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特表2024-500831バッテリ充電システムにおける接地抵抗を測定するための方法および装置
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  • 特表-バッテリ充電システムにおける接地抵抗を測定するための方法および装置 図1
  • 特表-バッテリ充電システムにおける接地抵抗を測定するための方法および装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】バッテリ充電システムにおける接地抵抗を測定するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20231227BHJP
   G01R 27/02 20060101ALI20231227BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231227BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
G01R19/00 L
G01R27/02 E
H02J7/00 S
H02J7/00 Q
H02H7/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537512
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-11
(86)【国際出願番号】 IB2021061923
(87)【国際公開番号】W WO2022137054
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】102020000031625
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514132486
【氏名又は名称】エルドル コーポレイション エセ.ペー.アー.
【住所又は居所原語表記】Via Don Paolo Berra 18, 22030 Orsenigo (Como),Italy
(71)【出願人】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(72)【発明者】
【氏名】フォルテ,パスクアレ
(72)【発明者】
【氏名】モルスタビリニ,ラウル
(72)【発明者】
【氏名】ポーリ,アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ピッコリ,クラウディオ
【テーマコード(参考)】
2G028
2G035
5G053
5G503
【Fターム(参考)】
2G028AA05
2G028BE04
2G028BE05
2G028BF01
2G028CG05
2G028DH05
2G028FK01
2G028GL10
2G028GL11
2G035AA08
2G035AB03
2G035AC04
2G035AD20
2G035AD28
2G035AD51
2G035AD55
2G035AD59
5G053AA06
5G053BA04
5G053BA05
5G053CA01
5G053FA05
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503DA08
5G503EA09
5G503FA06
5G503FA14
(57)【要約】
バッテリ充電システムにおける接地抵抗を測定する方法であって、第1の中性ノード(N)と第2の接地ノード(PE)との間に交流の測定信号を注入するステップと、第1のノード(N)と第2のノード(PE)との間の電位差を表す電圧信号を検出するステップと、電圧信号を処理して測定信号の周波数に等しい周波数とそれに相関する位相とを有する第1の信号を抽出するステップと、測定信号と第1の信号の基準値との間の比の関数として接地抵抗値を計算するステップと、を含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリッド(G)に接続された、または接続可能であるバッテリ充電システムであって、前記グリッド(G)によってもたらされる交流を、バッテリパック(6)を充電するために使用可能な直流に変換するように構成されたコンバータアセンブリ(4)を備えたバッテリ充電システムにおける接地抵抗を測定する方法であって、
‐グリッド電圧を表す電圧信号を検出するステップと、
‐前記電圧信号が最小値またはゼロ値を有する自由周波数範囲を特定するステップと、
‐第1の中性ノード(N)と第2の接地ノード(PE)との間に交流の測定信号を注入するステップであって、前記測定信号は、前記自由範囲内でプリセット持続時間およびプリセット周波数を有するステップと、
‐前記第1のノード(N)と前記第2のノード(PE)との間の電位差を表す電圧信号を検出するステップと、
‐前記プリセット周波数に等しい周波数と前記測定信号の位相に相関する位相とを有する第1の信号を抽出するために前記電圧信号を処理するステップと、
‐前記測定信号を識別する識別値と前記第1の信号の対応する基準値との間の比の関数として接地抵抗値を計算するステップと、を含む方法。
【請求項2】
‐前記第1の信号を周波数領域に変換するステップと、
‐前記プリセット周波数に等しい周波数値で前記基準値を識別するステップと、を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の信号の前記位相は、前記測定信号の前記位相と等しい、または前記測定信号の前記位相と経時的に一定に異なる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記処理するステップは、
‐前記電圧信号と基準信号を乗算し、前記電圧信号の周波数と前記基準信号の周波数との和に等しい第1の周波数成分と、前記電圧信号の周波数と前記基準信号の周波数との差に等しい第2の周波数成分とを含む派生信号を得ることと、
‐得られた前記派生信号をフィルタリングして、前記派生信号の前記第1の成分または第2の成分のみを抽出することと、を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記識別値は、前記測定信号の振幅に対応する少なくとも1つのパラメータによって規定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記測定信号は、各電流サイクル内で限界平均値を有し、前記測定信号を注入するステップは、前記測定信号を識別する前記識別値が前記限界平均値と適合する最大値を有するように、前記測定信号の前記プリセット持続時間および前記識別値を変調することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
グリッドノイズ分析ステップを含み、前記グリッドノイズ分析ステップでは、
‐ピークノイズ値は所定の時間間隔内で検出され、
‐前記測定信号の前記プリセット持続時間および前記識別値は前記ピークノイズ値に従って変調される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の接地ノード(PE)は、選択的に、
‐物理グリッドノード、
‐地電位に対応する電位を持ち且つ前記第1の中性ノード(N)および前記相(L1、L2、L3)と電気的に導通している再構築された仮想ノード、であり得る、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
バッテリ充電システムを保護する方法であって、
‐請求項1から8のいずれか一項に記載の測定方法を実行することによって充電装置(100)における接地抵抗を測定するステップと、
‐前記接地抵抗値を接地抵抗の基準限界値と比較するステップと、
‐前記接地抵抗値が前記接地抵抗の前記基準限界値を超える場合、前記充電装置(100)の前記コンバータアセンブリ(4)を前記グリッド(G)から絶縁するステップと、を含む方法。
【請求項10】
バッテリ充電システムにおける接地抵抗を測定するための装置であって、
前記充電システムは、グリッド(G)に接続されている、または接続可能であり、前記グリッド(G)によってもたらされる交流を、バッテリパック(6)を充電するために使用可能な直流に変換するように構成されたコンバータアセンブリ(4)を備えており、前記測定するための装置は、
‐第1の中性ノード(N)と第2の接地ノード(PE)の間において前記グリッド(G)に交流の測定信号を生成して注入するように構成された可変振幅および周波数を有する電流発生器(2)と、
‐前記第1のノード(N)と前記第2のノード(PE)の間の電位差を表す電圧信号を検出するように構成された電圧検出モジュール(3)と、
‐処理ユニット(10)であって、
‐前記電流発生器(2)を作動させて、前記第1の中性ノード(N)と前記第2の接地ノード(PE)との間に交流の測定信号であって、プリセット周波数およびプリセット持続時間を有する測定信号を注入し、
‐前記測定信号の注入に応答して、前記検出モジュール(3)から電圧信号を受信し、
‐前記プリセット周波数に等しい周波数と前記測定信号の位相に相関する位相とを有する第1の信号を前記電圧信号から抽出するように構成された増幅器モジュール(11)によって前記電圧信号を処理し、
‐前記測定信号を識別する値と前記第1の信号の対応する基準値との間の比の関数として接地抵抗値を計算する、ように構成された処理ユニット(10)と、を備える装置。
【請求項11】
前記検出モジュール(3)は、可変利得タイプのものである、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記増幅器モジュール(11)は、ロックイン増幅器である、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
バッテリ充電システムを保護するための装置であって、
前記充電システムは、グリッド(G)に接続されており、または接続可能であり、前記グリッド(G)によってもたらされる交流を、バッテリパック(6)を充電するために使用可能な直流に変換するように構成されたコンバータアセンブリ(4)を備え、前記保護するための装置は、
‐請求項10から12のいずれか一項に記載の測定装置(1)と、
‐前記測定装置(1)に結合され且つソケット(9)を前記コンバータアセンブリ(4)に電気的に接続する閉状態と、接続を開いて前記ソケット(9)を前記コンバータアセンブリ(4)から電気的に解放する開状態との間で選択的に切り替えることができるスイッチアセンブリ(8)と、を備え、
前記処理ユニット(10)は、前記接地抵抗値が限界値よりも大きい場合に、前記スイッチアセンブリ(8)を前記閉状態から前記開状態に切り替えるように構成されている、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ充電システム、好ましくは走行用(自動車)バッテリにおける接地抵抗を測定するための方法および装置に関する。
【0002】
したがって、本発明は、自動車分野、特に電池用の充電システムの設計および構築に主に適用される。
【背景技術】
【0003】
実際、電気自動車の分野では、バッテリパックの充電モードは、車載充電器と地上充電器という2つの異なるそれぞれのマクロカテゴリに分類される。
【0004】
「車載充電器」は、その名前が示すとおり、車両に組み込まれており、グリッドからの交流をバッテリパックの再充電に必要な直流に変換するために必要なすべての電源および制御電子機器を含む。
【0005】
一方、「地上」充電器は、車両に直流を供給することにより変換を直接もたらす通常の「コラム」またはウォールボックスである。
【0006】
したがって、両方のカテゴリのバッテリ充電器には、ユーザの安全の観点から重大な問題があり、当該バッテリ充電器は、適切な保護システムを装備しなければならないと思われる。当該バッテリ充電器は、グリッドによってもたらされる交流を管理し且つ高電圧バッテリを再充電するために当該交流を直流に変換しなければならないからである。
【0007】
これは、バッテリ充電器が交流配線との直接(且つ非誘導)電気接続を有する非絶縁車載充電システムの構築においてさらに重要である。
【0008】
安全システムに関連する主な研究分野の1つは、車両またはコラムが正しく「アースに接続されている」かどうかを確認することであり、これは、場合によっては、グリッドに電流信号を注入し、適切なコンピュータによる計算を通して結果として生じる電圧を測定し、その接地抵抗を計算することによって実行される。
【0009】
しかしながら、不利なことに、この方法には欠点がないわけではない。その有効性は境界状態、すなわちノイズグリッド状態に密接に関係しているからである。
【0010】
配電システムにおいては、最も多様な用途を持つ同一の変電所に多数のユーザが接続していることを考慮すると、電流信号の生成に使用される周波数が既に非常に重大な外乱によって占有されているということは珍しいことではない。
【0011】
場合によっては、測定に使用できる電流強度が1mA強に制限されるという厳しい規制上の制約があるので、検出された電圧信号のどの成分が注入信号と相関しているのか、およびどの成分がノイズ成分であるのかを決定することは現実的に困難である。
【発明の概要】
【0012】
したがって、本発明の目的は、従来技術の上述の欠点を克服できる、バッテリ充電システムにおける接地抵抗を測定するための方法および装置を提供することである。
【0013】
特に、本発明の目的は、ノイズレベルの異なる配電システムに対して効率を損なうことなく適応できる、信頼性が高く且つ汎用性が高い、バッテリ充電システムにおける接地抵抗を測定するための方法および装置を提供することである。
【0014】
前記目的は、後続の特許請求の範囲の請求項の1つまたは複数の特徴を有するバッテリ充電システムにおける接地抵抗を測定するための方法および装置によって達成される。
【0015】
特に、本方法は、グリッドの第1の中性ノードと第2の接地ノードとの間に交流の測定信号を注入(または生成)することを含む。
【0016】
好ましくは、測定信号は、プリセット周波数およびプリセット持続時間を有する。
【0017】
したがって、前記第1のノードと前記第2のノードとの間の電位差を表す電圧信号が検出される。
【0018】
したがって、本発明によれば、電圧信号は、前記プリセット周波数に等しい周波数および前記測定信号の位相に相関する位相を有する第1の信号を抽出するように処理される。
「~に相関する位相」という用語は、第1の信号が前記測定信号に対して経時的に一定である、またはゼロである位相シフトを有することを規定することを意図していることに留意されたい。
【0019】
言い換えれば、測定信号またはその周波数を知ることによって、検出されるべき電圧信号がどの周波数を持つべきかを判定することが可能であり、これは、同一周波数のノイズ成分とは異なり、測定信号に密接に関連しているので、それに対して時間の経過とともに同一の位相シフトを維持することになり、したがって、その抽出を可能にする。
【0020】
この時点で、電圧信号がわかれば、測定信号を識別する値と前記第1の信号の基準値との間の比の関数として接地抵抗値を計算することが可能である。
【0021】
明らかに、配電システムは交流であるので、回路の静電容量および等価インピーダンスも考慮して抵抗を計算する必要がある。
【0022】
しかしながら、本発明のさらなる態様によれば、これまでに説明した測定方法は、バッテリ充電システムを保護する方法の基礎として使用でき、これも本発明の(独立した)目的である。
【0023】
実際、本保護方法には、測定/計算された接地抵抗値を、それを基準限界値と比較するための基礎として使用すること、その後、接地抵抗値が基準限界値を超える場合にバッテリ充電器のコンバータアセンブリをグリッドから絶縁することが含まれる。
【0024】
好ましくは、基準限界値は300オーム未満に設定され、より好ましくは約200オームに設定される。
【0025】
本発明のさらなる目的は、これまでに説明した方法を実行するように構成された処理ユニットを備えた、バッテリ充電システムにおける接地抵抗を測定するための装置である。
【0026】
参照により本明細書に組み込まれる従属請求項は、本発明の種々の実施形態に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付図面に示されるように、バッテリ充電システムにおける接地抵抗を測定するための方法および装置の好ましいが排他的ではない実施形態の例示的な、したがって非限定的な説明からより明らかになる。
図1】本発明による保護装置を備えた車載充電装置の構造を概略的に示す。
図2】本発明による接地抵抗を測定する測定装置の構造を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付図面を参照すると、参照番号1は、本発明によるバッテリ充電システムにおける接地抵抗を測定するための装置を全体的に示す。
【0029】
以下では、単に一例として、車載充電装置100内の接地抵抗を測定するための装置1について説明する。実際、この説明は本発明の用途および範囲を限定することを意図したものではない。
【0030】
コラムまたはウォールボックスなどの地上充電システムについても同様の説明が可能であるが、車両では接地抵抗の測定がより重要であるので、以下では、本発明がより大きな利点を見出すことができる用途の説明を提供することを優先している。
【0031】
本明細書での車載充電装置100という用語は、ACグリッドに接続でき、バッテリに電力を供給する前に直流に変換できる走行用バッテリパック6用の任意の充電システムを一般に規定することを意図している。
【0032】
このため、充電装置100は、グリッドGに接続するための接続ソケット9と関連付けられた(アースに接続された)少なくとも1つのケーシングCであって、グリッドGによってもたらされる交流を、バッテリパック6を再充電するために使用可能な直流に変換するように構成されたコンバータアセンブリ4を収容するケーシングCを備える。
【0033】
したがって、接続ソケット9は、三相L1、L2、L3および中性線Nの両方を受け入れるように構成される。
【0034】
好ましくは、充電装置100は、電流入力ラインに沿って、すなわち、接続ソケット9とコンバータアセンブリ4との間に配置された少なくとも1つの電磁外乱フィルタ要素をさらに備える。
【0035】
より好ましくは、電磁外乱フィルタ要素は2つあり、第1のフィルタ要素5は(交流)電流入力ラインに沿って、第2のフィルタ要素7は(直流)電流出力ラインに沿って、すなわち、コンバータアセンブリ4とバッテリパック6との間にある。
【0036】
好ましい実施形態では、充電装置100は非絶縁型である、すなわち、バッテリと配電システムとの間に物理的(すなわち、非誘導)接続を提供する。
【0037】
好ましくは、このタイプの装置100では、コンバータアセンブリ4は、少なくとも1つの昇圧モジュールおよび少なくとも1つの降圧モジュールを備える。
【0038】
好ましい実施形態では、コンバータアセンブリ4は以下を備える、すなわち、
‐グリッドGによってもたらされる交流を直流に変換するように構成された第1の変換ステージ(またはAC‐DCコンバータ)、
‐充電ステージであって、好ましくはキャパシタバンクによって規定され、第1の変換ステージの下流に動作可能に配置され且つその出力を受信することによって充電されるように構成された充電ステージ、
‐バッテリパック6に送られる直流のレベルを変調するように構成された第2の変換ステージ(またはDC‐DCコンバータ)、を備える。
【0039】
好ましい実施形態では、前述したように、充電装置100は非絶縁型であるので、第2の変換ステージはバッテリパックに直接接続される(すなわち、変換/誘導ステージなし)。
【0040】
本発明の一態様によれば、本発明の別の目的として、接地抵抗は充電装置100に関連付けられる。
【0041】
測定装置1は、前記抵抗を測定することによって接地の問題を検出するように構成される。
【0042】
この測定装置1は、第1の中性ノードNと第2の接地ノードPEとの間においてグリッドGに交流の測定信号を生成して注入するように構成された可変振幅および周波数(および場合によっては位相)を有する電流発生器2を備える。
【0043】
第1のノードNと第2のノードPEとの間の電位差を表す電圧信号を検出するように構成された電圧検出モジュール3も提供される。
【0044】
特に、検出モジュール3は、好ましくは、電流発生器2による測定信号の注入または生成に続いて電圧信号を検出するように構成される。
【0045】
さらに、この検出モジュール3は、好ましくは、可変利得タイプのものであり、利得を変更し、したがって電圧信号の識別値(例えば、振幅)をそのノイズレベルの関数として変更するように構成される。
【0046】
好ましい実施形態では、検出モジュール3は、前記電圧信号のモジュールを表す整流信号を生成するように構成されたピーク整流器、好ましくは二重半波タイプのピーク整流器を備える。
【0047】
構成された処理ユニット10を備える前記測定装置1はまた、予め定められた時間間隔内で前記整流信号のピーク値を識別するように構成される。
【0048】
前記処理ユニット10はさらに、前記ピーク値の関数として測定信号の前記識別値(例えば、振幅)を増幅または減衰させるように構成される。
【0049】
したがって、より好ましくは、処理ユニット10は、ピーク値が増加するにつれて前記識別値(例えば、振幅)を減少させるように構成され、またその逆も同様である。
【0050】
測定装置1は、前記検出モジュール3および前記電流発生器2に関連付けられた増幅器モジュール11をさらに備える。
【0051】
前記増幅器モジュール11は、前記測定信号に対応する周波数およびそれに相関する位相を有する第1の信号を抽出するために、前記測定信号に基づいて前記電圧信号を処理するように構成される。
【0052】
「~に相関する位相」という用語は、第1の信号が前記測定信号に対して経時的に一定である、またはゼロである位相シフトを有することを規定することを意図していることに留意されたい。
【0053】
好ましい実施形態では、増幅器モジュール11はロックイン増幅器(または位相感応検出器)であり、完全にハードウェアコンポーネントで、または好ましくはソフトウェア機能によって規定されるアーキテクチャの少なくとも一部で作ることができる。
【0054】
このロックイン増幅器は、乗算器(基準信号とノイズ信号)と、その後に、抽出される信号の周期よりも長い積分周期を持つローパス積分フィルタと、を備える。
【0055】
正弦関数は直交しているので、この処理の結果は、以下の場合、nullとなる、すなわち、
‐抽出された信号および搬送波が異なる周波数を持つ場合、
‐それらが同一の周波数を持ち、位相が90°ずれている場合、nullとなる。
【0056】
代わりに、それらが等周波数である、または、ある一定の角度だけ位相がずれている場合、結果はゼロ以外の値を持ち、一定となる。
【0057】
逆に、信号が等周波数成分を持つが、位相が連続的に変化する場合、結果も連続的に変化する。
【0058】
したがって、これにより、所定の周波数で(連続的に変化する位相を有する)ノイズ成分、または測定信号に関連する(前述のように、測定信号に対して経時的に一定に相関する、等しい、または位相シフトされた位相を有する)成分が検出されるかどうかを識別することが可能になる。
【0059】
あるいは、増幅器モジュール11は、位相ロックループであって、やはり乗算器およびフィルタを備えるが、その後に制御発振器が続く位相ロックループを備えてもよい。
【0060】
これに関して、測定装置1の処理ユニット10はまた、測定信号を識別する値と前記第1の信号の基準値との間の比の関数として接地抵抗値を計算するように構成されることに留意されたい。
【0061】
好ましくは、測定装置1の処理ユニット10は、測定信号を表すパラメータを識別する値と第1の信号の同一のパラメータの基準値との間の比の関数として接地抵抗値を計算するように構成される。
【0062】
一実施形態では、前記パラメータは信号の振幅によって規定される。あるいは、時間領域信号の値またはさらに別のパラメータであり得る。
【0063】
より好ましくは、処理ユニットは、第1の信号を周波数領域に変換し、周波数スペクトルにおいて測定信号のプリセット周波数に対応するものを識別し、前記基準値がプリセット周波数の電圧信号の値に対応することを判定するように構成される。
【0064】
したがって、言い換えれば、処理ユニット10は、本発明の(独立した)目的でもある、接地抵抗を測定するための方法を実行するように構成される。
【0065】
したがって、本方法は、第1の中性ノードNと第2の接地ノードPEとの間に交流の測定信号を注入(または生成)することを含む。
【0066】
測定信号は、測定装置1の電流発生器2によって生成され、上述の2つのノード間に注入される。
【0067】
第2の中性ノードPEは、選択的に、
‐物理グリッドノード(すなわち、接続ソケット9の中性線に直接接続されたノード)、
‐地電位に対応する電位を持ち且つ第1の中性ノードNおよび位相と電気的に導通している再構築された仮想ノード、であってもよいことに留意されたい。
【0068】
さらに、グリッドノイズ分析が、好ましくは、位相測定信号の生成または注入に先立って実行される。
【0069】
このグリッドノイズ分析ステップは、グリッド電圧を表す電圧信号を検出すること、前記電圧信号が最小値またはゼロ値(例えば、最小またはゼロ振幅)を有する自由周波数範囲を識別することを含む。
【0070】
したがって、好ましくは、測定実行中の外乱の低減を最大限にするために、測定信号のプリセット周波数は自由範囲内にある。
【0071】
さらに、好ましくは、測定信号は、基準時間間隔内に限界平均値を有する。
【0072】
言い換えれば、電流規制は、通常の使用中に触れてはいけない金属部品に、各電流サイクルの限界値を超えない電流(通常、グリッド周波数に応じて20msecまたは16.6msecごとに3.5mARMSと見なされる)を、人体を通じて、生じさせてはいけない接触電圧を持たせることを規定している。
【0073】
この限界値の一部は、一部の電子部品の動作に必要であることを考慮すると、測定信号の生成に利用できるのは、限界値と使用部分との差だけである。
【0074】
したがって、好ましい実施形態では、測定信号の単一電流サイクル内の限界平均値は、約1mA RMSとして定量化できる。
【0075】
好ましくは、したがって、限界平均値は限界平均振幅である。
【0076】
注入された信号を、単一のグリッド変電所に接続された多数の負荷のために通常非常に高いグリッドノイズから、より識別可能にするために、測定信号注入ステップは、好ましくは、識別値が前記限界平均値に適合する最大値を有するように、識別値および予め定められた時間間隔を変調することを含む。
【0077】
言い換えれば、信号をより見やすくするために識別値を増幅する必要が生じた場合、本方法は、平均値を限界値より低く保つように、時間間隔をグリッドの電流サイクルの何分の一かに短縮する(任意付加的な)可能性を含む。
【0078】
好ましくは、本方法は、次いで、前記第1のノードNと前記第2のノードPEとの間の電位差を表す電圧信号を検出することを含む。
【0079】
次いで、この電圧信号は、前記プリセット周波数に等しい周波数および前記測定信号の位相に相関する位相を有する第1の信号を抽出するように処理される。
【0080】
「~に相関する位相」という用語は、第1の信号が前記測定信号に対して経時的に一定である、またはゼロである位相シフトを有することを規定することを意図していることに留意されたい。
【0081】
したがって、有利なことに、測定信号を知ることによって、検出されるべき電圧信号がどの周波数を持つべきかを判定することが可能であり、これは、同一周波数のノイズ成分とは異なり、測定信号に密接に関連しているので、それに対して時間の経過とともに同一の位相シフトを維持することになり、したがって、その抽出を可能にする。
【0082】
好ましい実施形態では、この抽出ステップは、ロックイン増幅器で使用されるものと同様の増幅およびフィルタ手順によって実行される。
【0083】
より正確には、この電圧信号処理ステップは、
‐電圧信号と基準信号を乗算し、電圧信号の周波数と基準信号の周波数との和に等しい第1の周波数成分と、電圧信号の周波数と基準信号の周波数との差に等しい第2の周波数成分とを含む派生信号を得ることと、
‐得られた派生信号をフィルタリングして、前記派生信号の第1の成分または第2の成分のみを抽出することと、を含む。
【0084】
有利には、このようにして、非常にノイズの多い環境内で、測定信号の注入によって測定される唯一の電圧成分を識別することが可能となり、したがって接地抵抗の測定が可能になる。
【0085】
この接地抵抗は、実際には、測定信号を識別する値と第1の信号の基準値との間の比の関数として計算される。
【0086】
既に上で述べられたように、前記基準値は、(周波数領域で評価された)測定信号のプリセット周波数の電圧信号値によって規定される。好ましくは、上述されたように、基準値は、測定信号のプリセット周波数の電圧信号振幅に対応する。
【0087】
さらに、有利なことに、接地抵抗を測定するためのこの方法および装置は、本発明の(独立した)目的でもある、充電装置を保護するための方法および装置内で使用され得る。
【0088】
実際、これまでに説明した測定方法に従うことによって、接地抵抗値を基準限界値(好ましくは300オーム未満)と比較し、前記接地抵抗値が前記基準限界値を超える場合、充電装置1のコンバータアセンブリ4をグリッドGから絶縁することが可能である。
【0089】
構造的には、これを行うために、充電装置1は、測定装置1に組み付けられたスイッチアセンブリ8を備えており、当該スイッチアセンブリ8は、ソケット9をコンバータアセンブリ4に電気的に接続する閉状態と、接続を開いてソケット9(したがってグリッドG)をコンバータアセンブリ4から(したがってバッテリパック6から)電気的に解放する開状態との間で、選択的に切り替えることができる。
【0090】
本発明は、意図された目的を達成し、重要な利点を提供する。
【0091】
実際、「ノイズの多い」電圧信号を(好ましくは増幅器によって)適切に処理することによって、グリッドのノイズレベルに関係なく、唯一の関連情報を選択的に抽出できる。
【0092】
言い換えれば、この解決策は、接地抵抗を検出し、あらゆる種類のグリッドおよびノイズ条件に対してシステムの安全性を高める可能性を保証する。
図1
図2
【国際調査報告】