(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(54)【発明の名称】抗原特異的T細胞を惹起するように操作された細菌
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20231227BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20231227BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20231227BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231227BHJP
A61P 13/00 20060101ALI20231227BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231227BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20231227BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231227BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231227BHJP
C07K 14/195 20060101ALI20231227BHJP
C12N 9/52 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
A61K35/74 A
A61P1/04
A61P11/00
A61P13/00
A61P17/00
A61P37/02
C12N1/21 ZNA
C07K19/00
C07K14/195
C12N9/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537533
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-20
(86)【国際出願番号】 US2021065011
(87)【国際公開番号】W WO2022140640
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520091661
【氏名又は名称】チャン ザッカーバーグ バイオハブ, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】フィッシュバック, マイケル エー.
(72)【発明者】
【氏名】永島 一樹
(72)【発明者】
【氏名】チェン, イーイン イー.
(72)【発明者】
【氏名】ボウスベイン, ジェネット
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA23X
4B065AA24X
4B065AA53X
4B065AA90Y
4B065AB01
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4C087AA01
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4C087BC55
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4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA59
4C087ZA68
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4C087ZB07
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA11
4H045CA41
4H045DA86
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
非天然抗原を発現するかまたは非天然抗原で表面標識されている改変された微生物、例えば、生きている組換え共生細菌、および改変された微生物を使用して非天然抗原に対する抗原特異的免疫応答を誘導する方法が、提供される。改変された微生物は、それを必要とする対象における自己免疫疾患を処置するために、異種抗原に対する調節性T細胞免疫応答を誘導するために使用することができ、またはそれを必要とする対象における感染性疾患または増殖性疾患を処置するために、異種抗原に対するエフェクターT細胞免疫応答を誘導するために使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融合タンパク質を発現するように操作された、生きている組換え共生細菌であって、前記融合タンパク質が、
(a)非天然天然タンパク質またはペプチドと、
(b)(i)tatシグナル配列ペプチド、secシグナル配列ペプチド、もしくはソルターゼ由来シグナル配列ペプチド、および/もしくは抗原提示細胞(APC)標的化部分、または(ii)tatシグナル配列ペプチド、secシグナル配列ペプチド、もしくはソルターゼ由来シグナル配列ペプチドと
を含み、
宿主への前記細菌の投与が、前記細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成、および前記非天然タンパク質またはペプチドに対する前記宿主による適応免疫応答の生成をもたらす、生きている組換え共生細菌。
【請求項2】
前記非天然タンパク質またはペプチドが、
(i)がん;
(ii)自己免疫障害;および
(iii)前記宿主の粘膜境界部で生じるまたは前記粘膜境界部に別様に関連している感染
からなる群から選択される宿主疾患または状態に関連している、請求項1に記載の生きている組換え共生細菌。
【請求項3】
前記シグナル配列ペプチドが、
(i)前記細菌の細胞壁への発現された融合タンパク質の繋留を指向するか、または
(ii)発現後に前記細菌からの前記融合タンパク質の分泌を指向する、
請求項1または2に記載の生きている組換え共生細菌。
【請求項4】
前記tatシグナル配列ペプチドが、Staphylococcus aureusのfepBに由来する配列を含み、前記secシグナル配列ペプチドが、予測sec分泌Staphylococcus epidermidisタンパク質(遺伝子座HMPREF9993_06668)に由来する配列を含み、または前記ソルターゼ由来シグナル配列ペプチドが、S.aureusのプロテインAに由来する1つもしくは複数の配列を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の生きている組換え共生細菌。
【請求項5】
前記シグナル配列ペプチドが、前記非天然タンパク質またはペプチドのN末端側に融合されており、前記融合タンパク質が、前記非天然タンパク質またはペプチドのC末端側に細胞壁貫通ペプチドドメインを含む、請求項3または4に記載の生きている組換え共生細菌。
【請求項6】
前記APC標的化部分が、CD11bまたはMHCII標的化部分を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の生きている組換え共生細菌。
【請求項7】
前記天然宿主ニッチが、胃腸管、気道、尿生殖路、および皮膚からなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の生きている組換え共生細菌。
【請求項8】
前記適応免疫応答が、投与部位および/または前記天然宿主ニッチから遠位の適応免疫応答である、請求項1から7のいずれか一項に記載の生きている組換え共生細菌。
【請求項9】
前記遠位の適応免疫応答が、前記投与部位および/または前記天然宿主ニッチの器官でない器官における免疫応答を含み、必要に応じて、前記投与部位および/または前記天然宿主ニッチが、皮膚を含む、請求項8に記載の生きている組換え共生細菌。
【請求項10】
前記遠位の適応免疫応答が抗腫瘍応答を含み、必要に応じて、前記抗腫瘍応答が転移を標的とする、請求項8に記載の生きている組換え共生細菌。
【請求項11】
前記天然宿主ニッチの前記コロニー形成が、持続的または一時的である、請求項1から10のいずれか一項に記載の生きている組換え共生細菌。
【請求項12】
前記天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、コロニー形成が、少なくとも60日間、少なくとも112日間、少なくとも178日間、少なくとも180日間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、または少なくとも5年間のコロニー形成である、請求項11に記載の生きている組換え共生細菌。
【請求項13】
前記持続的コロニー形成が、持続的抗原源を提供し、必要に応じて、前記抗原が、抗原特異的T細胞集団を刺激し、持続的な抗原特異的T細胞集団を生じさせる、請求項11または12に記載の生きている組換え共生細菌。
【請求項14】
前記天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、コロニー形成が、1日~60日間、3.5日~60日間、または7日~28日間のコロニー形成である、請求項11に記載の生きている組換え共生細菌。
【請求項15】
前記融合タンパク質が、天然細菌タンパク質またはその一部のN末端またはC末端に融合した前記非天然タンパク質またはペプチドを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の生きている組換え共生細菌。
【請求項16】
高複雑度の規定された微生物群落と組み合わせて投与するために製剤化されている、請求項1から15のいずれか一項に記載の生きている組換え共生細菌。
【請求項17】
(i)Staphylococcus epidermidis、Faecalibacterium sp.、Corynebacterium spp.、Eubacterium limosum、Ruminococcaceae bacterium cv2、Clostridium sp.、Clostridium bolteae 90B3、Clostridium cf.saccharolyticum K10、Clostridium symbiosum WAL-14673、Clostridium hathewayi 12489931、Ruminococcus obeum A2-162、Ruminococcus gnavus、Butyrate-producing bacterium SSC/2、Clostridium sp.ASF356、Coprobacillus sp.D6 cont1.1、Eubacterium sp.3_1_31 cont1.1、Erysipelotrichaceae bacterium 21_3、Ruminococcus bromii L2-63、Firmicutes bacterium ASF500、Firmicutes bacterium ASF500、Bifidobacterium animalis subsp.lactis ATCC 27673、Bifidobacterium breve、Cutibacterium acnes、Cutibacterium avidum、Dolosigranulum pigrum、Finegoldia magna、Rothia mucilaginosa、Streptococcus pyogenes、Streptococcus agalactiae、Streptococcus gordonii、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus jensenii Gasser、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus iners、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus casei、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus salivarius、Bifidobacterium longum、Gardnerella vaginalis、Atopobium vaginae、Mobiluncus mulieris、Mageeibacillus indolicus、Enterococcus faecium、およびLactococcus lactisからなる群から選択されるグラム陽性細菌であり、必要に応じて、S.epidermidis NIHLM087であるか;または
(ii)Bacteroides thetaiotaomicron、Helicobacter hepaticus、Parabacteroides sp.、Moraxella catarrhalis、Moraxella nonliquefaciens、Haemophilus influenzae、Haemophilus aegyptius、Neisseria lactamica、Neisseria cinerea、Neisseria Mucosa、Veillonella parvula、Prevotella bivia、Prevotella buccalis、Gardnerella vaginalis、およびMobiluncus mulierisからなる群から選択されるグラム陰性細菌である、
請求項1から16のいずれか一項に記載の生きている組換え共生細菌。
【請求項18】
対象における疾患または状態を処置する方法であって、異種抗原を発現するように操作された、生きている組換え共生細菌を、対象に投与するステップを含み、前記発現された異種抗原が、前記対象における前記疾患または状態を処置するための抗原特異的免疫応答を誘導する、方法。
【請求項19】
対象における疾患または状態を処置する方法であって、請求項1から17のいずれか一項に記載の生きている組換え共生細菌を対象に投与するステップを含み、前記非天然タンパク質またはペプチドに対する前記適応免疫応答によって前記対象における前記疾患または状態が処置される、方法。
【請求項20】
前記投与が、局所経路、経腸経路、非経口経路および吸入経路からなる群から選択される経路による投与である、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
1つまたは複数の追加の薬剤を共投与するステップをさらに含み、必要に応じて、前記1つまたは複数の追加の薬剤が、1つまたは複数のチェックポイント阻害剤を含む、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1から17のいずれかに記載の生きている組換え共生細菌を含む医薬組成物。
【請求項23】
(a)CD4+T細胞応答を惹起するように操作されている第1の非天然タンパク質またはペプチドと、
(b)CD8+細胞傷害性T細胞応答を惹起するように操作されている第2の非天然タンパク質またはペプチドと
を発現するように操作されている、生きている組換え共生細菌であって、
宿主への前記細菌の投与が、前記細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成をもたらす、生きている組換え共生細菌。
【請求項24】
(a)第1の非天然タンパク質またはペプチドを発現するように操作されており、前記第1の非天然タンパク質またはペプチドがCD4+T細胞応答を惹起するように操作されている、第1の生きている組換え共生細菌と、
(b)第2の非天然タンパク質またはペプチドを発現するように操作されており、前記第2の非天然タンパク質またはペプチドがCD8+細胞傷害性T細胞応答を惹起するように操作されている、第2の生きている組換え共生細菌と
を含む組成物であって、
宿主への前記組成物の投与が、前記第1の生きている組換え共生細菌および前記第2の生きている組換え共生細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成をもたらす、組成物。
【請求項25】
前記第1の非天然タンパク質またはペプチド、および前記第2の非天然タンパク質またはペプチドが、各々、共通抗原または異なる抗原に由来し、必要に応じて、前記第1の非天然タンパク質またはペプチド、および前記第2の非天然タンパク質またはペプチドが、前記共通抗原に由来する場合に、前記第1の非天然タンパク質またはペプチド、および前記第2の非天然タンパク質またはペプチドが、異なるアミノ酸配列を含む、請求項23に記載の生きている組換え共生細菌または請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記第1の非天然タンパク質またはペプチドが、発現後に前記第1の生きている組換え共生細菌からの前記非天然タンパク質またはペプチドの分泌を指向するシグナル配列ペプチドを含み、および/または前記第2の非天然タンパク質またはペプチドが、発現後に前記第2の生きている組換え共生細菌の細胞壁への前記第2の非天然タンパク質またはペプチドの共有結合を指向する第2のシグナル配列ペプチドを含む、請求項23もしくは25に記載の生きている組換え共生細菌または請求項24もしくは25に記載の組成物。
【請求項27】
宿主における疾患または状態を処置する方法であって、請求項23、25もしくは26のいずれか一項に記載の生きている組換え共生細菌、または請求項24から26のいずれか一項に記載の組成物を、前記宿主に投与するステップを含み、惹起されたCD4+T細胞応答およびCD8+細胞傷害性T細胞応答によって前記宿主における前記疾患または状態が処置される、方法。
【請求項28】
(a)細胞表面繋留部分と非天然タンパク質またはペプチドとを含む融合タンパク質と、(b)細菌と、(c)前記細菌の細胞壁タンパク質または外膜タンパク質への前記細胞表面繋留部分の共有結合を触媒でき、それによって細菌表面に前記融合タンパク質を呈示できるタンパク質またはそれをコードする遺伝子とを含む細菌表面ディスプレイシステム。
【請求項29】
(a)細胞表面繋留部分と非天然タンパク質またはペプチドとを含む融合タンパク質と(b)細菌とを含む細菌表面ディスプレイシステムであって、前記融合タンパク質が、前記細胞表面繋留部分によって細胞壁タンパク質または外膜タンパク質に共有結合されており、前記共有結合が、前記細菌の前記細胞壁タンパク質または外膜タンパク質への前記細胞表面繋留部分の結合を触媒できるタンパク質により触媒された、細菌表面ディスプレイシステム。
【請求項30】
前記細胞表面繋留部分が、ソルターゼA(SrtA)モチーフを含み、前記共有結合を触媒できる前記タンパク質が、SrtAタンパク質である、請求項28または29に記載の細菌表面ディスプレイシステム。
【請求項31】
前記SrtAモチーフおよび/または前記SrtAタンパク質が、S.aureusに由来し、必要に応じて、前記SrtAモチーフが、アミノ酸配列LPXTGを含む、請求項30に記載の細菌表面ディスプレイシステム。
【請求項32】
前記融合タンパク質が、増殖性障害、自己免疫障害、および感染からなる群から選択される宿主疾患または状態に関連している抗原タンパク質またはペプチドを含む、請求項28から31のいずれか一項に記載の細菌表面ディスプレイシステム。
【請求項33】
宿主への前記細菌の投与が、前記非天然タンパク質またはペプチドに対するT細胞応答を惹起する前記細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成をもたらす、請求項28から32のいずれか一項に記載の細菌表面ディスプレイシステム。
【請求項34】
前記融合タンパク質が、抗原提示細胞(APC)標的化部分をさらに含み、必要に応じて、前記APC標的化部分が、CD11bまたはMHC II標的化部分を含む、請求項28から33のいずれか一項に記載の細菌表面ディスプレイシステム。
【請求項35】
前記細菌が、
(i)Staphylococcus epidermidis、Faecalibacterium sp.、Corynebacterium spp.、Eubacterium limosum、Ruminococcaceae bacterium cv2、Clostridium sp.、Clostridium bolteae 90B3、Clostridium cf.saccharolyticum K10、Clostridium symbiosum WAL-14673、Clostridium hathewayi 12489931、Ruminococcus obeum A2-162、Ruminococcus gnavus、Butyrate-producing bacterium SSC/2、Clostridium sp.ASF356、Coprobacillus sp.D6 cont1.1、Eubacterium sp.3_1_31 cont1.1、Erysipelotrichaceae bacterium 21_3、Ruminococcus bromii L2-63、Firmicutes bacterium ASF500、Firmicutes bacterium ASF500、Bifidobacterium animalis subsp.lactis ATCC 27673、Bifidobacterium breve、Cutibacterium acnes、Cutibacterium avidum、Dolosigranulum pigrum、Finegoldia magna、Rothia mucilaginosa、Streptococcus pyogenes、Streptococcus agalactiae、Streptococcus gordonii、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus jensenii Gasser、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus iners、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus casei、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus salivarius、Bifidobacterium longum、Gardnerella vaginalis、Atopobium vaginae、Mobiluncus mulieris、Mageeibacillus indolicus、Enterococcus faecium、およびLactococcus lactisからなる群から選択されるグラム陽性細菌であり、必要に応じて、S.epidermidis NIHLM087であるか;または
(ii)Bacteroides thetaiotaomicron、Helicobacter hepaticus、Parabacteroides sp.、Moraxella catarrhalis、Moraxella nonliquefaciens、Haemophilus influenzae、Haemophilus aegyptius、Neisseria lactamica、Neisseria cinerea、Neisseria Mucosa、Veillonella parvula、Prevotella bivia、Prevotella buccalis、Gardnerella vaginalis、およびMobiluncus mulierisからなる群から選択されるグラム陰性細菌である、
請求項28から34のいずれか一項に記載の細菌表面ディスプレイシステム。
【請求項36】
請求項28から35のいずれか一項に記載の細菌表面ディスプレイシステムと賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項37】
高複雑度の規定された微生物群落をさらに含む、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
宿主における疾患または状態を処置する方法であって、請求項28から35に記載の細菌表面ディスプレイシステム、または請求項36もしくは37に記載の医薬組成物を、前記宿主に投与するステップを含み、前記投与が、前記細菌による前記宿主における天然宿主ニッチのコロニー形成、抗原提示細胞による前記細菌または前記非天然タンパク質もしくはペプチドの内在化、前記非天然タンパク質またはペプチドに由来する抗原の前記抗原提示細胞によるMHC-IまたはMHC-II複合体内における提示、および前記抗原に対するT細胞応答の生成をもたらし、前記T細胞応答によって前記宿主における前記疾患または状態が処置される、方法。
【請求項39】
前記天然宿主ニッチの前記コロニー形成が、持続的または一時的である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、コロニー形成が、1日~60日間、3.5日~60日間、または7日~28日間のコロニー形成である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記天然宿主ニッチが、胃腸管、気道、尿生殖路、および皮膚からなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記宿主が対象である、請求項1から17のいずれか一項に記載の生きている組換え共生細菌、請求項22、24から26のいずれか一項に記載の組成物、または請求項27、もしくは38から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記対象がヒトである、請求項42に記載の生きている組換え共生細菌、または請求項18から21、もしくは38から42のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年12月23日に出願した米国特許仮出願第63/130,354号、2020年12月23日に出願した米国特許仮出願第63/130,356号、および2021年2月16日に出願した米国特許仮出願第63/150,013号の利益および優先権を主張するものであり、前記仮出願の開示は、それらの全体があらゆる目的でこれにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
米国連邦政府による資金提供を受けた研究開発のもとでなされた発明の権利に関する記載
本発明は、米国政府による資金提供を受けて米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)(NIH)により付与された補助金番号DK113598のもとでなされたものである。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
配列表
本願は、ASCII形式で電子的に提出した配列表を含み、この配列表は、その全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる。2021年12月22日に作成した前記ASCIIコピーは、FBI-005WO_SL_ST25.txtという名であり、サイズが56,726バイトである。
【0004】
発明の分野
本発明は、一般に、改変された細菌、およびそのような細菌を、対象における疾患または状態の処置のために、抗原特異的適応免疫応答を惹起するために使用する方法に関する。
【背景技術】
【0005】
発明の背景
共生微生物叢は、主として、バリア部位、例えば、胃腸管、気道、尿生殖路および皮膚に生息し、そこでそれらは、自然および適応免疫系を機能的に調整する。これらの微小生物に対する免疫寛容がこれらの部位の各々において確立されるはずである。胃腸管における単層線毛円柱上皮は、厚い粘液層により覆われており、この粘液層は、管腔の細菌からの空間的分離を助長し、そしてまた微小生物抗原の免疫原性を、生息する樹状細胞に寛容原性シグナルを送達することにより低下させる。自然リンパ系細胞は、MHC-II依存性メカニズムによって共生体特異的CD4+T細胞応答を制限し、インターロイキン-22を産生し、このインターロイキン-22がさらに微生物の解剖学的隔離を促進する。特殊化した腸生息CD103+CD11b+樹状細胞もまた、炎症誘発性CD4+サブセットより調節性T(Treg)細胞の誘導を選好することによって腸管恒常性の維持に重要な役割を果たす(Scharschmidt T.C. et al., Immunity 2015, November 17; 43(5): 1011-1021を参照されたい)。興味深いことに、皮膚などの他の微生物ニッチでは、ある特定の共生微小生物(例えば、Staphylococcus epidermidis)が真皮樹状細胞との相互作用によってCD8+エフェクターT細胞応答を選択的に誘導することが実証されている(Naik S. et al., Nature 2015, 520:104-108を参照されたい)。
【0006】
Treg細胞は、末梢組織内での、特に、それらが安定的に生息するバリア部位での、免疫恒常性の確立および維持に大きな役割を果たす。腸管粘膜固有層において、Treg細胞は、自己寛容を維持するばかりでなく、共生生物に対する寛容の媒介にも極めて重要な役割を果たす。腸生息Treg細胞の大部分が共生抗原を認識し、胸腺由来Treg細胞は、腸管微小生物に対する寛容を支持する。加えて、ある特定の細菌種は、粘膜固有層においてTreg細胞を拡大する(同上)。
【0007】
Tregは、Tヘルパー(TH)細胞のサブセットであり、ナイーブCD4細胞と同じ系列に由来すると考えられている。Tregは、自己抗原に対する寛容の維持、および自己免疫疾患の予防に関与する。Tregはまた、エフェクターT細胞(Teff)の誘導および増殖を抑制する。Tregは、阻害性サイトカイン、例えば、TGF-β、IL-35、およびIL-10を産生する。Tregは、転写因子Foxp3を発現する。ヒトでは、Treg細胞の大多数がMHC-II拘束性CD4+細胞であるが、FoxP3+、MHC-I拘束性、CD8+細胞である少数集団がある。Tregを、胸腺において発生する「天然」CD4+CD25+FoxP3+Treg細胞(nTreg)、および末梢に生じる「誘導性」調節性細胞(iTreg)というサブセットに分けることもできる。iTregもCD4+CD25+FoxP3+でもあり、iTregは、末梢(すなわち、胸腺以外)における成熟CD4+T細胞から発生する。iTregはまた、RORγtとFoxp3の両方を発現することができる(Sefik E., et al., “Individual intestinal symbionts induce a distinct population of RORgamma(+) regulatory T cells,” Science 2015;349:993-997を参照されたい)。樹状細胞により産生されたTGF-βおよびレチノイン酸がナイーブT細胞をTregに分化するように刺激することができること、および消化管内のナイーブT細胞が抗原刺激後にTregに分化することは、研究により示されている。TGF-βを添加することにより、培養でiTregを誘導することもできる。
Tregとは対照的に、Tエフェクター(Teff)細胞は、一般に、異なるクラスの病原体に対処するように特殊化されている一連の膜結合および分泌タンパク質の発現または放出によって抗原特異的T細胞受容体(TCR)活性化時に炎症誘発性応答を刺激する。CD8+細胞傷害性T細胞、TH1細胞、およびTH2細胞という、Teff細胞の3つのクラスがある。CD8+細胞傷害性T細胞は、細胞表面のMHC-I分子のコンテキストで提示される細胞内病原体(例えば、ウイルス)のペプチド断片を呈示する標的細胞を認識し、死滅させる。CD8+細胞傷害性T細胞は、感染した標的細胞の膜と融合する溶解性顆粒の中にあらかじめ形成された細胞毒素を蓄えている。CD8+細胞傷害性T細胞は、Fas発現標的細胞においてアポトーシスを誘導するFasリガンドを、さらに発現する。TH1およびTH2細胞は両方とも、CD4を発現し、細胞内小胞の中で分解されてMHC-II分子のコンテキストで細胞表面に提示されるペプチド断片を認識する。TH1細胞は、マクロファージおよびB細胞をはじめとするいくつかの他の免疫細胞を活性化することができ、それによって、細胞内微生物のより効率的な破壊およびクリアランスを促進することができる。TH2細胞は、B細胞の分化を刺激し、抗体の産生および液性免疫応答の他のエフェクター分子の産生を促進する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Scharschmidt T.C. et al., Immunity 2015, November 17; 43(5): 1011-1021
【非特許文献2】Naik S. et al., Nature 2015, 520:104-108
【非特許文献3】Sefik E., et al., “Individual intestinal symbionts induce a distinct population of RORgamma(+) regulatory T cells,” Science 2015;349:993-997
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本開示は、特定抗原に対する免疫応答を促進するための非天然タンパク質またはペプチドを発現する組換え細菌の組成物およびその使用方法に関する。
【0010】
生きている組換え共生細菌を含む組成物であって、細菌が、(a)非天然タンパク質またはペプチドと(b)tatシグナル配列ペプチド、secシグナル配列ペプチド、またはソルターゼ由来シグナル配列ペプチドとを含む融合タンパク質を発現するように操作されており、非天然タンパク質またはペプチドが、宿主疾患または状態と関連しており、細菌を宿主に投与し、その結果として細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成が生じると、宿主が、非天然タンパク質またはペプチドに対する適応免疫応答を開始し、その適応免疫応答がT細胞応答である、組成物が、本明細書で提供される。一部の態様では、天然宿主ニッチにおけるコロニー形成は、持続的または一時的である。一部の態様では、天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、少なくとも60日間、少なくとも112日間、少なくとも178日間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、または少なくとも5年間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、少なくとも180日間のコロニー形成である。一部の態様では、持続的コロニー形成は、持続的抗原源を提供し、必要に応じて、この場合、抗原は、抗原特異的T細胞集団を刺激し、持続的な抗原特異的T細胞集団を生じさせる。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、1日~60日間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、3.5日~60日間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、7日~28日間のコロニー形成である。一部の態様では、コロニー形成は、宿主への投与後、1日、3.5日、7日、14日、28日または60日後に宿主から得られた試料を用いて行われるポリメラーゼ連鎖反応またはコロニー形成アッセイにより決定される。
【0011】
一部の態様では、投与は、細菌と天然免疫系パートナー細胞の相互作用をもたらす。一部の態様では、天然免疫系パートナー細胞は、抗原提示細胞である。一部の態様では、抗原提示細胞は、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、および腸管上皮細胞からなる群から選択される。一部の態様では、天然宿主ニッチは、胃腸管、気道、尿生殖路、および皮膚からなる群から選択される。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、宿主タンパク質またはペプチドである。
【0012】
一部の態様では、細菌は、グラム陰性細菌である。一部の態様では、グラム陰性細菌は、Bacteroides thetaiotaomicron、Helicobacter hepaticusおよびParabacteroides sp.からなる群から選択される。
【0013】
一部の態様では、細菌は、グラム陽性細菌である。一部の態様では、グラム陽性細菌は、Staphylococcus epidermidis、Faecalibacterium sp.、Corynebacterium spp.、Eubacterium limosum、Ruminococcaceae bacterium cv2、Clostridium sp.、Clostridium bolteae 90B3、Clostridium cf.saccharolyticum K10、Clostridium symbiosum WAL-14673、Clostridium hathewayi 12489931、Ruminococcus obeum A2-162、Ruminococcus gnavus AGR2154、ブチレート産生菌SSC/2、Clostridium sp.ASF356、Coprobacillus sp.D6 cont1.1、Eubacterium sp.3_1_31 cont1.1、Erysipelotrichaceae菌21_3、Ruminococcus bromii L2-63、Firmicutes菌ASF500、Firmicutes菌ASF500、Bifidobacterium animalis subsp.lactis ATCC 27673、およびBifidobacterium breve UCC2003からなる群から選択される。一部の態様では、グラム陽性細菌は、Staphylococcus epidermidis、Faecalibacterium sp.、Corynebacterium spp.、およびClostridium sp.からなる群から選択される。一部の態様では、細菌は、Staphylococcus epidermidisおよびCorynebacterium spp.からなる群から選択される。一部の態様では、細菌は、S.epidermidis NIHLM087である。
【0014】
一部の態様では、細菌は、Corynebacterium tuberculostearicum、Corynebacterium accolens、Corynebacterium amycolatum、Corynebacterium aurimucosum、Corynebacterium propinquum、Corynebacterium pseudodiphtheriticum、Corynebacterium granulosum、Cutibacterium acnes、Cutibacterium avidum、Dolosigranulum pigrum、Finegoldia magna、Moraxella catarrhalis、Moraxella nonliquefaciens、Haemophilus influenzae、Haemophilus aegyptius、Rothia mucilaginosa、Streptococcus pyogenes、Streptococcus agalactiae、Streptococcus gordonii、Neisseria lactamica、Neisseria cinerea、Neisseria mucosa、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus jensenii Gasser、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus iners、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus casei、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus salivarius、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium longum、Veillonella parvula、Gardnerella vaginalis、Atopobium vaginae、Prevotella bivia、Mobiluncus mulieris、Mageeibacillus indolicus、Prevotella buccalis、Enterococcus faecium、Lactococcus lactis、Ruminococcus gnavus、およびEubacterium limosumからなる群から選択される。一部の態様では、共生細菌は、ATCC受託番号35692、49725、49726、49368、700975、700540、51488、10700、25564、51277、11827、25577、49753、51524、29328、25238、25240、19976、51907、11116、25296、19615、12344、BAA-611、13813、10558、23970、14685、19696、33820、25258、19992、55195、4356、33200、7469、393、7995D-5、23272、11741、15700、15697、10790、17745、14018、BAA-55、29303、35243、BAA-2120、35310、19434、19435、29149、および8486を有する細菌からなる群から選択される。一部の態様では、共生細菌は、Lactobacillus casei、Lactococcus lactis、Streptococcus gordonii、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Cutibacterium acnes、Streptococcus agalactiae、Ruminococcus gnavus、Neisseria lactamica、Bifidobacterium breve、およびBifidobacterium longumからなる群から選択される。一部の態様では、共生細菌は、ATCC受託番号393、19435、35105、33820、55195、6919、13813、23970、15700、および15707を有する細菌、ならびに受託番号JCM6515を有する細菌からなる群から選択される。
【0015】
一部の態様では、この場合の投与は、局所経路、経腸経路、および吸入経路からなる群から選択される経路による投与である。一部の態様では、経路は、局所経路である。一部の態様では、経路は、経腸経路である。
【0016】
一部の態様では、タンパク質またはペプチドは、感染に関連している。一部の態様では、感染は、ウイルス感染、寄生虫感染、細菌感染、または真菌感染からなる群から選択される。一部の態様では、感染は、宿主の粘膜境界部で生じるか、または粘膜境界部に別様に関連している。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、感染に関連しているウイルス、寄生虫、細菌または真菌に由来する。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、インフルエンザ、HSV、HIV、またはSARS-CoV-2に由来する。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、NP366-374、NP306-322、NA177-193、M2エクトドメイン、HA2ステム-HA2 12-63、HA2ステム-HA2 76-130、gB糖タンパク質、gd糖タンパク質、gB糖タンパク質498-505、SARS-Cov2スパイクタンパク質、HIV-gp120、HIV-gp41、HIV V1V2突端部、HIV V3ループ、HIV CD4結合部位、gp120/gp41境界領域、gp120サイレント面、およびHIV膜貫通部位近傍(MPER)からなる群から選択される。
【0017】
一部の態様では、タンパク質またはペプチドは、自己免疫障害に関連している。
【0018】
一部の態様では、タンパク質またはペプチドは、増殖性障害に関連している。一部の態様では、増殖性障害は、がんである。一部の態様では、がんは、黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、精巣がん、肉腫、および前立腺がんから選択される。一部の態様では、がんは、黒色腫である。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、PMEL、TRP2およびMART-1からなる群から選択されるメラノサイト特異的抗原に由来する。
【0019】
一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、ネオ抗原を含み、この場合のネオ抗原は、少なくとも1つの突然変異を含み、この突然変異によって、非天然タンパク質またはペプチドを、宿主の野生型遺伝子によりコードされるタンパク質またはペプチドと明確に区別できる。一部の態様では、この場合のネオ抗原は、Ints11、Kif18bp、T3肉腫ネオ抗原、およびTRAMPC2前立腺がん細胞系により発現されるネオ抗原からなる群から選択される。
【0020】
一部の態様では、融合タンパク質は、シグナル配列ペプチドをさらに含む。一部の態様では、シグナル配列ペプチドは、発現後に細菌の細胞壁への融合タンパク質の繋留を指向する。一部の態様では、分泌を指向するシグナル配列ペプチドは、tatシグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、tatシグナル配列ペプチドは、S.aureus由来シグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、分泌を指向するシグナル配列ペプチドは、secシグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、secシグナル配列ペプチドは、S.epidermidis由来シグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、S.epidermidis由来シグナル配列ペプチドは、予測sec分泌S.epidermidisタンパク質(遺伝子座HMPREF9993_06668)に由来する。
【0021】
一部の態様では、融合タンパク質は、抗原提示細胞(APC)標的化部分をさらに含み、必要に応じて、この場合のAPC標的化部分は、CD11bまたはMHC II標的化部分を含む。一部の態様では、APC標的化部分は、ナノボディ(VHH)抗体結合ドメインを含み、必要に応じて、この場合のVHH抗体結合ドメインは、配列
【化1】
を含む。
【0022】
一部の態様では、細菌は、タンパク質またはペプチドと天然細菌タンパク質またはその一部分とを含む融合タンパク質を発現するように操作されている。一部の態様では、タンパク質またはペプチドは、天然細菌タンパク質またはその一部分のN末端またはC末端に融合されている。一部の態様では、細菌は、高複雑度の規定された微生物群落と組み合わせて投与するために製剤化されている。
【0023】
一部の態様では、宿主は、哺乳動物である。一部の態様では、哺乳動物は、ヒトである。
【0024】
生きている組換え共生細菌を含む組成物であって、細菌が、(a)非天然タンパク質またはペプチドと(b)抗原提示細胞(APC)標的化部分とを含む融合タンパク質を発現するように操作されている、組成物も、本明細書で提供される。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、宿主疾患または状態に関連しており、この場合、細菌を宿主に投与し、その結果として細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成が生じると、宿主は、非天然タンパク質またはペプチドに対する適応免疫応答を開始する。一部の態様では、この場合の適応免疫応答は、T細胞応答またはB細胞応答である。一部の態様では、天然宿主ニッチにおけるコロニー形成は、持続的または一時的である。一部の態様では、天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、少なくとも60日間、少なくとも112日間、少なくとも178日間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、または少なくとも5年間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、少なくとも180日間のコロニー形成である。一部の態様では、持続的コロニー形成は、持続的抗原源を提供し、必要に応じて、この場合、抗原は、抗原特異的T細胞集団を刺激し、持続的な抗原特異的T細胞集団を生じさせる。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、1日~60日間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、3.5日~60日間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、7日~28日間のコロニー形成である。一部の態様では、コロニー形成は、宿主への投与後、1日、3.5日、7日、14日、28日または60日後に宿主から得られた試料を用いて行われるポリメラーゼ連鎖反応またはコロニー形成アッセイにより決定される。
【0025】
一部の態様では、投与は、細菌と天然免疫系パートナー細胞の相互作用をもたらす。一部の態様では、天然免疫系パートナー細胞は、抗原提示細胞である。一部の態様では、抗原提示細胞は、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、および腸管上皮細胞からなる群から選択される。一部の態様では、天然宿主ニッチは、胃腸管、気道、尿生殖路、および皮膚からなる群から選択される。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、宿主タンパク質またはペプチドである。
【0026】
一部の態様では、細菌は、グラム陰性細菌である。一部の態様では、グラム陰性細菌は、Bacteroides thetaiotaomicron、Helicobacter hepaticusおよびParabacteroides sp.からなる群から選択される。
【0027】
一部の態様では、細菌は、グラム陽性細菌である。一部の態様では、グラム陽性細菌は、Staphylococcus epidermidis、Faecalibacterium sp.、Corynebacterium spp.、Eubacterium limosum、Ruminococcaceae bacterium cv2、Clostridium sp.、Clostridium bolteae 90B3、Clostridium cf.saccharolyticum K10、Clostridium symbiosum WAL-14673、Clostridium hathewayi 12489931、Ruminococcus obeum A2-162、Ruminococcus gnavus AGR2154、Butyrate-producing bacterium SSC/2、Clostridium sp.ASF356、Coprobacillus sp.D6 cont1.1、Eubacterium sp.3_1_31 cont1.1、Erysipelotrichaceae bacterium 21_3、Ruminococcus bromii L2-63、Firmicutes bacterium ASF500、Firmicutes bacterium ASF500、Bifidobacterium animalis subsp.lactis ATCC 27673、およびBifidobacterium breve UCC2003からなる群から選択される。一部の態様では、グラム陽性細菌は、Staphylococcus epidermidis、Faecalibacterium sp.、Corynebacterium spp.、およびClostridium sp.からなる群から選択される。一部の態様では、細菌は、Staphylococcus epidermidisおよびCorynebacterium spp.からなる群から選択される。一部の態様では、細菌は、S.epidermidis NIHLM087である。
【0028】
一部の態様では、細菌は、Corynebacterium tuberculostearicum、Corynebacterium accolens、Corynebacterium amycolatum、Corynebacterium aurimucosum、Corynebacterium propinquum、Corynebacterium pseudodiphtheriticum、Corynebacterium granulosum、Cutibacterium acnes、Cutibacterium avidum、Dolosigranulum pigrum、Finegoldia magna、Moraxella catarrhalis、Moraxella nonliquefaciens、Haemophilus influenzae、Haemophilus aegyptius、Rothia mucilaginosa、Streptococcus pyogenes、Streptococcus agalactiae、Streptococcus gordonii、Neisseria lactamica、Neisseria cinerea、Neisseria mucosa、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus jensenii Gasser、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus iners、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus casei、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus salivarius、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium longum、Veillonella parvula、Gardnerella vaginalis、Atopobium vaginae、Prevotella bivia、Mobiluncus mulieris、Mageeibacillus indolicus、Prevotella buccalis、Enterococcus faecium、Lactococcus lactis、Ruminococcus gnavus、およびEubacterium limosumからなる群から選択される。一部の態様では、共生細菌は、ATCC受託番号35692、49725、49726、49368、700975、700540、51488、10700、25564、51277、11827、25577、49753、51524、29328、25238、25240、19976、51907、11116、25296、19615、12344、BAA-611、13813、10558、23970、14685、19696、33820、25258、19992、55195、4356、33200、7469、393、7995D-5、23272、11741、15700、15697、10790、17745、14018、BAA-55、29303、35243、BAA-2120、35310、19434、19435、29149、および8486を有する細菌からなる群から選択される。一部の態様では、共生細菌は、Lactobacillus casei、Lactococcus lactis、Streptococcus gordonii、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Cutibacterium acnes、Streptococcus agalactiae、Ruminococcus gnavus、Neisseria lactamica、Bifidobacterium breve、およびBifidobacterium longumからなる群から選択される。一部の態様では、共生細菌は、ATCC受託番号393、19435、35105、33820、55195、6919、13813、23970、15700、および15707を有する細菌、ならびに受託番号JCM6515を有する細菌からなる群から選択される。
【0029】
一部の態様では、この場合の投与は、局所経路、経腸経路、および吸入経路からなる群から選択される経路による投与である。一部の態様では、経路は、局所経路である。一部の態様では、経路は、経腸経路である。
【0030】
一部の態様では、タンパク質またはペプチドは、感染に関連している。一部の態様では、感染は、ウイルス感染、寄生虫感染、細菌感染、または真菌感染からなる群から選択される。一部の態様では、感染は、宿主の粘膜境界部で生じるか、または粘膜境界部に別様に関連している。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、感染に関連しているウイルス、寄生虫、細菌または真菌に由来する。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、インフルエンザ、HSV、HIV、またはSARS-CoV-2に由来する。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、NP366-374、NP306-322、NA177-193、M2エクトドメイン、HA2ステム-HA2 12-63、HA2ステム-HA2 76-130、gB糖タンパク質、gd糖タンパク質、gB糖タンパク質498-505、SARS-Cov2スパイクタンパク質、HIV-gp120、HIV-gp41、HIV V1V2突端部、HIV V3ループ、HIV CD4結合部位、gp120/gp41境界領域、gp120サイレント面、およびHIV膜貫通部位近傍(MPER)からなる群から選択される。
【0031】
一部の態様では、タンパク質またはペプチドは、自己免疫障害に関連している。
【0032】
一部の態様では、タンパク質またはペプチドは、増殖性障害に関連している。一部の態様では、増殖性障害は、がんである。一部の態様では、がんは、黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、精巣がん、肉腫、および前立腺がんから選択される。一部の態様では、がんは、黒色腫である。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、PMEL、TRP2およびMART-1からなる群から選択されるメラノサイト特異的抗原に由来する。
【0033】
一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、ネオ抗原を含み、この場合のネオ抗原は、少なくとも1つの突然変異を含み、この突然変異によって、非天然タンパク質またはペプチドを、宿主の野生型遺伝子によりコードされるタンパク質またはペプチドと明確に区別できる。一部の態様では、この場合のネオ抗原は、Ints11、Kif18bp、T3肉腫ネオ抗原、およびTRAMPC2前立腺がん細胞系により発現されるネオ抗原からなる群から選択される。
【0034】
一部の態様では、融合タンパク質は、シグナル配列ペプチドをさらに含む。一部の態様では、シグナル配列ペプチドは、発現後に細菌の細胞壁への融合タンパク質の繋留を指向する。一部の態様では、分泌を指向するシグナル配列ペプチドは、tatシグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、tatシグナル配列ペプチドは、S.aureus由来シグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、分泌を指向するシグナル配列ペプチドは、secシグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、secシグナル配列ペプチドは、S.epidermidis由来シグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、S.epidermidis由来シグナル配列ペプチドは、予測sec分泌S.epidermidisタンパク質(遺伝子座HMPREF9993_06668)に由来する。
【0035】
一部の態様では、細菌は、タンパク質またはペプチドと天然細菌タンパク質またはその一部分とを含む融合タンパク質を発現するように操作されている。一部の態様では、タンパク質またはペプチドは、天然細菌タンパク質またはその一部分のN末端またはC末端に融合されている。一部の態様では、細菌は、高複雑度の規定された微生物群落と組み合わせて投与するために製剤化されている。
【0036】
一部の態様では、宿主は、哺乳動物である。一部の態様では、哺乳動物は、ヒトである。
【0037】
生きている組換え共生細菌を含む組成物であって、細菌が、非天然タンパク質またはペプチドを含む融合タンパク質を発現するように操作されており、非天然タンパク質またはペプチドが、宿主疾患または状態に関連しており、細菌を宿主に投与し、その結果として細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成が生じると、宿主が、非天然タンパク質またはペプチドに対する適応免疫応答を開始し、共生細菌が、Corynebacterium tuberculostearicum、Corynebacterium accolens、Corynebacterium amycolatum、Corynebacterium aurimucosum、Corynebacterium propinquum、Corynebacterium pseudodiphtheriticum、Corynebacterium granulosum、Cutibacterium acnes、Cutibacterium avidum、Dolosigranulum pigrum、Finegoldia magna、Moraxella catarrhalis、Moraxella nonliquefaciens、Haemophilus influenzae、Haemophilus aegyptius、Rothia mucilaginosa、Streptococcus pyogenes、Streptococcus agalactiae、Streptococcus gordonii、Neisseria lactamica、Neisseria cinerea、Neisseria mucosa、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus jensenii Gasser、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus iners、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus casei、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus salivarius、Bifidobacterium breve ATCC 15700、Bifidobacterium longum、Veillonella parvula、Gardnerella vaginalis、Atopobium vaginae、Prevotella bivia、Mobiluncus mulieris、Mageeibacillus indolicus、Prevotella buccalis、Enterococcus faecium、Lactococcus lactis、Ruminococcus gnavus JCM6515、およびEubacterium limosum ATCC 8486からなる群から選択される、組成物も、本明細書で提供される。一部の態様では、共生細菌は、ATCC受託番号35692、49725、49726、49368、700975、700540、51488、10700、25564、51277、11827、25577、49753、51524、29328、25238、25240、19976、51907、11116、25296、19615、12344、BAA-611、13813、10558、23970、14685、19696、33820、25258、19992、55195、4356、33200、7469、393、7995D-5、23272、11741、15700、15697、10790、17745、14018、BAA-55、29303、35243、BAA-2120、35310、19434、19435、29149、および8486を有する細菌からなる群から選択される。一部の態様では、共生細菌は、Lactobacillus casei、Lactococcus lactis、Streptococcus gordonii、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Cutibacterium acnes、Streptococcus agalactiae、Ruminococcus gnavus JCM6515、Neisseria lactamica、Bifidobacterium breve ATCC 15700、およびBifidobacterium longumからなる群から選択される。一部の態様では、共生細菌は、ATCC受託番号393、19435、35105、33820、55195、6919、13813、23970、15700、および15707を有する細菌、ならびに受託番号JCM6515を有する細菌からなる群から選択される。一部の態様では、適応免疫応答は、T細胞応答またはB細胞応答である。一部の態様では、天然宿主ニッチにおけるコロニー形成は、持続的または一時的である。一部の態様では、天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、少なくとも60日間、少なくとも112日間、少なくとも178日間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、または少なくとも5年間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、少なくとも180日間のコロニー形成である。一部の態様では、持続的コロニー形成は、持続的抗原源を提供し、必要に応じて、この場合、抗原は、抗原特異的T細胞集団を刺激し、持続的な抗原特異的T細胞集団を生じさせる。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、1日~60日間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、3.5日~60日間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、7日~28日間のコロニー形成である。一部の態様では、コロニー形成は、宿主への投与後、1日、3.5日、7日、14日、28日または60日後に宿主から得られた試料を用いて行われるポリメラーゼ連鎖反応またはコロニー形成アッセイにより決定される。
【0038】
一部の態様では、投与は、細菌と天然免疫系パートナー細胞の相互作用をもたらす。一部の態様では、天然免疫系パートナー細胞は、抗原提示細胞である。一部の態様では、抗原提示細胞は、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、および腸管上皮細胞からなる群から選択される。一部の態様では、天然宿主ニッチは、胃腸管、気道、尿生殖路、および皮膚からなる群から選択される。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、宿主タンパク質またはペプチドである。
【0039】
一部の態様では、細菌は、グラム陰性細菌である。一部の態様では、グラム陰性細菌は、Bacteroides thetaiotaomicron、Helicobacter hepaticusおよびParabacteroides sp.からなる群から選択される。
【0040】
一部の態様では、細菌は、グラム陽性細菌である。一部の態様では、グラム陽性細菌は、Staphylococcus epidermidis、Faecalibacterium sp.、Corynebacterium spp.、Eubacterium limosum、Ruminococcaceae bacterium cv2、Clostridium sp.、Clostridium bolteae 90B3、Clostridium cf.saccharolyticum K10、Clostridium symbiosum WAL-14673、Clostridium hathewayi 12489931、Ruminococcus obeum A2-162、Ruminococcus gnavus AGR2154、Butyrate-producing bacterium SSC/2、Clostridium sp.ASF356、Coprobacillus sp.D6 cont1.1、Eubacterium sp.3_1_31 cont1.1、Erysipelotrichaceae bacterium 21_3、Ruminococcus bromii L2-63、Firmicutes bacterium ASF500、Firmicutes bacterium ASF500、Bifidobacterium animalis subsp.lactis ATCC 27673、およびBifidobacterium breve UCC2003からなる群から選択される。一部の態様では、グラム陽性細菌は、Staphylococcus epidermidis、Faecalibacterium sp.、Corynebacterium spp.、およびClostridium sp.からなる群から選択される。一部の態様では、細菌は、Staphylococcus epidermidisおよびCorynebacterium spp.からなる群から選択される。一部の態様では、細菌は、S.epidermidis NIHLM087である。
【0041】
一部の態様では、細菌は、Corynebacterium tuberculostearicum、Corynebacterium accolens、Corynebacterium amycolatum、Corynebacterium aurimucosum、Corynebacterium propinquum、Corynebacterium pseudodiphtheriticum、Corynebacterium granulosum、Cutibacterium acnes、Cutibacterium avidum、Dolosigranulum pigrum、Finegoldia magna、Moraxella catarrhalis、Moraxella catarrhalis、Moraxella nonliquefaciens、Haemophilus influenzae、Haemophilus aegyptius、Rothia mucilaginosa、Streptococcus pyogenes、Streptococcus agalactiae、Streptococcus gordonii、Neisseria lactamica、Neisseria cinerea、Neisseria mucosa、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus jensenii Gasser、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus iners、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus casei、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus salivarius、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium longum、Veillona parvula、Gardnerella vaginalis、Atopobium vaginae、Prevotella bivia、Mobiluncus mulieris、Mageeibacillus indolicus、Prevotella buccalis、Enterococcus faecium、Lactococcus lactis、Ruminococcus gnavus、およびEubacterium limosumからなる群から選択される。一部の態様では、共生細菌は、ATCC受託番号35692、49725、49726、49368、700975、700540、51488、10700、25564、51277、11827、25577、49753、51524、29328、25238、25240、19976、51907、11116、25296、19615、12344、BAA-611、13813、10558、23970、14685、19696、33820、25258、19992、55195、4356、33200、7469、393、7995D-5、23272、11741、15700、15697、10790、17745、14018、BAA-55、29303、35243、BAA-2120、35310、19434、19435、29149、および8486を有する細菌からなる群から選択される。一部の態様では、共生細菌は、Lactobacillus casei、Lactococcus lactis、Streptococcus gordonii、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Cutibacterium acnes、Streptococcus agalactiae、Ruminococcus gnavus、Neisseria lactamica、Bifidobacterium breve、およびBifidobacterium longumからなる群から選択される。一部の態様では、共生細菌は、ATCC受託番号393、19435、35105、33820、55195、6919、13813、23970、15700、および15707を有する細菌、ならびに受託番号JCM6515を有する細菌からなる群から選択される。
【0042】
一部の態様では、この場合の投与は、局所経路、経腸経路、および吸入経路からなる群から選択される経路による投与である。一部の態様では、経路は、局所経路である。一部の態様では、経路は、経腸経路である。
【0043】
一部の態様では、タンパク質またはペプチドは、感染に関連している。一部の態様では、感染は、ウイルス感染、寄生虫感染、細菌感染、または真菌感染からなる群から選択される。一部の態様では、感染は、宿主の粘膜境界部で生じるか、または粘膜境界部に別様に関連している。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、感染に関連しているウイルス、寄生虫、細菌または真菌に由来する。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、インフルエンザ、HSV、HIV、またはSARS-CoV-2に由来する。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、NP366-374、NP306-322、NA177-193、M2エクトドメイン、HA2ステム-HA2 12-63、HA2ステム-HA2 76-130、gB糖タンパク質、gd糖タンパク質、gB糖タンパク質498-505、SARS-Cov2スパイクタンパク質、HIV-gp120、HIV-gp41、HIV V1V2突端部、HIV V3ループ、HIV CD4結合部位、gp120/gp41境界領域、gp120サイレント面、およびHIV膜貫通部位近傍(MPER)からなる群から選択される。
【0044】
一部の態様では、タンパク質またはペプチドは、自己免疫障害に関連している。
【0045】
一部の態様では、タンパク質またはペプチドは、増殖性障害に関連している。一部の態様では、増殖性障害は、がんである。一部の態様では、がんは、黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、精巣がん、肉腫、および前立腺がんから選択される。一部の態様では、がんは、黒色腫である。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、PMEL、TRP2およびMART-1からなる群から選択されるメラノサイト特異的抗原に由来する。
【0046】
一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、ネオ抗原を含み、この場合のネオ抗原は、少なくとも1つの突然変異を含み、この突然変異によって、非天然タンパク質またはペプチドを、宿主の野生型遺伝子によりコードされるタンパク質またはペプチドと明確に区別できる。一部の態様では、この場合のネオ抗原は、Ints11、Kif18bp、T3肉腫ネオ抗原、およびTRAMPC2前立腺がん細胞系により発現されるネオ抗原からなる群から選択される。
【0047】
一部の態様では、融合タンパク質は、シグナル配列ペプチドをさらに含む。一部の態様では、シグナル配列ペプチドは、発現後に細菌の細胞壁への融合タンパク質の繋留を指向する。一部の態様では、分泌を指向するシグナル配列ペプチドは、tatシグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、tatシグナル配列ペプチドは、S.aureus由来シグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、分泌を指向するシグナル配列ペプチドは、secシグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、secシグナル配列ペプチドは、S.epidermidis由来シグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、S.epidermidis由来シグナル配列ペプチドは、予測sec分泌S.epidermidisタンパク質(遺伝子座HMPREF9993_06668)に由来する。
【0048】
一部の態様では、融合タンパク質は、抗原提示細胞(APC)標的化部分をさらに含み、必要に応じて、この場合のAPC標的化部分は、CD11bまたはMHC II標的化部分を含む。一部の態様では、APC標的化部分は、ナノボディ(VHH)抗体結合ドメインを含み、必要に応じて、この場合のVHH抗体結合ドメインは、配列
【化2】
を含む。
【0049】
一部の態様では、細菌は、タンパク質またはペプチドと天然細菌タンパク質またはその一部分とを含む融合タンパク質を発現するように操作されている。一部の態様では、タンパク質またはペプチドは、天然細菌タンパク質またはその一部分のN末端またはC末端に融合されている。一部の態様では、細菌は、高複雑度の規定された微生物群落と組み合わせて投与するために製剤化されている。
【0050】
一部の態様では、宿主は、哺乳動物である。一部の態様では、哺乳動物は、ヒトである。
【0051】
生きている組換え共生細菌を含む組成物であって、細菌が、(a)CD4+T細胞応答を惹起するように操作されている第1の非天然タンパク質またはペプチドと(b)CD8+細胞傷害性T細胞応答を惹起するように操作されている第2の非天然タンパク質またはペプチドとを発現するように操作されている、組成物も、本明細書で提供される。一部の態様では、第1の非天然タンパク質またはペプチド、および第2の非天然タンパク質またはペプチドは、各々、共通抗原に由来する。一部の態様では、共通抗原に由来する、第1の非天然タンパク質またはペプチド、および第2の非天然タンパク質またはペプチドは、異なるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、第1の非天然タンパク質またはペプチド、および第2の非天然タンパク質またはペプチドは、各々、異なる抗原に由来する。一部の態様では、天然宿主ニッチにおけるコロニー形成は、持続的または一時的である。一部の態様では、天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、少なくとも60日間、少なくとも112日間、少なくとも178日間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、または少なくとも5年間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、少なくとも180日間のコロニー形成である。一部の態様では、持続的コロニー形成は、持続的抗原源を提供し、必要に応じて、この場合、抗原は、抗原特異的T細胞集団を刺激し、持続的な抗原特異的T細胞集団を生じさせる。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、1日~60日間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、3.5日~60日間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、7日~28日間のコロニー形成である。一部の態様では、コロニー形成は、宿主への投与後、1日、3.5日、7日、14日、28日または60日後に宿主から得られた試料を用いて行われるポリメラーゼ連鎖反応またはコロニー形成アッセイにより決定される。
【0052】
一部の態様では、投与は、細菌と天然免疫系パートナー細胞の相互作用をもたらす。一部の態様では、天然免疫系パートナー細胞は、抗原提示細胞である。一部の態様では、抗原提示細胞は、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、および腸管上皮細胞からなる群から選択される。一部の態様では、天然宿主ニッチは、胃腸管、気道、尿生殖路、および皮膚からなる群から選択される。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、宿主タンパク質またはペプチドである。
【0053】
一部の態様では、細菌は、グラム陰性細菌である。一部の態様では、グラム陰性細菌は、Bacteroides thetaiotaomicron、Helicobacter hepaticusおよびParabacteroides sp.からなる群から選択される。
【0054】
一部の態様では、細菌は、グラム陽性細菌である。一部の態様では、グラム陽性細菌は、Staphylococcus epidermidis、Faecalibacterium sp.、Corynebacterium spp.、Eubacterium limosum、Ruminococcaceae bacterium cv2、Clostridium sp.、Clostridium bolteae 90B3、Clostridium cf.saccharolyticum K10、Clostridium symbiosum WAL-14673、Clostridium hathewayi 12489931、Ruminococcus obeum A2-162、Ruminococcus gnavus AGR2154、Butyrate-producing bacterium SSC/2、Clostridium sp.ASF356、Coprobacillus sp.D6 cont1.1、Eubacterium sp.3_1_31 cont1.1、Erysipelotrichaceae bacterium 21_3、Ruminococcus bromii L2-63、Firmicutes bacterium ASF500、Firmicutes bacterium ASF500、Bifidobacterium animalis subsp.lactis ATCC 27673、およびBifidobacterium breve UCC2003からなる群から選択される。一部の態様では、グラム陽性細菌は、Staphylococcus epidermidis、Faecalibacterium sp.、Corynebacterium spp.、およびClostridium sp.からなる群から選択される。一部の態様では、細菌は、Staphylococcus epidermidisおよびCorynebacterium spp.からなる群から選択される。一部の態様では、細菌は、S.epidermidis NIHLM087である。
【0055】
一部の態様では、細菌は、Corynebacterium tuberculostearicum、Corynebacterium accolens、Corynebacterium amycolatum、Corynebacterium aurimucosum、Corynebacterium propinquum、Corynebacterium pseudodiphtheriticum、Corynebacterium granulosum、Cutibacterium acnes、Cutibacterium avidum、Dolosigranulum pigrum、Finegoldia magna、Moraxella catarrhalis、Moraxella nonliquefaciens、Haemophilus influenzae、Haemophilus aegyptius、Rothia mucilaginosa、Streptococcus pyogenes、Streptococcus agalactiae、Streptococcus gordonii、Neisseria lactamica、Neisseria cinerea、Neisseria mucosa、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus jensenii Gasser、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus iners、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus casei、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus salivarius、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium longum、Veillonella parvula、Gardnerella vaginalis、Atopobium vaginae、Prevotella bivia、Mobiluncus mulieris、Mageeibacillus indolicus、Prevotella buccalis、Enterococcus faecium、Lactococcus lactis、Ruminococcus gnavus、およびEubacterium limosumからなる群から選択される。一部の態様では、共生細菌は、ATCC受託番号35692、49725、49726、49368、700975、700540、51488、10700、25564、51277、11827、25577、49753、51524、29328、25238、25240、19976、51907、11116、25296、19615、12344、BAA-611、13813、10558、23970、14685、19696、33820、25258、19992、55195、4356、33200、7469、393、7995D-5、23272、11741、15700、15697、10790、17745、14018、BAA-55、29303、35243、BAA-2120、35310、19434、19435、29149、および8486を有する細菌からなる群から選択される。一部の態様では、共生細菌は、Lactobacillus casei、Lactococcus lactis、Streptococcus gordonii、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Cutibacterium acnes、Streptococcus agalactiae、Ruminococcus gnavus、Neisseria lactamica、Bifidobacterium breve、およびBifidobacterium longumからなる群から選択される。一部の態様では、共生細菌は、ATCC受託番号393、19435、35105、33820、55195、6919、13813、23970、15700、および15707を有する細菌、ならびに受託番号JCM6515を有する細菌からなる群から選択される。
【0056】
一部の態様では、この場合の投与は、局所経路、経腸経路、および吸入経路からなる群から選択される経路による投与である。一部の態様では、経路は、局所経路である。一部の態様では、経路は、経腸経路である。
【0057】
一部の態様では、タンパク質またはペプチドは、感染に関連している。一部の態様では、感染は、ウイルス感染、寄生虫感染、細菌感染、または真菌感染からなる群から選択される。一部の態様では、感染は、宿主の粘膜境界部で生じるか、または粘膜境界部に別様に関連している。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、感染に関連しているウイルス、寄生虫、細菌または真菌に由来する。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、インフルエンザ、HSV、HIV、またはSARS-CoV-2に由来する。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、NP366-374、NP306-322、NA177-193、M2エクトドメイン、HA2ステム-HA2 12-63、HA2ステム-HA2 76-130、gB糖タンパク質、gd糖タンパク質、gB糖タンパク質498-505、SARS-Cov2スパイクタンパク質、HIV-gp120、HIV-gp41、HIV V1V2突端部、HIV V3ループ、HIV CD4結合部位、gp120/gp41境界領域、gp120サイレント面、およびHIV膜貫通部位近傍(MPER)からなる群から選択される。
【0058】
一部の態様では、タンパク質またはペプチドは、自己免疫障害に関連している。
【0059】
一部の態様では、タンパク質またはペプチドは、増殖性障害に関連している。一部の態様では、増殖性障害は、がんである。一部の態様では、がんは、黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、精巣がん、肉腫、および前立腺がんから選択される。一部の態様では、がんは、黒色腫である。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、PMEL、TRP2およびMART-1からなる群から選択されるメラノサイト特異的抗原に由来する。
【0060】
一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、ネオ抗原を含み、この場合のネオ抗原は、少なくとも1つの突然変異を含み、この突然変異によって、非天然タンパク質またはペプチドを、宿主の野生型遺伝子によりコードされるタンパク質またはペプチドと明確に区別できる。一部の態様では、この場合のネオ抗原は、Ints11、Kif18bp、T3肉腫ネオ抗原、およびTRAMPC2前立腺がん細胞系により発現されるネオ抗原からなる群から選択される。
【0061】
一部の態様では、融合タンパク質は、シグナル配列ペプチドをさらに含む。一部の態様では、シグナル配列ペプチドは、発現後に細菌の細胞壁への融合タンパク質の繋留を指向する。一部の態様では、分泌を指向するシグナル配列ペプチドは、tatシグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、tatシグナル配列ペプチドは、S.aureus由来シグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、分泌を指向するシグナル配列ペプチドは、secシグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、secシグナル配列ペプチドは、S.epidermidis由来シグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、S.epidermidis由来シグナル配列ペプチドは、予測sec分泌S.epidermidisタンパク質(遺伝子座HMPREF9993_06668)に由来する。
【0062】
一部の態様では、融合タンパク質は、抗原提示細胞(APC)標的化部分をさらに含み、必要に応じて、この場合のAPC標的化部分は、CD11bまたはMHC II標的化部分を含む。一部の態様では、APC標的化部分は、ナノボディ(VHH)抗体結合ドメインを含み、必要に応じて、この場合のVHH抗体結合ドメインは、配列
【化3】
を含む。
【0063】
一部の態様では、細菌は、タンパク質またはペプチドと天然細菌タンパク質またはその一部分とを含む融合タンパク質を発現するように操作されている。一部の態様では、タンパク質またはペプチドは、天然細菌タンパク質またはその一部分のN末端またはC末端に融合されている。一部の態様では、細菌は、高複雑度の規定された微生物群落と組み合わせて投与するために製剤化されている。
【0064】
一部の態様では、宿主は、哺乳動物である。一部の態様では、哺乳動物は、ヒトである。
【0065】
(a)第1の非天然タンパク質またはペプチドを発現するように操作されており、その第1の非天然タンパク質またはペプチドがCD4+T細胞応答を惹起するように操作されている、第1の組換え共生細菌と、(b)非天然タンパク質またはペプチドを発現するように操作されており、その第2の非天然タンパク質またはペプチドがCD8+細胞傷害性T細胞応答を惹起するように操作されている、第2の組換え共生細菌とを含む組成物も、本明細書で提供される。一部の態様では、第1の非天然タンパク質またはペプチド、および第2の非天然タンパク質またはペプチドは、各々、共通抗原に由来する。一部の態様では、共通抗原に由来する、第1の非天然タンパク質またはペプチド、および第2の非天然タンパク質またはペプチドは、異なるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、第1の非天然タンパク質またはペプチド、および第2の非天然タンパク質またはペプチドは、各々、異なる抗原に由来する。一部の態様では、天然宿主ニッチにおけるコロニー形成は、持続的または一時的である。一部の態様では、天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、少なくとも60日間、少なくとも112日間、少なくとも178日間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、または少なくとも5年間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、少なくとも180日間のコロニー形成である。一部の態様では、持続的コロニー形成は、持続的抗原源を提供し、必要に応じて、この場合、抗原は、抗原特異的T細胞集団を刺激し、持続的な抗原特異的T細胞集団を生じさせる。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、1日~60日間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、3.5日~60日間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、7日~28日間のコロニー形成である。一部の態様では、コロニー形成は、宿主への投与後、1日、3.5日、7日、14日、28日または60日後に宿主から得られた試料を用いて行われるポリメラーゼ連鎖反応またはコロニー形成アッセイにより決定される。
【0066】
一部の態様では、投与は、細菌と天然免疫系パートナー細胞の相互作用をもたらす。一部の態様では、天然免疫系パートナー細胞は、抗原提示細胞である。一部の態様では、抗原提示細胞は、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、および腸管上皮細胞からなる群から選択される。一部の態様では、天然宿主ニッチは、胃腸管、気道、尿生殖路、および皮膚からなる群から選択される。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、宿主タンパク質またはペプチドである。
【0067】
一部の態様では、細菌は、グラム陰性細菌である。一部の態様では、グラム陰性細菌は、Bacteroides thetaiotaomicron、Helicobacter hepaticusおよびParabacteroides sp.からなる群から選択される。
【0068】
一部の態様では、細菌は、グラム陽性細菌である。一部の態様では、グラム陽性細菌は、Staphylococcus epidermidis、Faecalibacterium sp.、Corynebacterium spp.、Eubacterium limosum、Ruminococcaceae bacterium cv2、Clostridium sp.、Clostridium bolteae 90B3、Clostridium cf.saccharolyticum K10、Clostridium symbiosum WAL-14673、Clostridium hathewayi 12489931、Ruminococcus obeum A2-162、Ruminococcus gnavus AGR2154、Butyrate-producing bacterium SSC/2、Clostridium sp.ASF356、Coprobacillus sp.D6 cont1.1、Eubacterium sp.3_1_31 cont1.1、Erysipelotrichaceae bacterium 21_3、Ruminococcus bromii L2-63、Firmicutes bacterium ASF500、Firmicutes bacterium ASF500、Bifidobacterium animalis subsp.lactis ATCC 27673、およびBifidobacterium breve UCC2003からなる群から選択される。一部の態様では、グラム陽性細菌は、Staphylococcus epidermidis、Faecalibacterium sp.、Corynebacterium spp.、およびClostridium sp.からなる群から選択される。一部の態様では、細菌は、Staphylococcus epidermidisおよびCorynebacterium spp.からなる群から選択される。一部の態様では、細菌は、S.epidermidis NIHLM087である。
【0069】
一部の態様では、細菌は、Corynebacterium tuberculostearicum、Corynebacterium accolens、Corynebacterium amycolatum、Corynebacterium aurimucosum、Corynebacterium propinquum、Corynebacterium pseudodiphtheriticum、Corynebacterium granulosum、Cutibacterium acnes、Cutibacterium avidum、Dolosigranulum pigrum、Finegoldia magna、Moraxella catarrhalis、Moraxella nonliquefaciens、Haemophilus influenzae、Haemophilus aegyptius、Rothia mucilaginosa、Streptococcus pyogenes、Streptococcus agalactiae、Streptococcus gordonii、Neisseria lactamica、Neisseria cinerea、Neisseria mucosa、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus jensenii Gasser、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus iners、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus casei、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus salivarius、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium longum、Veillonella parvula、Gardnerella vaginalis、Atopobium vaginae、Prevotella bivia、Mobiluncus mulieris、Mageeibacillus indolicus、Prevotella buccalis、Enterococcus faecium、Lactococcus lactis、Ruminococcus gnavus、およびEubacterium limosumからなる群から選択される。一部の態様では、共生細菌は、ATCC受託番号35692、49725、49726、49368、700975、700540、51488、10700、25564、51277、11827、25577、49753、51524、29328、25238、25240、19976、51907、11116、25296、19615、12344、BAA-611、13813、10558、23970、14685、19696、33820、25258、19992、55195、4356、33200、7469、393、7995D-5、23272、11741、15700、15697、10790、17745、14018、BAA-55、29303、35243、BAA-2120、35310、19434、19435、29149、および8486を有する細菌からなる群から選択される。一部の態様では、共生細菌は、Lactobacillus casei、Lactococcus lactis、Streptococcus gordonii、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Cutibacterium acnes、Streptococcus agalactiae、Ruminococcus gnavus、Neisseria lactamica、Bifidobacterium breve、およびBifidobacterium longumからなる群から選択される。一部の態様では、共生細菌は、ATCC受託番号393、19435、35105、33820、55195、6919、13813、23970、15700、および15707を有する細菌、ならびに受託番号JCM6515を有する細菌からなる群から選択される。
【0070】
一部の態様では、この場合の投与は、局所経路、経腸経路、および吸入経路からなる群から選択される経路による投与である。一部の態様では、経路は、局所経路である。一部の態様では、経路は、経腸経路である。
【0071】
一部の態様では、タンパク質またはペプチドは、感染に関連している。一部の態様では、感染は、ウイルス感染、寄生虫感染、細菌感染、または真菌感染からなる群から選択される。一部の態様では、感染は、宿主の粘膜境界部で生じるか、または粘膜境界部に別様に関連している。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、感染に関連しているウイルス、寄生虫、細菌または真菌に由来する。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、インフルエンザ、HSV、HIV、またはSARS-CoV-2に由来する。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、NP366-374、NP306-322、NA177-193、M2エクトドメイン、HA2ステム-HA2 12-63、HA2ステム-HA2 76-130、gB糖タンパク質、gd糖タンパク質、gB糖タンパク質498-505、SARS-Cov2スパイクタンパク質、HIV-gp120、HIV-gp41、HIV V1V2突端部、HIV V3ループ、HIV CD4結合部位、gp120/gp41境界領域、gp120サイレント面、およびHIV膜貫通部位近傍(MPER)からなる群から選択される。
【0072】
一部の態様では、タンパク質またはペプチドは、自己免疫障害に関連している。
【0073】
一部の態様では、タンパク質またはペプチドは、増殖性障害に関連している。一部の態様では、増殖性障害は、がんである。一部の態様では、がんは、黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、精巣がん、肉腫、および前立腺がんから選択される。一部の態様では、がんは、黒色腫である。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、PMEL、TRP2およびMART-1からなる群から選択されるメラノサイト特異的抗原に由来する。
【0074】
一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、ネオ抗原を含み、この場合のネオ抗原は、少なくとも1つの突然変異を含み、この突然変異によって、非天然タンパク質またはペプチドを、宿主の野生型遺伝子によりコードされるタンパク質またはペプチドと明確に区別できる。一部の態様では、この場合のネオ抗原は、Ints11、Kif18bp、T3肉腫ネオ抗原、およびTRAMPC2前立腺がん細胞系により発現されるネオ抗原からなる群から選択される。
【0075】
一部の態様では、融合タンパク質は、シグナル配列ペプチドをさらに含む。一部の態様では、シグナル配列ペプチドは、発現後に細菌の細胞壁への融合タンパク質の繋留を指向する。一部の態様では、分泌を指向するシグナル配列ペプチドは、tatシグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、tatシグナル配列ペプチドは、S.aureus由来シグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、分泌を指向するシグナル配列ペプチドは、secシグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、secシグナル配列ペプチドは、S.epidermidis由来シグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、S.epidermidis由来シグナル配列ペプチドは、予測sec分泌S.epidermidisタンパク質(遺伝子座HMPREF9993_06668)に由来する。
【0076】
一部の態様では、融合タンパク質は、抗原提示細胞(APC)標的化部分をさらに含み、必要に応じて、この場合のAPC標的化部分は、CD11bまたはMHC II標的化部分を含む。一部の態様では、APC標的化部分は、ナノボディ(VHH)抗体結合ドメインを含み、必要に応じて、この場合のVHH抗体結合ドメインは、配列番号33または配列番号34の配列を含む。
【0077】
一部の態様では、細菌は、タンパク質またはペプチドと天然細菌タンパク質またはその一部分とを含む融合タンパク質を発現するように操作されている。一部の態様では、タンパク質またはペプチドは、天然細菌タンパク質またはその一部分のN末端またはC末端に融合されている。一部の態様では、細菌は、高複雑度の規定された微生物群落と組み合わせて投与するために製剤化されている。
【0078】
一部の態様では、宿主は、哺乳動物である。一部の態様では、哺乳動物は、ヒトである。
【0079】
生きている組換え共生細菌を含む組成物であって、細菌が、非天然タンパク質またはペプチドを含む融合タンパク質を発現するように操作されており、非天然タンパク質またはペプチドが、感染に関連しており、細菌を宿主に投与し、その結果として細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成が生じると、宿主が、非天然タンパク質またはペプチドに対する適応免疫応答を開始する、組成物も、本明細書で提供される。一部の態様では、適応免疫応答は、T細胞応答またはB細胞応答である。一部の態様では、天然宿主ニッチにおけるコロニー形成は、持続的または一時的である。一部の態様では、天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、少なくとも60日間、少なくとも112日間、少なくとも178日間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、または少なくとも5年間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、少なくとも180日間のコロニー形成である。一部の態様では、持続的コロニー形成は、持続的抗原源を提供し、必要に応じて、この場合、抗原は、抗原特異的T細胞集団を刺激し、持続的な抗原特異的T細胞集団を生じさせる。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、1日~60日間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、3.5日~60日間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、7日~28日間のコロニー形成である。一部の態様では、コロニー形成は、宿主への投与後、1日、3.5日、7日、14日、28日または60日後に宿主から得られた試料を用いて行われるポリメラーゼ連鎖反応またはコロニー形成アッセイにより決定される。
【0080】
一部の態様では、投与は、細菌と天然免疫系パートナー細胞の相互作用をもたらす。一部の態様では、天然免疫系パートナー細胞は、抗原提示細胞である。一部の態様では、抗原提示細胞は、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、および腸管上皮細胞からなる群から選択される。一部の態様では、天然宿主ニッチは、胃腸管、気道、尿生殖路、および皮膚からなる群から選択される。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、宿主タンパク質またはペプチドである。
【0081】
一部の態様では、細菌は、グラム陰性細菌である。一部の態様では、グラム陰性細菌は、Bacteroides thetaiotaomicron、Helicobacter hepaticusおよびParabacteroides sp.からなる群から選択される。
【0082】
一部の態様では、細菌は、グラム陽性細菌である。一部の態様では、グラム陽性細菌は、Staphylococcus epidermidis、Faecalibacterium sp.、Corynebacterium spp.、Eubacterium limosum、Ruminococcaceae bacterium cv2、Clostridium sp.、Clostridium bolteae 90B3、Clostridium cf.saccharolyticum K10、Clostridium symbiosum WAL-14673、Clostridium hathewayi 12489931、Ruminococcus obeum A2-162、Ruminococcus gnavus AGR2154、Butyrate-producing bacterium SSC/2、Clostridium sp.ASF356、Coprobacillus sp.D6 cont1.1、Eubacterium sp.3_1_31 cont1.1、Erysipelotrichaceae bacterium 21_3、Ruminococcus bromii L2-63、Firmicutes bacterium ASF500、Firmicutes bacterium ASF500、Bifidobacterium animalis subsp.lactis ATCC 27673、およびBifidobacterium breve UCC2003からなる群から選択される。一部の態様では、グラム陽性細菌は、Staphylococcus epidermidis、Faecalibacterium sp.、Corynebacterium spp.、およびClostridium sp.からなる群から選択される。一部の態様では、細菌は、Staphylococcus epidermidisおよびCorynebacterium spp.からなる群から選択される。一部の態様では、細菌は、S.epidermidis NIHLM087である。
【0083】
一部の態様では、細菌は、Corynebacterium tuberculostearicum、Corynebacterium accolens、Corynebacterium amycolatum、Corynebacterium aurimucosum、Corynebacterium propinquum、Corynebacterium pseudodiphtheriticum、Corynebacterium granulosum、Cutibacterium acnes、Cutibacterium avidum、Dolosigranulum pigrum、Finegoldia magna、Moraxella catarrhalis、Moraxella nonliquefaciens、Haemophilus influenzae、Haemophilus aegyptius、Rothia mucilaginosa、Streptococcus pyogenes、Streptococcus agalactiae、Streptococcus gordonii、Neisseria lactamica、Neisseria cinerea、Neisseria mucosa、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus jensenii Gasser、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus iners、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus casei、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus salivarius、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium longum、Veillonella parvula、Gardnerella vaginalis、Atopobium vaginae、Prevotella bivia、Mobiluncus mulieris、Mageeibacillus indolicus、Prevotella buccalis、Enterococcus faecium、Lactococcus lactis、Ruminococcus gnavus、およびEubacterium limosumからなる群から選択される。一部の態様では、共生細菌は、ATCC受託番号35692、49725、49726、49368、700975、700540、51488、10700、25564、51277、11827、25577、49753、51524、29328、25238、25240、19976、51907、11116、25296、19615、12344、BAA-611、13813、10558、23970、14685、19696、33820、25258、19992、55195、4356、33200、7469、393、7995D-5、23272、11741、15700、15697、10790、17745、14018、BAA-55、29303、35243、BAA-2120、35310、19434、19435、29149、および8486を有する細菌からなる群から選択される。一部の態様では、共生細菌は、Lactobacillus casei、Lactococcus lactis、Streptococcus gordonii、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Cutibacterium acnes、Streptococcus agalactiae、Ruminococcus gnavus、Neisseria lactamica、Bifidobacterium breve、およびBifidobacterium longumからなる群から選択される。一部の態様では、共生細菌は、ATCC受託番号393、19435、35105、33820、55195、6919、13813、23970、15700、および15707を有する細菌、ならびに受託番号JCM6515を有する細菌からなる群から選択される。
【0084】
一部の態様では、この場合の投与は、局所経路、経腸経路、および吸入経路からなる群から選択される経路による投与である。一部の態様では、経路は、局所経路である。一部の態様では、経路は、経腸経路である。
【0085】
一部の態様では、タンパク質またはペプチドは、感染に関連している。一部の態様では、感染は、ウイルス感染、寄生虫感染、細菌感染、または真菌感染からなる群から選択される。一部の態様では、感染は、宿主の粘膜境界部で生じるか、または粘膜境界部に別様に関連している。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、感染に関連しているウイルス、寄生虫、細菌または真菌に由来する。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、インフルエンザ、HSV、HIV、またはSARS-CoV-2に由来する。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、NP366-374、NP306-322、NA177-193、M2エクトドメイン、HA2ステム-HA2 12-63、HA2ステム-HA2 76-130、gB糖タンパク質、gd糖タンパク質、gB糖タンパク質498-505、SARS-Cov2スパイクタンパク質、HIV-gp120、HIV-gp41、HIV V1V2突端部、HIV V3ループ、HIV CD4結合部位、gp120/gp41境界領域、gp120サイレント面、およびHIV膜貫通部位近傍(MPER)からなる群から選択される。
【0086】
一部の態様では、タンパク質またはペプチドは、自己免疫障害に関連している。
【0087】
一部の態様では、タンパク質またはペプチドは、増殖性障害に関連している。一部の態様では、増殖性障害は、がんである。一部の態様では、がんは、黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、精巣がん、肉腫、および前立腺がんから選択される。一部の態様では、がんは、黒色腫である。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、PMEL、TRP2およびMART-1からなる群から選択されるメラノサイト特異的抗原に由来する。
【0088】
一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、ネオ抗原を含み、この場合のネオ抗原は、少なくとも1つの突然変異を含み、この突然変異によって、非天然タンパク質またはペプチドを、宿主の野生型遺伝子によりコードされるタンパク質またはペプチドと明確に区別できる。一部の態様では、この場合のネオ抗原は、Ints11、Kif18bp、T3肉腫ネオ抗原、およびTRAMPC2前立腺がん細胞系により発現されるネオ抗原からなる群から選択される。
【0089】
一部の態様では、融合タンパク質は、シグナル配列ペプチドをさらに含む。一部の態様では、シグナル配列ペプチドは、発現後に細菌の細胞壁への融合タンパク質の繋留を指向する。一部の態様では、分泌を指向するシグナル配列ペプチドは、tatシグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、tatシグナル配列ペプチドは、S.aureus由来シグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、分泌を指向するシグナル配列ペプチドは、secシグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、secシグナル配列ペプチドは、S.epidermidis由来シグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、S.epidermidis由来シグナル配列ペプチドは、予測sec分泌S.epidermidisタンパク質(遺伝子座HMPREF9993_06668)に由来する。
【0090】
一部の態様では、融合タンパク質は、抗原提示細胞(APC)標的化部分をさらに含み、必要に応じて、この場合のAPC標的化部分は、CD11bまたはMHC II標的化部分を含む。一部の態様では、APC標的化部分は、ナノボディ(VHH)抗体結合ドメインを含み、必要に応じて、この場合のVHH抗体結合ドメインは、配列番号33または配列番号34の配列を含む。
【0091】
一部の態様では、細菌は、タンパク質またはペプチドと天然細菌タンパク質またはその一部分とを含む融合タンパク質を発現するように操作されている。一部の態様では、タンパク質またはペプチドは、天然細菌タンパク質またはその一部分のN末端またはC末端に融合されている。一部の態様では、細菌は、高複雑度の規定された微生物群落と組み合わせて投与するために製剤化されている。
【0092】
一部の態様では、宿主は、哺乳動物である。一部の態様では、哺乳動物は、ヒトである。
【0093】
上記の生きている組換え共生細菌のいずれかを操作するために使用されるポリヌクレオチドを含む組成物も、本明細書で提供される。
【0094】
非天然タンパク質またはペプチドに由来する抗原を呈示する抗原提示細胞の生成を施行するための方法であって、対象に上記の組換え共生細菌のいずれかを投与するステップを含み、投与が、細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成、抗原提示細胞による細菌または非天然タンパク質もしくはペプチドの内在化、および抗原提示細胞による抗原の提示をもたらす、方法も、本明細書で提供される。一部の態様では、天然宿主ニッチにおけるコロニー形成は、持続的または一時的である。一部の態様では、天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、少なくとも60日間、少なくとも112日間、少なくとも178日間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、または少なくとも5年間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、少なくとも180日間のコロニー形成である。一部の態様では、持続的コロニー形成は、持続的抗原源を提供し、必要に応じて、この場合、抗原は、抗原特異的T細胞集団を刺激し、持続的な抗原特異的T細胞集団を生じさせる。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、1日~60日間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、3.5日~60日間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、7日~28日間のコロニー形成である。一部の態様では、コロニー形成は、宿主への投与後、1日、3.5日、7日、14日、28日または60日後に宿主から得られた試料を用いて行われるポリメラーゼ連鎖反応またはコロニー形成アッセイにより決定される。
【0095】
一部の態様では、投与は、細菌と天然免疫系パートナー細胞の相互作用をもたらす。一部の態様では、この場合の天然免疫系パートナー細胞は、抗原提示細胞である。一部の態様では、抗原提示細胞は、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、および腸管上皮細胞からなる群から選択される。一部の態様では、天然宿主ニッチは、胃腸管、気道、尿生殖路、および皮膚からなる群から選択される。一部の態様では、提示は、MHC II複合体内における提示である。一部の態様では、提示は、MHC I複合体内における提示である。
【0096】
一部の態様では、細菌は、高複雑度の規定された微生物群落と組み合わせて投与される。一部の態様では、宿主は、哺乳動物である。一部の態様では、哺乳動物は、ヒトである。
【0097】
一部の態様では、方法は、(a)非天然タンパク質またはペプチドを含む第1の抗原ペプチドを発現するように操作された第1の組換え共生細菌を投与するステップであって、第1の抗原ペプチドが、CD4+T細胞応答を惹起するように操作されている、ステップ、および(b)非天然タンパク質またはペプチドを含む第2の抗原ペプチドを発現するように操作された第2の組換え共生細菌を投与するステップであって、第2の抗原ペプチドが、CD8+細胞傷害性T細胞応答を惹起するように操作されている、ステップを含む。一部の態様では、第1の抗原ペプチドは、発現後に細菌からの第1の抗原ペプチドの分泌を指向するシグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、第2の抗原ペプチド、発現後に細菌の細胞壁への第1の抗原ペプチドの共有結合を指向するシグナル配列ペプチド。
【0098】
対象においてT細胞応答を生成するための方法であって、上記の組換え共生細菌のいずれかを対象に投与するステップを含み、投与が、細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成、およびT細胞応答の生成をもたらし、T細胞応答が、非天然タンパク質またはペプチドに由来する抗原に対するT細胞応答である、方法も、本明細書で提供される。一部の態様では、天然宿主ニッチにおけるコロニー形成は、持続的または一時的である。一部の態様では、天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、少なくとも60日間、少なくとも112日間、少なくとも178日間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、または少なくとも5年間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、少なくとも180日間のコロニー形成である。一部の態様では、持続的コロニー形成は、持続的抗原源を提供し、必要に応じて、この場合、抗原は、抗原特異的T細胞集団を刺激し、持続的な抗原特異的T細胞集団を生じさせる。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、1日~60日間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、3.5日~60日間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、7日~28日間のコロニー形成である。一部の態様では、コロニー形成は、宿主への投与後、1日、3.5日、7日、14日、28日または60日後に宿主から得られた試料を用いて行われるポリメラーゼ連鎖反応またはコロニー形成アッセイにより決定される。
【0099】
一部の態様では、投与は、局所経路、経腸経路、非経口経路および吸入経路からなる群から選択される経路による投与である。一部の態様では、経路は、局所経路である。一部の態様では、経路は、経腸経路である。
【0100】
一部の態様では、T細胞応答は、CD4+Tヘルパー細胞応答、CD8+細胞傷害性T細胞応答、またはCD4+Tヘルパー細胞応答およびCD8+細胞傷害性T細胞応答を含む。一部の態様では、CD4+Tヘルパー細胞応答は、TH1応答、TH2応答、TH17応答、またはこれらの組合せである。一部の態様では、CD4+Tヘルパー細胞応答は、TH1応答である。一部の態様では、CD4+Tヘルパー細胞応答は、TH2応答である。一部の態様では、T細胞応答は、Treg応答を含む。
【0101】
一部の態様では、細菌は、高複雑度の規定された微生物群落と組み合わせて投与される。一部の態様では、宿主は、哺乳動物である。一部の態様では、哺乳動物は、ヒトである。
【0102】
一部の態様では、方法は、(a)非天然タンパク質またはペプチドを含む第1の抗原ペプチドを発現するように操作された第1の組換え共生細菌を投与するステップであって、第1の抗原ペプチドが、CD4+T細胞応答を惹起するように操作されている、ステップ、および(b)非天然タンパク質またはペプチドを含む第2の抗原ペプチドを発現するように操作された第2の組換え共生細菌を投与するステップであって、第2の抗原ペプチドが、CD8+細胞傷害性T細胞応答を惹起するように操作されている、ステップを含む。一部の態様では、第1の抗原ペプチドは、発現後に細菌からの第1の抗原ペプチドの分泌を指向するシグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、第2の抗原ペプチド、発現後に細菌の細胞壁への第1の抗原ペプチドの共有結合を指向するシグナル配列ペプチド。
【0103】
対象における疾患または状態を処置する方法であって、上記の組換え共生細菌のいずれかを対象に投与するステップを含み、投与が、細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成、およびT細胞応答の生成をもたらし、T細胞応答が、非天然タンパク質またはペプチドに由来する抗原に対するT細胞応答であり、そのT細胞応答によって対象における疾患または状態が処置される、方法も、本明細書で提供される。一部の態様では、天然宿主ニッチにおけるコロニー形成は、持続的または一時的である。一部の態様では、天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、少なくとも60日間、少なくとも112日間、少なくとも178日間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、または少なくとも5年間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、少なくとも180日間のコロニー形成である。一部の態様では、持続的コロニー形成は、持続的抗原源を提供し、必要に応じて、この場合、抗原は、抗原特異的T細胞集団を刺激し、持続的な抗原特異的T細胞集団を生じさせる。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、1日~60日間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、3.5日~60日間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、7日~28日間のコロニー形成である。一部の態様では、コロニー形成は、宿主への投与後、1日、3.5日、7日、14日、28日または60日後に宿主から得られた試料を用いて行われるポリメラーゼ連鎖反応またはコロニー形成アッセイにより決定される。
【0104】
一部の態様では、疾患または状態は、感染、増殖性障害、または自己免疫障害である。一部の態様では、感染は、ウイルス感染、寄生虫感染、細菌感染、または真菌感染からなる群から選択される。一部の態様では、増殖性障害は、がんである。一部の態様では、がんは、黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、精巣がん、子宮頸がん、肛門がんおよび上咽頭がんから選択される。一部の態様では、がんは、黒色腫である。
【0105】
一部の態様では、投与は、局所経路、経腸経路、非経口経路および吸入経路からなる群から選択される経路による投与である。一部の態様では、経路は、局所経路である。一部の態様では、細菌は、S.epidermidisである。
【0106】
一部の態様では、疾患は、がんである。一部の態様では、がんは、黒色腫である。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、メラノサイト特異的抗原および精巣がん抗原からなる群から選択され、必要に応じて、この場合のメラノサイト特異的抗原は、PMEL、TRP2およびMART-1からなる群から選択され、必要に応じて、この場合の精巣がん抗原は、NY-ESOおよびMAGE-Aからなる群から選択される。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、ネオ抗原を含み、この場合のネオ抗原は、少なくとも1つの突然変異を含み、この突然変異によって、非天然タンパク質またはペプチドを、宿主の野生型遺伝子によりコードされるタンパク質またはペプチドと明確に区別できる。
【0107】
一部の態様では、細菌は、高複雑度の規定された微生物群落と組み合わせて投与される。一部の態様では、宿主は、哺乳動物である。一部の態様では、哺乳動物は、ヒトである。
【0108】
一部の態様では、方法は、(a)非天然タンパク質またはペプチドを含む第1の抗原ペプチドを発現するように操作された第1の組換え共生細菌を投与するステップであって、第1の抗原ペプチドが、CD4+T細胞応答を惹起するように操作されている、ステップ、および(b)非天然タンパク質またはペプチドを含む第2の抗原ペプチドを発現するように操作された第2の組換え共生細菌を投与するステップであって、第2の抗原ペプチドが、CD8+細胞傷害性T細胞応答を惹起するように操作されている、ステップを含む。一部の態様では、第1の抗原ペプチドは、発現後に細菌からの第1の抗原ペプチドの分泌を指向するシグナル配列ペプチドを含む。一部の態様では、第2の抗原ペプチド、発現後に細菌の細胞壁への第1の抗原ペプチドの共有結合を指向するシグナル配列ペプチド。
【0109】
一部の態様では、方法は、1つまたは複数の追加の薬剤を共投与するステップをさらに含む。一部の態様では、1つまたは複数の追加の薬剤は、1つまたは複数のチェックポイント阻害剤を含む。
【0110】
一部の態様では、遠位の適応免疫応答が生成される。一部の態様では、遠位の適応免疫応答は、投与部位から遠位の適応免疫応答である。一部の態様では、遠位の適応免疫応答は、天然宿主ニッチから遠位の適応免疫応答である。一部の態様では、遠位の適応免疫応答は、投与部位および/または天然宿主ニッチの器官でない器官における免疫応答を含む。一部の態様では、投与部位および/または天然宿主ニッチは、皮膚を含む。一部の態様では、遠位の適応免疫応答は、抗腫瘍応答を含む。一部の態様では、抗腫瘍応答は、転移を標的とする。
【0111】
一部の態様では、融合タンパク質を発現するように操作された、生きている組換え共生細菌であって、融合タンパク質が、(a)非天然タンパク質またはペプチドと、(b)(i)tatシグナル配列ペプチド、secシグナル配列ペプチド、もしくはソルターゼ由来シグナル配列ペプチド、および/もしくは抗原提示細胞(APC)標的化部分、または(ii)tatシグナル配列ペプチド、secシグナル配列ペプチド、もしくはソルターゼ由来シグナル配列ペプチドとを含み、宿主への細菌の投与が、細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成、および非天然タンパク質またはペプチドに対する宿主による適応免疫応答の生成をもたらす、生きている組換え共生細菌が、本明細書で提供される。
【0112】
一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドは、(i)がん;(ii)自己免疫障害;および(iii)宿主の粘膜境界部で生じるまたは粘膜境界部に別様に関連している感染からなる群から選択される宿主疾患または状態に関連している。
【0113】
一部の態様では、シグナル配列ペプチドは、(i)細菌の細胞壁への発現された融合タンパク質の繋留を指向するか、または(ii)発現後に細胞からの融合タンパク質の分泌を指向する。
【0114】
一部の態様では、tatシグナル配列ペプチドは、Staphylococcus aureusのfepBに由来する配列を含み、secシグナル配列ペプチドは、予測sec分泌Staphylococcus epidermidisタンパク質(遺伝子座HMPREF9993_06668)に由来する配列を含み、またはソルターゼ由来シグナル配列ペプチドは、S.aureusのプロテインAに由来する1つもしくは複数の配列を含む。
【0115】
一部の態様では、シグナル配列ペプチドは、非天然タンパク質またはペプチドのN末端側に融合されており、融合タンパク質は、非天然タンパク質またはペプチドのC末端側に細胞壁貫通ペプチドドメインを含む。
【0116】
一部の態様では、APC標的化部分は、CD11bまたはMHCII標的化部分を含む。
【0117】
一部の態様では、天然宿主ニッチは、胃腸管、気道、尿生殖路、および皮膚からなる群から選択される。
【0118】
一部の態様では、適応免疫応答は、投与部位および/または天然宿主ニッチから遠位の適応免疫応答である。一部の態様では、遠位の適応免疫応答は、投与部位および/または天然宿主ニッチの器官でない器官における免疫応答を含み、必要に応じて、この場合の投与部位および/または天然宿主ニッチは、皮膚を含む。一部の態様では、遠位の適応免疫応答は、抗腫瘍応答を含み、必要に応じて、この場合の抗腫瘍応答は、転移を標的とする。
【0119】
一部の態様では、天然宿主ニッチにおけるコロニー形成は、持続的または一時的である。一部の態様では、天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、少なくとも60日間、少なくとも112日間、少なくとも178日間、少なくとも180日間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、または少なくとも5年間のコロニー形成である。一部の態様では、持続的コロニー形成は、持続的抗原源を提供し、必要に応じて、この場合、抗原は、抗原特異的T細胞集団を刺激し、持続的な抗原特異的T細胞集団を生じさせる。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、1日~60日間、3.5日~60日間、または7日~28日間のコロニー形成である。
【0120】
一部の態様では、融合タンパク質は、天然細菌タンパク質またはその一部分のN末端またはC末端に融合された非天然タンパク質またはペプチドを含む。
【0121】
一部の態様では、細菌は、高複雑度の規定された微生物群落と組み合わせて投与するために製剤化されている。
【0122】
一部の態様では、生きている組換え共生細菌は、(i)Staphylococcus epidermidis、Faecalibacterium sp.、Corynebacterium spp.、Eubacterium limosum、Ruminococcaceae bacterium cv2、Clostridium sp.、Clostridium bolteae 90B3、Clostridium cf. saccharolyticum K10、Clostridium symbiosum WAL-14673、Clostridium hathewayi 12489931、Ruminococcus obeum A2-162、Ruminococcus gnavus、Butyrate-producing bacterium SSC/2、Clostridium sp. ASF356、Coprobacillus sp. D6 cont1.1、Eubacterium sp. 3_1_31 cont1.1、Erysipelotrichaceae bacterium 21_3、Ruminococcus bromii L2-63、Firmicutes bacterium ASF500、Firmicutes bacterium ASF500、Bifidobacterium animalis subsp. lactis ATCC 27673、Bifidobacterium breve、Cutibacterium acnes、Cutibacterium avidum、Dolosigranulum pigrum、Finegoldia magna、Rothia mucilaginosa、Streptococcus pyogenes、Streptococcus agalactiae、Streptococcus gordonii、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus jensenii Gasser、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus iners、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus casei、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus salivarius、Bifidobacterium longum、Gardnerella vaginalis、Atopobium vaginae、Mobiluncus mulieris、Mageeibacillus indolicus、Enterococcus faecium、およびLactococcus lactisからなる群から選択されるグラム陽性細菌であり、必要に応じて、S.epidermidis NIHLM087であるか;または(ii)Bacteroides thetaiotaomicron、Helicobacter hepaticus、Parabacteroides sp.、Moraxella catarrhalis、Moraxella nonliquefaciens、Haemophilus influenzae、Haemophilus aegyptius、Neisseria lactamica、Neisseria cinerea、Neisseria Mucosa、Veillonella parvula、Prevotella bivia、Prevotella buccalis、Gardnerella vaginalis、およびMobiluncus mulierisからなる群から選択されるグラム陰性細菌である。
【0123】
一部の態様では、対象における疾患または状態を処置する方法であって、異種抗原を発現するように操作された、生きている組換え共生細菌を、対象に投与するステップを含み、発現された異種抗原が、対象における疾患または状態を処置するための抗原特異的免疫応答を誘導する、方法が、本明細書で提供される。一部の態様では、非天然タンパク質またはペプチドに対する適応免疫応答によって対象の疾患または状態が処置される。一部の態様では、投与は、局所経路、経腸経路、非経口経路および吸入経路からなる群から選択される経路による投与である。
【0124】
一部の態様では、方法は、1つまたは複数の追加の薬剤を共投与するステップをさらに含み、必要に応じて、この場合の1つまたは複数の追加の薬剤は、1つまたは複数のチェックポイント阻害剤を含む。
【0125】
一部の態様では、細菌は、(a)CD4+T細胞応答を惹起するように操作されている第1の非天然タンパク質またはペプチドと(b)CD8+細胞傷害性T細胞応答を惹起するように操作されている第2の非天然タンパク質またはペプチドとを発現するように操作されており、この場合、宿主への細菌の投与は、細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成をもたらす。
【0126】
一部の態様では、(a)第1の非天然タンパク質またはペプチドを発現するように操作されており、その第1の非天然タンパク質またはペプチドがCD4+T細胞応答を惹起するように操作されている、第1の生きている組換え共生細菌と、(b)第2の非天然タンパク質またはペプチドを発現するように操作されており、その第2の非天然タンパク質またはペプチドがCD8+細胞傷害性T細胞応答を惹起するように操作されている、第2の生きている組換え共生細菌とを含む組成物であって、宿主への組成物の投与が、第1の生きている組換え共生細菌および第2の生きている組換え共生細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成をもたらす、組成物も、本明細書で提供される。
【0127】
一部の態様では、第1の非天然タンパク質またはペプチド、および第2の非天然タンパク質またはペプチドは、各々、共通抗原または異なる抗原に由来し、必要に応じて、第1の非天然タンパク質またはペプチド、および第2の非天然タンパク質またはペプチドが、共通抗原に由来する場合に、第1の非天然タンパク質またはペプチド、および第2の非天然タンパク質またはペプチドは、異なるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、第1の非天然タンパク質またはペプチドは、発現後に第1の生きている組換え共生細菌からの非天然タンパク質またはペプチドの分泌を指向するシグナル配列ペプチドを含み、および/または第2の非天然タンパク質またはペプチドは、発現後に第2の生きている組換え共生細菌の細胞壁への第2の非天然タンパク質またはペプチドの共有結合を指向する第2のシグナル配列ペプチドを含む。
【0128】
一部の態様では、宿主における疾患または状態を処置する方法であって、本発明の生きている組換え共生細菌または組成物を、宿主に投与するステップを含み、惹起されたCD4+T細胞応答およびCD8+細胞傷害性T細胞応答によって宿主における疾患または状態が処置される、方法が、本明細書で提供される。
【0129】
一部の態様では、(a)細胞表面繋留部分と非天然タンパク質またはペプチドとを含む融合タンパク質と、(b)細菌と、(c)細菌の細胞壁タンパク質または外膜タンパク質への細胞表面繋留部分の共有結合を触媒でき、それによって細菌表面に融合タンパク質を呈示できるタンパク質またはそれをコードする遺伝子とを含む細菌表面ディスプレイシステムが、本明細書で提供される。
【0130】
一部の態様では、(a)細胞表面繋留部分と非天然タンパク質またはペプチドとを含む融合タンパク質と(b)細菌とを含む細菌表面ディスプレイシステムであって、融合タンパク質が、細胞表面繋留部分によって細胞壁タンパク質または外膜タンパク質に共有結合されており、共有結合が、細菌の細胞壁タンパク質または外膜タンパク質への細胞表面繋留部分の結合を触媒できるタンパク質により触媒された、細菌表面ディスプレイシステムが、本明細書で提供される。
【0131】
一部の態様では、細胞表面繋留部分は、ソルターゼA(SrtA)モチーフを含み、共有結合を触媒できるタンパク質は、SrtAタンパク質である。一部の態様では、SrtAモチーフおよび/またはSrtAタンパク質は、S.aureusに由来し、必要に応じて、この場合のSrtAモチーフは、アミノ酸配列LPXTGを含む。
【0132】
一部の態様では、融合タンパク質は、増殖性障害、自己免疫障害、および感染からなる群から選択される宿主疾患または状態に関連している抗原タンパク質またはペプチドを含む。
【0133】
一部の態様では、宿主への細菌の投与は、非天然タンパク質またはペプチドに対するT細胞応答を惹起する細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成をもたらす。
【0134】
一部の態様では、融合タンパク質は、抗原提示細胞(APC)標的化部分をさらに含み、必要に応じて、この場合のAPC標的化部分は、CD11bまたはMHC II標的化部分を含む。
【0135】
一部の態様では、細菌は、(i)Staphylococcus epidermidis、Faecalibacterium sp.、Corynebacterium spp.、Eubacterium limosum、Ruminococcaceae bacterium cv2、Clostridium sp.、Clostridium bolteae 90B3、Clostridium cf.saccharolyticum K10、Clostridium symbiosum WAL-14673、Clostridium hathewayi 12489931、Ruminococcus obeum A2-162、Ruminococcus gnavus、Butyrate-producing bacterium SSC/2、Clostridium sp.ASF356、Coprobacillus sp.D6 cont1.1、Eubacterium sp.3_1_31 cont1.1、Erysipelotrichaceae bacterium 21_3、Ruminococcus bromii L2-63、Firmicutes bacterium ASF500、Firmicutes bacterium ASF500、Bifidobacterium animalis subsp.lactis ATCC 27673、Bifidobacterium breve、Cutibacterium acnes、Cutibacterium avidum、Dolosigranulum pigrum、Finegoldia magna、Rothia mucilaginosa、Streptococcus pyogenes、Streptococcus agalactiae、Streptococcus gordonii、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus jensenii Gasser、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus iners、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus casei、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus salivarius、Bifidobacterium longum、Gardnerella vaginalis、Atopobium vaginae、Mobiluncus mulieris、Mageeibacillus indolicus、Enterococcus faecium、およびLactococcus lactisからなる群から選択されるグラム陽性細菌であり、必要に応じて、S.epidermidis NIHLM087であるか;または(ii)Bacteroides thetaiotaomicron、Helicobacter hepaticus、Parabacteroides sp.、Moraxella catarrhalis、Moraxella nonliquefaciens、Haemophilus influenzae、Haemophilus aegyptius、Neisseria lactamica、Neisseria cinerea、Neisseria Mucosa、Veillonella parvula、Prevotella bivia、Prevotella buccalis、Gardnerella vaginalis、およびMobiluncus mulierisからなる群から選択されるグラム陰性細菌である。
【0136】
一部の態様では、本発明の細菌表面ディスプレイシステムと賦形剤とを含む医薬組成物が、本明細書で提供される。一部の態様では、医薬組成物は、高複雑度の規定された微生物群落をさらに含む。
【0137】
一部の態様では、宿主における疾患または状態を処置する方法であって、本発明の細菌表面ディスプレイシステムまたは医薬組成物を宿主に投与するステップを含み、投与が、細菌による宿主における天然宿主ニッチにおけるコロニー形成、抗原提示細胞による細菌または非天然タンパク質もしくはペプチドの内在化、非天然タンパク質またはペプチドに由来する抗原の抗原提示細胞によるMHC-IまたはMHC-II複合体内における提示、および抗原に対するT細胞応答の生成をもたらし、そのT細胞応答によって宿主における疾患または状態が処置される、方法が、本明細書で提供される。一部の態様では、天然宿主ニッチにおけるコロニー形成は、持続的または一時的である。一部の態様では、天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、この場合のコロニー形成は、1日~60日間、3.5日~60日間、または7日~28日間のコロニー形成である。一部の態様では、天然宿主ニッチは、胃腸管、気道、尿生殖路、および皮膚からなる群から選択される。
【0138】
一部の態様では、宿主は、対象である。一部の態様では、対象は、ヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【
図1】
図1は、本開示の組換え細菌株により発現される外因性抗原に対する調節性T細胞応答を生成するための例示的な方法を示す図である。
【0140】
【
図2】
図2は、オボアルブミン(OVA)ペプチドを発現するように操作されたBacteroides thetaiotaomicronによるOVA抗原ペプチドの発現を実証するウエスタンブロット解析の画像である。
【0141】
【
図3】
図3Aおよび
図3Bは、DCおよびOVA+B.thetaiotaomicron(
図3B)またはWT B.thetaiotaomicron(陰性対照;
図3A)で刺激した、4時間、B16-FLT3Lと共培養した、OTIIトランスジェニックマウスの脾臓からのOVA特異的T細胞における、Nur77発現のフローサイトメトリー分析を示すドットプロットである。
【0142】
【
図4】
図4A、
図4B、および
図4Cは、B.thetaiotaomicron(
図4A)、Bacteroides vulgatus(
図4B)、およびBacteroides finegoldii(
図4C)によるミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)融合構築物の発現を実証するウエスタンブロット解析の画像である。
【0143】
【
図5】
図5Aおよび
図5Bは、抗原提示細胞(APC;脾臓樹状細胞)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)特異的T細胞、および生きているもしくはオートクレーブ処理された野生型B.thetaiotaomicron、または異なるMOG35-55ペプチド構築物を発現するように操作された様々な組換えB.thetaiotaomicron株を含む、in vitro共培養物における、CD4+T細胞活性化(それぞれ、CD4+T細胞の%CD69+、およびCD4+T細胞の%CTV-CD44+)のフローサイトメトリーデータを示す棒グラフである。
【0144】
【
図6】
図6は、野生型MOGを発現するB.vulgatusおよびB.finegoldiiの混合物(BVF_WT)またはMOG融合構築物を発現するB.vulgatusおよびB.finegoldiiの混合物(BVF_MOG)をEAEの誘導(0日目)の2週間前に投与したノトバイオートマウスの実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)スコアを示すグラフである。
【0145】
【
図7】
図7A、
図7Bおよび
図7Cは、野生型B.vulgatusおよびB.finegoldiiの混合物(BVF_WT)またはMOG35-55融合構築物を発現するように操作された組換えB.vulgatusおよびB.finegoldiiの混合物(BVF_MOG)をEAEの誘導(0日目)の2週間前に投与したマウスにおける、7日目のCD4+T細胞集団のフローサイトメトリーデータ(CD4+T細胞の%Foxp3+Helios-(
図7A)、CD4+T細胞の%IL17+(
図7B)、およびCD4+T細胞の%IFNγ+(
図7C))を示す棒グラフである。
【0146】
【
図8】
図8Aおよび
図8Bは、APC、OT-IまたはOT-IIトランスジェニックマウスから単離されたオボアルブミン(OVA)特異的T細胞、および異なるOVAペプチド構築物を発現するように操作された様々な組換えStaphylococcus epidermidis株を含む、in vitro共培養物における、T細胞活性化の指標としてのCD8+T細胞の%Nur77+(
図8A)およびCD4+T細胞の%Nur77+(
図8B)のフローサイトメトリーデータを示す棒グラフである。PBS=リン酸緩衝食塩水(陰性対照);PMA/Iono=酢酸ミリスチン酸ホルボール/イオノマイシン(陽性対照)。
【0147】
【
図9】
図9は、APC、8restトランスジェニックマウスから単離されたPMEL抗原特異的T細胞、および異なるPMEL抗原構築物を発現するように操作された組換えStaphylococcus epidermidis株を含む、in vitro共培養物における、T細胞活性化の指標としてのCD8+T細胞の%Nur77+のフローサイトメトリーデータを示す棒グラフである。PBS=リン酸緩衝食塩水(陰性対照);PMA/Iono=酢酸ミリスチン酸ホルボール/イオノマイシン(陽性対照)。
【0148】
【
図10】
図10Aは、OVA+/-ルシフェラーゼを発現するように操作された組換えS.epidermidisを、黒色腫細胞の皮下または腹腔内注射の2週間前(「腫瘍前」)または1週間後(「腫瘍後」)のどちらかに局所的に付着させたマウスにおける、OVA+B16F0黒色腫腫瘍重量を示すグラフである。
図10Bは、野生型S.epidermidis(S epi対照)、またはOVAを発現するように操作された組換えS.epidermidis(S epi OVA)を、OVA+B16F0黒色腫腫瘍の腹腔内注射の1日~3日後に局所的に付着させたマウスにおける、OVA+B16F0黒色腫腫瘍の腫瘍放射輝度を経時的に示すグラフである。
図10Cは、野生型S.epidermidis(S epi対照)、またはOVAを発現するように操作された組換えS.epidermidis(S epi OVA)の局所的付着の13日後の
図10Bのマウスにおける腫瘍放射輝度を示すグラフである。
【0149】
【
図11-1】
図11A、
図11B、
図11Cおよび
図11Dは、細菌において発現されるように操作された抗原融合構築物を示す図およびデータである。
図11Aおよび
図11Bは、細菌への形質導入後に発現される抗原の局在を制御する、tat発現系およびソルターゼ発現系の略図をそれぞれ示す。
図11Cは、細胞質、細胞壁、または分泌に方向付けられた局在を伴う、OVA抗原またはペプチド断片OT1、OT2もしくはOT3pep(OVA3pep)の発現のための、様々な構築物の略図を示す。
図11Dは、S.epi-sOVA(分泌OVA)またはS.epi-cOVA(細胞質内OVA)の細胞ペレットまたは一晩液体培養上清から抽出されたタンパク質のウエスタンブロット解析を示す。
【0150】
【
図12】
図12Aおよび
図12Bは、in vitro共培養実験における、T細胞の活性化のマーカーであるNur77発現の、フローサイトメトリー分析を示すグラフである。
図12Aは、脾臓樹状細胞、およびOVA融合タンパク質もしくはペプチドを発現するS.epidermidis、または対照ペプチドを発現するS.epidermidisの存在下で培養した、OT-I刺激抗原特異的CD8+T細胞の%Nur77+細胞を示すグラフである。
図12Bは、脾臓樹状細胞、およびOVA融合タンパク質もしくはペプチドを発現するS.epidermidis、または対照ペプチドを発現するS.epidermidisの存在下で培養した、OT-II刺激抗原特異的CD4+T細胞の%Nur77+細胞を示すグラフである。
【0151】
【
図13】
図13Aは、OVA抗原または対照を発現するように操作されたS.epidermidisを、OVA陽性B16F10黒色腫細胞の皮下異種移植前に1週間、接種したマウスにおいて、21~23日腫瘍を成長させた後の腫瘍体積を示す棒グラフであり、
図13Bは、その腫瘍重量を示す棒グラフである。
【0152】
【
図14-1】
図14Aは、分泌OVA(sOVAtat)、壁結合OT1(wOVApep)、生きている細菌における両方の抗原構築物(OVA)、または熱殺菌された細菌における両方の抗原構築物(HK OVA)を発現するS.epidermidisを、OVA陽性B16F10黒色腫細胞の皮下異種移植前に1週間、接種したマウスにおける、腫瘍重量を示す棒グラフである。両方の生きている細菌株を接種したマウスのある特定の群を、抗CD8抗体(OVA+aCD8)または抗T細胞受容体(TCR)抗体(OVA+aTCRb)でさらに処置した。
【
図14-2】
図14Bおよび
図14Cは、OVAを発現するように操作されたS.epidermidis(S.epi-OVA)を局所的に付着させ、B16-F0-OVA腫瘍を皮下注射したマウスにおける、脾臓CD4+T細胞およびCD8+T細胞の数をそれぞれ示すグラフである。対照群は、抗CD8中和抗体(S.epi-OVA+抗CD8)、または抗TCRβ中和抗体(S.epi-OVA+抗TCRb)でさらに処置した。
【0153】
【
図15-1】
図15A、
図15B、
図15C、
図15D、
図15E、
図15F、
図15Gおよび
図15Hは、OVA抗原の組合せを発現するように操作されたS.epidermidis(S.epi/OVAコンボ)または対照抗原(S.epi対照)を、OVA陽性B16-F0黒色腫細胞の皮下異種移植前に1週間、接種したマウスの、流入領域リンパ節におけるCD8+T細胞またはCD4+T細胞のパーセンテージを示す棒グラフである。
図15A、
図15B、および
図15Cは、CD8+T細胞(
図15A)、IFNγ+CD8+T細胞(
図15B)、および四量体+CD8+T細胞(
図15C)の総パーセンテージについてのフローサイトメトリー分析を示すグラフである。
図15Dおよび
図15Eは、CD4+T細胞(
図15D)およびIFNγ+CD4+T細胞(
図15E)の総パーセンテージについてのフローサイトメトリー分析を示すグラフである。
図15Fは、OVAの異なるバージョン(野生型OVA(OVA);壁貫通OVA(wOVA);壁貫通OVA断片OT1および分泌OVA断片OT2(wOT1+sOT2);または壁貫通OVA断片OT2および分泌OVA断片OT1(wOT2+sOT1))を発現するように操作されたS.epidermidisのコロニーを形成させたマウスからの21~22日目の皮下B16-F0-OVA腫瘍重量を示すグラフである。
図15Gおよび
図15Hは、B16-F0 OVA腫瘍細胞を皮下異種移植し、野生型OVA、壁貫通OVA断片OT1(wOT1)もしくは壁貫通OVA断片OT2(wOT2)を発現するように操作されたS.epidermidisのコロニーを形成させたマウスからの腫瘍流入領域鼠径部リンパ節における、IFNγ+CD4+T細胞およびIFNγ+CD8+T細胞のパーセンテージについてのフローサイトメトリー分析をそれぞれ示すグラフである。
【0154】
【0155】
【
図17】
図17Aおよび
図17Bは、T細胞応答を誘導するために組換え細菌においてインフルエンザAウイルス(IAV)抗原を提示するように設計された融合タンパク質の模式図である。
図17Aは、IAV核タンパク質ペプチド断片NP
366-374に対するCD8+T細胞応答を誘導するように設計された2つの構築物についての設計を示し、下の構築物は、APC上のCD11bを標的とするVHH断片を含有する。
図17Bは、IAV NP
366-374またはIAVノイラミニダーゼ断片NA
177-193のどちらかに対するCD4+T細胞応答を誘導するための4つの構築物についての設計を示し、下の2つの構築物は、APC上のMHC-IIを標的とするVHH断片を含有する。
【0156】
【
図18】
図18Aおよび
図18Bは、オボアルブミン構築物の組合せ(OVAコンボ)を発現するS.epidermidisを接種したマウスにおける、接種後それぞれ3週間および5週間の時点での、血清抗OVA免疫グロブリンG(IgG)を示すグラフである。
【0157】
【
図19】
図19は、B細胞応答を誘導するために組換え細菌において3つのIAV抗原((M2e)
4、HA2
76-130、またはHA2
12-63)のうちの1つを提示するように設計された6つの構築物を示す模式図であり、下の3つの構築物は、APC上のMHC-IIを標的とするVHH断片を含有する。
【0158】
【
図20】
図20は、マウスにおいて組換え共生細菌を使用してIAVに対する免疫化を試験するための実験ワークフローの説明図である。IAV抗原を発現するように操作された組換え共生細菌をマウスに接種し、IAVに感染させ、次いで、感染、生存率、および感染の症状について分析した。
【0159】
【
図21-1】
図21Aは、転移性黒色腫に対する免疫化を試験するための実験ワークフローの説明図である。腫瘍注射の7日前に開始して、マウスに、OVA抗原を発現するように操作された、生きているS.epidermidis株のコロニーを局所的に形成させた。0日目に、B16-F10-OVA黒色腫細胞(ルシフェラーゼを構成的に発現する)を、成長中の培養物から新たに調製し、尾静脈に静脈内注射した。生きているマウスにおける腫瘍負荷量を、腹腔内ルシフェリン注射、続いてのIVIS Lumina Imagerでの生体発光イメージングにより、1~2回/週、モニターした。マウスを22日目に屠殺した。
図21Bは、ネオ抗原発現構築物、およびS.epidermidis内でのそれらの予測細胞内局在の模式図である。壁結合および分泌足場は、wOT1およびsOT1のものと同一である。ネオ抗原コード配列は、壁結合構築物(wB16Ag)についてはObsl1(T1764M)を中心とする、または分泌構築物(sB16Ag)についてはInts11(D314N)を中心とする、27-aaペプチドをコードする。
図21Cは、
図21Aに従って処置したマウスにおける腫瘍放射輝度/生体発光を定量化する折れ線グラフであり、ドットは、腫瘍注射後の各時点における平均測定値を示す。
図21Dは、
図21Aに従って処置したマウスにおける腫瘍注射後15日目の腫瘍放射輝度/生体発光を定量化する棒グラフであり、各ドットは、個々のマウス各々についての測定値を表す。
図21Eは、操作された共生細菌により誘導される抗腫瘍応答のモデルを示す図である。S.epidermidisの抗原発現株は、皮膚にコロニーを形成し、抗原提示細胞を、CD8+またはCD4+T細胞を刺激するように誘導し、その結果、これらの細胞が腫瘍に輸送されて腫瘍成長を制限する。
【0160】
【
図22】
図22は、野生型S.epidermidis(S.epi-対照)、野生型オボアルブミンを発現するように操作されたS.epidermidis(S.epi-OVA)、またはネオ抗原を発現するように操作されたS.epidermidis(S.epi-neoAg)を、静脈内腫瘍注射後4日目(左側のパネル)または15日目(右側のパネル)に局所的に付着させたマウスにおける、転移性腫瘍の生体発光についての一連の代表画像である。
【0161】
【
図23】
図23A、
図23Bおよび
図23Cは、ソルターゼA(SrtA)を使用して細菌上に融合タンパク質を固定する細菌表面ディスプレイシステムを示す図である。
図23Aは、扱いやすい共生生物における抗原の異種発現、および扱いにくい生物におけるSrtAを利用する表面ディスプレイシステムを示す図である。
図23Bは、SrtAが非天然タンパク質を細胞壁(例えば、S.epidermidis)上に固定するメカニズムを示す図である。
図23Cは、発現されるとSrtA表面ディスプレイシステムを使用して細菌細胞壁に固定され得る、様々な構築物の設計を示す図である。
【0162】
【
図24-1】
図24A、
図24B、
図24Cおよび
図24Dは、操作されたS.epidermidis株の定着腫瘍に対する有効性を示す。
図24Aは、S.epi-OVApepの局所的付着による皮下B16-F0-OVA黒色腫の処置を示す。左側のグラフは、盲検化ノギス測定値(n=10/群、両側性腫瘍)を示す。右側のグラフは、同じ実験からの21日目の腫瘍重量を示す。
図24Bは、S.epi-OVApepの局所的付着による転移性B16-F10-OVA黒色腫の処置を示す。左側のグラフは、生体発光イメージングにより定量化したときの腫瘍負荷量を示す。右側のグラフは、20日目の脾臓におけるOT-I特異的T細胞の頻度をH2-Kb-SIINFEKL四量体染色により示す。細胞を、生きているCD90.2+TCRβ+CD8β+細胞にゲーティングした。
図24Cは、S.epi-OVApepを事前に付着させた後の免疫チェックポイント遮断による皮下B16-F10-OVA黒色腫の処置を示す。左側のグラフは、盲検化ノギス測定値(マウスn=8、両側性腫瘍)を示す。上の右側のグラフは、この実験からの生存曲線を示す。下の右側のグラフは、片側性腫瘍を最初に注射し、その腫瘍を再投与し(反対側の側腹部)、いずれの追加の処置も施さなかった、14/16匹のレスポンダーを示す。グラフは、再投与した左側腹部の腫瘍のノギス測定値を描示する。
図24Dは、免疫チェックポイント遮断および局所的S.epi-OVApepによる、定着B16-F10-OVA黒色腫の処置を示す。盲検化ノギス測定値(マウスn=16、両側性腫瘍、2回の実験結果をプールした)。
図24A、
図24B、
図24Cおよび
図24Dにおける棒グラフについて:マン-ホイットニーU検定を使用してP値を生成した。
図24A、
図24B、
図24Cおよび
図24Dにおける腫瘍成長経時変化について:二元配置ANOVAと多重比較検定を使用した。
【発明を実施するための形態】
【0163】
詳細な説明
1.定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての専門および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味を有する。
【0164】
用語「1つの(a)」および「1つの(an)」は、本明細書で使用される場合、文脈が適切である場合を除いて、「1つまたは複数」を意味し、複数形の語を含む。
【0165】
本明細書で使用される場合、用語「共生(の)」は、2つまたはそれより多くの生物間の関係を意味する。ある特定の実施形態では、共生(の)は、一方が一般に何らかの利益を得るがもう一方が一般に無傷である、異なる種の2つまたはそれより多くの生物間の関係を指す。ある特定の実施形態では、共生(の)は、一方の生物がもう一方の生物から利益を得る、異なる種の2つまたはそれより多くの生物間の関係を指す。ある特定の実施形態では、共生(の)は、第1の生物が第2の生物から利益を得、第2の生物が無傷である、異なる種の2つまたはそれより多くの生物間の関係を指す。ある特定の実施形態では、共生(の)は、2つまたはそれより多くの生物間の相利共生的関係を指す。ある特定の実施形態では、共生(の)は、第1の生物が第2の生物から利益を得、第2の生物が無傷である、2つまたはそれより多くの生物間の相利共生的関係を指す。ある特定の実施形態では、共生微小生物は、宿主腸内マイクロバイオーム、宿主皮膚マイクロバイオーム、宿主粘膜マイクロバイオーム、または他の宿主ニッチマイクロバイオームの非病原性メンバーとして通常は存在するものであり得る。
【0166】
本明細書で使用される場合、用語「細菌(bacteria)」は、単数形と複数形、例えば細菌(bacterium)(単数の細菌細胞)と細菌(bacteria)(複数)、の両方、ならびにその遺伝子改変された(組換え)細菌細胞、細菌および細菌株を含む。
【0167】
本明細書で使用される場合、用語「共生細菌」および「共生微小生物」は、本明細書では同義で使用され、動物宿主または動物細胞と共生している細菌(bacterium)、細菌(bacteria)(単数もしくは複数)、細菌細胞または細菌株を指す。ある特定の実施形態では、共生細菌は、脊椎動物宿主または脊椎動物細胞と共生している細菌(bacterium)、細菌(bacteria)(単数もしくは複数)、細菌細胞または細菌株を指す。ある特定の実施形態では、共生細菌は、哺乳動物宿主または哺乳動物細胞と共生している細菌(bacterium)、細菌(bacteria)(単数もしくは複数)、細菌細胞または細菌株を指す。ある特定の実施形態では、共生細菌は、ヒト宿主と共生している細菌(bacterium)、細菌(bacteria)(単数もしくは複数)、細菌細胞または細菌株を指す。ある特定の実施形態では、共生細菌は、ヒト細胞と共生している細菌(bacterium)、細菌(bacteria)(単数もしくは複数)、細菌細胞または細菌株を指す。ある特定の実施形態では、共生細菌は、宿主の免疫系に作用する。ある特定の実施形態では、当業者によって理解されているように、大部分の共生細菌は、典型的に相利共生的であるが、共生株は、病原性になることがあり、またはある特定の条件下で病変、例えば、宿主免疫不全、微生物性腸内毒素症もしくは腸管バリア障害を引き起こすことがある。ある特定の実施形態では、例えば、共生細菌は、宿主腸内マイクロバイオーム、宿主皮膚マイクロバイオーム、宿主粘膜マイクロバイオーム、または他の宿主ニッチマイクロバイオームの非病原性メンバーとして存在する。
【0168】
本明細書で使用される場合、用語「コロニー形成」、「コロニーを形成した」、または「コロニーを形成する」は、宿主のニッチにおける微小生物、例えば生きている組換え共生細菌、の占有を指す。ある特定の実施形態では、コロニー形成は、持続的であることがあり、例えば、60日を超えて続くことがあり、または一時的であることがあり、例えば、1~60日の間、続くことがある。
【0169】
本明細書で使用される場合、用語「異種(の)」または「非天然」は、細胞または生物によって通常はまたは天然に産生も発現もされない分子(例えば、ペプチドまたはタンパク質)を指す。
【0170】
用語「抗原」は、免疫応答を惹起できる分子(例えば、ペプチドもしくはタンパク質)またはその免疫学的に活性な断片を指す。ペプチド抗原は、典型的に、APCにより免疫細胞、例えばTリンパ球(T細胞とも呼ばれる)に提示される。
【0171】
用語「異種抗原」は、またはタンパク質もしくはペプチドに関して「非天然抗原」は、細胞または生物により通常は発現されないペプチド、タンパク質または抗原を指す。ある特定の実施形態では、用語は、T細胞受容体に結合し、免疫応答を誘導する、抗原またはそれらの断片を含む。ある特定の実施形態では、例えば、タンパク質またはペプチド抗原は、APCにより消化されて短いペプチドになり、これらのペプチドが、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIまたはMHC-II分子のコンテキストでAPCの細部表面に発現される。ある特定の実施形態では、抗原という用語は、APCにより提示され、T細胞受容体により認識されるペプチドを含む。ある特定の実施形態では、異種抗原または非天然抗原は、宿主由来抗原であることもあり、または非宿主由来抗原であることもある。
【0172】
用語「融合ペプチド」および「融合タンパク質」は、本明細書では同義で使用され、配列に同じアミノ酸鎖で表される2つまたはそれより多くのタンパク質またはペプチドを含む組換えタンパク質を指す。ある特定の実施形態では、2つまたはそれより多くのタンパク質またはペプチド核酸コード配列は、ベクターまたは発現プラスミドの単一のオープンリーディングフレームにおいて連続的に発現され得る。したがって、ある特定の実施形態では、結果として生じるペプチドまたはタンパク質は、目的の2つまたはそれより多くのタンパク質がNまたはC末端での末端間融合によって接続されている、単一のアミノ酸鎖を含む。
【0173】
宿主における微生物ニッチに関して、用語「天然」は、共生微生物または宿主免疫細胞が通常の非病原性条件下で天然に存在する、宿主内または宿主上の環境を指す。
【0174】
微生物、例えば細菌、により発現されるタンパク質に関して、用語「天然」は、自然界の野生型微生物に通常発現され、存在する、タンパク質またはその一部分を指す。
【0175】
用語「有効量」、または「治療有効量」は、処置を必要とする対象に投与されたときに医学的状態または疾患の1つもしくは複数の症状を予防、軽減または消失させるのに十分な組成物の量を指す。
【0176】
本明細書で使用される場合、用語「作動可能に連結された」は、コード領域配列の転写が、連結された調節配列によって正または負に調節される、1つまたは複数の核酸配列間の、例えば、調節またはプロモーター配列とコード領域配列との間の、機能的連結を指す。
【0177】
本明細書で使用される場合、「抗原特異的」は、所与の抗原に特異的である、宿主において生成される免疫応答を指す。この用語は、目的の抗原に高い親和性で結合できる抗体により認識される抗原に対する応答、およびMHC分子と目的の抗原の分解産物である短いペプチドとを含む複合体を認識し、それに結合する、T細胞受容体(TCR)による抗原に対する応答を含む。ある特定の実施形態では、細菌抗原は、典型的にプロセシングされてペプチドになり、これらのペプチドがAPCの表面のMHC-II分子に結合し、それらがT細胞のTCRによって認識される。
【0178】
本明細書で使用される場合、「抗原提示細胞」または「APC」は、T細胞などのリンパ球による認識のために抗原をプロセシングし提示することにより対象における細胞免疫応答を媒介する免疫細胞を指す。APCは、それらの表面にMHCと複合体化された抗原を呈示し、これは、多くの場合、「抗原提示」と呼ばれる。ある特定の実施形態では、APCは、抗原をヘルパーT細胞(CD4+T細胞)に提示することができ、プロフェッショナルAPCと呼ばれ得る。プロフェッショナルAPCの例としては、樹状細胞、マクロファージ、ランゲルハンス細胞およびB細胞が挙げられる。
【0179】
用語「調節性T細胞」または「Treg」は、免疫系をモジュレートし、自己抗原に対する寛容を維持し、自己免疫疾患を防止する、T細胞の亜集団を指す。Tregは、CD4+T細胞およびCD8+T細胞の活性化、増殖およびサイトカイン産生を抑制し、B細胞および樹状細胞も抑制する。2つの型のTreg細胞がある。「天然」Tregは、胸腺において産生され、その一方で胸腺以外の(末梢の)ナイーブT細胞から分化されるTregは、「適応」Tregと呼ばれる。ある特定の実施形態では、自然Tregは、CD4 T細胞受容体およびCD25(IL-2受容体の成分)、ならびに転写因子FOXP3を発現する。ある特定の実施形態では、Tregは、免疫応答を抑制する分子、例えば、TGF-ベータ、IL-10およびアデノシンも、産生することができる。ある特定の実施形態では、適応Tregは、CD4、CD45RO、Foxp3、およびCD25を発現する(“Human CD4+ CD25hi Foxp3+ regulatory T cells are derived by rapid turnover of memory populations in vivo,” Vukmanovic-Stejic M, et al., J Clin Invest. 2006 Sep;116(9):2423-33を参照されたい)。
【0180】
本明細書で使用される場合、用語「Tエフェクター」、「エフェクターT」、または「Teff」は、細胞活性化時に、炎症誘発性免疫応答を惹起するように免疫系をモジュレートする膜および分泌タンパク質の産生により媒介されてエフェクター機能を発揮する、T細胞の亜集団を指す。ある特定の実施形態では、Teff細胞は、CD8+細胞傷害性T細胞であるTH1細胞、TH2細胞およびTH17細胞を含む。
【0181】
本明細書で使用される場合、用語「操作された」、「組換え(の)」、および「改変された」は、同義で使用され、自然界に現存しない生物、微生物、細胞または細菌を指す。ある特定の実施形態では、操作された細菌は、操作された共生細菌(本明細書では「操作された共生体(単数)」または「操作された共生体(複数)」とも呼ばれる)である。
【0182】
本明細書で使用される場合、「自己免疫疾患」は、身体の内在性器官、組織および/または細胞を攻撃する免疫系に関連しているまたはそれによって引き起こされる疾患または病的状態を指す。
【0183】
本明細書で使用される場合、「自己免疫抗原」は、内在性器官、組織または細胞に対する免疫応答を誘発する、内在性器官、組織または細胞により発現される抗原を指す。
【0184】
本明細書で使用される場合、「動物」は、動物または動物細胞を指す。ある特定の実施形態では、動物は、哺乳動物(例えば、ネズミ科動物、サル、ウマ科動物、ウシ亜科動物、ブタ、イヌ科動物、ネコ科動物など)である。ある特定の実施形態では、動物は、ヒトである。ある特定の実施形態では、動物は、組換え共生微小生物で処置されることになるまたは処置された生物である。ある特定の実施形態では、共生微小生物は、操作された細菌または表面標識細菌である。
【0185】
本明細書で使用される場合、「宿主」は、共生微生物がその内部または上にコロニーを形成する非微生物系生物を指す。ある特定の実施形態では、「宿主」は、共生細菌がその内部または上にコロニーを形成する非微生物系生物を指す。ある特定の実施形態では、宿主は、動物である。ある特定の実施形態では、宿主は、哺乳動物である。ある特定の実施形態では、宿主は、ヒトである。
【0186】
本明細書で使用される場合、用語「対象」または「患者」は、同義で使用され、ヒト、飼育動物および家畜、ならびに動物園、競技用またはペット動物、例えば、イヌ、ウマ、ネコ、雌ウシなどを含む、哺乳動物として分類される任意の動物を指す。ある特定の実施形態では、対象は、ヒトである。ある特定の実施形態では、対象は、改変された微生物が投与される生物を指す。ある特定の実施形態では、投与される改変された微生物は、本発明の生きている組換え共生細菌である。ある特定の実施形態では、対象は、自己免疫または増殖性疾患、障害または状態を有する。
【0187】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される担体」は、標準的な医薬担体のいずれか、例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)溶液、水、エマルジョン(例えば、油/水型または水/油型エマルジョンなど)、および様々なタイプの湿潤剤を指す。組成物は、安定剤および保存薬も含み得る。担体、安定剤、およびアジュバントの例については、例えば、Martin, Remington’s Pharmaceutical Sciences, 15th Ed. Mack Publ. Co., Easton, PA [1975]を参照されたい。
【0188】
本明細書で使用される場合、「医薬製剤」および「医薬組成物」は、同義で使用され、その中に含有されている活性成分の生物活性が有効であることを可能にするような形態であり、かつ製剤が投与されることになる対象にとって許容できないほど毒性である追加の成分を含有しない調製物を指す。
【0189】
本明細書で使用される場合、「一部の実施形態」、「ある特定の実施形態」、および「別の態様」は、同義で使用され、異なる意味および/または範囲を有さない。
【0190】
2.操作された微生物
異種(例えば、非天然)抗原を発現するように操作された改変された微生物、および対象において異種(例えば、非天然)抗原に対する免疫応答を誘導する方法が、本明細書に記載される。一部の実施形態では、改変された微生物は、ヒトにコロニーを形成するまたは共生している、生きている微生物、例えば、細菌、古細菌または真菌を含む。一部の実施形態では、生きている改変された微生物は、異種抗原を発現するように操作された、生きている操作された細菌(単数)、生きている操作された細菌(複数)または生きている操作された細菌株である。一態様では、操作された細菌は、対象において抗原特異的免疫応答を誘導できる非天然タンパク質またはペプチド(例えば、抗原)を発現する共生細菌である。共生細菌に対する自然および適応免疫応答とは異なり、本開示は、非天然タンパク質またはペプチド(例えば、抗原)、例えば哺乳動物抗原、を発現する操作された細菌株を提供する。一部の実施形態では、非天然抗原は、共生細菌に非天然だが宿主に天然であるタンパク質またはペプチドである。一部の実施形態では、非天然抗原は、共生細菌と宿主の両方に非天然であるタンパク質またはペプチドである。改変された細菌は、宿主に共生している細菌に由来するため、対象に投与されたとき病原性であると予想されない。
【0191】
一部の実施形態では、操作された微生物、または操作された微生物を含む医薬組成物は、天然宿主ニッチに投与される。例えば、宿主腸ニッチに天然な共生細菌に由来する、生きている組換え共生細菌が、コロニー形成のために同じ宿主腸ニッチに投与される。別の例では、宿主皮膚ニッチに天然な共生細菌に由来する、操作された細菌が、コロニー形成のために同じ宿主皮膚ニッチに投与される。
【0192】
一部の実施形態では、操作された微生物、例えば、生きている組換え共生細菌は、対象に投与されたとき、天然宿主ニッチに持続的にコロニーを形成する。例えば、一部の実施形態では、生きている組換え共生細菌は、天然宿主ニッチに60日より長きにわたって、112日より長きにわたって、178日より長きにわたって、1年より長きにわたって、2年より長きにわたって、または5年より長きにわたって存続する。説明に役立つ非限定的な例として、Staphylococcus epidermidisは、マウスの皮膚に付着後少なくとも180日間コロニーを形成することができる。
【0193】
一部の実施形態では、操作された微生物、例えば、生きている組換え共生細菌は、対象に投与されたとき、天然宿主ニッチに一時的にコロニーを形成する。例えば、一部の実施形態では、生きている組換え共生細菌は、天然宿主ニッチに、1~60日の間、2~60日の間、10~60日の間、20~60日の間、40~60日の間、1~40日の間、2~40日の間、10~40日の間、20~40日の間、1~20日の間、2~20日の間、10~20日の間、1~10日の間、または2~10日の間、一時的にコロニーを形成する。一部の実施形態では、改変された微生物は、対象における天然宿主ニッチに一時的にコロニーを形成し、次いで、宿主内の異なるニッチに遊走する。
【0194】
一部の実施形態では、微生物、例えば生きている共生細菌、の組換え改変は、対象に投与されたときに微生物がその天然宿主ニッチにコロニーを形成する能力に影響を与えない。例えば、一部の実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドを発現させるための生きている共生細菌の組換え改変は、共生細菌の天然生理機能に大きな影響を与えず、したがって、宿主とのおよび/またはその天然宿主ニッチに存在する他の微生物フローラとのその天然相乗的相互作用に関与する共生細菌の能力を維持し、その天然宿主ニッチへの共生細菌のコロニー形成を助長する。
【0195】
本明細書に記載の操作された細菌は、異種抗原またはその免疫学的に活性な断片に特異的に結合するT細胞受容体を発現するT細胞の生成または拡大をもたらす、非天然タンパク質またはペプチド(例えば、非天然抗原)に対する抗原特異的応答の誘導に有用である。したがって、操作された細菌を使用して、操作された細菌のまたは操作された細菌を含む医薬組成物の治療有効量を対象に投与することにより対象における疾患または状態を処置することができる。投与後、対象の免疫系は、細菌により発現される異種抗原に結合する抗原特異的T細胞を産生することにより応答する。一部の実施形態では、免疫系は、発現された異種タンパク質またはペプチドに対応する自己抗原または他の抗原に対する宿主の免疫応答を低減する抗原特異的調節性T細胞(Treg)を産生することにより応答する。一部の実施形態では、免疫系は、非天然タンパク質またはペプチド、例えば、腫瘍関連抗原、ネオ抗原、または感染性疾患に関連している抗原、に対する免疫応答をモジュレートする抗原特異的T細胞(Teff)を産生することにより応答する。一部の実施形態では、免疫系は、発現された異種抗原に対する免疫応答を、例えば、細胞免疫を促進すること(例えば、抗原特異的CD8細胞傷害性T細胞応答を促す免疫環境を促進すること)によって、モジュレートする、抗原特異的TH1細胞を産生することにより応答する。一部の実施形態では、免疫系は、発現された異種抗原に対する免疫応答を、例えば、液性免疫を促進すること(例えば、抗原特異的B細胞応答および抗体の産生を促す免疫環境を促進すること)によって、モジュレートする、抗原特異的TH2細胞を産生することにより応答する。一部の実施形態では、免疫応答は、発現された異種抗原に対する免疫応答をモジュレートする抗原特異的Tヘルパー17細胞(TH17)を産生することにより応答する。一部の実施形態では、免疫系は、発現された異種抗原に対する免疫応答をモジュレートする抗原特異的T濾胞性ヘルパー細胞(TFH)を産生することにより応答する。一部の実施形態では、免疫系は、発現された異種抗原に対する免疫応答(例えば、液性免疫応答)をモジュレートする抗原特異的B細胞を産生することにより応答する。
【0196】
一部の実施形態では、操作された共生体または他の操作された細菌により誘導される抗原特異的免疫応答は、操作された共生体または他の操作された細菌の投与部位に局在され得る。一部の実施形態では、操作された共生体または他の操作された細菌により誘導される抗原特異的免疫応答は、操作された共生体または他の操作された細菌の投与部位に限定され得る。一部の実施形態では、操作された共生体または他の操作された細菌により誘導される抗原特異的免疫応答は、操作された共生体または他の操作された細菌の投与部位より遠位の抗原特異的免疫応答であり得る。一部の実施形態では、抗原特異的免疫応答は、操作された共生体または他の操作された細菌の投与部位に局在した免疫応答とその投与部位に対して遠位の免疫応答の両方を含み得る。
【0197】
一部の実施形態では、操作された共生体または他の操作された細菌により誘導される抗原特異的免疫応答は、操作された共生体または他の操作された細菌によりコロニーが形成された天然宿主ニッチ(例えば、皮膚などの特定の器官)に局在され得る。一部の実施形態では、操作された共生体または他の操作された細菌により誘導される抗原特異的免疫応答は、操作された共生体または他の操作された細菌によりコロニーが形成された天然宿主ニッチに限定され得る。一部の実施形態では、操作された共生体または他の操作された細菌により誘導される抗原特異的免疫応答は、操作された共生体または他の操作された細菌によりコロニーが形成された天然宿主ニッチより遠位の抗原特異的免疫応答(例えば、操作された共生体または他の操作された細菌によりコロニーが形成されない、対象における器官または部位での抗原特異的免疫応答)であり得る。例えば、遠位の抗原特異的免疫応答は、操作された共生体または他の操作された細菌によりコロニーが形成された天然宿主ニッチにおける免疫細胞の刺激、続いて、免疫細胞の別の部位(例えば、別の器官)への遊走を含み得る。非限定的な、説明に役立つ例として、皮膚にコロニーを形成する操作された共生体または他の操作された細菌は、皮膚以外の器官においてそれらのエフェクター機能を行う免疫細胞(例えば、抗原特的T細胞)をもたらす抗原特異的免疫応答を誘導することができる。ある特定の実施形態では、皮膚以外の器官は、肺、乳房、前立腺、結腸、膀胱、子宮、腎臓、肝臓、膵臓、甲状腺、または卵巣である。一部の実施形態では、抗原特異的免疫応答は、天然宿主ニッチに局在した免疫応答と天然宿主ニッチに対して遠位の免疫応答の両方を含み得る。ある特定の実施形態では、抗原特異的免疫応答は、転移、例えば、他の器官に転移した皮膚黒色腫を標的とする。
【0198】
一部の実施形態では、遠位の抗原特異的免疫応答は、操作された共生体または他の操作された細菌の投与部位に対して遠位である。一部の実施形態では、遠位の抗原特異的免疫応答は、操作された共生体または他の操作された細菌によりコロニーが形成された宿主ニッチに対して遠位である。一部の実施形態では、遠位の抗原特異的免疫応答は、操作された共生体もしくは他の操作された細菌の投与部位とおよび/または操作された共生体もしくは他の操作された細菌によりコロニーが形成された天然宿主ニッチと同じ器官における抗原特異的免疫応答である。ある特定の実施形態では、操作された共生体または他の操作された細菌は、皮膚の1エリアに適用され、および/またはそこにコロニーを形成し、黒色腫皮膚転移などの皮膚の別の部分における免疫応答を生じさせる。一部の実施形態では、遠位の抗原特異的免疫応答は、操作された共生体もしくは他の操作された細菌の投与部位とはおよび/または操作された共生体もしくは他の操作された細菌によりコロニーが形成された天然宿主ニッチとは異なる器官における抗原特異的免疫応答である。ある特定の実施形態では、操作された共生体もしくは他の操作された細菌は、皮膚に適用され、および/または皮膚にコロニーを形成し、他の器官に転移した黒色腫などの、皮膚以外の器官における免疫応答を生じさせる。一部の実施形態では、遠位の抗原特異的免疫応答は、操作された共生体もしくは他の操作された細菌の投与部位および/または操作された共生体もしくは他の操作された細菌によりコロニーが形成された天然宿主ニッチと同じ器官および異なる器官の両方における抗原特異的免疫応答である。ある特定の実施形態では、操作された共生体もしくは他の操作された細菌は、皮膚に適用され、および/または皮膚にコロニーを形成し、皮膚における免疫応答と、皮膚以外の器官における免疫応答の両方、例えば、皮膚黒色腫を標的とする免疫応答と、他の器官に転移した黒色腫を標的とする免疫応答の両方を生じさせる。
【0199】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の改変された微生物(例えば、細菌、古細菌、および真菌)および方法は、対象に投与されたときに異種抗原に対して特異的な免疫応答を生成するという利点を提供する。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の改変された微生物は、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)などの、抗原特異的免疫細胞を生成するための現行のアプローチに勝る利点を提供する。これらの抗原特異的免疫細胞は、産生するのが困難であり、産生費用が高く、耐久性に疑問があり、患者に投与されたとき、オフターゲット効果、例えば、サイトカイン放出症候群、神経毒性、および真核細胞のCRISPR遺伝子編集方法により引き起こされる染色体変化のため、潜在的に安全でない。対照的に、改変された微生物(すなわち、操作された共生微生物および他の操作された微生物)は、強力な長期にわたる免疫応答を誘発するのに有用であり、オフターゲット効果なしで、または最小限のオフターゲット効果で、対象の生涯にわたって投与することができる。ある特定の実施形態では、生きている改変された微生物(すなわち、操作された共生微生物および他の操作された微生物)は、対象に長期間にわたって投与するのに望ましくない弱毒化された病原性共生および非共生微生物、例えば弱毒化されたListeria、に勝る利点を提供する。弱毒化された病原性非共生細菌の投与は、弱毒化された細菌が病原型に戻る可能性に起因して、特に長期間にわたって、対象にリスクをもたらす。対照的に、生きている共生および非共生、非病原性細菌は、非病原型で潜在的に長期間にわたって宿主対象にコロニーを形成することができ、したがって継続的な刺激を提供し、その結果、持続的な抗原特異的T細胞集団をもたらすことができ、これは、T細胞応答が短期間であり得るので重要である。ある特定の実施形態では、組換えS.epidermidisは、対象の皮膚に持続的に(例えば、付着後、少なくとも180日間)コロニーを形成することができ、抗原および/または刺激の継続的な供給源を提供することができる。
【0200】
一部の実施形態では、操作された微生物は、APC、例えば、樹状細胞、脾臓樹状細胞、CD8+樹状細胞、CD11b+樹状細胞、形質細胞様樹状細胞、濾胞性樹状細胞、単球性細胞、マクロファージ、骨髄由来マクロファージ、クッパー細胞、B細胞、ランゲルハンス細胞、自然リンパ系細胞、ミクログリア、または腸管上皮細胞により、飲み込まれる。ある特定の実施形態では、APCにより飲み込まれた後、改変された微生物は、溶解され、異種抗原は、消化され、免疫細胞に提示される。一部の実施形態では、異種抗原は、タンパク質またはペプチドであり、プロセシングされてより小さいペプチド断片になり、これらのペプチド断片がMHC分子に結合し、免疫細胞への提示のためにAPCの表面に呈示される。一部の実施形態では、免疫細胞は、ナイーブT細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞は、抗原を経験したT細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞は、CD8+細胞傷害性T細胞である。抗原特異的免疫応答をin vitroまたはin vivoで惹起することができる。一部の実施形態では、改変された微生物は、APCにより飲み込まれ、プロセシングされ、提示されて、異種抗原に対するTreg応答を誘導する。一部の実施形態では、改変された微生物(例えば、組換え共生細菌または他の操作された細菌)は、APCにより飲み込まれ、プロセシングされ、提示されて、異種抗原に対するTeff応答を誘導する。一部の実施形態では、改変された微生物(例えば、組換え共生細菌または他の操作された細菌)は、APCにより飲み込まれ、プロセシングされ、提示されて、異種抗原に対するCD8+細胞傷害性T細胞応答を誘導する。一部の実施形態では、改変された微生物(例えば、組換え共生細菌または他の操作された細菌)は、APCにより飲み込まれ、プロセシングされ、提示されて、異種抗原に対するTH1応答を誘導する。一部の実施形態では、改変された微生物(例えば、組換え共生細菌または他の操作された細菌)は、APCにより飲み込まれ、プロセシングされ、提示されて、異種抗原に対するTH2応答を誘導する。
【0201】
3.細菌表面ディスプレイシステム
ある特定の生物、例えば、グラム陽性細菌Firmicutesiをはじめとする細菌(例えば、共生細菌)は、強力な免疫調節能力を有するが、既存の遺伝子工学ツールの欠如およびこれらの細菌の遺伝子操作に対する耐性に起因して、これまで研究することが難しかった。ソルターゼ酵素は、グラム陽性細菌間に遍在しており、細菌細胞壁へのタンパク質の固定を媒介する。ソルターゼA(SrtA)は、Staphylococcus aureusにおいて発現されるペプチド転移酵素であり、アミノ酸配列LPXTGを有するSrtAモチーフとN末端グリシンとの間の共有結合性連結を触媒する。
【0202】
(a)細胞表面繋留部分を含む融合タンパク質と、(b)細菌と、(c)細菌の細胞壁への細胞表面繋留部分の共有結合を触媒でき、それによって細菌表面に融合タンパク質を呈示できるタンパク質またはそれをコードする遺伝子とを含む細菌表面ディスプレイシステムが、本明細書で提供される。一部の実施形態では、細胞壁繋留部分は、SrtAモチーフを含み、共有結合を触媒できるタンパク質は、SrtAタンパク質である。例えば、一部の実施形態では、SrtAは、共生細菌の外面にN末端グリシン残基を発現する表面タンパク質への融合タンパク質の共有結合性連結を触媒する。
【0203】
一部の実施形態では、細菌は、共生細菌である。一部の実施形態では、細菌は、グラム陽性共生細菌であり、SrtAは、N末端グリシン残基を発現する細胞壁タンパク質への融合タンパク質の共有結合性連結を触媒する。他の実施形態では、細菌は、グラム陰性細菌であり、SrtAは、N末端グリシン残基を発現する外膜タンパク質への融合タンパク質の共有結合性連結を触媒する。
【0204】
一部の実施形態では、細胞壁または外膜タンパク質は、2~20のN末端グリシン残基を含む。例えば、細胞壁または外膜融合タンパク質は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20のN末端グリシン残基を含む。
【0205】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、細菌に非天然であるタンパク質またはペプチドを含む。例えば、一部の実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドは、非天然抗原タンパク質またはペプチドを含む。一部の実施形態では、タンパク質またはペプチドは、宿主疾患または状態、例えば、感染、増殖性障害、または自己免疫障害に関連している。ある特定の実施形態では、タンパク質またはペプチドは、宿主の適応免疫応答、例えばT細胞応答、を惹起する。
【0206】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、特殊化細胞の分子標識または標的化を助長する非天然タンパク質またはペプチドを含む。例えば、一部の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号61の配列を含む、GFPに対するナノボディ(VHH)を含む。他の実施形態では、例えば、融合タンパク質は、APCを標的とするVHHドメイン(例えば、配列番号34の配列を含む抗CD11b VHH、または配列番号33の配列を含む抗MHC-II VHH)を含む。
【0207】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、in vitroで組換え発現され、SrtAの存在下で細菌と接触させられる。他の実施形態では、融合タンパク質は、組換え発現され、第2の細菌により分泌される。一部の実施形態では、SrtAは、in vitroで組換え発現され、融合タンパク質の存在下で細菌と接触させられる。他の実施形態では、SrtAは、組換え発現され、第2の細菌により分泌される。ある特定の実施形態では、融合タンパク質は、発現され、分泌され、SrtAは、同じ細菌により発現される。ある特定の実施形態では、融合タンパク質は、発現され、分泌され、SrtAは、同じ第2の細菌により発現され、第1の細菌の表面への融合タンパク質の連結を触媒する。
【0208】
一部の実施形態では、融合タンパク質が表面に呈示されている細菌(本明細書では「表面標識細菌」とも呼ばれる)は、ヒトにコロニーを形成し、または共生している、生きている微生物、例えば、細菌、古細菌および真菌を含む。一部の実施形態では、表面標識細菌は、生きている操作された細菌であるか、または異種抗原を呈示する生きている操作された細菌である。一部の実施形態では、生きている表面標識細菌は、異種抗原を発現するように操作された、生きている操作された細菌または生きている操作された細菌株である。一態様では、操作された細菌は、対象において抗原特異的免疫応答を誘導できる非天然タンパク質またはペプチド(例えば、抗原)を発現する共生細菌である。共生細菌に対する自然および適応免疫応答とは異なり、本開示は、非天然タンパク質もしくはペプチド(例えば、抗原)を呈示することができる表面標識細菌、または非天然タンパク質もしくはペプチド(例えば、抗原)、例えば哺乳動物抗原、を発現するように操作され得る表面標識細菌を、提供する。一部の実施形態では、非天然抗原は、表面標識細菌、例えば表面標識共生細菌、に非天然だが宿主に天然である、タンパク質またはペプチドである。一部の実施形態では、非天然抗原は、共生細菌と宿主の両方に非天然である、タンパク質またはペプチドである。表面標識細菌は、宿主に共生している細菌に由来し得るため、対象に投与されたとき病原性であると予想されない。
【0209】
一部の実施形態では、表面標識細菌、または表面標識細菌を含む医薬組成物は、天然宿主ニッチに投与される。例えば、宿主腸ニッチに天然な共生細菌に由来する生きている組換え共生細菌が、コロニー形成のために同じ宿主腸ニッチに投与される。別の例では、宿主皮膚ニッチに天然な共生細菌に由来する表面標識細菌が、コロニー形成のために同じ宿主皮膚ニッチに投与される。
【0210】
一部の実施形態では、表面標識細菌、例えば、生きている組換え共生細菌は、対象に投与されたとき、天然宿主ニッチに持続的にコロニーを形成する。例えば、一部の実施形態では、生きている組換え共生細菌は、天然宿主ニッチに60日より長きにわたって、112日より長きにわたって、178日より長きにわたって、1年より長きにわたって、2年より長きにわたって、または5年より長きにわたって存続する。
【0211】
一部の実施形態では、表面標識細菌、例えば、生きている組換え共生細菌は、対象に投与されたとき、天然宿主ニッチに一時的にコロニーを形成する。例えば、一部の実施形態では、生きている組換え共生細菌は、天然宿主ニッチに、1~60日の間、2~60日の間、10~60日の間、20~60日の間、40~60日の間、1~40日の間、2~40日の間、10~40日の間、20~40日の間、1~20日の間、2~20日の間、10~20日の間、1~10日の間、または2~10日の間、一時的にコロニーを形成する。一部の実施形態では、表面標識細菌は、対象における天然宿主ニッチに一時的にコロニーを形成し、次いで、宿主内の異なるニッチに遊走する。
【0212】
一部の実施形態では、微生物、例えば生きている共生細菌、の組換え改変は、対象に投与されたときに微生物がその天然宿主ニッチにコロニーを形成する能力に影響を与えない。例えば、一部の実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドを発現させるための生きている共生細菌の組換え改変は、共生細菌の天然生理機能に大きな影響を与えず、したがって、宿主とのおよび/またはその天然宿主ニッチに存在する他の微生物フローラとのその天然相乗的相互作用に関与する共生細菌の能力を維持し、その天然宿主ニッチへの共生細菌のコロニー形成を助長する。
【0213】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の表面標識細菌は、異種抗原またはその免疫学的に活性な断片に特異的に結合するT細胞受容体を発現するT細胞の生成または拡大をもたらす、非天然タンパク質またはペプチド(例えば、非天然抗原)に対する抗原特異的応答の誘導に有用である。したがって、表面標識細菌を使用して、表面標識細菌のまたは表面標識細菌を含む組成物の治療有効量を対象に投与することにより対象における疾患または状態を処置することができる。投与後、対象の免疫系は、細菌により発現される異種抗原に結合する抗原特異的T細胞を産生することにより応答する。一部の実施形態では、免疫系は、発現された異種タンパク質またはペプチドに対応する自己抗原または他の抗原に対する宿主の免疫応答を低減する抗原特異的調節性T細胞(Treg)を産生することにより応答する。一部の実施形態では、免疫系は、発現された非天然タンパク質またはペプチド、例えば、腫瘍関連抗原、ネオ抗原、または感染性疾患に関連している抗原、に対する免疫応答をモジュレートする抗原特異的Tエフェクター細胞(Teff)を産生することにより応答する。一部の実施形態では、免疫系は、発現された異種抗原に対する免疫応答を、例えば、細胞免疫を促進すること(例えば、抗原特異的CD8+細胞傷害性T細胞応答を促す免疫環境を促進すること)によって、モジュレートする、抗原特異的TH1細胞を産生することにより応答する。一部の実施形態では、免疫系は、発現された異種抗原に対する免疫応答を、例えば、液性免疫を促進すること(例えば、抗原特異的B細胞応答および抗体の産生を促す免疫環境を促進すること)によって、モジュレートする、抗原特異的TH2細胞を産生することにより応答する。一部の実施形態では、免疫系は、発現された異種抗原に対する免疫応答をモジュレートする抗原特異的Tヘルパー17細胞(TH17)を産生することにより応答する。一部の実施形態では、免疫系は、発現された異種抗原に対する免疫応答をモジュレートする抗原特異的T濾胞性ヘルパー細胞(TFH)を産生することにより応答する。一部の実施形態では、免疫系は、発現された異種抗原に対する免疫応答(例えば、液性免疫応答)をモジュレートする抗原特異的B細胞を産生することにより応答する。
【0214】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の表面標識細菌および方法は、対象に投与されたときに異種抗原に対して特異的な免疫応答を生成するという利点を提供する。本開示は、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)などの、抗原特異的免疫細胞を生成するための現行のアプローチに勝る利点も提供する。これらの抗原特異的免疫細胞は、産生するのが困難であり、産生費用が高く、耐久性に疑問があり、患者に投与されたとき、サイトカイン放出症候群および神経毒性などのオフターゲット効果のため潜在的に安全でない。対照的に、共生微生物は、強力な長期にわたる免疫応答を誘発するのに有用であり得、オフターゲット効果なしで、または最小限のオフターゲット効果で、対象の生涯にわたって投与することができる。したがって、生きている共生微生物は、対象に長期間にわたって投与するのに望ましくない弱毒化された病原性非共生微生物、例えば弱毒化されたListeria、に勝る利点を提供する。弱毒化された病原性非共生細菌の投与は、弱毒化された細菌の病原型に戻る可能性に起因して、特に長期間にわたって、対象にリスクをもたらす。対照的に、生きている共生細菌は、非病原型で潜在的に長期間にわたって宿主対象にコロニーを形成することができ、したがって継続的な刺激を提供し、その結果、持続的な抗原特異的T細胞集団をもたらすことができ、これは、T細胞応答が短期間であり得るので重要である。
【0215】
一部の実施形態では、表面標識細菌は、APC、例えば、樹状細胞、脾臓樹状細胞、CD8+樹状細胞、CD11b+樹状細胞、形質細胞様樹状細胞、濾胞性樹状細胞、単球性細胞、マクロファージ、骨髄由来マクロファージ、クッパー細胞、B細胞、ランゲルハンス細胞、自然リンパ系細胞、ミクログリア、または腸管上皮細胞により、飲み込まれる。APCにより飲み込まれた後、表面標識細菌は、溶解され、異種抗原は、消化され、免疫細胞に提示される。一部の実施形態では、異種抗原は、タンパク質またはペプチドであり、プロセシングされてより小さいペプチド断片になり、これらのペプチド断片がMHC分子(例えば、MHC-IまたはMHC-II)に結合し、免疫細胞への提示のためにAPCの表面に呈示される。一部の実施形態では、免疫細胞は、ナイーブT細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞は、抗原を経験したT細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞は、CD8+細胞傷害性T細胞である。抗原特異的免疫応答をin vitroまたはin vivoで惹起することができる。一部の実施形態では、表面標識細菌は、APCにより飲み込まれ、プロセシングされ、提示されて、異種抗原に対するTreg応答を誘導する。一部の実施形態では、表面標識細菌(例えば、組換え共生細菌)は、APCにより飲み込まれ、プロセシングされ、提示されて、異種抗原に対するTeff応答を誘導する。一部の実施形態では、表面標識細菌(例えば、組換え共生細菌)は、APCにより飲み込まれ、プロセシングされ、提示されて、異種抗原に対するCD8+細胞傷害性T細胞応答を誘導する。一部の実施形態では、表面標識細菌(例えば、組換え共生細菌)は、APCにより飲み込まれ、プロセシングされ、提示されて、異種抗原に対するTH1応答を誘導する。一部の実施形態では、表面標識細菌(例えば、組換え共生細菌)は、APCにより飲み込まれ、プロセシングされ、提示されて、異種抗原に対するTH2応答を誘導する。
【0216】
4.細菌株
一部の実施形態では、改変された微生物は、生きている組換え細菌または細菌株である。一部の実施形態では、生きている組換え細菌は、共生細菌または細菌株に由来する。一部の実施形態では、生きている組換え細菌は、哺乳動物における共生細菌または細菌株に由来する。一部の実施形態では、生きている組換え細菌または細菌株は、ヒトにおける共生細菌または細菌株に由来する。一部の実施形態では、生きている組換え細菌または細菌株は、ヒトニッチ、例えば、胃腸管、気道、尿生殖路、および/または皮膚において天然な、共生細菌または細菌株に由来する。
【0217】
一部の実施形態では、生きている組換え細菌は、哺乳動物の消化管に天然である共生細菌に由来する。生きている組換え細菌は、グラム陰性細菌またはグラム陽性細菌であり得る。一部の実施形態では、生きている組換え細菌は、Bacteroides spp.、Clostridium spp.、Faecalibacterium spp.、Helicobacter spp.、Parabacteroides spp.、またはPrevotella spp.に由来する。一部の実施形態では、生きている組換え細菌は、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides vulgatus、Bacteroides finegoldii、またはHelicobacter hepaticusに由来する。
【0218】
一部の実施形態では、生きている組換え細菌は、哺乳動物の皮膚に天然である共生細菌に由来する。例えば、一部の実施形態では、生きている組換え細菌は、Staphylococcus spp.、またはCorynebacterium spp.に由来する。一部の実施形態では、生きている組換え細菌は、Staphylococcus epidermidisに由来する。例えば、一部の実施形態では、生きている組換え細菌は、S.epidermidis NIHLM087に由来する。
【0219】
グラム陰性細菌
一部の実施形態では、生きている組換え細菌は、グラム陰性である、共生細菌または他の細菌に由来する。例えば、一部の実施形態では、グラム陰性細菌は、Bacteroides spp.、Helicobacter spp.、またはParabacteroides spp.である。一部の実施形態では、生きている組換え細菌は、B.thetaiotaomicron、B.vulgatus、B.finegoldii、またはH.hepaticusである。
【0220】
グラム陽性細菌
一部の実施形態では、生きている組換え細菌は、グラム陽性である、共生細菌または他の細菌に由来する。例えば、一部の実施形態では、グラム陽性細菌は、Staphylococcus spp.、Faecalibacterium spp.、またはClostridium spp.である。一部の実施形態では、生きている組換え細菌は、S.epidermidisである。
【0221】
一部の実施形態では、生きている組換え細菌は、哺乳動物宿主においてTreg応答を誘導することが公知である共生細菌に由来する。一部の実施形態では、生きている組換え細菌は、Bacteroides spp.、Helicobacter spp.、Parabacteroides spp.、Clostridium spp.、Staphylococcus spp.、Lactobacillus spp.、Fusobacterium spp.、Enterococcus spp.、Acenitobacter spp.、Flavinofractor spp.、Lachnospiraceae spp.、Erysipelotrichaceae spp.、Anaerostipes spp.、Anaerotruncus spp.、Coprococcus spp.、Clostridiales spp.、Odoribacter spp.、Collinsella spp.、Bifidobacterium spp.、またはStreptococcusor Prevotella spp.に由来する。
【0222】
一部の実施形態では、生きている組換え細菌は、Clostridium ramosum、Staphylococcus saprophyticus、Bacteroides thetaiotaomicron、Clostridium histolyticum、Lactobacillus rhamnosus、Parabacteroides johnsonii、Fusobacterium nucleatum、Enterococcus faecium、Lactobacillus casei、Acenitobacter lwofii、Bacteroides ovatus、Bacteroides vulgatus、Bacteroides uniformis、Bacteroides finegoldii、Clostridium spiroforme、Flavonifractor plautii、Clostridium hathewayi、Lachnospiraceae bacterium、Clostridium bolteae、Erysipelotrichaceae bacterium、Anaerostipes caccae、Anaerotruncus colihominis、Coprococcus comes、Clostridium asparagiforme、Clostridium symbiosum、Clostridium ramosum、Clostridium sp.D5、Clostridium scindens、Lachnospiraceae bacterium、Clostridiales bacterium、Bacteroides intestinalis、Bacteroides caccae、Bacteroides massiliensis、Parabacteroides distasonis、Odoribacter splanchnicus、Collinsella aerofaciens、Acinetobacter lwoffii、Bifidobacterium breve、Bacteroides finegoldii、Bacteroides fragilis、Bacteroides massiliensis、Bacteroides ovatus、Bifidobacterium bifidum、Lactobacillus acidofilus、Lactobacillus casei、Lactobacillus reuteri、Streptococcus thermophilus、またはPrevotella histicolaに由来する。
【0223】
一部の実施形態では、生きている組換え細菌は、Corynebacterium tuberculostearicum、Corynebacterium accolens、Corynebacterium accolens、Corynebacterium amycolatum、Corynebacterium aurimucosum、Corynebacterium aurimucosum、Corynebacterium propinquum、Corynebacterium pseudodiphtheriticum、Corynebacterium granulosum、Cutibacterium acnes、Cutibacterium acnes、Cutibacterium avidum、Cutibacterium avidum、Dolosigranulum pigrum、Finegoldia magna、Moraxella catarrhalis、Moraxella nonliquefaciens、Haemophilus influenzae、Haemophilus aegyptius、Rothia mucilaginosa、Streptococcus pyogenes、Streptococcus pyogenes、Streptococcus agalactiae、Streptococcus agalactiae、Streptococcus gordonii、Neisseria lactamica、Neisseria inereal、Neisseria Mucosa:、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus jensenii gasser、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus iners、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus casei、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus salivarius、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium longum、Veillonella parvula、Veillona parvula、Gardnerella vaginalis、Atopobium vaginae、Prevotella bivia、Mobiluncus mulieris、Mageeibacillus indolicus、Prevotella buccalis、Enterococcus faecium、Lactococcus lactis、Ruminococcus gnavus、またはEubacterium limosumに由来する。一部の実施形態では、共生細菌は、ATCC受託番号35692、49725、49726、49368、700975、700540、51488、10700、25564、51277、11827、25577、49753、51524、29328、25238、25240、19976、51907、11116、25296、19615、12344、BAA-611、13813、10558、23970、14685、19696、33820、25258、19992、55195、4356、33200、7469、393、7995D-5、23272、11741、15700、15697、10790、17745、14018、BAA-55、29303、35243、BAA-2120、35310、19434、19435、29149、または8486を有する細菌に由来する。本発明に有用な共生細菌は、表1に示される。
【表1-1】
【表1-2】
【0224】
一部の実施形態では、生きている組換え細菌は、哺乳動物宿主においてTeff応答を誘導することが公知である、共生細菌または他の細菌に由来する。一部の実施形態では、生きている組換え細菌は、Staphylococcus spp.、Parabacteroides spp.、Alistipes spp.、Bacteroides spp.、Eubacterium spp.、Runimococcaceae spp.、Phascolarctobacterium spp.、Fusobacterium spp.、Klebsiella spp.、Clostridium spp.、Coprobacillus spp.、Erysipelotrichaceae spp.、Subdoligranulum spp.、Ruminococcus spp.、Firmicutes spp.、またはBifidobacterium spp.に由来する。
【0225】
一部の実施形態では、生きている組換え細菌は、S.epidermidis、Parabacteroides distasonis、Parabacteroides gordonii、Alistipes senegalensis、Parabacteroides johnsonii、Paraprevotella xylaniphila、Bacteroides dorei、Bacteroides uniformis JCM 5828、Eubacterium limosum、Ruminococcaceae bacterium cv2、Phascolarctobacterium faecium、Fusobacterium ulcerans、Klebsiella pneumoniae、Clostridium bolteae 90B3、Clostridium cf.saccharolyticum K10、Clostridium symbiosum WAL-14673、Clostridium hathewayi 12489931、Ruminococcus obeum A2-162、Ruminococcus gnavus AGR2154、Butyrate-producing bacterium SSC/2、Clostridium sp.ASF356、Coprobacillus sp.D6 cont1.1、Eubacterium sp.3_1_31 cont1.1、Erysipelotrichaceae bacterium 21_3、Subdoligranulum sp.4_3_54A2FAA、Ruminococcus bromii L2-63、Firmicutes bacterium ASF500、Bacteroides dorei 5_1_36/D4 supercont2.3、Bifidobacterium animalis subsp.lactis ATCC 27673、またはBifidobacterium breve UCC2003に由来する。
【0226】
非天然タンパク質またはペプチドを発現または呈示するように操作され得る追加の共生および非共生細菌株が表2に収載される。
【表2-1】
【表2-2】
【0227】
5.非天然タンパク質およびペプチド
一部の実施形態では、改変された微生物、例えば、生きている組換え共生細菌は、その微生物において天然に発現されない非天然タンパク質またはペプチド(例えば、異種抗原)を発現または呈示するように操作される。例えば、一部の実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドは、通常、非細菌宿主に現存する、存在する、または非細菌宿主により発現される。一部の実施形態では、非細菌宿主は、改変された微生物が由来する共生細菌の天然宿主である動物である。一部の実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドは、通常、共生細菌に現存する、存在する、または共生細菌により発現される。一部の実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドは、脊椎動物または哺乳動物に現存する抗原である。一部の実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドは、哺乳動物抗原、例えば、マウスまたはヒト抗原である。
一部の実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドは、タンパク質またはその抗原断片である。少なくとも1つの抗原ペプチドのサイズは、これらに限定されないが、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約110、約120またはこれを超えるアミノ酸残基、およびそれらから導出可能な任意の範囲であり得る。特定の実施形態では、抗原ペプチド分子は、50アミノ酸に等しいかまたはそれ未満である。
【0228】
一部の実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドは、MHC-Iにより提示可能な1つまたは複数のT細胞エピトープ(例えば、CD8+細胞傷害性T細胞応答を惹起するように操作された非天然タンパク質またはペプチド)を含み、典型的には長さ15残基またはそれ未満であり、通常は約8~約11残基の間、特に、9または10残基からなる。一部の実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドは、MHC-IIにより提示可能な1つまたは複数のエピトープ(例えば、CD4+T細胞応答を惹起するように操作された非天然タンパク質またはペプチド)を含み、典型的には6~30残基(両端の値を含む)である。一部の実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドは、MHC-Iおよび/またはMHC-IIにより提示可能な1つまたは複数のT細胞エピトープへの抗原プロセシングを受け得る。一部の実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DQ、HLA-DRおよびHLA-DPのいずれか1つなどの、1つまたは複数の別個のHLA対立遺伝子上に提示され得る、抗原プロセシング可能なエピトープまたは抗原を含む。
【0229】
一部の実施形態では、操作された微生物は、MHC分子により提示可能な1つもしくは複数のT細胞エピトープと抗体応答を惹起できる1つもしくは複数のB細胞エピトープとを含む単一の非天然タンパク質もしくはペプチドを発現するように操作されており、または表面標識細菌は、その単一の非天然タンパク質もしくはペプチドを呈示する。T細胞エピトープおよびB細胞エピトープは、同じ抗原タンパク質に由来し得る。T細胞エピトープおよびB細胞エピトープは、別個の抗原タンパク質に由来し得る。
【0230】
一部の実施形態では、操作された微生物は、MHC分子により提示可能な2つもしくはそれより多くのT細胞エピトープを含む単一の非天然タンパク質もしくはペプチドを発現するように操作されており、または表面標識細菌は、その単一の非天然タンパク質もしくはペプチドを呈示する。例えば、単一の非天然タンパク質またはペプチドは、MHC-Iにより提示可能なT細胞エピトープ、およびMHC-IIにより提示可能なT細胞エピトープを含み得る。一部の実施形態では、MHC-Iにより提示可能なT細胞エピトープ、およびMHC-IIにより提示可能なT細胞エピトープは、各々、同じ抗原タンパク質、例えば、天然に存在する抗原に由来する単一の連続するアミノ酸配列(例えば、完全長タンパク質もしくはタンパク質ドメイン)、またはエピトープをコードするアミノ酸配列の非天然ペプチド融合体(例えば、コンカテマー)に由来する。一部の実施形態では、MHC-Iにより提示可能なT細胞エピトープ、およびMHC-IIにより提示可能なT細胞エピトープは、各々、別個の抗原タンパク質、例えば、第1のタンパク質からのエピトープをコードするアミノ酸配列と第2のタンパク質からのエピトープをコードするアミノ酸配列との非天然ペプチド融合体(例えば、コンカテマー)に由来する。ある特定の実施形態では、MHC-Iにより提示可能なT細胞エピトープ、およびMHC-IIにより提示可能なT細胞エピトープは、単一の非天然タンパク質またはペプチドによりコードされる。
【0231】
一部の実施形態では、操作された微生物は、2つもしくはそれより多くの非天然タンパク質もしくはペプチドを発現するように操作されており、または表面標識細菌は、2つもしくはそれより多くの非天然タンパク質もしくはペプチドを呈示する。一部の実施形態では、操作された微生物は、2つまたはそれより多くの非天然タンパク質またはペプチドを発現するように操作されており、2つまたはそれより多くの非天然タンパク質の各々は、独立して、MHC-Iにより提示可能なT細胞エピトープ、MHC-IIにより提示可能なT細胞エピトープ、B細胞エピトープ、またはこれらの組合せを含む。
【0232】
一部の実施形態では、操作された微生物は、MHC分子により提示可能な1つもしくは複数のT細胞エピトープを含む少なくとも1つの第1の非天然タンパク質もしくはペプチドと抗体応答を惹起できる1つもしくは複数のB細胞エピトープを含む少なくとも1つの第2の非天然タンパク質もしくはペプチドとを含む2つもしくはそれより多くの非天然タンパク質もしくはペプチドを発現するように操作されており、または表面標識細菌は、その2つもしくはそれより多くの非天然タンパク質もしくはペプチドを呈示する。T細胞エピトープおよびB細胞エピトープは、同じ抗原タンパク質に由来し得る。T細胞エピトープおよびB細胞エピトープは、別個の抗原タンパク質に由来し得る。
【0233】
一部の実施形態では、操作された微生物は、MHC-Iにより提示可能な1つもしくは複数のT細胞エピトープを含む少なくとも1つの第1の非天然タンパク質もしくはペプチドとMHC-IIにより提示可能な1つもしくは複数のT細胞エピトープを含む少なくとも1つの第2の非天然タンパク質もしくはペプチドとを含む2つもしくはそれより多くの非天然タンパク質もしくはペプチドを発現するように操作されており、または表面標識細菌は、その2つもしくはそれより多くの非天然タンパク質もしくはペプチドを呈示する。MHC-I T細胞エピトープおよびMHC-II T細胞エピトープは、同じ抗原タンパク質に由来し得る。MHC-I T細胞エピトープおよびMHC-II T細胞エピトープは、別個の抗原タンパク質に由来し得る。
【0234】
一部の実施形態では、2つまたはそれより多くの操作された微生物は、1つもしくは複数の非天然タンパク質もしくはペプチドを発現するように操作されていることがあり、または2つもしくはそれより多くの表面標識細菌は、1つもしくは複数の非天然タンパク質もしくはペプチドを呈示する。
【0235】
一部の実施形態では、MHC分子により提示可能な1つもしくは複数のT細胞エピトープを含む第1の非天然タンパク質もしくはペプチドを発現するように操作された少なくとも1つの第1の操作された微生物、またはその第1の非天然タンパク質もしくはペプチドを呈示する第1の表面標識細菌、および抗体応答を惹起できる1つもしくは複数のB細胞エピトープを含む第2の非天然タンパク質もしくはペプチドを発現するように操作された少なくとも1つの第2の操作された微生物、またはその第2の非天然タンパク質もしくはペプチドを呈示する第2の表面標識細菌を含めて、2つもしくはそれより多くの操作された微生物は、1つもしくは複数の非天然タンパク質もしくはペプチドを発現するように操作されていることがあり、または2つもしくはそれより多くの表面標識細菌は、1つもしくは複数の非天然タンパク質もしくはペプチドを呈示する。ある特定の実施形態では、別個の操作された微生物または表面標識細菌により発現されるT細胞エピトープおよびB細胞エピトープは、同じ抗原タンパク質に由来し得る。ある特定の実施形態では、別個の操作された微生物または表面標識細菌により発現されるT細胞エピトープおよびB細胞エピトープは、別個の抗原タンパク質に由来し得る。
【0236】
一部の実施形態では、MHC-Iにより提示可能な1つまたは複数のT細胞エピトープを含む第1の非天然タンパク質またはペプチドを発現するように操作された少なくとも1つの第1の操作された微生物、およびMHC-IIにより提示可能な1つまたは複数のT細胞エピトープを含む第2の非天然タンパク質またはペプチドを発現するように操作された少なくとも1つの第2の微生物を含めて、2つもしくはそれより多くの操作された微生物は、1つもしくは複数の非天然タンパク質もしくはペプチドを発現するように操作されていることがあり、または2つもしくはそれより多くの表面標識細菌は、1つもしくは複数の非天然タンパク質もしくはペプチドを呈示する。ある特定の実施形態では、別個の操作された微生物または表面標識細菌により発現されるMHC-I T細胞エピトープおよびMHC-II T細胞エピトープは、同じ抗原タンパク質に由来し得る。ある特定の実施形態では、別個の操作された微生物または表面標識細菌により発現されるMHC-I T細胞エピトープおよびMHC-II T細胞エピトープは、別個の抗原タンパク質に由来し得る。
【0237】
一部の実施形態では、改変された微生物は、改変された微生物が発現するように操作されているまたは表面標識細菌が呈示する非天然タンパク質またはペプチドに対する調節性T細胞応答を、宿主において誘導できる。一部の実施形態では、改変された微生物は、改変された微生物が発現するように操作されているまたは表面標識細菌が呈示する非天然タンパク質またはペプチドに対する調節性T細胞応答を宿主において誘導できる、生きている組換え共生細菌である。ある特定の実施形態では、非天然タンパク質もしくはペプチドまたは異種抗原が、ナイーブT細胞に対して抗原提示細胞の表面に提示されると、ナイーブT細胞は、Treg細胞に分化することになる。当技術分野において公知であるように、Treg細胞への分化は、TGF-βをはじめとするサイトカインの存在などの、適切な条件下で誘導され得る。特定のメカニズムに拘束されることを意図するものではないが、改変された微生物は、ナイーブT細胞のTreg細胞への分化に有利であるAPCによるサイトカインの産生を誘導し得る。ある特定の実施形態では、改変された微生物は、ナイーブT細胞のTreg細胞への分化に有利であるAPCによるサイトカインの産生を誘導し得る、生きている組換え共生細菌である。一部の実施形態では、改変された微生物は、異種抗原に対するTreg応答を誘導するが、T細胞の他のサブセット、例えばCD8+またはTH17 T細胞、により媒介される免疫応答を惹起しない。一部の実施形態では、改変された微生物は、異種抗原に対するTreg応答を誘導するが、T細胞の他のサブセット、例えばCD8+またはTH17 T細胞、により媒介される免疫応答を惹起しない、生きている組換え共生細菌である。一部の実施形態では、改変された微生物は、異種抗原に対するTH2応答を誘導する。一部の実施形態では、改変された微生物は、異種抗原に対するTH2応答を誘導する、生きている組換え共生細菌である。
【0238】
一部の実施形態では、改変された微生物は、微生物がAPCにより飲み込まれ、抗原またはその抗原断片がHLA分子のコンテキストでT細胞に提示されたとき、免疫応答を誘発するのに十分であるレベルで異種抗原を発現する。一部の実施形態では、改変された微生物は、微生物がAPCにより飲み込まれ、抗原またはその抗原断片がHLA分子のコンテキストでT細胞に提示されたとき、免疫応答を誘発するのに十分であるレベルで異種抗原を発現することができる、生きている組換え共生細菌である。細菌におけるタンパク質発現レベルを最適化するための方法は、Rosano G., et al. “Recombinant protein expression in Escherichia coli: advances and challenges,” Front Microbiol. 2014; 5: 172 (Published online 2014 Apr 17)に記載されている。
【0239】
一部の実施形態では、非天然タンパク質もしくはペプチドまたは異種抗原は、非天然アミノ酸を含む。「非天然アミノ酸」は、20の通常のアミノ酸のうちの1つでないアミノ酸であって、天然にコードされているアミノ酸(これらに限定されないが、20の通常のアミノ酸を含む)の改変により天然に存在するがそれら自体が翻訳複合体により成長ポリペプチド鎖に組み込まれないアミノ酸を含むがこれらに限定されないアミノ酸を指す。天然にコードされていない天然に存在するアミノ酸の非限定的な例としては、これらに限定されないが、N-アセチルグルコサミニル-L-セリン、N-アセチルグルコサミニル-L-トレオニン、およびO-ホスホチロシンが挙げられる。加えて、用語「非天然アミノ酸」は、これらに限定されないが、天然に存在しないアミノ酸であって、合成により得ることができるかまたは非天然アミノ酸の改変により得ることができるアミノ酸を含む。
【0240】
ある特定の実施形態では、改変された微生物による非天然タンパク質もしくはペプチドまたは異種抗原の発現を、抗原RNAまたはタンパク質の発現を検出するアッセイ、例えば、RT-PCR、ノーザン解析、マイクロアレイ、またはウエスタンブロットを使用して検出することができる。ある特定の実施形態では、生きている組換え共生細菌である改変された微生物による非天然タンパク質もしくはペプチドまたは異種抗原の発現を、抗原RNAまたはタンパク質の発現を検出するアッセイ、例えば、RT-PCR、ノーザン解析、マイクロアレイ、またはウエスタンブロットを使用して検出することができる。
【0241】
一部の実施形態では、本明細書に記載の非天然タンパク質もしくはペプチドまたは異種抗原は、共生細菌または細菌株により発現される内因性タンパク質または内因性タンパク質の機能的断片に連結される。一部の実施形態では、非天然タンパク質もしくはペプチド、または異種抗原もしくはその抗原断片を内因性共生細菌タンパク質またはその機能的断片に連結させて融合タンパク質を形成することができ、その融合タンパク質が、生きている組換え共生細菌により発現される。一部の実施形態では、非天然タンパク質もしくはペプチド、または異種抗原もしくはその抗原断片は、内因性共生細菌タンパク質またはその機能的断片のN末端に融合される。一部の実施形態では、非天然タンパク質もしくはペプチド、または異種抗原もしくはその抗原断片は、内因性共生細菌タンパク質またはその機能的断片のC末端に融合される。一部の実施形態では、非天然タンパク質もしくはペプチド、または異種抗原もしくはその抗原断片を、内因性共生細菌タンパク質またはその機能的部分に、アミノ酸リンカーにより連結させることができる。一部の実施形態では、アミノ酸リンカーは、配列GGを含む。
【0242】
一部の実施形態では、異種抗原またはその抗原断片は、シアリダーゼ、エンドヌクレアーゼ、分泌エンドグリコシダーゼ、抗シグマ因子、チオールペルオキシダーゼ、仮想タンパク質BT_2621、仮想タンパク質BT_3223、ペプチダーゼ、Iccファミリーホスホヒドロラーゼ、エキソ-ポリ-アルファ-D-ガラクツロノシダーゼ、仮想タンパク質BT_4428、またはその機能的断片に連結される。
【0243】
自己免疫抗原
一部の実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドは、自己免疫抗原である。一部の実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドは、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質、インスリン、クロモグラニンA、ハイブリッドインスリンペプチド、プロテオリピドタンパク質、ミエリン塩基性タンパク質、ビリン、上皮細胞接着分子、コラーゲンアルファ-1、アグリカンコアタンパク質、60kDaシェペロニン2、ビメンチン、アルファ-エノラーゼ、フィブリノゲンアルファ鎖、フィブリノゲンベータ鎖、キチナーゼ3様タンパク質、60kDaミトコンドリア熱ショックタンパク質、マトリックスメタロプロテイナーゼ-16、甲状腺ペルオキシダーゼ、サイロトロピン受容体、サイログロブリン、グルテン、TSHRタンパク質、グルタミン酸デカルボキシラーゼ2、受容体型チロシン-タンパク質ホスファターゼ様N、グルコース-6-ホスファターゼ2、インスリンアイソフォーム2、亜鉛輸送体8、グルタミン酸デカルボキシラーゼ1、GAD65、UniProt:A2RGM0、インテグリンアルファ-Iib、インテグリンベータ-3、EBV DNAポリメラーゼ触媒サブユニット、2’3’-環状ヌクレオチド3’ホスホジエステラーゼ、ミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質、核内低分子リボ核タンパク質、U1核内低分子リボ核タンパク質、ヒストンH2B、ヒストンH2A、ヒストンH3.2、ベータ-2-糖タンパク質、ヒストンH4、60Sリボソームタンパク質L7、TNF-アルファ、ミエロペルオキシダーゼ、Cbir1、MS4A12、DNAトポイソメラーゼ、CYP2D6、O-ホスホセリル-tRNAセレントランスフェラーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体、スペクトリンアルファ鎖、ステロイド21-ヒドロキシラーゼ、アセチルコリン受容体、MMP-16、ケラチン関連タンパク質、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4、ミエロブラスチン、U1核内低分子リボ核タンパク質70kDa、血液型Rh(D)、血液型Rh(CE)、ミエリンP2タンパク質、末梢ミエリンタンパク質22、ミエリンタンパク質P0、S-アレスチン、コラーゲンアルファ-1、凝固第VIII因子、コラーゲンアルファ-3(IV)、デスモグレイン-3、デスモグレイン-1、インスリン-2、主要DNA結合タンパク質、チロシナーゼ、5,6-ジヒドロキシインドール-2-カルボン酸オキシダーゼ、HLA-A2、アクアポリン-4、ミエリンプロテオリピドタンパク質、ABC輸送体、HLA I B-27アルファ鎖、HLA I B-7アルファ鎖、レチノール結合タンパク質3、またはこれらの抗原断片である。
【0244】
一部の実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドは、自己免疫疾患に関連している抗原である。一部の実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドは、多発性硬化症、乾癬、セリアック病、I型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、グレーブス病、橋本自己免疫性甲状腺炎、白斑、リウマチ熱、悪性貧血/萎縮性胃炎、円形脱毛症、免疫性血小板減少性紫斑病、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、強皮症、抗リン脂質症候群、自己免疫性肝炎1型、原発性胆汁性肝硬変、シェーグレン症候群、アジソン病、疱疹状皮膚炎、川崎病、交感性眼炎、HLA-B27関連急性前部ぶどう膜炎、原発性硬化性胆管炎、円板エリテマトーデス、結節性多発動脈炎、クレスト症候群、重力筋無力症、多発性筋炎/皮膚筋炎、スチル病、自己免疫性肝炎2型、ウェゲナー肉芽腫症、混合性結合組織病、顕微鏡的多発血管炎、多腺性自己免疫性症候群、フェルティー症候群、自己免疫性溶血性貧血、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、ギラン-バレー症候群、ベーチェット病、自己免疫性好中球減少症、水疱性類天疱瘡、本態性混合型クリオグロブリン血症、線状限局性強皮症、多腺性自己免疫性症候群1(APECED)、後天性血友病A、バッテン病/神経セロイドリポフスチン症、自己免疫性膵炎、橋本脳症、グッドパスチャー病、尋常性天疱瘡、自己免疫性散在性脳脊髄炎、再発性多発軟骨炎、高安動脈炎、チャーグ-ストラウス症候群、後天性表皮水疱症、瘢痕性類天疱瘡、落葉状天疱瘡、自己免疫性副甲状腺機能低下症、自己免疫性下垂体炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、多腺性自己免疫性症候群、コーガン症候群、嗜眠性脳炎(encephalitis lethartica)、持久性流規制紅斑、エバンス症候群、X連鎖免疫調節異常多発性内分泌障害腸症(IPEX)、アイザック症候群/後天性神経性筋強直症、ミラー・フィッシャー症候群、モルヴァン症候群、PANDAS、POEMS症候群、ラスムッセン脳炎、全身硬直症候群、フォークト-小柳-原田症候群、視神経脊髄炎、移植片対宿主病、食道性脳炎、または自己免疫性ぶどう膜炎に関連している。
【0245】
一部の実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドは、多発性硬化症(MS)に関連しているミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質またはその抗原断片である。一部の実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドは、I型糖尿病(例えば、インスリン)に関連している膵臓抗原またはその抗原断片である。
【0246】
一部の実施形態では、異種抗原は、がんなどの増殖性障害に関連している抗原またはその抗原断片である。一部の実施形態では、異種抗原は、黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、または精巣がんに関連している。一部の実施形態では、異種抗原は、メラノサイト特異的抗原、例えば、PMEL、TRP2、またはMART-1である。一部の実施形態では、異種抗原は、精巣がん抗原、例えば、NY-ESOまたはMAGE-Aである。一部の実施形態では、異種抗原は、ネオ抗原である。一部の実施形態では、異種抗原は、ネオ抗原でない。
【0247】
一部の実施形態では、異種抗原は、共生細菌によっても宿主によっても自然に発現されないタンパク質またはその抗原ペプチド断片である。一部の実施形態では、異種抗原は、宿主におけるセリアック病に関連しているグルテンまたはその抗原断片である。
【0248】
ネオ抗原
一部の実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドは、ネオ抗原タンパク質またはそのペプチド断片である。ネオ抗原は、がん細胞により特異的に発現され、正常な健康な細胞により発現されない、変異ペプチド抗原である。がん性細胞は、単一のネオ抗原を発現することもあり、または複数のネオ抗原を発現することもある。様々ながんによく見られ、かなりの数の患者により発現されるネオ抗原もあり、稀であり、ほんの少数の患者によってしか発現されないネオ抗原もある。T細胞は、ネオ抗原を、それらががん細胞のMHC上にまたはAPCにより呈示されたとき、認識することができる。ネオ抗原レパートリー、同定、およびがん免疫療法におけるそれらの役割についての説明は、これによりその全体が参照により本明細書に組み込まれる、“Neoantigens in cancer immunotherapy.” TN Schumacher et al., Science, 2015:Vol. 348, Issue 6230, pp. 69-74, DOI: 10.1126/science.aaa4971において提供されている。
【0249】
一部の実施形態では、ネオ抗原は、増殖性障害に関連している。一部の実施形態では、増殖性障害は、がんである。一部の実施形態では、ネオ抗原は、黒色腫、腎臓、肝胆道、頭頸部扁平上皮癌(HNSC)、膵臓、結腸、膀胱、神経膠芽腫、前立腺、肺、乳房(乳腺)、卵巣、胃、腎臓、膀胱、食道、腎、黒色腫、白血病、リンパ腫、中皮腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、および精巣がんからなる群から選択されるがんに関連している。
【0250】
一部の実施形態では、ネオ抗原は、Ints11、Kif18bp、T3肉腫ネオ抗原、およびTRAMPC2前立腺がん細胞系により発現されるようなネオ抗原からなる群から選択される。
【0251】
Ints11およびKif18bpネオ抗原は、Castle et al., “Exploiting the Mutanome for Tumor Vaccination” Cancer Res. 2012; 72(5):1081-1091に記載されており、T3肉腫ネオ抗原は、Alspach et al., “MHC-II neoantigens shape tumour immunity and response to immunotherapy” Nature. 2019; 574:696-701に記載されており、Tramp-C2ネオ抗原は、Fasso et al., “SPAS-1 (stimulator of prostatic adenocarcinoma-specific T cells)/SH3GLB2: A prostate tumor antigen identified by CTLA-4 blockade” PNAS. 2008; 105(9):3509-3514に記載さており、これらの参考文献の各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0252】
抗腫瘍応答を刺激するワクチン組成物の活性医薬品成分として役立ち得るネオ抗原および腫瘍関連ペプチドは、米国特許第9,115,402号に記載されており、この参考特許文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態では、個々のがん対象からのがん細胞におけるネオ抗原または腫瘍関連抗原を構成する利用可能な突然変異を先ず同定することにより、ネオ抗原を選択することができる。ある特定の実施形態では、同定したら、ネオ抗原またはその免疫原性断片を、本明細書に記載の生きている組換え共生細菌に発現させて、がん対象においてまたはがん対象に導入することができるHLA適合ドナーT細胞において、がん細胞を認識し死滅させるために適応T細胞応答を惹起することができる。
【0253】
感染性疾患抗原
一部の実施形態では、少なくとも1つの非天然タンパク質またはペプチドは、感染性疾患を引き起こす生物に関連している抗原である。ある特定の実施形態では、感染性疾患を引き起こす生物は、宿主に感染して宿主において疾患を引き起こす任意の感染性ウイルス、細菌、真菌または寄生虫を含む。一部の実施形態では、宿主は、哺乳動物である。一部の実施形態では、宿主は、ヒトである。一部の実施形態では、感染性疾患を引き起こす生物は、ウイルスである。一部の実施形態では、感染性疾患を引き起こす生物は、細菌である。一部の実施形態では、感染性疾患を引き起こす生物は、真菌である。一部の実施形態では、感染性疾患を引き起こす生物は、寄生虫である。
【0254】
一部の実施形態では、感染性疾患を引き起こす生物は、インフルエンザウイルスA型、インフルエンザウイルスB型、インフルエンザウイルスC型、ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV-1、HSV-2)、レトロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1、HIV-2)、ヒトアデノウイルス(hAdV)、パラインフルエンザウイルス(PIV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ライノウイルス、コロナウイルス、SARS-コロナウイルス、COVID-19、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、デングウイルス、フラビウイルス、エボラウイルス、エプスタイン-バーウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、狂犬病ウイルス、Staphylococcus aureus(MRSA)、Neisseria gonorrhoeae、Chlamydia trachomatis、Treponema pallidum、Clostridium tetani、Clostridium difficile、Mycobacterium tuberculosis、Borrelia burgdorferi、Yersinia pestis、Bordetella pertussis、Vibrio cholerae、Bacillus anthracis、Clostridium botulinum、A群Streptococcus細菌(連鎖球菌性咽頭炎を引き起こす細菌)、Listeria、Shigella、Streptococcus pneumoniae、Mycoplasma pneumoniae、Haemophilus influenzae、Legionella pneumophila、Cryptococcus、Histoplasmosis、Pneumocystis jirovecii、Aspergillus、Trichophyton、Microsporum、Epidermophyton、Trichomonas vaginalis、Plasmodium、Toxoplasma gondii、Giardia lamblia、およびLeishmaniaからなる群から選択される。一部の実施形態では、少なくとも1つの非天然タンパク質またはペプチドは、NP366-374、NP306-322、NA177-193、M2エクトドメイン、HA2ステム-HA 12-63、HA2ステム-HA 76-130、gB糖タンパク質、gd糖タンパク質、およびgB糖タンパク質498-505である。
【0255】
一部の実施形態では、非天然タンパク質またはペプチドは、表3に収載されているようなアミノ酸配列を含む。
【表3】
【0256】
APC標的化部分
一部の実施形態では、操作された微生物、または表面標識細菌、例えば、生きている組換え共生細菌は、APC標的化部分を含む非天然タンパク質もしくはペプチドを発現するように操作されており、またはその非天然タンパク質もしくはペプチドを呈示する。ある特定の実施形態では、APC標的化部分を含む非天然タンパク質またはペプチドはまた、1つまたは複数の抗原配列を含み得る。ある特定の実施形態では、APC標的化部分と1つまたは複数の抗原配列の両方を含む非天然タンパク質またはペプチドはまた、細胞外空間に分泌されるように操作され得る。ある特定の実施形態では、APC標的化部分と1つまたは複数の抗原配列の両方を含む非天然タンパク質またはペプチドはまた、操作された微生物または表面標識細菌の細胞壁に繋留されるように操作され得る。ある特定の実施形態では、分泌および細胞壁繋留は、本明細書における「シグナル配列ペプチド」と題する節でさらに説明される。
【0257】
一部の実施形態では、操作された微生物は、APC標的化部分を含む第1の非天然タンパク質もしくはペプチドと1つもしくは複数の抗原配列を含む第2の別個の非天然タンパク質もしくはペプチドとを発現するように操作されており、または表面標識細菌は、その第1の非天然タンパク質もしくはペプチド、およびその第2の非天然タンパク質もしくはペプチドを呈示する。
【0258】
ある特定の実施形態では、APC標的化部分は、これらに限定されないが、抗体またはその抗原結合性断片、例えば、Fab断片、Fab’断片、一本鎖可変断片(scFv)、単一特異性のものもしくは互いに連結された複数の特異性のどちらかとしての単一ドメイン抗体(sdAb)(例えば、ラクダ科動物抗体ドメイン)、または完全長一本鎖抗体(例えば、重鎖と軽鎖が柔軟なリンカーにより連結されている完全長IgG)を含む。ある特定の実施形態では、APC標的化部分は、発現可能な抗原結合性断片であって、抗原結合性断片が同種抗原に結合できるような適切な翻訳後プロセシングが可能な抗原結合性断片であり得る。ある特定の実施形態では、APC標的化部分は、単一ドメイン抗体(例えば、ラクダ科動物抗体)またはその抗原結合性断片である。APC標的化部分は、単一ドメイン抗体(VHH、「ナノボディ」とも呼ばれる)の可変ドメインであり得る。
【0259】
ある特定の実施形態では、APC標的化部分は、配列番号33のVHH配列を含み得る。ある特定の実施形態では、APC標的化部分は、配列番号34のVHH配列を含み得る。ある特定の実施形態では、APC標的化部分は、VHH配列・配列番号33のCDRの各々を含み得る。ある特定の実施形態では、APC標的化部分は、VHH配列・配列番号34のCDRの各々を含み得る。ある特定の実施形態では、APC標的化部分は、VHH配列・配列番号33のCDR3を含み得る。ある特定の実施形態では、APC標的化部分は、配列番号34のVHH配列のCDR3を含み得る。
【0260】
ある特定の実施形態では、APC標的化部分は、APCに付随する任意の同種リガンド、例えば、樹状細胞、マクロファージ、ランゲルハンス細胞、B細胞、腸管上皮細胞、および自然リンパ系細胞、脾臓樹状細胞、CD8+樹状細胞、CD11b+樹状細胞、形質細胞様樹状細胞、濾胞性樹状細胞、単球性細胞、マクロファージ、骨髄由来マクロファージまたはクッパー細胞に付随する任意の細胞マーカー、に結合する(それらを「標的とする」)ことができる。一部の実施形態では、APC標的化部分は、CD103+CD11b+樹状細胞に付随する任意の細胞マーカーを標的とする。一部の実施形態では、APC標的化部分は、CX3CR1+腸管マクロファージに付随する任意の細胞マーカーを標的とする。一部の実施形態では、APC標的化部分は、CD11bを標的とする。一部の実施形態では、APC標的化部分は、CD11bまたはMHC-II標的化部分を標的とする。
【0261】
シグナル配列ペプチド
一部の実施形態では、操作された微生物、または表面標識細菌、例えば、生きている組換え共生細菌は、シグナル配列ペプチドを含む非天然タンパク質もしくはペプチドを発現するように操作されており、またはその非天然タンパク質もしくはペプチドを呈示する。
【0262】
一部の実施形態では、シグナル配列ペプチドは、発現後に細菌の細胞壁への融合タンパク質の繋留を指向する。ある特定の実施形態では、シグナル配列ペプチドは、ソルターゼ由来シグナル配列ペプチドを含み得る。繋留を指向するシグナル配列ペプチドは、操作された微生物または表面標識細菌の内在性遺伝子に由来し得る。ある特定の実施形態では、繋留を指向するシグナル配列ペプチドは、操作された微生物または表面標識細菌とは異種の配列、例えば、パラログであり得る。ある特定の実施形態では、操作された微生物または表面標識細菌は、S.epidermidisであり得、シグナル配列ペプチドは、S.aureusに由来し得る。ある特定の実施形態では、繋留を指向するシグナル配列ペプチドは、ソルターゼの基質であるタンパク質(例えば、S.aureusのプロテインA)に由来するシグナル配列ペプチドであり得る。
【0263】
一般に、細胞壁に繋留されることになるタンパク質は、典型的に細胞壁貫通ペプチドドメインを含む。細胞壁貫通ペプチドドメインは、操作された微生物または表面標識細菌の内在性遺伝子に由来し得る。細胞壁貫通ペプチドドメインは、操作された微生物または表面標識細菌とは異種の配列、例えば、パラログであり得る。ある特定の実施形態では、操作された微生物または表面標識細菌は、S.epidermidisであり得、細胞壁貫通ペプチドドメインは、S.aureusに由来し得る。ある特定の実施形態では、細胞壁貫通ペプチドドメインは、ソルターゼの基質であるタンパク質(例えば、S.aureusのプロテインA)に由来し得る。
【0264】
ある特定の実施形態では、細胞壁に繋留されることになるタンパク質の一般的構成は、非天然タンパク質またはペプチドのN末端に位置する、繋留を指向するシグナル配列ペプチドと、非天然タンパク質またはペプチドのC末端に位置する、細胞壁貫通ペプチドドメインとを含み得る。
【0265】
一部の実施形態では、シグナル配列ペプチドは、発現後に細菌からの融合タンパク質の分泌(すなわち、細胞外空間への分泌)を指向する。ある特定の実施形態では、分泌を促進するシグナル配列ペプチドは、これらに限定されないが、ツインアルギニン透過(tat)シグナル配列ペプチドまたは一般分泌(sec)シグナル配列ペプチドを含む。ある特定の実施形態では、分泌を促進するシグナル配列ペプチドは、tatシグナル配列ペプチドであり得る。ある特定の実施形態では、分泌を促進するシグナル配列ペプチドは、操作された微生物または表面標識細菌の内在性遺伝子に由来し得る。ある特定の実施形態では、分泌を促進するシグナル配列ペプチドは、操作された微生物または表面標識細菌とは異種の配列、例えば、パラログであり得る。ある特定の実施形態では、操作された微生物は、S.epidermidisであり得、分泌を促進するシグナル配列ペプチドは、S.aureusに由来し得る(例えば、fepBからのシグナル配列ペプチドであり得る)。ある特定の実施形態では、分泌を促進するシグナル配列ペプチドは、secシグナル配列ペプチドであり得る。ある特定の実施形態では、シグナル配列ペプチドは、予測シグナル配列ペプチド、例えば、予測sec分泌S.epidermidisタンパク質(遺伝子座HMPREF9993_06668)に由来するシグナル配列ペプチドを含む。
【0266】
6.核酸
一部の実施形態では、改変された微生物、例えば、生きている組換え共生細菌は、非天然タンパク質もしくはペプチド、または異種抗原もしくはその抗原断片を発現させるために使用される、非天然核酸または異種核酸を含む。一部の実施形態では、異種核酸は、異種タンパク質またはその抗原断片を産生するように翻訳されるRNAである。一部の実施形態では、異種核酸は、異種タンパク質またはその抗原断片をコードするDNA(すなわち、異種タンパク質またはその抗原断片を産生するように翻訳されるmRNAに転写され得るDNA)である。
【0267】
ある特定の実施形態では、異種核酸は、典型的に、調節配列およびコード領域配列を含む。一部の実施形態では、調節配列は、コード領域配列に作動可能に連結されており、したがって、調節配列は、コード領域配列の発現(例えば、転写または翻訳)を制御する。ある特定の実施形態では、調節配列は、転写因子などの調節タンパク質に結合し、作動可能に連結された配列の転写速度に影響を与える、配列エレメント、例えば、プロモーターおよびエンハンサーを含み得る。ある特定の実施形態では、調節配列は、コード領域配列の上流(5’)もしくは下流(3’)または両方に位置し得る。
【0268】
一部の実施形態では、コード領域配列は、哺乳動物における免疫応答の惹起に有用である異種タンパク質をコードする。当業者には公知であるように、MHC-IIに強力に結合し、T細胞応答を惹起する、エピトープコード配列を予測するために、様々なオンラインサービスを使用することができる(例えば、Reynisson et al. NetMHCpan-4.1 and NetMHCIIpan-4.0: improved predictions of MHC antigen presentation by concurrent motif deconvolution and integration of MS MHC eluted ligand data. Nucleic Acids Res. 2020; 48(W1):W449-454.を参照されたい)。ある特定の実施形態では、核酸は、転写および翻訳されたときに異種タンパク質を特定の細胞位置または区画に輸送するためのシグナルを提供する配列(例えば、細胞内の、分泌された、または膜に結合している配列)も含み得る。
【0269】
一部の実施形態では、異種核酸は、コード領域配列のRNAへの転写を上方調節または下方調節する調節配列を含む発現ベクターである。一部の実施形態では、改変された微生物は、RNAをタンパク質に翻訳するための必要成分、例えば、アミノ酸およびtRNAを含み得る。一部の実施形態では、改変された微生物は、RNAをタンパク質に翻訳するための必要成分、例えばアミノ酸およびtRNA、を含む、生きている組換え共生細菌である。ある特定の実施形態では、発現ベクターは、生きている組換え共生細菌内の任意の位置における異種抗原の発現を指向する調節エレメントを含有し得る。ある特定の実施形態では、発現ベクターは、細胞質中の(すなわち、可溶性であり、封入体の中にない)、ペリプラズム中の、細胞表面タンパク質に融合された、または細菌により分泌された、異種抗原の発現を指向する調節エレメントを含有し得る。細菌における組換えタンパク質の発現のための核酸ベクターは、当業者に周知である。一部の実施形態では、発現ベクターは、pNBU2-bla-ermGb、pNBU2-bla-tetQb、またはpExchange-tdkである(例えば、Wang J. et al. (2000). J Bacteriol. 182. 3559-71;pMM668, Addgene;Mimee M. et al. (2015) Cell Syst. 1(1):62-71;およびKoropatkin N. et al. 2008. Structure. 16(7): 1105-1115を参照されたい)。
【0270】
一部の実施形態では、発現ベクターは、Whitaker et al., “Tunable Expression Tools Enable Single-Cell Strain Distinction in the Gut Microbiome,” Cell 169, 538-546, April 20, 2017に記載されているような、抗原エピトープコード領域を細菌ゲノムに組み込むために使用される、pWW3837ベクター(Genbank#KY776532)である。
【0271】
一部の実施形態では、異種核酸は、細菌のゲノムに安定的に組み込まれる。一部の実施形態では、異種核酸は、細菌内にプラスミドとして維持される。一部の実施形態では、異種核酸は、エピソームプラスミドである。
【0272】
一部の実施形態では、異種核酸は、表4に収載されているようなエピトープコード領域配列を含む。
【表4】
【0273】
一部の実施形態では、異種核酸は、非天然ヌクレオチド、または天然ヌクレオチドの類似体を含む。ヌクレオチドアナログまたは非天然ヌクレオチドは、塩基、糖またはリン酸部分に対する任意のタイプの改変を含有するヌクレオチドを含む。改変は、化学的改変を含み得る。ある特定の実施形態では、改変は、主鎖、糖成分またはヌクレオチド塩基の3’OHまたは5’OH基の改変であり得る。ある特定の実施形態では、改変は、天然に存在しないリンカー分子の付加、および/または鎖間もしくは鎖内架橋を含み得る。ある特定の実施形態では、改変された核酸は、3’OHもしくは5’OH基、主鎖、糖成分、またはヌクレオチド塩基の1つもしくは複数についての修飾、および/または天然に存在しないリンカー分子の付加を含む。ある特定の実施形態では、改変された骨格は、ホスホジエステル骨格以外の骨格を含む。一態様では、改変された糖は、デオキシリボース以外の糖(改変DNAの場合)、またはリボース以外の糖(改変RNAの場合)を含む。ある特定の実施形態では、改変された塩基は、アデニン、グアニン、シトシンもしくはチミン以外の塩基(改変DNAの場合)、またはアデニン、グアニン、シトシンもしくはウラシル以外の塩基(改変RNAの場合)を含む。
【0274】
7.生きている組換え共生細菌を産生する方法
ある特定の実施形態では、参照により本明細書に組み込まれる、Green, M.R. and Sambrook, J., eds., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2012)、およびAusubel, F. M., et al. Current Protocols in Molecular Biology (Supplement 99), John Wiley & Sons, New York (2012)に記載されているような一般的な分子生物学法を使用して、共生細菌を、非天然タンパク質もしくはペプチドまたは異種抗原もしくはその抗原断片を発現するように操作することができ、またはそれらを呈示するように表面標識することができる。
【0275】
ある特定の実施形態では、非天然タンパク質もしくはペプチドまたは異種抗原もしくはその抗原断片を発現する、生きている組換え共生細菌株を産生するために、抗原エピトープコード配列を発現ベクターにクローニングすることができる。ある特定の実施形態では、代表的な発現ベクターは、pWW3837ベクター(Genbank#KY776532)である(Whitaker et al., “Tunable Expression Tools Enable Single-Cell Strain Distinction in the Gut Microbiome,” Cell 169, 538-546, April 20, 2017を参照されたい)。ある特定の実施形態では、抗原エピトープコード配列をギブソンアセンブリーなどの公知の方法により発現ベクターにクローニングすることができる。ある特定の実施形態では、次いで発現ベクターを好適な細菌ドナー株、例えば、Escherichia coli S17ラムダpirドナー株に電気穿孔法で導入することができる。ある特定の実施形態では、E.coliドナー株を、コンジュゲーションのために一晩、レシピエントである生きている共生細菌と共培養し、陽性コロニーを発現ベクターの組込みについてスクリーニングすることができる。
【0276】
ある特定の実施形態では、非天然タンパク質もしくはペプチドまたは異種抗原の発現を、抗原をコードするRNAの発現の検出を含む様々なアッセイにより、決定することができる。ある特定の実施形態では、アッセイは、ノーザン解析、RT-PCR、またはタンパク質発現検出である。ある特定の実施形態では、タンパク質発現検出は、ウエスタン解析である。
【0277】
8.医薬組成物
一部の実施形態では、本明細書に記載の改変された微生物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物が、本開示で提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載の生きている組換え共生細菌である改変された微生物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物が、本開示で提供される。一部の実施形態では、医薬組成物は、対象によって摂取されたまたは別様に対象に投与されたときに本明細書に記載の改変された微生物により発現される異種抗原に対する抗原特異的T細胞応答を誘導する。一部の実施形態では、組成物は、本明細書に記載の改変された微生物により発現される異種抗原に対する抗原特異的Treg応答を誘導する。一部の実施形態では、組成物は、本明細書に記載の改変された微生物により発現される異種抗原に対する抗原特異的Teff応答を誘導する。
【0278】
一部の実施形態では、医薬組成物は、組成物が対象に投与されたときに抗原特異的T細胞応答を誘導する非天然または異種抗原をコードする非天然または異種核酸を含む、改変された微生物を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、組成物が対象に投与されたときに抗原特異的Treg応答を誘導する異種抗原をコードする異種核酸を含む、改変された微生物を含む。一部の実施形態では、異種抗原は、細菌細胞表面に繋留され得る。一部の実施形態では、医薬組成物は、組成物が対象に投与されたときに抗原特異的Teff応答を誘導する異種抗原をコードする異種核酸を含む、改変された微生物を含む。一部の実施形態では、異種抗原は、細菌細胞表面に繋留され得る。
【0279】
一部の実施形態では、医薬組成物は、組成物が対象に投与されたときに抗原特異的T細胞応答を誘導する非天然または異種抗原をコードする非天然または異種核酸を含む、生きている組換え共生細菌を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、組成物が対象に投与されたときに抗原特異的Treg応答を誘導する異種抗原をコードする異種核酸を含む、改変された共生細菌を含む。一部の実施形態では、異種抗原は、細菌細胞表面に繋留され得る。一部の実施形態では、医薬組成物は、組成物が対象に投与されたときに抗原特異的Teff応答を誘導する異種抗原をコードする異種核酸を含む、改変された共生細菌を含む。一部の実施形態では、異種抗原は、細菌細胞表面に繋留され得る。
【0280】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含み得る。ある特定の実施形態では、薬学的に許容される賦形剤の例としては、限定ではないが、滅菌溶液、例えば、水、食塩水、およびリン酸緩衝溶液が挙げられる。ある特定の実施形態では、医薬品賦形剤の追加の例は、Handbook of Pharmaceutical Excipients, 8th Edition, Authors/Editor: Sheskey, Paul J.; Cook, Walter G.; Cable, Colin G., Pharmaceutical Press (ISBN: 978-0-857-11271-2)に記載されている。使用される賦形剤のタイプが対象への投与経路に依存することは理解されるであろう。
【0281】
一部の実施形態では、医薬組成物は、哺乳動物の消化管に天然である共生細菌に由来する改変された細菌を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、Bacteroides sp.またはHelicobacter sp.から選択される、生きている組換え共生細菌を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、組換えB.thetaiotaomicron、B.vulgatus、B.finegoldiiまたはH.hepaticusを含む。
【0282】
一部の実施形態では、医薬組成物は、哺乳動物の皮膚に天然である共生細菌に由来する改変された細菌を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、Staphylococcus spp.を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、組換えS.epidermidisを含む。
【0283】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物を、異種抗原に対する抗原特異的免疫応答を誘導する好適な経路、例えば、経口、経鼻、皮下、皮膚、皮内、筋肉内、粘膜または直腸経路によって、対象に投与することができる。
【0284】
一部の実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、改変された微生物に、その改変された微生物が由来した微生物が元々生息していたであろう対象におけるニッチにコロニーを形成させるために、好適な経路によって対象に投与される。一部の実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、改変された微生物に、宿主の胃腸管にコロニーを形成させるために、対象に経口投与される。一部の実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、改変された微生物に、宿主の皮膚にコロニーを形成させるために、対象に局所投与される。
【0285】
一部の実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、改変された微生物が、その改変された微生物が由来した微生物が元々生息していたであろう対象におけるニッチにコロニーを形成する生きている組換え共生細菌となることを可能にするために、好適な経路によって対象に投与される。一部の実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、対象の胃腸管に天然な共生細菌に由来する生きている組換え細菌である改変された微生物に、宿主の胃腸管にコロニーを形成させるために、対象に経口投与される。一部の実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、対象の皮膚に天然な共生細菌に由来する生きている組換え細菌である改変された微生物に、宿主の皮膚にコロニーを形成させるために、対象に局所投与される。
【0286】
一部の実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載の改変された微生物が放出される前に胃経由で小腸に移行することを可能にする材料、例えば、遅延放出性腸溶コーティングを含む。一部の実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、本明細書に記載の改変された微生物を含有する腸溶性カプセルを含む。一部の実施形態では、腸溶コーティングは、胃の酸性pHなどの酸性pHで安定しているが小腸のpH(pH7~9)などのアルカリ性pHで容易に分解または溶解する、ポリマーを含む。
【0287】
一部の実施形態では、医薬組成物は、組換え共生細菌である改変された微生物が放出される前に胃経由で小腸に移行することを可能にする材料、例えば、遅延放出性腸溶コーティングを含む。一部の実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、本明細書に記載の生きている組換え共生細菌である改変された微生物を含有する腸溶性カプセルを含む。一部の実施形態では、腸溶コーティングは、胃の酸性pHなどの酸性pHで安定しているが小腸のpH(pH7~9)などのアルカリ性pHで容易に分解または溶解する、ポリマーを含む。
【0288】
一部の実施形態では、医薬組成物は、対象における疾患または病的状態の処置に有用である追加の薬剤をさらに含み得る。ある特定の実施形態では、追加の薬剤の例としては、対象における疾患または病的状態の処置に有用である小分子薬または抗体が挙げられる。
【0289】
9.適応T細胞応答を誘導する細菌を含む合成細菌群落
ある特定の実施形態では、本開示に従って産生される改変された微生物(例えば、これに限定されないが、生きている組換え共生細菌を含む)は、抗原特異的T細胞免疫応答を誘導するために対象に投与され得る。ある特定の実施形態では、細菌の投与は、一般に、単一の細菌細胞の投与を指すのではなく、複数の細菌細胞、典型的には、所望の特性(すなわち、異種抗原またはその抗原断片の発現)を有する細菌細胞のクローン集団、の投与を包含すると認識されることになる。
【0290】
「高複雑度の規定された微生物群落」は、本明細書で使用される場合、各微生物株が分子的に規定されている複数の異なる微生物(例えば、複数の異なる細菌株)の物理的組合せを指す。
【0291】
両方とも発明の名称が「高複雑度合成細菌群落(High Complexity Synthetic Gut Bacterial Communities)」であり、各々の内容が、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2018年11月21日に出願された米国特許仮出願第62/770,706号、および2020年5月28日にWO2020106999A1として公開された関連国際特許出願番号PCT/US2019/062689には、in vitroおよびin vivoバックフィル法を使用して産生された、規定された安定な微生物群落、すなわち「バックフィル群落」、およびそのような群落を作製するための方法が記載されている。ある特定の実施形態では、これらの微生物群落は、目的の少なくとも1つまたは複数の微生物細胞を含み、哺乳動物の(例えば、ヒトの)腸、例えば、ヒトマイクロバイオームを含有する腸に生着したとき、微生物生態系が恒常性を維持している、したがって、目的の少なくとも1つまたは複数の微生物細胞が群落からなくならず、腸内での競合する微小生物の成長により押しのけられず、腸内で成長して他の微小生物を押しのけない、という意味で、安定している。集団内の株の組合せが不安定であった場合、集団は、予測できない形で変化する可能性があり、それによって群落の代謝表現型が変化する可能性がある。
【0292】
米国特許仮出願第62/770,706号、および関連国際特許出願番号PCT/US2019/062689には、所望の代謝表現型を有する群落の生成、スクリーニングおよび生着が記載されている。ある特定の実施形態では、代謝表現型は、1つまたは複数の第1の化合物を1つまたは複数の第2の化合物に変換する微生物株または微生物群落の能力であり得る。ある特定の実施形態では、第1の化合物は、微小生物または群落によって第2の化合物に酵素的に転換され、代謝表現型は、第2の化合物の量の増加である。
【0293】
一部の実施形態では、例えば、これに限定されないが、生きている組換え共生細菌を含む、本明細書に記載の改変された微生物を、高複雑度の規定された微生物群落と組み合わせて投与することができる。一部の実施形態では、細菌は、高複雑度の規定された微生物群落と組み合わせて宿主に投与され、高複雑度の規定された微生物群落は、宿主におけるTH2、Tregおよび/またはTH17応答を促進する。一部の実施形態では、例えば、これに限定されないが、生きている組換え共生細菌を含む、本明細書に記載の改変された微生物を、国際特許出願番号PCT/US2019/062689で開示されているような高複雑度の規定された微生物群落と組み合わせて投与することができる。ある特定の実施形態では、高複雑度の規定された微生物群落の所望の表現型は、異種抗原に対する抗原特異的T細胞応答を誘導するのに十分な量で異種抗原またはその抗原断片を発現する、本明細書で開示の生きている組換え共生細菌の能力である。ある特定の実施形態では、改変された微生物、例えば生きている組換え共生細菌、を含む高複雑度の規定された微生物群落は、組換え細菌が由来した共生微生物が元々生息していただろう対象におけるニッチにおけるコロニー形成を可能にするために、対象に投与され、その結果として、生きている組換え共生細菌により発現される異種抗原またはその抗原断片に対する抗原特異的T細胞応答が誘導されることになる。一部の実施形態では、本明細書に記載の生きている組換え共生細菌を含む高複雑度の規定された微生物群落は、群落が生着する対象において抗原特異的調節性T細胞応答を誘導する。一部の実施形態では、本明細書に記載の生きている組換え共生細菌を含む高複雑度の規定された微生物群落は、群落が生着する対象において抗原特異的Tエフェクター細胞応答を誘導する。
【0294】
異種抗原に対する抗原特異的T細胞応答を誘導できる高複雑度の規定された微生物群落を、代謝表現型が抗原特異的T細胞応答を惹起する能力であるという変更を加えて、国際特許出願番号PCT/US2019/062689に記載されているように産生できることは、当業者には理解されるであろう。そこで開示されているように、培養またはin vivoバックフィル群落を、所望の抗原特異的T細胞応答を誘導する能力についてアッセイした。そこで開示されているある特定の実施形態では、所望の抗原特異的T細胞応答は、代謝表現型の一種と見なされ得る。
【0295】
代謝表現型についてのアッセイは、当技術分野において公知であり、本開示に記載されており、これに限定されないが、本開示の「T細胞応答を検出するための方法」と題する節に記載されているアッセイを含む。
【0296】
10.抗原特異的T細胞またはB細胞応答を誘導する方法
別の態様では、本明細書に記載の改変された微生物、例えば生きている組換え共生細菌、により発現または呈示される、非天然タンパク質、ペプチド、抗原またはその抗原断片に対する抗原特異的T細胞またはB細胞応答を誘導するための方法が提供される。ある特定の実施形態では、方法をin vitroまたはin vivoで行うことができる。
【0297】
T細胞
一部の実施形態では、T細胞応答は、TH1、TH2、TH17、Treg、CD8+、またはT濾胞性ヘルパー(TFH)応答である。一部の実施形態では、生きている組換え共生細菌は、宿主におけるTH1 T細胞の分化を制限する。一部の実施形態では、細菌は、宿主におけるTH1 T細胞の分化を制限するように天然宿主ニッチをモジュレートする。一部の実施形態では、細菌は、宿主におけるTH2 T細胞の分化を促進する。一部の実施形態では、細菌は、宿主におけるTH2 T細胞の分化を促進するように天然宿主ニッチをモジュレートする。
【0298】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の改変された細菌の投与後のT細胞応答は、サイトカインおよび/もしくはケモカイン発現、または細胞死滅を含み得る。一部の実施形態では、T細胞応答は、サイトカインおよび/またはケモカイン応答を含む。一部の実施形態では、T細胞応答は、サイトカインおよび/またはケモカインの分泌増加を含む。サイトカインおよび/またはケモカインの分泌増加は、これらに限定されないが、改変されていない細菌の投与と比較したサイトカインおよび/もしくはケモカインを分泌するT細胞の数の増加、改変されていない細菌の投与と比較した分泌されるサイトカインおよび/もしくはケモカインの量もしくは体積の増加、改変されていない細菌の投与と比較したT細胞によるサイトカインおよび/もしくはケモカインの分泌増進、または改変されていない細菌の投与と比較したサイトカインおよび/もしくはケモカインの分泌の誘導を含む。一部の実施形態では、T細胞応答は、TH2応答を含む。
【0299】
一部の実施形態では、T細胞応答は、細胞傷害性T細胞応答を含む。細胞傷害性T細胞応答増加は、これらに限定されないが、改変されていない細菌の投与と比較した細胞傷害性T細胞の数の増加、改変されていない細菌の投与と比較した細胞傷害性T細胞の活性化の増加、改変されていない細菌の投与と比較した細胞傷害性T細胞の活性化の増強、または改変されていない細菌の投与と比較した細胞傷害性T細胞活性化の誘導を含む。
【0300】
一部の実施形態では、T細胞応答は、TH1応答を含まない。ある特定の実施形態では、TH1応答の制限、抑制または低減は、これらに限定されないが、改変されていない細菌の投与と比較したTH1 T細胞または活性化TH1 T細胞の数の低減または減少を含む。
【0301】
調節性T細胞(Treg)は、複数の細胞型に対する多能性抗炎症効果を有する。特に、それらは、自然および適応免疫細胞の活性化を制御する。抗原特異的方法で作用するTregは、例えば、エフェクターT細胞が、侵入してくる病原体に対する攻撃の開始に成功した後に、または自己抗原に対する反応性を抑制し、それによって自己免疫疾患を防止するために、エフェクターT細胞の活性化および機能を低下させる。
【0302】
Treg細胞は、末梢組織内での、特に、それらが安定的に生息するバリア部位での、免疫恒常性の確立および維持に大きな役割を果たす。腸管粘膜固有層において、Treg細胞は、自己寛容を維持するばかりでなく、共生生物に対する寛容の媒介にも極めて重要な役割を果たす。腸生息Treg細胞の大部分が共生抗原を認識し、胸腺由来Treg細胞は、腸管微小生物に対する寛容を支持する。加えて、ある特定の細菌種は、粘膜固有層においてTreg細胞を拡大する。
【0303】
Tregは、Tヘルパー(TH)細胞のサブセットであり、ナイーブCD4+細胞と同じ系列に由来すると考えられている。Tregは、自己抗原に対する寛容の維持、および自己免疫疾患の予防に関与する。Tregはまた、エフェクターT細胞(Teff)の誘導および増殖を抑制する。Tregは、阻害性サイトカイン、例えば、TGF-β、IL-35、およびIL-10を産生する。Tregは、転写因子Foxp3を発現する。ヒトでは、Treg細胞の大多数がMHC-II拘束性CD4+細胞であるが、FoxP3+、MHC-I拘束性、CD8+細胞である少数集団がある。Tregはまた、胸腺において発生する「天然」CD4+CD25+FoxP3+Treg細胞(nTreg)、および末梢に生じる「誘導性」調節性細胞(iTreg)というサブセットに分けることができる。天然に存在するTregは、末梢において自己反応性免疫応答を抑制する。iTregはCD4+CD25+FoxP3+でもあり、iTregは、無害な抗原に対する寛容を確保するために通常のCD4+T細胞からの末梢(すなわち、胸腺以外)における成熟CD4+T細胞から発生し、例えば、食物および腸内フローラに由来するものを含む。Treg細胞の両方のサブセットは、高レベルのCD25および転写因子Foxp3の発現を特徴とする。Tregは、自己反応性エフェクターT細胞の抗原特異的拡大および/または活性化を阻害すると考えられ、TGF-ベータもしくはIL-10をはじめとする抑制性サイトカインを分泌すると考えられる。iTregはまた、RORγtとFoxp3の両方を発現することができる。樹状細胞により産生されたTGF-βおよびレチノイン酸は、ナイーブT細胞をTregに分化するように刺激することができること、および消化管内のナイーブT細胞は、抗原刺激後にTregに分化することが、研究により示されている。TGF-βを添加することにより、培養でiTregを誘導することもできる。
【0304】
Tエフェクター(Teff)細胞は、一般に、異なるクラスの病原体に対処するように特殊化されている一連の膜結合および分泌タンパク質の発現または放出によって抗原特異的T細胞受容体(TCR)活性化時に炎症誘発性応答を刺激する。Teff細胞は、通常、CD8+細胞傷害性T細胞およびTヘルパー細胞に分けられる。Tヘルパー細胞は、さらにTH1細胞、TH2細胞、およびTH17細胞に分類され得る。
【0305】
CD8+細胞傷害性T細胞は、細胞表面のMHC-I分子のコンテキストで提示される細胞内病原体(例えば、ウイルス)のペプチド断片を呈示する標的細胞を認識し、死滅させる。CD8+細胞傷害性T細胞は、感染した標的細胞の膜と融合する溶解性顆粒の中にあらかじめ形成された細胞毒素を蓄えている。CD8+細胞傷害性T細胞は、Fas発現標的細胞においてアポトーシスを誘導するFasリガンドを、さらに発現する。
【0306】
Tヘルパー(TH)細胞は、B細胞の増殖およびB細胞応答を調節するように機能するCD4+細胞の1クラスである。TH細胞は、液性免疫および免疫病原性に重要な役割を果たす。CD4+Tヘルパー細胞は、TH1細胞またはTH2細胞のどちらかに分化する。TH1およびTH2細胞は両方とも、CD4を発現し、細胞内小胞の中でプロセシングされてMHC-II分子のコンテキストで細胞表面に提示されるペプチド断片を認識する。TH1細胞は、マクロファージおよびB細胞をはじめとするいくつかの他の免疫細胞を直接または間接的に活性化することができ、それによって、細胞内微生物のより効率的な破壊およびクリアランスを促進することができる。TH1細胞は、CD8+細胞傷害性T細胞の活性化につながる経路にも関与し得る。TH2細胞は、B細胞の分化を刺激し、抗体の産生および液性免疫応答の他のエフェクター分子の産生を促進する。TH細胞は、抗原刺激およびサイトカイン環境に依存してTH1またはTH2 T細胞に分化し得る。IL-12の存在下で抗原によって最初に活性化されるTヘルパー細胞は、主としてTH1細胞になるが、IL-4の存在下で活性化されるTヘルパー細胞は、主としてTH2細胞になる。前駆Tヘルパー細胞は、TH1経路またはTH2経路のどちらかを示すサイトカインを合成する能力を持つようになる前に細胞分裂を必要とし得る。TH1およびTH2細胞表現型は、初期活性化シグナル伝達経路では、特に、TCR関連タンパク質チロシンキナーゼの役割が異なる点で、互いに異なる。TCRおよびその下流のタンパク質チロシンキナーゼ、例えば、Fyn、p56(Ick)、およびZAP-70は、TH1およびTH2細胞の発生および分化に関与する。
【0307】
TH17細胞は、IL-17を発現する炎症誘発性TH細胞のサブセットである。TH17細胞は、TH1およびTH2細胞とは発生的に異なる。TH細胞のTH17細胞への分化を誘導するシグナル伝達経路は、Treg分化を阻害する。
【0308】
T濾胞性ヘルパー細胞(TFH)は、CD4+細胞のサブセットである。TFH細胞は、同種B細胞による胚中心(GC)反応の形成および維持の助長に、ならびに液性免疫応答の発生に、不可欠である。これらの細胞は、それらをケモカインCXCL131の勾配によってB細胞卵胞に方向付けるケモカイン受容体CXCR5の発現により定義される。TFH細胞は、転写因子Bcl6(これは、Blimp-1/Prdm1を抑圧する)および高レベルの共刺激受容体ICOSも発現し、このBcl6およびICOSは、両方とも、それらの分化および維持に極めて重要である。加えて、TFH細胞は、GC形成、アイソタイプスイッチングおよび形質細胞形成に役立つ、大量のIL-21を分泌する。ヒトおよびマウスでは、機能的に類似したTFH細胞を二次リンパ器官において見いだすことができる。CXCR5+TFH細胞は、末梢血にも存在し、自己抗体を有する個体に高レベルで見られる。
【0309】
B細胞
一部の実施形態では、抗原特異的応答は、B細胞応答である。B細胞応答は、抗体の分泌を含み得る。一部の実施形態では、B細胞応答は、IgA、IgG、IgMまたはIgE産生形質細胞応答である。
【0310】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の改変された細菌の投与後のB細胞応答は、B細胞による抗体産生の増加である。一部の実施形態では、B細胞応答は、IgA、IgG、IgMまたはIgE産生形質細胞応答を含む。一部の実施形態では、B細胞応答は、IgA、IgG、IgMまたはIgE産生メモリーB細胞応答を含む。一部の実施形態では、B細胞応答は、形質細胞および/またはメモリーB細胞によるIgA、IgG、IgMまたはIgE抗体の産生増加を含む。ある特定の実施形態では、IgA、IgG、IgMまたはIgE抗体の分泌増加は、これらに限定されないが、改変されていない細菌の投与と比較したIgA、IgG、IgMもしくはIgE抗体を分泌するB細胞の数の増加、改変されていない細菌の投与と比較した分泌されるIgA、IgG、IgMもしくはIgE抗体の量もしくは体積の増加、改変されていない細菌の投与と比較した形質細胞もしくはメモリーB細胞によるIgA、IgG、IgMもしくはIgE抗体の分泌増進、および/または改変されていない細菌の投与と比較した形質細胞もしくはメモリーB細胞によるIgA、IgG、IgMもしくはIgE抗体の分泌の誘導を含む。
【0311】
B細胞は、適応免疫系の液性免疫成分の一部であり、抗体を分泌する。B細胞はまた、APCとして作用することができ、サイトカインを分泌することができる。未熟B細胞は、骨髄から、二次リンパ器官、例えば、脾臓およびリンパ節に進む。B細胞は、二次リンパ器官においてB細胞受容体(BCR)を介して抗原に結合すると活性化される。形質芽細胞、形質細胞、リンパ形質細胞様細胞、メモリーB細胞、濾胞性(FO)B細胞、辺縁帯(MZ)B細胞、B1 B細胞、および調節性B細胞をはじめとする、複数のタイプのB細胞がある。FO B細胞は、T細胞依存性活性化を優先的に受ける。MZ B細胞は、T細胞依存性活性化とT細胞非依存性活性化の両方を受け得る。活性化されると、B細胞は、2ステップの分化プロセスを辿り、結果として、短寿命の形質芽細胞ならびに長寿命の形質細胞およびメモリーB細胞が生じる。形質細胞は、特定の抗原を認識する抗体を分泌する長寿命の非増殖細胞である。メモリーB細胞は、抗原への再暴露後または再感染後により強力な、より迅速な抗体応答をもたらすように機能する、休眠B細胞である。TFH細胞は、メモリーB細胞の活性化および分化に関与する。B細胞分化、メモリーB細胞、およびB細胞による抗体分泌は、一般に、“Dynamics of B cells in germinal centres,” Nilushi S. et al., doi:10.1038/nri3804, Nature Reviews Immunology, 15, 137-148 (2015);“Memory B cells,” Tomohiro Kurosaki, Kohei Kometani & Wataru Ise, doi:10.1038/nri3802, Nature Reviews Immunology, 15, 149-159 (2015);および“The generation of antibody-secreting plasma cells,” Stephen L. Nutt, Philip D. Hodgkin, David M. Tarlinton & Lynn M. Corcoran, doi:10.1038/nri3795, Nature Reviews Immunology, 15, 160-171 (2015)に記載されている。
【0312】
例示的なB細胞表面マーカーとしては、B細胞受容体(BCR)、CD10、CD19、CD20(MS4A1)、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD40、CD53、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85およびCD86白血球表面マーカー(説明については、The Leukocyte Antigen Facts Book, 2nd Edition. 1997, ed. Barclay et al. Academic Press, Harcourt Brace & Co., New Yorkを参照されたい)が挙げられる。他のB細胞表面マーカーとしては、RP105、FcRH2、B細胞CR2、CCR6、P2X5、HLA-DOB、CXCR5、FCER2、BR3、Btig、NAG14、SLGC16270、FcRH1、IRTA2、ATWD578、FcRH3、IRTA1、FcRH6、BCMA、および239287が挙げられる。
【0313】
一部の実施形態では、B細胞応答は、IgA、IgG、IgMまたはIgE産生形質細胞応答である。
【0314】
抗原提示細胞
一部の実施形態では、目的の非天然タンパク質またはペプチドを発現または呈示する改変された微生物は、APCと接触し、APCは改変された微生物を貪食して異種抗原またはその抗原断片をMHC-IまたはMHC-II分子上への提示のためにプロセシングする。一部の実施形態では、改変された微生物は、目的の非天然タンパク質またはペプチドを発現または呈示する、生きている組換え共生細菌であって、APCと接触し、APCは組換え細菌を貪食してMHC-IまたはMHC-II分子上への提示のために異種抗原またはその抗原断片をプロセシングする。ある特定の実施形態では、APCの例としては、樹状細胞、マクロファージ、ランゲルハンス細胞、B細胞、腸管上皮細胞、および自然リンパ系細胞、脾臓樹状細胞、CD8+樹状細胞、CD11b+樹状細胞、形質細胞様樹状細胞、濾胞性樹状細胞、単球性細胞、マクロファージ、骨髄由来マクロファージ、およびクッパー細胞が挙げられる。一部の実施形態では、APCは、樹状細胞、脾臓樹状細胞、CD8+樹状細胞、CD11b+樹状細胞、形質細胞様樹状細胞、濾胞性樹状細胞、単球性細胞、マクロファージ、骨髄由来マクロファージ、クッパー細胞、B細胞、ランゲルハンス細胞、自然リンパ系細胞、ミクログリア細胞、または腸管上皮細胞である。一部の実施形態では、APCは、樹状細胞、例えば、CD103+CD11b+樹状細胞である。一部の実施形態では、APCは、腸管マクロファージ、例えば、CX3CR1+腸管マクロファージである。
【0315】
一部の実施形態では、プロセシングされた異種抗原をMHC分子との複合体でその細胞表面に呈示するAPCは、次いで、ナイーブT細胞などのT細胞と接触する。一部の実施形態では、ナイーブT細胞上のT細胞受容体(TCR)へのプロセシングされた異種抗原/MHC複合体の結合は、TCRの活性化、およびナイーブT細胞のTregへの分化をもたらす。一部の実施形態では、ナイーブT細胞上のT細胞受容体(TCR)へのプロセシングされた異種抗原/MHC複合体の結合は、ナイーブT細胞のエフェクターT細胞(Teff)への分化をもたらす。
【0316】
ある特定の実施形態では、抗原特異的T細胞応答の誘導を、好適なアッセイ、例えば、特異的T細胞亜集団についての細胞表面マーカー発現分析を使用して(例えば、フローサイトメトリー分析により)、検出することができる。ある特定の実施形態では、TregおよびTH2細胞を検出するための好適なアッセイは、本明細書に記載されており、または当業者に公知である。
【0317】
抗原特異的T細胞応答を誘導するin vitro法における、ある特定の実施形態では、目的の異種抗原を発現または呈示する改変された微生物は、好適な培地において、APCによる細菌の貪食、異種抗原のプロセシング、およびプロセシングされた抗原の細胞表面への呈示を可能にする条件下で、APCとともに培養される。抗原特異的T細胞応答を誘導するin vitro法における、ある特定の実施形態では、目的の異種抗原を発現または呈示する生きている組換え共生細菌は、好適な培地において、APCによる細菌の貪食、異種抗原のプロセシング、およびプロセシングされた抗原の細胞表面への呈示を可能にする条件下で、APCとともに培養される。ある特定の実施形態では、ナイーブT細胞を、APCおよび細菌のin vitro培養物に添加することができ、APCを細菌から単離し、ナイーブT細胞とともに培養することができる。ある特定の実施形態では、培地は、T細胞の生存および所与のT細胞サブセットへの分化を促進する、増殖因子およびサイトカインを含有し得る。一部の実施形態では、培地は、Treg細胞の分化を促進する因子、例えば、TGF-βを含有する。一部の実施形態では、培地は、Teff細胞の分化を促進する因子、例えば、IL-12、IL-2およびIFNγを含有する。
【0318】
一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、対象の腸または脾臓から単離された初代T細胞である。一部の実施形態では、単離されたT細胞は、完全に分化したTregを含む。一部の実施形態では、単離したての初代T細胞が、増殖因子もサイトカインも有さない基礎培地(すなわち、ダルベッコ変性イーグル培地+5%ウシ胎孔血清)で培養される。
【0319】
抗原特異的T細胞応答を誘導する別の実施形態では、方法は、in vivo法である。一部の実施形態では、目的の異種抗原を発現または呈示する改変された微生物を含む医薬組成物が、対象に投与される。一部の実施形態では、目的の異種抗原を発現または呈示する生きている組換え共生細菌である改変された微生物を含む医薬組成物が、対象に投与される。医薬組成物は、本明細書でさらに説明される任意の好適な経路により投与され得る。一部の実施形態では、医薬組成物は、対象の天然胃腸管ニッチへの組換え細菌の送達のために、対象により摂取される。一部の実施形態では、医薬組成物は、対象の上皮ニッチへの組換え細菌の送達のために局所投与される。ある特定の実施形態では、改変された微生物を含む医薬組成物が投与されると、改変された微生物は、対象におけるAPCにより貪食され、プロセシングされ、対象におけるナイーブT細胞に提示され、それにより抗原特異的T細胞応答が誘導される。ある特定の実施形態では、生きている組換え共生細菌を含む医薬組成物が投与されると、生きている組換え共生細菌は、対象におけるAPCにより貪食され、プロセシングされ、対象におけるナイーブT細胞に提示され、それにより抗原特異的T細胞応答が誘導される。一部の実施形態では、医薬組成物の投与は、抗原特異的Treg応答を惹起する。一部の実施形態では、医薬組成物の投与は、Teff応答を惹起する。
【0320】
一部の実施形態では、Tregへの分化は、APCにより飲み込まれた細菌のタイプによる影響を受ける。一部の実施形態では、異種抗原は、異種抗原が発現される細菌株に依存して異なるT細胞集団の分化を誘導し得る。一部の実施形態では、哺乳物の腸ニッチに共生している細菌株に由来する生きている組換え共生細菌は、その組換え細菌により発現される異種抗原に対して特異的なTreg応答を誘導し得るが、同じ異種抗原が、哺乳動物の皮膚ニッチに共生している細菌株に由来する生きている組換え共生細菌において発現されたときは、抗原特異的CD8+Teff応答の生成を誘導する。
【0321】
一部の実施形態では、細菌は、IL-10、IL-17A、IFNγ、IL-17F、IL-4、IL-5、IL-13、IL-21またはIL-22のうちの少なくとも1つについての発現増加を含むサイトカイン応答を誘導する。一部の実施形態では、細菌は、IL-10、IL-17A、IFNγ、IL-17F、IL-4、IL-5、IL-13、IL-21またはIL-22のうちの少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたはそれより多くについての発現増加を含むサイトカイン応答を誘導する。
【0322】
11.T細胞またはB細胞応答を検出するための方法
ある特定の実施形態では、異種抗原に対する抗原特異的T細胞またはB細胞応答を、当技術分野において公知の様々な技術により検出することができる。ある特定の実施形態では、T細胞またはB細胞応答は、本明細書で開示される生きている組換え共生細菌またはそれを含む医薬組成物を投与した対象からリンパ球を単離すること、およびリンパ球を抗原特異的T細胞またはB細胞の存在についてex vivoでアッセイすることにより、検出することができる。ヒト対象から単離された抗原特異的T細胞を検出するための方法は、例えば、“Manual of Molecular and Clinical Laboratory Immunology, 7th Edition,” Editors: B. Detrick, R. G. Hamilton, and J. D. Folds, 2006, e-ISBN: 9781555815905に記載されている。ヒト対象から単離された抗原特異的B細胞を検出するための方法は、例えば、“Techniques to Study Antigen-Specific B Cell Responses,” Jim Boonyaratanakornkit and Justin J. Taylor, Front. Immunol., 24 July 2019, doi.org/10.3389/fimmu.2019.01694に記載されている。
【0323】
ある特定の実施形態では、抗原に対するT細胞応答を検出するための方法は、フローサイトメトリー、サイトカインアッセイ(例えば、ELISA)およびTCRシークエンシングを含む。フローサイトメトリーは、ナイーブT細胞の活性化T細胞への分化前および後に細胞表面および/または細胞内マーカーの発現を検出するために使用され得る。ある特定の実施形態では、抗原特異的Treg応答を検出するために、CD3、CD4、CD25、FOXP3およびCD127に結合する抗体で細胞を標識し、CD3+、CD4+、CD25hi、FOXP3+、およびCD127loである細胞にゲーティングすることができる。ある特定の実施形態では、活性化T細胞は、多くの場合、CD25を上方調節し、Foxp3は、エフェクター(非抑制性)T細胞系列により発現されるため、別のゲーティング戦略は、Foxp3を含めず、CD3+、CD4+、CD25hiおよびCD127lo細胞である細胞を選別する戦略である。ある特定の実施形態では、次いで、選別された細胞集団を、Treg特性について、例えば、サイトカイン分析および/または非Treg T細胞(例えば、CD3+CD4+CD25-、CD127hi)との抑制共培養アッセイにより、アッセイすることができる。ある特定の実施形態では、誘導性Tregも、RORγtとFoxp3の両方の発現について分析することにより検出することができる(Xu M. et al., “c-Maf-dependent regulatory T cells mediate immunological tolerance to a gut pathobiont,” Nature. 2018 Feb 15; 554(7692): 373-377を参照されたい)。
【0324】
ある特定の実施形態では、抗原特異的Treg細胞を検出するための他のアッセイは、抑制アッセイを含む。ある特定の実施形態では、レスポンダーCD4+T細胞がポリクローナルに刺激され、異なる推定的Treg細胞比で共培養され、培養物が、レスポンダーT細胞のDNA合成をモニターするために3H-チミジンで処理される。ある特定の実施形態では、Treg細胞を、共培養アッセイでIL-2およびIFN-γの産生を測定することにより、検出することもできる。これらのサイトカインのレベルは、レスポンダーT細胞のTreg抑制により低下されるからである。ある特定の実施形態では、抗原特異的Treg応答を検出するための別のアッセイは、レスポンダーT細胞におけるIL-2およびIFN-γ mRNAの発現またはCD69およびCD154表面タンパク質発現を検出するアッセイであり、この場合、レスポンダーT細胞と推定的Treg細胞の共培養から5~7時間以内に抑制を検出することができる。参照により本明細書に組み込まれる、McMurchy et al., “Suppression assays with human T regulatory cells: A technical guide,” Eur. J. Immunol. 2012. 42: 27-34を参照されたい。
【0325】
ある特定の実施形態では、抗原特異的Treg応答を検出するための追加のアッセイは、Miragaia et al., “Single-Cell Transcriptomics of Regulatory T Cells Reveals Trajectories of Tissue Adaptation,” Immunity 50, 493-504, February 19, 2019に記載されているような単一細胞mRNAの配列分析、およびBhairavabhotla et al., Transcriptome Profiling of Human FoxP3+ Regulatory T Cells,” Human Immunology, Volume 77, Issue 2, February 2016, Pages 201-213に記載されているようなトランスクリプトームプロファイリングを含む。ある特定の実施形態では、抗原特異的Treg応答を検出するための別のアッセイは、Rossetti et al., “TCR repertoire sequencing identifies synovial Treg cell clonotypes in the bloodstream during active inflammation in human arthritis,” Ann Rheum Dis 2017;76:435-441 (doi:10.1136/annrheumdis-2015-208992)に記載されているような、Treg細胞のTCRのシークエンシングを含む。
【0326】
ある特定の実施形態では、抗原特異的Treg応答を検出するための別のアッセイは、Baron U. et al., “DNA demethylation in the human FOXP3 locus discriminates regulatory T cells from activated FOXP3(+) conventional T cells,” Eur J Immunol 2007;37:2378-89 (doi:10.1002/eji.200737594)に記載されているような、T細胞におけるFoxP3座のDNAメチル化の検出を含む。
【0327】
一部の実施形態では、抗原特異的Treg応答を検出するためのアッセイは、APC、異種抗原(または異種抗原発現または呈示細菌)およびT細胞共培養系を使用する。ある特定の実施形態では、好適な期間の共培養(例えば、約1、2、3、4または5時間の共培養)後、Nur77の発現が、抗原特異的TCR活性化を検出するためにモニターされる。
【0328】
ある特定の実施形態では、抗原特異的Teff応答を検出するために、特定のT細胞系列に特有であるT細胞マーカーに結合する抗体で細胞を標識することができ、異なるT細胞サブセット集団の割合を、当業者に公知の技術を使用して分析することができる(例えば、Syrbe, et al. (1999) Springer Semin Immunopathol 21, 263-285;Luckheeram RV et al.(2012). Clin Dev Immunol. 2012;2012:925135;およびMahnke YD et al. (2013) Cytometry A 83(5):439-440を参照されたい)。一部の実施形態では、CD3、CD8、CCR7、IFNγ、T-bet、CXCR3、CCR5、IL-4、IL-5、GATA3、STAT6、CCR4、CCR8、IL-17、RORγT、またはCCR6に結合する1つまたは複数の抗体で細胞を標識することができる。さらなる例では、CD8+T細胞を同定するために、CD3、CD8およびCCR7に結合する抗体で細胞を標識し、CD3+、CD8+およびCCR7-である細胞にゲーティングすることができる。
【0329】
ある特定の実施形態では、抗原特異的Teff応答を検出するためのアッセイは、当業者に周知である。一部の実施形態では、抗原特異的Teff応答を検出するためのアッセイは、APC、異種抗原(または異種抗原発現または呈示細菌)およびT細胞共培養系を使用する。好適な期間の共培養(例えば、約1、2、3、4または5時間の共培養)後、Nur77の発現が、抗原特異的TCR活性化を検出するためにモニターされる(例えば、Ashouri JF and Weiss A (2017) J Immunol. 198 (2) 657-668を参照されたい)。
【0330】
ある特定の実施形態では、抗原特異的Teff細胞を検出するための他のアッセイは、増殖アッセイを含む。ある特定の実施形態では、レスポンダーCD8+T細胞がポリクローナルに刺激され、異なる推定的Teff細胞比で共培養され、培養物が、レスポンダーT細胞のDNA合成をモニターするために3H-チミジンで処理される。ある特定の実施形態では、共培養アッセイでサイトカイン(例えば、IFN-γ)の産生を測定すること、ならびにパーフォリンおよびグランザイムの産生を測定することにより、Teff細胞を検出することもできる。
【0331】
ある特定の実施形態では、抗原特異的B細胞応答を検出するためのアッセイは、当業者に周知である。ある特定の実施形態では、そのようなアッセイは、フローサイトメトリー、ELISPOT、RNA-seq、DNAバーコーディング、限界希釈、およびマスサイトメトリーを含む。ある特定の実施形態では、抗原に対するB細胞応答を検出するための方法は、フローサイトメトリー、ELISPOTおよびBCRシークエンシングを含む。フローサイトメトリーは、細胞表面B細胞受容体(BCR)および他のB細胞表面マーカーの発現を検出するために使用され得る。
【0332】
12.処置方法
本明細書の組換え細菌または表面標識細菌を含む医薬組成物で、対象における疾患、障害または状態を予防または処置する方法も、提供される。一部の実施形態では、対象における疾患、障害または状態は、対象における自己免疫疾患、障害または状態である。一部の実施形態では、対象における疾患、障害または状態は、感染性疾患である。一部の実施形態では、対象における疾患、障害または状態は、がんまたは増殖性障害である。一部の実施形態では、本明細書に記載の組換え細菌または表面標識細菌を含む、細菌または医薬組成物の投与は、T細胞またはB細胞応答を誘導する。一部の実施形態では、本明細書に記載の組換え細菌または表面標識細菌を含む、細菌または医薬組成物の投与は、Teff T細胞応答を誘導する。一部の実施形態では、本明細書に記載の組換え細菌または表面標識細菌を含む、細菌または医薬組成物の投与は、Treg T細胞応答を誘導する。一部の実施形態では、本明細書に記載の組換え細菌または表面標識細菌を含む、細菌または医薬組成物の投与は、TH2 T細胞応答を誘導する。一部の実施形態では、本明細書に記載の組換え細菌または表面標識細菌を含む、細菌または医薬組成物の投与は、免疫応答を誘導する。一部の実施形態では、免疫応答は、宿主におけるTH2 T細胞の分化を促進する。一部の実施形態では、免疫応答は、宿主におけるTH1 T細胞の分化を制限する。
【0333】
一部の実施形態では、方法は、本明細書に記載の改変された微生物、例えば生きている組換え共生細菌細胞または株、を含む医薬組成物の治療有効量を対象に投与するステップを含む。ある特定の実施形態では、医薬組成物を、対象において有害反応を誘発しない任意の好適な経路により、対象に投与することができる。ある特定の実施形態では、医薬組成物を、経口、経鼻、経膣、直腸、局所、皮下、皮内または筋肉内経路により投与することができる。一部の実施形態では、医薬組成物は、対象により経口摂取されるか、対象に局所投与されるか、対象により吸入されるか、または対象に注射される。一部の実施形態では、医薬組成物は、医薬品が放出される前に胃経由で小腸に移行することを可能にする遅延放出性腸溶コーティングなどの材料に入れて投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、改変された微生物、例えば本明細書に記載の生きている組換え共生細菌、を含有する腸溶性カプセルを含む。
【0334】
一部の実施形態では、本明細書に記載の改変された微生物、例えば生きている組換え共生細菌、を含む医薬組成物は、自己免疫疾患の予防または処置に使用される。ある特定の実施形態では、本明細書で開示される改変された微生物により処置され得る自己免疫疾患の例としては、多発性硬化症、乾癬、セリアック病、I型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、グレーブス病、橋本自己免疫性甲状腺炎、白斑、リウマチ熱、悪性貧血/萎縮性胃炎、円形脱毛症、免疫性血小板減少性紫斑病、側頭動脈炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、強皮症、抗リン脂質症候群、自己免疫性肝炎1型、原発性胆汁性肝硬変、シェーグレン症候群、アジソン病、疱疹状皮膚炎、川崎病、交感性眼炎、HLA-B27関連急性前部ぶどう膜炎、原発性硬化性胆管炎、円板エリテマトーデス、結節性多発動脈炎、クレスト症候群、重症筋無力症、多発性筋炎/皮膚筋炎、スチル病、自己免疫性肝炎2型、ウェゲナー肉芽腫症、混合性結合組織病、顕微鏡的多発血管炎、多腺性自己免疫性症候群、フェルティー症候群、自己免疫性溶血性貧血、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、ギラン-バレー症候群、ベーチェット病、自己免疫性好中球減少症、水疱性類天疱瘡、本態性混合型クリオグロブリン血症、線状限局性強皮症、多腺性自己免疫性症候群1(APECED)、後天性血友病A、バッテン病/神経セロイドリポフスチン症、自己免疫性膵炎、橋本脳症、グッドパスチャー病、尋常性天疱瘡、自己免疫性散在性脳脊髄炎、再発性多発軟骨炎、高安動脈炎、チャーグ-ストラウス症候群、後天性表皮水疱症、瘢痕性類天疱瘡、落葉状天疱瘡、自己免疫性副甲状腺機能低下症、自己免疫性下垂体炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、多腺性自己免疫性症候群、コーガン症候群、嗜眠性脳炎、持久性流規制紅斑、エバンス症候群、X連鎖免疫調節異常多発性内分泌障害腸症(IPEX)、アイザック症候群/後天性神経性筋強直症、ミラー・フィッシャー症候群、モルヴァン症候群、PANDAS、POEMS症候群、ラスムッセン脳炎、全身硬直症候群、フォークト-小柳-原田症候群、視神経脊髄炎、移植片対宿主病、食道性脳炎、および自己免疫性ぶどう膜炎が挙げられる。
【0335】
一部の実施形態では、本明細書に記載の改変された微生物、例えば生きている組換え共生細菌、を含む医薬組成物は、増殖性障害の予防または処置に使用される。一部の実施形態では、増殖性障害は、がんである。一部の実施形態では、がんは、黒色腫、腎臓、肝胆道、頭頸部扁平上皮癌(HNSC)、膵臓、結腸、膀胱、神経膠芽腫、前立腺、肺、乳房(乳腺)、卵巣、胃、腎臓、膀胱、食道、腎、黒色腫、白血病、リンパ腫、中皮腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、または精巣がんである。
【0336】
一部の実施形態では、本明細書に記載の改変された微生物、例えば生きている組換え共生細菌、を含む医薬組成物は、増殖性疾患の予防または処置に使用される。ある特定の実施形態では、増殖性疾患の例としては、黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、および精巣がんが挙げられる。
【0337】
一部の実施形態では、医薬組成物は、個々のがん対象からのがん細胞において同定されたネオ抗原もしくは腫瘍関連抗原を発現するように操作された、またはこれらの抗原を呈示するように表面標識された、本明細書に記載の改変された微生物、例えば、生きている組換え共生細菌を含む。ある特定の実施形態では、同定されたネオ抗原もしくは腫瘍関連抗原を発現するように操作された、またはこれらの抗原を呈示するように表面標識された、生きている組換え共生細菌を、がん対象における適応T細胞応答を惹起するために医薬製剤で投与することができ、またはHLA適合ドナーT細胞とともにex vivoで培養することができ、それをその後、がん細胞を認識し、死滅させるためにがん対象に導入することができる。
【0338】
任意の好適な動物モデルを使用して、本明細書に記載の方法を試験することができる。一部の実施形態では、動物モデルは、マウスモデル、または非ヒト霊長類モデルである。
【0339】
一部の実施形態では、本明細書に記載の改変された微生物、例えば生きている組換え共生細菌、を含む医薬組成物は、増殖性疾患の予防または処置に使用される。ある特定の実施形態では、増殖性疾患の例としては、黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、および精巣がんが挙げられる。
【0340】
任意の好適な動物モデルを使用して、本明細書に記載の方法を試験することができる。一部の実施形態では、動物モデルは、マウスモデル、または非ヒト霊長類モデルである。
【0341】
一部の実施形態では、組換え共生細菌は、1つまたは複数の追加の薬剤と共投与される。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の追加の薬剤の治療有効量を共投与することができる。ある特定の実施形態では、共投与は、一般に、各薬剤が同じ期間にそれらの薬理効果を発揮できるように2つまたはそれより多くの薬剤(例えば、組換え共生細菌および第2の薬剤)を投与することを指し、そのような共投与は、2つまたはそれより多くの薬剤の同時並行投与、同時期に行われる投与、または連続投与のいずれかにより達成され得る。ある特定の実施形態では、共投与され得る薬剤は、免疫チェックポイント阻害剤、化学療法剤、および/または細胞ベースの治療薬を含む。ある特定の実施形態では、説明に役立つ免疫チェックポイント阻害剤としては、これらに限定されないが、トレメリムマブ(CTLA-4遮断抗体)、抗OX40、PD-L1モノクローナル抗体(抗B7-H1;MEDI4736)、イピリムマブ、MK-3475(PD-1遮断薬)、ニボルマブ(Nivolumamb)(抗PD1抗体)、CT-011(抗PD1抗体)、BY55モノクローナル抗体、AMP224(抗PDL1抗体)、BMS-936559(抗PDL1抗体)、MPLDL3280A(抗PDL1抗体)、MSB0010718C(抗PDL1抗体)およびYervoy/イピリムマブ(抗CTLA-4チェックポイント阻害剤)が挙げられる。ある特定の実施形態では、説明に役立つ化学療法剤としては、これらに限定されないが、アルキル化剤、例えば、シクロホスファミド、メクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン、ダカルバジン(DTIC)、ニトロソウレア、テモゾロミド(経口ダカルバジン);アントラサイクリン系薬剤、例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、およびバルルビシン;細胞骨格破壊剤、例えば、パクリタキセル、nab-パクリタキセル、ドセタキセル、アブラキサン、およびタキソテール;エポチロン;ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、例えば、ボリノスタットおよびロミデプシン;トポイソメラーゼIの阻害剤、例えば、イリノテカンおよびトポテカン、トポイソメラーゼIIの阻害剤、例えば、エトポシド、テニポシドおよびタフルポシド;キナーゼ阻害剤、例えば、ボルテゾミブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ベムラフェニブおよびビスモデギブ;ヌクレオチドアナログおよび前駆体アナログ、例えば、アザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン;ペプチド抗生物質、例えば、ブレオマイシンおよびアクチノマイシン;白金系薬剤、例えば、カルボプラチン、シスプラチンおよびオキサリプラチン;レチノイド、例えば、トレチノインおよびアリトレチノイン;ならびにビンカアルカロイドおよび誘導体、例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンが挙げられる。ある特定の実施形態では、細胞ベースの治療薬は、これらに限定されないが、キメラ抗原受容体を発現するように操作された免疫細胞(例えば、CAR-Tおよび/もしくはCAR-NK治療薬)または外因性T細胞受容体を発現するように操作された免疫細胞を含む。
【0342】
13.細菌株を含むキット
別の態様では、改変された微生物、例えば生きている組換え共生細菌、を含むキットが提供される。ある特定の実施形態では、キットは、本明細書に記載の異種抗原を発現する、生きている組換え共生細菌を含み得る。一部の実施形態では、異種抗原は、共生細菌の非細菌宿主に通常存在する抗原である。ある特定の実施形態では、異種抗原は、脊椎動物もしくは哺乳動物により発現されるまたはそれに存在する抗原であり得る。
【0343】
一部の実施形態では、キットは、本明細書に記載の医薬組成物を含む。ある特定の実施形態では、キットは、異種抗原を発現する改変された微生物、例えば生きている組換え共生細菌、を含む医薬組成物を含み得る。一部の実施形態では、医薬組成物は、異種抗原に対する調節性T細胞応答を誘導できる。一部の実施形態では、医薬組成物は、異種抗原に対するエフェクターT細胞応答を誘導できる。
【0344】
一部の実施形態では、キットは、医薬組成物を対象に投与するための使用説明書も含み得る。ある特定の実施形態では、キットは、医薬組成物の投与に役立つ医薬品賦形剤を含み得る。
【0345】
一部の実施形態では、キットは、対象における疾患または病的状態の処置に有用である追加の薬剤も含み得る。ある特定の実施形態では、追加の薬剤の例としては、対象における疾患または病的状態の処置に有用である小分子薬または抗体が挙げられる。
【0346】
さらなる非限定的な実施形態
本開示の追加の非限定的な実施形態が以下の態様で説明される:
1.(a)非天然タンパク質またはペプチドと(b)tatシグナル配列ペプチド、secシグナル配列ペプチド、またはソルターゼ由来シグナル配列ペプチドとを含む融合タンパク質を発現するように操作されている、生きている組換え共生細菌であって、非天然タンパク質またはペプチドが、宿主疾患または状態と関連しており、細菌を宿主に投与し、その結果として細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成が生じると、宿主が、非天然タンパク質またはペプチドに対する適応免疫応答を開始し、その適応免疫応答がT細胞応答である、生きている組換え共生細菌。
2.(a)非天然タンパク質またはペプチドと(b)抗原提示細胞(APC)標的化部分とを含む融合タンパク質を発現するように操作されている、生きている組換え細菌。
3.非天然タンパク質またはペプチドが、宿主疾患または状態に関連しており、細菌を宿主に投与し、その結果として細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成が生じると、宿主が、非天然タンパク質またはペプチドに対する適応免疫応答を開始する、態様2の組換え共生細菌。
4.適応免疫応答が、T細胞応答またはB細胞応答である、態様3の組換え共生細菌。
5.非天然タンパク質またはペプチドを含む融合タンパク質を発現するように操作されている、生きている組換え共生細菌であって、非天然タンパク質またはペプチドが、宿主疾患または状態に関連しており、細菌を宿主に投与し、その結果として細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成が生じると、宿主が、非天然タンパク質またはペプチドに対する適応免疫応答を開始し、共生細菌が、Corynebacterium tuberculostearicum、Corynebacterium accolens、Corynebacterium amycolatum、Corynebacterium aurimucosum、Corynebacterium propinquum、Corynebacterium pseudodiphtheriticum、Corynebacterium granulosum、Cutibacterium acnes、Cutibacterium avidum、Dolosigranulum pigrum、Finegoldia magna、Moraxella catarrhalis、Moraxella nonliquefaciens、Haemophilus influenzae、Haemophilus aegyptius、Rothia mucilaginosa、Streptococcus pyogenes、Streptococcus agalactiae、Streptococcus gordonii、Neisseria lactamica、Neisseria cinerea、Neisseria mucosa、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus jensenii Gasser、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus iners、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus casei、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus salivarius、Bifidobacterium breve ATCC 15700、Bifidobacterium longum、Veillonella parvula、Gardnerella vaginalis、Atopobium vaginae、Prevotella bivia、Mobiluncus mulieris、Mageeibacillus indolicus、Prevotella buccalis、Enterococcus faecium、Lactococcus lactis、Ruminococcus gnavus JCM6515、およびEubacterium limosum ATCC 8486からなる群から選択される、生きている組換え共生細菌。
6.ATCC受託番号35692、49725、49726、49368、700975、700540、51488、10700、25564、51277、11827、25577、49753、51524、29328、25238、25240、19976、51907、11116、25296、19615、12344、BAA-611、13813、10558、23970、14685、19696、33820、25258、19992、55195、4356、33200、7469、393、7995D-5、23272、11741、15700、15697、10790、17745、14018、BAA-55、29303、35243、BAA-2120、35310、19434、19435、29149、および8486を有する細菌からなる群から選択される、態様5の組換え共生細菌。
7.Lactobacillus casei、Lactococcus lactis、Streptococcus gordonii、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Cutibacterium acnes、Streptococcus agalactiae、Ruminococcus gnavus JCM6515、Neisseria lactamica、Bifidobacterium breve ATCC 15700、およびBifidobacterium longumからなる群から選択される、態様5の組換え共生細菌。
8.ATCC受託番号393、19435、35105、33820、55195、6919、13813、23970、15700、および15707を有する細菌、ならびに受託番号JCM6515を有する細菌からなる群から選択される、態様7の組換え共生細菌。
9.適応免疫応答が、T細胞応答またはB細胞応答である、態様5~8のいずれか1つの組換え共生細菌。
10.(a)CD4+T細胞応答を惹起するように操作されている第1の非天然タンパク質またはペプチドと(b)CD8+細胞傷害性T細胞応答を惹起するように操作されている第2の非天然タンパク質またはペプチドとを発現するように操作されている、生きている組換え共生細菌。
11.(a)第1の非天然タンパク質またはペプチドを発現するように操作されており、その第1の非天然タンパク質またはペプチドがCD4+T細胞応答を惹起するように操作されている、第1の組換え共生細菌と(b)非天然タンパク質またはペプチドを発現するように操作されており、第2の非天然タンパク質またはペプチドがCD8+細胞傷害性T細胞応答を惹起するように操作されている、第2の組換え共生細菌とを含む組成物。
12.第1の非天然タンパク質またはペプチドおよび第2の非天然タンパク質またはペプチドが、各々、共通抗原に由来する、態様10の組換え共生細菌または態様11の組成物。
13.共通抗原に由来する、第1の非天然タンパク質またはペプチドおよび第2の非天然タンパク質またはペプチドが、異なるアミノ酸配列を含む、態様12の組成物。
14.第1の非天然タンパク質またはペプチドおよび第2の非天然タンパク質またはペプチドが、各々、異なる抗原に由来する、態様10の組換え共生細菌または態様11の組成物。
15.非天然タンパク質またはペプチドを含む融合タンパク質を発現するように操作されている、生きている組換え共生細菌であって、非天然タンパク質またはペプチドが、感染に関連しており、細菌を宿主に投与し、その結果として細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成が生じると、宿主が、非天然タンパク質またはペプチドに対する適応免疫応答を開始する、生きている組換え共生細菌。
16.適応免疫応答が、T細胞応答またはB細胞応答である、態様15の組換え共生細菌。
17.適応免疫応答が、投与部位から遠位の適応免疫応答である、態様1~16のいずれか1つの組換え共生細菌。
18.適応免疫応答が、天然宿主ニッチから遠位の適応免疫応答である、態様1~17のいずれか1つの組換え共生細菌。
19.遠位の適応免疫応答が、投与部位および/または天然宿主ニッチの器官でない器官における免疫応答を含む、態様17または18の組換え共生細菌。
20.投与部位および/または天然宿主ニッチが、皮膚を含む、態様17~19のいずれか1つの組換え共生細菌。
21.遠位の適応免疫応答が、抗腫瘍応答を含む、態様17~20のいずれか1つの組換え共生細菌。
22.抗腫瘍応答が、転移を標的とする、態様21の組換え共生細菌。
23.天然宿主ニッチにおけるコロニー形成が、持続的または一時的である、態様1~22のいずれか1つの組換え共生細菌。
24.天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、コロニー形成が、少なくとも60日間、少なくとも112日間、少なくとも178日間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、または少なくとも5年間のコロニー形成である、態様1~23のいずれか1つの組換え共生細菌。
25.天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、コロニー形成が、少なくとも180日間のコロニー形成である、態様1~23のいずれか1つの組換え共生細菌。
26.持続的コロニー形成が、持続的抗原源を提供し、必要に応じて、抗原が、抗原特異的T細胞集団を刺激し、持続的な抗原特異的T細胞集団を生じさせる、態様24または25の組換え共生細菌。
27.天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、コロニー形成が、1日~60日間のコロニー形成である、態様1~23のいずれか1つの組換え共生細菌。
28.天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、コロニー形成が、3.5日~60日間のコロニー形成である、態様1~23のいずれか1つの組換え共生細菌。
29.天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、コロニー形成が、7日~28日間のコロニー形成である、態様27または28の組換え共生細菌。
30.コロニー形成が、宿主への投与後、1日、3.5日、7日、14日、28日または60日後に宿主から得られた試料を用いて行われるポリメラーゼ連鎖反応またはコロニー形成アッセイにより決定される、態様1~29のいずれか1つの組換え共生細菌。
31.投与が、細菌と天然免疫系パートナー細胞の相互作用をもたらす、態様1~30のいずれか1つの組換え共生細菌。
32.天然免疫系パートナー細胞が、抗原提示細胞である、態様31の組換え共生細菌。
33.抗原提示細胞が、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、および腸管上皮細胞からなる群から選択される、態様32の組換え共生細菌。
34.天然宿主ニッチが、胃腸管、気道、尿生殖路、および皮膚からなる群から選択される、態様1~33のいずれか1つの組換え共生細菌。
35.非天然タンパク質またはペプチドが、宿主タンパク質またはペプチドである、態様1~34のいずれか1つの組換え共生細菌。
36.グラム陰性細菌である、態様1~35のいずれか1つの組換え共生細菌。
37.グラム陰性細菌が、Bacteroides thetaiotaomicron、Helicobacter hepaticusおよびParabacteroides sp.からなる群から選択される、態様36の組換え共生細菌。
38.グラム陽性細菌である、態様1~35のいずれか1つの組換え共生細菌。
39.グラム陽性細菌が、Staphylococcus epidermidis、Faecalibacterium sp.、Corynebacterium spp.、Eubacterium limosum、Ruminococcaceae bacterium cv2、Clostridium sp.、Clostridium bolteae 90B3、Clostridium cf.saccharolyticum K10、Clostridium symbiosum WAL-14673、Clostridium hathewayi 12489931、Ruminococcus obeum A2-162、Ruminococcus gnavus AGR2154、Butyrate-producing bacterium SSC/2、Clostridium sp.ASF356、Coprobacillus sp.D6 cont1.1、Eubacterium sp.3_1_31 cont1.1、Erysipelotrichaceae bacterium 21_3、Ruminococcus bromii L2-63、Firmicutes bacterium ASF500、Firmicutes bacterium ASF500、Bifidobacterium animalis subsp.lactis ATCC 27673、およびBifidobacterium breve UCC2003からなる群から選択される、態様38の組換え共生細菌。
40.グラム陽性細菌が、Staphylococcus epidermidis、Faecalibacterium sp.、Corynebacterium spp.、およびClostridium sp.からなる群から選択される、態様39の組換え共生細菌。
41.Staphylococcus epidermidisおよびCorynebacterium spp.からなる群から選択される、態様40の組換え共生細菌。
42.S.epidermidis NIHLM087である、態様41の組換え共生細菌。
43.Corynebacterium tuberculostearicum、Corynebacterium accolens、Corynebacterium amycolatum、Corynebacterium aurimucosum、Corynebacterium propinquum、Corynebacterium pseudodiphtheriticum、Corynebacterium granulosum、Cutibacterium acnes、Cutibacterium avidum、Dolosigranulum pigrum、Finegoldia magna、Moraxella catarrhalis、Moraxella nonliquefaciens、Haemophilus influenzae、Haemophilus aegyptius、Rothia mucilaginosa、Streptococcus pyogenes、Streptococcus agalactiae、Streptococcus gordonii、Neisseria lactamica、Neisseria cinerea、Neisseria mucosa、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus jensenii Gasser、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus iners、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus casei、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus salivarius、Bifidobacterium breve ATCC 15700、Bifidobacterium longum、Veillonella parvula、Gardnerella vaginalis、Atopobium vaginae、Prevotella bivia、Mobiluncus mulieris、Mageeibacillus indolicus、Prevotella buccalis、Enterococcus faecium、Lactococcus lactis、Ruminococcus gnavus JCM6515、およびEubacterium limosumからなる群から選択される、態様1~4または10~35のいずれか1つの組換え共生細菌。
44.ATCC受託番号35692、49725、49726、49368、700975、700540、51488、10700、25564、51277、11827、25577、49753、51524、29328、25238、25240、19976、51907、11116、25296、19615、12344、BAA-611、13813、10558、23970、14685、19696、33820、25258、19992、55195、4356、33200、7469、393、7995D-5、23272、11741、15700、15697、10790、17745、14018、BAA-55、29303、35243、BAA-2120、35310、19434、19435、29149、および8486を有する細菌からなる群から選択される、態様43の組換え共生細菌。
45.Lactobacillus casei、Lactococcus lactis、Streptococcus gordonii、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Cutibacterium acnes、Streptococcus agalactiae、Ruminococcus gnavus、Neisseria lactamica、Bifidobacterium breve、およびBifidobacterium longumからなる群から選択される、態様43の組換え共生細菌。
46.ATCC受託番号393、19435、35105、33820、55195、6919、13813、23970、15700、および15707を有する細菌、ならびに受託番号JCM6515を有する細菌からなる群から選択される、態様45の組換え共生細菌。
47.投与が、局所経路、経腸経路、および吸入経路からなる群から選択される経路による投与である、態様1~46のいずれか1つの組換え共生細菌。
48.経路が、局所経路である、態様47の組換え共生細菌。
49.経路が、経腸経路である、態様47の組換え共生細菌。
50.タンパク質またはペプチドが、感染に関連している、態様1~14または23~49のいずれか1つの組換え共生細菌。
51.感染が、ウイルス感染、寄生虫感染、細菌感染、または真菌感染からなる群から選択される、態様50の組換え共生細菌。
52.感染が、宿主の粘膜境界部で生じるか、または粘膜境界部に別様に関連している、態様50または51の組換え共生細菌。
53.非天然タンパク質またはペプチドが、感染に関連しているウイルス、寄生虫、細菌または真菌に由来する、態様50~52のいずれか1つの組換え共生細菌。
54.非天然タンパク質またはペプチドが、インフルエンザ、HSV、HIV、またはSARS-CoV-2に由来する、態様53の組換え共生細菌。
55.非天然タンパク質またはペプチドが、NP366-374、NP306-322、NA177-193、M2エクトドメイン、HA2ステム-HA 212-64、HA2ステム-HA 276-130、gB糖タンパク質、gd糖タンパク質、gB糖タンパク質498-505、SARS-Cov2スパイクタンパク質、HIV-gp120、HIV-gp41、HIV V1V2突端部、HIV V3ループ、HIV CD4結合部位、gp120/gp41境界領域、gp120サイレント面、およびHIV膜貫通部位近傍(MPER)からなる群から選択される、態様54の組換え共生細菌。
56.タンパク質またはペプチドが、自己免疫障害に関連している、態様1~49のいずれか1つの組換え共生細菌。
57.タンパク質またはペプチドが、増殖性障害に関連している、態様1~49のいずれか1つの組換え共生細菌。
58.増殖性障害が、がんである、態様57の組換え共生細菌。
59.がんが、黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、精巣がん、肉腫、および前立腺がんから選択される、態様58の組換え共生細菌。
60.がんが、黒色腫である、態様58の組換え共生細菌。
61.非天然タンパク質またはペプチドが、PMEL、TRP2およびMART-1からなる群から選択されるメラノサイト特異的抗原に由来する、態様60の組換え共生細菌。
62.非天然タンパク質またはペプチドが、ネオ抗原を含み、ネオ抗原が、少なくとも1つの突然変異を含み、この突然変異によって、非天然タンパク質またはペプチドを、宿主の野生型遺伝子によりコードされるタンパク質またはペプチドと明確に区別できる、態様57~60のいずれか1つの組換え共生細菌。
63.ネオ抗原が、Ints11、Kif18bp、T3肉腫ネオ抗原、およびTRAMPC2前立腺がん細胞系により発現されるネオ抗原からなる群から選択される、態様62の組換え共生細菌。
64.融合タンパク質が、シグナル配列ペプチドをさらに含む、態様2~63のいずれか1つの組換え共生細菌。
65.シグナル配列ペプチドが、発現後に細菌の細胞壁への融合タンパク質の繋留を指向する、態様1~64のいずれか1つの組換え共生細菌。
66.繋留を指向するシグナル配列ペプチドが、ソルターゼ由来シグナル配列ペプチドを含み、必要に応じて、ソルターゼ由来シグナル配列ペプチドが、Staphylococcus aureusのプロテインAに由来する1つまたは複数の配列を含む、態様65の組換え共生細菌。
67.繋留を指向するシグナル配列ペプチドが、非天然タンパク質またはペプチドのN末端側にあり、融合タンパク質が、非天然タンパク質またはペプチドのC末端側に細胞壁貫通ペプチドドメインを含む、態様65または66の組換え共生細菌。
68.シグナル配列ペプチドが、発現後に細菌からの融合タンパク質の分泌を指向する、態様1~64のいずれか1つの組換え共生細菌。
69.分泌を指向するシグナル配列ペプチドが、tatシグナル配列ペプチドを含む、態様68の組換え共生細菌。
70.tatシグナル配列ペプチドが、S.aureus由来シグナル配列ペプチドを含む、態様69の組換え共生細菌。
71.S.aureus由来シグナル配列ペプチドが、fepBに由来する、態様70の組換え共生細菌。
72.分泌を指向するシグナル配列ペプチドが、secシグナル配列ペプチドを含む、態様68の組換え共生細菌。
73.secシグナル配列ペプチドが、S.epidermidis由来シグナル配列ペプチドを含む、態様72の組換え共生細菌。
74.S.epidermidis由来シグナル配列ペプチドが、予測sec分泌S.epidermidisタンパク質(遺伝子座HMPREF9993_06668)に由来する、態様73の組換え共生細菌。
75.融合タンパク質が、抗原提示細胞(APC)標的化部分をさらに含み、必要に応じて、APC標的化部分が、CD11bまたはMHC II標的化部分を含む、態様1または5~74のいずれか1つの組換え共生細菌。
76.APC標的化部分が、ナノボディ(VHH)抗体結合ドメインを含み、必要に応じて、VHH抗体結合ドメインが、配列番号33または配列番号34の配列を含む、態様75の組換え共生細菌。
77.タンパク質またはペプチドと天然細菌タンパク質またはその一部分とを含む融合タンパク質を発現するように操作されている、態様1~76のいずれか1つの組換え共生細菌。
78.タンパク質またはペプチドが、天然細菌タンパク質またはその一部分のN末端またはC末端に融合されている、態様77の組換え共生細菌。
79.高複雑度の規定された微生物群落と組み合わせて投与するために製剤化されている、態様1~78のいずれか1つの組換え共生細菌。
80.宿主が、哺乳動物である、態様1~79のいずれか1つの組換え共生細菌。
81.哺乳動物が、ヒトである、態様80の組換え共生細菌。
82.態様1~81のいずれか1つの組換え共生細菌を操作するために使用されるポリヌクレオチド。
83.非天然タンパク質またはペプチドに由来する抗原を呈示する抗原提示細胞を生成するための方法であって、態様1~81のいずれか1つの組換え共生細菌を対象に投与するステップを含み、投与が、細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成、抗原提示細胞による細菌または非天然タンパク質もしくはペプチドの内在化、および抗原提示細胞による抗原の提示をもたらす、方法。
84.天然宿主ニッチにおけるコロニー形成が、持続的または一時的である、態様83の方法。
85.天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、コロニー形成が、少なくとも60日間、少なくとも112日間、少なくとも178日間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、または少なくとも5年間のコロニー形成である、態様84の方法。
86.天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、コロニー形成が、少なくとも180日間のコロニー形成である、態様84の方法。
87.持続的コロニー形成が、持続的抗原源を提供し、必要に応じて、抗原が、抗原特異的T細胞集団を刺激し、持続的な抗原特異的T細胞集団を生じさせる、態様85または86の方法。
88.天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、コロニー形成が、1日~60日間のコロニー形成である、態様84の方法。
89.天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、コロニー形成が、3.5日~60日間のコロニー形成である、態様84の方法。
90.天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、コロニー形成が、7日~28日間のコロニー形成である、態様88または89の方法。
91.コロニー形成が、宿主への投与後、1日、3.5日、7日、14日、28日または60日後に宿主から得られた試料を用いて行われるポリメラーゼ連鎖反応またはコロニー形成アッセイにより決定される、態様83~90いずれか1つの方法。
92.投与が、細菌と天然免疫系パートナー細胞の相互作用をもたらす、態様83~91のいずれか1つの方法。
93.天然免疫系パートナー細胞が、抗原提示細胞である、態様92の方法。
94.抗原提示細胞が、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、および腸管上皮細胞からなる群から選択される、態様93の方法。
95.天然宿主ニッチが、胃腸管、気道、尿生殖路、および皮膚からなる群から選択される、態様83~94のいずれか1つの方法。
96.提示が、MHC II複合体内における提示である、態様83~95のいずれか1つの方法。
97.提示が、MHC I複合体内における提示である、態様83~95のいずれか1つの方法。
98.対象においてT細胞応答を生成するための方法であって、態様1~81のいずれか1つの組換え共生細菌を対象に投与するステップを含み、投与が、細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成、およびT細胞応答の生成をもたらし、T細胞応答が、非天然タンパク質またはペプチドに由来する抗原に対するT細胞応答である、方法。
99.天然宿主ニッチにおけるコロニー形成が、持続的または一時的である、態様98の方法。
100.天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、コロニー形成が、少なくとも60日間、少なくとも112日間、少なくとも178日間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、または少なくとも5年間のコロニー形成である、態様99の方法。
101.天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、コロニー形成が、少なくとも180日間のコロニー形成である、態様99の方法。
102.持続的コロニー形成が、持続的抗原源を提供し、必要に応じて、抗原が、抗原特異的T細胞集団を刺激し、持続的な抗原特異的T細胞集団を生じさせる、態様100または101の方法。
103.天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、コロニー形成が、1日~60日間のコロニー形成である、態様99の方法。
104.天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、コロニー形成が、3.5日~60日間のコロニー形成である、態様99の方法。
105.天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、コロニー形成が、7日~28日間のコロニー形成である、態様103または104の方法。
106.コロニー形成が、宿主への投与後、1日、3.5日、7日、14日、28日または60日後に宿主から得られた試料を用いて行われるポリメラーゼ連鎖反応またはコロニー形成アッセイにより決定される、態様98~105いずれか1つの方法。
107.投与が、局所経路、経腸経路、非経口経路および吸入経路からなる群から選択される経路による投与である、態様98~106のいずれか1つの方法。
108.経路が、局所経路である、態様107の方法。
109.経路が、経腸経路である、態様107の方法。
110.T細胞応答が、CD4+Tヘルパー細胞応答、CD8+細胞傷害性T細胞応答、またはCD4+Tヘルパー細胞応答およびCD8+細胞傷害性T細胞応答を含む、態様98~109のいずれか1つの方法。
111.CD4+Tヘルパー細胞応答が、TH1応答、TH2応答、TH17応答、またはこれらの組合せである、請求項110に記載の方法。
112.CD4+Tヘルパー細胞応答が、TH1応答である、請求項110に記載の方法。
113.CD4+Tヘルパー細胞応答が、TH2応答である、請求項110に記載の方法。
114.T細胞応答が、Treg応答を含む、態様98~109のいずれか1つの方法。
115.対象における疾患または状態を処置する方法であって、態様1~81のいずれか1つの組換え共生細菌を対象に投与するステップを含み、投与が、細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成、およびT細胞応答の生成をもたらし、T細胞応答が、非天然タンパク質またはペプチドに由来する抗原に対するT細胞応答であり、そのT細胞応答によって対象における疾患または状態が処置される、方法。
116.天然宿主ニッチにおけるコロニー形成が、持続的または一時的である、態様115の方法。
117.天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、コロニー形成が、少なくとも60日間、少なくとも112日間、少なくとも178日間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、または少なくとも5年間のコロニー形成である、態様116の方法。
118.天然宿主ニッチに持続的にコロニーが形成され、コロニー形成が、少なくとも180日間のコロニー形成である、態様116の方法。
119.持続的コロニー形成が、持続的抗原源を提供し、必要に応じて、抗原が、抗原特異的T細胞集団を刺激し、持続的な抗原特異的T細胞集団を生じさせる、態様117または118の方法。
120.天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、コロニー形成が、1日~60日間のコロニー形成である、態様116の方法。
121.天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、コロニー形成が、3.5日~60日間のコロニー形成である、態様116の方法。
122.天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、コロニー形成が、7日~28日間のコロニー形成である、態様120または121の方法。
123.コロニー形成が、宿主への投与後、1日、3.5日、7日、14日、28日または60日後に宿主から得られた試料を用いて行われるポリメラーゼ連鎖反応またはコロニー形成アッセイにより決定される、態様115~122いずれか1つの方法。
124.疾患または状態が、感染、増殖性障害、または自己免疫障害である、態様115~123の態様いずれか1つの方法。
125.感染が、ウイルス感染、寄生虫感染、細菌感染、および真菌感染からなる群から選択される、態様124の方法。
126.増殖性障害が、がんである、態様124の方法。
127.がんが、黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、精巣がん、子宮頸がん、肛門がんおよび上咽頭がんから選択される、態様126の方法。
128.がんが、黒色腫である、態様127に記載の方法。
129.投与が、局所経路、経腸経路、非経口経路および吸入経路からなる群から選択される経路による投与である、態様115~128のいずれか1つの方法。
130.経路が、局所経路である、態様129の方法。
131.細菌が、S.epidermidisである、態様130の方法。
132.疾患が、がんである、態様131の方法。
133.がんが、黒色腫である、態様132の方法。
134.非天然タンパク質またはペプチドが、メラノサイト特異的抗原および精巣がん抗原からなる群から選択され、必要に応じて、メラノサイト特異的抗原が、PMEL、TRP2およびMART-1からなる群から選択され、必要に応じて、精巣がん抗原が、NY-ESOおよびMAGE-Aからなる群から選択される、態様131または132の方法。
135.非天然タンパク質またはペプチドが、ネオ抗原を含み、ネオ抗原が、少なくとも1つの突然変異を含み、この突然変異によって、非天然タンパク質またはペプチドを、宿主の野生型遺伝子によりコードされるタンパク質またはペプチドと明確に区別できる、態様131または132の方法。
136.細菌が、高複雑度の規定された微生物群落と組み合わせて投与される、態様83~135のいずれか1つの方法。
137.宿主が、哺乳動物である、態様83~136のいずれか1つの方法。
138.哺乳動物が、ヒトである、態様137の方法。
139.(a)非天然タンパク質またはペプチドを含む第1の抗原ペプチドを発現するように操作された第1の組換え共生細菌を投与するステップであって、第1の抗原ペプチドが、CD4+T細胞応答を惹起するように操作されている、ステップ、および(b)非天然タンパク質またはペプチドを含む第2の抗原ペプチドを発現するように操作された第2の組換え共生細菌を投与するステップであって、第2の抗原ペプチドが、CD8+細胞傷害性T細胞応答を惹起するように操作されている、ステップを含む、態様83~138のいずれか1つの方法。
140.第1の抗原ペプチドが、発現後に細菌からの第1の抗原ペプチドの分泌を指向するシグナル配列ペプチドを含む、態様139の方法。
141.第2の抗原ペプチドが、発現後に細菌の細胞壁への第2の抗原ペプチドの共有結合を指向するシグナル配列ペプチドを含む、態様140の方法。
142.1または複数の追加の薬剤を共投与するステップをさらに含む、態様83~141のいずれか1つの方法。
143.1つまたは複数の追加の薬剤が、1つまたは複数のチェックポイント阻害剤を含む、態様142の方法。
144.遠位の適応免疫応答が生成される、態様83~143のいずれか1つの方法。
145.遠位の適応免疫応答が、投与部位から遠位の適応免疫応答である、態様144の方法。
146.遠位の適応免疫応答が、天然宿主ニッチから遠位の適応免疫応答である、態様144または145の方法。
147.遠位の適応免疫応答が、投与部位および/または天然宿主ニッチの器官でない器官における免疫応答を含む、態様145または146の方法。
148.投与部位および/または天然宿主ニッチが、皮膚を含む、態様145~147のいずれか1つの方法。
149.遠位の適応免疫応答が、抗腫瘍応答を含む、態様144~148のいずれか1つの方法。
150.抗腫瘍応答が、転移を標的とする、態様149の方法。
151.(a)細胞表面繋留部分を含む融合タンパク質と、(b)細菌と、(c)細菌の細胞壁タンパク質または外膜タンパク質への細胞表面繋留部分の共有結合を触媒でき、それによって細菌表面に融合タンパク質を呈示できるタンパク質またはそれをコードする遺伝子とを含む細菌表面ディスプレイシステム。
152.(a)細胞表面繋留部分を含む融合タンパク質と(b)細菌とを含む細菌表面ディスプレイシステムであって、融合タンパク質が、細胞表面繋留部分によって細胞壁タンパク質または外膜タンパク質に共有結合されており、共有結合が、細菌の細胞壁タンパク質または外膜タンパク質への細胞表面繋留部分の結合を触媒できるタンパク質により触媒された、細菌表面ディスプレイシステム。
153.細胞表面繋留部分が、ソルターゼA(SrtA)モチーフを含み、共有結合を触媒できるタンパク質が、SrtAタンパク質である、態様151または152の細菌表面ディスプレイシステム。
154.SrtAモチーフが、S.aureusに由来する、態様153の細菌ディスプレイシステム。
155.SrtAモチーフが、アミノ酸配列LPXTGを含む、態様153または154の細菌表面ディスプレイシステム。
156.SrtAタンパク質が、S.aureusに由来する、態様153~155のいずれか1つの細菌表面ディスプレイシステム。
157.融合タンパク質が、抗原タンパク質を含む、態様151~156のいずれか1つの細菌表面ディスプレイシステム。
158.抗原タンパク質が、宿主疾患または状態に関連しているタンパク質またはペプチドを含む、態様157の細菌表面ディスプレイシステム。
159.タンパク質またはペプチドが、感染、増殖性障害、または自己免疫障害に関連している、態様157または158の細菌表面ディスプレイシステム。
160.細菌を宿主に投与し、その結果として細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成が生じると、宿主が、非天然タンパク質またはペプチドに対する適応免疫応答を開始し、その適応免疫応答が、T細胞応答である、態様157~159のいずれか1つの細菌表面ディスプレイシステム。
161.細菌が、共生体である、態様151~160のいずれか1つの細菌表面ディスプレイシステム。
162.細菌が、グラム陽性細菌である、態様151~161のいずれか1つの細菌表面ディスプレイシステム。
163.グラム陽性細菌が、Staphylococcus epidermidis、Faecalibacterium sp.、Corynebacterium spp.、Eubacterium limosum、Ruminococcaceae bacterium cv2、Clostridium sp.、Clostridium bolteae 90B3、Clostridium cf.saccharolyticum K10、Clostridium symbiosum WAL-14673、Clostridium hathewayi 12489931、Ruminococcus obeum A2-162、Ruminococcus gnavus AGR2154、Butyrate-producing bacterium SSC/2、Clostridium sp.ASF356、Coprobacillus sp.D6 cont1.1、Eubacterium sp.3_1_31 cont1.1、Erysipelotrichaceae bacterium 21_3、Ruminococcus bromii L2-63、Firmicutes bacterium ASF500、Firmicutes bacterium ASF500、Bifidobacterium animalis subsp.lactis ATCC 27673、およびBifidobacterium breve UCC2003.からなる群から選択される、態様162の細菌表面ディスプレイシステム。
164.グラム陽性細菌が、Staphylococcus epidermidis、Faecalibacterium sp.、Corynebacterium spp.、およびClostridium sp.からなる群から選択される、態様163の細菌表面ディスプレイシステム。
165.細菌が、Staphylococcus epidermidisおよびCorynebacterium spp.からなる群から選択される、態様164の細菌表面ディスプレイシステム。
166.細菌が、S.epidermidis NIHLM087である、態様165の細菌表面ディスプレイシステム。
167.共生細菌が、Corynebacterium tuberculostearicum、Corynebacterium accolens、Corynebacterium amycolatum、Corynebacterium aurimucosum、Corynebacterium propinquum、Corynebacterium pseudodiphtheriticum、Corynebacterium granulosum、Cutibacterium acnes、Cutibacterium avidum、Dolosigranulum pigrum、Finegoldia magna、Moraxella catarrhalis、Moraxella nonliquefaciens、Haemophilus influenzae、Haemophilus aegyptius、Rothia mucilaginosa、Streptococcus pyogenes、Streptococcus agalactiae、Streptococcus gordonii、Neisseria lactamica、Neisseria cinerea、Neisseria mucosa、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus jensenii Gasser、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus iners、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus casei、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus salivarius、Bifidobacterium breve ATCC 15700、Bifidobacterium longum、Veillonella parvula、Gardnerella vaginalis、Atopobium vaginae、Prevotella bivia、Mobiluncus mulieris、Mageeibacillus indolicus、Prevotella buccalis、Enterococcus faecium、Lactococcus lactis、Ruminococcus gnavus JCM6515、およびEubacterium limosumからなる群から選択される、態様151~161のいずれか1つの細菌抗原ディスプレイシステム。
168.共生細菌が、ATCC受託番号35692、49725、49726、49368、700975、700540、51488、10700、25564、51277、11827、25577、49753、51524、29328、25238、25240、19976、51907、11116、25296、19615、12344、BAA-611、13813、10558、23970、14685、19696、33820、25258、19992、55195、4356、33200、7469、393、7995D-5、23272、11741、15700、15697、10790、17745、14018、BAA-55、29303、35243、BAA-2120、35310、19434、19435、29149、および8486を有する細菌からなる群から選択される、態様167の細菌表面ディスプレイシステム。
169.共生細菌が、Lactobacillus casei、Lactococcus lactis、Streptococcus gordonii、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Cutibacterium acnes、Streptococcus agalactiae、Ruminococcus gnavus、Neisseria lactamica、Bifidobacterium breve、およびBifidobacterium longumからなる群から選択される、態様167の細菌表面ディスプレイシステム。
170.共生細菌が、ATCC受託番号393、19435、35105、33820、55195、6919、13813、23970、15700、および15707を有する細菌、ならびに受託番号JCM6515を有する細菌からなる群から選択される、態様169の細菌表面ディスプレイシステム。
171.融合タンパク質が、抗原提示細胞(APC)標的化部分をさらに含み、必要に応じて、APC標的化部分が、CD11bまたはMHC II標的化部分を含む、態様151~170のいずれか1つの細菌表面ディスプレイシステム。
172.APC標的化部分が、ナノボディ(VHH)抗体結合ドメインを含み、必要に応じて、VHH抗体結合ドメインが、配列番号33または配列番号34の配列を含む、態様171の細菌表面ディスプレイシステム。
173.宿主が、哺乳動物である、態様151~172のいずれか1つの細菌表面ディスプレイシステム。
174.宿主が、ヒトである、態様173の細菌表面ディスプレイシステム。
175.態様151~174のいずれか1つの細菌表面ディスプレイシステムと賦形剤とを含む医薬組成物。
176.高複雑度の規定された微生物群落を含む、態様175の医薬組成物。
177.非天然タンパク質またはペプチドに由来する抗原を呈示する抗原提示細胞を生成するための方法であって、態様151~174のいずれか1つの細菌表面ディスプレイシステムまたは態様175もしくは176の医薬組成物を対象に投与するステップを含み、投与が、細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成、抗原提示細胞による細菌または非天然タンパク質もしくはペプチドの内在化、および抗原提示細胞による抗原の提示をもたらす、方法。
178.対象においてT細胞応答を生成するための方法であって、態様151~174のいずれか1つの細菌表面ディスプレイシステムまたは態様175もしくは176の医薬組成物を対象に投与するステップを含み、投与が、細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成、およびT細胞応答の生成をもたらし、T細胞応答が、非天然タンパク質またはペプチドに由来する抗原に対するT細胞応答である、方法。
179.対象における疾患または状態を処置する方法であって、態様151~174のいずれか1つの細菌表面ディスプレイシステムまたは態様175もしくは176の医薬組成物を対象に投与するステップを含み、投与が、細菌による天然宿主ニッチにおけるコロニー形成、およびT細胞応答の生成をもたらし、T細胞応答が、非天然タンパク質またはペプチドに由来する抗原に対するT細胞応答であり、そのT細胞応答によって対象における疾患または状態が処置される、方法。
180.天然宿主ニッチにおけるコロニー形成が、持続的または一時的である、態様177~179のいずれか1つの方法。
181.天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、コロニー形成が、1日~60日間のコロニー形成である、態様180の方法。
182.天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、コロニー形成が、3.5日~60日間のコロニー形成である、態様181の方法。
183.天然宿主ニッチに一時的にコロニーが形成され、コロニー形成が、7日~28日間のコロニー形成である、態様181または182の方法。
184.コロニー形成が、宿主への投与後、1日、3.5日、7日、14日、28日または60日後に宿主から得られた試料を用いて行われるポリメラーゼ連鎖反応またはコロニー形成アッセイにより決定される、態様177~183いずれか1つの方法。
185.投与が、細菌と天然免疫系パートナー細胞の相互作用をもたらす、態様177~184のいずれか1つの方法。
186.天然免疫系パートナー細胞が、抗原提示細胞である、態様185の方法。
187.抗原提示細胞が、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、および腸管上皮細胞からなる群から選択される、態様186の方法。
188.天然宿主ニッチが、胃腸管、気道、尿生殖路、および皮膚からなる群から選択される、態様177~187のいずれか1つの方法。
189.提示が、MHC-II複合体内における提示である、態様177~188のいずれか1つの方法。
190.提示が、MHC-I複合体内における提示である、態様177~188のいずれか1つの方法。
191.細菌表面ディスプレイシステムが、高複雑度の規定された微生物群落と組み合わせて投与される、態様177~190のいずれか1つの方法。
192.投与が、局所経路、経腸経路、非経口経路および吸入経路からなる群から選択される経路による投与である、態様177~191のいずれか1つの方法。
【実施例】
【0347】
今、一般的に説明している本開示は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解されるであろう。以下の実施例は、単に、本開示のある特定の態様および実施形態の説明を目的として含めるものであり、いかなる点においても本開示の範囲を限定することを意図したものではない。
【0348】
(実施例1)
Bacteroides株におけるOVAの発現
抗原エピトープコード配列を、pWW3837ベクター(Genbank#KY776532)(Whitaker et al., “Tunable Expression Tools Enable Single-Cell Strain Distinction in the Gut Microbiome,” Cell 169, 538-546, April 20, 2017を参照されたい)に、ギブソンアセンブリーによりクローニングした。ベクターをE.coli S17ラムダpirドナー株に電気穿孔法で導入した。E.coliドナー株を、一晩、コンジュゲーションのためにBHI血液平板上でレシピエント細菌と共培養した。バイオマスを掻き取り、BHI血液+erm/gent平板上に播種した。陽性コロニーをコロニーPCRによりスクリーニングした。
【0349】
図2に示されているように、ウエスタンブロット法のデータは、OVAエピトープを発現するように操作されたBacteroides thetaiotaomicron(「OVA」)が検出可能なレベルのOVAを示したことを実証するが、その一方で野生型B.thetaiotaomicron(「WT」;陰性対照)は、シグナルを全く示さない。
【0350】
(実施例2)
組換えBacteroides株によるOVA特異的T細胞のin vitroでの導入
OTIIトランスジェニックマウスの脾臓から単離したOVA特異的T細胞を、4時間、B16-FLT3L刺激DCおよびOVA
+B.thetaiotaomicron(
図3B)またはWT B.thetaiotaomicron(
図3A)と共培養した。
図3Bに示されているように、OVA
+B.thetaiotaomicronとともに培養したOTII T細胞は、Nur77(特異性を増加させるために2つの異なるNur77抗体を使用した)の発現を上方調節した。
【0351】
(実施例3)
組換えBacteroides株におけるMOG融合ペプチドの発現
実施例1で説明したものと類似の方法を使用して、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)35-55ペプチド配列をpWW3837ベクターにクローニングし、E.coliドナー株に電気穿孔法で導入し、共生レシピエント株とコンジュゲートした。
【0352】
共生細菌株および発現構築物を表5にまとめる。
【表5】
【0353】
図4に示されているように、抗FLAG抗体を使用するウエスタンブロット法のデータは、FLAGタグ付きMOG35-55ペプチドを発現するように操作されたB.thetaiotaomicron(
図4A)(BT_MOG#1およびBT_MOG#5、それぞれレーン1および5)、FLAGタグ付きMOG35-55ペプチドを発現するように操作されたBacteroides vulgatus(
図4B)(BV_MOG#1およびBT_MOG#5、それぞれ、レーン1および5)、およびFLAGタグ付きMOG35-55ペプチドを発現するように操作されたBacteroides finegoldii(
図4C)(BF_MOG#1、レーン1)全てが、検出可能なレベルのMOGペプチドを示したが、その一方で、野生型B.thetaiotaomicron、B.vulgatus、およびB.finegoldii(それぞれ、
図4A;WT、
図4B;WT、および図示なし)が、いずれのシグナルも示さなかったことを実証する。
【0354】
(実施例4)
組換えBacteroides株によるMOG特異的T細胞のin vitroでの導入
脾臓樹状細胞(DC)を拡大するために、CD45.1 C57BL/6(The Jackson Laboratory、血統#002014)マウスの側腹部に、Flt3Lを過剰発現している5×106のB16黒色腫細胞を、皮下注射した。11日目に、脾臓を回収し、脾臓解離キット(Miltenyi)を使用して消化し、CD11cマイクロビーズ(Miltenyi)を使用して脾臓DCを精製した。
【0355】
細菌抗原を調製するために、MOG35-55ペプチドを発現する生きている組換えB.thetaiotaomicron(実施例3で説明した方法に類似した方法により調製したもの)を、完全T細胞培地(DMEM、10%FBS、10mMのHEPES、50μMの2-ME)で洗浄し、その培地に再懸濁させた。熱殺菌を65℃で15分間行い、細菌の生存率の低下を培養により確認した。オートクレーブ処理された抗原を、細菌懸濁液の121℃で45分間の15psiでのオートクレーブ処理により調製した。CD4+T細胞単離キット(Miltenyi)を使用して、2D2 TCR-Tgマウス(The Jackson Laboratory、血統#006912)の脾臓および末梢リンパ節からMOG特異的T細胞を単離し、精製した。
【0356】
APC-T細胞共培養物を調製するために、生きている、熱殺菌された、またはオートクレーブ処理された細菌を、全タンパク質のmlあたり10~50または40μgの感染多重度(MOI)で、2×105の脾臓DCに、4時間、37℃でパルスした。2×105のMOG特異的2D2 CD4 T細胞をAPCに添加した。共培養後2日目に、細胞を回収し、CD45.1、CD45.2、TCRb、CD4、CD25、CD44、CD69の蛍光色素コンジュゲート抗体(ThermoFisher ScientificもしくはBioLegend)、および/またはcell traceバイオレット(CTV)で染色し、フローサイトメトリー(Attune NxT)により評定した。Live/Dead Aqua(ThermoFisher Scientific)により、生細胞を除外した。FlowJo v10を使用して、データ解析を行った。
【0357】
図5Aおよび5Bに示されているように、MOG35-55ペプチドを発現する組換えB.thetaiotaomicron株(L124、DR18.2、およびDR1)は、野生型B.thetaiotaomicron(wt)より、CD4+T細胞の高度な抗原特異的誘導を誘導した。
【0358】
(実施例5)
組換えBacteroides株によるMOG特異的T細胞のin vivoでの導入
実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデルを多発性硬化症(MS)のマウスモデルとして使用した。無菌8~10週齢C57BL/6マウスまたはC57BL/6-Tg(Tcra2D2、Tcrb2D2)1Kuch/Jマウスに、MOG35-55ペプチド発現細菌(BVF-MOG=MOG35-55を発現するB.vulgatusとMOG35-55を発現するB.finegoldiiの混合物)または陰性対照としての野生型共生細菌(BVF-WT=野生型B.vulgatusと野生型B.finegoldiiの混合物)を1日目に経口接種した。野生型および組換え細菌株は、前に実施例3で説明したように得た。14日目に、200μLの完全フロイントアジュバント(CFA)で乳化した200μgのMOG35-55を含有するHooke Kit(商標)MOG35-55/CFAエマルジョン(EK-2110、Hooke Labs、St Lawrence、MA、USA)を用いて、これらのマウスを皮下免疫した。14日目の、MOG35-55/CFA免疫化の2時間後に、リン酸緩衝食塩水(PBS)中の200ngの百日咳毒素(PTX)を各マウスの腹腔内腔に注射した。15日目に、PBS中の200ngの百日咳毒素(PTX)を腹腔内注射した。EAEスコアおよび体重を15日目から34日目まで毎日評定して、疾患の重症度およびステージを評価した。この実験からの苦痛を和らげるために、スコアが3.5に達した場合、マウスを安楽死させた。スコア0は、運動機能の明らかな変化なしを意味する。スコア0.5は、尾の遠位の麻痺であり、スコア1は、完全な尾麻痺であり、スコア1.5は、一方または両方の後肢の軽度不全麻痺であり、スコア2は、後肢の重度不全麻痺であり、スコア2.5は、一方の後肢の完全麻痺であり、スコア3は、両方の後肢の完全麻痺であり、スコア3.5は、後肢の完全麻痺および一方の前肢の不全麻痺である。スコア≧3.5に達したマウスを安楽死させた。
【0359】
35日目に、マウスを安楽死させ、脊髄試料を組織学的分析用に調製し、鼠径部リンパ節を収集し、PBSで洗浄し、溶解して細胞浮遊液を得、FoxP3染色緩衝剤セット(eBioscience)を使用して固定し、BD-LSRII装置でのフローサイトメトリー分析のために様々な蛍光標識抗体で染色した。
【0360】
図6に示されているように、MOG35-55ペプチドを発現する組換えB.vulgatusとMOG35-55ペプチドを発現する組換えB.finegoldiiの混合物を投与したマウス(BVF-MOG)は、野生型B.vulgatusと野生型B.finegoldiiの混合物を投与したマウス(BVF-WT)と比較して、有意に低下したEAEスコアを有した。
*p≦0.05、
**p≦0.01。結果は、3回の独立した実験からの結果である。
【0361】
図7Aに示されているように、MOG35-55ペプチドを発現する組換えB.vulgatusとMOG35-55ペプチドを発現する組換えB.finegoldiiの混合物を投与したマウス(BVF-MOG)は、野生型B.vulgatusと野生型B.finegoldiiの混合物を投与したマウス(BVF-WT)と比較して、リンパ節FoxP3+Helios-CD4+T細胞の数が増加した。MOG35-55ペプチドを発現する組換えB.vulgatusとMOG35-55ペプチドを発現する組換えB.finegoldiiの混合物を投与したマウス(BVF-MOG)はまた、野生型B.vulgatusと野生型B.finegoldiiの混合物を投与したマウス(BVF-WT)と比較して、より少ないIL17+CD4+T細胞(
図7B)およびIFN-γ+CD4+T細胞(
図7C)を示した。
【0362】
(実施例6)
組換えStaphylococcus株によるOVA特異的T細胞のin vitroでの導入
構成的プロモーター(Swoboda et al., ACS Chem Biol. 2009において発表されたpLI50-Ppen)を有するStaphylococcus/E.coliシャトルベクターを、S.aureusおよびS.epidermidisにおいて強力な構成的翻訳を促進する(Malone et al., J Microbiol Methods 2009.)、S.aureusデルタ溶血素(hld)遺伝子からのリボソーム結合部位に融合させた。一部の場合には、公開されている戦略(Johnston et al., PNAS 2019)を使用して、pLI50miniと表されるミニサークルプラスミドになるようにpLI50-Ppenを改変した。
【0363】
Chun et al. J Exp Med 2001に記載されているin silico予測法を使用して、(i)完全長タンパク質、(ii)OVAからのMHC-I結合抗原の1×リピート(アミノ酸配列SIINFEKLを有する;「1×」)、(iii)SIINFEKLの3×リピート(「3×」)、または(iv)OVAからの3つの予測H2-M3結合ペプチドのコンカテマー(「3pep」)という、4つの形態のOVA抗原を設計した。
【0364】
次に、細胞壁呈示抗原のためのS.epidermidis株を産生した。これらの株では、OVA、1×、3×、または3pepを、N末端シグナルペプチドおよびC末端細胞壁貫通領域という、S.aureusプロテインAの2つのドメイン間でスプライシングし、その結果、wOVA、wOVA1×、wOVA3×、およびwOVA3pepを得た。
【0365】
PepboyマウスにB16-黒色腫産生Flt3Lを腹腔内注射して、全樹状細胞産生を刺激した。約10~13日後、脾臓樹状細胞をCD11c磁気ビーズで単離した。これらの樹状細胞を、熱殺菌された細菌とともに、2.5時間、37℃でインキュベートした。トランスジェニックマウス(OT-IまたはOT-II)の脾臓から単離した細胞を、pan-T細胞単離キット(Miltenyi)で単離した。樹状細胞/細菌インキュベーション後、目的のT細胞を樹状細胞共培養物に10:1のまたはそれより高い樹状細胞対T細胞比で添加し、37℃でさらに3.5時間、共培養した。共培養後、フローサイトメトリー分析のための細胞表面マーカー、細胞内転写因子および細胞内Nur77発現についての固定および染色のために、細胞を収集した。Nur77発現を、共培養中のT細胞の抗原特異的TCR結合および活性化についてのマーカーとして使用した。
【0366】
図8Aに示されているように、細胞壁にOVA融合タンパク質を発現する組換えS.epidermidis株(492、540および569株)は、共培養物中のNur77発現CD8+T細胞の割合を増加させた。対照的に、
図8Bに示されているように、492、540および569株は、Nur77発現CD4+T細胞の割合を増加させなかった。
【0367】
(実施例7)
組換えStaphylococcus株によるPMEL特異的T細胞のin vitroでの導入
メラノサイト特異的抗原であるPMELを細菌細胞壁に呈示するS.epidermidis株を、前に実施例6で説明したのと類似の方法により産生した。
【0368】
in vitro混合細菌/APC/T細胞反応を、前に実施例6で説明したように、しかし、OVA発現S.epidermidis株の代わりにPMEL発現S.epidermidis株を使用して、およびOT-IまたはOT-II T細胞の代わりに8rest CD8 T細胞を使用して、行った。
【0369】
OVA発現組換えS.epidermidis株と同様に、
図9に示されているように、PMEL発現組換えS.epidermidis株は、共培養物中のNur77発現CD8+T細胞の割合を増加させた。
【0370】
(実施例8)
OVA発現S.epidermidisによるOVA+黒色腫のin vivo誘導腫瘍致死
8週齢~12週齢の間のC57BL/6雌マウスを、全てのin vivo黒色腫実験に使用した。1~3×105の黒色腫細胞を、黒色腫進行の局所または転移モデルに皮下注射または腹腔内注射した。黒色腫細胞は、OVAを発現するB16F10細胞系、OVAおよびルシフェラーゼを発現するB16F10細胞系、またはATCC B16F0-ルシフェラーゼおよびB16F10-ルシフェラーゼ細胞系のいずれかであった。腫瘍抗原発現S.epidermidisをマウスに局所投与する1週間前までに、または局所投与した2週間後に、黒色腫の注射を行った。ルシフェラーゼ発現B16黒色腫を注射したマウスについては、滅菌PBS中の150mg/kgのD-ルシフェリンをマウスに注射し、続いて、IVIS LuminaまたはLagoイメージャーを使用してイソフルラン麻酔下でイメージングすることにより、in vivoイメージングを行った。
【0371】
図10に示されているように、腫瘍注射前と腫瘍注射後の両方のOVA発現S.epidermidisの局所投与が、野生型対照S.epidermidisで処置したマウスと比較してマウスにおける腫瘍重量の有意な低減をもたらした(
図10A)。
*p≦0.05。同様に、ルシフェラーゼ発現黒色腫細胞の腫瘍注射の1~3日後のOVA発現S.epidermidisの局所投与は、野生型対照S.epidermidisで処置したマウスと比較して腫瘍放射輝度/発光の有意な低減をもたらした(
図10Bおよび
図10C)。
【0372】
(実施例9)
組換えS.epidermidisを使用する型特異的T細胞活性化のin vitro誘導
in vitro細胞培養モデルを使用して、腫瘍抗原を含有する融合タンパク質を発現する組換え細菌を接種したマウスにおいて抗原特異的免疫の誘導を試験した。
図11Aおよび
図11Bは、特定の細菌細胞内局在を有する腫瘍抗原を含有する融合タンパク質を発現させるために使用した構築物設計を示す模式図である。抗原断片がtat担体に挿入される、tat発現系は、tat担体ペプチドと融合した抗原の分泌をもたらす(
図11A)。抗原断片がソルターゼシグナルペプチドおよび細胞壁貫通ペプチドに融合される、細胞壁固定発現系は、細菌細胞壁に標的化されている抗原をもたらす(
図11B)。
図11Cは、OVA抗原を発現するための特異的構築物の設計を説明する模式図を示す。大部分の基本構築物(cOVA)は、細胞質内のOVA局在をもたらす。OVAまたは断片OT1、OT2もしくはOT3pepへの、N末端ソルターゼシグナル配列およびC末端壁貫通領域の付加は、発現される抗原の、細菌細胞の外面への固定をもたらす。対照的に、N末端secまたはtatシグナル配列の付加は、発現される抗原の分泌をもたらす。ペプチド断片には、C末端担体タンパク質を付加させて、抗原分泌を促進する。完全長OVA構築物の産生をウエスタンブロットにより評定した(
図11D)。注目すべきことに、S.epidermidisは、十分に報告されているSec分泌系を有し、識別可能なTat分泌系を有さないが、Tatシグナルペプチドは、OVAの効率的産生および分泌を助長した。
【0373】
マウス脾臓樹状細胞に、対照または抗原含有構築物を発現する組換えS.epidermidisを接種した。
図12は、T細胞活性化のマーカーであるNur77の発現により測定したときの培養CD8+T細胞(
図12A)およびCD4+T細胞(
図12B)の活性化を示す。CD8+T細胞の公知活性化因子であるOT-Iは、CD8+T細胞においてNur77のロバストな誘導を引き起こし、CD4+T細胞の活性化因子であるOT-IIは、同様に、CD4+T細胞のロバストな活性化を誘導した。CD8+T細胞は、OT-IIによって強力に活性化されず、CD4+T細胞もOT-Iによって強力に活性化されなかった。これは、特定の抗原へのT細胞型の特異的応答を示す。
【0374】
(実施例10)
マウスにおける組換えS.epidermidisでの抗腫瘍免疫のin vivo活性化
皮下異種移植モデルを使用して、OVA陽性腫瘍細胞に対する抗腫瘍免疫を誘導する組換えS.epidermidisの能力を試験した。OVA陽性B16F10黒色腫細胞の皮下異種移植前に1週間、マウスに、OVA抗原構築物または対照で操作されたS.epidermidisを接種した。
図13は、対照と比較してOVA発現細菌を接種したマウスにおける腫瘍体積および重量の有意な低減を実証する、異種移植の21~23日後の腫瘍体積(
図13A)および重量(
図13B)の分析を示す。
【0375】
S.epidermidisにおける特異的構築物の発現を使用して、抗原特異的抗腫瘍免疫におけるT細胞型の相対的寄与を評定した。OVA陽性B16F0黒色腫細胞の皮下異種移植前に1週間、マウスに、分泌OVA(sOVAtat)、壁結合OT1(wOVApep)、生きているsOVAtatおよびwOVApep両方(OVA)、または熱殺菌されたsOVAtatおよびwOVApep両方(HK OVA)を発現する細菌を接種した。生きているsOVAtatおよびwOVApep細菌株両方(OVA)を接種したマウスの群を、CD8+T細胞(OVA+aCD8)またはT細胞受容体(TCR)(OVA+aTCRb)のどちらかを標的とする抗体で処置した。
図14Aは、腫瘍重量の有意な低減が、生きているsOVAtatおよびwOVApep細菌株両方で処置したマウスにのみ見られたことを示す。腫瘍重量のこの低減は、CD8+T細胞またはTCR標的化抗体での併用処置により防止された。これは、CD8+T細胞とCD4+T細胞の両方の誘導が抗腫瘍免疫に必要であることを示す。熱殺菌された細菌での処置は、腫瘍重量の有意な低減をもたらさなかった。これは、操作された細菌が、単に抗原およびアジュバントの供給源ではなかったこと、しかし、細菌生存率が、および可能性として持続的抗原曝露が、一般に免疫刺激応答には必要であったことを示す。CD8+T細胞または全てのTCRβ+細胞の抗体媒介枯渇(
図14Bおよび
図14C)は抗腫瘍効果を消失させ、これはS.epi-OVA誘導応答にCD8+およびCD4+T細胞が果たす役割と整合していた(
図14A、
図14Bおよび
図14C)。
【0376】
腫瘍流入領域リンパ節内のT細胞の分析によって、組換えS.epidermidisを局所的に接種したマウスにおけるCD8+T細胞とCD4+T細胞の両方の抗原特異的活性化の指標が得られる。OVA陽性B16-F0黒色腫細胞の皮下異種移植前に1週間、マウスに、OVA抗原構築物または対照を発現するように操作されたS.epidermidisを接種した。
図15Bおよび
図15Eに示されているように、活性化IFNγ発現CD8+T細胞およびCD4+T細胞のパーセンテージは、腫瘍流入領域リンパ節においてS.epi-OVAによるコロニー形成後にそれぞれ増加したが、S.epi-対照では増加しなかった。
図15Cに示されているように、H2-Kb/SIINFEKL四量体染色CD8+T細胞のパーセンテージもまた、腫瘍流入領域リンパ節においてS.epi-OVAによるコロニー形成後に増加したが、S.epi-対照では増加しなかった。
図15Aおよび
図15Dに示されているように、CD8+T細胞の総パーセンテージも、CD4+T細胞の総パーセンテージも、S.epi-対照と比較してS.epi OVAを接種したマウスの流入領域リンパ節において、それぞれ有意に増加しなかった。これは、T細胞活性化が、免疫応答の一般的な活性化とは対照的に抗原特異的であったことを示す。これらの結果は、S.epi-OVAが生理的コロニー形成条件下で抗腫瘍免疫応答を惹起したことを示す。さらに、OVA発現細菌は、活性化した抗原特異的CD4+およびCD8+T細胞を誘導し、これらの細胞が腫瘍部位に遊走した。
【0377】
抗腫瘍効果のための局在および抗原要件をさらに評定した。B16-OVA腫瘍細胞を右側腹部に皮下注射する前に、マウスに、OVAの異なるバージョンを保有するS.epidermidis株のコロニーを形成した。S.epi-wOT1のみがCD8+T細胞抗原を発現するので、S.epi-wOVA(すなわち、完全長OVAタンパク質)を用いてマウスにコロニーを形成して、CD8+およびCD4+抗原が壁に呈示された構築物が応答を惹起し得るかどうかを判定した。しかし、
図15Fに示されているように、S.epi-wOVAは、対照と比較して抗腫瘍効果を示さなかった。対照的に、S.epi-wOT1とS.epi-sOT2の組合せを用いたコロニー形成は、腫瘍重量を減少させ(
図15F)、IFNγ発現CD8+T細胞を増加させた(データの図示なし)。これは、抗腫瘍有効性が、一般に、壁結合CD8+T細胞抗原と分泌CD4+T細胞抗原の両方を必要としたことを示唆する。S.epi-wOT2およびS.epi-sOT1を用いてマウスにコロニーを形成することにより、局在と抗原ペプチド同一性を不適正に組み合わせた場合、腫瘍流入領域リンパ節において、腫瘍重量(
図15F)のいかなる低減も、IFNγ発現CD4+T細胞(
図15G)およびCD8+T細胞(
図15H)のパーセンテージのいかなる増加も、観察されなかった。したがって、これらのin vivoデータは、壁結合CD8+エピトープと分泌CD4+エピトープの両方が最適な抗腫瘍活性に一般に必要とされる、細菌の抗原細胞内局在が重要であるモデルと整合した。これらの結果は、抗原特異的CD4+およびCD8+T細胞が両方とも一般にS.epidermidis誘導抗腫瘍応答に必要とされることも示唆している。
【0378】
(実施例10)
組換えS.epidermidisでの抗原提示細胞の標的化による抗ウイルス免疫のロバストな活性化
抗原提示細胞(APC)の標的化を使用して、特定の免疫細胞型のロバストな活性化を促進することができる。
図16A(Lopez-Requena, 2012から抜粋した図)は、免疫細胞の特異的活性化を促進するためのAPC抗原の標的化を示す。APC上のCD11bの標的化は、CD8+T細胞活性化を増強し、APC上のMHC-IIの標的化は、CD4+T細胞およびB細胞の活性化を増強する。
図16B(Lopez-Requena, 2012から抜粋した図)は、特定の抗原を標的とするために融合タンパク質において使用され得る、ナノボディ(VHH)を含む、機能的抗体断片を示す。
図17Aは、インフルエンザAウイルス(IAV)NP
366-374に対するCD8+T細胞特異的応答を誘導するように設計した構築物の模式図を示す。両方の構築物設計は、CD8+T細胞応答を促進するためのIAVエピトープと、発現を評定するためのHAタグと、細胞壁への融合タンパク質の局在を誘導するためのまたは分泌を誘導するための担体とを含む。下の構築物は、CD8+T細胞活性化をさらに促進するためにAPCを標的とするCD11b標的化VHH断片も含有する。これらの構築物をS.epidermidisなどの細菌に発現させ、対象に接種して、抗IAV CD8+T細胞応答を促進することができる。
図17Bは、CD4+T細胞応答を誘導するための構築物の概略設計を示す。これらの構築物は、同様に、担体およびHAタグを含み、CD4+T細胞応答を促進するための2つのIAV抗原断片のうちの1つ(NP
366-374またはNA
177-193)も含む。これらの構築物のうちの2つは、CD4+T細胞活性化を増加させるためにAPCを標的とするMHC-II標的化VHH断片も含有する。
【0379】
T細胞応答に加えて、B細胞も、異種抗原断片を発現するように操作された組換え細菌により活性化され得る。
図18は、オボアルブミン構築物を発現する組換えS.epidermidisを接種したマウスが、接種後3週間(
図18A)および5週間(
図18B)の時点で血清におけるオボアルブミン標的化IgG抗体の低レベル誘導を有することを示す。
図19は、組換え細菌における異種抗原の発現がIAVに対するB細胞応答を惹起する、構築物の設計の模式図を示す。全ての構築物は、B細胞刺激エピトープ((M2e)
4、HA2
76-130、またはHA2
12-63)とともに、担体およびHAタグを含有する。これらの構築物は、CD4+T細胞によるB細胞の活性化を促進するためにCD4+T細胞エピトープも含有する。これらの構築物の半分は、B細胞およびCD4+T細胞活性化を刺激するためにAPCを標的とするMHC-II標的化VHH断片も含有する。
【0380】
マウスモデルを利用して、IAV抗原とAPC標的化VHH断片とを含有する融合タンパク質を発現する組換え細菌での抗IAV免疫の活性化を実証することができる。
図20は、マウスモデルを使用して抗IAV免疫応答を促進する点での組換え細菌の効果を試験する実験のワークフロー図を示す。
図17A、
図17Bまたは
図19に示されている構築物を含む、組換え細菌の1つまたは複数の株、例えば、S.epidermidisまたは任意の他の好適な株を、野生型SPFマウスに接種することができる。およそ14~35日後、接種したマウスをIAVに鼻腔内感染させることができる。所定の終点で、生存率;体重;体温;Nur77発現、IFNγ発現もしくは任意の他の好適な尺度に基づくT細胞活性化;または抗体力価もしくは任意の他の好適な尺度に基づくB細胞活性化などの、尺度を使用して、抗IAV免疫応答を誘導する組換え細菌の能力を評定することができる。
【0381】
(実施例11)
操作されたS.epidermidis株は転移性黒色腫モデルにおいて有効性を示す
上記実施例では、腫瘍細胞をマウスの側腹部に皮下注射した。頭部への局所的適用によりマウスにコロニーを形成したが、マウスの毛づくろい行動は、S.epidermidisを皮膚にわたって広く分散させる可能性があり、それによって、抗腫瘍免疫応答の誘導のために組換え細菌と腫瘍がすぐそばにある必要があるのかどうかという問いが生じた。この問いに取り組むために、B16黒色腫の十分に特徴付けられた(およびより高悪性度の)バリアントであるB16-F10に由来する細胞系を使用して、転移性黒色腫モデルにおいて、実験を行った。そのワークフローを
図21Aに概略的に示す。ルシフェラーゼを構成的に発現するB16-F10-OVA細胞を皮下注射ではなく静脈内注射し、その結果として肺に転移が生じた。静脈内腫瘍細胞注射の7日前のS.epi-OVAの局所的付着は、腫瘍進行を大幅に緩徐化させた(
図21C、
図21Dおよび
図22)。これにより、S.epi-OVAの抗腫瘍効果が皮膚および皮下組織に限定されないことが実証された。これらのデータは、異種抗原発現S.epidermidisの抗腫瘍効果が、一般に、感染も、腫瘍への近接も必要としないこと、すなわち、異種抗原発現S.epidermidisが、天然宿主ニッチに対して遠位の抗腫瘍応答を刺激できたこと、および腫瘍転移を首尾よく標的とすることを示す。
【0382】
次に、現実世界での応用にあたってモデル抗原に付随する潜在的な問題、すなわち、APCにおけるそれらの効率的なプロセシング、および同系腫瘍細胞系における高度な発現、について解決するために、腫瘍に天然に存在するネオ抗原含有ペプチドの組換え細菌による発現を評定した。B16-F10黒色腫細胞に天然に存在する、およびmRNAワクチンとして製剤化されたときに抗腫瘍応答を駆動すると以前に報告されている(S. Kreiter et al., Mutant MHC class II epitopes drive therapeutic immune responses to cancer. Nature. 520, 692-696 (2015).)、2つのネオ抗原含有ペプチドを発現するように、S.epidermidisを操作した(
図21B)。Obsl1(T1764M)からのネオ抗原ペプチドは、CD8+T細胞を優先的に刺激するため、変異ネオ抗原残基を中心とする27-aaペプチドを、実施例9で説明した壁結合足場にスプライシングし、それによってS.epi-wB16Ag株を得た(
図21B、下のパネル)。別のネオ抗原ペプチドであるInts11(D314N)は、主としてCD4+T細胞を刺激するため、ネオ抗原突然変異を保有する27-aaペプチドを、実施例9で説明したTat媒介分泌の足場にスプライシングし、その結果、S.epi-sB16Ag株を生成した(
図21B、上のパネル)。S.epi-wB16AgとS.epi-sB16Agの混合物(「S.epi-neoAg」と呼ぶ)を用いてマウスにコロニーを形成し、次いで、7日後にB16-F10-OVA-luc細胞を静脈内注射した。腫瘍サイズを低減することができなかったS.epi-対照とは対照的に、S.epi-neoAgは、S.epi-OVAに匹敵するレベルで腫瘍成長を制限した(
図21C、
図21D、および
図22)。S.epi-neoAgによりコロニーが形成されたマウスは、自己免疫のいずれの症状も示さなかった。これは、操作されたS.epidermidisによって誘導されたT細胞が、健康な組織よりも腫瘍細胞に対して選択的であるモデルであって、ネオ抗原を含む潜在的に広範な宿主抗原に対してこれらのT細胞を方向付けることができるモデルと整合する。
【0383】
(実施例12)
ソルターゼAを使用する扱いにくい生物への組換えタンパク質の固定
グラム陽性細菌Firmicutesをはじめとする、ある特定の共生微生物は、免疫応答を強力にモジュレートするが、既存の遺伝子操作ツールの欠如に起因して、これまで研究することが難しかった。この目的を達成するために、
図23Aに示されている、Staphylococcus aureusペプチド転移酵素であるソルターゼA(SrtA)を使用する系を利用して、細菌の細胞壁に融合タンパク質を固定することができる。
図23Bは、SrtA上のシステイン残基が融合タンパク質上のC末端LPXTGモチーフと反応する系を示す。細胞壁上のアミン基は、求核アシル置換によって、融合タンパク質をSrtAに連結しているチオエーテル結合と反応する。この結果として、細菌の細胞壁への融合タンパク質の共有結合性連結が生じる。
図23Cは、抗原断片(例えば、OTI、OTII、またはCTR)、発現タグ(例えば、HA)、およびSrtAと反応できるC末端LPXTGモチーフを含有する構築物設計の模式図を示す。これらの構築物は、APCを標的とするためのN末端VHH領域(例えば、α-CD11b VHH、α-MHC-II VHH)も含有し得る。
【0384】
(実施例13)
操作されたS.epidermidisは定着腫瘍に対して有効である
腫瘍注射後の操作されたS.epidermidisによるマウスにおけるコロニー形成(一次処置のモデル)が治療応答を生じさせるかどうかを試験するために、実験を行った。先ず、マウスにB16-F0-OVA細胞を皮下注射し、次いで、腫瘍細胞注射の翌日に開始して、4回、S.epi-OVApepに対してS.epi-対照によってコロニーを形成した。腫瘍細胞負荷量の有意な低減が観察された(
図24A)。静脈内腫瘍細胞注射の3日後にコロニー形成を開始する、転移性黒色腫モデルにおいてB16-F10-OVAを使用する第2の実験では、腫瘍負荷量の低減は、さらにいっそう顕著であり、OVA特異的CD8+T細胞誘導の増加を伴った(
図24B)。S.epidermidis誘導T細胞の測定可能な増加に少なくとも7日かかると仮定すると、「処置モデル」(腫瘍細胞注射後)に観察された活性は、操作されたS.epidermidisが、高悪性度腫瘍が定着した後でさえ有効であることを実証した。
【0385】
S.epidermidis誘導腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の分析中に、大部分のTILがPD-1+であるという1つの観察結果が目を引いた。これは、TILが部分的にまたは完全に使い果たされた可能性と整合する。チェックポイント阻害剤である抗PD-1および抗CTLA-4を使用して、共投与した場合、これらの細胞が、より強力な抗腫瘍活性を発揮すると推論して、マウスに、予防的モデルでコロニーを形成し、2用量の抗PD-1/抗CTLA-4混合物を腫瘍細胞注射後5日目および9日目に与えた。抗PD-1と抗CTLA-4とS.epi-対照の組合せは腫瘍成長を制御することができず、これはB16-F10黒色腫の高悪性度の性質と整合していた。しかし、S.epi-OVApepを用いてコロニーを形成したとき、15/16の両側性腫瘍(7/8匹のマウスにおいて)が拒絶されるという著しい応答が観察され、したがって、大きな生存利益につながった(
図24C)。別の実験では、腫瘍細胞を右側腹部に注射した。14/16匹のマウスが、完全レスポンダーであり、31日後、左側腹部へのB16-F10細胞の注射によってその14匹のマウスに再投与した。14/14匹は、左側腹部における腫瘍成長の形跡を示さず、9/14匹は、右側腹部において腫瘍を依然として検出できなかった。これらのデータは、チェックポイント遮断が、操作されたS.epidermidisの抗腫瘍効果を増強すること、およびこのアプローチが腫瘍に対する免疫記憶を生じさせることを示す。
【0386】
操作されたS.epidermidisとチェックポイント阻害剤の組合せを、そのような組合せが一次処置のモデルにおいて増強された応答を生じさせることができるかどうかを判定するために試験した。B16-F10-OVAの皮下注射の5日後、S.epi-対照またはS.epi-OVApepを用いてマウスにコロニーを形成し、同時に抗PD1と抗CTLA-4の組合せを投与した(
図24D)。腫瘍負荷量の低減が顕著であり、12/14の腫瘍の拒絶があった(両側性腫瘍を有する5/7匹のマウスにおいて)。これらのデータは、腫瘍発現共生体とチェックポイント遮断を組み合わせることが、実行可能な治療戦略になり得ることを示す。
【0387】
参照による組込み
本明細書で言及する特許文献および科学論文の各々についての全開示は、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0388】
均等物
本発明を、趣旨またはその本質的特徴を逸脱することなく、他の特定の形態で実施することができる。それ故、上述の実施形態を、あらゆる点で、本明細書に記載の本発明を制限するものではなく説明に役立つものと見なされたい。したがって、本発明の範囲は、上述の説明ではなく添付の特許請求の範囲により示され、請求項の均等性の意味および範囲内に入る全ての変更は、その請求項に包含されるように意図されている。
【配列表】
【国際調査報告】