を表す。
【0017】
本明細書において使用される際、「MRI」は、磁気共鳴イメージングを表す。
【0018】
本明細書において使用される際、「CT」は、コンピュータ断層撮影法を表す。
【0019】
本明細書において使用される際、「RLT」は、放射性リガンド治療を表す。
【0020】
本明細書において使用される際、「化合物」は、本開示の式Iの化合物及びこのような化合物の任意の形態、すなわち、化合物自体、並びにその薬学的に許容される塩、その互変異性体、薬学的に許容される溶媒和物又は薬学的に許容される水和物のいずれかを意味する。
【0021】
本明細書において使用される際、化合物の「有効量」又は「治療有効量」という用語は、ヒト対象の生物学的又は医学的反応を誘発する、例えば、症状を改善する、病態を緩和する、疾患進行を減速する若しくは遅らせる、又は疾患を予防する、化合物の量を指す。
【0022】
本明細書において使用される際、「放射線分解に対する安定剤」は、例えば、放射性核種から放出されたγ線が、有機分子の原子間の結合を切断し、ラジカルが形成され、次に、それらのラジカルが、望ましくない潜在的に効果のない或いは毒性の分子をもたらし得るいずれかの他の化学反応をラジカルが起こすのを回避する安定剤によって除去される場合、放射線分解から有機分子を保護する安定剤を指す。したがって、それらの安定剤はまた、「フリーラジカル捕捉剤」又は単に「ラジカル捕捉剤」とも呼ばれる。それらの安定剤の他の代替用語は、「放射線安定性促進剤」、「放射線分解安定剤」、又は単に「クエンチャー」である。
【0023】
本明細書において使用される際、「金属イオン封鎖剤」は、製剤中の遊離放射性核種金属イオンと錯体形成する(放射性標識ペプチドと錯体形成されない)のに好適なキレート剤を指す。
【0024】
本明細書において使用される際、「pH調整剤」は、溶液のpH値を調整し、それによって、所望の性能を達成するために溶液に加えられる薬品である。pHを調節することは、pH調整剤を製剤に加えることによって行われ得る。pH調整剤の例としては、一般的に使用される酸及び塩基、酸及び塩基の緩衝液及び混合物が挙げられる。例えば、使用され得る塩基としては、NaOH、KOH、Ca(OH)2、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸カリウム、及び炭酸ナトリウムが挙げられる。使用され得る酸の例としては、塩酸、酢酸、クエン酸、ギ酸、フマル酸、及びスルファミン酸が挙げられる。
【0025】
「放射化学的純度」:記載される化学的又は生物学的形態で存在する記載される放射性核種のパーセンテージである。HPLC方法又は即時薄層クロマトグラフィー方法(iTLC)などのラジオクロマトグラフィー方法が、核薬学において放射化学的純度を決定するための一般的に認められている方法である。
【0026】
本明細書において使用される際、「水溶液」:水中の1つ以上の溶質の溶液。
【0027】
本明細書において使用される際、「良好な応答者」は、ランダム化された集団(すなわち、本発明の方法の選択工程によって選択されていない)と比較して、処置に対して統計的に良好な応答を示す集団、及び/又はランダム化された集団(すなわち、本発明の方法の選択工程によって選択されていない)と比較して、処置に対してより少ない副作用を示す集団から選択されるヒト対象である。
【0028】
「約(about)」又は「約(ca.)」という用語は、本明細書において、後続の値が、±20%、好ましくは、±10%、より好ましくは、±5%、さらにより好ましくは、±2%、さらにより好ましくは、±1%変動し得るという意味を有する。
【0029】
放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5アンタゴニスト処置を必要としているヒト対象
同義的に使用される「患者」及び「対象」という用語は、例えば、がんを有する対象、より具体的には、例えば、本開示に記載される方法に従って68Ga-FF58 PETによって特定した際に、αvβ3及び/又はαvβ5過剰発現腫瘍を有する患者を含むヒトを指す。
【0030】
本明細書において使用される際、「がん」という用語は、自律的増殖の能力を有する細胞、すなわち、急速に増殖している細胞増殖によって特徴付けられる異常な状態又は病態を指す。過剰増殖性及び腫瘍性疾患状態は、病理性であると分類され得、すなわち、疾患状態を特徴付ける若しくは構成し、又は非病理性であると分類され得、すなわち、正常状態から逸脱するが、疾患状態に関連しない。特に規定されない限り、この用語は、組織病理学的タイプ又は侵襲性の段階にかかわらず、あらゆるタイプのがん性増殖又は腫瘍形成プロセス、転移性組織又は悪性形質転換した細胞、組織、若しくは器官を含むことが意図される。
【0031】
本明細書において使用される際、「αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍」は、αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍を指す。αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍を有するがんの型としては、限定はされないが、膠芽細胞腫、頭頸部がん、胃食道腺がん、大腸がん、乳がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、悪性黒色腫、胃がん、膵臓がん、特に、膵管腺がん、前立腺がん及び脳転移、特に、乳がん及び黒色腫からの脳転移が挙げられる。
【0032】
化合物は、好ましくは、頭頸部がん、胃食道腺がん、大腸がん、腎臓がん、浸潤性乳管がんなどの乳がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、膠芽細胞腫、悪性黒色腫、胃がん、膵臓がん、特に、膵管腺がん、前立腺がんから好ましくは選択される固形がんの抑制のために使用されるか、又は好ましくは、乳がん及び黒色腫、好ましくは、黒色腫からの脳転移から好ましくは選択される転移の抑制のために使用される。
【0033】
本開示に係る使用のための放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5アンタゴニスト
本開示は、必要としている対象におけるαvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍を処置するための治療診断手法に関する。
【0034】
治療診断手法は、有利には、処置工程に好適なαvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍を有する患者を選択するための放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5アンタゴニストを使用する第1のイメージング工程、及び対応する放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5アンタゴニストで患者を処置するための第2の処置工程を含む。したがって、特定の実施形態において、同じαvβ3及び/又はαvβ5アンタゴニスト化合物は、処置及び処置工程に好適な患者を選択するためのイメージング工程のために使用されるが、放射性金属は異なり、一方は、イメージング用の造影剤として使用するのに好適であり、他方は、核治療用の治療剤として使用するのに好適である。
【0035】
本明細書において使用される際、αvβ3及び/又はαvβ5アンタゴニストは、高い親和性及び特異性でαvβ3及びαvβ5インテグリンに結合し、受容体結合時に内在化されず、特定の濃度で天然リガンドの作用に拮抗する少なくとも小さいペプチド部分を含む化合物を指す。
【0036】
より具体的には、αvβ3及び/又はαvβ5アンタゴニストは、以下の式(I)の化合物:
【化3】
又は任意の薬学的に許容される塩を指し、本明細書において、以後、化合物(the Compound)と呼ぶ。
【0037】
化合物は、様々な放射性核種M、例えば、68-ガリウム(イメージング用)、177ルテチウム(RLT用)及び他の関連する放射性核種で放射性標識するのを可能にするDOTA金属キレート剤をその構造中にさらに含み、それにより、このような化合物の治療診断的使用が可能になる。
【0038】
さらに、化合物は、腫瘍の検出において使用するための好ましい薬物動態(PK)及び血漿安定性を有する。
【0039】
化合物、その製造方法及び使用のさらなる詳細は、特に、欧州特許出願公開3050878A1又は米国特許出願公開2018008583に開示され、これらの開示内容は、参照により本明細書に援用される。
【0040】
一実施形態において、Mは、111In、133mIn、99mTc、94mTc、67Ga、66Ga、68Ga、52Fe、169Er、72As、97Ru、203Pb、212Pb、62Cu、64Cu、67Cu、186Re、188Re、86Y、90Y、51Cr、52mMn、157Gd、177Lu、161Tb、169Yb、175Yb、105Rh、166Dy、166Ho、153Sm、149Pm、151Pm、172Tm、121Sn、117mSn、213Bi、212Bi、142Pr、143Pr、198Au、199Au、89Zr、225Ac、43Sc、44Sc、47Sc、及び55Coから選択され得る放射性金属である。
【0041】
SPECT/CT又はPET/CT又はSPECT/MRI、PET/MRIイメージングにおいて造影剤として使用するのに好適な典型的な放射性金属は、111In、133mIn、99mTc、94mTc、67Ga、66Ga、68Ga、52Fe、72As、97Ru、203Pb、62Cu、64Cu、86Y、51Cr、52mMn、157Gd、169Yb、172Tm、117mSn、89Zr、43Sc、44Sc、55Coから選択され得る。SPECT/CT又はPET/CT又はSPECT/MRI、PET/MRIイメージングにおいて使用するための好ましい実施形態によれば、Mは、68Gaである。この場合、放射性標識αvβ3/αvβ5アンタゴニストは、患者選択工程のためのPET/CT又はPET/MRI又はSPECT/CT又はSPECT/MRIイメージングのための造影剤として使用され得る。
【0042】
RLTのための処置工程において使用するための典型的な放射性金属としては、以下のもの:169Er、212Pb、64Cu、67Cu、186Re、188Re、90Y、177Lu、161Tb、175Yb、105Rh、166Dy、166Ho、153Sm、149Pm、151Pm、121Sn、213Bi、212Bi、142Pr、143Pr、198Au、199Au、225Ac、47Scが挙げられる。特定の実施形態によれば、RLTのための処置工程において使用するための放射性金属Mは、177Luである。対象は、前記対象におけるPET/MRI又はPET/CT又はSPECT/CT又はSPECT/MRIイメージングによって決定される際、αvβ3/αvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍におけるαvβ3/αvβ5アンタゴニストの取り込みを評価することによって、処置のために選択される。
【0043】
式(II)のαvβ3及び/又はαvβ5アンタゴニストの合成
コールド化合物(cold compound)、すなわち、非放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5アンタゴニストは、式(II):
【化4】
のものである。
【0044】
式(II)のコールド化合物は、欧州特許出願公開3050878A1又は米国特許出願公開2018008583に開示される方法を用いて合成され得る。
【0045】
医薬組成物
本開示はまた、放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストの医薬組成物であって、
[i]式Iの放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニスト:
【化5】
(式中:
Mは、治療に好適な放射性金属、好ましくは、177-ルテチウムである)、及び
[ii]1つ以上の薬学的に許容される賦形剤
を含む、医薬組成物に関する。Mが
177Luである化合物は、本明細書において、以後、[
177Lu]-化合物と呼ばれる。
【0046】
一実施形態において、[177Lu]-化合物は、前記医薬組成物中で、少なくとも10mCi/mL(370MBq/mL)、好ましくは、少なくとも15mCi/mL(555MBq/mL)、より好ましくは、少なくとも20mCi/mL(740MBq/mL)の容積放射能を提供する濃度で存在し得る。[177Lu]-化合物は、例えば、前記医薬組成物中で、約90mCi/mL(3330MBq/mL)、又は99mCi/mL(3663MBq/mL)、又は168mCi/mL(6216MBq/mL)、又は184mCi/mL(6808MBq/mL)、又は361mCi/mL(1.34×104MBq/mL)の濃度で、70mCi/mL(2590MBq/mL)~400mCi/mL(1.48×104MBq/mL)、好ましくは、90mCi/mL(3330MBq/mL)~385mCi/mL(1.42×104MBq/mL)に含まれる容積放射能を提供する濃度で存在し得る。
【0047】
一実施形態において、GBq/総ペプチドとして表される治療剤としての[177Lu]-化合物を含む前記医薬組成物の比放射能は、1GBq/mg~75GBq/mg、好ましくは、18.5GBq/mg~55GBq/mg、より好ましくは、30GBq/mg~44GBq/mg、さらにより好ましくは、34GBq/mg~40GBq/mg、好ましくは、約37GBq/μmol(1Ci/mg)である。
【0048】
一実施形態において、化合物と放射性核種との間のモル比は、少なくとも1.3、好ましくは、1.3~1.8、より好ましくは、約1.5であり得る。
【0049】
1つ以上の薬学的に許容される賦形剤は、通常使用されるもののいずれかであり得、例えば、溶解度及び活性化合物との反応性の欠如など、物理化学的考慮事項によってのみ限定される。
【0050】
特に、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤は、放射線分解に対する安定剤、溶媒、金属イオン封鎖剤、pH調整剤及びそれらの混合物から選択され得る。
【0051】
第1の態様において、本開示は、本明細書に記載される[177Lu]-化合物、及び放射線分解に対する少なくとも2つの安定剤を含む医薬組成物に関する。一実施形態において、前記少なくとも2つの安定剤は、ゲンチジン酸(2,5-ジヒドロキシ安息香酸)又はその塩、アスコルビン酸(L-アスコルビン酸、ビタミンC)又はその塩(例えばアスコルビン酸ナトリウム)、メチオニン、ヒスチジン、メラトニン、及びSe-メチオニンから選択され得、好ましくは、ゲンチジン酸又はその塩及びアスコルビン酸又はその塩から選択され得る。より好ましくは、前記少なくとも2つの安定剤は、ゲンチジン酸及びアスコルビン酸ナトリウムである。
【0052】
特に、本発明者らは、予想外にも、[177Lu]-化合物の医薬組成物中に特定の量のゲンチジン酸及びアスコルビン酸ナトリウムの両方を加えることが、合成の72時間後、好ましくは、合成の5日後、95%を超える前記組成物の放射化学的純度を可能にすることを見出した。
【0053】
一実施形態において、ゲンチジン酸とアスコルビン酸ナトリウムとの間の比率は、1:100~1:200、好ましくは、1:110~1:150、より好ましくは、1:120~1:135、さらにより好ましくは、約1:128である。
【0054】
一実施形態において、前記ゲンチジン酸又はその塩、好ましくは、ゲンチジン酸は、少なくとも0.30mg/mL、好ましくは、少なくとも0.35mg/mL、より好ましくは、少なくとも0.38mg/mL、典型的に、0.30mg/mL~0.40mg/mL、好ましくは、0.38mg/mL~0.40mg/mL、より好ましくは、約0.39mg/mLの濃度で存在し得る。
【0055】
一実施形態において、前記アスコルビン酸又はその塩、好ましくは、アスコルビン酸ナトリウムは、少なくとも40mg/mL、好ましくは、少なくとも45mg/mL、典型的に、40mg/mL~75mg/mL、好ましくは、45mg/mL~65mg/mL、より好ましくは、約50mg/mLの濃度で存在し得る。
【0056】
一実施形態において、前記ゲンチジン酸又はその塩は、0.30mg/mL~0.40mg/mL、好ましくは、0.38mg/mL~0.40mg/mLの濃度で存在し、アスコルビン酸又はその塩は、40mg/mL~75mg/mL、好ましくは、45mg/mL~65mg/mLの濃度で存在し得る。
【0057】
一実施形態において、放射性医薬組成物は、放射性安定剤として、0.39mg/mL及び50mg/mLのそれぞれの濃度でゲンチジン酸及びアスコルビン酸ナトリウムの両方を含む。
【0058】
一実施形態において、医薬組成物は、72時間及び120時間まで、特に、5日間まで95%超、好ましくは、72時間まで97%以上及び120時間まで96.5%以上の放射化学的純度を有する。
【0059】
一実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物のpHは、4.5~7、好ましくは、5.5~6.5、より好ましくは、約6であり得る。
【0060】
第2の態様において、本開示は、本明細書に記載される[177Lu]-化合物、放射線分解に対する少なくとも2つの安定剤及び少なくとも1つの他の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。薬学的に許容される賦形剤は、通常使用されるもののいずれかであり得、例えば、溶解度及び活性化合物との反応性の欠如など、物理化学的考慮事項によってのみ限定される。
特に、少なくとも他の薬学的に許容される賦形剤は、溶媒、金属イオン封鎖剤、pH調整剤及びそれらの混合物から選択され得る。
【0061】
一実施形態において、前記溶媒は、注射用水及び/又は生理食塩溶液、好ましくは、注射用水である。
【0062】
一実施形態において、前記金属イオン封鎖剤は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はその塩である。一実施形態において、前記DTPAは、50~200μg/mL、好ましくは、75~150μg/mL、より好ましくは、約100μg/mLの濃度で存在する。
【0063】
一実施形態において、前記pH調整剤は、酢酸及び/又は酢酸ナトリウム、好ましくは、酢酸及び酢酸ナトリウムである。一実施形態において、前記酢酸は、0.20mg/mL~0.40mg/mL、好ましくは、約0.30mg/mLの濃度で存在し、前記酢酸ナトリウムは、0.30mg/mL~0.50mg/mL、好ましくは、約0.41mg/mLの濃度で存在する。
【0064】
本開示の別の態様において、医薬組成物は、商業規模の製造で製造され、特に、少なくとも1Ci(37GBq)、好ましくは、2Ci(74GBq)のバッチサイズで製造される。
【0065】
本開示の別の態様において、医薬組成物は、商業用途用である。
【0066】
式(II)のコールドαvβ3及び/又はαvβ5アンタゴニストの放射性標識
一般に、開示される放射性金属Mで式(II)のαvβ3及び/又はαvβ5アンタゴニストを標識するための方法は、
i.式(II)の前記αvβ3及び/又はαvβ5アンタゴニスト
【化6】
をバイアル中に提供する工程、
ii.前記放射性金属の溶液を前記バイアル中に加え、それによって、式(II)の前記αvβ3及び/又はαvβ5アンタゴニストと前記放射性同位体との溶液を得る工程、及び
iii.ii.で得られた溶液を混合し、式(I)の前記放射性同位体で標識された前記αvβ3及び/又はαvβ5アンタゴニストを得るのに十分な時間にわたってそれをインキュベートする工程
を含む。
【0067】
[177Lu]-化合物は、例えば、MiniAIO合成装置又は自動合成のための当該技術分野において公知の他の合成装置を用いることによって自動的に、及び手動で製造され得る。
【0068】
合成は、まず、177LuCl3を反応器中に移すことによって行われ得る。次に、反応緩衝液が、177LuCl3を予め含むバイアルに加えられる。反応緩衝液は、溶媒、好ましくは、注射用水、緩衝液、好ましくは、酢酸塩緩衝液及び放射線分解に対する安定剤、好ましくは、ゲンチジン酸を含む。次に、反応緩衝液は、反応器中に移され得る。式(II)の化合物は、第2のバイアル中にあり得、これが、第1のバイアル中で予め得られた反応緩衝液及び177LuCl3を含む反応器に加えられる。標識は、少なくとも5分間にわたって95℃で行われ得る。そして、最後に、標識の最後に、得られた[177Lu]-化合物は、母バイアルに移され得る。母バイアルは、21mCi/mLの容積放射能を得るために、ろ過され、希釈され得る。
【0069】
本方法において使用される放射性金属は、本明細書に開示されるとおりである。
【0070】
イメージング工程において造影剤として使用するための医薬組成物
イメージング工程において造影剤として使用するための医薬組成物は、本明細書に記載される放射性標識αvβ3/αvβ5アンタゴニスト、すなわち、化合物及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0071】
より具体的には、前記医薬組成物は、
[i]式Iの放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニスト:
【化7】
又は任意の薬学的に許容される塩
(式中:
Mは、SPECT/CT又はPET/CT又はSPECT/MRI、PET/MRIイメージングにおいて造影剤として使用するための放射性金属である)、及び
[ii]1つ以上の薬学的に許容される賦形剤
を含む。
【0072】
SPECT/CT又はPET/CT又はSPECT/MRI、PET/MRIイメージングにおいて造影剤として使用するのに好適な放射性金属は、111In、133mIn、99mTc、94mTc、67Ga、66Ga、68Ga、52Fe、72As、97Ru、203Pb、62Cu、64Cu、86Y、51Cr、52mMn、157Gd、169Yb、172Tm、117mSn、89Zr、43Sc、44Sc、55Coから選択され得る。好ましい実施形態によれば、Mは、68Gaである。Mが68Gaである化合物は、本明細書において、以後、[68Ga]-化合物と呼ばれる。
【0073】
一実施形態において、[68Ga]-化合物は、前記医薬組成物中で、少なくとも20MBq/mL、好ましくは、少なくとも50MBq/mLの容積放射能を提供する濃度で存在し得る。化合物は、例えば、前記医薬組成物中で、約200MBq/mLの濃度で、20MBq/mL~1000MBq/mL、好ましくは、30MBq/mL~600MBq/mLに含まれる容積放射能を提供する濃度で存在し得る。
【0074】
一実施形態において、GBq/総ペプチドとして表される造影剤としての[68Ga]-化合物を含む前記医薬組成物の比放射能は、3GBq/μmol~100GBq/μmol、好ましくは、4GBq/μmol~90GBq/μmol、より好ましくは、5GBq/μmol~80GBq/μmol、さらにより好ましくは、6GBq/μmol~70GBq/μmol、好ましくは、約50GBq/μmolである。
【0075】
1つ以上の薬学的に許容される賦形剤は、通常使用されるもののいずれかであり得、例えば、溶解度及び活性化合物との反応性の欠如など、物理化学的考慮事項によってのみ限定される。
【0076】
特に、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤は、放射線分解に対する安定剤、緩衝液、金属イオン封鎖剤及びそれらの混合物から選択され得る。
【0077】
化合物の放射性の性質のため、放射性核種の放射能の減衰が起こり、これが、その後、放射性医薬品の固有の特性になる。その結果として、化合物の比放射能、全放射能及び放射性濃度が、時間と共に変化する。
【0078】
放射線分解に対する好適な安定剤は、この化合物が感受性ペプチド分子であるとしても、25℃で24時間後、放射化学的純度放射性核種錯体、例えば、化合物に対して高い安定性、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の化学安定性を確実にするために使用され得る。
【0079】
好ましい実施形態において、イメージング工程において造影剤として使用するための医薬組成物は、放射線分解に対する安定剤、好ましくは、ゲンチジン酸を含む。
【0080】
一実施形態によれば、イメージング工程において造影剤として使用するための医薬組成物は、水溶液、例えば注射製剤である。特定の実施形態によれば、[68Ga]-化合物の医薬組成物は、ボーラス注入用の溶液である。
【0081】
注射用組成物のための有効な医薬担体の要件は、当業者に周知である(例えば、Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B.Lippincott Company,Philadelphia,PA,Banker and Chalmers,eds.,pages 238-250(1982)、及びSHP Handbook on Injectable Drugs,Trissel,15th ed.,pages 622-630(2009)を参照)。
【0082】
処置工程において治療剤として使用するための医薬組成物
処置工程において治療剤として使用するための医薬組成物は、本明細書に記載される放射性標識αvβ3/αvβ5アンタゴニスト、すなわち、化合物及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0083】
より具体的には、前記医薬組成物は、
[i]式Iの放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニスト:
【化8】
又は任意の薬学的に許容される塩
(式中:
Mは、治療に好適な放射性金属である)、及び
[ii]1つ以上の薬学的に許容される賦形剤
を含む。
【0084】
RLTに好適な放射性金属としては、以下のもの:169Er、212Pb、64Cu、67Cu、186Re、188Re、90Y、177Lu、161Tb、175Yb、105Rh、166Dy、166Ho、153Sm、149Pm、151Pm、121Sn、213Bi、212Bi、142Pr、143Pr、198Au、199Au、225Ac、47Scが挙げられる。好ましい実施形態によれば、Mは、177Luである。Mが177Luである化合物は、本明細書において、以後、[177Lu]-化合物と呼ばれる。
【0085】
1つ以上の薬学的に許容される賦形剤は、通常使用されるもののいずれかであり得、例えば、溶解度及び活性化合物との反応性の欠如など、物理化学的考慮事項によってのみ限定される。
【0086】
特に、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤は、放射線分解に対する安定剤、緩衝液、金属イオン封鎖剤及びそれらの混合物から選択され得る。
【0087】
一実施形態によれば、処置工程において治療剤として使用するための医薬組成物は、水溶液、例えば注射製剤である。特定の実施形態によれば、[177Lu]-化合物の医薬組成物は、注入用の溶液である。
【0088】
注射用組成物のための有効な医薬担体の要件は、当業者に周知である(例えば、Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B.Lippincott Company,Philadelphia,PA,Banker and Chalmers,eds.,pages 238-250(1982)、及びSHP Handbook on Injectable Drugs,Trissel,15th ed.,pages 622-630(2009)を参照)。
【0089】
αvβ3/αvβ5アンタゴニスト処置のための対象を選択するための方法
本開示はまた、αvβ3/αvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍病変を有するヒト患者が、放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストによる前記腫瘍病変の処置のために選択され得るかどうかを決定するための方法であって、
(i)前記対象における放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストの取り込みをイメージングするための本開示の造影剤として使用するための医薬組成物の有効量を投与する工程、
(ii)前記患者のPET/MRI又はPET/CT又はSPECT/CT又はSPECT/MRIによって画像を取得する工程、
(iii)前記腫瘍病変において工程(ii)で取得された画像に基づいて放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストの取り込みを決定する工程
を含む、方法に関する。
【0090】
本方法の特定の実施形態において、前記患者は、膠芽細胞腫、頭頸部がん、大腸がん、乳がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、悪性黒色腫、胃がん、膵臓がん、前立腺がん及び脳転移、特に、乳がん及び黒色腫からの脳転移からなる群から選択される腫瘍を有する患者である。より具体的な実施形態において、放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5アンタゴニストは、[68Ga]-化合物である。
【0091】
一実施形態において、造影剤として使用するための医薬組成物は、[68Ga]-化合物を含む医薬組成物である。
【0092】
一実施形態において、医薬組成物、造影剤としての[68Ga]-化合物は、静脈注射によって、好ましくは、ボーラス注入によって、前記対象に投与される。
【0093】
別の実施形態において、造影剤としての[68Ga]-化合物を含む医薬組成物は、PET/CT又はPET/MRI又はSPECT/CT又はSPECT/MRIイメージング工程(ii)の、6時間~15分前、好ましくは、3時間~25分前に投与される。
【0094】
本発明の方法において造影剤としての[68Ga]-化合物を含む医薬組成物の用量は、患者の年齢、性別、及び症状、投与経路、投与の回数、及び剤形に応じて異なる。一般に、[68Ga]-化合物を含む医薬組成物の放射線量は、例えば、1回の注射当たり50MBq~350MBq、好ましくは、150MBq~250MBqの範囲内で選択され得る。用量は、1回の投与につき約3MBq/kgの用量で、対象の体重に基づいて計算される。一実施形態において、ヒト患者は、[68Ga]-化合物の1回の注射のみを受ける。
【0095】
次に、患者の身体の画像が、PET/MRI又はPET/CT又はSPECT/CT又はSPECT/MRIイメージングによって取得され、画像は、従来のイメージング、例えばMRI、CTによって特定される病変が、[68Ga]-化合物の取り込みによっても特定されるかどうかを確認するために、対照画像と比較される。
【0096】
腫瘍を発現するαvβ3及び/又はαvβ5は、前記医薬組成物の注射後に、PET/MRI又はPET/CT又はSPECT/CT又はSPECT/MRIイメージングによって、本開示の造影剤として使用するための医薬組成物の取り込みを評価することによって有利に検出され得る。したがって、上記の方法の目的は、αvβ3及び/又はαvβ5過剰発現腫瘍を有し、治療剤として使用するための医薬組成物によるRLTに対する良好な応答者であり得る対象を選択することである。
【0097】
本方法の特定の実施形態において、前記処置のために選択される患者は、前記[68Ga]-αvβ3及び/又はαvβ5アンタゴニストを用いたPET/MRI又はPET/CT又はSPECT/CT又はSPECT/MRIによって決定される際、[68Ga]-αvβ3及び/又はαvβ5アンタゴニストの取り込みも示す従来のイメージングによって検出される病変の、少なくとも10%、好ましくは、20%超、好ましくは、30%超、好ましくは、40%超、好ましくは、50%超、好ましくは、60%超、好ましくは、70%超、好ましくは、80%超、好ましくは、90%超、好ましくは、90%~95%を有する患者である。
【0098】
特定の実施形態において、「病変」という用語は、http://www.eortc.beで入手可能な公開されたRECIST文書に定義されるような測定可能な腫瘍病変を指す。典型的に、測定可能な腫瘍病変は、以下の最小サイズ(測定面における最長直径が記録されるべきである)を有する病変である:
・CTスキャンによって10mm(5mm以下のCTスキャンスライス厚さ);
・臨床検査によって10mmのキャリパー測定(キャリパーで正確に測定できない病変は、測定不可能と記録されるべきである);
・胸部X線によって20mm。
【0099】
測定不可能は、小さい病変(最長直径<10mm又は≧10~<15mmの短軸を有する病理学的リンパ節)並びに全く測定不可能な病変を含む全ての他の病変である。全く測定不可能であると見なされる病変としては、軟膜疾患、腹水、胸水又は心外膜液、炎症性乳房疾患、皮膚又は肺のリンパ管症、再現可能なイメージング技術によって測定できない身体検査によって特定される腹部腫瘤/腹部臓器肥大が挙げられる。
【0100】
全ての測定は、臨床的に評価される場合、キャリパーを用いて、メートル法表記で記録されるべきである。全てのベースライン評価は、処置開始のできるだけ近くで行われるべきである。
【0101】
特定の実施形態において、従来のイメージングによって特定される病変は、病変における[68Ga]-化合物の取り込みが、脾臓における取り込みと等しいか、又はより優れている場合(視覚的評価)、本発明の患者選択方法のためのαvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍病変であると見なされるであろう。
【0102】
他の特定の実施形態において、病変は、描かれる各関心領域(潜在的病変)の平均SUVと大動脈の平均SUVとの間の比率、描かれる各関心領域(潜在的病変)の平均SUVと大動脈の平均SUV(SUVr)との間の比率を決定することによって、[68Ga]-化合物の取り込みについてαvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現するものと決定される。典型的に、病変は、SUVr値が上である場合、αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現するものと決定される。
【0103】
本開示は、ヒト対象が、αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍を処置するための放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストによる処置のために選択され得るかどうかを決定する際に、PET/CT又はPET/MRI又はSPECT/CT又はSPECT/MRIイメージングのための造影剤として使用するための、放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストの医薬組成物であって、前記腫瘍が、膠芽細胞腫、頭頸部がん、大腸がん、乳がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、悪性黒色腫、胃がん、膵臓がん、前立腺がん及び脳転移、特に、乳がん及び黒色腫からの脳転移からなる群から選択され、ここで、前記対象が、前記対象におけるPET/CT又はPET/MRI又はSPECT/CT又はSPECT/MRIイメージングによって、αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍における前記放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンの取り込みを評価することによって、処置のために選択される、医薬組成物に関する。
【0104】
特定の実施形態において、次に、本発明の方法は、このような処置のために選択される前記患者におけるαvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍を処置する工程(iv)をさらに含み、前記工程は、処置工程において治療剤として使用するための医薬組成物の治療有効量を投与することを含み、この医薬組成物は、RLTに好適な放射性金属を有すること以外は選択工程(i)において使用される同じαvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストを有効成分として含む。有利には、処置工程において治療剤として使用するための放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストは、[177Lu]-化合物である。
【0105】
一実施形態において、治療有効量の[177Lu]-化合物が、例えば、注入用の溶液として、静脈注射によって投与される。
【0106】
一実施形態において、[177Lu]-化合物を含む医薬組成物は、1回の注射当たり1.85GBq~18.5GBq(50~500mCi)の放射線量で投与され得る。用量は、漸増用量及び線量測定に基づいて計算される。
【0107】
特定の実施形態において、治療有効量の[177Lu]-化合物が、1回の処置当たり1~8回、例えば2~4回、前記対象に投与される。
【0108】
一実施形態において、治療有効量の[177Lu]-化合物が、イメージング工程において造影剤を投与する工程(i)の少なくとも2週間後に投与される。
【0109】
いくつかの態様において、処置工程における[177Lu]-化合物を含む医薬組成物の投与は、対象における腫瘍の増殖を阻害し、遅らせ、及び/又は軽減することができる。いくつかの態様において、腫瘍の増殖は、未処置の対照対象と比較して、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%又は80%遅らされる。
【0110】
いくつかの態様において、腫瘍の増殖は、未処置の対照対象と比較して、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%又は80%遅らされる。いくつかの態様において、腫瘍の増殖は、処置なしの腫瘍の予測される増殖と比較して、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%又は80%遅らされる。いくつかの態様において、腫瘍の増殖は、処置なしの腫瘍の予測される増殖と比較して、少なくとも50%遅らされる。
【0111】
いくつかの態様において、処置工程における[177Lu]-化合物を含む医薬組成物の投与は、対象の生存期間の長さを増加させ得る。いくつかの態様において、生存期間の増加は、未処置の対照対象と比較される。いくつかの態様において、生存期間の増加は、未処置の対象の生存期間の予測される長さと比較される。いくつかの態様において、生存期間の長さは、未処置の対照対象と比較した長さで、少なくとも3倍、4倍、又は5倍増加される。いくつかの態様において、生存期間の長さは、未処置の対照対象と比較した長さで、少なくとも4倍増加される。
【0112】
いくつかの態様において、生存期間の長さは、処置なしの対象の生存期間の予測される長さと比較した長さで、少なくとも3倍、4倍、又は5倍増加される。いくつかの態様において、生存期間の長さは、処置なしの対象の生存期間の予測される長さと比較した長さで、少なくとも4倍増加される。
【0113】
いくつかの態様において、生存期間の長さは、未処置の対照対象と比較して、少なくとも1週間、2週間、1か月、2か月、3か月、6か月、1年、2年、又は3年増加される。
【0114】
いくつかの態様において、生存期間の長さは、未処置の対照対象と比較して、少なくとも1か月、2か月、又は3か月増加される。いくつかの態様において、生存期間の長さは、処置なしの対象の生存期間の予測される長さと比較して、少なくとも1週間、2週間、1か月、2か月、3か月、6か月、1年、2年、又は3年増加される。いくつかの態様において、生存期間の長さは、処置なしの対象の生存期間の予測される長さと比較して、少なくとも1か月、2か月、又は3か月増加される。
【0115】
一実施形態において、本開示の[177Lu]-化合物を含む医薬組成物は、1つ以上の抗がん剤と組み合わせて使用され得る。このような抗がん剤の例としては、限定はされないが、アルキル化剤、代謝拮抗剤、微小管阻害剤、抗がん抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、白金製剤、分子標的化薬、ホルモン、がん免疫学及び生物製剤が挙げられる。
【0116】
典型的なアルキル化剤としては、ナイトロジェンマスタード抗がん剤、例えばシクロホスファミド、ニトロソ尿素抗がん剤、例えばラニムスチン、及びダカルバジンが挙げられる。代謝拮抗剤の例としては、5-FU、UFT、カルモフール、カペシタビン、テガフール、TS-1、ゲムシタビン、及びシタラビンが挙げられる。微小管阻害剤の例としては、アルカロイド抗がん剤、例えばビンクリスチン、及びタキサン抗がん剤、例えばドセタキセル及びパクリタキセルが挙げられる。抗がん抗生物質の例としては、マイトマイシンC、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、及びブレオマイシンが挙げられる。トポイソメラーゼ阻害剤の例としては、トポイソメラーゼI阻害効果を有するイリノテカン及びノギテカン、及びトポイソメラーゼII阻害効果を有するエトポシドが挙げられる。白金製剤の例としては、シスプラチン、パラプラチン、ネダプラチン、及びオキサリプラチンが挙げられる。分子標的化薬の例としては、トラスツズマブ、リツキシマブ、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ボルテゾミブ、スニチニブ、ソラフェニブ、クリゾチニブ、及びレゴラフェニブが挙げられる。ホルモンの例としては、デキサメタゾン、フィナステリド、及びタモキシフェンが挙げられる。生物製剤の例としては、インターフェロンα、6、及びγ及びインターロイキン2が挙げられる。
【0117】
別の実施形態において、[177Lu]-化合物を含む医薬組成物は、がん治療と組み合わせて使用され得、外科手術並びに放射線療法(γナイフ治療、サイバーナイフ治療、ホウ素中性子捕獲治療、陽子放射線療法、及び重粒子放射線療法を含む)、MRガイド下集束超音波手術、凍結療法、高周波アブレーション、経皮的エタノール注入治療、動脈塞栓術などと組み合わせて使用され得る。
【0118】
実施形態
1.ヒト対象における、膠芽細胞腫、頭頸部がん、大腸がん、乳がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、悪性黒色腫、胃がん、膵臓がん、前立腺がん及び脳転移、特に、乳がん及び黒色腫からの脳転移からなる群から選択されるαvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍を処置するのに使用するための、放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストの医薬組成物であって、前記医薬組成物が、
[i]式Iの放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニスト:
【化9】
(式中:
Mは、治療に好適な放射性金属、好ましくは、177-ルテチウムである)、及び
[ii]1つ以上の薬学的に許容される賦形剤
を含み、
ここで、前記対象が、Mが、イメージングに好適な放射性金属、好ましくは、68-ガリウム、67-ガリウム又は64-銅、より好ましくは、68-ガリウムである以外は処置について定義されるのと同じαvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストを用いたSPECT/CT又はPET/CT又はSPECT/MRI、PET/MRIイメージングによる処置のために選択された、医薬組成物。
【0119】
2.αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍が、膠芽細胞腫、悪性黒色腫、乳がん及び黒色腫からの脳転移、好ましくは、悪性黒色腫からなる群から選択される、実施形態1に記載の使用のための医薬組成物。
【0120】
3.医薬組成物が、注射、好ましくは、注入に好適である、実施形態1又は2に記載の使用のための医薬組成物。
【0121】
4.対象が、前記対象においてPET/MRI又はPET/CT又はSPECT/CT又はSPECT/MRIイメージングによって決定される際、病変における[68Ga]標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストの取り込みを評価することによって、処置のために選択される、実施形態1~3のいずれかに記載の使用のための医薬組成物。
【0122】
5.対象が、膠芽細胞腫、頭頸部がん、胃食道腺がん、大腸がん、乳がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、悪性黒色腫、胃がん、膵臓がん、特に、膵管腺がん、前立腺がん及び脳転移、特に、乳がん及び黒色腫からの脳転移からなる群から選択されるαvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍を処置するための放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストによる処置のために選択され得るかどうかを決定する際に、PET/CT又はPET/MRI又はSPECT/CT又はSPECT/MRIイメージングのための造影剤として使用するための、放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストの医薬組成物であって、前記医薬組成物が、
[i]式Iの放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニスト:
【化10】
(式中:
Mは、SPECT/CT又はPET/CT又はSPECT/MRI、PET/MRIイメージングにおいて造影剤として使用するための放射性金属、例えば68-ガリウムである)、及び
[ii]1つ以上の薬学的に許容される賦形剤
を含み、
ここで、前記対象が、前記対象におけるPET/CT又はPET/MRI又はSPECT/CT又はSPECT/MRIイメージングによって、αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する前記腫瘍における前記放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストの取り込みを評価することによって、処置のために選択される、医薬組成物。
【0123】
6.αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍が、膠芽細胞腫、悪性黒色腫、乳がん及び黒色腫からの脳転移、好ましくは、黒色腫からなる群から選択される、実施形態5に記載の使用のための医薬組成物。
【0124】
7.腫瘍を有するヒト患者が、放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストによる処置のために選択され得るかどうかを決定するための方法であって、
(i)放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストの取り込みをイメージングするための造影剤としての実施形態5又は6に記載の医薬組成物の有効量を投与する工程、
(ii)前記患者のPET/MRI又はPET/CT又はSPECT/CT又はSPECT/MRIによって画像を取得する工程、及び
(iii)対照画像と比較する工程
を含む、方法。
【0125】
8.治療有効量の実施形態1~3に記載の医薬組成物を投与することによって、αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンを過剰発現する腫瘍を処置する工程をさらに含む、実施形態7に記載の方法。
【0126】
9.請求項5又は6に記載の医薬組成物が、PET/CT又はPET/MRI又はSPECT/CT又はSPECT/MRIイメージングの前の、6時間~15分の間、好ましくは、3時間~25分の間に投与される、実施形態7又は8のいずれかに記載の方法。
【0127】
10.請求項5又は6に記載の医薬組成物が、150MBq~250MBqの量で投与される、実施形態7~9のいずれかに記載の方法。
【0128】
11.実施形態5又は6に記載の医薬組成物が、注射、好ましくは、ボーラス注入に好適である、実施形態7~10のいずれか1つに記載の方法。
【0129】
12.治療有効量の実施形態1~3のいずれか1つに記載の医薬組成物が、造影剤を投与する工程(i)の少なくとも2週間後に投与される、実施形態8~11のいずれか1つに記載の方法。
【0130】
13.放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストの医薬組成物であって、
[ii]式Iの放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニスト:
【化11】
(式中:
Mは、治療に好適な放射性金属、好ましくは、177-ルテチウムである)、及び
[ii]1つ以上の薬学的に許容される賦形剤
を含む、医薬組成物。
【0131】
14.前記放射性金属が、前記医薬組成物中で、少なくとも10mCi/mL(370MBq/mL)、好ましくは、少なくとも15mCi/mL(555MBq/mL)、より好ましくは、少なくとも20mCi/mL(740MBq/mL)の容積放射能を提供する濃度で存在する、実施形態13に記載の医薬組成物。
【0132】
15.式Iの放射性標識αvβ3及び/又はαvβ5インテグリンアンタゴニストと放射性金属との間のモル比が、少なくとも1.3、好ましくは、1.3~1.8、より好ましくは、約1.5である、実施形態13又は14に記載の医薬組成物。
【0133】
16.1つ以上の薬学的に許容される賦形剤が、放射線分解に対する安定剤、溶媒、金属イオン封鎖剤、pH調整剤及びそれらの混合物から選択される、実施形態13~15に記載の医薬組成物。
【0134】
17.1つ以上の薬学的に許容される賦形剤が、ゲンチジン酸又はその塩、アスコルビン酸又はその塩、メチオニン、ヒスチジン、メラトニン、及びSe-メチオニンから選択される、好ましくは、ゲンチジン酸又はその塩及びアスコルビン酸又はその塩から選択される放射線分解に対する少なくとも2つの安定剤であり、より好ましくは、前記少なくとも2つの安定剤が、ゲンチジン酸及びアスコルビン酸ナトリウムである、実施形態13~16に記載の医薬組成物。
【0135】
18.ゲンチジン酸とアスコルビン酸ナトリウムとの間の比率が、1:100~1:200、好ましくは、1:110~1:150、より好ましくは、1:120~1:135、さらにより好ましくは、約1:128である、実施形態13~17に記載の医薬組成物。
【0136】
19.前記ゲンチジン酸又はその塩、好ましくは、ゲンチジン酸が、少なくとも0.30mg/mL、好ましくは、少なくとも0.35mg/mL、より好ましくは、少なくとも0.38mg/mL、典型的に、0.30mg/mL~0.40mg/mL、好ましくは、0.38mg/mL~0.40mg/mL、より好ましくは、約0.39mg/mLの濃度で存在する、実施形態17又は18に記載の医薬組成物。
【0137】
20.前記アスコルビン酸又はその塩、好ましくは、アスコルビン酸ナトリウムが、少なくとも40mg/mL、好ましくは、少なくとも45mg/mL、典型的に、40mg/mL~75mg/mL、好ましくは、45mg/mL~65mg/mL、より好ましくは、約50mg/mLの濃度で存在する、実施形態17~19に記載の医薬組成物。
【0138】
21.前記ゲンチジン酸又はその塩が、0.30mg/mL~0.40mg/mL、好ましくは、0.38mg/mL~0.40mg/mLの濃度で存在し、アスコルビン酸又はその塩が、40mg/mL~75mg/mL、好ましくは、45mg/mL~65mg/mLの濃度で存在し得る、実施形態17~20に記載の医薬組成物。
【0139】
22.72時間及び120時間まで95%超、好ましくは、72時間まで97%以上及び120時間まで96.5%以上の放射化学的純度を有する、実施形態13~21に記載の医薬組成物。
【0140】
23.1つ以上の薬学的に許容される賦形剤が、放射線分解に対する少なくとも2つの安定剤並びに溶媒、金属イオン封鎖剤、pH調整剤及びそれらの混合物、好ましくは、それらの混合物から選択される少なくとも1つの他の薬学的に許容される賦形剤である、実施形態13~22に記載の医薬組成物。
【0141】
24.前記溶媒が、注射用水及び/又は生理食塩溶液、好ましくは、注射用水である、実施形態23に記載の医薬組成物。
【0142】
25.前記金属イオン封鎖剤が、好ましくは、50~200μg/mL、より好ましくは、75~150μg/mL、さらにより好ましくは、約100μg/mLの濃度のジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はその塩である、実施形態23に記載の医薬組成物。
【0143】
26.前記pH調整剤が、酢酸及び/又は酢酸ナトリウム、好ましくは、酢酸及び酢酸ナトリウムである、実施形態23に記載の医薬組成物。
【0144】
27.前記酢酸が、0.20mg/mL~0.40mg/mL、好ましくは、約0.30mg/mLの濃度で存在し、前記酢酸ナトリウムが、0.30mg/mL~0.50mg/mL、好ましくは、約0.41mg/mLの濃度で存在する、実施形態26に記載の医薬組成物。
【0145】
28.医薬組成物が、水溶液、好ましくは、注入用の溶液である、実施形態13~27に記載の医薬組成物。
【0146】
29.医薬組成物が、商業規模の製造で、好ましくは、少なくとも1Ci(37GBq)、より好ましくは、2Ci(74GBq)のバッチサイズで製造される、実施形態13~28に記載の医薬組成物。
【0147】
30.医薬組成物が、商業用途用である、実施形態13~28に記載の医薬組成物。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【
図1】雄WM266腫瘍異種移植片担持マウスの膀胱、右及び左腎臓における
68Ga-化合物生体内分布。
【
図2】雄WM266腫瘍異種移植片担持マウスの他の器官における
68Ga-化合物生体内分布。
【
図3】雌WM266腫瘍異種移植片担持マウスの膀胱、右及び左腎臓における
68Ga-FF58生体内分布。
【
図4】雌WM266腫瘍異種移植片担持マウスの他の器官における
68Ga-FF58生体内分布。
【実施例】
【0149】
実施例1:皮下WM266黒色腫がんモデルにおける[68Ga]-化合物のインビボ分布
WM266黒色腫腫瘍を担持するヌード、雄及び雌無胸腺マウスに、68Ga-化合物(雄について約100~150/uCi 320~480pmol、雌について約100~150uCi/127~191pmol、3.7~5.55MBqに相当する)を静脈内注射した。動物を、注射の30分後、1時間後、2時間後及び4時間後の時点で、4匹一組で殺処分した。対象とする腫瘍及び器官を採取し、秤量し、ガンマカウンターを用いて放射能を測定した。腸及び胃は、その内容物を取り除かれていなかった。データを、組織のグラム当たりの注射用量のパーセンテージ(%ID/g)として計算した。
【0150】
図1、2、3及び4において見られるように、腫瘍における取り込みは、雄及び雌マウスにおいてそれぞれ約6~9%及び8~10%であり、時間と共に低下せず、注射の4時間後の時点でさえ変化しないままであった。30分の時点での正常な器官におけるバックグラウンドの取り込みの検出にもかかわらず、それは、4時間まで中程度に除去された。腎臓及び腸における取り込みにより、雄及び雌動物の両方における腎排泄及び部分的な肝排泄が確認された。
【0151】
リガンドとして68Ga-化合物を用いて示される前臨床データは、ヒト患者において放射性診断薬としてのその使用のために分子の好適なプロファイルを示す。
【0152】
薬理学的効果の欠如、αvβ3/αvβ5に対する高い親和性及び他の受容体に対する親和性の非存在は、分子が、標的に選択的に結合し、標的を過剰発現する腫瘍組織の何らの生理学的又は薬理学的変化も伴わずに、イメージング検出用の放射性同位体を保有することを確実にする。さらに、関連する腫瘍動物モデルにおけるインビボ試験は、他の器官における好適なクリアランス及びイメージング性能と共に、標的を過剰発現する腫瘍塊における放射性リガンドの好ましい生体内分布を実証する。
【0153】
実施例2:αvβ3及びαvβ5インテグリンを過剰発現することが疑われる黒色腫を有する成人患者における治療診断用ペア[68Ga]/[177Lu]-化合物の使用。
[68Ga]-化合物が、150MBq以上及び250MBq以下/注射で、一定用量の3MBq/kg/注射±10%で投与される。
【0154】
注射の30分(±15分)、1時間(±15分)及び2時間(±30分)後の時点での静的全身[68Ga]-化合物PETイメージング、並びに従来のイメージングスキャン(高分解能CT又はMRI)が、[68Ga]-化合物PETスキャン(高分解能診断CTと共にPET/CTとしての共同取得(joint acquisition)若しくは高分解能MRIと共にPET/MRIとしての共同取得)の一環として、又は[68Ga]-化合物注射の前若しくは後の24時間以内に別々に取得される。
【0155】
次に、患者における[68Ga]-化合物の予備標的化特性が、以下を確立することによって特性評価される:
・[68Ga]-化合物全体によって及び各腫瘍型について検出される腫瘍病変の数及び位置、並びに
・腫瘍/バックグラウンド標準取り込み値(SUV)の比率及び組織のグラム当たりの%注射用量(ID/g)の計算並びに腫瘍全体における及び各腫瘍型についての吸収用量(mGy/MBq)の計算。
【0156】
従来のイメージングによって特定された病変の5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%又は80%が、[68Ga]-化合物によっても特定される場合(100%×二重陽性/従来のイメージングにおいて特定された病変の総数)、患者は、[177Lu]-化合物による処置のために選択される。
【0157】
[177Lu]-化合物が、患者が耐えられる蓄積用量(最大800GBq)まで6~8週間ごとに一定用量の200MBq/kg/注射±10%で投与される。
【0158】
結果は、[177Lu]-化合物の静脈内投与が、黒色腫患者にプラスの効果を与えることを実証する。
【0159】
実施例3:αvβ3及びαvβ5インテグリンを過剰発現することが疑われるGBM又は脳転移(HER2+乳がん)を有する成人患者における第I相単回投与試験における[68Ga]-化合物の使用。
これは、以前の放射線治療に失敗したか又はHER2+乳がんからの脳転移を新たに診断され、αvβ3及びαvβ5インテグリンを過剰発現することが疑われる、再発性又は難治性ベバシズマブ未治療GBMを有する成人患者における[68Ga]-化合物のイメージング特性、安全性、生体内分布及び線量測定を特性評価するための、[68Ga]-化合物の第I相、単回投与試験である。
【0160】
[68Ga]-化合物についての利用可能な前臨床データは、GBM腫瘍の著しい80%が、αvβ3及びαvβ5インテグリン陽性であるGBMにおける発現を裏付けている(Schittenhelm 2013)。
【0161】
脳転移の適応も、原発性腫瘍からの頭蓋外転移の視覚化を可能にするために、試験のために選択される。均質な集団を調査するために、HER2+乳がんが、脳転移の原発巣として選択される。
【0162】
合計で40人の患者が、パートA及びBから構成される試験に登録される。GBMにおける約20人の患者(男性及び女性)及び脳転移における20人の患者(HER2+乳がん)が含まれる。これらの40人の患者のうち、約12人が、線量測定サブグループに含まれ、少なくとも1人の線量測定患者は、女性でなければならない。
【0163】
試験のパートAは、12人の患者(6人の再発性/難治性GBM患者及び6人の脳転移(HER2+)患者)を登録する。これらのうち、適応当たり約3人の患者が、線量測定サブスタディに参加する。6人の再発性/難治性GBMベバシズマブ未治療患者のうち、3人が、手術の意思を有する。
【0164】
各適応の登録は、並行して行われ、パートBへの継続のために互いに独立して評価される。パートAからの患者が、各アームに登録したら、安全性、生体内分布及び68Gaの取り込みに基づく内部予備審査が行われる。試験のパートBへの両方のアームの患者登録の継続は、各適応において68Ga-化合物陽性患者が存在しない場合、行われない。
【0165】
試験のパートBは、14人の再発性又は難治性GBM患者及び14人の脳転移(HER2+BC)患者を登録する。パートBの線量測定サブグループは、適応当たり約3人の患者を含む。
【0166】
試験に登録される全ての患者は、単回用量の[68Ga]-化合物を投与される。前臨床データに基づいて、[68Ga]-化合物の推奨用量は、3MBq/kg/注射±10%であり、150MBq以上及び250MBq以下/注射である。これは、放射性核種の半減期(68Gaについて68分)、並びに良好な品質のイメージングを得るために十分であると見なされる、この初期試験において予測されるイメージング及び血液採取スケジュール(線量測定サブグループにおける投与の5時間後まで)を考慮に入れる。
【0167】
イメージング評価
・全ての患者について:
・注射の30分(±15分)、1時間(±15分)及び2時間(±30分)後の時点での静的全身[68Ga]-化合物PETイメージング、並びに
・[68Ga]-化合物PETスキャン(高分解能診断CTと共にPET/CTとしての共同取得又は高分解能MRIと共にPET/MRIとしての共同取得)の一環として、又は[68Ga]-化合物注射の前若しくは後の24時間以内に別々に取得される従来のイメージングスキャン(高分解能CT又はMRI)。
・線量測定サブグループのみについて:
・注射の0~15分後のさらなる全身動的[68Ga]-化合物PETイメージング、及び
・注射の30分~4時間後のさらなる静的全身[68Ga]-化合物PETイメージング取得。
【0168】
試験のパートAにおけるPETイメージング時点は、パートBにおける[68Ga]-化合物投与の後、イメージング取得のための最適な時間間隔を評価するために選択される。
【0169】
至適基準としての従来のイメージングは、イメージング技術([68Ga]-化合物PET及び高分解能CT/MRI)の両方の比較並びに各患者について両方の方法によって特定される同一の病変のパーセンテージ並びに[68Ga]-化合物PETのみ又は従来のイメージングで特定される不一致の病変の数及び位置を特定することを可能にする。
【0170】
約40人の患者(20人のGBM及び20人の脳転移患者)の全体的なサンプルサイズは、十分なαvβ3及びαvβ5陽性対象が、イメージング特性の初期評価及びその後の臨床試験の設計を裏付けるために利用可能であることを確実にする。
【0171】
実施例4:[177Lu]化合物のために好適な製剤の特定
製剤開発は、何らのさらなる精製工程を伴わずに177LuCl3の直接の添加に基づいて、化合物の簡単な標識を可能にすることができる反応混合物組成物を特定することを目的として行われた。
【0172】
初期の開発試験は、120時間まで十分な放射化学的純度及び安定性を有する[177Lu]Lu-FF58の溶液を一貫して生成することが可能な製剤を特定するために行われた。
【0173】
177Lu-放射性標識FF58の目標特性は、以下のとおりである:
・ 177Lu-FF58(HPLC)→≧97.0%(t0時間の時点)
・ 177Lu-FF58(HPLC)→≧95.0%(120時間まで)
・ 177Lu遊離+177Lu-DTPA(HPLC)→≦3.0%
・ 177Lu断片(HPLC)→≦3.0%
・ 177Lu遊離+177Luコロイド(iTLC)→≦3.0%
・ 177Lu-DTPA(iTLC)→≦3.0%
【0174】
最終的な製剤の主な成分は、以下のとおりである:
1.医薬品有効成分
2.酸化防止剤(ゲンチジン酸及びアスコルビン酸)
3.金属イオン封鎖剤(DTPA)
4.緩衝剤(酢酸ナトリウム及び酢酸)
【0175】
1)FF58の量及びFF58:Luモル比の調査
2ミリグラムのFF58の量が、2Ciの潜在的なバッチサイズのための200mCiの用量の調製のために選択された。
【0176】
放射化学的純度に対するFF58と177Luとの間のモル比の影響を、放射性標識製品の全ての目標特性を満たすのを可能にする値の好適な範囲を特定するために調べた。増加するナノモル比(FF58:ルテチウム)を、HPLCにおける97%を超える177Luパーセンテージ錯体形成を有するのに必要な最小量(177Lu遊離≦3%)を特定するために、標識について試験した。
【0177】
比放射能(SA)は、放射能と溶液中に存在する全てのLu同位体の和との間の比率に相当する。全てのこれらの同位体が一緒に、錯体形成についてDOTA部分と競合するため、Luの最大量、又は最小SA値を定義することが重要であり、これは、177Lu3+イオンの全配位を保証することを可能にする。
【0178】
試験を、10mCiの177LuCl3溶液を使用し、好適な量の反応緩衝液を加えて行い;放射性標識工程が終了したら、溶液を、[177Lu]Lu-FF58と同じ条件で配合した。
【0179】
以下の表に要約される結果は、1.30の比率(API:Lu)が、許容基準内の放射化学的純度をもたらす放射性同位体とのDOTA部分の錯体形成を保証するのに十分であったことを実証した。
【0180】
【0181】
1.50のモル比が、プロセスに十分な堅牢性を保証するために、開発のために選択された。この値を定義した後、2Ciバッチサイズについての化学的前駆体の目標量として2mgを考慮して、97%を超える177Lu3+の組み込みを一貫して保証するのを可能にする177LuCl3の最小比放射能が計算された。計算された最小比放射能は、10.00Ci/mgであり、安全マージンを考慮に入れて、11.00Ci/mgが選択された。
【0182】
2)酸化防止剤:アスコルビン酸ナトリウム及びゲンチジン酸の量
FF58について行われた予備試験は、分子が、放射線ストレスに対する良好な耐性を示すことを実証した。さらなる試験を、40℃の貯蔵温度及びローリング、減少する酸化防止剤(アスコルビン酸ナトリウム及びゲンチジン酸)の量などの、よりストレスの多い条件においても放射線分解を評価するために行った。放射化学的純度(RCP)を、放射性RP-HPLCによって、放出時間及び終了時間の時点で監視した。
【0183】
収集された結果が、以下の表に報告される。
【0184】
【0185】
上記の結果に基づいて、300μg/mL未満のゲンチジン酸及び40mg/mLのアスコルビン酸ナトリウムの濃度の、ゲンチジン酸及びアスコルビン酸ナトリウムが、貯蔵期間の終了の時点で95.0%の品質規格に準拠する完成製品の放射化学的純度を保証するのに十分でないことが実証される。
【0186】
合成後の中間バイアル中の製剤原料溶液の保持時間は、薬物製品の放射化学的純度(RCP)のための重要なパラメータであるため、さらなる試験を、保持を1時間まで増加して行った。
【0187】
収集された結果が、以下の表に報告される。
【0188】
【0189】
保持時間の増加にもかかわらず、上記に報告される結果は、貯蔵期間の最後までの、完成した製品の品質規格の遵守を示す。
【0190】
薬物製品中への酸化防止剤の最小量は、以下のように設定された:
- ゲンチジン酸=0.30mg/mL;
- アスコルビン酸ナトリウム=40.00mg/mL。
【0191】
目標量は、以下のように設定された:
- ゲンチジン酸=0.39mg/mL;
- アスコルビン酸ナトリウム=50.00mg/mL。
【0192】
実施例5:最終的な製剤及び詳細な組成物
実施例4に記載される結果に基づいて、2Ciバッチサイズプロセスの検証活動のために選択される[177Lu]Lu-FF58製剤は、以下である:
【0193】
【0194】
製剤は、試験され、十分な放射化学的純度及び安定性を有する[177Lu]Lu-FF58を一貫して生成することが実証された。
【0195】
結果が、以下に報告される:
表は、[177Lu]Lu-FF58 2Ciバッチについて得られた放射化学的純度の結果を要約する。
【0196】
【国際調査報告】